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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170264
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】原子炉格納容器内作業方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/003 20060101AFI20241129BHJP
   G21C 13/00 20060101ALI20241129BHJP
   G21F 7/06 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
G21C17/003
G21C13/00 200
G21F7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023090121
(22)【出願日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】P 2023087226
(32)【優先日】2023-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】柳谷 勝美
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 孝一
(72)【発明者】
【氏名】守中 廉
(72)【発明者】
【氏名】川北 祥貴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 義紀
【テーマコード(参考)】
2G075
【Fターム(参考)】
2G075AA01
2G075BA16
2G075CA11
2G075FC03
(57)【要約】
【課題】作業効率の向上が期待できる原子炉格納容器内作業方法を提供する。
【解決手段】沸騰水型原子力プラントにおける原子炉格納容器内作業方法であって、原子
炉格納容器に存在する貫通孔を複数使用して、複数の装置または機材を原子炉格納容器内
に搬入することを特徴とする原子炉格納容器内作業方法。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力プラントにおける原子炉格納容器内作業方法であって、
原子炉格納容器に存在する貫通孔を複数使用して、複数の装置または機材を前記原子炉
格納容器内に搬入することを特徴とする原子炉格納容器内作業方法。
【請求項2】
請求項1に記載の原子炉格納容器内作業方法であって、
複数の前記貫通孔から搬入した複数の前記装置または機材を用いて、前記原子炉格納容
器内の調査、前記原子炉格納容器内の各部状況の確認、前記原子炉格納容器内の物質のサ
ンプリング、前記原子炉格納容器内の構造物の補強、前記原子炉格納容器内の障害物の撤
去の少なくとも1つの作業を実行することを特徴とする原子炉格納容器内作業方法。
【請求項3】
請求項1に記載の原子炉格納容器内作業方法であって、
前記原子炉格納容器内に搬入する前記装置の機能を分担し、前記貫通孔の大きさに応じ
た装置を搬入することを特徴とする原子炉格納容器内作業方法。
【請求項4】
請求項1に記載の原子炉格納容器内作業方法であって、
前記原子炉格納容器の中で複数の前記装置がその作業を協調しあうことができることを
特徴とする原子炉格納容器内作業方法。
【請求項5】
請求項2に記載の原子炉格納容器内作業方法であって、
前記原子炉格納容器内に搬入した装置によりグレーチングに開口を形成し、開口から前
記装置を下ろし、前記原子炉格納容器内の下部およびサプレッションチャンバ内の調査、
前記サプレッションチャンバ内の状況の確認、前記原子炉格納容器内の物質のサンプリン
グ、前記原子炉格納容器内の構造物の補強、前記原子炉格納容器内の障害物の撤去の少な
くとも1つの作業を実行することを特徴とする原子炉格納容器内作業方法。
【請求項6】
原子力プラントにおける原子炉格納容器内作業方法であって、
原子炉格納容器に存在する第一の貫通孔から第一の作業装置を搬入し、
原子炉格納容器に存在する第二の貫通孔から第二の作業装置を搬入し、
前記第一の作業装置と第二の作業装置を遠隔にて操作する制御装置からの制御信号によ
