IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社黒岩の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017027
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】打ち抜き装置
(51)【国際特許分類】
   B26F 1/44 20060101AFI20240201BHJP
   B26F 1/40 20060101ALI20240201BHJP
   B26D 7/20 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B26F1/44 H
B26F1/40 B
B26D7/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119387
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】592190383
【氏名又は名称】株式会社黒岩
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【弁理士】
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【弁理士】
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】藤津 寛之
【テーマコード(参考)】
3C021
3C060
【Fターム(参考)】
3C021GA01
3C021GA04
3C060AA04
3C060BA03
3C060BB05
3C060BD01
3C060BE07
3C060BG06
3C060BH01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡易な構成で、切断面の高さが部位によって異なっている製品を打ち抜くことが可能な打ち抜き装置を提供する。
【解決手段】打ち抜き装置は、帯状の刃を環状に折り曲げて形成された打ち抜き刃12を具備する打ち抜き刃型1と、打ち抜き刃12の刃先と当接する刃受け面を有する受板22、及び前記刃受け面から離反する方向に突出して形成され、シート材を支持する支持部材23を具備する受け型2とを備え、前記シート材が打ち抜き刃型1と受け型2との間に配置された状態において打ち抜き刃型1と受け型2とが相対的に近接することにより、支持部材23で支持されている前記シート材の部位を打ち抜き刃12により切断した後、打ち抜き刃12の刃先を前記刃受け面に当接させて押し切りすることによって製品を前記シート材から打ち抜く。
【選択図】図10A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断面の高さが部位によって異なる製品をシート材から打ち抜く打ち抜き装置において、
帯状の刃を環状に折り曲げて形成された打ち抜き刃を具備する打ち抜き刃型と、
前記打ち抜き刃の刃先と当接する刃受け面、及び前記刃受け面から離反する方向に突出して形成され、前記シート材を支持する支持部材を具備する受け型と
を備え、
前記シート材が前記打ち抜き刃型と前記受け型との間に配置された状態において前記打ち抜き刃型と前記受け型とが相対的に近接することにより、前記支持部材で支持されている前記シート材の部位を前記打ち抜き刃により切断した後、前記打ち抜き刃の刃先を前記刃受け面に当接させて押し切りすることによって前記製品を前記シート材から打ち抜く、
打ち抜き装置。
【請求項2】
前記支持部材は、前記製品の切断部位の一部のみを支持し、
前記打ち抜き刃を前記刃受け面に当接させることによって前記支持部材で支持されていない前記シート材の部位を押し切りする、
請求項1に記載の打ち抜き装置。
【請求項3】
前記製品は、切断面の高さが一定となる平坦領域を一部有しており、
前記支持部材は、前記平坦領域を支持せず、
前記打ち抜き刃を前記刃受け面に当接させることによって前記平坦領域を押し切りする、
請求項2に記載の打ち抜き装置。
【請求項4】
前記支持部材は、前記打ち抜き刃型と前記受け型とが相対的に近接する場合に、打ち抜き刃の外側及び内側で前記シート材を支持する、
請求項1乃至3の何れかに記載の打ち抜き装置。
【請求項5】
前記支持部材は、切削加工により形成される、
