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特開2024-170251メルトブローン不織布、衛生材料、耐水シート及び医療用シート
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  • 特開-メルトブローン不織布、衛生材料、耐水シート及び医療用シート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170251
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】メルトブローン不織布、衛生材料、耐水シート及び医療用シート
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/153 20120101AFI20241129BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20241129BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20241129BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20241129BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20241129BHJP
   A41D 13/11 20060101ALI20241129BHJP
   A41D 13/12 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
D04H3/153
D04H3/16
A41D31/00 502E
A61F13/511 300
A61F13/514 100
A41D13/11 Z
A41D13/12 109
A41D13/12 136
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087311
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯濱 翔
(72)【発明者】
【氏名】飯場 康三
(72)【発明者】
【氏名】松原 暁雄
(72)【発明者】
【氏名】大越 豊
(72)【発明者】
【氏名】金 慶孝
(72)【発明者】
【氏名】冨澤 錬
(72)【発明者】
【氏名】菅原 昂亮
(72)【発明者】
【氏名】清水 紫
【テーマコード(参考)】
3B200
3B211
4L047
【Fターム(参考)】
3B200BB03
3B200DC02
3B200DD02
3B211AB06
3B211AB08
3B211AC17
3B211AC24
3B211CE02
4L047AA14
4L047AA28
4L047BA08
4L047BA09
4L047BB01
4L047CB01
4L047CC03
4L047CC04
4L047CC05
4L047CC16
(57)【要約】
【課題】張強度、伸び率、タフネス、耐水圧及び耐摩耗性に優れるメルトブローン不織布を提供する。
【解決手段】本開示のメルトブローン不織布は、熱可塑性非エラストマー(a)を含む繊維(A)と、熱可塑性エラストマー(b)を含む繊維(B)と、を含む。前記熱可塑性エラストマー(b)の融点は、前記熱可塑性非エラストマー(a)の融点よりも低い。前記繊維(A)と前記繊維(B)との混繊率(A/B)は、質量比で、60/40~99/1である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性非エラストマー(a)を含む繊維(A)と、熱可塑性エラストマー(b)を含む繊維(B)と、を含み、
前記熱可塑性エラストマー(b)の融点が、前記熱可塑性非エラストマー(a)の融点よりも低く、
前記繊維(A)と前記繊維(B)との混繊率(A/B)が、質量比で、60/40~99/1である、メルトブローン不織布。
【請求項2】
前記熱可塑性非エラストマー(a)が、プロピレン単独重合体を含み、
前記熱可塑性エラストマー(b)が、ポリオレフィン系エラストマーを含む、請求項1に記載のメルトブローン不織布。
【請求項3】
前記混繊率(A/B)が、65/35~72/28である、請求項1又は請求項2に記載のメルトブローン不織布。
【請求項4】
単位目付当たりの流れ方向(MD)の引張強さが、0.28N・m/25mm・g以上である、請求項1又は請求項2に記載のメルトブローン不織布。
【請求項5】
流れ方向(MD)のタフネスが、12.5N/in以上である、請求項1又は請求項2に記載のメルトブローン不織布。
【請求項6】
耐水圧が、320mmHO以上である、請求項1又は請求項2に記載のメルトブローン不織布。
【請求項7】
単位目付当たりの流れ方向(MD)の引張強さが、0.28N・m/25mm・g以上であり、
流れ方向(MD)の伸び率が、120%以上であり、
流れ方向(MD)のタフネスが、10N/in以上であり、
耐水圧が、320mmHO以上である、請求項1又は請求項2に記載のメルトブローン不織布。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載のメルトブローン不織布を含む、衛生材料。
【請求項9】
請求項1又は請求項2に記載のメルトブローン不織布を含む、耐水シート。
【請求項10】
請求項1又は請求項2に記載のメルトブローン不織布を含む、医療用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、メルトブローン不織布、衛生材料、耐水シート及び医療用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
メルトブローン不織布は、極細繊維で構成され、一般的なスパンボンド不織布よりも順軟性、均一性及び緻密性に優れる。そのため、メルトブローン不織布は、フィルタ(例えば、液体フィルタ、エアフィルタ等)、衛生材料等に広く用いられている。
【0003】
特許文献1は、メルトブロー法で製造された長繊維不織布(以下、「メルトブローン不織布」ともいう)を開示している。特許文献1に開示のメルトブローン不織布は、特定の粘着性繊維と、特定の非粘着性繊維とが、30/70重量%~95/5重量%の比率で混繊維されてなる。具体的に、特許文献1には、ポリプロピレンの繊維と、エチレン-オクテン共重合体の繊維とが、30/70の重量比率で混繊されたメルトブローン不織布が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-197291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示のメルトブローン不織布は、引張強さが十分ではないおそれがあった。そのため、特許文献1に開示のメルトブローン不織布は、高い濾過圧力が必要される用途(例えば、大流量濾過、微細粒子捕獲等)や、人体への追従変形性や耐摩耗性が必要とされる用途(例えば、衛生材料、医療用着衣等)に適さないおそれがあった。
メルトブローン不織布の用途を広げるために、破断に対する耐性(すなわち、引張強さ、伸び率、及びタフネス)、耐水圧及び耐摩耗性に優れるメルトブローン不織布が求められている。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものである。
