(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170419
(43)【公開日】2024-12-10
(54)【発明の名称】原核宿主細胞における2鎖タンパク質の産生方法
(51)【国際特許分類】
C12P 21/08 20060101AFI20241203BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20241203BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20241203BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241203BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20241203BHJP
C12N 15/90 20060101ALN20241203BHJP
【FI】
C12P21/08 ZNA
C12P21/02 C
C07K16/00
C12P21/08
C12N15/13
C12N15/31
C12N15/90 100Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024132069
(22)【出願日】2024-08-08
(62)【分割の表示】P 2021523353の分割
【原出願日】2019-11-04
(31)【優先権主張番号】62/755,915
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーラヴァリ, カルティック
(72)【発明者】
【氏名】マッケンナ, リベカ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】抗体、半抗体、抗体断片、または1アーム抗体などの2つの鎖を含むポリペプチドを産生するための方法および宿主細胞を提供する。
【解決手段】方法および宿主細胞は、染色体外ポリヌクレオチド(複数可)からのポリペプチド鎖をコードするポリヌクレオチドの発現、およびプロモータとシャペロンタンパク質をコードする翻訳単位との非天然の組合せ(複数可)を使用した宿主細胞染色体からの1つ以上のシャペロンタンパク質(例えば、ペプチジル-プロリルイソメラーゼおよび/またはタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼ)の発現を使用して、2鎖ポリペプチドの産生を可能にする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿主細胞染色体を含む原核宿主細胞中で、2つの鎖を含むポリペプチドを産生する方法であって、
(a)宿主細胞を、前記ポリペプチドの前記2つの鎖の発現に適した条件下の培養培地中で、前記ポリペプチドの前記2つの鎖を発現するように培養し、それによって、発現すると、前記2つの鎖は折り畳まれ、組み立てられて、前記宿主細胞中で生物学的に活性なポリペプチドを形成することであって、
前記宿主細胞が、
(1)前記ポリペプチドの第1の鎖をコードする第1の翻訳単位を含む第1のポリヌクレオチド、
(2)前記ポリペプチドの第2の鎖をコードする第2の翻訳単位を含む第2のポリヌクレオチド(ここで、前記第1および第2のポリヌクレオチドは、1つ以上の染色体外ポリヌクレオチドの一部である)、および
(3)ペプチジル-プロリルイソメラーゼおよびタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼからなる群から選択されるシャペロンタンパク質をコードする第3の翻訳単位を含む第3のポリヌクレオチドであって、前記第3の翻訳単位が前記宿主細胞染色体の一部であり、前記第3の翻訳単位が、前記宿主細胞染色体に組み込まれ、かつ前記第3の翻訳単位の転写を駆動するプロモータと作動可能な組合せにあり、前記第3の翻訳単位と前記プロモータとの組合せが、前記宿主細胞染色体に対して非天然である、第3のポリヌクレオチド
を含む、形成すること、ならびに
(b)前記宿主細胞から前記生物学的に活性なポリペプチドを回収すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記プロモータが、誘導性プロモータである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記誘導性プロモータが、前記培養培地中のリン酸塩が枯渇したときに、前記第3の翻訳単位の転写を駆動するPhoプロモータである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記誘導性プロモータが、前記培養培地中にイソプロピルβ-D-チオガラクトシド(IPTG)が存在する場合に、前記第3の翻訳単位の転写を駆動するIPTG誘導性プロモータである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記プロモータが、構成的プロモータである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記構成的プロモータが、CP25プロモータである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第3の翻訳単位が、前記宿主細胞染色体に対して天然である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第3の翻訳単位が、前記宿主細胞染色体に対して非天然である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記シャペロンタンパク質が、ペプチジル-プロリルイソメラーゼである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ペプチジル-プロリルイソメラーゼが、FkpAタンパク質である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記FkpAが、大腸菌FkpAである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記シャペロンタンパク質が、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼが、DsbCタンパク質である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼが、大腸菌DsbCである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼが、DsbAタンパク質である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼが、大腸菌DsbAである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
宿主細胞染色体を含む原核宿主細胞中で、2つの鎖を含むポリペプチドを産生する方法であって、
(a)宿主細胞を、前記ポリペプチドの前記2つの鎖の発現に適した条件下の培養培地中で、前記ポリペプチドの前記2つの鎖を発現するように培養し、それによって、発現すると、前記2つの鎖は折り畳まれ、組み立てられて、前記宿主細胞中で生物学的に活性なポリペプチドを形成することであって、
前記宿主細胞が、
(1)前記ポリペプチドの第1の鎖をコードする第1の翻訳単位を含む第1のポリヌクレオチド、
(2)前記ポリペプチドの第2の鎖をコードする第2の翻訳単位を含む第2のポリヌクレオチド(ここで、前記第1および第2のポリヌクレオチドは、1つ以上の染色体外ポリヌクレオチドの一部である)、
(3)タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼをコードする第3の翻訳単位を含む第3のポリヌクレオチドであって、前記第3の翻訳単位は前記宿主細胞染色体の一部であり、前記第3の翻訳単位が、前記宿主細胞染色体に組み込まれ、かつ前記第3の翻訳単位の転写を駆動する第1のプロモータと作動可能な組合せにあり、前記第3の翻訳単位と前記第1のプロモータとの組合せが、前記宿主細胞染色体に対して非天然である、第3のポリヌクレオチド、および
(4)ペプチジル-プロリルイソメラーゼをコードする第4の翻訳単位を含む第4のポリヌクレオチドであって、前記第4の翻訳単位は前記宿主細胞染色体の一部であり、前記第4の翻訳単位が、前記宿主細胞染色体に組み込まれ、かつ前記第4の翻訳単位の転写を駆動する第2のプロモータと作動可能な組合せにあり、前記第4の翻訳単位と前記第2のプロモータとの組合せが、前記宿主細胞染色体に対して非天然である、第4のポリヌクレオチドを含む、
形成すること、ならびに
(b)前記宿主細胞から前記生物学的に活性なポリペプチドを回収すること
を含む、方法。
【請求項18】
前記第1および第2のプロモータが両方とも、誘導性プロモータである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1および第2のプロモータが両方とも、前記培養培地中のリン酸塩が枯渇したときに、それぞれ前記第3および第4の翻訳単位の転写を駆動するPhoプロモータである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1および第2のプロモータの一方が誘導性プロモータであり、前記第1および第2のプロモータの他方が構成的プロモータである、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記第1のプロモータが誘導性プロモータであり、前記第2のプロモータが構成的プロモータである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第1のプロモータが、前記培養培地中のリン酸塩が枯渇したときに、前記第3の翻訳単位の転写を駆動するPhoプロモータであり、前記第2のプロモータがCP25プロモータである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第2のプロモータが誘導性プロモータであり、前記第1のプロモータが構成的プロモータである、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記第3の翻訳単位および前記第4の翻訳単位の一方または両方が、前記宿主細胞染色体に対して天然である、請求項17から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記第3の翻訳単位および前記第4の翻訳単位が両方とも、前記宿主細胞染色体に対して天然である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第3の翻訳単位および前記第4の翻訳単位の一方または両方が、前記宿主細胞染色体に対して非天然である、請求項17から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼが、DsbCタンパク質である、請求項17から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼが、大腸菌DsbCである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ペプチジル-プロリルイソメラーゼが、FkpAタンパク質である、請求項17から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記FkpAが、大腸菌FkpAである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼが、大腸菌DsbCであり、前記第1のプロモータが、前記培養培地中のリン酸塩が枯渇したときに、前記第3の翻訳単位の転写を駆動するPhoプロモータであり、前記ペプチジル-プロリルイソメラーゼが、大腸菌FkpAであり、前記第2のプロモータが、CP25プロモータである、請求項17に記載の方法。
【請求項32】
前記タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼが、大腸菌DsbCであり、前記第1のプロモータが、前記培養培地中のリン酸塩が枯渇したときに、前記第3の翻訳単位の転写を駆動するPhoプロモータであり、前記ペプチジル-プロリルイソメラーゼが、大腸菌FkpAであり、前記第2のプロモータが、前記培養培地中のリン酸塩が枯渇したときに、前記第4の翻訳単位の転写を駆動するPhoプロモータである、請求項17に記載の方法。
【請求項33】
前記宿主細胞が、(5)第2のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼをコードする第5の翻訳単位を含む第5のポリヌクレオチドであって、前記第5の翻訳単位は前記宿主細胞染色体の一部であり、前記第5の翻訳単位が、前記宿主細胞染色体に組み込まれ、かつ前記第5の翻訳単位の転写を駆動する第3のプロモータと作動可能な組合せにあり、前記第5の翻訳単位と前記第3のプロモータとの組合せが、前記宿主細胞染色体に対して非天然である、第5のポリヌクレオチドをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項34】
前記第2のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼが、DsbAタンパク質である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第2のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼが、大腸菌DsbAである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記第3のプロモータが、誘導性プロモータである、請求項33から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記第3のプロモータが、前記培養培地中にイソプロピルβ-D-チオガラクトシド(IPTG)が存在する場合に、前記第5の翻訳単位の転写を駆動するIPTG誘導性プロモータである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記第5の翻訳単位が、前記宿主細胞染色体に対して天然である、請求項33から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記第5の翻訳単位が、前記宿主細胞染色体に対して非天然である、請求項33から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記第1のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼが、大腸菌DsbCであり、前記第1のプロモータが、前記培養培地中にイソプロピルβ-D-チオガラクトシド(IPTG)が存在する場合に、前記第3の翻訳単位の転写を駆動するIPTG誘導性プロモータであり、前記ペプチジル-プロリルイソメラーゼが、大腸菌FkpAであり、前記第2のプロモータが、CP25プロモータであり、前記第2のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼが、大腸菌DsbAであり、前記第3のプロモータが、前記培養培地中にイソプロピルβ-D-チオガラクトシド(IPTG)が存在する場合に、前記第5の翻訳単位の転写を駆動するIPTG誘導性プロモータである、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
前記宿主細胞が、(6)前記ポリペプチドの第3の鎖をコードする第6の翻訳単位を含む第6のポリヌクレオチドチドであって、前記第6のポリヌクレオチドが、前記1つ以上の染色体外ポリヌクレオチドの一部である、第6のポリヌクレオチドをさらに含み、それによって、発現すると、前記3つの鎖が折り畳まれ、組み立てられて、前記宿主細胞中で生物学的に活性なポリペプチドを形成する、請求項17から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の翻訳単位が、免疫グロブリン重鎖をコードし、前記第2の翻訳単位が、免疫グロブリン軽鎖をコードし、前記第6の翻訳単位が、免疫グロブリンFc断片をコードし、前記3つの鎖が折り畳まれ、組み立てられて生物学的に活性な一価抗体を形成する、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記一価抗体が、抗原に特異的に結合することができる、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記第1および第2のポリヌクレオチドが両方とも、単一の染色体外発現ベクターの一部である、請求項1から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記染色体外発現ベクターが、選択剤に対する耐性を促進する選択可能マーカーをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記宿主細胞が、前記選択可能マーカーの発現に適した条件下で培養され、前記培養培地が、前記選択剤をさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記染色体外発現ベクターが、前記原核宿主細胞中で前記染色体外発現ベクターを複製するのに適した複製起点をさらに含む、請求項44または請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記ポリペプチドの前記2つの鎖が、少なくとも1つのジスルフィド結合によって互いに連結される、請求項1から46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記ポリペプチドが、ヘテロ二量体のモノマーである、請求項1から41および43から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記ポリペプチドが半抗体であり、前記第1の鎖および前記第2の鎖が、免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖を含む、請求項1から41および43から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記半抗体が、抗原に特異的に結合することができる、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記ポリペプチドが、分泌タンパク質である、請求項1から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記分泌タンパク質が、前記宿主細胞の前記ペリプラズムから回収される、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記原核宿主細胞が、グラム陰性細菌である、請求項1から52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記グラム陰性細菌が、大腸菌である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記大腸菌が、内因性プロテアーゼ活性を欠く株のものである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記大腸菌が、degpS210A変異を有する株である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記大腸菌が、増強されたLacI産生または活性を有する株のものである、請求項54から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記大腸菌が、lacIQ変異を有する株である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記大腸菌が、ΔfhuA ΔphoA ilvG2096(IlvG+、Valr)Δprc spr43H1 ΔmanA lacIQ ΔompT ΔmenE742 degPS210A株のものである、請求項54に記載の方法。
【請求項60】
第1の抗原に結合することができる第1の半抗体と、第2の抗原に結合することができる第2の半抗体とを含む、二重特異性抗体の産生方法であって、
前記第1の翻訳単位が、前記第1の半抗体の重鎖をコードし、前記第2の翻訳単位が、前記第1の半抗体の軽鎖をコードし、前記第1の半抗体が、少なくとも1つのノブ形成変異を含む、請求項1から40および44から59のいずれか一項に記載の方法に従って前記第1の半抗体を産生することと、
前記第1の翻訳単位が、前記第2の半抗体の重鎖をコードし、前記第2の翻訳単位が、前記第2の半抗体の軽鎖をコードし、前記第2の半抗体が、少なくとも1つのホール形成変異を含む、請求項1から40および44から59のいずれか一項に記載の方法に従って前記第2の半抗体を産生することと、
還元条件で、前記第1の半抗体を前記第2の半抗体と組み合わせて、前記二重特異性抗体を産生することとを含む、方法。
【請求項61】
前記第1の抗原および前記第2の抗原が、異なる抗原である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記還元条件を達成するために還元剤を添加する工程をさらに含む、請求項60または請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記還元剤が、グルタチオンである、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
宿主細胞染色体を含む原核宿主細胞であって、
(1)ペプチジル-プロリルイソメラーゼをコードする第1の翻訳単位を含む第1のポリヌクレオチドであって、前記第1の翻訳単位は前記宿主細胞染色体の一部であり、前記第1の翻訳単位が、前記宿主細胞染色体に組み込まれ、かつ前記第1の翻訳単位の転写を駆動する第1のプロモータと作動可能な組合せにあり、前記第1の翻訳単位と前記第1のプロモータとの組合せが、前記宿主細胞染色体に対して非天然である、第1のポリヌクレオチド、および
(2)タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼをコードする第2の翻訳単位を含む第2のポリヌクレオチドであって、前記第2の翻訳単位は前記宿主細胞染色体の一部であり、前記第2の翻訳単位が、前記宿主細胞染色体に組み込まれ、かつ前記第2の翻訳単位の転写を駆動する第2のプロモータと作動可能な組合せにあり、前記第2の翻訳単位と前記第2のプロモータとの組合せが、前記宿主細胞染色体に対して非天然である、第2のポリヌクレオチドを含む、原核宿主細胞。
【請求項65】
前記第1の翻訳単位および前記第2の翻訳単位の一方または両方が、前記宿主細胞染色体に対して天然である、請求項64に記載の原核宿主細胞。
【請求項66】
前記第1の翻訳単位および前記第2の翻訳単位の両方が、前記宿主細胞染色体に対して天然である、請求項65に記載の原核宿主細胞。
【請求項67】
前記第1の翻訳単位および前記第2の翻訳単位の一方または両方が、前記宿主細胞染色体に対して非天然である、請求項64に記載の原核宿主細胞。
【請求項68】
前記第1のプロモータが、第1の誘導性プロモータである、請求項64から67のいずれか一項に記載の原核宿主細胞。
【請求項69】
前記第1の誘導性プロモータが、Phoプロモータである、請求項68に記載の原核宿主細胞。
【請求項70】
前記第1の誘導性プロモータが、イソプロピルβ-D-チオガラクトシド(IPTG)誘導性プロモータである、請求項68に記載の原核宿主細胞。
【請求項71】
前記第1のプロモータが、第1の構成的プロモータである、請求項64から67のいずれか一項に記載の原核宿主細胞。
【請求項72】
前記第1の構成的プロモータが、CP25プロモータである、請求項71に記載の原核宿主細胞。
【請求項73】
前記第2のプロモータが、第2の誘導性プロモータである、請求項64から72のいずれか一項に記載の原核宿主細胞。
【請求項74】
前記第2の誘導性プロモータが、Phoプロモータである、請求項73に記載の原核宿主細胞。
【請求項75】
前記第2の誘導性プロモータが、イソプロピルβ-D-チオガラクトシド(IPTG)誘導性プロモータである、請求項73に記載の原核宿主細胞。
【請求項76】
前記第2のプロモータが、第2の構成的プロモータである、請求項64から72のいずれか一項に記載の原核宿主細胞。
【請求項77】
前記第2の構成的プロモータが、CP25プロモータである、請求項76に記載の原核宿主細胞。
【請求項78】
前記ペプチジル-プロリルイソメラーゼが、FkpAタンパク質である、請求項64から77のいずれか一項に記載の原核宿主細胞。
【請求項79】
前記FkpAが、大腸菌FkpAである、請求項78に記載の原核宿主細胞。
【請求項80】
前記タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼが、DsbCタンパク質である、請求項64から79のいずれか一項に記載の原核宿主細胞。
【請求項81】
前記タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼが、大腸菌DsbCである、請求項80に記載の原核宿主細胞。
【請求項82】
前記タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼが、DsbAタンパク質である、請求項64から79のいずれか一項に記載の原核宿主細胞。
【請求項83】
前記タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼが、大腸菌DsbAである、請求項82に記載の原核宿主細胞。
【請求項84】
前記ペプチジル-プロリルイソメラーゼが、FkpAタンパク質であり、前記第1のプロモータが、CP25プロモータであり、前記タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼが、DsbCタンパク質であり、前記第2のプロモータが、Phoプロモータである、請求項64に記載の原核宿主細胞。
【請求項85】
前記ペプチジル-プロリルイソメラーゼが、FkpAタンパク質であり、前記第1のプロモータが、Phoプロモータであり、前記タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼが、DsbCタンパク質であり、前記第2のプロモータが、Phoプロモータである、請求項64に記載の原核宿主細胞。
【請求項86】
請求項64から83のいずれか一項に記載の原核宿主細胞であって、
(3)第2のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼをコードする第3の翻訳単位を含む第3のポリヌクレオチドであって、前記第3の翻訳単位は前記宿主細胞染色体の一部であり、前記第3の翻訳単位が、前記宿主細胞染色体に組み込まれ、かつ前記第3の翻訳単位の転写を駆動する第3のプロモータと作動可能な組合せにあり、前記第3の翻訳単位と前記第3のプロモータとの組合せが、前記宿主細胞染色体に対して非天然である、第3のポリヌクレオチドをさらに含む、原核宿主細胞。
【請求項87】
前記第2のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼが、DsbAタンパク質である、請求項86に記載の原核宿主細胞。
【請求項88】
前記第2のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼが、大腸菌DsbAである、請求項87に記載の原核宿主細胞。
【請求項89】
前記第2のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼが、DsbCタンパク質である、請求項86に記載の原核宿主細胞。
【請求項90】
前記第2のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼが、大腸菌DsbCである、請求項89に記載の原核宿主細胞。
【請求項91】
前記第3のプロモータが、第3の誘導性プロモータである、請求項86から90のいずれか一項に記載の原核宿主細胞。
【請求項92】
前記第3の誘導性プロモータが、イソプロピルβ-D-チオガラクトシド(IPTG)誘導性プロモータである、請求項91に記載の原核宿主細胞。
【請求項93】
前記ペプチジル-プロリルイソメラーゼが、FkpAタンパク質であり、前記第1のプロモータが、CP25プロモータであり、前記第1のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼが、DsbCタンパク質であり、前記第2のプロモータが、イソプロピルβ-D-チオガラクトシド(IPTG)誘導性プロモータであり、前記第2のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼが、DsbAタンパク質であり、前記第3のプロモータが、イソプロピルβ-D-チオガラクトシド(IPTG)誘導性プロモータである、請求項86に記載の原核宿主細胞。
【請求項94】
前記原核宿主細胞が、グラム陰性細菌である、請求項64から93のいずれか一項に記載の原核宿主細胞。
【請求項95】
前記グラム陰性細菌が、大腸菌である、請求項94に記載の原核宿主細胞。
【請求項96】
前記大腸菌が、内因性プロテアーゼ活性を欠く株のものである、請求項95に記載の原核宿主細胞。
【請求項97】
前記大腸菌が、degpS210A変異を有する株である、請求項96に記載の原核宿主細胞。
【請求項98】
前記大腸菌が、増強されたLacI産生または活性を有する株のものである、請求項95から97のいずれか一項に記載の原核宿主細胞。
【請求項99】
前記大腸菌が、lacIQ変異を有する株である、請求項98に記載の原核宿主細胞。
【請求項100】
前記大腸菌が、ΔfhuA ΔphoA ilvG2096(IlvG+、Valr)Δprc spr43H1 ΔmanA lacIQ ΔompT ΔmenE742 degPS210A株のものである、請求項95に記載の原核宿主細胞。
【請求項101】
(a)2鎖ポリペプチドの第1の鎖をコードする第1の染色体外翻訳単位を含む第1の染色体外ポリヌクレオチド、および(b)前記2鎖ポリペプチドの第2の鎖をコードする第2の染色体外翻訳単位を含む第2の染色体外ポリヌクレオチドを含む染色体外発現ベクターを含む染色体外発現ベクターであって、それによって、発現すると、前記2つの鎖が折り畳まれ、組み立てられて、前記宿主細胞において生物学的に活性な2鎖ポリペプチドを形成する、染色体外発現ベクターをさらに含む、請求項64から100のいずれか一項に記載の原核宿主細胞。
【請求項102】
前記染色体外発現ベクターが、前記原核宿主細胞中で前記染色体外発現ベクターを複製するのに適した複製起点をさらに含む、請求項101に記載の原核宿主細胞。
【請求項103】
前記染色体外発現ベクターが、選択剤に対する耐性を促進する選択可能マーカーをコードするポリヌクレオチドをさらに含む、請求項101または請求項102に記載の原核宿主細胞。
【請求項104】
前記2鎖ポリペプチドの前記2つの鎖が、少なくとも1つのジスルフィド結合によって互いに連結される、請求項101から103のいずれか一項に記載の原核宿主細胞。
【請求項105】
前記2鎖ポリペプチドが、ヘテロ二量体のモノマーである、請求項101から104のいずれか一項に記載の原核宿主細胞。
【請求項106】
前記ポリペプチドが半抗体であり、前記第1の鎖および前記第2の鎖が免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖を含む、請求項101から104のいずれか一項に記載の原核宿主細胞。
【請求項107】
前記半抗体が、抗原に特異的に結合することができる、請求項106に記載の原核宿主細胞。
【請求項108】
前記2鎖ポリペプチドが、分泌タンパク質である、請求項101から104のいずれか一項に記載の原核宿主細胞。
【請求項109】
前記分泌タンパク質が、前記宿主細胞の前記ペリプラズムから回収される、請求項108に記載の原核宿主細胞。
【請求項110】
前記染色体外発現ベクターが、2鎖ポリペプチドの第3の鎖をコードする第3の染色体外翻訳単位を含む第3の染色体外ポリヌクレオチドをさらに含み、それによって、発現すると、前記3つの鎖が折り畳まれ、組み立てられて、前記宿主細胞中で生物学的に活性なポリペプチドを形成する、請求項101から104のいずれか一項に記載の原核宿主細胞。
【請求項111】
前記第1の染色体外翻訳単位が免疫グロブリン重鎖をコードし、前記第2の染色体外翻訳単位が免疫グロブリン軽鎖をコードし、前記第3の染色体外翻訳単位が免疫グロブリンFc断片をコードし、前記3つの鎖が折り畳まれ、組み立てられて、生物学的に活性な一価抗体を形成する、請求項110に記載の原核宿主細胞。
【請求項112】
前記一価抗体が、抗原に特異的に結合することができる、請求項111に記載の原核宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年11月5日に出願された米国特許仮出願第62/755,915号に対する優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
ASCIIテキストファイルによる配列表の提出
【0002】
以下のASCIIテキストファイルによる提出の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:配列表のコンピュータ可読形態(CRF)(ファイル名:146392044040SEQLIST.TXT、記録日::2019年10月28日、サイズ:6KB)。
【0003】
本開示は、抗体(例えば、二重特異性抗体、半抗体、1アーム抗体、抗体断片など)などの組換えポリペプチドを産生する方法、および前記方法に使用を見出すことができる原核宿主細胞に関する。
【背景技術】
【0004】
原核宿主細胞における組換えタンパク質産生は、1978年の大腸菌におけるヒトインスリンの産生以来、多くの重要な治療薬剤の源となっている。分子生物学ツールおよび知識が発達するにつれて、組換え治療薬の複雑性もまた増している。これらの組換えタンパク質の産生は、産物が、適切な翻訳、折り畳み、組立て、ジスルフィド結合、およびペリプラズムへの輸送などの特性を呈することを必要とする。多くの組換えタンパク質、特に、ジスルフィド結合を有するもの(例えば、抗体および抗体断片を含むが、これらに限定されない、2鎖タンパク質)の発現により、原核宿主細胞において封入体が形成されるということが知られている(Spadiutら、Trends in Biotechnology、32:54、2014)。したがって、産業規模で、原核宿主細胞において適切に折り畳まれ、組み立てられた2鎖タンパク質の組換え体産生のための発現系およびプロセスが必要とされている。
【0005】
モノクローナル抗体は、最も速く成長しているタイプの組換え治療薬剤のうちの1つに相当し、多数のモノクローナル抗体が、種々の疾患の治療のために既に承認されているか、または審査中である(Nelsonら、Nature Review Drug Discovery、9:767、2010)。従来のモノクローナル抗体は、単一の標的抗原に結合する。多くの疾患では、2つ以上の標的抗原に結合する抗体、すなわち、多重特異性抗体を採用することが有利であり得る。このような抗体を、複数の治療標的に対するコンビナトリアルアプローチにおいて採用することができる(例えば、Bostromら、Science、323:1610、2009、およびWuら、Nature Biotechnology、25:1290、2007を参照されたい)。例えば、がん細胞の表面上で発現したエピトープ、およびT細胞上で発現したエピトープに同時に結合して、腫瘍細胞のT細胞媒介性殺滅を誘導する、二重特異性抗体を産生することができる(Shalabyら、Clinical Immunology、74:185、1995)。抗体断片および1アーム抗体などの他のモノクローナル抗体フォーマットも使用されている(例えば、Merchantら、Proc.Natl.Acad.Sci.110:E2987~E2996、2013を参照されたい)。
【0006】
診療所における抗体の使用は、産業的に必要な量の2鎖タンパク質を産生する能力を必要とする。原核宿主細胞における組換えタンパク質産生を改善するベクター成分が記載されており(例えば、Schlapschyら、Protein Engineering,Design and Selection,19:385、2006、およびSimmonsら、Journal of Immunological Methods、263:133、2002を参照)、特に、シャペロンタンパク質(複数可)の発現が、抗体価を増加させるために使用されている。しかしながら、これらのシャペロンタンパク質(複数可)は、典型的には、宿主細胞内のプラスミドから発現される。これは、発現されるすべての新しい組換えタンパク質について、組換え産物およびシャペロン(複数可)の両方をコードするユニークな発現プラスミドを構築し、それらの発現を(例えば、様々なプロモータおよび/または翻訳開始領域を試験することによって)調整するために、かなりの時間および費用を費やさなければならないことを意味する。これはまた、コード配列(複数可)およびシャペロンタンパク質(複数可)のための関連する調節エレメントを収容するために、より大きなプラスミドサイズの使用を必要とする。プラスミド発現はまた、典型的には、(プラスミドは1細胞あたり少なくとも10~15コピーで存在し得るので、)シャペロンタンパク質(複数可)のより高い発現レベルをもたらし、いくつかの場合、プラスミド発現は、組換え産物力価からシャペロンタンパク質を除去するために追加の精製工程を必要とする。
