(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017028
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】礫含有ベントナイト混合土の製造方法
(51)【国際特許分類】
E02B 3/12 20060101AFI20240201BHJP
C09K 17/10 20060101ALI20240201BHJP
C09K 17/08 20060101ALI20240201BHJP
E02B 7/02 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
E02B3/12
C09K17/10 H
C09K17/08 H
E02B7/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119388
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100167597
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 一三
(72)【発明者】
【氏名】須山 泰宏
【テーマコード(参考)】
2D118
4H026
【Fターム(参考)】
2D118AA01
2D118AA20
2D118BA01
2D118CA08
4H026AA01
4H026AA02
4H026AB01
(57)【要約】
【課題】所期の透水係数を達成できる礫含有ベントナイト混合土を確実に得ることができる製造方法を提供する
【解決手段】砂と、礫と、ベントナイトと、水と、を混合する礫含有ベントナイト混合土の製造方法である。砂と礫とを互いに混合して第一の混合物とし、第一の混合物とベントナイトとを互いに混合して第二の混合物とし、第二の混合物と水とを互いに混合して礫含有ベントナイト混合土を製造する。第一の混合物の調製では、第一の混合物の含水比が3%~15%となるように調整する。含水比を調整することにより、ベントナイトが砂だけでなく礫のほうにも付着しやすくなり、礫含有ベントナイト混合土の組成が均質になりやすい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂と、礫と、ベントナイトと、水と、を混合する礫含有ベントナイト混合土の製造方法であって、
前記砂と前記礫とを互いに混合して第一の混合物とし、
前記第一の混合物と前記ベントナイトとを互いに混合して第二の混合物とし、
前記第二の混合物と前記水とを互いに混合して前記礫含有ベントナイト混合土を製造し、
前記第一の混合物の調製では、前記第一の混合物の含水比が3%~15%となるように調整する、礫含有ベントナイト混合土の製造方法。
【請求項2】
前記第一の混合物の調製において、前記水の一部を用いて前記第一の混合物の含水比を調整する、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記砂、前記礫、及び、前記ベントナイトの使用量は、これらの乾土重量の合計を100%としたときの割合として、前記礫が5%~80%であり、前記ベントナイトが5%~50%であり、残部が砂である、請求項1又は2記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、礫含有ベントナイト混合土の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、止水材料として礫含有ベントナイト混合土が知られている(例えば、特許文献1)。礫を含有しない通常のベントナイト混合土は、ベントナイトの膨潤特性によって透水係数を10-11m/s以下とすることができるが、ベントナイトの配合量によっては変形が大きくなる場合があること、及び、基礎地盤材料としての強度不足が欠点であった。礫含有ベントナイト混合土はこれらの欠点を改善するものであるとともに、粒径が大きい部類である礫が水を通さないことから、透水係数を一層小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
礫含有ベントナイト混合土は、砂、礫、ベントナイト及び水を混合して製造する。しかしながら、製造した礫含有ベントナイト混合土は何らかの理由により所期の透水係数を達成できない場合があった。そこで本発明は、所期の透水係数を達成できる礫含有ベントナイト混合土を確実に得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者の考察によれば、従来の礫含有ベントナイト混合土が所期の透水係数を達成できない理由としては、砂に含まれている水分の影響によってベントナイトが砂に優先的に付着し、礫のほうにはベントナイトがほとんど付着しないことが考えられた。この状況で製造された礫含有ベントナイト混合土は、締め固めた後に礫の周囲が水みちとなりやすい。本発明者は、礫含有ベントナイト混合土の製造にあたり、砂と礫とを先に混合し、これらの混合物の含水比を適切な範囲に調整することによって、最終的に得られる礫含有ベントナイト混合土が均質となり、所期の透水係数を得られることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、砂と、礫と、ベントナイトと、水と、を混合する礫含有ベントナイト混合土の製造方法であって、砂と礫とを互いに混合して第一の混合物とし、第一の混合物とベントナイトとを互いに混合して第二の混合物とし、第二の混合物と水とを互いに混合して礫含有ベントナイト混合土を製造し、第一の混合物の調製では、第一の混合物の含水比が3%~15%となるように調整する、礫含有ベントナイト混合土の製造方法を提供する。