請求項1乃至3の何れかに記載の打ち抜き装置。
【請求項6】
前記打ち抜き刃の刃先が同一平面上にある、
請求項1乃至3の何れかに記載の打ち抜き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製のトレイ等に用いられる被加工材を切断加工するための打ち抜き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製のトレイ等の製品は、帯状の刃を折り曲げて形成されたトムソン刃を備える打ち抜き装置によって、材料であるシート材(被加工材)を切断することにより製作される。従来、このような製品は切断面の形状が平坦となっているものが多いが、近年ではその形状が高低差を有するものが増えつつある。
【0003】
上記のように切断面が高低差を有する形状の製品を打ち抜くための技術として、特許文献1には、凹部として形成された製品部と、製品部の凹部上縁周囲に凹部の外側へ鍔状に張り出して形成されたブランク部と、製品部の凹部及び凹部上縁から凹部の外側へ向けて膨出形成された上縁変化部形成用膨出部とを備えたプラスチック成型品から製品部を打ち抜くために、前記ブランク部を抜き台に押し付けるとともに、前記製品部を位置決め支持する主凸部及び前記上縁変化部形成用膨出部を支持する補助凸部を用いてプラスチック成型品を支持した上で、トムソン刃により凹部外側周囲及び上縁変化部形成用膨出部を切断することによって、上縁変化部を有する製品部を打ち抜く打ち抜き装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4972226号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来の打ち抜き装置の場合、プラスチック成型品の上縁変化部形成用膨出部の形状が複雑になると、その上縁変化部形成用膨出部に沿った形状の補助凸部を容易に作成することができず、高コスト化を招くなどの問題が生じる。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、上記課題を解決することができる打ち抜き装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の打ち抜き装置は、切断面の高さが部位によって異なる製品をシート材から打ち抜く打ち抜き装置において、帯状の刃を環状に折り曲げて形成された打ち抜き刃を具備する打ち抜き刃型と、前記打ち抜き刃の刃先と当接する刃受け面、及び前記刃受け面から離反する方向に突出して形成され、前記シート材を支持する支持部材を具備する受け型とを備え、前記シート材が前記打ち抜き刃型と前記受け型との間に配置された状態において前記打ち抜き刃型と前記受け型とが相対的に近接することにより、前記支持部材で支持されている前記シート材の部位を前記打ち抜き刃により切断した後、前記打ち抜き刃の刃先を前記刃受け面に当接させて押し切りすることによって前記製品を前記シート材から打ち抜く。
【0008】
この態様において、前記支持部材は、前記製品の切断部位の一部のみを支持し、前記打ち抜き刃を前記刃受け面に当接させることによって前記支持部材で支持されていない前記シート材の部位を押し切りするようにしてもよい。
【0009】
この態様において、前記製品は、切断面の高さが一定となる平坦領域を一部有しており、前記支持部材は、前記平坦領域を支持せず、前記打ち抜き刃を前記刃受け面に当接させることによって前記平坦領域を押し切りするようにしてもよい。
【0010】
この態様において、前記支持部材は、前記打ち抜き刃型と前記受け型とが相対的に近接する場合に、打ち抜き刃の外側及び内側で前記シート材を支持するようにしてもよい。
【0011】
この態様において、前記支持部材は、切削加工により形成されてもよい。
【0012】
この態様において、前記打ち抜き刃の刃先が同一平面上にあってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る打ち抜き装置によれば、簡易な構成で、複雑な形状の製品を打ち抜くことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態に係る打ち抜き刃型の構成を示す平面図。
図2図1のA-A線断面図。
図3A】製品の一例であるトレイを示す斜視図。
図3B】製品の一例であるトレイを示す平面図。