【0007】
特許出願、特許公報、およびUniProtKB/Swiss-Prot受託番号を含む、本明細書において引用されるすべての参考文献は、個々の参考文献がそれぞれ参照により組み込まれるように具体的かつ個別に示されているかのように、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0008】
実験規模で組換え2鎖タンパク質を効率的に産生するための最適な方法が、依然として求められている。特に、シャペロンタンパク質をコードする翻訳単位(複数可)の原核宿主細胞染色体への組込み、および/または天然シャペロンタンパク質の発現を駆動するための非天然プロモータの組込みは、様々な組換えタンパク質産物を発現し、産生に必要なプラスミド操作およびタンパク質精製プロトコルを単純化するために使用することができる、単一の宿主細胞を可能にする。
【0009】
これらおよび他の要求を満たすために、原核宿主細胞およびそれを使用して2鎖ポリペプチドを産生する方法が本明細書で提供される。有利なことには、これらの宿主細胞および方法は、例えば、シャペロン発現プラスミドを最適化するための事前の時間およびコスト、またはシャペロンタンパク質を除去するための下流での精製工程を必要とせずに、2鎖ポリペプチドのより効率的な産生を可能にする。
【0010】
一態様では、宿主細胞染色体を含む原核宿主細胞中で、2つの鎖を含むポリペプチドを産生する方法が本明細書で提供され、該方法は、(a)宿主細胞を、該ポリペプチドの該2つの鎖の発現に適した条件下の培養培地中で、該ポリペプチドの該2つの鎖を発現するように培養し、それによって、発現すると、該2つの鎖は折り畳まれ、組み立てられて、該宿主細胞中で生物学的に活性なポリペプチドを形成することであって、該宿主細胞が、(1)該ポリペプチドの第1の鎖をコードする第1の翻訳単位を含む第1のポリヌクレオチド、(2)該ポリペプチドの第2の鎖をコードする第2の翻訳単位を含む第2のポリヌクレオチド(ここで、該第1および第2のポリヌクレオチドは、1つ以上の染色体外ポリヌクレオチドの一部である)、および(3)ペプチジル-プロリルイソメラーゼおよびタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼからなる群から選択されるシャペロンタンパク質をコードする第3の翻訳単位を含む第3のポリヌクレオチドであって、該第3の翻訳単位は該宿主細胞染色体の一部であり、該第3の翻訳単位が、該宿主細胞染色体に組み込まれ、かつ該第3の翻訳単位の転写を駆動するプロモータと作動可能な組合せにあり、該第3の翻訳単位と該プロモータとの組合せが、該宿主細胞染色体に対して非天然である、第3のポリヌクレオチドを含む、形成すること、ならびに(b)該宿主細胞から該生物学的に活性なポリペプチドを回収することを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、プロモータは、誘導性プロモータである。いくつかの実施形態では、誘導性プロモータは、培養培地中のリン酸塩が枯渇したときに、第3の翻訳単位の転写を駆動するPhoプロモータである。いくつかの実施形態では、誘導性プロモータは、培養培地中にイソプロピルβ-D-チオガラクトシド(IPTG)が存在する場合に、第3の翻訳単位の転写を駆動するIPTG誘導性プロモータである。いくつかの実施形態では、プロモータは、構成的プロモータである。いくつかの実施形態では、構成的プロモータは、CP25プロモータである。いくつかの実施形態では、第3の翻訳単位は、宿主細胞染色体に対して天然である。いくつかの実施形態では、第3の翻訳単位は、宿主細胞染色体に対して非天然である。いくつかの実施形態では、シャペロンタンパク質は、ペプチジル-プロリルイソメラーゼである。いくつかの実施形態では、ペプチジル-プロリルイソメラーゼは、FkpAタンパク質である。いくつかの実施形態では、FkpAは、大腸菌FkpAである。いくつかの実施形態では、シャペロンタンパク質は、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼである。いくつかの実施形態では、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼは、DsbCタンパク質である。いくつかの実施形態では、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼは、大腸菌DsbCである。いくつかの実施形態では、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼは、DsbAタンパク質である。いくつかの実施形態では、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼは、大腸菌DsbAである。
【0012】
別の態様では、宿主細胞染色体を含む原核宿主細胞中で、2つの鎖を含むポリペプチドを産生する方法が本明細書で提供され、該方法は、(a)宿主細胞を、該ポリペプチドの該2つの鎖の発現に適した条件下の培養培地中で、該ポリペプチドの該2つの鎖を発現するように培養し、それによって、発現すると、該2つの鎖は折り畳まれ、組み立てられて、該宿主細胞中で生物学的に活性なポリペプチドを形成することであって、該宿主細胞が、(1)該ポリペプチドの第1の鎖をコードする第1の翻訳単位を含む第1のポリヌクレオチド、(2)該ポリペプチドの第2の鎖をコードする第2の翻訳単位を含む第2のポリヌクレオチド(ここで、該第1および第2のポリヌクレオチドは、1つ以上の染色体外ポリヌクレオチドの一部である)、(3)タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼをコードする第3の翻訳単位を含む第3のポリヌクレオチドであって、該第3の翻訳単位は該宿主細胞染色体の一部であり、該第3の翻訳単位が、該宿主細胞染色体に組み込まれ、かつ該第3の翻訳単位の転写を駆動する第1のプロモータと作動可能な組合せにあり、該第3の翻訳単位と該第1のプロモータとの組合せが、該宿主細胞染色体に対して非天然である、第3のポリヌクレオチド、および(4)ペプチジル-プロリルイソメラーゼをコードする第4の翻訳単位を含む第4のポリヌクレオチドであって、該第4の翻訳単位は該宿主細胞染色体の一部であり、該第4の翻訳単位が、該宿主細胞染色体に組み込まれ、かつ該第4の翻訳単位の転写を駆動する第2のプロモータと作動可能な組合せにあり、該第4の翻訳単位と該第2のプロモータとの組合せが、該宿主細胞染色体に対して非天然である、第4のポリヌクレオチドを含む、形成すること、ならびに(b)該宿主細胞から該生物学的に活性なポリペプチドを回収することを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、第1および第2のプロモータは両方とも、誘導性プロモータである。いくつかの実施形態では、第1および第2のプロモータは両方とも、培養培地中のリン酸塩が枯渇したときに、それぞれ第3および第4の翻訳単位の転写を駆動するPhoプロモータである。いくつかの実施形態では、第1および第2のプロモータの一方は、誘導性プロモータであり、第1および第2のプロモータの他方は、構成的プロモータである。いくつかの実施形態では、第1のプロモータは、培養培地中のリン酸塩が枯渇したときに、第3の翻訳単位の転写を駆動するPhoプロモータであり、第2のプロモータは、CP25プロモータである。いくつかの実施形態では、第2のプロモータは、誘導性プロモータであり、第1のプロモータは、構成的プロモータである。いくつかの実施形態では、第3の翻訳単位および第4の翻訳単位の一方または両方は、宿主細胞染色体に対して天然である。いくつかの実施形態では、第3の翻訳単位および第4の翻訳単位は両方とも、宿主細胞染色体に対して天然である。いくつかの実施形態では、第3の翻訳単位および第4の翻訳単位の一方または両方は、宿主細胞染色体に対して非天然である。いくつかの実施形態では、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼは、DsbCタンパク質である。いくつかの実施形態では、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼは、大腸菌DsbCである。いくつかの実施形態では、ペプチジル-プロリルイソメラーゼは、FkpAタンパク質である。いくつかの実施形態では、FkpAは、大腸菌FkpAである。いくつかの実施形態では、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼは、大腸菌DsbCであり、第1のプロモータは、培養培地中のリン酸塩が枯渇したときに、第3の翻訳単位の転写を駆動するPhoプロモータであり、ペプチジル-プロリルイソメラーゼは、大腸菌FkpAであり、第2のプロモータは、CP25プロモータである。いくつかの実施形態では、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼは、大腸菌DsbCであり、第1のプロモータは、培養培地中のリン酸塩が枯渇したときに、第3の翻訳単位の転写を駆動するPhoプロモータであり、ペプチジル-プロリルイソメラーゼは、大腸菌FkpAであり、第2のプロモータは、培養培地中のリン酸塩が枯渇したときに、第4の翻訳単位の転写を駆動するPhoプロモータである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、(5)第2のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼをコードする第5の翻訳単位を含む第5のポリヌクレオチドであって、該第5の翻訳単位は該宿主細胞染色体の一部であり、該第5の翻訳単位が、該宿主細胞染色体に組み込まれ、かつ該第5の翻訳単位の転写を駆動する第3のプロモータと作動可能な組合せにあり、該第5の翻訳単位と該第3のプロモータとの組合せが、該宿主細胞染色体に対して非天然である、第5のポリヌクレオチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、第2のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼは、DsbAタンパク質である。いくつかの実施形態では、第2のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼは、大腸菌DsbAである。いくつかの実施形態では、第3のプロモータは、誘導性プロモータである。いくつかの実施形態では、第3のプロモータは、培養培地中にイソプロピルβ-D-チオガラクトシド(IPTG)が存在する場合に、第5の翻訳単位の転写を駆動するIPTG誘導性プロモータである。いくつかの実施形態では、第5の翻訳単位は、宿主細胞染色体に対して天然である。いくつかの実施形態では、第5の翻訳単位は、宿主細胞染色体に対して非天然である。いくつかの実施形態では、第1のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼは、大腸菌DsbCであり、第1のプロモータは、イソプロピルβ-D-チオガラクトシド(IPTG)が培養培地中に存在する場合に、第3の翻訳単位の転写を駆動するIPTG誘導性プロモータであり、ペプチジル-プロリルイソメラーゼは、大腸菌FkpAであり、第2のプロモータは、CP25プロモータであり、第2のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼは、大腸菌DsbAであり、第3のプロモータは、イソプロピルβ-D-チオガラクトシド(IPTG)が培養培地中に存在する場合に、第5の翻訳単位の転写を駆動するIPTG誘導性プロモータである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、(6)ポリペプチドの第3の鎖をコードする第6の翻訳単位を含む第6のポリヌクレオチドであって、該第6のポリヌクレオチドが、1つ以上の染色体外ポリヌクレオチドの一部である、第6のポリヌクレオチドをさらに含み、それによって、発現すると、3つの鎖は折り畳まれ、組み立てられて、該宿主細胞中で生物学的に活性なポリペプチドを形成する。いくつかの実施形態では、第1の翻訳単位は免疫グロブリン重鎖をコードし、第2の翻訳単位は免疫グロブリン軽鎖をコードし、第6の翻訳単位は免疫グロブリンFc断片をコードし、該3つの鎖は折り畳まれ、組み立てられて、生物学的に活性な一価抗体を形成する。いくつかの実施形態では、一価抗体は、抗原に特異的に結合することができる。
【0014】
上記実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、第1および第2のポリヌクレオチドは両方とも、単一の染色体外発現ベクターの一部である。いくつかの実施形態では、染色体外発現ベクターは、選択剤に対する耐性を促進する選択可能マーカーをコードするポリヌクレオチドをさらに含み、宿主細胞は、選択可能マーカーの発現に適した条件下で培養され、培養培地は、選択剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、染色体外発現ベクターは、原核宿主細胞中で染色体外発現ベクターを複製するのに適した複製起点をさらに含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドの2つの鎖は、少なくとも1つのジスルフィド結合によって互いに連結される。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、ヘテロ二量体のモノマーである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、第1の鎖および第2の鎖が免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖を含む、半抗体である。いくつかの実施形態では、半抗体は、抗原に特異的に結合することができる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、分泌タンパク質である。いくつかの実施形態では、分泌タンパク質は、宿主細胞のペリプラズムから回収される。いくつかの実施形態では、原核宿主細胞は、グラム陰性細菌である。いくつかの実施形態では、グラム陰性細菌は、大腸菌である。いくつかの実施形態では、大腸菌は、内因性プロテアーゼ活性を欠く株のものである。いくつかの実施形態では、大腸菌は、degpS210A変異を有する株である。いくつかの実施形態では、大腸菌は、増強されたLacI産生または活性を有する株のものである。いくつかの実施形態では、大腸菌は、lacIQ変異を有する株である。いくつかの実施形態では、大腸菌は、ΔfhuA ΔphoA ilvG2096(IlvG+、Valr)Δprc spr43H1 ΔmanA lacIQ ΔompT ΔmenE742 degPS210A株のものである。
【0015】
別の態様では、第1の抗原に結合することができる第1の半抗体および第2の抗原に結合することができる第2の半抗体を含む二重特異性抗体を産生する方法が本明細書で提供され、該方法は、上記実施形態のいずれか1つの方法に従って第1の半抗体を産生することであって、第1の翻訳単位が該第1の半抗体の重鎖をコードし、第2の翻訳単位が該第1の半抗体の軽鎖をコードし、該第1の半抗体が少なくとも1つのノブ形成変異を含む、第1の半抗体を産生すること、および上記実施形態のいずれか1つの方法に従って第2の半抗体を産生することであって、第1の翻訳単位が該第2の半抗体の重鎖をコードし、第2の翻訳単位が該第2の半抗体の軽鎖をコードし、該第2の半抗体が少なくとも1つのホール形成変異を含む、第2の半抗体を産生すること、ならびに、還元条件下で、該第1の半抗体を該第2の半抗体と組み合わせて、二重特異性抗体を生成することを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、第1の抗原および第2の抗原は、異なる抗原である。いくつかの実施形態では、方法は、還元条件を達成するために、還元剤を添加する工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、還元剤は、グルタチオンである。
【0017】
別の態様では、宿主細胞染色体を含む宿主細胞(例えば、原核宿主細胞)が本明細書で提供され、該原核宿主細胞は、(1)ペプチジル-プロリルイソメラーゼをコードする第1の翻訳単位を含む第1のポリヌクレオチドであって、該第1の翻訳単位は該宿主細胞染色体の一部であり、該第1の翻訳単位が、該宿主細胞染色体に組み込まれ、かつ該第1の翻訳単位の転写を駆動する第1のプロモータと作動可能な組合せにあり、該第1の翻訳単位と該第1のプロモータとの組合せが、該宿主細胞染色体に対して非天然である、第1のポリヌクレオチド、および(2)タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼをコードする第2の翻訳単位を含む第2のポリヌクレオチドであって、該第2の翻訳単位は該宿主細胞染色体の一部であり、該第2の翻訳単位が、該宿主細胞染色体に組み込まれ、かつ該第2の翻訳単位の転写を駆動する第2のプロモータと作動可能な組合せにあり、該第2の翻訳単位と該第2のプロモータとの組合せが、該宿主細胞染色体に対して非天然である、第2のポリヌクレオチドを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、第1の翻訳単位および第2の翻訳単位の一方または両方は、原核宿主細胞染色体に対して天然である。いくつかの実施形態では、第1の翻訳単位および第2の翻訳単位は両方とも、原核宿主細胞染色体に対して天然である。いくつかの実施形態では、第1の翻訳単位および第2の翻訳単位の一方または両方は、原核宿主細胞染色体に対して非天然である。いくつかの実施形態では、第1のプロモータは、第1の誘導性プロモータである。いくつかの実施形態では、第1の誘導性プロモータは、Phoプロモータである。いくつかの実施形態では、第1の誘導性プロモータは、イソプロピルβ-D-チオガラクトシド(IPTG)誘導性プロモータである。いくつかの実施形態では、第1のプロモータは、第1の構成的プロモータである。いくつかの実施形態では、第1の構成的プロモータは、CP25プロモータである。いくつかの実施形態では、第2のプロモータは、第2の誘導性プロモータである。いくつかの実施形態では、第2の誘導性プロモータは、Phoプロモータである。いくつかの実施形態では、第2の誘導性プロモータは、イソプロピルβ-D-チオガラクトシド(IPTG)誘導性プロモータである。いくつかの実施形態では、第2のプロモータは、第2の構成的プロモータである。いくつかの実施形態では、第2の構成的プロモータは、CP25プロモータである。いくつかの実施形態では、ペプチジル-プロリルイソメラーゼは、FkpAタンパク質である。いくつかの実施形態では、FkpAは、大腸菌FkpAである。いくつかの実施形態では、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼは、DsbCタンパク質である。いくつかの実施形態では、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼは、大腸菌DsbCである。いくつかの実施形態では、ペプチジル-プロリルイソメラーゼは、FkpAタンパク質であり、第1のプロモータは、CP25プロモータであり、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼは、DsbCタンパク質であり、第2のプロモータは、Phoプロモータである。いくつかの実施形態では、ペプチジル-プロリルイソメラーゼは、FkpAタンパク質であり、第1のプロモータは、Phoプロモータであり、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼは、DsbCタンパク質であり、第2のプロモータは、Phoプロモータである。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、(3)第2のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼをコードする第3の翻訳単位を含む第3のポリヌクレオチドであって、該第3の翻訳単位は該宿主細胞染色体の一部であり、該第3の翻訳単位が、該宿主細胞染色体に組み込まれ、かつ該第3の翻訳単位の転写を駆動する第3のプロモータと作動可能な組合せにあり、該第3の翻訳単位と該第3のプロモータとの組合せが、該宿主細胞染色体に対して非天然である、第3のポリヌクレオチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、第2のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼは、DsbAタンパク質である。いくつかの実施形態では、第2のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼは、大腸菌DsbAである。いくつかの実施形態では、第3のプロモータは、第3の誘導性プロモータである。いくつかの実施形態では、第3の誘導性プロモータは、イソプロピルβ-D-チオガラクトシド(IPTG)誘導性プロモータである。いくつかの実施形態では、ペプチジル-プロリルイソメラーゼは、FkpAタンパク質であり、第1のプロモータは、CP25プロモータであり、第1のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼは、DsbCタンパク質であり、第2のプロモータは、イソプロピルβ-D-チオガラクトシド(IPTG)誘導性プロモータであり、第2のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼは、DsbAタンパク質であり、第3のプロモータは、イソプロピルβ-D-チオガラクトシド(IPTG)誘導性プロモータである。いくつかの実施形態では、原核宿主細胞は、グラム陰性細菌である。いくつかの実施形態では、グラム陰性細菌は、大腸菌である。いくつかの実施形態では、大腸菌は、内因性プロテアーゼ活性を欠く株のものである。いくつかの実施形態では、大腸菌は、degpS210A変異を有する株である。いくつかの実施形態では、大腸菌は、増強されたLacI産生または活性を有する株のものである。いくつかの実施形態では、大腸菌は、lacIQ変異を有する株である。いくつかの実施形態では、大腸菌は、ΔfhuA ΔphoA ilvG2096(IlvG+、Valr)Δprc spr43H1 ΔmanA lacIQ ΔompT ΔmenE742 degPS210A株のものである。
【0019】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、(a)2鎖ポリペプチドの第1の鎖をコードする第1の染色体外翻訳単位を含む第1の染色体外ポリヌクレオチド、および(b)該2鎖ポリペプチドの第2の鎖をコードする第2の染色体外翻訳単位を含む第2の染色体外ポリヌクレオチドを含む染色体外発現ベクターをさらに含み、それによって、発現すると、該2つの鎖は折り畳まれ、組み立てられて、該宿主細胞中で生物学的に活性な2鎖ポリペプチドを形成する。いくつかの実施形態では、染色体外発現ベクターは、原核宿主細胞中で染色体外発現ベクターを複製するのに適した複製起点をさらに含む。いくつかの実施形態では、染色体外発現ベクターは、選択剤に対する耐性を促進する選択可能マーカーをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、2鎖ポリペプチドの2つの鎖は、少なくとも1つのジスルフィド結合によって互いに連結される。いくつかの実施形態では、2鎖ポリペプチドは、ヘテロ二量体のモノマーである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、第1の鎖および第2の鎖が免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖を含む、半抗体である。いくつかの実施形態では、半抗体は、抗原に特異的に結合することができる。いくつかの実施形態では、2鎖ポリペプチドは、分泌タンパク質である。いくつかの実施形態では、分泌タンパク質は、宿主細胞のペリプラズムから回収される。いくつかの実施形態では、染色体外発現ベクターは、2鎖ポリペプチドの第3の鎖をコードする第3の染色体外翻訳単位を含む第3の染色体外ポリヌクレオチドをさらに含み、それによって、発現すると、3つの鎖は折り畳まれ、組み立てられて、宿主細胞中で生物学的に活性なポリペプチドを形成する。いくつかの実施形態では、第1の染色体外翻訳単位は免疫グロブリン重鎖をコードし、第2の染色体外翻訳単位は免疫グロブリン軽鎖をコードし、第3の染色体外翻訳単位は免疫グロブリンFc断片をコードし、該3つの鎖は折り畳まれ、組み立てられ、生物学的に活性な一価抗体を形成する。いくつかの実施形態では、一価抗体は、抗原に特異的に結合することができる。
【0020】
本明細書において説明される種々の実施形態の特性のうちの1つ、いくつか、またはすべてが、組み合わされて、本開示の他の実施形態を形成し得るということを理解されたい。本開示のこれらの態様および他の態様は、当業者には明らかとなるであろう。本開示のこれらの実施形態および他の実施形態は、以下の詳細な説明によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】シャペロンタンパク質の染色体過剰発現を有する宿主細胞における2鎖タンパク質産物の発現のための発現ベクター(CS392、右)と比較して、同じシャペロンタンパク質および2鎖タンパク質産物(この場合、抗体断片重鎖および軽鎖、それぞれ「HC」および「LC」)を過剰発現するために使用される発現ベクター(MD156、左)のプラスミドマップを示す。ベクターサイズは、塩基対bpで提供されている。
【0022】
【
図2】FkpAのプラスミドベースの発現を有する株と比較して、示されたプロモータ-fkpAペアリングを有する株の力価(黒色)およびFkpA発現レベル(灰色)を示す。
【0023】
【
図3A-3C】振盪フラスコ中、示された株におけるDsbA(
図3A)、DsbC(
図3B)、またはFkpA(
図3C)の相対シャペロン発現レベル(天然の発現レベルに対しての倍数)を示す。Sh.Fl.は振盪フラスコ培養を表し、+は陽性対照(プラスミドシャペロン発現)を表し、-は陰性対照(シャペロン発現なし)を表し、Sh.Fl.(-)は天然の発現レベルを指す。
【0024】
【
図4A-4C】は、10L発酵槽からの示された株におけるDsbA(
図4A)、DsbC(
図4B)、またはFkpA(
図4C)の相対シャペロン発現レベル(天然の発現レベルに対しての倍数)を示す。+は陽性対照(プラスミドシャペロン発現)を表し、-は陰性対照(シャペロン発現なし)を表し、Ambr(-)は天然の発現レベルを指す。
【0025】
【
図5】は、示された染色体操作されたプラスミドおよび天然シャペロン遺伝子座のペアを有する株によって産生されるxIL13力価(g/L)を示す。67A6/MD157は、染色体操作を行わず、示されたプロモータの下で、示されたシャペロンを発現するMD157プラスミドを有する株を指す(MD157プラスミドの図については、
図1を参照されたい)。
【0026】
【
図6A-6B】xIL13を産生する、示された株/プラスミドの組合せの培養物の経時的な光学密度(OD、
図6A)およびオスモル濃度(
図6B)を示す。
【0027】
【
図7A-7C】示された株によって経時的に産生されるxIL13力価(g/L、
図7A)、DsbC濃度(
図7B)、およびFkpA濃度(
図7C)を示す。
【0028】
【
図8A-8B】AF2を産生する、示された株/プラスミドの組合せの培養物の経時的な光学密度(OD、
図8A)およびオスモル濃度(
図8B)を示す。
【0029】
【
図9】示された株によって産生されたAF2力価(g/L)を経時的に示す。
【0030】
【
図10A-10B】MetMAbを産生する、示された株/プラスミドの組合せの培養物の経時的な光学密度(OD、
図10A)およびオスモル濃度(
図10B)を示す。
【0031】
【
図11】示された株によって産生されたMetMAb力価(g/L)を経時的に示す。
【0032】
【
図12A-12B】抗VEGF抗体断片を産生する、示された株/プラスミドの組合せの培養物の経時的な光学密度(OD、
図12A)およびオスモル濃度(
図12B)を示す。
【0033】
【
図13】示された株によって産生された抗VEGF抗体断片力価(g/L)を経時的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示は、組換え2鎖タンパク質産物の大規模生産に適した非天然プロモータ:シャペロンタンパク質の組合せ(複数可)が組み込まれた宿主細胞(例えば、原核宿主細胞)、ならびにそれに関連する方法を提供する。本明細書で提供される例は、宿主細胞染色体からシャペロンタンパク質を発現する原核宿主細胞が、プラスミドベースのシャペロン発現に匹敵する力価を生じることを実証している。これらの結果は、半抗体、1アーム抗体、および抗体断片などの複数の抗体フォーマットにわたって一貫しており、追加のプロセス開発をほとんどまたは全く必要としなかった。重要なことに、本明細書で提示されるデータは、プラスミドではなく宿主細胞染色体からのシャペロン発現が、シャペロン発現レベルをより低くする(産物からシャペロンタンパク質を除去するためのさらなる下流での精製の必要性を潜在的になくす)が、同等またはより高い産物力価をもたらすことを示す。これらの結果は、プラスミドからシャペロンタンパク質(複数可)を発現する宿主細胞を使用するのと比較して、本開示の宿主細胞および/または方法を使用し、シャペロン発現プラスミドを最適化するための事前の時間およびコスト、またはシャペロンタンパク質を除去するための下流での精製工程を必要とせずに、少なくとも同程度に効率的に工業規模で産物を生産することができることを実証している。
【0035】
一態様では、宿主細胞染色体を含む原核宿主細胞中で、2つの鎖を含むポリペプチドを産生する方法が本明細書で提供され、該方法は、該宿主細胞を、該ポリペプチドの該2つの鎖の発現に適した条件下の培養培地中で、該ポリペプチドの該2つの鎖を発現するように培養し、それによって、発現すると、該2つの鎖は折り畳まれ、組み立てられて、該宿主細胞中で生物学的に活性なポリペプチドを形成すること、および(b)該宿主細胞から該生物学的に活性なポリペプチドを回収することを含み、該宿主細胞は、(1)該ポリペプチドの第1の鎖をコードする第1の翻訳単位を含む第1のポリヌクレオチド、(2)該ポリペプチドの第2の鎖をコードする第2の翻訳単位を含む第2のポリヌクレオチド(ここで、該第1および第2のポリヌクレオチドは、1つ以上の染色体外ポリヌクレオチドの一部である)、ならびに(3)ペプチジル-プロリルイソメラーゼおよびタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼからなる群から選択されるシャペロンタンパク質をコードする第3の翻訳単位を含む第3のポリヌクレオチドであって、該第3の翻訳単位は該宿主細胞染色体の一部であり、該第3の翻訳単位が、該宿主細胞染色体に組み込まれ、かつ該第3の翻訳単位の転写を駆動するプロモータと作動可能な組合せにあり、該第3の翻訳単位と該プロモータとの組合せが、該宿主細胞染色体に対して非天然である、第3のポリヌクレオチドを含む。
【0036】
別の態様では、宿主細胞染色体を含む原核宿主細胞中で、2つの鎖を含むポリペプチドを産生する方法が本明細書で提供され、該方法は、該宿主細胞を、該ポリペプチドの該2つの鎖の発現に適した条件下の培養培地中で、該ポリペプチドの該2つの鎖を発現するように培養し、それによって、発現すると、該2つの鎖は折り畳まれ、組み立てられて、該宿主細胞中で生物学的に活性なポリペプチドを形成すること、および(b)該宿主細胞から該生物学的に活性なポリペプチドを回収することを含み、該宿主細胞は、(1)該ポリペプチドの第1の鎖をコードする第1の翻訳単位を含む第1のポリヌクレオチド、(2)該ポリペプチドの第2の鎖をコードする第2の翻訳単位を含む第2のポリヌクレオチド(ここで、該第1および第2のポリヌクレオチドは、1つ以上の染色体外ポリヌクレオチドの一部である)、(3)タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼをコードする第3の翻訳単位を含む第3のポリヌクレオチドであって、該第3の翻訳単位は該宿主細胞染色体の一部であり、該第3の翻訳単位が、該宿主細胞染色体に組み込まれ、かつ該第3の翻訳単位の転写を駆動する第1のプロモータと作動可能な組合せにあり、該第3の翻訳単位と該第1のプロモータとの組合せが、該宿主細胞染色体に対して非天然である、第3のポリヌクレオチド、および(4)ペプチジル-プロリルイソメラーゼをコードする第4の翻訳単位を含む第4のポリヌクレオチドであって、該第4の翻訳単位は該宿主細胞染色体の一部であり、該第4の翻訳単位が、該宿主細胞染色体に組み込まれ、かつ該第4の翻訳単位の転写を駆動する第2のプロモータと作動可能な組合せにあり、該第4の翻訳単位と該第2のプロモータとの組合せが、該宿主細胞染色体に対して非天然である、第4のポリヌクレオチドを含む。
【0037】
別の態様では、宿主細胞染色体を含む原核宿主細胞が本明細書で提供され、該原核宿主細胞は、(1)ペプチジル-プロリルイソメラーゼをコードする第1の翻訳単位を含む第1のポリヌクレオチドであって、該第1の翻訳単位は該宿主細胞染色体の一部であり、該第1の翻訳単位が、該宿主細胞染色体に組み込まれ、かつ該第1の翻訳単位の転写を駆動する第1のプロモータと作動可能な組合せにあり、該第1の翻訳単位と該第1のプロモータとの組合せが、該宿主細胞染色体に対して非天然である、第1のポリヌクレオチド、および(2)タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼをコードする第2の翻訳単位を含む第2のポリヌクレオチドであって、該第2の翻訳単位は該宿主細胞染色体の一部であり、該第2の翻訳単位が、該宿主細胞染色体に組み込まれ、かつ該第2の翻訳単位の転写を駆動する第2のプロモータと作動可能な組合せにあり、該第2の翻訳単位と該第2のプロモータとの組合せが、該宿主細胞染色体に対して非天然である、第2のポリヌクレオチドを含む。
I.定義
【0038】
本開示を詳細に説明する前に、本開示は、特定の組成物または生物系に限定されず、言うまでもなく、変わり得ることを理解されたい。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことも理解されたい。
【0039】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、別途内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「1つの分子」への言及は、場合によっては、2つ以上のかかる分子の組合せなどを含む。
【0040】
本明細書で使用される「約」という用語は、当業者であれば容易に理解する、それぞれの値に対する通常の誤差範囲を指す。本明細書における「約」の値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。値に関して本明細書で使用される「約」という用語は、最大でその値の90%~110%を包含する(例えば、約1.0~約3.0の第1および第2のTIRの相対的翻訳強度は、0.9~3.3の間の範囲にある相対的翻訳強度を指す)。
【0041】
本明細書に記載の本開示の態様および実施形態は、態様および実施形態を「含む」、態様および実施形態「からなる」、および態様および実施形態「から本質的になる」を含むことを理解されたい。
【0042】
本明細書で使用される「2つの鎖を含むポリペプチド」(「2鎖タンパク質」および「2鎖ポリペプチド」という用語も本明細書で互換的に使用され得る)という用語は、2つ以上の別個のポリペプチド鎖を含有する任意のポリペプチドを指すように意図される。いくつかの実施形態では、2鎖タンパク質は、ジスルフィド結合を含むが、これに限定されない、1つ以上の分子間連結を介して共に連結する2つ以上のポリペプチドの高分子複合体を含み得る。いくつかの実施形態では、2鎖タンパク質は、ポリペプチドリンカーによって連結された2つの別個のポリペプチド鎖(例えば、抗体重鎖および抗体軽鎖)に属するアミノ酸配列を有する、単一のポリペプチドを含み得る。この場合、2鎖タンパク質は、物理的には単一の鎖を表すが、単一の鎖の2つ以上の部分は、それらが2つの別個のタンパク質鎖であるかのように機能的に挙動し得る。例えば、一本鎖抗体は、機能的重鎖および機能的軽鎖を含んでもよく、これらの機能的重鎖および機能的軽鎖は、ポリペプチドリンカーによって接合されるが、それにもかかわらず、分子間連結(例えば、1つ以上のジスルフィド結合)によってのみ会合している別個のポリペプチドであるかのように折り畳まれ、組み立てられる。
