(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170429
(43)【公開日】2024-12-10
(54)【発明の名称】不均一なストッパインターフェースを有するプランジャーロッドを備えた薬剤送達装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/20 20060101AFI20241203BHJP
A61M 5/24 20060101ALI20241203BHJP
A61M 5/28 20060101ALI20241203BHJP
A61M 5/315 20060101ALI20241203BHJP
A61M 5/19 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
A61M5/20 560
A61M5/24 530
A61M5/28 520
A61M5/315 580
A61M5/19
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024135249
(22)【出願日】2024-08-14
(62)【分割の表示】P 2021577467の分割
【原出願日】2020-06-26
(31)【優先権主張番号】19183155.1
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ベンディクス, クラウス
(72)【発明者】
【氏名】トルー, デーニエル パトリク ゴスケセン
(72)【発明者】
【氏名】ソーレンセン, ダン ノアートフト
(57)【要約】 (修正有)
【課題】1つ以上のピストンまたはストッパを動作させるのに必要な力を減少させるための手段を有する薬剤送達装置を提供する。
【解決手段】薬剤送達装置1であって、基準軸に沿って延在している貯蔵部本体21と、貯蔵部本体21内に配設された弾性ストッパ30と、を備える、薬剤貯蔵部20であって、弾性ストッパが、前部ストッパ端部と後部ストッパ端部34との間に延在しており、かつ貯蔵部本体の内壁との相互作用を封止するための複数の軸方向に離間された外周リブを有する、ストッパ本体を備える、薬剤貯蔵部と、内壁に対して弾性ストッパを変位させるためのプランジャーロッド構造10であって、プランジャーロッド構造が、基準軸に沿って延在しており、かつ後部ストッパ端部と接合するように適合された遠位端面を備える、プランジャーロッド構造と、を備える、薬剤送達装置を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達装置(1)であって、
-基準軸に沿って延在している貯蔵部本体(21)と、前記貯蔵部本体(21)内に配設された弾性ストッパ(30)と、を備える、薬剤貯蔵部(20)であって、前記弾性ストッパ(30)が、前部ストッパ端部(32)と後部ストッパ端部(34)との間に延在しており、かつ前記貯蔵部本体(21)の内壁(22)との相互作用を封止するための複数の軸方向に離間された外周リブ(33)を有する、ストッパ本体(31)を備える、薬剤貯蔵部(20)と、
-前記内壁(22)に対して前記弾性ストッパ(30)を変位させるためのプランジャーロッド構造(10)であって、前記プランジャーロッド構造(10)が、前記基準軸に沿って延在しており、かつ前記後部ストッパ端部(34)と接合するように適合された遠位端面(12、14)を備える、プランジャーロッド構造(10)と、を備え、
前記遠位端面(12、14)が、第1の力伝達部分(14)および第2の力伝達部分(12)を備え、前記第1の力伝達部分(14)が、前記第2の力伝達部分(12)を軸方向に先導し、かつ前記後部ストッパ端部(34)の周辺部分と相互作用するように適合されている、薬剤送達装置(1)。
【請求項2】
前記後部ストッパ端部(34)の前記周辺部分が、半円よりも小さい、請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項3】
前記第2の力伝達部分(12)が、前記基準軸に対して直交しており、前記第1の力伝達部分(14)が、前記第2の力伝達部分(12)から遠位に突出するスタッド(13)の一部を形成する、請求項1または2に記載の薬剤送達装置。
【請求項4】
前記スタッド(13)が、[1mm,2mm]の範囲の軸方向寸法を有する、請求項3に記載の薬剤送達装置。
