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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170310
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】不燃性を有する表面保護構造
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/18 20060101AFI20241129BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20241129BHJP
【FI】
B32B27/18 B
E04B1/94 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024084136
(22)【出願日】2024-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2023086762
(32)【優先日】2023-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】523180355
【氏名又は名称】株式会社ソーベックス
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】園部 容弘
【テーマコード(参考)】
2E001
4F100
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001EA01
2E001EA05
2E001EA08
2E001GA06
2E001HD11
2E001MA01
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK25
4F100AK51
4F100AK80
4F100AK80B
4F100AL06
4F100AL06B
4F100AR00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA08
4F100CA08B
4F100EJ65
4F100GB07
4F100JJ07
4F100JJ07A
4F100JJ07B
4F100JJ07C
4F100JL11
4F100JL11C
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】樹脂系塗装により不燃の要求を満たすことができる不燃性を有する表面保護構造を提供する。
【解決手段】この表面保護構造は、保護対象物10の表面10aを保護する表面保護構造であって、保護対象物10の表面10aに直接または間接的に塗装され、可燃性の樹脂層で形成された第1保護層12と、第1保護層12の表面12aに直接または間接的に塗装され、ポリリン酸アンモニウムが添加された樹脂を含む樹脂層で形成された第2保護層14とを備えていることにより、不燃性を確保できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護対象物の表面を保護する表面保護構造であって、
前記保護対象物の前記表面に直接または間接的に塗装され、可燃性の樹脂層で形成された第1保護層と、
前記第1保護層の表面に直接または間接的に塗装され、ポリリン酸アンモニウムが添加された樹脂を含む樹脂層で形成された第2保護層と、
を備えたことを特徴とする不燃性を有する表面保護構造。
【請求項2】
前記保護対象物の前記表面に、前記第1保護層との密着性を向上させるための第1密着層が塗装されていることを特徴とする請求項1に記載の不燃性を有する表面保護構造。
【請求項3】
前記第1保護層の表面に、前記第2保護層との密着性を向上させるための第2密着層が塗装されていることを特徴とする請求項1に記載の不燃性を有する表面保護構造。
【請求項4】
前記第2保護層の層厚が、0.6mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の不燃性を有する表面保護構造。
【請求項5】
前記保護対象物が構造物であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の不燃性を有する表面保護構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物等の保護対象物の表面を保護する、不燃性を有する表面保護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
殆どの樹脂系塗装は有機系塗装であるため、基本的には可燃物として取り扱われる。そのため、火災防護の観点から不燃を要求される構造物や建屋などで塗装を行いたいが行えない場所が存在している。
例えば、コンクリート造の構造物や危険物保管庫等、ブロック造の塀等おいては、目地やクラック等から水が侵入することがある。通常そのような場合には防水塗装をすることで対策を行うが、建築基準法で不燃を要求される箇所では、一般的な防水塗装は可燃物に分類されることから、要求を満たすことができない。
【0003】
現在行われている工法のなかで、不燃等の表面保護を満たす工法の一例として、ステンレス等による金属ライニング工法が存在する(例えば特許文献1参照)。ステンレスは金属のため不燃材料であり、そのステンレスを並べて溶接することで一枚のシームレスな鋼材とすることで不燃等の効果を得るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-324230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、金属ライニング工法は熟練した特殊溶接工が必要なこと、工期が非常に長いこと、複雑形状への対応が難しいなどのデメリットが存在する。
樹脂塗装であれば、防水工による作業が可能であり(防水工の数はステンレスライニング工の溶接者よりは全体数が多い)、短工期が見込め、複雑形状に対しても塗装を行う単純な作業で済むなどのメリットがある。
