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特開2024-170424クラッド2XXXシリーズの航空宇宙製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170424
(43)【公開日】2024-12-10
(54)【発明の名称】クラッド2XXXシリーズの航空宇宙製品
(51)【国際特許分類】
   C22C 21/12 20060101AFI20241203BHJP
   C22F 1/04 20060101ALI20241203BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20241203BHJP
   B64U 20/65 20230101ALN20241203BHJP
   B64C 1/00 20060101ALN20241203BHJP
【FI】
C22C21/12
C22F1/04 Z
C22F1/00 602
C22F1/00 623
C22F1/00 691B
C22F1/00 627
C22F1/00 630K
C22F1/00 682
C22F1/00 683
C22F1/00 691C
C22F1/00 685Z
C22F1/00 691A
C22F1/00 692A
C22F1/00 694A
C22F1/00 640A
C22F1/00 631Z
C22F1/00 630G
C22F1/00 630A
C22F1/00 613
C22F1/00 630M
B64U20/65
B64C1/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024134520
(22)【出願日】2024-08-09
(62)【分割の表示】P 2022554260の分割
【原出願日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】20172082.8
(32)【優先日】2020-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518412058
【氏名又は名称】ノベリス・コブレンツ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Novelis Koblenz GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】ビュルガー,アヒム
(72)【発明者】
【氏名】シュパンゲル,ザビーネ マリア
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,フィリップ
(57)【要約】
【課題】改善された圧延複合航空宇宙製品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本明細書で提供されているのは、2XXXシリーズのコア層と、2XXXシリーズのコア層の少なくとも一方の表面に連結されるAl-Cu合金クラッド層とを含む圧延複合航空宇宙製品であり、Al-Cu合金クラッド層は約0.06%~2.8%のCu、好ましくは約0.10%~1.8%のCuを含むアルミニウム合金である。圧延複合航空宇宙製品は理想的には航空宇宙用構造部品に好適である。本明細書に記載されているのはまた、圧延複合航空宇宙製品を製造する方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延複合航空宇宙製品であって、2XXXシリーズのコア層と前記2XXXシリーズのコア層の少なくとも一方の表面に連結されるAl-Cu合金クラッド層を含み、前記Al-Cu合金クラッド層は0.06%~2.8%のCuを含むアルミニウム合金のものである、
前記圧延複合航空宇宙製品。
【請求項2】
前記Al-Cu合金クラッド層が0.10%~1.8%のCuを含むアルミニウム合金のものである、請求項1に記載の圧延複合航空宇宙製品。
【請求項3】
前記Al-Cu合金クラッド層が重量%で、
Cu:0.06%~2.8%、
Mg:最大で1.5%、
Mn:最大で0.5%、
Si:最大で0.5%、
Fe:最大で0.4%、
Cr:最大で0.25%、
V:最大で0.25%、
Zr:最大で0.2%、
Ag:最大で0.80%、
Zn:最大で0.3%、
Ti:最大で0.2%、及び、
残りは不可避不純物とアルミニウムである組成を有するアルミニウム合金のものである、請求項1または2に記載の圧延複合航空宇宙製品。
【請求項4】
前記Cu含量が0.2%~1.5%の範囲にある、請求項3に記載の圧延複合航空宇宙製品。
【請求項5】
前記Mg含量が0.20%~1.2%の範囲にある、請求項3または4に記載の圧延複合航空宇宙製品。
【請求項6】
前記Al-Cuアルミニウム合金クラッド層が-710mV以下の腐食電位を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙製品。
【請求項7】
前記Al-Cu合金クラッド層が、圧延接合によって前記2XXXシリーズのコア層の前記少なくとも一方の表面に連結される、請求項1~6のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙製品。
【請求項8】
前記Al-Cu合金クラッド層が、前記圧延複合航空宇宙製品の総厚さの1%~20%の範囲の厚さを有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙製品。
【請求項9】
2XXXシリーズのコア層と、前記2XXXシリーズのコア層の一方の表面または双方の表面に連結されるAl-Cu合金クラッド層とから成る、請求項1~8のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙製品。
【請求項10】
前記2XXXシリーズのコア層と前記Al-Cu合金クラッド層との間に中間ライナーが配置され、前記中間ライナーが前記Al-Cu合金クラッド層とは異なるアルミニウム合金で作られる、請求項1~9のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙製品。
【請求項11】
前記中間ライナーが1XXXシリーズのアルミニウム合金で作られる、請求項10に記載の圧延複合航空宇宙製品。
【請求項12】
前記コア層の前記2XXXシリーズ合金は重量%で、
Cu:1.9%~7.0%、
Mg:0.30%~1.8%、
Mn:最大で1.2%、
Si:最大で0.40%、
Fe:最大で0.40%、
Cr:最大で0.35%、
Zn:最大で1.0%、
Ti:最大で0.15%、
Zr:最大で0.25、
V:最大で0.25%、
Li:最大で2.0%、
Ag:最大で0.80%、
Ni:最大で2.5%、及び、
残りはアルミニウムと不純物である組成を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙製品。
【請求項13】
前記2XXXシリーズのコア層は前記2X24シリーズの合金に由来する、請求項1~12のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙製品。
【請求項14】
少なくとも前記2XXXシリーズのコア層が、T3、T351、T39、T42、T8またはT851の調質である、請求項1~13のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙製品。
【請求項15】
前記圧延複合航空宇宙製品が0.8mm~50.8mmの総厚さを有する、請求項1~14のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙製品。
【請求項16】
前記圧延複合航空宇宙製品が航空宇宙用構造部品である、請求項1~15のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙製品。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の圧延複合航空宇宙製品を製造する方法であって、
前記複合航空宇宙製品の前記コア層を形成するための2XXXシリーズアルミニウム合金のインゴットを提供する工程と、
前記2XXXシリーズアルミニウム合金の前記インゴットを400℃~510℃の範囲の温度で少なくとも2時間均質化する工程と、
前記2XXXシリーズのコアアルミニウム合金上に外側クラッド層を形成するためのAl-Cuアルミニウム合金のインゴットまたは圧延クラッドライナーを提供する工程と、
任意で、外側クラッド層を形成する前記Al-Cuアルミニウムクラッド合金の前記インゴットを少なくとも400℃の範囲の温度で少なくとも0.5時間均質化するまたは予熱する工程と、
前記Al-Cuアルミニウム合金クラッド層を前記2XXXシリーズのコア合金に圧延接合して圧延接合製品を形成し、任意で冷間圧延がそれに続く工程と、
前記圧延接合製品を450℃~510℃の範囲の温度で固溶化熱処理する工程と、
