(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170296
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】風力タービンのロータのアンバランスの検出
(51)【国際特許分類】
F03D 1/06 20060101AFI20241129BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20241129BHJP
【FI】
F03D1/06 A
G01M99/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024078300
(22)【出願日】2024-05-14
(31)【優先権主張番号】23382497.8
(32)【優先日】2023-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】513131419
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック レノバブレス エスパーニャ, エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】ルイス・ボンド-スミス
(72)【発明者】
【氏名】エフレン・アルビス・イソ
(57)【要約】
【課題】風力タービンのロータのアンバランスを検出する
【解決手段】
本開示は、風力タービンのアンバランスを検出する方法に関する。本方法は、風力タービンの1つ又は複数のセンサから1つ又は複数の動き信号を受け取ることを含む。更に、本方法は、ロータ回転速度周波数における動き信号のエネルギーレベルを決定することと、決定されたエネルギーレベルに少なくとも部分的に基づいてロータのアンバランスを判断することとを含む。また、本方法は、ロータ回転速度周波数における動き信号のエネルギーレベルを、タワーの第1の固有振動数におけるエネルギーレベルと比較することも含む。このような方法を実行するのに適した制御システム、及びこのような制御システムを含む風力タービンも提供される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービン(10)のロータ(18)のアンバランスを検出するための方法(400;600)であって、前記方法は、
前記風力タービンの1つ又は複数のセンサから、前記風力タービンの振動を示す1つ又は複数の動き信号(401;610;710)を受け取ること、
ロータ回転速度周波数における前記動き信号のエネルギーレベル(402;630,730)を決定すること、
前記ロータ回転速度周波数における前記動き信号のエネルギーレベルをエネルギー閾値と比較する(403;640、740)こと、及び
前記ロータ回転速度周波数における前記動き信号のエネルギーレベルが、前記エネルギー閾値を超えている場合、前記ロータにアンバランス(404;650,750)が生じていると判断すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記風力タービン(10)のタワー(15)の第1の固有振動数における動き信号のエネルギーレベルを決定すること(625、725)、及び
前記風力タービンのタワー(15)の前記第1の固有振動数における前記動き信号のエネルギーレベルに少なくとも部分的に基づいて、前記エネルギー閾値を決定すること
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エネルギー閾値は、前記風力タービンのタワー(15)の前記第1の固有振動数における動き信号のエネルギーレベルの一定の割合である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記エネルギー閾値は、前記第1の固有振動数における動き信号のエネルギーレベルの40~100%の間の値、特に、50%~80%の間の値である、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
ロータ回転速度周波数における前記動き信号のエネルギーレベルを決定することは、受け取った動き信号をフィルタリング(615、715)して、ロータ回転速度周波数における動き信号を得ることを含む、請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記動き信号をフィルタリングすることは、ノッチフィルタを使用することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記動き信号をフィルタリングすることは、バンドパスフィルタを使用することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記ロータ回転速度周波数における及び/又は前記風力タービンのタワーの第1の固有振動数における前記動き信号のエネルギーレベルを決定することは、対応する動き信号の時間窓の間における二乗平均平方根を計算すること(630、730)を含む、請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記動き信号は、前記風力タービンの前後方向及び/又は左右方向の動き信号を含む、請求項1~8のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記動き信号のエネルギーの大きさを決定することは、ロータ回転速度周波数における前後方向及び左右方向の前記動き信号のエネルギーレベルを決定することを含み、前記方法は、更に、
ロータ回転速度周波数における前後方向及び左右方向の加速度信号のエネルギーレベルに基づいて、前記風力タービンが空気力学的アンバランス及び/又は質量アンバランスを受けているかどうかを判断すること
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、前記風力タービン(10)の通常運転中に実行され、任意選択で、前記方法はリアルタイムで実行される、請求項1~10のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ロータにアンバランスが生じていると判断したことに応答して、フラグ信号を生成すること又は動作変更をすることを更に含み、任意選択で、前記動作変更は、電力出力を低下すること、ロータの回転速度を低下すること、前記風力タービンの1つ又は複数のブレードのピッチ角を変更すること、及び前記風力タービンの運転を停止することのうちの1つ以上である、請求項1~11のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記動き信号が1つ又は複数の加速度計から得られる、請求項1~12のうちにいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
風力タービンのアンバランスを検出する制御システムであって、請求項1~13の方法のうちのいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されたプロセッサを含む制御システム。
【請求項15】
