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特開2024-170303化合物、モノマー、ポリマー、フォトレジスト組成物、及びパターン形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170303
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】化合物、モノマー、ポリマー、フォトレジスト組成物、及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/92 20060101AFI20241129BHJP
   C08F 212/04 20060101ALI20241129BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20241129BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20241129BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
C07C69/92 CSP
C08F212/04
G03F7/039 601
G03F7/004 503A
G03F7/004 501
G03F7/20 501
G03F7/20 502
G03F7/20 503
G03F7/20 504
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024082911
(22)【出願日】2024-05-21
(31)【優先権主張番号】18/324,450
(32)【優先日】2023-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】デュポン エレクトロニック マテリアルズ インターナショナル,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】DUPONT ELECTRONIC MATERIALS INTERNATIONAL,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ カイ
(72)【発明者】
【氏名】イマッド アカド
(72)【発明者】
【氏名】コナー ホルゼル
(72)【発明者】
【氏名】ジョングン パク
(72)【発明者】
【氏名】チュンボン イ
(72)【発明者】
【氏名】ブーシャン ポペレ
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4H006
4J100
【Fターム(参考)】
2H197CA03
2H197CA06
2H197CA08
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE01
2H197CE10
2H197HA03
2H197JA22
2H225AF11P
2H225AF16P
2H225AF53P
2H225AF68P
2H225AF71P
2H225AF99P
2H225AH03
2H225AH14
2H225AH19
2H225AJ04
2H225AJ12
2H225AJ13
2H225AJ48
2H225AN11P
2H225AN39P
2H225AN56P
2H225BA01P
2H225BA26P
2H225CA12
2H225CB08
2H225CC03
2H225CC15
4H006AA01
4H006AB46
4H006AB76
4H006AB92
4H006AC43
4H006BA66
4H006BB25
4H006BJ50
4H006BM30
4H006BM74
4H006BP30
4H006BP90
4H006KA31
4J100AB07P
4J100AB07Q
4J100AL08R
4J100BA02P
4J100BA03Q
4J100BA15P
4J100BB05P
4J100BC03P
4J100BC03R
4J100BC43P
4J100BC43R
4J100CA05
4J100DA01
4J100FA02
4J100FA19
4J100JA37
4J100JA38
(57)【要約】
【課題】化合物、モノマー、ポリマー、フォトレジスト組成物、及びパターン形成方法を提供する。
【解決手段】化合物は、C6~30芳香族又はC3~30ヘテロ芳香族コアを含み、このコアは、(i)エノールエーテル基又は(ii)置換若しくは無置換のハロメチルエーテル基を含む第1の置換基と、酸不安定基を含む第2の置換基と、ハロゲン原子である第3の置換基とを含む。コアは、任意選択的に更に置換されていてもよい。この化合物は、電子デバイス製造用のフォトレジスト組成物に使用され得るモノマー及びポリマーの合成に有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物であって、C6~30芳香族又はC3~30ヘテロ芳香族コアを含み、前記コアが、(i)エノールエーテル基又は(ii)置換若しくは無置換のハロメチルエーテル基を含む第1の置換基と、酸不安定基を含む第2の置換基と、ハロゲン原子である第3の置換基とを含み、前記コアが任意選択的に更に置換されていてもよい、化合物。
【請求項2】
前記化合物が、式(1)又は(2):
【化1】
(式中、
Arは、C6~30芳香族又はC3~30ヘテロ芳香族コアであり;
は、独立して、酸不安定基を含む部位を表し;
各Rは、独立して、H、置換若しくは無置換C1~10アルキル、置換若しくは無置換C1~10ハロアルキルを表し、任意選択的にその構造の一部として、-O-、-S-、-N(R)-、-C(O)-、-C(O)O-、又は-C(O)N(R)-から選択される1つ以上の基を含んでいてもよく、Rは、H、置換若しくは無置換C1~10アルキル、置換若しくは無置換C1~10ヘテロアルキル、置換若しくは無置換C6~30アリール、又は置換若しくは無置換C4~30ヘテロアリールを表し、式(1)における任意の2つのR基又は式(2)における2つのRが、任意選択的に一緒に環を形成していてもよく、1つ以上のR基とLが任意選択的に一緒に環を形成していてもよく;
Xは独立してハロゲン原子を表し;
Yは独立してCl、Br、又はIを表し;
各L及びLは、独立して、単結合又は二価連結基を表し;
a、b、及びcは、独立して1以上の整数を表し;
Arは、任意選択的に更に置換されていてもよい)
で表される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xがフッ素原子又はヨウ素原子である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
が、酸に不安定なエステル基、アセタール基、又はケタール基である、請求項2又は3に記載の化合物。
【請求項5】
cが1である、請求項2~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
cが2である、請求項2~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
が-S(O)-基を含む、請求項2~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
モノマーであって、(i)請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物と、(ii)重合性基及び-OH基又は-C(O)OH基から選択される基を含むモノマー前駆体と、の反応生成物を含み、前記反応生成物が、前記化合物のエノールエーテル部位又はハロメチルエーテル部位と、前記モノマー前駆体の前記-OH基又は-C(O)OH基と、の間の反応により形成されるアセタールリンカー又はケタールリンカーを含む、モノマー。
【請求項9】
前記モノマーが下記一般式(4):
【化2】
(式中、
Pは重合性基であり;
Arは、C6~30芳香族又はC3~30ヘテロ芳香族コアであり;
は、独立して、酸不安定基を含む部位を表し;
は、独立して、H、置換若しくは無置換C1~10アルキル、置換若しくは無置換C1~10ヘテロアルキル、置換若しくは無置換C6~30アリール、又は置換若しくは無置換C4~30ヘテロアリールを表し、任意の2つのR基は、任意選択的に一緒に環を形成していてもよく、R基とLが任意選択的に一緒に環を形成していてもよく;
Xは、独立してハロゲン原子を表し;
、L、及びLのそれぞれは、独立して単結合又は連結基を表し;
a、b、及びcは、独立して1以上の整数を表し;
dは1又は2であるが、cが1より大きい場合にはdは1であり;
前記コアは任意選択的に更に置換されていてもよい)
のものである、請求項8に記載のモノマー。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のモノマーから形成される繰り返し単位を含むポリマー。
【請求項11】
(i)請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物と、(ii)-OH又は-C(O)OHのうちの1つ以上から選択される基を含む第1の繰り返し単位を含む第1のポリマーと、の反応生成物を含むポリマーであって、前記反応生成物が、前記化合物のエノールエーテル部位又はハロメチルエーテル部位と、前記第1の繰り返し単位の前記-OH基又は-C(O)OH基と、の間の反応により形成されるアセタールリンカー又はケタールリンカーを含み、それによって修飾された第1の繰り返し単位が形成されている、ポリマー。
【請求項12】
前記修飾された第1の繰り返し単位が、式(4):
【化3】
(式中、
Arは、C6~30芳香族又はC3~30ヘテロ芳香族コアであり;
は、独立して、酸不安定基を含む部位を表し;
は、独立して、H、置換若しくは無置換C1~10アルキル、置換若しくは無置換C1~10ヘテロアルキル、置換若しくは無置換C6~30アリール、又は置換若しくは無置換C4~30ヘテロアリールを表し、任意の2つのR基は、任意選択的に一緒に環を形成していてもよく、R基とLが任意選択的に一緒に環を形成していてもよく、R基と式(4)に示されていないモノマーの別の部分が任意選択的に一緒に環を形成していてもよく;
Xは独立してハロゲン原子を表し;
及びLのそれぞれは、独立して単結合又は二価連結基を表し;
a、b、及びcは、独立して1以上の整数を表し;
**は前記修飾された第1の繰り返し単位の別の部分への結合点を表し;
前記コアは任意選択的に更に置換されている)
の部位を含む、請求項11に記載のポリマー。
【請求項13】
前記第1のポリマーの前記第1の繰り返し単位が重合性ビニル基を含むモノマーから形成される、請求項11又は12に記載のポリマー。
【請求項14】
酸不安定基、塩基分解性基、ヒドロキシアリール基、フルオロアルコール基、又はラクトン基を含む第2の繰り返し単位を更に含み、前記第2の繰り返し単位が前記修飾された第1の繰り返し単位とは構造的に異なる、請求項10~13のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項15】
請求項10~14のいずれか一項に記載のポリマーと、溶媒とを含むフォトレジスト組成物。
【請求項16】
光酸発生剤を更に含む、請求項15に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項17】
パターン形成方法であって、
(a)請求項15又は16に記載のフォトレジスト組成物からのフォトレジスト層を基板上に形成すること;
(b)前記フォトレジスト層を活性化放射に露光すること;
(c)前記露光されたフォトレジスト層を現像してレジストレリーフ像を得ること;
を含むパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して電子デバイスの製造に関する。より詳しくは、本発明は、エノールエーテル化合物、ハロメチルエーテル化合物、そのような化合物から形成されるモノマー及びポリマー、そのようなポリマーを含むフォトレジスト組成物、並びにフォトレジスト組成物を使用するパターン形成方法に関する。化合物、モノマー、ポリマー、フォトレジスト組成物、及びパターン形成方法は、半導体デバイスの製造に有用なリソグラフィーパターンの形成において特に有用である。
【背景技術】
【0002】
フォトレジスト組成物は、基板上に配置された金属、半導体、又は誘電体層などの、1つ以上の下層にパターンを転写するために使用される感光性材料である。ポジ型の化学増幅フォトレジスト組成物は、従来、高解像度処理のために使用されている。そのようなレジスト組成物は、典型的には、酸不安定基を有するポリマーと光酸発生剤(PAG)とを含む。フォトレジスト組成物の層は、活性化放射にパターン様露光され、PAGは、露光領域に酸を発生させる。露光後ベーキング中に、酸は、ポリマーの酸不安定基の開裂を引き起こす。これは、現像剤溶液中でのフォトレジスト層の露光領域と非露光領域との間の溶解度特性の違いを生み出す。ポジ型現像(PTD)プロセスにおいて、フォトレジスト層の露光領域は、現像液、典型的には水性塩基現像液に可溶性になり、基板表面から除去される。現像液に不溶性である、非露光領域は、現像後に残ってポジ型レリーフ像を形成する。得られたレリーフ像は、基板の選択的な処理を可能にする。
【0003】
