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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170283
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】セラミックスヒータ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/68 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024024096
(22)【出願日】2024-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2023086782
(32)【優先日】2023-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(72)【発明者】
【氏名】関谷 秀介
(72)【発明者】
【氏名】三矢 耕平
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131CA03
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA03
5F131EA04
5F131EB11
5F131EB14
5F131EB15
5F131EB16
5F131EB17
5F131EB18
5F131EB52
5F131EB53
5F131EB54
5F131EB72
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB81
5F131EB84
(57)【要約】
【課題】セラミックス基材の凸部の配置やセラミックス基材の上面の断面形状に起因して、円周状又は円弧状にヒートスポットが発生することを抑制するための技術を提供する。
【解決手段】
セラミックス基材110の上面111は、複数の凸部156が同心円状に配置されている。セラミックス基材110の外径の15%~85%の円環状の範囲に設けられた一部の複数の凸部156について、上下方向5の座標の平均値をZ(mm)とし、同心円の半径をr(mm)とし、隣接する同心円の半径との差をΔr(mm)としたとき、ΔZ/(Δr)の絶対値が10-5以下である、または、10-4/Δr以下である。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面、及び、前記上面と上下方向において対向する下面を有する円板状のセラミックス基材と、
前記セラミックス基材に埋設された、又は前記セラミックス基材の前記下面に配置された発熱体と、を備え、
前記セラミックス基材は、
前記セラミックス基材の前記上面よりも上方に突出し、且つ、前記セラミックス基材の前記上面に同心円状に配置された複数の凸部を備え、
前記複数の凸部のうち、前記セラミックス基材の前記上面の、前記セラミックス基材の外径の15%~85%の円環状の範囲に設けられた、一部の複数の凸部について、
前記一部の複数の凸部は、前記セラミックス基材の中心側から外周側に向かってn個(n≧2)の同心円を有するように配置されており、
第(n-1)番目の同心円における、前記凸部の前記上下方向の座標の平均値をZ(mm)、同心円の半径をr(mm)とし、
第n番目の同心円の半径と第(n-1)番目の同心円の半径との差をΔr(mm)としたとき、
前記一部の複数の凸部の、前記平均値Z(mm)の半径方向の変化率(ΔZ/Δr)の変化率(Δ(ΔZ/Δr)/Δr=ΔZ/Δr)の絶対値が、
10-5以下である、又は、10-4/Δr以下であることを特徴とするセラミックスヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェハ等の基板を保持して加熱するセラミックスヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内部に発熱体が埋設されたセラミックスヒータが開示されている。特許文献1に記載のセラミックスヒータの、基板が載置されるセラミックス基材の表面(加熱面)には、基板との接触面積を小さくするためや基板とセラミックス基材の表面によって画定される空間にガスを流す目的のため、複数の凸部(エンボス部)が形成されている。
【0003】
一般に、セラミックスヒータにおいては、載置された基板の一部にヒートスポットが形成されることがある。特許文献1においては、ヒートスポットと重なる領域の複数の凸部の数を減らすことにより、ヒートスポットの抑制を図っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-124367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の凸部が円周状に配置されている場合や、セラミックス基材の上面が凹状や凸状に加工されている場合において、セラミックス基材の凸部の配置やセラミックス基材の上面の断面形状に起因して、円周状又は円弧状にヒートスポットが生じることがある。特許文献1に記載のセラミックスヒータにおいては、このようなヒートスポットの発生を抑制することが困難であった。
