(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170515
(43)【公開日】2024-12-10
(54)【発明の名称】抗体-薬物コンジュゲートの製剤及びその凍結乾燥方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241203BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20241203BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20241203BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241203BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20241203BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20241203BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20241203BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241203BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20241203BHJP
C07K 7/06 20060101ALN20241203BHJP
【FI】
A61K39/395 M ZNA
A61K47/68
A61K31/4745
A61K9/08
A61K9/19
A61K47/22
A61K47/26
A61P35/00
A61K39/395 M
C07K16/00
C07K7/06
【審査請求】有
【請求項の数】38
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024151872
(22)【出願日】2024-09-04
(62)【分割の表示】P 2022211501の分割
【原出願日】2018-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2017160071
(32)【優先日】2017-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】上井 哲男
(72)【発明者】
【氏名】西本 典広
(57)【要約】 (修正有)
【課題】抗体-薬物コンジュゲートにおいて、凝集体の形成及び分解物の生成を抑制した医薬組成物(特に水性注射剤及び凍結乾燥注射剤)、並びに水溶液から凍結乾燥注射剤への効率的な凍結乾燥方法を提供する。
【解決手段】(i)下式(式中、Aは抗体との結合位置を示す)で示される抗体-薬物コンジュゲート、(ii)ヒスチジン緩衝剤、(iii)スクロース又はトレハロース、及び(iv)界面活性剤を含む医薬組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)ヒスチジン緩衝剤、
(iii)スクロース又はトレハロース、及び、
(iv)界面活性剤、
を含む、
医薬組成物;
(ここで、該抗体-薬物コンジュゲートは、次式
【化1】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コンジュゲートである)。
【請求項2】
界面活性剤がポリソルベート80又はポリソルベート20である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
抗体-薬物コンジュゲートが水に20mg/mLの濃度で溶解している状態でのpHが5.0~6.0である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗TROP2抗体、抗B7-H3抗体、又は抗GPR20抗体である、請求項1から3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が抗HER2抗体である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
抗HER2抗体が、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、請求項5又は6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
抗体-薬物コンジュゲートが水に20mg/mLの濃度で溶解している状態でのpHが5.5である、請求項5から7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が抗HER3抗体である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項10】
抗HER3抗体が、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、請求項9又は10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
抗体-薬物コンジュゲートが水に20mg/mLの濃度で溶解している状態でのpHが5.4である、請求項9から11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が抗TROP2抗体である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項14】
抗TROP2抗体が、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至470に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が3から5個の範囲である、請求項13又は14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
抗体-薬物コンジュゲートが水に20mg/mLの濃度で溶解している状態でのpHが6.0である、請求項13から15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が抗B7-H3抗体である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項18】
抗B7-H3抗体が、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が3から5個の範囲である、請求項17又は18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
抗体-薬物コンジュゲートが水に20mg/mLの濃度で溶解している状態でのpHが5.9である、請求項17から19のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が抗GPR20抗体である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項22】
抗GPR20抗体が、配列番号9に記載のアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号10においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体である、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から8個の範囲である、請求項21又は22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
抗体-薬物コンジュゲートが水に20mg/mLの濃度で溶解している状態でのpHが5.4である、請求項21から23のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
注射剤である、請求項1から24のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
水性注射剤である、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
抗体-薬物コンジュゲートの濃度が20mg/mLである、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
凍結された、請求項26又は27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
凍結乾燥注射剤である、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項30】
褐色バイアルに格納された、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
がんの治療に用いるための、請求項1から30のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
(1)所定量の、
(i)抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)ヒスチジン緩衝剤、
(iii)スクロース又はトレハロース、及び、
(iv)界面活性剤、を含む水溶液を調製する工程、
(2)必要に応じて、水溶液のpHを所定の値に調整する工程、次いで、
(3)水溶液を凍結乾燥する工程、を含む、請求項29に記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項33】
水溶液を凍結乾燥する工程が、水溶液の共融点付近の棚温度でアニーリングするプロセスを含む、請求項32に記載の製造方法;(ここで、共融点付近とは、共融点よりも1.5℃低い温度から、共融点よりも1.5℃ 高い温度の範囲を示す)。
【請求項34】
共融点よりも5℃低い棚温度でアニーリングを行った場合と比較し、1次乾燥するプロセスの時間が短縮されることを特徴とする、請求項33に記載の製造方法。
【請求項35】
共融点よりも5℃低い棚温度でアニーリングを行った場合と比較し、よりシュリンクが少ない凍結乾燥ケーキが得られることを特徴とする、請求項33又は34に記載の製造方法。
【請求項36】
水溶液を凍結乾燥する工程が、-4~-1℃の棚温度でアニーリングするプロセスを含む、請求項32に記載の製造方法。
【請求項37】
水溶液を凍結乾燥する工程が、-5~5℃の棚温度かつ5~15Paの真空下で1次乾燥するプロセスをさらに含む、請求項36に記載の製造方法。
【請求項38】
水溶液を凍結乾燥する工程が、40~50℃の棚温度かつ5~15Paの真空下で2次乾燥するプロセスをさらに含む、請求項37に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の抗体-薬物コンジュゲートの製剤及びその凍結乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がん細胞表面に発現し、かつ細胞に内在化できる抗原に結合する抗体に、細胞毒性を有
する薬物を結合させた抗体-薬物コンジュゲート(Antibody-Drug Con
jugate; ADC)は、がん細胞に選択的に薬物を送達できることによって、がん
細胞内に薬物を蓄積させ、がん細胞を死滅させることが期待できる(非特許文献1~5)
。
【0003】
抗体-薬物コンジュゲートの一つとして、抗体とトポイソメラーゼI阻害剤であるエキ
サテカンを構成要素とする抗体-薬物コンジュゲートが知られている(特許文献1~8、
非特許文献6、7)。これらの抗体-薬物コンジュゲートは、優れた抗腫瘍効果と安全性
を有することから、現在、臨床試験が進行中である。
【0004】
抗体-薬物コンジュゲートの製剤としては、メイタンシノイドを構成要素とする抗体-
薬物コンジュゲートの製剤(特許文献9~12)、モノメチルオーリスタチンEを構成要
素とする抗体-薬物コンジュゲートの製剤(特許文献13~15)、及びSN-38を構
成要素とする抗体-薬物コンジュゲートの製剤(特許文献16)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2014/057687号
【特許文献2】国際公開第2014/061277号
【特許文献3】国際公開第2015/098099号
【特許文献4】国際公開第2015/115091号
【特許文献5】国際公開第2015/146132号
【特許文献6】国際公開第2015/155976号
【特許文献7】国際公開第2015/155998号
【特許文献8】国際公開第2018/135501号
【特許文献9】国際公開第2004/004639号
【特許文献10】国際公開第2004/110498号
【特許文献11】国際公開第2007/019232号
【特許文献12】国際公開第2015/059147号
【特許文献13】国際公開第2010/081004号
【特許文献14】国際公開第2014/143765号
【特許文献15】国際公開第2015/157286号
【特許文献16】国際公開第2014/092804号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Ducry, L., et al., Bioconjugate Chem. (2010) 21, 5-13.
【非特許文献2】Alley, S. C., et al., Current Opinion in Chemical Biology (2010) 14, 529-537.
【非特許文献3】Damle N. K. Expert Opin. Biol. Ther. (2004) 4, 1445-1452.