半導体デバイスの集積密度を高める及びナノメートル(nm)範囲での寸法を有する構造の形成を可能にするために、高解像能力を有するフォトレジスト及びフォトリソグラフィー処理ツールが開発されており、且つ開発され続けている。半導体デバイスにおいてnmスケールのフィーチャサイズを達成するための1つのアプローチは、フォトレジスト層の露光のために、短波長を有する、例えば193nm以下の活性化放射を使用することである。リソグラフィー性能を更に改善するために、画像形成デバイスのレンズの開口数(NA)を効果的に増加させるための液浸リソグラフィーツールが開発されている。これは、画像形成デバイスの最終面と、半導体ウェハーの上面との間に比較的高い屈折率の流体、典型的には水を使用することによって達成される。
【0004】
ArFエキシマレーザー(193nm)液浸ツールは、現在、多重(二重、三重、又はより高次)パターン形成技術を用いて、16nm及び14nmのデバイスノードまでリソグラフィー処理の限界を押し上げている。しかしながら、多重パターン形成の使用は、単一露光の直接画像形成パターンと比べて、材料使用の増加及び必要なプロセスステップ数の増加の観点からコストがかかり得る。そのため、次世代EUV(13.5nm)リソグラフィーで有用なフォトレジスト組成物は、先進デバイスノードにとって重要性を増している。これらのノードと関連したフィーチャサイズの縮小の結果として、フォトレジスト組成物の性能要件は、より一層厳しくなってきている。望まれる性能特性には、例えば、活性化放射に対する高い感度、高解像能、及び良好な線幅粗さ(LWR)が含まれる。
【0005】
EUVフォトレジスト感度を高める1つの方法は、13.5nmにおける吸収断面積を増やすことである。13.5nmにおける吸収は材料の原子特性であり、既知の原子吸収を使用して理論的に計算することができる。炭素、酸素、水素、及び窒素などの、レジスト材料を構成する典型的な原子は、非常に弱いEUV吸収を示す。吸収断面積は、例えば、ハロゲン原子(例えばF、Cl、Br、I)をフォトレジストポリマーに組み込むことによって増加させることができ、ヨウ素は吸収を増加させるのに特に有益である。(特許文献1)には、フォトレジストポリマーの形成に使用するための、酸開裂可能なヨウ素含有モノマーが開示されている。このモノマーは、(メタ)アクリロイル重合性基及び第三級エステルである酸不安定基を含む。酸不安定基には、1つ以上のヨウ素原子置換基を有する単環式又は多環式の無置換又は置換のC6~30アリーレン基又はC3~30ヘテロアリーレン基が含まれる。そのようなモノマーをフォトレジストポリマーに組み込むと、EUV吸収断面積を増やすことができるものの、光酸との相互作用で開裂する芳香族フラグメントは、従来のTMAH現像液に不溶性であるため、パターニング欠陥を引き起こす可能性がある。そのため、より現像液に溶解する開裂フラグメントを有することが望まれる。
【0006】
先行技術に関連する1つ以上の問題に対処する化合物、モノマー、ポリマー、フォトレジスト組成物、及びパターン形成方法が、当該技術分野において必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第10,095,109B1号明細書
【特許文献2】米国特許第8,431,325号明細書
【特許文献3】米国特許第4,189,323号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Wallow,T.et al Proc.SPIE 6921,69211F,2008
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に従って、化合物が提供される。この化合物は、C6~30芳香族又はC3~30ヘテロ芳香族コアを含み、このコアは、(i)エノールエーテル基又は(ii)置換若しくは無置換のハロメチルエーテル基を含む第1の置換基と、酸不安定基を含む第2の置換基と、ハロゲン原子である第3の置換基とを含み、コアは任意選択的に更に置換されていてもよい。
【0010】
また、モノマーも提供される。このモノマーは、(i)本明細書に記載のエノールエーテル化合物又はハロメチルエーテル化合物と、(ii)重合性基及び-OH基又は-C(O)OH基から選択される基を含むモノマー前駆体と、の反応生成物を含む。この反応生成物は、化合物のエノールエーテル部位又はハロメチルエーテル部位と、モノマー前駆体の-OH基又は-C(O)OH基との間の反応により形成されるアセタールリンカー又はケタールリンカーを含む。
【0011】
また、モノマーの製造方法も提供される。この方法は、(i)本明細書に記載のエノールエーテル化合物又はハロメチルエーテル化合物と、(ii)重合性基及び-OH基又は-C(O)OH基から選択される基を含むモノマー前駆体と、を反応させることを含む。このモノマーは、化合物のエノールエーテル部位又はハロメチルエーテル部位と、モノマー前駆体の-OH基又は-C(O)OH基と、の間の反応により形成されるアセタールリンカー又はケタールリンカーを含む。
【0012】
また、本明細書に記載のモノマーの繰り返し単位を含むポリマーも提供される。
【0013】
(i)本明細書に記載のエノールエーテル化合物又はハロメチルエーテル化合物と、(ii)1つ以上の-OH又は-C(O)OHから選択される基を含む第1の繰り返し単位を含む第1のポリマーと、の反応生成物を含むポリマーも提供される。この反応生成物は、化合物のエノールエーテル部位又はハロメチルエーテル部位と、第1の繰り返し単位の-OH基又は-C(O)OH基と、の間の反応により形成されるアセタールリンカー又はケタールリンカーを含み、それによって修飾された第1の繰り返し単位が形成される。
【0014】
また、ポリマーの製造方法も提供される。この方法は、(i)本明細書に記載のエノールエーテル化合物又はハロメチルエーテル化合物と、(ii)1つ以上の-OH又は-C(O)OHから選択される基を含む第1の繰り返し単位を含む第1のポリマーと、を反応させることを含む。このポリマーは、化合物のエノールエーテル部位又はハロメチルエーテル部位と、第1の繰り返し単位の-OH基又は-C(O)OH基と、の間の反応により形成されるアセタールリンカー又はケタールリンカーを含み、それによって修飾された第1の繰り返し単位が形成される。
【0015】
また、フォトレジスト組成物も提供される。フォトレジスト組成物は、本明細書に記載のポリマーと溶媒とを含む。フォトレジスト組成物は、典型的には光酸発生剤を更に含む。
【0016】
また、パターン形成方法も提供される。この方法は、(a)本明細書に記載のフォトレジスト組成物からのフォトレジストの層を基板上に形成すること;(b)フォトレジスト層を活性化放射に露光すること;及び(c)露光されたフォトレジスト層を現像してレジストレリーフ像を得ることを含む。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書で用いられる専門用語は、特定の実施形態を記載する目的のためであるにすぎず、本発明を限定することを意図しない。単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈で別段の指示がない限り、単数形及び複数形を含むことを意図する。本明細書で開示される全ての範囲は、終点を含み、終点は、独立して、互いに合体できる。要素が別の要素「の上に」又は「にわたって」あると言われる場合、それは、他の要素と直接に接触し得るか、又は介在要素がそれらの間に存在し得る。対照的に、要素が別の要素「の上に直接」あると言われる場合、介在する要素は、存在しない。
【0018】
別記しない限り、「置換」されている基は、その水素原子の1つ以上が1つ以上の置換基によって置換されている基を意味する。例示的な置換基には、限定されないが、ヒドロキシ(OH)、ハロゲン(例えば、F、Cl、I、Br)、C1~18アルキル、C1~8ハロアルキル、C3~12シクロアルキル、少なくとも1つの芳香環を有するC6~12アリール(例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル等、各環は、置換又は無置換の芳香族のいずれかである)、少なくとも1つの芳香環を有するC7~19アリールアルキル、C7~12アルキルアリール、及びこれらの組み合わせが含まれる。炭素数決定の目的のために、基が置換されている場合、基の炭素原子の数は、任意の置換基の炭素原子を除いた、このような基における炭素原子の総数である。
【0019】
本明細書で用いるところでは、「酸不安定基」は、酸の触媒作用によって、任意選択的に及び典型的には熱処理を伴って、結合が開裂し、カルボン酸基又はアルコール基などの、極性基の形成をもたらす基を言い、ポリマー上に形成され、任意選択的に及び典型的には、開裂結合につながった部分はポリマーから切り離される。そのような酸は、典型的には、露光後ベーキング中に生じる結合開裂を伴う、光発生酸である。適切な酸不安定基には、例えば、第三級アルキルエステル基、第二級又は第三級アリールエステル基、アルキル基とアリール基との組み合わせを有する第二級又は第三級エステル基、第三級アルコキシ基、アセタール基、又はケタール基が含まれる。酸不安定基は、当該技術分野において、「酸開裂可能基」、「酸開裂可能保護基」、「酸不安定保護基」、「酸脱離基」、「酸分解可能基」、及び「酸感受性基」とも呼ばれる。
【0020】
エノールエーテル化合物
本発明のエノールエーテル化合物は、C6~30芳香族又はC3~30ヘテロ芳香族コアを含み、このコアは、エノールエーテル基を含む第1の置換基と、酸不安定基を含む第2の置換基と、ハロゲン原子、例えばF、Cl、Br、又はIである(F及びIが好ましく、Iが特に好ましい)第3の置換基とを含む。コアは更に置換されていてもよく、或いは更に無置換であってもよい。
【0021】
本発明の適切なエノールエーテル化合物としては、例えば式(1)で表されるものが挙げられる:
【化1】
(式中、Arは、C6~30芳香族又はC3~30ヘテロ芳香族コアであり;Rは、独立して、酸不安定基を含む部位を表し;各Rは、独立して、H、置換若しくは無置換C1~10アルキル、置換若しくは無置換C1~10ハロアルキルを表し、任意選択的にその構造の一部として、-O-、-S-、-N(R)-、-C(O)-、-C(O)O-、又は-C(O)N(R)-から選択される1つ以上の基を含んでいてもよく、Rは、H、置換若しくは無置換C1~10アルキル、置換若しくは無置換C1~10ヘテロアルキル、置換若しくは無置換C6~30アリール、又は置換若しくは無置換C4~30ヘテロアリールを表し、任意の2つのR基が任意選択的に一緒に環を形成していてもよく、1つ以上のR基とLが任意選択的に一緒に環を形成していてもよく;Xは、独立してハロゲン原子を表し;LとLのそれぞれは、独立して単結合又は連結基を表し;a、b、及びcは、独立して1以上の整数を表し;コアは、任意選択的に更に置換されていてもよい)。本明細書において、「任意選択的に更に置換されていてもよい」とは、該当する一般式で示される置換基以外に、1つ以上の追加の置換基を任意選択的に含んでいてもよいことを意味する。
【0022】
Arは、ピリジン、ベンゼン、ナフタレン、アセナフチレン、キノリン、イソキノリン、フルオレン、カルバゾール、アントラセン、フェナントレン、ピレン、コロネン、トリフェニレン、クリセン、フェナレン、ベンズ[a]アントラセン、ジベンズ[a,h]アントラセン、ベンゾ[a]ピレン、又はペンタセンから選択されることが好ましく、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、コロネン、トリフェニレン、クリセン、フェナレン、ベンズ[a]アントラセン、ジベンズ[a,h]アントラセン、及びベンゾ[a]ピレンから選択されることがより好ましく、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、コロネン、トリフェニレン、クリセン、及びフェナレンから選択されることが更に好ましく、最も好ましくは、Arはベンジル又はナフチルであり、これらのそれぞれは任意選択的に更に置換されていてもよい。
【0023】
に適した酸不安定基としては、例えば、第三級エステル基、例えば第三級アルキルエステル、第三級アリールエステル、及び第三級炭素原子に結合したアリール基とアルキル基との組み合わせを有する第三級エステル、並びに第二級エステル基、例えば第二級アリールエステル、及び第二級炭素原子に結合したアリール基とアルキル基とを有する第二級エステル、第三級アルコキシ基、アセタール基、並びにケタール基などの酸に不安定な1つ以上のエステル基が挙げられる。好ましくは、Rは、酸に不安定なエステル基、アセタール基、又はケタール基を含む。
【0024】
適切な例示的な酸不安定基としては、以下のものが挙げられる:
【化2】
(これらの式中、*は化合物の別の部分への結合点を表す)。
【0025】
としては、H、置換若しくは無置換C1~10アルキル、又は置換若しくは無置換C1~10フルオロアルキルが好ましく、任意の2つのR基が一緒になって任意選択的に環を形成していてもよい。
【0026】
Xについて好ましいハロゲン原子は、F、Cl、Br、及びIである。これらの中でも、フッ素原子及びヨウ素原子がより好ましく、ヨウ素が特に好ましい。
【0027】
及びLは、典型的には、単結合であるか、又は置換若しくは無置換C1~30アルキレン、置換若しくは無置換C1~30ヘテロアルキレン、置換若しくは無置換C3~30シクロアルキレン、置換若しくは無置換C1~30ヘテロシクロアルキレン、置換若しくは無置換C6~30アリーレン、置換若しくは無置換C7~30アリールアルキレン、置換若しくは無置換C1~30ヘテロアリーレン、置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリールアルキレン、-O-、-C(O)-、-C(O)O-、-S-、-S(O)-、又は-N(R44)-S(O)-のうちの1つ以上を含む連結基であり、R44は、H、直鎖若しくは分岐のC1~20アルキル、単環式若しくは多環式のC3~20シクロアルキル、又は単環式若しくは多環式のC3~20ヘテロシクロアルキルである。
