(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170355
(43)【公開日】2024-12-09
(54)【発明の名称】スルーホールを設けた基板のめっき方法、及びめっき装置
(51)【国際特許分類】
C25D 21/10 20060101AFI20241202BHJP
C25D 17/00 20060101ALI20241202BHJP
C25D 17/06 20060101ALI20241202BHJP
C25D 17/08 20060101ALI20241202BHJP
C23C 18/31 20060101ALI20241202BHJP
C25D 7/00 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
C25D21/10 302
C25D17/00 G
C25D17/06 H
C25D17/08 J
C23C18/31 E
C25D7/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087334
(22)【出願日】2023-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】592141466
【氏名又は名称】丸仲工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079511
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 利明
(72)【発明者】
【氏名】長倉 正次
【テーマコード(参考)】
4K022
4K024
【Fターム(参考)】
4K022AA42
4K022DA01
4K022DB14
4K022DB15
4K024BB11
4K024CA12
4K024CB02
4K024CB03
4K024CB12
4K024CB26
4K024GA16
(57)【要約】
【課題】 基板の表面はもとより基板のスルーホールの内壁にも均一で肉厚なめっき被膜を形成できるめっき方法及びめっき装置を提供する。特に小径で奥行長さが長いスルーホールの内壁に均一で肉厚なめっき被膜を形成できるようにする。
【解決手段】 レール2に横移動可能に支持された吊下げ治具3によってめっき槽内のめっき液F中に垂直姿勢で吊下げられた基板Wを該基板の基板面に対向する前後方向に往復搖動Sさせながら該基板Wを該基板の基板面と平行な一方向に連続して水平搬送させてめっき処理するようにした。基板Wの往復搖動Sは往路と復路に速度差を与えたものを含む。また、前記基板Wの下端部を前記レール2の長さ方向に横移動可能に支承する基板下部受けガイド5を設け、前後方向へ往復搖動され且つ水平搬送される前記基板Wの上下部がめっき液中で均等に前後搖動されながら水平搬送されるようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルーホールを設けたプリント配線基板などの基板の電気めっき又は無電解めっきによるめっき方法であって、めっき槽内のめっき液中に垂直姿勢で入れられた前記基板を該基板の基板面に対向する前後方向に繰り返し往復搖動させながらめっき処理し、この前後方向へ繰り返し往復搖動される前記基板の上下部がめっき液中で均等に前後搖動されるようにしたことを特徴とするスルーホールを設けた基板のめっき方法。
【請求項2】
スルーホールを設けたプリント配線基板などの基板の電気めっき又は無電解めっきによるめっき方法であって、めっき槽内のめっき液中に垂直姿勢で入れられた前記基板を該基板の基板面に対向する前後方向に繰り返し往復搖動させながらめっき処理し、この前後方向へ繰り返し往復搖動される前記基板の上下部がめっき液中で均等に前後搖動されるようにし、この前後方向への繰り返し往復搖動が往路に対して復路の速度を速く、若しくは復路に対して往路の速度を速くしたことを特徴とするスルーホールを設けた基板のめっき方法。
【請求項3】
スルーホールを設けたプリント配線基板などの基板の電気めっき又は無電解めっきによるめっき方法であって、めっき槽内のめっき液中に垂直姿勢で入れられた前記基板を該基板の基板面に対向する前後方向に繰り返し往復搖動させると共にこの往復搖動と同時に該基板を該基板の基板面と平行な一方向に連続して水平搬送させながらめっき処理することを特徴とするスルーホールを設けた基板のめっき方法。
【請求項4】