【0006】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、セラミックス基材の凸部の配置やセラミックス基材の上面の断面形状に起因して、円周状又は円弧状にヒートスポットが発生することを抑制するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に従えば、上面、及び、前記上面と上下方向において対向する下面を有する円板状のセラミックス基材と、
前記セラミックス基材に埋設された、又は前記セラミックス基材の前記下面に配置された発熱体と、を備え、
前記セラミックス基材は、
前記セラミックス基材の前記上面よりも上方に突出し、且つ、前記セラミックス基材の前記上面に同心円状に配置された複数の凸部を備え、
前記複数の凸部のうち、前記セラミックス基材の前記上面の、前記セラミックス基材の外径の15%~85%の円環状の範囲に設けられた、一部の複数の凸部について、
前記一部の複数の凸部は、前記セラミックス基材の中心側から外周側に向かってn個(n≧2)の同心円を有するように配置されており、
第(n-1)番目の同心円における、前記凸部の前記上下方向の座標の平均値をZ(mm)、同心円の半径をr(mm)とし、
第n番目の同心円の半径と第(n-1)番目の同心円の半径との差をΔr(mm)としたとき、
前記一部の複数の凸部の、前記平均値Z(mm)の半径方向の変化率(ΔZ/Δr)の変化率(Δ(ΔZ/Δr)/Δr=ΔZ/Δr)の絶対値が、
10-5以下である、又は、10-4/Δr以下であることを特徴とするセラミックスヒータが提供される。なお、ΔZは、第n番目の同心円における、前記凸部の前記上下方向の座標の平均値から第n―1番目の同心円における、前記凸部の前記上下方向の座標の平均値の差である。また、一部の複数の凸部のうち、第n番目の上下方向の座標が第n―1番目または第n+1番目の上下方向の座標に対し意図的に5μm以上小さく設けられている箇所は除かれる。意図的とはそのように設計されたことをいう。5μmより小さいと、意図的に小さく設けられた凸部にも基板が接触し、意図しない局所的なホットスポットやコールドスポットが生じる恐れがあるからである。またこの際、Δrは除外される同心円と隣り合う同心円の半径の差となる。
【発明の効果】
【0008】
上記構成において、セラミックス基材の外径の15%~85%の円環状の範囲に設けられた一部の複数の凸部はセラミックス基材の中心側から外周側に向かってn個(n≧2)の同心円を有するように配置されている。第(n-1)番目の同心円における、凸部のZ座標の平均値をZ(mm)とし、第(n-1)番目の同心円の半径をr(mm)とし、第n番目の同心円の半径と第(n-1)番目の同心円の半径との差をΔr(mm)としたとき、ΔZ/(Δr)の絶対値が10-5以下である、または、10-4/Δr以下である。このような関係が満たされている場合には、円周状又は円弧状にヒートスポットが発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、セラミックスヒータ100の上面図である。
図2図2は、セラミックスヒータ100の概略説明図である。
図3】(a)~(c)は、セラミックス基材110の断面の概略説明図である。
図4】(a)、(b)は、複数の凸部156の頂面の断面の概略説明図である。
図5図5は、電極120の概略説明図である。
図6図6は、ヒータ電極122の概略説明図である。
図7】(a)~(e)は、セラミックス基材110の製造方法の流れを示す図である。
図8】(a)~(d)は、セラミックス基材110の別の製造方法の流れを示す図である。
図9図9は実施例1の結果をまとめた表である。
図10図10は実施例2の結果をまとめた表である。
図11図11は実施例3の結果をまとめた表である。
図12図12は実施例4の結果をまとめた表である。
図13図13は比較例1の結果をまとめた表である。
図14図14は比較例2の結果をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<セラミックスヒータ100>
本発明の実施形態に係るセラミックスヒータ100について、図1、2を参照しつつ説明する。本実施形態に係るセラミックスヒータ100は、例えば、半導体製造装置の内部でシリコンウェハなどの半導体ウェハ(以下、単にウェハ10という)を保持し加熱するために用いられる。以下の説明においては、セラミックスヒータ100が使用可能に設置された状態(図2の状態)を基準として上下方向5が定義される。図2に示されるように、本実施形態に係るセラミックスヒータ100は、セラミックス基材110と、電極120と、給電線140、141とを備える。
