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特開2024-170293光送受信機制御方法および光送受信機
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170293
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】光送受信機制御方法および光送受信機
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/43 20130101AFI20241129BHJP
【FI】
H04B10/43
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024073256
(22)【出願日】2024-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2023087324
(32)【優先日】2023-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ポスト5G情報通信システムの開発/ポスト5G情報通信システムにおけるテラビット光伝送システムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条第1項の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 徹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 直也
(72)【発明者】
【氏名】野村 義孝
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA16
5K102AA42
5K102AD01
5K102AH02
5K102AH14
5K102AH24
5K102AH26
5K102AH27
5K102LA04
5K102LA05
5K102LA14
5K102LA53
5K102MA02
5K102MB17
5K102MC23
5K102MD03
5K102MH03
5K102MH13
5K102MH22
5K102MH32
5K102PH01
5K102PH31
5K102RD05
5K102RD26
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】自己折り返し接続を含むポート接続状態に対応した利得制御が行えること。
【解決手段】光信号の送受信で共通のITLA121を含む光送受信機100において、制御部は、受信ポートに対する伝送路の接続状態が、自装置の送信ポートからの自己折り返し接続であるか否かを接続判定する(S906)。判定結果、自己折り返し接続の場合、制御部は、受信利得の制御をAGCから利得固定に切り替える(S907)。接続判定は、例えば、光源の周波数を所定量変化させたときに、受信側で検出した光信号の周波数に所定量の変化が検出された場合、自己折り返し接続と判定する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号の送受信用の光源を含む光送受信機の制御方法において、
受信ポートに対する伝送路の接続状態が、自装置の送信ポートからの自己折り返し接続であるか否かを接続判定し、
自己折り返し接続の場合、受信利得の制御をAGCから利得固定に切り替える、
ことを特徴とする光送受信機制御方法。
【請求項2】
前記接続判定は、
前記光源の周波数の変化に対する、前記光信号と局発光の間の周波数オフセット量の変化に基づいて、自己折り返し接続か、そうでないかを判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光送受信機制御方法。
【請求項3】
前記接続判定は、
前記光源の周波数を所定量変化させたときに、受信側で検出した前記光信号の周波数に前記所定量の変化が検出された場合、自己折り返し接続と判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光送受信機制御方法。
【請求項4】
前記接続判定において、
前記光源の周波数を所定量変化させ、受信側での周波数を検出する処理を複数回行い、
当該複数回の全てで、受信側で検出した前記光信号と局発光の間の周波数オフセット量が予め定めた閾値の範囲内であれば、自己折り返し接続と判定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の光送受信機制御方法。
【請求項5】
前記接続判定は、
前記光源の周波数を所定量変化させたときに、受信側で検出した前記光信号と局発光の間の周波数オフセット量が予め定めた閾値の範囲外であれば、前記伝送路の接続状態が対向接続と判定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の光送受信機制御方法。
【請求項6】
前記接続判定は、
前記送信ポートから送信する光信号の空き領域に自装置に固有のIDを挿入し、
前記受信ポートを介して受信した光信号に自装置の前記IDが含まれていることを検出した場合、前記自己折り返し接続と判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光送受信機制御方法。
【請求項7】
前記切り替えの後、
受信処理した受信データでのエラーの発生の有無を判断し、
エラー時には、前記接続判定処理を再実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光送受信機制御方法。
【請求項8】
前記光源は、光信号の送受信で共通の光源であることを特徴とする請求項1に記載の光送受信機制御方法。
【請求項9】
前記光源は、光信号の送信側と、受信側とで異なる光源であり、
前記接続判定は、
受信側の前記光源の周波数を変化しない状態での第1受信データと、受信側の前記光源の周波数を所定量変化させた状態での第2受信データと、に基づき、自己折り返し接続か、そうでないかを判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の光送受信機制御方法。
【請求項10】
前記接続判定は、
受信側の前記光源の周波数を変化しない状態での第1受信データと、受信側の前記光源の周波数を所定量変化させた状態での第2受信データと、前記第2の受信データでの前記所定量の変化分を元に戻す演算を行った第3データと、に基づき、
前記第1受信データの信号帯域に対する前記第2受信データの信号帯域の一致/不一致、
および前記第1受信データの信号帯域に対する前記第3データの信号帯域の一致/不一致、の組合せにより自己折り返し接続か、そうでないかを判定する、
ことを特徴とする請求項9に記載の光送受信機制御方法。
【請求項11】
前記接続判定は、
受信側の前記光源の周波数を第1方向に所定量変化させた状態での第1受信データと、受信側の前記光源の周波数を前記第1方向と異なる第2方向に所定量変化させた状態での第2受信データと、前記第2の受信データに対して前記第1方向と第2方向の絶対値加算分を元に戻す演算を行った第3データと、に基づき、
前記第1受信データの信号帯域に対する前記第2受信データの信号帯域の一致/不一致、
および前記第1受信データの信号帯域に対する前記第3データの信号帯域の一致/不一致、の組合せにより自己折り返し接続か、そうでないかを判定する、
ことを特徴とする請求項9に記載の光送受信機制御方法。
【請求項12】
光信号の送受信用の光源を含む光送受信機において、
受信ポートに対する伝送路の接続状態が、自装置の送信ポートからの自己折り返し接続であるか否かを接続判定し、
自己折り返し接続の場合、受信利得の制御をAGCから利得固定に切り替える、
制御部を有することを特徴とする光送受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光送受信機制御方法および光送受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
光送受信機は、例えば、光送信装置(CDM)と、光受信装置(ICR)を含む。CDMはCoherent Driver Modulator、ICRはIntegrated Coherent Receiverの略である。従来、光送信装置と光受信装置は、それぞれ光デジタルコヒーレント伝送のために局発光用の光源を個別に有していた。
【0003】
また、1個の光源、例えば、ITLA(Integrable Tunable Laser Assembly)の光を光送信装置および光受信装置で共用することで、光源数を減らし、光送受信機のサイズ小型化および省電力化できるようになる。また、光受信装置では、受信した光信号に対し、AGC(Auto Gain Control)等の利得制御がなされる。
【0004】
また、製品の納入時の動作確認試験などにおいて、送信側装置と受信側装置とを同一の装置を用いて評価する場合がある。この場合、単一の光送受信装置の送信ポートを光ファイバで自装置の受信ポートに自己折り返し接続する。
