(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017029
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】フィルム容器
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
B65D65/40 D BRL
B65D65/40 BSE
B65D65/40 BSF
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119390
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】中村 元春
【テーマコード(参考)】
3E086
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA33
3E086BB51
3E086BB62
3E086CA01
3E086CA11
3E086CA29
3E086CA35
(57)【要約】 (修正有)
【課題】積層フィルムの紙層と樹脂フィルム層とを剥がれ残りなく剥離して分離し易いフィルム容器を提供する。
【解決手段】積層フィルムで構成された、前面、後面、底面を有するフィルム容器で、積層フィルムは、紙層と、紙層よりも内面側の樹脂フィルム層と、紙層と樹脂フィルム層との間の易分離層とを含む複数の層が積層および接合されており、少なくとも前面の樹脂フィルム層と後面の樹脂フィルム層との対向する側縁部が接合され、フィルム容器の周縁部に樹脂フィルム層が接合されたシール部が形成され、積層フィルムが収容物を収容する収容領域を包囲するように製袋され、フィルム容器の周縁部には、収容領域とシール部との境界よりも外側に、積層フィルムの紙層と樹脂フィルム層が非接合で外側に向かって延出された剥離開始部が備わり、易分離層の紙層と樹脂フィルム層との剥離強度が、シール部の樹脂フィルム層どうしの剥離強度よりも小さいフィルム容器。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層フィルムにより構成された、前面、後面、および底面を有するフィルム容器であって、
前記積層フィルムは、紙材により構成された紙層と、樹脂材により構成された、前記紙層よりも内面側に配置されてシーラント層となっている樹脂フィルム層と、前記紙層と前記樹脂フィルム層との間に配置されている易分離層と、を含む複数の層が積層および接合されており、
少なくとも前記前面を構成する前記積層フィルムの前記樹脂フィルム層と前記後面を構成する前記積層フィルムの前記樹脂フィルム層との対向する側縁部どうしが接合されて、前記フィルム容器の周縁部に前記積層フィルムの前記樹脂フィルム層どうしが接合されたシール部が形成され、前記積層フィルムが収容物を収容する収容領域を包囲するように製袋されており、
さらに、前記フィルム容器の前記周縁部には、前記収容領域と前記シール部との境界よりも外側に、前記積層フィルムの前記紙層および前記樹脂フィルム層が非接合で外側に向かって延出して形成された、前記積層フィルムの前記紙層を前記樹脂フィルム層から剥離する起点となる剥離開始部が備わり、
前記積層フィルムの、前記易分離層における前記紙層と前記樹脂フィルム層との剥離強度は、前記シール部における前記樹脂フィルム層どうしの剥離強度よりも小さく、前記紙層と前記樹脂フィルム層とを前記剥離開始部から剥離させたときに前記易分離層において前記紙層を実質的な剥がれ残りがなく前記樹脂フィルム層から剥離可能である、
フィルム容器。
【請求項2】
前記剥離開始部の外縁が、前記フィルム容器において前記剥離開始部に隣接する周囲領域の外縁に対して滑らかに連続するように形成されている、請求項1に記載のフィルム容器。
【請求項3】
前記フィルム容器の前記周縁部において、前記シール部が角形状に形成されている角部を1以上有し、
前記剥離開始部が、前記角部を含む角領域および前記角領域から外側に向かって延出して形成されている延出領域を有する、請求項2に記載のフィルム容器。
【請求項4】
前記易分離層が、樹脂材により構成された支持層および凝集剥離層を含む複数の樹脂層が積層されて構成されたイージーピール樹脂層であり、且つ、前記凝集剥離層が前記易分離層において最も内面側に配置されて前記樹脂フィルム層と接合されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のフィルム容器。
【請求項5】
前記樹脂フィルム層がインクを実質的に含まない構成である、請求項1~4のいずれか1項に記載のフィルム容器。
【請求項6】
前記樹脂フィルム層がポリオレフィン系樹脂を90質量%以上含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のフィルム容器。
【請求項7】
前記剥離開始部が、
前記前面を構成する前記積層フィルムの前記紙層および前記樹脂フィルム層と、前記後面を構成する前記積層フィルムの前記紙層および前記樹脂フィルム層と、がいずれも非接合で重なっているか、
前記前面または前記後面を構成する前記積層フィルムの前記紙層および前記樹脂フィルム層と、前記底面を構成する前記積層フィルムの前記紙層および前記樹脂フィルム層と、がいずれも非接合で重なっているか、あるいは、
前記フィルム容器が天面をさらに有し、前記前面または前記後面を構成する前記積層フィルムの前記紙層および前記樹脂フィルム層と、前記天面を構成する前記積層フィルムの前記紙層および前記樹脂フィルム層と、がいずれも非接合で重なっている、請求項1~6のいずれか1項に記載のフィルム容器。
【請求項8】
前記剥離開始部が、
前記前面を構成する前記積層フィルムの前記紙層および前記樹脂フィルム層と、前記後面を構成する前記積層フィルムの前記紙層および前記樹脂フィルム層と、がいずれも重なっているか、
前記前面または前記後面を構成する前記積層フィルムの前記紙層および前記樹脂フィルム層と、前記底面を構成する前記積層フィルムの前記紙層および前記樹脂フィルム層と、がいずれも重なっているか、あるいは、
前記フィルム容器が天面をさらに有し、前記前面または前記後面を構成する前記積層フィルムの前記紙層および前記樹脂フィルム層と、前記天面を構成する前記積層フィルムの前記紙層および前記樹脂フィルム層と、がいずれも重なっており、
前記剥離開始部における前記樹脂フィルム層どうしは接合されている、請求項1~6のいずれか1項に記載のフィルム容器。
【請求項9】
前記剥離開始部が、前記積層フィルムの前記紙層と前記樹脂フィルム層とが非接合である領域の一部に、少なくとも前記紙層が谷折りまたは山折りで折られて形成されている折れ線部、あるいは少なくとも前記紙層を谷折りまたは山折りするための目印線となる折り線を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載のフィルム容器。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のフィルム容器と、前記フィルム容器の前記収容領域に収容された収容物と、を備える、容器詰め品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム容器に関する。
【背景技術】
【0002】
スタンディングパウチなどのフィルム容器は、通常、樹脂フィルム層を含む複数のフィルム層が積層された積層フィルムにより構成されている。そして、この積層フィルムは、一般に、印刷層が表側の基材層(例えばこの基材層の内面側)に設けられ、接着層などによってこの基材層と整袋のために必要なシーラント層とが接合されている。しかし、この基材層とシーラント層とは分離困難な接合がされている場合がほとんどであるため、基材層に設けられた印刷層のインク材とシーラント層の樹脂材とを分離することが難しい。また、この基材層とシーラント層とは、フィルム容器としての必要性能(バリア性、印刷適正、強度など)から構成材料が大きく異なったり非相溶な樹脂材どうしにより構成されていたりすることも多いため、このような積層フィルムにより構成されたフィルム容器はマテリアルリサイクルには適さないと考えられていた。
【0003】
上記のような状況を鑑みて、マテリアルリサイクルの適正を高めたフィルム容器の開発が進められている。例えば特許文献1には、互いに向かい合って位置する、少なくとも2つの前面壁を有する、バッグフィルムから成るバッグ本体を備えるフィルムバッグであって、印刷された材料部片が、この材料部片の周囲に延在する縁部の一部において、永続的な固定継ぎ目によって、前面壁の内の1つの前面壁に固定されており、且つ、固定継ぎ目に対して隣接して、材料弱め部の様式における破断線を有している様式の上記フィルムバッグにおいて、固定継ぎ目が、周囲に延在する縁部の40%と98%との間の割合分にわたって延在するフィルムバッグが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のフィルムバッグでは、破断線によって印刷された材料部片を分離するため、縁部(容器端部)のシール部では印刷を含む材料部片が残存してしまう。よって、樹脂材により構成されたフィルムバッグ本体のリサイクル工程にこの印刷を含む材料部片が一定量混入し、その再生樹脂へのマテリアルリサイクルを阻害する恐れがある。