(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170397
(43)【公開日】2024-12-10
(54)【発明の名称】薬物送達のための相乗的な透過促進剤を伴う組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/445 20060101AFI20241203BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20241203BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241203BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241203BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20241203BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20241203BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20241203BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20241203BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20241203BHJP
A61K 31/529 20060101ALI20241203BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241203BHJP
A61P 23/00 20060101ALI20241203BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241203BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20241203BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20241203BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20241203BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20241203BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20241203BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20241203BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20241203BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
A61K31/445
A61P25/02
A61K45/00
A61P43/00 111
A61K9/06
A61K47/20
A61K47/06
A61K47/10
A61K47/34
A61K31/529
A61P31/04
A61P23/00
A61P29/00
A61P25/04
A61P43/00 105
A61P9/10 101
A61P7/02
A61K31/496
A61K45/06
A61K31/573
A61P31/00
A61P27/16
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024125762
(22)【出願日】2024-08-01
(62)【分割の表示】P 2021511602の分割
【原出願日】2019-08-30
(31)【優先権主張番号】62/726,058
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/814,161
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596115687
【氏名又は名称】ザ チルドレンズ メディカル センター コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】コハネ,ダニエル,エス.
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ロン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】障壁を越えて治療剤を送達するための組成物及び方法を提供する。
【解決手段】組成物が、以下:(a)治療剤または治療剤の組み合わせ;(b)透過促進剤または透過促進剤の組み合わせ、ここで透過促進剤または透過促進剤の組み合わせが、治療剤または治療剤の組み合わせの、障壁を越える流動を増大させる;及び(c)マトリックス形成剤またはマトリックス形成剤の組み合わせ、ここでマトリックス形成剤またはマトリックス形成剤の組み合わせが、ポリマーを含む;を含み、ここで:組成物が、相転移温度を上回る温度にてゲルを形成する;及び相転移温度が、約37℃未満である;ここで組成物が、例えばドデシル硫酸ナトリウムである、約0.5~20.0%wt/volの間の透過促進剤を含む;及びここで組成物が、ポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルである、約9.0~20.0%wt/volの間のポリマーを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物が、以下:
(a)治療剤または治療剤の組み合わせ;
(b)透過促進剤または透過促進剤の組み合わせ、ここで透過促進剤または透過促進剤の組み合わせが、治療剤または治療剤の組み合わせの、障壁を越える流動を増大させる;および
(c)マトリックス形成剤またはマトリックス形成剤の組み合わせ、ここでマトリックス形成剤またはマトリックス形成剤の組み合わせが、ポリマーを含む;
を含み、ここで:
組成物が、相転移温度を上回る温度にてゲルを形成する;および
相転移温度が、約37℃未満である;
ここで組成物が、ドデシル硫酸ナトリウムである、約0.5~20.0%wt/volの間の透過促進剤を含む;
ここで組成物が、治療剤の1種であるブピバカインである、約0.5~7.5%wt/volの間の透過促進剤を含む;
ここで組成物が、リモネンである、約0.5~12.0%wt/volの間の透過促進剤を含む;および
ここで組成物が、ポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルである、約9.0~20.0%wt/volの間のポリマーを含む;および
ここで組成物が、任意にさらに、局所麻酔薬である、約0.01~0.50%wt/volの間の別の治療剤を含む、前記組成物。
【請求項2】
以下:
(a)治療剤または治療剤の組み合わせ;
(b)透過促進剤または透過促進剤の組み合わせ、ここで透過促進剤または透過促進剤の組み合わせが、治療剤または治療剤の組み合わせの、障壁を越える流動を増大させる;および
(c)マトリックス形成剤またはマトリックス形成剤の組み合わせ、ここでマトリックス形成剤またはマトリックス形成剤の組み合わせが、ポリマーを含む;
を含み、ここで:
組成物が、相転移温度を上回る温度にてゲルを形成する;および
相転移温度が、約37℃未満である;
ここで組成物が、ドデシル硫酸ナトリウムである、約0.5~5.5%wt/volの間の透過促進剤を含む;
ここで組成物が、治療剤の1種であるブピバカインである、約0.5~7.5%wt/volの間の透過促進剤を含む;
ここで組成物が、リモネンである、約0.5~10.0%wt/volの間の透過促進剤を含む;および
ここで組成物が、ポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルである、約9.0~19.0%wt/volの間のポリマーを含む;および
ここで組成物が、ナトリウムチャネル遮断薬である、約0.01~0.50%wt/volの間の局所麻酔剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
以下:
(a)治療剤または治療剤の組み合わせ;
(b)透過促進剤または透過促進剤の組み合わせ、ここで透過促進剤または透過促進剤の組み合わせが、治療剤または治療剤の組み合わせの、障壁を越える流動を増大させる;および
(c)マトリックス形成剤またはマトリックス形成剤の組み合わせ、ここでマトリックス形成剤またはマトリックス形成剤の組み合わせが、ポリマーを含む;
を含み、ここで:
組成物が、相転移温度を上回る温度にてゲルを形成する;および
相転移温度が、約37℃未満である;
ここで組成物が、ドデシル硫酸ナトリウムである、約0.5~5.5%wt/volの間の透過促進剤を含む;
ここで組成物が、ブピバカインである、約0.5~1.5%wt/volの間の透過促進剤を含む;
ここで組成物が、リモネンである、約2.0~12.0%wt/volの間の透過促進剤を含む;および
ここで組成物が、ポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルである、約9.0~19.0%wt/volの間のポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
条件(i)、(ii)、および(iii):
(i)組成物が、サイズが16ゲージから24ゲージまで、かつ1インチから5.25インチまでに及ぶ軟性カテーテルから押し出され得、かつ組成物が、液体のままである;
(ii)組成物の相転移温度が、約15℃を上回りかつ約37℃を下回る;および
(iii)37℃にて、組成物の貯蔵弾性率が、約300Paより大きく、かつ貯蔵弾性率が、組成物の損失弾性率より大きい、
の少なくとも1つが、満たされる、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
条件(i)において、軟性カテーテルが、18ゲージ、1.88インチの軟性カテーテルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
条件(i)が、満たされる、請求項4または5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
条件(ii)が、満たされる、請求項4~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
条件(iii)が、満たされる、請求項4~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
ナトリウムチャネル遮断薬が、部位1ナトリウムチャネル遮断薬である、請求項2または4~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
部位1ナトリウムチャネル遮断薬が、テトロドトキシンである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
組成物が、約0.03~0.30%wt/volの間のテトロドトキシンを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
組成物が、約0.3%wt/volのテトロドトキシンを含む、請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
組成物が、約0.5~5.0%wt/volの間のドデシル硫酸ナトリウムを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
組成物が、約1.0%wt/volのドデシル硫酸ナトリウムを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
組成物が、約5.0%wt/volのドデシル硫酸ナトリウムを含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
組成物が、約0.5~1.25%wt/volの間のブピバカインを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
組成物が、約1.75~7.5%wt/volの間のブピバカインを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
組成物が、約2.0~7.5%wt/volのブピバカインを含む、請求項1~15または17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
組成物が、約2.0%wt/volのブピバカインを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
組成物が、約1.0%wt/volのブピバカインを含む、請求項1~19に記載の組成物。
【請求項21】
組成物が、約4.0~10.0%wt/volの間のリモネンを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
組成物が、約0.5~3.5%wt/volのリモネンを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
組成物が、約2.0%wt/volのリモネンを含む、請求項1~20または22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
組成物が、約4.0%wt/volのリモネンを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
組成物が、約10.0%wt/volのリモネンを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
組成物が、約10.0~15.0%wt/volの間のポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
組成物が、約10.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルを含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
組成物が、約12.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルを含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
組成物が、約15.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルを含む、請求項26に記載の組成物。
【請求項30】
治療剤が、抗生物質製剤、麻酔剤、抗炎症剤、鎮痛剤、抗線維化剤、抗硬化剤、抗凝固剤、または診断用薬である、請求項1~29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
抗生物質製剤が、シプロフロキサシン、セフロキシム、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン、セファレキシン、セファクロル、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム、セフィキシム、セフジニル、セフチドレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、セフトビプロール、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、メロフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スペクチノマイシン、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリン、ピペラシリン、チカルシリン、マフェニド、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、トリメトプリム、およびトリメトプリム-スルファメトキサゾールからなる群から選択される、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
抗生物質製剤が、シプロフロキサシンである、請求項30または31に記載の組成物。
【請求項33】
組成物が、約1.0~5.0%wt/volの間のシプロフロキサシンを含む、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
麻酔剤が、ブピバカイン、テトラカイン、プロカイン、プロパラカイン、プロポキシカイン、ジメトカイン、シクロメチカイン、クロロプロカイン、ベンゾカイン、リドカイン、プリロカイン、レボブピバカイン、ロピバカイン、ジブカイン、アルチカイン、カルチカイン、エチドカイン、メピバカイン、ピペロカイン、およびトリメカインからなる群から選択される、請求項30に記載の組成物。
【請求項35】
治療剤が、麻酔剤ブピバカインおよびナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤を含む、請求項1、3~30または34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
麻酔剤が、テトロドトキシンである、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
抗炎症剤が、アセチルサリチル酸、アロキシプリン、ベノリラート、コリンマグネシウムトリサリチル酸、ジフルニサル、エテンザミド、ファイスラミン、サリチル酸メチル、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸サリチラート、サリチルアミド、ジクロフェナク、アセクロフェナク、アセメタシン、アルクロフェナク、ブロムフェナク、エトドラク、インドメタシン、ナブメトン、オキサメタシン、プログルメタシン、スリンダク、トルメチン、イブロプロフェン、アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、カプロフェン、デクスイブプロフェン、デクスケトプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルノキサプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロキサム、インドプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラック、ロキソプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸、メフェナム酸、フルフェナム酸、メクロフェナム酸、トルフェナム酸、フェニルブタゾン、アンピロン、アザプロパゾン、クロフェゾン、ケブゾン、メタミゾール、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェナゾン、フェニルブタゾン、スルフィンピラゾン、ピロキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸デオキシコルチコステロン、およびアルドステロンからなる群から選択される、請求項30に記載の組成物。
【請求項38】
さらに追加の治療剤を含む、請求項1~37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
追加の治療剤が、麻酔剤である、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
麻酔剤が、局所麻酔薬である、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
麻酔剤が、ブピバカインである、請求項39または40に記載の組成物。
【請求項42】
追加の治療剤が、抗炎症剤である、請求項38に記載の組成物。
【請求項43】
抗炎症剤が、デキサメタゾンである、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
追加の治療剤が、β-ラクタマーゼ阻害剤である、請求項38に記載の組成物。
【請求項45】
組成物が、以下:
約1.0~5.0%wt/volの間のドデシル硫酸ナトリウム;
約0.5~1.0%wt/volの間のブピバカイン;
約4.0~10.0%wt/volの間のリモネン;および
約12.0~15.0%wt/volの間のポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステル
を含む、請求項1~44のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項46】
組成物が、以下:
(1)約1.0%wt/volのドデシル硫酸ナトリウム;約0.5%wt/volのブピバカイン;約2.0%wt/volのリモネン;および約12.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステル;
(2)約1.0%wt/volのドデシル硫酸ナトリウム;約1.0%wt/volのブピバカイン;約10.0%wt/volのリモネン;および約12.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステル;
(3)約1.0%wt/volのドデシル硫酸ナトリウム;約1.0%wt/volのブピバカイン;約10.0%wt/volのリモネン;および約15.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステル;
(4)約5.0%wt/volのドデシル硫酸ナトリウム;約1.0%wt/volのブピバカイン;約4.0%wt/volのリモネン;および約12.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステル;または
(5)約5.0%wt/volのドデシル硫酸ナトリウム;約1.0%wt/volのブピバカイン;約4.0%wt/volのリモネン;および約15.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステル
のいずれかを含む、請求項1~45のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項47】
組成物が、以下:
約0.5~5.0%wt/volの間のドデシル硫酸ナトリウム;
約0.5~7.5%wt/volの間のブピバカイン;
約0.5~3.5%wt/volの間のリモネン;
約9.0~15.0%wt/volの間のポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステル;および
ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤テトロドトキシンである、約0.01~0.50%wt/volの間の別の治療剤
を含む、請求項1~44のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項48】
組成物が、以下:約1.0%wt/volのドデシル硫酸ナトリウム;約2.0%wt/volのブピバカイン;約2.0%wt/volのリモネン;約12.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステル;およびナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤テトロドトキシンである、約0.3%wt/volの別の治療剤を含む、請求項1~44のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項49】
請求項1~48のいずれか一項に記載の組成物と、任意に、薬学的に許容し得る賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項50】
医薬組成物が、疾患または疾病の処置を、これを必要とする対象においてするのに使用するための、治療的に有効な量の組成物を含む、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項51】
疾患または疾病の処置を、これを必要とする対象においてする方法であって、方法が、請求項1~48のいずれか一項に記載の、治療的に有効な量の組成物、またはその薬学的に許容し得る塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、もしくは立体異性体、または請求項49もしくは50に記載の医薬組成物を対象へ投与することを含む、前記方法。
【請求項52】
疾病が、疼痛である、請求項50に記載の医薬組成物。
【請求項53】
疾病が、感染性疾患に関連する疼痛である、請求項50または52に記載の医薬組成物。
【請求項54】
疾病が、耳疾患または細菌感染症に関連する疼痛である、請求項50または52に記載の医薬組成物。
【請求項55】
疾患が、感染性疾患である、請求項50に記載の医薬組成物。
【請求項56】
疾患が、耳疾患または細菌感染症である、請求項50に記載の医薬組成物。
【請求項57】
細菌感染症が、H. influenzae、S. pneumoniae、またはM. catarrhalisの感染症である、請求項54または56のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項58】
感染性疾患が、中耳炎である、請求項50または55に記載の医薬組成物。
【請求項59】
疾病が、疼痛である、請求項51に記載の方法。
【請求項60】
疾病が、感染性疾患に関連する疼痛である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
疾病が、耳疾患または細菌感染症に関連する疼痛である、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
方法が、疼痛の持続的な処置を含む、請求項59~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
疾患が、感染性疾患である、請求項51に記載の方法。
【請求項64】
疾患が、耳疾患である、請求項51に記載の方法。
【請求項65】
疾患が、細菌感染症である、請求項51に記載の方法。
【請求項66】
細菌感染症が、H. influenzae、S. pneumoniae、またはM. catarrhalisの感染症である、請求項61または65に記載の方法。
【請求項67】
感染性疾患が、中耳炎である、請求項60または63に記載の方法。
【請求項68】
請求項1~48のいずれか一項に記載の組成物を、これを必要とする対象へ投与することを含む、バイオフィルムを根絶する方法。
【請求項69】
請求項1~48のいずれか一項に記載の組成物を送達する方法であって、方法が、組成物を対象の外耳道へ投与することを含む、前記方法。
【請求項70】
組成物が、鼓膜の表面と接触する、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
投与することが、組成物の点滴剤を外耳道中へ配置すること、またはある用量の組成物を、カテーテルを使用して外耳道中へ配置することを含む、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
投与することが、アプリケーターを使用して組成物を外耳道中へ配置することを含む、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
投与することが、組成物を、局所麻酔薬なしで、外耳道へ投与することを含む、請求項69に記載の方法。
【請求項74】
投与することが、以下:
組成物を、局所麻酔薬ありで、外耳道へ投与すること;および
組成物を、局所麻酔薬なしで、外耳道へ投与すること
を含む、請求項69に記載の方法。
【請求項75】
投与することが、組成物を、ダブルバレルシリンジで外耳道中へ配置することを含む、請求項69、73または74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
疾患もしくは疾病の処置および/または予防を、これを必要とする対象においてするための組成物の使用であって、使用が、請求項1~48のいずれか一項に記載の、治療的に有効な量の組成物、またはその薬学的に許容し得る塩、溶媒和物、水和物、互変異性体、もしくは立体異性体、または請求項49もしくは50に記載の医薬組成物を対象へ投与することを含む、前記使用。
【請求項77】
耳疾患および/または耳疾患に関連する疾病を処置するためのキットであって、容器、請求項1~48のいずれか一項に記載の組成物、および組成物を、これを必要とする対象へ投与するための指示を含む、前記キット。
【請求項78】
さらに、点滴器、シリンジ、またはカテーテルを含む、請求項77に記載のキット。
【請求項79】
ダブルバレルシリンジをさらに含む、請求項77に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、35 U.S.C.§119(e)の下、2018年8月31日出願のU.S.S.N.62/726,058および2019年3月5日出願のU.S.S.N.62/814,161の米国仮出願(これら各々は参照により本明細書に組み込まれる)に対して優先権を主張するものである。
【0002】
政府の支援
本発明は、国立衛生研究所によって授与された助成金DC015050およびDC016644の下、政府の支援によりなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
合衆国における1年当たりの1千2百万~1千6百万の受診は中耳炎(OM)に起因するものであり、このことからOMは特異的に処置される最も一般的な小児期の疾患となっている。[(a)Berman,S.,Otitis media in children. N Engl J Med 1995,332,1560-5;(b)Fried,V.M.;Makuc,D.M.;Rooks,R.N.Ambulatory health care visits by children:principal diagnosis and place of visit.;137;Washington,D.C.:Government Printing Office,1998.:1998.]。急性OM(AOM)は人生最初の5年以内に90%の有病率を有し[Teele,D.W.;Klein,J.O.;Rosner,B.,Epidemiology of otitis media during the first seven years of life in children in greater Boston:a prospective,cohort study.The Journal of infectious diseases 1989,160(1),83-94]、米国のすべての子どもらのうち90~95%は2歳までに、少なくとも1回の、確認された(documented)中耳の滲出を有する。[Casselbrant,M.L.;Mandel,E.M.,Epidemiology.In Evidence-based otitis media,Rosenfeld,R.M.;Bluestone,C.D.,Eds.Decker,Inc.:Hamilton,British Columbia,1999;pp117-137]。子どもらへ書かれたすべての処方箋の25%パーセントは、急性中耳炎の処置のためのものである。疾患の再発もまた著しく、米国のすべての子どもらの3分の1が7歳までに6回以上のAOMの症状の出現(episodes)を有する。[Faden,H.;Duffy,L.;Boeve,M.,Otitis media:back to basics.The Pediatric infectious disease journal 1998,17(12),1105-12;quiz 1112-3]。その上、疫学研究は、子どもらの、具体的に未成年者の間での再発性OMの有病率が上昇しつつあることを示唆している。[Lanphear,B.P.;ByrdR. S.;Auinger,P.;Hall,C.B.,Increasing prevalence of recurrent otitis media among children in the United States.Pediatrics 1997,99(3),E1]。他の先進国の子どもらのOMの発生率も、米国と同様である。発展途上世界において、OMは、聴覚の永続的後遺症を高頻度でもたらす慢性化膿性中耳炎の発症に起因し、そして世界で25,000名超に死をもたらすと推定される頭蓋内合併症に起因し、依然として子どもの死亡率の有意な原因である。[Acuin,J.Otitis Media:Burden of Illness and Management Options;World Health Organization:Geneva,Switzerland,2004]。
【0004】
急性OMは、疾患の高い有病率に起因して、米国の子どもらにおいて抗微生物薬処方するための最も一般的な理由になり、頻繁な再発は、病原性細菌のうち抗生物質耐性が増大し続けることを一部担っているものと考えられている。過去10年の間、子どもらにおいて抗微生物薬使用をおよそ25%低減することに成功したにもかかわらず、抗微生物薬耐性の増大が続いている。加えて、急性中耳炎(AOM)は最も一般的な小児期の疾患の1つであって、米国において毎年2千万を超える受診の主要因となっている1,2。再発もまた一般的であって、子どもらの3分の1が7歳までに6回以上のAOMの症状の出現を有する3。AOMの子どもらの最大80%までが、感染症の発病の最中に軽度~重度の疼痛を有し、そのうち約40%が重度の疼痛を有する4,5。最初の24~48時間が、AOMが最も痛む期間と見なされているが、子どもらの約30%は3~7日間の疼痛を有する6。その結果として、多くのAOMガイドラインは、不可欠な処置の一環として鎮痛薬の使用を推奨している7。AOMは一般的に、子どもらに疼痛およびディストレス(distress)を引き起こす。既存鎮痛薬の耳局所用(ototopical)点滴剤は、鼓膜の非透過性という性質に起因し、限定的な有効性しか有さない。経口鎮痛薬が一般的に使用されているが8、それらが役立つかは不透明である9。AOMにおける耳局所用商品の有効性もまた疑わしい10,11。それでもなお、AOMにおける疼痛の局部的局所(local topical)処置は、全身薬物分布からの副作用が回避され得ることと、疼痛緩和が経口鎮痛薬より早く(発病時)、より強く、かつより長く続くこととから、依然として所望されている。
【0005】
耳感染の現在の処置は全身性の経口抗生物質からなり、5~10日間にわたる複数回用量および抗生物質への全身曝露を要する処置である。抗生物質耐性の上昇は、OMの多くの多元的病因論と相まって、OMの診断および処置における困難性を招いた。さらにまた、現処置は、胃腸の副作用に起因する患者コンプライアンス問題、感染部位での薬物の有効濃度の不足、および日和見感染の可能性を包含する、数多の難点を提示している。感染の急性の兆候が一般に72時間以内に消失した後であっても、感染の根本的原因は、処置の残りの期間(for the remainder of the treatment)、およびこれを越えて(and beyond)、最大2カ月までも、継続することがある。よって、医者の処方箋を順守すること(making compliance with)は、感染の再発を予防するのに重要である。
【0006】