【0005】
従来、利得調整にかかる先行技術としては、例えば、光信号のレベルまたはRF信号のレベルを閾値と比較し、比較結果に応じてAGCの有無を切り替える光受信機がある。また、各ハイブリッド増幅器のラマンの励起時、反射アラームが存在しない場合、入力光パワーに応じて利得偏差を計算し、利得偏差にしたがってラマンの利得を調整し、調整後にAGC動作モードに切り替えるカスケードハイブリッド増幅器がある。また、光波長分割多重伝送装置に入力される波長数の変化により、光アンプをAGCに切り替え、各波長の光信号のパワーレベルが調整された後、再び光アンプをALC(Automatic Level Control)に切り替えるものがある。(例えば、下記特許文献1~3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-172147号公報
【特許文献2】米国特許第10686525号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2004/0202469号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、送信側と受信側の光源が共通な光送受信機において自己折り返し接続した場合、AGCの利得制御を行うと、送信側と受信側の周波数オフセットが0となり信号成分が歪み、信号のエラーが発生する可能性が生じる。この場合、例えば、動作確認試験を正常に行えなくなり、例えば、光送受信機の故障であるか、それ以外の伝送路等での問題であるかを切り分けできなくなる。
【0008】
一つの側面では、本発明は、自己折り返し接続を含むポート接続状態に対応した利得制御が行えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によれば、光信号の送受信用の光源を含む光送受信機の制御方法において、受信ポートに対する伝送路の接続状態が、自装置の送信ポートからの自己折り返し接続であるか否かを接続判定し、自己折り返し接続の場合、受信利得の制御をAGCから利得固定に切り替える、ことを要件とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、自己折り返し接続を含むポート接続状態に対応した利得制御が行えるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態にかかる光送受信機の説明図である。
図2図2は、光送受信機の接続状態を示す図である。
図3A図3Aは、送受信の周波数オフセット量がゼロでエラーが生じる説明図である。(その1)
図3B図3Bは、送受信の周波数オフセット量がゼロでエラーが生じる説明図である。(その2)
図3C図3Cは、送受信の周波数オフセット量がゼロでエラーが生じる説明図である。(その3)
図4図4は、自己折り返しの判定例1の説明図である。
図5図5は、判定例1による自己折り返し接続の判定の説明図である。
図6図6は、判定例1による対向接続の判定の説明図である。
図7図7は、光送受信機の判定例1の機能ブロック図である。
図8図8は、光送受信機の制御部のハードウェア構成例を示す図である。
図9図9は、判定例1による自己折り返し判定の処理例を示すフローチャートである。
図10図10は、判定例1の処理における周波数オフセットの変更の具体例を示すフローチャートである。
図11図11は、判定例1の処理における周波数オフセットと閾値との関係の説明図である。
図12図12は、自己折り返しの判定例2の説明図である。
図13図13は、光送受信機の判定例2の機能ブロック図である。
図14図14は、判定例2による自己折り返し判定の処理例を示すフローチャートである。
図15図15は、他の実施の形態にかかる光送受信機の構成例を示すブロック図である。
図16図16は、受信側制御部の機能を示すブロック図である。
図17図17は、受信側のレーザ周波数の変更と自己折り返し接続の有無との対応の説明図である。
図18図18は、他の実施の形態における自己折り返し接続の判定処理例を示すフローチャートである。
図19A図19Aは、自己折り返し接続時の判定信号生成部の各部のデータ例を示す図である。
図19B図19Bは、自己折り返し接続でない時の判定信号生成部の各部のデータ例を示す図である。
図20図20は、自己折り返し接続の有無の判定条件を示す図表である。
図21図21は、他の実施の形態の変形例の説明図である。
図22図22は、他の実施の形態の変形例における受信側制御部の機能を示すブロック図である。
図23図23は、他の実施の形態の変形例における自己折り返し接続の判定処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照して、開示の光送受信機の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
(実施の形態の光送受信機の構成例)
図1は、実施の形態にかかる光送受信機の説明図である。光送受信機100は、例えば、デジタルコヒーレントの光送受信機である。光送受信機100は、光送信装置100aとして、CDM101、送信部(Tx)102を含む。また、光受信装置100bとして、受信部(Rx)111、ICR112を含む。
【0014】
光源には、例えば、ITLA121が用いられ、ITLA121は、光送信装置100aのCDM101および光受信装置100bのICR112に共通の光信号(局発光)を出力する。DSP(Digital Signal Prosessor)131は、光送信装置100aのCDM101に送信データを出力し、光送信装置100aのICR112から受信データが入力され、送信側および受信側の信号処理を行う。後述するが、DSP131は、光送信装置100aの送信データ処理を行う送信側DSPと、光受信装置100bの受信データ処理を行う受信側DSPと、を含む。
【0015】
1台の光送受信機100内部で光送信装置100aと光受信装置100bで共通の光源(ITLA121)を用いるのは、業界の標準規格になっている(例えば、下記技術資料1、p13等参照。)。
【0016】
技術資料1:Implementation Agreement for Integrated Coherent Transmit-Receive Optical Sub Assembly、OIF-IC-TROSA-01.0、August20,2019
【0017】
送信部102は、送信ポート102aから光信号を送信出力する。受信部111は、受信ポート111bに入力された光信号を受信する。
【0018】
実施の形態の光送受信機100は、受信ポート111bに対するファイバ接続が、自己折り返し接続であるか否かを判定する機能を有する。光送受信機100は、自己折り返し接続の場合には、利得制御をAGC制御からゲイン固定制御(MGC:Manual Gain Control)に切り替える。
【0019】
自己折り返し接続は、図1に示すように、単一の光送受信機100の送信ポート102aと受信ポート111b同士を伝送路(光ファイバ)140で接続した状態である。これに対し、一方の光送受信機100の光送信装置100aの送信ポート102aに伝送路の一端を接続し、伝送路の他端を他方の光送受信機100の光受信装置100bの受信ポート111bに接続した状態を対向接続と言う。光伝送の実運用では、光送受信機100を対向接続する。
【0020】
そして、実施の形態の光送受信機100は、自己折り返し接続であるか否かの接続判定を、光源の周波数の変化に対する、光信号と局発光の間の周波数オフセット量の変化に基づいて判定する。例えば、下記判定例1,2のいずれかで判定する。光送受信機100は、自己折り返し接続以外は、対向接続であると判定する。
【0021】
(判定例1)ITLA121の局発光の周波数を所定のオフセット量で変化させ、その際、光受信装置100bで検出した周波数とオフセット量が変わらない(同じ)場合には、ファイバ接続が自己折り返し接続であると判定する。光送受信機100は、この自己折り返しの判定結果を外部出力することで、運用者等に通知することとしてもよい。
【0022】
(判定例2)送信する光信号のパイロットシンボルの空き領域に、光送受信機100あるいは光送信装置100aに固有のID(識別子の情報)を埋め込む。そして、光受信装置100bで受信したIDが、自装置(光送受信機100)のIDと一致するか判定し、一致した場合には、ファイバ接続が自己折り返し接続であると判定する。
【0023】
このように、実施の形態によれば、光送信装置および光受信装置の光源が共通である光送受信機であっても、ポート接続状態が自己折り返し接続であるか否かを装置自体で判定できるようになる。そして、自己折り返し接続検出時には、自己折り返し接続の状態に対応して光送受信機100の利得制御を適切に切り替える。例えば、通常運用では、利得制御をAGC制御しているが、自己折り返し接続状態でAGC制御を行うと、上記のように、受信信号にエラーが発生して動作確認試験を正常に行えなくなる等の問題を生じるが、ゲイン固定制御に切り替えることで、この問題を回避できるようになる。
