(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017030
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】スピーカー装置、及び、スピーカー装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H04R 1/02 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
H04R1/02 105B
H04R1/02 101F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119393
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明善
【テーマコード(参考)】
5D017
【Fターム(参考)】
5D017AD31
5D017AG06
(57)【要約】
【課題】製造コストの増加を抑制しつつ、スピーカーユニットの振動が外部に伝達されることを抑制する。
【解決手段】スピーカー装置1は、振動板3を有するスピーカーユニット2と、スピーカーユニット2を物に取り付ける取付部材40と、スピーカーユニット2の中心軸Oと交差する方向に延在し、スピーカーユニット2と取付部材40とを接続することにより、スピーカーユニット2を支持する帯状又は線状の複数の支持部材30とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放音部を有するスピーカーユニットと、
前記スピーカーユニットを物に取り付ける取付部材と、
前記スピーカーユニットの中心軸と交差する方向に延在し、前記スピーカーユニットと前記取付部材とを接続することにより、前記スピーカーユニットを支持する帯状又は線状の複数の支持部材と、
を備えるスピーカー装置。
【請求項2】
前記取付部材と前記スピーカーユニットとの間の隙間を密封する密封部材をさらに備える、
請求項1に記載のスピーカー装置。
【請求項3】
前記複数の支持部材は、3つの支持部材であり、
前記3つの支持部材は、前記中心軸を中心に放射状に配置される、
請求項1に記載のスピーカー装置。
【請求項4】
前記複数の支持部材の張力と前記スピーカーユニットの重量とに基づく前記スピーカーユニットの共振周波数は、前記スピーカーユニットに入力される音の帯域又は前記スピーカーユニットから出力される音の帯域よりも低い、
請求項1に記載のスピーカー装置。
【請求項5】
前記複数の支持部材の各々の伸び率は、3%以上であり、
前記スピーカーユニットの状態が所定の状態である場合、前記複数の支持部材の全ての張力は、0よりも大きい、
請求項4に記載のスピーカー装置。
【請求項6】
前記複数の支持部材の各々は、伸び率が1%以下で変形可能な材料により形成され、
前記スピーカーユニットの状態が所定の状態である場合、前記複数の支持部材の全ての張力は、0である、
請求項4に記載のスピーカー装置。
【請求項7】
前記複数の支持部材の各々は、金属、合成繊維及びガラス繊維のうちの少なくとも1つを含む材料により形成される、
請求項1に記載のスピーカー装置。
【請求項8】
前記複数の支持部材は、前記スピーカーユニットの軸線方向が水平方向となるように、前記スピーカーユニットを支持する、
請求項1に記載のスピーカー装置。
【請求項9】
放音部を有するスピーカーユニットと、前記スピーカーユニットを物に取り付ける取付部材とを備えるスピーカー装置の製造方法であって、
前記スピーカーユニットの中心軸と交差する方向に延在し、前記スピーカーユニットを支持する帯状又は線状の複数の支持部材を、前記スピーカーユニットと前記取付部材とに接続する接続工程を含み、
前記接続工程において、
前記スピーカーユニットのうちの前記複数の支持部材が接続される第1接続面と、前記取付部材のうちの前記複数の支持部材が接続される第2接続面との、前記第1接続面に垂直な方向の位置を異ならせるスペーサー上に、前記スピーカーユニット及び前記取付部材を配置し、
前記複数の支持部材の各々を前記第1接続面及び前記第2接続面に接続し、
前記スペーサーを取り除く、
スピーカー装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スピーカー装置、及び、スピーカー装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカーユニットの振動が外部に伝達されることを抑制するスピーカー装置(音声出力装置)が知られている。例えば、特許文献1には、スピーカーユニットと取付部材をバネ部材で接続する音声出力装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スピーカーユニットの振動が外部に伝達されることを抑制するための構成(例えば、バネ部材)のコストが増加した場合、音声出力装置の製造コストが増加する。このため、スピーカーユニットの振動が外部に伝達されることを抑制するための構成のコストの増加を抑制することが望まれている。
【0005】
以上の事情を考慮して、本開示のひとつの態様は、製造コストの増加を抑制しつつ、スピーカーユニットの振動が外部に伝達されることを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るスピーカー装置は、放音部を有するスピーカーユニットと、前記スピーカーユニットを物に取り付ける取付部材と、前記スピーカーユニットの中心軸と交差する方向に延在し、前記スピーカーユニットと前記取付部材とを接続することにより、前記スピーカーユニットを支持する帯状又は線状の複数の支持部材と、を備える。
【0007】
本開示の一態様に係るスピーカー装置の製造方法は、放音部を有するスピーカーユニットと、前記スピーカーユニットを物に取り付ける取付部材とを備えるスピーカー装置の製造方法であって、前記スピーカーユニットの中心軸と交差する方向に延在し、前記スピーカーユニットを支持する帯状又は線状の複数の支持部材を、前記スピーカーユニットと前記取付部材とに接続する接続工程を含み、前記接続工程において、前記スピーカーユニットのうちの前記複数の支持部材が接続される第1接続面と、前記取付部材のうちの前記複数の支持部材が接続される第2接続面との、前記第1接続面に垂直な方向の位置を異ならせるスペーサー上に、前記スピーカーユニット及び前記取付部材を配置し、前記複数の支持部材の各々を前記第1接続面及び前記第2接続面に接続し、前記スペーサーを取り除く。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るスピーカー装置の断面図である。
