(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170269
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】ポリビニルアセタール樹脂及びセラミックグリーンシート用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 8/28 20060101AFI20241129BHJP
C08L 29/14 20060101ALI20241129BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20241129BHJP
C04B 35/634 20060101ALI20241129BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
C08F8/28
C08L29/14
C08K5/10
C04B35/634 200
H01G4/30 515
H01G4/30 201L
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023110834
(22)【出願日】2023-07-05
(62)【分割の表示】P 2023087008の分割
【原出願日】2023-05-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】前田 貴之
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
4J002BE061
4J002EH046
4J002EH096
4J002EH146
4J002FD026
4J002GF00
4J002GQ01
4J002HA08
4J100AD02P
4J100BC59H
4J100DA01
4J100DA03
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4J100HC16
4J100HC17
4J100HC18
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4J100HC20
4J100HC27
4J100HC71
4J100HE07
4J100HE13
4J100HE41
4J100JA44
5E001AJ02
5E082BC38
5E082BC39
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG37
5E082FG46
(57)【要約】
【課題】セラミック粉末の分散性及び分散安定性に優れるとともに、強度が高く、乾燥時のデラミネーションや寸法変化が生じにくいセラミックグリーンシートを得ることができ、信頼性に優れた積層セラミックコンデンサを作製可能なポリビニルアセタール樹脂及びセラミックグリーンシート用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】Z平均分子量(Mz)が700,000以上、2,500,000以下であり、LоgM=6.00における分子量微分分布値が5.00以上、110.0以下である、ポリビニルアセタール樹脂。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Z平均分子量(Mz)が700,000以上、2,500,000以下であり、
LоgM=6.00における分子量微分分布値が5.00以上、110.0以下である、ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項2】
前記Z平均分子量に対する水酸基量(水酸基量/Z平均分子量)が、1.30×10-5以上である、請求項1に記載のポリビニルアセタール樹脂。
【請求項3】
アセタール基量が50~83モル%である、請求項1又は2記載のポリビニルアセタール樹脂。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のポリビニルアセタール樹脂と、可塑剤とを含む、セラミックグリーンシート用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアセタール樹脂及びセラミックグリーン用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の電子機器に搭載される電子部品の小型化、積層化が進んでおり、多層回路基板、積層コイル、積層セラミックコンデンサ等の積層型電子部品が広く使用されている。
なかでも、積層セラミックコンデンサは、一般に次のような工程を経て製造されている。
まず、ポリビニルブチラール樹脂やポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂等のバインダー樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に可塑剤、分散剤等を添加した後、セラミック原料粉末を加え、ビーズミル、ボールミル等の混合装置により均一に混合し、脱泡後に一定粘度を有するセラミックスラリー組成物を得る。このスラリー組成物をドクターブレード、リバースロールコーター等を用いて、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、又はSUSプレート等の支持体面に流延して、これを加熱等により、溶剤等の揮発分を溜去させた後、支持体から剥離してセラミックグリーンシートを得る。
次に、得られたセラミックグリーンシート上に、内部電極となる導電ペーストをスクリーン印刷により塗布したものを交互に複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体を作製する。その後、積層体中に含まれるバインダー樹脂成分等を熱分解して除去する処理、いわゆる脱脂処理を行い、焼成して得られるセラミック焼結体の端面に外部電極を焼結する工程を経て積層セラミックコンデンサが得られる。
【0003】
セラミックグリーンシートの作製に用いられるセラミックグリーンシート用樹脂組成物は、一般にメチルエチルケトン、トルエン、アルコール及びこれらの混合物等の有機溶剤にポリビニルアセタール樹脂を溶解した溶液として用いられる。しかしながら、従来のポリビニルアセタール樹脂は、有機溶剤に溶解した場合に微量の未溶解物が生じていた。このような未溶解物が存在すると、積層セラミックコンデンサに用いた場合に、脱脂工程及び焼成工程においてボイドが残りやすくなったり、セラミック粉末等の分散性が低下したりすることにより、得られる製品の電気特性が低下していた。
このため、ポリビニルアセタール樹脂をセラミックグリーンシートの用途に使用する際には、有機・無機化合物等を配合し、有機溶剤で溶解した後、濾過工程を行うことにより、未溶解物を除去する必要があった。
