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特開2024-170418解乳化添加剤組成物、その使用方法、及び解乳化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170418
(43)【公開日】2024-12-10
(54)【発明の名称】解乳化添加剤組成物、その使用方法、及び解乳化方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 17/05 20060101AFI20241203BHJP
   B01J 13/00 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
B01D17/05 501K
B01D17/05 501G
B01J13/00
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024131994
(22)【出願日】2024-08-08
(62)【分割の表示】P 2022099958の分割
【原出願日】2018-01-12
(31)【優先権主張番号】201721002955
(32)【優先日】2017-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(71)【出願人】
【識別番号】509270317
【氏名又は名称】ドルフ ケタール ケミカルズ (インディア)プライヴェート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(72)【発明者】
【氏名】サブラマニヤム,マヘッシ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】原油中の洗浄水に起因して引き起こされる油中水型エマルションの解乳化のための解乳化添加剤組成物を提供する。
【解決手段】解乳化添加剤組成物は、オキシアルキル化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂又は少なくとも1つのアルキルフェノールとホルムアルデヒドとのオキシアルキル化縮合生成物、を含む少なくとも1つの解乳化剤;並びに、グリオキサール、中和されたグリオキサール、グリオキサールのエチレングリコール誘導体及びそれらの混合物からなる群から選択される化合物;を含み、さらに、リン酸を含むものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
解乳化添加剤組成物であって、以下の:
(a)オキシアルキル化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂又は少なくとも1つのアルキルフェノールとホルムアルデヒドとのオキシアルキル化縮合生成物、を含む少なくとも1つの解乳化剤;並びに
(b)グリオキサール、中和されたグリオキサール、グリオキサールのエチレングリコール誘導体、及びそれらの混合物からなる群から選択される化合物;
を含み、さらに、
(c)リン酸
を含み、
ここで、前記オキシアルキル化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂は、オキシアルキル化アルキルフェノールホルムアルデヒド重合体及びオキシアルキル化アルキルフェノールホルムアルデヒド共重合体を含み;かつ、
前記中和されたグリオキサールのpHは、中性から塩基性の範囲であるグリオキサールである、
解乳化添加剤組成物。
【請求項2】
前記中和されたグリオキサールのpHは、7~12である、請求項1に記載の解乳化添加剤組成物。
【請求項3】
前記解乳化剤は、
i)ノニルフェノール、アミルフェノール、及びホルムアルデヒド、
ii)ノニルフェノール、ブチルフェノール、及びホルムアルデヒド、
iii)ノニルフェノール及びホルムアルデヒド、
iv)アミルフェノール及びホルムアルデヒド、
v)ブチルフェノール及びホルムアルデヒド、
vi)アルキルフェノール及びホルムアルデヒド、及び
vii)それらの混合物、
のオキシアルキル化縮合生成物からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の解乳化添加剤組成物。
【請求項4】
前記解乳化剤は、
i)カルダノール、ノニルフェノール、アミルフェノール、及びホルムアルデヒド、
ii)カルダノール、ノニルフェノール、ブチルフェノール、及びホルムアルデヒド、
iii)カルダノール、ノニルフェノール及びホルムアルデヒド、
iv)カルダノール、アミルフェノール及びホルムアルデヒド、
v)カルダノール、ブチルフェノール及びホルムアルデヒド、
