(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170257
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理システムおよびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/047 20230101AFI20241129BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20241129BHJP
【FI】
G06Q10/047
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087320
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】596130185
【氏名又は名称】株式会社 ヴァル研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 紀行
(72)【発明者】
【氏名】戎子 さやか
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L010AA04
5L049AA04
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】ユーザが、予備知識が無くても提示されれば最適と思う情報に容易に到達できるようにする。
【解決手段】ユーザ端末100を操作するユーザが転居の候補地物件を探すために情報処理装置1にアクセスすると、情報処理装置1は、ユーザの居住地の属性およびPOIを情報取得部13で取得し、解析部14が、上記属性を解析することにより所定時間内に1つ以上のPOIへ訪問可能な候補地物件の条件候補を生成する。そして、提示部17が、この条件候補をユーザ端末100へ提示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの行動の本拠となり得る第1拠点の属性および前記ユーザのPOIを取得する取得手段と、
前記第1拠点とは異なる拠点であって1つ以上の前記POIへの訪問が可能な第2拠点を探すための条件候補を前記属性を解析することにより生成する解析手段と、
生成された前記条件候補を前記ユーザが操作する情報端末へ提示する提示手段と、
を備えた情報処理装置。
【請求項2】
前記取得手段は、前記属性、前記POIおよび当該POIへの訪問履歴を、前記情報端末または当該情報端末と連携するサードパーティアカウント提供サービスシステムを通じて取得する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記条件候補は、前記ユーザの個人属性に基づいて当該ユーザ用に個性化された語、または、上位概念化された既存語を含み、
前記解析手段は、前記情報端末から前記条件候補の修正を受け付けたときは、当該条件候補を修正する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記情報端末に提示した前記条件候補又は修正した前記条件候補に対応する前記第2拠点の探索を行う探索手段をさらに備える、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記提示手段は、前記探索手段により探索された前記第2拠点の情報を、当該第2拠点が存在するエリアに絞って前記情報端末へ提示する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記提示手段は、前記探索手段により探索された前記第2拠点の情報を、拠点数に応じて異なる態様で提示する、
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記第1拠点が前記ユーザの居住地であり、前記第2拠点が前記ユーザの転居候補地物件である、
請求項1から6のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記解析手段は、前記訪問履歴から直近の前記POIまでの移動所要時間が所定時間内となる1つ以上の交通ノードを特定するとともに、特定した交通ノードからの前記移動所要時間の総和に基づいて前記条件候補を生成する、
請求項2から6のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記解析手段は、前記訪問履歴から判明する訪問頻度、所定期間内の訪問回数、前記POI毎の滞在時間の少なくともいずれかに基づく尺度で前記1つ以上の交通ノード拠点からの前記移動所要時間を補正し、補正した前記移動所要時間の総和に基づいて前記条件候補を生成する、
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1から6のいずれか一項に記載の情報処理装置として機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項11】
通信機能、情報処理機能、情報表示機能、位置検出機能を有するコンピュータを、請求項1から6のいずれか一項に記載の情報処理装置と通信可能な前記情報端末として機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項12】
ユーザの行動の本拠となり得る第1拠点の属性および前記ユーザのPOIを取得する第1装置と、
前記第1拠点とは異なる拠点であって1つ以上の前記POIへの訪問が可能な場所に存する第2拠点を探すための条件候補を前記属性に基づいて生成する第2装置と、
生成された前記条件候補を前記ユーザが操作する情報端末へ提示する第3装置と、
を備えた情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが、予備知識が無くとも提示されれば最適と思う情報に容易に辿り着けるようにする情報処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
転居を検討中の者に、不動産業者が提供する賃貸住宅等の不動産物件の情報をインターネットを通じて提供することがよく行われている。例えば入力された条件に適合した不動産物件の情報が、その地域の施設等と共に地図情報上に表示されることが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている不動産情報提供システムのように、不動産物件の情報を提供するシステムでは、物件探索に際して、転居を検討中の者や不動産業者の担当者(これらの者を「ユーザ」と総称する)による条件の都度入力やシステム側が特定した「よくある条件」等の入力が前提となる。条件としては、例えば、「沿線・エリア」、「通勤・通学時間」、「家賃相場」、「病院/学校/幼稚園/文化・スポーツ施設や生活用品購入店の有無」等がある。
【0005】
