(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170357
(43)【公開日】2024-12-09
(54)【発明の名称】ロボット装置
(51)【国際特許分類】
B25J 9/10 20060101AFI20241202BHJP
【FI】
B25J9/10 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023087336
(22)【出願日】2023-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】390020477
【氏名又は名称】トライエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003373
【氏名又は名称】弁理士法人石黒国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡 丈晴
(72)【発明者】
【氏名】荒川 敬紀
(72)【発明者】
【氏名】東 和也
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS12
3C707AS14
3C707BS10
3C707KS03
3C707KS04
3C707KS05
3C707KS07
3C707KX06
3C707KX07
3C707LT06
3C707LT12
3C707LV04
3C707LV05
(57)【要約】
【課題】ロボット装置1において、体格が大きなワーク2を満足に加工できるようにする。
【解決手段】ロボット装置1は、ロボット4に装着した加工具5を3次元的に移動させながら、ワーク2を加工するものであり、以下の部位計測手段、および、加工条件補正手段を備える。まず、部位計測手段は、加工具5による加工にあたり、ワーク2の位置および姿勢を決めた状態で、ワーク2における加工部位3の状態を計測する。また、加工条件補正手段は、ワーク2を加工するための加工条件として事前に設定された初期加工条件を、部位計測手段により得られた加工部位3の状態に基づき補正する。そして、ロボット装置1は、加工条件補正手段による補正後の加工条件を用いてワーク2の加工を制御する。これにより、ロボット装置1は、体格が大きなワーク2を満足に加工することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットに装着した加工具を3次元的に移動させながら、ワークを加工するロボット装置において、
前記加工具による加工にあたり、前記ワークの位置および姿勢を決めた状態で、前記ワークにおける加工部位の状態を計測する部位計測手段と、
前記ワークを加工するための加工条件として事前に設定された初期加工条件を、前記部位計測手段により得られた前記加工部位の状態に基づき補正する加工条件補正手段とを備え、
この加工条件補正手段による補正後の加工条件を用いて前記ワークの加工を制御することを特徴とするロボット装置。
【請求項2】
請求項1に記載のロボット装置において、
前記加工具による加工にあたり、前記ワークの位置および姿勢を決めた状態で、前記ワークの位置および姿勢を計測する全体計測手段と、
前記部位計測手段により前記加工部位の状態を計測するための計測条件として事前に設定された初期計測条件を、前記全体計測手段により得られた前記ワークの位置および姿勢に基づき補正する計測条件補正手段とを備え、
前記部位計測手段は、この計測条件補正手段による補正後の計測条件を用いて前記加工部位の状態を計測することを特徴とするロボット装置。
【請求項3】
請求項2に記載のロボット装置において、
前記全体計測手段は、前記ワークの位置および姿勢を3点計測により計測することを特徴とするロボット装置。
【請求項4】
請求項1に記載のロボット装置において、
前記ロボットに装着されて3次元的に移動し、前記加工部位の状態に応じた信号を発生する部位検出手段を備え、
前記部位計測手段は、この部位検出手段が発生する信号に基づき、前記加工部位の状態を計測することを特徴とするロボット装置。
【請求項5】
請求項2に記載のロボット装置において、
前記ロボットに装着されて3次元的に移動し、前記ワークの位置および姿勢に応じた信号を発生する全体検出手段を備え、
