IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シエナ コーポレーションの特許一覧

特開2024-170439エッジでの成長を増強または低減するマスクを使用した選択領域エピタキシ成長による半導体デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170439
(43)【公開日】2024-12-10
(54)【発明の名称】エッジでの成長を増強または低減するマスクを使用した選択領域エピタキシ成長による半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/026 20060101AFI20241203BHJP
   G02F 1/025 20060101ALN20241203BHJP
【FI】
H01S5/026 616
G02F1/025
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024137056
(22)【出願日】2024-08-16
(62)【分割の表示】P 2021569414の分割
【原出願日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】16/423,846
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/885,989
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519382455
【氏名又は名称】シエナ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120684
【弁理士】
【氏名又は名称】宮城 三次
(72)【発明者】
【氏名】マッククイスタン デイヴィッド アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】プロシク ケルヴィン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】信頼性があり、レーザとモノリシックに集積された製造可能な変調器と、十分に閉じ込められた電流注入を有する光増幅器を可能にする構造と製造工程を提供する。
【解決手段】フォトニックデバイスと利得素子構造とを含むフォトニック集積回路を形成する方法であって、利得素子は、ウェハ上に第1ドープ層をエピタキシに堆積するステップと、第1ドープ層上に、光学利得の可能な活性層をエピタキシに堆積するステップと、活性層上に第2ドープ層をエピタキシに堆積するステップと、少なくとも第2ドープ層及び活性層をパターンエッチングして、第1リッジを形成するステップと、第1リッジに横方向に近接し、パターンエッチングによって除去された活性層の体積を少なくとも部分的に満たす電流遮断層をエピタキシに堆積するステップを含み、電流遮断層がフォトニックデバイスの一部を形成する工程によって形成される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトニックデバイスと利得素子構造(35)とを含むフォトニック集積回路を形成する方法であって、前記方法は、
ウェハ上に第1ドープ層(10)をエピタキシに堆積するステップと、
前記第1ドープ層(10)上に、光学利得の可能な活性層(12)をエピタキシに堆積するステップと、
前記活性層(12)上に第2ドープ層(18)をエピタキシに堆積するステップと、
少なくとも前記第2ドープ層(18)及び前記活性層(12)をパターンエッチングして、第1リッジを形成するステップと、
前記第1リッジに横方向に近接し、前記パターンエッチングによって除去された活性層(12)の体積を少なくとも部分的に満たす電流遮断層(20)をエピタキシに堆積するステップを含み、
前記電流遮断層(20)が前記フォトニックデバイスの一部を形成する、方法。
【請求項2】
前記第1リッジと近接する電流遮断層との組み合わせによって形成され、一定またはテーパ状であり、第1全長及び第1全幅を有する第1導波路と、
前記電流遮断層を選択的にエッチングして形成され、前記第1導波路と連続し、一定またはテーパ状であり、第2全長及び第2全幅を有する第2導波路とをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1全幅は前記第2全幅よりも大きく、前記第1導波路は弱く導波され、前記第2導波路は強く導波される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第2全幅は、第2全長に沿ってテーパ状となり、第2導波路において弱い導波から強い導波への移行を提供する、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記利得素子構造(35)が前記フォトニックデバイスに光学的に結合される、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第2導波路と連続し、第3幅を有する強く導波される第3導波路をさらに備え、前記第3幅及び第2幅は、第2導波路と第3導波路との間の光の最適な結合を提供するように選択される、請求項2から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記フォトニックデバイスが光変調器(39)である、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記電流遮断層(20)がアンドープ半導体を含む、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記ウェハがリン化インジウムを含む、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記第1ドープ層(10)、前記第2ドープ層(18)、及び前記電流遮断層(20)のいずれかがイオン注入手段を用いて実質的に導電性または非導電性にされる、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記第1ドープ層(10)、前記第2ドープ層(18)、及び前記電流遮断層(20)のいずれかがドーパント拡散手段を用いて実質的に導電性または非導電性にされる、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記電流遮断層(20)は、それぞれが異なるドーパントを有する複数のサブ層を含む、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記電流遮断層(20)が、前記フォトニックデバイスにおけるオーバークラッド層である、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記電流遮断層が、鉄ドープリン化インジウムを含む、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれかに記載の方法によって形成されたフォトニック集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、半導体、すなわち、光デバイス及び光ネットワークで使用するためのフォトニック部品に関する。