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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170258
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】吊り具
(51)【国際特許分類】
   B66C 1/28 20060101AFI20241129BHJP
   B66C 1/38 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B66C1/28 C
B66C1/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087321
(22)【出願日】2023-05-26
(71)【出願人】
【識別番号】591235865
【氏名又は名称】大倉 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】110002712
【氏名又は名称】弁理士法人みなみ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110002996
【氏名又は名称】弁理士法人宮田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大倉 義憲
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004AA07
3F004AA08
3F004AB13
3F004AF06
3F004CD04
3F004CD06
3F004DA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】目的地で荷物を自動で切り離すことができるほか、飛行体が離陸する前に荷物の接続を終えることのできる吊り具の提供。
【解決手段】吊り具は、本体11と側板21とバネ54と上リンク42と下リンク44とフック45と操作片31などで構成し、側板21は本体11に対し、上下方向に移動可能とするほか、上リンク42と下リンク44を変形可能な菱形に配置し、上リンク42の上端部を本体11で支持し、下リンク44の下端部を側板21で支持し、さらに下リンク44とフック45を一体化する。これによって側板21の移動でフック45が開閉可能になるが、操作片31によって側板21の上昇を規制することで、飛行体Dの離陸に先立ち、荷物Fの接続を終えることができる。また離陸後は、操作片31が本体11から離れるため、バネ54の反力によってフック45を開放可能になり、荷物Fを着地させると、直ちに自動で切り離すことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体(D)で荷物(F)を吊り上げるために使用する吊り具であって、
ロープ(R)を介して飛行体(D)に接続される本体(11)と、本体(11)の側面に配置され且つ本体(11)に対して上下方向に移動可能な側板(21)と、本体(11)に対して側板(21)を上昇させるための反力を常時発生するバネ(54)と、本体(11)の下端部に取り付ける一対の上リンク(42)と、上リンク(42)の下方に取り付ける一対の下リンク(44)と、荷物(F)から伸びる接続手段(J)を保持するための一対のフック(45)と、側板(21)に取り付ける操作片(31)と、を有しており、
一対の上リンク(42)は「ハ」の字状に配置され、また一対の下リンク(44)は「ハ」の字を上下反転させた形状に配置され、一対の上リンク(42)および一対の下リンク(44)は菱形を維持しながら変形可能であり、一対の上リンク(42)の上端部は、本体(11)と一体化した上ピン(41)によって揺動自在に支持され、また一対の下リンク(44)の下端部は、側板(21)と一体化した下ピン(46)によって揺動自在に支持され、さらに個々の上リンク(42)の下端部と個々の下リンク(44)の上端部は、中ピン(43)によって互いに揺動自在に連結されており、
個々のフック(45)は湾曲しており、一対のフック(45)は環状に配置可能であり、またフック(45)は下ピン(46)よりも下方に配置してあり、さらにフック(45)と下リンク(44)は一体化してあり、
側板(21)が本体(11)に対して下降することで、下ピン(46)が上ピン(41)から遠ざかり一対のフック(45)が閉じた環状になって接続手段(J)を保持可能になり、これとは逆に側板(21)が本体(11)に対して上昇することで、下ピン(46)が上ピン(41)に接近して一対のフック(45)の下部が開放し、接続手段(J)を切り離し可能になり、
