(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170322
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】ブロックコポリマー組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
C08F 297/04 20060101AFI20241129BHJP
H01M 50/497 20210101ALI20241129BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20241129BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20241129BHJP
H01M 6/18 20060101ALI20241129BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20241129BHJP
H01M 8/1018 20160101ALI20241129BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20241129BHJP
H01G 11/38 20130101ALI20241129BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20241129BHJP
H01G 11/56 20130101ALI20241129BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20241129BHJP
H01M 8/1023 20160101ALI20241129BHJP
【FI】
C08F297/04
H01M50/497
H01M10/0565
H01M4/62 Z
H01M6/18 E
H01B1/06 A
H01M8/1018
H01M8/10 101
H01G11/38
H01G11/52
H01G11/56
H01M50/449
H01M8/1023
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024085161
(22)【出願日】2024-05-24
(31)【優先権主張番号】63/504,455
(32)【優先日】2023-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523468079
【氏名又は名称】ノターク・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビジェイ・メータル
(72)【発明者】
【氏名】ロジャー・トチェット
(72)【発明者】
【氏名】サン・フン・チャン
【テーマコード(参考)】
4J026
5E078
5G301
5H021
5H024
5H029
5H050
5H126
【Fターム(参考)】
4J026HA06
4J026HA15
4J026HA16
4J026HA34
4J026HB06
4J026HB15
4J026HB16
4J026HB34
4J026HC06
4J026HC15
4J026HC16
4J026HC34
5E078AB01
5E078BA41
5E078CA06
5E078DA12
5G301CA30
5G301CD01
5G301CE01
5H021EE03
5H021EE15
5H021EE25
5H021HH01
5H024FF21
5H024HH01
5H029AJ02
5H029AJ06
5H029AJ11
5H029AM16
5H029HJ02
5H050AA02
5H050AA12
5H050AA14
5H050BA05
5H050BA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050DA11
5H050DA13
5H050EA28
5H050HA02
5H126AA05
5H126BB06
5H126GG18
(57)【要約】
【課題】多様な用途、例えば、酸化安定性、高いイオン伝導性及び電気化学的性能、並びに所望の機械的強度を付与する、電池の電解質、CEMなどのための改善された官能化ブロックコポリマーを提供すること。
【解決手段】本開示は、金属化スルホン化スチレンブロックコポリマー(SO3
-M+-SBC)組成物に関する。該組成物は、SBC前駆体のエポキシ化によって、続いてグリニャール試薬を使用したエポキシ化SBCのアルコール分解によって、次いでリチオ化及びスルホン化(インサイチュ)によって得られる。前駆体ポリマーは、順次のジブロック、トリブロック又はカップリング構造のうちのいずれかを有することができ、これは、少なくとも1種の金属化スルホン化されたブロックを伴って、テトラブロック、ペンタブロックコポリマーに延長されうる。SO3
-M+-SBCは、エネルギー貯蔵デバイス中の電解質としての使用に好適である。SO3
-M+-SBCは、酸性化の際にスルホン酸スチレンブロックコポリマー(SO3
-H-SBC)に変換される。SO3
-H-SBCは、カチオン交換膜としての使用並びに多数のイオン輸送及び水分輸送用途に好適である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリブロック、テトラブロック、ペンタブロック、及びカップリング構造のいずれかを含む金属化スルホン化スチレンブロックコポリマーであって、各構造が、
ABA、ABA’、A’B’A’;
ABB’A、ABA’A、ABB’A’;
ABA’BA、AA’BA’A、ABABA、AA’BA’A、ABB’A’A、A’B’A’B’A’;
(ABA)
nX、(AB)
nX、(BAB)
nX、(ABAB)
nX、(ABABA)
nX、(A’B’)
n、(A’B’)
n(A’)、(A’B’A’)
n、(A’B’A’)
nX、(A’B’)
nX、(B’A’B’)
nX、(A’B’A’B’)
nX又は(A’B’A’B’A’)
nX
(式中、
nは、2~30の整数であり、Xは、カップリング剤の残基であり、
水素化の前に、B及びB’は、同一であり又は異なり、独立に、1,4-イソプレン単位、1,2-ブタジエン単位、1,4-ブタジエン単位、及びこれらの混合物のうちのいずれかに由来し、
ブロックA及びA’は、同一であり又は異なり、独立に、(i)パラ置換ビニル芳香族モノマー又は(ii)非置換ビニル芳香族モノマーのいずれかに由来し、
ブロックB及びB’のそれぞれは、中間ブロックであり、下記式(I)
【化1】
(M
+は、Na
+、K
+、Li
+、Cs
+、Ag
+、Hg
+及びCu
+からなる群から選択され、
(CH
2)
y(式中、yは3~12である)は、スペーサ基である)
によるペンダント鎖中に金属化スルホン化(SO
3
-M
+)基を有するように官能化されている)
の一般構成を有し、
ASTM D7131-05に準拠し測定される0.5~8.0meq/gのイオン交換能(IEC)を有する、
金属化スルホン化スチレンブロックコポリマー。
【請求項2】
ブロックB及びB’が、それぞれ独立に、30~100mol%の範囲の金属化スルホン化(SO3
-M+)度を有する、請求項1に記載の金属化スルホン化スチレンブロックコポリマー。
【請求項3】
下記式(II)
【化2】
(式中、
R
1は、H、CH
3又はt-ブチル基であり、
m及びnは>1であり、
ブロックAは、重合されたパラ置換ビニル芳香族モノマーを含む末端ブロックであり、
官能化前の中間ブロックBは、エチレン単位及びブチレン単位又はプロピレン単位からなる)
による構造を有するトリブロックである、
請求項1又は2に記載の金属化スルホン化スチレンブロックコポリマー。
【請求項4】
ABB’A、ABA’A、ABB’A’
(式中、ブロックA及びA’は、同一の又は異なるポリマー中間ブロック又は末端ブロックであり、独立に、(i)パラ置換ビニル芳香族モノマー又は(ii)非置換ビニル芳香族モノマーのいずれかに由来する)
及びこれらの混合物の一般構成を有するテトラブロックである、
請求項1又は2に記載の金属化スルホン化スチレンブロックコポリマー。
【請求項5】
ABA’BA、AA’BA’A、ABABA、AA’BA’A、ABB’A’A、A’B’A’B’A’
(式中、ブロックA及びA’は、中間ブロック又は末端ブロックであり、同一であり又は異なり、独立に、(i)パラ置換ビニル芳香族モノマー又は(ii)非置換ビニル芳香族モノマーのいずれかに由来する)
及びこれらの混合物の一般構成を有するペンタブロックである、
請求項1又は2に記載の金属化スルホン化スチレンブロックコポリマー。