より詳細には、本開示は、モノリシック集積利得素子(monolithically integrated gain element)のシステム及び方法に関する。また、本開示は、エッジでの成長を抑制または促進するためのマスクを利用した選択領域エピタキシ(SAE:Selective Area Epitaxy)成長を有する半導体デバイス、及びモノリシックに集積された光増幅器を有する変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトニック集積回路(PIC:Photonic integrated circuit)に使用される平面光導波路の様々な可能な構成は、しばしば、横方向の導波(ガイド)の強さによって、強い導波と弱い導波の2つのカテゴリに大別される。横方向の導波の強さは、光学モードが導波路の中央部にどの程度閉じ込められるかを決定し、モードが結合せずに導波路の外に放射されるまで、湾曲した光導波路が達成できる最小半径を決定する。図1Aに示すように、導波路3は、屈折率の光学指数(optical index of refraction)がNgのコア導波領域5と、屈折率の光学指数がNcの横方向に近接するクラッド領域7とで構成されていてもよい。強い導波とは、NgとNcの差が大きいことを指す。例えば、強い導波の導波路を有するリン化インジウム(InP)系PICの中で、導波コア5は、Ng=3.54の屈折率の光学指数を有するのに対し、クラッド7は、二酸化ケイ素(SiO)などの誘電体材料からなり、Nc=1.5の指数を有してもよい。逆に弱い導波とは、コア指数Ngがクラッド指数Ncよりもわずかに高く設計されることを指す。例えば、二酸化ケイ素の代わりに半導体からInP系PIC横方向クラッド7を製造した場合、導波部5は依然としてNg=3.54であるが、横方向クラッド7はNc=3.46となり、弱い導波を形成してもよい。別の弱い導波構造を図1Bに示す。ここでは、導波コア5に近接する材料7には実際の指数変化はないが、コア5の上の中央に位置する導波リッジ9が、導波コア5に横方向に近接する領域に有効な指数差を生じさせる。このような弱い導波路3は、浅いリッジ(shallow ridge)導波路とも呼ばれ、Ng-Nc<0.05の指数コントラスト(index contrast)であってもよい。
【0003】
フォトニック部品業界では、低コスト、小型、高性能のInP系マッハツェンダー変調器(MZM:Mach-Zehnder modulator)が広く知られている。一般にこのような変調器では、図1Aのような誘電体クラッド7を有する強く導波する導波路を使用することが望ましい。強く導波する導波路は、導波路をコンパクトにルーティングすることで小型化できるだけでなく、光変調機能を提供する導波路3の中央部5にモードを閉じ込めることができ、これにより高効率を実現する。
【0004】
本明細書に記載されている種類の変調器は、典型的には、データ内容を持たない連続波(CW:Continuous Wave)光搬送波の入力と、データを伝送する広帯域電気信号とを混合する。CWキャリアの周波数は、例えば約193THzであり、典型的には、可能な限り狭帯域であること、例えば100kHzの線幅であることが望まれる。電気データ信号の帯域幅は、例えば、500MHzから10GHz、又は現代の大容量通信システムでは500MHzから70GHzに及んでもよい。使用する変調方式にもよるが、10Gbit/s~400Gbit/s以上のデータレートが得られる。データは、元のCW光搬送波入力の周波数の光搬送波として伝送され、電気データ信号によって決定されるエンベロープ変調を有する。そのため、変調器は、元のRF(Radio Frequency)データのベースバンドから光周波数へのアップコンバージョン機能を果たし、光ファイバでの伝送を可能にする。また、変調器は、しばしば振幅変調された複数のRFデータ支局(RF data tributaries)を、より複雑な位相・振幅変調されたフォーマットに合成し、これにより、例えばファイバの受信側でのデータの信号対雑音比(SNR)が向上する。
【0005】
このような変調器の機能にとって重要なことは、CW光搬送波の入力である。いくつかの応用では、CW光搬送波は外部レーザによって提供され、それらが別々にパッケージされている場合は、短い長さの光ファイバを通して変調器の入力に結合され、それらが共同パッケージされている場合は、マイクロレンズまたは光導波システムを介して結合される。これらの応用では、結合と変調の過程で失われる光が重要な性能パラメータとなる。CW光搬送波の光が失われすぎると、変調器から出力されるアップコンバートされたデータ信号の出力(power)が低くなり、受信機でのSNRが低下する。明らかな解決策の1つは、損失を補うために、高出力のレーザを使用することである。しかし、レーザの出力を高くすることには技術的な限界があり、電力損失、性能の非理想性、コストなどの工学的な影響がある。半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)を変調器とモノリシックに集積することで、これらの問題を解決できる。
【0006】
他の応用では、レーザ自体を変調器とモノリシックに集積することが好ましく、これにより、光結合損失、パッケージの複雑さ、外部ソリューション(external solution)に伴うコストを回避できる。もちろん、レーザ集積(laser integration)は、集積SOAと組み合わせられて、光出力をさらに高めることもできる。レーザとSOAは、一般に能動素子または利得素子と呼ばれる。レーザであろうとSOAであろうと、横方向の光導波手段の技術状況は基本的に似ている。このような集積に伴い、変調器、レーザ、またはSOA以外のフォトニック部品、すなわち、検出器、光モニタ、位相調整素子、可変光減衰器などを集積する必要性がしばしば生じる。このように、利得素子(レーザやSOA)と変調器以外のフォトニック部品との集積に本発明を拡張することは、基本的に重要である。