操作片(31)は側板(21)に対して移動可能であり、また本体(11)には係合部(14)を形成してあり、操作片(31)が係合部(14)に嵌まり込むことで、側板(21)の上昇を規制し、さらに操作片(31)が係合部(14)に嵌まり込んだ後、側板(21)が下降することで操作片(31)が本体(11)によって押し出され、操作片(31)が本体(11)から離れた状態を維持し、
一対のフック(45)を閉じた状態とした後に操作片(31)を係合部(14)に嵌め込むことで接続手段(J)が離脱不能になるほか、本体(11)が架空に吊り上げられ、一対のフック(45)に荷物(F)の自重が伝達した際、その自重によって側板(21)が下降してバネ(54)が変形し、且つ操作片(31)は本体(11)によって押し出されて本体(11)から離れた状態になり、以降、荷物(F)の自重によって一対のフック(45)は閉じた状態を維持するが、荷物(F)が着地することでバネ(54)の反力によって側板(21)が上昇し、一対のフック(45)が開放して接続手段(J)を切り離すことができることを特徴とする吊り具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドローンなどの飛行体で荷物を吊り上げる際、飛行体から伸びるロープの末端に取り付け、荷物との接続を担う吊り具に関する。
【背景技術】
【0002】
ドローンなどの飛行体は、従来のヘリコプターなどと比べて取り扱いが容易であるため、土木建築や農業や林業や荷物輸送など、様々な分野での活用が期待されており、特に山岳地帯や海岸線など、通常の交通手段では到達が難しい場所では、その有効性を存分に発揮することができる。そしてドローンなどの飛行体で荷物を吊り上げる際は、飛行体にロープを取り付け、その末端を荷物に接続することになるが、荷物との接続や切り離しを簡単に行えるよう、通常はロープの末端に何らかの吊り具を取り付ける。
【0003】
このような吊り具に関する技術開発の具体例として後記の特許文献が挙げられる。そのうち特許文献1では、吊り下げた荷物を自動でリリースすることのできる荷下用フックが開示されている。この荷下用フックは、一対のアームで構成され、パンタグラフのような外観になっており、その最下部では、荷物から伸びる紐などを保持できるほか、アームの上部にはバネを組み込んであり、その反力により、アームの最下部が開放した状態を維持することができる。ただし、アームの最下部を閉じて紐などを保持した際は、そこから伝達する荷重により、アームの最下部が閉じた状態を維持するため、荷物を吊り下げることができる。そして荷物を着地させると、紐などから伝達する荷重が消滅するため、バネによってアームの最下部が開放され、荷物を自然に切り離すことができる。
【0004】
次の特許文献2では、自律飛行による物品移送用ドローンが開示されている。このドローンは、機体本体から複数のロータアームが突出しているほか、機体本体の底面には物品保持装置を備えており、さらに、高度センサーや測位システムからの情報に基づいて飛行を管理する移動制御部を備えており、あらかじめ入力された飛行経路に基づいて目的地に到達することができる。そして物品保持装置は、一対のアームで構成されており、双方のアームの先端には受部を形成してあり、この受部同士を接触させることで物品を保持することができ、しかも一対のアームを駆動モータで変位させることで、目的地に到達した際に物品の保持が解除され、物品の移送を終えることができる。
【0005】
そのほか、本発明と関連のある技術の例として引用文献3が挙げられ、この文献では、鉄管などの管を吊り上げる際に使用するクランプ装置が開示されている。このクランプ装置は、パンタグラフと類似した形状であり、一対のクランプアームの下部を開閉させることで、管のクランプと解放を実現している。さらにクランプアーム同士の相対移動を規制するため、一方のクランプアームには係止機構を取り付けてあり、この係止機構には、凹部を二箇所に設けてある。また他方のクランプアームには、凹部に嵌まり込むピンを取り付けてあり、ピンが一方の凹部に嵌まり込むことで、管をクランプした状態を維持できるほか、ピンが他方の凹部に嵌まり込むことで、管を解放することができ、この機能を活用することで、管のクランプから解放までを自動的に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3222160号公報
【特許文献2】実用新案登録第3223598号公報
