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特開2024-170456IgA抗体構築物を含む組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170456
(43)【公開日】2024-12-10
(54)【発明の名称】IgA抗体構築物を含む組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20241203BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20241203BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241203BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/63 Z
C07K16/28
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024144789
(22)【出願日】2024-08-26
(62)【分割の表示】P 2021524345の分割
【原出願日】2019-10-29
(31)【優先権主張番号】18203183.1
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/752,641
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】521190576
【氏名又は名称】ティガティーエックス,インコーポレーテッド
(71)【出願人】
【識別番号】514116305
【氏名又は名称】ユーエムセー・ユトレヒト・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】デ・ブール,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ロイゼン,ジャネット・ヘンリカ・ウィルヘルミナ
(72)【発明者】
【氏名】ファン・テザリング,ゲールツ・ヤン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】IgA定常領域を含む治療薬、医薬組成物、および方法を提供する。
【解決手段】(a)免疫グロブリンA(IgA)重鎖ドメイン;
(b)CD47結合ドメイン;および
(c)抗原結合ドメイン;
を含む抗体構築物であって、該IgA重鎖ドメインが、免疫エフェクター細胞上のFcαRに特異的に結合し、該CD47結合ドメインが、標的細胞上に発現されたCD47と免疫エフェクター細胞上のシグナル調節タンパク質α(SIRPα)との結合を阻害し、該抗原結合ドメインが、標的細胞上の抗原に結合し、そして該抗体構築物が、CD47と比較して、抗原に対してより高い結合親和性を有する、前記抗体構築物を提供する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)免疫グロブリンA(IgA)重鎖ドメイン;
(b)CD47結合ドメイン;および
(c)抗原結合ドメイン;
を含む抗体構築物であって、
該IgA重鎖ドメインが、免疫エフェクター細胞上のFcαRに特異的に結合し、
該CD47結合ドメインが、標的細胞上に発現されたCD47と免疫エフェクター細胞上のシグナル調節タンパク質α(SIRP α)との結合を阻害し、
該抗原結合ドメインが、標的細胞上の抗原に結合し、そして
該抗体構築物が、CD47と比較して、抗原に対してより高い結合親和性を有する、
前記抗体構築物。
【請求項2】
CD47結合ドメインが、第1の軽鎖可変ドメインおよび第1の重鎖可変ドメインのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の抗体構築物。
【請求項3】
抗原結合ドメインが、第2の軽鎖可変ドメインおよび第2の重鎖可変ドメインのうちの少なくとも1つを含む、請求項1または請求項2に記載の抗体構築物。
【請求項4】
前記構築物が、前記第1の軽鎖可変ドメインを含み、前記第1の軽鎖可変ドメインが、可変軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、可変軽鎖相補性決定領域2(CDR L2
)、および可変軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含み;
前記CDR-L1が、配列番号13のアミノ酸配列または配列番号13中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含み、前記CDR-L2が、配列番号14のアミノ酸配列または配列番号14中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含み、そして前記CDR-L3が、配列番号15のアミノ酸配列または配列番号15中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含む、
請求項2または請求項3に記載の抗体構築物。
【請求項5】
前記構築物が前記第1の軽鎖可変ドメインを含み、前記第1の軽鎖可変ドメインが、配列番号26に対して90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項6】
前記構築物が、前記第1の重鎖可変ドメインを含み、前記第1の重鎖可変ドメインが、可変重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、可変重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、および可変重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含み、
前記CDR-H1が、配列番号4のアミノ酸配列または配列番号4中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含み、前記CDR-H2が、配列番号5のアミノ酸配列または配列番号5中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含み、そして前記CDR-H3が、配列番号6のアミノ酸配列または配列番号6中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含む、
請求項2~5のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項7】
前記構築物が前記第1の重鎖可変ドメインを含み、該第1の重鎖可変ドメインが、配列番号23に対して90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項2~6のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項8】
前記構築物が、前記第2の軽鎖可変ドメインを含み、前記第2の軽鎖可変ドメインが、CDR-L1、CDR L2、およびCDR-L3を含み;
前記CDR-L1が、配列番号10のアミノ酸配列または配列番号10中に最大2つのア
ミノ修飾を有するそのバリアントを含み、前記CDR-L2が、配列番号11のアミノ酸配列または配列番号11中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含み、そして前記CDR-L3が、配列番号12のアミノ酸配列または配列番号12中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含む、
請求項3~7のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項9】
前記構築物が前記第2の軽鎖可変ドメインを含み、前記第2の軽鎖可変ドメインが配列番号25のアミノ酸配列を含む、請求項3~8のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項10】
前記構築物が、前記第2の重鎖可変ドメインを含み、前記第2の重鎖可変ドメインが、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含み;
前記CDR-H1が、配列番号1のアミノ酸配列または配列番号1中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含み、前記CDR-H2が、配列番号2のアミノ酸配列または配列番号2中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含み、そして前記CDR-H3が、配列番号3のアミノ酸配列または配列番号3中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含む、請求項3~9のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項11】
前記構築物が前記第2の重鎖可変ドメインを含み、前記第2の重鎖可変ドメインが、配列番号22に対して90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項3~10のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項12】
前記第1の重鎖可変ドメインおよび第2の重鎖可変ドメインを含み、前記第2の重鎖可変ドメインのC末端が第1の重鎖可変ドメインのN末端に連結されている、第1のポリペプチド;および
前記第1の軽鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインを含み、第2の軽鎖可変ドメインのC末端が第1の軽鎖可変ドメインのN末端に連結されている、第2のポリペプチド;
のうちの少なくとも1つを含む、請求項3~11のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項13】
前記第1または前記第2のポリペプチドが、前記可変ドメインを連結するリンカーペプチドをさらに含む、請求項12に記載の抗体構築物。
【請求項14】
リンカーペプチドが配列番号44の配列を含む、請求項13に記載の抗体構築物。
【請求項15】
第1のポリぺプチドが配列番号29の配列を含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項16】
第1のポリペプチドのC末端が(IgA)重鎖領域に連結されている、請求項12~15のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項17】
連結がIgA CH1定常ドメインを介している、請求項16に記載の抗体構築物。
【請求項18】
第2のポリぺプチドが配列番号31の配列を含む、請求項12~17のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項19】
抗体構築物が第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む、請求項12~18のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項20】
第1の重鎖可変ドメインのC末端が第2の重鎖可変ドメインのN末端に連結されている第1のポリペプチド;または
第1の軽鎖可変ドメインのC末端が第2の軽鎖可変ドメインのN末端に連結されている第2のポリペプチド;
のうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載の抗体構築物。
【請求項21】
連結がリンカーペプチドによる、請求項20に記載の抗体構築物。
【請求項22】
リンカーペプチドが配列番号44の配列を含む、請求項21に記載の抗体構築物。
【請求項23】
第1のポリぺプチドが配列番号30の配列を含む、請求項20~22のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項24】
第1のポリペプチドのC末端が(IgA)重鎖領域に連結されている、請求項20~23のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項25】
連結がIgA CH1定常ドメインを介する、請求項23に記載の抗体構築物。
【請求項26】
第2のポリぺプチドが配列番号32の配列を含む、請求項22~25のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項27】
抗体構築物が第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む、請求項20~26のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項28】
抗体構築物が、単鎖可変フラグメント(scFv)を含む第1のポリペプチドを含み、該scFVが、前記第2の軽鎖可変ドメインに連結された前記第2の重鎖可変ドメインを含む、請求項3~11のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項29】
前記可変ドメインを連結するリンカーペプチドを含む、請求項28に記載の構築物。
【請求項30】
リンカーペプチドが配列番号45の配列を含む、請求項29に記載の抗体構築物。
【請求項31】
第1のポリペプチドが、第1の軽鎖可変ドメイン;または第1の重鎖可変ドメインに連結されたscFvを含む、請求項28~30のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項32】
連結がリンカーペプチドによる、請求項31に記載の抗体構築物。
【請求項33】
リンカーペプチドが配列番号44の配列を含む、請求項32に記載の抗体構築物。
【請求項34】
第1の軽鎖可変ドメインに連結されたscFVを含む第1のポリペプチドを含み、該第1のポリペプチドが、配列番号35に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、請求項31~33のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項35】
第1の重鎖可変ドメインに連結されたscFVを含む第1のポリペプチドを含み、該第1のポリペプチドが、配列番号33に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、請求項31~33のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項36】
抗体構築物が、単鎖可変フラグメント(scFv)を含む第1のポリペプチドを含み、該scFVが、第1の軽鎖可変ドメインに連結された第1の重鎖可変ドメインを含む、請求項3に記載の抗体構築物。
【請求項37】
前記可変ドメインを連結するリンカーペプチドを含む、請求項36に記載の抗体構築物
【請求項38】
リンカーペプチドが配列番号45の配列を含む、請求項37に記載の抗体構築物。
【請求項39】
第1のポリペプチドが、第2の軽鎖可変ドメイン;または第2の重鎖可変ドメインに連結されたscFvを含む、請求項36~38のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項40】
連結がリンカーペプチドによる、請求項39に記載の抗体構築物。
【請求項41】
リンカーペプチドが配列番号44の配列を含む、請求項40に記載の抗体構築物。
【請求項42】
第2の軽鎖可変ドメインに連結されたscFVを含む第1のポリペプチドを含み、該第1のポリペプチドが、配列番号36に対して90%の同一性を有する配列を含む、請求項39~41のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項43】
第2の重鎖可変ドメインに連結されたscFVを含む第1のポリペプチドを含み、該第1のポリペプチドが、配列番号34に対して90%の同一性を有する配列を含む、請求項39~41のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項44】
IgA重鎖ドメインがIgA重鎖定常ドメインを含む、請求項1~43のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項45】
IgA重鎖定常ドメインが、IgA1定常ドメインまたはそのバリアントである、請求項44に記載の抗体構築物。
【請求項46】
IgA1定常ドメインが、IgA1 CH2領域およびIgA1 CH3領域またはそのバリアントのうちの少なくとも1つを含む、請求項45に記載の抗体構築物。
【請求項47】
IgA1定常領域が、IgA1 CH1領域またはそのバリアントをさらに含む、請求
項46に記載の抗体構築物。
【請求項48】
IgA重鎖定常ドメインが、IgA2定常ドメインまたはそのバリアントである、請求項44に記載の抗体構築物。
【請求項49】
IgA2定常ドメインが、IgA2 CH2領域およびIgA2 CH3領域またはそのバリアントのうちの少なくとも1つを含む、請求項48に記載の抗体構築物。
【請求項50】
IgA2定常領域がIgA2 CH1領域をさらに含む、請求項49に記載の抗体構築
物。
【請求項51】
抗原が、CD20、GD2、メソテリン、CD38、CD19、EGFR、HER2、PD-L1、またはCD25である、請求項1~50のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項52】
IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つまたは2つの天然に存在するグリコシル化部位を欠く、請求項44~51のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項53】
前記構築物が、少なくとも2つの天然に存在するグリコシル化部位を欠き、該少なくとも2つの天然に存在するグリコシル化部位が、少なくとも1つのIgA CH2領域また
はIgA CH3領域にある、請求項52に記載の抗体構築物。
【請求項54】
少なくとも2つの天然に存在するグリコシル化部位が、2つの天然に存在するN連結グリコシル化部位である、請求項53に記載の抗体構築物。
【請求項55】
IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも2つの天然に存在するアスパラギン(N)アミノ酸残基を欠く、請求項44~54のいずれか一項に記載の構築物。
【請求項56】
IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも2つの天然に存在するアスパラギン(N)アミノ酸残基のアミノ酸置換、または両方の残基の置換を含む、請求項44~54のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項57】
IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基を欠く、請求項44~56のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項58】
IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む、請求項57に記載の抗体構築物。
【請求項59】
IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基の非保存的アミノ酸置換を含む、請求項58に記載の抗体構築物。
【請求項60】
IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基のアミノ酸欠失を含む、請求項57に記載の抗体構築物。
【請求項61】
IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するチロシン(Y)アミノ酸残基を欠く、請求項44~60のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項62】
IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(Y)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む、請求項61に記載の抗体構築物。
【請求項63】
IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(Y)アミノ酸残基の欠失を含む、請求項61に記載の抗体構築物。
【請求項64】
IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基を欠く、請求項44~63のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項65】
IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む、請求項64に記載の抗体構築物。
【請求項66】
IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基の欠失を含む、請求項65に記載の抗体構築物。
【請求項67】
IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するイソロイシン(I)アミノ酸残基を欠く、請求項44~66のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項68】
IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するイソロイシン(I)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む、請求項67に記載の抗体構築物。
【請求項69】
IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するイソロイシン(I)アミノ酸残基の欠失を含む、請求項68に記載の抗体構築物。
【請求項70】
IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するプロリン(P)アミノ酸残基を欠く、請求項44~69のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項71】
IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するプロリン(P)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む、請求項70に記載の抗体構築物。
【請求項72】
IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するプロリン(P)アミノ酸残基の欠失を含む、請求項71に記載の抗体構築物。
【請求項73】
前記構築物が、対応する野生型IgA重鎖定常領域を含む対応する抗体構築物と比較して、より長い循環半減期を示す、請求項52~72のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項74】
抗体構築物が、対応する野生型CD47結合ドメインと比較して、CD47に対してより低い親和性を有する弱毒化CD47結合ドメインを含む、請求項1~73のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項75】
抗体構築物が、対応する野生型IgA重鎖定常領域を含む対応する抗体構築物と比較して、減少した凝集を示す、請求項52~74のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項76】
抗体構築物が、対応する野生型IgA重鎖定常領域を含む対応する抗体構築物と比較して、血清タンパク質との減少した凝集を示す、請求項52~75のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項77】
前記IgA重鎖定常領域が1以上のアルブミン結合ドメインを含む、請求項44~76のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項78】
抗体構築物が、1以上のアルブミン結合ドメインを含まない対応する抗体構築物よりも長い半減期を有する、請求項77に記載の抗体構築物。
【請求項79】
IgA重鎖定常ドメインが、配列番号37~41のいずれか1つから選択される配列に対して90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項44~78のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項80】
構築物がヒンジ領域をさらに含む、請求項1~79のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項81】
ヒンジ領域が、IgAヒンジアミノ酸配列またはそのバリアントもしくはフラグメントを含む、請求項80に記載の抗体構築物。
【請求項82】
ヒンジ領域が、ヒトIgAヒンジアミノ酸配列またはそのバリアントもしくはフラグメントを含む、請求項80または請求項81に記載の抗体構築物。
【請求項83】
ヒンジが、IgA1ヒンジもしくはIgA2ヒンジ、またはそのバリアントもしくはフ
ラグメントである、請求項80~82のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項84】
抗体構築物が軽鎖定常領域をさらに含む、請求項1~83のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項85】
軽鎖定常領域がカッパ定常領域である、請求項84に記載の抗体構築物。
【請求項86】
軽鎖定常領域がラムダ定常領域である、請求項84に記載の抗体構築物。
【請求項87】
軽鎖定常領域が、第1の軽鎖可変ドメインまたは第1の重鎖可変ドメインに連結される、請求項84~86のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項88】
(a)免疫グロブリンA(IgA)重鎖定常ドメイン;
(b)CD47結合ドメイン;および
(c)抗原結合ドメイン;
を含む抗体構築物であって、
該IgA重鎖ドメインが、免疫エフェクター細胞上のFcαRに特異的に結合し、
該CD47結合ドメインが、標的細胞上に発現されたCD47と免疫エフェクター細胞上のシグナル調節タンパク質α(SIRP α)との結合を阻害し、
該抗原結合ドメインが、標的細胞上の抗原に結合し、そして
該抗体構築物が、CD47と比較して、抗原に対してより高い結合親和性を有する、
前記抗体構築物。
【請求項89】
CD47結合ドメインが、第1の軽鎖可変ドメインおよび第1の重鎖可変ドメインを含む、請求項88に記載の抗体構築物。
【請求項90】
抗原結合ドメインが、第2の軽鎖可変ドメインおよび第2の重鎖可変ドメインを含む、請求項89に記載の抗体構築物。
【請求項91】
第1の軽鎖可変ドメインがカッパ型のものである、請求項90に記載の抗体構築物。
【請求項92】
第2の軽鎖可変ドメインがラムダ型のものである、請求項91に記載の抗体構築物。
【請求項93】
第1の軽鎖可変ドメインがラムダ型のものである、請求項90に記載の抗体構築物。
【請求項94】
第2の軽鎖可変ドメインがカッパ型のものである、請求項93に記載の抗体構築物。
【請求項95】
第1の軽鎖可変ドメインが、カッパ型のものであり、配列番号16の可変軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)アミノ酸配列、配列番号17の可変軽鎖相補性決定領域2(CDR L2)アミノ酸配列、配列番号18の可変軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)アミノ酸配列を含む、請求項91または請求項92に記載の抗体構築物。
【請求項96】
第1の軽鎖可変ドメインが、配列番号27に対して90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項95に記載の抗体構築物。
【請求項97】
第2の軽鎖可変ドメインが、配列番号19の可変軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)アミノ酸配列、配列番号20の可変軽鎖相補性決定領域2(CDR L2)アミノ酸配列、配列番号21の可変軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)アミノ酸配列を含むラムダ型のものである、請求項92に記載の抗体構築物。
【請求項98】
第2の軽鎖可変ドメインが、配列番号28に対して90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項97に記載の抗体構築物。
【請求項99】
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の重鎖可変ドメインが同じである、請求項90~98のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項100】
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の重鎖可変ドメインが、配列番号7の可変重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)アミノ酸配列、配列番号8の可変重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)アミノ酸配列、配列番号9の可変重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)アミノ酸配列を含む、請求項99に記載の抗体構築物。
【請求項101】
第1の重鎖可変ドメインおよび第2の重鎖可変ドメインが、配列番号24に対して90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項100に記載の抗体構築物。
【請求項102】
第1の軽鎖可変ドメインがカッパ定常領域をさらに含む、請求項89~101のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項103】
第2の軽鎖可変ドメインがラムダ定常領域をさらに含む、請求項90~102のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項104】
第1の軽鎖可変ドメインがラムダ定常領域をさらに含む、請求項89~101のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項105】
第2の軽鎖可変ドメインがカッパ定常領域をさらに含む、請求項90~101または請求項104のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項106】
カッパ定常領域が、配列番号42に対して95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項102~105のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項107】
ラムダ定常領域が、配列番号43に対して95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項103~105のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項108】
IgA重鎖定常ドメインが、IgA CH2領域およびIgA CH3領域またはそのバリアントのうちの少なくとも1つを含む、請求項88~107のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項109】
IgA重鎖定常ドメインがIgA CH1領域またはそのバリアントをさらに含む、請求項108に記載の抗体構築物。
【請求項110】
CD47結合ドメインが、IgA CH1ドメインによってIgA定常ドメインに連結される、請求項109に記載の抗体構築物。
【請求項111】
抗原結合ドメインが、IgA CH1ドメインによってIgA定常ドメインに連結される、請求項109~110に記載の抗体構築物。
【請求項112】
IgA重鎖定常ドメインがIgA1定常領域またはそのバリアントである、請求項88~111のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項113】
IgA1定常領域がIgA1 CH2領域およびIgA1 CH3領域を含む、請求項112に記載の抗体構築物。
【請求項114】
IgA1定常領域がIgA1 CH1領域をさらに含む、請求項113に記載の抗体構
築物。
【請求項115】
IgA重鎖定常ドメインがIgA2定常領域またはそのバリアントである、請求項88~111のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項116】
IgA2定常領域が、IgA2 CH2領域およびIgA2 CH3領域を含む、請求項115に記載の抗体構築物。
【請求項117】
IgA2定常領域がIgA2 CH1領域をさらに含む、請求項116に記載の抗体構
築物。
【請求項118】
抗原が、CD20、GD2、メソテリン、CD38、CD19、EGFR、HER2、PD-L1、またはCD25である、請求項88~117のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項119】
IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、1、2または3つの天然に存在するグリコシル化部位を欠く、請求項108~118のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項120】
前記部位が、IgA CH2領域またはIgA CH3領域の少なくとも1つにある、請求項119に記載の抗体構築物。
【請求項121】
前記構築物が、2つの天然に存在するN連結グリコシル化部位を欠く、請求項119または請求項120に記載の抗体構築物。
【請求項122】
IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、天然に存在するアスパラギン(N)アミノ酸残基を欠く、請求項108~121のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項123】
IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するアスパラギン(N)アミノ酸残基のアミノ酸置換、または少なくとも2つの天然に存在するアスパラギン(N)アミノ酸残基の置換を含む、請求項122に記載の抗体構築物。
【請求項124】
IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基を欠く、請求項108~123のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項125】
IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む、請求項124に記載の抗体構築物。
【請求項126】
IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基の非保存的アミノ酸置換を含む、請求項125に記載の抗体構築物。
【請求項127】
IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基のアミノ酸欠失を含む、請求項126に記載の抗体構築物。
【請求項128】
IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するチロシン(Y)アミノ酸残基を欠く、請求項108~127のいずれか一項に
記載の抗体構築物。
【請求項129】
IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(Y)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む、請求項128に記載の抗体構築物。
【請求項130】
IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(Y)アミノ酸残基の欠失を含む、請求項129に記載の抗体構築物。
【請求項131】
IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基を欠く、請求項108~130のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項132】
IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む、請求項131に記載の抗体構築物。
【請求項133】
IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基の欠失を含む、請求項132に記載の抗体構築物。
【請求項134】
IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するイソロイシン(I)アミノ酸残基を欠く、請求項108~133のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項135】
IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するイソロイシン(I)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む、請求項134に記載の抗体構築物。
【請求項136】
IgA重鎖定常領域が、少なくとも1つの天然に存在するイソロイシン(I)アミノ酸残基の欠失を含む、請求項135に記載の抗体構築物。
【請求項137】
IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するプロリン(P)アミノ酸残基を欠く、請求項108~136のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項138】
IgA重鎖定常領域が、少なくとも1つの天然に存在するプロリン(P)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む、請求項137に記載の抗体構築物。
【請求項139】
IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するプロリン(P)アミノ酸残基の欠失を含む、請求項138に記載の抗体構築物。
【請求項140】
抗体構築物が、対応する野生型IgA重鎖定常領域を含む対応する抗体構築物と比較して、より長い循環半減期を示す、請求項119~139のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項141】
抗体構築物が、対応する野生型IgA重鎖定常領域を含む対応する抗体構築物と比較して、より長い半減期を示す、請求項119~140のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項142】
抗体構築物が、対応する野生型IgA重鎖定常領域を含む対応する抗体構築物と比較して、減少した凝集を示す、請求項119~141のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項143】
抗体構築物が、対応する野生型IgA重鎖定常領域を含む対応する抗体構築物と比較して、血清タンパク質との減少した凝集を示す、請求項119~142のいずれか一項に記
載の抗体構築物。
【請求項144】
前記IgA重鎖定常領域が1以上のアルブミン結合ドメインを含む、請求項1~143のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項145】
抗体構築物が、1以上のアルブミン結合ドメインを含まない対応する抗体構築物よりも長い半減期を有する、請求項144に記載の抗体構築物。
【請求項146】
IgA重鎖定常領域がヒンジ領域をさらに含む、請求項88~145のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項147】
ヒンジ領域が、IgAヒンジアミノ酸配列またはそのバリアントもしくはフラグメントを含む、請求項146に記載の抗体構築物。
【請求項148】
ヒンジ領域が、ヒトIgAヒンジアミノ酸配列またはそのバリアントもしくはフラグメントを含む、請求項147に記載の抗体構築物。
【請求項149】
ヒンジが、IgA1ヒンジもしくはIgA2ヒンジ、またはそのバリアントもしくはフラグメントである、請求項147または148に記載の抗体構築物。
【請求項150】
抗体構築物が、免疫接着分子、造影剤、治療薬、または細胞毒性薬をさらに含む、請求項1~149のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項151】
造影剤が、放射性標識、酵素、蛍光標識、発光標識、生物発光標識、磁気標識、またはビオチンである、請求項150に記載の抗体構築物。
【請求項152】
前記治療薬または細胞毒性薬が、代謝拮抗薬、アルキル化薬、抗生物質、成長因子、サイトカイン、抗血管新生薬、抗有糸分裂薬、アントラサイクリン、毒素、またはアポトーシス薬である、請求項150に記載の抗体構築物。
【請求項153】
免疫エフェクター細胞が好中球である、請求項1または請求項88に記載の抗体構築物。
【請求項154】
抗体構築物が、CD47を発現する標的細胞に抗原結合ドメインも結合している場合にのみ、免疫エフェクター細胞上のシグナル調節タンパク質α(SIRP α)機能を阻害する、請求項1または請求項88に記載の抗体構築物。
【請求項155】
抗体構築物は二重特異性である、請求項1または請求項88に記載の抗体構築物。
【請求項156】
CD47結合ドメインが、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、scFv、F(ab’)2、ダイアボディ、線状抗体、単一ドメイン抗体(sdAb)、またはラクダ科VHHドメインである、請求項1または請求項88に記載の抗体構築物。
【請求項157】
抗原結合ドメインが、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、scFv、F(ab’)2、ダイアボディ、線状抗体、単一ドメイン抗体(sdAb)、またはラクダ科VHHドメインである、請求項1または請求項88に記載の抗体構築物。
【請求項158】
IgA重鎖ドメインが、2つのIgA重鎖定常ドメインのヘテロ二量体である、請求項153~157のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項159】
ヘテロ二量体化が、ノブ-イントゥ-ホールカップリング、塩橋/静電相補性カップリング、CrossMabカップリング、鎖交換操作ドメイン技術、またはそれらの組み合わせによる、請求項158に記載の抗体構築物。
【請求項160】
抗原結合ドメインが、癌細胞または病原体の抗原に結合する、請求項153~159のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項161】
病原体が、病原菌、微生物、またはウイルスである、請求項160に記載の抗体構築物。
【請求項162】
(a)免疫グロブリンA(IgA)重鎖ドメイン;
(b)CD47結合ドメイン;および
(c)抗原結合ドメイン;
を含む抗体構築物であって、
該IgA重鎖ドメインが、免疫エフェクター細胞上のFcαRに特異的に結合し、
該CD47結合ドメインが、標的細胞上に発現されたCD47と免疫エフェクター細胞上のシグナル調節タンパク質α(SIRP α)との結合を阻害し、
該抗原結合ドメインが、標的細胞上の抗原に結合し、
該抗原が、CD20、GD2、メソテリン、CD38、CD19、EGFR、HER2、PD-L1またはCD25であり、そして
該抗体構築物が、CD47と比較して、抗原に対してより高い結合親和性を有する、
前記抗体構築物。
【請求項163】
(a)免疫グロブリンA(IgA)重鎖ドメイン;
(b)CD47結合ドメイン;および
(c)抗原結合ドメイン;
を含む多重特異性免疫エフェクター細胞エンゲージャー分子であって、
該IgA重鎖ドメインが、免疫エフェクター細胞上のFcαRと特異的に結合し、
該CD47結合ドメインが、標的細胞上に発現されたCD47と免疫エフェクター細胞上のシグナル調節タンパク質α(SIRP α)との結合を阻害し、
該抗原結合ドメインが、標的細胞上の抗原と結合し、そして
該抗体構築物が、CD47と比較して、抗原に対してより高い結合親和性を有する、
前記多重特異性免疫エフェクター細胞エンゲージャー分子。
【請求項164】
請求項1~161のいずれか一項に記載の抗体構築物、および
医薬的に許容しうるキャリヤー、アジュバントまたは希釈剤、
を含む医薬組成物。
【請求項165】
さらに、少なくとも1つの追加の治療薬を含む、請求項164に記載の医薬組成物。
【請求項166】
前記追加的治療薬が、造影剤、細胞毒性薬、血管形成阻害薬、キナーゼ阻害薬、共刺激分子遮断薬、接着分子遮断薬、抗サイトカイン抗体もしくはその機能性フラグメント、メトトレキサート、シクロスポリン、ラパマイシン、FK506、検出可能な標識もしくはレポーター、TNF拮抗薬、抗リウマチ薬、筋弛緩薬、麻薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、鎮痛薬、麻酔薬、鎮静薬、局所麻酔薬、神経筋遮断薬、抗菌薬、抗乾癬薬、コルチコステロイド、タンパク同化ステロイド、エリスロポエチン、免疫化、免疫グロブリン、免疫抑制薬、成長ホルモン、ホルモン補充薬、放射性医薬品、抗うつ薬、抗精神病薬、刺激薬、喘息薬、ベータ作動薬、吸入ステロイド、エピネフリンもしくはその類似体、サイトカイン、またはサイトカイン拮抗薬である、請求項165に記載の医薬組成物。
【請求項167】
請求項1~161のいずれか一項に記載の抗体構築物をコードする、単離核酸。
【請求項168】
請求項167に記載の単離核酸を含むベクター。
【請求項169】
請求項167に記載の単離核酸を含むin vitro細胞。
【請求項170】
請求項1~161のいずれか一項に記載の抗体構築物を発現するin vitro細胞。
【請求項171】
抗体構築物を含む有効量の組成物を被験体に投与することを含む、それを必要とする被験体の処置方法であって、該抗体構築物が、
(a)免疫グロブリンA(IgA)重鎖ドメイン;
(b)CD47結合ドメイン;および
(c)抗原結合ドメイン;
を含み、
該IgA重鎖ドメインが、免疫エフェクター細胞上のFcαRに特異的に結合し、
該CD47結合ドメインが、標的細胞上に発現されたCD47と免疫エフェクター細胞上のシグナル調節タンパク質α(SIRP α)との結合を阻害し、
該抗原結合ドメインが、標的細胞上の抗原に結合し、そして
該抗体構築物が、CD47と比較して、抗原に対してより高い結合親和性を有する、
前記処置方法。
【請求項172】
SIRP αとのCD47結合の阻害が、標的細胞の食作用およびクリアランスを増加
させる、請求項171に記載の方法。
【請求項173】
組成物が、経口、病巣内、静脈内治療によって、または皮下、筋肉内、動脈内、静脈内、腔内、頭蓋内、もしくは腹腔内注射によって投与される、請求項171~172のいずれか一項に記載の方法。
【請求項174】
組成物が、毎日、毎週、隔週、毎月、2カ月毎、3カ月に1回、6カ月に1回、または12カ月に1回投与される、請求項171~173のいずれか一項に記載の方法。
【請求項175】
被験体が癌を有する、請求項171~174のいずれか一項に記載の方法。
【請求項176】
癌が、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、胆道癌、B細胞白血病、B細胞リンパ腫、胆道癌、骨癌、脳癌、乳癌、トリプルネガティブ乳癌、子宮頸癌、バーキットリンパ腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胆嚢癌、胃癌、消化管癌、神経膠腫、有毛細胞白血病、頭頚部癌、ホジキンリンパ腫、肝癌、肺癌、甲状腺髄様癌、黒色腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、非ホジキンリンパ腫、膵臓癌、前立腺癌、肺路癌、腎癌、肉腫、皮膚癌、精巣癌、尿路上皮癌、および膀胱癌からなる群より選択される、請求項175に記載の方法。
【請求項177】
被験体がヒトである、請求項171~176のいずれか一項に記載の方法。
【請求項178】
有効量の少なくとも1つの追加的治療薬を投与することを含む、請求項171~177のいずれか一項に記載の方法。
【請求項179】
追加的治療薬が、造影剤、化学療法薬、キナーゼ阻害薬、共刺激分子遮断薬、接着分子遮断薬、第2の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、薬物、毒素、酵素、細胞毒性薬
、抗血管形成薬、プロアポトーシス薬、抗生物質、ホルモン、免疫モジュレーター、サイトカイン、ケモカイン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA(siRNA)、メトトレキサート、シクロスポリン、ラパマイシン、FK506、検出可能な標識もしくはレポーター、TNF拮抗薬、抗リウマチ薬、筋弛緩薬、麻薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、鎮痛薬、麻酔薬、鎮静薬、局所麻酔薬、神経筋遮断薬、抗菌薬、抗乾癬薬、コルチコステロイド、タンパク同化ステロイド、エリスロポエチン、免疫化、免疫グロブリン、免疫抑制薬、成長ホルモン、ホルモン補充薬、放射性医薬品、抗うつ薬、または抗精神病薬である、請求項178に記載の方法。
【請求項180】
標的細胞を有効量の抗体構築物と接触させることを含む、標的細胞に対する好中球媒介免疫応答を誘導する方法であって、
該抗体構築物が、
(a)免疫グロブリンA(IgA)重鎖ドメイン;
(b)CD47結合ドメイン;および
(c)抗原結合ドメイン
を含み;
該IgA重鎖ドメインが、好中球上のFcαRに特異的に結合し、
該CD47結合ドメインが、標的細胞上に発現されたCD47と好中球上のシグナル調節タンパク質α(SIRP α)との結合を阻害し、
該抗原結合ドメインが、標的細胞上の抗原に結合し、そして
該抗体構築物が、CD47と比較して、抗原に対してより高い結合親和性を有し、それによって、好中球媒介免疫応答を誘導する、
前記方法。
【請求項181】
好中球媒介免疫応答が、標的細胞の食作用または標的細胞の溶解を含む、請求尾180に記載の方法。
【請求項182】
抗原提示細胞が癌細胞またはウイルス細胞である、請求項180~181のいずれか一項に記載の方法。
【請求項183】
癌細胞がリンパ球である、請求項182に記載の方法。
【請求項184】
CD47結合ドメインが、可変軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、可変軽鎖相補性決定領域2(CDR L2)および可変軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む第1の軽鎖可変ドメインを含み、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3が、表Aから選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~162のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項185】
CD47結合ドメインが、可変軽鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、可変軽鎖相補性決定領域2(CDR H2)および可変軽鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含む第1の重鎖可変ドメインを含み、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3が、表Aから選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~162または請求項184のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項186】
抗原結合ドメインが、可変軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、可変軽鎖相補性決定領域2(CDR L2)および可変軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む第2の軽鎖可変ドメインを含み、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3が、表Bから選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~162または請求項184~185のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【請求項187】
抗原結合ドメインが、可変軽鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、可変軽鎖相補性決定領域2(CDR H2)および可変軽鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含む第2の重鎖可変ドメインを含み、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3が、表Bから選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~162または請求項184~186のいずれか一項に記載の抗体構築物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
相互参照
[001]本出願は2018年10月29日に出願された欧州特許出願EP1820318
3.1および2018年10月30日に出願された米国仮出願No.62/752641の利益を主張するものである;これらはそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[002]腫瘍抗原を標的としたIgGアイソタイプのモノクローナル抗体は、さまざまな
悪性腫瘍の有効な治療法であることが証明されている。長年にわたって、異なる腫瘍抗原を標的とする、ますます多くのモノクローナル抗体で、癌治療における使用が承認されている。しかしながら、特に単独療法におけるそれらの臨床的有効性はまだ十分ではない。臨床的有効性が向上した新規代替的抗体療法の開発に、関心が寄せられている。
【発明の概要】
【0003】
[003]一観点において、本明細書中に、(a)免疫グロブリンA(IgA)重鎖ドメイ
ン、(b)CD47結合ドメイン、および(c)抗原結合ドメインを含む抗体構築物であって、該IgA重鎖ドメインが、免疫エフェクター細胞上のFcαRに特異的に結合し、該CD47結合ドメインが、標的細胞上に発現されたCD47と免疫エフェクター細胞上のシグナル調節タンパク質α(SIRP α)との結合を阻害し、該抗原結合ドメインが、標的細胞上の抗原に結合し、そして該抗体構築物が、CD47と比較して、抗原に対してより高い結合親和性を有する、前記抗体構築物を提供する。
【0004】
[004]いくつかの態様において、CD47結合ドメインは、第1の軽鎖可変ドメインお
よび第1の重鎖可変ドメインのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの態様において、抗原結合ドメインは、第2の軽鎖可変ドメインおよび第2の重鎖可変ドメインのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの態様において、前記構築物は、前記第1の軽鎖可変ドメインを含み、前記第1の軽鎖可変ドメインは、可変軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、可変軽鎖相補性決定領域2(CDR L2)、および可変軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含み、前記CDR-L1は、配列番号13のアミノ酸配列または配列番号13中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含み、前記CDR-L2は、配列番号14のアミノ酸配列または配列番号14中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含み、そして前記CDR-L3は、配列番号15のアミノ酸配列または配列番号15中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含む。いくつかの態様において、構築物は前記第1の軽鎖可変ドメインを含み、前記第1の軽鎖可変ドメインは、配列番号26に対して90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0005】
[005]いくつかの態様において、前記構築物は、前記第1の重鎖可変ドメインを含み、
前記第1の重鎖可変ドメインは、可変重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、可変重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、および可変重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含み、前記CDR-H1は、配列番号4のアミノ酸配列または配列番号4中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含み、前記CDR-H2は、配列番号5のアミノ酸配列または配列番号5中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含み、そして前記CDR-H3は、配列番号6のアミノ酸配列または配列番号6中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含む。
【0006】
[006]いくつかの態様において、前記構築物は前記第1の重鎖可変ドメインを含み、該
第1の重鎖可変ドメインは、配列番号23に対して90%の配列同一性を有するアミノ酸
配列を含む。
【0007】
[007]いくつかの態様において、前記構築物は、前記第2の軽鎖可変ドメインを含み、
前記第2の軽鎖可変ドメインは、CDR-L1、CDR L2、およびCDR-L3を含み、前記CDR-L1は、配列番号10のアミノ酸配列または配列番号10中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含み、前記CDR-L2は、配列番号11のアミノ酸配列または配列番号11中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含み、そして前記CDR-L3は、配列番号12のアミノ酸配列または配列番号12中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含む。いくつかの態様において、前記構築物は前記第2の軽鎖可変ドメインを含み、前記第2の軽鎖可変ドメインは、配列番号25のアミノ酸配列を含む。
【0008】
[008]いくつかの態様において、前記構築物は、前記第2の重鎖可変ドメインを含み、
前記第2の重鎖可変ドメインは、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含み、前記CDR-H1は、配列番号1のアミノ酸配列または配列番号1中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含み、前記CDR-H2は、配列番号2のアミノ酸配列または配列番号2中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含み、そして前記CDR-H3は、配列番号3のアミノ酸配列または配列番号3中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含む。
【0009】
[009]いくつかの態様において、前記構築物は前記第2の重鎖可変ドメインを含み、前
記第2の重鎖可変ドメインは、配列番号22に対して90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0010】
[0010]いくつかの態様において、前記第1の重鎖可変ドメインおよび第2の重鎖可変ドメインを含み、前記第2の重鎖可変ドメインのC末端が第1の重鎖可変ドメインのN末端に連結されている、第1のポリペプチド;および、前記第1の軽鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインを含み、第2の軽鎖可変ドメインのC末端が第1の軽鎖可変ドメインのN末端に連結されている、第2のポリペプチド;のうちの少なくとも1つを含む、抗体構築物。
【0011】
[0011]いくつかの態様において、前記第1または前記第2のポリペプチドは、前記可変ドメインを連結するリンカーペプチドをさらに含む。いくつかの態様において、リンカーペプチドは配列番号44の配列を含む。いくつかの態様において、第1のポリぺプチドは配列番号29の配列を含む。いくつかの態様において、第1のポリペプチドのC末端は、(IgA)重鎖領域に連結されている。いくつかの態様において、連結は、IgA CH1定常ドメインを介する。
【0012】
[0012]いくつかの態様において、第2のポリぺプチドは配列番号31の配列を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む。いくつかの態様において、第1の重鎖可変ドメインのC末端が第2の重鎖可変ドメインのN末端に連結されている第1のポリペプチド;または、第1の軽鎖可変ドメインのC末端が第2の軽鎖可変ドメインのN末端に連結されている第2のポリペプチド;のうちの少なくとも1つを含む、抗体構築物。
【0013】
[0013]いくつかの態様において、連結はリンカーペプチドによる。いくつかの態様において、リンカーペプチドは配列番号44の配列を含む。いくつかの態様において、第1のポリぺプチドは配列番号30の配列を含む。いくつかの態様において、第1のポリペプチドのC末端は、(IgA)重鎖領域に連結されている。
【0014】
[0014]いくつかの態様において、連結はIgA CH1定常ドメインを介する。いくつかの態様において、第2のポリぺプチドは配列番号32の配列を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、単鎖可変フラグメント(scFv)を含む第1のポリペプチドを含み、該scFVは、前記第2の軽鎖可変ドメインに連結された前記第2の重鎖可変ドメインを含む。いくつかの態様において、構築物は、前記可変ドメインを連結するリンカーペプチドを含む。いくつかの態様において、リンカーペプチドは、配列番号45の配列を含む。いくつかの態様において、第1のポリペプチドは、第1の軽鎖可変ドメイン;または第1の重鎖可変ドメインに連結されたscFvを含む。いくつかの態様において、連結はリンカーペプチドによる。いくつかの態様において、リンカーペプチドは配列番号44の配列を含む。いくつかの態様において、第1の軽鎖可変ドメインに連結されたscFVを含む第1のポリペプチドを含み、該第1のポリペプチドが、配列番号35に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、抗体構築物。
【0015】
[0015]いくつかの態様において、抗体構築物は、第1の重鎖可変ドメインに連結されたscFVを含む第1のポリペプチドを含み、該第1のポリペプチドは、配列番号33に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、単鎖可変フラグメント(scFv)を含む第1のポリペプチドを含み、該scFVは、第1の軽鎖可変ドメインに連結された第1の重鎖可変ドメインを含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、前記可変ドメインを連結するリンカーペプチドを含む。いくつかの態様において、リンカーペプチドは配列番号45の配列を含む。いくつかの態様において、第1のポリペプチドは、第2の軽鎖可変ドメイン;または第2の重鎖可変ドメインに連結されたscFvを含む。
【0016】
[0016]いくつかの態様において、連結はリンカーペプチドによる。いくつかの態様において、リンカーペプチドは配列番号44の配列を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、第2の軽鎖可変ドメインに連結されたscFVを含む第1のポリペプチドを含み、該第1のポリペプチドは、配列番号36に対して90%の同一性を有する配列を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、第2の重鎖可変ドメインに連結されたscFVを含む第1のポリペプチドを含み、該第1のポリペプチドは、配列番号34に対して90%の同一性を有する配列を含む。いくつかの態様において、IgA重鎖ドメインはIgA重鎖定常ドメインを含む。
【0017】
[0017]いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、IgA1定常ドメインまたはそのバリアントである。いくつかの態様において、IgA1定常ドメインは、IgA1 CH2領域およびIgA1 CH3領域またはそのバリアントのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの態様において、IgA1定常領域は、IgA1 CH1領域またはそ
のバリアントをさらに含む。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、IgA2定常ドメインまたはそのバリアントである。いくつかの態様において、IgA2定常ドメインは、IgA2 CH2領域およびIgA2 CH3領域またはそのバリアントのうちの少なくとも1つを含む。いくつかの態様において、IgA2定常領域は、IgA2