OM処置のための中耳への活性治療薬の直接的な持続的(sustained)局部送達は、全身曝露およびその弊害を最小限にしつつ、中耳における薬物の、全身投与よりはるかに高い濃度を可能にさせ得る。しかしながら、鼓膜(TM)は10細胞の層厚しかないが、最小のものを除き、中程度に疎水性のすべての分子に対し、おおむね非透過性である障壁を提示する。最薄の皮膚の層であるにもかかわらず、未だ経鼓膜(trans-tympanic membrane)拡散への障壁である。したがって、中耳感染の直接的な処置は解決が難しい。中耳感染などの耳疾患の現処置の欠点は、非侵襲的かつ直接作用する新しい処置への必要性を示唆する。加えて、AOMに関連する疼痛の局部的局所処置もまた、所望される。
【発明の概要】
【0007】
概要
本明細書に提供されるのは、持続的薬物流動が鼓膜(TM)を越える、非侵襲的な経鼓膜(trans-tympanic)中耳炎(OM)処置向けの組成物および方法である。化学的透過促進剤(CPE)は、一般的に経皮送達に採用されるが、かかる経鼓膜流動を可能にさせ得る。ある態様において、最適化された製剤の単回適用は、経口治療の難点もなく細菌性耳炎の根絶をもたらす、中耳へ局在化される高濃度の抗生物質を提供し得る。かかる製剤はまた、鼓膜を越える薬物送達を要する、耳の他の疾患の処置にも有用なことがある。
【0008】
典型的なOM処置は、10日間にわたる広範囲の経口抗生物質からなる。かかる高い有病率の疾患および再発に対する全身性の抗生物質の広範囲の使用は、鼻咽頭中の病原性細菌に見られる抗生物質耐性が増大し続けることを一部担っているものと考えられている。最も多い症例において、肺炎、皮膚、軟組織、および胃腸の感染症のような抗生物質耐性の感染症は、抗生物質で容易に処置可能な感染症と比較して、長時間の処置および/またはよりコストのかかる処置を要し、入院期間を延ばし、追加の往診および医療の使用を強制し、より深刻な身体障害および死をもたらす。複数回用法の順守もまた、世界のある地域では困難なこともある。順守および抗生物質耐性はまた、再発性OMの長期予防においては、解決がより難しいこともある。有効な持続的局部治療は、順守の問題に対処し得、薬物耐性の発生および慢性化膿性中耳炎に影響を及ぼし得、中耳控換気用チューブ(tympanostomy tube)の設置(TMに移植されることで、再発性OMの中耳排膿を促進するデバイス)への必要性を低減させ得る。[Khoo,X.;Simons,E.;Chiang,H.;Hickey,J.;Sabharwal,V.;Pelton,S.;Rosowski, J.;Langer,R.;Kohane,D.,Formulations for trans-tympanic antibiotic delivery. Biomaterials 2013,34,1281-8]。
【0009】
TMは、外層が外耳道(external auditory canal)の皮膚に続く重層扁平角化上皮である三層膜である。最内層は、単層立方粘膜上皮である。これら上皮間には、弾性線維結合組織の層ならびに関連する血管および神経がある。ヒトTMは約100μm厚しかないが、6~10細胞層の外エナメル上皮が、そのケラチン-かつ脂質-リッチな角質層に起因して、最小のものを除くすべての親油性の分子に対する頑強な障壁を形成する。[Doyle,W.J.;Alper,C.M.;Seroky,J.T.;Karnavas,W.J.,Exchange rates of gases across the tympanic membrane in rhesus monkeys. Acta oto-laryngologica 1998,118(4),567-73]。
【0010】
組織を直接標的にする、局在化した持続的薬物送達は、全身への弊害がほとんどないこと、使用される薬物の分量がより少ないこと、治療成果が潜在的により良好であること、およびコストが低減されることを包含する、全身適用に対する数種の利点を有する。TMの非透過性は、局部治療の開発にとって中心的な課題である。
【0011】
化学的透過促進剤(CPE)は、経皮薬物送達における小分子の流動を安全に増大させるために使用される。数個は、ヒトにおける使用に、FDAに承認されている。これらの剤はしばしば、親水性の頭部(heads)および疎水性の尾部(tails)をもつ両親媒性有機分子の異質な群(heterogeneous group)を含む界面活性剤である。数クラスの界面活性剤が研究されている。界面活性剤は、界面での吸着および可塑剤として作用する水-可溶性の剤の除去によって脂質を可逆的に修飾する。カチオン性界面活性剤は、透過流動(permeant flux)の増大がアニオン性界面活性剤より大きく生じること、その次に非イオン性界面活性剤より多く透過性を増大させることが知られている。幅広い非界面活性剤の化学的促進剤(例として、テルペン)もまた使用されており、角化細胞内および角化細胞間のタンパク質の変性、および/または、増大した脂質二重層の流動性をもたらす脂質の修飾もしくは乱れ(disruption)を包含する作用機序をもつ。
【0012】
本明細書に提供される組成物において、治療剤および透過促進剤は、マトリックス形成剤と組み合わされることで、好適な条件下でヒドロゲルを形成する組成物を形成する。かかる条件は、投与(例として、外耳道(ear canal)における)最中の、または組成物の2つの構成要素もしくはマトリックス形成剤の混合に続く、体温への曝露を包含していてもよい。マトリックス形成剤は、投与後にゲルを形成する化合物または化合物の混合物である。組成物は一般に、周囲条件にて液体であるが、しかしながら、一旦対象へ投与されたら、マトリックス形成剤またはマトリックス形成剤の組み合わせは、ヒドロゲルへの相転移を引き起こす。ヒドロゲルは、薬物および他の小分子の負荷(loading)を可能にする、高度に多孔質な構造を有し、これに続くゲルからの薬物溶離は、長期間にわたり、取り囲まれた組織中に高い局部濃度を創出する。ある態様において、薬物は、液体組成物中に負荷されている。ヒドロゲルは、これが適用される表面の形状に一致して接着し得、生体適合性になりやすくなり得る。
【0013】
本明細書に提供される組成物につき、透過促進剤の、マトリックス形成剤および治療剤との組み合わせは、透過促進剤が不在の組成物によって形成されたヒドロゲルと比べて、治療剤の流動が改善され、かつその結果得られたヒドロゲルの特性もまた改善された(または有意に機能が損なわれていない)組成物を提供する。本明細書に提供される組成物につき、透過促進剤の、マトリックス形成剤および治療剤との組み合わせは、透過促進剤が不在の組成物によって形成されたヒドロゲルと比べて、治療剤の流動が改善され、かつ追加の特性(薬物徐放、組成物の鼓膜への経時的接着、分解、またはそれらの組み合わせ(これらに限定されない)を包含する)が改善され、かつその結果得られたヒドロゲルの特性もまた改善された(または有意に機能が損なわれていない)組成物を提供する。
【0014】
加えて、AOMに関連する疼痛の処置に関し、耳局所用点滴剤からの効率的な鎮痛効果の欠如がTMへの透過不能に起因していたとの仮説が立てられる。TMの最外層である角質層は、小さいかつ中程度に疎水性の分子を除く事実上すべての分子に対して非透過性である。角質層の障壁は、化学的におよび生物学的に活性な分子および/または物理的手段によって乱され得る12。化学的透過促進剤(CPE)は、とりわけ、TMを越える小分子の流動を促進する有効な手段として浮上した13,14。CPEは、角質層内の非透過性角質細胞間の間質腔中の脂質二重層の流動性を可逆的に増大し得、分子(そうでなければほとんど透過しないであろう)の経皮送達を大いに改善する13,14。よって、CPEと知られている麻酔薬とを組み合わせる製剤は、無傷のTM中へのおよび無傷のTMを越える薬物流動を促進し、AOMに対する有効な鎮痛を達成し得る。
【0015】
先の(Prior)系は、ヒドロゲル化合物、ペンタ-ブロックコポリマーであるポロキサマー407-ポリブチルホスホエステル(P407-PBP)を、3種のCPE13,14;ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、リモネン(LIM)、およびブピバカイン-塩酸塩(BUP)とともに利用する経鼓膜(transtympanic)薬物送達系を伴う。CPEのその組み合わせは、無傷のTMを越えてシプロフロキサシンを移動させて、チンチラ動物モデルのAOMを成功裏に処置した14。製剤は、チンチラのTM上の外耳道を直接介し、単回用量として投与された。
【0016】
本組成物中、P407-PBPは、その堅固な、逆の(reverse)熱ゲル化挙動のせいで使用される14。ヒドロゲルをベースとした製剤は、室温にて、使い方が簡単な(easy-to-apply)液体であって、温かいTMと接触させた際に急速かつ堅くゲル化し、抗生物質およびCPEを適所に(すなわち、TM上に)保持させる(holding)。よって、薬物の中耳への持続放出および拡散は、製剤の単回適用によって達成され得、中耳液中に高濃度の薬物をもたらす14。本明細書に開示の疾患および/または疾病(例として、AOMおよび/またはAOMに関連する疼痛)の処置のための組成物および製剤はまた、CPEとしてもまた使用される治療的麻酔剤ブピバカインおよびナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤テトロドトキシンをも包含する。
【0017】
かかる製剤の最適な臨床応用性(clinical applicability)は、これらに限定されないが、数多のパラメータに依存する。非限定例として、かかるパラメータは、これらに限定されないが、具体的な透過促進剤の濃度、治療剤の流動、治療への応用(therapeutic application)のための製剤の粘度(viscosity)、ゲル化に影響を及ぼすかもしくは障壁(例として、鼓膜)上の粘り強さ(persistence)に影響を及ぼすレオロジー特性、または生理学的な薬害反応(例として、製剤を臨床応用において危険もしくは不適当なものにさせる組織の薬害反応)を包含する。本明細書に開示されるのは、臨床応用のための製剤(例として、臨床応用可能であって、治療剤の適正な流動を包含する)である。
【0018】
一側面において、本明細書に提供されるのは、以下:
(a)治療剤または治療剤の組み合わせ;
(b)透過促進剤または透過促進剤の組み合わせ(ここで透過促進剤または透過促進剤の組み合わせは、治療剤または治療剤の組み合わせの、障壁を越える流動を増大させる);および
(c)マトリックス形成剤またはマトリックス形成剤の組み合わせ(ここでマトリックス形成剤またはマトリックス形成剤の組み合わせは、ポリマーを含む)
を含む組成物であって、ここで:
組成物は、相転移温度を上回る温度にてゲルを形成する;および
相転移温度は、約37℃未満である;
ここで組成物は、ドデシル硫酸ナトリウムである、約0.5~20.0%wt/volの間の透過促進剤を含む;
ここで組成物は、治療剤の1種であるブピバカインである、約0.5~7.5%wt/volの間の透過促進剤を含む;
ここで組成物は、リモネンである、約0.5~12.0%wt/volの間の透過促進剤を含む;および
ここで組成物は、ポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルである、約9.0~20.0%wt/volの間のポリマーを含む;および
ここで組成物は、任意にさらに、局所麻酔薬である、約0.01~0.50%wt/volの間の別の治療剤を含む。
【0019】
ある態様において、本明細書に提供されるのは、以下:
(a)治療剤または治療剤の組み合わせ;
(b)透過促進剤または透過促進剤の組み合わせ(ここで透過促進剤または透過促進剤の組み合わせは、治療剤または治療剤の組み合わせの、障壁を越える流動を増大させる);および
(c)マトリックス形成剤またはマトリックス形成剤の組み合わせ(ここでマトリックス形成剤またはマトリックス形成剤の組み合わせは、ポリマーを含む)
を含む組成物であって、ここで:
組成物は、相転移温度を上回る温度にてゲルを形成する;および
相転移温度は、約37℃未満である;
ここで組成物は、ドデシル硫酸ナトリウムである、約0.5~5.5%wt/volの間の透過促進剤を含む;
ここで組成物は、治療剤の1種であるブピバカインである、約0.5~7.5%wt/volの間の透過促進剤を含む;
ここで組成物は、リモネンである、約0.5~10.0%wt/volの間の透過促進剤を含む;および
ここで組成物は、ポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルである、約9.0~19.0%wt/volの間のポリマーを含む;および
ここで組成物は、ナトリウムチャネル遮断薬である、約0.01~0.50%wt/volの間の局所麻酔剤を含む。
【0020】
別の側面において、本明細書に提供されるのは、以下:
(a)治療剤または治療剤の組み合わせ;
(b)透過促進剤または透過促進剤の組み合わせ(ここで透過促進剤または透過促進剤の組み合わせは、治療剤または治療剤の組み合わせの、障壁を越える流動を増大させる);および
(c)マトリックス形成剤またはマトリックス形成剤の組み合わせ(ここでマトリックス形成剤またはマトリックス形成剤の組み合わせは、ポリマーを含む);
を含む組成物であって、ここで:
組成物は、相転移温度を上回る温度にてゲルを形成する;および
相転移温度は、約37℃未満である;
ここで組成物は、ドデシル硫酸ナトリウムである、約0.5~5.5%wt/volの間の透過促進剤を含む;
ここで組成物は、ブピバカインである、約0.5~1.5%wt/volの間の透過促進剤を含む;
ここで組成物は、リモネンである、約2.0~12.0%wt/volの間の透過促進剤を含む;および
ここで組成物は、ポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルである、約9.0~19.0%wt/volの間のポリマーを含む。
【0021】
ある態様において、条件(i)、(ii)、および(iii):
(i)組成物は、サイズが10ゲージから24ゲージまで、かつ1インチから5.25インチまでに及ぶ軟性カテーテルから押し出され得、かつ組成物は、液体のままである;
(ii)組成物の相転移温度は、約15℃を上回りかつ約37℃を下回る;および
(iii)37℃にて、組成物の貯蔵弾性率は、約300Paより大きく、かつ貯蔵弾性率は、組成物の損失弾性率より大きい、
の少なくとも1つが満たされる。
【0022】
ある態様において、条件(i)、(ii)、および(iii)の少なくとも1つが満たされる。ある態様において、組成物は、ドデシル硫酸ナトリウムである、約0.5~5.5%wt/volの間の透過促進剤を含む;組成物は、ブピバカインである、約0.5~1.5%wt/volの間の透過促進剤を含む;および組成物は、リモネンである、約2.0~12.0%wt/volの間の透過促進剤を含む;および組成物は、ポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルである、約9.0~19.0%wt/volの間のポリマーを含む。
【0023】
ある態様において、組成物は、局所麻酔薬である、約0.01~0.50%wt/volの間の別の治療剤を包含する、2種の治療剤を含む。ある態様において、組成物は、ナトリウムチャネル遮断薬である局所麻酔薬である、約0.01~0.50%wt/volの間の別の治療剤を含む。ある態様において、組成物は、ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤(例として、テトロドトキシン)を含む。ある態様において、ナトリウムチャネル遮断薬は、部位(site)1ナトリウムチャネル遮断薬である。ある態様において、部位1ナトリウムチャネル遮断薬は、テトロドトキシンである。
【0024】
ある態様において、組成物は、ドデシル硫酸ナトリウムである、約0.5~5.0%wt/volの間の透過促進剤を含む;組成物は、ブピバカインである、約0.5~7.5%wt/volの間の透過促進剤を含む;および組成物は、リモネンである、約0.5~3.5%wt/volの間の透過促進剤を含む;組成物は、ポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルである、約9.0~15.0%wt/volの間のポリマーを含む;および組成物は、任意に、ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤テトロドトキシンである、約0.01~0.50%wt/volの間の別の治療剤を含む。ある態様において、組成物:約1.0%wt/volのドデシル硫酸ナトリウム;約2.0%wt/volのブピバカイン;約2.0%wt/volのリモネン;約12.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステル;およびナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤テトロドトキシンである、約0.3%wt/volの別の治療剤。
【0025】
別の側面において、本明細書に提供されるのは、疾患(例として、感染性疾患、耳疾患、細菌感染症)および/または疾患に関連する疾病(例として、感染性疾患、耳疾患、細菌感染症に関連する疼痛)を処置するための方法であって、前記方法は、本明細書に記載のとおりの、治療剤または治療剤の組み合わせ(例として、抗微生物剤、抗生物質、または麻酔剤)、透過促進剤、およびマトリックス形成剤を含む組成物を、これを必要とする対象へ投与することを含む。
【0026】
別の側面において、本明細書に提供されるのは、耳疾患を処置するための方法であって、前記方法は、本明細書に記載のとおりの、治療剤または治療剤の組み合わせ(例として、抗微生物剤、抗生物質、または麻酔剤)、透過促進剤、およびマトリックス形成剤を含む組成物を、これを必要とする対象へ投与することを含む。ある態様において、組成物は、外耳道中へまたは鼓膜へ投与される。ある態様において、疾患は、中耳炎である。ある態様において、疾患は、耳感染症である。ある態様において、疾患は、細菌感染症(例として、H. influenzae、S. pneumoniae、またはM. catarhallisの感染症)である。ある態様において、疾病は、疼痛である。ある態様において、疾病は、疾患である中耳炎に関連する疼痛である。ある態様において、疾病は、耳感染症に関連する疼痛である。ある態様において、疾病は、細菌感染症(例として、H. influenzae、S. pneumoniae、またはM. catarhallisの感染症)に関連する疼痛である。
【0027】
別の側面において、本明細書に提供されるのは、バイオフィルムを根絶する(eradicating)方法であって、前記方法は、本明細書に記載の組成物を、これを必要とする対象へ投与すること、またはバイオフィルムを本明細書に記載の組成物と接触させることを含む。
【0028】
別の側面において、本明細書に提供されるのは、バイオフィルムの形成を阻害するための方法であって、前記方法は、本明細書に記載の組成物を、これを必要とする対象へ投与すること、または表面を本明細書に記載の組成物と接触させることを含む。
【0029】
別の側面において、本明細書に提供されるのは、疾患もしくは疾病(例として、感染性疾患、耳疾患、細菌感染症)および/または疾患に関連する疾病(例として、疼痛;感染性疾患、耳疾患、細菌感染症に関連する疼痛)の処置および/または予防を、これを必要とする対象においてするための、本明細書に記載の組成物の使用であって、前記使用は、治療的に有効な量の本明細書に記載の組成物を対象へ投与することを含む。
【0030】
別の側面において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の組成物と、任意に、薬学的に許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物である。ある態様において、医薬組成物は、疾患の処置を、これを必要とする対象においてすることにおける使用のための、治療的に有効な量の組成物を含む。追加の側面において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の組成物を送達するための方法であって、前記方法は、組成物を対象の外耳道中へ投与することを含み、ここで組成物は、鼓膜の表面と接触させる。組成物は、点眼器、シリンジ、ダブルバレルシリンジ(double barrel syringe)、またはカテーテル(例として、血管カテーテル)で投与されてもよい。
【0031】
追加の側面において、本明細書に提供されるのは、容器、本明細書に記載の組成物、および組成物を、これを必要とする対象へ投与するための指示を含むキットである。キットはさらに、点滴器、シリンジ、カテーテル、ダブルバレルシリンジ、またはこれらの組み合わせなどの、組成物の対象への投与のためのデバイスを含んでいてもよい。
【0032】
組成物、組成物の構成要素(例として、マトリックス形成剤、治療剤、および透過促進剤)、方法、キット、および本開示の使用もまた、以下:Khoo et al.,Biomaterials.(2013)34,1281-8;米国特許第8,822,410号;2009年5月19日出願の米国特許出願第12/993,358号; 2007年4月12日出願の米国特許出願第11/734,537号;2009年5月19日出願のWIPO特許出願第PCT/US2009/003084号、および2007年4月12日出願のWIPO特許出願第PCT/US2007/009121号(これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる)に記載のいずれの特色も組み込んでいてもよい。
【0033】
本開示のある態様の詳細は、下に記載のとおり、ある態様の詳細な記載で表される。本開示の他の特色、目的、および利点は、定義、例、図、およびクレームから明らかであろう。
【0034】
定義
化学の定義
特定の官能基および化学用語の定義はより詳細に下に記載される。化学元素はHandbook of Chemistry and Physics, 75th Ed.内表紙の元素周期表CAS版に従って同定され、特定の官能基はそこに記載されるとおり一般に定義される。加えて、有機化学の一般原則ならびに特定の官能部分および反応性は、Organic Chemistry, Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito, 1999;Smith and March, March's Advanced Organic Chemistry, 5th Edition, John Wiley & Sons, Inc., New York, 2001;Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers, Inc., New York, 1989;およびCarruthers, Some Modern Methods of Organic Synthesis, 3rd Edition, Cambridge University Press, Cambridge, 1987に記載されている。
【0035】
本明細書に記載の化合物は1以上の不斉中心を含み得、ひいては様々な立体異性体形態、例として鏡像異性体および/またはジアステレオマーで存在し得る。例えば、本明細書に記載の化合物は、個々の鏡像異性体、ジアステレオマー、もしくは幾何異性体の形態であり得るか、または立体異性体の混合物の形態であり得る(ラセミ混合物、および1以上の立体異性体が富化された混合物を包含する)。異性体は、当業者に知られている方法(キラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、およびキラル塩の形成および結晶化を含む)によって混合物から単離され得る;または好ましい異性体は、不斉合成によって調製され得る。例えば、Jacques et al.,Enantiomers, Racemates and Resolutions(Wiley Interscience,New York,1981);Wilen et al.,Tetrahedron 33:2725(1977);Eliel,E.L.Stereochemistry of Carbon Compounds(McGraw-Hill,NY,1962);およびWilen,S.H.Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions p.268(E.L.Eliel,Ed.,Univ.of Notre Dame Press,Notre Dame,IN 1972)を参照。加えて、本開示は、他の異性体が実質的にない個々の異性体としての、代替的に様々な異性体の混合物としての化合物をも網羅する。
【0036】
別様に述べられない限り、本明細書に描かれる構造はまた、同位体が濃縮された1以上の原子が存在する点のみで異なる化合物をも包含することが意図される。例えば、本構造を有する化合物は、水素の、重水素もしくはトリチウムによる置き換え、19Fの18Fでの置き換え、または12Cの13Cもしくは14Cでの置き換えを除き、本開示の範囲内にある。かかる化合物は、例えば、生物学的アッセイにおける分析ツールまたはプローブとして有用である。
【0037】
値の範囲が列挙されているとき、その範囲内の各値および部分範囲を網羅することを意図する。例えば「C1~6アルキル」は、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C1~6、C1~5、C1~4、C1~3、C1~2、C2~6、C2~5、C2~4、C2~3、C3~6、C3~5、C3~4、C4~6、C4~5、およびC5~6アルキルを網羅することを意図する。
【0038】
用語「脂肪族」は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、および炭素環基を指す。同じく、用語「ヘテロ脂肪族」は、ヘテロアルキル基、ヘテロアルケニル基、ヘテロアルキニル基、および複素環式基を指す。
【0039】
用語「アルキル」は、1個から10個までの炭素原子を有する、直鎖のまたは分岐の飽和炭化水素基のラジカルを指す(「C1~10アルキル」)。いくつかの態様において、アルキル基は、1~9個の炭素原子を有する(「C1~9アルキル」)。いくつかの態様において、アルキル基は、1~8個の炭素原子を有する(「C1~8アルキル」)。いくつかの態様において、アルキル基は、1~7個の炭素原子を有する(「C1~7アルキル」)。いくつかの態様において、アルキル基は、1~6個の炭素原子を有する(「C1~6アルキル」)。いくつかの態様において、アルキル基は、1~5個の炭素原子を有する(「C1~5アルキル」)。いくつかの態様において、アルキル基は、1~4個の炭素原子を有する(「C1~4アルキル」)。いくつかの態様において、アルキル基は、1~3個の炭素原子を有する(「C1~3アルキル」)。いくつかの態様において、アルキル基は、1~2個の炭素原子を有する(「C1~2アルキル」)。いくつかの態様において、アルキル基は、1個の炭素原子を有する(「C1アルキル」)。いくつかの態様において、アルキル基は2~6個の炭素原子を有する(「C2~6アルキル」)。C1~6アルキル基の例は、メチル(C1)、エチル(C2)、プロピル(C3)(例として、n-プロピル、イソプロピル)、ブチル(C4)(例として、n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、イソブチル)、ペンチル(C5)(例として、n-ペンチル、3-ペンタニル、アミル、ネオペンチル、3-メチル-2-ブタニル、三級アミル)、およびヘキシル(C6)(例として、n-ヘキシル)を含む。アルキル基の追加の例は、n-ヘプチル(C7)、n-オクチル(C8)等を含む。そのように特定されない限り、アルキル基の各場合は、独立して、非置換であるか(「非置換アルキル」)、または1以上の置換基(例として、Fなどのハロゲン)で置換されている(「置換アルキル」)。ある態様において、アルキル基は、非置換C1~10アルキルである(非置換C1~6アルキルなど、例として-CH3(Me)、非置換エチル(Et)、非置換プロピル(Pr、例として、非置換n-プロピル(n-Pr)、非置換イソプロピル(i-Pr))、非置換ブチル(Bu、例として、非置換n-ブチル(n-Bu)、非置換tert-ブチル(tert-Buまたはt-Bu)、非置換sec-ブチル(sec-Bu)、非置換イソブチル(i-Bu)など)である。ある態様において、アルキル基は、置換C1~10アルキル(置換C1~6アルキルなど、例として-CF3、Bn)である。
【0040】
「対イオン」または「アニオン性対イオン」は、電子的中性を維持するために、正に帯電した基と結び付いた、負に帯電した基である。アニオン性対イオンは、一価であってもよい(すなわち、1つの負の形式電荷を包含する)。アニオン性対イオンはまた、二価または三価などの多価であってもよい(すなわち、1つより多くの負の形式電荷を包含する)。例示の対イオンは、ハロゲン化物イオン(例として、F-、Cl-、Br-、I-)、NO3
-、ClO4
-、OH-、H2PO4
-、HCO3
-、HSO4
-、スルホナートイオン(例として、メタンスルホナート、トリフルオロメタンスルホナート、p-トルエンスルホナート、ベンゼンスルホナート、10-カンファースルホナート、ナフタレン-2-スルホナート、ナフタレン-1-スルホン酸-5-スルホナート、エタン-1-スルホン酸-2-スルホナート等)、カルボキシラートイオン(例として、アセタート、プロパノアート、ベンゾアート、グリセラート、ラクタート、タートラート、グリコラート、グルコナート等)、BF4
-、PF4
-、PF6
-、AsF6
-、SbF6
-、B[3,5-(CF3)2C6H3]4]-、B(C6F5)4
-、BPh4
-、Al(OC(CF3)3)4
-、およびカルボランアニオン(例として、CB11H12
-、または(HCB11Me5Br6)-)包含する。例示の対イオンは、多価であってもよく、CO3
2-、HPO4
2-、PO4
3-、B4O7
2-、SO4
2-、S2O3
2-、カルボキシラートアニオン(例として、タートラート、シトラート、フマラート、マレアート、マラート、マロナート、グルコナート、スクシナート、グルタラート、アジパート、ピメラート、スベラート、アゼラート、セバカート、サリチラート、フタラート、アスパルタート、グルタマート等)、およびカルボランを包含する。
【0041】
本明細書に使用されるとき、句「少なくとも1つの場合」の使用は、1、2、3、4、またはこれより多い場合を指すが、例として、例えば、1から4までの、1から3までの、1から2までの、2から4までの、2から3までの、または3から4までの場合の範囲(両端含む)をもまた網羅する。
【0042】
「非水素基」は、水素ではない具体的な可変の基(variable)について定義されたいずれの基をも指す。
【0043】
用語「多糖類」は、炭水化物もしくは単糖類ユニット、またはそれらの誘導体(例として、架橋性官能基を含むよう修飾された単糖類)の長鎖から構成されるポリマーを指す。例示の多糖類は、これらに限定されないが、グリカン、グルカン、デンプン、グリコーゲン、アラビノキシラン、セルロース、ヘミセルロース、キチン、ペクチン、デキストラン、プルラン(pullulans)、クリソラミナリン、カードラン、ラミナリン、レンチナン、リケニン、プルーラン(pleurans)、ザイモサン、グリコサミノグリカン、デキストラン、ヒアルロン酸、キトサン、およびコンドロイチンを包含する。多糖類の単糖類モノマーは、典型的には、グリコシド連結によって接続されている。多糖類は、加水分解されることで、オリゴ糖類、二糖類、および/または単糖類を形成してもよい。用語「炭水化物」または「糖類」は、多価アルコールのアルデヒド誘導体またはケトン誘導体を指す。単糖類は、より小さい炭水化物へ加水分解され得ない点で、最も単純な炭水化物である。ほとんどの単糖類は、一般式CyH2yOy(例として、C6H12O6(グルコースなどのヘキソース))によって表され得るが、ここでyは、3に等しいかまたは3より大きい整数である。上に記載の一般式によって表されないある多価アルコールはまた、単糖類と見なされてもよい。例えば、デオキシリボースは、式C5H10O4で表され、かつ単糖類である。単糖類は大抵、5個または6個の炭素原子からなり、夫々ペントースおよびヘキソースと称される。単糖類がアルデヒドを含有する場合は、アルドースと称される;ケトンを含有する場合は、ケトースと称される。単糖類はまた、アルドース体またはケトース体においても、3個、4個、または7個の炭素原子からなり、夫々トリオース、テトロース、およびヘプトースと称される。グリセルアルデヒドおよびジヒドロキシアセトンは夫々、アルドトリオース糖およびケトトリオース糖と見なされている。アルドテトロース糖の例は、エリトロースおよびトレオースを包含する;ケトテトロース糖は、エリトルロースを包含する。アルドペントース糖は、リボース、アラビノース、キシロース、およびリキソースを包含する;ケトペントース糖は、リブロース、アラブロース(arabulose)、キシルロース、およびリキスロースを包含する。アルドヘキソース糖の例は、グルコース(例えば、デキストロース)、マンノース、ガラクトース、アロース、アルトロース、タロース、グロース、およびイドースを包含する;ケトヘキソース糖は、フルクトース、プシコース、ソルボース、およびタガトースを包含する。ケトヘプトース糖は、セドヘプツロースを包含する。ヒドロキシル基(-OH)を持つ単糖類の各炭素原子は、最初のおよび最後の炭素を除き、不斉であって、その炭素原子を、2種の実行可能な立体配置(RまたはS)をもつ立体中心とさせる。この不斉のせいで、数多の異性体がどのような単糖類の式であっても存在し得る。アルドヘキソースD-グルコースは、例えば式C6H12O6を有し、その6個の炭素原子のうち2個を除くすべてが不斉中心になり得(stereogenic)、D-グルコースを、16(すなわち、24)種の実行可能な立体異性体のうちの1種にさせる。DまたはLの割り当ては、カルボニル基から最も遠い不斉炭素の配向に従ってなされる:標準的なフィッシャー投影法において、ヒドロキシル基が右手にある場合、分子はD糖であって、そうでなければL糖である。直鎖の単糖類のアルデヒド基またはケトン基は、異なる炭素原子上のヒドロキシル基と可逆的に反応することで、ヘミアセタールまたはヘミケタールを形成し、2個の炭素原子間に酸素橋をもつ複素環式の環を形成するであろう。5個および6個の原子をもつ環は夫々、フラノース体およびピラノース体と呼ばれ、直鎖形態の平衡状態で存在する。直鎖形態から環状形態への変換の最中、アノマー炭素と呼ばれる、カルボニル酸素を含有する炭素原子は、2種の実行可能な立体配置の立体中心(stereogenic center)になる:酸素原子は、環の平面の上側または下側のいずれかの位置に付いてもよい。その結果得られる実行可能な対の立体異性体は、アノマーと呼ばれる。αアノマーにおいて、アノマー炭素上の-OH置換基は、-CH2OH側枝から環の反対側(trans)にある。-CH2OH置換基およびアノマーヒドロキシルが環の平面の同じ側(cis)にある代替の形態は、βアノマーと呼ばれる。用語炭水化物はまた、本明細書に記載の炭水化物の、他の天然のまたは合成の立体異性体をも包含する。
【0044】
これらのおよび他の例示の置換基は、詳細な記載、例、およびクレームにより詳細に記載される。本開示は、形はどうあれ、上の例示の置換基の列挙によって限定されることは意図していない。
【0045】
その他の定義
動物:
動物という用語は、本明細書に使用されるとき、例えば、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、および魚類の動物を包含する、ヒトならびに非ヒト動物を指す。好ましくは、非ヒト動物は、哺乳動物(例として、齧歯類の動物、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、霊長目の動物、またはブタ)である。非ヒト動物は、トランスジェニック動物であってもよい。
【0046】
およそまたは約:
本明細書に使用されるとき、数字に関する用語「およそ」または「約」は一般に、別様に述べられない限りまたは別様に文脈から明らかでない限り(かかる数字が、実行可能な値の0%より小さいかまたは100%を超えるであろう場合を除く)、数字(より大きいかまたはより小さい)のいずれの方向にしても、5%、10%、15%、または20%の範囲内に収まる数字を包含するよう解釈される。
