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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170243
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】打設空間計測装置及び計測方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
E21D11/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087292
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515163483
【氏名又は名称】K’zシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 快尚
(72)【発明者】
【氏名】上岡 亮一
(72)【発明者】
【氏名】山口 和秀
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155AA02
2D155BA05
2D155BB02
2D155DA08
2D155LA13
(57)【要約】
【課題】トンネルの天端部において打設空間の容積を精度良く計測することができ、残コンクリートの発生を効果的に抑える打設空間計測装置及び計測方法を提案する。
【解決手段】打設空間計測装置1は、トンネルTの天端部において覆工コンクリートCの打設空間S1の容積を計測する。型枠14の頂部14a1の外面に設置されトンネルTの軸方向に延在するレール2と、レール2に沿って走行しトンネルTの軸方向を法線方向とする面内において打設空間S1の形状を計測する2次元スキャナ3と、2次元スキャナ3を牽引する牽引機構4と、2次元スキャナ3の位置を計測するエンコーダ5と、2次元スキャナ3とエンコーダ5とによって計測された計測結果に基づいて、打設空間S1の容積を算出する制御部6と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの天端部において、セントルの型枠の外面とトンネルの内面との間に形成される覆工コンクリートの打設空間の容積を計測する打設空間計測装置であって、
前記型枠の頂部の外面に設置され前記トンネルの軸方向に延在するレールと、
前記レールに沿って走行し、前記トンネルの軸方向を法線方向とする面内において前記打設空間の形状を計測する2次元スキャナと、
前記2次元スキャナを牽引する牽引機構と、
前記2次元スキャナの位置を計測するエンコーダと、
前記2次元スキャナと前記エンコーダとによって計測された計測結果に基づいて、打設空間の容積を算出する制御部と、を備えたことを特徴とする打設空間計測装置。
【請求項2】
前記牽引機構に前記エンコーダが一体に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の打設空間計測装置。
【請求項3】
前記レールは、前記型枠の頂部の外面に対して磁石で固定されていることを特徴とする請求項1に記載の打設空間計測装置。
【請求項4】
トンネルの天端部において打設空間の容積を計測する計測方法であって、
セントルの型枠の褄部側に牽引機構及びエンコーダを設置するとともに、前記型枠のラップ部側に2次元スキャナを配置し、前記牽引機構により前記ラップ部側から前記褄部側に向けて前記2次元スキャナを牽引し、前記2次元スキャナと前記エンコーダとによって計測された計測結果に基づいて、打設空間の容積を算出することを特徴とする計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル施工における打設空間計測装置及び計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル施工における打設空間を計測する技術として特許文献1,2に開示されたものが知られている。特許文献1は、覆工コンクリートを打設するための巻立空間の確認、及びこの巻立空間の覆工コンクリートの打設ボリュームの把握に用いる巻立空間測定方法に関するものである。特許文献1の技術では、トンネル内にセントルを据え付ける前に、トンネルの内壁面の出来形を三次元スキャナで計測してトンネルの内壁面の座標を取得し、トンネル内にセントルを据え付けた後に、セントルに設けた複数点のプリズムの三次元座標をトータルステーションで計測することにより、セントルの型枠表面の座標を取得している。そして特許文献1の技術では、トンネルの内壁面の座標とセントルの型枠表面の座標との差分から、覆工コンクリート打設前の巻立空間及び巻立空間における覆工コンクリートの打設ボリュームを測定している。