このような状況下、少なくとも不燃の要求を満たせる表面保護構造の開発が望まれていた。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、樹脂系塗装により不燃の要求を満たすことができる表面保護構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の不燃性を有する表面保護構造は、保護対象物の表面を保護する表面保護構造であって、
前記保護対象物の前記表面に直接または間接的に塗装され、可燃性の樹脂層で形成された第1保護層と、
前記第1保護層の表面に直接または間接的に塗装され、ポリリン酸アンモニウムが添加された樹脂を含む樹脂層で形成された第2保護層と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
ここで、前記保護対象物としては、例えば、構造物が挙げられる。構造物は例えば、コンクリート、金属、樹脂、木等によって形成されるが、これに限ることはなく、さらに、これらのうち少なくとも2つを含む複合材であってもよい。さらに、保護対象物は構造物に限ることなく、不燃性が求められる物であれば、どのような物であってもよい。
【0009】
また、前記第1保護層は、塗装され、可燃性の樹脂層で形成されたものであるので、通常、防水性を有したものとなる。この第1保護層は、防水性の他に、防錆性、防食性、耐摩耗性、耐薬品性、耐塩害性、絶縁性、断熱性等を有していてもよい。
塗料を表面に塗装して樹脂層(第1保護層)を形成する場合、イソシアネート成分とポリオール成分を含むポリウレタン樹脂によって形成してもよい。
また、ポリウレタン樹脂以外の合成樹脂系塗料を表面に塗装して樹脂層(第1保護層)を形成してもよい。ポリウレタン樹脂以外の合成樹脂系塗料としては、例えば、エポキシ樹脂系、ウレア樹脂系、メタクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系、ビニルエステル樹脂系、アクリル樹脂系等の塗料が挙げられる。これらの塗料は、可燃性の樹脂層(塗膜)を形成する。
【0010】
なお、前記保護対象物の表面に、前記第1保護層の代わりに、表面強化剤が設けられることもある、この表面強化材としては、例えば保護対象物の表面がコンクリートによって形成されている場合、コンクリート素地強化を目的として、シリカ系、珪フッ化物系、エポキシ樹脂系の表面強化材が挙げられる。
また、無機系及び無機との組み合わせで使用する場合、セメント系、ポリマーセメント系、SBR系、EVA系の強化材を使用すればよい。
【0011】
また、前記第1保護層の代わりに、板材を表面に固定する場合、当該板材を接着剤によって貼り付け固定してもよいし、ビス、ネジ、釘等による機械式固定によって固定してもよい。
板材としては、例えば、主に防水や断熱を目的とする場合、グラスウール、ロックウール等の無機系の板材、セルロースファイバー等の木質繊維系の板材、ウールブレス(羊毛)、炭化コルク等の天然素材系の板材、ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム、フェノールフォーム等の発泡プラスチック系の板材が挙げられる。
【0012】
また、前記第1保護層の代わりに、シートを表面に貼り付ける場合、主に防水や剥落防止を目的として、加硫ゴム系、非加硫ゴム系、塩ビ樹脂系、EVA樹脂系、ポリエチレン樹脂系、ポリプロピレン樹脂系、ガラス繊維系、ビニロン繊維系、アラミド繊維系、ポリマーセメントモルタル系のシートを使用すればよい。
【0013】
第2保護層は、例えば、ウレタン系複合ポリマー、アミノシランを含む硬化剤と、ポリリン酸アンモニウムを含む主剤を含む樹脂層によって形成される。ポリリン酸アンモニウムは、アンモニウムを含む鎖状無機りん酸化合物である。
【0014】
本発明においては、保護対象物の表面に樹脂系塗装により第1保護層が設けられるので、簡単にかつ確実に防水性を得ることが可能である。さらに、この第1保護層が、密着性、防錆性、防食性、耐摩耗性、耐薬品性、耐塩害性、絶性縁、断熱性等を有する場合、表面の密着性、防水性、防錆性、防食性、耐摩耗性、耐薬品性、耐塩害性、絶縁性、断熱性を容易に付与することも可能である。
さらに、可燃性の樹脂層からなる第1保護層の表面に塗装して、ポリリン酸アンモニウムが添加された樹脂を含む樹脂層からなる第2保護層を形成することにより、従来達成できなかった樹脂製塗膜による不燃性の確保を達成することができる。
このように、本発明においては、第1保護層および第2保護層を樹脂系塗装により形成するので、短工期が見込め、保護対象物が複雑な形状のものに対して簡単に対応することができる。
また、ポリリン酸アンモニウムが添加された樹脂を含む樹脂層が塗装により形成されているので、通常、防水性が確保される。これにより、第1保護層の防水性に加えて、第2保護層によっても防水性を確保することが可能である。
【0015】
また、本発明の前記構成において、前記表面に、前記第1保護層との密着性を向上させるための第1密着層が塗装されていてもよい。
【0016】
第1密着層は密着性向上塗装(プライマー)によって形成されるが、この第1密着層を形成する塗装には、例えば、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレア系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ゴム系樹脂、無機系等の塗料のうちの少なくとも1種類が使用される。
【0017】
このような構成によれば、保護対象物の表面に、第1保護層との密着性を向上させるための第1密着層が塗装されているので、表面と第1保護層との密着性が向上し、第1保護層の剥離を抑制できる。
【0018】
また、本発明の前記構成において、前記第1保護層の表面に、前記第2保護層との密着性を向上させるための第2密着層が塗装されていてもよい。
【0019】
第2密着層は密着性向上塗装(プライマー)によって形成されるが、この第2密着層を形成する塗装には、第1密着層と同様に、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレア系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ゴム系樹脂、無機系等の塗料のうちの少なくとも1種類が使用される。