【0007】
既知の浅いリッジ、又はストライプ、レーザ及びSOAは、図1Bのような構成を有する。弱く導波されることに加え、これらは横方向の電流閉じ込め機能を欠き、電流が不均一かつ非効率的に広い領域に広がり、利得が減少する。
【0008】
導波コア5のエッチングされた側壁が、ミッドレベルトラップとして機能するダングリング化学結合(dangling chemical bonds)を残すため、図1Aと同様の既知の平面深いリッジレーザとSOAは、誘電体の横方向クラッド7を持ち、ほとんどの変調器のように、ほぼ使用されていない。これらのミッドレベルトラップは、関連するキャリアの再結合に大きな非放射性成分を加え、電流-利得曲線を非常に好ましくないものにしてしまう。側壁を適切に化学処理し、半導体を過成長(overgrow)させることで、このダングリング化学結合を取り除くことができる。
【0009】
既知の埋め込みヘテロ構造(BH:Buried Heterostructure)構造のレーザとSOA構造は数多くのバリエーションがあり、現在の業界標準となっているが、電流遮断層をより高度に配置することで、多重量子井戸(MQW:Multi Quantum Well)コアへの好ましい電流閉じ込めを達成している。1つの欠点は、再成長の方法が複雑で、製造可能な方法で変調器とモノリシックに集積するのが難しいことである。さらに、BHレーザと、Alを含むコアを有するSOAは、信頼性に問題があることでも有名である。図2Aに示すように、BH構造15は、MQW材料12の最初の成長を伴うN-InPウェハ10をブランケットすることによって製造される。その後、選択的なエッチングを行い、MQWリッジを形成する。続いて、N-InPウェハ10上のMQWリッジの周りに多層スタック16を選択的に成長させ、敏感な臨界寸法とする。最後に、P型半導体18の過成長は、MQWリッジと多層スタック16の上にブランケットされる。このようにして、電流が非常に閉じ込められるものの、導波路は、まだ弱く導波する。
【0010】
近年、BHレーザの電流遮断層の複雑な配置を、自己整列単成長(self-aligned single-growth)技術を用いて単純化する試みがなされている。この構造は、有益な電流閉じ込めを示す。図2Bに示すように、簡略化されたBH構造15bは、MQW12及びP型半導体18の材料の最初の成長でN-InPウェハ10をブランケットすることによって製造される。選択的なエッチングを行ってMQWリッジを形成する。続いて、構造体15の上にアンドープInP17の単一のブランケット層を成長させる。このアンドープInP17は、自己整列エッチング技術を用いてリッジの頂部から除去される。より複雑なBH構造15a(図2A)と同様に、この単純化されたBH構造15b(図2B)は、良好な電流閉じ込めを実現しているが、まだ弱く導波する。
【0011】
浅いリッジ構造(図1B)もBH構造(図2B)も、導波路の互換性がないため、直接変調器に光結合することはできない。例えば、特許文献1に記載されているような、強く導波する導波路と弱く導波する導波路をブリッジする何らかの相互接続手段が必要となる。
【0012】
このように、信頼性があり、レーザとモノリシックに集積された製造可能な変調器と、十分に閉じ込められた電流注入を有する光増幅器を可能にする構造と工程が当技術分野で依然として必要とされている。
【0013】
さらに、選択領域エピタキシ(SAE)は、半導体ウェハにパターン化されたアモルファス誘電体マスク(典型的には二酸化ケイ素(SiO)または窒化ケイ素(Si))を介してエピタキシャル層の局所的な成長を含む。半導体の成長条件は、誘電体マスク上ではなく、露出したウェハ上でエピタキシャル成長を確保するように選択される。SAEは、半導体表面の一部を成長が起こらないマスク材料で覆うことで形成される。従来、SAEは、エピタキシャル層の成長を意図的に促進させるために用いられてきた。マスクされた領域の面積が大きいほど、マスクに近接する結晶の成長の割合が大きくなる。成長促進の程度は、成長温度、成長圧力、マスク組成、マスク領域、マスクの向きなど多くの要因に依存する。
【0014】
マスクエッジでの意図しない成長促進は、SAEの継続的な問題である。これまでの解決策は、エピタキシャル成長のための成長条件を変更することに焦点を当てている。注目すべきは、SAEはInPフォトニクスの製造に使用される技術である。そのような光変調器の一例は、「高周波及び低光挿入損失のためのモノリシック光電子TWEコンポーネント構造(Monolithic Optoelectronic TWE-component Structure for High Frequencies and Low Optical Insertion Loss」というタイトルの特許文献2に記載されており、その内容は参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0015】
成長条件を変えて意図しない促進を抑制することは、意図的な成長の促進を抑制するという欠点を有しており、そもそもSAE成長を追求する目的であることも多い。従来のストレートサイドSAE(straight-sided SAE)マスクの使用は、マスクエッジに沿って成長促進材料(enhanced growth material)の線形構造をもたらし、これは壊れやすく、壊れてデバイス表面の汚染を形成し、製造性と信頼性に悪影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第7,184,207号
【特許文献2】米国特許第9,182,546号
【発明の概要】
【0017】
本開示は、エッジでの成長を抑制または促進するためにマスクを利用した選択領域エピタキシ(SAE)成長を有する半導体デバイスのシステム及び方法に関する。繰り返しになるが、SAEは、半導体ウェハ上での結晶成長のための技術である。ウェハ領域は誘電体材料(例えば、SiO、Siなど)の薄膜で覆われている、又は、マスクされている。金属-有機化学気相蒸着(MOCVD:Metal-Organic、Chemical-Vapor Deposition)チャンバなどの結晶成長反応炉(crystal growth reactor)では、マスクで覆われていない領域のみで選択的に結晶成長が進行する。本開示では、任意の方向に選択的に成長する領域を含み、マスクされた領域の外側のエッジに不要な成長の促進と対応する欠陥がない半導体デバイスを製造するための工程を提供している。具体的には、この工程は、エッジでの成長を抑制または促進するために使用される、マスクエッジの可変プロファイルを含む。