vi)カルダノール、アルキルフェノール及びホルムアルデヒド、又は
vii)それらの混合物、
のオキシアルキル化縮合生成物からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の解乳化添加剤組成物。
【請求項5】
前記オキシアルキルは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、又はそれらの混合物の誘導体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の解乳化添加剤組成物。
【請求項6】
前記解乳化剤が、以下の:
i)オキシアルキル化ノニルフェノールとアミルフェノールホルムアルデヒドの共重合体、
ii)オキシアルキル化ノニルフェノールとブチルフェノールホルムアルデヒドの共重合体、
iii)オキシアルキル化ノニルフェノールとホルムアルデヒドの重合体、
iv)オキシアルキル化アミルフェノールとホルムアルデヒドの重合体、
v)オキシアルキル化ブチルフェノールとホルムアルデヒドの重合体、
vi)オキシアルキル化アルキルフェノールとホルムアルデヒドの重合体、及び
vii)それらの混合物、
からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の解乳化添加剤組成物。
【請求項7】
前記解乳化剤は、
i)オキシアルキル化カルダノール、ノニルフェノール及びアミルフェノール、並びにホルムアルデヒドの共重合体、
ii)オキシアルキル化カルダノール、ノニルフェノール及びブチルフェノール、並びにホルムアルデヒドの共重合体、
iii)オキシアルキル化カルダノール、ノニルフェノール及びホルムアルデヒドの重合体、
iv)オキシアルキル化カルダノール、アミルフェノール及びホルムアルデヒドの重合体、
v)オキシアルキル化カルダノール、ブチルフェノール及びホルムアルデヒドの重合体、
vi)オキシアルキル化カルダノール、アルキルフェノール及びホルムアルデヒドの重合体、及び
vii)それらの混合物、
からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物は、処理される油中水型エマルションの性質に応じて、
成分(a)は、全組成物の99.1質量%~0.1質量%であり、
成分(b)は、全組成物の0.1質量%~99.1質量%であり、かつ
成分(c)は、全組成物の0.1質量%~99.1質量%である、
請求項1~7のいずれか一項に記載の解乳化添加剤組成物。
【請求項9】
前記解乳化剤の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定すると、1000~20000ダルトンの範囲である、請求項1~8のいずれか一項に記載の解乳化添加剤組成物。
【請求項10】
以下の、
(i)グリコール酸、
(ii)グリオキシル酸、
(iii)クエン酸、及び
(iv)無水マレイン酸、
を含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載の解乳化添加剤組成物。
【請求項11】
油中水型エマルションを、解乳化添加剤組成物で処理する、油中水型エマルションの解乳化方法であって、前記解乳化添加剤組成物は、以下の:
(a)オキシアルキル化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂又は少なくとも1つのアルキルフェノールとホルムアルデヒドとのオキシアルキル化縮合生成物、を含む少なくとも1つの解乳化剤;並びに
(b)グリオキサール、中和されたグリオキサール、グリオキサールのエチレングリコール誘導体、及びそれらの混合物からなる群から選択される化合物;を含み、かつ、さらに
(c)リン酸
を含み、
ここで、前記オキシアルキル化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂は、オキシアルキル化アルキルフェノールホルムアルデヒド重合体及びオキシアルキル化アルキルフェノールホルムアルデヒド共重合体を含む、
方法。
【請求項12】
油中水型エマルションを、請求項1~10のいずれか一項に記載の解乳化添加剤組成物で処理する、油中水型エマルションの解乳化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油中水型エマルションの解乳化(demulsification)のための解乳化添加剤組成物に関する。
【0002】
特に、本発明は、洗浄水と原油との混合により生じる、より具体的には精製所の脱塩装置ユニットにおける洗浄水と原油との混合によって起こる油中水型エマルションの解乳化のための解乳化添加剤組成物に関する。