【0020】
このような構成によれば、第1保護層の表面に、第2保護層との密着性を向上させるための第2密着層が塗装されているので、第1保護層の表面と第2保護層との密着性が向上し、第2保護層の剥離を抑制できる。
【0021】
また、本発明の前記構成において、前記第2保護層の層厚が、0.6mm以上であることが好ましい。
第2保護層の層厚が0.6mm未満であると、第2保護層が薄くなり過ぎて、不燃性が確保し難くなる。
【0022】
したがって、第2保護層の層厚が、0.6mm以上であることによって、不燃性を確実に確保できる。
【0023】
また、本発明の前記構成において、前記保護対象物が構造物であってもよい。
このような構成によれば、構造物の表面を第1保護層および第2保護層によって保護して、当該表面に不燃性を確保できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、樹脂系塗装により不燃の要求を満たすことができる表面保護構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1の実施形態に係る表面保護構造を示す断面図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る表面保護構造を示す断面図である。
図3】本発明の第3の実施形態に係る表面保護構造を示す断面図である。
図4】本発明の第4の実施形態に係る表面保護構造を示す断面図である。
図5】本発明の第5の実施形態に係る表面保護構造を示す断面図である。
図6】本発明の第6の実施形態に係る表面保護構造を示す断面図である。
図7】本発明の第7の実施形態に係る表面保護構造を示す断面図である。
図8】本発明の第8の実施形態に係る表面保護構造を示す断面図である。
図9】本発明の第9の実施形態に係る表面保護構造を示す断面図である。
図10】本発明の第10の実施形態に係る表面保護構造を示す断面図である。
図11】本発明の表面保護構造の発熱性試験における、時間の経過に伴う総発熱量と発熱速度を示すグラフである。
図12】従来の表面保護構造の発熱性試験における、時間の経過に伴う総発熱量と発熱速度を示すグラフである。
図13】第2保護層の層厚が、下限値の0.6mmの場合の発熱性試験における、時間の経過に伴う総発熱量と発熱速度を示すグラフである。
図14】第2保護層の層厚が下限値未満の0.5mmの場合の発熱性試験における、時間の経過に伴う総発熱量と発熱速度を示すグラフである。
図15】第2保護層の層厚が上限値の1.0mmの場合の発熱性試験における、時間の経過に伴う総発熱量と発熱速度を示すグラフである。
図16】第2保護層の層厚が上限値を超える1.2mmの場合の発熱性試験における、時間の経過に伴う総発熱量と発熱速度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明に係る不燃性を有する表面保護構造の実施形態について説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の実施形態のいくつかのの例を示すものであり、本発明は、当該実施形態の構成に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【0027】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る表面保護構造を示す断面図である。図1に示すように、表面保護構造は、保護対象物10である構造物10の表面10aを保護したものであり、表面10aに、図1において下から順に第1密着層11、第1保護層12、第2密着層13、および第2保護層14が積層されて設けられている。
【0028】
構造物10は例えばコンクリート構造物10であり、その表面10aに第1密着層11が当該表面10aの全体を覆うようにして塗装されている。第1密着層11は、第1保護層12との密着性を向上させるためのもので、密着性向上塗装(プライマー)によって形成されている。なお、表面10aと第1保護層12を形成する樹脂との相性がよく、密着性を確保できる場合、第1密着層11は省略してもよい。
【0029】
第1密着層11を形成する塗装には、例えば、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレア系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ゴム系樹脂、無機系等の塗料のうちの少なくとも1種類によって構成されている。
コンクリート構造物10の表面10aが粗くない場合、図1に示すように、第1密着層11が表面10aに直接塗装によって形成される。
【0030】
また、前記表面10aが粗い場合、表面10aの断面修復や素地調整が行われる。
断面修復は、コンクリート構造物10の表面10aに生じている不具合(ジャンカ、あばた、目違い段差等)に対して修正することを言う。一般的には、1mm以上のコンクリート表面の傷や凹凸を補修する。
この補修(修復)工程では、表面10aの脆弱箇所の撤去 →ボンド塗布 →モルタルや樹脂を流し込み、コテ等で平にする。
素地調整は、断面修復後の表面10aの小穴を潰すこと言う。基本的には表面10aの全体に素地調整材をコテで塗りつける。この素地調整は、第1密着層11や第1保護層12を形成(塗装)する場合のピンホール対策工程になる。
【0031】
前記第1保護層12は、表面10aに第1密着層11を介して間接的に、かつ第1密着層11の表面全体を覆うように設けられたもので、防水性を有していてもよい。第1保護層12は、防水性の他に、防錆性、防食性、耐摩耗性、耐薬品性、耐塩害性、絶縁性、断熱性等を有していてもよく、塗料を第1密着層11の表面に塗装することにより形成されている。このように塗装より形成すると、通常、防水性は確保される。塗料を表面に塗装して、樹脂層(第1保護層12)を形成する場合、例えば当該塗料は、イソシアネート成分とポリオール成分を含むポリウレタン樹脂によって形成されている。
【0032】
また、第1保護層12に塗装される樹脂として、ポリウレタン樹脂以外の合成樹脂系塗料を使用してもよい。例えば、エポキシ樹脂系、ウレア樹脂系、メタクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系、ビニルエステル樹脂系、アクリル樹脂系等の塗料を使用して、第1保護層12を形成してもよい。このような第1保護層12は、可燃性の樹脂層である。