また、特許文献2は、打設管理システムに関するものである。特許文献2の技術では、打設空間の三次元モデルに基づいてコンクリートの最終天端位置を特定する最終天端位置特定処理と、打設中の打設現場を撮像装置が撮像した撮像情報に基づいて、打設中の打設現場の点群情報を取得する点群情報取得処理と、三次元モデルと群情報とに基づいて、打設中のコンクリートの天端位置を特定する天端位置特定処理と、三次元モデル、点群情報、天端位置、および、最終天端位置に基づいて、最終天端位置まで打設するのに必要な必要量を算出する必要量算出処理と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-61417号公報
【特許文献2】特開2022-174364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の巻立空間測定方法は、躯体のように設計通りに型枠を組む工種を対象とした空間測定を行う場合に適している。一方、トンネル覆工を対象とした空間測定では、型枠の一部となる支保工仕上がり面(吹付けコンクリートの表面等)の出来形が施工の狙いに対して数cm程度の施工誤差を有することがあるため、特許文献1の測定方法に基づいて設計3Dモデルから残り体積を算出したとしても、バッチ式ミキサにおいて調整可能となる容量(0.25m)に収まらない可能性がある。したがって、トンネル覆工を対象とした空間測定に対して適用性が低い。
また、特許文献2では、メタルフォームに基づく設計3Dモデルをベースとしているため、箱抜きを施工する区間に適用する場合に課題がある。トンネルは、線状構造物であるため、同一断面をトンネル線形(平面・縦断)に基づいて延伸して設計3Dモデルを作成することが多い。しかし、箱抜き部は、縦断・横断方向に断面変化を有するため、詳細に設計3Dモデルに反映することが難しく、特許文献2の手法を箱抜き部に適用しようとすると、高度な3Dモデルが必要となるため、その3Dモデルの作成に高度な技術と手間を要する。それに加え、箱抜き部は、一般的に、セントルに木製の箱抜き用型枠を取り付けて施工することとなるが、これらの取り付けは作業員の手作業で行うため、セントルセット誤差と箱抜き用型枠の施工誤差も積算される。
また、打設前に算出した1スパン分の予定数量が例えば100mである場合には、4mの生コン車25台分の運搬になるが、実際のところ、生コン車1台あたりの正確な体積は確認することができない(例えば、空気量の管理基準値:±2.5%、製造プラントの計量設備の精度:水±1%、セメント±1%、骨材±3%)。また、生コン車からコンクリートを荷下ろしする際、ドラム内にコンクリートが付着して残留する。そのため、出荷時のコンクリート数量と躯体に打設した真のコンクリート数量は一致しない。このため、多数の運搬を伴う打設では、これらの誤差が積算されるため、最終的な誤差がバッチ式ミキサにおいて調整可能となる容量(0.25m)に収まらず、残コンクリートを低減するに至らないことが推察される。
本発明は、前記した課題を解決し、トンネルの天端部の打設作業において、打設空間の容積を精度良く計測することができ、残コンクリートの発生を効果的に抑えることができる打設空間計測装置及び計測方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の打設空間計測装置は、トンネルの天端部において、セントルの型枠の外面とトンネルの内面との間に形成される覆工コンクリートの打設空間の容積を計測するものである。打設空間計測装置は、前記型枠の頂部の外面に設置され前記トンネルの軸方向に延在するレールと、前記レールに沿って走行し、前記トンネルの軸方向を法線方向とする面内において前記打設空間の形状を計測する2次元スキャナと、前記2次元スキャナを牽引する牽引機構と、前記2次元スキャナの位置を計測するエンコーダと、前記2次元スキャナと前記エンコーダとによって計測された計測結果に基づいて、打設空間の容積を算出する制御部と、を備えている。