【
図2】
図1に示したスピーカー装置の正面図である。
【
図3】支持部材によるスピーカーユニットの支持の効果を説明するための説明図である。
【
図4】スピーカー装置の製造方法の一例を説明するための説明図である。
【
図5】スピーカー装置の製造方法の他の例を説明するための説明図である。
【
図6】第1変形例に係る支持部材の接続方法の一例を説明するための説明図である。
【
図7】第2変形例に係る支持部材の一例を説明するための説明図である。
【
図8】
図7に示した支持部材の接続方法の一例を説明するための説明図である。
【
図9】第3変形例に係るスピーカー装置の断面図である。
【
図10】第4変形例に係るスピーカー装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面において各部の寸法及び縮尺は実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に記載する実施形態は、本開示の好適な具体例である。このため、本実施形態には、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかし、本開示の範囲は、以下の説明において特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0010】
図1は、実施形態に係るスピーカー装置1の断面図である。なお、
図1は、後述するスピーカーユニット2の中心軸Oを通る平面でスピーカー装置1を切断した場合のスピーカー装置1の断面図を模式的に示している。
【0011】
スピーカーユニット2の中心軸Oは、後述する磁気回路6の中心軸Oである。中心軸Oは、後述する振動板3の振動方向に平行で、かつ、振動板3の中心を通る線分である。中心軸Oと直交する方向は、スピーカーユニット2の径方向Yである。
図1の断面図では、径方向Yのうち、スピーカー装置1の断面に平行な方向が矢印で示されている。また、以下では、中心軸Oに沿う方向の一方を正面側Xfと称し、他方(正面側Xfの反対側)を背面側Xbと称する場合がある。例えば、振動板3の両面のうちの正面側Xfの面が、放音する放音面である。また、以下では、中心軸Oに沿う方向は、正面側Xf及び背面側Xbを特に区別せずに、中心軸方向Xとも称される。中心軸方向Xは、「スピーカーユニットの軸線方向」に対応する。
【0012】
また、
図1では、スピーカー装置1が、取付対象部材50の開口部50aに挿入されている状態が図示されている。取付対象部材50は特に限定されないが、スピーカーユニット2の放音面が重力方向にほぼ平行(中心軸Oがほぼ水平方向)となるようにスピーカー装置1が設置される部材が、取付対象部材50として好適に利用される。例えば、取付対象部材50としては、車両のドアのインナパネルが好適である。なお、取付対象部材50は、車両のドアのインナパネル以外の部材(例えば、ドアトリム等)であってもよい。あるいは、取付対象部材50は、車両以外の他の用途に用いられる部材(例えば、キャビネット等)であってもよい。ここで、水平方向は、例えば、重力方向に垂直な面(水平面)に対して平行な方向である。
【0013】
例えば、スピーカー装置1は、取付対象部材50のうちの開口部50aを取り囲む周縁部50bに、後述する帯状又は線状の複数の支持部材30を介して、固定される。
【0014】
スピーカー装置1は、スピーカーユニット2と、密封部材16と、複数の支持部材30と、取付部材40とを含む。スピーカーユニット2は、振動板3と、駆動部4と、スピーカーフレーム5とを有する。すなわち、スピーカーユニット2は、振動板3、駆動部4、及び、スピーカーフレーム5をユニット化した構造体である。
【0015】
振動板3は、シート材で構成され、振動により放音する振動体である。当該シート材は、例えば、樹脂材料を繊維基材に含浸させた状態で硬化又は固化することで得られる。当該樹脂材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、変性ゴム樹脂、及び、フェノール樹脂等が挙げられる。当該繊維基材としては、例えば、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、シリカ繊維、金属繊維、チタン酸カリウム繊維、ジルコニア繊維、ポリアクリレート繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、綿繊維、麻繊維、及び、セルロース繊維等が挙げられる。
【0016】
例えば、振動板3は、後述する駆動部4よりも正面側Xfに配置され、中心軸方向Xに振動する。振動板3は、コーン型である。なお、振動板3の形状は、コーン型に限定されず、例えば、ドーム型等でもよい。振動板3は、「放音部」の一例である。
【0017】
駆動部4は、入力される電気信号に基づいて振動板3を駆動する機構である。例えば、駆動部4は、磁場を生じさせる磁気回路6と、振動板3に接続されるボイスコイル7とを含む。
【0018】
磁気回路6は、円環状のマグネット8と、円盤状のヨーク9と、円柱状のセンターポール10とを含む。なお、マグネット8、ヨーク9、及び、センターポール10は、中心軸Oと同軸に配置される。また、マグネット8、ヨーク9、及び、センターポール10は、中心軸方向Xにおいて、振動板3の背面側Xbに配置されている。ヨーク9及びセンターポール10の材料は、例えば、磁性材料である。
【0019】
マグネット8から生じる磁束は、ヨーク9及びセンターポール10を通過する。磁気回路6を通過する磁束により、磁気回路6の周囲に磁場が形成される。ボイスコイル7は、磁気回路6により形成された磁場内に配置される。
【0020】
スピーカーユニット2は、ボイスコイル7が巻回されるボビン11をさらに備える。ボビン11は、筒状部11a及びセンターキャップ11bを含む。センターキャップ11bは、筒状部11aの正面側Xfの開口を閉じる。ボイスコイル7は、ボビン11の筒状部11aの外周面に沿って巻回される。
【0021】
センターキャップ11bの外周には、振動板3の内周3aが接続される。すなわち、振動板3は、中心軸方向Xから見て、センターキャップ11bの周囲に形成される。
【0022】
