(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170222
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】車両整備用リフト
(51)【国際特許分類】
B66F 7/02 20060101AFI20241129BHJP
B60S 5/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B66F7/02 H
B60S5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087268
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】390018326
【氏名又は名称】株式会社スギヤス
(74)【代理人】
【識別番号】100110744
【弁理士】
【氏名又は名称】藤川 敬知
(72)【発明者】
【氏名】中村 健二
【テーマコード(参考)】
3D026
【Fターム(参考)】
3D026EA62
(57)【要約】
【課題】多関節スイングアームの回動に関わる作業性及び安全性を向上可能な車両整備用リフトを提供する。
【解決手段】車両整備用リフト1は、リフトアーム10のキャリッジ3に対する回動をロックする第1ロック機構LM1と、旋回アーム20のリフトアーム10に対する回動をロックする第2ロック機構LM2と、キャリッジ3が下限から所定範囲内にあるときは第1ロック機構LM1及び第2ロック機構LM2をそれぞれ解除状態に設定し、キャリッジ3が所定範囲外に上昇したときは、第1ロック機構LM1及び第2ロック機構LM2をそれぞれロック状態に設定する自動ロック解除機構70と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面上に立設される支柱と、前記支柱に沿って昇降するキャリッジと、前記キャリッジに水平回動自在に枢着され且つ先端に車両受け部を備えるスイングアームと、を備える車両整備用リフトであって、
前記スイングアームは、前記キャリッジに基端側が水平回動自在に枢着される第1アームと、前記第1アームの先端側に水平回動自在に枢着される第2アームと、を有する多関節スイングアームからなり、
前記車両整備用リフトは、
前記第1アームの前記キャリッジに対する回動をロックする第1ロック機構と、
前記第2アームの前記第1アームに対する回動をロックする第2ロック機構と、
前記キャリッジが下限から所定範囲内にあるときは前記第1ロック機構及び前記第2ロック機構をそれぞれ解除状態に設定し、前記キャリッジが前記所定範囲外に上昇したときは、前記第1ロック機構及び前記第2ロック機構をそれぞれロック状態に設定する自動ロック解除機構と、
を備える車両整備用リフト。
【請求項2】
前記自動ロック解除機構は、
前記支柱に固着された作動部材と、
前記キャリッジに設けられ、前記キャリッジの高さに応じて前記作動部材との接触作用で動作される被作動部材と、
前記被作動部材の動作を前記第1ロック機構及び前記第2ロック機構に連動させる連動部材と、
を備える、請求項1に記載の車両整備用リフト。
【請求項3】
前記第1アームは、前記キャリッジに一体化された基部リンクと、前記基部リンクに枢着連結される主リンクと、前記主リンクの先端部に枢着連結される先端部リンクと、前記先端部リンクと前記基部リンクとに枢着連結される副リンクとからなる四節リンク機構によって構成され、
前記第2アームは、前記第1アームにおける前記主リンクと前記先端部リンクとの連結部と同軸に枢着されるものであって、
前記第1ロック機構及び前記第2ロック機構は、前記主リンクの先端部近傍に設けられ、
前記第1ロック機構は、前記主リンクと前記先端部リンクとの相対角度を固定し、
前記第2ロック機構は、前記主リンクに対する前記第2アームの相対角度を固定する、請求項2に記載の車両整備用リフト。
【請求項4】
前記連動部材は、一端が前記被作動部材に連結され且つ他端が前記主リンクの先端部に向かって延設されて前記第1ロック機構及び前記第2ロック機構に連結される長尺部材を有する、請求項3に記載の車両整備用リフト。
【請求項5】
前記車両整備用リフトは、
前記先端部リンクに一体化された第1ロックギヤと、
前記第1ロックギヤと係止及び係止解除自在に設けられる第1ロック片と、
前記主リンクの先端部に一体化された第2ロックギヤと、
前記第2ロックギヤと係止及び係止解除自在に設けられる第2ロック片と、
を備え、
前記連動部材が前記被作動部材の動作を前記第1ロック片及び前記第2ロック片の係止及び係止解除にそれぞれ連動させるように構成することにより、
前記第1ロックギヤ、前記第1ロック片、前記第2ロックギヤ及び前記第2ロック片が、前記第1ロック機構として作用し、
前記第2ロックギヤ及び前記第2ロック片が、前記第2ロック機構として作用する、請求項3又は4に記載の車両整備用リフト。
【請求項6】
床面上に立設される支柱と、前記支柱に沿って昇降するキャリッジと、前記キャリッジに水平回動自在に枢着され且つ先端に車両受け部を備えるスイングアームと、を備える車両整備用リフトであって、
前記スイングアームは、基端から先端に向かって複数のアームが連結される多関節スイングアームからなり、
前記車両整備用リフトは、
前記各アームの回動をロックする複数のロック機構と、
前記キャリッジが下限から所定範囲内にあるときは前記各ロック機構をそれぞれ解除状態に設定し、前記キャリッジが前記所定範囲外に上昇したときは、前記各ロック機構をそれぞれロック状態に設定する自動ロック解除機構と、
を備える車両整備用リフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイングアームを有する車両整備用リフトに関し、特に、多関節スイングアームの回動のロック及びロック解除に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床面上に立設される支柱と、支柱に沿って昇降するキャリッジと、キャリッジに水平回動自在に枢着され且つ先端に車両受け部を備えるスイングアームとを備える車両整備用リフトが広く用いられている。このような車両整備用リフトの一つとして、キャリッジに基端側が水平回動自在に枢着されるリフトアームと、リフトアームの先端側に水平回動自在に枢着される旋回アームとを有する多関節スイングアームを備える車両整備用リフトが提案されている(例えば、特許文献1等参照。)。
【0003】