【0047】
生体適合性(Biocompatible):
本明細書に使用されるとき、用語「生体適合性」は、細胞に対して毒性がない物質を指す。いくつかの態様において、物質は、細胞へのin vivoでのその添加によって炎症および/または他の弊害がin vivoで誘導されない場合、「生体適合性」があると見なされる。いくつかの態様において、物質は、細胞へのin vitroまたはin vivoでのその添加によって、約50%、約45%、約40%、約35%、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%以下、または約5%未満の細胞死がもたらされる場合、「生体適合性」があると見なされる。
【0048】
生分解性(Biodegradable):
本明細書に使用されるとき、用語「生分解性」は、生理学的な条件下で分解される物質を指す。いくつかの態様において、生分解性の物質は、細胞機構によって壊される物質である。いくつかの態様において、生分解性の物質は、化学的な処理によって壊される物質である。
【0049】
光学的に透明な(Opticall transparent):
本明細書に使用されるとき、用語「光学的に透明な」は、物質を通って貫通する光が、ほとんどもしくはまったく吸収または反射されない物質を指す。いくつかの態様において、光学的に透明は、物質を通って貫通する光がまったく吸収または反射されない物質を指す。いくつかの態様において、光学的に透明は、物質を通って貫通する光がほとんど吸収または反射されない物質を指す。いくつかの態様において、光学的に透明な物質は、実質的に透き通っている(clear)。いくつかの態様において、光学的に透明な物質は、透き通っている。
【0050】
有効量:
一般に、活性剤の「有効量」は、所望の生物学的応答を惹起するのに充分な量を指す。当業者には当然のことながら、本開示の化合物の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、化合物の薬物動態、処置されている疾患、投与モード、および患者などの因子に応じて変動されてもよい。感染症を処置するのに使用される化合物の有効量は、感染症の原因となる生物(単数または複数)を死滅させるかまたはその成長を予防するのに必要となる量である。
【0051】
In vitro:
本明細書に使用されるとき、用語「in vitro」は、生物(例として、動物、植物、および/または微生物)内よりむしろ、人工の環境中、例として、試験管または反応槽中、細胞培養物中、等々で生じる事象を指す。
【0052】
In vivo:
本明細書に使用されるとき、用語「in vivo」は、生物(例として、動物、植物、および/または微生物)内で生じる事象を指す。
【0053】
…を患う(Suffering from):
疾患、障害、および/または疾病「を患う」個体は、疾患、障害、および/または疾病の1以上の症状があると診断されているかあるいはこれを現わしている。
【0054】
処置すること(Treating):
本明細書に使用されるとき、用語「処置すること」は、部分的または完全に、具体的な疾患、障害、および/または疾病の1以上の症状または特色の発病を緩和、向上、軽減、遅延させること、その進行を阻害すること、その重症度を低減させること、および/またはその発生率を低減させることを指す。例えば、微生物の感染症を「処置すること」は、微生物の生存、成長、および/または蔓延(spread)を阻害することを指すこともある。処置は、疾患、障害、および/または疾病に関連する病的状態を発症するリスクを減少させる目的で、疾患、障害、および/または疾病の兆候を呈さない対象へ、および/または、疾患、障害、および/または疾病の早期兆候のみを呈する対象へ施されてもよい。いくつかの態様において、処置は、独創的な(inventive)ワクチンナノ担体の対象への送達を含む。
【0055】
治療剤:
また「薬物」とも称され、対象に対して有害である疾患、障害、もしくは臨床上認識されている他の疾病を処置するために、または予防的な目的で、対象へ投与される剤であって、身体に対して疾患、障害、もしくは疾病の処置または予防に臨床的に有意な効果を有する剤を指すために本明細書に使用される。治療剤は、限定せずに、米国薬局方(USP),Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics,10th Ed.,McGraw Hill,2001;Katzung,B.(ed.)Basic and Clinical Pharmacology,McGraw-Hill/Appleton & Lange;8th edition(Sep.21,2000);Physician's Desk Reference(Thomson Publishing),および/またはThe Merck Manual of Diagnosis and Therapy,17th ed.(1999)または18th Ed.(2006),その出版に続きMark H.Beers and Robert Berkow (Eds.),Merck Publishing Groupまたは動物のケースにおいてThe Merck Veterinary Manual,9th ed.,Kahn,C.A.(Ed.),Merck Publishing Group,2005に挙げられた剤を包含する。
【0056】
診断用薬:
本明細書に使用されるとき、用語「診断用薬」は、疾患、障害、または疾病の診断を補助するために対象へ投与される剤を指す。いくつかの態様において、診断用薬は、病的なプロセスを定義するため、および/またはその局在化を特徴付けるために使用される。診断用薬は、X線造影剤、放射性同位体、および色素(dyes)を包含する。
【0057】
界面活性剤:
本明細書に使用されるとき、用語「界面活性剤」は、水と有機溶媒との間の界面、水/空気界面、または有機溶媒/空気界面などの、2種の不混和相間の界面へ優先的に吸着するいずれの剤をも指す。界面活性剤は大抵、親水性の部分および疎水性の部分を保有する(possess)。界面活性剤はまた、治療薬または診断用薬の、生物学的な膜、例として鼓膜を越える流動をも促進してよい。
【0058】
テルペン:
本明細書に使用されるとき、用語「テルペン」は、例として生合成で導かれるか、またはイソプレンユニット(5炭素ユニット)(単数または複数)に由来すると考えられるいずれの剤をも指す。例えば、テルペンのイソプレンユニットは、線状の鎖を一緒に形成するために連結されていてもよく、または環を形成するために配列されていてもよい。典型的には、本明細書に開示のテルペンは、治療薬または診断用薬の、生物学的な膜、例として鼓膜を越える流動を促進する。テルペンは、天然由来であっても、合成して調製されてもよい。
【0059】
用語「組成物」および「製剤」は、互換的に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図面の簡単な記載
添付の図面は、縮尺どおりに描かれることを意図していない。図面において、様々な図に説明される同一のまたは大体同一の各構成要素は、同種の数字によって表される。明確にするため、図面ごとにすべての構成要素が標識されているとは限らない。特許または願書の出願は、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含有する。カラーの図面(単数または複数)付きのこの特許または特許出願の刊行物のコピーは、請求および必要な手数料の支払に応じて庁によって提供されるであろう。図面において:
【0061】
【
図1】
図1は、治療剤、透過促進剤、およびマトリックス形成剤を含む、本明細書に記載の例示組成物の例示の最適化(例として、ピーク効果、すなわち、鼓膜のような障壁を越える最大限の薬物流動を増大することにおける相乗作用のための)を示す。
【0062】
【
図2】
図2は、実行可能な例示の組成物のレオロジーデータの概要を示す。組成物の各々について、ゲル化のための温度(℃)、平均の貯蔵弾性率(G')、および貯蔵弾性率の標準偏差が提供される。
【0063】
【
図3】
図3は、12%ポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステル(「PBP」)、1%ドデシル硫酸ナトリウム(「SDS」)、1%ブピバカイン(「BUP」)、および10%リモネン(「LIM」)をもつ組成物のレオロジーデータを示す。組成物の温度に対してプロットされた平均の貯蔵弾性率(「貯蔵(storage)」)および平均の損失弾性率(「喪失(loss)」)が提供される。エラーバーは標準偏差を表す。
【0064】
【
図4】
図4は、12%PBP-5%SDS-1%BUP-4%LIMをもつ組成物のレオロジーを示す。組成物の温度に対してプロットされた平均の貯蔵弾性率(「貯蔵(平均)(store ave.)」)および平均の損失弾性率(「喪失(平均)(loss ave.)」)が提供される。エラーバーは標準偏差を表す。
【0065】
【
図5】
図5は、15%PBP-5%SDS-1%BUP-4%LIMをもつ組成物のレオロジー データを示す。組成物の温度に対してプロットされた平均の貯蔵弾性率(「貯蔵(平均)」)および平均の損失弾性率(「喪失(平均)」)が提供される。エラーバーは標準偏差を表す。
【0066】
【
図6】
図6は、10%PBP-5%SDS-0.5%BUP-4%LIMをもつ組成物のレオロジーデータを示す。組成物の温度に対してプロットされた平均の貯蔵弾性率(「貯蔵(平均)」)および平均の損失弾性率(「喪失(平均)」)が提供される。エラーバーは標準偏差を表す。
【0067】
【
図7】
図7Aおよび7Bは、2CPE-[P407-PBP]を含有する製剤から鼓膜を越えたブピバカイン塩酸塩(BUP)の累積透過を示す。(
図7A)種々のBUP濃度でBUP-2CPE-[P407-PBP]によって達成された、48時間にわたるBUPの累積透過の時間経過。BUPは2CPE-[P407-PBP]において4%を超えると可溶性ではなかった。したがって、製剤、7.5%BUP
susp-2CPE-[P407-PBP]および15%BUP
susp-2CPE-[P407-PBP]は懸濁液であったが、これをプロット中†で表示する。矢印は、
図7B中にグラフ化されたデータを表示する。(
図7B)
図7A中に矢印によって示されるデータに由来する、6時間および48時間での、TMを越えた累積透過のブピバカイン濃度の効果。データは中央値±四分位範囲(n=4)である。
【0068】
【
図8】
図8Aおよび8Bは、2CPE-[P407-PBP]を含有する製剤から鼓膜を越えたテトロドトキシン(TTX)の累積透過を示す。
図8Aは、0.02、0.03、0.16、および0.32%のTTX(これらは、0.5、1、5、および10mMのTTXに対応する)を含有する製剤化からの、48時間にわたるTTXの経鼓膜透過を示す。
図8Bは、TTX透過の、ヒドロゲル製剤の薬物濃度への依存性を示す。データは中央値±四分位範囲(n=4)である。
【0069】
【
図9】
図9Aおよび9Bは、両化合物と[P407-PBP]とを含有する製剤から鼓膜を超えたBUP(
図9A)およびTTX(
図9B)の累積ex vivo透過を示す。データは中央値±四分位範囲(n=4)である。
【0070】
【
図10】
図10は、鼓膜を越えたブピバカイン遊離塩基およびBUPの累積透過を示す。BUPは2CPE-[P407-PBP]において4%を超えたら可溶性ではない。したがって、15%BUP
susp-2CPE-[P407-PBP]は懸濁液であったが、プロット中はこれを†によって表示する。データは、中央値±四分位範囲(n=4)である。
【0071】
【
図11】
図11は、種々の疾病の下で処置されたTMの代表的なヘマトキシリンおよびエオジン(H&E)-染色切片を示す。スケールバーは12μmを表す。
【0072】
【
図12】
図12は、健常な外耳道の、10%[ブピバカイン遊離塩基]-LIMへ曝露された後24時間処理された外耳道の、および4%BUP-2CPE-[P407-PBP]または15%BUP-2CPE-[P407-PBP]で7日間処置された外耳道の、代表的なH&E-染色切片を示す。スケールバーは50μmを表す。挿入図:拡大画像は炎症細胞を強調する;黒矢印は好中球を指し示す;黒輪郭付き白矢印はリンパ球を指し示す;挿入図内スケールバーは10μmを表す。
【0073】
【
図13】
図13は、無限シンク(infinite sink)条件下でのヒドロゲル製剤からのCipの累積in vitro 放出を示す。8ミリグラムのCipがゼロ時間にて各ゲルおよび溶液に含有されていた。データは±SD(n=4)を意味する。
【0074】
【
図14】
図14Aおよび14Bは、アイソボログラムの構築を示す。(
図14A)濃度(Conc.)-応答曲線が、アイソボル(isoboles)、すなわち同じ効果(R)を達成する濃度を同定するために使用される。この研究(work)において、主なRは、V
CIP48である。(
図14B)アイソボログラムの分析。解釈については下の考察を参照。C
xおよびC
yは、薬物XおよびYに等価な用量である。対角線は相加性の線であって、またアイソボルとしても知られている。
【0075】
【
図15A-B】
図15A~15Fは、CPEの対の性能を示す。(
図15A~15C)変動する濃度のCPEを単独で(黒曲線)または他のCPEと組み合わせて(グラフ上の灰色の点)含有するCPPBからTMを越えた48時間にわたる累積Cip透過(V
CIP48)。灰色の点は、すべてのパネルにおいて同じデータを表す。データは±SD(n=4)を意味する。*5%BUPおよび30%SDSは懸濁液であって、均一な溶液ではなかった。†CPE組み合わせと、パネルの対象である単一のCPEとを比較してp<0.05;†† p<0.1。(
図15D~15F)(
図15D)V
CIP48=0.39mgを達成したSDSおよび/またはLIM、(
図15E)V
CIP48=0.24mgを達成したSDSおよび/またはBUP、ならびに(
図15F)V
CIP48=0.22mgを達成したBUPおよび/またはLIM、の組み合わせについてのアイソボログラム。データは
図15A~15Cに由来する。
【
図15C-D】(
図15A~15C)変動する濃度のCPEを単独で(黒曲線)または他のCPEと組み合わせて(グラフ上の灰色の点)含有するCPPBからTMを越えた48時間にわたる累積Cip透過(V
CIP48)。灰色の点は、すべてのパネルにおいて同じデータを表す。データは±SD(n=4)を意味する。*5%BUPおよび30%SDSは懸濁液であって、均一な溶液ではなかった。†CPE組み合わせと、パネルの対象である単一のCPEとを比較してp<0.05;†† p<0.1。(
図15D~15F)(
図15D)V
CIP48=0.39mgを達成したSDSおよび/またはLIM、(
図15E)V
CIP48=0.24mgを達成したSDSおよび/またはBUP、ならびに(
図15F)V
CIP48=0.22mgを達成したBUPおよび/またはLIM、の組み合わせについてのアイソボログラム。データは
図15A~15Cに由来する。
【
図15E-F】(
図15D~15F)(
図15D)V
CIP48=0.39mgを達成したSDSおよび/またはLIM、(
図15E)V
CIP48=0.24mgを達成したSDSおよび/またはBUP、ならびに(
図15F)V
CIP48=0.22mgを達成したBUPおよび/またはLIM、の組み合わせについてのアイソボログラム。データは
図15A~15Cに由来する。
【0076】
【
図16A-B】
図16A~16Cは、変動する濃度のCPEを単独で(黒曲線)または他のCPEと組み合わせて(グラフ上の灰色の点)含有するCPPBからTMを越えた6時間にわたる累積Cip透過を示す(V
CIP6)。灰色の点は、すべてのパネルにおいて同じデータを表す。データは±SD(n=4)を意味する。*5%BUPおよび30%SDSは懸濁液であって、均一な溶液ではなかった。†CPE組み合わせと、パネルの対象である単一のCPEとを比較してp<0.05;†† p<0.1。
【
図16C】
図16A~16Cは、変動する濃度のCPEを単独で(黒曲線)または他のCPEと組み合わせて(グラフ上の灰色の点)含有するCPPBからTMを越えた6時間にわたる累積Cip透過を示す(V
CIP6)。灰色の点は、すべてのパネルにおいて同じデータを表す。データは±SD(n=4)を意味する。*5%BUPおよび30%SDSは懸濁液であって、均一な溶液ではなかった。†CPE組み合わせと、パネルの対象である単一のCPEとを比較してp<0.05;†† p<0.1。
【0077】
【
図17A】
図17A~17Cは、(
図17A)SDS、(
図17B)LIM、および(
図17C)BUPを含有するCPPBからTMを越えた48時間後のシプロフロキサシン透過(すなわちV
CIP48)についての濃度-応答曲線を示す。データは、方程式(1)を使用して3パラメータ双曲線関数モデル(黒線)へ適合させた。適合パラメータは表1に挙げる。データ点(灰色ドット)は
図14が起源である。なお、
図17Cのy軸の目盛りは
図17Aおよび
図17Bとは異なる。
【
図17B-C】
図17A~17Cは、(
図17A)SDS、(
図17B)LIM、および(
図17C)BUPを含有するCPPBからTMを越えた48時間後のシプロフロキサシン透過(すなわちV
CIP48)についての濃度-応答曲線を示す。データは、方程式(1)を使用して3パラメータ双曲線関数モデル(黒線)へ適合させた。適合パラメータは表1に挙げる。データ点(灰色ドット)は
図14が起源である。なお、
図17Cのy軸の目盛りは
図17Aおよび
図17Bとは異なる。
【0078】
【
図18】
図18Aは、V
CIP48=0.4mgを達成したSDSおよび/またはLIMおよび/またはBUPの組み合わせについてのアイソボログラムプロットを示す。表面は、
図14Aから14Cまでの3つのCPEについてのアイソボルに由来する。灰色ドットは、3つすべてのCPEの組み合わせから測定されたV
CIP48である。
図18Bは、CPE組み合わせの、最大(peak)V
CIP48に対する効果を示す。CPEの最大流動はLIM、SDS、およびBUPが夫々4%、20%、および1%にて発生した;組み合わせカラムは4%LIM、1%BUP、および20%SDSを包含していた。データは±SD(n=4)意味する。
【0079】
【
図19】
図19は、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、リモネン(LIM)、ブピバカイン塩酸塩(BUP)、およびポロキサマー407-ポリブチルホスホエステル(P407-PBP)の分子構造を示す。
【0080】
【
図20A】
図20Aおよび20Bは、P407-PBPの合成を示す。
図20Aは、ペンタブロックコポリマーのNMRを示す。以下に列挙するポリマーにおける斜字体の水素に対応するピーク(peak)の化学シフト(δ、ppmで)は、下に提供される。t/m/ブロードは、ピークの形状(すなわち、三重項(triplet)、多重(multiple)、ブロード)を表示する。CDCl
3は溶媒であった。
【化1】
【
図20B】
図20Bは、P407およびP407-PBPのFTIRスペクトルを示す。
図20Bは、トリ-およびペンタ-ブロックコポリマーのFTIRを示す。ピークは以下のとおりに割り当てられる:2650~3020cm
-1:CH
2基およびCH
3基からのC-H伸縮;1466cm
-1:CH
2基およびCH
3基からのC-H屈曲;1328~1400cm
-1:イソプロピル基からのC-H伸縮および屈曲;1279cm
-1:C-OおよびC-C伸縮(結晶相);1241cm
-1:非対称C-O-C伸縮;1144cm
-1:対称C-O-C伸縮;1103cm
-1:C-O伸縮;1061cm
-1:CO-C軸変形;1030cm
-1:P-O伸縮;964cm
-1:=C-H屈曲;845cm
-1:C-CH変形。
【発明を実施するための形態】
【0081】
本開示のある態様の詳細な記載
本明細書に提供されるのは、治療剤を対象へ障壁を通して投与するための組成物および方法である。いくつかの態様において、組成物は、治療剤を対象の耳へ投与するためであって、および障壁は、鼓膜である。組成物および方法は、対象の中耳および/または内耳への剤の効率的な送達を提供する。一側面において、組成物は、透過促進剤の組み合わせ、治療剤または治療剤の組み合わせ、およびマトリックス形成剤を含む。透過促進剤は、治療剤または治療剤の組み合わせの、障壁(例として、鼓膜)を越える流動を、透過促進剤を欠く組成物についての流動と比較して、増大させる。様々な側面において、組成物は、治療剤または治療剤の組み合わせの、鼓膜を越える局在化持続送達のための単回適用組成物である。様々な側面において、組成物は、治療剤の、鼓膜を越える局在化持続送達のための複数回適用組成物である。本明細書に記載の組成物および方法は、中耳への抗生物質の持続放出および送達を提供することによって、中耳炎および/または中耳炎に関連する疼痛を処置するのに具体的に有用である。
【0082】
一側面において、本明細書に提供されるのは、以下:
(a)治療剤または治療剤の組み合わせ;
(b)透過促進剤または透過促進剤の組み合わせ(ここで透過促進剤または透過促進剤の組み合わせは、治療剤または治療剤の組み合わせの、障壁を越える流動を増大させる);および
(c)マトリックス形成剤またはマトリックス形成剤の組み合わせ(ここでマトリックス形成剤またはマトリックス形成剤の組み合わせは、ポリマーを含む)
を含む組成物であって、ここで:
組成物は、相転移温度を上回る温度にてゲルを形成する;および
相転移温度は、約37℃未満である;
ここで組成物は、ドデシル硫酸ナトリウムである、約0.5~20.0%wt/volの間の透過促進剤を含む;
ここで組成物は、治療剤の1種であるブピバカインである、約0.5~7.5%wt/volの間の透過促進剤を含む;
ここで組成物は、リモネンである、約0.5~12.0%wt/volの間の透過促進剤を含む;および
ここで組成物は、ポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルである、約9.0~20.0%wt/volの間のポリマーを含む;および
ここで組成物は、任意にさらに、局所麻酔薬である、約0.01~0.50%wt/volの間の別の治療剤を含む。
【0083】
ある態様において、本明細書に提供されるのは、以下:
(a)治療剤または治療剤の組み合わせ;
(b)透過促進剤または透過促進剤の組み合わせ(ここで透過促進剤または透過促進剤の組み合わせは、治療剤または治療剤の組み合わせの、障壁を越える流動を増大させる);および
(c)マトリックス形成剤またはマトリックス形成剤の組み合わせ(ここでマトリックス形成剤またはマトリックス形成剤の組み合わせは、ポリマーを含む)
を含む組成物であって、ここで:
組成物は、相転移温度を上回る温度にてゲルを形成する;および
相転移温度は、約37℃未満である;
ここで組成物は、ドデシル硫酸ナトリウムである、約0.5~5.5%wt/volの間の透過促進剤を含む;
ここで組成物は、治療剤の1種であるブピバカインである、約0.5~7.5%wt/volの間の透過促進剤を含む;
ここで組成物は、リモネンである、約0.5~10.0%wt/volの間の透過促進剤を含む;および
ここで組成物は、ポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルである、約9.0~19.0%wt/volの間のポリマーを含む;および
ここで組成物は、ナトリウムチャネル遮断薬である、約0.01~0.50%wt/volの間の局所麻酔剤を含む。
【0084】
一側面において、本明細書に提供されるのは、以下:
(a)治療剤または治療剤の組み合わせ;
(b)透過促進剤または透過促進剤の組み合わせ(ここで透過促進剤または透過促進剤の組み合わせは、治療剤または治療剤の組み合わせの、障壁を越える流動を増大させる);および
(c)マトリックス形成剤またはマトリックス形成剤の組み合わせ(ここでマトリックス形成剤またはマトリックス形成剤の組み合わせは、ポリマーを含む)
を含む組成物であって、ここで:
組成物は、相転移温度を上回る温度にてゲルを形成する;および
相転移温度は、約37℃未満である;
ここで組成物は、ドデシル硫酸ナトリウムである、約0.5~5.5%wt/volの間の透過促進剤を含む;
ここで組成物は、ブピバカインである、約0.5~1.5%wt/volの間の透過促進剤を含む;
ここで組成物は、リモネンである、約2.0~12.0%wt/volの間の透過促進剤を含む;および
ここで組成物は、ポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルである、約9.0~19.0%wt/volの間のポリマーを含む。
【0085】
ある態様において、条件(i)、(ii)、および(iii):
(i)組成物は、サイズが16ゲージから24ゲージまで、かつ1インチから5.25インチまでに及ぶ軟性カテーテルから押し出され得、かつ組成物は、液体のままである;
(ii)組成物の相転移温度は、約15℃を上回りかつ約37℃を下回る;および
(iii)37℃にて、組成物の貯蔵弾性率は、約300Paより大きく、かつ貯蔵弾性率は、組成物の損失弾性率より大きい、
の少なくとも1つが満たされる。
【0086】
ある態様において、組成物は、サイズが10ゲージから24ゲージまで、かつ1インチから5.25インチまでに及ぶ軟性カテーテルから押し出され得、かつ組成物は、液体のままである、という条件(i)が満たされる。ある態様において、組成物は、サイズが16ゲージから24ゲージまで、かつ1.16インチから5.25インチまでに及ぶ軟性カテーテルから押し出され得、かつ組成物は、液体のままである、という条件(i)が満たされる。ある態様において、組成物は、サイズが16ゲージから24ゲージまで、かつ1インチから5.25インチまでに及ぶ軟性カテーテルから押し出され得、かつ組成物は、液体のままである、という条件(i)が満たされる。ある態様において、組成物は、サイズが16ゲージから18ゲージまで、かつ1.16インチから1.88インチまでに及ぶ軟性カテーテルから押し出され得、かつ組成物は、液体のままである、という条件(i)が満たされる。ある態様において、軟性カテーテルは、18ゲージ、1.88インチの軟性カテーテルである、という条件(i)が満たされる。ある態様において、軟性カテーテルは、10ゲージ、1インチの軟性カテーテルである、という条件(i)が満たされる。ある態様において、軟性カテーテルは、16ゲージ、1.16インチの軟性カテーテルである、という条件(i)が満たされる。ある態様において、軟性カテーテルは、20ゲージ、3インチの軟性カテーテルである、という条件(i)が満たされる。ある態様において、軟性カテーテルは、22ゲージ、3.25インチの軟性カテーテルである、という条件(i)が満たされる。ある態様において、軟性カテーテルは、24ゲージ、5.25インチの軟性カテーテルである、という条件(i)が満たされる。
【0087】
ある態様において、組成物の相転移温度は、約15℃を上回りかつ約37℃を下回る、という条件(ii)が満たされる。ある態様において、組成物の相転移温度は、約18℃を上回りかつ約37℃を下回る、という条件(ii)が満たされる。ある態様において、組成物の相転移温度は、約20℃を上回りかつ約37℃を下回る、という条件(ii)が満たされる。
【0088】
ある態様において、37℃にて、組成物の貯蔵弾性率は、約300Paより大きく、かつ貯蔵弾性率は、組成物の損失弾性率より大きい、という条件(iii)が満たされる。ある態様において、37℃にて、組成物の貯蔵弾性率は、約305Paより大きく、かつ貯蔵弾性率は、組成物の損失弾性率より大きい、という条件(iii)が満たされる。ある態様において、37℃にて、組成物の貯蔵弾性率は、約310Paより大きく、かつ貯蔵弾性率は、組成物の損失弾性率より大きい、という条件(iii)が満たされる。ある態様において、37℃にて、組成物の貯蔵弾性率は、約312Paより大きく、かつ貯蔵弾性率は、組成物の損失弾性率より大きい、という条件(iii)が満たされる。
【0089】
ある態様において、両条件(i)および(ii)が、満たされる。ある態様において、両条件(ii)および(iii)が、満たされる。ある態様において、両条件(i)および(iii)が、満たされる。ある態様において、条件(i)、(ii)、および(iii)の各々が、満たされる。
【0090】
ある態様において、治療剤は、単一の治療剤である。ある態様において、治療剤は、2種以上の治療剤(例として、2種、3種、4種)の組み合わせである。ある態様において、透過促進剤は、単一の治療剤である。ある態様において、治療剤は、2種以上の治療剤(例として、2、3、4)の組み合わせである。ある態様において、マトリックス形成剤は、単一のマトリックス形成剤である。ある態様において、マトリックス形成剤は、2種以上のマトリックス形成剤(例として、2種、3種、4種)の組み合わせである。ある態様において、治療剤または透過促進剤は、治療剤と透過促進剤との両剤として作用してもよい。ある態様において、治療剤は、治療剤と透過促進剤との両剤として作用してもよい。ある態様において、透過促進剤は、治療剤と透過促進剤との両剤として作用してもよい。ある態様において、局所麻酔薬は、治療剤と透過促進剤との両剤として作用してもよい。ある態様において、アミノアミドまたはアミノエステルの局所麻酔薬は、治療剤と透過促進剤との両剤として作用してもよい。ある態様において、アミノアミドまたはアミノエステルの局所麻酔薬は、治療剤と透過促進剤との両剤として作用してもよい。ある態様において、アミノエステル局所麻酔薬は、治療剤と透過促進剤との両剤として作用してもよい。ある態様において、ブピバカインは、治療剤と透過促進剤との両剤として作用してもよい。ある態様において、テトラカインは、治療剤と透過促進剤との両剤として作用してもよい。
【0091】
ある態様において、透過促進剤または透過促進剤の組み合わせは、参照組成物(例として、透過促進剤のない組成物)と比較して、治療剤の、障壁を越える流動を増大させるのに有効な量で存在する。ある態様において、透過促進剤または透過促進剤の組み合わせは、参照組成物(例として、透過促進剤のない組成物)と比較して、治療剤の、障壁を越える流動を、少なくとも約1.05倍、少なくとも約1.10倍、少なくとも約1.2倍、少なくとも約、少なくとも約1.3倍、少なくとも約1.4倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約1.6倍、少なくとも約1.7倍、少なくとも約1.8倍、または少なくとも約1.9倍増大させるのに有効な量で存在する。ある態様において、透過促進剤または透過促進剤の組み合わせは、参照組成物と比較して、治療剤の、障壁を越える流動を、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約25倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約250倍、少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍増大させるのに有効な量で存在する。ある態様において、透過促進剤または透過促進剤の組み合わせは、参照組成物と比較して、治療剤の、障壁を越える流動を、約1.5倍と約100倍と間で増大させるのに有効な量で存在する。
【0092】
ある態様において、マトリックス形成剤またはマトリックス形成剤の組み合わせは、ポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルであるポリマーを含む。ある態様において、ポリマーは、式:
【化2】
で表される(ポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステル;また「PBP-P407」もしくは「PBP」とも称される)。
【0093】
組成物は、相転移温度を上回って加温させるのに先立ち、液体であってもよい。いくつかの態様において、相転移温度は、対象の体温(例として、約37℃)であるか、またはこれを下回る。よって、組成物は、対象へ投与されたとき(例として、組成物が、生物学的な表面と接触したとき)、ゲルを形成してもよい。
【0094】
いくつかの態様において、相転移温度は、約15℃と約37℃との間、約20℃と約37℃との間、約25℃の間、約30℃と約37℃との間、約30℃と約35℃との間、または約35℃と約40℃との間である。いくつかの態様において、相転移温度は、約20℃と約37℃との間である。いくつかの態様において、相転移温度は、約0℃と約60℃との間、約10℃と約50℃との間、約20℃と約40℃との間、または約25℃と約35℃との間である。いくつかの態様において、相転移温度は、約20℃と25℃との間、約25℃と約30℃との間、約30℃と約35℃との間、または約35℃と約40℃との間である。いくつかの態様において、相転移温度は、約10℃と約50℃との間である。いくつかの態様において、相転移温度は、約20℃と約40℃との間である。いくつかの態様において、相転移温度は、約15℃と約40℃との間である。
【0095】
ある態様において、組成物は、相転移温度と等しいかまたはこれを上回る温度の表面へ適用される。いくつかの態様において、表面は、生物学的な表面である。ある態様において、表面は、皮膚である。ある態様において、表面は、対象の外耳道中の表面である。ある態様において、表面は、鼓膜である。ある態様において、表面は、対象の呼吸器中(例として、鼻腔中または口腔中)の表面である。ある態様において、表面は、対象の口中の表面(例として、または歯肉の表面)である。組成物は、例えば、皮内送達もしくは皮下(interdermal)送達によって、または外科手技の最中に、体内表面へ投与されてもよい。ある態様において、表面は、皮内表面である。ある態様において、表面は、器官(例として、心臓、肺、脾臓、膵臓、腎臓、肝臓、胃、腸、膀胱)の表面である。ある態様において、表面は、結合組織である。ある態様において、表面は、筋組織(例として、平滑筋、骨格筋、心筋)である。ある態様において、表面は、神経組織(例として、脳、脊髄)である。ある態様において、表面は、上皮組織である。ある態様において、表面は、消化管(例として、結腸、直腸)の表面である。ある態様において、表面は、上皮組織である。ある態様において、表面は、生殖管(例として、膣、子宮頸)の表面である。ある態様において、表面は、骨である。ある態様において、表面は、血管(vascular)組織である。ある態様において、表面は、創傷床である。ある態様において、表面は、バイオフィルムである。ある態様において、表面は、毛髪または毛皮である。ある態様において、表面は、医療移植片の表面である。
【0096】
ある態様において、組成物は、疾患を処置するのに有用である。いくつかの態様において、組成物は、感染性疾患を処置するのに有用である。いくつかの態様において、組成物は、耳疾患を処置するのに有用である(例として、障壁は、鼓膜である)。いくつかの態様において、組成物は、中耳炎を処置するのに有用である。ある態様において、組成物は、疼痛を処置する(例として、疼痛を持続的に処置する)のに有用である。ある態様において、組成物は、疾患に関連する疼痛を処置する(例として、前記疼痛を持続的に処置する)のに有用である。いくつかの態様において、組成物は、感染性疾患に関連する疼痛を処置する(例として、前記疼痛を持続的に処置する)のに有用である。いくつかの態様において、組成物は、耳疾患に関連する疼痛を処置する(例として、前記疼痛を持続的に処置する)のに有用である(例として、障壁は、鼓膜である)。いくつかの態様において、組成物は、中耳炎に関連する疼痛を処置する(例として、前記疼痛を持続的に処置する)のに有用である。
【0097】
記載のとおり、組成物のゲル化温度(相転移温度)は、組成物の好適性(例として、鼓膜への持続的送達を可能にする)を決定する一因子である。貯蔵弾性率が損失弾性率を超える温度は、ゲル化温度と見なされる。組成物は本明細書において、37℃より低いかまたはより高いゲル化温度を有していてもよいが、組成物(とりわけマトリックス形成剤)の体温への曝露の際、投与直後のゲル化を加速させるため好ましくは37℃より低いゲル化温度を有していてもよい。