請求項14に記載の制御システムを含む風力タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、風力タービン、及び風力タービンのアンバランスを検出する方法に関する。本開示は、より詳細には、測定された信号のエネルギーの大きさとエネルギー閾値との比較に基づいて風力タービンのアンバランスを判断するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の風力タービンは、一般に、電力網に電力を供給するために使用されている。この種の風力タービンは、一般に、タワーと、タワーに配置されたロータとを含んでいる。ロータは、典型的には、ハブと複数のブレードとを含んでおり、ブレードが風の影響を受けて回転する。この回転によりトルクが発生し、トルクは、通常、ロータシャフトを通じて発電機に直接(「直接駆動」又は「ギアレス」)伝達される、又はギアボックスを使用して伝達される。このようにして発電機は電力を生成し、電力は電力網に供給することができる。
【0003】
現代の風力タービンは、寿命が来るまで多くのエネルギーを取り込み、エネルギーコストを削減するために、ロータの直径がますます大きくなっている。大型風力タービンは、通常、高い回転速度で運転されるため、質量及び空気力学的なアンバランスの影響が増幅される恐れがある。ロータブレードの回転速度が速くなると、ブレード、ハブ、又はその他の構成要素のアンバランスによって、タービンの軸受、ギアボックス、その他の重要な構成要素に大きな振動及び応力が発生する。
【0004】
更に、ロータブレードが長くなるにつれて、ブレードの剛性は比例して増加することはなく、したがって、動的な摂動の影響を受けやすい可撓性のブレードになる。そのため、長いブレードを有する風力タービンは、風向や風速の変化によって空気力学的なアンバランスが引き起こされる危険性が高まる恐れがある。
【0005】
このように、質量と空気力学的なアンバランスによって、負荷及び振動が不均一になり、タービン部品の摩耗及び損傷が増加し、エネルギー出力を低下させる恐れがある。更に、負荷のアンバランスを受ける風力タービンには、メンテナンス作業を頻繁に行う必要がある。
【0006】
風力タービンのアンバランスを監視する方法としては、目視検査やブレード監視システムなどが知られている。
【0007】
目視検査は、タービン構成要素の目に見える損傷又は摩耗の兆候が発見できるように、訓練を受けた技術者によって実施することができる。これには、ロータブレードに亀裂、欠け、又はその他の損傷の兆候を検査すること、並びにギヤボックス、軸受、及びその他の重要な構成要素に摩耗又は損傷の兆候を確認することが含まれる。この方法は時間がかかり、現地に有資格者がいる必要がある。更に、この方法では、風力タービンの運転の停止を要求されることがある。
【0008】
一方、ブレード監視システムは、一般的に、ブレードに設置されたセンサであって、ブレードの状態を測定するセンサを含み、センサによって得られた測定データを分析し、起こり得るアンバランスを特定する。しかし、ブレード監視システムは、複雑な較正プロセスを必要とし、頻繁なメンテナンスを必要とする場合がある。
【0009】
既知のアプローチを使用して、風力タービンのアンバランスを推定することができるが、当技術分野では更に改良することが望まれていると考えられる。したがって、本開示は、前述の欠点のいくつかを少なくとも部分的に克服する、風力タービンのアンバランスを判断するための改良された方法及びシステムを提供する。
【発明の概要】
【0010】
本開示の一態様では、風力タービンのアンバランスを検出するための方法が提供される。前記方法は、前記風力タービンの1つ又は複数のセンサから、前記風力タービンの振動を示す1つ又は複数の動き信号を受け取ること、及びロータ回転速度周波数における前記動き信号のエネルギーレベルを決定することを含んでいる。前記方法は、更に、前記ロータ回転速度周波数における前記動き信号のエネルギーレベルをエネルギー閾値と比較すること、及び前記ロータ回転速度周波数における前記動き信号のエネルギーレベルが、前記エネルギー閾値を超えている場合、前記ロータにアンバランスが生じていると判断することを含んでいる。
【0011】
この態様によれば、動き信号のエネルギーレベルとエネルギー閾値との比較に基づいて、風力タービンのアンバランスを検出することができる。発明者らは、ロータのアンバランス(これは、製造時及び/又は設置時の不備、摩耗、又は氷のような物質の付着に起因する場合がある)によって、1p周波数の振動が生じ得ることを認識した。この周波数における受信信号のエネルギーレベル又はエネルギー含有量を決定することにより、ロータのアンバランスを検出することができる。この結果、風力タービンの運転中に、追加の装置の設置を必要とすることなく、風力タービンのアンバランスを判断することができる方法が得られる。この方法は、風力タービンに通常は既に組み込まれているセンサと、どのような場合でも通常分析されているセンサデータによって実施することができる。更に、この方法は、風力タービンの全体的な出力に影響を与えることなく、及び過大なコスト(例えば、有資格者が現場にいることなどに関係するコスト)を発生させることもなく、必要な頻度で実施することができる。
【0012】
さらなる態様では、前述の方法の任意の実施例を実行するように構成された制御システムが提供される。制御システムは、前記風力タービンの1つ又は複数のセンサから、前記風力タービンの振動を示す1つ又は複数の動き信号を受け取り、ロータ回転速度周波数における前記動き信号のエネルギーレベルを決定することによって、風力タービンのアンバランスを検出するように構成することができる。制御システムは、更に、前記ロータ回転速度周波数における前記動き信号のエネルギーレベルをエネルギー閾値と比較するし、前記ロータ回転速度周波数における前記動き信号のエネルギーレベルが、前記エネルギー閾値を超えている場合、前記ロータにアンバランスが生じていると判断するように構成することができる。
【0013】
更に別の態様では、このような制御システムを含む風力タービンが提供される。
【0014】
更に別の態様では、風力タービンのロータのアンバランスを判断する方法が提供される。本方法は、左右方向及び前後方向におけるロータの動きを示す動き信号を受け取ること、及び受け取った動き信号をフィルタリングして、ロータ回転速度周波数における左右方向及び前後方向の動き信号を決定することを含む。本方法は更に、受け取った動き信号をフィルタリングして、前記タワーの第1の固有振動数における左右方向及び前後方向の動き信号を決定することを含む。次いで、本方法は、ロータ回転速度周波数における左右方向及び前後方向の前記動き信号のエネルギーレベルを計算することと、タワーの第1の固有振動数における左右方向及び前後方向の動き信号のエネルギーレベルを計算することとを含む。次いで、ロータ回転速度周波数における左右方向の動き信号の計算されたエネルギーレベルを、第1の固有振動数における左右方向の動き信号の計算されたエネルギーレベルと比較することができ、ロータ回転速度周波数における前後方向の動き信号の計算されたエネルギーレベルを、第1の固有振動数における前後方向の動き信号の計算されたエネルギーレベルと比較することができる。本方法は更に、エネルギーレベルの比較に基づいてロータアンバランスが生じているかどうかを判断することを含む。
