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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017051
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】試料ホルダーおよび荷電粒子線装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/20 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
H01J37/20 E
H01J37/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119428
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100161540
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 良伸
(72)【発明者】
【氏名】樋山 公崇
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA04
5C101CC14
5C101FF03
5C101FF16
5C101FF43
5C101JJ12
(57)【要約】
【課題】タンクから冷却液が漏れることを防ぐことができる試料ホルダーを提供する。
【解決手段】試料ホルダー100は、試料Sに荷電粒子線を照射する荷電粒子線装置において試料Sを保持する試料ホルダーであって、試料Sを保持する試料保持部110と、試料保持部110を冷却するための冷却液を収容するタンク140と、を含み、タンク140は、タンク140内に冷却液を注ぐための管150を有し、管150は、屈曲している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に荷電粒子線を照射する荷電粒子線装置において前記試料を保持する試料ホルダーであって、
前記試料を保持する試料保持部と、
前記試料保持部を冷却するための冷却液を収容するタンクと、
を含み、
前記タンクは、前記タンク内に前記冷却液を注ぐための管を有し、
前記管は、屈曲している、試料ホルダー。
【請求項2】
請求項1において、
前記管は、90°に屈曲している、試料ホルダー。
【請求項3】
請求項1において、
前記管は、外部に開いた第1開口と、前記タンク内に開いた第2開口と、を有し、
前記第1開口が水平方向を向くときに、前記第2開口は鉛直上向きとなる、試料ホルダー。
【請求項4】
請求項1において、
前記管は、第1部分と、第2部分と、を有し、
前記シャフトは、第1軸に沿って延在し、
前記第1部分は、前記第1軸と直交する第2軸に沿って延在し、
前記第1軸に沿った方向から見て、前記第2部分は前記第1軸および前記第2軸に直交する第3軸に沿って延在している、試料ホルダー。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の試料ホルダーを含む、荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記試料ホルダーが取り付けられる取付け部を含み、
前記取付け部は、
外部と前記荷電粒子線装置内を仕切る仕切弁と、
前記仕切弁を動作させるためのスイッチと、
を有し、
前記スイッチは、前記取付け部において前記試料ホルダーを回転させることによって作動する、荷電粒子線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料ホルダーおよび荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
氷包埋法や凍結切片法などの各種凍結技法により、細胞や、タンパク質、ウイルス、脂質分子などの生物系試料を、凍結状態のまま電子顕微鏡内に導入して観察するクライオ電子顕微鏡法が注目されている。
【0003】
試料を凍結状態のまま電子顕微鏡内に導入して観察できるように、クライオ電子顕微鏡法に用いられる試料ホルダーとして、液体窒素や液体ヘリウムなどの冷却液を収容するタンクを備えているものが知られている。
【0004】