このような条件は、転居先に土地勘があって条件がクリアになっているユーザであれば問題なく入力できるが、そのようなユーザばかりであるとは限らない。不動産物件が存在する地域に関する予備知識がないユーザにとっては、希望する不動産物件の情報に辿り着くために、どの沿線・エリアを選択すればよいか、どのくらいの通勤・通学時間や家賃相場にしたらよいか等を入力すればよいかが判らないことが多いと思われる。
このような問題は、不動産物件のみならず、ユーザが辿り着きたいと願うさまざまな対象、たとえばユーザの今後の行動の拠点となり得る対象についても同様に生じ得る。
【0006】
本発明は、上記背景のもと、ユーザが、対象に関する予備知識の有無にかかわらず、提示されれば最適と思う対象に関する情報に容易に辿り着けるようにする情報処理技術の提供を主たる課題とする。本発明の他の課題は、本明細書の開示から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様は、ユーザの行動の本拠となり得る第1拠点の属性および前記ユーザのPOIを取得する取得手段と、前記第1拠点とは異なる拠点であって1つ以上の前記POIへの訪問が可能な場所に存する第2拠点を探すための条件候補を前記属性に基づいて生成する解析手段と、生成された前記条件候補を前記ユーザが操作する情報端末へ提示する提示手段と、を備えた情報処理装置である。
「行動の拠点」は行動のために必要となる地域、場所、施設等であり、「本拠」はその中心的な役割を果たす拠点である。「POI(=Point Of Interest)」は、例えばユーザが関心を持っていること、つまり行動の目的となっていることが推定される地域、場所、施設等である。なお、行動の拠点およびPOIは、拠点やPointの語義からは比較的狭い地点と解され得るが、これらに限らない。例えば、行政区等の比較的広い地点を含んでもよいし、地域や行政区で開催されるイベント等を含んでもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ユーザが、予備知識の有無にかかわらず、提示されれば最適と思う対象に関する情報に容易に到達できるようにする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の情報処理装置を含むコンピュータネットワーク環境の説明図。
【
図2】POI-DBに格納されている階層カテゴリーの例示図。
【
図3】(a)~(d)はユーザ端末に表示される入力画面の例示図。
【
図4】(a)~(d)はユーザ端末に表示される入力画面の例示図。
【
図7】(a)~(d)はユーザ端末に表示される入力画面の例示図。
【
図8】(a)~(d)はユーザ端末に表示される入力画面の例示図。
【
図10】POIへの訪問頻度、順序尺度、所要時間の倍率、POIまでの所要時間(補正前)、POIまでの所要時間(補正後)の例示図。
【
図11】補正前の候補地駅毎の4つのPOIまでの合計所要時間の例示図。
【
図12】補正後の候補地駅毎の4つのPOIまでの合計所要時間の例示図。
【
図13】探索された物件に関する情報のリスト形式による提示の例示図。
【
図14】探索された物件に関する情報のマーカークラスター形式の提示の提示図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、ユーザの行動の本拠となり得る第1拠点がそのユーザの居住地であり、第2拠点がそのユーザによる今後の本拠となり得る転居の候補地物件である場合に、候補地物件に関する情報をユーザの依頼に応じて提示する情報処理装置に適用した場合の例を挙げる。
この例は、ユーザが現実に生活している居住地の属性(現住所における生活環境等)や日々の行動履歴のような情報にはそのユーザの候補地物件の条件が内包されている可能性が高いことが強く推認される点に着目したものである。なお、以後の説明では、POIや候補地物件を訪れる際に利用する交通車両が離発着する交通ノードを「駅」と表記するが、バス停その他の離発着所の名称の一例と捉えられるものである。
【0011】
[全体構成]
図1は、本実施形態の情報処理装置1を含むコンピュータネットワーク環境の説明図である。情報処理装置1は、インターネット等のコンピュータネットワークNに接続されるコンピュータである。コンピュータネットワークNには、情報処理装置1のほか、ユーザが操作するユーザ端末100、不動産DB(DBはデータベースの略。以下同じ)200、地
図API(APIはApplication Programming Interfaceの略。以下同じ)300、各種の情報サイト400が適宜接続可能とされている。
【0012】
ユーザ端末100は、例えばスマートフォン、タブレット等に代表される携帯型の情報端末であり、通信機能、ストレージ機能、情報処理機能、情報表示機能、位置検出機能、ロケーション履歴機能を有する。通信機能は、コンピュータネットワークNに接続された装置(情報処理装置1を含む)と通信を可能にする機能である。ストレージ機能は、端末内ストレージへの情報の記録および記録情報の読み出しを行う機能である。情報処理機能は、端末用コンピュータプログラムを実行することにより、ユーザの行動の本拠となり得る第1拠点がそのユーザの居住地であり、第2拠点がそのユーザによる転居の候補地物件である場合に、候補地物件に関する情報を、情報処理装置1との協働で提示する機能を端末内で実現する。情報表示機能は、ディスプレイおよびその制御手段を含む。位置検出機能は、GPS信号受信ユニットを含む。ロケーション履歴機能は、ユーザ端末100の位置検出機能と併用して訪れた場所、店舗、ビル名、商標施設その他の施設(以下、「施設等」と略す。)や移動経路を時系列の行動履歴として端末内ストレージに記録する機能である。
【0013】
不動産DB200は、不動産事業者が提供する居住用物件の案内情報を、コンピュータネットワークNを通じてアクセス者へ提供する。不動産DB200には、物件情報として、例えば居住用物件毎の募集状況(募集中/募集終了)、エリア、所在地、最寄駅、専有面積、築後年数等が格納されている。
【0014】
地
図API300は、ユーザ端末100に対して上記のロケーション履歴を提供するAPIサービス提供システムの一つである。本例では、例えば国土地理院が提供する、地図や空中写真等が閲覧可能な地理院地図(Web地図)に文字、図形、記号、シンボル等をマッピングして提供する機能を基に説明するが、コンピュータネットワークNには、様々な事業者がほぼ同様のロケーション履歴の提供サービスシステムを接続しているので、そのような事業者の提供サービスシステムを地
図API300として利用することもできる。
【0015】
情報サイト400は、例えば物件探し用のWebサイトであり、施設、組織、店舗等に関する情報を提供する。情報サイト400の中には、サードパーティアカウントと連携可能なWebサイトも存在する。サードパーティアカウントとは、Webサイトの利用者がそのWebサイト以外の他のサービスに登録しているアカウントをいう。このような情報サイト400では、サードパーティアカウントで不動産DB200や地
