(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170250
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】材料に情報を記録する方法、材料の識別方法、材料の製造方法、及び材料の処理方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/207 20180101AFI20241129BHJP
B29B 17/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
G01N23/207
B29B17/00 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087310
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 泰生
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智章
(72)【発明者】
【氏名】杉山 和人
(72)【発明者】
【氏名】新城 亮
【テーマコード(参考)】
2G001
4F401
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA18
2G001CA01
2G001KA01
2G001KA20
2G001LA05
4F401BB20
4F401EA90
(57)【要約】
【課題】トレーサビリティに優れた、材料に情報を記録する方法、材料の識別方法、材料の製造方法、及び材料の処理方法を提供する。
【解決手段】材料に情報を記録する方法であって、前記方法は、前記情報に対応するXRDパターンを示す物質を前記材料に混合することを含む、方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料に情報を記録する方法であって、前記方法は、
前記情報に対応するXRDパターンを示す物質を前記材料に混合することを含む、方法。
【請求項2】
前記物質は、XRD分析において前記材料が示すピークと異なる位置にピークを示す物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記物質は、XRD分析において回折角2θ=0°~10°の範囲又は2θ=30°~180°の範囲の少なくとも一方にピークを示す物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記材料は樹脂を含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記樹脂はポリオレフィン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアクリロニトリル及びポリビニルアルコールからなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記樹脂はポリオレフィンを含み、前記ポリオレフィンはポリプロピレン及びポリエチレンから選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記物質は結晶構造を有する物質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記結晶構造を有する物質は粘土鉱物又は金属有機構造体を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記材料中の前記物質の含有率は0.1ppm~50,000ppmである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
材料を識別する方法であって、前記方法は、
前記材料のXRDパターンを取得することと、
前記XRDパターンに対応する情報を特定することと、を含む、方法。
【請求項11】
前記材料のXRDパターンは、前記材料に情報を記録するために混合された物質のXRDパターンを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記物質のXRDパターンに基づいて材料を識別する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記物質のXRDパターンは、回折角2θ=0°~10°の範囲又は2θ=30°~180°の少なくとも一方におけるピークを含む、請求項11又は請求項12に記載の方法。
【請求項14】
情報が記録された材料の製造方法であって、前記方法は、
前記情報に対応するXRDパターンを示す物質を前記材料に混合することを含む、方法。
【請求項15】