【0007】
このように砂と礫との混合物の含水比を調整することにより、ベントナイトが砂だけでなく礫のほうにも付着しやすくなり、礫含有ベントナイト混合土の組成が均質になりやすい。これによれば、本発明の製造方法によって得られた礫含有ベントナイト混合土は所期の透水係数を確実に達成することができる。
【0008】
本発明では、第一の混合物の調製において、調製に用いる水の一部を用いて第一の混合物の含水比を調整してもよい。用意した砂の含水比が小さい場合は、砂と礫との混合時に水を補うことで含水比を調整することが好ましい。
【0009】
砂、礫、及び、ベントナイトの使用量は、これらの乾土重量の合計を100%としたときの割合として、礫が5%~80%であり、ベントナイトが5%~50%であり、残部が砂であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、所期の透水係数を達成できる礫含有ベントナイト混合土を確実に得ることができる製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、砂と、礫と、ベントナイトと、水と、を混合する礫含有ベントナイト混合土の製造方法である。以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0012】
はじめに、砂と礫と互いに混合して第一の混合物を調製する。砂は、天然の通常の砂であり、粒径0.01~2mmのものを95重量%以上含むものが好ましい。砂の中心粒径は、0.5~1mm程度のものが特に好ましい。礫は、天然の通常の砂利や砕石であり、粒径2~80mmのものを95重量%以上含むものが好ましい。混合方法には特に制限はないが、強制二軸ミキサを用いることが好ましい。
【0013】
この砂と礫との混合では、第一の混合物の含水比が3%~15%となるように調整する。この含水比は、4%~12%であってもよく、5%~10%であってもよい。ここで含水比とは、材料粒子の重量の合計に対する、それらの間隙に含まれる水の重量の割合を百分率で表したものである。測定方法として、JIS A 1203:2020 土の含水比試験方法がある。
【0014】
一実施態様として、砂の含水比が高い場合はそのまま礫と混合する。他の実施態様として、砂の含水比が低い場合は、砂に対して少量の水を添加し、砂の含水比を高めてから礫と混合する。また、別の実施態様として、砂の含水比が低い場合は、砂と礫とを互いに混合した後に少量の水を添加して含水比を高めてもよい。いずれの実施態様においても、水を添加しない、もしくは水を添加することで、含水比を上記の範囲内に調整することができる。
【0015】
これらの実施態様において砂の含水比が高いか低いかの判断は、砂を対象として含水比を測定し、砂の含水比が12%以上、又は、8%以上、又は、4%以上であるか否かによって行う。砂の含水比の測定方法は、上記第一の混合物の含水比の測定方法と同一である。
【0016】
次に、第一の混合物とベントナイトとを互いに混合して、第二の混合物とする。混合方法には特に制限はないが、強制二軸ミキサを用いることが好ましい。
【0017】
砂、礫、及びベントナイトの使用量は、これらの乾土重量の合計を100%としたときの割合として、礫が5%~80%であり、ベントナイトが5%~50%であり、残部が砂であることが好ましい。礫は10%~70%であってもよく、20%~60%であってもよい。ベントナイトは8%~30%であってもよく、10%~20%であってもよい。
【0018】
次に、第二の混合物と水とを互いに混合する。混合方法には特に制限はないが、強制二軸ミキサを用いることが好ましい。使用する水の量は、砂、礫、及びベントナイトの乾土重量の合計を100重量部としたとき、5重量部~20重量部としてもよく、10重量部~15重量部としてもよい。なお、この水の重量は、使用する礫と砂とベントナイトが最初に保有している水の重量に加え、第一の混合物の含水比の調整のために少量の水を添加した場合には、その少量の水の重量を含めたものである。すなわち、第一の混合物の含水比の調整のために少量の水を添加することは、第二の混合物と混合すべき水の一部を先に用いることを意味している。水の使用量がこの範囲内であると、製造された礫含有ベントナイト混合土を使用する際の敷均しや締固めを行いやすい。