【0098】
ゾル-ゲル転移のタイミングは、投与の容易さに影響を与えるであろう。一般に、より早いin situ転移は、対象(例として、順守に抵抗する子どもら)への投与に有用である。ある態様において、組成物は、投与(例として、外耳道への)から約5s、約10s、約20s、約30s、約1分、約5分、または約10分以内にゲル化する。いくつかの態様において、組成物は、投与後、約1s~約20sの範囲内にゲル化する。
【0099】
ある態様において、組成物は、投与に先立ち、冷却保管される(例として、約5℃にて冷蔵される)。冷却保管は、投与に先立つまたは操作の最中のゲル化を防止するため、ゲル化温度が室温を下回る組成物に有用なこともある。
【0100】
本明細書に提供される組成物は、透過促進剤(例として、界面活性剤、テルペン)、治療剤または治療剤の組み合わせ(例として、抗生物質、麻酔剤)、およびマトリックス形成剤(例として、PBP-ポロキサマー407)を包含する。透過促進剤は、鼓膜の角質層を変えることで、治療剤の、鼓膜を越える流動を増大させる剤である。透過促進剤は、中耳および/または内耳中への治療剤の送達を容易にさせる。治療剤は、耳における治療的な利益を有する剤を包含する。ある態様において、マトリックス形成剤は、周囲条件にて液体であるが、一旦対象へ投与されるとゲル化する(例として、より粘性(viscous)が上がる)。ある態様において、マトリックス形成剤は、組成物の2種の構成要素を混合する際にゲル化する。いくつかの態様において、各構成要素は、マトリックス形成剤(例として、混合の際に架橋を経る、2種の多糖類誘導体)を含む。いくつかの態様において、1つの構成要素は、マトリックス形成剤を含み、第2構成要素は、マトリックス形成剤と混合されたときゲル化を引き起こすアクチベーターまたは触媒を含む。ある態様において、医薬組成物は実質的に、対象の聴覚と干渉しない。
【0101】
マトリックス形成剤
マトリックス形成剤は、投与後にゲルを形成する化合物または化合物の混合物である。ある態様において、マトリックス形成剤は、対象の外耳道中への投与後にゲルを形成する。ゲル組成物は、治療剤および透過促進剤を含有するリザーバのように振る舞って、治療剤の、障壁(例として、鼓膜)を越える持続放出を可能にする。ある態様において、ゲルは、鼓膜との接触を維持する。いくつかの態様において、ゲルは、0.5時間と1時間との間、1時間と4時間との間、1時間と8時間との間、1時間と16時間との間、または1時間と24時間との間、接触を維持する。いくつかの態様において、ゲルは、1日間と3日間との間、1日間と7日間との間、または1日間と14日間との間、接触を維持する。いくつかの態様において、ゲルは、0.5時間と1時間との間、1時間と4時間との間、1時間と8時間との間、1時間と16時間との間、または1時間と24時間との間、治療剤の、鼓膜を越える流動を可能にする。いくつかの態様において、ゲルは、1日間と3日間との間、1日間と7日間との間、または1日間と14日間との間、接触を維持する。かかるリザーバは、鼓膜との接触を維持することで、治療剤が鼓膜を横断して中耳または内耳へ送達される時間が増加する。かかるリザーバは、鼓膜の、透過促進剤および治療剤への曝露を最大化して、治療剤の、中耳および内耳中への持続的流動を容易にさせる。
【0102】
様々な態様において、組成物は、持続放出製剤である。様々な側面において、透過促進剤および/または治療剤のいずれかの持続放出は、透過促進剤または治療剤のいずれかの有効量を鼓膜、中耳、または内耳の表面へ送達するのに一定速度であり得る。様々な態様において、持続放出は、約1日、約2日間、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、または約7日間にわたり、治療剤の充分な流動を提供する。様々な態様において、持続放出は、約7間~約10日間の範囲にわたり、治療剤の充分な流動を提供する。様々な態様において、持続放出は、約7日間~約14日間にわたり一定速度であってもよい。様々な態様において、持続放出は、約14間~約21日間にわたり、治療剤の充分な流動を提供する。様々な態様において、持続放出は、約21間~約30日間にわたり、治療剤の充分な流動を提供する。本明細書に使用されるとき、充分な流動は、治療剤が中耳において治療的に有効な量または予防的に有効な量で存在するのに必要な流動である。いくつかの態様において、充分な流動は、抗生物質製剤(antibiotic agent)を、感染性微生物の最小阻害濃度と等しい濃度またはこれより高い濃度で提供するのに充分である。いくつかの態様において、感染性微生物は、H. influenza、S. pneumoniae、またはM. catarrhalisである。
【0103】
様々な側面において、持続放出プロファイルは、マトリックス形成剤の組成物への添加によって得られる。様々な態様において、組成物はさらに、マトリックス形成剤を含んでいてもよい。様々な態様において、マトリックス形成剤は、相変化、可溶性の変化、溶媒の蒸発、またはマトリックス形成剤を含む構成要素の混合に基づき、in situでの粘度の変化を経てもよい。かかるマトリックス形成剤は、患者の外耳道中への投与後in situでゲル化することで、治療剤および透過促進剤を含有するリザーバを形成し、治療剤の持続放出を可能にする。かかるリザーバは、鼓膜との接触を維持することで、治療剤が鼓膜を透過して中耳または内耳へ送達される時間が増加する。かかるリザーバは、鼓膜の、透過促進剤および治療剤への曝露を最大にする。
【0104】
ある態様において、マトリックス形成剤は、ヒドロゲルであるか、または投与の際にヒドロゲルを形成する。ある態様において、マトリックス形成剤は、ポリマーを含んでいない。ある態様において、マトリックス形成剤は、ポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルであるポリマーを含む。ある態様において、組成物は、約9.0~19.0%wt/volの間のポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルを含む。ある態様において、組成物は、約10.0~15.0%wt/volの間のポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルを含む。ある態様において、組成物は、約9.0~19.0%wt/volの間、約9.0~17.0%wt/volの間、約9.0~16.0%wt/volの間、約10.0~17.0%wt/volの間、約10.0~15.0%wt/volの間、約10.0~14.0%wt/volの間、約10.0~13.0%wt/volの間、約10.0~12.0%wt/volの間、約9.0~12.0%wt/volの間、約9.0~11.0%wt/volの間、または約9.0~10.0%wt/volの間の、ポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルを含む。ある態様において、組成物は、約9.0%wt/vol、約9.5%wt/vol、約10.0%wt/vol、約10.5%wt/vol、約11.0%wt/vol、約11.5%wt/vol、約12.0%wt/vol、約12.5%wt/vol、約13.0%wt/vol、約13.5%wt/vol、約14.0%wt/vol、約14.5%wt/vol、約15.0%wt/vol、約15.5%wt/vol、約16.0%wt/vol、約16.5%wt/vol、約17.0%wt/vol、約17.5%wt/vol、約18.0%wt/vol、約18.5%wt/vol、または約19.0%wt/volの、ポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルを含む。ある態様において、組成物は、約10.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルを含む。ある態様において、組成物は、約12.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルを含む。ある態様において、組成物は、約15.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルを含む。
【0105】
ある態様において、組成物は、約9.0~19.0%wt/volの間のポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルを含む。ある態様において、組成物は、約9.0~20.0%wt/volの間のポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルを含む。ある態様において、組成物は、約10.0~15.0%wt/volの間のポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルを含む。ある態様において、組成物は、約9.0~10.0%wt/volの間、約10.0~12.0%wt/volの間、約12.0~13.0%wt/volの間、約13.0~14.0%wt/volの間、約14.0~15.0%wt/volの間、約15.0~16.0%wt/volの間、約16.0~17.0%wt/volの間、約17.0~18.0%wt/volの間、約18.0~19.0%wt/volの間、約19.0~20.0%wt/volの間、約20.0~21.0%wt/volの間、約21.0~22.0%wt/volの間、約22.0~23.0%wt/volの間、約23.0~24.0%wt/volの間、または約24.0~25.0%wt/volの間の、ポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルを含む。ある態様において、組成物は、約9.0%wt/vol、約9.5%wt/vol、約10.0%wt/vol、約10.5%wt/vol、約11.0%wt/vol、約11.5%wt/vol、約12.0%wt/vol、約12.5%wt/vol、約13.0%wt/vol、約13.5%wt/vol、約14.0%wt/vol、約14.5%wt/vol、約15.0%wt/vol、約15.5%wt/vol、約16.0%wt/vol、約16.5%wt/vol、約17.0%wt/vol、約17.5%wt/vol、約18.0%wt/vol、約18.5%wt/vol、約19.0%wt/vol、約19.5%wt/vol、または約20.0%wt/volの、ポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルを含む。ある態様において、組成物は、約10.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルを含む。ある態様において、組成物は、約12.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルを含む。ある態様において、組成物は、約15.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルを含む。
【0106】
透過促進剤
透過促進剤は、治療剤の、障壁(例として、膜、細胞の層)を越える流動を増大させるいずれの剤も指す。いくつかの態様において、障壁は、皮膚である。いくつかの態様において、障壁は、鼓膜である。いくつかの態様において、障壁は、鼓膜であって、神経ではない。いくつかの態様において、障壁は、神経ではない。ある態様において、透過促進剤は、界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウムである。ある態様において、透過促進剤は、麻酔薬ブピバカインである。ある態様において、透過促進剤は、テルペンのリモネンである。ある態様において、透過促進剤は、単一の透過促進剤を含む。ある態様において、透過促進剤は、界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウムを含む。ある態様において、透過促進剤は、麻酔薬ブピバカインを含む。ある態様において、透過促進剤は、テルペンのリモネンを含む。ある態様において、透過促進剤は、界面活性剤の透過促進剤を含む。ある態様において、透過促進剤は、麻酔薬の透過促進剤を含む。ある態様において、透過促進剤は、テルペンの透過促進剤を含む。ある態様において、透過促進剤は、2種の透過促進剤を含む。ある態様において、透過促進剤は、界面活性剤の透過促進剤および麻酔薬の透過促進剤を含む。ある態様において、透過促進剤は、界面活性剤の透過促進剤およびテルペンの透過促進剤を含む。ある態様において、透過促進剤は、麻酔薬の透過促進剤およびテルペンの透過促進剤を含む。ある態様において、透過促進剤は、界面活性剤の透過促進剤、麻酔薬の透過促進剤、およびテルペンの透過促進剤を含む。ある態様において、透過促進剤は、3種の透過促進剤を含む。ある態様において、透過促進剤は、界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウム、麻酔薬ブピバカイン、およびテルペンのリモネンを含む。
【0107】
ある態様において、組成物は、ドデシル硫酸ナトリウムである、約0.5~5.5%wt/volの間の透過促進剤を含む。ある態様において、組成物は、約0.5~5.5%wt/volの間のドデシル硫酸ナトリウム、約0.75~5.5%wt/volの間のドデシル硫酸ナトリウム、約1.0~5.25%wt/volの間のドデシル硫酸ナトリウム、約1.25~5.25%wt/volの間のドデシル硫酸ナトリウム、または約1.0~5.0%wt/volの間のドデシル硫酸ナトリウムを含む。ある態様において、組成物は、約1.0~5.0%wt/volの間のドデシル硫酸ナトリウムを含む。ある態様において、組成物は、約0.5%wt/vol、約0.75%wt/vol、約1.0%wt/vol、約1.25%wt/vol、約1.5%wt/vol、約1.75%wt/vol、約2.0%wt/vol、約2.25%wt/vol、約2.5%wt/vol、約2.75%wt/vol、約3.0%wt/vol、約3.25%wt/vol、約3.5%wt/vol、約3.75%wt/vol、約4.0%wt/vol、約4.25%wt/vol、約4.5%wt/vol、約4.75%wt/vol、約5.0%wt/vol、または約5.5%wt/volの、ドデシル硫酸ナトリウムを含む。ある態様において、組成物は、約1.0%wt/volのドデシル硫酸ナトリウムを含む。ある態様において、組成物は、約2.0%wt/volのドデシル硫酸ナトリウムを含む。ある態様において、組成物は、約3.0%wt/volのドデシル硫酸ナトリウムを含む。ある態様において、組成物は、約4.0%wt/volのドデシル硫酸ナトリウムを含む。ある態様において、組成物は、約5.0%wt/volのドデシル硫酸ナトリウムを含む。
【0108】
ある態様において、組成物は、ドデシル硫酸ナトリウムである、約0.5~20.0%wt/volの間の透過促進剤を含む。ある態様において、組成物は、ドデシル硫酸ナトリウムである、約0.5~10.0%wt/volの間の透過促進剤を含む。ある態様において、組成物は、ドデシル硫酸ナトリウムである、約10.0~20.0%wt/volの間の透過促進剤を含む。ある態様において、組成物は、ドデシル硫酸ナトリウムである、約12.0~20.0%wt/volの間の透過促進剤を含む。ある態様において、組成物は、ドデシル硫酸ナトリウムである、約10.0~20.0%wt/volの間の透過促進剤を含む。ある態様において、組成物は、ドデシル硫酸ナトリウムである、約12.0~15.0%wt/volの間の透過促進剤を含む。ある態様において、組成物は、ドデシル硫酸ナトリウムである、約0.5~5.0%wt/volの間の透過促進剤を含む。ある態様において、組成物は、ドデシル硫酸ナトリウムである、約1.0~5.0%wt/volの間の透過促進剤を含む。ある態様において、組成物は、約0.5%wt/vol、約0.75%wt/vol、約1.0%wt/vol、約1.25%wt/vol、約1.5%wt/vol、約1.75%wt/vol、約2.0%wt/vol、約2.25%wt/vol、約2.5%wt/vol、約2.75%wt/vol、約3.0%wt/vol、約3.25%wt/vol、約3.5%wt/vol、約3.75%wt/vol、約4.0%wt/vol、約4.25%wt/vol、約4.5%wt/vol、約4.75%wt/vol、約5.0%wt/vol、約5.5%wt/vol、約6.0%wt/vol、約6.5%wt/vol、約7.0%wt/vol、約7.5%wt/vol、約8.0%wt/vol、約8.5%wt/vol、約9.0%wt/vol、約9.5%wt/vol、約10.0%wt/vol、約10.5%wt/vol、約11.0%wt/vol、約11.5%wt/vol、約12.0%wt/vol、約12.5%wt/vol、約13.0%wt/vol、約13.5%wt/vol、約14.0%wt/vol、約14.5%wt/vol、約15.0%wt/vol、約15.5%wt/vol、約16.0%wt/vol、約16.5%wt/vol、約17.0%wt/vol、約17.5%wt/vol、約18.0%wt/vol、約18.5%wt/vol、約19.0%wt/vol、約19.5%wt/vol、約20.0%wt/vol、または約25.5%wt/volの、ドデシル硫酸ナトリウムを含む。
【0109】
ある態様において、組成物は、ドデシル硫酸ナトリウムである約0.5%wt/vol~約5.0%wt/volの透過促進剤、ドデシル硫酸ナトリウムである約5.0%wt/vol~約10.0%wt/volの透過促進剤、ドデシル硫酸ナトリウムである約10.0%wt/vol~約15.0%wt/volの透過促進剤、ドデシル硫酸ナトリウムである約15.0%wt/vol~約20.0%wt/volの透過促進剤、ドデシル硫酸ナトリウムである約20.0%wt/vol~約22.5%wt/volの透過促進剤、ドデシル硫酸ナトリウムである約22.5%wt/vol~約25.0%wt/volの透過促進剤、ドデシル硫酸ナトリウムである約20.0%wt/vol~約25.0%wt/volの透過促進剤、またはドデシル硫酸ナトリウムである約25.0%wt/vol~約27.5%wt/volの透過促進剤を含む。
【0110】
ある態様において、組成物は、約0.5~1.5%wt/volの間、約0.75~1.5%wt/volの間、約1.0~1.5%wt/volの間、または約1.25~1.5%wt/volの間の、ブピバカインである透過促進剤を含む。ある態様において、組成物は、ブピバカインである、約0.5~1.5%wt/volの間の透過促進剤を含む。ある態様において、組成物は、約0.5%wt/vol、約0.75%wt/vol、約1.0%wt/vol、約1.25%wt/vol、または約1.5%wt/volの、ブピバカインを含む。ある態様において、組成物は、約0.5%wt/volのブピバカインを含む。ある態様において、組成物は、約0.75%wt/volのブピバカインを含む。ある態様において、組成物は、約1.0%wt/volのブピバカインを含む。ある態様において、組成物は、約1.25%wt/volのブピバカインを含む。
【0111】
ある態様において、組成物は、ブピバカインである、約0.5~7.5%wt/volの間、約0.5~2.5%wt/volの間、約0.75~2.5%wt/volの間、約1.0~2.5%wt/volの間、約1.25~2.5%wt/volの間、約1.75~7.5%wt/volの間、約2.5~5.5%wt/volの間、約2.5~7.5%wt/volの間、約5.5~7.0%wt/volの間、または約2.5~7.5%wt/volの間の、透過促進剤を含む。ある態様において、組成物は、ブピバカインである、約0.5~2.5%wt/volの間の透過促進剤を含む。ある態様において、組成物は、約0.5%wt/vol、約0.75%wt/vol、約1.0%wt/vol、約1.25%wt/vol、約1.5%wt/vol、約2.0%wt/vol、約2.25%wt/vol、約2.5%wt/vol、約3.0%wt/vol、約3.5%wt/vol、約4.0%wt/vol、約4.5%wt/vol、約5.0%wt/vol、約5.5%wt/vol、約6.0%wt/vol、約6.5%wt/vol、約7.0%wt/vol、または約7.5%wt/volの、ブピバカインを含む。ある態様において、組成物は、約1.75~7.5%wt/volの間のブピバカインを含む。ある態様において、組成物は、約2.0~7.5%wt/volの間のブピバカインを含む。ある態様において、組成物は、約0.5%wt/volのブピバカインを含む。ある態様において、組成物は、約0.75%wt/volのブピバカインを含む。ある態様において、組成物は、約1.0%wt/volのブピバカインを含む。ある態様において、組成物は、約1.25%wt/volのブピバカインを含む。ある態様において、組成物は、約1.5%wt/volのブピバカインを含む。ある態様において、組成物は、約1.75%wt/volのブピバカインを含む。ある態様において、組成物は、約2.0%wt/volのブピバカインを含む。ある態様において、組成物は、約2.25%wt/volのブピバカインを含む。ある態様において、組成物は、約2.5%wt/volのブピバカインを含む。ある態様において、組成物は、約3.0%wt/volのブピバカインを含む。ある態様において、組成物は、約3.5%wt/volのブピバカインを含む。ある態様において、組成物は、約4.0%wt/volのブピバカインを含む。ある態様において、組成物は、約4.5%wt/volのブピバカインを含む。ある態様において、組成物は、約5.0%wt/volのブピバカインを含む。ある態様において、組成物は、約5.5%wt/volのブピバカインを含む。ある態様において、組成物は、約6.0%wt/volのブピバカインを含む。ある態様において、組成物は、約6.5%wt/volのブピバカインを含む。ある態様において、組成物は、約7.0%wt/volのブピバカインを含む。ある態様において、組成物は、約7.5%wt/volのブピバカインを含む。ある態様において、組成物は、8.0~15.0%wt/volの間のブピバカインも、8.5~15.0%wt/volの間のブピバカインも、含まない。
【0112】
ある態様において、組成物は、ブピバカインである約0.5~0.75%wt/volの間の透過促進剤、ブピバカインである約0.75~1.0%wt/volの間の透過促進剤、ブピバカインである約1.0~1.25%wt/volの間の透過促進剤、ブピバカインである約1.25~1.5%wt/volの間の透過促進剤、ブピバカインである約1.5~1.75%wt/volの間の透過促進剤、ブピバカインである約1.75~2.25%wt/volの間の透過促進剤、ブピバカインである約2.25~2.5%wt/volの間の透過促進剤、ブピバカインである約2.25~2.5%wt/volの間の透過促進剤、ブピバカインである約2.5~3.0%wt/volの間の透過促進剤、ブピバカインである約3.0~4.0%wt/volの間の透過促進剤、ブピバカインである約4.0~5.0%wt/volの間の透過促進剤、ブピバカインである約5.0~6.0%wt/volの間の透過促進剤、ブピバカインである約6.0~7.0%wt/volの間の透過促進剤、ブピバカインである約6.0~7.5%wt/volの間の透過促進剤、またはブピバカインである約2.5~7.5%wt/volの間の透過促進剤、ブピバカインである透過促進剤を含む。
【0113】
ある態様において、組成物は、リモネンである、約0.5~10.0%wt/volの間の透過促進剤を含む。ある態様において、組成物は、リモネンである、約0.5~12.0%wt/volの間の透過促進剤を含む。ある態様において、組成物は、リモネンである、約1.5~12.0%wt/volの間の透過促進剤を含む。ある態様において、組成物は、リモネンである、約1.5~10.0%wt/volの間の透過促進剤を含む。ある態様において、組成物は、リモネンである、約0.5~3.5%wt/volの間の透過促進剤を含む。ある態様において、組成物は、約0.5~3.5%wt/volの間、約1.5~5.0%wt/volの間、約1.5~4.75%wt/volの間、約1.5~4.5%wt/volの間、約1.5~4.25%wt/volの間、約1.5~4.0%wt/volの間、約1.5~3.75%wt/volの間、約1.5~3.5%wt/volの間、約1.5~3.25%wt/volの間、約1.5~3.0%wt/volの間、約1.5~2.75%wt/volの間、約1.5~2.5%wt/volの間、約1.5~2.25%wt/volの間、約1.5~2.0%wt/volの間、約1.25~2.25%wt/volの間、または約1.0~2.5%wt/volの間を含む。ある態様において、組成物は、約2.0%wt/volのリモネンを含む。
【0114】
ある態様において、組成物は、リモネンである、約2.0~12.0%wt/volの間の透過促進剤を含む。ある態様において、組成物は、リモネンである、約1.5~12.0%wt/volの間、約1.5~11.5%wt/volの間、約1.5~11.0%wt/volの間、約1.5~10.0%wt/volの間、約1.5~9.0%wt/volの間、約1.5~8.0%wt/volの間、約2.0~9.0%wt/volの間、約2.0~10.0%wt/volの間、約3.0~11.0%wt/volの間、約4.0~10.0%wt/volの間の、透過促進剤を含む。ある態様において、組成物は、約2.0%wt/vol、約2.25%wt/vol、約2.5%wt/vol、約2.75%wt/vol、約3.0%wt/vol、約3.25%wt/vol、約3.5%wt/vol、約3.75%wt/vol、約4.0%wt/vol、約4.5%wt/vol、約5.0%wt/vol、約5.5%wt/vol、約6.0%wt/vol、約6.5%wt/vol、約7.0%wt/vol、約7.5%wt/vol、約8.0%wt/vol、約8.5%wt/vol、約9.0%wt/vol、約9.5%wt/vol、約10.0%wt/vol、約10.5%wt/vol、約11.0%wt/vol、約11.5%wt/vol、または約12.0%wt/volの、リモネンを含む。ある態様において、組成物は、約2.0%wt/volのリモネンを含む。ある態様において、組成物は、約3.0%wt/volのリモネンを含む。ある態様において、組成物は、約4.0%wt/volのリモネンを含む。ある態様において、組成物は、約5.0%wt/volのリモネンを含む。ある態様において、組成物は、約6.0%wt/volのリモネンを含む。ある態様において、組成物は、約7.0%wt/volのリモネンを含む。ある態様において、組成物は、約8.0%wt/volのリモネンを含む。ある態様において、組成物は、約9.0%wt/volのリモネンを含む。ある態様において、組成物は、約10.0%wt/volのリモネンを含む。
【0115】
ある態様において、組成物は、リモネンである、約1.5~15.0%wt/volの間、約1.5~3.0%wt/volの間、約3.0~5.0%wt/volの間、約5.0~7.0%wt/volの間、約7.0~9.0%wt/volの間、約7.0~11.0%wt/volの間、約9.0~13.0%wt/volの間、約11.0~13.0%wt/volの間、約13.0~14.0%wt/volの間、約14.0~15.0%wt/volの間、約8.0~12.5.0%wt/volの間、または約8.0~15.0%wt/volの間の、透過促進剤を含む。ある態様において、組成物は、約2.0%wt/vol、約2.25%wt/vol、約2.5%wt/vol、約2.75%wt/vol、約3.0%wt/vol、約3.25%wt/vol、約3.5%wt/vol、約3.75%wt/vol、約4.0%wt/vol、約4.5%wt/vol、約5.0%wt/vol、約5.5%wt/vol、約6.0%wt/vol、約6.5%wt/vol、約7.0%wt/vol、約7.5%wt/vol、約8.0%wt/vol、約8.5%wt/vol、約9.0%wt/vol、約9.5%wt/vol、約10.0%wt/vol、約10.5%wt/vol、約11.0%wt/vol、約11.5%wt/vol、約12.0%wt/vol、約13.0%wt/vol、約14.0%wt/vol、または約15.0%wt/volの、リモネンを含む。ある態様において、組成物は、約2.0%wt/volのリモネンを含む。ある態様において、組成物は、約3.0%wt/volのリモネンを含む。ある態様において、組成物は、約4.0%wt/volのリモネンを含む。ある態様において、組成物は、約5.0%wt/volのリモネンを含む。ある態様において、組成物は、約6.0%wt/volのリモネンを含む。ある態様において、組成物は、約7.0%wt/volのリモネンを含む。ある態様において、組成物は、約8.0%wt/volのリモネンを含む。ある態様において、組成物は、約9.0%wt/volのリモネンを含む。ある態様において、組成物は、約10.0%wt/volのリモネンを含む。ある態様において、組成物は、約11.0%wt/volのリモネンを含む。ある態様において、組成物は、約12.0%wt/volのリモネンを含む。ある態様において、組成物は、約13.0%wt/volのリモネンを含む。ある態様において、組成物は、約14.0%wt/volのリモネンを含む。ある態様において、組成物は、約15.0%wt/volのリモネンを含む。
【0116】
ある態様において、組成物は、以下:約1.0~5.0%wt/volの間のドデシル硫酸ナトリウム;約0.5~1.0%wt/volの間のブピバカイン;約4.0~10.0%wt/volの間のリモネン;および約12.0~15.0%wt/volの間のポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルを含む。
【0117】
ある態様において、組成物は、約0.5~5.0%wt/volの間のドデシル硫酸ナトリウム;約0.5~7.5%wt/volの間のブピバカイン;約0.5~3.5%wt/volの間のリモネン;約9.0~15.0%wt/volの間のポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステル;およびナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤テトロドトキシンである、約0.01~0.50%wt/volの間の別の治療剤を含む。
【0118】
ある態様において、組成物は、以下:
(a)治療剤または治療剤の組み合わせ(例として、抗生物質(例として、シプロフロキサシン));(b)透過促進剤または透過促進剤の組み合わせ(ここで透過促進剤または透過促進剤の組み合わせは、治療剤または治療剤の組み合わせの、障壁を越える流動を増大させる);および(c)マトリックス形成剤またはマトリックス形成剤の組み合わせ(ここでマトリックス形成剤またはマトリックス形成剤の組み合わせは、ポリマーを含む)を含む;ここで:組成物は、ゲル相転移温度を上回る温度にて形成する;および相転移温度は、約37℃未満である;ここで組成物は、ドデシル硫酸ナトリウムである、約0.5~5.5%wt/volの間の透過促進剤を含む;ここで組成物は、ブピバカインである、約0.5~1.5%wt/volの間の透過促進剤を含む;ここで組成物は、リモネンである、約2.0~12.0%wt/volの間の透過促進剤を含む;およびここで組成物は、ポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルである、約9.0~20.0%wt/volの間のポリマーを含む。
【0119】
ある態様において、組成物は、以下:
(a)治療剤または治療剤の組み合わせ(例として、抗生物質(例として、シプロフロキサシン));(b)透過促進剤または透過促進剤の組み合わせ(ここで透過促進剤または透過促進剤の組み合わせは、治療剤または治療剤の組み合わせの、障壁を越える流動を増大させる);および(c)マトリックス形成剤またはマトリックス形成剤の組み合わせ(ここでマトリックス形成剤またはマトリックス形成剤の組み合わせは、ポリマーを含む)を含む;
ここで:組成物は、相転移温度を上回る温度にてゲルを形成する;および相転移温度は、約37℃未満である;ここで組成物は、ドデシル硫酸ナトリウムである、約1.0~5.25%wt/volの間の透過促進剤を含む;ここで組成物は、ブピバカインである、約0.5~1.25%wt/volの間の透過促進剤を含む;ここで組成物は、リモネンである、約1.5~11.5%wt/volの間の透過促進剤を含む;およびここで組成物は、ポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルである、約9.5~19.5%wt/volの間のポリマーを含む。
【0120】
ある態様において、組成物は、以下:
(1)約1.0%wt/volのドデシル硫酸ナトリウム;約0.5%wt/volのブピバカイン;約2.0%wt/volのリモネン;および約12.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステル;
(2)約1.0%wt/volのドデシル硫酸ナトリウム;約1.0%wt/volのブピバカイン;約10.0%wt/volのリモネン;および約12.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステル;
(3)約1.0%wt/volのドデシル硫酸ナトリウム;約1.0%wt/volのブピバカイン;約10.0%wt/volのリモネン;および約15.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステル;
(4)約5.0%wt/volのドデシル硫酸ナトリウム;約1.0%wt/volのブピバカイン;約4.0%wt/volのリモネン;および約12.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステル;または
(5)約5.0%wt/volのドデシル硫酸ナトリウム;約1.0%wt/volのブピバカイン;約4.0%wt/volのリモネン;および約15.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステル
のいずれかを含む。
【0121】
ある態様において、組成物は、以下:
(1)約1.0%wt/volのドデシル硫酸ナトリウム;約0.5%wt/volのブピバカイン;約2.0%wt/volのリモネン;および約12.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルを含む。ある態様において、組成物は、以下:(2)約1.0%wt/volのドデシル硫酸ナトリウム;約1.0%wt/volのブピバカイン;約10.0%wt/volのリモネン;および約12.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルを含む。ある態様において、組成物は、以下:(3)約1.0%wt/volのドデシル硫酸ナトリウム;約1.0%wt/volのブピバカイン;約10.0%wt/volのリモネン;および約15.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルを含む。ある態様において、組成物は、以下:(4)約5.0%wt/volのドデシル硫酸ナトリウム;約1.0%wt/volのブピバカイン;約4.0%wt/volのリモネン;および約12.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルを含む。ある態様において、組成物は、以下:(5)約5.0%wt/volのドデシル硫酸ナトリウム;約1.0%wt/volのブピバカイン;約4.0%wt/volのリモネン;および約15.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルを含む。
【0122】