図DB300にログインすることができる。ユーザがこのような情報サイト400にサードパーティアカウントでログインした場合、ユーザの同意があれば、つまり、このような情報への連携および同意をユーザに求める画面をユーザ端末100に提示するとともに該画面を通じて同意の意思を示す操作入力があれば、サードパーティアカウント提供サービスに関する情報(例えば、サイト閲覧履歴等)が連携可能となる。この場合、地
図API300に代えて、あるいは地
図API300と共に、このような情報サイト400を利用することもできる。
【0016】
<情報処理装置の構成例>
情報処理装置1の構成例について説明する。情報処理装置1は、例えばサーバであり、コンピュータネットワークNとの接続を可能にする通信機能部品のほか、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read only memory)、RAM(Random Access Memory)、大容量のストレージおよびこれらの入出力インタフェースを有するコンピュータユニットを有する。このコンピュータユニットが本発明の物件探索用プログラムを読み込んで実行することにより、情報処理装置1を、通信制御部11、受付部12、情報取得部13、解析部14、探索部15、編集部16、提示部17、主制御部18として機能させる。また、ストレージに、ユーザDB21,運行情報DB22、POI-DB23を構築する。
【0017】
ユーザDB21には、登録したユーザの情報、例えば当該ユーザが操作するユーザ端末100から取得した上記の行動履歴と、行動履歴の分析結果または解析結果が時系列に格納されている。本明細書では、登録したユーザを「登録ユーザ」と呼ぶ場合がある。ユーザDB21には、登録ユーザ毎の現在の居住地の属性を格納してもよい。
【0018】
現在の居住地の属性は、登録ユーザの現住所から判明する現在の生活環境の特徴を表す。居住地の属性は、例えば住宅種別(戸建、集合住宅、自己保有、賃貸・・・)、広さ(○○m2・・・)、階数(平屋、○階建・・・)、利用可能な駐車場の数、地域(住宅地域、商業地域、農業地域・・・)、利用可能な商業施設までの距離、利用可能な病院、学校、幼稚園、スポーツ施設、公園等までの距離、公共交通機関(鉄道、バス、・・・)の利便性(徒歩圏内の駅数・・・)、現住所の地域における住所固定資産税、健康保険税・・・のような情報の少なくとも1つ以上である。このような居住地の属性は、登録ユーザの現住所をキーに不動産DB200から情報処理装置1が取得した物件情報の一部であるが、物件情報の一部をキーに情報サイト400から情報処理装置1が取得した情報を含んでもよい。ユーザが登録ユーザである場合にそのユーザから入力されてもよく、不動産DB200や情報サイト400を通じてユーザ端末100が取得した情報であってもよい。
【0019】
なお、本実施形態において、ユーザの登録は必ずしも不可欠ではなく、処理の依頼を受け付けたときに、ユーザ端末100から自己の居住地の属性等を取得する態様であってもよい。
【0020】
運行情報DB22には、鉄道、バスその他の公共交通車両の駅(停留所その他のノードを含む。以下、便宜上「駅」と総称する。)、路線毎の時刻表等が格納されている。上述した情報サイト400の一つが運行情報を提供するWebサイトである場合、その情報サイト400を利用することにより運行情報DB22を不要とすることができる。
【0021】
POI-DB23は、各ユーザが抱く関心(POI)の手がかりとなる概念を代表するカテゴリー(語または語句)が、テーマ/ジャンル/分野/地域・・・のような系統毎に階層的に格納された、いわゆるシソーラスであり、例えば、上述したユーザの行動履歴に含まれる訪問地(移動の目標地と推定されるカテゴリー)がどのPOIに属するかを判別する場合等に参照される。
【0022】
POI-DB23には、上位層になるほど抽象化されたカテゴリーが格納される。これらのカテゴリーを「階層カテゴリー」と呼ぶことがある。POI-DB23に格納されている階層カテゴリーの例を
図2に示す。
図2は、「東京近郊の生活環境」の下位層に「暮らし」、「遊ぶ」、「学ぶ」が格納されている。「暮らし」の下位層には、日々の暮らしに関係する「役所」、「病院」、「学校」が格納されている。「遊ぶ」の下位層には「テーマパーク」、「スポーツ施設」、「その他ランドマーク」が格納されている。「学ぶ」の下位層には「図書館」、「動物園、水族館、植物園」、「博物館、美術館、資料館」が格納されている。なお、「動物園、水族館、植物園」、「博物館、美術館、資料館」は、それぞれ独立に格納されていることもある。また、「遊ぶ」の下位層となる「スポーツ施設」のさらなる下位層には、「野球場」、「サッカー場」、「グラウンド」、「体育館」、「武道場」が格納されている。また「野球場」の下位層には「東京ドーム」、「西武球場」、「神宮球場」、「横浜スタジアム」が格納されている。
【0023】
他の系統の階層カテゴリーについても、
図2と同様の構造でPOI-DB23に格納されている。例えば「小売店」というカテゴリーがあり、その下位層の一つにデパート、スーパー(スーパーマーケット)、ドラッグストア、専門店があるときに、例えばスーパーの下位層に「総合スーパー」、「食品スーパー」、「コンビニ(コンビニエンスストア)」が格納され、さらに各下位層に「○○スーパー○○店」のように細分化されたカテゴリーが格納される。
上述した情報サイト400の一つがカテゴリーを提供するWebサイトであり、ユーザ端末100の行動履歴に、その情報サイト400に基づくカテゴリーが特定されている場合、それらの情報サイト400をPOI-DB23と併用するか、あるいは、その情報サイト400をPOI-DB23に代えて利用してもよい。
【0024】
図1に示される情報処理装置1の各機能は、以下の通りである。
通信制御部11は、コンピュータネットワークNに接続された通信相手との間の通信を制御する。
【0025】
受付部12は、ユーザ端末100を通じて入力されたユーザの登録依頼に基づいてそのユーザの情報、例えば居住地の属性、個人属性、所定期間における行動履歴等を当該ユーザ端末100から受け付ける。居住地の属性や個人属性は、あらかじめ定めた書式の欄への記入ないし選択により入力することができる。行動履歴は、例えば、当該ユーザ端末100が取得して保持している地図データ上の1つ以上の訪問地およびその位置(住所)、各訪問地への訪問履歴(滞在時間を含む)および時系列な移動経路を含む履歴等である。
【0026】
受け付けたユーザの情報は、ユーザDB21にユーザ識別情報と関連付けて格納される。受付部12は、また、登録ユーザかそうでないユーザかを問わず、ユーザ端末100から候補地物件に関する情報、例えば候補地物件の条件候補の提示依頼、提示後の条件候補の修正依頼、候補地物件の探索依頼、探索された候補地物件に関する情報の提示依頼その他の処理依頼を受け付ける。
【0027】
情報取得部13は、コンピュータネットワークNを通じて、ユーザ端末100、不動産DB200、地
図API300、情報サイト400から各種情報を取得する。
情報取得部13は、また、情報処理装置1が具備するコンピュータユニット内の入出力インタフェースを通じて、図示しない入力デバイス(キーボード等)、ユーザDB21,運行情報DB22、POI-DB23および他の機能ブロックから情報を適宜取得する。