また、スピーカーユニット2は、弾性を有するエッジ部12をさらに備える。中心軸方向Xから見たエッジ部12の形状は、例えば、円環状である。例えば、エッジ部12は、中心軸方向Xから見て、振動板3の外周3bに沿って設けられる。すなわち、振動板3の外周3bは、エッジ部12に接続される。振動板3は、エッジ部12を介して、スピーカーフレーム5に連結される。
【0023】
スピーカーフレーム5は、振動板3及び磁気回路6を保持する。スピーカーフレーム5は、金属材料又は樹脂材料で構成される。スピーカーフレーム5の形状は、振動板3及び磁気回路6を保持できればよく、
図1に示す形状に限定されず、任意である。
【0024】
スピーカーフレーム5は、コーン部13、磁気回路収容部14、及びフランジ15を含む。コーン部13は、振動板3を径方向Yにおける外側から覆うように形成される。磁気回路収容部14は、中心軸方向Xにおいて、コーン部13の背面側Xbに配置されている。磁気回路収容部14は、磁気回路6のうち、マグネット8及びヨーク9を収容する。センターポール10の背面側Xbの部分は、磁気回路収容部14に収容されている。センターポール10の正面側Xfの部分は、コーン部13内に延びている。すなわち、磁気回路収容部14は、磁気回路6の一部を収容している。
【0025】
フランジ15は、コーン部13の正面側Xfの端部13aから、径方向Yにおける外側に張り出している。中心軸方向Xから見たフランジ15の形状は、円環状である。
【0026】
また、スピーカーユニット2は、複数の支持部材30をスピーカーフレーム5に対して固定する固定部20をさらに備える。固定部20は、フランジ15の背面15bに設けられている。中心軸方向Xから見た固定部20の形状は、円環状である。例えば、固定部20の内径は、コーン部13の正面側Xfの端部13aの外径よりも大きい。また、固定部20の外径は、フランジ15の外径と同じでもよい。固定部20の背面20bに支持部材30が接続される。背面20bは、「第1接続面」の一例である。
【0027】
なお、固定部20は、フランジ15に固定されるものに限定されない。固定部20は、例えば、スピーカーフレーム5のコーン部13に固定されるものでもよい。また、固定部20は、スピーカーフレーム5と一体的に形成されていてもよい。固定部20は、フランジ15と別部材として形成されていてもよく、フランジ15と一体的に形成されていてもよい。
【0028】
また、固定部20は、中心軸方向Xにおいて、フランジ15から離れて配置されていてもよい。固定部20は、円環状のものに限定されない。固定部20は、スピーカーユニット2の周方向において部分的に形成されていてもよい。なお、スピーカーユニット2の周方向は、中心軸O回りの方向である。また、固定部20は、フランジ15の背面側Xbに配置されるものに限定されず、フランジ15の正面側Xfに配置されていてもよい。また、固定部20は、スピーカーユニット2の径方向Yにおいて、フランジ15よりも内側に配置されていてもよく、フランジ15よりも外側に配置されていてもよい。
【0029】
取付部材40は、スピーカーユニット2を取付対象部材50に取り付けるための部材であり、所定の強度を有する。例えば、取付部材40の材質は、樹脂である。なお、取付部材40の材質は、金属であってもよい。中心軸方向Xから見た取付部材40の形状は、円環状である。例えば、取付部材40は、取付対象部材50の周縁部50bから径方向Yにおける内側に張り出すように、周縁部50bに取り付けられる。また、取付部材40の内周縁部40cは、背面側Xbに突出している。取付部材40の内周縁部40cの背面40dに支持部材30が接続される。背面40dは、「第2接続面」の一例である。なお、取付部材40の内周縁部40cは、背面側Xbに突出していなくてもよい。
【0030】
取付部材40の背面40bは、取付対象部材50の正面50cに接合される。例えば、取付部材40は、取付対象部材50に対してボルトにより固定されてもよい。なお、取付部材40は、取付対象部材50に対して、ボルトによる固定以外の他の方法により接合されていてもよい。また、取付部材40の正面40aが、取付対象部材50の背面50dに接合されていてもよい。
【0031】
複数の支持部材30は、中心軸Oと交差する方向(例えば、径方向Y)に延在する帯状又は線状の部材である。例えば、支持部材30は、延在方向には伸びにくく、回転運動及びひねりに対して柔軟に変形する材料により、帯状又は線状に形成される。具体的には、支持部材30は、金属、合成繊維及びガラス繊維のうちの少なくとも1つを含む材料により線状に形成されてもよい。あるいは、支持部材30は、丈夫で伸びの少ない材質の繊維で編んだ布(ベルト)であってもよい。具体的には、支持部材30は、ガラス繊維の布(ガラスクロス)により帯状に形成されてもよい。本実施形態では、支持部材30が線状の部材(例えば、ワイヤーロープ)である場合を想定する。
【0032】
複数の支持部材30の各々の一端及び他端は、固定部20及び取付部材40にそれぞれ接続される。複数の支持部材30は、固定部20と取付部材40とを接続することにより、スピーカーユニット2と取付部材40とを接続する。これにより、スピーカーユニット2は、複数の支持部材30を介して、取付対象部材50に支持される。すなわち、複数の支持部材30は、スピーカーユニット2と取付部材40とを接続することにより、スピーカーユニット2を支持する。なお、固定部20及び取付部材40と、支持部材30との接続方法は、
図4において後述する。
【0033】
密封部材16は、取付部材40とスピーカーユニット2との間の隙間を密封する。密封部材16の一端及び他端は、フランジ15の正面15a及び取付部材40の正面40aにそれぞれ接合されている。密封部材16は、弾性を有する部材であり、例えば、ゴム膜である。密封部材16の材料は、ゴムに限定されず、樹脂等であってもよい。また、密封部材16は、膜状に限定されず、例えばブロック状でもよい。このように、本実施形態では、密封部材16により、スピーカーユニット2と取付部材40との間の隙間が密閉されているため、スピーカーユニット2の背面側Xbから正面側Xfに音が回り込むことを抑制することができる。
【0034】
ここで、スピーカー装置1では、例えば、中心軸方向Xにスピーカーユニット2が振動する場合がある。詳細は
図3において後述するが、本実施形態では、中心軸方向Xの運動を振り子の回転運動に変換することにより、取付部材40に発生する中心軸方向Xの力を小さくする。これにより、本実施形態では、スピーカーユニット2の振動が外部に伝達されることを抑制することができる。
