(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170449
(43)【公開日】2024-12-10
(54)【発明の名称】発光装置及びこれを用いた電子機器
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20241203BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20241203BHJP
G01N 21/01 20060101ALI20241203BHJP
G01N 21/84 20060101ALI20241203BHJP
F21V 9/38 20180101ALN20241203BHJP
C09K 11/08 20060101ALN20241203BHJP
C09K 11/64 20060101ALN20241203BHJP
C09K 11/80 20060101ALN20241203BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20241203BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20241203BHJP
【FI】
H01L33/50
G02B5/20
G01N21/01 D
G01N21/84 E
F21V9/38
C09K11/08 J
C09K11/64
C09K11/80
F21Y115:10
F21Y115:30
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024141180
(22)【出願日】2024-08-22
(62)【分割の表示】P 2023502290の分割
【原出願日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2021027328
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(74)【代理人】
【識別番号】100141449
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆芳
(74)【代理人】
【識別番号】100142446
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 覚
(72)【発明者】
【氏名】鴫谷 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】新田 充
(72)【発明者】
【氏名】大塩 祥三
(57)【要約】 (修正有)
【課題】近赤外と可視の双方の光成分を放つ、近赤外の光成分の高出力化と光出力面の大面積化を両立する発光装置を提供する。
【解決手段】発光装置10は、固体発光素子3と第一の波長変換体1Aと第二の波長変換体2Aを組み合わせてなり出力光4を放ち、固体発光素子は一次光3Bを放ち、第一の波長変換体は一次光の少なくとも一部を吸収して第一の波長変換光1Bに変換し、第二の波長変換体は第一の波長変換体を透過した第一の透過一次光3BT
1と第一の波長変換光とを含む第一の混合光14の少なくとも一部を吸収して第二の波長変換光2Bに変換し、出力光は少なくとも第一の波長変換光が第二の波長変換体を透過した光成分である透過第一の波長変換光1BT
2と第二の波長変換光の光成分とを含み、出力光は波長700nm未満の光成分のエネルギー強度の積分値が、波長700nm以上の積分値よりも大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体発光素子と、第一の蛍光体を含む第一の波長変換体と、第二の蛍光体を含む第二の波長変換体とを備え、出力光を放つ発光装置であって、
前記固体発光素子は、一次光を放ち、
前記第一の波長変換体は、前記一次光の少なくとも一部を吸収して、波長380nm以上780nm未満の可視の波長範囲内に蛍光ピークを持つ第一の波長変換光に変換し、
前記第二の波長変換体は、前記第一の波長変換体を透過した前記一次光である第一の透過一次光と前記第一の波長変換光とを含む第一の混合光の少なくとも一部を吸収して、700nmを超える波長領域に蛍光ピークを持ち、かつ、波長780nm以上2500nm未満の波長領域内の近赤外線成分を持つ第二の波長変換光に変換し、
前記第一の混合光は、相関色温度が2500K以上40000K未満の光色の光であり、
前記出力光は、少なくとも前記第一の波長変換光が前記第二の波長変換体を透過した光成分である透過第一の波長変換光と前記第二の波長変換光の光成分とを含み、
前記出力光は、波長700nm未満の光成分のエネルギー強度の積分値が、波長700nm以上の光成分のエネルギー強度の積分値よりも大きい、発光装置。
【請求項2】
固体発光素子と、第一の蛍光体を含む第一の波長変換体と、第二の蛍光体を含む第二の波長変換体とを備え、出力光を放つ発光装置であって、
前記固体発光素子は、一次光を放ち、
前記第一の波長変換体は、前記一次光の少なくとも一部を吸収して、波長380nm以上780nm未満の可視の波長範囲内に蛍光ピークを持つ第一の波長変換光に変換し、
前記第二の波長変換体は、前記第一の波長変換体を透過した前記一次光である第一の透過一次光と前記第一の波長変換光とを含む第一の混合光の少なくとも一部を吸収して、700nmを超える波長領域に蛍光ピークを持ち、かつ、波長780nm以上2500nm未満の波長領域内の近赤外線成分を持つ第二の波長変換光に変換し、
前記第一の混合光は、相関色温度が2500K以上40000K未満の光色の光であり、
前記出力光は、少なくとも前記第一の波長変換光が前記第二の波長変換体を透過した光成分である透過第一の波長変換光と前記第二の波長変換光の光成分とを含み、
前記出力光は、光束が291.6lm以上である、発光装置。
【請求項3】
前記固体発光素子と前記第一の波長変換体とは、これらを組み合わせてなる波長変換型発光素子を構成している請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
出力光は、相関色温度が2600K以上12000K未満の光色の光である請求項1~3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第二の波長変換光の光成分の出力割合を制御する制御機構を備える請求項1~4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第二の波長変換光の光成分を含む出力光と含まない出力光とを交互出力する請求項1~5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第一の波長変換体は、波長600nm以上660nm未満の赤色の波長領域に蛍光ピークを持つ光を放つ赤色蛍光体を含む請求項1~6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記第一の波長変換体が含む第一の蛍光体は、Ce3+で賦活された蛍光体のみである請求項1~7のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
少なくとも前記第二の波長変換体は、少なくとも前記第二の波長変換光を透過する特性を持つ請求項1~8のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記第二の蛍光体は、蛍光イオンとしてCr3+を含む請求項1~9のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項11】
センシングシステム用光源又はセンシングシステム用照明システムである請求項1~10のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の発光装置を備える電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置及びこれを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、固体発光素子と蛍光体を少なくとも組み合わせてなり、近赤外の光成分を含む出力光を放つ発光装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、Cr3+及び/又はNi2+を発光中心とする蛍光体を含む波長変換体と、励起光を放つ半導体チップを備えてなる単純な構造の発光装置が開示されている。この発光装置は、半導体チップが放つ青色光又は赤色光を、波長変換体で波長変換することで、近赤外光を生成するものである。
【0004】
特許文献1の発光装置は、主として、小型で持ち運びが可能な分析装置や分光計、工業用機械におけるセンサ用途、スマートフォン、内視鏡等への応用を意識した、従来光源に替わるオプトエレクトロニクス素子に関するものである。従来光源としては、ハロゲンランプ、赤外レーザー、赤外LED等が知られている。特許文献1の実施例には、発光装置(オプトエレクトロニクス素子)の近赤外の光の出力が50mW未満であると開示されている。
【0005】
特許文献2には、例えば、ハロゲンランプ等の代替として用いる産業機器用の発光装置が開示されている。この発光装置は、480nm以下の紫外~青の波長領域に強度最大値を持つ光を放つ発光素子と、近赤外の光に変換する蛍光体を少なくとも含む蛍光体を組み合わせて、蛍光スペクトル半値幅の広い近赤外の光成分を含む光を得るものである。特許文献2の実施例には、600mWの紫外線を放つLEDチップを用いる発光装置の近赤外の光の出力が10mWを超えると開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6570653号公報
【特許文献2】WO2019/240150号公報
【発明の概要】
【0007】
固体発光素子と蛍光体を少なくとも組み合わせてなり、近赤外と可視の光成分を同時に放つ従来の発光装置は、高出力化と大面積化の両立が困難であるという課題があった。これは、固体発光素子が放つ一次光が、近赤外線の発光成分を放つ波長変換体を、直接照射するために、特に近赤外の光成分の大面積高出力化が困難なためである。
【0008】
具体的には、固体発光素子が放つ一次光は、通常、指向性を持つため、従来の上記発光装置では、指向性を持つ一次光が、専ら波長変換体の被照射面を局所的に照射する。このため、強い一次光が照射される被照射面が小面積化し、前記被照射面を照射する一次光の強度に面内ばらつきが生じやすくなる。強い光が照射された箇所は、波長変換体が含む蛍光体の波長変換に伴うストークス損失によって発熱しやすい。この発熱は蛍光体の温度消光を誘引するため、一次光が高い指向性を持つと、波長変換体の波長変換効率の局所的な低下を招き、その平均的な波長変換効率を下げやすい。また、ストークス損失は、波長変換体が光吸収する波長と蛍光放出する波長の波長差が大きいほど大きくなる。このため、前記一次光が同じとなる条件下では、可視光に変換する蛍光体よりも、近赤外線に変換する蛍光体の方が発熱しやすく、温度消光による効率低下を誘発しやすいものとなる。
【0009】
また、高い指向性を持つ一次光は、波長変換体の被照射面の照射中心部から離れるにつれて、波長変換体に対して斜めに入射する。このため、高い指向性を持つ一次光を用いると、一次光の波長変換体への侵入深さ、又は波長変換体を透過する光路長が長くなり、出力光の色調が不均質となる配光角依存性を持ちやすくなる。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものである。本発明は、近赤外と可視の双方の光成分を放つ、人の目による見え方への配慮ができる産業用途に適し、近赤外の光成分の高出力化と光出力面の大面積化を両立する発光装置及びこれを用いた電子機器を提供することを目的とする。
【0011】
本発明は、具体的には、近赤外の光成分の均質高出力化と光出力面の大面積化を両立し、近赤外と可視の双方の光成分を放つ産業用途に適する発光装置を提供することを目的とする。また、本発明は、この発光装置を用いた、検査装置、検知装置、監視装置、分別装置、分析装置、計測装置、評価装置等の各種の電子機器を提供することを目的とする。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の態様に係る発光装置は、固体発光素子と、第一の蛍光体を含む第一の波長変換体と、第二の蛍光体を含む第二の波長変換体とを備え、出力光を放つ発光装置であって、前記固体発光素子は、一次光を放ち、前記第一の波長変換体は、前記一次光の少なくとも一部を吸収して、波長380nm以上780nm未満の可視の波長範囲内に蛍光ピークを持つ第一の波長変換光に変換し、前記第二の波長変換体は、前記第一の波長変換体を透過した前記一次光である第一の透過一次光と前記第一の波長変換光とを含む第一の混合光の少なくとも一部を吸収して、700nmを超える波長領域に蛍光ピークを持ち、かつ、波長780nm以上2500nm未満の波長領域内の近赤外線成分を持つ第二の波長変換光に変換し、前記第一の混合光は、相関色温度が2500K以上40000K未満の光色の光であり、前記出力光は、少なくとも前記第一の波長変換光が前記第二の波長変換体を透過した光成分である透過第一の波長変換光と前記第二の波長変換光の光成分とを含み、前記出力光は、波長700nm未満の光成分のエネルギー強度の積分値が、波長700nm以上の光成分のエネルギー強度の積分値よりも大きい。
本発明の態様に係る発光装置は、固体発光素子と、第一の蛍光体を含む第一の波長変換体と、第二の蛍光体を含む第二の波長変換体とを備え、出力光を放つ発光装置であって、前記固体発光素子は、一次光を放ち、前記第一の波長変換体は、前記一次光の少なくとも一部を吸収して、波長380nm以上780nm未満の可視の波長範囲内に蛍光ピークを持つ第一の波長変換光に変換し、前記第二の波長変換体は、前記第一の波長変換体を透過した前記一次光である第一の透過一次光と前記第一の波長変換光とを含む第一の混合光の少なくとも一部を吸収して、700nmを超える波長領域に蛍光ピークを持ち、かつ、波長780nm以上2500nm未満の波長領域内の近赤外線成分を持つ第二の波長変換光に変換し、前記第一の混合光は、相関色温度が2500K以上40000K未満の光色の光であり、前記出力光は、少なくとも前記第一の波長変換光が前記第二の波長変換体を透過した光成分である透過第一の波長変換光と前記第二の波長変換光の光成分とを含み、前記出力光は、光束が291.6lm以上である。
【0013】
本発明の態様に係る電子機器は、上記発光装置を備える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る発光装置の構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、第2の実施形態に係る発光装置の構成を示す概略図である。
【
図3】
図3は、第3の実施形態に係る発光装置の構成を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る発光装置が放つ出力光の分光分布の一例である。
【
図5】
図5は、第4の実施形態に係る電子機器の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第5の実施形態に係る電子機器の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第6の実施形態に係る電子機器の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、第7の実施形態に係る電子機器の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第8の実施形態に係る電子機器の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第9の実施形態に係る電子機器の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第10の実施形態に係る電子機器の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、実施例に係る発光装置が放つ出力光の分光分布等の一例である。
【
図13】
図13は、実施例に係る発光装置が放つ出力光の分光分布等の一例である。
【
図14】
図14は、実施例に係る発光装置が放つ出力光の分光分布等の一例である。
【
図15】
図15は、実施例に係る発光装置が放つ出力光の分光分布等の一例である。
【
図16】
図16は、実施例に係る発光装置が放つ出力光の分光分布等の一例である。
【
図17】
図17は、実施例に係る発光装置が放つ出力光の分光分布等の一例である。
【
図18】
図18は、実施例に係る発光装置が放つ出力光の分光分布等の一例である。
【
図19】
図19は、実施例に係る発光装置が放つ出力光の分光分布等の一例である。
【
図20】
図20は、実施例に係る発光装置が放つ出力光の分光分布等の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して実施形態に係る発光装置及び当該発光装置を用いた電子機器について説明する。具体的には、電子機器が検査装置や医療装置等である場合の電子機器について説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0016】
<発光装置>
(発光装置の装置構成の概要)
はじめに、発光装置について説明する。
図1~3は、第1~第3の実施形態に係る発光装置の構成を示す概略図である。なお、
図1~3の概略図では、発光装置に用いられる電源等の記載を省略している。
【0017】
図1は、第1の実施形態に係る発光装置の構成を示す概略図である。
図1に示される第1の実施形態に係る発光装置10A(10)は、固体発光素子3と第一の波長変換体1Aと第二の波長変換体2Aとを備える。具体的には、第1の実施形態に係る発光装置10Aは、固体発光素子3と第一の波長変換体1Aと第二の波長変換体2Aを、それぞれ1個用いて構成した単純な構成の発光装置である。なお、固体発光素子3と第一の波長変換体1Aとの組み合わせ構造を「発光-波長変換ユニット」ともいう。発光装置10Aでは、発光-波長変換ユニットは、1個である。
【0018】
図2は、第2の実施形態に係る発光装置の構成を示す概略図である。
図2に示される第2の実施形態に係る発光装置10B(10)は、固体発光素子3と第一の波長変換体1Aと第二の波長変換体2Aとを備える。具体的には、第2の実施形態に係る発光装置10Bは、固体発光素子3と第一の波長変換体1Aとの組み合わせ構造である発光-波長変換ユニットを複数個設けた発光装置である。
【0019】
図3は、第3の実施形態に係る発光装置の構成を示す概略図である。
図3に示される第3の実施形態に係る発光装置10C(10)は、固体発光素子3と第一の波長変換体1Aと第二の波長変換体2Aとを備える。具体的には、第3の実施形態に係る発光装置10Cは、固体発光素子3のみ複数個用いた構成の発光装置の一例である。発光装置10Cでは、複数個の固体発光素子3は、各固体発光素子3と第一の波長変換体1Aとの距離が一定になるように整列して配置される。また、発光装置10Cでは、複数個の固体発光素子3と、第一の波長変換体1Aとが離間している。
【0020】
[第1の実施形態]
以下、第1の実施形態に係る発光装置10Aについて説明する。
【0021】
発光装置10Aは、固体発光素子3と、第一の蛍光体1を含む第一の波長変換体1Aと、第二の蛍光体2を含む第二の波長変換体2Aを少なくとも組み合わせてなり、出力光4を放つ発光装置である。
【0022】
発光装置10Aでは、固体発光素子3と第二の波長変換体2Aと間に、第一の波長変換体1Aが配置される。このため、発光装置10Aでは、固体発光素子3が放つ一次光3Bは第一の波長変換体1Aを透過した後に第二の波長変換体2Aに照射されるようになっている。すなわち、発光装置10Aでは、固体発光素子3が放つ一次光3Bは第一の波長変換体1Aを透過しない状態で第二の波長変換体2Aに照射されることがないようになっている。
【0023】
以下、「固体発光素子3が放つ一次光3Bが第一の波長変換体1Aを透過した光」を「第一の透過一次光3BT1」ともいう。ここで、「第一の波長変換体1Aを透過した光」とは、「第一の波長変換体1A内での反射等にかかわらず、第一の波長変換体1Aの一方端から導入された一次光3Bが第一の波長変換体1Aの他方端から出射された光」を意味する。例えば、「第一の波長変換体1Aの一方端から導入された一次光3Bが第一の波長変換体1A中の第一の蛍光体1で反射されずにそのまま透過して第一の波長変換体1Aの他方端から出射された光」は第一の透過一次光3BT1である。また、「第一の波長変換体1Aの一方端から導入された一次光3Bが第一の波長変換体1A中の第一の蛍光体1で反射された後に第一の波長変換体1Aの他方端から出射された光」も第一の透過一次光3BT1である。第一の透過一次光3BT1は、一次光3Bに由来する分光分布を有し、かつ、一次光3Bよりも低い光強度を有する光である。
