(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170379
(43)【公開日】2024-12-10
(54)【発明の名称】断続的な負荷を受ける装置の性能変化予測
(51)【国際特許分類】
C25B 15/02 20210101AFI20241203BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20241203BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20241203BHJP
C25B 15/00 20060101ALI20241203BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20241203BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20241203BHJP
【FI】
C25B15/02
C25B9/00 A
C25B1/04
C25B15/00 302Z
G06N20/00 130
G01R31/367
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024077603
(22)【出願日】2024-05-10
(31)【優先権主張番号】23305747.0
(32)【優先日】2023-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】522232558
【氏名又は名称】トタルエナジーズ ワンテク
【氏名又は名称原語表記】TOTALENERGIES ONETECH
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】デュブワ、ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】マレシャル、ウィリアム
(57)【要約】 (修正有)
【課題】1つまたは複数の再生可能エネルギー源によって少なくともその部分が生成される断続的であることが想定される負荷を受ける電気化学装置の性能指標の予測変化を出力するように構成された予測モデルを生成するコンピュータ実装方法、プログラム及びシステムを提供する。
【解決手段】予想される断続的負荷を複数の基底関数に投影し、それによってそれぞれの線形結合の後継を得ることと、それぞれの線形結合の後継を複数の基礎的変化に適用することと、を含む予測モデルを生成する方法であって、1つまたは複数の再生可能エネルギー源によって少なくともその部分が生成される、それぞれの実際の断続的負荷を表す複数の時系列をそれぞれ取得することと、それぞれの基礎的な断続的負荷を表す複数の基底関数をそれぞれ機械学習することと、各基底関数について、電気化学装置の性能指標のそれぞれの基礎的変化を含む複数の基礎的変化を決定することとを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の再生可能エネルギー源によって少なくともその一部が生成される、想定断続的負荷を受ける電気化学装置の性能指標の、予測される変化を出力するように構成された予測モデルを生成するコンピュータ実装方法であって、当該方法が、
-複数の時系列を取得する工程であって、当該複数の時系列が、それぞれ、1つまたは複数の再生可能エネルギー源によって少なくともその一部が生成され、電気化学装置に負荷をかけるように構成された、それぞれの現実の断続的負荷を表すものである工程と;
-それぞれがそれぞれの基礎的な断続的負荷を表す複数の基底関数を機械学習する工程であって、前記複数の基底関数が複数の時系列の投影空間を形成し、前記複数の基底関数が、それによって、前記複数の基底関数に適用されるそれぞれの線形結合の後継によって、前記各時系列を近似するように構成される工程と、そして
-前記電気化学装置が、前記基底関数によって表されるそれぞれの基礎的な断続的負荷を受けた場合に、各基底礎関数について、前記電気化学装置の性能指標の各基礎的変化を含む複数の基礎的変化を決定する工程と
を含み、前記予測モデルが:
・前記想定断続的負荷を前記複数の基底関数に投影し、それによって、前記想定断続的負荷を近似するために前記複数の基底関数に適用可能な、それぞれの線形結合の継続を取得する工程と
・前記それぞれの線形結合の後継を前記複数の基礎的変化に適用し、それによって予測変化を出力する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記電気化学装置の性能指標のそれぞれの基礎的変化を決定することが、各基底関数について
-前記電気化学装置の少なくとも1つの物理的インスタンスを取得し、
-前記電気化学装置の少なくとも1つの物理的インスタンスを、基底関数によって表されるそれぞれの基礎的断続的負荷の少なくとも1つの実際のインスタンスに供し、
-前記電気化学装置の少なくとも1つの物理的インスタンスに対して、性能指標の少なくとも1つの測定を実行し、そして
-少なくとも1つの測定値に基づいて、前記それぞれの基礎的変化を計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電気化学装置の少なくとも1つの物理的インスタンスにおける性能指標の少なくとも1つの測定が、第1の測定と第2の測定とを含み、当該第1の測定が、前記それぞれの基礎的断続的負荷の前記少なくとも1つの実際のインスタンスの開始時に実行され、前記第2の測定が、前記それぞれの基礎的断続的負荷の少なくとも1つの実際のインスタンスの終了時に実行され、前記それぞれの基礎的変化の計算が、前記第2の測定から得られた値と前記第1の測定から得られた値との差を計算することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの基底関数について、前記基底関数によって表される前記それぞれの基礎的断続的負荷の少なくとも1つの前記実際のインスタンスが、前記それぞれの基礎的断続的負荷の複数の実際のインスタンスを含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
各時系列がそれぞれの分類ラベルを含み、かつ複数の基底関数の機械学習が、各時系列について、
-前記分類ラベルに関する分類誤差、および/または
-前記基底関数と前記提供された時系列との間の距離メトリック
を最小化することを含んでなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
-前記距離メトリックが動的時間伸縮法であること、および/または
-前記分類誤差がクロスエントロピー損失である、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の基底関数が、複数のシェイプレットからなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
各シェイプレットが長さパラメータを含み、前記複数の基底関数の機械学習が、さらに
-誤差を最小にするように各シェイプレットの長さを決定することを含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の基底関数の機械学習が、さらに
-前記決定された複数の基底関数から所定のサイズのサブセットを選択することを含んでなり、
当該選択されたサブセットが
-前記最小化された分類誤差の第1の近傍における分類誤差、および/または
-前記最小化距離メトリックの第2近傍の距離メトリックを有する、
請求項7または8に記載の、さらに請求項5に従属する、方法。
【請求項10】
前記性能指標が
-一定モードでの効率、
-温度信号、
-圧力信号、
-イオン濃度信号、または
-ガス濃度信号を表す、
先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記電気化学装置が、
-断続的な電源に接続された電解槽、
-断続的な電源に接続された電気化学エネルギー貯蔵装置、及び
-断続的な負荷に接続された電気化学エネルギー貯蔵装置
の少なくとも1つを備える、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法によって生成された予測モデルをそれぞれの電気化学装置に使用するコンピュータ実装方法であって、
当該方法が、
-1つまたは複数の再生可能エネルギー源によって少なくともその一部が生成される、想定断続的負荷を取得し、
-前記予測モデルを想定断続的負荷に適用し、それによって、それぞれの電気化学装置が想定断続的負荷にさらされた場合に、それぞれの電気化学装置の性能指標の予測された変化を出力すること
を含み、前記予測モデルの適用が
o想定断続的負荷を複数の基底関数に投影し、それによって、想定断続的負荷を近似するために複数の基底関数に適用可能な線形結合のそれぞれの後継を得て、そして
o前記それぞれの線形結合の後継を複数の基礎的変化に適用し、それによって予測変化を出力すること
を含む、方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法および/または請求項12に記載の方法を実行するための命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項15】
