(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170309
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】イオン光学系用高電圧RF発生器
(51)【国際特許分類】
H01J 49/02 20060101AFI20241129BHJP
H01J 49/06 20060101ALI20241129BHJP
H01J 49/42 20060101ALN20241129BHJP
H01J 49/40 20060101ALN20241129BHJP
H01J 49/00 20060101ALN20241129BHJP
【FI】
H01J49/02 200
H01J49/06 300
H01J49/42 100
H01J49/40 600
H01J49/00 810
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024084005
(22)【出願日】2024-05-23
(31)【優先権主張番号】2307970.0
(32)【優先日】2023-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】508306565
【氏名又は名称】サーモ フィッシャー サイエンティフィック (ブレーメン) ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ホロメーエフ
(57)【要約】
【課題】質量分析計などの分析機器を改善する。
【解決手段】分析機器は、第1の周波数を有するRF電圧を発生させるように構成されたRF発生器と、一次巻線と二次巻線とを有する第1の変圧器と、第1のイオン光学デバイスと、一次巻線と二次巻線とを有する第2の変圧器と、入力と出力とを有する増幅器と、第2のイオン光学デバイスと、第1の入力と第2の入力とを有する位相差検出器ユニットと、を備える。分析機器は、二次LC回路の少なくとも一部が可変インダクタンスを有するように、かつ二次LC回路の少なくとも一部のインダクタンスが位相差検出器ユニットの出力されたDC電流又は電圧の大きさに応じて変動するように構成されており、これにより、第2の共振周波数が、位相差検出器ユニットの出力されたDC電流又は電圧の大きさに応じて変動する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析機器であって、
第1の周波数を有するRF電圧を発生させるように構成されたRF発生器(1)と、
一次巻線と二次巻線とを有する第1の変圧器(2)であって、前記RF発生器(1)が、前記第1の変圧器(2)の前記一次巻線に結合されている、第1の変圧器(2)と、
前記第1の変圧器(2)の前記二次巻線に結合されている第1のイオン光学デバイス(3)と、
一次巻線と二次巻線とを有する第2の変圧器(11)と、
入力と出力とを有する増幅器(7)であって、前記RF発生器(1)から又は前記第1の変圧器(2)からの第1の信号が、前記増幅器(7)の前記入力に提供され、前記増幅器(7)の前記出力が、前記第2の変圧器(11)の前記一次巻線に結合されている、増幅器(7)と、
前記第2の変圧器(11)の前記二次巻線に結合されている第2のイオン光学デバイス(13)と、
第1の入力と第2の入力とを有する位相差検出器ユニット(8、9)であって、前記位相差検出器ユニット(8、9)が、前記第1の入力及び前記第2の入力で受け取られた信号間の位相差に比例するDC電流又は電圧を出力するように構成されており、前記第1の信号が、前記位相差検出器ユニットの前記第1の入力に提供され、前記第2の変圧器(11)からの第2の信号が、前記位相差検出器ユニットの前記第2の入力に提供される、位相差検出器ユニット(8、9)と、を備え、
前記第1の変圧器(2)の前記二次巻線及び前記第1のイオン光学デバイス(3)が、第1の共振周波数を有する一次LC回路を形成しており、前記RF発生器(1)によって発生した前記RF電圧の前記第1の周波数が、前記第1の共振周波数に対応するように構成され、
前記第2の変圧器(11)の前記二次巻線及び前記第2のイオン光学デバイス(13)が、第2の共振周波数を有する二次LC回路を形成しており、前記分析機器は、前記二次LC回路の少なくとも一部が可変インダクタンスを有するように構成されており、前記分析機器は、前記第2の共振周波数が前記位相差検出器ユニット(8、9)の前記出力されたDC電流又は電圧の前記大きさに応じて変動するように、前記二次LC回路の前記少なくとも一部の前記インダクタンスが前記位相差検出器ユニット(8、9)の出力された前記DC電流又は電圧の大きさに応じて変動するように構成されている、分析機器。
【請求項2】
前記分析機器は、前記第1のイオン光学デバイス(3)が前記第1の周波数を有する第1の動作RF電圧を受け取るように構成されており、
前記分析機器は、前記第2のイオン光学デバイス(13)が前記第1の周波数を有する第2の動作RF電圧を受け取るように構成されており、
前記位相差検出器ユニット(8、9)の前記出力されたDC電流又は電圧の前記大きさに応じた前記第2の共振周波数の変動が、前記第1の動作RF電圧と前記第2の動作RF電圧との間の任意の位相差が低減又は除去されるように負のフィードバックループを生成する、請求項1に記載の分析機器。
【請求項3】
前記第1の変圧器(2)の前記二次巻線が、第1のインダクタンスを有し、
前記第1のイオン光学デバイス(3)が、第1の自己キャパシタンス(4)を有し、
前記第1のインダクタンス及び前記第1の自己キャパシタンスが一緒になって、前記第1の共振周波数を有する前記一次LC回路を形成する、請求項1又は2に記載の分析機器。
【請求項4】
