(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170221
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】入力ペン用フィルム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
G06F3/041 460
G06F3/041 495
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087267
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪上 正史
(57)【要約】
【課題】入力ペン用フィルムにおいて、入力ペンの筆記感を向上させる。
【解決手段】入力ペンの入力部が接するペン接触面を有するフィルムは、前記入力部が前記ペン接触面に接した状態で前記入力ペンを移動させたときの、前記入力部と前記ペン接触面との相対速度が0となるスティック状態の時間をTst、前記相対速度が0でないスリップ状態の時間をTslとした場合に、前記入力ペンの移動速度が1mm/sの条件下において、{Tsl/(Tst+Tsl)}×100%により求められるスリップ時間率が50%以下である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力ペンの入力部が接するペン接触面を有する入力ペン用フィルムであって、
前記入力部が前記ペン接触面に接した状態で前記入力ペンを移動させたときの、前記入力部と前記ペン接触面との相対速度が0となるスティック状態の時間をTst、前記相対速度が0でないスリップ状態の時間をTslとした場合に、
前記入力ペンの移動速度が1mm/sの条件下において、
{Tsl/(Tst+Tsl)}×100%により求められるスリップ時間率が10%以上50%以下である、入力ペン用フィルム。
【請求項2】
前記スリップ時間率が20%以上40%以下である、請求項1に記載の入力ペン用フィルム。
【請求項3】
ウレタン層を有し、
前記ウレタン層の表面によって前記ペン接触面が形成されている、請求項1又は請求項2に記載の入力ペン用フィルム。
【請求項4】
前記ウレタン層の厚みは、10μm以上130μm以下である、請求項3に記載の入力ペン用フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、入力ペンの操作感を向上させるために入力装置の入力面に貼り付けられる入力ペン用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
スタイラスペンやタッチペンなど、ディスプレイに文字を書く用途で用いるデジタルペンの筆記感を向上させるためのフィルムが様々開発されている。これらのフィルムは、素材や表面形状を変えることで筆記抵抗を増し、筆記感を向上させている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-109048号公報
【特許文献2】特開2021-60710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
デジタルペン(入力ペン)はボールペン(筆記具)と比較してスリップ時間率が高い。低速筆記時にスリップ時間率が高い場合、運筆制御が難しくなる傾向にある。文字を書く場合、始筆時と終筆時に筆記速度を低速にし、運筆を制御する。このため、スリップ時間率は低いほうが好ましい。デジタルペンで文字を筆記する際に違和感を覚えるのは、低速筆記時のスリップ率がボールペンと比較して高いことが一つの要因として考えられる。すなわち、デジタルペンの筆記感には改善の余地がある。
【0005】
本開示は、入力ペン用フィルムにおいて、入力ペンの筆記感を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様の入力ペン用フィルムは、
入力ペンの入力部が接するペン接触面を有するフィルムであって、
前記入力部が前記ペン接触面に接した状態で前記入力ペンを移動させたときの、前記入力部と前記ペン接触面との相対速度が0となるスティック状態の時間をTst、前記相対速度が0でないスリップ状態の時間をTslとした場合に、
