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特開2024-170339導電性顔料ペーストの製造方法及び合材ペーストの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170339
(43)【公開日】2024-12-06
(54)【発明の名称】導電性顔料ペーストの製造方法及び合材ペーストの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/00 20060101AFI20241129BHJP
   C09C 1/44 20060101ALI20241129BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20241129BHJP
   C01B 32/168 20170101ALI20241129BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20241129BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20241129BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241129BHJP
   H01B 1/24 20060101ALN20241129BHJP
【FI】
H01B13/00 Z
C09C1/44
C09D17/00
C01B32/168
H01M4/62 Z
H01M4/139
H01M4/13
H01B1/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024163977
(22)【出願日】2024-09-20
(62)【分割の表示】P 2024519246の分割
【原出願日】2024-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2023049366
(32)【優先日】2023-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 耕吾
(72)【発明者】
【氏名】後藤 心次郎
(57)【要約】
【課題】高顔料濃度においても顔料分散性と貯蔵安定性に優れる導電性顔料ペースト及び合材ペーストであって、さらに、諸性能(導電性及び電池性能等)に優れるリチウムイオン二次電池用電極層を提供すること。
【解決手段】顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、及び必要に応じて含むことができるフッ素樹脂(D)を含有する導電性顔料ペーストの製造方法であって、工程1:導電性顔料(B)の顔料濃度が50質量%以上の導電性顔料組成物を粉砕機により粉砕する工程、並びに、工程2:前記工程1で得られた導電性顔料組成物に、顔料分散樹脂(A)、溶媒(C)、及び必要に応じて含むことができるフッ素樹脂(D)を含む成分を混合して分散する工程、を順次行う工程を含むことを特徴とする導電性顔料ペーストの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、及び必要に応じて含むことができるフッ素樹脂(D)を含有する導電性顔料ペーストの製造方法であって、
工程1:導電性顔料(B)の顔料濃度が50質量%以上の導電性顔料組成物を粉砕機により粉砕する工程、並びに、
工程2:前記工程1で得られた導電性顔料組成物に、顔料分散樹脂(A)、溶媒(C)、及び必要に応じて含むことができるフッ素樹脂(D)を含む成分を混合して分散する工程、
を順次行う工程を含むことを特徴とする、導電性顔料ペーストの製造方法。
【請求項2】
導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有することを特徴とする、請求項1に記載の導電性顔料ペーストの製造方法。
【請求項3】
工程1の粉砕前後のカーボンナノチューブ(B1)において、下記(1)及び(2);
(1)1560cm-1以上1600cm-1以下の範囲内での最大ピーク強度をG、1310cm-1以上1350cm-1以下の範囲内での最大ピーク強度をDとした際の粉砕前のカーボンナノチューブ(B1)のG/D比が、0.1以上5.0以下である、
(2)粉砕前のカーボンナノチューブ(B1)のG/D比をα、粉砕後のカーボンナノチューブ(B1)のG/D比をβとした場合に、β/α<1.00である、
を満たす、請求項2に記載の導電性顔料ペーストの製造方法。
【請求項4】
顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の、炭素数12以上のアルキル基を有することを特徴とする、請求項1に記載の導電性顔料ペーストの製造方法。
【請求項5】
顔料分散樹脂(A)が、アミド基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、シアノ基、ピロリドン基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであることを特徴とする、請求項1に記載の導電性顔料ペーストの製造方法。
【請求項6】
導電性顔料ペーストがフッ素樹脂(D)を含み、該フッ素樹脂(D)を混合する工程が、予め40℃以上の液温の溶媒と混合及び溶解する工程を含むか、若しくはフッ素樹脂(D)と溶媒とを混合してから40℃以上の温度に加温する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の導電性顔料ペーストの製造方法。
【請求項7】
溶媒(C)が、N-メチル-2-ピロリドンであることを特徴とする、請求項1に記載の導電性顔料ペーストの製造方法。
【請求項8】
前記工程2が、
工程2-1:分散後に得られる導電性顔料ペーストに含まれる導電性顔料組成物の総量100質量%を基準として、70質量%以下の量となる導電性顔料組成物を含む成分を分散機内に添加し、分散処理を行う工程、及び
工程2-2:所望の濃度になるまで導電性顔料組成物を分散機内に添加して分散処理を行う工程、
を順次行う工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載された導電性顔料ペーストの製造方法で得られる導電性顔料ペーストに、さらに
工程3:少なくとも一種の電極活物質(F)を混合する工程、
を含むことを特徴とする、リチウムイオン二次電池用合材ペーストの製造方法。
【請求項10】
請求項9の製造方法で得られるリチウムイオン二次電池用合材ペーストを集電体に塗工する工程を含む、リチウムイオン二次電池用電極層の製造方法。
【請求項11】
請求項10のリチウムイオン二次電池用電極層の製造方法で得られた電極層の端部又は上層に電極絶縁部を塗工する工程を含む、リチウムイオン二次電池用電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高顔料濃度においても、導電性、顔料分散性、及び貯蔵安定性に優れる導電性顔料ペーストの製造方法及び合材ペーストの製造方法、並びに優れた電池性能を有する電池用電極層の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顔料を顔料分散樹脂及び溶媒等の混合物中に分散させたペースト状の顔料分散体が、塗料、電池用電極、塗工材、コーティング材、電磁波シールド、ディスプレイパネル、タッチスクリーンパネル、着色フィルム、着色シート、化粧材、保護材、磁石改質材、印刷用インキ、デバイス部材、電子機器部材、プリント配線板、太陽電池、機能性ゴム部材、樹脂成形膜等の分野で広く用いられている。さらに、これらの材料に静電塗装性、導電性、電磁波シールド性、帯電防止性等の機能を付与するために導電性顔料や導電性高分子等を含有させている。
【0003】
これらの分野では、顔料の分散性、貯蔵安定性、導電性、塗工性、仕上がり性等の性能向上がますます要求されており、そのため、優れた顔料分散能力と、形成された顔料分散体中の顔料粒子を再凝集させないだけの優れた顔料分散安定性を有する顔料分散樹脂及び顔料ペーストの開発がなされつつある。
【0004】
顔料ペーストの設計にあたっては、顔料分散樹脂が塗工膜等の最終製品そのものの導電性能等に悪い影響を及ぼさないように、あるいは溶媒及び顔料分散樹脂の使用量を低減することや乾燥時の使用エネルギーを低減する観点から、少量の顔料分散樹脂で高濃度かつ均一に分散された顔料ペーストを作製することが重要となっている。
【0005】
例えば、特許文献1には、炭素系導電剤と分散溶媒とが混練されたのち、媒体型分散機を用いて炭素系導電剤が分散される工程と、前記工程で得られたペーストに活物質及びバインダーが添加され、これらを混練して活物質ペーストとする工程と、前記活物質ペーストが電極基体に塗布される工程とを備えたことを特徴とする非水電解質電池用電極の製造方法が開示されている。
しかしながら、これらの発明は高顔料濃度及び/又は高粘度のペーストの場合、均一な分散ができず、貯蔵安定性が悪いことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-144302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高顔料濃度及び/又は高粘度のペーストにおいても顔料分散性と貯蔵安定性に優れる導電性顔料ペーストの製造方法及び合材ペーストの製造方法を提供することであって、さらに、仕上がり性、及び導電性等に優れる塗工膜(電池用電極層)の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、及び必要に応じて含むことができるフッ素樹脂(D)を含有する導電性顔料ペーストの製造方法であって、
工程1:導電性顔料(B)の顔料濃度が50質量%以上の導電性顔料組成物を粉砕機により粉砕する工程、並びに、
工程2:前記工程1で得られた導電性顔料組成物に、顔料分散樹脂(A)、溶媒(C)、及び必要に応じて含むことができるフッ素樹脂(D)を含む成分を混合して分散する工程、
を順次行う工程を含む導電性顔料ペーストの製造方法によって、上記課題の解決が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、以下の導電性顔料ペーストの製造方法、合材ペーストの製造方法、及び電池用電極層の製造方法を提供するものである。
項1.
顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、及び必要に応じて含むことができるフッ素樹脂(D)を含有する導電性顔料ペーストの製造方法であって、
工程1:導電性顔料(B)の顔料濃度が50質量%以上の導電性顔料組成物を粉砕機により粉砕する工程、並びに、
工程2:前記工程1で得られた導電性顔料組成物に、顔料分散樹脂(A)、溶媒(C)、及び必要に応じて含むことができるフッ素樹脂(D)を含む成分を混合して分散する工程、
を順次行う工程を含むことを特徴とする導電性顔料ペーストの製造方法。
項2.
導電性顔料(B)が、カーボンナノチューブ(B1)を含有することを特徴とする項1に記載の導電性顔料ペーストの製造方法。
項3.
工程1の粉砕前後のカーボンナノチューブ(B1)において、下記(1)及び(2);
(1)1560cm-1以上1600cm-1以下の範囲内での最大ピーク強度をG、1310cm-1以上1350cm-1以下の範囲内での最大ピーク強度をDとした際の粉砕前のカーボンナノチューブ(B1)のG/D比が、0.1以上5.0以下である、
(2)粉砕前のカーボンナノチューブ(B1)のG/D比をα、粉砕後のカーボンナノチューブ(B1)のG/D比をβとした場合に、β/α<1.00である、
を満たす、項2に記載の導電性顔料ペーストの製造方法。
項4.