CH1領域をさらに含む。
【0018】
[0018]いくつかの態様において、抗原は、CD20、GD2、メソテリン、CD38、CD19、EGFR、HER2、PD-L1、またはCD25である。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つまたは2つの天然に存在するグリコシル化部位を欠く。いくつかの態様において、前記構築物は、少なくとも2つの天然に存在するグリコシル化部位を欠き、該少なくとも2つの天然に存在するグリコシル化部位は、少なくとも1つのIgA CH2領域またはIgA
CH3領域にある。いくつかの態様において、少なくとも2つの天然に存在するグリコ
シル化部位は、2つの天然に存在するN連結グリコシル化部位である。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも2つの天然に存在するアスパラギン(N)アミノ酸残基を欠く。
【0019】
[0019]いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、少なくとも2つの天然に存在するアスパラギン(N)アミノ酸残基のアミノ酸置換、または両方の残基の置換を含む。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基を欠く。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基の非保存的アミノ酸置換を含む。 いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基のアミノ酸欠失を含む。
【0020】
[0020]いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するチロシン(Y)アミノ酸残基を欠く。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(Y)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(Y)アミノ酸残基の欠失を含む。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基を欠く。
【0021】
[0021]いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、少なくとも1つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、少なくとも1つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基の欠失を含む。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するイソロイシン(I)アミノ酸残基を欠く。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、少なくとも1つの天然に存在するイソロイシン(I)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、少なくとも1つの天然に存在するイソロイシン(I)アミノ酸残基の欠失を含む。
【0022】
[0022]いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するプロリン(P)アミノ酸残基を欠く。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、少なくとも1つの天然に存在するプロリン(P)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、少なくとも1つの天然に存在するプロリン(P)アミノ酸残基の欠失を含む。
【0023】
[0023]いくつかの態様において、前記構築物は、対応する野生型IgA重鎖定常領域を含む対応する抗体構築物と比較して、より長い循環半減期を示す。
[0024]いくつかの態様において、抗体構築物は、対応する野生型CD47結合ドメインと比較して、CD47に対してより低い親和性を有する弱毒化CD47結合ドメインを含む。
【0024】
[0025]いくつかの態様において、抗体構築物は、対応する野生型IgA重鎖定常領域を含む対応する抗体構築物と比較して、減少した凝集を示す。いくつかの態様において、抗体構築物は、対応する野生型IgA重鎖定常領域を含む対応する抗体構築物と比較して、血清タンパク質との減少した凝集を示す。
【0025】
[0026]いくつかの態様において、前記IgA重鎖定常領域は1以上のアルブミン結合ドメインを含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、1以上のアルブミン結合ドメインを含まない対応する抗体構築物よりも長い半減期を有する。
【0026】
[0027]いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、配列番号37~41のいずれか1つから選択される配列に対して90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0027】
[0028]いくつかの態様において、構築物はヒンジ領域をさらに含む。いくつかの態様において、ヒンジ領域は、IgAヒンジアミノ酸配列またはそのバリアントもしくはフラグメントを含む。
【0028】
[0029]いくつかの態様において、ヒンジ領域は、ヒトIgAヒンジアミノ酸配列またはそのバリアントもしくはフラグメントを含む。いくつかの態様において、ヒンジは、IgA1ヒンジもしくはIgA2ヒンジ、またはそのバリアントもしくはフラグメントである。いくつかの態様において、抗体構築物は軽鎖定常領域をさらに含む。いくつかの態様において、軽鎖定常領域はカッパ定常領域である。いくつかの態様において、軽鎖定常領域はラムダ定常領域である。いくつかの態様において、軽鎖定常領域は、第1の軽鎖可変ドメインまたは第1の重鎖可変ドメインに連結される。
【0029】
[0030]一観点において、本明細書中に、(a)免疫グロブリンA(IgA)重鎖定常ドメイン、(b)CD47結合ドメイン;および(c)抗原結合ドメイン、を含む抗体構築物であって、該IgA重鎖ドメインが、免疫エフェクター細胞上のFcαRに特異的に結合し、該CD47結合ドメインが、標的細胞上に発現されたCD47と免疫エフェクター細胞上のシグナル調節タンパク質α(SIRP α)との結合を阻害し、該抗原結合ドメインが、標的細胞上の抗原に結合し、そして該抗体構築物が、CD47と比較して、抗原に対してより高い結合親和性を有する、前記抗体構築物を提供する。
【0030】
[0031]いくつかの態様において、CD47結合ドメインは、第1の軽鎖可変ドメインおよび第1の重鎖可変ドメインを含む。いくつかの態様において、抗原結合ドメインは、第2の軽鎖可変ドメインおよび第2の重鎖可変ドメインを含む。いくつかの態様において、第1の軽鎖可変ドメインはカッパ型のものである。いくつかの態様において、第2の軽鎖可変ドメインはラムダ型のものである。
【0031】
[0032]いくつかの態様において、第1の軽鎖可変ドメインはラムダ型のものである。いくつかの態様において、第2の軽鎖可変ドメインはカッパ型のものである。いくつかの態様において、第1の軽鎖可変ドメインは、カッパ型のものであり、配列番号16の可変軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)アミノ酸配列、配列番号17の可変軽鎖相補性決定領域2(CDR L2)アミノ酸配列、配列番号18の可変軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)アミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、第1の軽鎖可変ドメインは、配列番号27に対して90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0032】
[0033]いくつかの態様において、第2の軽鎖可変ドメインは、配列番号19の可変軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)アミノ酸配列、配列番号20の可変軽鎖相補性決定領域2(CDR L2)アミノ酸配列、配列番号21の可変軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)アミノ酸配列を含むラムダ型のものである。いくつかの態様において、第2の軽鎖可変ドメインは、配列番号28に対して90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、第1の重鎖可変ドメインおよび第2の重鎖可変ドメインは同じである。
【0033】
[0034]いくつかの態様において、第1の重鎖可変ドメインおよび第2の重鎖可変ドメインは、配列番号7の可変重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)アミノ酸配列、配列番号8の可変重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)アミノ酸配列、配列番号9の可変重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)アミノ酸配列を含む。
【0034】
[0035]いくつかの態様において、第1の重鎖可変ドメインおよび第2の重鎖可変ドメインは、配列番号24に対して90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、第1の軽鎖可変ドメインはカッパ定常領域をさらに含む。いくつかの態様において、第2の軽鎖可変ドメインはラムダ定常領域をさらに含む。いくつかの態様において、第1の軽鎖可変ドメインはラムダ定常領域をさらに含む。いくつかの態様において、第2の軽鎖可変ドメインはカッパ定常領域をさらに含む。いくつかの態様において、カッパ定常領域は、配列番号42に対して95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ラムダ定常領域は、配列番号43に対して95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、IgA CH2領域およびIgA CH3領域またはそのバリアントのうちの少なくとも1つを含む。
【0035】
[0036]いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、IgA CH1領域またはそのバリアントをさらに含む。いくつかの態様において、CD47結合ドメインは、IgA CH1ドメインによってIgA定常ドメインに連結される。いくつかの態様において、抗原結合ドメインは、IgA CH1ドメインによってIgA定常ドメインに連結される。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインはIgA1定常領域またはそのバリアントである。いくつかの態様において、IgA1定常領域はIgA1 CH2領域およびIgA1 CH3領域を含む。
【0036】
[0037]いくつかの態様において、IgA1定常領域はIgA1 CH1領域をさらに含
む。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインはIgA2定常領域またはそのバリアントである。いくつかの態様において、IgA2定常領域は、IgA2 CH2領域
およびIgA2 CH3領域を含む。いくつかの態様において、IgA2定常領域はIg
A2 CH1領域をさらに含む。いくつかの態様において、抗原は、CD20、GD2、
メソテリン、CD38、CD19、EGFR、HER2、PD-L1、またはCD25である。
【0037】
[0038]いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、対応する野生型IgAと比較して、1、2または3つの天然に存在するグリコシル化部位を欠く。いくつかの態様において、前記部位は、IgA CH2領域またはIgA CH3領域の少なくとも1つにある。いくつかの態様において、前記構築物は、2つの天然に存在するN連結グリコシル化部位を欠く。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、対応する野生型IgAと比較して、天然に存在するアスパラギン(N)アミノ酸残基を欠く。
【0038】
[0039]いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、少なくとも1つの天然に存在するアスパラギン(N)アミノ酸残基のアミノ酸置換、または少なくとも2つの天然に存在するアスパラギン(N)アミノ酸残基の置換を含む。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基を欠く。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基の非保存的アミノ酸置換を含む。
【0039】
[0040]
[0041]いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基のアミノ酸欠失を含む。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するチロシン(Y)アミノ酸残基を欠く。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(Y)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(Y)アミノ酸残基の欠失を含む。
【0040】
[0042]いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基を欠く。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、少なくとも1つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、少なくとも1つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基の欠失を含む。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するイソロイシン(I)アミノ酸残基を欠く。
【0041】
[0043]いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、少なくとも1つの天然に存在するイソロイシン(I)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む。いくつかの態様において、IgA重鎖定常領域は、少なくとも1つの天然に存在するイソロイシン(I)アミノ酸残基の欠失を含む。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するプロリン(P)アミノ酸残基を欠く。いくつかの態様において、IgA重鎖定常領域は、少なくとも1つの天然に存在するプロリン(P)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む。
【0042】
[0044]いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、少なくとも1つの天然に存在するプロリン(P)アミノ酸残基の欠失を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、対応する野生型IgA重鎖定常領域を含む対応する抗体構築物と比較して、より長い循環半減期を示す。いくつかの態様において、抗体構築物は、対応する野生型IgA重鎖定常領域を含む対応する抗体構築物と比較して、より長い半減期を示す。いくつかの態様において、抗体構築物は、対応する野生型IgA重鎖定常領域を含む対応する抗体構築物と比較して、減少した凝集を示す。いくつかの態様において、抗体構築物は、対応する野生型IgA重鎖定常領域を含む対応する抗体構築物と比較して、血清タンパク質との減少した凝集を示す。
【0043】
[0045]いくつかの態様において、前記IgA重鎖定常領域は1以上のアルブミン結合ドメインを含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、1以上のアルブミン結合ドメインを含まない対応する抗体構築物よりも長い半減期を有する。いくつかの態様において、IgA重鎖定常領域はヒンジ領域をさらに含む。いくつかの態様において、ヒンジ領域は、IgAヒンジアミノ酸配列またはそのバリアントもしくはフラグメントを含む。
【0044】
[0046]いくつかの態様において、ヒンジ領域は、ヒトIgAヒンジアミノ酸配列またはそのバリアントもしくはフラグメントを含む。いくつかの態様において、ヒンジは、IgA1ヒンジもしくはIgA2ヒンジ、またはそのバリアントもしくはフラグメントである。いくつかの態様において、抗体構築物は、免疫接着分子(immunoadhesion molecule)、
造影剤、治療薬、または細胞毒性薬をさらに含む。いくつかの態様において、造影剤は、放射性標識、酵素、蛍光標識、発光標識、生物発光標識、磁気標識、またはビオチンである。いくつかの態様において、前記治療薬または細胞毒性薬は、代謝拮抗薬、アルキル化薬、抗生物質、成長因子、サイトカイン、抗血管新生薬、抗有糸分裂薬、アントラサイクリン、毒素、またはアポトーシス薬である。いくつかの態様において、免疫エフェクター細胞は好中球である。
【0045】
[0047]いくつかの態様において、抗体構築物は、CD47を発現する標的細胞に抗原結合ドメインも結合している場合にのみ、免疫エフェクター細胞上のシグナル調節タンパク質α(SIRP α)機能を阻害する。いくつかの態様において、抗体構築物は二重特異性である。いくつかの態様において、CD47結合ドメインは、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、scFv、F(ab’)2、ダイアボディ(diabody)、線状抗体、単
一ドメイン抗体(sdAb)、またはラクダ科VHHドメインである。いくつかの態様において、抗原結合ドメインは、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、scFv、F(ab’)2、ダイアボディ、線状抗体、単一ドメイン抗体(sdAb)、またはラクダ科VHHドメインである。いくつかの態様において、IgA重鎖ドメインは、2つのIgA重鎖定常ドメインのヘテロ二量体である。いくつかの態様において、ヘテロ二量体化は、ノブ-イントゥ-ホールカップリング(knobs-into-holes coupling)、塩橋/静電相補
性カップリング、CrossMabカップリング、鎖交換操作ドメイン(strand-exchange
engineered domain)技術、またはそれらの組み合わせによる。いくつかの態様において
、抗原結合ドメインは、癌細胞または病原体の抗原に結合する。いくつかの態様において、病原体は、病原菌、微生物、またはウイルスである。
【0046】
[0048]一観点において、本明細書中に、(a)免疫グロブリンA(IgA)重鎖ドメイン、(b)CD47結合ドメイン;および(c)抗原結合ドメイン、を含む抗体構築物であって、該IgA重鎖ドメインが、免疫エフェクター細胞上のFcαRに特異的に結合し、該CD47結合ドメインが、標的細胞上に発現されたCD47と免疫エフェクター細胞上のシグナル調節タンパク質α(SIRP α)との結合を阻害し、該抗原結合ドメインが、標的細胞上の抗原に結合し、該抗原が、CD20、GD2、メソテリン、CD38、CD19、EGFR、HER2、PD-L1またはCD25であり、そして該抗体構築物が、CD47と比較して、抗原に対してより高い結合親和性を有する、前記抗体構築物を提供する。
【0047】
[0049]一観点において、本明細書に、(a)免疫グロブリンA(IgA)重鎖ドメイン;(b)CD47結合ドメイン;および(c)抗原結合ドメイン、を含む多重特異性免疫エフェクター細胞エンゲージャー(engager)分子であって、該IgA重鎖ドメインが、免
疫エフェクター細胞上のFcαRと特異的に結合し、該CD47結合ドメインが、標的細胞上に発現されたCD47と免疫エフェクター細胞上のシグナル調節タンパク質α(SIRP α)との結合を阻害し、該抗原結合ドメインが、標的細胞上の抗原に結合し、そして該抗体構築物が、CD47と比較して、抗原に対してより高い結合親和性を有する、前記多重特異性免疫エフェクター細胞エンゲージャー分子を提供する。
【0048】
[0050]一観点において、本明細書中に、上記抗体構築物のいずれか1つ、および医薬的に許容しうるキャリヤー、アジュバントまたは希釈剤を含む、医薬組成物を提供する。いくつかの態様において、医薬組成物は、少なくとも1つの追加の治療薬をさらに含む。いくつかの態様において、前記追加的治療薬は、造影剤、細胞毒性薬、血管形成阻害薬、キナーゼ阻害薬、共刺激分子遮断薬、接着分子遮断薬、抗サイトカイン抗体もしくはその機能性フラグメント、メトトレキサート、シクロスポリン、ラパマイシン、FK506、検出可能な標識もしくはレポーター、TNF拮抗薬、抗リウマチ薬、筋弛緩薬、麻薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、鎮痛薬、麻酔薬、鎮静薬、局所麻酔薬、神経筋遮断薬、抗菌薬、抗乾癬薬、コルチコステロイド(corticosteriod)、タンパク同化ステロイド、エリスロポエチン、免疫化、免疫グロブリン、免疫抑制薬、成長ホルモン、ホルモン補充薬、放射性医薬品、抗うつ薬、抗精神病薬、刺激薬、喘息薬、ベータ作動薬、吸入ステロイド、エピネフリンもしくはその類似体、サイトカイン、またはサイトカイン拮抗薬である。
【0049】
[0051]一観点において、本明細書中に、上記観点のいずれか1つの抗体構築物をコードする単離核酸を提供する。
[0052]一観点において、本明細書中に、上記単離核酸を含むベクターを提供する。
【0050】
[0053]一観点において、本明細書中に、先に開示した単離核酸を含むin vitro細胞を提供する。
[0054]一観点において、本明細書中に、上記観点のいずれか1つの抗体構築物を発現するin vitro細胞を提供する。
【0051】
[0055]一観点において、本明細書中に、抗体構築物を含む有効量の組成物を被験体に投与することを含む、それを必要とする被験体の処置方法であって、該抗体構築物が、(a
)免疫グロブリンA(IgA)重鎖ドメイン、(b)CD47結合ドメイン;および(c)抗原結合ドメインを含み、該IgA重鎖ドメインが、免疫エフェクター細胞上のFcαRに特異的に結合し、該CD47結合ドメインが、標的細胞上に発現されたCD47と免疫エフェクター細胞上のシグナル調節タンパク質α(SIRP α)との結合を阻害し、該抗原結合ドメインが、標的細胞上の抗原に結合し、そして該抗体構築物が、CD47と比較して、抗原に対してより高い結合親和性を有する、前記処置方法を提供する。
【0052】
[0056]いくつかの態様において、SIRP αとのCD47結合の阻害は、標的細胞の
食作用およびクリアランスを増加させる。いくつかの態様において、組成物は、経口、病巣内、静脈内治療によって、または皮下、筋肉内、動脈内、静脈内、腔内、頭蓋内、もしくは腹腔内注射によって投与される。いくつかの態様において、組成物は、毎日、毎週、隔週、毎月、2カ月毎、3カ月に1回、6カ月に1回、または12カ月に1回投与される。いくつかの態様において、被験体は癌を有する。いくつかの態様において、癌は、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、胆道癌、B細胞白血病、B細胞リンパ腫、胆道癌、骨癌、脳癌、乳癌、トリプルネガティブ乳癌、子宮頸癌、バーキットリンパ腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胆嚢癌、胃癌、消化管癌、神経膠腫、有毛細胞白血病、頭頚部癌、ホジキンリンパ腫、肝癌、肺癌、甲状腺髄様癌、黒色腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、非ホジキンリンパ腫、膵臓癌、前立腺癌、肺路癌(pulmonary tract cancer)、腎癌、肉腫、皮膚癌、精巣癌、尿路上皮癌、および膀胱癌からなる群より選択される。
【0053】
[0057]いくつかの態様において、被験体はヒトである。いくつかの態様において、本方法は、有効量の少なくとも1つの追加的治療薬を投与することを含む。いくつかの態様において、追加的治療薬は、造影剤、化学療法薬、キナーゼ阻害薬、共刺激分子遮断薬、接着分子遮断薬、第2の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、薬物、毒素、酵素、細胞毒性薬、抗血管形成薬、プロアポトーシス薬、抗生物質、ホルモン、免疫モジュレーター、サイトカイン、ケモカイン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA(siRNA)、メトトレキサート、シクロスポリン、ラパマイシン、FK506、検出可能な標識もしくはレポーター、TNF拮抗薬、抗リウマチ薬、筋弛緩薬、麻薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、鎮痛薬、麻酔薬、鎮静薬、局所麻酔薬、神経筋遮断薬、抗菌薬、抗乾癬薬、コルチコステロイド、タンパク同化ステロイド、エリスロポエチン、免疫化、免疫グロブリン、免疫抑制薬、成長ホルモン、ホルモン補充薬、放射性医薬品、抗うつ薬、または抗精神病薬である。
【0054】
[0058]一観点において、本明細書中に、標的細胞を有効量の抗体構築物と接触させることを含む、標的細胞に対する好中球媒介免疫応答を誘導する方法であって、該抗体構築物が、(a)免疫グロブリンA(IgA)重鎖ドメイン;(b)CD47結合ドメイン;および(c)抗原結合ドメインを含み;該IgA重鎖ドメインが、好中球上のFcαRに特異的に結合し、該CD47結合ドメインが、標的細胞上に発現されたCD47と好中球上
のシグナル調節タンパク質α(SIRP α)との結合を阻害し、該抗原結合ドメインが、標的細胞上の抗原に結合し、そして該抗体構築物が、CD47と比較して、抗原に対してより高い結合親和性を有し、それによって、好中球媒介免疫応答を誘導する、前記方法を提供する。
【0055】
[0059]いくつかの態様において、好中球媒介免疫応答は、標的細胞の食作用または標的細胞の溶解を含む。いくつかの態様において、抗原提示細胞は、癌細胞またはウイルス細胞である。いくつかの態様において、癌細胞はリンパ球である。
【0056】
[0060]いくつかの態様において、CD47結合ドメインは、可変軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、可変軽鎖相補性決定領域2(CDR L2)および可変軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む第1の軽鎖可変ドメインを含み、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3は、表Aから選択されるアミノ酸配列を含む。
【0057】
[0061]いくつかの態様において、CD47結合ドメインは、可変軽鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、可変軽鎖相補性決定領域2(CDR H2)および可変軽鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含む第1の重鎖可変ドメインを含み、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3は、表Aから選択されるアミノ酸配列を含む。
【0058】
[0062]いくつかの態様において、抗原結合ドメインは、可変軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、可変軽鎖相補性決定領域2(CDR L2)および可変軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む第2の軽鎖可変ドメインを含み、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3は、表Bから選択されるアミノ酸配列を含む。
【0059】
[0063]いくつかの態様において、抗原結合ドメインは、可変軽鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、可変軽鎖相補性決定領域2(CDR H2)および可変軽鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含む第2の重鎖可変ドメインを含み、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3は、表Bから選択されるアミノ酸配列を含む。
【0060】
[0064]本開示の特徴を、添付の特許請求の範囲に詳細に記載する。本開示の特徴および利点のより良い理解は、本開示の原理が利用される例示的な態様を記載する以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することによって得られるであろう:
[0065]図1A~1Eは、本明細書中に記載される例示的な抗体構築物を示す。例示的な構築物の調製法は、実施例において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1A図1Aは、例示的なIgA定常ドメイン足場に基づく二価二量体構築物を示し(本明細書に記載の例示的な構築物において、IgA1、IgA2、または減少したグリコシル化および/もしくはより良好な発現プロフィールを有する改変IgA2(IgA2.0またはIgA3.0ともよばれる)のIgA重鎖足場を例示する)、特異性は、IgA足場に接続されたVHおよびカッパVL領域によって決定される。前記構築物は、CD47および抗原提示細胞上の例示的な抗原(例示的な場合、CD20)に結合することができる。
図1B図1Bは、共通の重鎖と、カッパおよびラムダ軽鎖の両方とからなる二価ヘテロ二量体を示す。特異性は、カッパ領域およびラムダ領域の両方のVL領域によってのみ決定され、このような領域の一方はCD47に特異的に結合し、他方は抗原提示細胞上の例示的な抗原(例示的な場合、CD20)に特異的に結合する。
図1C図1Cは、四価ホモ二量体であるDVD-IgA2に基づく構築物を示す。特異性は2つのVH/VL対の組み合わせによって決定される。追加的なVHが元のVHに連結され、追加的なVLが元のVLに連結されており、これらはペプチドリンカーによって既存のVHおよびVLに連結されている。
図1D図1Dは、四価ホモ二量体であるDVD-IgA3.0-scFv_LCを示し、ここで、IgA3.0は、グリコシル化および製造可能性のために最適化されたIgAである。特異性は、元のVLに連結されたscFvの組合せによって決定される。
図1E図1Eは、四価ホモ二量体であるDVD-IgA3.0-scFv_HCを示す。特異性は、元のVHに連結されたscFvの組み合わせによって決定される。本明細書中に記載される態様において、構築物は、CD47および抗原提示細胞上の抗原(例示的な場合、CD20、HER2、GD2、メソテリン、EGFRなど)に特異的に結合する。本明細書中で図1A~1Eのいずれかに記載される抗体構築物設計において、抗原結合領域およびCD47結合領域は、商業的に入手可能な抗体または他の公知の抗体から誘導することができる。特定の態様において、抗体構築物は、構築物中の抗原結合ドメインまたは領域よりもCD47に対して低い結合親和性を有するCD47結合ドメインまたは領域を有するように設計される。
図2A】[0066]図2A~2Kは、HEK293-Freestlye(HEK293F)細胞における本明細書に記載されるIgA抗体構築物の発現に必要な最適な重鎖:軽鎖比を示す。X軸は、容積2mL中の総濃度1ug/mLにおける、pAdvantage-pAdv(Promega)と組み合わせた、重鎖をコードするDNA(HC)と軽鎖をコードするDNA(KLC)の比を示す。pAdv DNAの量は常にHC DNAと等しい。Y軸は、個々の抗体構築物について測定されたタンパク質濃度を示す。タンパク質濃度は、表1および表2の二重特異性抗体のそれぞれについて決定した。DVD-IgA二重特異性抗体#1(図2A)およびDVD-IgA二重特異性抗体#2(図2B)、DVD-IgA-scFv_LC二重特異性抗体#5(図2C)、DVD-IgA-scFv_LC二重特異性抗体#6(図2D)、DVD-IgA-scFv_HC二重特異性抗体#3(図2E)、DVD-IgA-scFv_HC二重特異性抗体#4(図2F)については、カッパ-IgA ELISAによってタンパク質濃度を決定する。カッパ-カッパIgA(図2G-2H)およびラムダ-ラムダIgA(図2I-2J)については、カッパ/ラムダ-IgA ELISAによりタンパク質濃度を測定する。標準の欠如により濃度を測定することができなかったため、カッパ-ラムダIgAについてのOD415値(図2K)。方法を、実施例の3節に記載する。図2Aは、HEK293-Freestlye(HEK293F)細胞におけるDVD-IgA二重特異性抗体#1の発現に必要な最適な重鎖:軽鎖比を示す。
図2B図2Bは、HEK293-Freestlye(HEK293F)細胞におけるDVD-IgA二重特異性抗体#2の発現に必要な最適な重鎖:軽鎖比を示す。
図2C図2Cは、HEK293-Freestlye(HEK293F)細胞におけるDVD-IgA-scFv_LC二重特異性抗体#5の発現に必要な最適な重鎖:軽鎖比を示す。
図2D図2Dは、HEK293-Freestlye(HEK293F)細胞におけるDVD-IgA-scFv_LC二重特異性抗体#6の発現に必要な最適な重鎖:軽鎖比を示す。
図2E図2Eは、HEK293-Freestlye(HEK293F)細胞におけるDVD-IgA-scFv_HC二重特異性抗体#3の発現に必要な最適な重鎖:軽鎖比を示す。
図2F図2Fは、HEK293-Freestlye(HEK293F)細胞におけるDVD-IgA-scFv_HC二重特異性抗体#4の発現に必要な最適な重鎖:軽鎖比を示す。
図2G図2Gは、HEK293-Freestlye(HEK293F)細胞におけるカッパ-カッパIgAの発現に必要な最適な重鎖:軽鎖比を示す。
図2H図2Hは、HEK293-Freestlye(HEK293F)細胞におけるカッパ-カッパIgAの発現に必要な最適な重鎖:軽鎖比を示す。
図2I図2Iは、HEK293-Freestlye(HEK293F)細胞におけるラムダ-ラムダIgAの発現に必要な最適な重鎖:軽鎖比を示す。
図2J図2Jは、HEK293-Freestlye(HEK293F)細胞におけるラムダ-ラムダIgAの発現に必要な最適な重鎖:軽鎖比を示す。
図2K図2Kは、HEK293-Freestlye(HEK293F)細胞におけるカッパ-ラムダIgAの発現に必要な最適な重鎖:軽鎖比をOD415値について示す。
図3A】[0067]図3A~3Bは、本明細書に記載の例示的な組換えIgA抗体構築物の精製を示す。図3Aは、例示的な二重特異性DVD-IgA分子のアフィニティー精製溶出プロフィールを例示する。
図3B図3Bは、予想される分子量での非還元SDS-PAGEゲル上の二重特異性抗体#1および#5の純度を示す。ゲルは、低レベルの非会合カッパ軽鎖(#1について35kDa;#5について50kDa)を示す。方法を、実施例の3節に記載する。
図4】[0068]図4は、本明細書中に記載される(例えば、表1に列挙される)6つの代表的な抗体構築物(DVD-IgA)の測定された濃度を示す。6つの二重特異性IgA分子はすべてHEK293F細胞中で産生され、濃度は上清においてELISAによって測定された。
図5A】[0069]図5A~5Dは、IgA抗体構築物を発現する細胞のフローサイトメトリー分析および同定におけるゲーティング戦略を示す。図5Aは、細胞サイズおよび形状に基づく生細胞集団の選択を示す。
図5B図5Bは、生細胞集団からの単一細胞のさらなる選択を示す。
図5C図5Cは、抗IgA PE標識抗体で染色した後の対照IgA陰性細胞のゲーティング戦略を示す。
図5D図5Dは、抗IgA PE標識抗体で染色することによるIgA陽性細胞の分析および選択を示す。
図6A】[0070]図6A~6Bは、フローサイトメトリーによる本明細書に記載の抗体構築物(例えば、表1および表2)の結合分析を示す。図6Aは、使用したSKBR3細胞株の特徴付けを示す。SKBR3 WT細胞およびSKBR3-CD20細胞はいずれも、CD20(Obi=オビヌツズマブ(Obinituzumab)の相補性領域)またはCD47(クローン2.3D11)に対するIgA抗体で染色されている。無染色細胞および二次抗体のみは対照である。
図6B図6Bは、SKBR3 WTおよびSKBR3-CD20細胞に対する二重特異性抗体の結合を示す。図6Bの左パネルのX軸は、抗体、例えば、抗CD47抗体2.3D11単独、抗体#1、抗体#2、抗体#3、抗体#4、抗体#5、および抗体#6を識別する。図6Bの右パネルのX軸は、抗体、例えば、抗CD20 Obi抗体単独、抗体#1、抗体#2、抗体#3、抗体#4、抗体#5、および抗体#6を識別する。個々の二重特異性抗体#1~6を含有する上清を、CD47遮断抗体の非存在下(黒色)または存在下(灰色)で、SKBR3 WT(左パネル)およびSKBR3-CD20(右パネル)細胞の両方で試験した。二重特異性抗体#2、#3、および#5は、CD47遮断の効果を示し、追加的なCD47結合によってCD20結合が増強されることを示している。
図7A】[0071]図7A~7Bは、二重特異性抗体の抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)分析を示す。SKBR3-CD20細胞を、PMN ADCCアッセイにおいて標的細胞として使用した。抗体IgA3.0-ObiおよびIgA3.0-2.3D11を単独または組み合わせのいずれかで使用し、二重特異性IgA抗体#2を並行して試験した。組み合わせ(Obi+2.3D11)および二重特異性抗体は、mIgG1 CD47 PerCP-Cy5.5抗体を用いて事前遮断(pre-block)した。CD47の事前遮断により、組み合わせおよび二重特異性について観察される死滅が減少する。CD47の二重特異性遮断による機能的効果は、CD20依存性ADCCを増強する。図7Aは、標的細胞としてSKBR3(CD20-/-)WT(上部パネル)またはSKBR3 CD20(+)(下部パネル)のいずれかを用いたPMNでのObi-IgAおよび2.3D11-IgA依存性ADCC活性を示す。SKBR3 WTおよびCD20細胞は、IgG1でADCCを示さない。SKBR3 WTはObi-IgAのみでは特異的溶解を示さないが、2.3D11はADCCを誘発する。SKBR3-CD20(+)細胞において、Obi-IgAは2.3D11-IgAとの組み合わせでさらなるADCCを誘発し、これはmIgG1-抗CD47 PerCP‐Cy5.5を用いたCD47の事前遮断により部分的に元に戻った。x軸に、抗体濃度をug/mLで示す。
図7B図7Bは、二重特異性抗体#2、DVD-IgA Obi-2.3D11のADCC活性を試験するためのPMN ADCCアッセイにおけるSKBR3-CD20(+)細胞を示す。対照として、IgA3.0-ObiおよびIgA3.0-2.3D11を単独または組み合わせのいずれかで使用した。組み合わせ(Obi+2.3D11)は最高のADCCを示し、これは、SKBR3-CD20(+)細胞をmIgG1 CD47 PerCP-Cy5.5抗体とプレインキュベートすることによって効率的に遮断することができた。二重特異性抗体#2は、組み合わせと比較して同様の死滅効率を示した。この効果は、mIgG1抗CD47 PerCP-Cy5.5による事前遮断によって部分的にのみ低下することができた。このように、同じ分子、二重特異性IgAにおけるCD47の遮断による機能的効果は、CD20依存性ADCCを大きく増強する。
図8A】[0072]図8A~8Dは、抗体構築物によるCD47結合の分析を示す。[0073]図8Aは、赤血球のゲーティング戦略を示す。CD235a+細胞を選択し、単なる陰性ゲートとして二次IgA抗体に関しゲートした。CD47は赤血球上で高度に陽性である。
図8B図8Bは、血小板のゲーティング戦略を示す。CD61+細胞を選択し、単なる陰性ゲートとして二次IgA抗体に関しゲートした。CD47は血小板上で高度に陽性である。
図8C図8Cは、本明細書中に記載される抗体構築物の赤血球への結合のフローサイトメトリー分析を示す。
図8D図8Dは、本明細書中に記載される抗体構築物の血小板への結合のフローサイトメトリー分析を示す。図8Cは、赤血球へのCD47結合の分析が、二重特異性抗体#4(Obi-scFv:2.3D11_HC)による赤血球に対する低レベルのCD47結合を示すことを、示している。他のすべての二重特異性では、赤血球への結合は観察されなかった。図8Dは、二重特異性抗体の血小板結合が観察されないことを示す。
図9】[0074]図9は、本明細書中に記載される抗体構築物の作用機構を記載する例示を示す。本開示の抗体構築物は、抗原結合ドメイン、CD47結合ドメインおよびIgA重鎖定常ドメインを含む。抗体構築物は、抗原結合ドメインを介して標的細胞の抗原と結合し、CD47結合ドメインにより同じ標的細胞上のCD47と結合し、そしてIgA重鎖定常ドメインにより免疫エフェクター細胞(例えば、好中球)上のFc受容体と結合する。CD47に結合することで、免疫エフェクター細胞上のSIRPαと標的細胞上のCD47との相互作用が阻害され、それによって「私を食べないでシグナル」が阻害され、標的細胞に対する免疫エフェクター細胞応答が誘導される。
【発明を実施するための形態】
【0062】
[0075]以下の説明および実施例は、本開示の態様を詳細に例示するものである。本開示は、本明細書に記載された特定の態様に限定されず、したがって変更可能であることを理解されたい。当業者は、本開示の多数の変形および修正が存在し、それらが本開示の範囲内に包含されることを、認識するであろう。
【0063】
[0076]すべての用語は、当業者によって理解されるように理解されることが意図される。他に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術的および科学的用語は、本開示に関連する、当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有している。
【0064】
[0077]本明細書で使用される項目見出しは、構成的な目的のためでしかなく、説明され
る主題を限定すると解釈すべきではない。
[0078]本開示のさまざまな特徴は、単一の態様の文脈で説明することができるが、特徴を別個に、または任意の適切な組み合わせで提供することもできる。反対に、本開示は、明確にするために、本明細書において別個の態様の文脈で説明することができるが、本開示は単一の態様で実施することもできる。
【0065】
定義
[0079]以下の定義は当業者を補完するものであり、本出願を被験体としており、任意の関連事例または無関係の事例、例えば、任意の共同所有された特許または出願に帰属されるべきではない。本明細書に記載されるものと同様または同等の任意の方法および材料を本開示の試験の実施において使用することができるが、好ましい材料および方法は本明細書に記載するものである。したがって、本明細書で使用される専門用語は特定の態様を説明することのみを目的としており、限定することを意図していない。
【0066】
[0080]本出願において、単数形の使用は、特記しない限り、複数形を包含する。本明細書で使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示被験体を包含することに留意されたい。本出願において、「または」の使用は、特記しない限り、「および/または」を意味する。さらに、「包含している」という用語ならびに「包含する」、「包含する(単数形)」、および「包含される」など他の形態の使用は、限定的ではない。
【0067】
[0081]本明細書における「いくつかの態様」、「態様」、「一態様」、または「他の態様」への言及は、態様に関連して記載される特定の特徴、構造、または特性が、本開示の少なくともいくつかの態様に包含されるが、必ずしもすべての態様に包含されるわけではないことを意味する。
【0068】
[0082]本明細書および請求項(1以上)で使用される場合、用語「含んでいる」(ならびに、「含む」および「含む(単数形)」など、含んでいるの任意の形態)、「有している」(ならびに、「有する」および「有する(単数形)」など、有しているの任意の形態)、「包含している」(ならびに、「包含する(単数形)」および「包含する」など、包含しているの任意の形態)、または「含有している」(ならびに、「含有する(単数形)」および「含有する」など、含有しているの任意の形態)は、包含的または無制限であり、列挙されていない追加的な要素または方法段階を除外しない。本明細書で論じられる任意の態様は本開示の任意の方法または組成物に関して実施することができ、逆もまた同様であることが企図される。さらに、本開示の組成物は、本開示の方法を達成するために使用することができる。
【0069】
[0083]用語「約」または「およそ」は、当業者によって決定される特定の値についての許容可能な誤差範囲内を意味し、これは、値がどのように測定または決定されるか、すなわち、測定システムの限界に部分的に依存する。例えば、「約」は、当技術分野での実施により、1以上の標準偏差内を意味することができる。あるいは、「約」は、所与の値の最大20%、最大10%、最大5%、または最大1%の範囲を意味することができる。他の例において、「約10」という量は、10および9~11の任意の量を包含する。さらに他の例において、参照数値に関する用語「約」は、その値からプラスまたはマイナス10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%の範囲を包含することもできる。あるいは、とりわけ生物学的システムまたはプロセスに関して、用語「約」は、値の大きさの程度以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味することができる。特定の値が出願および特許請求の範囲に記載されている場合、特記しない限り、特定の値の許容誤差範囲内を意味する「約」という用語を想定すべきである。
【0070】
[0084]本明細書中で使用される場合、「抗原提示細胞上の抗原」は、抗原提示に関連し、そして宿主において免疫応答を誘発する可能性がある抗原性物質をさす。例えば、抗原は、病原性細胞、例えば癌細胞において産生または過剰発現される任意の抗原性物質である。抗原は、タンパク質、ペプチドまたは多糖類である。本明細書に記載される抗原提示細胞は、例えば組織適合性分子上のペプチドの形態で、抗原を提示する細胞である。癌細胞、例えば、腫瘍抗原を提示する腫瘍細胞は、代表的な抗原提示細胞である。腫瘍抗原は、本明細書中に記載される構築物における代表的な抗原であり、ここで、前記腫瘍抗原は、腫瘍細胞において産生される。それは、例えば、宿主において免疫応答を誘発する可能性がある。あるいは、本開示の目的のために、腫瘍抗原は、健常細胞および腫瘍細胞の両方によって発現されるタンパク質であることができるが、それらは特定の腫瘍タイプを識別するか、または特定の腫瘍タイプにおいて過剰発現されるため、適切な治療標的である。態様において、腫瘍抗原は、CD20、GD2、CD38、CD19、EGFR、HER2、PD-L1、CD25、CD33、BCMA、CD44、α-葉酸受容体、CAIX、CD30、ROR1、CEA、EGP-2、EGP-40、HER3、葉酸結合タンパク質、GD3、IL-13R-a2、KDR、EDB-F、メソテリン、CD22、EGFR、MUC-1、MAGE-A1、MUC16、h5T4、PSMA、TAG-72、EGFRvIII、CD123またはVEGF-R2である。一態様において、腫瘍抗原はEGFRvIIIであり、これは、骨髄性悪性腫瘍、例えば神経膠芽腫または多形性神経膠芽腫(GBM)を処置する治療薬の標的である。他の態様において、腫瘍抗原はCD20である。さらに他の態様において、腫瘍抗原はGD2である。さらに他の態様において、腫瘍抗原はメソテリンである。
【0071】
[0085]本明細書中で使用される場合、「抗体」という用語は、特定の抗原に特異的に結合するか、または特定の抗原に対して免疫学的に反応性を示す免疫グロブリン分子をさす。抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、遺伝子操作抗体、およびそれらの抗原結合フラグメントを包含することができる。抗体は、例えば、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヘテロコンジュゲート抗体、二重特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ(triabody)、またはテトラボディ(tetrabody)であることができる。抗原結
合フラグメントとしては、例えば、Fab’、F(ab’)2、Fab、Fv、rlgG、scFv、hcAb(重鎖抗体)、単一ドメイン抗体、VHH、VNAR、sdAb、またはナノボディを挙げることができる。本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、B細胞の単一クローンによって産生され、同じエピトープに結合する抗体をさす。対照的に、「ポリクローナル抗体」は、異なるB細胞によって産生され、同じ抗原の異なるエピトープに結合する抗体の集団をさす。全抗体は、典型的には4つのポリペプチド、すなわち、:重(H)鎖ポリペプチドの2つの同一コピーおよび軽(L)鎖ポリペプチドの2つの同一コピーからなる。各重鎖は1つのN末端可変(VH)領域および3つのC末端定常(CH1、CH2およびCH3)領域を含有し、各軽鎖は1つのN末端可変(VL)領域および1つのC末端定常(CL)領域を含有する。軽鎖および重鎖の各対の可変領域は、抗体の抗原結合部位を形成する。VHおよびVL領域は同様の一般構造を有し、各領域は4つのフレームワーク領域を含み、その配列は比較的保存されている。フレームワーク領域は、3つの相補性決定領域(CDR)によって接続される。CDR1、CDR2、およびCDR3として知られる3つのCDRは、抗原結合に関与する抗体の「超可変領域」を形成する。本明細書中に記載される構築物において、抗体は、CD47結合ドメインおよび/または抗原結合ドメインの付着のための足場を形成するIgA重鎖ドメインまたは領域を含む。IgA定常領域ドメインはIgA1またはIgA2定常領域ドメインに基づいており、これらは、場合によっては、改善されたグリコシル化プロフィール、改善された製造性、ヘテロ二量体形成の容易さ、または適合させた/選択的なFc受容体結合のために、さらに改変されている。
【0072】
[0086]本明細書中で使用される場合、「組換え抗体」は、2つの異なる種または2つの
異なる供給源に由来するアミノ酸配列を含み、合成分子を包含する抗体である。非限定的な例として、非ヒトCDRおよびヒト可変領域フレームワークまたは定常もしくはFc領域を含む抗体、2つの異なるモノクローナル抗体由来の結合ドメインを有する抗体、あるいは、抗体の一部の生物学的活性または結合を増加または減少させるための1以上のアミノ酸残基の変異を含む抗体。特定の態様において、組換え抗体は、組換えDNA分子から産生されるか、または合成される。特定の態様において、本明細書中に記載される抗体は、1以上のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド(1以上)である。
【0073】
[0087]本明細書中で使用される場合、「認識する」または「結合する」または「に選択的」は、抗原結合ドメインと抗原との間の会合または結合をさす。本明細書で使用される場合、「抗原」は、宿主において免疫応答を誘発することができる抗原性物質をさす。抗原性物質は、宿主において免疫応答を誘発することができる共刺激分子のような分子であることができる。
【0074】
[0088]本明細書中で使用される場合、「抗体構築物」は、抗原結合ドメインおよびFcドメインを含有する構築物をさす。
[0089]本明細書中で使用される場合、「結合ドメイン」は、抗体または非抗体ドメインをさす。
【0075】
[0090]本明細書中で使用される場合、「抗原結合ドメイン」は、抗体由来の、または抗原に結合することができる非抗体由来の結合ドメインをさす。抗原結合ドメインは、腫瘍抗原結合ドメイン、または抗原提示細胞上の抗原(例えば、分子)に結合することができる結合ドメインであることができる。所与のコンジュゲートまたは抗体構築物中に1より多くの抗原結合ドメインが存在する場合、抗原結合ドメインに番号を付けることができる(例えば、第1の抗原結合ドメイン、第2の抗原結合ドメイン、第3の抗原結合ドメインなど)。同じコンジュゲートまたは構築物中の異なる抗原結合ドメインは、同じ抗原または異なる抗原(例えば、腫瘍抗原に結合することができる第1の抗原結合ドメイン、抗原提示細胞上の分子(APC抗原)に結合することができる第2の抗原結合ドメイン、およびAPC抗原に結合することができる第3の抗原結合ドメイン)を標的化することができる。
【0076】
[0091]本明細書中で使用される場合、「抗体抗原結合ドメイン」は、抗原に結合することができる抗体由来の結合ドメインをさす。
[0092]本明細書中で使用される場合、「Fcドメイン」は、抗体由来のFcドメイン、またはFc受容体に結合することができる非抗体由来のFcドメインをさす。本明細書中で使用される場合、「Fcドメイン」および「Fcを含むドメイン」は、互換的に使用することができる。
【0077】
[0093]本明細書中で使用される場合、「標的結合ドメイン」は、抗体由来の、または抗原に結合することができる非抗体由来の抗原結合ドメインを含有する構築物をさす。
[0094]本明細書中で使用される場合、天然の1エナンチオマーアミノ酸の略語は慣用的であり、以下の通りであることができる:アラニン(A、Ala);アルギニン(R、Arg);アスパラギン(N、Asn);アスパラギン酸(D、Asp);システイン(C、Cys);グルタミン酸(E、Glu);グルタミン(Q、Gin);グリシン(G、Gly);ヒスチジン(H、His);イソロイシン(I、He);ロイシン(L、Leu);リジン(K、Lys);メチオニン(M、Met);フェニルアラニン(F、Phe);プロリン(P、Pro);セリン(S、Ser);トレオニン(T、Thr);トリプトファン(W、Trp);チロシン(Y、Tyr);バリン(V、Val)。特記しない限り、Xは任意のアミノ酸を示すことができる。いくつかの観点において、Xは、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、ヒスチジン(H)、リジン(K)、またはアルギ
ニン(R)であることができる。
【0078】
[0095]「医薬的に許容しうる」という語句は、本明細書において、妥当な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴うことなく、合理的な利益/リスク比に相応して、被験体、例えば、ヒトおよび動物の組織との接触で使用するのに適した、化合物、材料、組成物および/または剤形をさすために採用される。
【0079】
[0096]本明細書中で使用される場合、「医薬的に許容しうる賦形剤」または「医薬的に許容しうるキャリヤー」という語句は、医薬的に許容しうる材料、組成物またはビヒクル、例えば、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒またはカプセル化材料を意味する。各キャリヤーは、製剤の他の成分と適合し、患者に有害でないという意味で、「許容可能」でなければならない。医薬的に許容しうるキャリヤーとして働くことができる材料のいくつかの例としては、以下が挙げられる:(1)糖、例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース;(2)デンプン、例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンのような;(3)セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;(4)粉末トラガント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤、例えば、ココアバターおよび座薬ワックス;(9)油、例えば、落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油;(10)グリコール、例えばプロピレングリコール;(11)ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;(12)エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張食塩水;(18)リンガー液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;および(21)医薬製剤に採用される他の非毒性適合性物質。
【0080】
[0097]抗原は免疫応答を誘発することができる。抗原はタンパク質、多糖、脂質、または糖脂質であることができ、これらは、免疫細胞、例えば、T細胞またはB細胞によって認識されることができる。これらの抗原の1以上に免疫細胞が暴露されると、迅速な細胞分裂および分化応答が誘発されて、暴露されたT細胞およびB細胞のクローン形成がもたらされ得る。B細胞は形質細胞に分化することができ、形質細胞は、抗原に選択的に結合する抗体を産生することができる。
【0081】
[0098]「癌」、「腫瘍」および「増殖性疾患」という用語は、脱調節された細胞成長によって特徴付けられる、哺乳類における生理学的状態に関連する。癌は、細胞群が制御されない成長または望ましくない成長を示す疾患のクラスである。癌細胞は他の部位にも拡散する可能性があり、転移の形成をもたらす可能性がある。体内での癌細胞の拡散は、例えば、リンパ液または血液を介して起こる可能性がある。制御されない成長、侵入および転移形成はまた、癌の悪性特性ともよばれる。これらの悪性特性により、癌は、典型的には浸潤も転移もしない良性腫瘍と区別される。
【0082】
[0099]「抗原認識部分」または「抗体認識ドメイン」は、抗原に特異的に結合する分子または分子の一部をさす。一態様において、抗原認識部分は、抗体、抗体様分子またはそのフラグメントであり、抗原は、腫瘍抗原または感染性疾患抗原である。
【0083】
[00100]用語「抗体のフラグメント」、「抗体フラグメント」、「抗体の機能的フラグ
メント」、「抗原結合ドメイン」またはそれらの文法的等価物は、本明細書において、抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体の1以上のフラグメントまたは部分を意味するために互換的に使用される(一般的に、Holliger ら、Nat.Biotech
.,23(9):1126-1129(2005)参照)。抗体フラグメントは、望ましくは、例えば、1以上のCDR、可変領域(もしくはその部分)、定常領域(もしくはその部分)、またはそれらの組み合わせを含む。抗体フラグメントの例としては、限定されるものではないが、以下が挙げられる:(i)Fabフラグメント、これは、VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価フラグメントである;(ii)F(ab’)2フラグメント、これは、ストーク領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントである;(iii)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント;(iv)一本鎖Fv(scFv)、これは、2つのドメインが単一のポリペプチド鎖として合成されることを可能にする合成リンカーによって接合されたFvフラグメント(すなわち、VLおよびVH)の2つのドメインからなる一価の分子である(例えば、Birdら、Science,242:423-426(1988);Hustonら、Proc Natl.Acad.Sci.米国、85:5879-5883(1988);および、Osbournら、Nat.Biotechnol.,16:778(1998)参照);ならびに、(v)ポリペプチド鎖の二量体であるダイアボディ、これに関し、各ポリペプチド鎖は、同一ポリペプチド鎖上のVHとVLとの間の対合を可能にするには短すぎるペプチドリンカーによってVLに接続されたVHを含み、それによって、異なるVH-VLポリペプチド鎖上の相補的ドメイン間の対合を促進して、2つの機能的抗原結合部位を有する二量体分子をもたらす。抗体フラグメントは当該分野で公知であり、例えば、米国特許第8603950号により詳細に記載されている。他の抗体フラグメントとしては、重鎖抗体の可変フラグメント(VHH)を挙げることができる。
【0084】
[00101]「保存的アミノ酸置換」または「保存的変異」という用語は、共通の特性を有
する別のアミノ酸による1つのアミノ酸の置換をさす。個々のアミノ酸間の共通の特性を定義するための機能的方法は、相同生物の対応するタンパク質間のアミノ酸変化の正規化頻度を分析することである(Schulz,G.E.およびSchirmer,R.H.,Principles of Protein Structure,Springer-Verlag,New York(1979))。このような分析によれば、アミノ酸のグループは、グループ内のアミノ酸が互いに優先的に交換し、したがって、全体的なタンパク質構造に対するそれらの影響において互いに最も類似していると定義することができる(Schulz,G.E.およびSchirmer,R.H.,上記)。保存的変異の例としては、上記サブグループ内のアミノ酸のアミノ酸置換、例えば、正電荷が維持され得るように、アルギニンに対するリジンおよびその逆;負電荷が維持され得るように、アスパラギン酸に対するグルタミン酸およびその逆;遊離-OHが維持され得るように、トレオニンに対するセリン;および、遊離-NHが維持され得るように、アスパラギンに対するグルタミン;が挙げられる。あるいは、またはさらに、治療薬は、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換を有する参照タンパク質のアミノ酸配列を含むことができる。
【0085】
[00102]「非保存的変異」または「非保存的アミノ酸置換」という用語は、異なるグル
ープ間のアミノ酸置換、例えば、トリプトファンに対するリジン、セリンに対するフェニルアラニンなどを包含する。この場合、非保存的アミノ酸置換は、治療薬の生物学的活性を妨害または阻害しないことが好ましい。非保存的アミノ酸置換は治療薬の生物学的活性を向上させることができ、その結果、治療薬の生物学的活性は、野生型の治療薬と比較して向上する。
IgA抗体
[00103]免疫グロブリンA(IgA)は、その抗微生物的役割が知られており、その二
量体形態で粘膜部位に豊富に存在する。モノマーとして、それは、血清中に存在する2番目に最も一般的な抗体である。IgAは2つのサブクラス、IgA1およびIgA2を含み、これらは同様の親和性で骨髄IgA受容体(FcαRI、CD89)に結合する。い
くつかの態様において、IgA抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)のために好中球を補充する優れた能力を有する。いくつかの態様において、IgA抗体は、より低いエフェクター:標的(E:T)比を必要とする。いくつかの態様において、IgA抗体は、他のタイプの抗体(例えば、IgG)と比較して、腫瘍オプソニン化抗体濃度を低下させる。一般に、癌治療抗体は、直接的ならびに間接的な免疫媒介作用の両方の組合せによって働く。これらの作用としては、補体活性化により誘導される細胞傷害、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、および抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)が挙げられる。ADCCは、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージおよび好中球を含む異なるFc受容体発現細胞の活性化により媒介されることができる。これらのFc受容体発現エフェクター細胞のうち、マクロファージおよび好中球はIgA抗体と結合するのに必要なFcαRIを発現し、したがって、ADCPまたはADCCによって腫瘍細胞を死滅させることができる。
【0086】
[00104]いくつかの態様において、IgA抗体は、IgA抗体-免疫細胞の係合(engagement)に続いて、腫瘍細胞のような病原性細胞の免疫細胞媒介性(例えば、好中球媒介性
)食作用またはトロゴサイトーシスを誘発する。この腫瘍細胞を死滅させる機構は、おもにIgAに対するFc受容体(FcαRI;CD89)との相互作用によって媒介され、このFc受容体は、最もよく特徴付けられているIgA受容体である。FcαRIは、単球、マクロファージ、顆粒球、樹状細胞のサブセット、およびクッパー細胞に発現し、単量体および二量体のIgAアイソフォームの両方に中間的親和性で結合する。IgAのFcαRIへの結合は、食作用、酸化的バースト、サイトカイン放出、抗原提示、およびADCCなどのエフェクター機能を媒介する。ヒトでは、2つのIgAアイソタイプ、すなわちIgA1およびIgA2、ならびに3つのアロタイプ、すなわちIgA2m(1)、IgA2m(2)およびIgA2nが識別されている。いくつかの態様において、IgA抗体は、IgG抗体よりも効率的に多形核細胞(PMN)媒介ADCCを誘発する。
【0087】
[00105]IgAは2つのサブクラス(IgA1およびIgA2)を有し、単量体および
二量体形態ならびに分泌形態として産生されことができる。いくつかの態様において、IgA抗体は単量体であることができる。いくつかの態様において、IgA抗体は、1以上のIgA1アミノ酸配列を含むことができる。いくつかの態様において、IgA抗体は、1以上のIgA2アミノ酸配列を含むことができる。いくつかの態様において、IgA抗体は、1以上のIgA1アミノ酸配列および1以上のIgA2アミノ酸配列を含むことができる。