【0035】
図2は、
図1に示したスピーカー装置1の正面図である。なお、
図2は、スピーカー装置1を正面側Xfから見た場合のスピーカー装置1を示している。
図2では、複数の支持部材30の配置を説明するために、密封部材16等の背面側Xbに位置する複数の支持部材30を破線で示している。また、
図2では、図を見やすくするために、フランジ15及び取付部材40を網掛けで示している。
図2の円環状の破線は、取付対象部材50の周縁部50bを示す。
【0036】
4つの支持部材30は、中心軸Oを中心に放射状に配置されている。これより、本実施形態では、2つ以下の支持部材30でスピーカーユニット2を支持する場合に比べて、スピーカーユニット2の支持が不安定になることを抑制することができる。なお、支持部材30の数は、4つに限定されない。例えば、スピーカーユニット2は、中心軸Oを中心に放射状に配置された3つの支持部材30により支持されてもよいし、中心軸Oを中心に放射状に配置された5つ以上の支持部材30により支持されてもよい。
【0037】
図3は、支持部材30によるスピーカーユニット2の支持の効果を説明するための説明図である。
図3の丸印は、スピーカーユニット2を示し、方向Ygは、重力方向を示す。
図3では、中心軸Oが重力方向に垂直である場合を想定する。さらに、
図3では、スピーカー装置1の状態が、4つの支持部材30のうちの1つがスピーカーユニット2を取付部材40から吊り下げている状態である場合を想定する。スピーカーユニット2を吊り下げている支持部材30以外の支持部材30にテンションが張られていない状態では、スピーカーユニット2は、振り子のように揺れる。
図3では、特に断りがない場合、支持部材30は、4つの支持部材30のうち、スピーカーユニット2を吊り下げている支持部材30を意味する。
【0038】
角度θは、重力方向に対する支持部材30の傾きを示す。また、距離xは、角度θが0の場合のスピーカーユニット2の位置に対するスピーカーユニット2の中心軸方向Xの移動距離を示す。支持部材30がスピーカーユニット2を取付部材40から吊り下げている状態での支持部材30の長さをlとした場合、角度θ、距離x及び長さlの関係は、式(1)で表される。また、角度θは、式(1)を変形して、式(2)で表される。
【0039】
x/l=sinθ ・・・(1)
θ=arcsin(x/l) ・・・(2)
【0040】
式(2)より、支持部材30の長さlが距離xよりも十分に大きい場合(l>>x)、角度θを0と見なせることができる。なお、長さlは、例えば、支持部材30の伸び率及びスピーカーユニット2の質量等に基づいて定まる。
【0041】
また、スピーカーユニット2の質量をmとし、中心軸方向Xの加速度をaとした場合、スピーカーユニット2の中心軸方向Xの力は、スピーカーユニット2の質量mと加速度aとの積(ma)で表される。また、スピーカーユニット2の重力方向の力は、重力加速度(方向Ygの加速度)をgとした場合、スピーカーユニット2の質量mと重力加速度gとの積(mg)で表される。
【0042】
支持部材30のスピーカーユニット2との接続点には、重力方向と反対方向の力が“mg”と釣り合い、中心軸方向Xに沿ってスピーカーユニット2に働く力の方向と反対方向の力が“ma”と釣り合うように、張力が発生する。従って、支持部材30と取付部材40との接続点(振り子の支点)において、支持部材30にかかる力Fは、式(3)で表される。また、支持部材30と取付部材40との接続点に発生する中心軸方向Xの力Fxは、式(4)で表される。なお、式(3)及び式(4)では、式を見やすくするために、“ma”及び“mg”の後のみに、乗算を示す記号(・)を記載している。
【0043】
F=mg・cosθ+ma・sinθ ・・・(3)
Fx=(mg・cosθ+ma・sinθ)sinθ ・・・(4)
【0044】
式(4)より、例えば、角度θが0の場合、力Fxは、0である。また、式(3)及び式(4)より、角度θが小さい場合(支持部材30の傾きが小さい場合)、角度θが大きい場合に比べて、力Fxが小さくなることが分かる。例えば、支持部材30の長さlが10mmであり、距離xが1mmである場合、式(1)から式(4)より、力Fxは力Fの1/10(-20dB)に抑制されることが分かる。
【0045】
このように、本実施形態では、スピーカーユニット2に働く中心軸方向Xの運動を振り子の回転運動に変換することにより、取付部材40に発生する中心軸方向Xの力Fxを小さくすることができる。この結果、本実施形態では、スピーカーユニット2の振動が取付部材40に伝達されることを抑制することができる。
【0046】
また、スピーカーユニット2が支持部材30によって吊り下げられた状態である場合のスピーカーユニット2の共振周波数は、スピーカーユニット2を重りとする振り子の共振周波数として、支持部材30の長さlと重力加速度gとに基づいて算出される。例えば、スピーカーユニット2の角周波数ωは、式(5)で表される。また、スピーカーユニット2の共振周波数fは、“ω=2πf”の関係に基づいて式(5)を変形することにより、式(6)で表される。
【0047】
ω=√(g/l) ・・・(5)
f=(1/2π)√(g/l) ・・・(6)
【0048】
スピーカーユニット2が支持部材30によって吊り下げられた状態である場合のスピーカーユニット2の共振周波数fは、「複数の支持部材の張力とスピーカーユニットの重量とに基づくスピーカーユニットの共振周波数」の一例である。本実施形態では、スピーカーユニット2の共振周波数fがスピーカー装置1の最低共振周波数よりも低くなるように、スピーカーユニット2及び複数の支持部材30が設けられる。
【0049】
例えば、支持部材30の長さlが10mmである場合(l=0.01m)、スピーカーユニット2の共振周波数fは、式(6)より、5Hz程度である。従って、スピーカー装置1が、最低共振周波数が40Hzから60Hz程度のウーハー(例えば、車両のドアスピーカー)であり、支持部材30の長さlが10mmである場合、スピーカーユニット2の共振周波数fは、スピーカー装置1の最低共振周波数よりも低い。
【0050】
なお、スピーカー装置1の最低共振周波数は、スピーカーユニット2(より詳細には、振動板3)に入力される音の帯域又はスピーカーユニット2(より詳細には、振動板3)から出力される音の帯域の下限に対応する。従って、上述の想定の場合、スピーカーユニット2の共振周波数fは、スピーカーユニット2に入力される音の帯域又はスピーカーユニット2から出力される音の帯域よりも低い。これにより、本実施形態では、スピーカーユニット2から放たれる音の質が低下することを抑制することができる。