【0028】
a及びbは、それぞれ、典型的には1~6の整数であり、より典型的には1~3又は1~2の整数である。a+bは、2からArの利用可能な(他に置換されていない)芳香環炭素原子の総数までの整数とすることができる。a+bは、典型的には2~10、より典型的には2~6、又は2~4の整数である。cは、典型的には1~3、より典型的には1又は2の整数である。
【0029】
式(1)の適切な化合物としては、例えば以下のものが挙げられる:
【化3】
【化4】
【化5】
【0030】
上述したエノールエーテル化合物は、当業者であれば公知の合成技術を使用して容易に製造することができる。例えば、化合物は、反応物、例えばフェノールを、ビニルオキシアルキルの塩化物、臭化物、又はヨウ化物、塩基、及び溶媒と混合することによって、任意選択的にはハロゲン化アルカリ触媒、好ましくはヨウ化アルカリとも混合することによって、調製することができる。溶媒は、典型的には有機溶媒であり、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、1,4-ジオキサン、又はそれらの組み合わせである。反応は、反応混合物中の反応物の反応を引き起こしてエノールエーテルを形成するのに効果的な温度及び時間で行われる。反応温度は、典型的には0~150℃、好ましくは25~100℃である。反応時間は、典型的には1分~96時間、好ましくは2~24時間である。生成物化合物は、カラムクロマトグラフィーなどの当該技術分野で公知の技術によって精製することができる。
【0031】
本明細書に記載のエノールエーテル化合物は、酸感受性モノマー及び酸感受性ポリマーの形成において特に有用である。第1の態様では、エノールエーテル化合物は、酸感受性モノマーを形成するための直接的な反応物として使用することができ、この酸感受性モノマーは、酸感受性ポリマーを形成するために重合することができる。更なる態様では、エノールエーテル化合物は、前駆体(又は塩基)ポリマーとの反応によって酸感受性ポリマーを形成するための直接的な反応物として使用することができる。本発明の酸感受性モノマー及びポリマーを以下で説明する。
【0032】
ハロメチルエーテル化合物
本発明の適切なハロメチルエーテル化合物としては、例えば式(2)で表されるものが挙げられる:
【化6】
(式中、Ar、R、R、X、L、L、a、b、及びcは、式(1)に関して上で定義した通りであり;Yは、独立してCl、Br、又はIを表す。コアは任意選択的に更に置換されていてもよい)。
【0033】
式(2)の適切なハロメチルエーテル化合物としては、例えば以下のものが挙げられる:
【化7】
【化8】
【0034】
本発明のハロメチルエーテル化合物は、当業者であれば公知の合成技術を使用して容易に製造することができる。例えば、ハロメチルエーテル基は、OH基をホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドの水溶液と反応させ、続いて塩化水素又は臭化水素の水溶液で処理することにより、アルキルアルコール基又はアリールアルコール基を有する基質に共有結合させることができる。本発明に従い、アルキルアルコール基を有する基質にハロメチルエーテル基を付加し、続いて第三級エステルとのエステル化反応を行ってハロメチルエーテル化合物を形成する例示的なプロセスを、以下のスキームに示す:
【化9】
【0035】
本明細書に記載のハロメチルエーテル化合物は、酸感受性モノマー及び酸感受性ポリマーの形成において特に有用である。第1の態様では、ハロメチルエーテル化合物は、酸感受性モノマーを形成するための反応物として使用することができ、この酸感受性モノマーは、酸感受性ポリマーを形成するために重合することができる。更なる態様では、ハロメチルエーテル化合物は、前駆体(又はベース)ポリマーとの反応によって酸感受性ポリマーを形成するための直接的な反応物として使用することができる。本発明の酸感受性モノマー及びポリマーについて以下で説明する。
【0036】
酸感受性モノマー
本明細書に記載のエノールエーテル化合物又はハロメチルエーテル化合物は、ポリマーの合成に使用され得る酸感受性モノマーの合成に使用することができる。酸感受性モノマーは、(i)本明細書に記載のエノールエーテル化合物又はハロメチルエーテル化合物と、(ii)重合性基、典型的にはエチレン性不飽和炭素-炭素二重結合を含む基、例えば重合性ビニル基、及び-OH基又は-C(O)OH基から選択される基、を含むモノマー前駆体と、の反応生成物を含む。反応生成物は、エノールエーテル化合物のエノールエーテル部位又はハロメチルエーテル化合物のハロメチルエーテル部位と、モノマー前駆体の-OH基又は-C(O)OH基と、の間の反応により形成されるアセタールリンカー又はケタールリンカーを含む。
【0037】
モノマー前駆体(及び得られる酸感受性モノマー)に適した重合性基としては、エチレン性不飽和炭素-炭素二重結合が挙げられる。重合性基は、典型的には、置換若しくは無置換C2~20アルケニル基、置換若しくは無置換ノルボルニル基、置換若しくは無置換(メタ)アクリル基、置換若しくは無置換ビニルエーテル基、置換若しくは無置換ビニルケトン基、置換若しくは無置換ビニルエステル基、置換若しくは無置換ビニル芳香族基、又は置換若しくは無置換N-マレイミド基から選択される。これらの中でも、置換若しくは無置換(メタ)アクリル基及び置換若しくは無置換ビニル芳香族基が好ましい。
【0038】
適切なモノマー前駆体は特に限定されず、例えば以下のものが挙げられる:
【化10】
【化11】
【0039】
適切なモノマー前駆体は市販されており、或いは当該技術分野で公知の方法を使用して製造することができる。
【0040】
酸感受性モノマーは、好ましくは式(3)の部位を含む:
【化12】
(式中、Ar、R、X、L、L、a、b、及びcは、式(1)に関して上で記載した通りであり;Rは、独立して、H、置換若しくは無置換C1~10アルキル、置換若しくは無置換C1~10ヘテロアルキル、置換若しくは無置換C6~30アリール、又は置換若しくは無置換C4~30ヘテロアリールを表し、任意の2つのR基が任意選択的に一緒に環を形成していてもよく、R基とLが任意選択的に一緒に環を形成していてもよく;R基と式(3)に示されていないモノマーの別の部分が任意選択的に一緒に環を形成していてもよく;*はモノマーの別の部位への結合点を表す)。Rについて好ましいものは、H、置換若しくは無置換C1~5アルキル、置換若しくは無置換C1~5フルオロアルキル、又は置換若しくは無置換C1~5ヘテロアルキルである。
【0041】
酸感受性モノマーは、好ましくは下記式(4)のものである:
【化13】
(式中、Ar、R、R、X、L、L、a、b、及びcは、式(3)に関して上で記載した通りであり;Lは、独立して、単結合又は二価の連結基であり;Pは、モノマー前駆体に関して上述した重合性基を表し;dは1又は2であるが、cが1より大きい場合にはdは1である)。
【0042】
は、典型的には、単結合であるか、又は置換若しくは無置換1~30アルキレン、置換若しくは無置換C1~30ヘテロアルキレン、置換若しくは無置換C3~30シクロアルキレン、置換若しくは無置換C1~30ヘテロシクロアルキレン、置換若しくは無置換C6~30アリーレン、置換若しくは無置換C7~30アリールアルキレン、置換若しくは無置換C1~30ヘテロアリーレン、置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリールアルキレン、-O-、-C(O)-、-C(O)O-、-S-、
-S(O)-、又は-N(R44)-S(O)-のうちの1つ以上を含む連結基であり、R44は、H、直鎖若しくは分岐のC1~20アルキル、単環式若しくは多環式のC3~20シクロアルキル、又は単環式若しくは多環式のC3~20ヘテロシクロアルキルである。L二価連結基は、好ましくは、隣接するアセタール酸素原子又はケタール酸素原子に共有結合している芳香族基を含む。
【0043】
Pとしては、ビニル基を有する重合性基、例えばビニル芳香族(例えばスチレン)基及び(メタ)アクリレート基が好ましい。
【0044】
酸感受性モノマーは、典型的には、下記式(4a)又は(4b)のものである:
【化14】
(式中、Ar、R、R、X、L、L、L、a、b、c、及びdは、式(4)に関して上で記載した通りであり;Rは、独立して、H、ハロゲン原子、又は置換若しくは無置換C1~6アルキルを表し、H又はメチルが典型的であり;Arは、置換若しくは無置換C6~30芳香族基、又は置換若しくは無置換C3~30ヘテロ芳香族基である)。Arは、ベンゼン、ピリジン、ナフタレン、アセナフチレン、キノリン、イソキノリン、フルオレン、カルバゾール、アントラセン、フェナントレン、ピレン、コロネン、トリフェニレン、クリセン、フェナレン、ベンズ[a]アントラセン、ジベンズ[a,h]アントラセン、ベンゾ[a]ピレン、又はペンタセンの多価形態から、好ましくは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、コロネン、トリフェニレン、クリセン、フェナレン、ベンズ[a]アントラセン、ジベンズ[a,h]アントラセン、及びベンゾ[a]ピレンの多価形態から、より好ましくは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、コロネン、トリフェニレン、クリセン、及びフェナレンの多価形態から、最も好ましくは、ベンゼンの多価形態(例えばフェニレン)から選択される。
【0045】
酸感受性モノマーの非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【0046】
本発明のモノマーは、当該技術分野で公知の適切な方法を用いて調製することができる。例えばエノールエーテル反応物の場合、モノマーは、本明細書に記載のモノマー前駆体及びエノールエーテル化合物を、適切な酸触媒及び溶媒と混合することによって調製することができる。適切なモノマー前駆体は市販されており、或いは当該技術分野で公知の方法を使用して製造することができる。酸触媒は、有機又は無機の酸触媒、例えばメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、塩酸、酢酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、リンゴ酸、ギ酸、又はそれらの組み合わせであってよい。溶媒は、典型的には無水の有機溶媒であり、例えばプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、1,4-ジオキサン、又はそれらの組み合わせである。反応は、反応物間の反応を引き起こして酸感受性モノマーを形成するのに効果的な温度及び時間で行われる。反応温度は、典型的には0~150℃、好ましくは25~100℃である。反応時間は、典型的には1時間~96時間、好ましくは2~48時間である。生成物モノマーは、析出、カラムクロマトグラフィー再結晶、又はそれらの組み合わせなどの当該技術分野で公知の技術によって精製することができる。
【0047】
ハロメチルエーテル反応物から調製されるモノマーは、本明細書に記載のモノマー前駆体及びハロメチルエーテル化合物を、適切な酸触媒及び溶媒と混合することによって調製することができる。本発明のモノマーは、例えば、モノマー前駆体及びハロメチルエーテル化合物を、適切な塩基及び溶媒と混合することにより、当該技術分野で公知の適切な方法を使用して調製することができる。適切なモノマー前駆体は市販されており、或いは当該技術分野で公知の方法を使用して製造することができる。塩基は、例えば炭酸カリウム、炭酸セシウム、水素化ナトリウム、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、又は1,8-ジアザビシクロウンデク-7-エンなど、無機塩基であっても有機塩基であってもよい。溶媒は、典型的には有機溶媒であり、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、1,4-ジオキサン、又はそれらの組み合わせである。反応は、反応物間の反応を引き起こして酸感受性モノマーを形成するのに効果的な温度及び時間で行われる。反応温度は、典型的には0~150℃、好ましくは25~100℃である。反応時間は、典型的には1時間~96時間、好ましくは2~48時間である。生成物モノマーは、析出、カラムクロマトグラフィー再結晶、又はそれらの組み合わせなどの当該技術分野で公知の技術によって精製することができる。
【0048】
酸感受性ポリマー
本発明の更なる態様によれば、酸感受性ポリマーが提供される。以降で記載するように、ポリマーは、本明細書に記載するエノールエーテル化合物又はハロメチルエーテル化合物の直接的な又は間接的な反応生成物であってよい。ポリマーは、ホモポリマー、又はより典型的には、複数の異なる繰り返し単位、例えば、2個、3個、4個、又はそれ以上の異なる繰り返し単位を有するコポリマーであってよい。
【0049】
ポリマーは、好ましくは、式(5)の部位を含む酸感受性繰り返し単位を含む:
【化19】
(式中、Ar、R、R、X、L、L、a、b、及びcは、式(3)に関して上で記載した通りであり;**は繰り返し単位の別の部分への結合点を表す)。
【0050】
酸感受性繰り返し単位は、好ましくは式(6)のものである:
【化20】