メモリに結合されたプロセッサを含むシステムであって、前記メモリには、請求項13に記載のコンピュータプログラムが記録されている、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はコンピュータプログラムおよびシステムの分野に関し、より具体的には、断続的であることが想定される負荷を受ける電気化学装置の性能指標の、予測される変化を出力するように構成された予測モデルを生成する方法、システム、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー転換の一環として、電気化学装置を利用して、電気エネルギーを間欠的に貯蔵および/または放出することが極めて重要になってきている。この背景から、グリーン水素への求めが著しいペースで大きくなっている。実際上、グリーン水素製造の重要なプロセスは、再生可能エネルギー源から生成された電気を電解装置に供給することである。たとえば、水電解装置を使用して、再生可能エネルギー源と組み合わせて水素を生成する。電解装置は通常、一定かつ安定した入力で動作するが、再生可能エネルギー源は変動する性質を特徴としている。このような変動プロファイルを持つ断続的な負荷を電気化学装置に適用すると、その動作が大幅に変化する可能性があり、特に当該装置の劣化を進行させ、その結果、性能が低下する可能性がある。劣化の速度はプロジェクトの運用性に重大な影響を与え得る。しかし、劣化を予測するための実験的試験はかなりの長期になり、あるいはすべての再生可能プロファイルを代表するものではない。
【0003】
電気化学装置の経年劣化を引き起こす物理化学的メカニズムを統合したホワイトボックスモデルのグループが存在する。一方、ブラックボックスモデルのグループは、装置の内部動作に関する知識なしに装置の性能を予測しようとするものである。このようなブラックボックスモデルは、機械学習アプローチに基づいていることがある。一般に、電気化学装置内の物理現象は複雑なマルチフィジックスによって制御されており、高速でシンプルなリアルタイムのホワイトボックスモデリングの提供は難しい。一方で、正確なブラックボックスモデルを得るには、膨大な量の学習データが必要となる。
【0004】
このような状況の中で、断続的であることが想定される負荷を受ける電気化学装置の性能指標の変化を予測するための改良された解決策が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
したがって、1つ以上の再生可能エネルギー源によって少なくともその部分が生成される負荷であって断続的であることが想定される負荷を受ける電気化学装置の性能指標の、予測される変化を出力するように構成された、予測モデルを生成するコンピュータ実装方法が提供される。この方法は、1つ以上の再生可能エネルギー源によって少なくともその部分が生成され、電気化学装置に負荷をかけるように構成された現実の断続的な負荷を、それぞれが表す複数の時系列を取得する工程を含む。この方法はさらに、それぞれがそれぞれの基礎的な断続的負荷を表す複数の基底関数を機械学習することを含む。この複数の基底関数は、複数の時系列の投影空間を形成する。これにより、複数の基底関数は、複数の基底関数に適用されるそれぞれの線形結合の後継によって各時系列を近似するように構成される。この方法はさらに、電気化学装置が基底関数によって表されるそれぞれの基礎的な断続的負荷を受ける場合に、各基底関数について、電気化学装置の性能指標のそれぞれの基礎的な変化を含む複数の基礎的な変化を決定することを含む。予測モデルは、予期される断続的負荷を複数の基底関数に投影し、それによって、断続的であることが想定される負荷を近似するために複数の基底関数に適用可能な線形結合のそれぞれの後継を取得することと、線形結合のそれぞれの後継を複数の基礎的変化に適用し、それによって予測変化を出力することとを含む。
【0006】
この方法は、以下の1つ以上の要素から構成される:
-電気化学装置の性能指標の各基礎的変化を決定する工程であって、当該工程は、各基底関数について:
o 電気化学装置の少なくとも1つの物理的インスタンスを取得し;
o 電気化学装置の前記少なくとも1つの物理的インスタンスを、基底関数によって表される前記それぞれの基礎的断続的負荷の少なくとも1つの実際のインスタンスに供すること;
o 電気化学装置の少なくとも1つの物理的インスタンスに対して、性能指標の少なくとも1つの測定を実行すること;そして
o 少なくとも1つの測定値に基づいて、それぞれの基礎的変化を計算すること
を含んでなり;
-電気化学装置の少なくとも1つの物理的インスタンスにおける性能指標の少なくとも1つの測定は、第1の測定と第2の測定とを含み、第1の測定は、それぞれの基礎的な断続的負荷の少なくとも1つの実際のインスタンスの開始時に実行され、第2の測定は、それぞれの基礎的断続的負荷の少なくとも1つの実際のインスタンスの終了時に実行され、それぞれの基礎的変化の計算は、第2の測定から得られた値と第1の測定から得られた値との差を計算することからなる;
-少なくとも1つの基底関数について、基底関数によって表されるそれぞれの基礎的な断続的負荷の少なくとも1つの実際のインスタンスは、それぞれの基礎的な断続的負荷の複数の実際のインスタンスから構成される;
-各時系列は、それぞれの分類ラベルを含み、複数の基底関数の機械学習は、各時系列について、分類ラベルに関する分類誤差、および/または、基底関数と提供された時系列との間の距離メトリックを最小化することを含む;
-距離メトリックは動的時間伸縮であり、分類誤差はクロスエントロピー損失である;
-複数の基底関数は複数のシェイプレットから構成される;
-各シェイプレットは長さパラメータを含み、複数の基底関数の機械学習は、誤差を最小化するように各シェイプレットの長さを決定することをさらに含む;
-前記複数の基底関数の機械学習は、前記決定された複数の基底関数から所定のサイズのセブセットを選択することをさらに含み、前記選択されたサブセットは、最小化された分類誤差の第1の近傍における分類誤差、および/または最小化距離メトリックの第2の近傍の距離メトリックを有する;
-性能指標は、一定モードでの効率、温度信号、圧力信号、イオン濃度信号、またはガス濃度信号を表し、および/または
-電気化学装置は、断続的な電源に接続された電解槽、断続的な電源に接続された電気化学エネルギー貯蔵装置、および断続的な負荷に接続された電気化学エネルギー貯蔵装置の少なくとも1つから構成される。
【0007】
上述した方法に従って生成された予測モデルをそれぞれの電気化学装置に対して使用するコンピュータ実装方法がさらに提供される。この使用する方法は、1つまたは複数の再生可能エネルギー源によって少なくとも部分的に生成される断続的であることが想定される負荷を取得することと、想定断続的負荷に予測モデルを適用することとを含み、それによって、それぞれの電気化学装置が想定断続的負荷にさらされた場合、それぞれの電気化学装置の性能指標の予測された変化を出力する。予測モデルを適用することは、想定断続的負荷を複数の基底関数に投影し、それにより想定断続的負荷を近似するために複数の基底関数に適用可能な線形結合のそれぞれの後継を得ること、および線形結合のそれぞれの後継を複数の基礎的変化に適用し、それにより予測される変化を出力することを含む。
【0008】
さらに、上述した方法のいずれかを実行するための命令を含むコンピュータプログラムが提供される。
【0009】
さらに、このコンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【0010】
さらに、メモリとグラフィカル・ユーザー・インターフェースに結合されたプロセッサを含むシステムであって、メモリにはコンピュータプログラムが記録されているシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
非限定的な実施例を、以下に、添付図面を参照し説明する。
【0013】
予測モデルを生成するコンピュータ実装方法が提案される。この予測モデルは、電気化学装置の性能指標の予測推移を出力するように構成され、電気化学装置は、断続的であることが想定される負荷を受ける。断続的負荷は、少なくとも部分的に1つ以上の再生可能エネルギー源によって生成される。本方法は、複数の時系列を取得することを含む。時系列の各々は、1つまたは複数の再生可能エネルギー源によって少なくとも部分的に生成される(すなわち、形成される)それぞれの実際の断続的負荷を表す。それぞれの実際の断続的負荷は、電気化学装置を対象とするように構成される。本方法はさらに、複数の基底関数を特定する機械学習アプローチを含む。各基底関数は、それぞれの基礎的な断続的負荷を表す。複数の基底関数は、複数の時系列の投影空間を形成する。それによって、複数の基底関数は、複数の基底関数に適用される線形結合のそれぞれの後継によって各時系列を近似するように構成される。本方法はさらに、複数の基礎的な変化を決定することを含む。複数の基礎的な変化は、各基底関数について、電気化学装置が、その基底関数によって表されるそれぞれの基礎的な断続的負荷にさらされる場合の、電気化学装置の性能指標のそれぞれの基礎的な変化からなる。予測モデルは、想定断続的負荷を複数の基底関数に投影することにより、それぞれの線形結合の後継を得ることからなる。線形結合のそれぞれの後継は、想定断続的負荷を近似するために、複数の基底関数に適用される。予測モデルはさらに、線形結合のそれぞれの後継を複数の基礎的な変化に適用し、それによって予測される変化を出力することを含む。