【0028】
本例では、例えば候補地物件の探索依頼を行ったユーザの居住地の属性と1つ以上のPOIに関する情報とを取得する。これらの情報は、登録ユーザの場合、その登録ユーザが操作するユーザ端末100またはユーザDB21から取得することできる。登録ユーザでないユーザからの提示依頼であった場合、そのユーザがアクセスしたユーザ端末100、あるいはそのユーザ端末100と地
図API200あるいは情報サイト400のような端末外システムとから取得することができる。
【0029】
解析部14は、情報取得部12が取得した情報を目的に応じて解析する。本例では、ユーザの居住地の属性、あるいは、ユーザの居住地の属性とそのユーザの行動履歴とを解析する。そしてこれにより、所定時間内に1つ以上のPOIへ訪問可能な候補地物件を検索または探索するための条件候補を生成し、条件候補の修正依頼を受け付けたときは、該条件候補を再生成する。
条件候補は、候補地物件に関して既存の物件(拠点)情報を探索する際に使用される条件の一部または全部をユーザ用に個性化したものとすることができる。「個性化」とは、いわゆるパーソナライズであり、例えば既存の語をそのユーザの属性に合わせて別の表現にすること(最適化と呼ばれることがある)である。例えば上述した「スポーツ施設」または「野球場」を「西武球場」のように修正することが「個性化」の例として挙げられる。条件候補は、そのユーザが独自に使う表現をより一般的な表現にしたもの、つまり上位概念化あるいは抽象化したものであってもよい。例えば上述した「○○スーパー○○店」を「食品スーパー」あるいは「スーパー」に修正して表記することが、一般的な表現に修正することの例として挙げられる。
なお、修正した語は、解析部14が選定したものなので、ユーザの意図に沿わない場合、解析部14は、ユーザ端末100からの修正指示に従ってその語を再修正した後に再提示してもよい。また、「検索」は対象が判明している情報を探す処理であり、「探索」は対象が判明していない情報を探す処理であるが、両者を厳密に区別する必要がない場合は「探索」と表記する。
【0030】
探索部15は、目的に応じた情報の探索処理を行う。本例では、ユーザ毎のPOIの探索、ユーザが入力した探索の条件あるいは解析部14が生成した条件候補に対応する候補地物件の探索、候補地物件から利用可能な候補駅の探索、候補地駅から候補地物件までの移動経路等の探索等を行う。なお、条件候補の修正を受け付けた場合、探索部15は、修正された条件候補に対応する候補地物件の探索を行うことになる。これらの探索の具体例については、後で詳しく説明する。
【0031】
編集部16は、処理依頼をしたユーザ端末100のOS(Operating System)に応じた提示対象情報の編集処理を行う。本例では、ユーザ端末100に対して各種入力用の提示画面、情報の提示画面その他の画面の内容およびレイアウトを編集する。提示画面には、対応する操作を促すための各種のボタン画像が含まれる。
編集部16は、また、探索部15により探索された情報、本例では候補地物件に関する情報を、当該候補地物件が存在するエリアに絞って提示画面に提示されるように編集する。編集部16は、また、候補地物件の情報を、特定された物件数に応じて異なる態様で提示されるように編集する。
【0032】
提示部17は、ユーザ端末100に対して編集部16で編集された提示画面をユーザ端末100のディスプレイへ提示させる。
主制御部18は、通信制御部11、受付部12、情報取得部13、解析部14、探索部15、編集部16、提示部17の機能を統括的に制御する。そのため、情報処理装置1が実行する処理ないし制御という場合、主制御部18の処理ないし主制御部18による制御と読み替えることができる。
【0033】
[使用形態]
次へ、上記のように構成される情報処理装置1の使用形態例を説明する。情報処理装置1が実行する処理には、物件探索の条件確定のための処理と物件探索処理とが含まれる。以下、これらの処理の内容を具体的に説明する。
【0034】
<条件確定のための処理>
ユーザ端末100を通じて物件探索の依頼を受け付けると、情報処理装置1は、そのユーザ端末100のディスプレイに
図3(a)~(d)に例示した入力画面を表示させる。
図3(a)の例ではディスプレイ500に「条件から探す」のボタン画像511と、「条件候補を出す」のボタン画像512とが示されている。「条件から探す」のボタン画像511は、転居先に土地勘があって条件がクリアになっているユーザに適した内容のもので、それが操作されると、転居地における「沿線・エリア」、「通勤・通学時間」、「家賃相場」、「病院/学校/幼稚園/文化・スポーツ施設や生活用品購入店の有無」等の入力画面が表示される。このような入力画面は、上述した従来技術とほぼ同様なので、図示を省略する。
【0035】
一方、
図3(a)に矢印で示したように「条件候補を出す」のボタン画像512が操作されると、ディスプレイ500の入力画面が
図3(b)に示す位置情報の連携の可否を尋ねる二択画面に遷移する。
図3(b)の「いいえ」のボタン画像514が操作されると、
図3(a)に示した「条件から探す」のボタン画像511が操作されたときと同様の入力画面に遷移する。
【0036】
他方、
図3(b)の「はい」のボタン画像513が操作されると、情報処理装置1は、ユーザ端末100あるいはユーザDB21に保存されている当該ユーザの行動履歴を参照し、
図3(c)に示す訪問頻度の高い訪問地とその住所をユーザ端末100のディスプレイに表示させる。
図3(c)において「自宅」は訪問地のうち訪問回数が多い住宅地であり、「勤務先」は自宅の次へ訪問回数が多い施設であり、「〇〇球場」と「〇〇スーパー〇〇店」は、所定期間に複数回数訪れた施設である。訪問頻度は、所定期間(例えば、1週間、1ヶ月、6ヶ月、1年のような基準期間)内の訪問回数である。自宅からの訪問頻度と自宅以外の場所からの訪問頻度の少なくとも一方あるいは両者の合算値であってよい。
【0037】
これらの提示内容を物件探索の条件候補に含めることに同意する場合、ユーザは、「OK」のボタン画像580を操作することになる。この操作入力を契機に、情報処理装置1は、ユーザ端末100に表示させる入力画面を
図3(d)に例示される画面に編集して提示する。数値等は、例えばユーザの居住地の属性または統計値等に基づいて解析部14により算出され、自動入力される。エリアの住所は、自宅の現住所が自動入力されるが、空白であってもよい。ユーザは、
図3(d)の「修正」の画像ボタン582を操作してカテゴリーを削除したり、数値等を適宜修正することができる。
【0038】
図4(a)、(b)は、
図3(d)の入力画面において「修正」の画像ボタン582が操作されたときの条件候補の入力画面例を示す。
図4(a)は
図3(d)に比べて「〇〇球場」のカテゴリーが削除されている。これは、例えば、当該地域への予備知識がないユーザの操作によるものである。
図4(a)の入力画面において「〇〇スーパー〇〇店」のカテゴリー521は、