【0015】
前後方向と左右方向に動きを分割することで、ロータのアンバランスを検出できるだけでなく、アンバランスの原因、又はアンバランスの原因として考えられる少なくとも一部の原因を、この方法によって取り除くことができる。
【0016】
本開示を通じて、「動き信号」という用語は、少なくとも部分的に動きを表す信号として理解されるべきである。従って、動き信号は、例えば、動き又は変形を示す信号であってもよいし、加速度値を含む信号であってもよい。
【0017】
本明細書において、「デフォルト状態」は、風力タービンの基準状態(すなわち、比較されるべき状況又は状態)とみなすことができる。デフォルト状態は,風力タービンの「理想的な」状態,すなわち,構成部品の劣化及びブレードへの材料の蓄積がなく,納品されたままのバランスの取れた風力タービンとすることができる。しかし、デフォルト状態は,別の状態が選択されてもよい。
【0018】
本開示の全体を通じて、信号の「エネルギー」又は「エネルギー含有量」を決定することに言及される場合、これは本明細書において、エネルギーを示すために使用することができる任意の指標を決定(計算又は推定)することと考えられ、特に、信号の大きさの二乗、信号の二乗平均平方根(RMS)、信号の大きさの二乗の包絡線、又は信号の大きさの二乗の積分を使用することが含まれる。信号のエネルギー又はエネルギー含有量は、有限の期間について計算する又は推定することができる。この有限の期間を本明細書では「時間窓」と呼ぶ。信号エネルギーは必ずしも物理学で理解される「エネルギー」の測定値ではないことに留意されたい。
【0019】
本開示全体を通じて使用される固有振動数は、共振が発生する周波数とみなすことができる。各固有振動数には、関連するモード、すなわち構造の変形を表す形状がある。変形が生じる最も低い振動数は第1のモードである。
【0020】
本開示の実施形態の追加の目的、利点及び特徴は、本明細書を考察することにより当業者に明らかになる、又は実施により理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】風力タービンの一例の斜視図を概略的に示す。
【
図3】本開示の第1の態様による、風力タービンのアンバランスを検出する方法の一例のフローチャートである。
【
図4】
図3の方法の別の例のフローチャートである。
【
図5】本開示による風力タービンの制御システムの一例を概略的に示す図である。
【
図6】独立した2つの例示的な動き信号のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本開示の実施形態を詳細に参照する。実施形態の1つ又は複数の例が図面に例示されている。各例は、説明のために提供されるものであり、限定するものとして提供されるものではない。実際、当業者には、教示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、本開示において様々な修正及び変形をすることができることが明らかである。例えば、1つの実施形態の一部として例示又は説明された特徴は、更に別の実施形態と共に使用され、更に他の実施形態を作り出すことができる。したがって、本開示は、特許請求の範囲及びその均等物の範囲内に入るような修正及び変形をカバーすることが意図される。
【0023】
図1は、風力タービン10の一例を示す斜視図である。この例では、風力タービン10は水平軸型風力タービンである。あるいは、風力タービン10は垂直軸型風力タービンであってもよい。実施例では、風力タービン10は、地面12の支持システム14から延在するタワー15と、タワー15に取り付けられたナセル16と、ナセル16に結合されたロータ18とを含んでいる。ロータ18は、回転可能なハブ20と、ハブ20に結合された少なくとも1つのロータブレード22であって、ハブ20から外側に向かって延在する少なくとも1つのロータブレード22とを含んでいる。この例では、ロータ18は3つのロータブレード22を有している。代替の実施形態では、ロータ18は、3つより多いロータブレード22を含んでいてもよいし、3つより少ないロータブレード22を含んでいてもよい。タワー15は、支持システム14とナセル16との間に空洞(
図1には示されていない)を画定する管状鋼から製造することができる。代替実施形態では、タワー15は、任意の適切な高さを有する任意の適切なタイプのタワーである。代替の形態によれば、タワーは、コンクリート製部分と鋼管製部分とを含むハイブリッドタワーとすることができる。また、タワーは、パーシャル又はフルの格子タワーとすることもできる。
【0024】
ロータブレード22は、ハブ20の周囲に間隔をあけて配置されており、ロータ18を回転させて、風からの運動エネルギーを、利用可能な機械エネルギー、その後に電気エネルギーに変換するために、ハブ20の周囲に間隔をあけて配置されている。ロータブレード22は、複数の負荷伝達領域26においてブレードのルート部分24をハブ20に結合することにより、ハブ20に嵌合されている。負荷伝達領域26は、ハブ負荷伝達領域及びブレード負荷伝達領域(両領域とも
図1には示されていない)を有することができる。ロータブレード22に誘導された負荷は、負荷伝達領域26を通じてハブ20に伝達される。
【0025】
実施例では、ロータブレード22は、約15メートル(m)から約90m以上の範囲の長さを有することができる。ロータブレード22は、風力タービン10を本明細書に記載されるように機能させることか可能な任意の適切な長さを有することができる。例えば、ブレードの長さの非限定的な例には、20m以下、37m、48.7m、50.2m、52.2m、又は91mを超える長さが含まれる。風が風向28からロータブレード22に当たると、ロータ18はロータ軸30を中心に回転する。ロータブレード22が回転して遠心力を受けると、ロータブレード22様々な力とモーメントも受ける。そのため、ロータブレード22は、中立(又は非撓み)位置から撓み位置まで撓む及び/又は回転する可能性がある。
【0026】
更に、ロータブレード22のピッチ角(すなわち、風向きに対するロータブレード22の向きを定める角度)はピッチシステム32によって変更することができ、風ベクトルに対する少なくとも1つのロータブレード22の角度位置を調整することによって、風力タービン10によって生成される負荷及び電力を制御することができる。ロータブレード22のピッチ軸34が示されている。風力タービン10の運転中、ピッチシステム32は、特に、ロータブレード(の一部)の迎え角を減少させるようにロータブレード22のピッチ角を変化させることができ、これにより、回転速度を容易に減少させること及び/又はロータ18を容易に失速させることができる。
【0027】
本実施例では、各ロータブレード22のブレードピッチは、風力タービンコントローラ36又はピッチ制御システム80によって個別に制御される。あるいは、全てのロータブレード22のブレードピッチは、前記制御システムによって同時に制御されてもよい。
【0028】
