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特開2024-170291ガロカテキンガレートとイソクエルシトリンを含む体脂肪の減少のための組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170291
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】ガロカテキンガレートとイソクエルシトリンを含む体脂肪の減少のための組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/353 20060101AFI20241129BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20241129BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20241129BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20241129BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20241129BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20241129BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
A61K31/353
A23L33/10
A61K31/7048
A61P3/06
A61P3/04
A61P3/00
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024067003
(22)【出願日】2024-04-17
(31)【優先権主張番号】10-2023-0068217
(32)【優先日】2023-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】100, Hangang-daero, Yongsan-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン, ヒョン ウ
(72)【発明者】
【氏名】キム, ワンギ
(72)【発明者】
【氏名】ノ, チョン ファ
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB06
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE05
4B018MD08
4B018ME01
4B018ME04
4B018ME14
4B018MF02
4C086BA08
4C086EA11
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA28
4C086MA32
4C086MA52
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA70
4C086ZC21
4C086ZC33
4C086ZC51
4C086ZC75
(57)【要約】
【課題】本明細書では、ガロカテキンガレート(Gallocatecin Gallate;GCG)とイソクエルシトリン(Isocercitrin;IQC)とを有効成分として含む、脂肪生成抑制と、脂肪蓄積抑制と、脂肪分解促進と、体脂肪の減少と、及び/または肥満または代謝性疾患の予防、改善または治療とのための組成物が開示される。
【解決手段】一態様において、本発明の組成物は、脂質代謝制御効果に優れ、脂肪細胞内のミトコンドリアを増加させ、褐色脂肪の産生を促進することができる。よって、一態様において、本発明は、肥満または代謝性疾患の予防または治療のための薬学組成物、または肥満または代謝性疾患の予防または改善のため、あるいは体脂肪を減少させるための食品組成物を提供することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガロカテキンガレート(Gallocatechin Gallate;GCG)とイソクエルシトリン(Isoquercitrin;IQC)とを重量比1:1~1:9で含む、脂肪生成抑制と、脂肪蓄積抑制と、脂肪分解促進と、及び/または肥満または代謝性疾患の予防、改善または治療とのための組成物。
【請求項2】
