(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170308
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】コネクタおよびコネクタシステム
(51)【国際特許分類】
H01R 13/629 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
H01R13/629
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024083779
(22)【出願日】2024-05-23
(31)【優先権主張番号】2305294
(32)【優先日】2023-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】518105024
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクス フランス エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110004347
【氏名又は名称】弁理士法人大場国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カンタン ドレストル
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ ジョドン ドゥ ヴィルロシュ
(72)【発明者】
【氏名】グザヴィエ ルイヤール
(72)【発明者】
【氏名】ステファヌ ガレラン
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA16
5E021FC40
5E021HB09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】特に高い結合力を伴うコネクタシステムのための、よりコンパクトなコネクタ結合を提供する。
【解決手段】インナーシェル3、アウターシェル5、およびギアホイールを備えるコネクタに関し、ギアホイールは、第1の直線ギア29とラックアンドピニオン構成で配置され、ギアホイールは、嵌合方向に直交するヒンジ軸に対して回転可能にインナーシェルにヒンジ接続される。ギアホイールは、ラックアンドピニオン構成において第1の直線ギアと係合するように構成されたギア外歯の第1のセット41と、相手側コネクタ100の第2の直線ギア105と係合するように構成されたギア外歯の第2のセット45とを備え、ギア外歯の第1のセットおよび第2のセットは、同じ平面に配置される。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵌合方向(M)において相手側コネクタ(100)と結合するように構成されているコネクタであって、前記コネクタ(1)は、インナーシェル(3)、アウターシェル(5)、およびギアホイール(7)を備え、
前記アウターシェル(5)は、前記インナーシェル(3)を少なくとも部分的に包囲し、前記インナーシェル(3)に対して前記嵌合方向(H)に移動するように構成され、前記アウターシェル(5)は、前記アウターシェル(5)の内面(15)に前記嵌合方向(H)に沿って配置されている第1の直線ギア(29)を備え、
前記ギアホイール(7)は、前記第1の直線ギア(29)とラックアンドピニオン構成で配置され、前記ギアホイール(7)は、前記嵌合方向(x)に直交するヒンジ軸(H)に対して回転可能に前記インナーシェル(3)にヒンジ接続されている、コネクタにおいて、
前記ギアホイール(7)が、前記ラックアンドピニオン構成において前記第1の直線ギア(29)と係合するように構成されているギア外歯(43)の第1のセット(41)と、前記相手側コネクタ(100)の第2の直線ギア(105)と係合するように構成されているギア外歯(47)の第2のセット(45)とを備え、ギア外歯(43)の前記第1のセット(41)およびギア外歯(47)の前記第2のセット(45)が、同じ平面(L)に配置されていることを特徴とする、
コネクタ。
【請求項2】
ギア外歯(43)の前記第1のセット(41)の第1のピッチ円半径(R1)は、ギア外歯(47)の前記第2のセット(45)の第2のピッチ円半径(R2)とは異なり、特に、前記第1のピッチ円半径(R1)は、前記第2のピッチ円半径(R2)よりも大きく、好ましくは1.2~5倍大きい、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第1のセット(41)の前記歯(43)および前記第2のセット(45)の前記歯(47)は、同じピッチ角(β)および/または円弧歯厚(T)および/または歯幅(W)を有し、特に、前記第1のセット(41)の前記歯(43)および前記第2のセット(45)の前記歯(47)は、同じ寸法を有する、請求項1から2のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ギアホイール(7)は、少なくとも1つの切抜き領域(55c)、特に完全に空洞化された領域を備え、前記切抜き領域(55c)は、歯(43、47)の前記第1のセット(41)および前記第2のセット(45)の間における前記ギアホイール(7)の角度方向領域(α3)に含まれている、請求項1から3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記インナーシェル(3)は、前記相手側コネクタ(100)のハウジング要素(101)に嵌合するように構成され、前記インナーシェル(3)は、前記嵌合方向(x)に沿って延びる凹部(35)を備え、前記凹部(35)は、ギア外歯(47)の前記第2のセット(45)が前記第2の直線ギア(105)と係合することができるように、前記インナーシェル(3)が前記ハウジング要素(101)と嵌合したときに前記相手側コネクタ(100)の前記第2の直線ギア(105)を受け入れるように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記ギアホイール(7)は、少なくとも1つのギア歯フラップを備え、特に、前記第1のセット(41)に対応する前記ギアホイール(7)の角度方向領域(α1)における第1のフラップ(49)と、前記第1のフラップ(49)に対して反対側の、前記第2のセット(41)に対応する前記ギアホイール(7)の角度方向領域(α2)における第2のフラップ(51)とを備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記アウターシェル(5)は、結合解除された第1の位置から、前記コネクタ(1)が前記相手側コネクタ(100)に結合する第2の位置へと、前記インナーシェル(3)に対して移動するように構成され、