【0024】
(自己折り返し接続の課題)
ここで、図2図3A図3Cを用い、自己折り返し接続で生じる課題について説明しておく。
【0025】
図2は、光送受信機の接続状態を示す図である。図2(a)は、2台の光送受信機100,100を対向接続した状態である。「対向接続」では、一方の光送受信機100の光送信装置100aの送信ポート102aに伝送路140の一端を接続し、伝送路140の他端を他方(対向局)の光送受信機100の光受信装置100bの受信ポート111bに接続する。通常の運用時には、光送受信機100,100を対向接続し、光信号の送受信を行う。通常の運用では、自己折り返し接続(光信号の送受信が同一装置)で使用するケースはない。
【0026】
図2(b)は、1台の光送受信機100を自己折り返し接続した状態である。自己折り返し接続は、例えば、光送受信機100の製品出荷時等の初期起動時に、信号が疎通しない等の不具合が生じた際に行い、正常に起動するかを確認している。この確認では、運用者は、光送受信機100の故障であるのか、それ以外の伝送路140等の箇所に問題があるかを切り分ける作業を行う。ここで、光送受信機100自体が有する問題であるのか、伝送路140上での問題であるのかを判定する切り分け作業が非常に重要となっている。この自己折り返し接続の状態でエラーが発生した場合、切り分け作業ができなくなる。
【0027】
ここで、図2(b)に示すように、ITLA121が送受信用に共通である1台の光送受信機100において、自己折り返し接続を行った場合を仮定する。この場合、光送信装置100a(CDM101)側と光受信装置100b(ICR112)側の光信号の周波数が同一(周波数オフセットが0)になり、DSP131では、受信信号にエラーが発生する。
【0028】
1台の光送受信機100でITLA121が出力する光信号が送受信で共通な構成では、周波数オフセットがICR112のAGC帯域に入ると、信号成分がつぶされることで信号劣化が生じる。例えば、64QAMのような多値変調の場合は最悪バーストエラーが生じる。自己折り返しでエラーが生じることで、運用者は、上記の切り分け作業が行えず不具合の原因を特定できず、不具合に対する適切な対処が行えなくなる。
【0029】
図3A図3Cは、送受信の周波数オフセット量がゼロでエラーが生じる説明図である。図3Aは、光送受信機100の光受信装置100bを示す図である。伝送路140からのWDMの光信号とITLA121の局発光LOは、ICR112の90度ハイブリッド回路301で干渉され、PD(Photo Detector)302で光電変換される。
【0030】
ICR112内部において、PD302が検出した光パワーはTIA303により光増幅された後、受信側DSP131bのADC304に出力される。ADC304は、光パワーをAD変換し、DSP Core305で信号処理され、受信データとして出力される。TIA303は、AGCのループ制御により光パワーが利得制御される。
【0031】
図3Bは、周波数オフセットがある場合の説明図である。送受信の光信号に周波数オフセットがある場合、図3B(a)に示すIQ軸コンスタレーションで見て、各信号点(シンボル)Pの振幅の時間的変動が発生せず、受信側DSP131bへの入力が平滑化される。
【0032】
図3B(b)は、横軸が時間、縦軸がTIA303のRMSモニタレベルであり、周波数オフセットにより、シンボル間遷移の低域成分もRMSモニタ帯域外にシフトすることで平滑化され、RMSモニタ値は一定となる。
【0033】
図3B(c)は、横軸が時間、縦軸がTIA303の出力レベルであり、AGC制御によりシンボル遷移に対して影響を与えず一定となる。
【0034】
図3Cは、周波数オフセットがない場合の説明図である。送受信の光信号に周波数オフセットがない場合、図3C(a)のIQ軸コンスタレーション上でシンボルの振幅の時間的変動が発生するため、帯域内の低域成分が変動し、信号成分に影響を与える。
【0035】
例えば、周波数オフセット量が、0の場合を含めICR112のAGC帯域(例えば、10MHz)の領域に入る値の場合、図3C(b)に示すように、シンボル間遷移の低域成分がRMSモニタの帯域内で変動して見える。
【0036】
この場合、図3C(c)に示すように、TIA303の出力レベルは、シンボル遷移の低域成分が影響を受けてエラーを生じ信号劣化する。例えば、64QAMのような多値変調の場合、バーストエラーが生じる。
【0037】
光送信装置の光源と、光受信装置の光源とが独立した構成においては、自己折り返し接続時であっても上述した周波数オフセットの問題は生じない。しかし、実施の形態で前提とする光送受信機100のように、光送信装置100aと、光受信装置100bとで共通の光源(ITLA121)を用いる構成では、自己折り返し接続時、上記の周波数オフセットによるエラー発生の問題が生じることになる。この問題に対応するため、実施の形態では、上述したように、受信ポート111bに一端が接続された伝送路(光ファイバ)140が、自己折り返し接続であるか否かを判定する。
【0038】
上述したAGCについて、伝送路140におけるWDMの波長数の急変があると、WDMの光信号を増幅する光アンプの問題により、光信号のレベルが急変することがある。そのような場合でも光信号がノイズに埋もれないようにDSP131への入力レベルをAGCにより揃えている。
【0039】
ここで、光送受信機100を対向接続により伝送路140に接続する通常の運用では、受信側での光信号の入力パワーが時間的に変動するため、AGCが必要となる。これに対し、自己折り返し接続の状態では、入力パワーは時間的に変動しないことになる。このため、実施の形態の光送受信機100では、自己折り返し接続を検出した場合、例えば、AGCからゲイン固定制御(MGC:Manual Gain Control)に切り替えを行うこととし、制御上の問題は生じない。
【0040】
(判定例1の詳細説明)
図4は、自己折り返しの判定例1の説明図である。判定例1では、ITLA121の局発光fMHzの周波数設定を周波数オフセット量分変更させる。その際、光受信装置100bで検出した周波数オフセット量が変わらない(同じ)場合には、光送受信機100は、ファイバ接続が自己折り返し接続であると判定する。光送受信機100は、下記の処理を実行する。
【0041】
1.ITLA121の周波数を変更する前に、DSP131の受信側のモニタ131mを用いて周波数オフセット量を測定する。
2.ITLA121の周波数を変動させ、DSP131の受信側のモニタ131mを用いて周波数オフセット量を測定する。
3.上記1.2.の処理を複数回繰り返す。
4.所定の判定条件に基づいて、自己折り返し接続であるか否かを判定する。詳細な判定条件は後述する。
【0042】
ここで、ITLA121は、送受信で共通であるため、自己折り返し接続である場合にはFine tune設定を変えてもDSP131のモニタ131mは、ほぼ0のまま検出することになる。
【0043】
図5は、判定例1による自己折り返し接続の判定の説明図である。図5(a)に示すように、ITLA121の周波数設定をΔfMHzに設定する。そして、受信側DSP131を通じ、ITLA121の周波数設定をf+ΔfMHzに変更する。受信側DSP131のモニタ131mは、オフセット量を検出する。
【0044】
そして、図5(b)に示すように、周波数オフセット設定がΔfまで変化したとき、光送信装置100aからの光信号とITLA121の周波数がいずれもf+ΔfMHzであったとする。この場合、受信側DSP131のモニタ131mがオフセット量≒0MHzを検出した場合、自己折り返し接続であると判定する。
【0045】
図6は、判定例1による対向接続の判定の説明図である。図6(a)に示すように、対向接続では、一方の光送受信機100の光送信装置100aの送信ポート102aに伝送路140の一端が接続されている。また、伝送路140の他端が他方(対向局)の光送受信機100の光受信装置100bの受信ポート111bに接続されている。
【0046】
ここで、図5(a)同様に、まず、ITLA121の周波数設定をΔfMHzに設定する。そして、受信側DSP131を通じ、ITLA121の周波数設定をf+ΔfMHzに変更する。受信側DSP131のモニタ131mは、オフセット量を検出する。
【0047】
そして、図6(b)に示すように、周波数オフセット設定がΔfまで変化したとき、光送信装置100aからの光信号はfMHz、受信側のITLA121の周波数はf+ΔfMHzとなる。この場合、受信側DSP131のモニタ131mは、周波数オフセット量≒ΔfMHzを検出し、周波数オフセット量が変化するため、自己折り返し接続ではなく対向接続であると判定する。
【0048】
(判定例1の機能ブロック図)
図7は、光送受信機の判定例1の機能ブロック図である。図7に示す光送受信機100に示す点線は光ファイバ等による光経路、実線は電気信号経路である。図7において、図1および図3(受信側)と同様の構成には同じ符号を付してある。
【0049】
