(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170223
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】車両整備用リフト
(51)【国際特許分類】
B66F 7/02 20060101AFI20241129BHJP
B66F 7/28 20060101ALI20241129BHJP
B60S 5/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B66F7/02 H
B66F7/28 C
B60S5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087269
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】390018326
【氏名又は名称】株式会社スギヤス
(74)【代理人】
【識別番号】100110744
【弁理士】
【氏名又は名称】藤川 敬知
(72)【発明者】
【氏名】中村 健二
【テーマコード(参考)】
3D026
【Fターム(参考)】
3D026EA62
(57)【要約】
【課題】スイングアームの回動のロック及びロック解除に関わる機構の配置の自由度を確保可能な車両整備用リフトを提供する。
【解決手段】車両整備用リフト1は、旋回アーム20の先端側で先端アーム30との間に配置されて先端アーム30の旋回アーム20に対する回動をロックする第3ロック機構LM3と、第3ロック機構LM3に対して旋回アーム20の長手方向の基端側へ離間して配置される連動リンク棒61と、旋回アーム20の長手方向に沿って配設されて連動リンク棒61の動作に連係して第3ロック機構LM3を作動させる第3ロック片作動機構66を有し、連動リンク棒61の駆動により第3ロック片作動機構66を介して第3ロック機構LM3の解除状態への設定とロック状態への設定とを行うロック解除機構ULを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降可能なキャリッジと、前記キャリッジに水平回動自在に枢着され且つ先端に車両受け部を備えるスイングアームと、を備える車両整備用リフトであって、
前記スイングアームは、第1アームと、前記第1アームの先端側に水平回動自在に枢着される第2アームと、を有して構成され、
前記車両整備用リフトは、
前記第1アームの先端側で前記第2アームとの間に配置されて前記第2アームの前記第1アームに対する回動をロックするロック機構と、
前記ロック機構に対して前記第1アームの長手方向の基端側へ離間して配置される駆動部と、前記第1アームの長手方向に沿って配設されて前記駆動部の動作に連係して前記ロック機構を作動させるロック作動部とを有し、前記駆動部の駆動により前記ロック作動部を介して前記ロック機構の解除状態への設定とロック状態への設定とを行うロック解除機構と、
を備える、車両整備用リフト。
【請求項2】
前記第1アームは、筒型のアーム本体と前記アーム本体に嵌合して長手方向にスライド可能なスライド体とを有して伸縮可能に構成され、前記ロック作動部は、前記第1アームの伸縮に伴って長手方向に伸縮する、請求項1に記載の車両整備用リフト。
【請求項3】
前記ロック作動部は、
前記アーム本体に収容されて長手方向に延びる棹部材と、
前記スライド体に収容されて長手方向に延び且つ前記ロック機構に連結されるロッドと、
前記棹部材に対して長手方向に摺動自在に設けられ且つ前記ロッドに連結されて前記駆動部の駆動により動作する摺動連結部材と、を備える、請求項2に記載の車両整備用リフト。
【請求項4】
前記棹部材は、一対平行に配置され且つ互いの間隔を駆動部の駆動により可変に構成され、
前記摺動連結部材は、前記一対の棹部材間の間隔の可変動作に連動して前記ロッドを長手方向に作動する、請求項3に記載の車両整備用リフト。
【請求項5】
前記ロック機構は、
前記第2アームの基端部に設けられるロックギヤと、
前記ロッドの先端部に前記ロックギヤと係止及び係止解除可能に設けられるロック片と、を備える、請求項3又は4に記載の車両整備用リフト。
【請求項6】
前記車両整備用リフトは、
前記スイングアームが基部アームを有し且つ前記第1アームが前記基部アームの先端側に水平回動自在に枢着されると共に、
前記第1アームの前記基部アームに対する回動をロックする他のロック機構を備え、
前記ロック解除機構は、前記駆動部の駆動により前記他のロック機構の解除状態への設定とロック状態への設定とをさらに行うものであって、
前記駆動部は、前記基部アームと前記第1アームとの間の連結部近傍に配置される、請求項1に記載の車両整備用リフト。
【請求項7】
前記ロック解除機構は、前記駆動部を手動操作で駆動する手動解除レバーを備える、請求項1に記載の車両整備用リフト。
【請求項8】
前記車両整備用リフトは、床面上に立設される支柱を備え、前記キャリッジは前記支柱に沿って昇降するものであって、
前記ロック解除機構は、前記支柱に固着された作動部材と、前記キャリッジに設けられ、前記キャリッジの高さに応じて前記作動部材との接触作用で動作される被作動部材と、前記被作動部材の動作を前記駆動部に連動させる連動部材と、を有して、前記キャリッジが下限から所定範囲内にあるときは前記ロック機構を解除状態に設定し、前記キャリッジが前記所定範囲外に上昇したときは、前記ロック機構をロック状態に設定する自動ロック解除機構を備える、請求項1に記載の車両整備用リフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイングアームを有する車両整備用リフトに関し、特に、スイングアームの回動のロック及びロック解除に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、昇降可能なキャリッジと、キャリッジに水平回動自在に枢着され且つ先端に車両受け部を備えるスイングアームとを備える車両整備用リフトが広く用いられている。このような車両整備用リフトの一つとして、キャリッジに基端側が水平回動自在に枢着されるリフトアームと、リフトアームの先端側に水平回動自在に枢着される旋回アームとを有する多関節スイングアームを備える車両整備用リフトが提案されている(例えば、特許文献1等参照。)。
【0003】