【請求項5】
前記スタッド(13)が、2mmの最大放射方向寸法を有する、請求項3または4に記載の薬剤送達装置。
【請求項6】
前記スタッド(13)が、前記複数の軸方向に離間された外周リブ(33)のうちの1つと前記内壁(22)との間の界面で、前記後部ストッパ端部(34)に当接するように適合されている、請求項3~5のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項7】
ハウジング(2)をさらに備え、前記プランジャーロッド構造(10)が、前記ハウジング(2)に対して遠位に前記プランジャーロッド構造(10)を変位させるように解放可能な圧縮ばね要素(80)を収容するように適合された中空内部を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項8】
前記薬剤貯蔵部(20)が、前記弾性ストッパ(30)の遠位に配設された第2の弾性ストッパ(40)と、前記内壁(22)に対する前記弾性ストッパ(30)の変位中に流体流が前記第2の弾性ストッパ(40)を通過することを可能にするためのバイパスセクション(25)と、をさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療装置に関し、より具体的には、ピストンまたはストッパの変位によって減少され得る容量を有する貯蔵部を備えた薬剤送達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一部の医療治療領域内では、少なくとも2つの薬剤の併用投与を含む併用療法は、相乗的または相加的効果のために有利である。例えば、糖尿病ケアにおいて、2型糖尿病の管理では、特定のインスリンおよびglp-1産物の同時使用は、対象においてHbA1cレベルを減少させ、それによって、血糖管理を改善することが示されている。
【0003】
多くの薬剤は、身体内で有効であるために非経口的に投与されなければならず、これらのいくつか、例えば、インスリンおよびglp-1は、1回以上の用量を毎日皮下に送達することを必要とする場合がある。皮下薬剤送達は、多くの人々が皮膚を通して注射針を挿入するという考えを嫌うため、しばしば不快感と関連する。針恐怖症にさえ苦しんでいる人の数は不明であり、これらの人々は、特に複数回の毎日の注射療法から逃れたいという強い願望を持っている。
【0004】
したがって、1つの魅力的なシナリオは、単一の注射針を介して、薬剤を同時に、または実質的に同時に投与することによって、必要な皮膚浸透の数を減少させることである。一部の事例では、これは、活性成分の共製剤化によって達成可能であり、共製剤化生成物は、従来の注射装置を使用して投与される。他の場合では、例えば、活性成分が共製剤に適さない場合、個々の物質は、専用の発現手段の使用によって、単一の注射針を介して同時または連続的に発現され得る、二重チャンバーまたはマルチチャンバー、貯蔵装置の別個のチャンバーに格納される。
【0005】
特許文献1は、固定して取り付けられた皮下針を有するカートリッジを有する自動注射器の形態の二重チャンバー貯蔵装置の実施例を開示している。装置の使用前の状態では、カートリッジは、前方液体医薬を前部チャンバーに、および後方液体医薬を後部チャンバーに保持する。2つの液体は、中間ピストンによって分離され、後部チャンバーは、後方ピストンによって近位に封止される。使用中に、応力を受けたばねの放出に応答して、プランジャーを前方に付勢し、後方ピストンを押し、後方液体医薬を加圧して、後方ピストンの動きを中間ピストンに伝達する。最終的に、ばねがプランジャーに前方バイアスを提供し続けるにつれて、これは、皮下針を介して前方液体医薬の排出をもたらし、その後、遠位に配置されるバイパスセクションを介して後方液体医薬の排出をもたらす。
【0006】