【0018】
また、本開示では、例えば特許文献2に記載されているような、InPウェハ上に形成された深くエッチングされたリッジ導波路変調器と、特にマルチグロース変調器に光増幅器が効率的にモノリシックに集積される設計を提供する。この設計は、TWE変調器の既存のアンドープ過成長を電流遮断の目的で再使用できる。電流遮断された埋もれたリッジのその後の深いエッチングは、閉じ込め係数の独立した制御を提供し、深くエッチングされた変調器への効率的な結合を可能にする。このように、本開示は、標準的な変調器プロセスシーケンスに既に存在する過成長を再使用する手段を提供し、それにより、コスト、複雑さ、及び信頼性の問題などの多くのエピタキシャル成長に関連する問題を低減する。本開示は、代替的な浅いリッジのソリューションよりも、より良く電流を閉じ込め、したがってより良い電気効率を提供する。本開示は、電流閉じ込め(以下に詳述するi-InPブロックによって提供される)を光学的閉じ込め(以下に詳述するエッチングされた領域によって提供される)から切り離す。したがって、本開示は、例えば、特許文献1に提供されているような追加または新しい光学素子を設計に導入することなく、光を変調器から利得部に結合するための効率的な代替手段を提供する。
【0019】
本開示は、N型層と、N型層上に配置された多重量子井戸材料と、N型層に対向して多重量子井戸材料上に配置されたP型層とを含む、光増幅器を有する変調器を提供する。N型層の一部、多重量子井戸材料、及びP型層の一部が集合的にリッジ構造を形成し、選択領域エピタキシを用いて、意図的にドープされていない材料(一般に、固有の(intrinsic)、i型と呼ばれる)がN型層上及びリッジ構造の側部まわりに配置される。意図的にドープされていない半導体の一般的な呼称はi型であるが、i型材料には低レベルの意図しない微量ドーパント汚染が、場合によっては1e16 atoms/cm以上、存在する可能性があるが、通常はより低い濃度が望まれることが当業者には理解される。任意で、i型材料をさらに深くエッチングして、強い導波構造を形成する。N型層は、N-InPを含む。P型層は、P-InGaAs及びP-InPのいずれかを含む。i型材料は、i-InPを含むが、代わりに、半絶縁性の鉄ドープ(iron-doped)InPなど、電流の流れを遮断する任意の種類の適切な電流遮断材料であってもよい。任意で、長さのすべてまたは一部にわたって、強い導波構造の幅が選択されて、強く導波される変調器導波路に効率的に結合する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1A及び図1Bは、それぞれ、従来の強く導波する導波路及び弱く導波する導波路(浅いリッジ)を示す一連の模式図である。
図2A図2A図2Bは、従来のBHレーザやSOA構造の製造方法を示す一連の模式図である。
図2B図2A図2Bは、従来のBHレーザやSOA構造の製造方法を示す一連の模式図である。
図3図3は、従来の利得素子の製造方法を示す一連の模式図である。
図4図4は、本開示の利得素子の1つの例示的な実施形態の製造方法を示す一連の模式図である。
図5図5は、本開示の利得素子の別の例示的な実施形態の製造、及び関連するSOAと変調器の結合を示す一連の模式図である。
図6図6は、本開示の方法による、関連する変調器SOAの光学モードに整合させるために、導波路SOAまたは変調器の幅のフレアリング(flaring)を示す模式図である。
図7図7は、本開示の方法による、SOA光学モードに整合させるための導波路変調器の幅のフレアリングを示す別の模式図である。
図8図8は、本開示の方法による、エピタキシャル層を過成長させるために使用され、望ましくない成長促進を抑制する、マスクのエッジのための新しい形状(geometry)を示す模式図である。
図9A図9A図9Dは、マスクのエッジにおける過剰な成長(excess growth)を示す、ウェハ上のSAE成長工程のステップを示すブロック図である。
図9B図9A図9Dは、マスクのエッジにおける過剰な成長(excess growth)を示す、ウェハ上のSAE成長工程のステップを示すブロック図である。
図9C図9A図9Dは、マスクのエッジにおける過剰な成長(excess growth)を示す、ウェハ上のSAE成長工程のステップを示すブロック図である。
図9D図9A図9Dは、マスクのエッジにおける過剰な成長(excess growth)を示す、ウェハ上のSAE成長工程のステップを示すブロック図である。
図10図10は、図9Dのステップの後の実際のウェハの写真である。
図11図11Aは、ある領域を示すウェハの上面図である。図11Bは、マスク上に広がる領域と過剰な成長を示すウェハの写真である。
図12図12A及び図12Bは、導波路の方向(図12A)及び導波路に垂直な方向(図12B)における図9A図9DのPアイランド(P island)の断面を示す写真である。
図13図13は、ウェハを示す図、すなわちメジャーフラット及びメジャーフラットに垂直なマイナーフラットを有する(100)面に配向されたInPウェハの図と、ウェハの好ましい方向を示すグラフである。
図14図14は、シリーズ2による角度のついた向きの長方形のマスクと、シリーズ1,2の両方からの角度が可変のジグザグ形状のマスクの図である。
図15図15は、ウェハにマスクを配置した例のInPウェハの図である。
図16図16は、ウェハにマスク12Bを配置した例のInPウェハの図である。
図17図17は、半導体デバイスのための半導体ウェハ上にエピタキシャル層を成長させる工程のフローチャートである。
図18図18は、好ましい角度がどのように決定されたかを示す、高解像度の視野(FOV:Field of View)内の円形マスクの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、本明細書において、様々な図面を参照して図示及び説明され、その中で、同様の参照番号は、適宜、同様のシステム構成要素/方法ステップを示すために使用される。
【0022】