図4(c)の「スーパー」531と「ドラッグストア」532のように、抽象化(上位概念化)されて提示される。抽象化や自動修正は、例えば解析部14により実行される。
【0039】
他方、
図4(b)は、逆に当該地域への予備知識のあるユーザの操作によるものであり、当該ユーザにより「西武球場」のカテゴリー522と「横浜スタジアム」のカテゴリー523とが追記されている。これらのカテゴリーが追記されると、解析部14により所要時間が自動的に計算され、入力される。また、
図4(b)の入力画面において、ユーザが例えば「勤務先」までの所要時間を修正すると、
図4(d)のように、他のカテゴリーまでの所要時間も解析部14により自動的に修正される。
提示された条件候補についてユーザが納得したときは、「確定」の画像ボタン581が操作され、当該条件候補が保存される。
【0040】
<物件探索処理>
次へ、物件探索処理について説明する。物件探索処理は、上記の条件確定のための処理の後に実行してもよく、あるいは、上記の条件確定のための処理とは独立のタイミングで実行してもよい。ここでは、便宜上、後者の例を示す。
【0041】
図5は物件探索処理の全体手順例を示す図である。
図5を参照すると、情報処理装置1は、ユーザ端末100のストレージあるいはユーザDB21にそのユーザの行動履歴が保存されているかどうかを判別する(S101)。行動履歴が保存されている場合(S101:Y)、情報処理装置1は、ユーザの現在の居住地の情報を取得するとともに、保存されている行動履歴からユーザのこれまでの訪問地と各訪問地への訪問頻度の情報を取得する(S102)。
【0042】
現在の居住地は上記の「自宅」の現住所であってよい。訪問地は、ユーザの移動の目標地で当該ユーザが何らかの形で関わりを持つ場所であることが強く推認されることから、当該場所をユーザのPOIとみなすことができる。そのため、情報処理装置1は、POI-DB23を参照して、当該訪問地のカテゴリーをそのユーザのPOIとしてユーザの識別情報と関連付けて保存することができる。訪問頻度については、上述した通りである。
【0043】
現在の居住地および訪問頻度を正しく取得できた場合(S103:Y)、情報処理装置1は、現在の居住地の属性を取得する(S104)。居住地の属性は、例えば上述した環境属性とすることができる。情報処理装置1は、この居住地の属性を転居候補物件、すなわち探索の対象となる物件の属性とみなし、この属性をPOIと関連付けて保存した後(S105)、S106の処理に移る。S104で取得した居住地の属性の一部または全部は、後で数値演算ができるように定量化されていてもよい。
【0044】
S101において、ユーザの行動履歴が保存されていない場合(S101:N)、あるいは、S103においてPOIおよび訪問頻度を正しく取得できなかった場合(S103:N)、情報処理装置1は、POI受付処理(S120)を実行する。
【0045】
ここで、
図6の詳細手順例、
図7~
図8の画面例を参照して、POI受付処理S120の内容を具体的に説明する。
図6を参照すると、情報処理装置1は、ユーザ端末100のディプレイにPOI受付用の入力画面を表示させる(S201)。表示された入力画面において、キーワード入力が選択された場合(S201:Y)、情報処理装置1は、ユーザ端末100の入力画面をキーワード入力領域が表示された画面に遷移させる。その後、情報処理装置1は、入力キーワードを基にシソーラス検索を行う(S202)。入力キーワードは、ユーザが感覚的に決めたフリーキーワードであってよい。シソーラス検索は、入力キーワードと意味合いが所定範囲で類似するカテゴリーが、シソーラス辞書であるPOI-DB23あるいはWebサイト400に存在するかどうかを検索する処理である。シソーラス検索により該当するカテゴリーの存在が確認された場合(S203:Y)、情報処理装置1は、そのカテゴリーを読み出して保存する(S204)。
【0046】
一方、S201において、カテゴリー入力が選択され、かつユーザ端末100からカテゴリーが入力された場合(S220:Y)、情報処理装置1は、そのカテゴリーを保存する(S221)。S204またはS221においてカテゴリーが保存されると、情報処理装置1は、ユーザ端末100からそのカテゴリーの選択承認を受け付ける(S205)。そして、POI-DB23を参照して入力カテゴリーの下位層のカテゴリーが存在するかどうかを判定する(S206)。入力カテゴリーの下位層のカテゴリーが存在する場合(S206:N)、S221の処理に戻り、下位層のカテゴリーの選択画面をユーザ端末100へ提示する。また、S203においてPOI-DB23に、適切なカテゴリーが存在しない場合(S203:N)、情報処理装置1は、S201の処理に戻り、新たなキーワードの入力を促す画面をユーザ端末100へ表示させる。
【0047】
S206において、下位層のカテゴリーがないと判定した場合(S206:Y)、情報処理装置1は、カテゴリーに適合する施設等の数を判別する(S207)。施設等の数が1つだけの場合(S207:Y)、情報処理装置1は、その施設等をユーザ端末100へ提示する(S208)。他方、施設等が2つ以上の場合(S207:N)、情報処理装置1は、施設等の選択画面をユーザ端末100へ提示し、いずれか1つ以上の施設等の選択を依頼する(S230)。S208またはS230による提示に基づき、ユーザ端末100から承認(OK)が入力されると、情報処理装置1は、施設等の選択承認の受付処理を行う(S209)。
【0048】
S220において、カテゴリー入力も選択されない場合(S220:N)、情報処理装置1は、ユーザにとって関心のある施設等またはその住所を直接入力させるように促すメッセージをユーザ端末100に表示させる(S240)。
これらの情報が入力されると、情報処理装置1は、入力された施設等が、例えば地
図API300に存在するかどうかの探索を行い、存在しない場合は再入力を促すためにS240の処理に戻る(S241:N)。施設等が探索された場合は、S210の処理に移る(S241:Y)。
S210では、1つ以上の施設等をPOIとして設定する。ユーザ端末100を通じて他のキーワード等の受付を希望する場合はS201以降の処理を繰り返し(S211:N)、上記希望がない場合(S211:Y)、POI受付処理を完了させる。
【0049】
図7(a)は、S201で表示されるPOI受付用の入力画面例である。この入力画面は、ユーザ端末100のディスプレイ500に表示される。図示の例では、「キーワードから探す」の画像ボタン540、「カテゴリーから探す」の画像ボタン550、「直接入力する」の画像ボタン560が表示されている。「直接入力する」の画像ボタン560が操作されると、S220において入力される直接入力画面(図示省略)に遷移する。
【0050】
図7(a)に矢印で示したように、ディスプレイ500上で「キーワードから探す」の画像ボタン540が操作されることで、情報処理装置1は、キーワード入力が選択されたことを検知し(S201:Y)、入力画面を
図7(b)のように遷移させる。