透過電子顕微鏡用の試料ホルダーとして、特許文献1には、ガイドピンを備えた試料ホルダーが開示されている。試料ホルダーの先端に保持された試料を透過電子顕微鏡の試料室に導入する際には、ガイドピンをゴニオメーターに設けられたガイド溝に沿って移動させる。ガイド溝には、試料室と外部(大気側)を遮断するためのバルブ(仕切弁)を開くためのスイッチが設けられている。試料ホルダーをガイド溝に沿って90度回転させることで、ガイドピンでスイッチを押すことができる。これにより、バルブを開くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-031051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、試料を試料室に導入する際には、試料ホルダーを回転させる。しかしながら、冷却液を収容するタンクを備えた試料ホルダーを回転させると、タンクから冷却液が漏れてしまう場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る試料ホルダーの一態様は、
試料に荷電粒子線を照射する荷電粒子線装置において前記試料を保持する試料ホルダーであって、
前記試料を保持する試料保持部と、
前記試料保持部を冷却するための冷却液を収容するタンクと、
を含み、
前記タンクは、前記タンク内に前記冷却液を注ぐための管を有し、
前記管は、屈曲している。
【0008】
このような試料ホルダーでは、試料ホルダーを回転させてもタンクに収容された液体窒素が漏れることを防ぐことができる。
【0009】
本発明に係る荷電粒子線装置の一態様は、
上記試料ホルダーを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る試料ホルダーを模式的に示す断面図。
図2】本発明の一実施形態に係る試料ホルダーを模式的に示す断面図。
図3】第2管を模式的に示す斜視図。
図4】タンクを模式的に示す平面図。
図5】本発明の一実施形態に係る試料ホルダーの先端部を模式的に示す図。
図6】タンクに液体窒素を収容した状態の本発明の一実施形態に係る試料ホルダーを模式的に示す断面図。
図7】タンクに液体窒素を収容した状態の本発明の一実施形態に係る試料ホルダーを模式的に示す断面図。
図8】本発明の一実施形態に係る試料ホルダーを含む電子顕微鏡を説明するための図。
図9】本発明の一実施形態に係る試料ホルダーを含む電子顕微鏡を説明するための図。
図10】ゴニオメーターの挿入孔を模式的に示す図。
図11】比較例に係る試料ホルダーを模式的に示す断面図。
図12】比較例に係る試料ホルダーを模式的に示す断面図。
図13】第1変形例に係る試料ホルダーを模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0012】
1. 試料ホルダー
まず、本発明の一実施形態に係る試料ホルダーについて図面を参照しながら説明する。図1および図2は、本発明の一実施形態に係る試料ホルダー100を模式的に示す断面図である。なお、図1および図2には、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸、およびZ軸を図示している。
【0013】
試料ホルダー100は、透過電子顕微鏡用の試料ホルダーである。試料ホルダー100は、透過電子顕微鏡において試料Sを保持する。試料ホルダー100を用いることによって、クライオ電子顕微鏡法による試料Sの観察が可能である。クライオ電子顕微鏡法による観察の対象となる試料Sは、例えば、細胞や、タンパク質、ウイルス、脂質分子などの生物系試料である。試料Sは、ウルトラミクロトームなどで薄片化されている。試料ホルダー100では、試料ホルダー100に保持された試料Sを冷却できる。
【0014】
試料ホルダー100は、図1および図2に示すように、試料保持部110と、シャフト120と、グリップ130と、管150を備えたタンク140と、ヒートコンダクタ160と、キャップ170と、を含む。
【0015】
試料保持部110は、試料Sを保持する。試料保持部110は、シャフト120の先端に設けられている。図示の例では、試料保持部110は、シャフト120の+Y方向の端に設けられている。
【0016】
試料保持部110は、例えば、試料Sが固定された試料グリッドが装填可能なカートリッジである。また、試料保持部110は、板バネと試料台を有しており、試料Sが固定された試料グリッドを試料台に板バネで固定可能であってもよい。なお、試料保持部110における試料Sを保持する方法は特に限定されない。
【0017】
シャフト120は、Y軸に沿って延びる棒状の部材である。シャフト120の先端(+
Y方向の端)には試料保持部110が設けられ、シャフト120の後端(-Y方向の端)にはグリップ130が設けられている。シャフト120は、タンク140を貫通する管141内を通る。
【0018】