この従来技術に係る車両整備用リフトでは、リフトアームと旋回アームとをそれぞれ平行四辺形リンク機構により構成し、各アームの回動をロックするための各ロック機構を両アーム間の連結部に配置している。そして、両アーム間の連結部近傍に一つのロック操作用レバーを設けてリフトアーム及び旋回アームの回動のロック又はロック解除を同時に行う構造としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、リフトアーム及び旋回アームの両方で平行四辺形リンク機構を採用することでスイングアームの構造が複雑になるだけでなく、構造に起因する制約が存在するという課題がある。例えば、上記従来技術のスイングアームでは、平行四辺形リンク機構の構造上、旋回アームを長手方向に伸縮できない点や、旋回アームの先端に設けたタイヤ受けバーを角度調整できない点などの制約がある。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、スイングアームの回動のロック及びロック解除に関わる機構の配置の自由度を確保可能な車両整備用リフトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両整備用リフトは、昇降可能なキャリッジと、前記キャリッジに水平回動自在に枢着され且つ先端に車両受け部を備えるスイングアームと、を備える車両整備用リフトであって、前記スイングアームは、第1アームと、前記第1アームの先端側に水平回動自在に枢着される第2アームと、を有して構成され、前記車両整備用リフトは、前記第1アームの先端側で前記第2アームとの間に配置されて前記第2アームの前記第1アームに対する回動をロックするロック機構と、前記ロック機構に対して前記第1アームの長手方向の基端側へ離間して配置される駆動部と、前記駆動部の動作に連係して前記ロック機構を作動させるロック作動部とを有し、前記駆動部の駆動により前記ロック作動部を介して前記ロック機構の解除状態への設定とロック状態への設定とを行うロック解除機構と、を備える。
【0008】
この構成によれば、ロック解除機構において、ロック機構に対して第1アームの長手方向の基端側へ離間して配置される駆動部が駆動されると、駆動部の動作がロック作動部を介してロック機構に連係されることで、ロック機構の解除状態又はロック状態への設定が行われる。つまり、ロック機構から離間した位置で駆動することで、第2アームの第1アームに対する回動をロックしたり、ロック解除したりすることができる。よって、スイングアームの回動のロック及びロック解除に関わる機構の配置の自由度を確保可能な車両整備用リフトを提供することができるという効果を奏する。
【0009】
また、前記第1アームは、筒型のアーム本体と前記アーム本体に嵌合して長手方向にスライド可能なスライド体とを有して伸縮可能に構成され、前記ロック作動部は、前記第1アームの伸縮に伴って長手方向に伸縮する。
【0010】
この構成によれば、第1アームが長手方向に伸縮するとロック作動部が第1アームの伸縮に伴って伸縮するので、第1アームの伸縮状態に関わらず、駆動部の動作がロック作動部を介してロック機構に連係されることで、ロック機構の解除状態又はロック状態への設定が確実に行われる。
【0011】
また、前記ロック作動部は、前記アーム本体に収容されて長手方向に延びる棹部材と、前記スライド体に収容されて長手方向に延び且つ前記ロック機構に連結されるロッドと、前記棹部材に対して長手方向に摺動自在に設けられ且つ前記ロッドに連結されて前記駆動部の駆動により動作する摺動連結部材と、を備える。
【0012】
この構成によれば、第1アームが長手方向に伸縮すると、ロッドに連結される摺動連結部材が棹部材に沿って長手方向に摺動するので、第1アームの伸縮状態に関わらず、駆動部の駆動により摺動連結部材を介してロッドを作動し、ロッドに連結されるロック機構が作動することで、解除状態又はロック状態への設定が確実に行われる。
【0013】
また、前記棹部材は、一対平行に配置され且つ互いの間隔を駆動部の駆動により可変に構成され、前記摺動連結部材は、前記一対の棹部材間の間隔の可変動作に連動して前記ロッドを長手方向に作動する。
【0014】
この構成によれば、平行に配置された一対の棹部材間の間隔が駆動部の駆動により可変動作すると、摺動連結部材が連動してロッドを長手方向に作動し、ロッドに連結されるロック機構が作動することで、解除状態又はロック状態への設定が確実に行われる。
【0015】
また、前記ロック機構は、前記第2アームの基端部に設けられるロックギヤと、前記ロッドの先端部に前記ロックギヤと係止及び係止解除可能に設けられるロック片と、を備える。
【0016】
この構成によれば、第2アームの基端部に設けられるロックギヤに対し、ロッドの先端部に設けられるロック片が進退してロックギヤと係止又は係止解除することで、ロック状態又は解除状態への設定が確実に行われる。
【0017】
また、前記車両整備用リフトは、前記スイングアームが基部アームを有し且つ前記第1アームが前記基部アームの先端側に水平回動自在に枢着されると共に、前記第1アームの前記基部アームに対する回動をロックする他のロック機構を備え、前記ロック解除機構は、前記駆動部の駆動により前記他のロック機構の解除状態への設定とロック状態への設定とをさらに行うものであって、前記駆動部は、前記基部アームと前記第1アームとの間の連結部近傍に配置される。
【0018】
この構成によれば、駆動部は、基部アームと第1アームとの間の連結部近傍に配置されるので、駆動部を集約配置してロック機構及び他のロック機構の解除状態又はロック状態への設定を行う構成とすることができる。
【0019】
また、前記ロック解除機構は、前記駆動部を手動操作で駆動する手動解除レバーを備える。
【0020】
この構成によれば、手動解除レバーを用いて駆動部を手動操作で駆動することで、ロック機構の解除状態又はロック状態への設定を行うことができる。
【0021】
また、前記車両整備用リフトは、床面上に立設される支柱を備え、前記キャリッジは前記支柱に沿って昇降するものであって、前記ロック解除機構は、前記支柱に固着された作動部材と、前記キャリッジに設けられ、前記キャリッジの高さに応じて前記作動部材との接触作用で動作される被作動部材と、前記被作動部材の動作を前記駆動部に連動させる連動部材と、を有して、前記キャリッジが下限から所定範囲内にあるときは前記ロック機構を解除状態に設定し、前記キャリッジが前記所定範囲外に上昇したときは、前記ロック機構をロック状態に設定する自動ロック解除機構を備える。
