(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170321
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】血流最適化モデルとニューラルネットワークを組み合わせた自動挿針方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/06 20060101AFI20241129BHJP
【FI】
A61B8/06
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024084943
(22)【出願日】2024-05-24
(31)【優先権主張番号】202310607104.8
(32)【優先日】2023-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】517312490
【氏名又は名称】ヂェァジァン ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.866,Yuhangtang Road,Xihu District,Hangzhou, Zhejiang China
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】孫 逸之
(72)【発明者】
【氏名】孔 徳興
(72)【発明者】
【氏名】孫 志林
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD03
4C601DE01
4C601EE09
4C601FF03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、血流最適化モデルと神経ネットワークを組み合わせた自動挿針方法を開示する。
【解決手段】該方法は、まずドップラー超音波原理を利用し、自動での超音波走査によって測定した血流情報によって挿針待ち区域の血管位置と血流速度分布を算出し、その後血流相対速度最適化モデルと、選択機能を有するニューラルネットワークを確立し、物理測量結果に基づいて最適な挿針点及び挿針角度を決定し、最後に学習機能を持つニューラルネットワークを利用して専門スタッフの挿針手法をシミュレーションして挿針経路を設計する。本発明の方法は、四肢などの身体部分の皮下血管の挿針に用いることができ、血管の肉眼による視認性が低い場合での人間による挿針の困難さを克服し、専門スタッフが不足する環境での自助救急に技術的な補助を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血流最適化モデルとニューラルネットワークを組み合わせた自動挿針方法であって、
ステップ1:ドップラー超音波原理を利用し、自動超音波走査により測定された血流フィードバック信号により、挿針待ち区域の血管位置と血流速度分布の空間角度関係を算出して、超音波血流情報を取得する、
ステップ2:血流相対速度最適化モデルを構築し、その瞬時での最小値のモデルである瞬時最小化モデル式は以下の通りであり、
物理的計測及び血流相対速度最適化モデルから、一組の挿針位置及び挿針角度の好ましい挿針方案を得る、
ステップ3:、前記好ましい挿針方案は、選択機能を持つニューラルネットワークと組み合わせ、最適な挿針点と挿針角度を決定して最適な挿針方案を得る、
ステップ4:、前記最適な挿針方案に基づき、学習機能を持つニューラルネットワークを組み合わせ、専門スタッフの挿針手法を学習しシミュレーションし、挿針経路を得る、
を含むことを特徴とする血流最適化モデルとニューラルネットワークを組み合わせた自動挿針方法。
【請求項2】
前記ステップ2において、局所最適解を有する血流相対速度最適化モデルを用いて、一組の候補のより良い挿針位置の座標である挿針座標を求め、前記血流相対速度最適化モデルは、具体的には以下のように構成される、
【請求項3】
【請求項4】
【請求項5】
前記ステップ1において、前記血流相対速度最適化モデルに必要な各変数値を獲得し、自動挿針の目的を達成するため、挿針待ちの身体上の部位に対して発射角度と周波数を自動調整できる超音波走査を行い、さらにドップラー原理を利用して自動計測し、
超音波走査は機動式又は静止式を採用し、機動式の超音波走査は超音波プローブが局部範囲内に可変角度で自動的に回転することを要求し、且つ可動ブラケットに沿って機動式並進走査を行い、静止式超音波走査は電子制御のフェーズドアレイモードを採用し、