【0011】
セラミックス基材110は、直径12インチ(約300mm)の円形の板状の形状を有する部材であり、セラミックス基材110の上にはウェハ10が載置される。セラミックス基材110は、例えば、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、アルミナ、窒化ケイ素等のセラミックス焼結体により形成することができる。なお、図2では図面を見やすくするためにウェハ10とセラミックス基材110とを離して図示している。図1に示されるように、セラミックス基材110の上面111には、環状の凸部152(以下、単に環状凸部152という)と、複数の凸部156とが設けられている。なお、図2においては、図面を見やすくするために、図1と比べて複数の凸部156の数を減らして図示している。また、図1に示されるように、セラミックス基材110の中心には、ガス流路164(図2参照)の開口164aが設けられている。開口164aの直径は5mmである。また、セラミックス基材110の中心に対して半径80mmの円を3等配した位置には、それぞれ、リフトピン穴166が設けられている。リフトピン穴166の直径は5mmである。
【0012】
本実施形態のセラミックス基材110の上面111は下に凸の凹面形状又は上に凸の凸面形状を有している。例えば、図2に示されるように、セラミックス基材110の上面111が凹面形状であって、且つ、下面113が水平な(上下方向5に垂直な)平面であってもよい。図3(a)に示されるように、セラミックス基材110の上面111及び下面113が平行であって、且つ、いずれも凹面形状を有していてもよい。図3(b)に示されるように、セラミックス基材110の上面111及び下面113が平行であって、且つ、いずれも凸面形状を有していてもよい。あるいは、後述の複数の凸部156の頂面156aの包絡面が凹面形状(図3(c)参照)又は凸面形状(図示省略)を有していれば、セラミックス基材110の上面111及び下面113がいずれも水平な(上下方向5に垂直な)平面であってもよい。
【0013】
図1、2に示されるように、環状凸部152は、セラミックス基材110の上面111の外周部(外縁部)に配置された円環状の凸部であり、上面111から上方に突出している。図2に示されるように、ウェハ10がセラミックス基材110の上に載置されたとき、環状凸部152の頂面152aはウェハ10の下面と当接する。つまり、環状凸部152は、ウェハ10がセラミックス基材110の上に載置されたときに、上下方向5においてウェハ10と重なる位置に配置されている。
【0014】
セラミックス基材110の上面111の、環状凸部152の内側には、複数の凸部156が設けられている。複数の凸部156は、同心円状に配置されている。複数の凸部156の頂面156aの形状は上視野で円形である。本明細書において、頂面156aは、凸部156の上端面を意味している。なお、複数の凸部156が配置される位置及び/又は数は、用途、作用、機能に応じて適宜設定される。
【0015】
複数の凸部156の頂面156aは、水平面であってもよく(図4(a)参照)、水平面でなくてもよい(図4(b)参照)。ウェハ10との接触圧が緩和されてヒートスポットを抑制できるという観点からは、複数の凸部156の頂面156aは曲面であることが好ましい。なお、本明細書において、環状凸部152の高さ及び複数の凸部156の高さは、セラミックス基板110の上面111からの上下方向の長さとして定義される。本実施形態において、複数の凸部156の高さと環状凸部152の高さは、いずれも5μm~2mmの範囲にすることができる。
【0016】
環状凸部152の頂面152aの幅は、一定の幅であることが望ましく、0.1mm~10mmにすることができる。環状凸部152の頂面152aの中心線平均粗さRaは1.6μm以下にすることができる。なお、中心線平均粗さRaは、表面の凹凸を、その中心線からの偏差の絶対値の平均で表したものである。同様に、複数の凸部156の頂面156aの中心線平均粗さRaは1.6μm以下にすることができる。なお、環状凸部152の頂面152a及び複数の凸部156の頂面156aの中心線平均粗さRaは0.4μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましく、0.1μm以下であることがさらに好ましい。
【0017】
複数の凸部156の、各凸部の離間距離は、1.5mm~30mmの範囲にすることができる。複数の凸部156が同心円状に配置されている場合には、半径方向の離間距離は5mm~20mmであることが好ましく、周方向の離間距離も5mm~20mmであることが好ましい。
【0018】