【0022】
この構成によれば、キャリッジが下限から所定範囲内にあるとき、自動ロック解除機構がロック機構を解除状態に設定する。これにより、第2アームが水平回動自在となるので、スイングアームの姿勢を自在に変化させて車両受け部を車両の所望位置に位置決めすることができる。一方、キャリッジが所定範囲外に上昇したときは、自動ロック解除機構がロック機構をロック状態に設定する。これにより、第2アームは回動がロックされるので、車両受け部を車両の所望位置に位置決めした状態でスイングアームの姿勢が固定される。つまり、キャリッジの昇降に伴って第2アームのロック及びロック解除を自動で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両整備用リフトの全体構成を示す斜視図である。
【
図2】車両整備用リフトのスイングアーム周辺を示す斜視図である。
【
図3】旋回アームが伸長した状態のスイングアーム周辺を示す平面図である。
【
図4】スイングアームにおいて旋回アーム周辺を拡大して示す斜視図である。
【
図5】ロック片作動機構周辺を拡大して示す斜視図である。
【
図6】キャリッジが下限範囲外に上昇したロック時の自動ロック解除機構周辺を示す斜視図である。
【
図7】キャリッジが下限範囲内に位置するロック解除時の自動ロック解除機構周辺を示す斜視図である。
【
図8】キャリッジが下限範囲外に上昇したロック時のロック片作動機構の状態を示す平面図である。
【
図9】キャリッジが下限範囲内に位置するロック解除時のロック片作動機構の状態を示す平面図である。
【
図10】キャリッジが下限範囲外に上昇した状態で手動解除レバーが操作されたロック解除時のロック片作動機構の状態を示す平面図である。
【
図11】旋回アームが伸長した状態を示す
図8相当の平面図である。
【
図12】旋回アームが伸長した状態を示す
図9相当の平面図である。
【
図13】旋回アームが伸長した状態を示す
図10相当の平面図である。
【
図14】整備対象の車両の各タイヤに各先端アームのタイヤ受けバーを位置決めした使用状態を示す斜視図である。
【
図15】整備対象の車両の各タイヤに各先端アームのタイヤ受けバーを位置決めした使用状態を示す平面図である。
【
図16】変形例に係るスイングアーム周辺を示す平面図である。
【
図17】変形例において整備対象の車両の各ジャッキアップポイントに各先端アームの受け金を位置決めした使用状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る車両整備用リフトを具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0025】
<車両整備用リフト1の構成>
最初に、本発明の実施形態に車両整備用リフト1の構成について、
図1乃至
図15を参照しつつ説明する。
図1は車両整備用リフト1の全体構成を示す斜視図、
図2はスイングアーム4周辺を示す斜視図であり、
図3は旋回アーム20が伸長した状態を示すスイングアーム4周辺を示す平面図である。
図4はスイングアーム4において旋回アーム20周辺を拡大して示す斜視図である。
図5はロック片作動機構60周辺を拡大して示す斜視図である。
図6はキャリッジ3が下限範囲外に上昇したロック時の自動ロック解除機構70周辺を示す斜視図、
図7はキャリッジ3が下限範囲内に位置するロック解除時の自動ロック解除機構70周辺を示す斜視図である。
【0026】
図8はキャリッジ3が下限範囲外に上昇したロック時のロック片作動機構60の状態を示す平面図、
図9はキャリッジ3が下限範囲内で自動ロック解除された時のロック片作動機構60の状態を示す平面図、
図10はキャリッジ3が下限範囲外で手動解除レバー62の操作による手動ロック解除時のロック片作動機構60の状態を示す平面図である。
図11は旋回アーム20が伸長した状態を示す
図8相当の平面図、
図12は同じく
図9相当の平面図、
図13は同じく
図10相当の平面図である。
図14は整備対象の車両Cの各タイヤTに各先端アーム30のタイヤ受けバー32,32を位置決めした使用状態を示す斜視図であり、
図15は同じく平面図である。
【0027】
車両整備用リフト1は、2柱式リフト又は門型リフトと称され、整備対象である車両を4カ所で支持することで車両の昇降を行う車両整備用リフトである。
【0028】
車両整備用リフト1は、支柱2,2と、キャリッジ3,3と、スイングアーム4,4と、ロック解除機構ULとを備える。尚、ロック解除機構ULは、ロック片作動機構60、手動解除レバー62、及び自動ロック解除機構70を含む総称である。
【0029】
支柱2,2は、
図1に示すように、車両整備工場の床面上に整備対象の車両Cを挟んで左右一対に立設される。支柱2,2は、連結ビーム2aで連結されて全体で門型を構成している。
【0030】
キャリッジ3,3は、支柱2,2に沿って昇降自在に組み付けられる。各キャリッジ3は、支柱2内に組み込まれた油圧シリンダにより昇降動作されるようになっている。
【0031】
スイングアーム4,4は、キャリッジ3,3に水平回動自在に枢着され且つ先端に車両受け部を備える。各スイングアーム4は、リフトアーム10と、旋回アーム20と、先端アーム30とを備えて構成される多関節スイングアームである。
【0032】
リフトアーム10は、基端側がキャリッジ3に水平回動自在に枢着されるアーム部材である。リフトアーム10は、具体的には、リフトアーム本体11と、副リンク12と、基部リンク13と、先端部リンク14と、第1ロックギヤ41と、第2ロックギヤ42とを備えて構成される。
【0033】
リフトアーム本体11は、リフトアーム10の主要部をなす鋼製部材であり、互いに平行な上板部と下板部とが垂直壁で一体化された横向きH形の断面形状を有している。リフトアーム本体11は、基端部が枢着軸11aを介してキャリッジ3に水平回動自在に枢着されると共に、先端部には枢着軸11bを介して旋回アーム20が水平回動自在に枢着されている。
【0034】
副リンク12は、整備対象の車両Cに対する背面側でリフトアーム本体11と平行に配置される棒状部材である。副リンク12は、基端が基部リンク13に水平回動自在に枢着連結され且つ先端が先端部リンク14に水平回動自在に枢着連結される。
【0035】
基部リンク13は、キャリッジ3に固着されて一体化してなるリンク部材であって、キャリッジ3背面から水平に所定長さ(例えば、数cm~10数cm)だけ延びている。基部リンク13の先端には、副リンク12の基端が水平回動自在に枢着連結される。
