(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170255
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】電力融通管理システム、および、電力融通管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20241129BHJP
G06Q 50/40 20240101ALI20241129BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087316
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 道樹
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 正俊
(72)【発明者】
【氏名】藤原 周平
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC06
5L049CC42
5L050CC06
5L050CC42
(57)【要約】 (修正有)
【課題】事業者の余剰電力の自家消費量を増大させる電力融通管理システムおよび電力融通管理方法を提供する。
【解決手段】電力融通管理システム1は、EV車44の充電装置43と自家発電装置とを管理し、電気自動車の充電と配車とを計画するEV配車・充電計画システム42と、電気自動車の充電装置43を管理し、電気自動車の充電と配車とを計画するEV配車・充電計画システム46と、EV配車・充電計画システム42から余剰電力を集約して融通可能電力とし、予め定めた優先順位に従ってEV配車・充電計画システム46に対して融通可能電力を提供する融通計画部21と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1拠点の電気自動車の充電装置と自家発電装置とを管理し、当該電気自動車の充電と配車とを計画する第1のEV配車・充電計画システムと、
第2拠点の電気自動車の充電装置を管理し、当該電気自動車の充電と配車とを計画する第2のEV配車・充電計画システムと、
各前記第1のEV配車・充電計画システムから余剰電力を集約して融通可能電力とし、予め定めた優先順位に従って各前記第2のEV配車・充電計画システムに対して前記融通可能電力を提供する融通計画部と、
を備えることを特徴とする電力融通管理システム。
【請求項2】
前記融通計画部は、或る優先度の第2のEV配車・充電計画システムが管理する第2拠点の超過需要を差し引いた新たな余剰電力を、次の優先度の第2のEV配車・充電計画システムが管理する第2拠点へ提供する処理を繰り返す、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力融通管理システム。
【請求項3】
前記第2のEV配車・充電計画システムは、前記融通計画部から提供された余剰電力から電力需要を差し引いた新たな余剰電力を前記融通計画部に通知する余剰電力通知部を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力融通管理システム。
【請求項4】
前記第1のEV配車・充電計画システムは、
前記自家発電装置の発電電力を予測する発電予測部と、
前記電気自動車の充電電力を含む電力需要を予測する電力需要予測部と、
前記発電電力から前記電力需要を減算した余剰電力を前記融通計画部に通知する余剰電力通知部と、を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力融通管理システム。
【請求項5】
前記融通計画部は、各前記第2のEV配車・充電計画システムの優先順位を、当該第2のEV配車・充電計画システムが管理する第2拠点の電気自動車の台数をもとに決定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の電力融通管理システム。
【請求項6】
前記融通計画部は、各前記第2のEV配車・充電計画システムの優先順位を、当該第2のEV配車・充電計画システムが管理する第2拠点の電気自動車の蓄電池総容量をもとに決定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の電力融通管理システム。
【請求項7】
前記融通計画部は、各前記第2のEV配車・充電計画システムの優先順位を、当該第2のEV配車・充電計画システムが管理する第2拠点の平均総配送距離をもとに決定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の電力融通管理システム。
【請求項8】
前記融通計画部は、各前記第2のEV配車・充電計画システムの優先順位を、当該第2のEV配車・充電計画システムが管理する第2拠点のエンジン車の平均燃費をもとに決定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の電力融通管理システム。
【請求項9】