【特許文献3】特開2019-99370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ドローンなどの飛行体で荷物輸送を行う場合、その吊り上げ能力は限られているため、荷物の量によっては、目的地との間を何度も往復することになる。したがって作業の効率化の観点から、荷物の積み込みや積み下ろしは短時間で終える必要があり、積み下ろしの際は、荷物の着地を検知した後、荷物を自動で切り離すことが望ましい。そこで前記の特許文献1のように、荷物を着地させた際、直ちに荷物の切り離しが可能な手段を導入すべきである。
【0008】
ただし特許文献1の技術において、地上に置かれている荷物をドローンなどで吊り上げる際は、まず荷物から伸びる紐を一対のアームの間に差し入れ、次にアームを人力で閉じ、その後にドローンを上昇させ、荷物の自重がアームに伝達した段階でアームが閉じた状態を維持できるようになり、その後、目的地に向けてドローンを飛行させることになる。そのため輸送の開始時は、離陸したドローンの近傍でアームを閉じる作業が必要になり、その間、安全を確保した状態でドローンを空中静止させた場合、エネルギー消費によって航続距離が短くなる恐れがある。
【0009】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、目的地で荷物を自動で切り離すことができるほか、飛行体が離陸する前に荷物の接続を終えることのできる吊り具の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、飛行体で荷物を吊り上げるために使用する吊り具であって、ロープを介して飛行体に接続される本体と、本体の側面に配置され且つ本体に対して上下方向に移動可能な側板と、本体に対して側板を上昇させるための反力を常時発生するバネと、本体の下端部に取り付ける一対の上リンクと、上リンクの下方に取り付ける一対の下リンクと、荷物から伸びる接続手段を保持するための一対のフックと、側板に取り付ける操作片と、を有しており、一対の上リンクは「ハ」の字状に配置され、また一対の下リンクは「ハ」の字を上下反転させた形状に配置され、一対の上リンクおよび一対の下リンクは菱形を維持しながら変形可能であり、一対の上リンクの上端部は、本体と一体化した上ピンによって揺動自在に支持され、また一対の下リンクの下端部は、側板と一体化した下ピンによって揺動自在に支持され、さらに個々の上リンクの下端部と個々の下リンクの上端部は、中ピンによって互いに揺動自在に連結されており、個々のフックは湾曲しており、一対のフックは環状に配置可能であり、またフックは下ピンよりも下方に配置してあり、さらにフックと下リンクは一体化してあり、側板が本体に対して下降することで、下ピンが上ピンから遠ざかり一対のフックが閉じた環状になって接続手段を保持可能になり、これとは逆に側板が本体に対して上昇することで、下ピンが上ピンに接近して一対のフックの下部が開放し、接続手段を切り離し可能になり、操作片は側板に対して移動可能であり、また本体には係合部を形成してあり、操作片が係合部に嵌まり込むことで、側板の上昇を規制し、さらに操作片が係合部に嵌まり込んだ後、側板が下降することで操作片が本体によって押し出され、操作片が本体から離れた状態を維持し、一対のフックを閉じた状態とした後に操作片を係合部に嵌め込むことで接続手段が離脱不能になるほか、本体が架空に吊り上げられ、一対のフックに荷物の自重が伝達した際、その自重によって側板が下降してバネが変形し、且つ操作片は本体によって押し出されて本体から離れた状態になり、以降、荷物の自重によって一対のフックは閉じた状態を維持するが、荷物が着地することでバネの反力によって側板が上昇し、一対のフックが開放して接続手段を切り離すことができることを特徴とする。
【0011】
本発明による吊り具は、様々な荷物を飛行体で吊り上げるために使用され、大別して本体と側板とバネと上リンクと下リンクとフックと操作片で構成され、本体の上部を飛行体に接続するほか、上リンクと下リンクとフックについては、それぞれが二個で一対となり、一対のフックで荷物を保持する。そのため荷物には、綱や棒材などで構成される接続手段を取り付けておく必要があり、一対のフックの内部に接続手段を差し入れることで、荷物の吊り上げが可能になる。また飛行体については、空中で静止状態を維持可能なマルチコプターやヘリコプターといった回転翼機を想定している。
【0012】
本体は、荷物を吊り上げた状態において安定した姿勢を維持できる必要があり、その上端部には、飛行体から伸びるロープを接続する。対して本体の下端部では、上リンクを揺動可能な状態で保持する。また側板は、本体の側面を覆い隠すように配置し、しかも本体に対して上下方向に移動可能な構成とするが、バランスを考慮し、側板は、本体を挟み込むように二枚使用することが多い。なお本体に対して側板を移動可能とするため、何らかのガイド機構を組み込むことになるが、その形態は自在に決めることができる。そのほかバネは、その一端側を本体に接続させ、他端側を側板に接続させるが、初期段階で弾性変形させておき、以降、本体に対して側板を上昇させるような反力を常時発生させる。
