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特開2024-170292燃料電池触媒電極の製造方法およびこれにより製造された燃料電池触媒電極
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  • 特開-燃料電池触媒電極の製造方法およびこれにより製造された燃料電池触媒電極 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170292
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】燃料電池触媒電極の製造方法およびこれにより製造された燃料電池触媒電極
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/88 20060101AFI20241129BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20241129BHJP
   H01M 4/90 20060101ALI20241129BHJP
   H01M 4/96 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
H01M4/88 K
H01M4/92
H01M4/90 B
H01M4/90 M
H01M4/88 C
H01M4/96 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024067906
(22)【出願日】2024-04-19
(31)【優先権主張番号】10-2023-0068135
(32)【優先日】2023-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】507098483
【氏名又は名称】ヒュンダイ・モービス・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(72)【発明者】
【氏名】リ ジ ウン
(72)【発明者】
【氏名】リ スン チュル
(72)【発明者】
【氏名】キム ドン ジン
(72)【発明者】
【氏名】チョ ヤン イク
(72)【発明者】
【氏名】チョ ミン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】チョ ソン ヨン
【テーマコード(参考)】
5H018
【Fターム(参考)】
5H018AA06
5H018AS02
5H018AS03
5H018BB01
5H018BB08
5H018BB11
5H018BB12
5H018EE02
5H018EE03
5H018EE05
5H018EE17
5H018EE18
5H018HH01
5H018HH02
5H018HH05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】燃料電池スタックが高い出力密度を有し、全体の燃料電池システムの体積を減少させることができる燃料電池触媒電極の製造方法、および燃料電池触媒電極を提供する。
【解決手段】本発明は、燃料電池触媒電極の製造方法に関し、第1触媒、バインダーおよび第1溶媒を分散および混合して第1触媒スラリーを製造するステップ(S10)と、第1触媒スラリーを熱処理し、粉砕して第1触媒粉末を製造するステップ(S20)と、第2触媒、バインダーおよび第2溶媒を分散および混合して第2触媒スラリーを製造するステップ(S30)と、第2触媒スラリーを熱処理し、粉砕して第2触媒粉末を製造するステップ(S40)と、第1触媒粉末、および第2触媒粉末を第3溶媒に分散して第3触媒スラリーを製造するステップ(S50)と、第3触媒スラリーを基材上にコーティングまたは転写して触媒層が形成された電極を製造するステップ(S60)とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1触媒、バインダーおよび第1溶媒を分散および混合して第1触媒スラリーを製造するステップ(S10)と、
第1触媒スラリーを熱処理し、粉砕して第1触媒粉末を製造するステップ(S20)と、
第2触媒、バインダーおよび第2溶媒を分散および混合して第2触媒スラリーを製造するステップ(S30)と、
第1触媒スラリーを熱処理し、粉砕して第2触媒粉末を製造するステップ(S40)と、
第1触媒粉末、および第2触媒粉末を第3溶媒に分散して第3触媒スラリーを製造するステップ(S50)と、
第3触媒スラリーを基材上にコーティングまたは転写して触媒層が形成された電極を製造するステップ(S60)とを含み、
前記ステップ(S50)において、前記第1触媒粉末と第2触媒粉末は、100:5~100:60の重量比で第3溶媒に分散される、燃料電池触媒電極の製造方法。
【請求項2】
前記第1触媒は、白金または白金系合金を含み、
前記白金系合金は、白金と金、銀、銅、パラジウム、スズ、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、およびバナジウムから選択される1種以上の合金である、請求項1に記載の燃料電池触媒電極の製造方法。
【請求項3】
前記ステップ(S10)および(S30)のバインダーは、それぞれ、イオン伝導性高分子である、請求項1に記載の燃料電池触媒電極の製造方法。
【請求項4】
前記第2触媒は、触媒金属が担持体に担持された担持触媒を含む、請求項1に記載の燃料電池触媒電極の製造方法。
【請求項5】
前記担持触媒に担持された触媒金属は、白金、金、銀、銅、パラジウム、スズ、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、およびバナジウムからなる群から選択される1種以上である、請求項4に記載の燃料電池触媒電極の製造方法。
【請求項6】
前記担持体は、高結晶性カーボン担持体であり、前記高結晶性カーボン担持体は、縦の結晶サイズが2.5~4.5nmであり、BET比表面積が100~600m/gである、請求項4に記載の燃料電池触媒電極の製造方法。
【請求項7】
前記第1触媒粉末と第2触媒粉末は、それぞれ、バインダーがコーティングされている、請求項1に記載の触媒電極の製造方法。
【請求項8】