図7(b)の例では、ユーザ端末100において、キーワード入力部541にキーワード「野球」が入力され、「次へ」の画像ボタン544が操作されると、ディスプレイ500の画面が
図7(c)のように遷移する。
図7(c)の例では、
図2に例示された「野球場」のボタン画像542とその上位層の「スポーツ施設」のボタン画像543とが表示されている。「次へ」の画像ボタン544は、下位層のカテゴリーがPOI-DB23に格納されている場合にのみ表示される。そのため、ユーザは、表示されているカテゴリーにさらに下位層のカテゴリーが存在することを知ることができる。
【0051】
図7(c)に矢印で示すように、ユーザが「野球場」のボタン画像542を操作すると、S202のシソーラス検索が実行され、
図7(d)のようにディスプレイ500の画面が、最下位層のカテゴリー選択用の入力画面に遷移する。図示の例では、「東京ドーム」のボタン画像5421、「西武球場」のボタン画像5422、「神宮球場」のボタン画像5423、「千葉マリンスタジアム」のボタン画像5424が表示されている。追加したい場合、ユーザは「追加」のボタン画像545を操作する。矢印で示された野球場でよい場合、ユーザは、「選択完了」のボタン画像546を操作する。選択完了したカテゴリーがS204の処理として保存される。
【0052】
図8(a)は、S201で表示されるPOI受付用の入力画面例において、「カテゴリーから探す」の画像ボタン550が操作されたことを示す。また、
図8(b)は、カテゴリーの一例として「暮らし」のボタン画像551、「遊ぶ」のボタン画像552、「学ぶ」のボタン画像553が表示され、その中から「遊ぶ」のボタン画像552が操作されたことを示している。
図8(c)は、
図2に示される「遊ぶ」の下位層の3つのカテゴリー、すなわち、「テーマパーク」のボタン画像561、「スポーツ施設」のボタン画像562、「その他ランドマーク」のボタン画像563が表示され、そのうち「スポーツ施設」のボタン画像562が操作されたことを示している。下位層のカテゴリーが存在するため、「次へ」のボタン画像564が表示される。
【0053】
図8(d)は、「スポーツ施設」の下位層のカテゴリーが表示されている。すなわち、「野球場」のボタン画像5621、「サッカー場」のボタン画像5622、「グラウンド」のボタン画像5623、「体育館」のボタン画像5624、「武道館」のボタン画像5625が表示され、そのうち「サッカー場」のボタン画像5622と「グラウンド」のボタン画像5623と「体育館」のボタン画像5624とが操作されたことを示している。下位層のカテゴリーが存在する「野球場」のボタン画像5621が操作されていないことから、「次へ」のボタン画像はなく、「追加」のボタン画像565と、「選択完了」のボタン画像566が表示される。「選択完了」のボタン画像566が操作された場合、選択されたカテゴリーがS221の処理として保存される。
【0054】
図5に戻り、POI受付処理(S120)が完了すると、情報処理装置1は、ユーザ端末100を通じて探索を希望する物件の属性の入力を受け付け(S121)、それを保存した後、処理をS106に移す。この物件の属性の一部または全部は、後で数値演算ができるように定量化されていてもよい。
【0055】
S106では、POIと物件の属性を正しく取得できたかどうか、つまり正しく取得して保存できたかどうかを判定する。POIと居住地の属性とが正しく取得され、保存されている場合(S106:Y)、情報処理装置1は、保存されているPOIの数を判定する(S107)。
【0056】
POIの数が2以上の場合(S107:Y)、情報処理装置1は、各POIについて訪問頻度の情報が保存されているかどうかを判定する(S108)。各POIについての訪問頻度の情報が保存されている場合(S108:Y)、情報処理装置1は、例えば訪問頻度の差が所定値M未満かどうかを判定する(S109)。所定値Mは、訪問頻度の差を補正する必要があるかどうかを判定するための基準値あり、ユーザが任意に設定した数値を用いることができる。例えば、訪問頻度の差が基準値を超えて大きいときは、各訪問頻度の数値(回数)を正規化することにより、より多くのPOIを取得できるように各訪問頻度の数値を補正することが可能となる。あるいは、逆に訪問頻度の差がM未満の場合に訪問頻度の差がより大きくなるように各訪問頻度の数値を補正することも可能となる。本例では、訪問頻度の差がM未満の場合(S109:Y)、情報処理装置1は、公共交通機関を利用したときの最寄駅から各POIまでの所要時間に対して各POIへの訪問頻度の回数を重み付けした後に候補地駅の探索を行う(S110)。例えば、あるPOIへの訪問頻度が2回であれば、そのPOIまでの所要時間に「2」を乗算した時間を用いた候補地駅の探索を行う。候補地駅は、候補地物件から利用できる駅である。
【0057】
S110の処理後、情報処理装置1は、候補地駅が1つ以上存在するかどうかを判定する(S111)。候補地駅が1つ以上存在する場合(S111:Y),情報処理装置1は、候補地駅付近の物件探索を行い(S112)、該当物件が存在するかどうかを判定する(S113)。このとき、ユーザ端末100へ絞り込み条件の入力を促し、該絞り込み条件に基づいて物件範囲探索を行うようにしてもよい。
【0058】
一方、S107において、取得したPOIが1つだけの場合(S107:N)、情報処理装置100は、そのPOIの最寄駅を候補地駅に設定して(S130)、直ちにS112の処理に移る。
【0059】
また、S108において、POIの数が2つ以上であっても訪問頻度の情報が保存されていない場合(S108:N)、情報処理装置1は、各POIを区別するための所定の尺度、例えば順序尺度による重み付け係数の入力を受け付ける(S140)。この係数は、単純な例では、四分位数を用いた3段階の倍率とすることができる。例えば、訪問頻度が「高」の場合は0.7、訪問頻度が「中」の場合は1.0、訪問頻度が「低」の場合は1.3とすることができる。
【0060】
S109において、訪問頻度の差がMを超える場合(S109:N)、訪問頻度を順序尺度の値に変換し(S150)、その順序尺度で所要時間の重み付けに変換した後(S151)、候補地駅の探索を行う(S152)。その後、S111の処理に移る。
このように、訪問頻度の差がMを超える場合に、所要時間を補正することにより、特定のPOIが存在する地域の駅だけが集中的に抽出される事態を回避することができる。すなわち、訪問頻度が比較的高いPOIは、所要時間が短く、訪問頻度が比較的低いPOIは、所要時間が長い場所が候補地駅として抽出されやすくなる。
【0061】
S113の処理において、該当物件が存在する場合(S113:Y)、情報処理装置1は、該当物件の情報をユーザ端末100へ提示して処理を終える(S114)。
【0062】
S106において、POIと居住地の属性を正しく取得できなかった場合(S106:N)、あるいは、S111において候補地駅の数が1つも存在しなかった場合(S111:N)、あるいは、S113において該当物件が存在しなかった場合(S113:N)、情報処理装置1は、S120、S121、S106以降の処理を繰り返す。