情報が記録された材料を処理する方法であって、前記方法は、
前記材料のXRDパターンを取得することと、
前記XRDパターンに対応する情報を特定することと、
前記情報に基づいて前記材料を処理することと、を含む、方法。
【請求項16】
前記処理は前記材料のリサイクル処理又は廃棄処理である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記材料のXRDパターンは、前記材料に情報を記録するために混合された物質のXRDパターンを含む、請求項15又は請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記物質のXRDパターンに基づいて材料を処理する、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、材料に情報を記録する方法、材料の製造方法、材料の識別方法及び材料の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂から製造される製品(以下、樹脂製品ともいう)は、様々な分野および産業において広く使用されている。
近年、使用済みの樹脂製品の廃棄処理が適切に行われずに水質や土壌の汚染をもたらしたり、焼却処理の際に排出される二酸化炭素が地球温暖化を招いたりと、樹脂製品の処理が様々な環境問題を引き起こしている。これらの問題を解決するために、樹脂製品をリサイクルする取り組みが重要性を増している。
【0003】
リサイクルの目的で回収される樹脂製品の中には、様々な種類の樹脂からなる製品が混在している。このため、例えば、規制物質を含有するなどの理由からリサイクルに適さない樹脂製品が回収物に混入する可能性がある。したがって、回収された樹脂製品の中からそれらを識別して除外することが適切なリサイクル処理を行うために必要である。
【0004】
成分などの情報を樹脂製品に表示する方法としては、当該情報を印字したラベルを樹脂製品に貼り付ける方法、当該情報を樹脂製品に印刷又は刻印する方法などが挙げられる。例えば、特許文献1には樹脂製品に追跡用のレーザーマーキングを施すことを含むリサイクルシステムが記載されている。特許文献2にはX線回折によるオブジェクトの認証方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2023-33777号公報
【特許文献2】特表2020-526761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法では、ラベルの貼り付けや印刷又は刻印によって樹脂製品に情報を記録する方法は、回収された樹脂製品からラベルが剥がれていたり、樹脂製品が破損した状態であると当該情報を特定できず、トレーサビリティが充分に担保されない場合がある。
特許文献2に記載の方法では、オブジェクトに加えられる熱履歴によって識別するためのパターンが異なるため、樹脂の製造、物品への成形加工、リサイクル等の複数プロセスを介した場合に情報の識別が困難である。
上記事情に鑑み、本開示は、トレーサビリティに優れた、材料に情報を記録する方法、材料の識別方法、材料の製造方法、及び材料の処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の態様を含む。
<1>材料に情報を記録する方法であって、前記方法は、
前記情報に対応するXRDパターンを示す物質を前記材料に混合することを含む、方法。
<2>前記物質は、XRD分析において前記材料が示すピークと異なる位置にピークを示す物質を含む、<1>に記載の方法。
<3>前記物質は、XRD分析において回折角2θ=0°~10°の範囲又は2θ=30°~180°の範囲の少なくとも一方にピークを示す物質を含む、<1>又は<2>に記載の方法。
<4>前記材料は樹脂を含む、<1>~<3>のいずれか1項に記載の方法。
<5>前記樹脂はポリオレフィン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアクリロニトリル及びポリビニルアルコールからなる群より選択される、<4>に記載の方法。
<6>前記樹脂はポリオレフィンを含み、前記ポリオレフィンはポリプロピレン及びポリエチレンから選択される、<4>に記載の方法。
<7>前記物質は結晶構造を有する物質を含む、<1>~<6>のいずれか1項に記載の方法。
<8>前記結晶構造を有する物質は粘土鉱物又は金属有機構造体を含む、<1>~<7>のいずれか1項に記載の方法。
<9>前記材料中の前記物質の含有率は0.1ppm~50,000ppmである、<7>又は<8>に記載の方法。
<10>材料を識別する方法であって、前記方法は、
前記材料のXRDパターンを取得することと、