【0013】
上リンクと下リンクはいずれも細長形状であり、上リンクは二個で一対となり、これらを「ハ」の字状に配置するほか、下リンクも二個で一対となるが、一対の下リンクは、「ハ」の字を上下反転させた形状に配置し、さらに、個々の上リンクの下端部と個々の下リンクの上端部を連結する。そのため上リンクと下リンクは、菱形に配置される。そして一対の上リンクの上端部では、双方の表面が向かい合い、そこに棒状の上ピンを配置して本体の下端部に取り付けるが、個々の上リンクは、本体に対して自在に揺動可能とする。対して一対の下リンクの下端部では、双方の表面が向かい合い、そこに棒状の下ピンを配置して側板に取り付けるが、個々の下リンクは、側板に対して自在に揺動可能とする。そのほか、上リンクと下リンクとの連結箇所には中ピンを配置し、双方を自在に揺動可能とする。したがって上リンクと下リンクで構成される菱形は、変形可能である。
【0014】
フックは、荷物から伸びる接続手段を保持する機能を担い、個々のフックは円弧のように湾曲させた形状である。そして、二個で一対となるフックが途切れることのない環状に配置されることで、その内部で接続手段を保持することができる。ただし一対のフックの下部を開放することで、接続手段を切り離すことができる。さらにフックは、下リンクの下端部と一体化させてあり、必然的に下ピンよりも上方が下リンクになり、下ピンよりも下方がフックになり、下リンクが横倒しになることで一対のフックの下部が開放し、これとは逆に下リンクが直立することで一対のフックが閉じた状態になる。
【0015】
本体に対して側板を下降させた場合、側板と一体で下ピンも下降するため、上ピンと下ピンとの間が遠ざかり、上リンクと下リンクで構成される菱形は、上下方向に引き伸ばされ、一対のフックが閉じた状態になる。これとは逆に、本体に対して側板を上昇させた場合、上ピンと下ピンが接近し、上リンクと下リンクで構成される菱形は、横方向に引き伸ばされ、一対のフックの下部が開放する。
【0016】
本体と側板との間にはバネが介在しており、その反力により、側板の押し上げが継続するため、一対のフックの下部は、開放した状態を維持する。ただし、バネの反力に逆らって一対のフックを閉じた後、フックに荷物の自重が伝達すると、その自重がバネの反力に打ち勝ち、一対のフックは閉じた状態を維持する。その後、荷物が着地することで、フックに伝達する自重が消滅するため、バネの反力で一対のフックの下部が開放し、荷物を切り離すことができる。当然ながらバネの反力は、想定される荷物の重量に基づいて決定し、予期しないタイミングで荷物が切り離されることを防ぐ必要がある。
【0017】
操作片は、側板の上昇を防ぐため、側板に取り付ける部品だが、側板に対して移動可能とする。また本体には、操作片に対応した係合部を形成し、操作片を人為的に操作することで、操作片の一角が係合部に嵌まり込むような構成とする。そして実際に操作片が係合部に嵌まり込んだ際は、本体と側板が一体化し、操作片によってバネの反力を受け止め、側板の上昇を防ぐ。なお操作片が係合部に嵌まり込んだ際は、一対のフックが閉じた状態を維持できるよう、各部の寸法を調整する。
【0018】
操作片の一角が係合部に嵌まり込んだ後、本体に対して側板を下降させた場合、その動作に追従して操作片も移動し、操作片が本体から離れた状態を維持できる必要がある。そして操作片が本体から離れることで、本体と側板との一体化が解除される。そのためフックに荷物の自重が伝達している場合、一対のフックは閉じた状態を維持するが、この自重の伝達が消滅するとバネによって側板が上昇し、一対のフックの下部が開放する。
【0019】
操作片と係合部は、単に本体と側板を一体化できればよい訳ではなく、本体と側板との移動方向により、異なる動作を行う必要がある。そのため係合部は、クサビ形の溝などとしておき、側板を上昇させた場合には、本体と操作片が噛み合い、本体と側板を一体化することができ、逆に側板を下降させた場合には、本体によって操作片が押し出され、本体と側板との一体化を解除できるものとする。
【0020】