スルーホールを設けたプリント配線基板などの基板の電気めっき又は無電解めっきによるめっき方法であって、めっき槽内のめっき液中に垂直姿勢で入れられた前記基板を該基板の基板面に対向する前後方向に繰り返し往復搖動させると共にこの往復搖動と同時に該基板を該基板の基板面と平行な一方向に連続して水平搬送させながらめっき処理するようにし、前記往復搖動が往路に対して復路の速度を速く、若しくは復路に対して往路の速度を速くしたことを特徴とするスルーホールを設けた基板のめっき方法。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のめっき方法であり、前後方向へ繰り返し往復搖動され且つ水平搬送される前記基板の上下部がめっき液中で均等に前後搖動されながら水平搬送されるようにしたことを特徴とするスルーホールを設けた基板のめっき方法。
【請求項6】
スルーホールを設けたプリント配線基板などの方形の基板の電気めっき又は無電解めっきによるめっき装置であって、このめっき装置は、めっき液が入れられるめっき槽と、このめっき槽のめっき液面の上方位置にめっき液面と平行に配設されたレールと、このレールに該レールの長さ方向に横移動可能に支持され、前記基板を該基板の基板面がレールの長さ方向と平行になる垂直な吊下げ姿勢に吊下げ支持し、吊下げ支持した前記基板をめっき液中に浸漬する吊下げ治具を備え、前記レールを該レールの長さ方向と直交する前後方向に往復直線移動できるように該レールを直線状のガイドに沿って前後方向に移動可能に支持すると共に、前記レールを前後往復移動作動装置の往復移動作動部に連結し、前記レールが前記ガイドに沿って前後方向に繰り返し往復直線移動されるようにし、前記レールに該レールの長さ方向に横移動可能に支持された前記吊下げ治具を該レールに沿って一方向に連続して水平搬送させる搬送手段を設けたことを特徴とするめっき装置。
【請求項7】
スルーホールを設けたプリント配線基板などの方形の基板の電気めっき又は無電解めっきによるめっき装置であって、このめっき装置は、めっき液が入れられるめっき槽と、このめっき槽のめっき液面の上方位置にめっき液面と平行に配設されたレールと、このレールに該レールの長さ方向に横移動可能に支持され、前記基板を該基板の基板面がレールの長さ方向と平行になる垂直な吊下げ姿勢に吊下げ支持し、吊下げ支持した前記基板をめっき液中に浸漬する吊下げ治具を備え、前記レールを該レールの長さ方向と直交する前後方向に往復直線移動できるように該レールを直線状のガイドに沿って前後方向に移動可能に支持すると共に、前記レールを往路行程に対して復路行程の速度を速くした作動機構を有する前後往復移動作動装置の往復移動作動部に連結し、前記レールが前記ガイドに沿って往路行程に対して復路行程の速度を速く前後方向に繰り返し往復直線移動されるようにし、前記レールに該レールの長さ方向に横移動可能に支持された前記吊下げ治具を該レールに沿って一方向に連続して水平搬送させる搬送手段を設けたことを特徴とするめっき装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のめっき装置であり、前記吊下げ治具で垂直な吊下げ姿勢に吊下げ支持される前記基板の下端部を前記レールの長さ方向に横移動可能に支承する基板下部受けガイドを前記レールと一体的に前後往復移動するように設けたことを特徴とするめっき装置。
【請求項9】
請求項8に記載のめっき装置であり、前記基板下部受けガイドは、上下方向に延びる取付け部材の下方部に設けられ、この取付け部材の上方部が前記レールの背面側に固定された固定ガイドに沿って上下方向にスライド移動可能に支持され、該基板下部受けガイドが前記吊下げ治具で吊下げ支持された前記基板の下端部に合う上下方向位置において固定手段で固定されるようにしたことを特徴とするめっき装置。
【請求項10】
請求項6に記載のめっき装置であり、前記前後往復移動作動装置が駆動モーターによる等速のクランク回転運動を往路行程と復路行程の移動速度が等しい直線往復運動に変換できる作動機構であり、この前後往復移動作動装置の往復移動作動部と直線状のガイドに沿って前後方向に往復直線移動される前記レールを連結したことを特徴とするめっき装置。
【請求項11】
請求項7に記載のめっき装置であり、前記前後往復移動作動装置が駆動モーターによる等速のクランク回転運動を早戻り機構によって往路行程の移動速度に対して復路行程の移動速度を速くした直線往復運動に変換できる作動機構であり、この前後往復移動作動装置の往復移動作動部と直線状のガイドに沿って前後方向に往復直線移動される前記レールを連結したことを特徴とするめっき装置。