【0003】
さらにより詳細には、本発明は精製所の脱塩装置ユニットにおける洗浄水と原油との混合により生じる油中水型エマルションの解乳化のための解乳化添加剤組成物に関する。ここで、前記解乳化添加剤組成物は、以下の:
(a)1以上の解乳化剤(demulsifiers)、
(b)グリオキサール、中和されたグリオキサール及びそれらの混合物を含む群から選択される化合物、及び
(c)さらにリン酸を含む。
【0004】
一実施形態では、本発明は、精製所の脱塩装置ユニットにおける、油中水型エマルション、特に洗浄水と原油との混合によって生じる油中水型エマルション、より詳細には洗浄水と原油との混合により生じる油中水型エマルション、を、本発明に関する解乳化添加剤組成物を用いて、解乳化するための方法に関する。
【0005】
他の実施形態では、本発明は、精製所の脱塩装置ユニットにおける、油中水型エマルション、特に洗浄水と原油との混合により生じる油中水型エマルション、より詳細には洗浄水と原油との混合により生じる油中水型エマルションの解乳化のために、本発明に関する解乳化添加剤組成物を用いる方法に関する。
【背景技術】
【0006】
油中水型エマルションは、様々な産業活動において形成され、油の分離が困難になるなど、様々な産業成分の実質的な損失の原因となっている。特に原油精製業界では、精製装置の脱塩装置で洗浄水が原油と混合され、油中水型エマルションが形成されるため、油中水型エマルジョンを分解することが求められている。
【0007】
現在、洗浄水と原油との混合によって生じる油中水型エマルションは、解乳化剤を洗浄水に添加することによって破壊されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解乳化剤は使用量が多量であり、原油の処理において連続して用いられるため、原油の処理コストが大幅に増加するという課題がある。
【0009】
解乳化剤は高価であるため、原油の処理コストを実質的に増加させるという他の課題もある。
【0010】
さらに重要なことは、現在使用されている解乳化剤はノニルフェノールの縮合生成物であるが、現在、そのコストと環境への悪影響の観点から、ノニルフェノールの消費を減らすことが求められていることである。
【0011】
従って、原油処理装置の工業的生産高を損なったり犠牲にしたりせずに、解乳化剤を用いる場合の上記の課題を最小限に抑えられるように、完全に排除できない場合であっても、解乳化剤必要量を低減する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、本発明は、以下の:
i)油中水型エマルションの解乳化のための、改善された効果的な解乳化添加剤組成物、及び
ii)油中水型エマルションの解乳化のための本発明の解乳化添加剤組成物を使用する方法、及び
iii)本発明の解乳化添加剤組成物を使用することによる油中水型エマルションの解乳化のための方法、を提供することにより、上記の既存の産業上の課題に対する解決策を提供することを目的とする。
【0013】
従って、本発明の主な目的は、
i)精製所の脱塩装置ユニットにおいて、油中水型エマルション、特に洗浄水と原油との混合により生じる油中水型エマルション、より詳細には洗浄水と原油との混合により生じる油中水型エマルションを解乳化するための解乳化添加剤組成物、
を提供することである。
【0014】
従って、本発明の他の目的は、
ii)本発明の解乳化添加剤組成物を用いて、精製所の脱塩装置ユニットにおいて、油中水型エマルション、特に洗浄水と原油との混合により生じる油中水型エマルション、より詳細には洗浄水と原油との混合により生じる油中水型エマルションを解乳化するための方法、
を提供することである。
【0015】
従って、本発明の他の目的は、
iii)精製所の脱塩装置ユニットにおいて、油中水型エマルション、特に洗浄水と原油との混合により生じる油中水型エマルション、より詳細には洗浄水と原油との混合により生じる油中水型エマルションを解乳化するために、本発明の解乳化添加剤組成物を使用する方法、
を提供することである。
【0016】
従って、本発明の目的は、好ましくは、精製所の脱塩装置ユニットにおいて、洗浄水と原油との混合により生じる油中水型エマルションの解乳化のための、より好ましくは、洗浄水と原油との混合により生じる油中水型エマルションの解乳化のための、解乳化添加剤組成物を、現在用いられている解乳化剤の量を削減するように提供することである。より好ましくは、精製所の脱塩装置ユニットにおいて、現在使用されている解乳化剤であるノニルフェノールの縮合生成物のノニルフェノール類又はノニルフェノール類の縮合生成物量を減らし、それによって加工コスト及び関連する環境への悪影響を減らすためである。