【0019】
以上の手順により、本実施形態の礫含有ベントナイト混合土を製造することができる。
【0020】
従来の礫含有ベントナイト混合土は、所期の透水係数を達成できない場合があった。その理由としては、砂とベントナイトとを先に混合した場合に、砂に含まれている水分の影響によってベントナイトが砂に優先的に付着し、その後に混合する礫のほうにはベントナイトがほとんど付着しないことが考えられた。この状況で製造された礫含有ベントナイト混合土は、締め固めた後に礫の周囲が水みちとなりやすい。反対に、礫とベントナイトとを先に混合しても、礫に含まれている水分が少ないためベントナイトが礫に優先的に付着せず、その後に投入する砂にベントナイトが付着しやすい。また、含水比が低い状態で混合した砂、礫、ベントナイトの混合物に水を混合すると、比表面積の大きい砂側にベントナイトが付着しやすい。
【0021】
これに対し、本実施形態の製造方法では、砂と礫とを先に混合し、これらの混合物の含水比を3%~15%に調整する。これによって、含水比が低い傾向がある礫の表面を十分に湿らせることができ、その後に混合するベントナイトが砂と礫とに均等に付着するようになる。そして最終的に得られる礫含有ベントナイト混合土が均質となり、所期の透水係数を得られる。ここで「均質」とは、ベントナイトが砂又は礫のいずれか一方の周囲に偏って存在するのではなく、砂及び礫の両方の周囲に偏りなく存在する状態をいう。この場合、礫の粒子にベントナイトが十分に付着しているので礫の周囲が水みちとなることが防止されるとともに、砂にも同様にベントナイトが十分に付着しているため、「不均質」に伴う水みちが形成されることが抑制される。したがって、均質に混合されることで、得られる礫含有ベントナイト混合土の締固め後の透水係数が所期のとおりの値となる。つまり、水みちの形成によって透水係数が想定よりも大きくなることが防止される。
【0022】
本実施形態の製造方法によって製造された礫含有ベントナイト混合土は、十分な止水性と強度を有するので、止水を兼ねた基礎地盤の構築に好適である。また、ダムのコア材、池の止水層、廃棄処分場の遮水シートの下地材や保護材等、相当の強度を要求される止水材として幅広く利用される。また、放射性廃棄物の埋設設備において、放射性物質の漏出を防止するために利用することもできる。
【0023】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【実施例0024】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0025】
(使用材料・装置)
以下の材料を用いた。
・砂…段丘堆積砂(細粒分含有率10以下)
・礫…コンクリート用粗骨材(砕石2005)
・ベントナイト…クニゲルV1(クニミネ工業)
・水…水道水
材料の混合にはバッチャープラントの強制二軸ミキサを用いた。含水比の測定にはJIS A 1203:2020 土の含水比試験方法を用いた。
【0026】
(実施例1)
締固め密度が1.95Mg/m3となるように乾土重量として、砂35%、礫50%、ベントナイト15%の量を用意した。砂(含水比が10%)と礫とを互いに混合した。混合物の含水比は5.0%であった。その後、ベントナイトを混合し、最後に水を混合した。目視により、礫含有ベントナイト混合土の混ざり具合を確認したところ、ほぼ均質に混合されていた。
【0027】
(比較例1)
締固め密度が1.95Mg/m3となるように乾土重量として、砂35%、礫50%、ベントナイト15%の量を用意した。砂(含水比が2%)と礫とを互いに混合した。混合物の含水比は1.7%であった。その後、ベントナイトを混合し、最後に水を混合した。目視により、礫含有ベントナイト混合土の混ざり具合を確認したところ、ベントナイトが砂側に付着しやすく、不均質に混合されていた。
【0028】
(比較例2)
締固め密度が1.95Mg/m3となるように乾土重量として、砂35%、礫50%、ベントナイト15%の量を用意した。砂(含水比が10%)とベントナイトとを互いに混合した。その後、礫を混合し、最後に水を混合した。目視により、礫含有ベントナイト混合土の混ざり具合を確認したところ、ベントナイトが砂に優先的に付着しており、礫分へのベントナイトの付着が不十分で、不均質に混合されていた。
【0029】
以上の結果によれば、礫含有ベントナイト混合土の製造方法として、実施例1のように、砂と礫とを先に混合し、かつ、ベントナイトを混合する直前の混合物の含水比を所定の値以上に調整することによって、均質に混合された礫含有ベントナイト混合土をえられたことから、配合設定に基づく所期の透水係数が得られること、つまりこの場合は透水係数を十分に小さくすることができることが分かる。これに対し、比較例1及び比較例2では、礫含有ベントナイト混合土が均質に混合されなかったことから、配合設定に基づく所期の透水係数が得られないこと、つまりこの場合は透水係数を十分に小さくすることができないことが分かる。