【0063】
ここで、S108、S109、S140、S150~S152、S112~S114の処理の具体例を
図9~
図13を参照して説明する。
図9は、候補地駅周辺の物件探索要領の説明図である。ここでは、物件探索の条件として保存されたPOIが、職場、神宮球場、横浜スタジアム、西武球場の4つであるものとする。
図9には、職場の最寄駅である高円寺901、神宮球場の最寄駅である外苑前911、横浜スタジアムの最寄駅である関内921が示されている。破線で示す範囲902が高円寺901までの所要時間の範囲(補正後)、一点長鎖線で示す範囲912が外苑前911までの所要時間(補正後)、一点短鎖線で示す範囲922が関内921までの所要時間(補正後)、二点鎖線で示す範囲932が西武球場前までの所要時間(補正後)である。
図9中、強調されているエリア940が、公共交通機関を利用してどのPOIにも訪問が可能な地域、つまり、提示されれば最適とユーザが認識する可能性が高い物件探索の範囲となる。
【0064】
図10は、各POIへの訪問頻度、順序尺度、所要時間の倍率、POIまでの所要時間(補正前)、POIまでの所要時間(補正後)の例示図である。図示の例では、職場には、テレワークによって現実に訪問する頻度が低くなっているが、それでも、テレワーク解除時には他のPOIよりは相対的に高いことから、順序尺度は「低」であり、所要時間の倍率も高くなっている。他方、野球場に着目すると、西武球場への訪問頻度が最も高いことから、順序尺度は「高」であり、所要時間の倍率も低くなっている。結局、補正前は、どのPOIへの所要時間は同じであるが、補正により、職場への所要時間が最も高く、西武球場への所要時間が最も低くなっている。
【0065】
図11は、補正前の候補地駅毎の4つのPOIまでの合計所要時間(候補地駅毎の往復にかかる時間の合計)の例示図、
図12は、補正後の候補地駅毎の4つのPOIまでの合計所要時間(候補地駅毎に片道にかかる時間および訪問頻度を乗算した合計)の例示図である。
所要時間の補正前は、合計所要時間が最も短い候補地駅は石神井公園であり、国分寺、ひばりケ丘・・・と続くが、補正後は西所沢が最も合計所要時間が短く、所沢、池袋・・・と続く。
図12の矢印の方向は、
図11に対する順位の変動傾向を示している。
【0066】
S114の候補地物件の提示は、複数の態様で選択的に行うことができる。
図13は、リスト形式による提示の例示図である。リスト形式の提示によれば、
図9において強調されているエリアが西武池袋線沿線、特に候補順位が1位の西所沢駅または同2位の所沢駅を最寄駅とするエリアであることが容易に判別できる利点がある。
【0067】
図14は、探索された物件に関する情報のマーカークラスター形式の提示の提示図である。上段は高範囲、中段は中範囲、下段は詳細範囲の地理画像にマッピングされた物件数が示されている。エリアA10、エリアA20、エリアA30は、地理画像が拡大されるにつれてエリアA11,A12,A21,A22,A23,A31,A32,A33に再分類される。また、各エリアに含まれる数値は物件数を示している。また、例えば、物件数の多い地域は赤、中程度の地域はオレンジ色、少ない場所は緑と、色分け表示してもよい。候補順位の高いいくつかの該当エリアにおける物件数だけが表示されるため、地理画像の全エリアにわたって物件数が提示される一般的なマーカークラスター形式に比べて、ユーザに判別しやすくなる利点がある。なお、色に代えて物件数に応じてサイズを変更することもできる。
【0068】
このように、本実施形態によれば、例えば転居の候補地物件には、ユーザが現実に生活している居住地の属性や日々の行動履歴のような情報にはそのユーザの候補地物件の条件が内包されている可能性が高いことが強く推認される点に着目した物件探索の条件候補や物件探索処理を実行するので、例えば転居が予定されているが転居地に関して予備知識のないユーザであっても、条件候補をヒントに物件探しを始めることができる。また、転居地について予備知識のあるユーザであっても、このエリアでなければならないという思い込みを外し、思いがけないエリアで良い物件を見つけることができる。つまり、提示されれば自分に適すると感じる候補地物件に関する情報をユーザに提供することができる。
【0069】
[変形例]
本実施形態では、居住地がユーザの現在の居住地である場合の例を説明したが、そのユーザが過去に居住していた居住地としてもよい。また、居住地の属性を解析する際に、ユーザの現在の居住地と過去の居住地とで共通する項目の入力画面をユーザ端末100に提示し、共通する項目が優先的に候補地物件探索の条件候補に採用されるように複数の条件候補にそれぞれ提示の順位を付けるようにしてもよい。
【0070】
本実施形態では、ユーザの同意があれば、サードパーティアカウント提供サービスに関する情報を連携できることを説明したが、このような連携により取得した情報を条件候補の生成または条件候補の提示の際に利用してもよい。また、そのような情報へのアクセス(情報の取得)を
図5の物件探索処理または
図6のPOI受付処理の手順の一部に盛り込んでもよい。例えば、スポーツニュースをよく閲覧していることがサードパーティアカウント提供サービスから取得した情報により判明しているユーザには、ジャンルに関わらず、「球場から○○分」の条件候補がより上位に表示されるように、複数の条件候補にそれぞれ提示の順位を付けるようにしてもよい。
【0071】
また、最寄駅からPOIまでの所要時間を算定する際に、年代、性別、身体的特徴、健康状態別の歩行速度や歩幅等を示す情報をパラメータとして用いる構成であってもよい。このようなパラメータは、公表情報であってもよく、ユーザ端末100から取得する情報であってもよい。このような構成によれば、条件候補を生成するときの所要時間の精度を高めることができる。
【0072】
本実施形態では、情報処理装置1を、通信制御部11、受付部12、情報取得部13、解析部14、探索部15、編集部16、提示部17、主制御部18として機能させる例について説明したが、このような機能ブロックは複数の情報処理装置が協働して実現することも可能である。例えば、本発明は、ユーザの行動の本拠となり得る第1拠点の属性および前記ユーザのPOIを取得する第1装置と、前記第1拠点とは異なる拠点であって1つ以上の前記POIへの訪問が可能な第2拠点を探すための条件候補を前記属性に基づいて生成する第2装置と、生成された前記条件候補を前記ユーザが操作する情報端末へ提示する第3装置と、を備えた情報処理システムとしての実施も可能である。
【0073】
本発明は、また、ユーザの行動の本拠となり得る第1拠点の属性および前記ユーザのPOIを取得し、前記第1拠点とは異なる拠点であって1つ以上の前記POIへの訪問が可能な第2拠点を探すための条件候補を前記属性に基づいて生成するとともに、生成された前記条件候補を前記ユーザが操作する情報端末へ提示する処理工程を含む情報処理方法としての実施も可能である。
【0074】
本実施形態では、また、第1拠点をユーザの居住地、対象となる第2拠点をそのユーザの転居候補地物件とした場合の例について説明したが、以下の適用例も可能である。