図3C】製品の一例であるトレイを示す正面図。
図3D】製品の一例であるトレイを示す側面図。
図4】実施の形態に係る打ち抜き刃型の構成を示す側面図。
図5】実施の形態に係る受け型の構成を示す平面図。
図6図5のB-B線断面図。
図7】実施の形態に係る受け型の構成を示す側面図。
図8A】支持部材の構成を示す平面図。
図8B】支持部材の構成を示す側面図。
図8C】支持部材の構成を示す正面図。
図9A】シート材を支持するときの実施の形態に係る受け型の構成を示す側面図。
図9B】シート材を支持するときの実施の形態に係る受け型の構成を示す側面図。
図10A】打ち抜き装置を正面から見た場合におけるシート材の打ち抜き加工工程を示す模式図。
図10B】打ち抜き装置を正面から見た場合におけるシート材の打ち抜き加工工程を模式図。
図11A】打ち抜き装置を側面から見た場合におけるシート材の打ち抜き加工工程を示す模式図。
図11B】打ち抜き装置を側面から見た場合におけるシート材の打ち抜き加工工程を示す模式図。
図11C】打ち抜き装置を側面から見た場合におけるシート材の打ち抜き加工工程を示す模式図。
図12】実施の形態に係る受け型の変形例の構成を示す平面図。
図13】変形例の打ち抜き装置を正面から見た場合におけるシート材の打ち抜き加工工程を示す模式図。
図14A】製品の他の例のトレイを示す斜視図。
図14B】製品の他の例のトレイを示す側面図。
図15A】製品の他の例のトレイを示す斜視図。
図15B】製品の他の例のトレイを示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0016】
本実施の形態に係る打ち抜き装置は、打ち抜き刃を具備する打ち抜き刃型と、受け型とを備えている。以下、これらの打ち抜き刃型及び受け型の構成について説明する。
【0017】
[打ち抜き刃型の構成]
図1は、本実施の形態に係る打ち抜き刃型の構成を示す平面図である。また、図2図1のA-A線断面図である。打ち抜き刃型1は、木製の基台11の一面に帯状の打ち抜き刃12が配置されて構成されている。以下、基台11の打ち抜き刃12が配置されている側を「表側」、その反対側を「裏側」という。
【0018】
基台11の表面は、平坦面であり、この表面にレーザ加工によって打ち抜くべき形状の溝(図示せず)が形成され、当該溝に、帯状の刃を環状に折り曲げて形成された打ち抜き刃12が嵌合されることで、打ち抜き刃型1が構成される。打ち抜き刃12は、表側に刃先が位置づけられるように、刃先と反対側の端部が基台11の溝に嵌入される。本実施の形態の場合、図1に示すように、打ち抜き刃12の輪郭は円形である。
【0019】
打ち抜き刃12の外周側及び内周側には、基台11に取り付けられた弾性部材13a及び13bがそれぞれ設けられている。弾性部材13a及び13bは、ウレタン製のスポンジで構成されている。後述するように、弾性部材13a及び13bは、受け型側に設けられている支持部材と共に、加工対象のシート材を拘束するための拘束部材として機能する。
【0020】
基台11の中央部分には、円形の貫通孔14が設けられている。この貫通孔14は、シート材を切断加工する際にそのシート材から打ち抜かれる製品の底部分を収容するための空間となる。
【0021】
図3Aは、加工対象のシート材を打ち抜き加工して得られた製品の一例であるトレイを示す斜視図であり、図3B乃至図3Dはそれぞれ、そのトレイを示す平面図、正面図及び側面図である。後述するように、加工対象のシート材が打ち抜き刃型1の打ち抜き刃12の表側に配置され、そのシート材が打ち抜き刃型1と後述する受け型2との間に挟み込まれて切断加工される。その結果、トレイ3が作製される。
【0022】
図3A乃至図3Dに示すように、トレイ3の両側面の切断面は高低差を有する形状をなしている。より具体的に説明すると、トレイ3の両側面の中央部における切断面が半円状に下方に窪んでおり、それ以外の切断面の高さは一定となっている。このように、トレイ3は、切断面の高さが部位によって異なる領域を有している。以下では、トレイ3において切断面の高さが一定となっている領域3bを平坦領域と呼び、切断面が半円状に下方に窪んでいる領域3aを非平坦領域と呼ぶことにする。
【0023】