【0004】
これに対して、特許文献1では、メチルエチルケトン及び/又はトルエンとエタノールとの1:1混合溶剤に溶解して5重量%溶液としたポリビニルアセタール樹脂溶液を、目開き5μmのフィルタを用い、濾過温度25℃、濾過圧10mmHgの条件で濾過したときの濾過流量の低下率が10%未満であるポリビニルアセタール樹脂が提案されている。また、このようなポリビニルアセタール樹脂を用いることで、有機溶剤に溶解した場合に未溶解物が少なく、濾過時間を短縮できることにより、生産性を向上させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、近年では、電子機器の多機能化、小型化に伴い、積層セラミックコンデンサは、大容量化小型化が求められており、セラミックグリーンシートにも更なる薄層化が求められている。
しかしながら、特許文献1に記載のポリビニルアセタール樹脂を用いた場合、得られるセラミックグリーンシートの強度が不充分なものになるという問題があった。
また、セラミックグリーンシートを積層、乾燥する工程において、デラミネーション(層間剥離)や寸法変化が生じることがあった。セラミックグリーンシートの薄層化に伴い、デラミネーションや寸法変化が生じると、積層体を切断後の外観不良が発生するという問題がある。
【0007】
本発明は、セラミック粉末の分散性及び分散安定性に優れるとともに、強度が高く、乾燥時のデラミネーションや寸法変化が生じにくいセラミックグリーンシートを得ることができ、信頼性に優れた積層セラミックコンデンサを作製可能なポリビニルアセタール樹脂及びセラミックグリーンシート用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示(1)は、Z平均分子量(Mz)が700,000以上、2,500,000以下であり、LоgM=6.00における分子量微分分布値が5.00以上、110.0以下である、ポリビニルアセタール樹脂である。
本開示(2)は、前記Z平均分子量に対する水酸基量(水酸基量/Z平均分子量)が、1.30×10-5以上である、本開示(1)に記載のポリビニルアセタール樹脂である。
本開示(3)は、アセタール基量が50~83モル%である、本開示(1)又は(2)に記載のポリビニルアセタール樹脂である。
本開示(4)は、本開示(1)~(3)の何れかに記載のポリビニルアセタール樹脂と、可塑剤とを含む、セラミックグリーンシート用樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、Z平均分子量及びLоgM=6.00における分子量微分分布値が所定の範囲内であるポリビニルアセタール樹脂は、セラミック粉末の分散性及び分散安定性に優れるとともに、強度が高く、乾燥時のデラミネーションや寸法変化が生じにくいセラミックグリーンシートを得ることができ、信頼性に優れた積層セラミックコンデンサを作製できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明のポリビニルアセタール樹脂は、Z平均分子量(Mz)が700,000以上、2,500,000以下であり、LоgM=6.00における分子量微分分布値が5.00以上、110.0以下である。
このようなポリビニルアセタール樹脂を含有することで、強度が高く、乾燥時のデラミネーションや寸法変化が生じにくいセラミックグリーンシートを得ることができる。
【0011】
本発明のポリビニルアセタール樹脂のZ平均分子量(Mz)は、700,000以上、2,500,000以下である。上記範囲内とすることで、セラミック粉末との濡れ性を改善して分散安定性を向上させることができる。
上記Mzは、750,000以上であることが好ましく、800,000以上であることがより好ましく、2,400,000以下であることが好ましく、2,300,000以下であることがより好ましい。すなわち、上記Z平均分子量は700,000~2,500,000であり、750,000~2,400,000であることが好ましく、800,000~2,300,000であることがより好ましい。
上記Mzは、溶媒としてN-メチルピロリドンを用い、適切な標準(例えば、ポリスチレン標準)を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0012】
本発明のポリビニルアセタール樹脂のLоgM=6.00における分子量微分分布値が5.00以上、110.0以下である。上記範囲内とすることで、分散性と強度をバランス良く両立することができる。
上記LоgM=6.00における分子量微分分布値は、7.00以上であることが好ましく、8.00以上であることがより好ましく、100.0以下であることが好ましく、95.0以下であることがより好ましい。すなわち、上記LоgM=6.00における分子量微分分布値は5.00~110.0であり、7.00~100.0であることが好ましく、8.00~95.0であることがより好ましい。
【0013】
本発明において、「LоgM=6.00における分子量微分分布値」とは、分子量Mの対数logMが6.00である場合の微分分布値であり、高分子量成分の割合となる。
上記分子量微分分布値の一例として、横軸にLоgM、縦軸に分子量微分分布値を規定した分子量微分分布曲線を
図1に示す。本発明では、LоgMが6.00である場合における分子量微分分布値が5.00以上、110.0以下であることを規定する。
上記LоgM=6.00における分子量微分分布値は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定することができる。
【0014】
上記Mz、LоgM=6.00における分子量微分分布値は、例えば、原料ポリビニルアルコール樹脂の平均重合度、ケン化度、アセタール化反応の温度や時間条件を変化させ、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基量、水酸基量、アセチル基量等を適宜設定することで調整することができる。
特に、Mz、LоgM=6.00における分子量微分分布値は、後述するアセタール化反応時の保持温度、保持時間、昇温時間、昇温速度を変化させることで調整することができる。
【0015】
本発明のポリビニルアセタール樹脂は、下記式(1)で表されるアセタール基を有する構成単位、下記式(2)で表される水酸基を有する構成単位、下記式(3)で表されるアセチル基を有する構成単位を有することが好ましい。
【0016】
【0017】
上記式(1)中、R1は水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を表す。
【0018】