前記第2の変圧器(11)の前記二次巻線が、可変インダクタンスを有し、前記機器は、前記第2の変圧器(11)の前記二次巻線の前記インダクタンスが前記位相差検出器ユニット(8、9)の前記出力されたDC電流又は電圧の前記大きさに応じて変動するように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の分析機器。
【請求項5】
前記第2の変圧器(11)が、1つ以上の変圧器(10)を備え、前記機器は、1つ以上の変圧器(10)を備える前記第2の変圧器(11)の前記二次巻線の前記インダクタンスが前記位相差検出器ユニット(8、9)の前記出力されたDC電流又は電圧の前記大きさに応じて変動するように構成されている、請求項4に記載の分析機器。
【請求項6】
前記第2のイオン光学デバイス(13)が、第2の自己キャパシタンス(14)を有し、
前記可変インダクタンス及び前記第2の自己キャパシタンスが一緒になって、前記第2の共振周波数を有する前記二次LC回路を形成する、請求項4又は5に記載の分析機器。
【請求項7】
可変インダクタンスを有するインダクタ(10)を更に備え、前記位相差検出器ユニット(8、9)の前記出力されたDC電流又は電圧が前記インダクタ(10)に提供され、前記インダクタは、そのインダクタンスが前記位相差検出器ユニット(8、9)の前記出力されたDC電流又は電圧の前記大きさに応じて変動するように構成されており、前記インダクタ(10)が、前記第2の変圧器(11)の前記二次巻線に結合されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の分析機器。
【請求項8】
前記第2の変圧器(11)の前記二次巻線が、第2のインダクタンスを有し、
前記第2のイオン光学デバイス(13)が、第2の自己キャパシタンス(14)を有し、
前記第2のインダクタンス、前記可変インダクタンス、及び前記第2の自己キャパシタンスが一緒になって、前記第2の共振周波数を有する前記二次LC回路を形成する、請求項7に記載の分析機器。
【請求項9】
前記インダクタが、一次巻線と二次巻線とを有するコンバータから形成されており、前記位相差検出器ユニット(8,9)の前記出力されたDC電流又は電圧が、前記コンバータの前記一次巻線に提供され、前記コンバータ(10)の前記二次巻線が、前記第2の変圧器の前記二次巻線に結合されている、請求項7又は8に記載の分析機器。
【請求項10】
前記コンバータ(10)の前記二次巻線が、前記第2の変圧器(11)の前記二次巻線と直列に接続されている、請求項9に記載の分析機器。
【請求項11】
前記コンバータ(10)の前記二次巻線が、前記第2の変圧器(11)の前記二次巻線と並列に接続されている、請求項9に記載の分析機器。
【請求項12】
前記第2の変圧器(11)又は前記インダクタ(10)が、磁気コアを備え、前記位相差検出器ユニット(8、9)の前記出力されたDC電流又は電圧が、前記磁気コアを磁化させるように構成され、これにより、前記第2の変圧器(11)の前記二次巻線の前記インダクタンス又は前記インダクタ(10)の前記インダクタンスが、前記位相差検出器ユニット(8、9)の前記出力されたDC電流の前記大きさに応じて変動する、請求項4~11のいずれか一項に記載の分析機器。
【請求項13】
前記分析機器は、前記第1のイオン光学デバイス(3)が前記第1の周波数を有する第1の動作RF電圧を受け取るように構成されており、
前記第1の信号が、前記RF発生器(1)に、前記第1の変圧器(2)の前記一次巻線に、又は前記第1の変圧器(2)の前記二次巻線に結合された第1のフィードバックモジュール(5)によって発生し、
前記第1の信号が、前記第1の動作RF電圧に対応する、請求項1~12のいずれか一項に記載の分析機器。
【請求項14】
前記第1の信号が、位相シフタ(6)を介して前記増幅器(7)の前記入力に提供される、請求項1~13のいずれか一項に記載の分析機器。
【請求項15】
前記分析機器は、前記第2のイオン光学デバイス(13)が前記第1の周波数を有する第2の動作RF電圧を受け取るように構成されており、
前記第2の信号が、前記第2の変圧器(11)の前記一次巻線に、又は前記第2の変圧器(11)の前記二次巻線に結合された第2のフィードバックモジュール(12)によって発生し、
前記第2の信号が、前記第2の動作RF電圧に対応する、請求項1~14のいずれか一項に記載の分析機器。
【請求項16】
前記位相差検出器ユニット(8、9)が、前記第1の入力及び前記第2の入力で受け取られた信号間の位相差に比例する電圧を出力するように構成された位相検出器(8)と、出力された前記電圧を前記出力されたDC電流に変換するように構成された電圧電流コンバータ(9)と、を備える、請求項1~15のいずれか一項に記載の分析機器。
【請求項17】
前記位相差検出器ユニット(8、9)は、前記出力されたDC電流の大きさの範囲が制御可能であるように構成されている、請求項1~16のいずれか一項に記載の分析機器。
【請求項18】
前記第2の変圧器(11)が、磁気コアを備えるか又は空芯である、請求項1~17のいずれか一項に記載の分析機器。
【請求項19】
前記第1のイオン光学デバイス(3)が、第1の多重極であり、かつ/又は前記第2のイオン光学デバイス(13)が、第2の多重極である、請求項1~18のいずれか一項に記載の分析機器。
【請求項20】
前記第1のイオン光学デバイス(3)が、第1の四重極イオントラップであり、かつ/又は前記第2のイオン光学デバイス(13)が、第2の四重極イオントラップである、請求項1~19のいずれか一項に記載の分析機器。
【請求項21】
前記分析機器が、質量分析計であるか、又は質量分析計を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の分析機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析計などの分析機器に関し、特に、多重極イオン光学デバイスなどのイオン光学デバイスを備える分析機器に関する。
【背景技術】