図4は、打ち抜き刃型1の構成を示す側面図である。この図4では弾性部材13aの記載は省略されている。図4に示すとおり、打ち抜き刃12は、全周にわたって一定の高さを有しているため、刃先が同一平面上にある。このように、本実施の形態では、刃先が同一平面上にある打ち抜き刃12を用いて、切断面の高さが部位によって異なっているトレイ3を打ち抜く。
【0024】
なお、図4では、弾性部材13aの記載が省略されているが、弾性部材13aも打ち抜き刃12と同様に全周にわたって一定の高さを有しており、弾性部材13aの方が打ち抜き刃12よりも少し高くなっている。同様にして、弾性部材13bも打ち抜き刃12と同様に全周にわたって一定の高さを有しており、弾性部材13bの方が打ち抜き刃12よりも少し高くなっている。但し、打ち抜き刃12並びに弾性部材13a及び13bの高さは同一であってもよく、また、弾性部材13a及び13bの方が打ち抜き刃12より低くなっていても構わない。
【0025】
[受け型の構成]
図5は、本実施の形態に係る受け型の構成を示す平面図である。また、図6図5のB-B線断面図であり、図7はその構成を示す側面図である。受け型2は、木製の基台21の一面に受板22及び2つの支持部材23が配置されて構成されている。以下、基台21の支持部材23が配置されている側を「表側」、その反対側を「裏側」という。
【0026】
受板22の表面は、打ち抜き刃12と当接する刃受け面として機能する。この刃受け面に打ち抜き刃12の刃先を当接させることにより、シート材を押し切りすることができる。後述するように、本実施の形態では、トレイ3の平坦領域3bは押し切りによって切断される。
【0027】
支持部材23は、打ち抜き刃12によってシート材からトレイ3を打ち抜く際にそのシート材を支持する。この支持部材23は、トレイ3の非平坦領域3aに対応する位置に設けられ、その非平坦領域3aの近傍でシート材を支持する。このように、支持部材23は、トレイ3の切断部位の一部のみを支持する。支持部材23によるシート材の支持の態様については後に詳述する。
【0028】
図8Aは、支持部材23の構成を示す平面図であり、図8B及び図8Cはそれぞれ、その側面図及び正面図である。図8A乃至図8Cに示すように、支持部材23は、台部23aと、台部23a上に設けられた支持部23bとで構成されている。
【0029】
支持部材23の支持部23は、受板22の表面(刃受け面)から離反する方向、すなわち表側に突出して形成されており、その表面(上端面)でシート材を支持する。図7Cに示すように、支持部23bは、側面視で半円状をなしており、トレイ3の非平坦領域3aと対応する形状を有している。支持部材23の上記形状は切削加工により得られる。
【0030】
支持部材23は、打ち抜き刃12の輪郭よりも若干外側に配設される。これにより、支持部材23は、打ち抜き刃型1と受け型2とが相対的に近接してシート材が切断されるときに、打ち抜き刃12の外側でシート材を支持することになる。また、上述したとおり、支持部材23は、打ち抜き刃型1側に設けられている弾性部材13a及び13bと共に、加工対象のシート材を拘束するための拘束部材として機能する。
【0031】
図9A及び図9Bは、シート材を支持するときの受け型2の構成を示す側面図である。本実施の形態では、シート材31の表面側が受け型2の表側を向くようにしてシート材31が配置される(図9A参照)。その後、打ち抜き加工が行われるときにシート材31の非平坦領域3aの表面が支持部材23の支持部23bの上端面に当接されることによって支持されるとともに、シート材31の平坦領域3bの表面が受板22上に載置される(図9B参照)。なお、上記とは異なり、シート材31の裏面側が受け型2の表側を向くようにしてシート材31が配置される態様もあり得る。
【0032】
本実施の形態の場合、支持部23bはトレイ3の非平坦領域3aに応じた形状を有しており、したがって支持部23bの上端面の全面で非平坦領域3aの表面を支持する。そのため、非平坦領域3aを安定して支持することができる。ただし、これに限定されず、支持部23bが非平坦領域3aの一部のみに接するような形状であってもよい。例えば、支持部23bが非平坦領域3aの最も高い部分のみに接するような形状を有していてもよい。
【0033】
[打ち抜き加工工程]