特に、印刷された材料部片が紙材により構成されたものであると、印刷を施すという観点などからは紙材は好ましい材料ではあるが、上記した残存によりフィルムバッグ本体のマテリアルリサイクルを阻害する恐れがより大きくなる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、容器を構成している積層フィルムの紙層と樹脂フィルム層とを実質的な剥がれ残りなく剥離させて分離し易いフィルム容器に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、積層フィルムにより構成された、前面、後面、および底面を有するフィルム容器であって、積層フィルムは、紙材により構成された紙層と、樹脂材により構成された、紙層よりも内面側に配置されてシーラント層となっている樹脂フィルム層と、紙層と樹脂フィルム層との間に配置されている易分離層と、を含む複数の層が積層および接合されており、少なくとも前面を構成する積層フィルムの樹脂フィルム層と後面を構成する積層フィルムの樹脂フィルム層との対向する側縁部どうしが接合されて、フィルム容器の周縁部に積層フィルムの樹脂フィルム層どうしが接合されたシール部が形成され、積層フィルムが収容物を収容する収容領域を包囲するように製袋されており、さらに、フィルム容器の周縁部には、収容領域とシール部との境界よりも外側に、積層フィルムの紙層および樹脂フィルム層が非接合で外側に向かって延出して形成された、積層フィルムの紙層を樹脂フィルム層から剥離する起点となる剥離開始部が備わり、積層フィルムの、易分離層における紙層と樹脂フィルム層との剥離強度は、シール部における樹脂フィルム層どうしの剥離強度よりも小さく、紙層と樹脂フィルム層とを剥離開始部から剥離させたときに易分離層において紙層を実質的な剥がれ残りがなく樹脂フィルム層から剥離可能であるフィルム容器に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、容器を構成している積層フィルムの紙層と樹脂フィルム層とを実質的な剥がれ残りなく剥離させて分離し易いフィルム容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るフィルム容器の正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るフィルム容器の斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るフィルム容器における剥離開始部の拡大図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るフィルム容器を構成している積層フィルムの断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るフィルム容器を構成している積層フィルムの変形例の断面図である。
【
図6】本発明の別の実施形態に係るフィルム容器の正面図である。
【
図7】本発明の別の実施形態に係るフィルム容器における剥離開始部の拡大図である。
【
図8】本発明の別の実施形態に係るフィルム容器の裏面図である。
【
図9】本発明のさらに別の実施形態に係るフィルム容器における剥離開始部の拡大図である。
【
図10】本発明の実施形態に係るフィルム容器における剥離開始部の変形例の拡大断面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係るフィルム容器における剥離開始部のさらなる変形例の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。また、一部の図面については、便宜上、符号を付していない(省略している)箇所がある。さらに、図面に示された各部材の寸法比率は、発明の理解を容易にするために、実際の寸法比率とは異なる場合がある。
【0011】
〔全体構成〕
まず、
図1から
図3および
図6から
図8を用いて本発明に係るフィルム容器およびこれを使用した容器詰め品の実施形態の全体構成について説明する。
本発明に係るフィルム容器は、以下の実施形態を包含するものである。ここで、以下の各実施形態における各構成要素の位置関係(上下関係、左右関係等)の説明は、特に断りのない場合、
図1、
図2、
図6、
図7などのようにフィルム容器の底面を下側にして載置面に自立させた状態での位置関係を説明したものである。よって、これらの説明における位置関係は、フィルム容器の使用時や製造時の位置関係とは必ずしも一致しない。
【0012】
本実施形態に係るフィルム容器1は、積層フィルム100により構成された、前面、後面、および底面を有するものである。積層フィルム100は、紙材により構成された紙層10と、樹脂材により構成された、紙層10よりも内面側(つまりフィルム容器1における積層フィルム100の紙層10よりも容器内部側)に配置されてシーラント層となっている樹脂フィルム層12と、紙層10と樹脂フィルム層12との間に配置されている易分離層11と、を含む複数の層が積層および接合されたものである。そして、少なくとも前面を構成する積層フィルム(前面構成積層フィルム2)の樹脂フィルム層12と後面を構成する積層フィルム(後面構成積層フィルム3)の樹脂フィルム層12との対向する側縁部どうしが接合されて、フィルム容器1の周縁部に、より好ましくはフィルム容器1の周縁部において前面または後面を囲うように、積層フィルム100の樹脂フィルム層12どうしが接合されたシール部(サイドシール部21を含むシール部)が形成され、積層フィルム100が収容物を収容する収容領域を包囲するように製袋されている。さらに、フィルム容器1の周縁部には、収容領域とシール部との境界よりも外側(例えばシール部と隣り合う外側の位置や、シール部を含む外側の領域など)に、積層フィルム100の紙層10および樹脂フィルム層12が非接合で外側に向かって延出して形成された、積層フィルム100の紙層10を樹脂フィルム層12から剥離する起点となる剥離開始部5が備わる。ここで、この「外側」とは、
図1、
図6、および
図8に示すように、フィルム容器1を前面方向または後面方向から(前後方向に)見たときの外側である。そして、積層フィルム100の、易分離層11における紙層10と樹脂フィルム層12との剥離強度は、シール部における樹脂フィルム層12どうしの剥離強度よりも小さく、紙層10と樹脂フィルム層12とを剥離開始部5から剥離させたときに易分離層11において紙層10を実質的な剥がれ残りがなく樹脂フィルム層12から剥離可能である。つまり、紙層10を実質的な剥がれ残りなく剥離させて分離し易い。
【0013】
例えば、本実施形態に係るフィルム容器1は、
図1から
図3に示すような実施形態であって良い。具体的には、1枚または複数枚のシート状積層フィルム100が前面、後面、および底面を構成するようにし、前面構成積層フィルム2の樹脂フィルム層12と後面構成積層フィルム3の樹脂フィルム層12との対向する側縁部(積層フィルム100の対向する内面側の側縁部)どうしが接合されてサイドシール部21が形成され、さらに前面構成積層フィルム2の樹脂フィルム層12と後面構成積層フィルム3の樹脂フィルム層12との対向する上縁部どうしも接合されて天部シール部25が形成され、必要に応じて前面構成積層フィルム2の樹脂フィルム層12または後面構成積層フィルム3の樹脂フィルム層12と底面を構成する積層フィルム(底面構成積層フィルム4)の樹脂フィルム層12との対向する下縁部どうしも接合されて底部シール部22が形成され、前面構成積層フィルム2、底面構成積層フィルム4、および後面構成積層フィルム3が収容領域を包囲するように製袋されて袋状となったものが示される。つまり、この収容領域は、積層フィルム100の樹脂フィルム層12に包囲されて形成されている。そして、フィルム容器1の上縁端部において、サイドシール部21および天部シール部25といずれも斜め方向に連続するように斜めシール部23が形成され、この一方の斜めシール部23における収容領域との境界(斜めシール部23の収容領域側の側端)よりも外側に、前面構成積層フィルム2の紙層10および樹脂フィルム層12ならびに後面構成積層フィルム3の紙層10および樹脂フィルム層12が非接合でいずれも外側に向かって延出して形成された剥離開始部5が備わる。そして、上縁端部のもう一方の斜めシール部23を含む領域には、収容物を収容および排出可能であり且つ繰り返し開閉可能な口栓構造を有する開口部31が備わる。
なお、この実施形態では、1枚のシート状積層フィルム100から前面構成積層フィルム2、底面構成積層フィルム4、および後面構成積層フィルム3をいずれも形成しても良く、あるいは、これらから選ばれる少なくとも1つが別シートとなった複数枚のシート状積層フィルム100を用いて形成しても良い。また、この実施形態の底面では、底面構成積層フィルム4を含む領域が折り畳み可能なマチ構造となって前面と後面とを連結している(底マチ部)。同時に、フィルム容器1の前面および後面において、前面構成積層フィルム2および後面構成積層フィルム3の少なくとも一部の領域が、サイドシール部21に挟まれた領域である胴部を形成し、フィルム容器1の収容領域に収容物が収容されたときに、この胴部が積層フィルム100の厚み方向に膨らむような構成となっている。
【0014】
また、本実施形態に係るフィルム容器1は、
図6から