前記XRDパターンに対応する情報を特定することと、を含む、方法。
<11>前記材料のXRDパターンは、前記材料に情報を記録するために混合された物質のXRDパターンを含む、<10>に記載の方法。
<12>前記物質のXRDパターンに基づいて材料を識別する、<11>に記載の方法。
<13>前記物質のXRDパターンは、回折角2θ=0°~10°の範囲又は2θ=30°~180°の少なくとも一方におけるピークを含む、<11>又は<12>に記載の方法。
<14>情報が記録された材料の製造方法であって、前記方法は、
前記情報に対応するXRDパターンを示す物質を前記材料に混合することを含む、方法。
<15>情報が記録された材料を処理する方法であって、前記方法は、
前記材料のXRDパターンを取得することと、
前記XRDパターンに対応する情報を特定することと、
前記情報に基づいて前記材料を処理することと、を含む、方法。
<16>前記処理は前記材料のリサイクル処理又は廃棄処理である、<15>に記載の方法。
<17>前記材料のXRDパターンは、前記材料に情報を記録するために混合された物質のXRDパターンを含む、<15>又は<16>に記載の方法。
<18>前記物質のXRDパターンに基づいて材料を処理する、<17>に記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、トレーサビリティに優れた、材料に情報を記録する方法、材料の識別方法、材料の製造方法、及び材料の処理方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0010】
<第1実施形態>
本開示の第1実施形態は、
材料に情報を記録する方法であって、前記方法は、
前記情報に対応するXRDパターンを示す物質を前記材料に混合することを含む。
【0011】
上記方法では、材料への情報の記録を、当該情報に対応するXRD(X-ray Diffraction、X線回折)パターンを示す物質(以下、識別物質ともいう)を材料に混合することにより行う。
すなわち、上記方法では材料に混合された識別物質が示すXRDパターンによって、当該XRDパターンと関連付けられた情報を材料に記録する。
このため、上記方法は材料の情報がラベルや材料の特定部位に記録されている場合に比べ、材料に記録された情報が消失しにくく、優れたトレーサビリティを発揮する。
【0012】
上記方法において、材料に記録される情報は特に制限されない。
材料に記録される情報として具体的には、材料に含まれる成分の種類、成分の比率、品質、製造時期、製造場所、製造者、材料を用いた物品の成形加工方法、成形加工場所、成形加工業者、材料を用いた物品の流通方法、流通ルート、流通業者、材料を用いた物品の販売方法、販売場所、販売業者、消費期間、材料を用いた物品の回収方法、回収場所、回収ルート、回収業者、材料を用いた物品のリサイクル方法、リサイクル場所、リサイクル業者、材料を用いた物品の廃棄方法、廃棄場所、廃棄業者等に関する情報が挙げられる。
【0013】
材料に記録される情報を利用する目的として具体的には、材料のリサイクル又は廃棄処理に対する適性の判断、材料が純正品であるか否かの判断、プロセスの水やエネルギーの消費量、温室効果ガス排出量等を算出するライフサイクル評価(LCA)等が挙げられる。
材料に記録される情報の数は、1つであっても複数であってもよい。
【0014】
材料に混合される識別物質は、材料に記録される情報に対応するXRDパターンを示す。
材料に混合される識別物質は、1種のみでも2種以上であってもよい。材料に混合される識別物質の種類を増やすことで、材料に記録される情報の選択肢を増やすことができる。
例えば、材料に混合される識別物質が1種である場合は、2通りの選択肢からなる情報を材料に記録することができる。
すなわち、材料が識別物質を含みそのXRDパターンが検出される場合と、材料が識別物質を含まずそのXRDパターンが検出されない場合とに分けられる情報を記録することができる。
これに対し、材料に混合される識別物質が2種である場合は、2×2=4通りの選択肢からなる情報を材料に記録することができる。材料に混合される識別物質がn種である場合は、2n通りの選択肢からなる情報を材料に記録することができる。
あるいは、識別物質がその含有量に応じて異なるXRDピーク強度を示す場合は、材料に混合される識別物質の含有量を変化させることで、材料に記録される情報の選択肢を増やすことができる。
【0015】
材料に記録された情報は、材料に対してXRD分析を実施することで読み取ることができる。
材料に対してXRD分析を実施する方法は、材料に含まれた識別物質のXRDパターンを検出可能であれば特に制限されない。
【0016】
情報が記録される材料の材質は、特に制限されない。