ITLA121は、光送信装置100a(CDM101)および光受信装置100b(90度ハイブリッド回路301)に局発光を出力する。
【0050】
光送受信機100の光送信装置100aは、送信側DSP131a、DAC702、CDM101、送信側制御部701を含む。送信側制御部701は、光信号の送信にかかるITLA121、送信側DSP131a、CDM101を制御する。
【0051】
光受信装置100bは、90度ハイブリッド回路301、PD302、TIA303、ADC304、受信側DSP131b、受信側制御部703を含む。
【0052】
受信側制御部703は、周波数オフセット読み出し部711、自己折り返し判定部712、周波数設定部713、利得モード設定部714を含む。
【0053】
周波数オフセット読み出し部711は、受信側DSP131bがモニタ検出した周波数オフセット量を読み出し、自己折り返し判定部712に出力する。周波数設定部713は、ITLA121が出力する光源の周波数(周波数オフセットを含む)を設定する。
【0054】
自己折り返し判定部712は、周波数オフセットを変更した前後のそれぞれで周波数オフセット読み出し部711が読み出した周波数オフセット量に基づき、自己折り返し接続であるか否かを判定する。
【0055】
利得モード設定部714は、TIA303の利得制御にかかる利得モードを変更可能に設定する。利得モード設定部714は、通常の運用時(対向接続時)、TIA303の利得モードをAGCに設定する。また、自己折り返し判定部712の判定結果が「自己折り返し」の場合、利得モードを「AGC」→「利得固定(MGC)」に設定変更する。
【0056】
(光送受信機の制御部のハードウェア構成例)
図8は、光送受信機の制御部のハードウェア構成例を示す図である。例えば、光送受信機100の送信側制御部701、および受信側制御部703は、それぞれ、図8に示す汎用のハードウェアにより構成できる。
【0057】
例えば、受信側制御部703は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ801と、メモリ802と、ネットワークIF803と、記録媒体IF804と、記録媒体805とを有する。また、各構成部は、バス800によってそれぞれ接続される。
【0058】
ここで、プロセッサ801は、受信側制御部703全体の制御を司る制御部である。プロセッサ801は、複数のコアを有していても良くい。メモリ802は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびフラッシュROMなどを有する。具体的には、例えば、フラッシュROMが制御プログラムを記憶し、ROMがアプリケーションプログラムを記憶し、RAMがプロセッサ801のワークエリアとして使用される。メモリ802に記憶されるプログラムは、プロセッサ801にロードされることで、コーディングされている処理をプロセッサ801に実行させる。
【0059】
ネットワークIF803は、ネットワークNWと受信側制御部703とのインタフェースを司り、受信側制御部703外部との間で情報の入出力を制御する。
【0060】
記録媒体IF804は、プロセッサ801の制御にしたがって記録媒体805に対するデータのリード/ライトを制御する。記録媒体805は、記録媒体IF804の制御で書き込まれたデータを記憶する。
【0061】
なお、受信側制御部703は、上述した構成部のほかに、例えば、入力装置、ディスプレイなどを、IFを介して接続可能としてもよい。
【0062】
図8に記載のプロセッサ801は、プログラム実行により、図7に記載の受信側制御部703の機能を実現できる。
【0063】
図8に示した受信側制御部703のハードウェア構成は、光送受信機100を有する光受信器の制御部の一機能とすることもできる。この場合、図8に示したハードウェア構成によって、光受信装置100bによる光受信処理にかかる機能に加えて、実施の形態の光送受信機100による自己折り返し接続の有無の判定にかかる制御機能を実現する。
【0064】
また、送信側制御部701についても、図8に示すハードウェア構成を用いて機能実現でき。さらには、送信側制御部701および受信側制御部703は、図8に示すハードウェア構成を共用してもよい。
【0065】
(判定例1の処理例)
図9は、判定例1による自己折り返し判定の処理例を示すフローチャートである。図9の処理は、例えば、光送受信機100の制御部(受信側制御部703、プロセッサ801)が実行処理する。
【0066】
制御部は、装置起動(ステップS901)により、下記処理を行う。はじめに、制御部は、起動時における周波数オフセットを受信側DSP131bのモニタ131mにより測定する(ステップS902)。制御部は、測定した周波数オフセット量(値)を保持する。
【0067】
次に、制御部は、ITLA121による受信側局発光の周波数を変更し(ステップS903)、受信側DSP131bのモニタ131mによりこのときの周波数オフセットを測定する(ステップS904)。
【0068】
この後、制御部は、受信側局発光の周波数を変えて、周波数オフセットを測定する処理を複数回繰り返す(ステップS905)。制御部は、周波数をfからf+Δfのように変更し、各回におけるオフセット値を保持する。
【0069】
制御部は、ステップS905での処理が複数回になるまで(ステップS905:No)、ステップS903に戻る処理を複数回ループ実行する。そして、制御部は、複数回の処理実行により(ステップS905:Yes)、ステップS906の処理に移行する。
【0070】
ステップS906では、制御部は、送信側と受信側が同一の局発光であるか否かを判定する(ステップS906)。例えば、制御部は、ステップS902で測定した周波数オフセット量と、ステップS904で測定した複数回の周波数オフセット量が、すべて所定の範囲に収まっているか否かを判定する。
【0071】
制御部は、判定結果が所定の範囲内であれば(ステップS906:Yes)、送信側と受信側の局発光が同じであり、送受信が同一ポート(自己折り返し接続)と判定し、ステップS907の処理に移行する。一方、判定結果が所定の範囲外であれば(ステップS906:No)、送信側と受信側の局発光が異なり、送受信が別ポート(対向接続)と判定し、以上の処理を終了する。
【0072】
制御部は、ステップS906での判定結果を外部出力してもよい。例えば、自己折り返し接続の状態を表示出力することで、運用者に対し、光送受信機100に対する伝送路140の接続状態が自己折り返しであることを通知できる。
【0073】
ステップS907では、制御部は、TIA303の利得制御をAGCから利得固定制御(MGC)に切り替える(ステップS907)。この後、制御部は、受信側DSP131bでエラーが発生しているか否かを判定する(ステップS908)。制御部は、判定結果、エラーがあれば(ステップS908:No)、ステップS901の処理に戻る。一方、判定結果、エラーがなければ(ステップS908:Yes)、以上の処理を終了する。
【0074】
(周波数オフセットの変更処理の具体例)
図10は、判定例1の処理における周波数オフセットの変更の具体例を示すフローチャートである。図10は、図9に示したステップS902~ステップS906の処理の詳細例に相当する。
【0075】
制御部は、周波数オフセットの変更について、複数回処理を行う回数cntを予め定め、nとする。また、制御部は、周波数オフセットの範囲を決める閾値を、Δf_thとする。
【0076】
はじめに、制御部は、処理回数cnt=0(初期値)を設定する(ステップS1001)。次に、制御部は、起動時における周波数オフセットを受信側DSP131bのモニタ131mにより測定する(ステップS1002)。制御部は、この際に測定した周波数オフセットをf_offsetとして保持する。そして、制御部は、cntをインクリメントする(ステップS1003)。
【0077】
次に、制御部は、ITLA121による受信側局発光の周波数を変更する(ステップS1004)。例えば、fMHz→f+Δfに変更する。そして、制御部は、受信側DSP131bのモニタ131mによりこのときの周波数オフセットを測定する(ステップS1005)。制御部は、この際に測定した周波数オフセットをf_offset_cntとして保持する。
【0078】
この後、制御部は、cntがn以上であるか否かを判定する(ステップS1006)。判定結果、cntがn未満であれば(ステップS1006:No)、制御部は、ステップS1003の処理に戻る。一方、判定結果、cntがn以上であれば(ステップS1006:Yes)、制御部は、ステップS1007の処理に移行する。以上により、制御部は、受信側局発光の周波数を変えて、周波数オフセットを測定する処理を複数回nだけ繰り返す。
【0079】
そして、制御部は、周波数オフセットを変えて測定したn個のf_offset_cntがすべて閾値の範囲内(f_offset-Δf_th以上、f_offset+Δf_th以下)であるか以中を判断する。(ステップS1007)。
【0080】