この従来技術に係る車両整備用リフトでは、多関節スイングアームにおけるリフトアームと旋回アームとの関節部にロック機構が設けられている。そして、旋回アームに設けられたロック操作用レバーを手動操作することにより、リフトアーム及び旋回アームの回動を同時にロック又はロック解除できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スイングアームを有する車両整備用リフトは、一般に次のような手順で使用される。まず、キャリッジを下限まで降下させた状態でスイングアームの回動のロックを解除する。次いで、スイングアームの姿勢を変化させて車両支持部を車両における所定位置に位置決めする。最後に、スイングアームが不用意に回動しないようにロックした状態で車両が所定高さになるまで上昇させる。
【0006】
しかしながら、上述した従来の車両整備用リフトでは、多関節スイングアームの回動をロックするためにロック操作用レバーの手動操作が必要である。このため、車両への位置合わせと同時にロック操作用レバーを手動操作する必要があり、このことが作業者の負担になる等の作業性の課題がある。さらに、人的ミスに起因して多関節スイングアームの回動をロック解除したまま上昇させた場合、スイングアームが不用意に回動する恐れがある等の安全性の課題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、多関節スイングアームの回動に関わる作業性及び安全性を向上可能な車両整備用リフトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両整備用リフトは、床面上に立設される支柱と、前記支柱に沿って昇降するキャリッジと、前記キャリッジに水平回動自在に枢着され且つ先端に車両受け部を備えるスイングアームと、を備える車両整備用リフトであって、前記スイングアームは、前記キャリッジに基端側が水平回動自在に枢着される第1アームと、前記第1アームの先端側に水平回動自在に枢着される第2アームと、を有する多関節スイングアームからなり、 前記車両整備用リフトは、前記第1アームの前記キャリッジに対する回動をロックする第1ロック機構と、前記第2アームの前記第1アームに対する回動をロックする第2ロック機構と、前記キャリッジが下限から所定範囲内にあるときは前記第1ロック機構及び前記第2ロック機構をそれぞれ解除状態に設定し、前記キャリッジが前記所定範囲外に上昇したときは、前記第1ロック機構及び前記第2ロック機構をそれぞれロック状態に設定する自動ロック解除機構と、を備える。
【0009】
この構成によれば、キャリッジが下限から所定範囲内にあるとき、ロック解除機構が第1ロック機構及び第2ロック機構をそれぞれ解除状態に設定する。これにより、第1アーム及び第2アームがそれぞれ水平回動自在となるので、多関節スイングアームを下限付近で姿勢を自在に変化させて車両受け部を車両の所望位置に位置決めすることができる。
【0010】
一方、キャリッジが所定範囲外に上昇したときは、ロック解除機構が第1ロック機構及び第2ロック機構をそれぞれロック状態に設定する。これにより、第1アーム及び第2アームはそれぞれ回動がロックされるので、車両受け部を車両の所望位置に位置決めした状態で多関節スイングアームの姿勢が固定される。
【0011】
よって、多関節スイングアームの回動のロック及びロック解除をキャリッジの昇降に伴って自動で行うことができる。これにより、多関節スイングアームの回動に関わる作業性及び安全性を向上可能な車両整備用リフトを提供することができるという効果を奏する。
【0012】
また、前記自動ロック解除機構は、前記支柱に固着された作動部材と、前記キャリッジに設けられ、前記キャリッジの高さに応じて前記作動部材との接触作用で動作される被作動部材と、前記被作動部材の動作を前記第1ロック機構及び前記第2ロック機構に連動させる連動部材と、を備える。
【0013】
この構成によれば、キャリッジが下限から所定範囲内にあるときは、連動部材が被作動部材の動作を第1ロック機構及び第2ロック機構に連動させて第1ロック機構及び第2ロック機構をそれぞれ解除状態に設定する。一方、キャリッジが所定範囲外に上昇したときは、連動部材が被作動部材の動作を第1ロック機構及び第2ロック機構に連動させて、第1ロック機構及び第2ロック機構をそれぞれロック状態に設定する。
【0014】
よって、作動部材、被作動部材及び連動部材を用いた簡単な構成により、キャリッジの高さに応じて自動的に第1ロック機構及び第2ロック機構をそれぞれ解除状態に設定したり、ロック状態に設定したりできるという効果を奏する。また、ロック解除機構の各構成部材がすべて車両整備用リフト内に設けられているため、車両整備工場の床など外部環境を用いることなく第1ロック機構及び第2ロック機構を自動的に解除状態に設定したり、ロック状態に設定したりする構成を実現することができる。
【0015】
また、前記第1アームは、前記キャリッジに一体化された基部リンクと、前記基部リンクに枢着連結される主リンクと、前記主リンクの先端部に枢着連結される先端部リンクと、前記先端部リンクと前記基部リンクとに枢着連結される副リンクとからなる四節リンク機構によって構成され、前記第2アームは、前記第1アームにおける前記主リンクと前記先端部リンクとの連結部と同軸に枢着されるものであって、前記第1ロック機構及び前記第2ロック機構は、前記主リンクの先端部近傍に設けられ、前記第1ロック機構は、前記主リンクと前記先端部リンクとの相対角度を固定し、前記第2ロック機構は、前記主リンクに対する前記第2アームの相対角度を固定する。
【0016】
この構成によれば、第1アームが基部リンクと主リンクと先端部リンクと副リンクとからなる四節リンク機構からなり、リンク間の相対角度の変化に伴う姿勢変化によってキャリッジに対する水平回動が行われるので、主リンクと先端部リンクとの相対角度を固定することで、第1アームのキャリッジに対する回動をロックすることができる。一方、第2アームは、第1アームにおける主リンクと先端部リンクとの連結部と同軸に枢着されるので、主リンクに対する第2アームの相対角度を固定することで、第2アームの第1アームに対する回動をロックすることができる。これにより、第1ロック機構及び第2ロック機構を共に主リンクの先端部近傍に設けることができ、被作動部材の動作を第1ロック機構及び第2ロック機構に連動させる連動部材の構成を簡単化することができる。
【0017】
また、前記連動部材は、一端が前記被作動部材に連結され且つ他端が前記主リンクの先端部に向かって延設されて前記第1ロック機構及び前記第2ロック機構に連結される長尺部材を有する、請求項3に記載の車両整備用リフト。
【0018】
この構成によれば、連動部材は、一端が被作動部材に連結され且つ他端が主リンクの先端部に向かって延設される長尺部材を有するので、キャリッジに設けられる被作動部材の動作を、キャリッジから離れた主リンクの先端部近傍の第1ロック機構及び第2ロック機構にそれぞれ連動させることができる。
【0019】