【0043】
1つ以上の遺伝要素(例えば、プロモータ、翻訳単位、またはそれらの組合せ)に関して、本明細書で使用される「天然」および「非天然」という用語は、自然界で発生する宿主細胞染色体中の遺伝要素のゲノム状況を指すことを意図している。例えば、翻訳単位は、翻訳単位が宿主細胞のゲノム中に天然に存在する場合、宿主細胞または宿主細胞染色体に関して「天然」であり、翻訳単位が宿主細胞のゲノム中に天然に存在しない場合、「非天然」である。プロモータは、プロモータが宿主細胞のゲノム中に天然に存在する場合、宿主細胞または宿主細胞染色体に関して「天然」であり、プロモータが宿主細胞のゲノム中に天然に存在しない場合、「非天然」である。プロモータと翻訳単位との作動可能な組合せは、プロモータが翻訳単位と同じ作動可能な連結で、宿主細胞のゲノム中に天然に存在しない場合、またはその逆の場合、「非天然」である。例えば、プロモータ:翻訳単位の組合せは、プロモータおよび翻訳単位の一方または両方が、宿主細胞ゲノム中に天然に存在しない場合、プロモータが、(たとえ、同じプロモータ配列が、宿主細胞ゲノム中のどこか他の場所に天然に存在する場合であっても)天然に存在する宿主細胞ゲノムにおいて作動可能に組み合わされていない翻訳単位と、作動可能に連結して宿主細胞ゲノムに存在する場合、または翻訳単位が、(たとえ、同じ翻訳単位が、宿主細胞ゲノム中のどこか他の場所に天然に存在する場合であっても)天然に存在する宿主細胞ゲノムにおいて作動可能に組み合わされていないプロモータと、作動可能に連結して宿主細胞ゲノムに存在する場合に、宿主細胞または宿主細胞染色体に関して「非天然」である。
【0044】
「ベクター」という用語は、本明細書で使用される場合、連結している別の核酸を輸送することができる核酸分子を指すように意図される。ベクターの1つの種類は「プラスミド」であり、これは環状二本鎖DNAループを指し、これに追加のDNAセグメントがライゲーションされ得る。ベクターの別の種類は、ファージベクターである。ベクターの別の種類は、ウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲーションされ得る。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞中で自己複製することができる(例えば、細菌性複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞への導入時に、宿主細胞のゲノムに組み込まれ得、それによって、宿主ゲノムとともに複製される。さらに、ある特定のベクターは、それらが作動可能に連結された遺伝子の発現を導くことができる。このようなベクターは、本明細書において「組換え発現ベクター」(または単純に「組換えベクター」)と称される。一般に、組換えDNA技法において利用される発現ベクターは、プラスミドの形態である場合が多い。本明細書では、「プラスミド」および「ベクター」は、プラスミドがベクターの最も一般的に使用される形態であるため、互換的に使用され得る。
【0045】
「シストロン」という用語は、本明細書で使用される場合、ポリペプチド鎖および隣接する制御領域をコードするヌクレオチド配列を含む翻訳単位と広義で等しい遺伝要素を指すように意図される。「シストロン」は、例えば、1つ以上のオープンリーディングフレーム、翻訳開始領域(本明細書で以下において定義されるTIR)、シグナル配列、および終結領域を含み得る。
【0046】
「多シストロン性」発現ベクターは、1つの単一プロモータの調節制御下にある複数のシストロンを含有してそれらを発現する単一のベクターを指す。多シストロン性ベクターの一般的な例は、1つのプロモータの制御下にある2つの異なるポリペプチドを含有してそれらを発現する「2シストロン性」ベクターである。2シストロン性または多シストロン性ベクターの発現の際、複数の遺伝子は、まず単一の転写単位として転写され、その後、別個に翻訳される。
【0047】
「転写単位」は、単一のRNA転写産物として転写されるポリヌクレオチドを指す。「翻訳単位」は、ポリペプチドをコードし、翻訳時にポリペプチドを産生するポリヌクレオチドを指す。上記のように、多シストロン性ポリヌクレオチドは、複数の翻訳単位を有する単一の転写単位を含有し得る。
【0048】
本開示に従う「別個のシストロン」発現ベクターは、少なくとも2つの別個のプロモータ-シストロン対を含む単一のベクターを指し、各シストロンは、それ自体のプロモータの制御下にある。別個のシストロン発現ベクターの発現の際、異なる遺伝子の転写プロセスおよび翻訳プロセスの両方は、別個の独立したものである。
【0049】
本明細書で使用される「シャペロンタンパク質」は、2鎖タンパク質を含むが、これに限定されない、他の高分子の折畳みまたは組立てに役立つ任意のタンパク質を指す。一般に、シャペロンタンパク質は、多くの異なる機構によって、タンパク質の折畳みまたは組立てを促進するように作用し得る。例えば、シャペロンタンパク質は、タンパク質の折畳みおよび/または組立ての促進、鎖内ジスルフィド結合の形成の触媒、(例えば、凝集またはミスフォールドしたタンパク質または多タンパク質複合体の)タンパク質アンフォールディングおよび/または分解の促進、凝集の防止、タンパク質分解の支援などを行ってもよい。
【0050】
「分泌シグナル配列」または「シグナル配列」は、新たに合成された目的のタンパク質を、細胞膜、通常は原核生物の内膜または内膜および外膜の両方を介して導くために使用することができる、短いシグナルペプチドをコードする核酸配列を指す。このように、免疫グロブリン軽鎖または重鎖ポリペプチドなどの目的のタンパク質は、原核宿主細胞のペリプラズム中または培養培地中に分泌される。分泌シグナル配列によってコードされるシグナルペプチドは、宿主細胞に対して内因性であってもよく、またはそれらは外因性であってもよく、発現されるポリペプチドに対して天然のシグナルペプチドを含む。分泌シグナル配列は、典型的には、発現されるポリペプチドのアミノ末端に存在し、典型的には、生合成とポリペプチドの細胞質からの分泌との間で酵素的に除去される。したがって、シグナルペプチドは、通常、成熟タンパク質産物中には存在しない。
【0051】
「作動可能に連結した」は、2つ以上の構成要素の並立を指し、そのように記述される構成要素は、それらがその意図される様式で機能することを可能にする関係にある。例えば、プロモータは、連結した配列の転写を制御または調節するためにシスにおいて作用する場合、コード配列または翻訳単位に作動可能に連結されている。一般的に、「作動可能に連結される」DNA配列は、必ずしも連続していなくてよいが、2つのタンパク質コード領域を接合する必要がある場合、または分泌リーダーの場合には、連続し、かつリーディングフレーム内にある。しかしながら、作動可能に連結したプロモータは、概して、コード配列または翻訳単位の上流に位置するが、必ずしもそれと連続していない。作動可能に連結されたエンハンサーは、プロモータから相当な距離を置いて、コード配列/翻訳単位の上流、その中、またはその下流に位置し得る。連結は、当技術分野で既知の組換え方法によって、例えば、PCR法を使用して、アニーリングによって、または都合のよい制限酵素部位でのライゲーションによって、達成される。都合のよい制限酵素部位が存在しない場合には、合成オリゴヌクレオチドアダプタまたはリンカーが、慣行に従って使用される。
【0052】
本明細書で使用される「調節エレメント」は、異種ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのポリペプチドへの転写および翻訳に不可欠な、シスに存在するヌクレオチド配列を指す。転写調節エレメントは、通常、発現される遺伝子配列のプロモータ5’、転写開始および終結部位、ならびにポリアデニル化シグナル配列を含む。「転写開始部位」という用語は、一次転写産物、すなわち、mRNA前駆体に組み込まれる第1の核酸に対応する構築物中の核酸を指し、転写開始部位はプロモータ配列と重複し得る。
【0053】
「プロモータ」は、それが作動可能に連結している遺伝子または配列の転写を制御するポリヌクレオチド配列を指す。プロモータは、RNAポリメラーゼの結合および転写の開始のためのシグナルを含む。使用されるプロモータは、選択された配列の発現が企図される宿主細胞の細胞型において機能的である。多様な異なるソースに由来する構成的、誘導性、および抑制性プロモータを含む多数のプロモータが、当技術分野で周知であり(かつGenBankなどのデータベースにおいて特定され)、クローン化されたポリヌクレオチドとして、またはクローン化されたポリヌクレオチド内で(例えば、ATCCなどの受託機関および他の商業的または個人的ソースから)利用可能である。誘導性プロモータについては、プロモータの活性が、シグナル、例えば、IPTGの存在またはリン酸塩枯渇に応答して増加または減少する。
【0054】
「宿主細胞」(または「組換え宿主細胞」)という用語は、本明細書で使用される場合、遺伝的に改変されているか、または組換えプラスミドもしくはベクターなどの外因性もしくは非天然ポリヌクレオチドの導入よって遺伝的に改変されることができる細胞を指すように意図される。このような用語は、特定の対象細胞だけでなく、かかる細胞の子孫も指すように意図されることを理解されたい。変異または環境的影響のいずれかに起因して、後続の世代においてある特定の修飾が起こる場合があるため、かかる子孫は、実際には、親細胞と同一でない場合があるが、本明細書で使用される「宿主細胞」という用語の範囲内に依然として含まれる。
【0055】
「薬学的製剤」という用語は、活性成分の生物学的活性が有効になるような形態であり、かつ製剤が投与される対象に許容できないほどに有毒な追加の成分を含有しない調製物を指す。このような製剤は、無菌である。「薬学的に許容される」賦形剤(ビヒクル、添加剤)は、対象哺乳動物に適度に投与されて、用いられる有効用量の活性成分を提供することができるものである。
【0056】
治療の目的のための「対象」または「個体」は、哺乳類に分類される任意の動物を指し、ヒト、家畜および農場動物、および動物園、スポーツ、またはペット動物、例えば犬、馬、猫、牛などを含む。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0057】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、具体的には、それらが所望の生物学的活性を呈する限り、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体断片を包含する。
【0058】
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から特定および分離され、かつ/または回収された抗体である。その自然環境の混入成分は、抗体の試験的、診断的、または治療的使用を妨害するであろう物質であり、それらとしては、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、抗体は、(1)例えば、ローリー法によって決定される、95重量%超になるまで、いくつかの実施形態では、99重量%超になるまで、(2)例えば、スピニングカップシークエネーターを使用して、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに充分な程度まで、または(3)例えば、クマシーブルーまたはシルバー染色を使用して、還元または非還元条件下でSDS-PAGEによって均質性が得られるまで精製される。単離された抗体は、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイチュ抗体を含む。しかしながら、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製されることになる。
【0059】
「天然抗体」は、通常、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖からなる、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖が1つのジスルフィド共有結合によって重鎖に連結される一方で、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重および軽鎖はまた、規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一方の端に可変ドメイン(VH)を有し、その後、いくつかの定常ドメインが続く。各軽鎖は、一方の端に可変ドメイン(VL)を有し、他方の端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列する。特定のアミノ酸残基は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。
【0060】
「定常ドメイン」という用語は、抗原結合部位を含有する可変ドメインである、免疫グロブリンの他の部分と比較して、より保存されたアミノ酸配列を有する免疫グロブリン分子の部分を指す。定常ドメインは、重鎖のCH1、CH2、およびCH3ドメイン(集合的に、CH)、ならびに軽鎖のCHL(またはCL)ドメインを含有する。
【0061】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖の可変ドメインは、‘‘VH’’と称され得る。軽鎖の可変ドメインは、‘‘VL’’と称され得る。これらのドメインは、一般に、抗体の最も可変性の高い部分であり、抗原結合部位を含有する。
【0062】
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定の部分が、配列において抗体間で大きく異なり、かつ各特定の抗体の、その特定の抗原に対する結合および特異性において使用されるという事実を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均等に分布してはいない。可変性は、軽鎖可変ドメインおよび重鎖可変ドメインの両方における超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインは各々、ベータシート構造を接続する、かついくつかの場合では、ベータシート構造の一部を形成する、ループを形成する3つのHVRによって接続されたベータシート立体配置を主に採用する4つのFR領域を含む。各鎖内のHVRは、FR領域によって近接して互いに保持され、他方の鎖からのHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、National Institute of Health、Bethesda、Md、1991を参照されたい)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与しないが、抗体の抗体依存性細胞毒性への関与などの様々なエフェクター機能を呈する。
【0063】
任意の哺乳動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(「κ」)およびラムダ(「λ」)と呼ばれる2つの明らかに異なるタイプのうちの一方に割り当てられ得る。
【0064】
本明細書で使用されるIgG「アイソタイプ」または「サブクラス」という用語は、それらの定常領域の化学的および抗原的特徴によって定義される免疫グロブリンのサブクラスのうちのいずれかを意味する。
【0065】
重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は、異なるクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンの主な5つのクラスは、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMであり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分かれ得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、γ、ε、γ、およびμと呼ばれる。様々なクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元構成が周知であり、例えば、Abbasら、Cellular and Mol.Immunology、第4版(W.B.Saunders,Co.、2000)に一般的に記載されている。抗体は、抗体と1つ以上の他のタンパク質またはペプチドとの共有または非共有会合によって形成される、より大きい融合分子の一部であり得る。
【0066】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、および「全抗体」という用語は、以下で定義される抗体断片ではない、実質的にインタクトな形態の抗体を指すために、本明細書で互換的に使用される。これらの用語は、具体的には、Fc領域を含有する重鎖を有する抗体を指す。
【0067】
本明細書における目的のための「裸抗体」は、細胞傷害性部分または放射標識にコンジュゲートされていない抗体である。
【0068】
「抗体断片」は、インタクトな抗体の一部を含み、好ましくはその抗原結合領域を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体断片は、抗原結合断片である。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子、ならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0069】
抗体のパパイン消化により、各々単一の抗原結合部位を有する「Fab」断片と、容易に結晶化するその能力を反映して命名された残りの「Fc」断片と呼ばれる、2つの同一の抗原結合断片が産生される。ペプシン処理は、F(ab’)2断片をもたらし、これは、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋することができる。
【0070】
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含有する最小の抗体断片である。一実施形態では、二本鎖Fv種は、密接に非共有会合した1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv(scFv)種において、1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインは、軽鎖および重鎖が二本鎖Fv種における構造に類似の「二量体」構造で会合し得るように、可動性ペプチドリンカーによって共有結合し得る。各可変ドメインの3つのHVRが相互作用して、VH-VL二量体の表面上の抗原結合部位を定義するのは、この立体配置においてである。集合的に、6つのHVRが、抗体に抗原結合特異性を与える。しかしながら、全結合部位よりも低い親和性ではあるが、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的なHVRを3つしか含まないFvの半分)でさえも、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
【0071】
Fab断片は、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含有し、軽鎖定常ドメインおよび第1の重鎖定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つ以上のシステインを含む、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端での数個の残基の付加によって、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が、遊離チオール基を持つFab’に対する本明細書での呼称である。F(ab’)2抗体断片は、元々、間にヒンジシステインを有するFab’断片のペアとして産生されたものであった。抗体断片の他の化学的カップリングも既知である。
【0072】
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVHおよびVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖中に存在する。一般に、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これにより、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成することが可能になる。scFvに関するレビューについては、例えば、Pluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、第113巻、RosenburgおよびMoore編、(Springer-Verlag、New York、1994)、269~315頁を参照されたい。
【0073】
「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、これらの断片は(VH-VL)、同じポリペプチド鎖に軽鎖可変ドメイン(VL)に接続した重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間のペアリングを可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、これらのドメインは、別の鎖の相補的なドメインとペアリングさせられ、2つの抗原結合部位を作製する。ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る。ダイアボディは、例えば、EP404,097、WO1993/01161、Hudsonら、Nat.Med.9、129~134(2003)、およびHollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444~6448(1993)において、より完全に記載されている。トリアボディおよびテトラボディはまた、Hudsonら、Nat.Med.9:129~134(2003)に記載されている。
【0074】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指し、例えば、その集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る可能な変異、例えば、天然に存在する変異を除いて同一である。したがって、「モノクローナル」という修飾語は、別個の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示す。ある特定の実施形態では、このようなモノクローナル抗体は、典型的には、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、該標的結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列の選択を含むプロセスによって得られたものである。例えば、この選択プロセスは、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、または組換えDNAクローンのプールなどの複数のクローンから特有のクローンを選択することであり得る。選択された標的結合配列が、例えば、標的への親和性を改善し、標的結合配列をヒト化し、細胞培養物におけるその産生を改善し、インビボでのその免疫原性を低減し、多重特異性抗体を作製するなどのために、さらに改変されてもよく、改変された標的結合配列を含む抗体もまた、本開示のモノクローナル抗体でもあることを理解されたい。通常、異なる決定基(エピトープ)に対して指向する様々な抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、1つの抗原上の単一の決定基に対して指向する。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、通常は他の免疫グロブリンによる混入がないという点で有利である。
【0075】
「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団から得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本開示に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、原核宿主細胞における発現を含む様々な技法、ハイブリドーマ法(例えば、KohlerおよびMilstein、Nature、256:495~97(1975)、Hongoら、Hybridoma、14(3):253~260(1995)、Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版、1988)、Hammerlingら、Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas563~681(Elsevier、N.Y.、1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clacksonら、Nature、352:624~628(1991)、Marksら、J.Mol.Biol.222:581~597(1992)、Sidhuら、J.Mol.Biol.338(2):299~310(2004)、Leeら、J.Mol.Biol.340(5):1073~1093(2004)、Fellouse、Proc.Natl.Acad.Sci.USA101(34):12467~12472(2004)、およびLeeら、J.Immunol.Methods284(1~2):119~132(2004)を参照)、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座またはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部またはすべてを有する動物において、ヒトまたはヒト様抗体を産生するための技術(例えば、WO1998/24893、WO1996/34096、WO1996/33735、WO1991/10741、Jakobovitsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:2551(1993)、Jakobovitsら、Nature362:255~258(1993)、Bruggemannら、Year in Immunol.7:33(1993)、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、同第5,569,825号、同第5,625,126号、同第5,633,425号、および同第5,661,016号、Marksら、Bio/Technology10:779~783(1992)、Lonbergら、Nature368:856~859(1994)、Morrison、Nature368:812~813(1994)、Fishwildら、Nature Biotechnol.14:845~851(1996)、Neuberger、Nature Biotechnol.14:826(1996)、ならびにLonbergおよびHuszar、Intern.Rev.Immunol.13:65~93(1995)を参照)によって作製され得る。
【0076】
本明細書におけるモノクローナル抗体は、具体的には、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同である一方で、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同である「キメラ抗体」、ならびにそれらが所望の生物学的活性を呈する限り、そのような抗体の断片を含む(例えば、米国特許第4,816,567号およびMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA81、6851~6855(1984)を参照されたい)。キメラ抗体としては、PRIMATIZED(登録商標)抗体が挙げられ、該抗体の抗原結合領域は、例えば、マカクザルを目的の抗原で免疫化することによって産生された抗体由来である。
【0077】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小限の配列を含有するキメラ抗体である。一実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVR由来の残基が、所望の特異性、親和性、および/または能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)のHVR由来の残基によって置き換えられるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの事例では、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基により置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含み得る。これらの修飾により、抗体の性能をさらに洗練させることができる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には、2つの可変ドメインのうちの実質的にすべてを含み、超可変ループのうちのすべてまたは実質的にすべてが、非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、FRのうちのすべてまたは実質的にすべてが、ヒト免疫グロブリン配列のFRである。ヒト化抗体はまた、場合によっては、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、ヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。さらなる詳細については、例えば、Jonesら、Nature、321:522~525(1986)、Riechmannら、Nature332:323~329(1988)、およびPresta、Curr.Op.Struct.Biol.2:593~596(1992)を参照されたい。また、例えば、VaswaniおよびHamilton、Ann.Allergy,Asthma&Immunol.1:105~115(1998)、Harris、Biochem.Soc.Transactions23:1035~1038(1995)、HurleおよびGross、Curr.Op.Biotech.5:428~433(1994)、ならびに米国特許第6,982,321号および同第7,087,409号も参照されたい。
【0078】
「ヒト抗体」は、ヒトによって産生され、かつ/または本明細書に開示されるヒト抗体を作製するための技法のうちのいずれかを使用して作製された抗体のアミノ酸配列に対応する、アミノ酸配列を有する抗体である。このヒト抗体の定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特定的に除外する。ヒト抗体は、ファージ・ディスプレイ・ライブラリを含む当技術分野で公知の様々な技法を使用して産生され得る。HoogenboomおよびWinter、J.Mol.Biol.227:381(1991)、Marksら、J.Mol.Biol.222:581(1991)。Coleら、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss、77頁(1985)、Boernerら、J.Immunol.147:(1)86~95(1991)に記載されている方法もまた、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である。van Dijkおよびvan de Winkel、Curr.Opin.Pharmacol.、5:368~74(2001)もまた、参照されたい。ヒト抗体は、抗原投与に応答してそのような抗体を産生するように修飾されているが、その内因性遺伝子座が無効化されているトランスジェニック動物、例えば、免疫化されたキセノマウス(例えば、XENOMOUSE(商標)技術に関して、米国特許第6,075,181号および同第6,150,584号を参照)に抗原を投与することによって調製することができる。また、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により産生されるヒト抗体については、例えば、Liら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、103:3557~3562(2006)を参照されたい。
【0079】
「種依存性抗体」は、第2の哺乳動物種由来の抗原のホモログに対する結合親和性よりも、第1の哺乳類種由来の抗原に対して、より強い結合親和性を有する抗体である。通常、種依存性抗体は、ヒト抗原に「特異的に」結合する(例えば、約1×10-7M以下、好ましくは約1×10-8M以下、好ましくは約1×10-9M以下の結合親和性(Kd)値を有する)が、ヒト抗原に対する結合親和性よりも少なくとも約50倍、または少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍弱い、第2の非ヒト哺乳動物種由来の抗原のホモログに対する結合親和性を有する。種依存性抗体は、上で定義される様々な種類の抗体のうちのいずれかであり得るが、好ましくは、ヒト化抗体またはヒト抗体である。
【0080】
「超可変領域」、「HVR」、または「HV」という用語は、本明細書で使用される場合、配列が超可変性であり、かつ/または構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は、6つのHVRを含み、3つがVH(H1、H2、H3)に、3つがVL(L1、L2、L3)にある。天然抗体では、H3およびL3が、6つのHVRのうちで最も高い多様性を示し、特にH3が抗体に優れた特異性を与える上で特有の役割を果たすと考えられている。例えば、Xuら、Immunity13:37~45(2000)、JohnsonおよびWu、Methods in Molecular Biology248:1~25(Lo編、Human Press、Totowa、N.J.、2003)を参照されたい。実際に、重鎖のみからなる、天然に存在するラクダ抗体は、軽鎖の非存在下で機能的であり、安定している。例えば、Hamers-Castermanら、Nature363:446~448(1993)、Sheriffら、Nature Struct.Biol.3:733~736(1996)を参照されたい。
【0081】
いくつかのHVR説明が本明細書で使用され、本明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づくものであり、最も一般的に使用されている(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991))。代わりに、Chothiaは、構造的ループの位置を指す(ChothiaおよびLesk、J.Mol.Biol.196:901~917(1987))。AbM HVRは、KabatのHVRとChothiaの構造的ループとの間の折衷物を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用されている。「接触」HVRは、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらHVRの各々に由来する残基が、以下に示される。
【0082】
HVRは、以下の「伸長HVR」を含み得る:VLにおいて、24~36または24~34(L1)、46~56または50~56(L2)、および89~97または89~96(L3)、ならびにVHにおいて、26~35(H1)、50~65または49~65(H2)、および93~102、94~102、または95~102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義の各々について、Kabatら(上記参照)に従って付番される。
【0083】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書で定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0084】