ステップS1007の判断結果、n個のf_offset_cntがすべて閾値の範囲内であれば(ステップS1007:Yes)、制御部は、伝送路140が自己折り返し接続であると判断し、TIA303の利得制御をAGCから利得固定制御(MGC)に切り替え(ステップS1008)、以上の処理を終了する。
【0081】
一方、ステップS1007での判定結果が所定の範囲外であれば(ステップS1007:No)、制御部は、送信側と受信側の局発光が異なり、送受信が別ポート(対向接続)と判定し、特別な処理を行わず、以上の処理を終了する。
【0082】
図11は、判定例1の処理における周波数オフセットと閾値との関係の説明図である。横軸は周波数、縦軸は光パワーである。なお、パワーの値は省略し、周波数軸上での測定値の位置を示している。図11を用いて、図10で説明したf_offset、f_offset_cnt、閾値の範囲(f_offset-Δf_th、f_offset+Δf_th)について説明する。
【0083】
図11(a)は、f_offset、f_offset_cnt、下限および上限の閾値(f_offset-Δf_th、f_offset+Δf_th)の関係を示す。ステップS1007では、f_offsetを中心に設定した閾値(f_offset-Δf_thとf_offset+Δf_th)の範囲内にf_offset_cntが位置しているか否かを判定する。送信側で変化させるオフセット量は、この閾値の範囲内で変化させる。
【0084】
例えば、図11(b)に示すように、複数回n測定したf_offset_cntが閾値(f_offset-Δf_thとf_offset+Δf_th)の範囲内に位置している状態を示す。この場合、制御部は、自己折り返し接続と判定する。図11(c)に示すように、複数回n測定したf_offset_cntが閾値の範囲外の場合には、制御部は、自己折り返し接続でないと判定する。
【0085】
(判定例2の詳細説明)
図12は、自己折り返しの判定例2の説明図である。判定例2では、光送受信機100は、送信する光信号Sに、光送信装置100a(光送受信機100)のIDを埋め込む。そして、光受信装置100bで受信したIDが、自身(光送受信機100)のIDと一致するか判定し、一致した場合には、伝送路140が自己折り返し接続であると判定する。
【0086】
図12に示すように、光信号Sは、データ同期に使用する領域、トレーニングシーケンス(TS)、パイロットシンボル(PS)、空き領域(Stuff)を含む。そして、光送信装置100aの制御部は、空き領域に自装置のIDとしてポート情報、例えば、製品の型格、シリアルナンバー等を埋め込む。
【0087】
挿入する空き領域は、QPSKにおいてエラーが発生しにくい領域であり、送信できない事象は起こらない。ファームウェア上でFEC(Forward Error Correction)もパイロットシンボルPSに埋め込んでエラー訂正を行っている。なお、挿入するデータにFECを行っており、送信側DSP131a内でFECを行っているわけではない。
【0088】
(判定例2の機能ブロック図)
図13は、光送受信機の判定例2の機能ブロック図である。図13において、判定例1(図7)同様の構成には同じ符号を付している。図13に示す構成例では、判定例1(図7)に対し、周波数設定部713の構成が省かれ、また、受信側制御部703は、ID読み出し部1301を備えた点が異なる。
【0089】
判定例2では、光送受信機100の光送信装置100aの送信側制御部701は、送信する光信号の空き領域に自装置(光送受信機100)のID、例えば、送信ポート102aのポート情報を埋め込み送信する。
【0090】
光受信装置100bのID読み出し部1301は、受信した光信号の空き領域に含まれるIDを読み出す。自己折り返し判定部712は、ID読み出し部1301が読み出したIDが自装置のIDに一致するか否かに基づき、自己折り返し接続であるか否かを判定し、判定結果を利得モード設定部714に出力する。
【0091】
(判定例2の処理例)
図14は、判定例2による自己折り返し判定の処理例を示すフローチャートである。図14の処理は、例えば、光送受信機100の制御部(送信側制御部701および受信側制御部703、プロセッサ801)が実行処理する。
【0092】
はじめに、送信側制御部701は、装置起動(ステップS1401)により、送信データに自装置のIDを挿入する(ステップS1402)。挿入するIDは、例えば、自装置(光送受信機100)の送信ポート102aのポート情報であり、例えば、メモリ802に記憶保持されている。
【0093】
次に、受信側制御部703は、受信ポート111bを介して受信した受信データからID(ポート情報)を抽出する(ステップS1403)。次に、受信側制御部703は、送信側と受信側のIDが一致するか否かを判定する(ステップS1404)。自装置のメモリ802に記憶されたID(ポート情報)が受信データから抽出したID(ポート情報)に一致しなければ(ステップS1404:No)、受信側制御部703は、対向接続であると判定し、特別な処理を行わず、以上の処理を終了する。
【0094】
受信側制御部703は、自装置のメモリ802に記憶されたID(ポート情報)が受信データから抽出したID(ポート情報)に一致すれば(ステップS1404:Yes)、伝送路140が自己折り返し接続であると判定する。そして受信側制御部703は、TIA303の利得制御をAGCから利得固定制御(MGC)に切り替える(ステップS1405)。
【0095】
この後、受信側制御部703は、受信側DSP131bでエラーが発生しているか否かを判定する(ステップS1406)。受信側制御部703は、判定結果、エラーがあれば(ステップS1406:No)、ステップS1401の処理に戻る。一方、判定結果、エラーがなければ(ステップS1406:Yes)、以上の処理を終了する。
【0096】
(他の実施の形態)
次に、他の実施の形態について説明する。以下に説明する他の実施の形態では、光送信装置100aと光受信装置100bとは、互いに独立した異なる光源を用いる。そして、他の実施の形態では、周波数オフセットが測定できているかの確認方法として、光受信装置100bの受信レーザの調整機能と信号帯域(スペクトル)の変化に基づき、自己折り返し接続の有無を判定する。この場合、DSP131(受信側DSP131b)に信号が疎通していない状態でも自己折り返し接続の有無が判定可能となる。
【0097】
図15は、他の実施の形態にかかる光送受信機の構成例を示すブロック図である。図15に示す光送受信機1500おいて、上述した実施の形態(例えば、図7に示した光送受信機100)と同一の構成部分には同一の符号を付している。図15に示す構成例では、受信側制御部1514は、ADC304直後のデータを取得して自己折り返し判定を行う。
【0098】
光送受信機1500の光送信装置1500aには、周波数調整部1501と、送信光のLD1502が設けられ、LD1502が出力する送信光の波長(周波数)が周波数調整部1501で調整され、IQ変調部1504に出力される。IQ変調部1504は、ドライバ1503が出力する送信側のデータをLD1502が出力する送信光によりIQ変調し、送信ポート102aから送信出力する。LD1502には、例えば、ITLAを用いることができる。
【0099】
光送受信機1500の光受信装置1500bには、周波数調整部1511と、局発光(LO光)のLD1512が設けられ、LD1512が出力する局発光の波長(周波数)が周波数調整部1511で調整され、90度ハイブリッド301に入力される。
【0100】
この図15には、自己折り返し接続の状態として、光送受信機1500の送信ポート102aと、受信ポート111b(90度ハイブリッド301の入力)同士を伝送路(光ファイバ)140で接続した自己折り返し接続の状態を示している。
【0101】
そして、光送受信機1500の光受信装置1500bにおいて、ADC304の出力(受信データ)は、受信側DSP131bに接続するとともに、RAM1513にも接続している。RAM1513は、ADC304の出力(受信データ)を複数保持する。例えば、RAM1513は、LD1512の周波数を変更しないときの受信データ(受信データ1)と、LD1512の周波数を変更したときの受信データ(受信データ2)とを保持する。
【0102】
受信側制御部1514は、周波数調整部1511に対し、LD(局発光)1512の周波数を可変制御する。受信側制御部1514は、LD(局発光)1512の周波数をオフセット分(例えば+5GHz)可変制御する。受信側制御部1514の自己折り返し判定部1525は、可変制御前後のRAM1513に保持された受信データの周波数変化量に基づき、自己折り返し接続の有無を判定する。
【0103】
図16は、受信側制御部の機能を示すブロック図である。受信側制御部1514は、自己折り返し判定のための受信データ1,2を取得する。受信データ1として、光受信装置1500bのLD1512の周波数を変更しないときの受信データを用いる。また、受信データ2として、光受信装置1500bのLD1512の周波数を変更したときの受信データを用いる。
【0104】