(式中、Ar、R、R、X、L、L、L、a、b、c、及びdは、式(4)に関して上で記載した通りであり;BBはポリマー主鎖を表す)。BBに典型的なものは、エチレン性不飽和炭素-炭素二重結合、好ましくは重合性ビニル基、例えば、置換若しくは無置換C2~20アルケニル基、置換若しくは無置換ノルボルニル基、置換若しくは無置換(メタ)アクリル基、置換若しくは無置換ビニルエーテル基、置換若しくは無置換ビニルケトン基、置換若しくは無置換ビニルエステル基、置換若しくは無置換ビニル芳香族基(例えばスチレン)、又は置換若しくは無置換N-マレイミド基の重合によって形成されるポリマー主鎖である。これらの中でも、置換若しくは無置換ビニル芳香族基及び置換若しくは無置換(メタ)アクリレート基が典型的である。
【0051】
酸感受性繰り返し単位は、典型的には下記式(6a)又は(6b)のものである:
【化21】
(式中、Ar、Ar、R、R、R、X、L、L、L、a、b、c、及びdは、式(4a)及び(4b)に関して上で記載した通りである)。
【0052】
酸感受性繰り返し単位は、ポリマー中の全繰り返し単位を基準として典型的には5~100モル%、5~90モル%、より典型的には5~50モル%、更に典型的には10~30モル%の量でポリマー中に存在する。
【0053】
酸感受性ポリマーがコポリマーの形態である場合、それは上述した1つ以上の追加の構造的に異なる酸感受性繰り返し単位を含んでいてもよく、或いは1つ以上の別のタイプの繰り返し単位を含んでいてもよい。別の適切な追加の繰り返し単位としては、例えば、酸不安定基、塩基分解性基、ヒドロキシアリール基、フルオロアルコール基、又はラクトン基を含むものが挙げられる。
【0054】
いくつかの態様では、ポリマーは、芳香族基を有する追加の繰り返し単位を含んでいてもよく、ここで、芳香族基は、置換されていても無置換であってもよい。芳香族基は、N、O、S、又はそれらの組み合わせから選択される1個以上の芳香環ヘテロ原子を任意選択的に含んでいてもよい単環式若しくは多環式のC5~60芳香族基である。芳香族基が多環式である場合、環又は環基は、縮合していてもよく(ナフチル等など)、直接結合していてもよく(ビフェニルなどのビアリールなど)、ヘテロ原子によって架橋されていてもよく(トリフェニルアミノ又はジフェニレンエーテルなど)、及び/又は縮合環と直接結合環との組み合わせを含んでいてもよい(ビナフチル等など)。
【0055】
単環式若しくは多環式C5~60芳香族基は、置換されていても無置換であってもよい。例示的な置換基には、置換若しくは無置換C1~30アルキル、置換若しくは無置換C1~30ハロアルキル、置換若しくは無置換C3~30シクロアルキル、置換若しくは無置換C1~30ヘテロシクロアルキル、置換若しくは無置換C2~30アルケニル、置換若しくは無置換C2~30アルキニル、置換若しくは無置換C6~30アリール、置換若しくは無置換C7~30アリールアルキル、置換若しくは無置換C7~30アルキルアリール、置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリール、置換若しくは無置換C4~30ヘテロアリールアルキル、ハロゲン、-OR51、-SR52、又は-NR5354が含まれるが、それらに限定されず、ここで、R51~R54は、それぞれ独立して、水素、又は置換若しくは無置換C1~30アルキル、置換若しくは無置換C3~30シクロアルキル、置換若しくは無置換C2~30ヘテロシクロアルキル、置換若しくは無置換C6~30アリール、置換若しくは無置換C7~30アリールアルキル、置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリール、又は置換若しくは無置換C4~30ヘテロアリールアルキルである。好ましくは、芳香族基は、置換C6~30アリール基又は置換C7~30ヘテロアリール基であり、ここで、芳香族基は、-OR51、-SR52、又は-NR5354などの、ヘテロ原子含有置換基で置換されており、ここで、R51~R54は、それぞれ独立して、水素、又は置換若しくは無置換C1~10アルキル、置換若しくは無置換C3~20シクロアルキル、置換若しくは無置換C2~20ヘテロシクロアルキル、置換若しくは無置換C6~30アリール、置換若しくは無置換C7~30アリールアルキル、置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリール、又は置換若しくは無置換C4~30ヘテロアリールアルキルである。
【0056】
芳香族基を有する繰り返し単位は、典型的には、ポリマー中の全繰り返し単位を基準として、5~80モル%、より典型的には10~50モル%、更により典型的には10~40モル%の量でポリマー中に存在する。
【0057】
1種以上の追加の繰り返し単位は特に限定されず、例えば、後述する本発明のポリマーを形成するためのさらなる方法に関して後述する任意選択的な繰り返し単位、又はフォトレジストポリマーで使用するための当該技術分野で公知の他の繰り返し単位から選択することができる。
【0058】
酸感受性ポリマーは、酸不安定基、例えば酸に不安定なエステル基又はアセタール基を含む1種以上の追加の繰り返し単位を含み得る。これらの繰り返し単位に適したモノマーとしては、例えば以下のものが挙げられる:
【化22】
【化23】
(式中、Rは、水素、フッ素、C1~5アルキル、又はC1~5フルオロアルキル、典型的には水素又はメチルである)。
【0059】
酸不安定基を有する繰り返し単位は、酸感受性ポリマー中の総繰り返し単位を基準として、典型的には10~80モル%、より典型的には25~75モル%、更により典型的には30~70モル%の量で酸感受性ポリマー中に存在する。
【0060】
いくつかの態様では、酸感受性ポリマーは、芳香族基を有する1種以上の追加の繰り返し単位を含んでいてもよく、ここで、芳香族基は、置換されていても無置換であってもよい。芳香族基は、N、O、S、又はそれらの組み合わせから選択される1個以上の芳香環ヘテロ原子を任意選択的に含んでいてもよい単環式若しくは多環式のC5~60芳香族基である。芳香族基が多環式である場合、環又は環基は、縮合していてもよく(ナフチル等など)、直接結合していてもよく(ビフェニルなどのビアリールなど)、ヘテロ原子によって架橋されていてもよく(トリフェニルアミノ又はジフェニレンエーテルなど)、及び/又は縮合環と直接結合環との組み合わせを含んでいてもよい(ビナフチル等など)。
【0061】
単環式若しくは多環式C5~60芳香族基は、置換されていても無置換であってもよい。例示的な置換基には、置換若しくは無置換C1~30アルキル、置換若しくは無置換C1~30ハロアルキル、置換若しくは無置換C3~30シクロアルキル、置換若しくは無置換C1~30ヘテロシクロアルキル、置換若しくは無置換C2~30アルケニル、置換若しくは無置換C2~30アルキニル、置換若しくは無置換C6~30アリール、置換若しくは無置換C7~30アリールアルキル、置換若しくは無置換C7~30アルキルアリール、置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリール、置換若しくは無置換C4~30ヘテロアリールアルキル、ハロゲン、-OR51、-SR52、又は-NR5354が含まれるが、それらに限定されず、ここで、R51~R54は、それぞれ独立して、水素、又は置換若しくは無置換C1~30アルキル、置換若しくは無置換C3~30シクロアルキル、置換若しくは無置換C2~30ヘテロシクロアルキル、置換若しくは無置換C6~30アリール、置換若しくは無置換C7~30アリールアルキル、置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリール、又は置換若しくは無置換C4~30ヘテロアリールアルキルである。好ましくは、芳香族基は、置換C6~30アリール基又は置換C7~30ヘテロアリール基であり、ここで、芳香族基は、-OR51、-SR52、又は-NR5354などの、ヘテロ原子含有置換基で置換されており、ここで、R51~R54は、それぞれ独立して、水素、又は置換若しくは無置換C1~10アルキル、置換若しくは無置換C3~20シクロアルキル、置換若しくは無置換C2~20ヘテロシクロアルキル、置換若しくは無置換C6~30アリール、置換若しくは無置換C7~30アリールアルキル、置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリール、又は置換若しくは無置換C4~30ヘテロアリールアルキルである。
【0062】
芳香族基を有する追加の繰り返し単位が使用される場合、それは、酸感受性ポリマー中の総繰り返し単位を基準として、典型的には5~80モル%、より典型的には10~50モル%、更により典型的には10~40モル%の量で酸感受性ポリマー中に存在する。
【0063】
酸感受性ポリマーは、ラクトン基を含む繰り返し単位を含んでいてもよい。適切な繰り返し単位は、例えば、式(6a)又は式(6b)のモノマーに由来し得る:
【化24】
【0064】
式(6a)において、Rは、水素、フッ素、シアノ、置換若しくは無置換C1~10アルキル、又は置換若しくは無置換C1~10フルオロアルキルである。好ましくは、Rは、水素、フッ素、又は置換若しくは無置換C1~5アルキルであり、典型的にはメチルである。Lは、単結合であるか、又は置換若しくは無置換C1~30アルキレン、置換若しくは無置換C1~30ヘテロアルキレン、置換若しくは無置換C3~30シクロアルキレン、置換若しくは無置換C1~30ヘテロシクロアルキレン、置換若しくは無置換C6~30アリーレン、置換若しくは無置換C7~30アリールアルキレン、又は置換若しくは無置換C1~30ヘテロアリーレン、又は置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリールアルキレンの1つ以上を含む二価連結基であってよく、Lは、任意選択的に、例えば-O-、-C(O)-、-C(O)-O-、-S-、-S(O)-、及び-N(R44)-S(O)-から選択される1つ以上の基を更に含んでいてもよく、R44は、水素、直鎖若しくは分岐C1~20アルキル、単環式若しくは多環式C3~20シクロアルキル、又は単環式若しくは多環式C3~20ヘテロシクロアルキルであってよい。R14は、単環式、多環式、又は縮合多環式のC4~20ラクトン含有基であってよい。式(6b)において、R15は、水素又は非水素置換基、典型的には置換若しくは無置換C1~10アルキルであり、nは1又は2である。
【0065】
式(6a)及び(6b)の適切な例示的なラクトン含有モノマーには、以下のものが含まれる:
【化25】
(式中、Rは、上記で定義された通りである)。存在する場合、酸感受性ポリマーは、典型的には、酸感受性ポリマー中の総繰り返し単位を基準として、5~60モル%、典型的には20~55モル%、より典型的には25~50モル%の量でラクトン繰り返し単位を含む。
【0066】
酸感受性ポリマーは、12以下のpKaを有する塩基可溶性繰り返し単位を含んでいてもよい。例えば、塩基可溶性繰り返し単位は、式(7)のモノマーに由来することができる:
【化26】
【0067】
式(7)において、Rは、水素、フッ素、シアノ、置換若しくは無置換C1~10アルキル、又は置換若しくは無置換C1~10フルオロアルキルであってよい。好ましくは、Rは、水素、フッ素、又は置換若しくは無置換C1~5アルキルであり、典型的にはメチルである。Qは、置換若しくは無置換C1~30アルキレン、置換若しくは無置換C3~30シクロアルキレン、置換若しくは無置換C1~30ヘテロシクロアルキレン、置換若しくは無置換C6~30アリーレン、置換若しくは無置換の二価のC7~30アリールアルキル、置換若しくは無置換C1~30ヘテロアリーレン、又は置換若しくは無置換の二価のC3~30ヘテロアリールアルキル、又は-C(O)-Oのうちの1つ以上を含み得る。Wは、塩基可溶性基であり、例えば、ヒドロキシル(OH);-C(O)-OH;-C(CFOHなどのフッ素化アルコール;イミド;又は-NH-S(O)-Y(ここで、Yは、C1~4アルキル若しくはフルオロアルキルであり、典型的にはC1~4ペルフルオロアルキルである)から選択することができる。式(7)において、aは、1、2、又は3である。
【0068】
式(7)のモノマーの非限定的な例としては、以下のにものが挙げられる:
【化27】
(式中、Rは、上記で記載された通りである)。存在する場合、酸感受性ポリマーは、典型的には、酸感受性ポリマー中の総繰り返し単位を基準として、5~60モル%、典型的には20~55モル%、より典型的には25~50モル%の量で上記の塩基可溶性繰り返し単位を含む。
【0069】
酸感受性ポリマーは、任意選択的に、1つ以上の追加の繰り返し単位を含んでいてもよい。追加の繰り返し構造単位には、例えば、エッチ速度及び溶解性などの、フォトレジスト組成物の特性を調整する目的のための1つ以上の追加の単位が含まれ得る。追加の単位には、例えば、スチレン、(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、ビニルケトン、又はビニルエステル型単位の1つ以上が含まれ得る。酸感受性ポリマー中に存在する場合、1つ以上の追加の繰り返し単位は、酸感受性ポリマーの総繰り返し単位を基準として、90モル%以下、典型的には3~50モル%の量で使用され得る。
【0070】
酸感受性ポリマーの非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
【化34】
(式中、a、b、c、及びdは、対応する繰り返し単位のモル分率を表し、各ポリマー内の全ての繰り返し単位のモル分率の合計は1である)。
【0071】