前記インナーシェル(3)は、前記ギアホイール(7)がヒンジ接続されている前記インナーシェル(3)の外面(17)に形成されている突出部(65)を備え、
前記ギアホイール(7)は、前記突出部(65)と合致し、前記第1の位置において前記突出部(65)を受け入れるように構成されている窪み(33)を備える、
請求項1から6のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記第2のピッチ円半径(または2)に対する前記第1のピッチ円半径(R1)の比は、前記第2のセット(45)におけるギア外歯(47)の数に対する前記第1のセット(41)におけるギア外歯(43)の数の比に対応する、請求項1から7のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記インナーシェル(3)または前記アウターシェル(5)は、前記嵌合方向(x)に沿って延びる直線カム(61)を備え、前記インナーシェル(3)および前記アウターシェル(5)のいずれか他方は、前記直線カム(61)のための対応するカムフォロアとして構成されている突起(59)をさらに備え、前記インナーシェル(3)に対する前記アウターシェル(5)の移動は、前記直線カム(61)に沿った前記突起(59)の摺動を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載のコネクタ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の前記コネクタ(1)と、相手側コネクタ(100)とを備えるコネクタシステムであって、
前記相手側コネクタ(1)は、前記インナーシェル(3)に嵌合するように構成されているハウジング要素(101)を備え、
前記ハウジング要素(101)は、前記ハウジング要素(101)の外面(107)に形成されている第2の直線ギア(105)を備え、前記第2の直線ギア(5)は、前記コネクタ(1)および前記相手側コネクタ(100)が結合したときに前記第2のセット(45)と係合するように構成されている、
コネクタシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナーシェル、アウターシェル、およびギアホイールを備える、相手側コネクタと結合するように構成されたコネクタに関する。本発明はまた、前記コネクタを備えるコネクタシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタと、相手側コネクタと、コネクタおよび相手側コネクタの結合を容易にするように設計された結合システムとを備えるコネクタシステムが、当技術分野において知られている。結合が容易になると、コネクタ同士の所期の結合のために必要な力、精度、および/または技量が減じるので、ユーザの快適性およびコネクタシステムの信頼性が向上する。
【0003】
高結合力コネクタシステムに組み込まれる典型的な結合システムとしては、レバーシステムがある。レバーシステムでは、一方のコネクタに、コネクタハウジングにヒンジ接続される外部レバーが設けられ、相手側コネクタに、レバーの作用側に引っ掛かるように構成された構造体が設けられる。代替的解決策が米国特許第9,917,402(B1)号の特許文献に開示されており、ここでは、結合システムは、従来の円形ギアおよび可変ピッチ円半径を有するカムギアを含み、カムギアおよび円形ギアは、互いに連通して積層ギアを形成する。
【0004】
同時に、多くの現代の技術的環境は、ますますスペース制約が厳しくなっており、コネクタの設置のための余裕、およびコネクタへのアクセスのため余裕が減少していることから、提案されている大型の結合システムは不適となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、特に高い結合力を伴うコネクタシステムのための、よりコンパクトなコネクタ結合の解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本開示に係るコネクタにより実現される。コネクタは、嵌合方向において相手側コネクタと結合するように構成され、インナーシェル、アウターシェル、およびギアホイールを備える。アウターシェルは、インナーシェルを少なくとも部分的に包囲し、インナーシェルに対して嵌合方向に移動するように構成される。アウターシェルは、アウターシェルの内面に嵌合方向に沿って配置される第1の直線ギアを備える。ギアホイールは、第1の直線ギアとラックアンドピニオン構成(rack-and-pinion configuration)で配置され、嵌合方向に直交するヒンジ軸に対して回転可能にインナーシェルにヒンジ接続される。
【0007】
コネクタは、ギアホイールが、ラックアンドピニオン構成において第1の直線ギアと係合するように構成されたギア外歯(external gear teeth)の第1のセットと、相手側コネクタの第2の直線ギアと係合するように構成されたギア外歯の第2のセットとを備え、ギア外歯の第1のセットおよび第2のセットが、同じ平面に配置されることを特徴とする。
【0008】
この構成において、ギアホイールは、よりコンパクトな配置で相手側コネクタとのコネクタの結合を容易にする。ギア外歯の第1のセットおよび第2のセットが1つの平面に配置されるので、ギアホイール自体が、先行技術において知られているものよりも小さいサイズおよび質量に保たれる。さらに、ギア外歯の第1のセットおよび第2のセットはアウターシェルの直線ギアおよび相手側コネクタの第2の直線ギアとそれぞれ係合するように構成されるので、それらの直線ギアもそこに配置することができ、それによりコネクタの全体的な断面サイズが低減する。
【0009】
コネクタの追加の任意選択的な特徴および様々な態様を、以下で説明する。それらの特徴および態様は、互いの間で自由に組み合わされてよく、それにより、本発明のコネクタのさらなる可能な実施形態または態様が得られる。
【0010】