また、前記車両整備用リフトは、前記先端部リンクに一体化された第1ロックギヤと、前記第1ロックギヤと係止及び係止解除自在に設けられる第1ロック片と、前記主リンクの先端部に一体化された第2ロックギヤと、前記第2ロックギヤと係止及び係止解除自在に設けられる第2ロック片と、を備え、前記連動部材が前記被作動部材の動作を前記第1ロック片及び前記第2ロック片の係止及び係止解除にそれぞれ連動させるように構成することにより、前記第1ロックギヤ、前記第1ロック片、前記第2ロックギヤ及び前記第2ロック片が、前記第1ロック機構として作用し、前記第2ロックギヤ及び前記第2ロック片が、前記第2ロック機構として作用する。
【0020】
この構成によれば、キャリッジが下限から所定範囲内にあるときは、連動部材が被作動部材の動作を第1ロック片及び第2ロック片の係止解除に連動させ、第1ロックギヤ及び第2ロックギヤに対してそれぞれ解除位置に設定することで第1ロック機構及び第2ロック機構をそれぞれ解除状態に設定する。一方、キャリッジが所定範囲外に上昇したときは、連動部材が被作動部材の動作を第1ロック片及び第2ロック片の係止に連動させ、第1ロックギヤ及び第2ロックギヤに対してそれぞれ係止位置に設定することで、第1ロック機構及び第2ロック機構をそれぞれロック状態に設定する。
【0021】
本発明に係る車両整備用リフトは、床面上に立設される支柱と、前記支柱に沿って昇降するキャリッジと、前記キャリッジに水平回動自在に枢着され且つ先端に車両受け部を備えるスイングアームと、を備える車両整備用リフトであって、前記スイングアームは、基端から先端に向かって複数のアームが連結される多関節スイングアームからなり、前記車両整備用リフトは、前記各アームの回動をロックする複数のロック機構と、前記キャリッジが下限から所定範囲内にあるときは前記各ロック機構をそれぞれ解除状態に設定し、前記キャリッジが前記所定範囲外に上昇したときは、前記各ロック機構をそれぞれロック状態に設定する自動ロック解除機構と、を備える。
【0022】
この構成によれば、キャリッジが下限から所定範囲内にあるとき、ロック解除機構が複数の各ロック機構をそれぞれ解除状態に設定する。これにより、多関節スイングアームを構成する複数の各アームがそれぞれ水平回動自在となるので、多関節スイングアームの姿勢を自在に変化させて車両受け部を車両の所望位置に位置決めすることができる。
【0023】
一方、キャリッジが所定範囲外に上昇したときは、ロック解除機構が複数の各ロック機構をそれぞれロック状態に設定する。これにより、複数の各アームはそれぞれ回動がロックされるので、車両受け部を車両の所望位置に位置決めした状態で多関節スイングアームの姿勢が固定される。
【0024】
よって、多関節スイングアームを構成する複数の各アームにおける回動のロック及びロック解除をキャリッジの昇降に伴って自動で行うことができる。これにより、多関節スイングアームの回動に関わる作業性及び安全性を向上可能な車両整備用リフトを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両整備用リフトの全体構成を示す斜視図である。
【
図2】車両整備用リフトのスイングアーム周辺を示す斜視図である。
【
図3】旋回アームが伸長した状態のスイングアーム周辺を示す平面図である。
【
図4】スイングアームにおいて旋回アーム周辺を拡大して示す斜視図である。
【
図5】ロック片作動機構周辺を拡大して示す斜視図である。
【
図6】キャリッジが下限範囲外に上昇したロック時の自動ロック解除機構周辺を示す斜視図である。
【
図7】キャリッジが下限範囲内に位置するロック解除時の自動ロック解除機構周辺を示す斜視図である。
【
図8】キャリッジが下限範囲外に上昇したロック時のロック片作動機構の状態を示す平面図である。
【
図9】キャリッジが下限範囲内に位置するロック解除時のロック片作動機構の状態を示す平面図である。
【
図10】キャリッジが下限範囲外に上昇した状態で手動解除レバーが操作されたロック解除時のロック片作動機構の状態を示す平面図である。
【
図11】旋回アームが伸長した状態を示す
図8相当の平面図である。
【
図12】旋回アームが伸長した状態を示す
図9相当の平面図である。
【
図13】旋回アームが伸長した状態を示す
図10相当の平面図である。
【
図14】整備対象の車両の各タイヤに各先端アームのタイヤ受けバーを位置決めした使用状態を示す斜視図である。
【
図15】整備対象の車両の各タイヤに各先端アームのタイヤ受けバーを位置決めした使用状態を示す平面図である。
【
図16】変形例に係るスイングアーム周辺を示す平面図である。
【
図17】変形例において整備対象の車両の各ジャッキアップポイントに各先端アームの受け金を位置決めした使用状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る車両整備用リフトを具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0027】
<車両整備用リフト1の構成>
最初に、本発明の実施形態に車両整備用リフト1の構成について、
図1乃至
図15を参照しつつ説明する。
図1は車両整備用リフト1の全体構成を示す斜視図、
図2はスイングアーム4周辺を示す斜視図であり、
図3は旋回アーム20が伸長した状態を示すスイングアーム4周辺を示す平面図である。
図4はスイングアーム4において旋回アーム20周辺を拡大して示す斜視図である。
図5はロック片作動機構60周辺を拡大して示す斜視図である。
図6はキャリッジ3が下限範囲外に上昇したロック時の自動ロック解除機構70周辺を示す斜視図、
図7はキャリッジ3が下限範囲内に位置するロック解除時の自動ロック解除機構70周辺を示す斜視図である。
【0028】
図8はキャリッジ3が下限範囲外に上昇したロック時のロック片作動機構60の状態を示す平面図、
図9はキャリッジ3が下限範囲内で自動ロック解除された時のロック片作動機構60の状態を示す平面図、
図10はキャリッジ3が下限範囲外で手動解除レバー62の操作による手動ロック解除時のロック片作動機構60の状態を示す平面図である。
図11は旋回アーム20が伸長した状態を示す
図8相当の平面図、
図12は同じく
図9相当の平面図、
図13は同じく
図10相当の平面図である。
図14は整備対象の車両Cの各タイヤTに各先端アーム30のタイヤ受けバー32,32を位置決めした使用状態を示す斜視図であり、
図15は同じく平面図である。
【0029】
車両整備用リフト1は、2柱式リフト又は門型リフトと称され、整備対象である車両を4カ所で支持することで車両の昇降を行う車両整備用リフトである。
【0030】
車両整備用リフト1は、支柱2,2と、キャリッジ3,3と、スイングアーム4,4と、ロック解除機構ULとを備える。尚、ロック解除機構ULは、ロック片作動機構60、手動解除レバー62、及び自動ロック解除機構70を含む総称である。
【0031】
支柱2,2は、