酸感受性ポリマーは、典型的には、1,000~50,000ダルトン(Da)、特に2,000~30,000Da、より特には3,000~20,000Da、更により特に3,000~10,000Daの重量平均分子量(Mw)を有する。数平均分子量(Mn)に対するMwの比である、酸感受性ポリマーの多分散指数(PDI)は、典型的には1.1~3、特に1.1~2である。分子量値は、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される。
【0072】
本発明のポリマーは、様々な方法によって調製することができる。例えば、ポリマーは、上述した本発明の酸感受性モノマーを、上述した1種以上の任意選択的なコモノマーと一緒に重合することによって製造することができる。ポリマーは、当該技術分野における任意の適切な方法、例えば、フリーラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などを使用して調製することができる。前駆体ポリマーの繰り返し単位に対応する1種以上のモノマーは、例えば、適切な溶媒及び開始剤を使用して組み合わせることができ、或いは別々に供給することができ、反応器内で重合することができる。重合は、有効な温度での加熱、有効な波長での化学線照射、又はそれらの組み合わせによるなどの、適切な条件下で行うことができる。ポリマーがヒドロキシ置換ビニル芳香族繰り返し単位を含む場合、そのような繰り返し単位は、ヒドロキシ置換ビニル芳香族モノマー、例えばヒドロキシスチレンの重合によって形成することができる。或いは、ヒドロキシ置換ビニル芳香族繰り返し単位は、保護されたヒドロキシ芳香族繰り返し単位、例えばアセトキシスチレンの繰り返し単位を使用することによって調製することもできる。その後、アセトキシ基が塩基との反応によって除去され、ヒドロキシ芳香族繰り返し単位が生成する。その後、例えば粗製ポリマーを酸性イオン交換樹脂で処理することによって塩基が除去される。
【0073】
酸感受性ポリマーは、更に、(i)本明細書に記載のエノールエーテル化合物又はハロメチルエーテル化合物と、(ii)1つ以上の-OH基又は-C(O)OH基から選択される基を含む繰り返し単位を含む前駆体ポリマーと、を反応させることによって製造することができる。反応生成物は、化合物のエノールエーテル部位と繰り返し単位の-OH又は-C(O)OH基と、の間の反応によって形成されるアセタール又はケタールリンカーを含み、それによって修飾された繰り返し単位を形成する。
【0074】
前駆体ポリマーは、エノールエーテル化合物が反応し得る-OH基又は-C(O)OH基を有する1つ以上の繰り返し単位を含む。前駆体ポリマーに適したそのような繰り返し単位としては、以下のものが挙げられる:
【化35】
【化36】
【0075】
-OH基又は-C(O)OH基を含む前駆体ポリマーの繰り返し単位は、典型的には、前駆体ポリマーの全繰り返し単位を基準として1~100モル%、5~100モル%、5~90モル%、より典型的には5~50モル%、更に典型的には10~30モル%の量で酸感受性ポリマー中に存在する。
【0076】
前駆ポリマーは、当該技術分野における任意の適切な方法、例えばフリーラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などを使用して調製することができる。前駆体ポリマーの繰り返し単位に対応する1種以上のモノマーは、例えば、適切な溶媒及び開始剤を使用して組み合わせることができ、或いは別々に供給することができ、反応器内で重合することができる。重合は、有効な温度での加熱、有効な波長での化学線照射、又はそれらの組み合わせによるなどの、任意の適切な条件下で行うことができる。前駆体ポリマーがヒドロキシ置換ビニル芳香族繰り返し単位を含む場合、そのような繰り返し単位は、ヒドロキシ置換ビニル芳香族モノマー、例えばヒドロキシスチレンの重合によって、或いは保護されたヒドロキシ芳香族繰り返し単位、例えばアセトキシスチレンの繰り返し単位の使用によって、第1のポリマー合成方法に関して上述した通りに形成することができる。
【0077】
前駆体ポリマーは、当該技術分野で公知の適切な方法を使用して本発明のハロメチルエーテル化合物のエノールエーテル化合物と反応させることができる。エノールエーテル化合物については、本発明のポリマーは、前駆体ポリマー及びエノールエーテル化合物を適切な酸触媒及び溶媒と混合することによって調製することができる。酸触媒は、有機又は無機の酸触媒であってよく、例えば、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、塩酸、酢酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、リンゴ酸、ギ酸、又はそれらの組み合わせであってよい。溶媒は、典型的には有機溶媒であり、例えば、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、1,4-ジオキサン、又はそれらの組み合わせである。反応は、反応混合物中の反応物の反応を引き起こして本発明のポリマーを形成するのに効果的な温度及び時間で行われる。反応温度は、典型的には0~150℃、好ましくは25~100℃である。反応時間は、典型的には1時間~96時間、好ましくは2~48時間である。生成物ポリマーは、カラムクロマトグラフィーなどの当該技術分野で公知の技術によって精製することができる。
【0078】
ハロメチルエーテル化合物については、本発明のポリマーは、例えば本発明のポリマー前駆体及びハロメチルエーテル化合物を適切な塩基及び溶媒と混合することによって調製することができる。塩基は、有機塩基又は無機塩基であってよく、例えば、炭酸カリウム、炭酸セシウム、水素化ナトリウム、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、又は1,8-ジアザビシクロウンデック-7-エンであってよい。溶媒は、典型的には有機溶媒であり、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、1,4-ジオキサン、又はそれらの組み合わせである。反応は、反応混合物中の反応物の反応を引き起こして酸感受性モノマーを形成するのに効果的な温度及び時間で行われる。反応温度は、典型的には0~150℃、好ましくは25~100℃である。反応時間は、典型的には1時間~96時間、好ましくは2~48時間である。生成物ポリマーは、析出などの当該技術分野で公知の技術によって精製することができる。
【0079】
フォトレジスト組成物
本発明のフォトレジスト組成物は、上述したポリマーと溶媒とを含み、1種以上の追加の任意選択的な成分を含んでいてもよい。ポリマーは、ポリマー及びフォトレジスト組成物の他の成分の性質に応じて、組成物中で様々な機能を果たすことができる。例えば、好ましい態様では、ポリマーはフォトレジストマトリックス材料として機能することができる。別の態様では、ポリマーは表面活性ポリマーとして機能し、ポリマーと他の成分の相対的な表面エネルギー特性のため、コーティングプロセス中にフォトレジスト組成物の他の成分から分離することができる。
【0080】
フォトレジスト組成物は、光酸発生剤(PAG)を更に含有し得る。PAGは、イオン型又は非イオン型であり得る。PAGは、ポリマー形態又は非ポリマー形態であり得る。ポリマー形態では、PAGは、上述したポリマー又は異なるポリマーの繰り返し単位中の部位として存在することができ、この繰り返し単位は、重合可能なPAGモノマーから誘導される。
【0081】
適切なPAG化合物は、式Gのものであってよく、Gは光活性カチオンであり、Aは、光酸を生成することができるアニオンである。光活性カチオンは、好ましくは、オニウムカチオン、好ましくはヨードニウムカチオン又はスルホニウムカチオンから選択される。特に適切なアニオンには、その共役酸が-15~10のpKaを有するものが含まれる。アニオンは、典型的には、スルホネート基又は非スルホネートタイプの基(スルホンアミデート、スルホンイミデート、メチド又はボレートなど)を有する有機アニオンである。
【0082】
いくつかの実施形態では、光活性カチオンは、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンであり得る。例えば、光活性カチオンは、式(8)のスルホニウムカチオン又は式(9)のヨードニウムカチオンであってよい:
【化37】
【0083】
式(8)及び(9)において、R17~R21は、それぞれ独立して、置換若しくは無置換C1~20アルキル、置換若しくは無置換C3~20シクロアルキル、置換若しくは無置換C2~20アルケニル、置換若しくは無置換C6~30アリール、置換若しくは無置換C6~30ヨードアリール、置換若しくは無置換C3~30ヘテロアリール、置換若しくは無置換C7~20アリールアルキル、又は置換若しくは無置換C4~20ヘテロアリールアルキル、又はそれらの組み合わせであってよい。各R17~R19は、個別であってよいか、又は単結合若しくは二価連結基を介して別の基R17~R19と連結して環を形成し得る。R20とR21は、個別であってよいか、又は単結合若しくは二価連結基を介して互いに連結して環を形成し得る。各R17~R21は、任意選択的に、その構造の一部として二価連結基を含み得る。各R17~R21は、独立して、例えば第三級アルキルエステル基、第二級若しくは第三級アリールエステル基、アルキル基とアリール基との組み合わせを有する第二級若しくは第三級エステル基、第三級アルコキシ基、アセタール基又はケタール基から選択される酸不安定基を任意選択的に含み得る。
【0084】
式(8)の例示的なスルホニウムカチオンには、以下の1つ以上が含まれ得る:
【化38】
【化39】
【0085】
式(9)の例示的なヨードニウムカチオンには、以下の1つ以上が含まれ得る:
【化40】
【0086】
スルホネート基を有する例示的な有機アニオンには、以下の1つ以上が含まれ得る:
【化41】
【0087】
例示的な非スルホネート化アニオンには、以下の1つ以上が含まれ得る:
【化42】
【0088】
一般的に使用されるオニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、(p-tert-ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリス(p-tert-ブトキシフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムp-トルエンスルホネート;ジ-t-ブチルフェニルヨードニウムペルフルオロブタンスルホネート及びジ-t-ブチルフェニルヨードニウムカンファースルホネートを挙げることができる。他の有用なPAG化合物は、化学増幅型フォトレジストの技術分野で知られており、例えば、非イオン性スルホニル化合物、例えば、2-ニトロベンジル-p-トルエンスルホネート、2,6-ジニトロベンジル-p-トルエンスルホネート、及び2,4-ジニトロベンジル-p-トルエンスルホネート;スルホン酸エステル、例えば、1,2,3-トリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3-トリス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ベンゼン、及び1,2,3-トリス(p-トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン;ジアゾメタン誘導体、例えば、ビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン;グリオキシム誘導体、例えば、ビス-O-(p-トルエンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム及びビス-O-(n-ブタンスルホニル)-α-ジメチルグリオキシム;N-ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体、例えばN-ヒドロキシスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N-ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル;並びにハロゲン含有トリアジン化合物、例えば2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、及び2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジンが挙げられる。適切な光酸発生剤は、(特許文献2)及び(特許文献3)に詳しく記載されている。
【0089】
フォトレジスト組成物は、塩基性失活剤及び/又は光分解性失活剤(PDQ)(光分解性塩基としても知られる)を更に含んでいてもよい。使用される場合、それぞれの含有量は、典型的には、フォトレジスト組成物の全固形分を基準として、0.01~10重量%の量である。
【0090】