【0002】
分析機器のイオン光学系のために、機械的及び電気的に分離されるが、それらの間に固定(好ましくは、0)位相を伴う同じRF周波数で動作する、多重極等のいくつかのRF電力イオン光学デバイスを有することが、時として必要である。この場合、異なるイオン光学デバイスに印加されるRF電圧の振幅は異なってもよく、独立して設定されてもよい。
【0003】
RF発生器への供給による電力消費を低減するために、このような構成は一般に、発生器内のRF変圧器のインダクタンスとこの発生器から送られるイオン光学デバイスの寄生キャパシタンスを利用するLC共振原理に基づいて設計される。
【0004】
2つの異なるイオン光学デバイスに対して、自己共振周波数は著しく異なる可能性があり、これは、発生器のうちの1つにおける共振タンクのパラメータを調整することなく、それらの間の同じ周波数及び所与の位相でそれらに電力を供給することができないことを意味する。
【0005】
この問題に対する既存の技術的解決策は、小さいRF電圧振幅に対して開発されてきたが、イオン光学系に必要な電圧は数キロボルトであり得、共振回路を調整するための実際に知られている唯一の方法は、空気誘電体を有する可変HVキャパシタを使用することである。
【0006】
しかしながら、この解決策にはいくつかの欠点がある:(i)高電圧キャパシタは、かなりの質量及びサイズを有すること、(ii)マスタ発生器との共振に同調した後であっても、2つの発生器間の位相は制御不能に変化すること、(iii)位相同期ループ(Phase Locked Loop、PLL)回路を使用して自動周波数制御を実装するためには、ステップモータ等の大型の電気機械デバイスが必要となること、などである。
【0007】
質量分析計などの分析機器には改善の余地がまだあると考えられている。
【発明の概要】
【0008】
第1の態様は、請求項1による分析機器を提供する。
【0009】
分析機器は、
第1の周波数を有するRF電圧を発生させるように構成されたRF発生器と、
一次巻線と二次巻線とを有する第1の変圧器であって、RF発生器が、第1の変圧器の一次巻線に結合される、第1の変圧器と、
第1のイオン光学デバイスであって、第1の変圧器の二次巻線に結合されている、第1のイオン光学デバイスと、
一次巻線と二次巻線とを有する第2の変圧器と、
入力と出力とを有する増幅器であって、RF発生器から又は第1の変圧器からの第1の信号が増幅器(7)の入力に提供され、増幅器の出力が、第2の変圧器の一次巻線に結合されている、増幅器と、
第2のイオン光学デバイスであって、第2の変圧器の二次巻線に結合されている、第2のイオン光学デバイスと、
第1の入力と第2の入力とを有する位相差検出器ユニットであって、位相差検出器ユニットが、第1の入力及び第2の入力で受け取られた信号間の位相差に比例するDC電流又は電圧を出力するように構成され、第1の信号が、位相差検出器の第1の入力に提供され、第2の変圧器からの第2の信号が、位相差検出器ユニットの第2の入力に提供される、位相差検出器ユニットと、を備え、
第1の変圧器の二次巻線及び第1のイオン光学デバイスが、第1の共振周波数を有する一次LC回路を形成し、RF発生器によって発生するRF電圧の第1の周波数が、第1の共振周波数に対応するように構成されており、
第2の変圧器の二次巻線及び第2のイオン光学デバイスは、第2共振周波数を有する二次LC回路を形成しており、分析機器は、二次LC回路の少なくとも一部が可変インダクタンスを有するように構成されており、分析機器は、二次LC回路の少なくとも一部のインダクタンスが位相差検出器ユニットの出力されたDC電流又は電圧の大きさに応じて変動するように構成されており、これにより、第2の共振周波数が、位相差検出器ユニットの出力されたDC電流又は電圧の大きさに応じて変動する。
【0010】
したがって、実施形態は、好ましくはコイルのインダクタンスを制御することによって、二次LC回路におけるインダクタンスの純粋な電気的制御を提供する。
【0011】
分析機器は、第1のイオン光学デバイスが第1の周波数を有する第1の動作RF電圧を受け取り、第2のイオン光学デバイスが第1の周波数を有する第2の動作RF電圧を受け取るように構成され得る。分析機器は、位相差検出器ユニットの出力されたDC電流又は電圧の大きさに応じて第2の共振周波数の変動が負のフィードバックループを生成するように構成され得、これにより、第1の動作RF電圧と第2の動作RF電圧との間の任意の位相差が低減又は除去される。
【0012】
第1の変圧器の二次巻線は、第1のインダクタンスを有し得、第1のイオン光学デバイスは、第1の自己キャパシタンスを有し得、第1のインダクタンス及び第1の自己キャパシタンスは一緒になって、第1の共振周波数を有する一次LC回路を形成し得る。
【0013】
第2の変圧器の二次巻線は、可変インダクタンスを有し得、機器は、第2の変圧器の二次巻線のインダクタンスが位相差検出器ユニットの出力されたDC電流又は電圧の大きさに応じて変動するように構成され得る。
【0014】
第2の変圧器は、1つ以上の変圧器を備え得、機器は、1つ以上の変圧器を備える第2の変圧器の二次巻線のインダクタンスは位相差検出器ユニットの出力されたDC電流又は電圧の大きさに応じて変動するように構成され得る。
【0015】
第2のイオン光学デバイスは、第2の自己キャパシタンスを有し得、可変インダクタンス及び第2の自己キャパシタンスは一緒になって、第2の共振周波数を有する二次LC回路を形成し得る。
【0016】
分析機器は、可変インダクタンスを有するインダクタを更に備え得、位相差検出器ユニットの出力されたDC電流又は電圧がインダクタに提供され、インダクタは、そのインダクタンスが位相差検出器ユニットの出力されたDC電流又は電圧の大きさに応じて変動するように構成され、インダクタは、第2の変圧器の二次巻線に結合されている。したがって、第2の変圧器の二次巻線は、第2のインダクタンスを有し得、第2のイオン光学デバイスは、第2の自己キャパシタンスを有し得、第2のインダクタンス、可変インダクタンス及び第2の自己キャパシタンスは一緒になって、第2の共振周波数を有する二次LC回路を形成し得る。