【0017】
本発明の他の目的及び利点は、本発明の範囲を限定することを意図しない実施例の記載とともに、以下の説明からより明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
従来技術の上記の産業上の問題を克服すること、及び本発明の上記の目的を達成することを目的として、本発明者は、:
(a)1以上の解乳化剤(成分(a)と称してもよい)と;
(b)グリオキサール、中和されたグリオキサール、グリオキサール誘導体及びそれらの混合物を含む群から選択される化合物(成分(b)と称してもよい)と;
(c)さらに、リン酸(成分(c)と称してもよい)
をさらに含む組成物により、驚くべきことにそして意外にも、当該解乳化剤(成分(a))の解乳化効率が実質的に改善され、必要な解乳化剤の量を実質的に低減することができ、それにより、原油の処理コスト及び関連する環境上の悪影響を実質的に低減することができることを見出した。
【0019】
本発明者はまた、成分(a)、成分(b)及び成分(c)の組み合わせ、
成分(a)と成分(b)との組み合わせからなる組成物、及び
成分(a)と成分(c)との組み合わせからなる組成物、
を含む本発明の組成物が、驚くべきことにそして意外にも、解乳化効率を実質的に向上させることも見出した。
【0020】
さらに、グリオキサール及び中和されたグリオキサールは解乳化剤よりも安価であるため、それにより、さらに原油の処理コストが実質的に低減される。
【0021】
従って、本発明は、原油中の洗浄水に起因する油中水型エマルションの解乳化のための解乳化添加剤組成物に関する。ここでは、前記組成物は、
(a)1以上の解乳化剤(成分(a))、
(b)グリオキサール、中和されたグリオキサール、グリオキサール誘導体及びそれらの混合物を含む群から選択される化合物(成分(b))、
(c)さらに、リン酸(成分(c))、を含む。
【0022】
本発明者はさらに、成分(a)と成分(b)との組み合わせを含むか、又は成分(a)と成分(b)と成分(c)との組み合わせを含む前記組成物のうち、前記成分(b)が、以下の:
グリコール酸;
グリオキシル酸;
クエン酸;又は
無水マレイン酸;
のうち1つ以上を含み、前記成分(c)はリン酸を含む、前記組成物では、本発明の成分(a)からなる組成物の解乳化効率が改善されないことを見出した。
【0023】
従って、本発明の一実施形態では、本組成物は以下:
グリコール酸;
グリオキシル酸;
クエン酸;又は
無水マレイン酸;
のうちの1つ以上を含まない。
【0024】
本発明では、中和されたグリオキサールは、pHが中性から塩基性までであるグリオキサールである。本発明者は、グリオキサールは非常に酸性であるため、腐食を起こす可能性があることを観察した。従って、グリオキサールをpHが中性から塩基性になるまで(neutral to basic)中和することにより、原油処理装置の腐食が回避され、解乳化剤の解乳化効率がさらに改善される。
【0025】
本発明では、中和されたグリオキサールは、グリオキサールをアミン又はアルカリ媒体で中和することによって得られる。
【0026】
本発明では、アミンはトリエタノールアミン(TEA)を包含するか含んでよい。
【0027】
本発明では、アルカリ性媒体は水酸化ナトリウム水溶液を包含するか含んでよい。
【0028】
本発明では、中和されたグリオキサールは、グリオキサールの中和された誘導体も包含するか含んでよい。従って、本発明における用語「中和されたグリオキサール」又は「グリオキサールの中和誘導体」は、特に明記しない限り、同一の意味である。
【0029】
本発明では、中性から塩基性までのpHは、約7から約12までのpHを包含する。
【0030】
本発明では、グリオキサール誘導体は、グリオキサールのメタノール、エタノール、ブタノール、もしくはエチレングリコール誘導体、又はそれらの混合物を包含するか含んでよい。
【0031】
本発明の好ましい一実施形態では、解乳化剤は、以下のi)~vii):
i)ノニルフェノール、アミルフェノール、及びホルムアルデヒド;
ii)ノニルフェノール、ブチルフェノール、及びホルムアルデヒド;
iii)ノニルフェノール及びホルムアルデヒド;
iv)アミルフェノール及びホルムアルデヒド;
v)ブチルフェノール及びホルムアルデヒド;
vi)アルキルフェノール及びホルムアルデヒド;及び
vii)それらの混合物;
のオキシアルキレン化縮合生成物からなる群から選択される。
【0032】
本発明の好ましい実施形態では、解乳化剤は、以下のi)~vii):
i)カルダノール、ノニルフェノール及びアミルフェノール、ならびにホルムアルデヒド;
ii)カルダノール、ノニルフェノール及びブチルフェノール、ならびにホルムアルデヒド;