例示的な塩基性失活剤には、例えば、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリイソプロパノールアミン、テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン:n-tert-ブチルジエタノールアミン、トリス(2-アセトキシ-エチル)アミン、2,2’,2’’,2’’’-(エタン-1,2-ジイルビス(アザントリイル))テトラエタノール、2-(ジブチルアミノ)エタノール、及び2,2’,2’’-ニトリロトリエタノールなどの直鎖脂肪族アミン;1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-ヒドロキシピペリジン、1-ピロリジンカルボン酸tert-ブチル、2-エチル-1H-イミダゾール-1-カルボン酸tert-ブチル、ピペラジン-1,4-ジカルボン酸ジ-tert-ブチル、及びN-(2-アセトキシ-エチル)モルホリンなどの環状脂肪族アミン;ピリジン、ジ-tert-ブチルピリジン、及びピリジニウムなどの芳香族アミン;N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)ピバルアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N1,N1,N3,N3-テトラブチルマロンアミド、1-メチルアゼパン-2-オン、1-アリルアゼパン-2-オン、及びtert-ブチル1,3-ジヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-2-イルカルバメートなどの直鎖及び環状アミド並びにそれらの誘導体;スルホン酸塩、スルファミン酸塩、カルボン酸塩、及びホスホン酸塩の第四級アンモニウム塩などのアンモニウム塩;一級及び第二級アルジミン及びケチミンなどのイミン;任意選択的に置換されたピラジン、ピペラジン、及びフェナジンなどのジアジン;任意選択的に置換されたピラゾール、チアジアゾール、及びイミダゾールなどのジアゾール;並びに2-ピロリドンなどの任意選択的に置換されたピロリドン及びシクロヘキシルピロリジンが含まれる。
【0091】
光分解性失活剤PDQは、フォトレジスト組成物中の酸不安定基と迅速に反応しない比較的弱い酸を照射時に生成する。例示的な光分解性失活剤には、例えば、光分解性カチオン、及び好ましくは、強酸発生剤を調製するためにも有用であるが例えばC1~20カルボン酸などの弱酸又はC1~20スルホン酸のアニオンとペアにされるものが含まれる。例示的なカルボン酸には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酒石酸、コハク酸、シクロヘキサンカルボン酸、安息香酸、サリチル酸等が含まれる。例示的なカルボン酸には、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸等が含まれる。好ましい実施形態では、光分解性失活剤は、ジフェニルヨードニウム-2-カルボキシレートなどの光分解性有機双性イオン化合物である。
【0092】
フォトレジスト組成物は、1つ以上の塩基不安定基を含む材料(「塩基不安定材料」)を更に含んでいてもよい。本明細書で言及する場合、塩基不安定基は、露光ステップ及び露光後ベーキングステップ後に水性アルカリ性現像液の存在下で、開裂反応を受けてヒドロキシル、カルボン酸、スルホン酸等などの極性基を提供することができる官能基である。塩基不安定基は、塩基不安定基を含むフォトレジスト組成物の現像ステップの前に有意に反応しないであろう(例えば、結合切断反応を受けないであろう)。したがって、例えば、塩基不安定基は、露光前ソフトベーク、露光及び露光後ベークステップ中に実質的に不活性であろう。「実質的に不活性な」とは、塩基不安定基(又は部分)のうち、露光前ソフトベーク、露光ステップ及び露光後ベークステップ中に分解、開裂又は反応するものが≦5%、好ましくは≦1%であることを意味する。塩基不安定基は、例えば、0.26規定(N)のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の水溶液などの水性のアルカリ性フォトレジスト現像液を使用する典型的なフォトレジスト現像条件下で反応性が高い。例えば、TMAHの0.26N水溶液を、単一パドル現像又は動的現像プロセスを用いてレジストパターンを現像するために使用することができ、例えば、その場合に0.26NのTMAH現像液は、画像形成されたフォトレジスト層上へ10~120秒などの適切な時間分配される。例示的な塩基不安定基は、エステル基、典型的にはフッ素化エステル基である。好ましくは、塩基不安定材料は、フォトレジスト組成物の他の固形成分と実質的に混和せず、他の固形成分よりも低い表面エネルギーを有する。基板上にコーティングされた場合、塩基不安定材料は、それによってフォトレジスト組成物の他の固形成分から形成されたフォトレジスト層の上面に分離することができる。
【0093】
塩基不安定材料は、好ましくは、ポリマー系材料であり、本明細書では塩基不安定ポリマーとも言われ、それは、1つ以上の塩基不安定基を含む1つ以上の繰り返し単位を含んでいてもよい。例えば、塩基不安定ポリマーは、同じもの若しくは異なる2つ以上の塩基不安定基を含む繰り返し単位を含み得る。好ましい塩基不安定ポリマーは、2つ以上の塩基不安定基を含む少なくとも1つの繰り返し単位、例えば、2つ又は3つの塩基不安定基を含む繰り返し単位を含む。
【0094】
塩基不安定ポリマーは、式(E1)のモノマーに由来する繰り返し単位を含むポリマーであってよい
【化43】
(式中、Xは、ビニル及びアクリルから選択される重合性基であり、Lは、置換若しくは無置換の直鎖若しくは分岐C1~20アルキレン、置換若しくは無置換C3~20シクロアルキレン、-C(O)-、又は-C(O)O-のうちの1つ以上を含む二価の連結基であり;Rは、置換若しくは無置換C1~20フルオロアルキル基であり、但し、式(E1)のカルボニル(C=O)に結合した炭素原子は、少なくとも1つのフッ素原子で置換されている)。
【0095】
例示的な式(E1)のモノマーには、以下のものが含まれる:
【化44】
【0096】
塩基不安定ポリマーは、2つ以上の塩基不安定基を含む繰り返し単位を含み得る。例えば、塩基不安定ポリマーは、式(E2)のモノマーに由来する繰り返し単位を含むことができる:
【化45】
(式中、X及びRは、式(E1)で定義した通りであり;Lは、置換若しくは無置換の直鎖若しくは分岐C1~20アルキレン、置換若しくは無置換C3~20シクロアルキレン、-C(O)-、又は-C(O)O-のうちの1つ以上を含む多価連結基であり;nは、2以上の整数、例えば2又は3である)。
【0097】
例示的な式(E2)のモノマーには、以下のものが含まれる:
【化46】
【0098】
塩基不安定ポリマーは、1つ以上の塩基不安定基を含む繰り返し単位を含み得る。例えば、塩基不安定ポリマーは、式(E3)のモノマーに由来する繰り返し単位を含み得る:
【化47】
(式中、Xは式(E1)において定義した通りであり;Lは、置換若しくは無置換の直鎖若しくは分岐C1~20アルキレン、置換若しくは無置換C3~20シクロアルキレン、-C(O)-、又は-C(O)O-の1つ以上を含む二価連結基であり;Lは、置換若しくは無置換C1~20フルオロアルキレン基であり、ここで、式(E1)におけるカルボニル(C=O)に結合した炭素原子は、少なくとも1個のフッ素原子で置換されており;Rは、置換若しくは無置換の直鎖若しくは分岐C1~20アルキル、又は置換若しくは無置換C3~20シクロアルキルである)。
【0099】
例示的な式(E3)のモノマーには、以下のものが含まれる:
【化48】
【0100】
本発明の更なる態様では、塩基不安定ポリマーは、1つ以上の塩基不安定基と、1つ以上の酸に不安定なエステル部位(例えばt-ブチルエステル)又は酸に不安定なアセタール基などの1つ以上の酸不安定基とを含み得る。例えば、塩基不安定ポリマーは、塩基不安定基及び酸不安定基を含む繰り返し単位を含み得る。すなわち、塩基不安定基及び酸不安定基の両方は、同じ繰り返し単位上に存在する。別の例では、塩基不安定ポリマーは、塩基不安定基を含む第1の繰り返し単位と、酸不安定基を含む第2の繰り返し単位とを含み得る。本発明の好ましいフォトレジストは、フォトレジスト組成物から形成されたレジストレリーフ像に関連する欠陥の減少を示すことができる。存在する場合、塩基不安定ポリマーの含有量は、典型的には、フォトレジスト組成物の全固形分を基準として、0.01~10重量%である。
【0101】
塩基不安定ポリマーは、第1及び第2のポリマーに関して本明細書で記載されたものを含めて、当該技術分野における任意の好適な方法を用いて調製され得る。例えば、塩基不安定ポリマーは、有効な温度での加熱、有効な波長での化学線での照射又はそれらの組み合わせによるなど、任意の好適な条件下でのそれぞれのモノマーの重合によって得ることができる。加えて又は代わりに、1つ以上の塩基不安定基は、好適な方法を用いてポリマーの主鎖上へグラフトされ得る。
【0102】
フォトレジスト組成物は、1つ以上の追加の任意選択の添加剤を更に含んでいてもよい。例えば、任意選択の添加剤には、化学染料及び造影剤、条痕防止剤、可塑剤、速度促進剤、増感剤、界面活性剤等、又はそれらの組み合わせが含まれ得る。存在する場合、各任意選択の添加剤の含有量は、典型的には、フォトレジスト組成物の全固形分を基準として、0.01~10重量%である。
【0103】
例示的な界面活性剤は、フッ素化及び非フッ素化界面活性剤を含み、イオン性又は非イオン性であることができ、非イオン性界面活性剤が好ましい。例示的なフッ素化非イオン界面活性剤としては、FC-4430及びFC-4432界面活性剤(3M Corporation)などのペルフルオロC界面活性剤;並びにPOLYFOX PF-636、PF-6320、PF-656、及びPF-6520フルオロ界面活性剤(Omnova)などのフルオロジオールが挙げられる。
【0104】
フォトレジスト組成物は、組成物の成分を溶解させる及び基板上でのそのコーティングを容易にするための溶媒を更に含む。好ましくは、溶媒は、電子デバイスの製造に従来使用される有機溶媒である。好適な溶媒には、例えば、ヘキサン及びヘプタンなどの脂肪族炭化水素;トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素;ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン及び1-クロロヘキサンなどのハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、4-メチル-2-ペンタノール、及びジアセトンアルコール(4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン)(DAA)などのアルコール;プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME);ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン及びアニソールなどのエーテル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン及びシクロヘキサノン(CHO)などのケトン;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、乳酸エチル(EL)、ヒドロキシイソブチレートメチルエステル(HBM)及びアセト酢酸エチルなどのエステル;ガンマ-ブチロラクトン(GBL)及びイプシロン-カプロラクトンなどのラクトン;N-メチルピロリドンなどのラクタム;アセトニトリル及びプロピオニトリルなどのニトリル;炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジフェニル、及び炭酸プロピレンなどの環状又は非環状炭酸エステル;ジメチルスルホキシド及びジメチルホルムアミドなどの極性非プロトン性溶媒;水;並びにそれらの組み合わせが含まれる。これらのうち、好ましい溶媒は、PGME、PGMEA、EL、GBL、HBM、CHO、DAA、及びそれらの組み合わせである。溶媒は、典型的には有機系である。これは、溶媒中の有機溶媒(少ない不純物)の累積含有量が、溶媒の総重量を基準として50重量%以上、典型的には95重量%以上、95重量%以上、98重量%以上、又は100重量%であることを意味する。フォトレジスト組成物中の総溶媒含有量(すなわち全ての溶媒に関する累積溶媒含有量)は、フォトレジスト組成物全体を基準として典型的には40~99重量%、例えば70~99重量%、又は85~99重量%である。所望の溶媒含有量は、例えば、コーティングされるフォトレジスト層の所望の厚さ及びコーティング条件に依存するであろう。
【0105】
フォトレジスト組成物は、公知の手順に従って調製することができる。例えば、組成物は、フォトレジスト組成物の固形成分を溶媒中に溶解させることによって調製することができる。フォトレジスト組成物又は組成物の1つ以上の成分は、1つ以上の精製プロセス、例えば、濾過及び/又はイオン交換プロセスに任意選択的に供することができる。組成物の所望の全固形分は、所望の最終層厚さなどの因子に依存するであろう。フォトレジスト組成物の固形分は、組成物の総重量を基準として、典型的には1~10重量%、より好ましくは1~5重量%である。
【0106】
パターン形成方法