前記入力ペンの移動速度が1mm/sの条件下において、
{Tsl/(Tst+Tsl)}×100%により求められるスリップ時間率が10%以上50%以下である。
【0007】
本開示の第2態様の入力ペン用フィルムは、第1態様の入力ペン用フィルムにおいて、前記スリップ時間率が20%以上40%以下である。
【0008】
本開示の第3態様の入力ペン用フィルムは、第1態様又は第2態様の入力ペン用フィルムにおいて、ウレタン層を有し、前記ウレタン層の表面によって前記ペン接触面が形成されている。
【0009】
本開示の第4態様の入力ペン用フィルムは、第3態様の入力ペン用フィルムにおいて、前記ウレタン層の厚みは、10μm以上130μm以下である。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様の入力ペン用フィルムは、入力ペンの筆記感を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一態様の入力ペン用フィルムの斜視図である。
【
図2】
図1の入力ペン用フィルムの2X-2X線に沿った拡大断面図である。
【
図4】入力ペンをペン接触面に接触させた状態で入力ペン用フィルムを移動させたときの、一周期におけるスティック状態とスリップ状態の状態変化を説明するための概念図である。
【
図5】静動摩擦測定装置によって得られた摩擦係数波形の一例を示す波形図である。
【
図6】
図5の波形図から、ばね定数を求めるための説明図である。
【
図7】試験データと、スリップ時間率及び動摩擦係数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係る入力ペン用フィルムを詳細に説明する。
【0013】
各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一又は同様の構成要素であることを意味する。なお、以下に説明する実施形態において重複する説明及び符号については、省略する場合がある。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0014】
<入力ペン用フィルム>
図1には、本実施形態に係る入力ペン用フィルム20(以下、フィルム20と略す)の斜視図が示されている。また
図2には、
図1の矢印2X-2X線に沿った拡大断面図が示されている。
【0015】
本実施形態のフィルム20は、入力ペン10で手書き入力を受ける装置の入力面に貼り付けて用いられる。一例として、タッチパネル式の表示装置の入力面やタブレットの入力面に貼り付けられたり、タッチパッドの入力面に貼り付けられたりして使用される。
【0016】
フィルム20は、入力ペン10の入力部12が接するペン接触面20Aを有する。フィルム20が装置の入力面に貼り付けられた状態では、入力部12がペン接触面20A上を移動することで装置に手書き入力が受け付けられる。なお、本実施形態における入力部12は、入力ペン10のペン先を指す。
【0017】
図2に示されるように、フィルム20は、積層フィルムである。具体的には、フィルム20は、プラスチック製の基材22と、基材22に積層されたスリップ抑制層としてのウレタン層24と、を有している。
【0018】
基材22は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)で構成されている。なお、基材22を構成する材料は、PETに限定されない。
【0019】
基材22の厚みは、一例として100mm以上188mm以下であるが、本開示はこの構成に限定されない。
【0020】
ウレタン層24は、ペン接触面20Aを構成している。具体的には、ウレタン層24の表面によってペン接触面20Aが形成されている。
【0021】
ウレタン層24の厚みは、10μm以上130μm以下であることが好ましく、70μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。
【0022】
ウレタン層24は、基材22にウレタン樹脂を塗布して形成されている。なお、本開示はこの構成に限定されない。例えば、基材22にウレタンフィルムを貼り付けて形成してもよい。
【0023】