顔料分散樹脂(A)が、少なくとも一種の、炭素数12以上のアルキル基を有することを特徴とする項1~3のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストの製造方法。
項5.
顔料分散樹脂(A)が、アミド基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、シアノ基、ピロリドン基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g~23mmol/gであることを特徴とする項1~4のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストの製造方法。
項6.
導電性顔料ペーストがフッ素樹脂(D)を含み、該フッ素樹脂(D)を混合する工程が、予め40℃以上の液温の溶媒と混合及び溶解する工程を含むか、若しくはフッ素樹脂(D)と溶媒とを混合してから40℃以上の温度に加温する工程を含むことを特徴とする項1~5のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストの製造方法。
項7.
溶媒(C)が、N-メチル-2-ピロリドンであることを特徴とする項1~6のいずれか1項に記載の導電性顔料ペーストの製造方法。
項8.
前記工程2が、
工程2-1:分散後に得られる導電性顔料ペーストに含まれる導電性顔料組成物の総量100質量%を基準として、70質量%以下の量となる導電性顔料組成物を含む成分を分散機内に添加し、分散処理を行う工程、及び
工程2-2:所望の濃度になるまで導電性顔料組成物を分散機内に添加して分散処理を行う工程、
を順次行う工程を含むことを特徴とする項1~7のいずれか1項に記載の製造方法。
項9.
項1~8のいずれか1項に記載された導電性顔料ペーストの製造方法で得られる導電性顔料ペーストに、さらに
工程3:少なくとも一種の電極活物質(F)を混合する工程、
を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池用合材ペーストの製造方法。
項10.
項9の製造方法で得られるリチウムイオン二次電池用合材ペーストを集電体に塗工する工程を含むリチウムイオン二次電池用電極層の製造方法。
項11.
項10のリチウムイオン二次電池用電極層の製造方法で得られた電極層の端部又は上層に電極絶縁部を塗工する工程を含むリチウムイオン二次電池用電極の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の導電性顔料ペーストの製造方法及び合材ペーストの製造方法は、高顔料濃度及び/又は高粘度においても、顔料の分散性、貯蔵安定性に優れ、比較的少ない分散樹脂の配合量で充分にペーストの粘度を低下させることができる。また、その塗工膜(電池用電極層)は、仕上がり性、導電性、及び電池性能等に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0012】
なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含むものとして理解されるべきである。
また、本発明においては、導電性顔料(B)を顔料濃度で50質量%以上含有し、粉砕機により粉砕して得られた組成物を「導電性顔料組成物」という。
前記導電性顔料組成物に少なくとも一種の顔料分散樹脂(A)、溶媒(C)、必要に応じて含むことができるフッ素樹脂(D)、及び任意選択でその他の各種成分をさらに配合して調製したペーストを「導電性顔料ペースト」という。
「導電性顔料ペースト」とは、導電性顔料を含有するペーストであって、ペースト自体が導電性を有するという意味ではない。
前記導電性顔料ペーストは実質的に電極活物質を含有していないペーストであるといえる。
前記導電性顔料ペーストを塗工するために少なくとも一種の電極活物質及び任意選択でその他の各種成分をさらに配合して調製したペーストを「合材ペースト」という。前記合材ペーストを被塗物に塗工して乾燥したものを「塗工膜」、又は「合材層」という。
塗工膜が電池用電極に用いられる場合は「電極層」とも言い換えることができる。
カーボンナノチューブを「CNT」と略すこともできる。
【0013】
[導電性顔料ペーストの製造方法]
本発明は、顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、及び必要に応じて含むことができるフッ素樹脂(D)を含有する導電性顔料ペーストの製造方法であって、まず導電性顔料(B)を50質量%以上の顔料濃度で粉砕機により粉砕し、導電性顔料組成物を得る工程(工程1:粉砕工程)、並びに前記工程1で得られた導電性顔料組成物に、顔料分散樹脂(A)、溶媒(C)、及び必要に応じて含むことができるフッ素樹脂(D)を含む成分を混合して分散する工程(工程2:分散工程)によって良好な分散状態の導電性顔料(B)を有する導電性顔料ペーストの製造方法である。
なお、本発明は工程1と工程2の間や前後に別の工程を含んでもよい。
【0014】
工程1(粉砕工程)
工程1は、導電性顔料(B)を粉砕機により粉砕(解砕含む)し、導電性顔料組成物を得る工程であって、導電性顔料(B)の顔料濃度としては、導電性顔料組成物100質量%を基準として、通常50質量%以上であり、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上であり、特に好ましくは99質量%以上であり、さらに特に好ましくは100質量%である。なお、上記「導電性顔料(B)の顔料濃度」とは、導電性顔料組成物に含まれる導電性顔料(B)の顔料濃度であって、導電性顔料(B)以外の顔料や固形物は含まれない。
導電性顔料組成物中の導電性顔料(B)以外の成分としては、後述する溶媒、樹脂、及び導電性顔料(B)以外の顔料等を好適に使用できる。
また、導電性顔料組成物の固形分濃度としては、導電性顔料組成物100質量%を基準として、通常50質量%以上であり、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上であり、特に好ましくは99質量%以上であり、さらに特に好ましくは100質量%である。なお、上記「固形分濃度」とは、試料1gを130℃3時間で加熱乾燥させた場合の固形分の割合(質量%)である。
【0015】
また、工程1で得られる導電性顔料組成物は上記顔料濃度及び固形分濃度であれば導電性顔料(B)以外の他の成分を含んでも良く、例えば、後述する顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)以外の顔料、溶媒(C)、及び必要に応じて含むことができるフッ素樹脂(D)等を含むことができるが、導電性顔料組成物は実質的に導電性顔料(B)のみを含む事が好ましく、実質的にカーボンナノチューブ(B1)のみを含む事が特に好ましい。
また、導電性顔料ペーストを電極層用途として使用する場合、後述する電極活物質は後の工程(工程3)で混ぜるため実質的に含まないことが好ましい。
【0016】
導電性顔料(B)
導電性顔料(B)としては、導電性の顔料であり、それ自体既知の導電性顔料を用いることができるが、カーボンナノチューブ(B1)を含有することが好ましい。導電性顔料(B)は、さらに、カーボンナノチューブ(B1)以外のその他の導電性顔料(B2)を含有していてもよい。
【0017】
上記導電性顔料(B)中のカーボンナノチューブ(B1)の含有量としては、導電性顔料(B)100質量%を基準として、例えば50質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは95質量%以上であり、特に好ましくは99質量%以上であり、さらに特に好ましくは100質量%である。
【0018】
カーボンナノチューブ(B1)
カーボンナノチューブ(B1)としては、単層カーボンナノチューブ、又は多層カーボンナノチューブをそれぞれ単独で、又は組合せて使用できる。特に粘度、導電性及びコストの関係から、多層カーボンナノチューブを用いることが好ましい。
【0019】
カーボンナノチューブ(B1)を用いる場合の含有量は、導電性顔料ペーストの総量100質量%を基準として、例えば0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、例えば10質量%以下、好ましくは7質量%以下、より好ましくは6質量%以下である。
また、導電性顔料ペーストの固形分総量100質量%を基準として、例えば5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、例えば90質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0020】
カーボンナノチューブ(B1)の平均外径としては、例えば1nm以上、好ましくは3nm以上、より好ましくは5nm以上であり、例えば30nm以下、好ましくは28nm以下、より好ましくは25nm以下である。
【0021】
カーボンナノチューブ(B1)の平均長さとしては、例えば0.1μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上であり、例えば100μm以下、好ましくは80μm以下、より好ましくは60μm以下である。
【0022】
カーボンナノチューブ(B1)のBET比表面積としては、粘度及び導電性の関係から、通常100m/g以上、好ましくは130m/g以上、より好ましくは160m/g以上であり、通常800m/g以下、好ましくは600m/g以下、より好ましくは400m/g以下である。
本発明のBET比表面積は窒素吸着測定によるBET法で算出することができる。具体的には、例えば、JIS Z8830:2013に準拠し、比表面積測定装置(BERSORP-MAX(マイクロトラック・ベル株式会社))を用いて、BET比表面積(m/g)を測定できる。
【0023】
カーボンナノチューブ(B1)の酸性基量としては、分散性及び貯蔵性の観点から、通常0.01mmol/g以上、好ましくは0.01mmol/g以上であり、通常1.0mmol/g以下、好ましくは0.5mmol/g以下、より好ましくは0.2mmol/g以下、さらに好ましくは0.1mmol/g以下である。酸性基量が0.01mmol/g以上であれば分散性が良好となり、また1.0mmol/g以下であれば貯蔵性が良好となる。
【0024】
上記酸性基は以下のカーボンナノチューブの酸処理により付与することができる。
【0025】
(酸処理方法)
酸処理の方法としては、カーボンナノチューブに酸を接触させることができれば特に限定されないが、カーボンナノチューブを酸処理液(酸の水溶液)中に浸漬させる方法が好ましい。酸処理液に含まれる酸としては、特に限定されないが、例えば硝酸、硫酸、塩酸が挙げられる。これらは、一種を単独又は二種以上を組み合わせて用いることができる。そしてこれらの中でも、硝酸、硫酸が好ましい。
カーボンナノチューブの酸性基量は、酸処理液の濃度、温度、処理時間等によって調整することができる。
【0026】
酸処理後、後述する洗浄方法により表面に付着した余剰な酸成分を除去し、酸処理カーボンナノチューブを得ることができる。
酸処理したカーボンナノチューブを洗浄する方法としては、特に限定されないが、水洗が好ましい。例えば、酸処理をしたカーボンナノチューブから、ろ過などの既知の手法でカーボンナノチューブを回収し、続いてカーボンナノチューブを水洗する。上記洗浄後、必要に応じて、表面に付着した水を乾燥により除去する等して、酸処理カーボンナノチューブを得ることができる。
【0027】