受信側制御部1514は、例えば、図8に示したCPU801を用いるハードウェアで構成できる。受信側制御部1514は、このほか、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)で構成することもできる。受信側制御部1514は、複数の周波数-振幅情報変換部1601と、周波数可変演算部1602と、複数の判定信号生成部1603と、上記の自己折り返し判定部1525とを含む。
【0105】
図16の例では、周波数-振幅情報変換部1601は、3つの周波数-振幅情報変換部1601a~1601cを含む。1つ目の周波数-振幅情報変換部1601aは、RAM1513が保持する第1のデータ(LD1512の周波数を変更しないときの所定の信号帯域を有する受信データ:受信データ1)を周波数の振幅情報(周波数特性1)に変換する。2つ目の周波数-振幅情報変換部1601bは、RAM1513が保持する第2のデータ(LD1512の周波数をオフセット分(+5GHz)変更したときの受信データ:受信データ2)を周波数の振幅情報(周波数特性2)に変換する。
【0106】
LD1512の周波数をオフセット分(+5GHz)変更したときの受信データは、周波数可変演算部1602の演算によりオフセット分が解消され(元に戻され)、3つ目の周波数-振幅情報変換部1601cに入力される。3つ目の周波数-振幅情報変換部1601cは、RAM1513が保持する第3のデータ(LD1512の周波数を基に戻した受信データ)を周波数の振幅情報(周波数特性3)に変換する。
【0107】
1つ目の周波数-振幅情報変換部1601aの出力は、一方の判定信号生成部1(1603a)と、他方の判定信号生成部2(1603b)に出力される。2つ目の周波数-振幅情報変換部1601bの出力は、一方の判定信号生成部1(1603a)に出力される。3つ目の周波数-振幅情報変換部1601cの出力は、他方の判定信号生成部2(1603b)に出力される。
【0108】
一方の判定信号生成部1(1603a)は、自己接続の有無を判定するための判定用信号1を生成して自己折り返し判定部1525に出力する。他方の判定信号生成部2(1603b)は、自己接続の有無を判定するための判定用信号2を生成して自己折り返し判定部1525に出力する。
【0109】
これら判定用信号生成部1,2(1603a,1603b)は、それぞれ、差分演算部1611、負の周波数帯域符号反転部1612、全加算部1613、絶対値演算部1614を含む。
【0110】
差分演算部1611は、入力された一対の受信データ(周波数特性)の差分を演算出力する。負の周波数帯域符号反転部1612は、差分演算後の受信データのうち負の符号を反転し正の符号にして出力する。全加算部1613は、負の周波数帯域符号反転部1612が出力するデータのレベルを加算して出力する。絶対値演算部1614は、全加算後の受信データの絶対値を演算して自己折り返し判定部1525に出力する。図16には、これら差分演算部1611~絶対値演算部1614の各構成を判定信号生成部2(1603b)部分に図示したが、判定信号生成部1(1603a)もこれら差分演算部1611~絶対値演算部1614の各構成を含む。
【0111】
自己折り返し判定部1525は、判定用信号生成部1,2(1603a,1603b)が出力する判定用信号1,2を比較し、比較結果に基づいて自己接続の有無の判定結果を出力する。判定用信号1,2は、値の大小を有しており、自己折り返し判定部1525は、判定用信号1,2の値の大小の組合せに基づき自己接続の有無を簡単に判定できる(詳細は後述する)。
【0112】
図17は、受信側のレーザ周波数の変更と自己折り返し接続の有無との対応の説明図である。他の実施の形態において、自己折り返し接続の有無と、光受信装置1500bのLD(局発光)1512の周波数変化時の受信データの中心周波数との関係を示す。図17に示す受信データは、図16の各周波数-振幅情報変換部1601a~1601cへの入力データに相当する。
【0113】
図17(a)は、自己折り返し接続の場合の周波数変化量を示す。横軸は周波数である。自己折り返し接続されている場合、LD1512の周波数変化量を0GHz、あるいはオフセット分(+5GHz)変更させたいずれの場合でも、受信データの中心周波数は変化しない。一方、図17(b)は、自己折り返し接続でない場合の周波数変化量を示す。自己折り返し接続でない場合、LD1512の周波数変化量を0GHzとしたとき、受信データの中心周波数は変化しないが、オフセット分(+5GHz)変更したときには、受信データの中心周波数もオフセット分(+5GHz)だけ変化する。
【0114】
図18は、他の実施の形態における自己折り返し接続の判定処理例を示すフローチャートである。図18の処理は、図15に示した受信側制御部1514が実行処理する。まず、受信側制御部1514は、初期状態で受信利得の制御をAGCで起動させる(ステップS1801)。次に、受信側制御部1514は、ADC304でAD変換後の受信データ1を取得する(ステップS1802)。受信データ1は、LD1512の周波数を変更しないときの受信データであり、RAM1513から取得する。
【0115】
次に、受信側制御部1514は、LD1512のレーザ周波数をオフセット分(+5GHz)変更して設定する(ステップS1803)。オフセット分の周波数は+5GHzに限らず、LD1512で可変できる範囲であればよい。
【0116】
次に、受信側制御部1514は、ADC304でAD変換後の受信データ2を取得する(ステップS1804)。受信データ2は、LD1512の周波数を変更したときの受信データであり、RAM1513から取得する。
【0117】
次に、受信側制御部1514は、取得した受信データ1,2で自己折り返し接続の有無を判定処理し(ステップS1805)、自己折り返し接続の有無を判定する(ステップS1806)。判定結果が自己折り返し接続であれば(ステップS1806:Yes)、受信側制御部1514は、利得制御をAGC制御からゲイン固定制御(MGC)に切り替え(ステップS1807)、以上の処理を終了する。一方、判定結果が自己折り返し接続でなければ(ステップS1806:No)、受信側制御部1514は、利得制御をAGC制御のまま変更せずに、以上の処理を終了する。
【0118】
(自己折り返し接続の有無別の受信側制御部の各部のデータ例)
図19Aは、自己折り返し接続時の判定信号生成部の各部のデータ例を示す図、図19Bは、自己折り返し接続でない時の判定信号生成部の各部のデータ例を示す図である。図19A図19Bには、図16に示した判定信号生成部1,2(1603a,1603b)の各部(差分演算部1611~絶対値演算部1614)でのデータ例を示し、横軸は周波数、縦軸は光パワーに相当する値である。
【0119】
受信データは、周波数-振幅情報変換部1601で周波数の振幅情報(周波数特性)に変換されている。図19Aに示す自己折り返し接続時、周波数特性1,2は、それぞれ中心周波数を中央として所定の信号帯域を有しており、周波数特性1,2の信号帯域が一致している。これに対し、周波数特性3の信号帯域は、周波数可変演算部1602により受信データ2(周波数特性2)に対して全体が-5GHzずれており、周波数特性1,3の信号帯域は不一致となる。判定信号生成部1,2(1603a,1603b)は、これら周波数特性1,2の信号帯域、および周波数特性1,3の信号帯域の一致/不一致を利用して判定用信号1,2を生成する。
【0120】
図16同様に、周波数特性1のデータは、判定信号生成部1,2(1603a,1603b)に入力される。周波数特性2のデータは、判定信号生成部1(1603a)に入力される。周波数特性3のデータは、判定信号生成部2(1603b)に入力される。
【0121】
判定信号生成部1(1603a)側のデータは、差分演算部1611の演算で周波数特性1,2の差分(周波数特性1-2)が演算され、信号帯域全域で一様な小さな(0に近い)所定レベルとなる。この後、負の周波数帯域符号反転部1612では、符号反転が生じずそのまま出力され、全加算部1613では、所定レベルのデータとなる。絶対値演算部1614は、絶対値として小さな所定レベルのデータを出力する。
【0122】
判定信号生成部2(1603b)側のデータは、差分演算部1611の演算で周波数特性1,3の差分(周波数特性1-3)を演算することで、信号帯域の両端部にそれぞれ所定のレベル(±)が生じる。信号帯域の低周波端にはマイナス(-)のレベルが生じ、信号帯域の高周波端にはプラス(+)のレベルが生じる。この後、負の周波数帯域符号反転部1612では、負(-)の符号を正(+)の符号に変換し、全加算部1613では、信号帯域と、信号帯域の両端部のレベルを加算する。絶対値演算部1614は、絶対値として大きな所定レベルのデータを出力する。
【0123】
このように、自己折り返し接続時、判定信号生成部1(1601a)は、小さいレベルのデータ(判定用信号1)を出力し、判定信号生成部2(1601b)は、判定信号生成部1(1601a)と比べて大きなレベルのデータ(判定用信号2)を出力する。このように、レベルの大小で説明したが、受信データ1,2が同じレベルであれば、判定信号生成部1(1603a)が出力する判定用信号1はレベル0に限りなく近く、判定信号生成部2(1603b)が出力する所定レベルの判定用信号2とは、所定のレベル差を有することとなる。