前記組成物が、肥満または代謝性疾患の予防または治療のための薬学組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、脂肪生成抑制と、脂肪蓄積抑制と、脂肪分解促進と、体脂肪の減少と、及び/または肥満または代謝性疾患の予防または改善とのための食品組成物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、SREBP1c、ACC、及びFASからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を減少させる必要がある対象体に適用されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、ACO、CPT、PPARα、tfam、NDUFA9、COX4、ATP5a、UCP1、及びUCP2からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を増加させる必要がある対象体に適用されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、脂肪細胞内のミトコンドリアを増加させる必要がある対象体に適用されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、褐色脂肪の産生を促進する必要がある対象体に適用されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物の有効成分の1日適用量が、5mg/kg以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物の有効成分の1日適用量が、10mg/kg以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ガロカテキンガレートとイソクエルシトリンとを重量比1:1.5~1:4で含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記ガロカテキンガレートとイソクエルシトリンとを重量比1:2.2~1:2.8で含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、脂肪生成抑制、脂肪蓄積抑制または脂肪分解促進のための組成物が開示される。
【背景技術】
【0002】
肥満は、体脂肪の過度の増加と代謝異常によって引き起こされる状態であり、肥満患者は、過去20年間で着実に増加している。肥満は、高血圧、糖尿病、心血管疾患などの様々な成人病と、癌などの主な危険因子であると考えられている。よって、抗肥満治療は、体重減少のみならず、肥満に関連する高血糖、脂質異常症、動脈硬化性心疾患などの様々な疾患を改善するためにも重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】韓国特許出願公開第2022-0145604号
【特許文献2】韓国特許出願公開第2022-0071741号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、脂肪生成抑制と、脂肪蓄積抑制と、脂肪分解促進と、体脂肪の減少と、及び/または肥満または代謝性疾患の予防、改善または治療とのための組成物を提供することを1つの目的とする。
【0005】
本発明は、肥満または代謝性疾患の予防または治療のための薬学組成物を提供することを他の目的とする。
【0006】
本発明は、脂肪生成抑制と、脂肪蓄積抑制と、脂肪分解促進と、体脂肪の減少と、及び/または肥満または代謝性疾患の予防または改善とのための食品組成物を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、一態様において、ガロカテキンガレート(Gallocatecin Gallate;GCG)とイソクエルシトリン(Isocercitrin;IQC)とを有効成分として含む、脂肪生成抑制と、脂肪蓄積抑制と、脂肪分解促進と、体脂肪の減少と、及び/または肥満または代謝性疾患の予防、改善または治療とのための組成物を提供する。
【0008】
本発明は、他の態様において、ガロカテキンガレート(Gallocatecin Gallate;GCG)とイソクエルシトリン(Isocercitrin;IQC)とを有効成分として含む、肥満または代謝性疾患の予防または治療のための薬学組成物を提供する。
【0009】
本発明は、別の態様において、ガロカテキンガレート(Gallocatecin Gallate;GCG)とイソクエルシトリン(Isocercitrin;IQC)とを有効成分として含む、脂肪生成抑制と、脂肪蓄積抑制と、脂肪分解促進と、体脂肪の減少と、及び/または肥満または代謝性疾患の予防または改善とのための食品組成物を提供する。
【発明の効果】
【0010】
一態様において、本発明の組成物は、脂質代謝制御効果に優れているので、有意な脂肪生成抑制、脂肪蓄積抑制、または脂肪分解促進の効果を奏する。
【0011】
別の態様において、本発明の組成物は、脂肪細胞内のミトコンドリアを増加させ、褐色脂肪の産生を効果的に促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ガロカテキンガレート(Gallocatecin Gallate;GCG)とイソクエルシトリン(Isocercitrin;IQC)との混合物(APGQ)の各組成比における脂肪細胞内の脂肪合成遺伝子の発現変化の比較図である。
図2】APGQの各組成比における脂肪酸酸化関連遺伝子の発現の増加の比較図である。
図3A】APGQの各組成比における脂肪代謝関連遺伝子(脂肪合成誘導遺伝子)の発現変化の比較図である。