荷物から伸びる接続手段をフックで保持する際は、まず一対のフックの下部が開放した状態としておき、その内部に接続手段を差し入れ、次にバネの反力に対抗して側板を下降させ、一対のフックを閉じる。その後、一対のフックが閉じた状態を維持しながら操作片を移動させ、その一角を係合部に嵌め込むと、側板の上昇が規制されてフックが閉じた状態を維持する。以降、飛行体を離陸させて吊り具が架空に吊り上げられると、荷物の自重がフックに伝達するため側板が下降し、それに伴って操作片は、本体で押し出されて係合部から離れていく。その後、荷物の自重によって一対のフックは閉じた状態を維持するが、荷物が着地すると、フックに伝達していた自重が消滅するため、バネの反力によって側板が上昇し、一対のフックの下部が開放して荷物が切り離される。
【0021】
本体や側板など、各部品の具体的な形状は自在である。また、上リンクや下リンクを湾曲形状としたならば、これらが菱形に配置されないこともあり得る。ただし、各リンクの端部を支持する上ピンと下ピンと中ピンは、菱形の頂点を構成するように配置される。そして側板やバネや操作片は、バランスを考慮して二個を対称形に配置することもあるが、一個だけとしても構わない。そのほか下リンクとフックは個別に製造し、接着や溶接で一体化することもできる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1記載の発明のように、荷物を吊り上げるための吊り具は、本体と側板とバネと上リンクと下リンクとフックと操作片などで構成し、側板は本体に対して上下方向に移動可能とするほか、上リンクと下リンクを変形可能な菱形に配置し、上リンクの上端部を本体で支持し、下リンクの下端部を側板で支持し、さらに下リンクとフックを一体化することで、側板の移動によって一対のフックが開閉可能になる。加えてバネにより、一対のフックの下部が開放するような反力を常時発生させるが、操作片を本体の係合部に嵌め込むことで、バネによる反力に対抗して側板の上昇が規制され、一対のフックが閉じた状態を維持するため、荷物の吊り上げが可能になる。
【0023】
本発明では、操作片により、一対のフックが閉じた状態を維持できるため、飛行体の離陸に先立ち、飛行体と荷物との接続を終えることができ、離陸した飛行体の近傍で荷物を接続する作業が不要である。また飛行体を離陸させた後は、目的地に向けて直ちに移動できるため、その分、エネルギー消費が抑制され、航続距離の増大などが実現する。さらに荷物を吊り上げた後は、その自重によって側板が下降して操作片が本体から離れるため、以降、操作片が側板の上昇を規制することはない。したがって飛行体が目的地に到達して荷物を着地させた際は、バネの反力によって側板が上昇し、一対のフックの下部が開放され、荷物を直ちに自動で切り離すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明による吊り具の形状例を示す斜視図であり、吊り具は、ドローンなどの飛行体と荷物を接続するために使用され、飛行体と吊り具はロープで接続されている。
図2図1の吊り具の構成要素を分離した状態を示す斜視図である。
図3図1の吊り具において、一対のフックが閉じた状態を示す斜視図だが、左側の図は、手前に位置する側板を取り外してある。
図4図1の吊り具において、一対のフックの下部が開放した状態を示す斜視図だが、左側の図は、手前に位置する側板を取り外してある。
図5】吊り具に荷物を接続する前と後の状態を示す斜視図であり、左側の図は荷物を接続する前の状態であり、右側の図は荷物を接続した後の状態である。
図6】吊り具に荷物を接続する過程を示す側面図だが、手前に位置する側板は取り外した状態で描いてある。
図7図6の後、荷物を吊り上げる過程を示す側面図である。
図8図7の後、荷物を着地させるまでの過程を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明による吊り具の形状例を示しており、吊り具は、ドローンなどの飛行体Dと荷物Fを接続するために使用され、飛行体Dと吊り具はロープRで接続されている。そして吊り具は、本体11と側板21とバネ54と上リンク42と下リンク44とフック45と操作片31などで構成され、そのうち本体11は、吊り上げた際に直立する棒状であり、その上端部には、ロープRを取り付けるための吊り口13を設けてある。また側板21は、本体11の側面を挟み込むよう、同一形状のものを二枚配置しているが、ここでは内部構造を示すため、手前側の一枚を取り外した状態で描いてある。そのほか荷物Fには、吊り上げのための接続手段Jを取り付けてあり、この接続手段Jを吊り具で保持する。なお接続手段Jの形態は自在だが、この図では荷物Fから直立する棒状のものを想定している。
【0026】