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、引張強さ、伸び率、タフネス、耐水圧及び耐摩耗性に優れるメルトブローン不織布、衛生材料、耐水シート及び医療用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 熱可塑性非エラストマー(a)を含む繊維(A)と、熱可塑性エラストマー(b)を含む繊維(B)と、を含み、
前記熱可塑性エラストマー(b)の融点が、前記熱可塑性非エラストマー(a)の融点よりも低く、
前記繊維(A)と前記繊維(B)との混繊率(A/B)が、質量比で、60/40~99/1である、メルトブローン不織布。
<2> 前記熱可塑性非エラストマー(a)が、プロピレン単独重合体を含み、
前記熱可塑性エラストマー(b)が、ポリオレフィン系エラストマーを含む、前記<1>に記載のメルトブローン不織布。
<3> 前記混繊率(A/B)が、65/35~72/28である、前記<1>又は<2>に記載のメルトブローン不織布。
<4> 単位目付当たりの流れ方向(MD)の引張強さが、0.28N・m/25mm・g以上である、前記<1>~<3>のいずれか1つに記載のメルトブローン不織布。
<5> 流れ方向(MD)のタフネスが、12.5N/in以上である、前記<1>~<4>のいずれか1つに記載のメルトブローン不織布。
<6> 耐水圧が、320mmHO以上である、前記<1>~<5>のいずれか1つに記載のメルトブローン不織布。
<7> 単位目付当たりの流れ方向(MD)の引張強さが、0.28N・m/25mm・g以上であり、
流れ方向(MD)の伸び率が、120%以上であり、
流れ方向(MD)のタフネスが、10N/in以上であり、
耐水圧が、320mmHO以上である、前記<1>~<6>のいずれか1つに記載のメルトブローン不織布。
<8> 前記<1>~<7>のいずれか1つに記載のメルトブローン不織布を含む、衛生材料。
<9> 前記<1>~<7>のいずれか1つに記載のメルトブローン不織布を含む、耐水シート。
<10> 前記<1>~<7>のいずれか1つに記載のメルトブローン不織布を含む、医療用シート。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態によれば、引張強さ、伸び率、タフネス、耐水圧及び耐摩耗性に優れるメルトブローン不織布、衛生材料、耐水シート及び医療用シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の実施形態に係るメルトブローン繊維不織布製造装置を示す模式図である。
図2図2は、本開示の実施形態に係るダイの正面図である。
図3図3は、実施例及び比較例のPOE混繊率に対するMD引張強さを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示において、数値範囲を示す「~」はその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示において段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本開示に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本開示において、「不織布」とは、製織,編成及び製紙を除く,物理的方法及び/又は化学的方法によって所定のレベルの構造的強さが得られている平面状の繊維集合体を示す。
【0011】
(1)メルトブローン不織布
本開示のメルトブローン不織布(以下、「MB不織布」ともいう)は、熱可塑性非エラストマー(a)を含む繊維(A)と、熱可塑性エラストマー(b)を含む繊維(B)と、を含む。前記熱可塑性エラストマー(b)の融点は、前記熱可塑性非エラストマー(a)の融点よりも低い。前記繊維(A)と前記繊維(B)との混繊率(A/B)が、質量比で、60/40~99/1である。
【0012】
本開示において、「熱可塑性非エラストマー」とは、常温でゴム状弾性を有しない熱可塑性樹脂を示す。詳しくは、「熱可塑性非エラストマー」とは、25℃での引張弾性率が6.0×10Pa以上である熱可塑性樹脂を示す。
「熱可塑性エラストマー」とは、常温でゴム状弾性を有する熱可塑性樹脂を示す。熱可塑性エラストマーは、部分的に架橋された熱可塑性樹脂である。詳しくは、25℃での引張弾性率が6.0×10Pa未満である熱可塑性樹脂を示す。
「メルトブローン不織布」とは、溶融ポリマーを高速の高温ガス流中に押し出して複数の繊維とし、複数の繊維を動くスクリーン上に積層することで得られる不織布を示す。メルトブローン不織布の平均繊維径は、通常、10μm未満である。
【0013】
本開示のメルトブローン不織布は、上記の構成を有するので、引張強さ、伸び率、タフネス、耐水圧及び耐摩耗性に優れる。
メルトブローン不織布は、溶融ポリマーを高速の高温ガス流中にノズルから押し出して複数の繊維とし、複数の繊維を動くスクリーン上に積層することで得られる。この際、高温ガス流中にノズルから押し出された繊維は、高温ガス流により延伸細化され、高温ガス流と周囲の外気との混合に伴って徐々に冷却されながら空中を移動してスクリーンに向かう。そして、繊維は、スクリーン下部に設置されたエアサクションの吸引作用によってスクリーン上に堆積し、残余した熱によって相互に融着しながら捕集される。スクリーンにより近く堆積した繊維は、エアサクションの吸引作用をより強く受ける。そのため、スクリーンにより遠く堆積した繊維に比べ、繊維の相互融着が強くなる傾向にある。
メルトブローン不織布を構成する繊維が熱可塑性非エラストマー(a)を含む繊維(A)のみからなる場合、繊維(A)は、延伸細化と冷却に伴って繊維表面樹脂の固化が進みやすく、融着するためには強いエアサクションの吸引作用を必要とする。このため、スクリーン上に積層されるメルトブローン不織布のスクリーン側とは反対側(以下、「ノズル側」ともいう)の繊維(A)同士は、融着しにくい。そのため、メルトブローン不織布のノズル側の繊維(A)は、ほどけやすい。つまり、メルトブローン不織布は、全体として一体となりにくい。その結果、メルトブローン不織布の引張強さや、ノズル側の面の耐摩耗性は十分ではないおそれがある。
一方、本開示のメルトブローン不織布では、繊維(B)に含まれる熱可塑性エラストマー(b)は、繊維(A)に含まれる熱可塑性非エラストマー(a)よりも低い融点を有し、粘着性を示す。これにより、繊維(B)は、ノズルからスクリーンまでの距離が同一という条件下において、繊維(A)よりも延伸細化と冷却に伴う繊維表面樹脂の固化が進みにくく、エアサクションの吸引作用がなくとも、繊維(A)または繊維(B)と融着することができる。換言すると、本開示のメルトブローン不織布は、厚み方向の全体にわたり、繊維同士は融着する。つまり、本開示のメルトブローン不織布は、ノズルからスクリーンまでの距離が同一の条件下で作成した繊維(A)のみからなるメルトブローン不織布と比較して、全体として一体となりやすい。更に、混繊率(A/B)は、質量比で、60/40~99/1である。換言すると、比較的高い強度を有する繊維(A)が、比較的低い強度を有する繊維(B)と比べて、より多く含まれる。その結果、本開示のメルトブローン不織布は、引張強さ、伸び率、タフネス、耐水圧及び耐摩耗性に優れると推測される。