【請求項6】
S-CD-S、S-CD-CD’、S’-CD-S’;
S-CD-CD’-S、S-CD-S’-S、S-CD-CD’-S’;
S-CD-S’-CD-S、S-CD-S-CD-S、SS’-CD-S’S、S-CD-CD’-S’-S、S’-CD’-S’-CD’-S’、(S-CD-S)nX、(S-CD)nX、(CD-S-CD)nX、(S-CD-S-CD)nX、(S-CD-S-CD-S)nX、(S’-CD’-S’)nX、(S’-CD’)nX、(S’-CD’-S’CD’)nX又は(S’-CD’-S’-CD’-S’)nX
(式中、
nは、2~30の整数であり、
Xは、カップリング剤の残基であり、
CD及びCD’は、同一であり又は異なり、独立に、1,4-イソプレン単位、1,2-ブタジエン単位、1,4-ブタジエン単位、又はこれらの混合物のうちのいずれかに由来し、
S及びS’は、同一であり又は異なり、独立に、(i)パラ置換ビニル芳香族モノマー又は(ii)非置換ビニル芳香族モノマーのいずれかに由来する)
の一般構成を有するスチレンブロックコポリマー前駆体をスルホン化及び金属化することによって得られる、
請求項1又は2に記載の金属化スルホン化スチレンブロックコポリマー。
【請求項7】
M+がLi+であり、前記スチレンブロックコポリマー前駆体のスルホン化及びリチオ化によって得られる、請求項6に記載の金属化スルホン化スチレンブロックコポリマー。
【請求項8】
前記スチレンブロックコポリマー前駆体が、部分的に水素化されたスチレンブロックコポリマーであり、該部分的に水素化されたスチレンブロックコポリマーが、0.5~15meq/gの残存不飽和度を有する、請求項6に記載の金属化スルホン化スチレンブロックコポリマー。
【請求項9】
C3~C12の炭素原子を有する前記CH2スペーサ基が、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1,3-ブタンスルトン、C6~C12アルキルスルトン、トリルスルトン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるスルトンに由来する、請求項1又は2に記載の金属化スルホン化スチレンブロックコポリマー。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の金属化スルホン化スチレンブロックコポリマーを含むエネルギー貯蔵デバイスであって、該金属化スルホン化スチレンブロックコポリマーが、電極バインダ、電極、セパレータ及び電解質のうちのいずれかとして応用される、エネルギー貯蔵デバイス。
【請求項11】
リチウムイオン一次電池、リチウムイオン二次電池、キャパシタ、スーパーキャパシタ、燃料電池、金属-硫黄電池、ナトリウム-イオン電池及び金属-空気電池のいずれかである、請求項10に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項12】
請求項1又は2に記載の金属化スルホン化スチレンブロックコポリマーを含むフィルム。
【請求項13】
修飾されたポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリオレフィンを含む微多孔性膜上に応用される、請求項12に記載のフィルム。
【請求項14】
前記金属化スルホン化スチレンブロックコポリマーが液状電解質に溶解されており、該液状電解質が、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、又はこれらの混合物からなる群から選択される溶媒に溶解されたリチウム塩を含み、該リチウム塩が、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiTFSI、及びこれらの混合物を含む、請求項1又は2に記載の金属化スルホン化スチレンブロックコポリマー。
【請求項15】
電気化学的用途における使用のための膜を調製する方法であって、
請求項1又は2に記載の金属化スルホン化スチレンブロックコポリマーを、塩酸、臭化水素酸、硝酸、ヨウ化水素酸、塩素酸、硫酸、及びこれらの混合物からなる群から選択される酸溶液で酸性化させて、スルホン化スチレンブロックコポリマーを形成するステップ、
前記スルホン化スチレンブロックコポリマーをポリエチレングリコールと架橋させるステップ、及び、
架橋スルホン化スチレンブロックコポリマーをキャスト成形してフィルムを形成するステップであって、該フィルムが、1週間後、該フィルムの総初期重量に基づいて250%未満の水中膨潤度を有する、ステップ
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属化スルホン化スチレンブロックコポリマー組成物、調製の方法及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
カチオン交換膜(CEM)は、多くの電気化学デバイス、例えば燃料電池及び電解槽にとって重要な構成成分である。しかしながら、比較的低い水酸化物伝導性及び不十分な長期の化学的及び機械的安定性は、CEMベースの技術のより広い採択に対する大きな障壁となっている。これらの問題に対処するために、イオン交換容量を増加させ、膜ポリマーを架橋させるために、さまざまな合成アプローチが検討されてきた。しかしながら、これらのアプローチは、典型的に、カスタマイズ可能な機能及び改善した機械的特性を有する総合的な材料設計を達成するために、複数の合成ステップを要する。
【0003】
CEMの性能は、使用される材料のタイプに依存する。水素化スチレン-ブタジエンブロックコポリマー(SEBS)及び非水素化スチレンブロックコポリマー(USBC)は、柔質ブロック及び硬質ブロックが交互に配置され、主鎖が全て炭素の独自の特性により、相分離における応用の可能性が高く、及び耐アルカリ性に優れている。USBCは、不飽和の形態で十分な反応部位を有する。官能化SBCは、優れた膜加工性を付与する前駆体材料として働く。しかしながら、これらのポリマーに基づくCEMは、塩基性環境における安定性の低さ、イオン伝導性の低さ、並びに吸水及び主鎖不飽和の脆弱性に起因する機械的強度の低下という課題がある。
【0004】
スチレンブロックコポリマー(SBC)は、電池における電解質としての使用のためにそれらの特性を改質するよう官能化されうる。電解質は、CEMに似た多くの要請、例えば熱安定性、高いイオン伝導性及び優れた電気化学的性能を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電池の電解質、CEMなどのさまざまな用途に、酸化安定性、高いイオン伝導性及び電気化学的性能、及び所望の機械的強度を提供する、改善された官能化ブロックコポリマーが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
一態様において、本開示は、トリブロック、テトラブロック、ペンタブロック、及びカップリング構造のうちのいずれかを含む金属化スルホン化スチレンブロックコポリマーであって、各構造が、ABA、ABA’、A’B’A’;ABB’A、ABA’A、ABB’A’;ABA’BA、AA’BA’A、ABABA、AA’BA’A、ABB’A’A、A’B’A’B’A’;(ABA)nX、(AB)nX、(BAB)nX、(ABAB)nX、(ABABA)nX、(A’B’)n、(A’B’)n(A’)、(A’B’A’)n、(A’B’A’)nX、(A’B’)nX、(B’A’B’)nX、(A’B’A’B’)nX又は(A’B’A’B’A’)nX(式中、nは、2~30の整数であり、Xは、カップリング剤の残基である)。水素化の前に、ブロックB及びB’は、同一であり又は異なり、独立に、1,4-イソプレン単位、1,2-ブタジエン単位、1,4-ブタジエン単位、及びこれらの混合物のうちのいずれかに由来する。ブロックA及びA’は、同一であり又は異なり、独立に、(i)パラ置換ビニル芳香族モノマー又は(ii)非置換ビニル芳香族モノマーのいずれかに由来する。ブロックB及びB’のそれぞれは、中間ブロックであり、下記式(I)
【0007】
【化1】
(M
+は、Na
+、K
+、Li
+、Cs
+、Ag
+、Hg
+及びCu
+からなる群から選択され、(CH
2)y(式中、yは、3~12である)は、スペーサ基である)
によるペンダント鎖中に金属化スルホン化(SO
3
-M
+)基を有するように官能化されている。)の一般構成を有する。金属化スルホン化スチレンブロックコポリマーは、ASTM D7131-05に準拠し0.5~8.0meq/gのイオン交換能(IEC)を有する。
【0008】
別の態様において、各ブロックB及びB’は、独立に、30mol%~100mol%の範囲の金属化スルホン化(SO3