上述のように、上面111の略中心には、ガス流路164の開口164aが開口している(図2参照)。ガス流路164は、開口164aを備えるガス流路であり、セラミックス基材110の内部に形成されている。本実施形態において、ガス流路164は、開口164aから下方に延びている。ガス流路164は、セラミックス基材110の上面111とウェハ10の下面とによって画定される空間(間隙)にガスを供給するための流路として用いることができる。例えば、ウェハ10とセラミックス基材110との間の伝熱のための伝熱ガスを供給することができる。伝熱ガスとして、例えば、ヘリウム、アルゴンのような不活性ガスや、窒素ガスなどを用いることができる。伝熱ガスは、ガス流路164を通じて、100Pa~40000Paの範囲内で設定された圧力で供給される。また、環状凸部152の頂面152aとウェハ10の下面との隙間から、環状凸部152の内側の間隙にプロセスガスが侵入してくる場合には、ガス流路164を介して、ガスを排気することができる。この際、排気圧を調整することによって間隙の外側の圧力と、間隙の内側の圧力の差圧を調節することができる。これにより、ウェハ10をセラミックス基材110の上面111に向けて吸着させることができる。
【0019】
図2に示されるように、セラミックス基材110の内部には、電極120が埋設されている。電極120は、ヒータ電極122と、静電吸着用電極124とを含んでいる。静電吸着用電極124はヒータ電極122の上方に埋設されている。
【0020】
図5に示されるように、静電吸着用電極124は2つの半円形状の電極124a、124bが所定の間隔を隔てて向かい合うように配置されており、全体として略円形の形状を有している。本実施形態において、静電吸着用電極124の外径は292mmである。電極124a及び電極124bにそれぞれ所定の電圧(例えば、±500V)を印加することにより、ウェハ10を静電吸着することができる。
【0021】
図6に示されるように、ヒータ電極122は帯状に裁断された金属製のメッシュや箔である。ヒータ電極122の外径は298mmである。ヒータ電極120はセラミックス基材110の側面から露出しない。ヒータ電極120の略中央には、給電線140(図1参照)と接続される端子部121が設けられている。ヒータ電極122はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、モリブデン及び/又はタングステンを含む合金のワイヤーを織ったメッシュや箔等の耐熱金属(高融点金属)により形成されている。タングステン、モリブデンの純度は99%以上であることが好ましい。ヒータ電極122の厚さは0.15mm以下である。なお、ヒータ電極122の抵抗値を高くして、セラミックスヒータ100の消費電流を低減させるという観点からは、ワイヤーの線径を0.1mm以下、ヒータ電極122の厚さをワイヤーの交点を除き0.1mm以下にすることが好ましい。また、帯状に裁断されたヒータ電極122の幅は2.5mm~20mmであることが好ましく、5mm~15mmであることがさらに好ましい。本実施形態においては、ヒータ電極122は、図6に示される形状に裁断されているがヒータ電極122の形状はこれには限られず、適宜変更しうる。なお、セラミックス基材110の内部にはヒータ電極122に加えて、あるいは、ヒータ電極122に代えて、セラミックス基材110の上方にプラズマを発生させるためのプラズマ電極が埋設されていてもよい。
【0022】
図2に示されるように、セラミックスヒータ100には、ヒータ電極122に電力を供給するための給電線140と、静電吸着用電極124に電力を供給するための給電線141とが配置されている。なお、図2においては、給電線140、141はそれぞれ1つずつしか図示されていないが、実際には複数の給電線140及び複数の給電線141が配置されている。給電線140の上端は、ヒータ電極122の中央に配置された端子部121(図6参照)に電気的に接続されている。給電線140は、不図示のヒータ用電源に接続される。これにより、給電線140を介してヒータ電極122に電力が供給される。同様に、給電線141を介して、静電吸着用電極124に電力が供給される。
【0023】
次に、セラミックスヒータ100の製造方法について説明する。以下では、セラミックス基材110が窒化アルミニウムで形成される場合を例に挙げて説明する。
【0024】
まず、セラミックス基材110の製造方法について説明する。なお、説明を簡略化するために、セラミックス基材110の内部には、電極120としてヒータ電極122のみが埋設されているものとする。図7(a)に示されるように、窒化アルミニウム(AlN)粉末を主成分とする造粒粉Qをカーボン製の有床型601に投入し、パンチ602で仮プレスする。なお、造粒粉Qには、5wt%以下の焼結助剤(例えば、Y)が含まれることが好ましい。次に、図7(b)に示されるように、仮プレスされた造粒粉Qの上に、所定形状に裁断されたヒータ電極122を配置する。なお、ヒータ電極122は、加圧方向に垂直な面(有床型601の底面)に平行になるように配置される。このとき、Wのペレット又はMoのペレットをヒータ電極122の端子121(図6参照)の位置に埋設してもよい。