繰り返しになるが、本開示では、例えば特許文献2に記載されているような、InPウェハ上に形成された深くエッチングされたリッジ導波路変調器と、特にマルチグロース変調器に光増幅器が効率的にモノリシックに集積される設計を提供する。この設計は、TWE変調器の既存のアンドープ過成長を電流遮断の目的で再使用できる。電流遮断された埋もれたリッジのその後の深いエッチングは、閉じ込め係数の独立した制御を提供し、深くエッチングされた変調器への効率的な結合を可能にする。このように、本開示は、標準的な変調器プロセスシーケンスに既に存在する過成長を再使用する手段を提供し、それにより、コスト、複雑さ、及び信頼性の問題などの多くのエピタキシャル成長に関連する問題を低減する。本開示は、代替的な浅いリッジのソリューションよりも、より良く電流を閉じ込め、したがってより良い電気効率を提供する。本開示は、電流閉じ込め(以下に詳述するi-InPブロックによって提供される)を光学的閉じ込め(以下に詳述するエッチングされた領域によって提供される)から切り離す。したがって、本開示は、例えば、特許文献1に提供されているような追加または新しい光学素子を設計に導入することなく、光を変調器から利得部に結合するための効率的な代替手段を提供する。
【0023】
本開示は、N型層と、N型層上に配置された多重量子井戸材料と、N型層に対向して多重量子井戸材料上に配置されたP型層とを含む、光増幅器を有する変調器を提供する。N型層の一部、多重量子井戸材料、及びP型層の一部が集合的にリッジ構造を形成し、選択領域エピタキシを用いて、意図的にドープされていない材料(アンドープ、又はi型)がN型層上及びリッジ構造の側部まわりに配置される。任意で、i型材料をさらに深くエッチングして、強い導波構造を形成する。N型層は、N-InPを含む。P型層は、P-InGaAs及びP-InPのいずれかを含む。i型材料は、i-InPを含むが、代わりに、半絶縁性の鉄ドープInPなど、電流の流れを遮断する任意の種類の適切な電流遮断材料であってもよい。任意で、長さのすべてまたは一部にわたって、強い導波構造の幅が選択されて、強く導波される変調器導波路に効率的に結合する。
【0024】
モノリシック集積利得素子
図3は、例えば特許文献2に提供されてる工程によるような従来の変調器構造25の製造を示している。変調器構造25は、MQW材料12とP型層18の最初の成長を有するN型ウェハ10をブランケットすることによって製造される。i型リッジの実施形態では、その後、P型層18の選択的なエッチングを行い、エッチングされた領域にu-InP層20を選択的に成長させる。その後、P型層18とMQW材料12を選択的にエッチングし、i型リッジSOA実施形態においてi-InPキャップ付きリッジを残し、P型リッジ変調器実施形態においてP型キャップ付きリッジを残す。このように、選択的なi型成長ステップが一般的に利用されている。きわどい配置成長ステップを導入することなく、SOAを変調器とモノリシックに集積し、BH構造15(図2A及び図2B)と類似した性能を提供することが依然として望まれる。また、モノリシックに集積されたSOAのため、深くエッチングされた変調器リッジへの光結合に適合する横方向の光学モードを有するBHのような構造を作成することも依然として望まれる。
【0025】
ここで具体的に図4を参照すると、一実施形態において、本開示の利得素子構造35は、光学利得材料12とP型層18の最初の成長を有するN型層1をブランケットすることによって製造される。次に、P型層18、光学利得材料12、及びN型層10を選択的にエッチングして、マスク19で覆われたPキャップ付きリッジを残す。その後、i型成長ステップを利用して、リッジの横方向の領域をi-InP材料20で埋める。ここで、横方向のi-InP材料20は、BH製造に伴う追加の成長ステップやきわどい配置を必要とせず、優れた電流遮断を提供する。
【0026】
図5は、本開示の利得素子構造35の別の例示的な実施形態の製造、ならびに関連するSOA37及び変調器39の結合手段を示す一連の模式図である。i-InP材料20とN型材料10は、リッジの両側にi-InP材料の壁を形成するようにエッチングされており、それによってリッジの両側に強い導波を提供している。さらに、深くエッチングされた変調器導波路を広げることで、横方向の光学的マッチングを実現できる。図5では、下の模式図は、中央の模式図に示されたSOA入出力導波路に幅整合された変調器導波路を表していることが理解されるであろう。SOA37では、W1(電流閉じ込め)とW2(光学モード重複)を独立して変化させることができ、例えば、空間的なホールバーニングの影響を緩和するために、SOA37の長さに沿って利得(gain)を変化させることができる。
【0027】
図6は、本開示の方法による、関連する変調器SOAの光学モードに合わせるために、導波路SOAまたは変調器の幅のフレアリングを示す模式図である。その間にテーパを有する中央の幅及び外側の幅の任意の組み合わせが可能である。例えば、中央部のみをテーパ状にし、先頭と末尾の一定部分を省略することも可能である。これは、最初は高い光閉じ込めを持ち、注入量を増やすものの、最後は光学的な重複を少なくすることで、空間的ホールバーニング(spatial hole burning)のために実用的な利点を提供する。
【0028】
図7は、本開示の方法による、SOA光学モードに合わせた導波路変調器の幅のフレアリングを示す別の模式図である。ここでは、SOA導波路37は、テーパ状の受動導波路38またはSOA導波路37または変調器導波路39のテーパ部分を介して変調器導波路39に結合される。
【0029】
図3の従来の変調器構造25では、既にi-InP層20の選択的な成長があり、その厚さは変調器設計の最適化によって決定される可能性がある。この同じ成長は、本明細書では、SOAのためのより良い電流遮断を提供するために使用される。図4に示すように、従来の変調器からのi-InP層20は、SOAリッジ19のいずれの側に堆積(蒸着、deposit)されてもよい。しかし、変調器25の設計要求がSOAリッジ19の高さと整合させるのに十分なi-InP層20の厚さを提供しなくてもよい。後続の処理ステップの製造性を向上させるために、より平面的な上面を作るために成長促進を用いてもよい。電流遮断メサ(mesa)の増加した横方向の閉じ込めを必要としない領域のため、SOAの熱インピーダンスを改善するように、幅を増加させられることに留意すべきである。また、横方向の光閉じ込めを(変調器のモードに整合させ、及び/又は、SOAの効率を向上させるために)強化したい場合には、深いエッチングリッジを使用できる。