【請求項12】
請求項6又は7に記載のめっき装置であり、前記前後往復移動作動装置が前後往復移動用シリンダであり、この前後往復移動用シリンダの往復移動作動部である往復作動ロッド部と直線状のガイドに沿って前後方向に往復直線移動される前記レールを連結したことを特徴とするめっき装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルーホールを設けたプリント配線基板などの基板のめっき方法、及びめっき装置であり、特にスルーホールの口径が小径で奥行長さが長いスルーホールであっても、このスルーホールの内壁に均一なめっき被膜を形成できるようにしためっき方法、及びめっき装置である。
【背景技術】
【0002】
従来、スルーホールを設けたプリント配線基板などの基板をめっきするに際し、基板の表面、及びスルーホールの内壁に均一なめっき被膜を形成できるようにするため、めっき液中の基板を搖動させながらめっきする方法(いわゆる基板搖動法)があった。
【0003】
従来のこの基板搖動法としては、めっき液中の基板を基板面に沿った左右方向に繰り返し等速で往復搖動させながらめっきする方法が知られている。この基板左右搖動法として、例えば特許文献1に、クランクの回転運動を連接棒を介して陰極バー(陰極として機能するバー)に連結し、この陰極バーをバーの長さ方向に左右に繰り返し等速で往復移動させることによって、この陰極バーに治具を介して吊下げ支持された基板製品を基板面に沿った左右方向に繰り返し等速で往復搖動させる装置が開示されている。
【0004】
しかし、前記した従来の基板左右搖動法では、基板(プリント配線基板などの)のスルーホールの口径が小径(例えば、0.2mm程度)となるほど、またスルーホールの奥行長さが長く(例えば、4mm程度)なるほど、この基板搖動で撹拌されためっき液が基板のスルーホール内を流通しにくく、このスルーホールの内壁に均一で肉厚なめっき被膜を形成することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、スルーホールを設けた基板のめっき方法、及びめっき装置であって、基板の表面はもとより基板のスルーホールの内壁にも均一で肉厚なめっき被膜を形成できるようにすることを課題とする。また、本発明は、特にスルーホールの口径が比較的小径で奥行長さが比較的長いスルーホールであっても、このスルーホールの内壁に均一で肉厚なめっき被膜を形成できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するため、本発明(請求項1の発明)は、スルーホールを設けたプリント配線基板などの基板の電気めっき又は無電解めっきによるめっき方法であって、めっき槽内のめっき液中に垂直姿勢で入れられた前記基板を該基板の基板面に対向する前後方向に繰り返し往復搖動させながらめっき処理し、この前後方向へ繰り返し往復搖動される前記基板の上下部がめっき液中で均等に前後搖動されるようにしたことを特徴とするスルーホールを設けた基板のめっき方法を提供する。
【0008】
このめっき方法は、めっき槽内のめっき液中に垂直姿勢で入れられた前記基板を該基板の基板面に対向する前後方向に繰り返し往復搖動すると共に、この前後方向へ繰り返し往復搖動される前記基板の上下部がめっき液中で均等に前後搖動されるようにしたものであるため、めっき槽内のめっき液を上下部において均等に且つ効率的に撹拌でき、この均等に且つ効率的に撹拌されためっき液によって、基板の表面はもとより基板のスルーホールの内壁にも均一で肉厚なめっき被膜を形成できる。
【0009】
また、この課題を解決するため、本発明(請求項2の発明)は、スルーホールを設けたプリント配線基板などの基板の電気めっき又は無電解めっきによるめっき方法であって、めっき槽内のめっき液中に垂直姿勢で入れられた前記基板を該基板の基板面に対向する前後方向に繰り返し往復搖動させながらめっき処理し、この前後方向へ繰り返し往復搖動される前記基板の上下部がめっき液中で均等に前後搖動されるようにし、この前後方向への繰り返し往復搖動が往路に対して復路の速度を速く、若しくは復路に対して往路の速度を速くしたことを特徴とするスルーホールを設けた基板のめっき方法を提供する。
【0010】