シャフト120は、ヒートコンダクタ160を介して、タンク140の内槽142と熱的に接続される。シャフト120は、ヒートコンダクタ160とともに、タンク140(内槽142)と試料保持部110を熱的に接続する熱伝導部材として機能する。
【0019】
シャフト120は、タンク140の内槽142と外槽144との間の空間2に配置されている。空間2は、真空状態である。シャフト120が空間2に配置されることによって、シャフト120に対する外部の熱の影響を低減でき、試料保持部110を効率よく冷却できる。試料保持部110の一部は、断熱材180を貫通して空間2の外に配置されている。断熱材180は、タンク140の外槽144の開口を塞いている。
【0020】
グリップ130は、試料ホルダー100の握りの部分である。グリップ130は、断熱材182を介してシャフト120に接続されている。
【0021】
タンク140は、試料保持部110を冷却するための液体窒素を収容する。なお、タンク140に収容される冷却液は、液体窒素に限定されず、液体ヘリウムなどであってもよい。タンク140内の液体窒素によって、ヒートコンダクタ160およびシャフト120を介して試料保持部110を冷却できる。これにより、試料ホルダー100では、試料保持部110に保持された試料Sを冷却でき、試料Sを凍結状態のまま維持できる。
【0022】
タンク140は、内槽142および外槽144を有している。内槽142と外槽144との間の空間2は、真空状態である。内槽142の内の空間4には、液体窒素が収容される。
【0023】
タンク140は、タンク140内の空間4に液体窒素を注ぐための管150を有している。
【0024】
管150は、図2に示すように、屈曲している。図示の例では、管150は、110°屈曲している。管150は、Z軸に沿って延びる第1管152(第1部分)と、X軸に対して時計回りに20°傾いた第2管154(第2部分)と、を有している。第1管152と第2管154が接続されることによって、屈曲した管150が構成されている。
【0025】
図3は、第2管154を模式的に示す斜視図である。図3に示すように、円盤状の板156に、第2管154が固定されている。第2管154は、板156の面に対して斜めに取り付けられている。第2管154は、板156に設けられた貫通孔に連通している。板156は、内槽142にロウ付けされる。
【0026】
なお、図示はしないが、1つの管を折り曲げることで、屈曲した管150を形成してもよい。
【0027】
管150は、外部に開いた第1開口150aと、タンク140内の空間4に開いた第2開口150bと、を有している。図2に示す例では、第1開口150aは+Z方向に開き、第2開口150bは+X方向に開いている。
【0028】
図4は、タンク140を模式的に示す平面図である。
【0029】
図4に示すように、平面視において(Z軸に沿った方向から見て)、第1開口150a
は、シャフト120に重なっている。シャフト120は、試料Sを透過電子顕微鏡の試料室に導入する際に試料ホルダー100を回転させるときの回転軸となる。第1開口150aは、平面視において、タンク140(内槽142)の中心に重なっている。
【0030】
第2開口150bは、平面視において、シャフト120と重なっていない。平面視において、第2開口150bとタンク140(内槽142)の内壁143との間の距離L2は、第2開口150bとタンク140(内槽142)の中心との間の距離L1よりも小さい(L2<L1)。
【0031】
シャフト120は、Y軸に沿って延在している。また、第1管152は、Z軸に沿って延在している。また、第2管154は、平面視において、X軸に沿って延在している。
【0032】
ヒートコンダクタ160は、タンク140とシャフト120を熱的に接続する。ヒートコンダクタ160は、内槽142とシャフト120を接続している。ヒートコンダクタ160は、熱伝導率の高い材料からなる。
【0033】
キャップ170は、管150の第1開口150aを塞いている。キャップ170は、断熱材で構成されている。キャップ170で第1開口150aを塞ぐことで、タンク140を断熱できる。キャップ170は、例えば、液体窒素が蒸発して空間4の圧力が上昇した場合に、ガス(窒素ガス)が逃げるように密封されていない。キャップ170は、断熱材184を介して、タンク140に配置されている。キャップ170は、第1開口150aに対して着脱可能である。
【0034】
図5は、試料ホルダー100の先端部を模式的に示す図である。図5に示すように、試料ホルダー100は、ガイドピン190を有している。ガイドピン190は、試料ホルダー100に保持された試料Sを透過電子顕微鏡の試料室に導入する際に、試料ホルダー100をガイドする。