コネクタの一態様において、ギア外歯の第1のセットの第1のピッチ円半径(pitch radius)は、ギア外歯の第2のセットの第2のピッチ円半径とは異なっていてよい。ギアホイールのピッチ円半径とは、ギアホイール中心とギアのピッチ点、すなわちギアの噛み合う歯の接触点との間の距離である。異なるピッチ円半径により、有利なてこ作用を得ることができ、結合が容易になる。
【0011】
コネクタの一態様において、第1のピッチ円半径は、第2のピッチ円半径よりも大きくてよい。これにより、てこの法則に従って、ギア外歯の第2のセットにより第2の直線ギアに印加される結合力、すなわちギアホイールの出力する力が、アウターシェルに印加される力、すなわちギアホイールの入力される力に対して増大する。
【0012】
コネクタの一態様において、第1のピッチ円半径は、第2のピッチ円半径よりも1.2~5倍、特に1.5~3倍大きくてよい。したがって、出力する力を、1.2~5、特に1.5~3の前記倍率で増大させることができる。この倍率は、力の増倍、ギアホイールのコンパクト性、およびギアホイールの構造的安定性の間の有利なバランスをもたらす。
【0013】
コネクタの一態様において、第1のセットの歯および第2のセットの歯は、同じピッチ角および/または円弧歯厚および/または歯幅を有してよい。ピッチ角は、ギアホイールの2つの連続するギア歯のピッチ点の間に含まれる角度である。円弧歯厚は、ヒンジ軸に直交する平面における、ピッチ点でのギア歯の厚さである。歯幅は、ヒンジ軸に平行な方向に沿ったギア歯の幅、すなわち延在範囲である。これにより、アウターシェルの直線ギアと係合するギア外歯の第1のセットと、相手側コネクタの第2の直線ギアと係合するギア外歯の第2のセットとの間のトルク伝達が向上する。
【0014】
コネクタの一態様において、第1のセットの歯および第2のセットの歯は、同じ寸法を有してよい。これにより、コネクタおよび相手側コネクタのギアホイールと直線ギアの製造、例えば射出成形が簡略化し、構成要素の費用効率が増大する。
【0015】
コネクタの一態様において、インナーシェルは、相手側コネクタのハウジング要素に嵌合するように構成されてよく、インナーシェルは、嵌合方向に沿って延びる凹部を備え、凹部は、ギア外歯の第2のセットが第2の直線ギアと係合することができるように、インナーシェルがハウジング要素と嵌合したときに相手側コネクタの第2の直線ギアを受け入れるように構成される。よって、コネクタは、コネクタの断面サイズを増大させることなく、ギア外歯の第2のセットとの係合に適した構成で、相手側コネクタの第2の直線ギアを受け入れることができる。
【0016】
コネクタの一態様において、ギアホイールは、少なくとも1つのギア歯フラップを備えてよい。ギア歯フラップは、ギアホイール円周の同じ角度方向領域(angular region)に沿ってギア歯と共にギアホイール円周を越えて延びるが、ギア歯の係合を妨げないようにヒンジ軸に関して軸方向にずれている径方向突起である。ギア歯フラップは、高い結合力を要する場合にリスクがあり得るギア歯の構造的完全性を補強する。
【0017】
コネクタの一態様において、ギアホイールは、ギア外歯の第1のセットに対応するギアホイールの角度方向領域における第1のギア歯フラップと、ギア外歯の第2のセットに対応するギアホイールの角度方向領域における第2のギア歯フラップとを備えてよい。これにより、ギア外歯の第1のセットおよび第2のセットの両方が、ギアホイールに対して構造的に補強される。
【0018】
コネクタの一態様において、第2のフラップは、第1のフラップに対して反対側に配置される。すなわち、第1のフラップおよび第2のフラップは、ヒンジ軸に沿ってギアホイールの互いに反対の側に配置される。これにより、軸方向におけるギアホイールのバランスが向上する。
【0019】
コネクタの一態様において、第1のフラップは、ギア外歯の第1のセットの、アウターシェルの内面とは反対の側に配置されてよく、第2のフラップは、ギア外歯の第2のセットの、インナーシェルの外面とは反対の側に配置されてよい。この構成では、ギア外歯の第1のセットとアウターシェルの直線ギアとの係合の案内が向上し、第1のフラップによる干渉から保護される。対応するように、ギア外歯の第2のセットと第2の直線ギアとの係合の案内を向上させ、第2のフラップによる外部干渉から保護することができる。
【0020】
コネクタの一態様において、アウターシェルは、結合解除された第1の位置から、コネクタが相手側コネクタに結合する第2の位置へと、インナーシェルに対して移動するように構成されてよく、インナーシェルは、ギアホイールがヒンジ接続されるインナーシェルの外面に形成される突出部を備え、ギアホイールは、突出部と合致し、第1の位置において突出部を受け入れるように構成された窪みを備える。この態様によれば、ギアホイールの窪みにおけるインナーシェルの突出部の摩擦係合の作用により、アウターシェルを第1の位置においてインナーシェルに対して安定化させることができる。これにより、アウターシェルをインナーシェルに対して移動させ相手側コネクタとの結合を開始するために、摩擦抵抗に打ち勝つ必要があるため、コネクタの操作性が向上する。
【0021】
コネクタの一態様において、ギアホイールは、少なくとも1つの切抜き領域を備えてよい。これにより、特に、構造的に必要でない、ギアホイール中心の周りの角度方向領域、換言すると「パイスライス」において、ギアホイールの質量および材料コストを低減することが可能となる。
【0022】
コネクタの一態様において、少なくとも1つの切抜き領域は、歯の第1のセットおよび第2のセットの間におけるギアホイールの角度方向領域に含まれる。これにより、(インナーシェルの外面に形成される)突出部が窪みから外されて結合が開始されたときに、ギアホイールにおける突出部のための角度方向の移動経路を空けることができる。換言すると、ギアホイールと突出部との間の摩擦が低減し、ギアホイールの回転が容易になる。
【0023】
コネクタの一態様において、切抜き領域は、完全に空洞化された領域であってよい。これにより、ギアホイールの質量および材料コストがさらに低減する。
【0024】
コネクタの一態様において、ギアホイールは、インナーシェルとアウターシェルとの間に配されてよい。そのように間に配されたギアホイールは、アウターシェルにより包囲され、外部からアクセス可能でなく、それによりギアホイールに対する誤操作または損傷のリスクが低減する。これにより、結合システムの信頼性を高めることができる。
【0025】