【0014】
以下、メルトブローン積層において、繊維が積層される移動可能なスクリーンの面方向のうち、スクリーンの進行方向に対して平行な方向を「流れ方向(MD)」ともいう。長繊維が積層される移動可能なスクリーンの面方向のうち、スクリーンの進行方向の進行方向に直交する方向を「横方向(CD)」ともいう。
【0015】
メルトブローン不織布の流れ方向(MD)は、メルトブローン不織布の引張強さを測定することによって、メルトブローン不織布自体から決定することができる。
一般に、メルトブローン不織布の製造において、スクリーンの移動速度は、生産性の観点から、速目に設定される。そのため、メルトブローン不織布に含まれる繊維は、スクリーン上に積層される際に流れ方向(MD)に平行な方向に配向されやすい。その結果、メルトブローン不織布の流れ方向(MD)の引張強さは、メルトブローン不織布の横方向(CD)の引張強さよりも高い。それ故に、メルトブローン不織布の引張強さを測定することによって、メルトブローン不織布自体からメルトブローン不織布の流れ方向(MD)を決定することができる。
【0016】
MB不織布は、繊維(A)と、繊維(B)と、を含む混繊不織布である。MB不織布は、繊維(A)及繊維(B)に加えて、公知の繊維を更に含んでもよい。
【0017】
混繊率(A/B)は、質量比で、60/40~99/1である。混繊率(A/B)は、65/35~72/28であることが好ましい。これにより、メルトブローン不織布の強度及び伸度のバランスが優れる。
混繊率(A/B)の測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0018】
MB不織布の平均繊維径は、通常、10μm未満であり、MB不織布の用途に応じて適宜選択される。MB不織布の平均繊維径は、フィルター性能や耐水圧の観点から、好ましくは6.5μm以下、より好ましくは6.0μm以下、さらに好ましくは5.5μm以下である。MB不織布の平均繊維径は、2.5μm以上であってもよく、より好ましくは5.0μm以上であってもよく、5.3μm以上であってもよい。これらの観点から、MB不織布の平均繊維径は、好ましくは2.5μm~6.5μmである。
MB不織布の平均繊維径の測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0019】
MB不織布は、シート状物である。MB不織布の構造は、MB不織布の用途等に応じて適宜選択され、例えば、単層構造、又は2層以上の複数層構造であってもよい。
【0020】
MB不織布の厚みは、特に限定されず、用途により適宜選択される。MB不織布の厚みは、好ましくは0.005mm~10mm、より好ましくは0.01mm~2mmである。厚みが0.005mm以上であると、MB不織布をフィルタとして用いたときに、粉塵の捕集効率と圧力損失とのバランスが好適に確保され、濾過性能はより向上する傾向にある。
MB不織布の厚みの測定方法は、下記の通りである。すなわち、MB不織布から10個の試料(サイズ:縦方向100mm×横方向100mm)を採取する。試料の中央及び四隅の5点の厚みを、厚み計(PEACOCK社製、品番「R1-250」、測定端子25mmφ)を用いて、荷重7g/mで測定する。10個の試料の厚みの平均値を「厚み(mm)」とする。
【0021】
MB不織布の目付は、特に限定されず、用途により適宜選択される。MB不織布の目付は、好ましくは0.001g/m~30g/m、より好ましくは0.002g/m~20g/mである。目付が0.001g/m以上であると、MB不織布の強度は向上し、MB不織布を製造しやすくなる傾向がある。目付が30g/m以下であると、MB不織布の圧力損失は高くなり過ぎず、MB不織布はフィルタとして好適に用いることができる傾向がある。MB不織布の目付の測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0022】
単位目付当たりの流れ方向(MD)(以下、単に「MD」ともいう)の引張強さ(以下、単に「MD引張強さ」ともいう)は、0.28N・m/25mm・g以上であることが好ましい。MD引張強さは、メルトブローン不織布の破断に対する耐性を評価する指標の1つとして用いられている。MD引張強さが0.28N・m/25mm・g以上であることは、MB不織布の引張強さが優れることを示す。これにより、高い濾過圧力が必要される用途(例えば、大流量濾過、微細粒子捕獲等)に好適に使用できる。
MD引張強さは、0.29N・m/25mm・g以上であってもよい。MD引張強さは、0.35N・m/25mm・g以下であってもよい。これらの観点から、MD引張強さは、0.28N・m/25mm・g~0.35N・m/25mm・gであってもよい。
MD引張強さの測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0023】
流れ方向(MD)の伸び率(以下、「MD伸び率」ともいう)は、120%以上であることが好ましい。MD伸び率は、メルトブローン不織布の破断に対する耐性を評価する指標の1つとして用いられている。MD伸び率が120%以上であることは、MB不織布の伸び率が優れることを示す。これにより、人体への追従変形性が必要とされる用途(例えば、衛生材料、医療用着衣等)に好適に使用できる。
MD伸び率は、160%以上であってもよい。MD伸び率は、190%以下であってもよく、175%以下であってもよい。MD伸び率は、120%~190%であってもよい。
MD伸び率の測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0024】
流れ方向(MD)のタフネス(以下、「MDタフネス」)は、12.5N/in以上であることが好ましい。MDタフネスは、メルトブローン不織布の破断に対する耐性を評価する指標の1つとして用いられている。MDタフネスは、MD引張強さ及びMD伸び率を加味したパラメータで表現される。MDタフネスが高いほど、メルトブローン不織布の粘り強さがより強くなり、メルトブローン不織布はちぎれにくくなる。MDタフネスが12.5N/in以上であることは、MB不織布のタフネスに優れることを示す。これにより、高い濾過圧力が必要される用途(例えば、大流量濾過、微細粒子捕獲等)や、人体への追従変形性が必要とされる用途(例えば、衛生材料、医療用着衣等)に好適に使用できる。
MDタフネスは、13.0N/in以上であってもよい、MDタフネスは、14.0N/in以下であってもよく、13.5N/in以下であってもよい。MDタフネスは、12.5N/in~14.0N/in以であってもよい。
MDタフネスの測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0025】
耐水圧は、320mmHO以上であることが好ましい。耐水圧が320mmHO以上であることは、MB不織布の耐水圧に優れることを示す。これにより、高い耐水バリア性が必要とされる用途(例えば、衛生材料、医療用着衣等)に好適に使用できる。
耐水圧は、340mmHO以上であってもよく、350mmHO以上であってもよい。耐水圧は、400mmHO以下であってもよい。これらの観点から、耐水圧は、320mmHO~400mmHOであってもよい。