超音波ドップラー原理を利用して血流方向の空間角度に対する計測と標識の方法は下記の通りであり、
赤血球群はX軸方向(血流方向)に沿って速度vで移動するものとし、Wを基準軸とし、Z軸、X軸及びW軸は同一平面内にあり、Z軸はX軸に垂直であり、Z軸とWの交角はφとし、超音波プローブの発射周波数はf
0であり、超音波は体内媒体中で音速c
sで検出対象に伝播し、そして散乱信号を受信プローブに戻し、周波数f
rで受信し、超音波の入射平面は入射音波ビーム軸とZ軸がある平面P
1で、P
1内のZ軸と垂直する軸はYであり、超音波入射平面と血流方向の夾角はαであり、即ちX軸とY軸の夾角はαであり、入射音波ビーム軸とXY平面の夾角はβであり、即ち入射音波ビーム軸とY軸の夾角はβであり、赤血球(群)の受信機方向に沿った散乱音波ビーム軸とZ軸が位置する散乱平面はP
2であり、P
2中のZ軸と垂直する軸はY'であり、Y'軸と血流方向の夾角はα'であり、かつ散乱音波ビーム軸とY'軸の夾角はβ'であり、入射音波ビーム軸とW軸との交角をγとし、散乱音波ビーム軸とW軸との交角をγ'とし、そのうちγとγ'の値は直接測定することができ、
超音波受信周波数f
r(t+Δt)及び入射周波数f
0(t)の関係式は、下記の通りである、
(13a)-(14)の各式において、±符号は、右側の計算量が左側のcosβ又はcosαの正負と一致することを保証し、さらに式(8)よりZ軸と基準軸Wの夾角φを計算して記録する、ことを特徴とする請求項1に記載の血流最適化モデルとニューラルネットワークを組み合わせた自動挿針方法。
【請求項6】
前記ステップ3において、選択機能を有するニューラルネットワークは、複数の中間層を含み、候補となる挿針点における血流相対速度と座標に対応するパラメータ(μ1,α1,β1,φ1),…(μ5,α5,β5,φ5) 、及びシリアル番号を、入力層の入力データとし、且つ専門スタッフが物理的に算出された座標と角度に評価フィードバックを行い、そのうちμは人体組織又は動物体内組織媒体中の超音波音速csに対する血流速度の比であり、(α,β,φ)は入射音波ビームと血流方向との夾角を確定し、
学習グループの評価フィードバック内容は、専門スタッフが他の装置を利用して実験サンプルに予め付けた好ましい挿針位置と実際に挿針する時の血管走行方向、及び優先順位に基づいて与えられたシリアル番号順位を含み、
学習された選択機能を有するニューラルネットワークは、入力データに基づいてパラメータ形式(p,α0,β0,φ0,d)で最適な挿針座標及び挿針角度を出力することができる、ことを特徴とする請求項1に記載の血流最適化モデルとニューラルネットワークを組み合わせた自動挿針方法。
【請求項7】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工知能及び医学分野に属し、具体的には血流最適化モデルとニューラルネットワークを組み合わせた自動挿針方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管への挿針は現代医療の至る所で行われており、小さいものは健康診断時の静脈採血から、大きいものは患者を応急処置する際の輸血輸液まである。しかし、静脈又は動脈を正確に見つけ、その走向方向を判断することは、多くの場合、医療スタッフにとって困難なことである。例えば、一部の人は血管が細かったり、皮下脂肪の筋肉層にしっかり包まれていたり、体表の毛が濃いため、人の目での視認性が低い。一方、動物の血管は獣毛に包まれており、人間の目では静動脈の走行方向を認識することが困難である。挿針に使用できる血管を正確に見つけることができないため、救急が遅れることがしばしばある。下手な挿針方法は、患者又は動物に何度も不必要に注射を受け、痛み、出血、さらには異なる程度の感染を出現させ、さらに医療事故、及び患者の家庭と医者の深刻な衝突を引き起こす可能性がある。
【0003】
超音波は、人間の目に見えない浅層及び深層組織の検出に用いることができ、特に人体及び動物の体内の血管を正確に検出し、位置を特定するのに適している。自然界の中で、吸血コウモリは持っている超音波能力によって動物と家畜の体の人間の目に見えない血管の分布を正確に判断し、そして吸血を達成する。人工的に開発された医療機器において、カラードップラー超音波画像装置は、与えられた断面内の血流の方向や流速などの2次元又は3次元の画像情報を提供することができる。
【0004】