【0033】
また、第1保護層12の層厚は、0.5mm以上、5.0mm未満に設定されているが、0.5mm以上、3.0mm未満であってもよく、0.5mm以上、2.0mm未満であってもよい。
第1保護層12の層厚を、0.5mm以上、5.0mm未満に設定したのは、層厚が0.5mm未満であると、第1保護層12が薄くなり過ぎて、防水性、その他性能を確保し難く、一方、5.0mm以上になると、第1保護層12が厚くなり過ぎて、材料費が嵩むとともに、施工にも手間がかかるからである。
【0034】
前記第2密着層13は、第1保護層12の表面12aに当該表面12aの全面を覆うようにして塗装されている。第2密着層13は、第2保護層12との密着性を向上させるためのもので、密着性向上塗装(プライマー)によって形成されている。
この第2密着層13を形成する塗装には、第1密着層11と同様に、例えば、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレア系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ゴム系樹脂、無機系等の塗料のうちの1種類が使用される。
【0035】
前記第2保護層14は、第1保護層12に第2密着層13を介して間接的に、かつ第2密着層13の表面全体を覆うようにして塗装されている。この第2保護層14は、ウレタン系複合ポリマー、アミノシランを含む硬化剤と、ポリリン酸アンモニウムを含む主剤とを含む樹脂層によって形成される。ポリリン酸アンモニウムは、アンモニウムを含む鎖状無機りん酸化合物であり、難燃剤である。
第2保護層14を形成するために使用される塗料としては、例えば、ナリファイア・ハイブリッドベースコート SC902(英国のナリファイア社製)が挙げられる。
【0036】
また、前記第2保護層14を形成する場合、ウレタン系複合ポリマー、アミノシランを含む硬化剤と、ポリリン酸アンモニウムを含む主剤とを含む樹脂に、希釈剤(添加剤)として、ホウ素化合物、モリブデン化合物、スズ化合物、アンチモン化合物、ジルコニウム化合物、リン化合物、シリコン系化合物、水和化合物、水和金属化合物、窒素化合物、セラミック系化合物、臭素化合物、塩素化合物等の化合物を加えることが好ましい。
希釈剤(添加剤)は、濃度30wt%のものを、第2保護層14の前記樹脂に対して50~400%の重量比で添加するのが好ましい。希釈剤を添加することで、第2保護層14の前記樹脂の粘度が低くなり、容易に塗装することができる。
【0037】
また、第2保護層14の層厚は、0.6mm以上に設定されているが、0.6mm以上、5.0未満に設定されてもよく、好ましくは、0.6mm以上、2.0mm以下に設定されてもよく、さらに好ましくは0.6mm以上、1.0mm以下に設定されてもよい。
第2保護層14の層厚を、0.6mm以上に設定したのは、層厚が0.6mm未満であると、第2保護層14が薄くなり過ぎて、不燃性を確保し難くなるからである。一方、層厚が1.0mmを超えると、第2保護層14が厚くなり過ぎて、材料費が嵩むとともに、施工にも手間がかかるうえ、樹脂層(第2保護層)を形成する樹脂量が過多となって、逆に不燃性が低下する場合があるので、層厚は1.0mm以下が好ましい。
【0038】
構造物10の表面10aを塗装するには、つまり本実施形態の表面保護構造を施工するには、まず、表面10aに第1密着層11を設ける。この場合、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレア系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ゴム系樹脂、無機系等の塗料のうちの少なくとも1種類によって構成された樹脂を表面10aに当該表面全体を覆うようにして塗装する(プライマー塗装する)。
表面10aが粗い場合、上述したような断面修復を行い、必要に応じて、素地調整を行った後、前記プライマー塗装を行う。プライマー塗装による第1密着層11の層厚は約0.02mm程度である。
【0039】
次に、前記プライマー塗装を行ってから、十分な養生(例えば3時間以上、48時間以内)後、第1保護層12を設ける。この場合、塗料を第1密着層11の表面に当該表面全体を覆うようにして塗装することによって、当該表面に第1保護層12を設ける。
当該塗料は、イソシアネート成分とポリオール成分を含むポリウレタン樹脂によって形成されたものである。
第1密着層11によって、構造物10の表面10aの小傷を補修したうえで、第1保護層12を平滑に塗装によって形成するようにするだけでなく、接着力の向上を付与することができる。また、第1保護層12には、構造物10にひび割れ等が発生するような場合でもあっても追従性能により、構造物10に高い耐久性を付与することができる。
【0040】
次に、第1保護層12を塗装によって設けてから、十分な養生(例えば24時間以内)後、第2密着層13を設ける。この場合、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ウレア系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ゴム系樹脂、無機系等の塗料のうちの少なくとも1種類によって構成された樹脂を第1保護層12の表面12aに当該表面全体を覆うようにして塗装する(プライマー塗装する)。プライマー塗装による第2密着層13の層厚は約0.02mm程度である。
【0041】
次に、前記プライマー塗装を行ってから、十分な養生(例えば1時間以上、48時間以内)後、第2保護層14を設ける。この場合、塗料を第2密着層13の表面に当該表面全体を覆うようにして塗装することによって、当該表面に第2保護層14を設ける。
第2保護層14を形成する塗料は、ウレタン系複合ポリマー、アミノシランを含む硬化剤と、ポリリン酸アンモニウムを含む主剤とを含む樹脂に、上述した希釈剤(添加剤)を添加したものによって形成される。
このような塗料を塗装することによって、構造物10の耐久性を向上でき、かつ表面10aに不燃性を付与することができる。