前記全体計測手段は、この全体検出手段が発生する信号に基づき、前記被加工物の位置および傾斜を計測することを特徴とするロボット装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットに装着した加工具を3次元的に移動させながら、ワークを加工するロボット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、上記のようなロボット装置では、ワークの位置および姿勢を決めた状態で、ロボットを動作させて加工具による加工を行うことが公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1によれば、自動車のドアパネルのように、複数の金属板体を重ねて構成されるワークの周縁を、ロボットに装着した加工具としてのローラによりヘム加工するローラ式ヘミング加工装置が開示されている。そして、この加工装置によれば、所定の加工スペースに下型が設置されており、この下型にワークを載せるとともに、事前のティーチングにより設定した加工条件に従ってロボットを動作させることで、同じ型の多数のワークを一品ごとにヘム加工していくことができる。
【0004】
近年、金属材料、樹脂材料等の素材に関わりなく、ドアパネルよりも遥かに体格が大きいワークをロボット装置により加工する需要が高まっているが、このように体格が大きいワークをロボット装置により加工する場合、体格の大きさに起因して以下のような問題が発生している。
【0005】
例えば、鉄道車両の台車の製造工程では、各種の金属部材を溶接により一体化した大型の金属構造体をワークとして、溶接部の余肉をフェイスミル等により除去する。しかし、このようなワークでは、溶接歪に伴う変形量が大きいので、事前のティーチングにより設定した加工条件に従ってロボット装置を動作させても、満足に加工することが難しい。
【0006】
また、モータボートのデッキやハルの製造工程では、FRPを主な素材とする大型の樹脂成形品をワークとして、余材をエンドミル・丸鋸等により切除する。しかし、このようなワークでは、熱収縮に伴う変形量が大きいので、事前のティーチングにより設定した加工条件に従ってロボット装置を動作させても、同様に満足に加工することが難しい。
【0007】
また、上記のような体格が大きいワークに関しては、一品ごとに、精度よく位置および姿勢を決めることが難しく、位置および姿勢をラフに決めてしまうことが多い。このため、ワークの位置および姿勢も一品ごとに大きく変動してしまい、より一層、ロボット装置による加工を困難にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、ロボット装置において、体格が大きなワークに関しても満足に加工できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のロボット装置は、ロボットに装着した加工具を3次元的に移動させながら、ワークを加工するものであり、以下の部位計測手段、および、加工条件補正手段を備える。まず、部位計測手段は、加工具による加工にあたり、ワークの位置および姿勢を決めた状態で、ワークにおける加工部位の状態を計測する。また、加工条件補正手段は、ワークを加工するための加工条件として事前に設定された初期加工条件を、部位計測手段により得られた加工部位の状態に基づき補正する。
【0011】
そして、ロボット装置は、加工条件補正手段による補正後の加工条件を用いてワークの加工を制御する。
これにより、本開示のロボット装置によれば、体格が大きなワークに関しても満足に加工できるようにする、という課題を潜在的に解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ロボット装置の全体構成図である(実施例1)。
【
図3】部位検出手段が加工部位の状態を検出する様子を示す要部図である(実施例1)。
【
図4】加工具が加工部位を加工する様子を示す要部図である(実施例1)。
【
図5】ロボット装置の制御方法を示すフローチャートである(実施例1)。
【
図6】ワークを平面視するものであって、全体検出手段による検出箇所を示す説明図である(実施例2)。
【
図7】ワークの
図6のVII-VII断面図である(実施例2)。
【