本発明では、打設作業の最終段階となるトンネルの天端部の打設作業において、覆工コンクリートの残必要量を精度良く計測することができるので、生コンクリートの発注や運搬に係る積算誤差の影響が小さく、残コンクリートの発生を効果的に抑えることができる。このことは、コンクリートガラの処分費の低減、コンクリート生産に伴うCO排出量の削減に寄与する。
また、2次元スキャナ及びエンコーダによる計測結果と、簡単な演算処理とによって容積を算出できるので、短時間で精度良く覆工コンクリートの残必要量を把握できる。また、算出した容積に基づいて、生コンクリート車の台数調整を行うことができるので、生コンクリート車の待ち時間を削減することが可能となり、生産性の向上を図ることができる。
前記牽引機構に前記エンコーダが一体に設けられていることが好ましい。この構成では、牽引機構へのエンコーダの取り付けや調整が不要となるので、覆工コンクリートの残必要量をスムーズに精度良く計測できる。また、トンネルの天端部への機器の設置及び計測後の撤去が容易である。
また、前記レールは、前記型枠の頂部の外面に対して磁石で固定されていることが好ましい。このように構成することで、型枠の頂部の外面に対するレールの設置及び計測後の撤去が容易である。
【0006】
前記課題を解決するための本発明の計測方法は、トンネルの天端部において打設空間の容積を計測する方法である。セントルの型枠の褄部側に牽引機構及びエンコーダを設置するとともに、前記型枠のラップ部側に2次元スキャナを配置し、前記牽引機構により前記ラップ部側から前記褄部側に向けて前記2次元スキャナを牽引し、前記2次元スキャナと前記エンコーダとによって計測された計測結果に基づいて、打設空間の容積を算出することを特徴とする。
本発明では、ラップ部側から褄部側に向けて2次元スキャナを牽引して計測するので、打設済覆工コンクリートに隣接する打設空間の容積を計測できる。これにより、生コンクリートの発注や運搬に係る積算誤差の影響が小さくなり、残コンクリートの発生を効果的に抑えることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の打設空間計測装置及び計測方法によれば、トンネルの天端部の打設作業において、打設空間の容積を精度良く計測することができ、残コンクリートの発生を効果的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係る打設空間計測装置が適用されるトンネルを示す概要断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る打設空間計測装置が設置されたトンネルの天端部付近を示す拡大断面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る打設空間計測装置を示す図であり、(a)は全体構成を示す側面図、(b)は要部を拡大して示した側面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る打設空間計測装置の2次元スキャナを示す拡大側面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る打設空間計測装置の2次元スキャナを褄部側から見た状態を示す拡大図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る打設空間計測装置の牽引装置及びエンコーダを示す拡大図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る打設空間計測装置の容積算出システムを示すブロック図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る打設空間計測装置の制御部による容積の算出手順を説明するための図であり、(a)は2次元スキャナを用いてトンネルの断面積を算出する際の説明図、(b)は2次元スキャナ及びエンコーダの計測結果に基づいて打設空間の容積を算出する際の説明図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る打設空間計測装置の2次元スキャナを示す拡大側面図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る打設空間計測装置の2次元スキャナを褄部側から見た状態を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の打設空間計測装置及び計測方法について適宜図面を参照して詳細に説明する。以下の説明において、打設空間計測装置及び計測方法について「前後」「左右」「上下」を言うときは図1図2等に示す方向を基準とするが、打設空間計測装置の使用方法(設置方向)を限定する趣旨ではない。また、各実施形態において、共通する部分には共通の符合を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係る打設空間計測装置1が適用されるトンネルTを示す概要断面図である。