特許文献2は、関連するIV注入針の適切な挿入を確実にするための吸引処置を可能にするピストンカップリング配設を有する手動操作の混合装置の形態の二重チャンバー貯蔵装置の実施例を開示している。装置の使用前の状態では、乾燥薬剤または液体が前部チャンバーに保持されており、液体が後部チャンバーに保持されている。2つの物質は、前部ピストンによって分離され、後部チャンバーは、ピストンロッドが延在する後部ピストンによって近位に封止される。使用中、ピストンロッドは手動で前進し、後部ピストンを切断し、後部チャンバー液体を加圧して、後部ピストンの動きを前部ピストンに伝達する。ユーザーがピストンロッドを前方に押し続けると、前部ピストンは、バイパスセクションに入り、圧力が後部チャンバー液体をバイパスに押し込み、前部ピストンを通過して前部チャンバーに入るため、動かなくなる。前部チャンバーでは、後部チャンバーが圧縮するにつれて2つの物質が混合する。後部ピストンが最終的に前部ピストンに到達し、物質が完全に混合されると、ユーザーは、ピストンロッドの継続的な前進によって混合物質を排出することができる。
【0007】
こうした装置の一般的な欠点は、保管中、経時的に、ピストン材料が貯蔵部材料に接着する傾向にあるという事実であり、これは、薬剤混合および/または排出を開始するために、著しい静電気摩擦を克服しなければならないことを意味する。後部チャンバー内の液体の圧縮不能性により、2つのピストンは、前部ピストンがバイパスセクションに到達するまで同時に移動する。結果として、この静止摩擦を克服するために必要な力は、実際には、個々のピストンを解放するために必要な力の総和である。
【0008】
手動で駆動されるピストンロッドの場合、ピストンが解放されているときの静止摩擦から運動摩擦への突然のシフトは、ユーザーが力入力を大幅に減少させることによって突然の加速を補償しようと試みるときに、ピストンの急激な前方運動を引き起こす可能性が高い。不快なユーザー体験であるだけでなく、実際には、後部チャンバー液体を前部チャンバーに過度に高速で移送することにつながる場合がある。前部チャンバーが乾燥粉末を担持して再構成される場合、移送プロセスは、望ましくない発泡にさえつながり得る。
【0009】
特許文献1の自動注射器のようなばね駆動式注射装置に関連して、十分な解放力の可用性を確実にするために、ばねは比較的強力である必要がある。これの欠点は、摩擦が動的になると、実際の薬剤排出に利用できる動力が非常に高くなり、不快なほど高速な送達につながる可能性があることである。さらに、強力なばねは、予荷重がかけられた状態での潜在的な中期間または長期間の保管期間中にクリープまたは破損を避けるために、より強力な接合注射装置部品を必要とし、注射装置のコストおよび重量の両方を増加させる。
【0010】
1つのピストンのみが動員される必要があり、かつ必要な解放力が比較的小さいにもかかわらず、貯蔵部材料へのピストン材料の記載された付着は、実際には、単一のチャンバー貯蔵部にとっても課題であり得る。したがって、静止摩擦を克服し、送達速度を制御することに関連する問題はまた、例えば、従来の薬剤カートリッジを用いる従来のシリンジおよび自動注射ペンなどの装置に関連する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,394,863号(Survival Technology,Inc.)
【特許文献2】国際公開第2010/139793号(Novo Nordisk A/S)
【発明の概要】
【0012】
先行技術の少なくとも1つの欠点を除去するかもしくは低減させること、または先行技術のソリューションに対する有用な代替案を提供することが、本発明の目的である。
【0013】
特に、本発明の目的は、1つ以上のピストンまたはストッパを動作させるのに必要な力を減少させるための手段を有する薬剤送達装置を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、薬剤投与手技全体を通して、より均一なピストン変位力を可能にする手段を有する薬剤送達装置を提供することである。
【0015】
本発明の開示では、上記の目的のうちの1つ以上に対処し、かつ/または、以下の文章から明らかである目的に対処する、態様および実施形態が記載される。
【0016】
一態様では、本発明は、請求項1に記載の薬剤送達装置を提供する。
【0017】