更に、本実施例では、風向28が変化すると、ナセル16のヨー方向をヨー軸38を中心に回転させて、ロータブレード22を風向28に対して位置決めすることができる。
【0029】
本実施例では、風力タービンコントローラ36は、ナセル16内に集中配置されているように示されているが、風力タービンコントローラ36は、風力タービン10の全体、支持システム14、風力発電地帯、及び/又は遠隔制御センターに分散配置されたシステムであってもよい。風力タービンコントローラ36は、本明細書で説明する方法及び/又はステップを実行するように構成されたプロセッサ40を含む。更に、本明細書で説明する他の構成要素の多くの構成要素は、プロセッサを含んでいる。
【0030】
本明細書で使用される場合、「プロセッサ」という用語は、当該技術分野でコンピュータと呼ばれる集積回路に限定されず、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロコンピュータ、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、特定用途向け集積回路、及び他のプログラマブル回路を広く表し、これらの用語は本明細書において交換可能に使用される。プロセッサ及び/又は制御システムは、メモリ、入力チャネル、及び/又は出力チャネルを含むことができることも理解されたい
【0031】
図2は、風力タービン10の一部の拡大断面図である。この例では、風力タービン10は、ナセル16と、ナセル16に回転可能に結合されたロータ18とを含んでいる。より具体的には、ロータ18のハブ20は、メインシャフト44、ギアボックス46、高速シャフト48、及びカップリング50によって、ナセル16内に配置された発電機42に回転可能に結合されている。実施例では、メインシャフト44は、ナセル16の長手方向軸(図示せず)と少なくとも部分的に同軸上に配置されている。メインシャフト44が回転すると、ギアボックス46が駆動され、ロータ18及びメインシャフト44の遅い回転運動を高速シャフト48の速い回転運動に変換され、高速シャフト48が駆動される。後者(高速シャフト48)は、カップリング50によって、電気エネルギーを生成するための発電機42に接続されている。更に、400V~1000Vの電圧を有する発電機42によって生成された電気エネルギーを中間電圧(10~35KV)を有する電気エネルギーに変換するために、変圧器90及び/又は適切な電子機器、スイッチ、及び/又はインバータをナセル16内に配置することができる。前記電気エネルギーは、電力ケーブルを通じて、ナセル16からタワー15に伝えられる。
【0032】
ギアボックス46、発電機42、及び変圧器90は、ナセル16の主支持構造フレーム(任意選択で、メインフレーム52として具現化される)によって支持することができる。ギアボックス46は、1つ又は複数のトルクアーム103によってメインフレーム52に接続されるギアボックスハウジングを含むことができる。実施例では、ナセル16は、主前方支持軸受60及び主後方支持軸受62も含んでいる。更に、発電機42は、特に、発電機42の振動がメインフレーム52に導入され、それによって騒音放出源になることを防止するために、デカップリング支持手段54によってメインフレーム52に取り付けることができる。
【0033】
任意選択で、メインフレーム52は、ロータ18及びナセル16の構成部品の重量によって、並びに風荷重及び回転負荷によって引き起こされる全体の負荷を担持し、更に、これらの負荷を風力タービン10のタワー15に伝えるように構成されている。ロータシャフト44、発電機42、ギアボックス46、高速シャフト48、カップリング50、関連する締結具、支持部、及び/又は固定装置(支持体52、及び前方支持軸受60及び後方支持軸受62であるが、これらに限定されることはない)は、ドライブトレイン64と呼ばれることがある。
【0034】
一部の実施例では、風力タービンはギアボックス46のない直接駆動型風力タービンであってもよい。発電機42は、直接駆動型風力タービンのロータ18と同じ回転速度で動作する。したがって、直接駆動型風力タービンは、一般に、ギアボックスを有する風力タービンと同程度の電力を供給するために、ギアボックス46を有する風力タービンで使用される発電機よりもはるかに大きな直径を有する。
【0035】
ナセル16はヨー駆動機構56も含むことができる。ヨー駆動機構56は、風向28に対するロータブレード22の釣合いを制御するために、ヨー軸38を中心にナセル16を回転させ、それによってロータ18も回転させるために使用されるヨー駆動機構56を含むことができる。
【0036】
風向28に対してナセル16を適切に位置決めするために、ナセル16は、風向計及び風速計を含む少なくとも1つの気象測定システム58を含むこともできる。気象測定システム58は、風力タービンコントローラ36に、風向28及び/又は風速を含む情報を供給することができる。本実施例では、ピッチシステム32は、ハブ20内に、少なくとも部分的にピッチアセンブリ66として配置されている。ピッチアセンブリ66は、1つ又は複数のピッチ駆動システム68と、少なくとも1つのセンサ70とを含んでいる。各ピッチ駆動システム68は、ピッチ軸34に沿ってロータブレード22のピッチ角を調整するために、それぞれのロータブレード22(
図1に示されている)に結合されている。
図2には、3つのピッチ駆動システム68のうちの1つのみが示されている。
【0037】
実施例では、ピッチアセンブリ66は、それぞれのロータブレード22をピッチ軸34を中心に回転させるために、ハブ20及びそれぞれのロータブレード22(
図1に示されている)に結合された少なくとも1つのピッチ軸受72を含んでいる。ピッチ駆動システム68は、ピッチ駆動モータ74、ピッチ駆動ギアボックス76、及びピッチ駆動ピニオン78を含んでいる。ピッチ駆動モータ74はピッチ駆動ギアボックス76に結合されており、ピッチ駆動モータ74はピッチ駆動ギアボックス76に機械的な力を与える。ピッチ駆動ギアボックス76はピッチ駆動ピニオン78に結合されており、ピッチ駆動ピニオン78はピッチ駆動ギアボックス76によって回転する。ピッチ軸受72はピッチ駆動ピニオン78に結合されており、ピッチ駆動ピニオン78が回転すると、ピッチ軸受72が回転する。
【0038】
ピッチ駆動システム68は風力タービンコントローラ36に結合されており、風力タービンコントローラ36からの1つ又は複数の信号を受け取ってロータブレード22のピッチ角を調整することができる。本実施例では、ピッチ駆動モータ74は、電力及び/又は油圧システムによって駆動され、ピッチアセンブリ66が本明細書で説明するように機能できるようにする任意の適切なモータである。あるいは、ピッチアセンブリ66は、油圧シリンダ、バネ、及び/又はサーボ機構などの任意の適切な構造、構成、配置、及び/又は構成要素を含むことができるが、これらに限定されることはない。特定の実施形態では、ピッチ駆動モータ74は、ハブ20の回転慣性から抽出された及び/又は風力タービン10の構成要素にエネルギーを供給する蓄積エネルギー源(図示せず)から抽出されたエネルギーによって駆動される。
【0039】