前記固溶化熱処理された圧延接合製品を100℃未満に冷却する工程と、
任意で、前記固溶化熱処理され、冷却された圧延接合製品を延伸する工程と、前記冷却された圧延接合製品の時効を行う工程と、
を含む、前記方法。
【請求項18】
前記方法がさらに、前記固溶化熱処理され、冷却され、及び任意でさらに延伸もされている圧延接合製品を、形成プロセスにて単軸または2軸の湾曲を有する所定の形状の製品に成形することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記時効工程の後に成形工程が実施される、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記成形工程及び前記時効工程が高温で1~50の時間の範囲の時間、成形工程において組み合わせられる、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月29日に出願された欧州特許出願第20172082.2号の利益及びそれに対する優先権を主張するものであり、この内容は参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に記載されているのは、2XXXシリーズのコア層と、2XXXシリーズのコア層の少なくとも一方の表面に連結されるアルミニウム合金層とを含む圧延複合航空宇宙製品である。圧延複合航空宇宙製品は理想的には航空宇宙用構造部品に好適である。本開示はさらに、圧延複合航空宇宙製品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
航空宇宙産業では、AA2024シリーズのアルミニウム合金及びその改良品は高い耐損傷性アルミニウム合金として、主にT3状態またはその改良品で広く使用されている。これらアルミニウム合金の製品は、重量比に対して比較的高い強度を有し、良好な破壊靱性、良好な疲労特性、及び適切な耐食性を示す。
【0004】
耐食性を向上させるために、AA2024シリーズの合金製品は、一方または双方の面に比較的薄いクラッド層を持つ複合製品として提供されてもよい。クラッド層は通常、より高純度であり、AA2024コア合金を腐食から保護する。クラッドは本質的に非合金のアルミニウムを含む。多くの場合、一般的に1XXXシリーズのアルミニウム合金が参照され、これには1000型、1100型、1200型、及び1300型のサブクラスが含まれる。しかしながら、実際には、クラッド層のために使用される1XXXシリーズのアルミニウム合金は相当に極めて純粋であり、Si+Fe<0.7%、Cu<0.10%、Mn<0.05%、Mg<0.05%、Zn<0.10%、Ti<0.03%と、残りはアルミニウムである組成を有する。
【0005】
1XXXシリーズ合金を伴うAA2024シリーズのアルミニウム合金クラッドはまた、陽極酸化されてもよい。陽極酸化は、腐食及び摩耗に対する耐性を増加させ、塗装プライマー及び接着剤に対してむき出しの金属よりも良好な接着性を提供する。陽極酸化された物品は、例えば、翼、水平尾翼、垂直尾翼または胴体の外板パネルのような構造的接着金属結合にて適用される。さらなる既知の用途は、1以上の(ガラス)繊維強化層が、接着結合を使用してアルミニウムパネル間またはシート間に置かれ、いわゆる繊維金属積層板を生じるサンドイッチ構造を含む。
【0006】
クラッド層としての1XXXシリーズ合金の欠点は、これらの合金が極めて柔らかく、製品の取り扱い中に表面損傷を受けやすいことである。成形作業中に、これは、例えば、金型粘着をもたらしてもよい。
【発明の概要】
【0007】
本発明の包含される実施形態は、本概要ではなく、特許請求の範囲によって定義される。この発明の概要は、本発明の様々な態様の高次の概要であり、以下の発明を実施するための形態のセクションでさらに説明される概念の一部を紹介する。この発明の概要は、特許請求される主題の鍵となるまたは本質的な特徴を特定することを意図しておらず、特許請求される主題の範囲を決定するために単独で使用されることも意図していない。主題は、明細書全体、図面の一部またはすべて、及び各請求項の適切な部分を参照することによって理解されるべきである。
【0008】
本明細書に記載されているのは、2XXXシリーズのコア層と2XXXシリーズのコア層の少なくとも一方の表面に連結されるAl-Cu合金クラッド層とを含む圧延複合航空宇宙製品であり、その際、Al-Cu合金クラッド層は0.06%~2.8%のCuを含むアルミニウム合金のものである。任意で、Al-Cu合金クラッド層は0.10%~1.8%のCuを含むアルミニウム合金のものである。任意で、Al-Cu合金クラッド層は重量%での
Cu:0.06%~2.8%、好ましくは0.10%~1.8%、
Mg:最大で1.5%、好ましくは0.10%~1.2%、
Mn:最大で0.5%、好ましくは0.10%~0.5%、
Si:最大で0.5%、好ましくは最大で0.3%、
Fe:最大で0.4%、
Cr:最大で0.25%、
V:最大で0.25%、
Zr:最大で0.2%、
Ag:最大で0.80%、
Zn:最大で0.3%、
Ti:最大で0.2%、及び、
残りは不可避不純物とアルミニウムである組成を有するアルミニウム合金である。
【0009】
任意で、Cu含量は0.2%~1.5%、好ましくは0.5%~1.6%の範囲である。任意で、Mg含量は0.20%~1.2%、好ましくは0.20%~0.9%の範囲である。
【0010】
Al-Cuアルミニウム合金クラッド層は任意で-710mV以下の腐食電位を有することができる。任意で、Al-Cu合金クラッド層は2XXXシリーズのコア層の少なくとも一方の表面に圧延接合によって連結される。Al-Cu合金クラッド層は圧延複合航空宇宙製品の総厚さの1%~20%、好ましくは1%~10%の範囲の厚さを有することができる。
【0011】
任意で、本明細書に記載されている圧延複合航空宇宙製品は2XXXシリーズのコア層と、2XXXシリーズのコア層の一方の表面または双方の表面に連結されるAl-Cu合金クラッド層とから成る。中間ライナーは2XXXシリーズのコア層とAl-Cu合金クラッド層との間に配置することができ、任意で、中間ライナーはAl-Cu合金クラッド層とは異なるアルミニウム合金で作られる。いくつかの例では、中間ライナーは1XXXシリーズのアルミニウム合金で作られる。
【0012】
場合によっては、コア層(20)の2XXXシリーズ合金は以下のような重量%での:
Cu:1.9%~7.0%、好ましくは3.0%~6.8%、さらに好ましくは3.2%~4.95%、
Mg:0.30%~1.8%、好ましくは0.35%~1.8%、
Mn:最大で1.2%、好ましくは0.2%~1.2%、
Si:最大で0.40%、
Fe:最大で0.40%、
Cr:最大で0.35%、
Zn:最大で1.0%、
Ti:最大で0.15%、
Zr:最大で0.25%、
V:最大で0.25%、
Li:最大で2.0%、
Ag:最大で0.80%、
Ni:最大で2.5%、及び、
残りはアルミニウムと不純物である組成を有する。
【0013】
場合によっては、2XXXシリーズのコア層(20)は2X24シリーズの合金に由来する。任意で、少なくとも2XXXシリーズのコア層(20)はT3、T351、T39、T42、T8、またはT851の調質である。圧延複合航空宇宙製品(10)は0.8mm~50.8mm、好ましくは0.8mm~25.4mmの総厚さを有することができる。
【0014】
任意で、圧延複合航空宇宙製品は航空宇宙用構造部品であり、好ましくは、胴体または胴体コンポーネントである。
【0015】
本明細書に記載されているのはまた、複合航空宇宙製品のコア層を形成するための2XXXシリーズのアルミニウム合金のインゴットを提供する工程と、2XXXシリーズのアルミニウム合金のインゴットを400℃~510℃の範囲の温度で少なくとも2時間均質化する工程と、2XXXシリーズのコアのアルミニウム合金上に外側クラッド層を形成するためのAl-Cuアルミニウム合金のインゴットまたは圧延クラッドライナーを提供する工程と、任意で、外側クラッド層を形成するAl-Cuアルミニウムクラッド合金のインゴットを、好ましくは少なくとも400℃の範囲、好ましくは400℃から510℃の範囲の温度で少なくとも0.5時間均質化するまたは予熱する工程と、好ましくは熱間圧延によって、任意でその後冷間圧延によってAl-Cuアルミニウム合金クラッド層を2XXXシリーズのコア合金に圧延接合して、圧延接合製品を形成する工程と、圧延接合製品を450℃~510℃の範囲の温度で固溶化熱処理する工程と、固溶化熱処理した圧延接合製品を100℃未満、好ましくは周囲温度に冷却する工程と、任意で、固溶化熱処理され、冷却された圧延接合製品を延伸する工程と、冷却された圧延接合製品で時効を行う工程と、を含む、本明細書に記載されているような圧延複合航空宇宙製品を製造する方法である。
【0016】
任意で、方法はさらに、固溶化熱処理され、冷間圧延接合された、及び任意で延伸もされた製品を成形プロセスにて単軸または2軸の湾曲を有する所定の形状の製品に成形することを含む。場合によっては、時効工程の後に成形工程を実行することができる。任意で、成形工程及び時効工程を高温にて、好ましくは140℃~200℃の範囲の温度で、好ましくは1~50時間の範囲の時間、成形工程にて組みあわせる。