前記融通計画部は、各前記第2のEV配車・充電計画システムの優先順位を、当該第2のEV配車・充電計画システムが管理する第2拠点の契約電力に対する平均空き容量をもとに決定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の電力融通管理システム。
【請求項10】
前記融通計画部は、各前記第2のEV配車・充電計画システムの優先順位を、当該第2のEV配車・充電計画システムが管理する第2拠点の再生エネルギー電力比率をもとに決定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の電力融通管理システム。
【請求項11】
前記融通計画部は、各前記第2のEV配車・充電計画システムの優先順位を、当該第2のEV配車・充電計画システムが管理する第2拠点の総EV充電量の平均値をもとに決定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の電力融通管理システム。
【請求項12】
前記融通計画部は、各前記第2のEV配車・充電計画システムの優先順位を、当該第2のEV配車・充電計画システムが管理する第2拠点にて契約している電力プランのCO2原単位をもとに決定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の電力融通管理システム。
【請求項13】
前記融通計画部は、各前記第2のEV配車・充電計画システムの優先順位を、当該第2のEV配車・充電計画システムが管理する第2拠点の電気自動車の台数、当該第2のEV配車・充電計画システムが管理する第2拠点の電気自動車の蓄電池総容量、当該第2のEV配車・充電計画システムが管理する第2拠点の平均総配送距離、当該第2のEV配車・充電計画システムが管理するエンジン車の平均燃費、当該第2のEV配車・充電計画システムが管理する第2拠点の契約電力に対する平均空き容量、当該第2のEV配車・充電計画システムが管理する第2拠点の再生エネルギー電力比率、当該第2のEV配車・充電計画システムが管理する第2拠点の総EV充電量の平均値、当該第2のEV配車・充電計画システムが管理する第2拠点にて契約している電力プランのCO2原単位のうち何れか複数を選択して重みづけして決定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の電力融通管理システム。
【請求項14】
第1拠点の電気自動車の充電装置と自家発電装置とを管理する第1のEV配車・充電計画システムが、当該電気自動車の充電と配車とを計画するステップと、
第2拠点の電気自動車の充電装置を管理する第2のEV配車・充電計画システムが、当該電気自動車の充電と配車とを計画するステップと、
融通計画部が、各前記第1のEV配車・充電計画システムから余剰電力を集約して融通可能電力とするステップと、
予め定めた優先順位に従って各前記第2のEV配車・充電計画システムに対して前記融通可能電力を提供するステップと、
を備えることを特徴とする電力融通管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力融通管理システム、および、電力融通管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大手物流事業者は、自社倉庫の広大な屋根を活用した再エネ(PV:太陽光発電)導入を推進中。自社別拠点へ電力融通する自己託送制度の活用も検討している。同時に、ラストワンマイルのトラックEV(電動)化も推進されており、内燃機関トラックと、EVトラックとが混在して運用されている。
【0003】
特許文献1には、通信網に接続された端末で実行される送電制御方法が記載されている。この方法は、は、電力融通サービスを利用する各需要家が電力系統から受電する電気の量を個別に予測する処理と、各需要家の自家用発電設備で発電され、電力系統に送電される電気の量を、予測された電気の量に応じて制御する処理とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
或る拠点が倉庫を有する場合、設置可能なPV容量に対して余剰電力が発生する場合がある。そこで、この余剰電力を自己託送により、送配電ネットワークを通じて、自社の他拠点に送電することが考えられる。これにより、電力会社から購入する電力量を削減でき、CO2排出量を削減できる。また、或る拠点で自家消費できなかった余剰電力を他の拠点で無駄なく活用できる。
【0006】
自己託送を利用する場合には、「計画値同時同量」の制度を守らなければならない。「計画値同時同量」では、電気の需要量と供給量を30分単位で予測し、計画値を報告しなければならない。また、自己託送は、売電目的であってはならず、発電元の事業者と供給先の事業者に密接な関係がなければならない。
【0007】
太陽光発電の自己託送を行えば、屋根や空き地のスペースを確保することが難しい需要場所においても再生可能エネルギーを利用することが可能となる。しかし、自己託送では電気の需要量と発電量を30分単位で予測し、乖離がないように実際の需給と計画値を一致させなければならない。万が一計画値と実績値にズレが生じた場合はペナルティが科されるので注意を要する。