【0035】
図6および図7は、タンク140に液体窒素Lを収容した状態の試料ホルダー100を模式的に示す断面図である。図7は、試料ホルダー100を90°回転した状態を図示している。
【0036】
図6に示すように、タンク140に液体窒素Lを充填できる。図6では、管150の第1開口150aは鉛直上向き(+Z方向を向き)であり、管150の第2開口150bは、水平方向(+X方向)を向いている。第1開口150aからキャップ170を取り外し、第1開口150aから液体窒素Lを注ぐと、液体窒素Lは第1管152および第2管154を通って第2開口150bから空間4内に注がれる。
【0037】
タンク140に液体窒素Lを収容した状態で試料ホルダー100をシャフト120を回転軸として90°回転させると、図7に示すように、タンク140が90°回転する。このとき、第1開口150aは水平方向(-X方向を向き)を向き、第2開口150bは鉛直上向き(+Z方向を向き)である。
【0038】
このように、試料ホルダー100では、第1開口150aが鉛直上向きのときに、第2開口150bは水平方向を向き、第1開口150aが水平方向を向くときに、第2開口150bは鉛直上向きとなる。この結果、試料ホルダー100を回転させても、タンク140内の液体窒素Lが、管150を通ってタンク140の外に漏れることを防ぐことができる。
【0039】
2. 電子顕微鏡
図8および図9は、試料ホルダー100を含む電子顕微鏡10を説明するための図である。電子顕微鏡10は、クライオ電子顕微鏡法で試料Sを観察可能な透過電子顕微鏡である。
【0040】
電子顕微鏡本体12は、電子銃、電子銃から放出された電子を試料Sに照射するための照射光学系、試料ホルダー100が挿入されるゴニオメーター14(試料ステージ)、試料Sを透過した電子を結像するための結像光学系、試料Sを透過した電子で結像された透過電子顕微鏡像(TEM像)を撮影するための撮像装置、試料Sを透過した電子を検出して走査透過電子顕微鏡像(STEM像)を得るための検出器などを含む。
【0041】
ゴニオメーター14は、試料Sを傾斜する機構を備えた試料ステージである。ゴニオメーター14には、試料ホルダー100が取り付けられる。すなわち、ゴニオメーター14は、試料ホルダー100が取り付けられる取付け部として機能する。ゴニオメーター14は、例えば、試料ホルダー100が挿入される挿入孔を有している。挿入孔は、外部と電子顕微鏡本体12の試料室をつなぐ。ゴニオメーター14の挿入孔に試料ホルダー100を挿入することで、試料ホルダー100を電子顕微鏡本体12に取り付けることができる。試料ホルダー100をゴニオメーター14の挿入孔に挿入することによって、試料保持部110に保持された試料Sを試料室に導入できる。
【0042】
図10は、ゴニオメーター14の挿入孔15を模式的に示す図である。ゴニオメーター14は、図10に示すように、仕切弁18と、仕切弁18を動作(開閉動作)させるためのスイッチ19と、を有している。挿入孔15の内壁には、ガイド溝16が設けられている。
【0043】
仕切弁18は、ゴニオメーター14の挿入孔15に設けられている。仕切弁18は、試料室と外部(大気側)を仕切る。
【0044】
試料ホルダー100をゴニオメーター14の挿入孔15に挿入すると、ガイドピン190がガイド溝16に嵌まる。そして、ガイドピン190をガイド溝16に沿って移動させることによって、試料保持部110に保持された試料Sが試料室に導かれる。
【0045】
ガイド溝16は、図10に示すように、第1部分16aと、第2部分16bと、第3部分16cと、を含む。第1部分16aは、大気側に位置する部分である。第1部分16aは、挿入孔15の中心軸に沿って設けられている。第2部分16bは、第1部分16aと第3部分16cを接続している。第2部分16bは、挿入孔15の軸まわりに設けられている。第2部分16bは、挿入孔15の軸まわりに90°の角度範囲で設けられている。第3部分16cは、試料室側に位置する部分である。第3部分16cは、挿入孔15の中心軸に沿って設けられている。
【0046】
ガイド溝16の第2部分16bには、仕切弁18を開くためのスイッチ19が設けられている。ガイドピン190によって仕切弁18のスイッチ19を作動させることができる。例えば、ガイドピン190でスイッチ19を押すことによってスイッチ19が作動する。
【0047】
3. 動作
試料ホルダー100に保持された試料Sを試料室に導入するときの動作について説明する。
【0048】