しかし、現在、ドップラー超音波原理と血流最適化モデルに基づいて、画像化を必要としない自動挿針技術方法がまだ存在しない。
【発明の概要】
【0005】
従来技術の方法の欠点と不足に対して、本発明は、血流最適化モデルとニューラルネットワークを組み合わせた自動挿針方法を提案する。本発明は、具体的には以下の技術的態様によって実現される。
血流最適化モデルとニューラルネットワークを組み合わせた自動挿針方法であって、以下のステップを含む。
ステップ1:ドップラー超音波原理を利用して、自動超音波走査によって測定した血流フィードバック信号によって、挿針区域の血管位置と血流速度分布の空間角度関係を算出し、超音波血流情報を獲得する。
ステップ2:血流相対速度最適化モデルを構築し、その瞬時での最小値のモデルである瞬時最小化モデル式は以下の通りである。
ステップ3:上記好ましい挿針方案は、選択機能を持つニューラルネットワークと組み合わせ、最適な挿針点と挿針角度を決定し、最適な挿針方案を得る。
ステップ4:上述した最適な挿針方案に基づき、学習機能を持つニューラルネットワークを組み合わせ、医療スタッフの挿針手法を学習しシミュレーションし、挿針経路を得る。
【0006】
さらに、上記ステップ1は、複数組の周波数を有し、角度を調整可能な自動超音波走査と、超音波ドップラーに基づく血管位置及び血流速度の計算とを含む。通常の医療における超音波検査は手動式走査であるが、上記血流相対速度最適化モデルに必要な各変数値を獲得して自動挿針の目的を達成するために、挿針待ちの身体上の部位に対して発射角度と周波数を自動調整できる超音波走査を行い、ドップラー原理を利用して自動計測する。
【0007】
超音波走査は機動式又は静止式を採用し、機動式超音波走査は、超音波プローブが局部範囲内で可変の角度で自動的に回転することを要求し、そして可動支持体に沿って機動式並進走査をする。静止式超音波走査は、電子制御のフェーズドアレイモードを採用する。
【0008】
収集した超音波情報に基づいて、関連性のない情報をフィルタリングし、ドップラー超音波原理により、挿針される部位の皮下主要血管の局部空間分布、血流方向を含む必要な情報を復調し、計算した。超音波ドップラー原理を利用して血流空間角度の計測とマークを行う方法は以下の通りである。
【0009】
赤血球群は、X軸即ち血流方向に沿って速度vで移動し、Wは基準軸であり、上記基準軸は重力方向の垂直軸であってもよく、Z軸、X軸及びW軸は同一平面内にあり、そのうちZ軸はX軸に垂直であり、且つZ軸とWとの交角はφである。超音波プローブの放射周波数がf0である超音波は、体内媒質中で音速cSで検出ターゲットに伝播し、そして散乱信号を受信プローブに戻す。受信周波数はfrである。超音波入射平面は入射音波ビーム軸とZ軸が位置する平面P1であり、P1内のZ軸に垂直な軸はYである。超音波入射平面と血流方向との夾角はαであり、即ちX軸とY軸との夾角はαであり、入射音波ビーム軸とXY平面との夾角はβであり、即ち入射音波ビーム軸とY軸との夾角はβである。赤血球(群)が受信器方向に沿う散乱音波ビーム軸とZ軸が位置する散乱平面はP2であり、P2におけるZ軸に垂直な軸はY'であり、Y'軸と血流方向との夾角はα'であり、且つ散乱音波ビーム軸とY'軸との夾角はβ'である。入射音波ビーム軸とW軸との交角をγとし、散乱音波ビーム軸とW軸との交角をγ'とし、γとγ'の値は直接測定することができる。
【0010】
走査角度が変化した後に収集及びフィルタリングして抽出された有効超音波フィードバック帯域に基づき、指向復調によって一組のドップラーシフトを得て且つそれにより血管位置、血流流速変数を算出し、即ち周波数シフト変化方程式組、対応する遅延変化及び式(3)を利用し、相対流速及び相対角度パラメータ(μ,α,β,φ)を求め、さらに必要な挿針区域の局所血管が基準座標に対する分布及び走行方向を得る。超音波送信器と受信器が同一のプローブ内に位置し、即ち同一の空間位置にある場合、上記周波数シフト変化方程式組の式は以下のとおりである。
(8a)-(9)の各式において、±符号は、右側の計算量が左側のcosβ又はcosαの正負と一致することを保証する。△αと△βが正確に制御できる情況下で相対角度パラメータを求め、そして周波数シフト変化方程式から局部相対流速を得る。さらに、Z軸と基準軸wとの夾角φを式(3)により算出して記録する。
また、パラメータαを保持した場合にも、音程変化による遅延計算によりBの値を得ることができる。