【0008】
なお、単に或る拠点の余剰電力を他の拠点に自己託送するだけでは、EV充電計画と連動しておらず余剰電力を最大限活用できていない。また、現状のトラックのEV(Electric Vehicle)化は、契約電力による充電制約などにより、限定的な導入しかできない。
そこで、本発明は、事業者の余剰電力の自家消費量を増大させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した課題を解決するため、本発明の電力融通管理システムは、第1拠点の電気自動車の充電装置と自家発電装置とを管理し、当該電気自動車の充電と配車とを計画する第1のEV配車・充電計画システムと、第2拠点の電気自動車の充電装置を管理し、当該電気自動車の充電と配車とを計画する第2のEV配車・充電計画システムと、各前記第1のEV配車・充電計画システムから余剰電力を集約して融通可能電力とし、予め定めた優先順位に従って各前記第2のEV配車・充電計画システムに対して前記融通可能電力を提供する融通計画部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の電力融通管理方法は、第1拠点の電気自動車の充電装置と自家発電装置とを管理する第1のEV配車・充電計画システムが、当該電気自動車の充電と配車とを計画するステップと、第2拠点の電気自動車の充電装置を管理する第2のEV配車・充電計画システムが、当該電気自動車の充電と配車とを計画するステップと、融通計画部が、各前記第1のEV配車・充電計画システムから余剰電力を集約して融通可能電力とするステップと、予め定めた優先順位に従って各前記第2のEV配車・充電計画システムに対して前記融通可能電力を提供するステップと、を備えることを特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、事業者の余剰電力の自家消費量を増大させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る電力融通管理システムの全体構成図である。
【
図2A】EV配車・充電計画システムの構成図である。
【
図2B】EV配車・充電計画システムの構成図である。
【
図3】電力融通管理システムが実行するシーケンス図の一例を示す図である。
【
図4A】拠点の電力需要と充電量の合計のグラフである。
【
図4B】拠点の太陽光発電予測データのグラフである。
【
図4C】最終的な購入電力量と余剰電力量のグラフである。
【
図5A】拠点の電力需要と充電量の合計のグラフである。
【
図5C】拠点の電力需要と充電量の合計から余剰電力を減算した結果のグラフである。
【
図6】各拠点のEVトラック保有数のテーブルである。
【
図7】各拠点のEVトラック蓄電池総容量のテーブルである。
【
図10】各拠点の契約電力平均空き容量のテーブルである。
【
図11】各拠点の再生エネルギー電力比率のテーブルである。
【
図12】各拠点の1日当たりの平均総EV充電量のテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る電力融通管理システム1の全体構成図である。
電力融通管理システム1は、融通計画サーバ2と、拠点4aなどに設けられたEV配車・充電計画システム42と、拠点5a,5bに設けられたEV配車・充電計画システム46とを含んで構成される。ここで、拠点4aなどは、自家発電装置である太陽光発電パネル41と、EV車44の充電装置43を備えており、余剰電力が発生する可能性がある第1拠点である。拠点5a,5bなどは、EV車44の充電装置43を備えているが、自家発電装置を備えておらず、余剰電力が発生しない第2拠点である。なお、ここでは拠点は3つを図示しているが、実際には太陽光発電パネル41を備えた複数の第1拠点と、太陽光発電パネル41を備えていない複数の第2拠点が存在する。
【0014】
電力融通管理システム1は、拠点4aなどで発生した余剰電力を他の拠点5a,5bなどに融通する時に、EV配車計画と連動した融通計画を立案することで、余剰電力の自家消費量増大と、EV車44の航続距離延伸によるCO2排出量の削減効果を狙うものである。例えは配送距離の長いルートへはEV車44、配送距離の短いルートへはエンジン車45を割り当てることで、CO2排出量の削減を図ることができる。なお、エンジン車45は、ICE(Internal Combustion Engine)と呼ばれることもある。
【0015】
融通計画サーバ2は、太陽光発電パネル41などの再エネ発電装置を導入した拠点4aなどの余剰電力量(総量)を管理する融通計画部21を備えている。融通計画部21は、拠点4aの余剰電力量のうち、余剰電力の発生しない拠点5a,5bなどへ融通する融通量を算出して管理する。融通計画部21は、余剰電力の発生しない拠点5a,5bなどの優先順位を設定し、その優先順位に従って、利用可能な余剰電力量を拠点5a,5bなどに通知する。
【0016】