【0025】
図7(c)に示されるように、ヒータ電極122を覆うようにさらに造粒粉Qを有床型601に投入し、パンチ602でプレスして成形する。次に、図7(d)に示されるように、ヒータ電極122が埋設された造粒粉Qをプレスした状態で焼成する。焼成の際に加える圧力は、1MPa以上であることが好ましい。また、1800℃以上の温度で焼成することが好ましい。次に、図7(e)に示されるように、端子121を形成するために、ヒータ電極122までの止まり穴加工を行う。なお、ペレットを埋設した場合には、ペレットまでの止まり穴加工を行えばよい。さらに、ガス流路164の一部となる貫通孔を形成する。これにより、内部にガス流路164が形成されたセラミックス基材110を作製することができる。この場合、ヒータ電極122がガス流路164から露出しないように、予めヒータ電極122に所定の開口部を設けることが好ましい。
【0026】
なお、セラミックス基材110は以下の方法によっても製造することができる。図8(a)に示されるように、窒化アルミニウムの造粒粉Qにバインダーを加えてCIP成型し、円板状に加工して、窒化アルミニウムの成形体610を作製する。次に、図8(b)に示されるように、成形体610の脱脂処理を行い、バインダーを除去する。
【0027】
図8(c)に示されるように、脱脂された成形体610に、ヒータ電極122を埋設するための凹部511を形成する。成形体610の凹部611にヒータ電極122を配置し、別の成形体610を積層する。なお、凹部611は予め成形体610に形成しておいてもよい。次に、図8(d)に示されるように、ヒータ電極122を挟むように積層された成形体610をプレスした状態で焼成し、焼成体を作製する。焼成の際に加える圧力は、1MPa以上であることが好ましい。また、1800℃以上の温度で焼成することが好ましい。焼成体を作製した後の工程は、上述の工程と同様であるので、説明を省略する。
【0028】
このようにして形成されたセラミックス基材110の上面111に対して研削を行い、研磨加工を行う。さらに、上面111に対してサンドブラスト加工を行うことにより、上面111に複数の凸部156及び環状凸部152を形成する。このとき、複数の凸部156の高さは同じになるように加工される。また、環状凸部152の頂面152aも所定の形状に加工される。なお、複数の凸部156、環状凸部152を形成するための加工方法は、サンドブラスト加工が好適であるが、他の加工方法を用いることもできる。
【実施例0029】
以下、本発明について実施例1~4を用いて更に説明する。但し、本発明は、以下に説明する実施例に限定されない。なお、図9~12には、実施例1~4の結果を記載した表が示されている。図13及び14には、比較例1、2の結果を記載した表が示されている。
【0030】
[実施例1]
実施例1のセラミックスヒータ100(図2参照)について説明する。実施例1においては、5wt%の焼結助剤(Y)を添加した窒化アルミニウム(AlN)を原料として、上述の作製方法により直径300mm、厚さ25mmのセラミックス基材110を作製した。実施例1のセラミックス基材110は下に凸に湾曲した形状を有している(図3(a)参照)。実施例1のセラミックスヒータ100には、上述の静電吸着用電極124は埋設されておらず、図3に示される形状のヒータ電極122がセラミックス基材110に埋設されている。
【0031】
セラミックス基材110の中心には、ガス流路164(図2参照)の開口164aを設けた。開口164aの直径は4mmであった。
【0032】
セラミックス基材110の上面111に、内径296mm、外径300mm、幅2mmの環状凸部152を形成した。環状凸部152の高さは150μmとした。さらに、セラミックス基材110の上面111に、円柱形状の複数の凸部156を形成した。複数の凸部156の頂面156aの形状は、直径3mmの円形とした。複数の凸部156の高さは150μmとした。複数の凸部156は直径20mm~140mm、10mm間隔の同心円上に、8~12mmの範囲内において等間隔で並んでいる。なお、環状凸部152の頂面152a及び複数の凸部156の頂面156aの中心線平均粗さRaを、いずれも0.4μmとした。
【0033】