【0030】
選択領域エピタキシ(SAE:Selective Area Epitaxy)成長が抑制または促進された半導体デバイス
また、本開示は、エッジでの成長を抑制または促進するためにマスクを利用した選択領域エピタキシ(SAE)成長を有する半導体デバイスのシステム及び方法に関する。繰り返しになるが、SAEは、半導体表面での結晶成長のための技術である。ウェハ領域は誘電体材料(例えば、SiO、Siなど)の薄膜で覆われている、又は、マスクされている。金属-有機気相蒸着(MOCVD)チャンバなどの結晶成長反応炉では、マスクで覆われていない領域のみで選択的に結晶成長が進行する。本開示では、任意の方向に選択的に成長する領域を含み、マスクされた領域の外側のエッジに不要な成長の促進と対応する欠陥がない半導体デバイスを製造するための工程を提供している。具体的には、この工程は、エッジでの成長を抑制または促進するために使用される、マスクエッジの可変プロファイルを含む。
【0031】
実現技術として、図8は、エピタキシャル層を過成長するために使用されるマスクのエッジに対する新規の形状50を示している。例えば、パターンが[011]または[0-11]方向にあるマスクエッジで発生する、望ましくない程度の促進された結晶成長がしばしばある。マスクエッジに非線形形状50を使用することで、この望ましくない成長促進を抑制できる。マスクエッジに直線エッジではなく、ジグザグパターンを使用することは、新しい解決策である。マスクエッジでの意図しない成長促進は、選択領域成長における継続的な問題である。これまでの解決策は、エピタキシャル成長のための成長条件の変更に焦点を当てている。選択領域エピタキシは、多くのInP光変調器の製造に使用される技術である。この技術と、意図しない促進を抑制するためのマスクパターンの使用は、特許文献2に記載されているように、InPウェハの多成長変調器と関連する。成長条件を変えて意図しない促進を抑制することは、意図的な成長の促進を抑制するという欠点を有しており、そもそも選択領域成長を追求する目的であることも多い。従来のストレートサイドSAEマスクの使用は、マスクエッジに沿って成長促進材料の線形構造をもたらし、これは壊れやすく、壊れてデバイス表面の汚染を形成し、製造性と信頼性に悪影響を及ぼす。形状ソリューション50を使用することで、意図的な成長促進を損なうことなく、マスクのエッジでの意図的な成長促進を抑制できる。マスクエッジでの意図しない促進の効果は、ウェハ表面では異方性である。ある方向の軸に沿っては効果が強いが、垂直な軸に沿っては効果が弱い。促進の影響を受けやすいエッジに沿ってジグザグパターン50を配置することで、意図しない促進が発生するラインに平行な境界はほとんどありない。
【0032】
図9A図9Dは、マスク102のエッジにおける過剰な成長を示す、ウェハ100上のSAE成長工程95のステップを示すブロック図である。ウェハ100は、ウェハ104と、リン化インジウム(InP)のPアイランド106と、例えば、ヒ化インジウムガリウム(InGaAs)を含むコンタクト層108とを含むウェハである。マスク102は、SiOを含むことができ、図9Aではコンタクト層108に蒸着(塗布)されている。図9Bでは、マスク102、Pアイランド106、及びコンタクト層108を介して領域がエッチングされる。図9Cでは、エッチングされた領域でSAE成長が行われる。なお、マスク100の上にはSAE成長はないことに留意すべきである。図9Dでは、マスク100が除去されている。図9C及び9Dは、マスク100のエッジにおける過剰な成長110を含む。
【0033】
図10は、実際のウェハ100における図9Dの写真である。具体的には、ストレートサイドSAEマスク102の従来の使用が、マスクエッジに沿って成長促進110材料の線形構造をもたらし、それが壊れやすく、デバイス表面の汚染を形成し、製造性及び信頼性に悪影響を与えることを示している。図10は、残留酸化物のクリーンアップにおいて、マイナーフラットに平行なエッジ(導波路の長さに垂直な)はクリーンであっても、過剰な成長110がメジャーフラットに平行なPアイランド106のエッジに沿っていかに破断するかを示す。
【0034】
図11Aは、領域140を示すウェハ100の上面図であり、図11Bは、領域140と、マスク102の上に延びる過剰な成長110とを示すウェハ100の写真である。ベアウェハは酸化物でマスクされており、領域140にはInPの厚い過成長がある。これにより、酸化物からはみ出した過剰な成長の「キャップ」が形成される。後続のエッチングは、キャップの下の酸化物を除去するのに十分であるが、他の材料を破壊する傾向がある。
【0035】
図12A及び図12Bは、Pアイランド106の導波路方向(図12A)及び導波路に垂直な方向(図12B)の断面を示す写真である。図12Aでは、導波管の方向に界面が良好な挙動を示していることに留意すべきである。一方、図12Bは、ウェットクリーンアップの後、過剰な成長が破壊された状態を示している。この前に、InPの大きな「マッシュルームキャップ」形状がある。この特徴は、後にエッチングされたときに、材料の残留カラムを残す。
【0036】
さまざまに、本開示は、マスク102の特定の好ましい角度、マスク102の形状及び/または配向の適応、及び/またはマスク102のジグザグエッジが、マスク102のエッジにおける成長の抑制(または促進)につながることに留意する。すなわち、マスク102は、SAEの目的である意図的な成長促進を損なうことなく、マスク102のエッジにおける意図的な成長促進を抑制または促進する特定の形状を含む。マスクエッジにおける意図しない促進の効果は、ウェハ表面で異方性があり、すなわち、異なる方向で測定すると異なる値になる。ある方向の軸に沿っては効果が強いが、直角方向の軸に沿っては効果が弱い。これは、図12A図12Bで示される。
【0037】
一実施形態において、促進の影響を受けやすいエッジに沿ってジグザグパターン又は他の角のあるパターンを配置することで、その境界のほとんどが、意図しない促進が発生するラインに平行ではない。
【0038】
III-V半導体材料(具体的には、(100)面に配向したInPウェハ)の成長実験を通じて、特定の結晶軸に沿って整列したマスク102のエッジは、特に[011]または
【数1】