図8】ロボット装置を側方から視た全体構成図である(実施例2)。
【
図9】ロボット装置を上方から視た全体構成図である(実施例2)。
【
図10】部位検出手段が加工部位の状態を検出する様子を示す要部図である(実施例2)。
【
図11】加工具が加工部位を加工する様子を示す要部図である(実施例2)。
【
図12】ロボット装置の制御方法を示すフローチャートである(実施例2)。
【
図13】加工部位を示す平面図である(実施例3)。
【
図14】部位検出手段が加工部位の状態を検出する様子を側方から視て示す要部図である(実施例3)。
【
図15】部位検出手段が加工部位の状態を検出する様子を後方から視て示す要部図である(実施例3)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施形態のロボット装置を、以下の実施例に基づき説明する。
【実施例0014】
〔実施例1の構成〕
実施例1のロボット装置1の構成を、
図1~
図4を用いて説明する。
実施例1のロボット装置1は、例えば、鉄道車両の台車の製造工程において、筒状の金属部材を複数個所で溶接により一体化した大型の金属構造体をワーク2とし(
図2参照。)、複数ある溶接部を加工部位3として溶接部における余肉をフェイスミルにより除去する。
【0015】
ここで、ロボット4は、周知の6軸垂直多関節型であり、先端に加工具5としてのフェイスミルが装着されている。また、ロボット装置1は、ロボット4や加工具5の動作を制御する制御部6として制御盤を備える。そして、制御部6は、ロボット4や加工具5に組み付けられた各種のアクチュエータに指令して、加工具5としてのフェイスミルを回転させつつ、三次元的に移動させながら余肉を除去していく。
【0016】
また、ロボット装置1は、制御部6の機能として、以下の部位計測手段および加工条件補正手段を備える。
まず、部位計測手段は、加工具5による加工にあたり、ワーク2の位置および姿勢を決めた状態で、ワーク2における加工部位3の状態を計測する。
【0017】
また、ロボット装置1は、以下の部位検出手段7を備える。すなわち、部位検出手段7は、例えば、加工具5とともにロボット4の先端に装着されて3次元的に移動し、加工部位3の状態に応じた信号を発生するものである。そして、部位計測手段は、部位検出手段7が発生する信号に基づき、加工部位3の状態を計測する。
【0018】
以上により、制御部6は、位置および姿勢が決められたワーク2の加工部位3を部位検出手段7により走査することで、加工部位3の状態を計測する。
より具体的には、制御部6は、部位検出手段7を後記する初期計測条件の移動軌跡に従って移動させながら動作させて、溶接部の形状に応じた信号を出力させ、複数ある溶接部の形状を、逐次、計測する。
【0019】
なお、部位検出手段7は、例えば、周知の2次元レーザー変位計である。そして、部位検出手段7は、溶接部に向かって線状のレーザー光を照射しつつ移動させることで(
図3参照。)、移動方向に垂直な断面ごとに、溶接部のプロファイルに応じた信号を発生させる。
【0020】
また、ロボット4の先端には、取付プレート9が装着されており、取付プレート9においてロボット4と反対側の面に、加工具5および部位検出手段7が取り付けられている。
さらに、実施例1のロボット装置1によれば、多数のワーク2を一品ごとに加工していくが、特定の加工スペース10において、毎回、加工の前に精度よく位置および姿勢が決められる。このため、ワーク2毎の位置および姿勢のバラツキは、極めて小さい。
【0021】
ここで、部位計測手段は、加工部位3の状態を計測するための計測条件として事前に設定された初期計測条件に従って加工部位3の状態を計測する。例えば、制御部6は、初期計測条件にて設定されている移動軌跡に従って部位検出手段7を移動させながら加工部位3の状態を計測する(
図3参照。)。
【0022】
なお、初期計測条件における部位検出手段7の移動軌跡は、例えば、次のような前提に基づき設定されている。
すなわち、加工具5により加工するときにワーク2を配置すべき正規の位置、および、ワーク2に取らせるべき正規の姿勢が設定されている。そして、計測するときのワーク2の位置および姿勢それぞれの正規の位置、および、正規の姿勢に対するズレは、所定の範囲内に収まっている。また、ワーク2の形状や寸法のバラツキは所定の範囲内に収まっている。