EV配車・充電計画システム42は、第1拠点の太陽光発電パネル41の発電量を予測し、配送ルート条件などからEV車44の配車計画とEV充電計画を立案する。拠点4aのように、エンジン車45とEV車44が混在する場合もある。EV配車・充電計画システム42は、どの配送ルートにどの車両を割り当てるか、という配車計画を立案する。EV配車・充電計画システム42は、EV充電計画を立案する際、拠点の消費電力量が契約電力(上限値)を越えないように充電計画を立案する。このEV配車・充電計画システム42は、電気自動車の充電装置と自家発電装置とを管理し、この電気自動車の充電と配車とを計画する第1のEV配車・充電計画システムとして機能する。なお、拠点に設置される自家発電装置は、太陽光発電パネル41や風力発電装置などの再エネ発電装置に限定されず、任意形式の発電装置であってもよい。
【0017】
EV配車・充電計画システム46は、融通計画サーバ2より利用可能な余剰電力量を受け取り、第2拠点の配送ルート条件などからEV車44の配車計画とEV充電計画を立案する。拠点5a,5bのように、エンジン車45とEV車44が混在する場合もある。EV配車・充電計画システム46は、どの配送ルートにどの車両を割り当てるか、という配車計画を立案する。EV配車・充電計画システム46は、EV充電計画を立案する際、拠点の消費電力量が契約電力(上限値)を越えないように充電計画を立案する。EV配車・充電計画システム46は、第2拠点の電気自動車の充電装置を管理し、この電気自動車の充電と配車とを計画する第2のEV配車・充電計画システムとして機能する。
そして融通計画部21は、各EV配車・充電計画システム42から余剰電力を集約して融通可能電力とし、予め定めた優先順位に従って各EV配車・充電計画システム46に対して融通可能電力を提供する。
【0018】
図2Aは、EV配車・充電計画システム42の構成図である。
EV配車・充電計画システム42は、発電予測部421と、電力需要予測部422と、配車計画立案部423と、EV配車・充電計画立案部424と、余剰電力通知部425とを含んで構成される。発電予測部421は、太陽光発電パネル41の発電電力を予測する。電力需要予測部422は、この拠点におけるEV車44の充電電力を含む電力需要を予測する。
【0019】
配車計画立案部423は、何時に、どこに運ぶという配送ルートに関する情報に基づき、どのEV車44を、どの配送ルートへ割り当てるか、という配車計画を立案する。EV配車・充電計画立案部424は、配送情報を満たすようにEV車44の配車計画と充電計画を立案する。余剰電力通知部425は、太陽光発電パネル41の発電電力から、この拠点における電力需要を減算した余剰電力を融通計画部21に通知する。
【0020】
図2Bは、EV配車・充電計画システム46の構成図である。
EV配車・充電計画システム46は、余剰電力受信部461と、電力需要予測部462と、配車計画立案部463と、余剰電力通知部465とを含んで構成される。余剰電力受信部461は、余剰電力を受信する。電力需要予測部462は、この拠点におけるEV車44の充電電力を含む電力需要を予測する。
【0021】
配車計画立案部463は、何時に、どこに運ぶという配送ルートに関する情報に基づき、どのEV車44を、どの配送ルートへ割り当てるか、という配車計画を立案する。EV配車・充電計画立案部464は、配送情報を満たすようにEV車44の配車計画と充電計画を立案する。余剰電力通知部465は、融通計画部21から提供された余剰電力から電力需要を差し引いた新たな余剰電力を融通計画部21に通知する。
【0022】
図3は、電力融通管理システム1が実行するシーケンス図の一例を示す図である。
電力融通管理システム1は、本処理シーケンスを定期的に実行して計画を立案する。本処理シーケンスの実行間隔は例えば数時間~1日に1度、などである。
【0023】
発電予測部421は、過去の電力需要履歴、季節、曜日、時刻、天気などの情報をもとに機械学習機能などにより将来(1日分~数日分、1時間単位など)の太陽光発電量を予測する(ステップS10)。
【0024】
電力需要予測部422は、過去の電力需要履歴、季節、曜日、時刻、天気などの情報をもとに機械学習機能などにより将来(1日分~数日分、1時間単位など)の拠点電力需要量を予測する(ステップS11)。予測機能自体は、別システムにより実現してもよく、本特許の必要構成要素ではない。
【0025】
配車計画立案部423は、何時に、どこに運ぶという配送ルートに関する情報を取得する(ステップS12)。そして、配車計画立案部423は、どのEV車44を、どの配送ルートへ割り当てるか、という配車計画を立案する(ステップS13)。
図1に示したように、拠点にはエンジン車45とEV車44とが混在する場合もある。この場合であっても、配車計画立案部423は、どの配送ルートにどの車両を割り当てるか、という配車計画を立案する。
【0026】
次にEV配車・充電計画立案部424は、配送情報を満たすようにEV車44の配車計画と充電計画を立案する。EV配車・充電計画立案部424は更に、式(1)の制約をもとに充電計画を立案する。