ある態様において、組成物は、以下:約1.0%wt/volのドデシル硫酸ナトリウム;約2.0%wt/volのブピバカイン;約2.0%wt/volのリモネン;約12.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステル;およびナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤テトロドトキシンである、約0.03%wt/volの別の治療剤を含む。ある態様において、組成物は、以下:約1.0%wt/volのドデシル硫酸ナトリウム;約2.0%wt/volのブピバカイン;約2.0%wt/volのリモネン;約12.0%wt/volのポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステル;およびナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤テトロドトキシンである、約0.3%wt/volの別の治療剤を含む。
【0123】
治療剤
治療剤は、いずれの耳疾患、または耳疾患もしくは感染性疾患の症状(例として、耳疾患に関連する疼痛もしくは感染性疾患)を処置するために使用されるいずれの剤でもあり得る。治療剤は、疼痛を処置するために使用される剤であり得る。治療剤は、抗微生物剤を包含してもよい。治療剤は、これらに限定されないが、抗微生物剤、抗生物質、麻酔薬、抗炎症薬、鎮痛薬、抗線維化薬(anti-fibrotics)、抗硬化薬(anti-sclerotics)、および抗凝固薬を包含してもよい。治療剤は、これらに限定されないが、抗生物質、麻酔薬、抗炎症薬、鎮痛薬、抗線維化薬、抗硬化薬、および抗凝固薬を包含してもよい。ある態様において、治療剤は、抗微生物剤である。ある態様において、治療剤は、抗生物質製剤である。ある態様において、治療剤は、麻酔剤である。ある態様において、治療剤は、抗炎症剤である。ある態様において、治療剤は、鎮痛剤である。ある態様において、治療剤は、抗線維化剤(anti-fibrotic agent)である。ある態様において、治療剤は、抗硬化剤(anti-sclerotic agent)である。ある態様において、治療剤は、抗凝固剤である。
【0124】
様々な側面において、治療剤は、組成物の約0.01パーセント~約10パーセント間を含んでいてもよい。様々な態様において、治療剤は、組成物の約0.01パーセント~約1パーセントの間を含んでいてもよく、組成物の約1パーセント~約2パーセントの間を含んでいてもよく、組成物の約2パーセント~約3パーセントの間を含んでいてもよく、組成物の約3パーセント~約4パーセントの間を含んでいてもよく、組成物の約4パーセント~約5パーセントの間を含んでいてもよく、組成物の約5パーセント~約6パーセントの間を含んでいてもよく、組成物の約6パーセント~約7パーセントの間を含んでいてもよく、組成物の約7パーセント~約8パーセントの間を含んでいてもよく、組成物の約8パーセント~約9パーセントの間を含んでいてもよく、または組成物の約9パーセント~約10パーセントの間を含んでいてもよい。
【0125】
様々な側面において、治療剤は、組成物の約0.01パーセント~約10パーセントwt/volの間を含んでいてもよい。様々な側面において、治療剤は、組成物の約1.0パーセント~約7.0パーセントwt/volの間を含んでいてもよい。様々な側面において、治療剤は、組成物の約1.0パーセント~約6.0パーセントwt/volの間を含んでいてもよい。
【0126】
要求される厳密な量は、種、齢(age)、および対象の全身状態、具体的な化合物、その投与モード、その活性モード、処置されている疾病等に応じて、対象ごとに変動するであろう。本明細書に記載の組成物は、好ましくは、投与の容易さおよび投薬量の画一性のため、単位剤形で製剤化される。しかしながら、化合物および組成物の1日の総使用量が、堅実な(sound)医学的判断の範囲内で主治医によって決められることは理解されるであろう。いずれの具体的な患者または生物のための、治療的に有効な特定の用量レベルは、処置されている障害および障害の重症度;採用される特定の化合物の活性;採用される特定の組成;患者の齢、体重、健康全般、性別、および食生活;投与の時間、投与ルート、および採用される特定の化合物の排出率;処置の期間;採用される特定の化合物との組み合わせに使用されるか、またはこれと同時に使用される薬物;ならびに、医術において周知である同種の因子を包含する様々な因子に依存するであろう。
【0127】
ある態様において、治療剤は、抗微生物剤である。ある態様において、治療剤は、抗生物質である。いずれの抗生物質も、系において使用されてもよい。ある態様において、抗生物質は、ヒトまたは他の動物における使用が認可されている。ある態様において、抗生物質は、米国食品医薬品局によって使用が認可されている。ある態様において、抗生物質は、セファロスポリン、キノロン、ポリペプチド、マクロライド、ペニシリン、およびスルホンアミドからなる群から選択されてもよい。例示の抗生物質は、これらに限定されないが、シプロフロキサシン、セフロキシム、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン、セファレキシン、セファクロル、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム、セフィキシム、セフジニル、セフチドレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、セフトビプロール、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スペクチノマイシン、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリン、ピペラシリン、チカルシリン、マフェニド、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、トリメトプリム、およびトリメトプリム-スルファメトキサゾールを包含していてもよい。
【0128】
ある態様において、治療剤は、抗生物質製剤、麻酔剤、抗炎症剤、鎮痛剤、抗線維化剤、抗硬化剤、抗凝固剤、または診断用薬である。
【0129】
ある態様において、抗生物質は、キノロンである。ある態様において、抗生物質は、カルバペネムである。ある態様において、抗生物質は、アモキシシリン、アジスロマイシン、セフロキシム、セフトリアキソン、トリメトプリム、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、メロペネム、またはシプロフロキサシンである。いくつかの態様において、抗生物質は、シプロフロキサシンである。いくつかの態様において、抗生物質は、シプロフロキサシンおよびその薬学的に許容し得る塩である。いくつかの態様において、抗生物質は、シプロフロキサシン塩酸塩である。いくつかの態様において、抗生物質は、レボフロキサシンである。
【0130】
例示の抗生物質は、これらに限定されないが、以下:アバメクチン、アクチノマイシン(例として、アクチノマイシンA、アクチノマイシンC、アクチノマイシンD、オーランチン(Aurantin))、メシル酸アラトロフロキサシン、アミカシン硫酸塩、アミノサリチル酸、アントラサイクリン(例として、アクラルビシン、アドリアマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン)、アンチマイシン(例として、アンチマイシンA)、アベルメクチン、BAL 30072、バシトラシン、ブレオマイシン、セファロスポリン(例として、7-アミノセファロスポラン酸、7-アミノデアセトキシセファロスポラン酸、セファクロル、セファドロキシル、セファマンドール、セファゾリン、セフェピム、セフィキシム、セフメノキシム、セフメタゾール、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフォテタン、セフォチアム、セフォキシチン、セフピロム、セフポドキシムプロキセチル、セフスロジン、セフスロジンナトリウム、セフタジジム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム、セファレキシン、セファロリジン、セファロスポリンC、セファロチン、セファロチンナトリウム、セファピリン、セフラジン)、シプロフロキサシン、エンロフロキサシン、クラリスロマイシン、クラブラン酸、クリンダマイシン、コリシン、シクロスポリン(例として、シクロスポリンA)、ダルホプリスチン/キヌプリスチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、GSK 1322322、ジェネテシン、ゲンタマイシン、ゲンタマイシン硫酸塩、グラミシジン(例として、グラミシジンA)、グレパフロキサシン塩酸塩、イベルメクチン、カナマイシン(例として、カナマイシンA)、ラサロシド、ロイコマイシン、レボフロキサシン、リネゾリド、ロメフロキサシン、ロバスタチン、MK 7655、メロペネム、メバスタチン、ミトラマイシン、マイトマイシン、モノマイシン、ナタマイシン、ネオカルチノスタチン、ネオマイシン(例として、ネオマイシン硫酸塩)、ナイスタチン、オリゴマイシン、オリボマイシン、ペフロキサシン、ペニシリン(例として、6-アミノペニシラン酸、アモキシシリン、アモキシシリン-クラブラン酸、アンピシリン、アンピシリンナトリウム、アズロシリン、カルベニシリン、セフォキシチン、セファロリジン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、メシリナム、メチシリン、メズロシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンG、ペニシリンGカリウム、ペニシリンGプロカイン、ペニシリンGナトリウム、ペニシリンV、ピペラシリン、ピペラシリン-タゾバクタム、スルバクタム、タゾバクタム、チカルシリン)、フレオマイシン、ポリミキシン(例として、コリスチン、ポリミキシンB)、ピオシン(例として、ピオシンR)、RPX 7009、ラパマイシン、リストセチン、サリノマイシン、スパルフロキサシン、スペクチノマイシン、スピラマイシン、ストレプトグラミン、ストレプトバリシン、テジゾリドリン酸エステル、テイコプラニン、テリスロマイシン、テトラサイクリン(例として、アクロマイシンV、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ドキシサイクリン一水和物、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン塩酸塩、テトラサイクリン、テトラサイクリン塩酸塩)、トリコスタチンA、トロバフロキサシン、ツニカマイシン、チロシジン、バリノマイシン、(-)-フロルフェニコール、アセチルスルフイソキサゾール、アクチノニン、アミカシン硫酸塩、ベンズエトニウム塩化物、セトリミド、チェレリスリン、クロルヘキシジン(例として、グルコン酸クロルヘキシジン)、酢酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロタロニル、コトリモキサゾール、ジクロロフェン、ジデシルジメチルアンモニウム塩化物、ジヒドロストレプトマイシン、エノキサシン、エタンブトール、フレロキサシン、フラゾリドン、メチルイソチアゾリノン、モノラウリン、オキソリニン酸、ポビドンヨード、スピロヘータ殺菌薬(例として、アルスフェナミン、ネオアルスフェナミン)、スルファキノキサリン、チアンフェニコール、チニダゾール、トリクロサン、トロバフロキサシン、抗結核薬(例として、4-アミノサリチル酸、AZD 5847、アミノサリチル酸、エチオナミド)、ビダラビン、ジンクピリチオン、およびリン酸ジルコニウムを包含する。
【0131】
ある態様において、治療剤は、感染症または感染性疾患を処置するための、食品医薬品局(FDA)に認可された薬物である。FDAに認可された例示の剤は、これらに限定されないが、以下:アビカズ(Avycaz)(セフタジジム-アビバクタム)、クレセンバ(Cresemba)(イサブコナゾニウム硫酸塩)、エボタズ(Evotaz)(アタザナビルおよびコビシスタット、プレジコビックス(Prezcobix)(ダウナビルおよびコビシスタット)、ダルバンス(Dalvance)(ダルババンシン)、ハーボニー(Harvoni)(レジパスビルおよびソホスブビル)、インパビド(Impavido)(ミルテホシン)、ジュブリア(Jublia)(エフィナコナゾール)、ケリージン(Kerydin)(タバボロール)、メトロニダゾール、オルバクティブ(Orbactiv)(オリタバンシン)、ラピバブ(Rapivab)(ペラミビル注射液)、シベクトロ(Sivextro)(テジゾリドリン酸エステル)、トリーメク(Triumeq)(アバカビル、ドルテグラビル、およびラミブジン)、ヴィキラ・パック(Viekira Pak)(オムビタスビル、パリタプレビル、リトナビル、およびダサブビル)、Xtoro(フィナフロキサシン)、ザバクサ(Zerbaxa)(セフトロザン+タゾバクタム)、ルズ(Luzu)(ルリコナゾール)、オリシオ(Olysio)(シメプレビル)、シタヴィグ(Sitavig)(アシクロビル)、ソバルディ(Sovaldi)(ソホスブビル)、アブスラックス(Abthrax)(ラキシバクマブ)、アフィニトール(Afinitor)(エベロリムス)、シスタラン(Cystaran)(システアミン塩酸塩)、ダイミスタ(Dymista)(アゼラスチン塩酸塩およびプロピオン酸フルチカゾン)、Fulyzaq(クロフェレマー)、ジェトレア(Jetrea)(オクリプラスミン)、リンゼス(Linzess)(リナクロチド)、クナスル(Qnasl)(ジプロピオン酸ベクロメタゾン)経鼻エアロゾル、サチュロ(Sirturo)(ベダキリン)、スクリーセ(Sklice)(イベルメクチン)、スタリビルド(Stribild)(エルビテグラビル、コビシスタット、エムトリシタビン、フマル酸テノホビルジソプロキシル)、トゥドーザ(Tudorza)プレスエア(Pressair)(アクリジニウム臭化物 吸入粉末)、コムプレア(Complera)(エムトリシタビン/リルピビリン/フマル酸テノホビルジソプロキシル)、ディフィシッド(Dificid)(フィダキソマイシン)、エジュラント(Edurant)(リルピビリン)、アイリーア(Eylea)(アフリベルセプト)、フィラジル(Firazyr)(イカチバント)、グラリセ(Gralise)(ガバペンチン)、インシベック(Incivek)(テラプレビル)、ビクトレリス(Victrelis)(ボセプレビル)、エグリフタ(Egrifta)(テサモレリン)、テフラロ(Teflaro)(セフタロリンフォサミル)、ザイマキシド(Zymaxid)(ガチフロキサシン)、ベプリベ(Bepreve)(ベシル酸ベポタスチン)、ヴィバティブ(Vibativ)(テレバンシン)、アプティバス(Aptivus)(チプラナビル)、アステプロ(Astepro)(アゼラスチン塩酸塩 鼻腔用スプレー)、インテレンス(Intelence)(エトラビリン)、パタネーゼ(Patanase)(オロパタジン塩酸塩)、ビリアード(Viread)(フマル酸テノホビルジソプロキシル)、アイセントレス(Isentress)(ラルテグラビル)、シーエルセントリ(Selzentry)(マラビロク)、ベラミスト(Veramyst)(フロ酸フルチカゾン)、ザイザル(Xyzal)(レボセチリジン二塩酸塩)、エラクシス(Eraxis)(アニデュラファンギン)、ノクサフィル(Noxafil)(ポサコナゾール)、プレジスタ(Prezista)(ダウナビル)、タイゼカ(Tyzeka)(テルビブジン)、ベレジェン(Veregen)(クネカテキン)、バラクルード(Baraclude)(エンテカビル)、フゼオン(Fuzeon)(エンフビルチド)、レクシヴァ(Lexiva)(ホスアンプレナビルカルシウム)、レイアタッツ(Reyataz)(硫酸アタザナビル)、クラリネックス(Clarinex)、ヘプセラ(Hepsera)(アデホビルジピボキシル)、ペガシス(Pegasys)(ペグインターフェロンアルファ-2a)、サスティバ(Sustiva)、ブイフェンド(Vfend)(ボリコナゾール)、ゼルノーム(Zelnorm)(マレイン酸テガセロッド)、アベロックス(Avelox)(モキシフロキサシン塩酸塩)、カンサイダス(Cancidas)、インバンズ(Invanz)、ペグイントロン(Peg-Intron)(ペグインターフェロンアルファ-2b)、レベトール(Rebetol)(リバビリン)、スペクトラセフ(Spectracef)、タビスト(Tavist)(フマル酸クレマスチン)、ツインリックス(Twinrix)、バルサイト(Valcyte)(バルガンシクロビルHCl)、ザイグリス(Xigris)(ドロトレコギンアルファ)、アブレバ(ABREVA)(ドコサノール)、セファゾリン、カレトラ(Kaletra)、ラミシール(Lamisil)(テルビナフィン塩酸塩)、ロトリゾン(Lotrisone)(クロトリマゾール/ジプロピオン酸ベタメタゾン)、ロトロネックス(Lotronex)(アロセトロンHCL)、トリジビル(Trizivir)(硫酸アバカビル、ラミブジン、ジドブジンAZT)、シナシッド(Synercid)、シナジス(Synagis)、ヴィロプティック(Viroptic)、アルダラ(Aldara)(イミキモド)、バクトロバン(Bactroban)、セフチン(Ceftin)(セフロキシムアキセチル)、コンビビル(Combivir)、コンディロックス(Condylox)(ポドフィロックス)、ファムビル(Famvir)(ファムシクロビル)、フロキシン(Floxin)、フォートベイス(Fortovase)、インファーゲン(INFERGEN)(インターフェロンアルファコン-1)、イントロン(Intron)A(インターフェロンアルファ-2b、組換え型)、メンタックス(Mentax)(ブテナフィンHCl)、ノービア(Norvir)(リトナビル)、オムニセフ(Omnicef)、レスクリプター(Rescriptor)(デラビルジンメシル酸塩)、タキソール、チメンチン(Timentin)、トロバン(Trovan)、ビラセプト(VIRACEPT)(メシル酸ネルフィナビル)、ゼリット(Zerit)(スタブジン)、AK-Con-A(ナファゾリン 点眼用)、アレグラ(Allegra)(フェキソフェナジン塩酸塩)、アステリン(Astelin)鼻腔用スプレー、アトロベント(イプラトロピウム臭化物)、オーグメンチン(Augmentin)(アモキシシリン/クラブラン酸)、クリキシバン(Crixivan)(硫酸インジナビル)、エルミロン(Elmiron)(ポリ硫酸ペントサンナトリウム)、ハブリックス(Havrix)、リューカイン(Leukine)(サルグラモスチム)、メルレム(Merrem)(メロペネム)、ナサコート(Nasacort)AQ(トリアムシノロンアセトニド)、タビスト(Tavist)(フマル酸クレマスチン)、ヴァンセナーゼ(Vancenase)AQ、ヴァイデックス(Videx)(ジダノシン)、ビラミューン(Viramune)(ネビラピン)、ジスロマック(Zithromax)(アジスロマイシン)、セダックス(Cedax)(セフチブテン)、クラリスロマイシン(ビアキシン(Biaxin))、エピビル(Epivir)(ラミブジン)、インビラーゼ(Invirase)(サキナビル)、バルトレックス(Valtrex)(バラシクロビルHCl)、ジルテック(Zyrtec)(セチリジンHCl)、アシクロビル、ペニシリン(ペニシリンgカリウム)、キュビシン(Cubicin)(ダプトマイシン)、ファクティブ(Factive)(ゲミフロキサシン)、アルベンザ(Albenza)(アルベンダゾール)、アリニア(Alinia)(ニタゾキサニド)、アルタバックス(Altabax)(レタパムリン)、アザサイト(AzaSite)(アジスロマイシン)、ベシバンス(Besivance)(ベシフロキサシン点眼用懸濁液)、バイアキシン(Biaxin)XL(クラリスロマイシン 徐放性)、ケイストン(Cayston)(アズトレオナム)、クレオシン(Cleocin)(クリンダマイシンリン酸エステル)、ドリバックス(Doribax)(ドリペネム)、ダイナバック(Dynabac)、フラジール(Flagyl)ER、ケテック(Ketek)(テリスロマイシン)、モクサタグ(Moxatag)(アモキシシリン)、ラパミューン(Rapamune)(シロリムス)、レスタシス(Restasis)(シクロスポリン)、チンダマックス(Tindamax)(チニダゾール)、タイガシル(Tygacil)(チゲサイクリン)、およびキシファクサン(Xifaxan)(リファキシミン)を包含する。ある態様において、抗生物質製剤は、シプロフロキサシン、セフロキシム、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン、セファレキシン、セファクロル、セファマンドール、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム、セフィキシム、セフジニル、セフチドレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、セフトビプロール、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、メロフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、バシトラシン、コリスチン、ポリミキシンB、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイシン、スペクチノマイシン、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリン、ピペラシリン、チカルシリン、マフェニド、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファサラジン、スルフイソキサゾール、トリメトプリム、およびトリメトプリム-スルファメトキサゾールからなる群から選択される。ある態様において、抗生物質製剤は、シプロフロキサシンである。ある態様において、組成物は、約1.0~5.0%wt/volの間のシプロフロキサシンを含む。
【0132】
ある態様において、治療剤は、麻酔薬である。いずれの麻酔薬も、系において使用されてもよい。ある態様において、麻酔薬は、ヒトまたは他の動物における使用が認可されている。ある態様において、麻酔薬は、米国食品医薬品局によって使用が認可されている。例示の麻酔薬は、これらに限定されないが、ブピバカイン、テトラカイン、プロカイン、プロパラカイン、プロポキシカイン、ジメトカイン、シクロメチカイン、クロロプロカイン、ベンゾカイン、リドカイン、プリロカイン、レボブピバカイン、ロピバカイン、ジブカイン、アルチカイン、カルチカイン、エチドカイン、メピバカイン、ピペロカイン、およびトリメカインを包含していてもよい。ある態様において、麻酔薬は、ブピバカインである。ある態様において、麻酔剤は、ブピバカイン、テトラカイン、プロカイン、プロパラカイン、プロポキシカイン、ジメトカイン、シクロメチカイン、クロロプロカイン、ベンゾカイン、リドカイン、プリロカイン、レボブピバカイン、ロピバカイン、ジブカイン、アルチカイン、カルチカイン、エチドカイン、メピバカイン、ピペロカイン、およびトリメカインからなる群から選択される。
【0133】
ある態様において、治療剤は、麻酔剤である。ある態様において、治療剤は、局所麻酔薬である。ある態様において、治療剤は、ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤である。ある態様において、治療剤は、部位1ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤である。ある態様において、治療剤は、強力な部位1ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤である。ある態様において、ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤は、テトロドトキシンである。ある態様において、ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤は、サキシトキシン(例として、サキシトキシン類のメンバー、サキシトキシンの類似体)である。ある態様において、ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤は、サキシトキシンである。ある態様において、ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤は、ネオサキシトキシンである。ある態様において、ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤は、ゴニオウトキシンである。ある態様において、ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤は、コノトキシン(例として、μ-コノトキシン)である。ある態様において、ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤は、テトロドトキシン、サキシトキシン、またはコノトキシンである。ある態様において、ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤は、テトロドトキシン、サキシトキシン、またはネオサキシトキシンである。ある態様において、治療剤は、ブピバカインおよびナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤を包含する。ある態様において、治療剤は、ブピバカインと、テトロドトキシンである、ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤とを包含する。ある態様において、治療剤は、麻酔剤の組み合わせであって、抗生物質は含まない。ある態様において、治療剤は、ブピバカインと、テトロドトキシンである、ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤とを包含し、シプロフロキサシンは含まない。ある態様において、第1治療剤は、局所麻酔薬である。ある態様において、第1治療剤は、アミノ-アミド局所麻酔薬(例として、ブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、エチドカイン)である。ある態様において、第1治療剤は、アミノ-エステル局所麻酔薬(例として、テトラカイン、プリロカイン、プロカイン、クロロプロカイン、ベンゾカイン)である。
【0134】
ある態様において、組成物は、局所麻酔薬である、約0.01~0.50%wt/volの間の第2治療剤を含む。ある態様において、組成物は、ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤である、約0.01~0.50%wt/volの間の治療剤を含む。ある態様において、組成物は、部位1ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤である、約0.01~0.50%wt/volの間の治療剤を含む。ある態様において、組成物は、ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤テトロドトキシンである、約0.01~0.50%wt/volの間の治療剤を含む。ある態様において、組成物は、部位1ナトリウムチャネル遮断薬である、約0.01~0.50%wt/volの間の治療剤を含む。ある態様において、組成物は、ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤テトドトキシンである、約0.2~0.50%wt/volの間の治療剤を含む。ある態様において、組成物は、ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤テトロドトキシンである、約0.1~0.50%wt/volの間の治療剤を含む。ある態様において、組成物は、ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤である、約0.01~0.50%wt/volの間、約0.03~0.50%wt/volの間、約0.03~0.30%wt/volの間、約0.1~0.50%wt/volの間、約0.2~0.50%wt/volの間、約0.1~0.45%wt/volの間、約0.2~0.45%wt/volの間、約0.25~0.50%wt/volの間、約0.25~0.45%wt/volの間、または約0.25~0.45%wt/volの間の、治療剤を含む。ある態様において、組成物は、部位1ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤である、約0.01~0.50%wt/volの間、約0.03~0.50%wt/volの間、約0.03~0.30%wt/volの間、約0.1~0.50%wt/volの間、約0.2~0.50%wt/volの間、約0.1~0.45%wt/volの間、約0.2~0.45%wt/volの間、約0.25~0.50%wt/volの間、約0.25~0.45%wt/volの間、または約0.25~0.45%wt/volの間の、治療剤を含む。ある態様において、組成物は、ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤テトロドトキシンである、約0.01~0.50%wt/volの間、約0.03~0.50%wt/volの間、約0.03~0.30%wt/volの間、約0.2~0.50%wt/volの間、約0.25~0.50%wt/volの間、約0.25~0.45%wt/volの間、または約0.25~0.45%wt/volの間の、治療剤を含む。ある態様において、組成物は、ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤である、約0.03~0.30%wt/volの間の治療剤を含む。ある態様において、組成物は、約0.03%wt/volのナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤を含む。ある態様において、組成物は、約0.3%wt/volのナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤を含む。ある態様において、組成物は、ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔剤テトロドトキシンである、約0.03~0.30%wt/volの間の治療剤を含む。ある態様において、組成物は、約0.03%wt/volのテトロドトキシンを含む。ある態様において、組成物は、約0.3%wt/volのテトロドトキシンを含む。
【0135】
ある態様において、治療剤は、抗炎症剤である。抗炎症剤は、非ステロイド性の抗炎症剤であっても、ステロイド性の抗炎症剤であってもよい。ある態様において、治療剤は、ステロイド性の抗炎症剤である。ある態様において、治療剤は、ステロイドである。例示の抗炎症剤は、これらに限定されないが、アセチルサリチル酸、アロキシプリン、ベノリラート(benorylate/benorilate)、コリンマグネシウムトリサリチル酸、ジフルニサル、エテンザミド、ファイスラミン(faislamine)、サリチル酸メチル、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸サリチラート、サリチルアミド、ジクロフェナク、アセクロフェナク、アセメタシン、アルクロフェナク、ブロムフェナク、エトドラク、インドメタシン、ナブメトン、オキサメタシン、プログルメタシン、スリンダク、トルメチン、イブロプロフェン、アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、カプロフェン、デクスイブプロフェン、デクスケトプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルノキサプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロキサム、インドプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラック、ロキソプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸、メフェナム酸、フルフェナム酸、メクロフェナム酸、トルフェナム酸、フェニルブタゾン、アンピロン、アザプロパゾン、クロフェゾン、ケブゾン、メタミゾール、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェナゾン、フェニルブタゾン、スルフィンピラゾン、ピロキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸デオキシコルチコステロン、およびアルドステロンを包含していてもよい。ある態様において、抗炎症剤は、アセチルサリチル酸、アロキシプリン、ベノリラート、コリンマグネシウムトリサリチル酸、ジフルニサル、エテンザミド、ファイスラミン、サリチル酸メチル、サリチル酸マグネシウム、サリチル酸サリチラート、サリチルアミド、ジクロフェナク、アセクロフェナク、アセメタシン、アルクロフェナク、ブロムフェナク、エトドラク、インドメタシン、ナブメトン、オキサメタシン、プログルメタシン、スリンダク、トルメチン、イブロプロフェン、アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、カプロフェン、デクスイブプロフェン、デクスケトプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルノキサプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロキサム、インドプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラック、ロキソプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸、メフェナム酸、フルフェナム酸、メクロフェナム酸、トルフェナム酸、フェニルブタゾン、アンピロン、アザプロパゾン、クロフェゾン、ケブゾン、メタミゾール、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェナゾン、フェニルブタゾン、スルフィンピラゾン、ピロキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、酢酸フルドロコルチゾン、酢酸デオキシコルチコステロン、およびアルドステロンからなる群から選択される。
【0136】
様々な態様において、様々な透過促進剤と治療剤との組み合わせは、相乗的であってかつ高められた効き目を有することが観察されている。様々な側面において、かかる組み合わせは、これらに限定されないが、シプロフロキサシンおよびリモネンを包含していてもよい。様々な側面において、かかる組み合わせは、これらに限定されないが、シプロフロキサシンおよびドデシル硫酸ナトリウムを包含していてもよい。様々な側面において、かかる組み合わせは、これらに限定されないが、ドデシル硫酸ナトリウム、リモネン、ブピバカイン、およびシプロフロキサシンを包含していてもよい。様々な側面において、かかる組み合わせは、これらに限定されないが、ドデシル硫酸ナトリウム、リモネンおよびシプロフロキサシンを包含していてもよい。
【0137】
別の側面において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載のとおりの組成物の少なくとも1つと、任意に、薬学的に許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物である。ある態様において、医薬組成物は、治療剤の組み合わせを包含する。ある態様において、医薬組成物は、抗生物質および追加の治療剤を包含する。ある態様において、医薬組成物は、抗生物質製剤および抗炎症剤を包含する。他の態様において、医薬組成物は、抗生物質製剤および麻酔剤を包含する。ある態様において、医薬組成物は、1種より多くの抗生物質製剤を包含する。ある態様において、医薬組成物は、疾患の処置を、これを必要とする対象においてすることにおける使用のための、治療的に有効な量の組成物を含む。