また、カーボンナノチューブ(B1)の体積換算のメディアン径(D50)としては、後述する実施例で記載する方法で測定した場合、通常10μm以上、好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上であり、通常250μm以下、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下である。ここでメディアン径(D50)はカーボンナノチューブの粒子にレーザー光を照射し、その散乱光からカーボンナノチューブの直径を球形に換算して求めることができる。メディアン径(D50)が大きいほどカーボンナノチューブの凝集塊が多く存在し、分散性が悪いことを意味する。メディアン径(D50)が250μmより大きい場合、電極中でカーボンナノチューブの凝集塊が存在する可能性が高くなり、電極全体における導電性が不均一となる。一方、メディアン径(D50)が10μmよりも小さい場合、繊維長が短くなっていることから導電パスが不十分であり、導電性が低下してしまう。メディアン径(D50)が10μm以上250μm以下の範囲内である場合、カーボンナノチューブは導電性を維持したまま電極内で均一に分散することが可能になる。
【0028】
また、上記カーボンナノチューブ(B1)のラマンスペクトルにおいて、1560cm-1以上1600cm-1以下の範囲内での最大ピーク強度をG、1310cm-1以上1350cm-1以下の範囲内での最大ピーク強度をDとした際のG/D比が、通常0.1以上、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.6以上であり、通常5.0以下、好ましくは3.0以下より好ましくは1.0以下であることがより好ましい。
【0029】
ここで、G/D比が0.1以上5.0以下の範囲内であると、炭素表面の欠陥や結晶界面が少なく導電性が高くなりやすいため好適である。
【0030】
また、導電性顔料(B)としてカーボンナノチューブ(B1)を用いる場合、前記工程1の粉砕前後のカーボンナノチューブ(B1)において、下記(1)及び(2)を満たすことが好ましい。
(1)1560cm-1以上1600cm-1以下の範囲内での最大ピーク強度をG、1310cm-1以上1350cm-1以下の範囲内での最大ピーク強度をDとした際の粉砕前のカーボンナノチューブ(B1)のG/D比が、0.1以上5.0以下である。
(2)粉砕前のカーボンナノチューブ(B1)のG/D比をα、粉砕後のカーボンナノチューブ(B1)のG/D比をβとした場合に、β/α<1.00である。
また、上記β/αは粉砕が進むと値が小さくなり、通常β/α<1.00であり、0.50<β/α<1.00が好ましく、0.70<β/α<0.98がより好ましく、0.90<β/α<0.96がさらに好ましい。
β/αが上記範囲内であると、比較的短時間の粉砕時間で適度に粉砕面が活性化し、後述する工程2の分散工程において良好な分散性及び貯蔵安定性が得られ、その塗工膜は優れた導電性と仕上がり性を得ることができる。
【0031】
その他の導電性顔料(B2)
カーボンナノチューブ(B1)以外のその他の導電性顔料(B2)としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、グラフェン、黒鉛からなる群より選ばれる少なくとも一種の導電性カーボンが挙げられる。好ましくは、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラックからなる群より選ばれる一種以上であり、より好ましくは、アセチレンブラック、ケッチェンブラックからなる群より選ばれる一種以上であり、さらに好ましくはアセチレンブラックである。
【0032】
その他の導電性顔料(B2)の平均一次粒子径としては、例えば10nm以上、好ましくは20nm以上であり、例えば80nm以下好ましくは70nm以下であることがより好ましい。ここで、平均一次粒子径は、導電性顔料(B2)を電子顕微鏡で観察し、100個の粒子について、それぞれ投影面積を求めてその面積に等しい円を仮定したときの直径を求め、100個の粒子の直径を単純平均して求めた一次粒子の平均粒子径をいう。なお、顔料が凝集状態になっていた場合は、凝集粒子を構成している一次粒子で計算をする。
【0033】
その他の導電性顔料(B2)のBET比表面積は、特に限定されない。粘度及び導電性の関係から、例えば1m/g以上、好ましくは10m/g以上、より好ましくは20m/g以上であり、例えば500m/g以下、好ましくは250m/g以下、より好ましくは200m/g以下である。
【0034】
その他の導電性顔料(B2)のジブチルフタレート(DBP)吸油量は、特に限定されない。顔料分散性及び導電性の関係から、例えば60ml/100g以上、好ましくは150ml/100g以上であり、例えば1,000ml/100g以下、好ましくは800ml/100g以下である。
【0035】
粉砕方法及び粉砕機
上記導電性顔料(B)は粉砕機により粉砕(解砕含む)される。本発明においては特に導電性顔料(B)としてカーボンノチューブを含むことが好適である。
工程1の粉砕工程においては、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、スチールボール等の粉砕メジア(メディアともいう)を内蔵した粉砕機を使用して粉砕するものである。粉砕は、粉砕メジア同士の衝突、及び/又は粉砕機と粉砕メジアとの衝突による粉砕力や破壊力を利用して行なわれる。粉砕装置としては、高速回転型衝撃式ミル、ジェットミル、ロールミル、アトライター、ボールミル、振動ミル、ビーズミルなどの既知の粉砕装置を用いることができる。
【0036】
また、粉砕時に各種の蒸気又は気体を粉砕機内に吹き込んで導電性顔料(B)表面を更なる活性化又は活性度の調整をすることができる。蒸気としては、酸性又は塩基性の化合物などが好適であり、気体としては、酸素、窒素などが好適である。
【0037】
上記の粉砕はいわゆる乾式分散で行うことが好ましい。ここで、「乾式分散」とは、実質的に液状成分を含有させないで顔料を粉砕することであり、顔料に対して直接エネルギーを加えることができるため高効率かつ強力な粉砕(解砕)が可能である。また、粉砕面が活性化し周囲の物質と相互作用を起こすため、後述する工程2の分散工程において良好な分散性及び貯蔵安定性が得られ、その塗工膜は優れた導電性と仕上がり性を得ることができる。
【0038】
粉砕メジアの外径は、0.1~5mmが好ましく、0.5~3mmがより好ましい。上記の範囲であれば、所望の粉砕力が得られ、導電性顔料(B)がカーボンナノチューブの場合は繊維形状を過度に破壊せず効率的に顔料を粉砕及び解砕させることができる。
【0039】
工程2(分散工程)
工程2は、前記工程1で得られた導電性顔料組成物に、顔料分散樹脂(A)、溶媒(C)、及び必要に応じて含むことができるフッ素樹脂(D)を含有する成分を混合して分散する工程であり、工程2によって液状の導電性顔料ペーストを得ることができる。
【0040】
導電性顔料ペーストの固形分濃度の上限としては、通常80質量%未満であり、好ましくは50質量%未満であり、より好ましくは20質量%未満であり、さらに好ましくは10質量%未満である。下限としては、通常0.1質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは2質量%以上である。
【0041】
前記導電性顔料ペーストは、顔料分散樹脂(A)、導電性顔料(B)、溶媒(C)、及び必要に応じて含むことができるフッ素樹脂(D)を含有する導電性顔料のペーストであって、顔料分散樹脂(A)が、アミド基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、シアノ基、ピロリドン基、アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有し、かつ顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度が0.3mmol/g以上23mmol/g以下であることが好ましい。
また、さらに必要に応じて高極性低分子量成分(E)を含有することが好ましい。
【0042】
工程2の分散工程において、上記に述べた各成分を、例えば、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、ペブルミル、LMZミル、DCPパールミル、遊星ボールミル、ホモジナイザー、二軸混練機、薄膜旋回型高速ミキサー(フィルミックス社製、商品名「クレアミックス」等)等の従来公知の分散機を用いて均一に混合、分散させることにより調製することができる。
なお、各成分の混合する順序は特に限定されない。
【0043】
顔料分散樹脂(A)
前記顔料分散樹脂(A)は、少なくとも一種の炭素数12以上のアルキル基を有することが好ましい。前記炭素数12以上のアルキル基は、それ自体公知のアルキル基(炭化水素基)を特に制限なく用いることができ、直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましく、直鎖状のアルキル基がより好ましい。
前記炭素数12以上のアルキル基としては、炭素数12以上30未満のアルキル基が好ましく、15以上26未満のアルキル基がより好ましく、19以上24未満のアルキル基がさらに好ましい。
前記炭素数12以上のアルキル基は、例えば、炭素数12以上のアルキル基を含有する重合性モノマーを(共)重合することで樹脂に導入することができる。
炭素数12以上のアルキル基を含有する重合性モノマーとしては、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリルアミド、ステアリル(メタ)アクリルアミド、ベヘニル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
顔料分散樹脂(A)が炭素数12以上のアルキル基の比較的嵩高い側鎖を有すると、立体反発によって顔料分散性と貯蔵安定性が向上すると考えられる。
【0044】
また、前記顔料分散樹脂(A)は、アミド基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、シラノール基、シアノ基、ピロリドン基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の極性官能基を有することが好ましい。顔料分散樹脂(A)が極性官能基を有する場合、その極性官能基濃度が0.3mmol/g以上23mmol/g以下であることが好ましい。また、上記の酸基は塩になっていてもよい。
なかでも、極性官能基としては、アミド基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、及びアミノ基を少なくとも用いることが好ましく、水酸基、カルボキシル基、及びアミノ基を少なくとも用いることがより好ましい。
【0045】
樹脂の種類としては、後述するフッ素樹脂(D)以外の樹脂であれば特に限定されない。例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素系樹脂、及びこれらの複合樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
なかでも、顔料分散性、貯蔵安定性、及び仕上がり性等の観点から、顔料分散樹脂(A)としては、下記式(1)の重合性不飽和基含有モノマーを含むモノマーを重合又は共重合することにより得られるビニル(共)重合体(A1)を含有することが好ましく、特に、少なくとも一種の(メタ)アクリロイル基を含有する重合性不飽和基含有モノマーを(共)重合したアクリル樹脂が好ましい。