【0024】
固体発光素子3は、一次光3Bを放つ。また、第一の波長変換体1Aは、一次光3Bの少なくとも一部を吸収して、波長380nm以上780nm未満の可視の波長範囲内に蛍光ピークを持つ第一の波長変換光1Bに変換する。
【0025】
第二の波長変換体2Aは、第一の透過一次光3BT1と第一の波長変換光1Bとを含む第一の混合光14の少なくとも一部を吸収して、第二の波長変換光2Bに変換する。第一の混合光14は、第一の波長変換体1Aを透過した一次光3Bである第一の透過一次光3BT1と第一の波長変換光1Bとを含む光である。
【0026】
第一の混合光14は、相関色温度が2500K以上40000K未満、好ましくは3800K以上20000K未満の光色の光である。なお、第一の混合光14の相関色温度の上限や下限の具体的な数値は、上記の数値範囲内であれば特に限定されるものではなく、上限温度を、例えば、5000K、7000K、10000K、15000K等から適宜選択できる。
【0027】
第二の波長変換光2Bは、700nmを超える波長領域に蛍光ピークを持ち、かつ、波長780nm以上2500nm未満の波長領域内の近赤外線成分を持つ光である。第二の波長変換光2Bは、好ましくは750nmを超える波長領域に蛍光ピークを持つ。第二の波長変換光2Bは、好ましくは780nm以上1000nm未満の波長領域内の近赤外線成分を持つ。
【0028】
出力光4は、少なくとも第一の波長変換光1Bと第二の波長変換光2Bの光成分を含む。
【0029】
発光装置10Aでは、このような装置構成により、第二の波長変換体2Aが、固体発光素子3が放つ一次光3Bに直接照射されることがない。
【0030】
第二の波長変換体2Aに照射される第一の混合光14は、第一の透過一次光3BT1と、第一の波長変換光1Bと、を含む。ここで、第一の波長変換光1Bは、第一の波長変換体1Aによって長波長の光に変換された、一次光3Bよりも低エネルギーの光である。また、第一の透過一次光3BT1は、第一の波長変換体1Aでの波長変換により光子数が減って強度が弱められ、さらに第一の波長変換体1Aによって光拡散された、一次光3Bよりも低強度の光である。そして、第一の透過一次光3BT1の分光分布は、一次光3Bの分光分布に由来する。
【0031】
第二の波長変換体2Aは、散乱された光子からなり、強度が相対的に下がった第一の混合光14によって照射される。ここで、第一の混合光14は、通常、固体発光素子3が放つ一次光3Bよりも、照射面積が大きい。このため、第二の波長変換体2Aでは、入射する光の波長変換に伴い生じる局所的な発熱(ストークス損失による)を抑制できる。
【0032】
第二の波長変換体2Aでは、第二の蛍光体2が、比較的大きなストークス損失をもたらす一次光3Bや光エネルギー密度が大きい一次光3Bで直接に励起されることがない。また、第二の波長変換体2Aでは、指向性を持つ一次光3Bで励起する場合のように、第二の波長変換体2A中の第二の蛍光体2の一部のみが励起されることが抑制される。このため、発光装置10Aでは、第二の波長変換体2Aの全体に亘って光子が均等均質に照射・吸収されて、光出力面が大きくなりやすい。これによって、出力光4が照射する被照射面を大きくすることが容易になる。
【0033】
発光装置10Aでは、第二の波長変換体2Aの全体に亘って光子が均等均質に照射・吸収されやすいため、第二の波長変換体2Aの波長変換に伴う発熱による局所的な温度上昇を抑制できる。また、第二の波長変換体2Aの全体に亘って光子が均等均質に照射・吸収されやすいため、光出力面を大きくでき、被照射面を大面積化することもできる。このため、発光装置10Aは、第二の波長変換体2Aに含まれる第二の蛍光体2の温度消光を抑制し、近赤外線の光成分の高出力化とその光出力面の大面積化に好適な、可視光と近赤外線とを出力し得る発光装置になる。
【0034】
なお、発光装置10Aでは、固体発光素子3と第一の波長変換体1Aとは別体になっている。しかし、発光装置10Aの変形例として、固体発光素子3及び第一の波長変換体1Aに代えて、固体発光素子3と第一の波長変換体1Aとを組み合わせてなる一体型の波長変換型発光素子を用いたものとすることができる。すなわち、固体発光素子3と第一の波長変換体1Aとは、これらを組み合わせてなる波長変換型発光素子を構成しているようにすることができる。
【0035】
波長変換型発光素子は、白色LED技術を用いて容易に製造できる。また、相関色温度が2500K以上40000K未満の光色の光を放つ波長変換型発光素子も、白色LED技術を用いて容易に製造できる。例えば、相関色温度が2600K以上12000K未満の光色の光を放つ波長変換型発光素子であれば、白色LEDとして、様々な仕様や形態の製品が市場に数多く出回っており、容易に入手できる。このため、波長変換型発光素子を用いる発光装置は、顧客要望に対して、設計から商品開発や工業生産に至るまでの過程を、少ない工数でスピーディーに対応することが可能である。
【0036】
以下、発光装置10Aの各構成について詳述する。
【0037】
(固体発光素子3)
固体発光素子3は、一次光3Bを放つ部材である。固体発光素子3としては、例えば、発光ダイオードやレーザーダイオード等の固体発光素子が用いることができる。なお、固体発光素子3はこれらに限定されず、一次光3Bを放つことが可能であれば、あらゆる固体発光素子を用いることができる。
【0038】
固体発光素子3として、例えば、1W以上の高ワットエネルギーの光を放つLEDモジュール、又はレーザーダイオードを用いれば、数百mWクラスの近赤外の光成分を含む光出力を期待できる発光装置10Aが得られる。固体発光素子3として、例えば、3W以上、又は10W以上の高ワットエネルギーの光を放つLEDモジュールを用いれば、数Wクラスの光出力を期待できる発光装置10Aが得られる。30W以上の高ワットエネルギーの光を放つLEDモジュールを用いれば、10Wを超える光出力を期待できる発光装置10Aが得られる。100W以上の高ワットエネルギーの光を放つLEDモジュールを用いれば、30Wを超える光出力を期待できる発光装置10Aが得られる。
【0039】
固体発光素子3としてレーザーダイオードを用いると、一次光3Bがレーザー光になり、第一の波長変換体1Aに高密度のスポット光を照射する仕様になる。このため、固体発光素子3としてレーザーダイオードを用いた発光装置10Aによれば、高出力の点光源とすることができ、固体照明の産業利用の範囲を広げることが可能である。
【0040】
また、発光装置10Aの変形例として、固体発光素子3と第一の波長変換体1Aとの間に、光ファイバー等の導光部材を備えるものとすることができる。この変形例によれば、固体発光素子3と第一の波長変換体1Aとが空間的に離間し、発光装置の発光部が軽くて自在に動かすことが可能になり、照射場所を自在に変えることが容易な発光装置10が得られる。
【0041】
レーザーダイオードとしては、例えば、端面発光レーザー(EEL:Edge Emitting Laser)や垂直共振器面発光型レーザー(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)等を用いることができる。
【0042】
固体発光素子3が放射する一次光3Bの光エネルギー密度は、0.3W/mm2を超えることが好ましく、1.0W/mm2を超えることがより好ましい。一次光3Bの光エネルギー密度が上記範囲内にあると、例えば、発光装置10Aの変形例として、固体発光素子3と第一の波長変換体1Aとの間に図示しない拡散板等を配置した場合でも、比較的強い出力光4を放つ発光装置にすることができる。
【0043】
固体発光素子3が放つ一次光3Bの光エネルギー密度の上限は特に限定されないが、例えば30W/mm2とすることができる。
【0044】
発光装置10Aを構成する固体発光素子3は、複数個であることが好ましい。発光装置10Aが固体発光素子3を複数個備えると、一次光3Bの出力を大きくすることが容易であるため、高出力化に好適な発光装置が得られる。固体発光素子3の個数は特に限定されるものではない。用途に合わせて、例えば、縦横同数となる、2×2、3×3、5×5、8×8、10×10個、あるいは、縦横異数となる2×3、3×5、3×10個などから適宜選択することができる。
【0045】
発光装置10Aにおいて、固体発光素子3が面発光形の面発光光源であると、第一の波長変換体1Aに照射する一次光3Bの強度分布のばらつきや色調のむらが抑制され、出力光の強度分布むらの抑制等が可能であるため、好ましい。
【0046】
固体発光素子3は、複数種類の固体発光素子を組み合わせて用いることができる。また、固体発光素子3は、色調が異なる一次光3Bを放つ複数種類の固体発光素子を組み合わせて用いることができる。色調が異なる一次光3Bを放つ複数種類の固体発光素子を組み合わせて用いる場合、第一の波長変換体1Aは、少なくとも1種類の固体発光素子3が放つ一次光3Bの少なくとも一部を吸収して、第一の波長変換光1Bに変換するものとすることができる。
【0047】
(一次光)
一次光3Bは、固体発光素子3)が放つ光である。一次光3Bは、第一の波長変換体1Aが、その一部を吸収して、波長380nm以上780nm未満の可視の波長範囲内に蛍光ピークを持つ第一の波長変換光1Bに変換し得る波長の光であればよい。一次光3Bは、紫外線又は可視光の波長領域内に強度最大値を持つ光とすることができる。紫外線又は可視光の波長領域としては、例えば、波長350nm以上750nm未満が挙げられる。
【0048】
一次光3Bとしては、例えば、315nm以上400nm未満(UV-A)の長波長紫外線が用いられる。一次光3Bとしては、例えば、380nm以上495nm未満の紫色光又は青色光が用いられる。一次光3Bとしては、例えば、495nm以上590nm未満の緑色光又は黄色光が用いられる。一次光3Bとしては、例えば、590nm以上750nm未満の橙色光又は赤色光が用いられる。
【0049】
一次光3Bは、好ましくは波長435nm以上560nm未満、より好ましくは波長440nm以上480nm未満の範囲内に強度最大値を持つ光である。一次光3Bとしてこれらの光を用いると、オーソドックスな青色LEDや青色LED仕様の白色LED等の用いることができるため、発光装置10Aのスピーディーな商品開発や工業生産等が容易になる。
【0050】
なお、一次光3Bは、一次光を構成する光子が、複数個の固体発光素子から供給されると、固体発光素子3の数に比例して第一の波長変換体1Aに多くの光子を供給でき、出力光4の高出力化が可能であるため、好ましい。
【0051】
(第一の波長変換体1A)
第一の波長変換体1Aは、第一の蛍光体1を含む部材である。
【0052】
第一の波長変換体1Aとしては、例えば、第一の蛍光体1をシリコーン等の樹脂で封止した波長変換体、第一の蛍光体1を低融点ガラス等で封止した全無機の波長変換体、第一の蛍光体1を結着材で結着させた全無機の波長変換体等が用いられる。また、第一の波長変換体1Aとしては、例えば、第一の蛍光体1を焼結してなる無機材料の焼結体からなる波長変換体等が用いられる。無機材料の焼結体からなる波長変換体としては、例えば、蛍光セラミックスからなる波長変換体が用いられる。
【0053】
第一の波長変換体1Aは、適宜、複合した形態の波長変換体とすることもでき、例えば、上記波長変換体が積層した構造を持つ波長変換体等として用いることができる。
【0054】
樹脂封止した波長変換体は、粉末蛍光体を用いて比較的容易に製造できるため、比較的安価な発光装置を提供する上で有利である。一方、全無機の波長変換体は熱伝導性に優れ放熱設計が容易になるため、波長変換体の温度上昇を抑制して蛍光体の温度消光の抑制による高ワット出力化が可能である。
【0055】
第一の波長変換体1Aの厚み等については特に限定されるものではないが、一例を挙げると、最大厚みが100μm以上5mm未満、好ましくは200μm以上1mm未満である。
【0056】
第一の波長変換体1Aは、固体発光素子3の光出力面の全体を覆うように配置されていることが好ましく、面発光光源の光出力面の全体を覆うように配置されていることがより好ましい。第一の波長変換体1Aがこのように配置されると、一次光3Bが第一の波長変換体1Aを効率よく照射するため、一次光3Bの第一の波長変換光1Bへの変換効率が高い高効率の発光装置10Aが得られる。
【0057】
第一の波長変換体1Aは、透光性を持つものにすることができる。第一の波長変換体1Aが透光性を持つと、波長変換体の内部で波長変換されて生成した光成分を、第一の波長変換体1Aを透過して放出することができる。このため、第一の波長変換体1Aが透光性を持つと、光成分の出力に好適な発光装置10Aが得られる。
【0058】
(第一の蛍光体1)
第一の蛍光体1は、第一の波長変換体1Aに含まれる。第一の蛍光体1は、固体発光素子3が放つ一次光3Bの少なくとも一部を吸収して第一の波長変換光1Bに変換する。第一の蛍光体1としては、例えば、固体照明光源用等として知られる各種の無機の蛍光体(以後、「無機の蛍光体」を、単に「蛍光体」と記す。)を用いることができる。
【0059】
第一の蛍光体1として、435nm以上500nm未満の波長範囲内に蛍光強度最大値を示す青色の波長変換光を放つ蛍光体を用いた発光装置10Aによれば、青色の光成分を含む出力光4が得られる。第一の蛍光体1として、470nm以上530nm未満の波長範囲内に蛍光強度最大値を示す青緑色又は緑色の波長変換光を放つ蛍光体を用いた発光装置10Aによれば、青緑色の光成分を含む出力光4が得られる。
【0060】
第一の蛍光体1として、500nm以上560nm未満の波長範囲内に蛍光強度最大値を示す緑色又は黄緑色の波長変換光を放つ蛍光体を用いた発光装置10Aによれば、緑色の光成分を含む出力光4が得られる。第一の蛍光体1として、560nm以上600nm未満の波長範囲内に蛍光強度最大値を示す黄色又は橙色の波長変換光を放つ蛍光体を用いた発光装置10Aによれば、黄色の光成分を含む出力光4が得られる。
【0061】
第一の蛍光体1として、600nm以上700nm未満、好ましくは610nm以上660nm未満の赤色又は深赤色の波長範囲内に蛍光強度最大値を示す波長変換光を放つ蛍光体を用いた発光装置10Aによれば、赤色の光成分を含む出力光4が得られる。
【0062】
これらの発光装置10Aは、第一の蛍光体1が蛍光強度最大値を示す波長未満の波長範囲内に強度最大値を示す一次光3Bを放つ固体発光素子3を用いることによって構成できる。
【0063】
なお、暗所視において視感度が高い青緑色の光成分を含む波長変換光を放つ蛍光体を用いた発光装置10Aによれば、暗がりや暗闇において視認しやすい出力光4を放つ発光装置10Aが得られる。明所視において視感度が高い緑色の光成分を含む波長変換光を放つ蛍光体を用いた発光装置10Aによれば、明るい所において視認しやすい出力光4を放つ発光装置10Aが得られる。
【0064】
第一の蛍光体1として、黄色の光成分を含む波長変換光を放つ蛍光体を用いると、例えば、紫外線や青色光によって感光しやすい樹脂を使用する作業環境下で使用する発光装置の出力光の高効率化に好適な発光装置10Aが得られる。第一の蛍光体1として、赤色の光成分を含む波長変換光を放つ蛍光体を用いると、赤みを持つ食肉やマグロやリンゴ等の食品、肌色を呈する人の肌等の見た目を良好にする照明設計に好適な発光装置10Aが得られる。
【0065】
第一の蛍光体1としては、例えば、希土類イオン、遷移金属イオン等で付活され、可視の蛍光を放つ蛍光体を用いることができる。第一の蛍光体1としては、具体的には、希土類イオン、遷移金属イオン等を蛍光イオン(発光中心)として含む、酸化物、硫化物、窒化物、ハロゲン化物、酸硫化物、酸窒化物、酸ハロゲン化物等を用いることができる。希土類イオンとしては、例えば、Ce3+及びEu2+の少なくとも1種が用いられる。遷移金属イオンとしては、例えば、Mn4+が用いられる。
【0066】
第一の蛍光体1としては、より具体的には、ハロリン酸塩、リン酸塩、ハロ珪酸塩、珪酸塩、アルミン酸塩、アルミノ珪酸塩、硼酸塩、ゲルマン酸塩、窒化珪酸塩、窒化アルミノ珪酸塩、酸窒化珪酸塩、酸窒化アルミノ珪酸塩等が用いられる。第一の蛍光体1としては、上記物質から、照明設計に適するものを適宜選択して用いればよい。
【0067】
第一の波長変換体1Aは、第二の波長変換体2Aによる波長変換に伴う吸収光のストークス損失を抑制する観点から、できる限り長波長の範囲内に蛍光強度最大値を示す波長変換光を放つ第一の蛍光体1を含むことが好ましい。この場合、第一の波長変換体は、波長600nm以上660nm未満の赤色の波長領域に蛍光ピークを持つ光を放つ赤色蛍光体を含むものが好ましい。
【0068】
このような構成にすると、第一の波長変換体1Aが放射する近赤外線の波長領域に波長が近接する赤色光を用いて、第二の波長変換体2Aが含む第二の蛍光体2を励起させることができる。第一の波長変換体が上記赤色蛍光体を含む発光装置10Aによれば、第二の波長変換体2Aの波長変換に伴うストークス損失をいっそう低減して、波長変換に伴い生じる発熱を抑制し、第二の蛍光体2の温度消光を抑制できる。このため、第一の波長変換体が上記赤色蛍光体を含む発光装置10Aによれば、近赤外線をより高出力化させることが可能である。
【0069】
赤色蛍光体は、好ましくは、Eu2+で付活された複合窒化物蛍光体又は複合酸窒化物蛍光体(以後、「Eu2+付活窒化物系蛍光体」と記す。)である。Eu2+付活窒化物系蛍光体としては、例えば、アルカリ土類金属窒化珪酸塩、アルカリ土類金属窒化アルミノ珪酸塩、アルカリ土類金属酸窒化珪酸塩、及びアルカリ土類金属酸窒化アルミノ珪酸塩の蛍光体が用いられる。Eu2+付活窒化物系蛍光体としては、具体的には、MAlSiN3:Eu2+、MAlSi4N7:Eu2+、M2Si5N8:Eu2+(但し、Mは、Ca、Sr、及びBaから選択される少なくとも1種の元素である。)を主成分とする赤色蛍光体が用いられる。また、Eu2+付活窒化物系蛍光体としては、MAlSiN3:Eu2+、MAlSi4N7:Eu2+、M2Si5N8:Eu2+のSi4+-N3+の組み合わせの一部をAl3+-O2―で置換した変形組成のEu2+付活窒化物系蛍光体等が用いられる。
【0070】
当該Eu2+付活窒化物系蛍光体は、青~緑~黄~橙の広い波長範囲に亘る光成分を吸収して赤色光に変換する性質を持つものが多いため、固体発光素子3として、青色光だけでなく、緑色光や黄色光を放つ固体発光素子を用いることができる。このような固体発光素子を用いた発光装置10Aによれば、最終的に近赤外線に波長変換する際のストークス損失を小さくする形態にすることが容易で、かつ出力光4の高効率化が可能である。
【0071】
固体発光素子として、青色光を放つ固体発光素子を用いる場合は、光の三原色(青、緑、赤)を構成する、少なくとも青色と赤色の二種類の光成分を少なくとも含んでなる高演色性の出力光4を得ることに好適な発光装置10Aが得られる。
【0072】
第一の波長変換体1Aの蛍光出力飽和を抑制して第二の波長変換体2Aにより多くの光子を供給する観点からは、第一の波長変換体1Aはできる限り短残光性の第一の蛍光体1を含むことが好ましい。
【0073】
短残光性の第一の蛍光体1を用いる場合は、第一の蛍光体1としてCe3+で賦活された蛍光体のみを用いることが好ましい。
【0074】
Ce3+は、パリティー許容スピン許容型の電子エネルギー遷移に基づく光吸収と蛍光放出を示すことに起因して、瞬時に、光吸収と蛍光放出が生じる。このため、レーザー光等の高密度励起光の照射条件下でも蛍光出力飽和し難い。ここで、蛍光出力飽和とは、励起光エネルギーの強度増加とともに蛍光出力が飽和する現象を指す。このため、第一の蛍光体1としてCe3+で賦活された蛍光体のみを用いると、第一の波長変換体1Aに直接照射する一次光3Bの光子数を増して強度を高めることができ、固体発光素子3から供給する光子数を増すことが容易になる。したがって、第一の蛍光体1としてCe3+で賦活された蛍光体のみを用いた発光装置10Aによれば、出力する光子数を増すことが容易になり、近赤外線や可視光の高出力化が可能である。
【0075】
Ce3+で賦活された蛍光体としては、例えば、ガーネット型の結晶構造を持つCe3+で付活された複合酸化物蛍光体(以後、この蛍光体を「Ce3+付活ガーネット蛍光体」と記す。)が用いられる。Ce3+で賦活された蛍光体としては、具体的には、希土類アルミニウムガーネット蛍光体が用いられる。希土類アルミニウムガーネット蛍光体としては、例えば、Lu3Al2(AlO4)3:Ce3+、Y3Al2(AlO4)3:Ce3+、Lu3Ga2(AlO4)3:Ce3+、Y3Ga2(AlO4)3:Ce3+;これらの化合物を端成分としてなる固溶体としてのガーネット化合物等が用いられる。
【0076】
Ce3+付活ガーネット蛍光体は青色光を吸収して緑色光に変換する性質を持つことが多い。このため、Ce3+付活ガーネット蛍光体を用いる場合は、一次光3Bを放つ固体発光素子3として青色光を放つ固体発光素子3を用いやすい。青色光を放つ固体発光素子3とCe3+付活ガーネット蛍光体とを用いると、光の三原色(青、緑、赤)を構成する、少なくとも青色と緑色の二種類の光成分を少なくとも含んでなる高演色性の出力光4を得ることが容易になる。