「Kabatにおけるような可変ドメイン残基付番」または「Kabatにおけるようなアミノ酸位置付番」という用語、およびそれらの変形は、Kabatら(上記参照)における抗体の編集物の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用される付番システムを指す。この付番システムを使用して、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはHVRの短縮、またはそれへの挿入に対応する、より少ないアミノ酸または追加のアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatに従う残基52a)、および重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatに従う残基82a、82b、および82cなど)を含んでもよい。残基のKabat付番は、所与の抗体に対して、「標準の」Kabatによって付番された配列を有する抗体の配列の相同領域での整列によって決定され得る。
【0085】
Kabat付番システムは一般に、可変ドメイン(およそ軽鎖の残基1~107および重鎖の残基1~113)中の残基に言及するときに使用される(例えば、Kabatら、Sequences of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991))。「EU付番システム」または「EUインデックス」は、一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域における残基について言及するときに使用される(例えば、Kabatら(上記参照)で報告されるEUインデックス)。「KabatにおけるようなEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基付番を指す。
【0086】
「直鎖状抗体」という表現は、Zapataら(1995Protein Eng、8(10):1057~1062)に記載されている抗体を指す。簡潔には、これらの抗体は、相補的軽鎖ポリペプチドと一緒になって一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFdセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む。直鎖状抗体は、二重特異性または単一特異性であり得る。
II.宿主細胞
【0087】
プロモータと翻訳単位との組合せが宿主細胞または宿主細胞染色体に対して非天然であるように、少なくとも1つのシャペロンタンパク質(例えば、ペプチジル-プロリルイソメラーゼまたはタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼ)をコードする翻訳単位であって、該翻訳単位の転写を駆動するプロモータ(宿主細胞染色体の一部でもある)と作動可能な組合せにあるか、または連結されている、翻訳単位を含む、宿主細胞染色体を有する宿主細胞(例えば、原核宿主細胞)が本明細書で提供される。
【0088】
いくつかの実施形態では、宿主細胞染色体は、(1)ペプチジル-プロリルイソメラーゼをコードする第1の翻訳単位を含む第1のポリヌクレオチド、(2)タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼをコードする第2の翻訳単位を含む第2のポリヌクレオチドを含み、該第1および第2の翻訳単位が該宿主細胞染色体の一部であり、該第1および第2の翻訳単位それぞれの転写を駆動する第1および第2の(それぞれの)プロモータ(また、該宿主細胞染色体の一部である)と作動可能な組合せにあるか、または連結されている。いくつかの実施形態では、第1の翻訳単位と第1のプロモータとの組合せおよび/または第2の翻訳単位と第2のプロモータとの組合せは、宿主細胞染色体に対して非天然である。例えば、プロモータの一方もしくは両方は、宿主細胞染色体に対して非天然であり得るか、翻訳単位の一方もしくは両方は、宿主細胞染色体に対して非天然であり得るか、または翻訳単位の一方もしくは両方は、宿主細胞染色体に対して天然であるが、宿主細胞染色体に対して非天然である組合せでプロモータと作動可能に組み合わされ得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、本開示の2鎖ポリペプチドの2つ以上の鎖をコードする1つ以上の染色体外ポリヌクレオチドをさらに含む。例えば、いくつかの実施形態では、宿主細胞は、(1)本開示の2鎖ポリペプチドの第1の鎖をコードする第1の翻訳単位を含む第1のポリヌクレオチド、(2)本開示の2鎖ポリペプチドの第2の鎖をコードする第2の翻訳単位を含む第2のポリヌクレオチド、および(3)シャペロンタンパク質(例えば、ペプチジル-プロリルイソメラーゼまたはタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼ)をコードする第3の翻訳単位を含む第3のポリヌクレオチドであって、該第3の翻訳単位の転写を駆動するプロモータと作動可能な組合せにある、第3のポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、第3の翻訳単位とプロモータとの組合せは、宿主細胞染色体に対して非天然である。いくつかの実施形態では、第1および第2のポリヌクレオチド(すなわち、それぞれ第1および第2の翻訳単位をコードする)は、1つ以上の染色体外ポリヌクレオチド(例えば、プラスミド)の一部であり、第3のポリヌクレオチド(および関連するプロモータ)は、宿主細胞染色体の一部である。
【0090】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、(1)本開示の2鎖ポリペプチドの第1の鎖をコードする第1の翻訳単位を含む第1のポリヌクレオチド、(2)本開示の2鎖ポリペプチドの第2の鎖をコードする第2の翻訳単位を含む第2のポリヌクレオチド、(3)タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼをコードする第3の翻訳単位を含む第3のポリヌクレオチドであって、該第3の翻訳単位の転写を駆動するプロモータと作動可能な組合せにある、第3のポリヌクレオチド、および(4)ペプチジル-プロリルイソメラーゼをコードする第4の翻訳単位を含む第4のポリヌクレオチドであって、該第4の翻訳単位の転写を駆動するプロモータと作動可能な組合せにある、第4のポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、第3の翻訳単位とその関連するプロモータとの組合せおよび/または第4の翻訳単位とその関連するプロモータとの組合せは、宿主細胞染色体に対して非天然である。いくつかの実施形態では、第1および第2のポリヌクレオチド(すなわち、それぞれ第1および第2の翻訳単位をコードする)は、1つ以上の染色体外ポリヌクレオチド(例えば、プラスミド)の一部であり、第3および第4のポリヌクレオチド(および関連するプロモータ)は、宿主細胞染色体の一部である。
【0091】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、(1)本開示の2鎖ポリペプチドの第1の鎖をコードする第1の翻訳単位を含む第1のポリヌクレオチド、(2)本開示の2鎖ポリペプチドの第2の鎖をコードする第2の翻訳単位を含む第2のポリヌクレオチド、(3)タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼをコードする第3の翻訳単位を含む第3のポリヌクレオチドであって、該第3の翻訳単位の転写を駆動する第1のプロモータと作動可能な組合せにある、第3のポリヌクレオチド、および(4)タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼをコードする第4の翻訳単位を含む第4のポリヌクレオチドであって、該第4の翻訳単位の転写を駆動する第2のプロモータと作動可能な組合せにある、第4のポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、第3の翻訳単位と第1のプロモータとの組合せおよび/または第4の翻訳単位と第2のプロモータとの組合せは、宿主細胞染色体に対して非天然である。いくつかの実施形態では、第1および第2のポリヌクレオチド(すなわち、それぞれ第1および第2の翻訳単位をコードする)は、1つ以上の染色体外ポリヌクレオチド(例えば、プラスミド)の一部であり、第3および第4のポリヌクレオチド(および関連するプロモータ)は、宿主細胞染色体の一部である。
【0092】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、(1)本開示の2鎖ポリペプチドの第1の鎖をコードする第1の翻訳単位を含む第1のポリヌクレオチド、(2)本開示の2鎖ポリペプチドの第2の鎖をコードする第2の翻訳単位を含む第2のポリヌクレオチド、(3)タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼをコードする第3の翻訳単位を含む第3のポリヌクレオチドであって、該第3の翻訳単位の転写を駆動する第1のプロモータと作動可能な組合せにある、第3のポリヌクレオチド、(4)ペプチジル-プロリルイソメラーゼをコードする第4の翻訳単位を含む第4のポリヌクレオチドであって、該第4の翻訳単位の転写を駆動する第2のプロモータと作動可能に組合せにある、第4のポリヌクレオチド、および(5)タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼをコードする第5の翻訳単位を含む第5のポリヌクレオチドであって、該第5の翻訳単位の転写を駆動する第3のプロモータと作動可能な組合せにある、第5のポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、第3の翻訳単位と第1のプロモータとの組合せ、第4の翻訳単位と第2のプロモータとの組合せ、および/または第5の翻訳単位と第3のプロモータとの組合せは、宿主細胞染色体に対して非天然である。いくつかの実施形態では、第1および第2のポリヌクレオチド(すなわち、それぞれ第1および第2の翻訳単位をコードする)は、1つ以上の染色体外ポリヌクレオチド(例えば、プラスミド)の一部であり、第3、第4、および第5のポリヌクレオチド(および関連するプロモータ)は、宿主細胞染色体の一部である。
【0093】
いくつかの実施形態では、シャペロンタンパク質(例えば、ペプチジル-プロリルイソメラーゼまたはタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼ)をコードする、本開示のポリヌクレオチドまたは翻訳単位は、宿主細胞染色体に対して天然である。例えば、シャペロンタンパク質をコードする、ポリヌクレオチドまたは翻訳単位は、天然のシャペロンタンパク質遺伝子または遺伝子座であり得る。いくつかの実施形態では、プロモータは、天然シャペロンタンパク質遺伝子または遺伝子座と作動可能な組合せになるように宿主細胞ゲノムに(例えば、1つ以上の天然の調節配列または遺伝要素への挿入またはその置換によって)挿入され、宿主細胞染色体に対して非天然であるプロモータ:翻訳単位の組合せを生成する。
【0094】
他の実施形態では、シャペロンタンパク質(例えば、ペプチジル-プロリルイソメラーゼまたはタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼ)をコードする、本開示のポリヌクレオチドまたは翻訳単位は、宿主細胞(例えば、染色体的に組み込まれた宿主細胞)に対して非天然である。
【0095】
いくつかの実施形態では、本開示の宿主細胞染色体は、本開示のシャペロンタンパク質をコードする1つ以上の天然の翻訳単位と、本開示のシャペロンタンパク質をコードする1つ以上の非天然の翻訳単位とを含み得る。いくつかの実施形態では、本開示の宿主細胞染色体は、本開示のシャペロンタンパク質をコードする複数の非天然の翻訳単位を含み得る。さらに、本開示の宿主細胞の多くは、複数のシャペロンタンパク質(例えば、大腸菌のFkpA、DsbA、およびDsbC)をコードする宿主細胞染色体を含むことが公知である。いくつかの実施形態では、本開示のシャペロンタンパク質をコードする1つ以上の天然の翻訳単位は、宿主細胞または宿主細胞染色体に対して非天然である組合せで、本開示のプロモータと作動可能に組み合わされる。
【0096】
本開示のポリヌクレオチドまたは翻訳単位を宿主細胞(例えば、原核宿主細胞)に導入する方法は、当技術分野で公知である。例示的な方法である、対立遺伝子交換は、以下により詳細に記載されている。有利なことには、対立遺伝子交換方法は、宿主細胞ゲノム上に「傷」を残さない。他の方法としては、Datsenko,K.A.およびWanner,B.L.(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.97:6640~6645に記載されている方法が挙げられるが、これに限定されない。
【0097】
上記実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、宿主細胞は、本開示の2鎖ポリペプチドの第3の鎖をコードする翻訳単位をさらに含む。いくつかの実施形態では、翻訳単位は、2鎖ポリペプチドの第1および/または第2の鎖をコードする染色体外ポリヌクレオチドの一部である。例えば、いくつかの実施形態では、2鎖ポリペプチドは、生物学的に活性な一価抗体(例えば、抗原に特異的に結合することができる一価抗体)を形成するように組立てられる、例えば、免疫グロブリン重鎖、免疫グロブリン軽鎖、および免疫グロブリンFc断片を含む1アーム抗体である。
シャペロンタンパク質
【0098】
本開示のある特定の態様は、シャペロンタンパク質に関する。シャペロンタンパク質は、2鎖タンパク質を含むが、これに限定されない、他の高分子の折畳みまたは組立てに役立つ任意のタンパク質を指し得る。シャペロンタンパク質の例としては、ペプチジル-プロリルイソメラーゼ、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼ、および熱ショックタンパク質(Hsp60、Hsp70、Hsp90、およびHsp100タンパク質など)を挙げることができるが、これらに限定されない。シャペロンタンパク質はまた、タンパク質を膜を通して輸送すること、例えば、原形質膜または小胞体膜を通したポリペプチド鎖の転座に役立ち得る。
【0099】
いくつかの実施形態では、シャペロンタンパク質は、ペプチジル-プロリルイソメラーゼであり得る。ペプチジル-プロリルイソメラーゼ(「プロリルイソメラーゼ」、「ロタマーゼ」、および「PPiase」という用語が、本明細書で互換的に使用され得る)は、プロリンまたはプロリル-イミノペプチド結合のシスおよびトランス異性体の相互変換を触媒する任意の酵素を指し得る。この反応のEC番号は、EC5.2.1.8である。このEC番号によって表される反応を触媒することが知られるまたは予測される任意のタンパク質は、本開示のペプチジル-プロリルイソメラーゼであり得る。ペプチジル-プロリルイソメラーゼ活性はまた、GO:0003755というGOタームIDによって表され得る。このGOタームIDによって表される分子機能を保有することが知られるまたは予測される任意のタンパク質は、本開示のペプチジル-プロリルイソメラーゼであり得る。
【0100】
ペプチジル-プロリルイソメラーゼ活性は、タンパク質の折畳みおよび組立てを促進することが当技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、ペプチジル-プロリルイソメラーゼは、適切に折り畳まれた構造がシスプロリル結合を含むタンパク質について、トランスプロリル結合をシスプロリル結合に変換することで、タンパク質の折畳みおよび組立てに役立ち得る。いくつかのペプチジル-プロリルイソメラーゼはまた、シスプロリル結合を欠くタンパク質の折畳みおよび組立てを向上させることも公知である(Bothmann HおよびPluckthun A 2000 J.Biol.Chem.275:17100)。いくつかの実施形態では、ペプチジル-プロリルイソメラーゼは、シスプロリル結合を欠くタンパク質のタンパク質の折畳みおよび組立てに役立ち得る。したがって、ペプチジル-プロリルイソメラーゼ活性は、本明細書に記載の方法に有用であるシャペロンタンパク質を特定するための機能的特徴として機能し得るが、ペプチジル-プロリルイソメラーゼの有用性は、その触媒活性自体に必ずしも限定されない。
【0101】
いくつかの実施形態では、ペプチジル-プロリルイソメラーゼは、FkpAタンパク質である。いくつかの実施形態では、FkpAタンパク質は、大腸菌FkpAである。大腸菌FkpAは、大腸菌種に属する細菌の任意の株または単離株におけるfkpA遺伝子によってコードされる任意のポリペプチドを指し得る。いくつかの実施形態では、大腸菌FkpAは、EcoGene受託番号EG12900によって表されるfkpA遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。いくつかの実施形態では、大腸菌FkpAは、NCBI RefSeq受託番号NP_417806によって表される配列を有するタンパク質を指す。
【0102】
他のFkpAタンパク質が、当技術分野で公知である。FkpAタンパク質の例としては、限定されないが、S.boydiiペプチジル-プロリルイソメラーゼ(NCBI RefSeq番号WP_000838252)、C.youngaeペプチジル-プロリルイソメラーゼ(NCBI RefSeq番号WP_006687366)、K.oxytocaペプチジル-プロリルイソメラーゼ(NCBI RefSeq番号WP_004125943)、S.entericaペプチジル-プロリルイソメラーゼ(NCBI RefSeq No.WP_000838233)、K.pneumoniaeペプチジル-プロリルイソメラーゼ(NCBI RefSeq番号WP_019704642)、S.cerevisiae FPR3p(NCBI RefSeq番号NP_013637)、M.musculus Fkpb1a(NCBI RefSeq番号NP_032045)、M.musculus Fkpb2(NCBI RefSeq番号NP_032046)、H.sapiens FKBP2(NCBI RefSeq番号NP_001128680)、およびD.melanogaster CG14715(NCBI RefSeq番号NP_650101)が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、本開示のFkpAタンパク質は、大腸菌FkpAに対して、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の同一性を有する。
【0103】
いくつかの実施形態では、シャペロンタンパク質は、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼであり得る。タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼ(「タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ」および「チオール-ジスルフィドイソメラーゼ」という用語が、本明細書で互換的に使用され得る)は、タンパク質におけるジスルフィド結合の再構成を触媒する任意の酵素を指し得る。例えば、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼは、システインの酸化を触媒して、タンパク質におけるジスルフィド結合を形成し得る。タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼはまた、タンパク質における不対合ジスルフィド結合の異性化を触媒し得る。この反応のEC番号は、EC5.3.4.1である。このEC番号によって表される反応を触媒することが知られるまたは予測される任意のタンパク質は、本開示のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼであり得る。タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼ活性はまた、GO:0015035というGOタームIDによって表され得る。このGOタームIDによって表される分子機能を保有することが知られるまたは予測される任意のタンパク質は、本開示のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼであり得る。
【0104】
タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼ活性は、タンパク質の折畳みおよび組立てを促進することが当技術分野で公知である。例えば、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼ活性は、タンパク質の折畳みおよび組立て中に適切な分子内および分子間ジスルフィド結合の形成を促進する。特に、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼ活性は、原核細胞のペリプラズムにおいて発現されるジスルフィド結合を有するタンパク質にとって重要である。
【0105】
いくつかの実施形態では、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼは、DsbAタンパク質である。いくつかの実施形態では、DsbAタンパク質は、大腸菌DsbAである。大腸菌DsbAは、大腸菌種に属する細菌の任意の株または単離株におけるdsbA遺伝子によってコードされる任意のポリペプチドを指し得る。いくつかの実施形態では、大腸菌DsbAは、EcoGene受託番号EG11297によって表されるdsbA遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。いくつかの実施形態では、大腸菌DsbAは、NCBI RefSeq受託番号NP_418297によって表される配列を有するタンパク質を指す。
【0106】
他のDsbAタンパク質が、当技術分野で公知である。DsbAタンパク質の例としては、限定されないが、S.flexneriチオール-ジスルフィドイソメラーゼ(NCBI RefSeq番号WP_000725335)、S.dysenteriaeチオール-ジスルフィドイソメラーゼ(NCBI RefSeq番号WP_000725348)、C.youngaeチオール-ジスルフィドイソメラーゼ(NCBI RefSeq番号WP_006686108)、およびS.entericaチオール-ジスルフィドイソメラーゼ(NCBI RefSeq番号WP_023240584)が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、本開示のDsbAタンパク質は、大腸菌DsbAに対して、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の同一性を有する。
【0107】
いくつかの実施形態では、タンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼは、DsbCタンパク質である。いくつかの実施形態では、DsbCタンパク質は、大腸菌DsbCである。大腸菌DsbCは、大腸菌種に属する細菌の任意の株または単離株におけるdsbC遺伝子によってコードされる任意のポリペプチドを指し得る。いくつかの実施形態では、大腸菌DsbCは、EcoGene受託番号EG11070によって表されるdsbC遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。いくつかの実施形態では、大腸菌DsbCは、NCBI RefSeq受託番号NP_417369によって表される配列を有するタンパク質を指す。
【0108】
他のDsbCタンパク質が、当技術分野で公知である。DsbCタンパク質の例としては、限定されないが、S.sonneiタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(NCBI RefSeq番号WP_000715206)、S.dysenteriaeタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(NCBI RefSeq番号WP_000715209)、E.fergusoniiタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(NCBI RefSeq番号WP_000715225)、S.bongoriチオール:ジスルフィド交換タンパク質DsbC(NCBI RefSeq番号WP_020845161)、およびS.entericaタンパク質ジスルフィドイソメラーゼDsbC(NCBI RefSeq番号WP_023183515)が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、本開示のDsbCタンパク質は、大腸菌DsbCに対して、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の同一性を有する。
【0109】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の同一性パーセントを決定するために、配列を最適な比較目的のために整列させる(例えば、最適な整列のためにギャップを第1および第2のアミノ酸または核酸配列の一方または両方に導入し得、比較目的で非相同配列を無視し得る)。一実施形態では、比較目的で整列させた参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも50%、典型的には少なくとも75%、さらにより典型的には少なくとも80%、85%、90%、95%、または100%である。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置にある、アミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列における位置が、第2の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有される場合、それら分子は、その位置にて同一である(本明細書で使用される場合、アミノ酸または核酸「同一性」は、アミノ酸または核酸「相同性」と等しい)。
【0110】
2つの配列間の同一性パーセントは、ギャップの数、および該2つの配列の最適な整列のために導入されることを必要とする各ギャップの長さを考慮して、配列によって共有される同一の位置の数の関数である。配列比較のために、典型的には、1つの配列が参照配列として機能し、これと試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じてサブシーケンス座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトのプログラムパラメータを使用することができ、または代替的なパラメータを指定することができる。次いで、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づき、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを算出する。同一性について2つの配列を比較する場合、配列が連続している必要はないが、いずれのギャップも、全体的な同一性パーセントを減少させ得るペナルティを持ち得る。blastnについては、デフォルトのパラメータは、ギャップ隙間ペナルティが5、ギャップ延長ペナルティが2である。blastpについては、デフォルトのパラメータは、ギャップ隙間ペナルティが11、ギャップ延長ペナルティが1である。
【0111】
「比較ウィンドウ」は、本明細書で使用される場合、20~600、通常は約50~約200、さらに通常は約100~約150からなる群から選択される連続する位置の数のうちのいずれか1つのセグメントへの言及を含み、この中で、配列が、2つの配列を最適に整列させた後で、同じ数の連続する位置の参照配列と比較する。比較のための配列整列方法は、当技術分野で周知である。比較のための配列の最適な整列は、公知のアルゴリズムを使用して(例えば、SmithおよびWaterman、Adv Appl Math、2:482,1981のローカル相同性アルゴリズムによって、NeedlemanおよびWunsch、J Mol Biol、48:443、1970の相同性整列アルゴリズムによって、PearsonおよびLipman、Proc Natl Acad Sci USA、85:2444、1988の類似性方法の調査によって、Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group,Madison、WI))における、アルゴリズムFASTDB(Intelligenetics)、BLAST(National Center for Biomedical Information)、GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTAのコンピュータ化された実装によって、または手動の整列および目視検査によって実施することができる。
【0112】
配列同一性パーセントおよび配列類似性を決定するのに好適なアルゴリズムの好ましい例は、FASTAアルゴリズム(PearsonおよびLipman、Proc Natl Acad Sci USA、85:2444、1988、ならびにPearson、Methods Enzymol、266:227~258、1996)である。同一性パーセントを算出するために、DNA配列のFASTA整列において使用される好ましいパラメータを最適化する。BL50マトリックス15:-5、kタプル=2、ジョイニングペナルティ=40、最適化=28、ギャップペナルティ-12、ギャップ長さペナルティ=-2、および幅=16。
【0113】
配列同一性パーセントおよび配列類似性を決定するために好適なアルゴリズムの例は、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムである(それぞれ、Altschulら、Nuc Acids Res、25:3389~3402、1977およびAltschulら、J Mol Biol、215:403~410、1990)。本明細書に記載のパラメータを用い、BLASTおよびBLAST2.0を使用して、本開示の核酸およびタンパク質についての配列同一性パーセントを決定する。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)のウェブサイトを介して一般に利用可能である。このアルゴリズムは、まず、データベース配列における同じ長さのワードと整列するときに、何らかの正値の閾値スコアTと一致するかまたはそれを満たす、問い合わせ配列における長さの短いワードWを特定することによって、高スコアの配列対(HSP)を特定することを伴う。Tは、近傍のワードスコア閾値と称される。これらの最初の近傍のワードヒットは、それらを含有するより長いHSPを見出すために検索を開始するためのシードとして機能する。ワードヒットは、累積整列スコアが増加することができる限り、各配列に沿って両方向に伸長される。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメータM(マッチする残基の対に対するリワードスコア;常に0超)およびN(ミスマッチの残基に対するペナルティスコア;常に0未満)を使用して算出する。アミノ酸配列については、スコア化マトリックスを使用して累積スコアを算出する。各方向におけるワードヒットの伸長は、累積整列スコアが、その最大の実績値から量Xだけ減少する場合、累積スコアが、1つ以上の負のスコアの残基整列の蓄積に起因してゼロ以下になる場合、またはいずれかの配列の終端に達する場合に停止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXは、整列の感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列について)は、ワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4、および両方の鎖の比較をデフォルトで使用する。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、ワード長3、および期待値(E)10、ならびにBLOSUM62スコア化マトリックス(HenikoffおよびHenikoff、Proc Natl Acad Sci USA、89:10915,1989)整列(B)50、期待値(E)10、M=5、N=-4、および両方の鎖の比較をデフォルトで使用する。
【0114】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計的分析を実施する(例えば、KarlinおよびAltschul、Proc Natl Acad Sci USA、90:5873~5787、1993を参照されたい)。BLASTアルゴリズムが提供する類似性の1つの測定は、最小合計確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間の一致が偶然に起こり得る確率の指標を提供する。例えば、核酸は、試験核酸と参照核酸とを比較した際の最小合計確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合に、参照配列に類似していると見なされる。
【0115】
有用なアルゴリズムの別の例は、PILEUPである。PILEUPは、関係および配列同一性パーセントを示すために、進歩的な対整列を使用して、関係する配列の群から複数の配列整列を創出する。これはまた、整列を創出するために使用されるクラスター関係を示す系図または樹状図をプロットする。PILEUPは、公開されている方法(HigginsおよびSharp、CABIOS 5:151~153、1989)に類似した方法を用いる進歩的整列方法の単純化を使用する(FengおよびDoolittle,J Mol Evol、35:351~360、1987)。プログラムは、最大で300配列を整列させることができ、各々のヌクレオチドまたはアミノ酸の最大長は5,000である。複数整列の手順は、2つの最も類似した配列の対整列から開始し、2つの整列した配列のクラスタを生成する。次いで、このクラスタを、次に最も関係のある配列または整列した配列のクラスタに整列させる。配列の2つのクラスタを、2つの個々の配列の対整列の単純な延長によって整列させる。最後の整列は、一連の進歩的な対整列によって達成される。プログラムは、特定の配列およびそのアミノ酸またはヌクレオチド座標を配列比較の領域に対して示すこと、ならびにプログラムパラメータを示すことによって実行される。PILEUPを使用して、参照配列を他の試験配列と比較して、以下のパラメータを使用して配列同一性パーセントの関係を決定する:デフォルトのギャップ重み(3.00)、デフォルトのギャップ長重み(0.10)、および重み付き端部ギャップ。PILEUPは、GCG配列分析ソフトウェアパッケージ、例えば、バージョン7.0(Devereauxら、Nuc Acids Res、12:387~395、1984)から得ることができる。
【0116】
複数のDNAおよびアミノ酸配列整列に好適なアルゴリズムの別の好ましい例は、CLUSTALWプログラムである(Thompsonら、Nucl Acids.Res、22:4673~4680、1994)。CLUSTALWは、配列群間の複数の対比較を実行し、相同性に基づき、それらを整理して複数整列にする。ギャップ隙間ペナルティおよびギャップ延長ペナルティは、それぞれ、10および0.05であった。アミノ酸整列については、BLOSUMアルゴリズムをタンパク質重み付けマトリックスとして使用することができる(HenikoffおよびHenikoff、Proc Natl Acad Sci USA、89:10915~10919,1992)。
プロモータ
【0117】
発現ベクターおよびクローニングベクターは、一般に、宿主生物によって認識され、かつ抗体をコードする核酸に作動可能に連結されるプロモータを含有する。原核宿主との使用に好適なプロモータとしては、phoAプロモータ、β-ラクタマーゼおよびラクトースプロモータ系、アルカリホスファターゼプロモータ、トリプトファン(trp)プロモータ系、ならびにtacプロモータなどのハイブリッドプロモータが挙げられる。しかしながら、他の公知の細菌性プロモータも好適である。細菌系で使用するためのプロモータは、抗体をコードするDNAに作動可能に連結されるShine-Dalgarno(S.D.)配列も含有することになる。上述のように、プロモータは、宿主細胞または宿主細胞染色体に対して非天然であるプロモータ:翻訳単位の組合せを生成するために、翻訳単位(例えば、本開示のシャペロンタンパク質をコードするものなどの天然の翻訳単位)と作動可能な組合せで、宿主細胞染色体に挿入することができる。
【0118】