【0036】
先端部リンク14は、第1ロックギヤ41に固着されて一体化してなるリンク部材であって、第1ロックギヤ41背面から水平に所定長さ(例えば、数cm~10数cm)だけ延びている。先端部リンク14は、その一端が副リンク12の先端に水平回動自在に枢着連結される。すなわち、リフトアーム10は、リフトアーム本体11と副リンク12と基部リンク13と先端部リンク14とで、基部リンク13を固定部とする四節リンク機構LKを構成するものであり、この四節リンク機構LKが姿勢変形することでキャリッジ3に対して水平回動自在な構造となっている。
【0037】
第1ロックギヤ41は、円弧形状の外周に多数の歯を有するギヤ部が形成され、枢着軸11bと同軸に配置されて先端部リンク14に固着されている。
【0038】
第2ロックギヤ42は、円弧形状の外周に多数の歯を有するギヤ部が形成されている。第2ロックギヤ42は、枢着軸11bと同軸に配置されてリフトアーム本体11に固着されている。
【0039】
旋回アーム20は、基端側がリフトアーム10に水平回動自在に枢着されるアーム部材である。旋回アーム20は、具体的には、旋回アーム本体21と、スライド体23と、ロック片作動機構60と、を備えて構成される。
【0040】
旋回アーム本体21は、旋回アーム20の主要部をなす鋼製部材であり、機構収容部21aと、角筒部21bとを備えて構成される。機構収容部21aは、平面視への字状の鋼製部材であり、互いに平行な上板部と下板部とが垂直壁で一体化されてなり、内部空間にロック片作動機構60の主要部を収容する。機構収容部21aは、基端部が枢着軸11bを介してリフトアーム10(リフトアーム本体11)に対して水平回動自在に枢着されている。
【0041】
角筒部21bは、角筒状の鋼製部材であり、基端部が機構収容部21aの先端側で上板部と下板部との間に挿入されて固着されている。
【0042】
スライド体23は、旋回アーム本体21の角筒部21bよりも小径の角筒状の鋼製部材であり、角筒部21bの内周に挿入され長手方向にスライド可能となっている。つまり、旋回アーム20は、スライド体23を角筒部21bに対して長手方向にスライドさせることで全長を伸縮、すなわち、収縮させたり(
図8~
図10)、伸長させたりできる(
図9~
図11)。
【0043】
先端アーム30は、整備対象の車両CのタイヤTを受けるためのタイヤ受けアームである。先端アーム30は、先端アーム本体31と、一対のタイヤ受けバー32,32と、第3ロックギヤ43と、を備えて構成される。
【0044】
先端アーム本体31は、アーム長手方向に対して交差する水平方向に延びる鋼製部材であり、両端側面から一対のタイヤ受けバー32,32がアーム先端側へ直角に突設されている。一対のタイヤ受けバー32,32は互いに平行に配置され、先端アーム本体31と一対のタイヤ受けバー32,32とで平面視コ字状を呈している。一対のタイヤ受けバー32,32は、車両CのタイヤT下部における前後2箇所に下方から接することでタイヤを受ける。
【0045】
先端アーム本体31は、基端に設けられた軸穴及び旋回アーム20のスライド体23先端に設けられた軸穴に枢着軸31aが挿通されることにより、旋回アーム20のスライド体23に対して水平回動自在に支持される。先端アーム本体31(すなわち先端アーム30)は、
図3において、回動範囲RRの範囲内で回動可能である。回動範囲RRは、例えば、旋回アーム20の軸線L20方向を0°としたとき、反時計回り90°(-90°)~時計回り90°(+90°)の範囲に設定してもよい。
【0046】
第3ロックギヤ43は、先端アーム本体31基端の軸穴と同軸の軸穴を有し、基端側の円弧形状の外周に多数の歯を有するギヤ部が形成されている。
【0047】
ロック片作動機構60は、第1ロック片51、第2ロック片52及び第3ロック片53をそれぞれロック方向又はロック解除方向へ同時に作動させる機構である。ロック片作動機構60は、具体的には、連動リンク棒61と、第1ロック片作動機構64と、第2ロック片作動機構65と、第3ロック片作動機構66と、を備えて構成される。
【0048】
連動リンク棒61は、旋回アーム20における旋回アーム本体21の機構収容部21a内に垂直に配置されるリンク棒部材である。すなわち、連動リンク棒61は、旋回アーム20の基端部における第1ロック機構LM1及び第2ロック機構LM2に対して近傍であり、第3ロック機構LM3に対して旋回アーム20の長手方向の基端側へ離間して配置される。換言すれば、連動リンク棒61は、リフトアーム10と旋回アーム20との間の連結部近傍に配置される。連動リンク棒61は、回動軸69に一端側が枢着される揺動リンク片68の他端側に連結され、回動軸69を中心として水平方向に所定範囲で揺動自在となっている。連動リンク棒61の下部には、手動解除レバー62の握り部とは反対側の端部の側面が当接している。また、連動リンク棒61の上端は、自動解除レバー63の長穴63a内に挿入されている。さらに、連動リンク棒61は、第1ロック片作動機構64、第2ロック片作動機構65、及び第3ロック片作動機構66にそれぞれ連結されている。
【0049】
手動解除レバー62は、回動軸69に枢着されると共に、旋回アーム20の長手方向に対して略平行に配置される棒状のレバー部材である。手動解除レバー62は、一方の端部に手で握り易くするための握り部が設けられ、回動軸69を挟む反対側の端部の側面が連動リンク棒61の下部に当接している。手動解除レバー62と旋回アーム本体21の機構収容部21aとの間にはスプリング62sが設けられ、手動解除レバー62は、常にはスプリング62sのバネ力によって、旋回アーム20の長手方向と略平行な姿勢に保持されている。手動解除レバー62を、スプリング62sのバネ力に抗して、
図3~
図5等で回動軸69を中心に時計回りに手動で回転操作することで、連動リンク棒61が回動軸69を中心に時計回りに揺動する。
【0050】
第1ロック片51は、第1ロックギヤ41のギヤ部と噛み合う歯を有する爪状部材であり、第1ロックギヤ41に対向して配置される。第1ロック片51は、常には、第1ロック片作動機構64がスプリング64sのバネ力によって付勢されて前進姿勢に保持されることにより、第1ロックギヤ41に係合している。
【0051】