って、複数の前記作業装置が、原子炉格納容器内にて協調作業を実施することを特徴とす
る原子炉格納容器内作業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の小型貫通孔を使用した原子炉格納容器内作業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
福島第一原子力発電所事故後の原子炉格納容器内の調査実績では、原子炉格納容器に多数存在する貫通孔(ペネトレーション)よりアクセス可能な貫通孔を選定し、調査目的に合わせた専用装置を投入して調査を実施している。
【0003】
原子炉格納容器内へのアクセスには、ペデスタル内に直線的に最短でアクセスできる貫通孔もあるが、貫通孔の寸法は小さい。投入する装置の役割にもよるが、装置に複数の機能を持たそうとすると装置自身が大きくなる可能性があり、投入する貫通孔の寸法制約により、投入装置の機能も限定される可能性がある。
【0004】
1つの貫通孔で作業を行う場合は、装置を役割毎に分けて複数のステップを踏んで作業する必要があるため、作業効率は悪く、作業期間も長く費やすことになる。または、投入する装置に複数の役割を持たすことにより、装置が複雑になり、操作性の難易度が高くなる。一方で、原子炉格納容器には複数の貫通孔があり、それらの貫通孔から複数の装置を投入し、原子炉格納容器内で装置同士を組み合わせることで、装置の出し入れを頻繁に行わずにすみ、作業ステップを分けずに原子炉格納容器内で作業することが可能である。
【0005】
この点に関して、特許文献1では、最小限のアクセスで原子炉格納容器内の事前調査を可能とする原子炉格納容器の内部観察方法を提供することを目的として、「原子炉格納容器の内部観察方法において、原子炉格納容器12の内外を貫通するように設けられるペネトレーション13から観察用プローブ50を挿入しその内部観察を実施する」ことを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-104817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
貫通孔からの原子炉格納容器内の調査によれば、小型の貫通孔では原子炉格納容器内に搬入できる装置の大きさが制限されてしまう。また、1つの貫通孔で作業を行う場合、目的に合わせた専用装置を準備し、目的に応じた専用装置を複数回搬出入する必要があり、効率的ではない。
【0008】
より具体的に述べると、ペデスタル内に最短でアクセスできる貫通孔はペデスタル内と直線的な位置になるため、容易にペデスタル内へ侵入することが困難である。また貫通孔が小さく、搬入できる装置の寸法が限定されてしまう。
【0009】
さらに、ペデスタル内のカメラの設置や原子炉格納容器内での作業については、使用装
置が一つではないため、1つの小型の貫通孔で作業する場合、装置の搬出入が複数回行われ、効率的ではない。
【0010】
以上のことから本発明においては、作業効率の向上が期待できる原子炉格納容器内作業方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上のことから本発明においては、「沸騰水型原子力プラントにおける原子炉格納容器内作業方法であって、原子炉格納容器に存在する貫通孔を複数使用して、複数の装置または機材を原子炉格納容器内に搬入することを特徴とする原子炉格納容器内作業方法。」としたものである。
【0012】
また本発明によれば、「原子力プラントにおける原子炉格納容器内作業方法であって、原子炉格納容器に存在する第一の貫通孔から第一の作業装置を搬入し、原子炉格納容器に存在する第二の貫通孔から第二の作業装置を搬入し、第一の作業装置と第二の作業装置を遠隔にて操作する制御装置からの制御信号によって、複数の作業装置が、原子炉格納容器内にて協調作業を実施することを特徴とする原子炉格納容器内作業方法。」としたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、作業効率の向上が期待できる原子炉格納容器内作業方法を提供することができる。
【0014】
具体的には実施例の説明から明らかなように、原子炉格納容器へのアクセスに複数の貫通孔を使用することで、搬入装置を拡充させ、装置の使用用途の役割を分配することで、作業用途を増やすことが可能であり、1つの貫通孔だけでは出来なかったことが出来るようになり、作業効率の向上に期待ができる。