【数1】
【0027】
余剰電力が発生する拠点4aにおける最終的な購入電力量と余剰電力量は、
図4Cに示されており、式(2)で算出される。
【数2】
【0028】
その後、余剰電力通知部425は、この余剰電力量を融通計画部21に通知する(ステップS14)。他の拠点の余剰電力通知部425も、この余剰電力量を融通計画部21に通知する(ステップS15)。
融通計画部21は、余剰電力量を受信する処理を、太陽光発電、風力発電など発電設備を持ち余剰電力を発生可能な拠点の数だけ繰り返した後、余剰電力の総量を算出する(ステップS16)。
【0029】
EV配車・充電計画システム42は、購入電力量が契約電力Enを超過しないように、EVトラック充電計画を立案する。EV配車・充電計画システム42は、配送ルートの走行を満たしかつ購入電力が契約電力Enを超過しないという制約条件を満たす制約充足問題や、最適化問題を解くことで計画を立案する。
【0030】
融通計画部21は、ステップS16で算出した総余剰電力を、余剰電力が発生しない拠点5a,5bなどで利用する。融通計画部21は、融通先の優先順位を確認し(ステップS20)、優先順位に従って各拠点に余剰電力量を通知する(ステップS21)。
【0031】
電力需要予測部462は、過去の電力需要履歴、季節、曜日、時刻、天気などの情報をもとに機械学習機能などにより将来(1日分~数日分、1時間単位など)の拠点電力需要量を予測する(ステップS22)。
【0032】
配車計画立案部463は、何時に、どこに運ぶという配送ルートに関する情報を取得する(ステップS23)。そして、配車計画立案部463は、どのEV車44を、どの配送ルートへ割り当てるか、という配車計画を立案する。
【0033】
次にEV配車・充電計画立案部464は、配送情報を満たすようにEV車44の配車計画と充電計画を立案する(ステップS24)。EV配車・充電計画立案部464は更に、式(1)の制約をもとに充電計画を立案する。そして、余剰電力通知部465は、残りの余剰電力量を融通計画部21に通知する(ステップS25)。
【0034】
融通計画部21は、或る優先度の拠点のEV配車・充電計画システム46の超過需要を差し引いた新たな余剰電力を、次の優先度の拠点のEV配車・充電計画システム46へ提供する処理を繰り返す。融通計画部21は、余剰電力が発生しない全ての拠点5a,5bなどで、EV配車計画とEV充電計画の立案が完了するまで、この処理を繰り返す。余剰電力が少ないか、または余剰電力が無い場合、余剰電力が発生しない拠点は、融通電力なしでEV配車計画を立案することになる。
【0035】
図4Aから
図4Cは、余剰電力が発生する拠点でのEV配車・充電計画立案の概要を示すものである。
余剰電力が発生する拠点4aにおける最終的な購入電力量または余剰電力量は、
図4Aに示すように、拠点の電力需要E
dとEV車の充電量E
cの和から、拠点の太陽光発電量E
pを減算することで算出される。
【0036】
EV配車・充電計画システム42では、購入電力量が契約電力Enを超過しないように、EVトラック充電計画を立案する。EV配車・充電計画システム42は、配送ルートの走行を満たし、かつ、購入電力が契約電力Enを超過しないという制約条件を満たす制約充足問題や最適化問題を解くことで、計画を立案する。
【0037】
図4Aは、拠点の電力需要と充電量の合計のグラフである。グラフの横軸は時刻を示している。グラフの縦軸は拠点の電力需要E
dと充電量E
cの合計を示している。
【0038】
図4Bは、拠点の太陽光発電予測データのグラフである。グラフの横軸は時刻を示している。グラフの縦軸は太陽光発電量E
pの予測値を示している。
【0039】
図4Cは、最終的な購入電力量または余剰電力量のグラフである。グラフの横軸は時刻を示している。グラフの縦軸は、最終的な購入電力量または余剰電力量を示している。なお、グラフの縦軸が正のときには購入電力量を示し、グラフの縦軸が負のときには余剰電力量を示す。最終的な購入電力量または余剰電力量は、上述した式(2)で算出される。
【0040】
図5Aから
図5Cは、余剰電力が発生しない拠点でのEV配車・充電計画立案の概要を示すものである。
【0041】
余剰電力が発生しない拠点5a,5bにおける最終的な購入電力量または余剰電力量は、式(3)で示される。
【数3】
【0042】
EV配車・充電計画システム46では、購入電力量が契約電力Enを超過しないように、EVトラック充電計画を立案する。EV配車・充電計画システム46は、配送ルートの走行を満たし、かつ、購入電力が契約電力を超過しないという制約条件を満たす制約充足問題や最適化問題を解くことで計画を立案する。
【0043】
図5Aは、拠点の電力需要と充電量の合計のグラフである。グラフの横軸は時刻を示している。グラフの縦軸は拠点の電力需要E
dと充電量E
cの合計を示している。
【0044】
図5Bは、余剰電力のグラフである。グラフの横軸は時刻を示している。グラフの縦軸は余剰電力量E
0を示している。
【0045】