図1に示すように、車両整備工場の床面上に整備対象の車両Cを挟んで左右一対に立設される。支柱2,2は、連結ビーム2aで連結されて全体で門型を構成している。
【0032】
キャリッジ3,3は、支柱2,2に沿って昇降自在に組み付けられる。各キャリッジ3は、支柱2内に組み込まれた油圧シリンダにより昇降動作されるようになっている。
【0033】
スイングアーム4,4は、キャリッジ3,3に水平回動自在に枢着され且つ先端に車両受け部を備える。各スイングアーム4は、リフトアーム10と、旋回アーム20と、先端アーム30とを備えて構成される多関節スイングアームである。
【0034】
リフトアーム10は、基端側がキャリッジ3に水平回動自在に枢着されるアーム部材である。リフトアーム10は、具体的には、リフトアーム本体11と、副リンク12と、基部リンク13と、先端部リンク14と、第1ロックギヤ41と、第2ロックギヤ42とを備えて構成される。
【0035】
リフトアーム本体11は、リフトアーム10の主要部をなす鋼製部材であり、互いに平行な上板部と下板部とが垂直壁で一体化された横向きH形の断面形状を有している。リフトアーム本体11は、基端部が枢着軸11aを介してキャリッジ3に水平回動自在に枢着されると共に、先端部には枢着軸11bを介して旋回アーム20が水平回動自在に枢着されている。
【0036】
副リンク12は、整備対象の車両Cに対する背面側でリフトアーム本体11と平行に配置される棒状部材である。副リンク12は、基端が基部リンク13に水平回動自在に枢着連結され且つ先端が先端部リンク14に水平回動自在に枢着連結される。
【0037】
基部リンク13は、キャリッジ3に固着されて一体化してなるリンク部材であって、キャリッジ3背面から水平に所定長さ(例えば、数cm~10数cm)だけ延びている。基部リンク13の先端には、副リンク12の基端が水平回動自在に枢着連結される。
【0038】
先端部リンク14は、第1ロックギヤ41に固着されて一体化してなるリンク部材であって、第1ロックギヤ41背面から水平に所定長さ(例えば、数cm~10数cm)だけ延びている。先端部リンク14は、その一端が副リンク12の先端に水平回動自在に枢着連結される。すなわち、リフトアーム10は、リフトアーム本体11と副リンク12と基部リンク13と先端部リンク14とで、基部リンク13を固定部とする四節リンク機構LKを構成するものであり、この四節リンク機構LKが姿勢変形することでキャリッジ3に対して水平回動自在な構造となっている。
【0039】
第1ロックギヤ41は、円弧形状の外周に多数の歯を有するギヤ部が形成され、枢着軸11bと同軸に配置されて先端部リンク14に固着されている。
【0040】
第2ロックギヤ42は、円弧形状の外周に多数の歯を有するギヤ部が形成されている。第2ロックギヤ42は、枢着軸11bと同軸に配置されてリフトアーム本体11に固着されている。
【0041】
旋回アーム20は、基端側がリフトアーム10に水平回動自在に枢着されるアーム部材である。旋回アーム20は、具体的には、旋回アーム本体21と、スライド体23と、ロック片作動機構60と、を備えて構成される。
【0042】
旋回アーム本体21は、旋回アーム20の主要部をなす鋼製部材であり、機構収容部21aと、角筒部21bとを備えて構成される。機構収容部21aは、平面視への字状の鋼製部材であり、互いに平行な上板部と下板部とが垂直壁で一体化されてなり、内部空間にロック片作動機構60の主要部を収容する。機構収容部21aは、基端部が枢着軸11bを介してリフトアーム10(リフトアーム本体11)に対して水平回動自在に枢着されている。
【0043】
角筒部21bは、角筒状の鋼製部材であり、基端部が機構収容部21aの先端側で上板部と下板部との間に挿入されて固着されている。
【0044】
スライド体23は、旋回アーム本体21の角筒部21bよりも小径の角筒状の鋼製部材であり、角筒部21bの内周に挿入され長手方向にスライド可能となっている。つまり、旋回アーム20は、スライド体23を角筒部21bに対して長手方向にスライドさせることで全長を伸縮、すなわち、収縮させたり(
図8~
図10)、伸長させたりできる(
図9~
図11)。
【0045】
先端アーム30は、整備対象の車両CのタイヤTを受けるためのタイヤ受けアームである。先端アーム30は、先端アーム本体31と、一対のタイヤ受けバー32,32と、第3ロックギヤ43と、を備えて構成される。
【0046】
先端アーム本体31は、アーム長手方向に対して交差する水平方向に延びる鋼製部材であり、両端側面から一対のタイヤ受けバー32,32がアーム先端側へ直角に突設されている。一対のタイヤ受けバー32,32は互いに平行に配置され、先端アーム本体31と一対のタイヤ受けバー32,32とで平面視コ字状を呈している。一対のタイヤ受けバー32,32は、車両CのタイヤT下部における前後2箇所に下方から接することでタイヤを受ける。
【0047】
先端アーム本体31は、基端に設けられた軸穴及び旋回アーム20のスライド体23先端に設けられた軸穴に枢着軸31aが挿通されることにより、旋回アーム20のスライド体23に対して水平回動自在に支持される。先端アーム本体31(すなわち先端アーム30)は、
図3において、回動範囲RRの範囲内で回動可能である。回動範囲RRは、例えば、旋回アーム20の軸線L20方向を0°としたとき、反時計回り90°(-90°)~時計回り90°(+90°)の範囲に設定してもよい。
【0048】
第3ロックギヤ43は、先端アーム本体31基端の軸穴と同軸の軸穴を有し、基端側の円弧形状の外周に多数の歯を有するギヤ部が形成されている。
【0049】
ロック片作動機構60は、第1ロック片51、第2ロック片52及び第3ロック片53をそれぞれロック方向又はロック解除方向へ同時に作動させる機構である。ロック片作動機構60は、具体的には、連動リンク棒61と、第1ロック片作動機構64と、第2ロック片作動機構65と、第3ロック片作動機構66と、を備えて構成される。
【0050】
連動リンク棒61は、旋回アーム20における旋回アーム本体21の機構収容部21a内に垂直に配置されるリンク棒部材である。すなわち、連動リンク棒61は、旋回アーム20の基端部における第1ロック機構LM1及び第2ロック機構LM2に対して近傍であり、第3ロック機構LM3に対して旋回アーム20の長手方向の基端側へ離間して配置される。換言すれば、連動リンク棒61は、リフトアーム10と旋回アーム20との間の連結部近傍に配置される。連動リンク棒61は、回動軸69に一端側が枢着される揺動リンク片68の他端側に連結され、回動軸69を中心として水平方向に所定範囲で揺動自在となっている。連動リンク棒61の下部には、手動解除レバー62の握り部とは反対側の端部の側面が当接している。また、連動リンク棒61の上端は、自動解除レバー63の長穴63a内に挿入されている。さらに、連動リンク棒61は、第1ロック片作動機構64、第2ロック片作動機構65、及び第3ロック片作動機構66にそれぞれ連結されている。