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
さらに、上記ステップ3において、物理計測と血流相対速度最適化モデルから得られた好ましい挿針方案と実際の臨床表現スコアを利用し、選択機能を有するニューラルネットワークを学習し、一つの学習チップに集積する。上記選択機能を有するニューラルネットワークは、複数の中間層を含み、候補となる注射点の血流相対速度と座標に対応するパラメータ(μ1,α1,β1,φ1),…(μ5,α5,β5,φ5)及び(1,2,3,4,5)のシリアル番号を入力層の入力データとし、且つ経験的な医療従事者が物理的に算出した挿針座標と挿針角度に評価フィードバックを行う。そのうちμは人体組織又は動物体内組織媒体中の超音波音速csに対する血流速度の比である。α,β,φは入射音波ビームと血流方向との夾角を確定する。学習グループの評価フィードバック内容は、医療従事者が他の医療機器を利用して実験サンプルに予め付けた好ましい注射位置と実際に挿針する時の血管走行方向、及び優先順位に基づいて与えられたシリアル番号順位を含む。実験に注記された好ましい注射位置及び血管走行方向は、システムによる走査及び計算により、データ形式で上記選択機能を有するニューラルネットワークにフィードバックする。複数回の使用評価後、学習された選択機能を有するニューラルネットワークは、入力データに基づいてパラメータ形式(p,α0,β0,φ0,d)で最適な挿針座標及び挿針角度を出力することができる。
【0017】
【0018】
【0019】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
(1)本発明は、血流最適化モデルとニューラルネットワークの学習と判別機能を組み合わせることによって、血管上の最適な挿針位置を自動的に選択し、かつ専門スタッフの挿針手法を模して挿針経路を設計し、特殊な状況下で肉眼で血管を探す時の困難さを克服し、専門スタッフが不足する環境での自助救急の生存確率を向上させる。
(2)本発明は、人と動物が何度も挿針を失敗することによって引き起こされる苦痛を避ける又は減少することに有益である。
(3)本発明は、超音波ドップラー原理に基づくが、血流速度の関連データを使用して局部範囲内で空間座標の計算と最適化を行うだけでよく、三次元超音波イメージングを行う必要がなく、三次元超音波イメージングに必要な膨大な計算量と現像装置を省き、体積が小さく、重量が小さく、かつ携帯に便利な自動挿針装置を実現するための斬新な技術的方法の基礎を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】血流最適化モデルとニューラルネットワークとを組み合わせた自動挿針方法の全体フロー概略図である。
【
図2】ドップラーシフトの計算式における各角度パラメータ関係の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面と実施例を参照し、本発明を更に詳細に説明する。本明細書に記載された特定の実施形態は、本発明を説明するためだけのものであり、本発明を限定するものではない。
図1に示すように、血流最適化モデルとニューラルネットワークを組み合わせた自動挿針方法は、全体の実施過程によって超音波血流情報の獲得、血流相対速度最適化モデルの構築とニューラルネットワークの決定、及び自動挿針の3つの主要部分を含み、具体的なステップは以下の通りである。
【0022】
ステップ1:超音波血流情報の取得であり、ドップラー超音波原理を利用し、自動超音波走査により測定された血流フィードバック信号に基づき、注射区域の血管位置と血流速度分布を計算する。
【0023】
上記血流相対速度最適化モデルに必要な各変数値を獲得し、自動挿針の目的を達成するため、挿針待ちの部位に対して発射角度と周波数を自動調整できる超音波走査を行い、さらにドップラー原理を利用して自動計測する。超音波走査は機動式又は静止式で行うことができる。腕静脈の挿針を例にすると、機動式とは、超音波プローブが注射部位の周囲の一定の距離内で、自動的に皮膚の平行切断面内の腕軸方向に沿った平行移動を行うことができ、また一定の角度範囲内で軸方向の回転を行うこともできることである。そのため、プローブの小範囲の活動に供える適当な長さのホルダを配備しなければならない。静止式のプローブは、フェーズドアレイ、電子制御位相差を用いてフォーカスを実現することができ、可動空間が制限される身体上の部位により適用される。それ以外に、超音波発射機は一定の範囲内(7.5MHz以上)で自動調節し、多組の異なる周波数の超音波を発射することが必要である。挿針される部位は一般的に皮下の浅い所に位置するため、比較的高い超音波の周波数段を使用することができ、サンプリングの精度を高める。超音波走査は心拍が安定する時に行うべきであり、それにより心拍周期が相対的に安定することを確保し、且つ血流の乱れを回避又は減少する。