【0015】
また、使用用途の役割を分配することで、装置を小型化することが可能であり、貫通孔の寸法による制約が緩和され、小型の貫通孔の使用も可能となり、使用できる貫通孔の選択肢も増えることで、最適な作業手順を構築できる。使用できる貫通孔が増えることで、装置を複数搬入することも可能となり、貫通孔の制約が緩和されることで装置設計も容易になる。
【0016】
更には、1つの貫通孔を装置の搬入で占有しても、他の貫通孔から装置を搬入することで、継続的に原子炉格納容器内で作業することが可能となるため、作業効率の向上および工期の短縮が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】沸騰水型原子炉の原子炉格納容器の外観と各部断面を示す図。
図2A】作業用ロボットなどが原子炉格納容器内に内部進入した状態を示す横断面図。
図2B】作業用ロボットなどが原子炉格納容器内に内部進入した状態を示す一部拡大図。
図3A】作業用ロボットなどが原子炉格納容器内に内部侵入した状態を示す横断面図。
図3B】作業用ロボットなどが原子炉格納容器の下部に降下し作業する状態を示す一部拡大図。
図4A】作業用ロボットなどが原子炉格納容器内に内部侵入した状態を示す横断面図。
図4B】原子炉格納容器内に、カメラを各所に配置した状態を示す一部拡大図。
図5】ベント管内を確認する作業状態を示す一部拡大図。
図6】ベント管内堆積物をサンプリングする作業状態を示す一部拡大図。
図7】ベント管内を確認する作業状態を示す一部拡大図。
図8】ペデスタルの状態を確認するための作業状態を示す一部拡大図。
図9】ペデスタルの状態を確認するための作業状態を示す一部拡大図。
図10A】作業用ロボットなどが原子炉格納容器内に内部侵入した状態を示す横断面図。
図10B】ペデスタルの補強作業状態を示す一部拡大図。
図11】ペデスタルの補強作業状態を示す一部拡大図。
図12】共通貫通孔とすることを示す図。
図13A】原子炉格納容器内に投入した作業用ロボット、切断ツール、カメラを示す図。
図13B】原子炉格納容器内で作業用ロボットが切断ツールとカメラを受け取った状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明の実施例について、図面を参照して説明する。
【実施例0019】
図1は沸騰水型原子炉の原子炉格納容器の外観と各部断面を示す図である。図1左の外によれば原子炉格納容器1には、調査や作業のために内部進入が可能な、大きさの異なる複数の貫通孔2が形成されている。
【0020】
また図1右上には原子炉格納容器1の外観のB-B断面(縦断面)の配置構成が、図1左下には外観のA-A断面(横断面)の配置構成が、右下には縦断面のサプレッションチンバ3に至る部分の拡大図(一部拡大図)が例示されている。以下に述べる本発明の実施例では、これらのいずれかの構成を用いて、順次進展する作業内容を説明する。
【0021】
実施例1では、最初の段階として、作業用ロボットなどが貫通孔2を介して原子炉格納容器1内に内部進入状態を示している。この状態を、図2A図2Bにより説明する。
【0022】
図2Aによれば、異なる貫通孔2a,2b,2cから、それぞれ作業用ロボット6a,切断ツール6b,カメラ6cのような機器を、貫通孔2を介して原子炉格納容器1内に投入させた状態を示している。また図2Bによれば、これらの機器が原子炉格納容器1内のグレーチング9に着座された状態を示している。なお貫通孔2からは機材なども搬入される。機材には土嚢、ドライモルタルまたはジオポリマなどの補強材、ホースなどである。
【0023】
図2A図2Bの作業では、原子炉格納容器1の1つの貫通孔2aより作業用ロボット6aを原子炉格納容器内1へ搬入させ、作業用ロボット6aを搬入した貫通孔2aとは別貫通孔2bより切断ツール2bを投入する。更に作業用ロボット6aおよび切断ツール6bとは別の貫通孔2cよりカメラ6cを投入して作業状況を確認する。
【0024】
原子炉格納容器内1に搬入した作業用ロボット6aおよび切断ツール6bにより、原子炉格納容器内1のグレーチング9を切断し、地下階へのアクセスルートとなる開口10を構築することが可能である。
【実施例0025】