【0051】
ここで、スピーカーユニット2の振動が外部に伝達されることを抑制する構成として、スピーカーユニット2を囲む円環状の板バネを、支持部材30の代わりに用いる構成が考えられる。但し、板バネの強度を所定の強度にするために、丈夫な材料で板バネを形成した場合、板バネのコストが高くなる。また、板バネが用いられる構成では、板バネの変位を制限するために、ストッパーが設けられる。この場合、板バネがストッパーに衝突した際の衝突音が異音の原因になる。これに対し、本実施形態では、板バネに比べて柔軟な材料により支持部材30が形成されるため、板バネが用いられる構成よりも機械的強度を高くすることができる。また、本実施形態では、支持部材30を板バネのような特注品にする必要がないため、製造コストの増加を抑制することができる。また、本実施形態では、中心軸方向Xへのスピーカーユニット2の移動は、中心軸Oを中心に放射状に配置された複数の支持部材30がスピーカーユニット2を引っ張ることにより、制限される。このため、本実施形態では、衝突音等の異音は発生しない。
【0052】
図4は、スピーカー装置1の製造方法の一例を説明するための説明図である。
図4の上段は、背面側Xbから見た支持部材30の周辺の図を示し、
図4の下段は、支持部材30の延在方向に垂直な方向から見た支持部材30の周辺の図を示している。
【0053】
複数の支持部材30がある程度伸びる材料で形成されている場合、例えば、複数の支持部材30の各々の伸び率が3%以上である場合、複数の支持部材30は、弛みなく張られる。これに対し、複数の支持部材30が伸びにくい材料で形成されている場合、複数の支持部材30は、弛みが発生するように張られる。
図4では、複数の支持部材30の各々の伸び率が3%以上である場合を想定する。
【0054】
例えば、複数の支持部材30の各々は、ねじSC1及びワッシャWA1により固定部20に固定され、ねじSC2及びワッシャWA2により取付部材40に固定される。固定部20には、ねじSC1の軸部SC1bが挿入されるねじ穴Hs1が形成され、取付部材40には、ねじSC2の軸部SC2bが挿入されるねじ穴Hs2が形成されている。また、固定部20は、ねじ穴Hs1を囲み、背面側Xbに突出する突出部20cを有する。中心軸方向Xから見た突出部20cの形状は、例えば、円環状である。突出部20cの外径R1は、ねじSC1の頭部SC1aの径よりも大きい。なお、突出部20cの外径R1は、ねじSC2の軸部SC2bの径R2よりも大きければ、ねじSC1の頭部SC1aの径と同じでもよいし、ねじSC1の頭部SC1aの径よりも小さくてもよい。
【0055】
ワッシャWA1は、突出部20cとねじSC1の頭部SC1aとの間に配置される。ワッシャWA1の径は、突出部20cの外径R1よりも大きい。また、ワッシャWA2は、内周縁部40cの背面40dとねじSC2の頭部SC2aとの間に配置される。なお、ワッシャWA2の径は、ねじSC2の頭部SC2aの径と同じでもよいし、ねじSC2の頭部SC2aの径よりも大きくてもよい。
【0056】
なお、固定部20及び取付部材40の形状は、
図4に示す例に限定されない。例えば、突出部20cは、形成されなくてもよい。この場合、突出部20cと同様の形状を有するワッシャが、ワッシャWA1と固定部20との間に配置されてもよい。また、取付部材40は、ねじ穴Hs2を囲み、内周縁部40cから背面側Xbに突出する突出部を有してもよい。この場合、ねじ穴Hs2を囲む突出部は、例えば、突出部20cの外径R1よりも小さい外径を有する円環状に形成される。
【0057】
次に、支持部材30を弛みなく張る接続方法の具体例について説明する。
【0058】
支持部材30を弛みなく張る接続方法では、固定部20の背面20bと取付部材40の内周縁部40cの背面40dとの中心軸方向Xの位置を一致させるスペーサーSPが用いられる。なお、「一致」は、厳密な一致だけではなく、実質的な一致(例えば、背面20bと背面40dとの位置の差が誤差範囲内であること)も含む。スペーサーSPは、固定部20と取付部材40との距離を距離Dsにするための突出部SPaを含む。中心軸方向Xから見た突出部SPaの形状は、例えば、円環状である。
【0059】
例えば、スピーカーユニット2と取付部材40とに複数の支持部材30を接続する接続工程では、突出部SPaが固定部20と取付部材40との間に位置するように、スピーカーユニット2及び取付部材40がスペーサーSP上に配置される。これにより、中心軸方向Xにおいて、固定部20の背面20bの位置と取付部材40の内周縁部40cの背面40dの位置とが互いに一致する。さらに、固定部20と取付部材40とのY軸上(径方向Y)の距離が距離Dsに定まる。
【0060】
そして、支持部材30が、突出部20c及びねじSC2の軸部SC2bを囲むように、突出部20cで折り返され、径方向Yにおける外側に引かれる。この状態で、ねじSC1及びSC2が締められる。さらに、突出部20c及びねじSC2の軸部SC2bを囲む支持部材30がスリーブSLにより加締められる。これにより、支持部材30が、ねじSC1及びSC2から抜けることが防止される。支持部材30がスリーブSLにより加締められた後に、スペーサーSPが取り除かれる。
【0061】
このように、
図4に示す製造方法では、固定部20の背面20bと取付部材40の内周縁部40cの背面40dとの中心軸方向Xの位置を一致させるスペーサーSPが用いられるため、複数の支持部材30を弛みなく張ることができる。すなわち、複数の支持部材30の各々の伸び率が3%以上である場合、スピーカーユニット2が所定の状態である場合の複数の支持部材30の全ての張力が0よりも大きくなるように、複数の支持部材30がスピーカーユニット2及び取付部材40に接続される。なお、所定の状態は、例えば、中心軸方向Xにおいて、固定部20の背面20bの位置と取付部材40の内周縁部40cの背面40dの位置とが互いに一致する状態である。
【0062】
本実施形態では、支持部材30がある程度伸びる材料で形成されている場合、複数の支持部材30が弛みなく張られるため、スピーカーユニット2の支持を安定させることができる。なお、支持部材30がある程度伸びる材料で形成されているため、複数の支持部材30が弛みなく張られている場合においても、中心軸方向Xの運動を振り子の回転運動に変換することができる。例えば、スピーカーユニット2の共振周波数fは、スピーカー装置1の最低共振周波数よりも低い。従って、本実施形態では、支持部材30をある程度伸びる材料で形成することにより、スピーカーユニット2の支持を安定させつつ、スピーカーユニット2の振動が取付部材40に伝達されることを抑制することができる。