上リンク42と下リンク44は、いずれも一直線に伸びる帯状であり、上リンク42は二枚で一対となり、この一対は「ハ」の字状に配置してあり、また下リンク44も二枚で一対だが、この一対については「ハ」の字を上下反転させた形状に配置してあり、上リンク42と下リンク44の四枚で菱形を構成する。そして上リンク42の上端部は、上ピン41で支持しているが、一方の上リンク42は本体11の手前側に配置してあり、他方の上リンク42は本体11の奥側に配置してあり、双方が接触することはなく、さらに上ピン41は本体11の下端部を貫き、上ピン41と本体11は一体化しているほか、上リンク42は、上ピン41に対して自在に揺動可能である。
【0027】
個々の上リンク42の下端部には、中ピン43を介して下リンク44の上端部を取り付けてあり、上リンク42と下リンク44のいずれも、中ピン43に対して自在に揺動可能である。そして二枚の下リンク44の下端部では、双方の表面が接触するように重なっており、そこを貫くように下ピン46を差し込んであり、下リンク44は、下ピン46に対して自在に揺動可能である。さらに下ピン46の両端部は、側板21の下部に設けたピン穴26に嵌め込む。そのため下ピン46は、側板21と一体で移動することになり、本体11に対して側板21を上昇させると、上ピン41と下ピン46が接近するため、上リンク42と下リンク44で構成される菱形は、横方向に引き伸ばされた状態になる。これとは逆に側板21を下降させると、上ピン41と下ピン46が遠ざかるため、上リンク42と下リンク44で構成される菱形は、上下方向に引き伸ばされた状態になる。
【0028】
フック45は二枚で一対となるが、いずれも同一形状であり、個々のフック45は帯状だが、半円形に湾曲させてあり、その上端部は下リンク44と一体化しており、下リンク44とフック45との境界付近に下ピン46が差し込まれている。そして二枚のフック45の下部において、双方の表面が重なるように隣接することで、一対のフック45は閉じた状態になり、その内部で接続手段Jを保持することができる。ただし、二枚のフック45が下ピン46を軸として移動した場合、一対のフック45の下部が開放し、接続手段Jの出し入れが可能になる。なお接続手段Jが不用意に離脱することを防ぐため、一対のフック45の表面同士の隙間は、最小限に留めてある。
【0029】
本体11の中間部分からは左右に枝部16が突出している。また二枚の側板21を結ぶように二本の押圧ピン57を配置してあり、さらに押圧ピン57と接触するように押圧板56を配置してある。押圧板56の中心部分は切り抜かれており、そこに本体11を差し込むことで、押圧板56は本体11に沿って上下方向に移動可能であり、しかも押圧板56は枝部16と対向している。そして枝部16と押圧板56との間には、コイル状のバネ54を挟み込んであり、バネ54は自然な状態から圧縮させた状態で組み込んであるため、常時、押圧板56を持ち上げるような反力を発生している。したがって側板21は、常時、本体11に対して上昇しようとしている。なお押圧ピン57の端部を嵌め込むため、側板21にはピン穴27を設けてある。
【0030】
操作片31は、本体11と側板21との移動を規制する機能を担い、ここでの操作片31は、二枚の側板21の間に挟み込まれるL字状としてあり、その屈曲箇所に支持ピン33を差し込んであり、支持ピン33の両端部は、側板21に設けたピン穴23に嵌め込まれる。したがって操作片31は、側板21と一体で移動することになるが、支持ピン33を軸として移動可能であるほか、操作片31の末端部は側板21から突出させてあり、人為的な操作が可能になっている。また本体11の側面には、クサビ形の係合部14を形成してあり、そこに操作片31の先端部が嵌まり込むことで、本体11と側板21が一体化し、バネ54の反力による側板21の上昇を防ぐことができる。なお操作片31の移動範囲を規制するため、支持ピン33に隣接してストッパピン34を配置してあり、これに操作片31が接触することで、図のように、操作片31は支持ピン33から横方向に突出した状態を維持する。そしてストッパピン34の両端部は、側板21に設けたピン穴24に嵌め込まれる。
【0031】
そのほか、本体11に対して側板21が円滑に移動できるよう、二枚の側板21を結ぶように案内軸55を組み込んであり、その両端部は、側板21に設けた軸穴25に嵌め込まれる。また本体11には、案内軸55を通すための長穴15を設けてある。なお側板21が移動する際のブレを防ぐため、案内軸55と長穴15との隙間は最小限に抑制してある。そして長穴15の端部に案内軸55が接触することで、側板21の移動範囲が規制される。
【0032】