方向に、望ましくない程度の結晶成長の促進を示すことが判明した。残念ながら、フォトニック集積回路(PIC)のような多くの半導体デバイスでは、これらの方向が好ましい主な配向軸となっている。一般的に長方形の形状をしているSAEマスク102は、デバイスのフットプリントに整列し、スペースを無駄にしないために、このような方向に沿って配向される傾向がある。すなわち、従来の工程は、ウェハ100を有し長方形である従来のマスク102を配向させる傾向がある。本開示では、好ましい主な配向軸における過剰な成長を避けるために、マスク102のための異なる幾何学的形状と同様に、角度のない配向を提案する。
【0039】
また、上記の逆もまた真であることが決定されている。つまり、特定の結晶学的な方向に沿って、望ましくない促進された結晶成長が抑制され、実際に、[011]軸または
【数2】
軸に対する角度の関数(function)として、ゼロ促進を通過する(transits through zero enhancement)。図13は、メジャーフラット152と、メジャーフラット152に垂直なマイナーフラット154とを有する(100)面に配向されたInPウェハ150の図であり、ウェハ100の好ましい方向のグラフ160である。方向については、グラフ162が、InPウェハ510及びフラット152,154に対する[011]軸164及び
【数3】
軸166を示している。注目すべきは、軸及び方向という用語は、本明細書において交換可能に使用され得ることである。また、InPウェハ150は、ウェハ100上にあるべきである。メジャーフラット及びマイナーフラットの位置は、1つの共通の慣習に従っているが、他のものが存在してもよいことに留意すべきである。
【0040】
(100)面(ウェハ100)に配向されたInPウェハ150のため、例えば、SAEマスク102のエッジが、2つのシリーズに集められた[011]方向164に対する以下の角度(「好ましい角度」)のうちの1つに整列されたときに、成長促進がヌルを通過する(passes through a null)。
【表1】
【0041】
各シリーズは、4つの角度方向を含み、各方向はシリーズ内の他の3つの方向から90度離れている。(100)方向のInPウェハ150の場合、促進及び欠陥のないSAEマスク102のエッジに利用可能な合計8つの方向がある。具体的には、グラフ160は、[011]方向164に対するシリーズ1,2をグラフ形式で示している。シリーズ1,2の角度は[011]方向164に対して指定されているが、当業者であれば、マスク102のエッジに対するこれらの角度は、
【数4】
方向166を含む任意の方向や、本明細書に図示されていない他の結晶学的軸に対しても指定できることに留意すべきである。また、当業者であれば、これらの角度が近似値であることを認識するであろうことに留意すべきである。
【0042】
図14は、シリーズ2に応じて角度をつけた長方形のマスク102Aと、シリーズ1,2の両方から可変の角度を有するジグザグ形状のマスク102Bの斜視図である。図15は、例示のマスク102Aをその上に配置したInPウェハ150の斜視図である。図16は、その上に例示のマスク102Bを配置したInPウェハ150の斜視図である。当業者であれば、図13図16が縮尺通りでないことを認識するであろう。典型的には、InPウェハ150は、メジャーフラット152から反対側(上側)まで、サイズ(直径)がセンチメートルのオーダーであり得る。マスク102は、長さが数百ミクロン、幅が数十ミクロンのオーダーの大きさであり、ジグザグの歯はミクロンのオーダーの大きさである。
【0043】
InPウェハ150を有するマスク102の使用は、半導体ウェハ150上にエピタキシャル層を成長させる工程を介して製造される、SAEを有する半導体デバイスを形成するために利用される。一実施形態において、半導体デバイスは、1)半導体ウェハ150の表面上での結晶成長を阻害するマスク102によって覆われた第1領域、2)第1領域と相補的(近接)であり、マスク102によって覆われていない、半導体ウェハ150上での結晶成長を可能にする第2領域、及び3)第1領域を囲み、第1領域と第2領域との間の境界として機能するマスク102の周囲を含む。ここで、周囲の長さの大部分は、半導体ウェハ150上での低減された成長促進を提供する好ましい結晶方向に沿って実質的に整列している。
【0044】
また、半導体ウェハ150は、成長促進が望まれる部分と、成長促進が望まれない部分とを有することができ、本開示は、両方のニーズを満たすための自由度を提供する。例えば、スポットサイズ変換器には成長促進が望まれ、進行波電極には成長の最小化が望まれる。
【0045】
一実施形態において、マスク102Aは、四辺形の形状、すなわち、4つの辺(または側面)と4つの頂点または角を有する多角形である。つまり、外周が四辺形になることもある。重要なのは、4つの辺のいずれかが、好ましい角度と一致することである。
【0046】
別の実施形態では、マスク102Bは、一連のジグザグパターンの形状をしており、すなわち、周囲は、好ましい角に沿った一連の小さな角を含んでいる。
【0047】
半導体ウェハ表面150は、III族元素とV族元素の化合物で構成されている。一実施形態において、半導体ウェハ表面150は、(100)方向の近くでカットされたInPである。好ましい結晶方向は、[011]方向に対しておよそ、34、124、214、304、56、146、236、326度の角度うちの1つ以上である。最後の4つの数字それぞれは、(360-最初の4つの数字のうちの1つ)であること、及びその逆にも留意すべきである。すなわち、326=360-34、236=360-124などである。
【0048】
図17は、半導体デバイス用の半導体ウェハ上にエピタキシャル層を成長させる工程180のフローチャートである。工程180は、平面内の配向を有する半導体ウェハを用いて、1つまたは複数のマスクを半導体ウェハに堆積する工程と、1つまたは複数のマスクを半導体ウェハに堆積する工程を含み、各マスクは半導体ウェハの一部を覆うように構成され、各マスクは、実質的に整列した側面のエッジにおいて促進されたまたは低減された成長促進を提供する配向に対して、好ましい結晶方向に沿って実質的に整列した複数の側面を有する周辺部を含む(ステップ184)。また、半導体ウェハの表面上で選択領域エピタキシ(SAE)成長を実行する工程を含む(ステップ186)。
【0049】