【0017】
本発明の他の目的及び利点は、非限定的な実施例及び図面の以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本明細書に記載されているような圧延複合航空宇宙製品の概略図である。
図2】本明細書に記載されているような5つの区別される層を有する圧延複合航空宇宙製品の概略図である。
図3】圧延複合航空宇宙製品を製造するためのプロセスのいくつかの実施形態の概略フロースケジュールである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の本明細書において明らかとなるように、別段に示されていない限り、アルミニウム合金及び調質記号は、アルミニウム協会が2018年に公開したような、且つ頻繁に更新されているAluminum Standards and Data and the Registration Recordsにおけるアルミニウム協会の記号を指し、当業者には周知である。その調質記号は欧州規格EN515でも定められている。
【0020】
合金組成または好ましい合金組成の任意の説明については、割合に言及されているものはすべて、別段に示されていない限り、重量パーセントによるものである。
【0021】
「最大で」及び「最大で約」という用語は、本明細書で採用されるとき、それが言及する特定の合金化成分のゼロ重量パーセントという可能性を明白に含むが、これに限定されない。例えば、最大で0.3%のZnはZnを含まないアルミニウム合金を含んでもよい。
【0022】
本明細書で使用されるとき、「a」、「an」または「the」の意味には文脈上明らかに別段に示されない限り、単数と複数の言及が含まれる。
【0023】
本明細書で開示されているすべての範囲には、それらに含まれる任意の及びすべての部分範囲が包まれることになっている。例えば、示されている「1~10」という範囲には、最小値1と最大値10の間の任意の及びすべての部分範囲(1及び10を含む)が含まれるとみなされるべきであり、すなわち、すべての部分範囲は、1以上の最小値(例えば、1~6.1)で開始され、且つ10以下の最大値(例えば、5.5~10)で終了する。
【0024】
本明細書の目的のために、シート製品またはシート材は1.3mm(0.05インチ)以上且つ6.3mm(0.25インチ)以下の厚さを有する圧延製品として理解されるべきである。例えば、シートは、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、1.9mm、2.0mm、2.1mm、2.2mm、2.3mm、2.4mm、2.5mm、2.6mm、2.7mm、2.8mm、2.9mm、3.0mm、3.1mm、3.2mm、3.3mm、3.4mm、3.5mm、3.6mm、3.7mm、3.8mm、3.9mm、4.0mm、4.1mm、4.2mm、4.3mm、4.4mm、4.5mm、4.6mm、4.7mm、4.8mm、4.9mm、5.0mm、5.1mm、5.2mm、5.3mm、5.4mm、5.5mm、5.6mm、5.7mm、5.8mm、5.9mm、6.0mm、6.1mm、6.2mm、または6.3mmの厚さを有してもよい。Aluminium Standard and Data,the Aluminium Association,Chapter 5 Terminology,1997を参照のこと。
【0025】
本明細書の目的のために、プレート材またはプレート製品は、6.3mm(0.25インチ)を超える厚さを有する圧延製品として理解されるべきである。例えば、プレート材またはプレート製品は6.3を超える、6.4mmを超える、6.5mmを超える、6.6mmを超える、6.7mmを超える、6.8mmを超える、6.9mmを超える、7.0mmを超える、7.1mmを超える、7.2mmを超える、7.3mmを超える、7.4mmを超える、7.5mmを超える、7.8mmを超える、7.9mmを超える、8.0mmを超える、10.0mmを超える、15.0mmを超える、20.0mmを超える、25.0mmを超える、30.0mmを超える、35.0mmを超える、40.0mmを超える、45.0mmを超える、50.0mmを超える、または100.0mmを超える厚さを有してもよい。Aluminium Standard and Data,the Aluminium Association,Chapter 5 Terminology,1997を参照のこと。
【0026】
本明細書で提供されているのは、2XXXシリーズ合金に基づき、且つ耐食性と形成性との改善されたバランス、及びさらなる利点を提供する圧延航空宇宙製品である。具体的には、本明細書に記載されているのは2XXXシリーズのコア層を含む圧延複合航空宇宙製品であり、コア層は2つの面を有し、Al-Cu合金クラッド層が2XXXシリーズのコア層の少なくとも一方の表面に連結され、Al-Cu合金クラッド層は主要な合金成分として0.06%~2.8%のCu、好ましくは0.10%~2.8%、さらに好ましくは0.10%~1.8%のCuを含むアルミニウム合金で作られる。
【0027】
1XXXシリーズの合金と比べて、本明細書に記載されているAl-Cu合金にはいくつかの利点がある。最大で2.8%、好ましくは最大で1.8%のCuを有するAl-Cu合金によってアルミニウム合金はさらに陰極になる。少なくとも0.06%のCu、好ましくは少なくとも0.10%のCu、さらに好ましくは少なくとも0.20%のCuを有することによって、クラッド層は2XXXシリーズのコア合金との十分な電位差を有して極めて良好な耐食性、また特に良好な粒界耐食性を圧延複合航空宇宙製品に提供する。
【0028】
Al-Cu合金は、圧延複合航空宇宙製品が高い変形度を必要とする成形作業において形成され得るように極めて良好な成形性特性を有してもよい。形成性特性はいくつかの自動車用シートのアルミニウム合金のものに匹敵する。形成金型に対するクラッド層の金型粘着は、1XXXシリーズのクラッド層と比べてAl-Cu合金のクラッド層の高い硬度のせいで有意に低下する、または回避さえされる。表面の亀裂がないことは成形潤滑剤の表面への捕捉を回避する。表面の亀裂がないことも複合航空宇宙製品の疲労性能を大幅に向上させる。また、疲労は孔食開始部位によって一般的に引き起こされるので、孔食に対する極めて良好な耐性も疲労性能を改善する。Al-Cu合金は、1XXXシリーズ合金よりも有意に高い強度を有し、さらに硬い表面及び製品取り扱い中の擦り傷のような対応する表面損傷の減少をもたらす。任意で、T3状態のAl-Cu合金クラッド層は100MPaを超える降伏強度(Rp)を有する。
【0029】
Al-Cu合金は陽極酸化を受けやすく、接着結合層及び/またはプライマー層の後に続く適用に問題が生じないように陽極酸化の際に好適な特性を示す。
【0030】
Al-Cu合金は、複合航空宇宙製品の全体の強度が同じクラッド層厚さの1XXXシリーズ合金と比べて増大するように、1XXXシリーズ合金よりも有意に強度が高い。強度特性また、軽量化を図りながらクラッド厚を薄くし、必要とされる良好な耐食性と改善された成形性特性を備えた複合航空宇宙製品の設計を可能にし、または代わりに、高い全体強度に到達する一方で同じ厚さを維持するのを可能にする。
【0031】
また、圧延複合航空宇宙製品の工業規模の廃物のリサイクルは、2XXXシリーズ合金がCuの意図的添加を有し、Mn及びMgの意図的添加を有してもよいので、どんな主要な問題も引き起こさない。圧延接合製品は、コア層からクラッド層(複数可)を先に分離することなく再溶融することができ、新しい2XXXシリーズのアルミニウム合金製品に加工することができる。
【0032】
任意で、Al-Cuアルミニウム合金クラッド層は圧延接合によって、好ましくは熱間圧延によって2XXXシリーズのコア層に接合されて層間の必要とされる冶金接合を達成する。そのような圧延接合プロセスは、極めて経済的であり、所望の特性を提示する極めて有効な複合製品をもたらす。本発明に記載されているような圧延複合製品を生成するためのそのような圧延接合プロセスを実施する場合、コア層及びAl-Cuアルミニウム合金クラッド層(複数可)の双方が圧延接合中に厚み減少に供されることが好ましい。通常、圧延の前に、特に熱間圧延の前に、圧延インゴットの鋳造したままの表面に近い偏析領域を除去するため及び製品の平坦性を高めるためにコア層及びクラッド層(複数可)双方のインゴットの圧延面は剥ぎ取られる。
【0033】
好ましくは2XXX合金コア層の鋳造インゴットまたはスラブは、熱間圧延の前に均質化され、及び/またはそれは予熱され、その直後に熱間圧延されてもよい。熱間圧延の前の2XXXシリーズ合金の均質化及び/または予熱は通常、単一または複数の工程にて約400℃~505℃の範囲の温度で実施される。どちらの場合でも、鋳造したままの材料における合金化元素の偏析は減り、可溶性元素は溶解される。処理が約400℃未満で実施される場合、生じる均質化効果は不十分である。温度が約505℃を超える場合、望ましくない孔形成をもたらす相の溶融が生じる場合がある。この熱処理の好ましい時間は2~30時間の間である。さらに長い時間は通常有害である。均質化は通常、約480℃を超える温度で実施される。典型的な予熱温度は、最大で約15時間の範囲の浸漬時間で約430℃~460℃の範囲である。