【0024】
挿針対象である人体のプライバシー保護を考えると、限られたスペース内でサンプリングを完了する必要がある。挿針装置全体は固定デバイスによって身体局部に固定され、かつ挿針を必要とする区域と相対的な静止を保持し、これにより超音波探測と挿針に必要な精度が保証される。良いサンプリング容積を選択することは、精確な血流情報を獲得することに対して非常に重要であり、挑戦的であり、例えばフェーズドアレイの数を増加することによってサンプリング格子の密度は向上し、精確性を向上させる。しかし、どのように精確にサンプリング容積を選択するかは本発明の上記方法の考慮範囲内ではない。以下の計算においていずれも極めて短い時間内に各箇所のサンプリング容積を良好に自動的に確定し且つ十分に正確な測定結果を得ることができることを前提としている。
【0025】
挿針装置の取り付け位置によって、1つの基準座標を選び、そしてドップラー超音波原理で血管位置、血流速度などの変数を自動的に計測する。以下では、超音波ドップラー原理を利用して血流方向の空間角度に対する計測と標識の1種の方法を述べる。
【0026】
図2に示すように、赤血球群はX軸方向(血流方向)に沿って速度vで移動するものとし、Wを基準軸とし、重力方向の鉛直軸をとり、Z軸、X軸とW軸は同一平面内にあり、Z軸はX軸に垂直であり、Z軸とWの交角はφとする。超音波プローブの発射周波数はf
0である。超音波は体内媒体中で音速c
sで検出対象に伝播し、そして散乱信号を受信プローブに戻し、周波数f
rで受信する。超音波入射平面は入射音波ビーム軸とZ軸がある平面P
1で、P
1内のZ軸と垂直する軸はYである。超音波入射平面と血流方向の夾角はαであり、即ちX軸とY軸の夾角はαである。入射音波ビーム軸とXY平面の夾角はβであり、即ち入射音波ビーム軸とY軸の夾角はβである。赤血球(群)の受信機方向に沿った散乱音波ビーム軸とZ軸が位置する散乱平面はP
2であり、P
2中のZ軸と垂直する軸はY'であり、Y'軸と血流方向の夾角はα'であり、かつ散乱音波ビーム軸とY'軸の夾角はβ'である。入射音波ビーム軸とW軸との交角をγとし、散乱音波ビーム軸とW軸との交角をγ'とし、そのうちγとγ'の値は直接測定することができる。入射音波ビーム軸と血流方向の夾角が大きすぎることを避けるべきで、即ちα、β、α'とβ'の初期値は確定待ちの量であるが、それが60度角を超えないことを確保して測量結果が精確でないことを避けるべきである。
超音波受信周波数f
r(t+Δt)及び入射周波数f
0(t)の関係式は、下記の通りである。
式(10)において、1はプローブと目標検出点との距離であり、tは超音波の送信時刻であり、t
kはβがβ+k△βとなり、αがそのままのときの信号の受信時刻を示す。
△αと△βが精確に制御できる場合、相対角度パラメータを求めることができ、周波数シフト変化方程式から局部相対流速を得る。このような測定において△α
j及び△β
kの値を正確に制御可能とするための一つの代替法は、血流速度を検出すべき各部位に対して一組の相対角度関係が固定された超音波パルス(フェーズドアレイを利用して正確に制御しやすい)を送信することである。周波数シフト変化方程式組の設定において、選択する周波数シフト強度は一定の閾値より高く、即ち大量の低強度周波数シフト情報は、非血流関連情報と対応し、事前に排除して考慮しないことができる。
【0027】
ステップ2:血流相対速度最適化モデルを確立し、物理測量と血流相対速度最適化モデルから一組の挿針位置と挿針角度の好ましい方案を得る。
【0028】
皮膚表面近くでμ値の血流方向の変化が緩やかで、かつ血流量が比較的大きい場所(太く分岐していない静脈に対応する)が理想的な挿針位置の候補と考えられ、(5つの仮定)をp1,p2,...,p5と記する。ここで、p1は物理計算によって得られた最適な挿針点であり、p2は次に善い挿針点である。順に類推する。
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
ステップ3:ステップ2で得られた好ましい挿針方案を、選択機能を有するニューラルネットワークと組み合わせ、最適な挿針点及び挿針角度を決定し、最適な挿針方案を得る。