図8に示すような実施形態であっても良い。具体的には、1枚のシート状積層フィルム100が前面、後面、底面、および天面を構成するように折り畳まれ、前面構成積層フィルム2の樹脂フィルム層12と後面構成積層フィルム3の樹脂フィルム層12との対向する側縁部(積層フィルム100の対向する内面側の側縁部)どうしが接合されてサイドシール部21が形成され、さらに前面構成積層フィルム2の樹脂フィルム層12または後面構成積層フィルム3の樹脂フィルム層12と底面構成積層フィルム4との対向する下縁部どうしも接合されて底部シール部22が形成され、同様に天面を構成する積層フィルム(天面構成積層フィルム51)と前面構成積層フィルム2の樹脂フィルム層12または後面構成積層フィルム3の樹脂フィルム層12との対向する上縁部どうしも接合されて天部シール部25が形成され、天面構成積層フィルム51、前面構成積層フィルム2、底面構成積層フィルム4、および後面構成積層フィルム3が収容領域を包囲するように製袋されて袋状となったものが示される。つまり、この実施形態でも、収容領域は積層フィルム100の樹脂フィルム層12に包囲されて形成されている。そして、フィルム容器1の上縁端部において、サイドシール部21および天部シール部25といずれも斜め方向に連続するように斜めシール部23が形成され、この一方の斜めシール部23における収容領域との境界よりも外側に、前面構成積層フィルム2の紙層10および樹脂フィルム層12ならびに天面構成積層フィルム51の紙層10および樹脂フィルム層12が非接合でいずれも外側に向かって延出して形成された剥離開始部5が備わり(
図6、
図7)、さらに、フィルム容器1の下縁端部においても、サイドシール部21および底部シール部22といずれも斜め方向に連続するように斜めシール部23が形成され、この一方の斜めシール部23における収容領域との境界よりも外側に、後面構成積層フィルム3の紙層10および樹脂フィルム層12が非接合で外側に向かって延出して形成された剥離開始部5が備わる(
図8)。そして、天部には、収容物を収容および排出可能であり且つ繰り返し開閉可能な口栓構造を有する開口部31が備わる。
この剥離開始部5は、上記実施形態のフィルム容器1における上縁端部および下縁端部において、いずれも両側に備わる構成であっても構わない。あるいは、上縁端部または下縁端部のいずれか一方において、剥離開始部5が両側に備わる構成であっても構わない。
【0015】
なお、この実施形態の天面および底面では、天面構成積層フィルム51を含む領域が折り畳み可能なマチ構造となって前面と後面とを連結し(天マチ部)、底面構成積層フィルム4を含む領域も折り畳み可能なマチ構造となって前面と後面とを連結している(底マチ部)。同時に、フィルム容器1の前面および後面において、前面構成積層フィルム2および後面構成積層フィルム3の少なくとも一部の領域が、サイドシール部21に挟まれた領域である胴部を形成している。そして、天マチ部および底マチ部は、収容物を収容前などにおいては折り畳んでフィルム容器1を縮小させることができ、且つ、収容物が収容領域に収容されたときには、胴部とともにフィルム容器1に厚みを与えるように広がることができる構造を有する。
【0016】
ここで、この積層フィルム100の樹脂フィルム層12どうしの接合(シール部の形成)は、ヒートシール、超音波シール、接合剤(接着剤等)などによって行うことができるが、リサイクル性を高める観点などから、樹脂フィルム層12がヒートシール性を有する樹脂材(例えばポリエチレン系樹脂など)により構成され、上記接合がヒートシールによってなされたものであるのが好ましい。ヒートシール条件は、樹脂フィルム層12を構成する樹脂材の特性などによって設定が可能であるが、例えば110℃以上230℃以下のシール温度、0.1MPa以上1.0MPa以下のシール圧力、0.1秒以上10秒以下のシール時間などが条件として例示される。
なお、限定されるものではないが、フィルム容器1の開き性(収容領域の開き性)などの観点から、上記したいずれの実施形態においても、サイドシール部21のシール幅(シール部の短手方向の幅)は3mm以上7mm以下程度であるのが好ましい。また、自立性の観点からは前述した底部シール部22を有するのが好ましく、この底部シール部22のシール幅も上記と同様であって良い。そして、斜めシール部23および天部シール部25のシール幅についても同様であって良い。
【0017】
さらに、本実施形態に係るフィルム容器1には、収容物を収容および排出が可能な開口部31が設けられている。この開口部31は、前述した斜めサイドシール部23を含む領域または天部に設けられた、繰り返し開閉可能な口栓構造を有する構成(スパウト)であっても良いが(例えば
図1、
図2、
図6から
図8)、これに限定されるものではない。なお、この口栓構造は、キャップやポンプ付きキャップなどにより封止することができるネジ山が設けられていても良い。さらに、この開口部31は、リサイクル性を高める観点から、樹脂フィルム層12と同様の樹脂材により構成されたもの(例えば樹脂フィルム層12がポリオレフィン系樹脂を90質量%以上含む構成であり、且つ開口部31もポリオレフィン系樹脂を90質量%以上含む構成など)であるか、樹脂フィルム層12から容易に分離可能な構成であるのが好ましい。
あるいは、本実施形態に係るフィルム容器1は、その開口部31が収容領域における積層フィルム100(樹脂フィルム層12どうし)の非接合部分であり、この非接合部分から収容物を収容し、ヒートシールなどによってこの非接合部分が接合されて密封された構成であって、収容物の排出時には密封されている開口部31の一部が切除される構成あっても良く、フィルム容器1の形態などに応じて適宜選択可能である。
【0018】
そして、このような本実施形態に係るフィルム容器1を使用して、収容領域に収容物が収容された容器詰め品を得ることができる。この容器詰め品に収容された収容物を使用する場合には、開口部31などからこの収容物をスクイズやポンピング等によって排出して使用する。本実施形態に係るフィルム容器1の収容領域に収容する収容物の種類は、特に限定されないが、例えば、シャンプー、リンス、コンディショナー、ボディーソープ、洗顔料、洗剤、漂白剤、柔軟剤、飲料、食品、エンジンオイルなどが挙げられる。
また、この収容物は、液体(ペースト状のものを含む)であっても良いし、固体(例えば、粒状のもの(顆粒状のものを含む)、あるいは粉状のものなど)であっても良い。
収容物が液体である場合には、その粘度は、例えば30℃において1mPa・s以上であることが好ましく、そして、12万mPa・s以下であることが好ましく、6万mPa・s以下であることがより好ましい(いずれもB型粘度計(例えば東機産業社製ビスコメーターTV-10またはビスコメーターTVB-10など)により測定)。
【0019】
〔積層フィルムの層構成〕
次に、本発明に係るフィルム容器を構成している積層フィルムの層構成の実施形態について、
図4および
図5などを用いて詳細に説明する。
【0020】
本実施形態に係るフィルム容器1を構成している積層フィルム100は、少なくとも、紙層10、易分離層11、および樹脂フィルム層12を含む複数の層が積層および接合されたものである。そして、
図4および
図5に示すように、積層フィルム100の外面側(フィルム容器1における積層フィルム100の容器外部側)から順に、紙層10、易分離層11、樹脂フィルム層12が配置されて積層および接合されて一体となった層構成であり、紙層10と樹脂フィルム層12とは易分離層11を介して(易分離層11を挟んで)接合されている。したがって、積層フィルム100の製袋時においては、これらの層は一体となっている。なお、これらの層が積層フィルム100として一体となっている限り、剥離開始部5も含めて、一部に紙層10と樹脂フィルム層12とが接合されていない領域を有していても良い。例えば前述した胴部において紙層10と樹脂フィルム層12とが接合されていない構成などであっても良い。しかしながら、紙層10と樹脂フィルム層12とが易分離層11を介さずに接合されている領域(これらが直接接合されている領域や、易分離層11以外の層をこれらの間に配置し且つ易分離層11はこれらの間に配置しないで接合されている領域)は含まれない。また、積層フィルム100の一部において上記した層のいずれか1つまたは2つが形成されていない領域を有していても良い。そして、このような構成である限り、紙層10、易分離層11、および樹脂フィルム層12以外の層(例えば接着層や機能層など)をさらに含んでいても良い。
【0021】
積層フィルム100の紙層10は、本実施形態に係るフィルム容器1において基材となる層であって、紙材により構成されたペーパーフィルム層である。そして、これは単層であっても良く、あるいは紙材の層が複数積層された構成であっても良い。紙材により構成された紙層10は印刷適性を有するため、この紙層10にインクを含むインク材を用いて印刷を施したり、この紙層10の表面(例えば紙層10の外面側の表面など)に印刷層を形成したりすることが可能である。さらに、全体として紙材により構成された(紙材を主体とする)層である限りにおいて、紙材以外の材料(後述するニスや前述したインクなど)を含んでいても良い。ここで、この「紙材を主体」とは、紙層10の全質量における紙材の質量割合が60%以上であることを意味し、これは70%以上であるのがより好ましく、80%以上であるのがさらに好ましく、90%以上であるのがさらに好ましく、95%以上であるのがさらに好ましい。
【0022】
なお、積層フィルム100の折り曲げ加工がよりし易くなることなどから、この紙層10の坪量は150g/m2以下であるのが好ましく、125g/m2以下であるのがより好ましく、100g/m2以下であるのがさらに好ましい。下限は、容器物性が担保される範囲内であれば限定されないが、例えば50g/m2以上、さらには80g/m2以上などであって良い。また、剥離時を含む物理的な力の負荷に対する耐久性が向上して紙層10の破れや裂けが発生しにくくなることなどから、JIS Z 1707:2019に準拠した突刺し試験を実施したときの突刺し強度が8N以上であるのが好ましく、10N以上であるのがより好ましい。なお、この上限は、積層フィルム100の折り曲げ加工のし易さなどの観点から、20N以下であるのが好ましく、15N以下であるのがより好ましい。