【0051】
手動解除レバー62は、回動軸69に枢着されると共に、旋回アーム20の長手方向に対して略平行に配置される棒状のレバー部材である。手動解除レバー62は、一方の端部に手で握り易くするための握り部が設けられ、回動軸69を挟む反対側の端部の側面が連動リンク棒61の下部に当接している。手動解除レバー62と旋回アーム本体21の機構収容部21aとの間にはスプリング62sが設けられ、手動解除レバー62は、常にはスプリング62sのバネ力によって、旋回アーム20の長手方向と略平行な姿勢に保持されている。手動解除レバー62を、スプリング62sのバネ力に抗して、
図3~
図5等で回動軸69を中心に時計回りに手動で回転操作することで、連動リンク棒61が回動軸69を中心に時計回りに揺動する。
【0052】
第1ロック片51は、第1ロックギヤ41のギヤ部と噛み合う歯を有する爪状部材であり、第1ロックギヤ41に対向して配置される。第1ロック片51は、常には、第1ロック片作動機構64がスプリング64sのバネ力によって付勢されて前進姿勢に保持されることにより、第1ロックギヤ41に係合している。
【0053】
第2ロック片52は、第2ロックギヤ42のギヤ部と噛み合う歯を有する爪状部材であり、第2ロックギヤ42に対向して配置される。第2ロック片52は、常には、第2ロック片作動機構65がスプリング65sのバネ力によって付勢されて前進姿勢に保持されることにより、第2ロックギヤ42に係合している。
【0054】
第3ロック片53は、第3ロックギヤ43のギヤ部と噛み合う歯を有する爪状部材であり、第3ロックギヤ43に対向して配置される。第3ロック片53は、常には、第3ロック片作動機構66がスプリング66sのバネ力によって付勢されて前進姿勢に保持されることにより、第3ロックギヤ43に係合している。
【0055】
第1ロック片作動機構64は、第1ロック片51を第1ロックギヤ41のギヤ部に対して進退作動させる機構であって、枢着連結された複数個のリンク片によって構成されるリンク機構と、このリンク機構と旋回アーム本体21との間に配設されるスプリング64sとを備えて構成される。第1ロック片作動機構64は、リンク機構の基端が回動軸69に枢着されると共に、中間部において連動リンク棒61に当接し、先端に第1ロック片51が連結される。連動リンク棒61が回動軸69を中心に周方向に揺動して第1ロック片作動機構64が姿勢変化することで、第1ロック片51が第1ロックギヤ41に対して進退する。
【0056】
具体的には、常には、スプリング64sのバネ力によって第1ロック片作動機構64が前進姿勢に保持され、第1ロック片51が前進位置で第1ロックギヤ41に係合している。一方、連動リンク棒61がスプリング64sのバネ力に抗して時計回りに揺動すると、第1ロック片作動機構64が後退姿勢に変化し、第1ロック片51が後退して第1ロックギヤ41との係合が解除される。
【0057】
第2ロック片作動機構65は、第2ロック片52を第2ロックギヤ42のギヤ部に対して進退作動させる機構であって、枢着連結された複数個のリンク片によって構成されるリンク機構と、このリンク機構と旋回アーム本体21との間に配設されるスプリング65sとを備えて構成される。第2ロック片作動機構65は、第1ロック片作動機構64の上方で、基端が回動軸69に枢着されると共に、中間部において連動リンク棒61に当接し、先端に第2ロック片52が連結される。連動リンク棒61が回動軸69を中心に周方向に揺動して第2ロック片作動機構65のリンクが姿勢変化することで、第2ロック片52が第2ロックギヤ42に対して進退する。
【0058】
具体的には、常にはスプリング65sのバネ力によって第2ロック片作動機構65が前進姿勢に保持され、第2ロック片52が前進して第2ロックギヤ42に係合している。一方、連動リンク棒61がスプリング65sのバネ力に抗して時計回りに揺動すると、第2ロック片作動機構65が後退姿勢に変化し、第2ロック片52が後退して第2ロックギヤ42との係合が解除される。
【0059】
第3ロック片作動機構66は、第3ロック片53を第3ロックギヤ43のギヤ部に向かって進退作動させる機構である。第3ロック片作動機構66は、固定棹部材661と、棹部材作動リンク片662と、可動棹部材663と、棹部材連結リンク片664と、摺動連結リンク665と、ロッド666と、スライド体23と摺動連結リンク665との間に配設されるスプリング66sとを備えて構成される。
【0060】
固定棹部材661は、旋回アーム20の旋回アーム本体21内に長手方向に沿って固定配置される。棹部材作動リンク片662は、回動軸69に枢着されると共に、一端が連動リンク棒61に連結され且つ他端が可動棹部材663の基端に枢着連結される。可動棹部材663は、旋回アーム本体21内を長手方向に沿って固定棹部材661と平行に配置され、基端が棹部材作動リンク片662の先端に枢着連結される。スプリング66sは、一端がスライド体23に、他端が摺動連結リンク665の摺動リンク片665aにそれぞれ連結され、常にはスプリング66sのバネ力によって付勢されて、可動棹部材663が固定棹部材661に平行姿勢で近接する状態(両部材が当接又は間隔が最小となる状態)が保持されている。
【0061】
棹部材連結リンク片664は、一端が固定棹部材661の先端近傍に枢着連結されると共に、他端が可動棹部材663の先端に枢着連結されることにより、両部材を先端側で接近離間可能に連結する。摺動連結リンク665は、摺動リンク片665aとロッド作動片665bとを互いに枢着連結して構成されるリンク機構であり、摺動リンク片665aにはローラ665rが回動自在に取付けられている。摺動リンク片665aは、基端がスプリング66sに連結されると共に、先端がロッド作動片665bに枢着連結される。ローラ665rは、可動棹部材663の固定棹部材661とは反対側の側面に当接している。ロッド作動片665bは、基端が摺動リンク片665aに枢着連結され、先端がロッド666の基端に枢着連結される。ロッド666は、スライド体23内を長手方向に沿って固定棹部材661及び可動棹部材663と平行に配置され、先端には第3ロック片53が連結されている。
【0062】
そして、第3ロック片作動機構66において、常にはスプリング66sのバネ力によって付勢されて可動棹部材663が固定棹部材661に平行姿勢で近接する状態が保持されることで、ロッド666が前進姿勢とされ、第3ロック片53が前進位置で第3ロックギヤ43に係合している。一方、連動リンク棒61が時計回りに揺動すると、可動棹部材663がスプリング66sのバネ力に抗して固定棹部材661から平行姿勢で離間し、ローラ665rが可動棹部材663によって固定棹部材661から離間する側へ押圧される。これにより、摺動リンク片665aが