iii)カルダノール、ノニルフェノール及びホルムアルデヒド;
iv)カルダノール、アミルフェノール及びホルムアルデヒド;
v)カルダノール、ブチルフェノール及びホルムアルデヒド;
vi)カルダノール、アルキルフェノール及びホルムアルデヒド;及び
vii)それらの混合物;
のオキシアルキレン化縮合生成物からなる群から選択される。
【0033】
本発明の好ましい一実施形態では、解乳化剤は、以下のi)~vii):
i)オキシアルキル化ノニルフェノール及びアミルフェノールホルムアルデヒド共重合体;
ii)オキシアルキル化ノニルフェノール及びブチルフェノールホルムアルデヒド共重合体;
iii)オキシアルキル化ノニルフェノールホルムアルデヒド重合体;
iv)オキシアルキル化アミルフェノールホルムアルデヒド重合体;
v)オキシアルキル化ブチルフェノールホルムアルデヒド重合体;
vi)オキシアルキル化アルキルフェノールホルムアルデヒド重合体;及び
vii)それらの混合物
を含む群から選択される。
【0034】
本発明の好ましい一実施形態では、解乳化剤は、以下のi)~vii):
i)オキシアルキル化カルダノール、ノニルフェノール及びアミルフェノール、及びホルムアルデヒド共重合体;
ii)オキシアルキル化カルダノール、ノニルフェノール及びブチルフェノール、及びホルムアルデヒド共重合体;
iii)オキシアルキル化カルダノール、ノニルフェノール及びホルムアルデヒド重合体;
iv)オキシアルキル化カルダノール、アミルフェノール及びホルムアルデヒド重合体;
v)オキシアルキル化カルダノール、ブチルフェノール及びホルムアルデヒド重合体;
vi)オキシアルキル化カルダノール、アルキルフェノール及びホルムアルデヒド重合体;及び
vii)それらの混合物
を含む群から選択することができる。
【0035】
本発明の好ましい一実施形態では、オキシアルキル化生成物は、エチレンオキシド誘導体、プロピレンオキシド誘導体、ブチレンオキシド誘導体又はそれらの混合物である。本発明の好ましい一実施形態では、オキシアルキル化生成物は、オキシアルキル化共重合体又はオキシアルキル化重合体又はオキシアルキル化樹脂である。本発明の好ましい一実施形態では、オキシアルキル化生成物は、前記フェノール化合物(すなわちカルダノール、ノニルフェノール、ブチルフェノール、アミルフェノール、アルキルフェノール)のうち1つ以上と、ホルムアルデヒドとの塩基触媒オキシアルキル化共重合体、又は塩基触媒オキシアルキル化重合体又は塩基触媒オキシアルキル化樹脂である。本発明の好ましい一実施形態では、オキシアルキル化生成物は、オキシアルキル化フェノールホルムアルデヒド樹脂、オキシアルキル化フェノールホルムアルデヒド重合体、又はオキシアルキル化フェノールホルムアルデヒド共重合体である。
【0036】
本発明の一実施形態では、フェノール系反応物はアルキル基を含むアルキルフェノールを包含する。本発明の実施形態のうちの1つによれば、アルキル基は約1から約20個の炭素原子を含む。本発明の一実施形態では、ブチル、アミル、ノニル、ヘキシル、オクチル、イソオクチル、デシル、又はドデシル基の置換があってよい。
【0037】
用語「共重合体」は2つの異なるフェノールから製造される重合体を意味し、用語「重合体」は1つのフェノールから製造される重合体を意味し、樹脂は重合体及び共重合体を包含することを意図することに留意されたい。
【0038】
本発明の一実施形態では、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂とアルキレンオキシドとの反応は高分子量のオキシアルキル化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂を形成する。
【0039】
本発明の一実施形態では、アルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド又はそれらの混合物を含み、好ましくは、アルキレンオキシドはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、又はそれらの混合物を含む。
【0040】
本発明の好ましい一実施形態では、本発明の解乳化剤の分子量は、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定して、約1000~約20000ダルトン、好ましくは約2000~約15000ダルトン、より好ましくは約2000~約10000ダルトンでありうる。
【0041】
本発明の一実施形態では、本発明の解乳化剤の平均分子量は、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定して、約1000~約2000ダルトン、好ましくは約2000~約15000ダルトン、より好ましくは約2000~約15000ダルトンでありうる。