この突刺し強度は、具体的には、直径60mmの略円形状である紙層10の試験片を切り出し、平らに固定したうえで、AUTOGARPH AG-S(株式会社島津製作所製)に直径1mmの金属針を装着して50mm/秒の速度で試験片を貫通させたときに、この金属針に加わる最大荷重である。この金属針は、全長が10mmで先端から5mmの範囲が先細り形状となっており、針の先端は直径1mmの半球状となっている。
【0023】
そして、この紙層10を構成する紙材としては、例えば、クラフト紙、上質紙、模造紙、グラシン紙、パーチメント紙、合成紙、白板紙、マニラボール、ミルクカートン原紙、カップ原紙、アイボリー紙、クレープ紙などが挙げられる。そして、その原料としては、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)あるいは針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)に代表される針葉樹由来のパルプや広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)に代表される広葉樹由来のパルプ等の木材パルプ、綿パルプや麻パルプ等の非木材パルプ、キュプラやレーヨン等の再生セルロース繊維などが挙げられる。耐久性の観点からは、この紙層10がNBKPまたはNUKPを原料として用いた紙材により構成されたものであるのが好ましく、特に、これらのうち繊維長が比較的長いもの(例えば繊維長が0.5mm以上であるNBKPまたはNUKP)を原料として用いた紙材により構成されたものであるのがより好ましい。
例えば、新東海製紙株式会社製の重包装用クラフト伸張紙や、王子製紙株式会社製のクラフト紙重包装紙を用いることができる。
【0024】
また、この紙層10は、物流時や消費者の手元等で水などが接触して損傷するリスクを回避し易くするために、紙層10の外面側(容器外部側)の表面に、耐水性、耐摩擦性、防黴性、耐光性(特に紫外線耐性)などの機能を有する機能層としてニスやセルロースナノファイバー(CNF)等がコーティングされたコーティング層などが形成されているのが好ましい。しかしながら、この機能層は、紙層10が有する紙材の質感を損なわない厚さおよび材質のコーティング層等であるのが好ましい。そして、この紙層10の表面に、製品に関する表示や図柄などの印刷が施された印刷層が形成されているのが好ましい。例えば、紙層10の外面側(容器外部側)の表面であり且つ機能層の内面側(容器内部側)に印刷層が形成されていても良い。
【0025】
積層フィルム100の樹脂フィルム層12は、紙層10よりも内面側に配置されて、本実施形態に係るフィルム容器1のシーラント層(製袋のための積層フィルム100どうしの接合に利用される層)となっているものであって、樹脂材により構成された樹脂フィルムの層である。そして、これも単層であっても良く、あるいは樹脂材の層が複数積層された構成であっても良い。樹脂フィルム層12を構成する樹脂材としては、ポリオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂などが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などが挙げられる。なお、このポリエチレン系樹脂には、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、これらのいずれかを延伸した一軸延伸ポリエチレン(OPE)、二軸延伸ポリエチレン(BOPE)などが包含される。また、サトウキビの廃糖蜜などから製造されたバイオエタノールを脱水、重合することにより得られるバイオポリエチレン(BioPE)や、ポリエチレン系樹脂により構成されたフィルムや容器を洗浄、溶融して得られた再生ポリエチレンも包含される。そして、これらを2種以上混合して使用しても良い。また、ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、非晶性ポリエチレンテレフタレート(非晶性PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などが挙げられる。なお、ポリオレフィン系樹脂とポリエステル系樹脂とは非相溶であるため、得られる再生樹脂の品質を高度に維持する(再生樹脂を用いたフィルム容器の成形不良や強度不足の発生を抑制し易くする)という観点から、これらを併用しない実施形態(いずれか一方が含まれ、もう一方は実質的に含まない実施形態)であるのが好ましい。
【0026】
特に、樹脂フィルム層12から得られるリサイクル材料の品質向上やシール部の形成のし易さなどの観点から、この樹脂フィルム層12は、ポリオレフィン系樹脂(より好ましくはポリエチレン系樹脂)を90質量%以上含むのがより好ましく、95質量%以上含むのがさらに好ましく、99質量%以上含むのがさらに好ましく、ポリオレフィン系樹脂からなるのがさらに好ましい。つまり樹脂フィルム層12がモノマテリアルであると特に好適である。なお、樹脂フィルム層12が複数の層が積層された構成である場合でも、この樹脂フィルム層12全体としてポリオレフィン系樹脂を90質量%以上含むのが好ましいが、例えばポリエチレン系樹脂を90質量%以上含む層とポリプロピレン系樹脂を90質量%以上含む層との積層などの、いずれもポリオレフィン系樹脂に分類されるが化合物としては異なる樹脂材を併用して構成する実施形態を除外するものではない。また、アルミ蒸着(VM蒸着)、AlO・SiO蒸着、バリアコート剤、ラミネート接着剤等は合計で樹脂フィルム層12の全質量の10質量%以下であることが好ましい。特に、樹脂フィルム層12がポリオレフィン系樹脂を95質量%以上含み、他の材料は5質量%以下である構成が好適である。
【0027】
そして、マテリアルリサイクルにより得られるリサイクル材料の品質をより高める(着色の低減など)という観点から、この樹脂フィルム層12がインクを実質的に含まない構成であるとより好適である。ここで、「実質的に含まない」とは、樹脂フィルム層12の全質量におけるインクの質量割合が1%未満であることを意味し、0.5%未満であることが好ましく、0%であることが最も好ましい。なお、樹脂フィルム層12にインクが含まれる構成であっても、インクによる印刷の色合いを薄く淡い色合いにしたり、ベタ塗りを避けたりして、極力インクの質量割合を減らした構成(例えば5質量%以下)とすることが好ましい。
【0028】
樹脂フィルム層12の厚さは、特に限定されるものではないが、積層フィルム100の薄肉化などの観点から、200μm以下であるのが好ましく、150μm以下であるのがより好ましく、120μm以下であるのがさらに好ましい。また、下限は、40μm以上であって良く、60μm以上であって良く、80μm以上であって良い。
【0029】
易分離層11は、積層フィルム100において紙層10と樹脂フィルム層12との間に配置されている。そして、紙層10と樹脂フィルム層12とは、この易分離層11を介して接合されている。例えば、
図4および
図5に示すような、紙層10と易分離層11とが接着材料により構成された接着層13により接合され、易分離層11と樹脂フィルム層12とが熱融着によって直接接合されている実施形態などであって良い。
そして、積層フィルム100の、易分離層11における紙層10と樹脂フィルム層12との剥離強度は、前述したシール部(サイドシール部21など)における樹脂フィルム層12どうしの剥離強度よりも小さくなっている。つまり、紙層10と樹脂フィルム層12とが易分離層11を介して接合されている領域における、紙層10と樹脂フィルム層12とを易分離層11において剥離させる(紙層10と易分離層11とを剥離させる、樹脂フィルム層12と易分離層11とを剥離させる、あるいは易分離層11を破壊する)ために必要な強度が、シール部において接合された樹脂フィルム層12どうしを剥離させるために必要な強度よりも小さい構成となっている。したがって、前述したシール部は、この易分離層11における紙層10と樹脂フィルム層12との剥離強度よりも剥離強度が大きくなるように樹脂フィルム層12どうしを接合して形成する必要がある。このような易分離層11と後述するような剥離開始部5とを備えることによって、フィルム容器1において紙層10と樹脂フィルム層12とを剥離開始部5から手指の力などによって剥離させたときに(例えば、剥離開始部5の先端部を含む領域を手指で摘んで面直方向に静かに剥離させたときに)この易分離層11において紙層10を実質的な剥がれ残りがなく樹脂フィルム層12から剥離可能となっている。ここで、「実質的な剥がれ残りがない」とは、フィルム容器1において紙層10と樹脂フィルム層12とを剥離開始部5から剥離させたときの樹脂フィルム層12への紙層10の残存が、フィルム容器1を構成している積層フィルム100における紙層10の全質量の1質量%未満であることを意味し、これは0.5質量%未満であるのがより好ましく、0.1質量%未満であるのがさらに好ましい。なお、この易分離層11における紙層10と樹脂フィルム層12との剥離強度は、さらに、紙層10を破断させるために必要な破断強度および樹脂フィルム層12を破断させるために必要な破断強度よりも小さいことが好ましい。
【0030】
上記したような剥離強度となる易分離層11の具体的な構成としては、例えば、易剥離性を有する材料により構成されたものが示される。この「易剥離性」とは、物理的または化学的な処理(物理的な力の負荷、水や有機溶媒などとの接触、加熱など)によって紙層10を易分離層11において樹脂フィルム層12から実質的な剥がれ残りがなく剥離させることが可能な材料であり、具体的には、物理的な力の負荷により剥離させることが可能なイージーピール樹脂により構成されたイージーピール樹脂層を含む構成や、水、温水、または熱による処理によってその粘着力を低下あるいは消失させることが可能な水溶性樹脂により構成された水溶性樹脂層を含む構成などが例示される。一方で、シール部については、樹脂フィルム層12どうしがヒートシールにより接合されて形成されているのがより好ましい。