図1に示すように、打設空間計測装置1が適用されるトンネルTの抗内には、セントル(スライドセントル)10が設置されている。セントル10は、トンネルTの軸方向に敷設された移動用レール11cに沿って移動可能である。セントル10は、ガントリ11と、ガントリ11に支持された型枠14とを備えている。
トンネルTは、発破や機械掘削等により地山Gに造成された、例えば図示例のような馬蹄形や円形等の孔壁T1を備えている。孔壁T1と型枠14との間に覆工コンクリートCが打設される打設空間Sが形成される。なお、孔壁T1の内周面に吹付けコンクリートが施工されている場合は、型枠14と吹付けコンクリートとの間に打設空間Sが形成される。
ガントリ11は、形鋼等を適宜組み合わせることにより門型に形成された枠組み部材である。ガントリ11は、左右一対の支持脚11a,11aと、支持脚11a,11aの上端部に架設された梁部材11bと、を備えている。支持脚11a,11aの下端部には、移動用レール11cを走行するための図示しない車輪が設けられている。また、ガントリ11は、打設時の作業員の足場や資材機器等の仮置き場として機能する作業足場13を備えている。セントル10の内空には、コンクリート打設管15a~15dが配設されている。
【0011】
型枠14は、トンネルTの周方向及び軸方向に並ぶ複数のフォームにより形成されており、アーチ形状を呈している。複数のフォームは、ガントリ11から鉛直方向や水平方向、斜め上方向や斜め下方向に延在する複数の支保部材12により支持されている。複数のフォームは、セントル10の天端部に位置する天フォーム14aと、天フォーム14aの両側に位置する側フォーム14b,14bと、側フォーム14b,14bの下部側に位置するインバートフォーム14c,14cとを備えている。
側フォーム14bの側方の打設空間Sには、箱抜き部14eが形成されている。箱抜き部14eは、覆工コンクリートCにより埋没されないように枠材で囲われており、脱型後は、例えば、設備機器の設置や給排気配管等の設置場所として機能する。
セントル10を構築する際には、トンネルTの地面にガントリ11を組み立てた後、支保部材12や各種の中間部材等を介して天フォーム14a、側フォーム14b、インバートフォーム14cの順に組み付けられる。
【0012】
次に、打設空間計測装置1について説明する。図2は打設空間計測装置1が設置されたトンネルの天端部付近を示す拡大断面図、図3は打設空間計測装置1を示す図であり、(a)は全体構成を示す側面図、(b)は要部を拡大して示した側面図である。図4は2次元スキャナ3を示す拡大側面図、図5は2次元スキャナ3を褄部TU側から見た拡大図、図6は打設空間計測装置1の牽引装置20及びエンコーダ30を示す拡大図である。また、図7は容積算出システムを示すブロック図である。
打設空間計測装置1は、トンネルTの天端部において、セントル10の型枠14の外面とトンネルTの孔壁T1(内面)との間に形成される覆工コンクリートCの打設空間S1(図2において濃いドット模様を付した領域)の容積を計測するものである。
打設空間計測装置1は、図3(a)(b)に示すように、レール2と、レール2上を走行する2次元スキャナ3と、2次元スキャナ3を牽引する牽引機構4と、エンコーダ5とを備えている。また、打設空間計測装置1は、図7に示すように、2次元スキャナ3とエンコーダ5とで取得されたデータから天端部の打設空間S1の容積を算出する制御部6のほか、通信制御部7と、操作用の端末装置8とを備えている。
レール2は、図3(a)(b)に示すように、天フォーム14aの頂部の外面に磁石2aにより固定されており、トンネルTの軸方向に延在している。レール2は、図5に示すように、上部及び下部に略V字状の溝部2bが形成された直線状のレールである。上部の溝部2bには、2次元スキャナ3をレール2に沿って走行させるためのガイド部材2cが挿入されている。一方、下部の溝部2bには、磁石2aの留め具2dが挿入されている。磁石2aは、所定間隔を空けて複数個(本実施形態では計4個)配設されている。なお、磁石2aの数は適宜設定することができる。