コネクタの一態様において、ギアホイールは、嵌合方向に平行な平面においてインナーシェルとアウターシェルとの間に配されてよい。これにより、インナーシェルの外面とアウターシェルの面との間の最小距離を低減することができ、コンパクト性がさらに高まる。
【0026】
コネクタの一態様において、コネクタは、第2の位置においてインナーシェルに対する嵌合方向に沿ったアウターシェルの相対位置をロックするように構成されたコネクタ位置保証装置(CPA)を備えてよい。CPAは、ロック解除位置からロック位置へとアウターシェルに対して移動可能に配置される。CPAは、CPAの一方の遠位端部がコネクタのアウターシェルに形成される受入れポケットに配置され、一方の遠位端部とは反対の他方の遠位端部が受入れポケットの外側に配置されるように、アウターシェルに配置される。CPAは、ロックノーズを備える。対応するロックノッチが、インナーシェルの外面に形成され、アウターシェルがインナーシェルに対して第2の結合位置にあり、CPAがアウターシェルに対してロック位置へと移動したときにロックノーズを受け入れるように構成される。このように構成されたCPAは、アセンブリのコンパクト性を保ちつつ、相手側コネクタと結合したときのコネクタのロック機能を提供する。
【0027】
コネクタの一態様において、第2のピッチ円半径に対する第1のピッチ円半径の比は、第2のセットにおけるギア外歯の数に対する第1のセットにおけるギア外歯の数の比に対応する。これにより、それぞれのギア歯の係合部にわたっての結合力の作用の分散の向上が可能となり、よって、個々の歯に対する不適当に高い負荷を回避することにより、力の伝達が滑らかになる。
【0028】
コネクタの一態様において、インナーシェルまたはアウターシェルは、嵌合方向に沿って延びる直線カムを備えてよく、インナーシェルおよびアウターシェルのいずれか他方は、直線カムのための対応するカムフォロアとして構成された突起をさらに備え、インナーシェルに対するアウターシェルの移動は、直線カムに沿った突起の摺動を含む。直線カムおよび対応する突起は、インナーシェルに対するアウターシェルの移動を有利に案内し安定化する摺動を提供することができる。
【0029】
コネクタの一態様において、コネクタは、電気コネクタであってよい。さらに、電気コネクタのインナーシェルは、少なくとも1つの電気端子、特に400V以上の電圧用に構成された電気端子を収容してよい。電気コネクタは、上述のコンパクト性の恩恵を受け、よって、特に電気自動車の充電インレット接続部またはバッテリ接続部に関して、狭い空間での電気アプリケーションに適合することができる。
【0030】
本発明はまた、上述の態様のうちのいずれか1つに係るコネクタと、相手側コネクタとを備えるコネクタシステムに関する。相手側コネクタは、インナーシェルに嵌合するように構成されたハウジング要素を備え、ハウジング要素は、ハウジング要素の外面に形成される第2の直線ギアを備え、第2の直線ギアは、コネクタおよび相手側コネクタが結合したときに第2のセットと係合するように構成される。本発明のコネクタシステムは、歯の2つのセットが同じ平面に配置されるギアホイールベースの結合システムを有する上述のコネクタのコンパクト性および構造的簡略性の恩恵を受ける。歯のセット同士が同じ平面に配置されるので、相手側コネクタは何らかのさらなる構成要素を必要としない。
よって、アウターシェルにより画定されるコネクタの断面サイズが増大するリスクが低減し、コネクタシステムが、レバーなどの煩雑な結合の解決策を有する先行技術のコネクタよりもコンパクトになり、特に狭い空間により適合する。
【0031】
添付の図面と併せて、本発明の現在好適な例示的実施形態の以下のより詳細な説明を入念に検討することにより、本発明の上述の態様、目的、特徴および利点がより完全に理解および認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】相手側コネクタと結合する前の、本発明の一実施形態に係るコネクタを示す図である。
【
図2A】
図1のコネクタのギアホイールを示す図である。
【
図2B】本発明の別の実施形態に係るコネクタのための代替的なギアホイールを示す図である。
【
図3A】相手側コネクタとの結合中における
図1のコネクタを示す図である。
【
図3B】結合しているがロックされていない状態における
図1のコネクタを示す図である。
【
図3C】結合しかつロックされている状態における
図1のコネクタを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
特に明記しない限り、
図1~
図3Cに示す物体の構造的特徴は、それらのデカルト寸法に対して個々にも、または1つのデカルト方向に沿って互いに対しても、実際の縮尺通りに描かれていない。さらに、異なる図において用いられる同一の参照符号は、同一の要素に関連する。
【0034】
図1~
図3Cの以下の詳細な説明において、本発明の一実施形態に係るコネクタ1、および本発明の別の実施形態に係るコネクタシステム200を共に説明する。
【0035】
図1は、コネクタ1および相手側コネクタ100を備えるコネクタシステム200を示す。
図1の図において、コネクタ1および相手側コネクタ100は、コネクタの結合およびロックの前の事前状態で示されている。
【0036】
コネクタ1は、インナーシェル3、アウターシェル5、およびギアホイール7を備える。例示の目的で、
図1では、ギアホイール7および以下で説明するさらなる要素を含む領域Aの視認を可能とするために、アウターシェル5の断面の一部分が取り除かれている(または透明化されている)。
【0037】
本実施形態において、コネクタ1は、電気コネクタであり、相手側コネクタ100は、電気ヘッダ相手コネクタである。コネクタ1は、4つのそれぞれの端子キャビティ9に収容される4つの電気端子(不図示)を備える。コネクタ1および相手側コネクタ100は、電気自動車用の電力コネクタであり、例えば400V以上の電圧を有する、高電圧の電気接続部用に構成される。
【0038】
コネクタ1は、第1のデカルト方向Xに平行な嵌合方向Mにおいて相手側コネクタ100と結合するように構成される。本実施形態において、インナーシェル3およびアウターシェル5を含むコネクタ1、ならびに相手側コネクタ100は、嵌合方向Mに垂直な平面Y-Zにおいて正方形の断面を有する。インナーシェル3の嵌合方向Mに平行な縁部11には丸みが付けられ、一方で、アウターシェル5の嵌合方向Mに平行な縁部13は面取りされている。
【0039】