図3B】APGQの各組成比における脂肪代謝関連遺伝子(脂肪酸酸化促進遺伝子)の発現変化の比較図である。
図4】APGQによる脂肪細胞内のミトコンドリア構成遺伝子の発現の増加に関する図である。
図5】APGQによる脂肪細胞内のミトコンドリア数の増加に関する図である。
図6】APGQによる脂肪細胞内のUCP発現の増加に関する図である。
図7】APGQによる細胞内酸素消費量の増加に関する図である。細胞内酸素消費量の測定には、XF Analyzer(Seahorse)を用いた。
図8】APGQによる脂肪細胞内の脂質蓄積阻害効果に関する図である。
【0013】
図1~8において、統計的に有意な差(P<0.01)を示す実験群は、異なる記号で示した。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明は、一様態において、ガロカテキンガレート(Gallocatechin Gallate;GCG)とイソクエルシトリン(Isoquercitrin;IQC)とを重量比1:1~1:9で含む、脂肪生成抑制と、脂肪蓄積抑制と、脂肪分解促進と、体脂肪の減少と、及び/または肥満または代謝性疾患の予防、改善または治療とのための組成物に関する。
【0016】
例示的な一実施例において、前記ガロカテキンガレート及びイソクエルシトリンを、重量比1:1以上、1:1.1以上、1:1.2以上、1:1.3以上、1:1.4以上、1:1.5以上、1:1.6以上、1:1.7以上、1:1.8以上、1:1.9以上、1:2.0以上、1:2.1以上、1:2.2以上、1:2.3以上、1:2.4以上、または1:2.5以上で含んでもよく、重量比1:9以下、1:8以下、1:7以下、1:6以下、1:5以下、1:4以下、1:3.5以下、1:3.4以下、1:3.3以下、1:3.2以下、1:3.1以下、1:3以下、1:2.9以下、1:2.8以下、1:2.7以下、または1:2.6以下で含んでもよい。前記ガロカテキンガレート及びイソクエルシトリンを前記重量比で含むと、脂肪生成抑制、脂肪蓄積抑制または脂肪分解促進に効果を奏することができる。例えば、ガロカテキンガレート及びイソクエルシトリンを重量比1:1~1:9または重量比1:1.5~1:4で含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0017】
本明細書における「適用」なる用語は、任意の適切な方法で適用対象に前記組成物を提供することを意味し、投与、塗布、吸収、及び摂取などを含む意味である。そのとき、適用対象とは、前記組成物を適用することができるヒト、サル、イヌ、ヤギ、ブタ、またはラットなどのあらゆる動物を意味する。
【0018】
例示的な一実施例において、前記組成物は、SREBP1c、ACC、及びFASからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を減少させる必要がある対象体に適用されることを特徴としてもよい。
【0019】
例示的な一実施例において、前記組成物は、ACO、CPT、PPARα、tfam、NDUFA9、COX4、ATP5a、UCP1、及びUCP2からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を増加させる必要がある対象体に適用されることを特徴としてもよい。
【0020】
例示的な一実施例において、前記組成物は、脂肪細胞内のミトコンドリアを増加させる必要がある対象体に適用されることを特徴としてもよい。
【0021】
例示的な一実施例において、前記組成物は、褐色脂肪の産生を促進する必要がある対象体に適用されることを特徴としてもよい。
【0022】
例示的な一実施例において、前記組成物の有効成分の一日適用量は、5mg/kg以上、6mg/kg以上、7mg/kg以上、8mg/kg以上、9mg/kg以上、10mg/kg以上、20mg/kg以上、30mg/kg以上、40mg/kg以上、50mg/kg以上、60mg/kg以上、70mg/kg以上、80mg/kg以上、90mg/kg以上、100mg/kg以上、1g/kg以上、2g/kg以上、3g/kg以上、4g/kg以上、5g/kg以上、または6g/kg以上であってもよく、60g/kg以下、59g/kg以下、58g/kg以下、57g/kg以下、56g/kg以下、55g/kg以下、54g/kg以下、53g/kg以下、52g/kg以下、または51g/kg以下であってもよい。前記適用量であれば、脂肪生成抑制、脂肪蓄積抑制または脂肪分解促進の効果に優れ、前記適用量よりも少ない場合、脂肪生成抑制、脂肪蓄積抑制または脂肪分解促進の効果が微小であり、前記適用量よりも多い場合、毒性などの問題が生じる虞がある。前記適用は、1日1回から数回に分けて行ってもよい。例えば、1日2回~24回、3日1回~2回、1週間1回~6回、2週間1回~10回、3週間1回~15回、4週間1回~3回、または1年に1回~12回適用してもよいが、それらに限定されるものではない。
【0023】