【0138】
ある態様において、追加の治療剤は、抗炎症剤(例として、ステロイド)である。ある態様において、第1治療剤は、抗生物質であり、かつ追加の治療剤は、抗炎症剤である。ある態様において、第1治療剤は、抗生物質であり、かつ追加の治療剤は、ステロイドである。ステロイドは、これらに限定されないが、コルチゾール、ヒドロ酢酸コルチゾン、酢酸コルチゾン、チキソコルトールピバル酸エステル、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコール、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、ハルシノニド、ベタメタゾン、ベタメタゾンリン酸エステルナトリウム、デキサメタゾン、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム、フルオコルトロン、17-吉草酸ヒドロコルチゾン、ハロメタゾン、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、プレドニカルベート、17-酪酸クロベタゾン、17-プロピオン酸クロベタゾール、カプロン酸フルオコルトロン、ピバリン酸フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン、17-酪酸ヒドロコルチゾン、17-アセポン酸ヒドロコルチゾン、17-酪酸プロピオン酸(buteprate)ヒドロコルチゾン、シクレソニド、およびプレドニカルベートを包含する。いくつかの態様において、追加の抗炎症剤は、デキサメタゾンである。
【0139】
ある態様において、追加の治療剤は、β-ラクタマーゼ阻害剤である。ある態様において、第1治療剤は、抗生物質(例として、β-ラクタム)であり、かつ追加の治療剤は、β-ラクタマーゼ阻害剤である。β-ラクタマーゼ阻害剤は、これらに限定されないが、アビバクタム、クラブラン酸、タゾバクタム、およびスルバクタムを包含する。β-ラクタマーゼ阻害剤は、β-ラクタム抗生物質を含む組成物において具体的に有用であってもよい。β-ラクタマーゼ阻害剤は、β-ラクタム抗生物質の効き目を増大させてもよく、またはβ-ラクタム抗生物質が、β-ラクタマーゼ阻害剤を含有しない組成物より低濃度で組成物中に存在できるようにさせてもよい。
【0140】
ある態様において、追加の治療剤は、麻酔剤である。ある態様において、追加の治療剤は、ブピバカインである。
【0141】
さらにまた、適切な薬学的に許容し得る担体とともに所望の投薬量で製剤化した後、医薬組成物は、ヒトおよび他の動物へ投与され得る。
【0142】
剤形は、これらに限定されないが、薬学的に許容し得るエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ剤、およびエリキシル剤を包含する。活性化合物に加えて、液体剤形は、例えば、水または他の溶媒などの、当該技術分野において一般的に使用される不活性な希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾアート、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(とりわけ、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステルなどの可溶化剤および乳化剤、ならびにそれらの混合物を含有していてもよい。不活性な希釈剤の他にも、組成物はまた、湿潤剤、乳化および懸濁化させる剤(emulsifying and suspending agents)、ならびに芳香剤などの補助剤(adjuvants)を包含し得る。ある態様において、組成物は、クレモフォール(Cremophor)、アルコール、油、変性油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマー、およびそれらの組み合わせなどの可溶化剤を含む。
【0143】
本明細書に記載の組成物が併用治療に採用され得る、つまり、化合物および医薬組成物が、1以上の他の所望の治療法または医学的手技と同時に、これに先立ち、またはこれに続いて投与され得ることもまた、解されるであろう。併用レジメンに採用される治療(治療法または手技)の具体的な組み合わせは、所望の治療法および/または手技と、達成されるべき所望の治療効果との両立性(compatibility)を考慮するであろう。採用される治療が、同じ障害に対して所望の効果を達成してもよく(例えば、本明細書に開示の化合物もしくは組成物は、別の抗がん剤と同時に投与されてもよい)、またはそれらが、異なる効果(例として、いずれの弊害の制御)を達成してもよいこともまた、解されるであろう。
【0144】
ある態様において、組成物は、診断用薬を含む。いくつかの態様において、診断用薬は、X線造影剤である。いくつかの態様において、診断用薬は、放射性同位体を含む。いくつかの態様において、診断用薬は、色素である。
【0145】
その他の添加剤
ある態様において、組成物は、1種以上の追加の添加剤を含む。例えば、追加の添加剤は、希釈剤、結合剤、保存料、緩衝剤、平滑剤、芳香剤、防腐剤、または油であってもよい。
【0146】
例示の希釈剤は、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム、ラクトース、スクロース、セルロース、微結晶性セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、コーンスターチ、粉砂糖、およびこれらの混合物を包含する。
【0147】
例示の結合剤は、デンプン(例として、コーンスターチおよびデンプン糊)、ゼラチン、糖(例として、スクロース、グルコース、デキストロース、デキストリン、糖蜜、ラクトース、ラクチトール、マンニトールなど)、天然および合成ゴム(例として、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アイリッシュモスの抽出物、パンワルゴム(panwar gum)、ガッチゴム(ghatti gum)、イサポール殻(isapol husk)の粘液(mucilage)、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶性セルロース、酢酸セルロース、ポリ(ビニルピロリドン)、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(Veegum(登録商標))、および落葉松アラボガラクタン)、アルギナート、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、無機カルシウム塩、ケイ酸、ポリメタクリラート、ワックス、水、アルコール、および/またはこれらの混合物を包含する。
【0148】
例示の保存料は、抗酸化剤、キレート剤、抗微生物性保存料、抗真菌性保存料、抗原生動物性保存料(antiprotozoan preservatives)、アルコール保存料(alcohol preservatives)、酸保存料、およびその他の保存料を包含する。ある態様において、保存料は、抗酸化剤である。他の態様において、保存料は、キレート剤である。ある態様において、保存料は、塩化ベンザルコニウムである。
【0149】
例示の抗酸化剤は、アルファ トコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、および亜硫酸ナトリウムを包含する。
【0150】
例示の抗真菌性保存料は、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、およびソルビン酸を包含する。
【0151】
例示のアルコール保存料は、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、ヒドロキシベンゾアート、およびフェニルエチルアルコールを包含する。
【0152】
例示の酸保存料は、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ベータ カロチン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、およびフィチン酸を包含する。
【0153】
その他の保存料は、トコフェロール、酢酸トコフェロール、メシル酸デテロキシム(deteroxime mesylate)、セトリミド、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、Glydant(登録商標)Plus、Phenonip(登録商標)、メチルパラベン、Germall(登録商標)115、Germaben(登録商標)II、Neolone(登録商標)、Kathon(登録商標)、およびEuxyl(登録商標)を包含する。
【0154】
例示の緩衝剤は、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D-グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、二塩基性リン酸カルシウム、リン酸、三塩基性リン酸カルシウム、リン酸カルシウムヒドロキシド(calcium hydroxide phosphate)、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、二塩基性リン酸カリウム、一塩基性リン酸カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、パイロジェンフリーの水、等張の生理食塩水、リンガー溶液、エチルアルコール、およびこれらの混合物を包含する。
【0155】
例示の平滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、麦芽、ベヘン酸グリセリル、水素化植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物を包含する。
【0156】
例示の天然油は、アーモンド、杏仁、アボカド、ババス、ベルガモット、ブラックカレント種子、ルリジサ、カデ、カモミール、キャノーラ、キャラウェイ、カルナバ、ヒマシ油、シナモン、ココアバター、ココナッツ、タラ肝臓、コーヒー、トウモロコシ、綿実、エミュー、ユーカリ、月見草、魚、アマニ、ゲラニオール、ヘチマ、ブドウ種子、ヘーゼルナッツ、ヒソップ、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ、ククイナッツ、ラバンジン、ラベンダー、レモン、リツェアクベバ、マカデミアナッツ、ゼニアオイ、マンゴー種子、メドウフォームシード、ミンク、ナツメグ、オリーブ、オレンジ、オレンジラフィー、パーム、パーム核、桃仁、ピーナッツ、ケシの実、カボチャの種、菜種、米ぬか、ローズマリー、ベニバナ、サンダルウッド、サザンカ、セイボリー、シーバックソーン、ゴマ、シアバター、シリコーン、大豆、ヒマワリ、ティーツリー、アザミ、ツバキ、ベチベル、クルミ、および小麦胚芽を包含する。例示的な合成油は、これらに限定はされないが、ステアリン酸ブチル、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコン、セバシン酸ジエチル、ジメチコーン360、ミリスチン酸イソプロピル、鉱油、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコーン油、およびこれらの混合物を包含する。
【0157】
活性成分に加えて、液体剤形は、例えば、水または他の溶媒などの、当該技術分野において一般的に使用される不活性希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸酢酸エチルエチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(例として、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステルなどの、可溶化剤および乳化剤、およびこれらの混合物を含んでもよい。
【0158】
組成物は、水または他の溶媒、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾアート、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(例として、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステルなどの可溶化剤および乳化剤、ならびにそれらの混合物を含んでいてもよい。
【0159】
投与(例として、外耳道への)に好適な製剤は、これらに限定はされないが、リニメント剤、ローション剤などの液体調製物および/または半液体調製物、クリーム剤、軟膏剤などの水中油型および/または油中水型エマルション、および/またはペースト剤、および/または溶液剤および/または懸濁液剤を包含する。局所的に投与可能な製剤は、例えば、約1%から約10%(w/w)までの治療剤を含んでもよいが、治療剤の濃度は、溶媒中の活性成分の溶解限度まで高められる。局所投与のための製剤はさらに、本明細書に記載の1以上の追加成分を含んでいてもよい。
【0160】
処置の方法および使用
本明細書に提供されるのは、疾患または疾病の処置を、これを必要とする対象においてするための、本明細書に記載の組成物の方法である。ある態様において、本明細書に記載の組成物は、疼痛を処置する(例として、疼痛を持続的に処置する)のに使用される。ある態様において、本明細書に記載の組成物は、感染性疾患に関連する疼痛を処置するの(例として、持続的な疼痛の処置)に使用される。ある態様において、本明細書に記載の組成物は、耳疾患または細菌感染症に関連する疼痛を処置するの(例として、持続的な疼痛の処置)に使用される。ある態様において、本明細書に記載の組成物は、持続的な疼痛の処置に使用される。ある態様において、本明細書に記載の組成物は、感染性疾患、耳疾患、または細菌感染症に関連する疼痛のための、持続的な疼痛の処置に使用される。
【0161】
様々な態様の本明細書に記載の組成物を使用する方法は、一般に、感染性疾患、耳疾患、および/または感染性疾患および/または耳疾患に関連する疾病(例として、疼痛の処置、持続的な疼痛の処置)を処置する方法にむけられる。ある態様において、本明細書に記載の組成物は、疼痛を処置する方法に使用される。ある態様において、本明細書に記載の組成物は、感染性疾患を処置する方法に使用される。ある態様において、本明細書に記載のマトリックス形成剤は、感染性疾患を処置する方法に使用される。ある態様において、本明細書に記載の組成物は、耳疾患を処置する方法に使用される。ある態様において、本明細書に記載の組成物は、感染性の耳疾患を処置する方法に使用される。様々な態様の本明細書に記載の組成物を使用する方法は、一般に、感染性疾患を処置する方法に向けられる。様々な側面において、組成物は、治療薬または診断用薬を、鼓膜を越えて送達するために使用されもよい。したがって、組成物は、中耳および/または内耳の疾患および/または疾病を処置するのに具体的に有用である。ある態様において、本明細書に記載の組成物は、中耳の疾患および/または疾病を処置する方法に使用される。ある態様において、本明細書に記載の組成物は、内耳の疾患および/または疾病を処置する方法に使用される。
【0162】
ある態様において、本明細書に記載の対象は、ヒトである。ある態様において、対象は、非ヒト動物である。ある態様において、対象は、哺乳動物である。ある態様において、対象は、非ヒト哺乳動物である。ある態様において、対象は、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、またはヤギなどの、飼育動物(domesticated animal)である。ある態様において、対象は、イヌまたはネコなどの、伴侶動物である。ある態様において、対象は、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、またはヤギなどの、家畜動物(livestock animal)である。ある態様において、対象は、動物園の動物である。別の態様において、対象は、齧歯類の動物(例として、マウス、ラット)、イヌ、ブタなどの、研究動物、または霊長目の非ヒト動物である。
【0163】
様々な側面において、本明細書に記載の組成物は、これらに限定されないが、耳感染、中耳における類線維腫の発症、または耳硬化症を包含する耳疾患を処置するために使用され得る。ある態様において、本明細書に記載のマトリックス形成剤は、これらに限定されないが、耳感染、中耳における類線維腫の発症、または耳硬化症を包含する耳疾患を処置するために使用され得る。様々な他の側面において、本明細書に記載の組成物は、目眩、メニエール病、乳様突起炎、コレステリン腫、迷路炎、外リンパ瘻、上半規管裂隙症候群(superior canal dehiscence syndrome)、耳漏、耳痛、耳鳴、気圧外傷、耳のがん、自己免疫内耳疾患、聴神経腫、良性発作性頭位目眩症、耳帯状疱疹、化膿性迷路炎、前庭神経炎、鼓膜穿孔、または鼓膜炎を処置するために使用されてもよい。様々な他の側面において、本明細書に記載の組成物は、目眩、メニエール病、乳様突起炎、コレステリン腫、迷路炎、外リンパ瘻、上半規管裂隙症候群、耳漏、耳痛、耳鳴、気圧外傷、耳のがん、自己免疫内耳疾患、聴神経腫、良性発作性頭位目眩症、耳帯状疱疹、化膿性迷路炎、前庭神経炎、鼓膜穿孔、または鼓膜炎を処置するために使用されてもよい。ある態様において、本明細書に記載のマトリックス形成剤は、目眩、メニエール病、乳様突起炎、コレステリン腫、迷路炎、外リンパ瘻、上半規管裂隙症候群、耳漏、耳痛、耳鳴、気圧外傷、耳のがん、自己免疫内耳疾患、聴神経腫、良性発作性頭位目眩症、耳帯状疱疹、化膿性迷路炎、前庭神経炎、鼓膜穿孔、または鼓膜炎を処置するために使用されてもよい。いくつかの態様において、本明細書に開示の方法は、中耳炎(OM)を処置するために使用される。本明細書に開示の方法によって処置されてもよい、種々の形態のOMは、体液(fluid)(滲出液)の存在によって、および/または、炎症の期間もしくは残留感覚(persistence)によって、区別されてもよい。ある態様において、感染性疾患は、急性中耳炎、慢性中耳炎、または滲出性中耳炎である。滲出液は、存在する場合、水様(漿液)から粘稠(viscid)および粘液様(mucous-like)(粘液性(mucoid))まで、膿様(化膿)まで、いずれの粘度(consistency)であり得る;期間は、急性、亜急性、または慢性に分類される。滲出液を伴うOM(OME)は、中耳液(MEF)を伴う炎症を示すが、急性感染といういずれの適応症もない。急性OM(AOM)は、滲出液の有無にかかわらず、中耳の急性感染に関連する兆候および症状の迅速な発病(例として、耳痛、発熱)によって特徴付けられる。いくつかの態様において、方法は、例えば、Streptococcus pneumoniae、Haemophilus influenzae、およびMoraxella catarrhalisを包含する、数多の病原性細菌のいずれかによる感染に関連する中耳炎を処置するために使用される。
【0164】
感染性疾患は、細菌感染症であってもよい。ある態様において、細菌感染症は、Streptococcus、Haemophilus、またはMoraxellaの感染症である。ある態様において、細菌感染症は、Staphylococcus、Escherichia、またはBacillusの感染症である。ある態様において、細菌感染症は、H. influenzaeの感染症である。ある態様において、細菌感染症は、S. pneumoniaeの感染症である。ある態様において、細菌感染症は、M. catarrhalisの感染症である。ある態様において、感染性疾患は、耳感染症である。ある態様において、感染性疾患は、中耳炎である。
【0165】
様々な態様において、本明細書に記載の組成物の投与は、組成物を対象の外耳道中へ適用することからなる。ある態様において、組成物を対象の外耳道中へ適用することは、組成物を対象の外耳道中へ噴霧することを含む。ある態様において、本明細書に記載の組成物の投与は、組成物を対象の内耳中へ適用することからなる。ある態様において、本明細書に記載の組成物の投与は、組成物を対象の中耳中へ適用することからなる。ある態様において、本明細書に記載の組成物の投与は、組成物を対象の内耳、洞、目、膣、または皮膚中へ適用することからなる。ある態様において、本明細書に記載の組成物の投与は、組成物を対象の洞中へ適用することからなる。ある態様において、本明細書に記載の組成物の投与は、組成物を対象の目中へ適用することからなる。ある態様において、本明細書に記載の組成物の投与は、組成物を対象の膣中へ適用することからなる。ある態様において、本明細書に記載の組成物の投与は、組成物を対象の皮膚へ適用することからなる。処置のための対象は、処置を必要とするいずれの哺乳動物でもあり得る。様々な側面において、組成物は、約1日~約30日間、鼓膜との直接接触にある。様々な側面において、組成物は、約1日から約3日間まで、約3日間から約7日間まで、約7日間から約14日間まで、約14日間から約21日間まで、または約21日間から約30日間まで、鼓膜と接触する。様々な態様において、組成物は、持続放出リザーバを形成し、鼓膜と接触する。様々な側面において、組成物は液体として外耳道中へ適用され、組成物は鼓膜の表面上in situでゲル化する。鼓膜と接触したとき、治療剤は鼓膜へ透過して、中耳へ送達される。様々な態様において、鼓膜を越える送達は、何日もかける治療剤の持続放出である。鼓膜と接触し得る日数は、これらに限定されないが、5日間、7日間、10日間、14日間、21日間、または30日間であり得る。組成物は処置過程中、単回適用されても、繰り返し適用されてもよい。様々な側面において、組成物は、約1日毎から約7日間毎まで、約1日毎から約14日間毎まで、または約1日毎から約30日間毎まで、定期的に投与されてもよい。様々な態様において、組成物は、耳垢の押出と同様に自然のプロセスを介して、処置の終了時に対象から自然に押し出される。ある態様において、組成物は天然に崩壊することもあり、その分解産物は対象によって排出されてもよい。様々な態様において、本明細書に記載の組成物の投与は、マトリックス形成剤、透過促進剤、および治療剤を外耳道へ入れること(adding);次いで、第2治療剤を外耳道へ入れること;ならびに、マトリックス形成剤、透過促進剤、および治療剤を外耳道上で混合することを含む。ある態様において、第2治療剤は、麻酔薬である。ある態様において、第2治療剤は、局所麻酔薬である。
【0166】
様々な態様において、本明細書に記載の組成物の投与は、マトリックス形成剤を外耳道へ入れること;透過促進剤を外耳道へ入れること;治療剤を外耳道へ入れること;ならびに、マトリックス形成剤、透過促進剤、および治療剤を外耳道上で混合することを含む。様々な態様において、本明細書に記載の組成物の投与は、マトリックス形成剤を外耳道へ入れること;透過促進剤を外耳道へ入れること;治療剤を外耳道へ入れること;追加の治療剤を外耳道へ入れること;ならびに、マトリックス形成剤、透過促進剤、および治療剤を外耳道上で混合することを含む。ある態様において、外耳道へ、治療剤を入れることおよび透過促進剤を入れることは、外耳道中へ、治療剤を噴霧することおよび透過促進剤を噴霧することを含む。
【0167】
様々な態様において、本明細書に記載の組成物の投与は、治療剤を外耳道へ入れること;透過促進剤を外耳道へ入れること;マトリックス形成剤を外耳道へ入れること;ならびに、マトリックス形成剤、透過促進剤、および治療剤を外耳道上で混合することを含む。様々な態様において、本明細書に記載の組成物の投与は、治療剤を外耳道へ入れること;追加の治療剤を外耳道へ入れること;透過促進剤を外耳道へ入れること;マトリックス形成剤を外耳道へ入れること;ならびに、マトリックス形成剤、透過促進剤、および治療剤を外耳道上で混合することを含む。ある態様において、外耳道へ、治療剤を入れることおよび透過促進剤を入れることは、外耳道中へ、治療剤を噴霧することおよび透過促進剤を噴霧することを含む。ある態様において、治療剤は、抗生物質または麻酔剤である。ある態様において、治療剤は、抗生物質である。ある態様において、治療剤は、麻酔剤である。ある態様において、透過促進剤は、ブピバカインである。
【0168】
様々な態様において、本明細書に記載の組成物の投与は、1種以上の治療剤、1種以上の透過促進剤、および1種以上のマトリックス形成剤を包含する組成物を外耳道へ入れること;ならびに続いて、治療剤を含まないかまたは1種以上の治療剤を含み、透過促進剤を含まないかまたは1種以上の透過促進剤を含み、かつマトリックス形成剤を含まないかまたは1種以上のマトリックス形成剤を含む組成物を外耳道へ入れることを含む。ある態様において、1種以上の治療剤のこれに続く添加は、1種以上の治療剤の第1の添加と同じ治療剤を含む。ある態様において、1種以上の治療剤のこれに続く添加は、1種以上の治療剤の第1の添加とは異なる治療剤を含む。ある態様において、透過促進剤のこれに続く添加は、透過促進剤の第1の添加と同じ透過促進剤を含む。ある態様において、透過促進剤のこれに続く添加は、透過促進剤の第1の添加とは異なる透過促進剤を含む。ある態様において、マトリックス形成剤のこれに続く添加は、マトリックス形成剤の第1の添加と同じマトリックス形成剤を含む。ある態様において、マトリックス形成剤のこれに続く添加は、マトリックス形成剤の第1の添加とは異なるマトリックス形成剤を含む。ある態様において、第1の組成物と第2の組成物とを入れる間の時間間隔は、約1分である。ある態様において、第1の組成物と第2の組成物とを入れる間の時間間隔は、1分未満である。ある態様において、第1の組成物と第2の組成物とを入れる間の時間間隔は、1分より長い。
【0169】
ある態様において、用量は、感染の部位に必要とされる最小阻害濃度に基づき決定される。具体的な理論には拘束されずに、様々な側面において、H. influenzaeまたはS. pneumoniaeの中耳感染への最小阻害濃度は、シプロフロキサシンが約4μg/mLである。様々な側面において、典型的な用量は、3mLという平均中耳体積に基づき、およそ12μgのシプロフロキサシンを要するであろう。様々な態様において、組成物は、12μのシプロフロキサシンを中耳へ送達するのに充分な用量を含むであろう。
【0170】
具体的な理論には拘束されずに、様々な側面において、H. influenzaeまたはS. pneumoniaeの中耳感染に関連する疼痛を処置するのに要される最小投薬濃度は、ブピバカインが約0.36μg/mLおよび/またはテトロドトキシンが約0.32μg/mLである。様々な側面において、H. influenzaeまたはS. pneumoniaeの中耳感染に関連する疼痛の処置が(例として、切開された鼓膜を使用する透過実験の最中の中耳側上で、または中耳において)達成される最小投薬濃度は、ブピバカインが約8μg/mL(約25μM)および/またはテトロドトキシンが約0.3ng/mL(約1nM)である。
【0171】
様々な側面において、組成物の投与は、単回適用を含む。他の側面において、組成物の投与は、複数回適用を含む。例えば、組成物は、2回、3回、4回、またはこれより多くの回数で投与されてもよい。ある態様において、組成物は、所望の臨床成果が達成される(例えば、感染症が消散される)まで、繰り返し投与される。ある態様において、組成物の投与は、第1の組成物の投与、これに続き、ある期間後の第2の組成物の投与を含む。ある態様において、第1の組成物の投与と第2の組成物の投与との間の期間は、1週間である。ある態様において、第1の組成物の投与と第2の組成物の投与との間の期間は、1週間より長い。ある態様において、第1の組成物の投与と第2の組成物の投与との間の期間は、1カ月である。ある態様において、第1の組成物の投与と第2の組成物の投与との間の期間は、1カ月より長い。様々な態様において、本明細書に記載の組成物の投与は、局所麻酔薬がない組成物の外耳道への第1の投与;これに続き、局所麻酔薬がない組成物の外耳道への第2の投与を含む。ある態様において、本明細書に記載の組成物の投与は、局所麻酔薬がない組成物の外耳道への第1の投与;これに続き、局所麻酔薬がない組成物の外耳道への第2の投与を含む。
【0172】
様々な態様において、本明細書に記載の組成物の投与は、局所麻酔薬がない組成物の外耳道への第1の投与;これに続き、局所麻酔薬以外の透過促進剤がない組成物の外耳道への第2の投与を含む。ある態様において、本明細書に記載の組成物の投与は、局所麻酔薬がない組成物の外耳道への第1の投与;これに続き、局所麻酔薬以外の透過促進剤がない組成物の外耳道への第2の投与を含む。ある態様において、第1に投与される組成物と第2に投与される組成物とが、同じである。ある態様において、第1に投与される組成物と第2に投与される組成物とは、異なっている。
【0173】
本明細書に提供されるのは、本開示の組成物を対象の鼓膜の表面へ送達する方法である。ある態様において、対象は、耳疾患を有する。いくつかの態様において、対象は、中耳炎を有する。いくつかの態様において、対象は、ヒトである。ある態様において、対象は、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、またはヤギなどの飼育動物である。
【0174】
ある態様において、送達する方法は、組成物を、アプリケーター(applicator)を介して外耳道中へ投与することを含む。ある態様において、送達する方法は、組成物の点滴剤を外耳道中へ配置すること(placing)を含む。いくつかの態様において、点滴剤は、点滴器(例として、ピペット、点眼器)から送達される。いくつかの態様において、点滴剤は、シリンジによって送達される。シリンジは、針、硬いカテーテル、または柔らかいカテーテルへ取り付けられてもよい。ある態様において、送達する方法は、組成物を内耳へ送達するために、正円窓膜上に組成物を投与することを含む。
【0175】
ある態様において、送達する方法は、ある用量の(a dose of)組成物を、カテーテルを使用して外耳道中へ配置することを含む。いくつかの態様において、カテーテルは、シリンジへ取り付けられる。いくつかの態様において、カテーテルは、硬い。いくつかの態様において、カテーテルは、柔らかい。ある態様において、送達する方法は、ある用量の組成物を、針を使用して外耳道中へ配置することを含む。いくつかの態様において、針は、シリンジへ取り付けられる。いくつかの態様において、針は、丸い先端(blunt tip)を有する。
【0176】
ある態様において、送達する方法は、組成物の用量を、ダブルバレルシリンジを使用して外耳道中へ配置することを含む。ダブルバレルシリンジは、組成物の2種の構成要素を保持する(keep)ために、2種の構成要素の混合が投与の最中に(例として、in situで)生じるまで使用されてもよい。いくつかの態様において、ダブルバレルシリンジは、単一のカテーテルまたは針へ取り付けられる。いくつかの態様において、ダブルバレルシリンジの各バレルは、別々の針またはカテーテルへ取り付けられる。
【0177】
ある態様において、感染性疾患または耳疾患を処置する方法は、対象へ組成物を投与するよう指示すること、または組成物の自己投与のための指示を対象へ提供することを含む。
【0178】
別の側面において、本明細書に提供されるのは、対象におけるバイオフィルムを根絶する方法であって、前記方法は、本明細書に記載の組成物を、これを必要とする対象へ投与することを含む。別の側面において、本明細書に提供されるのは、バイオフィルムを根絶する方法であって、前記方法は、バイオフィルムを本明細書に記載の組成物と接触させることを含む。
別の側面において、本明細書に提供されるのは、対象におけるバイオフィルムの形成を阻害する方法であって、前記方法は、本明細書に記載の組成物を、これを必要とする対象へ投与することを含む。別の側面において、本明細書に提供されるのは、バイオフィルムの形成を阻害する方法であって、前記方法は、表面を本明細書に記載の組成物と接触させることを含む。
【0179】
別の側面において、本明細書に提供されるのは、疾患もしくは疾病(例として、感染性疾患、耳疾患、細菌感染症、疼痛)および/または疾患に関連する疾病(例として、感染性疾患、耳疾患、細菌感染症に関連する疼痛)の処置および/または予防を、これを必要とする対象においてするための、本明細書に記載の組成物の使用であって、使用は、治療的に有効な量の本明細書に記載の組成物を対象へ投与することを含む。ある態様において、提供されるのは、疼痛を処置するための本明細書に記載の組成物の使用であって、使用は、治療的に有効な量の本明細書に記載の組成物を対象へ投与することを含む。
【0180】
キット
本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の組成物のいずれも含むキットであるが、前記キットは加えて、滅菌パッケージング中の組成物を含んでいてもよい。本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の組成物またはマトリックス形成剤のいずれも含むキットであるが、前記キットは加えて、滅菌パッケージング中の組成物またはマトリックス形成剤を含んでいてもよい。キットは、二部のマトリックス形成剤のための2つの容器を含んでいてもよい。治療剤は、マトリックス形成剤の片方の容器中もしくは両方の容器中に包含されていてもよく、または治療剤は、個別にパッケージングされていてもよい。透過促進剤は、マトリックス形成剤の片方の容器中もしくは両方の容器中に包含されていてもよく、または透過促進剤は、個別にパッケージングされていてもよい。様々な側面において、キットは、瓶(単数または複数)、および各瓶への点滴器またはシリンジを含んでいてもよい。ある態様において、キットは、本明細書に記載の疾患(例として、耳疾患、感染性疾患、細菌感染症)、疾病(例として、疼痛)、および/または疾患に関連する疾病(例として、耳疾患、感染性疾患、細菌感染症に関連する疼痛)を処置するために使用される。
【0181】
ある態様において、キットは、1以上の点滴器(例として、ピペット、点眼器)を含む。ある態様において、キットは、1以上のシリンジを含む。いくつかの態様において、シリンジは、組成物または組成物の1種以上の構成要素で予め充填されている(pre-loaded)。ある態様において、キットは、1以上の針(例として、丸い先端の針)を含む。ある態様において、キットは、1以上のカテーテル(例として、柔らかいカテーテル)を含む。
【0182】
ある態様において、キットは、ダブルバレルシリンジを含む。いくつかの態様において、ダブルバレルシリンジは、組成物の2種の構成要素で予め充填されている。いくつかの態様において、ダブルバレルシリンジは、単一のカテーテルまたは針へ取り付けられている。いくつかの態様において、ダブルバレルシリンジの各バレルは、別々の針またはカテーテルへ取り付けられている。
【0183】
ある態様において、本明細書に記載のキットはさらに、本開示の方法においてキットを使用するための指示(例として、本明細書に記載の化合物または医薬組成物を対象へ投与するための指示)などのキットを使用するための指示を包含する。本明細書に記載のキットはまた、米国食品医薬品局(FDA)などの規制当局によって要求されるとおりの情報をも包含していてよい。
【0184】
例
本開示がより完全に(fully)理解されるために、以下の例を明記する(set forth)。本出願に記載の合成例および生物学的な例は、本明細書に提供される化合物、医薬組成物、および方法を説明するために用意した(offered)ものであって、形はどうあれそれらの範囲(scope)を限定するものとして解釈するべきではない。
【0185】
例1.レオロジー。