識別物質との混合しやすさの観点からは、情報が記録される材料は樹脂を含むことが好ましい。
樹脂の種類は、特に制限されない。例えば、材料に含まれる樹脂は、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアクリロニトリル及びポリビニルアルコールからなる群より選択されてもよい。
樹脂の出自は、特に制限されない。例えば、石油由来の樹脂、バイオ由来の樹脂、リサイクル由来の樹脂又はこれらの混合物であってよい。
樹脂は、単一種の樹脂でもよく、二種類以上の樹脂からなる組成物であってもよい。
【0017】
情報が記録される材料が樹脂としてポリオレフィンを含む場合、ポリオレフィンはポリプロピレン及びポリエチレンから選択されてもよい。
ポリオレフィンは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン等のα-オレフィンの単独重合体又は共重合体;α-オレフィンと他の共重合可能なモノマー、たとえばスチレン、アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルなどの共重合体;これらの重合体の2種以上又はこれらの重合体と他の熱可塑性樹脂とのブレンド物、ブロック共重合体、グラフト共重合体などであってよい。
【0018】
材料が樹脂を含む場合、材料は任意の熱成形方法により物品へ加工されてよい。熱成形方法として具体的には、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、パウダースラッシュ成形、カレンダー成形、発泡成形等が挙げられる。
【0019】
情報が記録される材料の形状は、特に制限されない。例えば、繊維状、フィルム状、シート状、ペレット状、立体形状等であってよい。
情報が記録される材料は、一つの部材からなっても、複数の部材からなってもよい。
【0020】
情報が記録される材料は、XRD分析の実施が妨げられない範囲において公知の添加剤を含んでもよい。添加剤として具体的には、ゴム、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇材、核剤、滑剤、塩酸吸収剤、有機系又は無機系発泡剤、架橋剤、共架橋剤、架橋助剤、粘着剤、可塑剤、軟化剤、着色剤、顔料、染料、無機又は有機のフィラー、難燃剤、帯電防止剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0021】
材料に含まれる識別物質の種類は、特に制限されない。識別物質は、天然物であっても人工物であってもよい。
【0022】
識別物質を含む材料に対してXRD分析を実施した際に検出されるXRDパターンの明瞭性の観点からは、識別物質は結晶構造を有する物質であることが好ましい。
結晶構造の結晶系としては、三斜晶系、単斜晶系、斜方晶系(直方晶系)、正方晶系、六方晶系、三方晶系、菱面体晶系、立方晶系が挙げられる。
結晶構造の結晶格子としては、単純格子、底心格子、体心格子、面心格子、菱面体格子が挙げられる。
結晶構造がとり得る構造には、単純立方格子構造、面心立法構造、体心立方構造、六方最密充填構造、ダイヤモンド構造、白スズ型構造、グラファイト構造、A15型構造、塩化ナトリウム型構造、塩化セシウム構造、閃亜鉛鉱型構造、ウルツ型構造、ヒ化ニッケル型構造、一酸化亜鉛型構造、蛍石型構造、黄鉄鉱型構造、赤銅鉱型構造、ルチル型構造、ヨウ化カドミウム型構造、フッ化ビスマス型構造、酸化レニウム型構造、Ni4Mo型構造、Al4Ba型構造、ホウ化カルシウム型構造、CaCu5型構造、コランダム型構造、ペロブスカイト型構造、ウルマナイト型構造、スピネル型構造、リン酸銀型構造、CuAuI型構造、K4結晶構造等が挙げられる。
【0023】
結晶構造を有する物質としては、粘土鉱物及び金属有機構造体、その他無機物が挙げられる。
粘土鉱物として具体的には、ゼオライト、カオリナイト、モンモリロナイト、タルク、セリサイト等が挙げられる。
ゼオライトの骨格コードとしては、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFV、AFX、AFY、AHT、ANA、ANO、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AVE、AVL、AWO、AWW、BCT、BEC、BIK、BOF、BOG、BOZ、BPH、BRE、BSV、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、-CHI、-CLO、CON、CSV、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EEI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETL、ETR、ETV、EUO、EWF、EWO、EWS、-EWT、EZT、FAR、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、-HOS、IFO、IFR、-IFT、-IFU、IFW、IFY、IHW、IMF、IRN、IRR、-IRT、-IRY、ISV、ITE、ITG、ITH、ITR、ITT、-ITV、ITW、IWR、IWS、IWV、IWW、JBW、JNT、JOZ、JRY、JSN、JSR、JST、JSW、JZO、KFI、LAU、LEV、LIO、-LIT、LOS、LOV、LTA、LTF、LTJ、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MRT、MSE、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MVY、MWF、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NPT、NSI、OBW、OFF、OKO、OSI、OSO、OWE、-PAR、PAU、PCR、PHI、PON、POR、POS、PSI、PTF、PTO、PTT、PTY、PUN、PWN、PWO、PWW、RHO、-RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAF、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBN、SBS、SBT、SEW、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SFS、SFW、SGT、SIV、SOD、SOF、SOR、SOS、SOV、SSF、-SSO、SSY、STF、STI、STT、STW、-SVR、SVV、SWY、-SYT、SZR、TER、THO、TOL、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOS、UOV、UOZ、USI、UTL、UWY、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、-WEN、YFI、YUG、ZON、*BEA、*CTH、*-ITN、*-MRE、*PCS、*SFV、*STO、*-SVY、*UOE等が挙げられる。
【0024】
金属有機構造体とは、金属と有機配位子とからなる結晶性の多孔質物質(metal-organic framework:MOF)を意味する。金属有機構造体として具体的には、MOF-5:Zn4O(bdc)3、HKUST-1:Cu3(btc)2、UiO-66:Zr6O4(OH)4(bdc)6、MOF-74:M2(dobdc)、ELM-11:Cu(bpy)2(BF4)2、UIO-67、ZIF-8、ELM-11、MIL-53、MIL-100、MIL-101、DUT-5等が挙げられる。
【0025】
その他無機物として具体的には、α-PO、Al、Ca、Ni、Cu、Ag、Au、Li、Na、K、V、Cr、Be、Mg、Ti、Co、Zn、C、Si、Ge、Sn、β―Sn、C、Nb3Sn、V3Si、βW、Nb3Al、Cr3O、NaCl、MgO、CoO、CsCl、RbCl、ZnS、HgS、CuCl、ZnO、AlN、BeO、GaN、NiAs、AuSn、CoTe、CrSe、PbO、FeSe、FeS、CaF2、CeO2、FeS2、AuSb2、CaC2、CoS2、MnS2、Cu2O、Ag2O、Pb2O、TiO2、MgF2、MnF2、NiF2、ZnF2、CdI2、BiF3、BiFe3、AlFe3、ReO3、Cu3N、O3W、O3U、Ni4Mo、Ag4Lu、Ag4Sc、Au4Cr、Al4Ba、ThCu2Si2、ThCr2Si2、B6Ca、CaCu5、Ag5Ba、CePt5、Ag3Al2La、α-Al2O3、CaTiO3、LiNbO3、CaZrO3、NiSSb、AsBaPt、AsPdS、BiIrS、MgAl2O4、CaIn2S4、Al2CdS4、Ag3PO4、CuAu、TiAl、NiPt、CoPt、FePd、SrSi2、BaSi2等が挙げられる。
【0026】
識別物質を含む材料に対してXRD分析を実施した際に検出されるXRDパターンの明瞭性の観点からは、識別物質はXRD分析において、材料由来のピークと異なる位置にピークを示す物質であることが好ましく、回折角2θ=0°~10°の範囲又は2θ=30°~180°の範囲の少なくとも一方にピークを示す物質を含むことがより好ましい。
【0027】