第2ロック片52は、第2ロックギヤ42のギヤ部と噛み合う歯を有する爪状部材であり、第2ロックギヤ42に対向して配置される。第2ロック片52は、常には、第2ロック片作動機構65がスプリング65sのバネ力によって付勢されて前進姿勢に保持されることにより、第2ロックギヤ42に係合している。
【0052】
第3ロック片53は、第3ロックギヤ43のギヤ部と噛み合う歯を有する爪状部材であり、第3ロックギヤ43に対向して配置される。第3ロック片53は、常には、第3ロック片作動機構66がスプリング66sのバネ力によって付勢されて前進姿勢に保持されることにより、第3ロックギヤ43に係合している。
【0053】
第1ロック片作動機構64は、第1ロック片51を第1ロックギヤ41のギヤ部に対して進退作動させる機構であって、枢着連結された複数個のリンク片によって構成されるリンク機構と、このリンク機構と旋回アーム本体21との間に配設されるスプリング64sとを備えて構成される。第1ロック片作動機構64は、リンク機構の基端が回動軸69に枢着されると共に、中間部において連動リンク棒61に当接し、先端に第1ロック片51が連結される。連動リンク棒61が回動軸69を中心に周方向に揺動して第1ロック片作動機構64が姿勢変化することで、第1ロック片51が第1ロックギヤ41に対して進退する。
【0054】
具体的には、常には、スプリング64sのバネ力によって第1ロック片作動機構64が前進姿勢に保持され、第1ロック片51が前進位置で第1ロックギヤ41に係合している。一方、連動リンク棒61がスプリング64sのバネ力に抗して時計回りに揺動すると、第1ロック片作動機構64が後退姿勢に変化し、第1ロック片51が後退して第1ロックギヤ41との係合が解除される。
【0055】
第2ロック片作動機構65は、第2ロック片52を第2ロックギヤ42のギヤ部に対して進退作動させる機構であって、枢着連結された複数個のリンク片によって構成されるリンク機構と、このリンク機構と旋回アーム本体21との間に配設されるスプリング65sとを備えて構成される。第2ロック片作動機構65は、第1ロック片作動機構64の上方で、基端が回動軸69に枢着されると共に、中間部において連動リンク棒61に当接し、先端に第2ロック片52が連結される。連動リンク棒61が回動軸69を中心に周方向に揺動して第2ロック片作動機構65のリンクが姿勢変化することで、第2ロック片52が第2ロックギヤ42に対して進退する。
【0056】
具体的には、常にはスプリング65sのバネ力によって第2ロック片作動機構65が前進姿勢に保持され、第2ロック片52が前進して第2ロックギヤ42に係合している。一方、連動リンク棒61がスプリング65sのバネ力に抗して時計回りに揺動すると、第2ロック片作動機構65が後退姿勢に変化し、第2ロック片52が後退して第2ロックギヤ42との係合が解除される。
【0057】
第3ロック片作動機構66は、第3ロック片53を第3ロックギヤ43のギヤ部に向かって進退作動させる機構である。第3ロック片作動機構66は、固定棹部材661と、棹部材作動リンク片662と、可動棹部材663と、棹部材連結リンク片664と、摺動連結リンク665と、ロッド666と、スライド体23と摺動連結リンク665との間に配設されるスプリング66sとを備えて構成される。
【0058】
固定棹部材661は、旋回アーム20の旋回アーム本体21内に長手方向に沿って固定配置される。棹部材作動リンク片662は、回動軸69に枢着されると共に、一端が連動リンク棒61に連結され且つ他端が可動棹部材663の基端に枢着連結される。可動棹部材663は、旋回アーム本体21内を長手方向に沿って固定棹部材661と平行に配置され、基端が棹部材作動リンク片662の先端に枢着連結される。スプリング66sは、一端がスライド体23に、他端が摺動連結リンク665の摺動リンク片665aにそれぞれ連結され、常にはスプリング66sのバネ力によって付勢されて、可動棹部材663が固定棹部材661に平行姿勢で近接する状態(両部材が当接又は間隔が最小となる状態)が保持されている。
【0059】
棹部材連結リンク片664は、一端が固定棹部材661の先端近傍に枢着連結されると共に、他端が可動棹部材663の先端に枢着連結されることにより、両部材を先端側で接近離間可能に連結する。摺動連結リンク665は、摺動リンク片665aとロッド作動片665bとを互いに枢着連結して構成されるリンク機構であり、摺動リンク片665aにはローラ665rが回動自在に取付けられている。摺動リンク片665aは、基端がスプリング66sに連結されると共に、先端がロッド作動片665bに枢着連結される。ローラ665rは、可動棹部材663の固定棹部材661とは反対側の側面に当接している。ロッド作動片665bは、基端が摺動リンク片665aに枢着連結され、先端がロッド666の基端に枢着連結される。ロッド666は、スライド体23内を長手方向に沿って固定棹部材661及び可動棹部材663と平行に配置され、先端には第3ロック片53が連結されている。
【0060】
そして、第3ロック片作動機構66において、常にはスプリング66sのバネ力によって付勢されて可動棹部材663が固定棹部材661に平行姿勢で近接する状態が保持されることで、ロッド666が前進姿勢とされ、第3ロック片53が前進位置で第3ロックギヤ43に係合している。一方、連動リンク棒61が時計回りに揺動すると、可動棹部材663がスプリング66sのバネ力に抗して固定棹部材661から平行姿勢で離間し、ローラ665rが可動棹部材663によって固定棹部材661から離間する側へ押圧される。これにより、摺動リンク片665aが
図8等で時計回りに回動すると共に、ロッド作動片665bが反時計回りに回動する。このような摺動連結リンク665の姿勢変化によって、ロッド666を基端側へ牽引して後退姿勢とさせて第3ロック片53が後退することで、第3ロックギヤ43との係合が解除される。
【0061】
また、旋回アーム20が長手方向に伸縮すると、第3ロック片作動機構66が旋回アーム20の伸縮に伴って伸縮する。よって、旋回アーム20の伸縮状態に関わらず、連動リンク棒61の動作が第3ロック片作動機構66を介して第3ロック機構LM3に連係されることで、第3ロック機構LM3の解除状態又はロック状態への設定が確実に行われる。より詳細には、旋回アーム20のスライド体23が長手方向に移動すると、スライド体23に連結される摺動連結リンク665は、可動棹部材663に沿ってローラ665rが転動して長手方向にスライド移動する。このため、旋回アーム20の伸縮状態に関わらず、連動リンク棒61の駆動により摺動連結リンク665を介してロッド666を作動し、ロッド666に連結される第3ロック機構LM3(第3ロック片53)が作動することで、解除状態又はロック状態への設定が確実に行われる。