図2は、図1の吊り具の構成要素を分離した状態を示している。吊り具の中心に配置される本体11は棒状だが、その上端部には吊り口13を設けてあるほか、下端部には上ピン41を嵌め込むためのピン穴17を設けてある。さらに本体11の中間部よりもやや上方には、三角形を上下反転させたようなクサビ形の係合部14を形成してある。そのほか本体11の下部からは、枝部16が左右に突出しているほか、本体11の中心に沿って長穴15を設けてある。また側板21には、支持ピン33を嵌め込むためのピン穴23と、ストッパピン34を嵌め込むためのピン穴24と、押圧ピン57を嵌め込むためのピン穴27と、案内軸55を嵌め込むための軸穴25と、下ピン46を嵌め込むためのピン穴26と、を設けてある。このように側板21に接触する部品は、圧入などで側板21と一体化させる。
【0033】
操作片31はL字状であり、その屈曲箇所には支持ピン33を差し込むための丸穴を設けてあり、操作片31は支持ピン33を軸として移動可能である。また操作片31は、支持ピン33を基準として本体11から遠い方の延長を増大させている。そのため操作片31は、自重によって本体11から離れる方向に移動し、通常は本体11と接触することがない。そのほか押圧板56は、本体11を軸として上下方向に移動可能とする必要があり、その中心部分には、本体11を差し込むための切り抜きを設けてある。そしてバネ54は、枝部16と押圧板56との間に挟み込むが、実際にはバネ54の離脱を防ぐ対策も必要になる。
【0034】
上リンク42は一直線に伸びる単純な帯状であり、その上下両端部には丸穴を設けてあり、そこに上ピン41や中ピン43を差し込むことができる。なお実際には、上リンク42の離脱を防ぐため、上ピン41や中ピン43には、何らかの抜け止めが必要になる。また下リンク44とフック45は一体化しており、そのうち下リンク44は一直線に伸びる単純な帯状であり、その上下両端部には丸穴を設けてあり、そこに中ピン43や下ピン46を差し込むことができる。そしてフック45は半円形に湾曲しており、一対のフック45の下部において、双方の表面が重なるように隣接することで、一対のフック45は閉じた状態になるが、一対のフック45の下部が開放する場合もある。
【0035】
図3は、図1の吊り具において、一対のフック45が閉じた状態を示しているが、左側の図は、手前に位置する側板21を取り外してある。図3では、人為的に外力を与えて側板21を下降させており、上ピン41と下ピン46が遠ざかっている。そのため、上リンク42と下リンク44で構成される菱形は、上下方向に引き伸ばされ、これに伴って一対のフック45は閉じた状態になる。そしてこの際は、押圧板56が下降して枝部16に接近するため、バネ54は大きく圧縮され、側板21を上昇させるような反力が発生している。なおこの図では、操作片31が本体11から離れており、操作片31によって本体11と側板21との移動が規制されることはない。したがって人為的な外力を解除した場合、バネ54の反力で側板21が上昇する。
【0036】
吊り具が完成した段階では、右側の図のように、本体11などの部品は二枚の側板21で覆い隠され、その内側に異物が入り込むことを抑制できるほか、バネ54などが覆い隠されて美観が向上する。ただしフック45は、側板21の下部から突出しているほか、本体11の上部の吊り口13は、側板21から十分な距離を確保してあり、さらに操作片31については、横方向に大きく突出している。したがって、フック45と吊り口13と操作片31のいずれも、側板21で妨げられることなく取り扱うことができる。
【0037】
図4は、図1の吊り具において、一対のフック45の下部が開放した状態を示しているが、左側の図は、手前に位置する側板21を取り外してある。図4では、バネ54の反力によって側板21が最大限まで上昇しており、上ピン41と下ピン46が最大限接近している。そのため、上リンク42と下リンク44で構成される菱形は、横方向に引き伸ばされ、これに伴って一対のフック45の下部が開放している。なおこの図においても、操作片31は本体11から離れており、操作片31によって本体11と側板21との移動が規制されている訳ではない。ただし案内軸55は長穴15の上端部に位置しており、側板21が更に上昇することはできず、枝部16と押圧板56は最大限離れている。
【0038】
図5は、吊り具に荷物Fを接続する前と後の状態を示しており、左側の図は荷物Fを接続する前の状態であり、右側の図は荷物Fを接続した後の状態である。荷物Fを接続する前は、本体11と側板21が互いに移動可能な状態にしておく。そのためバネ54の反力で側板21が上昇し、一対のフック45の下部が開放している。そこで荷物Fから伸びる接続手段Jを一対のフック45の内部に差し入れるが、その後、側板21を人為的に下降させ、一対のフック45を閉じる必要がある。
【0039】