耐水圧の測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0026】
流れ方向(MD)の引張強さは、0.28N・m/25mm・g以上であり、流れ方向(MD)の伸び率が、120%以上であり、流れ方向(MD)のタフネスが、10N/in以上であり、耐水圧が、320mmHO以上であることが好ましい。これにより、MB不織布は、引張強さ、伸び率、タフネス、及び耐水圧に優れる。
【0027】
MB不織布は、用途に応じて、後処理や二次加工が施されていてもよい。後処理としては、例えば、機械的強度の向上等を目的とした加熱処理、カレンダー処理、帯電加工などが挙げられる。二次加工としては、例えば、折り曲げ、切り抜き等が挙げられる。
【0028】
(1.1)繊維(A)
繊維(A)は、熱可塑性非エラストマー(a)を含む。繊維(A)は、熱可塑性非エラストマー(a)のみからなってもよいし、熱可塑性非エラストマー(a)に加えて公知の樹脂を更に含有してもよい。熱可塑性非エラストマー(a)の詳細については後述する。
【0029】
繊維(A)の平均繊維径は、通常、10μm未満である。繊維(A)の平均繊維径の好ましい範囲は、MB不織布の平均繊維径の好ましい範囲として例示した範囲と同様である。繊維(A)の平均繊維径は、実施例に記載の方法と同様である。
【0030】
繊維(A)は、長繊維であってもよいし、短繊維であってもよい。繊維(A)の断面形状は、特に制限されず、例えば、円形、楕円形、異形断面等が挙げられる。
【0031】
繊維(A)は、複合繊維であってもよく、モノコンポーネント繊維であってもよい。複合繊維は、2種以上の熱可塑性樹脂を構成成分としていることが好ましい。複合繊維としては、例えば、芯鞘型、サイドバイサイド型、海島型、並列型等が挙げられる。
【0032】
繊維(A)は、必要に応じて、公知の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス等が挙げられる。
【0033】
(1.1.1)熱可塑性非エラストマー(a)
熱可塑性非エラストマー(a)としては、オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。熱可塑性非エラストマー(a)は、1種単独であってもよく、2種以上の併用であってもよい。
中でも、熱可塑性非エラストマー(a)は、オレフィン系樹脂を含むことが好ましく、オレフィン系樹脂であることがより好ましい。熱可塑性非エラストマー(a)は、オレフィン系樹脂を含むことで、不織布を安価に得ることができる。
【0034】
熱可塑性非エラストマー(a)の融点は、特に限定されず、メルトブローン不織布の用途等に応じて適宜選択される。熱可塑性非エラストマー(a)の融点は、好ましくは140℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは155℃以上、特に好ましくは160℃~170℃である。
熱可塑性非エラストマー(a)の融点は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気下-40℃で5分間保持した後10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして定義される。具体的には、示差走査型熱量計(パーキン・ エルマー社製、製品名:DSC-7)を用い、試料5mgを窒素雰囲気下-40℃で5分間保持した後、10℃/分で昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップとして求めることができる。
【0035】
(1.1.2)オレフィン系樹脂
オレフィン系樹脂としては、プロピレン系重合体、エチレン重合体、ポリメチルペンテン、エチレン-環状オレフィン共重合体等が挙げられる。オレフィン系樹脂は、1種のみであってもよく、融点、分子量、結晶構造などが互いに異なる2種以上であってもよい。
中でも、オレフィン系樹脂は、プロピレン系重合体を含むことが好ましく、プロピレン系重合体であることがより好ましい。オレフィン系樹脂は、プロピレン系重合体を含むことで、高耐熱性の不織布を安価に得ることができる。
【0036】
(1.1.3)プロピレン系重合体
プロピレン系重合体は、プロピレンに由来する構成単位を含む。
プロピレン系重合体は、プロピレン単独重合体、又はプロピレン共重合体である。プロピレン共重合体は、プロピレンと1種又は2種以上のα-オレフィンとの共重合体であることが好ましい。
α-オレフィンの炭素数は、2以上(但し炭素数3を除く)であり、好ましくは2~8(但し炭素数3を除く)である。具体的に、プロピレン共重合体におけるα-オレフィンとしては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。
なかでも、プロピレン系重合体は、プロピレン単独重合体を含むことが好ましく、プロピレン単独重合体であることがより好ましい。プロピレン系重合体がプロピレン単独重合体を含むことで、高強度・高耐熱性の不織布を安価に得ることができる。
【0037】
プロピレン系重合体の融点は、好ましくは140℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは155℃以上、特に好ましくは160℃~170℃である。
プロピレン系重合体の融点の測定方法は、熱可塑性非エラストマー(a)の融点の測定方法と同様である。
【0038】
プロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR:Melt Flow Rate)は、特に限定されず、好ましくは1g/10分~1000g/10分、より好ましくは5g/10分~500g/10分、更に好ましくは10g/10分~100g/10分である。
プロピレン系重合体のMFRの測定方法は、ASTM D-1238に準拠し、測定条件は、230℃、荷重2.16kgである。
【0039】
以下、ASTM D-1238に準拠し、230℃、荷重2.16kgの条件で測定されるメルトフローレートを「MFR(230℃)」ともいう。
【0040】
繊維(A)の総量に対するプロピレン系重合体の割合は、好ましくはい90質量%~100質量%、より好ましくは98質量%~100質量%である。
【0041】
プロピレン系重合体は、市販品であってもよい。
【0042】
(1.1.4)バイオマス由来の熱可塑性非エラストマー(a)
熱可塑性非エラストマー(a)(例えば、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ポリエステル系重合体等)は、バイオマス由来の原料であってもよい。バイオマス由来の原料はカーボンニュートラルな材料であるため、MB不織布の製造における環境負荷を低減することができる。
バイオマス由来熱可塑性樹脂の原料となるモノマーは、バイオマスナフサのクラッキングやバイオマス由来エチレンから合成することで得られる。バイオマス由来の熱可塑性非エラストマー(a)は、このようにして合成したバイオマス由来モノマーを、従来公知の石油由来熱可塑性樹脂を用いる場合と同様の方法により重合することによって得られる。
バイオ由来モノマーを原料として合成した熱可塑性樹脂の重合体は、バイオマス由来の熱可塑性非エラストマー(a)となる。原料モノマー中のバイオ由来の熱可塑性非エラストマー(a)の含量は、原料モノマーの総量に対して、0質量%超であり、100質量%であってもよいし、それ以下でもよい。