【0014】
本方法は、電気化学装置の性能指標の変化を予測するための改善された解決策を構成する。本方法は、このような装置の性能指標の変化を予測するための簡単なツールを提供する。このような予測は、少なくとも一部が再生可能エネルギー源によって生成される断続的負荷を受ける電気化学装置にとって特に重要である。例えば、風力や太陽資源のような再生可能エネルギー資源の場合、(太陽の位置や気象条件の不可避な変動により)常に利用できるわけではなく、ほとんど予測できないため、再生可能エネルギー源は断続的な負荷をもたらす。想定断続的負荷の少なくとも一部を生成する1つまたは複数の再生可能エネルギー源、および/または、複数の時系列によって表されるそれぞれの実際の断続的負荷の少なくとも一部(例えば、それぞれ)を生成する1つまたは複数の再生可能エネルギー源は、太陽エネルギー源、風力エネルギー源、および水力エネルギー源のいずれか1つまたは任意の組み合わせから構成され得る。このような負荷を装置、例えば電気化学装置に供給すると、当該装置の性能は(例えば一定の負荷と比較して)はるかに大きく劣化する。
【0015】
性能指標の変化または変更は、性能指標の初期条件を定義した上で、当該性能指標を予測することと密接に関連している。このような性能指標の初期条件、例えば電気化学装置の効率は、例えば製造業者によって電気化学装置について一般的に知られている。これにより、本明細書では、「性能指標の変化の予測」と「性能指標の予測」という表現を互換的に使用する。
【0016】
本方法は、複雑なハードウェア及び/又は測定技術を必要とせず、装置から単純に得られるデータの処理及び当該データに基づく計算に(例えば、単独で)依存することができる。このツールは、想定(断続的)負荷について性能の変化が、(前記性能指標の)基礎的な変化の線形結合の後継として得られる可能性があるという重要な観察に基づいている。基礎的変化は、性能変化に対する(それぞれの基底関数によって表される)基礎的負荷の影響を表す。本方法は、提供された複数の時系列の間で機械学習を実行することによって複数の前記基礎的負荷を取得し、例えば、それぞれの実験を実行することによって、それぞれの基礎的変化を決定する。この実験は、電気化学装置をそれぞれの基礎的な断続的負荷にさらし、性能指標のそれぞれの変化を観察/測定することによってそれぞれの基礎的変化を決定することからなる。
【0017】
本方法によって提供されるツールは、効率的なオンライン/オフラインタスク分離を提供する上でさらに有益である。オフラインモードで予測モデルを生成すると、本方法はオンラインで予測負荷を受け取り、それを複数の基底関数に投影してそれぞれの線形結合の後継を得、得られた線形結合を既に決定された複数の基礎的変化に適用する準備が整う。これにより、オンライン段階は、単に、提供されたオンライン負荷の投影と、決定された値の集合に対するそれぞれの線形結合の適用であり、オフライン段階よりも著しく高速で計算コストが少ない。これにより、本方法のリアルタイム性能が向上する。
【0018】
さらに、提案された方法の文脈では、前記投影を介した予測負荷の分解が、(数を減らした)基底関数の線形結合の後継になることで、手元のタスクに関する関連情報が大きく失われることはないことが確認されている。これにより、この方法は、高い精度で性能指標の変化を予測することができる。
【0019】
「電気化学装置」とは、少なくとも1つの電気化学セルを含む装置を意味する。電気化学セルとは、それ自体知られているように、化学反応から電気エネルギーを生成するか、電気エネルギーを使用して化学反応を引き起こすことができる装置である。例では、電気化学装置は、断続的な電力源に接続された(構成された/されることが予定された)電解槽(および、電気分解プロセスを実行するために前記電力源から受け取った電力を消費するように構成された)少なくとも1つを含むことができる、断続的な電源に接続された(ように構成/想定された)電気化学エネルギー貯蔵装置(および電源の電力を前記エネルギー貯蔵装置の化学ポテンシャルエネルギーに変換するように構成された)、および断続的な負荷に接続された(ように構成/想定された)電気化学エネルギー貯蔵装置(および前記負荷からエネルギーを受け取り、または前記負荷にエネルギーを放出するように構成された)。これにより、「断続的負荷」とは、間欠的に電力を放ちまたは受けること、言い換えれば、正または負の断続的なエネルギー変化を意味する。一方、「断続的電源」とは、断続的な電力供給であり、言い換えれば、断続的負荷の特定の形態である。言い換えれば、断続的負荷は、「受け」モード(例えば、再生可能な電源に接続された電解槽)または「送り」モード(例えば、間欠運転を行うエンジンに接続されたバッテリー)のいずれかで動作する電気化学デバイスに関する場合がある。
【0020】
これにより、「電気化学装置」という表現は、同じタイプで同じ動作パラメータを使用する電気化学装置のクラスを意味する。特に、本方法は、あるクラスの電気化学装置の予測モデルを生成することができ、生成されたモデルは、あるクラスのすべての装置(例えば、同じブランドからの同じモデル/参照)に適用可能である。これにより、本方法による普遍的な予測機能が提供される。
【0021】
「電気化学の性能指標」とは、当該電気化学装置の性能を評価するために技術分野で使用されるあらゆる指標を意味する。例えば、性能指標は、電気化学装置の出力電圧または電流である。あるいは、性能指標は、当該装置の効率であってもよい。装置の効率は、当該分野で使用される任意の効率であってよい。例えば、装置の効率は、装置の入力エネルギーに対する装置の出力エネルギーの比であってもよい。
【0022】
他の例として、性能指標は、一定モードにおける効率、温度信号、圧力信号、イオン濃度信号、またはガス濃度信号のいずれかを表すことができる。「一定モードにおける効率」とは、装置の効率(すなわち、装置が断続的な負荷にさらされる場合)の、一定の負荷に対する効率に対する比率を意味する。上述したように、断続的な負荷を受けると、一定の負荷に対する効率に比べて、時間とともに効率が低下する可能性がある。圧力信号および温度信号は、装置からの圧力/温度信号であってもよく、例えば、装置内のリザーバー(例えば、電気分解の際に生成された水素(H2)および酸素(O2)を収集/輸送するように構成されたリザーバー/パイプ)からの圧力/温度信号であってもよい。圧力または温度信号は、任意のタイプの既知の圧力/温度センサーを使用して得ることができる。ガス濃度は、装置内の元素の濃度を表す信号であってもよく、例えば、H2リザーバー/パイプ内のO2濃度および/または電解槽のO2リザーバー/パイプ内のH2濃度を表す信号であってもよい。濃度信号は、例えば光学センサー、質量分析、ガスクロマトグラフィーなど、あらゆるタイプの既知の装置/方法を用いて得ることができる。既知のように、電解槽で電気分解して得られたH2と酸素O2は、それぞれ水素と酸素の容器/貯槽(それぞれHVとOV)に貯蔵され、そこで取り込まれて電解液から分離される。2つの容器(すなわち、アノード回路とカソード回路)間の圧力は異なっていてもよい。電解プロセス中、ある割合(例えば、体積%)のH2が容器(例えば、ガス分離器)の間に設置された障壁を越えてO2リザーバーに移動することがあり、逆にある割合のO2がH2リザーバーに移動することがある。特に、酸素濃度が混合ガスの低爆発限界に近づかないように、H2リザーバー中のO2容積%を安全上の理由からアラームに接続することができる。同様のアラームシステムを、各容器の圧力および/または温度に関して設定し、リザーバー内の潜在的な過圧/温度を警告することもできる。各貯槽内のガス組成/圧力/温度は、負荷によって変動する可能性がある。このような変動は、装置を連続モードで機能させることができず、過渡的な挙動を強いる。装置は連続モードではなく、過渡モードで作動する。システムダイナミクスのための既知の制御方法は、負荷の変動ほど高速ではない。したがって、このような装置の制御は難しい問題である。特に、断続的な負荷を受ける装置は、HV中のO2の爆発限界、過圧、過温度などを経験しやすい。従って、この種の負荷にさらされる電気化学装置には、正確で高速な予測モデルを備えることがより重要である。
【0023】
「電気化学装置の性能指標の変化」とは、当該装置が機能する間の当該指標の時間的挙動を意味する。電気化学装置の性能指標の推移は、時間経過に伴う(すなわち、初期時刻とある時刻との間における)効率および/または容量の低下、すなわち劣化を表す場合がある。「電気化学装置の性能指標の予測変化を出力するように構成された予測モデル」とは、電気化学装置に関するデータを入力として受け入れ、当該装置の性能指標の変化を表す複数の値を出力するモデルを意味する。
【0024】