【0042】
表1は上述した本実施形態の表面保護構造の一例を施工する際の工程、塗料の材質、塗布(塗装)量、層厚、塗装間隔を示す表である。塗装間隔は、次の工程との時間間隔である。なお、表1では第2保護層の層厚を0.6~1.0mmに設定している。
【0043】
【表1】
【0044】
本実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
(1)保護対象物(コンクリート構造物)10の表面10aに第1保護層12が設けられ、この第1保護層12が、塗装より形成されているので、通常、防水性は確保される。また、第1保護層12が、防水性に加え、防錆性、防食性、耐摩耗性、耐薬品性、耐塩害性、絶性縁、断熱性等を有するので、表面10aの防錆性、防食性、耐摩耗性、耐薬品性、耐塩害性、絶縁性、断熱性を容易に確保できる。
(2)さらに、可燃性の樹脂層からなる第1保護層12の表面に塗装して、ポリリン酸アンモニウムが添加された樹脂を含む樹脂層からなる第2保護層14を形成することにより、従来達成できなかった樹脂製塗膜による不燃性の確保を達成することができる。
このように、本発明においては、第1保護層12および第2保護層14を樹脂系塗装により形成するので、短工期が見込め、保護対象物が複雑な形状のものに対して簡単に対応することができる。
(3)また、第2保護層14が樹脂層を塗装することにより形成されているので、通常、防水性が確保される。これにより、第1保護層12の防水性に加えて、第2保護層14によって防水性を確保できる。
【0045】
(4)保護対象物(コンクリート構造物)10の表面10aに、第1保護層12との密着性を向上させるための第1密着層11が塗装されているので、表面10aと第1保護層12との密着性が向上し、第1保護層12の剥離を抑制できる。
(5)第1保護層12の表面12aに、第2保護層14との密着性を向上させるための第2密着層13が塗装されているので、第1保護層12の表面12aと第2保護層14との密着性が向上し、第2保護層14の剥離を抑制できる。
【0046】
なお、第1の実施形態では、保護対象物10の表面10aに、順次、第1密着層11、第1保護層12、第2密着層13、第2保護層14を形成するとともに、第1密着層11を形成する前に、表面10aに断面修復や素地調整を行った、つまり、(1)断面修復 →(2)素地調整 →(3)第1密着層11(プライマー) →(4)第1保護層12 →(5)第2密着層13(プライマー) →(6)第2保護層14の工程を行った。
本発明は、第1保護層12および第2保護層14の形成工程は必須であるが、その他の工程は必要に応じて行われる。したがって、本発明に係る表面保護構造を施工する場合、全部で16通りとなり、16通りの断面構造を有する。
【0047】
また、素地調整と第1密着層11の形成とが一体の場合、(1)断面修復 →(2)素地調整+第1密着層11(プライマー) →(3)第1保護層12 →(4)第2密着層13(プライマー) →(5)第2保護層14の工程を行うことになり、全部で8通りとなり、8通りの断面構造を有する。
さらに、断面修復、素地調整および第1密着層の形成が一体の場合、(1)断面修復+素地調整+第1密着層11(プライマー) →(2)第1保護層12 →(3)第2密着層13(プライマー) →(4)第2保護層14の工程を行うことになり、全部で4通りとなり、4通りの断面構造を有する。
したがって、本発明に係る表面保護構造を施工する場合、16通り+8通り+4通りの合計28通りとなり、28通りの断面構造を有する。
【0048】
また、本実施形態では、第1保護層12をポリウレタン樹脂によって形成したが、このポリウレタン樹脂による第1保護層12に代えて、第1密着層11および/または第2密着層13によって第1保護層12Aを形成してもよい(図10参照)。
この場合、第1密着層11および第2密着層13の双方を形成する必要はなく、何れか一方の密着層を形成すればよいので、(1)断面修復 →(2)素地調整 →(3)第1保護層(第1密着層11または第2密着層13) →(4)第2保護層14の工程を行うことになり、全部で4通りとなり、4通りの断面構造を有する。
したがって、上述した28通りに4通りを加えて、全部で32通りになり、32通りの断面構造を有する。
【0049】
次に、上述した32の通りの断面構造のうち、いくつかの断面構造を有する表面保護構造の例について説明する。
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態に係る表面保護構造を示す断面図である。第2の実施形態に係る表面保護構造が、第1の実施形態と異なる点は、第2密着層13を省略した点であり、その他の構成は第1の実施形態と同一であるので、同一構成には同一符号を付してその説明を省略する。
【0050】
本実施形態では、第1保護層12を塗装によって形成した後、すぐに第2保護層14を形成(塗装)できる場合(塗り重ね間隔時間以内の場合)に、第1保護層12の表面12aに第2密着層13を形成することなく、直接第2保護膜14が塗装によって形成されている。
【0051】
本実施形態によれば、前記第1の実施形態における(1)~(4)の効果を得られる他、第2密着層13を省略しているので、その分、施工時間の短縮や施工費用の削減を図ることができる。
【0052】
(第3の実施形態)
図3は、第3の実施形態に係る表面保護構造を示す断面図である。第3の実施形態に係る表面保護構造が、第1の実施形態と異なる点は、第1密着層11の塗装、コンクリート構造物10の表面10aに対する断面修復および素地調整を省略した点であり、その他の構成は第1の実施形態と同一であるので、同一構成には同一符号を付してその説明を省略する。
【0053】
本実施形態では、コンクリート構造物10の表面10aの表面状態が第1保護層12を形成(塗装)するのに適した表面であり、当該表面10aと第1保護層12を形成する樹脂との相性がよく、第1保護層12の密着性が高い場合に、表面10aに直接第1保護層12が形成(塗装)されている。
【0054】
本実施形態によれば、前記第1の実施形態における(1)~(3)および(5)の効果を得られる他、第1密着層11の塗装、コンクリート構造物10の表面10aに対する断面修復および素地調整を省略しているので、その分、施工時間の短縮や施工費用の削減を図ることができる。