【0062】
自動ロック解除機構70は、キャリッジ3が下限から所定範囲内にあるときは各ロック機構(第1ロック機構LM1、第2ロック機構LM2及び第3ロック機構LM3)をそれぞれ解除状態に設定し、キャリッジ3が所定範囲外に上昇したときは、上記各ロック機構をそれぞれロック状態に設定する機構である。ここで、「下限から所定範囲内」は、例えば、キャリッジ3の昇降下限から50mm~200mm以内に設定される。自動ロック解除機構70は、具体的には、下限解除レール71と、下限解除レバー72と、コントロールケーブル73と、自動解除レバー63と、を備えて構成される。尚、下限解除レール71が本発明の作動部材を、下限解除レバー72が被作動部材を、コントロールケーブル73及び自動解除レバー63が連動部材RNをそれぞれ構成するものである。
【0063】
下限解除レール71は、支柱2の下部側面に固着され、下限解除レバー72の先端に取付けられているガイドローラ72aとの接触面を有する。下限解除レール71の接触面は、略下半分が垂直方向に延びる垂直面となっており、略上半分が支柱2幅方向外側に向かって傾斜するテーパ面となっている。
【0064】
下限解除レバー72は、キャリッジ3に設けられるレバー部材であり、先端にガイドローラ72aが取付けられている。下限解除レバー72は、基端部がキャリッジ3の支柱2との対向面において上下回動自在に枢着されている。
【0065】
コントロールケーブル73は、鋼製のワイヤ等からなり、基端が下限解除レバー72におけるガイドローラ72aと基端部との間に固着されている。コントロールケーブル73は、基端から延びてリフトアーム10内を長手方向に沿って配設され、先端が自動解除レバー63の先端に接続固着される。
【0066】
自動解除レバー63は、板状の小片からなり、長穴63aが形成されている。長穴63aには連動リンク棒61の上端が下から挿通される。自動解除レバー63の先端にはコントロールケーブル73の先端が接続固着されている。自動解除レバー63がコントロールケーブル73によってキャリッジ3側へ牽引されることで、連動リンク棒61は長穴63a内の一端側の内壁に押圧されて
図3~
図5等で回動軸69を中心に時計回りに揺動する。
【0067】
<スイングアーム4のロック及びロック解除に伴う各部の作動>
車両整備用リフト1のキャリッジ3が下限解除レール71よりも上方の高さまで上昇しているとき、下限解除レバー72は、ガイドローラ72aが下限解除レール71と接触せず、スプリング64s,65s,66sの付勢力によってスイングアーム4に近づく側へ傾斜する第1姿勢となっており、コントロールケーブル73はスイングアーム4基端側へ牽引されない。このため、
図8,
図11に示すように、自動解除レバー63は回動せず、第1ロック片作動機構64、第2ロック片作動機構65は、それぞれスプリング64s,65sの力で第1ロック片51、第2ロック片52を付勢して、第1ロックギヤ41、第2ロックギヤ42に対してそれぞれ前進位置となっている。
【0068】
そして、第1ロックギヤ41と旋回アーム20側に固定される第1ロック片51とが係合し、且つリフトアーム10側に固定される第2ロックギヤ42と旋回アーム20側に固定される第2ロック片52とが係合することで、リフトアーム本体11と先端部リンク14との相対角度R1が固定される。ここで、相対角度R1は、リフトアーム本体11の軸線L11と先端部リンク14の軸線L14とが成す角度である(
図3参照)。これにより、リフトアーム10を構成する四節リンク機構の姿勢変化が不可となって、リフトアーム10のキャリッジ3に対する回動がロックされている。すなわち、第1ロックギヤ41、第1ロック片51及び第1ロック片作動機構64と、第2ロックギヤ42、第2ロック片52及び第2ロック片作動機構65とが、リフトアーム10のキャリッジ3に対する回動をロックする第1ロック機構LM1を構成する。
【0069】
また、リフトアーム10側に固定される第2ロックギヤ42と旋回アーム20側に固定される第2ロック片52とが係合することで、旋回アーム20のリフトアーム10に対する回動がロックされている。換言すれば、リフトアーム本体11の軸線L11と旋回アーム20の軸線L20とが成す相対角度R2が固定されている(
図3参照)。すなわち、第2ロックギヤ42、第2ロック片52及び第2ロック片作動機構65が、旋回アーム20のリフトアーム10に対する回動をロックする第2ロック機構LM2を構成する。
【0070】
また、第3ロック片作動機構66では、可動棹部材663が固定棹部材661に平行な姿勢で近接している。ロッド666は、摺動連結リンク665を介して前進位置とされ、これにより第3ロック片53を前進位置として第3ロックギヤ43と係合し、先端アーム30の回動がロックされている。
【0071】
一方、車両整備用リフト1のスイングアーム4がロック状態にあるときにキャリッジ3を下降していくと、所定の高さで自動ロック解除機構70のガイドローラ72aが下限解除レール71における傾斜部分に到達し、その後、ガイドローラ72aはねじりバネの力に抗して徐々にスイングアーム4から遠ざかる側へ押し戻されて、略垂直な第2姿勢となる。このため、
図9,
図12に示すように、コントロールケーブル73はスイングアーム4基端側へ牽引され、自動解除レバー63は時計回りに回動し、連動リンク棒61を介して第1ロック片作動機構64、第2ロック片作動機構65、及び第3ロック片作動機構66がロック解除方向へ作動する。これにより、第1ロック片51、第2ロック片52、及び第3ロック片53が、それぞれ第1ロックギヤ41、第2ロックギヤ42、及び第3ロックギヤ43から離間してロック解除状態となる。
【0072】
具体的には、第1ロック片作動機構64では、連動リンク棒61が時計回りに揺動すると、スプリング64sのバネ力に抗して、略直線状の姿勢から略「く」の字状に折れ曲がった姿勢に変化し、第1ロック片51が後退して第1ロックギヤ41から離脱してロック解除状態となる。
【0073】
また、第2ロック片作動機構65では、連動リンク棒61が時計回りに揺動すると、スプリング65sのバネ力に抗して、略直線状の姿勢から略「く」の字状に折れ曲がった姿勢に変化するので、第2ロック片52が後退して第2ロックギヤ42から離脱し、ロック解除状態となる。