また、ピッチアセンブリ66は、特定の優先された状況の場合及び/又はロータ18の過速時に、風力タービンコントローラ36からの制御信号に従ってピッチ駆動システム68を制御するための1つ又は複数のピッチ制御システム80を含むことができる。実施例では、ピッチアセンブリ66は、風力タービンコントローラ36から独立してピッチ駆動システム68を制御するために、それぞれのピッチ駆動システム68に通信可能に結合された少なくとも1つのピッチ制御システム80を含んでいる。実施例では、ピッチ制御システム80は、ピッチ駆動システム68及びセンサ70に結合されている。風力タービン10の通常運転中、風力タービンコントローラ36は、ロータブレード22のピッチ角が調整されるようにピッチ駆動システム68を制御することができる。
【0040】
一実施形態によれば、発電機84は、例えば、バッテリ及び電気コンデンサを含み、ハブ20に配置される又はハブ20の内部に配置され、センサ70、ピッチ制御システム80、及びピッチ駆動システム68に結合されて、これらの構成要素に電力を供給する。本実施例では、発電機84は、風力タービン10の運転中、ピッチアセンブリ66に継続的な電力を供給する。代替実施形態では、発電機84は、風力タービン10の電力損失の事象が生じている間だけピッチアセンブリ66に電力を供給する。電力損失事象には、電力網の電力損失又は電力低下、風力タービン10の電気システムの誤動作、及び/又は風力タービンコントローラ36の故障などが挙げられる。電力損失事象の間、発電機84は、ピッチアセンブリ66に電力が供給されるように動作し、ピッチアセンブリ66は、電力損失事象の間動作することができる。
【0041】
この例では、ピッチ駆動システム68、センサ70、ピッチ制御システム80、ケーブル、及び発電機84の各々は、ハブ20の内側表面88によって画定された空洞86内に配置されている。代替実施形態では、これら構成要素はハブ20の外側ルーフ面に対して配置され、外側ルーフ面に直接的又は間接的に結合することができる。
【0042】
図3は、本開示の第1の態様による風力タービンのアンバランスを検出するための方法400の一例のフローチャートを示す。
図3の方法400は、ブロック401において、風力タービンの1つ又は複数のセンサから1つ又は複数の動き信号を受け取ることを含んでいる。また、方法400は、ブロック402において、ロータ回転速度周波数における動き信号のエネルギーレベルを決定することを含んでいる。方法400は、ブロック403において、ロータ回転速度周波数における動き信号のエネルギーレベルを、エネルギー閾値と比較することを含んでいる。そして、ブロック404において、閾値との比較に基づいてロータのアンバランスに関する判断をすることができる。
【0043】
前述したように、方法400は、エネルギー閾値と比較して、ロータ回転速度周波数における動き信号のエネルギーの大きさが増加したことに基づいて、風力タービンのアンバランスを検出することができる。したがって、方法400は、受け取った動き信号から、風力タービンがアンバランス状態で運転されているかどうかを正確かつ堅牢(robust)に推定することができる。更に、方法400は、風力タービンの運転中に、風力タービンの電力の全体的な出力に影響を与えることなく、前記風力タービンのアンバランスを検出することができる。更に、方法400は、一般的に風力タービンに既に含まれている装置によって実行することができ、したがって、風力タービンに追加の装置を設置する必要はない。
【0044】
動き信号401は、様々な供給源から得ることができる。特に、動き信号は、加速度に関する信号とすることができる。このような信号は、風力タービンに設置された(例えば風力タービンのロータ又はナセル、あるいはタワーの上部に設置された)加速度計から得ることができる。
【0045】
実施例では、本方法は、風力タービンのタワーの第1の固有振動数における動き信号のエネルギーレベルを決定することと、風力タービンのタワーの第1の固有振動数における動き信号のエネルギーレベルに少なくとも部分的に基づいてエネルギー閾値を決定することとを更に含むことができる。これらの例では、ロータがアンバランスであるかどうかを判断するための閾値は、風力タービンの運転状況に合わせて調整される。タワーの第1の固有振動数における振動(第1の固有モード)、及びロータ回転速度周波数における振動についても、気象条件(風速、乱気流、波浪)及び他の条件が影響する。エネルギー閾値を第1の固有モードの振動に依存させることで、ロータのアンバランスが発生している恐れがある判断を、より信頼性の高いものとすることができる。
【0046】
一部の例では、エネルギー閾値は、風力タービンのタワーの第1の固有振動数における動き信号のエネルギーレベルの一定の割合である。具体的な例では、エネルギー閾値は、第1の固有振動数における動き信号のエネルギーレベルの40%~100%の間の値、特に、50%~80%の間の値とすることができる。
【0047】
他の例では、エネルギー閾値は、計算シミュレーションの結果に少なくとも部分的に基づいていてもよい。計算シミュレーションは、運転中の風力タービンの計算シミュレーションとすることができる。更に、計算シミュレーションは、気象条件(気圧、風向、平均風速(例えば、自由流速)、ウィンドシア、ウィンドベアなど)に依存する変数のセットを含むことができる。更なる例では、エネルギー閾値は、少なくとも部分的にフィールドデータに基づいていてもよい。
【0048】
一部の例では、ブロック402において、ロータ回転速度周波数における動き信号のエネルギーレベルを決定することは、受け取った動き信号をフィルタリングして、ロータ回転速度周波数(すなわち1p周波数)における動き信号を得ることを含んでいる。得られる動き信号は、予めフィルタリングされていてもよいし、ローデータ(raw data)を含んでいてもよい。ローデータの場合、信号は、1p周波数における信号が選択されるようにフィルタリングすることができる。
【0049】
動き信号をフィルタリングすることは、ノッチフィルタを使用することを含むことができる。他のフィルタ(例えば、バンドパスフィルタ)を使用することもできる。バンドパスフィルタは、ロータ回転速度周波数における動き信号を決定するために適用することができる。本明細書において、バンドパスフィルタ(band-pass filter又はbandpass filter)は、或る範囲内の周波数を通過させ、当該範囲の外側の周波数を除去する(減衰する)フィルタとみなすことができる。したがって、ロータ回転速度周波数における動き信号は、当該周波数のみの動き信号に必ずしも正確に対応するとは限らず、ロータ回転速度周波数を中心とした細い(狭い)周波数帯域を含む場合がある。これらの細い周波数帯域は「通過帯域」と呼ばれることもある。
【0050】
このようなフィルタリングステップは、1P周波数の動きを実質的に分離し、他の動き源(風力タービンタワーを通過するブレード22(3P周波数)など)の寄与を動き信号410のエネルギーにおいて緩和することができる。したがって、方法400の後続のステップは、動き信号のエネルギーの変化をより正確に推定することができる。
【0051】
更に、方法400は他のフィルタリングステップ(