アウターシェル5は、インナーシェル3を部分的に包囲する。特に、アウターシェル5は、インナーシェル3の延在範囲D2よりも小さい嵌合方向Mに沿った延在範囲D1に沿って、嵌合方向Mに垂直な平面Y-Zにおいてインナーシェル3の全周を取り囲む。よって、アウターシェル5は、インナーシェル3の外面17と少なくとも部分的に対向する内面15を備える。
【0040】
コネクタ1は、コネクタ1が相手側コネクタ100と完全にかつ適正に結合したときに、コネクタ1を所定位置にロックするためのコネクタ位置保証装置(CPA)19をさらに備える。CPA19は、ロック解除位置とロック位置との間でポケット21においてアウターシェル5に対して移動可能であるように、アウターシェル5に形成され嵌合方向Mに沿って延びるポケット21に配置される。
図1の図において、コネクタ1はまだ相手側コネクタ100と結合していないため、CPA19もロック解除位置にある。
【0041】
CPA19は、嵌合方向Mにおいて、第1の遠位端部23、および第1の遠位端部23とは反対側の第2の遠位端部(視認不可能)を備える。CPA19は、ロック解除位置およびロック位置の両方において、第1の遠位端部23がポケット21の外側に留まり、第2の遠位端部がポケット21の内側に留まるように、ポケット21に配置される。
【0042】
CPA19の第1の遠位端部23は、作動グリップ25を備える。作動グリップ25は、ポケット21におけるCPA19の手動での移動を容易にするように構成され、インナーシェル3に対して外方に突出するように形成される。ロックノーズ(視認不可能)が、内方に突出するようにCPA19の第2の遠位端部に形成され、インナーシェル3の外面17に向く。対応するロックノッチ27が、外面17に形成され、結合したコネクタ1、100がロックされたときにロックノーズを受け入れるように構成される(
図3B、
図3C参照)。
【0043】
図1に示す領域Aは、アウターシェル5が第1の直線ギア29を備えることを示す。第1の直線ギア29は、アウターシェル5の内面15に形成され、嵌合方向Mに沿って延びる。具体的には、第1の直線ギア29は、第1の直線ギア31の歯31がアウターシェル5の内面15およびインナーシェル3の外面17に平行に向くように形成され、それにより、第1の直線ギア29は、インナーシェル3およびアウターシェル5の間に平行に配される、または挟まれる。これについては、
図3A~
図3Bに関してさらに説明する。
【0044】
相手側コネクタ100のハウジング要素101は、嵌合方向Mに沿って延びる、同様に配置される第2の直線ギア105を備える。第2の直線ギア105は、第2の直線ギア105の歯109がハウジング要素101の外面107に平行に向くように、ハウジング要素101の外面107に形成される。
【0045】
領域Aはまた、インナーシェル3の外面17に形成され、嵌合方向Mに直交するヒンジ軸Hに沿って延びるヒンジシャフト33に、ギアホイール7がヒンジ接続されることを示す。ギアホイール7は、ヒンジシャフト33およびヒンジ軸Hに対して回転可能であるように、かつ、以下でさらに説明するように、ギアホイール7の歯が第1の直線ギア29および第2の直線ギア105と係合可能であるように、ヒンジシャフト33にヒンジ接続される。
【0046】
以下でさらに説明および例示するように、アウターシェル5は、結合解除された位置と結合した位置との間で嵌合方向Mに沿ってインナーシェル3に対して移動可能である。本説明の
図1において、コネクタ1は、相手側コネクタ100の近傍に移動しており、インナーシェル3は、相手側コネクタ100の合致するハウジング要素101と嵌合している。具体的には、インナーシェル3は、第2の直線ギア105が嵌合方向Mに沿って延びるインナーシェル3に形成される凹部35に受け入れられるように、ハウジング要素101の上に差し込まれている。
【0047】
ただし、端子を収容するインナーシェル3の嵌合方向Mにおける遠位縁部37は、依然として相手側コネクタ100の対応する当接部103から距離D3だけ離隔している。よって、距離D3を乗り越えるまで、コネクタ1および相手側コネクタ100のそれぞれの端子は所期の接触位置になく、コネクタシステム200は結合しない。
【0048】
ここで、上述のコネクタシステム200のギアホイール7について、
図2Aを参照して説明する。
図2Aは、斜視図において、ギアホイール7を単独で示す。本実施形態において、ギアホイール7は、中央貫通孔39を有する一体構造の射出成形品である。中央貫通孔39は、ヒンジシャフト33を受け入れるように構成され、コネクタ1に組み付けられたときに、ヒンジ軸Hに対応する中央軸に沿って延びる。ギアホイール7は、ギア外歯43の第1のセット41およびギア外歯47の第2のセット45を備える。第1のセット41の歯43は、第1の直線ギア29と係合するように構成され、第2のセット45の歯47は、第2の直線ギア105と係合するように構成される。
【0049】
ギア外歯43の第1のセット41は、第1のピッチ円半径R1で第1の周面P1に沿って配置され、周面P1は、ヒンジ軸Hの周りに第1の半円C1を画定する。同様に、ギア外歯47の第2のセット45は、第2のピッチ円半径R2で第2の周面P2に沿って配置され、当該周面P2は、ヒンジ軸Hの周りに第2の半円C2を画定する。第1の半円C1および第2の半円C2は、ギアホイール7の2つの反対側の半部に対応する。
【0050】
本発明の顕著な特徴によれば、ギア外歯43の第1のセット41およびギア外歯47の第2のセット45は、同じ平面、例えば中線Lにより画定される平面に配置される。ここで、中線Lは、ギアホイール7をヒンジ軸Hに沿って等しい厚さの2つの半部に分割する線である。
【0051】
換言すると、歯43の第1のセット41が配置される平面は、歯47の第2のセット45が配置される平面と合致する。すなわち、ギアホイール7の全てのギア歯43、47は、ヒンジ軸Hに沿って同じ範囲に沿って延びる。歯43の第1のセット41および歯47の第2のセット45は、ギアホイール7の同じ軸方向領域に配置される。
【0052】
この特徴的なギアホイール7により、単一の装置が結合の促進のために有利なトルク伝達を確保することが可能となり、当該装置は、先行技術の結合の解決策と比較して、特にコンパクトかつ軽量な構造となる。
【0053】