このめっき方法は、請求項1に記載のめっき方法と同様な効果が期待できる。しかも、このめっき方法は、前後方向への繰り返し往復搖動において、特に、往路と復路の基板移動速度に速度差を与えたものであるため、めっき槽内のめっき液を上下部において更に均等に且つ効率的に撹拌でき、この均等に且つ効率的に撹拌されためっき液によって、基板の表面はもとより基板のスルーホールの内壁にも均一で肉厚なめっき被膜を形成できる。特に、本発明の新規な基板搖動法によれば、スルーホール内を効率的に流通し、通過するめっき液によって、特にスルーホールの口径が小径で奥行長さが長いスルーホールを設けた基板であっても、このスルーホールの内壁に均一で肉厚なめっき被膜を形成することができる。
【0011】
また、この課題を解決するため、本発明(請求項3の発明)は、スルーホールを設けたプリント配線基板などの基板の電気めっき又は無電解めっきによるめっき方法であって、めっき槽内のめっき液中に垂直姿勢で入れられた前記基板を該基板の基板面に対向する前後方向に繰り返し往復搖動させると共にこの往復搖動と同時に該基板を該基板の基板面と平行な一方向に連続して水平搬送させながらめっき処理することを特徴とするスルーホールを設けた基板のめっき方法を提供する。
【0012】
また、この課題を解決するため、本発明(請求項4の発明)は、スルーホールを設けたプリント配線基板などの基板の電気めっき又は無電解めっきによるめっき方法であって、めっき槽内のめっき液中に垂直姿勢で入れられた前記基板を該基板の基板面に対向する前後方向に繰り返し往復搖動させると共にこの往復搖動と同時に該基板を該基板の基板面と平行な一方向に連続して水平搬送させながらめっき処理するようにし、前記往復搖動が往路に対して復路の速度を速く、若しくは復路に対して往路の速度を速くしたことを特徴とするスルーホールを設けた基板のめっき方法を提供する。
【0013】
前記した発明(請求項3、4の発明)は、基板を前後方向に繰り返し往復搖動させながら水平搬送させてめっき処理するめっき方法であり、
図2(水平搬送される基板の搖動状態を示した平面図)に示したように、基板の前後搖動が水平搬送によって該基板の平行状態を維持した状態で斜め方向への前後搖動となり、この前後搖動の繰り返しによって、基板は平行状態を維持した状態でジグザグ搬送されることとなる。この基板の平行状態を維持した状態での斜め方向への前後搖動に因り、液傾斜流動が起き、この液傾斜流動で効率的に撹拌されためっき液によって、基板の表面はもとより基板のスルーホールの内壁にも均一で肉厚なめっき被膜を形成できる。特に、基板を前後方向に繰り返し往復搖動させながら水平搬送させてめっき処理するようにした本発明の新規な基板搖動法によれば、スルーホール内を効率的に流通し、通過するめっき液によって、特にスルーホールの口径が小径で奥行長さが長いスルーホールを設けた基板であっても、このスルーホールの内壁に均一で肉厚なめっき被膜を形成することができる。
【0014】
また、本発明(請求項5の発明)は、前後方向へ繰り返し往復搖動され且つ水平搬送される前記基板の上下部がめっき液中で均等に前後搖動されながら水平搬送されるようにした基板のめっき方法を提供する。
【0015】
この発明は、前記基板の上下部がめっき液中で均等に前後搖動されながら水平搬送されるようにしたものであるため、めっき槽内のめっき液を上下部において均等に且つ効率的に撹拌でき、この均等に且つ効率的に撹拌されためっき液によって、基板の表面はもとより基板のスルーホールの内壁にも均一で肉厚なめっき被膜を形成できる。
【0016】
また、この課題を解決するため、本発明(請求項6の発明)は、スルーホールを設けたプリント配線基板などの方形の基板の電気めっき又は無電解めっきによるめっき装置であって、このめっき装置は、めっき液が入れられるめっき槽と、このめっき槽のめっき液面の上方位置にめっき液面と平行に配設されたレールと、このレールに該レールの長さ方向に横移動可能に支持され、前記基板を該基板の基板面がレールの長さ方向と平行になる垂直な吊下げ姿勢に吊下げ支持し、吊下げ支持した前記基板をめっき液中に浸漬する吊下げ治具を備え、前記レールを該レールの長さ方向と直交する前後方向に往復直線移動できるように該レールを直線状のガイドに沿って前後方向に移動可能に支持すると共に、前記レールを前後往復移動作動装置の往復移動作動部に連結し、前記レールが前記ガイドに沿って前後方向に繰り返し往復直線移動されるようにし、前記レールに該レールの長さ方向に横移動可能に支持された前記吊下げ治具を該レールに沿って一方向に連続して水平搬送させる搬送手段を設けたことを特徴とするめっき装置を提供する。
【0017】
このめっき装置によれば、請求項3に記載のめっき方法を達成(実現)でき、請求項3に記載のめっき方法と同様な作用及び効果を期待できる。すなわち、このめっき装置によれば、基板を前後方向に繰り返し往復搖動させながら水平搬送させてめっき処理することができ、