【非特許文献4】Senter P. D., et al., Nature Biotechnology (2012) 30, 631-637.
【非特許文献5】Howard A. et al., J Clin Oncol 29: 398-405.
【非特許文献6】Ogitani Y. et al., Clinical Cancer Research (2016) 22(20), 5097-5108.
【非特許文献7】Ogitani Y. et al., Cancer Science (2016) 107, 1039-1046.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
抗体製剤における凝集体の形成及び分解物の生成は、該製剤の投与を受ける患者に免疫
原性や静脈障害を与える要因になる等、医療上、望ましくない影響を及ぼす。従って、抗
体の製剤化にあたっては、凝集体の形成及び分解物の生成を抑制することが求められてお
り、種々の医薬組成物(例えば、水性注射剤及び凍結乾燥注射剤等)が検討されている。
しかし、抗体-薬物コンジュゲートの製剤化にあたっては、抗体部分のみならず薬物リ
ンカー部分特有の物性も考慮しなければならず、より複雑な検討が必要とされる。
また、スクロースやトレハロースを含有する水溶液から凍結乾燥注射剤を調製する場合
には、(1)1次乾燥するプロセスが長時間となる、(2)凍結乾燥ケーキにシュリンク
が生じやすくなる、などの問題点がある。
本発明は、特定の抗体-薬物コンジュゲートにおいて、凝集体の形成及び分解物の生成を
抑制した医薬組成物(特に水性注射剤及び凍結乾燥注射剤)、並びに水溶液から凍結乾燥
注射剤への効率的な凍結乾燥方法を提供することが主な課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定の抗体-薬物コンジュゲートにおいて、凝集体の形成及び分解物の
生成を抑制した医薬組成物(特に水性注射剤及び凍結乾燥注射剤)を見出した。また、水
溶液から凍結乾燥注射剤への効率的な凍結乾燥方法を見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、
[1]
(i)抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)ヒスチジン緩衝剤、
(iii)スクロース又はトレハロース、及び、
(iv)界面活性剤、
を含む、医薬組成物;
(ここで、該抗体-薬物コンジュゲートは、次式
【0010】
【0011】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コン
ジュゲートである)。
[2]
界面活性剤がポリソルベート80又はポリソルベート20である、[1]に記載の医薬
組成物。
[3]
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)3~80mmolのヒスチジン緩衝剤、
(iii)24~320mgのスクロース又はトレハロース、及び、
(iv)0.05~1.6mgのポリソルベート80又はポリソルベート20、
を含む、[1]又は[2]に記載の医薬組成物。
[4]
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)10~40mmolのヒスチジン緩衝剤、
(iii)90mgのスクロース又は100mgのトレハロース水和物、及び、
(iv)0.2~0.4mgのポリソルベート80又はポリソルベート20、
を含む、[1]から[3]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[5]
(i)抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)ヒスチジン緩衝剤、
(iii)スクロース、及び、
(iv)ポリソルベート80又はポリソルベート20
を含む、[1]又は[2]に記載の医薬組成物。
【0012】
[6]
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)3~80mmolのヒスチジン緩衝剤、
(iii)24~320mgのスクロース、及び、
(iv)0.05~1.6mgのポリソルベート80又はポリソルベート20、
を含む、[1]、[2]又は[5]に記載の医薬組成物。
[7]
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)10~40mmolのヒスチジン緩衝剤、
(iii)90mgのスクロース、及び、
(iv)0.2~0.4mgのポリソルベート80又はポリソルベート20、
を含む、[1]、[2]、[5]又は[6]に記載の医薬組成物。
[8]
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)10又は25mmolのヒスチジン緩衝剤、
(iii)90mgのスクロース、及び、
(iv)0.2又は0.3mgのポリソルベート80又はポリソルベート20、
を含む、[1]から[7]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[9]
抗体-薬物コンジュゲートが水に20mg/mLの濃度で溶解している状態でのpHが
4.0~7.0である、[1]から[8]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[10]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が2から
8個の範囲である、[1]から[9]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0013】
[11]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗TR
OP2抗体、抗B7-H3抗体、又は抗GPR20抗体である、[1]から[10]のい
ずれか1項に記載の医薬組成物。
[12]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER2抗体である、[11]に記載の
医薬組成物。
[13]
抗HER2抗体が、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配
列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列
からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及
び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[12]に記
載の医薬組成物。
[14]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から
8個の範囲である、[12]又は[13]に記載の医薬組成物。
[15]
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)25mmolのヒスチジン緩衝剤、
(iii)90mgのスクロース、及び、
(iv)0.3mgのポリソルベート80、
を含み、該抗体-薬物コンジュゲートが水に20mg/mLの濃度で溶解している状態で
のpHが5.5である、[12]から[14]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0014】
[16]
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)0.89mgのL-ヒスチジン、及び4.04mgのL-ヒスチジン塩酸塩水
和物、
(iii)90mgのスクロース、並びに、
(iv)0.3mgのポリソルベート80を含む、[12]から[14]のいずれか1
項に記載の医薬組成物。
[17]
(i)100mgの抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)4.45mgのL-ヒスチジン、及び20.2mgのL-ヒスチジン塩酸塩水
和物、
(iii)450mgのスクロース、並びに、
(iv)1.5mgのポリソルベート80を含む、[12]から[14]のいずれか1
項に記載の医薬組成物。
[18]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER3抗体である、[11]に記載の
医薬組成物。
[19]
抗HER3抗体が、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記
載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端
のリシン残基が欠失している抗体である、[18]に記載の医薬組成物。
[20]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から
8個の範囲である、[18]又は[19]に記載の医薬組成物。
【0015】
[21]
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)25mmolのヒスチジン緩衝剤、
(iii)90mgのスクロース、及び、
(iv)0.3mgのポリソルベート20、
を含み、該抗体-薬物コンジュゲートが水に20mg/mLの濃度で溶解している状態で
のpHが5.4である、[18]から[20]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[22]
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)0.81mgのL-ヒスチジン、及び4.14mgのL-ヒスチジン塩酸塩水
和物、
(iii)90mgのスクロース、並びに、
(iv)0.3mgのポリソルベート20を含む、[18]から[20]のいずれか1
項に記載の医薬組成物。
[23]
(i)100mgの抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)4.06mgのL-ヒスチジン、及び20.7mgのL-ヒスチジン塩酸塩水
和物、
(iii)450mgのスクロース、並びに、
(iv)1.5mgのポリソルベート20を含む、[18]から[20]のいずれか1
項に記載の医薬組成物。
[24]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗TROP2抗体である、[11]に記載
の医薬組成物。
[25]
抗TROP2抗体が、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至470に記載のアミノ
酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ
酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残
基が欠失している抗体である、[24]に記載の医薬組成物。
【0016】
[26]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が3から
5個の範囲である、[24]又は[25]に記載の医薬組成物。
[27]
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)10mmolのヒスチジン緩衝剤、
(iii)90mgのスクロース、及び、
(iv)0.2又は0.3mgのポリソルベート80、
を含み、該抗体-薬物コンジュゲートが水に20mg/mLの濃度で溶解している状態で
のpHが6.0である、[24]から[26]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[28]
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)0.78mgのL-ヒスチジン、及び1.05mgのL-ヒスチジン塩酸塩水
和物、
(iii)90mgのスクロース、並びに、
(iv)0.2又は0.3mgのポリソルベート80を含む、[24]から[26]の
いずれか1項に記載の医薬組成物。
[29]
(i)100mgの抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)3.88mgのL-ヒスチジン、及び5.26mgのL-ヒスチジン塩酸塩水
和物、
(iii)450mgのスクロース、並びに、
(iv)1.0又は1.5mgのポリソルベート80を含む、[24]から[26]の
いずれか1項に記載の医薬組成物。
[30]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗B7-H3抗体である、[11]に記載
の医薬組成物。
【0017】
[31]
抗B7-H3抗体が、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ
酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ
酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残
基が欠失している抗体である、[30]に記載の医薬組成物。
[32]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が3から
5個の範囲である、[30]又は[31]に記載の医薬組成物。
[33]
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)10mmolのヒスチジン緩衝剤、
(iii)90mgのスクロース、及び、
(iv)0.2又は0.3mgのポリソルベート20、
を含み、該抗体-薬物コンジュゲートが水に20mg/mLの濃度で溶解している状態で
のpHが5.9である、[30]から[32]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[34]
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)0.65mgのL-ヒスチジン、及び1.22mgのL-ヒスチジン塩酸塩水
和物、
(iii)90mgのスクロース、並びに、
(iv)0.2又は0.3mgのポリソルベート20を含む、[30]から[32]の
いずれか1項に記載の医薬組成物。
[35]
(i)100mgの抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)3.23mgのL-ヒスチジン、及び6.12mgのL-ヒスチジン塩酸塩水
和物、
(iii)450mgのスクロース、並びに、
(iv)1.0又は1.5mgのポリソルベート20を含む、[30]から[32]の
いずれか1項に記載の医薬組成物。
【0018】
[36]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗GPR20抗体である、[11]に記載
の医薬組成物。
[37]
抗GPR20抗体が、配列番号9に記載のアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ
酸配列からなる重鎖及び配列番号10においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミ
ノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン
残基が欠失している抗体である、[36]に記載の医薬組成物。
[38]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から
8個の範囲である、[36]又は[37]に記載の医薬組成物。
[39]
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)10mmolのヒスチジン緩衝剤、
(iii)90mgのスクロース、及び、
(iv)0.3mgのポリソルベート80、
を含み、該抗体-薬物コンジュゲートが水に20mg/mLの濃度で溶解している状態で
のpHが5.4である、[36]から[38]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[40]
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)0.32mgのL-ヒスチジン、及び1.66mgのL-ヒスチジン塩酸塩水
和物、
(iii)90mgのスクロース、並びに、
(iv)0.3mgのポリソルベート80を含む、[36]から[38]のいずれか1
項に記載の医薬組成物。
【0019】
[41]
(i)100mgの抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)1.62mgのL-ヒスチジン、及び8.29mgのL-ヒスチジン塩酸塩水
和物、
(iii)450mgのスクロース、並びに、
(iv)1.5mgのポリソルベート80を含む、[36]から[38]のいずれか1
項に記載の医薬組成物。
[42]
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)0.89mgのL-ヒスチジン、及び4.04mgのL-ヒスチジン塩酸塩水
和物、
(iii)90mgのスクロース、並びに、
(iv)0.3mgのポリソルベート80を含む、医薬組成物;
(ここで、該抗体-薬物コンジュゲートは、次式
【0020】
【0021】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コン
ジュゲートである)。
[43]
(i)100mgの抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)4.45mgのL-ヒスチジン、及び20.2mgのL-ヒスチジン塩酸塩水
和物、
(iii)450mgのスクロース、並びに、
(iv)1.5mgのポリソルベート80を含む、[42]に記載の医薬組成物。
[44]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から
8個の範囲である、[42]又は[43]に記載の医薬組成物。
[45]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER2抗体である、[42]から[4
4]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0022】
[46]
抗HER2抗体が、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配
列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列
からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[45]に記載の医薬組成物。
[47]
抗HER2抗体が、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記
載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[45]に記載の医薬組成物。
[48]
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)0.81mgのL-ヒスチジン、及び4.14mgのL-ヒスチジン塩酸塩水
和物、
(iii)90mgのスクロース、並びに、
(iv)0.3mgのポリソルベート20を含む、医薬組成物;
(ここで、該抗体-薬物コンジュゲートは、次式
【0023】
【0024】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コン
ジュゲートである)。
[49]
(i)100mgの抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)4.06mgのL-ヒスチジン、及び20.7mgのL-ヒスチジン塩酸塩水
和物、
(iii)450mgのスクロース、並びに、
(iv)1.5mgのポリソルベート20を含む、[48]に記載の医薬組成物。
[50]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から
8個の範囲である、[48]又は[49]に記載の医薬組成物。
【0025】
[51]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER3抗体である、[48]から[5
0]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[52]
抗HER3抗体が、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記
載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[51]に記載の医薬組成物。
[53]
抗HER3抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[52]に記載
の医薬組成物。
[54]
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)0.78mgのL-ヒスチジン、及び1.05mgのL-ヒスチジン塩酸塩水
和物、
(iii)90mgのスクロース、並びに、
(iv)0.2又は0.3mgのポリソルベート80を含む、医薬組成物;
(ここで、該抗体-薬物コンジュゲートは、次式
【0026】