【0124】
次に、図19Bに示す自己折り返し接続でない時(対向接続時)、周波数特性1,3は、それぞれ中心周波数を中央として所定の信号帯域を有する。これに対し、周波数特性2の信号帯域は、受信データ2(周波数特性2)に対して全体が+5GHzずれる。これにより、周波数特性1,2の信号帯域は不一致となり、周波数特性1,3の信号帯域は一致する。
【0125】
図16同様に、周波数特性1のデータは、判定信号生成部1,2(1603a,1603b)に入力される。周波数特性2のデータは、判定信号生成部1(1603a)に入力される。周波数特性3のデータは、判定信号生成部2(1603b)に入力される。
【0126】
判定信号生成部1(1603a)側のデータは、差分演算部1611の演算で周波数特性1,2の差分(周波数特性1-2)を演算することで、信号帯域の両端部にそれぞれ所定のレベル(±)が生じる。信号帯域の低周波端にはプラス(+)のレベルが生じ、信号帯域の高周波端にはマイナス(-)のレベルが生じる。この後、負の周波数帯域符号反転部1612では、正(+)の符号を負(-)の符号に変換し、全加算部1613では、信号帯域と、信号帯域の両端部のレベルを加算する。絶対値演算部1614は、絶対値として大きな所定レベルのデータ(判定用信号1)を出力する。
【0127】
判定信号生成部2(1603b)側のデータは、差分演算部1611の演算で周波数特性1,3の差分(周波数特性1-3)を演算することで、信号帯域全域で一様な小さな(0に近い)所定レベルとなる。この後、負の周波数帯域符号反転部1612では、符号反転が生じずそのまま出力され、全加算部1613では、所定レベルのデータとなる。絶対値演算部1614は、絶対値として小さな所定レベルのデータ(判定用信号2)を出力する。
【0128】
このように、自己折り返し接続でない時、判定信号生成部1(1601a)は、大きなレベルのデータ(判定用信号1)を出力し、判定信号生成部2(1601b)は、判定信号生成部1(1601a)と比べて小さなレベルのデータ(判定用信号2)を出力する。
【0129】
図20は、自己折り返し接続の有無の判定条件を示す図表である。自己折り返し判定部1525は、判定信号生成部1,2(1603a,1603b)が出力する判定用信号1,2のレベルの組合せに基づき、自己折り返し接続の有無を判定する。
【0130】
図20に示すように、自己折り返し判定部1525は、判定用信号1のレベルが小であり、判定用信号2のレベルが大のとき、自己折り返し接続であると判定する。また、自己折り返し判定部1525は、判定用信号1のレベルが大であり、判定用信号2のレベルが小のとき、自己折り返し接続ででない(対向接続に相当)と判定する。
【0131】
なお、自己折り返し判定部1525は、例えば、判定用信号の大小のレベル差の中間値に閾値を設け、閾値を超えたレベルの判定用信号を「大」と判定し、閾値を下回わったレベルの判定用信号を「小」と判定してもよい。
【0132】
(他の実施の形態の変形例)
図21は、他の実施の形態の変形例の説明図である。以下に説明する変形例では、他の実施の形態に対して受信信号の周波数差をより大きく設定する。図21には、受信側のレーザ周波数の変更と自己折り返し接続の有無との対応を示し、周波数特性1,2にそれぞれオフセットを設定している。図21の例では、周波数特性1のデータの中心周波数を第1方向に-5GHz、周波数特性2のデータの中心周波数を第1方向と逆の第2方向に+5GHzとしている。
【0133】
図21(a)は、自己折り返し接続の場合の周波数変化量を示す。横軸は周波数である。自己折り返し接続の場合、最上段に記載のLD1512の周波数を変更しないときの受信特性と、LD1512の周波数を-5GHz変更したときの受信特性と、LD1512の周波数を+5GHz変更したときの受信特性は、いずれも受信データの中心周波数は変化しない。ここで、周波数可変演算部1602は、周波数特性2のデータに対し-10GHzの演算を行う。この10GHzは、周波数特性1のデータの中心周波数の変化分である第11方向の-5GHzと、周波数特性2のデータの中心周波数の変化分の第2方向の+5GHzの絶対値加算に相当する。この場合、最下段に記載の周波数特性3のデータは、信号帯域が-10GHzずれることになる。
【0134】
図21(b)は、自己折り返し接続でない場合の周波数変化量を示す。自己折り返し接続されてない場合、最上段に記載のLD1512の周波数を変更しないときの受信特性に対し、LD1512の周波数を-5GHz変更したときの受信特性は、信号帯域が-5GHzずれる。また、LD1512の周波数を+5GHz変更したときの受信特性は、信号帯域が+5GHzずれる。周波数可変演算部1602が周波数特性2のデータに対し-10GHzの演算を行う場合、周波数特性3のデータは、周波数特性1と周波数特性2のデータに対し、信号帯域が-10GHzずれることになる。
【0135】
図22は、他の実施の形態の変形例における受信側制御部の機能を示すブロック図である。図22に示す受信側制御部1514の各部の機能は図16と同様であり、同じ符号を付している。図16と比べて異なる点を太字で示したが、受信データ1が光受信装置1500bのLD1512の周波数を-5GHz変更したときの受信データであり、また、周波数可変演算部1602が受信データ2に対し-10GHzの演算を行う点が異なる。
【0136】
図23は、他の実施の形態の変形例における自己折り返し接続の判定処理例を示すフローチャートである。図23に示した処理は、図2に示した受信側制御部1514が実行処理する。なお、図23の処理において、図18の処理と異なる点は、ステップS2302の処理が追加された点のみである。
【0137】
まず、受信側制御部1514は、初期状態で受信利得の制御をAGCで起動させる(ステップS2301)。次に、受信側制御部1514は、LD1512のレーザ周波数を第1オフセット分(-5GHz)変更して設定する(ステップS2302)。
【0138】
そして、受信側制御部1514は、ADC304でAD変換後の受信データ1を取得する(ステップS2303)。受信データ1は、LD1512の周波数を-5GHz変更したときの受信データであり、RAM1513から取得する。
【0139】
次に、受信側制御部1514は、LD1512のレーザ周波数を第2オフセット分(+5GHz)変更して設定する(ステップS2304)。
【0140】
次に、受信側制御部1514は、ADC304でAD変換後の受信データ2を取得する(ステップS2305)。受信データ2は、LD1512の周波数を+5GHz変更したときの受信データであり、RAM1513から取得する。
【0141】
次に、受信側制御部1514は、取得した受信データ1,2で自己折り返し接続の有無を判定処理し(ステップS2306)、自己折り返し接続の有無を判定する(ステップS2307)。判定結果が自己折り返し接続であれば(ステップS2307:Yes)、受信側制御部1514は、利得制御をAGC制御からゲイン固定制御(MGC)に切り替え(ステップS2308)、以上の処理を終了する。一方、判定結果が自己折り返し接続でなければ(ステップS2307:No)、受信側制御部1514は、利得制御をAGC制御のまま変更せずに、以上の処理を終了する。
【0142】
以上説明した他の実施の形態の変形例のように、受信信号の周波数差が大きいほど自己折り返し接続の検出精度を向上できるようになる。また、上記の説明では、周波数差を10GHzとする際、LD1512のレーザ周波数を±5GHzで変更しており、LD1512の調整範囲で周波数変更できる。
【0143】
以上説明した実施の形態によれば、光信号の送受信用の光源を含む光送受信機の制御方法において、受信ポートに対する伝送路の接続状態が、自装置の送信ポートからの自己折り返し接続であるか否かを接続判定し、自己折り返し接続の場合、受信利得の制御をAGCから利得固定に切り替える。これにより、自己折り返し接続状態を含むポート接続状態に対応した利得制御が行えるようになる。
【0144】
また、接続判定は、光源の周波数の変化に対する、光信号と局発光の間の周波数オフセット量の変化に基づいて、自己折り返し接続か、そうでないかを判定してもよい。また、接続判定は、光源の周波数を所定量変化させたときに、受信側で検出した光信号の周波数に所定量の変化が検出された場合、自己折り返し接続と判定してもよい。これにより、光信号の送受信で共通の光源である光送受信機における自己折り返し接続の有無を簡単な処理で判定できるようになる。
【0145】
また、接続判定において、光源の周波数を所定量変化させ、受信側で光信号の周波数を検出する処理を複数回行ってもよい。この場合、複数回の全てで、受信側で検出した光信号と局発光の間の周波数オフセット量が予め定めた閾値の範囲内であれば、自己折り返し接続と判定する。これにより、自己折り返し接続の判定精度を向上できるようになる。
【0146】