多くの種類の樹脂は、XRD分析において回折角2θ=10°~30°の範囲内にピークを示す。また、樹脂に由来するピークは、成形加工法(熱履歴)の違いにより、ピーク位置やピーク強度が変わる可能性があるため、2つ以上のプロセスを介する識別子としては好適でない。例えば、樹脂からペレットを製造した後に示すピーク位置やピーク強度と、樹脂を物品へ成形加工した後やリサイクルした後に示すピーク位置やピーク強度は、同じ樹脂であっても異なる可能性がある。したがって、識別物質が回折角2θ=0°~10°の範囲又は2θ=30°~180°の範囲の少なくとも一方にピークを示す物質を含んでいると、材料が樹脂を含んでいても識別物質に由来するXRDパターンを良好に検出できる。
【0028】
材料に含まれる識別物質の含有率は、特に制限されない。
識別物質を含む材料に対してXRD分析を実施した際に検出されるXRDパターンの明瞭性の観点からは、材料に含まれる識別物質の含有率(質量基準)は0.1ppm以上であることが好ましく、1ppm以上であることがより好ましく、10ppm以上であることがさらに好ましい。
材料の物理特性等の観点からは、材料に含まれる識別物質の含有率(質量基準)は50,000ppm以下であることが好ましく、30,000ppm以下であることがより好ましく、10,000ppm以下であることがさらに好ましい。
材料が2種以上の識別物質を含む場合、上記含有率は、2種以上の識別物質の合計含有率である。
【0029】
識別物質は、材料の全体に含まれていても、材料の一部に含まれていてもよい。充分なトレーサビリティを担保する観点からは、材料中の識別物質が存在する部位の割合は、全体の50体積%以上であることが好ましく、70体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることがさらに好ましい。
【0030】
材料に記録される情報に対応するXRDパターンは、データベースに登録されていてもよい。
XRDパターンが登録されるデータベースは、情報が記録された材料の製造者以外の者によるアクセス又は情報の追記が可能であってもよい。
製造者以外の者としては、情報が記録された材料の流通、販売、消費、回収、リサイクル、廃棄等の工程に関与する者、これらの工程を監視又は規制する者などが挙げられる。
【0031】
識別物質によって情報が記録された材料は、任意の用途へ適用されてよい。情報が記録された材料の用途として具体的には、自動車部品、家具、家電、電気電子部品、光学部品、機械部品、工業用品、食品容器、包装材、文具、玩具、雑貨、家庭用品、日用品、屋外使用機器、園芸用品、農業資材、土木資材、建築資材、医療用品、塗料、染料、接着剤、電線被覆材、繊維、フィルター、不織布、服、漁網、釣り具、宇宙用部品、航空機部品等が挙げられる。
【0032】
<第2実施形態>
本開示の第2実施形態は、
材料を識別する方法であって、前記方法は、
前記材料のXRDパターンを取得することと、
前記XRDパターンに対応する情報を特定することと、を含む。
【0033】
上記方法では、材料の識別を、材料のXRDパターンを取得し、取得されたXRDパターンに対応する情報を特定することによって行う。
すなわち、上記方法は材料の識別に必要な情報がラベルや材料の特定部位に記録されている場合に比べ、材料に記録された情報が消失しにくく、優れたトレーサビリティを発揮する。
【0034】
上記方法において、材料のXRDパターンを取得する方法は特に制限されず、一般的なXRD分析によって行うことができる。
【0035】
上記方法で取得されるXRDパターンは、材料に情報を記録するために混合された物質(識別物質)のXRDパターンを含んでもよい。
上記方法で取得されるXRDパターンのうち、識別物質由来のXRDパターンに基づいて材料を識別することを含んでもよい。
上記方法で取得されるXRDパターンのうち、回折角2θ=0°~10°の範囲または2θ=30°~180°の回折ピークに基づいて材料を識別することを含んでもよい。
【0036】
上記方法において、材料のXRDパターンに対応する情報を特定する方法は特に制限されない。
例えば、材料の製造工程で材料に識別物質が混合されている場合は、当該識別物質のXRDパターンと材料から取得されたXRDパターンとを照合させることによって情報を特定することができる。
上記照合は、例えば、材料に含まれる識別物質のXRDパターンと、当該XRDパターンに対応する情報とが登録されたデータベースにアクセスして行うことができる。
【0037】
第2実施形態における材料及び識別物質の詳細及び好ましい態様は、第1実施形態における材料及び識別物質の詳細及び好ましい態様と同様である。
【0038】
<第3実施形態>
本開示の第3実施形態は、
情報が記録された材料の製造方法であって、前記方法は、
前記情報に対応するXRDパターンを示す物質を前記材料に混合することを含む。
【0039】
上記方法では、材料への情報の記録を、当該情報に対応するXRDパターンを示す物質(識別物質)を材料に混合することにより行う。