【0027】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コン
ジュゲートである)。
[55]
(i)100mgの抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)3.88mgのL-ヒスチジン、及び5.26mgのL-ヒスチジン塩酸塩水
和物、
(iii)450mgのスクロース、並びに、
(iv)1.0又は1.5mgのポリソルベート80を含む、[54]に記載の医薬組
成物。
[56]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が3から
5個の範囲である、[54]又は[55]に記載の医薬組成物。
[57]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗TROP2抗体である、[54]から[
56]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[58]
抗TROP2抗体が、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至470に記載のアミノ
酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ
酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[57]に記載の医薬組成物。
[59]
抗TROP2抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[58]に記
載の医薬組成物。
[60]
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)0.65mgのL-ヒスチジン、及び1.22mgのL-ヒスチジン塩酸塩水
和物、
(iii)90mgのスクロース、並びに、
(iv)0.2又は0.3mgのポリソルベート20を含む、医薬組成物;
(ここで、該抗体-薬物コンジュゲートは、次式
【0028】
【0029】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コン
ジュゲートである)。
[61]
(i)100mgの抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)3.23mgのL-ヒスチジン、及び6.12mgのL-ヒスチジン塩酸塩水
和物、
(iii)450mgのスクロース、並びに、
(iv)1.0又は1.5mgのポリソルベート20を含む、[60]に記載の医薬組
成物。
[62]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が3から
5個の範囲である、[60]又は[61]に記載の医薬組成物。
[63]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗B7-H3抗体である、[60]から[
62]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[64]
抗B7-H3抗体が、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ
酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ
酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[63]に記載の医薬組成物。
[65]
抗B7-H3抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[64]に記
載の医薬組成物。
[66]
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)0.32mgのL-ヒスチジン、及び1.66mgのL-ヒスチジン塩酸塩水
和物、
(iii)90mgのスクロース、並びに、
(iv)0.3mgのポリソルベート80を含む、医薬組成物;
(ここで、該抗体-薬物コンジュゲートは、次式
【0030】
【0031】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コン
ジュゲートである)。
[67]
(i)100mgの抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)1.62mgのL-ヒスチジン、及び8.29mgのL-ヒスチジン塩酸塩水
和物、
(iii)450mgのスクロース、並びに、
(iv)1.5mgのポリソルベート80を含む、[66]に記載の医薬組成物。
[68]
抗体-薬物コンジュゲートにおける1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数が7から
8個の範囲である、[66]又は[67]に記載の医薬組成物。
[69]
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗GPR20抗体である、[66]から[
68]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[70]
抗GPR20抗体が、配列番号9に記載のアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ
酸配列からなる重鎖及び配列番号10においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミ
ノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[69]に記載の医薬組成物。
【0032】
[71]
抗GPR20抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している、[70]に記
載の医薬組成物。
[72]
注射剤である、[1]から[71]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[73]
水性注射剤である、[72]に記載の医薬組成物。
[74]
抗体-薬物コンジュゲートの濃度が20mg/mLである、[73]に記載の医薬組成
物。
[75]
凍結された、[73]又は[74]に記載の医薬組成物。
【0033】
[76]
凍結乾燥注射剤である、[72]に記載の医薬組成物。
[77]
褐色バイアルに格納された、[76]に記載の医薬組成物。
[78]
がんの治療用である、[1]から[77]のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[79]
(1)所定量の、
(i)抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)ヒスチジン緩衝剤、
(iii)スクロース又はトレハロース、及び、
(iv)界面活性剤、
を含む水溶液を調製する工程、
(2)必要に応じて、水溶液のpHを所定の値に調整する工程、次いで、
(3)水溶液を凍結乾燥する工程、
を含む、[76]に記載の医薬組成物の製造方法。
[80]
水溶液を凍結乾燥する工程が、水溶液の共融点付近の棚温度でアニーリングするプロセ
スを含む、[79]に記載の製造方法;
(ここで、共融点付近とは、共融点よりも1.5℃低い温度から、共融点よりも1.5℃
高い温度の範囲を示す)。
【0034】
[81]
水溶液を凍結乾燥する工程が、水溶液の共融点と同じ棚温度でアニーリングするプロセ
スを含む、[80]に記載の製造方法。
[82]
共融点よりも5℃低い棚温度でアニーリングを行った場合と比較し、1次乾燥するプロ
セスの時間が短縮されることを特徴とする、[80]又は[81]に記載の製造方法。
[83]
共融点よりも5℃低い棚温度でアニーリングを行った場合と比較し、よりシュリンクが
少ない凍結乾燥ケーキが得られることを特徴とする、[80]から[82]のいずれか1
項に記載の製造方法。
[84]
水溶液を凍結乾燥する工程が、-4~-1℃の棚温度でアニーリングするプロセスを含
む、[79]に記載の製造方法。
[85]
水溶液を凍結乾燥する工程が、-4~-2℃の棚温度でアニーリングするプロセスを含
む、[79]に記載の製造方法。
【0035】
[86]
水溶液を凍結乾燥する工程が、-2.5℃の棚温度でアニーリングするプロセスを含む
、[79]に記載の製造方法。
[87]
水溶液を凍結乾燥する工程が、-5~5℃の棚温度かつ5~15Paの真空下で1次乾
燥するプロセスをさらに含む、[84]から[86]のいずれか1項に記載の製造方法。
[88]
水溶液を凍結乾燥する工程が、0℃の棚温度かつ10Paの真空下で1次乾燥するプロ
セスをさらに含む、[84]から[86]のいずれか1項に記載の製造方法。
[89]
水溶液を凍結乾燥する工程が、40~50℃の棚温度かつ5~15Paの真空下で2次
乾燥するプロセスをさらに含む、[87]又は[88]に記載の製造方法。
[90]
水溶液を凍結乾燥する工程が、45℃の棚温度かつ10Paの真空下で2次乾燥するプ
ロセスをさらに含む、[87]又は[88]に記載の製造方法。
【0036】
[91]
[42]又は[43]の医薬組成物と、注射用水を含む、キット。
[92]
注射用水がアンプルに格納されている、[91]に記載のキット。
[93]
スクロース又はトレハロースを含有する水溶液の共融点付近の棚温度でアニーリングす
るプロセスを含む、凍結乾燥注射剤の製造方法;(ここで、共融点付近とは、共融点より
も1.5℃低い温度から、共融点よりも1.5℃高い温度の範囲を示す)。
[94]
スクロース又はトレハロースを含有する水溶液の共融点と同じ棚温度でアニーリングす
るプロセスを含む、凍結乾燥注射剤の製造方法。
に関する。
【発明の効果】
【0037】
本発明により、特定の抗体-薬物コンジュゲートにおいて、凝集体の形成及び分解物の
生成を抑制した医薬組成物(特に水性注射剤及び凍結乾燥注射剤)、並びに、水溶液から
凍結乾燥注射剤への効率的な凍結乾燥方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】抗HER2抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号1)を示した図である。
【
図2】抗HER2抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号2)を示した図である。
【
図3】賦形剤スクリーニングに関する図である。横軸に各処方での時間推移、縦軸に凝集体の含有率を示している。
【
図4】緩衝剤スクリーニングに関する図である。横軸に各処方での時間推移、縦軸に凝集体の含有率を示している。
【
図5】pHスクリーニングに関する図である。横軸に各処方での時間推移、縦軸に凝集体の含有率を示している。
【