【0077】
また、車載ヘッドランプ技術や高出力プロジェクタ-技術等の進展に伴い、近年、高出力化や信頼性確保に好適なCe3+付活ガーネット蛍光体のセラミックス化技術が進展している。このため、Ce3+付活ガーネット蛍光体を用いる場合は、高出力化や信頼性の面で好適な、Ce3+付活ガーネット蛍光体の蛍光セラミックスからなる第一の波長変換体1Aを備える発光装置10Aの提供が比較的容易である。
【0078】
昨今では、青色光を放つLEDと黄緑色光を放つCe3+付活ガーネット蛍光体とを組み合わせてなる、多種多様な白色LED光源が市場に出回っており、数多くの企業が製造販売している。このため、白色LED光源及びこれらの関連技術の入手が容易であり、少ない労力で速やかに白色LED光源を前記発光-波長変換ユニットとする発光装置10Aを開発することができる。
【0079】
(第一の波長変換光1B)
発光装置10Aでは、第一の波長変換体1Aは、一次光3Bの少なくとも一部を吸収して、波長380nm以上780nm未満の可視の波長範囲内に蛍光ピークを持つ第一の波長変換光1Bに変換する。
【0080】
第一の波長変換光1Bは、例えば、波長435nm以上700nm未満の範囲内に強度最大値を持つ可視の光成分となる。また、第一の波長変換光1Bは、例えば、波長500nm以上600nm未満、好ましくは510nm以上560nm未満の波長範囲内に強度最大値を持つ光成分となる。さらに、第一の波長変換光1Bは、例えば、波長600nm以上660nm未満、好ましくは610nm以上650nm未満の波長範囲内に強度最大値を持つ光成分となる。発光装置10Aでは、第一の波長変換光1Bを上記光成分の少なくとも一種にすることができる。
【0081】
(第二の波長変換体2A)
第二の波長変換体2Aは、第二の蛍光体2を含む部材である。
【0082】
第二の波長変換体2Aは、第一の混合光14の少なくとも一部を吸収して、700nmを超える波長領域に蛍光ピークを持ち、かつ、波長780nm以上2500nm未満の波長領域内の近赤外線成分を持つ第二の波長変換光2Bに変換する部材である。第一の混合光14は、第一の波長変換体1Aを透過した一次光3Bである第一の透過一次光3BT1と第一の波長変換光1Bとを含む光である。
【0083】
第二の波長変換体2Aとしては、例えば、第二の蛍光体2をシリコーン等の樹脂で封止した波長変換体、第二の蛍光体2を低融点ガラス等で封止した全無機の波長変換体、第二の蛍光体2を結着材で結着させた全無機の波長変換体等が用いられる。また、第二の波長変換体2Aとしては、例えば、第二の蛍光体2を焼結してなる無機材料の焼結体からなる波長変換体等が用いられる。無機材料の焼結体からなる波長変換体としては、例えば、蛍光セラミックスからなる波長変換体が用いられる。
【0084】
第二の波長変換体2Aは、第一の蛍光体1に代えて第二の蛍光体2を用いる以外は、第一の波長変換体1Aと同様である。例えば、第二の波長変換体2Aの形態は、第一の波長変換体1Aの形態と同様である。このため、第二の波長変換体2Aの形態についての説明を省略又は簡略化する。
【0085】
第二の波長変換体2Aは、第一の波長変換体1Aの全体を覆うように配置されていることが好ましい。第二の波長変換体2Aがこのように配置されると、第一の波長変換体1Aを透過した一次光3Bである第一の透過一次光3BT1や、第一の波長変換体1Aから放たれる第一の波長変換光1Bが、第二の波長変換体2Aを効率よく照射する。このため、第二の波長変換体2Aがこのように配置されると、第一の透過一次光3BT1及び第一の波長変換光1Bの、第二の波長変換光2Bへの変換効率が高い高効率の発光装置10Aが得られる。
【0086】
なお、第二の波長変換体2Aは、透光性を持つものにすることができる。第二の波長変換体2Aが透光性を持つと、第一の透過一次光3BT1や第一の波長変換光1Bだけでなく、波長変換体の内部で波長変換されて生成した光成分も、第二の波長変換体2Aを透過して放出することができる。このため、第二の波長変換体2Aが透光性を持つと、これらの光成分の出力に好適な発光装置10Aが得られる。
【0087】
第二の波長変換体2Aは、少なくとも第二の波長変換光2Bを透過する特性を持つものにすることができる。このような構成にすると、第二の波長変換体2Aが、第二の波長変換光2Bの近赤外の光成分を透過させることから、近赤外の光成分が波長変換体の内部で光子が波長変換体自身に吸収されて消失することを抑制する。このため、第二の波長変換体2Aは、少なくとも第二の波長変換光2Bを透過する特性を持つと、近赤外線の高出力化に好適な発光装置10Aが得られる。
【0088】
(第二の蛍光体2)
第二の蛍光体2は、第二の波長変換体2Aに含まれる。第二の蛍光体2は、第一の波長変換体1Aを透過した一次光3Bである第一の透過一次光3BT1と第一の波長変換光1Bとを含む第一の混合光14の少なくとも一部を吸収して、第二の波長変換光2Bに変換する蛍光体である。
【0089】
なお、第一の透過一次光3BT1は、第一の波長変換体1Aでの波長変換により光子数が減って強度が弱められ、さらに第一の波長変換体1Aによって光拡散された、一次光3Bよりも低強度の光である。そして、第一の透過一次光3BT1の分光分布は、一次光3Bの分光分布に由来する。
【0090】
このため、第二の蛍光体2は、仮に、第一の混合光14に含まれる第一の透過一次光3BT1が一次光3Bに置き換えられた場合でも、一次光3Bと第一の波長変換光1Bとを含む混合光の少なくとも一部を吸収して、第二の波長変換光2Bに変換する。第二の蛍光体2としては、例えば、近赤外光源用等として知られる各種の無機の蛍光体(以後、「近赤外蛍光体」と記す。)を用いることができる。
【0091】
第二の蛍光体2として、700nm以上1700nm未満の波長範囲内に蛍光強度最大値を示す比較的短波長側の近赤外の波長変換光を放つ蛍光体を用いた発光装置10Aによれば、各種ガス分子の吸光波長の光成分を含む出力光4が得られる。各種ガス分子の吸光波長は、例えば、O2:760nm、NO2:830nm、H2O:1365nm、NH3:1530nm、C2H2:1530nm、CO:1567nm、CO2:1573nm、CH4:1651nmである。
【0092】
上記出力光4は、第一の透過一次光3BT1、一次光3B又は第一の波長変換光1Bが、例えば、380nm以上700nm未満の可視の波長範囲内に強度最大値を示す光である発光装置10Aにより得られる。上記出力光4は、第一の透過一次光3BT1、一次光3B又は第一の波長変換光1Bが、好ましくは、440nm以上500nm未満の波長範囲内に強度最大値を示す青から青緑色の光である発光装置10Aにより得られる。上記出力光4は、第一の透過一次光3BT1、一次光3B又は第一の波長変換光1Bが、好ましくは、500nm以上580nm未満の波長範囲内に強度最大値を示す緑から黄色の光である発光装置10Aにより得られる。上記出力光4は、第一の透過一次光3BT1、一次光3B又は第一の波長変換光1Bが、好ましくは、波長600nm以上680nm未満の波長範囲内に強度最大値を示す赤色の光である発光装置10Aにより得られる。
【0093】
第二の蛍光体2は、800nm±100nm未満の波長範囲内に蛍光強度最大値を示す波長変換光を放つ蛍光体であると、近赤外分光法を用いて、酸素(O2)、二酸化窒素(NO2)及びこれらの成分を含む被照射物に関する情報を得る用途に望ましい。第二の蛍光体2は、好ましくは800nm±50nm未満の波長範囲内に蛍光強度最大値を示す波長変換光を放つ蛍光体であると、同じ理由でより望ましい。
【0094】
第二の蛍光体2は、1350nm±150nm未満、好ましくは1350nm±75nm未満の波長範囲内に蛍光強度最大値を示す波長変換光を放つ蛍光体であると、水(H2O)及び水を含む被照射物に関する情報を得る用途に望ましい。
【0095】
第二の蛍光体2は、1600nm±200nm未満の波長範囲内に蛍光強度最大値を示す波長変換光を放つ蛍光体であると好ましい。このような第二の蛍光体2は、アンモニア(NH3)、炭化水素(C2H2、CH4等)、酸化炭素(CO、CO2等)及びこれらの成分を含む被照射物に関する情報を得る用途に望ましい。第二の蛍光体2は、好ましくは1600nm±100nm未満の波長範囲内に蛍光強度最大値を示す波長変換光を放つ蛍光体であると、同じ理由でより望ましい。
【0096】
なお、これらとは逆に、第二の蛍光体2は、800nm±50nm未満の波長範囲内の光成分の強度最大値が、分光分布の700nm以上1700nm未満の波長範囲内における強度最大値の10%に満たない蛍光体であることも、上記とは別の好ましい形態となる。この形態では、800nm±50nm未満の波長範囲内に光成分を持たない蛍光体が特に好ましい。この第二の蛍光体2が好ましい理由は、酸素(O2)又は二酸化窒素(NO2)による光吸収が被照射物、システム等に与える悪影響を避けることができるためである。
【0097】
また、第二の蛍光体2は、800nm±100nm未満の波長範囲内の光成分の強度最大値が、分光分布の700nm以上1700nm未満の波長範囲内における強度最大値の10%に満たない蛍光体であると、同じ理由でより好ましい。
【0098】
なお、第二の蛍光体2は、1350nm±75nm未満の波長範囲内の光成分の強度最大値が、分光分布の700nm以上1700nm未満の波長範囲内における強度最大値の10%に満たない蛍光体であることも好ましい。この形態では、1350nm±75nm未満等の上記波長範囲内に光成分を持たない蛍光体が特に好ましい。この第二の蛍光体2が好ましい理由は、水(H2O)による光吸収が被照射物、システム等に与える悪影響を避けることができるためである。
【0099】
また、第二の蛍光体2は、1350nm±150nm未満の波長範囲内の光成分の強度最大値が、分光分布の700nm以上1700nm未満の波長範囲内における強度最大値の10%に満たない蛍光体であると、同じ理由でより好ましい。
【0100】
なお、第二の蛍光体2は、1600nm±100nm未満の波長範囲内の光成分の強度最大値が、分光分布の700nm以上1700nm未満の波長範囲内における強度最大値の10%に満たない蛍光体であることも好ましい。この形態では、1600nm±100nm未満等の上記波長範囲内に光成分を持たない蛍光体が特に好ましい。このような第二の蛍光体2が好ましい理由は、アンモニア(NH3)、炭化水素(C2H2、CH4等)、又は酸化炭素(CO、CO2等)による光吸収が被照射物、システム等に与える悪影響を避けることができるためである。
【0101】
また、第二の蛍光体2は、1600nm±200nm未満の波長範囲内の光成分の強度最大値が、分光分布の700nm以上1700nm未満の波長範囲内における強度最大値の10%に満たない蛍光体であると、同じ理由でより好ましい。
【0102】
なお、上記の比較的短波長側の近赤外の波長変換光を放つ蛍光体を用いる発光装置10Aは、検出器用のセンサに専ら用いられるフォトダイオードの分光感度が高い光成分を出力する。このため、比較的短波長側の近赤外の波長変換光を放つ蛍光体を用いる発光装置10Aは、フォトダイオードを用いる検査装置用に望ましい。
【0103】
第二の蛍光体2は、700nm以上1100nm未満の波長範囲内に蛍光強度最大値を示す波長変換光を放つ蛍光体であると、SiフォトダイオードやSi-PINフォトダイオードを用いる検査装置用向けの発光装置を提供する用途に望ましい。第二の蛍光体2は、好ましくは780nm以上1050nm未満、より好ましくは800nm以上1000nm未満の波長範囲内に蛍光強度最大値を示す波長変換光を放つ蛍光体であると、同じ理由でより望ましい。
【0104】
第二の蛍光体2は、700nm以上1600nm未満の波長範囲内に蛍光強度最大値を示す波長変換光を放つ蛍光体であると、Geフォトダイオードを用いる検査装置用向けの発光装置を提供する用途に望ましい。第二の蛍光体2は、好ましくは1100nm以上1550nm未満、より好ましくは1300nm以上1500nm未満の波長範囲内に蛍光強度最大値を示す波長変換光を放つ蛍光体であると、同じ理由でより望ましい。
【0105】
第二の蛍光体2は、900nm以上1650nm未満の波長範囲内に蛍光強度最大値を示す波長変換光を放つ蛍光体であると、InGaAsフォトダイオードを用いる検査装置用向けの発光装置を提供する用途に望ましい。第二の蛍光体2は、好ましくは1000nm以上1600nm未満、より好ましくは1100nm以上1600nm未満の波長範囲内に蛍光強度最大値を示す波長変換光を放つ蛍光体であると、同じ理由でより望ましい。
【0106】
なお、上記の比較的短波長側の近赤外の波長変換光を放つ蛍光体を用いる発光装置10Aは、熱線となる4000nm以上の光成分を出力するリスクが下がる。このため、これらの発光装置10Aは、上記光成分を出力しないものにすると熱によって変質しやすい被照射物の検査用等としては、望ましくなる。
【0107】
第二の蛍光体2として、780nm以上2500nm未満の波長範囲内に蛍光強度最大値を示す比較的長波長側の近赤外の波長変換光を放つ蛍光体を用いると、人の目に見えない赤外線の光成分を含む出力光4を放射する発光装置10Aが得られる。第二の蛍光体2として、好ましくは800nm以上2500nm未満の波長範囲内に蛍光強度最大値を示す比較的長波長側の近赤外の波長変換光を放つ蛍光体を用いると、人の目に見えない赤外線の光成分を含む出力光4を放射する発光装置10Aがより得られる。
【0108】
これらの発光装置10Aは、第一の透過一次光3BT1、一次光3B又は第一の波長変換光1Bが、例えば、380nm以上700nm未満の可視の波長範囲内に強度最大値を示す光である場合に、得られる。
【0109】
このような、比較的長波長側の近赤外の波長変換光を放つ蛍光体を用いる発光装置10Aは、人の目に見える780nmよりも短波長の可視光成分を出力するリスクが下がる。このため、これらの発光装置10Aは、上記可視光成分を出力しないものにすると、出力光4の存在を人に悟られることが不都合な監視用等の用途に望ましくなる。
【0110】
第二の蛍光体2としては、例えば、希土類イオン、遷移金属イオン等で付活され、近赤外の光成分を含む蛍光を放つ蛍光体を用いることができる。希土類イオンとしては、例えば、Nd3+、Eu2+、Ho3+、Er3+、Tm3+及びYb3+から選択される少なくとも1種が用いられる。遷移金属イオンとしては、例えば、Ti3+、V4+、Cr4+、V3+、Cr3+、V2+、Mn4+、Fe3+、Co3+、Co2+及びNi2+から選択される少なくとも1種が用いられる。
【0111】
第二の蛍光体2としては、第一の蛍光体1と同様に、希土類イオン、遷移金属イオン等を蛍光イオンとして含む、酸化物、硫化物、窒化物、ハロゲン化物、酸硫化物、酸窒化物、酸ハロゲン化物等を用いることができる。
【0112】
なお、第二の蛍光体2を構成し無機化合物の蛍光イオンとして機能するイオンとしては、上記希土類イオン及び遷移金属イオンから選択できる少なくとも1種のイオンとすることができる。上記蛍光イオンとして機能するイオンとしては、第一の透過一次光3BT1、一次光3B及び第一の波長変換光1Bの少なくとも1種を吸収して近赤外の光成分に変換する性質を持つ蛍光体の蛍光イオンとして機能するものが用いられる。上記蛍光イオンとして機能するイオンは、好ましくはCr3+である。すなわち、第二の蛍光体2は、好ましくは蛍光イオンとしてCr3+を含む。
【0113】
第二の蛍光体2がCr3+を含むと、可視光、特に青色光又は赤色光を吸収して近赤外の光成分に変換する性質を持ちやすいため好ましい。第二の蛍光体2がCr3+を含むと、蛍光体の母体である無機化合物の種類によって、光吸収ピーク波長や蛍光ピーク波長を変えることが容易であり、励起スペクトル形状、蛍光スペクトル等の形状を変えやすいため好ましい。
【0114】
また、第二の蛍光体2がCr3+を含むと、入手に好適な青色LED仕様の波長変換型発光素子が放つ青色光成分を励起光として用いることが容易になる。ここで、入手に好適な青色LED仕様の波長変換型発光素子としては、例えば、固体発光素子と蛍光体とを組み合わせてなる発光素子が用いられる。このため、第二の蛍光体2がCr3+を含むと、速やかに製造販売する上で好適な発光装置10Aが得られる。
【0115】
さらに、第二の蛍光体2がCr3+を含むと、赤色蛍光体を含む仕様の波長変換型発光素子を用いる場合に、ストークス損失の低減に好適な赤色光成分を励起光として用いることが容易になる。
【0116】
このため、第二の蛍光体2がCr3+を含むと、出力する近赤外の光成分の分光分布の制御に好適な発光装置10Aが得られる。
【0117】
なお、蛍光イオンがCr3+となる蛍光体の種類は、第一の透過一次光3BT1、一次光3B及び第一の波長変換光1Bの少なくとも1種を吸収し、赤外の蛍光成分に変換するものであれば特に限定されるものではない。このため、蛍光イオンがCr3+となる第二の蛍光体2としては、既知のCr3+付活蛍光体から適宜選択すれば足りる。蛍光イオンがCr3+となる第二の蛍光体2としては、例えば、製造が容易な複合金属酸化物が挙げられる。
【0118】
蛍光イオンがCr3+となる第二の蛍光体2としては、具体的には、多くの実用実績を持つガーネット型の結晶構造を持つCr3+で付活された複合酸化物蛍光体(以後、「Cr3+付活ガーネット蛍光体」と記す。)が用いられる。Cr3+付活ガーネット蛍光体としては、好ましくは、希土類アルミニウムガーネット蛍光体が用いられる。Cr3+付活ガーネット蛍光体としては、より具体的には、Y3Al2(AlO4)3:Cr3+、La3Al2(AlO4)3:Cr3+、Gd3Al2(AlO4)3:Cr3+、Y3Ga2(AlO4)3:Cr3+、La3Ga2(AlO4)3:Cr3+、Gd3Ga2(AlO4)3:Cr3+、Y3Sc2(AlO4)3:Cr3+、La3Sc2(AlO4)3:Cr3+、Gd3Sc2(AlO4)3:Cr3+、Y3Ga2(GaO4)3:Cr3+、La3Ga2(GaO4)3:Cr3+、Gd3Ga2(GaO4)3:Cr3+、Y3Sc2(GaO4)3:Cr3+、La3Sc2(GaO4)3:Cr3+、Gd3Sc2(GaO4)3:Cr3+、及びこれらの物質を端成分としてなる固溶体からなるガーネット化合物が用いられる。
【0119】
Cr3+付活ガーネット蛍光体は、青~赤色の光成分、特に、青又は赤色の光成分を吸収して深赤色~近赤外の光に変換する性質を持つものが多い。このため、一次光3Bを放つ固体発光素子3、及び/又は第一の波長変換光1Bを放つ第一の波長変換体1Aとして、青色光及び/又は赤色光の光成分を放つ固体発光素子、青色光及び/又は赤色光の光成分を放つ蛍光体を用いることができる。Cr3+付活ガーネット蛍光体を用いると、光の三原色(青、緑、赤)を構成する少なくとも一種類(青色又は赤色)の光成分と近赤外の光成分を少なくとも含んでなる出力光4を得ることが容易な発光装置10Aが得られる。
【0120】
光の三原色(青、緑、赤)を構成する光成分と近赤外の光成分を含んでなる高演色性の出力光4を得られる発光装置10Aとしては、例えば、下記固体発光素子3、第一の波長変換体1A及び第二の波長変換体2Aからなるものが用いられる。この発光装置10Aでは、第1に、固体発光素子3として、一次光3Bとして青色光を放つ固体発光素子3を用いる。上記発光装置10Aでは、第2に、第一の蛍光体1として、青色光を緑色光に変換するCe3+付活ガーネット蛍光体、及び/又は少なくとも青色光を赤色光に変換するEu2+付活窒化物系蛍光体を含む第一の波長変換体1Aを用いる。上記発光装置10Aでは、第3に、第二の蛍光体2として、第一の透過一次光3BT1、一次光3B及び第一の波長変換光1Bの少なくとも1種を、近赤外の光に変換するCr3+付活ガーネット蛍光体を含む第二の波長変換体2Aを用いる。
【0121】
なお、近年では、Ce3+付活ガーネット蛍光体の材料技術が、セラミックス化技術も含めて進展しているため、Ce3+付活ガーネット蛍光体で培われた技術のCr3+付活ガーネット蛍光体への応用が容易である。このため、Cr3+付活ガーネット蛍光体を主体にしてなる蛍光セラミックスを用いると、近赤外の光成分の高出力化や信頼性の面で好適な発光装置10Aの提供が比較的容易である。
【0122】
さらに、白色LED光源と同様、Ce3+付活ガーネット蛍光体についても多種多様な当該蛍光体が市場に出回っており、数多くの企業が製造販売しているため、これらの関連技術の入手も容易である。このため、Ce3+付活ガーネット蛍光体で培われた技術の水平展開を期待できるCr3+付活ガーネット蛍光体を用いることにより、少ない労力で速やかに商品開発する上で好適な発光装置10Aが得られる。
【0123】
(第二の波長変換光2B)