電気工学の分野で知られているように、再生可能エネルギー源は、多くの場合、24時間のうちのほんの一部しか動作しない負荷を生成する。断続的負荷を部分的に生成する1つまたは複数の再生可能エネルギー源は、そのような再生可能エネルギー源で構成されて(例えば、からなるものとされて)よい。断続的負荷は、(例えば、前記1つまたは複数の再生可能エネルギー源の周期的変動に起因する)振動的挙動を有する負荷であってよく、また、ある時間帯において消滅する可能性がある。断続的負荷の概念は、通常、長期間連続的に動作する負荷として定義される連続的な負荷とは逆の定義とされることがある。言い換えれば、連続負荷は、同じ条件下で長時間継続する負荷である。一方、断続的な負荷は、短時間持続し、その後、長時間または非常に短時間のどちらかで停止する負荷である。断続的負荷の適用には、「受け」モードで作動する電気化学装置(例えば、自然エネルギーに接続された電気分解機)、または「送り」モードで作動する電気化学装置(例えば、断続的負荷を持つモーターに接続されたバッテリー)が含まれる。断続的負荷は、1つ以上の再生可能エネルギー源、例えば太陽エネルギー源、風力エネルギー源、地熱エネルギー源、海洋エネルギー源のうちの1つ以上によって少なくとも部分的に生成される。
【0025】
本方法は、それぞれの実際の断続的負荷を表す複数の時系列を取得することからなる。実際の断続的負荷は、現実に観測された負荷であってもよい。言い換えれば、断続的負荷は、電気化学装置、例えば太陽光発電システムまたは風力発電システムのエネルギー生産の記録である。これらの記録は、いわゆるSCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)システムによって作成されることが多い。さらに、実際の断続的負荷は、履歴負荷、すなわち、過去のある期間にわたって測定され、データベースに保存された負荷である場合もある。言い換えれば、実際の断続的負荷を表す時系列は、当該断続的負荷の履歴である。あるいは、実際の断続的負荷は、生成された負荷であってもよい(すなわち、それぞれの時系列は人工的に生成されたものであってもよい)。例えば、時系列は、風プロファイルと風力タービンの特性から風力発電量を生成することによって構築されてよい。したがって、複数の時系列は、現実に観測された負荷の時系列、および/または過去の負荷の時系列、および/または生成された時系列から構成されてもよい。また他に、複数の時系列は、それのみ(すなわち、時系列の100%について)、または実質的にそれのみ(例えば、時系列の90%以上について)、現実に観測された負荷および/または過去の負荷の時系列から構成されてもよい。
【0026】
各断続的負荷は、1つまたは複数の再生可能エネルギー源によって部分的に生成され、電気化学装置を対象とするように構成されている。負荷が「電気化学装置を対象とするように構成されている」とは、負荷が電気化学装置に適用可能であること、すなわち物理的構成をなしていることを意味する。
【0027】
次に、本方法は、それぞれの基礎的な断続的負荷を表す複数の基底関数を機械学習することからなる。複数の基底関数は、複数の時系列の有限次元投影空間を提供する。本方法は、時系列の投影空間を得るために既知の方法を用いて複数の基底関数を機械学習してもよい。例として、有限次元射影空間は最適射影空間であってもよい。最適投影空間とは、投影空間のある次元数(すなわち、与えられた基底関数の数)において、投影空間上の投影誤差が最小となる投影空間を意味する。投影誤差は、任意の既知のメトリックに従うことができる。特に、最適な投影空間は、提供された複数の時系列を正確に定義するために必要な次元よりも小さい次元を有することができる。この態様において、最適投影空間は、時系列を記述するための次元的に縮小された空間を提供する(それにより、複雑さが低減される)。このような次元削減された空間は、正確で高速な予測モデルを得るために、提供された時系列と予想される断続的な負荷を基底関数を用いて十分に正確に記述するのに十分価値あるものである。例では、基底関数の数は50、25、15より少なくてもよい。投影空間は線形投影空間であり、それによって複数の基底関数は、複数の基底関数に適用される線形結合のそれぞれの後継によって各時系列を近似するように構成される。
【0028】
例では、複数の基底関数は複数のシェイプレットから構成されてよい。言い換えれば、本方法は、断続的負荷のシェイプレット分解/学習を得るために、(機械学習を使用して)複数の基底関数を特定してもよい。あるいは、複数の基底関数は、複数のフーリエ関数(すなわち、フーリエ分解を提供する)または複数のウェーブレット関数(すなわち、ウェーブレット分解を提供する)から構成されてもよい。シェイプレット分解は、フーリエ分解および/またはウェーブレット分解に対する拡張を提供する。フーリエ分解がその(固有)周波数によって信号を分解するように、ウェーブレット分解はその周波数と次数によって信号を分解する。ウェーブレット分解は主要な周波数を特定し、さらに主要な摂動の局在に関する情報を提供し、信号を調整する。一方、シェイプレット学習は、信号を周波数、次数、パターンで分解することができる。言い換えれば、シェイプレット学習は信号の代表的なパターンを識別し、そのパターンを直接識別する。さらに、シェイプレット学習では、分類ラベルに基づく信号の分解も同時に行うことができる。信号を分解する際にこのようなラベルを考慮することは、再生可能エネルギー源の対象となる装置の性能変化予測への応用において特に重要である。このようなエネルギー源は、気象条件(例えば、風、雲、太陽など)および/または1日または1年の時間(昼/夜、冬/夏など)に対して高い変動を示す。例えば、夏の晴れた日のソーラーパネルの出力プロファイル(およびそのパターン)は、冬の夜や雨の日の出力プロファイルとは大きく異なる場合がある。そのため、電気化学装置の同等の動作条件の類似データ間でパターンを分解するための追加パラメータを考慮することが重要である。 シェイプレット学習を使用することで、例えば機械学習ステップを向上させるために、提供された時系列のメタデータを使用することができる。学習プロセスの最初では、シェイプレット学習は手元の信号の一部から始めることができる。しかし、学習が反復されるにつれて(例えば、エポックにわたって)、最良の妥協点を持つために、信号の前記部分間の混合または平均が得られる。言い換えれば、シェイプレット学習は、信号を取り込み、信号をより小さな断片に切断し、動的時間伸縮法(DTW)メトリックを低減するように小さな断片を修正し、前記メトリックに従って最良の断片を保持する。いくつかの例では、シェイプレット学習は、メトリックの選択としてDTWを使用する遺伝的アルゴリズムを使用することができる。例では、シェイプレットの線形結合が、考慮される時系列の異なる時間間隔について決定される。時間区分は、詳しくは一般加法モデル(GAM)の分野で知られているような最適化アルゴリズムによって決定される。
【0029】
次に、本方法は、基底関数の各々について複数の基礎的変化を決定する。各基礎的変化は、電気化学装置が基底関数によって表されるそれぞれの基礎的な断続的負荷にさらされる場合の、電気化学装置の性能指標のそれぞれの基礎的変化からなる。言い換えれば、本方法は、電気化学装置が複数の(基礎的な)断続的負荷にさらされる試験プログラムを含むことができる。このような試験プログラムの例については、さらに後述する。
【0030】
上述したように、本方法は予測モデルを生成する方法である。(生成された)予測モデルは、想定断続的負荷を入力とし、当該想定断続的負荷を受けたときの電気化学装置の性能指標の予測変化を出力する関数である。そのために、この関数は、(第1の機能ブロックにおいて)複数の基底関数への想定断続的負荷の投影から構成される。このような投影により、想定断続的負荷を近似するために複数の基底関数に適用可能な線形結合のそれぞれの後継が得られる。投影関数は、機械学習ステップによって直接出力される。予測モデルはさらに、(機械学習ステップによってさらに出力される)線形結合のそれぞれの後継を複数の基礎変化に適用することによって構成され、それによって予測変化が出力される。線形結合のそれぞれの後継は、線形結合および基底関数ごとに、それぞれのスカラー係数を含む。前記それぞれのスカラー係数は、基底関数に対応するそれぞれの基礎的変化に適用される係数である。
【0031】
例(例えば、上述した試験プログラム)では、電気化学装置の性能指標のそれぞれの基礎変化を決定することは、各基底関数について、電気化学装置の少なくとも1つの物理的インスタンスを取得することからなる。「物理的インスタンス」とは、実世界における特定のクラス(上述)の電気化学装置のインスタンスを意味する。(前記あるクラスの)電気化学装置のインスタンスは、断続的負荷を受けたときの性能の変化の観点からその挙動を定義する仕様のセットによって定義される。仕様のセットは、機能における装置の挙動を制御し定義する任意の技術的特性(例えば、公称電力、電圧応答、材料など)から構成され得る。物理的インスタンスとは、すべての仕様を満たし、電気化学装置の動作バージョンを形成する実世界のハードウェアのことである。
【0032】
次いで、決定することは、電気化学装置の少なくとも1つの物理的インスタンスを、基底関数によって表されるそれぞれの基礎断続的負荷の少なくとも1つの実際のインスタンスに供することを含み得る。決定することは、電気化学装置の少なくとも1つの物理的インスタンスに対して性能指標の少なくとも1つの測定を実行することと、少なくとも1つの測定に基づいてそれぞれの基礎的変化を計算することとをさらに含んでよい。例えば、基礎測定は、電気化学装置の最大容量または電力の測定であってもよく、基礎的変化は、それぞれの実際の断続的負荷の実際のインスタンスによって装置の物理的インスタンスに引き起こされる基礎的劣化であってもよい。