【0017】
インダクタは、一次巻線と二次巻線とを有するコンバータから形成され得、位相差検出器ユニットの出力されたDC電流又は電圧は、コンバータの一次巻線に提供され、コンバータの二次巻線は、第2の変圧器の二次巻線に結合されている。
【0018】
コンバータの二次巻線は、第2の変圧器の二次巻線と直列に接続され得、又はコンバータの二次巻線は、第2の変圧器の二次巻線と並列に接続され得る。
【0019】
第2の変圧器(例えば、その1つ以上の変圧器のうちの1つ以上)又はインダクタ(すなわち、コンバータ)は、磁気コアを備え得、位相差検出器ユニットの出力されたDC電流又は電圧は、(例えば、コンバータの一次巻線に、出力されたDC電流を提供することによって)磁気コアを磁化させるように構成され得、これにより、第2の変圧器の二次巻線のインダクタンス又はインダクタのインダクタンスが、位相差検出器ユニットの出力されたDC電流の大きさに応じて変動する。
【0020】
分析機器は、第1のイオン光学デバイスが第1の周波数を有する第1の動作RF電圧を受け取るように構成され得、第1の信号は、第1の動作RF電圧に対応する。第1の信号は、RF発生器、第1の変圧器の一次巻線、又は第1の変圧器の二次巻線に結合された第1のフィードバックモジュールによって発生し得る。
【0021】
第1の信号は、位相シフタを介して増幅器の入力に提供され得る。
【0022】
分析機器は、第2のイオン光学デバイスが第1の周波数を有する第2の動作RF電圧を受け取るように構成され得、第2の信号は第2の動作RF電圧に対応する。第2の信号は、第2の変圧器の一次巻線又は第2の変圧器の二次巻線に結合された第2のフィードバックモジュールによって発生し得る。
【0023】
位相差検出器ユニットは、第1及び第2の入力において受け取られた信号間の位相差に比例する電圧を出力するように構成された位相検出器と、出力された電圧を出力されたDC電流に変換するように構成された電圧電流コンバータとを備え得る。
【0024】
位相差検出器ユニットは、出力されたDC電流の大きさの範囲が制御可能であるように構成され得る。
【0025】
第2の変圧器は、磁気コアを備え得、又は空芯であり得る。
【0026】
第1のイオン光学デバイスは、第1の多重極であり得、及び/又は第2のイオン光学デバイスは、第2の多重極であり得る。第1のイオン光学デバイスは、第1の四重極イオントラップであり得、及び/又は第2のイオン光学デバイスは、第2の四重極イオントラップであり得る。
【0027】
第1のイオン光学デバイスは、第1の動作RF電圧が第1のイオン光学デバイスのトラップ領域にイオンを閉じ込める第1のRF場を発生させるように構成され得る。第2のイオン光学デバイスは、第2の動作RF電圧が第2のイオン光学デバイスのトラップ領域にイオンを閉じ込める第2のRF場を発生させるように構成され得る。機器は、第1の動作RF電圧及び第2の動作RF電圧が実質的に同じ周波数及び整合された位相を有するように構成され得る。
【0028】
第1のイオン光学デバイスは、比較的低いガス圧領域に配置され得、第2のイオン光学デバイスは、比較的高いガス圧領域に配列され得る。機器は、比較的高いガス圧領域から比較的低いガス圧領域へのガスの流れを制限するように構成されたガスコンダクタンス制限部を備え得、ガスコンダクタンス制限部は、イオンが第2のイオン光学デバイスから第1のイオン光学デバイスへ(及び/又はその逆に)通過できるようにする開口を有する。
【0029】
機器は、(i)イオンが、第2のイオン光学デバイス内で蓄積及び/又は処理(例えば、冷却及び/又は断片化)され得るように、(ii)蓄積及び/又は処理されたイオンが、第2のイオン光学デバイスから第1のイオン光学デバイスに通過し得るように、及び(iii)イオンが、第1のイオン光学デバイスから放出され得るように、構成され得る。第1のイオン光学デバイス及び/又は第2のイオン光学デバイスは、質量分析器の一部を形成し得、機器は、イオンが、質量分析のために、第1のイオン光学デバイスから質量分析器の中へ放出され得るように構成され得る。質量分析器は、多重反射飛行時間型(multi-reflection time-of-flight、MR-ToF)質量分析器などの飛行時間型(time-of-flight、ToF)質量分析器であり得、機器は、イオンが第1のイオン光学デバイスから飛行時間型(ToF)質量分析器の飛行経路内に放出され得るように構成され得る。
【0030】
分析機器は、質量分析計であってもよく、又は質量分析計を備えていてもよい。
【0031】
次に、添付の図面を参照して、様々な実施形態をより詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】実施形態による分析機器の詳細を概略的に示す。
【
図3】実施形態による分析機器のイオン光学系用の同期された高電圧共振RF発生器の詳細を概略的に示す。
【
図4】実施形態による分析機器のイオン光学系用の同期された高電圧共振RF発生器の詳細を概略的に示す。
【
図5】実施形態による分析機器のイオン光学系用の同期された高電圧共振RF発生器の詳細を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、実施形態により構成され、動作され得る、質量分析計などの分析機器を概略的に例示している。
図1に示すように、分析機器は、イオン源15、1つ以上のイオン移送ステージ20、及び分析器30を含む。
【0034】