発光装置10Aでは、第二の波長変換体2Aは、第一の波長変換体1Aを透過した一次光3Bである第一の透過一次光3BT1と第一の波長変換光1Bとを含む第一の混合光14の少なくとも一部を吸収する。そして、第二の波長変換体2Aは、700nmを超える波長領域に蛍光ピークを持ち、かつ、波長780nm以上2500nm未満の波長領域内の近赤外線成分を持つ第二の波長変換光2Bに変換する。
【0124】
第二の波長変換光2Bは、例えば、波長700nm以上2500nm未満の範囲内に強度最大値を持つ近赤外の光成分となる。また、第二の波長変換光2Bは、例えば、波長750nm以上1800nm未満、好ましくは780nm以上1500nm未満の波長範囲内に強度最大値を持つ光成分となる。
【0125】
(出力光4)
出力光4は、少なくとも、第一の波長変換光1Bが前記第二の波長変換体2Aを透過した光成分である透過第一の波長変換光1BT2と、第二の波長変換光2Bの光成分とを含む。ここで、透過第一の波長変換光1BT2は、第一の波長変換光1Bよりも低強度の光である。そして、透過第一の波長変換光1BT2の分光分布は、第一の波長変換光1Bの分光分布に由来する。
【0126】
出力光4は、さらに、第二の波長変換光2Bを透過した第一の透過一次光3BT
1である第二の透過一次光3BT
2を含んでいてもよい。
図1には、出力光4が、透過第一の波長変換光1BT
2と、第二の波長変換光2Bと、第二の透過一次光3BT
2とを含む第二の混合光24である態様を示す。出力光4と第二の混合光24とは同じ光であるが、便宜上、出力光4を第二の混合光24ともいう。
【0127】
図4は、本実施形態に係る発光装置が放つ出力光4の分光分布の一例である。
【0128】
本実施形態に係る発光装置が放つ出力光4は、
図4に示すように、例えば、色調が異なる、少なくとも、第一の光成分5と第二の光成分6と第三の光成分7とを含むものにすることができる。
【0129】
ここで、第一の光成分5とは、固体発光素子3が放つ一次光3Bに由来する光成分である。
図4に示す第一の光成分5は、
図1に示す第二の透過一次光3BT
2と同一である。第一の光成分5と第二の透過一次光3BT
2とは同一の光成分であるが、説明の便宜上、異なる表現にした。
【0130】
第一の光成分5は、例えば、波長300nm以上660nm未満、好ましくは380nm以上670nm未満、より好ましくは435nm以上470nm未満の波長範囲内に強度最大値を持つ可視の光成分である。
図4に示す第一の光成分5は、455nmに強度最大値を持つ。
【0131】
また、第二の光成分6とは、第一の蛍光体1が放つ第一の波長変換光1Bに由来する光成分である。
図4に示す第二の光成分6は、
図1に示す透過第一の波長変換光1BT
2と同一である。第二の光成分6と透過第一の波長変換光1BT
2とは同一の光成分であるが、説明の便宜上、異なる表現にした。
【0132】
第二の光成分6は、例えば、波長380nm以上700nm未満、好ましくは500nm以上660nm未満の波長範囲内に強度最大値を持つ可視の光成分である。
図4に示す第二の光成分6は、540nmに強度最大値を持つ。
【0133】
さらに、第三の光成分7とは、第二の蛍光体2が放つ第二の波長変換光2Bに由来する、光成分である。
図4に示す第三の光成分7は、
図1に示す第二の波長変換光2Bと同一である。第三の光成分7と第二の波長変換光2Bとは同一の光成分であるが、説明の便宜上、異なる表現にした。
【0134】
第三の光成分7は、例えば、波長700nm以上2500nm未満、好ましくは750nm以上1800nm未満の波長範囲内に強度最大値を持つ近赤外の光である。なお、当該波長範囲の最長波長は、適宜、800nm、900nm、1000nm、1200nm、1500nm等にすることが可能である。
図4に示す第三の光成分7は、730nmに強度最大値を持つ。
【0135】
上記第一の光成分5、第二の光成分6及び第三の光成分7を有する出力光4を放つ発光装置10Aによれば、出力光4が、人の目で視認できる可視の光成分と、人の目で見えにくい近赤外の光成分を含む。ここで、可視の光成分は第一の光成分5と第二の光成分6であり、近赤外の光成分は第三の光成分7である。上記発光装置10Aによれば、照らされた被照射物を人の目で確認しながら、近赤外分光法等を用いることによって、その内部を非破壊検査することができる。
【0136】
また、上記発光装置10Aによれば、一次光3B(第一の光成分5)と、第一の波長変換光1B及び/又は第二の波長変換光2B(第二の光成分6及び/又は第三の光成分7)とが加法混色された色調を持つ出力光4が得られる。
【0137】
上記発光装置10Aによれば、固体発光素子3に供給する電力を制御して、出力光4の総光子数を制御できる。また、上記発光装置10Aによれば、第一の波長変換体1A及び第二の波長変換体2Aの厚みや光透過率を変えることによって、第一の光成分5と第二の光成分6と第三の光成分7を構成する光子割合を制御できる。さらに、上記発光装置10Aによれば、第一の蛍光体1及び第二の蛍光体2の種類を変えることによって、第二の光成分6と第三の光成分7の色調を制御できる。
【0138】
このため、上記発光装置10Aによれば、照らされたものの視認性、及びその非破壊検査等に関わる両方の顧客要望への対応が容易になる。また、上記発光装置10Aによれば、人の目と検知器の双方にとって好適な、照らされた被照射物の見え方が自然な出力光を放射する発光装置となる。
【0139】
出力光4の分光分布は、650nm以上800nm未満、好ましくは700nm±50nmの波長範囲内に谷を持つことが望ましい。出力光4の分光分布は、谷を持つ上記の波長範囲内の強度最小値が、波長380nm以上2500nm以下、好ましくは380nm以上960nm以下の波長範囲内の分光分布の強度最大値の、50%を下回ることが望ましい。
【0140】
このような構成にすると、出力光4は、可視の光成分を主体にしてなる第一の光成分5と第二の光成分6との第一の混合光14と、近赤外の光成分を持つ第三の光成分7との干渉が少なくなる。具体的には、出力光4の分光分布は、波長700nm付近を境目として、可視光成分と近赤外の光成分とが、ある程度以上、分離される分光分布になる。このため、このような出力光4を放射する発光装置10Aによれば、照らした被照射物を透過、又は照らした被照射物によって反射される光近赤外の光成分を検知する検出器のS/Nが向上しやすい。
【0141】
なお、光源が放つ近赤外の光成分を検出器で検知して、検出器の検知信号をフーリエ変換して用いる用途(例えば、光干渉断層像撮影)等では、第三の光成分7の分光分布は単峰型であることが好ましい。また、上記用途では、正規分布を持つかこれに近い分光分布を持つことがより好ましい。
【0142】
この場合、第三の光成分7の分光分布は、700nmを超える波長領域において、強度の波長依存性が急激な変化を伴わないことが好ましく、±8%/nm、特に、±3%/nmを超えて変化しないことがより好ましい。
【0143】
なお、正規分布に近くなる、好ましい分光分布の程度を数値で示す。第三の光成分7が強度最大値を示す波長をλPとし、第三の光成分7の強度が強度最大値の半分となる短波長側と長波長側の波長を、それぞれλSとλLとする。このときに、λPとλSとλLとが、例えば、1≦(λL-λP)/(λP-λS)<2.0、好ましくは1≦(λL-λP)/(λP-λS)<1.8を満足する数値となる分光分布である。
【0144】
第三の光成分7の分光分布がこの条件を満たすと、フーリエ変換後の偽信号の生成を抑制でき、信号としての品質に優れる検知信号を検出器に検知させる上で好適な発光装置が得られる。
【0145】
ここで、第一の光成分5と第二の光成分6の少なくとも1種は、波長510nm以上600nm未満の青緑~緑~黄~橙色、好ましくは波長530nm以上580nm未満の緑~黄色の光成分を持つことが望ましい。第一の光成分5と第二の光成分6の少なくとも1種は、より好ましくは545nm以上565nm未満の緑色の光成分を持つことが望ましい。
【0146】
このような構成にすると、人の目が光を感じ取る強さが大きく、明るく感じる波長の光成分を出力するものになるため、人の目で、照らされた被照射物を視認しやすい出力光4を放つ発光装置10Aが得られる。
【0147】
また、発光装置10Aにおいて、第一の光成分5と第二の光成分6の少なくとも1種は、波長460nm以上550nm未満の青~青緑~緑、好ましくは波長480nm以上530nm未満の青緑~緑色の光成分を持つ。第一の光成分5と第二の光成分6の少なくとも1種は、より好ましくは490nm以上520nm未満の青緑~緑色の光成分を持つことも好ましい。
【0148】
このような構成にすると、光量が小さい暗所視の状況において、人の目が光を感じ取る強さが強く、明るく感じる波長の光成分を出力する発光装置10Aが得られる。すなわち、暗闇の中で照らされた被照射物を視認しやすい出力光4を放つ発光装置10Aが得られる。
【0149】
発光装置10Aは、第一の光成分5と第二の光成分6の少なくとも1種は、波長610nm以上670nm未満、好ましくは630nm以上660nm未満の赤色の光成分を持つことが好ましい。
【0150】
このような構成にすると、照らされたものの肌色や赤色を美しく見せたり、色鮮やかに見せたりする光成分を出力する発光装置10Aが得られる。すなわち、照らされた人の顔や肌の見え方や、赤みを持つ食肉や果物等の見栄え等をよくする出力光4を放つ発光装置10Aが得られる。
【0151】
なお、第三の光成分7は、850nmを起点として、長波長になるにつれて強度低下することが好ましく、1000nmにおける蛍光強度が、850nmの蛍光強度の10%を下回るようにすることができる。また、上記起点とする波長は、850nmよりも短いことが好ましく、例えば、800nmとすることができる。さらにこの場合、1000nmにおける蛍光強度が800nmにおける蛍光強度の10%を下回り、かつ950nmにおける蛍光強度が800nmにおける蛍光強度の10%を下回るようにすることができる。
【0152】
このような構成にすると、熱線として機能しやすい長波長側領域の近赤外線や中赤外線等の割合が小さな出力光4を放つ発光装置10Aが得られる。すなわち、例えば食品類等、発光装置が放つ熱によって悪影響を受けやすい被照射物を検査する用途に好適な発光装置10Aが得られる。
【0153】
出力光4の分光分布は、第二の光成分6と第三の光成分7の間に極小値を持ち、この極小値は第三の光成分7の強度最大値の50%を下回ることが好ましい。また、出力光4の分光分布は、第三の光成分が、その強度最大値が50%となる強度をとる長波長側の波長と低波長側の波長との波長差が、70nm、好ましくは100nmを超えることが望ましい。
【0154】
このような構成にすると、可視と近赤外の光成分とがよく分離され、波長が異なる近赤外の光成分を広い波長領域に亘って持つ出力光4を放つ発光装置10Aが得られる。すなわち、近赤外の光の光吸収波長が異なるか、又は周囲環境によって変動しやすい被照射物の検査、評価等に好適な発光装置10Aが得られる。
【0155】
このような構成において、第一の光成分5と第二の光成分6と第三の光成分7を混合した光は、青色光成分と、青緑~緑~黄色光成分と、赤色光成分とを含むことが好ましい。ここで、青色光成分としては、波長435nm以上480nm未満の波長範囲内の青色光成分が好ましい。青緑~緑~黄色光成分としては、波長500nm以上580nm未満の波長範囲内の青緑~緑~黄色光成分が好ましい。赤色光成分としては、波長600nm以上700nm未満の波長範囲内の赤色光成分が好ましい。
【0156】
上記青色光成分は、好ましくは、当該波長範囲内に強度最大値を持つ青色光成分である。上記青緑~緑~黄色光成分は、好ましくは、当該波長範囲内に強度最大値を持つ緑~緑~黄色光成分である。上記赤色光成分は、好ましくは、当該波長範囲内に強度最大値を持つ赤色光成分である。
【0157】
このような構成にすると、出力光4は、光の三原色となる青と緑と赤の光成分を含むものになり、演色性が高い可視光を出力できる発光装置10Aが得られる。すなわち、照らされた被照射物をありのままのように見せることに好適な発光装置10Aが得られる。また、このような構成にすると、光の三原色(青、緑、赤)及び近赤外の光成分を多く放つものになるため、RGB-NIRイメージングと呼ばれるイメージング技術との適合性がよい発光装置10Aが得られる。
【0158】
このような構成において、第一の光成分5は、固体発光素子3が放つ一次光3Bに由来する、通常波長435nm以上480nm未満、好ましくは440nm以上470nm未満の波長範囲内に強度最大値を持つ青色光成分とすることができる。
【0159】
このような構成の出力光4は、青色光を放つ発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)等、オーソドックスな固体発光素子を用いて容易に得ることができる。このため、このような構成にすると、スピーディーな商品開発や工業生産に好適な発光装置10Aが得られる。
【0160】
第二の光成分6は、第一の光成分5の、第一の蛍光体1による第一の波長変換光1Bに由来する光とすることが好ましい。
【0161】
このような構成にすると、第一の蛍光体1による光吸収と蛍光放出のエネルギー差(ストークスシフト)を小さくする発光装置10Aが得られる。すなわち、このような構成にすると、可視光からそれよりも長波長の可視光への波長変換に伴い生じるエネルギー損失によって、第一の蛍光体1が発熱し、当該蛍光体の温度上昇によって消光する現象(温度消光という。)が抑制される。このため、このような構成にすると、第二の光成分6の、高い光子変換効率での出力に好適な発光装置10Aが得られる。
【0162】
第三の光成分7は、第二の光成分6の、第二の蛍光体2による第二の波長変換光2Bとすることが好ましい。
【0163】
このような構成にすると、第二の蛍光体2による光吸収と蛍光放出のエネルギー差を小さくする発光装置10Aが得られる。すなわち、このような構成にすると、可視光からそれよりも長波長となる近赤外線への波長変換に伴い生じるエネルギー損失によって、第二の蛍光体2が発熱し、当該蛍光体の温度上昇によって消光することが抑制される。このため、このような構成にすると、第三の光成分7の、高い光子変換効率での出力に好適な発光装置が得られる。
【0164】
なお、出力光4は、波長700nm未満の光成分のエネルギー強度の積分値が、波長700nm以上の光成分のエネルギー強度の積分値よりも大きいものにすることができる。このような構成にすると、波長700nm未満の光成分のエネルギー強度の積分値が、波長700nm以上の光成分のエネルギー強度の積分値の2倍、好ましくは3倍を超える発光装置10Aが得られる。
【0165】
このため、このような構成にすると、視感度の大きな可視光の光成分のエネルギー強度が、視感度の小さな近赤外線を含む長波長域の光成分のエネルギー強度よりも大きい発光装置10Aが得られる。すなわち、人の目にとって、照らされた被照射物が明るくて見やすく、必要に応じて、照らされた被照射物の非破壊検査等ができる出力光を放つ発光装置10Aが得られる。
【0166】
逆に、出力光4は、波長700nm未満の光成分のエネルギー強度の積分値が、波長700nm以上の光成分のエネルギー強度の積分値よりも小さい発光装置10Aとしてもよい。このような構成にすると、波長700nm未満の光成分のエネルギー強度の積分値が、波長700nm以上の光成分のエネルギー強度の積分値の半分、好ましくは1/3に満たない発光装置10Aが得られる。
【0167】
このため、このような構成にすると、非破壊検査等に利用可能な近赤外の光成分を含む光成分のエネルギー強度が、人の目に見える光成分のエネルギー強度よりも大きくなる発光装置10Aが得られる。すなわち、このような構成にすると、高精度の非破壊検査、微小物の非破壊検査、広域の非破壊検査、大きな被照射物又は厚みを持つ被照射物の非破壊検査等に適する出力光4を放つ発光装置10Aが得られる。また、このような構成にすると、必要に応じて、照らされた被照射物の表面状態等を人の目で簡単に確認することができる出力光4を放つ発光装置10Aが得られる。さらに、このような構成にすると、人の目に見える可視光成分の出力割合が小さな出力光を放つ発光装置10Aが得られるため、出力光4の眩しさを緩和する上で好適な発光装置10Aが得られる。
【0168】
なお、発光装置10Aにおいて、白色の出力光4を放つものとすることができる。例えば、第一の光成分5と、第二の光成分6と、第三の光成分7とが、加法混色によって白色光を形成する適当な光成分を選択して組み合わせると、白色の出力光4を放つ発光装置10Aが得られる。
【0169】
このような構成にすると、自然光に近い色調の光と、高出力の近赤外線を同時に放つものになり、一般照明と産業用照明を兼ねる発光装置10Aが得られる。このため、自然に近い照らされた被照射物の見え方が自然で、照らされた被照射物の状態等を検知する検知装置、照らされた被照射物の内部構造や欠陥等を検査する検査装置等の用途に適する発光装置10Aが得られる。
【0170】
出力光4は、相関色温度が、好ましくは2600K以上12000K未満、より好ましくは3000K以上8000K未満の光色の光である。
【0171】
このような構成にすると、自然光に近い色調の可視光と、近赤外線を同時に放つものになり、ヒトの目による見え方が重視される一般照明と電子機器の目(センサ)による見え方が重視される産業用照明を兼ねることができる発光装置10Aが得られる。すなわち、自然に近い照らされた被照射物の見え方が自然で、照らされた被照射物の状態等を検知する検知装置、又は照らされた被照射物の内部構造や欠陥等を検査し得る検査装置等の用途に好適な発光装置10Aが得られる。なお、相関色温度が低い光は電球が放つ光に近い光色の光になり、相関色温度が高い光は昼間の太陽光に近い光色の光になる。
【0172】
本実施形態において好ましい出力光4の平均演色評価数(Ra)は、80以上100未満である。
【0173】
このような発光装置10Aによれば、高演色性の光によって青果物、食肉、鮮魚等の被照射物の見た目を鮮度感があふれる良好なものにし、かつ近赤外の光の反射光又は透過光の光成分の検出によって被照射物の内部の傷み具合や鮮度等の評価が可能になる。
【0174】
また、上記発光装置10Aによれば、例えば、売り場に陳列した青果物等の商品の傷み具合等を第三者に悟られることなく把握して、傷みが認められる商品等を定価売り場等から早めに取り去ることを可能にする店舗用照明等に用いることが可能になる。
【0175】
さらに、上記発光装置10Aは、高演色性の光によって人の顔、肌、体内の臓器等の被照射物を美しくみせ、かつ近赤外の光の反射光又は透過光の光成分の検出によって人の健康状態や疾病等の評価を可能にするヘルスケア又は医療等の用途に好適である。ここで、近赤外の光の反射光又は透過光は、被照射物を照らす近赤外に基づく光である。なお、平均演色評価数が小さい光は、高光束化に好適な光になり、平均演色評価数が大きい光は自然光に近い光になる。
【0176】
上記発光装置10Aによれば、自然光で照らされたときと遜色のない空間の見え方をする中で、人に悟られることなく、近赤外の光によって、照らされたものの状態の監視や計測等が可能になる。
【0177】
なお、白色を呈する出力光4は、少なくとも440nm以上660nm未満、好ましくは、少なくとも430nm以上900nm未満の波長範囲内の全域において、分光強度を持つものにすることができる。すなわち、上記の波長範囲内において、強度がゼロとなる波長成分がない分光分布の光にすることができる。
【0178】
このような出力光4を用いると、波長が異なる多くの光で対象物を照らすことができる。また、短波長可視(紫青)から近赤外に亘る出力光4を用いる構成にすると、照らす波長によって異なる反射光を撮影して集約し、照らされた被照射物の特徴を可視化するハイパースペクトルイメージングに好適な発光装置10Aが得られる。
【0179】
発光装置が放つ出力光4の分光分布の形態は、波長700nm以上の長波長の光成分の強度が最大値(強度最大値)を示すことが好ましい。また、出力光4の分光分布は、波長700nm以上の光成分の強度最大値が、波長380nm以上700nm未満の光成分の強度最大値の1.5倍、好ましくは2倍、より好ましくは3倍を超えることが好ましい。
【0180】
また、波長380nm以上700nm未満の波長範囲内の光成分の強度最大値は、波長700nm以上の光成分の強度最大値の50%未満であることが好ましく、30%未満であることがより好ましい、10%未満であることがさらに好ましい。これによって、近赤外の光成分割合が多く、近赤外の光成分への変換効率が高い発光装置10Aが得られる。
【0181】
発光装置が放つ出力光4の分光分布の形態は、波長380nm以上700nm未満の光成分の強度が最大値(強度最大値)を示すことが好ましい。また、出力光4の分光分布は、波長700nm未満の光成分の強度最大値が、波長700nm以上の光成分の強度最大値の1.5倍、好ましくは2倍、より好ましくは3倍を超えることが好ましい。このような構成にすると、可視の光成分割合が多く、可視の光成分への変換効率が高い発光装置10Aが得られる。
【0182】