尚、本発明の「(共)重合体」とは、一種類のモノマーを重合した重合体と二種以上のモノマーを共重合した共重合体の両方を含むものである。
【0047】
C(-R)=C(-R) ・・・式(1)
[上記式において、Rは、それぞれ同じでも異なってもよく、水素原子又は有機基である。]
上記ビニル(共)重合体(A1)としては、例えば、水酸基含有ビニル(共)重合体、カルボキシル基含有ビニル(共)重合体、アミド基含有ビニル(共)重合体、スルホン酸基含有ビニル(共)重合体、リン酸基含有ビニル(共)重合体、ピロリドン基含有ビニル(共)重合体、アミノ基含有(共)重合体等が挙げられる。これらの(共)重合体は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
水酸基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール-脂肪酸ビニル共重合体、ビニルアルコール-エチレン共重合体、ビニルアルコール-(N-ビニルホルムアミド)共重合体、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとその他の重合性不飽和モノマーとの共重合体等が挙げられる。(共)重合体中のビニルアルコール単位は脂肪酸ビニル単位を(共)重合した後に加水分解して得られたものでもよい。
【0049】
カルボキシル基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸の重合体、又はポリ(メタ)アクリル酸とその他の重合性不飽和モノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0050】
アミド基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、(メタ)アクリルアミドの重合体、又は(メタ)アクリルアミドとその他の重合性不飽和モノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0051】
スルホン酸基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、アリルスルホン酸又はスチレンスルホン酸等の重合体、アリルスルホン酸及び/又はスチレンスルホン酸とその他の重合性不飽和モノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0052】
リン酸基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシアルキルアシッドホスフェートの重合体、又は(メタ)アクリロイルオキシアルキルアシッドホスフェートとその他の重合性不飽和モノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0053】
アミノ基含有ビニル(共)重合体としては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートとその他の重合性不飽和モノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0054】
共重合可能なその他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酢酸イソプロペニル、バレリン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサティック酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィン類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、フマル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、イタコン酸ジイソプロピル等のエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;メチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等のビニルエーテル単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル単量体又はビニリデン単量体;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;3-(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム基含有単量体等が挙げられる。これらの単量体は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
顔料分散樹脂(A)の極性官能基濃度は、顔料分散性、貯蔵安定性、及び溶媒との相溶性の観点から、通常0.3mmol/g~23mmol/gであり、0.3mmol/g~12mmol/gであることが好ましく、0.4mmol/g~8.0mmol/gであることがより好ましく、0.4mmol/g~6.0mmol/gであることがさらに好ましく、0.4mmol/g~2.0mmol/gであることがさらに特に好ましい。
【0056】
上記ビニル(共)重合体(A1)の重合方法は、それ自体既知の重合方法で製造することができ、例えば溶液重合を用いることが好ましいが、これに限られるものではなく、バルク重合や乳化重合や懸濁重合等でもよい。溶液重合を行う場合には、連続重合でもよいしバッチ重合でもよく、単量体は一括して仕込んでもよいし、分割して仕込んでもよく、あるいは連続的又は断続的に添加してもよい。
【0057】
溶液重合において使用する重合開始剤は、特に限定するものではないが、具体的には、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、アゾビス-2,4-ジメチルパレロニトリル、アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルパレロニトリル)等のアゾ化合物;アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド、2,4,4-トリメチルペンチル-2-パーオキシフェノキシアセテート等の過酸化物;ジイソプピルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート等のパーカーボネート化合物;t-ブチルパーオキシネオデカネート、α-クミルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシネオデカネート等のパーエステル化合物;アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシバレロニトリル等の公知のラジカル重合開始剤を使用できる。
【0058】
重合反応温度は、特に限定するものではないが、通常30℃以上200℃以下程度の範囲で設定できる。
【0059】
上記のようにして得ることができるビニル(共)重合体(A1)は、重合度が例えば100以上、好ましくは150以上であり、例えば4,000以下、好ましくは3,000以下、より好ましくは700以下である。
【0060】
また、重量平均分子量としては、例えば1,000以上、好ましくは2,000以上、より好ましくは7,000以上であり、例えば2,000,000以下、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下である。
【0061】
なお、本明細書における重量平均分子量は、特に記載がない限り、ゲルパーミュエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミュエーションクロマトグラフとして、「HLC8120GPC」(東ソー社製、商品名)を用い、カラムとして、「TSKgel G-4000HXL」、「TSKgel G-3000HXL」、「TSKgel G-2500HXL」及び「TSKgel G-2000HXL」(いずれも東ソー社製、商品名)の4本を用い、移動相テトラヒドロフラン、測定温度40℃、流速1mL/min及び検出器RIの条件下で測定することができる。
【0062】
上記ビニル(共)重合体(A1)は、合成終了後に脱溶媒及び/又は溶媒置換することで、固体又は任意の溶媒に置き換えた樹脂溶液にできる。
【0063】
脱溶媒の方法としては、常圧で加熱により行ってもよいし、減圧下で脱溶媒してもよい。溶媒置換の方法としては、脱溶媒前、脱溶媒途中、又は脱溶媒後のいずれの段階で置換溶媒を投入してもよい。
【0064】
また、前記分散樹脂(A)における炭素数12以上のアルキル基の含有量としては、ビニル(共)重合体(A1)の場合、全モノマーを100質量%としたときの当該モノマーの質量割合として、1~100質量%が好ましく、10~90質量%がより好ましく、20~80質量%がさらに好ましく、30~60質量%が特に好ましい。
なお、炭素数12以上のアルキル基の含有量としては、樹脂に反応性の炭素数12以上のアルキル基を有する化合物を後から付加した場合は当該化合物の質量割合で計算するものとする。
【0065】
前記顔料分散樹脂(A)は、固体の状態から樹脂溶液化する際は、溶媒への溶解性の観点から、予め60℃以上(好ましくは80℃以上)(上限は200℃以下、好ましくは100℃以下)の液温の溶媒と混合及び溶解して樹脂溶液化してから、さらに他の成分[成分(B)、(C)、(D)など]と混合することが好ましい。
なお、「液温」とは、溶解時の溶媒又は樹脂溶液の温度のことである。
予め60℃以上の溶媒に固形の顔料分散樹脂(A)を混入して溶解してもよく、また固形の顔料分散樹脂(A)と溶媒を混合してから60℃以上の温度に加温してもよい。
また、顔料分散樹脂(A)と溶媒以外の成分を含有していてもよい。
使用する溶媒は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができ、種類としては後述する溶媒(C)で挙げたものを好適に用いることができる。
【0066】
顔料分散樹脂(A)の固形分含有量は、導電性顔料ペーストの固形分総量100質量%を基準として、例えば0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、例えば40質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0067】
また、顔料分散樹脂(A)の固形分含有量は、導電性顔料ペーストの総量100質量%を基準として、例えば0.1質量%以上、好ましくは0.4質量%以上、より好ましくは0.7質量%以上であり、例えば10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
【0068】
また、顔料分散樹脂(A)の固形分含有量は、導電性顔料(B)の含有量100質量%を基準として、例えば0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、例えば150質量%以下、好ましくは120質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0069】
溶媒(C)
前記溶媒(C)は、水や各種有機溶媒などを好適に用いることができる。