【0034】
Al-Cuアルミニウムクラッド合金は、鋳造製品のための半連続鋳造技術、例えば、直接チル鋳造(DC鋳造)、電磁鋳造(EMC鋳造)、電磁撹拌鋳造(EMS鋳造)を使用し、且つ好ましくは、約300mm以上、例えば、500mmまたは600mmの範囲のインゴット厚さを有する、圧延原料に加工するためのインゴットまたはスラブとして提供され得る。任意で、連続鋳造から生じるさらに薄い規格のスラブ、例えば、ベルトキャスターまたはロールキャスターを使用して、Al-Cuアルミニウム合金クラッドライナーの原料を提供してもよい。そのようなさらに薄い規格のスラブは最大で約40mmの厚さを有することができる。
【0035】
いくつかの例では、Al-Cuアルミニウム合金クラッド層を形成する鋳造インゴットまたはスラブは、単一または複数の圧延工程にて圧延クラッドライナーを形成するさらに薄い規格に熱間圧延する前に、少なくとも400℃、好ましくは少なくとも約450℃の温度で予熱される、または均質化される。インゴット内での考えられる望ましくない細孔形成を生じる相の溶融を回避するために、温度は高すぎてはならず、典型的には、510℃を超えてはならず、好ましくは505℃を超えてはならない。大型の商用サイズのインゴットの温度での時間は、少なくとも約0.5時間であるべきであり、約1~30時間であり得る。長期間、例えば、48時間以上は、望ましい特性にすぐに悪影響を及ぼすことはないが、経済的には魅力に欠ける。均質化または予熱は、相が溶解し、元素の偏析プロファイルが減少した、さらに均質な微細構造を生じ、それによって熱間圧延プロセス用の合金の成形性を改善する。
【0036】
熱間圧延と、任意でその後に続く冷間圧延とによって圧延複合航空宇宙製品を最終規格まで規格縮小する。圧延複合製品が最終規格まで圧延された後、圧延複合製品は固溶化効果が平衡に近づくのに十分な時間、約450℃~510℃の範囲の温度で固溶化熱処理され、典型的な浸漬時間は約5分~120分の範囲である。好ましくは、固溶化熱処理は約475℃~510℃の範囲の温度、例えば約495℃でのことである。固溶化熱処理(SHT)は典型的には、バッチ炉または連続加熱炉にて実施される。示された温度での好ましい浸漬時間は約5~35分の範囲である。しかしながら、クラッド製品では、特に2XXXコア層からの多すぎる銅がアルミニウム合金クラッド層(複数可)に拡散する場合があり、それは当該層(複数可)によって得られる腐食保護に有害な影響を及ぼし得るため、過度に長い浸漬時間に対して注意が払われるべきである。連続SHT操作はバッチアニーリングと比べて、いわゆる引張歪模様の形成を減らす。連続SHTは、移動する圧延接合製品の急速な加熱を必要とし、平均加熱速度は5℃/秒を超える、好ましくは10℃/秒を超える。
【0037】
固溶化熱処理の後、複合製品を175℃以下の温度、好ましくは約100℃以下、さらに好ましくは周囲温度に十分に早く冷却して、二次相、例えば、AlCuMg及びAlCuの制御されない析出を阻止するまたは最小限に抑えることは重要である。一方で、冷却速度は、複合製品における十分な平坦性及び低レベルの残留応力を可能にするために過度に高くすべきではない。好適な冷却速度は、水の使用、例えば、水浸漬または水ジェットにより達成することができる。この温度範囲での固溶化熱処理とそれに続く急速冷却が過飽和により微細構造が生じる。複合製品はさらに、その中の残留応力を解消するために及び製品の平坦性を改善するために、例えば、その元々の長さの約0.5~8%の範囲まで延伸させることによって冷間加工されてもよい。好ましくは、延伸は約0.5%~6%、さらに好ましくは約0.5%~4%、最も好ましくは約0.5%~3%の範囲である。
【0038】
冷却の後、圧延複合航空宇宙製品は、通常周囲温度で自然時効され、代わりに、複合航空宇宙製品はまた人工時効されることもできる。このプロセス工程中の人工時効はさらに高い規格の製品に特に役に立つことができる。
【0039】
一実施形態では、Al-Cuアルミニウム合金クラッド層の組成は、-710mV以下(例えば、-750mV)の開放電位腐食値(基準甘汞電極(SCE)に対するもの、「腐食電位」とも称される)を有して2XXXシリーズのコア合金に対して最適な腐食保護を提供するように調整され、0.1N甘汞電極によって25℃で53g/LのNaCl+3g/LのHの溶液中にて固溶化熱処理され、且つ急速冷却された物質で測定される。好ましい実施形態では、Al-Cuアルミニウム合金クラッド層の腐食電位は、SHT及び急速冷却の後、したがって、重要な合金元素が概ね固溶体中にあるときに測定して-730mV~-800mVの範囲である。
【0040】
一実施形態では、2XXXコア層とAl-Cuアルミニウム合金クラッド層との間、すなわち、最終調質における腐食電位差は、陽極クラッド層からコア層までの十分な腐食保護を提供するために30mV~100mVの範囲である。
【0041】
Al-Cuアルミニウム合金クラッド層は通常、コアよりもはるかに薄く、各Al-Cuアルミニウム合金層は複合体の総厚さの1%~20%を構成する。Al-Cu合金クラッド層はさらに好ましくは、複合体の総厚さの約1%~10%を構成する。
【0042】
一実施形態では、Al-Cuアルミニウム合金クラッド層は2XXXシリーズのコア層の一方の表面または一方の面の上に結合される。
【0043】
一実施形態では、Al-Cuアルミニウム合金クラッド層は、圧延複合航空宇宙製品の外側表面を形成する2XXXシリーズのコア層の双方の表面または双方の面の上に結合される。
【0044】
一実施形態では、中間ライナーまたは中間層は、2XXXシリーズのコア層とAl-Cuアルミニウム合金クラッド層との間に配置され、中間ライナーはAl-Cuアルミニウム層とは異なるアルミニウム合金から作られる。場合によっては、中間ライナー用のそのようなアルミニウム合金は1XXXシリーズの合金であることができる。この中間ライナーは、コア合金からAl-Cuアルミニウム合金によって形成される外側表面層までのCuのさらなる拡散障壁として作用する。それは種々の層間のCu含量の差異を作り出し、且つCu勾配を作り出すのを可能にし、それによって2XXXシリーズのコア合金に増大した電気防食を提供し、優先的な中間ライナーの腐食によって2XXXシリーズのコア合金の孔食及び粒界腐食の耐性を向上させる一方で、Al-Cuアルミニウム合金外層によって提供される硬度及び表面特性は維持される。中間ライナーは好ましくは、コア合金にも圧延接合される。各中間ライナーは複合航空宇宙製品の総厚さの1%~20%を構成し、好ましくは複合航空宇宙製品の総厚さの約1%~10%を構成する。
【0045】
一実施形態では、圧延複合航空宇宙製品は少なくとも0.8mmの総厚さを有する。
【0046】
一実施形態では、圧延複合航空宇宙製品は多くても50.8mm(2インチ)、好ましくは多くても25.4mm(1インチ)、最も好ましくは多くても12mmの総厚さを有する。
【0047】
任意で、圧延複合航空宇宙製品はプレート製品である。
【0048】
任意で、圧延複合航空宇宙製品はシート製品である。
【0049】
Al-Cuアルミニウム合金クラッド層は0.06%~2.8%の範囲のCu含量を有する。一実施形態では、Cu含量の上限は約1.8%、好ましくは約1.6%である。一実施形態では、Cu含量の下限は、好ましくは0.10%、さらに好ましくは0.20%、最も好ましくは0.50%であり、コア合金に最適な腐食保護を提供する。Cu含量は、アルミニウム合金クラッド層に強度を提供し、腐食電位を目標範囲に調整し、航空宇宙部品として使用するための許容レベルに粒界耐食性を制御することを可能にする。
【0050】
任意で、クラッド層におけるCu含量は約0.06%~2.8%(0.1%~2.5%、0.1%~1.8%、0.5%~2.0%、0.5%~1.6%、または1.0%~1.9%)であることができる。任意で、クラッド層におけるCu含量は約0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.55%、0.6%、0.65%、0.7%、0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、25%、2.6%、2.7%、または2.8%であることができる。
【0051】
一実施形態では、Al-Cuアルミニウム合金クラッド層は重量%で、
Cu:0.06%~2.8%、好ましくは0.10%~1.8%、さらに好ましくは0.50%~1.6%、
Mg:最大で1.5%、好ましくは0.10%~1.2%、さらに好ましくは0.2%~0.9%、
Mn:最大で0.5%、好ましくは0.10%~0.5%、
Si:最大で0.5%、好ましくは最大で0.3%、
Fe:最大で0.4%、好ましくは最大で0.3%、
Cr:最大で0.25%、
V:最大で0.25%、