このような前提に基づき、初期計測条件における部位検出手段7の移動軌跡が設定されている。
【0023】
このような前提に対し、実施例1のワーク2は、加工前に精度よく位置および姿勢が決められているため、制御部6は、初期計測条件における移動軌跡に従って部位検出手段7を移動させることにより、高精度に加工部位3の状態を計測することができる。
【0024】
次に、加工条件補正手段は、ワーク2を加工するための加工条件として事前に設定された初期加工条件を、部位計測手段により得られた加工部位3の状態に基づき補正する。そして、制御部6は、加工条件補正手段による補正後の加工条件を用いてワーク2の加工を制御する。
【0025】
より具体的には、制御部6は、加工条件補正手段の機能により、部位計測手段により得られた溶接部の形状に基づき、例えば、加工具5の移動軌跡を修正する。そして、制御部6は、加工条件補正手段による補正後の移動軌跡に従って加工具5を移動させながら溶接部の余肉を除去する。
【0026】
ここで、初期加工条件における加工具5の移動軌跡は、初期計測条件における部位検出手段7の移動軌跡と同様に、例えば、次のような前提に基づき設定されている。
すなわち、加工するときのワーク2の位置および姿勢それぞれの正規の位置、および、正規の姿勢に対するズレは、所定の範囲内に収まっている。また、ワーク2の形状や寸法のバラツキは所定の範囲内に収まっている。
このような前提に基づき、初期加工条件における加工具5の移動軌跡が設定されている。
【0027】
このような前提に対し、実施例1のワーク2は、加工前に、精度よく位置および姿勢が決められるが、加工部位3において、溶接歪に伴う変形が大きい。このため、初期加工条件における移動軌跡に従って加工具5を移動させても、満足に加工することが難しい。これに対し、制御部6は、部位計測手段により得られた溶接部の形状に基づき、移動軌跡を修正することで、溶接部の現実の形状に即した移動軌跡を得ることができ、溶接部の現実の形状に対して加工具5を適切に移動させて満足な加工を行わせることができる。
【0028】
〔実施例1の制御方法〕
実施例1の制御方法を、
図5のフローチャートを用いて説明する。
なお、
図5のフローチャートは、加工スペース10においてワーク2の位置および姿勢が決められるとスタートする。
まず、ステップS1で、部位計測手段を実行する。ステップS1では、制御部6は、部位検出手段7を初期計測条件の移動軌跡に従って移動させながら動作させて、溶接部の形状に応じた信号を出力させ、複数ある溶接部の形状を、逐次、計測する。
【0029】
次に、ステップS2で、加工条件補正手段を実行する。ステップS2では、制御部6は、部位計測手段により得られた溶接部の形状に基づき、例えば、加工条件の1つである加工具5の移動軌跡を修正する。
そして、ステップS3で、加工を実施する。ステップS3では、制御部6は、加工条件補正手段による補正後の移動軌跡に従って加工具5を移動させながら、複数の溶接部それぞれにおける余肉を、逐次、除去する。
【0030】
〔実施例1の効果〕
実施例1のロボット装置1は、ロボット4に装着した加工具5を3次元的に移動させながら、ワーク2を加工するものであり、以下の部位計測手段、および、加工条件補正手段を備える。まず、部位計測手段は、加工具5による加工にあたり、ワーク2の位置および姿勢を決めた状態で、ワーク2における加工部位3の状態を計測する。また、加工条件補正手段は、ワーク2を加工するための加工条件として事前に設定された初期加工条件を、部位計測手段により得られた加工部位3の状態に基づき補正する。そして、ロボット装置1は、加工条件補正手段による補正後の加工条件を用いてワーク2の加工を制御する。
【0031】
実施例1のワーク2は、体格が大きいものの、加工前に、精度よく位置および姿勢が決められる。しかし、加工部位3において、溶接歪に伴う変形が大きい。このため、ワーク2自身の体格の大きさも相まって、初期加工条件における移動軌跡に従って加工具5を移動させても、満足に加工することが難しい。これに対し、部位計測手段により得られた加工部位3の状態に基づき、移動軌跡を修正することで、加工部位3の現実の状態に即した移動軌跡を得ることができ、加工部位3の現実の状態に対して加工具5を適切に移動させることで、満足な加工を行うことができる。