本発明のフォトレジスト組成物を使用するパターン形成方法が以下に記載される。フォトレジスト組成物をその上にコーティングすることができる適切な基板には、電子デバイス基板が含まれる。多様な電子デバイス基板、例えば半導体ウェハー;多結晶シリコン基板;マルチチップモジュールなどのパッケージング基板;フラットパネルディスプレイ基板;有機発光ダイオード(OLED)などの発光ダイオード(LED)のための基板等などが本発明において使用され得、半導体ウェハーが典型的である。そのような基板は、典型的には、シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、窒化シリコン、オキシ窒化シリコン、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、アルミニウム、サファイア、タングステン、チタン、チタン-タングステン、ニッケル、銅及び金の1つ以上から構成される。好適な基板は、集積回路、光センサー、フラットパネルディスプレイ、光集積回路及びLEDの製造において使用されるものなどのウェハーの形態であり得る。そのような基板は、任意の好適なサイズであり得る。典型的なウェハー基板直径は、200~300ミリメートル(mm)であるが、より小さい直径及びより大きい直径を有するウェハーが、本発明に従って適切に用いられ得る。基板は、形成されつつあるデバイスの動作中の部分又は動作可能な部分を任意選択的に含んでいてもよい1つ以上の層又は構造体を含んでいてもよい。
【0107】
典型的には、ハードマスク層、例えば、スピンオンカーボン(SOC)、非晶質炭素、若しくは金属ハードマスク層、窒化シリコン(SiN)、酸化シリコン(SiO)、若しくはオキシ窒化シリコン(SiON)層などのCVD層、有機若しくは無機下層、又はそれらの組み合わせなどの1つ以上のリソグラフィー層が、本発明のフォトレジスト組成物をコーティングする前に基板の上表面上に提供される。そのような層は、オーバーコーティングされたフォトレジスト層と一緒に、リソグラフィー材料スタックを形成する。
【0108】
任意選択的には、接着促進剤の層は、フォトレジスト組成物をコーティングする前に基板表面に塗布され得る。接着促進剤が望ましい場合、シラン、典型的には、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ヘキサメチルジシラザンなどのオルガノシラン又はガンマ-アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノシランカプラーなど、ポリマーフィルムのための任意の好適な接着促進剤が使用され得る。特に好適な接着促進剤としては、DuPont Electronics & Imaging(Marlborough,Massachusetts)から入手可能な、AP 3000、AP 8000及びAP 9000S名称で販売されているものが挙げられる。
【0109】
フォトレジスト組成物は、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、又はドクターブレーディング等などの任意の適切な方法によって基板上にコーティングされ得る。例えば、フォトレジストの層の塗布は、コーティングトラックを使用して溶媒中でフォトレジストをスピンコーティングすることによって達成され得、この場合、フォトレジストは、回転するウェハー上に分配される。分配中に、ウェハーは、典型的には、最大4,000回転/分(rpm)、例えば、200~3,000rpm、例えば、1,000~2,500rpmの速度で、15~120秒の期間回転して、基板上にフォトレジスト組成物の層を得る。コーティングされた層の厚さが、回転速度及び/又は組成物の固形分を変更することによって調整され得ることは当業者に十分理解されるであろう。本発明の組成物から形成されるフォトレジスト層は、典型的には、10~200ナノメートル(nm)、好ましくは15~100nm、より好ましくは20~60nmの乾燥層厚さを有する。
【0110】
フォトレジスト組成物は、典型的には次に、層中の溶媒含有量を最小限にするためにソフトベークされ、それによって不粘着性コーティングを形成し、基板への層の接着性を改善する。ソフトベークは、例えば、ホットプレート上で又はオーブン中で行われ、ホットプレートが典型的である。ソフトベーク温度及び時間は、例えば、特定のフォトレジスト組成物及び厚さに依存するであろう。ソフトベーク温度は、典型的には、90~170℃、例えば、110~150℃である。ソフトベーク時間は、典型的には、10秒~20分、例えば、1分~10分又は1分~5分である。加熱時間は、組成物の成分を基づいて当業者により容易に決定することができる。
【0111】
フォトレジスト層は、次に、露光領域と非露光領域との間で溶解性の違いを生み出すために活性化放射にパターン様露光される。組成物のために活性化する放射にフォトレジスト組成物を露光することへの本明細書での言及は、放射がフォトレジスト組成物に潜像を形成できることを示す。露光は、典型的には、レジスト層の露光領域と非露光領域とにそれぞれ対応する、光学的に透明な領域と光学的に不透明な領域とを有するパターン化フォトマスクを通して行われる。そのような露光は、代わりに、典型的には電子ビームリソグラフィーのために用いられる、直接描画法において、フォトマスクなしで行われ得る。活性化放射は、典型的には、400nm未満、300nm未満、又は200nm未満の波長を有し、248nm(KrF)、若しくは13.5nm(EUV)の波長、又は電子ビームリソグラフィーが好ましい。これらの中でも、13.5nm(EUV)が特に好ましい。露光エネルギーは、典型的には、1平方センチメートル当たり1~200ミリジュール(mJ/cm)、好ましくは10~100mJ/cm、より好ましくは20~50mJ/cmであり、露光ツール及びフォトレジスト組成物の成分に依存する。いくつかの態様では、活性化放射は、13.5nmの波長でのEUVである。
【0112】
フォトレジスト層の露光後に、露光されたフォトレジスト層の露光後ベーク(PEB)が行われる。PEBは、例えば、ホットプレート上で又はオーブン中で行うことができ、ホットプレートが典型的である。PEBの条件は、例えば、特定のフォトレジスト組成物及び層厚さに依存するであろう。PEBは、典型的には、80~150℃の温度で、及び30~120秒間行われる。極性切り替え(露光領域)及び極性非切り替え領域(非露光領域)によって画定される潜像が、フォトレジストに形成される。
【0113】
露光されたフォトレジスト層を次に適切な現像液で現像して、現像液に可溶である層の領域を選択的に除去する一方、残った不溶領域は、結果として生じるフォトレジストパターンレリーフ像を形成する。ポジ型現像(PTD)プロセスの場合、フォトレジスト層の露光領域が現像中に除去され、非露光領域が残る。逆に、ネガ型現像(NTD)プロセスでは、フォトレジスト層の露光領域が残り、非露光領域が現像中に除去される。現像液の塗布は、フォトレジスト組成物の塗布に関して上で記載されたような任意の好適な方法によって達成され得、スピンコーティングが典型的である。現像時間は、フォトレジストの可溶性領域を除去するのに有効な期間であり、5~60秒の時間が典型的である。現像は、典型的には、室温で行われる。
【0114】
PTDプロセスのための好適な現像液には、水性塩基現像液、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、好ましくは0.26規定(N)のTMAH、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムなどの水酸化第四級アンモニウム溶液、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が含まれる。NTDプロセスのための適切な現像液は、有機溶媒系であり、現像液中の有機溶媒の累積含有量が現像液の総重量を基準として50重量%以上、典型的には95重量%以上、95重量%以上、98重量%以上又は100重量%であることを意味する。NTD現像液用の適切な有機溶媒には、例えば、ケトン、エステル、エーテル、炭化水素、及びそれらの混合物から選択されるものが含まれる。NTD現像液は、典型的には、酢酸n-ブチル又は2-へプタノンである。
【0115】
コーティングされた基板は、本発明のフォトレジスト組成物から形成され得る。そのようなコーティングされた基板は、(a)それの表面上に1つ以上の層を有する基板と、(b)1つ以上の層にわたってフォトレジスト組成物の層とを含む。
【0116】
フォトレジストパターンは、例えば、エッチングマスクとして使用され、それによって、公知のエッチング技術、典型的には反応性イオンエッチングなどの乾式エッチングにより、パターンが1つ以上の連続した下位層に転写されることを可能にし得る。フォトレジストパターンは、例えば、下位ハードマスク層へのパターン転写のために使用され得、それは、順繰りに、ハードマスク層の下の1つ以上の層へのパターン転写のためのエッチングマスクとして使用される。フォトレジストパターンがパターン転写中に消費されない場合、それは、公知の技術、例えば、酸素プラズマ灰化又はウェットストリッププロセスによって基板から除去され得る。フォトレジスト組成物は、1つ以上のそのようなパターン形成プロセスにおいて使用される場合、メモリデバイス、プロセッサチップ(CPU)、グラフィックチップ、オプトエレクトロニックチップ、LED、OLEDなどの半導体デバイス、並びに他の電子デバイスを製造するために使用され得る。
【0117】
以下の非限定的な実施例は、本発明を例示するものである。
【実施例0118】
エノールエーテル化合物の合成
実施例1(化合物SM1)
【化49】
反応容器内で、1-エチルシクロペンチル-2-ヒドロキシ-5-ヨードベンゾエート(36.0g、100mmol)をDMF中に懸濁させて、9重量%溶液を得た。炭酸セシウム(65.1g、200mmol)及びヨウ化ナトリウム(1.50g、10mmol)を無希釈で溶液に添加し、反応混合物を形成した。次に、(2-クロロエトキシ)エテン(12.8g、120mmol)を撹拌しながら反応混合物にゆっくりと滴下した。反応混合物を70℃の内部温度まで4時間加熱した。次いで、追加の(2-クロロエトキシ)エテン(10.7g、100mmol)を反応混合物に添加し、反応混合物を70℃で更に14時間加熱した。反応混合物を室温まで放冷し、次いでDI水(1.5L)で希釈し、水性混合物をメチルtert-ブチルエーテル(3×250mL)で抽出した。有機層を合わせ、水(5×200mL)で洗浄し、溶媒を減圧下で除去することで、エノールエーテル化合物SM1を無色オイルとして得た(37.5g、収率87%)。[H-NMR(500MHz,クロロホルム-d)δ(ppm):7.94(d,1H,ArH),7.66(dd,1H,ArH),6.73(d,1H,ArH),6.51(dd,1H,アルケニル-H),4.27-4.18(m,3H,CH/アルケニル-H),4.08-4.00(m,3H,CH/アルケニル-H),2.29-2.18(m,2H,CH),2.09(q,2H,CH),1.82-1.68(m,4H,CH),1.67-1.57(m,2H,CH),0.93(t,3H,CH).]
【0119】
実施例2(化合物SM2)
【化50】
反応容器内で、1-エチルシクロペンチル-2-ヒドロキシ-3,5-ジヨードベンゾエート(36.5g、75mmol)をDMFに懸濁して、12重量%溶液を得た。炭酸セシウム(48.9g、150mmol)及びヨウ化ナトリウム(1.12g、7.5mmol)を無希釈で添加して反応混合物を形成した。次に、(2-クロロエトキシ)エテン(12.8g、120mmol)を撹拌しながら反応混合物にゆっくりと滴下した。反応混合物を70℃の内部温度まで16時間加熱した。次いで、追加の(2-クロロエトキシ)エテン(9.6g、100mmol)を反応混合物に添加し、反応温度を85℃に1時間上げた。反応混合物を室温まで放冷し、次いでDI水(1.5L)で希釈し、水性混合物を酢酸エチル(4×200mL)で抽出した。有機層を合わせ、DI水(5×200mL)で洗浄し、減圧下で溶媒を除去することで、エノールエーテル化合物SM2を無色オイルとして得た(37.5g、収率90%)。[H-NMR(500MHz,クロロホルム-d)δ(ppm):8.20(d,1H,ArH),7.92(d,1H,ArH),6.52(dd,1H,アルケニル-H),4.30-4.20(m,3H,CH/アルケニル-H),4.10(t,2H,CH),4.05(dd,1H,アルケニル-H),2.28-2.15(m,2H,CH),2.10(q,2H,CH),1.84-1.71(m,4H,CH),1.70-1.60(m,2H,CH),0.93(t,3H,CH).]
【0120】
実施例3(化合物SM3)
【化51】
反応容器内で、2-フェニルプロパン-2-イル2-ヒドロキシ-5-ヨードベンゾエート(11.5g、30mmol)をDMP中に懸濁させて、11.5重量%の溶液を得た。炭酸セシウム(19.5g、60mmol)及びヨウ化ナトリウム(0.5g、3mmol)を無希釈で溶液に添加し、反応混合物を形成した。次に、(2-クロロエトキシ)エテン(3.8g、36mmol)を撹拌しながら反応混合物にゆっくりと滴下した。反応混合物を70℃の内部温度まで4時間加熱した。次いで、追加の(2-クロロエトキシ)エテン(3.2g、30mmol)を反応混合物に添加し、反応混合物を70℃で更に16時間加熱した。反応混合物を室温まで放冷し、次いでDI水(1.0L)で希釈し、水性混合物を酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。有機層を合わせ、DI水(5×100mL)で洗浄し、減圧下で溶媒を除去することで、エノールエーテル化合物SM3を無色オイルとして得た(11.1g、収率82%)。[H-NMR(500MHz,アセトン-d)δ(ppm):7.90(s,1H,ArH),7.79(d,1H,ArH),7.53(d,2H,ArH),7.34(t,2H,ArH),7.23(t,1H,ArH),7.00(d,1H,ArH),6.57(dd,1H,アルケニル-H),4.34(t,2H,CH),4.27(d,1H,アルケニル-H),4.13(t,2H,CH),4.01(d,1H,アルケニル-H),1.86(s,6H,CH).]