なお、出力光4の分光分布は、波長380nm未満の紫外域の光成分を実質に含まないことが好ましい。このような構成にすると、投入電力を可視光と近赤外線を含む赤外線にのみ変換でき、可視光と赤外線へのエネルギー変換効率が高い発光装置10Aが得られる。
【0183】
出力光の分光分布は、
図4に第三の光成分7として示すような、Cr
3+イオンの
4T
2→
4A
2の電子エネルギー遷移に由来するブロードな蛍光成分を放つことが好ましい。また、当該蛍光成分は700nm以上の波長領域に蛍光ピークを持つことが好ましい。これによって、広い波長範囲に亘って近赤外光成分を放つものになり、ハイパースペクトルイメージングに適する発光装置10Aが得られる。
【0184】
出力光4の分光分布は、少なくとも410nm以上700nm未満、好ましくは380nm以上780nm未満の可視の波長領域の全域に亘って光成分を持つことが好ましい。このような構成にすると、照らされたものが人の目で視認できるだけでなく、スペクトルイメージングに用いることができる光成分を、可視域の全波長範囲に亘って持つ出力光を放つ発光装置10Aが得られる。
【0185】
(発光装置の動作)
以下、
図1を用いて、発光装置10Aの動作を説明する。
【0186】
固体発光素子3に電力を供給して駆動すると、固体発光素子3は、一次光3Bを放出する。固体発光素子3から放射された一次光3Bが第一の波長変換体1Aに入射すると、第一の波長変換体1Aが一次光3Bの一部を吸収して、それよりも光エネルギーが低い第一の波長変換光1Bへと変換する。一次光3Bは、第一の波長変換体1Aを透過すると第一の透過一次光3BT1となる。第一の波長変換体1Aからは、第一の透過一次光3BT1と第一の波長変換光1Bとの混合光である第一の混合光14が放射される。
【0187】
第一の混合光14が第二の波長変換体2Aに入射すると、第二の波長変換体2Aは混合光の一部を吸収して、それよりも光エネルギーが低い第二の波長変換光2Bへと変換する。第一の透過一次光3BT1は、第二の波長変換体2Aを透過すると第二の透過一次光3BT2となる。第一の波長変換光1Bは、第二の波長変換体2Aを透過すると透過第一の波長変換光1BT2となる。第二の波長変換体2Aからは、第二の透過一次光3BT2と透過第一の波長変換光1BT2と第二の波長変換光2Bとの混合光である第二の混合光24が放射される。第二の混合光24は、出力光4となる。
【0188】
一次光3B、第一の波長変換光1B及び第二の波長変換光2Bは、それぞれ第一の光成分5(第二の透過一次光3BT2)、第二の光成分6(透過第一の波長変換光1BT2)及び第三の光成分7(第二の波長変換光2B)の光成分を形成する起源となる。分光分布を形成して、出力光4として出力される。
【0189】
[第2の実施形態]
図2に示される第2の実施形態に係る発光装置10Bは、固体発光素子3と第一の波長変換体1Aと第二の波長変換体2Aとを備える。具体的には、第2の実施形態に係る発光装置10Bは、固体発光素子3と第一の波長変換体1Aとの組み合わせ構造である発光-波長変換ユニットを複数個設けた発光装置である。
【0190】
第2の実施形態に係る発光装置10Bは、発光-波長変換ユニットを複数個設けた以外は、第1の実施形態に係る発光装置10Aと同じである。このため、第2の実施形態に係る発光装置10Bと第1の実施形態に係る発光装置10Aとで同一部材に同一符号を付し、これらの部材の説明については省略する。
【0191】
(発光装置の動作)
第1の実施形態に係る発光装置10Aの動作では、1個の発光-波長変換ユニットを構成する複数個の第一の波長変換体1Aが第一の混合光14を放射する。一方、第2の実施形態に係る発光装置10Bの動作では、複数個の発光-波長変換ユニットを構成する複数個の第一の波長変換体1Aのそれぞれが第一の混合光14を放射する。
【0192】
第2の実施形態に係る発光装置10Bの動作は、1個の発光-波長変換ユニットが第一の混合光14を放射することに代えて複数個の発光-波長変換ユニットが第一の混合光14を放射すること以外は、第1の実施形態に係る発光装置10Aの動作と同じである。このため、第2の実施形態に係る発光装置10Bの動作については説明を省略する。
【0193】
[第3の実施形態]
図3に示される第3の実施形態に係る発光装置10Cは、固体発光素子3と第一の波長変換体1Aと第二の波長変換体2Aとを備える。具体的には、第3の実施形態に係る発光装置10Cは、固体発光素子3のみ複数個用いた構成の発光装置の一例である。発光装置10Cでは、複数個の固体発光素子3は、各固体発光素子3と第一の波長変換体1Aとの距離が一定になるように整列して配置される。なお、発光装置10Cでは、複数個の固体発光素子3と、第一の波長変換体1Aとが離間しているが、これらが密着した構造にすることもできる。
【0194】
第3の実施形態に係る発光装置10Cは、複数個の固体発光素子3を用い、各固体発光素子3と第一の波長変換体1Aとの距離が一定になるように整列して配置される以外は、第1の実施形態に係る発光装置10Aと同じである。このため、第3の実施形態に係る発光装置10Cと第1の実施形態に係る発光装置10Aとで同一部材に同一符号を付し、これらの部材の説明については省略する。
【0195】
(発光装置の動作)
第1の実施形態に係る発光装置10Aの動作では、1個の固体発光素子3の放つ一次光3Bが1個の第一の波長変換体1Aに受光される。一方、第3の実施形態に係る発光装置10Cの動作では、複数個の固体発光素子3の放つ一次光3Bが1個の第一の波長変換体1Aに受光される。
【0196】
第3の実施形態に係る発光装置10Cの動作は、1個の第一の波長変換体1Aに受光される一次光3Bが複数個の固体発光素子3の放つ複数個の一次光3Bであること以外は、第1の実施形態に係る発光装置10Aの動作と同じである。このため、第3の実施形態に係る発光装置10Cの動作については説明を省略する。
【0197】
(発光装置の基本的な構成例)
図1~
図3に示される発光装置10A~10Cにおいて、一次光3Bとして固体発光素子(発光ダイオード、レーザーダイオード等)が放つ青色光を用いることができる。以下、
図1~
図3に示される発光装置10A~10Cを単に「発光装置10」ともいう。
【0198】
発光装置10では、例えば、第一の波長変換光1Bとして青色光を吸収して青色光よりも長波長の可視光に変換する第一の蛍光体1による可視光を用いることができる。
【0199】
発光装置10では、例えば、第二の波長変換光2Bとして青色光を吸収して近赤外線に変換する第二の蛍光体2による近赤外の光を用いることができる。
【0200】
発光装置10では、例えば、固体発光素子3として、430nm以上480nm未満、好ましくは440nm以上470nm未満の波長範囲内に蛍光ピークを持つ青色光を一次光3Bとして放つ固体発光素子を用いることができる。
【0201】
発光装置10では、例えば、第一の蛍光体1として、青色光を吸収して第一の波長変換光1Bとなる緑色光又は赤色光に変換する蛍光体を用いることができる。このような蛍光体としては、例えば、Ce3+又はEu2+で付活された蛍光体、好ましくはCe3+付活ガーネット蛍光体及び/又はEu2+付活窒化物系蛍光体が用いられる。
【0202】
発光装置10では、例えば、第二の蛍光体2として、青色光及び/又は赤色光を吸収して第二の波長変換光2Bとなる近赤外の光に変換する蛍光体を用いることができる。このような蛍光体としては、例えば、遷移金属イオンで付活された蛍光体、好ましくはCr3+付活ガーネット蛍光体を用いることができる。
【0203】
このような構成にすると、第一の光成分5、第二の光成分6及び第三の光成分7の光成分で構成される出力光4が、
図4に示すように、可視と近赤外の両方の光成分を持つものになる。また、上記出力光4が、可視と近赤外の双方の光成分の境目付近の蛍光強度が小さく、ある程度以上の明瞭さでもって、これらが分離された分光分布を持つものになる。
【0204】
発光装置10では、固体発光素子3、第一の波長変換体1A、及び第二の波長変換体2Aの種類を変えることによって、第一の光成分5の起源となる一次光3Bの色調を変えることが容易である。
【0205】
発光装置10では、固体発光素子3、第一の波長変換体1A、及び第二の波長変換体2Aの種類を変えることによって、第二の光成分6の起源となる第一の波長変換光1Bの色調を変えることが容易である。
【0206】
発光装置10では、固体発光素子3、第一の波長変換体1A、及び第二の波長変換体2Aの種類を変えることによって、第三の光成分7の起源となる第二の波長変換光2Bの色調を変えることが容易である。
【0207】
発光装置10では、第一の波長変換体1A及び第二の波長変換体2Aの厚みや蛍光体の含有濃度を変えることによって、これらの出力比を変えることが容易である。このため、このような構成にすると、出力光4の分光分布の制御が容易である。
【0208】
図1~
図3に示される発光装置10A~10Cは、透過形の構成の一例である。透過形の構成とは、第一の波長変換体1Aが正面1Aaで一次光3Bを受光し背面1Abから蛍光を放射し、第二の波長変換体2Aが正面2Aaで一次光3B及び第一の波長変換光1Bを受光し背面2Abから蛍光を放射する構成である。
【0209】
このような透過形の構成では、第一の光成分5と第二の光成分6と第三の光成分7との混合光成分である第二の混合光24は、出力光4として、第二の波長変換体2Aの同じ出力面から出力されることが容易である。このため、この透過形の構成によれば、光出力面の小型化に好適な発光装置10が得られる。
【0210】
発光装置10では、固体発光素子3が放つ一次光3Bが第一の波長変換体1Aを照射し、第一の波長変換体1Aを透過した第一の透過一次光3BT1が第二の波長変換体2Aの波長変換体を照射するようになっている。
【0211】
透過形の構成である発光装置10では、第一の波長変換体1A及び第二の波長変換体2Aは、共に光透過性を持つ。すなわち、発光装置10では、一次光3B及び第一の波長変換光1Bが第一の波長変換体1Aを透過し、第一の透過一次光3BT1及び透過第一の波長変換光1BT2が第二の波長変換体2Aを透過する。そして、発光装置10では、第二の波長変換体2Aから、第二の透過一次光3BT2と透過第一の波長変換光1BT2と第二の波長変換光2Bとの混合光である第二の混合光24が出力光4として放射される。
【0212】
このような構成にすると、出力光4を放つ光出射面を、第一の波長変換体1A及び第二の波長変換体2Aの水平投影図のうちの、面積が大きな方の水平投影図の範囲内に納める装置設計が容易であるため、小型化に好適な発光装置10が得られる。
【0213】
発光装置10では、第一の波長変換体1Aと第二の波長変換体2Aの間隙が大きいことが好ましい。第一の波長変換体1Aと第二の波長変換体2Aの間隙は、例えば、1mmを超え、好ましくは3mmを超え、より好ましくは10mmを超える。但し、発光装置10の小型化の観点から、第一の波長変換体1Aと第二の波長変換体2Aの間隙は、例えば、10cm未満、好ましくは3cm未満である。
【0214】
このような構成にすると、指向性を持つ一次光3Bが、第一の波長変換体1Aによって散乱され、さらに距離を隔てることによって拡散された光が第二の波長変換体2Aに照射されることになる。このため、近赤外の光成分の均質高出力化と光出力面の大面積化を両立する上で好適な発光装置10が得られる。
【0215】
発光装置10では、第一の波長変換体1Aの厚みが厚いことが好ましい。第一の波長変換体1Aの厚みは、例えば100μmを超え、好ましくは300μmを超える。第一の波長変換体1Aの厚みは、第二の波長変換体2Aの厚みよりも厚いものとすることができる。但し、発光装置10の小型化の観点から、第一の波長変換体1Aの厚みは、例えば3mm未満、好ましくは1mm未満である。
【0216】
このような構成にすると、指向性を持つ一次光3Bが、第一の波長変換体1Aによって散乱されやすくなり、散乱された光が第二の波長変換体2Aに照射されることになる。このため、近赤外の光成分の均質高出力化と光出力面の大面積化を両立する上で好適な発光装置10が得られる。
【0217】
(発光装置の改良例)
以下、本実施形態の性能改善等のための改良例を説明する。
【0218】
発光装置10は、固体発光素子3を高出力型のものにする、又は発光素子の数を増す等の手段によって、出力光4を構成する光子の絶対数を容易に増すことができる。
【0219】
このような発光装置10としては、出力光4の波長700nm以上の光成分の光エネルギーは、通常3Wを超え、好ましくは10Wを超え、より好ましくは30Wを超える発光装置10が挙げられる。
【0220】
このような構成にすると、強い近赤外線で照らすことができるものになるため、照らす被照射物との距離が大きくても、対象物に比較的強い近赤外線を照射できる発光装置10が得られる。このような構成にすると、照らす対象物が微小なものや厚みを持つ被照射物であっても、対象物に関わる情報を得ることが容易な発光装置10が得られる。
【0221】
発光装置10は、固体発光素子3を、例えばレーザーダイオード等の高光密度の一次光を放つ発光素子にする、又は発光素子が放つ光を光学レンズを用いて集光する等の手段によって、波長変換体が含む蛍光体に供給する光子密度を高めることができる。
【0222】
このような構成にすると、第一の波長変換体1Aを照射する一次光3Bの光エネルギー密度が、通常0.3W/mm2、好ましくは1.0W/mm2、より好ましくは3.0W/mm2を超える発光装置10が得られる。
【0223】
このような構成にすると、光エネルギー密度が大きい出力光4を放ち得る発光装置10が得られるため、例えば、光エネルギー密度が大きな近赤外の光を点出力することができる発光装置10が得られる。
【0224】
なお、レーザーダイオード等の高光密度の一次光を放つ発光素子を用いる構成にすると、固体発光素子3の放つ一次光の光エネルギー密度を高くすることができる。このような構成にすると、例えば0.3W/mm2、好ましくは1.0W/mm2、より好ましくは3.0W/mm2を超える発光装置10が得られる。
【0225】
このため、このような構成にすると、光拡散させた一次光を、第一の波長変換体1Aに照射する構成にしても、比較的強い近赤外の光成分を放つ発光装置10が得られる。光拡散させない一次光を、第一の波長変換体1Aに直接照射する構成にすると、光エネルギー密度が相対的に大きい出力光4を放つ発光装置10が得られる。このような構成にすると、光出力面が小さな発光素子を用いて、大面積を近赤外の光で照射できる発光装置10が得られる。また、上記構成にすると、光エネルギー密度が大きな近赤外の光を照射するのに好適な発光装置10が得られる。
【0226】
なお、発光装置10においては、適当な固体発光素子を選択することによって、出力光4を調整することができる。例えば、適当な固体発光素子を選択することによって、440nmよりも波長が短い紫外~青の波長領域の光成分の強度が、蛍光強度最大値の3%、好ましくは1%を下回る発光装置10が得られる。
【0227】
このような構成にすると、フォトレジストが感光しやすい、紫外~青の波長領域の光成分の強度がゼロに近い出力光4になる。このため、例えば、イエロールームでの使用等に適する半導体関連の検査作業用として好適な近赤外の光を放つ発光装置10が得られる。
【0228】
発光装置10は、例えば、配光特性を制御する配光制御機構を備えていてもよい。このような構成にすると、例えば車載用の配光可変型の照明システム等、所望の配光特性を持つ出力光を得る上で好適な発光装置10が得られる。
【0229】
発光装置10は、例えば、投入電力の制御装置を備える等、近赤外線の強度を変える出力強度可変機構を備えていてもよい。このような構成にすると、近赤外線照射によって損傷しやすい食品や薬剤等の検査等に好適な発光装置10が得られる。
【0230】
また、発光装置10は、第二の波長変換光2Bの光成分の出力割合を制御、特にON-OFF制御する制御機構を備えていてもよい。このような構成にすると、近赤外線の出力割合を制御できるため、出力する近赤外線の出力を、顧客要望に応じたものへと強度調整する上で好適な発光装置10が得られる。
【0231】
さらに、発光装置10は、第二の波長変換光2Bの光成分を含む出力光4と含まない出力光4とを交互出力するようにしてもよい。このような構成にすると、ヒトの目による見え方と電子機器の目(センサ)による見え方を、交互に切り替えながら確認できる発光装置10が得られる。このため、ヒトの目による見え方と電子機器の目による見え方の干渉をなくすことができ、どちらの目で見た場合であっても、その見え方を明瞭にする上で好適な発光装置10が得られる。
【0232】
発光装置10は、例えば、波長700nm以上2500nm未満の波長範囲内に蛍光強度最大値を持つ光成分の蛍光ピーク波長を変える可変機構を備えていてもよい。
【0233】
このような構成にすると、汎用性が大きく、雑多な用途への対応が容易な発光装置10が得られる。また、光の被照射物の内部への侵入深さは波長によって変わるため、被照射物の深さ方向の検査等に好適な発光装置10が得られる。
【0234】
なお、このような近赤外線の制御機構や蛍光ピーク波長の可変機構は、例えば、バンドパスフィルターやローカットフィルター等の光学フィルターを備える発光装置10とすることによって実現できる。この場合、出力光4が、用途に応じて選択された光学フィルターを透過して出力される構造体や選択された光学フィルターによって遮断される構造物にすればよい。
【0235】
発光装置10は、近赤外の光成分に限らず、出力光4の少なくとも一部の波長成分の出力を、ON-OFF制御を含めて制御する光制御機構を備えていてもよい。このような構成にしても、汎用性が大きく、雑多な用途への対応が容易な発光装置10が得られる。
【0236】
なお、発光装置10は、出力光4をパルス光とすることができる。
【0237】
パルス光の照射時間の半値幅の一例は、300ms未満であり、出力光4又は第三の光成分7(近赤外の光成分)の出力強度の大きさが大きければ大きいほど短くすることもできる。半値幅としては、例えば、100ms未満、30ms未満、10ms未満、3ms未満及び1ms未満から選択される適当な半値幅を、出力強度に合わせて選択することができる。
【0238】
また、パルス光の消灯時間の一例は、1ms以上10秒未満である。
【0239】
人の目は、50~100Hz(周期20~10ms)の光をフリッカーとして感じ、ハト等の鳥類は、150Hz(周期6.7ms)ハエ等の昆虫は、300Hz(周期3.3ms)前後の光をフリッカーとして感じることが報告されている。このため、パルス光の消灯時間が1ms以上10秒未満であると、人を含むこれらの生き物がフリッカーを感じない30ms未満の消灯時間が一つの好ましい発光装置10が得られる。
【0240】
一方で、強い光照射は、照らした被照射物に損傷を与えるリスクを持つ。このため、フリッカーを気にする必要性がない用途では、パルス光の消灯時間を100ms以上、好ましくは300ms以上とした発光装置10とすることが好ましい。
【0241】
なお、人の毛髪や体毛の成長調整をする美容の目的で好ましい出力光4の光エネルギーは、0.01J/cm2以上1J/cm2未満とされる。このような光エネルギーを毛根部付近に照射すると、皮膚内部に存在するメラニン等に光を吸収させることができ、毛髪等の成長を調整できるとされている。これよりも低エネルギーでは、光照射による毛髪等の成長調整の効果を確認しにくくなり、これよりも高エネルギーでは、人体に対する他の影響等の懸念が生じることになる。
【0242】
このような懸念を排除するためには、出力光4の好ましい1/10残光時間(消灯する直前の光強度が1/10に強度低下するまでの時間)は、100μs未満、好ましくは10μs未満、特に1μs未満である。これによって、瞬時点灯や瞬時消灯し得る発光装置10が得られる。
【0243】
発光装置10は、120nm以上380nm未満、好ましくは250nm以上370nm未満の波長範囲内に強度最大値を持つ紫外線を放つ紫外光源を、さらに備えていてもよい。このような構成にすると、紫外線による殺菌効果等も併せ持つ発光装置10が得られる。
【0244】
発光装置10は、従来知られる一般的な照明装置を、さらに備えていてもよい。このような構成にすると、近赤外の光を出力する機能を付与したオーソドックスな照明装置になり、主たる機能が一般照明となる発光装置10が得られる。なお、従来知られる一般的な照明装置の代表例としては、固体発光素子と蛍光体を組み合わせてなる照明装置がある。具体的には、青色LEDと緑色又は黄色蛍光体としてのCe3+付活ガーネット蛍光体とを組み合わせてなる照明装置、さらに赤色蛍光体としてのEu2+付活窒化物蛍光体又はEu2+付活酸窒化物蛍光体を用いてなる照明装置が挙げられる。
【0245】
近赤外の光成分を放つ発光装置10は、医療用又はバイオ技術用の、光源又は照明装置とすることができる。近赤外の光成分を放つ発光装置10は、好ましくは蛍光イメージング法又は光線力学療法のいずれかに使用される医療用発光装置とすることができる。近赤外の光成分を放つ発光装置10は、好ましくは細胞や遺伝子や検体等の検査や分析解析等に使用されるバイオ技術用発光装置とすることができる。