【0032】
また、実施例1のロボット装置1は、以下の部位検出手段7を備える。すなわち、部位検出手段7は、ロボット4に装着されて3次元的に移動し、加工部位3の状態に応じた信号を発生する。そして、部位計測手段は、部位検出手段7が発生する信号に基づき、加工部位3の状態を計測する。
これにより、加工部位3の状態や要求される計測精度等に応じて部位検出手段7を選択することで、部位計測手段による計測を適切に行うことができる。
【0033】
具体的には、実施例1では、部位検出手段7として、2次元レーザー変位計を採用し、溶接部に向かって線状のレーザー光を照射しつつ移動させることで、溶接部のプロファイルに応じた信号を、移動方向に垂直な断面ごと発生させる。これにより、制御部6は、溶接部の形状を把握するのに必要な情報を適切に取得することができる。
【0034】
〔実施例2の構成〕
実施例2のロボット装置1を、実施例1と異なる点を中心に、
図6~
図11を用いて説明する。
実施例2のロボット装置1は、例えば、モータボートのデッキやハルの製造工程において、FRPを素材とする大型の樹脂成形品をワーク2として、余材を丸鋸により切除する。
【0035】
より具体的には、実施例2のロボット装置1は、例えば、ハルの主体となる大型の樹脂成型品をワーク2とし、さらに、樹脂成型品の上端近傍を加工部位3として、上端において上側に伸びるように周状に発生した余材を丸鋸により切除する(
図6、
図7参照。)。なお、実施例2のロボット装置1でも、多数のワーク2を一品ごとに、加工スペース10において位置および姿勢を決めて加工していく。
【0036】
また、実施例2のロボット装置1によれば、実施例1よりも更に大型のワーク2を加工することから、ロボット4は、水平面に平行な1軸方向に移動可能に設けられており、可動範囲が広がっている。具体的には、ロボット装置1は、以下の移動手段12を備える(
図8、
図9参照。)。すなわち、移動手段12は、水平面に平行な1つの方向にロボット4を自在に移動させるものであり、ロボット4の走行路13、および、ロボット4を駆動するアクチュエータ14等を有する周知の構成である。
【0037】
さらに、実施例2のロボット装置1によれば、ワーク2は、自身の大きさに起因して加工スペース10への直接の搬入が困難であることから、一品ごとに、例えばクレーンで引き上げられて所定の台車15に載せられ、台車15とともに加工スペース10に搬入される(
図8参照。)。また、ワーク2は、加工スペース10において自身の長手方向の指向する方位が、例えば、ロボット4の移動可能な方向と略一致するように搬入される。
【0038】
また、ロボット4の先端には、加工具5としての丸鋸が装着されている。そして、制御部6は、ロボット4、加工具5や移動手段12に組み付けられた各種のアクチュエータに指令して、加工具5としての丸鋸を回転させつつ、三次元的に移動させながら余材を切除していく。
【0039】
ところで、実施例2のワーク2は、大型の樹脂成型品であることから、熱収縮に伴う変形が大きい。このため、実施例1のロボット装置1と同様に、部位計測手段および加工条件補正手段により、初期加工条件を補正する必要がある。
【0040】
また、実施例2のワーク2は、実施例1のワーク2よりも更に大型であり、全体として、より大きく変形する。
その上、台車15へのワーク2の載置がラフであるばかりでなく、加工スペース10には台車15の位置決め手段も存在しない。したがって、実施例2では、そもそも加工スペース10におけるワーク2の位置および姿勢がラフに決められているので、ワーク2毎の位置および姿勢のバラツキも大きい。
【0041】
このため、上記の初期計測条件に従って加工部位3の状態を計測しようとしても、満足に計測することが難しい。
そこで、実施例2のロボット装置1は、制御部6の機能として、実施例1と同様の部位計測手段および加工条件補正手段に加えて、以下の全体計測手段および計測条件補正手段を備える。
【0042】
まず、全体計測手段は、加工位置にセットされたワーク2の位置および傾斜を計測する。
また、ロボット装置1は、以下の全体検出手段16を備える(