右側の図のように、バネ54の反力に逆らって側板21を下降させると、一対のフック45は閉じた状態になるため、接続手段Jは離脱不能になり、荷物Fが吊り具に接続される。この状態で操作片31を移動させ、その先端部を本体11の係合部14に嵌め込む。この嵌め込み後は、バネ54の反力などにより、操作片31を左回転させようとする力が発生するが、操作片31は係合部14に隙間なく嵌まり込んでいるため、この力で操作片31が回転することは不可能であり、その結果、操作片31は不動状態を維持し、側板21の上昇が規制される。
【0040】
図6は、吊り具に荷物Fを接続する過程を示す側面図だが、手前に位置する側板21は取り外した状態で描いてある。まずは左側の図のように、操作片31が本体11から離れている場合、バネ54の反力によって側板21が上昇するため、一対のフック45の下部が開放し、その内部には、荷物Fから伸びる接続手段Jを差し入れることができる。なおこの状態では、案内軸55が長穴15の上端部に位置しており、側板21の上昇が規制されている。また操作片31は、支持ピン33を基準として一方が短く、他方が長くなっている。そのため操作片31は、自重によってストッパピン34に接触し、本体11と操作片31は離れた状態を維持する。
【0041】
次に右側の図のように、側板21を人為的に下降させると、一対のフック45が閉じた状態になり、接続手段Jが離脱不能になるほか、案内軸55は長穴15の下端部に位置しており、側板21の下降が規制されており、バネ54は最も圧縮された状態になる。そしてこの際、操作片31を人為的に移動させ、その先端部を係合部14に入り込ませる。その後、側板21を移動可能な状態にすると、バネ54の反力で側板21は上昇することになるが、これによって操作片31は係合部14に隙間なく嵌まり込む。
【0042】
図7は、先の図6の後、荷物Fを吊り上げる過程を示す側面図である。先の図6のように、操作片31を人為的に移動させた後、バネ54の反力で側板21をわずかに上昇させると、左側の図のように、操作片31は係合部14に隙間なく嵌まり込み、それ以降、側板21が上昇しようとすると、操作片31と本体11が互いに押し合う状態になるため、側板21の上昇が規制され、一対のフック45が開放することを防ぐ。このように、操作片31が係合部14に隙間なく嵌まり込むことで、吊り具と荷物Fが確実に接続され、荷物Fの吊り上げが可能になる。
【0043】
次に、吊り具に接続された飛行体Dを離陸させると、やがてロープRに張力が発生し、荷物Fが架空に吊り上げられた際、その自重がフック45に伝達する。これによって下ピン46を介して側板21が下降するため、右側の図のように、操作片31が本体11で押し出され、やがて操作片31が自重で移動して本体11から離れていく。なおバネ54は、荷物Fの自重で十分に圧縮されるよう、その特性を調整してあり、操作片31が本体11から離れた後も、バネ54の反力で側板21が上昇することはなく、一対のフック45は閉じた状態を維持する。
【0044】
図8は、先の図7の後、荷物Fを着地させるまでの過程を示す側面図である。先の図7のように、荷物Fが架空に吊り上げられた後は、左側の図のように、操作片31は本体11から完全に離れており、しかもその自重によってストッパピン34に接触した状態を維持する。そして飛行中は、荷物Fの自重によってバネ54が圧縮され、一対のフック45は閉じた状態を維持する。しかし目的地に到達して荷物Fを着地させると、荷物Fの自重がフック45に伝達しなくなるため、バネ54の反力で側板21が上昇し、一対のフック45の下部が開放して荷物Fが切り離される。
【0045】
このように本発明による吊り具は、操作片31により、飛行体Dを離陸させる前に荷物Fの接続を終えることができるため、安全性に優れるほか、飛行体Dの離陸後は、直ちに目的地に向けて移動を開始することができる。また、荷物Fが架空に吊り上がることで、操作片31が本体11から離れるため、目的地に到達して荷物Fが着地すると、直ちに荷物Fが吊り具から切り離され、飛行体Dは直ちに次の作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0046】
11 本体
13 吊り口
14 係合部
15 長穴
16 枝部
17 ピン穴
21 側板
23 ピン穴
24 ピン穴
25 軸穴
26 ピン穴
27 ピン穴
31 操作片
33 支持ピン
34 ストッパピン
41 上ピン
42 上リンク
43 中ピン
44 下リンク
45 フック
46 下ピン
54 バネ
55 案内軸
56 押圧板
57 押圧ピン
D 飛行体(ドローン)
F 荷物
J 接続手段
R ロープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8