【0074】
また、第3ロック片作動機構66では、連動リンク棒61が時計回りに揺動すると、スプリング66sのバネ力に抗して、棹部材作動リンク片662が時計回りに所定角度回動し、可動棹部材663が固定棹部材661から平行姿勢で所定距離だけ離間する。そして、ロッド666は、可動棹部材663の移動に伴う摺動連結リンク665の姿勢変化により牽引されて後退位置とされ、これにより第3ロック片53が後退して第3ロックギヤ43から離脱し、ロック解除状態となる。
【0075】
また、車両整備用リフト1のスイングアーム4がロック状態にあるとき、手動解除レバー62をスプリング62sのバネ力に抗して手動で時計回りに回転操作した場合、
図10,
図13に示すように、手動解除レバー62に連結される連動リンク棒61が時計回りに揺動する。これにより、上述した自動ロック解除機構70によるロック解除動作と同様に、連動リンク棒61を介して第1ロック片作動機構64、第2ロック片作動機構65、及び第3ロック片作動機構66がロック解除方向へ作動する。よって、第1ロック片51、第2ロック片52、及び第3ロック片53が、それぞれ第1ロックギヤ41、第2ロックギヤ42、及び第3ロックギヤ43から離間し、リフトアーム10、旋回アーム20及び先端アーム30がそれぞれロック解除状態となる。
【0076】
<実施形態のまとめ>
以上詳述したことから明らかなように、本実施形態に係る車両整備用リフト1は、昇降可能なキャリッジ3と、キャリッジ3に水平回動自在に枢着され且つ先端に車両受け部としてのタイヤ受けバー32,32を備えるスイングアーム4と、を備える車両整備用リフトであって、スイングアーム4は、第1アームとしての旋回アーム20と、旋回アーム20の先端側に水平回動自在に枢着される第2アームとしての先端アーム30と、を有して構成され、車両整備用リフト1は、旋回アーム20の先端側で先端アーム30との間に配置されて先端アーム30の旋回アーム20に対する回動をロックするロック機構としての第3ロック機構LM3と、第3ロック機構LM3に対して旋回アーム20の長手方向の基端側へ離間して配置される駆動部としての連動リンク棒61と、旋回アーム20の長手方向に沿って配設されて連動リンク棒61の動作に連係して第3ロック機構LM3を作動させるロック作動部としての第3ロック片作動機構66を有し、連動リンク棒61の駆動により第3ロック片作動機構66を介して第3ロック機構LM3の解除状態への設定とロック状態への設定とを行うロック解除機構ULを備える。
【0077】
この構成によれば、ロック解除機構ULにおいて、第3ロック機構LM3に対して旋回アーム20の長手方向の基端側へ離間して配置される連動リンク棒61が駆動されると、連動リンク棒61の動作が第3ロック片作動機構66を介して第3ロック機構LM3に連係されることで、第3ロック機構LM3の解除状態又はロック状態への設定が行われる。つまり、第3ロック機構LM3から離間した位置で駆動することで、先端アーム30の旋回アーム20に対する回動をロックしたり、ロック解除したりすることができる。よって、スイングアーム4の回動のロック及びロック解除に関わる機構の配置の自由度を確保可能な車両整備用リフトを提供することができるという効果を奏する。
【0078】
また、旋回アーム20は、筒型のアーム本体としての旋回アーム本体21及び中間体22と旋回アーム本体21に嵌合して長手方向にスライド可能なスライド体23とを有して伸縮可能に構成され、第3ロック片作動機構66は、旋回アーム20の伸縮に伴って長手方向に伸縮する。
【0079】
この構成によれば、旋回アーム20が長手方向に伸縮すると第3ロック片作動機構66が旋回アーム20の伸縮に伴って伸縮するので、旋回アーム20の伸縮状態に関わらず、連動リンク棒61の動作が第3ロック片作動機構66を介して第3ロック機構LM3に連係されることで、第3ロック機構LM3の解除状態又はロック状態への設定が確実に行われる。
【0080】
また、第3ロック片作動機構66は、旋回アーム本体21に収容されて長手方向に延びる棹部材としての固定棹部材661及び可動棹部材663と、スライド体23に収容されて長手方向に延び且つ第3ロック機構LM3に連結されるロッド666と、固定棹部材661及び可動棹部材663に対して長手方向に摺動自在に設けられ且つロッド666に連結されて連動リンク棒61の駆動により動作する摺動連結部材としての摺動連結リンク665と、を備える。
【0081】
この構成によれば、旋回アーム20が長手方向に伸縮すると、ロッド666に連結される摺動連結リンク665が固定棹部材661及び可動棹部材663に沿って長手方向に摺動するので、旋回アーム20の伸縮状態に関わらず、連動リンク棒61の駆動により摺動連結リンク665を介してロッド666を作動し、ロッド666に連結される第3ロック機構LM3が作動することで、解除状態又はロック状態への設定が確実に行われる。
【0082】
また、一対の棹部材としての固定棹部材661及び可動棹部材663は、一対平行に配置され且つ互いの間隔を連動リンク棒61の駆動により可変に構成され、摺動連結リンク665は、固定棹部材661及び可動棹部材663間の間隔の可変動作に連動してロッド666を長手方向に作動する。
【0083】
この構成によれば、平行に配置された固定棹部材661及び可動棹部材663間の間隔が連動リンク棒61の駆動により可変動作すると、摺動連結リンク665が連動してロッド666を長手方向に作動し、ロッド666に連結される第3ロック機構LM3が作動することで、解除状態又はロック状態への設定が確実に行われる。
【0084】
また、第3ロック機構LM3は、先端アーム30の基端部に設けられる第3ロックギヤ43とロッド666の先端部に第3ロックギヤ43と係止及び係止解除可能に設けられるロック片としての第3ロック片53と、を備える。
【0085】
この構成によれば、先端アーム30の基端部に設けられる第3ロックギヤ43に対し、ロッド666の先端部に設けられる第3ロック片53が進退して第3ロックギヤ43と係止又は係止解除することで、ロック状態又は解除状態への設定が確実に行われる。
【0086】