Zr:最大で0.2%、
Ag:最大で0.80%、好ましくは最大で0.40%、さらに好ましくは最大で0.10%、
Zn:最大で0.3%、好ましくは最大で0.15%、
Ti:最大で0.2%、及び、
残りは不可避不純物とアルミニウムとを含む組成を有するアルミニウム合金に由来する。好ましくは、不可避不純物はそれぞれ最大で0.05%であり、合計は最大で0.15%である。
【0052】
Mgは最大で約1.5%、好ましくは最大で約1.2%の範囲でAl-Cuアルミニウム合金クラッド層に添加されて、AlCuMg析出物の析出及び/または固溶体硬化によってクラッド層に追加の強度を提供することができる。一実施形態では、Mg含量の上限は約0.9%、さらに好ましくは約0.80%である。Mg添加の好ましい下限は約0.10%、さらに好ましくは約0.20%、最も好ましくは約0.35%である。
【0053】
任意で、クラッド層におけるMg含量は最大で1.5%(例えば、0.10%~1.2%または0.2%~0.9%)であることができる。任意で、クラッド層におけるMg含量は約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.55%、0.6%、0.65%、0.7%、0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、または1.5%であることができる。
【0054】
一実施形態では、Cuが主要な合金化元素のままであるようにMg含量はAl-Cu合金におけるCu含量よりも少ない。
【0055】
Mnは最大で0.5%、好ましくは最大で0.4%の範囲にてAl-Cuアルミニウム合金クラッド層に添加されて、熱間圧延前の均質化及び/または予熱の間での分散質の形成及びどの分散質が粒界を動けなくするかを介して粒状構造を制御することができる。その目的のための好ましい下限は約0.10%、さらに好ましくは約0.15%である。Mnは、クラッド層(複数可)にて小さな粒度を維持することに寄与し、後に続く成形作業後のさらに良好な表面外観及びさらに少ない表面亀裂を提供する。Mnの存在は、β-AlFeSi相(AlFeSi)からα-AlFeSi(AlFeSi)への変換を促進し、α-AlFeSi相を安定化するので、Al-Cuアルミニウム合金クラッド層の外側表面の陽極酸化の品質を向上させる。Mnの存在はまた、Al-Cuアルミニウム合金の腐食電位を有利に増大させ、添加されるMnの量を調整して、適用に応じて2XXXシリーズのコア合金と外側クラッド層(複数可)との間の腐食電位の差異を最適化することができ、それによって圧延複合航空宇宙製品の耐食性を強化する。
【0056】
任意で、クラッド層におけるMn含量は最大で0.5%(たとえば、0.10%~0.5%または0.2%~0.4%)である。任意で、クラッド層におけるMn含量は約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、または0.5%であることができる。
【0057】
別の実施形態では、Mn含量は最大で0.2%、好ましくは最大で0.15%、さらに好ましくは最大で0.10%であるので、意図的に添加することはなく、Feの存在と組み合わせた有害な粗大金属間化合物の形成を制限する。
【0058】
鉄は一般的な不純物であり、最大で約0.4%までの範囲で存在することができる。Fe含量が0.4%を超えると、大きなFe含有金属間化合物が形成される場合があり、金属間化合物のせいで流脈パターンが発生する場合があり、または陽極酸化物層が濁る場合がある。一実施形態では、Fe含量は約0.3%の最大値に保たれる。一実施形態では、Fe含量は少なくとも0.10%である。
【0059】
任意で、クラッド層におけるFe含量は最大で0.4%(例えば、最大0.3%または0.06~0.35%)である。任意で、クラッド層におけるFe含量は約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、または0.4%であることができる。
【0060】
ケイ素(Si)は一般的な不純物であり、最大で約0.5%までの範囲で存在することができ、好ましくは約0.3%の最大値に保たれる。さらに好ましいSiレベルは、最大で約0.20%までの範囲である。一実施形態では、陽極酸化後の色の濃さと安定性を得るために、Siレベルは少なくとも約0.05%であり、好ましくは少なくとも約0.07%である。
【0061】
任意で、クラッド層におけるSi含量は最大で0.5%(たとえば、0.10%~0.5%または0.15%~0.3%)である。任意で、クラッド層におけるSi含量は約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、または0.5%であることができる。
【0062】
アルミニウム合金の強度を高めるために、且つ結晶粒組織の制御のためにCrは最大で0.25%まで添加されてもよい。好ましくは、それは最大で0.20%まで、さらに好ましくは、0.15%までで存在する。一実施形態では、Crは不可避の不純物の中にある。
【0063】
場合によっては、クラッド層におけるCr含量は最大で0.25%(例えば、最大で0.20%、最大で0.09%、最大で0.04%、0.05%~0.25%、0.1%~0.25%、または0.15%~0.2%)であることができる。任意で、Cr含量は0.01%、0.05%、0.1%、0.15%、0.2%、または0.25%であることができる。
【0064】
アルミニウム合金の強度を高めるために、且つ結晶粒組織の制御のためにVは最大で0.25%まで添加されてもよい。好ましくは、それは最大で0.20%、さらに好ましくは最大で0.15%存在する。一実施形態では、Vは不可避の不純物の中にあり、好ましくは最大で0.02%のみ、さらに好ましくは最大で0.01%のみである。
【0065】
場合によっては、クラッド層におけるV含量は最大で0.25%(例えば、最大で0.20%、最大で0.09%、最大で0.04%、0.05%~0.25%、0.1%~0.25%、または0.15%~0.2%)であることができる。任意で、V含量は0.01%、0.05%、0.1%、0.15%、0.2%、または0.25%であることができる。
【0066】
Agは最大で0.80%(例えば、最大で0.40%または最大で0.15%)までの量でクラッド層に存在することができる。場合によっては、クラッド層におけるAg含量は約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.55%、0.6%、0.65%、0.7%、0.75%または0.8%であることができる。
【0067】
Znは本明細書に記載されている利点から逸脱することなく最大で0.3%、好ましくは最大で0.15%で存在することができる。Znによってアルミニウム合金はさらに陽極性になり、腐食電位をさらに低い値に調整するためにZnを使用することができる。一実施形態では、アルミニウム合金は少なくとも0.05%のZnを含む。一実施形態では、Znは不可避の不純物の中にある。
【0068】
いくつかの例では、クラッド層におけるZn含量は最大で0.3%(例えば、最大で0.25%、最大で0.20%、最大で0.15%、最大で0.09%、最大で0.04%、0.05%~0.3%、0.1%~0.25%、または0.15%~0.2%)であることができる。任意で、Zn含量は0.01%、0.05%、0.1%、0.15%、0.2%、0.25%または0.3%であることができる。
【0069】
本明細書に記載されている利点から逸脱することなく結晶粒組織を制御するためにZrは最大で0.2%、好ましくは最大で0.1%まで添加されてもよい。好ましい実施形態では、Zrは不可避の不純物の中にあり、好ましくは最大で0.02%のみ、さらに好ましくは最大で0.01%のみである。高レベルでは、それはアルミニウム合金にて有害な金属間化合物粒子を形成してもよい。
【0070】
場合によっては、クラッド層におけるZrは最大で0.2%(例えば、最大で0.15%、最大で0.1%、0.05%~0.2%、または0.05%~0.15%)であることができる。任意で、Zr含量は0.01%、0.05%、0.1%、0.15%、または0.2%であることができる。
【0071】
Tiはインゴットと溶接継手双方の凝固中の結晶粒微細化剤である。Tiレベルは約0.2%を超えてはならず、好ましくは最大で0.10%までであり、Tiのさらに好ましい範囲は約0.005%~0.07%である。Tiは、唯一の元素として、または当該技術分野で知られているようにホウ素または炭素のいずれかとともに、例えば、TiB、Ti-Cなどのように添加することができ、結晶粒度制御のために鋳造助剤として役立つ。
【0072】
場合によっては、クラッド層におけるTi含量は最大で0.2%(例えば、最大で0.15%、最大で0.1%、0.05%~0.2%、または0.05%~0.15%)であることができる。任意で、Ti含量は0.01%、0.05%、0.1%、0.15%、または0.2%であることができる。
【0073】