【0055】
(第4の実施形態)
図4は、第4の実施形態に係る表面保護構造を示す断面図である。第4の実施形態に係る表面保護構造が、第1の実施形態と異なる点は、第1密着層11および第2密着層12の塗装、コンクリート構造物10の表面10aに対する断面修復および素地調整を省略した点であり、その他の構成は第1の実施形態と同一であるので、同一構成には同一符号を付してその説明を省略する。
【0056】
本実施形態では、コンクリート構造物10の表面10aと第1保護層12を形成する樹脂の相性がよく密着性が高く、かつ第1保護層12の形成(塗装)後、すぐに第2保護層14を形成(塗装)できる場合(塗り重ね間隔時間以内の場合)に、表面10aに断面修復および素地調整を施すことなく、直接第1保護層12が形成(塗装)され、さらに、第1保護層12に直接第2保護層14が形成(塗装)されている。
【0057】
本実施形態によれば、前記第1の実施形態における(1)~(3)の効果を得られる他、第1密着層11および第2密着層12の塗装、コンクリート構造物10の表面10aに対する断面修復および素地調整を省略しているので、その分、施工時間の短縮や施工費用の削減を図ることができる。
【0058】
(第5の実施形態)
図5は、第5の実施形態に係る表面保護構造を示す断面図である。第5の実施形態に係る表面保護構造が、第1の実施形態と異なる点は、コンクリート構造物10の表面10aが粗い場合に、断面修復を行った点であり、その他の構成は第1の実施形態と同一であるので、同一構成には同一符号を付してその説明を省略する。
【0059】
本実施形態では、表面10aの断面修復は、表面10aの全体および/または部分的な補修(通常1mm以上の凹凸の補修)である。図5に示すように、表面10aには、補修によって形成された断面修復層20が設けられている。
また、保護対象物10がコンクリート構造物でなく、金属板によって形成されているものである場合、金属板のパテによる補修も含む。
【0060】
本実施形態によれば、前記第1の実施形態における(1)~(5)の効果を得られる他、コンクリート構造物10の表面10aの断面修復を行ったうえで、第1密着層11を形成(塗装)しているので、第1密着層11を確実に表面10aに形成できる。
【0061】
(第6の実施形態)
図6は、第6の実施形態に係る表面保護構造を示す断面図である。第6の実施形態に係る表面保護構造が、第1の実施形態と異なる点は、コンクリート構造物10の表面10aに、第1密着層11を形成(塗装)する前に、素地調整を施した点であり、その他の構成は第1の実施形態と同一であるので、同一構成には同一符号を付してその説明を省略する。
【0062】
本実施形態では、表面10aの素地調整は、表面10aの全体的なものであり、表面10aに素地調整が素地調整材の全体塗布によって施されている。図6に示すように、表面10aには、素地調整によって形成された素地調整層21が設けられている。
【0063】
本実施形態によれば、前記第1の実施形態における(1)~(5)の効果を得られる他、コンクリート構造物10の表面10aの素地調整を行ったうえで、第1密着層11を形成(塗装)しているので、第1密着層11を均一に形成できるとともに、第1密着層11や第1保護層12に生じ易いピンホールを抑制できる。
【0064】
(第7の実施形態)
図7は、第7の実施形態に係る表面保護構造を示す断面図である。第7の実施形態に係る表面保護構造が、第1の実施形態と異なる点は、コンクリート構造物10の表面10aに、第1密着層11を形成(塗装)する前に、断面修復および素地調整を施した点であり、その他の構成は第1の実施形態と同一であるので、同一構成には同一符号を付してその説明を省略する。
【0065】
本実施形態では、表面10aに断面修復を施した後、さらに素地調整を施している。断面修復は、表面10aの部分修復であり、素地調整は全体的(表面10aの全体)である。図7に示すように、表面10aには、断面修復によって形成された断面修復層20と素地調整によって形成された素地調整層21とが設けられている。
【0066】
本実施形態によれば、前記第1の実施形態における(1)~(5)の効果を得られる他、コンクリート構造物10の表面10aの断面修復を行ったうえで、第1密着層11を形成(塗装)しているので、第1密着層11を確実に表面10aに形成でき、さらに、素地調整を行ったうえで、第1密着層11を形成(塗装)しているので、第1密着層11を均一に形成できるとともに、第1密着層11や第1保護層12に生じ易いピンホールを抑制できる。
【0067】
(第8の実施形態)
図8は、第8の実施形態に係る表面保護構造を示す断面図である。第8の実施形態に係る表面保護構造が、第1の実施形態と異なる点は、コンクリート構造物10の表面10aに、素地調整と第1密着層11とを一体的に施した点であり、その他の構成は第1の実施形態と同一であるので、同一構成には同一符号を付してその説明を省略する。
【0068】
本実施形態では、素地調整材と第1密着層とを形成する樹脂が同一樹脂で形成され、図8に示すように、当該樹脂によって素地調整層を含む第1密着層11Aが形成(塗装)されている。このため、第1密着層11Aは、第1の実施形態の第1密着層11より層厚が厚くなっている。
【0069】
本実施形態によれば、前記第1の実施形態における(1)~(5)の効果を得られる他、コンクリート構造物10の表面10aの素地調整層が第1密着層11Aと同時に形成されているので、第1密着層11Aの形成(塗装)と素地調整を同時行うことができ、その分施工が容易となる。
【0070】
(第9の実施形態)
図9は、第9の実施形態に係る表面保護構造を示す断面図である。第9の実施形態に係る表面保護構造が、第1の実施形態と異なる点は、コンクリート構造物10の表面10aに、素地調整と第1密着層11とを一体的に施すとともに、第2密着層13を省略した点であり、その他の構成は第1の実施形態と同一であるので、同一構成には同一符号を付してその説明を省略する。
【0071】