図2(水平搬送される基板の搖動状態を示した平面図)に示したように、基板の前後搖動が水平搬送によって該基板の平行状態を維持した状態で斜め方向への前後搖動となり、この前後搖動の繰り返しによって、基板は平行状態を維持した状態でジグザグ搬送されることとなる。よって、このめっき装置によれば、この基板の平行状態を維持した状態での斜め方向への前後搖動に因り、液傾斜流動が起き、この液傾斜流動で効率的に撹拌されためっき液によって、基板の表面はもとより基板のスルーホールの内壁にも均一で肉厚なめっき被膜を形成できる。
【0018】
また、この課題を解決するため、本発明(請求項7の発明)は、スルーホールを設けたプリント配線基板などの方形の基板の電気めっき又は無電解めっきによるめっき装置であって、このめっき装置は、めっき液が入れられるめっき槽と、このめっき槽のめっき液面の上方位置にめっき液面と平行に配設されたレールと、このレールに該レールの長さ方向に横移動可能に支持され、前記基板を該基板の基板面がレールの長さ方向と平行になる垂直な吊下げ姿勢に吊下げ支持し、吊下げ支持した前記基板をめっき液中に浸漬する吊下げ治具を備え、前記レールを該レールの長さ方向と直交する前後方向に往復直線移動できるように該レールを直線状のガイドに沿って前後方向に移動可能に支持すると共に、前記レールを往路行程に対して復路行程の速度を速くした作動機構を有する前後往復移動作動装置の往復移動作動部に連結し、前記レールが前記ガイドに沿って往路行程に対して復路行程の速度を速く前後方向に繰り返し往復直線移動されるようにし、前記レールに該レールの長さ方向に横移動可能に支持された前記吊下げ治具を該レールに沿って一方向に連続して水平搬送させる搬送手段を設けたことを特徴とするめっき装置を提供する。
【0019】
このめっき装置によれば、請求項4に記載のめっき方法を達成(実現)でき、請求項4に記載のめっき方法と同様な作用及び効果を期待できる。すなわち、このめっき装置によれば、基板を前後方向に往路行程に対して復路行程の速度を速く繰り返し往復搖動させながら水平搬送させてめっき処理することができ、基板の前後搖動が水平搬送によって該基板の平行状態を維持した状態で斜め方向への前後搖動となり、この前後搖動の繰り返しによって、基板は平行状態を維持した状態でジグザグ搬送されることとなる。よって、このめっき装置によれば、この基板の平行状態を維持した状態での斜め方向への前後搖動に因り、液傾斜流動が起き、この液傾斜流動で効率的に撹拌されためっき液によって、基板の表面はもとより基板のスルーホールの内壁にも均一で肉厚なめっき被膜を形成できる。
【0020】
また、本発明(請求項8の発明)は、前記しためっき装置(請求項6、7のめっき装置)において、前記吊下げ治具で垂直な吊下げ姿勢に吊下げ支持される前記基板の下端部を前記レールの長さ方向に横移動可能に支承する基板下部受けガイドを前記レールと一体的に前後往復移動するように設けたことを特徴とするめっき装置を提供する。
【0021】
この発明は、基板下部受けガイドを設けたことによって、前記吊下げ治具で保持された基板の上端部に対して前後方向への振れ幅が大きくなる基板の下端部の振れを防止でき、基板の上下部がめっき液中で均等に前後搖動されながら水平搬送されるようにしてある。よって、このめっき装置によれば、請求項5に記載のめっき方法を達成(実現)でき、請求項5に記載のめっき方法と同様な作用及び効果を期待できる。すなわち、めっき槽内のめっき液を上下部において均等に且つ効率的に撹拌でき、この均等に且つ効率的に撹拌されためっき液によって、基板の表面はもとより基板のスルーホールの内壁にも均一で肉厚なめっき被膜を形成できる。
【0022】
また、本発明(請求項9の発明)は、前記基板下部受けガイドを、上下方向に延びる取付け部材の下方部に設け、この取付け部材の上方部が前記レールの背面側に固定された固定ガイドに沿って上下方向にスライド移動可能に支持され、該基板下部受けガイドが前記吊下げ治具で吊下げ支持された前記基板の下端部に合う上下方向位置において固定手段で固定されるようにしたことを特徴とするめっき装置を提供する。これによって、前記基板下部受けガイドを基板の上下方向の長さ幅の変更に対処できるようにしてある。
【0023】