【0246】
近赤外の光成分を放つ発光装置10によれば、生体や細胞等を透過する性質を持つ近赤外の光成分を用いて、体内外からの患部の観察や治療、又はバイオ技術に用いることができる発光装置10が得られる。
【0247】
近赤外の光成分を放つ発光装置10は、センシングシステム用光源又はセンシングシステム用照明システムとすることができる。
【0248】
このような構成にすると、例えば、有機物等を透過する性質を持つ近赤外の光成分、物体によって反射される近赤外の見えない光成分を用いて、未開封状態での検査、又は人を含む動植物や被照射物の監視等に用いることができる発光装置10が得られる。ここで、未開封状態での検査とは、透光性を持たない有機物質製の袋や容器等の中の被照射物や異物等についての未開封状態での検査を意味する。
【0249】
<電子機器>
[第4~第10の実施形態]
図5は、第4の実施形態に係る電子機器を示す概念図である。
図5に示される第1の実施形態に係る電子機器200D(200)は、発光装置10を備える。
【0250】
図5において、発光装置10は、電源回路111と導体112と発光部113とを少なくとも備えてなる。発光部113は、
図1~
図3に示される発光装置10A~10Cに相当する。
図1~
図3では、
図5の電源回路111、導体112等に相当する部材の記載を省略している。
図5に示す発光装置10は、
図1~
図3に示される発光装置10A~10Cに相当する発光部113に加え、電源回路111と導体112とを備えるものである。
【0251】
電源回路111は、発光部113に電力を供給する部材であり、導体112を通じて、発光部113に電気エネルギーを供給する。
【0252】
発光部113は、電気エネルギーを光エネルギーに変換する部材であり、電源回路から供給される電気エネルギーの少なくとも一部を、近赤外の光を含む光エネルギーに変換して、出力光4として出力する。上記のように発光部113は、
図1~
図3に示される発光装置10A~10Cに相当する。
【0253】
第一の検出器117A(117)は、発光装置10の発光部113から放射され、被照射物114に照射された出力光4の中の近赤外の光の透過光成分115を少なくとも検知する部材である。
【0254】
第二の検出器117B(117)は、発光装置10の発光部113から放射され、被照射物114に照射された出力光4の中の近赤外の光の反射光成分116を少なくとも含む光成分を検出する部材である。
【0255】
上記構成の電子機器200Dでは、初めに、被照射物114に、少なくとも近赤外の光成分を含む出力光4が照射される。電子機器200Dでは、次に、被照射物114を透過した透過光成分115、又は被照射物114によって反射された反射光成分116のいずれかを、第一の検出器117A及び第二の検出器117Bのいずれかで検出される。このため、電子機器200Dによれば、近赤外の光成分が関与する被照射物114に関わる特性情報を検出又は検知できる。
【0256】
電子機器200Dは、上記のように、発光装置10を備える。
【0257】
上記のように発光装置10は、近赤外の光成分の高出力化と光出力面の大面積化を両立し、人の目及び検出器の両方に好適な、可視光と近赤外の光成分を含む出力光4を放出する。このため、発光装置10を用いると、近赤外線の検出器と組み合わせて用いる、産業用途等に適する電子機器200Dが得られる。
【0258】
発光装置10は、出力光4のエネルギーが大きく、広い範囲を照らすものにすることができる。このような構成の電子機器200Dでは、離れた距離から被照射物114を照射しても、S/Nの良好な信号を検出することができる。このような構成にすると、大きな被照射物114の検査、広範囲に分布する被照射物の一括検査、広範囲に亘る検査面積の一部に存在する被照射物の検知、遠方からの人や被照射物の検知等に適する電子機器200Dが得られる。
【0259】
発光装置10を構成する発光部113の主光取り出し面の面積は、例えば、1cm2以上1m2未満、好ましくは10cm2以上1000cm2未満である。
【0260】
発光部113の表面から被照射物114の表面までの最短距離は、例えば、1mm以上10m未満である。また、強い近赤外線を被照射物114に照射する必要性がある用途(例えば、医療、美容、繊細な異物検査等)では、上記最短距離は、例えば、1mm以上30cm未満、特に3mm以上10cm未満である。さらに、広い範囲の被照射物114の検査等をする必要性がある用途では、上記最短距離は、30cm以上10m未満、好ましくは1m以上5m未満である。
【0261】
なお、強い近赤外線を、広い範囲に亘って照射する必要性がある用途(例えば、大きな被照射物や広範囲に亘る被照射物の繊細な検査等)では、少なくとも発光部113が移動可能な構造物であると好適である。このような構成にすると、照らす被照射物の形態によって自在に移動可能な構造が好ましい電子機器200Dが得られる。なお、この電子機器200Dのより具体的な態様としては、
図11等に示される形態の電子機器200J(200)が挙げられる。
【0262】
移動可能な構造の電子機器200Dとしては、例えば、発光部113が直線又は曲線上を往来し得る構造の電子機器200D、発光部113がXY軸方向又はXYZ方向に走査し得る構造の電子機器200Dが挙げられる。また、移動可能な構造の電子機器200Dとしては、移動体(自動車や自転車、ドローン等の飛行体ほか)等に取り付けられた構造の電子機器200Dが挙げられる。電子機器200Dがドローンの形態である場合の電子機器200Jを
図11に示す。
【0263】
ここで、第一の検出器117A及び第二の検出器117Bとしては、各種の光検出器を使用することができる。例えば、第一の検出器117A及び第二の検出器117Bとしては、光が半導体のPN接合に入射したときに生じる電荷を検出する量子型の光検出器(フォトダイオード、フォトトランジスタ、フォトIC、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等)、光を受光したときの発生熱による温度上昇によって生じる電気的性質の変化を検知する熱型の光検出器(熱電効果を用いるサーモパイル、焦電効果を用いる焦電素子等)、及び光に感光する赤外線フィルム等から適宜選択される。
【0264】
また、第一の検出器117A及び第二の検出器117Bは、光電変換素子を単体で用いる単独素子として使用してもよいし、光電変換素子を集積化した撮像素子として使用してもよい。撮像素子の形態としては、一次元的に配置した線型のものであってもよいし、二次元的に配置した面型のものであってもよい。第一の検出器117A及び第二の検出器117Bとしては、例えば、撮像カメラ(ハイパースペクトルカメラを含む)を使用することができる。
【0265】
電子機器200Dは、近赤外の光成分を含む出力光4を用いる、被照射物114の、検査装置、検知装置、監視装置、及び分別装置のいずれかとして用いることができる。
【0266】
出力光4が持つ近赤外の光成分は、ほとんどの物質を透過する性質を持つため、物質の外部から近赤外の光を照射して、その透過光又は反射光を検出する装置構成とすることができる。これにより、物質を破壊することなく、その内部の状態や異物の有無等を検査又は検知し得る電子機器200Dが得られる。このような用途に好適な電子機器200Dの具体例を、
図6に電子機器200Eとして示す。すなわち、
図6は、第5の実施形態に係る電子機器の一例を示す図である。
【0267】
図6に示す電子機器200Eは、被照射物114を載置して移動させるベルトコンベア105と、被照射物114に照射光120として照射する発光装置10と、ベルトコンベア105上の撮影領域130を撮影するハイパースペクトルカメラ150と、を備える。照射光120は、発光装置10の放射する出力光4である。
【0268】
電子機器200Eの作用について簡単に説明する。はじめに、発光装置10から被照射物114に照射光120が放射される。次に、ハイパースペクトルカメラ150は、照射光120が放射されたベルトコンベア105上の撮影領域130を撮影することで、画像データを取得する。得られた画像データは、そのままで、又は図示しないコンピータ等で処理されることにより観察・分析等の種々の用途に用いられる。
【0269】
また、近赤外の光成分は人の目に見えず、その反射特性は物質に依存する。このため、被照射物に近赤外の光を照射しその反射光を検出する装置構成とすることによって、人に悟られることなく暗闇等においても人や動植物や被照射物等を検知又は監視し得る電子機器200Dが得られる。
【0270】
さらに、近赤外の光成分は、物質を破壊することなく、その内部の状態や異物の有無等を検査又は検知でき、物質等の良否を判定できる。このため、近赤外の光成分を被照射物に照射すると、良品と不良品の選別等をすることができる電子機器200Dが得られる。また、被照射物114(検査対象物)のうちの、正常状態又は異常状態のいずれかを検知したものを除去する機構をさらに備える電子機器200Dを用いると、被照射物の選別や分別に適する電子機器200Dが得られる。
【0271】
電子機器200Dにおいて、発光装置10は、可動式になっておらず、固定されているものとすることができる。
【0272】
このような構成にすると、発光装置を機械的に動かすための複雑な機構を持たないため、故障が発生しにくい電子機器200Dが得られる。
【0273】
また、電子機器200Dを、例えば、屋内又は屋外で固定されたものにすると、あらかじめ定めた場所における、人や被照射物(飛散物や移動体等)の状態を定点観察したり、人や被照射物の数をカウントしたりすることが可能になる。このため、このような構成にすると、課題の発見やビジネス活用等に役立つビッグデータの収集に好適な電子機器200Dが得られる。
【0274】
このような用途に好適な電子機器200Dの具体例を、
図7に電子機器200E、
図8に電子機器200F、
図9に電子機器200G、
図10に電子機器200I、
図11に電子機器200Jとして示す。
図7は、第6の実施形態に係る電子機器の一例を示す図である。
図8は、第7の実施形態に係る電子機器の一例を示す図である。
図9は、第8の実施形態に係る電子機器の一例を示す図である。
図10は、第9の実施形態に係る電子機器の一例を示す図である。
図11は、第10の実施形態に係る電子機器の一例を示す図である。
【0275】
電子機器200Dは、可動式とすることができる。電子機器200Dは、例えば、移動ステージや移動体(車両、飛行体等)に取り付けた構造物として可動式にすることができる。このような用途に好適な電子機器200Dの具体例を、
図11に電子機器200Jとして示す。
【0276】
このような構成にすると、電子機器200Dを構成する発光装置10が、所望の場所や、広い範囲を照射し得るものになるため、大型の被照射物の検査や屋外における被照射物の状態の検査等に好適な電子機器200Dが得られる。
【0277】
電子機器200Dは、さらにハイパースペクトルカメラを備えるものとすることができる。このような構成にすると、ハイパースペクトルイメージングができる電子機器200Dが得られる。このような電子機器200Dは、肉眼や通常のカメラでは判別できない違いを画像として見分けることができ、製品の検査や選別等に関わる幅広い分野で有用な検査装置等になる。
【0278】
電子機器200Dは、機械学習するデータ処理システムを備えるものにすることも好ましい。このような構成にすると、コンピューターに取り込んだデータを反復的に学習し、そこに潜むパターンを見つけ出すことができるだけでなく、新たに取り込んだデータをそのパターンにあてはめることができる。このため、検査・検知・監視等の自動化や高精度化やビッグデータを用いる将来予測等に好適な電子機器200Dが得られる。
【0279】
電子機器200Dは、医療用、動物医療用、バイオ技術用、農林水産業用、畜産業用(食肉・肉製品・乳製品等用)、及び工業用(異物検査、内容量検査、形状検査、包装状態検査等用)のいずれかとして用いることができる。また、電子機器200Dは、医薬品用、動物実験用、食品用、飲料用、農林水産物用、畜産物用、又は工業製品用のいずれかの検査用等として用いることができる。
【0280】
電子機器200Dは、人体用、動植物用、物体用のいずれかとして用いることができ、気体用、液体用、固体用のいずれかとして用いることができる。
【0281】
電子機器200Dの好ましい形態は、医療機器、治療機器、美容機器、健康機器、介護関連機器、分析機器、計測機器、及び評価機器のいずれかである。
【0282】
医療やバイオ技術開発の目的で用いられる電子機器200Dは、例えば、以下に列記する被照射物の、検査、検出、測定、評価、分析、解析、観察、監視、分離、診断、治療、浄化等に使用するものになる。具体的には、血液・体液それらの成分の検査、排泄物(尿・便)の検査、たんぱく・アミノ酸の測定、細胞(がん細胞を含む)の検査、遺伝子・染色体・核酸の検査、生体試料・細菌・検体・抗体の検査、生体組織・臓器・血管の検査、皮膚病・脱毛症の観察等、が挙げられる。
【0283】
例えば、美容やヘルスケアの目的では、電子機器200Dは、例えば、以下に列記する被照射物の、検査、検出、測定、評価、分析、解析、観察、監視、美化、衛生、発育促進、健康増進、診断等に使用するものになる。具体的には、皮膚の観察、毛髪・体毛の観察、口内・歯内・歯周の観察、耳・鼻の検査、バイタルサインの測定等、が挙げられる。
【0284】
例えば、農林水産業、畜産業、又は工業での利用目的では、電子機器200Dは、例えば、以下に列記する被照射物の、検査、検出、測定、計測、評価、分析、解析、観察、監視、認識、選別、分別等に使用するものになる。具体的には、工業製品(電子部材・電子デバイスを含む)の検査、農産物(青果物等)の検査、酵素・菌の検出、海産物(魚類・貝類・甲殻類・軟体類)の検査、医薬品・生体試料の検査、食品・飲料の検査、人・動物・被照射物の存在・状態の観察、ガス(水蒸気を含む)の状態の観察、液体・流体・水・水分・湿度の検査、被照射物の形状・色・内部構造・物理状態の観察、空間・位置・距離の測定、被照射物の汚染状態の観察、分子・粒子の状態の観察、産業廃棄物の観察、等が挙げられる。
【0285】
例えば、介護の目的では、電子機器200Dは、例えば、排泄確認や健康状態の識別や管理や監視等に使用するものになる。
【0286】
このように、電子機器200Dは、検査、検出、測定、計測、評価、分析、解析、観察、監視、認識、選別、分別等のあらゆる用途に対応できるものになる。
【0287】
なお、本実施形態は、発光装置10を用いる検査方法、検知方法、監視方法、分別方法、分析方法、計測方法、評価方法のいずれかの単純な方法に適用可能である。
【0288】
以上、本実施形態の内容を説明したが、本実施形態はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【実施例0289】
以下、実施例により本実施形態の発光装置をさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれらによって限定されるものではない。
【0290】
[実施例1]
はじめに、第一の波長変換体1Aを作製した。第一の波長変換体1Aとして、540nm付近に蛍光ピークを持つ黄緑色光を放つ蛍光体と625nm付近に蛍光ピークを持つ赤色光を放つ蛍光体とを含む樹脂蛍光膜からなる蛍光体シートを用いた。540nm付近に蛍光ピークを持つ黄緑色光を放つ蛍光体として、Y3Al2(AlO4)3:Ce3+(YAG)蛍光体(株式会社東京化学研究所製、中心粒径D50≒24μm)を用いた。625nm付近に蛍光ピークを持つ赤色光を放つ蛍光体として、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu2+(SCASN)蛍光体(三菱ケミカル株式会社製、中心粒径D50≒14μm)を用いた。
【0291】
以下、第一の波長変換体1Aの作製手順を説明する。蛍光体粉末として、上記のYAG蛍光体とSCASN蛍光体を準備した。また、蛍光体粉末の封止剤として、二液混合型の熱硬化シリコーン樹脂(製品名KER-2500A/B、信越化学工業株式会社)を準備した。
【0292】
次に、YAG蛍光体(0.493g)及びSCASN蛍光体(0.013g)とシリコーン樹脂(A剤0.75gとB剤0.75g)とを、混合・脱泡処理(約2000rpm、3分間)して、蛍光体とシリコーン樹脂からなる蛍光体ペーストを作製した。混合・脱泡処理は、製品名:あわとり練太郎(形式:ARE-310、株式会社シンキ―製)を用いた。
【0293】
得られた蛍光体ペーストを、ディスペンサー(形式:ML-5000XII、武蔵エンジニアリング株式会社製)を用いて、ガラス基板(200mm×200mm×t1mm)上に設けた型枠に滴下した。その後、スキージを用いて、滴下した蛍光体ペーストの表面を平滑平坦化した。型枠を外し、150℃の大気中で2時間加熱して硬化することによって形成される蛍光体シートを、ピンセットを用いて、ガラス基板から剥がすことによって、第一の波長変換体1Aを得た。第一の波長変換体1Aは、5mm×6mm、厚み:130μmであった。
【0294】
念のため、第一の波長変換体1Aの蛍光特性を、絶対PL量子収率測定装置を用いて、450nmの光励起条件下で評価したところ、内部量子効率(IQE)は93%、光吸収率(Abs.)は28%、蛍光ピーク波長は598nmであった。
【0295】
次に、第二の波長変換体2Aを作製した。第二の波長変換体2Aは750nm付近に蛍光ピークを持つCr3+で付活された複合金属酸化物(自作品)を主体にしてなる蛍光体を含む樹脂蛍光膜となる蛍光体シートとした。なお、この蛍光体は、(Gd0.95La0.05)3(Ga0.97Cr0.03)2(GaO4)3の組成式で表される(Gd,La)3Ga2(GaO4)3:Cr3+(GLGG)蛍光体であり、ガーネット型の結晶構造を持つ。
【0296】
以下、GLGG蛍光体の作製手順を説明する。
GLGG蛍光体は、以下の化合物粉末を主原料として使用し、オーソドックスな固相反応により調製した。
酸化ガドリニウム(Gd2O3):純度3N、日本イットリウム株式会社
水酸化ランタン(La(OH)3):純度3N、信越化学工業株式会社
酸化ガリウム(Ga2O3):純度4N、アジア物性材料株式会社
酸化クロム(Cr2O3):純度3N、株式会社高純度化学研究所製
【0297】
具体的には、はじめに、化学反応によって化学量論的組成の化合物(Gd0.95La0.05)3(Ga0.97Cr0.03)2(GaO4)3を生成するように、上記原料を秤量した。この秤量値を表1に示した。
【0298】
【0299】
次に、アルミナ製のポットミル(容量250ml)に、秤量した原料20gを、アルミナボール(直径φ3mm、合計200g)とエタノール60mlとともに投入した。その後、遊星ボールミル(フリッチュ社製、品番P-5)を用いて、ポットミルを回転速度150rpmで30分間回転させることによって、原料を湿式混合した。
【0300】
次いで、ふるいを用いてアルミナボールを取り除き、原料とエタノールからなるスラリー状の混合原料を得た。その後、スラリー状の混合原料を、乾燥機を用いて125℃で全量乾燥させた。そして、乾燥後の混合原料を乳鉢と乳棒を用いて軽く混合することにより、蛍光体原料とした。
【0301】
次に、蛍光体原料をアルミナ製の焼成容器(材質SSA-H、B3サイズ、蓋付き)に入れ、箱型電気炉を用いて、1500℃の大気中で2時間の焼成を行った。なお、焼成時の昇降温速度は300℃/hとした。
【0302】
得られた焼成物を、アルミナ製の乳鉢と乳棒を用いて手解砕した後、ナイロンメッシュ(目開き95μm)を通過させて粗大粒子を除去することによって、粉末状のGLGG蛍光体を得た。
【0303】
データを省略するものの、得られたGLGG蛍光体の結晶構成物を、X線回折装置(デスクトップX線回折装置、MiniFlex(登録商標)、株式会社リガク製)を用いて評価したところ、ほぼ単一結晶相のガーネット化合物であった。また、粒子形状と粒子サイズを電子顕微鏡(卓上顕微鏡Miniscope TM4000、日立ハイテクノロジーズ株式会社製)を用いて評価した。この結果、粒子形態は単分散粒子状であり、粒子形状はガーネットの結晶に由来するとみなせる形状であり、粒子サイズの主体は15μm前後であった。そして、GLGG蛍光体の蛍光特性を、絶対PL量子収率測定装置(C9920-02、浜松ホトニクス(株)製)を使用して、波長450nmの青色光の照射条件下で評価した。この結果、蛍光ピーク波長は747nm、内部量子効率(IQE)は92%、青色光の光吸収率(Abs.)は57%であった。また、波長628nmの赤色光の照射条件下で評価した結果、蛍光ピーク波長は746nm、内部量子効率(IQE)は93%、赤色光の光吸収率(Abs.)は45%であった。
【0304】