【0088】
[00106]いくつかの態様において、抗体構築物は、IgA1またはIg!抗体であるI
gA抗体由来の定常領域ドメインを含む。いくつかの場合において、IgA2抗体は、アロタイプのIgA2抗体、すなわち、IgA2m(1)、IgA2(m)2、またはIgA2nである。いくつかの態様において、IgA2m(1)抗体はコーカサス系IgA2m(1)抗体である。いくつかの態様において、IgA2m(2)抗体はアフリカ系IgA2m(2)抗体またはアジア系IgA2m(2)抗体である。いくつかの態様において、改善された製造性、好ましいグリコシル化、改善された溶解性、または改善された活性、例えば選択的Fc受容体結合のために改変されたIgA2抗体である。IgA2.0およびIgA3.0など、そのような改善を伴う、本明細書に記載の抗体構築物における例示的なIgA2ベースの定常領域または使用を、本明細書中に提供する。当業者の知識に基づくさらなるこのような改変は、本明細書中に記載される構築物の範囲内である。
【0089】
[00107]いくつかの態様において、本明細書に記載される抗体構築物は、少なくとも6
0%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%のIgAアミノ酸を含む重鎖定常領域を含む。いくつかの態様において、IgA抗体は、少なくとも50、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%のIgAア
ミノ酸を含む軽鎖定常領域を含む。
【0090】
[00108]いくつかの態様において、本明細書中に記載される抗体構築物は、1以上のI
gA CH3領域、IgA CH2、またはIgA CH1領域、またはそれらの任意の組み合わせを含む重鎖定常領域を含む。いくつかの態様において、本明細書中に記載される抗体構築物は、IgA CH1領域を含む軽鎖領域ドメインを含む。いくつかの態様において、本明細書中に記載される抗体構築物は、IgG CH3領域、IgG CH2、またはIgG CH1領域、またはそれらの任意の組み合わせの1以上のアミノ酸を含む重鎖定常領域を含む。いくつかの態様において、本明細書中に記載される抗体構築物は、IgA CH3領域、IgA CH2、およびIgA CH1領域、またはそれらの任意の組み合わせを含む重鎖定常領域を含む。いくつかの態様において、本明細書中に記載される抗体構築物は、IgA CH3領域、IgA CH2、およびIgAもしくはIgG
CH1領域、またはそれらの任意の組み合わせを含む重鎖定常領域を含む。
【0091】
[00109]いくつかの態様において、本明細書中に記載される抗体構築物は、IgG可変
領域、例えば、所望によりリンカーの使用によってIgA定常領域に融合または接続される軽鎖可変領域を含む。いくつかの態様において、本明細書中に記載される抗体構築物は、IgG重鎖可変領域を含む。いくつかの態様において、本明細書中に記載される抗体構築物は、IgG軽鎖可変領域およびIgG重鎖可変領域を含む。
【0092】
[00110]いくつかの態様において、本明細書中に記載される抗体構築物は、ヒト化抗体
由来の1以上のドメインを含むことができる。いくつかの態様において、本明細書中に記載される抗体構築物は、キメラ抗体、マウス抗体、ラクダ科抗体またはサメ抗体由来の1以上のドメインを含むことができる。いくつかの態様において、本明細書中に記載される抗体構築物は、ヒト抗体のみに由来するドメインを含むことができる。
【0093】
[00111]いくつかの態様において、本明細書中に記載される抗体構築物は、二重特異性
抗体、または多重特異性抗体構築物であることができる。いくつかの態様において、本明細書中に記載される抗体構築物は、三重特異性抗体であることができる。いくつかの態様において、本明細書中に記載される抗体構築物は、多重特異性抗体であることができる。
【0094】
[00112]いくつかの態様において、本明細書中に記載される抗体構築物は、二重特異性
抗体であることができる。いくつかの態様において、本明細書中に記載される抗体構築物は、細胞表面でCD47および1以上の抗原と共時係合する。いくつかの例において、2つの異なる抗原への本明細書中に記載される抗体構築物の結合は、逐次的である。例えば、第1の抗原への構築物の結合が最初に起こり、それによって、第2の抗体のアームによって探索される空間が制限される。結果として、第2の抗原の局所濃度の有意な上昇が生じる可能性があり、これは、第2の抗体のアームの結合を容易にすることができる。いくつかの場合において、そのような第一の抗原は、抗原提示細胞上に選択的に発現または過剰発現される抗原であり、第二の抗原は、同様に抗原提示細胞上に発現されるCD47である。いくつかの場合において、構築物は、第1の抗原よりも低い結合強度で第2の抗原に結合し、それによって、第1の抗原への結合が細胞特異性を指示することが可能になる。
【0095】
[00113]いくつかの態様において、構築物は、IgAまたはそのバリアントのFcドメ
インの少なくとも一部を含むことができる。いくつかの態様において、本明細書中に記載される抗体構築物は、CH3、CH2、およびCH1ドメインを含む重鎖定常領域を含む。いくつかの態様において、本明細書中に記載される抗体構築物は、CH1を含む軽鎖定常領域を含む。
【0096】
[00114]いくつかの態様において、構築物は、補体依存性細胞傷害(CDC)を誘導す
る。いくつかの態様において、構築物は、多形核好中球(PMN)媒介腫瘍細胞溶解を誘導する。いくつかの態様において、IgA抗体は、カスパーゼ非依存性経路を介してプログラム細胞死(PCD)を誘導する。いくつかの態様において、抗体構築物は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を誘導する。いくつかの態様において、IgA抗体は、好中球によって媒介される抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を誘導する。
【0097】
[00115]いくつかの態様において、本明細書中に記載される抗体構築物は、対応するI
gG抗体と比較して、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)のために好中球を補充する優れた能力を有することができる。いくつかの態様において、IgA抗体は、より低いエフェクター:標的(E:T)比を必要とし得る。いくつかの態様において、本明細書中に記載される抗体構築物は、他のタイプの抗体(例えば、IgG)と比較して、より低い腫瘍オプソニン化抗体濃度を必要とし得る。いくつかの態様において、本明細書中に記載される抗体構築物は、IgA抗体-好中球の係合に続いて、腫瘍細胞の好中球媒介食作用またはトロゴサイトーシスを誘発することができる。この腫瘍細胞を死滅させる機構は、おもにIgAに対するFc受容体(FcαRI;CD89)との相互作用によって媒介され、このFc受容体は、最もよく特徴づけられているIgA受容体である。FcαRIは、単球、マクロファージ、顆粒球、樹状細胞のサブセット、およびクッパー細胞に発現し、単量体および二量体のIgAアイソフォームの両方に中間的親和性で結合する。IgAのFcαRIへの結合は、食作用、酸化的バースト、サイトカイン放出、抗原提示、およびADCCなどのエフェクター機能を媒介する。ヒトでは、2つのIgAアイソタイプ、すなわちIgA1およびIgA2、ならびに3つのアロタイプ、すなわちIgA2m(1)、IgA2m(2)およびIgA2nが識別されている。いくつかの態様において、IgA抗体は、IgG抗体よりも効率的に多形核細胞(PMN)媒介ADCCを誘発する。
【0098】
[00116]いくつかの態様において、本明細書中に記載される抗体構築物は、B細胞、T
細胞、血小板、および/または赤血球に結合しない。例えば、いくつかの態様において、IgA抗体は、低い免疫原性を有することができる。
【0099】
[00117]いくつかの態様において、本明細書中に記載される抗体構築物は、治療用抗体
である。いくつかの態様において、本明細書に記載される抗体構築物は、組換え抗体であることができる。いくつかの態様において、本明細書中に記載される抗体構築物は、細胞株において作製される。いくつかの態様において、細胞株はCHOである。いくつかの態様において、細胞株はSP20である。いくつかの態様において、細胞株はHEK239細胞株である。いくつかの態様において、HEK293細胞株は、HEK293Fである。
【0100】
IgA抗体修飾
[00118]1以上のIgA定常領域ドメインに1以上のアミノ酸置換および/または1以
上のアミノ酸欠失を含む、本明細書に記載される抗体構築物を、本明細書に記載する。
【0101】
[00119]いくつかの態様において、本明細書中に記載されるIgA抗体に基づく構築物
のアミノ酸番号付けは、C-DOMAINおよびC-LIKE-DOMAINについてのIMGT独自の番号付けに従って示される(“IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor constant domains and Ig superfamily C-like domains.”Dev Comp Immunol.2005;29(3):185-203に開示されているとおりであり、その内容全体を本明細書中で参考として援用する)。
【0102】
[00120]いくつかの態様において、構築物は、定常領域内に少なくとも4つのグリコシ
ル化部位の欠失を含む。いくつかの態様において、構築物は、抗体の定常領域に少なくとも3つのN-連結グリコシル化部位の欠失を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、抗体の定常領域に少なくとも3つのN-連結グリコシル化部位の欠失、および抗体の定常領域に少なくとも1つのO-連結グリコシル化部位を含む。
【0103】
[00121]
いくつかの態様において、欠失したテールピースを含むIgA定常領域を含む、抗体構築物である。いくつかの態様において、構築物は、3-20、3-19、3-18、3-17、3-16、3-15、3-14、3-13、3-12、3-11、3-10、3-9、3-8、3-7、3-6、3-5、3-4C末端アミノ酸の欠失を含む。いくつかの態様において、構築物は、3-20、3-19、3-18、3-17、3-16、3-15、3-14、3-13、3-12、3-11、3-10、3-9、3-8、3-7、3-6、3-5、3-4C末端アミノ酸の欠失を含む。いくつかの態様において、C末端アミノ酸は、IMGTスキームに従った番号付けで、IgA2抗体のアミノ酸131~148に由来する。
【0104】
[00122]いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付け
で、アミノ酸131~148の欠失を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、アミノ酸147~148の欠失を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、アミノ酸146~148の欠失を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、アミノ酸145~148の欠失を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、アミノ酸144~148の欠失を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、アミノ酸143~148の欠失を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、アミノ酸142~148の欠失を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、アミノ酸141~148の欠失を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、アミノ酸140~148の欠失を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、アミノ酸139~148の欠失を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、アミノ酸138~148の欠失を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、アミノ酸137~148の欠失を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、アミノ酸136~148の欠失を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、アミノ酸135~148の欠失を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、アミノ酸134~148の欠失を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、アミノ酸133~148の欠失を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、アミノ酸132~148の欠失を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、アミノ酸131~148の欠失を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構
築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、アミノ酸P131~Y148の欠失を含むIgA2ベースの定常領域を含む。
【0105】
[00123]いくつかの態様において、IgA抗体は、C末端アスパラギン(N)アミノ酸
の変異を含む。いくつかの態様において、変異は非保存的アミノ酸置換である。いくつかの態様において、変異は、IgAのC末端アスパラギン(N)アミノ酸のグリコシル化部位を欠失させる。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、N135の変異を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、N135の非保存的変異を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、N135Q変異を含むIgA2ベースの定常領域を含む。
【0106】
[00124]いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付け
で、N45.2の変異を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、N45.2の非保存的変異を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、N45.2Gを含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、IgA2ベースの定常領域を含む抗体構築物は、N45.2アミノ酸に変異を有さないIgA2ベースの定常領域を含む抗体構築物と比較して、延長された循環半減期を有する。
【0107】
[00125]いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付け
で、P124の変異を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、P124の非保存的変異を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、P124Rを含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、IgA2ベースの定常領域を含む抗体構築物は、P124アミノ酸に変異を有さないIgA2ベースの定常領域を含む抗体構築物と比較して、延長された循環半減期を有する。いくつかの態様において、IgA2ベースの定常領域を含む抗体構築物は、P124アミノ酸に変異を有さないIgA2ベースの定常領域を含む抗体構築物と比較して、増大した安定性を有する。
【0108】
[00126]いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付け
で、C92の変異を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、C92の非保存的変異を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、C92Sを含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、IgA2ベースの定常領域を含む抗体構築物は、C92アミノ酸に変異を有さないIgA2抗体と比較して、減少した凝集を有する。いくつかの態様において、IgA2ベースの定常領域を含む抗体構築物は、C92アミノ酸に変異を有さないIgA2抗体と比較して、血清タンパク質との凝集が減少した。いくつかの態様において、抗体構築物は、C92アミノ酸に変異を有さないIgA2抗体と比較して、in vitroまたはin vivoで凝集が減少した。
【0109】
[00127]いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付け
で、N120の変異を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、N120の非保存的変異を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、N120Tを含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつか
の態様において、IgA2抗体は、N120アミノ酸に変異を有さないIgA2抗体と比較して、延長された循環半減期を有する。
【0110】
[00128]いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付け
で、I121の変異を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、I121の非保存的変異を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、I121Lを含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、IgA2抗体は、N338アミノ酸に変異を有さないIgA2抗体と比較して、延長された循環半減期を有する。
【0111】
[00129]いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付け
で、T122の変異を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、T122の非保存的変異を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、T122Sを含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、IgA2抗体は、N339アミノ酸に変異を有さないIgA2抗体と比較して、延長された循環半減期を有する。
【0112】
[00130]いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付け
で、C147の変異を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、C147の非保存的変異を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、アミノ酸C147の欠失を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、IgA2抗体は、C147アミノ酸に変異を有さないIgA2抗体と比較して、減少した凝集を有する。
【0113】
[00131]いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付け
で、Y148の変異を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、Y148の非保存的変異を含むIgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、IMGTスキームに従った番号付けで、アミノ酸Y148の欠失を含むIgA2ベースの定常領域を含む。
【0114】
[00132]いくつかの態様において、IgA抗体は、1以上のアルブミン結合ドメインを
含む。いくつかの態様において、1以上のアルブミン結合ドメインは、IgA定常領域の軽鎖または重鎖に融合される。いくつかの態様において、1以上のアルブミン結合ドメインは、IgA定常領域の重鎖に融合される。いくつかの態様において、1以上のアルブミン結合ドメインは、IgA定常領域の重鎖のCH3領域のC末端領域に融合される。いくつかの態様において、IgA2抗体は、1以上のアルブミン結合ドメインを含まないIgA2抗体と比較して、延長された循環半減期を有する。いくつかの態様において、抗体構築物は、1以上のアルブミン結合ドメインを含み、対応するIgG抗体の循環半減期の1%、5%、または10%内の循環半減期を有する、IgA2ベースの定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体構築物は、1以上のアルブミン結合ドメインを含み、対応するIgG抗体の半減期よりも長い循環半減期を有する、IgA2ベースの定常領域を含む。
【0115】
[00133]いくつかの態様において、IgA抗体は、Lohse S.et al.Ca
ncer Res.2015;76(2):403-17;Meyer S.et al.mAbs.2016;8(1):87-98;またはLeusen J.et al.
Molecular Immunology.2015;68:35-39に記載されている1以上の変異を含む。
【0116】
[00134]いくつかの態様において、参照IgA配列と比較して1以上の変異または欠失
は、抗体構築物の循環半減期の延長または短縮をもたらす。いくつかの態様において、1以上の変異または欠失は、抗体構築物の循環半減期の延長をもたらす。例えば、1以上の変異は、ヒトにおいて、抗体構築物の血清半減期を最大21日またはそれ以上延長することができる。さらに、1以上の変異は、マウスにおいて、抗体構築物の血清半減期を最大9日またはそれ以上延長することができる。いくつかの態様において、1以上の変異は、抗体構築物の血清半減期を、免疫グロブリンG(IgG)分子の血清半減期に匹敵するレベルまで延長することができる。いくつかの態様において、1以上の変異または欠失は、抗体構築物の循環半減期の短縮をもたらす。
【0117】
[00135]いくつかの態様において、1以上の変異は、抗体構築物の血清半減期を、少な
くとも約7日~約30日またはそれ以上延長することができる。いくつかの態様において、1以上の変異は、抗体構築物の血清半減期を少なくとも約7日延長することができる。いくつかの態様において、1以上の変異は、抗体構築物の血清半減期を最大約30日延長することができる。いくつかの態様において、1以上の変異は、抗体構築物の血清半減期を、約7日~約8日、約7日~約9日、約7日~約10日、約7日~約15日、約7日~約20日、約7日~約25日、約7日~約30日、約8日~約9日、約8日~約10日、約8日~約15日、約8日~約20日、約8日~約25日、約8日~約30日、約9日~約10日、約9日~約15日、約9日~約20日、約9日~約25日、約9日~約30日、約10日~約15日、約10日~約20日、約10日~約25日、約10日~約30日、約15日~約20日、約15日~約25日、約15日~約30日、約20日~約25日、約20日~約30日、または約25日~約30日、延長することができる。いくつかの態様において、1以上の変異は、抗体構築物の血清半減期を、約7日、約8日、約9日、約10日、約15日、約20日、約25日、または約30日、延長することができる。
【0118】
[00136]いくつかの態様において、抗体構築物は、増大した安定性を示す。いくつかの
態様において、1以上の変異および/または1以上の欠失は、1以上の変異および/または1以上の欠失を含まない対応するIgA抗体と比較して、抗体構築物の増大した安定性をもたらす。
【0119】
[00137]いくつかの態様において、抗体構築物は、減少した凝集を示す。抗体凝集は、
物理的不安定性のより一般的な発現である。タンパク質凝集体は一般に、エピトープの多様性および/または構造変化に起因して、低下した活性と、より重要なことには、より大きな免疫原性の可能性を有する。免疫グロブリン凝集体は、重篤な腎不全およびアナフィラキシー様反応、例えば、頭痛、発熱、および悪寒を引き起こすことが知られている。したがって、抗体治療において、凝集を減少させることは有利である。これに加えて、市販の静注用免疫グロブリン製品中の凝集体レベルは、世界保健機構(WHO)基準に基づき5%未満に制限されている。いくつかの態様において、1以上の変異は凝集の減少をもたらす。いくつかの態様において、1以上の変異および/または1以上の欠失は、1以上の変異および/または1以上の欠失を含まない対応するIgA抗体と比較して、抗体構築物の凝集の減少をもたらす。
【0120】
[00138]いくつかの態様において、本明細書で提供される抗体構築物は、少なくとも約
0.1%~最大約5%の範囲の凝集体レベルを有する。いくつかの態様において、本明細書で提供される抗体構築物は、少なくとも約0.1%の範囲の凝集体レベルを有する。いくつかの態様において、本明細書で提供される抗体構築物は、最大約5%の範囲の凝集体レベルを有する。いくつかの態様において、本明細書で提供される抗体構築物は、約0.
1%~約0.5%、約0.1%~約1%、約0.1%~約2%、約0.1%~約3%、約0.1%~約4%、約0.1%~約5%、約0.5%~約1%、約0.5%~約2%、約0.5%~約3%、約0.5%~約4%、約0.5%~約5%、約1%~約2%、約1%~約3%、約1%~約4%、約1%~約5%、約2%~約3%、約2%~約4%、約2%~約5%、約3%~約4%、約3%~約5%、または約4%~約5%の範囲の凝集体レベルを有する。いくつかの態様において、本明細書で提供される抗体構築物は、約0.1%、約0.5%、約1%、約2%、約3%、約4%、または約5%の範囲の凝集体レベルを有する。
【0121】
[00139]本明細書中に開示される治療用抗体は、1以上の天然に存在するアミノ酸の代
わりに合成アミノ酸を含んでいてもよい。このような合成アミノ酸は当分野で公知であり、例えば、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、α-アミノn-デカン酸、ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、トランス-3-およびトランス-4-ヒドロキシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、β-フェニルセリン β-ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、α-ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン-2-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’-ベンジル-N’-メチル-リジン、N’,N’-
[00140]ジベンジル-リジン、6-ヒドロキシリジン、オルニチン、α-アミノシクロ
ペンタンカルボン酸、α-アミノシクロヘキサンカルボン酸、α-アミノシクロヘプタンカルボン酸、α-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、α,γ-ジアミノ酪酸、α,β-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン、およびα-tert-ブチルグリシンを包含する。
【0122】
CD47およびSIRPα
[00141]シグナル調節タンパク質α(SIRP-α)は、骨髄細胞の膜に広く発現する
タンパク質である。SIRP-αは、体内の多くの細胞型に広く発現するタンパク質であるCD47(分化抗原群47)と相互作用する。SIRP-αとCD47との相互作用は、通常なら免疫系によって認識されることができる「自己」細胞の抱き込みを妨げる。急性骨髄性白血病およびいくつかの固形腫瘍癌において、腫瘍細胞上の高いCD47発現が、生存に対する負の予後因子として作用し得ることが観察されている。CD47とSIRP-αとの相互作用を中断させることに焦点を当てた戦略、例えば、CD47またはSIRP-αのいずれかをマスキングする薬剤の投与は、潜在的な抗癌療法となる可能性がある。
【0123】
[00142]さらに、抑制性受容体シグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)または
そのリガンドCD47のチェックポイント阻害は、IgG抗癌療法と組み合わせた前臨床モデルにおいて非常に効果的であることが証明されており、これらのCD47-SIRPa相互作用遮断薬のいくつかは、血液癌および固形癌に対する臨床試験ですでに試験中である(www.clinicaltrials.gov 識別番号:NCT02216409;NCT02678338,NCT02641002;NCT02367196,NCT02890368;NCT02663518,NCT02953509)。SIRPαは多かれ少なかれ選択的に骨髄細胞上に存在し、それぞれマクロファージおよび好中球によるADCP/ADCCを制限する。その遍在的に発現されたリガンドCD47は「私を食べないで」シグナルとして作用し、しばしば癌細胞上で過剰発現して、マクロファージによる食作用およびクリアランスを阻害することが見いだされている。実際、臨床の場において、癌細胞上でのCD47の発現レベルは、抗癌抗体療法に対する臨床反応と逆相関することが見いだされている。いくつかの前臨床モデルにおいて、CD47-SIRPα遮断薬は、さまざまな腫瘍抗原を標的化するIgG mAb、例えばセツキシマブお
よびトラスツズマブと併用した場合、癌免疫療法を増強するための有望な標的であることが証明されている。しかしながら、特異的腫瘍抗原に対するIgA抗体については、この追加的なCD47-SIRPαチェックポイント阻害の増強効果はまだ検討されていない。CD47はヒト細胞に遍在的に発現されるので、CD47の広範な阻害は有害作用のリスクを提示する可能性がある。したがって、癌細胞に対するCD47の効果的な局所的標的化が望ましい。いくつかの態様において、本明細書中に記載される治療薬は、CD47への低い親和性結合を有し;したがって、癌細胞以外の細胞への不要な結合を防止する。本明細書中に記載される構築物の特定の態様において、CD47のこのような低い親和性結合を、抗原結合細胞上に発現される抗原への高い親和性結合と組み合わせると、抗原結合が構築物の細胞特異性を指示することが可能になる。
【0124】
[00143]本明細書中に、IgA定常領域ドメインを含む治療薬であって、図1に示すよ
うに、治療薬がCD47および追加的な腫瘍関連抗原に結合するものを提供する。さらに、本明細書に開示される治療用量の治療薬を被験体に投与することを含む、それを必要とする被験体の処置方法を、本明細書中に提供する。さらに、本明細書中に開示される治療薬および医薬的に許容しうるキャリヤーを含む医薬組成物を、本明細書中に提供する。
【0125】
治療薬
[00144]本明細書に記載の抗体構築物を含む治療薬を提供する。
[00145]本明細書に記載の態様において、免疫エフェクター細胞エンゲージャー分子と
して作用する抗体構築物を、本明細書中に記載する。このような免疫エフェクター細胞エンゲージャーは、本明細書中に記載されるようなIgA構築物に基づく免疫グロブリンA(IgA)重鎖ドメイン、本明細書中に記載されるようなCD47結合ドメイン;および抗原提示細胞上で発現される抗原結合ドメインを含み;これに関し、該IgA重鎖ドメインは、免疫エフェクター細胞上のFcαRに特異的に結合し、それによって前記免疫エフェクター細胞と係合し、該抗原結合ドメインは、標的抗原提示細胞上の抗原に結合し、該CD47結合ドメインは、標的抗原提示細胞上に発現されるCD47と、免疫エフェクター細胞上のシグナル調節タンパク質α(SIRP α)との結合を阻害し、それによって、免疫エフェクター細胞が抗原提示細胞を破壊することを可能にし、そして、該抗体構築物は、CD47と比較して、抗原に対してより高い結合親和性を有し、それによって抗原提示細胞に選択的に結合する。
【0126】
[00146]特定の態様において、標的細胞を有効量の抗体構築物と接触させることを含む
、標的抗原提示細胞に対する好中球媒介免疫応答を誘導する方法であり、これに関し、該抗体構築物は、免疫グロブリンA(IgA)重鎖ドメイン;CD47結合ドメイン;および抗原結合ドメインを含み;
該抗原結合ドメインは、標的細胞上の抗原と結合し、該IgA重鎖ドメインは、好中球上のFcαRと特異的に結合し、それによって前記好中球を標的細胞に補充し、該CD47結合ドメインは、標的細胞上に発現されたCD47と好中球上のシグナル調節タンパク質α(SIRP α)との結合を阻害し、それによって好中球による標的細胞の死滅を促進し、そして該抗体構築物は、CD47と比較して、抗原に対してより高い結合親和性を有し、それによって好中球媒介免疫応答を誘導し、それによって抗原提示標的細胞と選択的に結合する。
【0127】
[00147]いくつかの場合において、標的細胞は、腫瘍抗原を提示する癌細胞である。癌
には、以下の4つの一般的な腫瘍抗原群がある:(i)このタイプの任意のウイルス性腫瘍に対して同一であることができるウイルス性腫瘍抗原、(ii)患者および腫瘍に対して特異的であることができる発癌性腫瘍抗原、(iii)すべての個々のタイプの腫瘍において異なる可能性があるが、同一ウイルスによって引き起こされる異なる腫瘍において同一である可能性がある、移植タイプの同種抗原または腫瘍特異的移植抗原;および(iv
)胚性抗原。腫瘍抗原が発見された結果、癌を特異的に標的化することができる新規癌治療法の開発において、腫瘍抗原が重要になってきた。これにより、これらの腫瘍抗原に対する抗体が開発された。癌治療のための腫瘍抗原に対する抗体の開発に加え、免疫細胞を標的化して免疫応答を促進する抗体も開発されている。
【0128】
[00148]本明細書中で、特定の態様において、IgA定常領域を含む治療薬を開示する
。いくつかの場合において、治療薬はIgA抗体である。IgA定常領域は、IgA1定常領域であることができる。IgA定常領域は、IgA2定常領域であることができる。例えば、治療薬は、IgA1抗体またはIgA2抗体であることができる。いくつかの態様において、治療薬は、B細胞、T細胞、血小板、および/または赤血球に結合しない。例えば、治療薬は、低い免疫原性を有する。
【0129】
[00149]治療薬は、二重特異性または多重特異性抗体であることができる。いくつかの
場合において、治療薬は、細胞表面で2つの抗原と共係合する。治療薬は、2つの異なる抗原と共係合することができる。いくつかの例において、2つの異なる抗原への治療薬の結合は、逐次的である。例えば、第1の抗原への治療薬の結合が最初に起こり、それによって、第2の抗体のアームによって探索される空間が制限される。結果として、第2の抗原の局所濃度の有意な上昇が生じる可能性があり、これは、第2の抗体のアームの結合を容易にすることができる。
【0130】
[00150]いくつかの態様において、治療薬は、抗原への結合と比較して低い親和性でC
D47に結合する。いくつかの場合において、治療薬は癌細胞のCD47結合を減少させる。例えば、治療薬は、ヒトCD47とシグナル調節タンパク質α(SIRPα)との相互作用を阻害することができる。さらに、ヒトCD47とSIRPαとの間の相互作用の阻害は、治療薬の治療可能性を上昇させることができる。ヒトCD47とSIRPαとの間の相互作用の阻害は、腫瘍部位における癌細胞の食作用およびクリアランスを増加させることができる。例えば、癌細胞は、IgAオプソニン化癌細胞であることができる。治療薬は、低親和性CD47アームを含むIgA二重特異性抗体であることができる。いくつかの態様において、本明細書に記載の治療薬はCD47への低親和性結合を有し、これにより、癌細胞以外の細胞上のCD47への治療薬の結合が妨げられる。いくつかの場合において、本明細書中に記載される治療薬の低親和性CD47アームは、CD47を発現する腫瘍細胞に結合する。いくつかの例において、本明細書に記載の治療薬の低親和性CD47アームは、腫瘍細胞ではないCD47を発現する細胞には結合しない。治療薬は、CD47-SIRPαシグナルを中断させるIgA二重特異性抗体であることができる。いくつかの例において、治療薬は、対応する野生型CD47結合抗体と比較して、より低い結合親和性(K)でCD47に結合する弱毒化CD47結合ドメインを含む。
【0131】
[00151]いくつかの態様において、治療薬は、少なくとも約0.01マイクロモル(μ
M)~約999μM以上の結合親和性(K)でCD47に結合する。いくつかの態様において、治療薬は、少なくとも約0.01μMの結合親和性(K)でCD47に結合する。いくつかの態様において、治療薬は、最大約999μMの結合親和性(K)でCD47に結合する。いくつかの実施態様において、治療薬は、約0.01μM~約0.1 μM、約0.01μM~約0.5μM、約0.01μM~約1μM、約0.01μM~約5μM、約0.01μM~約10μM、約0.01μM~約50μM、約0.01μM~約100μM、約0.01μM~約200μM、約0.01μM~約300μM、約0.01μM~約500μM、約0.01μM~約999μM、約0.1μM~約0.5μM、約0.1μM~約1μM、約0.1μM~約5μM、約0.1μM~約10μM、約0.1μM~約50μM、約0.1μM~約100μM、約0.1μM~約200μM、約0.1μM~約300μM、約0.1μM~約500μM、約0.1μM~約999μM、約0.5μM~約1μM、約0.5μM~約5μM、約0.5μM~約10μM、約0
.5μM~約50μM、約0.5μM~約100μM、約0.5μM~約200μM、約0.5μM~約300μM、約0.5μM~約500μM、約0.5μM~約999μM、約1μM~約5μM、約1μM~約10μM、約1μM~約50μM、約1μM~約100μM、約1μM~約200μM、約1μM~約300μM、約1μM~約500μM、約1μM~約999μM、約5μM~約10μM、約5μM~約50μM、約5μM~約100μM、約5μM~約200μM、約5μM~約300μM、約5μM~約500μM、約5μM~約999μM、約10μM~約50μM、約10μM~約100μM、約10μM~約200μM、約10μM~約300μM、約10μM~約500μM、約10μM~約999μM、約50μM~約100μM、約50μM~約200μM、約50μM~約300μM、約50μM~約500μM、約50μM~約999μM、約100μM~約200μM、約100μM~約300μM、約100μM~約500μM、約100μM~約999μM、約200μM~約300μM、約200μM~約500μM、約200μM~約999μM、約300μM~約500μM、約300μM~約999μM、または約500μM~約999μMの結合親和性(K)でCD47に結合する。いくつかの態様において、治療薬は、約0.01μM、約0.1μM、約0.5μM、約1μM、約5μM、約10μM、約50μM、約100μM、約200μM、約300μM、約500μM、または約999μMの結合親和性(K)でCD47に結合する。
【0132】
[00152]本明細書中に記載される構築物は、公知のまたはde novoで生成された
CD47標的化抗体または分子に由来する任意のCD47結合ドメインを含むことができる。これらのCD47結合領域は、本明細書中に記載される構築物中にそのまま組み込まれることができ、またはこれらは、本明細書中に記載される構築物中に組み込まれる前に、さらに弱毒化してCD47結合強度を低下させることができる。CD47標的化に使用することができる抗体の代表的なCDR領域を、以下の表Aに提供する。
【0133】
[00153]
【0134】
【表1】
【0135】
[00154]いくつかの態様において、治療薬は、約1mM~約1000ミリモル(mM)
の結合親和性(K)でCD47に結合する。いくつかの態様において、治療薬は、少なくとも約1mMの結合親和性(K)でCD47に結合する。いくつかの態様において、治療薬は、最大約1000mMの結合親和性(K)でCD47に結合する。いくつかの態様において、治療薬は、約1mM~約5mM、約1mM~約10mM、約1mM~約50mM、約1mM~約100mM、約1mM~約200mM、約1mM~約300mM、約1mM~約400mM、約1mM~約500mM、約1mM~約600mM、約1mM~約800mM、約1mM~約1000mM、約5mM~約10mM、約5mM~約50mM、約5mM~約100mM、約5mM~約200mM、約5mM~約300mM、約5mM~約400mM、約5mM~約500mM、約5mM~約600mM、約5mM~約800mM、約5mM~約1000mM、約10mM~約50mM、約10mM~約100mM、約10mM~約200mM、約10mM~約300mM、約10mM~約40
0mM、約10mM~約500mM、約10mM~約600mM、約10mM~約800mM、約10mM~約1000mM、約50mM~約100mM、約50mM~約200mM、約50mM~約300mM、約50mM~約400mM、約50mM~約500mM、約50mM~約600mM、約50mM~約800mM、約50mM~約1000mM、約100mM~約200mM、約100mM~約300mM、約100mM~約400mM、約100mM~約500mM、約100mM~約600mM、約100mM~約800mM、約100mM~約1000mM、約200mM~約300mM、約200mM~約400mM、約200mM~約500mM、約200mM~約600mM、約200mM~約800mM、約200mM~約1000mM、約300mM~約400mM、約300mM~約500mM、約300mM~約600mM、約300mM~約800mM、約300mM~約1000mM、約400mM~約500mM、約400mM~約600mM、約400mM~約800mM、約400mM~約1000mM、約500mM~約600mM、約500mM~約800mM、約500mM~約1000mM、約600mM~約800mM、約600mM~約1000mM、または約800mM~約1000mMの結合親和性(K)でCD47に結合する。いくつかの態様において、治療薬は、約1mM、約5mM、約10mM、約50mM、約100mM、約200mM、約300mM、約400mM、約500mM、約600mM、約800mM、または約1000mMの結合親和性(K)でCD47に結合する。
【0136】
[00155]いくつかの場合において、治療薬は、腫瘍関連抗原と結合する。治療薬は、高
親和性腫瘍関連抗原アームを含むIgA二重特異性抗体であることができる。腫瘍関連抗原は、CD20であることができる。腫瘍関連抗原は、GD2であることができる。腫瘍関連抗原は、メソテリンであることができる。腫瘍関連抗原は、GD2、CD38、CD19、EGFR、HER2、PD-L1、およびCD25からなる群より選択することができる。腫瘍関連抗原は、CD33、BCMA、CD44、α-葉酸受容体、CAIX、CD30、ROR1、CEA、EGP-2、EGP-40、HER3、葉酸結合タンパク質、GD3、IL-13R-a2、KDR、EDB-F、メソテリン、CD22、EGFR、MUC-1、MAGE-A1、MUC16、h5T4、PSMA、TAG-72、EGFRvIII、CD123、VEGF-R2、またはそれらの任意の組み合わせであることができる。
【0137】
[00156]本明細書中に記載される構築物は、公知のまたはde novoで生成された
抗原標的化抗体または分子に由来する任意の抗原結合ドメインを含むことができる。抗原標的化に使用することができる抗体の代表的なCDR領域を、以下の表Bに提供する。当業者なら、公知の供給源からの適切な抗原結合ドメインを利用して、抗原提示細胞を適切に標的化することを知っているはずである。
【0138】
[00157]
【0139】
【表2】
【0140】
[00158]いくつかの態様において、本明細書中に記載される治療薬は、CD20に結合
する。CD20は、ほぼすべての正常および悪性B細胞の表面上に発現される33~37kDの非グリコシル化リンタンパク質である。CD20ノックアウトマウスはほぼ正常な表現型を示し、高レベルの冗長度が示唆される。最近、ヒトにおけるCD20欠損は、T細胞非依存性抗体応答の障害をもたらすことが報告された。CD20は、カルシウムチャネルとして機能するほか、脂質ラフト、すなわち、細胞膜中のコレステロール富むミクロドメインに存在すると仮定されている。CD20は膜を4回貫通(span)し、細胞内C末端およびN末端を持つ。CD20の2つの領域は細胞外にあり、小ループと大ループを形成している。
【0141】
[00159]いくつかの態様において、本明細書中に記載される治療薬は、HER2に結合
する。HER2/neu(ヒト上皮成長因子受容体2/受容体チロシン-プロテインキナーゼerbB-2)は、ヒト上皮成長因子ファミリーの一部である。このタンパク質の過剰発現は、例えば乳癌のような癌の進行において重要な役割を果たすことが示され得る。HER2/neuタンパク質は、受容体チロシンキナーゼとして機能することができ、結合パートナーとの二量体化時に自己リン酸化する。HER2/neuは、いくつかのシグナル伝達経路、例えば、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ、ホスホイノシチド3-キナーゼ、ホスホリパーゼC、プロテインキナーゼC、ならびにシグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)などを、活性化することができる。HER2/neuを標的化および阻害することができる抗体の例としては、トラスツズマブおよびペルツズマブを挙げることができる。
【0142】
[00160]いくつかの態様において、本明細書中に記載される治療薬は、EGFRに結合
する。EGFR(上皮成長因子受容体)は、ヒト上皮成長因子ファミリーのメンバーをコードする。EGFRの過剰発現または過剰活性につながりうる変異は、扁平上皮癌および膠芽腫を含むいくつかの癌と関連する可能性がある。EGFRは受容体チロシンキナーゼとして機能することができ、リガンド結合は結合パートナーとの二量体化および自己リン酸化を誘発することができる。次に、リン酸化されたEGFRは、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ、ホスホイノシチド3-キナーゼ、ホスホリパーゼCy、プロテインキナーゼC、およびシグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)を含むいくつかの下流シグナル伝達経路を活性化することができる。EGFRを標的化および阻害することができる抗体の例としては、セツキシマブ、パニツムマブ(panutumumab)、ニモツズマブ、および
ザルツムマブを挙げることができる。EGFRの1つの変異バリアントはEGFRvIII(上皮成長因子受容体バリアントIII)である。EGFRvIIIは、細胞外ドメインのエクソン2~7が欠失したEGFR遺伝子再配列の結果である可能性がある。この変異は、任意の公知のリガンドに結合できない変異受容体をもたらす可能性がある。得られた受容体は、構成的な低レベルのシグナル伝達に係合することができ、腫瘍の進行に関与することができる。EGFRvIIIを標的化することができる抗体の例としては、AMG595およびABT806を挙げることができる。
【0143】
[00161]いくつかの態様において、本明細書に記載の治療薬は、メソテリンに結合する
。メソテリンは、最初は、OVCAR-3ヒト卵巣癌細胞株でマウスを免疫化した後に生成されるK1モノクローナル抗体によって認識される抗原として記載された。その後、1996年にメソテリン遺伝子がクローニングされた。メソテリンcDNAは1884bpのオープンリーディングフレームを含有し、69kDa前駆体タンパク質(628アミノ酸)をコードする。グリコシル化後、前駆体はアミノ酸288~293でフリンによって切断され、40kDaのタンパク質および細胞から放出されるより小さな32kDaのフラグメントを生じる。この32kDaの脱落フラグメントは巨核球増強因子(MPF)とよばれる。40kDaのタンパク質は細胞表面に見いだされ、ホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼCでの処理によって放出されることができる。この40kDaのGPI連結膜結合タンパク質は、正常な中皮細胞によって産生されるため、メソテリンと命名された。悪性中皮腫と卵巣腺癌は正常な中皮細胞に由来するので、メソテリンがこれらの悪性疾患と関連していることは驚くにあたらない。
【0144】
[00162]メソテリンの最も一般的な形態は膜結合型であるが、2つのバリアントが見い
だされている:8アミノ酸の挿入を有するバリアント-1もまた、膜結合型である。バリアント-2は、GPIアンカーシグナル配列の欠如により脱落し、可溶性である。可溶性メソテリンタンパク質は卵巣癌患者の血清中で検出可能であり、卵巣癌の診断および/またはCA125(癌抗原125)と共に治療に対するその応答をモニタリングするための、有用な新規マーカーを提供する可能性がある。さらに、可溶性メソテリンは、中皮腫患者の血液および滲出液中で上昇し、これらの流体中のメソテリンレベルの決定は、おもに患者の応答および進行をモニタリングするためのツールとして、米国FDAにより承認されている。
【0145】
[00163]メソテリンは、卵巣癌の診断に使用される腫瘍抗原であるCA125との相互
作用を介して、細胞接着および腫瘍転移に役割を果たすことが疑われている。CA125はMUC16ともよばれる。CA125/MUC16は多くの上皮の細胞表面に発現されるI型膜貫通タンパク質であり、その可溶形態は細胞外空間に放出されることができる。さらに、CA125/MUC16にメソテリンが結合すると、MMP-7活性化を介して膵臓癌細胞の運動性および浸潤が促進される。
【0146】
[00164]メソテリンは正常組織での発現が中皮に限定されるため、分化抗原と考えられ
ているが、メソテリンは、中皮腫、卵巣癌、膵臓癌および肺癌を含むさまざまな腫瘍で多量に発現される。メソテリンは胸膜、心膜、および腹膜表面を覆う正常な中皮細胞上で免疫組織学的方法により検出することができるが、重要な器官では検出できない。多くの上皮性癌で高度に発現されることが多い。腫瘍におけるメソテリンの差次的過剰発現ならびに細胞接着および腫瘍転移におけるその役割により、メソテリンは癌治療のための適切な標的となる。
【0147】
[00165]いくつかの態様において、本明細書に記載される治療薬の抗原結合部分は、G
D2、CD38、CD19、EGFR、HER2、PD-L1、CD25、CD33、BCMA、CD44、α-葉酸受容体、CAIX、CD30、ROR1、CEA、EGP-
2、EGP-40、HER2、HER3、葉酸結合タンパク質、GD2、GD3、IL-13R-a2、KDR、EDB-F、メソテリン、CD22、EGFR、MUC-1、MUC-16、MAGE-A1、MUC16、h5T4、PSMA、TAG-72、EGFRvIII、CD123およびVEGF-R2に特異的であるか、またはこれらに結合する。いくつかの態様において、抗原結合ドメインは、グリシン-セリンリンカーまたはWhitlowリンカーなどのフレキシブルリンカーによって接合された標的抗原特異的モノクローナル抗体の可変ドメイン軽鎖(VL)および可変ドメイン重鎖(VH)を含む単鎖抗体フラグメント(scFv)を含む。複数態様において、scFvはヒト化されている。いくつかの態様において、治療薬は、可変ドメインおよび抗体を含む。いくつかの態様において、治療薬は、ヒト、ヒト化、または任意の他の非ヒト起源のIgG抗体由来の可変ドメインを含む。いくつかの態様において、抗原結合部分は、例えば、NからC末端、VH-リンカー-VLまたはVL-リンカー-VHに方向的に連結されたVHおよびVLを含むことができる。いくつかの例において、抗原結合ドメインは、標的のエピトープを認識する。
【0148】
[00166]一態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、CD20
に特異的である。一態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、CD19に特異的である。一態様において、本明細書に記載される治療薬の抗原結合部分は、CD38に特異的である。一態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、PD-L1に特異的である。一態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、CD25に特異的である。一態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、CD33に特異的である。他の態様において、本明細書に記載される治療薬の抗原結合部分は、BCMAに特異的である。さらに他の態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、CD44に特異的である。いくつかの態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、α-葉酸受容体に特異的である。いくつかの態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、CAIXに特異的である。一態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、CD30に特異的である。いくつかの態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、ROR1に特異的である。一態様において、本明細書に記載される治療薬の抗原結合部分は、CEAに特異的である。いくつかの態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、EGP-2に特異的である。一態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、EGP-40に特異的である。他の態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、HER2に特異的である。さらに他の態様において、本明細書に記載される治療薬の抗原結合部分は、HER3に特異的である。さらに他の態様において、本明細書に記載される治療薬の抗原結合部分は、葉酸結合タンパク質に特異的である。いくつかの態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、GD2に特異的である。いくつかの態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、GD3に特異的である。一態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、IL-13R-a2に特異的である。一態様において、本明細書に記載される治療薬の抗原結合部分は、KDRに特異的である。一態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、EDB-Fに特異的である。他の態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、メソテリンに特異的である。さらに他の態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、CD22に特異的である。一態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、EGFRに特異的である。一態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、MUC-1に特異的である。一態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、MUC-16に特異的である。一態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、MAGE-A1に特異的である。いくつかの態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、h5T4に特異的である。いくつかの態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、PSMAに特異的
である。他の態様において、本明細書に記載される治療薬の抗原結合部分は、TAG-72に特異的である。さらに一態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、EGFRvIIIに特異的である。他の態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、CD123に特異的である。さらに態様において、本明細書中に記載される治療薬の抗原結合部分は、VEGF-R2に特異的である。
【0149】
[00167]治療用モノクローナル抗体としての未改変IgAは、比較的短い半減期を有す
る。これは、in vivoで新生児Fc受容体(FcRn)への結合がないことと、組換え産生系におけるシアリル化レベルが低いこととの組み合わせによる可能性がある。FcRn受容体は抗体半減期の維持において確立された役割を有し、FcRnへの抗体分子の結合の減少は、血清中でのより短い半減期につながる。さらに、IgAはIgGよりも高度にグリコシル化されているので、シアル酸を新生オリゴ糖に移動させる酵素(シアリルトランスフェラーゼ)は限られている。In vivoにおいて、アシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)は、シアリル化のレベルが低いため、IgGよりも速やかにIgAを除去する。血清中での延長された半減期を有する抗体治療薬の開発は、さまざまな理由、例えば、限定されるものではないが、血流中での持続的循環による改善された治療効力および改善された投与のために望ましい。
【0150】
[00168]本明細書中に、改善された薬物動態をもたらす1以上の変異を含む治療薬を提
供する(Lohse S.et al.Cancer Res.2016;76(2):403-17;Meyer S.et al.mAbs.2016;8(1):87-98)。本明細書中に、改善された薬物動態をもたらす1以上のアルブミン結合ドメインを含む治療薬を提供する。いくつかの態様において、治療薬は1以上の変異を含む。変異は保存的変異であることができる。変異は、非保存的変異であってもよい。いくつかの態様において、治療薬は、1以上の欠失を含む。いくつかの態様において、治療薬は、1以上のアルブミン結合ドメインを含む。変異または欠失は、IgA定常領域に見いだすことができる。あるいは、1以上の変異および/または1以上の欠失は、IgA可変領域に見いだすことができる。1以上の変異は、治療薬の血清半減期を、免疫グロブリンG(IgG)分子の半減期に匹敵するレベルまで延長させることができる。例えば、1以上の変異は、ヒトにおいて治療薬の血清半減期を最大21日またはそれ以上まで延長することができる。さらに、1以上の変異は、マウスにおいて、治療薬の血清半減期を最大9日またはそれ以上まで延長することができる。
【0151】
[00169]いくつかの態様において、1以上の変異は、治療薬の血清半減期を、少なくと
も約7日~約30日またはそれ以上延長することができる。いくつかの態様において、1以上の変異は、治療薬の血清半減期を少なくとも約7日延長することができる。いくつかの態様において、1以上の変異は、治療薬の血清半減期を最大約30日延長することができる。いくつかの態様において、1以上の変異は、治療薬の血清半減期を、約7日~約8日、約7日~約9日、約7日~約10日、約7日~約15日、約7日~約20日、約7日~約25日、約7日~約30日、約8日~約9日、約8日~約10日、約8日~約15日、約8日~約20日、約8日~約25日、約8日~約30日、約9日~約10日、約9日~約15日、約9日~約20日、約9日~約25日、約9日~約30日、約10日~約15日、約10日~約20日、約10日~約25日、約10日~約30日、約15日~約20日、約15日~約25日、約15日~約30日、約20日~約25日、約20日~約30日、または約25日~約30日、延長することができる。いくつかの態様において、1以上の変異は、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約15日間、約20日間、約25日間、または約30日間、延長することができる。いくつかの態様において、1以上の変異は、治療薬の血清半減期を、約7日、約8日、約9日、約10日、約15日、約20日、約25日、または約30日、延長することができる。
【0152】
[00170]いくつかの態様において、IgA定常領域は、166位に変異を含有する。変
異は、非保存的変異であることができる。例えば、変異は、166位のアスパラギンをグリシンまたはグリシン相同体で置換することを含むことができる。いくつかの場合において、166位のアミノ酸置換は、治療薬の血清半減期を、グリシンでの置換と同等またはそれよりも長く延長する。治療薬は、166位にアスパラギンを含む対応する治療薬よりも長い半減期を有することができる。
【0153】
[00171]いくつかの場合において、IgA定常領域は、337位に変異を含有する。変
異は、非保存的変異であることができる。例えば、変異は、337位のアスパラギンをトレオニンまたはトレオニン相同体で置換することを含むことができる。特定の態様において、337位のアミノ酸置換は、治療薬の血清半減期を、アスパラギンでの置換と同等またはそれよりも長く延長する。いくつかの態様において、治療薬は、337位にアスパラギンを含む対応する治療薬よりも長い半減期を有する。
【0154】
[00172]いくつかの態様において、IgA定常領域は、338位に変異を含有する。変
異は、非保存的変異であることができる。例えば、変異は、338位のイソロイシンをロイシンまたはロイシン相同体で置換することを含むことができる。特定の場合において、338位のアミノ酸置換は、前記治療薬の血清半減期を、イソロイシンでの置換と同等またはそれよりも長く延長する。いくつかの例において、治療薬は、338位にイソロイシンを含む対応する治療薬よりも長い半減期を有する。
【0155】
[00173]いくつかの態様において、IgA定常領域は、339位に変異を含有する。変
異は、非保存的変異であることができる。例えば、変異は、339位のトレオニンをセリンまたはセリン相同体で置換することを含むことができる。いくつかの場合において、治療薬は、339位にトレオニンを含む対応する治療薬よりも長い半減期を有する。
【0156】
[00174]特定の態様において、IgA定常領域は、1以上のグリコシル化部位を欠く。
いくつかの場合において、IgA定常領域は、1以上のアルブミン結合ドメインを含む。特定の場合において、1以上のアルブミン結合ドメインは、前記IgA定常領域の軽鎖または重鎖に融合される。いくつかの態様において、1以上のアルブミン結合ドメインは、治療薬の血清半減期を延長する。いくつかの場合において、治療薬は、1以上のアルブミン結合ドメインを含まない対応する治療薬よりも長い半減期を有する。
【0157】
[00175]安定性を増大させた抗体治療薬の開発は、治療薬の活性をそのままで維持しつ
つ、治療薬の保存寿命を延長することができるので望ましい。いくつかの態様において、本明細書で提供される治療薬は、IgG分子と同じか、それよりも良好な安定性を有する。いくつかの場合において、治療薬の安定性は、変異を導入することによって改善される。いくつかの態様において、IgA定常領域は、221位に変異を含有する。変異は、非保存的変異であることができる。例えば、変異は、221位のプロリンをアルギニンまたはアルギニン相同体で置換することを含むことができる。いくつかの例において、アミノ酸置換によって、前記治療薬の安定性は、221位にプロリンを含む対応する治療薬よりも高くなる。
【0158】
[00176]ヒト抗体のさらなる固有の生物物理学的特性は、凝集する傾向である。抗体凝
集は、物理的不安定性のより一般的な発現である。タンパク質凝集体は一般に、エピトープの多様性および/または構造変化に起因して、低下した活性と、より重要なことには、より大きな免疫原性の可能性を有する。免疫グロブリン凝集体は、重篤な腎不全およびアナフィラキシー様反応、例えば、頭痛、発熱、および悪寒を引き起こすことが知られている。したがって、抗体治療薬において、凝集を減少させることが有利である。これに加えて、市販の静注用免疫グロブリン製品中の凝集体レベルは、世界保健機構(WHO)基準
に基づき5%未満に制限されている。
【0159】
[00177]本明細書中に、減少した凝集を含む治療薬を提供する。いくつかの態様におい
て、本明細書で提供される治療薬は、IgG分子の凝集と比較して減少した凝集を有する。いくつかの態様において、本明細書で提供される治療薬は、IgG分子と同じ、またはそれよりも良好な凝集傾向を有する。いくつかの場合において、治療薬の凝集傾向は、変異を導入することによって改善される。いくつかの態様において、IgA定常領域は、311位に変異を含有する。変異は、非保存的突然変異であることができる。例えば、変異は、311位のシステインをセリンまたはセリン相同体で置換することを含むことができる。いくつかの例において、治療薬は、311位にシステインを含む対応する治療薬と比較して、減少した凝集を有する。
【0160】
[00178]いくつかの場合において、治療薬の凝集傾向は、欠失を導入することによって
改善される。いくつかの場合において、IgA定常領域は、417位に欠失を含有する。いくつかの場合において、471位のシステインの欠失は、治療薬の凝集傾向を低下させることができる。特定の例において、治療薬は、471位の欠失を含まない対応する治療薬と比較して、低下した凝集を有する。
【0161】
[00179]いくつかの態様において、本明細書で提供される治療薬は、少なくとも約0.