具体的には、例えば、n-ブタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロブタン等の炭化水素系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;n-ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤;エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤;エクアミド(アミド系溶剤、出光興産社製、商品名)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルプロピオアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤等を挙げることができる。
【0070】
なかでも、アミド系溶剤が好ましく、N-メチル-2-ピロリドンがより好ましい。これらの溶媒は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
また、導電性顔料ペーストの顔料分散性や樹脂成分を変質又は加水分解させない観点から、実質的に水を含まないことが好ましい。ここで「実質的に水を含まない」とは、導電性顔料ペーストの全量100質量%を基準として、水の含有量が、通常1質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下であることをいう。
本発明において、導電性顔料ペーストの水の分含有量は、カールフィッシャー電量滴定法にて測定できる。具体的には、カールフィッシャー水分率計(京都電子工業社製、商品名「MKC-610」)を用い、該装置に備えられた水分気化装置(京都電子社製、商品名「ADP-611」)の設定温度は130℃として測定できる。
【0072】
N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系化合物(溶剤)を用いる場合、不純物としてアミン成分を含むことがあり、本発明の導電性顔料ペーストにおいて、この不純物であるアミン成分によってロット毎に粘度又は増粘傾向が異なることがあった。
【0073】
また、本発明の導電性顔料ペーストを後述する方法で電極層にする場合、溶媒等は揮発するため残らないが、廃棄物削減、環境対応、及び/又は原料コスト削減のために揮発した溶媒を回収及び再利用することが好ましい。すなわち、溶媒(C)として再生品を使用することが好ましい。この再生溶媒(再生品)には、本発明の導電性顔料ペーストにもともと含有しているアミン化合物(E1)も含まれることになり、同じくロット毎に導電性顔料ペーストの粘度又は増粘傾向が異なることになる。また、アミン化合物は強い臭気を有する場合が多い。
【0074】
従って、再生品である溶媒(C)中のアミン化合物含有量を一定量以下に管理・調整することが好ましく、アミン化合物含有量としては、通常1質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以下であり、特に好ましくは0.1質量%以下であることが好適である。
【0075】
また、アミン化合物の含有量は、イオンクロマトグラフィー質量分析(IC-MS:Ion Chromatography - Mass Spectrometry)等の一般的な分析により定量することができる。予め混入が予想されるアミン種のピークについて検量線を作成することにより含有量の定量が可能である。
【0076】
なお、上記「溶媒(C)として再生品を使用」とは、本発明の導電性顔料ペーストに用いられる溶媒(C)中に再生品が10質量%以上(好ましくは20質量%以上)含まれるということである。
【0077】
導電性顔料ペーストにおける溶媒(C)の含有量は、導電性顔料ペーストの総量100質量%を基準として、例えば40質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、例えば99質量%以下、好ましくは98質量%以下、より好ましくは97質量%以下である。
また、導電性顔料ペーストの固形分としては、導電性顔料ペーストの総量100質量%を基準として、例えば1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、例えば60質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0078】
フッ素樹脂(D)
前記フッ素樹脂(D)は、電極層の膜形成を目的とする樹脂であり、導電性顔料ペーストに、必要に応じて含むことができ、含有することが好ましい。
また、後述する合材ペーストには必須の成分である。
【0079】
フッ素樹脂(D)としては、特にポリフッ化ビニリデン(PVDF)が好ましく、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、ポリフッ化ビニリデンは各種の変性がされていてもよく、基材との密着性の観点から、極性官能基を有することが好ましい。
【0080】
フッ素樹脂(D)は、顔料分散時に含有していてもよく、あるいは顔料分散後に添加して含有してもよい。また、後述する合材ペーストの製造時に含有してもよい。
フッ素樹脂(D)の重量平均分子量としては、基材との密着性、膜物性の補強、及び耐溶剤性の観点から、例えば10万以上、好ましくは50万以上、より好ましくは65万以上であり、例えば300万以下、好ましくは200万以下である。
【0081】
フッ素樹脂(D)を含む場合の含有量は、導電性顔料ペーストの固形分100質量%を基準として、例えば10.0質量%以上、好ましくは30.0質量%以上、より好ましくは40.0質量%以上であり、例えば99.0質量%以下、好ましくは80.0質量%以下、より好ましくは60.0質量%以下である。また、導電性顔料ペーストの総量100質量%を基準として、例えば0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、例えば10質量%以下、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0082】
フッ素樹脂(D)を固体の状態から樹脂溶液化する際は、溶媒への溶解性の観点から、予め40℃以上(好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上)(上限は200℃以下、好ましくは100℃以下)の液温で溶媒と混合及び溶解して樹脂溶液化してから、さらに前記導電性顔料組成物と混合及び分散することが好ましい。
なお、「液温」とは、溶解時の溶媒又は樹脂溶液の温度のことである。
予め40℃以上の溶媒に固形のフッ素樹脂(D)を混入して溶解してもよく、また固形のフッ素樹脂(D)と溶媒を混合してから40℃以上の温度に加温してもよい。
また、フッ素樹脂(D)と溶媒以外の成分を含有していてもよい。
上記の熱溶解をする場合、フッ素樹脂(D)はポリフッ化ビニリデン(又はその変性体)が好ましい。
使用する溶媒は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができ、種類としては前記溶媒(C)で挙げたものを好適に用いることができる。
また、上記の通り熱溶解した樹脂溶液を10℃以上40℃未満の所定温度まで冷却することが好ましく、該冷却工程は、下記式:
冷却速度=(冷却開始時の溶液温度-冷却終了時の溶液温度)/冷却時間
で定義される冷却速度が0.5℃/分以上(好ましくは1℃/分以上)となることが析出を防止する観点から好ましい。
【0083】
高極性低分子量成分(E)
前記高極性低分子量成分(E)は、導電性顔料のぬれ性及び/又は貯蔵安定性を上げる成分であり、例えば、それ自体既知の塩基性成分や酸性成分が挙げられ、なかでもアミン化合物(E1)を含有することが好ましい。
【0084】
上記高極性低分子量成分(E)中のアミン化合物(E1)の含有量としては、高極性低分子量成分(E)100質量%を基準として、例えば50質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは95質量%以上である。
【0085】
上記アミン化合物(E1)としては、例えば、アンモニア、1級アミン、2級アミン、3級アミン等が挙げられる。
【0086】
1級アミンとしては、例えば、エチルアミン、n-プロピルアミン、sec-プロピルアミン、n-ブチルアミン、sec-ブチルアミン、i-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミスチリルアミン、1,2-ジメチルヘキシルアミン、3-ペンチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、アリルアミン、アミノエタノール、1-アミノプロパノール、2-アミノプロパノール、アミノブタノール、アミノペンタノール、アミノヘキサノール、3-エトキシプロピルアミン、3-プロポキシプロピルアミン、3-イソプロポキシプロピルアミン、3-ブトキシプロピルアミン、3-イソブトキシプロピルアミン、3-(2-エチルヘキシロキシ)プロピルアミン、アミノシクロペンタン、アミノシクロヘキサン、アミノノルボルネン、アミノメチルシクロヘキサン、アミノベンゼン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、α-フェニルエチルアミン、ナフチルアミン、フルフリルアミン等の1級モノアミン;エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,2-ジアミノブタン、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ビス-(3-アミノプロピル)エーテル、1,2-ビス-(3-アミノプロポキシ)エタン、1,3-ビス-(3-アミノプロポキシ)-2,2’-ジメチルプロパン、アミノエチルエタノールアミン、1,2-ビスアミノシクロヘキサン、1,3-ビスアミノシクロヘキサン、1,4-ビスアミノシクロヘキサン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4-ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,3-ビスアミノエチルシクロヘキサン、1,4-ビスアミノエチルシクロヘキサン、1,3-ビスアミノプロピルシクロヘキサン、1,4-ビスアミノプロピルシクロヘキサン、水添4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2-アミノピペリジン、4-アミノピペリジン、2-アミノメチルピペリジン、4-アミノメチルピペリジン、2-アミノエチルピペリジン、4-アミノエチルピペリジン、N-アミノエチルピペリジン、N-アミノプロピルピペリジン、N-アミノエチルモルホリン、N-アミノプロピルモルホリン、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、1,4-ビスアミノプロピルピペラジン、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,4-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン、2,4-トルエンジアミン、m-アミノベンジルアミン、4-クロロ-o-フェニレンジアミン、テトラクロロ-p-キシリレンジアミン、4-メトキシ-6-メチル-m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,5-ナフタレンジアミン、2,6-ナフタレンジアミン、ベンジジン、4,4’-ビス(o-トルイジン)、ジアニシジン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-(4,4’-ジアミノジフェニル)プロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-チオジアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジトリルスルホン、メチレンビス(o-クロロアニリン)、3,9-ビス(3-アミノプロピル)2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N-アミノエチルピペラジン、N-アミノプロピルピペラジン、1,4-ビス(アミノエチルピペラジン)、1,4-ビス(アミノプロピルピペラジン)、2,6-ジアミノピリジン、ビス(3,4-ジアミノフェニル)スルホン等の1級ポリアミン等が挙げられる。