図8等で時計回りに回動すると共に、ロッド作動片665bが反時計回りに回動する。このような摺動連結リンク665の姿勢変化によって、ロッド666を基端側へ牽引して後退姿勢とさせて第3ロック片53が後退することで、第3ロックギヤ43との係合が解除される。
【0063】
また、旋回アーム20が長手方向に伸縮すると、第3ロック片作動機構66が旋回アーム20の伸縮に伴って伸縮する。よって、旋回アーム20の伸縮状態に関わらず、連動リンク棒61の動作が第3ロック片作動機構66を介して第3ロック機構LM3に連係されることで、第3ロック機構LM3の解除状態又はロック状態への設定が確実に行われる。より詳細には、旋回アーム20のスライド体23が長手方向に移動すると、スライド体23に連結される摺動連結リンク665は、可動棹部材663に沿ってローラ665rが転動して長手方向にスライド移動する。このため、旋回アーム20の伸縮状態に関わらず、連動リンク棒61の駆動により摺動連結リンク665を介してロッド666を作動し、ロッド666に連結される第3ロック機構LM3(第3ロック片53)が作動することで、解除状態又はロック状態への設定が確実に行われる。
【0064】
自動ロック解除機構70は、キャリッジ3が下限から所定範囲内にあるときは各ロック機構(第1ロック機構LM1、第2ロック機構LM2及び第3ロック機構LM3)をそれぞれ解除状態に設定し、キャリッジ3が所定範囲外に上昇したときは、上記各ロック機構をそれぞれロック状態に設定する機構である。ここで、「下限から所定範囲内」は、例えば、キャリッジ3の昇降下限から50mm~200mm以内に設定される。自動ロック解除機構70は、具体的には、下限解除レール71と、下限解除レバー72と、コントロールケーブル73と、自動解除レバー63と、を備えて構成される。尚、下限解除レール71が本発明の作動部材を、下限解除レバー72が被作動部材を、コントロールケーブル73及び自動解除レバー63が連動部材RNをそれぞれ構成するものである。
【0065】
下限解除レール71は、支柱2の下部側面に固着され、下限解除レバー72の先端に取付けられているガイドローラ72aとの接触面を有する。下限解除レール71の接触面は、略下半分が垂直方向に延びる垂直面となっており、略上半分が支柱2幅方向外側に向かって傾斜するテーパ面となっている。
【0066】
下限解除レバー72は、キャリッジ3に設けられるレバー部材であり、先端にガイドローラ72aが取付けられている。下限解除レバー72は、基端部がキャリッジ3の支柱2との対向面において上下回動自在に枢着されている。
【0067】
コントロールケーブル73は、鋼製のワイヤ等からなり、基端が下限解除レバー72におけるガイドローラ72aと基端部との間に固着されている。コントロールケーブル73は、基端から延びてリフトアーム10内を長手方向に沿って配設され、先端が自動解除レバー63の先端に接続固着される。
【0068】
自動解除レバー63は、板状の小片からなり、長穴63aが形成されている。長穴63aには連動リンク棒61の上端が下から挿通される。自動解除レバー63の先端にはコントロールケーブル73の先端が接続固着されている。自動解除レバー63がコントロールケーブル73によってキャリッジ3側へ牽引されることで、連動リンク棒61は長穴63a内の一端側の内壁に押圧されて
図3~
図5等で回動軸69を中心に時計回りに揺動する。
【0069】
<スイングアーム4のロック及びロック解除に伴う各部の作動>
車両整備用リフト1のキャリッジ3が下限解除レール71よりも上方の高さまで上昇しているとき、下限解除レバー72は、ガイドローラ72aが下限解除レール71と接触せず、スプリング64s,65s,66sの付勢力によってスイングアーム4に近づく側へ傾斜する第1姿勢となっており、コントロールケーブル73はスイングアーム4基端側へ牽引されない。このため、
図8,
図11に示すように、自動解除レバー63は回動せず、第1ロック片作動機構64、第2ロック片作動機構65は、それぞれスプリング64s,65sの力で第1ロック片51、第2ロック片52を付勢して、第1ロックギヤ41、第2ロックギヤ42に対してそれぞれ前進位置となっている。
【0070】
そして、第1ロックギヤ41と旋回アーム20側に固定される第1ロック片51とが係合し、且つリフトアーム10側に固定される第2ロックギヤ42と旋回アーム20側に固定される第2ロック片52とが係合することで、リフトアーム本体11と先端部リンク14との相対角度R1が固定される。ここで、相対角度R1は、リフトアーム本体11の軸線L11と先端部リンク14の軸線L14とが成す角度である(
図3参照)。これにより、リフトアーム10を構成する四節リンク機構の姿勢変化が不可となって、リフトアーム10のキャリッジ3に対する回動がロックされている。すなわち、第1ロックギヤ41、第1ロック片51及び第1ロック片作動機構64と、第2ロックギヤ42、第2ロック片52及び第2ロック片作動機構65とが、リフトアーム10のキャリッジ3に対する回動をロックする第1ロック機構LM1を構成する。
【0071】
また、リフトアーム10側に固定される第2ロックギヤ42と旋回アーム20側に固定される第2ロック片52とが係合することで、旋回アーム20のリフトアーム10に対する回動がロックされている。換言すれば、リフトアーム本体11の軸線L11と旋回アーム20の軸線L20とが成す相対角度R2が固定されている(
図3参照)。すなわち、第2ロックギヤ42、第2ロック片52及び第2ロック片作動機構65が、旋回アーム20のリフトアーム10に対する回動をロックする第2ロック機構LM2を構成する。
【0072】
また、第3ロック片作動機構66では、可動棹部材663が固定棹部材661に平行な姿勢で近接している。ロッド666は、摺動連結リンク665を介して前進位置とされ、これにより第3ロック片53を前進位置として第3ロックギヤ43と係合し、先端アーム30の回動がロックされている。
【0073】
一方、車両整備用リフト1のスイングアーム4がロック状態にあるときにキャリッジ3を下降していくと、所定の高さで自動ロック解除機構70のガイドローラ72aが下限解除レール71における傾斜部分に到達し、その後、ガイドローラ72aはねじりバネの力に抗して徐々にスイングアーム4から遠ざかる側へ押し戻されて、略垂直な第2姿勢となる。このため、
図9,
図12に示すように、コントロールケーブル73はスイングアーム4基端側へ牽引され、自動解除レバー63は時計回りに回動し、連動リンク棒61を介して第1ロック片作動機構64、第2ロック片作動機構65、及び第3ロック片作動機構66がロック解除方向へ作動する。これにより、第1ロック片51、第2ロック片52、及び第3ロック片53が、それぞれ第1ロックギヤ41、第2ロックギヤ42、及び第3ロックギヤ43から離間してロック解除状態となる。
【0074】