-M+)度を有する。
【0009】
なおも別の態様において、金属化スルホン化スチレンブロックコポリマーは、スチレンブロックコポリマー前駆体から得られる部分的に水素化されたスチレンブロックコポリマーである。部分的に水素化されたスチレンブロックコポリマーは、0.5~15meq/gの残存不飽和度を有する。
【0010】
いまだ別の態様において、エネルギー貯蔵デバイスは、金属化スルホン化スチレンブロックコポリマーを含む。金属化スルホン化スチレンブロックコポリマーは、電極バインダ、電極、セパレータ又は電解質のいずれかとして応用される。
【0011】
別の態様において、エネルギー貯蔵デバイスは、リチウムイオン一次電池、リチウムイオン二次電池、キャパシタ、スーパーキャパシタ、燃料電池、金属-硫黄電池又は金属-空気電池を含む。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の用語は、以下の意味を有する。
【0013】
「から本質的になる」は、特許請求されている組成物が、特許請求されている発明の新規な特性又は機能に実質的に影響を及ぼさない追加の構成成分を許容して、特定の材料を主に含有することを意味し、追加の構成成分が存在する場合、30%未満、又は20%未満、又は10%未満の量である。
【0014】
「少なくとも1種の[A、B及びCなどの基]」又は「[A、B又はCなどの基]のいずれか」は、群からの単一のメンバー、群からの1つ超のメンバー又は群からのメンバーの組み合わせを意味する。例えば、A、B及びCのうちの少なくとも1つには、例えば、Aのみ、Bのみ又はCのみ、並びにA及びB、A及びC、B及びC、又はA、B及びC又はA、B及びCの任意の他の全ての組み合わせが挙げられる。
【0015】
「A、B又はC」と提示されている実施形態の列挙は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、「A又はB」、「A又はC」、「B又はC」又は「A、B又はC」の実施形態を含むと解釈されることになる。
【0016】
「A、B又はCのいずれか」は、A、B又はCからの1つという選択肢を指す。
【0017】
「A、B及びCのいずれか」は、A、B及びCからの1つ以上という選択肢を指す。
【0018】
本明細書で使用される「ブロック」は、複数の同一の構成単位(モノマー)を有して、即時に近接したセクション(ブロック)中に現れない少なくとも1種の構成上の又は構成的な特徴を所有する、ポリマー分子のセクションを指す。
【0019】
「共役ジエン(CD)」は、1,3シクロヘキサジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、クロロプレン及びピペリレン又はこれらの任意の組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない1,3-ブタジエン及び置換されたブタジエンのいずれかでありうる、共役の炭素-炭素二重結合及び総計で4~12個の炭素原子、例えば4~8個の炭素原子を含有する有機化合物を指す。実施形態において、共役のジエンブロックは、ブタジエンモノマーとイソプレンモノマーとの混合物を含む。実施形態において、1,3-ブタジエン単独が使用される。
【0020】
「ブタジエン」は、1,3-ブタジエン又は1,4-ブタジエンを指す。
【0021】
「モノビニルアレーン」又は「モノアルケニルアレーン」又は「ビニル芳香族」は、単一の炭素-炭素二重結合、少なくとも1つの芳香族部分及び合計で8~18個の炭素原子、例えば8~12個の炭素原子を含有する有機化合物を指す。例には、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tertブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、アルファ-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン又はこれらの混合物のいずれかが挙げられる。実施形態において、モノアルケニルアレーンブロックは、実質的に純粋なモノアルケニルアレーンモノマーを含む。いくつかの実施形態において、スチレンは、小さい割合(10重量%未満)の構造的に関連するビニル芳香族モノマー、例えばo-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、a-メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン又はこれらの組み合わせを有する主要な構成成分である。実施形態において、スチレン単独が使用される。
【0022】
「ビニル含有量」は、ブタジエンの場合は1,2-付加を介して又はイソプレンの場合は3,4-付加を介して重合されて、モノ置換されたオレフィン又はポリマー主鎖に近接しているビニル基をもたらす共役ジエンの含有量を指す。ビニル含有量は、核磁気共鳴(NMR)によって測定されうる。
【0023】
「カップリング効率」は、%CEと表され、カップリングされたポリマーの重量%及びカップリングされていないポリマーの重量%の値を用いて計算される。カップリングされたポリマー及びカップリングされていないポリマーの重量%は、示唆屈折率検出器のアウトプットを用いて決定される。特定の溶出体積におけるシグナルの強度は、溶出体積において検出されるポリスチレン標準に相当する分子量の材料の量に比例する。
【0024】
「カップリング剤」又は「X」は、スチレンブロックコポリマーSBC技術の作製において通常使用されるカップリング剤、例えば、シランカップリング剤、例えばイソブチル-トリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン;ポリビニル化合物、ポリビニルアレーン、ジ-又はマルチビニルアレーン化合物;ジ-又はマルチエポキシド;ジ-又はマルチイソシアネート;ジ-又はマルチアルコキシシラン;ジ-又はマルチイミン;ジ-又はマルチアルデヒド;ジ-又はマルチケトン;アルコキシスズ化合物;ジ-又はマルチハロゲン化物、例えばハロゲン化ケイ素及びハロシラン;モノ-、ジ-又はマルチ無水物;ジ-又はマルチエステル;スズテトラクロリド;テトラメチルオルトシリケートを指す。
【0025】
ブロックコポリマーの「ポリスチレン含有量」又はPSCは、ビニル芳香族、例えばブロックコポリマー中のポリスチレンの重量%を指し、これは、全てのビニル芳香族ブロックの分子量の和を、ブロックコポリマーの総分子量で割ることによって算出される。PSCは、プロトン核磁気共鳴(NMR)などの任意の好適な方法論を用いて決定されうる。
【0026】
「分子量」又はMWは、ポリマーブロック又はブロックコポリマーのkg/molにおけるスチレン当量分子量を指す。MWは、ASTM5296-19に準拠して行われるような、ポリスチレン較正標準を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されうる。GPC検出器は、紫外線若しくは屈折率検出器又はこれらの組み合わせとすることができる。クロマトグラフは、市販のポリスチレン分子量標準を用いて較正される。そのように較正されるGPCを用いて測定されるポリマーのMWは、スチレン当量分子量又は見かけの分子量である。本明細書で表されるMWは、GPC痕跡のピークにおいて測定され、通常スチレン当量「ピーク分子量」と称され、Mpと指定される。
【0027】
「残存不飽和度(RU)」は、不飽和のレベル、すなわちブロックコポリマー1g当たりの炭素-炭素二重結合を指す。RUは、プロトンNMRを用いて測定されうる。
【0028】
「pHSBC」は、部分的な又は部分的に水素化されたスチレンブロックコポリマーと互換的に使用される。
【0029】
「中間ブロック」は、末端(terminal)ブロック(又は末端(end)ブロック)同士の間に位置されているマルチブロックコポリマー構造(例えばSBC)中のブロックを指す。中間ブロックは、中央ブロック、例えばAAMAA又はAMAA(式中、「A」は、末端(terminal)ブロック又は末端(end)ブロックである)の構造中のM(中間ブロック)であってもなくてもよい。
【0030】
「末端(end)ブロック」は、マルチブロックコポリマー構造(例えばSBC)中の末端(terminal)ブロック、例えば「AMMA」の例における「A」を指す。
【0031】