以下、シート材31の打ち抜き加工工程について説明する。図10A及び図10Bは、本実施の形態の打ち抜き装置を正面から見た場合におけるシート材31の打ち抜き加工工程を示す模式図である。これらの図において、打ち抜き刃型1及び受け型2は断面で示されている。シート材31の打ち抜き加工が行われるとき、図10Aに示すように、シート材31は打ち抜き刃型1と受け型2との間に配置される。なお、本実施の形態においては、シート材31がその上方に配置された打ち抜き刃型1によって切断されるが、打ち抜き刃型1がシート材31の下方に配置される場合もある。
【0034】
上記のようにシート材31が配置された状態で、打ち抜き刃型1が下降、または受け型2が上昇することによって、シート材31が打ち抜き刃型1と受け型2との間に挟まれた状態で、打ち抜き刃型1と受け型2とが相対的に近接する。
【0035】
シート材31の非平坦領域3aは、その表面が受け型2の支持部材23の支持部23bの上端面に接触し、その裏面が打ち抜き刃型1の弾性部材13a及び13bに接触する(図10B参照)。その結果、シート材31の非平坦領域3aは、支持部材23並びに弾性部材13a及び13bによって挟持され、移動できないように拘束される。これにより、シート材31の非平坦領域3aが打ち抜き刃12によって裏側から切断されるときに、シート材31が引っ張られて移動することを防止することができる。上記の非平坦領域3aの切断は、打ち抜き刃12の刃先を受板22に当接させることなく空中で行われることになる。
【0036】
また、シート材31の平坦領域3bは、その表面が受け型2の受板22の表面に接触する(図10B参照)。上記のようにして打ち抜き刃12によって非平坦領域3aが空中で切断された後、打ち抜き刃12の刃先が受板22に当接されることにより平坦領域3bが押し切りされて切断される。これにより、シート材31が打ち抜かれてトレイ3が作製される。
【0037】
なお、上記のとおり、本実施の形態では、シート材31の非平坦領域3aの表面が支持部材23の支持部23bの上端面に接触している状態において、平坦領域3bの表面が受け型2の受板22の表面に接触するが、これに限定されるわけではない。当該状態においては、シート材31の平坦領域3bの表面と受け型2の受板22の表面とが接触しておらず、両表面の間に一定の距離があってもよい。この場合であっても、打ち抜き刃型1と受け型2とが相対的に近接し、最終的に打ち抜き刃12の刃先が受板22に当接されることにより、平坦領域3bを押し切りすることができる。
【0038】
図11A乃至図11Cは、打ち抜き装置の側面から見た場合の打ち抜き加工工程を示す模式図である。図11A乃至図11Cにおいて、弾性部材13aの記載は省略されている。図11Aに示すように、シート材31は打ち抜き刃型1と受け型2との間に配置された後、シート材31の非平坦領域3a及び平坦領域3bの表面が支持部23b及び受板22にそれぞれ接触される。この状態において、打ち抜き刃型1及び受け型2が相対的に近接することにより、打ち抜き刃12の刃先が、シート材31の非平坦領域3aの切断面の最高点の部位に当接する(図11B参照)。
【0039】
その後、さらに打ち抜き刃型1及び受け型2が相対的に近接することによって、シート材31が、非平坦領域3aの切断面の最低点に向かって順次空中で切断される。本実施の形態の場合、このようにシート材31の非平坦領域3aの切断面の最高点から切断を開始することになるため、小さい力で切断を開始することができる。
【0040】
さらに打ち抜き刃型1及び受け型2が相対的に近接することによって、打ち抜き刃12の刃先は受板22に到達する。これにより、シート材31の平坦領域3bが押し切りによって切断され、トレイ3が作製される(図11C参照)。
【0041】
このように、本実施の形態では、シート材31の非平坦領域3aが空中で切断された後、平坦領域3bが押し切りによって切断される。この最後の押し切りによって、シート材31からトレイ3を確実に切り離すことができるため、トレイ3の切断面におけるバリの発生を抑制することができる。
【0042】
また、本実施の形態の場合、製品の切断部位の一部は押し切りによって切断されるため、打ち抜き刃12において押し切りを行う箇所にいわゆる刃殺し(ニック)を設けることができる。これにより、製品の散け等を防止することが可能になる。
【0043】
なお、空中での切断は押し切りと比べると不安定になりやすいところ、本実施の形態では、製品の切断部位のすべてではなくその一部のみが空中で切断されることになるため、切断部位のすべてを空中で切断する場合と比べてより安定した打ち抜き動作を実現できる。また、そのことに伴って、打ち抜き装置1の動作制御が容易になるというメリットが得られる。