本発明は、他の観点において、有効量のガロカテキンガレート(GALLOCATKIN Gallate;GCG)とイソクエルシトリン(Isocercitrin;IQC)とを重量比1:1~1:9で対象体に適用することで、脂肪生成抑制と、脂肪蓄積抑制と、脂肪分解促進と、脂肪生成抑制と、脂肪蓄積抑制と、脂肪分解促進と、体脂肪の減少と、及び/または肥満または代謝性疾患の予防、改善または治療とのための方法に関する。
【0024】
本発明は、別の観点において、脂肪生成抑制と、脂肪蓄積抑制と、脂肪分解促進と、体脂肪の減少と、及び/または肥満または代謝性疾患の予防、改善または治療とのための組成物を製造するためのガロカテキンガレート(GALLOCATKIN Gallate;GCG)とイソクエルシトリン(Isocercitrin;IQC)との用途に関し、前記組成物は、前記ガロカテキンガレートとイソクエルシトリンとを、重量比1:1~1:9で含んでもよい。
【0025】
本発明は、別の観点において、ガロカテキンガレート(GALLOCATEKIN Gallate;GCG)とイソクエルシトリン(Isocercitrin;IQC)との脂肪生成抑制と、脂肪蓄積抑制と、脂肪分解促進と、体脂肪の減少と、及び/または肥満または代謝性疾患の予防、改善または治療とのための用途に関し、前記ガロカテキンガレートとイソクエルシトリンとは、重量比1:1~1:9であってもよい。
【0026】
本発明は、別の観点において、ガロカテキンガレート(GCLG)とイソクエルシトリン(Isocercitrin;IQC)との非治療的または治療的用途に関する。
【0027】
本発明は、別の観点において、ガロカテキンガレート(GALLOCATKIN Gallate;GCG)とイソクエルシトリン(Isocercitrin;IQC)とを重量比1:1~1:9で含む、肥満または代謝性疾患の予防または治療のための薬学組成物に関する。
【0028】
本明細書における「肥満」なる用語は、体内に過剰な脂肪組織がある状態を意味する。男性は体脂肪が体重の25%を超えるとき、女性は体重の30%を超えるときに肥満と言われ、食べ物で摂取するカロリーが、体を動かして消費するカロリーよりも多い場合に肥満が発生する。肥満になると外見が太って見えるのみならず、息切れが生じやすく、関節痛、糖尿病、高血圧などの症状を伴うこともある。
【0029】
本明細書における「予防」なる用語は、前記薬学組成物の適用によって肥満または代謝性疾患を抑制または遅延させるあらゆる行為を意味する。「治療」なる用語は、前記薬学組成物の適用によって肥満または代謝性疾患の疑いがあるか、あるいはそれに罹患している個体の症状が改善または有益に変化するあらゆる行為を意味する。
【0030】
例示的な一実施例において、前記代謝性疾患は、肥満に由来する代謝性疾患であり、糖尿病、高脂血症、心臓病、脳卒中、動脈硬化症、及び脂肪肝からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0031】
例示的な一実施例において、前記ガロカテキンガレート及びイソクエルシトリンを、重量比1:1以上、1:1.1以上、1:1.2以上、1:1.3以上、1:1.4以上、1:1.5以上、1:1.6以上、1:1.7以上、1:1.8以上、1:1.9以上、1:2.0以上、1:2.1以上、1:2.2以上、1:2.3以上、1:2.4以上、または1:2.5以上で含んでもよく、重量比1:9以下、1:8以下、1:7以下、1:6以下、1:5以下、1:4以下、1:3.5以下、1:3.4以下、1:3.3以下、1:3.2以下、1:3.1以下、1:3以下、1:2.9以下、1:2.8以下、1:2.7以下、または1:2.6以下で含んでもよい。前記ガロカテキンガレート及びイソクエルシトリンを前記重量比で含むと、肥満または代謝性疾患の予防または治療効果が効果的に奏される。例えば、ガロカテキンガレート及びイソクエルシトリンを重量比1:1~1:9または重量比1:1.5~1:4で含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0032】
例示的な一実施例において、前記薬学組成物は、SREBP1c、ACC、及びFASからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を減少させる必要がある対象体に適用されることを特徴としてもよい。
【0033】
例示的な一実施例において、前記薬学組成物は、ACO、CPT、PPARα、tfam、NDUFA9、COX4、ATP5a、UCP1、及びUCP2からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を増加させる必要がある対象体に適用されることを特徴としてもよい。
【0034】
例示的な一実施例において、前記薬学組成物は、脂肪細胞内のミトコンドリアを増加させる必要がある対象体に適用されることを特徴としてもよい。
【0035】
例示的な一実施例において、前記薬学組成物は、褐色脂肪の産生を促進する必要がある対象体に適用されることを特徴としてもよい。
【0036】