1%~最大約5%の範囲の凝集体レベルを有する。いくつかの態様において、本明細書で提供される治療薬は、少なくとも約0.1%の範囲の凝集体レベルを有する。いくつかの態様において、本明細書で提供される治療薬は、最大約5%の範囲の凝集体レベルを有する。いくつかの態様において、本明細書に提供される治療薬は、約0.1%~約0.5 %、約0.1%~約1%、約0.1%~約2%、約0.1%~約3%、約0.1%~約4%、約0.1%~約5%、約0.5%~約1%、約0.5%~約2%、約0.5%~約3%、約0.5%~約4%、約0.5%~約5%、約1%~約2%、約1%~約3%、約1%~約4%、約1%~約5%、約2%~約3%、約2%~約4%、約2%~約5%、約3%~約4%、約3%~約5%、または約4%~約5%の範囲の凝集体レベルを有する。いくつかの態様において、本明細書で提供される治療薬は、約0.1%、約0.5%、約1%、約2%、約3%、約4%、または約5%の範囲の凝集体レベルを有する。
【0162】
[00180]本明細書中に開示される治療薬は、1以上の天然に存在するアミノ酸の代わり
に合成アミノ酸を含んでいてもよい。このような合成アミノ酸は当分野で公知であり、例えば、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、α-アミノn-デカン酸、ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、トランス-3-およびトランス-4-ヒドロキシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、β-フェニルセリン β-ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、α-ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン-2-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’-ベンジル-N’-メチル-リジン、N’,N’-ジベンジル-リジン、6-ヒドロキシリジン、オルニチン、α-アミノシクロペンタンカルボン酸、α-アミノシクロヘキサンカルボン酸、α-アミノシクロヘプタンカルボン酸、α-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、α,γ-ジアミノ酪酸、α,β-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン、およびα-tert-ブチルグリシンを包含する。
【0163】
[00181]「多重特異性抗体」は、異なる構造の少なくとも2つの標的、例えば、2つの
異なる抗原、同じ抗原上の2つの異なるエピトープ、またはハプテンおよび/または抗原もしくはエピトープに、同時に結合することができる抗体である。「多価抗体」は、同じまたは異なる構造の少なくとも2つの標的に同時に結合することができる抗体である。価
数は、抗体が単一の抗原またはエピトープに対してどれだけの結合アームまたは部位を有するか、すなわち、一価、二価、三価または多価を示す。抗体の多価性とは、抗体が抗原に結合する際に複数の相互作用を利用することができ、したがって、抗原への結合の結合活性が増大することを意味する。特異性は、抗体が結合することができる抗原またはエピトープの数、すなわち、単一特異性、二重特異性、三重特異性、多重特異性を示す。これらの定義を用いると、自然抗体、例えばIgAは、2つの結合アームを有するので二価であるが、1つのエピトープに結合するので単一特異性である。多重特異性、多価抗体は、異なる特異性の1より多くの結合領域を有する構築物である。例えば、本明細書中に開示される二重特異性抗体構築物は、CD47結合領域および抗原結合領域を有する。
【0164】
[00182]「二重特異性抗体」は、異なる構造の2つの標的に同時に結合することができ
る抗体である。二重特異性抗体(bsAb)および二重特異性抗体フラグメント(bsFab)は、例えばCD47に特異的に結合する少なくとも1つのアームと、疾患細胞、組織、器官または病原体、例えば腫瘍関連抗原によって産生されるかまたはそれに関連する抗原に特異的に結合する少なくとも1つの他のアームとを有することができる。さまざまな二重特異性抗体を、分子工学を用いて生産することができる。
【0165】
[00183]二重特異性抗体構築物、または本明細書中に記載される組成物は、投与される
量が生理学的に有意である場合、「治療有効量」で投与されると言われる。薬剤は、その存在がレシピエント被験体の生理機能に検出可能な変化をもたらす場合、生理学的に有意である。特定の態様において、本明細書に開示される二重特異性抗体構築物は、その存在が抗腫瘍応答を引き起こすか、または感染性疾患状態の徴候および症状を軽減する場合、生理学的に有意である。生理学的に有意な効果は、標的細胞の成長阻害または死をもたらすレシピエント被験体における体液性および/または細胞性免疫応答の惹起であることもできる。
【0166】
[00184]用語「リンカー」は、ペプチド結合によって接合された2以上のアミノ酸残基
を含み、1以上の抗原結合部分または可変ドメインを連結するために使用されるポリペプチドを示すために用いられる。このようなリンカーポリペプチドは、当分野で周知である(例えば、Holliger,P.,et al.(1993) Proc.Natl.
Acad.Sci.USA 90:6444-6448;Poljak,R.J.,e
t al.(1994) Structure 2:1121-1123参照)。いくつかの態様において、リンカーペプチドは、配列番号44のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、リンカーペプチドは、配列番号45のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0167】
[00185]「Fv」または「Fvフラグメント」は、免疫グロブリンの「シングルアーム
」の軽鎖可変ドメイン(VL)および重鎖可変ドメイン(VH)のみからなる。したがって、「Fv」は、完全な抗原認識および結合部位を含有する最小の抗体フラグメントである。「二本鎖」Fvフラグメントは、密接で非共有結合的に会合している1つの重鎖可変領域と1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。一本鎖Fv種(scFv)は免疫グロブリンのVHおよびVLドメインを包含し、これらのドメインは、リンカーペプチドによって互いに共有結合して、一本鎖ポリペプチド中に存在する。典型的には、scFvフラグメントにおいて、軽鎖および重鎖の可変ドメインは二本鎖Fv種と類似の二量体構造で会合する。一本鎖Fvフラグメントにおいては、一本鎖ポリペプチドのN末端に配置された軽鎖の可変ドメイン、続いてリンカー、そして、ポリペプチド鎖のC末端に配置された重鎖の可変ドメインを有するか、あるいはその逆で、重鎖の可変ドメインがN末端に配置
され、軽鎖の可変ドメインがC末端に配置され、リンカーペプチドがその間に配置されているかのいずれかであることが可能である。リンカーペプチドは、当分野で公知の任意のフレキシブルリンカー、例えば、グリシンおよびセリン残基から作製されるものであることができる。保存されたフレームワーク領域にジスルフィド結合を導入することによって、VHドメインとVLドメインとの間のドメイン会合をさらに安定化することも可能である(Reiter et al. Stabilization of the Fv fragments in recombinant immunotoxins by
disulfide bonds engineered into conserved framework regions,Biochemistry 1994,33,6551-5459参照)。このようなscFvフラグメントは、ジスルフィド安定化scFvフラグメント(ds-scFv)としても知られている
CD47への結合
[00186]CD47およびそのフラグメントに結合する二重特異性抗体構築物は、CD4
7の機能的活性を調節、遮断、阻害、低減、拮抗、中和またはその他の方法で妨害するように働く。CD47の機能的活性は、非限定的な例として、SIRPαとの相互作用を包含する。抗体の存在下でのCD47-SIRPα相互作用のレベルが、本明細書に記載の二重特異性抗体との結合の非存在下でのCD47-SIRPα相互作用のレベルと比較して、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または95%、例えば、96%、97%、98%、99%または100%低下した場合、抗体は、CD47-SIRPα相互作用を完全に調節し、遮断し、阻害し、低減し、拮抗し、中和し、またはその他の方法で妨害すると考えられる。二重特異性抗体は、抗体の存在下でのCD47-SIRPα相互作用のレベルが、本明細書に記載される二重特異性抗体との結合の非存在下でのCD47-SIRPα相互作用のレベルと比較して、95%未満、例えば、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、75%、80%、85%または90%低下した場合に、CD47-SIRPα相互作用を部分的に調節、遮断、阻害、低減、拮抗、中和またはその他の方法で妨害すると考えられる。
【0168】
[00187]本開示は、1つの結合領域がCD47に特異的であり、他の結合領域が抗原(
例えば、CD20のような腫瘍抗原)に特異的である、抗体構築物を提供する。いくつかの態様において、構築物は、好中球上のFc受容体に結合することができる機能性IgA
Fc部分を包含する。二重特異性抗体の抗原結合領域は、CD47結合領域を抗原提示細胞に標的化する。IgA Fc部分は好中球と結合する。CD47アームは、CD47とSIRPαとの間の相互作用を遮断、阻害、またはその他の方法で低減し、それにより、抗原に対する好中球媒介免疫応答を誘導する。いくつかの態様において、二重特異性抗体の抗原結合領域は、抗CD20抗体配列またはその抗原結合フラグメントを包含する。本明細書中の構築物に使用するための抗原結合領域は、本開示の他の箇所に記載されるように、任意の抗原を標的化することができる。このような抗原結合領域は、例えば表Bに示すような公知の抗体からも得ることができる。
【0169】
[00188]いくつかの態様において、抗原結合領域の親和性は、二重特異性構築物におい
て増大する。いくつかの態様において、CD47結合領域の親和性は、二重特異性構築物において低下する。例えば、二重特異性抗体では、抗原結合領域の親和性が増大し、CD47結合領域の親和性が低下する。抗原結合領域およびCD47結合領域の結合親和性におけるこれらの差異により、例えば、標的細胞または標的細胞群に対する選択性を改善することが可能になる。本明細書中の構築物で使用するためのCD47結合領域は、de novoで設計されることができ、または、例えば、表Aに示すような公知の抗体からも得ることができる。
【0170】
[00189]いくつかの態様において、抗原結合領域の親和性は、少なくとも約2、4、5
、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90または10
0倍増大する。いくつかの態様において、増大は、単一特異性抗原結合抗体に関連する。いくつかの態様において、増大は、二重特異性抗体におけるCD47に対するCD47結合領域の結合親和性に関連する。いくつかの態様において、CD47結合領域の親和性は、少なくとも約2、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90または100倍低下する。いくつかの態様において、低下は、単一特異性CD47結合抗体に関連する。いくつかの態様において、低下は、二重特異性抗体における抗原に対する抗原結合領域の結合親和性に関連する。
【0171】
抗体の作製方法
一般的抗体技術
[00190]実質的に任意の標的抗原に対するモノクローナル抗体を調製するための技術は
、当分野で周知である。例えば、KohlerおよびMilstein,Nature 256:495(1975),およびColigan et al.(編集), CUR
RENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY,VOL.1,2.5.1~2.6.7頁(John Wiley & Sons 1991)参照。簡潔には、モノクローナル抗体は、抗原を含む組成物をマウスに注射し、脾臓を除去してBリンパ球を得、Bリンパ球を骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを産生し、ハイブリドーマをクローニングし、抗原に対する抗体を産生する陽性クローンを選択し、抗原に対する抗体を産生するクローンを培養し、ハイブリドーマ培養物から抗体を単離することによって、得ることができる。
【0172】
[00191]MAbは、さまざまな十分に確立された技術によって、ハイブリドーマ培養物
から単離および精製することができる。このような単離技術としては、プロテインAセファロースでのアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびイオン交換クロマトグラフィーが挙げられる。例えば、2.7.1~2.7.12頁および2.9.1~2.9.3頁のColigan参照。同様に、Baines et al.,“Purification of Immunoglobulin G(IgG),”, METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY,VOL.10
,79~104頁(The Humana Press,Inc.1992)参照。
【0173】
[00192]最初に体を免疫原に対して抗惹起した後、抗体を配列決定し、続いて組換え技
術によって調製することができる。マウス抗体および抗体フラグメントのヒト化およびキメラ化は、当業者に周知である。ヒト化抗体、キメラ抗体またはヒト抗体に由来する抗体成分の使用は、マウス定常領域の免疫原性に関連する潜在的な問題を取り除く。
【0174】
キメラ抗体
[00193]キメラ抗体は、ヒト抗体の可変領域が、例えば、マウス抗体の相補性決定領域
(CDR)などのマウス抗体の可変領域によって置換されている、組換えタンパク質である。キメラ抗体は、被験体に投与された場合、低減した免疫原性および増大した安定性を示す。マウス免疫グロブリン可変ドメインをクローニングするための一般的な技術は、例えば、Orlandi et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:3833(1989)に開示されている。キメラ抗体を構築するための技術は
、当業者に周知である。一例として、Leung et al.,Hybridoma
13:469(1994)は、抗CD22モノクローナル抗体であるマウスLL2のVκおよびVHドメインをコードするDNA配列を、それぞれのヒトκおよびIgG1定常領域ドメインと組み合わせることによって、LL2キメラを産生した。
【0175】
ヒト化抗体
[00194]ヒト化MAbを産生するための技術は当分野で周知である(例えば、Jone
s et al.,Nature 321:522(1986),Riechmann
et al.,Nature 332:323(1988),Verhoeyen et
al.,Science 239:1534(1988),Carter et al
.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 89:4285(1992),Sandhu,Crit.Rev.Biotech.12:437(1992),およびSinger et al.,J.Immun.150:2844(1993)参照)。キメラまたはマウスモノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンの可変重鎖および軽鎖由来のマウスCDRを、ヒト抗体の対応する可変ドメインに移入することによって、ヒト化することができる。キメラモノクローナル抗体中のマウスフレームワーク領域(FR)もまた、ヒトFR配列で置換される。マウスCDRをヒトFRに単に移入することは、しばしば、抗体親和性の低減またはさらには損失をもたらすので、マウス抗体の元の親和性を回復するために、さらなる改変が必要とされ得る。これは、FR領域中の1以上のヒト残基をマウス対応物で置換して、そのエピトープに対して良好な結合親和性を有する抗体を得ることによって、達成することができる。例えば、Tempest et al.,Biotechnology 9:266(1991)およびVerhoeyen et
al.,Science 239:1534(1988)参照。一般に、マウス対応物
とは異なり、そして1以上のCDRアミノ酸残基に近接または接触して位置するヒトFRアミノ酸残基は、置換の候補である。
【0176】
ヒト抗体
[00195]コンビナトリアルアプローチまたはヒト免疫グロブリン遺伝子座で形質転換さ
れたトランスジェニック動物のいずれかを使用して完全ヒト抗体を産生するための方法は、当分野で公知である(例えば、Mancini et al.,2004,New Microbiol. 27:315-28;ConradおよびScheller,20
05,Comb.Chem.High Throughput Screen.8:117-26;BrekkeおよびLoset,2003,Curr.Opin.Phamacol.3:544-50)。完全ヒト抗体はまた、遺伝的または染色体トランスフェクション法、ならびにファージディスプレイ技術によって構築することができ、これらのすべては、当分野で公知である。例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552-553(1990)参照。このような完全ヒト抗体は、キメラまたはヒト化抗体よりもさらに少ない副作用を示し、in vivoで実質的に内因性のヒト抗体として機能することが予想される。特定の態様において、特許請求される方法および手順は、このような技術によって産生されるヒト抗体を利用することができる。
【0177】
[00196]1つの代替法において、ファージディスプレイ技術を、ヒト抗体を生じさせる
ために使用してもよい(例えば、Dantas-Barbosa et al.,2005,Genet.Mol.Res.4:126-40)。ヒト抗体は正常ヒトから、または癌のような特定の疾患状態を示すヒトから、生じさせることができる(Dantas-Barbosa et al.,2005)。疾患個体からヒト抗体を構築する利点は、循環抗体レパートリーが疾患関連抗原に対する抗体に偏り得ることである。
【0178】
[00197]この方法論の非限定的な一例において、Dantas-Barbosa et
al.(2005年)は、骨肉腫患者由来のヒトFab抗体フラグメントのファージディスプレイライブラリーを構築した。一般に、全RNAは、循環血液リンパ球から得た(同上)。組換えFabをμ、γおよびκ鎖抗体レパートリーからクローニングし、ファージディスプレイライブラリーに挿入した(同上)。RNAをcDNAに変換し、重鎖および軽鎖免疫グロブリン配列に対する特異的プライマーを使用してFab cDNAライブラリーの作製に使用した(Marks et al.,1991,J Mol.Biol.222:581-97)。ライブラリー構築は、Andris-Widhopf et
al.(2000,PHAGE DISPLAY LABORATORY MANUAL,Barbas et al.(編集),第1版,Cold Spring Harb
or Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y. pp.9.1~9.22)に従って行った。 最終的なFabフラグメントを制限エンドヌクレアーゼで消化し、バクテリオファージゲノムに挿入してファージディスプレイライブラリーを作製した。このようなライブラリーは、当分野で公知のように、標準的なファージディスプレイ法によってスクリーニングすることができる(例えば、PasqualiniおよびRuoslahti,1996,Nature 380:364-366;Pasqualini,1999,The Quart.J.Nucl.Med.43:159-162参照)。
【0179】
[00198]ファージディスプレイは、さまざまなフォーマットで実施することができる。
それらの概説に関しては、例えば、JohnsonおよびChiswell,Current Opinion in Structural Biology 3:5564-571(1993)を参照されたい。ヒト抗体はまた、in vitroで活性化したB細胞により生成することもできる。米国特許第5567610号および第5229275号参照。これらの特許の全体を参照により本明細書中で援用する。当業者なら、これらの技術は例示的であり、ヒト抗体または抗体フラグメントを作製およびスクリーニングするための任意の公知の方法を利用してもよいことを理解するであろう。
【0180】
[00199]他の代替法では、ヒト抗体を産生するために遺伝子操作されたトランスジェニ
ック動物を、標準的な免疫化プロトコルを使用して実質的に任意の免疫原性標的に対する抗体を産生するために、使用することができる。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得るための方法は、Green et al., Nature Genet.7:1
3(1994)、Lonberg et al.,Nature 368:856(19
94)、およびTaylor et al.,Int.Immun.6:579(1994)によって開示されている。このようなシステムの非限定的な例は、Abgenix(Fremont,CA)からのXENOMOUSE(登録商標)(例えば、Green et al.,1999,J.Immunol.Methods 231:11-23)である。XENOMOUSE(登録商標)および同様の動物では、マウス抗体遺伝子が不活性化され、機能的なヒト抗体遺伝子に置き換わっているが、残りのマウス免疫系はそのまま残っている。
【0181】
[00200]XENOMOUSE(登録商標)を、アクセサリー遺伝子および調節配列に沿
って可変領域配列の大部分を包含するヒトIgHおよびIgカッパ遺伝子座の一部を含有する生殖細胞系構成YAC(酵母人工染色体)で形質転換した。ヒト可変領域レパートリーを用いて抗体産生B細胞を生成することができ、これを、公知の技術によってハイブリドーマに処理することができる。標的抗原で免疫化されたXENOMOUSE(登録商標)は正常な免疫応答によってヒト抗体を産生し、これは、上記標準的技術によって採取および/または産生することができる。XENOMOUSE(登録商標)のさまざまな株が利用可能であり、その各々は、異なるクラスの抗体を産生することができる。トランスジェニック的に産生されたヒト抗体は、正常なヒト抗体の薬物動態学的特性を保持しながら、治療可能性を有することが示されている(Green et al.,1999)。当業者なら、特許請求される組成物および方法がXENOMOUSE(登録商標)系の使用に限定されず、ヒト抗体を産生するために遺伝子操作された任意のトランスジェニック動物を利用してもよいことを、理解するであろう。
【0182】
抗体のクローニングおよび産生
[00201]キメラ抗体またはヒト化抗体の産生などのさまざまな技術は、抗体のクローニ
ングおよび構築の手順を包含することができる。目的の抗体に対する抗原結合Vκ(可変軽鎖)およびVH(可変重鎖)配列は、さまざまな分子クローニング手順、例えば、RT-PCR、5’-RACE、およびcDNAライブラリースクリーニングによって得るこ
とができる。マウス抗体を発現する細胞由来の抗体のV遺伝子は、PCR増幅によってクローニングされ、配列決定され得る。その真正性を確認するために、クローニングしたVLおよびVH遺伝子を、Orlandi et al.,(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:3833(1989))によって記載されているように、細胞培養においてキメラ抗体として発現させることができる。次いで、V遺伝子配列に基づき、ヒト化抗体を、Leung et al.(Mol.Immunol.,32:1413(1995))によって記載されるように設計および構築することができる。
【0183】
[00202]cDNAは、一般的な分子クローニング技術によって、マウス抗体を産生する
任意の公知のハイブリドーマ株またはトランスフェクト細胞株から調製することができる(Sambrook et al.,Molecular Cloning,A laboratory manual,第2版(1989))。抗体のVκ配列は、プライマーVK1BACKおよびVK1FOR(Orlandi et al.,1989)またはLeung et al.(BioTechniques,15:286(1993))によって記載されている伸長プライマーセットを使用して、増幅することができる。VH配列は、プライマー対VH1BACK/VH1FOR(Orlandi et al.,1989)、またはLeung et al.(Hybridoma,13:469(1994))によって記載されるマウスIgGの定常領域にアニーリングするプライマーを用いて、増幅することができる。ヒト化V遺伝子は、Leung et al.(Mol.Immunol.,32:1413(1995))によって記載されるように、長いオリゴヌクレオチド鋳型合成およびPCR増幅の組み合わせによって構築することができる。
【0184】
[00203]VκのためのPCR産物は、ステージングベクター(staging vector)にサブク
ローニングすることができる。ステージングベクターは、pBR327に基づくステージングベクターであるVKpBRなどであり、Igプロモーター、シグナルペプチド配列および好都合な制限部位を含有する。VHのPCR産物は、pBluescriptに基づくVHpBSなど同様のステージングベクターにサブクローニングすることができる。プロモーターおよびシグナルペプチド配列と共にVκおよびVH配列を含有する発現カセットを、VKpBRおよびVHpBSから切り出し、適切な発現ベクター、例えば、それぞれ、pKhおよびpG1gに連結することができる(Leung et al.,Hybridoma,13:469(1994))。発現ベクターを適切な細胞に同時トランスフェクトし、上清液を、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体の産生についてモニタリングすることができる。あるいは、VκおよびVH発現カセットを切り出し、Gillie et al.Immunol.Methods 125:191(1989)によって記載され、また、Losman et al.,Cancer,80:2660(1997)に示されているように、単一の発現ベクター、例えばpdHL2中にサブクローニングすることができる。
【0185】
[00204]他の態様において、発現ベクターは、無血清培地中でのトランスフェクション
、成長および発現に予め適合させた宿主細胞にトランスフェクトすることができる。使用することができる代表的な細胞株としては、Sp/EEE、Sp/ESFおよびSp/ESF-X細胞株が挙げられる(例えば、米国特許第7531327号;第7537930号および第7608425号参照;それぞれの実施例の節を、本明細書中で参考として援用する)。これらの代表的な細胞株は、Sp2/0骨髄腫細胞株に基づいており、変異Bcl-EEE遺伝子がトランスフェクトされ、メトトレキサートに暴露してトランスフェクトされた遺伝子配列を増幅し、タンパク質発現のために無血清細胞株に予め適合させる。
【0186】
抗体フラグメント
[00205]特異的エピトープを認識する抗体フラグメントは、公知の技術によって生成す
ることができる。抗体フラグメントは、F(ab’)2、Fab’、F(ab)2、Fab、Fv、scFvなどのような抗体の抗原結合部分である。F(ab’)2フラグメントは抗体分子のペプシン消化によって生成することができ、Fab’フラグメントは、F(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって生成することができる。あるいは、Fab’発現ライブラリーを構築して(Huse et al.,1989,Science,246:1274-1281)、所望の特異性を有するモノクローナルFab’フラグメントの迅速かつ容易な同定を可能にすることができる。F(ab)2フラグメントは、抗体のパパイン消化によって生成することができる。
【0187】
[00206]単鎖Fv分子(scFv)は、VLドメインおよびVHドメインを含む。VL
およびVHドメインは会合して標的結合部位を形成する。これらの2つのドメインは、ペプチドリンカー(L)によってさらに共有結合される。scFv分子を作製し、適切なペプチドリンカーを設計するための方法は、米国特許第4704692号;米国特許第4946778号;RaagおよびWhitlow,FASEB 9:73-80(1995)ならびにBirdおよびWalker,TIBTECH,9:132-137(1991)に記載されている。
【0188】
[00207]単一ドメイン抗体(DABまたはVHH)を産生するための技術はまた、例え
ば、本明細書中で参考として援用するCossins et al.(2006,Prot Express Purif 51:253-259)に開示されるように、当該分野で公知である。単一ドメイン抗体は、例えば、標準的な免疫化技術によってラクダ、アルパカまたはラマから得ることができる。(例えば、Muyldermans et al.,TIBS 26:230-235,2001;Yau et al.,J Immunol Methods 281:161-75,2003;Maass et al.,J Immunol Methods 324:13-25,2007参照)。VHHは、強力な抗原結合能力を有することができ、従来のVH-VL対にはアクセスできない(inacessible)新規エピトープと相互作用することができる。(Muylderman
s et al.,2001)。アルパカ血清IgGは、約50%のラクダ科重鎖のみのIgG抗体(HCAb)を含有する(Maass et al.,2007)。アルパカはTNF-αのような公知の抗原で免疫化することができ、標的抗原に結合して中和するVHHを単離することができる(Maass et al.,2007)。実質的にすべてのアルパカVHHコード配列を増幅するPCRプライマーが同定されており、アルパカVHHファージディスプレイライブラリーを構築するために使用することができ、このライブラリーは、当分野で周知の標準的バイオパニング技術による抗体フラグメント単離に用いることができる(Maass et al.,2007)。特定の態様において、抗膵臓癌VHH抗体フラグメントは、特許請求される組成物および方法において利用することができる。
【0189】
[00208]抗体フラグメントは、全長抗体のタンパク質分解性加水分解によって、または
E.Coliもしくは該フラグメントをコードするDNAの他の宿主における発現によって、調製することができる。抗体フラグメントは、従来法による全長抗体のペプシンまたはパパイン消化によって得ることができる。これらの方法は、例えば、Goldenbergの米国特許第4036945号および第4331647号、ならびにそれらに含まれる参考文献に記載されている。Nisonoff et al.,Arch Biochem.Biophys.89:230(1960);Porter,Biochem.J.73:119(1959)、Edelman et al.,METHODS IN ENZYMOLOGY VOL.1、422頁(Academic Press 1967)、ならびにColigan、2.8.1~2.8.10および2.10.~2.10.4頁も参照されたい。
【0190】
二重特異性抗体
[00209]二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有する
抗体である。この場合、結合特異性の1つは、標的、例えば、CD47またはその任意のフラグメントに対するものである。第2の結合標的は任意の他の抗原であり、有利には、細胞表面タンパク質または受容体または受容体サブユニットである。
【0191】
[00210]二重特異性抗体の作製方法は当分野で公知である。従来、二重特異性抗体の組
換え産生は、2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づいており、これに関し、2つの重鎖は、異なる特異性を有する(MilsteinおよびCuello,Nature,305:537-539(1983))。免疫グロブリン重鎖および軽鎖の分類はランダムなため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10の異なる抗体分子の潜在的な混合物を産生し、そのうちの1つのみが正しい二重特異性構造を有する。正確な分子の精製は、通常、アフィニティークロマトグラフィー工程によって行われる。同様の手順がWO93/08829、およびTraunecker et al.,EMBO
J.,10:3655-3659(1991)に開示されている。
【0192】
[00211]カッパラムダ抗体などの二重特異性抗体は、WO2012/023053に開
示されているものを含む、さまざまな当技術分野で認識されている技術のいずれかを使用して作製することができる、上記特許の内容を、全体として本明細書中で参考として援用する。
【0193】
[00212]二重特異性抗体を産生する他の態様において、望ましい結合特異性を有する抗
体可変ドメイン(抗体-抗原結合部位)を、免疫グロブリン定常ドメイン配列に連結することができる。この融合は、少なくともヒンジの一部、CH2およびCH3領域を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとの融合であることが好ましい。融合体の少なくとも1つに存在する軽鎖の結合に必要な部位を含有する第1の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合体および所望により免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを別個の発現ベクターに挿入し、適切な宿主生物に同時トランスフェクトする。二重特異性抗体を生成するさらなる詳細については、例えば、Suresh et al.,Methods in Enzymology,121:210(1986)を参照のこと。
【0194】
[00213]いくつかの態様において、本明細書中の構築物中の一対の抗体分子間の界面は
、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体のパーセンテージを最大にするように操作することができる。好ましい界面は、IgA抗体定常ドメインのCH3領域の少なくとも一部を包含する。この方法では、第1の抗体分子の界面からの1以上の小さなアミノ酸側鎖を、より大きな側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)で置換する。大きなアミノ酸側鎖をより小さなもの(例えば、アラニンまたはトレオニン)で置換することによって、大きな側鎖(1以上)と同一または同様のサイズの補償的「キャビティー」が、第2の抗体分子の界面上に作り出される。これは、ホモ二量体のような望ましくない他の最終産物よりもヘテロ二量体の収率を増加させる機構を提供する。
【0195】
[00214]抗体フラグメントから二重特異性抗体を生成するための技術は、文献に記載さ
れている。例えば、二重特異性抗体は化学的連結を用いて調製することができる。生じた二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための薬剤として用いることができる。
【0196】
[00215]組換え細胞培養物から直接的に二重特異性抗体フラグメントを作成し、それを
単離するさまざまな技術も記載されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを用いて産生されている。Kostelny et al.,J.Immunol.
148(5):1547-1553(1992)。FosおよびJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドを、遺伝子融合によって2つの異なる抗体のFab’部分に連結した。抗体ホモ二量体をヒンジ領域で還元してモノマーを形成した後、再酸化して抗体ヘテロ二量体を形成する。この方法は、抗体ホモ二量体の産生にも利用することができる。Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA
90:6444-6448(1993)によって記載された「ダイアボディ」技術は、二重特異性抗体フラグメントを作製するための代替的機構を提供した。フラグメントは、同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーによって軽鎖可変ドメイン(VL)に接続されている重鎖可変ドメイン(VH)を含む。したがって、1つのフラグメントのVHおよびVLドメインは、もう1つのフラグメントの相補的VLおよびVHドメインと強制的に対合し、それにより、2つの抗原-結合部位を形成する。単一鎖Fv(sFv)二量体の使用によって二重特異性抗体フラグメントを作成するための他の戦略も報告されている。Gruber et al.,J.Immunol.152:5368(1994)を参照のこと。
【0197】
[00216]2を超える価数を持つ抗体が考えられる。例えば、三重特異性抗体を調製する
ことができる。Tutt et al.,J.Immunol.147:60(1991)。代表的な二重特異性抗体は2つの異なるエピトープに結合することができ、その少なくとも1つは本発明のタンパク質抗原に由来する。あるいは、免疫グロブリン分子の抗抗原アームを、T細胞受容体分子(例えば、CD2、CD3、CD28、またはB7)のような白血球上のトリガー分子、またはFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)およびFcγRIII(CD16)のようなIgG(FcγR)に対するFc受容体に結合するアームと組み合わせて、特定の抗原を発現する細胞に細胞防御機構を集中させることができる。二重特異性抗体を用いて、特定の抗原を発現する細胞に細胞毒性薬を誘導することもできる。これらの抗体は、抗原結合アームと、EOTUBE、DPTA、DOTA、またはTETAなどの細胞毒性薬または放射性核種キレート剤に結合するアームとを有する。対象となる他の二重特異性抗体は、本明細書中に記載されるタンパク質抗原に結合し、そしてさらに組織因子(TF)に結合する。
【0198】
[00217]抗体フラグメントの化学的架橋、強制的ヘテロ二量体化、クアドローマ技術、
ポリペプチドリンカーを介した抗体フラグメントの融合、および単一ドメイン抗体の使用などのいくつかの戦略が、このような二重特異性分子を生成するために使用されてきた。組換えDNA技術の利用可能性は、多数の二重特異性抗体フォーマットの生成をもたらした(例えば、Ridgway JB et al.,(1996)Protein Eng 9:617-621参照)。リンカーおよび変異は、しばしば抗体の異なる領域に導入されて、ヘテロ二量体を強制的に形成するか、または異なる結合部分を単一分子に接続している。
【0199】
化学的架橋
[00218]2つの抗体を共有結合させるための化学的架橋試薬の使用は、概念的に簡単な
アプローチである。酵素消化によってそれぞれの親抗体から生成された抗体フラグメント、または組換え技術によって生成された抗体フラグメントを、二官能性試薬を使用して接合させる(Glennie MJ et al.,J Exp Med 1992;175:217-225)。二重特異性種はホモ二量体から精製されなければならず、修飾工程はタンパク質の完全性および安定性を変化させる可能性があるので、生成物の均一性はこのアプローチの主な限界である。
【0200】
クアドローマ
[00219]クアドローマおよびトリオーマは、それぞれ、2つのハイブリドーマまたは1
つのハイブリドーマのいずれかをBリンパ球と融合させることによって生成することがで
きる(Suresh MR et al.,Methods Enzymol 1986;121:210-228)。この場合、2つの重鎖および2つの軽鎖の同時発現は、10の抗体の組合せのランダムアセンブリーをもたらし、所望の二重特異性抗体は、分泌された抗体のごく一部を示すに過ぎない。二重特異性抗体は、クロマトグラフィー技術の組み合わせを用いて精製しなければならず、産生収率が劇的に低下する。主要な制限は、クアドローマはげっ歯類起源の二重特異性抗体をもたらし、免疫原性の問題により治療可能性が制限される点である。
【0201】
組換え二重特異性抗体
[00220]二重特異性抗体フォーマットの大部分は、ポリペプチドリンカーを介して接続
されるビルディングブロックとしてscFvまたはFabフラグメントのような抗体フラグメントを使用する遺伝子工学技術によって、生成することができる。連結された抗体フラグメントに基づくフォーマットとしては、タンデムscFv(BiTE)、ダイアボディおよびタンデム-ダイアボディが挙げられる(Kipriyanov SM.Methods Mol Biol 2003;207:323-333;Korn T et al.,Int J Cancer 2002;100:690-697)。これらの構築ブロックは、「IgA様」分子を生じる免疫グロブリンFc領域にさらに連結することができる。これらのフォーマットとしては、ダイアボディ-Fc、タンデムダイアボディ-Fc、タンデムダイアボディ-CH3、(scFv)4-FcおよびDVD-Igが挙げられる(Lu D et al.,J Immunol Methods 2003;279:219-232;Lu D et al.,J Biol Chem 2005;280:19665-19672;Lu D et al.,J Biol Chem
2004;279:2856-2865;Wu C et al.,Nat Biotechnol 2007 25:1290-7)。
【0202】
[00221]2つの重鎖のヘテロ二量体化の強制に基づく戦略が探求されてきた。第1のア
プローチは、「ノブ-イントゥ-ホール」という造語で表され、接触界面を改変するためにCH3ドメインに変異を導入することによって、2つの異なるIgG重鎖の対合を強制することを目標とする(Ridgway JB et al.,Protein Eng
1996;9:617-621)。大きな側鎖を有するのアミノ酸を1つの鎖上に導入して、「ノブ」を作り出した。反対に、バルキーなアミノ酸を短い側鎖を有するアミノ酸で置き換えて、他のCH3ドメイン中に「ホール」を作り出した。これら2つの重鎖を同時発現させることによって、ホモ二量体形成(「ホール-ホール」または「ノブ-ノブ」)に対して90%を超えるヘテロ二量体形成(「ノブ-ホール」)が観察された。同様の概念が、ヒトIgGおよびヒトIgA配列に基づく鎖交換操作ドメイン(SEED)ヒトCH3ドメインを使用して開発された(Davis JH et al.,2010,PEDS 23:195-202)。これらの操作ドメインは、2つの異なる特異性を持つことができるヘテロ二量体分子の形成をもたらす。
【0203】
[00222]最近、「ノブ・イントゥ・ホール」アプローチの改良である「CrossMa
b」が、WO2009/080253 Alに記載されている。この方法は、「ノブ・イ
ントゥ・ホール」変異に加えて、軽鎖および重鎖ドメインのいくつかの交換を包含する。
【0204】
[00223]単一ドメインベースの抗体。ラクダ科(ラマおよびラクダ)および軟骨魚類(
テンジクザメ)の免疫系は、Fcに融合した単一のVドメインを使用し、単一のドメインが抗原に高い親和性結合を与えることができることを示している。ラクダ科、サメ、さらにはヒトのVドメインは、抗体の代替物に相当するが、bsAbの生成にも使用されている。これらは正統的なIgGに再フォーマットすることができ、各アームは、そのVHまたはVLドメインのいずれかを介して2つの標的に結合する可能性を有する。
【0205】
[00224]本開示の二重特異性抗体は、本出願において開示されるか、またはそわなけれ
ば当分野において公知の任意のプロセスによって、作製することができる。
二重可変ドメイン免疫グロブリン
[00225]二重特異性抗体は個々にコードされたペプチドまたは「セグメント」を含むこ
とができ、これは、単一の連続鎖において、コンパクトな三次構造を含む。成分ペプチドは、自己会合してホモ多量体を形成するのではなく、むしろ相補的に会合して、親三次構造に似た安定な複合体を採用するように、それらの想定される構造において非対称であるように選択する。遺伝的レベルでは、これらのセグメントは、適した制限部位をもつ互換可能なカセットによってコードされている。これらの標準化されたカセットは、適切な発現ベクター系においてリンカーまたはヒンジを介して異なる組換えタンパク質にC末端またはN末端で融合される。ホモ二量体としてアセンブルする能力を有さないポリペプチドセグメントは、コンパクトな三次構造を有する親ポリペプチドを切断することによって誘導される。次いで、これらのポリペプチドセグメントは、遺伝子レベルで1以上の異なる機能性ドメインに融合されることができる。この時点で1以上の機能性ドメインに融合されているこれらの異なるポリペプチドセグメントは、例えば、同時発現されて、機能性ドメインに付着した天然様親構造の形成をもたらすことができる。この親構造は、元の親ポリペプチドに由来するポリペプチドセグメントの二量体化によって形成される。得られる多機能構築物は、1以上の機能性ドメインに付着したコンパクトな三次構造として現れる。いったん構造サブドメインが同定されると、タンパク質は、これらのサブドメインがそのまま維持されるような方法で解体される。本開示の一部として、DNA配列、ベクター、好ましくはバイシストロニックベクター、ベクターカセットを作製することができ、これらは、アミノ酸配列をコードするDNA配列、および所望により、本発明の多機能性ポリペプチドに含まれる少なくとも1つのさらなる(ポリ)ペプチド、および追加的に、少なくとも1つのさらなる機能性ドメインをコードするDNAを挿入するための少なくとも1つの好ましくは単一のクローニング部位を含むか、あるいは、アミノ酸配列をコードするDNA配列、および所望により、本発明の多機能性ポリペプチドに含まれるさらなる(ポリ)ペプチド(1以上)、および機能性ドメインをコードするDNA配列をクローニングするための適切な制限部位を含み、その結果、適切な宿主において、機能性ドメインをコードするDNA配列を前記制限部位に挿入した後にDNA配列を発現させると、本発明の多機能性ポリペプチドを形成することができることを、特徴とすることができる。前記ベクターカセットは、前記機能性ドメイン(1以上)をコードする挿入DNA配列(1以上)と、前記二重特異性または多機能性ポリペプチドの調製に使用することができる本発明の少なくとも1つのベクターまたはベクターカセットで形質転換された宿主細胞とを含むことを特徴とする。宿主細胞は、哺乳類、好ましくはヒト、酵母、昆虫、植物または細菌、好ましくはE.coli細胞であることができる。二重特異性抗体は、適切な培地中で本発明の少なくとも2つの宿主細胞を培養し、これに関し、前記宿主細胞はそれぞれ、少なくとも1つのさらなる機能性ドメインに付着している前記第1および前記第2のアミノ酸配列のうちの1つのみを産生する;該アミノ酸配列を回収し;穏やかな変性条件下でそれを混合し;そして、前記アミノ酸配列からの本発明の多機能性ポリペプチドのin vitroでの折り畳みを可能にする;ことを含む方法によって調製され得る。本方法は、少なくとも1つのさらなる機能性ドメインに付着しているさらなるアミノ酸配列が、前記第1または第2のアミノ酸配列を産生しない少なくとも1つのさらなる宿主細胞によって産生されることを、特徴とすることができる。さらに、本方法は、少なくとも1つのさらなる機能性ドメインに付着した少なくとも1つのさらなるアミノ酸配列が、前記第1または第2のアミノ酸配列を産生する本発明の宿主細胞によって産生されることを、特徴とすることができる。
【0206】
[00226]本明細書中に記載される抗体構築物の第2または第1の部分のいずれかが2つ
の抗体可変ドメインを含む場合、これらの2つの抗体可変ドメインは、互いに会合するVHドメインおよびVLドメインであることができる。しかしながら、第2または第1の部
分のいずれかに含まれる2つの抗体可変ドメインは、互いに会合する2つのVHドメインまたは2つのVL領域であってもよいことも企図される。第1または第2の部分の2つの抗体可変ドメインが互いに共有結合的に会合している場合、2つの抗体可変ドメインはscFvフラグメントとして設計することができ、これは、2つのドメインが、これら2つのドメイン間の分子間会合を可能にするのに十分な長さのペプチドリンカーによって互いに分離されていることを意味する。この目的に適したリンカーの設計は、従来技術、例えば、取得特許EP623679B1、米国特許第5258498号、EP573551B1および米国特許第5525491号の従来技術に記載されている。言い換えれば、二重特異性抗体は、合計3つの抗体可変ドメインを有する構築物であることができる。抗体可変ドメインの1つは、単独で、すなわち、他の抗体可変ドメインと対合することなく、(a)ヒト免疫エフェクター細胞上のエフェクター抗原に特異的に結合することによってヒト免疫エフェクター細胞に、または標的細胞に、特異的に結合する。一方、残りの2つの抗体可変ドメインは、一緒に、それぞれ(b)標的細胞上の標的抗原に、またはヒト免疫エフェクター細胞上のエフェクター抗原に特異的に結合することによってヒト免疫エフェクター細胞に、特異的に結合する。この場合、二重特異性抗体における3つの抗体可変ドメインの存在は、独特の利点を伴う。しばしば、標的抗原に望ましい結合特異性を示すscFvは既に公知で最適化されており、その2つの抗体可変ドメインのうちの1つを削除することは、その結合特性を消失させるか、または少なくとも弱めるであろう。このようなscFvは、本明細書中に記載される抗体構築物の一部を構成し得る。具体的には、このような3ドメイン抗体は、そのエフェクター抗原付与部分または標的抗原付与部分のいずれかとして、scFv全体を有利に含むことができる。次いで、効果的に、これは、1つの追加的抗体可変ドメインのみをscFvと同じポリペプチド鎖へ単純に組み込むことによって、望ましいscFvから出発して二重特異性抗体が形成されることを可能にし、これに関し、組み込まれる1つの追加的抗体可変ドメインは、scFvのそれとは異なる抗原結合特異性を有する。二重特異性抗体の第1および第2の部分は、合成ポリペプチドスペーサー部分によって互いに分離されていてもよく、このスペーサー部分は、第1の部分のC末端を第2の部分のN末端と、または第2の部分のC末端を第1の部分のN末端と、共有結合的(すなわち、ペプチド結合的)に連結する。このように、これらの二重特異性抗体の部分は、N-(第1の部分)-(第2の部分)-CまたはN-(第2の部分)-(第1の部分)-Cのいずれかとして配置されることができる。いくつかの態様において、第2の特異性の結合部位は、重鎖または軽鎖のN末端またはC末端に、例えば、scFvフラグメントまたは可変単一ドメインの形態で融合されて、二重特異性四価分子を生じる。scFvフラグメントのmAbへの融合によって生成される二重特異性分子は、高い柔軟性を示す。ScFv分子は、一般に産生性または抗原結合活性を損なうことなく、mAbの重鎖または軽鎖可変ドメインのN末端のみならずC末端にも連結することができる。この群の二重特異性分子はDVD-Igも包含し、これに関し、第2のVHおよびVLドメインは、mAb、第2の特異性がIgG分子の天然結合部位に導入されるツー・イン・ワン(two-in-one)抗体、および、第2の特異性がFc領域のCH3ドメインに構築されるmAb2分子の重鎖および軽鎖にそれぞれ融合される。これらすべての分子の特徴は、これらの鎖の固有特性である2つの同一重鎖の二量体アセンブリーに起因する対称性である。
【0207】
[00227]重鎖ヘテロ二量体化は、荷電CH3界面を操作して静電ステアリング効果(electrostatic steering effect)を導入することによって、またはヒトIgAおよびIgGからの交互セグメントで構成されるCH3配列での鎖交換操作ドメイン技術(SEEDbody)を使用することによって、達成することができる。二重特異性IgG様分子とは対照的に、これらの二重特異性抗体は、IgGと基本的に同一のサイズを有する二価である。Fcヘテロ二量体化は近年、操作された重鎖(HA-TF Fcバリアント)のC末端にVHおよびVLドメインを融合させる三価の二重特異性分子を生成するために施用された。50~100kDaの範囲の分子質量を有する二重特異性抗体は、2つの抗体の可変
ドメインを組み合わせることによって生成することができる。例えば、2つのscFvは、程度の差はあるがフレキシブルなペプチドリンカーによってタンデム配向(タンデムscFv、taFv、tascFv)で接続されており、これは、追加的なscFvによってさらに伸長されて、例えば、二重特異性または三重特異性のトリプルボディ(triple body)(sctb)を生成することができる。ダイアボディは、VHA-VLBおよびVH
B-VLAの順序(VH-VL配向)またはVLA-VHBおよびVLB-VHAの順序(VL-VH配向)のいずれかで配置された2つの抗体の可変ドメインで構成されるヘテロ二量体分子である。1つの鎖内の2つのドメインを接続するリンカーは、約5残基であり、1つの細胞内での2つの鎖の同時発現後に、ヘッド・トゥ・テール・アセンブリー (head-to-tail assembly)、したがって、2つの機能性結合部位を有するコンパクトな分子の形成をもたらす。ダイアボディ(Db)フォーマットは、鎖間ジスルフィド結合(dsDb、DART分子)を導入することによって、または単鎖誘導体(scDb)を生成することによって、さらに安定化された。ScDbを、中間リンカーを還元することによって四価分子に変換して、2つの鎖のホモ二量体化をもたらすことができる。小二重特異性分子はまた、scFvをFabフラグメントの重鎖または軽鎖に融合させることによっても産生されている。さらに、タンデムscFv、ダイアボディおよびscDbをFcまたはCH3ドメインに融合させて、四価誘導体を生成している。また、scFvをFcまたはCH3ドメインと組み合わせて、例えば、scFvをFcフラグメントのN末端およびC末端に融合させるか、あるいはノブ・イントゥ・ホールアプローチを用いて二価scFv-FcまたはscFv-CH3分子を生成して、四価分子を生成することができる。本発明の二重特異性抗体を生成するための異なるアプローチは、ドック・アンド・ロック(dock-and-lock)法(DNL)である。ここで、抗体フラグメントは、ヒトcAMP依存性