なお、「バイオマス度」は、バイオマス由来の炭素の含有率を示し、放射性炭素(C14)を測定することにより算出される。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(約105.5pMC)で含まれている。そのため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物(例えばトウモロコシ)中のC14含有量も約105.5pMC程度であることが知られている。化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、重合体中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、原料中のバイオマス由来の炭素の含有率を算出することができる。
熱可塑性非エラストマー(a)は、リサイクルによって得られた熱可塑性重合体、いわゆるリサイクルポリマーを含んでいてもよい。
「リサイクルポリマー」とは、廃ポリマー製品のリサイクルにより得られたポリマーを含むものであり、例えば、DE102019127827(A1)に記載の方法で製造することができる。リサイクルポリマーは、リサイクルにより得られたことが識別できるようなマーカーを含んでいてもよい。
【0043】
(1.1)繊維(B)
繊維(B)は、熱可塑性エラストマー(b)を含む。繊維(B)は、熱可塑性非エラストマー(b)のみからなってもよいし、熱可塑性エラストマー(b)に加えて公知の樹脂を更に含有してもよい。熱可塑性エラストマー(b)の詳細については後述する。
【0044】
繊維(B)の平均繊維径は、通常、10μm未満である。繊維(B)の平均繊維径の好ましい範囲は、MB不織布の平均繊維径の好ましい範囲として例示した範囲と同様である。繊維(B)の平均繊維径は、実施例に記載の方法と同様である。
【0045】
繊維(B)は、長繊維であってもよいし、短繊維であってもよい。繊維(B)の断面形状は、特に制限されず、例えば、円形、楕円形、異形断面等が挙げられる。
【0046】
繊維(B)は、複合繊維であってもよく、モノコンポーネント繊維であってもよい。複合繊維は、2種以上の熱可塑性樹脂を構成成分としていることが好ましい。複合繊維としては、例えば、芯鞘型、サイドバイサイド型、海島型、並列型等が挙げられる。
【0047】
繊維(B)は、必要に応じて、公知の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス等が挙げられる。
【0048】
(1.2.1)熱可塑性エラストマー(b)
熱可塑性エラストマー(b)としては、例えば、α-オレフィン共重合体に代表されるオレフィン系エラストマー(以下、「POE」ともいう)、ポリウレタン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー等が挙げられる。熱可塑性エラストマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、熱可塑性エラストマー(b)は、α-オレフィン共重合体を含むことが好ましく、α-オレフィン共重合体であることがより好ましい。熱可塑性エラストマー(b)がα-オレフィン共重合体を含むことで、高耐熱性の不織布を安価に得ることができる。
【0049】
熱可塑性エラストマー(b)の融点は、熱可塑性非エラストマー(a)の融点よりも低い。熱可塑性非エラストマー(a)の融点から熱可塑性エラストマー(b)の融点を減算した値(以下、「融点差」ともいう)は、熱可塑性エラストマー(b)を含む繊維(B)の繊維融着効果を高める観点から、好ましくは3℃以上、より好ましくは5℃以上である。融点差(樹脂)は、熱可塑性非エラストマー(a)と熱可塑性エラストマー(b)の押出温度を同一として、ダイ(紡糸口金)における温度ムラの発生を防止する観点から、好ましくは100℃以下、より好ましくは10℃以下である。
熱可塑性エラストマー(b)の融点の測定方法は、熱可塑性非エラストマー(a)の融点の測定方法と同様である。
【0050】
(1.2.1.1)α-オレフィン共重合体
α-オレフィン共重合体は、2種以上のα-オレフィン骨格を有する共重合成分が共重合された共重合体である。
α-オレフィン骨格を有する共重合成分としては、α-オレフィン等が挙げられる。α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。
【0051】
α-オレフィン共重合体の形態は、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体及びランダム共重合体のいずれであってもよい。
【0052】
ブロック共重合体は、硬質部となる結晶性の高いポリマーを形成するポリオレフィンブロックと、軟質部となる非晶性を示すモノマー共重合体とのブロック共重合体であることが好ましい。具体的には、ブロック共重合体としては、オレフィン(結晶性)・エチレン・ブチレン・オレフィンブロック共重合体、ポリプロピレン・ポリオレフィン(非晶性)・ポリプロピレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0053】
α-オレフィン共重合体のMFR(230℃)は、特に限定されず、好ましくは1g/10分~100g/10分、より好ましくは10g/10分~80g/10分、さらに好ましくは15g/10分~70g/10分、特に好ましくは15g/10分~50g/10分である。
【0054】
繊維(B)の総量に対するα-オレフィン共重合体の割合は、好ましくは90質量%~100質量%、より好ましくは98質量%~100質量%である。
【0055】
(1.3)好ましい態様
繊維(A)と繊維(B)との融着効果を高める観点から、繊維(A)に含まれる前記熱可塑性非エラストマー(a)と、繊維(B)に含まれる熱可塑性エラストマー(b)とは、共通のモノマーを含むことが好ましい。これにより、熱可塑性非エラストマー(a)と熱可塑性エラストマー(b)とに共通する部分構造に親和性が生じ、繊維(A)と繊維(B)との相溶性は向上する。その結果、MB不織布の張強度、伸び率、タフネス、耐水圧及び耐摩耗性は優れる。
繊維(A)に含まれる前記熱可塑性非エラストマー(a)の主モノマーと、繊維(B)に含まれる熱可塑性エラストマー(b)の主モノマーとは、同一であることが好ましい。「主モノマー」とは、樹脂を構成するモノマー成分の中で最も高い含有量(質量%)を有するモノマーを示す。これにより、熱可塑性非エラストマー(a)と熱可塑性エラストマー(b)とに共通し、互いに親和性を有する部分構造の比率が高まり、繊維(A)と繊維(B)との相溶性は、より向上する。その結果、MB不織布の張強度、伸び率、タフネス、耐水圧及び耐摩耗性は、より優れる。前記熱可塑性非エラストマー(a)が、プロピレン単独重合体を含む場合、前記熱可塑性エラストマー(b)が、プロピレン系エラストマーを含むことが好ましい。これにより、高強度・高耐熱性の不織布を安価に得ることができる。プロピレン系エラストマー(主モノマー:プロピレン)の市販品としては、タフマーPN20300(登録商標)(三井化学株式会社)等が挙げられる。
【0056】
(1.4)用途