「架橋」は、共有結合によって2つ以上の分子を化学的に結合させるプロセスを指す。それはまた、ここで、適当な触媒の存在下でポリマー鎖上の官能基と反応することができるモノマーが分枝鎖の増殖からのグラフトをもたらし、それらのうちのいくつかが構造の他の鎖と反応するプロセスを指す。架橋ステップは、熱処理若しくは放射線処理(UV)を使用した又は中和を使用した硬化によって達成されうる。架橋試薬は、ポリマー又は他の分子上に、特定の官能基(第一級アミン、アクリレート、スルフィドなど)に対して反応性末端を含有することができる。
【0032】
「膜」は、材料(フィルム又はコーティングなど)の連続的な曲げやすいシート又は層を指し、これは、何らかのもの、例えば分子、イオン、気体又は粒子などを通過させるが他のものを止める選択的バリアとして機能することができる。
【0033】
「カチオン交換膜」又は「アルカリ交換膜」又は「CEM」は、一般にイオノマーから作製されて、アニオンを伝導しカチオンに反発するように設計されている半透過性の膜を指す。
【0034】
「カチオン交換膜電解槽」(CEMEL)は、アノードをカソードから分離するポリマー電解質膜を有する電解槽を指す。電解槽は電気を使用して、電気化学的反応を通して水(H2O)を水素と酸素とに分ける。
【0035】
「燃料電池」は、燃料(例えば水素)及び酸化剤(例えば酸素)の化学的エネルギーを、1組のレドックス反応を通じて電気へと変換する電気化学的電池を指す。
【0036】
「イオン交換能」又はIECは、ポリマー中の、イオン交換を左右する全ての活性部位又は官能性基を指す。従来の酸塩基滴定方法はIECを決定するのに使用され得、International Journal of Hydrogen Energy、第39巻、第10号、2014年3月26日、5054~5062頁、「Determination of the ion exchange capacity of anion-selective membrane」を参照されたい。IECは、「当量」又はEWの逆であり、これは、交換可能なプロトン1モルを付与するのに必要とされるポリマーの重量である。
【0037】
「Liイオン電池」は、リチウムベースの貯蔵システムを指すが、本明細書で使用されるときは、この用語はまた、エネルギー貯蔵システムにおける使用のための、ナトリウム、カリウム、セシウム、銀、水銀、銅などの他の金属(M+)の用途も含む。
【0038】
「充電能力」は、一定の電池電圧に到達されるまでの、電流値における一定の電流充電によって得られる能力を指す。
【0039】
「放電能力」は、電池電圧が一定の値に到達するまでの、電流値における電池の放電を指す。
【0040】
「金属化スルホン化ブロックコポリマー」又は「SO3
-M+-ブロックコポリマー」は、金属化スルホン化スチレンブロックコポリマー(SO3
-M+-SBC)又は部分的に水素化された金属化スルホン化スチレンブロックコポリマー(SO3Li-pHSBC)を指す。金属化スルホン化ブロックコポリマーという用語は、SO3Li-SBC又はSO3Li-pHSBCとして互換的に使用されうる。金属(M+)は、Li、Na、K、Cs、Ag、Hg又はCuのうちのいずれかである。
【0041】
本開示は、金属化スルホン化スチレブロックコポリマー(SO3
-M+-SBC)組成物に関する。SO3
-M+-SBCは、i)SBC前駆体の水素化、続くエポキシ化、ii)エポキシ化SBCのアルコール分解並びにiii)インサイチュの金属化及びスルホン化によって得られる。SBC前駆体は、金属化スルホン化(SO3
-M+-)官能基を有するブロックのうちの少なくとも1種を有する、トリブロック、テトラブロック、ペンタブロック、又はカップリング構造のいずれかでありうる。SO3
-M+-SBCは、CEM又はCEM水電解槽としての使用に好適である。
【0042】
金属化スルホン化ブロックコポリマー(SO3
-M+-ブロックコポリマー):金属化スルホン化ブロックコポリマー(SO3
-M+-ブロックコポリマー)組成物は、SO3
-M+-SBCを得るために、エポキシ化された、加水分解された、かつ金属化スルホン化された、スチレンブロックコポリマー(SBC)又は部分的に水素化されたスチレンブロックコポリマー(p-HSBC)前駆体を、含む、それらから本質的になる又はそれらからなる。実施形態において、p-HSBCは、SBC前駆体から調製される。実施形態において、SO3
-M+-SBCは、トリブロック、テトラブロック、ペンタブロック又はA、A’、B及びB’(式中、A、A’及びB、B’は、同一であり又は異なる)ブロックを含有するカップリング構造のうちのいずれかである。全ての構造において、各B又はB’ブロックは、中間ブロックであり、下記式(I)
【0043】
【化2】
(式(I)中、M
+は、Na
+、K
+、Li
+、Cs
+、Ag
+、Hg
+及びCu
+からなる群から選択され、(CH
2)
y(式中、yは、3~12である)は、アルキルスペーサ基である。好ましくは、M
+は、Na
+、K
+又はLi
+のうちのいずれかである)
によるペンダント鎖中に金属化スルホン化(SO
3
-M
+)部分を有するように官能化されている。
【0044】
実施形態において、SBC前駆体又はベースポリマーは、それら自体により又は1種以上のモノアルケニルアレーンモノマーを伴って、少なくとも1種の共役ジエンを含む1種以上のオレフィンを共重合することによって調製される。コポリマーは、先細であってもなくてもよく、個々のブロックは、ホモポリマー又はランダムコポリマーであってもよく、ポリマー分子は、直鎖状であっても分枝状であってもよい。
【0045】
実施形態において、SBC前駆体は、順次のジブロック構造の群、例えば、S-CD、S-CD/CD’又はS-CD/S、順次のトリブロック構造、例えばS-CD-S、S-CD-CD’、S’-CD-S’、テトラブロック構造、例えばS-CD-CD’-S、S-CD-S’-S、S-CD-CD’-S’、ペンタブロック構造、例えばS-CD-S’-CD-S、S-CD-S-CD-S、SS’-CD-S’S、S-CD-CD-’S’-S、S’-CD’-S’-CD’-S’又はカップリング構造、例えば(S-CD-S)nX、(S-CD)nX、(CD-S-CD)nX、(S-CD-S-CD)nX、(S-CD-S-CD-S)nX、(S’-CD’-S’)nX、(S’-CD’)nX、(S’-CD’-S’-CD’)nX又は(S’-CD’-S’-CD’-S’)nX及びこれらの混合物から選択される構造を有し、Xは、カップリング剤の残基である。実施形態において、Sブロック及びS’ブロックは、同一であり又は異なり、独立に、(i)パラ置換ビニル芳香族モノマー及び(ii)非置換ビニル芳香族モノマーのいずれかに由来し、各CDブロック及びCD’ブロックは、同一であり又は異なり、独立に、1,4-イソプレン単位、1,2-ブタジエン単位、1,4-ブタジエン単位、及びこれらの混合物に由来する。
【0046】
「n」は、構造のそれぞれにおける「腕」又は「分枝」の数を指し、nは、1超の整数である。実施形態において、nは、2~30又は2~20又は2~10又は2~7の範囲である。
【0047】
実施形態において、各ブロックS及びS’は、独立に、スチレン、アルファ-メチルスチレン、メチルスチレン、パラ-メチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、tert-ブチルスチレン、ジメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルトルエンの異性体、ビニルキシレン、1,1-ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0048】
実施形態において、各ブロックS及びS’は、独立に、3~300kg/mol、5~250kg/mol又は10~200kg/mol又は3~150kg/mol又は5~225kg/mol又は20~220kg/molの分子量(Mp)を有する。実施形態において、ポリマーブロックS及びS’は、SBCの総重量に基づいて、50重量%以下又は5~55重量%又は10~35重量%又は15~25重量%又は5~20重量%又は5~15重量%、5~20重量%を占める。
【0049】
実施形態において、ポリマーブロックCD及びCD’のそれぞれは、独立に、イソプレン、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、ファルネセン、ピペリレン、シクロヘキサジエン及びこれらの混合物からなる群から選択される共役ジエンモノマーのポリマー又はコポリマーを含む。
【0050】