プロテインキナーゼA(PKA)由来のホモ二量体化ドッキングドメイン(DDD)およびAキナーゼアンカータンパク質(AKAP)由来のアンカー化ドメイン(AD)に融合されて、二重特異性の三価分子の形成をもたらす。確立された二重特異性抗体フォーマットの多くはまた、さらなるタンパク質および成分、例えば、薬物、毒素、酵素およびサイトカインと組み合わせて、融合パートナーの二重標的化および送達を可能にすることができる。さらに、血清アルブミンまたはアルブミン結合部分などの血漿タンパク質への融合を施用して、二重特異性抗体の血漿半減期を延長することができる。二重特異性抗体の構造
[00228]一例において、二重特異性抗体は、第1のポリペプチド鎖を含む結合タンパク
質であることができ、これに関し、ポリペプチド鎖は、VD-H1-(X1)n-VD-H2-C-(X2)n[式中、VD-H1は第1の重鎖可変ドメインであり、VD-H2は第2の重鎖可変ドメインであり、Cは定常ドメインであり、X1はポリペプチドリンカーを表し、X2はIgA Fc領域を表し、nは0または1である]を含む。いくつかの態様において、結合タンパク質中のVD-H1およびVD-H2は、マウス重鎖可変ドメイン、ヒト重鎖可変ドメイン、CDR移植重鎖可変ドメイン、およびヒト化重鎖可変ドメインからなる群より選択される重鎖可変ドメインであることができる。VD-H1およびVD-H2は、異なる抗原と結合できる可能性がある。Cは重鎖定常ドメインであることができる。例えば、X1はリンカーペプチドである。例えば、X1は、本明細書中に挙げるリンカーである。一態様において、X2はIgA Fc領域である。他の態様において、X2はバリアントIgA Fc領域である。いくつかの態様において、VD-H1はCD47に結合することができ、VD-H2は抗原に結合することができる。いくつかの態様において、VD-H1は抗原に結合することができ、VD-H2はCD47に結合することができる。
【0208】
[00229]一例において、二重特異性抗体は、第2のポリペプチド鎖を含む結合タンパク
質であることができ、これに関し、ポリペプチド鎖は、VD-L1-(X1)n-VD-L2-C-(X2)n[式中、VD-L1は第1の軽鎖可変ドメインであり、VD-L2は第2の軽鎖可変ドメインであり、Cは定常ドメインであり、X1はポリペプチドリンカ
ーを表し、X2はIgA Fc領域を表し、nは0または1である]を含む。いくつかの態様において、結合タンパク質中のVD-L1およびVD-L2は、マウス軽鎖可変ドメイン、ヒト軽鎖可変ドメイン、CDR移植軽鎖可変ドメイン、およびヒト化軽鎖可変ドメインからなる群より選択される軽鎖可変ドメインであることができる。VD-L1およびVD-L2は、異なる抗原に結合できる可能性がある。Cは重鎖定常ドメインであることができる。例えば、X1はリンカーペプチドである。例えば、X1は、本明細書中に挙げるリンカーである。一態様において、X2はIgA Fc領域である。他の態様において、X2はバリアントIgA Fc領域である。いくつかの態様において、VD-L1はCD47に結合することができ、VD-L2は抗原に結合することができる。いくつかの態様において、VD-L1は抗原に結合することができ、VD-L2はCD47に結合することができる。いくつかの態様において、二重特異性抗体構築物は、第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖の両方を含む。本開示の二重特異性抗体は、Jakob 2013に記載されているような二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD-IgTM)であることができ、これは、フレキシブルな天然に存在するリンカーを介して2つのモノクローナル抗体の標的結合ドメインを組み合わせ、四価のIgG様分子をもたらす。
【0209】
[00230]本発明はさらに、CD47の親抗体および望ましい抗原(例えば、CD20)
を予め選択することによって、DVD-Ig結合タンパク質を作製する方法を提供する。2つの抗原を結合する二重可変ドメイン免疫グロブリンの作製方法は、a)第1の抗原に結合する第1の親抗体またはその抗原結合部分を得る段階;b)第2の抗原に結合する第2の親抗体またはその抗原結合部分を得る段階;c)第1のポリペプチド鎖の2つのコピーを構築する段階、これに関し、該コピーはそれぞれ、VD1-(X1)n-VD2-C-(X2)n[式中、VD1は、前記第1の親抗体またはその抗原結合部分から得られる第1の重鎖可変ドメインであり;VD2は、前記第2の親抗体またはその抗原結合部分から得られる第2の重鎖可変ドメインであり、第2の親抗体は、第1の親抗体と同じまたは異なっていることができる;Cは重鎖定常ドメインであり;(X1)nはリンカーであり、前記(X1)nは、存在するか存在しないかのいずれかであり;そして(X2)nはIgA Fc領域である]を含む;d)第2のポリペプチド鎖の2つのコピーを構築する段階、これに関し、該コピーはそれぞれ、VD1-(X1)n-VD2-C-(X2)n[式中、VD1は、前記第1の親抗体またはその抗原結合部分から得られる第1の軽鎖可変ドメインであり;VD2は、前記第2の親抗体またはその抗原結合部分から得られる第2の軽鎖可変ドメインであり、第2の親抗体は、第1の親抗体と同じまたは異なっていることができる;Cは軽鎖定常ドメインであり;(X1)nはリンカーであり、前記(X1)nは、存在するか存在しないかのいずれかであり;そして(X2)nはIgA Fc領域を含まず、前記(X2)nは、存在するか存在しないかのいずれかである]を含む;そしてe)前記第1および第2のポリペプチド鎖の2つのコピーを発現させる段階;を含み、その結果、前記第1の抗原(例えばCD47)および前記第2の抗原(例えばCD20)に結合するDVD-Igが生じる。
【0210】
抗原結合ドメインおよび/またはCD47結合ドメインの生成:
[00231]DVD結合タンパク質の可変ドメインは、目的の抗原に結合するポリクローナ
ルおよびモノクローナル抗体などの親抗体から得ることができる。これらの抗体は、天然に存在していてもよく、または組換え技術によって生成してもよく、またはde novoで設計してもよい。MAbは、ハイブリドーマ、組換え、およびファージディスプレイ技術、またはそれらの組み合わせの使用を含む、当分野で公知の多種多様な技術を使用して調製することができる。モノクローナル抗体は、本明細書中に開示される方法によって調製することができる。
【0211】
[00232]二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD-Ig)分子は、2つの異なる親モ
ノクローナル抗体由来の2つの異なる軽鎖可変ドメイン(VL)が、直接的にタンデムに
、または組換えDNA技術により短いリンカーを介して連結され、続いて軽鎖定常ドメイン、および所望によりFc領域が連結されるように設計される。同様に、重鎖は、タンデムに連結された2つの異なる重鎖可変ドメイン(VH)、続いて定常ドメインCH1およびFc領域を含む。可変ドメインは、本明細書に記載の方法のいずれか1つによって生成された親抗体から組換えDNA技術を用いて得ることができる。可変ドメインは、マウス重鎖または軽鎖可変ドメイン、CDR、ヒト重鎖または軽鎖可変ドメインであることができる。第1および第2の可変ドメインは、組換えDNA技術を用いて互いに直接的に連結することができ、リンカー配列を介して連結することができく、または、2つの可変ドメインは連結される。可変ドメインは、同じ抗原に結合することができ、または異なる抗原に結合することができる。定常ドメインは、組換えDNA技術を使用して、2つの連結された可変ドメインに連結することができる。連結された重鎖可変ドメインを含む配列は、重鎖定常ドメインに連結することができ、連結された軽鎖可変ドメインを含む配列は、軽鎖定常ドメインに連結される。定常ドメインはまた、それぞれヒト重鎖定常ドメインおよびヒト軽鎖定常ドメインであることができる。DVD重鎖は、IgA Fc領域にさらに連結することができる。Fc領域は、天然配列Fc領域、またはバリアントFc領域、またはヒトFc領域、またはIgA1、IgA2由来のFc領域であることができる。2つの重鎖DVDポリペプチドおよび2つの軽鎖DVDポリペプチドを組み合わせて、DVD-Ig分子を形成することができる。
【0212】
[00233]本発明の「二重特異的(dual-specific)多価全長結合タンパク質」の設計は、主に望ましい「二重特異的多価全長結合タンパク質」にアセンブルする二重可変ドメイン軽鎖および二重可変ドメイン重鎖をもたらす。
【0213】
DVD分子の構築
[00234]二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD-Ig)分子は、同じであっても異
なっていてもよい2つの親モノクローナル抗体由来の2つの異なる軽鎖可変ドメイン(VL)が、直接的にタンデムに、または組換えDNA技術により短いリンカーを介して連結され、続いて軽鎖定常ドメイン、および所望によりIgA Fc領域が連結されるように設計される。同様に、重鎖は、タンデムに連結された2つの異なる重鎖可変ドメイン(VH)、続いて定常ドメインCH1およびIgA Fc領域を含む。
【0214】
[00235]可変ドメインは、本明細書に記載の方法のいずれか1つによって生成された親
抗体から組換えDNA技術を用いて得ることができる。一態様において、可変ドメインはマウス重鎖または軽鎖可変ドメインである。他の態様において、可変ドメインは、CDR移植またはヒト化可変重鎖もしくは軽鎖ドメインである。一態様において、可変ドメインはヒト重鎖または軽鎖可変ドメインである。
【0215】
[00236]一態様において、第1および第2の可変ドメインは、組換えDNA技術を用い
て互いに直接的に連結される。他の態様において、可変ドメインは、リンカー配列を介して連結される。一態様では、2つの可変ドメインが連結される。3つ以上の可変ドメインも、直接またはリンカー配列を介して連結することができる。可変ドメインは、同じ抗原に結合することができ、または異なる抗原に結合することができる。本発明のDVD-Ig分子は、1つの免疫グロブリン可変ドメインおよび1つの非免疫グロブリン可変ドメイン、例えば、受容体のリガンド結合ドメイン、または酵素の活性ドメインを包含することができる。DVD-Ig分子はまた、2以上の非Igドメインを含むことができる。
【0216】
[00237]1つの態様において、定常ドメインは、組換えDNA技術を使用して、2つの
連結された可変ドメインに連結される。一態様において、連結された重鎖可変ドメインを含む配列は重鎖定常ドメインに連結され、連結された軽鎖可変ドメインを含む配列は軽鎖定常ドメインに連結される。一態様において、定常ドメインは、それぞれヒト重鎖定常ド
メインおよびヒト軽鎖定常ドメインである。一態様において、DVD重鎖はさらに、Fc領域に連結される。Fc領域は、天然配列Fc領域、またはバリアントFc領域であることができる。他の態様において、Fc領域はヒトFc領域である。他の態様において、Fc領域としては、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、またはIgD由来のFc領域が挙げられる。
【0217】
[00238]他の態様では、2つの重鎖DVDポリペプチドおよび2つの軽鎖DVDポリペ
プチドを組み合わせて、DVD-Ig分子を形成する。
[00239]本発明の結合タンパク質は、当分野で公知のいくつかの技術のいずれかによっ
て産生させることができる。例えば、宿主細胞からの発現、これに関し、DVD重鎖およびDVD軽鎖をコードする発現ベクター(1以上)は、標準的な技術によって宿主細胞にトランスフェクトされる。「トランスフェクション」という用語のさまざまな形態は、原核生物または真核生物宿主細胞への外因性DNAの導入に一般的に使用される広範な技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクションなどを包含することが意図される。本発明のDVDタンパク質を原核生物または真核生物宿主細胞のいずれかで発現させることは可能であるが、DVDタンパク質は真核細胞、例えば哺乳類宿主細胞において発現される。これは、そのような真核細胞(および特に哺乳類細胞)は、原核細胞よりも、適切に折りたたまれた免疫学的に活性なDVDタンパク質をアセンブルし、分泌する可能性が高いからである。
【0218】
[00240]本発明の組換え抗体を発現するための代表的な哺乳類宿主細胞としては、チャ
イニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えば、UrlaubおよびChasin,(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216-4220に記載されているdhfr-CHO細胞を、例えば、Kaufman,R.J.およびSharp,P.A.(1982)Mol.Biol.159:601-621に記載されるようなDHFR選択可能マーカーと一緒に使用する)、NS0骨髄腫細胞、COS細胞、SP2およびPER.C6細胞が挙げられる。DVDタンパク質をコードする組換え発現ベクターを哺乳類宿主細胞に導入する場合、宿主細胞内でのDVDタンパク質の発現、または宿主細胞が成長する培地中へのDVDタンパク質の分泌を可能にするのに十分な時間にわたり、宿主細胞を培養することによって、DVDタンパク質を産生する。DVDタンパク質は、標準的なタンパク質精製方法を用いて培養培地から回収することができる。
【0219】
[00241]本明細書中に記載される構築物におけるDVDタンパク質の組換え発現のため
の代表的なシステムでは、DVD重鎖およびDVD軽鎖の両方をコードする組換え発現ベクターを、リン酸カルシウム媒介トランスフェクションによってdhfr-CHO細胞に導入する。組換え発現ベクター内で、DVD重鎖および軽鎖遺伝子はそれぞれ、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター調節要素にオペレート可能(operatively)に連結さ
れ、遺伝子の高レベルの転写を促進する。組換え発現ベクターはDHFR遺伝子も有し、これにより、メトトレキサート選択/増幅を用いてベクターでトランスフェクトされたCHO細胞の選択が可能になる。選択された形質転換宿主細胞を培養して、DVD重鎖および軽鎖の発現を可能にし、完全なままのDVDタンパク質を培養培地から回収する。標準的な分子生物学的技術を用いて、組換え発現ベクターを調製し、宿主細胞をトランスフェクトし、形質転換体を選択し、宿主細胞を培養し、そして培養培地からDVDタンパク質を回収する。さらに、本発明は、本発明のDVDタンパク質が合成されるまで、適切な培養培地中で本発明の宿主細胞を培養することによって、本発明のDVDタンパク質を合成する方法を提供する。この方法はさらに、培養培地からのDVDタンパク質の単離を含むことができる。
【0220】
[00242]DVD-Igの重要な特徴は、従来の抗体と同様の方法で産生および精製する
ことができる点である。DVD-Igの産生は、定常領域の配列改変またはあらゆる種類
の化学修飾なしに、望ましい二重特異的活性を有する均質な単一の主要産物を生じる。先に記載した、「二重特異性」、「多重特異性」および「多重特異性多価」全長結合タンパク質を生成するための他の方法は、単一の一次産物をもたらさず、代わりに、異なる結合部位の組み合わせを有する、アセンブルされた不活性タンパク質、単一特異性タンパク質、多重特異性タンパク質、多価タンパク質、全長結合タンパク質、および多価全長結合タンパク質の混合物の細胞内産生または分泌産生をもたらす。一例として、MillerおよびPresta(PCT公開番号WO2001/077342(A1))によって記載された設計に基づき、重鎖および軽鎖には16の可能な組み合わせが存在する。その結果、他の15の可能な組み合わせと比較して、ほんの6.25%のタンパク質だけが、単一の主要産物または単一の一次産物としてではなく、望ましい活性形態にある可能性がある。大規模製造で典型的に使用される標準的なクロマトグラフィー技術を使用して、不活性および部分的に活性な形態のタンパク質から、望ましい完全に活性な形態のタンパク質を分離することは、まだ実証されていない。
【0221】
[00243]本明細書に記載の構築物で使用するための「二重特異的多価全長結合タンパク
質」の設計は、主に望ましい「二重特異的多価全長結合タンパク質」にアセンブルする二重可変ドメイン軽鎖および二重可変ドメイン重鎖をもたらす。
【0222】
[00244]アセンブルされ、発現された二重可変ドメイン免疫グロブリン分子の少なくと
も50%、少なくとも75%、および少なくとも90%が、望ましい二重特異的四価タンパク質である。本発明のこの観点は、とりわけ本発明の商業的有用性を高める。したがって、本発明は、単一細胞中で二重可変ドメイン軽鎖および二重可変ドメイン重鎖を発現させて、「二重特異的四価全長結合タンパク質」の単一の一次産物をもたらす方法を包含する。
【0223】
[00245]本明細書中に、二重可変ドメイン軽鎖および二重可変ドメイン重鎖を単一細胞
中で発現させて、「二重特異的四価全長結合タンパク質」の「一次産物」をもたらす方法であって、「一次産物」が、二重可変ドメイン軽鎖および二重可変ドメイン重鎖を含む、すべてのアセンブルされたタンパク質の50%を超える方法を提供する。
【0224】
[00246]本明細書中に、二重可変ドメイン軽鎖および二重可変ドメイン重鎖を単一細胞
中で発現させて、「二重特異的四価全長結合タンパク質」の「一次産物」をもたらす方法であって、「一次産物」が、二重可変ドメイン軽鎖および二重可変ドメイン重鎖を含む、すべてのアセンブルされたタンパク質の75%を超える方法を提供する。
【0225】
[00247]本明細書中に、二重可変ドメイン軽鎖および二重可変ドメイン重鎖を単一細胞
中で発現させて、「二重特異的四価全長結合タンパク質」の「一次産物」をもたらす方法であって、「一次産物」が、二重可変ドメイン軽鎖および二重可変ドメイン重鎖を含む、すべてのアセンブルされたタンパク質の90%を超える方法を提供する。
【0226】
カッパラムダ体
[00248]いくつかの態様において、カッパ-ラムダ抗体フォーマットの二重特異性抗体
を、本明細書に提供する。本明細書中に提供される二重特異性抗体は、共通の重鎖、2つの軽鎖-1つのカッパ(K)、1つのラムダ(λ)-を有し、後者はそれぞれ、異なる特異性(すなわち、2つの軽鎖、2つの特異性)を有する。本明細書中に提供される方法は、多様性がVL領域に制限される特異的結合を有する分子を産生する。これらの方法は、3つの鎖(1つのVH鎖、2つのVL鎖)の制御された同時発現、および二重特異性抗体の精製を介して、二重特異性抗体を産生する。
【0227】
[00249]このタイプの分子は、特有の重鎖ポリペプチドの2つのコピー、定常カッパド
メインに融合された第1の軽鎖可変領域、および定常ラムダドメインに融合された第2の軽鎖可変領域で構成される。各結合部位は、重鎖および軽鎖の両方が寄与する異なる抗原特異性を示す。軽鎖可変領域はラムダまたはカッパファミリーであることができ、好ましくは、それぞれ、ラムダおよびカッパ定常ドメインに融合される。これは、非天然ポリペプチド接合の生成を回避するために好ましい。しかしながら、第1の特異性のためにカッパ軽鎖可変ドメインを定常ラムダドメインに融合させ、第2の特異性のためにラムダ軽鎖可変ドメインを定常カッパドメインに融合させることによって、本発明の二重特異性抗体を得ることも可能である。
【0228】
[00250]本方法に必須の工程は、同じ重鎖可変ドメインを共有し異なる抗原特異性を有
する2つの抗体Fv領域(それぞれ可変軽鎖および可変重鎖ドメインによって構成される)の同定である。モノクローナル抗体およびそのフラグメントの生成に関し、多くの方法が記載されている。(例えば、Antibodies:A Laboratory Manual,Harlow E,およびLane D,1988,Cold Spring
Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY参照。これを、本明細書中に参考として援用する)。完全ヒト抗体は、CDR1および2を含む軽鎖および重鎖の両方の配列がヒト遺伝子に由来する抗体分子である。CDR3領域は、ヒト由来であることができ、または合成的手段によって設計することができる。このような抗体を、本明細書では「ヒト抗体」または「完全ヒト抗体」とよぶ。ヒトモノクローナル抗体は、トリオーマ技術;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al.,1983 Immunol Today 4:72参照);およびヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBVハイブリドーマ技術(Cole et
al.,1985:MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY,Alan R. Liss,Inc.,77-96頁参照)を使用することによって調製することができる。ヒトモノクローナル抗体を利用することができ、これは、ヒトハイブリドーマを使用することによるか(Cote et al.,1983.Proc Natl Acad Sci USA 80:2026-2030参照)、またはin vitroでヒトB細胞をエプスタイン・バー・ウイルスで形質転換することによって(Cole et al.,1985:MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY,Alan R.Liss,Inc.,77-96頁参照)産生することができる。
【0229】
[00251]モノクローナル抗体は、例えば、標的抗原またはその免疫原性フラグメント、
誘導体もしくはバリアントで動物を免疫化することによって生成される。あるいは、標的抗原をコードする核酸分子を含有するベクターでトランスフェクトされた細胞を用いて、トランスフェクト細胞の表面で標的抗原が発現され、会合するように、動物を免疫する。異種非ヒト動物を産生するためのさまざまな技術が、当分野で周知である。例えば、米国特許第6075181号および第6150584号参照。これらの全体を、本明細書中で参考として援用する。
【0230】
[00252]あるいは、抗体は、標的抗原に結合するための抗体または抗原結合ドメイン配
列を含有するライブラリーをスクリーニングすることによって得られる。このライブラリーは、例えば、バクテリオファージ中で、アセンブルされたファージ粒子の表面に発現されるバクテリオファージコートタンパク質とのタンパク質またはペプチド融合物として調製され、コードDNA配列は、ファージ粒子内に含有されている(すなわち、「ファージディスプレイライブラリー」)。
【0231】
[00253]次いで、骨髄腫/B細胞融合から得たハイブリドーマを、標的抗原に対する反
応性についてスクリーニングする。モノクローナル抗体は、例えば、KohlerおよびMilstein,Nature,256:495(1975)によって記載されている
ようなハイブリドーマ法を用いて調製する。ハイブリドーマ法では、マウス、ハムスター、または他の適切な宿主動物を、典型的には免疫化剤で免疫化して、免疫化剤に特異的に結合する抗体を産生するか、産生することができるリンパ球を惹起する。あるいは、リンパ球をin vitroで免疫化することができる。
【0232】
[00254]同じ重鎖可変ドメインを有するカッパ-ラムダ抗体は、重鎖可変ドメインがす
べてのライブラリーメンバーについて同じであり、したがって多様性が軽鎖可変ドメインに制限される抗体ライブラリーを使用することによって、生成することができる。このようなライブラリーは、例えば、WO2010/135558に記載されている。しかしながら、軽鎖可変ドメインは重鎖可変ドメインと関連して発現されるので、両方のドメインが抗原結合に寄与し得る。このプロセスをさらに容易にするために、同じ重鎖可変ドメインおよび多様なラムダ可変軽鎖またはカッパ可変軽鎖のいずれかを含有する抗体ライブラリーを、異なる抗原に対する抗体のin vitro選択のために並行して使用することができる。このアプローチにより、共通の重鎖を有するが、一方はラムダ軽鎖可変ドメインを有し、他方は、本発明の完全免疫グロブリンフォーマットにおける二重特異性抗体の生成のための構築ブロックとして用いることができるカッパ軽鎖可変ドメインを有する、2つの抗体の同定が可能になる。本発明の二重特異性抗体は、IgAアイソタイプであることができ、それらのFc部分は、異なるFc受容体への結合特性を変更するために改変することができ、このようにして、抗体のエフェクター機能ならびにその薬物動態特性を改変することができる。Fc部分の改変のための多数の方法が記載されており、本発明の抗体に施用可能である(例えば、Strohl,WR Curr Opin Biotechnol 2009(6):685-91参照)。
【0233】
[00255]本発明の他の重要な工程は、共通の重鎖および2つの異なる軽鎖の単一細胞へ
の同時発現を最適化して、本発明の二重特異性抗体のアセンブリーを可能にすることである。すべてのポリペプチドが同じレベルで発現され、同等に良好にアセンブルされて免疫グロブリン分子を形成する場合、単一特異性(同じ軽鎖)および二重特異性(2つの異なる軽鎖)の比率は50%であるべきである。
【0234】
[00256]重鎖および2つの軽鎖の同時発現は、細胞培養物の上清中に3つの異なる抗体
、すなわち、2つの単一特異性二価抗体と1つの二重特異性二価抗体の混合物を生成する。後者は、目的の分子を得るために混合物から精製しなければならない。本明細書に記載の方法は、この精製手順を、CaptureSelect Fab KappaおよびCaptureSelect Fab Lambda親和性マトリックス(BAC BV,オランダ)のようなカッパまたはラムダ軽鎖定常ドメインと特異的に相互作用するアフィニティークロマトグラフィー媒体の使用により、著しく促進する。この多段階アフィニティークロマトグラフィー精製アプローチは効率的であり、一般に本発明の抗体に施用可能である。これは、抗体混合物を発現するクアドローマまたは他の細胞株に由来する二重特異性抗体それぞれについて開発および最適化しなければならない特異的精製方法とは、明らかに対照的である。実際、混合物中の異なる抗体の生化学的特性が同様である場合、イオン交換クロマトグラフィーのような標準的なクロマトグラフィー技術を使用する分離は、困難であるか、または全く不可能であり得る。
【0235】
[00257]3つの鎖の同時発現は、3つの異なる抗体、すなわち、2つの単一特異性抗体
および1つの二重特異性抗体のアセンブリーをもたらした。それらの理論的相対比は、発現レベルおよびアセンブリー速度が両方の軽鎖について同様であるという条件で、1:1:2であるべきである。二重特異性抗体を、3段階アフィニティークロマトグラフィー手順を用いて精製した:(1)Protein A:IgA(モノ-およびビ-)を補足、(2)Kappa select:カッパ軽鎖(1以上)を含有するIgAを補足、および(3)Lambda select:ラムダ軽鎖を含有するIgGを捕捉。Kappa
selectおよびLambdaselectは、BAC、BVおよびGE Healthcareによって開発されたアフィニティークロマトグラフィー用媒体である。
【0236】
[00258]精製された二重特異性抗体は、以下のように特徴付けられた。各アフィニティ
ー精製工程からのフロースルーおよび溶離を、SDS-PAGEによって分析した。κλ-ボディの特異性および親和性を、ELISAおよび表面プラズモン共鳴によって決定した。本発明の方法は、最適化なしで、サブナノモルからナノモル範囲の親和性を有する抗体の同定を可能にする。本明細書中に記載される抗体ライブラリーにおける多様性は、標準的な抗体における結合エネルギーにあまり寄与しない軽鎖に制限されるので、これは明白ではない。
【0237】
[00259]カッパ型およびラムダ型の軽鎖可変ドメインを有する2つの抗体へのアクセス
の必要性が、本発明に対する制限として認識されることを回避するために、本明細書に記載される方法は、ラムダ可変ドメインをカッパ定常ドメインに融合させることができ、反対にカッパ可変ドメインがラムダ定常ドメインに融合させることができる、ハイブリッド軽鎖の生成を可能にする。いくつかの態様において、二重特異性および/または多重特異性抗体の生成方法は、完全に無血清で化学的に規定されたプロセスを使用する。これらの方法は、製薬産業において最も広く使用されている哺乳類細胞株、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株を組み込む。そこに記載されている方法は、半安定性および安定性細胞株の両方を生成するために使用される。本方法は、本発明の二重特異性および/または多重特異性抗体を、小規模(例えば、三角フラスコ中)および中規模(例えば、25L Waveバッグ中)で製造するために使用することができる。本方法はまた、本発明の抗体混合物と同様に、二重特異性および/または多重特異性抗体のより大規模な生産にも容易に施用可能である。
【0238】
代表的な抗体構築物
[00260]いくつかの態様において、CD47結合領域は、(a)配列番号4のアミノ酸
配列を含むCDR-H1;(b)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2;(c)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される少なくとも1つ、2つ、または3つのCDRを含む、第1の重鎖可変ドメインを含む。
【0239】
[00261]いくつかの態様において、CD47結合領域は、(a)配列番号7のアミノ酸
配列を含むCDR-H1;(b)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H2;(c)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される少なくとも1つ、2つ、または3つのCDRを含む、第1の重鎖可変ドメインを含む。
【0240】
[00262]いくつかの態様において、CD47結合領域は、(a)配列番号13のアミノ
酸配列を含むCDR-L1;(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される少なくとも1つ、2つ、または3つのCDRを含む、第1の軽鎖可変ドメインを含む。
【0241】
[00263]いくつかの態様において、CD47結合領域は、(a)配列番号16のアミノ
酸配列を含むCDR-L1;(b)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および(c)配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される少なくとも1つ、2つ、または3つのCDRを含む、第1の軽鎖可変ドメインを含む。
【0242】
[00264]いくつかの態様において、CD47結合領域は、(a)配列番号4のアミノ酸
配列を含むCDR-H1;(b)配列番号5のアミノ酸配列を含むCDR-H2;(c)配列番号6のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される少なくとも1つ、2つ、または3つのCDRを含む第1の重鎖可変ドメインと、(a)配列番号13のアミノ酸配列
を含むCDR-L1;(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および(c)配列番号15のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される少なくとも1つ、2つ、または3つのCDRを含む第1の軽鎖可変ドメインとを含む。
【0243】
[00265]いくつかの態様において、CD47結合領域は、(a)配列番号7のアミノ酸
配列を含むCDR-H1;(b)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H2;(c)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される少なくとも1つ、2つ、または3つのCDRを含む第1の重鎖可変ドメインと、(a)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(b)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および(c)配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される少なくとも1つ、2つ、または3つのCDRを含む第1の軽鎖可変ドメインとを含む。
【0244】
[00266]いくつかの態様において、CD47結合領域は、配列番号23のアミノ酸配列
に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する第1の重鎖可変配列を含む。
【0245】
[00267]いくつかの態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94
%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する第1の重鎖可変配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、該配列を含む抗体またはその抗原結合フラグメントは、抗原に結合する能力を保持する。いくつかの態様では、全部で1~10個のアミノ酸が、配列番号23のアミノ酸配列において置換、挿入および/または欠失されている。いくつかの態様において、置換、挿入、または欠失はCDRの外側の領域(例えば、FR中)で起こる。所望により、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列の翻訳後修飾を含む、配列番号23のアミノ酸配列のVH配列を含む。
【0246】
[00268]いくつかの態様において、CD47結合領域は、配列番号26のアミノ酸配列
に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する第1の軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。いくつかの態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、該配列を含む抗体またはその抗原結合フラグメントは、抗原に結合する能力を保持する。いくつかの態様では、全部で1~10個のアミノ酸が、配列番号26のアミノ酸配列のいずれか1つにおいて置換、挿入および/または欠失されている。いくつかの態様において、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域(例えば、FR中)で起こる。所望により、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列の翻訳後修飾を含む、配列番号26のVL配列を含む。
【0247】
[00269]いくつかの態様において、CD47結合領域は、配列番号23の第1の重鎖可
変ドメインアミノ酸配列と、配列の翻訳後修飾を含む、配列番号26での第1の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列とを含む。
【0248】
[00270]いくつかの態様において、CD47結合領域は、配列番号24のアミノ酸配列
に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する第1の重鎖可変配列を含む。
【0249】
[00271]いくつかの態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94
%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する第1の重鎖可変配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが
、該配列を含む抗体またはその抗原結合フラグメントは、抗原に結合する能力を保持する。いくつかの態様では、全部で1~10個のアミノ酸が、配列番号24のアミノ酸配列において置換、挿入および/または欠失されている。いくつかの態様において、置換、挿入、または欠失はCDRの外側の領域(例えば、FR中)で起こる。所望により、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列の翻訳後修飾を含む、配列番号27のアミノ酸配列のVH配列を含む。
【0250】
[00272]いくつかの態様において、CD47結合領域は、配列番号27のアミノ酸配列
に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する第1の軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。いくつかの態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、該配列を含む抗体またはその抗原結合フラグメントは、抗原に結合する能力を保持する。いくつかの態様では、全部で1~10個のアミノ酸が、配列番号27のアミノ酸配列のいずれか1つにおいて置換、挿入および/または欠失されている。いくつかの態様において、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域(例えば、FR中)で起こる。所望により、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列の翻訳後修飾を含む、配列番号27のVL配列を含む。
【0251】
[00273]いくつかの態様において、CD47結合領域は、配列番号24の第1の重鎖可
変ドメインアミノ酸配列と、配列の翻訳後修飾を含む、配列番号27での第1の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列とを含む。
【0252】
[00274]いくつかの態様において、抗原結合領域は、(a)配列番号1のアミノ酸配列
を含むCDR-H1;(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H2;(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される少なくとも1つ、2つ、または3つのCDRを含む、第2の重鎖可変ドメインを含む。
【0253】
[00275]いくつかの態様において、抗原結合領域は、(a)配列番号10のアミノ酸配
列を含むCDR-H1;(b)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-H2;(c)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される少なくとも1つ、2つ、または3つのCDRを含む、第2の重鎖可変ドメインを含む。
【0254】
[00276]いくつかの態様において、抗原結合領域は、(a)配列番号1のアミノ酸配列
を含むCDR-H1;(b)配列番号2のアミノ酸配列を含むCDR-H2;(c)配列番号3のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される少なくとも1つ、2つ、または3つのCDRを含む第2の重鎖可変ドメインと、(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(b)配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および(c)配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される少なくとも1つ、2つ、または3つのCDRを含む第2の第1の軽鎖可変ドメインとを含む。
【0255】
[00277]いくつかの態様において、抗原結合領域は第2の重鎖可変ドメインを含む。
[00278]いくつかの態様において、抗原結合領域は、配列番号22のアミノ酸配列に対
して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する第2の重鎖可変配列を含む。
【0256】
[00279]いくつかの態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94
%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する第2の重鎖可変配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが
、該配列を含む抗体またはその抗原結合フラグメントは、抗原に結合する能力を保持する。いくつかの態様では、全部で1~10個のアミノ酸が、配列番号22のアミノ酸配列において置換、挿入および/または欠失されている。いくつかの態様において、置換、挿入、または欠失はCDRの外側の領域(例えば、FR中)で起こる。所望により、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列の翻訳後修飾を含む、配列番号22のアミノ酸配列のVH配列を含む。
【0257】
[00280]いくつかの態様において、抗原結合領域は、配列番号25のアミノ酸配列に対
して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する第2の軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。いくつかの態様において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、該配列を含む抗体またはその抗原結合フラグメントは、抗原に結合する能力を保持する。いくつかの態様では、全部で1~10個のアミノ酸が、配列番号25のアミノ酸配列のいずれか1つにおいて置換、挿入および/または欠失されている。いくつかの態様において、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域(例えば、FR中)で起こる。所望により、抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列の翻訳後修飾を含む、配列番号25のVL配列を含む。
【0258】
[00281]いくつかの態様において、抗原結合領域は、配列番号22の第2の重鎖可変ド
メインアミノ酸配列と、配列の翻訳後修飾を含む、配列番号25での第2の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列とを含む。
【0259】
[00282]いくつかの態様において、CD47結合領域が表AからのCDRを含み、抗原
結合領域が表BからのCDRを含む構築物を、本明細書中に記載する。これらのCDRおよび結合領域は、標的抗原提示細胞に免疫エフェクター細胞を補充するのに望ましい結合プロフィールを達成するために、文献において公知の他のものと置換することができる。
【0260】
代表的なDVD Ig抗体
[00283]いくつかの態様において、抗体構築物は、第2の重鎖可変ドメインのC末端が
第1の重鎖可変ドメインのN末端に連結しているポリペプチドを含む。いくつかの態様において、連結はリンカーペプチドを介する。いくつかの態様において、リンカーペプチドは、配列番号44のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、第2の重鎖可変ドメインのC末端が第1の重鎖可変ドメインのN末端に連結しているポリペプチドは、配列番号29のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドのC末端は、IgA定常重鎖をコードするアミノ酸配列に連結している。
【0261】
[00284]いくつかの態様において、抗体構築物は、第2の軽鎖可変ドメインのC末端が
第1の軽鎖可変ドメインのN末端に連結しているポリペプチドを含む。いくつかの態様において、連結はリンカーペプチドを介する。いくつかの態様において、リンカーペプチドは、配列番号44のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、第2の軽鎖可変ドメインのC末端が第1の軽鎖可変ドメインのN末端に連結しているポリペプチドは、配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチド
のC末端は、IgA定常重鎖をコードするアミノ酸配列に連結している。
【0262】
[00285]いくつかの態様において、二重特異性抗体は、配列番号29のアミノ酸配列と
少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドと、配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドとを含む。
【0263】
[00286]いくつかの態様において、二重特異性抗体は、第1の重鎖可変ドメインのC末
端が第2の重鎖可変ドメインのN末端に連結していることを含む第1のポリペプチドを含む。いくつかの態様において、連結はリンカーペプチドを介する。いくつかの態様において、リンカーペプチドは、配列番号44のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、第1の重鎖可変ドメインのC末端が第2の重鎖可変ドメインのN末端に連結していることを含むポリペプチドは、配列番号30のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドのC末端は、IgA定常重鎖をコードするアミノ酸配列に連結している。
【0264】
[00287]いくつかの態様において、二重特異性抗体は、第1の軽鎖可変ドメインのC末
端が第2の軽鎖可変ドメインのN末端に連結していることを含む第1のポリペプチドを含む。いくつかの態様において、連結はリンカーペプチドを介する。いくつかの態様において、リンカーペプチドは、配列番号44のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、第1の軽鎖可変ドメインのC末端が第2の軽鎖可変ドメインのN末端に連結していることを含むポリペプチドは、配列番号32のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様において、ポリペプチドのC末端は、IgA定常重鎖をコードするアミノ酸配列に連結している。
【0265】
[00288]いくつかの態様において、二重特異性抗体は、配列番号30のアミノ酸配列と
少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む第1のポリペプチドと、配列番号32のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む第2のポリペプチドとを含む。
【0266】
[00289]いくつかの態様において、抗体構築物は、軽鎖または重鎖可変ドメインに連結
されたscFvを含む第1のポリペプチドを含む。いくつかの態様において、連結はリンカーペプチドを介する。いくつかの態様において、リンカーペプチドは、配列番号44または配列番号45のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0267】
[00290]いくつかの態様において、scFvは、第2の重鎖可変ドメインおよび第2の
軽鎖可変ドメインを含み、第1の軽鎖可変ドメインに連結している。いくつかの態様において、第1の軽鎖可変ドメインに連結しているscFv(例えば、第2の重鎖可変ドメイ
ンおよび第2の軽鎖可変ドメインを含む)を含む第1のポリペプチドは、配列番号35のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である配列を含む。
【0268】
[00291]いくつかの態様において、scFvは、第2の重鎖可変ドメインおよび第2の
軽鎖可変ドメインを含み、第1の重鎖可変ドメインに連結している。いくつかの態様において、第1の重鎖可変ドメインに連結しているscFv(例えば、第2の重鎖可変ドメイ
ンおよび第2の軽鎖可変ドメインを含む)を含む第1のポリペプチドは、配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である配列を含む。
【0269】
[00292]いくつかの態様において、scFvは、第1の重鎖可変ドメインおよび第1の
軽鎖可変ドメインを含み、第2の軽鎖可変ドメインに連結している。いくつかの態様において、第2の軽鎖可変ドメインに連結しているscFv(例えば、第1の重鎖可変ドメイ
ンおよび第1の軽鎖可変ドメインを含む)を含む第1のポリペプチドは、配列番号36のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である配列を含む。
【0270】
[00293]いくつかの態様において、scFvは、第1の重鎖可変ドメインおよび第1の
軽鎖可変ドメインを含み、第2の重鎖可変ドメインに連結している。いくつかの態様において、第2の重鎖可変ドメインに連結しているscFv(例えば、第1の重鎖可変ドメインおよび第1の軽鎖可変ドメインを含む)を含む第1のポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である配列を含む。
【0271】
代表的なカッパラムダ体
[00294]いくつかの態様において、抗体構築物(例えば、カッパ-ラムダ体)は、カッ
パ型またはラムダ型の第1の軽鎖可変ドメイン、およびカッパ型またはラムダ型の第2の軽鎖可変ドメインを含む。いくつかの態様において、抗体構築物(例えば、カッパ-ラムダ体)は、カッパ型の第1の軽鎖可変ドメインおよびラムダ型の第2の軽鎖可変ドメインを含む。いくつかの態様において、抗体構築物(例えば、カッパ-ラムダ体)は、ラムダ型の第1の軽鎖可変ドメインおよびラムダ型の第2の軽鎖可変ドメインを含む。いくつかの態様において、CD47結合領域は、(a)配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-L1;(b)配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および(c)配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される少なくとも1つ、2つ、または3つのCDRを含む、第1の軽鎖可変ドメインを含む。いくつかの態様において、CD47結合領域は、配列番号27のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する第1の軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。
【0272】
[00295]いくつかの態様において、抗原結合ドメインは、(a)配列番号19のアミノ
酸配列を含むCDR-L1;(b)配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR-L2;および(c)配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-L3から選択される少なくとも1つ、2つ、または3つのCDRを含む、第2の軽鎖可変ドメインを含む。いくつかの態様において、抗原結合ドメインは、配列番号28のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する第1の軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。
【0273】
[00296]いくつかの態様において、第1の軽鎖可変ドメインはさらに、軽鎖定常ドメイ
ンを含む。いくつかの態様において、第2の軽鎖可変ドメインはさらに、軽鎖定常ドメイ
ンを含む。いくつかの態様において、軽鎖定常ドメインはカッパ型のものである。いくつかの態様において、軽鎖定常ドメインはラムダ型のものである。いくつかの態様において、軽鎖定常ドメインは、配列番号42のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むカッパ型のものである。いくつかの態様において、軽鎖定常ドメインは、配列番号43のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むラムダ型のものである。
【0274】
[00297]いくつかの態様において、抗体構築物は、第1の重鎖可変ドメインおよび第2
の重鎖可変ドメインを含み、第1の重鎖可変ドメインおよび第2の重鎖可変ドメインは同じである。いくつかの態様において、第1の重鎖可変ドメインおよび第2の重鎖可変ドメインは、(a)配列番号7のアミノ酸配列を含むCDR-H1;(b)配列番号8のアミノ酸配列を含むCDR-H2;(c)配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H3から選択される少なくとも1つ、2つ、または3つのCDRを含む。いくつかの態様において、第1の重鎖可変ドメインおよび第2の重鎖可変ドメインは、配列番号24のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0275】
[00298]いくつかの態様において、本明細書中の抗体構築物は、IgA重鎖定常領域を
含む。いくつかの態様において、IgA重鎖定常領域は、配列番号37のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの態様において、IgA重鎖定常領域は、配列番号38のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの態様において、IgA重鎖定常領域は、配列番号39のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの態様において、IgA重鎖定常領域は、配列番号40のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの態様において、IgA重鎖定常領域は、配列番号41のアミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0276】
IgA定常領域
[00299]一態様において、本開示の二重特異性IgA抗体は、完全なIgA重鎖定常ド
メインを含む。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインは、2つの重鎖間に非対称界面を作り出すための1以上の改変を含む。
【0277】
[00300]用語「非対称界面」は、第1および第2のIgA重鎖定常領域のような2つの
抗体鎖の間、および/またはIgA重鎖定常領域とその適合軽鎖との間に形成される界面(上記で定義されている)をさすために使用され、これに関し、第1および第2の鎖中の接触残基は設計によって異なり、相補的な接触残基を含む。非対称界面は、ノブ/ホール相互作用および/または塩橋カップリング(電荷スワップ)および/または当技術分野で公知の他の技術、例えば重鎖をその適合する軽鎖に結合するためのCrossMabアプローチによって作り出すことができる。「キャビティー」または「ホール」は、第2のポリペプチドの界面から窪んでいるため、第1のポリペプチドの隣接する界面上の対応する突起(「ノブ」)を収容する、少なくとも1つのアミノ酸側鎖をさす。キャビティー(ホ