図4には図示せず)を含むことができ、当該他のフィルタリングステップでは、動き信号の高周波数成分がフィルタリングされる。このフィルタリングステップは、時間領域又は周波数領域において動き信号に適用する平滑化フィルタを使用することを含むことができる。平滑化フィルタリングは、移動平均フィルタ、加重移動平均フィルタ(二項荷重移動平均フィルタ、指数二高加重平均フィルタ、又は多項加重移動平均フィルタなど)、メディアンフィルタ、又はその他のフィルタとすることができる。更に、フィルタリングステップは、平滑化フィルタを適用する前に動き信号401を再サンプリングすることを含むことができる。また、フィルタリングステップは、外れ値除去のステップを含んでいてもよい。更に、例えばハンペルフィルタのように、外れ値除去と平滑化とを組み合わせたフィルタリングアプローチを適用することもできる。
【0052】
ブロック402において、ロータ回転速度周波数における動き信号のエネルギーレベルを決定することは、対応する動き信号の時間窓の間の二乗平均平方根を計算することを含むことができる。時間窓は、検出されるべき現象の出現を判断できるようにするため、適切に選択することができる。実施例では、時間の長さは、1分(風力タービンロータの少なくとも数回転を含む)から15分の間、特に3分から10分の間で選択することができる。また、他の時間長さを使用することもできる。
【0053】
あるいは、信号のエネルギーの大きさを推定するために、他の演算処理を適用することもできる。例えば、周期性が高い信号の場合、方法400のブロック402は、ピークピークの大きさを計算することを含んでいてもよい。更に、ブロック402は、エネルギーの大きさを得るためにいくつかの演算を実行することを含んでいてもよく、したがって方法400の堅牢性を高めることができる。
【0054】
風力タービンタワーの固有振動数におけるエネルギーレベルの決定にも、同じ又は類似のフィルタリングステップ及び同じ又は類似の計算を適用できることに留意されたい。
【0055】
幾つかの例では、動き信号は、風力タービンの前後方向及び/又は左右方向の動き信号を含んでいる。また、幾つかの例では、動き信号のエネルギーレベルを決定することは、ロータ回転速度周波数における前後方向及び左右方向の動き信号のエネルギーレベルを決定することを含んでおり、本方法は、ロータ回転速度周波数における前後方向及び左右方向の加速度信号のエネルギーレベルに基づいて、風力タービンが空気力学的アンバランス及び/又は質量アンバランスを受けているかどうかを判断することを更に含んでいる。
【0056】
特定のセンサは前後方向の振動に関する情報を提供することができ、他のセンサは左右方向の振動に関する情報を提供することが考えられる。ブレードに質量のアンバランスがある場合(この質量のアンバランスが製造時に生じたものであるか、氷のようにブレードに物質(氷など)が付着したことによるものであるかにかかわらず)、質量のアンバランスは、一般に、前後方向よりも左右方向の振動により顕著な影響を受ける。
【0057】
一方、空気力学的なアンバランス(例えば、物質の浸食又は付着によるブレードの形状の違い、ブレード間の標準のピッチ角のばらつきなどに起因するアンバランス)は、ブレードによって与えられる空気力学的な推力が異なるため、前後方向に顕著な影響を与える。前後方向と左右方向に対して別々に判断することによって、アンバランスの原因として考えられる徴候を得ることができる。
【0058】
一部の例では、本方法は風力タービンの通常運転中に実施することができ、任意選択で本方法をリアルタイムで実施することができる。本明細書に開示された方法は、一般に、運転を中断する又は停止する必要がなく、対応する発電損失を回避することができる。
【0059】
実施例では、ロータがアンバランスであると判断された場合、本方法は、ロータのアンバランスの判断に応答して、フラグ信号を生成すること、又は動作変更を行うことを更に含むことができる。フラグ信号は、一般的な警告信号であってもよいし、警告にとどまらなくてもよい。すなわち、場合によっては、フラグ信号は、考えられる原因及び/又は考えられる対策を示すことを含む。場合によっては、フラグ信号は、保守又は修理のスケジュールを指示してもよいし、スケジュールの計画を立てるトリガーであってもよい。
【0060】
実施例では、運転中に変化が生じることがあり、この変化は、電力出力を低減すること、ロータ回転速度を低下すること、風力タービンの1つ又は複数のブレードのピッチ角を変更すること、及び風力タービンの運転を停止すること、のうちの1つ又は複数の変化とすることができる。
【0061】
さらなる態様では、
図4による方法が提供される。風力タービンのロータのアンバランスを判断するための方法600が提供されている。方法600は、ロータの左右方向及び前後方向の動きを示す動き信号を受け取ること(ブロック610、710)を含んでいる。方向により分離された信号は、一部の例では、異なるセンサ(のグループ)から得ることができる。他の例では、信号は同じセンサから得られるが、2つの方向の振動に関する信号を得るために処理することができる。
【0062】
方法600は、更に、ブロック615及び620において、受け取った動き信号をフィルタリングして、ロータ回転速度周波数における左右方向及び前後方向の動き信号を求めることを含んでいる。本明細書において前述したようなフィルタリング方法は、例えば、バンドパスフィルタ、ノッチフィルタなどを使用することができる。
【0063】
本方法は、ブロック715、720において、受け取った動き信号をフィルタリングして、タワーの第1の固有振動数における左右方向及び前後方向の動き信号を決定することを含んでいる。ここでも、同一又は類似のフィルタリングを使用することができる。
【0064】
また、方法600は、ブロック625、630、725及び730において、ロータ回転速度周波数における左右方向及び前後方向の動き信号のエネルギーレベルを計算することと、タワーの第1の固有振動数における左右方向及び前後方向の動き信号のエネルギーレベルを計算することとを含んでいる。
図4の例では、エネルギーレベルは二乗平均平方根法を用いて求めることができるが、他の方法も可能である。
【0065】
本方法は、更に、ブロック640において、ロータ回転速度周波数における左右方向の動き信号の計算されたエネルギーレベルと、第1の固有振動数における左右方向の動き信号の計算されたエネルギーレベルとを比較することを含んでいる。そして、ブロック740では、ロータ回転速度周波数における前後方向の動き信号の計算されたエネルギーレベルが、第1の固有振動数における前後方向の動き信号の計算されたエネルギーレベルと比較される。ブロック750において、エネルギーレベルの比較に基づいて、ロータのアンバランスが発生しているかどうかを判断することができる。
【0066】
図4の例では、前後方向と左右方向に関する様々なプロセスが並行して実行されているが、他の例では、これらのプロセスを連続的に順に実行してもよい。
【0067】
図4の例では、異なる振動モードのエネルギー含有量に関するプロセスが並行して実行されているが、他の例ではこれらのプロセスを連続的に順に実行してもよい。
【0068】