本実施形態において、第1のピッチ円半径R1の値は、第2のピッチ円半径R2の値の2倍である。さらに、第1のセット41は、ヒンジ軸Hの周りの第1の角度方向領域α1において第1の周面P1に沿って配置される6つのギア外歯43を備える。第2のセット45は、ヒンジ軸Hの周りの第2の角度方向領域α2において第2の周面P2に沿って配置される3つのギア外歯47を備える。加えて、第1のセット41および第2のセット45の歯43、47は、同じ寸法、特に同じピッチ角β、同じ円弧歯厚T、および同じ歯幅Wを有する。
【0054】
変形例において、第1のピッチ円半径R1は、第2のピッチ円半径R2よりも1.2倍大きいか、または5倍大きいか、またはその間の任意の値であってよい。好ましくは、第1のピッチ円半径R1は、第2のピッチ円半径R2よりも1.5~3倍大きい。ただし、トルク伝達およびコンパクト性の向上のために、第2のピッチ円半径に対する第1のピッチ円半径の比が、第2のセットにおけるギア外歯の数に対する第1のセットにおけるギア外歯の数の比に対応することが有利である。
【0055】
ギアホイール7は、第1のギア歯フラップ49および第2のギア歯フラップ51を備える。第1のフラップ49は、第1のセット41の歯43に隣接して、第1の角度方向領域α1に沿って第1の周面P1から外方に突出する。これに対応して、第2のフラップ51は、第2のセット45の歯47に隣接して、第2の角度方向領域α2に沿って第2の周面P2から外方に突出する。
【0056】
第1のフラップ49は、アウターシェル5の内面15とは反対の側において歯43に隣接して配置される。第2のフラップ51は、インナーシェル3の外面17とは反対の側において歯43に隣接して配置される。フラップ49、51は、それぞれのギア歯セット41、45の少なくとも1つの側を覆うことで、直線ギア29、105とのそれぞれの係合の構造的安定性および案内性を向上させる。
【0057】
窪み53が、第1の角度方向領域α1においてギアホイール7に形成され、インナーシェル3の外面17に形成される対応する突出部65を受け入れるように構成される。突出部65は、
図1および
図2Aでは視認不可能であるが、
図3Aおよび
図3Bで視認可能である。窪み53および対応する突出部65の機能は、
図3A~
図3Cおよびその説明に照らしてより明らかとなるであろう。
【0058】
ギアホイール7の質量および材料コストを低減するために、中央貫通孔39と第1の周面P1との間の一部の径方向領域は切り抜かれ、すなわち空洞化されている。本実施形態において、ギアホイール7は、第1の半円C1における3つの切抜き径方向領域55a、55b、55cを備える。この実施形態において、切抜き領域55a、55b、55cは、完全に空洞化され、すなわちギアホイール7の本体を横断する。変形例においては、切抜き領域55a、55b、55cの一部または全てが部分的にのみ空洞化されていてもよい。
【0059】
径方向領域55aおよび55bは、第1の角度方向領域α1に含まれる。径方向領域55cは、第1の角度方向領域α1と第2の角度方向領域α2との間におけるギアホイール7の角度方向領域α3に実質的に含まれる。領域55cは、窪み53から取り除かれた突出部65を受け入れるように構成され、突出部65との過度な摩擦を回避することにより、インナーシェル3に対するギアホイール7の回転を容易にする。
【0060】
任意選択的な特徴として、ギアホイール7は、ホイール7の径方向において所定の形状、例えば段差形状57aを有するホイールスポーク要素57を備えてよい。段差形状57aは、第2の直線ギア105と最初に係合する領域に配置される。所定の形状が、凹部35およびインナーシェル3に受け入れられる第2の直線ギア105の先端部105a(
図3A参照)の形状に適合される場合、ギアホイールの回転による結合の開始の追加のフールプルーフ機構を得ることができる。
【0061】
代替的なギアホイール7’を
図2Bに示す。ギアホイール7’は、本発明の別の実施形態に係るコネクタ、および/または本発明の別のさらなる実施形態に係るコネクタシステムに適したギアホイールである。例えば、ギアホイール7’は、ギアホイールの構成に関してのみコネクタ1と異なるコネクタのためのギアホイールであってよい。ギアホイール7’は、ギアホイールの構成に関してのみコネクタシステム200と異なるコネクタシステムのためのギアホイールであってもよい。ギアホイール7と比較して、ギアホイール7’は、より多くの材料を必要とするが、より高密度かつより機械的に堅牢でもある。したがって、これはより高い信頼性および耐久性を有する。
【0062】
ギアホイール7’は、切抜き径方向領域に関してのみギアホイール7と異なる。よって、ギアホイール7’はまた、中央貫通孔39、窪み53、フラップ49、51、および歯のセット41、45を備える。ただし、ギアホイールは、ギアホイール7と同じ切抜き径方向領域55a、55b、55cを備えない。具体的には、切抜き径方向領域55aおよび55bに代えて、ギアホイール7’は、ギアホイール7’の他の部分と一体構造の中実領域55a’を備える。切抜き径方向領域55cに代えて、ギアホイール7’は、切抜き領域55c’を備える。
【0063】
切抜き領域55c’は、切抜き径方向領域55cと比較して、ヒンジ軸Hに直交する平面における面積が低減し、特に大幅に低減している。具体的には、切抜き領域55c’は、ヒンジ軸Hに直交する平面において、窪み53から取り除かれた突出部65などの突出部を受け入れ、コネクタのインナーシェルに対するギアホイール7’の回転を容易にするのに必要な最小面積に相当する面積を有する。以下、コネクタシステム200の結合およびロックについて、
図3A、
図3Bおよび
図3Cを参照して説明する。
図3A~
図3Cの図は、
図1の斜視図であり、アウターシェル5が
図2Aに示すギアホイール7の中線Lに沿って部分的に切断されている点が相違する。
【0064】
図3Aは、コネクタ1と相手側コネクタ100との間の結合シークエンスの中間段階におけるコネクタシステム200を示す。インナーシェル3が相手側コネクタ100のハウジング要素101と嵌合し、
図1に示す位置に配された後、アウターシェル5が嵌合方向Mに移動され、好ましくは手動で押される。
【0065】
インナーシェル3に対するアウターシェル5の移動を容易にするために、インナーシェル3の外面17には、インナーシェル3の嵌合方向Mに沿った延在範囲D2の少なくとも半分にわたって、嵌合方向Mに沿って延びる直線状突起59が設けられる。直線状突起59は、アウターシェル5の内面15に形成される対応する直線カム61に配置される。よって、アウターシェル5がインナーシェル3に対して移動するとき、アウターシェル5は、インナーシェル3の外面17に沿って滑らかにかつ案内されて摺動することができる。