【0031】
なお、イージーピール樹脂層を含む構成などの、易分離層11が物理的な力の負荷により紙層10を実質的な剥がれ残りがなく樹脂フィルム層12から剥離させることが可能な材料により構成されている場合の、易分離層11における紙層10と樹脂フィルム層12との剥離強度としては、限定されるものではないが、JIS K 6854-3:1999に準拠したT型剥離試験による測定値で30N/15mm以下であるのが好ましく、15N/15mm以下であるのがより好ましく、10N/15mm以下であるのがより好ましく、7N/15mm以下であるのがさらに好ましく、5N/15mm以下であるのがより好ましい。この場合、シール部の剥離強度は、同じ測定方法で30N/15mm超となっているのが好ましい。この測定値は、例えば
図3に示す実施形態(斜めシール部23において紙層10と樹脂フィルム層12とが易分離層11を介して接合されている実施形態)の場合、次のように測定する。まず、AUTOGARPH AG-S(島津製作所社製)にエアーチャックを装着し、
図3に示すように斜めシール部23が引張試験片200の幅方向と平行となるようにし、さらに、引張試験片200が斜めシール部23を含み且つ引張試験片200の長手方向の端部が斜めシール部23のシール幅の側端のいずれかと一致するような位置関係で、15mm(W)×50mm(L)に切り出すことで得た引張試験片200の収容領域との境界とは反対側の端部10mmをエアーチャックで把持し、下部チャックは固定され、上部チャックが300mm/minの速度で上方へ移動した際の最大試験力をT字剥離強度として測定する。
【0032】
ここで、イージーピール樹脂により構成されたイージーピール樹脂層とは、紙層10または樹脂フィルム層12の少なくとも一方と熱融着が可能であって、さらに、物理的な力の負荷によって紙層10をこのイージーピール樹脂層において剥離させて分離することが可能な易剥離性を有する易剥離層と、層加工時や積層フィルム100の作製時などにおいてこの易剥離層を支持する機能を有する支持層と、を含む複数の樹脂層が積層されて構成されたものである。なお、この易剥離層が、フィルム容器1において易分離層11の最も内面側(容器内部側)に配置された実施形態であると、易剥離層と樹脂フィルム層12とを熱融着する(直接接合する)ことができ、樹脂フィルム層12から得られるリサイクル材料の品質向上などの観点からより好適である。イージーピール樹脂層としては、樹脂フィルム層12などとの接合界面で剥離する界面剥離タイプ、接合界面付近で凝集破壊(素材自身の破壊)を伴いながら剥離する凝集剥離タイプ(凝集剥離層)、多層フィルムで構成された樹脂層の層間が剥離する層間剥離タイプ(層間剥離層)などを採用することができるが、本実施形態のフィルム容器1においては、界面剥離タイプまたは凝集剥離タイプを採用することがより好ましい。また、樹脂フィルム層12がポリエチレン系樹脂を90質量%以上含む構成の場合、ポリエチレン系樹脂と他の種類の樹脂による二元系であり、剥離後に樹脂フィルム層12に残る剥がれ残りがポリエチレン系樹脂のみであるようなイージーピール樹脂層であるのとより好ましい。
【0033】
特に、易分離層11が、樹脂材により構成された支持層15および凝集剥離層17を含む複数の樹脂層が積層されて構成されたイージーピール樹脂層19であり、且つ、凝集剥離層17が易分離層11において最も内面側(容器内部側)に配置されて樹脂フィルム層12と接合(特に熱融着)されている実施形態であると、易分離層11と樹脂フィルム層12との接合力および凝集剥離層17の易分離性(易剥離性)がより安定するため好適である。また、剥離時に紙層10への負荷がより小さくなり紙層10の破れなどもより発生にくくなる。例えば、
図5に示すような、易分離層11が外面側(容器外部側)から順に支持層15および凝集剥離層17が積層されて形成されたイージーピール樹脂層19であり、紙層10と支持層15とが接着材料により構成された接着層13により接合され、凝集剥離層17と樹脂フィルム層12とが熱融着によって直接接合され、紙層10と樹脂フィルム層12とがイージーピール樹脂層19を介して接合されている実施形態などであって良い。さらには、この支持層15と凝集剥離層17との間に中間層(中間ラミネート層)が配置されていても良い。
例えば、このような構成とするために、三井化学東セロ社製のTAF610C(登録商標)などを易分離層11として用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0034】
さらに、マテリアルリサイクルにより得られるリサイクル材料の品質をより高めるという観点から、この凝集剥離層17が樹脂フィルム層12と同様の樹脂材により構成されているとより好適である。例えば、樹脂フィルム層12がポリオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン系樹脂)を90質量%以上含む構成の場合には、この凝集剥離層17もポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン系樹脂)を90質量%以上含む構成であると好適である。さらに、この構成において、
図5に示すように凝集剥離層17が樹脂フィルム層12と熱融着されているとより好ましい。このような構成であると、紙層10と樹脂フィルム層12とを剥離開始部5から剥離させたときに、凝集剥離層17が破壊して樹脂フィルム層12に凝集剥離層17の一部が残存しても、マテリアルリサイクルにより得られるリサイクル材料の品質を高く維持することができる。
【0035】
なお、これらのようなイージーピール樹脂層は、共押出積層フィルム層とするのが製造のし易さなどの観点から好ましい。ここで、「共押出積層フィルム層」とは、各層に用いる各樹脂または樹脂混合物を、それぞれ別々の押出機で加熱溶融させ、必要に応じて厚さが10μm未満のアンカー層(接着層)を積層間に用いながらフィルム状に共押出成形されて積層および接合された多層フィルム層である。
また、このイージーピール樹脂層の厚さは、限定されるものではないが、積層フィルム100の薄肉化などの観点から、上限は60μm以下であるのが好ましく、50μm以下であるのがより好ましい。下限は15μm以上であるのが好ましく、25μm以上であるのがより好ましい。
【0036】
そして、易分離層11と樹脂フィルム層12との接合も熱融着に限定されるものではなく、例えば、易分離層11を構成する層と樹脂フィルム層12を構成する層とが共押出されて接合されたものであっても良い。つまり、易分離層11と樹脂フィルム層12との積層フィルム層が共押出積層フィルム層であっても良い。
また、易分離層11と紙層10との接合は、例えば、紙層10と易分離層11(イージーピール樹脂層19の支持層15など)とがドライラミネートされている構成、つまり紙層10と易分離層11との積層フィルム層がドライラミネートフィルム層であっても良い。ここで、「ドライラミネートフィルム層」とは、接合させる層の各面の少なくとも一方の面に、溶剤により希釈された接着剤をコーティング後に乾燥することによって溶剤を揮発させてドライラミネート接着層を形成し、これらを積層させて、必要であれば加熱または加圧をして、このドライラミネート接着層により接合させた多層フィルム層である。
【0037】
本実施形態に係るフィルム容器1を構成している積層フィルム100は、このような易分離層11を介して紙層10と樹脂フィルム層12とが接合されて形成されていることにより、紙層10を樹脂フィルム層12から物理的な力などによって容易に剥離させて分離することができ、接合されていた紙層10の残存が実質的にない樹脂フィルム層12を主体とする材料を容易に取得することができる。そして、この材料をマテリアルリサイクルすること等によって、品質の良いリサイクル材料を得ることができる。
【0038】
そして、この積層フィルム100の全体の厚さは、これも限定されるものではないが、好ましくは80μm以上、より好ましくは100μm以上であり、また、好ましくは400μm以下、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは250μm以下である。このような積層フィルム100により構成された本実施形態に係るフィルム容器1は、把持感および自立性も高いものとなる。
【0039】
この積層フィルム100は、例えば、前述したような構成である易分離層11と樹脂フィルム層12とを熱融着などにより接合し、同時にあるいはその前後に、前述したような構成である紙層10(例えばニス等がコーティングされた紙層10)を易分離層11にラミネートする工程を含む方法によって作製することができる。なお、この紙層10と易分離層11とは、接合のし易さなどの観点から、前述したようなドライラミネート接着層などの接着層13を介してラミネートされたものであるのが好ましい。
また、底面を含む領域に底マチ部を備えるフィルム容器1を構成する場合には、底開き性の観点から、底面構成積層フィルム4には紙層10が含まれない構成であるのがより好ましい。さらに、耐突刺し性を高めるなどの観点から、前面および後面におけるサイドシール部21を含むシール部に囲まれた領域(例えば胴部など)などでは、少なくとも一部、より好ましくは50%超、さらに好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上の領域において紙層10と樹脂フィルム層12とが非接合であると好適である。この場合、この非接合部分には易分離層11が形成されていなくても良い。