前記ステップ(S50)において、前記第1触媒粉末と第2触媒粉末は、100:10~100:45の重量比で第3溶媒に分散される、請求項1に記載の燃料電池触媒電極の製造方法。
【請求項9】
基材と、基材の少なくとも一側の表面に形成された触媒層とを含み、
前記触媒層は、第1触媒粉末および第2触媒粉末を含み、
前記第1触媒粉末は、前記第1触媒にバインダーがコーティングされており、前記第2触媒粉末は、前記第2触媒にバインダーがコーティングされており、
前記第1触媒粉末と第2触媒粉末は、100:5~100:60の重量比を満たす、燃料電池触媒電極。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池触媒電極の製造方法に関し、より詳細には、出力特性が改善した燃料電池触媒電極を製造することができる燃料電池触媒電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電池内において、水素、メタノールなどの燃料を電気化学的に酸化させて、燃料の化学的エネルギーを電気エネルギーに変換するものである。特に、高分子電解質膜燃料電池(PEFC、Polymer Electrolyte membrane Fuel Cell)は、イオン伝導性を有する固体高分子電解質膜を用いて、固体酸化物燃料電池(SOFC、Solid Oxide Fuel Cell)などの高温運転燃料電池に比べて、低温運転が可能であり、簡易なシステムの実現が可能であり、車両および建物などの電源として使用されている。
【0003】
このような高分子電解質膜燃料電池は、負極(水素極)、正極(空気極)および水素イオン伝導性高分子電解質膜を含む膜電極接合体(MEA、Membrane Electrode Assembly)を含む。ここで、前記負極(水素極)および正極(空気極)は、それぞれ燃料の酸化反応と酸素の還元反応を起こすことができる同種または異種の貴金属触媒が、多孔性担持体の表面に均一に分散した形態で存在する。触媒は、種類に応じて電荷移動抵抗などにおいて差を示し、触媒の表面の形状から由来する比表面積、疎水性などの物性によって、水排出特性などにおいても差を示す。同様に、担持触媒の製造に使用される多孔性担持体もその表面積と結晶性に応じて、表面特性とアイオノマーとの親和力が変化する。
【0004】
したがって、膜電極接合体(MEA)の電極層の設計時に、触媒の選定、触媒を担持触媒として使用する時に、担持体の選定、バインダーの選定の問題について検討し、電極内に含まれる触媒の種類とバインダーの種類による物質間の親和力などを考慮した後、これより発揮される燃料電池セルの出力特性に関する最終的な検討が必要である。
【0005】
本発明の発明者らは、このような理解に基づいて、燃料電池用電極に2種の触媒を適用し、この際、適用される2種の触媒を単純に混合して適用するのではなく、別の工程を経て電極内に含むようにすることで、燃料電池用電極の高出力特性を改善して燃料電池スタックの出力密度を高め、これにより、全体の燃料電池システムの体積を減少させることができる燃料電池触媒電極の製造方法を開発するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第2007-0099935号公報
【特許文献2】韓国登録特許第10-1113311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、燃料電池の触媒電極、特に、正極(空気極)内で触媒反応の活性に優れ、高い燃料透過度を示し、水排出特性が向上することから、燃料電池用電極の高出力特性が改善することで、これを含む燃料電池スタックが高い出力密度を有し、全体の燃料電池システムの体積を減少させることができる燃料電池触媒電極の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、第1触媒、バインダーおよび第1溶媒を分散および混合して第1触媒スラリーを製造するステップ(S10)と、第1触媒スラリーを熱処理し、粉砕して第1触媒粉末を製造するステップ(S20)と、第2触媒、バインダーおよび第2溶媒を分散および混合して第2触媒スラリーを製造するステップ(S30)と、第1触媒スラリーを熱処理し、粉砕して第2触媒粉末を製造するステップ(S40)と、第1触媒粉末、および第2触媒粉末を第3溶媒に分散して第3触媒スラリーを製造するステップ(S50)と、第3触媒スラリーを基材上にコーティングまたは転写して触媒層が形成された電極を製造するステップ(S60)とを含み、前記ステップ(S50)において、前記第1触媒粉末と第2触媒粉末は、100:5~100:60の重量比で第3溶媒に分散される燃料電池触媒電極の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明による燃料電池触媒電極の製造方法は、電荷移動抵抗、水排出特性などにおいて互いに異なる利点を有する2種の触媒を適用し、別の分散方法を用いて、触媒とバインダーが均一に分散するようにして、燃料電池触媒内の物質伝達抵抗および電荷移動抵抗を減少させた燃料電池触媒電極を実現することができる。本発明の製造方法により製造された燃料電池触媒電極は、優れた高出力特性を発揮することができ、これにより、燃料電池スタックの出力密度を高めることができ、全体の燃料電池システムの体積を減少させることができる効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1~4に対してRH50条件で測定した単位電池性能曲線である。
図2】実施例1~4に対してRH100条件で測定した単位電池性能曲線である。
図3】実施例3および比較例1~3に対してRH50条件で測定した単位電池性能曲線である。
図4】実施例3および比較例1~3に対してRH100条件で測定した単位電池性能曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に関する理解に資するため、本発明をより詳細に説明する。
【0012】
本明細書および請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0013】
本明細書において、用語「第1」および「第2」などの数字は、構成の区分を容易にするために任意に記載した数字であって、各構成に対して特別な意味を付与するものではない。