実施例2では、次の段階として、作業用ロボットなどを原子炉格納容器1の下部に進入させる降下作業を示している。この状態を、図3A図3Bにより説明する。
【0026】
図3Aによれば、さらに異なる貫通孔2d,2eから、それぞれ作業用ロボット6d,昇降設備6eを原子炉格納容器1内に投入させた状態を示している。また図3Bによれば、昇降設備6eを用いて作業用ロボット6aとカメラ6cを原子炉格納容器1内のグレーチング9から下に吊り降ろしている状態を示している。
【0027】
図3A図3Bの作業では、実施例1で原子炉格納容器1へ搬入した装置とは別の貫通孔2dより、作業用ロボット6dを原子炉格納容器内1へ搬入し、実施例1で搬入した作業用ロボット6aの補助作業ならびに共同作業を行う。例えば、更に別の貫通孔2eより昇降設備6eを投入し、実施例1で構築したアクセスルート10より、本昇降設備6eを使用して、作業用ロボット6aを地下階へ降下する。
【0028】
作業用ロボット6aを降下させる際に作業用ロボット6aの昇降設備6eへの接続やケーブル処理を作業用ロボット6dで補助することが可能である。また、昇降設備6eについては、昇降させる機構や荷重を支えるために投入する貫通孔よりも形状が大きくなる場合には、昇降設備6eの部品を貫通孔2から搬入し、作業用ロボット6aおよび作業用ロボット6dの共同作業により原子炉格納容器1内で組み立てて使用することも可能である。
【0029】
またこのときに、カメラ6cも吊り下げることで、吊り降ろし作業を原子炉格納容器1の外部において監視することができる。
【0030】
投入する装置については、先に投入した装置と入れ替えて、使用する貫通孔を増やさないことも可能である。例えば、実施例1で投入した切断ツール6bを使用後、切断ツール6bを回収し、切断ツール6bを投入した貫通孔2bから昇降設備6eを投入することや、カメラ6cを回収して、貫通孔2cから作業用ロボット6dを投入することも可能である。
【実施例0031】
実施例3では、次の段階として、原子炉格納容器1の下部に降下させた作業用ロボット6a1が調査作業を示している状態を、図3A図3Bに示している。
【0032】
さらに図3A図3Bの作業では、実施例2で原子炉格納容器1の地下階へ降下した作業用ロボット6a1を自走させ、ペデスタル15内外の調査を行うことも可能である。
【実施例0033】
実施例4では、次の段階として、原子炉格納容器1の下部に降下させた作業用ロボット6a1が調査後の実作業に開始した状態を、図3A図3Bに示している。
【0034】
図3A図3Bの作業では、実施例2で原子炉格納容器1の地下階へ降下した作業用ロボット6a1を自走させ、ペデスタル15内外の堆積物やペデスタル内に落下した構造物の付着物をサンプリングすることも可能である。サンプリングした堆積物や構造物への付着物は容器に入れ、容器だけを取り出すことで、装置の搬出入回数を低減することも可能である。
【実施例0035】
実施例5では、次の段階として、原子炉格納容器1内における本格的作業開始にあたり、確認用のカメラを各所に配置した状態を図4A図4Bに示している。
【0036】
図4Aの場合、原子炉格納容器1内に投入された機器の種別としては図3Aと同じものでよいが、ここでは新たなカメラ6cnを貫通孔2nから投入したことを記述している。この結果、図4Bに示すように原子炉格納容器1内の各所に複数のカメラ6cが投入されたことを示している。なお複数カメラを投入するための貫通孔2はカメラ6ごとに別の場所を利用してもよいし、共通としてもよい。
【0037】
実施例5では、実施例1から実施例4で使用していない原子炉格納容器1の貫通孔2nよりカメラ6cnまたはカメラ搭載型のロボット6anを原子炉格納容器内1へ搬入する。搬入したカメラ6cnまたはカメラ搭載型のロボット6anの具体的な設置場所としては、例えばペデスタルのCRD搬出入口18付近にカメラ6c2,および地下階の作業員開口19付近にカメラ6c1、CRD引抜挿入配管開口20付近にカメラ6c3を設置することが望ましく、これらのすべてまたはいずれかの開口に設置することで、ペデスタル18内の確認を行うことが可能である。
【0038】
投入する装置については、先に投入した装置と入れ替えて、使用する貫通孔を増やさないことも可能である。例えば、実施例1で投入した切断ツール6bやカメラ6cを回収して、切断ツール6bとカメラ6cを回収した貫通孔2bと貫通孔2cからカメラ6cnまたはカメラ搭載型のロボット6anを投入することも可能である。