したがって、基準軸に沿って延在している貯蔵部本体と、貯蔵部本体内に配設された弾性ストッパと、を備える、薬物貯蔵部を備える、薬剤送達装置が提供される。弾性ストッパは、例えば、ISO 11040-5(2012)Prefilled syringes-part 5:Plunger stoppers for injectablesに明示されているように、前部ストッパ端部と後部ストッパ端部との間に延在しており、かつ貯蔵部本体の内壁との相互作用を封止するための複数の軸方向に離間された外周リブを有する、ストッパ本体を備える。薬剤送達装置は、内壁に対して弾性ストッパを変位させるためのプランジャーロッド構造をさらに備える。プランジャーロッド構造は、後部ストッパ端部と接合するように適合された遠位端面を備える。遠位端面は、第1の力伝達部分および第2の力伝達部分を備える。第1の力伝達部分は、第2の力伝達部分の遠位に位置付けられており、かつ後部ストッパ端部の周辺部分と相互作用するように適合されている。本文脈では、中央軸から離れるように横方向に所与の範囲を有する構造の「周辺部分」は、その横方向に沿った所与の範囲の半分以上が中央軸から離れて位置付けられている、その構造の一部分である。
【0018】
したがって、第1の力伝達部分は、プランジャーロッド構造が基準軸に沿って遠位に移動して、弾性ストッパを変位させるときに第2の力伝達部分を先導する。これにより、不均一な圧力が後部ストッパ端部に及ぼされ、ここで、最初に非ゼロ圧力が周辺部分上に及ぼされ、ゼロ圧力が後部ストッパ端部の残りの部分に及ぼされる。周辺部分への圧力は、内壁からの後部ストッパ材料の局所的な破損を生じさせ、その結果、第2の力伝達部分が後部ストッパ端部に到達したときに、バルクストッパの変位が、一部の粘着性が既に克服されたためにより容易に達成される。貯蔵部本体からの外周リブが順次分離された結果として、弾性ストッパを起動するために必要な最大力が減少し、薬剤送達装置との完全な薬剤排出作用に対する全体的な力プロファイルは、より均質である。
【0019】
遠位端面は、所望の効果を得るために様々な方法で設計されてもよいが、概して、その効果は、第1の力伝達部分の位置および構成と相関する。例えば、後部ストッパ端部が中心を有する円形である場合、第1の力伝達部分は、後部ストッパ端部が交差する円の半径の半分または3分の2を超える中心からの放射方向距離に位置付けられた後部ストッパ端部の領域に当接するように配設されてもよい。第1の力伝達部分と後部ストッパ端部との間の接触領域が、貯蔵部本体の内壁に近いほど、解放力の意図された減少に相対して、第1の力伝達部分によって提供される圧力の影響が大きくなる。同様に、例えば、周辺部分は、局所的な圧力効果を最大化するために、半円よりも小さいサイズであってもよい。
【0020】
本発明の例示的な実施形態では、第1の力伝達部分は、[1mm,2mm]の範囲の放射状の範囲を有する。これらの実施形態のうちの特定の部分では、第1の力伝達部分は、2mmまたは約2mmの放射状の範囲を有する。
【0021】
第1の力伝達部分および第2の力伝達部分は、後部ストッパ端部の総表面積と実質的に等しい蓄積表面積を有してもよい。それによって、弾性ストッパは、後部ストッパ端部全体または実質的に全体にわたって変位中に支持される。
【0022】
第2の力伝達部分は、基準軸に対して直交であってもよく、第1の力伝達部分は、第2の力伝達部分から遠位に突出するスタッド部材の一部を形成してもよい。したがって、後部ストッパ端部の大部分と相互作用するプランジャーロッド構造の表面は、それに適合し、薬剤貯蔵部におけるバルク前進中に弾性ストッパが傾くことがないことを確実にしている。
【0023】
スタッドは、複数の軸方向に離間された外周リブのうちの1つと内壁との間の界面で後部ストッパ端部に当接するように適合されてもよく、第1の力伝達部分によって提供される初期圧力の効果を最大化する。
【0024】
本発明の例示的な実施形態では、スタッドは、[1mm,2mm]の範囲の軸方向寸法を有する。
【0025】
遠位端面は、別の方法として、遠位端面の周辺部分に波頭部を有する波状のプロファイルを示すことができる。次に、波頭部は、第1の力伝達部分を構成し、第2の力伝達部分を構成する遠位端面の残りの部分を軸方向に先導する。
【0026】
遠位端面は、代替的に、放物線プロファイルを示してもよく、この場合、第1の力伝達部分は、後部ストッパ端部の直径の方向に対向する周辺部分上に圧力を印加するように適合されており、それによって、最初に、2つの異なる場所で、貯蔵部本体の内壁からのストッパ材料の局所的な解放を引き起こす。
【0027】
本発明の例示的な実施形態では、薬剤送達装置は、ハウジングをさらに備え、プランジャーロッド構造は、ハウジングに対して遠位にプランジャーロッド構造を変位させるように解放可能な圧縮ばね要素を収容するように適合された中空内部を備える。
【0028】