図5Cは、拠点の電力需要と充電量の合計から余剰電力を減算した結果のグラフである。グラフの横軸は時刻を示している。グラフの縦軸は、拠点の電力需要と充電量の合計から現在の余剰電力量E
0を減算した結果を示している。なお、グラフの縦軸が正のときには購入電力量を示し、グラフの縦軸が負のときには新たな余剰電力量E
1を示す。
【0046】
ステップS20にて、融通計画部21は、各拠点のパラメータに基づいて、融通先としての優先順位を決定する。優先順位を決定するためのパラメータ例を、以下の
図6から
図12に示す。
【0047】
図6は、各拠点のEVトラックの保有台数のテーブルである。
融通計画部21は、拠点のEVトラックの台数が多いほど消費電力が多く電力融通が必要になるという考えのもと、EV配車・充電計画システム46が管理するEV車の台数が多い順に優先度を決定する。
【0048】
図7は、各拠点のEVトラック蓄電池総容量のテーブルである。
融通計画部21は、拠点のEVトラックの総蓄電池容量が多いほど消費電力が多く電力融通が必要になるという考えのもと、EV配車・充電計画システム46が管理するEVトラックの蓄電池総容量が多い順に優先度を決定する。
【0049】
図8は、各拠点の平均総配送距離のテーブルである。
拠点の平均総配送距離とは、その拠点の各トラックが荷物を配送するために走行した距離(配送距離)の総和の平均値のことをいう。融通計画部21は、拠点の1日あたりの平均総配送距離が多いほどEVトラックの消費電力が多くなり電力融通が必要になるという考えのもと、EV配車・充電計画システム46が管理する平均総配送距離が長い順に優先度を決定する。
【0050】
図9は、各拠点のICE平均燃費のテーブルである。
融通計画部21は、拠点のICE(エンジン車)の平均燃費が低いほどCO
2排出量が多く,EVトラックによる走行が必要となり消費電力が増えるという考えのもと,EV配車・充電計画システム46が管理するエンジン車の平均燃費の値が小さい順に優先度を決定する。
【0051】
図10は、各拠点の契約電力平均空き容量のテーブルである。
融通計画部21は、拠点の契約電力の平均空き容量が小さいほど、契約電力超過リスクが高く電力融通を必要とするという考えのもと、EV配車・充電計画システム46が管理する契約電力に対する平均空き容量の値が小さい順に優先度を決定する。
【0052】
図11は、各拠点の再生エネルギー電力比率のテーブルである。
融通計画部21は、再生エネルギー電力比率の低い拠点ほど,CO
2排出量削減のために再生エネルギー余剰電力の融通が必要という考えのもと、EV配車・充電計画システム46が管理する拠点の再生エネルギー電力比率の値が小さい順に優先度を決定する。なお、再生エネルギー電力比率R
rは、以下の式(4)で算出される。
【数4】
【0053】
なお、購入再エネ電力量とは、小売電気事業者から購入した再エネ電力量のことをいう。
【0054】
図12は、各拠点の1日当たりの総EV充電量の平均値のテーブルである。
融通計画部21は、1日当たりの総EV充電量の平均値が多い拠点ほど電力消費が大きいという考えのもと、平均総EV充電量の平均値が大きい順に優先度を決定する。
また、融通計画部21は、各EV配車・充電計画システム46の優先順位を、このEV配車・充電計画システム46が管理する第2拠点にて契約している電力プランのCO
2原単位をもとに決定してもよい。
なお、融通計画部21は、上記のパラメータそれぞれに限定されず、これら複数のパラメータのうち何れかを選択して重み付けして得られた評価値を元に、優先度を決定してもよく、限定されない。
【0055】
(変形例)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0056】
上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路などのハードウェアで実現してもよい。上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈して実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、フラッシュメモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)などの記録媒体に置くことができる。
【0057】
各実施形態に於いて、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 電力融通管理システム
2 融通計画サーバ
21 融通計画部
4a 拠点 (第1拠点)
5a,5b 拠点 (第2拠点)
41 太陽光発電パネル
42 EV配車・充電計画システム (第1のEV配車・充電計画システム)
421 発電予測部
422 電力需要予測部
423 配車計画立案部
424 EV配車・充電計画立案部
425 余剰電力通知部
43 充電装置
44 EV車
45 エンジン車
46 EV配車・充電計画システム (第2のEV配車・充電計画システム)
461 余剰電力受信部
462 電力需要予測部
463 配車計画立案部
464 EV配車・充電計画立案部
465 余剰電力通知部