【0040】
〔剥離開始部〕
次に、本発明に係るフィルム容器に備わる剥離開始部の実施形態について、
図1から
図3および
図6から
図11を用いて詳細に説明する。
【0041】
本実施形態に係るフィルム容器1は、前述したように、フィルム容器1の周縁部において、収容領域とシール部との境界よりも外側に、積層フィルム100の紙層10および樹脂フィルム層12が非接合で外側(フィルム容器1を前後方向に見たときの外側)に向かって延出して形成された、積層フィルム100の紙層10を樹脂フィルム層12から剥離する起点となる領域である剥離開始部5が備わる。例えば、
図1から
図3および
図6から
図8に示す実施形態のような、斜めシール部23における収容領域との境界となっているシール幅の側端よりも外側に、積層フィルム100の紙層10および樹脂フィルム層12が非接合で外側に向かって延出して形成された剥離開始部5などが例示される。そして、収容物を使い切った後などのフィルム容器1から、この剥離開始部5を起点として紙層10を樹脂フィルム層12から易分離層11において剥離して分離することができる。つまり、この剥離開始部5には非接合である紙層10と樹脂フィルム層12とが含まれ、その周縁の少なくとも一部には紙層10と樹脂フィルム層12とが易分離層11を介して接合されている領域が備わり、この剥離開始部5の紙層10が剥離時において摘みの役割を果たし、剥離開始部5の樹脂フィルム層12は剥離時においてもう一方の摘みあるいは土台の役割を果たすことが可能となっている。そして、本実施形態に係るフィルム容器1は、このような剥離開始部5と前述したような易分離層11と備えることにより、紙層10に破断線を形成しなくても紙層10と樹脂フィルム層12との剥離および分離がし易くなっており、さらに紙層10を実質的な剥がれ残りがなく樹脂フィルム層12から剥離可能となっている。
【0042】
なお、この「起点」とは、必ずしもこの剥離開始部5の周縁から最初に剥離が開始される構成でなくても良く、紙層10の剥離開始を誘導できる構成であれば良い。つまり、この実施形態には、剥離開始部5の周縁よりも先に紙層10の剥離が開始される領域が含まれていても良いが、この剥離開始部5の周縁から最初に剥離が開始される構成であるのがより好適である。また、この剥離開始部5には、紙層10または樹脂フィルム層12のいずれか一方と接合された易分離層11が含まれていても良い。つまり、この剥離開始部5に、紙層10または樹脂フィルム層12のいずれか一方とは接合されていない易分離層11が含まれていても良い。この場合、製造のし易さなどの観点から、易分離層11が紙層10と接合されて含まれている構成とするのが好適である。
【0043】
そして、剥離開始部5は、例えば
図1から
図3に示される実施形態のように、フィルム容器1の上縁端部において、前面と後面とが接合されて形成されたサイドシール部21および天部シール部25といずれも斜め方向で連続するように、前面と後面とが接合された斜めシール部23がその両端に形成され、このうち一方の斜めシール部23における収容領域との境界よりも外側に、前面構成積層フィルム2の紙層10および樹脂フィルム層12ならびに後面構成積層フィルム3の紙層10および樹脂フィルム層12が非接合でいずれも外側に向かって延出して形成された構成などであって良い。この構成では、剥離開始部5は、前面構成積層フィルム2から延出した紙層10である前面紙層延出部6および前面構成積層フィルム2から延出した樹脂フィルム層12である前面樹脂フィルム層延出部7と、後面構成積層フィルム3から延出した樹脂フィルム層12である後面樹脂フィルム層延出部8および後面構成積層フィルム3から延出した紙層10である後面紙層延出部9と、を有する(
図3)。なお、前述したように、この前面紙層延出部6または前面樹脂フィルム層延出部7のいずれか一方や、後面樹脂フィルム層延出部8または後面紙層延出部9のいずれか一方には、易分離層11が接合されて含まれていても良い。
【0044】
また、剥離開始部5は、例えば
図6から
図8に示される実施形態のように、フィルム容器1の上縁端部において、前面と後面とが接合されて形成されたサイドシール部21および前面と天面とが接合されて形成された天部シール部25といずれも斜め方向で連続するように、前面と天面とが接合された斜めシール部23がその両端に形成され、このうち一方の斜めシール部23における収容領域との境界よりも外側に、前面構成積層フィルム2の紙層10および樹脂フィルム層12ならびに天面構成積層フィルム51の紙層10および樹脂フィルム層12が非接合でいずれも外側に向かって延出して形成された構成などであっても良い。さらに、この実施形態では、フィルム容器1の下縁端部においても、前面と後面とが接合されて形成されたサイドシール部21および後面と底面とが接合されて形成された底部シール部22といずれも斜め方向で連続するように、後面と天面とが接合された斜めシール部23が両端に形成され、このうち一方の斜めシール部23における収容領域との境界よりも外側に、後面構成積層フィルム3の紙層10および樹脂フィルム層12が非接合で外側に向かって延出して形成されたもう1つの剥離開始部5が備わる。したがって、このフィルム容器1の上縁端部の剥離開始部5は、前面構成積層フィルム2から延出した紙層10である前面紙層延出部6および前面構成積層フィルム2から延出した樹脂フィルム層12である前面樹脂フィルム層延出部7と、天面構成積層フィルム51から延出した樹脂フィルム層12である天面樹脂フィルム層延出部53および天面構成積層フィルム51から延出した紙層10である天面紙層延出部55と、を有する(
図7)。なお、これも前述したように、この前面紙層延出部6または前面樹脂フィルム層延出部7のいずれか一方や、天面樹脂フィルム層延出部53または天面紙層延出部55のいずれか一方には、易分離層11が接合されて含まれていても良い。また、このフィルム容器1の下縁端部の剥離開始部5は、後面構成積層フィルム3から延出した紙層10である後面紙層延出部9および後面構成積層フィルム3から延出した樹脂フィルム層12である後面樹脂フィルム層延出部8を有し(いずれか一方に易分離層11が接合されて含まれていても良い)、この剥離開始部5と対向する領域の前面構成積層フィルム2では紙層10と樹脂フィルム層12とが易分離層11を介して接合されている(
図8)。
【0045】
ここで、剥離開始部5は、上記したように、収容領域と、収容領域を包囲している積層フィルム100と、の境界よりも外側に形成されたものであれば良く、シール部を含んでいても良い。つまり、例えば
図8に示される実施形態において、斜めシール部23の収容領域側の側端から外側の略三角形状の領域全体が後面構成積層フィルム3の紙層10と樹脂フィルム層12とが非接合であり、剥離開始部5に斜めシール部23が包含されている構成であっても良い。しかしながら、製造のし易さなどの観点から、シール部の少なくとも一部、より好ましくは全体において紙層10と樹脂フィルム層12とが易分離層11を介して接合されている構成であるのが好ましく、例えば
図8の斜めシール部23においては後面構成積層フィルム3の紙層10と樹脂フィルム層12が易分離層11を介して接合され、この斜めシール部23の容器外部側の側端から外側に剥離開始部5が形成されている構成であると好適である。他の実施形態の剥離開始部5においても同様であり、例えば
図2および
図3に示す実施形態のように、斜めシール部23においては前面構成積層フィルム2の紙層10と樹脂フィルム層12とが易分離層11を介して接合され、後面構成積層フィルム3の紙層10と樹脂フィルム層12とも易分離層11を介して接合され、この斜めシール部23の容器外部側の側端から外側に剥離開始部5が形成されている構成であると好適である。
【0046】
そして、この剥離開始部5は、その外縁がフィルム容器1において剥離開始部5に隣接する周囲領域の外縁に対して滑らかに連続するように形成されているのが好ましい。手指によって剥離開始部5から紙層10の剥離を開始した時に、手指の力が紙層10の一部に集中することを回避し易く、より確実な紙層10の剥離を実現できるからである。この滑らかに連続するとは、剥離開始部5と隣接する周囲領域との境界点(例えばシール部の外側境界)における、この周囲領域の外縁の接線方向と、剥離開始部5の外縁の接線方向とが実質的に同一方向であることである。例えば、
図1から
図3や
図6から
図8に示すような、多角形(略三角形)のシート状である剥離開始部5の外縁(外縁の2辺)が、フィルム容器1において剥離開始部5に隣接する周囲領域の外縁に対して滑らかに連続するように形成されている実施形態などが例示される。また、剥離開始部5の外縁の少なくとも一部が湾曲線により構成され、その外縁(例えば湾曲線部分の外縁)が剥離開始部5に隣接する周囲領域の外縁に対して滑らかに連続するように形成されている実施形態であっても構わない。
【0047】
また、上記実施形態で、フィルム容器1の周縁部において、シール部が角形状に形成されている角部27を1以上有し、剥離開始部5がこの角部27を含む角領域およびこの角領域から外側に向かって延出して形成されている延出領域を有する構成であるとより好ましい。これによって剥離開始部5の剥離方向(フィルム容器1を前後方向に見たときの内側方向)の裾野部分の広がりを大きくなりすぎないようにすることができ、剥離開始部5の外縁を、剥離開始部5に隣接する周囲領域の外縁に対して滑らかに連続するように形成することがより容易となるからである。ここで、シール部が「角形状」に形成されているとは、シール部の側端が略角形状に形成されていることを意味するが、このシール部の側端の線形が部分的に円弧状となっていても「略角形状」であり、この「角形状」に含まれる。また、剥離開始部5が角領域を含むとは、少なくとも角形状であるシール部の側端(外側の側端)を含む意味である。したがって、このシール部の角部27の側端から外側に剥離開始部5が形成されている実施形態なども包含される。例えば、