薬剤貯蔵部は、弾性ストッパの遠位に配設された第2の弾性ストッパと、内壁に対する弾性ストッパの変位中に流体流が第2の弾性ストッパを通過することを可能にするためのバイパスセクションと、をさらに備え得る。その場合、薬剤貯蔵部は、上述のデュアルチャンバータイプのものであり、2つの弾性ストッパが同時に動員されなければならないという事実の結果として、通常、比較的大きな解放力を示す。本明細書に定義されるタイプのプランジャーロッド構造では、薬剤の排出作用を実施するための最大入力力は、大幅に減少され得る。
【0029】
別の態様では、本発明は、前部ストッパ端部と後部ストッパ端部との間に軸方向に延在しており、かつ薬剤貯蔵部の壁に沿って複数の軸方向に離間した外周シーリングリブを有するストッパ本体を備えるタイプの弾性ストッパを変位させるためのプランジャーロッド構造であって、プランジャーロッド構造が、後部ストッパ端部と接合するように適合された遠位端面を備える、プランジャーロッド構造を提供し、ここで、遠位端面は、第1の力伝達部分および第2の力伝達部分を備え、第1の力伝達部分は、遠位端面の周辺で第2の力伝達部分を軸方向に先導する。
【0030】
こうしたプランジャーロッド構造は、後部ストッパ端部の残りの部分と相互作用する前に、後部ストッパ端部の周辺部分と係合し、その周辺部分に軸方向力を印加し、それによって、薬剤貯蔵部の壁からのシーリングリブの分離を順次提供し、結果として、より低い軸方向入力力を要求して、弾性ストッパを動作させる。プランジャーロッド構造は、上述のように具体的に構成されてもよい。
【0031】
本発明に関連して記載されるような弾性ストッパは、すべてまたは部分的に弾性材料で作製され得、外表面が貯蔵部と接合しているが、所望の封止効果を得るために本来弾性であることに留意されたい。
【0032】
いかなる疑念も回避するために、本文脈において、「薬剤」という用語は、状況の治療、予防、または診断に使用される媒体を指し、すなわち、身体における療法または代謝効果を有する媒体を含む。さらに、「遠位」および「近位」という用語は、薬剤送達装置、薬剤貯蔵部、または針ユニットにおける位置、もしくはこれらに沿った方向を示し、「遠位」は薬剤出口端を指し、また「近位」は、薬剤出口端とは反対側の端を指す。
【0033】
本明細書において、特定の態様または特定の実施形態(例えば、「一態様」、「第1の態様」、「一実施形態」、「例示的な実施形態」など)への言及は、それぞれの態様または実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または、特性が、少なくとも本発明のその一態様または実施形態に含まれるか、または固有のものであるが、必ずしも本発明のすべての態様または実施形態の中に含まれるわけではなく、それらすべての固有のものでもないことを表す。しかしながら、本発明に関連して説明した様々な特徴、構造および/もしくは特性の任意の組み合わせが、本明細書に明示的に記載されない限り、または明確に文脈上矛盾しない限り、本発明に包含されることが強調される。
【0034】
本文中のありとあらゆる例、または例示的な言語(例えば、など)の使用は、単に本発明をより良く明らかにすることを意図するものであり、別段特許請求されない限り、本発明の範囲を制限するものではない。さらに、本明細書中のいずれの言語または言い回しも、特許請求されないいずれの要素も本発明の実施に必須であると示しているとは解釈されない。
【0035】
以下において、本発明は、図面を参照してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、本発明の例示的な実施形態による、プランジャーロッド構造の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のプランジャーロッド構造を含む、本発明の例示的な実施形態による薬剤送達装置の長軸方向断面図である。
【
図3】
図3は、薬剤送達装置における弾性ストッパと相互作用するプランジャーロッド構造の遠位部分の側面図である。
【
図4】
図4は、プランジャーロッド構造との相互作用から生じる弾性ストッパの初期変形の線図である。
【
図5】
図5は、本発明の別の例示的な実施形態による、プランジャーロッド構造の遠位部分の側面図である。
【
図6】
図6は、本発明のさらなる例示的な実施形態による、プランジャーロッド構造の遠位部分の側面図である。