【0066】
アウターシェル5がインナーシェル3に対して嵌合方向Mにおいてカム61に沿って摺動すると、第1の直線ギア29も嵌合方向Mに移動し、ギア外歯の第1のセット41と係合する。アウターシェル5が嵌合方向Mに移動することに伴い、第1の直線ギア29がラックとして構成され、ギアホイール7がピニオンフォロアとして構成されたラックアンドピニオン構成において、ギアホイール7が時計回り方向Oにそのヒンジシャフト33の周りに回転する。ギアホイール7の時計回り回転Oにより、ギア外歯の第2のセット45が、ギアホイール7の他方側において第2の直線ギア105と係合する。よって、ギアホイール7が時計回り方向Oに回転することに伴い、歯の第2のセット45が、嵌合方向Mとは反対の方向の結合力を第2の直線ギア105に印加し、相手側コネクタ100をコネクタ1に向かって引っ張る。
第1のピッチ円半径R1が第2のピッチ円半径R2に対して大きい(
図2A参照)ことにより、アウターシェル5に印加される結合力の、相手側コネクタ100に対する有利な力の伝達が得られる。
【0067】
有利な力の伝達は、必要な結合力が電気端子の数に対して累積的である、複数の電気端子を要する電気コネクタアプリケーションにおいて特に重要である。ただし、有利な力の伝達は、コネクタが電気コネクタではなく、例えば代わりに油圧コネクタである代替的実施形態においても、重要な場合がある。油圧コネクタシステムの場合、結合システムは、コネクタシステムを水密化するように構成された封止構造体の封止力に打ち勝つ必要がある。
【0068】
図3A(ならびに
図3Bおよび
図3C)は、ギアホイール7の第1のセット41および第2のセット45の両方のギア歯、第1の直線ギア29および第2の直線ギア105とのそれぞれの係合、ならびにギアホイール7の切抜き領域55a、55b、55cを示す。加えて、
図3Aは、ギアホイール7に形成される窪み53の裏面63を示し、デフォルトの結合していない出荷状態において窪み53に受け入れられるように構成されたインナーシェル3の外面17に形成される突出部65を部分的に示す。突出部65は、
図3Bおよび
図3Cにおいてより明確に視認可能である。
【0069】
図3Aでは、窪み53にはめ込まれた突出部65の摩擦嵌めに起因する初期摩擦抵抗に、アウターシェル5の押し込みが打ち勝っている。ギアホイール7は、安定な出荷状態から既に取り除かれ、時計回りOに回転している。
【0070】
図3Bでは、コネクタ1の遠位縁部37が、相手側コネクタ100の当接部103に当接している。よって、インナーシェル3に対するアウターシェル5の移動、および、ラックとして働く第1の直線ギア29に対するピニオンとして働くギアホイール7の移動は、その範囲の終端に達している。アウターシェル5は結合位置にあり、全ての電気端子が意図したように接触しているため、コネクタシステム200は完全に結合した状態にある。
【0071】
ただし、嵌合方向Mとは反対の方向にアウターシェル5を単に引っ張ることにより、または過度な振動によっても、コネクタ1が相手側コネクタ100から結合解除される場合がある。よって、コネクタシステムは、
図3Bではロックされていない。CPA19は、アウターシェル5に対してロック解除位置にある。コネクタシステム200をロックするために、CPA19は、例えば作動グリップ25を手動で押すことにより、ロックノーズ(視認不可能)がロックノッチ27とまたはその後方にロックすることで形状嵌めを確立することができるまで、ロック解除位置から嵌合方向Mに沿ってポケット21内のより深くへと移動される。形状嵌めが確立されると、CPA19はロック位置となる。
図3Cは、CPA19がロック位置にある、結合しロックされた状態における
図1のコネクタを示す。
【0072】
本明細書に記載のコネクタ1、およびコネクタシステム200は、低減したサイズで向上したコネクタ結合の解決策を提供することにより、本発明を実現する。本開示の発明の結合の解決策のより高いコンパクト性は、スペース制約のあるまたは狭い環境に特に適している。
【符号の説明】
【0073】
1 コネクタ
3 インナーシェル
5 アウターシェル
7 ギアホイール
9 端子キャビティ
11 インナーシェルの縁部
13 アウターシェルの縁部
15 アウターシェルの内面
17 インナーシェルの外面
19 CPA
21 アウターシェルのポケット
23 CPAの第1の遠位端部
25 CPAの作動グリップ
27 インナーシェルに形成されるロックノッチ
29 第1の直線ギア
31 第1の直線ギアの歯
33 ヒンジシャフト
35 インナーシェルの凹部
37 コネクタの遠位縁部
39 中心貫通孔
41 ギア外歯の第1のセット
43 第1のセットのギア外歯
45 ギア外歯の第2のセット
47 第2のセットのギア外歯
49 第1のギア歯フラップ
51 第2のギア歯フラップ
53 窪み
55a、55b、55c 切抜き径方向領域
57 ホイールスポーク要素
57a 径方向の段差形状
59 直線状突起
61 直線カム
63 窪みの裏面
65 インナーシェルの突出部
100 相手側コネクタ
101 相手側コネクタのハウジング要素
103 相手側コネクタの当接部
105 第2の直線ギア
105a 第2の直線ギアの先端部
107 ハウジング要素の外面
109 第2の直線ギアの歯
200 コネクタシステム
A
図1で視認可能な領域
C1 第1の半円
C2 第2の半円
D1 アウターシェルの嵌合方向に沿った延在範囲
D2 インナーシェルの嵌合方向に沿った延在範囲
D3 結合状態までの距離
H ヒンジ軸
L 断面図の中線
M 嵌合方向
P1 ギアホイールの第1の周面
P2 ギアホイールの第2の周面
R1 第1のピッチ円半径
R2 第2のピッチ円半径
T 歯の円弧歯厚
W 歯の歯幅
X、Y、Z デカルト方向
α1 第1の角度方向領域
α2 第2の角度方向領域
α3 第1の角度方向領域と第2の角度方向領域との間の角度方向領域
β 歯のピッチ角
【手続補正書】
【提出日】2024-07-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵌合方向(M)において相手側コネクタ(100)と結合するように構成されているコネクタであって、前記コネクタ(1)は、インナーシェル(3)、アウターシェル(5)、およびギアホイール(7)を備え、