【0121】
酸感受性モノマーの合成
実施例4(モノマーMC1)
【化52】
反応容器にモノマーHPMA(5.0g、28.06mmol)及び無水テトラヒドロフラン50mLを入れる。トリフルオロ酢酸(0.03g)及びエノールエーテル化合物SM1(12.0g、28.06mmol)を無水溶液に添加し、反応混合物を得る。反応混合物を室温(約23℃)で24時間撹拌する。その後、反応混合物をアルミナカラムに通し、溶媒を減圧下で完全に除去する。モノマーMC1が得られると予想される。
【0122】
実施例5(モノマーMC2)
【化53】
反応容器にモノマーHVN(5.1g、30.0mmol)及び無水テトラヒドロフラン75mLを入れる。トリフルオロ酢酸(0.03g)及びエノールエーテル化合物SM2(16.68.0g、30.0mmol)を無水溶液に添加し、反応混合物を得る。反応混合物を室温(約23℃)で24時間撹拌する。その後、反応混合物をアルミナカラムに通し、溶媒を減圧下で完全に除去する。モノマーMC2が得られると予想される。
【0123】
実施例6(モノマーMC3)
【化54】
反応容器にモノマーMVP(4.50g、30.0mmol)及び無水テトラヒドロフラン60mLを入れる。トリフルオロ酢酸(0.03g)及びエノールエーテル化合物SM1(13.56g、30.0mmol)を無水溶液に添加し、反応混合物を得る。反応混合物を室温(約23℃)で24時間撹拌する。その後、反応混合物をアルミナカラムに通し、溶媒を減圧下で完全に除去する。モノマーMC3が得られると予想される。
【0124】
ポリマーの合成
以下の材料を使用して、下記のポリマーを調製した。
【化55】
【0125】
実施例7(ポリマーCP-1)
ポリマーCP-1は、50/50のモル供給比のモノマーMA-1及びMB-1から調製した。モノマーMA-1(22.6g、140mmol)及びモノマーMB-1(28.5g、140mmol)を50gのPGMEAに溶解することにより、供給溶液を製造した。別途、4.4gの2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(Wako Pure Chemical Industries,Ltd.よりV-65として入手)を13gのPGMEA及びTHF(wt/wt 1/1)に溶解することによって開始剤溶液を調製した。重合は、水コンデンサーと、フラスコ内の反応を監視するための温度計とを備えた三口丸底フラスコ内で行った。反応器に25gのPGMEAを入れ、75℃まで加熱した。供給溶液及び開始剤溶液は、それぞれシリンジポンプを使用して6時間かけて反応器に別々に供給した。添加後、内容物を更に2時間撹拌した。続いて、内容物を室温まで冷却し、1リットル(L)のヘプタンの中に析出させた。得られた生成物を濾過によって単離し、減圧下で35℃で一晩乾燥させた。次いで、生成物をメタノール(500mL)に溶解し、30重量%のナトリウムメトキシドのメタノール溶液(0.6g)と合わせた。反応が完了するまで反応混合物を67℃で加熱した。反応混合物を室温まで放冷した後、酸性イオン交換樹脂C381H(Evoqua Water Technologies LLC)を添加して中和した。この反応により、4-アセトキシスチレン(MA-1)由来の繰り返し単位の構造が4-ヒドロキシスチレン(MA-2)に変換される。ポリマー溶液をDI水中で析出させて白色固体(約36.3g)[Mw=6.5キロダルトン(kDa)、PDI=1.63]を単離し、これを35℃で更に真空乾燥した。分子量は、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定した。
【化56】
【0126】
実施例8(ポリマーCP-2)
ポリマーCP-2は、50/50のモル供給比のモノマーMA-1及びMB-2から調製した。モノマーMA-1(28.22g、174mmol)及びモノマーMB-2(31.78g、174mmol)を40gのPGMEAに溶解することにより、供給溶液を製造した。別途、4.41gの2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(Wako Pure Chemical Industries,Ltd.よりV-65として入手)を13.23gのPGMEA及びTHF(wt/wt 1/1)に溶解することによって開始剤溶液を調製した。重合は、水コンデンサーと、フラスコ内の反応を監視するための温度計とを備えた三口丸底フラスコ内で行った。反応器に20gのPGMEAを入れ、75℃まで加熱した。供給溶液及び開始剤溶液は、それぞれシリンジポンプを使用して6時間かけて反応器に別々に供給した。添加後、内容物を更に2時間撹拌した。続いて、内容物を室温まで冷却し、1リットル(L)のヘプタンの中に析出させた。得られた生成物を濾過によって単離し、減圧下で35℃で一晩乾燥させた。次いで、生成物をメタノール(600mL)に溶解し、30重量%のナトリウムメトキシドのメタノール溶液(0.75g)と合わせた。反応が完了するまで反応混合物を67℃で加熱した。反応混合物を室温まで放冷した後、酸性イオン交換樹脂C381H(Evoqua Water Technologies LLC)を添加して中和した。この反応により、4-アセトキシスチレン(MA-1)由来の繰り返し単位の構造が4-ヒドロキシスチレン(MA-2)由来の繰り返し単位の構造に変換される。ポリマー溶液をDI水中で析出させて白色固体(約42.2g)[Mw=7.1キロダルトン(kDa)、PDI=1.74]を単離し、これを35℃で更に真空乾燥した。分子量は、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定した。
【化57】
【0127】
実施例9(ポリマーP1)
反応容器にポリマーCP1(15.0g)及びPGMEAを入れ、20重量%溶液を得た。共沸蒸留により微量の水を除去した。トリフルオロ酢酸(0.014g)及びエノールエーテル化合物SM1(4.38g)を無水溶液に添加し、反応混合物を得た。反応混合物を室温(約23℃)で24時間撹拌した。その後、反応混合物をアルミナカラムに通し、溶媒を減圧下で除去することで、PGMEA中のポリマーP1(48.8g、固形分26.0%、収率65.5%)を得た。分子量は、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定した。[Mw=7.9キロダルトン(kDa)、PDI=2.54]。
【化58】
【0128】
実施例10(ポリマーP2)
反応容器にポリマーCP-2(15.2g)及びPGMEAを入れ、20重量%の溶液を得た。共沸蒸留により微量の水を除去した。トリフルオロ酢酸(0.032g)及びエノールエーテル化合物SM2(8.39g)を無水溶液に添加して、反応混合物を得た。反応混合物を室温(約23℃)で24時間撹拌した。その後、反応混合物をアルミナカラムに通し、溶媒を減圧下で除去することで、PGMEA中のポリマーP2(84.1g、固形分22.3%、収率79.5%)を得た。分子量は、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定した。[Mw=8.9キロダルトン(kDa)、PDI=3.48]。
【化59】
【0129】
実施例11(ポリマーP3)
反応容器にポリマーCP-2(14.1g)及びPGMEAを入れ、20重量%の溶液を得た。共沸蒸留により微量の水を除去した。トリフルオロ酢酸(0.03g)及びエノールエーテル化合物SM3(8.09g)を無水溶液に添加して、反応混合物を得た。反応混合物を室温(約23℃)で24時間撹拌した。その後、反応混合物をアルミナカラムに通し、溶媒を減圧下で除去することで、PGMEA中のポリマーP3(86.5g、固形分20.8%、収率78.0%)を得た。(Mw=9.0キロダルトン(kDa)、PDI=3.49)。これを更に35℃で真空乾燥した。分子量は、ポリスチレン標準を使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定した。
【化60】
【0130】
フォトレジスト組成物の調製
実施例12~16
フォトレジスト組成物は、表1に示される相対量で成分を混ぜ合わせることによって調製した。ここでの量は、総固形分を基準とした重量パーセント(wt%)で表される。フォトレジスト組成物は、それぞれPGMEAとメチル-2-ヒドロキシイソブチレートとの重量比1:1の溶媒混合物中で調製し、組成物全体を基準として2.15重量の総固形分が得られた。組成物をメカニカルシェーカー上で振とうし、次いで0.2ミクロンの細孔径を有するPTFE円盤状フィルターを通して濾過した。
【0131】
【表1】
【化61】
【0132】
リソグラフィー評価ラインスペース(L/S)パターニング
実施例17~21
フォトレジスト組成物を、明視野マスクパターンを使用してKrF露光下でライン/スペース(l/s)パターニングについて評価した。フォトリソグラフィー試験のための200nmウェハーをAR(商標)3有機反射防止剤(DuPont Electronics & Industrial)でコーティングし、205℃で60秒間ソフトベークして60nmの第1のBARC層を得た。次いで、AR(商標)40A有機反射防止剤(DuPont Electronics & Industrial)のコーティングを第1のBARC層の上に配置し、215℃で60秒間ソフトベークして、約80nmの厚さを有する第2のBARC層を得た。次いで、フォトレジスト組成物をデュアルBARCスタック上へコーティングし、110℃で60秒間ソフトベークして、約50nmの厚さを有するフォトレジスト膜層を得た。ウェハーを、120nmのl/sパターンを有するマスクを使用してCanon FPA-5000 ES4スキャナー(NA=0.8、アウターシグマ=0.85、インナーシグマ=0.57)で248nmの放射でそれぞれ露光した。ウェハーを100℃で60秒間露光後ベークし、MF-CD26(商標)TMAH現像液(DuPont Electronics & Industrial)で60秒間現像し、DI水でリンスし、乾燥させた。形成されたl/sパターンの限界寸法(CD)測定は、HITACHI S-9380 CD SEMで行った。サイジングエネルギー(Esize)及びラインのLWR(nm)は、CD測定に基づいて決定した。サイジングエネルギーは、目標の120nmのライン-スペースパターンが解像された照射エネルギーである。
【0133】
疑似Zファクターは以下に報告されている。これは式1に従って決定した:
疑似Zファクター=(Esize)×(LWR) (式1)
(式中、Esizeはミリジュール/平方センチメートル(mJ/cm)単位で報告され、LWRはナノメートル(nm)単位で報告され、疑似ZファクターはmJ×10-11単位で報告されている)。疑似Zファクターは、RLS(Resolution,Line Edge Roughness,Sensitivity)フォトレジスト性能を示す既知のパラメータの指標であるZファクターに基づいたフォトレジストの性能の修正された尺度である(例えば(非特許文献1)を参照)。疑似Zファクターは一定の解像度(CDサイズ)で計算される。結果を表2に示す。
【0134】
【表2】
【0135】
表2に示されているように、本発明のフォトレジスト組成物PR-1、PR-2、及びPR-3は、比較のフォトレジスト組成物CPR-1及びCPR-2と比較して、改善された(低い)LWR及び改善された(低い)疑似Zファクターを達成した。
【0136】
トレンチ(TR)パターニング
実施例22~26
フォトレジスト組成物を、実施例17~21に記載されている、暗視野マスクパターンを使用するKrF露光下でのトレンチ(TR)パターニングについて評価した。Esize及びスペースのLWRは、CD測定に基づいて決定した。サイジングエネルギーは、目標の120nmのトレンチパターンが解像された照射エネルギーから決定した。結果を表3に示す。
【0137】
【表3】
【0138】
表3に示されているように、本発明フォトレジスト組成物PR-1B、PR-2B、及びPR-3Bは、比較のフォトレジスト組成物CPR1-B及びCPR-2Bと比較して、改善された(低い)LWR及び改善された(低い)疑似Zファクターを達成した。
【外国語明細書】