また、本発明(請求項10の発明)は、前記前後往復移動作動装置が駆動モーターによる等速のクランク回転運動を往路行程と復路行程の移動速度が等しい直線往復運動に変換できる作動機構であり、この前後往復移動作動装置の往復移動作動部と直線状のガイドに沿って前後方向に往復直線移動される前記レールを連結したことを特徴とするめっき装置を提供する。
【0024】
また、本発明(請求項11の発明)は、前記前後往復移動作動装置が駆動モーターによる等速のクランク回転運動を早戻り機構によって往路行程の移動速度に対して復路行程の移動速度を速くした直線往復運動に変換できる作動機構であり、この前後往復移動作動装置の往復移動作動部と直線状のガイドに沿って前後方向に往復直線移動される前記レールを連結したことを特徴とするめっき装置を提供する。
【0025】
また、本発明(請求項12の発明)は、前記前後往復移動作動装置が前後往復移動用シリンダであり、この前後往復移動用シリンダの往復移動作動部である往復作動ロッド部と直線状のガイドに沿って前後方向に往復直線移動される前記レールを連結したことを特徴とするめっき装置を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明のめっき方法及びめっき装置によれば、基板の上下部がめっき液中で均等に前後搖動されるようにしたものであるため、めっき槽内のめっき液を上下部において均等に且つ効率的に撹拌でき、この均等に且つ効率的に撹拌されためっき液によって、基板の表面はもとより基板のスルーホールの内壁にも均一で肉厚なめっき被膜を形成できる。
【0027】
特に、前後方向への繰り返し往復搖動において、往路と復路の基板移動速度に速度差を与えてある、本発明のめっき方法及びめっき装置によれば、めっき槽内のめっき液を上下部において更に均等に且つ効率的に撹拌でき、この均等に且つ効率的に撹拌されためっき液によって、基板の表面はもとより基板のスルーホールの内壁にも均一で肉厚なめっき被膜を形成できる。特に、本発明の新規な基板搖動法によれば、スルーホール内を効率的に流通し、通過するめっき液によって、特にスルーホールの口径が小径でスルーホールの奥行長さが長いスルーホールを設けた基板であっても、このスルーホールの内壁に均一で肉厚なめっき被膜を形成することができる。
【0028】
さらに、本発明のめっき方法及びめっき装置によれば、基板を前後方向に繰り返し往復搖動させながら水平搬送させてめっき処理するようにしたものであるため、基板の前後搖動が水平搬送によって該基板の平行状態を維持した状態で斜め方向への前後搖動となり、この基板の平行状態を維持した状態での斜め方向への前後搖動に因り、液傾斜流動が起き、この液傾斜流動で効率的に撹拌されためっき液によって、基板の表面はもとより基板のスルーホールの内壁にも均一で肉厚なめっき被膜を形成できる。特に、基板を前後方向に繰り返し往復搖動させながら水平搬送させてめっき処理するようにした本発明の新規な基板搖動法によるめっき方法及び装置によれば、スルーホール内を効率的に流通し、通過するめっき液によって、特にスルーホールの口径が小径で奥行長さが長いスルーホールを設けた基板であっても、このスルーホールの内壁に均一で肉厚なめっき被膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明のめっき方法及びめっき装置の概略を説明した側面図である。
【
図2】水平搬送される基板の搖動状態を示した本発明の平面図である。
【
図3】本発明のめっき装置の概略を示した側面図である。
【
図4】本発明のめっき装置の要部を示した拡大側面図である。
【
図5】本発明のめっき装置の要部を示した拡大側面図である。
【
図6】本発明のめっき装置の要部を示した拡大側面図である。
【
図7】本発明のめっき装置の要部を示した拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、スルーホールを設けたプリント配線基板などの方形の基板を電気めっき又は無電解めっきに因りめっきする、本発明のめっき方法及びめっき装置の概略を説明した側面図であり、めっき槽1内(
図1はめっき槽を図示してない。)のめっき液F中に垂直姿勢で入れられた前記基板Wを該基板の基板面に対向する前後方向に繰り返し往復搖動させながらめっき処理し、この前後方向へ繰り返し往復搖動される前記基板Wの上下部がめっき液F中で均等に前後搖動されるようにしてある。
図1において、符号Sは基板Wの搖動範囲、符号Lは基板搖動範囲の基準中心線、符号Hは基板Wに設けられているスルーホール、符号2はレール、符号3は吊下げ治具、符号5は基板下部受けガイドを示している。本発明において、基板Wの搖動範囲Sは特に限定するものではないが、図示した実施例では約40mmとしてある。