本実施形態のフィルム20は、入力部12がペン接触面20Aに接した状態で入力ペン10を移動させたときの、入力部12とペン接触面20Aとの相対速度が0となるスティック状態の時間をTst、入力部12とペン接触面20Aとの相対速度が0でないスリップ状態の時間をTslとした場合に、入力ペン10の移動速度が1mm/sの条件下において、{Tsl/(Tst+Tsl)}×100%により求められるスリップ時間率が50%以下となるフィルムである。具体的には、フィルム20は、ペン接触面20Aのスリップ時間率が50%以下となるようにペン接触面20Aが構成されている。
【0024】
なお、本開示におけるスリップ時間率とは、トライボロジーにおけるスティックスリップ運動の厳密解において、1周期の内にどれだけスリップ時間が占めるかを示す指標である(参考:「クーロン摩擦モデルに基づくStick-Slip運動の発生条件式(第1報)」 横浜国立大学 大学院環境情報研究院 中野健 トライボロジスト第51巻第2号2006/131-139))。
【0025】
スリップ時間率は、10%以上50%以下であることが好ましく、20%以上40%以下であることがさらに好ましい。
【0026】
<スリップ時間率の算出方法>
次に、スリップ時間率の算出方法について説明する。
【0027】
前述したようにスリップ時間率は、以下の式(1)で求められる。
【0028】
スリップ時間率={Tsl/(Tst+Tsl)}×100%・・・(1)
Tsl:1周期におけるスリップ状態の時間
Tst:1周期におけるスティック状態の時間
【0029】
時間Tslは、前述したように、入力部12とペン接触面20Aとの相対速度が0となるスティック状態の時間である。言い換えると、時間Tslは、入力部12がペン接触面20Aに対して固着している状態の時間である。
【0030】
時間Tstは、前述したように、入力部12とペン接触面20Aとの相対速度が0でないスリップ状態の時間である。言い換えると、時間Tstは、入力部12がペン接触面20Aに対して滑っている状態の時間である。
【0031】
図3には、スリップ時間率を求めるために用いられる静動摩擦測定装置としての測定装置40が示されている。測定装置40のアーム42は、入力ペン10を支持している。入力ペン10の入力部12はアーム42に支持された状態でフィルム20のペン接触面20Aに接している。フィルム20は、測定装置40の移動テーブル44上に設置されている。移動テーブル44は、入力ペン10の軸方向と直交する方向に移動可能とされている。
図3では、移動テーブル44の移動方向を矢印M1及びM2で示している。なお、矢印M2は矢印M1の逆方向である。
【0032】
図4には、測定装置40を用いて入力ペン10をフィルム20のペン接触面20Aに接触させた状態において、スティックスリップ現象の1周期におけるスリップ状態とスティック状態との間の状態変化を示している。
図4に示されるように、入力ペン10による始筆時及び終筆時に入力部12がペン接触面20Aに対してスティック状態となり、始筆時と終筆時との間の時間では入力部12がペン接触面20Aに対してスリップ状態となる。なお、
図4におけるθaは、スティック状態からスリップ状態へ移り変わるスリップ遷移点における位相を示している。また、
図4におけるLstickは、スティック距離を示している。また、1周期の時間は時間Tslと時間Tstを足したものである。
【0033】
時間Tslは、以下の式(2)で求められる。
【0034】
【0035】
時間Tstは、以下の式(3)で求められる。
【0036】
【0037】
式(2)及び式(3)におけるvは筆記速度(mm/s)であり、Wは垂直荷重(N)である。垂直荷重Wは、9.8×mで求められる。mは質量(kg)である。なお、筆記速度vは、測定速度、擦過速度と言い換えてもよい。
【0038】
筆記速度v及び垂直荷重Wを設定し、その設定条件下における入力ペンのペン先とフィルムとの間の動摩擦係数μk、静止摩擦係数μs及びばね定数K[N/m]を実験により求める。
【0039】
筆記速度v、垂直荷重W、動摩擦係数μk、静止摩擦係数μs及びばね定数Kからペン先の滑り始め(言い換えるとスリップ開始時)の変位量Xa、最大変位量Xb及びスリップ遷移点位相θaを求める。
【0040】