イオン源15は、サンプルからイオンを発生させるように構成されている。イオン源15は、エレクトロスプレーイオン化(Electrospray Ionisation、ESI)イオン源、MALDIイオン源、大気圧イオン化(Atmospheric Pressure Ionisation、API)イオン源、プラズマイオン源、電子イオン化イオン源、化学イオン化イオン源など、任意の好適な連続又はパルスイオン源とすることができる。いくつかの実施形態では、2つ以上のイオン源が提供され、使用され得る。イオンは、分析される任意の好適なタイプのイオン、例えば、小型及び大型の有機分子、生体分子、DNA、RNA、タンパク質、ペプチド、それらの断片などであってもよい。
【0035】
イオン源15は、液体クロマトグラフィ分離デバイス、ガスクロマトグラフィ分離デバイス又はキャピラリ電気泳動分離デバイス(図示せず)などの分離デバイスに任意選択的に結合され得、それにより、イオン源15においてイオン化されるサンプルは、分離デバイスからもたらされる。
【0036】
イオン移送ステージ20は、イオン源15の下流に配置され、大気圧インターフェース、並びにイオン源15によって発生したイオンの一部又は全部をイオン源15から分析器30に移送することができるように構成された1つ以上のイオンガイド、レンズ、トラップ及び/又は他のイオン光学デバイスを含み得る。イオン移送ステージ20は、任意の好適な数及び構成のイオン光学デバイスを含み得、例えば、任意選択的に、1つ以上のRF及び/又は多重極イオンガイド、イオンを冷却するための1つ以上のイオンガイド、1つ以上の質量選択イオンガイドなどのうちの任意の1つ以上を含む。
【0037】
質量分析器30は、イオン移送ステージ20の下流に配置され、イオン移送ステージ20からイオンを受け取るように構成されている。質量分析器は、イオンを分析してそれらの質量電荷比(m/z)を決定するように構成される。分析器30は、飛行時間型(ToF)質量分析器、イオントラップ質量分析器、四重極質量分析器などの任意の好適な質量分析器とすることができる。
【0038】
図1は単なる概略的なものであり、分析機器は任意の数の1つ以上の追加の構成要素を含むことができ、実施形態ではもちろん含むことに留意されたい。例えば、いくつかの実施形態では、分析機器は、イオンを断片化又は反応させるための衝突セル又は反応セルを含み、質量分析器30によって分析されるイオンは、イオン源15によって発生した親イオンを断片化又は反応させることによって生成されたフラグメントイオン又は生成物イオンであり得る。
【0039】
図1にも示すように、機器は、イオン移送ステージ20及び分析器30を含む機器の様々な構成要素の動作を制御する、適切にプログラムされたコンピュータなどの制御ユニット50の制御下にある。制御ユニット50はまた、分析器30を含む様々な構成要素からデータを受け取り、処理し得る。
【0040】
図2は、実施形態により構成され及び動作され得るMR-ToF質量分析器を含む1つの例示的な質量分析計の詳細を概略的に例示している。
図2に示す機器は非限定的な例であり、多数の変形が可能であることが理解される。
【0041】
図2に示す実施形態では、機器のイオン源15は、エレクトロスプレーイオン化(electrospray ionisation、ESI)イオン源である。この機器は、移送管21、イオン漏斗22、四重極前置フィルタイオンガイド23、及び「ベントフラットポール」イオンガイド24を含む真空インターフェースを含む。ベントフラットポールイオンガイド24は、米国特許第9,536,722号に記載されている設計のものであり得る。
【0042】
機器はまた、四重極質量フィルタ26の形態の質量フィルタと、湾曲線形イオントラップ(「Cトラップ」)の形態のイオントラップ28と、イオン経路指定多重極(「ion routing multipole、IRM」)衝突セルの形態の衝突セル29とを含む。イオン源15からのイオンは、Cトラップ28と質量フィルタ26との間に配置される電荷検出器アセンブリ27内に位置するゲート電極を開閉することによって、Cトラップ28及び/又は衝突セル29内に蓄積することができる。
【0043】
機器はまた、軌道イオントラップ質量分析器の形態の第1の質量分析器60を含む。イオントラップ28及び/又は衝突セル29内に蓄積されると、イオンを、質量分析器60内に放出することができる。これを行うために、イオンは、例えば、1つ以上の好適なDC電圧をイオントラップ28に印加することによって、トラップの軸に直交する方向にトラップ28から放出され得る(直交放出)。
【0044】
衝突セル又は反応せる29は、イオントラップ28の下流に配置される。イオントラップ28に収集されたイオンは、衝突セル又は反応セル29に入ることなく、質量分析器60に直交して放出され得るか、又はイオンは、処理のために軸方向に沿って衝突セル又は反応セル29に伝送され得、その後、質量分析器60への次の直交放出のために、処理されたイオンをイオントラップ28に戻すことができる。この処理は、例えば、衝突セル29内の衝突ガス及び/又は試薬との衝突によってイオンを断片化すること、又はイオンを断片化させるより低いエネルギーでのガスとの衝突によってイオンを更に冷却することを含み得る。
【0045】
機器はまた、機器の後部に追加された多重反射飛行時間(ToF)質量分析器の形態の第2の質量分析器30を含む。このハイブリッド化された機器は、米国特許第10,699,888号により詳細に記載されている。
【0046】
図2に示されるように、機器は、イオンが衝突セル29から飛行時間型質量分析器30に移送されることを可能にする多重極イオンガイド61を含む。イオンは、衝突セル29から多重極イオンガイド61を介して質量分析器30の抽出トラップ31に送出される。イオンは、抽出トラップ31に蓄積されて冷却される。
【0047】