図8参照。)。すなわち、全体検出手段16は、例えば、ロボット4に装着されて3次元的に移動し、ワーク2の位置および傾斜に応じた信号を発生するものである。そして、全体計測手段は、全体検出手段16が発生する信号に基づき、ワーク2の位置および傾斜を計測する。
【0043】
さらに、全体計測手段は、ワーク2の位置および姿勢を3点計測により計測する。ここで、全体計測条件は、全体検出手段16が発生する信号に基づき、例えば、ワーク2の加工部位3の内、先端2a、後端2b、および、走行路13の側の側縁の中央2cの3点の位置を検出することにより、ワーク2の位置および傾斜を計測する(
図6参照。)。
【0044】
なお、全体検出手段16は、例えば、周知の1次元レーザー変位計であり、加工具5および部位検出手段7とともに、ロボット4の先端に装着されている。そして、全体検出手段16は、ワーク2の加工部位3の内、先端2a、後端2b、および、走行路13の側の側縁の中央2cそれぞれの周辺に点状のレーザー光を照射してそれぞれの位置に応じた信号を発生させる。
【0045】
次に、計測条件補正手段は、全体計測手段により得られたワーク2の位置および傾斜に基づき初期計測条件を補正する。そして、部位計測手段は、計測条件補正手段による補正後の計測条件を用いて加工部位3の状態を計測する。
なお、実施例2の部位検出手段7も、実施例1と同様の2次元レーザー変位計である。そして、部位検出手段7は、ワーク2の上端に向かって線状のレーザー光を照射しつつ移動させることで(
図10参照。)、移動方向に垂直な断面ごとに、余材のプロファイルに応じた信号を発生させる。
【0046】
以上により、制御部6は、ワーク2の現実の位置および傾斜に即した計測条件を得ることができるとともに、ワーク2の現実の位置および傾斜に対してロボット4、部位検出手段7および移動手段12を適切に動作させて満足な計測を行わせることができる。
そして、このようにして得られた加工部位3の状態、つまり、余材の形状に基づき、加工条件補正手段は、例えば、加工具5の移動軌跡を修正する。そして、制御部6は、加工条件補正手段による補正後の移動軌跡に従って加工具5を移動させながら余材を除去する(
図11参照)。
【0047】
〔実施例2の制御方法〕
実施例2の制御方法を、
図12のフローチャートを用いて説明する。
なお、
図12のフローチャートは、加工スペース10にワーク2が搬入されて静止するとスタートする。
まず、ステップS11で、全体計測手段を実行する。ステップS11では、制御部6は、全体検出手段16を動作させてワーク2の上端縁の内、先端2a、後端2b、および、走行路13の側の側縁の中央2cの3点を検出することにより、3点計測によってワーク2の位置および傾斜を計測する。
【0048】
次に、ステップS12で、計測条件補正手段を実行する。ステップS12では、制御部6は、全体計測手段により得られたワーク2の位置および傾斜に基づき、例えば、計測条件の1つである部位検出手段7の移動軌跡を修正する。
次に、ステップS13で、部位計測手段を実行する。ステップS13では、制御部6は、計測条件補正手段により修正された移動軌跡に従って部位検出手段7を移動させながら動作させて余材の形状に応じた信号を出力させ、余材の形状を計測する。
【0049】
次に、ステップS14で、加工条件補正手段を実行する。ステップS14では、制御部6は、部位計測手段により得られた余材の形状に基づき、例えば、加工条件の1つである加工具5の移動軌跡を修正する。
そして、ステップS15で、加工を実施する。ステップS15では、制御部6は、加工条件補正手段による補正後の移動軌跡に従って加工具5を移動させながら、余材を切除していく。
【0050】
〔実施例2の効果〕
実施例2のロボット装置1は、以下の全体計測手段および計測条件補正手段を備える。まず、全体計測手段は、加工具5による加工にあたり、ワーク2の位置および姿勢を決めた状態で、ワーク2の位置および姿勢を計測する。また、計測条件補正手段は、事前に設定された初期計測条件を、全体計測手段により得られたワーク2の位置および姿勢に基づき補正する。そして、部位計測手段は、計測条件補正手段による補正後の計測条件を用いて加工部位3の状態を計測する。
【0051】
これにより、ワーク2の位置および姿勢がラフに決められている場合でも、ワーク2の加工部位3を満足に計測することができる。このため、大型のワーク2に関し、位置および姿勢がラフに決められている場合でも、加工条件を適切に補正することができるので、満足に加工することができる。