複数の凸部156の頂面156aに、3次元測定器のプローブを当てて、頂面152aの重心位置の半径方向の座標値と上下方向5の座標値を測定した。そして、同一の同心円上に配置された凸部156の頂面156aについて、上下方向5の座標値の平均をとり、この同心円に対応する上下方向5の座標値の平均値Zを算出した。この場合において、8点以上の平均を取ることが好ましい。また、同一の同心円上に配置された凸部156の頂面156aについて、頂面156aの重心位置とセラミックス基材110の中心までの距離を求めて、その平均値を同心円の半径rとした。また、ある同心円の半径rと、その外側に隣接する同心円の半径との差をΔrとした。これに基づいて、凸部156の、平均値Z(mm)の半径方向の変化率(ΔZ/Δr)の変化率(ΔZ/Δr)(単位:mm-1)及び値10-4/Δr(単位:mm-1)を算出した。本明細書においては、このような測定を載置面断面曲線の測定と呼んでいる。頂面156aの中心線平均粗さRaが0.2μm以下である場合には、レーザー干渉計によって載置面断面曲線の測定を行うこともできる。
【0034】
なお、実施例1においては採用していないが、セラミックスヒータ100にスーパーフラットウェハ(TTV=0.1μm以下が好ましい)を載置し、ウェハの表面側の中心を通る放射状の線上のr座標、Z座標を測定することもできる。載置面断面曲線の測定には、3次元測定器またはレーザー干渉計を使用できる。この場合には、測定するr座標の間隔がΔrとなる。
【0035】
図9に実施例1のセラミックスヒータ100についての載置面断面曲線の測定結果をまとめた表を示す。図9の表から読み取れるように、セラミックス基材110の外径(実施例1においては、環状凸部152の外径と同じ)の15%~85%の円環状の範囲内(実施例1においては、環状凸部152の外径が300mmであるので、r=25mm~125mmの範囲内)において、ΔZ/Δrの絶対値が、10-4/Δr(mm-1)以下であり、且つ、10-5(mm-1)以下であった。
【0036】
このような形状のセラミックスヒータ100を真空チャンバに設置し、セラミックスヒータ100に直径300mmの温度評価用のシリコンウェハを載置した。そして、真空チャンバ内のガス圧力をAr200Torrに減圧し、ガス流路164を不図示の排気装置に接続し、排気装置の排気孔圧力を50Torrとした。これにより、差圧(150Torr)でシリコンウェハを真空吸着した。そして、以下の手順でシリコンウェハの真空吸着時におけるシリコンウェハの温度分布評価を行った。
【0037】
セラミックスヒータ100のヒータ電極122に不図示の外部電源を接続し、定常状態でシリコンウェハの上面の温度が500℃となるように外部電源の出力電力を調整した。その後、温度評価用のシリコンウェハの温度分布を赤外線カメラで計測した。赤外線カメラの温度コンター図(カラーバー)の温度レンジが3℃以下となるように設定し、温度コンター図において、円弧状のヒートスポットの発生の有無を目視で確認した。ヒートスポットが認められた場合はシリコンウェハの中心を通り、かつ、ヒートスポットを通る半径方向の温度分布を測定した。ヒートスポットが認められない場合は任意の半径方向の温度分布を測定し、設定値と実測値の乖離を測定した。セラミックス基材110の外径(実施例1においては、環状凸部152の外径と同じ)の15%~85%の円環状の範囲内(実施例1においては、環状凸部152の外径が300mmであるので、r=25mm~125mmの範囲内)の半径方向の任意の距離50mmあたり1.0℃以上の温度差が現れている箇所がある場合ヒートスポットがあると判定した。すなわち、任意のr1~r2(r1とr2の離間距離は50mm)の範囲で、任意のrでの実測値-(r1での実測値+r2での実測値)/2の絶対値が0.5℃以上である場合ヒートスポットがあると判定した。
【0038】
実施例1においては、ヒートスポットが確認されなかった。
【0039】
[実施例2]
実施例2のセラミックスヒータ100は、実施例1のセラミックスヒータ100と比べて、複数の凸部156の半径方向のピッチを変更した。実施例2のセラミックス基材110は下に凸に湾曲した形状を有している(図3(a)参照)。
【0040】
このような形状のセラミックスヒータ100を真空チャンバに設置し、セラミックスヒータ100に実施例1と同様の温度評価用のシリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順で載置面断面曲線の測定を行い、シリコンウェハの温度分布評価を行った。
【0041】
図10に実施例2のセラミックスヒータ100についての測定結果をまとめた表を示す。図10の表から読み取れるように、セラミックス基材110の外径の15%~85%の円環状の範囲内においては、ΔZ/Δrの絶対値が10-5(mm-1)よりも大きかったが、10-4/Δr(mm-1)以下であった。実施例2において、ヒートスポットは確認されなかった。
【0042】
[実施例3]
実施例3のセラミックスヒータ100は、実施例1のセラミックスヒータ100と比べて、複数の凸部156の半径方向のピッチを変更した。実施例3のセラミックス基材110は下に凸に湾曲した形状を有している(図3(a)参照)。
【0043】