周辺部は、四辺形の形状または一連のジグザグパターンを有する。半導体ウェハは、III族元素とV族元素との化合物を含むことができる。半導体ウェハは、リン化インジウム(InP)であることができ、平面は(100)方向に近いことができる。好ましい結晶方向は、半導体ウェハの[011]方向に対して、34、124、214、304、56、146、236、326度に近い角度を有する角度の1つ以上とできる。
【0050】
一実施形態において、マスクは、スポットサイズ変換器のためのものであり、好ましい結晶方向は、最大の成長促進を提供するように選択される。別の実施形態では、マスクは進行波電極のためのものであり、好ましい結晶方向は減少した成長促進を提供するように選択される。
【0051】
また、工程180によって、半導体デバイスを形成できる。
【0052】
別の実施形態では、半導体デバイスは、選択領域エピタキシ(SAE)を介して半導体ウェハ上にエピタキシャル層を成長させる工程を介して製造されるため、第1領域の表面での結晶成長を抑制するマスクによって覆われた第1領域と、第1領域に近接し、マスクによって覆われていない、第2領域の表面上での結晶成長を可能にする第2領域と、第1領域と第2領域との間の境界として機能するマスクの周囲とを含む。周囲の複数の側面は、半導体ウェハの方向に対して好ましい結晶方向に沿って実質的に整列しており、実質的に整列した側面のエッジにおける成長促進を最小または最大にする。
【0053】
図18は、好ましい角度がどのように決定されたかを示す、高解像度の視野(FOV)内の円形マスクの写真である。注目すべきは、円形マスクは、[011]方向164に対するすべての可能な角度値(0~360度)を表していることである。この方法では、小さなアイランドを分離してデータを抽出することができた。アイランドの高さと体積を角度と関連付けることが可能であると判断された。このようにして、好ましい結晶方向は、InPウェハ150の[011]方向に対する角度、およそ34、124、214、304、56、146、236、326度の1つ以上であると判断された。当業者であれば、この同じアプローチ、すなわち、異なる角度での成長特性を実験的に決定するために円形マスクを使用することが、好ましいマスク102の角度を決定するために、他の結晶軸を有する他のタイプのウェハ100などに使用できることを認識するであろう。
【0054】
本開示は、本明細書において、好ましい実施形態及びその具体的な例を参照して図示及び説明されてきたが、他の実施形態及び例が同様の機能を実行し、及び/または同様の結果を達成し得ることは、当業者には容易に明らかだろう。そのような同等の実施形態及び実施例はすべて、本開示の精神及び範囲にあり、それによって企図され、以下の請求項の対象であることが意図される。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2024-09-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面内に配向を有する半導体ウェハ(150)を用いて、前記半導体ウェハにマスク(102A、102B)を堆積するステップであって、前記マスク(102A、102B)は前記半導体ウェハの一部を覆うように構成され、前記マスク(102A、102B)は、すべて互いに接続されて単一形状を形成する複数の側面を有する周辺部を含み、これにより、前記マスク(102A、102B)の前記周辺部のほとんどは、配向に対して好ましい結晶方向に沿って実質的に整列し、前記実質的に整列した前記単一形状の側面のエッジでの成長促進を増強または低減するステップ(184)と、
前記半導体ウェハの表面上で選択領域エピタキシ(SAE)成長を実行するステップ(186)と、を含む方法(180)。
【請求項2】
前記周辺部は四辺形の形状を有する、請求項1に記載の方法(180)。
【請求項3】
前記周辺部は一連のジグザグパターンの形状を有する、請求項1に記載の方法(180)。
【請求項4】
前記表面はIII族元素とV族元素との化合物を有する、請求項1に記載の方法(180)。
【請求項5】
前記表面はリン化インジウム(InP)であり、前記平面は[100]方向に近い、請求項4に記載の方法(180)。
【請求項6】
前記半導体ウェハの[011]方向に対する前記好ましい結晶方向は、およそ34、124、214、304、56、146、236、326度の角度のうちの1つ以上である、請求項5に記載の方法(180)。
【請求項7】
前記マスク(102A、102B)はスポットサイズ変換器のためのものである、請求項1~6のいずれかに記載の方法(180)。
【請求項8】
前記好ましい結晶方向は、最大の成長促進を提供するように選択される、請求項7に記載の方法(180)。
【請求項9】
前記マスク(102A、102B)は進行波電極のためのものであり、前記好ましい結晶方向は前記低減した成長促進を提供するように選択される、請求項1~6のいずれかに記載の方法(180)。
【請求項10】
前記好ましい結晶方向は前記低減した成長促進を提供するように選択される、請求項1~6のいずれかに記載の方法(180)。
【請求項11】
単一のマスクの位置に基づいて、前記増強または低減した成長促進を伴う前記単一のマスクを用いて実施される、請求項1~10のいずれかに記載の方法(180)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の方法(180)によって形成された半導体デバイス。
【請求項13】
第1領域の表面での結晶成長を抑制するマスク(102A、102B)によって覆われた第1領域と、
前記第1領域に近接し、前記マスク(102A、102B)によって覆われていない、第2領域の表面上での結晶成長を可能にする第2領域と、
前記第1領域と前記第2領域との間の境界として機能する前記マスク(102A、102B)の周辺部と、備え、
複数の側面は、すべて互いに接続されて単一形状を形成し、前記周辺部に配置され、これにより、前記マスク(102A、102B)の前記周辺部のほとんどは、半導体ウェハ(150)の配向に対して好ましい結晶方向に沿って実質的に整列し、前記実質的に整列した前記単一形状の側面のエッジでの成長促進を増強または低減する、
選択領域エピタキシ(SAE)を介して半導体ウェハ(150)上にエピタキシャル層を成長させる工程を介して製造される半導体デバイス。
【請求項14】
前記周辺部は四辺形の形状又は一連のジグザグパターンの形状を有する、請求項13に記載の半導体デバイス。
【請求項15】
前記表面はリン化インジウム(InP)であり、前記平面は[100]方向に近い、請求項13又は14に記載の半導体デバイス。
【外国語明細書】