一実施形態では、Al-Cuアルミニウム合金クラッド層は、重量%にて0.06%~2.8%、好ましくは0.10%~1.8%のCu、最大で1.5%までのMg、最大で0.5%までのMn、最大で0.5%までのSi、最大で0.4%までのFe、最大で0.25%までのCr、最大で0.25%までのV、最大で0.2%までのZr、最大で0.3%までのZn、最大で0.2%までのTiと、残りはアルミニウム及び不純物とから成る組成を有するアルミニウム合金で作られ、好ましいさらに狭い組成範囲は本明細書に記載され、特許請求されているとおりである。
【0074】
一実施形態では、2XXXシリーズのコア層は重量%にて、
Cu:1.9%~7.0%、好ましくは3.0%~6.8%、さらに好ましくは3.2%~4.95%、
Mg:0.30%~1.8%、好ましくは0.35%~1.8%、さらに好ましくは0.6%~1.8%、
Mn:最大で1.2%、好ましくは0.2%~1.2%、さらに好ましくは0.25%~0.9%、
Si:最大で0.40%、好ましくは最大で0.25%、
Fe:最大で0.40%、好ましくは最大で0.25%、
Cr:最大で0.35%、好ましくは最大で0.10%、
Zn:最大で1.0%、好ましくは最大で0.25%、
Ti:最大で0.15%、好ましくは0.01%~0.10%、
Zr:最大で0.25、好ましくは最大で0.12%、
V:最大で0.25%、
Li:最大で2.0%、
Ag:最大で0.80%、
Ni:最大で2.5%、及び、
残りはアルミニウムと不純物とを含む組成を有するアルミニウム合金に由来する。通常、そのような不純物はそれぞれ0.05%未満で存在し、合計で0.15%未満である。
【0075】
任意で、2XXXシリーズのコア層は重量%にて、
Cu:1.9%~7.0%、好ましくは3.0%~6.8%、さらに好ましくは3.2%~4.95%、
Mg:0.30%~1.8%、好ましくは0.6%~1.8%、さらに好ましくは0.8%~1.8%、
Mn:最大で1.2%、好ましくは0.2%~1.2%、さらに好ましくは0.25%~0.9%、
Si:最大で0.40%、好ましくは最大で0.25%、
Fe:最大で0.40%、好ましくは最大で0.25%、
Cr:最大で0.35%、好ましくは最大で0.10%、
Zn:最大で0.4%、好ましくは最大で0.25%、
Ti:最大で0.15%、好ましくは0.01%~0.10%、
Zr:最大で0.25、好ましくは最大で0.12%、
V:最大で0.25%、好ましくは最大で0.05%、及び、
残りはアルミニウムと不純物とを含む組成を有する、好ましくはそれらから成る組成を有するアルミニウム合金に由来する。通常、そのような不純物はそれぞれ0.05%未満で存在し、合計で0.15%未満である。
【0076】
コア層におけるCu含量は1.9%~7.0%(例えば、2.0%~7.0%、3.0%~6.8%、3.0%~6.0%、または3.2%~4.95%)であることができる。任意で、コア層におけるCu含量は約1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%、4.0%、4.1%、4.2%、4.3%、4.4%、4.5%、4.6%、4.7%、4.8%、4.9%、5.0%、5.1%、5.2%、5.3%、5.4%、5.5%、5.6%、5.7%、5.8%、5.9%、6.0%、6.1%、6.2%、6.3%、6.4%、6.5%、6.6%、6.7%、6.8%、6.9%、または7.0%であることができる。
【0077】
コア層におけるMg含量は0.30%~1.8%(例えば、0.35%~1.8%または0.6%~1.8%)であることができる。任意で、コア層におけるMg含量は約0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.55%、0.6%、0.65%、0.7%、0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、または1.8%であることができる。
【0078】
コア層におけるMn含量は最大で1.5%(たとえば、0.2%~1.2%または0.25%~0.9%)であることができる。任意で、コア層におけるMn含量は約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.55%、0.6%、0.65%、0.7%、0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%、1.0%、1.1%、または1.2%であることができる。
【0079】
コア層におけるSi含量は最大で0.4%(たとえば、最大で0.3%、最大で0.25%、または0.06~0.35%)であることができる。任意で、コア層におけるSi含量は約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、または0.4%であることができる。
【0080】
任意で、コア層におけるFe含量は最大で0.4%(例えば、最大で0.3%、最大で0.25%または0.06~0.35%)である。任意で、コア層におけるFe含量は約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、または0.4%であることができる。
【0081】
コア層におけるCr含量は、最大で0.35%(例えば、最大で0.20%、最大で0.10%、最大で0.09%、最大で0.04%、0.05%~0.25%、0.1%~0.25%、または0.15%~0.2%)であることができる。任意で、Cr含量は0.01%、0.05%、0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%または0.35%であることができる。
【0082】
コア層におけるZn含量は最大で1.0%(例えば、最大で0.25%、0.10%~1.2%、または0.2%~0.9%)であることができる。任意で、コア層におけるZn含量は約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.55%、0.6%、0.65%、0.7%、0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%、または1.0%であることができる。
【0083】
コア層におけるTi含量は最大で0.15%(例えば、最大で0.10%、最大で0.01%、0.05%~0.2%、または0.05%~0.15%)であることができる。任意で、Ti含量は0.01%、0.05%、0.1%、または0.15%であることができる。
【0084】
コア層におけるZr含量は最大で0.25%(例えば、最大で0.15%、最大で0.12%、最大で0.1%、0.05%~0.2%、または0.05%~0.15%)であることができる。任意で、Zr含量は0.01%、0.05%、0.1%、0.15%、0.2%、また0.25%であることができる。
【0085】
コア層におけるV含量は最大で0.25%(例えば、最大で0.20%、最大で0.09%、最大で0.04で%、0.05%~0.25%、0.1%~0.25%、または0.15%~0.2%)であることができる。任意で、V含量は0.01%、0.05%、0.1%、0.15%、0.2%、または0.25%であることができる。
【0086】
コア層におけるLi含量は最大で2.0%(例えば、最大で1.5%、0.10%~1.2%、または0.2%~0.9%)であることができる。任意で、コア層におけるLi含量は約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.55%、0.6%、0.65%、0.7%、0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%または2.0%であることができる。
【0087】
Agは最大で0.80%(例えば、最大で0.40%または最大で0.15%)までの量にてクラッド層に存在することができる。場合によっては、クラッド層におけるAg含量は約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.55%、0.6%、0.65%、0.7%、0.75%または0.8%であることができる。
【0088】
コア層におけるNi含量は最大で2.5%(たとえば、最大で2.0%、最大で1.5%、0.10%~2.5%、または0.2%~2.0%)であることができる。任意で、コア層におけるNi含量は約0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.1%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.55%、0.6%、0.65%、0.7%、0.75%、0.8%、0.85%、0.9%、0.95%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.1%、2.2%、2.3%、2.4%または2.5%であることができる。
【0089】