【0063】
図5は、スピーカー装置1の製造方法の他の例を説明するための説明図である。
図5の上段及び下段は、
図4の上段及び下段にそれぞれ対応する。
図4において説明された要素等については、詳細な説明は省略される。
図5では、伸び率が1%以下で変形可能な材料により複数の支持部材30の各々が形成されている場合を想定する。すなわち、
図5では、複数の支持部材30が伸びにくい材料で形成されている場合を想定する。この場合、複数の支持部材30は、弛みが発生するように張られる。
【0064】
支持部材30を弛みが発生するように張る接続方法は、
図4に示したスペーサーSPの代わりにスペーサーSP2が用いられることを除いて、
図4において説明した支持部材30を弛みなく張る接続方法と同様である。
【0065】
支持部材30を弛みが発生するように張る接続方法では、固定部20の背面20bと取付部材40の内周縁部40cの背面40dとの中心軸方向Xの位置を異ならせるスペーサーSP2が用いられる。なお、中心軸方向Xは、「第1接続面に垂直な方向」の一例である。
【0066】
例えば、スピーカーユニット2と取付部材40とに複数の支持部材30を接続する接続工程では、突出部SPaが固定部20と取付部材40との間に位置するように、スピーカーユニット2及び取付部材40がスペーサーSP2上に配置される。これにより、スピーカーユニット2及び取付部材40は、中心軸方向Xにおいて、固定部20の背面20bの位置と取付部材40の内周縁部40cの背面40dの位置とが互いに異なる状態に維持される。さらに、固定部20と取付部材40とのY軸上(径方向Y)の距離が距離Dsに定まる。
【0067】
そして、接続工程では、支持部材30を弛みなく張る接続方法と同様に、複数の支持部材30の各々を固定部20の背面20b及び内周縁部40cの背面40dに弛みなく接続し、スペーサーSP2を取り除く。
【0068】
これにより、例えば、中心軸方向Xにおいて、固定部20の背面20bの位置と取付部材40の内周縁部40cの背面40dの位置とが互いに一致する状態(所定の状態)では、固定部20と取付部材40との間の支持部材30の長さが距離Dsよりも大きくなる。このため、スピーカーユニット2が所定の状態である場合、複数の支持部材30に弛みが発生する。すなわち、伸び率が1%以下で変形可能な材料により複数の支持部材30の各々が形成されている場合、スピーカーユニット2が所定の状態である場合の複数の支持部材30の全ての張力は、0である。
【0069】
このように、本実施形態では、支持部材30が伸びにくい材料で形成されている場合においても、複数の支持部材30に弛みが発生するように複数の支持部材30が張られるため、中心軸方向Xの運動を振り子の回転運動に変換することができる。これにより、本実施形態では、支持部材30が伸びにくい材料で形成されている場合においても、スピーカーユニット2の振動が取付部材40に伝達されることを抑制することができる。
【0070】
また、本実施形態では、ある程度伸びる材料、又は、伸びにくい材料のいずれの材料も、汎用品を用いることが可能である。このため、本実施形態では、専用のバネ部材等によりスピーカーユニット2と取付部材40とを接続する構成に比べて、スピーカーユニット2の振動が外部に伝達されることを抑制するための構成のコストの増加を抑制することができる。すなわち、本実施形態では、製造コストの増加を抑制しつつ、スピーカーユニット2の振動が外部に伝達されることを抑制することができる。
【0071】
なお、支持部材30の伸び率が1%よりも大きく3%未満である場合、支持部材30は、弛みが発生するように張られてもよいし、弛みなく張られてもよい。例えば、支持部材30の伸び率が3%未満である場合でも、中心軸方向Xの運動を振り子の回転運動に変換可能で、スピーカーユニット2の共振周波数fをスピーカー装置1の最低共振周波数よりも低くできれば、支持部材30は弛みなく張られてもよい。
【0072】
以上、本実施形態では、スピーカー装置1は、振動板3を有するスピーカーユニット2と、スピーカーユニット2を物(取付対象部材50)に取り付ける取付部材40と、スピーカーユニット2の中心軸Oと交差する方向に延在し、スピーカーユニット2と取付部材40とを接続することにより、スピーカーユニット2を支持する線状の複数の支持部材30とを有する。
【0073】
このように、本実施形態では、バネ部材等よりも安い汎用品のワイヤーロープ等の線状の部材を用いて、スピーカーユニット2を支持することができる。例えば、複数の支持部材30の各々は、金属、合成繊維及びガラス繊維のうちの少なくとも1つを含む材料により形成されてもよい。また、本実施形態では、スピーカーユニット2が支持部材30によって吊り下げられた状態になるため、スピーカーユニット2に中心軸Oに沿う方向(中心軸方向X)に力が働いた場合、スピーカーユニット2は、振り子のように揺れる。これにより、本実施形態では、中心軸方向Xの運動を振り子の回転運動に変換することができる。この結果、本実施形態では、スピーカーユニット2の外部(例えば、取付部材40)に発生する中心軸方向Xの力を小さくすることができる。このように、本実施形態では、製造コストの増加を抑制しつつ、スピーカーユニット2の振動が外部に伝達されることを抑制することができる。
【0074】
また、本実施形態では、スピーカー装置1は、取付部材40とスピーカーユニット2との間の隙間を密封する密封部材16をさらに有する。これにより、本実施形態では、スピーカーユニット2の放音面とは反対側から放出される音が取付部材40とスピーカーユニット2との間を通って放出されること(回り込み)を防止することができる。
【0075】
また、本実施形態では、複数の支持部材30の張力とスピーカーユニット2の重量とに基づくスピーカーユニット2の共振周波数fは、スピーカーユニット2に入力される音の帯域又はスピーカーユニット2から出力される音の帯域よりも低い。すなわち、本実施形態では、支持部材30によって吊り下げられたスピーカーユニット2の共振周波数fは、スピーカーユニット2で使用される周波数帯域よりも低い。このため、本実施形態では、スピーカーユニット2から放たれる音の質が低下することを抑制することができる。
【0076】