上記式(1)中、R1が炭素数1~20のアルキル基である場合、該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。なかでも、メチル基、n-プロピル基が好ましい。
【0019】
本発明のポリビニルアセタール樹脂において、上記式(1)で表されるアセタール基を有する構成単位の含有量(以下、「アセタール基量」ともいう)の好ましい下限は50モル%、好ましい上限は83モル%である。
上記アセタール基量が50モル%以上であると、有機溶剤への溶解性を向上させることができる。上記アセタール基量が83モル%以下であると、引張強度に優れたポリビニルアセタール樹脂とすることができる。
上記アセタール基量は、より好ましい下限が55モル%、より好ましい上限が80モル%である。すなわち、上記アセタール基量は50~83モル%であることが好ましく、55~80モル%であることがより好ましい。
上記アセタール基量は、例えば、1H-NMRにより測定することができる。
なお、アセタール基量の計算方法については、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基がポリビニルアルコールの2個の水酸基をアセタール化して得られたものであることから、アセタール化された2個の水酸基を数える方法を採用する。
【0020】
本発明のポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(2)で表される水酸基を有する構成単位の含有量(以下、「水酸基量」ともいう)の好ましい下限は18モル%、好ましい上限は40モル%である。
上記水酸基量が18モル%以上であると、強靭性の高いポリビニルアセタール樹脂とすることができる。上記水酸基量が40モル%以下であると、有機溶剤への溶解性を充分に向上させることができる。
上記水酸基量は、より好ましい下限が22モル%、より好ましい上限が38モル%である。すなわち、上記水酸基量は18~40モル%であることが好ましく、22~38モル%であることがより好ましい。
上記水酸基量は、例えば、1H-NMRにより測定することができる。
【0021】
本発明のポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(3)で表されるアセチル基を有する構成単位の含有量(以下、「アセチル基量」ともいう)の好ましい下限は0.1モル%、好ましい上限は22.0モル%である。
上記アセチル基量が0.1モル%以上であると、ポリビニルアセタール樹脂中の水酸基の分子内及び分子間の水素結合によるセラミックグリーンシート用スラリー組成物の高粘度化を抑制することができる。上記アセチル基量が22.0モル%以下であると、ポリビニルアセタール樹脂の柔軟性が上がりすぎることなく、ハンドリング性を向上させることができる。
上記アセチル基量は、より好ましい下限が0.5モル%、より好ましい上限が15.0モル%である。すなわち、上記アセチル基量は0.1~22.0モル%であることが好ましく、0.5~15モル%であることがより好ましい。
上記アセチル基量は、例えば、1H-NMRにより測定することができる。
【0022】
本発明のポリビニルアセタール樹脂のZ平均分子量に対する水酸基量(水酸基量/Mz)は、1.30×10-5以上であることが好ましい。上記下限以上とすることで、高い分散性を得ることができる。
上記水酸基量/Mzは、1.40×10-5以上であることがより好ましく、1.50×10-5以上であることが更に好ましく、2.70×10-5以下であることが好ましく、2.65×10-5以下であることがより好ましく、2.60×10-5以下であることが更に好ましい。すなわち、上記水酸基量/Mzは1.30×10-5~2.70×10-5であることが好ましく、1.40×10-5~2.65×10-5であることがより好ましく、1.50×10-5~2.60×10-5であることが更に好ましい。
【0023】
本発明のポリビニルアセタール樹脂は、薄膜セラミックグリーンシートを作製する場合に、機械的強度が保てるという観点から、平均重合度の好ましい下限が500、より好ましい下限が600、また有機溶剤への溶解性や、溶解粘度の観点から、好ましい上限が10,000、より好ましい上限が9,000である。すなわち、上記平均重合度は500~10,000であることが好ましく、600~9,000であることがより好ましい。
なお、上記ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度は原料ポリビニルアルコールのものと同様である。また、上記平均重合度は、JIS K 6726に準拠して測定することができる。
【0024】
本発明のポリビニルアセタール樹脂は、通常、ポリビニルアルコール樹脂をアセタール化することにより製造することができる。
【0025】
上記ポリビニルアルコール樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系樹脂をアルカリ、酸、アンモニア水等によりけん化することにより製造された樹脂等の従来公知のポリビニルアルコール樹脂を用いることができる。
上記ポリビニルアルコール樹脂は、完全けん化されていてもよいが、少なくとも主鎖の1カ所にメソ、ラセモ位に対して2連の水酸基を有するユニットが最低1ユニットあれば完全けん化されている必要はなく、部分けん化ポリビニルアルコール樹脂であってもよい。また、上記ポリビニルアルコール樹脂としては、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂、部分けん化エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂等、ビニルアルコールと共重合可能なモノマーとビニルアルコールとの共重合体も用いることができる。
上記ポリ酢酸ビニル系樹脂は、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0026】
上記ポリビニルアルコール樹脂は、ケン化度が75モル%以上であることが好ましい。
上記ケン化度は76モル%以上99.4モル%以下であることがより好ましく、78モル%以上98モル%以下であることが更に好ましい。すなわち、上記ケン化度は76~99.4モル%であることが好ましく、78~98モル%であることがより好ましい。
上記ポリビニルアルコール樹脂を用いることにより、上記Mzを所定の範囲とすることができる。
【0027】
上記アセタール化は、水溶剤中、水と水との相溶性のある有機溶剤との混合溶剤中、あるいは有機溶剤中で行うことが好ましい。
上記水との相溶性のある有機溶剤としては、例えば、アルコール系有機溶剤を用いることができる。
上記有機溶剤としては、例えば、アルコール系有機溶剤、芳香族有機溶剤、脂肪族エステル系溶剤、ケトン系溶剤、低級パラフィン系溶剤、エーテル系溶剤、アミド系溶剤、アミン系溶剤等が挙げられる。