【0013】
2次元スキャナ3は、レール2上を走行し、レール2に沿って移動しながらトンネルTの軸方向を法線方向とする面内において天端部の打設空間S1の形状を計測する。2次元スキャナ3は、図示しない電源から供給された電力により作動し、レーザーパルスのビームをトンネルTの孔壁T1に向けて放射するとともに戻りビームを光学センサで検出することで、孔壁T1までの距離Lを正確に計測するものである。2次元スキャナ3の仕様としては、例えば、開口角度:360度、スキャン回数:25回/秒、角度分解:0.04度のものを用いることができ、1回の360度の計測で、0.04度ごとに9000件の距離データを計測可能である。2次元スキャナ3を移動させながら計測する場合、1回の計測で出力されるビームは厳密には同一平面上に存在しないが、打設空間S1の容積を算出するにあたっては、同一平面上で計測されたものとしている。
2次元スキャナ3は、ブラケット31に取り付けられている。ブラケット31は、平板状の基部32と、基部32の端部から立ち上がる取付部33と、基部32と取付部33とを繋ぐ補強部34とを有している。基部32の下面には、ガイド部材2c,2cを支持する板状の支持部材35が取り付けられている。
【0014】
牽引機構4は、ハンドルウインチであり、図6に示すように、基台41と、左右一対の側板42,42と、回転ドラム43と、減速部44と、操作ハンドル45とを備えている。牽引機構4(回転ドラム43)の出力軸43aには、連結部材46を介してエンコーダ5が一体的に取り付けられている。
基台41は、図3(b)に示すように、天フォーム14aの頂部14a1における褄部側TUの端部14a2にボルト等により固定される。基台41には、図6に示すように、左右一対の側板42,42と、エンコーダ5を支持するための支持板51が取り付けられている。回転ドラム43は、側板42,42の間に回転可能に支持されている。回転ドラム43には、2次元スキャナ3を牽引するためのワイヤ48(図3(a)(b)参照)が巻回されている(図6では不図示)。回転ドラム43は、操作ハンドル45の回転操作で駆動される減速部44を介して回転駆動される。減速部44は、左側の側板42の左側方に設けられている。操作ハンドル45は、減速部44の入力軸44aに取り付けられている。
【0015】
エンコーダ5は、牽引機構4(回転ドラム43)の出力軸43aの回転から2次元スキャナ3の移動距離(位置)を計測するものである。エンコーダ5は、ロータリーエンコーダであり、例えば、1回転あたり1000パルスを発生させて1パルスあたりの距離をカウントする。エンコーダ5は、図示しないケーブルを介して2次元スキャナ3に接続されており、2次元スキャナ3と通信を行っている。エンコーダ5による計測結果は、2次元スキャナ3に送出され、2次元スキャナ3による計測結果とともに制御部6に送出される(図7参照)。制御部6へのデータの送出は、通信制御部7を介して行われる。通信制御部7は、ルータの機能を有している。通信制御部7には、図7に示すように、2次元スキャナ3、制御部6及び端末装置8が、ネットワーク、例えばイーサーネットケーブルを介して接続されている。なお、ネットワークとしては、その他に、インターネットや電話通信網を利用することも可能である。
【0016】
制御部6は、通信制御部7を介して入力された2次元スキャナ3及びエンコーダ5による計測結果に基づいて、打設空間S1の容積を算出する。
図8は制御部6による容積の算出手順を説明するための図であり、(a)は2次元スキャナ3を用いてトンネルTの断面積を算出する際の説明図、(b)は2次元スキャナ3及びエンコーダ5の計測結果に基づいて打設空間S1の容積を算出する際の説明図である。
図8(a)に示すように、2次元スキャナ3は、2次元スキャナ3からトンネルTの孔壁T1までの距離Lと角度θとを計測し、その計測結果を制御部6に送出する。なお、角度θは任意に設定することができる。
制御部6は、角度θの間隔に準じてそれぞれを三角形とみなし、各三角形の面積A~Aを算出する。各三角形の面積A~Aは、(L/2)tanθ により求めることができる。そして、制御部6は、各三角形の面積A~Aを積算し、断面積Aを算出する。
次に、制御部6は、エンコーダ5の計測値から2次元スキャナ3の移動量を算出し、所定の移動量M毎に断面積Aを乗算して、移動量M毎の区間体積V~Vを算出する。そして、制御部6は、区間体積V~Vを合算するとともに、区間体積V~Vにおけるレール2の容積を減算して打設空間S1の容積を算出する。なお、レール2の容積は、2次元スキャナ3の移動量から算出してもよいし、予め算出して制御部6に記憶しておいてもよい。