実施形態において、ポリマーブロックCD及びCD’のそれぞれは、独立に、2~350kg/mol又は5~300kg/mol又は7~250kg/mol又は10~200kg/mol又は5~150kg/mol又は3~100kg/molの分子量(Mp)を有する。実施形態において、ポリマーブロックCD及びCD’は、SBCの総重量に基づいて、最大で100重量%又は70~95重量%又は75~95重量%又は80~95重量%又は85~95重量%又は75~85重量%又は80~90重量%又は75重量%以上を構成する。
【0051】
金属化スルホン化スチレンブロックコポリマー(SO3
-M+-SBC):実施形態において、SBC前駆体は、水素化され、エポキシ化され、次いで加水分解され、その後インサイチュで金属化及びスルホン化されて、金属化スルホン化スチレンブロックコポリマーを形成する。実施形態において、金属化スルホン化スチレンブロックコポリマーは、トリブロック、テトラブロック、ペンタブロック、又はカップリング構造のいずれかを有し、各構造が、ABA、ABA’、A’B’A’;ABB’A、ABA’A、ABB’A’;ABA’BA、ABABA、AA’BA’A、ABB’A’A、A’B’A’B’A’;(ABA)nX、(AB)nX、(BAB)nX、(ABAB)nX、(ABABA)nX、(A’B’A’)nX、(A’B’)nX、(B’A’B’)nX、(A’B’A’B’)nX若しくは(A’B’A’B’A’)nX(式中、nは、2~30の整数であり、Xは、カップリング剤の残基である)の一般構成を有する。実施形態において、B及びB’は、同一であり又は異なり、独立に、1,4-イソプレン単位、1,2-ブタジエン単位、1,4-ブタジエン単位、及びこれらの混合物のうちのいずれかに由来する。A及びA’は、同一であり又は異なり、独立に、(i)パラ置換ビニル芳香族モノマー又は(ii)非置換ビニル芳香族モノマーのいずれかに由来する。
【0052】
実施形態において、SO3
-M+官能化されているブロックB又はB’は、グリニャール反応において加水分解SBCから生成され、反応性求核試薬は、SN2型の反応においてエポキシドと反応する。脱離基は、アルコキシドの形態にあるエポキシドの酸素原子であり、これは、酸性ワークアップにおいてアルコールに変換される。
【0053】
実施形態において、SBCは、金属酸化物とC3~C12スルトン化合物との混合物からSO3
-M+官能化される。金属化ステップのための金属酸化物の例には、リチウム、セシウム、ナトリウム、カリウムの各酸化物及びこれらの混合物が挙げられる。スルトンの例には、環中に炭素-酸素-硫黄-炭素の結合を含有するものが挙げられ、6価の硫黄原子は、2個のさらなる酸素原子にさらに結合される。実施形態において、官能化に使用されるスルトンは、6~12個の炭素原子を含有する。これらのスルトンは、最小の発泡の産生により特徴付けられる。例には、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1,3-ブタンスルトン、長鎖アルキルスルトン(C6~C12)、トリルスルトン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0054】
実施形態において、SO3
-M+-SBCは、下記式(II)
【0055】
【化3】
(式中、R1は、H、CH
3又はt-ブチル基であり、m及びnは>1であり、Aは、重合されたパラ置換ビニル芳香族モノマーを含む末端ブロックであり、官能化前の中間ブロックBは、エチレン単位及びブチレン単位又はプロピレン単位からなる)
による構造を有するトリブロックである。
【0056】
実施形態において、ポリマーブロックBは、官能化単位の95%超を占める。実施形態において、式(II)のSO3
-M+-SBCは、ポリマーブロックAのポリマーブロックBに対する重量比15:5~19:1又は16:4~18:2を有する。式(I)のブロックコポリマー中のSO3
-M+-SBC官能化度は、モノマー単位の総数に基づいて、30mol%~95mol%又は15~80mol%又は20~70mol%又は25~60mol%の範囲であり又は20mol%超又は50mol%超である。
【0057】
実施形態において、SO3
-M+-SBCは、ABB’A、ABA’A及びこれらの混合物の一般構成を有するテトラブロックである。
【0058】
実施形態において、SO3
-M+-SBCは、ABA’BA、AA’BA’A、ABABA、AA’BA’A及びこれらの混合物の一般構成を有するペンタブロックである。
【0059】
実施形態において、ポリマーブロックB及びB’は、中間ブロックであり、同一であり又は異なり、独立に、1,4-イソプレン単位、1,2-ブタジエン単位、1,4-ブタジエン単位又はこれらの混合物に由来する。ブロックA及びA’は、中間ブロック又は末端ブロックであり得、同一であり又は異なり、独立に、i)パラ置換ビニル芳香族モノマー又はii)非置換ビニル芳香族モノマーのうちのいずれかに由来する。
【0060】
部分的に水素化された金属化スルホン化スチレンブロックコポリマー(SO3
-M+-pHSBC):実施形態において、SBC前駆体は、それをSO3
-M+-pHSBCへと変換する前に、SO3
-M+-SBCを作製するために検討された類似した一連のステップを介して、部分的に水素化されている。部分的に水素化されたスチレンブロックコポリマー(pHSBC)は、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン(S-E/B-S)、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロックコポリマー(S-EB-S-EB-S)、スチレン-エチレン/ブチレン/スチレン-スチレン(S-EB/S-S)、スチレン-スチレン/エチレン/ブチレン-スチレン(S-S/EB-S)、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロックコポリマー(S-EB-S-EP-S)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンブロックコポリマー(S-EP-S-EP-S)及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0061】
SBC前駆体は部分的に水素化されており、これは、水素化共役ジエンが、20~90%又は25~85%又は20%超又は40%超又は70%未満又は80%未満又は85%未満又は50~85%又は55~80%又は60~75%の水素化レベルを有していることを意味する。水素化レベルは、水素化の際に飽和されるようになる元々の不飽和結合のパーセンテージを指す。水素化ビニル芳香族ポリマーにおける水素化のレベルは、UV-VIS分光光度法及び/又はプロトンNMRを用いて決定されうる。水素化ジエンポリマーにおける水素化レベルは、プロトンNMRを用いて決定されうる。
【0062】
実施形態において、部分的に水素化されたブロックコポリマーは、ポリマー中、残存脂肪族二重結合を初期に含有する。残存脂肪族二重結合は、官能基との反応のために優れた部位を付与する。実施形態において、部分的に水素化された共役ジエンは、20meq/g未満又は15meq/g未満又は10meq/g未満又は8meq/g未満又は3meq/g超又は5meq/g未満又は2~15meq/g又は0.5meq/g超の残存不飽和度又はRUを有する。
【0063】
実施形態において、pHSBC中のポリマーブロックB及び/又はB’は、(重合されたブタジエンモノマー又はイソプレンモノマーに由来する)水素化の後、20meq/g未満又は15meq/g未満又は10meq/g未満又は8meq/g未満又は3meq/g超又は5meq/g未満又は2~15meq/g又は0.5meq/g超のRUを有する。
【0064】
実施形態において、pHSBCは、5~75重量%又は15~45重量%又は20~40重量%又は25~35重量%又は35重量%超又は50重量%未満の平均1,2-ビニル又は3,4-ビニル含有量を有する。ビニル含有量は、水素化の前に又は後に、プロトンNMRを介して測定されうる。
【0065】
実施形態において、ポリマーブロックB及びB’のそれぞれは、ポリマーブロックB中の総1,3-ブタジエン単位に基づいて、40~70重量%又は45~65重量%又は50~60重量%又は45重量%超又は65重量%未満の量の重合された1,2及び1,3-ブタジエン単位を有する。
【0066】
実施形態において、ポリマーブロックB及びB’のそれぞれは、ポリマーブロックB中の総イソプレン単位に基づいて、5~15重量%又は6~12重量%又は5~10重量%の量の重合された3,4イソプレン単位を有する。
【0067】
実施形態において、水素化前のpHSBCは、0~40重量%又は15~35重量%又は8~30重量%又は45重量%未満又は40重量%未満のポリスチレン含有量を有する。