【0033】
実施例においては、電気化学装置の少なくとも1つの物理的インスタンスにおける性能指標の少なくとも1つの測定は、第1の測定と第2の測定とを含んでよい。第1の測定は、それぞれの基礎的断続的負荷の少なくとも1つの実際のインスタンスの開始時に実行されてもよい。第2の測定は、それぞれの実際の断続的負荷の少なくとも1つの実際のインスタンスの終了時に実行されてもよい。言い換えれば、本方法は、それぞれの負荷の開始時と終了時の少なくとも2つの測定を提供することができる。それぞれの基礎的変化の計算は、第2の測定から得られた値と第1の測定から得られた値との差を計算することからなる場合がある。このような差は、基底関数によって表される基礎的な断続的負荷に対応する性能指標の変化(すなわち、変動)を示すことができる。
【0034】
実施例においては、少なくとも1つの基底関数について、基底関数によって表されるそれぞれの基礎的な断続的負荷の少なくとも1つの実際のインスタンスは、それぞれの基礎的な断続的負荷の複数の実際のインスタンスから構成され得る。言い換えれば、このような実施例は、断続的負荷の反復パターンを前記装置に提供する。断続的負荷の繰り返しを適用することで、生成されたモデルが長期的に性能指標の変化を予測することが可能になる。特に、様々な用途や多くの負荷条件下において、電気化学装置の挙動は線形、すなわちヒステリシスなしとみなすことができる。これにより、離れたある時点の予測を実行する代わりに、複数のモデルによる並列予測を実行する方法が改善される。
【0035】
実施例にあっては、各時系列は、それぞれの分類ラベルを含むことができる。そして、複数の基底関数の機械学習は、各時系列について、分類ラベルに関する分類誤差、及び/又は、基底関数と提供された時系列との間の距離メトリックを最小化することを含むことができる。それぞれの分類ラベルは、バイナリ分類(すなわち、2つのラベル値を有する)またはマルチクラス分類を表すことができる。距離(または類似度)メトリックは、時系列と基底関数との間の類似度を表す。分類メトリックは、時系列のフィッティングされた分類が、分類ラベルに従った既知の分類に対応するかどうかを評価する。
【0036】
特に、複数の基底関数が上述のように複数のシェイプレットからなる場合、得られたシェイプレットは、分類を最もよく表すものである。このような場合、視差メトリックは、シェイプレットがクラスを「どの程度」表すかを表す中央値とすることができる。このメトリックは、各クラスがシェイプレットによって見られるレンズである。このような組み合わせにおいて、また時系列への分類フィッティングに関して、本方法は、各クラスに、ある数のシェイプレットを関連付ける。そして、入力時系列と各クラスの各シェイプレットとの間の距離を評価するために、メトリックを使用することができる。そして時系列に最も近いクラスが時系列に関連付けられる。シェイプレット学習の目的は、複数の時系列を既知のクラスに最も適合させることができる最良のシェイプレットを見つけることである。
【0037】
実施例にあっては、距離メトリックは、当該分野で知られているような動的時間伸縮法であってもよい。分類誤差は、当該分野で既知の任意の分類メトリックであってよい。例えば、分類誤差は、クロスエントロピー損失、例えばL2-penalizedクロスエントロピー損失であってもよい。
【0038】
上述したように、いくつかの例によれば、複数の基底関数は複数のシェイプレットから構成される。そのような例において、各シェイプレットは長さパラメータを含んでよく、複数の基底関数の(ステップの)機械学習は、誤差を最小化するように各シェイプレットの長さを決定することをさらに含んでよい。本方法は、各シェイプレットの最適な長さを得るための最適化工程を含んでもよい。最適化プロセスは、距離メトリック及び/又は分類誤差の組み合わせを最小化するように、前記長さを最適化してもよい。最適化工程は、当該分野における任意の既知の最適化方法に従ってよい。例では、最適化プロセスは、ニューラルネットワークまたは遺伝的アルゴリズム、例えば、Gendisの実装(文献Vandewiele et al。,”GENDIS:Genetic Discovery of Shapelets”、Sensors 2021、21(4)、1059)に従って構成されてよい。
【0039】
代替的または追加的に、本方法は、(複数のシェイプレットの)各シェイプレットのそれぞれの長さを定義する入力を受け付けることができる。ユーザーは、例えばドメイン知識に基づいて、任意の方法で前記入力を提供することができる。このような例は、シェイプレットの長さを定義する提供された入力を使用してシェイプレットを機械学習するtslearn(https://tslearn.readthedocs.io/en/stable/ 参照)のような実装を利用することができる。
【0040】
実施例にあっては、複数の基底関数の機械学習は、決定された複数の基底関数から所定のサイズのサブセットを選択することをさらに含んでよい。このような例は、複数の基底関数の機械学習が、分類誤差及び/又は距離メトリックを最小化することからなる、上述した方法の例と組み合わせてもよい。このような組み合わせにおいて、選択されたサブセットは、分類誤差を最小化する第1の近傍の分類誤差、および/または、距離メトリックを最小化する第2の近傍の距離メトリックを有することができる。
【0041】
このような例では、(決定された基底関数として)抽出されたシェイプレットを、分類力を保持しつつ、シェイプレット集合を最もよく表現する選択されたシェイプレットに再グループ化するクラスタリングアルゴリズムに関連する。特に、計算上の制約から、シェイプレット学習プロセスでは、ある最大長のある数のシェイプレットしかテストできない。この長さは、上述のように、領域知識を用いるか、最適化を用いて決定することができる。(所望の)数のシェイプレットを得るために、アルゴリズムに十分な探索の柔軟性を持たせるために、より大きな数が抽出されるように設定される。次に、シェイプレットは、末端値で埋めることによって長さを等しくすることができる。次に、得られたシェイプレットを所望の数にクラスタ化してもよい。次に、残りの末端平坦部をカットオフする。最後に、クラスタリングが分類器の精度を保っていることを検証するために、クラスタリング前後のシェイプレットに対して慣性基準を評価する。
【0042】
本モデルが上述の方法に従って生成される、それぞれの電気化学装置について生成された予測モデルを使用するコンピュータ実装方法がさらに提案される。このような使用方法は、1つまたは複数の再生可能エネルギー源によって少なくとも部分的に生成される想定断続的負荷を取得することからなる。使用方法はさらに、予測モデルを想定断続的負荷に適用することからなる。したがって、使用方法は、それぞれの電気化学装置が想定断続負荷にさらされた場合に、それぞれの電気化学装置の性能指標の予測変化を出力する。予測モデルの適用は、想定断続的負荷を複数の基底関数に投影し、それによって、想定断続的負荷を近似するために複数の基底関数に適用可能な線形結合のそれぞれの後継を得ることを含む。予測モデルの適用はさらに、線形結合のそれぞれの後継を複数の基礎変化に適用し、それによって予測変化を出力することを含む。
【0043】
上述した方法、すなわち、予測モデルを生成する方法、生成された予測モデルを使用する方法、およびデータセットを形成する方法は、コンピュータに実装される。これは、方法のステップ(または実質的にすべてのステップ)が、少なくとも1つのコンピュータ、または任意のシステムによって実行されることを意味する。したがって、方法のステップは、コンピュータによって、場合によっては完全に自動的に、または、半自動的に実行される。実施例では、方法のステップの少なくとも一部のトリガーは、ユーザーとコンピュータの対話によって実行される。必要とされるユーザーとコンピュータの対話のレベルは、予見される自動化のレベルと、ユーザーの希望を実現する必要性とのバランスに依存する。実施例では、このレベルは、ユーザー定義および/または事前定義されることがある。例えば、予測モデルを生成する方法において、複数の時系列を取得するステップは、ユーザーからの入力を受けて実行されることがある。このような入力を受け取ると、当該方法は自動的に残りのステップを実行し、予測モデルを生成することができる。別の例として、使用する方法において予測される断続的な負荷を取得するステップは、ユーザーによる入力を受けたときに実行されてもよい。このような入力を受け取ると、前記方法は、予測モデルを想定断続的負荷に自動的に適用し、それぞれの電気化学装置に対する性能指標の予測された変化移を出力する。
【0044】
方法のコンピュータ実装の典型的な例は、この目的に適合したシステムで方法を実行することである。このシステムは、メモリとグラフィカルユーザインタフェース(GUI)とに結合されたプロセッサを含んでいてもよく、メモリは、本方法を実行するための命令を含んでなるコンピュータプログラムをその上に記録している。メモリはまた、データベースを記憶してもよい。メモリは、このような記憶用に適合された任意のハードウェアであり、場合によっては、複数の物理的に異なる部分(例えば、1つはプログラム用であり、場合によって1つはデータベース用)から構成される。
【0045】