制御部6は、打設空間S1の容積に基づいて、覆工コンクリートの打設の数量を算出する。
【0017】
端末装置8は、作業者が使用する端末であり、例えば、スマートフォン、タブレット、ノート型等のパーソナルコンピュータである。端末装置8により、2次元スキャナ3及びエンコーダ5の各種設定の入力を行うことができる。また、端末装置8の表示画面には、2次元スキャナ3及びエンコーダ5の計測結果、制御部6により算出された断面積A、移動量M毎の区間体積V~V、打設空間S1の容積、覆工コンクリートの打設の数量等、種々のデータを表示することが可能である。なお、端末装置8は、必ずしも必要ではなく、制御部6に予め設定されたプログラム等によって自動的に計測されるように構成してもよい。
【0018】
次に打設空間計測装置1による計測方法について説明する。
打設空間計測装置1を設置するタイミングは、セントル10をセットした後、覆工コンクリートCを打設する前段階で行うことが好ましい。打設空間計測装置1の設置に際しては、まず、セントル10の褄部TU側からレール2を設置し、天フォーム14aの頂部14a1の端部14a2に対してボルト等により牽引機構4を設置する。そして、ラップ部LA側のレール2上に2次元スキャナ3を設置する。そして、牽引機構4の回転ドラム43からワイヤ48を引出し、ワイヤ48の先端部を2次元スキャナ3のブラケット31に繋ぐ。また、2次元スキャナ3とエンコーダ5とを通信ケーブルで接続するとともに、2次元スキャナ3、制御部6及び端末装置8を、イーサーネットケーブルを介して通信制御部7に接続する。
その後、図1に示すように、コンクリート打設管15aを通じて、覆工コンクリートCを供給し、インバートフォーム14c及び側フォーム14bの側方の打設空間Sに覆工コンクリートCの打設作業を行う。この際、箱抜き部14eの周囲にも覆工コンクリートCが回り込む。その後、コンクリート打設管15aからコンクリート打設管15bに切り替え、さらに吹き上げ用のコンクリート打設管15cに切り替えて、図2に示す打設高さH、例えば、天フォーム14aの左右端部が覆工コンクリートCで覆われる程度の高さまで、覆工コンクリートCを打設する。なお、打設高さHは、2次元スキャナ3により計測可能な打設空間S1が天端部に残る高さに設定されている。つまり、2次元スキャナ3のレーザーパルスのビームが天フォーム14aの外形状や打設された覆工コンクリートCで遮られることがなく、打設された覆工コンクリートCの打設面(上面)の全体に到達できる高さまで、吹き上げ用のコンクリート打設管15cを通じて覆工コンクリートCが打設される。
【0019】
その後、2次元スキャナ3及びエンコーダ5を計測開始可能な状態にセットし、牽引機構4の操作ハンドル45を回転操作して回転ドラム43にワイヤ48を巻き取る。これにより、2次元スキャナ3がラップ部LA側から褄部TU側に向けてレール2上を走行し、2次元スキャナ3及びエンコーダ5による計測結果が制御部6に送出される。
制御部6は、2次元スキャナ3から1処理9000件の計測結果を取得して高速演算を行い、断面積Aを算出する。また、制御部6は、エンコーダ5の計測結果を取得して、断面積Aから区間体積V~Vを算出し、打設空間S1の容積を算出する。
作業者は、算出された打設空間S1の容積に基づいて、生コンクリートの発注を行う。
【0020】
その後、褄部TU側から2次元スキャナ3、牽引機構4及びレール2等を回収し、打設空間計測装置1を天フォーム14a上から撤去する。そして、吹き上げ用のコンクリート打設管15dを通じて打設空間S1に覆工コンクリートCを打設する。
【0021】
以上説明した本実施形態の打設空間計測装置1によれば、打設作業の最終段階となるトンネルTの天端部の打設作業において、覆工コンクリートCの残必要量を精度良く計測することができるので、生コンクリートの発注や運搬に係る積算誤差の影響が小さく、残コンクリートの発生を効果的に抑えることができる。このことは、コンクリートガラの処分費の低減、コンクリート生産に伴うCO排出量の削減に寄与する。
また、2次元スキャナ3及びエンコーダ5による計測結果と、簡単な演算処理とによって容積を算出できるので、短時間で精度良く覆工コンクリートCの残必要量を把握できる。また、算出した容積に基づいて、生コンクリート車の台数調整を行うことができるので、生コンクリート車の待ち時間を削減することが可能となり、生産性の向上を図ることができる。