図6】pHスクリーニングに関する図である。横軸に各処方での時間推移、縦軸にNPIの含有率を示している。
【
図7】界面活性剤スクリーニングに関する図である。横軸に各処方での時間推移、縦軸に10mm未満の不溶性微粒子数の含有率を示している。ここで、「PS」はポリソルベートを意味し、「PS20」はポリソルベート20を意味し、「PS80」はポリソルベート80を意味する。
【
図8】バイアル検討に関する図である。横軸に光照射量、縦軸に凝集体の含有率を示している。
【
図9】バイアル検討に関する図である。横軸に光照射量、縦軸にIoPの含有率を示している。
【
図10】1次乾燥プロセスにおける棚温度と庫内真空度を変動させた時の水溶液(1)の製品温度の等高線図である。
【0039】
【
図11】1次乾燥プロセスにおける棚温度と庫内真空度を変動させた時の水溶液(1)の乾燥時間の等高線図である。
【
図12】棚温度を-7℃から0.5℃の範囲でアニーリングを実施し凍結乾燥した場合の製品温度(アニーリング時)と凍結乾燥ケーキの形状を示した図である。
【
図13】キャピラリー示差走査熱量計による、抗体-薬物コンジュゲート(1)の熱変性を示した図である。
【
図14】抗HER3抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号3)を示した図である。
【
図15】抗HER3抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号4)を示した図である。
【
図16】抗TROP2抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号5)を示した図である。
【
図17】抗TROP2抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号6)を示した図である。
【
図18】抗B7-H3抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号7)を示した図である。
【
図19】抗B7-H3抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号8)を示した図である。
【
図20】抗GPR20抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号9)を示した図である。
【
図21】抗GPR20抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号10)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお
、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、こ
れによって本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0041】
[抗体-薬物コンジュゲート]
本発明において使用される抗体-薬物コンジュゲートは、次式
【0042】
【0043】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コ
ンジュゲートである。
【0044】
本発明においては、抗体-薬物コンジュゲートのうち、リンカー及び薬物からなる部分
構造を「薬物リンカー」と称する。この薬物リンカーは抗体の鎖間のジスルフィド結合部
位(2箇所の重鎖-重鎖間、及び2箇所の重鎖-軽鎖間)において生じたチオール基(言
い換えれば、システイン残基の硫黄原子)に結合している。
【0045】
本発明の薬物リンカーは、トポイソメラーゼI阻害剤であるエキサテカン(IUPAC
名:(1S,9S)-1-アミノ-9-エチル-5-フルオロ-1,2,3,9,12,
15-ヘキサヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10H,13H-ベンゾ[de]ピ
ラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-10,13-ジオン
、(化学名:(1S,9S)-1-アミノ-9-エチル-5-フルオロ-2,3-ジヒド
ロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:
6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-10,13(9H,15H)-ジオンと
して表すこともできる))を構成要素としている。エキサテカンは、次式
【0046】
【0047】
で示される、抗腫瘍効果を有するカンプトテシン誘導体である。
【0048】
本発明において使用される抗体-薬物コンジュゲートは、次式で示すこともできる。
【0049】
【0050】
ここで、薬物リンカーは抗体とチオエーテル結合によって結合している。また、nはい
わゆる平均薬物結合数(DAR; Drug-to-Antibody Ratio)と
同義であり、1抗体あたりの薬物リンカーの平均結合数を示す。
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートは、がん細胞内に移行した後に、次式
【0051】
【0052】
で表されるトポイソメラーゼI阻害作用を有する化合物(以下、「化合物(1)」と称す
る。)を放出することにより、抗腫瘍効果を発揮する。
化合物(1)は、本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートのリンカー部分が切断さ
れることにより生じると考えられる、次式
【0053】
【0054】
で表される化合物のアミナール構造が分解することにより生じると考えられる。
【0055】
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートは、バイスタンダー効果を有することも
知られている(Ogitani Y. et al., Cancer Science (2016) 107, 1039-1046)。
このバイスタンダー効果は、本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートが、標的発
現がん細胞に内在化した後、放出された化合物(1)が、標的を発現していない近傍のが
ん細胞に対しても抗腫瘍効果を及ぼすことにより発揮される。
【0056】
[抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体]
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体は、いずれの種に由来して
もよいが、好適には、ヒト、ラット、マウス、及びウサギに由来する抗体である。抗体が
ヒト以外の種に由来する場合は、周知の技術を用いて、キメラ化又はヒト化することが好
ましい。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であって
もよいが、モノクローナル抗体が好ましい。
【0057】
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体は、好適にはがん細胞を標
的にできる性質を有するものであり、がん細胞を認識できる特性、がん細胞に結合できる
特性、がん細胞内に取り込まれて内在化する特性、及び/又はがん細胞に対する殺細胞活
性等を備えているものが好ましい。
【0058】
抗体のがん細胞への結合性は、フローサイトメトリーを用いて確認できる。がん細胞内
への抗体の取り込みは、(1)治療抗体に結合する二次抗体(蛍光標識)を用いて細胞内
に取り込まれた抗体を蛍光顕微鏡で可視化するアッセイ(Cell Death and Differentiatio
n (2008) 15, 751-761)、(2)治療抗体に結合する二次抗体(蛍光標識)を用いて細胞
内に取り込まれた蛍光量を測定するアッセイ(Molecular Biology of the Cell Vol. 15,
5268-5282, December 2004)、又は(3)治療抗体に結合するイムノトキシンを用いて、
細胞内に取り込まれると毒素が放出されて細胞増殖が抑制されるというMab-ZAPア
ッセイ(Bio Techniques 28:162-165, January 2000)を用いて確認できる。イムノトキシ
ンとしては、ジフテテリア毒素の触媒領域とプロテインGとのリコンビナント複合蛋白質
も使用可能である。
【0059】
抗体の抗腫瘍活性は、in vitroでは、細胞の増殖の抑制活性を測定することで
確認できる。例えば、抗体の標的蛋白質を過剰発現しているがん細胞株を培養し、培養系
に種々の濃度で抗体を添加し、フォーカス形成、コロニー形成及びスフェロイド増殖に対
する抑制活性を測定することができる。in vivoでは、例えば、標的蛋白質を高発
現しているがん細胞株を移植したヌードマウスに抗体を投与し、がん細胞の変化を測定す
ることによって、抗腫瘍活性を確認できる。
【0060】
抗体自体が抗腫瘍効果を有することは、好ましいが、抗体-薬物コンジュゲートは抗腫
瘍効果を発揮する化合物を結合させてあるので、抗体自体の抗腫瘍効果は必須ではない。
抗腫瘍性化合物の細胞障害性をがん細胞において特異的・選択的に発揮させる目的からは
、抗体が内在化してがん細胞内に移行する性質のあることが重要であり、好ましい。
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体は、公知の手段によって取得
することができる。例えば、この分野で通常実施される方法を用いて、抗原となるポリペ
プチドを動物に免疫し、生体内に産生される抗体を採取、精製することによって得ること
ができる。抗原の由来はヒトに限定されず、マウス、ラット等のヒト以外の動物に由来す
る抗原を動物に免疫することもできる。この場合には、取得された異種抗原に結合する抗
体とヒト抗原との交差性を試験することによって、ヒトの疾患に適用可能な抗体を選別で
きる。
【0061】
また、公知の方法(例えば、Kohler and Milstein, Nature (1975) 256, p.495-497;Ke
nnet, R. ed., Monoclonal Antibodies, p.365-367, Plenum Press, N.Y.(1980))に従っ
て、抗原に対する抗体を産生する抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることによ
ってハイブリドーマを樹立し、モノクローナル抗体を得ることもできる。
【0062】
なお、抗原は抗原蛋白質をコードする遺伝子を遺伝子操作によって宿主細胞に産生させ
ることによって得ることができる。具体的には、抗原遺伝子を発現可能なベクターを作製
し、これを宿主細胞に導入して該遺伝子を発現させ、発現した抗原を精製すればよい。上
記の遺伝子操作による抗原発現細胞、或は抗原を発現している細胞株、を動物に免疫する