図8に示すように、まず、タンク140の第1開口150aが水平方向を向いた状態で試料ホルダー100をゴニオメーター14の挿入孔15に挿入する。このとき、ガイドピ
ン190がガイド溝16の第1部分16aに嵌まる。図7に示すように、第1開口150aが水平方向を向いても第2開口150bが鉛直上向きであるため、タンク140内の液体窒素Lは管150から漏れない。
【0049】
試料ホルダー100を挿入孔15の奥に挿入すると、ガイドピン190がガイド溝16の第1部分16aにガイドされて、試料ホルダー100がY軸に沿って移動し、ガイドピン190が第2部分16bに到達する。
【0050】
第2部分16bは、挿入孔15の軸まわりに設けられているため、試料ホルダー100をシャフト120を回転軸として回転させる。これにより、ガイドピン190が第2部分16bにガイドされて第3部分16cに到達する。第2部分16bは、挿入孔15の軸まわりに設けられているため、ガイドピン190が第2部分16bでガイドされているときには、試料ホルダー100は、Y軸に沿って移動しない。第2部分16bには、スイッチ19が設けられているため、試料ホルダー100を回転させることで、ガイドピン190でスイッチ19を作動させることができる。この結果、試料室と外部を仕切る仕切弁18が開く。
【0051】
図示はしないが、試料ホルダー100は、Oリングを備えている。ガイドピン190が第2部分16bに到達したときには、試料ホルダー100と挿入孔15の内壁との間の隙間をOリングで気密に封止できる。したがって、仕切弁18を開いても試料室を真空状態に保つことができる。
【0052】
ガイドピン190が第3部分16cに到達すると、図6および図9に示すように、タンク140の第1開口150aは鉛直上向きとなり、第2開口150bは水平方向を向く。
【0053】
試料ホルダー100をさらに挿入孔15の奥に挿入すると、ガイドピン190が第3部分16cでガイドされて、試料ホルダー100がY軸に沿って移動し、試料保持部110に保持された試料Sが試料室に到達する。
【0054】
以上の工程により、試料ホルダー100の試料Sを試料室に導入できる。
【0055】
なお、試料室から試料Sを取り出すときは、ガイドピン190はガイド溝16の第3部分16c、第2部分16b、第1部分16aの順でガイドされる。ガイドピン190は、第2部分16bにおいてスイッチ19を作動させて仕切弁18を閉じる。このように試料室から試料Sを取り出すときには、試料室に試料Sを導入するときと逆の手順となる。
【0056】
4. 効果
試料ホルダー100は、試料Sを保持する試料保持部110と、試料保持部110を冷却するための液体窒素Lを収容するタンク140と、を含む。また、タンク140は、タンク140内に液体窒素Lを注ぐための管150を有し、管150は屈曲している。そのため、試料ホルダー100では、試料ホルダー100に保持された試料Sを電子顕微鏡10の試料室に導入する際に、試料ホルダー100を回転させても、タンク140から液体窒素Lが漏れることを防ぐことができる。
【0057】
図11および図12は、比較例に係る試料ホルダー1000を模式的に示す断面図である。
【0058】
図11および図12に示すように、比較例に係る試料ホルダー1000では、タンク140内に液体窒素Lを注ぐための管150は屈曲していない。図示の例では、管150は、図2に示す第2管154を有しておらず、第1管152のみで構成されている。試料ホ
ルダー1000では、図12に示すように、試料ホルダー1000をシャフト120を回転軸として90°回転させると、液体窒素Lが管150を通って管150の第1開口150aに到達する。キャップ170は、第1開口150aを密封していないため、液体窒素Lは第1開口150aから外部に漏れてしまう。
【0059】
これに対して、試料ホルダー100では、管150が屈曲しているため、試料ホルダー100をシャフト120を回転軸として回転させても、タンク140から液体窒素Lが漏れることを防ぐことができる。
【0060】
また、試料ホルダー1000では、試料ホルダー1000を回転させても液体窒素Lが漏れないようにするためにはタンク140内の液体窒素Lの量を少なくする必要がある。これに対して、試料ホルダー100では、管150が屈曲しているため、試料ホルダー1000と比べて、タンク140内の液体窒素Lの量を多くできる。したがって、試料ホルダー100では、試料ホルダー1000と比べて、試料Sを凍結した状態で保持できる時間を長くできる。
【0061】