また、接続判定は、光源の周波数を所定量変化させたときに、受信側で検出した光信号と局発光の間の周波数オフセット量が予め定めた閾値の範囲外であれば、伝送路の接続状態が対向接続と判定してもよい。これにより、光送受信機における接続状態が自己折り返し接続であるか対向接続であるかを自動判定でき、判定結果に応じた利得制御を実行できるようになる。
【0147】
また、接続判定は、送信ポートから送信する光信号の空き領域に自装置に固有のIDを挿入し、受信ポートを介して受信した光信号に自装置のIDが含まれていることを検出した場合、自己折り返し接続と判定することとしてもよい。このようなIDを用いることによっても、光信号の送受信で共通の光源である光送受信機における自己折り返し接続の有無を簡単な処理で判定できるようになる。
【0148】
また、切り替えの後、受信処理した受信データでのエラーの発生の有無を判断し、エラー時には、接続判定処理を再実行することとしてもよい。これにより、自己折り返し接続の判定精度を向上できるようになる。また、接続判定の結果を外部出力し、運用者等に通知することとしてもよい。
【0149】
また、光源は、光信号の送受信で共通の光源であってもよい。これにより、装置内の光源数を減らし低コスト化できる。また、製品出荷時の動作確認試験において、運用者が送受信で共通の光源を含む光送受信機であることを意識せず、特別な操作を行うことなく通常通りの試験を遂行できるようになる。
【0150】
また、光源は、光信号の送信側と、受信側とで異なる光源であってもよい。この場合、接続判定は、受信側の光源の周波数を変化しない状態での第1受信データと、受信側の光源の周波数を所定量変化させた状態での第2受信データと、に基づき、自己折り返し接続か、そうでないかを判定することができる。これにより、受信側装置でのローカル光の周波数を変更させるだけで変更前後の受信データを用いて簡単に自己折り返し接続か、そうでないかを判定できるようになる。さらには、受信側装置のDSPに信号が疎通していない状態でも自己折り返し接続の有無が判定可能となる。
【0151】
また、接続判定は、受信側の光源の周波数を変化しない状態での第1受信データと、受信側の光源の周波数を所定量変化させた状態での第2受信データと、第2の受信データでの所定量の変化分を元に戻す演算を行った第3データと、に基づき、第1受信データの信号帯域に対する第2受信データの信号帯域の一致/不一致、および第1受信データの信号帯域に対する第3データの信号帯域の一致/不一致、の組合せにより自己折り返し接続か、そうでないかを判定することができる。このように、受信側の光源の周波数を変化させた前後の受信データの信号帯域の一致/不一致に基づいて簡単に自己折り返し接続か、そうでないかを判定できるようになる。
【0152】
また、接続判定は、受信側の光源の周波数を第1方向に所定量変化させた状態での第1受信データと、受信側の光源の周波数を第1方向と異なる第2方向に所定量変化させた状態での第2受信データと、第2の受信データに対して第1方向と第2方向の絶対値加算分を元に戻す演算を行った第3データと、に基づき、第1受信データの信号帯域に対する第2受信データの信号帯域の一致/不一致、および第1受信データの信号帯域に対する第3データの信号帯域の一致/不一致、の組合せにより自己折り返し接続か、そうでないかを判定することとしてもよい。この場合、受信側の光源の周波数の変化量を増やすことができ、自己折り返し接続の判定精度を向上できるようになる。
【0153】
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0154】
(付記1)光信号の送受信用の光源を含む光送受信機の制御方法において、
受信ポートに対する伝送路の接続状態が、自装置の送信ポートからの自己折り返し接続であるか否かを接続判定し、
自己折り返し接続の場合、受信利得の制御をAGCから利得固定に切り替える、
ことを特徴とする光送受信機制御方法。
【0155】
(付記2)前記接続判定は、
前記光源の周波数の変化に対する、前記光信号と局発光の間の周波数オフセット量の変化に基づいて、自己折り返し接続か、そうでないかを判定する、
ことを特徴とする付記1に記載の光送受信機制御方法。
【0156】
(付記3)前記接続判定は、
前記光源の周波数を所定量変化させたときに、受信側で検出した前記光信号の周波数に前記所定量の変化が検出された場合、自己折り返し接続と判定する、
ことを特徴とする付記1に記載の光送受信機制御方法。
【0157】
(付記4)前記接続判定において、
前記光源の周波数を所定量変化させ、受信側で前記光信号の周波数を検出する処理を複数回行い、
当該複数回の全てで、受信側で検出した前記光信号と局発光の間の周波数オフセット量が予め定めた閾値の範囲内であれば、自己折り返し接続と判定する、
ことを特徴とする付記3に記載の光送受信機制御方法。
【0158】
(付記5)前記接続判定は、
前記光源の周波数を所定量変化させたときに、受信側で検出した前記光信号と局発光の間の周波数オフセット量が予め定めた閾値の範囲外であれば、前記伝送路の接続状態が対向接続と判定する、
ことを特徴とする付記3に記載の光送受信機制御方法。
【0159】
(付記6)前記接続判定は、
前記送信ポートから送信する光信号の空き領域に自装置に固有のIDを挿入し、
前記受信ポートを介して受信した光信号に自装置の前記IDが含まれていることを検出した場合、前記自己折り返し接続と判定する、
ことを特徴とする付記1に記載の光送受信機制御方法。
【0160】
(付記7)前記切り替えの後、
受信処理した受信データでのエラーの発生の有無を判断し、
エラー時には、前記接続判定処理を再実行する、
ことを特徴とする付記1に記載の光送受信機制御方法。
【0161】
(付記8)前記接続判定の結果を外部出力することを特徴とする付記1に記載の光送受信機制御方法。
【0162】
(付記9)前記光源は、光信号の送受信で共通の光源であることを特徴とする付記1に記載の光送受信機制御方法。
【0163】
(付記10)前記光源は、光信号の送信側と、受信側とで異なる光源であり、
前記接続判定は、
受信側の前記光源の周波数を変化しない状態での第1受信データと、受信側の前記光源の周波数を所定量変化させた状態での第2受信データと、に基づき、自己折り返し接続か、そうでないかを判定する、
ことを特徴とする付記1に記載の光送受信機制御方法。
【0164】
(付記11)前記接続判定は、
受信側の前記光源の周波数を変化しない状態での第1受信データと、受信側の前記光源の周波数を所定量変化させた状態での第2受信データと、前記第2の受信データでの前記所定量の変化分を元に戻す演算を行った第3データと、に基づき、
前記第1受信データの信号帯域に対する前記第2受信データの信号帯域の一致/不一致、
および前記第1受信データの信号帯域に対する前記第3データの信号帯域の一致/不一致、の組合せにより自己折り返し接続か、そうでないかを判定する、
ことを特徴とする付記10に記載の光送受信機制御方法。
【0165】
(付記12)前記接続判定は、
受信側の前記光源の周波数を第1方向に所定量変化させた状態での第1受信データと、受信側の前記光源の周波数を前記第1方向と異なる第2方向に所定量変化させた状態での第2受信データと、前記第2の受信データに対して前記第1方向と第2方向の絶対値加算分を元に戻す演算を行った第3データと、に基づき、
前記第1受信データの信号帯域に対する前記第2受信データの信号帯域の一致/不一致、
および前記第1受信データの信号帯域に対する前記第3データの信号帯域の一致/不一致、の組合せにより自己折り返し接続か、そうでないかを判定する、
ことを特徴とする付記10に記載の光送受信機制御方法。
【0166】
(付記13)光信号の送受信用の光源を含む光送受信機において、
受信ポートに対する伝送路の接続状態が、自装置の送信ポートからの自己折り返し接続であるか否かを接続判定し、
自己折り返し接続の場合、受信利得の制御をAGCから利得固定に切り替える、
制御部を有することを特徴とする光送受信機。
【符号の説明】
【0167】
100 光送受信機
100a 光送信装置
100b 光受信装置
102 送信部(Tx)
102a 送信ポート
111 受信部(Rx)
111b 受信ポート
112 ICR
121 光源(ITLA)
131 DSP
131a 送信側DSP
131b 受信側DSP
131m モニタ
140 伝送路(光ファイバ)
301 90度ハイブリッド回路
302 PD
303 TIA
304 ADC
701 送信側制御部
702 DAC
703 受信側制御部
711 周波数オフセット読み出し部
712 自己折り返し判定部
713 周波数設定部
714 利得モード設定部
800 バス
801 プロセッサ
802 メモリ
805 記録媒体
1301 ID読み出し部
1512 LD(LO光)
1514 受信側制御部
NW ネットワーク
PS パイロットシンボル
S 光信号
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19A
図19B
図20
図21
図22
図23