(適用例1)
第1拠点がユーザの居住地または勤務地で、第2拠点がシェアードオフィス(Shared-Office)である例。シェアードオフィスは、例えばコワーキングスペース(複数の個人や組織体が共同で利用するフレキシブルなオフィススペース)、サテライトオフィス(組織体の本拠から離れた場所に設置されるオフィス)である。シェアードオフィスをPOIとして用いてもよい。
(適用例2)
第1拠点がユーザの居住地または勤務地で、第2拠点がPOIへの訪問が可能な駐車場である例。月極駐車場のように、行動の拠点となる時間がコインパーキングよりも長い駐車場の場合、本発明は有効な手段となり得る。
(適用例3)
第1拠点がユーザの居住地であり、第2拠点がユーザの旅行先である例。ユーザの居住地の属性やPOIをもとに旅行先のプランの作成が可能となる。
(適用例4)
第1拠点がユーザの居住地または勤務地であり、第2拠点がサードパーティアカウント提供サービスによるサイト閲覧履歴より特定される業種企業の所在地あるいは当該業種そのものとする例。この例では、ユーザの仕事探しを支援することが可能となる。
なお、適用例1~4は例示なので、これら以外の適用例であってもよいのは勿論である。
【0075】
以上説明した技術的事項は、以下の各態様の発明のように概括することができる。
[態様1]
態様1の発明は、ユーザの本拠となり得る第1拠点の属性および前記ユーザのPOIを取得する取得手段と、前記第1拠点とは異なる拠点であって1つ以上の前記POIへの訪問が可能な第2拠点を探すための条件候補を、前記属性を解析することにより生成する解析手段と、生成された前記条件候補を前記ユーザが操作する情報端末へ提示する提示手段と、を備える情報処理装置である。
態様1の発明によれば、POI付近の第2拠点に対する予備知識のないユーザであっても、提示された条件候補をヒントとして、今の自分に適すると感じる第2拠点に辿り着くことができる。予備知識のあるユーザであっても、提示されることで初めて気づく条件候補に遭遇することが期待される。
【0076】
[態様2]
態様2の発明は、態様1において、前記取得手段は、前記属性、前記POIおよび当該POIへの訪問履歴を、前記情報端末または当該情報端末と連携するサードパーティアカウント提供サービスシステムを通じて取得する。
態様2の発明によれば、POIへの訪問履歴を条件候補の生成に利用することができるので、ユーザの現実の行動パターンに即した第2拠点が探し出しやすくなる。
【0077】
[態様3]
態様3の発明は、態様1において、前記条件候補は、前記ユーザの個人属性に基づいて当該ユーザ用に個性化された語、または、上位概念化された既存語を含み、前記解析手段は、前記情報端末から前記条件候補の修正を受け付けたときは、当該条件候補を修正する。
態様3の発明によれば、例えば既存の語あるいはユーザが独自に考えた語では考慮されない条件候補が生成され得るので、ユーザも気づかない可能性がある条件候補をそのユーザに提示することができる。また、提示された条件候補がユーザの意図に沿わないものである場合、提示した条件候補の修正を適宜受け付けることで、ユーザに選ばれやすい第2拠点の案内が可能になる。
【0078】
[態様4]
態様4の発明は、態様3において、提示された前記条件候補又は修正された前記条件候補に対応する前記第2拠点の探索を行う探索手段をさらに備える。
態様4の発明によれば、第2拠点の探索を修正の有無に関わらず一元的に実施することができることから、情報端末を操作するユーザの操作作業負担を軽減することができる。
【0079】
[態様5]
態様5の発明は、態様4において、前記提示手段は、前記探索手段により探索された前記第2拠点の情報を、当該第2拠点が存在するエリアに絞って前記情報端末へ提示する。
態様5の発明によれば、近郊のエリアの情報が除外されることから、第2拠点が絞り込み易くなる。
【0080】
[態様6]
態様6の発明は、態様4において、前記提示手段は、前記探索手段により探索された前記第2拠点の情報を拠点数に応じて異なる態様で提示する。
態様6の発明によれば、第2拠点が存在するエリアの絞り込みの方向を適切にガイダンスすることができる。
【0081】
[態様7]
態様7の発明は、態様1から6のいずれかにおいて、前記第1拠点が前記ユーザの居住地であり、前記第2拠点が前記ユーザの転居候補地物件であることを特徴とする。
態様7の発明によれば、提示されればユーザが最適と思う転居候補物件に関する情報を提供することができる。なお、第1拠点および第2拠点は、これらの例に限らない。
【0082】
[態様8]
態様8の発明は、態様2から6のいずれかにおいて、前記解析手段は、前記訪問履歴から直近の前記POIまでの移動所要時間が所定時間内となる1つ以上の交通ノードを特定するとともに、特定した交通ノードからの前記移動所要時間の総和に基づいて前記条件候補を生成する。
態様8の発明によれば、ユーザが今後も利用することが予想される交通ノードを容易に特定することができる。また、移動所要時間の総和に基づいて条件候補を生成するので、訪問履歴に存在するすべてのPOIへの訪問が可能な候補地物件の条件候補を生成して情報端末へ提示することができる。
【0083】
[態様9]
態様9の発明は、態様8において、前記解析手段は、前記訪問履歴から判明する訪問頻度、所定期間内の訪問回数、前記POI毎の滞在時間の少なくともいずれかに基づく尺度で前記1つ以上の交通ノードからの前記移動所要時間を補正し、補正した前記移動所要時間の総和に基づいて前記条件候補を生成する。
態様9の発明によれば、移動所要時間を例えば順序尺度等で補正(重み付け)することにより、条件候補の過度の偏りを緩和することができ、ユーザの意図に即した条件候補の提示が可能になる。なお、条件候補の偏りを逆に強めるように補正してもよい。
【0084】
[態様10]
態様10の発明は、コンピュータを、態様1から態様6のいずれかに記載の情報処理装置として機能させるためのコンピュータプログラムである。
【0085】
[態様11]
態様11の発明は、通信機能、情報処理機能、情報表示機能、位置検出機能を有するコンピュータを、態様1から6のいずれかに記載の情報処理装置と通信可能な前記情報端末として機能させるためのコンピュータプログラムである。
【0086】
[態様12]
態様12の発明は、ユーザの行動の本拠となり得る第1拠点の属性および前記ユーザのPOIを取得する第1装置と、前記第1拠点とは異なる拠点であって1つ以上の前記POIへの訪問が可能な場所に存する第2拠点を探すための条件候補を前記属性に基づいて生成する第2装置と、生成された前記条件候補を前記ユーザが操作する情報端末へ提示する第3装置と、を備えた情報処理システムである。
態様12の発明によれば、態様1の発明と同様の作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 情報処理装置
11 通信制御部
12 受付部
13 情報取得部
14 解析部
15 探索部
16 編集部
17 提示部
18 主制御部
21 ユーザDB
22 運行情報DB
23 POI-DB