【0031】
この基板Wの前後方向への繰り返し往復搖動は、往路と復路の速度を等しくしたもの、又は、往路に対して復路の速度を速く、若しくは復路に対して往路の速度を速くした変速式のものも含む。なお、この前後往復搖動において、往路と復路に速度差を与えた変速式の往復速度比率としては、1対2~1対10の範囲で可変可能とすることが好ましい。
【0032】
図2は、水平搬送される基板Wの搖動状態を説明的に示した平面図である。同図において、矢印Aは基板Wの搬送方向、符号Sは基板Wの搖動範囲、符号Lは基板搖動範囲の基準中心線を示している。なお、この基準中心線Lは後述する左右一対の陽極部材10間の中心線ともなる。
図2に示したように、基板Wを前後方向に繰り返し往復搖動させながら水平搬送させた場合、基板Wの前後搖動が水平搬送によって該基板Wの平行状態を維持した状態で斜め方向への前後搖動となり、この前後搖動の繰り返しによって、基板Wは平行状態を維持した状態でジグザグ搬送されることとなる。なお、
図2に示した基板の動きは、搖動速度と搬送速度によって変化するが、基板Wの前後搖動が水平搬送によって該基板Wの平行状態を維持した状態で斜め方向への前後搖動となることには変わりがない。
【0033】
図3に示しためっき装置は、電気めっき装置であり、このめっき装置は、めっき液Fが入れられるめっき槽1と、このめっき槽1のめっき液面の上方位置にめっき液面と平行に配設されたレール2と、このレール2に該レールの長さ方向に横移動可能に支持され、前記基板Wを該基板の基板面がレール2の長さ方向と平行になる垂直な吊下げ姿勢に吊下げ支持し、吊下げ支持した前記基板Wをめっき液F中に浸漬する吊下げ治具3とを備えている。この吊下げ治具3は、適宜な搬送手段(
図3には図示せず。)によって、レール2に沿って一方向に水平搬送されるようになっている(
図7参照)。前記吊下げ治具3は、レール2に摺動自在に支持される本体部3aと、基板Wの上部を摘持できる複数のクリップ状の摘持部3bを備えている。前記レール2は、陰極として機能する導電性の金属レールであり、このレール2から導電性の吊下げ治具3を介して基板Wに陰極の電流を供給できるように成っている。更に、このめっき装置は、めっき槽1内の基板位置の両側に配置された陽極部材10と、この陽極部材10と基板Wとの間にそれぞれ配置され、基板Wの表面及びスルーホールHに向けてめっき液を噴射できる噴射ノズル12を備えている。更に、
図3において、符号Lは基板搖動範囲の基準中心線を示し、この基準中心線Lは左右一対の陽極部材10間の中心線でもあり、前記基板Wはこの基準中心線Lを中心にした搖動範囲Sを同図において左右(正面方向から視て前後方向)に往復搖動されるようにしてある。
【0034】
本発明のめっき装置は、
図4及び
図5に示したように、前記レール2を該レールの長さ方向と直交する前後方向に往復直線移動(実線と一点鎖線で示した往復移動範囲)できるように該レール2を直線状のガイド20に沿って前後方向に移動可能(スライド移動可能)に支持すると共に、前記レール2を前後往復移動作動装置30の往復移動作動部31に連結し、前記レール2が前記ガイド20に沿って前後方向に繰り返し往復直線移動されるようにしてある。前後往復移動作動装置30として、
図4はロッド部が往復作動する前後往復移動用シリンダ、
図5は駆動モーターによる等速のクランク回転運動を直線往復運動に変換できる作動機構としてある。
【0035】
前記ガイド20は、装置の固定部に平行に架設された2本のガイドから成り、それぞれのガイド20にスライド移動自在に支持されたスライダ21間に架け渡された架設部22から垂下された固定部材23と前記レール2の背面側に固着されたチャンネル状の固定部材24とを固着することによって、レール2を直線状のガイド20に沿って前後方向に移動可能に支持している。
【0036】
さらに、本発明のめっき装置は、
図6及び
図7に示したように、前記吊下げ治具3で垂直な吊下げ姿勢に吊下げ支持される前記基板Wの下端部を前記レール2の長さ方向に横移動可能に支承する樹脂製の基板下部受けガイド5を前記レール2と一体的に前後往復移動するように設けてある。
【0037】
前記基板下部受けガイド5は、上下方向に延びる樹脂製の取付け部材6の下方部に設けられ、この取付け部材6の上方部が前記レール2の背面側に固定された固定ガイド7に沿って上下方向にスライド移動可能に支持され、該基板下部受けガイド5が前記吊下げ治具3で吊下げ支持された前記基板Wの下端部に合う上下方向位置で適宜な固定手段(ボルト締結手段など)で固定されるようにしてある。これによって、基板下部受けガイド5を基板Wの上下方向の長さ幅の変更に対処できるようにしてある。