いくつかの実施形態では、本開示のプロモータは、誘導性プロモータである。誘導性プロモータの活性は、シグナルに応答して増加または減少する。例えば、誘導性プロモータは、IPTGなどのシグナルの存在に応答して、転写を促進し得る。誘導性プロモータは、リン酸塩などのシグナルの不在に応答して、転写を促進し得る。これらのシナリオのいずれにおいても、転写の量は、シグナルの量またはその欠如に比例する場合も、しない場合もある。原核宿主細胞に好適な誘導性プロモータの多数の例が、当技術分野で公知である。これらには、lac、tac、trc、trp、pho、recA、tetA、nar、ファージPL、cspA、T7、およびPBADプロモータが含まれ得るが、これらに限定されない(より詳細な説明については、Terpe K.、2006 Appl.Microbiol.Biotechnol.72:211を参照されたい)。いくつかの実施形態では、誘導性プロモータの複数のコピーを使用して、例えば、DsbCおよびFkpAなどのシャペロンタンパク質をコードする別個の翻訳単位の発現を協調的に駆動する。
【0119】
いくつかの実施形態では、誘導性プロモータは、IPTG誘導性プロモータである。IPTG誘導性プロモータは、イソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)、またはlacオペロンからの転写を促進することができる任意の他のラクトース誘導体(例えば、アロラクトース)に応答する様式で、転写を促進する任意のポリヌクレオチド配列を指し得る。IPTG誘導性プロモータの多くの例が当技術分野で公知であり、これらの例としては、tac(例えば、tacI、tacIIなど)プロモータ、lacプロモータ、およびこれらの誘導体(例えば、lacUV5、taclacなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
いくつかの実施形態では、誘導性プロモータは、培養培地中のリン酸塩が枯渇したときに、翻訳単位の転写を駆動するphoプロモータである。phoプロモータは、細胞外リン酸塩(例えば、無機リン酸塩)に応答する様式で、転写を促進する任意のポリヌクレオチド配列を指し得る。例えば、大腸菌におけるリン酸塩(Pho)レギュロンは、細胞外リン酸塩を感知し、リン酸塩レベルに応答してPhoプロモータを介して多数の下流遺伝子の発現を調節するタンパク質成分を含む(より詳細な説明については、Hsieh YJおよびWanner BL 2010 Curr.Opin.Microbiol.13(2):198を参照されたい)。細菌を培養培地中で増殖させる場合、このPhoレギュロンの発現は、リン酸塩(例えば、無機リン酸塩、Pi)が培地中で得られるときに抑制され、リン酸塩が枯渇したときに誘導されることが公知である。本明細書に記載の方法において使用されるphoプロモータの1つの非限定的な例は、大腸菌phoAプロモータである。このプロモータは広く知られており、原核宿主細胞における組換えタンパク質発現を、細胞培養培地中のリン酸塩濃度に依存する様式で調節するために、当技術分野で使用される(より詳細な説明については、Lubke Cら、1995 Enzyme Microb.Technol.17(10):923を参照されたい)。
【0121】
いくつかの実施形態では、本開示のプロモータは、構成的プロモータである。構成的プロモータの活性は、宿主細胞が増殖する条件(例えば、栄養条件、細胞密度など)の変動にかかわらず、一定レベルの遺伝子発現を保持すると考えられている。例えば、構成的プロモータの活性は、1つ以上の転写因子の活性または発現ではなく、RNAポリメラーゼの利用可能性に依存し得る。いくつかの実施形態では、プロモータは、合成プロモータまたは天然に存在しないプロモータである。ある範囲の原核宿主細胞に適した例示的な構成的プロモータは、例えば、Jensen PR、Hammer K.Appl Environ Microbiol 1998、64:82~87に記載されている。いくつかの実施形態では、構成的プロモータは、CP25プロモータである。
【0122】
本明細書に記載されているように、本開示の宿主細胞染色体は、本開示のシャペロンタンパク質をコードする翻訳単位と作動可能に連結されたまたは組み合わされたプロモータの複数の非天然の組合せを含むことができる。異なる種類のプロモータが、任意の数または組合せで宿主細胞染色体に挿入され得る。例えば、いくつかの実施形態では、本開示の宿主細胞染色体は、誘導性プロモータ(例えば、本開示のシャペロンタンパク質をコードする翻訳単位と作動可能に組み合わされる)および構成的プロモータ(例えば、本開示のシャペロンタンパク質をコードする異なる翻訳単位と作動可能に組み合わされる)を含む。例えば、いくつかの実施形態では、本開示の宿主細胞染色体は、本開示のシャペロンタンパク質をコードする翻訳単位と作動可能に組み合わされた本開示の誘導性プロモータ、および本開示のシャペロンタンパク質をコードする異なる翻訳単位と作動可能に連結された本開示の構成的プロモータを含み、該プロモータ:翻訳単位の両方の組合せは、宿主細胞または宿主細胞染色体に対して非天然である。
【0123】
いくつかの実施形態では、本開示の宿主細胞染色体は、本開示のシャペロンタンパク質をコードする翻訳単位と作動可能に連結された本開示のPhoプロモータ、および本開示のシャペロンタンパク質をコードする異なる翻訳単位と作動可能に連結された本開示のCP25プロモータを含む。いくつかの実施形態では、本開示の宿主細胞染色体は、本開示のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼをコードする翻訳単位と作動可能に連結された本開示のPhoプロモータ、および本開示のペプチジル-プロリルイソメラーゼをコードする翻訳単位と作動可能に連結された本開示のCP25プロモータを含む。いくつかの実施形態では、本開示の宿主細胞染色体は、DsbCをコードする翻訳単位と作動可能に連結された本開示のPhoプロモータ、およびFkpAをコードする翻訳単位と作動可能に連結された本開示のCP25プロモータを含む。いくつかの実施形態では、本開示の宿主細胞染色体は、大腸菌DsbCをコードする翻訳単位と作動可能に連結された本開示のPhoプロモータ、および大腸菌FkpAをコードする翻訳単位と作動可能に連結された本開示のCP25プロモータを含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は大腸菌であり、DsbCおよびFkpAをコードする翻訳単位は天然である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、本開示の2鎖ポリペプチドの2つ以上のポリペプチド鎖をコードする2つ以上の翻訳単位を含む1つ以上の染色体外ポリヌクレオチドをさらに含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、本開示の宿主細胞染色体は、本開示のシャペロンタンパク質をコードする翻訳単位と作動可能に連結された本開示のPhoプロモータ、および本開示のシャペロンタンパク質をコードする異なる翻訳単位と作動可能に連結された本開示のPhoプロモータを含む。いくつかの実施形態では、本開示の宿主細胞染色体は、本開示のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼをコードする翻訳単位と作動可能に連結された本開示のPhoプロモータ、および本開示のペプチジル-プロリルイソメラーゼをコードする翻訳単位と作動可能に連結された本開示のPhoプロモータを含む。いくつかの実施形態では、本開示の宿主細胞染色体は、DsbCをコードする翻訳単位と作動可能に連結された本開示のPhoプロモータ、およびFkpAをコードする翻訳単位と作動可能に連結された本開示のPhoプロモータを含む。いくつかの実施形態では、本開示の宿主細胞染色体は、大腸菌DsbCをコードする翻訳単位と作動可能に連結された本開示のPhoプロモータ、および大腸菌FkpAをコードする翻訳単位と作動可能に連結された本開示のPhoプロモータを含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は大腸菌であり、DsbCおよびFkpAをコードする翻訳単位は天然である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、本開示の2鎖ポリペプチドの2つ以上のポリペプチド鎖をコードする2つ以上の翻訳単位を含む1つ以上の染色体外ポリヌクレオチドをさらに含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、本開示の宿主細胞染色体は、本開示のシャペロンタンパク質をコードする翻訳単位と作動可能に連結された本開示のtacプロモータ、本開示のシャペロンタンパク質をコードする第2の翻訳単位と作動可能に連結された本開示のtacプロモータ、および本開示のシャペロンタンパク質をコードする第3の翻訳単位と作動可能に連結された本開示のCP25プロモータを含む。いくつかの実施形態では、本開示の宿主細胞染色体は、本開示のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼをコードする翻訳単位と作動可能に連結された本開示のtacプロモータ、本開示のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼをコードする第2の翻訳単位と作動可能に連結された本開示のtacプロモータ、および本開示のペプチジル-プロリルイソメラーゼをコードする第3の翻訳単位と作動可能に連結された本開示のCP25プロモータを含む。いくつかの実施形態では、本開示の宿主細胞染色体は、DsbCをコードする翻訳単位と作動可能に連結された本開示のtacプロモータ、DsbAをコードする翻訳単位と作動可能に連結された本開示のtacプロモータ、およびFkpAをコードする翻訳単位と作動可能に連結された本開示のCP25プロモータを含む。いくつかの実施形態では、本開示の宿主細胞染色体は、大腸菌DsbCをコードする翻訳単位と作動可能に連結された本開示のtacプロモータ、大腸菌DsbAをコードする翻訳単位と作動可能に連結された本開示のtacプロモータ、および大腸菌FkpAをコードする翻訳単位と作動可能に連結された本開示のCP25プロモータを含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は大腸菌であり、DsbC、DsbA、およびFkpAをコードする翻訳単位は天然である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、本開示の2鎖ポリペプチドの2つ以上のポリペプチド鎖をコードする2つ以上の翻訳単位を含む1つ以上の染色体外ポリヌクレオチドをさらに含む。
染色体外ポリヌクレオチドおよび発現ベクター
【0126】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、(1)本開示の2鎖ポリペプチドの第1の鎖をコードする第1の翻訳単位を含む第1のポリヌクレオチド、および(2)該2鎖ポリペプチドの第2の鎖をコードする第2の翻訳単位を含む第2のポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、第1および第2のポリヌクレオチドは、1つ以上の染色体外ポリヌクレオチドの一部である。いくつかの実施形態では、第1および第2のポリヌクレオチドは、同じ染色体外ポリヌクレオチドの一部である。いくつかの実施形態では、染色体外ポリヌクレオチド(複数可)は、2鎖ポリペプチドの第3の鎖をコードする第3の翻訳単位をさらに含む。いくつかの実施形態では、染色体外ポリヌクレオチド(複数可)は、1つ以上の発現ベクターまたはプラスミドを含む。
【0127】
いくつかの実施形態では、2鎖ポリペプチドの第1の鎖をコードする第1の翻訳単位および2鎖ポリペプチドの第2の鎖をコードする第2の翻訳単位は、単一の染色体外ポリヌクレオチド(例えば、プラスミドまたは他の発現ベクター)の一部である。いくつかの実施形態では、2鎖ポリペプチドの第1の鎖をコードする第1の翻訳単位および2鎖ポリペプチドの第2の鎖をコードする第2の翻訳単位は、別個の染色体外ポリヌクレオチド(例えば、プラスミドまたは他の発現ベクター)から発現される。
【0128】
いくつかの実施形態では、染色体外ポリヌクレオチド(複数可)は、選択可能マーカー(例えば、選択可能マーカータンパク質をコードする翻訳単位)をさらに含む。選択可能マーカーは、細胞が、選択、すなわち、選択可能マーカーを欠く細胞(複数可)の存在量と比較して、選択可能マーカーを保有する細胞(複数可)の存在量を選択的に増加させるために使用される任意の条件に曝露されるとき、宿主細胞の生存を促進するタンパク質をコードする任意のポリヌクレオチドを指し得る。典型的な選択マーカーは、(a)抗生物質もしくは他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、もしくはテトラサイクリンへの耐性を与えるか、(b)栄養要求性欠損を補完するか、または(c)複合培地から得ることができない必須の栄養素を供給する(例えば、Bacilliに対するD-アラニンラセマーゼをコードする遺伝子)、タンパク質をコードする。多数の選択可能マーカー、および単一の抗生物質を有する対応する選択剤が、当技術分野で公知である。例えば、限定しないが、多くの選択可能マーカーおよび対応する抗生物質が、Jang CWおよびMagnuson T 2013 PLoS ONE 8(2):e57075において記載され、引用されている。いくつかの実施形態では、選択可能マーカーは、宿主細胞のゲノム内に存在する遺伝子欠失を補う遺伝子(例えば、プラスミドから発現される遺伝子)を指し得る。これらの例では、細胞を選択するとき(すなわち、宿主ゲノムから欠失した遺伝子の活性を必要とする条件下での増殖)、プラスミドによって供給される遺伝子のコピーが、宿主ゲノムの欠損を補い、それによって外因性相補遺伝子を保有する細胞(複数可)を選択する。このような遺伝子としては、細胞培地において欠乏している特定の栄養素を生成するために必要とされる栄養要求性マーカーまたは遺伝子を挙げることができ、これらの例は、本明細書でさらに記載されている。いくつかの例示的な選択可能マーカーおよび抗生物質を、本明細書でさらに記載する。
【0129】
いくつかの実施形態では、選択可能マーカーは、選択剤に対する耐性を促進し、培養培地は、宿主細胞にポリヌクレオチドを保持させるための選択剤を含む。いくつかの実施形態では、選択剤は、抗生物質である。選択スキームの一例は、宿主細胞の増殖を停止する薬物を利用する。異種遺伝子での形質転換に成功した細胞は、薬物耐性を与えるタンパク質を産生して、したがって、選択レジメンで生き残る。このような優性選択の例は、薬物ネオマイシン、ミコフェノール酸、およびハイグロマイシンを使用する。
【0130】
別の選択スキームは、遺伝子産物が特定の培養培地における増殖に不可欠である遺伝子を除去する、染色体欠失を有する原核宿主細胞を使用する。これらの例では、宿主細胞の染色体欠失を補う異種遺伝子による形質転換に成功した細胞は、特定の培養培地における増殖時に生存することになる。このスキームにおいて有用な遺伝子の例としては、栄養要求性マーカー遺伝子、または宿主細胞を特定の培養培地において増殖させるときに必須の栄養素を産生するために必要とされる他の遺伝子を挙げることができる。
【0131】
いくつかの実施形態では、染色体外ポリヌクレオチド(複数可)は、原核宿主細胞中で染色体外発現ベクターを複製するのに適した複製起点をさらに含む。一般に、クローニングベクターにおいて、この配列は、宿主染色体DNAから独立してベクターの複製を可能にするものであり、これらとしては、複製起点または自己複製配列が挙げられる。このような配列は、多様な原核宿主細胞について周知である。例えば、プラスミドpBR322からの複製起点は、大部分のグラム陰性細菌に好適である。
【0132】
原核宿主細胞において使用される発現ベクターはまた、転写の終結およびmRNAの安定化に必要な配列を含有し得る。原核細胞において、終結因子は、Rho依存性またはRho非依存性終結因子を含んでもよい。原核宿主細胞において有用な終結因子の一例としては、λt0終結因子が挙げられるが、これに限定されない(ScholtissekおよびGrosse、Nucleic Acids Res.15:3185、1987)。
【0133】
本開示の抗体は、直接的にだけではなく、異種ポリペプチドとの融合ポリペプチドとしても組換え的に産生され得、この異種ポリペプチドは、好ましくは、成熟タンパク質またはポリペプチドのN末端にて特異的切断部位を有するシグナル配列または他のポリペプチドである。選択される異種シグナル配列は、好ましくは、宿主細胞によって認識およびプロセシング(例えば、シグナルペプチダーゼによって切断される)ものである。天然抗体シグナル配列を認識もプロセシングもしない原核宿主細胞の場合、シグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lpp、または熱安定性エンテロトキシンIIリーダーの群から選択される原核シグナル配列によって置換される。
組換えポリペプチド
【0134】
本開示のある特定の態様は、2鎖ポリペプチドを産生する方法に関する。有利なことには、本明細書に記載の方法は、多くの様々な種類のタンパク質、特に、上記のような2鎖タンパク質などのジスルフィド結合を有するものの発現、折畳み、および組立てを促進するのに有用であり得る。特定の2鎖タンパク質を以下に記載するが、本明細書に記載の方法は、これらの特定の実施形態に限定されない。本明細書で使用される場合、2鎖タンパク質は、2つを超える別個のポリペプチド鎖を含有するタンパク質を含み得る。本明細書に記載の多くの実施形態は、2つのポリペプチド鎖を含む2鎖タンパク質に関するが、2つを超えるポリペプチド鎖(例えば、3つ以上のポリペプチド)を有する2鎖タンパク質が企図され、本明細書に記載の方法によって産生されてもよい。上記のように、そうでなければ、2つの別個のポリペプチド鎖(例えば、一本鎖抗体、一本鎖可変断片など)である場合に会合する、単一のポリペプチド鎖からなる2鎖タンパク質もまた企図され、本明細書に記載の方法によって産生され得る。
【0135】
いくつかの実施形態では、本開示の2鎖ポリペプチドの2つの鎖は、少なくとも1つのジスルフィド結合によって互いに連結される。ジスルフィド結合は、2つのチオール基を連結している任意の共有結合を指し得る。ポリペプチドにおけるジスルフィド結合は、典型的には、システイン残基のチオール基の間で形成する。ポリペプチドジスルフィド結合は、本開示の2鎖タンパク質などの多くのポリペプチドの折畳みおよび組立てに重要であることが、当技術分野で公知である。ポリペプチドジスルフィド結合は、単一のポリペプチド鎖におけるシステイン残基間のジスルフィド結合(すなわち、分子内または鎖内ジスルフィド結合)を含み得る。ポリペプチドジスルフィド結合はまた、別個のポリペプチド鎖上で見出されるシステイン残基間のジスルフィド結合(すなわち、分子間または鎖間ジスルフィド結合)を含み得る。したがって、いくつかの実施形態では、2鎖ポリペプチドの2つの鎖は、少なくとも1つのジスルフィド結合によって互いに連結される。
【0136】
ジスルフィド結合は、抗体および抗体断片の折畳みおよび組立てに重要であることが、当技術分野で公知である。異なる抗体同位体、および同位体内の異なるサブクラスは、異なるパターンのジスルフィド結合を保有することが知られている。例えば、IgG抗体は、特定のIgGサブクラスに応じて、鎖内ジスルフィド結合を12個、各軽鎖とその対応する重鎖との間の鎖間ジスルフィド結合を1個、重鎖間の鎖間ジスルフィド結合を2~11個含有し得る(より詳細な説明については、Liu HおよびMay K 2012 MAbs.4(1):17を参照されたい)。IgM(例えば、Wiersma EJおよびShulman MJ 1995 J.Immunol.154(10):5265を参照)、IgE(例えば、Helm BAら 1991 Eur.J.Immunol.21(6):1543を参照)、IgA(例えば、Chintalacharuvu KRら 2002 J.Immunol.169(9):5072を参照)、およびIgD(例えば、Shin SUら 1992 Hum.Antibodies Hybridomas 3(2):65を参照)はまた、折畳みおよび組立て中にジスルフィド結合を形成することが公知である。
【0137】
いくつかの実施形態では、本開示の2鎖ポリペプチドは、宿主細胞に対して異種である。本明細書で使用される場合、宿主細胞に関連して使用される場合の異種ポリペプチドは、宿主細胞(すなわち、宿主細胞が自然から単離される場合)において内因的に発現されない任意のポリペプチドを指し得る。異種ポリペプチドはまた、宿主細胞によって内因的に発現され得るが、宿主細胞が自然から単離される場合とは異なる調節の下で発現されるポリペプチドを指し得る。異なる調節の例としては、異なる発現の量、異なる刺激に応答した発現、または誘導性プロモータなどの異種プロモータの使用によるなど、任意の他の改変された発現の量を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0138】
いくつかの実施形態では、本開示の2鎖ポリペプチドは、ヘテロ二量体のモノマーである。本明細書で使用される場合、ヘテロ二量体は、作動可能に連結している、2つの別個のポリペプチドまたはポリペプチド複合体を含有する任意のポリペプチド複合体を指し得る。ヘテロ二量体の非限定的な例は、2つの別個の抗体モノマーで構成される二重特異性または二価抗体(すなわち、作動可能に連結している軽鎖-重鎖対)である。この例では、第1の抗原を認識する第1の重鎖-軽鎖対の折畳みおよび組立ては、第1の抗体モノマーを生成する。第2の抗原を認識する第2の重鎖-軽鎖対の折畳みおよび組立ては、第2の抗体モノマーを生成する。これらのモノマーは、当技術分野で公知である任意の手段(二重特異性抗体に関して以下でより詳細に記載されている)によって組み立てられて、ヘテロ二量体を形成し得る。ヘテロ二量体抗体形成の例示に関するさらなる詳細については、Ridgway JBBら 1996 Protein Eng.9(7):617を参照されたい。
【0139】
いくつかの実施形態では、本開示の2鎖ポリペプチドは、第1の鎖および第2の鎖が免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖に相当する一価抗体である。本明細書で使用される場合、一価抗体は、共に作動可能に連結して重鎖-軽鎖対を形成する抗体重鎖および抗体軽鎖から作製される任意のポリペプチド複合体を指してもよく、これにおいて、重鎖-軽鎖対は、第2の重鎖-軽鎖対に対して作動可能に連結されない。「半抗体(hAb)」という用語が、本明細書では互換的に使用され得る。
【0140】
いくつかの実施形態では、本開示の一価抗体は、抗原に特異的に結合することができる。本明細書で使用される場合、「結合する」、「特異的に結合する」、または「~に特異的である」という用語は、標的と(すなわち、生体分子を含む不均一な分子集団の存在下での標的の存在を決定する抗体と)の間の結合などの測定可能かつ再現可能な相互作用を指す。例えば、標的(エピトープであり得る)に結合するか、またはそれに特異的に結合する抗体は、この標的に、他の標的に結合するよりも高い親和性で、結合力で、より容易に、かつ/またはより長期間結合する抗体である。一実施形態では、抗体が無関係の標的に結合する程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定される、抗体の標的への結合の約10%未満である。ある特定の実施形態では、標的に特異的に結合する抗体は、1μM以下、100nM以下、10nM以下、1nM以下、または0.1nM以下の解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態では、抗体は、異なる種由来のタンパク質間で保存されるタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態では、特異的結合は、排他的結合を含み得るが、それを必要としない。
【0141】
いくつかの実施形態では、本開示の2鎖ポリペプチドは、分泌タンパク質である。本明細書で使用される場合、分泌タンパク質は、宿主細胞によって宿主細胞ペリプラズムまたは細胞外環境に分泌される任意のタンパク質を指し得る。分泌タンパク質は、宿主細胞によって内因的に分泌されるタンパク質であってもよく、または分泌タンパク質は、宿主細胞によって内因的に分泌はされないが、その分泌を促進するような方法で修飾されるタンパク質であってもよい。例えば、典型的にはポリペプチドのN末端で見出されるシグナル配列の存在により、ポリペプチドが分泌のための分泌経路に導かれ得る。多数のシグナル配列が当技術分野で公知であり、分泌タンパク質の分泌を促進するため、または宿主細胞によって自然に分泌されないタンパク質の分泌を可能にするために有用であり得る。例えば、Pickenら、Infect.Immun.42:269~275(1983)、SimmonsおよびYansura、Nature Biotechnology 14:629~634(1996)、ならびにHumphreys DPら 2000 Protein Expr.Purif.20(2):252を参照されたい。シグナル配列の1つの非限定的な例は、熱安定性エンテロトキシンII(STII)シグナル配列である。
【0142】
いくつかの実施形態では、本開示の分泌タンパク質は、宿主細胞のペリプラズムから回収される。ペリプラズムは、グラム陰性細菌細胞の内膜または細胞膜と外膜との間の空間を指すことが、当技術分野で公知である。理論に拘束されることを望むものではないが、ペリプラズムは、ジスルフィド結合の形成に適した酸化環境であると考えられる。したがって、ジスルフィド結合を、その適切に折り畳まれ、組み立てられた構造の一部として有するポリペプチド(例えば、本開示の2鎖タンパク質)をペリプラズムに局在させることが有利であり得る(より詳細な説明については、Schlapschy Mら 2006 Protein Eng.Des.Sel.19(8):385を参照されたい)。
【0143】
ペリプラズムタンパク質を回収するための多数の方法が、当技術分野で公知である。ペリプラズムタンパク質の大規模な精製の1つの非限定的な例は、欧州特許EP1356052 B1において記載されている(例えば、実施例4を参照されたい)。ペリプラズムタンパク質は、スフェロプラスト調製物から、ペリプラズム画分を抽出することによって回収され得る(例えば、Schlapschy Mら2006 Protein Eng.Des.Sel.19(8):385を参照されたい)。ペリプラズム抽出物が生成されると、ペリプラズムタンパク質は、当技術分野で公知の任意の標準的なタンパク質精製技法、例えば、アフィニティ精製、クロマトグラフィなどによって精製され得る。
宿主細胞
【0144】
本開示のある特定の態様は、原核宿主細胞に関する。本明細書のベクターにDNAをクローニングまたは発現させるために適した原核生物としては、真正細菌、例えばグラム陰性またはグラム陽性生物、例えば、エンテロバクター科、例えば、Escherichia、例えば、大腸菌、Enterobacter、Erwinia、Klebsiella、Proteus、Salmonella、例えば、Salmonella typhimurium、Serratia、例えば、Serratia marcescans、およびShigella、ならびにBacilli、例えば、B.subtilisおよびB.licheniformis(例えば、1989年4月12日に公表のDD266,710において開示されたB.licheniformis41P)、Pseudomonas、例えば、P.aeruginosaおよびP.aeruginosaが挙げられる。1つの好ましい大腸菌クローニング宿主は、E.coli294(ATCC31,446)であるが、E.coliB、E.coliX1776(ATCC31,537)、およびE.coliW3110(ATCC27,325)などの他の株も好適である。これらの例は、限定するものではなく、例証するものである。
【0145】
いくつかの実施形態では、原核宿主細胞は、グラム陰性細菌である。グラム陰性細菌は、グラム染色によって検出されるペプチドグリカン層を取り囲む外膜を含む任意の細菌を指す。多くのグラム陰性細菌宿主細胞が、当技術分野で公知である。例えば、グラム陰性細菌は、これらに限定されないが、アルファプロテオバクテリア、ベータプロテオバクテリア、ガンマプロテオバクテリア、ゼータプロテオバクテリア、イプシロンプロテオバクテリア、デルタプロテオバクテリア、およびアキドバクテリアなどのプロテオバクテリア、シアノバクテリア、ならびにスピロヘータを含むことが公知である。周知のグラム陰性細菌には、エシェリヒア属、サルモネラ属、シゲラ属、シュードモナス属、ヘリオバクター属、レジオネラ属、ナイセリア属、およびクレブシエラ属などの属の種が含まれ得る。
【0146】
いくつかの実施形態では、本開示のグラム陰性細菌は、大腸菌である。本明細書で使用される場合、大腸菌は、大腸菌種に属する細菌の任意の株または単離株を指し得る。大腸菌は、自然発生株、または変異もしくは本明細書に記載のプラスミドによる形質転換などによって遺伝的に修飾された株を含んでもよい。
【0147】
いくつかの実施形態では、本開示の大腸菌は、内因性プロテアーゼ活性を欠く株のものである。理論に拘束されることを望むものではないが、いくつかの内因性プロテアーゼは、組換えによって発現された基質に対する活性を有するため、内因性プロテアーゼ活性を欠く株は、本開示のペリプラズムタンパク質などの組換えタンパク質の産生の向上を可能にし得ると考えられる(1つのこのような例については、Baneyx FおよびGeorgiu G 1990 J.Bacteriol.172(1):491を参照されたい)。内因性プロテアーゼ活性を欠く株は、内因性プロテアーゼをコードする遺伝子が、変異、欠失、そうでなければ不活性化している株を含んでもよい。このような遺伝子の例としては、degP、prc、およびompTを挙げることができるが、これらに限定されない。多種多様な原核宿主細胞(例えば、内因性プロテアーゼ活性を欠く株を操作するため)に変異を導入する方法は、当技術分野で周知である。例えば、Snyder Lら2013 Molecular Genetics of Bacteria 第4版ASM Pressを参照されたい。ある特定の実施形態では、本開示の大腸菌は、degpS210A変異を有する株のものである。
【0148】
いくつかの実施形態では、本開示の大腸菌は、増強されたLacI産生または活性を有する株のものである。例示的なLacIタンパク質の配列は、UniProt KB受託番号P03023によって表される。ある特定の実施形態では、大腸菌は、lacIQ変異(例えば、Muller-Hill,B.ら(1968)Proc.Natl.Acad.Sci.59:1259~1264を参照)を有する株である。この変異は、lacオペロンのLacIリプレッサーの過剰産生をもたらすことが知られている。
【0149】
ある特定の実施形態では、本開示の大腸菌は、ΔfhuA ΔphoA ilvG2096(IlvG+、Valr)Δprc spr43H1 ΔmanA lacIQ ΔompT ΔmenE742 degPS210A株のものである。
抗体および抗体断片
【0150】
本明細書に記載の2鎖タンパク質は、当技術分野で公知である任意の好適な技法によって調製され得る。2鎖タンパク質の1つの例示的なクラスは、抗体である。以下に記載されているように、抗体は、抗体を生成するために当技術分野で利用可能な技法を使用して調製され、その例示的な方法は、以下のセクションにおいてより詳細に記載されている。当業者は、以下に記載の方法の多くが、抗体以外の2鎖タンパク質に適用され得ることを認識するであろう。
【0151】
抗体は、目的の抗原(例えば、かつ非限定的に、PD-L1(ヒトPD-L1など)、HER2、またはCD3(ヒトCD3など)、IL13、IL4、VEGFC、VEGFA、およびVEGF)に対して指向する。好ましくは、抗原は、生物学的に重要なポリペプチドであり、障害に罹患している哺乳動物への抗体の投与により、その哺乳動物に治療的利益がもたらされ得る。
【0152】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、インターロイキン-13(本明細書においてIL-13またはIL13と称される)に対して指向する。例えば、抗体は、IL13に対する一価抗体もしくは「半抗体」、IL13に対する2つの一価の重鎖-軽鎖対を含む完全抗体(例えば、2つの同一の一価の重鎖-軽鎖対、IL13の同一のエピトープを認識する異なるHVRまたはCDRをそれぞれ含む、2つの一価の重鎖-軽鎖対、またはIL13の非重複または部分的に重複するエピトープを認識する異なるHVRまたはCDRをそれぞれ含む、2つの一価重鎖-軽鎖対)、またはIL13に対する重鎖-軽鎖対および異なる抗原に対する重鎖-軽鎖対を含む二重特異性抗体であり得る。
【0153】
IL13ポリペプチドの例は、当技術分野で公知である。いくつかの実施形態では、IL13ポリペプチドは、ヒトIL13ポリペプチドである。いくつかの実施形態では、IL13ポリペプチドは、IL13の前駆体形態である。IL13ポリペプチドの前駆体形態の非限定的な例は、Swiss-Prot受託番号P35225.2によって表されるようなヒトIL13前駆体である。いくつかの実施形態では、IL13ポリペプチドは、配列:
MALLLTTVIA LTCLGGFASP GPVPPSTALRELIEEL VNITQNQKAP LCNGSMVWSI NLTAGMYCAA LESLINVSGC SAIEKTQRML SGFCPHKVSA GQFSSLHVRD TKIEVAQFVK DLLLHLKKLF REGRFN(配列番号1)を含む。
【0154】
他の実施形態では、IL13は、IL13の成熟形態(例えば、シグナル配列を欠く)である。いくつかの実施形態では、IL13ポリペプチドは、配列:
SPGPVPPSTALR ELIEELVNIT QNQKAPLCNG SMVWSINLTA GMYCAALESL INVSGCSAIE KTQRMLSGFC PHKVSAGQFS SLHVRDTKIE VAQFVKDLLL HLKKLFREGR FN(配列番号2)を含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む抗IL13抗体が、本明細書で提供され、
(a)
(a)該重鎖可変ドメインは、AYSVN(配列番号5)、MIWGDGKIVYNSALKS(配列番号6)、およびDGYYPYAMDN(配列番号7)に対して、それぞれ、少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR-H1、HVR-H2、およびHVR-H3配列を含み、かつ/または、
(b)
(b)該軽鎖可変ドメインは、RASKSVDSYGNSFMH(配列番号8)、LASNLES(配列番号9)、およびQQNNEDPRT(配列番号10)に対して、それぞれ、少なくとも85%の配列同一性を有する、HVR-L1、HVR-L2、およびHVR-L3配列を含む。
特定の態様では、配列同一性は、参照配列と比較して、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である。
【0156】
いくつかの実施形態では、抗IL13抗体は、配列番号3の重鎖可変ドメイン配列および/または配列番号4の軽鎖可変ドメイン配列を含む。なおさらなる実施形態では、重鎖配列および/または軽鎖配列を含む、単離された抗IL13抗体が提供され、
(a)(a)該重鎖可変ドメイン配列は、以下の参照重鎖配列に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し:
(b)EVTLRESGPALVKPTQTLTLTCTVSGFSLSAYSVNWIRQPPGKALEWLAMIWGDGKIVYNSALKSRLTISKDTSKNQVVLTMTNMDPVDTATYYCAGDGYYPYAMDNWGQGSLVTVSS(配列番号3)
(c)(b)該軽鎖可変ドメイン配列は、以下の参照軽鎖配列に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する:
(d)DIVLTQSPDSLSVSLGERATINCRASKSVDSYGNSFMHWYQQKPGQPPKLLIYLASNLESGVPDRFSGSGSGTDFTLTISSLQAEDVAVYYCQQNNEDPRTFGGGTKVEIKR(配列番号4)。
【0157】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、インターロイキン-33(本明細書においてIL-33またはIL33と称される)に対して指向する。例えば、抗体は、IL33に対する一価抗体もしくは「半抗体」、IL33に対する2つの一価の重鎖-軽鎖対を含む完全抗体(例えば、2つの同一の一価の重鎖-軽鎖対、IL33の同一のエピトープを認識する異なるHVRまたはCDRをそれぞれ含む、2つの一価重鎖-軽鎖対、またはIL33の非重複または部分的に重複するエピトープを認識する異なるHVRまたはCDRをそれぞれ含む、2つの一価重鎖-軽鎖対)、またはIL33に対する重鎖-軽鎖対および異なる抗原に対する重鎖-軽鎖対を含む二重特異性抗体であり得る。