抽出トラップ31は、2つのトラップ領域を組み込むことができ、1つは急速イオン冷却のための比較的高い圧力であり、イオン抽出のための第2の低圧領域である。イオンは高圧領域で冷却され、次いで低圧領域に移送され、そこで一対の偏向器36,38を介してToF分析器にパルス放出される。イオンは、一対のミラー34,35の間で振動し、これらは、イオン経路がゆっくりと偏向され、検出器33に再配向されるように互いに対して傾斜している。補正ストライプ電極40は、別様でミラーの非平行性によって引き起こされるイオン集束の損失に対抗する。
【0048】
図2に描写する質量分析計は特に好適であるが、多くの代替的な質量分析計構成が可能であることが理解されるであろう。例えば、
図2に描写される質量分析計は、2つの質量分析器30、60を有するが、質量分析計は、単一の質量分析器のみを有してもよい(又は2つより多くの質量分析器を有してもよい)。
図2に描写される機器において、ToF分析器30は、米国特許第9,136,101号に記載される傾斜ミラータイプであるが、任意のタイプのToF分析器が使用され得ることが理解される。例えば、分析器は、例えば英国特許第2,580,089号に記載されているような単一レンズタイプの多重反射飛行時間型質量分析器、線形ToF質量分析器、直交加速ToF質量分析器、リフレクトロンToF質量分析器、閉ループ多重反射質量分析器、別のタイプの多重反射飛行時間型(MR-ToF)分析器などであり得る。
【0049】
質量分析計のイオン光学系のために、機械的及び電気的に分離されるが、それらの間に固定(好ましくは、0)位相を伴う同一RF周波数で動作する、多重極等のいくつかのRF電力イオン光学デバイスを有することが、時として必要である。この場合、異なるイオン光学デバイスに印加されるRF電圧の振幅は異なってもよく、独立して設定されてもよい。
【0050】
例えば、一実施形態では、
図2に描写される機器の抽出トラップ31は、第1の多重極イオン光学デバイス及び第2の多重極イオン光学デバイスを有する英国特許同時係属出願第2613439号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載される設計のものであってもよく、第1及び第2の多重極イオン光学デバイスを、それらの間の固定(好ましくはゼロ)位相を有する同じRF周波数で動作させることが望ましい場合がある。2つ以上のイオン光学デバイスを有し、それらの間に固定された(好ましくは0の)位相を有する同じRF周波数でイオン光学デバイスを動作させることが望ましい分析機器の多数の他の可能な実施形態があることが理解されるであろう。
【0051】
固定された(好ましくは0の)位相差を有する同じRF周波数を2つ以上のイオン光学デバイスに印加することを可能にする既存の解決策は、上述の理由で不十分であることが認識されている。
【0052】
図3は、実施形態による分析機器のイオン光学系用の同期された高電圧共振RF発生器を示す。
【0053】
図3に示されるように、イオン光学システムは、少なくとも2つのイオン光学デバイス、すなわち、第1のイオン光学デバイス3及び第2のイオン光学デバイス13を備え、その両方は、RF電圧で電力供給される。
図3に描写される実施形態では、イオン光学デバイス3、13は、両方とも、四重極であるが、概して、イオン光学デバイス3、13は、任意の好適なタイプ又は複数のタイプのイオン光学デバイスであり得る。2つより多くのイオン光学デバイスがあり得る。
図3において、キャパシタ4及び14は、四重極3、13の自己キャパシタンスを表すものとして示されている。
【0054】
図3に示されるように、マスタRF発生器1は、第1の変圧器2の出力インダクタンス及びキャパシタンス4によって形成される共振タンク回路(LC回路としても知られる)と共振するように同調される。第1の変圧器2の二次巻線から、第1のイオン光学デバイス3の動作周波数に対応する信号がフィードバックモジュール5によって発生し、この信号は位相シフタ6及び位相検出器8の基準入力に送られる。代わりに、フィードバックモジュール5が、マスタRF発生器1から、又は第1の変圧器2の一次巻線からその信号を発生させることも可能である。
【0055】
位相シフタ6は、2つの四重極3及び13に印加されるRF電圧間の位相差の粗い補償のために使用される。
図3では、位相シフタ6は、位相検出器8の基準入力に適用されるフィードバックモジュール5からの信号に影響を与えないように示されているが、代わりに、位相シフタ6(又は第2の位相シフタ)を使用して、位相検出器8の基準入力に送られる信号に粗い位相補償を適用することも可能である。
【0056】
位相シフタ6の後の制御信号は、増幅器7によって増幅され、第2の変圧器11の一次巻線に送られる。第2の変圧器11の出力電圧は、第2の駆動四重極13に供給される。
【0057】
第2の変圧器11の二次巻線に直列に、電流制御変圧器10の二次巻線が接続されている。これらの巻線のインダクタンスとキャパシタンス14との和は、この第2の共振タンク回路(二次LC回路)の共振周波数を決定する。
【0058】
デバイス10は、通常の一次巻線を有さない調整可能なインダクタである。このインダクタは、制御巻線によってのみ接続された2つの同一部分を含む。これらの巻線は逆直列に接続されているので、巻線全体の入力(コンバータ9の出力)において、RF電圧が減算され、その結果得られる値は0となる。したがって、デバイス10は入力電圧を変圧しない。
【0059】
第2の変圧器11の二次巻線から、フィードバックモジュール12は、第2のイオン光学デバイス13に供給される電圧の動作周波数に対応する信号を発生し、これは位相検出器8のフィードバック入力に送られる。代わりに、フィードバックモジュール12が第2の変圧器11の一次巻線からその信号を発生することも可能である。
【0060】
位相検出器8の出力から四重極に印加されるRF電圧間の位相差に比例する電圧は、電流制御変圧器10のコアを磁化する制御バイアス電流に変換され、それによって、そのインダクタンスの変化をもたらす。
【0061】