上記アルコール系有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール等が挙げられる。
上記芳香族有機溶剤としては、例えば、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、安息香酸メチル等が挙げられる。
上記脂肪族エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等が挙げられる。
上記ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ベンゾフェノン、アセトフェノン等が挙げられる。
上記低級パラフィン系溶剤としては、ヘキサン、ペンタン、オクタン、シクロヘキサン、デカン等が挙げられる。
上記エーテル系溶剤としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
上記アミド系溶剤としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルテセトアミド、N-メチルピロリドン、アセトアニリド等が挙げられる。
上記アミン系溶剤としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、n-ブチルアミン、ジn-ブチルアミン、トリn-ブチルアミン、アニリン、N-メチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、ピリジン等が挙げられる。
これらは、単体で用いることもできるし、2種以上の溶剤を混合で用いることもできる。これらのなかでも、樹脂に対する溶解性及び精製時の簡易性の観点から、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフランが特に好ましい。
【0028】
上記アセタール化は、酸触媒の存在下において行うことが好ましい。
上記酸触媒は特に限定されず、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等の鉱酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸や、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等のスルホン酸が挙げられる。これらの酸触媒は、単独で用いられてもよく、2種以上の化合物を併用してもよい。なかでも、塩酸、硝酸、硫酸が好ましく、塩酸が特に好ましい。
【0029】
上記アセタール化に用いられるアルデヒドとしては、炭素数1~10の鎖状脂肪族基、環状脂肪族基又は芳香族基を有するアルデヒドが挙げられる。これらのアルデヒドとしては、従来公知のアルデヒドを使用できる。上記アセタール化反応に用いられるアルデヒドは、特に限定されるものではなく、例えば、脂肪族アルデヒド、芳香族アルデヒド等が挙げられる。
上記脂肪族アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、2-エチルヘキシルアルデヒド、n-ヘプチルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド、アミルアルデヒド等が挙げられる。
上記芳香族アルデヒドとしては、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、2-メチルベンズアルデヒド、3-メチルベンズアルデヒド、4-メチルベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、m-ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β-フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。
これらのアルデヒドは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。アルデヒドとしては、なかでも、アセタール化反応性に優れ、生成する樹脂に充分な内部可塑効果をもたらし、結果として良好な柔軟性を付与することができるホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、2-エチルヘキシルアルデヒド、n-ノニルアルデヒドが好ましい。また、耐衝撃性及び金属との接着性に特に優れる接着剤組成物を得られることから、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒドがより好ましい。
【0030】
上記アルデヒドの添加量としては、目的とするポリビニルアセタール樹脂のアセタール基量にあわせて適宜設定することができる。特に、ポリビニルアルコール100モル%に対して、好ましくは50モル%以上95モル%以下、より好ましくは55モル%以上90モル%以下とすると、アセタール化反応が効率よく行われ、未反応のアルデヒドも除去しやすいため好ましい。
【0031】
上記アセタール化反応は、所定の昇温速度で昇温を行った後、一定時間、温度で保持して行うことが好ましい。
上記アセタール化反応における昇温時間は、120分以上、420分以下であることが好ましく、180分以上、360分以下であることがより好ましい。すなわち、上記昇温時間は120~420分であることが好ましく、180~360分であることがより好ましい。
また、上記昇温速度は0.1℃/分以上、0.4℃/分以下であることが好ましい。すなわち、上記昇温速度は0.1~0.4℃/分であることが好ましい。
上記昇温速度、昇温速度で昇温を行うことで、上記Mz、LоgM=6.00における分子量微分分布値を所定の範囲とすることができる。
【0032】
上記アセタール化反応における保持時間は、1時間以上、10時間以下であることが好ましく、2時間以上、9時間以下であることがより好ましい。すなわち、上記保持時間は1~10時間であることが好ましく、2~9時間以下であることがより好ましい。上記保持時間とすることで、上記Mzを所定の範囲とすることができる。
上記アセタール化反応における保持温度は、30℃以上、80℃以下であることが好ましく、40℃以上、70℃以下であることがより好ましい。すなわち、上記保持温度は30~80℃であることが好ましく、40~70℃であることがより好ましい。上記保持温度とすることで、上記Mz、LogM=6.00における分子量微分分布値を所定の範囲とすることができる。
【0033】
本発明のポリビニルアセタール樹脂と、可塑剤とを含む、セラミックグリーンシート用樹脂組成物もまた本発明の1つである。