図1はシステムの一例を示しており、システムはクライアントコンピュータシステム、例えばユーザーのワークステーションである。
【0046】
本実施例のクライアントコンピュータは、内部通信BUS1000に接続された中央処理装置(CPU)1010と、同じくBUSに接続されたランダムアクセスメモリ(RAM)1070とを備える。クライアントコンピュータはさらに、BUSに接続されたビデオランダムアクセスメモリ1100に関連するグラフィック処理ユニット(GPU)1110を備える。ビデオRAM1100は、当技術分野ではフレームバッファとしても知られている。大容量記憶装置コントローラ1020は、ハードドライブ1030などの大容量記憶装置へのアクセスを管理する。コンピュータプログラム命令およびデータを具体化するのに適した大容量記憶装置には、例として、EPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリデバイスなどの半導体メモリデバイス;内蔵ハードディスクおよびリムーバブルディスクなどの磁気ディスク;光磁気ディスクを含む、あらゆる形態の不揮発性メモリが含まれる。上記のいずれかは、特別に設計されたASIC(特定用途向け集積回路)によって補足されるか、または特別に設計されたASIC(特定用途向け集積回路)に組み込まれてもよい。ネットワーク・アダプタ1050は、ネットワーク1060へのアクセスを管理する。クライアントコンピュータは、カーソル制御装置、キーボードなどのハプティクスデバイス1090を含むこともできる。カーソル制御装置は、ユーザーがディスプレイ1080上の任意の所望の位置にカーソルを選択的に配置することを可能にするために、クライアントコンピュータにおいて使用される。さらに、カーソル制御装置は、ユーザーが様々なコマンドを選択し、制御信号を入力することを可能にする。カーソル制御デバイスは、システムに制御信号を入力するための多数の信号生成デバイスを含む。典型的には、カーソル制御デバイスはマウスであり、マウスのボタンは信号を生成するために使用される。代替的または追加的に、クライアントコンピュータシステムは、感応パッド、および/または感応スクリーンを含むことができる。
【0047】
コンピュータプログラムは、コンピュータによって実行可能な命令を含んでいてもよく、該命令は、上記システムに該方法を実行させるための手段を含んでいる。プログラムは、システムのメモリを含む任意のデータ記憶媒体に記録可能であってもよい。プログラムは、例えば、デジタル電子回路、コンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせで実装されてもよい。プログラムは、装置、例えば、プログラマブルプロセッサによる実行のために機械可読記憶装置に具体化された製品として実装されてもよい。方法ステップは、入力データを操作して出力を生成することによって方法の機能を実行する命令のプログラムを実行するプログラマブルプロセッサによって実行されてもよい。したがって、プロセッサは、データ記憶システム、少なくとも1つの入力装置、および少なくとも1つの出力装置からデータと命令を受信し、データと命令を送信するようにプログラム可能に結合されてもよい。アプリケーションプログラムは、高レベルの手続き型プログラミング言語またはオブジェクト指向プログラミング言語、あるいは必要に応じてアセンブリ言語または機械語で実装することができる。いずれの場合も言語はコンパイル言語またはインタプリタ言語であってもよい。プログラムは、フルインストールプログラムであっても、アップデートプログラムであってもよい。システム上でプログラムを適用すると、どのような場合でも方法を実行するための命令が得られる。コンピュータプログラムは代わりにクラウドコンピューティング環境のサーバーに格納され実行されることもあり、サーバーは1つまたは複数のクライアントとネットワークを介して通信している。その場合、処理装置がプログラムによって構成される命令を実行し、それによってクラウドコンピューティング環境上で方法が実行される。
【0048】
次に、上述した方法の実装について説明する。
【0049】
本実施形態は、上流/下流の断続的負荷に接続された装置の劣化を予測する方法論に関するものである。電解槽のような電気化学システムの劣化は、劣化の引き金となる電極の電圧、始動/停止や負荷変動による熱勾配の発生、始動/停止や負荷変動による種の拡散(例えばガスのクロスオーバー)など、いくつかの要因によって支配される。実装は両方の現象を捉えることができる。実装は、負荷変動を反映しながら、(電気化学装置の)セルに、(シェイプレットの振幅によって定義されるように)所与の時間、所与の電圧にとどまることを課す。
【0050】
特に、再生可能エネルギー源は一般的に周期的なエネルギー生産パターンを有するため(例えば、太陽によって駆動される再生可能エネルギー資源の場合、太陽からの周期的な入力に対する応答として)、異なる規模におけるエネルギー生産の特徴として、これらの周期的なパターンを捕捉できることが極めて重要である。本実施形態は、前記パターンを特定し、各パターンに劣化を特徴付け、関連付けることからなる方法論を扱う。次に、予測モデルが再生可能エネルギー生産の時間的形状を予測する。時間的形状は、特定されたパターンに投影される形状である。投影係数は、パターンを特徴付ける様々な劣化を組み合わせるために使用され、今後予想される劣化の推定を与える。
【0051】
シェイプレット学習は、フーリエ分解とウェーブレット分解をあらゆる形状に一般化したものである。シェイプレット学習は、教師あり分類の機械学習アプローチである。これを実装するために、実装はpythonパッケージtslearnバージョン0.5.2の "LearningShapelets "を使用する(https://tslearn.readthedocs.io/en/stable/index.html 参照)。
【0052】
最初のステップでは、実装は、断続的な負荷の多数のデータセット(例えば、10セット以上のデータ)を収集し(すなわち、取得し)、機械学習/人工知能アルゴリズムを使用して、これらの関数を投影することができる単位パターンのベース(si(t))を生成する。各単位パターンは、それ自体が数ミリ秒から数時間の継続時間を持つ負荷プロファイルである。
【0053】
第2ステップでは、実装はテストプログラムを実行する。試験プログラムには、第1段階で得られた単位パターンの数と同じ数の試験段階がある。試験プログラムの各フェーズは、1つの単体パターンに対応する負荷を数回加えることからなる。各試験の典型的な継続時間は1時間から10000時間である。試験期間は1年に及ぶこともある。各段階の終了時に、一定モードと比較した効率を測定することにより、装置の劣化を監視する。この実施形態では、観測された劣化をそのフェーズの単位パターンの数で割ることにより、単位パターン(si)あたりの劣化(di)を計算する。
【0054】
試験を高速化するために、実装では、別個の装置で複数の並列試験を実施する。このような並列戦略は、システムの劣化が以前の寿命の影響を受けない(すなわち、ヒステリシスがない)という仮定に基づいている。特に電解槽の場合、時間の経過とともに直線的な劣化が観察されるため、これは有効な仮定である。故障は劣化の傾きに変化をもたらすため、セル/スタックは故障が起こるかなり前に交換される。
【0055】
図2Aは、第1ステップと第2ステップの概略を示す。ステップ1において、実装は、断続的負荷のライブラリ201にアクセスすることにより、大規模なデータセットを収集する。次に、実装は、機械学習および人工知能アルゴリズムを使用して、方法が得た断続的プロファイルを記述する固有ベクトルの最良のファミリーを特定する。実装は、フーリエ変換、ウェーブレット、またはシェイプレットのような異なる技術を使用して、そのような固有ベクトルを特定することができる。このステップの結果として、実施形態は、断続的負荷を記述するために使用することができる、特定された複数の固有ベクトル(またはパターン)s
i からなるセットを得ることができる。このセットは10個の固有ベクトルで構成される。次に、実施形態は、セットの各特定パターンを適用して装置(例えば、電解槽)を試験し、各パターンによって引き起こされる固有劣化d
iを決定する。
【0056】
第3のステップでは、新しい断続的荷プロファイルS(t)に接続された装置の劣化を予測することができる。新しい負荷は、ステップ1で生成されたユニタリーパターンの線形結合により、以下のように近似される。
P(t)=Si=1.n ai si(t)
【0057】
そして、使用されたユニタリーパターンの個々の劣化を合計し、新規荷重のユニタリーパターンの線形結合への変換に使用された係数で重み付けすることにより、以下のように劣化(d)を予測することができる。
d =Si=1..n ai di
【0058】
図2Bは第3ステップの概略を示す。この例では、新しいプロファイルP(t)が方法に提供される。プロファイルは、日次、月次、または年次の電力/負荷に関連する可能性がある。負荷は正規化される。実装は、提供されたプロファイルのスペクトル変換を、例えばフーリエ、ウェーブレット、またはシェイプレットを使用して計算し、その後、上述したように劣化を予測する。実施形態は、オリジナル(すなわち、提供されたプロファイル)プロファイルと(すなわち、計算されたスペクトル変換を使用して)再構成されたプロファイルとの間の距離を計算することによって、信頼レベルを推定することができる。