【0068】
実施形態において、水素化前のpHSBCは、5~500kg/mol又は20~400kg/mol又は50~200kg/mol又は10~200kg/mol又は20~100kg/mol又は30~300kg/molの分子量(Mp)を有する。
【0069】
実施形態において、SO3
-M+-pHSBCコポリマーは、トリブロック構造を有し、ブロックB又はB’は、重合されたエチレン単位、ブチレン単位又はプロピレン単位又はこれらの混合物からなり、官能化されていない最大で20%の非水素化単位を含有する。実施形態において、トリブロックSO3
-M+-pHSBCは、ブロックA(及びA’)のブロックB(又はB’)に対する重量比5:15~1:19又は4:16~2:18の範囲を有する。
【0070】
任意選択的な添加剤:
実施形態において、SO3
-M+-SBC組成物は、活性剤、硬化剤、ジアミン系とは異なる架橋剤、安定化剤、中和剤、増粘剤、合体剤、平滑剤、離型剤、オゾン劣化防止剤、色変化pH指示剤、可塑剤、粘着付与剤、成膜添加剤、染料、顔料、UV安定化剤、UV吸収剤、他の樹脂、レドックスカップル、難燃剤、粘度修飾剤、湿潤剤、脱気剤、着色剤、熱安定化剤、光安定化剤、潤滑剤、流動性改良剤、防滴剤、抗ブロッキング剤、帯電防止剤、加工助剤、応力緩和添加剤、結合剤及びこれらの混合物からなる群から選択される任意選択的な添加剤をさらに含む。
【0071】
実施形態において、任意選択的な添加剤は、靭性及び総合強度を増強するために又は膜中の、制御された多孔性を達成するために、低アスペクト比のフィラーをさらに含む。その一方、高アスペクト比のフィラーは、支持構造を有していない膜中の靭性及び引張強度を増大させるのに使用される。
【0072】
実施形態において、低アスペクト比のフィラーは、5未満又は4未満又は3未満又は2未満又は1.5未満又は1超のアスペクト比を有する。低アスペクトフィラーは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属カーボネート、スルフェート及びホスフェート並びにこれらの混合物からなる群から選択される。例には、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム及びこれらの混合物が挙げられる。実施形態において、高アスペクト比のフィラーは、50~1500又は200~1400又は350~1350又は400~1250又は500~1100のアスペクト比を有する。例には、シリケート、アルミナ、炭素及びこれらの混合物が挙げられる。
【0073】
実施形態において、添加剤は、SO3
-M+-SBC組成物の総重量に基づいて、最大で10重量%又は0.1~10重量%又は0.5~5重量%又は1~10重量%又は1~5重量%の量で使用される。
【0074】
実施形態において、SO3
-M+-SBCは、イオン伝導性の増大を促進させるために、少なくとも可塑剤、高い比誘電率の溶媒又は液状電解質をさらに含む。可塑剤の例には、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(BEHP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジイソブチル(DIBP)又はこれらの混合物が挙げられる。実施形態において、高い比誘電率の溶媒は、炭酸プロピレン(PC)、炭酸エチレン(EC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸エチルメチル(EMC)又はこれらの混合物から選択される。実施形態において、液状電解質は、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiTFSIなどの電解質を、SO3
-M+-SBCに添加する前に、高い比誘電率の溶媒に溶解することによって形成される(すなわちリチウム塩)。
【0075】
任意選択的なポリマー構成成分:実施形態において、SO3
-M+-SBC組成物は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリケトン、ポリ(2,6ジメチル1,4フェニレン)エーテル、ポリ(p-フェニレンオキシド)(PPO)、ポリフェニレンエーテル、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリビニリデンフルオリド、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、エチレン-ビニルアルコールコポリマー、ポリビニリデンクロリド、ポリアクリレート、ポリtertブチルスチレン及びこれらの混合物からなる群から選択される別のポリマーとさらにブレンドされる。
【0076】
任意選択的なポリマー構成成分の分子量は、SO3
-M+-SBCと第2の(任意選択的な)ポリマーとの間の混和性を得るように調整されうる。実施形態において、任意選択的なポリマー構成成分は、1~15kg/mol又は2~12kg/mol、7~9kg/mol又は10~12kg/molの範囲の分子量を有するPPOから選択される。実施形態において、第2の(任意選択的な)ポリマーのMWとAブロックのMWとの比は、5:1~1:2又は4:1~3:1又は2:1~1:1の範囲である。
【0077】
実施形態において、SO3
-M+-SBCとブレンディングするための第2のポリマーは、SO3
-M+-SBCのポリスチレンブロックの重量に対して、0.1~50重量%又は1~35重量%又は5~30重量%又は15重量%超又は25重量%未満又は15~25重量%の量で存在する。
【0078】
酸性化剤:
実施形態において、SO3
-M+-SBCは、SBC中にSO3H官能化を得るために、塩酸(HCL)、臭化水素酸(HBr)、硝酸(HNO3)、ヨウ化水素酸(HI)、塩素酸(HCLO3)、硫酸(H2SO4)及び、これらの混合物からなる群から選択される強酸溶液でさらに酸性化させる。実施形態において、ブロックコポリマー中のスルホン化度は、モノマー単位の総数に基づいて、30mol%~95mol%又は15~80mol%又は20~70mol%又は25~60mol%又は20mol%超、又は50mol%超の範囲である。
【0079】
SO3
-M+-ブロックコポリマーを形成する方法:SO3
-M+官能化ブロックコポリマーは、一連の反応ステップにおいて形成されうる。実施形態において、前駆体SBCは、既知の方法によって付与される又は調製される。前駆体は、モノマー及び開始剤の段階的添加を伴う、開始剤の存在下での溶液中の(溶媒中の)モノマーの順次の(又は連続的な)重合、続く水素化(又は部分的水素化)によって調製されうる。前駆体は、水素化ステップの前に、得られたブロックコポリマーをカップリング剤でカップリングすることによって調製されうる。
【0080】
実施形態において、エポキシ化SBCが付与され又は(付与された又は調製された)SBC前駆体が既知の方法によってエポキシ化される(e-SBC)。実施形態において、SBCのエポキシ化は、過酢酸、酢酸及び硫酸の存在下での過酸化水素又はギ酸などの低分子量の脂肪酸の存在下での過酸化水素によって例示される過酸を使用して実施される。比較的低い温度が利用され、例えば25~40℃であり、0.5~4時間の反応時間が、共役ジエンポリマーブロック中で所望される高いエポキシ化度を果たすのに通常十分である。
【0081】
実施形態において、e-SBCは、官能化されやすいポリマーブロック、すなわちブロックBに対して、1~90%又は1~99又は3~95%又は5~90%又は10~85%又は10~80%又は10~75%、10~60%、15~50%又は15%超又は20%超のエポキシ化度を有する。e-SBC中のエポキシの量は、滴定、FTIR又は1HNMRによって測定されうる。
【0082】
ベースブロックコポリマー(水素化SBC)に添加される官能化/エポキシ化剤の量は、官能化の所望のレベルに基づいて多様である。実施形態において、エポキシ化剤は、ベースブロックコポリマーの総重量に対して、0.1~20重量%又は0.5~15重量%又は1~12重量%又は2~10重量%の範囲の量で添加される。
【0083】
実施形態において、エポキシ化ベースポリマー(e-SBC)は、官能化されやすいポリマーブロックに対して、最大で100%又は1~99%又は5~90%又は10~80%又は20~70%又は30~90%又は40~80%又は40%超又は50%超のエポキシ化度を有する。
【0084】