このようにして作製したGLGG蛍光体(4.57g)、及び厚みが異なる型枠を利用し、第一の波長変換体1Aと同様にして、第二の波長変換体2A(10mm×10mm、厚み:265μm)を作製した。
【0305】
念のため、第二の波長変換体2Aの蛍光特性を、上記絶対PL量子収率測定装置を用いて、450nmの光励起条件下で評価したところ、内部量子効率(IQE)は90%、光吸収率(Abs.)は57%、蛍光ピーク波長は733nmであった。
【0306】
次に、このようにして作製した第一の波長変換体1Aと第二の波長変換体2Aを用いて、発光装置を作製した。
【0307】
具体的には、青色光(蛍光ピーク波長:450nm)である一次光3Bを放つ固体発光素子3としての青色LEDチップ(品番:LE B P2MQ、オスラムオプトセミコンダクターズ社製)の光出力面の上に第一の波長変換体1Aを配置した。この第一の波長変換体1Aの上に第二の波長変換体2Aを配置して、
図1に示すような発光装置を構成して、実施例1に係る発光装置とした。
【0308】
青色LEDチップに、電力(10.3V、20mA)を投入すると、青色LEDチップから一次光3Bとしての青色光が放射された。そして、その一部が、第一の波長変換体1Aによって第一の波長変換光1Bとしての可視光(緑色光成分と赤色光成分の加法混色による黄色光)に変換された。さらに、一次光3Bと第一の波長変換光1Bの混合光の一部が、第二の波長変換体2Aによって第二の波長変換光2Bとしての深赤~近赤外の光成分に変換された。そして、一次光3Bとしての青色光と、第一の波長変換光1Bとしての可視光と、第二の波長変換光2Bとしての近赤外の光成分を含む光とからなる混合光が、出力光4として放出された。
【0309】
図12(a)、(b)及び(c)に、それぞれ、青色LEDチップが放つ一次光3B、第一の混合光14及び出力光4の分光分布を示した。第一の混合光14は、第一の波長変換体1Aを透過した一次光3Bである第一の透過一次光3BT
1と第一の波長変換光1Bとを含む混合光成分である。 出力光4は、第二の透過一次光3BT
2と、透過第一の波長変換光1BT
2と、第二の波長変換光2Bとを含む混合光成分である。第二の透過一次光3BT
2は、第二の波長変換体2Aを透過した第一の透過一次光3BT
1である。透過第一の波長変換光1BT
2は、第二の波長変換体2Aを透過した第一の波長変換光1Bである。
【0310】
図12(a)、(b)及び(c)から判るように、一次光3Bは、455nmに蛍光ピークを持つ単峰型の青色光であり、半値幅は約17nm(15nm以上20nm未満)であった。
【0311】
第一の波長変換体1Aを透過した一次光3Bである第一の透過一次光3BT1と第一の波長変換光1Bとを含む第一の混合光14は、一次光3Bと第一の波長変換光1Bの光成分を含む。第一の混合光14は、相関色温度が30243K、duv=-26.4、(x,y)=(0.271、0.230)、Ra=81の光であった。なお、第一の波長変換光1Bの光成分は、540nmと590nmにピークを持ち、少なくとも495nmから800nmまでの広い波長範囲に亘って光成分を持つ多峰型のブロードな光成分であった。
【0312】
出力光4は、一次光3Bに由来する第二の透過一次光3BT2と、第一の波長変換光1Bに由来する透過第一の波長変換光1BT2と、第二の波長変換光2Bの光成分を含む。出力光4は、相関色温度が4646K、duv=24.1、(x,y)=(0.365、0.421)、Ra=69の光であった。なお、出力光4の光成分は、455nmと545nmと730nmにピークを持ち、少なくとも410nmから950nmまでの広い波長範囲に亘って光成分を持つ多峰型のブロードな光成分であった。
【0313】
この出力光4を白紙面に照射して確認したところ、大体φ30cmの範囲内の光が均質であることを確認できた。
【0314】
[実施例2]
実施例2に係る発光装置は、実施例1に対して、一次光3Bの出力を抑えた設計仕様のものであり、半導体の製造ライン等、紫外~青色光を嫌う環境での使用を意図したものである。
【0315】
実施例1で説明したYAG蛍光体とSCASN蛍光体の使用量を、それぞれ、2.852gと0.076gとし、厚みが異なる型枠を使用した以外は、実施例1と同様にして第一の波長変換体1A(厚み:200μm)を作製した。念のため、第一の波長変換体1Aの蛍光特性を、上記絶対PL量子収率測定装置を用いて、450nmの光励起条件下で評価したところ、内部量子効率(IQE)は94%、光吸収率(Abs.)は30%、蛍光ピーク波長は607nmであった。また、実施例1で使用した第二の波長変換体2A及び固体発光素子3を再利用した。そして、実施例1と同様に、固体発光素子3と第一の波長変換体1Aと第二の波長変換体2Aを配置して、
図1に示すような発光装置を構成して、実施例2に係る発光装置とした。
【0316】
実施例1と同様に、青色LEDチップに、電力(10.3V、20mA)を投入して、実施例2に係る発光装置を点灯させた。
【0317】
図13(a)、(b)及び(c)に、それぞれ、青色LEDチップが放つ一次光3B、第一の混合光14及び出力光4の分光分布を示した。第一の混合光14は、第一の波長変換体1Aを透過した一次光3Bである第一の透過一次光3BT
1と第一の波長変換光1Bとを含む混合光成分である。出力光4は、第二の透過一次光3BT
2と、透過第一の波長変換光1BT
2と、第二の波長変換光2Bとを含む混合光成分である。第二の透過一次光3BT
2は、第二の波長変換体2Aを透過した第一の透過一次光3BT
1である。透過第一の波長変換光1BT
2は、第二の波長変換体2Aを透過した第一の波長変換光1Bである。
【0318】
図13(a)、(b)及び(c)から判るように、一次光3Bは、455nmに蛍光ピークを持つ単峰型の青色光であり、半値幅は約17nmであった。
【0319】
第一の波長変換体1Aを透過した一次光3Bである第一の透過一次光3BT1と第一の波長変換光1Bとを含む第一の混合光14は、一次光3Bと、第一の波長変換光1Bの光成分を含む。第一の混合光14は、相関色温度が2510K、duv=12.5、(x,y)=(0.501、0.455)、Ra=77の光であった。なお、第一の波長変換光1Bの光成分は、610nmにピークを持ち、少なくとも495nmから800nmまでの広い波長範囲に亘って光成分を持つ単峰型のブロードな光成分であった。
【0320】
出力光4は、一次光3Bと、第一の波長変換光1Bと、第二の波長変換光2Bの光成分を含み、相関色温度は2828K、duv=21.6、(x,y)=(0.489、0.482)、Ra=68の光であった。なお、出力光4の光成分は、455nmと590nmと715nmにピークを持ち、少なくとも410nmから950nmまでの広い波長範囲に亘って光成分を持つ多峰型のブロードな光成分であった。但し、500nm未満の波長領域における分光強度は、出力光4の分光強度最大値(波長590nmの光成分の分光強度)の7%未満であり、紫外~青色の波長領域の光成分強度が大きく抑制された出力光4であった。
【0321】
この出力光4を白紙面に照射して確認したところ、大体φ30cmの範囲内の光が均質であることを確認できた。
【0322】
[実施例3]
実施例3に係る発光装置は、実施例1に対して、520nm以上750nm未満の波長範囲内の分光強度の最大値に対する最小値が70%以上となる設計仕様のものである。具体的には、緑から深赤色の波長範囲内における分光強度の変化量が小さい特性が求められる用途向けの光源等を意図したものである。
【0323】
第一の波長変換体1Aとして、525nm付近に蛍光ピークを持つ緑色光を放つ蛍光体と655nm付近に蛍光ピークを持つ赤色光を放つ蛍光体とを含む樹脂蛍光膜からなる蛍光体シートを用いた。525nm付近に蛍光ピークを持つ緑色光を放つ蛍光体として、Lu3Al2(AlO4)3:Ce3+(LuAG)蛍光体(株式会社東京化学研究所製、中心粒径D50≒55μm)を用いた。655nm付近に蛍光ピークを持つ赤色光を放つ蛍光体として、CaAlSiN3:Eu2+(CASN)蛍光体(三菱ケミカル株式会社製、中心粒径D50≒18μm)を用いた。
【0324】
LuAG蛍光体とCASN蛍光体の使用量を、それぞれ、0.849gと0.157gとし、厚みが異なる型枠を使用した以外は、実施例1と同様にして第一の波長変換体1A(厚み:260μm)を作製した。念のため、第一の波長変換体1Aの蛍光特性を、上記絶対PL量子収率測定装置を用いて、450nmの光励起条件下で評価したところ、内部量子効率(IQE)は93%、光吸収率(Abs.)は32%、蛍光ピーク波長は630nmであった。また、実施例1で使用した第二の波長変換体2A及び固体発光素子3を再利用した。そして、実施例1と同様に、固体発光素子3と第一の波長変換体1Aと第二の波長変換体2Aを配置して、
図1に示すような発光装置を構成して、実施例3に係る発光装置とした。
【0325】
実施例1と同様に、青色LEDチップに、電力(10.3V、20mA)を投入して、実施例3に係る発光装置を点灯させた。
【0326】
図14(a)、(b)及び(c)に、それぞれ、青色LEDチップが放つ一次光3B、第一の混合光14及び出力光4の分光分布を示した。第一の混合光14は、第一の波長変換体1Aを透過した一次光3Bである第一の透過一次光3BT
1と第一の波長変換光1Bとを含む混合光成分である。出力光4は、第二の透過一次光3BT
2と、透過第一の波長変換光1BT
2と、第二の波長変換光2Bとを含む混合光成分である。第二の透過一次光3BT
2は、第二の波長変換体2Aを透過した第一の透過一次光3BT
1である。透過第一の波長変換光1BT
2は、第二の波長変換体2Aを透過した第一の波長変換光1Bである。
【0327】
図14(a)、(b)及び(c)から判るように、一次光3Bは、455nmに蛍光ピークを持つ単峰型の青色光であり、半値幅は約17nmであった。
【0328】
第一の波長変換体1Aを透過した一次光3Bと第一の波長変換光1Bとを含む第一の混合光14は、一次光3Bと第一の波長変換光1Bの光成分を含む。第一の混合光14は、相関色温度が4146K、duv=-3.0、(x,y)=(0.372、0.365)、Ra=93の光であった。なお、第一の波長変換光1Bの光成分は、555nmと635nmにピークを持ち、少なくとも495nmから800nmまでの広い波長範囲に亘って光成分を持つ多峰型のブロードな光成分であった。
【0329】
出力光4は、一次光3Bに由来する第二の透過一次光3BT2と、第一の波長変換光1Bに由来する透過第一の波長変換光1BT2と、第二の波長変換光2Bの光成分を含む。出力光4は、相関色温度が3893K、duv=25.1、(x,y)=(0.407、0.453)、Ra=83の高演色性の光であった。なお、出力光4の光成分は、460nmと550nmと655nmと715nmにピークを持ち、少なくとも410nmから950nmまでの広い波長範囲に亘って光成分を持つ多峰型のブロードな光成分であった。そして、520nm以上750nm未満の波長範囲内の分光強度は715nmで最大値をとり、最小値をとる595nmの分光強度は、その73.8%であった。
【0330】
この出力光4を白紙面に照射して確認したところ、大体φ30cmの範囲内の光が均質であることを確認できた。
【0331】
ここで、第一の混合光14と出力光4のduvに注目する。なお、duvは黒体輻射からのずれを示す指数であり、白色光の色調を示す指数である。そして、duvの数値がプラスであれば緑がかった色調の、マイナスであれば紫がかった色調の白色光を示すものとなる。
【0332】
実施例1~3の説明からわかるように、duvの数値は、第一の混合光14が、第二の波長変換体2Aによって、出力光4へと変換されると、プラス側へと大きく振れる。そして、その振れ幅は、5以上55未満である。これは、第二の波長変換体2Aが含むCr3+が、第一の混合光14が持つ青と赤の光成分をよく吸収し、緑の光成分をさほど吸収しない性質を持つことに起因する。
【0333】
つまり、第一の混合光14の青と赤の光成分は、第二の波長変換体2Aに吸収されて近赤外の光成分へと変換されやすい。これに対して、第一の混合光14の中の緑の光成分は、第二の波長変換体2Aに吸収されず、第二の波長変換体2Aを透過しやすい。このため、第一の混合光14の白色光に対して、出力光4は緑がかった白色光になるのである。
【0334】
このようなことから、前記第一の混合光14のduvの数値は、マイナスであることが好ましく、その好ましい数値範囲は、-55以上-5未満、特に、-50以上-10未満といえる。これによって、自然光に近い色調の白色光(duv=0±2)の出力が容易になる。
【0335】
[実施例4~6]
実施例4~6の発光装置として、青色LED(蛍光ピーク波長:455nm)及び赤色LED(蛍光ピーク波長:633nm)蛍光体を組み合わせてなるLED照明用の白色LEDと、第二の波長変換体2Aとを組み合わせてなる発光装置を作製した。入手した白色LED(2700K、Lumileds LLC製)の光出力面上に、単純に、第二の波長変換体2Aを載置し、白色LEDに定格電流(136mA)を通電して点灯させた。そして、出力される光を積分球(φ20インチ、品番:LMS-200、Labsphere社製)で積分し、全光束測定システム(SLMS-CDS-2021、Labsphere社製)を用いて、出力光4の分光分布や放射束等を測定した。
【0336】
ここで、第二の波長変換体2Aは、実施例1で使用した第二の波長変換体(GLGG蛍光体を使用した樹脂蛍光膜)の厚みを三種類の厚み(155μm、240μm、340μm)に変えた波長変換体を使用した。三種類の厚みの異なる波長変換体は、厚みが異なる型枠を使用して作製した。
【0337】
図15に、実施例4~6の発光装置の出力光4の分光分布をまとめて示す。なお、
図15中の(a)、(b)及び(c)は、それぞれ実施例4、実施例5及び実施例6の出力光4に対応し、それぞれ155μm、240μm及び340μmの厚みの第二の波長変換体2Aを使用した装置構成に対応している。また、
図15中の(d)は、参考のために示した、白色LED(第二の波長変換体2Aなし)の出力光の分光分布(参考例1)である。
【0338】
図15(a)、(b)及び(c)から判るように、出力光4の分光分布は、少なくとも420nm以上950nm未満の全波長範囲内の光成分を含む。出力光4の分光分布は、青色LEDに由来する蛍光成分と、緑色蛍光体(Ce
3+付活ガーネット蛍光体)に由来する蛍光成分と、赤色LEDに由来する蛍光成分と、近赤外蛍光体(Cr
3+付活ガーネット蛍光体)に由来する蛍光成分とを主体にしていた。なお、青色LEDに由来する蛍光成分は、450nm付近にピークを持っていた。緑色蛍光体(Ce
3+付活ガーネット蛍光体)に由来する蛍光成分は、550nm付近にピーク又はショルダー状の膨らみを持つ。赤色LEDに由来する蛍光成分は、635nm付近にピークを持っていた。近赤外蛍光体(Cr
3+付活ガーネット蛍光体)に由来する蛍光成分は、730nm付近にピークを持っていた。
【0339】
450nmと550nmと635nmと730nmの波長の光成分の分光強度に着目した。第二の波長変換体2Aを用いていない白色LEDでは、分光強度(高さ)がもっとも強い蛍光成分は、赤色LEDに由来する635nmの分光強度であった。緑色蛍光体に由来する550nmの分光強度と、青色LEDに由来する450nmの分光強度がこれに続く分光強度(高さ)を示した。
【0340】
厚みが異なる第二の波長変換体2Aと組み合わせた本実施例4~6(
図15中の(a)~(c))では、第二の波長変換体2Aの厚みが増すにつれて、450nmと550nmと635nmの分光強度が低下した。とりわけ、450nmと635nmの分光強度が大きく低下した。この影響を受け、本実施例4~6の分光分布は、560nm以上610nm未満の波長範囲内に極小値を持つものになった。一方で、第二の波長変換体2Aの厚みが増すにつれて、730nmの分光強度が増加した。
【0341】
実施例4~6では、730nmの分光強度は、635nmの分光強度に比して小さいものの、550nmの分光強度に比して大きかった。実施例6(
図15中の(c))では、730nmの分光強度は、635nmの分光強度よりも大きいものになり、これらの中で、もっとも強い分光強度になった。なお、実施例4~6では、450nmの分光強度は730nmの分光強度に比して小さく、その25%未満の分光強度であり、特に実施例6では5%未満の分光強度であった。
【0342】
以上のことから、本実施例は、強い赤色光成分と強い近赤外成分と、それらに比して弱い緑色光成分とを含み、青色光成分の強度を抑えた出力光4を必要とする用途に好適な発光装置といえる。
【0343】
表2に、実施例4~6の出力光4の照明光としての特性をまとめた。比較のため、同表には、参考例1(第二の波長変換体2Aを備えない白色LED)の特性も示した。
【0344】
【0345】
表2から判るように、第二の波長変換体2Aの厚みが増すにつれて、すなわち、実施例4から実施例5、さらには実施例6とするにつれて、放射束と光束とは低下傾向を示した。一方で、相関色温度は若干高くなる傾向を示し、平均演色評価数(Ra)は、高演色性を示す80以上の数値領域において、大きく増加して90を超えた後、次第に低下する傾向を示した。
【0346】
これらのデータから、本実施例は、高出力の近赤外線と高演色性を両立する出力光4を得る上で好適な発光装置ともいえる。
【0347】
なお、この出力光4を白紙面に照射して確認したところ、大体φ30cmの範囲内の光が均質であることを確認できた。
【0348】
[実施例7~9]
実施例7~9の発光装置として、青色LED及び赤色LEDと蛍光体を組み合わせてなるLED照明用の白色LEDと第二の波長変換体2Aとを組み合わせてなる発光装置を作製した。実施例4~6と同様にして、入手した白色LED(3500K、Lumileds LLC製)の光出力面上に、第二の波長変換体2Aを載置し、白色LEDに定格電流(136mA)を通電することによって出力される出力光4の分光分布や放射束等を測定した。
【0349】
図16に、実施例7~9の発光装置の出力光4の分光分布をまとめて示す。なお、
図16中の(a)、(b)及び(c)は、それぞれ実施例7、実施例8及び実施例9の出力光4に対応し、それぞれ155μm、240μm及び340μmの厚みの第二の波長変換体2Aを使用した装置構成に対応している。また、
図16中の(d)は、参考のために示した、白色LED(第二の波長変換体2Aなし)の出力光の分光分布(参考例2)である。
【0350】
図16(a)、(b)及び(c)から判るように、
図16(a)、(b)及び(c)の出力光4の分光分布も、先に
図15を用いて説明した実施例4~6の分光分布と同じ構成である。そこで、
図15と同様に、450nmと550nmと635nmと730nmの波長の光成分の分光強度に着目した。第二の波長変換体2Aを用いていない白色LEDでは、分光強度(高さ)がもっとも強い蛍光成分は、赤色LEDに由来する635nmの分光強度であった。青色LEDに由来する450nmの分光強度と緑色蛍光体に由来する550nmの分光強度がこれに続く分光強度(高さ)を示した。
【0351】
厚みが異なる第二の波長変換体2Aと組み合わせた本実施例7~9(
図16中の(a)~(c))でも、第二の波長変換体2Aの厚みが増すにつれて認められる分光スペクトルの基本的な挙動は、先の実施例4~6の場合と同様であった。
【0352】
実施例7~9では、730nmの分光強度は、第二の波長変換体2Aの厚みが少なくとも240nm以下と小さい実施例7と実施例8では、550nmと635nmの分光強度に比して小さかった。しかし、同厚みが少なくとも340nm以上と大きい実施例9では、550nmと635nmの分光強度と同程度になり、550nmと635nmと730nmの分光強度差は±10%となった。また、730nmの分光強度は、少なくとも635nmの分光強度よりも大きくなった。なお、実施例7~9でも、450nmの分光強度は730nmの分光強度に比して小さく、その65%未満の分光強度であった。特に実施例9では15%未満の分光強度であった。
【0353】
以上のことから、本実施例は、強い緑色光成分と強い赤色光成分と強い近赤外成分とを含み、青色光成分の強度を抑えた出力光4を必要とする用途に好適な発光装置といえる。
【0354】
表3に、実施例7~9の出力光4の照明光としての特性をまとめた。比較のため、同表には、参考例2(第二の波長変換体2Aを備えない白色LED)の特性も示した。
【0355】
【0356】
表3から判るように、第二の波長変換体2Aの厚みが増すにつれて、すなわち、実施例7から実施例8、さらには実施例9とするにつれて、放射束と光束と平均演色評価数(Ra)は低下傾向を示した。一方で、相関色温度は若干高くなる傾向を示した。但し、同じ厚みの第二の波長変換体2Aを使用した場合の比較では、その放射束及び光束は、実施例4~6に比して20%以上大きい水準であった。特に、光束は70%以上大きい水準であった。
【0357】
これらのデータから、本実施例は、高出力の近赤外線と高光束を両立する出力光4を得る上で好適な発光装置ともいえる。