このような形状のセラミックスヒータ100を真空チャンバに設置し、セラミックスヒータ100に実施例1と同様の温度評価用のシリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順で載置面断面曲線の測定を行い、シリコンウェハの温度分布評価を行った。図11に実施例3のセラミックスヒータ100についての測定結果をまとめた表を示す。図11の表から読み取れるように、セラミックス基材110の外径の15%~85%の円環状の範囲内においては、ΔZ/Δrの絶対値が10-4/Δr(mm-1)よりも大きかったが、10-5(mm-1)以下であった。実施例3において、ヒートスポットは確認されなかった。
【0044】
[実施例4]
実施例4のセラミックスヒータ100は、実施例1のセラミックスヒータ100と比べて、複数の凸部156の半径方向のピッチを変更した。実施例4のセラミックス基材110は上に凸に湾曲した形状を有している(図3(b)参照)。
【0045】
このような形状のセラミックスヒータ100を真空チャンバに設置し、セラミックスヒータ100に実施例1と同様の温度評価用のシリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順で載置面断面曲線の測定を行い、シリコンウェハの温度分布評価を行った。図12に実施例4のセラミックスヒータ100についての測定結果をまとめた表を示す。図12の表から読み取れるように、セラミックス基材110の外径の15%~85%の円環状の範囲内においては、ΔZ/Δrの絶対値が10-4/Δr(mm-1)以下であり、且つ、10-5(mm-1)以下であった。実施例4において、ヒートスポットは確認されなかった。
【0046】
[比較例1]
比較例1のセラミックスヒータ100は、実施例4のセラミックスヒータ100と比べて、複数の凸部156の半径方向のピッチは同じである。比較例1のセラミックス基材110は下に凸に湾曲した形状を有している(図3(a)参照)。
【0047】
このような形状のセラミックスヒータ100を真空チャンバに設置し、セラミックスヒータ100に実施例1と同様の温度評価用のシリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順で載置面断面曲線の測定を行い、シリコンウェハの温度分布評価を行った。図13に比較例1のセラミックスヒータ100についての測定結果をまとめた表を示す。図13の表から読み取れるように、セラミックス基材110の外径の15%~85%の円環状の範囲内においては、ΔZ/Δrの絶対値が10-4/Δr(mm-1)より大きい箇所、及び、10-5(mm-1)より大きい箇所が存在し、その近傍でヒートスポットが確認された。
【0048】
[比較例2]
比較例2のセラミックスヒータ100は、実施例1のセラミックスヒータ100と比べて、複数の凸部156の半径方向のピッチを変更した。比較例2のセラミックス基材110は下に凸に湾曲した形状を有している(図3(a)参照)。
【0049】
このような形状のセラミックスヒータ100を真空チャンバに設置し、セラミックスヒータ100に実施例1と同様の温度評価用のシリコンウェハを載置した。そして、実施例1と同様の手順で載置面断面曲線の測定を行い、シリコンウェハの温度分布評価を行った。図14に比較例2のセラミックスヒータ100についての測定結果をまとめた表を示す。図14の表から読み取れるように、セラミックス基材110の外径の15%~85%の円環状の範囲内においては、ΔZ/Δrの絶対値が10-4/Δr(mm-1)より大きい箇所、及び、10-5(mm-1)より大きい箇所が存在し、その近傍でヒートスポットが確認された。
【0050】
<実施形態の作用効果>
上記実施形態及び実施例1~4において、セラミックスヒータ100は、円板状のセラミックス基材110と、セラミックス基材110に埋設されたヒータ電極122とを備えている。セラミックス基材110の上面111は、複数の凸部156が同心円状に配置されている。複数の凸部156のうち、セラミックス基材110の上面111の、セラミックス基材110の外径の15%~85%の円環状の範囲に設けられた一部の複数の凸部156について、以下の関係が成り立っている。なお、セラミックス基材110の外径の15%~85%の円環状の範囲は、セラミックス基材110の外径の15%の長さの外径を有する第1仮想円と、セラミックス基材110の外径の85%の長さの外径を有する第2仮想円とに形成される円環状の範囲として定義される。これらの範囲は、凸部156が同心円状に半径方向に離間しているためセラミックス基材110の中心近傍および外径近傍で凸部156の高さの偏差を求めることが困難になるために設けられたものである。また、セラミックス基材110の上面111に、環状凸部152が設けられている場合には、セラミックス基材110の外径を、環状凸部152の外径として定義してもよい。
【0051】