例示的な一実施例において、前記薬学組成物の有効成分の一日適用量は、5mg/kg以上、6mg/kg以上、7mg/kg以上、8mg/kg以上、9mg/kg以上、10mg/kg以上、20mg/kg以上、30mg/kg以上、40mg/kg以上、50mg/kg以上、60mg/kg以上、70mg/kg以上、80mg/kg以上、90mg/kg以上、100mg/kg以上、1g/kg以上、2g/kg以上、3g/kg以上、4g/kg以上、5g/kg以上、または6g/kg以上であってもよく、60g/kg以下、59g/kg以下、58g/kg以下、57g/kg以下、56g/kg以下、55g/kg以下、54g/kg以下、53g/kg以下、52g/kg以下、または51g/kg以下であってもよい。前記適用量であれば、肥満または代謝性疾患の予防または治療効果に優れ、前記適用量よりも少ない場合、肥満または代謝性疾患の予防または治療効果が微小であり、前記適用量よりも多い場合、毒性などの問題が生じる虞がある。前記適用は、1日1回から数回に分けて行ってもよい。例えば、1日2回~24回、3日1回~2回、1週間1回~6回、2週間1回~10回、3週間1回~15回、4週間1回~3回、または1年に1回~12回適用してもよいが、それらに限定されるものではない。
【0037】
本発明は、別の観点において、肥満または代謝性疾患の予防または治療のための薬学組成物を製造するためのガロカテキンガレート(GALLOCATKIN Gallate;GCG)とイソクエルシトリン(Isocercitrin;IQC)との用途に関し、前記薬学組成物は、前記ガロカテキンガレートとイソクエルシトリンとを、重量比1:1~1:9で含んでもよい。
【0038】
例示的な一実施例において、前記薬学組成物は、局所適用に適したあらゆる剤形で提供されてもよい。例えば、経口、経皮(trandermally)、静脈、筋肉、皮下注射によって投与しもよい。一例として、前記薬学組成物は、注射剤、皮膚外用溶液剤、懸濁剤、乳液剤、ゲル、パッチまたはスプレー剤であってもよいが、これらに限定されるものではない。前記剤形は、当技術分野において通常の方法に従って容易に調製することができ、界面活性剤、賦形剤、水和剤、乳化促進剤、懸濁剤、浸透圧調整のための塩または緩衝剤、着色剤、スパイス、安定剤、防腐剤、保存剤または他の一般的に用いられる補助剤を適宜使用してもよい。
【0039】
例示的な一実施例において、前記薬学組成物の有効成分は、対象の年齢、性別、体重、病状、及びその重症度、投与経路または処方者の判断に依存するであろう。それらの要因に基づく適当な使用量の決定は、当業者の水準内に属する。
【0040】
本発明は、別の観点において、ガロカテキンガレート(Gallocatechin Gallate;GCG)とイソクエルシトリン(Isoquercitrin;IQC)とを重量比1:1~1:9で含む、脂肪生成抑制と、脂肪蓄積抑制と、脂肪分解促進と、体脂肪の減少と、及び/または肥満または代謝性疾患の予防または改善とのための食品組成物に関する。
【0041】
本明細書における「改善」なる用語は、前記組成物の適用によって肥満または代謝性疾患が改善するか、あるいは有利に変化するあらゆる行為を意味する。
【0042】
例示的な一実施例において、前記代謝性疾患は、肥満に由来する代謝性疾患であり、糖尿病、高脂血症、心臓病、脳卒中、動脈硬化症、及び脂肪肝からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0043】
例示的な一実施例において、前記ガロカテキンガレート及びイソクエルシトリンを、重量比1:1以上、1:1.1以上、1:1.2以上、1:1.3以上、1:1.4以上、1:1.5以上、1:1.6以上、1:1.7以上、1:1.8以上、1:1.9以上、1:2.0以上、1:2.1以上、1:2.2以上、1:2.3以上、1:2.4以上、または1:2.5以上で含んでもよく、重量比1:9以下、1:8以下、1:7以下、1:6以下、1:5以下、1:4以下、1:3.5以下、1:3.4以下、1:3.3以下、1:3.2以下、1:3.1以下、1:3以下、1:2.9以下、1:2.8以下、1:2.7以下、または1:2.6以下で含んでもよい。前記ガロカテキンガレート及びイソクエルシトリンを前記重量比で含むと、肥満または代謝性疾患の予防または改善、もしくは体脂肪の減少効果が奏される。例えば、ガロカテキンガレート及びイソクエルシトリンを重量比1:1~1:9または重量比1:1.5~1:4で含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0044】
例示的な一実施例において、前記食品組成物は、SREBP1c、ACC、及びFASからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を減少させる必要がある対象体に適用されることを特徴としてもよい。
【0045】
例示的な一実施例において、前記食品組成物は、ACO、CPT、PPARα、tfam、NDUFA9、COX4、ATP5a、UCP1、及びUCP2からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を増加させる必要がある対象体に適用されることを特徴としてもよい。