MB不織布は、特に限定されず、例えば、衣料(例えば、芯地、接着芯地等)、医療(例えば、手術着、覆布等)、建築(例えば、ルーフィング材、タフトカーペット基材等)、土木(例えば、ドレン材、ろ過材等)、車両(例えば、自動車内装、自動車部品等)、衛生(例えば、おむつ、生理用品、救急用品、清浄用品等)、インテリア(例えば、カーペット、家具部材、建具、壁装、装飾品等)、寝装(例えば、ふとん袋、枕カバー、シーツ等)、農業(例えば、ビニールハウスシート、苗床用シート等)、皮革(例えば、人工皮革用基布、合成皮革用基布等)、生活資材(例えば、収納用品、包装材、袋物等)、産業資材(例えば、工業用資材、電気材料、製品基材等)等が挙げられる。
具体的に、MB不織布は、フィルタ(例えば、ガスフィルタ(エアフィルタ)、液体フィルタ等)、衛生材料、耐水シート、医療用シート等に好適に用いられる。
【0057】
(1.5)メルトブローン不織布製造装置
本開示のメルトブローン不織布は、メルトブローン不織布製造装置を用いて、製造される。
【0058】
以下、図1及び図2を参照して、本開示のメルトブローン不織布の製造に用いられるメルトブローン不織布製造装置の一例について説明する。
【0059】
(1.5.1)構成
本実施形態に係るメルトブローン不織布製造装置1は、図1に示すように、押出機10と、ギアポンプ20と、押出機30と、ギアポンプ40と、ダイ(紡糸口金)50と、ガス加熱装置60と、捕集機構70と、を備える。押出機10は、ギアポンプ20を介して、ダイ50に接続されている。押出機30は、ギアポンプ40を介して、ダイ50に接続されている。
【0060】
以下、繊維(A)の原料を「樹脂組成物(A)」ともいい、繊維(B)の原料を「樹脂組成物(B)」ともいう。
【0061】
(1.5.2)押出機
押出機10は、樹脂組成物(A)の固形物を溶融し、樹脂組成物(A)の溶融物をギアポンプ20に供給する。
押出機10は、図1に示すように、ホッパー11と、バレル12と、を有する。ホッパー11とバレル12とは接続される。ホッパー11には、樹脂組成物(A)の固形物が投入される。バレル12は、ホッパー11から投入される樹脂組成物(A)の固形物を移動させながら、可塑化及び混練する。押出機10は、単軸押出機であってもよいし、多軸押出機(例えば、二軸押出機等)であってもよい。
【0062】
ギアポンプ20は、樹脂組成物(A)の溶融物をダイ50に連続的に供給する。ギアポンプ20の回転数を変更することにより、ダイ50に供給される単位時間あたりの樹脂組成物(A)の溶融物の体積を制御することができる。ギアポンプ20は、樹脂組成物(A)の溶融物から異物を除去してもよい。ギアポンプ20は、公知のギアポンプであればよい。
【0063】
押出機30は、樹脂組成物(B)の固形物を溶融し、樹脂組成物(B)の溶融物をギアポンプ20に供給する。
押出機30は、図1に示すように、ホッパー31と、バレル32と、を有する。ホッパー31とバレル32とは接続される。ホッパー31には、樹脂組成物(B)の固形物が投入される。バレル32は、ホッパー31から投入される樹脂組成物(B)の固形物を移動させながら、可塑化及び混練する。押出機30は、単軸押出機であってもよいし、多軸押出機(例えば、二軸押出機等)であってもよい。
【0064】
ギアポンプ40は、樹脂組成物(B)の溶融物をダイ50に連続的に供給する。ギアポンプ40の回転数を変更することにより、ダイ50に供給される単位時間あたりの樹脂組成物(B)の溶融物の体積を制御することができる。ギアポンプ40は、樹脂組成物(B)の溶融物から異物を除去してもよい。ギアポンプ40は、公知のギアポンプであればよい。
【0065】
(1.5.4)
ダイ50は、樹脂組成物(A)の溶融物及び樹脂組成物(B)の溶融物の各々を高温ガスGの高速の流れの中に押し出して、複数の繊維とする。
【0066】
ダイ50は、図1に示すように、複数の紡糸ノズル51と、2つのガスノズル52と、を有する。2つのガスノズル52は、流れ方向(MD)において、複数の紡糸ノズル51を挟むように形成されている。
【0067】
ダイ50の温度(以下、「ダイス温度」ともいう)は、樹脂組成物(A)の溶融物及び樹脂組成物(B)の溶融物を押し出せる温度であれば特に限定されず、樹脂組成物(A)及び樹脂組成物(B)の種類等に応じて、適宜選択される。
【0068】
(1.5.4.1)紡糸ノズル
複数の紡糸ノズル51は、図2に示すように、横方向(CD)に沿って、等間隔に一列に配置されている。紡糸ノズル51の直径L1(図2参照)は、MB不織布の用途等に応じて適宜選択され、0.08mm~0.60mmであってもよい。隣接する紡糸ノズル51のノズル間距離L2(図2参照)は、MB不織布の用途等に応じて適宜選択され、0.5mm~3.0mmであってもよい。複数の紡糸ノズル51の数は、特に限定されず、MB不織布の用途等に応じて適宜選択される。
【0069】
複数の紡糸ノズル51は、樹脂組成物(A)の溶融物を吐出する複数の紡糸ノズル51Aと、樹脂組成物(B)の溶融物を吐出する複数の紡糸ノズル51Bと、を有する。複数の紡糸ノズル51Aは、ダイ50の第1流路(図示せず)を介して、押出機10と接続されている。複数の紡糸ノズル51Bは、ダイ50の第2流路(図示せず)を介して、押出機30と接続されている。第1流路と第2流路とは、独立している。
【0070】
複数の紡糸ノズル51A及び複数の紡糸ノズル51Bの各々の1つの紡糸ノズル51当たりの吐出量(以下、「単孔吐出量」ともいう)は、上述した混繊率(A/B)に応じて、適宜選択される。紡糸ノズル51A及び紡糸ノズル51Bの各々の単孔吐出量を調整することで、上述した混繊率(A/B)を調整することができる。
【0071】
本実施形態では、図2示すように、横方向(CD)に沿って、3つの紡糸ノズル51Aが連続的に配置された第1グループと、3つの紡糸ノズル51Bが連続的に配置された第2グループとが、交互に配置されている。
【0072】
なお、本開示はこれに限定されず、第1グループは、1つ、2つ又は4つ以上の紡糸ノズル51Aで構成されていてもよいし、第2グループは、1つ、2つ又は4つ以上の紡糸ノズル51Bで構成されていてもよい。また、本実施形態では、複数の紡糸ノズル51は、横方向(CD)に沿って一列に配置されているが、本開示はこれに限定されない。複数の紡糸ノズル51は、横方向(CD)に沿って2つ以上の列で配置されていてもよい。
【0073】
(1.5.4.2)ガスノズル
ガスノズル52は、紡糸ノズル51の開口部付近に加熱ガスGを噴射する。図1に示されるように、ガスノズル52は、紡糸ノズル51から吐出された直後の吐出物に、加熱ガスGを噴射する。加熱ガスGの供給量(以下、「延伸エア量」ともいう)及び加熱ガスGの温度は、特に限定されず、MB不織布の用途等に応じて適宜選択される。
【0074】
(1.5.5)ガス加熱装置
ガス加熱装置60は、加熱ガスGをダイ50のガスノズル52に供給する。ガス加熱装置60は、公知の構成であればよい。
【0075】
(1.5.6)捕集機構
捕集機構70は、ダイ50から吐出される複数の繊維を捕集する。