【0358】
なお、この出力光4を白紙面に照射して確認したところ、大体φ30cmの範囲内の光が均質であることを確認できた。
【0359】
[実施例10~12]
実施例10~12の発光装置として、青色LEDと蛍光体を組み合わせてなるLED照明用の白色LEDと第二の波長変換体2Aとを組み合わせてなる発光装置を作製した。実施例4~6と同様にして、入手した白色LED(5000K、シチズン電子(株)製)の光出力面上に、第二の波長変換体2Aを載置し、白色LEDに定格電流(269mA)を通電することによって出力される出力光4の分光分布や放射束等を測定した。
【0360】
図17に、実施例10~12の発光装置の出力光4の分光分布をまとめて示す。なお、
図17中の(a)、(b)及び(c)は、それぞれ実施例10、実施例11及び実施例12の出力光4に対応し、それぞれ155μm、240μm及び340μmの厚みの第二の波長変換体2Aを使用した装置構成に対応している。また、
図17中の(d)は、参考のために示した、白色LED(第二の波長変換体2Aなし)の出力光の分光分布(参考例3)である。
【0361】
図17(a)、(b)及び(c)から判るように、出力光4の分光分布は、少なくとも420nm以上950nm未満の全波長範囲内の光成分を含む。出力光4の分光分布は、青色LEDに由来する蛍光成分と、緑色蛍光体と赤色蛍光体の混合蛍光成分に由来する蛍光成分と、近赤外蛍光体(Cr
3+付活ガーネット蛍光体)に由来する蛍光成分とを主体にしていた。ここで、緑色蛍光体と赤色蛍光体の混合蛍光成分に由来する蛍光成分は、緑色蛍光体(Ce
3+付活ガーネット蛍光体)と赤色蛍光体(Eu
2+付活窒化物系蛍光体)の混合蛍光成分に由来する蛍光成分である。なお、青色LEDに由来する蛍光成分は、450nm付近にピークを持っていた。緑色蛍光体(Ce
3+付活ガーネット蛍光体)と赤色蛍光体(Eu
2+付活窒化物系蛍光体)の混合蛍光成分に由来する蛍光成分は、560nm付近にピークを持っていた。近赤外蛍光体(Cr
3+付活ガーネット蛍光体)に由来する蛍光成分は、730nm付近にピークを持っていた。
【0362】
そこで、450nmと560nmと730nmの波長の光成分の分光強度に着目した。第二の波長変換体2Aを用いていない白色LEDでは、分光強度(高さ)がもっとも強い蛍光成分は、青色LEDに由来する450nmの分光強度であった。緑色蛍光体と赤色蛍光体の両方に由来する560nmの分光強度がこれに続く分光強度(高さ)を示した。
【0363】
厚みが異なる第二の波長変換体2Aと組み合わせた本実施例10~12(
図17中の(a)~(c))では、第二の波長変換体2Aの厚みが増すにつれて、450nmと560nm、とりわけ、450nmの分光強度が大きく低下した。この影響を受け、本実施例10~12の分光分布は、550nm以上580nm未満の波長範囲内に極大値を持つものになった。一方で、第二の波長変換体2Aの厚みが増すにつれて、730nmの分光強度が増加し、600nm以上700nm未満の波長範囲内に極小値を持つものになった。
【0364】
実施例10~12では、730nmの分光強度は、第二の波長変換体2Aの厚みが増すにつれて、450nmと560nmの分光強度との大小関係が異なった。具体的には、実施例10では、730nmの分光強度は、450nm及び560nmの分光強度に比して小さくなった。実施例11では、730nmの分光強度は、450nmの分光強度に比して大きく560nmの分光強度に比して小さくなった。実施例12では、730nmの分光強度は、450nm及び560nmの分光強度に比して大きいものになり、これらの中で、もっとも強い分光強度になった。なお、実施例10~12では、450nmの分光強度は730nmの分光強度に比して同程度又は小さかった。例えば、実施例11では、730nmの50%未満の分光強度であった。実施例12では20%未満の分光強度であった。
【0365】
以上のことから、本実施例は、強い黄緑~黄色光成分と強い近赤外成分とを含む出力光4を必要とする用途に好適な発光装置といえる。なお、白色LEDが放つ白色光が第二の波長変換体2Aを透過するようにしたときには、白色LEDが放つ光成分の中の、青色光成分と赤色光成分が大きく強度低下する。この理由は、第二の波長変換体2Aが含むCr3+付活蛍光体が、青と赤の光成分を吸収する性質を持つためである。これに起因して、出力光4は黄色味を帯びやすくなるため、白色光に近い出力光4を得る目的では、白色LED(波長変換型発光素子)の光の一部を、そのまま透過させる構造とすることが好ましい形態になる。
【0366】
表4に、実施例10~12の出力光4の特性をまとめた。比較のため、同表には、参考例3(第二の波長変換体2Aを備えない白色LED)の特性も示した。
【0367】
【0368】
表4から判るように、第二の波長変換体2Aの厚みが増すにつれて、すなわち、実施例10から実施例11、さらには実施例12とするにつれて、放射束と光束と平均演色評価数(Ra)は低下傾向を示した。一方で、相関色温度は4000K付近の一定値を保つ傾向を示した。なお、同じ厚みの第二の波長変換体2Aを使用した場合の比較では、その放射束及び光束は、実施例7~9に比して40%以上大きい水準であった。特に、放射束は50%以上大きい水準であった。
【0369】
これらのデータから、本実施例は、高出力の近赤外線と高放射束と高光束を兼ね備える出力光4を得る上で好適な発光装置ともいえる。
【0370】
なお、この出力光4を白紙面に照射して確認したところ、大体φ30cmの範囲内の光が均質であることを確認できた。
【0371】
[実施例13~15]
実施例13~15の発光装置として、青色LEDと蛍光体を組み合わせてなるLED照明用の白色LEDと第二の波長変換体2Aとを組み合わせてなる発光装置を作製した。実施例4~6と同様にして、入手した白色LED(3000K、Lumileds LLC製)の光出力面上に、第二の波長変換体2Aを載置し、白色LEDに定格電流(400mA)を通電することによって出力される出力光4の分光分布や放射束等を測定した。
【0372】
図18に、実施例13~15の発光装置の出力光4の分光分布をまとめて示す。なお、
図18中の(a)、(b)及び(c)は、それぞれ実施例13、実施例14及び実施例15の出力光4に対応し、それぞれ155μm、240μm及び340μmの厚みの第二の波長変換体2Aを使用した装置構成に対応している。また、
図18中の(d)は、参考のために示した、白色LED(第二の波長変換体2Aなし)の出力光の分光分布(参考例4)である。
【0373】
図18(a)、(b)及び(c)から判るように、出力光4の分光分布は、少なくとも420nm以上950nm未満の全波長範囲内の光成分を含む。出力光4の分光分布は、青色LEDに由来する蛍光成分と、緑色蛍光体と赤色蛍光体の混合蛍光成分に由来する蛍光成分と、近赤外蛍光体(Cr
3+付活ガーネット蛍光体)に由来する蛍光成分とを主体にしていた。ここで、緑色蛍光体と赤色蛍光体の混合蛍光成分に由来する蛍光成分は、緑色蛍光体(Ce
3+付活ガーネット蛍光体)と赤色蛍光体(Eu
2+付活窒化物系蛍光体)の混合蛍光成分に由来する蛍光成分である。なお、青色LEDに由来する蛍光成分は、450nm付近にピークを持っていた。緑色蛍光体(Ce
3+付活ガーネット蛍光体)と赤色蛍光体(Eu
2+付活窒化物系蛍光体)の混合蛍光成分に由来する蛍光成分は、570nm以上635nm未満の波長範囲内のピークを持つか、又はショルダーとなっていた。近赤外蛍光体(Cr
3+付活ガーネット蛍光体)に由来する蛍光成分は、730nm付近にピークを持っていた。
【0374】
そこで、450nmと570nmと635nmと730nmの波長の光成分の分光強度に着目した。第二の波長変換体2Aを用いていない白色LEDでは、分光強度(高さ)がもっとも強い蛍光成分は、混合蛍光成分に由来する635nmの分光強度であった。青色LEDに由来する450nmの分光強度と、混合蛍光成分に由来する570nmの分光強度がこれに続く分光強度(高さ)を示した。
【0375】
厚みが異なる第二の波長変換体2Aと組み合わせた本実施例13~15(
図18中の(a)~(c))では、第二の波長変換体2Aの厚みが増すにつれて、450nmと570nmと635nm、とりわけ、450nmと635nmの分光強度が大きく低下した。一方で、第二の波長変換体2Aの厚みが増すにつれて、730nmの分光強度が増加し、これらの影響を受け、本実施例13~15の分光分布は、600nm以上700nm未満の波長範囲内に極小値又は凹みを持つものになった。
【0376】
実施例13~15では、730nmの分光強度は、第二の波長変換体2Aの厚みに関わらず、570nmの分光強度に比して大きいものになった。特に、実施例14と実施例15では、450nm及び635nmの分光強度に比しても大きく、これらの中で、もっとも強い分光強度になった。なお、実施例13~15では、450nmの分光強度は730nmの分光強度に比して小さく、35%未満の分光強度であった。特に実施例15では10%未満の分光強度であった。
【0377】
以上のことから、本実施例は、緑~黄~赤色の広い波長範囲に亘る強い光成分と強い近赤外成分とを含む出力光4を必要とする用途に好適な発光装置といえる。
【0378】
表5に、実施例13~15の出力光4の特性をまとめた。比較のため、同表には、参考例4(第二の波長変換体2Aを備えない白色LED)の特性も示した。
【0379】
【0380】
表5から判るように、第二の波長変換体2Aの厚みが増すにつれて、すなわち、実施例13から実施例14、さらには実施例15とするにつれて、放射束と光束と平均演色評価数(Ra)は低下傾向を示した。一方で、相関色温度は次第に増加する傾向を示した。なお、特筆すべきは、放射束と光束であり、平均演色評価数(Ra)が75%以上の高演色性を示しながら、同じ厚みの第二の波長変換体2Aを使用した場合の比較では、その放射束及び光束は、実施例10~12に比して10%以上大きい水準であった。特に、放射束は50%以上大きい水準であった。
【0381】
これらのデータから、本実施例は、高出力の近赤外線と高放射束と高光束と高演色性を兼ね備える出力光4を得る上で好適な発光装置ともいえる。
【0382】
なお、この出力光4を白紙面に照射して確認したところ、大体φ30cmの範囲内の光が均質であることを確認できた。
【0383】
[実施例16~18]
実施例16~18の発光装置として、青色LEDと蛍光体を組み合わせてなるLED照明用の白色LEDと第二の波長変換体2Aとを組み合わせてなる発光装置を作製した。実施例4~6と同様にして、入手した白色LED(5000K、Lumileds LLC製)の光出力面上に、第二の波長変換体2Aを載置し、白色LEDに定格電流(400mA)を通電することによって出力される出力光4の分光分布や放射束等を測定した。
【0384】
図19に、実施例16~18の発光装置の出力光4の分光分布をまとめて示す。なお、
図19中の(a)、(b)及び(c)は、それぞれ実施例16、実施例17及び実施例18の出力光4に対応し、それぞれ155μm、240μm及び340μmの厚みの第二の波長変換体2Aを使用した装置構成に対応している。また、
図19中の(d)は、参考のために示した、白色LED(第二の波長変換体2Aなし)の出力光の分光分布(参考例5)である。
【0385】
図19(a)、(b)及び(c)から判るように、出力光4の分光分布は、少なくとも420nm以上950nm未満の全波長範囲内の光成分を含む。出力光4の分光分布は、青色LEDに由来する蛍光成分と、緑色蛍光体(Ce
3+付活ガーネット蛍光体)に由来する蛍光成分と、近赤外蛍光体(Cr
3+付活ガーネット蛍光体)に由来する蛍光成分とを主体にしていた。なお、青色LEDに由来する蛍光成分は、450nm付近にピークを持っていた。緑色蛍光体(Ce
3+付活ガーネット蛍光体)に由来する蛍光成分は、555nm付近にピークを持っていた。近赤外蛍光体(Cr
3+付活ガーネット蛍光体)に由来する蛍光成分は、730nm付近にピークを持っていた。
【0386】
そこで、450nmと555nmと730nmの波長の光成分の分光強度に着目した。第二の波長変換体2Aを用いていない白色LEDでは、分光強度(高さ)がもっとも強い蛍光成分は、青色LEDに由来する450nmの分光強度であった。緑色蛍光体に由来する555nmの分光強度がこれに続く分光強度(高さ)を示した。
【0387】
厚みが異なる第二の波長変換体2Aと組み合わせた本実施例16~18(
図19中の(a)~(c))では、第二の波長変換体2Aの厚みが増すにつれて、450nmと555nm、とりわけ、450nmの分光強度が大きく低下した。一方で、第二の波長変換体2Aの厚みが増すにつれて、730nmの分光強度が増加し、600nm以上700nm未満の波長範囲内に極小値を持つものになった。なお、その極小値は、730nmの分光強度の60%未満であった。特に実施例18では25%未満であった。
【0388】
実施例16~18では、450nm及び730nmの分光強度は、第二の波長変換体2Aの厚みに関わらず、555nmの分光強度に比して小さかった。実施例16では、730nmの分光強度は、450nmの分光強度に比して小さいが、厚みが増した実施例17と実施例18では、450nmの分光強度に比して大きいものになった。例えば、実施例16では、450nmの分光強度は、730nmの120%以上の分光強度であるが、実施例17では50%未満の分光強度であった。実施例18では25%未満の分光強度であった。
【0389】
以上のことから、本実施例は、強い黄緑色光成分と強い近赤外成分とを含み、光成分が、650nm付近を境にしてよく分離された出力光4を必要とする用途に好適な発光装置といえる。
【0390】
表6に、実施例16~18の出力光4の特性をまとめた。比較のため、同表には、参考例5(第二の波長変換体2Aを備えない白色LED)の特性も示した。
【0391】
【0392】
表6から判るように、第二の波長変換体2Aの厚みが増すにつれて、すなわち、実施例16から実施例17、さらには実施例18とするにつれて、放射束と光束と平均演色評価数(Ra)は低下傾向を示した。一方で、相関色温度は次第に増加する傾向を示した。特筆すべきは、放射束と光束であり、同じ厚みの第二の波長変換体2Aを使用した場合の比較では、その放射束及び光束は、実施例13~15に比して7%以上大きい水準であった。特に、光束は60%以上大きい水準であった。
【0393】
これらのデータから、本実施例は、高出力の近赤外線と高光束を兼ね備える出力光4を得る上で好適な発光装置ともいえる。
【0394】
なお、この出力光4を白紙面に照射して確認したところ、大体φ30cmの範囲内の光が均質であることを確認できた。
【0395】
[実施例19~21]
実施例19~21の発光装置として、LED照明用の白色LEDと第二の波長変換体2Aとを組み合わせてなる発光装置を作製した。実施例4~6と同様にして、入手した白色LED(3000K、シチズン電子(株)製)の光出力面上に、第二の波長変換体2Aを載置し、白色LEDに定格電流(180mA)を通電することによって出力される出力光4の分光分布や放射束等を測定した。
【0396】
図20に、実施例19~21の発光装置の出力光4の分光分布をまとめて示す。なお、
図20中の(a)、(b)及び(c)は、それぞれ実施例19、実施例20及び実施例21の出力光4に対応し、それぞれ155μm、240μm及び340μmの厚みの第二の波長変換体2Aを使用した装置構成に対応している。また、
図20中の(d)は、参考のために示した、白色LED(第二の波長変換体2Aなし)の出力光の分光分布(参考例6)である。
【0397】
図20(a)、(b)及び(c)から判るように、出力光4の分光分布は、少なくとも420nm以上950nm未満の全波長範囲内の光成分を含む。出力光4の分光分布は、青色LEDに由来する蛍光成分と、緑色蛍光体と赤色蛍光体の混合蛍光成分に由来する蛍光成分と、近赤外蛍光体(Cr
3+付活ガーネット蛍光体)に由来する蛍光成分とを主体にしていた。ここで、緑色蛍光体と赤色蛍光体の混合蛍光成分に由来する蛍光成分は、緑色蛍光体(Ce
3+付活ガーネット蛍光体)と赤色蛍光体(Eu
2+付活窒化物系蛍光体)の混合蛍光成分に由来する蛍光成分である。なお、青色LEDに由来する蛍光成分は、450nm付近にピークを持っていた。緑色蛍光体(Ce
3+付活ガーネット蛍光体)と赤色蛍光体(Eu
2+付活窒化物系蛍光体)の混合蛍光成分に由来する蛍光成分は、590nm±10nmの波長範囲内にピークを持っていた。近赤外蛍光体(Cr
3+付活ガーネット蛍光体)に由来する蛍光成分は、730nm付近にピークを持っていた。
【0398】
そこで、450nmと590nmと730nmの波長の光成分の分光強度に着目した。第二の波長変換体2Aを用いていない白色LEDでは、分光強度(高さ)がもっとも強い蛍光成分は、緑色蛍光体と赤色蛍光体の両方に由来する590nmの分光強度であった。青色LEDに由来する450nmの分光強度がこれに続く分光強度(高さ)を示した。
【0399】
厚みが異なる第二の波長変換体2Aと組み合わせた本実施例19~21(
図20中の(a)~(c))では、第二の波長変換体2Aの厚みが増すにつれて、450nmと590nm、とりわけ、450nmの分光強度が大きく低下した。一方で、第二の波長変換体2Aの厚みが増すにつれて、730nmの分光強度が増加し、600nm以上700nm未満の波長範囲内に極小値を持つものになった。
【0400】
実施例19~21では、730nmの分光強度は、厚みに関わらず、450nmの分光強度に比して大きい。そして、730nmの分光強度は、実施例19と実施例20では、590nmの分光強度よりも小さいが、実施例21ではそれよりも大きくなり、これらの中でもっとも強い分光強度になった。
【0401】
なお、730nmの分光強度に対する450nmの分光強度は、例えば、実施例19では55%未満であった。実施例20では25%未満であり、実施例21では15%未満であった。
【0402】
以上のことから、本実施例は、強い黄橙色光成分と強い近赤外成分とを含む出力光4を必要とする用途に好適な発光装置といえる。
【0403】
表7に、実施例19~21の出力光4の特性をまとめた。比較のため、同表には、参考例6(第二の波長変換体2Aを備えない白色LED)の特性も示した。
【0404】
【0405】
表7から判るように、第二の波長変換体2Aの厚みが増すにつれて、すなわち、実施例19から実施例20、さらには実施例21とするにつれて、放射束と光束と平均演色評価数(Ra)は低下傾向を示した。一方で、相関色温度は次第に増加する傾向を示した。
【0406】
なお、この出力光4を白紙面に照射して確認したところ、大体φ30cmの範囲内の光が均質であることを確認できた。
【0407】
なお、白色LEDの分光分布は、用いるLEDや蛍光体が放つ蛍光の色調(蛍光ピーク波長)、又は蛍光体を含む第一の波長変換体1Aの光吸収率等によって変わる。また、第一の波長変換体1Aの光吸収率は、第一の波長変換体1A中の蛍光体の体積割合や第一の波長変換体1Aの厚みによって変わる。さらに、第一の波長変換体1Aの光吸収率は、用いる蛍光体の蛍光イオン(発光中心)の付活量や母体となる化合物の組成、又は粒子サイズ(中心粒径D50)によっても変わる。
【0408】
このようなことから、白色LEDは、本実施例で使用した白色LED以外にも、多種多様な色調の白色光を放つものが市販されている状況にあるため、当業者はこれらを容易に入手できる。すなわち、所望する照明光の設計等は容易であり、用途に応じた照明光を容易に提供することができる。このため、出力光の相関色温度や演色性等は本例に限定されるものではなく、本例以外の照明光を放つ本実施形態の発光装置として実施可能である。
【0409】
また、本例では、第二の波長変換体2Aとして、GLGG蛍光体を含んでなる樹脂蛍光膜を使用した場合を説明したが、高出力化のため、樹脂蛍光膜の替わりに、無機封止蛍光膜や蛍光セラミックスを用いること等は容易に想到し得る。
【0410】
例えば、蛍光セラミックスの製造は、透光性YAG蛍光セラミックスや透光性アルミナ発光管の製造技術を応用すれば足りる。このため、製造技術を持たない場合であっても、透光性YAG蛍光セラミックス等の製造技術を保有するメーカー等に試作依頼すれば、品質水準の差こそあれ入手できることになる。
【0411】
以上、実施例に沿って本実施形態の内容を説明したが、本実施形態はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0412】
特願2021-027328号(出願日:2021年2月24日)の全内容は、ここに援用される。
【0413】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
本開示によれば、近赤外と可視の双方の光成分を放つ、人の目による見え方への配慮ができる産業用途に適し、近赤外の光成分の高出力化と光出力面の大面積化を両立する発光装置及びこれを用いた電子機器を提供することができる。