【0046】
例示的な一実施例において、前記食品組成物は、脂肪細胞内のミトコンドリアを増加させる必要がある対象体に適用されることを特徴としてもよい。
【0047】
例示的な一実施例において、前記食品組成物は、褐色脂肪の産生を促進する必要がある対象体に適用されることを特徴としてもよい。
【0048】
例示的な一実施例において、前記食品組成物の一日適用量は、5mg/kg以上、6mg/kg以上、7mg/kg以上、8mg/kg以上、9mg/kg以上、10mg/kg以上、20mg/kg以上、30mg/kg以上、40mg/kg以上、50mg/kg以上、60mg/kg以上、70mg/kg以上、80mg/kg以上、90mg/kg以上、100mg/kg以上、1g/kg以上、2g/kg以上、3g/kg以上、4g/kg以上、5g/kg以上、または6g/kg以上であってもよく、60g/kg以下、59g/kg以下、58g/kg以下、57g/kg以下、56g/kg以下、55g/kg以下、54g/kg以下、53g/kg以下、52g/kg以下、または51g/kg以下であってもよい。前記適用量であれば、肥満または代謝性疾患の予防または改善、もしくは体脂肪の減少効果に優れ、前記適用量よりも少ない場合、肥満または代謝性疾患の予防または改善、もしくは体脂肪の減少効果が微小であり、前記適用量よりも多い場合、毒性などの問題が生じる虞がある。前記適用は、1日1回から数回に分けて行ってもよい。例えば、1日2回~24回、3日1回~2回、1週間1回~6回、2週間1回~10回、3週間1回~15回、4週間1回~3回、または1年に1回~12回適用してもよいが、それらに限定されるものではない。
【0049】
本発明は、別の観点において、脂肪生成抑制と、脂肪蓄積抑制と、脂肪分解促進と、体脂肪の減少と、及び/または肥満または代謝性疾患の予防または改善とのための食品組成物を製造するためのガロカテキンガレート(GALLOCATKIN Gallate;GCG)とイソクエルシトリン(Isocercitrin;IQC)との用途に関し、前記食品組成物は、前記ガロカテキンガレートとイソクエルシトリンとを、重量比1:1~1:9で含んでもよい。
【0050】
例示的な一実施例において、前記組成物を保健機能食品の添加物として使用する場合、それをそのまま添加するか、あるいは他の食品または食品成分と組み合わせて用いてもよく、従来の方法に従って適切に用いてもよい。有効成分の混合量は、予防、健康または治療などの各使用目的に応じて適宜決定されてもよい。保健機能食品の剤形は、散剤、顆粒剤、丸剤、錠剤、カプセル剤の形態のみならず、一般的な食品または飲料の形態のいずれでも可能である。
【0051】
例示的な一実施例において、前記保健機能食品の種類には特に制限はなく、前記組成物を添加できる食品の例としては、肉類、菓子類、麺類、ガム類、アイスクリーム類をはじめとする乳製品、各種スープ、清涼飲料水、茶、ドリンク剤、アルコール飲料、及びビタミン複合剤などが挙げられ、通常の意味での食品が全て含まれてもよい。
【0052】
例示的な一実施例において、前記保健機能食品または飲料の製造時に、前記組成物を原料100重量部に対して、15重量%以下、好ましくは10重量%以下の量で添加してもよい。しかしながら、健康及び衛生を目的とするか、または健康調節を目的とする長期間の摂取においては、前記量は前記範囲以下であってもよい。
【0053】
例示的な一実施例において、前記保健機能食品中の飲料は、通常の飲料のように、様々な香味剤、天然炭水化物などを追加成分として含有してもよい。前記天然炭水化物は、グルコース、フルクトースなどの単糖類;マルトース、スクロースなどの二糖類;及びデキストリン、シクロデキストリンなどの多糖類;キシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールであってもよい。甘味剤としては、ソーマチン、ステビア抽出物などの天然甘味剤や、サッカリン、アスパルテームなどの合成甘味剤などを用いることができる。前記天然炭水化物の割合は、本発明による飲料100mLに大して、約0.01~0.04g、好ましくは約0.02~0.03gであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0054】
例示的な一実施例において、前記以外に、本発明による保健機能食品は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護コロイド、増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に用いられる炭酸化剤を含有してもよい。その他に、本発明による保健機能食品は、天然フルーツジュース、フルーツジュース飲料、及び野菜飲料の製造のための果肉を含んでもよい。これらの成分は、単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。これらの添加剤の割合は限定されないが、本発明による保健機能食品100重量部に対して、0.01~0.1重量部の範囲で選択されるのが一般的である。