【0037】
図において、同様の構造物は、主として同様の参照番号によって特定される。
【発明を実施するための形態】
【0038】
「上」および「下」、「左」および「右」、「水平」および「垂直」、「時計回り」および「反時計回り」などの相対的な表現が以下で使用される時/場合、これらは添付の図を参照しており、必ずしも実際の使用状況を参照するものではない。示される図は、概略図であり、そのため、その相対寸法だけでなく、異なる構造の構成も、例示的な目的でのみ機能することが意図される。
【0039】
図1は、本発明の一実施形態による、薬剤送達装置で使用するためのプランジャーロッド10の斜視図である。プランジャーロッド10は、長手方向軸に沿って延在している中空の細長いシャフト11を備える。その前部端部で、プランジャーロッド10は、以下でより詳細に説明するように、薬剤投与作用中に薬剤貯蔵部内のストッパに当接するように適合された当接表面12を提供される。周辺スタッド13は、以下にも説明するように、当接表面12から遠位に突出しており、ストッパの移動を準備するための先導端部14を有する。プランジャーロッド10には、直径の方向に対向するノッチ15の対がさらに提供されている。
【0040】
図2は、プランジャーロッド10を採用する本発明の例示的な実施形態による、注射装置1の長手方向断面図である。注射装置1は、プランジャーロッド10の長手方向軸と一致する全体軸に沿って延在しているバレル21を有するシリンジ20を収容するハウジング2を備える。バレル21は、概して円形の円筒形であるが、バイパスチャネル25を形成する遠位の膨出部と、注射針35を保持する狭い遠位端部分とを有する。前部ストッパ40は、バイパスチャネル25の近位に配設され、第1の液体物質を保持する前部チャンバー29の近位シールを提供し、後部ストッパ30は、前部ストッパ40の近位に、かつ前部ストッパ40から軸方向に離間して配設され、それによって、第2の液体物質を保持する後部チャンバー28の近位シールを提供する。
【0041】
注射装置1の示された使用前状態では、スタッド13の先導端部14は、後部ストッパ30の近位端部34に当接するが、当接表面12は、後部ストッパ30から離間している。予め拘束された駆動ばね80は、プランジャーロッド10の中空に配設され、ハウジング2の端部壁3の内面に近位に当接する。一対の放射方向に柔軟なアーム4は、端部壁3から遠位に延在しており、プランジャーロッド10は、ノッチ15の1つに係留される各アーム4上の爪5によって所定の位置に保持され、各爪5は、シリンジ20とハウジング2との間に軸方向に延在している針シールド50の保持エッジ52によって放射方向に拘束される。
【0042】
針シールド50は、シールドばね90によって遠位に付勢され、この付勢に対してシリンジ20に沿って軸方向に変位可能であり、注射針35を露出させる。製造業者によって提供される最終製品は、針シールド50を覆うためのハウジング2に取り付けられた針キャップ60を含み、針キャップ60は、注射針35の専用保護のための内側カバー65を担持する。
【0043】
薬剤投与を実施するために、ユーザーは、針キャップ60を単に除去し、針シールド50を皮膚表面に対して配置し、ハウジング2を皮膚に向けて押し付け、それによって、シールドばね90を圧縮し、針シールド50を変位させて、注射針35が所望の注射部位に入ることを可能にする。
【0044】
したがって、針シールド50が変位するのにつれて、保持エッジ52が、爪5を通過して摺動し、アーム4が放射状に偏向することを可能にする。結果として、予め拘束された駆動ばね80からの力は、直ぐに爪5をノッチ15から放射状に付勢し、それによって、プランジャーロッド10がラッチされなくなり、駆動ばね80が解放される。
【0045】
図3は、駆動ばね80の解放におけるプランジャーロッド10と後部ストッパ30との間の初期相互作用を示している。後部ストッパ30は、遠位端部32と近位端部34との間に延在しており、かつバレル21の内壁22に流体密封シーリング界面を提供する4つの軸方向に離間された外周リブ33を有する、弾性ストッパ本体31を備える。
【0046】
後部ストッパ30を動作させるためには、外周リブ33と内壁22との間の静止摩擦を克服しなければならない。静止摩擦が克服され、後部ストッパ30がストッパ本体31とバレル21との間の界面を移動し始めると、静止摩擦よりも小さな動的摩擦が示される。したがって、薬剤投与作用を実施するために必要な労力は、いわゆる解放力のサイズに大きく依存する。