本方法は、運転中に、所望の頻度で及び必要な回数だけ実行することができる。例えば、方法600は、10分ごと、1時間ごと、又は毎日繰り返すことができる。別の繰返しを開始する前に、並列処理のいずれの処理も完全に完了している必要はない。また、各並列処理が同じ頻度で実行される必要もない。
【0069】
一部の実施例において、本方法は、計算されたエネルギーレベルの前後方向における比、及び計算されたエネルギーレベルの左右方向における比を決定することを含むことができる。これらの比に対する閾値を定義することができ、例えば0.4~1、特に、0.4~0.8の閾値を選択することができる。これらの比のうちの一方の比又は両方の比が閾値に達すると、本明細書で説明したように、動作が影響を受けることがある、及び/又はフラグ信号を送信することができる。
【0070】
一部の例では、動き信号は、風力タービンの前後方向及び/又は左右方向の加速度測定値を含む加速度信号を含んでいる。加速度信号は、風力タービンのナセルに、又は風力タービンの他の構成要素に(例えば、風力タービンのタワーの上部に)配置されたセンサから得ることができる。
【0071】
場合によっては、アンバランスの原因の診断に役立てるために、1p周波数における左右方向の動き信号のエネルギーレベルを、1p周波数における前後方向の動き信号のエネルギーレベルと比較することができる。
【0072】
他の態様では、風力タービンのアンバランスを検出するための制御システム500が開示されている。風力タービンのアンバランスを検出するための制御システムは、本明細書に開示される方法のいずれの方法も実行するように構成されたプロセッサを含むことができる。
【0073】
図5には、このような制御システム500の一例が概略的に示されている。制御システム500は、1つ又は複数の風力タービンセンサ520から1つ又は複数の動き信号530を受け取るように構成されたプロセッサ510を含んでいる。更に、プロセッサ510は、ロータ回転速度周波数における動き信号530からエネルギーの大きさを決定するように構成される。更に、プロセッサ510は、ロータ回転速度周波数における動き信号530からのエネルギーの大きさをエネルギー閾値と比較するように構成される。そして、プロセッサ500は、ロータ回転速度周波数における動き信号530からのエネルギーの大きさがエネルギー閾値よりも大きい場合に、フラグ信号を生成するように構成される。
【0074】
一部の例では、制御システム500のプロセッサ510は、風力タービンのナセルに配置された加速度センサ520から動き信号530を受け取るように構成することができる。他の例では、センサ520は、風力タービンの他の(又は幾つかの)構成要素に配置することができる。更に、センサ520は、光学センサ及び歪みゲージセンサのうちの少なくとも一方のセンサであってもよい。
【0075】
本開示による制御システム500の例では、制御システム500は、風力タービン10の他の装置と通信することができる。例えば、制御システム500は、ピッチ駆動システム68と通信して、生成されたフラグ信号に従ってピッチ駆動システム68に命令することができる。
【0076】
更に、実施例では、制御システム500は、風力タービンの計算シミュレーションから得られる負荷データを含むメモリデバイスと通信している。負荷データは、エネルギー閾値を確定するために制御システム500によってアクセスされる。
【0077】
更に、一部の例では、制御システム500は、前後方向の加速度信号と左右方向の加速度信号とからエネルギーの大きさを決定するように構成することができる。これは、逐次的に実行されてもよいし、並列的に(すなわち、並列計算で)実行されてもよい。次に、制御システム500は、決定されたエネルギーの大きさを使用して、風力タービンのアンバランスが空気力学的アンバランスであるか質量アンバランスであるかを検出することができる。
【0078】
一部の例では、風力タービンは、制御システムと通信するピッチ駆動機構を更に含むことができ、制御システムは、生成されたフラグ信号に従ってピッチ駆動機構に命令するように構成することができる。したがって、風力タービンのアンバランスが緩和されるように、1つ又は複数のブレードのピッチ角を変更することができる。ピッチ角の修正は、空気力学的なアンバランスを補償するのに適しているが、必要に応じて、一般的な負荷の軽減にも使用することができる。
【0079】
幾つかの例では、風力タービン10は、風力タービンのローカルコントローラ、SCADAシステム、又は遠隔操作センターにフラグ信号を送信するように構成された通信ユニットを更に含むことができる。他の例では、制御システム500は、風力タービンのローカルコントローラの一部を構成することができる。
【0080】
図6はグラフを示し、このグラフは、例示的な動き信号530a、530bと、ロータ回転速度周波数550及び風力タービンタワーの固有振動数560に関連する周波数点とを有している。
図6は、周波数軸を共有する2つの独立した動き信号530a、530bを示している。
【0081】
この図の動き信号530aは、風力タービンの前後方向の動き信号(より詳細には、例えばナセルの加速度)を概略的に表したものである。1p周波数(ライン550)におけるエネルギー含有量は、第1の固有振動数(ライン560)におけるエネルギー含有量よりも高いことが分かる。これは、ロータに強い空気力学的アンバランスがあることを示している。
【0082】
更に、上記の図に示した動き信号530bは、同じ状況ではあるが風力タービンの、左右方向の動き信号を概略的に表したものである。この場合、第1のピーク(1p周波数)におけるエネルギー含有量は、タワーの第1の固有振動数に対応する第2のピークにおけるエネルギー含有量と実質的に同じである。したがって、この方向にも大きなアンバランスがある。アンバランスが左右方向と前後方向との両方で発生する場合は、最も可能性の高い原因は空気力学的なアンバランスである。もし、アンバランスが主に左右方向に発生し、前後方向ではほとんど発生しないのであれば、最も可能性の高い原因は質量のアンバランスである。
【0083】
さらなる態様では、風力タービンのアンバランスを検出する制御システム500を含む風力タービン10が提供される。風力タービンの制御システム500は、1つ又は複数の風力タービンセンサ520から1つ又は複数の動き信号530を受け取るように構成されたプロセッサ510を含んでいる。更に、プロセッサ510は、ロータ回転速度周波数における動き信号530のエネルギーレベルを決定するように構成することができる。更に、プロセッサ510は、ロータ回転速度周波数における動き信号のエネルギーレベルをエネルギー閾値と比較し、ロータ回転速度周波数における動き信号からのエネルギーの大きさがエネルギー閾値よりも大きい場合にフラグ信号を生成するように構成することができる。
【0084】
制御システム500のすべての特徴は、風力タービンのアンバランスを検出するのに適した方法400、600に含めることができ、その逆に、方法400、600の全ての特徴を制御システム500に含めることも可能であることに留意されたい。更に、当業者であれば、本明細書の開示に関連して説明した様々な例示的な論理ブロック、モジュール、回路、及びアルゴリズムの工程は、電子ハードウェア、コンピュータソフトウェア、又はその両方の組み合わせとして実装できることを理解する。ハードウェアとソフトウェアの交換可能性を明確に説明するために、様々な例示的構成要素、ブロック、モジュール、回路、及び工程が、それらの機能性の観点から概ね上述されている。このような機能がハードウェアとして実装されるかソフトウェアとして実装されるかは、特定の用途及びシステム全体に課される設計上の制約に依存する。熟練した技術者は、記載された機能を、特定の用途ごとに様々な方法で実装することができる。