【0158】
IL33の様々なアイソフォームが、公知である。例えば、ヒトIL33アイソフォームとしては、例えば、限定されないが、NCBI RefSeq受託番号AOZ26495、ADR77828、AAH47085、NP_254274、NP_001186569、NP_001300977、NP_001340731、NP_001300975、NP_001300976、およびXP_06870774によって表されるものが挙げられる。
【0159】
一態様では、多重特異性抗体が提供され、該抗体は、第1の一価または半抗体および第2の一価または半抗体を含み、該第1の半抗体は、IL-33に結合する第1のVH/VLユニットを含み、該第2の半抗体は、IL-13に結合する第2のVH/VLユニットを含む。
【0160】
例示的な抗IL33抗体(抗IL33/抗IL13二重特異性抗体を含む)のHVRおよび可変ドメイン配列は、例えば、WO2016077381に見出すことができる。
【0161】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体のCH3および/またはCH2ドメインは、IgG(例えば、IgG1サブタイプ、IgG2サブタイプ、IgG2Aサブタイプ、IgG2Bサブタイプ、IgG3サブタイプ、またはIgG4サブタイプ)に由来する。いくつかの実施形態では、本開示の抗体のCH3および/またはCH2ドメインは、1つ以上のノブ形成変異またはホール形成変異(例えば、下記の表2に記載されている変異など)を含み得る。
【0162】
ある特定の実施形態では、本開示の抗体のCH3および/またはCH2ドメインは、IgG4サブタイプに由来する。いくつかの実施形態では、本開示の抗体のIgG4 CH3および/またはCH2ドメインは、限定されないが、S228P変異(EU付番)を含む1つ以上の追加の変異を含み得る。
【0163】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、以下により詳細に考察されるように、抗体断片である。本明細書で使用される場合、抗体断片は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子(例えば、scFv)、および抗体断片から形成した多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0164】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、1アーム抗体である。いくつかの実施形態では、1アーム抗体は、免疫グロブリン重鎖、免疫グロブリン軽鎖、および免疫グロブリンFc断片を含み、該3つの鎖は折り畳まれ、組み立てられて、生物学的に活性な一価抗体を形成する。例示的かつ非限定的な1アーム抗体オナルツズマブ(例えば、MetMAb)の説明については、例えば、Merchant,M.ら(2013)Proc.Natl.Acad.Sci.110:E 2987~E2996を参照されたい。
抗体特性
【0165】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、1μM以下、150nM以下、100nM以下、50nM以下、10nM以下、1nM以下、0.1nM以下、0.01nM以下、または0.001nM以下(例えば、10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0166】
一実施形態では、Kdは、以下のアッセイにより説明されるように、目的の抗体のFabバージョンおよびその抗原を用いて行われる放射性標識抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。抗原に対するFabの溶液結合親和性は、非標識抗原の滴定系の存在下で、最小濃度の(125I)標識抗原によりFabを平衡化し、次いで、結合した抗原を抗Fab抗体でコーティングしたプレートで捕捉することによって測定する(例えば、Chenら、J.Mol.Biol.、293:865~881(1999)を参照されたい)。アッセイの条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中の5μg/mLの捕捉用抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、その後、PBS中の2%(w/v)ウシ血清アルブミンで2~5時間、室温(およそ23℃)でブロッキングする。非吸着性プレート(Nunc番号269620)中、100pMまたは26pMの[125I]抗原を、目的のFabの段階希釈液と混合する。次いで、目的のFabを一晩インキュベートするが、インキュベーションをより長い期間(例えば、約65時間)続けて、平衡に達することを保証してもよい。その後、室温でのインキュベーション(例えば、1時間)のために混合物を捕捉プレートに移す。次いで、溶液を除去し、プレートを、PBS中の0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))で8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μL/ウェルのシンチラント(MICROSCINT-20(商標)、Packard)を添加し、プレートを10分間、TOPCOUNT(商標)ガンマカウンター(Packard)上で計数する。最大結合の20%以下をもたらす各Fabの濃度を、競合結合アッセイでの使用のために選択する。
【0167】
別の実施形態によると、Kdは、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.、Piscataway、NJ)を使用した表面プラズモン共鳴アッセイを使用して、25℃で、約10の応答ユニット(RU)で固定化抗原CM5チップを用いて測定される。簡潔には、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE,Inc.)を、供給業者の指示に従って、N-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。抗原を、pH4.8の10mMの酢酸ナトリウムによって、5μg/ml(約0.2μM)に希釈した後、5μl/分の流速でインジェクトし、カップリングされたタンパク質のおよそ10応答ユニット(RU)を達成する。抗原のインジェクション後、1Mのエタノールアミンをインジェクトして、未反応基をブロックする。キネティクス測定のために、Fab(0.78nM~500nM)の2倍段階希釈物(0.05%のポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤(PBST)を有するPBS中)を、25℃で、およそ25μL/分の流速でインジェクトする。会合速度(kon)および解離速度(koff)を、単純1対1ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を使用して、会合および解離センサグラムを同時にフィッティングすることによって、計算する。平衡解離定数(Kd)は、koff/kon比として算出される。例えば、Chenら、J.Mol.Biol.、293:865~881(1999)を参照されたい。上記の表面プラズモン共鳴アッセイによる会合速度が、106M-1s-1を超える場合、会合速度は、ストップトフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)または撹拌キュベットを有する8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定されるように、増加する抗原濃度の存在下、25℃で、PBS(pH7.2)中の20nM抗-抗原抗体(Fab形態)の蛍光発光強度(励起=295nm、発光=340nm、16nmバンドパス)の増加または減少を測定する蛍光消光技法を使用して決定することができる。
(i)抗原調製
【0168】
場合によっては、他の分子にコンジュゲートされる可溶性抗原またはその断片は、抗体を生成するための免疫原として使用され得る。受容体などの膜貫通分子に対しては、これらの断片(例えば、受容体の細胞外ドメイン)が、免疫原として使用され得る。代替的に、膜貫通分子を発現する細胞が、免疫原として使用され得る。このような細胞は、自然源(例えば、がん細胞株)由来であり得るか、または膜貫通分子を発現するように組換え技法によって形質転換された細胞であり得る。抗体の調製に有用な他の抗原およびその形態は、当業者には明らかであろう。
(ii)ある特定の抗体に基づく方法
【0169】
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連する抗原およびアジュバントの複数回の皮下(sc)または腹腔内(ip)注射によって、動物中で産生される。二官能性剤または誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介するコンジュゲーション)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2、またはR1N=C=NR(式中、RおよびR1は、異なるアルキル基である)を使用して、関連抗原を、免疫化される種において免疫原性であるタンパク質、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、または大豆トリプシン阻害剤にコンジュゲートさせることが有用であり得る。
【0170】
動物は、例えば、タンパク質またはコンジュゲート(ウサギまたはマウスの場合、それぞれ100μgまたは5μg)を、フロイントの完全アジュバント3容量と組み合わせ、溶液を複数の部位で皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲートまたは誘導体に対して免疫化される。1ヶ月後、動物を、複数の部位での皮下注射によって、フロイントの完全アジュバント中の元々の量の1/5~1/10のペプチドまたはコンジュゲートで追加免疫する。7~14日後、動物から採血し、血清を抗体価についてアッセイする。力価がプラトー状態になるまで、動物を追加免疫する。好ましくは、動物を、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なるタンパク質にコンジュゲートしたものおよび/または異なる架橋試薬によりコンジュゲートしたもので追加免疫する。コンジュゲートはまた、タンパク質融合物として組換え細胞培養で作製することもできる。ミョウバンなどの凝集剤も免疫応答を増強するために、好適に使用される。
【0171】
本開示のモノクローナル抗体は、Kohlerら、Nature、256:495(1975)によって最初に記載され、例えば、Hongoら、Hybridoma、14(3):253~260(1995)、Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、第2版、1988)にさらに記載されているハイブリドーマ法、ヒト-ヒトハイブリドーマについては、Hammerlingら、Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas563~681(Elsevier、N.Y.、1981)、およびNi、Xiandai Mianyixue26(4):265~268(2006)を用いて作製することができる。追加の方法としては、ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒト天然IgM抗体の産生について、例えば、米国特許第7,189,826号に記載の方法が挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)は、VollmersおよびBrandlein、Histology and Histopathology、20(3):927~937(2005)、ならびにVollmersおよびBrandlein、Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology、27(3):185~91(2005)に記載されている。所望のモノクローナル抗体が、ハイブリドーマから単離されると、それらをコードするポリヌクレオチドを、原核発現ベクターへとサブクローニングすることができ、本明細書に記載の方法のいずれかによって、原核宿主細胞中で発現させることで抗体を産生することができる。
(iii)ライブラリ由来抗体
【0172】
本開示の抗体を、コンビナトリアルライブラリを所望の活性(複数可)を有する抗体についてスクリーニングすることによって、単離することができる。例えば、実施例3に記載の方法などのファージ・ディスプレイ・ライブラリを作製し、かつ所望の結合特性を有する抗体についてかかるライブラリをスクリーニングするための様々な方法が当技術分野で公知である。追加の方法は、例えば、Hoogenboomら、Methods in Molecular Biology、178:1~37(O’Brienら編、Human Press、Totowa、NJ、2001)でレビューされ、例えば、McCaffertyら、Nature、348:552~554、Clacksonら、Nature、352:624~628(1991)、Marksら、J.Mol.Biol.、222:581~597(1992)、MarksおよびBradbury、Methods in Molecular Biology、248:161~175(Lo編、Human Press、Totowa、NJ、2003)、Sidhuら、J.Mol.Biol.、338(2):299~310(2004)、Leeら、J.Mol.Biol.、340(5):1073~1093(2004)、Fellouse、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、101(34):12467~12472(2004)、ならびにLeeら、J.Immunol.Methods、284(1~2):119~132(2004)でさらに説明されている。
【0173】
ある特定のファージディスプレイ法では、VHおよびVL遺伝子のレパートリは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別個にクローニングされ、ファージライブラリ中でランダムに再結合され、次いで、Winterら、Ann.Rev.Immunol.12:433~455(1994)に記載されているように抗原結合ファージのスクリーニングを行うことができる。ファージは、典型的には、一本鎖Fv(scFv)断片として、またはFab断片としてのいずれかで、抗体断片を提示する。免疫化源からのライブラリは、ハイブリドーマを構築する必要なく、免疫原に対する高親和性抗体を提供する。あるいは、ナイーブレパートリは、Griffithsら、EMBO J、12:725~734(1993)によって記載されているように、免疫化を行わずに、広範囲の非自己抗原および自己抗原にも対する抗体の単一供給源を提供するために、(例えば、ヒトから)クローン化することができる。最後に、ナイーブライブラリは、HoogenboomおよびWinter、J.Mol.Biol.227:381~388(1992)に記載されているように、高度に可変なCDR3領域をコードし、インビトロで再構成を達成するために、幹細胞から再構成されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダムな配列を含むPCRプライマーを使用して、合成的に作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリについて記載する特許公報としては、例えば:米国特許第5,750,373号、ならびに米国特許出願公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号、および同第2009/0002360号が挙げられる。
【0174】
ヒト抗体ライブラリから単離された抗体または抗体断片は、本明細書ではヒト抗体またはヒト抗体断片とみなされる。
(iv)キメラ、ヒト化、およびヒト抗体
【0175】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、キメラ抗体である。ある特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号、およびMorrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、81:6851~6855(1984)に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長類由来の可変領域)およびヒト定常領域を含む。さらなる例では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが、親抗体のそれから変更されている「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片を含む。
【0176】
ある特定の実施形態では、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、ヒトに対する免疫原性を低減させる一方で、親の非ヒト抗体の特異性および親和性を保持するようにヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、HVR、例えば、CDR(またはその一部)が非ヒト抗体由来であり、かつFR(またはその一部)がヒト抗体配列由来である、1つ以上の可変ドメインを含む。ヒト化抗体はまた、場合によっては、ヒト定常領域の少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体におけるいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を回復、または改善するように、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0177】
ヒト化抗体およびそれらを作製する方法は、例えば、AlmagroおよびFransson、Front.Biosci.13:1619~1633(2008)でレビューされ、例えば、Riechmannら、Nature332:323~329(1988)、Queenら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA86:10029~10033(1989)、米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、および同第7,087,409号、Kashmiriら、Methods36:25~34(2005)(SDR(a-CDR)グラフトの記載)、Padlan、Mol.Immunol.28:489~498(1991)(「リサーフェシング」の記載)、Dall’Acquaら、Methods36:43~60(2005)(「FRシャッフリング」の記載)、ならびにOsbournら、Methods36:61~68(2005)およびKlimkaら、Br.J.Cancer、83:252~260(2000)(FRシャッフリングの「ガイド付き選択」アプローチの記載)にさらに記載されている。
【0178】
ヒト化のために使用され得るヒトフレームワーク領域としては、限定されないが、「ベストフィット」法を使用して選択されたフレームワーク領域(例えば、Simsら、J.Immunol.、151:2296(1993)を参照)、軽鎖または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:4285(1992)、およびPrestaら、J.Immunol.、151:2623(1993)を参照)、ヒト成熟(体細胞性変異)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞フレームワーク領域(例えば、AlmagroおよびFransson、Front.Biosci.、13:1619~1633(2008)を参照)、ならびにFRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Bacaら、J.Biol.Chem.、272:10678~10684(1997)およびRosokら、J.Biol.Chem.、271:22611~22618(1996)を参照)が挙げられる。
【0179】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当技術分野で公知の様々な技法を使用して産生され得る。ヒト抗体は、一般に、van Dijkおよびvan de Winkel、Curr.Opin.Pharmacol.5:368~74(2001)およびLonberg、Curr.Opin.Immunol.20:450~459(2008)に記載されている。ヒト抗体は、例えば、かつ非限定的に、本明細書に記載の方法のいずれかによって、原核宿主細胞中で原核発現ベクターから発現させることによって作製することができる。
【0180】
ヒト抗体はまた、ヒト由来のファージ・ディスプレイ・ライブラリから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって生成することができる。次いで、かかる可変ドメイン配列は、所望のヒト定常ドメインと組み合わせられ得る。抗体ライブラリからヒト抗体を選択するための技法を、以下に記載する。
(v)抗体断片
【0181】
抗体断片は、酵素消化などの従来の手段または組換え技法によって生成され得る。ある特定の状況下では、全抗体ではなく抗体断片を使用する利点がある。より小さいサイズの断片により、迅速なクリアランスが可能になり、固形腫瘍へのアクセスの改善がもたらされ得る。ある特定の抗体断片のレビューについては、Hudsonら(2003)Nat.Med.9:129~134を参照されたい。
【0182】
抗体断片を産生するために、様々な技法が開発されている。従来、これらの断片は、インタクトな抗体のタンパク分解を介して得られていた(例えば、Morimotoら、Journal of Biochemical and Biophysical Methods24:107~117(1992)、およびBrennanら、Science、229:81(1985)を参照されたい)。しかしながら、これらの断片は、現在、組換え宿主細胞によって直接産生することができる。Fab、Fv、およびScFv抗体断片はすべて、大腸菌中で発現され、大腸菌から分泌され得るため、これらの断片の容易な大量生産が可能である。抗体断片を、上記の抗体ファージライブラリから単離することができる。代替的に、Fab’-SH断片は、大腸菌から直接回収され、化学的にカップリングして、F(ab’)2断片を形成することができる(Carterら、Bio/Technology10:163~167(1992))。別のアプローチによると、F(ab’)2断片を、組換え宿主細胞培養物から直接単離することができる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、インビボ半減期が増加した、FabおよびF(ab’)2断片については、米国特許第5,869,046号に記載されている。抗体断片を産生するための他の技法は、当業者に明らかであろう。ある特定の実施形態では、抗体は、一本鎖Fv断片(scFv)である。WO93/16185、米国特許第5,571,894号、および同第5,587,458号を参照されたい。FvおよびscFvは、定常領域を欠くインタクトな結合部位を有する唯一の種であり、それゆえに、それらは、インビボでの使用中の非特異的結合の低減に好適であり得る。scFv融合タンパク質を構築して、scFvのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかでのエフェクタータンパク質の融合をもたらすことができる。上記のAntibody Engineering、Borrebaeck編を参照されたい。抗体断片はまた、例えば、米国特許第5,641,870号に記載されているように、「直鎖状抗体」であり得る。このような直鎖状抗体は、単一特異性または二重特異性であり得る。
(vi)多重特異性抗体
【0183】
多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有し、これらのエピトープは、通常、異なる抗原由来である。このような分子は、通常、2つの異なるエピトープ(すなわち、二重特異性抗体、BsAb)のみに結合するが、三重特異性抗体などのさらなる特異性を有する抗体は、本明細書で使用される場合、この表現に包含される。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)として調製され得る。
【0184】
二重特異性抗体の作製方法は、当技術分野で公知である。全長二重特異性抗体の従来の産生は、2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の共発現に基づき、これらの2つの鎖は、異なる特異性を有する(Millsteinら、Nature、305:537~539(1983))。免疫グロブリン重鎖および軽鎖のランダムな分類のため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10個の異なる抗体分子の混合物を産生する可能性があり、これらのうちの1つのみが正しい二重特異性構造を有する。通常、アフィニティクロマトグラフィ工程によって行われる、この正しい分子の精製は、いくらか煩わしく、産物収率は低い。同様の手順は、WO93/08829、およびTrauneckerら、EMBO J.、10:3655~3659(1991)に記載されている。
【0185】
二重特異性抗体を作製するための当技術分野で公知の1つのアプローチは、「ノブ・イントゥー・ホール」または「突起イントゥーキャビティ」アプローチである(例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい)。このアプローチでは、2つの免疫グロブリンポリペプチド(例えば、重鎖ポリペプチド)がそれぞれ、界面を含む。一方の免疫グロブリンポリペプチドの界面が、他方の免疫グロブリンポリペプチドの対応する界面と相互作用し、それによって、2つの免疫グロブリンポリペプチドの会合を可能にする。これらの界面を、一方の免疫グロブリンポリペプチドの界面に位置する「ノブ」または「突起」(これらの用語は、本明細書で互換的に使用され得る)が、他方の免疫グロブリンポリペプチドの界面に位置する「ホール」または「キャビティ」(これらの用語は、本明細書で互換的に使用され得る)に対応するように操作することができる。いくつかの実施形態では、ホールは、ノブと同一または同様のサイズのものであり、2つの界面が相互作用するときに、一方の界面のノブが他方の界面の対応するホール内に位置付け可能であるように好適に位置付けられる。理論に拘束されることを望むものではないが、これは、ヘテロ多量体を安定させ、かつ他の種、例えば、ホモ多量体よりもヘテロ多量体の形成に適していると考えられる。いくつかの実施形態では、このアプローチを使用して、2つの異なる免疫グロブリンポリペプチドのヘテロ多量体化を促進し、異なるエピトープに対する結合特異性を有する2つの免疫グロブリンポリペプチドを含む二重特異性抗体を作製することができる。
【0186】
いくつかの実施形態では、ノブは、小さいアミノ酸側鎖をより大きい側鎖で置き換えることによって構築され得る。いくつかの実施形態では、ホールは、大きいアミノ酸側鎖をより小さい側鎖で置き換えることによって構築され得る。ノブまたはホールは、元々の界面に存在し得るか、または合成的に導入され得る。例えば、ノブまたはホールは、界面をコードする核酸配列を改変し、少なくとも1つの「元々の」アミノ酸残基を少なくとも1つの「移入」アミノ酸残基で置き換えることによって合成的に導入され得る。核酸配列を改変するための方法としては、当技術分野で周知の標準的な分子生物学的技法が挙げられ得る。様々なアミノ酸残基の側鎖体積を、以下の表に示す。いくつかの実施形態では、元々の残基は、小さい側鎖体積(例えば、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グリシン、セリン、トレオニン、またはバリン)を有し、ノブを形成するための移入残基は、天然に存在するアミノ酸であり、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンを含み得る。いくつかの実施形態では、元々の残基は、大きい側鎖体積(例えば、アルギニン、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン)を有し、ホールを形成するための移入残基は、天然に存在するアミノ酸であり、アラニン、セリン、トレオニン、およびバリンを含み得る。
aアミノ酸の分子量は、水の分子量を差し引いたものである。Handbook of Chemistry and Physics、第43版、Cleveland、Chemical Rubber Publishing Co.、1961からの値。
bA.A.Zamyatnin、Prog.Biophys.Mol.Biol.24:107~123、1972からの値。
cC.Chothia、J.Mol.Biol.105:1~14、1975からの値。アクセス可能な表面積は、この参考文献の
図6~
図20に定義されている。
【0187】
いくつかの実施形態では、ノブまたはホールを形成するための元々の残基は、ヘテロ多量体の三次元構造に基づき、特定される。当技術分野で公知の三次元構造を得るための技法としては、X線結晶学およびNMRが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、界面は、免疫グロブリン定常ドメインのCH3ドメインである。これらの実施形態では、ヒトIgG
1のCH3/CH3界面は、4つの逆平行β鎖上に位置する各ドメイン上の16残基が関与する。理論に拘束されることを望むものではないが、変異した残基は、好ましくは、ノブがパートナーCH3ドメイン中の補償ホールではなく、周囲の溶媒によって収容され得るリスクを最小限に抑えるように、2つの中央の逆平行β鎖上に位置する。いくつかの実施形態では、2つの免疫グロブリンポリペプチド中の対応するノブおよびホールを形成する変異は、以下の表に提供される1つ以上の対に対応する。
変異は、元々の残基、続いて、Kabat付番システムを使用した位置、次いで、移入残基によって表されている(すべての残基は一文字のアミノ酸コードで示されている)。複数の変異は、コロンで区切られている。
【0188】
いくつかの実施形態では、免疫グロブリンポリペプチドは、上の表2に列記される1つ以上のアミノ酸置換を含むCH3ドメインを含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、表2の左側の列に列記される1つ以上のアミノ酸置換を含むCH3ドメインを含む第1の免疫グロブリンポリペプチドと、表2の右側の列に列記される1つ以上の対応するアミノ酸置換を含むCH3ドメインを含む第2の免疫グロブリンポリペプチドとを含む。ノブおよびホール形成対の非限定的な例として、いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、T366W変異を含むCH3ドメインを含む第1の免疫グロブリンポリペプチドと、T366S、L368A、およびY407V変異を含むCH3ドメインを含む第2の免疫グロブリンポリペプチドとを含む。
【0189】
各半抗体は、米国特許第7,642,228号に記載されているように、重鎖に操作されたノブ(突起)またはホール(キャビティ)のいずれかを有することができる。簡潔には、CH3ノブ変異体を最初に生成することができる。次いで、パートナーCH3ドメイン上のノブに近接している残基366、368、および407をランダム化することによって、CH3ホール変異体のライブラリを作製することができる。ある特定の実施形態では、ノブ変異はT366Wを含み、ホール変異は、IgG1またはIgG4骨格中にT366S、L368A、およびY407Vを含む。他の免疫グロブリンアイソタイプにおける同等の変異は、当業者によって作製され得る。さらに、当業者は、二重特異性抗体に使用される2つの半抗体が同じアイソタイプであることが好ましいことを容易に理解するであろう。
【0190】
多重特異性(例えば、二重特異性)抗体を産生するための例示的かつ非限定的な技法が、セクションIIIで提供される。
【0191】
2つを超えるの結合価を有する抗体が企図される。例えば、三重特異性抗体が調製され得る。Tuftら、J.Immunol.147:60(1991)。
【0192】
いくつかの実施形態では、2鎖タンパク質は、多重特異性抗体または二重特異性抗体の一部である。多重特異性抗体または二重特異性抗体は、本開示の2つ以上の一価抗体を含有する。
【0193】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体の第1の抗原結合ドメインは、1つ以上の重鎖定常ドメインを含み、該1つ以上の重鎖定常ドメインは、第1のCH1(CH1
1)ドメイン、第1のCH2(CH2
1)ドメイン、第1のCH3(CH3
1)ドメインから選択され、二重特異性抗体の第2の抗原結合ドメインは、1つ以上の重鎖定常ドメインを含み、該1つ以上の重鎖定常ドメインは、第2のCH1(CH1
2)ドメイン、第2のCH2(CH2
2)ドメイン、および第2のCH3(CH3
2)ドメインから選択される。いくつかの実施形態では、第1の抗原結合ドメインの1つ以上の重鎖定常ドメインのうちの少なくとも1つは、第2の抗原結合ドメインの別の重鎖定常ドメインと対形成される。いくつかの実施形態では、CH3
1およびCH3
2ドメインはそれぞれ、突起またはキャビティを含み、CH3
1ドメインにおける突起またはキャビティは、CH3
2ドメインにおけるキャビティまたは突起にそれぞれ位置決め可能である。いくつかの実施形態では、CH3
1およびCH3
2ドメインは、前記突起とキャビティとの間の界面で会合する。CH3
1およびCH3
2ドメインにおけるアミノ酸置換の例示的なセットを、本明細書の表2に示す。いくつかの実施形態では、CH2
1およびCH2
2ドメインはそれぞれ、突起またはキャビティを含み、CH2
1ドメインにおける突起またはキャビティは、CH2
2ドメインにおけるキャビティまたは突起にそれぞれ位置決め可能である。いくつかの実施形態では、CH2
1およびCH2
2ドメインは、前記突起とキャビティとの間の界面で会合する。いくつかの実施形態では、IgGのCH3
1および/またはCH3
2ドメインは、米国特許第8,216,805号の
図5に示されているアミノ酸付番による347、349、350、351、366、368、370、392、394、395、398、399、405、407、および409からなる群から選択される残基で、1つ以上のアミノ酸置換を含有する。いくつかの実施形態では、突起は、アルギニン(R)残基、フェニルアラニン(F)残基、チロシン(Y)残基、およびトリプトファン(W)残基からなる群から選択される、1つ以上の導入された残基を含む。いくつかの実施形態では、キャビティは、アラニン(A)残基、セリン(S)残基、トレオニン(T)残基、およびバリン(V)残基からなる群から選択される、1つ以上の導入された残基を含む。いくつかの実施形態では、CH3および/またはCH2ドメインは、IgG(例えば、IgG1サブタイプ、IgG2サブタイプ、IgG2Aサブタイプ、IgG2Bサブタイプ、IgG3サブタイプ、またはIgG4サブタイプ)に由来する。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体の一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換T366Yを含み、もう一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換Y407Tを含む。いくつかの実施形態では、一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換T366Wを含み、もう一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換Y407Aを含む。いくつかの実施形態では、一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換F405Aを含み、もう一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換T394Wを含む。いくつかの実施形態では、一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換T366YおよびF405Aを含み、もう一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換T394WおよびY407Tを含む。いくつかの実施形態では、一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換T366WおよびF405Wを含み、もう一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換T394SおよびY407Aを含む。いくつかの実施形態では、一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換F405WおよびY407Aを含み、もう一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換T366WおよびT394Sを含む。いくつかの実施形態では、一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換F405Wを含み、もう一方のCH3ドメインは、アミノ酸置換T394Sを含む。変異は、元々の残基、続いて、Kabat付番システムを使用した位置、次いで、移入残基によって表されている。米国特許第8,216,805号の