方法を用いることによっても抗体を取得できる。
【0063】
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体は、ヒトに対する異種抗原
性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメ
ラ(Chimeric)抗体、ヒト化(Humanized)抗体であることが好ましく
、又はヒト由来の抗体の遺伝子配列のみを有する抗体、すなわちヒト抗体であることが好
ましい。これらの抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
【0064】
キメラ抗体としては、抗体の可変領域と定常領域が互いに異種である抗体、例えばマウ
ス又はラット由来抗体の可変領域をヒト由来の定常領域に接合したキメラ抗体を挙げるこ
とができる(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81, 6851-6855,(1984))。
【0065】
ヒト化抗体としては、異種抗体の相補性決定領域(CDR;complementar
ity determining region)のみをヒト由来の抗体に組み込んだ抗
体(Nature(1986) 321, p.522-525)、CDR移植法によって、異種抗体のCDRの配列に
加えて、異種抗体の一部のフレームワークのアミノ酸残基もヒト抗体に移植した抗体(国
際公開第90/07861号)、遺伝子変換突然変異誘発(gene conversi
on mutagenesis)ストラテジーを用いてヒト化した抗体(米国特許第58
21337号)を挙げることができる。
【0066】
ヒト抗体としては、ヒト抗体の重鎖と軽鎖の遺伝子を含むヒト染色体断片を有するヒト
抗体産生マウスを用いて作成した抗体(Tomizuka, K. et al., Nature Genetics(1997) 1
6, p.133-143;Kuroiwa, Y. et. al., Nucl. Acids Res.(1998) 26, p.3447-3448;Yoshida
, H. et. al., Animal Cell Technology:Basic and Applied Aspects vol.10, p.69-73(K
itagawa, Y., Matsuda, T. and Iijima, S. eds.), Kluwer Academic Publishers, 1999;
Tomizuka, K. et. al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA(2000) 97, p.722-727等を参照。)
を挙げることができる。或いは、ヒト抗体ライブラリーより選別したファージディスプレ
イにより取得した抗体(Wormstone, I. M. et. al, Investigative Ophthalmology & Vis
ual Science. (2002)43 (7), p.2301-2308;Carmen, S. et. al., Briefings in Function
al Genomics and Proteomics(2002), 1(2), p.189-203;Siriwardena, D. et. al., Ophth
almology(2002) 109(3), p.427-431等参照。)も挙げることができる。
【0067】
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体には、抗体の修飾体も含ま
れる。当該修飾体とは、本発明に係る抗体に化学的又は生物学的な修飾が施されてなるも
のを意味する。化学的な修飾体には、アミノ酸骨格への化学部分の結合、N-結合又はO
-結合炭水化物鎖への化学部分の結合を有する化学修飾体等が含まれる。生物学的な修飾
体には、翻訳後修飾(例えば、N-結合又はO-結合型糖鎖の付加、N末端又はC末端の
プロセッシング、脱アミド化、アスパラギン酸の異性化、メチオニンの酸化等)されたも
の、原核生物宿主細胞を用いて発現させることによってN末にメチオニン残基が付加され
たもの等が含まれる。また、本発明に係る抗体又は抗原の検出又は単離を可能にするため
に標識されたもの、例えば、酵素標識体、蛍光標識体、アフィニティ標識体もかかる修飾
体の意味に含まれる。この様な本発明に係る抗体の修飾体は、抗体の安定性及び血中滞留
性の改善、抗原性の低減、抗体又は抗原の検出又は単離等に有用である。
【0068】
また、本発明に係る抗体に結合している糖鎖修飾を調節すること(グリコシル化、脱フ
コース化等)によって、抗体依存性細胞傷害活性を増強することが可能である。抗体の糖
鎖修飾の調節技術としては、国際公開第99/54342号、国際公開第00/6173
9号、国際公開第02/31140号等が知られているが、これらに限定されるものでは
ない。本発明に係る抗体には当該糖鎖修飾が調節された抗体も含まれる。
【0069】
なお、哺乳類培養細胞で生産される抗体では、その重鎖のカルボキシル末端のリシン残
基が欠失することが知られており(Journal of Chromatography A, 705: 129-134(1995))
、また、同じく重鎖カルボキシル末端のグリシン、リシンの2アミノ酸残基が欠失し、新
たにカルボキシル末端に位置するプロリン残基がアミド化されることが知られている(Ana
lytical Biochemistry, 360: 75-83(2007))。しかし、これらの重鎖配列の欠失及び修飾
は、抗体の抗原結合能及びエフェクター機能(補体の活性化や抗体依存性細胞障害作用等
)には影響を及ぼさない。したがって、本発明に係る抗体には、当該修飾を受けた抗体及
び当該抗体の機能性断片も含まれ、重鎖カルボキシル末端において1又は2のアミノ酸が
欠失した欠失体、及びアミド化された当該欠失体(例えば、カルボキシル末端部位のプロ
リン残基がアミド化された重鎖)等も包含される。但し、抗原結合能及びエフェクター機
能が保たれている限り、本発明に係る抗体の重鎖のカルボキシル末端の欠失体は上記の種
類に限定されない。本発明に係る抗体を構成する2本の重鎖は、完全長及び上記の欠失体
からなる群から選択される重鎖のいずれか一種であってもよいし、いずれか二種を組み合
わせたものであってもよい。各欠失体の量比は本発明に係る抗体を産生する哺乳類培養細
胞の種類及び培養条件に影響を受け得るが、本発明に係る抗体は、好ましくは2本の重鎖
の双方でカルボキシル末端のひとつのアミノ酸残基が欠失しているものを挙げることがで
きる。
【0070】
本発明に係る抗体のアイソタイプとしては、例えばIgG(IgG1、IgG2、Ig
G3、IgG4)等を挙げることができるが、好ましくはIgG1又はIgG2を挙げる
ことができる。
【0071】
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体は、特に制限はないが、例
えば、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗TROP2抗体、抗B7-H3抗体、抗CD
3抗体、抗CD30抗体、抗CD33抗体、抗CD37抗体、抗CD56抗体、抗CD9
8抗体、抗DR5抗体、抗EGFR抗体、抗EPHA2抗体、抗FGFR2抗体、抗FG
FR4抗体、抗FOLR1抗体、抗VEGF抗体、及び抗GPR20抗体を挙げることが
でき、好適には、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗TROP2抗体、抗B7-H3、
及び抗GPR20抗体を挙げることができる。
【0072】
本発明において、「抗HER2抗体」とは、HER2(Human Epiderma
l Growth FactorReceptor Type 2; ErbB-2)に
特異的に結合し、好ましくは、HER2と結合することによってHER2発現細胞に内在
化する活性を有する抗体を示す。
【0073】
抗HER2抗体としては、例えば、トラスツズマブ(Trastuzumab)(米国
特許第5821337号)、及び、ペルツズマブ(Pertuzumab)(国際公開第
01/00245号)を挙げることができ、好適にはトラスツズマブを挙げることができ
る。
【0074】
本発明において、「トラスツズマブ」は、配列番号1(
図1)においてアミノ酸番号1
乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2(
図2)においてアミノ酸
番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなるヒト化抗HER2モノ
クローナル抗体である。
【0075】
本発明において、「抗HER3抗体」とは、HER3(Human Epiderma
l Growth FactorReceptor Type 3; ErbB-3)に
特異的に結合し、好適には、HER3発現細胞表面上のHER3と結合して該HER3発
現細胞に内在化する活性を有する抗体を示す。
【0076】
抗HER3抗体としては、例えば、パトリツマブ(Patritumab; U3-1
287)、U1-59(国際公開第2007/077028号)、MM-121(ser
ibantumab)、国際公開2008/100624号記載の抗ERBB3抗体、R
G-7116(Lumretuzumab)、及びLJM-716(Elgemtuma
b)を挙げることができ、好適には、パトリツマブ、及びU1-59を挙げることができ
る。
【0077】
本発明において、「抗TROP2抗体」とは、TROP2(TACSTD2:Tumo
r-associated calcium signal transducer 2
; EGP-1)に特異的に結合し、好ましくは、TROP2と結合することによってT
ROP2発現細胞に内在化する活性を有する抗体を示す。
【0078】
抗TROP2抗体としては、例えば、hTINA1-H1L1(国際公開第2015/
098099号)を挙げることができる。
【0079】
本発明において、「抗B7-H3抗体」とは、B7-H3(B cell antig
en #7 homolog 3; PD-L3; CD276)に特異的に結合し、好
ましくは、B7-H3と結合することによってB7-H3発現細胞に内在化する活性を有
する抗体を示す。
【0080】
抗B7-H3抗体としては、例えば、M30-H1-L4(国際公開第2014/05
7687号)を挙げることができる。
【0081】
本発明において、「抗GPR20抗体」とは、GPR20(G Protein-co
upled receptor 20)に特異的に結合し、好ましくは、GPR20と結
合することによってGPR20発現細胞に内在化する活性を有する抗体を示す。
抗GPR20抗体としては、例えば、h046-H4e/L7(国際公開第2018/1