【0087】
2級アミンとしては、例えば、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-n-ペンチルアミン、ジ-3-ペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジ(2-エチルヘキシル)アミン、メチルヘキシルアミン、ジアリルアミン、ピロリジン、ピペリジン、2,4-ルペチジン、2,6-ルペチジン、3,5-ルペチジン、ジフェニルアミン、N-メチルアニリン、N-エチルアニリン、ジベンジルアミン、メチルベンジルアミン、ジナフチルアミン、ピロール、インドリン、インドール、モルホリン等の2級モノアミン;N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチル-1,2-ジアミノプロパン、N,N’-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N’-ジメチル-1,2-ジアミノブタン、N,N’-ジメチル-1,3-ジアミノブタン、N,N’-ジメチル-1,4-ジアミノブタン、N,N’-ジメチル-1,5-ジアミノペンタン、N,N’-ジメチル-1,6-ジアミノヘキサン、N,N’-ジメチル-1,7-ジアミノヘプタン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチル-1,2-ジアミノプロパン、N,N’-ジエチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N’-ジエチル-1,2-ジアミノブタン、N,N’-ジエチル-1,3-ジアミノブタン、N,N’-ジエチル-1,4-ジアミノブタン、N,N’-ジエチル-1,6-ジアミノヘキサン、ピペラジン、2-メチルピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、2,6-ジメチルピペラジン、ホモピペラジン、1,1-ジ-(4-ピペリジル)メタン、1,2-ジ-(4-ピペリジル)エタン、1,3-ジ-(4-ピペリジル)プロパン、1,4-ジ-(4-ピペリジル)ブタン等の2級ポリアミン等が挙げられる。
【0088】
3級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-iso-プロピルアミン、トリ-1,2-ジメチルプロピルアミン、トリ-3-メトキシプロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-iso-ブチルアミン、トリ-sec-ブチルアミン、トリ-ペンチルアミン、トリ-3-ペンチルアミン、トリ-n-ヘキシルアミン、トリ-n-オクチルアミン、トリ-2-エチルヘキシルアミン、トリ-ドデシルアミン、トリ-ラウリルアミン、ジシクロヘキシルエチルアミン、シクロヘキシルジエチルアミン、トリ-シクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルヘキシルアミン、N-メチルジヘキシルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルジシクロヘキシルアミン、N、N-ジエチルエタノールアミン、N、N-ジメチルエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリベンジルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、ジエチルベンジルアミン、トリフェニルアミン、N,N-ジメチルアミノ-p-クレゾール、N,N-ジメチルアミノメチルフェノール、2-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン、ピリジン、キノリン、N-メチルモルホリン、N-メチルピペリジン、2-(2-ジメチルアミノエトキシ)-4-メチル-1,3,2-ジオキサボルナン、2-、3-、4-ピコリン等の3級モノアミン;テトラメチルエチレンジアミン、ピラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、N,N’-ビス((2-ヒドロキシ)プロピル)ピペラジン、ヘキサメチレンテトラミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ブタンアミン、2-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシプロパン、ジエチルアミノエタノール、N,N,N-トリス(3-ジメチルアミノプロピル)アミン、2,4,6-トリス(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、ヘプタメチルイソビグアニド等の3級ポリアミン等が挙げられる。
【0089】
これらは、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0090】
なかでも、1級のアミン化合物が好ましく、1価のアミン化合物(モノアミン)が好ましい。
【0091】
上記アミン化合物(E1)としては、アルカノールアミン、脂肪族アミン、脂環族アミン、芳香族アミン等が挙げられ、いずれも好適に使用できるが、芳香族アミンが好ましい。
【0092】
乾燥後の電極層にアミン化合物が残らないことが好ましいため、アミン化合物(E1)の重量平均分子量が1,000未満であることが好ましく、800以下であることがより好ましく、500以下であることがさらに好ましく、350以下であることが特に好ましく、250以下であることがさらに特に好ましい。
また同じ理由で、アミン化合物の沸点としては、400℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましく、200℃以下がさらに好ましい。
また、沸点が低い場合は製造又は貯蔵中に揮発する可能性があり、さらに臭気の観点から、下限としては50℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。
また、アミン化合物(E1)のアミン価としては、通常5mgKOH/g以上、好ましくは50mgKOH/g以上、より好ましくは105mgKOH/g以上であり、通常1,000mgKOH/g以下の範囲内である。
【0093】
その他の高極性低分子量成分としては、アミン化合物(E1)と併用して、例えば、有機酸及び無機酸から選ばれる酸性の高極性低分子量成分の一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、有機塩基及び無機塩基から選ばれる塩基性の高極性低分子量成分の一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
有機酸としては、例えば、有機カルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、フタル酸等)、有機スルホン酸(ベンゼンスルホン酸等)等が、無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等が、それぞれ挙げられ、これらの酸無水物も用いることができる。
【0094】
有機塩基としては、アミン化合物以外の塩基成分や、無機塩基としては、例えば、金属水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)等が、それぞれ挙げられる。
【0095】
上記高極性低分子量成分(E)の含有量としては、導電性顔料ペーストの固形分100質量%を基準として、例えば1質量%以上、好ましくは1.5質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、例えば600質量%以下、好ましくは300質量%以下、より好ましくは50質量%以下が好適である。
【0096】
また、導電性顔料(B)の固形分100質量%を基準として、下限としては、例えば1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。上限としては、例えば1,000質量%以下、好ましくは500質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
また、導電性顔料ペーストの総量100質量%を基準として、下限としては、例えば0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。上限としては、例えば10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
【0097】
高極性低分子量成分(E)[特にアミン化合物(E1)]は、臭気が強いものが多いため、配合時や乾燥過程で作業環境が悪化する場合がある。また、一般的に高価なためコスト増になる場合がある。従って、必要最低限の含有量にする必要がある。
【0098】
また、溶媒(C)と高極性低分子量成分(E)の含有比率としては、溶媒(C)と高極性低分子量成分(E)の質量比で、通常100/0.01~100/10の範囲内であり、好ましくは100/0.02~100/7の範囲内であり、より好ましくは100/0.05~100/5の範囲内であり、より好ましくは100/0.1~100/4の範囲内であることが好適である。
【0099】
その他の成分
前記導電性顔料ペーストとしては、上記の成分(A)、(B)、(C)、及び必要に応じて含むことができる(D)と成分(E)の他に、さらにその他の成分を含有することができる。
【0100】
その他の成分としては、例えば、顔料分散樹脂(A)及びフッ素樹脂(D)以外の樹脂、中和剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤、可塑剤、導電性顔料(B)以外の顔料等を挙げることができる。
【0101】
導電性顔料(B)以外の顔料としては、例えば、チタン白、亜鉛華等の白色顔料;シアニンブルー、インダスレンブルー等の青色顔料;シアニングリーン、緑青等の緑色顔料;アゾ系やキナクリドン系等の有機赤色顔料、ベンガラ等の赤色顔料;ベンツイミダゾロン系、イソインドリノン系、イソインドリン系及びキノフタロン系等の有機黄色顔料、チタンイエロー、黄鉛等の黄色顔料等が挙げられる。これらの顔料は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。これらの導電性顔料(B)以外の顔料は、導電性を大きく損なわない範囲内で色調整や膜の物性補強等の目的で使用することができ、顔料分散樹脂(A)と導電性顔料(B)と共に同時に分散してもよく、また、顔料分散樹脂(A)と導電性顔料(B)を分散してペーストを作成した後に顔料又は顔料ペーストとして混ぜてもよい。