例示の組成物を、ゲル化および通針性(syringeability)に関しての好ましい特性について分析した。貯蔵弾性率(G')および損失弾性率(G'')を包含するレオロジーデータを、組成物の温度範囲にわたってプロットした。経鼓膜および生体適合性の実験もまた実施した。
【0186】
合理的なゲル化および通針性の特性を伴う例示の実行可能な組成物は、以下の組成物を包含する:12%PBP-1%SDS-0.5%BUP-10%LIM、12%PBP-1%SDS-1%BUP-10%LIM、12%PBP-5%SDS-1%BUP-4%LIM、12%PBP-10%SDS-0.5%BUP-10%LIM、12%PBP-10%SDS-1%BUP-10%LIM、12%PBP-20%SDS-1%BUP-4%LIM、15%PBP-1%SDS-0.5%BUP-10%LIM、15%PBP-1%SDS-1%BUP-10%LIM、15%PBP-5%SDS-0.5%BUP-4%LIM、15%PBP-5%SDS-1%BUP-4%LIM、15%PBP-10%SDS-0.5%BUP-1%LIM、15%PBP-10%SDS-1%BUP-1%LIM、10%PBP-1%SDS-0.5%BUP-4%LIM、10%PBP-5%SDS-0.5%BUP-4%LIM、10%PBP-5%SDS-1%BUP-4%LIM、18%PBP-1%SDS-0.5%BUP-4%LIM、18%PBP-1%SDS-1%BUP-4%LIM、および18%PBP-5%SDS-0.5%BUP-4%LIM。組成物の各々は、パーセンテージ重量/volとして提供される。
図1~6を参照。
【0187】
例2.製剤およびゲル化、通針性、貯蔵弾性率、およびゲル化温度に関連した特性。
表1.組成物の製剤の最適化についてのデータ概要、群1。
【表1-1】
【表1-2】
X:通針性試験結果は1から5までに及ぶが、ここで1は、良好な通針性であり(例として、目詰まりなく軟性カテーテルを通して液体として通針可能(syringeable)であり得)、および5は、不良な通針性である(例として、目詰まりなく軟性カテーテルを通した液体としての通針能(ability to be syringeable)が低い)
【0188】
表2.例示の組成物の製剤の最適化についてのデータ概要、群2。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
X:通針性試験結果は1から5までに及ぶが、ここで1は、良好な通針性であり(例として、目詰まりなく軟性カテーテルを通して液体として通針可能(syringeable)であり得)、および5は、不良な通針性である(例として、目詰まりなく軟性カテーテルを通した液体としての通針能(ability to be syringeable)が低い)
【0189】
表3.例示の組成物の製剤の最適化についてのデータ概要、群3。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
X:通針性試験結果は1から5までに及ぶが、ここで1は、良好な通針性であり(例として、目詰まりなく軟性カテーテルを通して液体として通針可能(syringeable)であり得)、および5は、不良な通針性である(例として、目詰まりなく軟性カテーテルを通した液体としての通針能(ability to be syringeable)が低い)
【0190】
表4.例示の組成物の製剤の最適化についてのデータ概要、群4。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
X:通針性試験結果は1から5までに及ぶが、ここで1は、良好な通針性であり(例として、目詰まりなく軟性カテーテルを通して液体として通針可能(syringeable)であり得)、および5は、不良な通針性である(例として、目詰まりなく軟性カテーテルを通した液体としての通針能(ability to be syringeable)が低い)
【0191】
それらのポリマー濃度(例として、10%PBP、12%PBP、15%PBP、18%PBP;ここで「PBP」は、ポロキサマー407-ポリ(ブトキシ)ホスホエステルである)に基づき分類されている各群(群1、2、3、および4の各々)において32個の例示の組成物の製剤がある。各群は、32個の組成物の製剤を含有し、次いでSDSの濃度(例として、1%SDS、5%SDS、10%SDS、20%SDS)に基づき4個の下位群に分けられている。したがって、各下位群内には8個の製剤がある。これらの下位群は、次いで最初にそれらのブピバカイン濃度(低濃度から高濃度へ、下位-下位群)に従って分けられ、次いでそれらのリモネン濃度(低濃度から高濃度へ)に従って配置される。したがって、各下位-下位群は、PBP、SDS、およびブピバカイン濃度が同じであるが、リモネン濃度が異なる4個の製剤から構成される。各下位-下位群内にて、最も高いリモネン濃度を有する製剤でかつレオロジーを実施するための以下の条件を満たすものを選択した。
【0192】
選択条件は、以下である:(A)室温にて液体である(表1~4中の4列目);(B)体温にて固体である(表1~4中の5列目);および(C)室温にて良好な通針性(表1~4中の6列目)。合理的に実行可能な例示の組成物は、表1~4中で斜字体にて表示される。これらの例示の組成物のレオロジーデータは、表の最右の2列中に提供される。
【0193】
レオロジーを実施した試料の中で、以下の条件を満たすものがex vivo実験(経鼓膜の透過性を試験する)のために選択された:(1)室温より上でありかつ体温より下であるゲル化温度(表1~4中の最後の列);(2)体温での貯蔵弾性率は、100Paを超える(表1~4中の最後から2列目)。(3)下位群(例として、同じPBPおよびSDS濃度を有する2個の製剤)において、上の(1)および(2)の両方を満たす、2個の製剤がある場合、より高いブピバカイン濃度を有するもののみを選び取る。選択された例示の製剤(十分に機能している(well-performing)製剤)を、表1~4中で斜字体にて標識する。4個の十分に機能している製剤を、本明細書に記載のデータに基づき選択した。
【0194】
表1~4中のデータについての実験手順
上の表1~4中のテータを生成するための実験手順は、以下のとおりである。表1~4中の4列目についてのデータを決定するために、製剤を、実験室周囲条件(~20℃から25℃)下にて1~5分間バイアル中で保った。次いでバイアルをひっくり返した。製剤がバイアルの側壁に流れ落ちた場合は、次いでそれを液体とみなした。表1~4中の5列目についてのデータを決定するために、製剤を含有するバイアルを、37℃の水浴に30秒間沈めた。次いでバイアルをひっくり返した。製剤がバイアルの(逆さまにひっくり返された)底にとどまった場合は、次いでそれをゲルとみなした。表1~4中の6列目についてのデータを決定するために、(氷上に保った)製剤を1mlシリンジ内に引き入れた。次いで、18ゲージ、1.88インチ軟性カテーテルを各シリンジに取り付け、製剤を(実験室周囲条件下に保たれた)ガラス表面上にカテーテルを通して押し出した。押し出された材料が受ける表面上に液滴を形成した場合は、次いでそれを通針可能であるとみなした。押し出された材料が棒状に成形された固体を形成した場合は、次いで製剤を通針可能ではないとみなした。
【0195】
表1~4中の最後2列中のデータを以下の条件を使用して、レオロジー測定から算出した:10~40℃の温度範囲にわたる貯蔵および喪失弾性率を、線形振動せん断レオロジーを使用した温度ランプ/スイープモード(ramp/sweep mode)において測定した。毎秒100radの振動速度、1%の変形ひずみ速度、および1℃/分の温度傾斜率(ramping rate)を使用した。ゲル化温度を、損失弾性率よりも大きくなる温度とみなした。
【0196】
例4
ここで、TMにわたって局所麻酔薬を送達するためのこの経鼓膜薬物送達系の使用もまた研究された。CPEとして固有の活性を有することが見出されている、現在の臨床用途における両親媒性アミノ-アミド局所麻酔薬である、ブピバカインが研究された。ブピバカインと同じナトリウムチャネルを異なる部位で遮断し、および過度に強力な局所麻酔活性を有する極めて親水性の化合物である、テトロドトキシン(TTX)もまた研究された。ブピバカインおよびTTXは、組み合わせて与えられたときに、互いの麻酔効果を強く増強することが知られている15~17。
【0197】
材料
2-クロロ-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホラン(COP)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、n-ブタノール、ジエチルエーテル、酢酸、無水ジクロロメタン、無水テトラヒドロフラン、SDS、LIM、およびUS医薬品グレードのBUPおよびブピバカイン遊離塩基(BUP-fb)をSigma-Aldrich(St. Louis、MO)から受け取ったとおりに使用した。US医薬品グレードのTTXをAbcam Inc.(Boston、MA)から受け取ったとおりに使用した。微粒化された(micro-prilled)(微粒子にペレット化した)US医薬品グレードのKolliphor(登録商標)P407を、BASF(Florham Park、NJ)から受け取った。
【0198】
動物の維持
500~650gの重量の健常な成体のオスのチンチラを、Ryerson Chinchilla Ranch(Plymouth、OH)から購入し、制度的におよび全国的に承認されたプロトコルに従って世話をした。実験は、Boston Children’s Hospitalの動物使用ガイドラインに従って実行され、動物実験委員会によって承認された。
【0199】
ブトキシ-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホラン(BP)の合成
BPをこれまでに報告されたとおりに調製した14。手短に言えば、BPをCOPおよびn-ブタノールの縮合反応によって合成した。無水THF(50mL)中のCOP(5.0g、35mmol)を、無水THF(100mL)中のn-ブタノール(2.6g、35mmol)およびトリメチルアミン(3.9g、39mmol)の撹拌溶液に、0℃で液滴にて添加した。反応混合物を、THF中のCOPの添加の完了に際し、氷浴中で12時間撹拌した。COPの変換の完了の際に、反応混合物をろ過し、濾過物を濃縮した。濃縮した濾過物を、低減された真空下での真空蒸留によって精製し、粘性の無色の液体を生じた。
【0200】
P407-PBPの合成
P407-PBPをこれまでに報告されたとおり14、-20℃で有機分子触媒であるDBUの存在下での、マクロ開始剤としてP407を用いたBPの開環重合(ROP)によって合成した18。無水ジクロロメタン(DCM、0.5mL)中のP407(8.1g、0.56mmol)およびBP(1.0g、5.6mmol)を、撹拌子を備えたフレームドライした(flame dried)シュレンクフラスコ(10mL)に添加した。反応混合物を、飽和NaCl溶液を含む氷浴中に浸しながら、窒素ガスで5分間フラッシュした。無水DCM中のDBU(0.13g、0.84mmol)の溶液を、窒素ガス雰囲気下で反応を維持しながら、シリンジを介して液滴で撹拌溶液に添加した。反応の完了の際に、過剰量のDCM中の酢酸を反応混合物に添加し、反応物をクエンチした。産物をエーテル中への沈殿(3回)によって精製し、真空下で乾燥して、白色粉末産物を得た。
【0201】
ヒドロゲル形成
12%(w/v) P407-PBPヒドロゲル製剤の溶液を、粉末状ポリマーの蒸留された脱イオン水への添加および低温室での単純な溶解によって作製し、P407-PBPのよりよい可溶性を可能とした。SDS、および/またはLIM、および/またはBUP、および/またはTTXを、12%(w/v) P407-PBPの溶液に添加し、および少なくとも4時間低温室で溶解させた。TTXヒドロゲル製剤は、柑橘類バッファー(citrus buffer)で作製されており、TTX可溶性を増強している。
【0202】
In vitro放出研究
各製剤からのBUPまたはTTXの放出を、拡散系を使用して測定した。Transwell(登録商標)膜インサート(0.4μm孔径、1.1cm2の面積;Costar、Cambridge、MA)および24ウェル培養プレートを、夫々ドナーおよびアクセプターチャンバーとして用いた。200μLの各製剤を、予め加温したフィルターインサート上に直接ピペットでとり、固体ヒドロゲルを得た。形成されたゲルを含むフィルターインサート(ドナー区画)を、予め加温したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で満たしたウェル(アクセプター区画)中で懸濁し、次いでプレートを37℃インキュベーター中に保った。各時点(0.5、1、2、6、12、24、48時間)で、1mLアリコートのPBS受入れ培地(PBS receiving media)をサンプリングし、インサートを新たなPBSを含む新しいウェル中に順次移動した。アリコートを70:30アセトニトリル/PBS中で懸濁し、合計薬物溶出を保証した。試料アリコートを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いてクロマトグラフ的に分析し、BUP濃度(波長λ=254nmでの吸光)を決定した;またはREAGEN(商標)TTX Elisa検査キット(Reagen LLC.Collingswood、NJ)を用いて分析し、TTX濃度を定量した。実験を4重(quadruplicate)で実施した。
【0203】
Ex vivo透過実験
BUPおよび/またはTTXの経鼓膜透過率を、健常なチンチラから採取した耳骨胞を用いて決定した。チンチラを、ケタミン(30mg/kg)およびキシラジン(4mg/kg)の筋肉内投与による深い全身麻酔下に置き、次いでペントバルビタール(100mg/kg)の心臓内投与で安楽死させた。安楽死させた動物を断頭し、耳骨胞を鼓室輪がいまだに取り付けられたままで、無傷で取り除いた。それらの完全性を、TMを上がドナー溶液および下がレシピエント溶液である12ウェルプレート中に水平に位置する設定において、それらの電気インピーダンス(抵抗力≧18kOhm*cm2;これまでに決定された値によって示される13)を測定することによって査定した。TMを変形させるかまたは破裂させるであろう、従来の拡散セルの代わりに同じ設定を、薬物流動を測定するために使用した。すべての製剤を、37℃に保たれた骨胞中に適用し、TM上に沈殿させた。BUPの濃度は、0.5~15%の範囲をとり、および適用された体積は、1~30mgのBUPに換算される200μLであった。TTXの濃度は、0.02%~0.32%(TTXの可溶性限界)であり、および適用される体積は、0.03~0.64mgのTTXに換算される200μLであった。受入れチャンバー(receiving chamber)中のBUPおよびTX濃度を、ヒドロゲル化合物の投与の0.5、1.0、2.0、6.0、12、24および48時間後に測定した。TMを越えて受入れチャンバー内へのBUPおよび/またはTTXの透過を、HPLCまたはTTX Elisaキットを使用して定量した。TMの採取、TMの電気耐性測定、およびex vivo透過実験の構成に関する詳細な情報は、参照中に見出すことができる13。
【0204】
組織病理学
麻酔薬およびCPEを含有するヒドロゲル製剤を、健常なチンチラの外耳道に投与した。24時間後から7日後に、上に記載のとおりそれらを安楽死させた。サクリファイスに続き、上に記載のとおり骨胞を切除し、TMおよび外耳道の試料を得た。切除された組織を10%ホルマリンで即時に終夜固定し、次いで脱灰し、パラフィン中に包埋し、薄片(厚さ10um)にして、およびヘマトキシリンおよびエオジンで染色した。すべての染色された標本を、盲検様式における光学顕微鏡法によって評価した。
【0205】
統計分析
ex vivo実験のために、各製剤について4個の試料サイズを選択し、このことはノンパラメトリックフリードマン試験(バージョン7.0、nQuery Advisor、Statistical Solutions、Saugus、MA)を使用した検出力分析に基づき流動における50%の差異を検出するための80%検出力を提供する。統計分析を、Origin 8ソフトウェア(バージョン9.2、SAS Institute、Cary、NC)を使用して行った。データを中央値(第1四分位数~第3四分位数)として提示した。
【0206】
中耳液中の仮定の薬物レベルの計算
以下の仮定を、in vivoで達成するであろうブピバカインおよびTTXの中耳濃度を計算するために作成した:(1)AOMにおいては中耳液の排液が耳管粘膜の炎症によって妨げられているために、体液代謝回転率は、AOM患者の中耳中でゼロ(すなわち中耳液が補充されていない)である19;(2)周囲の中耳粘膜による吸収、細菌および酵素による消化等々に起因した薬物濃度の変化は無視できるほどである;(3)ヒト中耳の平均容量は、~0.45mLである20;(4)受入れチャンバーの容量が3mLであるex vivo実験中に適用された無限シンク条件は、ヒト中耳容量の0.45mLにもなお当てはまる。
【0207】
いずれかの時点でのTMを通過した測定された薬物の累積質量を、ヒト中耳の容量(0.45mL)で割って、所与の製剤によって達成され得る濃度を提供した。
【0208】
結果
要旨および製剤の命名法
ヒドロゲル製剤を、12%(w/v)でのペンタ-ブロックコポリマーP407-PBPの水性溶液に、追加のCPEの有無にかかわらず、局所麻酔薬BUP[0.5~15%(w/v);4%(w/v)を超える濃度は懸濁液であり、下付きのsuspで標識した]および/またはTTX[0.02~0.32%(w/v)]の有無にかかわらず作製した。CPEを添加したとき、組成物は2%(w/v)LIMを含む1%(w/v)SDSであった;この組み合わせを2CPEと称した。ゲルをx%BUP(susp)-y%TTX-2CPE-[P407-PBP]と称し、ここでxおよびyは、夫々BUPおよびTTXの体積パーセント濃度による重量である。室温にてシリンジから容易に押し出され、および体温にて迅速にゲル化するので14、12パーセントのP407-PBPをこの作業を通してずっと使用した。(後者の特性は、じっとしていることを好まない歩き始めの子供に材料を適用するときに重要であるだろう。ヒドロゲルは、TMのCPEおよび麻酔薬への連続的な曝露のために必要である14。)構成要素が製剤中にない場合は、上の命名法からは省かれた。他に特定されない限りは、すべてのパーセンテージは、体積パーセントによる重量である。
【0209】
純粋なLIM中に溶解したBUPを含有する製剤は、x%BUP-LIMと称され、ここでxはBUPの体積パーセント濃度による重量であった。
【0210】
P407-PBPを、報告されるとおりに開環重合により合成した14。核磁気共鳴(NMR)は、PBP部分の存在を確認し、PBP部分の重合度が5であると決定した。フーリエ変換赤外分光(FTIR)は、ペンタ-ブロックコポリマーP407-PBPの合成が成功したことを確認した。
【0211】
経鼓膜透過率に対するBUP濃度の効果
BUPの経鼓膜透過率を、これまでに報告されたex vivoの方法を使用して査定した
14。手短に、TMを越えての薬物輸送を、健常なチンチラから切除した耳骨胞を使用して37℃にて研究した。200μLの麻酔製剤(ドナー溶液)を、TMのある表面上に置き(詳しくは方法を参照)および3mLのPBS(レシピエント溶液)内への流動を経時的に測定した(
図7)。
【0212】
BUP-2CPE-[P407-PBP]製剤からのTMを越えてのBUPの流動を、0.5%~15%の範囲をとるBUP濃度において研究した(
図7)。BUPは、最大2%までの濃度でのみ水に可溶性であり、および最大4%までの濃度でのみ12%[P407-PBP]溶液に可溶性であることに留意する。したがって、7.5%BUP
susp-2CPE-[P407-PBP]および15%BUP
susp-2CPE-[P407-PBP]の製剤は、溶解した、および固体のBUPの懸濁液であった。BUPの流動は、BUP濃度が最大で~7.5%まで増大するに伴い、連続的に増大した。
【0213】
6時間で、2CPEの存在下でのTMを越えてのBUP透過は、0.5%BUP-2CPE-[P407-PBP]について約1.5μg(1.1~1.9μg)であった(
図7)。0.5%から1%までBUP濃度を増加させることは、BUPの経鼓膜流動を約28倍改善し、42.7μg(27.4~71.7μg)の6時間BUP累積透過を生じた。2%または4%までBUP濃度をさらに増加させることは、BUP流動においてさほど改善を生じず、2%BUP-2CPE-[P407-PBP]は51.0μg(35.3~68.1μg)を達成し、4%BUP-2CPE-[P407-PBP]は48.0μg(43.9~51.2μg)を達成した。懸濁液である7.5%BUP
susp-2CPE-[P407-PBP]は、6時間BUP累積透過を141.1μg(85.6~168.8μg)までさらに増加させた;15%BUP
susp-2CPE-[P407-PBP]を用いてのさらなる増加はなかった[163.6μg(74.3~223.2μg)]。
【0214】
48時間で、0.5%から1%までのBUP濃度を増加させることは、27.0μg(19.4~31.5μg)から208.1μg(127.7~340.8μg)までBUP流動を増加させ、それは8倍の増強であった(
図7B)。BUP濃度を2%までさらに増加させることは、BUP流動において、296.4μg(206.1~395.7μg)までの小さな増加を生じた。BUP濃度を再び4%までと倍にすることは、BUP流動において671.9μg(479.4~820.9μg)までとさらに2倍の増加を達成した。BUPの最大限の累積透過は、7.5%BUP
susp-2CPE-[P407-PBP]を用いて達成され、48時間で1251.2μg(971.5~1471.0μg)のTMを横断するBUPをもたらした。無傷のTMを越えて浸透したBUPの分量は、TM上に適用された合計BUPの~8.3%に相当した。7.5%から15%までBUP濃度を増加させることは、48時間透過のこれ以上の増強を生じなかった。
【0215】
経鼓膜透過率に対するTTX濃度の効果
TMを越えてのTTXの流動を、同じくex vivo方法によって評価した。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によるTTXの濃度(詳しくは方法を参照)。TTX-2CPE-[P407-PBP]中のTTXの濃度は、0.02%(0.5mM)から0.32%(10mM、
図8)まで変動し、0.32%(10mM)がTTXの溶解限度であった。
【0216】
6時間で、TTXの経鼓膜透過は、製剤中のTTX濃度とともに大まかに直線的に増加した(
図8B)。0.02%(0.5mM)から0.16%(5mM、すなわち10倍)までTTX濃度を増加させることは、0.2μg(0.2~0.3μg)から1.3μg(0.9~2.0μg)までとTTX透過性の6倍の増加をもたらした。0.16%(5mM)から0.32%(10mM)までTTX濃度を倍にすることは、1.3μg(0.9~2.0μg)から4.4μg(3.2~5.1μg)までとTTX透過性のさらなる3倍の増加をもたらした。48時間で、TTX濃度と経鼓膜透過性の間には線形相関が残存しており、0.02%TTX-2CPE-[P407-PBP]は、3.0μg(2.3~4.4μg)のTTXの累積透過につながり、および0.03%、0.16%、および0.32%TTX製剤は、夫々3、9および16倍の増強を達成した。
【0217】
BUPおよびTTXを組み合わせる製剤
BUPとTTXを組み合わせることは、麻酔効果を劇的に増強することが示されている
15~17,21。ここで、組み合わせ製剤中のBUPの濃度を、2%で固定した。同様の濃度が局所的に使用されているために、TTX濃度を0.03%(1mM)で一定に保った
22,23。BUPおよびTTXの経鼓膜透過性を、上に記載のex vivoモデルにおいて、2%BUP-0.03%TTX-[P407-PBP]および2%BUP-0.03%TTX-2CPE-[P407-PBP]から研究した(
図9)。
【0218】
6時間で、4.3μg(0.6~10.8μg)のみのBUPが2%BUP-0.3%TTX-[P407-PBP]からTMを越えて浸透した。製剤内に2CPEを組み込むことは、BUP経鼓膜透過の3倍の増加につながった。TTX透過に対する2CPEの増強効果は、はるかに大きく、0.1μg(0~0.2μg)から2.9μg(1.6~4.5μg)までの29倍であった。
【0219】
48時間で、2%BUP-0.3%TTX-[P407-PBP]によって達成されたBUPの累積透過は、~80.2μg(47.7~128.1μg)であり、適用された合計BUPの~2.0%であった(
図9A);TTXに対する累積透過は、~0.9μg(0.4~1.7μg)であり、適用された合計TTXの~1.4%であった(
図9B)。2CPEを組み込むことは、経鼓膜BUP透過を350.2μg(270.1~452.9μg)に増加させ、これはTM(
図9A)上に適用されたBUPの総量(4mg)の~8.8%であった。同じ期間中に、TMを越えて浸透した9.2μg(5.2~14.4μg)TTXは、適用されたTTXの総量(63.9μg、
図9B)の14.3%に相当した。2CPEの組み合わせは、BUPの透過性を4倍およびTTXの透過性を10倍に増加させた。
【0220】
テルペン系麻酔製剤
先行するセクションのすべてにおいて、ブピバカイン塩酸塩(BUP)を、その親水性のために使用して、麻酔薬ヒドロゲルを処方した。それでもなお、最も高い可溶性の濃度は4%であった。SDSおよび/またはLIM(2CPE)の濃度を夫々それらの溶解限度である20%および10%まで増加させることは、水におけるBUPの可溶性を改善しなかった。水におけるBUPの可溶性は、製剤のpHを3~9の範囲に調整することによって、塩形態のブピバカインの割合[より低いpHでより高い]およびより疎水性である遊離塩基の割合を変更することの影響を受けなかった。
【0221】
製剤中の可溶性のBUP濃度を増加させるために、ブピバカイン遊離塩基(BUP-fb)を代わりに使用し、純粋なLIMに溶解した。純粋なLIMを、その疎水性24、その証明された透過増強効果13,14,25、およびその局所適用へのFDA承認ステータス(-approved status)のために溶媒として選んだ。BUP-fbの溶解限度は、純粋なLIMにおいて~10%であり、これまでのところ確立された最も高い可溶性のブピバカイン濃度である。
【0222】
上のex vivo流動モデルにおいて10%BUP-fb-LIMを使用して、中耳内に送達されるBUP-fbの累積量は、0.5時間後に63.5μg(45.3~68.9μg)であった。中耳薬物レベルは、6および48時間後に3、および27倍に増加した(
図10)。10%BUP-fb-LIM[1709.8μg(1600.1~1742.5μg)]によって達成された経鼓膜薬物透過性は、15%BUP
susp-2CPE-[P407-PBP][1234.5μg(735.5~1633.8μg)]のそれと有意には異ならなかった。
【0223】
耳におけるin vivo生体適合性
耳における生体適合性を、健常なチンチラに製剤を含有する麻酔薬で処置し、これに続く処置された耳の組織病理学的評価によって試験した(実験の詳細についてセクション2.8を参照)。ヒドロゲル製剤について、処置の期間を、急性中耳炎についての典型的な処置期間である7日間に設定した2。10%BUP-fb-LIMについて、その時までの臨床的な見掛けの炎症反応のために、曝露時間を24時間に設定した。炎症性組織反応は、7日後に消失した。
【0224】
4%BUP-2CPE-[P407-PBP]または15%BUP
susp-2CPE-[P407-PBP]で7日間処置された動物において、TMのヘマトキシリン-エオシン染色された切片は、正常のものと同様に見えた(
図11)。炎症、壊死、または組織損傷は観察されなかった。その上、処置された動物の外耳道は、ヘマトキシリン-エオシン染色された切片における健常な耳道と同様に見えた(
図12)。切片は、正常な付属器構造/腺を覆う、炎症のない、正常な上皮(最外層)を示した。
【0225】
10%BUP-fb-LIMで24時間処置された健常なTMは、正常なものと同様に見えた(
図11)。しかしながら、重度の急性および慢性炎症反応を、処置された動物の外耳道において観察した(
図12)。炎症反応は、処置された動物の表皮および表皮下の層中のリンパ球、単球、および好中球からなった。加えて、10%BUP-fb-LIMを受けた動物は、それらの処置された耳を過度にひっかくなどの行動異常を示した。
【0226】
考察
ヒドロゲル薬物送達系は、持続的なやり方においてブピバカインおよびTTXの経鼓膜送達を達成した。麻酔薬、2%BUP-0.3%TTX-2CPE-[P407-PBP]の両方を含有する製剤は、48時間でTMを越えて350.2±102.7μgのBUPおよび9.2±5.2μgのTTXを送達した。それは、ブピバカインについての平均流動の~7.3μg/hおよびTTXについての平均流動の~0.2μg/hに相当する。
【0227】
上述の流動からヒトにおいて起こるであろう薬物濃度は、方法に記載されるとおり算出された。2%BUP-0.3%TTX-2CPE-[P407-PBP]への曝露の6時間後、薬物の累積流動は、中耳におけるブピバカイン濃度が0.03mg/mL(0.013mgの累積流動を0.45mLで割る;すなわち0.09mM)およびテトロドトキシン濃度6.4μg/mL(2.9μgの累積流動を0.45mLで割る;すなわち20μM)TTXに到達し得るようであった。48時間で、薬物濃度は、BUPについて~0.8mg/mL(0.35mgの累積流動を0.45mLで割る;すなわち3mM)およびTTXについて~0.02mg/mL(9.2μgの累積流動を0.45mLで割る;すなわち64μM)まで増加した。
【0228】
受入れチャンバーで測定された濃度は、組織全体を通して透過し、次いで出ていく薬物の産物であり、すなわちそれらは組織中の濃度を反映する。これらの濃度が局部の疼痛緩和を達成するかどうかを考慮するに、どの濃度が組織における局所麻酔をもたらすかを最初に考慮することが有用である。In vitroで、ブピバカインはKI=25μMでほとんどのナトリウム電流を阻害し26、および180μMの阻害濃度の中央値で活動電位の振幅を低減させる27;TTXの対応する値は、1~2nM28,29および5~6nM30である。受入れチャンバー中の濃度はすべて、in vitroで神経ブロックのために必要とされるナノ~マイクロモル濃度よりも高かった。ブピバカインについて、受入れチャンバー中の濃度もまた、動物において鎮痛を達成するために必要である血中(全身性)薬物濃度よりもはるかに高かった。0.36μg/mL(1.5μM)の血漿リドカイン濃度は、ラット神経障害性疼痛モデルにおいて鎮痛を達成した31;これは、ここで6時間にて達成されたブピバカイン濃度の1.2%、および48時間での濃度の0.05%であった。(加えて、ブピバカインは、リドカインよりも~4倍強力である32。)ここで6時間および48時間で達成されるTTXの濃度は、実際には神経周囲のブロックにおいて使用されるときに33,34神経ブロックを達成する濃度(数10μM)である。
【0229】
健常な動物からの鼓膜の代わりにここでOMを有する動物からの鼓膜を使用する場合に、ブピバカインおよびTTXのTMを越えての流動は、さらに大きくなる可能性がある。OMにおいて、鼓膜はまた、非常に厚くなるにもかかわらず、薬物流動に非常に大きな浸透性を有する様になる14。そのより大きな薬物流動は、中耳における薬物レベルを著しく増強し得る。
【0230】
その上、ブピバカインおよびTTXを共に送達する場合に、局所麻酔薬の効き目は大いに増強され得る15~17。ブピバカインなどの従来のアミノ-アミドまたはアミノ-エステル局所麻酔薬は、同じナトリウムチャネルを軸索の表面上の部位1と呼ばれる異なる部位で遮断する、テトロドトキシンなどの化合物と著しい相乗作用を有することが知られている。独立して相対的に有効ではないであろういずれかの化合物の濃度は、組み合わせて有効になり得る。その上、CPEは、テトロドトキシンの局所麻酔薬効果を、おそらく軸索表面への透過を増強することによって、増強させることが知られている35~37。
【0231】
リドカインなどの麻酔薬を含有する点耳薬の有効性は、物議をかもしており、および一時的なものである38;この不十分な性能は、鼓膜の周知な関門機能に起因している可能性がある12。透過障壁が克服され、治療的レベルのブピバカインおよびTTXが無傷の鼓膜を越えて送達された。加えて、ヒドロゲルは、耳痛がその最もひどい時間枠に及ぶ可能性のある長時間にわたって効果を延長させた。共送達(co-delivery)が効果の期間を著しく増強し得るために、これは従来の局所麻酔薬および部位1ナトリウムチャネル遮断薬の二重送達でさらにいっそう有効となる可能性があるだろう15~17,33。
【0232】
CPEがBUPおよびTTXの両方の経鼓膜流動を増加させたにもかかわらず、TTXの流動に対する効果(48時間で10倍の増加)は、BUP(48時間で4倍の増加)に対する効果よりもはるかに大きかった。このパターンは、坐骨神経でのそれらの化合物とCPEの共注射(co-injected)の効果を連想させた35:TTXによる神経遮断が、CPEによって著しく増強された一方で、BUPからのそれはそうではなかった。この差異についての理由は、極めて親水性であるTTXが生物学的障壁を透過することが非常に困難であり、それゆえにCPEの恩恵を受けるであろうことが考えられた。両親媒性であるBUPは、生物学的障壁を透過することの問題点も少なく、それゆえにCPEの恩恵も少ないであろう。
【0233】
10%BUP-fb-LIMは、ヒドロゲル製剤よりも大きな溶解薬物濃度を有したにもかかわらず、BUPの経鼓膜透過は同様であった。10%BUP-fb-LIMは、投与後6時間で中耳において~0.4mg/mL(1.2mM)のBUP濃度を達成した。10%BUP-fb-LIMは、耳道において10度の炎症反応を引き起こし、このことは製剤中の高いLIM濃度または高い遊離ブピバカイン濃度の結果であり得る。おそらくヒドロゲルの不在下において、動物が目覚めた時点で10%BUP-fb-LIMがTMから耳道(auditory canal)内に流れ出たために、炎症反応は、TMにおいては見られなかった。
【0234】
溶液であるブピバカインの濃度がおそらく同じであるために、7.5%BUPsusp-2CPE-[P407-PBP]などのブピバカインの懸濁液を含有するヒドロゲルが、4%BUP-2CPE-[P407-PBP]などのヒドロゲル溶液と比較して、ブピバカインの経鼓膜透過を48時間で2倍に増加させたことは興味深かった。懸濁液中の薬物が流動によって枯渇したときにTM表面上の遊離薬物の濃度を補充する薬物リザーバとして作用することが考えられる。
【0235】
同様のヒドロゲル送達系を使用して、経鼓膜薬物送達が、抗生物質シプロフロキサシンの検出可能な全身性(血液)分布をもたらさないことがこれまでに示されてきた14,39。おそらく、ブピバカインおよびTTXの経鼓膜送達もまた、全身性薬物分布をもたらさず、それゆえに局所麻酔薬の副作用を除去するだろう。この処置はまた、全身性(経口)鎮痛薬についての必要性およびそれらの潜在的な副作用を除去するであろう。
【0236】
温度感受性ヒドロゲルを、持続した疼痛の緩和を提供し、容易な投与を可能にするよう設計した。ヒドロゲル製剤は、他の規則的な点耳薬の様な外耳道を通じた投与のために室温下で溶液である;製剤は、温かなTMと接触する際に、その位置で急速にゲル化する。長時間にわたって局所麻酔を維持するために単一の適用のみが必要とされ、多用量が非協力的な若年の患者の間で乏しいコンプライアンスを引き起こし得るために、このことは有益である。
【0237】
局所の薬物送達系は、AOMを有する患者における単一の適用からの持続的な疼痛の緩和を提供するために送達される。一般的に使用されるアミノ-アミド麻酔薬であるブピバカインは、高度に強力な部位1ナトリウムチャネル遮断薬の麻酔薬であるTTXと同様に無傷のTMを越えて成功裏に送達された。ヒドロゲル系に組み込まれる化学的透過促進剤は、TMを越えてのBUPおよびTTXの透過性を大幅に増加させた。
【0238】
例3.