【0059】
この実施態様は、他のタイプの装置、例えば断続的な電源(例えば、再生可能エネルギー、ハイブリッドシステムなど)に接続された電解槽ファミリー、断続的な電源に接続された電気化学エネルギー貯蔵装置、および/または断続的な負荷(電気モーターなど)に接続された電気化学エネルギー貯蔵装置の劣化を予測するために、同様の方法で使用することができる。実施態様はまた、温度、圧力、イオン濃度、および/またはガスなどの他の出力信号を同様の方法で予測することができる。
【0060】
次に、実装の計量的側面について説明する。
【0061】
周知のように、シェイプレット抽出法は、信号の集合から特徴的なパターンを抽出するものである。言い換えれば、シェイプレットを学習することで信号の基本形状を特定する。
【0062】
図3は、トレーニングデータとテストデータの生成に使用したベース信号を示す。
図4A-Bは、それぞれトレーニングセットとテストセットの時系列を示す。データセットの3分の2がトレーニングセットとして使用され、残りの3分の1がテストセットとして使用される。
【0063】
プロセスの2つの瞬間に実装によって識別された形状は、識別プロセスを説明するために評価される。実装は、時系列分析のための機械学習ツールを提供するPythonパッケージであるtslearnによって実行される。tslearnパッケージは、その性能を最適化するために、エポックと呼ばれるデータセット全体を通過するたびにその重みを修正するニューラルネットワークを実装している。評価の2つの瞬間は異なるエポック数で、1つは収束前(例えば3000エポック)、もう1つは収束が達成されたと考えられる(例えば10000エポック)。
【0064】
最初の瞬間、すなわち3000エポックの場合を
図5に示す。フィットネス曲線510を見ると、まだ収束に達していないことがわかる。さらに、抽出された(すなわち、識別された)シェイプレット520は、
図3に示されるように、トレーニングおよびテスト日を生成するために使用されたベース信号の混合物である。
【0065】
第2の瞬間、すなわち10000エポックの場合を
図6に示す。フィットネス曲線610は、
図5の510に比べて低く、平坦になっている。これは収束が達成されたことを示している。さらに、抽出されたシェイプレット620は、
図3に示されるように、トレーニングおよびテスト日を生成するために使用された純粋なベース信号をほとんど示している。
【0066】
3000エポックと10000エポックの両トレーニングの精度を比較すると、最初のケース(
図5)から2番目のケース(
図6)へ0.6%増加している。ここで精度は、シェイプレットの分類性能を測定するものであり、ベース信号への近接性を測定するものではない。シェイプレットの形状の正確さは、シェイプレット学習分類器には必要ではなく、むしろそれらの差に依存する。しかし、識別された形状の正確さは、分類性能を向上させる。
【0067】
これらの観察結果は、実装が正しい形状に収束することを示している。言い換えれば、学習シェイプレットアルゴリズムは、確かに信号の集合から正しい基本パターンを識別し、抽出する。
【0068】
図7A-Cは、抽出されたシェイプレットの例を示す:
図7Aは同定された正弦波状の信号、
図7Bは同定された三角波状の信号、
図7Cは同定された矩形波状の信号である。
【0069】
この実装では、異なる場所、異なる条件での再生可能エネルギー生産を表すデータセットが収集され、巨視的条件(昼/夜、冬/夏、太陽/風、気候...)によってラベル付けされる。これらの収集されたデータセットまたは例に対して、機械学習方法は「動的時間伸縮法」と呼ばれるメトリックを使用して、この例のサブセクションまたはシェイプレット間の距離または類似性を計算することができる。これらのシェイプレットの長さ(または持続時間)は、最適化手法によって決定されるか、ドメイン知識によって決定されるかのいずれかである。他のすべての可能なサブセクションに最も近く、ユーザーによって与えられた分類を最もよく表すシェイプレットのグループは、保持または抽出される。分類はニューラルネットワークとして構築されたロジスティック回帰によって行われ、重みはL2-penalized cross-entropy損失に対する確率的勾配降下によって最適化される。
【0070】
電解槽での実験には多大な時間とリソースを要し、運用上の制約を受けるため、実装では可能なシェイプレットの長さをすべて探索しないアプローチを使用することができる。このようなアプローチにおいて、実施態様はクラスタリングアルゴリズムを使用して、「抽出されたシェイプレット」をシェイプレットを最もよく表すk個の「選択されたシェイプレット」に再グループ化してもよい。クラスタリングアルゴリズムは、ロジスティック回帰による分類力のx%またはシェイプレット間の全距離のx%のいずれかを保持するように、k個の選択されたシェイプレットを選択することができる。値xは、各「選択されたシェイプレット」について関連付ける劣化を特徴付ける実験計画の制約によって決定されてもよい。
【0071】
実験計画は、任意に2つの付随する経験に単純化することができる。1つは、2つ目と比較する基準点となるベースラインシナリオである。2つ目は、各「選択されたシェイプレット」のN回の繰り返しからなる。Nは、特徴付けられた劣化が静的に代表的であるように、中心極限定理によって決定され得る(ガウス分布が仮定される場合、通常は30以上)。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の再生可能エネルギー源によって少なくともその一部が生成される、想定断続的負荷を受ける電気化学装置の性能指標の、予測される変化を出力するように構成された予測モデルを生成するコンピュータ実装方法であって、当該方法が、
-複数の時系列を取得する工程であって、当該複数の時系列が、それぞれ、1つまたは複数の再生可能エネルギー源によって少なくともその一部が生成され、電気化学装置に負荷をかけるように構成された、それぞれの現実の断続的負荷を表すものである工程と;
-それぞれがそれぞれの基礎的な断続的負荷を表す複数の基底関数を機械学習する工程であって、前記複数の基底関数が複数の時系列の投影空間を形成し、前記複数の基底関数が、それによって、前記複数の基底関数に適用されるそれぞれの線形結合の後継によって、前記各時系列を近似するように構成される工程と、そして
-前記電気化学装置が、前記基底関数によって表されるそれぞれの基礎的な断続的負荷を受けた場合に、各基底礎関数について、前記電気化学装置の性能指標の各基礎的変化を含む複数の基礎的変化を決定する工程と
を含み、前記予測モデルが:
・前記想定断続的負荷を前記複数の基底関数に投影し、それによって、前記想定断続的負荷を近似するために前記複数の基底関数に適用可能な、それぞれの線形結合の継続を取得する工程と
・前記それぞれの線形結合の後継を前記複数の基礎的変化に適用し、それによって予測変化を出力する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記電気化学装置の性能指標のそれぞれの基礎的変化を決定することが、各基底関数について
-前記電気化学装置の少なくとも1つの物理的インスタンスを取得し、
-前記電気化学装置の少なくとも1つの物理的インスタンスを、基底関数によって表されるそれぞれの基礎的断続的負荷の少なくとも1つの実際のインスタンスに供し、
-前記電気化学装置の少なくとも1つの物理的インスタンスに対して、性能指標の少なくとも1つの測定を実行し、そして
-少なくとも1つの測定値に基づいて、前記それぞれの基礎的変化を計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電気化学装置の少なくとも1つの物理的インスタンスにおける性能指標の少なくとも1つの測定が、第1の測定と第2の測定とを含み、当該第1の測定が、前記それぞれの基礎的断続的負荷の前記少なくとも1つの実際のインスタンスの開始時に実行され、前記第2の測定が、前記それぞれの基礎的断続的負荷の少なくとも1つの実際のインスタンスの終了時に実行され、前記それぞれの基礎的変化の計算が、前記第2の測定から得られた値と前記第1の測定から得られた値との差を計算することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの基底関数について、前記基底関数によって表される前記それぞれの基礎的断続的負荷の少なくとも1つの前記実際のインスタンスが、前記それぞれの基礎的断続的負荷の複数の実際のインスタンスを含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
各時系列がそれぞれの分類ラベルを含み、かつ複数の基底関数の機械学習が、各時系列について、
-前記分類ラベルに関する分類誤差、および/または
-前記基底関数と前記提供された時系列との間の距離メトリック
を最小化することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
-前記距離メトリックが動的時間伸縮法であること、および/または