【0102】
上記導電性顔料(B)以外の顔料の含有量としては、導電性顔料ペースト中の全顔料100質量%を基準として、10質量以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、実質的に含有しないことが特に好ましい。
【0103】
上記導電性顔料ペーストの粘度としては、顔料分散性や貯蔵安定性などの観点から、せん断速度2s-1での粘度が、例えば5,000mPa・s未満、好ましくは2,500mPa・s未満、より好ましくは1,000mPa・s未満であり、例えば10mPa・s以上、好ましくは50mPa・s以上より好ましくは100mPa・s以上である。
【0104】
粘度の測定は、例えば、コーン&プレート型粘度計(HAAKE社製、商品名「Mars2」、直径35mm、2°傾斜のコーン&プレート)を用いて測定することができる。
【0105】
[(リチウムイオン二次電池用)合材ペーストの製造方法]
工程3(電極活物質の混合工程)
本発明の製造方法においては、まず前記工程1及び工程2によって導電性顔料を有する導電性顔料ペーストが調整される。さらに工程3(電極活物質の混合工程)として、前記導電性顔料ペーストと少なくとも一種の電極活物質(F)を混合してリチウムイオン二次電池用の合材ペーストを製造することができる。
【0106】
電極活物質(F)の固形分含有量は、合材ペーストの総量100質量%を基準として、通常10質量%以上、好ましくは20質量%以上であり、通常99質量%以下、好ましくは95質量%以下であることが、電池性能の面から好適である。
なお、前記導電性顔料ペーストでは任意成分であったフッ素樹脂(D)は、合材ペーストでは必須成分であり、必ず含有される。
フッ素樹脂(D)の固形分含有量は、合材ペーストの総量100質量%を基準として、通常0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上であり、通常10質量%以下、好ましくは2質量%以下であることが、電池性能、ペースト粘度等の面から好適である。
【0107】
工程3の混合工程においては、従来公知の混合機及び分散機を用いて合材ペーストを均一に混合することができる。
【0108】
上記合材ペースト固形分中の顔料分散樹脂(A)の固形分含有量は、合材ペーストの総量100質量%を基準として、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上であり、通常10質量%以下、好ましくは1質量%以下であることが、電池性能、ペースト粘度等の面から好適である。
【0109】
本発明の合材ペーストにおいては、合材ペーストにおける貯蔵安定性(増粘抑制)の観点から、高極性低分子量成分(E)を含有しており、高極性低分子量成分(E)として、少なくとも一種のアミン化合物(E1)を含有していることが好ましい。
高極性低分子量成分(E)を導電性顔料(B)に接触させ(濡れさせ)、次いで電極活物質(F)を混合することで導電性顔料(B)と電極活物質(F)との凝集が緩和される観点から、まず導電性顔料(B)と高極性低分子量成分(E)を混合する順序を含むことが好ましい。
【0110】
本発明の合材ペースト固形分中の導電性顔料(B)の固形分含有量は、合材ペーストの総量100質量%を基準として、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、通常30質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であることが電池性能の点から好適である。また、本発明の合材ペースト中の溶媒(C)の含有量は、合材ペーストの総量100質量%を基準として、通常1質量%以上、好ましくは4質量%以上、より好ましくは7質量%以上であり、通常90質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下であることが電極乾燥効率、ペースト粘度の点から好適である。
【0111】
上記合材ペーストは、リチウムイオン二次電池電極用の正極又は負極用途に使用することが好適であり、好ましくは正極用途として使用することが好適である。
【0112】
電極活物質(F)
前記電極活物質(F)としては、例えば、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMn)、コバルト酸リチウム(LiCoO)、LiNi1/3Co1/3Mn1/3等のリチウム複合酸化物;リン酸鉄リチウム(LiFePO);ナトリウム複合酸化物;カリウム複合酸化物等が挙げられる。これらの電極活物質(F)は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。上記リン酸鉄リチウムを含有する電極活物質は、安価でありサイクル特性及びエネルギー密度が比較的良好であるため、好適に用いることができる。
【0113】
電極活物質の粒子径としては、通常0.5μm以上、好ましくは10.5μm以上であり、通常30μm以下、好ましくは20μm以下である。
【0114】
本発明のリチウムイオン二次電池電極用合材ペースト固形分100質量%中の電極活物質(F)の固形分含有量は、通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上であり、かつ100質量%未満であることが、電池容量、電池抵抗等の面から好適である。
【0115】
合材ペースト中に上記電極活物質(F)を含有すると、貯蔵により増粘する場合がある。その理由としては、電極活物質(F)は、粒子表面に原料由来のアルカリ金属の水酸化物(例えば、LiOH、KOH、NaOHなど)を有することになるため、酸性表面を有する導電性顔料(B)により凝集(増粘)すると考えられる。そのため、高極性低分子量成分(E)[特にアミン化合物(E1)]を一定量以上含有することにより合材ペーストの貯蔵増粘を抑制することができる。
【0116】
また、本発明の電極活物質(F)は、その表面の少なくとも一部をカーボンナノチューブで覆った電極活物質複合体(F-1)を好適に用いることができる。
上記複合体(F-1)は、予め電極活物質(F)と、カーボンナノチューブと、必要に応じて他の成分(例えば、溶媒や分散樹脂)とを混合して得ることができ、必要に応じて混合後に乾燥工程を入れることができ、電極活物質(F)にカーボンナノチューブをより均一に吸着及び/又は定着することができる。
また、上記の通り製造した電極活物質複合体(F-1)は、カーボンナノチューブを電極活物質表面へ吸着及び/又は定着することで、電極活物質の周辺で均一な導電ネットワークを形成することができる。
前記電極活物質複合体(F-1)で用いることができるカーボンナノチューブとしては、それ自体公知のものを特に制限なく用いることができるが、前記カーボンナノチューブ(B1)で挙げたカーボンナノチューブを好適に用いることができる。
【0117】
[リチウムイオン二次電池電極]
リチウムイオン二次電池用電極層の製法
前述したように、リチウムイオン二次電池用電極層(電極合材層又は合材層とも呼ぶ)は、リチウムイオン二次電池用合材ペーストを正極又は負極の芯材表面(集電体)に塗布し、これを乾燥することで、電極層を製造することができるが、特に正極に用いることが好ましい。
【0118】
また、本発明の製造方法で得られた導電性顔料ペーストの用途としては、合材層(電極層)のペーストとして用いる以外に、電極芯材と合材層(電極層)との間のプライマー層(機能層、接着層ともいわれる)としても用いることができる。
リチウムイオン二次電池用合材ペーストの塗布方法は、ダイコーター等を用いたそれ自体公知の方法により行うことができる。リチウムイオン二次電池用合材ペーストの塗布量は特に限定されないが、乾燥後の合材層の厚みが、例えば0.04mm以上、好ましくは0.06mm以上であり、例えば0.30mm以下、好ましくは0.24mm以下の範囲となるように設定することができる。乾燥工程の温度としては、例えば80℃以上、好ましくは100℃以上であり、例えば250℃以下、好ましくは200℃以下の範囲内で適宜設定することができる。乾燥工程の時間としては、例えば5秒以上であり、例えば120分以下、好ましくは60分以下の範囲内で適宜設定することができる。
【0119】
上記乾燥工程で溶媒(C)及び必要に応じて含有できる高極性低分子量成分(E)の全部又は一部が揮発するが、前述した通り、廃棄物削減、環境対応、及び/又はコスト削減のために、揮発した成分(C)及び成分(E)を回収・再利用することが好ましい。
【実施例0120】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら特定の実施形態に限定されるものではない。各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0121】
[分散樹脂の製造]
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、N-メチル-2-ピロリドン(注1)75部を加え、窒素気流中で120℃に加温した。120℃に達したら、下記表1に示したモノマー種(合計100部)及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)2部の混合物を3時間かけて滴下した。添加終了後120℃で30分間熟成し、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)1部とN-メチル-2-ピロリドン(注1)20部の混合物を1時間要して滴下した。さらに120℃で1時間熟成を行った後に冷却し、N-メチル-2-ピロリドン(注1)を加えて固形分50%のアクリル樹脂(A1)を得た。極性官能基濃度は1.3mmol/gである。
【0122】
(注1)N-メチル-2-ピロリドン:水分含有量500ppm(注2)、アミン含有量500ppm(注2)、再生品
(注2)水分含有量とアミン含有量は、カールフィッシャー水分率計(京都電子工業製、商品名「MKC-610」)とイオンクロマトグラフィー(島津製作所製、商品名「prominence HIC-NS」)を用いて測定した。
【0123】
製造例2
下記表1のモノマー種とする以外は製造例1と同様にして固形分50%のアクリル樹脂(A2)を得た。
尚、得られた樹脂の重量平均分子量の値を下記表1に記す。なお、表中「樹脂A1」は、アクリル樹脂(A1)を、「樹脂A2」は、アクリル樹脂(A2)を意味する。
【0124】
【表1】
【0125】
上記表1中のモノマー種の略称は下記の通りである。
・SLMA:ラウリルメタクリレート(炭素数12の炭化水素基を有する)
・BEMA:ベヘニルメタクリレート(炭素数22の炭化水素基を有する)
・St:スチレン
・DMAEMA:N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート。
【0126】
[カーボンナノチューブ(CNT)の粉砕]
製造例3
連続乾式ビーズミル「ドライスター SDA1」(アシザワ・ファインテック株式会社製)を用いて、ジルコニアビーズ(直径3.0mm)、充填率70%、ミル周速5.0m/sで、カーボンナノチューブ(CNT1(下記表2))を供給量0.5kg/hrで1時間粉砕し、カーボンナノチューブ粉砕品(C1-1)を得た。
粉砕前のカーボンナノチューブのG/D比をα、粉砕後のG/D比をβとした場合の、β/αは0.97であった。G/D比は後述する方法で測定した。
【0127】
製造例4