変位量Xaは、以下の式(4)で求められる。
【0041】
【0042】
最大変位量Xbは、以下の式(5)で求められる。
【0043】
【0044】
スリップ遷移点位相θaは、以下の式(6)で求められる。
【0045】
【0046】
そして、式(1)における時間Tslと時間Tstをそれぞれ式(2)及び式(3)に置き換えたものが以下の式(7)である。
【0047】
【0048】
次に本実施形態の作用並びに効果について説明する。
本実施形態のフィルム20では、入力ペン10の入力部12がペン接触面20Aに接した状態で入力ペン10が1mm/sの移動速度で移動する(擦過する)条件下において、{Tsl/(Tst+Tsl)}×100%により求められるスリップ時間率が10%以上50%以下となるように構成されている。このため、フィルム20は、入力ペン10の低速筆記時において、ボールペン(筆記具)で用紙に字を書く場合に近い筆記感を得ることができる。すなわち、本実施形態のフィルム20は、スリップ時間率が50%を超えているものと比べて、入力ペン10の筆記感が向上する。
【0049】
またスリップ時間率が20%以上40%以下である場合、入力ペン10の筆記感が更に向上する。スリップ時間率が20%未満となると書き味が重く感じてしまうことがあり筆記感が良いものとはいえず、また、40%より大きくなると筆記具に近い書き味を得にくくなる。
【0050】
入力ペン10の入力部12と接するペン接触面20Aがウレタン層24の表面によって形成されている場合、ウレタン層24の弾力により入力ペン10の筆記感が向上する。また、ペン接触面20Aの耐摩耗性が向上する。
【0051】
また本実施形態では、ウレタン層24の厚みが10μm以上90μm以下の場合、入力ペン10の筆記感とウレタン層24の耐摩耗性が向上する。
【0052】
フィルム20は、基材22にウレタン層24を積層して形成されている。この基材22のウレタン層24と反対側の面に粘着層を積層してもよい。この場合、フィルム20を貼り付け対象に貼り付けやすくなる。
【0053】
また、フィルム20のウレタン層24の表面(ペン接触面20A)に摩擦係数や光学的な性能を向上させるパターンを有してもよい。このパターンは、例えば、印刷や型押し等で形成してもよい。この場合には、入力ペン10の筆記感がさらに向上する。
【0054】
<試験例>
次に本開示の技術の効果を確認するため、実施例のフィルムと比較例のフィルムを準備して以下の試験1を実施した。なお、実施例及び比較例のフィルムの詳細については表1に示す。
【0055】
試験1には、静動摩擦測定装置として新東科学の表面性測定機TYPE:14FWを用いた。
【0056】
まず、先端SR=0.5mmのポリアセタール芯を有する入力ペンを静動摩擦測定装置に垂直に固定し、フィルムのペン接触面に対して垂直荷重Wを100g、測定速度(筆記速度)vを1.0mm/sに設定して測定を行った。
【0057】
動摩擦係数μkは、上記で測定した摩擦力波形を垂直荷重Wで除した摩擦係数波形において、立ち上がり部を除いた平均値を用いた(
図5参照)。静止摩擦係数μsは摩擦係数波形の最大値を用いた。
【0058】
ばね定数Kは上記で測定した摩擦係数波形の立ち上がり部を用いて求めた(
図6参照)。立ち上がり部におけるμk×36.8%以上、μk×63.2%以下の範囲を1次直線近似した時の傾きから、ばね定数Kを求めた。なお、上記63.2%及び36.8%の値は、制御工学や電気工学等で一般に用いられる時定数τの基準点である。
【0059】
上記で求めた動摩擦係数μk、静止摩擦係数μs及びばね定数Kを用いてスリップ時間率を求めた。
【0060】
そして、使用者に目隠しをし、その状態で実施例及び比較例のフィルムに入力ペンで筆記を行った。その際、文字書き時に重要となる運筆の「とめはね払い」が制御できるかどうかを官能評価してもらった。
【0061】
評価結果A:ボールペンの紙への筆記と同等に「とめはね払い」を制御できた。
評価結果B:ボールペンの紙への筆記との差はあるものの、滑りすぎる感覚は少なかった。
評価結果C:ガラスそのままよりは運筆が行いやすかった。
評価結果D:ガラスと同等に滑り、運筆が行いにくかった。
なお、評価結果は、Aが最もよい結果で、BがAの次によい結果、CはBよりも劣る結果を示し、Dはフィルムによる筆記感向上効果がなかったことを示している。