図2および
図3に示すような、斜めシール部23とサイドシール部21または天部シール部25(底部シール部22)とが連続する部分の側端がいずれも角形状に形成されている角部27であり、剥離開始部5がこの2つの角部27を含む角領域およびこの角領域から外側に向かって延出して形成されている延出領域を有する実施形態などが例示される。
【0048】
なお、この剥離開始部5の外形(剥離開始部5を構成する領域の紙層10または樹脂フィルム層12の外形)は、当然ながら前述した略三角形に限定されるものではなく、手指での把持可能な形状および面積であれば良いが、剥離開始部5にも外縁が角形状に形成されている領域(外縁角部5a)が含まれると、この領域から紙層10を摘まみ易くなることから、剥離開始部5の外形は多角形状であるのが好適であり、特に、剥離開始部5の外形が剥離方向に向かって裾野部分が一定程度広がっている多角形状(略三角形状など)であると、前述した剥離開始部5に隣接する周囲領域の外縁に対する滑らかな連続も形成し易いためより好適である。
【0049】
そして、剥離開始部5は、上記したように、その外縁が角形状に形成されている領域(外縁角部5a)を有しているのが好ましいが、この場合、
図6および
図7に示すような、剥離開始部5を構成している紙層10または樹脂フィルム層12の一部の外縁角部5aが部分的に円弧状になっていても「角形状(略角形状)」である。そして、この
図6および
図7の実施形態のように、剥離開始部5が非接合である紙層10および樹脂フィルム層12を2対有し(いずれかに接合された易分離層11が含まれていても良い)、剥離開始部5の外縁角部5aが、一方の紙層10および樹脂フィルム層12(
図6および
図7では前面構成積層フィルム2の前面紙層延出部6および前面樹脂フィルム層延出部7)は外側の先端が鋭頭を有するように形成され、この領域と対向するもう一方の紙層10および樹脂フィルム層12(
図6および
図7では天面構成積層フィルム51の天面紙層延出部55および天面樹脂フィルム層延出部53)の領域は外側の先端が部分的に円弧状となるように形成されていると、剥離開始部5において積層フィルム100の2つの紙層10の区別がし易くなり好適である。
【0050】
この剥離開始部5の面積は、上記したように手指などで把持可能な面積であれば特に限定されるものではないが、剥離開始部5が125mm2以上の面積(例えば底辺25mm×高さ10mmの略三角形状など)であることが好ましい。しかしながら、この面積は手指などで把持しやすいとの目的に合致する範囲内で大小の幅を許容するものである。
【0051】
さらに、例えば
図2および
図3や
図7に示すような、剥離開始部5が、前面を構成する積層フィルム100(前面構成積層フィルム2)の紙層10および樹脂フィルム層12と、後面を構成する積層フィルム100(後面構成積層フィルム3)の紙層10および樹脂フィルム層12と、がいずれも非接合で重なっているか、前面または後面を構成する積層フィルム100(前面構成積層フィルム2または後面構成積層フィルム3)の紙層10および樹脂フィルム層12と、底面を構成する積層フィルム100(底面構成積層フィルム4)の紙層10および樹脂フィルム層12と、がいずれも非接合で重なっているか、あるいは、フィルム容器1が天面をさらに有し、前面または後面を構成する積層フィルム100(前面構成積層フィルム2または後面構成積層フィルム3)の紙層10および樹脂フィルム層12と、天面を構成する積層フィルム100(天面構成積層フィルム51)の紙層10および樹脂フィルム層12と、がいずれも非接合で重なっている実施形態であると好適である。つまり、この剥離開始部5における延出して形成された2層の樹脂フィルム層12どうし(例えば
図2および
図3では前面構成積層フィルム2の樹脂フィルム層12と後面構成積層フィルム3の樹脂フィルム層12、
図7では前面構成積層フィルム2の樹脂フィルム層12と天面構成積層フィルム51の樹脂フィルム層12)も非接合である実施形態、言い換えれば、剥離開始部5を構成する2つの紙層10と2つの樹脂フィルム層12とがいずれも非接合である実施形態であると好適である。剥離開始部5において、剥離させる紙層10と、2層の樹脂フィルム層12あるいはもう一方の紙層10および2層の樹脂フィルム層12の計3層と、を手指で把持できるため、この2層または3層が安定した土台となり易く、紙層10の剥離がよりし易くなるからである。なお、前述したように、この向かい合う(非接合の)紙層10または樹脂フィルム層12のいずれか一方には、易分離層11が接合されて含まれていても良い。
【0052】
特に、
図2および
図3に示すような、剥離開始部5が、前面を構成する積層フィルム100(前面構成積層フィルム2)の紙層10および樹脂フィルム層12と、後面を構成する積層フィルム100(後面構成積層フィルム3)の紙層10および樹脂フィルム層12と、がいずれも非接合で重なっている(非接合で重なって延出している)実施形態であると、フィルム容器1の前面および後面の両方(前面構成積層フィルム2の紙層10および後面構成積層フィルム3の紙層10の両方)に印刷を施しても、これらをいずれも容易に剥離して分離し易いためリサイクル性に影響を与えにくく、商品情報を印刷によってより多く示し易くなるため好適である。
【0053】
一方で、同様の理由から、剥離開始部5が、前面を構成する積層フィルム100(前面構成積層フィルム2)の紙層10および樹脂フィルム層12と、後面を構成する積層フィルム100(後面構成積層フィルム3)の紙層10および樹脂フィルム層12と、がいずれも重なっているか、前面または後面を構成する積層フィルム100(前面構成積層フィルム2または後面構成積層フィルム3)の紙層10および樹脂フィルム層12と、底面を構成する積層フィルム100(底面構成積層フィルム4)の紙層10および樹脂フィルム層12と、がいずれも重なっているか、あるいは、フィルム容器1が天面をさらに有し、前面または後面を構成する積層フィルム100(前面構成積層フィルム2または後面構成積層フィルム3)の紙層10および樹脂フィルム層12と、天面を構成する積層フィルム100(天面構成積層フィルム51)の紙層10および樹脂フィルム層12と、がいずれも重なっており、この剥離開始部5における2層の樹脂フィルム層12どうしは接合されている実施形態であっても好適である。つまり、剥離開始部5を構成する2つの紙層10および2つの樹脂フィルム層12は、紙層10と樹脂フィルム層12とは非接合で延出しているが、樹脂フィルム層12どうしは接合されている実施形態であるのが好ましい。例えば、
図2および
図3に示す実施形態の剥離開始部5において前面樹脂フィルム層延出部7と後面樹脂フィルム層延出部8とが接合された(シール部となった)構成や、
図7に示す実施形態の剥離開始部5において前面樹脂フィルム層延出部7と天面樹脂フィルム層延出部53とが接合された(シール部となった)構成であっても良い。これによって、剥離開始部5において、剥離させる紙層10の識別がよりし易くなる。ここで、この剥離開始部5における2層の樹脂フィルム層12どうしの接合は、略全面が接合されているのが好ましいが、樹脂フィルム層12どうしが容易に分離しない状態が保たれていれば、一部に非接合領域を含んでいても良い。また、前述したように、向かい合う紙層10または樹脂フィルム層12のいずれか一方には、易分離層11が接合されて含まれていても良い。
【0054】
なお、例えば
図1から
図3に示される実施形態などにおいて、剥離開始部5が備わる側の斜めシール部23のサイドシール部21に対する角度(斜めシール部23とサイドシール部21とがなす角度)は、限定されるものではないが、30~60°であるのが好ましい。また、剥離開始部5が備わる側の斜めシール部23とサイドシール部21とが曲線で連続している構成であっても良い。天部シール部25と斜めシール部23とのなす角度や底部シール部22と斜めシール部23とのなす角度なども同様であって良く、剥離開始部5が備わっていない側の斜めシール部23も同様であって良い。
【0055】
また、フィルム容器1の下縁端部において斜めシール部23が形成され、このうち一方の斜めシール部23における収容領域との境界よりも外側に、後面構成積層フィルム3などの紙層10および樹脂フィルム層12が非接合で外側に向かって延出して形成された剥離開始部5などの場合において、
図9に示すような、剥離開始部5の一部の領域に紙層10(
図9では後面構成積層フィルム3の紙層10)が欠損されて形成された切り欠き部71を有する構成であると好ましい。つまり、この切り欠き部71の積層フィルム100は、紙層10は形成されていないが樹脂フィルム層12は備わる構成である。易分離層11については限定されないが、切り欠き部71では易分離層11も形成されていない(欠損されている)のが好ましい。これにより、剥離開始部5において、剥離させる紙層10の識別がよりし易くなるからである。
【0056】
例えば、
図9に示す実施形態の場合、フィルム容器1の下縁端部の剥離開始部5において、後面構成積層フィルム3の紙層10(後面紙層延出部9)がサイドシール部21側から胴部側に向かって一部の領域(概ねサイドシール部21と重なる領域)の紙層10(後面紙層延出部9)が欠損されて切り欠き部71となっている。ここでは、易分離層11も紙層10と同様に欠損されていても良い。