【実施例0039】
実施例6では、ベント管24付近を確認することについて図5図6の一部拡大図を用いて説明する。
【0040】
図5においてベント管24内を確認する場合には、実施例1と同様な手順で、堆積物が流入したと思われるジェットデフ21の上のグレーチング9を切断し、開口10をあける。使用していない原子炉格納容器1の貫通孔2よりカメラ6cを投入し、搬入済みまたは新たに搬入する作業用ロボット6aを使用して、グレーチング9上からジェットデフ21にカメラ6cを挿入し、ベント管24内の調査を行うことも可能である。
【0041】
また図5と同じベント管24を示す図6において、カメラ6cの代わりにサンプリング装置25を挿入すれば、ベント管24内の堆積物のサンプリングが可能である。
【0042】
さらにまた図5図6と同じベント管24を示す図7において、新たに調査用のロボッ6aを使用していない貫通孔より挿入すれば、ベント管内24の奥まで確認でき、サブ
レッションチェンバー3への堆積物の流入可否も確認することが可能である。
【実施例0043】
実施例7では、原子炉格納容器1の下部に冷却水が溜まっていることを想定してペデスタルの状態の確認を行うことについて図8を用いて説明する。
【0044】
図8に示すようにこの場面では、原子炉格納容器1の貫通孔2からUT(超音波)探触子搭載型のボート型ロボット29を搬入し、ペデスタル18の状態を確認することも可能ある。ボート型ロボット29を搬入した貫通孔2とは別の貫通孔よりカメラや照明を搬入することで作業状況を俯瞰的に確認することが可能である。
【実施例0045】
実施例8でも、原子炉格納容器1の下部に冷却水が溜まっていることを想定してペデスタルの状態の確認を行うことについて図9を用いて説明する。
【0046】
この時は図9に示すように、実施例7のUT(超音波)探触子に代えてコアボーリング搭載型のボート型ロボット30を原子炉格納容器1の貫通孔2より搬入することで、ペデスタルのコアサンプリングをすることが可能である。またコアボーリング搭載型のボート型ロボットを搬入した貫通孔とは別の貫通孔よりカメラや照明を搬入することで作業状況を俯瞰的に確認することが可能である。
【実施例0047】
実施例9では、補強が必要な場合に補強をすることについて、図10A図10Bにより説明する。
【0048】
図10Aは各所の補強のために土嚢31、ホース34,作業用ロボット6をそれぞれ相違する貫通孔2から原子炉格納容器内1へ搬入したことを示している。図10Bは、補強作業状態を示している。
【0049】
この場面では、原子炉格納容器1の貫通孔2より原子炉格納容器1内へ土嚢31を搬入する。搬入した土嚢31は別の貫通孔2から搬入した作業用ロボット6を使用してペデスタル内に運搬し、作業用ロボット6を使用して補強が必要なペデスタル18の前に積み上げて堰33を作る。
【0050】
また使用していない原子炉格納容器1の貫通孔2よりドライモルタルまたはジオポリマなどの補強材35用のホース34を原子炉格納容器1内へ搬入し、土嚢31を積み上げて作った堰33の中にドライモルタルまたはジオポリマなどの補強材35を注入してペデスタル18を補強することが可能である。
【実施例0051】
実施例10も、補強が必要な場合の補強に関する。実施例9とは別の補強方法を示している。 このときは図11に示すように、実施例9と同様な手順でペデスタル18の作業員開口19に土嚢により堰36をつくり、使用していない貫通孔より搬入したドライモルタルまたはジオポリマなどの補強材35用のホースをペデスタル18内に持っていき、ペデスタル内にドライモルタルまたはジオポリマなどの補強材35を注入することによりペデスタル18を補強する。ペデスタル18内に注入したドライモルタルまたはジオポリマなどの補強材35は、堆積物と共に回収する。
【実施例0052】
実施例11では図12を用いて共通貫通孔とすることについて説明する。実施例1から実施例10において、1つの貫通孔に複数の開口を設けられる場合、例えば、1つの貫通孔2に複数穴をあけて、あけた穴にガイドパイプ37を取り付け、ガイドパイプ37から設備を投入できる場合には、複数のガイドパイプと複数の貫通孔を組み合わせ使用して作業することも可能である。