好ましい実施形態では、2XXXシリーズのコア層はXが0、1、2、3、4、5、6、7、または8に等しいAA2X24シリーズのアルミニウム合金に由来する。特に好ましいアルミニウム合金はAA2024、AA2524、及びAA2624の組成範囲内にある。
【0090】
一実施形態では、2XXXシリーズのコア層で、且つ片面または両面にてAl-Cu合金クラッド層によって金属被覆された2XXXシリーズのコア層はT3、T351、T39、T42、T8またはT851の状態で提供される。
【0091】
2XXXシリーズのコア層で、且つ片面または両面にてAl-Cu合金クラッド層によって金属被覆された2XXXシリーズのコア層は、固溶化熱処理されていない状態、例えば、「F」調質またはアニーリングされた「O」調質で使用者に提供され、次いで成形され、固溶化熱処理され、必要とされる状態、例えば、T3、T351、T39、T42、T8またはT851の調質に時効され得る
【0092】
提供されているのはまた、本明細書に記載されている圧延複合航空宇宙製品を製造する方法であって、該方法は
(a)複合航空宇宙製品のコア層を形成するための2XXXシリーズアルミニウム合金のインゴットまたは圧延原料を提供する工程と、
(b)当該2XXXシリーズアルミニウム合金のインゴットを400℃~510℃の範囲の温度で少なくとも2時間均質化する工程と、
(c)2XXXシリーズのコアアルミニウム合金上に外側クラッド層を形成するためのAl-Cuアルミニウム合金のインゴットまたは圧延クラッドライナーを提供する工程、任意で、2XXXシリーズのコアアルミニウム合金の各面上にクラッド層を形成するためにAl-Cuアルミニウム合金の2つのインゴットまたは2つの圧延クラッドライナーが提供される工程と、
(d)任意で、少なくとも約400℃の範囲の温度で、好ましくは約400℃~510℃の範囲の温度で少なくとも0.5時間、Al-Cuアルミニウム合金のインゴット(複数可)を均質化するまたは予熱する工程と、
(e)好ましくは熱間圧延及び任意でそれに続く冷間圧延によって、Al-Cuアルミニウム合金層(複数可)を2XXXシリーズのコア合金層に圧延接合して圧延接合製品を形成する工程と、
(f)バッチ式作業または連続式作業のいずれかで約450℃~510℃の範囲の温度にて圧延接合製品を固溶化熱処理する工程と、
(g)固溶化熱処理された圧延接合製品を約100℃未満に、好ましくは周囲温度に冷却する工程と、
(h)任意で、固溶化熱処理された圧延接合製品を、好ましくはその元の長さの約0.5%~8%の範囲、好ましくは約0.5%~6%の範囲、さらに好ましくは約0.5%~4%、最も好ましくは約0.5%~3%の範囲にて冷延伸によって延伸する工程と、
(i)冷却された圧延接合製品を天然時効及び/または人工時効によって時効させる工程と、を含む。好ましい実施形態では、時効は2XXXシリーズのコア層をT3、T351、T39、T42、T8またはT851の調質にする。時効はAl-Cu合金クラッド層を2XXXシリーズのコア層と同じ調質にする。
【0093】
本明細書に記載されているような方法の一実施形態では、次の加工工程(j)にて、圧延複合航空宇宙製品は周囲温度または高温での成形プロセスで単軸湾曲または2軸湾曲のうちの少なくとも一方を有する成形製品に形成される。
【0094】
方法の代替的な実施形態では、工程(e)にて好ましくは熱間圧延及び任意でそれに続く冷間圧延によってAl-Cuアルミニウム合金(複数可)を2XXXシリーズのコア合金に圧延接合して圧延接合製品を形成した後、周囲温度または高温での圧延接合製品は成形プロセスにて、単軸湾曲または2軸湾曲のうちの少なくとも一方を有する成形製品に成形され、続いて固溶化熱処理され、その後、最終調質まで時効される。
【0095】
成形プロセスは、曲げ作業、圧延成形、延伸成形、時効クリープ成形、深絞り、及び高エネルギーハイドロフォーミングの群から選択される成形作業による、特に爆発成形または放電成形によるものであることができる。
【0096】
一実施形態では、高温での成形プロセスまたは成形作業は約140℃~200℃の範囲の温度で実施され、好ましくは圧延複合航空宇宙製品は約1~50時間の範囲の時間、成形温度で保持される。好ましい実施形態では、高温での成形は時効クリープ成形作業による。時効クリープ成形は、時効熱処理中に部品を特定の形状に拘束するプロセスまたは操作であり、部品が応力を開放し、輪郭、例えば、単一湾曲または二重湾曲を伴う胴体外板に対してクリープが生じるのを可能にする。
【0097】
一実施形態では、参照によって本明細書に組み込まれる特許文献US-2014/036699-A1に開示されているように、固溶化熱処理(SHT)を受けた後、且つ所定の形状に成形する前の本明細書に記載されている圧延複合航空宇宙製品が、圧延複合航空宇宙製品にて少なくとも25%の冷間加工を誘導するSHT後冷間加工工程を受け入れ、特に冷間加工が圧延航空宇宙製品の最終規格への冷間圧延を含むことは本開示から除外される。
【0098】
本明細書に記載されている一態様は、圧延航空宇宙用クラッド製品を形成するための、2XXXシリーズアルミニウム合金の一方または双方の表面上のクラッド層として本明細書に記載され、特許請求されているAl-Cuアルミニウム合金の使用に関する。
【0099】
さらなる態様では、本明細書で提供されているのは、本明細書に記載されているような圧延複合航空宇宙製品と、リベット打ちまたは溶接作業によって圧延複合航空宇宙製品に接合される少なくとも1つのアルミニウム合金補強要素とを含む溶接構造物である。
【0100】
本開示はまた、本明細書に記載されているような圧延複合航空宇宙製品と、リベット打ちまたは溶接作業によって、例えば、レーザービーム溶接または摩擦撹拌溶接によって圧延複合航空宇宙製品に接合される少なくとも1つのアルミニウム合金補強要素、好ましくは縦通材とを含む航空機の溶接構造物部材にも関する。
【0101】
それはまた、胴体パネルがレーザービーム溶接(「LBW」)または摩擦撹拌溶接(「FSW」)によって、例えば、突き合わせ溶接によって互いに接合される溶接胴体構造物にも関する。
【0102】
本明細書に記載されている製品はまた、その胴体が、全体的または部分的に、航空機の種々の構造部分に組み込まれてもよい本明細書に記載されている圧延複合航空宇宙製品から構築されている、航空機または宇宙船も含む。例えば、種々の開示されている実施形態は、主翼の組み立てにおける構造的部分及び/または尾翼の組み立て(尾部)における構造的部分を形成するために使用されてもよい。航空機は一般に、商業用旅客機または貨物機を代表する。代替的な実施形態では、本明細書に記載されている製品は他の型の飛行体にも組み込まれてもよい。そのような飛行体の例には、有人または無人の軍事用航空機、回転翼航空機、またはさらに弾道飛行体が挙げられた。
【0103】
本明細書に記載されている圧延複合航空宇宙製品は航空機のための部材、例えば、胴体部品もしくは胴体パネル、または例えば、翼部品もしくは翼パネルに成形されることができ、航空機は記載されている製品の利点を利用することができる。言及される成形は、航空機、航空宇宙または他の車両用のパネルまたは他の部材を成形するための、曲げ、延伸成形、機械加工および当該技術分野で知られている他の成形作業を含むことができる。曲げまたは他の塑性変形を含む形成は室温でまたは高温で実施することができる。
【実施例0104】
図1は、本明細書で示され、特許請求されている、Al-Cuアルミニウム合金のAl-Cuアルミニウム合金クラッド層30を各面に有する2XXXシリーズのコア合金層20の3層構造から成る圧延複合航空宇宙製品10を説明している。別の実施形態では、2XXXシリーズのコア合金はAl-Cuアルミニウム合金クラッドライナーによって片面のみまたは片面にて金属被覆されている。
【0105】
図2は、本明細書に示され、特許請求されている、Al-Cuアルミニウム合金クラッド層30を各面上に有する2XXXシリーズのコア合金層20から成る5層構造を有する圧延複合航空宇宙製品10を説明しており、Al-Cuアルミニウム合金クラッド層30が圧延複合航空宇宙製品10の外層を形成するように、別の異なるアルミニウム合金の中間ライナーまたはクラッド層40がコア合金層20とAl-Cuアルミニウム合金クラッド層30との間に入れられる。一実施形態では、中間ライナーまたはクラッド層40は1XXXシリーズのアルミニウム合金由来のアルミニウム合金でできている。
【0106】
図3は、圧延複合航空宇宙製品を製造するための本明細書に記載されているプロセスのいくつかの実施形態の概略フロースケジュールである。プロセス工程1では、インゴットは、複合航空宇宙製品のコア合金を形成する2XXXシリーズ合金の鋳造物であり、これは任意で、工程2にて剥ぎ取られて、圧延インゴットの鋳造したままの表面近くの偏析領域を取り除き、製品の平坦性を高めることができる。プロセス工程3では、圧延インゴットは均質化される。プロセス工程4にて並行して、インゴットは複合航空宇宙製品のコア合金の表面上、及び任意でコア合金の両面上に少なくとも1つのクラッド層を形成するためのAl-Cuアルミニウム合金の鋳造物である。また、このインゴットは任意で、工程5にて剥ぎ取られ得る。プロセス工程6では、Al-Cu合金は熱間圧延開始温度に予熱され、その後、クラッド層は通常、コアよりもはるかに薄いため、プロセス工程7にて熱間圧延されてライナープレート(複数可)を形成する。プロセス工程8では、2XXXコア合金と、コア合金の一方または双方の面上のAl-Cuアルミニウム合金のライナープレートとは好ましくは熱間圧延によって圧延接合される。所望の最終規格に応じて、圧延接合製品はプロセス工程9にて最終規格、例えば、シート製品または薄い規格のプレート製品に冷間圧延することができる。プロセス工程10では、圧延航空宇宙製品は固溶化熱処理され、次にプロセス工程11にて冷却され、好ましくはプロセス工程12にて延伸される。