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明の構成及び効果をより具体的に説明する。しかしながら、以下の実施例は、本発明についての理解を助けるために提供するものであり、本発明の範疇及び範囲がそれらによって限定されるものではない。
【0056】
<実施例>
[実施例1]
ガロカテキンガレート及びイソクエルシトリンの処理による脂肪細胞内の脂質代謝関連遺伝子の発現の変化
脂肪細胞の主な役割は、過剰なエネルギーを脂肪の形で蓄えることである。過剰なエネルギーが蓄積されると、脂肪細胞内に蓄積された脂肪の量が多くなり、脂肪細胞が肥大化し、体型の変化となって現れるようになる。過剰な栄養成分の脂肪への転換及び蓄積を抑制することは、肥満の最も基本的な解決策である。
【0057】
本発明者らは、ガロカタキンガレート(GALGOTACTIN Gallate;GCG)とイソクエルシトリン(Isoquercitrin;IQC)との混合物(APGQ)が脂肪細胞内の脂質代謝調節遺伝子の発現に及ぼす影響と、その発現を最大化できるGCG:IQCの配合比とを確認するために、以下の実験を行った。
【0058】
ATCCから3T3-L1脂肪前駆細胞を購入し、その後、10%子ウシ血清(bovine calf serum)(Gibco)と1%ペニシリン/ストレプトマイシン(P/S;Sigma Aldrich)を含むDulbecco’s Modified Eagle’s Medium(DMEM;Sigma Aldrich)で培養した。3T3-L1細胞を培養皿が100%満たされるまで増殖させ、その後、同じ培地でさらに2日間培養してクローン増殖(clonal expansion)を誘導した。脂肪前駆細胞から脂肪細胞への分化は、dexamethasone(1mM;Sigma Aldrich)、insulin(10mg/mL;Sigma Aldrich)、3-isobutyl-1-methylxanthine(0.5mM;Sigma Aldrich)+10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum)(FBS;Gibco)+1%P/Sを含むDMEMに48時間処理し、その後、10%FBS+10mg/mL insulin+1%P/S DMEMを2日間隔で10日間培養して、完全な脂肪細胞への分化を誘導した。
【0059】
分化済みの脂肪細胞にGCGとIQCを様々な配合比(10:0~0:10、GCG+IQC処理濃度は100mg/mLに固定)で24時間処理し、その後、脂肪合成関連遺伝子(図1)及び脂肪酸酸化関連遺伝子(図2)の発現を測定した。実験のために、細胞をPhosphate-buffered saline(PBS;Sigma Aldrich)で2回洗浄し、その後、PBSを除去し、TaKaRa MiniBEST Universal RNA Extraction Kit(Takara Bio)を用いてRNAを抽出した。Tecan Infinite M200(Tecan)でRNAを定量した後、同量(1mg)のRNAをRevertAid 1st-strand cDNA Synthesis Kit(Thermo Fisher Scientific)を用いてcDNAを合成した。標的遺伝子の発現を観察するために、標的遺伝子のコード配列(coding sequence)を鋳型とし、NCBI primer BLAST(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/tools/primer-blast/)サービスを用いて設計し、Bioneerによって作製され、CFX96 thermocycler(Bio-Rad)を用いて脂肪代謝関連遺伝子の発現変化を観察した。
【0060】
その結果、図1及び図2に示されるように、組成比ごとの差はあるものの、脂質代謝制御においてGCGとIQCの併用処理による相乗効果が現れることが確認された。脂質代謝標的遺伝子ごとに若干の差はあるものの、GCG:IQC比が4:6~2:8で有意な遺伝子の発現調節効果が現れ、特に3:7で最も優れた効果が示された。
【0061】
そこで、GCG:IQC比の4:6~2:8(1:1.5~1:4)区間を細分化して、脂肪合成及び酸化関連遺伝子の発現変化パターンを再確認した(図3A及び3B)。その結果、GCG:IQC組成比が1:2~1:3の区間では優れた脂肪代謝関連遺伝子の発現調節効果が現れ、特にGCG:IQC比が1:2.5~1:2.6の区間で最も優れた効果が現れた。よって、その後の実験は、APGQのGCG:IQC比を1:2.5に固定して行った。
【0062】
[実施例2]
ガロカテキンガレート及びイソクエルシトリンの処理による脂肪細胞内のミトコンドリア及び褐色脂肪の活性化