本発明のセラミックグリーンシート用樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない限り、酸化防止剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、消泡剤等の成分を含有していてもよい。
【0034】
本発明のセラミックグリーンシート用樹脂組成物を製造する方法としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂をアルデヒドによってアセタール化して得られたポリビニルアセタール樹脂に対して、可塑剤及びその他必要に応じて添加される添加剤を添加して混合してセラミックグリーンシート用樹脂組成物とすることができる。
【0035】
本発明のセラミックグリーンシート用樹脂組成物は、可塑剤を含む。上記可塑剤を添加することで、得られるセラミックグリーンシートの機械的強度、及び、柔軟性を大幅に向上させることができる。
上記可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)等のフタル酸ジエステル、ジオクチルアジペート等のアジピン酸ジエステル、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコール-ジ-2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコール-ジ-2-エチルブチレート、テトラエチレングリコール-ジ-2-エチルブチレート、テトラエチレングリコール-ジ-ヘプタノエート、トリエチレングリコール-ジ-ヘプタノエート等のアルキレングリコールジエステル等が挙げられる。
【0036】
本発明のセラミックグリーンシート用樹脂組成物において、上記可塑剤の含有量は、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対する好ましい下限が7重量部、より好ましい下限が8.5重量部、好ましい上限が18重量部、より好ましい上限が13.5重量部である。
【0037】
本発明のセラミックグリーンシート用樹脂組成物に有機溶剤、セラミック粉末を混合することでセラミックグリーンシート用スラリー組成物を作製することができる。
【0038】
上記有機溶剤としては特に限定されず、例えば、上記ポリビニルアセタール樹脂を溶解できるものであれば特に限定されず、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類が挙げられる。また、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。更に、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、ブタン酸メチル、ブタン酸エチル、ブタン酸ブチル、ペンタン酸メチル、ペンタン酸エチル、ペンタン酸ブチル、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸ブチル、酢酸2-エチルヘキシル、酪酸2-エチルヘキシル等のエステル類等が挙げられる。また、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール、ブチルセルソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、テルピネオールアセテート、ジヒドロテルピネオールアセテート等が挙げられる。特に、アルコール類、ケトン類、芳香族炭化水素類及びこれらの混合溶剤が塗工性、乾燥性の面から見て好ましい。なかでも、エタノールとトルエンの混合溶剤やメチルエチルケトンとトルエンの混合溶剤がより好ましい。
【0039】
上記セラミックグリーンシート用スラリー組成物中の上記有機溶剤の含有量は、用いられるポリビニルアセタール樹脂の種類等によって設定されるものであって、特に限定されるものではないが、あまり少ないと、混錬に必要な溶解性を発揮しにくい。また、あまり多いと、セラミックグリーンシート用スラリー組成物の粘度が低くなり過ぎてセラミックグリーンシートを作製する際のハンドリング性が悪くなることがある。このため、有機溶剤の含有量は、好ましくは20重量%以上80重量%以下である。
【0040】
上記セラミック粉末としては、セラミックの製造に使用される金属又は非金属の酸化物もしくは非酸化物の粉末が挙げられる。また、これらの粉末の組成は単一組成、化合物の状態のものを単独又は混合して使用しても差し支えない。なお、金属の酸化物又は非酸化物の構成元素はカチオン又はアニオンともに単元素でも複数の元素から成り立っていてもよく、更に酸化物又は非酸化物の特性を改良するために加えられる添加物を含んでいてもよい。具体的には、Li、K、Mg、B、Al、Si、Cu、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Ga、In、Y、ランタノイド、アクチノイド、Ti、Zr、Hf、Bi、V、Nb、Ta、W、Mn、Fe、Co、Ni等の酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、硫化物等が挙げられる。
また、通常複酸化物と称される複数の金属元素を含む酸化物粉末の具体的なものを結晶構造から分類すると、ペロブスカイト型構造をとるものとしてNaNbO3、SrZrO3、PbZrO3、SrTiO3、BaZrO3、PbTiO3、BaTiO3等が挙げられる。スピネル型構造をとるものとしてMgAl2O4、ZnAl2O4、CoAl2O4、NiAl2O4、MgFe2O4等が挙げられる。イルメナイト型構造をとるものとしてはMgTiO3、MnTiO3、FeTiO3等が挙げられる。ガーネット型構造をとるものとしてはGdGa5O12、Y6Fe5O12等が挙げられる。このなかでも、本願の変性ポリビニルアセタール樹脂は、BaTiO3の粉末と混合したセラミックグリーンシートに対し、高い特性を示す。
【0041】
上記セラミック粉末の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、例えば、薄層セラミックグリーンシート(厚さ5μm以下)の作製用としては、0.5μm以下であることが好ましい。
【0042】
上記セラミックグリーンシート用スラリー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明のポリビニルアセタール樹脂以外のポリビニルアセタール樹脂や、アクリル樹脂、エチルセルロース等の他の樹脂を含有していてもよい。このような場合、全バインダー樹脂に対する本発明のポリビニルアセタール樹脂の含有量が50重量%以上であることが好ましい。
【0043】