【0047】
対応する単一のチャンバー注射装置と比較して、注射装置1の解放力は、後部ストッパ30および前部ストッパ40が後部チャンバー28の第2の液体物質が圧縮不能であるため同時に動作するので2倍大きい。したがって、解放力を低減できるソリューションは、注射装置1の製造業者がより強力ではない駆動ばねを組み込むことを可能にし、それによって、棚上げ中に予め拘束されたばねからの負荷下で接合する構成要素が変形するリスクを減少させる。
【0048】
本発明の本実施形態によって提供されるソリューションは、当接表面12の周辺部分へのスタッド13の追加であり、これは、当接表面12が近位端部34の残りの部分と相互作用する前に、後部ストッパ30の近位端部34の周辺部分と相互作用する先導界面を提供する。
図3では、スタッド13の相対的な寸法が誇張されており、その効果をより明確に示している。プランジャーロッド10がシリンジ20の遠位端部に向かって前進すると、先導端部14は、最初に近位端部34の周辺部分に圧力をかけるが、一方で、当接表面12は、後部ストッパ30に近づく。これは、近位端部34の周辺部分を変形させ、最終的に、外周リブ33の近位大部分と内壁22との間の界面にあるバレル21からの後部ストッパ30材料の局所的な解放をもたらす。
【0049】
したがって、当接表面12がその後に近位端部34と接触したときに、スタッド13の弾性ストッパ本体31への侵入は、内側壁22に対して後部ストッパ30の周辺の一部が既に変位していることになる。これは
図4に示されており、ここで、バレル21の外部上の実線クラスタは、内壁22に沿ったそれぞれの外周リブ33の位置を表す。接触線33dによってスケッチされた最も近位の外周リブは、遠位方向に局所的に偏向され、接触線33cによってスケッチされた最も近位の外周リブに隣接した外周リブは、少しだけ偏向され、接触線33bによってスケッチされたそれに隣接した1つのリブは、わずかに偏向され、接触線33aによってスケッチされた最も遠位の外周リブは、なおも影響を受けていないことが分かる。
【0050】
先導端部14によって提供される局所的な比較的高い圧力によって促進される外周リブ33の局所的な初期偏向は、後部ストッパ30および前部ストッパ40をバレル21内で動員するために必要な解放力の減少に積極的に寄与する。内側壁22からの外周リブ33の順次的な脱離は、2つのストッパと内側壁22との間のすべての接触点が同時に壊される必要がないため、駆動ばね80の効果を増加させる。
【0051】
後部ストッパ30がバレル21内で傾斜しないことを確実にするために、これが漏れをもたらし得るため、スタッド13の軸方向寸法は、後部ストッパ30の軸方向寸法に対して限定されるべきである。本事例では、スタッド13の軸方向寸法は、2mmである。それによって、先導端部14による最初の起動に従って、当接表面12は、引き継がれ、駆動ばね80がエネルギーを解放し続けるのにつれて、後部ストッパ30の進行に対する安定的かつ均一な支持を提供する。
【0052】
解放力の減少のレベルは、バレル/ストッパ界面の摩擦に依存する。当然のことながら、スタッド13の効果は、高摩擦系において高い。例えば、およそ0.3の摩擦係数を使用するシミュレーションでは、その解放力は、従来のプランジャーロッド設計の解放力の約1/3に低減される。
【0053】
後部ストッパ30のバルクが動き出し、バレル21を通って前進すると、デュアルチャンバー注射装置の従来の動作モードと同様に、第2の液体物質は、前部ストッパ40をバイパスチャネル25に向かって、最終的にその中に押し込み、一方で、ある容量の第1の液体物質を注射針35に通させる。前部ストッパ40がバイパスチャネル25に到達すると、後部ストッパ30の継続的な前進により、第2の液体物質が前部ストッパ40を通過し、前部チャンバー29に入り、そこで、第1の液体物質の残りの容量と混合し、それとともに注射針35を通して流される。
【0054】