前記アウターシェル(5)は、前記インナーシェル(3)を少なくとも部分的に包囲し、前記インナーシェル(3)に対して前記嵌合方向(M)に移動するように構成され、前記アウターシェル(5)は、前記アウターシェル(5)の内面(15)に前記嵌合方向(M)に沿って配置されている第1の直線ギア(29)を備え、
前記ギアホイール(7)は、前記第1の直線ギア(29)とラックアンドピニオン構成で配置され、前記ギアホイール(7)は、前記嵌合方向(M)に直交するヒンジ軸(H)に対して回転可能に前記インナーシェル(3)にヒンジ接続されている、コネクタにおいて、
前記ギアホイール(7)が、前記ラックアンドピニオン構成において前記第1の直線ギア(29)と係合するように構成されているギア外歯(43)の第1のセット(41)と、前記相手側コネクタ(100)の第2の直線ギア(105)と係合するように構成されているギア外歯(47)の第2のセット(45)とを備え、前記ギア外歯(43)の前記第1のセット(41)および前記ギア外歯(47)の前記第2のセット(45)が、同じ平面(L)に配置されていることを特徴とする、
コネクタ。
【請求項2】
前記ギア外歯(43)の前記第1のセット(41)の第1のピッチ円半径(R1)は、前記ギア外歯(47)の前記第2のセット(45)の第2のピッチ円半径(R2)とは異なる、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第1のピッチ円半径(R1)は、前記第2のピッチ円半径(R2)よりも大きい、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第1のピッチ円半径(R1)は、前記第2のピッチ円半径(R2)よりも1.2~5倍大きい、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記第1のセット(41)の前記ギア外歯(43)および前記第2のセット(45)の前記ギア外歯(47)は、同じピッチ角(β)および/または円弧歯厚(T)および/または歯幅(W)を有する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記第1のセット(41)の前記ギア外歯(43)および前記第2のセット(45)の前記ギア外歯(47)は、同じ寸法を有する、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記ギアホイール(7)は、少なくとも1つの切抜き領域(55c)を備え、前記少なくとも1つの切抜き領域(55c)は、前記ギア外歯(43)の前記第1のセット(41)および前記ギア外歯(47)の前記第2のセット(45)の間における前記ギアホイール(7)の角度方向領域(α3)に含まれている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記少なくとも1つの切抜き領域(55c)は、完全に空洞化された領域である、請求項7に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記インナーシェル(3)は、前記相手側コネクタ(100)のハウジング要素(101)に嵌合するように構成され、前記インナーシェル(3)は、前記嵌合方向(M)に沿って延びる凹部(35)を備え、前記凹部(35)は、前記ギア外歯(47)の前記第2のセット(45)が前記第2の直線ギア(105)と係合することができるように、前記インナーシェル(3)が前記ハウジング要素(101)と嵌合したときに前記相手側コネクタ(100)の前記第2の直線ギア(105)を受け入れるように構成されている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記ギアホイール(7)は、前記第1のセット(41)に対応する前記ギアホイール(7)の角度方向領域(α1)における第1のフラップ(49)を少なくとも備える、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項11】
前記ギアホイール(7)は、前記第1のフラップ(49)に対して反対側の、前記第2のセット(45)に対応する前記ギアホイール(7)の角度方向領域(α2)における第2のフラップ(51)をさらに備える、請求項10に記載のコネクタ。
【請求項12】
前記アウターシェル(5)は、結合解除された第1の位置から、前記コネクタ(1)が前記相手側コネクタ(100)に結合する第2の位置へと、前記インナーシェル(3)に対して移動するように構成され、
前記インナーシェル(3)は、前記ギアホイール(7)がヒンジ接続されている前記インナーシェル(3)の外面(17)に形成されている突出部(65)を備え、
前記ギアホイール(7)は、前記突出部(65)と合致し、前記第1の位置において前記突出部(65)を受け入れるように構成されている窪み(33)を備える、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項13】
前記第2のピッチ円半径(R2)に対する前記第1のピッチ円半径(R1)の比は、前記第2のセット(45)における前記ギア外歯(47)の数に対する前記第1のセット(41)における前記ギア外歯(43)の数の比に対応する、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項14】
前記インナーシェル(3)および前記アウターシェル(5)のいずれか一方は、前記嵌合方向(M)に沿って延びる直線カム(61)を備え、前記インナーシェル(3)および前記アウターシェル(5)のいずれか他方は、前記直線カム(61)のための対応するカムフォロアとして構成されている突起(59)を備え、前記インナーシェル(3)に対する前記アウターシェル(5)の移動は、前記直線カム(61)に沿った前記突起(59)の摺動を含む、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の前記コネクタ(1)と、相手側コネクタ(100)とを備えるコネクタシステムであって、
前記相手側コネクタ(1)は、前記インナーシェル(3)に嵌合するように構成されているハウジング要素(101)を備え、
前記ハウジング要素(101)は、前記ハウジング要素(101)の外面(107)に形成されている第2の直線ギア(105)を備え、前記第2の直線ギア(105)は、前記コネクタ(1)および前記相手側コネクタ(100)が結合したときに前記第2のセット(45)と係合するように構成されている、
コネクタシステム。
【外国語明細書】