連続乾式ビーズミル「ドライスター SDA1」(アシザワ・ファインテック株式会社製)を用いて、ジルコニアビーズ(直径3.0mm)、充填率70%、ミル周速5.0m/sで、カーボンナノチューブ(CNT1(下記表2))を供給量0.5kg/hrで2時間粉砕し、カーボンナノチューブ粉砕品(C1-2)を得た。
粉砕前のカーボンナノチューブのG/D比をα、粉砕後のG/D比をβとした場合の、β/αは0.95であった。G/D比は後述する方法で測定した。
【0128】
製造例5
連続乾式ビーズミル「ドライスター SDA1」(アシザワ・ファインテック株式会社製)を用いて、ジルコニアビーズ(直径3.0mm)、充填率70%、ミル周速5.0m/sで、カーボンナノチューブ(CNT2(下記表2))を供給量0.5kg/hrで2時間粉砕し、カーボンナノチューブ粉砕品(C2-2)を得た。
粉砕前のカーボンナノチューブのG/D比をα、粉砕後のG/D比をβとした場合の、β/αは0.95であった。G/D比は後述する方法で測定した。
【0129】
製造例6
連続乾式ビーズミル「ドライスター SDA1」(アシザワ・ファインテック株式会社製)を用いて、ジルコニアビーズ(直径3.0mm)、充填率70%、ミル周速5.0m/sで、カーボンナノチューブ(CNT3(下記表2))を供給量0.5kg/hrで1時間粉砕し、カーボンナノチューブ粉砕品(C3-1)を得た。
粉砕前のカーボンナノチューブのG/D比をα、粉砕後のG/D比をβとした場合の、β/αは0.97であった。G/D比は後述する方法で測定した。
【0130】
【表2】
【0131】
上記カーボンナノチューブは全て多層カーボンナノチューブである。
なお、上記表2中のメディアン径(D50)、G/D比、比表面積(BET比表面積)、及び酸性基量は後述する方法で測定した。
【0132】
[導電性顔料ペースト及び合材ペーストの製造]
実施例1A
容器にN-メチル-2-ピロリドン(注1)5000部、粉砕したカーボンナノチューブ(C1-2)200部、分散樹脂としてポリビニルピロリドン80部(固形分40部)(注3)、KFポリマーW#7300(クレハ社製、商品名、ポリフッ化ビニリデン、重量平均分子量100万)の樹脂溶液1800部(固形分180部)(注4)、及びアミンとしてベンジルアミン25部を撹拌しながら混合し、最後にN-メチル-2-ピロリドン(注1)で合計質量10000部となるように調整した。続いてボールミルにて4時間分散し、導電性顔料ペースト(A-1)を製造した。
(注3)ポリビニルピロリドン:重量平均分子量(Mw)12000、極性官能基濃度9.0(mmol/g)
(注4)ポリフッ化ビニリデンの樹脂溶液は、予め80℃の温度でポリフッ化ビニリデンとN-メチル-2-ピロリドン(注1)とを混合及び溶解したものであり、次いで40分かけて30℃まで冷却して樹脂溶液を得た。
【0133】
実施例2A~10A、比較例1A~2A
分散樹脂、カーボンナノチューブ(CNT)及びアミンを下記表3の配合とする以外は実施例1Aと同様にして導電性顔料ペースト(A-2)~(A-12)を得た。
なお、比較例では粉砕(乾式分散)していないカーボンナノチューブ[CNT1(C1-0)]を使用している。
また、後述する導電性顔料ペーストの評価試験の結果を下記表3に記す。
【0134】
【表3】
【0135】
上記表3の分散樹脂の配合量は固形分の値である。
上記表3中の分散樹脂の組成は下記の通りである。
・ポリビニルブチラール:平均重合度600、水酸基量12モル%、ブチラール基量87モル%、アセチル基量1モル%、極性官能基濃度1.0(mmol/g)
・ポリメチルメタクリレート:重量平均分子量20000、メチルメタクリレートのホモポリマー、極性官能基濃度0(mmol/g)。
上記表3中のアミンの沸点及び分子量は下記の通りである。
・ベンジルアミン:沸点185℃、分子量107
・アミノメチルプロパノール:沸点166℃、分子量89。
【0136】
実施例1B
上記導電性顔料ペースト(A-1)100部に対して、電極活物質粒子(組成式LiNi0.5Mn1.5で表されるスピネル構造のリチウムニッケルマンガン酸化物粒子、平均粒子径6μm、BET比表面積0.7m/g)900部をディスパーで混合して合材ペースト(B-1)を製造した。
【0137】
実施例2B~10B、比較例1B~2B
下記表4の配合とする以外は実施例1Bと同様にして合材ペースト(B-2)~(B-12)を得た。
また、後述する合材ペーストの評価試験の結果を上記表3に記す。
【0138】
【表4】
【0139】
<メディアン径(D50)>
メディアン径(D50)の測定は、レーザー回折/散乱式 粒子径分布測定装置「LA-960」(HORIBA社製、商品名)を用い、下記の手順で行った。
【0140】
[水分散媒の調製]
蒸留水100mLにF10MC(日本製紙社製、商品名、カルボキシメチルセルロースナトリウム(以下CMCNaとも記載))0.10gを添加し、24時間以上常温で撹拌し溶解させ、CMCNa0.1質量%の水分散媒を調製した。
【0141】
[CMCNa水溶液の調製]
蒸留水100mLにF10MC(日本製紙社製、商品名、カルボキシメチルセルロースナトリウム)2.0gを添加し、24時間以上常温で撹拌し溶解させ、CMCNa2.0質量%の水溶液を調製した。
【0142】
[測定前処理]
バイアル瓶にカーボンナノチューブを6.0mg秤量し、前記水分散媒6.0gを添加した。測定前処理に超音波ホモジナイザー(マイクロテック・ニチオン社製、「SmurtNR-50」)を用いた。チップの劣化がないことを確認し、チップが処理サンプル液面から10mm以上つかるように調整した。TIME SET(照射時間)を40秒、POW SETを50%、START POWを50%(出力50%)とし、出力電力が一定であるオートパワー運転による超音波照射により均一化させカーボンナノチューブ水分散液を作製した。
【0143】
[測定]
前記カーボンナノチューブ水分散液を用い、カーボンナノチューブの1μm以下の分散粒子の割合及びメディアン径(D50)の測定を、以下の方法に従い実施した。
LS 13 320 ユニバーサルリキッドモジュールの光学モデルをカーボンナノチューブ1.520、水1.333とそれぞれの屈折率に設定し、モジュ-ル洗浄終了後にCMCNa水溶液を約1.0mL充填する。
ポンプスピード50%の条件でオフセット測定、光軸調整、バックグラウンド測定を行った後、粒度分布計に、調製したカーボンナノチューブ水分散液を粒子によってビームの外側に散乱する光のパーセントを示す相対濃度が8~12%、もしくはPIDSが40%~55%になるように加え、粒度分布計付属装置により78W、2分間超音波照射を行い(測定前処理)、30秒循環し気泡を除いた後に粒度分布測定を行った。粒度(粒子径)に対する体積%のグラフを得て、1μm以下の分散粒子の存在割合及びメディアン径(D50)を求めた。
測定は、カーボンナノチューブ1試料につき、採取場所を変え3測定用サンプルを採取して粒度分布測定を行い、1μm以下の分散粒子の存在割合及びメディアン径(D50)をその平均値で求めた。
【0144】
<カーボンナノチューブのG/D比>
カーボンナノチューブのラマンスペクトルは、ラマン顕微鏡(堀場製作所社製、商品名「XploRA」)にカーボンナノチューブを設置し、532nmのレーザー波長を用いて測定を行った。得られたピークの内、スペクトルで1560cm-1以上~1600cm-1以下の範囲内で最大ピーク強度をG、1310cm-1以上~1350cm-1以下の範囲内で最大ピーク強度をDとした際のG/Dの比をカーボンナノチューブのG/D比とした。
【0145】
<比表面積(BET比表面積)>
カーボンナノチューブのBET比表面積は、JIS Z8830:2013に準拠し、比表面積測定装置(BERSORP-MAX(マイクロトラック・ベル株式会社))を用いて、BET比表面積(m/g)を測定した。
【0146】
<カーボンナノチューブ(CNT)の酸性基量>
CNTを2g精秤し、0.01Mのベンジルアミン/n-メチルピロリドン溶液50mlに浸漬させ、超音波照射機で1時間分散処理をした。その後遠心分離を行い、上澄みをフィルターでろ過した。得られたろ液中に残存するベンジルアミンを0.1Mの塩酸で電位差滴定することにより定量分析し、得られたCNT1g当たりの酸性基量(mmol/g)を特定した。
【0147】
評価試験
上記実施例及び比較例で得られた導電性顔料ペースト及び合材ペーストの評価試験を行った。1つでも不合格の評価結果がある場合、評価としては不合格である。
【0148】
<分散性>
得られた導電性顔料ペーストをJIS K-5600-2-5の分散度試験に準じ、ツブゲージを用いて下記基準により分散性を評価した。C及びDが不合格である。
A:顔料が10μm未満で分散されている。分散性は非常に良好である。
B:顔料が10μm以上、かつ20μm未満で分散されている。分散性はやや良好である。
C:顔料が20μm以上で分散されているが、目視で凝集物は確認できない。分散性はやや劣る。
D:目視で凝集物が確認される。分散性は非常に劣る。
【0149】
<体積抵抗率(導電性)>
得られた導電性顔料ペーストに関して、さらに体積抵抗率の測定を行った。体積抵抗率の測定では、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンの5質量%溶液(クレハ社製、商品名「KFポリマーW#7300」、溶媒:N-メチル-2-ピロリドン)を使用した。
得られた導電性顔料ペーストの導電性顔料(B)の質量と、導電性顔料ペーストの顔料分散樹脂(A)固形分及びKFポリマーW#7300固形分を合計した質量との比が5:100となるように、導電性顔料ペーストとKFポリマーW#7300溶液を量り取り、超音波ホモジナイザーで2分間混合して測定用試料を得た。
ガラス板(2mm×100mm×150mm)上に測定用試料をドクターブレード法にて塗工して、80℃60分で加熱乾燥し、ガラス板上に塗工膜を形成した。得られた塗工膜について膜厚を測定した後、ASPプローブ(三菱化学アナリテック社製、商品名「MCP-TP03P」)を用いて、抵抗率計(三菱化学アナリテック社製、商品名「Loresta-GP MCP-T610」)で抵抗値を測定し、得られた抵抗値に抵抗率補正係数(RCF)4.532及び塗工膜の膜厚を乗じて体積抵抗率を算出した。体積抵抗率は下記基準により評価した。Dが不合格である。
A:体積抵抗率が、7Ω・cm未満であり、導電性は良好である。
B:体積抵抗率が、7Ω・cm以上、かつ15Ω・cm未満であり、導電性は普通である。
D:体積抵抗率が、15Ω・cm以上であり、導電性は劣る。
【0150】
<初期粘度>
得られた合材ペーストをコーン&プレート型粘度計(HAAKE社製、商品名「Mars2」、直径35mm、2°傾斜のコーン&プレート)を用い、シアーレート2.0sec-1で粘度を測定し、下記基準により評価した。Dが不合格である。
A:粘度が、10Pa・s未満である。
B:粘度が、10Pa・s以上、かつ20Pa・s未満である。
C:粘度が、20Pa・s以上、かつ50Pa・s未満である。
D:粘度が、50Pa・s以上である。
【0151】
[電池用電極層の製造]
応用例1C~10C
実施例1B~10Bで得られた合材ペーストを、平均厚み15μmの長尺状アルミニウム箔(正極集電体)の両面に、片面あたりの目付量が10mg/cm(固形分基準)となるようにローラコート法で帯状に塗布して乾燥(乾燥温度180℃、10分間)することにより、正極層を形成した。この正極集電体に担持された正極活物質層(正極電極層)をロールプレス機により圧延して、性状を調整した。
得られた電極層は残存溶媒量が1%未満であり、仕上がり性などが良好な電極層であった。