実施形態において、e-SBCのアルコール分解は、e-SBCをグリニャール試薬と反応させることによって実施され、例えば、R-MgBrを、SN2型反応を介して、ヒドロキシル-SBCコポリマーを生成する。次いで、ヒドロキシル-SBCコポリマーは、金属酸化物とスルトンとの、10:90又は20:80又は30:70又は40:60又は50:50の比における混合物と、有機溶媒中又はこれらの混合物中、インサイチュで反応させることによって、SO3
-M+-SBCブロックコポリマーに変換される。溶媒の例には、n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチレンクロリド、エチレンクロリド、イソプロピルアルコール、アセトン、N,N-ジメチルアセタミド、1-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジオキソラン、2-メトキシエタノール、ジメチルホルムアミド、ベンジルアルコール及びこれらの混合物が挙げられる。
【0085】
SO3
-M+-SBCは、SO3H官能化を得るために、強酸溶液を使用してさらに酸性化される。
【0086】
実施形態において、SO3
-M+-SBCは、最終的な用途のものを調製するために、薄片として又は溶液中(溶媒中)で又はペレットとして使用されうる。実施形態において、溶液中のSO3
-M+-SBCはまた、その後の最終用途における使用のためにフィルム又は膜へと作製することもできる。
【0087】
SO3
-M+-SBCを含有する膜又はフィルム:実施形態において、形成されるSO3
-M+-SBCは、溶媒に溶解され、膜又はフィルムへと作製するためにその後使用される。溶媒の例には、n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチレンクロリド、エチレンクロリド、イソプロピルアルコール、アセトン、N,N-ジメチルアセタミド、1-メチル-2-ピロリジノン、1,3-ジオキソラン、2-メトキシエタノール、ジメチルホルムアミド、ベンジルアルコール、トルエン、キシレン、ジメチルスルホキシド及びこれらの混合物が挙げられる。
【0088】
実施形態において、SO3
-M+-SBCポリマーに加えて、架橋剤、添加剤、アルキルハロゲン化物で置換されたSBC以外のポリマーなどを含む任意選択的な構成成分もまた使用されて/溶媒に添加されて、膜/フィルムを形成しうる。
【0089】
実施形態において、膜(フィルム)は、既知の方法、例えばキャスト成形、エレクトロスピニング、押出、圧縮、コーティング、例えばディッピング、フローコーティング、ロールコーティング、バーコーティング、スプレーコーティング、カーテン、輪転グラビア印刷、ブラッシング、巻線ロッドコーティング、パンフェッド逆ロールコーティング、無電解ニッケルコーティング、スプレー、ナイフコーティング、スピンコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、超音波スプレーコーティング、プリンティング、フィルム転送などによって形成される。フィルムは、連続又はバッチプロセス中、真空あり又はなしで、20℃~210℃又は30~180℃又は35~150℃又は40~100℃にて乾燥されうる。実施形態において、フィルムは、スタンドアローン型フィルムであり又はイオン透過性基板、例えばガラス、カーボン又は他の織布若しくは不織布マット、ポリマー又は充填ポリマー、プラスチックフィルム、セラミクス、陶材の多孔質剛性基板などにより支持される。
【0090】
別の実施形態において、膜(フィルム)は、キャスト成形、エレクトロスピニング、押出、圧縮、コーティング、例えばディッピング、フローコーティング、ロールコーティング、バーコーティング、スプレーコーティング、カーテン、輪転グラビア印刷、ブラッシング、巻線ロッドコーティング、パンフェッド逆ロールコーティング、無電解ニッケルコーティング、スプレー、ナイフコーティング、スピンコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、超音波スプレーコーティング、プリンティング、フィルム転送などの方法を用いて、エネルギー貯蔵デバイスの電極上に直接形成される。リチウムイオン電池の場合、膜(フィルム)は、カソード又はアノード上に直接形成されうる。好適な電極は、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(NMC)又はリチウム鉄ホスフェートなどの材料で作製されたカソード、並びにグラファイト、ケイ素含有グラファイト及びリチウム金属などの材料で作製されたアノードである。
【0091】
実施形態において、SO3
-H-SBC膜は、0.1~500μm又は1~200μm又は50~300μm又は3~100μm又は1~50μm又は5~45μm又は5~40μm又は20~150μm又は12~25μm又は0.1μm超又は50μm未満の厚さを有する。
【0092】
SO3
-H-SBC膜又はフィルムのさらなる加工:
実施形態において、SO3
-H-SBCは、架橋剤、例えばグリコール、ポリエチレングリコール(PEG)などで架橋される。SO3
-H-SBCの架橋剤に対する量は、98:2~95:5mol%又は90:10~80:20mol%又は75:25~70:30mol%又は60:40~55:35mol%の比にある。実施形態において、SO3
-H-SBCは、トルエン/イソプロパノールの二元混合物に溶解され、架橋剤は、トルエン溶液に別々に溶解される。2種の溶媒系は一緒に混合され基板上にキャスト成形されて、フィルム又は膜を形成する。
【0093】
性質:SO3
-H-SBC若しくはSO3
-M+SBCから又はポリエチレン-グリコール(PEG)架橋SO3
-H-SBCから得られたフィルム/膜は、弾性であり、低い膨潤特性を有する。フィルムは、非常に寸法安定性であり、高イオン輸送特性、耐メタノール性、バリア特性、硬度、熱/酸化安定性及び抗ファウリング特性を有する。
【0094】
実施形態において、SO3
-M+-SBCフィルムは、0.5~3.5meq/g又は1.2~3.0meq/g又は1.5~3meq/g又は1meq/g超又は2meq/g未満又は3meq/g未満又は0.5meq/g超のイオン交換能(IEC)を有する。
【0095】
実施形態において、SO3
-H-SBCとPEGとの架橋フィルムは、1.0~3meq/g又は1.2~3.0meq/g又は1.5~3meq/g又は1meq/g超又は2meq/g未満又は3meq/g未満又は0.5meq/g超のイオン交換能(IEC)を有する。
【0096】
実施形態において、SO3
-M+-SBCフィルムは、100~2000MPa又は500~1000MPa又は600~800MPaのヤング率を有する。
【0097】
実施形態において、SO3
-H-SBCとPEGとの架橋フィルムは、100~2000MPa又は500~1000MPa又は600~800MPaのヤング率を有する。
【0098】
実施形態において、SO3
-M+SBCフィルムは、2~30MPa又は7~25MPa又は10~20MPa又は5~20MPa又は7~18MPa又は10~25MPaの引張強度を有する。
【0099】
実施形態において、SO3
-H-SBCとPEGとの架橋フィルムは、2~30MPa又は7~25MPa又は10~20MPa又は5~20MPa又は7~18MPa又は10~25MPaの引張強度を有する。
【0100】
実施形態において、SO3
-M+-SBCフィルムは、1~8MJ/m3又は1.5~6MJ/m3又は1~5MJ/m3の靭性を有する。
【0101】
実施形態において、SO3
-H-SBCとPEGとの架橋フィルムは、1~8MJ/m3又は1.5~6MJ/m3又は1~5MJ/m3の靭性を有する。
【0102】
実施形態において、SO3
-M+-SBCフィルムは、10~150%又は100%超又は150%未満又は20%超又は35%超又は15~50%又は25~75%又は35~90%の破断伸びを有する。
【0103】
実施形態において、SO3
-H-SBCとPEGとの架橋フィルムは、10~150%又は100%超又は150%未満又は20%超又は35%超又は15~50%又は25~75%又は35~90%の破断伸びを有する。
【0104】
実施形態において、SO3
-M+SBCフィルムは、フィルムの総初期重量(フィルムを水中で浸す前の)に基づいて、5~100重量%又は10~90重量%又は20~80重量%又は30~60重量%又は10~50重量%又は30~80重量%の24時間後給水能(又は膨潤度)(80℃の脱イオン水における重量増加)を有する。
【0105】
実施形態において、SO3
-H-SBCとPEGとの架橋フィルムは、フィルムの総初期重量に基づいて、5~100重量%又は10~90重量%又は20~80重量%又は30~60重量%又は10~50重量%又は30~80重量%の(24時間後)給水能を有する。