また、車両整備用リフト1は、スイングアーム4が基部アームとしてのリフトアーム10を有し且つ旋回アーム20がリフトアーム10の先端側に水平回動自在に枢着されると共に、旋回アーム20のリフトアーム10に対する回動をロックする他のロック機構としての第2ロック機構LM2を備え、ロック解除機構ULは、連動リンク棒61の駆動により第2ロック機構LM2の解除状態への設定とロック状態への設定とをさらに行うものであって、連動リンク棒61は、リフトアーム10と旋回アーム20との間の連結部近傍に配置される。
【0087】
この構成によれば、連動リンク棒61は、リフトアーム10と旋回アーム20との間の連結部近傍に配置されるので、駆動部としての連動リンク棒61を集約配置して第3ロック機構LM3及び第2ロック機構LM2の解除状態又はロック状態への設定を行う構成とすることができる。
【0088】
また、ロック解除機構ULは、連動リンク棒61を手動操作で駆動する手動解除レバー62を備える。
【0089】
この構成によれば、手動解除レバー62を用いて連動リンク棒61を手動操作で駆動することで、第3ロック機構LM3の解除状態又はロック状態への設定を行うことができる。
【0090】
また、車両整備用リフト1は、床面上に立設される支柱2を備え、キャリッジ3は支柱2に沿って昇降するものであって、ロック解除機構ULは、支柱2に固着された作動部材としての下限解除レール71と、キャリッジ3に設けられ、キャリッジ3の高さに応じて下限解除レール71との接触作用で動作される被作動部材としての下限解除レバー72と、下限解除レバー72の動作を第3ロック機構LM3に連動させる連動部材としてのコントロールケーブル73とを有し、キャリッジ3が下限から所定範囲内にあるときは第3ロック機構LM3を解除状態に設定し、キャリッジ3が所定範囲外に上昇したときは、第3ロック機構LM3をロック状態に設定する自動ロック解除機構70を備える。
【0091】
この構成によれば、キャリッジ3が下限から所定範囲内にあるとき、自動ロック解除機構70が第3ロック機構LM3を解除状態に設定する。これにより、先端アーム30が水平回動自在となるので、スイングアーム4の姿勢を自在に変化させて車両受け部としてのタイヤ受けバー32,32を車両CのタイヤTに位置決めすることができる。一方、キャリッジ3が所定範囲外に上昇したときは、自動ロック解除機構70が第3ロック機構LM3をロック状態に設定する。これにより、先端アーム30は回動がロックされるので、タイヤ受けバー32,32を車両CのタイヤTに位置決めした状態でスイングアーム4の姿勢が固定される。つまり、キャリッジ3の昇降に伴って先端アーム30のロック及びロック解除を自動で行うことができる。
【0092】
<変形例>
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変更を施すことが可能である。例えば、上記実施形態では、スイングアーム4をリフトアーム10、旋回アーム20及び先端アーム30の3つのアームからなる多関節スイングアームとした例を示したが、これには限られず、リフトアーム10及び旋回アーム20の2つのアームからなる多関節スイングアームとしてもよいし、さらにアームを追加して4つ以上のアームからなる多関節スイングアームとしてもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、先端アーム30が、車両受け部として一対のタイヤ受けバー32,32を備える例を示したが、これには限られない。
図16は変形例に係るスイングアーム4周辺を示す平面図であり、
図17は変形例において整備対象の車両Cの各ジャッキアップポイント(図示せず)に各先端アーム30の受け金33を位置決めした使用状態を示す平面図である。本変形例に係る車両整備用リフト1において、先端アーム30は、車両Cのジャッキアップポイントを受けるための受け金33を備えている。本変形例によれば、多関節スイングアームであるスイングアーム4の姿勢を自在に変化させて、受け金33を車両の各ジャッキアップポイントに位置決めすることができる。
【0094】
また、上記実施形態では、旋回アーム20、先端アーム30をそれぞれ本発明の第1アーム、第2アームに対応させて本発明を適用した例を示したが、これには限られない。例えば、リフトアーム10、旋回アーム20をそれぞれ本発明の第1アーム、第2アームに対応させて本発明を適用してもよい。
【0095】
また、上記実施形態では、旋回アーム20を伸縮自在に構成した例を示したが、これには限られず、旋回アーム20を伸縮不可のアーム部材により構成してもよい。その場合、ロック作動部としての第3ロック片作動機構66は、固定棹部材661及び可動棹部材663を省略し、連動リンク棒61とロッド666とを連結するリンク機構を設けて、連動リンク棒61の駆動によりリンク機構を姿勢変化させてロッド666を進退させる構成としてもよい。
【0096】
また、上記実施形態では、床面上に立設される支柱2を備え、支柱2に沿ってキャリッジ3を昇降させる床上柱式の車両整備用リフトに本発明を適用した例を示したが、これには限られない。例えば、柱を床に埋設し、上端にキャリッジを設けてラムシリンダ、ネジ機構等により昇降する埋設柱式の車両整備用リフト、或いは、Xリンク式、パンタグラフ式、λ(ラムダ)リンク式等のリンク機構によってキャリッジを昇降する車両整備用リフトに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 車両整備用リフト
2 支柱
3 キャリッジ
4 スイングアーム
10 リフトアーム(基部アーム)
11 リフトアーム本体
12 副リンク
13 基部リンク
14 先端部リンク
20 旋回アーム(第1アーム)
21 旋回アーム本体(アーム本体)
23 スライド体
30 先端アーム(第2アーム)
41 第1ロックギヤ
42 第2ロックギヤ
43 第3ロックギヤ(ロックギヤ)
51 第1ロック片
52 第2ロック片
53 第3ロック片(ロック片)
61 連動リンク棒(駆動部)
62 手動解除レバー
63 自動解除レバー
66 第3ロック片作動機構(ロック作動部)
661 固定棹部材(棹部材)
663 可動棹部材(棹部材)
666 ロッド
665 摺動連結リンク(摺動連結部材)
665a摺動リンク片(摺動連結部材)
665bロッド作動片(摺動連結部材)
70 下限ロック解除機構
71 下限解除レール(作動部材)
72 下限解除レバー(被作動部材)
73 コントロールケーブル(連動部材)
UL ロック解除機構
LM1 第1ロック機構
LM2 第2ロック機構(他のロック機構)
LM3 第3ロック機構(ロック機構)
LK 四節リンク機構
RN 連動部材