35501号)を挙げることができる。
【0082】
[抗体-薬物コンジュゲートの製造に使用される薬物リンカー中間体]
本発明の抗体-薬物コンジュゲートの製造に使用される薬物リンカー中間体は、次式で
示される。
【0083】
【0084】
上記の薬物リンカー中間体は、国際公開第2014/057687号、国際公開第20
15/098099号、国際公開第2015/115091号、及び国際公開第2015
/155998号等の記載を参考に製造することができる。
【0085】
[抗体と薬物リンカー中間体のコンジュゲーション]
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートは、前述の薬物リンカー中間体と、チオ
ール基(又はスルフヒドリル基とも言う)を有する抗体を反応させることによって製造す
ることができる。
【0086】
スルフヒドリル基を有する抗体は、当業者周知の方法で得ることができる(Hermanson,
G. T, Bioconjugate Techniques, pp.56-136, pp.456-493, Academic Press(1996))。例
えば、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)等の還元剤を、抗
体内鎖間ジスルフィド1個当たりに対して0.3乃至3モル当量用い、エチレンジアミン
四酢酸(EDTA)等のキレート剤を含む緩衝液中で、抗体と反応させることで、抗体内
鎖間ジスルフィドが部分的若しくは完全に還元されたスルフヒドリル基を有する抗体を得
ることができる。
【0087】
さらに、スルフヒドリル基を有する抗体1個あたり、2乃至20モル当量の薬物リンカ
ー中間体を使用して、抗体1個当たり2個乃至8個の薬物が結合した抗体―薬物コンジュ
ゲートを製造することができる。
【0088】
製造した抗体-薬物コンジュゲートの抗体一分子あたりの平均薬物結合数の算出は、例
えば、280nm及び370nmの二波長における抗体-薬物コンジュゲートとそのコン
ジュゲーション前駆体のUV吸光度を測定することにより算出する方法(UV法)や、抗
体-薬物コンジュゲートを還元剤で処理し得られた各フラグメントをHPLC測定により
定量し算出する方法(HPLC法)により行うことができる。
【0089】
抗体と薬物リンカー中間体のコンジュゲーション、及び抗体-薬物コンジュゲートの抗
体一分子あたりの平均薬物結合数の算出は、国際公開第2014/057687号、国際
公開第2015/098099号、国際公開第2015/115091号、国際公開第2
015/155998号、及び国際公開第2018/135501号等の記載を参考に実
施することができる。
【0090】
本発明において、「抗HER2抗体-薬物コンジュゲート」とは、抗体-薬物コンジュ
ゲートにおける抗体が抗HER2抗体である抗体-薬物コンジュゲートを示す。
【0091】
抗HER2抗体は、好適には、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載の
アミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のア
ミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、配列番号1に記載のアミノ酸配列から
なる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である。
【0092】
本発明において使用される抗HER2抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物
リンカーの平均結合数は、好適には2から8であり、より好適には3から8であり、更に
より好適には7から8であり、更により好適には7.5から8であり、更により好適には
約8である。
【0093】
本発明において使用される抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、国際公開第201
5/115091号等の記載を参考に製造することができる。
【0094】
本発明において、「抗HER3抗体-薬物コンジュゲート」とは、抗体-薬物コンジュ
ゲートにおける抗体が抗HER3抗体である抗体-薬物コンジュゲートを示す。
【0095】
抗HER3抗体は、好適には、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列
番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボ
キシル末端のリシン残基が欠失している抗体である。
【0096】
本発明において使用される抗HER3抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬物
リンカーの平均結合数は、好適には2から8であり、より好適には3から8であり、更に
より好適には7から8であり、更により好適には7.5から8であり、更により好適には
約8である。
【0097】
本発明において使用される抗HER3抗体-薬物コンジュゲートは、国際公開第201
5/155998号等の記載を参考に製造することができる。
【0098】
本発明において、「抗TROP2抗体-薬物コンジュゲート」とは、抗体-薬物コンジ
ュゲートにおける抗体が抗TROP2抗体である抗体-薬物コンジュゲートを示す。
【0099】
抗TROP2抗体は、好適には、配列番号5においてアミノ酸番号20乃至470に記
載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記
載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端
のリシン残基が欠失している抗体である。
【0100】
本発明において使用される抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬
物リンカーの平均結合数は、好適には2から8であり、より好適には3から5であり、更
により好適には3.5から4.5であり、更により好適には約4である。
【0101】
本発明において使用される抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートは、国際公開第20
15/098099号等の記載を参考に製造することができる。
【0102】
本発明において、「抗B7-H3抗体-薬物コンジュゲート」とは、抗体-薬物コンジ
ュゲートにおける抗体が抗B7-H3抗体である抗体-薬物コンジュゲートを示す。
【0103】
抗B7-H3抗体は、好適には、配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記
載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記
載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端
のリシン残基が欠失している抗体である。
【0104】
本発明において使用される抗B7-H3抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬
物リンカーの平均結合数は、好適には2から8であり、より好適には3から5であり、更
により好適には3.5から4.5であり、更により好適には約4である。
【0105】
本発明において使用される抗B7-H3抗体-薬物コンジュゲートは、国際公開第20
14/057687号等の記載を参考に製造することができる。
【0106】
本発明において、「抗GPR20抗体-薬物コンジュゲート」とは、抗体-薬物コンジ
ュゲートにおける抗体が抗GPR20抗体である抗体-薬物コンジュゲートを示す。
【0107】
抗GPR20抗体は、好適には、配列番号9においてアミノ酸番号20乃至472に記
載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号10においてアミノ酸番号21乃至234に
記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末
端のリシン残基が欠失している抗体である。
【0108】
本発明において使用される抗GPR20抗体-薬物コンジュゲートの1抗体あたりの薬
物リンカーの平均結合数は、好適には2から8であり、より好適には3から8であり、更
により好適には7から8であり、更により好適には7.5から8であり、更により好適に
は約8である。
【0109】
本発明において使用される抗GPR20抗体-薬物コンジュゲートは、国際公開第20
18/135501号等の記載を参考に製造することができる。
【0110】
[医薬組成物]
以下、本発明の医薬組成物について説明する。
本発明の医薬組成物は、
(i)抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)ヒスチジン緩衝剤、
(iii)スクロース又はトレハロース、及び、
(iv)界面活性剤、
を含む、医薬組成物である。
(ここで、該抗体-薬物コンジュゲートは、次式
【0111】
【0112】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体-薬物コン
ジュゲートである。)
本発明において「ヒスチジン緩衝剤」とは、ヒスチジンとヒスチジンの塩(酸付加物)
との混合物であり、好適には、L-ヒスチジンとL-ヒスチジン塩酸塩(及び/又はその
水和物)との混合物である。本発明におけるヒスチジン緩衝剤が溶解している水は、ヒス
チジン緩衝液と同義である。
【0113】
ヒスチジン緩衝剤の量は、好適には、抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに3~
80mmolであり、より好適には、抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、10
~80mmolであり、更により好適には、抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに
、10~40mmolであり、更により好適には、抗体-薬物コンジュゲート20mg当
たりに10~25mmolであり、更により好適には、抗体-薬物コンジュゲート20m
g当たりに10又は25mmolである。
【0114】
なお、本発明の医薬組成物が水に溶解している状態でのpHは、ヒスチジン緩衝液にお
けるヒスチジンとヒスチジンの塩の含有率に依存する。言い換えれば、ヒスチジンとヒス
チジンの塩の含有率を調整することにより、水に溶解している状態で所望のpHを示す医
薬組成物を提供することができる。
【0115】
本発明の医薬組成物は、抗体-薬物コンジュゲートが水に20mg/mLの濃度で溶解
している状態でのpHが、好適には4.0~7.0であり、より好適には、5.0~6.