上記セラミックグリーンシート用スラリー組成物には、必要に応じて、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、充填剤等を適宜添加してもよく、場合によってはアクリル樹脂やウレタン樹脂等の他樹脂を少量添加してもよい。
【0044】
上記セラミックグリーンシート用スラリー組成物を製造する方法としては特に限定されず、例えば、本発明のポリビニルアセタール樹脂、有機溶剤、セラミック粉末及び必要に応じて添加する各種添加剤をボールミル、ブレンダーミル、3本ロール等の各種混合機を用いて混合する方法等が挙げられる。
【0045】
上記セラミックグリーンシート用スラリー組成物を塗工した後、加熱し乾燥させることでセラミックグリーンシートが得られる。
上記セラミックグリーンシートを用いて、セラミック電子部品を製造することができる。例えば、セラミックグリーンシートの表面に電極層用ペーストを塗工する工程、電極層が形成されたセラミックグリーンシートを積層し加熱圧着して得られた積層体を脱脂、焼成する工程を行うことで、セラミック電子部品を製造することができる。
【0046】
上記セラミックグリーンシート用スラリー組成物を塗工する場合の方法としては、特に限定されず、例えば、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター等の方法が挙げられる。なお、その他の具体的な方法については、従来公知の方法を用いることができる。
【0047】
上記セラミック電子部品としては特に限定されず、例えば、積層セラミックコンデンサ、積層セラミックインダクタ、キャパシタ、圧電アクチュエーター、積層バリスタ、積層サーミスタ、EMIフィルタ、窒化アルミニウム多層基板、アルミナ多層基板等が挙げられる。
【0048】
上記セラミック電子部品の製造方法では、上記セラミックグリーンシートの表面に電極層用ペーストを塗工する工程を行う。
電極層用ペーストとしては、例えば、ポリビニルアセタール樹脂やエチルセルロース、アクリル樹脂等をバインダー樹脂として有機溶剤に溶解し、導電粉末等を分散させることで得ることができる。これらの樹脂は単独で使用しても2種以上混合して使用してもよい。ポリビニルアセタール樹脂を含有する電極層用ペーストは、加熱圧着工程において、セラミックグリーンシートに優れた接着性を示すので好ましい。
【0049】
上記セラミック電子部品の製造方法では、上述した、電極層が形成されたセラミックグリーンシートを作製した後、同様にして作製した電極層が形成されたセラミックグリーンシートを積層し加熱圧着して得られた積層体を脱脂、焼成することで、シートアタックやクラック等の問題が解決された積層セラミック電子部品が得られる。
なお、上記加熱圧着工程、積層体を脱脂、焼成する工程については特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明によれば、強度が高く、乾燥時のデラミネーションや寸法変化が生じにくいセラミックグリーンシートを得ることができ、信頼性に優れた積層セラミックコンデンサを作製可能なポリビニルアセタール樹脂及びセラミックグリーンシート用樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明のポリビニルアセタール樹脂を用いることで、セラミック粉末の分散性及び分散安定性を大幅に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】分子量微分分布曲線の一例を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
ポリビニルアルコール樹脂(平均重合度1,700、ケン化度99.0モル%)300gに純水3000gを加え、90℃で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を20℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸120gとn-ブチルアルデヒド140gとを添加し、昇温速度0.2℃/分で昇温させ(昇温時間250分)、70℃で、3時間保持してアセタール化反応を行った後、反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。
【0054】
(セラミックグリーンシート用樹脂組成物の作製)
得られたポリビニルアセタール樹脂1.25重量部を、エタノール/トルエン混合溶剤(重量比1:1)48.75重量部に加え、攪拌溶解することでセラミックグリーンシート用樹脂組成物を得た。
【0055】
(樹脂シートの作製)
得られたセラミックグリーンシート用樹脂組成物を、コーターを用いて乾燥後の厚みが20μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗工した後、70℃で60分加熱乾燥させることにより、樹脂シートを作製した。
【0056】
(スラリー組成物の作製)
得られたポリビニルアセタール樹脂2重量部、及び、ジオクチルフタレート(DOP)2重量部を、エタノール/トルエン混合溶剤(重量比1:1)96重量部に加え、攪拌溶解することにより、樹脂溶液を作製した。
また、ポリビニルアセタール樹脂「BL-1」(積水化学工業社製)3重量部をエタノール/トルエン混合溶剤(重量比1:1)40重量部に加え、攪拌溶解した。次いで、チタン酸バリウム粉末(堺化学工業社製、BT01)100重量部を加え、ビーズミル(アイメックス社製レディーミル)にて180分間攪拌することにより、無機分散液を作製した。
得られた無機分散液に上記樹脂溶液100重量部を加えてビーズミルにて攪拌することにより、スラリー組成物を得た。なお、攪拌中、5分毎にサンプリングを実施し、得られたスラリー組成物0.1重量部を、エタノール/トルエン混合溶剤(重量比1:1)10重量部に添加し、超音波分散機(エスエヌディ社製 US-303)にて撹拌することにより、分散評価用溶液を作製した。レーザー回折式粒度分布計(堀場製作所社製、LA-910)を用いて粒度分布測定を行い、粒度分布のD50値が1.0μmに達した時点で攪拌を終了した。
【0057】
(実施例2)
ポリビニルアルコール樹脂(平均重合度3,000、ケン化度98.9モル%)300gに純水3000gを加え、90℃で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を20℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸120gとn-ブチルアルデヒド140gとを添加し、昇温速度0.2℃/分で昇温させ(昇温時間250分)、70℃で、3時間保持してアセタール化反応を行った後、反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末、セラミックグリーンシート用樹脂組成物、樹脂シート、スラリー組成物を得た。