【0014】
本発明は、燃料電池触媒電極、具体的には、燃料電池の負極を製造するための燃料電池触媒電極の製造方法を提供する。
【0015】
本発明の一実施形態によると、前記燃料電池触媒電極の製造方法は、第1触媒、バインダーおよび第1溶媒を分散および混合して第1触媒スラリーを製造するステップ(S10)と、第1触媒スラリーを熱処理し、粉砕して第1触媒粉末を製造するステップ(S20)と、第2触媒、バインダーおよび第2溶媒を分散および混合して第2触媒スラリーを製造するステップ(S30)と、第2触媒スラリーを熱処理し、粉砕して第2触媒粉末を製造するステップ(S40)と、第1触媒粉末、および第2触媒粉末を第3溶媒に分散して第3触媒スラリーを製造するステップ(S50)と、第3触媒スラリーを基材上にコーティングまたは転写して触媒層が形成された電極を製造するステップ(S60)とを含み、前記ステップ(S50)において、前記第1触媒粉末と第2触媒粉末は、100:5~100:60の重量比で第3溶媒に分散される燃料電池触媒電極の製造方法を提供する。
【0016】
第1触媒、バインダーおよび第1溶媒を分散および混合して第1触媒スラリーを製造するステップ(S10)
前記(S10)ステップは、燃料電池触媒電極、特に、正極の触媒層に第1触媒を含むようにするために、第1触媒スラリーを製造するためのステップである。
【0017】
本発明の一実施形態によると、前記第1触媒は、触媒金属、および前記触媒金属が担持された導電材を含むことができる。
【0018】
本発明の一実施形態によると、前記第1触媒は、白金または白金系合金を含むことができ、前記白金系合金は、白金と金、銀、銅、パラジウム、スズ、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、およびバナジウムから選択される1種以上の合金であることができる。具体的には、前記第1触媒は、Pt-Mで表される白金系合金を含み、前記Ptは、白金であり、前記Mは、金、銀、銅、パラジウム、スズ、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、およびバナジウムから選択される1種以上であることができる。
【0019】
また、前記導電材は、活性化炭素であることができ、具体的な例として、前記触媒金属を担持させるための多孔性活性化炭素であることができる。より具体的な例として、前記水素酸化反応触媒は、前記白金系合金が多孔性炭素担持体に担持されたPt-M/C触媒であることができる。
【0020】
本発明の一実施形態によると、前記第1触媒は、触媒金属が、導電材100重量部に対して10重量部~150重量部、30重量部~120重量部、または50重量部~100重量部担持されることができ、この範囲内で、導電材による電極安定性およびイオン伝導度を十分に確保し、且つ水素酸化反応活性を向上させる効果がある。
【0021】
前記活性化炭素は、BET比表面積が、400m/g~1、000m/gであることができ、具体的には、BET比表面積が、500m/g~1、000m/g、さらに具体的には、600m/g~900m/gであることができる。また、前記活性化炭素は、縦(高さ方向)結晶サイズであるLcが1.0nm~3.2nmであることができ、具体的には、Lcが2.5nm~3.2nm、さらに具体的には、3.0nm~3.2nmであることができる。
【0022】
また、本発明の一実施形態によると、前記導電材が活性化炭素であるときに、前記触媒金属が担持された活性化炭素のBET比表面積は、200m/g~600m/gであることができ、具体的には、BET比表面積が、250m/g~550m/g、さらに具体的には、50m/g~150m/gであることができる。
【0023】
本発明の一実施形態によると、前記バインダーは、イオン伝導性高分子であることができる。具体的な例として、前記イオン伝導性高分子は、側鎖に、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基およびこれらの誘導体からなる群から選択されるカチオン交換基を有している高分子であることができる。
【0024】
本発明の一実施形態によると、前記イオン伝導性高分子は、フルオロ系高分子、ベンゾイミダゾール系高分子、ポリイミド系高分子、ポリエーテルイミド系高分子、ポリフェニレンスルフィド系高分子、ポリスルホン系高分子、ポリエーテルスルホン系高分子、ポリエーテルケトン系高分子、ポリエーテル-エーテルケトン系高分子およびポリフェニルキノキサリン系高分子からなる群から選択される1種以上のイオン伝導性高分子であることができる。
【0025】
本発明の一実施形態によると、前記イオン伝導性高分子は、ポリ(パーフルオロスルホン酸)、ポリ(パーフルオロカルボン酸)またはスルホン酸基を含むテトラフルオロエチレンとフルオロビニルエーテルの共重合体であることができる。また、アリールケトン、ポリ(2,2'-m-フェニレン)-5,5'-バイベンゾイミダゾール(poly(2,2'-m-phenylene)-5,5'-bibenzimidazole)およびポリ(2,5-ベンゾイミダゾール)のうち一つの高分子であり、側鎖に、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基およびこれらの誘導体からなる群から選択されるカチオン交換基が結合したイオン伝導性高分子であることができる。
【0026】
本発明の一実施形態によると、前記バインダーは、1種または2種以上の混合物であることができ、必要に応じて、非伝導性化合物をさらに含むことができ、この場合、高分子電解質膜との接着力をより向上させることができる。ここで、前記非伝導性化合物は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン/テトラフルオロエチレン(ethylene/tetrafluoroethylene(ETFE))、エチレンクロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフル-4-オライド、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンのコポリマー(PVdF-HFP)、ドデシルベンゼンスルホン酸およびソルビトール(Sorbitol)からなる群から選択される1種以上であることができる。
【0027】
本発明の一実施形態によると、前記第1溶媒は、第1触媒スラリーを製造するにあたり、第1触媒およびバインダーを混合および分散させるための分散剤であることができる。具体的な例として、前記第1溶媒は、水系溶媒または有機系溶媒であることができる。前記水系溶媒は、水、アルコールまたはこれらの混合物を含むことができる。前記アルコールは、エタノール、イソプロピルアルコールなどの第一級アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのポリオールからなる群から選択される1種以上であることができる。また、前記有機系溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)およびN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)からなる群から選択される1種以上であることができる。
【0028】
第1触媒スラリーを熱処理し、粉砕して第1触媒粉末を製造するステップ(S20)
前記(S20)ステップは、第1触媒スラリーを熱処理し、粉砕して第1触媒粉末を製造するステップである。
【0029】
本発明の燃料電池触媒電極の製造方法は、ステップ(S20)において、まず、第1触媒スラリーのみを用いて、第1触媒粉末を製造する。本発明の燃料電池触媒電極の製造方法は、第1触媒が分散、混合されている第1触媒スラリーから第1触媒粉末を取得する。
【0030】
本発明の一実施形態による燃料電池触媒電極の製造方法は、ステップ(S10)および(S20)の過程により、第2触媒とは別に、第1触媒のみを用いて、第1触媒粉末を製造する。
【0031】
本発明の一実施形態によると、前記(S20)ステップの熱処理は、100℃~200℃、100℃~180℃、または100℃~150℃で実施されることができ、この範囲内で、バインダーの機械的安定性を向上させるとともに、結晶性およびイオンチャネルサイズの変化を最小化することができ、第1触媒スラリーに存在する第1溶媒がすべて除去された第1触媒を製造することができる。
【0032】
本発明の一実施形態によると、前記(S20)ステップの粉砕は、前記熱処理によって取得した第1触媒の塊を粉末形態で取得するために通常利用することができる粉砕装置を用いて実施されることができる。
【0033】
本発明の一実施形態によると、前記第1触媒粉末は、前記第1触媒に前記バインダーがコーティングされていることができる。
【0034】
本発明の一実施形態によると、前記(S20)ステップで製造された第1触媒粉末は、第1触媒粒子の一部または全部がバインダーによって覆われており、第1触媒粒子がバインダーによって結合した形態で存在することができる。
【0035】
第2触媒、バインダーおよび第2溶媒を分散および混合して第2触媒スラリーを製造するステップ(S30)
前記ステップ(S30)は、第2触媒、バインダーおよび第2溶媒を分散および混合して第2触媒スラリーを製造するステップである。
【0036】
本発明の一実施形態によると、前記第2触媒は、触媒金属、および前記触媒金属が担持された導電材を含むことができる。前記触媒金属は、白金、金、銀、銅、パラジウム、スズ、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、およびバナジウムからなる群から選択される1種であることができる。
【0037】
また、本発明の一実施形態によると、前記第2触媒が含む前記導電材は、結晶性炭素担持体であることができ、具体的には、高結晶性炭素担持体であることができる。前記結晶性炭素担持体の例としては、カーボンナノチューブ(CNT)およびカーボンナノファイバー(CNF)が挙げられ、前記カーボンナノチューブの一例のうち、ヘリンボーンタイプのカーボンナノチューブが高結晶性炭素担持体に該当することができる。
【0038】
本発明の一実施形態によると、前記結晶性炭素担持体は、BET比表面積が、100m/g~500m/gであることができ、具体的には、BET比表面積が、100m/g~400m/g、さらに具体的には、100m/g~300m/gであることができる。また、前記活性化炭素は、縦(高さ方向)結晶サイズであるLcが、3.3nm~4.5nmであることができ、具体的には、Lcが、3.3nm~4.0nm、さらに具体的には、3.3nm~3.6nmであることができる。
【0039】
また、本発明の一実施形態によると、前記導電材が結晶性炭素担持体であるときに、前記触媒金属が担持された結晶性炭素担持体のBET比表面積は、30m/g~300m/gであることができ、具体的には、BET比表面積が、40m/g~200m/g、さらに具体的には、50m/g~150m/gであることができる。
【0040】
本発明の一実施形態によると、前記第2触媒は、触媒金属が、導電材100重量部に対して、10重量部~150重量部、30重量部~120重量部、または50重量部~100重量部担持されることができ、前記範囲を満たす場合、担持体による電極安定性およびイオン伝導度を十分に確保し、且つ触媒反応活性を向上させる効果がさらに適切に発揮されることができる。
【0041】
本発明の一実施形態によると、前記バインダーは、イオン伝導性高分子であることができる。具体的な例として、前記イオン伝導性高分子は、側鎖に、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基およびこれらの誘導体からなる群から選択されるカチオン交換基を有している高分子であることができる。
【0042】
本発明の一実施形態によると、前記イオン伝導性高分子は、フルオロ系高分子、ベンゾイミダゾール系高分子、ポリイミド系高分子、ポリエーテルイミド系高分子、ポリフェニレンスルフィド系高分子、ポリスルホン系高分子、ポリエーテルスルホン系高分子、ポリエーテルケトン系高分子、ポリエーテル-エーテルケトン系高分子およびポリフェニルキノキサリン系高分子からなる群から選択される1種以上のイオン伝導性高分子であることができる。
【0043】