このため、上記方法で製造された材料は、材料の情報がラベルや材料の特定部位に記録されている場合に比べ、材料に記録された情報が消失しにくく、優れたトレーサビリティを発揮する。
【0040】
情報が記録される材料が樹脂を含む場合、識別物質は、タンブラー、V型ブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等の任意の標準的な方法で材料へ分散し、またはハンドブレンドした後、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、二本ロール等の任意の標準的な方法で溶融混合することができる。
【0041】
情報が記録される材料が樹脂を含む場合、識別物質は、任意のタイミングで材料に添加されてよい。例えば、樹脂を製造する際、マスターバッチを製造する際、添加剤を樹脂に添加する際、2種以上の材料をコンパウンドする際、材料を物品に成形加工する際、材料をリサイクルする際等が挙げられる。
【0042】
第3実施形態における材料及び識別物質の詳細及び好ましい態様は、第1実施形態における材料及び識別物質の詳細及び好ましい態様と同様である。
【0043】
<第4実施形態>
本開示の第4実施形態は、
情報が記録された材料を処理する方法であって、前記方法は、
前記材料のXRDパターンを取得することと、
前記XRDパターンに対応する情報を特定することと、
前記情報に基づいて前記材料を処理することと、を含む。
【0044】
上記方法では、材料のXRDパターンを取得し、取得されたXRDパターンに対応する情報を特定し、特定された情報に基づいて材料の処理を行う。
すなわち、上記方法は材料の処理に必要な情報がラベルや材料の特定部位に記録されている場合に比べ、材料に記録された情報が消失しにくく、優れたトレーサビリティを発揮する。
【0045】
上記方法における材料の処理としては、材料のリサイクル処理、廃棄処理等が挙げられる。
【0046】
第4実施形態における材料及び識別物質の詳細及び好ましい態様は、第1実施形態における材料及び識別物質の詳細及び好ましい態様と同様である。
【実施例0047】
以下、実施例により本開示を具体的に説明する。ただし、本開示はこれらの実施例に制限されない。
【0048】
<実施例1>
ポリプロピレン(F-300SP、プライムポリマー株式会社)とゼオライト(HSZ-980HOA、東ソー株式会社、骨格コード:*BEA)とをハンドブレンドしたものを、押出機(KZW15、株式会社テクノベル)を用いて押出温度230℃にて溶融混合し、混合物を調製した。ゼオライトの含有率は、5,000ppmとした。この混合物をプレス機(株式会社神藤金属工業所)にてプレス成形し、約20cm角、厚み約1.8mmのシートを得た。
【0049】
<実施例2>
ゼオライトの含有率を10,000ppmとしたこと以外は実施例1と同様にして、プレス成形により、約20cm角、厚み約1.8mmのシートを得た。
【0050】
<比較例1>
ポリプロピレンにゼオライトを混合しなかったこと以外は実施例1と同様にして、プレス成形により、約20cm角、厚み約1.8mmのシートを得た。
【0051】
<XRD分析>
実施例1、実施例2及び比較例1で作製したシートの一部より試験片を作製し、XRD分析(SmartLab、株式会社リガク)を実施した。その結果、実施例1及び実施例2で作製した試験片ではゼオライトに由来するピーク(2θ=7.8°)がXRDパターン中に検出され、比較例1で作製したゼオライトを含まない試験片のXRDパターンと識別することができた。
【0052】
<物理特性の評価>
実施例1、実施例2及び比較例1で作製したシートより、JISK7161-2-1BAに準拠した試験片を作製し、測定温度23℃、試験速度20.0mm/min、チャック間距離58.0mm、チャック間距離25.0mm、試験回数5回にて引張試験を実施し、弾性率、降伏歪及び降伏応力をそれぞれ算出した。結果を表1に示す。
引張試験には、5本掛け引張試験機(2005X-5、伸び計付き、株式会社インテスコ)を使用した。
【0053】
(弾性率)
引張試験より取得された応力を縦軸、つかみ具間歪を横軸とした応力ひずみ曲線において、初期の傾きで最も大きい値(接線法)を弾性率として算出した。
(降伏歪)
引張試験中に、応力の増加を伴わずに標線間ひずみの増加が生じる最初の地点を降伏歪として算出した。
(降伏応力)
降伏歪における応力を降伏応力として算出した。
【0054】
【0055】
表1に示すように、実施例1及び実施例2で作製した試験片はゼオライトを含まない比較例1の試験片と同等の物理特性を示した。この結果から、識別物質(ゼオライト)の添加が材料(ポリプロピレン)の物理特性に与える影響は小さいことがわかった。