図5は、本発明の別の実施形態による、プランジャーロッド110の遠位部分の側面図である。プランジャーロッド110は、長手方向軸に沿って延在しており、かつその前部端部に、薬剤貯蔵部におけるストッパとの相互作用のための波状の当接表面112が提供される、細長いシャフト111を備える。当接表面112は、シャフト111の周辺部分で波頭部114を提供するために形成されている。波頭部114は、当接表面112の残りの部分を軸方向に先導するため、上述のプランジャーロッド10上のスタッド13の先導端部14と類似の効果を有する。シャフト111は、中空であってもよく、その場合、プランジャーロッド110は、プランジャーロッド10の代替として注射装置1に採用されてもよく、または固体であってもよい。
【0055】
図6は、本発明のさらなる実施形態による、プランジャーロッド210の遠位部分の側面図である。プランジャーロッド210は、長手方向軸に沿って延在しており、かつ薬剤貯蔵部におけるストッパとの相互作用のためにその前部端部に当接表面212を有する、細長いシャフト211を備える。当接表面212は、放物線プロファイルを有し、シャフト211の直径の方向に対向する周辺部分に2つの突出部分214を提供する。突出部分214の各々は、上述のプランジャーロッド10上のスタッド13の先導端部14と類似の効果を有し、それによって最初に、薬剤貯蔵部の2つの円周方向に離間された内部部分からのストッパ材料の局所的な係脱が得られる。シャフト211は、中空であってもよく、その場合、プランジャーロッド210は、プランジャーロッド10の代替として注射装置1に採用されてもよく、または固体であってもよい。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達装置(1)であって、
-基準軸に沿って延在する貯蔵部本体(21)と、前記貯蔵部本体(21)内に配設された弾性ストッパ(30)とを備える薬剤貯蔵部(20)であって、前記弾性ストッパ(30)がストッパ本体(31)を備え、前記ストッパ本体(31)が、前部ストッパ端部(32)と後部ストッパ端部(34)との間に延在しており、かつ前記貯蔵部本体(21)の内壁(22)との相互作用を封止するための複数の軸方向に離間された外周リブ(33)を有する、薬剤貯蔵部(20)と、
-前記内壁(22)に対して前記弾性ストッパ(30)を変位させるためのプランジャーロッド構造(10)であって、前記プランジャーロッド構造(10)が、前記基準軸に沿って延在しており、かつ前記後部ストッパ端部(34)と接合するように適合された遠位端面(12、14)を備える、プランジャーロッド構造(10)と、を備え、
前記遠位端面(12、14)が、第1の力伝達部分(14)および第2の力伝達部分(12)を備え、
前記第1の力伝達部分(14)が、前記第2の力伝達部分(12)を軸方向に先導し、かつ前記複数の軸方向に離間された外周リブ(33)のうちの1つと前記内壁(22)との間の界面で前記後部ストッパ端部(34)に当接することによって、前記後部ストッパ端部(34)の周辺部分と相互作用するように適合されている、薬剤送達装置(1)。
【請求項2】
前記後部ストッパ端部(34)の前記周辺部分が、半円よりも小さい、請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項3】
前記第2の力伝達部分(12)が、前記基準軸に対して直交しており、前記第1の力伝達部分(14)が、前記第2の力伝達部分(12)から遠位に突出するスタッド(13)の一部を形成する、請求項1または2に記載の薬剤送達装置。
【請求項4】
前記スタッド(13)が、[1mm,2mm]の範囲の軸方向寸法を有する、請求項3に記載の薬剤送達装置。
【請求項5】
前記スタッド(13)が、2mmの最大放射方向寸法を有する、請求項3または4に記載の薬剤送達装置。
【請求項6】
ハウジング(2)をさらに備え、前記プランジャーロッド構造(10)が、前記ハウジング(2)に対して遠位に前記プランジャーロッド構造(10)を変位させるように解放可能な圧縮ばね要素(80)を収容するように適合された中空内部を備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項7】
前記薬剤貯蔵部(20)が、前記弾性ストッパ(30)の遠位に配設された第2の弾性ストッパ(40)と、前記内壁(22)に対する前記弾性ストッパ(30)の変位中に流体流が前記第2の弾性ストッパ(40)を通過することを可能にするためのバイパスセクション(25)と、をさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【外国語明細書】