本発明の一実施形態によると、前記イオン伝導性高分子は、ポリ(パーフルオロスルホン酸)、ポリ(パーフルオロカルボン酸)またはスルホン酸基を含むテトラフルオロエチレンとフルオロビニルエーテルの共重合体であることができる。また、アリールケトン、ポリ(2,2'-m-フェニレン)-5,5'-バイベンゾイミダゾール(poly(2,2'-m-phenylene)-5,5'-bibenzimidazole)およびポリ(2,5-ベンゾイミダゾール)のうち一つの高分子であり、側鎖に、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基およびこれらの誘導体からなる群から選択されるカチオン交換基が結合したイオン伝導性高分子であることができる。
【0044】
本発明の一実施形態によると、前記バインダーは、1種または2種以上の混合物であることができ、必要に応じて、非伝導性化合物をさらに含むことができ、この場合、高分子電解質膜との接着力をより向上させることができる。ここで、前記非伝導性化合物は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン/テトラフルオロエチレン(ethylene/tetrafluoroethylene(ETFE))、エチレンクロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフル-4-オライド、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンのコポリマー(PVdF-HFP)、ドデシルベンゼンスルホン酸およびソルビトール(Sorbitol)からなる群から選択される1種以上であることができる。
【0045】
本発明の一実施形態によると、前記第2溶媒は、第2触媒スラリーを製造するにあたり、第2触媒およびバインダーを混合および分散させるための分散剤であることができる。具体的な例として、前記第2溶媒は、水系溶媒または有機系溶媒であることができる。前記水系溶媒は、水、アルコールまたはこれらの混合物を含むことができる。前記アルコールは、エタノール、イソプロピルアルコールなどの第一級アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのポリオールからなる群から選択される1種以上であることができる。また、前記有機系溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)およびN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)からなる群から選択される1種以上であることができる。
【0046】
第2触媒スラリーを熱処理し、粉砕して第2触媒粉末を製造するステップ(S40)
前記ステップ(S40)は、第2触媒スラリーを熱処理し、粉砕して第2触媒粉末を製造するステップである。
【0047】
本発明の燃料電池触媒電極の製造方法は、ステップ(S40)において、第2触媒スラリーのみを用いて、第2触媒粉末を製造するようになり、これにより、第1触媒の影響を考慮する必要なしに、第2触媒をバインダーと均一に混合することができる。
【0048】
本発明の一実施形態によると、前記(S40)ステップの熱処理は、100℃~200℃、100℃~180℃、または100℃~150℃で実施されることができ、この範囲内で、バインダーの機械的安定性を向上させるとともに、結晶性およびイオンチャネルサイズの変化を最小化することができ、第2触媒スラリーに存在する第2溶媒がすべて除去された第2触媒粉末を製造することができる。
【0049】
本発明の一実施形態によると、前記(S40)ステップの粉砕は、前記熱処理によって取得した第2触媒の塊を粉末形態で取得するために通常利用することができる粉砕装置を用いて実施されることができる。
【0050】
本発明の一実施形態によると、前記第2触媒粉末は、前記第2触媒に前記バインダーがコーティングされていることができる。
【0051】
本発明の一実施形態によると、前記(S40)ステップで製造された第2触媒粉末は、第2触媒粒子の一部または全部がバインダーによって覆われており、第2触媒粒子がバインダーによって結合した形態で存在することができる。
【0052】
第1触媒粉末、および第2触媒粉末を第3溶媒に分散して第3触媒スラリーを製造するステップ(S50)
前記ステップ(S50)では、第1触媒粉末、および第2触媒粉末を第3溶媒に分散して第3触媒スラリーを製造する。
【0053】
本発明は、ステップ(S50)で製造される前記第3触媒スラリーは、触媒電極を形成するためのものであり、前記ステップによりそれぞれ製造された第1触媒粉末および第2触媒粉末を第3溶媒にともに分散して混合することで、第1触媒および第2触媒のそれぞれが、すべてバインダーと均一に混合されており、電極層内に第1触媒および第2触媒が、すべて均一に分布されている燃料電池触媒電極を製造することができる。
【0054】
一方、本発明の燃料電池触媒電極は、前記第1触媒粉末と第2粉末は100:5~100:60の重量比で第3溶媒に分散される。
【0055】
また、前記第1触媒粉末と第2粉末は、具体的には、100:8~100:50の重量比、さらに具体的には、100:10~100:45の重量比で第3溶媒に分散されることができる。
【0056】
本発明の一実施形態によると、第1触媒および第2触媒をともに含み、且つ前記重量比を満たす場合、優れた触媒反応および優れた水排出特性を発揮することができ、全領域にわたる電流密度において優れた性能を発揮することができ、特に、高電流領域において優れた出力を発揮することができる。
【0057】
本発明の一実施形態によると、前記第3溶媒は、第3触媒スラリーを製造するにあたり、第1触媒粉末および第2触媒粉末を混合および分散させるための分散剤であることができる。具体的な例として、前記第3溶媒は、上記で記載した第1溶媒および第2溶媒と同一または相違することができ、水系溶媒または有機系溶媒であることができる。前記水系溶媒は、水、アルコールまたはこれらの混合物を含むことができる。前記アルコールは、エタノール、イソプロピルアルコールなどの第一級アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのポリオールからなる群から選択される1種以上であることができる。また、前記有機系溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)およびN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)からなる群から選択される1種以上であることができる。