【0044】
(その他の実施の形態)
上記の実施の形態では、支持部材23が打ち抜き刃12の外側でシート材31を支持しているが、その内側でシート材31を支持する構成であってもよく、また外側及び内側の両方でシート材31を支持する構成であってもよい。図12は、支持部材23が打ち抜き刃12の外側及び内側にて支持する場合の受け型2の構成を示す平面図である。また、図13は、その受け型2を備える打ち抜き装置を正面から見た場合におけるシート材の打ち抜き加工工程を示す模式図である。図12及び図13に示すように、この変形例では、一対の支持部材23がシート材31の非平坦領域3aに対応する位置に設けられる。この場合、一対の支持部材23は、支持部23bが対向するようにして配設される。この場合、シート材31の非平坦領域3aは、一対の支持部材23の支持部23bと弾性部材13a及び13bとで拘束されることになるため、空中での切断の際にシート材31をより確実に固定することができる。
【0045】
なお、打ち抜き刃型1に弾性部材13a及び13bが設けられておらず、空中での切断においてはシート材31の非平坦領域3aが支持部材23の支持部23bにて支持されるのみであってもよい。また、弾性部材13a及び13bの何れか一方のみが打ち抜き刃型1に設けられる構成であってもよい。
【0046】
また、上記の実施の形態においては、弾性部材13a及び13bをウレタン製のスポンジとする構成について述べたが、これに限定されるものではない。天然ゴム、合成ゴム又はバネなどを弾性部材13a及び13bとして使用することも可能である。
【0047】
また、上記の実施の形態では、弾性部材13a及び13bがシート材31を直接挟持しているが、各弾性部材の先端にプレート等の他の部材を取り付けることにより、弾性部材a及び13bが当該他の部材を介してシート材31を挟持するようにしてもよい。
【0048】
また、弾性部材以外の部材によって拘束部材を構成してもよい。例えば、刃又は針などをシート材31に突き刺すことによってシート材31を拘束するような構成であってもよい。
【0049】
また、上記の実施の形態では、シート材から打ち抜かれる製品として、両側面の中央部における切断面が半円状に下方に窪んでおり、それ以外の切断面の高さが一定となっているトレイ3が例示されているが、これ以外の様々な形状の製品を打ち抜くことが可能であることは勿論である。例えば、図14A及び図14Bに示すように、正面及び背面の切断面が中央部において最も低く、その中央部から端部に向かって漸次高くなる形状を有し、それ以外の切断面の高さが一定となっているトレイ3、または図15A及び図15Bに示すように、正面、背面及び両側面の中央部において切断面の高さが周期的に変化するような形状を有しており、それ以外の切断面の高さが一定となっているトレイ3などであっても、支持部材23の支持部23bの支持面の高さをこれらの形状に応じたものにすることによって、容易に打ち抜くことができる。
【0050】
また、上記の実施の形態では、切断面の高さが一定となる平坦領域bをトレイ3が有しているが、トレイ3がそのような平坦領域bを有していなくてもよい。その場合でも、上述したように、シート材31における特定の領域を空中で切断した後、その残りの領域を押し切りによって切断することができる。
【0051】
また、上記の実施の形態では、支持部材23が製品の切断部位の一部のみを支持しているが、切断部位のすべてが支持部材23で支持されていても構わない。そのように製品の切断部位のすべてを支持部材23が支持する場合であっても、支持部材23、打ち抜き刃12、及び/又は受板22の形状によっては、製品の切断部位において押し切りされる箇所が生じるためである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の打ち抜き装置は、合成樹脂製のトレイ等に用いられる被加工材を切断加工するための打ち抜き装置として有用である。
【符号の説明】
【0053】
1 打ち抜き刃型
11 基台
12 打ち抜き刃
13a、13b 弾性部材
14 貫通孔
2 受け型
21 基台
22 受板
23 支持部材
23a 台部
23b 支持部
3 トレイ
3a 非平坦領域
3b 平坦領域
31 シート材
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B