これは、次に二次LC回路の共振周波数の変化につながる。周波数及び位相制御ループにおける負のフィードバックのため、これは、RF電圧間の位相差を好ましくは0に低減する効果を有する。
【0062】
任意のコンバータ9にバイアス電圧を印加することによって、この位相シフトは、必要であれば、ある範囲で変更することができる。
【0063】
したがって、実施形態では、スレーブ発生器(又は複数の発生器)内のRF変圧器の出力インダクタンスの電気的制御は、その磁性材料コアを直流で磁化することによって提供され、それは、この発生器(又は複数の発生器)がマスタ発生器と同期されることを可能にすることが理解されるであろう。
【0064】
図3に描写された構成に対する様々な代替が可能である。例えば、
図3は、マスタ発生器回路(一次LC回路)及び単一のスレーブ発生器回路(二次LC回路)を描写するが、各々がそれぞれのイオン光学デバイスを駆動する、複数のスレーブ発生器回路を有することが可能である。
【0065】
図3は、電気的に調整可能な出力インダクタンスを有するRF変圧器の1つの可能な構成を示すが、様々な他の実施形態が可能である。
【0066】
例えば、
図3では、コンバータ10及び第2の変圧器11の二次巻線は直列に接続されているが、インダクタ10の二次巻線を第2の変圧器11の二次巻線の一部と並列に接続することも可能であり、これにより、これらのデバイス10、11の総インダクタンスの制御も可能になる。
【0067】
図4は、1つのそのような実施形態を示し、可変インダクタンスは、第2のRF変圧器11の二次巻線の一部への可変インダクタ10の並列接続によって提供される。
【0068】
第2のLC回路が、増幅器7への接続のための追加の一次巻線とともに直列に接続された、より大きいが偶数のコイルから構築された変圧器10のみを備えることも可能である。
図5は、制御された高電圧RFインダクタが、磁心、一次巻線及び二次巻線、並びに制御巻線を含む可変インダクタンスを有するいくつかの同一の要素から構築される、1つのそのような実施形態を示す。しかしながら、
図3及び
図5を比較すると、
図3に描写される変圧器11は、
図5に対してコイルの数を低減し、RF発生器からの駆動を単純化することが理解されるであろう。
【0069】
したがって、概して、実施形態は、好ましくはコイルのインダクタンスを制御することによって、第2の高電圧共振タンク回路(二次LC回路)におけるインダクタンスの純粋な電気的制御を提供することが理解されるであろう。
【0070】
図3に描写される構成は、
図2に描写される質量分析計の開発において実装され、完全に検証されている。四重極におけるRF電圧間の位相差は、振幅及び周囲温度の適用可能な範囲全体において1度を超えなかった。発生器の動作周波数は約4MHzであり、出力電圧は最大1800Vppであった。
【0071】
様々な実施形態を参照して本発明を記載してきたが、添付の特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができることが理解されるであろう。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析機器であって、
第1の周波数を有するRF電圧を発生させるように構成されたRF発生器(1)と、
一次巻線と二次巻線とを有する第1の変圧器(2)であって、前記RF発生器(1)が、前記第1の変圧器(2)の前記一次巻線に結合されている、第1の変圧器(2)と、
前記第1の変圧器(2)の前記二次巻線に結合されている第1のイオン光学デバイス(3)と、
一次巻線と二次巻線とを有する第2の変圧器(11)と、
入力と出力とを有する増幅器(7)であって、前記RF発生器(1)から又は前記第1の変圧器(2)からの第1の信号が、前記増幅器(7)の前記入力に提供され、前記増幅器(7)の前記出力が、前記第2の変圧器(11)の前記一次巻線に結合されている、増幅器(7)と、
前記第2の変圧器(11)の前記二次巻線に結合されている第2のイオン光学デバイス(13)と、
第1の入力と第2の入力とを有する位相差検出器ユニット(8、9)であって、前記位相差検出器ユニット(8、9)が、前記第1の入力及び前記第2の入力で受け取られた信号間の位相差に比例するDC電流又は電圧を出力するように構成されており、前記第1の信号が、前記位相差検出器ユニットの前記第1の入力に提供され、前記第2の変圧器(11)からの第2の信号が、前記位相差検出器ユニットの前記第2の入力に提供される、位相差検出器ユニット(8、9)と、を備え、
前記第1の変圧器(2)の前記二次巻線及び前記第1のイオン光学デバイス(3)が、第1の共振周波数を有する一次LC回路を形成しており、前記RF発生器(1)によって発生した前記RF電圧の前記第1の周波数が、前記第1の共振周波数に対応するように構成され、
前記第2の変圧器(11)の前記二次巻線及び前記第2のイオン光学デバイス(13)が、第2の共振周波数を有する二次LC回路を形成しており、前記分析機器は、前記二次LC回路の少なくとも一部が可変インダクタンスを有するように構成されており、前記分析機器は、前記第2の共振周波数が前記位相差検出器ユニット(8、9)の前記出力されたDC電流又は電圧の前記大きさに応じて変動するように、前記二次LC回路の前記少なくとも一部の前記インダクタンスが前記位相差検出器ユニット(8、9)の出力された前記DC電流又は電圧の大きさに応じて変動するように構成されている、分析機器。
【請求項2】
前記分析機器は、前記第1のイオン光学デバイス(3)が前記第1の周波数を有する第1の動作RF電圧を受け取るように構成されており、
前記分析機器は、前記第2のイオン光学デバイス(13)が前記第1の周波数を有する第2の動作RF電圧を受け取るように構成されており、
前記位相差検出器ユニット(8、9)の前記出力されたDC電流又は電圧の前記大きさに応じた前記第2の共振周波数の変動が、前記第1の動作RF電圧と前記第2の動作RF電圧との間の任意の位相差が低減又は除去されるように負のフィードバックループを生成する、請求項1に記載の分析機器。