ール)は元の界面に存在することができ、または合成的に導入することができる(例えば、界面をコードする核酸を改変することによって)。通常、第2のポリペプチドの界面をコードする核酸は、キャビティをコードするように改変される。これを達成するために、第2のポリペプチドの界面における少なくとも1つの「元の」アミノ酸残基をコードする核酸は、元のアミノ酸残基よりも小さい側鎖体積を有する少なくとも1つの「インポート(import)」アミノ酸残基をコードするDNAで置換される。元の残基および対応するインポート残基が1より多く存在することは、理解されるであろう。置換されてい元の残基の数の上限は、第2のポリペプチドの界面における残基の総数である。キャビティーの形成に好ましいインポート残基は、通常、天然に存在するアミノ酸残基であり、好ましくは、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、バリン(V)およびグリシン(G)から選択される。最も好ましいアミノ酸残基はセリン、アラニンまたはトレオニンであり、最も好ましくはアラニンである。好ましい態様において、突起の形成のための元の残基は、チロシン(Y)、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)またはトリプトファン(W)など、大きな側鎖容積を有する。
【0278】
[00301]「元の」アミノ酸残基は、元の残基よりも小さいまたは大きい側鎖体積を有す
ることができる「インポート」残基によって置換されるものである。インポートアミノ酸残基は天然に存在するか、または天然に存在しないアミノ酸残基であり得るが、好ましくは前者である。
【0279】
[00302]「天然に存在しない」アミノ酸残基とは、遺伝暗号によってコードされていな
いが、ポリペプチド鎖中の隣接するアミノ酸残基(1以上)に共有結合することができる残基を意味する。天然に存在しないアミノ酸残基の例はノルロイシン、オルニチン、ノルバリン、ホモセリン、および、例えば、Eilman et al Enzym.202:301-336(1991)に記載されているような他のアミノ酸残基類似体である。このような天然に存在しないアミノ酸残基を生成するために、Noren et al,Science 244:182(1989)および上記Eilman et al.の手順を使用することができる。手短に述べると、これは、天然に存在しないアミノ酸残基でサプレッサーtRNAを化学的に活性化した後、in vitroでRNAを転写および翻訳することを含む。本発明の方法は、特定の態様において、IgM重鎖中の少なくとも1つの元のアミノ酸残基を置換することを含むが、1より多くの元の残基を置換することができる。通常、第1または第2のポリペプチドの界面における全部以下の残基が、置換されている元のアミノ酸残基を含む。置換に好ましい元の残基は「埋め込まれ(buried)」ており、「埋め込まれる」は、残基が実質的に溶媒に接近できないことを意味する。好ましいインポート残基は、ジスルフィド結合の考えうる酸化または誤対合を防止するために、システインではない。突起はキャビティー内に「位置決め可能」であり、これは、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドそれぞれの界面上の突起およびキャビティーの空間的位置、ならびに突起およびキャビティーのサイズが、界面での第1および第2のポリペプチドの正常な会合を著しく混乱させることなく、突起をキャビティー内に位置決めすることができるようなものであることを意味する。Tyr、Phe、およびTrpなどの突起は、典型的には界面の軸から垂直に延在せず、好ましい立体配座を有するので、対応するキャビティーとの突起のアラインメントは、X線結晶学または核磁気共鳴(NMR)によって得られるような三次元構造に基づいて突起/キャビティー対をモデル化することに依存する。これは、分子モデリングの技術を含む、当技術分野で広く受け入れられている技術を使用して達成することができる。
【0280】
[00303]「元の核酸」とは、突起またはキャビティーをコードするように「改変」(す
なわち、遺伝子操作または変異)することができる目的のポリペプチドをコードする核酸を意味する。元の、または出発時の核酸は、天然に存在する核酸であることができ、または予め改変を受けた核酸を含むことができる(例えば、ヒト化抗体フラグメント)。核酸
を「改変する」とは、元の核酸が、目的のアミノ酸残基をコードする少なくとも1つのコドンを挿入、欠失または置換することによって変異されることを意味する。通常、元の残基をコードするコドンは、インポート残基をコードするコドンによって置換される。このようにDNAを遺伝的に修飾するための技術は、Mutagenesis:a Practical Approach.M,J.McPherson,編集.(IRL Press,Oxford.英国(1991)に概説されており、例えば、部位特異的変異誘発、カセット変異誘発およびポリメラーゼ連鎖反応(PGR)変異誘発を包含する。
【0281】
[00304]突起またはキャビティーは、合成的手段、例えば、組換え技術、in vit
roペプチド合成、前述の天然に存在しないアミノ酸残基の導入技術、ペプチドの酵素的または化学的カップリング、またはこれらの技術のいくつかの組合せによって、第1または第2のポリペプチドの界面に「導入」することができる。したがって、「導入される」突起またはキャビティーは、「天然に存在しない」または「非天然」であり、このことは、それが天然に、たは元のポリペプチド(例えば、ヒト化モノクローナル抗体)中に、存在しないことを手段する。
【0282】
[00305]好ましくは、突起を形成するためのインポートアミノ酸残基は、比較的少数の
「回転異性体」(例えば、約3~6)を有する。「回転異性体」は、アミノ酸側鎖のエネルギー的に好ましい立体配座である。さまざまなアミノ酸残基の回転異性体の数。
【0283】
[00306]さらなる態様において、本発明の多重特異性IgA抗体は、完全な天然J鎖を
含む。J鎖はIgAの重合を促進し、これらのポリマー中でのその存在がSC/plgRに対するそれらの親和性に必要であると考えられるので、SlgAの生成において重要なタンパク質である。本明細書中の多重特異性IgA抗体は、I鎖フラグメント、または他の方法で修飾されたJ鎖を、フラグメントまたは修飾されたJ鎖が、特にIgAの効率的な重合および分泌成分(SC)/ポリマー(p)IgRへのそのようなポリマーの結合を可能にする天然のJ鎖の機能を保持する限り、含むことができる。J鎖の構造-機能関係のさらなる詳細については、例えば、Johansen et al.,2001 ; j.Immunol,167(9):5185-5192参照。
【0284】
[00307]2つの異なる重鎖を有するIgA分子を生成するために(すなわち、結合nn
ltの少なくとも1つが二重特異性である場合)、2つの異なる結合特異性を有する2つの適合する重鎖を互いにカップリングするための溶液を見出さなければならない。さらに、結合領域を形成するために軽鎖が必要とされる場合、溶液は、所望の結合特異性を提供するために、各重鎖をその適合する軽鎖とカップリングさせることが見出されなければならない。
【0285】
[00308]カップリングは、特定の残基間の塩橋対電荷スイッチング(電荷スワップまた
は電荷反転ともよばれる)によって、および/または2つの鎖間にノブ-ホール相互作用を作り出すことによって、達成することができる。重鎖はまた、CrossMab技術を使用することによって、それらの適合する軽鎖と対合させることもできる。最適な結果を達成するために、異なるアプローチを組み合わせることもできる。
【0286】
ノブ-イントゥ-ホール技術
[00309]本発明の五量体または六量体二重特異性結合分子の収率を改善するために、I
gA重鎖定常領域、例えばCH3ドメインを、「ノブ-イントゥ-ホール」技術によって改変することができる。この技術は、WO96/02701 1、Ridgway,J.,B.,et al.,Protein Eng 9(1996)617-621;および、Merchant,A.M.et al.Nat Biotechno).16(1998)677-681において、いくつかの例と共に詳細に記載されている。この方法
において、2つのIgA重鎖定常ドメインの相互作用表面は、異なる結合特異性を有する2つの重鎖のヘテロ二量体化、および/または重鎖とその適合する軽鎖との間のヘテロ二量体化が増加するように改変される。2つの重鎖ドメインの各々は「ノブ」であることができ、他方は「ホール」である。ジスルフィド架橋の導入は、ヘテロ二量体を安定化させ(Merchant,A.M.s et al.,Nature Biotech 16(1998)677-681;Atwell,S.,et al.,J. Moi.Biol.270(1997)26-35)、収率を上昇させる。同様に、適合する重鎖および軽鎖は、この技術によって互いにカップリングすることができる(Zhu,Z.;Presta,L.G.;Zapata,G.;Carter,P.Remodeling domain interfaces to enhance heterodimer
formation. Prof Sci.6:781-788(1997))。
【0287】
[00310]このアプローチに続いて、二重特異性IgA抗体内の他の重鎖の対応するドメ
インの元の界面に合う1つの重鎖のCo.(例えば、Ca3)ドメインの元の界面内で、アミノ酸残基は、より大きな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置換されて、それにより界面内に突起を作り出す可能性がある。この突起は、他のIgA重鎖定常領域における対応するドメインの界面内のキャビティーに位置決めされる。同様に、第2のIgA重鎖は、第1のIgA重鎖の定常領域中に対応するドメインを有する界面内のアミノ酸残基を、より小さな側鎖体積を有するアミノ酸残基と置換することによって、改変することができ、それによって、2つの重鎖領域間の界面内にホール(キャビティー)が作り出される。
塩橋対電荷スイッチング(電荷スワッピング)
[00311]反対の電荷は互いに引きつけ、同様の電荷は互いに反発する。アミノ酸分子の
電荷はpH依存性であり、アルファアミノ基(N)、アルファカルボキシ基(C)および遊離アミノ酸の側鎖について決定されるpK値によって特徴付けることができる。アミノ酸がタンパク質またはペプチドの一部である場合、局所的環境が側鎖のpHを変化させる可能性がある。
【0288】
[00312]アミノ酸分子の電荷特性は等電点(pi)によって特徴付けることもでき、等
電点は、分子の全体的電荷が中性であるときのpHである。アミノ酸は側鎖において互いに異なるので、piは側鎖のpKの違いを反映する。
【0289】
[00313]ほとんどのアミノ酸(20のうち15)は、6に近いpiを有するので、それ
らは中性の全体的電荷を有するとみなされる。AspおよびGluは負に帯電し、His、Lys、Argは正に帯電している。
【0290】
[00314]これらの変異の1以上、または変異のセットは、2つの異なるIgA重鎖間お
よび/またはIgA重鎖とその適合する軽鎖との間に所望の非対称界面を提供するために、ノブ-ホール変異の1以上のセットと組み合わせることができる。
【0291】
[00315]好ましくは、2つの異なるIgA重鎖定常領域間の非対称界面は、1つのIg
A重鎖における最大8、例えば、1~8、または1~7、または1~6、または1~5、または1~4、または1~3、または1~2個の変異か、2つのIgA重鎖における2~10、または2~9、または2~8、または2~7、または2~6、または2~5、または2~4、または2~3の組み合わされた変異によって、作り出される。
CrossMab技術
[00316]上記のように、ノブ-イントゥ-ホール技術たは電荷スワッピングは、抗体重
鎖のヘテロ二量体化を可能にする。軽鎖およびそれらの同族重鎖の的確な会合は、二重特異性抗体結合単位の半分の抗原結合フラグメント(Fab)内の重鎖および軽鎖ドメインの交換によって、達成することができる。完全なVH-CHおよびVL-CLドメインの交差、VHおよびVLドメインのみの交差、またはigA抗体の二重特異性結合単位の半
分内のCAおよびCLドメインの交差として起こり得る。この「交差」は、抗原結合親和性を保持するが、軽鎖の誤対合がもはや起こらないように2つのアームを相違させる。詳細については、IgG抗体の文脈において、例えば、Sehaeffer et al., (2011)Proc Natl AcadSci USA 108(27):11187-11192参照。
【0292】
免疫コンジュゲート
[00317]特定の態様において、抗体またはそのフラグメントは、1以上の治療薬または
診断薬にコンジュゲートすることができる。治療薬は同じである必要はなく、異なるもの、例えば、薬物および放射性同位体であってもよい。例えば、131Iは、抗体または融合タンパク質のチロシンおよびリジン残基のイプシロンアミノ基に付着している薬物に、組み込まれることができる。治療薬および診断薬はまた、例えば、還元SH基および/または炭水化物側鎖に付着させることができる。治療薬または診断薬と抗体または融合タンパク質との共有結合または非共有結合コンジュゲートを作製するための多くの方法は、当該分野で公知であり、任意のこのような公知の方法を利用することができる。
【0293】
[00318]治療薬または診断薬は、ジスルフィド結合形成を介して還元抗体成分のヒンジ
領域に付着させることができる。あるいは、このような薬剤は、ヘテロ二官能性架橋剤、例えば、N-スクシニル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)を使用して付着させることができる。Yu et al.,Int.J.Cancer 56:
244(1994)。このようなコンジュゲーションのための一般的な技術は、当分野で周知である。例えば、Wong,CHEMISTRY OF PROTEIN CONJUGATION AND CROSS-LINKING(CRC Press 1991);Upeslacis et al.,“Modification of Antibodies by Chemical Methods”,MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND APPLICATIONS,Birch et al.(編集),187~230頁(Wiley-Liss,Inc.1995);Price,“Production and Characterization of Synthetic Peptide-Derived Antibodies”,MONOCLONAL ANTIBODIES:PRODUCTION,ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION,Ritter et al.(編集),60~84頁(Cambridge University Press 1995)参照。あるいは、治療薬または診断薬は、抗体のFc領域において炭水化物部分を介してコンジュゲートされることができる。炭水化物基は、チオール基に結合される同じ薬剤の負荷を増加させるために使用することができ、または炭水化物部分は、異なる治療薬または診断薬に結合するために使用することができる。
【0294】
[00319]抗体炭水化物部分を介してペプチドを抗体成分にコンジュゲートさせるための
方法は、当業者に周知である。例えば、Shih et al.,Int.J.Cancer 41:832(1988);Shih et al.,Int.J.Cancer
46:1101(1990);およびShih et al.,米国特許第5057313号参照。これらを、全体として本明細書中で参考として援用する。一般的な方法は、酸化炭水化物部分を有する抗体成分を、少なくとも1つの遊離アミン官能基を有するキャリヤーポリマーと反応させることを包含する。この反応は最初のシッフ塩基(イミン)連結をもたらし、これは、第二級アミンへの還元によって安定化されて、最終コンジュゲートを形成することができる。
【0295】
[00320]免疫コンジュゲートの抗体成分として使用される抗体が抗体フラグメントであ
る場合、Fc領域は存在しなくてもよい。しかし、全長抗体または抗体フラグメントの軽鎖可変領域に炭水化物部分を導入することが可能である。例えば、Leung et a
l.,J.Immunol.154:5919(1995);Hansen et al.,米国特許第5443953号(1995),Leung et al.,米国特許第第6254868参照。これらを、全体として本明細書中で参考として援用する。操作された炭水化物部分は、治療薬または診断薬に付着させるために使用される。
【0296】
[00321]いくつかの態様において、キレート化剤は、抗体、抗体フラグメントまたは融
合タンパク質に付着させることができ、そして放射性核種のような治療薬または診断薬とキレートを形成するために使用することができる。代表的なキレート化剤としては、限定されるものではないが、DTPA(Mx-DTPAなど)、DOTA、TETA、NETAまたはNOTAが挙げられる。金属または他のリガンドをタンパク質に付着させるためのコンジュゲーション法およびキレート剤の使用方法は、当分野で周知である(例えば、米国特許第7563433号参照。その実施例の節を、本明細書中で参考として援用する)。
【0297】
[00322]特定の態様において、放射性金属または常磁性イオンは、ロングテールを有す
る試薬との反応によってタンパク質またはペプチドに付着させることができ、ロングテールには、イオンを結合するための多数のキレート化基が付着することができる。このようなテールは、ポリマー、例えば、ポリリジン、多糖、あるいは、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビス-チオセミカルバゾン、ポリオキシム、およびこの目的に有用であることが知られている同様の基などのキレート化基が結合することができるペンダント基を有する他の誘導体化または誘導体化可能な鎖であることができる。
【0298】
[00323]キレートは、例えば、米国特許第4824659号に開示されているように、
抗体またはペプチドに直接連結することができる。この特許を、全体として本明細書中で参考として援用する。とりわけ有用な金属キレートの組み合わせとしては、2-ベンジル-DTPAならびにそのモノメチルおよびシクロヘキシル類似体が挙げられ、これらは、放射線画像化のために、60~4000keVの一般的エネルギー範囲の診断用同位体、例えば、125I、131I、123I、124I、62Cu、64Cu、18F、111In、67Ga、68Ga、99mTc、94mTc、11C、13N、15O、76Brと一緒に使用される。同じキレートは、マンガン、鉄およびガドリニウムなどの非放射性金属と錯体を形成する場合、MMに有用である。NOTA、DOTA、およびTETAなどの大環状キレートは、さまざまな金属および放射性金属と共に、最も詳細には、それぞれガリウム、イットリウム、および銅の放射性核種と共に使用される。このような金属-キレート錯体は、環の大きさを目的の金属に合わせることによって非常に安定にすることができる。RAITのための223Raのような、安定に結合する核種にとって興味深い、大環状ポリエーテルのような他の環型キレートが包含される。
【0299】
[00324]より最近になって、PET走査技術で用いられる18F標識化法、例えば、F
-18と金属または他の原子、例えばアルミニウムとの反応による方法が、開示されている。18F-Alコンジュゲートは、抗体に直接付着されるか、またはプレターゲッティング法において標識化可能な構築物を標識化するために使用される、DOTA、NOTA、またはNETAなどのキレート化基と錯体化することができる。このようなF-18標識化技術は、米国特許第7563433号に開示されており、その実施例の節を、本明細書中で参考として援用する。
【0300】
[00325]他の代表的な免疫コンジュゲートは、Johannson et al.(2
006,AIDS 20:1911-15)に開示されており、ここでは、ドキソルビシンがコンジュゲートしたP4/D10(抗gp120)抗体が、HIVに感染した細胞を処置する際に非常に有効であることが見出された。
【0301】
追加の治療薬
[00326]他の態様において、細胞毒性薬、抗血管新生薬、プロアポトーシス薬、抗生物
質、ホルモン、ホルモン拮抗薬、ケモカイン、薬物、プロドラッグ、毒素、酵素、または他の薬剤などの治療薬を、対象bsAb、ADCおよび/もしくは抗体にコンジュゲートさせて、またはbsAb、ADCおよび/もしくは抗体の前に、同時に、または後に別個に投与するかのいずれかで、使用することができる。使用薬物は、抗有糸分裂薬、抗キナーゼ薬、アルキル化薬、代謝拮抗薬、抗生物質、アルカロイド薬、抗血管新生薬、アポトーシス促進薬およびそれらの組合せからなる群より選択される医薬的特性を有することができる。
【0302】
[00327]有用な代表的薬物としては、限定されるものではないが、5-フルオロウラシ
ル、アファチニブ、アプリジン(aplidin)、アザリビン、アナストロゾール、アントラサ
イクリン、アキシチニブ、AVL-101、AVL-291、ベンダムスチン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ボスチニブ、ブリオスタチン-1、ブスルファン、カリケアマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン、10-ヒドロキシカンプトテシン、カルムスチン、セレブレックス、クロラムブシル、シスプラチン(CDDP)、Cox-2阻害剤、イリノテカン(CPT-11)、SN-38、カルボプラチン、クラドリビン、カンプトテカン、クリゾチニブ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダサチニブ、ディナシクリブ、ドセタキセル、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、2-ピロリノドキソルビシン(2P-DOX)、シアノ-モルホリノドキソルビシン、ドキソルビシングルクロニド、エピルビシングルクロニド、エルロチニブ、エストラムスチン、エピドフィロトキシン、エルロチニブ、エンチノスタット、エストロゲン受容体結合剤、エトポシド(VP16)、エトポシドグルクロニド、エトポシドリン酸塩、エキセメスタン、フィンゴリモド、フロクスウリジン(FUdR)、3’,5’-O-ジオレオイル-FudR(FUdR-dO)、フルダラビン、フルタミド、ファルネシル-タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、フラボピリドール、フォスタマチニブ、ガネテスピブ、GDC-0834、GS-1101、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イブルチニブ、イダルビシン、イデラリシブ、イフォスファミド、イマチニブ、L-アスパラギナーゼ、ラパチニブ、レノリダミド(lenolidamide)、ロイコボリン、LFM-A13、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトタン、ナベルビン、ネラチニブ、ニロチニブ、ニトロソ尿素、オラパリブ、プリコマイシン、プロカルバジン、パクリタキセル、PCI-32765、ペントスタチン、PSI-341、ラロキシフェン、セムスチン、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、SU11248、スニチニブ、タモキシフェン、テマゾロミド(DTICの水性形態)、トランスプラチナム、サリドマイド チオグアニン、チオペタ、テニポシド、トポテカン、ウラシルマスタード、バタラニブ、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンカアルカロイドおよびZD1839が挙げられる。
【0303】
[00328]有用な毒素としては、リシン、アブリン、アルファ毒素、サポリン、リボヌク
レアーゼ(RNase)、例えば、オンコナーゼ、DNase I、ブドウ球菌エンテロトキシン-A、ポークウィード(pokeweed)抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素、およびシュードモナス内毒素が挙げられる。
【0304】
[00329]有用なケモカインとしては、RANTES、MCAF、MIP1-アルファ、
MIP1-ベータおよびIP-10を挙げることができる。特定の態様において、抗血管新生薬例えば、アンギオスタチン、バキュロスタチン、カンスタチン、マスピン、抗VEGF抗体、抗P1GFペプチドおよび抗体、抗血管成長因子抗体、抗Flk-1抗体、抗Flt-1抗体およびペプチド、抗Kras抗体、抗cMET抗体、抗MIF(マクロフ
ァージ遊走阻止因子)抗体、ラミニンペプチド、フィブロネクチンペプチド、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤、組織メタロプロテイナーゼ阻害剤、インターフェロン、インターロイキン-12、IP-10、Gro-β、トロンボスポンジン、2-メトキシオエストラジオール(methoxyoestradiol)、プロリフェリン関連タンパク質、カルボキシアミド
トリアゾール、CM101、マリマスタット、ペントサンポリ硫酸塩、アンジオポエチン-2、インターフェロン-アルファ、ハービマイシンA、PNU145156E、16Kプロラクチンフラグメント、リノミド(ロキニメックス)、サリドマイド、ペントキシフィリン、ゲニステイン、TNP-470、エンドスタチン、パクリタキセル、アキュチン、アンギオスタチン、シドフォビル、ビンクリスチン、ブレオマイシン、AGM-1470、血小板第4因子またはミノサイクリンが有用であることができる。
【0305】
[00330]有用な免疫調節薬は、サイトカイン、幹細胞成長因子、リンホトキシン、造血
因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、エリスロポエチン、トロンボポエチンおよびこれらの組合せから選択することができる。とりわけ有用なのは、腫瘍壊死因子(TNF)などのリンホトキシン、インターロイキン(IL)などの造血因子、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)などのコロニー刺激因子、インターフェロン-α、-βまたは-λなどのインターフェロン、および「S1因子」と指名されるものなどの幹細胞成長因子である。サイトカインに包含されるものは、成長ホルモン、例えば、ヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;糖タンパク質ホルモン、例えば、卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)および黄体形成ホルモン(LH);肝臓成長因子;プロスタグランジン、線維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン、OBタンパク質;腫瘍壊死因子-αおよび-β;ミュラー管抑制物質;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);神経成長因子、例えば、NGF-β;血小板成長因子;形質転換成長因子(TGF)、例えば、TGF-αおよびTGF-β;インスリン様成長因子-Iおよび-II;エリスロポエチン(EPO);骨誘導因子:インターフェロン、例えば、インターフェロン-α、-βおよび-γ;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、マクロファージ-CSF(M-CSF);インターロイキン(IL))、例えば、IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12;IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-21、IL-25、LIF、キット-リガンドまたはFLT-3、アンギオスタチン、トロンボスポンジン、エンドスタチン、腫瘍壊死因子、およびLTである。
【0306】
[00331]有用な放射性核種としては、限定されるものではないが、111In、177
Lu、212Bi、213Bi、211At、62Cu、67Cu、90Y、125I、131I、32P、33P、47Sc、111Ag、67Ga、142Pr、153Sm、161Tb、166Dy、166Ho、186Re、188Re、189Re、212Pb、223Ra、225Ac、59Fe、75Se、77As、89Sr、99Mo、105Rh、109Pd、143Pr、149Pm、169Er、194Ir、198Au、199Au、211Pb、および227Thが挙げられる。治療用放射性核種は、好ましくは、20~6000keVの範囲の崩壊エネルギーを有し、好ましくは、オージェ放射体の場合は60~200keV、ベータ放射体の場合は100~2500keV、アルファ放射体の場合は4000~6000keVの範囲の崩壊エネルギーを有する。有用なベータ粒子放出核種の最大崩壊エネルギーは、好ましくは20~5000keV、より好ましくは100~4000keV、最も好ましくは500~2500keVである。また、オージェ放出粒子と共に実質的に崩壊する放射性核種も好ましい。例えば、Co-58、Ga-67、Br-80m、Tc-99m、Rh-103m、Pt-109、In-
111、Sb-119、1-125、Ho-161、Os-189m、およびIr-192である。有用なベータ粒子放出核種の崩壊エネルギーは、好ましくは<1000keV、より好ましくは<100keV、最も好ましくは<70keVである。アルファ粒子の生成と共に実質的に崩壊する放射性核種も好ましい。このような放射性核種としては、限定されるものではないが、Dy-152、At-211、Bi-212、Ra-223、Rn-219、Po-215、Bi-211、Ac-225、Fr-221、At-217、Bi-213、Th-227およびFm-255が挙げられる。有用なアルファ粒子放出放射性核種の崩壊エネルギーは、好ましくは2000~10000keV、より好ましくは3000~8000keV、最も好ましくは4000~7000keVである。さらに考えうる有用な放射性同位体としては、11C、13N、15O、75Br、198Au、224Ac、126I、133I、77Br、113mIn、95Ru、97Ru、103Ru、105Ru、107Hg、203Hg、121mTe、122mTe、125mTe、165mTe、1657Tm、168Tm、197Pt、109Pd、105Rb、142Pr、143Pr、161Tb、166Ho、199Au、57Co、58Co、51Cr、59Fe、75Se、201Tl、225Ac、76Br、169Y
bなどが挙げられる。いくつかの有用な診断用核種としては、18F、52Fe、62Cu、64Cu、67Cu、67Ga、68Ga、86Y、89Zr、94Tc、94mTc、99mTc、または111Inを挙げることができる。
【0307】
[00332]治療薬は、光活性剤または染料を包含することができる。蛍光色素などの蛍光
組成物、および他の色原体、または可視光に感受性を示すポルフィリンなどの染料が、病変に適切な光を向けることによって病変を検出および処置するために使用されてきた。治療において、これは光線照射、光線療法、または光線力学的療法とよばれている。Joni et al.(編集),PHOTODYNAMIC THERAPY OF TUMORS AND OTHER DISEASES(Libreria Progetto
1985);van den Bergh,Chem.Britain(1986),22:430参照。さらに、光線療法を達成するために、モノクローナル抗体が光活性化染料とカップリングされている。Mew et al.,J.Immunol(1983),130:1473;同上,Cancer Res.(1985),45:4380;Oseroff et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1986),83:8744;同上,Photochem.Photobiol.(1987),46:83;Hasan et al.,Prog.Clin.Biol.Res.(1989),288:471;Tatsuta et al.,Lasers Surg.Med.(1989),9:422;Pelegrin et al.,Cancer(1991),67:2529参照。
【0308】
[00333]他の有用な治療薬は、オリゴヌクレオチド、特に、好ましくは癌遺伝子および
癌遺伝子産物、例えば、bcl-2またはp53に対して指向されるアンチセンスオリゴヌクレオチドを含んでいてもよい。治療用オリゴヌクレオチドの好ましい形態は、siRNAである。当業者なら、任意のsiRNAまたは干渉RNA種が、標的組織への送達のために抗体またはそのフラグメントに付着することができることを理解するであろう。多種多様な標的に対する多くのsiRNA種が当技術分野で公知であり、任意のこのような公知のsiRNAを、特許請求される方法および組成物において利用することができる。
【0309】
[00334]有用になり得る公知のsiRNA種としては、IKK-ガンマ(米国特許第7
022828号);VEGF、Flt-1およびFlk-1/KDR(米国特許第7148342号);Bcl2およびEGFR(米国特許第7541453号);CDC20(米国特許第7550572号);トランスデューシン(ベータ)-様3(米国特許第7576196号);KRAS(米国特許第7576197号);炭酸脱水酵素II(米国特許第7579457号);補体成分3(米国特許第7582746号);インターロイキ
ン-1受容体関連キナーゼ4(IRAK4)(米国特許第7592443号);サバイビン(米国特許第76087070号);スーパーオキシドジスムターゼ1(米国特許第7632938号);MET癌原遺伝子(米国特許第7632939号);アミロイドベータ前駆体タンパク質(APP)(米国特許第7635771号);IGF-1R(米国特許第7638621号);ICAM1(米国特許第7642349号);補体因子B(米国特許第7696344号);p53(7781575号)、およびアポリポタンパク質B(7795421号)に特異的なものが挙げられる。それぞれの参照した特許の実施例の節を、本明細書中に参考として援用する。
【0310】
[00335]さらなるsiRNA種は、公知の商業的供給源、例えば、多くの供給源のなか
でもとりわけ、Sigma-Aldrich(St Louis,Mo.)、Invitrogen(Carlsbad,CA)、Santa Cruz Biotechnology(Santa Cruz,CA)、Ambion(Austin,Tex.)、Dharmacon(Thermo Scientific,Lafayette,Colo.)、Promega(Madison,Wis.)、Minis Bio(Madison,Wis.)およびQiagen(Valencia,CA)から入手可能である。siRNA種の他の公的に利用可能な供給源としては、Stockholm Bioinformatics CentreのsiRNAdbデータベース、MIT/ICBP
siRNAデータベース、Broad InstituteのRNAi Consortium shRNAライブラリー、およびNCBIのProbeデータベースが挙げられる。例えば、NCBI Probeデータベースには30852のsiRNA種が存在する。当業者なら、目的の任意の遺伝子について、siRNA種が既に設計されているか、または公的に利用可能なソフトウェアツールを使用して容易に設計され得ることを理解するであろう。任意のこのようなsiRNA種は、本DNL(登録商標)複合体を使用して送達することができる。
【0311】
処置方法
[00336]特定の態様において、本明細書に開示されるのは、被験体に、治療用量の本明
細書に開示される治療薬または医薬組成物を投与することを含む、それを必要とする被験体の処置方法である。いくつかの例において、被験体は癌または感染性疾患を有する。場合によっては、癌は、CD20、GD2、CD38、CD19、EGFR、HER2、PD-L1、CD25、CD33、BCMA、CD44、α-葉酸受容体、CAIX、CD30、ROR1、CEA、EGP-2、EGP-40、HER3、葉酸結合タンパク質、GD3、IL-13R-a2、KDR、EDB-F、メソテリン、CD22、EGFR、MUC-1、MAGE-A1、MUC16、h5T4、PSMA、TAG-72、EGFRvIII、CD123またはVEGF-R2の発現に関連する癌である。
【0312】
[00337]いくつかの態様において、医薬組成物または治療薬は、静脈内、皮膚、皮下に
投与されるか、または苦痛部位に注射される。特定の場合において、医薬組成物または治療薬は、単回用量として、または分割用量で互いに約48時間以内に投与される。いくつかの例において、医薬組成物または治療薬は、癌細胞数または体積の減少によって測定して、非癌性組織と比較して癌に対してより大きな免疫活性化を誘導する。
【0313】
[00338]いくつかの態様において、本明細書中に開示されるのは、CD20の過剰発現
に関連する癌を有する被験体に、本明細書中に記載される治療薬または医薬組成物を投与する方法である。いくつかの態様において、本明細書に開示されるのは、GD2の過剰発現に関連する癌を有する被験体に、本明細書に記載の治療薬または医薬組成物を投与する方法である。いくつかの態様において、本明細書に開示されるのは、メソテリンの過剰発現に関連する癌を有する被験体に、本明細書に記載の治療薬または医薬組成物を投与する方法である。いくつかの態様において、本明細書中に開示されるのは、CD38、CD1
9、EGFR、HER2、PD-L1、CD25、CD33、BCMA、CD44、α-葉酸受容体、CAIX、CD30、ROR1、CEA、EGP-2、EGP-40、HER3、葉酸結合タンパク質、GD2、GD3、IL-13R-a2、KDR、EDB-F、メソテリン、CD22、EGFR、MUC-1、MAGE-A1、MUC16、h5T4、PSMA、TAG-72、EGFRvIII、CD123またはVEGF-R2の過剰発現に関連する癌を有する被験に、改変したエフェクター細胞を投与する方法である。いくつかの場合において、癌は転移癌である。他の場合において、癌は再発性または難治性癌である。
【0314】
[00339]いくつかの場合において、癌は固形腫瘍または血液悪性腫瘍である。いくつか
の場合において、癌は固形腫瘍である。他の場合において、癌は血液悪性腫瘍である。いくつかの場合、癌は転移癌である。いくつかの場合は、癌は再発性または難治性癌である。
【0315】
[00340]いくつかの場合において、癌は固形腫瘍である。例示的な固形腫瘍としては、
限定されるものではないが、肛門癌;虫垂癌;胆管癌(bile duct cancer)(すなわち、胆管癌(cholangiocarcinoma));膀胱癌;脳腫瘍;乳癌;子宮頚癌;結腸癌;原発不明癌(CUP);食道癌;眼癌;卵管癌;消化器癌;腎臓癌;肝臓癌;肺癌;髄芽腫;黒色腫;口腔癌;卵巣癌;膵臓癌;上皮小体疾患;陰茎癌;下垂体腫瘍;前立腺癌;直腸癌;皮膚癌;胃癌;精巣癌;咽頭癌;甲状腺癌;子宮癌;膣癌;外陰癌;または膠芽腫が挙げられる。
【0316】
[00341]「膠芽腫」または「多形性膠芽腫」(GBM)は、侵攻性の神経上皮性脳癌で
ある。GBMは、グリア型細胞、星状細胞、乏突起膠細胞前駆細胞、または神経幹細胞に由来し得る。膠芽腫の4つのサブタイプが同定されている。GBMの大部分である古典的サブタイプは上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子の余分なコピーを保有しており、大部分は上皮成長因子受容体(EGFR)の発現が正常よりも多い。症例のサブセットでは、EGFR増幅は遺伝子再構成を伴い、そのうち最も一般的なものはEGFRバリアントIII(EGFRvIII)である。膠芽腫でしばしば変異している遺伝子TP53(p53)は、古典的サブタイプではほとんど変異していない。前神経(proneural)サブタイ
プは、TP53(p53)、および血小板由来成長因子受容体Aをコードする遺伝子であるPDGFRA、およびイソクエン酸デヒドロゲナーゼ-1をコードする遺伝子であるIDH1において、高い変化率を有することが多い。間葉系サブタイプは、ニューロフィブロミン1をコードする遺伝子であるNF1において変異またはその他の変化の割合が高く、EGFR遺伝子の変化が少なく、EGFRの発現が他のタイプより少ないことを特徴とする。神経系サブタイプは、NEFL、GABRA1、SYT1およびSLC12A5などのニューロンマーカーの発現という特徴を示す。他の遺伝子変化は膠芽腫で記載されており、それらの大部分はRBとPI3K/AKTの2つの経路でクラスター化されている。膠芽腫では、これらの経路のそれぞれ68~78%および88%に変化がみられる。
【0317】
[00342]いくつかの例では、癌は血液悪性腫瘍である。場合によっては、血液悪性腫瘍
は、リンパ腫、白血病、骨髄腫、またはB細胞悪性腫瘍を含む。場合によっては、血液悪性腫瘍は、がリンパ腫、白血病または骨髄腫を含む。いくつかの例において、例示的な血液悪性腫瘍としては、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、高リスクCLL、非CLL/SLLリンパ腫、前リンパ球性白血病(PLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症、多発性骨髄腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、非バーキット高悪性度B細胞リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PMBL)、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆B細胞リンパ芽球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞
性リンパ腫、脾性辺縁帯リンパ腫、形質細胞性骨髄腫、形質細胞腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、またはリンパ腫様肉芽腫症が挙げられる。いくつかの態様では、血液悪性腫瘍は骨髄性白血病を含む。いくつかの態様において、血液悪性腫瘍は、急性骨髄性白血病(AML)または慢性骨髄性白血病(CML)を含む。
【0318】
[00343]いくつかの例において、本明細書中に開示されるのは、慢性リンパ性白血病(
CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、高リスクCLL、非CLL/SLLリンパ腫、前リンパ球性白血病(PLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症、多発性骨髄腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、非バーキット高悪性度B細胞リンパ腫、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PMBL)、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆B細胞リンパ芽球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、脾性辺縁帯リンパ腫、形質細胞性骨髄腫、形質細胞腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、またはリンパ腫様肉芽腫症から選択される血液悪性腫瘍を有する被験体に、本明細書中に記載される改変されたエフェクター細胞を投与する方法である。いくつかの場合、本明細書中に開示されるのは、AMLまたはCMLから選択される血液悪性腫瘍を有する被験体に、改変されたエフェクター細胞を投与する方法である。
【0319】
[00344]他の場合において、本明細書中に開示されるのは、感染性疾患による感染を有
する被験体に投与する方法である。感染性疾患は、細菌、ウイルスまたは真菌の感染に起因する疾患であることができる。他の例において、例示的なウイルス病原体としては、Adenoviridae、Epstein-Barrウイルス(EBV)、Cytomegalovirus(CMV)、Respiratory Syncytial Virus(RSV)、JCウイルス、BKウイルス、HSV、HHVファミリーのウイルス、Picornaviridae、Herpesviridae、Hepadnaviridae、Flaviviridae、Retroviridae、Orthomyxoviridae、Paramyxoviridae、Papovaviridae、Polyomavirus、Rhabdoviridae、およびTogaviridaeが挙げられる。代表的な病原性ウイルスは、天然痘、インフルエンザ、ムンプス、麻疹、水痘、エボラ、および風疹を引き起こす。代表的な病原性真菌としては、Candida、Aspergillus、Cryptococcus、Histoplasma、Pneumocystis、およびStachybotrysが挙げられる。代表的な病原性細菌としては、Streptococcus、Pseudomonas、Shigella、Campylobacter、Staphylococcus、Helicobacter、E.coli、Rickettsia、Bacillus、Bordetella、Chlamydia、Spirochetes、およびSalmonellaが挙げられる。
【0320】
二重特異性抗体の使用
[00345]本発明による治療実体の投与は、改善された移動、送達、忍容度などを提供す
るために製剤に組み込まれる適切なキャリヤー、賦形剤、および他の薬剤と共に投与されることは、理解されるであろう。多数の適切な製剤は、すべての医薬化学者に知られている処方集:Remington’s Pharmaceutical Sciences(第15版、Mack Publishing Company,Easton,Pa(1975))、特にBlaug、Seymourによる第87章に、見出すことができる。これらの製剤としては、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、脂質(カチオン性またはアニオン性)含有小胞(Lipofectin(商標)など)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油型および油中水型エマルション、エ
マルションカルボワックス(さまざまな分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびカルボワックスを含有する半固体混合物が挙げられる。製剤中の活性成分が製剤によって不活性化されず、製剤が投与経路と生理学的に適合性であり、忍容性であるという条件で、上記混合物のいずれも、本発明に従った処置および治療において適切であることができる。製薬化学者に周知の製剤、賦形剤およびキャリヤーに関するさらなる情報については、以下の文献およびその中の引用も参照されたい。Baldrick P.“Pharmaceutical excipient development:the need for preclinical guidance.”Regul.Toxicol Pharmacol.32(2):210-8(2000),Wang W.
“Lyophilization and development of solid protein pharmaceuticals.”Int.J.Pharm.203(1-2):1-60(2000),Charman W N“Lipids,lipophilic drugs,and oral drug delivery-some emerging concepts.”J Pharm Sci.89(8):967-78(2000),Powell et al.“Compendium of
excipients for parenteral formulations”PDA J Pharm Sci Technol.52:238-311(1998)。
【0321】
[00346]本発明の抗体を包含する本発明の治療用製剤は、癌、例えば、非限定的な例と
して、白血病、リンパ腫、乳癌、結腸癌、卵巣癌、膀胱癌(bladder cancer)、前立腺癌、神経膠腫、肺および気管支癌、結腸直腸癌、膵臓癌、食道癌、肝臓癌、膀胱癌(urinary bladder cancer)、腎臓および腎盂癌、口腔および咽頭癌、子宮体癌、および/または黒色腫に関連する症状を処置または緩和するために用いられる。本発明はまた、癌に関連する症状の処置または緩和方法を提供する。治療レジメンは、標準的な方法を使用して、被験体、例えば、癌を罹患している(または癌を発症するリスクがある)ヒト患者を同定することによって実施される。
【0322】
[00347]処置の有効性は、特定の免疫関連疾患を診断または処置するための任意の公知
の方法と関連して決定される。免疫関連疾患の1以上の症状の緩和は、抗体が臨床的利益を与えることを示す。
【0323】
[00348]所望の特異性を有する抗体をスクリーニングするための方法としては、限定さ
れるものではないが、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)および当分野で公知の他の免疫学的に媒介される技術が挙げられる。
【0324】
[00349]CD47、腫瘍関連抗原または他の抗原(またはそのフラグメント)などの標
的に対する抗体は、例えば、適切な生理学的試料内のこれらの標的のレベルの測定に使用するため、診断方法で使用するため、タンパク質の画像化に使用するために、これらの標的の局在性および/または定量に関連する当分野で公知の方法において使用することができる。所与の態様では、抗体由来抗原結合ドメインを含有するこれらの標的、またはその誘導体、フラグメント、類似体もしくは同族体のいずれかに特異的な抗体が、薬理学的に活性な化合物(以下、「治療薬」とよぶ)として利用される。
【0325】
[00350]本発明の抗体は、イムノアフィニティー、クロマトグラフィーまたは免疫沈降
などの標準的な技術を用いて、特定の標的を単離するために使用することができる。本発明の抗体(またはそのフラグメント)は、臨床試験手順の一部として、例えば、所定の処置レジメンの効力を決定するために、組織中のタンパク質レベルをモニタリングするために診断的に使用され得る。検出は、抗体を検出可能な物質にカップリングさせる(すなわち、物理的に連結させる)ことによって促進することができる。検出可能な物質の例とし
ては、さまざまな酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、および放射性物質が挙げられる。適切な酵素の例としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ;適切な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ;適切な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、またはフィコエリトリンが挙げられ;発光物質の例としてはルミノールが挙げられ;生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられ;適切な放射性物質の例としては、125I、131I、35S、または3Hが挙げられる。
【0326】
[00351]ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化および完全ヒト抗体を含む本発明の
抗体を、治療薬として使用することができる。このような薬剤は一般に、被験体における所与の標的の異常な発現または活性化に関連する疾患または病理を処置または予防するために使用される。抗体調製物、好ましくは、標的抗原に対して高い特異性および高い親和性を有するものが、被験体に投与され、一般に、その標的との結合に起因する効果を有する。抗体の投与は、標的のシグナル伝達機能を無効化するか、阻害するか、または妨害することができる。抗体の投与は、標的と、それが天然に結合する内因性リガンドとの結合を無効化するか、阻害するか、または妨害することができる。例えば、抗体は標的に結合し、CD47とSIRPαとの間の相互作用を中和または他の方法で阻害する。
【0327】
[00352]本発明の抗体の治療有効量は一般に、治療目的を達成するのに必要な量に関連
する。上記のように、これは、特定の場合において、標的の機能を妨害する、抗体とその標的抗原との間の結合相互作用であり得る。投与するのに必要な量はさらに、その特異的抗原に対する抗体の結合親和性に依存し、また、投与される抗体が、それが投与される他の被験体の自由体積から激減する速度に依存する。本発明の抗体または抗体フラグメントの治療的に有効な投与のための一般的な範囲は、非限定的な例として、約0.1mg/kg体重~約50mg/kg体重であることができる。一般的な投薬頻度は、例えば、1日2回~週1回の範囲であり得る。
【0328】
[00353]本発明の抗体またはそのフラグメントは、さまざまな疾患および障害の処置の
ために、医薬組成物の形態で投与することができる。このような組成物の調製に関与する原理および考察、ならびに成分の選択の指針は、例えば、以下に提供される:Remington:The Science And Practice Of Pharmacy 第19版(Alfonso R.Gennaro,et al.,編集者)Mack
Pub.Co.,Easton,Pa.:1995;Drug Absorption
Enhancement Concepts,Possibilities,Limitations,And Trends,Harwood Academic Publishers,Langhorne,Pa.,1994;およびPeptide And
Protein Drug Delivery(Advances In Parenteral Sciences,Vol.4),1991,M.Dekker,New York。
【0329】
[00354]抗体フラグメントが使用される場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的
に結合する最小の阻害フラグメントが好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列に結合する能力を保持するペプチド分子を設計することができる。このようなペプチドは、化学的に合成することができ、および/または組換えDNA技術によって生産することができる。(例えば、Marasco et al.,Proc.