【0058】
本発明の一実施形態によると、前記(S50)ステップで混合される前記第1触媒粉末と第2触媒粉末は、それぞれバインダーがコーティングされていることができ、前記ステップ(S10)および(S30)で混合されたバインダー以外に、追加のバインダーの投入なしに実施されることができる。
【0059】
第3触媒スラリーを基材上にコーティングまたは転写して触媒層が形成された電極を製造するステップ(S60)
前記(S60)ステップは、第3触媒スラリーを基材上にコーティングまたは転写して触媒層が形成された電極を製造するステップであり、燃料電池触媒電極を取得するためのステップである。
【0060】
本発明の一実施形態によると、前記(S60)ステップは、第3触媒スラリーに含まれた第2溶媒を乾燥させるための乾燥ステップまたは揮発させるための熱処理ステップを含んで実施されることができる。
【0061】
本発明の一実施形態によると、前記基材は、第2触媒スラリーから燃料電池触媒電極を製造するための支持層であり、燃料電池触媒電極に使用されることができる基材であれば、特に制限なく利用可能である。また、前記基材は、場合に応じて高分子電解質膜自体であることができる。
【0062】
本発明は、前記燃料電池触媒電極の製造方法から製造された燃料電池触媒電極を提供する。
【0063】
本発明の一実施形態によると、前記燃料電池触媒電極は、基材と、基材の少なくとも一側の表面に形成された触媒層とを含み、前記触媒層は、第1触媒、第2触媒およびバインダーを含むことができる。このように、触媒層に第1触媒および第2触媒の2種の触媒を適用するとともに、第1触媒および第2触媒に個別にバインダーをコーティングさせた後、これを混合したスラリーを用いて触媒層を製造する場合、触媒層内にその性質が異なる第1触媒および第2触媒をともに含み、且つ前記第1触媒および第2触媒が均一に分布することができる。このような本発明の燃料電池触媒電極は、優れた触媒反応を発揮することができ、高電流領域で優れた出力を発揮することができ、優れた水排出特性を発揮することができる。
【0064】
また、本発明は、前記高分子電解質膜を含む膜電極接合体を提供する。前記膜電極接合体は、負極と、正極と、負極と正極との間に介在された高分子電解質膜とを含み、前記正極は、本発明による燃料電池触媒電極であることができる。
【0065】
本発明の一実施形態によると、前記膜電極接合体は、水素ガスなどの燃料と酸素を含む空気の電気化学触媒反応が行われる電極および水素イオンの伝達が行われる高分子電解質膜の接合体であることができ、負極、正極および負極と正極との間に介在された高分子電解質膜が互いに接着されていることができる。
【0066】
本発明の一実施形態によると、前記膜電極接合体は、反応ガスを供給する負極(燃料極または水素極)および正極(酸素極または空気極)の一面にガス拡散層が導入されていることができる。具体的な例として、負極および正極それぞれの一面に導入されたガス拡散層の間に前記膜電極接合体が介在されていることができる。
【0067】
本発明の一実施形態によると、前記膜電極接合体は、反応ガスを供給する負極(燃料極または水素極)および正極(酸素極または空気極)の他の一面に触媒層が導入されていることができる。具体的な例として、負極および正極それぞれの一面に導入された触媒層の間に前記高分子電解質膜が介在されていることができる。
【0068】
本発明の一実施形態によると、前記膜電極接合体は、負極/高分子電解質膜/正極、ガス拡散層/負極/高分子電解質膜/正極、負極/高分子電解質膜/正極/ガス拡散層、ガス拡散層/負極/高分子電解質膜/正極/ガス拡散層、負極/触媒層/高分子電解質膜/正極、負極/高分子電解質膜/触媒層/正極、負極/触媒層/高分子電解質膜/触媒層/正極、ガス拡散層/触媒層/負極/高分子電解質膜/正極、ガス拡散層/負極/高分子電解質膜/触媒層/正極、ガス拡散層/触媒層/負極/高分子電解質膜/触媒層/正極、負極/高分子電解質膜/触媒層/正極/ガス拡散層、負極/触媒層/高分子電解質膜/正極/ガス拡散層、負極/触媒層/高分子電解質膜/触媒層/正極/ガス拡散層、およびガス拡散層/触媒層/負極/高分子電解質膜/触媒層/正極/ガス拡散層からなる群から選択される1種の積層構成を有する積層体であることができる。
【0069】
本発明の一実施形態によると、前記負極は、上記で記載した燃料電池触媒電極であることができ、これにより、前記触媒層は、上記で記載した燃料電池触媒電極の触媒層であることができる。
【0070】
本発明の一実施形態によると、前記正極の触媒層は、触媒金属および触媒金属が担持された導電材を含むことができる。前記正極の触媒は、酸素の還元反応を促進する金属を含むことができ、具体的な例として、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、バナジウムおよびこれらの合金などであることができる。また、前記導電材は、活性化炭素であることができる。また、前記正極の触媒層は、バインダーとして、前記燃料電池触媒電極のバインダーと同じイオン伝導性高分子を含むことができる。
【0071】
本発明の一実施形態によると、前記高分子電解質膜は、イオン伝導性高分子であることができ、上記で記載した燃料電池触媒電極のバインダーと同じイオン伝導性高分子であることができる。さらに他の例として、前記イオン伝導性高分子は、スルホン酸基を含むイオン伝導性高分子であることができる。
【0072】
本発明の一実施形態によると、スルホン酸基を含むイオン伝導性高分子は、フッ素系高分子、炭化水素系高分子および部分フッ素系高分子からなる群から選択される1種以上の高分子がスルホン化されていてもよく、この場合、水素イオン伝導性および反応ガス遮断性に優れる効果がある。
【0073】
本発明の一実施形態によると、前記スルホン化フッ素系高分子は、ポリ(パーフルオロスルホン酸)、ポリ(パーフルオロカルボン酸)およびスルホン酸基を含むテトラフルオロエチレンとフルオロビニルエーテルの共重合体からなる群から選択される1種以上であることができる。