実施例1で確認したように、GCGとIQCを一定の割合で混合したAPGQは、脂肪酸の合成及び分解に関わる遺伝子の発現を調節した。脂肪酸の酸化により中性脂肪が分解されて遊離脂肪酸を生成し、遊離脂肪酸がミトコンドリア内に移動して加水分解され、順次アセチル-CoAが生成される。生成されたアセチル-CoAは、クレブス回路と電子伝達系を経てATPを生成する。ミトコンドリアは、エネルギー代謝が活発な筋肉や肝臓組織の細胞に多く存在し、脂肪細胞には、筋肉や肝細胞に対してミトコンドリアの含有量が少ないことが知られている。脂肪細胞で脂肪の酸化がスムーズに行われるためには、脂肪細胞内でもミトコンドリアの量が増加する必要がある。
【0063】
APGQが脂肪細胞内のミトコンドリア生合成を誘導できるかどうかを調べるために、分化した脂肪細胞にAPGQを様々な濃度(10~100mg/mL)で24時間処理し、実施例1と同様の方法でRNAを抽出し、cDNAを合成した。次いでQ-PCRによってミトコンドリア関連遺伝子の発現を観察した(図4)。さらに、脂肪細胞内のミトコンドリアの量が実際に増加したかどうかを調べるために、同じ濃度のAPGQを分化脂肪細胞に48時間処理し、その後、PBSで洗浄した。それから、MitotrackerTM Green FM(Invitrogen;20nM)を30分間処理してミトコンドリアを染色し、その後、TECAN Infinite M200 multiplate readerを用いて(ex 490nm、em 512nm)蛍光値を測定し、定量した(図5)。
【0064】
その結果、図4及び図5に示されるように、脂肪細胞をAPGQで処理すると、濃度依存的にミトコンドリア数と共にミトコンドリア生合成(tfam)及び電子伝達系構成遺伝子(NDUFA9、COX4、ATP5a)の発現が増加する現象が確認された。すなわち、APGQは、脂肪酸合成は抑制し、脂肪酸酸化は促進しながら、脂肪代謝が円滑に起こるように、ミトコンドリアを活性化させて脂肪細胞内のエネルギー消費を増加させることができる。
【0065】
ミトコンドリアの電子伝達系を経てATPを合成するためには、ミトコンドリア内膜の内外部の水素イオン濃度の差が非常に重要である。場合によっては、この水素イオンの濃度の差を、ATP合成ではなく熱に変換することで細胞の生存に必要な温度を維持する(thermogenesis)ために使用することがあるが、脱共役タンパク質(Uncoupling Protein;UCPs)がこのような役割を果たすことが知られている。これらの役割に特化した組織は、多くのミトコンドリアを含む褐色脂肪であり、これは主に冬眠する動物によく見られる。興味深いことに、最近、人にも褐色脂肪が存在し、その量は幼いときに多く、成長しながら体温調節中枢の発達につれて徐々に量が減っていくことが明らかになった。脱共役タンパク質が多いほど、ATPを産生せずに熱に変換するため、細胞の立場からみると、UCPが増加すると、細胞機能を維持するために必要なATPを産生するために、より多くの栄養素を分解しなければならない。そのため、褐色脂肪の分布と活性が肥満とも密接に関係していることが明らかになり、褐色脂肪の活性化が肥満治療の新たなターゲットとなった。白色脂肪細胞にb-adrenergic receptor agonistなどを処理すると、ミトコンドリアと共にUCP1が増加し、褐色脂肪に似たように変化するが、これをベージュ脂肪(beige fat)細胞と呼ぶ。褐色脂肪とベージュ脂肪の共通点は、脂肪細胞中に多量のミトコンドリアが存在することであり、そこで、APGQが脂肪細胞内のミトコンドリアの増加と共に褐色脂肪化も誘導できるかどうかを調べるために、UCPの発現をさらに確認した(図6)。
【0066】
その結果、酸化ストレスに関与するUCP2と共に、褐色脂肪にのみ存在するUCP1の発現が増加し、これはAPGQが白色脂肪の褐色脂肪化を誘導してエネルギー代謝を促進することを示す。実際、APGQを処理した細胞の場合、細胞の酸素消費量(=ミトコンドリアによる酸素呼吸)が大幅に増加することが示された(図7)。これは、APGQ処理によって細胞内エネルギー代謝が最大化されたことを裏付ける結果である。
【0067】
[実施例3]
ガロカテキンガレート及びイソクエルシトリンの処理による脂肪細胞における脂質蓄積阻害効果
実施例1及び2により、APGQが脂肪酸合成は阻害し、脂肪細胞の褐色脂肪化を誘導して脂肪消耗を促進することが確認されたので、実際にAPGQがこの一連の機序によって、脂肪細胞内に蓄積された脂肪量を減少させることができるかどうかを確認するために、以下の実験を行った。
【0068】
分化した脂肪細胞に、様々な濃度(10、20、50、100mg/mL)のAPGQを72時間処理した。その後、細胞をPBSで2回洗浄し、10%ホルマルデヒド(Sigma Aldrich)溶液で5分間固定し、次いで、ナイルレッド(Nile-red(Sigma Aldrich;300nM)溶液を用いて細胞内に蓄積した中性脂肪を染色した。蓄積された脂肪の量は、Tecan Infinite M200 Multiplate Reader(ex 495nm、emi 585nm)を用いて定量した(図8)。
【0069】
その結果、APGQを処理すると、様々な脂質代謝制御効果により、3T3-L1脂肪細胞に蓄積された中性脂肪の量が減少することが確認された。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8