【0038】
図7に吊下げ治具3を前記レール2に沿って一方向に連続して水平搬送させる搬送手段40の一例を示してある。
図7に示した搬送手段40は、吊下げ治具3の本体部3aの背面側に取付けられた複数の送りツメ41(この送りツメ41は
図4の吊下げ治具3にも示してある。)と、この送りツメ41に係合して連続駆動するエンドレスなコンベアチェーン42(又はエンドレスな歯付ベルト)とを備え、連続駆動するエンドレスなコンベアチェーン42(又はエンドレスな歯付ベルト)に吊下げ治具3の送りツメ41を係合させて、吊下げ治具3をレール2に沿って一方向に連続して水平搬送できるようにしてある。前記したエンドレスなコンベアチェーン42は、前記した基板下部受けガイド5と同様に、前記レール2と一体的に前後往復移動するように設けてある。なお、搬送手段40は図示したものに限定されないことは勿論である。例えば、吊下げ治具3の上部に突出形成した突起3cを押送手段(図示せず)で押送することによって、吊下げ治具3をレール2に沿って一方向に連続して水平搬送できるようにすることも可能である。水平搬送させる基板の搬送速度は、1分当たり30cm~200cmとしてあり、めっき処理される基板のめっき処理条件によって搬送速度を変更可能にしてある。
【0039】
図4に示した前記前後往復移動作動装置30は前後往復移動用シリンダ(エアー又は油圧式のシリンダー)であり、この前後往復移動用シリンダの往復移動作動部31である往復作動ロッド部と直線状のガイド20に沿って前後方向に往復直線移動される前記レール2を該レール2の背面側に固着されたチャンネル状の固定部材24を介して固定的に連結したものである。この前後往復移動用シリンダのシリンダ本体部はめっき装置の固定部に取付けてある。前後往復移動作動装置30として用いる前後往復移動用シリンダは、前後往復移動の速度調整を個々に変えることができ、基板のスルーホール内への液流通が図り易い利点がある。
【0040】
図5に示した前記前後往復移動作動装置30は、駆動モーター32による等速のクランク回転運動を早戻り機構33によって往路行程の移動速度に対して復路行程の移動速度を速くした直線往復運動に変換できる作動機構であり、この前後往復移動作動装置30の往復移動作動部31と直線状のガイド20に沿って前後方向に往復直線移動される前記レール2を連結したものである。
【0041】
図5に示したように、前記レール2の後方位置に駆動モーター32の回転駆動力を得て中心軸を中心として等速回転される回転体34を設け、この回転体34に該回転体の中心軸より偏位した位置で等速回転されるクランクとして機能する連結軸35を設け、前記レール2と前記回転体34の間に、一端部が固定部に支持軸で枢支され、自由端部が揺動される揺動レバー36を設け、この揺動レバー36の自由端部と前記回転体34の連結軸35とを第一連接リンク37を介して連結ピンで連結し、前記揺動レバー36の自由端部と前記レール2の背面側に固着されたチャンネル状の固定部材24とを第二連接リンク38を介して連結ピンで連結した。前記回転体34が中心軸を中心として等速で一回転される間に前記揺動レバー36の自由端部が往路行程に対して復路行程の速度が速く前後方向に一往復揺動され、この揺動レバー36の往復揺動が第二連接リンク38を介して前記レール2に伝達され、前記レール2を往路行程に対して復路行程の速度を速く前後方向に往復移動するようにしてある。
【0042】
また、
図5に示した前後往復移動作動装置30に変えて、図示してないが、この前後往復移動作動装置を駆動モーターによる等速のクランク回転運動を連結ピンで連結された連接リンクを介して往路行程と復路行程の移動速度が等しい直線往復運動に変換できる作動機構とし、この前後往復移動作動装置の往復移動作動部として機能する前記連接リンクの作動端部と直線状のガイドに沿って前後方向に往復直線移動される前記レールを連結したものとすることも可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 めっき槽
F めっき液
W 基板
H スルーホール
L 基準中心線
S 基板の搖動範囲
2 レール
3 吊下げ治具
5 基板下部受けガイド
6 取付け部材
7 固定ガイド
10 陽極部材
12 噴射ノズル
20 ガイド
30 前後往復移動作動装置
31 往復移動作動部
40 搬送手段