【0042】
本発明によれば、組成物は、処理される油中水型エマルションの性質に応じて、:
成分(a)は、全組成物の約99.1質量%から約0.1質量%まで変動し、
成分(b)は、全組成物の約0.1質量%から約99.1質量%まで変動し、かつ、
成分(c)は、全組成物の約0.1質量%から約99.1質量%まで変動する、
を含む。
【0043】
本発明では、添加剤組成物を原油相又は脱塩器に添加することができ、ここで洗浄水は原油と混合されて油中水型エマルションを形成することに留意されたい。
【0044】
本発明の範囲は、原油又は洗浄水によって限定されないことにも留意されたい。
【0045】
従って、他の実施形態では、本発明は、精製所の脱塩装置ユニットにおいて、油中水型エマルション、特に洗浄水と原油との混合により生じる油中水型エマルション、より詳細には洗浄水と原油との混合により生じる油中水型エマルションを解乳化方法に関し、ここで、原油中の洗浄水の混合により形成した油中水型エマルションは、本発明に関する解乳化添加剤組成物を用いて処理される。
【0046】
従って、さらに他の実施形態では、本発明はまた、精製所の脱塩装置ユニットにおいて、油中水型エマルション、特に洗浄水と原油との混合により生じる油中水型エマルション、より詳細には洗浄水と原油との混合により生じる油中水型エマルションを解乳化するために、本発明の解乳化添加剤組成物を使用する方法に関し、ここで、本発明に関する解乳化添加剤組成物は、原油中の洗浄水の混合のために形成された油中水型エマルションに添加される。本発明の範囲は、本本発明に関する解乳化添加剤組成物の添加量によって限定されるものではなく、油中水型エマルジョンの解乳化に十分な量を添加すればよい。
【0047】
次に、本発明を以下の実施例により説明するが、これらは本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、先行技術に対する本発明の利点を説明するために組み込まれたにすぎない。
【実施例0048】
以下の実施例は以下の条件下で実施した。
PED No 1315
Crude: Raw Crude
API: 28.1
洗浄水: 5%(HMEL、ID443)、pH-8.1
混合温度: 550℃
混合時間: 2分
温度: 130℃
電圧: 3KV、8分間
【0049】
以下の実施例では、以下の組成物の解乳化効率について試験した。
1.成分(a)は、50%活性ノニルフェノールホルムアルデヒドエトキシレート樹脂(または塩基触媒ノニルフェノールホルムアルデヒド樹脂であってもよい)である、脱乳化剤である。
2.本発明の成分(b)はグリオキサール又は中和されたグリオキサールであり、ここでグリオキサールはトリエタノールアミン(TEA)で中和されている。
3.本発明の成分(c)はリン酸である。;
4.比較成分は、グリコール酸、グリオキシル酸、クエン酸、及び無水マレイン酸から選択することができる。以下の実験では、これらは以下のように同定されており、そして14質量%のDM(脱塩水)で摂取される。
比較成分(b1)はグリコール酸(40%)である。;
比較成分(b2)はグリオキシル酸(40%)である。;
比較成分(b3)はクエン酸(40%)である。;
比較成分(b4)は無水マレイン酸(40%)である。
5.比較組成物は、本発明の成分(b)と成分(c)との組み合わせを含まない。
「ブランク(blank)」は添加剤を含まない。
【0050】
【表1】
【0051】
上記の表Iでは、用量「10+3」は、添加剤が成分(a)を10ppm及び比較成分(b1)を3ppm含む等を示す。
しかしながら、上記表1において、「本組成物」は成分(a)を10ppm及び[成分(b)+成分(c)]を3ppm含み、ここで[成分(b)+成分(c)]は、14/0.43/85.57の質量比で、DM(脱塩水)水中、グリオキサール(40%)である成分(b)及びHPO(85%)である成分(c)を含む。
【0052】
上記表Iから観察されるように、比較組成物の効率が56%又は74%であるのに対して、本発明の組成物の効率は84%であった。
【0053】
【表2】
【0054】
上記の表IIにおいて、添加量「10+3」は、添加剤が成分(a)を10ppm及び第2の成分、すなわち比較成分(b1)、比較組成物(B)、比較成分(b2)、比較組成物(C)、比較成分(b3)、比較組成物(D)、比較成分(b4)、比較組成物(E)、を3ppm含むことを示す。
【0055】
上記の表I及びIIにおいて、種々の成分は以下の組成を有する。:
成分(a)は50%活性ノニルフェノールホルムアルデヒドエトキシレート樹脂(オキシアルキル化縮合生成物)である。