上記の円環状の範囲に設けられた一部の複数の凸部156はセラミックス基材110の中心側から外周側に向かってn個(n≧2)の同心円を有するように配置されている。第(n-1)番目の同心円における、凸部156の上下方向5の座標の平均値をZ(mm)とし、第(n-1)番目の同心円の半径をr(mm)とし、第n番目の同心円の半径と第(n-1)番目の同心円の半径との差をΔr(mm)としたとき、ΔZ/(Δr)の絶対値が10-5以下である、または、10-4/Δr以下である。ここで、ΔZ/(Δr)は、凸部156のZ座標の平均値Z(mm)の半径方向の変化率(ΔZ/Δr)の変化率(Δ(ΔZ/Δr)/Δr)を意味している。
【0052】
実施例1~4によれば、上記の円環状の範囲において、ΔZ/(Δr)の絶対値が10-5以下である、または、10-4/Δr以下である箇所が存在しない場合には、ヒートスポットが確認されないことが分かった。これに対して、比較例1、2によれば、ΔZ/Δrの絶対値が10-4/Δr(mm-1)より大きい箇所、及び、10-5(mm-1)より大きい箇所が存在する場合には、その近傍でヒートスポットが確認された。
【0053】
発明者らの知見によれば、ウェハ10の温度分布は、特に半径方向の中間部(例えば、直径300mmの基板サイズに対し、直径50mm(半径25mm)~直径250mm(半径125mm)の領域)に中心対称にM字状、W字状に分布しやすいと考えられる。このような範囲が、上記の円環状の範囲に対応している。そして、複数の凸部156の頂面156によって構成される基板載置面(頂面156の包絡面)の中心を通る断面形状において、上下方向に急激な変化が生じる箇所があれば、その箇所で該当する凸部156とウェハ10との接触圧力が増大し、その結果、伝熱が過多となり円弧状にヒートスポットが発生すると考えられる。実施例1~4においては、凸部156のZ座標の平均値Z(mm)の半径方向の変化率(ΔZ/Δr)の変化率ΔZ/(Δr)の絶対値を10-5以下、または、10-4/Δr以下とすることにより、基板載置面(頂面156の包絡面)の、上下方向5に急激な変化を抑制することができた。これにより、ヒートスポットの発生を抑制し、ウェハ10の均熱化ができたと考えられる。
【0054】
<変更形態>
上述の実施形態は、あくまで例示に過ぎず、適宜変更しうる。例えば、セラミックス基材110の形状、寸法は上記実施形態のものには限られず、適宜変更しうる。環状凸部152の高さ、幅等の寸法、環状凸部152の頂面152aの形状、頂面152aの中心線平均粗さRaの大きさは適宜変更しうる。複数の凸部156の高さ、頂面156aの形状、頂面156aの中心線平均粗さRaの大きさは適宜変更しうる。例えば、複数の凸部156の頂面156aの形状は必ずしも円形でなくてもよく、例えば、正方形などの適宜の形状にすることができる。
【0055】
上記実施形態においては、ヒータ電極122として、モリブデン、タングステン、モリブデン及び/又はタングステンを含む合金を用いていたが、本発明はそのような態様には限られない。例えば、モリブデン、タングステン以外の金属又は合金を用いることもできる。また、電極120は発熱体としてのヒータ電極122を含んでいた。しかしながら、電極120は必ずしも発熱体としてのヒータ電極122を含む必要は無く、例えば、発熱体として高周波電極を含んでいてもよい。
【0056】
上記実施形態においては、セラミックスヒータ100はセラミックス基材110に埋設されたヒータ電極122を備えていたが、本発明はそのような態様には限られず、ヒータ電極122はセラミックスヒータ100のセラミックス基材110に埋設されていなくてもよい。例えば、発熱体としてのヒータ電極122又は高周波電極がセラミックス基材110の裏面113に貼付されていてもよい。
【0057】
以上、発明の実施形態及びその変更形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることが当業者に明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが請求の範囲の記載からも明らかである。
【0058】
明細書、及び図面中において示した製造方法における各処理の実行順序は、特段に順序が明記されておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるので無い限り、任意の順序で実行しうる。便宜上、「まず、」「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するわけではない。
【符号の説明】
【0059】
100 基板保持部材
110 セラミックス基材
122 ヒータ電極
140、141 給電線
152 環状凸部
156 複数の凸部
164 ガス流路
図1
図2
図3
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