【0035】
臨床効果を向上させるために、物理的な計測と数学的な最適化モデルから得られた最適値と実際の臨床表現スコアを利用して選択機能を有するニューラルネットワーク(ネットワーク1)を学習し、一つの学習チップに集積する。簡単な例としては、複数の中間層を持つ畳み込みニューラルネットワークを生成し、候補となる注射点に対応するパラメータ(μ1,α1,β1,φ1)...(μ5,α5,β5,φ5)及び(1,2,3,4,5)のシリアル番号を入力層の入力データとして、物理的に算出された挿針座標と挿針角度を経験豊富な専門スタッフが評価してフィードバックする方法がある。学習グループの評価フィードバックは、専門スタッフが他の装置を使用して実験試料上に予めマーキングした好ましい挿針位置及び実際の挿針時の血管走行方向、ならびに(2,1,3,5,4)などの優先順位に従って与えられたランキングを含むことができる。実験中に標記した最適な挿針位置と血管走行方向は、システムによる走査と計算によって、データ形式で神経ネットワークにフィードバックする。評価を複数回使用した後、選択機能を備えて学習されたニューラルネットワークは、入力データに基づいてより優れた出力スキームを提供することができ、挿針に使用できる最適な血管、挿針点p、及びその点における血流の正確な走行方向(α0,β0,φ0)を決定することができる。
【0036】
上記の物理計算、血流最適化モデルの計算、及びニューラルネットワークの学習は、(外付けの独立パソコンや大型計算機ではなく)小型チップ又は小型コンピューティングデバイスに統合でき、それによって、挿針装置全体を持ち運びやすくすることができる。したがって、最適化モデルの選択及びニューラルネットのノード数と層数の選択において、実際的な計算能力を満たすべきである。
【0037】
さらに注意しなければならないのは、本発明が必要とする装置は、ドップラー超音波原理を利用するが、カラードップラー血流イメージングシステムと比べて以下の本質的な違いがある。
本発明は、血流最適化モデルとドップラー原理を利用して血流速度分布を計算し、サンプリング容積が基準座標に対する正確な位置と角度を計算し、挿針を準備し、画像形成の必要がなく、体積が小さく、重量が小さく、携帯に便利である。カラードップラー血流イメージングは直感的で定性的なものであり、現在のカラードップラー血流イメージングシステムは、ディスプレイとコンピュータの協力が必要で、採集した超音波信号をデジタル超音波DSC処理を経てカラー画像を生成し、大量の時間を消費し、三次元画像の生成に必要な大量のデータを処理することに関連する。
【0038】
ステップ4:上記最適な挿針方案によって、針頭の移動を制御し、かつ最適な挿針点に正確に接触させ、挿針を開始する。挿針過程において、学習機能を持つニューラルネットワークを組み合わせ、プロの挿針手法を学習してシミュレーションし、挿針の角度と速度を自動的に調節して、挿針の経路を得る。
【0039】
【0040】
【0041】
本発明は、超音波を利用して局部の血流情報を精確に計測し、血流速度最適化モデルとニューラルネットワークを組み合わせて挿針位置と挿針角度を自動的に調整し、かつ専門スタッフの挿針手法を模して自動挿針を達成する。本発明の自動挿針技術方法は、携帯式自動挿針装置の製作に技術基礎を提供し、後続の医療従事者不足の環境で携帯式自動装置で注射と採血を達成することに便利を提供する。
【0042】
上記は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するためのものではなく、前述の実施例を参照して発明を詳細に説明したが、当業者にとっては、前述の各実施例に記載された技術的解決手段の修正、又はその一部の技術的特徴の均等な置換が依然として可能であることは理解され得る。本発明の精神及び原則内において行われた修正、均等な置換等は、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2024-11-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血流相対速度最適化モデルとニューラルネットワークを組み合わせた自動挿針方法であって、
ステップ1:ドップラー超音波原理を利用し
て超音波血流情報を取得する、すなわちドップラー超音波原理を利用して対象の人体又は動物の挿針を必要とする挿針待ちの身体上の部位である挿針待ち区域に対して自動