【0057】
フィルム容器1の下縁端部の剥離開始部5以外でも、剥離開始部5が1枚の紙層10および1枚の樹脂フィルム層12により構成されている場合などにおいては、上記したような切り欠き部71を有する構成であるのが好ましい。
なお、この切り欠き部71は、積層フィルム100において、同じ形状の紙層10と樹脂フィルム層12との積層、接合時における位置ズレにより形成されるものではなく、紙層10が樹脂フィルム層12とは別形状の部位を有し、紙層10におけるこの別形状の部位により形成されるものである。
【0058】
さらに、この剥離開始部5は、積層フィルム100の紙層10と樹脂フィルム層12とが非接合である領域の一部に、少なくとも紙層10が谷折りまたは山折りで折られて形成されている折れ線部41、あるいは少なくとも紙層10を谷折りまたは山折りするための目印線となる折り線43を有する構成であると好ましい。剥離開始部5における紙層10の識別および摘まみ上げがし易くなり、紙層10と樹脂フィルム12との剥離開始部5における最初の分離がよりし易くなるからである。
なお、この折れ線部41または折り線43は、剥離開始部5の紙層10と樹脂フィルム層12とが非接合である領域に形成されていれば良く、これ以外の位置や線形状は限定されないが、形成のし易さや折り易さなどの観点から、シール部を含まない領域(樹脂フィルム12どうしが接合されていない領域)であり且つシール部の容器外部側の境界と略平行となるように直線状に形成されていると好適である。しかしながら、剥離開始部5が前述した切り欠き部71を有する実施形態の場合、この折れ線部41または折り線43が切り欠き部71を含む領域に形成されている(例えばシール部を含む領域に形成された切り欠き部71と、この切り欠き部71と隣接する剥離開始部5と、を跨ぐように形成されている)と、切り欠き部71の端部において紙層10の摘まみ上げがよりし易くなるため好適である。
【0059】
折れ線部41としては、例えば
図10に示すような、剥離開始部5が前面構成積層フィルム2から延出した前面紙層延出部6および前面樹脂フィルム層延出部7と、後面構成積層フィルム3から延出した後面樹脂フィルム層延出部8および後面紙層延出部9と、を有する構成の場合において、これら4つの延出部が非接合である領域に、フィルム容器1の前面側が谷となるようにこれら4つの延出部がいずれも折られて形成された実施形態などが例示される。この4つの延出部は、紙層10と樹脂フィルム層12との形状記憶性の違いなどによって、概ね折れ線部41を境として端側の間隔が変化し、この部分において前面紙層延出部6などを摘まみ易い構成となっている。また、この実施形態の変形例として、折れ線部41が、前面紙層延出部6または後面紙層延出部9が折られ、前面樹脂フィルム層延出部7および後面樹脂フィルム層延出部8は折られていない構成であっても良い。
【0060】
折り線43としては、例えば
図11に示すような、略三角形状の剥離開始部5において、その略三角形状の底辺と略平行となるように、紙層10と樹脂フィルム層12が非接合である領域の紙層10(紙層10の外面側の表面)に付けられた直線状の目印線などが例示される。そして、この折り線43において少なくとも紙層10を谷折りまたは山折りすることによって、上記した折れ線部41と同様の構成となり、同様の効果が期待できる。
【0061】
以上のような本実施形態に係るフィルム容器1は、容器を構成する積層フィルム100の紙層10と樹脂フィルム層12とを易分離層11において実質的な剥がれ残りなく剥離させて分離し易く、この分離された樹脂フィルム層12を含む部材をマテリアルリサイクルし易い。また、分離した紙層10を含む部材もマテリアルリサイクルし易い。したがって、環境への負荷低減に大きく寄与することができるフィルム容器となっている。
【0062】
なお、このような本実施形態に係るフィルム容器1は、例えば、積層フィルム100をフィルム容器1の形状となるようにして紙層10がフィルム容器1において外面側(容器外部側)に配置されるように折り畳んであるいは組み合わせて、前面構成積層フィルム2と後面構成積層フィルム3との対向する内面側の側縁部どうしをヒートシールなどによって接合してサイドシール部21を形成し、必要であれば他のシール部も形成し、積層フィルム100が収容領域を包囲するように製袋してカットする製袋工程と、フィルム容器1の下部側に、前述したような構成の底マチ部を形成する底マチ部形成工程と、フィルム容器1の上部側に、前述したような構成の開口部31を形成する開口部形成工程と、を含む方法によって作製することができる。なお、必要であれば、天マチ部を形成する天マチ部形成工程や、不要な部分を切除する工程などをさらに含んでいても良い。
【0063】
〔フィルム容器のマテリアルリサイクル方法〕
次に、本発明に係るフィルム容器のマテリアルリサイクル方法の実施形態について、詳細に説明する。
【0064】
収容された収容物を使い切った本実施形態に係るフィルム容器1は、紙層10が易分離層11において剥離されて樹脂フィルム層12と分離される。前述したスパウトなどの開口部31を有する場合には、これも分離しても良い。そして、必要に応じて押しつぶされ、樹脂フィルム層12により構成された部材として回収される。なお、この押しつぶしは、紙層10の剥離および分離前に行うこともできる。
【0065】
そして、この紙層10の剥離および分離は、物理的な力などによって剥離開始部5から紙層10を剥離させて分離する。なお、収容された収容物を使い切る前に紙層10を剥離させて分離しても構わない。本実施形態に係るフィルム容器1は、前述したように積層フィルム100の紙層10と樹脂フィルム層12とを易分離層11において実質的な剥がれ残りなく剥離して分離することが可能であるため、樹脂フィルム層12により構成された部材を容易に分離回収することができる。そして、この樹脂フィルム層12により構成された部材は、必要に応じて収容領域などの洗浄を行う。
【0066】
次に、この得られた樹脂フィルム層12により構成された部材を用いて、マテリアルリサイクル材料である再生樹脂(樹脂ペレット等)を形成する。例えば、この樹脂フィルム層12により構成された部材あるいはその細断物(洗浄された細断物など)を溶融し、押出や圧偏などによって樹脂ペレット等を形成することができる。
【0067】
なお、例えば、新しい樹脂原料(バージン樹脂原料)を主原料として使用し、これに前述した樹脂フィルム層12により構成された部材の溶融物などを混合して再生樹脂を形成しても良いが、本実施形態に係るフィルム容器1の樹脂フィルム層12がポリオレフィン系樹脂を90質量%以上含む場合、この樹脂フィルム層12により構成された部材を主原料として使用しても、品質が高い(不純物の少ない)マテリアルリサイクル材料を得ることができるため非常に好適である。
ここで、この「主原料」とは、再生樹脂形成原料中の割合が80質量%以上であることを意味し、90質量%以上であっても良く、95質量%以上であっても良く、100質量%であっても良い。
【0068】
そして、得られた再生樹脂(樹脂ペレット等)を用いて、例えば本実施形態に係るフィルム容器1を形成する積層フィルム100の少なくとも一部を形成することもできる。特に、収容物と再生樹脂とが直接接触しないようにするために、この再生樹脂を用いて、積層フィルム100の樹脂フィルム層12における収容物と直接接しない層の少なくとも一部を形成するのが好ましい。このようにすると、収容された収容物を使い切った後のフィルム容器1を、同様のフィルム容器1の作製に用いる樹脂原料に再生する、フィルム容器1の水平リサイクルシステムを構築することができる。
なお、上記再生樹脂を用いて、本実施形態に係るフィルム容器1とは別のフィルム容器の少なくとも一部を形成することもできる。
【0069】
また、分離した紙層10についても、公知の古紙リサイクル技術を用いることによって再生紙(段ボール紙、トイレットペーパー等)などにマテリアルリサイクルすることができる。具体的には、まずパルパーなどを使用して、分離した紙層10に温水、薬品等を加え、粗く溶解させ、一定時間保持する。そして、開口部31などの紙材により構成されていない部材を含む場合には、その後の工程でスクリーンセパレーターなどを用いて除去する。
【0070】
次に、液状となったパルプ原料から気泡や薬剤などを用いた脱墨工程等によりインク原料(染料、顔料など)を取り除き、さらに殺菌、漂白などを行い、得られたパルプを用いて再生紙を製造する。
このようにして、収容された収容物を使い切った後の本実施形態に係るフィルム容器1から、樹脂フィルム層12を再生樹脂にリサイクルし、さらに紙層10を再生紙にリサイクルするマテリアルリサイクルシステムを構築することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 フィルム容器
2 前面構成積層フィルム
3 後面構成積層フィルム
4 底面構成積層フィルム
5 剥離開始部
5a 剥離開始部の外縁角部
6 前面紙層延出部
7 前面樹脂フィルム層延出部
8 後面樹脂フィルム層延出部
9 後面紙層延出部
10 紙層
11 易分離層
12 樹脂フィルム層
13 接着層
15 支持層
17 凝集剥離層
19 イージーピール樹脂層
21 サイドシール部
22 底部シール部
23 斜めシール部
25 天部シール部
27 角部
31 開口部
41 折れ線部
43 折り線
51 天面構成積層フィルム
53 天面樹脂フィルム層延出部
55 天面紙層延出部
71 切り欠き部
100 積層フィルム
200 引張試験片