試料ホルダー100では、管150は、外部に開いた第1開口150aと、タンク140内に開いた第2開口150bと、を有し、第1開口150aが水平方向を向くとき、第2開口150bは、鉛直上向きとなる。例えば、図7に示す例では、第1開口150aが-X方向を向くとき、第2開口150bは、+Z方向を向く。したがって、試料ホルダー100を回転させても、液体窒素Lが漏れることを防ぐことができる。
【0062】
例えば、図12に示す試料ホルダー1000では、第1開口150aが-X方向を向くと、第2開口150bは+X方向を向く。したがって、試料ホルダー1000では、試料ホルダー1000を回転させると液体窒素Lが漏れてしまう。
【0063】
試料ホルダー100では、管150は、第1管152(第1部分)と、第2管154(第2部分)と、を有し、シャフト120は、Y軸(第1軸)に沿って延在し、第1管152は、Z軸(第2軸)に沿って延在し、Z軸に沿った方向から見て第2管154はX軸(第3軸)に沿って延在している。そのため、試料ホルダー100では、試料ホルダー100を回転させても、液体窒素Lが漏れることを防ぐことができる。
【0064】
試料ホルダー100では、図4に示すように、平面視において、第2開口150bとタンク140(内槽142)の内壁143との間の距離L2は、第2開口150bとタンク140の中心との間の距離L1よりも小さい(L2<L1)。そのため、試料ホルダー100では、距離L2が距離L1以上(L2≧L1)の場合と比べて、タンク140内の液体窒素Lの量をより多くできる。
【0065】
電子顕微鏡10では、試料ホルダー100を含む。また、電子顕微鏡10は、試料ホルダー100が取り付けられる取付け部として機能するゴニオメーター14を含み、ゴニオメーター14は、外部と試料室を仕切る仕切弁18と、仕切弁18を動作させるためのスイッチ19と、を有している。スイッチ19は、ゴニオメーター14の挿入孔15において試料ホルダー100を回転させることによって作動する。電子顕微鏡10では、ゴニオメーター14の挿入孔15に試料ホルダー100を挿入して、試料ホルダー100を回転させても、液体窒素Lがタンク140から漏れることを防ぐことができる。
【0066】
5. 変形例
5.1. 第1変形例
図13は、第1変形例に係る試料ホルダー101を模式的に示す断面図である。以下、第1変形例に係る試料ホルダー101において、上述した試料ホルダー100の構成部材
と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0067】
上述した実施形態では、管150は、110°屈曲していたが、管150が屈曲する角度は特に限定されない。例えば、図13に示すように、管150は、90°屈曲していてもよい。
【0068】
図13に示す試料ホルダー101でも、図2に示す試料ホルダー100と同様に、第1開口150aが鉛直上向きのときに第2開口150bは水平方向を向き、第1開口150aが水平方向を向くときに第2開口150bは鉛直上向きとなる。この結果、試料ホルダー101を回転させても、タンク140内の液体窒素Lがタンク140から漏れることを防ぐことができる。
【0069】
5.2. 第2変形例
上述した実施形態では、試料ホルダー100が透過電子顕微鏡用の試料ホルダーである場合について説明したが、試料ホルダー100は、例えば、イオンビームを試料Sに照射して試料Sの観察および加工を行う集束イオンビーム装置用の試料ホルダーであってもよいし、走査電子顕微鏡用の試料ホルダーであってもよい。このように、試料ホルダー100は、試料Sに電子線やイオンビームなどの荷電粒子線を照射する荷電粒子線装置において試料Sを保持する試料ホルダーとして用いることができる。
【0070】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0071】
2…空間、4…空間、10…電子顕微鏡、12…電子顕微鏡本体、14…ゴニオメーター、15…挿入孔、16…ガイド溝、16a…第1部分、16b…第2部分、16c…第3部分、18…仕切弁、19…スイッチ、100…試料ホルダー、101…試料ホルダー、110…試料保持部、120…シャフト、130…グリップ、140…タンク、141…管、142…内槽、143…内壁、144…外槽、150…管、150a…第1開口、150b…第2開口、152…第1管、154…第2管、156…板、160…ヒートコンダクタ、170…キャップ、180…断熱材、182…断熱材、184…断熱材、190…ガイドピン、1000…試料ホルダー
図1
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図13