具体的には、第1ロック片作動機構64では、連動リンク棒61が時計回りに揺動すると、スプリング64sのバネ力に抗して、略直線状の姿勢から略「く」の字状に折れ曲がった姿勢に変化し、第1ロック片51が後退して第1ロックギヤ41から離脱してロック解除状態となる。
【0075】
また、第2ロック片作動機構65では、連動リンク棒61が時計回りに揺動すると、スプリング65sのバネ力に抗して、略直線状の姿勢から略「く」の字状に折れ曲がった姿勢に変化するので、第2ロック片52が後退して第2ロックギヤ42から離脱し、ロック解除状態となる。
【0076】
また、第3ロック片作動機構66では、連動リンク棒61が時計回りに揺動すると、スプリング66sのバネ力に抗して、棹部材作動リンク片662が時計回りに所定角度回動し、可動棹部材663が固定棹部材661から平行姿勢で所定距離だけ離間する。そして、ロッド666は、可動棹部材663の移動に伴う摺動連結リンク665の姿勢変化により牽引されて後退位置とされ、これにより第3ロック片53が後退して第3ロックギヤ43から離脱し、ロック解除状態となる。
【0077】
また、車両整備用リフト1のスイングアーム4がロック状態にあるとき、手動解除レバー62をスプリング62sのバネ力に抗して手動で時計回りに回転操作した場合、
図10,
図13に示すように、手動解除レバー62に連結される連動リンク棒61が時計回りに揺動する。これにより、上述した自動ロック解除機構70によるロック解除動作と同様に、連動リンク棒61を介して第1ロック片作動機構64、第2ロック片作動機構65、及び第3ロック片作動機構66がロック解除方向へ作動する。よって、第1ロック片51、第2ロック片52、及び第3ロック片53が、それぞれ第1ロックギヤ41、第2ロックギヤ42、及び第3ロックギヤ43から離間し、リフトアーム10、旋回アーム20及び先端アーム30がそれぞれロック解除状態となる。
【0078】
<実施形態のまとめ>
以上詳述したことから明らかなように、本実施形態に係る車両整備用リフト1は、床面上に立設される支柱2と、支柱2に沿って昇降するキャリッジ3と、キャリッジ3に水平回動自在に枢着され且つ先端に車両受け部としてのタイヤ受けバー32,32を備えるスイングアーム4と、を備える車両整備用リフトであって、スイングアーム4は、キャリッジ3に基端側が水平回動自在に枢着される第1アームとしてのリフトアーム10と、リフトアーム10の先端側に水平回動自在に枢着される第2アームとしての旋回アーム20と、を有する多関節スイングアームからなる。
【0079】
そして、車両整備用リフト1は、リフトアーム10のキャリッジ3に対する回動をロックする第1ロック機構LM1と、旋回アーム20のリフトアーム10に対する回動をロックする第2ロック機構LM2と、キャリッジ3が下限から所定範囲内にあるときは第1ロック機構LM1及び第2ロック機構LM2をそれぞれ解除状態に設定し、キャリッジ3が所定範囲外に上昇したときは、第1ロック機構LM1及び第2ロック機構LM2をそれぞれロック状態に設定する自動ロック解除機構70と、を備える。
【0080】
この構成によれば、キャリッジ3が下限から所定範囲内にあるとき、自動ロック解除機構70が第1ロック機構LM1及び第2ロック機構LM2をそれぞれ解除状態に設定する。これにより、リフトアーム10及び旋回アーム20がそれぞれ水平回動自在となるので、
図14,
図15に示すように、スイングアーム4を下限付近で姿勢を自在に変化させて一対のタイヤ受けバー32,32を車両CのタイヤTに位置決めすることができる。
【0081】
一方、キャリッジ3が所定範囲外に上昇したときは、ロック解除機構が第1ロック機構及び第2ロック機構をそれぞれロック状態に設定する。これにより、第1アーム及び第2アームはそれぞれ回動がロックされるので、車両受け部を車両の所望位置に位置決めした状態で多関節スイングアームの姿勢が固定される。
【0082】
よって、多関節スイングアームの回動のロック及びロック解除をキャリッジ3の昇降に伴って自動で行うことができる。これにより多関節スイングアームの回動に関わる作業性及び安全性の向上を図ることができるという効果を奏する。
【0083】
また、自動ロック解除機構70は、支柱2に固着された作動部材としての下限解除レール71と、キャリッジ3に設けられ、キャリッジ3の高さに応じて下限解除レール71との接触作用で動作される被作動部材としての下限解除レバー72と、下限解除レバー72の動作を第1ロック機構LM1及び第2ロック機構LM2に連動させる連動部材としてのコントロールケーブル73とを備える。
【0084】
この構成によれば、キャリッジ3が下限から所定範囲内にあるときは、コントロールケーブル73が下限解除レバー72の動作を第1ロック機構LM1及び第2ロック機構LM2に連動させて第1ロック機構LM1及び第2ロック機構LM2をそれぞれ解除状態に設定する。一方、キャリッジ3が所定範囲外に上昇したときは、コントロールケーブル73が下限解除レバー72の動作を第1ロック機構LM1及び第2ロック機構LM2に連動させて、第1ロック機構LM1及び第2ロック機構LM2をそれぞれロック状態に設定する。
【0085】
よって、下限解除レール71、下限解除レバー72、及びコントロールケーブル73を用いた簡単な構成により、キャリッジ3の高さに応じて自動的に第1ロック機構LM1及び第2ロック機構LM2をそれぞれ解除状態に設定したり、ロック状態に設定したりできるという効果を奏する。また、自動ロック解除機構70の各構成部材がすべて車両整備用リフト1内に設けられているため、車両整備工場の床など外部環境を用いることなく第1ロック機構LM1及び第2ロック機構LM2を自動的に解除状態に設定したり、ロック状態に設定したりする構成を実現することができる。
【0086】
また、リフトアーム10は、キャリッジ3に一体化された基部リンク13と、基部リンク13に枢着連結される主リンクとしてのリフトアーム本体11と、リフトアーム本体11の先端部に枢着連結される先端部リンク14と、先端部リンク14と基部リンク13とに枢着連結される副リンク12とからなる四節リンク機構LKを形成し、旋回アーム20は、リフトアーム10におけるリフトアーム本体11と先端部リンク14との連結部と同軸に枢着されるものであって、第1ロック機構LM1及び第2ロック機構LM2は、リフトアーム本体11の先端部近傍に設けられ、第1ロック機構LM1は、リフトアーム本体11と先端部リンク14との相対角度を固定し、第2ロック機構LM2は、リフトアーム本体11に対する旋回アーム20の相対角度を固定する。
【0087】