図5における付番も参照されたい。
(vii)単一ドメイン抗体
【0194】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、単一ドメイン抗体である。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべてもしくは一部、または軽鎖可変ドメインのすべてもしくは一部を含む、単一のポリペプチド鎖である。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.、Waltham、Mass.、例えば、米国特許第6,248,516 B1号を参照されたい)。一実施形態では、単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインのすべてまたは一部からなる。
(viii)抗体バリアント
【0195】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗体のアミノ酸配列修飾(複数可)が企図される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を改善させることが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な変化を導入することによって、またはペプチド合成によって調製することができる。そのような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失、および/または挿入、および/または置換を含む。欠失、挿入、および置換の任意の組合せにより、最終構築物に到達することができるが、但し、最終構築物が所望の特徴を有することを条件とする。主題の抗体のアミノ酸配列が作製されるときに、アミノ酸改変がその配列に導入されてもよい。
(ix)置換、挿入、および欠失バリアント
【0196】
ある特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。置換による変異導入のための目的の部位には、HVRおよびFRが含まれる。保存的置換は、「保存的置換」という見出しの下で表1に示される。より実質的な変化は、表1において、「例示的な置換」という見出しの下に提供され、またアミノ酸側鎖クラスを参照して以下にさらに記載されている通りである。目的の抗体中にアミノ酸置換を導入することができ、その産物を、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、または改善されたADCCもしくはCDCについてスクリーニングする。
【0197】
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従ってグループ化され得る。
a.疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
b.中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、
c.酸性:Asp、Glu、
d.塩基性:His、Lys、Arg、
e.鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro、
f.芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0198】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴うことになる。
【0199】
一種の置換バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基の置換を伴う。一般に、さらなる研究のために選択される、得られたバリアント(複数可)は、親抗体と比較して、ある特定の生物学的特性(例えば、増加した親和性、低減した免疫原性)における修飾(例えば、改善)を有し、かつ/または実質的に保持された親抗体のある特定の生物学的特性を有することになる。例示的な置換バリアントは、親和性成熟した抗体であり、例えば、本明細書に記載のファージディスプレイに基づく親和性成熟技法などを使用して、簡便に作成されてもよい。簡潔には、1つ以上のHVR残基が変異を受け、バリアント抗体がファージにディスプレイされ、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0200】
改変(例えば、置換)をHVRに行い、例えば、抗体親和性を改善することができる。このような改変は、HVRの「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセスの間に高頻度で変異が起こるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury、Methods Mol.Biol.207:179~196(2008)を参照)、および/またはSDR(a-CDR)において行われてもよく、得られたバリアントVHまたはVLが、結合親和性について試験される。二次ライブラリからの構築と再選択による親和性成熟化は、例えば、Hoogenboomら、Methods in Molecular Biology178:1~37(O’Brienら編、Human Press、Totowa、NJ、(2001))に記載されている。親和性成熟のいくつかの実施形態では、多様な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性変異導入)のいずれかによって、成熟のために選択される可変遺伝子に多様性が導入される。次いで、二次ライブラリが作製される。次いで、このライブラリをスクリーニングして、所望の親和性を有する抗体バリアントを同定する。多様性を導入するための別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6個の残基)をランダム化する、HVR指向性アプローチを含む。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異導入またはモデリングを使用して、具体的に同定され得る。特に、CDR-H3およびCDR-L3が、標的にされることが多い。
【0201】
ある特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、このような改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低下させない限り、1つ以上のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的改変(例えば、本明細書で提供される保存的置換)が、HVR中になされてもよい。このような改変は、HVR「ホットスポット」またはSDR外であってもよい。上に提供されるバリアントVHおよびVL配列のある特定の実施形態では、各HVRは、改変されていないか、または1つ、2つ、もしくは3つ以下のアミノ酸置換を含有するかのいずれかである。
【0202】
変異導入の標的となり得る抗体の残基または領域を同定するための有用な方法は、CunninghamおよびWells(1989)Science、244:1081~1085に記載されているように「アラニンスキャニング変異導入」と呼ばれる。この方法では、一残基または一群の標的残基(例えば、arg、asp、his、lys、およびgluなどの荷電残基)が同定され、中性または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えられて、抗体の抗原との相互作用が影響を受けたかどうかが判定される。さらなる置換が、最初の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸の位置に導入されてもよい。あるいは、またはさらに、抗体と抗原との間の接点を同定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。このような接触残基および隣接残基は、置換の候補として標的とされるか、または除去されてもよい。バリアントは、所望の特性を有するかどうかを判定するためにスクリーニングされてもよい。
【0203】
アミノ酸配列挿入としては、1個の残基から100個以上の残基を含むポリペプチドまでの長さ範囲のアミノ末端および/またはカルボキシル末端の融合、ならびに1個または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入型バリアントとしては、抗体の血清半減期を増加させる酵素(例えば、ADEPTのための)またはポリペプチドへの抗体のN末端またはC末端の融合が挙げられる。
(x)Fc領域バリアント
【0204】
ある特定の実施形態では、1つ以上のアミノ酸修飾が、本明細書で提供される抗体のFc領域に導入され、それによって、Fc領域バリアントが生成され得る。Fc領域バリアントは、1つ以上のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含む、ヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0205】
ある特定の実施形態では、本開示は、すべてではないが、いくつかのエフェクター機能を有することにより、インビボでの抗体の半減期は重要ではあるが、特定のエフェクター機能(補体およびADCCなど)が不要または有害である用途に望ましい候補となる抗体変異体を企図する。インビトロおよび/またはインビボの細胞毒性アッセイを行い、CDCおよび/またはADCC活性の低減/消失を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行い、抗体がFcγR結合を欠く(ゆえに、ADCC活性を欠く可能性がある)が、FcRn結合能力を保持することを保証することができる。ADCCの媒介のための主要な細胞であるNK細胞は、Fc(RIIIのみを発現する一方で、単球は、F(RI、Fc(RII、およびFc(RIIIを発現する。造血細胞におけるFcRの発現については、RavetchおよびKinet、Annu.Rev.Immunol.9:457~492(1991)の464頁の表3にまとめてある。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.らProc.Nat’l Acad.Sci.USA83:7059~7063(1986)を参照)、およびHellstrom,Iら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA82:1499~1502(1985);5,821,337(Bruggemann,M.ら、J.Exp.Med.166:1351~1361(1987)を参照)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法が用いられ得る(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞毒性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View、CA)、およびCytoTox96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega、Madison、WI)を参照されたい)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、またはさらに、目的の分子のADCC活性を、例えば、Clynesら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA、95:652~656(1998)に開示されているように、動物モデルにおいて、インビボで評価することができる。C1q結合アッセイを実施して、抗体がC1qに結合することができないために、CDC活性を欠くことを確認してもよい。例えば、WO2006/029879およびWO2005/100402における、C1qおよびC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行うことができる(例えば、Gazzano-Santoroら、J.Immunol.Methods202:163(1996)、Cragg,M.S.ら、Blood101:1045~1052(2003)、ならびにCragg,M.S.およびM.J.Glennie、Blood103:2738~2743(2004)を参照されたい)、FcRn結合およびインビボクリアランス/半減期の判定はまた、当技術分野で公知の方法を使用して行うことができる(例えば、Petkova,S.B.ら、Int’l.Immunol.18(12):1759~1769(2006)を参照されたい)。
【0206】
低減したエフェクター機能を有する抗体としては、Fc領域の残基238、265、269、270、297、327、および329のうちの1つ以上の置換を有する抗体が挙げられる(米国特許第6,737,056号)。このようなFc変異体としては、アミノ酸265、269、270、297、および327位のうちの2つ以上で置換を有するFc変異体が挙げられ、残基265および297がアラニンに置換されている、いわゆる「DANA」Fc変異体を含む(米国特許第7,332,581号)。
【0207】
FcRへの結合が改善または減少した特定の抗体バリアントが記載されている。(例えば、米国特許第6,737,056号、WO2004/056312、およびShieldsら、J.Biol.Chem.9(2):6591~6604(2001)を参照されたい。)
【0208】
ある特定の実施形態では、抗体バリアントは、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298、333、および/または334位(残基のEU付番)での置換を有するFc領域を含む。例示的な実施形態では、抗体は、そのFc領域に以下のアミノ酸置換:S298A、E333A、およびK334Aを含む。
【0209】
いくつかの実施形態では、例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642、およびIdusogieら、J.Immunol.、164:4178~4184(2000)に記載されているように、変化した(すなわち、改善されたかまたは減少したかのいずれか)C1q結合および/または補体依存性細胞毒性(CDC)をもたらす改変が、Fc領域において行われる。
【0210】
半減期が増加し、母体のIgGの胎児への移行に関与する新生児Fc受容体(FcRn)への結合が改善された抗体(Guyerら、J.Immunol.117:587(1976)およびKimら、J.Immunol.24:249(1994))は、US2005/0014934A1(Hintonら)に記載されている。これらの抗体は、Fc領域の、FcRnへの結合を改善する1つ以上の置換を有するFc領域を含む。このようなFcバリアントは、Fc領域残基238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434のうちの1つ以上で置換(例えば、Fc領域残基434の置換(米国特許第7,371,826号))を伴うバリアントを含む。Fc領域バリアントの他の例に関して、DuncanおよびWinter、Nature322:738~40(1988)、米国特許第5,648,260号、米国特許第5,624,821号、およびWO94/29351も参照されたい。
(xi)抗体誘導体
【0211】
本開示の抗体は、当技術分野で公知であり、かつ容易に入手可能な追加の非タンパク質性部分を含むように、さらに修飾され得る。ある特定の実施形態では、抗体の誘導体化に好適な部分は、水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、およびデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中での安定性のため、製造時に有利であり得る。ポリマーは、任意の分子量を有していてもよく、分岐していても、分岐していなくてもよい。抗体に結合したポリマーの数は異なってもよく、2つ以上のポリマーが結合している場合、それらは、同じ分子であっても、異なる分子であってもよい。一般に、誘導体化のために使用されるポリマーの数および/または種類は、改善される抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が規定の条件下で、ある治療に使用されるかどうかなどを含む検討事項に基づき決定することができるが、これらに限定されるものではない。
III.産生方法
【0212】
本開示の原核宿主細胞において、2つの鎖(例えば、2鎖ポリペプチド)を含むポリペプチドを産生する方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、方法は、本開示の宿主細胞を、ポリペプチドの2つの鎖の発現に適した条件下の培養培地中で、該ポリペプチドの該2つの鎖を発現するように培養し、それによって、発現すると、該2つの鎖は折り畳まれ、組み立てられて、該宿主細胞中で生物学的に活性なポリペプチドを形成すること、および該宿主細胞から該生物学的に活性なポリペプチドを回収することを含む。
【0213】
本開示の宿主細胞(例えば、セクションIIに記載されているように)のいずれも、本開示の方法において使用を見出すことができる。例えば、いくつかの実施形態では、宿主細胞は、本開示の1つ以上の染色体外ポリヌクレオチドおよび本開示の1つ以上の翻訳単位(例えば、プロモータに作動可能に連結され、非天然の組合せで宿主細胞染色体上に存在する)を含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、ポリペプチドの第1の鎖をコードする第1の翻訳単位を含む第1のポリヌクレオチド(染色体外ポリヌクレオチドの一部)、ポリペプチドの第2の鎖をコードする第2の翻訳単位を含む第2のポリヌクレオチド(染色体外ポリヌクレオチドの一部)、およびシャペロンタンパク質(例えば、本開示のペプチジル-プロリルイソメラーゼまたはタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼ)をコードする第3の翻訳単位を含む第3のポリヌクレオチドであって、非天然の組合せで本開示のプロモータと作動可能な組合せにある、第3のポリヌクレオチド(宿主細胞染色体の一部)を含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、ポリペプチドの第1の鎖をコードする第1の翻訳単位を含む第1のポリヌクレオチド(染色体外ポリヌクレオチドの一部)、ポリペプチドの第2の鎖をコードする第2の翻訳単位を含む第2のポリヌクレオチド(染色体外ポリヌクレオチドの一部)、本開示のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼをコードする第3の翻訳単位を含む第3のポリヌクレオチド(宿主細胞染色体の一部)であって、非天然の組合せで本開示のプロモータと作動可能な組合せにある、第3のポリヌクレオチド、および本開示のペプチジル-プロリルイソメラーゼをコードする第4の翻訳単位を含む第4のポリヌクレオチド(宿主細胞染色体の一部)であって、非天然の組合せで本開示のプロモータと作動可能な組合せにある、第4のポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、ポリペプチドの第1の鎖をコードする第1の翻訳単位を含む第1のポリヌクレオチド(染色体外ポリヌクレオチドの一部)、ポリペプチドの第2の鎖をコードする第2の翻訳単位を含む第2のポリヌクレオチド(染色体外ポリヌクレオチドの一部)、本開示のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼをコードする第3の翻訳単位を含む第3のポリヌクレオチドであって、非天然の組合せで本開示のプロモータと作動可能な組合せにある、第3のポリヌクレオチド(宿主細胞染色体の一部)、本開示のペプチジル-プロリルイソメラーゼをコードする第4の翻訳単位を含む第4のポリヌクレオチドであって、非天然の組合せで本開示のプロモータと作動可能に組合せにある、第4のポリヌクレオチド(宿主細胞染色体の一部)、および本開示の第2のタンパク質ジスルフィドオキシドレダクターゼをコードする第5の翻訳単位であって、非天然の組合せで本開示のプロモータと作動可能な組合せにある、第5の翻訳単位を含む。上記実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、宿主細胞は、2鎖タンパク質の第3の鎖をコードする翻訳単位(染色体外ポリヌクレオチドの一部)をさらに含む。
【0214】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、ポリペプチドの2つの鎖を発現するように培養され、発現すると、該2つの鎖は折り畳まれ、組み立てられて、宿主細胞中で生物学的に活性なポリペプチドを形成する。本明細書で使用される場合、2つの鎖の折畳みおよび組立ては、適切な3次元の2鎖タンパク質立体構造、2鎖タンパク質組立て、またはその両方の最終的な適合を促進する、任意またはすべての工程を指し得る。折畳みおよび組立ては、各鎖をその適切な立体構造および折畳みに、折り畳むことおよび組み立てることを指してもよく、または2つのタンパク質鎖の分子間連結によって創出される複合体の折畳みおよび組立てを指してもよい。同様に、各鎖は、折り畳まれ、組み立てられて生物学的に活性なポリペプチドを形成してもよく、または2つのタンパク質鎖の分子間連結によって創出される複合体は、概して、折り畳まれ、組み立てられて生物学的に活性なポリペプチドを形成し得る。
【0215】
生物学的に活性なポリペプチドは、ポリペプチドに起因する機能を実行することができる任意のポリペプチドを指し得る。生物学的に活性なポリペプチドの機能としては、適切な折畳みまたは組立て、別の高分子との結合または他の相互作用、および酵素活性が挙げられるが、これらに限定されない。例示を目的として、生物学的に活性な抗体は、抗体に起因する少なくとも1つの機能を実行することができる抗体を指してもよく、該機能としては、本明細書でより詳述するように、エピトープへの結合または抗体Fc領域の特性の保有が挙げられるが、これらに限定されない。
【0216】
抗体は、組換え方法を使用して産生され得る。抗抗原抗体の組換え体産生について、抗体をコードする核酸が単離され、さらなるクローニング(DNAの増幅)または発現のために複製可能なベクターに挿入される。抗体をコードするDNAは、容易に単離され、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用して)配列決定され得る。多くのベクターが利用可能である。ベクターの成分には、一般に、シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモータ、および転写終結配列のうちの1つ以上が含まれるが、これらに限定されない(例えば、上に記載の通り)。
多重特異性(例えば、二重特異性)抗体の産生
【0217】
本開示のある特定の態様は、二重特異性抗体(例えば、第1の抗原に結合することができる第1の半抗体および第2の抗原に結合することができる第2の半抗体を含み、該第1および第2の抗原は、場合によっては、異なる)を産生する方法に関する。いくつかの実施形態では、方法は、本明細書に記載の第1の半抗体を産生することであって、該第1の半抗体が、本開示の翻訳単位(例えば、1つ以上の染色体外ポリヌクレオチドの一部)によってコードされる重鎖および軽鎖を含む、第1の半抗体を産生することと、本明細書に記載の第2の半抗体を産生することであって、該第2の半抗体が、本開示の翻訳単位(例えば、1つ以上の染色体外ポリヌクレオチドの一部)によってコードされる重鎖および軽鎖を含む、第2の半抗体を産生することとを含む。いくつかの実施形態では、第1および第2の半抗体の一方は、本開示の少なくとも1つのノブ形成変異を含み、第1および第2の半抗体の他方は、本開示の少なくとも1つのホール形成変異を含む。いくつかの実施形態では、方法は、還元条件下で、第1の半抗体を第2の半抗体と組み合わせて、二重特異性抗体を生成することをさらに含む。半抗体産生および二重特異性抗体組立てのための例示的な方法が、下記に提供される。
【0218】
1つ以上の対応するノブまたはホール形成変異を有する、修飾された免疫グロブリンポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、当技術分野で公知の標準的な組換え技法および細胞系を使用して、発現および精製することができる。例えば、米国特許第5,731,168号、同第5,807,706号、同第5,821,333号、同第7,642,228号、同第7,695,936号、同第8,216,805号、米国特許出願公開第2013/0089553号、およびSpiessら、Nature Biotechnology31:753~758、2013を参照されたい。修飾された免疫グロブリンポリペプチドは、大腸菌などの原核宿主細胞を使用して産生されてもよい。対応するノブおよびホールを持つ免疫グロブリンポリペプチドは、共培養下で、宿主細胞中で発現され、ヘテロ多量体として一緒に精製され得るか、または単一培養下で発現され、別個に精製され、インビトロで組立てられ得る。いくつかの実施形態では、細菌宿主細胞の2つの株(一方はノブを有する免疫グロブリンポリペプチドを発現し、他方はホールを有する免疫グロブリンポリペプチドを発現する)は、当技術分野で公知の標準的な細菌培養技法を使用して共培養される。いくつかの実施形態では、2つの株は、例えば、培養下で等しい発現レベルを達成するように、特定の比率で混合され得る。いくつかの実施形態では、2つの株は、50:50、60:40、または70:30の比率で混合され得る。ポリペプチドが発現した後、細胞が一緒に溶解され得、タンパク質が抽出され得る。ホモ多量体種対ヘテロ多量体種の存在量の測定を可能にする、当技術分野で公知の標準的な技法としては、サイズ排除クロマトグラフィが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、各修飾された免疫グロブリンポリペプチドは、標準的な組換え技法を使用して、別個に発現され、回収され、インビトロで一緒に組立てられ得る。以下により詳細に記載されているように、組立ては、例えば、各修飾された免疫グロブリンポリペプチドを精製し、それらを等しい質量で混合および一緒にインキュベートし、ジスルフィドを還元し(例えば、ジチオスレイトールで処理することによって)、濃縮し、ポリペプチドを再酸化することによって達成され得る。形成された二重特異性抗体は、陽イオン交換クロマトグラフィを含む標準的な技法を使用して精製することができ、サイズ排除クロマトグラフィを含む標準的な技法を使用して測定することができる。これらの方法のより詳細な説明については、Speissら、Nat Biotechnol31:753~8、2013を参照されたい。
【0219】
ノブまたはホール変異のいずれかを含有する半抗体は、細菌宿主細胞(例えば、大腸菌)において、重鎖および軽鎖構築物を発現させることによって、別々の培養物中で生成される。各半抗体を、プロテインAアフィニティクロマトグラフィによって、別個に精製することができる。ノブおよびホール半抗体からの清澄化された細胞抽出物を、HiTrap MABSELECT SURE(商標)カラムによって精製することができる。異なる特異性を有するプロテインA精製半抗体は、還元剤の存在下で、インビトロの酸化還元反応において、二重特異性抗体を形成するように組み立てられ得る。
【0220】
任意の適切な方法を使用して、所望の還元条件を調製することができる。例えば、所望の還元条件は、還元化剤/還元剤を反応物(本発明の組立て混合物など)に添加することによって調製することができる。好適な還元化剤には、これらに限定されないが、ジチオスレイトール(DTT)、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、チオグリコール酸、アスコルビン酸、チオール酢酸、グルタチオン(GSH)、β-メルカプトエチルアミン、システイン/シスチン、GSH/グルタチオンジスルフィド(GSSG)、システアミン/シスタミン、グリシルシステイン、およびβ-メルカプトエタノール、好ましくはGSHが含まれる。ある特定の特定の実施形態では、還元化剤は、GSH、β-メルカプトエチルアミン、システイン/シスチン、GSH/GSSG、システアミン/シスタミン、グリシルシステイン、およびβ-メルカプトエタノール、好ましくはGSHを含むが、これらに限定されない、弱い還元化剤である。ある特定の好ましい実施形態では、還元化剤はGSHである。ある特定の実施形態では、還元化剤は、DTTではない。反応において所望の還元条件を達成するために、適切な濃度および適切な実験条件下で適切な還元化剤を選択することは、当業者の能力の範囲内である。例えば、20oCで10g/Lの二重特異性抗体タンパク質濃度を有する溶液中の10mMのL-還元型グルタチオンは、約-400mVの開始酸化還元電位をもたらす。例えば、組立て混合物に添加されたグルタチオンは、ノブ-イントゥー-ホール二重特異性組立てに有利な弱還元条件を創出する。BMEA(β-メルカプトエチルアミン)などの同様のクラスの他の還元化剤も、同様の効果を有し得る。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、WO2013/055958を参照されたい。反応の還元条件は、当技術分野で公知の任意の適切な方法を使用して、推定および測定することができる。例えば、レサズリン指示薬(還元条件で青色から無色への変色)を用いて、測定することができる。より正確な測定のために、酸化還元電位計(BROADLEY JAMES(登録商標)製のORP電極など)を使用することができる。
【0221】
ある特定の特定の実施形態では、還元条件は弱還元条件である。本明細書で使用される「弱還元化剤」または「弱還元条件」という用語は、25°Cで負の酸化電位を有する還元剤によって調製される還元剤または還元条件を指す。還元化剤の酸化電位は、pHが7~9の間であり、温度が15°C~39°Cの間である場合、好ましくは-50~-600mVの間、-100~-600mVの間、-200~-600mVの間、-100~-500mVの間、-150~-300mVの間、より好ましくは約-300~-500mVの間、最も好ましくは約-400mVである。当業者は、所望の還元条件を調製するために、適切な還元化剤を選択することができるであろう。当業者は、強力な還元化剤、すなわち、同じ濃度、pH、および温度で上述の還元化剤よりも負の酸化電位を有するものが、より低い濃度で使用され得ることを認識するであろう。好ましい実施形態では、タンパク質は、上記の条件下でインキュベートした場合、還元化剤の存在下で、ジスルフィド結合を形成することができる。弱還元化剤の例としては、これらに限定されないが、グルタチオン、β-メルカプトエチルアミン、シスチン/システイン、GSH/GSSG、システアミン/シスタミン、グリシルシステイン、およびβ-メルカプトエタノールが挙げられる。ある特定の実施形態では、GSH:抗体の200Xのモル比の酸化電位と同様の酸化電位を、他の還元化剤を使用して効率的な組立てが期待され得る弱還元条件の基準点として、使用することができる。
【0222】
グルタチオン濃度は、組立て混合物中に存在する半抗体の量に対して、モル濃度、またはモル比もしくはモル過剰で表すことができる。組立て混合物中のタンパク質濃度に対する還元化剤対照の標的モル比の使用、これは、可変なタンパク質濃度の結果としての過剰な還元または過少な還元を防止する。ある特定の他の実施形態では、還元化剤は、半抗体の総量に対して、2~600X、2~200X、2~300X、2~400X、2~500X、2~20X、2~8X、20~50X、50~600X、50~200X、または100~300Xのモル過剰、好ましくは50~400X、より好ましくは100~300X、最も好ましくは200Xのモル過剰で、組立て混合物に添加される。ある特定の実施形態では、組立て混合物は、pH7~9の間、好ましくはpH8.5を有する。
【0223】
ある特定の実施形態では、第1の半抗体および第2の半抗体の培養物を組み合わせ、続いて組み合わせた培養物中で溶解することができる。放出された第1の半抗体と第2の半抗体との組合せは、還元条件で二重特異性抗体を形成することができる。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、WO2011/133886を参照されたい。
【0224】
異なるアプローチによると、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体-抗原結合部位)が、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。この融合は、好ましくは、ヒンジ、CH2、およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合である。これらの融合のうちの少なくとも1つに存在する、軽鎖結合に必要な部位を含有する第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが典型的である。免疫グロブリン重鎖融合物と、所望の場合、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、別個の発現ベクターに挿入され、適切な宿主生物に共トランスフェクトされる。構築にあたり、使用される3つのポリペプチド鎖の不均等な比率が最適収率をもたらす実施形態では、これは、3つのポリペプチド断片の相互割合を調整する上で、優れた柔軟性を提供する。しかしながら、少なくとも2つのポリペプチド鎖を等比率で発現させることが高収率をもたらす場合、または比率が特に重要でない場合、2つまたは3つすべてのポリペプチド鎖のコード配列を1つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0225】
このアプローチの一実施形態では、二重特異性抗体は、一方のアームに第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖、および他方のアームに(第2の結合特異性を提供する)ハイブリッド免疫グロブリン重鎖-軽鎖対からなる。この非対称構造は、望まない免疫グロブリン鎖の組合せから、所望の二重特異性化合物の分離を容易にすることが見出された。二重特異性分子の半分のみで、免疫グロブリン軽鎖が存在することにより、容易な分離方法がもたらされるためである。このアプローチは、WO94/04690に開示されている。二重特異性抗体の生成のさらなる詳細については、例えば、Sureshら、Methods in Enzymology121:210(1986)を参照されたい。
【0226】
WO96/27011に記載の別のアプローチによると、抗体分子対の間の界面は、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体の割合が最大になるように操作され得る。1つの界面は、抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1の抗体分子の界面由来の1つ以上の小さいアミノ酸側鎖は、より大きい側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置き換えられる。大きい側鎖(複数可)と同一または同様のサイズの補償「キャビティ」は、大きいアミノ酸側鎖をより小さいアミノ酸側鎖(例えば、アラニンまたはトレオニン)で置き換えることによって、第2の抗体分子の界面上に作製される。これにより、ホモ二量体などの他の望まない最終産物と比べて、ヘテロ二量体の収率を増加させるための機構が提供される。
【0227】
二重特異性抗体には、架橋または「ヘテロコンジュゲート」抗体が含まれる。例えば、ヘテロコンジュゲート中の抗体の一方がアビジンにカップリングし、他方がビオチンにカップリングし得る。このような抗体は、例えば、望まない細胞を免疫系細胞の標的とするために(米国特許第4,676,980号)、HIV感染の治療のために(WO91/00360、WO92/200373、およびEP03089)提案されている。ヘテロコンジュゲート抗体を、任意の簡便な架橋方法を用いて、作製してもよい。好適な架橋剤が当技術分野で周知であり、いくつかの架橋技法とともに、米国特許第4,676,980号に開示されている。