【0053】
なお原子炉格納容器内に装置または機材を搬入するにあたり、その機能を分担し、貫通孔の大きさに応じた装置または機材を搬入するのがよい。
【0054】
また複数の貫通孔から複数の装置が搬入されていることから、これらの協調作業により、より複雑な作業を行わせることができる。一例として、原子炉格納容器に存在する第一の貫通孔から第一の作業装置を搬入し、原子炉格納容器に存在する第二の貫通孔から第二の作業装置を搬入し、第一の作業装置と第二の作業装置を遠隔にて操作する制御装置からの制御信号によって、複数の作業装置が、原子炉格納容器内にて協調作業を実施することで実現可能である。さらに、第三の貫通孔があれば、第三の作業装置を搬入し、さらに複数の貫通孔があれば、複数の作業装置を搬入するようにしても良い。制御装置は原子炉格納容器の外部の任意の場所に設けておくと良い。
【実施例0055】
実施例12では実施例1の具体例として図2A図2B図13A図13Bを用いて作業用ロボットを使用したグレーチング切断作業について説明する。
【0056】
実施例1では、最初の段階として、作業用ロボットなどが貫通孔2を介して原子炉格納容器1内に内部進入し、原子炉格納容器内のグレーチングを切断して地下階へのアクセスルートとなる開口を構築する作業を示している。
【0057】
図2Aでは、異なる貫通孔2a,2b,2cから、それぞれ作業用ロボット6a,切断ツール6b,カメラ6cのような機器を、貫通孔2を介して原子炉格納容器1内に投入させた状態を示している。
【0058】
図2Bは原子炉格納容器1内に搬入した作業用ロボット6aおよび切断ツール6bにより、原子炉格納容器1内のグレーチング9を切断し、地下階へのアクセスルートとなる開口10を構築する作業を示したものである。
【0059】
図13Aは、図2Aで原子炉格納容器1内に投入された作業用ロボット6a,切断ツール6b,カメラ6cの一例を示しており、切断ツール6bは平面と側面の状態を示し、カメラ6cは正面と側面を示している。作業用ロボット6aは4本の脚38を有し、2本の腕39を持つ、液圧駆動系のロボットを示したものである。ロボットの脚と腕は供給する液圧により複数のシリンダ体を駆動して自由位置に制御することが可能である。
【0060】
図13Bは作業用ロボット6aが、原子炉格納容器1内で切断ツール6b、カメラ6cを受け取った状態を示している。作業用ロボット6aが4本の脚38を使用して原子炉格納容器1内を移動し、原子炉格納容器1内へ投入された切断ツール6b、カメラ6cを作業用ロボット6aの2本の腕39で受け取り、所定の場所へ移動する。作業用ロボット6aは、所定の場所に到着後、原子炉格納容器1内に投入された切断ツール6bを使用して、グレーチング9を切断し、地下階へのアクセスルートとなる開口10を構築することが可能である。
【0061】
上記は原子炉格納容器内の移動手段として多脚ロボットとした一例を示すものであり、移動手段はクローラーロボットなど多脚以外でもよい。また、上記は移動先の作業としてロボットに備えた双腕にツールを持たせた一例を示すものであり、ロボットに備える腕が短腕でも作業ツールを持ち替えて持たすことで作業は可能である。さらに、上記は作業用ロボットが液圧駆動系のロボットの一例を示すものであり、電動ロボットなど液圧駆動系以外のロボットとしてもよい。
【0062】
以上説明した実施例に示すように、本発明では原子炉格納容器内へアクセスする貫通孔
を1つに限定せず、複数使用する。またこの時原子炉格納容器内へのアクセス開口を複数
使用することで、搬入する装置を拡充させ、装置の使用用途の役割を分配することが可能
となる。また装置の役割を分担することで装置の小型化が可能となる。複数の装置や機材
を投入することで原子炉格納容器内での装置の組み合わせが可能となる。また1つの貫通
孔を占有しても、他の貫通孔から装置や機材を投入することで、継続的に作業が可能とな
る。
【符号の説明】
【0063】
1:原子炉格納容器
2:貫通孔
3:サプレッションチャンバ
6:機器、機材
9:グレーチング
10:開口
15:ペデスタル
18:CRD搬出入口
19:作業員開口
20:CRD引抜挿入配管開口
24:ベント管
25:サンプリング装置
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13A
図13B