化学的透過促進剤(CPE)は、鼓膜を越えての抗生物質の流動を可能にし得る。ここで、CPE(ドデシル硫酸ナトリウム、リモネン、およびブピバカイン塩酸塩)の組み合わせが相乗的であるか、およびそれらがピークの薬物流動を増加させ得るかどうかを調査した。相乗作用を、アイソボログラムの分析および組み合わせ指標によって研究した。CPE濃度-応答(すなわちシプロフロキサシンの経鼓膜流動)曲線は、各CPE、CPEのペアについて構築されたアイソボログラム、および3つのペアすべてについて実証された相乗作用について構築する。効果サイズはより遅くで大きくなるにもかからず、相乗作用はより早く(6時間)でより遅い(48時間)時点ではるかに大きくなっている。相乗作用はまた、3つの薬物の組み合わせで実証された。CPEの組み合わせはまた、個々のCPEによって達成されるものを超えて達成できる最大限の薬物流動を大きく増加させる。
【0239】
導入
耳局所的薬物送達は、中耳への薬物投与のための経口治療法の有望な代替手段を提示する。無傷の鼓膜(TM)を越えての、および中耳に直接的な局所的送達の治療法は、全身性の有害作用(下痢、発疹、およびおそらくは中耳炎[OM]の処置のための経口の抗生物質によって引き起こされた抗生物質耐性[44])を最小化し、患者の治療へのアドヒアランスを改善し(低減された副作用およびしばしば非協力的な歩き始めの子供の長期にわたる処置についての必要性の除去に起因して)、したがっておそらくはよりよい治療的成果を達成し得る。しかしながら、非侵襲的な経鼓膜送達は、TMの不透過性に起因して、近年まではほとんど探求されていない[45,46]。[47,48]TMは、100μmの厚さの三層膜であり、その外層である角質層(SC)は、外耳道(external auditory canal)の皮膚と連続した角化重層扁平上皮であり、皮膚におけるそれと構造的に同様である。
【0240】
化学的透過促進剤(CPE)は、TMを越えての小分子治療法の流動を増強する有効な手段である。[45,46]その上、CPEの濃度の増加によって、増強は増加し得る。[49,50]CPEは、角質層において脂質二重層の構造的完全性を崩壊させて、治療法の拡散を増強することが知られている。[49]OMがCPEの組み合わせによって可能となるシプロフロキサシン(Cip)の経鼓膜送達によって処置され得ることは、これまでに実証されている。[45,46]しかしながら、CPEの組み合わせの利益は正式に、具体的に言うとそれらの効果が、真に相乗的であるか、または単に相加的であるかはいまだ実証されていない。相乗的な相互作用は、所与の効果を達成するために必要であるCPEの量を低減させる可能性があり、よって毒性をも低減させる可能性がある。
【0241】
関連のある重要な問題は、CPEの組み合わせが、ピーク効果を最大化する、すなわち障壁を越えての最大限の薬物流動のために使用され得るかどうかである。相対的に高い抗生物質濃度が、一般的なOMの病原体であるStreptococcus pneumoniaeなどのいくつかの細菌を処置するために必要とされるために、薬物流動の大きさは、OMを処置することにおいて特に重要である。[51,52]
【0242】
CPEの相互作用に対する先駆的な研究は、CPEが組み合わせられたときに、予期されるより高い透過増強を達成する可能性を実証している。[53~58]ここで、ここに注記されているCPE相互作用が相乗的であるかどうか[59]、またCPE組み合わせが達成され得るピーク効果を増加させるために使用され得るかどうかを確立するために正式な薬理学的アプローチを使用した。潜在的な相乗効果を、アイソボル分析[60,61]および組み合わせ指標[59,62,63]を使用した経鼓膜透過の増強においてポリマーマトリックス中に送達される3個のCPEの間で調査した(
図19)。
【0243】
界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、およびテルペンであるリモネン(LIM)を、それらが両方とも局所的使用についてFDAによって承認されたCPEであるために選んだ。[64]SDS(アニオン性界面活性剤)は、SCから脂質を引き抜き、角質細胞中のケラチンのタンパク質構造を変更させることによってSC透過性を増強し得る一方で、[65]LIM(テルペン)は、SC脂質を分割し、薬物分子のための経路を形成し得る。[66]相乗効果は、しばしば異なる機序による共通の現象に対して作用するプロセスとともに見出される。[53,66~68]臨床使用される局所麻酔薬ブピバカイン塩酸塩(BUP)を、OMに関連する疼痛を低減するであろうことから研究した。
【0244】
透過増強に対するSDS、LIM、BUP、およびそれらの組み合わせの効果は、健常なチンチラのTMを超えてのCipの透過性に対するそれらの効果を測定することによって明らかにされた。OMの処置のために中耳に局所的に投与されることをFDAで承認されているため、Cipを選択した。[69]CipおよびCPEを、これまでに報告されたヒドロゲルであるポロキサマー407-ポリブチルホスホエステル(P407-PBP)から送達した(
図19)。[45]その確固たる逆熱ゲル化挙動のために、P407-PBPをここで使用した。[45]ヒドロゲルをベースとした製剤は、室温にて容易に適用できる液体であり、および温かなTMに接触する際に急速に、および堅固にゲル化し、透過性測定を通してずっと決まった位置(すなわちTM上)に抗生物質およびCPEを保持する。
【0245】
ヒトTMとのそれらの確立された構造的類似性のために、チンチラTMをここでモデル系として使用した[70]。チンチラTMとヒトTMとの間の主な差異は、後者が、はるかに厚いヒトのものであるということである[45,71]。それでもなお、ここで辿り着いた結論は、なお以下のためにヒトTMに影響しそうである;a)2つの種におけるTMは、構造的に同様であり、およびb)CPEは、ヒトの皮膚などのはるかに厚い構造体にさえそれらの効果を有し得る。
【0246】
材料および方法
材料
2-クロロ-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホラン(COP)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、n-ブタノール、ジエチルエーテル、酢酸、無水ジクロロメタン、無水テトラヒドロフラン、SDS、LIM、およびUS医薬品グレードのCipおよびBUPを、Sigma-Aldrich(St. Louis、MO)から受け取ったとおりに使用した。微粒化された(微粒子にペレット化した)Kolliphor(登録商標) P407をBASF(Florham Park、NJ)から受け取った。
【0247】
動物の維持
500~650gの重量の健常な成体のオスのチンチラを、Ryerson Chinchilla Ranch(Plymouth、OH)から購入し、制度的におよび全国的に承認されたプロトコルに従って世話をした。実験は、Boston Children’s Hospitalの動物使用ガイドラインに従って実行され、動物実験委員会によって承認された。
【0248】
ブトキシ-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホラン(BP)の合成
BPをCOPおよびn-ブタノールの縮合反応によって合成した。無水THF(50mL)中のCOP(5.0g、35mmol)を、無水THF(100mL)中のn-ブタノール(2.6g、35mmol)およびトリメチルアミン(3.9g、39mmol)の撹拌溶液に、0℃で液滴にて添加した。反応混合物を、THF中のCOPの添加の完了に際し、氷浴中で12時間撹拌した。COPの変換の完了の際に、反応混合物をろ過し、濾過物を濃縮した。濃縮した濾過物を、低減された真空下での真空蒸留によって精製し、粘性の無色の液体を生じた。
【0249】
P407-PBPの合成
P407-PBPを、-20℃で有機分子触媒であるDBUの存在下での、マクロ開始剤としてP407を用いたBPの開環重合(ROP)によって合成した。無水ジクロロメタン(DCM、0.5mL)中のP407(8.1g、0.56mmol)およびBP(1.0g、5.6mmol)を、撹拌子を備えたフレームドライした(flame dried)シュレンクフラスコ(10mL)に添加した。反応混合物を、飽和NaCl溶液を含む氷浴中に浸しながら、窒素ガスで5分間フラッシュした。無水DCM中のDBU(0.13g、0.84mmol)の溶液を、窒素ガス雰囲気下で反応を維持しながら、シリンジを介して液滴で撹拌溶液に添加した。反応の完了の際に、過剰量のDCM中の酢酸を反応混合物に添加し、反応物をクエンチした。産物をエーテル中への沈殿(3回)によって精製し、真空下で乾燥して、白色粉末産物を得た。
【0250】
ヒドロゲル形成
12%(w/v) P407-PBPヒドロゲル製剤のヒドロゲル溶液を、粉末状ポリマーの4%(w/v) Cip(pH=3.3~3.9)の水性溶液への添加および低温室での単純な溶解によって作製し、P407-PBPのよりよい可溶性を可能とした。SDS、および/またはLIM、および/またはBUPを、4%(w/v) Cipおよび12%(w/v) P407-PBPの溶液に添加し、および少なくとも4時間低温室で溶解させた。
【0251】
In vitro放出研究
各製剤からのCipの放出を、拡散系を使用して測定した。Transwell(登録商標)膜インサート(0.4μm孔径、1.1cm2の面積;Costar、Cambridge、MA)および24-ウェル培養プレートを、夫々ドナーおよびアクセプターチャンバーとして用いた。200μLの各製剤を、予め加温したフィルターインサート上に直接ピペットでとり、固体ヒドロゲルを得た。形成されたゲルを含むフィルターインサート(ドナー区画)を、予め加温したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で満たしたウェル(アクセプター区画)中で懸濁し、次いでプレートを37℃インキュベーター中に保った。各時点(0.5、1、2、6、12、24、48時間)で、1mLアリコートのPBS受入れ培地をサンプリングし、インサートを新たなPBSを含む新しいウェル中に順次移動した。アリコートを70:30アセトニトリル/PBS中で懸濁し、合計薬物溶出を保証した。試料アリコートを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いてクロマトグラフ的に分析し、Cip濃度(波長λ=275nmでの吸光)を決定した。Cip測定およびHPLC条件に関してより詳しくは、参照中に見出され得る[46]。実験を4重(quadruplicate)で実施した。
【0252】
Ex vivo透過実験
Cipの経鼓膜透過率を、健常なチンチラから採取した耳骨胞を用いて決定した。チンチラを、ケタミン(30mg/kg)およびキシラジン(4mg/kg)の筋肉内投与による深い全身麻酔下に置き、次いでペントバルビタール(100mg/kg)の心臓内投与で安楽死させた。安楽死させた動物を断頭し、耳骨胞を鼓室輪がいまだに取り付けられたままで、無傷で取り除いた。それらの完全性を、TMを上がドナー溶液および下がレシピエント溶液である12ウェルプレート中に水平に位置する設定において、それらの電気インピーダンス(抵抗力≧18kOhm*cm2;これまでに決定された値によって示される[46])を測定することによって査定した。TMを変形させるかまたは破裂させるであろう、従来の拡散セルの代わりに同じ設定を、薬物流動を測定するために使用した。すべての製剤を、37℃に保たれた骨胞中に適用し、TM上に沈殿させた。適用された体積は、8mgのCipに換算される200μLであった。TMを越えて受入れチャンバー内へのCipの透過を、HPLCを使用して定量した。TMの採取、TMの電気耐性測定、およびex vivo透過実験の構成に関する詳細な情報は、参照中に見出すことができる[46]。
【0253】
統計分析
正規分布に従うデータを、平均および標準偏差(Microsoft(登録商標) Excel(登録商標)を使用して計算した)を用いて記載し、および対応のないスチューデントのt検定(Origin(登録商標)8、OriginLabを使用する)によって比較した。その他の点では、データを中央値±四分位数(Microsoft(登録商標) Excel(登録商標)を使用する)として提示した。
【0254】
結果
要旨および製剤の命名法
ヒドロゲル製剤を、4%(w/v)での抗生物質Cip、12%(w/v)でのペンタ-ブロックコポリマーP407-PBP、および様々な濃度でのCPEを用いて処方した;ゲルを、CPPB-x%LIM-y%SDS-z%BUPと称し、ここでCPPBは不変の4%Cip-12%[P407-PBP]を表す;x、y、zは、夫々LIM、SDS、およびBUPの体積パーセント濃度による重量を表す。室温にて容易にシリンジから押し出され、体温にて迅速にゲル化することから、12パーセントP407-PBPを本研究を通してずっと使用した。[45](後者の特性は、じっとしているのを好まない歩き始めの子供に材料を適用するときに重要であるだろう。ヒドロゲル自体は、in vivoで抗生物質およびCPEをTMで維持するだろう。P407-PBPは、TMのCPEおよび抗生物質への連続的な曝露のために必要である。[45])
【0255】
P407-PBPを、報告されるとおりに開環重合によって合成した。[45]核磁気共鳴(NMR)は、PBP部分の存在を確認し、PBP部分の重合度が5であると決定した(
図20A)。フーリエ変換赤外分光(FTIR)は、ペンタ-ブロックコポリマーP407-PBPの合成が成功したことを確認した(
図20B)。
【0256】
構成要素が製剤中にない場合は、上の命名法からは省かれた。これまでに報告された3個のCPEの組み合わせ、[45]すなわち、2%LIM、1%SDS、および0.5%BUPを、3CPEとして表示した。他に特定されない限りは、すべてのパーセンテージは、体積パーセントによる重量である。
【0257】
ex vivo実験において切除されたTMを越えて浸透したCipの累積量をVCIPtとして表し、ここでtは、Cipの累積透過を測定した時間単位での時間である。具体的に言うと、VCIP6およびVCIP48は、ex vivo実験において、夫々6時間および48時間以内にTMを越えて浸透したCipの累積量を表す。
【0258】
ヒドロゲルからのin vitro薬物放出
各製剤からのCipの放出を、Transwell(登録商標)膜インサートを使用して測定した。CPEの有無にかかわらず8.0mgの薬物を含有する200μLのCPPBゲルからのCip放出を、37℃にて測定した(
図13)。薬物放出は、Cip溶液については大まかに12時間後に、およびCPEの有無にかかわらずCPPBゲルについては大まかに24時間後に有意に減速する。48時間において、CPPBがロードされたCipのほとんど全体(7.7mg)を放出した一方で、CPPB-3CPEはおよそ4分の3(5.9mg)を放出した。
【0259】
CPE間の相乗的な相互作用
アイソボログラムの分析
薬物用量の相互作用を比較することにおける重要な概念は、用量同等性の概念である。[60,61]同等性を確立する1つの厳密な方法は、集団の所与のパーセンテージに影響を与えるかまたは最大限の効果の所与のパーセンテージを有する用量の観点にある(これらのうちの両方が、例えば、EC50[半数効果濃度]として定義されている)。かかるケースにおいて、用量の効果は、アイソボログラムの分析によって比較され得る。
【0260】
アイソボログラムの分析を実施するために以下のステップに従う。濃度-応答曲線を薬物XおよびYについて構築し、所与の効果を達成するための当量濃度(または用量)(例として、0.4mgのVCIP48)をそれぞれについて決定した(
図14A)。その所与の効果を達成する薬物Xの濃度をX軸にプロットし、薬物Yについての当量をY軸にプロットするアイソボログラム(
図14B)を構築する。2つ(アイソボル)をつなぐ線は、相加性の線である;薬物XおよびYについての当量用量の画分の組み合わせの効果を、次いでグラフ上にプロットする。例えば、Xの当量用量の10%とYの当量用量の90%との組み合わせ(すなわち合計で100%の当量用量)が所与の効果を達成した場合、次いでXおよびYは、単に相加的である。Xの当量用量の10%とYの当量用量の10%のみ(すなわち20%の当量用量)が所与の効果を達成した場合、それらは相乗的である。Xの当量用量の90%とYの当量用量の90%の組み合わせ(すなわち180%の当量用量)が所与の効果を有する場合、それらは、拮抗的である。
【0261】
単一のCPEについての濃度-応答曲線
アイソボログラムの分析を作り出すために、単一のCPEの濃度の効果とCipの経鼓膜薬物透過とを関連付ける曲線を生成した(
図14に類似して)。続いてこれらの曲線を使用してアイソボログラムを構築し[61]、CPEの組み合わせの効果が、相加的、相乗的、またはもしかすると拮抗的であるかどうかを査定した。
【0262】
TMを越えての薬物輸送を、健常なチンチラから37℃にて切除した耳骨胞においてex vivoで研究した。様々な濃度のSDS、LIM、またはBUPの有無にかかわらず8.0mgの薬物を含有する200μLのCPPBゲル(ドナー溶液)を、TMのある表面上に置き(詳しくは方法を参照)、3mLのPBS(レシピエント溶液)内への流動を測定した(
図15)。CPE濃度(X軸)とVCIP6およびVCIP48を関連づける曲線を各CPEについて構築した。
【0263】
水におけるSDSに対する溶解限度が20%であるために、CPPB-SDSからのTMを越えてのCip流動を0~20%の範囲をとるSDS濃度において研究した。[74](局所適用についてのFDAに承認された濃度限界は、SDSについて40%であるが、[64]20%超のSDSを含む製剤は溶液ではなく懸濁液であった)Cip流動は、SDS濃度の増加とともに絶えず増加した。6時間(
図16)にて、CPEの不在下でのTMを越えてのCip透過は、HPLC(約1μg/mL)の検出限界未満であった。1%SDSをヒドロゲルに導入すること(
図16A)は、V
CIP6を約0.001±0.0002mgまで増加させた(p<0.001);SDS濃度を1%から20%まで増加させることは、6時間でV
CIP6(0.002±0.002mg)をおおまかに2倍にした(p=0.29)。48時間にて(
図15A)、SDS濃度を1%から20%まで増加させることは、V
CIP48を0.03±0.004mgから0.39±0.11mgまで増加させ(p<0.001)、13倍の増強であった。30%までSDS濃度をさらに増加させることは、おそらくSDSが20%を超えては可溶性でないために、V
CIP6およびV
CIP48をさらに増加させなかった[夫々0.002±0.001mg(p=0.83)および0.39±0.29mg(p=0.94)]。CPPB-LIMヒドロゲルからのV
CIP6およびV
CIP48に対するLIMの効果を、10%が局所適用についてUS FDAによって承認された最も高いLIM濃度ために、0~10%の範囲をとるLIM濃度において研究した。[64]1%LIMを添加しても、V
CIP6はHPLC検出限界未満のままであった(
図16B);4%LIMを用いると、それは0.004±0.001mgであり、10%LIM(0.004±0.001mg、p=0.51)を用いてもさらに増加はしなかった。LIMの濃度を1%から4%まで増加させるにつれて、V
CIP48(
図15B)は、~25倍(0.02±0.004mgから0.40±0.13mgまで、p=0.001)増加した;10%LIMでのさらなる増加はなかった(0.42±0.09mg、p=0.73)。
【0264】
V
CIP6およびV
CIP48は、1%のBUP濃度で定常に達した;スラリーである過飽和濃度の5%で、流動は酷似していた。V
CIP6(
図16C)は、0.5%BUPで約2±2μgであり、1%および5%BUPで5±3μgのV
CIP6であった(
図15C)。BUPを用いた最大限のV
CIP6は、他のCPEのそれに匹敵するにもかかわらず、BUPを用いたV
CIP48は、LIMまたはSDSからのそれらよりもはるかに小さかった。V
CIP48は、1%BUPにて0.03mgであり、5%にて0.04±0.01mgであった。
【0265】
ある関心を引く所見は、CPE間の組み合わせ効果が経時的に変化するということであった。関係のある正味の薬物透過率ははるかに小さかったのだが、組み合わせるCPEからの増強の程度は、6時間で48時間よりもはるかに大きかった。例えば、3CPEの組み合わせによって達成されたVCIP6は、1%SDSのそれの20倍、0.5%BUPのそれの10倍、および2%LIMのそれの無限倍であるのに(後者はHPLC検出限界未満であった)、3CPEを用いたVCIP48は、夫々1%SDS、0.5%BUP、および2%LIMのそれの17、2、および37倍であった。
【0266】
CPEの組み合わせの事実上の効果は、個々のCPEのピーク効果(濃度-応答曲線によって決定される)をはるかに超過しており、アイソボログラムを構築することが不可能である
【0267】
アイソボログラムを、V
CIP48を使用して構築した。CPE濃度-V
CIP48曲線(
図15A-15C)を、3個のパラメータの双曲線関数(濃度-応答曲線のために使用される最も一般的なロジスティック関数[73])にフィッティングさせて、以下の方程式を用いてピーク効果のE
maxを決定した:[61,75]
【数1】
式中V
CIP48は、測定された応答である;Cは、V
CIP48をもたらしたCPEの濃度である;E
maxは、無限濃度(すなわち、最大限の応答)についての応答である;EC
50は、E
maxの半分の応答をもたらす濃度である;pは、各CPEについての双極線の急勾配を決定する定数であり、しばしばヒル係数と呼ばれる。[61]医薬の濃度-応答曲線に由来するヒル係数は、相互作用している部位の数(例として受容体へ結合されたリガンドの数)を表す。[76]CPEの文脈において、ヒル係数の分子相関は、不明確であるが、方程式(1)にデータをフィッティングさせることにより決定され得る。
【0268】
E
max値は、非線形最小二乗回帰を使用して、CPE濃度-V
CIP48曲線を方程式(1)にフィッティングさせることによってSDS、LIM、およびBUPについて得られた(
図17および表5)。SDSは、0.65mgのE
maxを有しており、そのことはSDSによって達成され得る最大限のV
CIP48が~0.65mgであることを指し示している。しかしながら、同様のV
CIP48である~0.4mg、および計算されたE
maxが生じる濃度を達成した20%および30%でのSDSは、スラリーである。その結果として、実験的に決定されたピーク効果である0.4mgを、SDSについてのE
maxに使用した。
表5.SDS、LIM、およびBUPについてパラメータをフィッティングさせた濃度-応答曲線
【表5】
a方程式(1)に由来する;
b実験的に由来する
【0269】
LIMは、0.41mgのEmaxを有した。その透過増強効果は、ほぼ4%のLIM濃度で定常に達した。BUPは、最も小さなEmaxを有した(0.04mg)。ブピバカインのEmaxは、LIMのそれの9.76%、およびSDSのそれの6.15%であった。Cip透過に対するBUPの効果は、~1%の濃度で定常に達した。
【0270】
2個のCPEの組み合わせ
相乗性がCPE間に生じるかどうかを査定するために、TMを越えての薬物流動に対するそれらの効果をアイソボログラムの方法によって分析した。上の濃度-応答曲線は、このアプローチの使用を複雑にする2個の因子を特定した:1)CPEのいくつかについて、達成し得るCPE濃度を限定する物理化学的な因子(例として、可溶性)が、ピーク効果の決定を妨げているであろう、2)個々のCPEの最大限の効果は、極めて異なっていた。かかる状況において、アイソボログラムは、特定の絶対的効果(例として、所与の薬物透過率)を使用して構築され得る。[18]低い最大限の効果を伴う薬物を、大きな最大限の効果を伴うものと比較する場合(例として、このケースにおけるBUPおよびLIM、またはグルコサミンおよびイブロプロフェン[34])、相加性の線は、より低い最大限の効果を伴う薬物を表す軸に並行であるだろう[61,77](すなわち、その薬物の濃度が所与の絶対的効果を達成しないだろう)。
【0271】
0.39mgのV
CIP48を、CPE間の相乗効果のアイソボル分析についての「効果」として使用した。CPPB-4%LIMおよびCPPB-20%SDSの両方が、そのV
CIP48をもたらし(
図3AおよびB、p=0.96)、よって4%LIMおよび20%SDSを、当量用量とみなした。X軸に対してLIMの濃度を、およびY軸に対してSDSの濃度であるアイソボログラム(
図15D)をこれまでに議論したように構築し、および各々の当量用量(4%LIMおよび20%SDS)を、それらの夫々の軸にプロットした。2個をつなぐ線は、相加性(アイソボル)の線である;それは以下の方程式を使用して記載され得る、[60,61]
【数2】
式中d
LIMは、所与の製剤中のLIMの体積パーセントによる重量であり、d
SDSは、SDSの体積パーセントによる重量である。方程式の右側の「4%」は、d
LIMとd
SDSの組み合わせが、SDSおよびLIMが相加的である場合に、4%LIMと同じ応答を達成するだろうことを指し示す。変形した方程式(2)は、以下の線形アイソボル方程式を与える:
【数3】
【0272】
方程式(3)に基づきプロットされた、アイソボルのグラフ(
図15D)における軸をつなぐ線は、LIMおよびSDSの効果が相加的である場合に、V
CIP48=0.39mgの応答を生じるだろうLIMとSDSの組み合わせのすべてを表した。実験的に、CPPB-1%SDS-1%LIM、すなわち5%のSDS当量用量(すなわち、5%の20%SDS)と25%のLIM当量用量(25%の4%LIM)の組み合わせは、~0.4mgのV
CIP48、すなわち1%SDSの14倍の応答、および1%LIMの28倍の応答を達成した。この組み合わせを表す点は、相加性の線を下回り(すなわち
【数4】
、LIMおよびSDS間の相乗効果を指し示した。
【0273】
SDSおよびBUPもまた、相乗的に相互作用した(
図15E)。方程式(1)~(3)と同様の計算が、SDSとBUPの組み合わせに適用された(以下の議論「SDS-BUPおよびLIM-BUPのアイソボログラムの分析において使用された方程式」のセクションを参照)。当量用量および組み合わせを同定するために必要な動物の数を低減させるために、CPPB-1%SDS-1%BUPの製剤を使用して達成される応答を最初に測定し、次いで濃度-応答曲線を使用した当量用量を同定した(
図15Aおよび15C)。CPPB-1%SDS-1%BUPについてのV
CIP48は0.24mgであった。SDSについての濃度-応答(すなわち、CPE-薬物流動)曲線(
図15A)から、10%SDS(in CPPB-10%SDSが0.24±0.07mgのV
CIP48を達成した(
図15A)ことが付け加えられた。V
CIP48=0.24mgを達成するために必要とされるBUPの濃度は、無限大であった(E
max[BUP]=0.04mg、表5)。10%のSDS当量用量(10%の10%SDS)および0%のBUP当量用量を含有する、1%SDSと1%BUPの組み合わせは、1%SDSの8倍の応答および1%BUPの8倍の応答である、V
CIP48=~0.24mgをもたらした。
【0274】
0.24mgのV
CIP48を達成するためのSDSとBUPの組み合わせについてのアイソボル(すなわち、相加性の線)は、BUP軸に平行な直線であり、10%にてSDS軸と交差した(
図15E)、[61]0.24mgのV
CIP48を達成するSDSとBUPの組み合わせを表す点(CPPB-1%SDS-1%BUP)は、アイソボルをはるかに下回り、SDSおよびBUP間の強い相乗効果を指し示した。
【0275】
LIMおよびBUPもまた、相乗効果を有した。方程式(1)~(3)と同様の計算を、LIMとBUPの組み合わせに適用した(以下の議論「SDS-BUPおよびLIM-BUPのアイソボログラムの分析において使用した方程式」のセクションを参照)。また、CPPB-1%LIM-1%BUPの製剤を使用して達成された応答を最初に測定し、次いで当量用量を濃度-応答曲線を使用して同定した。CPPB-1%LIM-1%BUPについてのV
CIP48は、0.22mgであった。V
CIP48=0.22mgを達成するために、~1.8%LIMが必要であった(
図15B)。0.22mgのV
CIP48を達成するために必要なBUPの量は、無限大であった(E
max[BUP]=0.04mg、表5)。したがって、LIMおよびBUPについてのアイソボルの線は、BUP軸に平行であり、1.8%にてLIM軸と交差した(
図15F)。56%のLIM当量用量(56%の1.8%LIM)および0%のBUP当量用量を含有するCPPB-1%LIM-1%BUPの製剤は、1%LIMの16倍の応答、および1%BUPの7倍の応答であるV
CIP48=0.22mgを達成した。LIMとBUPの組み合わせを表す点は、アイソボルの線を下回り、相乗作用を指し示した。
【0276】
相乗作用のさらなる実証として、方程式(4)~(7)中のように定義される、組み合わせ指標(CI)を計算した。CIは、実験的に測定された組み合わせにおける所与の効果を生じる2個の薬物の用量(分子)と相加性があった場合に同じ効果を生じると期待される用量(分母)とを比較する。[16,19,20]CI<1は、相乗作用を指し示す;CIが低いほど相乗作用は大きい。
【0277】
SDSとLIMの組み合わせについて:
【数5】
式中、
【数6】
は、夫々~0.4mgのV
CIP48を達成したLIMおよびSDSの当量用量である;および
【数7】
は、実験的に~0.4mgのV
CIP48を達成したLIMとSDSの組み合わせである。したがって、
【数8】
【0278】
【0279】
【0280】
CPEのすべてのペアについてのCIは、強い相乗効果を指し示した。
【0281】
考察.SDS-BUPおよびLIM-BUPのアイソボログラムの分析において使用された方程式
CPPB-10%SDSは、V
CIP48=0.24mgを有したが、そのV
CIP48を達成するためのBUPの量は無限大であったために、V
CIP48=0.24mgを達成したSDSおよびBUPの当量用量についてのアイソボルは、方程式(S1)および(S2)を使用して記載され得る。したがって、
【数11】
式中d
BUPは、所与の製剤中のBUPの体積パーセントによる重量であり、d
SDSは、SDSの体積パーセントによる重量である。方程式は、SDSおよびBUPが相加性である場合に10%SDSと同じ応答を達成するであろうd
BUPとd
SDSの組み合わせを記載した。
およびよって:
【数12】
CPPB-1.8%LIMはV
CIP48=0.22mgを有したが、そのV
CIP48を達成するためのBUPの量が無限大であるために、V
CIP48=0.22mgを達成したLIMおよびBUPの当量用量についてのアイソボルは、方程式(S3)および(S4)を使用して記載され得る。したがって、
【数13】
およびよって:
【数14】
【0282】
3個のCPEの組み合わせ
3個の構成要素間の相乗作用は、めったに分析されない;ここで、相乗作用の概念は、アイソボログラムを平面としてプロッティングすることによって、2構成要素系(例として、LIMとBUPの間)から3構成要素へと拡張される(
図18A)。それらを単独で使用するとき、0.4mgのV
CIP48を達成するために必要とされるCPEの濃度は、SDSについては~20%であり(
図15A)、LIMについては~4%であり(
図15B)、およびBUPについては無限大であった(E
max[BUP]=0.04mg、表1)。したがって、アイソボル平面は、SDSおよびLIMを表す軸と20%および4%にて交差し、BUP軸に平行であった(
図18A)。3個のCPEの組み合わせである、CPPB-3CPE(すなわち5%のSDS当量用量(5%の20%SDS)、50%のLIM当量用量(50%の4%LIM)、および0%のBUP当量用量に対応する2%LIM、1%SDS、および0.5%BUP)は、0.43±0.02mgのCip流動を達成した。V
CIP48=0.43mgにてCPPB-3CPEを表す点は、十分にアイソボル平面を下回っており(
図18A)、相乗作用を示唆した。CI値<1が、3個のCPEのすべての間の相乗効果よりもむしろ、3個のCPEの中の2個の間の相乗効果を指し示し得るために、3CPEの組み合わせについてのCIは、算出されなかった。
【0283】
ピーク効果に対するCPEの組み合わせの効果
アイソボログラムの方法による相乗作用の研究は、薬剤間の相互作用を決定すること、および例えば、所与の効果を1個の薬物よりむしろ2個の薬物のより少ない量で達成することができるかどうかを確立することに関心をもっている。関係しているが異なる課題は、剤の組み合わせの使用が、どちらか単一の剤単独でこれまでに達成され得たものより大きなピーク効果を達成し得るかどうかである。CPEを使用した抗生物質の経鼓膜送達の文脈において、達成可能な最大限のピーク効果は、感染の迅速な除去のために非常に興味深いものである。[78]
【0284】
この問題に取り組むために、最大限の流動(すなわち、定常に達する)を提供した個々のCPEの濃度を組み合わせることが、最大限の流動を増加させるであろうかどうかを調査した(
図18B)。
図15から、LIM、SDS、およびBUPについてのピークV
CIP48は、夫々4%LIM(0.40±0.13mg)、20%SDS(0.39±0.11mg)、および1%BUP(0.03±0.01mg)にて達成された。それらの最も大きなV
CIP48を提供した3個のCPEの濃度を夫々組み合わせた。その組み合わせであるCPPC-4%LIM-1%BUP-20%SDSは、2.37±0.78mgのV
CIP48を達成し、それは個々のCPEのいずれかからの最も高いE
maxのそれよりも6倍大きかった(
図18B)。
【0285】
考察
CPEがTMを越えての薬物流動に対する相乗効果を有すること、およびCPEの組み合わせが単一のCPEのいずれかの濃度によって達成され得るものを超えて最大限の流動を増加させ得ることが正式に実証されている。同様の現象が構造的に同様である皮膚、およびCPEが有効であることが示されている他の設定において観察されるだろうことが仮定される。[79]
【0286】
この経鼓膜薬物送達プラットホームのための輸送に2つの主要な障壁があった:1)バルクのヒドロゲルマトリックスを通しての拡散および2)TMを越えての透過。水性溶液から、およびCPPBからのCipの放出プロファイル間の類似性(
図13)は、バルクのヒドロゲルマトリックス内の最小限の拡散抵抗を指し示した。3CPEを組み込むことは、拡散の速度を落とし、SDS/LIMとPBP末端基との間の相互作用の結果としての追加の物理的な架橋の可能性を示唆した。
【0287】
SDS、LIM、およびBUPは、CPE濃度に比例して、TM透過性を増加させた(
図15)。興味深いことに、他のものと比べての各CPEについての増強効果は、6時間と48時間とで異なっていた。例えば、BUPは、SDSまたはLIMによって達成された最大限のV
CIP6のおよそ2倍を有した。しかしながら、SDSまたはLIMからの最大限のV
CIP48は、大まかにBUPのそれの10倍であった。短期間(6時間)の透過増強効果と長期間(48時間)の透過増強効果との間の対比は、BUPがSDSおよびLIMなどの既存のCPEとは異なる透過増強の機序を有するであろうことを暗示した。
【0288】
CPE間には著しい相乗作用があった。相乗効果は、使用されるCPEの総量を低減するために使用され得、そのことは、同じかまたはそれより大きな透過増強を維持しながら、いくつかの所望の目標(組織の刺激を低減する、または製剤の粘度を低減するなど)を達成するであろう。BUPは、それ自体では最も効果のあるCPEではないが、SDSおよびLIMの透過増強を劇的に増加させた。興味深いことに、CPEの相乗効果は、経時的に変化する、すなわち3CPEの組み合わせは、48時間よりも6時間にてより著しく薬物流動を増加させた。抗生物質処置の早期段階の間の大いに増強された薬物流動は、治癒の時間経過を加速させることにおいておそらく重要である。臨床的証拠は、中耳からの病原体の早期根絶が臨床成果を改善することを示している。[80]
【0289】
関係しているが異なる必要性は、いずれか単一の剤単独で達成され得るものより大きなピーク効果を達成することである。より大きなピーク効果は、抗生物質の経鼓膜薬物送達の文脈において、治療効果を改善するために、特に所望される。単独で使用されるときに最も大きな実行可能な効果を提供する濃度での3個のCPEの組み合わせは、薬物透過の著しい増強を達成した。
【0290】
結論
要約すれば、SDS、BUP、およびLIM間の強い相乗効果を、アイソボログラムの分析および組み合わせ指標によって実証した。分析を、3個すべてのCPEを一緒に使用したときに強い相乗効果を実証するよう拡張した。CPEの組み合わせはまた、薬物流動に対するピーク効果を改善させ得る。
参考文献
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
【表6-5】
【表6-6】
【表6-7】
【表6-8】
【0291】
当量および範囲(Scope)
クレーム中、「a」、「an」、および「the」などの冠詞は、それとは反対との指摘がなされない限りまたはそうでなければ文脈から明白である限り、1つまたは1つより多くを意味することもある。群の1以上のメンバー間に「or」を包含するクレームまたは記載は、それとは反対との指摘がなされない限りまたはそうでなければ文脈から明白である限り、群のメンバーのうち、1つ、1つより多く、またはすべてが、所定の産物もしくはプロセス中に存在するか、採用されているか、またはそうでなければこれに関係がある場合に満足するものと見なされる。本開示は、群の厳密に1つのメンバーが、所定の産物もしくはプロセス中に存在するか、採用されているか、またはそうでなければこれに関係がある態様を包含する。本開示は、群のメンバーの1つより多くまたはすべてが、所定の産物もしくはプロセス中に存在するか、採用されているか、またはそうでなければこれに関係がある態様を包含する。
【0292】
さらにまた、本開示は、列挙された1以上のクレームから1以上の限定、要素、箇条、または記述用語が別のクレーム中へ導入される、すべてのバリエーション、組み合わせ、および順列を網羅する。例えば、いずれかのクレームは、別のクレームに従属しているとき、ベースとなる同じクレームに従属する他のいずれかのクレームから見出される1以上の限定を包含するように修飾され得る。要素が、リストとして、例としてマーカッシュ群の形式において提示されている場合、要素の各下位群もまた開示され、いずれの要素(単数または複数)が群から除去され得る。一般に、本開示または本開示の側面が具体的な要素および/または特色を含むものとして言及される場合、本開示のある態様または本開示の側面が、かかる要素および/または特色からなるか、または本質的にこれらからなることは理解されるはずである。簡潔にするために、それらの態様は、本明細書にこれらの言葉で(in haec verba)具体的には表されていない。用語「含むこと」および「含有すること」は、オープンであることが意図され、追加の要素またはステップの包含を許すことにもまた留意されたい。範囲が与えられている場合、端点(endpoints)も包含される。さらにまた、そのように指摘されない限り、あるいはそうでなければ文脈および/または当業者の理解から明白でない限り、範囲として表現されている値は、文脈が明確にそのように指示しない限り、本開示の種々の態様において言明された範囲内のいずれの特定の値または下位範囲~その範囲の下限の単位の10分の1も前提とし得る。
【0293】
本出願は、様々な交付済み特許、公開された特許出願、学術文献、および他の刊行物を指すが、これらのすべては参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれた参考文献のいずれかと本明細書との間にもし矛盾が生じたら、本明細書が支配することになる。加えて、先行技術の範囲内に収まる本開示のいずれの具体的な態様も、いずれの1以上のクレームから明示的に排除されてもよい。かかる態様が当業者に知られていると見なされることから、その排除が本明細書に明示的に表されていないとしても、それらは排除されてもよい。本開示のいずれの具体的な態様も、先行技術の存在に関与するか否かにかかわらず、いずれの理由によっても、いずれのクレームから排除され得る。
【0294】
当業者は、わずかな型どおりの実験法を使用し、本明細書に記載の特定の態様の多くの均等物を認識するか、または解明できるであろう。本明細書に記載の本態様は、上の記載に限定されることを意図しておらず、むしろ添付のクレームで表されるとおりである。当業者は、この記載に対して様々な変化および修飾が、以下のクレームにおいて定義されるとおりの本開示の精神または範囲から逸脱せずになされてもよいことを解するであろう。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【外国語明細書】