また、本実施形態では、複数の支持部材30の各々の伸び率は、3%以上であってもよい。複数の支持部材30の各々の伸び率が3%以上であるスピーカー装置1では、スピーカーユニット2の状態が所定の状態である場合、複数の支持部材30の全ての張力は、0よりも大きくてもよい。この場合、複数の支持部材30が弛みなく張られるため、スピーカーユニット2を安定的に支持することができる。すなわち、本実施形態では、伸び率が3%以上の支持部材30を用いることにより、スピーカーユニット2の支持を安定させつつ、スピーカーユニット2の振動が外部に伝達されることを抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態では、複数の支持部材30の各々は、伸び率が1%以下で変形可能な材料により形成されてもよい。伸び率が1%以下で変形可能な材料により複数の支持部材30が形成されるスピーカー装置1では、スピーカーユニット2の状態が所定の状態である場合、複数の支持部材30の全ての張力は、0であってもよい。この場合、弛みが発生するように複数の支持部材30が張られるため、中心軸方向Xの運動を振り子の回転運動に変換することができる。すなわち、本実施形態では、伸び率が1%以下で変形可能な材料により複数の支持部材30が形成される場合においても、弛みが発生するように複数の支持部材30を張ることにより、スピーカーユニット2の振動が外部に伝達されることを抑制することができる。
【0078】
また、本実施形態では、複数の支持部材30は、中心軸方向X(スピーカーユニット2の軸線方向)が水平方向となるように、スピーカーユニット2を支持してもよい。なお、中心軸方向Xが水平方向となることは、中心軸方向Xが厳密に水平方向となることだけではなく、中心軸方向Xが実質的に水平方向(例えば、誤差範囲内の水平方向)となることも含む。中心軸方向Xが水平方向となるようにスピーカーユニット2が支持される場合、中心軸方向Xの運動を振り子の回転運動に効率よく変換することができる。
【0079】
また、弛みが発生するように複数の支持部材30が張られるスピーカー装置1の製造方法は、複数の支持部材30をスピーカーユニット2と取付部材40とに接続する接続工程を含む。当該接続工程では、固定部20の背面20bと取付部材40の背面40dとの中心軸方向Xの位置を異ならせるスペーサーSP2上にスピーカーユニット2及び取付部材40を配置し、複数の支持部材30の各々を背面20b及び背面40dに接続し、スペーサーSP2を取り除く。なお、固定部20の背面20bは、スピーカーユニット2のうちの複数の支持部材30が接続される面であり、背面40dは、取付部材40のうちの複数の支持部材30が接続される面であり、中心軸方向Xは、背面20bに垂直な方向である。
【0080】
このように、本実施形態では、スペーサーSP2を用いることにより、複数の支持部材30に弛みが発生するように、複数の支持部材30をスピーカーユニット2と取付部材40とに簡易に接続することができる。
【0081】
なお、以上に例示した実施形態は多様に変形され得る。前述の実施形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で併合してもよい。
【0082】
上述した実施形態では、支持部材30がスリーブSLにより加締められる場合を例示したが、本開示はこのような態様に限定されるものではない。例えば、支持部材30は、リード線により形成され、固定部20及び取付部材40に半田により接続されてもよい。本変形例(第1変形例)について、
図6を参照して説明する。
【0083】
図6は、第1変形例に係る支持部材30Aの接続方法の一例を説明するための説明図である。なお、
図6は、支持部材30Aの延在方向に垂直な方向から見た支持部材30Aの周辺の図を示している。本変形例では、支持部材30がリード線により形成されている場合を想定する。リード線は、例えば、アラミド繊維を含む導線であってもよい。この種のリード線は、引張強度及び耐熱性が高い。
【0084】
本変形例のスピーカー装置1は、支持部材30、固定部20及び取付部材40の代わりに、支持部材30A、固定部20A及び取付部材40Aを有することを除いて、上述した実施形態のスピーカー装置1と同様である。
【0085】
固定部20Aは、固定部20Aを中心軸方向Xに貫通する貫通孔H1を有し、取付部材40Aは、取付部材40Aを中心軸方向Xに貫通する貫通孔H2を有する。また、固定部20Aには、端子TE1が固定され、取付部材40Aには、端子TE2が固定されている。例えば、端子TE1は、インサート成型により、固定部20Aと一体に形成される。同様に、端子TE2は、インサート成型により、取付部材40Aと一体に形成される。
【0086】
支持部材30Aは、貫通孔H1及びH2を通り、端子TE1及び端子TE2に固定されている。例えば、支持部材30Aの一端は、半田SO1により端子TE1に固定され、支持部材30Aの他端は、半田SO2により端子TE2に固定されている。また、貫通孔H1は、接着剤AD1により塞がれ、貫通孔H2は、接着剤AD2により塞がれる。
【0087】
支持部材30Aが貫通孔H1及びH2を通って端子TE1及び端子TE2に接続される構成では、支持部材30Aが貫通孔H1及びH2を通らずに端子TE1及び端子TE2に接続される構成に比べて、端子TE1及びTE2にかかる力を低減することができる。これにより、支持部材30Aが貫通孔H1及びH2を通って端子TE1及び端子TE2に接続される構成では、端子TE1及びTE2の各々と支持部材30Aとの接続が不安定になること、及び、端子TE1及びTE2が破損すること等を抑制することができる。なお、支持部材30Aは、貫通孔H1及びH2を通らずに端子TE1及び端子TE2に接続されてもよい。
【0088】
以上、本変形例においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0089】
また、上述した実施形態及び変形例では、支持部材30が線状の部材である場合を例示したが、本開示はこのような態様に限定されるものではない。例えば、支持部材30は、丈夫で伸びの少ない材質の繊維で編んだ布により帯状に形成されてもよい。本変形例(第2変形例)について、
図7及び
図8を参照して説明する。
【0090】
図7は、第2変形例に係る支持部材30Bの一例を説明するための説明図である。なお、
図7は、背面側Xbから見た支持部材30Bを示している。
【0091】