【請求項3】
前記第1の変圧器(2)の前記二次巻線が、第1のインダクタンスを有し、
前記第1のイオン光学デバイス(3)が、第1の自己キャパシタンス(4)を有し、
前記第1のインダクタンス及び前記第1の自己キャパシタンスが一緒になって、前記第1の共振周波数を有する前記一次LC回路を形成する、請求項1又は2に記載の分析機器。
【請求項4】
前記第2の変圧器(11)の前記二次巻線が、可変インダクタンスを有し、前記機器は、前記第2の変圧器(11)の前記二次巻線の前記インダクタンスが前記位相差検出器ユニット(8、9)の前記出力されたDC電流又は電圧の前記大きさに応じて変動するように構成されている、請求項1又は2に記載の分析機器。
【請求項5】
前記第2の変圧器(11)が、1つ以上の変圧器(10)を備え、前記機器は、1つ以上の変圧器(10)を備える前記第2の変圧器(11)の前記二次巻線の前記インダクタンスが前記位相差検出器ユニット(8、9)の前記出力されたDC電流又は電圧の前記大きさに応じて変動するように構成されている、請求項4に記載の分析機器。
【請求項6】
前記第2のイオン光学デバイス(13)が、第2の自己キャパシタンス(14)を有し、
前記可変インダクタンス及び前記第2の自己キャパシタンスが一緒になって、前記第2の共振周波数を有する前記二次LC回路を形成する、請求項4に記載の分析機器。
【請求項7】
可変インダクタンスを有するインダクタ(10)を更に備え、前記位相差検出器ユニット(8、9)の前記出力されたDC電流又は電圧が前記インダクタ(10)に提供され、前記インダクタは、そのインダクタンスが前記位相差検出器ユニット(8、9)の前記出力されたDC電流又は電圧の前記大きさに応じて変動するように構成されており、前記インダクタ(10)が、前記第2の変圧器(11)の前記二次巻線に結合されている、請求項1又は2に記載の分析機器。
【請求項8】
前記第2の変圧器(11)の前記二次巻線が、第2のインダクタンスを有し、
前記第2のイオン光学デバイス(13)が、第2の自己キャパシタンス(14)を有し、
前記第2のインダクタンス、前記可変インダクタンス、及び前記第2の自己キャパシタンスが一緒になって、前記第2の共振周波数を有する前記二次LC回路を形成する、請求項7に記載の分析機器。
【請求項9】
前記インダクタが、一次巻線と二次巻線とを有するコンバータから形成されており、前記位相差検出器ユニット(8,9)の前記出力されたDC電流又は電圧が、前記コンバータの前記一次巻線に提供され、前記コンバータ(10)の前記二次巻線が、前記第2の変圧器の前記二次巻線に結合されている、請求項7に記載の分析機器。
【請求項10】
前記コンバータ(10)の前記二次巻線が、前記第2の変圧器(11)の前記二次巻線と直列に接続されている、請求項9に記載の分析機器。
【請求項11】
前記コンバータ(10)の前記二次巻線が、前記第2の変圧器(11)の前記二次巻線と並列に接続されている、請求項9に記載の分析機器。
【請求項12】
前記第2の変圧器(11)又は前記インダクタ(10)が、磁気コアを備え、前記位相差検出器ユニット(8、9)の前記出力されたDC電流又は電圧が、前記磁気コアを磁化させるように構成され、これにより、前記第2の変圧器(11)の前記二次巻線の前記インダクタンス又は前記インダクタ(10)の前記インダクタンスが、前記位相差検出器ユニット(8、9)の前記出力されたDC電流の前記大きさに応じて変動する、請求項4に記載の分析機器。
【請求項13】
前記分析機器は、前記第1のイオン光学デバイス(3)が前記第1の周波数を有する第1の動作RF電圧を受け取るように構成されており、
前記第1の信号が、前記RF発生器(1)に、前記第1の変圧器(2)の前記一次巻線に、又は前記第1の変圧器(2)の前記二次巻線に結合された第1のフィードバックモジュール(5)によって発生し、
前記第1の信号が、前記第1の動作RF電圧に対応する、請求項1又は2に記載の分析機器。
【請求項14】
前記第1の信号が、位相シフタ(6)を介して前記増幅器(7)の前記入力に提供される、請求項1又は2に記載の分析機器。
【請求項15】
前記分析機器は、前記第2のイオン光学デバイス(13)が前記第1の周波数を有する第2の動作RF電圧を受け取るように構成されており、
前記第2の信号が、前記第2の変圧器(11)の前記一次巻線に、又は前記第2の変圧器(11)の前記二次巻線に結合された第2のフィードバックモジュール(12)によって発生し、
前記第2の信号が、前記第2の動作RF電圧に対応する、請求項1又は2に記載の分析機器。
【請求項16】
前記位相差検出器ユニット(8、9)が、前記第1の入力及び前記第2の入力で受け取られた信号間の位相差に比例する電圧を出力するように構成された位相検出器(8)と、出力された前記電圧を前記出力されたDC電流に変換するように構成された電圧電流コンバータ(9)と、を備える、請求項1又は2に記載の分析機器。
【請求項17】
前記位相差検出器ユニット(8、9)は、前記出力されたDC電流の大きさの範囲が制御可能であるように構成されている、請求項1又は2に記載の分析機器。
【請求項18】
前記第2の変圧器(11)が、磁気コアを備えるか又は空芯である、請求項1又は2に記載の分析機器。
【請求項19】
前記第1のイオン光学デバイス(3)が、第1の多重極であり、かつ/又は前記第2のイオン光学デバイス(13)が、第2の多重極である、請求項1又は2に記載の分析機器。
【請求項20】
前記第1のイオン光学デバイス(3)が、第1の四重極イオントラップであり、かつ/又は前記第2のイオン光学デバイス(13)が、第2の四重極イオントラップである、請求項1又は2に記載の分析機器。
【請求項21】
前記分析機器が、質量分析計であるか、又は質量分析計を含む、請求項1又は2に記載の分析機器。
【外国語明細書】