【0085】
本明細書の開示に関連して説明される様々な例示的な論理ブロック、モジュール、及び回路は、1つ又は複数の汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、クラウドコンピューティングアーキテクチャ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)又は他のプログラマブルロジックデバイス、ディスクリートゲート又はトランジスタロジック、ディスクリートハードウェアコンポーネント、又は本明細書に記載される機能を実行するように設計されたこれらの任意の組み合わせで実装する又は実行することができる。汎用プロセッサは、マイクロプロセッサとすることができるが、代替例として、プロセッサは、従来のプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、又はステートマシンとすることもできる。プロセッサは、コンピューティング装置の組み合わせ(例えば、DSPとマイクロプロセッサの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと併用された1つ又は複数のマイクロプロセッサ、又は他の構成)として実装することもできる。
【0086】
また、本開示は、本明細書に開示された複数の方法のうちのいずれかの方法を実行するように適合されたコンピューティングシステムに関連する。
【0087】
また、本開示は、命令(コード)を含むコンピュータプログラム又はコンピュータプログラム製品に関し、命令は、実行されると、本明細書に開示された複数の方法のうちのいずれかの方法を実行する。
【0088】
コンピュータプログラムは、ソースコード、オブジェクトコード、ソースコードとオブジェクトコードの中間コード(部分的にコンパイルされた形態のコードなど)、又はプロセスの実施に使用するのに適した他の任意の形態とすることができる。キャリアは、コンピュータプログラムを担持することができる任意のエンティティ又はデバイスとすることができる。
【0089】
ソフトウェア/ファームウェアに実装される場合、機能は、コンピュータ可読媒体の1つ又は複数の命令又はコードとして記憶されてもよいし、伝送されてもよい。コンピュータ可読媒体には、コンピュータ記憶媒体と、コンピュータプログラムをある場所から別の場所に転送することができる媒体を含む通信媒体との両方の媒体が含まれる。記憶媒体は、汎用コンピュータ又は専用コンピュータがアクセスできる任意の利用可能な媒体とすることができる。一例として、このようなコンピュータ可読媒体は、RAM、ROM、EEPROM、CD/DVD若しくは他の光ディスク(disk)記憶装置、磁気ディスク(disk)記憶装置若しくは他の磁気記憶装置、又は命令若しくはデータ構造の形態で所望のプログラムコード手段を伝送する又は記憶するために使用できる任意の他の媒体であって、汎用コンピュータ若しくは専用コンピュータ、又は汎用プロセッサ若しくは専用プロセッサによってアクセス可能な他の媒体を含むことができるが、これらに限定されることはない。また、どのような接続も、コンピュータ可読媒体と呼ぶことができる。例えば、ソフトウェア/ファームウェアが、同軸ケーブル、光ファイバーケーブル、ツイストペア、デジタル加入者線(DSL)、又は無線技術(赤外線、ラジオ波、及びマイクロ波など)を使用して、ウェブサイト、サーバ、又は他のリモートソースから送信される場合、同軸ケーブル、光ファイバーケーブル、ツイストペア、DSL、又は無線技術(赤外線、ラジオ波、及びマイクロ波など)は、媒体の定義に含まれる。本明細書において、ディスク(disk)及びディスク(disc)には、コンパクトディスク(compact disc:CD)、レーザディスク(laser disc)、光ディスク(optical disc)、デジタル多用途ディスク(digital versatile disc:DVD)、フロッピーディスク(floppy disk)、ブルーレイディスク(Blu-ray (登録商標) disc)が含まれ、ディスク(disk)は通常、データを磁気的に再生するが、ディスク(disc)はレーザでデータを光学的に再生する。上記の組み合わせもコンピュータ可読媒体の範囲に含まれる。
【0090】
ここに記載された説明は実施例を使用して、教示(好ましい実施形態を含む)を開示しており、また、当業者であれば誰でも教示を実施する(装置又はシステムを製造する及び使用する、並びに組み込まれた方法を実行することを含む)ことができる。特許可能な範囲は特許請求の範囲によって定義され、当業者が思いつく他の例を含むことができる。そのような他の例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の文言と実質的に異ならない等価な構造要素を含む場合、特許請求の範囲に含まれることが意図される。記載された様々な実施形態の態様、並びにそのような各態様の他の既知の等価物は、当業者によって混合され、組み合わされて、本出願の原理に従う追加の実施形態及び技術を構成することができる。請求項において括弧内に図面に関連する符号が示されている場合、符号は単に請求項を理解しやすくしようとするものであり、請求項の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【符号の説明】
【0091】
10 風力タービン
12 地面
14 支持システム
15 タワー
16 ナセル
18 ロータ
20 ハブ
22 ロータブレード
26 負荷伝達領域
28 風向
30 ロータ軸
32 ピッチシステム
34 ピッチ軸
36 風力タービンコントローラ
38 軸
40 プロセッサ
42 発電機
44 メインシャフト
46 ギアボックス
48 高速シャフト
50 カップリング
52 メインフレーム
54 デカップリング支持手段
56 駆動機構
58 気象測定システム
60 前方支持軸受
62 後方支持軸受
64 ドライブトレイン
66 ピッチアセンブリ
68 ピッチ駆動システム
70 センサ
72 ピッチ軸受
74 ピッチ駆動モータ
76 ピッチ駆動ギアボックス
78 ピッチ駆動ピニオン
80 ピッチ制御システム
84 発電機
86 空洞
88 内側表面
90 変圧器
103 トルクアーム
400 方法
401 ブロック
401 動き信号
402 ブロック
403 ブロック
404 ブロック
410 動き信号
500 制御システム
500 プロセッサ
510 プロセッサ
520 センサ
530 動き信号
530a 動き信号
530b 動き信号
550 ロータ回転速度周波数
560 自然周波数
600 方法
610 ブロック
615 ブロック
625 ブロック
640 ブロック
715 ブロック
740 ブロック
750 ブロック
【外国語明細書】