支持部材30Bは、ガラス繊維の布(ガラスクロス)により帯状に形成されている。ガラス繊維は、加工性がよく、伸びも少なく、扱いやすい。例えば、支持部材30Bは、ガラスクロスを抜き型で加工することにより形成される。また、支持部材30Bは、
図8において後述する2つねじSC3の軸部SC3bがそれぞれ通る2つの貫通孔H3と、2つねじSC4の軸部SC4bがそれぞれ通る2つの貫通孔H4とを有する。例えば、上述の抜き型は、2つの貫通孔H3と2つの貫通孔H4とに対応する穴をガラスクロスにあけるための型を含む。なお、貫通孔H3及びH4の数は、
図7に示す例に限定されない。
【0092】
図8は、
図7に示した支持部材30Bの接続方法の一例を説明するための説明図である。
図8の上段は、背面側Xbから見た支持部材30の周辺の図を示し、
図8の下段は、A1-A2線に沿う支持部材30の周辺の断面図を示している。
【0093】
本変形例のスピーカー装置1は、支持部材30、固定部20及び取付部材40の代わりに、支持部材30B、固定部20B及び取付部材40Bを有することを除いて、上述した実施形態のスピーカー装置1と同様である。
【0094】
固定部20Bは、ねじSC3の軸部SC3bが挿入されるねじ穴Hs3を有し、取付部材40Bは、ねじSC4の軸部SC4bが挿入されるねじ穴Hs4を有する。支持部材30Bは、ねじSC3及び固定部品FI1により固定部20Bに固定され、ねじSC4及び固定部品FI2により取付部材40Bに固定される。固定部品FI1は、ねじSC3の軸部SC3bが通る貫通孔を有し、支持部材30BとねじSC3の頭部SC3aとの間に配置される。固定部品FI2は、ねじSC4の軸部SC4bが通る貫通孔を有し、取付部材40BとねじSC4の頭部SC4aとの間に配置される。すなわち、ねじSC3の軸部SC3bは、固定部品FI1の貫通孔及び支持部材30Bの貫通孔H3を通り、固定部20Bのねじ穴Hs3に挿入される。同様に、ねじSC4の軸部SC4bは、固定部品FI2の貫通孔及び支持部材30Bの貫通孔H4を通り、取付部材40Bのねじ穴Hs4に挿入される。
【0095】
以上、本変形例においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0096】
また、上述した実施形態及び変形例では、スピーカーユニット2は、中心軸方向Xにおいて、コーン部13の端部13a付近の位置から支持部材30により吊り下げられる場合を例示したが、本開示はこのような態様に限定されるものではない。例えば、スピーカーユニット2は、中心軸方向Xにおいて、コーン部13の底付近の位置から支持部材30、30A又は30B等により吊り下げられてもよい。本変形例(第3変形例)について、
図9を参照して説明する。
【0097】
図9は、第3変形例に係るスピーカー装置1Aの断面図である。なお、
図9は、
図1と同様に、スピーカーユニット2の中心軸Oを通る平面でスピーカー装置1Aを切断した場合のスピーカー装置1Aの断面図を模式的に示している。
【0098】
スピーカー装置1Aは、
図1に示した、固定部20、支持部材30及び取付部材40の代わりに、固定部20A、支持部材30A及び取付部材40Aを有する。そして、スピーカーユニット2は、中心軸方向Xにおいて、コーン部13の底部分13b付近の位置から支持部材30Aにより吊り下げられる。スピーカー装置1Aのその他の構成は、
図1に示したスピーカー装置1と同様である。
【0099】
固定部20Aは、コーン部13の底部分13bから、径方向Yにおける外側に張り出すように、コーン部13に固定されている。なお、固定部20Aは、コーン部13と別部材として形成されていてもよく、コーン部13と一体的に形成されていてもよい。
【0100】
取付部材40Aは、取付部材40Aの正面側Xfの面と固定部20Aの正面側Xfの面との中心軸方向Xの位置が一致するように、取付対象部材50Aに取り付けられる。なお、取付対象部材50Aは、例えば、密封部材16が接合される部分と、取付対象部材50Aが取り付けられる部分とを連結する部分を含む。
【0101】
なお、スピーカー装置1Aの構成は、
図9に示す例に限定されない。例えば、スピーカー装置1Aは、固定部20、支持部材30及び取付部材40の代わりに、固定部20、支持部材30及び取付部材40を有してもよいし、固定部20B、支持部材30B及び取付部材40Bを有してもよい。
【0102】
以上、本変形例においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0103】
また、上述した実施形態では、4つの支持部材30が中心軸Oを中心に放射状に配置される場合を例示したが、本開示はこのような態様に限定されるものではない。例えば、3つの支持部材30が、中心軸Oを中心に放射状に配置されてもよい。本変形例(第4変形例)について、
図10を参照して説明する。
【0104】
図10は、第4変形例に係るスピーカー装置1の正面図である。なお、
図4は、
図2と同様に、スピーカー装置1を正面側Xfから見た場合のスピーカー装置1を示している。
図4の破線及び網掛けの意味は、
図2の破線及び網掛けの意味と同様である。
【0105】
3つの支持部材30は、中心軸Oを中心に放射状に配置されている。これより、本変形例では、2つ以下の支持部材30でスピーカーユニット2を支持する場合に比べて、スピーカーユニット2を安定的に支持することができる。なお、スピーカー装置1は、支持部材30の代わりに、支持部材30A又は30Bを有してもよい。
【0106】
以上、本変形例においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本変形例では、支持部材30の数が3つであるため、支持部材30の数が4つ以上の場合に比べて、製造コストを低減することができる。
【0107】
また、上述した実施形態では、取付部材40とフランジ15との間の隙間を密封する密封部材16について説明しているが、密封部材16はその他の構成でもよい。例えば、密封部材は、取付部材40及びフランジ15以外のその他の複数の部品間の隙間を密封してもよい。以上、本変形例においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0108】
1、1A…スピーカー装置、2…スピーカーユニット、3…振動板、5…スピーカーフレーム、15…フランジ、20、20A、20B…固定部、30、30A、30B…支持部材、40、40A、40B…取付部材、50、50A…取付対象部材、50a…開口部、50b…周縁部。