捕集機構70は、スクリーン71と、ローラ72と、スクリーン71の捕集面の裏側に配置されたエア吸引部73と、ブロワー74と、を有する。スクリーン71は、例えば、多孔ベルトである。スクリーン71と紡糸ノズル51との距離DCD(図1参照)は、特に限定されず、MB不織布の用途等に応じて適宜選択される。ローラ72は、スクリーン71を支持するとともに、スクリーン71を流れ方向(MD)に動かす。エア吸引部73は、ダイ50から吐出される複数の繊維を吸引する。ブロワー74は、エア吸引部73と連結されている。ブロワー74は、エア吸引部73に吸引力を付与する。
【0076】
(1.5.7)動作
メルトブローン不織布製造装置1では、押出機10に投入される樹脂組成物(A)の固形物は、樹脂組成物(A)の溶融物となって、ギアポンプ20を介して、ダイ50に供給される。押出機30に投入される樹脂組成物(B)の固形物は、樹脂組成物(B)の溶融物となって、ギアポンプ40を介して、ダイ50に供給される。ダイ50に供給される樹脂組成物(A)の溶融物は、複数の紡糸ノズル51Aから高温ガスGの高速の流れの中に押し出され、延伸されて、複数の繊維(A)となる。ダイ50に供給される樹脂組成物(B)の溶融物は、複数の紡糸ノズル51Bから高温ガスGの高速の流れの中に押し出され、延伸されて、複数の繊維(B)となる。複数の繊維(A)及び複数の繊維(B)は、動くスクリーン71上に積層されて、MB不織布が得られる。
【0077】
(2)衛生材料
本開示の衛生材料は、本開示のメルトブローン不織布を含む。本開示の衛生材料は、本開示のメルトブローン不織布を含むことの他は、公知の構成であればよい。
【0078】
本開示の衛生材料は、おむつ、マスク、使い捨て手術着、レスキューガウン等に用いられる。具体的に、本開示の衛生材料は、展開型使い捨ておむつ又はパンツ型使い捨ておむつにおいて、トップシート、バックシート、ウェストバンド(例えば、延長テープ、サイドフラップ等)、ファスニングテープ、立体ギャザー、レッグカフ等に好適に用いられる。衛生材料は、パンツ型使い捨ておむつのサイドパネル等の部位等に好適に用いられる。これら部位に本開示のメルトブローン不織布を使用することで、装着者の動きに追随し装着者の身体にフィットすることが可能となり、着用中においても快適な状態が維持される。
【0079】
(3)耐水シート
本開示の耐水シートは、本開示のメルトブローン不織布を含む。本開示の耐水シートは、本開示のメルトブローン不織布を含むことの他は、公知の構成であればよい。本開示の耐水シートは、本開示のメルトブローン不織布からなってもよい。本開示の耐水シートは、本開示のメルトブローン不織布からなる層(以下、「メルトブローン不織布層」ともいう)と、公知の繊維(例えば、セルロース繊維等)からなる層(以下、「繊維層」ともいう)と、を有してもよい。繊維層は、メルトブローン不織布層の一方の主面上に積層されている。
【0080】
本開示の耐水シートは、吸収性材料(例えば、使い捨ておむつ、生理用品な等)、衛生材料(例えば、衛生マスク、化粧用素材等)、医療材料(例えば、包帯等)、生活資材(例えば、衣料素材、包材等)、工業資材(例えば、フィルタ等)等に好適に用いることができる。
【0081】
(4)医療用シート
本開示の医療用シートは、本開示のメルトブローン不織布を含む。本開示の医療用シートは、本開示のメルトブローン不織布を含むことの他は、公知の構成であればよい。例えば、本開示の医療用シートは、メルトブローン不織布からなってもよいし、メルトブローン不織布層と、繊維層と、を有してもよい。繊維層は、メルトブローン不織布層の一方の主面上に積層されている。
【0082】
本開示の医療用シートは、ガウン、キャップ、ドレープ、マスク、ガーゼ、包帯、各種防護服などの素材、プラスター基布、パップ材、外傷被覆材、傷テープ等に好適に用いられる。さらに滅菌時や殺菌時に照射される電子線やガンマ線に安定な原料を使用することで、本開示の医療用シートは、滅菌医療用シートに好適に用いられる。
【実施例0083】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0084】
[1]物性の測定方法
各種物性の測定方法は、下記の通りである。
【0085】
[1.1]混繊率
ギアポンプ20から供給される樹脂組成物(A)の溶融物の単位時間あたりの供給体積と、樹脂組成物(A)の溶融物の溶融密度とから、樹脂組成物(A)の溶融物の単位時間あたりの供給質量を求めた。同様にして、ギアポンプ40から供給される樹脂組成物(B)の溶融物の単位時間あたりの供給量と、樹脂組成物(B)の溶融物の溶融密度とから、樹脂組成物(B)の溶融物の単位時間あたりの供給質量を求めた。これらの単位時間あたりの樹脂供給質量の比率(A/B)を、得られるメルトブローン不織布における「混繊率(A/B)」とした。
【0086】
[1.2]目付〔g/m
メルトブローン不織布から100mm(MD)×100mm(CD)の試験片を10枚採取した。試験片の採取場所は、メルトブローン不織布の横方向(CD)の中央部とした。次いで、20℃、相対湿度50%RH環境下で、上皿電子天秤(研精工業社製)を用いて、各試験片の質量〔g〕を測定した。各試験片の質量の平均値を求めた。求めた質量の平均値から1m当たりの質量〔g〕に換算し、小数点第1位を四捨五入して得られた値を「目付〔g/m〕」とした。
【0087】
[1.3]平均繊維径〔g/m
繊維の平均繊維径は、以下のようにして求めた。測定対象となるメルトブローン不織布を走査電子顕微鏡(KEYENCE社製、3Dリアルサーフェスビュー顕微鏡「VE9800/8800」)で観察した。画面上のメルトブローン不織布を形成する複数の繊維から100本を選び、その繊維径を測定した。100本の繊維径の測定値の平均値を「平均繊維径」とした。
【0088】
[1.4]引張強さ、伸び率及びタフネス
メルトブローン不織布の引張強さを、JIS L 1906の6.12.1[A法](JIS L 1913:2010へ移行、ISO 9073-3:1989に対応)に準拠して測定した。メルトブローン不織布から、200mm(MD)×25mm(CD)の試験片を10枚採取した。試験片の採取場所は、横方向(CD)にわたって5箇所とした。引張試験機を用いて、チャック間距離100mm、ヘッドスピード100mm/minで、流れ方向(MD)において、試験片が切断されるまで試験片に荷重を加えた。試験片の最大荷重時の強さを「引張強さ〔N/25mm〕」とした。最大荷重時の伸びから「伸び率〔%〕」を求めた。上記の引張試験の応力-歪み曲線(すなわち、伸び率〔%〕に対する荷重〔N/25mm〕のグラフ)において、試験片の流れ方向(MD)の引っ張りを開始した時点から試験片が切断される時点までの曲線の積分値を「タフネス〔N/in〕」とした。10枚の試験片の単位目付当たりのMDの引張強さの測定値の平均値を「単位目付当たりのMD引張強さ」とした。10枚の試験片のMDの伸び率の測定値の平均値を「MD伸び率」とした。10枚の試験片のMDのタフネスの測定値の平均値を「MDタフネス」とした。
【0089】
単位目付当たりのMD引張強度、MD伸び率及びMDタフネスの各々を、下記の評価基準に基づいて、評価した。評価結果を表1に示す。単位目付当たりのMD引張強度の許容可能な評価結果は「A1」である。MD伸び率の許容可能な評価結果は「A2」である。MDタフネスの許容可能な評価結果は「A3」である。
【0090】
[1.5.1]単位目付当たりのMD引張強さの評価基準
「A1」:単位目付当たりのMD引張強さ≧0.28〔N・m/25mm・g〕
「B1」:単位目付当たりのMD引張強さ<0.28〔N・m/25mm・g〕
【0091】