また、牽引機構4にエンコーダ5が一体に設けられているので、牽引機構4へのエンコーダ5の取り付けや調整が不要となり、覆工コンクリートCの残必要量をスムーズに精度良く計測できる。また、トンネルTの天端部への牽引機構4及びエンコーダ5の設置及び計測後の撤去が容易である。
また、レール2は、天フォーム14aの頂部14a1の外面に対して磁石2aで固定されているので、頂部14a1の外面に対するレール2の設置及び計測後の撤去が容易である。
また、覆工コンクリートCの残必要量を計測するタイミングが箱抜き部14eの打設を終了した後となるため、箱抜き部14eに係る打設作業の影響を受けることがなく、覆工コンクリートCの残必要量を精度良く計測することができる。
【0022】
また、本実施形態の計測方法では、ラップ部LA側から褄部TU側に向けて2次元スキャナ3を牽引して計測するので、天端部の打設済覆工コンクリートに隣接する打設空間S1の容積(覆工コンクリートCの残必要量)を計測できる。これにより、生コンクリートの発注や運搬に係る積算誤差の影響が小さくなり、残コンクリートの発生を効果的に抑えることができる。
【0023】
(第2実施形態)
次に、図9図10を参照して、第2実施形態の打設空間計測装置について説明する。本実形態が前記第1実施形態と異なるところは、レール2の側方に2次元スキャナ3が配置される点にある。
図9は第2実施形態に係る打設空間計測装置1の2次元スキャナ3を示す拡大側面図、図10は、第2実施形態に係る打設空間計測装置1の2次元スキャナ3を褄部TU側から見た状態を示す拡大図である。
2次元スキャナ3は、図9図10に示すように、ブラケット31Aに取り付けられており、ブラケット31Aによりレール2の側方に配置されている。ブラケット31Aは、図10に示すように、基部32から上方に延在する側部36と、側部36に連続してレール2上に配置される上部37とを備えている。基部32、側部36及び上部37は、一体的に形成されており、褄部TU(図3(b)参照)側から見て略クランク状を呈している。
基部32の下面には、平板状の摺動板39が取り付けられている。摺動板39は、天フォーム14aの頂部14a1の外面に対して摺動可能である。なお、摺動板39は、摺動抵抗の小さい部材、例えば樹脂成形品により形成することが好ましい。側部36は、レール2の側面に沿って基部32の側縁部から立ち上がっている。上部37は、側部36の上端部に連続して形成されており、レール2の上面に延在している。上部37の下面には、ガイド部材2c,2cを支持する板状の支持部材35が取り付けられている。
【0024】
本実施形態では、第1実施形態で説明した作用効果と同様の作用効果が得られる。加えて、ブラケット31Aにより、レール2の側方に2次元スキャナ3が配置されるので、レール2の上側に2次元スキャナ3が配置される場合に比べて、天フォーム14aの外面からの2次元スキャナ3の突出量を小さくすることができる。これにより、天端部における打設空間S1の容積が比較的小さいトンネルTにおいても、2次元スキャナ3と孔壁T1との距離Lを確保することができ、打設空間S1の容積の計測を好適に行うことができる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、前記第1,第2実施形態では、牽引機構4をハンドルウインチとして説明したが、これに限られることはなく、電動モータ等を駆動源として駆動される構成としてもよい。
また、前記第1,第2実施形態では、エンコーダ5が牽引機構4に一体的に設けられたものを示したが、これに限られることはなく、エンコーダ5を牽引機構4と別体に設けて、牽引機構4に取り付けるように構成してもよい。
また、前記第1,第2実施形態では、レール2が磁石2aにより天フォーム14aの頂部14a1の外面に固定される構成としたが、これに限られることはなく、その他の種々の固定具や固定機構を用いて頂部14a1の外面に固定されるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 打設空間計測装置
2 レール
2a 磁石
3 2次元スキャナ
4 牽引機構
5 エンコーダ
6 制御部
10 セントル
14 型枠 T トンネル
14a1 頂部
C 覆工コンクリート
S1 打設空間
T トンネル
T1 孔壁(内面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10