本実施形態では、第8の実施形態と同様に、素地調整材と第1密着層とを形成する樹脂が同一樹脂で形成され、図9に示すように、当該樹脂によって素地調整層を含む第1密着層11Aが形成(塗装)されている。このため、第1密着層11Aは、第1の実施形態の第1密着層11より層厚が厚くなっている。
また、本実施形態では、第1保護層12を塗装によって形成した後、すぐに第2保護層14を形成(塗装)できる場合(塗り重ね間隔時間以内の場合)に、第1保護層12の表面12aに第2密着層13を形成することなく、直接第2保護膜14が塗装によって形成されている。
【0072】
本実施形態によれば、前記第1の実施形態における(1)~(4)の効果を得られる他、コンクリート構造物10の表面10aの素地調整層が第1密着層11Aと同時に形成されているので、第1密着層11Aの形成(塗装)と素地調整を同時行うことができ、その分施工が容易となる。
また、第2密着層13を省略しているので、その分、施工時間の短縮や施工費用の削減を図ることができる。
【0073】
(第10実施形態)
図10は、第10の実施形態に係る表面保護構造を示す断面図である。第10の実施形態に係る表面保護構造が、第1の実施形態と異なる点は、コンクリート構造物10の表面10aに、素地調整を施すとともに、ポリウレタン樹脂による第1保護層12に代えて、第1密着層および/または第2密着層によって第1保護層12Aを形成した点であり、その他の構成は第1の実施形態と同一であるので、同一構成には同一符号を付してその説明を省略する。
【0074】
本実施形態では、図10に示すように、素地調整層21の表面に、第1密着層および/または第2密着層によって形成された第1保護層12Aが形成されている。
【0075】
本実施形態によれば、前記第1の実施形態における(1)および(3)の効果を得られる他、ポリウレタン樹脂による第1保護層に代えて、第1密着層および/または第2密着層によって第1保護層12Aを形成したので、施工が容易になるとともに、取り扱いが比較的難しい(適切な下地処理やプライマーの選定、耐薬品や耐熱に対する事前の調査・検証を念入りに行う必要がある)とされているポリウレタン樹脂を使用しないので、その分施工が容易となる。
【0076】
次に、本発明に係る表面保護構造と、ポリウレタン樹脂によって形成された樹脂層(第1保護層)のみを有する従来の表面保護構造とについて、それぞれ発熱性試験(コーンカロリーメータ試験)を行ったので、当該発熱性試験の結果について説明する。
【0077】
本発明に係る表面構造における保護対象物たる試験体は、直方体状のコンクリートであり、当該コンクリートの表面にポリウレタン樹脂によって形成された第1保護層を形成(塗装)し、この第1保護層の表面に、ウレタン系複合ポリマー、アミノシランを含む硬化剤と、ポリリン酸アンモニウムを含む主剤を含む樹脂層(ナリファイア製のハイブリッドベースコート SC902)によって第2保護層を形成(塗装)した。
第1保護層の層厚は2.0mm、第2保護層の層厚は1.0mmである。
また、直方体状の試験体は、長辺と短辺の長さが99mm×100mm、厚さが35.0mm、重量(質量)は729.0gである。
【0078】
表2は本発明に係る表面保護構造の一例の発熱性試験の試験結果を示す。
【0079】
【表2】
【0080】
図11は、時間の経過に伴う総発熱量(MJ/m)と発熱速度(kW/m)を示すグラフである。
不燃の判定基準、つまり不燃として適している判定基準は以下のとおりである。
<判定基準>
(1)総発熱量8.0MJ/m以下であること。
(2)最大発熱速度200KW/mの継続時間10秒以下であること。
(3)試験体の裏面に貫通する穴があかないこと。
不燃として適しているには、前記(1)~(3)の判定基準を全て満たす必要があり、特に(1)の判定基準を満たすことが最も重要である。
【0081】
表2および図11に示すように、20分(1200秒)経過時の総発熱量は5.7(MJ/m)であった。発熱性試験において、不燃としての判定基準は8.0(MJ/m)以下であるので、前記(1)の判定基準を満たす。
また、表2および図11に示すように、最高発熱速度は140.7(kW/m)であるが、発熱速度が200(kW/m)を超えることはなかった。発熱性試験において、不燃としての判定基準は、発熱速度200(kW/m)超が10秒未満であるのに対し、本発明に係る表面保護構造では、発熱速度200(kW/m)を超えることはないので、前記(2)の判定基準を満たす。
また、第1保護層および第2保護層を貫通して試験体裏面まで達する穴や、変形は無かったので、前記(3)の判定基準を満たす。
以上のように、本発明に係る表面保護構造は、前記(1)~(3)の判定基準を全て満たすので、不燃として適していることが分かる。
【0082】
一方、従来の表面保護構造における保護対象物たる試験体は、本発明の場合と同様に、直方体状のコンクリートであり、当該コンクリートの表面にポリウレタン樹脂によって形成された第1保護層を形成(塗装)した。
第1保護層の層厚は2.0mmである。
また、直方体状の試験体は、面積が0.008840m、厚さが7.27mm、重量(質量)は70.87gである。
【0083】
表3は従来の表面保護構造の発熱性試験の試験結果を示す。
【0084】
【表3】
【0085】
図12は、時間の経過に伴う総発熱量(MJ/m)と発熱速度(kW/m)を示すグラフである。
表3および図12に示すように、20分経過時の総発熱量は24.43(MJ/m)であった。したがって、前記(1)の判定基準を満たさないことが分かる。
また、表3および図12に示すように、最大発熱速度(最高発熱速度)は129.70(kW/m)であり、発熱速度が200(kW/m)未満であるので、前記(2)の判定基準を満たすのが分かる。
また、第1保護層を貫通して試験体裏面まで達する穴は無かったので、前記(3)の判定基準を満たす。
しかし、従来の表面保護構造は、前記(2)、(3)の判定基準は満たすが、最も重要な(1)の判定基準を満たさないので、不燃として不適であることが分かる。
【0086】
次に、本発明に係る表面保護構造において、第2保護層の層厚は、0.6mm以上に設定されるが、好ましくは、0.6mm以上、1.0mm以下に設定されてもよい。
第2保護層の層厚が下限値の0.6mmの場合と下限値未満の0.5mmの場合とについて発熱性試験を行うとともに、第2保護層の層厚が上限値の1.0mmの場合と上限値を超える1.2mmの場合とについて発熱性試験を行ったので、当該発熱性試験の結果について説明する。