この構成によれば、リフトアーム10が基部リンク13とリフトアーム本体11と先端部リンク14と副リンク12とからなる四節リンク機構LKを形成し、リンク間の相対角度の変化に伴う姿勢変化によってキャリッジ3に対する水平回動が行われるので、リフトアーム本体11と先端部リンク14との相対角度を固定することで、リフトアーム10のキャリッジ3に対する回動をロックすることができる。一方、旋回アーム20は、リフトアーム10におけるリフトアーム本体11と先端部リンク14との連結部と同軸に枢着されるので、リフトアーム本体11に対する旋回アーム20の相対角度を固定することで、旋回アーム20のリフトアーム10に対する回動をロックすることができる。これにより、第1ロック機構LM1及び第2ロック機構LM2を共にリフトアーム本体11の先端部近傍に設けることができ、下限解除レバー72の動作を第1ロック機構LM1及び第2ロック機構LM2に連動させる連動部材RNの構成を簡単化することができる。
【0088】
また、連動部材RNは、一端が下限解除レバー72に連結され且つ他端がリフトアーム本体11の先端部に向かって延設されて第1ロック機構LM1及び第2ロック機構LM2に連結される長尺部材としてのコントロールケーブル73を有する。
【0089】
この構成によれば、連動部材RNは、一端が下限解除レバー72に連結され且つ他端がリフトアーム本体11の先端部に向かって延設されるコントロールケーブル73を有するので、キャリッジ3に設けられる下限解除レバー72の動作を、キャリッジ3から離れたリフトアーム本体11の先端部近傍の第1ロック機構LM1及び第2ロック機構LM2にそれぞれ連動させることができる。
【0090】
また、車両整備用リフト1は、先端部リンク14に一体化された第1ロックギヤ41と、第1ロックギヤ41と係止及び係止解除自在に設けられる第1ロック片51と、リフトアーム本体11の先端部に一体化された第2ロックギヤ42と、第2ロックギヤ42と係止及び係止解除自在に設けられる第2ロック片52と、を備え、連動部材RNが下限解除レバー72の動作を第1ロック片51及び第2ロック片52の係止及び係止解除にそれぞれ連動させるように構成することにより、第1ロックギヤ41、第1ロック片51、第2ロックギヤ42及び第2ロック片52が、第1ロック機構LM1として作用し、第2ロックギヤ42及び第2ロック片52が、第2ロック機構LM2として作用する。
【0091】
この構成によれば、キャリッジ3が下限から所定範囲内にあるときは、連動部材RNが下限解除レバー72の動作を第1ロック片51及び第2ロック片52の係止解除に連動させ、第1ロックギヤ41及び第2ロックギヤ42に対してそれぞれ解除位置に設定することで第1ロック機構LM1及び第2ロック機構LM2をそれぞれ解除状態に設定する。一方、キャリッジ3が所定範囲外に上昇したときは、連動部材RNが下限解除レバー72の動作を第1ロック片51及び第2ロック片52の係止に連動させ、第1ロックギヤ41及び第2ロックギヤ42に対してそれぞれ係止位置に設定することで、第1ロック機構LM1及び第2ロック機構LM2をそれぞれロック状態に設定する。
【0092】
本実施形態に係る車両整備用リフト1は、スイングアーム4が基端から先端に向かって複数のアーム(リフトアーム10、旋回アーム20及び先端アーム30)が連結される多関節アームからなり、各アームの回動をロックする複数のロック機構としての第1ロック機構LM1、第2ロック機構LM2及び第3ロック機構LM3と、キャリッジ3が下限から所定範囲内にあるときは上記各ロック機構をそれぞれ解除状態に設定し、キャリッジ3が所定範囲外に上昇したときは、上記各ロック機構をそれぞれロック状態に設定する自動ロック解除機構70と、を備える。
【0093】
この構成によれば、キャリッジ3が下限から所定範囲内にあるとき、自動ロック解除機構70が複数の各ロック機構をそれぞれ解除状態に設定する。これにより、多関節スイングアームを構成する複数の各アーム(リフトアーム10、旋回アーム20及び先端アーム30)がそれぞれ水平回動自在となるので、スイングアーム4の姿勢を自在に変化させてタイヤ受けバー32,32を車両Cの各タイヤTに位置決めすることができる。
【0094】
一方、キャリッジ3が所定範囲外に上昇したときは、自動ロック解除機構70が複数の各ロック機構をそれぞれロック状態に設定する。これにより、複数の各アーム(リフトアーム10、旋回アーム20及び先端アーム30)はそれぞれ回動がロックされるので、タイヤ受けバー32,32を車両の各タイヤTに位置決めした状態でスイングアーム4の姿勢が固定される。
【0095】
よって、多関節スイングアームを構成する複数の各アームの回動のロック及びロック解除をキャリッジの昇降に伴って自動で行うことができる。
【0096】
<変形例>
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変更を施すことが可能である。例えば、上記実施形態では、スイングアーム4をリフトアーム10、旋回アーム20及び先端アーム30の3つのアームからなる多関節スイングアームとした例を示したが、これには限られず、リフトアーム10及び旋回アーム20の2つのアームからなる多関節スイングアームとしてもよいし、さらにアームを追加して4つ以上のアームからなる多関節スイングアームとしてもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、先端アーム30が、車両受け部として一対のタイヤ受けバー32,32を備える例を示したが、これには限られない。
図16は変形例に係るスイングアーム4周辺を示す平面図であり、
図17は変形例において整備対象の車両の各ジャッキアップポイント(図示せず)に各先端アーム30の受け金33を位置決めした使用状態を示す平面図である。本変形例に係る車両整備用リフト1において、先端アーム30は、車両Cのジャッキアップポイントを受けるための受け金33を備えている。本変形例によれば、多関節スイングアームであるスイングアーム4の姿勢を自在に変化させて、受け金33を車両の各ジャッキアップポイントに位置決めすることができる。
【符号の説明】
【0098】
1 車両整備用リフト
2 支柱
3 キャリッジ
4 スイングアーム
10 リフトアーム(第1アーム、複数のアーム)
11 リフトアーム本体(主リンク)
12 副リンク
13 基部リンク
14 先端部リンク
20 旋回アーム(第2アーム、複数のアーム)
30 先端アーム(複数のアーム)
32 タイヤ受けバー(車両受け部)
33 受け金(車両受け部)
41 第1ロックギヤ(ロック機構、第1ロック機構)
42 第2ロックギヤ(ロック機構、第2ロック機構)
43 第3ロックギヤ(ロック機構)
51 第1ロック片(ロック機構、第1ロック機構)
52 第2ロック片(ロック機構、第2ロック機構)
53 第3ロック片(ロック機構)
63 自動解除レバー
70 自動ロック解除機構
71 下限解除レール(作動部材)
72 下限解除レバー(被作動部材)
73 コントロールケーブル(連動部材、長尺部材)
LM1 第1ロック機構(ロック機構)
LM2 第2ロック機構(ロック機構)
LM3 第3ロック機構(ロック機構)
LK 四節リンク機構
RN 連動部材