【0106】
実施形態において、SO3
-M+SBCフィルムは、フィルムの総初期重量に基づいて、70%未満又は90%未満又は100%未満又は120%未満又は150%未満又は200%未満又は250%未満又は40~300%又は50~250%又は60~220%又は70~200%又は80~180%又は100~160%の、80℃脱イオン水中での1週間後の膨潤度を有する。
【0107】
実施形態において、SO3
-H-SBCとPEGとの架橋コポリマーフィルムは、フィルムの総初期重量に基づいて、70%未満又は90%未満又は100%未満又は120%未満又は150%未満又は200%未満又は250%未満又は40~300%又は50~250%又は60~220%又は70~200%又は80~180%又は100~160%の、80℃脱イオン水中での1週間後の膨潤度を有する。
(SO3
-M+SBCフィルムを含有するLiイオン電池の性質):
SO3
-M+SBC(式中、M+=Li+)組成物のフィルムは、電池(battery)/電池(cell)中で使用されるとき、優れた放電能力を示すことが期待される。
【0108】
実施形態において、SO3
-M+-SBCフィルムを含有するLiイオン電池は、1~12V又は2~10V又は2.5~8V又は3~6V又は3.5~5.5V又は4~7V又は4V超又は10V未満の電気化学的安定性を有する。電気化学的安定性は、ポリマー電解質の開路電圧の制御を指す。
【0109】
実施形態において、Liイオン電池は、室温における少なくとも1000回の充電/放電サイクル後に、最初のサイクルに対して、80%超又は85%超又は90%超又は95%超又は97%超又は99.5%未満の保持能力を有する。Liイオン電池の保持能力は、電池が一定期間使用された後又は長期間にわたり使用せずに放置された場合に得られる、電池のフル充電又は放電能力を指す。
【0110】
用途:酸性化-スルホン化ブロックコポリマー組成物(SO3
-H-SBC)は、電気化学的な、例えば水中電解槽、燃料電池用のカチオン交換膜、膜電極アセンブリ、酸電池(電解質セパレータ)、スーパーキャパシタ(電解質);金属回収プロセス用の分離電池(電解質バリア);センサー(特に湿度を感知するための);バナジウム中又は鉄レドックスフロー電池膜中などのエネルギー貯蔵溶液を含む用途において使用されうる。
【0111】
実施形態において、SO3
-H-SBC組成物は、フロー電池、水素生成、水電解用のCEM、水分解などを含む、エネルギー貯蔵デバイス中での使用のためのものである。
【0112】
実施形態において、SO3
-M+-SBC組成物は、例えば、電流コレクタ、電極又はセパレータ(バインダーとしての)のいずれかにおける、エネルギー貯蔵デバイスの構成成分としての使用のためである。実施形態において、SO3
-M+-SBCは、多孔質セパレータ上にコーティングされる又は堆積される。他の実施形態において、SO3
-M+-SBC層は、セパレータの少なくとも一方の側の上にコーティングされる。なおも別の実施形態において、セパレータの両側は、同一の又は異なるSO3
-M+-SBC組成物でコーティングされる。
【実施例0113】
以下の実施例は、非限定的である。
【0114】
以下の試験を行った。
【0115】
エポキシド開環反応及びそれに続く四級化反応を、FT-IR(減衰全反射(ATR)付属品を備えたNicolet-iS-50FTIR分光計)によって特徴付けた。フィルムを、ATRダイアモンド上に直接置き、スペクトルを室温にて記録した。
【0116】
エポキシド開環反応を、TA Instruments Q2000を用いた-75℃~250℃の示差走査熱量測定(DSC)によってさらに特徴付けた。
【0117】
靭性、ヤング率、引張強度及び破断伸びを含む機械的性質を、ASTM D412に準拠して測定した。
【0118】
実施例において使用した構成成分は、以下を含む。
【0119】
前駆体USBCは、部分的に水素化したスチレンブロックコポリマー(p-HSBC)前駆体の作製における使用のためのものである。異なるPSC含有量(ポリスチレン)、残存不飽和度(RU)レベル及びMFRにおける、USBC、p-HSBC-1、p-HSBC-2は、実施例において使用したSBCの表1に提供されているとおりである。
【0120】
【0121】
実施例1-SBCのエポキシ化:
表1のSBCをシクロヘキサンに温度40℃にて溶解した。ギ酸レベルを変動させて、エポキシ化のレベルを調整した。1.0:0.5モルのギ酸及び過酸化水素の溶液を最初に反応させて、過ギ酸を形成した。溶液をシクロヘキサン中SBCに添加し、1時間撹拌した。反応を、60℃にて操作するバッチ反応器中、反応時間3~4時間実施した。全ての反応物を重炭酸ナトリウムで直ちに中和して、二次反応を回避した。反応混合物を10%の水性重炭酸ナトリウムで2回洗浄した。ポリマーをイソプロピルアルコール(IPA)中に沈殿させ、洗浄し、1HNMRにより分析してエポキシ含有量を測定した。
【0122】
(表1のSBCのエポキシ化から)得た生成物のそれぞれを、エポキシ化e-SBCと称する。
【0123】
実施例2-ヒドロキシ-SBC:
e-SBC(実施例1から得た3種のエポキシ化e-SBC生成物)6gをTHF250mlに溶解した。次いで、反応混合物をN2下で10℃に冷却した。CuCl20.67gを冷却性反応混合物に添加して、10分間よく撹拌した。CH3MgBr22.2mlを、撹拌済み反応混合物に(温度を25~30℃に上げて)ゆっくり添加した。撹拌を3時間続け、次いで反応混合物を10%AlCl3100mlでクエンチした。溶液を1.5NのHCLで酸性化し、ジクロロメタンで抽出し、その後に洗浄して粗生成物を得、これをメタノール中に沈殿させ、よく乾燥させてヒドロキシ-SBCを得る。
【0124】
実施例3-ヒドロキシ-SBCのリチオ化及びスルホン化:
実施例2の3種の生成物について、ヒドロキシSBC3gをTHF200mlに溶解し、続いて30分間撹拌した。リチウムtert-ブトキシド6mlを撹拌済み溶液に添加し、撹拌を60~70℃にて1時間続けた。一晩撹拌した後、1,3プロパンスルトン1.05mlを60~70℃にて添加した。反応混合物を室温に冷却した。溶媒を蒸発させてSO3
-Li+-SBCを得、次いでこれをメタノール溶液に溶解した。次いで、溶液を基板上にキャスト成形して、フィルム又は膜を形成した。
【0125】
実施例4-SO3
-Li+-SBCからのSO3
-H-SBC:
実施例3において得たTHF中反応生成物SO3
-Li+-SBCのそれぞれを、1.5NのHCLと混合し、3~4時間撹拌した。THFを真空下で蒸留させ、粘性の生成物をメタノール中に沈殿させ、真空下で乾燥させて、SO3
-H-SBC生成物を得た。次いで、生成物をメタノール溶液に溶解し、基板上にキャスト成形して、フィルム又は膜を形成した。
【0126】
実施例5-SO3
-H-SBCの、PEG1000による架橋:
SO3
-H-SBCの溶液を、好適な量のSO3
-H-SBCをトルエン/イソプロパノール溶媒に溶解することによって調製する。好適な量の架橋剤PEG1000を、それとは別に、トルエン溶液に溶解する。2種の溶媒系を、十分な時間(30分)撹拌して一緒に混合する。溶媒を基板上にキャスト成形して、フィルム又は膜を形成する。
【0127】
実施例6- SO3
-M+-SBCとのPPOブレンディング、つまりPPOとSO3
-M+-SBCとのブレンドを、PPOサンプル及びSO3
-M+-SBCサンプルを別々に好適な比(e-SBCのポリスチレン(PS)構成成分の重量%に対するPPOの重量%)においてクロロホルム溶液に溶解することによって調製する。最初にPPOのクロロホルム中溶液を調製し、完全な溶解を確実にするために十分撹拌した。この溶液を、SO3
-M+-SBCサンプルの予混合済みクロロホルム溶液に添加する。溶液をさらに撹拌して、完全な溶解をさらに確実にする。混合済みクロロホルム溶液を基板上にキャスト成形し、続いて溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。
【0128】
用語「含む(comprising)」及び「含む(including)」は、本明細書では多様な態様を説明するために使用されているが、用語「本質的にからなる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」は、本開示のより具体的な態様を提供するために「含む(comprising)」及び「含む(including)」の代わりに使用することができ、また開示される。