【0107】
一実施形態では、冷却された製品が成形プロセス13にて形成され、プロセス工程14では最終調質、例えばT3またはT8の調質まで時効、すなわち、天然時効または人工時効が行われる。
【0108】
一実施形態では、成形プロセス13とプロセス工程14の時効とを組み合わせることができる。例えば、形成作業は2XXXシリーズのコア及びAl-Cu合金クラッド層(複数可)の双方の人工時効も生じるように、約140℃~200℃の範囲の温度にて好ましくは約1~50時間の範囲の時間で実施される。
【0109】
一実施形態では、冷却された製品はプロセス工程14にて所望の調質まで時効すなわち、天然時効または人工時効が行われ、その後、成形プロセス13にて所定の形状の成形された製品に成形される。
【0110】
代替的な実施形態では、2XXXシリーズのコア及びAl-Cuアルミニウム合金クラッド層(複数可)を最終規格まで圧延接合した後、圧延製品は、成形プロセス13にて所定の形状に成形され、プロセス工程15にて固溶化熱処理が行われ、プロセス工程11にて冷却され、続いてプロセス工程14にて最終調質、例えば、T3またはT8の調質までの時効、すなわち、天然時効または人工時効が行われる。
【0111】
実例
実例1は、2XXXシリーズのコア層と、前記2XXXシリーズのコア層の少なくとも一方の表面に連結されるAl-Cu合金クラッド層とを含む圧延複合航空宇宙製品であって、前記Al-Cu合金クラッド層は0.06%~2.8%のCuを含むアルミニウム合金のものである、前記圧延複合航空宇宙製品である。
【0112】
実例2は、前記Al-Cu合金クラッド層が0.10%~1.8%のCuを含むアルミニウム合金のものである、先行するまたは後続の任意の実例に記載の圧延複合航空宇宙製品である。
【0113】
実例3は、前記Al-Cu合金クラッド層が重量%にて
Cu:0.06%~2.8%、
Mg:最大で1.5%、
Mn:最大で0.5%、
Si:最大で0.5%、
Fe:最大で0.4%、
Cr:最大で0.25%、
V:最大で0.25%、
Zr:最大で0.2%、
Ag:最大で0.80%、
Zn:最大で0.3%、
Ti:最大で0.2%、と、
残りは不可避不純物及びアルミニウムとの組成を有するアルミニウム合金である、先行するまたは後続の任意の実例に記載の圧延複合航空宇宙製品である。
【0114】
実例4は、前記Cu含量が0.2%~1.5%の範囲にある、先行するまたは後続の任意の実例に記載の圧延複合航空宇宙製品である。
【0115】
実例5は、前記Mg含量が0.20%~1.2%の範囲にある、先行するまたは後続の任意の実例に記載の圧延複合航空宇宙製品である。
【0116】
実例6は、前記Al-Cuアルミニウム合金クラッド層が-710mV以下の腐食電位を有する、先行するまたは後続の任意の実例に記載の圧延複合航空宇宙製品である。
【0117】
実例7は、前記Al-Cu合金クラッド層が圧延接合によって前記2XXXシリーズのコア層の前記少なくとも一方の表面に連結される、先行するまたは後続の任意の実例に記載の圧延複合航空宇宙製品である。
【0118】
実例8は、前記Al-Cu合金クラッド層が前記圧延複合航空宇宙製品の総厚さの1%~20%の範囲の厚さを有する、先行するまたは後続の任意の実例に記載の圧延複合航空宇宙製品である。
【0119】
実例9は、2XXXシリーズのコア層と、前記2XXXシリーズのコア層の一方の表面または双方の表面に連結されるAl-Cu合金クラッド層とから成る、先行するまたは後続の任意の実例に記載の圧延複合航空宇宙製品である。
【0120】
実例10は、中間ライナーが、前記2XXXシリーズのコア層と前記Al-Cu合金クラッド層との間に配置され、前記中間ライナーは前記Al-Cu合金クラッド層とは異なるアルミニウム合金で作られる、先行するまたは後続の任意の実例に記載の圧延複合航空宇宙製品である。
【0121】
実例11は、前記中間ライナーが1XXXシリーズのアルミニウム合金で作られる、先行するまたは後続の任意の実例に記載の圧延複合航空宇宙製品である。
【0122】
実例12は、前記コア層の前記2XXXシリーズの合金が重量%で
Cu:1.9%~7.0%、
Mg:0.30%~1.8%、
Mn:最大で1.2%、
Si:最大で0.40%、
Fe:最大で0.40%、
Cr:最大で0.35%、
Zn:最大で1.0%、
Ti:最大で0.15%、
Zr:最大で0.25、
V:最大で0.25%、
Li:最大で2.0%、
Ag:最大で0.80%、
Ni:最大で2.5%、及び、
残りはアルミニウム及び不純物との組成を有する、先行するまたは後続の任意の実例に記載の圧延複合航空宇宙製品である。
【0123】
実例13は、前記2XXXシリーズのコア層が2X24シリーズの合金に由来する、先行するまたは後続の任意の実例に記載の圧延複合航空宇宙製品である。
【0124】
実例14は、少なくとも前記2XXXシリーズのコア層がT3、T351、T39、T42、T8またはT851の調質である、先行するまたは後続の任意の実例に記載の圧延複合航空宇宙製品である。
【0125】
実例15は、前記圧延複合航空宇宙製品が0.8mm~50.8mmの総厚さを有する、先行するまたは後続の任意の実例に記載の圧延複合航空宇宙製品である。
【0126】
実例16は、前記圧延複合航空宇宙製品が航空宇宙用構造部品である、先行するまたは後続の任意の実例に記載の圧延複合航空宇宙製品である。
【0127】
実例17は、先行するまたは後続の任意の実例に記載の圧延複合航空宇宙製品を製造する方法であって、以下の工程、
前記複合航空宇宙製品の前記コア層を形成するための2XXXシリーズアルミニウム合金のインゴットを提供する工程と、
前記2XXXシリーズアルミニウム合金の前記インゴットを400℃~510℃の範囲の温度で少なくとも2時間均質化する工程と、
前記2XXXシリーズのコアアルミニウム合金上に外側クラッド層を形成するためのAl-Cuアルミニウム合金のインゴットまたは圧延クラッドライナーを提供する工程と、
任意で、外側クラッド層を形成する前記Al-Cuアルミニウム合金の前記インゴットを少なくとも400℃の範囲の温度で少なくとも0.5時間均質化するまたは予熱する工程と、
前記Al-Cuアルミニウム合金クラッド層を前記2XXXシリーズのコア合金に圧延接合して圧延接合製品を形成し、任意で冷間圧延がそれに続く工程と、
前記圧延接合製品を450℃~510℃の範囲の温度で固溶化熱処理する工程と、
前記固溶化熱処理された圧延接合製品を100℃未満に冷却する工程と、
任意で、前記固溶化熱処理され、冷却された圧延接合製品を延伸する工程と、前記冷却された圧延接合製品の時効を行う工程と、
を含む、前記方法である。
【0128】
実例18は、前記方法がさらに、前記固溶化熱処理され、冷却され、及び任意で延伸もされている圧延接合製品を成形プロセスにて一軸または二軸の湾曲を有する所定の形状製品に成形することを含む、先行するまたは後続の任意の実例に記載の方法である。
【0129】
実例19は、成形工程が前記時効工程の後に実施される、先行するまたは後続の任意の実例に記載の方法である。
【0130】
実例20は、前記成形工程及び前記時効工程が高温で1~50時間の範囲の時間、成形工程にて組み合わせられる、先行するまたは後続の任意の実例に記載の方法である。
【0131】
上記で引用されている特許、刊行物及び要約はすべて参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる。本発明の様々な実施形態が、本発明の様々な目的を実現させる中で説明されてきた。これらの実施形態は、本発明の原理の単なる例示であることが認識されるべきである。それらの多数の改変及び適応が、以下の特許請求の範囲で定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、当業者に容易に明らかとなるだろう。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-09-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延複合航空宇宙製品であって、2XXXシリーズのコア層と前記2XXXシリーズのコア層の少なくとも一方の表面に連結されるAl-Cu合金クラッド層を含み、前記Al-Cu合金クラッド層は0.06%~2.8%のCuを含むアルミニウム合金のものである、
前記圧延複合航空宇宙製品。
【外国語明細書】