【0087】
本発明に係る表面構造における保護対象物たる試験体は、直方体状のコンクリートであり、当該コンクリートの表面にポリウレタン樹脂によって形成された第1保護層を形成(塗装)し、この第1保護層の表面に、ウレタン系複合ポリマー、アミノシランを含む硬化剤と、ポリリン酸アンモニウムを含む主剤を含む樹脂層によって第2保護層(耐火塗装)を形成(塗装)した。
【0088】
(1)第2保護層の層厚が下限値の0.6mmの場合
直方体状の試験体は、面積が0.008840m、厚さが6.06mm、重量(質量)は52.20gである。
【0089】
表4は第2保護層の層厚が下限値の0.6mmの場合の発熱性試験の試験結果を示す。
【0090】
【表4】
【0091】
図13は、第2保護層の層厚が下限値の0.6mmの場合の時間の経過に伴う総発熱量(MJ/m)と発熱速度(kW/m)を示すグラフである。
表4および図13に示すように、20分経過時の総発熱量は5.91(MJ/m)であった。
上述したように発熱性試験において、不燃としての判定基準(1)は8.0(MJ/m)以下であるので、第2保護層の層厚が0.6mmである表面保護構造は、不燃として適切であることが分かる。
また、表4および図13に示すように、最大発熱速度(最高発熱速度)は76.12(kW/m)であり、判定基準(2)の発熱速度が200(kW/m)を超えていないので、不燃として適切であることが分かる。
また、第1保護層および第2保護層を貫通して試験体裏面まで達する穴や、変形は無かったので、判定基準(3)を満たす。
したがって、第2保護層の層厚が下限値の0.6mmの場合、不燃として適していることが分かる。
【0092】
(2)第2保護層の層厚が下限値未満の0.5mmの場合
直方体状の試験体は、面積が0.008840m、厚さが5.68mm、重量(質量)は59.51gである。
【0093】
表5は第2保護層の層厚が下限値未満の0.5mmの場合の発熱性試験の試験結果を示す。
【0094】
【表5】
【0095】
図14は、第2保護層の層厚が下限値未満の0.5mmの場合の時間の経過に伴う総発熱量(MJ/m)と発熱速度(kW/m)を示すグラフである。
表5および図14に示すように、20分経過時の総発熱量は9.31(MJ/m)であった。
上述したように発熱性試験において、不燃としての判定基準(1)は8.0(MJ/m)以下であるので、第2保護層の層厚が0.5mmである表面保護構造は、不燃として不適であることが分かる。
また、表5および図14に示すように、最大発熱速度(最高発熱速度)は254.02(kW/m)であり、判定基準(2)の発熱速度が200(kW/m)を超えているので、不燃として不適切であることが分かる。
また、第1保護層および第2保護層を貫通して試験体裏面まで達する穴や、変形は無かったので、判定基準(3)を満たす。
しかし、前記(1)および(2)の判定基準を全て満たさないので、不燃として不適であることが分かる。
【0096】
(3)第2保護層の層厚が上限値の1.0mmの場合
直方体状の試験体は、面積が0.008840m、厚さが6.31mm、重量(質量)は57.31gである。
【0097】
表6は第2保護層の層厚が上限値の1.0mmの場合の発熱性試験の試験結果を示す。
【0098】
【表6】
【0099】
図15は、第2保護層の層厚が上限値の1.0mmの場合の時間の経過に伴う総発熱量(MJ/m)と発熱速度(kW/m)を示すグラフである。
表6および図15に示すように、20分経過時の総発熱量は6.08(MJ/m)であった。
上述したように発熱性試験において、不燃としての判定基準(1)は8.0(MJ/m)以下であるので、第2保護層の層厚が1.0mmである表面保護構造は、不燃として適切であることが分かる。
また、表6および図15に示すように、最大発熱速度(最高発熱速度)は131.81(kW/m)であり、判定基準(2)の発熱速度が200(kW/m)を超えていないので、不燃として適切であることが分かる。
また、第1保護層および第2保護層を貫通して試験体裏面まで達する穴や、変形は無かったので、判定基準(3)を満たす。
したがって、第2保護層の層厚が上限値の1.0mmの場合、不燃として適していることが分かる。
【0100】
(4)第2保護層の層厚が上限値を超える1.2mmの場合
直方体状の試験体は、面積が0.008840m、厚さが5.29mm、重量(質量)は56.88gである。
【0101】
表7は第2保護層の層厚が上限値を超える1.2mm場合の発熱性試験の試験結果を示す。
【0102】
【表7】
【0103】
図16は、第2保護層の層厚が上限値を超える1.2mmの場合の時間の経過に伴う総発熱量(MJ/m)と発熱速度(kW/m)を示すグラフである。
表7および図16に示すように、20分経過時の総発熱量は10.14(MJ/m)であった。
上述したように発熱性試験において、不燃としての判定基準(1)は8.0(MJ/m)以下であるので、第2保護層の層厚が1.2mmである表面保護構造は、不燃として不適であることが分かる。
また、表7および図16に示すように、最大発熱速度(最高発熱速度)は237.58(kW/m)であり、判定基準(2)の発熱速度が200(kW/m)を超えているので、不燃として不適であることが分かる。
また、第1保護層および第2保護層を貫通して試験体裏面まで達する穴や、変形は無かったので、判定基準(3)を満たす。
しかし、前記(1)および(2)の判定基準を満たさないので、不燃として不適であることが分かる。
また、第2保護層の層厚が、上限値を超える1.2mmである表面保護構造では、試験開始後18秒で着火し、約3分で8.0(MJ/m)に達した。
したがって、第2保護層の層厚が1.2mmであると、第2保護層が厚くなり過ぎて、樹脂層(第2保護層)を形成する樹脂量が過多となって、逆に不燃性が低下することが分かった。
【符号の説明】
【0104】
10 コンクリート構造物(保護対象物)
10a 表面
11,11A 第1密着層
12,12A 第1保護層
13 第2密着層
14 第2保護層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16