化された超音波走査
が行われることにより測定され
て自動挿針装置に送られた血流フィードバック信号により
算出される、前記挿針待ち区域の血流の速度と変位とに基づいて、血管位置と
血管の空間角度とを算
出する、
ステップ2:血流相対速度最適化モデル
として、その
単位時間当たりでの最小値のモデルである瞬時最小化モデル
の式
を以下の通り
構築し、
【請求項2】
【請求項3】
【請求項4】
【請求項5】
前記ステップ1において、前記血流相対速度最適化モデルに必要な各変数値を獲得し、自動挿針の目的を達成するため、挿針待ち
区域に対して発射角度と周波数を自動調整できる超音波走査を行い、さらにドップラー原理を利用して
血流方向の空間角度についての自動計測
をし、
超音波走査は機動式又は静止式を採用し、機動式の超音波走査は超音波プローブが局部範囲内に
おいて可変角度で自動的に回転することを
採用し、且つ可動ブラケットに沿って機動式並進走査を行い、静止式超音波走査は電子制御のフェーズドアレイモードを採用し、
超音波ドップラー原理を利用
した血流方向の空間角度に
ついての自動計測と
好ましい挿針方案の決定方法は下記の通りであり、
赤血球群はX軸方向
すなわち血流方
向に沿って速度vで移動するものとし、Wを基準軸とし、Z軸、X軸及びW軸は同一平面内にあり、Z軸はX軸に垂直であり、Z軸とWの
夾角はφとし、超音波プローブの発射周波数はf
0であり、超音波は
人体又は動物の体内媒体中で音速c
sで
前記挿針待ち区域に伝播し、そして散乱信号を受信プローブに戻し、周波数f
rで受信し、超音波の入射平面は入射音波ビーム軸とZ軸がある平面P
1で、P
1内のZ軸と垂直する軸はYであり、超音波入射平面と血流方向の夾角はαであり、即ちX軸とY軸の夾角は
前記αであり、入射音波ビーム軸とXY平面の夾角はβであり、即ち入射音波ビーム軸とY軸の夾角は
前記βであり、赤血球
群の受信機方向に沿った散乱音波ビーム軸とZ軸が位置する散乱平面はP
2であり、P
2中のZ軸と垂直する軸はY'であり、Y'軸と血流方向の夾角はα'であり、かつ散乱音波ビーム軸とY'軸の夾角はβ'であり、入射音波ビーム軸とW軸との
夾角をγとし、散乱音波ビーム軸とW軸との
夾角をγ'とし、そのうちγとγ'の値は直接測定することができ、
超音波受信周波数f
r(t+Δt)及び入射周波数f
0(t)の関係式は、下記の通りである、
【請求項6】
前記ステップ3において、
学習機能と選択機能
とを有するニューラルネットワークは、複数の中間層を含み
、
血流
の平均相対速度と
、前記挿針待ち区域において設定された座標軸である基準座標に対応するパラメータ(μ
1,α
1,β
1,φ
1),…(μ
5,α
5,β
5,φ
5)
、であって、且つ専門スタッフが物理的に算出された座標と角度に
つき評価
してシリアル番号を付したものを、前記自動挿針装置にフィードバックを行
ったものを入力層の入力データとし、
(α,β,φ)は入射音波ビームと血流方向との夾角を確定し、
前記シリアル番号は、専門スタッフによって順位付けがされた実験サンプルのデータのグループである学習グループ
に対する評価フィードバック内容
であって、専門スタッフが
前記自動挿針装置とは別の装置を利用して実験サンプルに予め付けた
、好ましい挿針位置と実際に挿針する時の血管走行方向、及び
候補となる注射点の血流の平均相対速度と基準座標に対応するパラメータ(μ
1
,α
1
,β
1
,φ
1
),…(μ
5
,α
5
,β
5
,φ
5
)」について付した、優先順位
であって、
ここで前記(α,β,φ)の定義は以下のとおりであり、すなわち、
赤血球群はX軸方向すなわち血流方向に沿って速度vで移動するものとし、Wを基準軸とし、Z軸、X軸及びW軸は同一平面内にあり、Z軸はX軸に垂直であり、Z軸とWの夾角はφとし、超音波プローブの発射周波数はf
0
であり、超音波は体内媒体中で音速c
s
で前記挿針待ち区域に伝播し、そして散乱信号を受信プローブに戻し、周波数f
r
で受信し、超音波の入射平面は入射音波ビーム軸とZ軸がある平面P
1
で、P
1
内のZ軸と垂直する軸はYであり、超音波入射平面と血流方向の夾角はαであり、即ちX軸とY軸の夾角は前記αであり、入射音波ビーム軸とXY平面の夾角はβであり、即ち入射音波ビーム軸とY軸の夾角は前記βである、
ことを特徴とする請求項1に記載の血流
相対速度最適化モデルとニューラルネットワークを組み合わせた自動挿針方法。
【請求項7】
【外国語明細書】