成分(b)は14%DM水中のグリオキサール(40%)を含む。
成分(c)は、DM水の0.43%中のHPO(85%)を含む。
本組成物は成分(a)に加えて、DM水中のグリオキサール(40%)である成分(b)及びHPO(85%)である成分(c)を14/0.43/85.57の質量比で含む。
比較成分(b1)は、14%DM水中のグリコール酸(40%)である。
比較組成物(B)は、DM水中のグリコール酸(40%)である比較成分(b1)とHPO(85%)である成分(c)とを14/0.43/85.57の質量比で含む。
比較成分(b2)は、DM水14質量%中のグリオキシル酸(40%)である。
比較組成物(C)は、DM水中にグリオキシル酸(40%)である比較成分(b2)とHPO(85%)である成分(c)とを14/0.43/85.57の質量比で含む。
比較成分(b3)は、DM水14質量%中のクエン酸(40%)である。
比較組成物(D)は、DM水中にクエン酸(40%)である比較成分(b3)とHPO(85%)である成分(c)を14/0.43/85.57の質量比で含む。
比較成分(b4)は、DM水14質量%中の無水マレイン酸(40%)である。
比較組成物(E)は、DM水中に無水マレイン酸(40%)である比較成分(b4)及びHPO(85%)である成分(c)を14/0.43/85.57の質量比で含む。
【0056】
上記の表IIから観察されるように、全ての比較組成物の効率は56%又は60%でしかない。
【0057】
【表3】
【0058】
表IIIにおいて、混合時間は2分であり、混合温度は55℃であった。成分(b)はDM水中、グリオキサール(40%)0.9ppmであり、そして成分(c)0.9ppmは、DM中グリオキサール(40%)0.87ppm、及びHPO(85%)0.03ppmを含む[すなわち、DM中グリオキサール(40%)97質量%及びHPO(85%)3質量%]。;成分(a)は、50質量%の活性エトキシル化ノニルフェノールカルダノールホルムアルデヒド樹脂であり、これはノニルフェノール90質量%とカルダノール10質量%とのエトキシル化縮合生成物である。
【0059】
上記表IIIから観察されるように、本発明の組成物の効率は90%であるのに対し、比較組成物の効率は、56%又は74%であった。
【0060】
【表4】
【0061】
表IVにおいて、混合時間はまた2分でありそして混合温度は再び55℃であった。成分(b)はDM水中グリオキサール(40%)の0.9ppmである。成分(c)の0.9ppmは、DM中グリオキサール(40%)の0.846ppm及びHPO(85%)の0.054ppmを含む[即ち、DM中のグリオキサール(40%)の84質量%及びHPO(85%)の6質量%]。成分(a)は、50%活性エトキシル化ノニルフェノールパラ3級アミルフェノールホルムアルデヒド樹脂であり、これはノニルフェノール50質量%とパラ3級アミルフェノール50質量%とのエトキシル化縮合生成物である。
【0062】
上記表IVから観察されるように、本発明の組成物の効率は84%であるのに対し、比較組成物の効率は、60%又は74%であった。
【0063】
【表5】
【0064】
表Vにおいて、混合時間はまた2分でありそして混合温度は再び55℃であった。成分(b)はDM水中グリオキサール(40%)の1.2ppmである。成分(c)の1.2ppmは、DM中グリオキサール(40%)の1.164ppm及びHPO(85%)の0.036ppmを含む[即ち、DM中のグリオキサール(40%)の97質量%及びHPO(85%)の3質量%]。成分(a)は、50%活性エトキシル化ノニルフェノールパラ3級ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂であり、これはノニルフェノール90質量%とパラ3級ブチルフェノール10質量%とのエトキシル化縮合生成物である。
【0065】
上記表IVから観察され得るように、本発明の組成物は、比較組成物の56%又は74%の効率に対して84%の効率を示す。
【0066】
上記例では、本添加剤組成物及び先行技術もしくは比較添加剤組成物は、水と原油の混合後に形成された水と原油の油中水型エマルションに添加された。
【0067】
以上の実験結果は、本発明の上述の驚くべき予想外の技術的利点を確認する。特にこれらの実験により、成分(a)、本発明の成分(b)及び本発明の成分(c)を含む本添加剤組成物が驚くべきそして予想外の技術的利点が示された。
【0068】
本明細書で用いられる用語「約」は、特許請求される発明の範囲を拡大することを意図するものではなく、本発明の分野の許容される実験誤差を包含するためにのみ用いられている。
【外国語明細書】