【0062】
【0063】
表1から分かるように、スリップ時間率が50%以下の実施例1~6の入力ペン用フィルムは、スリップ時間率が50%を超えている比較例1~6の入力ペン用フィルムと比べて、官能評価の結果が良好である。したがって本開示の入力ペン用フィルムは、入力ペンの筆記感が向上していると考えられる。なお比較例3の評価がCとなったのは動摩擦係数が0.17と比較的高かったことが影響している。つまり、運筆の官能評価はスリップ率のみならず動摩擦係数も影響を及ぼしていることがわかる。
【0064】
また、実施例1、2及び実施例5、6の入力ペン用フィルムは、スリップ時間率が20%以上40%以下であり、官能評価の結果がいずれも最も良好な結果である。したがって、スリップ時間率は20%以上40%以下であることがさらに好ましいと考えられる。
【0065】
次に、筆記具を用いて紙に筆記した際のスリップ時間率と動摩擦係数を測定する試験2を実施した。
【0066】
この試験2には、試験1と同様に静動摩擦測定装置として新東科学の表面性測定機TYPE:14FWを用いた。
【0067】
まず静動摩擦測定装置に、JIS規格P3201に準拠した測定用紙(化学パルプ100%を原料に抄造された上質紙、坪量範囲40~157g/m2、白色度75.0%以上)を固定した。詳細には、静動摩擦測定装置のステンレス板上に測定用紙を固定した。
【0068】
次に、各種筆記具を静動摩擦測定装置に垂直に固定し、ペン接触面に対して垂直荷重Wを100g、測定速度vを1.0mm/sに設定して測定を行った。
【0069】
動摩擦係数μkは、上記で測定した摩擦力波形を垂直荷重Wで除した摩擦係数波形において、立ち上がり部を除いた平均値を用いた(
図5参照)。静止摩擦係数μsは摩擦係数波形の最大値を用いた。
【0070】
ばね定数Kは上記で測定した摩擦係数波形の立ち上がり部を用いて求めた(
図6参照)。立ち上がり部におけるμk×36.8%以上、μk×63.2%以下の範囲を1次直線近似した時の傾きから、ばね定数Kを求めた。なお、上記63.2%及び36.8%の値は、制御工学や電気工学等で一般に用いられる時定数τの基準点である。
【0071】
上記で求めた動摩擦係数μk、静止摩擦係数μs及びばね定数Kを用いてスリップ時間率を求めた。
【0072】
なお、試験2に用いた筆記具1~9を以に示す。インク色は全て黒色とした。
筆記具1:三菱鉛筆社製 筆ペン「親子筆ペンPFK-302N 太字側」
筆記具2:三菱鉛筆社製 筆ペン「親子筆ペンPFK-302N 細字側」
筆記具3:三菱鉛筆社製 サインペン「PIN-101」
筆記具4:三菱鉛筆社製 サインペン「プロッキーPM120T 細字側」
筆記具5:三菱鉛筆社製 サインペン「プロッキーPM120T 太字側」
筆記具6:三菱鉛筆社製 サインペン「EMOTT」
筆記具7:三菱鉛筆社製 ボールペン「uni-ball Signo 307(UMN-307) ボール径φ0.7」
筆記具8:三菱鉛筆社製 ボールペン「uni JETSTREAM (SXN-150-07) ボール径φ0.7)」
筆記具9:三菱鉛筆社製 ボールペン「uni楽ノック SN-101 ボール径φ0.7」
【0073】
【0074】
図7は、表1及び表2の測定結果をグラフにしたものである。この
図7に示されるように、筆記具1~9を用いて測定用紙に筆記したときのスリップ時間率に、実施例1~6のスリップ時間率の測定結果が比較例1~6のスリップ時間率の測定結果が近いことが分かる。すなわち、実施例1~6の入力ペン用フィルムは、比較例1~6のフィルムと比べて、筆記感が筆記具に近い、つまり、筆記感が向上していることが分かる。
【0075】
本開示の特定の実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本開示の入力ペン用フィルムは、入力ペンの操作感を向上させるために入力装置の入力面に貼り付けるフィルムとして利用可能である。
【符号の説明】
【0077】
10 入力ペン
12 入力部
20 フィルム
20 入力ペン用フィルム
20A ペン接触面
22 基材
24 ウレタン層
Tsl 時間(スリップ状態の時間)
Tst 時間(スティック状態の時間)