【0074】
本発明の一実施形態によると、前記スルホン化炭化水素系高分子は、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリアリールエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン、スルホン化ポリベンゾイミダゾール、スルホン化ポリスルホン、スルホン化ポリスチレン、スルホン化ポリホスファゲン、スルホン化ポリエーテルエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルスルホン、スルホン化ポリエーテルベンゾイミダゾール、スルホン化ポリアリレンエーテルケトン、スルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化ポリスタイレン、スルホン化ポリイミダゾール、スルホン化ポリエーテルケトンケトンおよびスルホン化ポリアリールエーテルベンゾイミダゾールからなる群から選択される1種以上であることができる。
【0075】
本発明の一実施形態によると、前記スルホン化部分フッ素系高分子は、スルホン化ポリ(アリレンエーテルスルホン-コ-ビニリデンプロライド)、スルホン化トリフルオロスチレン-グラフト-ポリ(テトラフルオロエチレン)およびスチレン-グラフトスルホン化ポリビニリデンフルオライドからなる群から選択される1種以上であることができる。
【0076】
本発明の一実施形態によると、前記膜電極接合体は、負極;正極;負極と正極との間に介在された高分子電解質膜を互いに密着させた状態で熱圧着などの圧着によって製造されることができる。また、前記膜電極接合体は、高分子電解質膜の一面、または両面に負極と正極の触媒層を形成するための触媒層スラリーを直接塗布および乾燥して製造されることができる。
【0077】
本発明の一実施形態によると、前記ガス拡散層は、微細気孔層(Micro-Porous Layer、MPL)と、マクロ気孔支持体(Macro-Porous Substrate)の二重層構造で構成されることができる。前記微細気孔層は、アセチレンブラックカーボン(Acetylene Black Carbon)、ブラックパールカーボン(Black Pearls Carbon)などの炭素粉末とポリテトラフルオロエチレン(Polytetrafluoroethylene、PTFE)系の疎水性物質(Hydrophobic Agent)を混合して製造した後、用途に応じて、マクロ気孔支持体の一面または両面に塗布されることができる。前記マクロ気孔支持体は、炭素繊維およびポリテトラフルオロエチレン系の疎水性物質で構成されることができ、具体的な例として、炭素繊維クロス(Cloth)、炭素繊維フェルト(Felt)および炭素繊維ペーパー(Paper)型などの炭素繊維が使用されることができる。
【0078】
また、本発明は前記膜電極接合体を含む燃料電池を提供する。前記燃料電池は、スタック、燃料供給部および酸化剤供給部を含むことができる。
【0079】
本発明の一実施形態によると、前記スタックは、前記膜電極接合体を一つまたは二つ以上含むことができ、膜電極接合体が二つ以上含まれる場合には、これらの間に介在されるバイポーラプレートを含むことができる。前記バイポーラプレートは、外部から供給された燃料および酸化剤を膜電極接合体に伝達するとともに、負極および正極を直列に連結する伝導体の役割をする。
【0080】
本発明の一実施形態によると、前記燃料供給部は、燃料を前記スタックに供給することができ、燃料を貯蔵する燃料タンクおよび燃料タンクに貯蔵された燃料をスタックに供給するポンプを含むことができる。前記燃料としては、ガスまたは液体状態の水素または炭化水素燃料が使用されることができ、炭化水素燃料の例としては、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールなどのアルコール、または天然ガスであることができる。
【0081】
本発明の一実施形態によると、前記酸化剤供給部は、酸化剤を前記スタックに供給することができる。前記酸化剤としては、空気が代表的に使用されることができ、酸素または空気をポンプで注入して使用することができる。
【0082】
本発明の一実施形態によると、前記燃料電池は、高分子電解質膜燃料電池、直接液体燃料電池、直接メタノール燃料電池、直接ギ酸燃料電池、直接エタノール燃料電池、または直接ジメチルエーテル燃料電池などであることができる。
【0083】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施することができるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な相違する形態に実現されることができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【実施例0084】
ジプロピレングリコールと水を8:2の重量比で混合した溶媒100重量部に、PtCo合金触媒(Pt:Coの重量比8:1)13.6重量部およびバインダーとしてアイオノマー4.1重量部を投入し、均一に分散および混合して第1触媒スラリーを製造した。次に、第1触媒スラリーを乾燥した後、粉砕して第1触媒粉末を取得した。
【0085】
次いで、ジプロピレングリコールと水を8:2の重量比で混合した溶媒100重量部に、前記で製造されたPt担持触媒13.6重量部およびバインダーとしてアイオノマー4.1重量部を投入し、均一に分散および混合して第2触媒スラリーを製造した。次に、第2触媒スラリーを乾燥した後、粉砕して第2触媒粉末を取得した。
【0086】
その後、ジプロピレングリコールと水を8:2の重量比で混合した溶媒100重量部に、取得した第1触媒粉末18.0重量部および第2触媒粉末2.0重量部を投入し、均一に分散および混合して第3触媒スラリーを製造した。前記製造された第3触媒スラリーをフッ化ポリイミド(Fluorinated Polyimide、FPI)フィルム上に0.3mg/cmでコーティングし、乾燥させて燃料電池触媒電極を製造した。
【実施例0087】