-前記分類誤差がクロスエントロピー損失である、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の基底関数が、複数のシェイプレットからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
各シェイプレットが長さパラメータを含み、前記複数の基底関数の機械学習が、さらに
-誤差を最小にするように各シェイプレットの長さを決定することを含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の基底関数の機械学習が、さらに
-前記決定された複数の基底関数から所定のサイズのサブセットを選択することを含んでなり、
当該選択されたサブセットが
-前記最小化された分類誤差の第1の近傍における分類誤差、および/または
-前記最小化距離メトリックの第2近傍の距離メトリックを有する、
請求項7に記載の、方法。
【請求項10】
前記性能指標が
-一定モードでの効率、
-温度信号、
-圧力信号、
-イオン濃度信号、または
-ガス濃度信号を表す、
先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記電気化学装置が、
-断続的な電源に接続された電解槽、
-断続的な電源に接続された電気化学エネルギー貯蔵装置、及び
-断続的な負荷に接続された電気化学エネルギー貯蔵装置
の少なくとも1つを備える、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法によって生成された予測モデルをそれぞれの電気化学装置に使用するコンピュータ実装方法であって、
当該方法が、
-1つまたは複数の再生可能エネルギー源によって少なくともその一部が生成される、想定断続的負荷を取得し、
-前記予測モデルを想定断続的負荷に適用し、それによって、それぞれの電気化学装置が想定断続的負荷にさらされた場合に、それぞれの電気化学装置の性能指標の予測された変化を出力すること
を含み、前記予測モデルの適用が
o想定断続的負荷を複数の基底関数に投影し、それによって、想定断続的負荷を近似するために複数の基底関数に適用可能な線形結合のそれぞれの後継を得て、そして
o前記それぞれの線形結合の後継を複数の基礎的変化に適用し、それによって予測変化を出力すること
を含む、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法を実行するための命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項15】
メモリに結合されたプロセッサを含むシステムであって、前記メモリには、請求項13に記載のコンピュータプログラムが記録されている、システム。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の再生可能エネルギー源によって少なくともその一部が生成される、想定断続的負荷を受ける電気化学装置の性能指標の、予測される変化を出力するように構成された予測モデルを生成するコンピュータ実装方法であって、当該方法が、
-複数の時系列を取得する工程であって、当該複数の時系列が、それぞれ、1つまたは複数の再生可能エネルギー源によって少なくともその一部が生成され、電気化学装置に負荷をかけるように構成された、それぞれの現実の断続的負荷を表すものである工程と;
-それぞれがそれぞれの基礎的な断続的負荷を表す複数の基底関数を機械学習する工程であって、前記複数の基底関数が複数の時系列の投影空間を形成し、前記複数の基底関数が、それによって、前記複数の基底関数に適用されるそれぞれの線形結合の後継によって、前記各時系列を近似するように構成される工程と、そして
-前記電気化学装置が、前記基底関数によって表されるそれぞれの基礎的な断続的負荷を受けた場合に、各基底礎関数について、前記電気化学装置の性能指標の各基礎的変化を含む複数の基礎的変化を決定する工程と
を含み、前記予測モデルが:
・前記想定断続的負荷を前記複数の基底関数に投影し、それによって、前記想定断続的負荷を近似するために前記複数の基底関数に適用可能な、それぞれの線形結合の継続を取得する工程と
・前記それぞれの線形結合の後継を前記複数の基礎的変化に適用し、それによって予測変化を出力する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記電気化学装置の性能指標のそれぞれの基礎的変化を決定することが、各基底関数について
-前記電気化学装置の少なくとも1つの物理的インスタンスを取得し、
-前記電気化学装置の少なくとも1つの物理的インスタンスを、基底関数によって表されるそれぞれの基礎的断続的負荷の少なくとも1つの実際のインスタンスに供し、
-前記電気化学装置の少なくとも1つの物理的インスタンスに対して、性能指標の少なくとも1つの測定を実行し、そして
-少なくとも1つの測定値に基づいて、前記それぞれの基礎的変化を計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電気化学装置の少なくとも1つの物理的インスタンスにおける性能指標の少なくとも1つの測定が、第1の測定と第2の測定とを含み、当該第1の測定が、前記それぞれの基礎的断続的負荷の前記少なくとも1つの実際のインスタンスの開始時に実行され、前記第2の測定が、前記それぞれの基礎的断続的負荷の少なくとも1つの実際のインスタンスの終了時に実行され、前記それぞれの基礎的変化の計算が、前記第2の測定から得られた値と前記第1の測定から得られた値との差を計算することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの基底関数について、前記基底関数によって表される前記それぞれの基礎的断続的負荷の少なくとも1つの前記実際のインスタンスが、前記それぞれの基礎的断続的負荷の複数の実際のインスタンスを含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
各時系列がそれぞれの分類ラベルを含み、かつ複数の基底関数の機械学習が、各時系列について、
-前記分類ラベルに関する分類誤差、および/または
-前記基底関数と前記提供された時系列との間の距離メトリック
を最小化することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
-前記距離メトリックが動的時間伸縮法であること、および/または
-前記分類誤差がクロスエントロピー損失である、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の基底関数が、複数のシェイプレットからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
各シェイプレットが長さパラメータを含み、前記複数の基底関数の機械学習が、さらに
-誤差を最小にするように各シェイプレットの長さを決定することを含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の基底関数の機械学習が、さらに
-前記決定された複数の基底関数から所定のサイズのサブセットを選択することを含んでなり、
当該選択されたサブセットが
-前記最小化された分類誤差の第1の近傍における分類誤差、および/または
-前記最小化距離メトリックの第2近傍の距離メトリックを有する、
請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記性能指標が
-一定モードでの効率、
-温度信号、
-圧力信号、
-イオン濃度信号、または
-ガス濃度信号を表す、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記電気化学装置が、
-断続的な電源に接続された電解槽、
-断続的な電源に接続された電気化学エネルギー貯蔵装置、及び
-断続的な負荷に接続された電気化学エネルギー貯蔵装置
の少なくとも1つを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法によって生成された予測モデルをそれぞれの電気化学装置に使用するコンピュータ実装方法であって、
当該方法が、
-1つまたは複数の再生可能エネルギー源によって少なくともその一部が生成される、想定断続的負荷を取得し、
-前記予測モデルを想定断続的負荷に適用し、それによって、それぞれの電気化学装置が想定断続的負荷にさらされた場合に、それぞれの電気化学装置の性能指標の予測された変化を出力すること
を含み、前記予測モデルの適用が
o想定断続的負荷を複数の基底関数に投影し、それによって、想定断続的負荷を近似するために複数の基底関数に適用可能な線形結合のそれぞれの後継を得て、そして
o前記それぞれの線形結合の後継を複数の基礎的変化に適用し、それによって予測変化を出力すること
を含む、方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法を実行するための命令を含む、コンピュータプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータプログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項15】
メモリに結合されたプロセッサを含むシステムであって、前記メモリには、請求項13に記載のコンピュータプログラムが記録されている、システム。
【外国語明細書】