[1.5.2]MD伸び率の評価基準
「A2」:MD伸び率≧120〔%〕
「B2」:MD伸び率<120〔%〕
【0092】
[1.5.3]MDタフネスの評価基準
「A3」:MDタフネス≧10〔N/in
「B3」:MDタフネス<10〔N/in
【0093】
[1.5]耐水圧〔mmHO〕
メルトブローン不織布から150mm(MD)×150mm(CD)の試験片を10枚採取した。試験片の採取場所は、メルトブローン不織布の横方向(CD)の中央部とした。耐水圧試験機を用いて、試験片に加速速度10mbar/minで圧力を与えた際、試験片中の3か所から水が漏れたときの圧力(すなわち、耐水圧)を測定した。10枚の試験片の耐水圧の測定値の平均値を、「耐水圧〔mmHO〕」とした。
【0094】
耐水圧を、下記の評価基準に基づいて評価した。評価結果を表1に示す。耐水圧の許容可能な評価結果は「A4」である。
【0095】
[1.4.1]耐水圧の評価基準
「A4」:耐水圧≧320〔mmHO〕
「B4」:耐水圧<320〔mmHO〕
【0096】
[1.6]耐摩耗性
メルトブローン不織布から150mm(MD)×150mm(CD)の試験片を2枚採取した。試験片の採取場所は、メルトブローン不織布の横方向(CD)の中央部とした。
学振型摩擦堅牢度試験機(大栄科学精器製作所社製、新型NR-100)を用いて、JIS L 0849の摩擦堅牢度試験法に準拠して摩擦試験を行った。摩擦子に、JIS L 0803に準拠の染色堅ろう度試験用添付白布(3-1号)を貼付して、布付き摩擦子を得た。布付き摩擦子を試験片に荷重をかけずに、試験片のノズル側の面(以下、「ノズル面」ともいう)に接触させ、流れ方向(MD)に布付き摩擦子を往復させて、ノズル面を擦った。往復回数10回ごとに、ノズル面の摩擦箇所の中央部位に、毛羽立ち(繊維がメルトブローン不織布から脱落し起毛する現象)又は不織布破壊(不織布が破断し穴が開く現象)が発生したか否かを目視で観察した。毛羽立ち又は不織布破壊が観測されるまで、摩擦試験を行った。毛羽立ち又は不織布破壊が初めて観察される往復回数を、耐摩耗回数とした。2枚の試験片の耐摩耗回数の平均値を「平均耐摩耗回数」とした。
平均耐摩耗回数を、下記の評価基準に基づいて、耐摩耗性を評価した。評価結果と、耐摩耗回数時のノズル面の摩擦箇所の状態と、を表1に示す。耐摩耗性の許容可能な評価結果は、「A5」である。
【0097】
[1.5.1]耐摩耗性の評価基準
「A5」:平均耐摩耗回数≧20回
「B5」:平均耐摩耗回数<20回
【0098】
[2]メルトブローン不織布の作製
[2.1]実施例1
メルトブローン不織布として以下の原料を用いた
【0099】
<熱可塑性非エラストマー(a)>
・hPP(a1):ホモポリプロピレン製品(材質:ホモポリプロピレン、融点:166℃、MFR(230℃):35g/10分)
【0100】
<熱可塑性エラストマー(b)>
・POE(b1):「タフマー(登録商標)PN20300」(三井化学株式会社製、材質:ポリオレフィンエラストマー、融点:160℃、MFR(230℃):30g/10分)
【0101】
図1及び図2に示すメルトブローン不織布製造装置1を準備した。押出機10として、単軸押出機を用いた。押出機30として、二軸押出機を用いた。紡糸ノズル51の直径L1(図2参照)は0.3mmであった。ノズル間距離L2(図2参照)は、1mmであった。スクリーン71と紡糸ノズル51との距離DCD(図1参照)は、400mmであった。
【0102】
以下のようにしてメルトブローン不織布を作製した。押出機10にhPP(a1)の固形物を投入して、溶解した。押出機30にPOE(b1)の固形物を投入して、溶解した。hPP(a1)の溶融物およびPOE(b1)の溶融物の各々を、ダイ50に供給した。
【0103】
ダイ50の設定温度は270℃であった。hPP(a1)の溶融物のダイ50への供給量は、紡糸ノズル51Aの単孔吐出量が0.083g/分となるように調整された。POE(b1)の溶融物のダイ50への供給量は、紡糸ノズル51Bの単孔吐出量が0.027g/分となるように調整された。供給量をこのように調整することで、混繊率は、PP:75質量%、POE:25質量%となる。
【0104】
複数の紡糸ノズル51Aの各々から吐出されたhPP(a1)の溶融物と、複数の紡糸ノズル51Bの各々から吐出されたPOE(b1)の溶融物とは、高温ガスGによって延伸され、動くスクリーン71に吹き付けられて、繊維となった。高温ガスGの温度は270℃、高速ガスGの流量は270m/hrであった。
【0105】
目付が30.4gsmとなるようにスクリーンの速度を調節して繊維を捕集し、メルトブローン不織布を得た。メルトブローン不織布に含まれる繊維の平均繊維径は5.0μmであった。メルトブローン不織布のMD最大強度は0.29N/25mm・gsm、MD伸び率は151%、MDタフネスは12.6N/in、耐水圧は351mmHOであった。
【0106】
[2.2]実施例2、実施例3及び比較例1~比較例4
樹脂種及び単孔吐出量を表1に示すように変更したことの他は、実施例1と同様にして、メルトブローン不織布を得た。得られたメルトブローン不織布の評価結果等を表1に示す。更に、POE(b1)の混線率に対するMD引張強さの関係を示すグラフを図3に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
比較例1~比較例3のメルトブローン不織布は、熱可塑性非エラストマー(a)としてのhPP(a1)を含む繊維(A)と、熱可塑性エラストマー(b)としてのPOE(b1)を含む繊維(B)とを含む。混繊率(A/B)は、質量比で、60/40~99/1の範囲外であった。そのため、比較例1~比較例3では、MD最大強さの評価結果が「B1」、耐水圧の評価結果が「B4」であった。
比較例4のメルトブローン不織布は、繊維(B)を含まなかった。そのため、比較例4では、MD最大強さの評価結果が「B1」、MDタフネスの評価結果が「B3」、耐水圧の評価結果が「B4」、耐摩耗性の評価結果が「B5」であった。
これらの結果、比較例1~比較例5のメルトブローン不織布は、張強度、伸び率、タフネス、耐水圧及び耐摩耗性に優れるメルトブローン不織布ではないことがわかった。
【0109】
実施例1~実施例3のメルトブローン不織布は、熱可塑性非エラストマー(a)としてのhPP(a1)を含む繊維(A)と、熱可塑性エラストマー(b)としてのPOE(b1)を含む繊維(B)とを含む。POE(b1)の融点は、hPP(a1)よりも低い。混繊率(A/B)は、質量比で、60/40~99/1の範囲内であった。そのため、実施例1~実施例5では、MD最大強さの評価結果が「A1」、MD伸び率の評価結果が「A2」、MDタフネスの評価結果が「A3」、耐水圧の評価結果が「A4」、耐摩耗性の評価結果が「A5」であった。
これらの結果、実施例1~実施例3のメルトブローン不織布は、張強度、伸び率、タフネス、耐水圧及び耐摩耗性に優れるメルトブローン不織布であることがわかった。
【符号の説明】
【0110】
1 メルトブローン不織布製造装置
10,30 押出機
11,31 ホッパー
12,32 バレル
20,40 ギアポンプ
50 ダイ
51、51A、51B 紡糸ノズル
52 ガスノズル
60 ガス加熱装置
70 捕集機構
71 スクリーン
72 ローラ
73 エア吸引部
74 ブロワー
図1
図2
図3