【0058】
(実施例3)
ポリビニルアルコール樹脂(平均重合度5,000、ケン化度98.9モル%)300gに純水3000gを加え、90℃で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を20℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸120gとn-ブチルアルデヒド140gとを添加し、昇温速度0.2℃/分で昇温させ(昇温時間250分)、70℃で、2時間保持してアセタール化反応を行った後、反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末、セラミックグリーンシート用樹脂組成物、樹脂シート、スラリー組成物を得た。
【0059】
(実施例4)
ポリビニルアルコール樹脂(平均重合度9,000、ケン化度98.9モル%)300gに純水3000gを加え、90℃で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を20℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸120gとn-ブチルアルデヒド140gとを添加し、昇温速度0.2℃/分で昇温させ(昇温時間250分)、70℃で、3時間保持してアセタール化反応を行った後、反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末、セラミックグリーンシート用樹脂組成物、樹脂シート、スラリー組成物を得た。
【0060】
(実施例5)
ポリビニルアルコール樹脂(平均重合度1700、ケン化度98.8モル%)300gに純水3000gを加え、90℃で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を20℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸120gとn-ブチルアルデヒド140gとを添加し、昇温速度0.16℃/分で昇温させ(昇温時間250分)、60℃で、3時間保持してアセタール化反応を行った後、反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末、セラミックグリーンシート用樹脂組成物、樹脂シート、スラリー組成物を得た。
【0061】
(実施例6)
ポリビニルアルコール樹脂(平均重合度800、ケン化度98.8モル%)300gに純水3000gを加え、90℃で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を20℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸150gとn-ブチルアルデヒド145gとを添加し、昇温速度0.16℃/分で昇温させ(昇温時間250分)、60℃で、3時間保持してアセタール化反応を行った後、反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末、セラミックグリーンシート用樹脂組成物、樹脂シート、スラリー組成物を得た。
【0062】
(比較例1)
ポリビニルアルコール樹脂(平均重合度300、ケン化度99.0モル%)300gに純水3000gを加え、90℃で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を20℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸150gとn-ブチルアルデヒド145gとを添加し、昇温速度0.5℃/分で昇温させ(昇温時間10分)、25℃で、4時間保持してアセタール化反応を行った後、反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末、セラミックグリーンシート用樹脂組成物、樹脂シート、スラリー組成物を得た。
【0063】
(比較例2)
ポリビニルアルコール樹脂(平均重合度500、ケン化度98.5モル%)300gに純水3000gを加え、90℃で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を20℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸150gとn-ブチルアルデヒド145gとを添加し、昇温速度0.5℃/分で昇温させ(昇温時間10分)、25℃で、3時間保持してアセタール化反応を行った後、反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末、セラミックグリーンシート用樹脂組成物、樹脂シート、スラリー組成物を得た。
【0064】
(比較例3)
ポリビニルアルコール樹脂(平均重合度800、ケン化度99.0モル%)300gに純水3000gを加え、90℃で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を20℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸150gとn-ブチルアルデヒド145gとを添加し、昇温速度0.7℃/分で昇温させ(昇温時間7分)、25℃で、3時間保持してアセタール化反応を行った後、反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末、セラミックグリーンシート用樹脂組成物、樹脂シート、スラリー組成物を得た。
【0065】
(比較例4)
ポリビニルアルコール樹脂(平均重合度9000、ケン化度99.0モル%)300gに純水3000gを加え、90℃で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を20℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸150gとn-ブチルアルデヒド145gとを添加し、昇温速度0.7℃/分で昇温させ(昇温時間10分)、25℃で、2.5時間保持してアセタール化反応を行った後、反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末、セラミックグリーンシート用樹脂組成物、樹脂シート、スラリー組成物を得た。
【0066】
(比較例5)