Natl.Acad.Sci.USA,90:7889-7893(1993)参照)。製剤はまた、処置される特定の適応症に必要な1より多くの活性化合物、好ましくは、
互いに悪影響を及ぼさない相補的活性を有する活性化合物を含有することができる。あるいは、またはさらに、組成物は、その機能を増強する薬剤、例えば、細胞毒性薬、サイトカイン、化学療法薬、または成長阻害薬を含むことができる。このような分子は、意図される目的に有効な量で、組み合わせ中に適切に存在する。
【0330】
[00355]活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技術によって、または界面重合
によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、コロイド薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子、およびナノカプセル)またはマクロエマルションにおける、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に、捕捉されることができる。
【0331】
[00356]in vivo投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは、滅
菌濾過膜による濾過によって容易に達成される。
[00357]徐放性製剤を調製することができる。徐放性製剤の適切な例としては、抗体を
含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは造形品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態にある。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3773919号)、L-グルタミン酸とγ-エチル-L-グルタミン酸とのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマーおよびロイプロリドアセテートから構成される注射用ミクロスフェア)などの分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、およびポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。ポリマー、例えば、エチレン-酢酸ビニルおよび乳酸-グリコール酸は、100日間を超えて分子を放出できるが、特定のヒドロゲルはより短い時間の間しかタンパク質を放出しない。
【0332】
[00358]本発明による抗体は、試料中の所与の標的(またはそのタンパク質フラグメン
ト)の存在を検出するための薬剤として使用することができる。いくつかの態様において、抗体は、検出可能な標識を含有する。抗体はポリクローナルであるか、より好ましくはモノクローナルである。完全な抗体、またはそのフラグメント(例えば、Fab、scFv、またはF(ab)2)を使用する。プローブまたは抗体に関する「標識化された」という用語は、検出可能な物質をプローブまたは抗体にカップリング(すなわち、物理的に連結)することによる、プローブまたは抗体の直接的な標識化と、直接標識化される別の試薬との反応性による、プローブまたは抗体の間接的な標識化とを包含することを意図する。間接的標識化の例としては、蛍光標識された二次抗体を使用する一次抗体の検出、および蛍光標識されたストレプトアビジンで検出され得るようなビオチンによるDNAプローブの末端標識化が挙げられる。用語「生物学的試料」は、被験体から単離された組織、細胞および生物学的流体、ならびに被験体内に存在する組織、細胞および流体を包含することが意図される。したがって、「生物学的試料」という用語の使用に包含されるのは、血液、および血清、血漿、またはリンパを含む血液の画分または成分である。すなわち、本発明の検出方法は、生物学的試料中の分析物mRNA、タンパク質、またはゲノムDNAをin vitroおよびin vivoで検出するために使用することができる。例えば、分析物mRNAの検出のためのin vitro技術としては、ノーザンハイブリダイゼーションおよびin situハイブリダイゼーションを包含する。分析物タンパク質の検出のためのin vitro技術には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈降、および免疫蛍光が包含される。分析物ゲノムDNAの検出のためのin vitro技術には、サザンハイブリダイゼーションが含まれる。免疫アッセイを実施するための手順は、例えば、“ELISA:Theory and Practice:Methods in Molecular Biology”,V
ol.42,J.R.Crowther(編集)Human Press,Totowa,N.J.,1995;“Immunoassay”,E.DiamandisおよびT.Christopoulus,Academic Press,Inc.,San Diego,Calif.,1996;および“Practice and Theory
of Enzyme Immunoassays”,P.Tijssen,Elsevier Science Publishers,Amsterdam,1985に記載されている。さらに、分析物タンパク質の検出のためのin vivo技術は、標識化された抗分析物タンパク質抗体を被験体に導入することを包含する。例えば、抗体を放射性マーカーで標識することができ、被験体におけるその存在および位置を、標準的な画像化技術によって検出することができる。
【0333】
医薬組成物および用量
[00359]本明細書に開示されるのは、特定の態様において、被験体に投与するための、
本明細書に開示される治療薬を含む医薬組成物である。
【0334】
[00360]いくつかの例において、本明細書に記載される治療薬を含む医薬組成物は、医
薬的に使用可能な調製物への活性化合物の加工を容易にする、賦形剤および補助剤を含む1以上の生理学的に許容しうるキャリヤーを使用して、従来法で製剤化される。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。本明細書に記載される医薬組成物の要約は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,第19版(Easton,Pa.:Mack Publishing
Company,1995); Hoover,John E.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania 1975;Liberman, H.A.およびLachman,L.,編集,Pharmaceutical Dosage Forms,Marcel Decker,New York,N.Y.,1980;およびPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,第7版(Lippincott Williams & Wilkins1999)に見いだされる。
【0335】
[00361]医薬組成物は、所望により、従来法、例えば、例示に過ぎないが、従来の混合
、溶解、顆粒化、糖衣錠製造、水簸、乳化、カプセル化、捕捉または圧縮プロセスの手段により製造される。
【0336】
[00362]特定の態様において、組成物はまた、1以上のpH調整剤または緩衝剤、例え
ば、酢酸、ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸および塩酸などの酸;水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびトリス-ヒドロキシメチルアミノメタンなどの塩基;ならびにクエン酸塩/デキストロース、重炭酸ナトリウムおよび塩化アンモニウムなどの緩衝剤を包含することができる。このような酸、塩基および緩衝剤は、組成物のpHを許容範囲に維持するのに必要な量で包含される。
【0337】
[00363]他の態様において、組成物はまた、組成物の重量モル浸透圧濃度を許容範囲に
するのに必要な量の1以上の塩を包含することができる。このような塩としては、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムカチオンおよび塩化物、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、硫酸塩、チオ硫酸塩または重亜硫酸塩アニオンを有するものが挙げられ;適切な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウムおよび硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0338】
[00364]本明細書に記載の医薬組成物は、任意の適した投与経路、例えば、限定される
ものではないが、経口、非経口(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、脳内、脳室内、関節内、腹腔内、または頭蓋内)、鼻腔内、バッカル、舌下、または直腸内の投与経路によって投与される。場合によっては、医薬組成物は、非経口(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、脳内、脳室内、関節内、腹腔内、または頭蓋内)投与のために製剤化される。
【0339】
[00365]本明細書に記載される医薬組成物は、任意の適した剤形、例えば、限定される
ものではないが、処置される個体による経口摂取のための、水性経口分散液、液体、ゲル、シロップ、エリキシル、スラリー、懸濁液など、固体経口剤形、エアロゾル、放出制御製剤、速溶融性製剤(fast melt formulation)、発泡性製剤、凍結乾燥製剤、錠剤、粉末
、丸剤、糖衣錠、カプセル、遅延放出性製剤、徐放性製剤、パルス放出製剤、多粒子製剤、ならびに混合された即時放出性および放出制御性製剤に製剤化される。いくつかの態様において、医薬組成物はカプセルに製剤化される。いくつかの態様において、医薬組成物は、(例えば、IV投与のために)溶液に製剤化される。場合によっては、医薬組成物は、注入剤として製剤化される。場合によっては、医薬組成物は注射剤として製剤化される。
【0340】
[00366]本明細書中に記載される医薬固体剤形は、所望により、本明細書に記載される
化合物と、1以上の医薬的に許容しうる添加剤、例えば、適合性キャリヤー、結合剤、充填剤、懸濁化剤、香味剤、甘味剤、崩壊剤、分散剤、界面活性剤、潤滑剤、着色剤、希釈剤、可溶化剤、加湿剤、可塑剤、安定剤、浸透増強剤、湿潤剤、消泡剤、抗酸化剤、防腐剤、またはそれらの1以上の組み合わせとを包含する。
【0341】
[00367]さらに他の観点では、Remington’s Pharmaceutica
l Sciences,第20版(2000)に記載されているような標準的なコーティング手順を用いて、組成物の周囲にフィルムコーティングを提供する。いくつかの態様では、組成物を粒子(例えば、カプセルによる投与のための)に製剤化し、粒子のいくつかまたはすべてをコーティングする。いくつかの態様では、組成物を粒子(例えば、カプセルによる投与のための)に製剤化し、粒子のいくつかまたはすべてをマイクロカプセル化する。いくつかの態様では、組成物を粒子(例えば、カプセルによる投与のための)に製剤化し、粒子のいくつかまたはすべてをマイクロカプセル化せず、コーティングしない。
【0342】
[00368]特定の態様において、本明細書で提供される組成物はまた、微生物活性を阻害
するために1以上の防腐剤を含むことができる。適切な防腐剤としては、メルフェン(merfen)およびチオメルサールなどの水銀含有物質;安定化二酸化塩素;ならびに、塩化ベンザルコニウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミドおよびセチルピリジニウムクロリドなどの第四級アンモニウム化合物が挙げられる。
【0343】
[00369]本明細書中で言及される「増殖性疾患」は、細胞の過剰な増殖および細胞基質
のターンオーバーが、癌を含むいくつかの疾患の病因に顕著に寄与するという統一概念を意味する。
【0344】
[00370]本明細書で使用される「患者」または「被験体」は、生理学的状態、例えば、
癌または自己免疫状態または感染症を有するか、または発症すると、診断されるか、または疑われる哺乳類被験体をさす。いくつかの態様において、「患者」という用語は、平均よりも癌を発症する可能性が高い哺乳類被験体をさす。代表的な患者は、ヒト、類人猿、イヌ、ブタ、ウシ、ネコ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、齧歯類、および本明細書に開示される治療法から利益を得ることができる他の哺乳類であることができる。代表的なヒト患者は、男性および/または女性であることができる。
【0345】
[00371]「それを必要とする患者」または「それを必要とする被験体」は、本明細書中
では、疾患または傷害、例えば、制限されるものではないが、癌などの増殖性障害を有すると診断されるか、または疑われる患者をさす。いくつかの場合において、癌は固形腫瘍または血液悪性腫瘍である。場合によっては、癌は固形腫瘍である。他の場合において、癌は血液悪性腫瘍である。いくつかの場合、癌は転移癌である。いくつかの場合、癌は再発性または難治性癌である。いくつかの場合において、癌は固形腫瘍である。例示的な固形腫瘍としては、限定されるものではないが、肛門癌;虫垂癌;胆管癌(bile duct cancer)(すなわち、胆管癌(cholangiocarcinoma));膀胱癌;脳腫瘍;乳癌;子宮頚癌;結腸癌;原発不明癌(CUP);食道癌;眼癌;卵管癌;消化器癌;腎臓癌;肝臓癌;肺癌;髄芽腫;黒色腫;口腔癌;卵巣癌;膵臓癌;上皮小体疾患;陰茎癌;下垂体腫瘍;前立腺癌;直腸癌;皮膚癌;胃癌;精巣癌;咽頭癌;甲状腺癌;子宮癌;膣癌;外陰癌;または膠芽腫が挙げられる。いくつかの態様において、白血病は、例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)および慢性骨髄性白血病(CML)であることができる。
【0346】
[00372]本明細書において、「投与すること」とは、本開示の組成物を患者に提供する
ことをいう。限定ではなく例として、組成物投与、例えば、注射は、静脈内(i.v.)注射、皮下(s.c.)注射、皮内(i.d.)注射、腹腔内(i.p.)注射、または筋肉内(i.m.)注射によって行うことができる。1以上のこのような経路を使用してもよい。非経口投与は、例えば、ボーラス注射によるか、または経時的な段階的潅流によることができる。あるいは、または同時に、投与は経口経路によるものであり得る。さらに、投与はまた、細胞のボーラスもしくはペレットの外科的堆積(surgical deposition)
、または医療デバイスの位置決めによるものであり得る。一態様において、本開示の組成物は、本明細書に記載される核酸配列を発現する操作された細胞もしくは宿主細胞、または本明細書に記載される少なくとも1つの核酸配列を含むベクターを、増殖性障害を処置または予防するのに有効な量で含むことができる。医薬組成物は、本明細書に記載の標的細胞集団を、1以上の医薬的または生理学的に許容しうるキャリヤー、希釈剤または賦形剤と組み合わせて含むことができる。このような組成物は、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水などの緩衝液;グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトールなどの炭水化物;タンパク質;グリシンなどのポリペプチドまたはアミノ酸;抗酸化剤;EDTAまたはグルタチオンなどのキレート化剤;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);および防腐剤を含むことができる。
【0347】
[00373]本明細書中で使用される場合、用語「処置」、「処置すること」およびその文
法的等価物は、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることをいう。態様において、効果は治療的であり、すなわち、効果は、疾患および/または疾患に起因する有害症状を部分的または完全に治癒する。この目的のために、本明細書中に記載される方法は、本明細書中に記載される核酸配列を発現する宿主細胞を含む組成物、または本明細書中に記載される核酸配列を含むベクターの「治療的有効量」を投与することを含む。
【0348】
[00374]用語「治療的有効量」、「治療量」、「免疫学的有効量」、「抗腫瘍有効量」
、「腫瘍阻害有効量」またはそれらの文法的等価物は、所望の治療結果を達成するために必要な投与量および期間で有効な量をさす。治療的有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに個体において所望の応答を誘発する本明細書に記載の組成物の能力などの因子に従って変動することができる。投与されるべき本開示の組成物の正確な量は、年齢、体重、腫瘍サイズ、感染または転移の程度、および患者(被験体)の状態における個体差を考慮して、医師によって決定され得る。
【0349】
[00375]あるいは、本明細書中に記載される1以上の組成物の患者または被験体への投
与の薬理学的および/または生理学的効果は、「予防的」であることができ、すなわち、この効果は、疾患またはその症状を完全にまたは部分的に予防する。
【0350】
[00376]「予防的有効量」は、所望の予防的結果(例えば、疾患発症の予防)を達成す
るために必要な投与量および期間で有効な量をさす。
[00377]「消泡剤」は、水性分散液の凝固、完成フィルム中の気泡をもたらし、または
一般的に加工を損なうことがある、加工中の発泡を減少させる。例示的な消泡剤としては、ケイ素エマルジョンまたはソルビタンセスキオレイン酸エステル(sorbitan sesquoleate)が挙げられる。
【0351】
[00378]「抗酸化剤」としては、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ア
スコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウムおよびトコフェロールが挙げられる。特定の態様において、抗酸化剤は、必要な場合、化学的安定性を増強する。
【0352】
[00379]本明細書に記載される製剤は、抗酸化剤、金属キレート化剤、チオール含有化
合物および他の一般的な安定剤から利益を得ることができる。このような安定剤の例としては、例えば、限定されるものではないが、(a)約0.5%~約2%w/v グリセロール、(b)約0.1%~約1%w/v メチオニン、(c)約0.1%~約2%w/vモノチオグリセロール、(d)約1mM~約10mM EDTA、(e)約0.01%~約2%w/v アスコルビン酸、(f)0.003%~約0.02%w/v ポリソルベート80、(g)0.001%~約0.05%w/v ポリソルベート20、(h)アルギニン、(i)ヘパリン、(j)デキストラン硫酸(dextran sulfate)、(k)シクロデ
キストリン、(l)ペントサンポリスルフェートおよび他のヘパリノイド、(m)マグネシウムおよび亜鉛などの二価カチオン;または(n)それらの組み合わせが挙げられる。
【0353】
[00380]「結合剤」は凝集性を付与し、例えば、アルギン酸およびその塩;カルボキシ
メチルセルロース、メチルセルロース(例えば、Methocel(登録商標))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、Klucel(登録商標))、エチルセルロース(例えば、Ethocel(登録商標))、および微晶質セルロース(例えば、Avicel(登録商標))などのセルロース誘導体;微晶質デキストロース;アミロース;マグネシウムアルミニウムシリケート;多糖類酸;ベントナイト;ゼラチン;ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー;クロスポビドン;ポビドン;デンプン;プレゼラチン化デンプン;トラガカント、デキストリン、スクロース(例えば、Dipac(登録商標))、グルコース、デキストロース、糖蜜、マンニトール、ソルビトール、キシリトール(例えば、Xylitab(登録商標))、およびラクトースなどの糖;アカシア、トラガカントゴム、ガティガム(ghatti gum)、イサポール皮(isapol husk)の粘液、ポリビニルピロリドン(例えば
、Polyvidone(登録商標) CL、Kollidon(登録商標) CL、Polyplasdone(登録商標) XL-10)、カラマツアラボガラクタン、Ve
egum(登録商標)、ポリエチレングリコール、ワックス、アルギン酸ナトリウムなどを包含する。
【0354】
[00381]「キャリヤー」または「キャリヤー材料」は、薬剤学で一般に使用されている
任意の賦形剤を包含し、イブルチニブおよび抗癌剤の化合物などの本明細書に開示される化合物との適合性、および所望の剤形の放出プロフィール特性に基づいて選択されるべきである。例示的なキャリヤー材料としては、例えば、結合剤、懸濁化剤、崩壊剤、充填剤、界面活性剤、可溶化剤、安定剤、潤滑剤、湿潤剤、希釈剤などが挙げられる。「医薬的に適合しうるキャリヤー材料」は、限定されるものではないが、アカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、マルトデキストリン、グリセリン、ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン(PVP)、コレステロール、コレステロールエステル、カゼイン酸ナトリウム、大豆レシチン、タウロコール酸、
ホスホチジルコリン、塩化ナトリウム、リン酸三カルシウム、リン酸二カリウム、セルロースおよびセルロースコンジュゲート、糖ステアロイル乳酸ナトリウム(sugars sodium stearoyl lactylate)、カラゲナン、モノグリセリド、ジグリセリド、プレゼラチン化デンプンなどが挙げられる。例えば、Remington:The Science and
Practice of Pharmacy,第19版(Easton,Pa.:Mack Publishing Company,1995);Hoover,John E.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania 1975;Liberman,H.A.およびLachman,L.,編集,Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker,New
York,N.Y.,1980;およびPharmaceutical Dosage
Forms and Drug Delivery Systems,第7版(Lippincott Williams & Wilkins1999)参照。
【0355】
[00382]「分散剤」および/または「粘度調節剤」は、液体媒体または顆粒化方法また
はブレンド方法を通して薬物の拡散および均質性を制御する材料を包含する。いくつかの態様において、これらの薬剤はまた、コーティングまたは浸食マトリックスの有効性を促進する。例示的な拡散促進剤/分散剤としては、例えば、親水性ポリマー、電解質、Tween(登録商標)60または80、PEG、ポリビニルピロリドン(PVP;Plasdone(登録商標)として商業的に知られている)、および炭水化物ベースの分散剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、HPC、HPC-SL、およびHPC-L)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、HPMC K100、HPMC
K4M、HPMC K15M、およびHPMC K100M)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートステアレート(HPMCAS)、非結晶性セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(S630)、4-(1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノールポリマーとエチレンオキシドおよびホルムアルデヒド(チロキサポールとしても知られる)、ポロキサマー(例えば、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーであるPluronics F68(登録商標)、F88(登録商標)およびF108(登録商標));およびポロキサミン(例えば、Tetronic 908(登録商標)、これは、Poloxamine(登録商標)としても知られ、エチレンジアミンへのプロピレンオキシドおよびエチレンオキシドの逐次付加から誘導される四官能性ブロックコポリマーである(BASF Corporation,Parsippany, NJ))、ポリビニルピロリドンK12、ポリビニルピロリドンK17、ポリビニルピロリドンK25、またはポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(S-630)、ポリエチレングリコール、例えば、ポリエチレングリコールは約300~約6000、または約3350~約4000、または約7000~約5400の分子量を有することができる、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリソルベート-80、アルギン酸ナトリウム、ゴム、例えば、トラガカントゴムおよびアラビアゴム、グアーガム、キサンタンゴムを含むキサンタン、糖類、セルロース系誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど、ポリソルベート-80、アルギン酸ナトリウム、ポリエトキシル化ソルビタンモノラウレート、ポリエトキシル化ソルビタンモノラウレート、ポビドン、カルボマー、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸塩、キトサンおよびそれらの組み合わせが挙げられる。セルロースまたはトリエチルセルロースなどの可塑剤も分散剤として使用することができる。リポソーム分散液および自己乳化分散液に特に有用な分散剤は、ジミリストイルホスファチジルコリン、卵由来の天然ホスファチジルコリン、卵由来の天然ホスファチジルグリセロール、コレステロー
ルおよびミリスチン酸イソプロピルである。
【0356】
[00383]1以上の浸食促進剤と1以上の拡散促進剤との組み合わせもまた、本組成物に
おいて使用することができる。
[00384]「希釈剤」という用語は、送達前に目的の化合物を希釈するために使用される
化合物をさす。希釈剤は、より安定な環境を提供することができるので、化合物を安定化するために使用することもできる。緩衝溶液(これはまた、pH制御または維持を提供することもできる)に溶解した塩、例えば、限定されるものではないが、リン酸緩衝食塩水は、当分野で希釈剤として用いられている。特定の態様において、希釈剤は組成物の嵩を増大させて、圧縮を容易にし、またはカプセル充填のための均質なブレンドのために十分な嵩を作り出す。このような化合物としては、例えば、ラクトース、デンプン、マンニトール、ソルビトール、デキストロース、Avicel(登録商標)などの微結晶セルロー
ス;二塩基性リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物;リン酸三カルシウム、リン酸カルシウム;無水ラクトース、噴霧乾燥ラクトース;プレゼラチン化デンプン、圧縮性糖(compressible sugar)、例えばDi-Pac(登録商標)(Amstar);マンニトール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートステアレート、スクロースに基づく希釈剤、粉砂糖;一塩基性硫酸カルシウム一水和物、硫酸カルシウム二水和物;乳酸カルシウム三水和物、デキストレート(dextrate);加水分解された穀物固体、アミロース;粉末セルロース、炭酸カルシウム;グリシン、カオリン;マンニトール、塩化ナトリウム;イノシトール、ベントナイトなどが挙げられる。
【0357】
[00385]「充填剤」としては、ラクトース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、二塩
基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、微結晶セルロース、セルロース粉末、デキストロース、デキストレート、デキストラン、デンプン、プレゼラチン化デンプン、スクロース、キシリトール、ラクチトール、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム、ポリエチレングリコールなどの化合物が挙げられる。
【0358】
[00386]「潤滑剤」および「流動促進剤」は、材料の付着または摩擦を防止、低減また
は抑制する化合物である。例示的な潤滑剤としては、例えば、ステアリン酸、水酸化カルシウム、タルク、フマル酸ステアリルナトリウム(sodium stearyl fumerate)、鉱油など
の炭化水素、または水素化大豆油(Sterotex(登録商標))などの水素化植物油、高級脂肪酸およびそのアルカリ金属およびアルカリ土類金属塩、例えば、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、グリセロール、タルク、ワックス、Stearowet(登録商標)、ホウ酸、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ポリエチレングリコール(例えば、PEG-4000)、またはCarbowaxTMなどのメトキシポリエチレングリコール、オレイン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ベヘン酸グリセリル、ポリエチレングリコール、マグネシウムもしくはラウリル硫酸ナトリウム、コロイドシリカ、例えば、SyloidTM、Cab-O-Sil(登録商標)、トウモロコシデンプンなどのデンプン、シリコーン油、界面活性剤などが挙げられる。
【0359】
[00387]「可塑剤」は、マイクロカプセル化材料またはフィルムコーティングを軟化さ
せて、それらをより脆性を低下させるために使用される化合物である。適切な可塑剤としては、例えば、PEG 300、PEG 400、PEG 600、PEG 1450、PEG 3350、およびPEG 800などのポリエチレングリコール、ステアリン酸、プロピレングリコール、オレイン酸、トリエチルセルロース、およびトリアセチンが挙げられる。いくつかの態様では、可塑剤が分散剤または湿潤剤としても機能することができる。
【0360】
[00388]「可溶化剤」には、トリアセチン、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、
カプリル酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、ドクサートナトリウム(sodium doccusate)、ビタミンE TPGS、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ヒドロキシエチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、エタノール、n-ブタノール、イソプロピルアルコール、コレステロール、胆汁塩、ポリエチレングリコール200-600、グリコールフルオール、トランスクトール、プロピレングリコール、およびジメチルイソソルビドなどの化合物が包含される。
【0361】
[00389] 「安定剤」には、任意の抗酸化剤、緩衝剤、酸、防腐剤などの化合物が包含される。
[00390]「懸濁化剤」には、ポリビニルピロリドン、例えば、ポリビニルピロリドンK
12、ポリビニルピロリドンK17、ポリビニルピロリドンK25、またはポリビニルピロリドンK30、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(S-630)、ポリエチレングリコール、例えば、ポリエチレングリコールは約300~約6000、または約3350~約4000、または約7000~約5400の分子量を有することができる、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースアセテートステアレート、ポリソルベート-80、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ゴム、例えば、トラガカントゴムおよびアラビアゴム、グアーガム、キサンタンゴムを含むキサンタン、糖類、セルロース系誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリソルベート-80、アルギン酸ナトリウム、ポリエトキシル化ソルビタンモノラウレート、ポリエトキシル化ソルビタンモノラウレート、ポビドンなどが包含される。
【0362】
[00391]「界面活性剤」には、ラウリル硫酸ナトリウム、ドクサートナトリウム、Tw
een 60または80、トリアセチン、ビタミンE TPGS、ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリソルベート、ポロキソマー(polaxomer)、胆汁塩、グリセリルモノステアレート、エチレンオキシドとプロピレンオキ
シドとのコポリマー、例えばPluronic(登録商標)(BASF)などの化合物が包含される。他のいくつかの界面活性剤としては、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリドおよび植物油、例えば、ポリオキシエチレン(60)水素化ひまし油;およびポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびアルキルフェニルエーテル、例えば、オクトキシノール10、オクトキシノール40が挙げられる。いくつかの態様において、界面活性剤は、物理的安定性を増強するために、または他の目的のために包含させることができる。
【0363】
[00392]「粘度増強剤」には、例えば、メチルセルロース、キサンタンガム、カルボキ
シメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートステアレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートカルボマー、ポリビニルアルコール、アルギン酸塩、アカシア、キトサンおよびそれらの組合せが包含される。
【0364】
[00393]「湿潤剤」としては、オレイン酸、グリセリルモノステアレート、ソルビタン
モノオレエート、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ドクサートナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドクサートナトリウム、トリアセチン、Tween 80、ビタミンE TPGS、アンモニウム塩
などの化合物が挙げられる。
【0365】
抗体をコードする核酸分子
[00394]本開示の別の観点は、本明細書中に記載される抗体ポリペプチドまたはその抗
原結合フラグメントをコードする単離された核酸配列に関する。「ポリヌクレオチド」または「核酸分子」は本明細書中で互換的に使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをさし、DNAおよびRNAを包含する。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチドもしくは塩基、および/またはそれらの類似体、またはDNAもしくはRNAポリメラーゼによってポリマー中に組み込むことができる任意の基質であることができる。核酸分子は、修飾ヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチドおよびそれらの類似体を含むことができる。核酸分子は、標準的技術、例えば、限定されるものではないが、アルカリ/SDS処理、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動および当分野で周知の他の技術によって、他の細胞成分または他の汚染物質、例えば、他の細胞核酸またはタンパク質から精製された場合、「単離」されており、「実質的に純粋になっている」。F.Ausubel,et al.,編集(1987)Current Protocols in Molecular
Biology,Greene Publishing and Wiley Interscience,New York参照。本開示の少なくともいくつかの態様に従った核酸は、例えば、DNAまたはRNAであってもよく、イントロン配列を含んでも含まなくてもよい。好ましい態様では、核酸はcDNA分子である。
【0366】
[00395]いくつかの態様において、単離された核酸分子は、抗体の重鎖可変ドメインを
コードする核酸配列を含む。いくつかの態様において、第2の可変軽鎖ドメインをコードする核酸配列は、配列番号49のヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、第2の可変軽鎖ドメインをコードする核酸配列は、配列番号52のヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、第1の可変軽鎖ドメインをコードする核酸配列は、配列番号50のヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、第1の可変軽鎖ドメインをコードする核酸配列は、配列番号51のヌクレオチド配列を含む。
【0367】
[00396]いくつかの態様において、単離された核酸分子は、抗体の重鎖ポリペプチドを
コードする核酸配列を含む。いくつかの態様にて、第2の可変重鎖ドメインをコードする核酸配列は、配列番号46のヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、第1の可変重鎖ドメインをコードする核酸配列は、配列番号47のヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、第1の可変重鎖ドメインをコードする核酸配列は、配列番号48のヌクレオチド配列を含む。
【0368】
[00397]いくつかの態様において、二重可変ドメインIgにおいて第1のポリペプチド
をコードする単離された核酸分子は、配列番号53のヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、二重可変ドメインIgにおいて第2のポリペプチドをコードする単離された核酸分子は、配列番号55のヌクレオチド配列を含む。
【0369】
[00398]いくつかの態様において、二重可変ドメインIgにおいて第1のポリペプチド
をコードする単離された核酸分子は、配列番号54のヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、二重可変ドメインIgにおいて第2のポリペプチドをコードする単離された核酸分子は、配列番号56のヌクレオチド配列を含む。
【0370】
[00399]いくつかの態様において、抗体構築物のポリペプチドをコードする単離された
核酸は、表15および表16から選択されるヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、IgA重鎖定常ドメインをコードする単離された核酸は、配列番号61~66から選択される。いくつかの態様において、カッパ型の軽鎖定常ドメインをコードする単離された核酸は、配列番号67または配列番号68のヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、ラムダ型の軽鎖定常ドメインをコードする単離された核酸は、配列番号69のヌクレオチド配列を含む。
【0371】
[00400]本開示の少なくともいくつかの態様に従った核酸分子は、標準的な分子生物学
技術を用いて得ることができる。ハイブリドーマによって発現される抗体(例えば、以下にさらに記載されるようなヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニックマウスから調製されるハイブリドーマ)の場合、ハイブリドーマによって作製される抗体の軽鎖および重鎖をコードするcDNAは、標準的なPCR増幅またはcDNAクローニング技術によって得ることができる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリーから(例えば、ファージディスプレイ技術を使用して)得られる抗体に関し、抗体をコードする核酸は、ライブラリーから回収することができる。
【0372】
[00401]いったんDNA断片が得られると、これらのDNAフラグメントを標準的な組
換えDNA技術によってさらに操作して、例えば、可変領域遺伝子を全長抗体鎖遺伝子、Fabフラグメント遺伝子またはscFv遺伝子に変換することができる。これらの操作において、VLまたはVHをコードするDNAフラグメントは、他のタンパク質、例えば、抗体定常領域またはフレキシブルリンカーをコードする他のDNAフラグメントにオペレート可能に連結される。この文脈において使用される用語「オペレート可能に連結された」は、2つのDNAフラグメントによってコードされるアミノ酸配列がインフレームのままであるように、2つのDNAフラグメントが接合されることを意味することを意図する。VH領域をコードする単離されたDNAは、VHをコードするDNAを重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)をコードする他のDNA分子にオペレート可能に連結することによって、全長重鎖遺伝子に変換することができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当分野で公知であり(例えば、Kabat,E.A.,et al.1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,U.S. Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242参照)、これらの領域を包含するDNAフラグメントは、標準的なPCR増幅によって得ることができる。重鎖定常領域は、IgA1またはIgA2定常領域であることができる。VHをコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする他のDNA分子にオペレート可能に連結することができる。
【0373】
[00402]VL領域をコードする単離されたDNAは、VLをコードするDNAを、軽鎖
定常領域CLをコードする他のDNA分子にオペレート可能に連結することによって、全長軽鎖遺伝子(ならびにFab軽鎖遺伝子)に変換することができる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当分野で公知であり(例えば、Kabat,E. A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版, U.S. Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242を参照)、これらの領域を包含するDNAフラグメントは、標準的なPCR増幅によって得ることができる。軽鎖定常領域は、カッパまたはラムダ定常領域であることができる。
【0374】
[00403]scFv遺伝子を作製するために、VHおよびVLをコードするDNAフラグ
メントは、ペプチドリンカーをコードする他のフラグメントにオペレート可能に連結され、その結果、VHおよびVL配列は連続する一本鎖タンパク質として発現され得、VLおよびVH領域はフレキシブルリンカーによって接合される(例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423-426;Huston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883;McCafferty et al.(1990)Nature 348:552-554)参照)。
【0375】
[00404]本開示から単離された核酸分子は、オープンリーディングフレーム(ORF)
を含む核酸分子を包含することができ、オープンリーディングフレーム(ORF)は、所望により、1以上のイントロン、例えば、限定されるものではないが、少なくとも1つのCDRの少なくとも1つの特異的部分を、少なくとも1つの軽鎖または少なくとも1つの重鎖のCDR1、CDR2および/またはCDR3として含み;本明細書に開示される抗体構築物のコード配列または可変領域、例えば、軽鎖の可変領域および重鎖の可変領域を含む核酸分子;ならびに、上記のものとは実質的に異なるが、遺伝コードの縮重のために、少なくとも抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または本明細書に記載されている、および/または当技術分野で知られている抗体のドメインもしくはポリペプチドを依然としてコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む。言うまでもなく、遺伝子コードは当技術分野で周知である。したがって、本開示の特異的抗体をコードするそのような縮重核酸バリアントを生成することは、当業者にとって日常的であろう。例えば、Ausubel et al.,同上参照。このような核酸バリアントは、本発明に包含される。
【0376】
[00405]抗体の1以上のドメインをコードする核酸配列を含む核酸分子を、本明細書中
に提供する。いくつかの態様において、核酸分子は、抗体の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインをコードする核酸配列を含む。いくつかの態様において、核酸分子は、抗体の重鎖可変ドメインをコードする核酸配列と、軽鎖可変ドメインをコードする核酸配列の両方を含む。いくつかの態様では、第1の核酸分子が、重鎖可変ドメインをコードする第1の核酸配列を含み、第2の核酸分子が、軽鎖可変ドメインをコードする第2の核酸配列を含む。
【0377】
[00406]いくつかの態様において、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインは、2つ
の別個のポリペプチドとして、1つの核酸分子から、または2つの別個の核酸分子から発現される。いくつかの態様において、例えば、抗体がscFvである場合、単一の核酸配列は、一緒に連結された重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインの両方を含む単一のポリペプチドをコードする。
【0378】
[00407]いくつかの態様において、核酸分子は、本明細書の表1~2の抗体のアミノ酸
配列のいずれかをコードするものである。いくつかの態様において、核酸配列は、本明細書の表12~17中のアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸と少なくとも80%同一であり、例えば、少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99%同一であるものである。いくつかの態様において、核酸は、本明細書中に提供される核酸配列の任意の1以上にハイブリダイズする核酸である。いくつかの態様において、ハイブリダイゼーションは、中程度の条件下である。いくつかの態様において、ハイブリダイゼーションは非常に厳しい条件下であり、例えば、65oCで少
なくとも約6×SSCおよび1% SDS、最初の洗浄は、約42oCにおいて0.1×
SSC中の約20%(v/v)ホルムアミドで10分間、次の洗浄は、65oCにおいて
0.2×SSCおよび0.1% SDSで行われる。
【0379】
[00408]核酸分子は、当該分野で慣用的な組換えDNA技術を使用して構築することが
できる。いくつかの態様において、核酸分子は、選択された宿主細胞における発現に適した発現ベクター中に配置される。
【0380】
[00409]本明細書中の抗体または抗原結合フラグメントをコードする核酸分子を含むベ
クターを提供する。重鎖および/または軽鎖をコードする核酸分子を含むベクターも提供する。このようなベクターとしては、限定されるものではないが、DNAベクター、ファージベクター、ウイルスベクター、レトロウィルスベクターなどが挙げられる。一態様において、軽可変ドメインをコードする核酸および重鎖可変ドメインをコードする核酸は、
上記に概説される手順によって別個に単離される。一態様において、軽鎖可変ドメインをコードする単離された核酸および重鎖可変ドメインをコードする単離された核酸は、それぞれが適切なプロモーターおよび翻訳制御下にある限り、別々の発現プラスミド中に、または同じプラスミド中に一緒に、挿入されることができる。いくつかの態様において、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインは、例えば、抗体がscFvである場合、単一のポリペプチドの一部として発現される。
【0381】
[00410]いくつかの態様において、第1のベクターは、重鎖可変ドメインをコードする
核酸分子を含み、第2のベクターは、軽鎖可変ドメインをコードする核酸分子を含む。いくつかの態様では、第1のベクターおよび第2のベクターは、同様の量(同様のモル量または同様の質量量など)で宿主細胞にトランスフェクトされる。いくつかの態様では、5:1~1:5のモル比または質量比の第1のベクターおよび第2のベクターが、宿主細胞にトランスフェクトされる。いくつかの態様では、重鎖をコードするベクターおよび軽鎖をコードするベクターについて、1:1~1:5の質量比が使用される。いくつかの態様では、重鎖をコードするベクターおよび軽鎖をコードするベクターについて1:2の質量比が使用される。いくつかの態様では、CHOまたはCHO由来細胞、またはNSO細胞におけるポリペプチドの発現のために最適化されたベクターが選択される。このようなベクターの例は、例えば、Running Deer et al.,Biotechnol.Prog.20:880-889(2004)に記載されている。
【0382】
[00411]一観点において、本開示は、核酸分子を投与することを含む、癌の処置または
予防方法を提供し、ここで、該核酸分子は、VHのVH、VL、CDR3領域またはVLもしくはその抗原結合フラグメントのCDR3領域をコードし、該核酸分子は、遺伝子治療として本明細書中に開示される配列(例えば、表12~17)を含む。遺伝子治療法は、発現された、または発現されうる核酸の被験体への投与により実施する治療法をさす。本発明のこの態様において、核酸は、予防的または治療的効果を媒介するそれらのコードされたタンパク質を産生する。当該分野で利用可能な遺伝子治療のための任意の方法を、本明細書中の態様に従って使用することができる。
【0383】
[00412]遺伝子治療の方法の一般的な概説については、Goldspiel et a
l.,1993,Clinical Pharmacy 12:488-505;WuおよびWu,1991,Biotherapy 3:87-95;Tolstoshev,1993,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.32:573-596; Mulligan,1993,Science 260:926-932;およびMorganおよびAnderson,1993,Ann.Rev.Biochem.62:191-217;May,1993,TIBTECH 11(5):155-215参照。使用することができる組換えDNA技術の技術分野で一般に公知の方法は、Ausubel et al.,(編集)、1993、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons, NY;およびKriegler,1990,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NYに記載されている。適切な細胞への治療抗体の送達は、物理的DNA転移法(例えば、リポソームまたは化学的処理)の使用によるか、またはウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、またはレトロウイルス)の使用を含む、当該分野で公知の任意の適切なアプローチの使用によって、ex vivo、in situ、またはin vivoでの遺伝子治療を介して達成され得る。
【0384】
[00413]本明細書で使用される「宿主細胞」という用語は、核酸分子でトランスフェク
トされた特定の被験体細胞、およびそのような細胞の子孫または潜在的子孫をさす。このような細胞の子孫は、核酸分子をトランスフェクトされた親細胞と同一ではないことがあ
るが、これは、核酸分子の宿主細胞ゲノムへの連続した発生または統合において起こりうる変異または環境の影響による。
【0385】
[00414]他のin vivo核酸導入技術は、ウイルスベクター(例えば、アデノウイ
ルス、単純ヘルペスIウイルス、またはアデノ随伴ウイルス)および脂質ベースのシステムでのトランスフェクションを含む。核酸およびトランスフェクション剤は、所望により、微粒子と会合される。例示的なトランスフェクション剤としては、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、四級アンモニウム両親媒性DOTMA((ジオレオイルオキシプロピル)トリメチルアンモニウムブロミド、GIBCO-BRLによってLipofectinとして市販されている)(Felgner et al.,(1987) Proc Natl. Acad.Sc
i.USA 84,7413-7417;Malone et al.(1989)Proc.Natl Acad.Sci.USA 86 6077-6081);ペンダントトリメチルアンモニウムヘッドを有する親油性グルタミン酸ジエステル(Ito et al.(1990)Biochem)Biophys.Acta 1023, 124-132);カチオン性脂質ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS,Transfectam,Promega)およびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミルスペルミン(DPPES)(J.P.Behr(1986)Tetrahedron
Lett 27,5861-5864;J.P.Behr et al.,(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,6982-6986))のような代謝可能な親脂質;代謝可能な第四級アンモニウム塩(DOTB、N-(1-[2,3-ジオレオイルオキシ]プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムメチルスルフェート(DOTAP)(Boehringer Mannheim)、ポリエチレンイミン(PEI)、ジオレオイルエステル、ChoTB、ChoSC、DOSC)(Leventis et al.,(1990)Biochim Inter.22,235-241);3ベータ[N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)、1対1の混合物でのジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)/3ベータ[N-(N’,N’ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロールDC-Chol(Gao ct al.,(1991)Biochim)Biophys.Acta 1065,8-14)、スペルミン、スペルミジン、リポポリアミン(Behr et al.,Bioconjugate Chem,1994,5:382-389)、親油性ポリリジン(LPLL)(Zhou et al.,(1991)Biochim Biophys.Acta 939, 8-18)、[[(1,1,3,3テトラメチルブチル)クレソキシ]エトキシ]エチル]ジメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド(DEBDAヒドロキシド)と過剰のホスファチジルコリン/コレステロール(Ballas et al.,(1988)Biochim.Biophys.Acta 939,8-18)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)/DOPE混合物(Pinnaduwage et al,(1989)Biochim Biophys.Acta 985,33-37)、ホスファチジルエタノールアミンとの混合物中のDOPE、CTAB、DEBDA、ジドデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、およびステアリルアミンを含むグルタミン酸(TMAG)の親油性ジエステル(Rose et al,(1991)Biotechnique 10,520-525)、DDAB/ DOPE(TransfectACE,GIBCO BRL)、およびオリゴガラクトース含有脂質が挙げられる。移入の効率を増加させる例示的なトランスフェクション増強剤には、例えば、DEAE-デキストラン、ポリブレン、リソソーム破壊ペプチド(Ohmori NI et al.,Biochem Biophys Res Commun Jun 1997;235(3):726-9)、コンドロイタンに基づくプロテオグリカン、硫酸化プロテオグリカン、ポリエチレンイミン、ポリリジン(Pollard H et al.,J Biol Chem、1998、273(13):7507-11)、インテグリン結合ペプチドCYGGRGDTP、
線状デキストラン非糖類、グリセロール、オリゴヌクレオチドの3’末端インターヌクレオシド連結で繋がれたコレステリル基(Letsnger R.L.1989 Proc
Natl Acad Sci USA 86:(17):6553-6)、リゾホスファチド、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、および1-オレオイルリゾホスファチジルコリンが含まれる。
【0386】
[00415]いくつかの状況において、核酸含有ベクターを標的細胞に向ける薬剤と共に核
酸を送達することが望ましい場合がある。このような「標的化」分子には、標的細胞上の細胞表面膜蛋白質に特異的な抗体、または標的細胞上の受容体に対するリガンドが含まれる。リポソームが使用される場合、エンドサイトーシスに関連する細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質を、標的化のために、および/または取り込みを容易にするために使用することができる。このようなタンパク質の例としては、特定の細胞型に対して向性のキャプシドタンパク質およびそのフラグメント、サイクリングにおいてインターナリゼーションを受けるタンパク質に対する抗体、ならびに細胞内局在化を標的とし、細胞内半減期を増強するタンパク質が挙げられる。他の態様では、受容体媒介エンドサイトーシスを使用することができる。このような方法は、例えば、Wu et al.,1987またはWagner et al.,1990に記載されている。現在知られている遺伝子マーキングおよび遺伝子治療プロトコルのレビューについては、Anderson 19
92を参照のこと。WO93/25673およびそこに引用されている参考文献も参照されたい。
【実施例0387】
[00416]これらの実施例は、例示の目的のために提供するに過ぎず、本明細書に提供さ
れる特許請求の範囲を限定するものではない。
実施例1.IgAに基づく抗体構築物は腫瘍細胞の食作用を誘発する
[00417]CD20-CD47 IgA二重特異性抗体構築物は、CD47-SIRPα
相互作用を遮断し、マクロファージ上でFcRを係合させる結果、腫瘍細胞の食作用を可能にする。CD20+CD47+CFSE標識細胞株を、異なる抗体の存在下で非標識ヒトマクロファージと共インキュベートし、標的細胞の食作用をフローサイトメトリーにより評価する。CD47またはCD20に対する抗体は、アイソタイプ対照抗体で観察されるベースラインレベルと比較して有意な食作用を誘発する。IgA二重特異性抗体は抗CD47とリツキシマブの併用治療の相乗作用を反復し、試験される細胞株において抗CD47単独による治療と比較して食作用を増加させる。
【0388】
実施例2 二重特異性抗体構築物
二重可変ドメインIgA免疫グロブリン(DVD-Ig二重特異性IgA)
[00418]二重可変ドメインIgA免疫グロブリン(DVD-Ig二重特異性IgA)で
ある、CD20およびCD47に結合可能な二重特異性抗体構築物を作製した。これらの二重特異性抗体構築物において、追加の可変軽鎖ドメイン(VL)および可変重鎖ドメイン(VH)ドメインを、短いリンカー(配列番号44;SGGGGS)の手段によって、存在するIgA VH-VLドメインの上部に連結した。追加のVHドメインを既存のVHに連結し、同様に、追加のVLを既存のVLに連結する。これらの二重特異性構築物に加えて、scFvフォーマットを用いる2つの単一連結二重可変ドメイン抗体も調製した(DVD-IgA scFv)。scFv要素は単独で、VLを長いリンカー(配列番号45;GGGGSGGGGSGGGGS)でVHに連結するが、全scFv分子は、短いリンカー(配列番号44;SGGGGS)によってVLまたはVHのいずれかに連結される。
【0389】
[00419]抗原CD20結合可変ドメインは、オビヌツズマブ(CD20結合抗体)から
誘導した。CD47結合可変ドメインは、5A3M5または2.3D11クローン(いず
れもCD47結合抗体)から誘導した。すべての組み合わせの概要は、以下の表1に見ることができる。
【0390】
[00420]追加のCD20およびCD47可変ドメインの位置決めを、以下の組み合わせ
を用いて、両方の配向で使用した:
二重連結二重特異性IgA
[00421]1つの二重特異性抗体構築物(二重特異性抗体#2)において、外側ドメイン
に位置決めされた追加のVH/VLドメインは、CD20結合部分(すなわち、CD20結合可変ドメイン)を含有し、既存のVH/VLドメインはaCD47 2.3D11結合部分(すなわち、CD47結合可変ドメイン)を含有していた。
【0391】
[00422]他の二重特異性抗体構築物(二重特異性抗体#1)において、外側ドメインに
位置決めされたVH/VLドメインはaCD47 5A3M5結合部分(すなわち、CD47結合可変ドメイン)を含有し、既存のVH/VLドメインはaCD20結合部分を含有する。
【0392】
scFv-LC単一連結二重特異性IgA
[00423]二重特異性抗体#6は、外側ドメインに位置決めされたscFvを有していた
。scFVはCD20結合部分を含有し、二重特異性抗体構築物中の既存のVH/VLドメインはaCD47 2.3D11結合部分を含有していた。scFvを、可変軽鎖、特に、aCD47 2.3D11結合部分の可変軽鎖ドメインに連結した。
【0393】
[00424]二重特異性抗体#5は、外側ドメインに位置決めされたscFvを有していた
。scFVはaCD47 5A3M5結合部分を含有し、既存のVH/VLドメインはCD20結合部分を含有していた。scFvを、可変軽鎖、特に、CD20結合部分の可変軽鎖ドメインに連結した。
【0394】
scFv-HC単一連結二重特異性IgA
[00425]二重特異性抗体#4は、外側ドメインに位置決めされたscFvを有していた
。scFVはCD20結合部分を含有し、既存のVH/VLドメインはaCD47 2.3D11結合部分を含有していた。scFvを、可変重鎖、特に、CD47結合部分(aCD47 2.3D11結合部分)の可変重鎖ドメインに連結した。
【0395】
[00426]二重特異性抗体#3は、外側ドメインに位置決めされたscFvを有していた
。scFvはCD47結合部分(aCD47 5A3M5結合部分)を含有し、既存のVH/VLドメインはCD20結合部分を含有していた。scFvを、可変重鎖、特に、CD20結合部分の可変重鎖ドメインに連結した。
【0396】
【表3】
【0397】
カッパ-ラムダ二重特異性抗体
[00427]カッパ-ラムダ二重特異性抗体も生成した。これらの抗体において、何に対し
ても親和性を有さない重鎖を、カッパおよびラムダ軽鎖の両方と組み合わせて使用した。これらの軽鎖はそれぞれ、それらのVLドメインに別個の親和性を含有する。したがって、二重の特異性は軽鎖のみによって指示され、この場合、C2クローンによるCD19と5A3M5クローンによるCD47である。共通の重鎖のVH領域をIgA分子に適応させた。カッパおよびラムダ軽鎖は改変されていなかった。親和性も特異性も含有しない対照軽鎖のセットを用いて、シングルアーム親和性、いわゆるダミー軽鎖を決定した。以下の表2は、カッパ-ラムダ抗体の代表的な組み合わせを示す。
【0398】
【表4】
【0399】
実施例3.二重特異性抗体構築物の生成
IgA二重特異性抗体構築物のクローニング
DVD-IgA3.0
[00428]2つのVHを互いに接合するSGGGGSリンカー(配列番号44)を含有す
る5A3M3 VHおよびオビヌツズマブVHからなるフラグメント(二重特異性抗体#1)を、クリセツルス・グリセウス細胞(cricetulus griseus cell)で使用するためにコ
ドン最適化し、IDTにおいて合成DNA(gBlock)として順序付けし、そして製造者のプロトコルに従ってHiFiアセンブリー(NEB)を用いて、HindIIIおよびNotIで前消化されたIgA3.0の定常領域を含有するpEE14.4ベクターにクローニングした。
【0400】
[00429]2つのVHを互いに接合するSGGGGSリンカー(配列番号44)を含有す
るオビヌツズマブVHおよび2.3D11 VHからなるフラグメント(二重特異性抗体#2)を、クリセツルス・グリセウス細胞で使用するためにコドン最適化し、IDTにおいて合成DNA(gBlock)として順序付けし、そして製造業者のプロトコルに従ってHiFiアセンブリー(NEB)を用いて、HindIIIおよびNotIで前消化されたIgA3.0の定常領域を含有するpEE14.4ベクターにクローニングした。
【0401】
[00430]2つのVLを互いに接合するSGGGGSリンカー(配列番号44)を含有す
る5A3M3 VLおよびオビヌツズマブVLからなるフラグメント(二重特異性抗体#1)を、クリセツルス・グリセウス細胞で使用するためにコドン最適化し、IDTにおいて合成DNA(gBlock)として順序付けし、そして製造者のプロトコルに従ってHiFiアセンブリー(NEB)を用いて、HindIIIおよびNotIで前消化されたIgA3.0の定常領域を含有するpEE14.4ベクターにクローニングした。
【0402】
[00431]2つのVLを互いに接合するSGGGGSリンカー(配列番号44)を含有す
るオビヌツズマブVLおよび2.3D11 VLからなるフラグメント(二重特異性抗体#2)を、クリセツルス・グリセウス細胞で使用するためにコドン最適化し、IDTにおいて合成DNA(gBlock)として順序付けし、そして製造業者のプロトコルに従ってHiFiアセンブリー(NEB)を用いて、HindIIIおよびNotIで前消化されたIgA3.0の定常領域を含有するpEE14.4ベクターにクローニングした。
【0403】
DVD-IgA scFv_HC
[00432]GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号45)を介して5A3M5 VL
に連結された後、scFvをVHに接合するSGGGGSリンカー(配列番号44)によってオビヌツズマブVHに連結されている5A3M5 VHからなるscFvフラグメント(二重特異性抗体#3)を、クリセツルス・グリセウス細胞で使用するためにコドン最適化し、IDTにおいて合成DNA(gBlock)として順序付けし、そして製造業者のプロトコルに従ってHiFiアセンブリー(NEB)を用いて、HindIIIおよびNotIで前消化されたIgA3.0の定常領域を含有するpEE14.4ベクターにクローニングした。
【0404】
[00433]GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号45)を介してオビヌツズマブV
Lに連結された後、scFvをVHに接合するSGGGGSリンカー(配列番号44)によって2.3D11 VHに連結されているオビヌツズマブVHからなるscFvフラグメント(二重特異性抗体#4)を、クリセツルス・グリセウス細胞で使用するためにコドン最適化し、IDTにおいて合成DNA(gBlock)として順序付けし、そして製造業者のプロトコルに従ってHiFiアセンブリー(NEB)を用いて、HindIIIおよびNotIで前消化されたIgA3.0の定常領域を含有するpEE14.4ベクターにクローニングした。