【0228】
抗体断片から二重特異性抗体を生成するための技法もまた、文献に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学結合を使用して調製することができる。Brennanら、Science、229:81(1985)は、インタクトな抗体がタンパク質分解的に切断されて、F(ab’)2断片を生成する手順について記載している。これらの断片は、ジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元されて、近接するジチオールを安定させ、分子間ジスルフィド形成を防止する。次いで、生成したFab’断片を、チオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換する。次いで、Fab’-TNB誘導体の一方が、メルカプトエチルアミンによる還元によってFab’-チオールに再変換され、等モル量の他方のFab’-TNB誘導体と混合されて、二重特異性抗体を形成する。産生された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための薬剤として使用され得る。
【0229】
近年の進歩により、化学的にカップリングして二重特異性抗体を形成することができるFab’-SH断片を、大腸菌から直接回収することが容易になった。Shalabyら、J.Exp.Med.175:217~225(1992)は、完全にヒト化された二重特異性抗体F(ab’)2分子の産生について記載している。各Fab’断片は、大腸菌から別個に分泌され、インビトロでの指向性化学的カップリングに供されて、二重特異性抗体を形成した。
【0230】
二重特異性抗体断片を、直接、組換え細胞培養物から作製および単離するための様々な技法も記載されている。例えば、ロイシンジッパを使用して、二重特異性抗体が産生された。Kostelnyら、J.Immunol.、148(5):1547~1553(1992)。FosおよびJunタンパク質由来のロイシン・ジッパ・ペプチドを、遺伝子融合によって、2つの異なる抗体のFab’部分に連結させた。抗体ホモ二量体を、ヒンジ領域で還元して単量体を形成させ、次いで、再酸化して抗体ヘテロ二量体を形成させた。この方法はまた、抗体ホモ二量体の産生にも利用することができる。Hollingerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444~6448(1993)により記載されている「ダイアボディ」技術は、二重特異性抗体断片を作製するための代替的機構を提供している。断片は、同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーによって、軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。したがって、ある断片のVHおよびVLドメインは、別の断片の相補的なVLドメインおよびVHドメインと対合させられ、それによって、2つの抗原結合部位を形成する。一本鎖Fv(sFv)二量体の使用によって、二重特異性抗体断片を作製するための、別の戦略も報告されている。Gruberら、J.Immunol、152:5368(1994)を参照されたい。
【0231】
二重特異性抗体断片を作製するための別の技法は、「二重特異性T細胞エンゲージャー」またはBiTE(登録商標)アプローチである(例えば、WO2004/106381、WO2005/061547、WO2007/042261、およびWO2008/119567を参照されたい)。このアプローチは、単一のポリペプチド上に配列された2つの抗体可変ドメインを利用する。例えば、単一のポリペプチド鎖は、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)ドメインを各々有する2つの一本鎖Fv(scFv)断片を含み、これらのドメインは、2つのドメイン間の分子内会合を可能にする十分な長さのポリペプチドリンカーによって分離されている。この単一のポリペプチドは、2つのscFv断片間のポリペプチドスペーサー配列をさらに含む。各scFvは、異なるエピトープを認識し、2つの異なる細胞種の細胞が、各scFvがその同族のエピトープと係合するときに近接近するかまたは繋留されるように、これらのエピトープは、異なる細胞種に対して特異的であり得る。このアプローチの1つの特定の実施形態は、免疫細胞によって発現される細胞表面抗原を認識するscFv、例えば、T細胞上のCD3ポリペプチドを含み、これは、悪性または腫瘍細胞などの標的細胞によって発現される細胞表面抗原を認識する別のscFvに連結される。
【0232】
これは単一ポリペプチドであるため、二重特異性T細胞エンゲージャーは、当技術分野で公知の任意の原核細胞発現系を使用して発現され得る。しかしながら、特定の精製技法(例えば、EP1691833を参照)が、単量体二重特異性T細胞エンゲージャーを、単量体の意図される活性以外の生物学的活性を有し得る他の多量体種から分離するために、必要であり得る。1つの例示的な精製スキームでは、分泌されたポリペプチドを含有する溶液はまず、金属アフィニティクロマトグラフィに供され、ポリペプチドは、イミダゾール濃度の勾配を用いて溶出される。この溶出物は、陰イオン交換クロマトグラフィを使用してさらに精製され、ポリペプチドは、塩化ナトリウム濃度の勾配を使用して溶出される。最後に、この溶出液をサイズ排除クロマトグラフィに供して、モノマーを多量体種から分離する。
宿主細胞の選択および形質転換
【0233】
全長抗体または半抗体、抗体融合タンパク質、1アーム抗体、および抗体断片などの2鎖タンパク質を、特にグリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされない場合、例えば、治療用抗体が、単独で腫瘍細胞の破壊において効果を示す細胞傷害性薬剤(例えば、毒素)にコンジュゲートされる場合に、細菌において産生することができる。全長抗体は、より優れた循環血中の半減期を有する。大腸菌での産生が、より迅速であり、より費用効率が高い。細菌における抗体断片およびポリペプチドの発現については、発現および分泌を最適化するための翻訳開始領域(TIR)およびシグナル配列を説明している、例えば、米国特許第5,648,237号(Carterら)、米国特許第5,789,199号(Jolyら)、米国特許第5,840,523号(Simmonsら)を参照されたい。また、大腸菌における抗体断片の発現を記載する、Charlton、Methods in Molecular Biology、第248巻(B.K.C.Lo編、Humana Press、Totowa、N.J.、2003)、245~254頁も参照されたい。発現後、抗体は、可溶性画分中の大腸菌細胞ペーストから単離することができ、例えば、アイソタイプに応じてプロテインAまたはGカラムにより精製され得る。最終精製は、例えば、CHO細胞で発現された抗体を精製するためのプロセスと同様に行われ得る。
【0234】
宿主細胞は、2鎖タンパク質産生のために、本開示の発現またはクローニングベクターによって形質転換され、プロモータの誘導、形質転換体の選択、または所望の配列をコードしている遺伝子の増幅に適切なものとなるように修飾された従来の栄養素培地において培養される。
宿主細胞の培養
【0235】
本開示の宿主細胞は、多様な培地中で培養され得る。本明細書で使用される「培養培地」は、本開示の細菌の増殖を支援する任意の組成物または培養液を指す。好適な培養培地は、液体または固体であり、任意の栄養素、塩、緩衝液、元素、ならびに細胞の増殖および生存を支援する他の化合物を含有し得る。培養培地の一般的な栄養素は、窒素、炭素、アミノ酸、炭水化物、微量元素、ビタミン、およびミネラル源を含み得る。これらの栄養素は、個々の成分として(定義された培養培地中のように)または複合エキスの構成成分(例えば、酵母エキス)として添加されてもよい。培養培地は、急速な増殖を支援するために栄養素に富んでいてもよく、あるいはより遅い増殖を支援するために栄養素が最低限であってもよい。培養培地はまた、混入生物の増殖を阻害するかまたは混入生物を殺滅するために使用される任意の薬剤(例えば、抗生物質)を含有してもよい。培養培地はまた、誘導性プロモータまたは酵素の活性を制御するために使用される任意の化合物を含有してもよい(一例として、IPTGを含めることにより、lacオペロンまたは機能的に類似するプロモータによって制御される、任意のポリヌクレオチドの発現を誘導してもよい)。好適な培養培地の多数の例が、当技術分野で周知であり、M9培地、Lysogeny Broth(LB)、Terrific Broth(TB)、NZY培養液、SOB培地、およびYT培養液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0236】
これらの培地のいずれも、必要に応じて、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、およびリン酸塩など)、緩衝液(HEPESなど)、ヌクレオチド(アデノシンおよびチミジンなど)、抗生物質、抗真菌薬、微量元素(マイクロモル範囲の最終濃度で通常存在する無機化合物として定義される)、グルコース、および/または適切なエネルギー源を補充され得る。原核細胞培養培地中で見出される典型的な成分は、酵母エキス、塩(例えば、NaCl)、トリプトン、緩衝液(例えば、リン酸緩衝液)、グリセロールなどを含む。任意の他の必要な補充物もまた、当業者に公知の適切な濃度で含まれ得る。温度およびpHなどの培養条件は、発現のために選択される原核宿主細胞で既に使用されたものであり、当業者には明らかとなるであろう。
生物学的に活性なポリペプチドの精製
【0237】
本開示のある特定の態様は、宿主細胞から生物学的に活性なポリペプチドを回収することに関する。典型的には、本開示の生物学的に活性なポリペプチドを回収すること(「精製すること」または「精製」という用語が、本明細書で互換的に使用され得る)は、ポリペプチドを宿主細胞(または、ポリペプチドが培地中に排出される場合には、細胞培養培地)から単離すること、ならびにポリペプチドを、他の関連する高分子、例えば、細胞残屑および他のポリペプチドから精製することを伴う。様々な宿主細胞コンパートメントから様々なタンパク質を精製するための多数の技法が、当技術分野で公知である(例えば、Evans,Jr.,TCおよびXu MQ(編)Heterologous Gene Expression in E.coli(2011)Methods in Molecular Biology、第705巻、Humana Pressを参照されたい)。例示的な技法が以下に記載されているが、これらは、当業者の理解を補助するための例示目的のために含まれるものであり、決して限定を意味するものではない。
【0238】
組換え技法を使用する場合、分泌タンパク質などの2鎖タンパク質は、細胞内で産生されるか、ペリプラズム空間で産生されるか、または培地中に直接分泌され得る。分泌タンパク質が細胞内で産生される場合、第1の工程として、宿主細胞または溶解断片である粒子状残屑が、例えば、遠心分離または限外濾過によって除去される。
【0239】
いくつかの実施形態では、分泌タンパク質は、宿主細胞のペリプラズムから回収される。Carterら、Bio/Technology10:163~167(1992)は、大腸菌のペリプラズム空間に分泌される分泌タンパク質を単離するための手順を記載している。簡潔には、細胞ペーストが、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、およびフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)の存在下で、約30分間にわたって解凍される。細胞残屑が、遠心分離によって除去され得る。分泌タンパク質が培地中に排出される場合、一般に、このような発現系から上清を、まず、市販のタンパク質濃縮フィルタ、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して濃縮する。タンパク質分解を阻害するために、PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤が前述の工程のいずれかに含まれてもよく、外来性混入物の増殖を防止するために、抗生物質が含まれてもよい。
【0240】
細胞から調製された分泌タンパク質組成物を、例えば、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、ゲル電気泳動、透析、およびアフィニティクロマトグラフィを使用して精製することができるが、アフィニティクロマトグラフィが典型的に好ましい精製工程のうちの1つである。抗体に関して、アフィニティリガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体中に存在する任意の免疫グロブリンFcドメインの種およびアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、またはγ4重鎖に基づく抗体を精製するために使用することができる(Lindmarkら、J.Immunol.Meth.62:1~13(1983))。プロテインGは、すべてのマウスアイソタイプおよびヒトγ3に対して推奨される(Gussら、EMBO J.5:15671575(1986))。アフィニティリガンドが結合するマトリックスは、ほとんどの場合、アガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。制御された細孔ガラスまたはポリ(スチレンジビニル)ベンゼンなどの機械的に安定なマトリックスにより、アガロースで達成され得るよりも速い流速および短いプロセシング時間が可能になる。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABX(商標)樹脂(J.T.Baker、Phillipsburg、N.J.)が精製に有用である。タンパク質精製のための他の技法、例えば、イオン交換カラム上での分別、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカ上でのクロマトグラフィ、ヘパリンSEPHAROSE(商標)上でのクロマトグラフィ、陰イオンまたは陽イオン交換樹脂(ポリアスパラギン酸カラムなど)上でのクロマトグラフィ、クロマト分画、SDS-PAGE、および硫酸アンモニウム沈殿も回収される抗体に応じて利用可能である。当業者は、抗体回収に有用なこれらの技法の多くが、分泌タンパク質などの他の2鎖タンパク質を回収するために、容易に応用できることを認識するであろう。
【実施例0241】
本開示は、以下の例を参照することによって、より完全に理解されることになるだろう。しかしながら、これらは、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載の例および実施形態は、例証のみを目的とするものであり、それを考慮に入れた様々な修飾または変更が当業者に提案されるであろうが、それらは、本出願の趣旨および範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれるべきであることを理解されたい。
実施例1:シャペロンDsbA、DsbC、およびFkpAの発現を制御する、染色体に組み込まれたプロモータを有する大腸菌株の操作
【0242】
プラスミドからのシャペロンDsbA、DsbC、およびFkpAの過剰発現は、細菌培養における抗体ベースの産物産生を改善することができる。しかしながら、プラスミドからのこれらのシャペロンの発現には、いくつかの欠点がある。例えば、このようなアプローチは、新しい産物ごとに発現プラスミドの開発および調整を必要とする。大きなプラスミドサイズはまた、場合によっては、より低い産物力価をもたらし得る。さらに、プラスミドは、典型的には、1細胞あたり10~15コピーで存在し、産物からシャペロンタンパク質(例えば、FkpA)を除去するために下流の精製工程(複数可)を必要とし得る高レベルの過剰発現をもたらす。場合によっては、1つ以上のシャペロンのより低い発現レベルで、同じ産物力価を達成することができた。
【0243】
ここで、大腸菌ゲノム内のdsbA、dsbC、およびfkpAの天然プロモータを、非天然の組合せのプロモータphoA、tac、およびCP25と交換して、シャペロンを染色体過剰発現する操作された株を作製した。これらの株を、2つの半抗体(本明細書で「xIL13」およびAF2と称される、抗IL13半抗体)、1アーム抗体(MetMAb)、および抗体Fab断片(抗VEGF抗体断片)の産生における使用について調べた。
方法
ベクター構築
【0244】
シャペロンおよびxIL13(MD157)またはAF2(MD341)のいずれかを発現するベクターを、WO2016073791(例えば、段落278および279、281~284、285~288を参照)に記載されているように構築した。
株の操作
【0245】
phoA(Wanner B.L.(1990)Colloqium Mosbach,Mol.Basis Bact.Metab.41頁を参照)、tac(de Boer H.A.ら(1983)PNAS80、21~5頁を参照)、およびCP25(Jensen P.R.およびHammer K.(1998)Appl.Environ.Microbiol.64、82~87頁を参照)プロモータを、大腸菌ゲノムに組み込み、dsbA、dsbC、およびfkpAの天然プロモータを置き換えた。これらのプロモータ修飾は、対立遺伝子交換(例えば、Bass,S.ら(1996)J.Bacteriol.178:1154~1161およびInnes,D.ら(2001)Microbiology147:1887~1896を参照)を介して行った。
【0246】
簡潔には、大腸菌ゲノム中の所望の挿入領域に一致する500塩基対の相同配列が両側に隣接し、目的のプロモータを含むように、NEBuilder(登録商標)HiFi DNA Assembly Master Mix(Gibson Assembly)を用いて、pS1080ベースの自殺ベクターを構築した。確認のために配列決定した後、バクテリオファージM13およびP1を使用して、48C8株にプラスミド配列を感染させ、導入した配列を目的の株に形質導入した(例えば、Nakashima,N.およびMiyazaki,K.(2014)Int.J.Mol.Sci.15:2773~2793を参照されたい)。供給源プラスミドから得られたプロモータは、シャペロンの上流の遺伝子間領域を置き換えた。これにより、大腸菌ゲノム内のdsbA、dsbC、およびfkpAの天然プロモータが、pS1080自殺ベクター由来のphoA、tac、および/またはCP25プロモータで置換された。lacI遺伝子に対する修飾も、tacプロモータからの発現をさらに増強するために行った。得られた株のバイアルロットを製造し、-80°Cで保存した。
振盪フラスコ培養および発酵槽プロセス
【0247】
操作された株(表Bを参照)を、標準的な振盪フラスコ培養(Sh.Fl.)および10リットルの発酵槽(10L)で培養した。WO2016073791(例えば、段落289~292を参照)に記載されているように、10リットルの発酵を行った。それらの天然プロモータから発現されるシャペロンのみを含有する、株67A6および64B4を陰性対照として使用した(すなわち、Sh.Fl.(-)およびAmbr(-))。陽性対照として、これらの株を、DsbA、DsbC、およびFkpAを発現するプラスミドで形質転換した(表Aを参照)(すなわち、Sh.Fl.(+)、Ambr(+)、および10L(+))。
電気泳動、ウェスタンブロット、およびHPLC分析
【0248】
DsbA、DsbC、およびFkpAの相対濃度をウェスタンブロットによって測定した。xIL13、AF2、MetMAb、および抗VEGF抗体断片濃度を逆相HPLCによって測定した。電気泳動、ウェスタンブロット、およびHPLC分析方法は、WO2016073791(例えば、段落293~299を参照)に記載されているように行った。
結果
【0249】
抗体ベースの産物xIL13、AF2、MetMAb、および抗VEGF抗体断片を、大腸菌中で過剰発現させるためのベクターを構築した。xIL13を発現するベクターの代表的なプラスミドマップを
図1に示す。各ベクターは、以下の表Aに詳述されるように、xIL13、AF2、MetMAb、または抗VEGF抗体断片をコードする遺伝子と、(1)シャペロン遺伝子なし(例えば、
図1、右)、または(2)dsbA、dsbC、およびfkpAの組合せ(例えば、
図1、左)のいずれかとを含む。これらのベクターを含有する株は、操作された株におけるタンパク質発現を評価する場合、陽性対照として使用することができる。
-は、示されたシャペロン遺伝子が存在しないことを示す。
【0250】
さらに、大腸菌ゲノム中のこれらのシャペロンの天然プロモータをtac、phoA、およびCP25プロモータと交換することによって、ペリプラズムシャペロンDsbC、DsbA、およびFkpAのうちの1つ以上の過剰発現のための17株を構築した。株のlacIバックグラウンドはまた、lacIを欠失させる(ΔlacIおよびΔlacI::kan)、lacIの野生型コピーを挿入する(lacI
+またはlacIWT)、または親株の元々のlacI
Q変異を無傷のまま残すことによって、tacプロモータからの発現をさらに増強するように操作された。lacI遺伝子産物は、tacプロモータからの発現を抑制するので、lacIの欠失は、tacプロモータからのより高い発現をもたらす。lacI
Q変異は、lacIの転写レベルの増加をもたらし、tacプロモータのより強い抑制をもたらす(Calos(1978)Nature274、762~765頁を参照されたい)。さらに、tacプロモータを、IPTGで誘導することができる。表Bは操作された株を列挙しており、lacI遺伝子修飾に加えて、操作されたプロモータ修飾を示している。
-ダッシュは、天然プロモータ配列に対する修飾がないことを示す。
a親株(67A6)の遺伝子型は、lacI
q変異を有する。
実施例2:染色体に組み込まれたプロモータの制御下でのFkpAの過剰発現
【0251】
FkpAの過剰発現を、FkpAを発現するプラスミドを有する株と比較して、天然FkpAを過剰発現する組み込まれたプロモータを有する、実施例1に記載されているように操作された株の間で比較した。
【0252】
FkpAが染色体過剰発現される能力を評価するために、FkpAの天然プロモータを実施例1の方法に従って、tac、phoA、またはCP25プロモータと交換した。lacIプロモータに対する修飾もまた、tacプロモータの強度をさらに増強するために行った。株を10リットルの発酵槽で増殖させ、ウェスタンブロットによって、FkpA産生について評価した。
【0253】
CP25プロモータによって駆動される染色体発現は、最も高いレベルのFkpA発現を示し、phoAプロモータによって駆動される発現がそれに続いた(
図2)。予想通り、tacプロモータは、最も低いレベルのFkpA発現を示し、ΔlacIバックグラウンドではlacIWTバックグラウンドよりも高いFkpA発現を示した。
【0254】
したがって、プラスミド発現fkpA遺伝子座の使用による単一レベルの高発現と比較して、染色体工学によって様々な範囲のFkpA発現がもたらされた。これらの結果は、FkpAの発現が染色体過剰発現によって、制御および増強され得ることを実証している。
実施例3:振盪フラスコ培養におけるtac、phoA、およびCP25プロモータの制御下でのシャペロンの染色体発現
【0255】
DsbA、DsbC、およびFkpAのプロモータ修飾を有する株におけるシャペロン発現を評価するために、培養物を振盪フラスコ中で増殖させ、これらのシャペロンの発現を、ウェスタンブロットを使用して測定した。
【0256】
様々な範囲の発現レベルが、観察された(
図3A~
図3C)。DsbAについては、CP25プロモータからの発現が最も強く、陽性対照で見られた発現のレベル(Sh.Fl.(+)および10L(+)、プラスミドからのDsbA発現)を超えた(
図3A)。次に高いDsbAレベルは、phoA、次いでtacによって産生され、tacプロモータのIPTG誘導は、予想通り、DsbAの発現レベルを上昇させた。tacプロモータ単独からの発現は、おそらくこの株の抑制性lacI
Qバックグラウンドのために、陰性対照(Sh.Fl.(-)、外因性シャペロン発現なし)よりも低かった。同様に、DsbC発現は、tacプロモータと比較して、phoAプロモータでより高く、tacプロモータのIPTG誘導は、DsbC発現の増加をもたらした(
図3B)。tacプロモータ単独からのDsbC発現も、陰性対照より低かった(Sh.Fl.(-))。
【0257】
興味深いことに、FkpA発現は、DsbAおよびDsbC発現結果と比較した場合に、操作された株の間でわずかに異なっていた(
図3C)。phoAプロモータは、FkpAの最も高い発現を駆動し、CP25プロモータからの発現がそれに続いた。DsbAおよびDsbCと同様に、tacプロモータは、最も低いレベルの発現を駆動した。一般に、FkpAの発現レベルは、天然レベル(Sh.Fl.(-))と比較して非常に高く、天然のFkpAプロモータは、天然のDsbAおよびDsbCプロモータと比較して、より弱いプロモータであることを示している。
【0258】
まとめると、これらの結果は、3つのシャペロンDsbA、DsbC、およびFkpAの発現がすべて、染色体過剰発現を介し、同様に制御および増強され得ることを実証している。
実施例4:ambr250発酵槽培養におけるtac、phoA、およびCP25プロモータの制御下でのシャペロンの染色体発現
【0259】
シャペロンの染色体過剰発現が振盪フラスコ培養からより大きな発酵槽培養に転換され得るかどうかを試験するために、操作された株を実施例1の方法に従って、ambr250高細胞密度発酵槽で増殖させ、シャペロン発現をウェスタンブロットによって測定した。
【0260】
振盪フラスコ培養と同様に、様々な範囲の発現レベルが観察された(
図4A~
図4C)。DsbAおよびDsbCについては、異なるlacIバックグラウンドを有するtacプロモータのみを試験した。DsbAおよびDsbCの両方に対して、lacI
Qバックグラウンドを有するtacプロモータは、最も低いレベルの発現をもたらしたが、lacIWTバックグラウンドを有するIPTG誘導性tacプロモータは、振盪フラスコ培養で見られるように、最も高い発現を有した(
図4Aおよび
図4B)。振盪フラスコにおけるFkpA発現とは異なり、phoAおよびtacプロモータと比較した場合、CP25プロモータは、ambR250バイオリアクターにおいて、最も高いFkpA発現を有していた(
図4C)。
【0261】
まとめると、これらのデータは、染色体発現されたシャペロンの発現パターンが、振盪フラスコから10Lの高細胞密度発酵槽プロセスに首尾よくスケールアップされ得ることを示している。
実施例5:操作された株におけるxIL13半抗体の発現
【0262】
半抗体xIL13の産生について、宿主株(表Bを参照)におけるシャペロン過剰発現の効果を試験した。
【0263】
宿主株を、xIL13を発現するプラスミドCS392で形質転換した。染色体過剰発現シャペロンを含有しない宿主株67A6を、DsbA、DsbC、およびFkpAと共にxIL13を発現するプラスミドMD157で、形質転換した(
図1)。67A6/MD157を、陽性対照として使用した。すべての株を実施例1に記載のように、10Lの発酵槽で増殖させ、xIL13産生を逆相HPLC力価アッセイによって評価した。
【0264】
上位3つのxIL13産生株(69E1、69F8、および69F4)は、陽性対照と比較して、同等以上の力価のxIL13を産生し、xIL13はプラスミドから発現された(
図5)。69E1株からの最も高い発現は、phoAおよびCP25プロモータによって駆動されるDsbCおよびFkpAをそれぞれ含有していた。これらの結果はまた、xIL13力価が、DsbAの発現によって有意には影響されないことを示した。
【0265】
したがって、3つの操作された69E1、69F8、および69F4株のような染色体操作を、プラスミド上でシャペロンをxIL13と共発現させる代替として使用することができ、同等のxIL13力価が得られる。
実施例6:操作された69E1、69F4、および69F8株におけるシャペロンおよびxIL13半抗体の発現
【0266】
抗体ベースの産物産生における69E1、69F4および69F8株の使用をさらに調査するために、これらの株を、72時間にわたって、xIL13およびシャペロンの発現についてより入念に評価した。実施例5に記載されている3つの操作された株を、実施例1および5に記載されているように、プラスミドCS392で形質転換して、xIL13を発現させた。実施例1に記載されているように、67A6株を陽性対照として、プラスミドMD157で形質転換して、xIL13およびシャペロンを発現させた。すべての株を、実施例1に記載されているように、10Lの発酵槽で増殖させ、xIL13濃度を逆相HPLC力価アッセイによって評価した。
【0267】
発酵中、光学密度(
図6A)およびオスモル濃度(
図6B)を測定した。実験株とプラスミド対照株との間に、有意差は見られなかった。
【0268】
3つすべての実験株について、xIL13発現は陽性対照と類似しているか、またはそれよりわずかに高く、69E1および69F8株は、72時間で最も高い発現レベルを有していた(
図7A)。操作された株の発酵槽におけるDsbCレベルは、大部分の発酵槽について、対照プロセスと比較して、低かった(
図7B)。これは、プラスミドベースのプロセスは、シャペロンが染色体から発現されるプロセスよりも、はるかに高いコピー数を有するからと予想された。69E1株の発酵槽と69F8株の発酵槽との間のDsbCレベルは類似しており、両方とも発現のためにphoAプロモータを使用しているからと予想された。興味深いことに、それらのレベルは発酵の終わりに向かって、プラスミド発現レベルと類似していた。DsbCは、69E1および69F8株においてphoAプロモータから発現された。そのため、リン酸塩の存在に起因してプロモータが発酵の18時間後まで誘導されず、発酵の最初の部分ではレベルが低かった。リン酸塩は約18時間で完全に消費され、その後、プロモータは完全に誘導され、より多くのDsbC発現がもたらされる。69F4は漏出性tacプロモータを使用し、培地中のリン酸塩レベルとは無関係であるので、69F4の発酵槽におけるDsbCレベルは、最初、69E1および69F8株の発酵槽と比較して高かった。これらの結果はまた、phoAプロモータは、振盪フラスコ培養で得られた発現結果と同様に、tacプロモータと比較して、より強いプロモータであることを示している。
【0269】
69E1および69F4株は、CP25プロモータ下でFkpAを発現する一方、69F8は、phoAプロモータ下でFkpAを発現する。強力な構成的CP25プロモータは、(FkpAが、phoAプロモータ下にある)プラスミドレベルに匹敵する高いレベルのFkpAをもたらした(
図7C)。69F8株は、プラスミドベースのプロセスと比較して、より低いレベルでFkpAを蓄積したが、これは、FkpA発現を駆動するために、両方の場合でphoAプロモータを使用するにもかかわらず、コピー数の差(プラスミドでは約15、染色体では1)に起因しているという可能性がある。しかしながら、第I相プラスミドベースのプロセスと69F8株プロセスとの間の力価(
図7A)は類似しており、追加のFkpAは必要でない可能性があることを示唆している。最終プール中のFkpAレベルを低減させるために精製開発に課される負担のため、高力価を達成する能力を有しながらの低減したFkpAレベルは、xIL13プロセスのための69F8株の利点と考えられ得る。
【0270】
これらのデータは、xIL13の発現は、プラスミド対照と比較して、高いレベルのDsbCおよびFkpAを必ずしも必要としないことを示唆する。株は、一般に、低いレベルのシャペロンを発現したにもかかわらず、3つすべての株から同等以上の力価のxIL13を産生することができた(とはいえ、この特徴は、FkpAを除去するためのさらなる精製の必要性を排除するという点で有利である)。
実施例7:操作された69E1、69F4、および69F8株におけるAF2半抗体の発現
【0271】
半抗体AF2を産生する、69E1、69F4、および69F8株の能力を評価した。69E1、69F4、および69F8株をプラスミドERD046で形質転換してAF2を発現させ、67A6株を陽性対照として、実施例1に記載されているように、プラスミドMD341で形質転換してAF2およびシャペロンを発現させた。株を、実施例1に記載されているように、10Lの発酵槽で増殖させ、AF2濃度を72時間にわたって様々な時点で評価した。
【0272】
発酵中、光学密度(
図8A)およびオスモル濃度(
図8B)を測定した。実験株とプラスミド対照株との間に、有意差は見られなかった。AF2の発現は69E1株で最も高く、プラスミド対照で見られる力価を上回った(
図9)。69F4および69F8株は、対照と比較して、わずかに低いが同程度の力価のAF2を有していた。
【0273】
これらのデータは、AF2を産生する場合、3つすべての株、特に69E1株を、プラスミド上でシャペロンを発現させる代わりに使用できることを実証している。
実施例8:操作された69E1、69F4、および69F8株におけるMetMAb1アーム抗体の発現
【0274】
1アーム抗体MetMAbを産生する、69E1、69F4、および69F8株の能力を評価した。これらの3つの株を、プラスミドp186で形質転換してMetMAbを発現させ、株64B4を陽性対照として、実施例1に記載されているように、プラスミドpOA5D5.3630で形質転換して、MetMAbおよびシャペロンを発現させた。株を、実施例1に記載されているように、10Lの発酵槽で増殖させ、MetMAb濃度を72時間にわたって様々な時点で評価した。
【0275】
発酵中、光学密度(
図10A)およびオスモル濃度(
図10B)を測定した。実験株とプラスミド対照株との間に、有意差は見られなかった。
【0276】
対照プロセスでは、DsbAおよびDsbCをプラスミドから発現させ、FkpAを使用しなかった。3つすべての株を使用した発酵槽は、対照プロセスと比較した場合、同等以上の力価を有した(
図11)。69E1株を使用した発酵槽は、対照プロセスと比較して、力価が約2倍に増加した。驚くべきことに、69F4株を使用した発酵槽は、69E1株と同様の力価を蓄積しなかった。理論に拘束されることを望むものではないが、これは、69E1株のphoAプロモータ(より強力なプロモータ)と比較して、69F4株のtacプロモータ下で発現されるDsbCの準最適レベルに起因する可能性がある。69E8株を使用した発酵槽は、対照プロセスと同様の力価を有した。理論に拘束されることを望むものではないが、これはFkpAの準最適レベルに起因する可能性がある。
実施例9:操作された69E1株における抗VEGF抗体断片の発現
【0277】
抗VEGF Fab断片を産生する69E1株の能力を評価した。69E1株および対照株67A6を、実施例1に記載されているように、プラスミドHSK117で形質転換して、抗VEGF抗体断片を発現させた。株を、実施例1に記載されているように、10Lの発酵槽で増殖させ、抗VEGF抗体断片濃度を72時間にわたって様々な時点で評価した。
【0278】
発酵中、光学密度(
図12A)およびオスモル濃度(
図12B)を測定した。69E1株は、72時間で対照よりもわずかに高い光学密度を示した(
図12A)。69E1株における抗VEGF抗体断片の発現もまた、試験したすべての時点でプラスミド対照の発現を超えた(
図13)。
【0279】
これらのデータは、染色体シャペロン過剰発現を有する株を、プラスミドベースのシャペロン過剰発現を使用する株と比較して、より高い力価の抗VEGF抗体断片を産生するために使用できることを実証している。
【0280】
まとめると、実施例5~9の結果は、シャペロンの染色体過剰発現が、プラスミドベースのシャペロン発現に匹敵する力価を生じる可能性を有することを実証している。二重特異性半抗体xIL13およびAF2、1アーム抗体MetMAb、および抗VEGF Fab断片を含むいくつかの分子フォーマットを試験した。3つの操作された69E1、68F8、および69F4株を使用した発酵は、追加のプロセス開発がほとんどまたは全くない対照プロセスと比較して、同等またはより高い力価を有した。さらに、1つの場合(69F8宿主でのAF2の場合)、対照を超える事例では、追加の開発を行わなかったので、ここで観察されたレベルを超える力価をさらに駆動するために、分子ごとにさらなるプロセス開発努力を行うことができる可能性がある。高い力価を達成することに加えて、これらの株は、追加のプラスミドクローニング作業を必要とせず、シャペロン発現を評価するための迅速かつ容易な方法を提供する。いくつかの場合(例えば、xIL13プロセスにおける69F8株)では、より低いレベルのFkpAで同様の力価が得られた。これはFkpAのクリアランスのために追加のカラム精製が必要ないので、下流の精製にとって望ましい。