ポリビニルアルコール樹脂(平均重合度8800、ケン化度99.0モル%)300gに純水3000gを加え、90℃で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を20℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸150gとn-ブチルアルデヒド150gとを添加し、昇温速度0.7℃/分で昇温させ(昇温時間7分)、25℃で、2.5時間保持してアセタール化反応を行った後、反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を行い、ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末、セラミックグリーンシート用樹脂組成物、樹脂シート、スラリー組成物を得た。
【0067】
(評価)
実施例及び比較例で得られたポリビニルアセタール樹脂、セラミックグリーンシート用樹脂組成物、樹脂シート、スラリー組成物について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0068】
(1)ポリビニルアセタール樹脂の評価
(1-1)アセタール基量、水酸基量、アセチル基量
得られたポリビニルアセタール樹脂について、AV400型分光計(Bruker社製)を使用して、1H-NMR測定を行い、アセタール基量、水酸基量、アセチル基量を算出した。
なお、得られたポリビニルアセタール樹脂をDMSO-D6中に1.6重量%になるように溶解し、測定溶液とした。また、1H-NMR測定は80℃で実施した。
【0069】
(1-2)Mz、LоgM=6.00における分子量微分分布値
得られたポリビニルアセタール樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に0.2重量%の濃度で溶解させ、GPC装置HLC-8220(東ソー製)にて測定を行い、得られた測定結果から、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して、Z平均分子量Mzを算出した。
また、得られた分子量微分分布曲線から、LоgM=6.00における分子量微分分布値を測定した。
なお、カラムとして、TSKgelSuperHZ(東ソー社製)を用いた。
【0070】
(2)樹脂シートの評価
(2-1)引張弾性率、破断点伸度及び破断点応力
得られた樹脂シートについて、JIS K 7113に準拠して、引張試験機(島津製作所製、AUTOGRAPH AGS-J)を用い、引張速度20mm/分の条件にて破断点応力(MPa)、破断点伸度(%)及び引張弾性率(MPa)の測定を行った。
【0071】
(3)スラリー組成物の評価
(3-1)分散性
(分散性評価溶液の作製)
得られたスラリー組成物0.1重量部をエタノール/トルエン混合溶剤(重量比1:1)10重量部に添加し、超音波分散機(エスエヌディ社製、US-303)にて撹拌することにより、分散性評価用溶液を作製した。
【0072】
(分散性評価)
得られた分散性評価用溶液について、撹拌終了から60分後の粒度分布を測定した。
なお、粒度分布測定は、レーザー回析式粒度分布計(堀場製作所製 LA-910)を用いて行い、平均粒子径を測定した。
【0073】
(3-2)分散安定性
上記(3-1)で得られた分散性評価用溶液を用いて、23℃で1週間放置した後の粒度分布測定を行い、平均粒子径を測定した。
【0074】
(4)セラミックグリーンシートの評価
(セラミックグリーンシートの作製)
得られたスラリー組成物を、コーターを用いて乾燥後の厚みが20μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗工した後、加熱乾燥させ、セラミックグリーンシートを作製した。
【0075】
(4-1)引張弾性率、破断点伸度及び破断点応力
(セラミックグリーンシートの作製)
ポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業社製、BL-1)1重量部を、トルエン20重量部とエタノール20重量部との混合溶剤に加え、攪拌溶解した。次いで、100重量部のチタン酸バリウムの粉末(堺化学工業社製、BT01、平均粒子径0.1μm)を得られた溶液に添加し、ビーズミル(アイメックス社製 レディーミル)にて180分間撹拌することにより、無機分散液を作製した。
得られた無機分散液に、実施例、比較例で得られたセラミックグリーンシート用樹脂組成物を添加しビーズミルにて90分間攪拌した後、コーターを用いて乾燥後の厚みが20μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗工した。その後、40℃で30分間加熱乾燥させ、PETフィルムを剥離することでセラミックグリーンシートを作製した。
得られたセラミックグリーンシートについて、JIS K 7113に準拠して、引張試験機(島津製作所製、AUTOGRAPH AGS-J)を用い、引張速度20mm/分の条件にて破断点応力(MPa)、引張弾性率(MPa)及び破断点伸度(%)の測定を行った。
【0076】
(4-2)切断断面状態
「(4-1)引張弾性率、破断点伸度及び破断点応力」測定後の破断面をSEMにて観察し、下記評価基準に従って判定した。
◎:破断面に欠け、ヒビ、傷がないこと
○:破断面に欠け、ヒビはないが、傷があること
△:破断面に欠けはないが、ヒビがあること
×:破断面に欠け、シート間剥離があること
【0077】
(4-3)寸法変化率
「(4-1)引張弾性率、破断点伸度及び破断点応力」と同様の方法でセラミックグリーンシートを作製した。得られたセラミックグリーンシートを70℃で3時間乾燥させ、70℃乾燥前後の寸法変化率を算出し以下の基準で評価した。
◎:2%以下
○:2%を超え3%以下
△:3%を超え4%以下
×:4%を超える
【0078】
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明によれば、セラミック粉末の分散性及び分散安定性に優れるとともに、強度が高く、乾燥時のデラミネーションや寸法変化が生じにくいセラミックグリーンシートを得ることができ、信頼性に優れた積層セラミックコンデンサを作製可能なポリビニルアセタール樹脂及びセラミックグリーンシート用樹脂組成物を提供することができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Z平均分子量(Mz)が800,000以上、2,300,000以下であり、
LоgM=6.00における分子量微分分布値が8.00以上、95.0以下である、ポリビニルアセタール樹脂。
【請求項2】
前記Z平均分子量に対する水酸基量(水酸基量/Z平均分子量)が、1.30×10-5以上、2.70×10
-5
以下である、請求項1に記載のポリビニルアセタール樹脂。
【請求項3】
アセタール基量が50~83モル%である、請求項1又は2記載のポリビニルアセタール樹脂。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のポリビニルアセタール樹脂と、可塑剤とを含む、セラミックグリーンシート用樹脂組成物。