【0405】
[00434]オビヌツズマブVLまたはVHをpBluescript IIベクター中に
クローニングし、そこから、VHまたはVLを、HindIII-NotIを介して、IgA3.0またはカッパ軽鎖の定常領域を含有するpEE14.4ベクター中にサブクロ
ーニングした。
【0406】
[00435]2.3D11 VLまたはVHをpBluescript IIベクター中に
クローニングし、そこから、VHまたはVLを、HindIII-NotIを介して、IgA3.0またはカッパ軽鎖の定常領域を含有するpEE14.4ベクター中にサブクローニングした。
【0407】
DVD-IgA scFv_LC
[00436]GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号45)を介して5A3M5 VL
に連結された後、scFvをVHに接合するSGGGGSリンカー(配列番号44)によってオビヌツズマブVLに連結されている5A3M5 VHからなるscFvフラグメント(二重特異性抗体#5)を、クリセツルス・グリセウス細胞で使用するためにコドン最適化し、IDTにおいて合成DNA(gBlock)として順序付けし、そして製造業者のプロトコルに従ってHiFiアセンブリー(NEB)を用いて、HindIIIおよびNotIで前消化されたIgA3.0の定常領域を含有するpEE14.4ベクターにクローニングした。
【0408】
[00437]GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号45)を介してオビヌツズマブV
Lに連結された後、scFvをVHに接合するSGGGGSリンカー(配列番号44)によって2.3D11 VLに連結されているオビヌツズマブVHからなるscFvフラグメント(二重特異性抗体#6)を、クリセツルス・グリセウス細胞で使用するためにコドン最適化し、IDTにおいて合成DNA(gBlock)として順序付けし、そして製造業者のプロトコルに従ってHiFiアセンブリー(NEB)を用いて、HindIIIおよびNotIで前消化されたIgA3.0の定常領域を含有するpEE14.4ベクターにクローニングした。
【0409】
カッパ-ラムダ抗体
[00438]完全なIgA3.0共通重鎖を、クリセツルス・グリセウス細胞で使用するた
めにコドン最適化し、合成DNAとして順序付けし、そして製造業者のプロトコルに従ってHiFiアセンブリー(NEB)を用いてpcDNA3.4ベクターにアセンブルした。
【0410】
[00439]完全な5A3M5カッパ軽鎖を、クリセツルス・グリセウス細胞で使用するた
めにコドン最適化し、合成DNAとして順序付けし、そして製造業者のプロトコルに従ってHiFiアセンブリー(NEB)を用いてpcDNA3.4ベクターにアセンブルした。
【0411】
[00440]完全なC2ラムダ軽鎖を、クリセツルス・グリセウス細胞で使用するためにコ
ドン最適化し、合成DNAとして順序付けし、そして製造業者のプロトコルに従ってHiFiアセンブリー(NEB)を用いてpcDNA3.4ベクターにアセンブルした。
【0412】
HEK293F細胞のトランスフェクション
[00441]HEK293 Freestyle細胞を、以下の改変を伴いトランスフェク
トした:DNA:293フェクチンの比は1:1.33を用いた。いくつかのHC:LC
DNA、すなわち、重鎖をコードするDNAおよび軽鎖をコードするDNAの抗体鎖の比を、pAdvantage(Promega)と組み合わせて、全濃度1ug/mL、容積2mLで試験した。pAdvantage DNAの量は常に重鎖DNAと等しかった。
【0413】
[00442]FACS、ADCC、RBCおよび血小板プロファイリング実験で使用した上
清の生産を、以下の比率で4mL中でもたらした:#1(1:1:1)、#2(1:2:1)、#3(1:0.5:1)、#4(1:0.5:1)、#5(1:2:1)、#6(1:2:1)。
【0414】
[00443]細胞産生抗体を採取し、350gで5分間遠心分離し、得られた上清を収集し
た。0.22umフィルターを通過させることにより、上清から細胞デブリを除去した。
ELISA
[00444]次いで、二重特異性抗体の濃度を、以下のようなELISAによって、上記で
得た清澄化された上清中で測定した;
1日目:プレートコーティング
[00445]プレートを、100μL/ウェルを使用して、4℃で一晩、PBS中の抗体で
コーティングした。
【0415】
2日目:ELISA
[00446]プレートを150μL/ウェルの洗浄緩衝液で3回洗浄し、各洗浄後にプレー
トを穏やかにフリックした。プレートを遮断するために、150μL/ウェルの遮断緩衝液を各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを穏やかにフリックし、標準物質を加えた。試料を以下の条件に従った遮断緩衝液で希釈し、室温で2時間インキュベートした;標準希釈;100μL/ウェルおよび希釈試料;100μL/ウェル。
【0416】
[00447]プレートをフリックした後、150μL/ウェルの洗浄緩衝液で3回洗浄した
。検出抗体を遮断緩衝液(100μL/ウェル)に添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートをフリックし、150μL/ウェルの洗浄緩衝液で3回洗浄し、各洗浄後にプレートをフリックした。ABTS基質を添加した(50mLのABTS緩衝液中に50mgを1錠、暗所保存);100μL/ウェル、±15分間。プレートの光学濃度を415nmでBio-Rad分光光度計で測定した。
【0417】
[00448]使用した緩衝液は、洗浄緩衝液(PBS、0.05% Tween-20)お
よび遮断緩衝液(PBS、0.05% Tween-20、1% BSA)であった。使用したPBS;Sigma;D88537。コーティング抗体はヤギ抗ヒトカッパであった;Southern Biotech;2060-01、1:2000で使用。使用したコーティング抗体はヤギ抗ヒトラムダであった;Southern Biotech;
2070-01、1:2000で使用。標準曲線ヒトIgA;BETHYL;p80-102。使用した検出抗体はヤギ抗ヒトIgA HRPであった;Southern Biotech;2050-05、1:2000使用。使用した検出抗体は、ヤギ抗ヒトラムダHRPであった;Southern Biotech;2070-05、1:5000使用。アッセイのためにMaxiSORPプレートを使用した;NUNC;439454およびBSA;Roche;10735094001。
【0418】
[00449]DVD-IgA、DVD-IgA-scFvおよびカッパ-カッパ抗体分子に
ついて、ヤギ抗ヒトカッパコーティング抗体をヤギ抗ヒトIgA-HRP検出抗体と組み合わせて使用した。ラムダ-ラムダ抗体については、ヤギ抗ヒトラムダコーティング抗体をヤギ抗ヒトIgA-HRP検出抗体と組み合わせて使用した。カッパ-ラムダ抗体については、ヤギ抗ヒトカッパコーティング抗体をヤギ抗ヒトカッパ-HRP検出抗体と組み合わせて使用した。
【0419】
HiTrap KappaSelectによる二重特異性抗体の精製
[00450]5mLのHiTrap Kappa Selectカラム(17-5458-
12;GE Healthcare)にロードする前に、上清をPBSで1:1に希釈し
た。試料全体をロードした後、カラムを5カラム容量(CV)のPBS、続いて溶出緩衝液(0.1Mグリシン pH2.5)ですすいだ。1mLの画分を、中和緩衝液(75uL 1M Tris pH 8.8)を予め充填したチューブに収集した。
【0420】
SDS-PAGE
[00451]合計15uL/HiTrap Kappa Select溶出液を、還元剤を
含まない5uL 4xローディング緩衝液(Bio-Rad)に添加し、4~20% Precast勾配ゲルMiniProtean TGX(Bio-Rad)上で±1時間運転した。ゲルを、バンドが可視化されるまでロッカー上でInstantBlue(1SB1L;Expedeon)で染色し、ロッカー上で5分間水で3回洗浄し、走査した。
【0421】
フローサイトメトリー二特異性抗体結合アッセイ
[00452]SKBR3 WTおよびSKBR3-CD20細胞を、標準培養条件を用いて
RPMI-1640培地(Gibco)中で培養した。100.000細胞の量を、Obi-IgA3.0(1ug/mL)、または2.3D11-IgA2(1ug/mL)、50uL二重特異性抗体上清と一緒に4℃で45分間染色した後、FACS緩衝液(PBS中の1% BSA)中で洗浄した。二次抗体を使用し、ヤギ抗hIgA RPE F(ab’)2(Southern Biotech 2052-09;1:150使用)を4℃で45分間使用して、IgA分子を検出した後、FACS緩衝液中で洗浄した。細胞の一部を、4℃で45分間、mIgG1抗CD47 PerCP-Cy5.5(Biolegend;クローンCC26C;1:20使用)で事前遮断し、続いて洗浄した。事前遮断後、IgA抗体を上記のように施用した。試料をBD Canto IIで分析し、データをFlowJo(BD)を用いて分析した。
【0422】
抗体依存性細胞傷害(ADCC)
[00453]合計100万の標的細胞を51Crで少なくとも3時間標識化し、続いて培養
培地で洗浄した。標的細胞のサブセット(500.000)を、mIgG1抗CD47
PerCp-Cy5.5抗体によって、200 uLの20倍希釈液中、4℃で1時間イ
ンキュベートし、続いて培地洗浄することによって、事前遮断した。
【0423】
[00454]エフェクター細胞を、標準的なFicoll-paque(GE Healt
hcare)およびHistopaque-1119(Sigma Aldrich)を使用して、健康なドナーから単離した。HistopaqueをFicoll層の上に施用してから、PBS中で1:1に希釈した血液混合物を施用した。チューブを、室温においで450gで25分間スピンダウンした。Histopaque層からPMNを単離し、培養培地で洗浄した。
【0424】
[00455]合計200.000のPMNを用いて、さまざまな濃度の抗体(Obi-Ig
A3.0;2.3D11-IgA3.0)または二重特異性抗体の生の上清の存在下で、5000の標的細胞(1:40比率)と一緒に4時間にわたり共培養した。最小放出として標的およびエフェクター細胞のみを採取したが、最大放出の場合は標的およびエフェクター細胞を5%Triton中で共培養した。
【0425】
実施例4.二重特異性抗体の作製と特性解析
[00456]二重特異性抗体のすべての10形態を、標準条件を使用してHEK293F細
胞中で産生し、そして清澄化した上清を採取し、0.22umフィルターを通過させ、そして使用まで4℃で保存した。上清をELISAによって評価して、成功した産生および抗体濃度を決定した。すべての二重特異性分子の産生は成功し、下流アッセイで使用するのに十分な濃度をもたらした。
【0426】
[00457]DVD-Ig様二重特異性抗体(#1~6)の生上清を、以下の細胞に直接施
用した:1)CD47を自然に発現するがCD20を発現しないSKBR3細胞(CD20-/CD47+);2)CD20を形質導入され、二重陽性(CD20+/CD47+)細胞株として作用する、SKBR3細胞株。
【0427】
[00458]フローサイトメトリー分析を行って、細胞表面上のIgA二重特異性抗体を検
出した。
[00459]二重特異性抗体によるCD47オプソニン化に関してどのような効率があるか
、およびCD47への付加的結合能が二重特異性抗体のCD20結合を増強し得るかを決定するために、CD47に対するmIgG1遮断抗体(PerCP-Cy5.5で標識化)を用いて、CD47分子をそれぞれ事後遮断(post-block)または事前遮断した。これは、IgAバリアントにおいて使用されるクローンとは異なるクローンであった。また、二重特異性によってCD20のオプソニン化を決定する対照も平行して利用し、これに関してはIgG1 オビヌツズマブを用いた。
【0428】
[00460]事前遮断(二重特異性抗体による増強されたCD20結合を決定する)に関し
ては、以下の方法を使用した:1)CD47遮断抗体を細胞に施用し、非結合抗体画分を洗い流し;2)細胞を二重特異性抗体(上清)と共にインキュベートし、非結合二重特異性抗体画分を洗い流し;そして3)細胞を抗IgA-PEと共にインキュベートし、非結合抗体画分を洗い流した。細胞を固定し、FACSによって測定した。
【0429】
[00461]事後遮断(二重特異性抗体によるCD47オプソニン化を決定する)に関して
は、以下の方法を使用した:1)細胞を二重特異性抗体(上清)と共にインキュベートし、非結合二重特異性抗体画分を洗い流し;そして2)細胞を抗IgA-PEと共にインキュベートし、同時にCD47遮断抗体を細胞に施用し、非結合抗体画分を洗い流した。細胞を固定し、FACSによって測定した。平行して利用された対照は、未染色細胞、二次抗体のみ、および二価単一特異性抗体である。
【0430】
[00462]SKBR3細胞では、予想通り、二価単一特異性抗体2.3D11のCD47
の強力な結合が観察された。mIgG1 aCD47抗体を用いたクロスブロッキング実験は、CD47は良好に遮断されることができ、二重特異性抗体による結合は観察することができないことを示した。二重特異性#4および#6の結合は見られたが、それらは、事後遮断実験で観察されたように、細胞上のCD47を完全にオプソニン化しない。
【0431】
[00463]SKBR3-CD20では、すべての二重特異性抗体が高い親和性でCD20
と結合するが、細胞を完全にオプソニン化するわけではない。CD47分子もまた、抗CD47 mIgG1による事後遮断によって決定されるように、完全にオプソニン化されていない。しかしながら、CD47分子を事前遮断し、次いで二重特異性抗体で染色した場合、結合の減少が、抗体#2、#3、および#5について観察される。これらの抗体は、CD20陰性細胞(SKBR3-WT)で観察されるようなCD47の結合を示さない。これは、CD47分子を結合することによって、二重特異性抗体はCD20により良好に結合することができ、結合の増強を示すことを、示している。上記の観察は、IgA抗体が、2つの標的に同時に結合する二重特異性抗体に適応され得ることを示し、これらの例において、CD47結合はCD20結合を増強する。
【0432】
赤血球染色
[00464]PMN/PBMCから赤血球を分離するために、Histopaque/fi
coll単離を行った。血漿、PBMC、ficoll、histopaqueおよびPMNは廃棄した。赤血球の残りのペレットをPBSで洗浄し、2400rpmで5分間回
転させ、ペレットを5mLのPBSに再懸濁した。マウスIgG1抗ヒトCD47 PerCP-Cy5.5(Biolegend;クローンCC2C6;1:20希釈)と組み合わせたマウスIgG2b抗ヒトCD235a-PE(BD;クローンGA-R2;1:40希釈)、または二重特異性IgA抗体1~6の40uLの上清で染色するために、試料当たり10uLの量を使用した。希釈は、FACS緩衝液(PBS中1% BSA)中で行う。遮光下の室温で30分間インキュベートし、過剰の未結合抗体をFACS緩衝液で洗い流した。40uLをFACS緩衝液に加え、検出抗体(ヤギF(ab)’2抗ヒトIgA-FITC(Southern Biotech;1:100希釈)を希釈し、遮光下の室温で30分間インキュベートし、過剰の未結合抗体をFACS緩衝液で洗い流した。1% PFAをペレット化細胞に添加することにより、試料を固定した。Canto
II (BD)を測定し、CD235陽性事象をにゲーティングする。
【0433】
血小板染色
[00465]マウスIgG1抗ヒトCD47 PerCP-Cy5.5(Biolegen
d;クローンCC2C6;1:20希釈)と組み合わせたマウスIgG1抗ヒトCD61-FITC(Dako;クローンY2-51;1:20希釈)、または二重特異性IgA抗体1~6の40uLの上清で染色するために、試料当たりヘパリン/EDTAチューブから10uLの全血を使用した。希釈は、FACS緩衝液(PBS中1% BSA)中で行った。遮光下の室温で30分間インキュベートした後、0.5uLの検出抗体(ヤギF(ab)’2抗ヒトIgA-RPE(Southern Biotech;1:50希釈)を添加し、遮光下の室温で30分間インキュベートした。1% PFAをペレット化細胞に添加することにより、試料を固定した。測定はCanto II(BD)で行い、CD61陽性事象をゲーティングした。
【0434】
【表5】
【0435】
【表6】
【0436】
【表7】
【0437】
【表8】
【0438】
【表9】
【0439】
【表10】
【0440】
【表11】
【0441】
【表12】
【0442】
【表13】
【0443】
【表14】
【0444】
【表15】
【0445】
【表16】
【0446】
【表17】
【0447】
【表18】
【0448】
【表19】
【0449】
【表20】
【0450】
【表21】
【0451】
【表22】
【0452】
【表23】
【0453】
【表24】
【0454】
【表25】
【0455】
【表26】
【0456】
【表27】
【0457】
【表28】
【0458】
【表29】
【0459】
[00466]本開示の好ましい態様を本明細書に示し、記載してきたが、そのような態様が単に例として提供されていることは当業者には明らかであろう。ここで、本開示から逸脱することなく、多数の変形、変更、および置換が当業者に想起されるであろう。本明細書に記載された態様、またはこれらの態様もしくはそこに記載された観点のうちの1以上の組み合わせに対するさまざまな代替物が、本開示を実施する際に採用されてもよいことを、理解すべきである。以下の特許請求の範囲が本開示の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲およびその等価物の範囲内の方法および構造は、それによって包含されることが意図される。
本願は以下の発明を包含する。
[項目1] (a)免疫グロブリンA(IgA)重鎖ドメイン;
(b)CD47結合ドメイン;および
(c)抗原結合ドメイン;
を含む抗体構築物であって、
該IgA重鎖ドメインが、免疫エフェクター細胞上のFcαRに特異的に結合し、
該CD47結合ドメインが、標的細胞上に発現されたCD47と免疫エフェクター細胞上のシグナル調節タンパク質α(SIRP α)との結合を阻害し、
該抗原結合ドメインが、標的細胞上の抗原に結合し、そして
該抗体構築物が、CD47と比較して、抗原に対してより高い結合親和性を有する、
前記抗体構築物。
[項目2] CD47結合ドメインが、第1の軽鎖可変ドメインおよび第1の重鎖可変ドメインのうちの少なくとも1つを含む、項目1に記載の抗体構築物。
[項目3] 抗原結合ドメインが、第2の軽鎖可変ドメインおよび第2の重鎖可変ドメインのうちの少なくとも1つを含む、項目1または2に記載の抗体構築物。
[項目4] 前記構築物が、前記第1の軽鎖可変ドメインを含み、前記第1の軽鎖可変ドメインが、可変軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、可変軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)、および可変軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含み;
前記CDR-L1が、配列番号13のアミノ酸配列または配列番号13中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含み、前記CDR-L2が、配列番号14のアミノ酸配列または配列番号14中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含み、そして前記CDR-L3が、配列番号15のアミノ酸配列または配列番号15中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含む、
項目2または3に記載の抗体構築物。
[項目5] 前記構築物が前記第1の軽鎖可変ドメインを含み、前記第1の軽鎖可変ドメインが、配列番号26に対して90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目2~4のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目6] 前記構築物が、前記第1の重鎖可変ドメインを含み、前記第1の重鎖可変ドメインが、可変重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、可変重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)、および可変重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含み、
前記CDR-H1が、配列番号4のアミノ酸配列または配列番号4中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含み、前記CDR-H2が、配列番号5のアミノ酸配列または配列番号5中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含み、そして前記CDR-H3が、配列番号6のアミノ酸配列または配列番号6中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含む、
項目2~5のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目7] 前記構築物が前記第1の重鎖可変ドメインを含み、該第1の重鎖可変ドメインが、配列番号23に対して90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目2~6のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目8] 前記構築物が、前記第2の軽鎖可変ドメインを含み、前記第2の軽鎖可変ドメインが、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3を含み;
前記CDR-L1が、配列番号10のアミノ酸配列または配列番号10中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含み、前記CDR-L2が、配列番号11のアミノ酸配列または配列番号11中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含み、そして前記CDR-L3が、配列番号12のアミノ酸配列または配列番号12中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含む、
項目3~7のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目9] 前記構築物が前記第2の軽鎖可変ドメインを含み、前記第2の軽鎖可変ドメインが配列番号25のアミノ酸配列を含む、項目3~8のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目10] 前記構築物が、前記第2の重鎖可変ドメインを含み、前記第2の重鎖可変ドメインが、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3を含み;
前記CDR-H1が、配列番号1のアミノ酸配列または配列番号1中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含み、前記CDR-H2が、配列番号2のアミノ酸配列または配列番号2中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含み、そして前記CDR-H3が、配列番号3のアミノ酸配列または配列番号3中に最大2つのアミノ修飾を有するそのバリアントを含む、項目3~9のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目11] 前記構築物が前記第2の重鎖可変ドメインを含み、前記第2の重鎖可変ドメインが、配列番号22に対して90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目3~10のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目12] 前記第1の重鎖可変ドメインおよび第2の重鎖可変ドメインを含み、前記第2の重鎖可変ドメインのC末端が第1の重鎖可変ドメインのN末端に連結されている、第1のポリペプチド;および
前記第1の軽鎖可変ドメインおよび第2の軽鎖可変ドメインを含み、第2の軽鎖可変ドメインのC末端が第1の軽鎖可変ドメインのN末端に連結されている、第2のポリペプチド;
のうちの少なくとも1つを含む、項目3~11のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目13] 前記第1または前記第2のポリペプチドが、前記可変ドメインを連結するリンカーペプチドをさらに含む、項目12に記載の抗体構築物。
[項目14] リンカーペプチドが配列番号44の配列を含む、項目13に記載の抗体構築物。
[項目15] 第1のポリペプチドが配列番号29の配列を含む、項目12~14のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目16] 第1のポリペプチドのC末端が(IgA)重鎖領域に連結されている、項目12~15のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目17] 連結がIgA CH1定常ドメインを介している、項目16に記載の抗体構築物。
[項目18] 第2のポリぺプチドが配列番号31の配列を含む、項目12~17のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目19] 抗体構築物が第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む、項目12~18のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目20] 第1の重鎖可変ドメインのC末端が第2の重鎖可変ドメインのN末端に連結されている第1のポリペプチド;または
第1の軽鎖可変ドメインのC末端が第2の軽鎖可変ドメインのN末端に連結されている第2のポリペプチド;
のうちの少なくとも1つを含む、項目3に記載の抗体構築物。
[項目21] 連結がリンカーペプチドによる、項目20に記載の抗体構築物。
[項目22] リンカーペプチドが配列番号44の配列を含む、項目21に記載の抗体構築物。
[項目23] 第1のポリぺプチドが配列番号30の配列を含む、項目20~22のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目24] 第1のポリペプチドのC末端が(IgA)重鎖領域に連結されている、項目20~23のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目25] 連結がIgA CH1定常ドメインを介する、項目23に記載の抗体構築物。
[項目26] 第2のポリぺプチドが配列番号32の配列を含む、項目22~25のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目27] 抗体構築物が第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドを含む、項目20~26のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目28] 抗体構築物が、単鎖可変フラグメント(scFv)を含む第1のポリペプチドを含み、該scFVが、前記第2の軽鎖可変ドメインに連結された前記第2の重鎖可変ドメインを含む、項目3~11のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目29] 前記可変ドメインを連結するリンカーペプチドを含む、項目28に記載の構築物。
[項目30] リンカーペプチドが配列番号45の配列を含む、項目29に記載の抗体構築物。
[項目31] 第1のポリペプチドが、第1の軽鎖可変ドメイン;または第1の重鎖可変ドメインに連結されたscFvを含む、項目28~30のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目32] 連結がリンカーペプチドによる、項目31に記載の抗体構築物。
[項目33] リンカーペプチドが配列番号44の配列を含む、項目32に記載の抗体構築物。
[項目34] 第1の軽鎖可変ドメインに連結されたscFVを含む第1のポリペプチドを含み、該第1のポリペプチドが、配列番号35に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、項目31~33のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目35] 第1の重鎖可変ドメインに連結されたscFVを含む第1のポリペプチドを含み、該第1のポリペプチドが、配列番号33に対して少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、項目31~33のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目36] 抗体構築物が、単鎖可変フラグメント(scFv)を含む第1のポリペプチドを含み、該scFVが、第1の軽鎖可変ドメインに連結された第1の重鎖可変ドメインを含む、項目3に記載の抗体構築物。
[項目37] 前記可変ドメインを連結するリンカーペプチドを含む、項目36に記載の抗体構築物。
[項目38] リンカーペプチドが配列番号45の配列を含む、項目37に記載の抗体構築物。
[項目39] 第1のポリペプチドが、第2の軽鎖可変ドメイン;または第2の重鎖可変ドメインに連結されたscFvを含む、項目36~38のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目40] 連結がリンカーペプチドによる、項目39に記載の抗体構築物。
[項目41] リンカーペプチドが配列番号44の配列を含む、項目40に記載の抗体構築物。
[項目42] 第2の軽鎖可変ドメインに連結されたscFVを含む第1のポリペプチドを含み、該第1のポリペプチドが、配列番号36に対して90%の同一性を有する配列を含む、項目39~41のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目43] 第2の重鎖可変ドメインに連結されたscFVを含む第1のポリペプチドを含み、該第1のポリペプチドが、配列番号34に対して90%の同一性を有する配列を含む、項目39~41のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目44] IgA重鎖ドメインがIgA重鎖定常ドメインを含む、項目1~43のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目45] IgA重鎖定常ドメインが、IgA1定常ドメインまたはそのバリアントである、項目44に記載の抗体構築物。
[項目46] IgA1定常ドメインが、IgA1 CH2領域およびIgA1 CH3領域またはそのバリアントのうちの少なくとも1つを含む、項目45に記載の抗体構築物。
[項目47] IgA1定常領域が、IgA1 CH1領域またはそのバリアントをさらに含む、項目46に記載の抗体構築物。
[項目48] IgA重鎖定常ドメインが、IgA2定常ドメインまたはそのバリアントである、項目44に記載の抗体構築物。
[項目49] IgA2定常ドメインが、IgA2 CH2領域およびIgA2 CH3領域またはそのバリアントのうちの少なくとも1つを含む、項目48に記載の抗体構築物。
[項目50] IgA2定常領域がIgA2 CH1領域をさらに含む、項目49に記載の抗体構築物。
[項目51] 抗原が、CD20、GD2、メソテリン、CD38、CD19、EGFR、HER2、PD-L1、またはCD25である、項目1~50のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目52] IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つまたは2つの天然に存在するグリコシル化部位を欠く、項目44~51のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目53] 前記構築物が、少なくとも2つの天然に存在するグリコシル化部位を欠き、該少なくとも2つの天然に存在するグリコシル化部位が、少なくとも1つのIgA CH2領域またはIgA CH3領域にある、項目52に記載の抗体構築物。
[項目54] 少なくとも2つの天然に存在するグリコシル化部位が、2つの天然に存在するN連結グリコシル化部位である、項目53に記載の抗体構築物。
[項目55] IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも2つの天然に存在するアスパラギン(N)アミノ酸残基を欠く、項目44~54のいずれか1項に記載の構築物。
[項目56] IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも2つの天然に存在するアスパラギン(N)アミノ酸残基のアミノ酸置換、または両方の残基の置換を含む、項目44~54のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目57] IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基を欠く、項目44~56のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目58] IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む、項目57に記載の抗体構築物。
[項目59] IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基の非保存的アミノ酸置換を含む、項目58に記載の抗体構築物。
[項目60] IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基のアミノ酸欠失を含む、項目57に記載の抗体構築物。
[項目61] IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するチロシン(Y)アミノ酸残基を欠く、項目44~60のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目62] IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(Y)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む、項目61に記載の抗体構築物。
[項目63] IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(Y)アミノ酸残基の欠失を含む、項目61に記載の抗体構築物。
[項目64] IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基を欠く、項目44~63のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目65] IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む、項目64に記載の抗体構築物。
[項目66] IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基の欠失を含む、項目65に記載の抗体構築物。
[項目67] IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するイソロイシン(I)アミノ酸残基を欠く、項目44~66のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目68] IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するイソロイシン(I)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む、項目67に記載の抗体構築物。
[項目69] IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するイソロイシン(I)アミノ酸残基の欠失を含む、項目68に記載の抗体構築物。
[項目70] IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するプロリン(P)アミノ酸残基を欠く、項目44~69のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目71] IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するプロリン(P)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む、項目70に記載の抗体構築物。
[項目72] IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するプロリン(P)アミノ酸残基の欠失を含む、項目71に記載の抗体構築物。
[項目73] 前記構築物が、対応する野生型IgA重鎖定常領域を含む対応する抗体構築物と比較して、より長い循環半減期を示す、項目52~72のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目74] 抗体構築物が、対応する野生型CD47結合ドメインと比較して、CD47に対してより低い親和性を有する弱毒化CD47結合ドメインを含む、項目1~73のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目75] 抗体構築物が、対応する野生型IgA重鎖定常領域を含む対応する抗体構築物と比較して、減少した凝集を示す、項目52~74のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目76] 抗体構築物が、対応する野生型IgA重鎖定常領域を含む対応する抗体構築物と比較して、血清タンパク質との減少した凝集を示す、項目52~75のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目77] 前記IgA重鎖定常領域が1以上のアルブミン結合ドメインを含む、項目44~76のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目78] 抗体構築物が、1以上のアルブミン結合ドメインを含まない対応する抗体構築物よりも長い半減期を有する、項目77に記載の抗体構築物。
[項目79] IgA重鎖定常ドメインが、配列番号37~41のいずれか1つから選択される配列に対して90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目44~78のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目80] 構築物がヒンジ領域をさらに含む、項目1~79のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目81] ヒンジ領域が、IgAヒンジアミノ酸配列またはそのバリアントもしくはフラグメントを含む、項目80に記載の抗体構築物。
[項目82] ヒンジ領域が、ヒトIgAヒンジアミノ酸配列またはそのバリアントもしくはフラグメントを含む、項目80または81に記載の抗体構築物。
[項目83] ヒンジが、IgA1ヒンジもしくはIgA2ヒンジ、またはそのバリアントもしくはフラグメントである、項目80~82のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目84] 抗体構築物が軽鎖定常領域をさらに含む、項目1~83のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目85] 軽鎖定常領域がカッパ定常領域である、項目84に記載の抗体構築物。
[項目86] 軽鎖定常領域がラムダ定常領域である、項目84に記載の抗体構築物。
[項目87] 軽鎖定常領域が、第1の軽鎖可変ドメインまたは第1の重鎖可変ドメインに連結される、項目84~86のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目88] (a)免疫グロブリンA(IgA)重鎖定常ドメイン;
(b)CD47結合ドメイン;および
(c)抗原結合ドメイン;
を含む抗体構築物であって、
該IgA重鎖ドメインが、免疫エフェクター細胞上のFcαRに特異的に結合し、
該CD47結合ドメインが、標的細胞上に発現されたCD47と免疫エフェクター細胞上のシグナル調節タンパク質α(SIRP α)との結合を阻害し、
該抗原結合ドメインが、標的細胞上の抗原に結合し、そして
該抗体構築物が、CD47と比較して、抗原に対してより高い結合親和性を有する、
前記抗体構築物。
[項目89] CD47結合ドメインが、第1の軽鎖可変ドメインおよび第1の重鎖可変ドメインを含む、項目88に記載の抗体構築物。
[項目90] 抗原結合ドメインが、第2の軽鎖可変ドメインおよび第2の重鎖可変ドメインを含む、項目89に記載の抗体構築物。
[項目91] 第1の軽鎖可変ドメインがカッパ型のものである、項目90に記載の抗体構築物。
[項目92] 第2の軽鎖可変ドメインがラムダ型のものである、項目91に記載の抗体構築物。
[項目93] 第1の軽鎖可変ドメインがラムダ型のものである、項目90に記載の抗体構築物。
[項目94] 第2の軽鎖可変ドメインがカッパ型のものである、項目93に記載の抗体構築物。
[項目95] 第1の軽鎖可変ドメインが、カッパ型のものであり、配列番号16の可変軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)アミノ酸配列、配列番号17の可変軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)アミノ酸配列、配列番号18の可変軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)アミノ酸配列を含む、項目91または92に記載の抗体構築物。
[項目96] 第1の軽鎖可変ドメインが、配列番号27に対して90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目95に記載の抗体構築物。
[項目97] 第2の軽鎖可変ドメインが、配列番号19の可変軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)アミノ酸配列、配列番号20の可変軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)アミノ酸配列、配列番号21の可変軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)アミノ酸配列を含むラムダ型のものである、項目92に記載の抗体構築物。
[項目98] 第2の軽鎖可変ドメインが、配列番号28に対して90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目97に記載の抗体構築物。
[項目99] 第1の重鎖可変ドメインおよび第2の重鎖可変ドメインが同じである、項目90~98のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目100] 第1の重鎖可変ドメインおよび第2の重鎖可変ドメインが、配列番号7の可変重鎖相補性決定領域1(CDR-H1)アミノ酸配列、配列番号8の可変重鎖相補性決定領域2(CDR-H2)アミノ酸配列、配列番号9の可変重鎖相補性決定領域3(CDR-H3)アミノ酸配列を含む、項目99に記載の抗体構築物。
[項目101] 第1の重鎖可変ドメインおよび第2の重鎖可変ドメインが、配列番号24に対して90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目100に記載の抗体構築物。
[項目102] 第1の軽鎖可変ドメインがカッパ定常領域をさらに含む、項目89~101のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目103] 第2の軽鎖可変ドメインがラムダ定常領域をさらに含む、項目90~102のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目104] 第1の軽鎖可変ドメインがラムダ定常領域をさらに含む、項目89~101のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目105] 第2の軽鎖可変ドメインがカッパ定常領域をさらに含む、項目90~101または104のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目106] カッパ定常領域が、配列番号42に対して95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目102~105のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目107] ラムダ定常領域が、配列番号43に対して95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目103~105のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目108] IgA重鎖定常ドメインが、IgA CH2領域およびIgA CH3領域またはそのバリアントのうちの少なくとも1つを含む、項目88~107のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目109] IgA重鎖定常ドメインがIgA CH1領域またはそのバリアントをさらに含む、項目108に記載の抗体構築物。
[項目110] CD47結合ドメインが、IgA CH1ドメインによってIgA定常ドメインに連結される、項目109に記載の抗体構築物。
[項目111] 抗原結合ドメインが、IgA CH1ドメインによってIgA定常ドメインに連結される、項目109~110に記載の抗体構築物。
[項目112] IgA重鎖定常ドメインがIgA1定常領域またはそのバリアントである、項目88~111のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目113] IgA1定常領域がIgA1 CH2領域およびIgA1 CH3領域を含む、項目112に記載の抗体構築物。
[項目114] IgA1定常領域がIgA1 CH1領域をさらに含む、項目113に記載の抗体構築物。
[項目115] IgA重鎖定常ドメインがIgA2定常領域またはそのバリアントである、項目88~111のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目116] IgA2定常領域が、IgA2 CH2領域およびIgA2 CH3領域を含む、項目115に記載の抗体構築物。
[項目117] IgA2定常領域がIgA2 CH1領域をさらに含む、項目116に記載の抗体構築物。
[項目118] 抗原が、CD20、GD2、メソテリン、CD38、CD19、EGFR、HER2、PD-L1、またはCD25である、項目88~117のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目119] IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、1、2または3つの天然に存在するグリコシル化部位を欠く、項目108~118のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目120] 前記部位が、IgA CH2領域またはIgA CH3領域の少なくとも1つにある、項目119に記載の抗体構築物。
[項目121] 前記構築物が、2つの天然に存在するN連結グリコシル化部位を欠く、項目119または120に記載の抗体構築物。
[項目122] IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、天然に存在するアスパラギン(N)アミノ酸残基を欠く、項目108~121のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目123] IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するアスパラギン(N)アミノ酸残基のアミノ酸置換、または少なくとも2つの天然に存在するアスパラギン(N)アミノ酸残基の置換を含む、項目122に記載の抗体構築物。
[項目124] IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基を欠く、項目108~123のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目125] IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む、項目124に記載の抗体構築物。
[項目126] IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基の非保存的アミノ酸置換を含む、項目125に記載の抗体構築物。
[項目127] IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(C)アミノ酸残基のアミノ酸欠失を含む、項目126に記載の抗体構築物。
[項目128] IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するチロシン(Y)アミノ酸残基を欠く、項目108~127のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目129] IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(Y)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む、項目128に記載の抗体構築物。
[項目130] IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するシステイン(Y)アミノ酸残基の欠失を含む、項目129に記載の抗体構築物。
[項目131] IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基を欠く、項目108~130のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目132] IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む、項目131に記載の抗体構築物。
[項目133] IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するトレオニン(T)アミノ酸残基の欠失を含む、項目132に記載の抗体構築物。
[項目134] IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するイソロイシン(I)アミノ酸残基を欠く、項目108~133のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目135] IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するイソロイシン(I)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む、項目134に記載の抗体構築物。
[項目136] IgA重鎖定常領域が、少なくとも1つの天然に存在するイソロイシン(I)アミノ酸残基の欠失を含む、項目135に記載の抗体構築物。
[項目137] IgA重鎖定常ドメインが、対応する野生型IgAと比較して、少なくとも1つの天然に存在するプロリン(P)アミノ酸残基を欠く、項目108~136のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目138] IgA重鎖定常領域が、少なくとも1つの天然に存在するプロリン(P)アミノ酸残基のアミノ酸置換を含む、項目137に記載の抗体構築物。
[項目139] IgA重鎖定常ドメインが、少なくとも1つの天然に存在するプロリン(P)アミノ酸残基の欠失を含む、項目138に記載の抗体構築物。
[項目140] 抗体構築物が、対応する野生型IgA重鎖定常領域を含む対応する抗体構築物と比較して、より長い循環半減期を示す、項目119~139のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目141] 抗体構築物が、対応する野生型IgA重鎖定常領域を含む対応する抗体構築物と比較して、より長い半減期を示す、項目119~140のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目142] 抗体構築物が、対応する野生型IgA重鎖定常領域を含む対応する抗体構築物と比較して、減少した凝集を示す、項目119~141のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目143] 抗体構築物が、対応する野生型IgA重鎖定常領域を含む対応する抗体構築物と比較して、血清タンパク質との減少した凝集を示す、項目119~142のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目144] 前記IgA重鎖定常領域が1以上のアルブミン結合ドメインを含む、項目1~143のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目145] 抗体構築物が、1以上のアルブミン結合ドメインを含まない対応する抗体構築物よりも長い半減期を有する、項目144に記載の抗体構築物。
[項目146] IgA重鎖定常領域がヒンジ領域をさらに含む、項目88~145のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目147] ヒンジ領域が、IgAヒンジアミノ酸配列またはそのバリアントもしくはフラグメントを含む、項目146に記載の抗体構築物。
[項目148] ヒンジ領域が、ヒトIgAヒンジアミノ酸配列またはそのバリアントもしくはフラグメントを含む、項目147に記載の抗体構築物。
[項目149] ヒンジが、IgA1ヒンジもしくはIgA2ヒンジ、またはそのバリアントもしくはフラグメントである、項目147または148に記載の抗体構築物。
[項目150] 抗体構築物が、免疫接着分子、造影剤、治療薬、または細胞毒性薬をさらに含む、項目1~149のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目151] 造影剤が、放射性標識、酵素、蛍光標識、発光標識、生物発光標識、磁気標識、またはビオチンである、項目150に記載の抗体構築物。
[項目152] 前記治療薬または細胞毒性薬が、代謝拮抗薬、アルキル化薬、抗生物質、成長因子、サイトカイン、抗血管新生薬、抗有糸分裂薬、アントラサイクリン、毒素、またはアポトーシス薬である、項目150に記載の抗体構築物。
[項目153] 免疫エフェクター細胞が好中球である、項目1または88に記載の抗体構築物。
[項目154] 抗体構築物が、CD47を発現する標的細胞に抗原結合ドメインも結合している場合にのみ、免疫エフェクター細胞上のシグナル調節タンパク質α(SIRP α)機能を阻害する、項目1または88に記載の抗体構築物。
[項目155] 抗体構築物は二重特異性である、項目1または88に記載の抗体構築物。
[項目156] CD47結合ドメインが、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、scFv、F(ab’)2、ダイアボディ、線状抗体、単一ドメイン抗体(sdAb)、またはラクダ科VHHドメインである、項目1または88に記載の抗体構築物。
[項目157] 抗原結合ドメインが、Fab、Fab’、Fab’-SH、Fv、scFv、F(ab’)2、ダイアボディ、線状抗体、単一ドメイン抗体(sdAb)、またはラクダ科VHHドメインである、項目1または88に記載の抗体構築物。
[項目158] IgA重鎖ドメインが、2つのIgA重鎖定常ドメインのヘテロ二量体である、項目153~157のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目159] ヘテロ二量体化が、ノブ-イントゥ-ホールカップリング、塩橋/静電相補性カップリング、CrossMabカップリング、鎖交換操作ドメイン技術、またはそれらの組み合わせによる、項目158に記載の抗体構築物。
[項目160] 抗原結合ドメインが、癌細胞または病原体の抗原に結合する、項目153~159のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目161] 病原体が、病原菌、微生物、またはウイルスである、項目160に記載の抗体構築物。
[項目162] (a)免疫グロブリンA(IgA)重鎖ドメイン;
(b)CD47結合ドメイン;および
(c)抗原結合ドメイン;
を含む抗体構築物であって、
該IgA重鎖ドメインが、免疫エフェクター細胞上のFcαRに特異的に結合し、
該CD47結合ドメインが、標的細胞上に発現されたCD47と免疫エフェクター細胞上のシグナル調節タンパク質α(SIRP α)との結合を阻害し、
該抗原結合ドメインが、標的細胞上の抗原に結合し、
該抗原が、CD20、GD2、メソテリン、CD38、CD19、EGFR、HER2、PD-L1またはCD25であり、そして
該抗体構築物が、CD47と比較して、抗原に対してより高い結合親和性を有する、
前記抗体構築物。
[項目163] (a)免疫グロブリンA(IgA)重鎖ドメイン;
(b)CD47結合ドメイン;および
(c)抗原結合ドメイン;
を含む多重特異性免疫エフェクター細胞エンゲージャー分子であって、
該IgA重鎖ドメインが、免疫エフェクター細胞上のFcαRと特異的に結合し、
該CD47結合ドメインが、標的細胞上に発現されたCD47と免疫エフェクター細胞上のシグナル調節タンパク質α(SIRP α)との結合を阻害し、
該抗原結合ドメインが、標的細胞上の抗原と結合し、そして
該抗体構築物が、CD47と比較して、抗原に対してより高い結合親和性を有する、
前記多重特異性免疫エフェクター細胞エンゲージャー分子。
[項目164] 項目1~161のいずれか1項に記載の抗体構築物、および
医薬的に許容しうるキャリヤー、アジュバントまたは希釈剤、
を含む医薬組成物。
[項目165] さらに、少なくとも1つの追加の治療薬を含む、項目164に記載の医薬組成物。
[項目166] 前記追加的治療薬が、造影剤、細胞毒性薬、血管形成阻害薬、キナーゼ阻害薬、共刺激分子遮断薬、接着分子遮断薬、抗サイトカイン抗体もしくはその機能性フラグメント、メトトレキサート、シクロスポリン、ラパマイシン、FK506、検出可能な標識もしくはレポーター、TNF拮抗薬、抗リウマチ薬、筋弛緩薬、麻薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、鎮痛薬、麻酔薬、鎮静薬、局所麻酔薬、神経筋遮断薬、抗菌薬、抗乾癬薬、コルチコステロイド、タンパク同化ステロイド、エリスロポエチン、免疫化、免疫グロブリン、免疫抑制薬、成長ホルモン、ホルモン補充薬、放射性医薬品、抗うつ薬、抗精神病薬、刺激薬、喘息薬、ベータ作動薬、吸入ステロイド、エピネフリンもしくはその類似体、サイトカイン、またはサイトカイン拮抗薬である、項目165に記載の医薬組成物。
[項目167] 項目1~161のいずれか1項に記載の抗体構築物をコードする、単離核酸。
[項目168] 項目167に記載の単離核酸を含むベクター。
[項目169] 項目167に記載の単離核酸を含むin vitro細胞。
[項目170] 項目1~161のいずれか1項に記載の抗体構築物を発現するin vitro細胞。
[項目171] 抗体構築物を含む有効量の組成物を被験体に投与することを含む、それを必要とする被験体の処置方法であって、該抗体構築物が、
(a)免疫グロブリンA(IgA)重鎖ドメイン;
(b)CD47結合ドメイン;および
(c)抗原結合ドメイン;
を含み、
該IgA重鎖ドメインが、免疫エフェクター細胞上のFcαRに特異的に結合し、
該CD47結合ドメインが、標的細胞上に発現されたCD47と免疫エフェクター細胞上のシグナル調節タンパク質α(SIRP α)との結合を阻害し、
該抗原結合ドメインが、標的細胞上の抗原に結合し、そして
該抗体構築物が、CD47と比較して、抗原に対してより高い結合親和性を有する、
前記処置方法。
[項目172] SIRP αとのCD47結合の阻害が、標的細胞の食作用およびクリアランスを増加させる、項目171に記載の方法。
[項目173] 組成物が、経口、病巣内、静脈内治療によって、または皮下、筋肉内、動脈内、静脈内、腔内、頭蓋内、もしくは腹腔内注射によって投与される、項目171~172のいずれか1項に記載の方法。
[項目174] 組成物が、毎日、毎週、隔週、毎月、2カ月毎、3カ月に1回、6カ月に1回、または12カ月に1回投与される、項目171~173のいずれか1項に記載の方法。
[項目175] 被験体が癌を有する、項目171~174のいずれか1項に記載の方法。
[項目176] 癌が、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、胆道癌、B細胞白血病、B細胞リンパ腫、胆道癌、骨癌、脳癌、乳癌、トリプルネガティブ乳癌、子宮頸癌、バーキットリンパ腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道癌、胆嚢癌、胃癌、消化管癌、神経膠腫、有毛細胞白血病、頭頚部癌、ホジキンリンパ腫、肝癌、肺癌、甲状腺髄様癌、黒色腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、非ホジキンリンパ腫、膵臓癌、前立腺癌、肺路癌、腎癌、肉腫、皮膚癌、精巣癌、尿路上皮癌、および膀胱癌からなる群より選択される、項目175に記載の方法。
[項目177] 被験体がヒトである、項目171~176のいずれか1項に記載の方法。
[項目178] 有効量の少なくとも1つの追加的治療薬を投与することを含む、項目171~177のいずれか1項に記載の方法。
[項目179] 追加的治療薬が、造影剤、化学療法薬、キナーゼ阻害薬、共刺激分子遮断薬、接着分子遮断薬、第2の抗体もしくはその抗原結合フラグメント、薬物、毒素、酵素、細胞毒性薬、抗血管形成薬、プロアポトーシス薬、抗生物質、ホルモン、免疫モジュレーター、サイトカイン、ケモカイン、アンチセンスオリゴヌクレオチド、低分子干渉RNA(siRNA)、メトトレキサート、シクロスポリン、ラパマイシン、FK506、検出可能な標識もしくはレポーター、TNF拮抗薬、抗リウマチ薬、筋弛緩薬、麻薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、鎮痛薬、麻酔薬、鎮静薬、局所麻酔薬、神経筋遮断薬、抗菌薬、抗乾癬薬、コルチコステロイド、タンパク同化ステロイド、エリスロポエチン、免疫化、免疫グロブリン、免疫抑制薬、成長ホルモン、ホルモン補充薬、放射性医薬品、抗うつ薬、または抗精神病薬である、項目178に記載の方法。
[項目180] 標的細胞を有効量の抗体構築物と接触させることを含む、標的細胞に対する好中球媒介免疫応答を誘導する方法であって、
該抗体構築物が、
(a)免疫グロブリンA(IgA)重鎖ドメイン;
(b)CD47結合ドメイン;および
(c)抗原結合ドメイン
を含み;
該IgA重鎖ドメインが、好中球上のFcαRに特異的に結合し、
該CD47結合ドメインが、標的細胞上に発現されたCD47と好中球上のシグナル調節タンパク質α(SIRP α)との結合を阻害し、
該抗原結合ドメインが、標的細胞上の抗原に結合し、そして
該抗体構築物が、CD47と比較して、抗原に対してより高い結合親和性を有し、それによって、好中球媒介免疫応答を誘導する、
前記方法。
[項目181] 好中球媒介免疫応答が、標的細胞の食作用または標的細胞の溶解を含む、請求尾180に記載の方法。
[項目182] 抗原提示細胞が癌細胞またはウイルス細胞である、項目180~181のいずれか1項に記載の方法。
[項目183] 癌細胞がリンパ球である、項目182に記載の方法。
[項目184] CD47結合ドメインが、可変軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、可変軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)および可変軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む第1の軽鎖可変ドメインを含み、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3が、表Aから選択されるアミノ酸配列を含む、項目1~162のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目185] CD47結合ドメインが、可変軽鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、可変軽鎖相補性決定領域2(CDR-H2)および可変軽鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含む第1の重鎖可変ドメインを含み、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3が、表Aから選択されるアミノ酸配列を含む、項目1~162または184のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目186] 抗原結合ドメインが、可変軽鎖相補性決定領域1(CDR-L1)、可変軽鎖相補性決定領域2(CDR-L2)および可変軽鎖相補性決定領域3(CDR-L3)を含む第2の軽鎖可変ドメインを含み、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3が、表Bから選択されるアミノ酸配列を含む、項目1~162または184~185のいずれか1項に記載の抗体構築物。
[項目187] 抗原結合ドメインが、可変軽鎖相補性決定領域1(CDR-H1)、可変軽鎖相補性決定領域2(CDR-H2)および可変軽鎖相補性決定領域3(CDR-H3)を含む第2の重鎖可変ドメインを含み、CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3が、表Bから選択されるアミノ酸配列を含む、項目1~162または184~186のいずれか1項に記載の抗体構築物。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図2K
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
【配列表】
2024170456000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-08-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)免疫グロブリンA(IgA)重鎖ドメイン;
(b)CD47結合ドメイン;および
(c)抗原結合ドメイン;
を含む抗体構築物であって、
該IgA重鎖ドメインが、免疫エフェクター細胞上のFcαRに特異的に結合し、
該CD47結合ドメインが、標的細胞上に発現されたCD47と免疫エフェクター細胞上のシグナル調節タンパク質α(SIRP α)との結合を阻害し、
該抗原結合ドメインが、標的細胞上の抗原に結合し、そして
該抗体構築物が、CD47と比較して、抗原に対してより高い結合親和性を有する、
前記抗体構築物。
【外国語明細書】