【0052】
また、実施例2のロボット装置1によれば、全体計測手段は、ワーク2の位置および傾斜を3点計測により計測する。
これにより、簡単かつ高精度にワーク2の位置および傾斜を計測することができる。
【0053】
さらに、実施例2のロボット装置1は、以下の全体検出手段16を備える。すなわち、全体検出手段16は、ロボット4に装着されて3次元的に移動し、ワーク2の位置および傾斜に応じた信号を発生する。そして、全体計測手段は、全体検出手段16が発生する信号に基づき、ワーク2の位置および傾斜を計測する。
これにより、ワーク2の全体形状や要求される計測精度等に応じて全体検出手段16を選択することで、全体計測手段による計測を適切に行うことができる。
【0054】
具体的には、実施例2では、全体検出手段16として、1次元レーザー変位計を採用し、加工部位3の内、先端2a、後端2b、および、走行路13の側の側縁の中央2cそれぞれの周辺に点状のレーザー光を照射してそれぞれの位置に応じた信号を発生させる。これにより、制御部6は、ワーク2の位置および傾斜の計測において、3点計測に必要な情報を適切に取得することができる。
【0055】
〔実施例3〕
実施例3のロボット装置1を、実施例2と異なる点を中心に、
図13~
図15を用いて説明する。
実施例3のロボット装置1は、モータボートのハルの製造工程において、エンドミルを加工具5とし、また、ハルの主体となる樹脂成型品をワーク2として、ワーク2に穴18を開ける加工を施す。
【0056】
ここで、穴18は、ワーク2の内側の前方寄り、平面視で左右の中央に位置する略正方形の平面19に設けられる(
図13参照。)。また、平面19の前方および両側方の3方は、それぞれ、上側に隆起する段20a、20b、20cに囲われ、後方は、下側に沈下する段20dをなして切り立っている。なお、穴18の形状は矩形であり、寸法は、前後方向、左右方向の長さがそれぞれLa、Lbである。
【0057】
このような平面19に対し、制御部6は、部位計測手段において、部位検出手段7に、例えば、以下のようの信号を発生させて、平面19の位置を把握する。
すなわち、部位検出手段7は、前後の段20a、20dを含むように平面19に向かって線状のレーザー光を照射することで、段20a、20dおよび平面19を含む左右方向に垂直な断面のプロファイルに応じた信号を発生する(
図14参照。)。また、部位検出手段7は、左右の段20b、20cを含むように平面19に向かって線状のレーザー光を照射することで、段20b、20cおよび平面19を含む前後方向に垂直な断面のプロファイルに応じた信号を発生する(
図15参照)。
【0058】
そして、制御部6は、これらの信号により平面19の位置を把握して、加工具5の移動軌跡を修正する。具体的には、段20a、20d間の距離Lcの中間からLa/2だけ前方、後方、および、段20b、20cの距離Ldの中間からLb/2だけ左方、右方の線が穴18の開口縁となるように、加工具5の移動軌跡を修正する。
【0059】
〔変形例〕
実施例1~3は具体例を開示するものであり、本発明が実施例1~3に限定されないことは言うまでもない。
例えば、実施例2のロボット装置1はハルの主体となる樹脂成型品をワーク2として、上端に沿って上側に伸びるように周状に発生した余材を丸鋸により切除していたが、このような態様に限定されない。例えば、デッキの周縁において外側に伸びるように発生した余材を丸鋸により切除してもよい。
【0060】
また、実施例1~3のロボット装置1によれば、部位検出手段7は2次元レーザー変位計であり、全体検出手段16は、1次元レーザー変位計であったが、部位検出手段7や全体検出手段16は、このような態様に限定されない。例えば、部位検出手段7や全体検出手段16としてカメラを採用し、カメラが取得した画像情報に基づき、部位計測手段や全体計測手段による計測を実行させてもよい。
【0061】
さらに、実施例2、3では、部位検出手段7としての2次元レーザー変位計と、全体検出手段16としての1次元レーザー変位計とを個別にロボット4に装着していたが、例えば、2次元レーザー変位計のみをロボット4に装着して部位検出手段7、全体検出手段16として機能させてもよい。