第3触媒スラリーの製造時に、第1触媒粉末および第2触媒粉末をそれぞれ17.0重量部および3.0重量部投入した以外は、前記実施例1と同様の方法で燃料電池触媒電極を製造した。
【実施例0088】
第3触媒スラリーの製造時に、第1触媒粉末および第2触媒粉末をそれぞれ16.0重量部および4.0重量部投入した以外は、前記実施例1と同様の方法で燃料電池触媒電極を製造した。
【実施例0089】
第3触媒スラリーの製造時に、第1触媒粉末および第2触媒粉末をそれぞれ14.0重量部および6.0重量部投入した以外は、前記実施例1と同様の方法で燃料電池触媒電極を製造した。
(比較例1)
【0090】
ジプロピレングリコールと水を8:2の重量比で混合した溶媒100重量部に、PtCo合金触媒(Pt:Coの重量比8:1)13.6重量部およびバインダーとしてアイオノマー4.1重量部を投入し、均一に分散および混合して触媒スラリーを製造した。前記製造された触媒スラリーをフッ化ポリイミド(Fluorinated Polyimide、FPI)フィルム上に0.3mg/cmでコーティングし、乾燥させて燃料電池触媒電極を製造した。
(比較例2)
【0091】
PtCo合金触媒の代わりに、前記実施例1の過程で製造されたPt担持触媒を使用した以外は、比較例1と同様の方法で燃料電池触媒電極を製造した。
(比較例3)
【0092】
ジプロピレングリコールと水を8:2の重量比で混合した溶媒100重量部に、PtCo合金触媒(Pt:Coの重量比8:1)および前記実施例1の過程で製造されたPt担持触媒を90:10の重量比で含む混合触媒13.6重量部およびバインダーとしてアイオノマー4.1重量部を投入し、均一に分散および混合して触媒スラリーを製造した。前記製造された触媒スラリーをフッ化ポリイミド(Fluorinated Polyimide、FPI、FM2社製)フィルム上に0.3mg/cmでコーティングし、乾燥させて燃料電池触媒電極を製造した。
(実験例)
【0093】
前記実施例および比較例で製造された燃料電池触媒電極に対する性能測定を実施した。
【0094】
(膜電極接合体の製造)
ジプロピレングリコールと水を1:1の重量比で混合した溶媒100重量部に、PtCo合金触媒(Pt:Coの重量比6:4)および前記実施例1の過程で製造されたPt担持触媒を90:10の重量比で含む混合触媒13.6重量部およびバインダーとしてアイオノマー4.1重量部を投入し、均一に分散および混合して触媒スラリーを製造した。
【0095】
前記実施例1~4、および比較例1~3それぞれで製造された触媒スラリーを0.5mg/cmでコーティングし、乾燥させた。
【0096】
このような方法により、前記実施例1~4、および比較例1~3それぞれで製造された燃料電池触媒電極を正極とする膜電極接合体(MEA)を製造した。
(実験例)
【0097】
前記製造された膜電極接合体をセルに締結した後、単位電池性能曲線を測定した。単位電池性能は、負極に水素150ccm、正極に酸素150ccmを流し、常圧、セル温度75℃で測定した。
【0098】
単位電池の作動を開始する前に、湿度センサ(viasensoe HS-1000)を用いて、負極および正極の加湿装置を調節した。負極および正極の燃料供給ラインの温度を加湿装置の温度より高く維持して、水蒸気が凝縮しないようにした。燃料ガスの供給は、湿気のある水素ガスと湿気のある空気を一定の速度で供給しながら行われた。
【0099】
前記単位電池性能曲線測定は、RH50条件とRH100条件で実施された。
【0100】
図1には、実施例3および比較例1~3に対して、RH50条件で測定した単位電池性能曲線を、図2には、実施例3および比較例1~3に対して、RH100条件で測定した単位電池性能曲線を示した。
【0101】
図1および2を参照すると、PtCo合金触媒のみを使用した比較例1の燃料電池触媒電極の場合、1A/cm以下では相対的に高い出力を示しているが、1A/cm以上では相対的に大きい性能減少を示している。また、Pt担持触媒のみを使用した比較例2の場合、1A/cm以下では相対的に低い出力を示しているが、1A/cm以上では相対的に高い出力を示している。
【0102】
これに比べて、比較例3は、PtCo合金触媒およびPt担持触媒をともに使用して、比較例1の1A/cm以上での相対的に大きい性能減少および比較例2の1A/cm以下での相対的に低い出力を減少させることができたが、単純な触媒混合分散方式によって各触媒の利点を発現することができなかった。実施例3と比較すると、電流密度の増加による電圧降下程度が大きく、このような点は、RH100でさらに顕著であることを確認することができた。
【0103】
図1を参照すると、実施例3の燃料電池触媒電極を正極とする膜電極接合体(MEA)単位電池性能曲線は、低電流領域から高電流領域まで緩やかな曲線を描いて高電流領域で相対的に低い電圧降下を示し、特に、高電流領域での電圧降下が、比較例1~3に比べて低いことを確認することができる。これに対し、比較例1~3は、高電流領域に行くほど大きな電圧降下を示した。したがって、実施例3の燃料電池触媒電極は、別の触媒混合方式を適用して、高出力を要する燃料電池に適用する時に、優れた出力特性を発揮することができる。
【0104】
また、図2を参照すると、実施例3の燃料電池触媒電極を正極とする膜電極接合体(MEA)単位電池性能曲線は、RH100条件でも、比較例1~3に比べて、低電流領域から高電流領域まで緩やかな電圧降下を示し、高電流領域でも低い電圧降下を示した。
【0105】
一方、図3には、実施例1~4に対して、RH50条件で測定した単位電池性能曲線を、図4には、実施例1~4に対して、RH100条件で測定した単位電池性能曲線を示した。
【0106】
図3を参照すると、RH50条件で、実施例1、2および4は、それぞれ実施例3と電流密度による電圧降下の挙動が類似しており、図4を参照すると、RH100条件でも、実施例1、2および4は、それぞれ実施例3と電流密度による電圧降下の挙動が類似しており、実施例1は、1.5A/cm以上では、相対的に電圧降下が大きくなったが、1.5A/cmまでは、実施例3と類似する電流密度による電圧降下挙動を示した。
【0107】
これにより、実施例1~4の燃料電池触媒電極は、低い電流密度および高い電流密度でも、相対的に優れた効果を示すことを確認することができた。

図1
図2
図3
図4