0である。また、抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体の種類に応じて、より好適なp
Hを選定することができる。
スクロース又はトレハロースの量は、好適には、抗体-薬物コンジュゲート20mg当た
りに24~320mgである。スクロースの場合、その量は、より好適には、90mgで
ある。トレハロースの場合は、トレハロース水和物として計算すると、その量は、より好
適には、100mgである。また、本発明の医薬組成物は、スクロース及びトレハロース
のうち、スクロースをより好適に用いることができる。
本発明において「界面活性剤」とは、親水性基と疎水性基を有し、医薬品製剤の構成成分
の一つとして使用される物質を示す。本発明における界面活性剤は、好適には、ポリソル
ベート(ポリソルベート80(Tween80)、ポリソルベート20(Tween20
)、及びポリソルベート60(Tween60)を含む)、ポリオキシエチレン(160
)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポ
リオキシエチレンヒマシ油、又はラウリル硫酸ナトリウムであり、より好適には、ポリソ
ルベート80、又はポリソルベート20である。
【0116】
ポリソルベート80又はポリソルベート20の量は、好適には、抗体-薬物コンジュゲ
ート20mg当たりに0.05~1.6mgであり、より好適には、0.1~1.6mg
であり、更により好適には、0.2~0.4mgであり、更により好適には、0.2~0
.3mgであり、更により好適には、0.2又は0.3mgである。
以上を総合的に考慮すると、本発明の医薬組成物は、好適には、
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)3~80mmolのヒスチジン緩衝剤、
(iii)24~320mgのスクロース又はトレハロース、及び、
(iv)0.05~1.6mgのポリソルベート80又はポリソルベート20、
を含む、医薬組成物であり、
より好適には、
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)10~40mmolのヒスチジン緩衝剤、
(iii)90mgのスクロース又は100mgのトレハロース水和物、及び、
(iv)0.2~0.4mgのポリソルベート80又はポリソルベート20、
を含む、医薬組成物であり、
更により好適には、
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)10又は25mmolのヒスチジン緩衝剤、
(iii)90mgのスクロース、及び、
(iv)0.2又は0.3mgのポリソルベート80又はポリソルベート20、
を含む、医薬組成物である。
上記の医薬組成物は、抗体-薬物コンジュゲートの濃度が20mg/mLである水溶液
として表すと、以下のように言い換えることもできる。
【0117】
即ち、本発明の医薬組成物は、好適には、
(i)20mg/mLの抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)ヒスチジン緩衝剤、
(iii)スクロース又はトレハロース、
(iv)界面活性剤、及び、
(v)水
を含む、医薬組成物であり、
より好適には、
(i)20mg/mLの抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)3~80mMのヒスチジン緩衝剤、
(iii)2.4~32%のスクロース又はトレハロース、
(iv)0.005~0.16%のポリソルベート80又はポリソルベート20、及び、
(v)水
を含む、医薬組成物であり、
更により好適には、
(i)20mg/mLの抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)10~40mMのヒスチジン緩衝剤、
(iii)9%のスクロース又は10%のトレハロース水和物、
(iv)0.02~0.04%のポリソルベート80又はポリソルベート20、及び、
(v)水
を含む、医薬組成物であり、
更により好適には、
(i)20mg/mLの抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)10又は25mMのヒスチジン緩衝剤、
(iii)9%のスクロース、及び、
(iv)0.02又は0.03%のポリソルベート80又はポリソルベート20、及び、
(v)水
を含む、医薬組成物である。
【0118】
なお、本発明において、スクロース及びトレハロースの含量における「%」は、水1m
Lに対する重量%を示す。従って、例えば、「9%のスクロース」は、水1mLに対して
90mgのスクロースが含まれていることを意味し、「10%のトレハロース水和物」は
、水1mLに対して100mgのトレハロース水和物が含まれていることを意味する。
【0119】
同様に、本発明において、ポリソルベート80及びポリソルベート20の含量における
「%」も、水1mLに対する重量%を示す。従って、例えば、「0.03%のポリソルベ
ート80」は、水1mLに対して0.3mgのポリソルベート80が含まれていることを
意味し、「0.03%のポリソルベート20」は、水1mLに対して0.3mgのポリソ
ルベート20が含まれていることを意味する。
【0120】
本発明の医薬組成物は、抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体の種類に応じて、より
好適な処方を選定することができる。
【0121】
例えば、抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER2抗体(好適には、配列
番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番
号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる
抗体、又は、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミ
ノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体)である場合は、本発明の医薬組成物は、好適に
は、
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)25mmolのヒスチジン緩衝剤、
(iii)90mgのスクロース、及び、
(iv)0.3mgのポリソルベート80、
を含む、医薬組成物である。
さらに、該抗体-薬物コンジュゲートが水に20mg/mLの濃度で溶解している状態で
の上記医薬組成物のpHは、好適には5.3~5.7であり、より好適には5.4~5.
6であり、更により好適には5.5である。
【0122】
また、ヒスチジン緩衝剤を、L-ヒスチジンとL-ヒスチジン塩酸塩の含有量として表
すと、pHが5.5であるときの上記医薬組成物は、
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)0.89mgのL-ヒスチジン、及び4.04mgのL-ヒスチジン塩酸塩水和
物、
(iii)90mgのスクロース、並びに、
(iv)0.3mgのポリソルベート80を含む、医薬組成物として表すことができる。
【0123】
さらに、抗体-薬物コンジュゲートを100mg含有する単位製剤として表すと、pH
が5.5であるときの上記医薬組成物は、
(i)100mgの抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)4.45mgのL-ヒスチジン、及び20.2mgのL-ヒスチジン塩酸塩水和
物、
(iii)450mgのスクロース、並びに、
(iv)1.5mgのポリソルベート80を含む、医薬組成物として表すことができる。
【0124】
あるいは、抗体-薬物コンジュゲートの濃度が20mg/mLである水溶液として表す
と、上記医薬組成物は、
(i)20mg/mLの抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)25mMのヒスチジン緩衝剤、
(iii)9%のスクロース、及び、
(iv)0.03%のポリソルベート80、及び、
(v)水
を含み、pHが5.5である、医薬組成物として表すことができる。
【0125】
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗HER3抗体(好適には、配列番号3に
記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含
んでなる抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体)
である場合は、本発明の医薬組成物は、好適には、
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)25mmolのヒスチジン緩衝剤、
(iii)90mgのスクロース、及び、
(iv)0.3mgのポリソルベート20、
を含む、医薬組成物である。
さらに、該抗体-薬物コンジュゲートが水に20mg/mLの濃度で溶解している状態で
の上記医薬組成物のpHは、好適には5.2~5.6であり、より好適には5.3~5.
5であり、更により好適には5.4である。
【0126】
また、ヒスチジン緩衝剤を、L-ヒスチジンとL-ヒスチジン塩酸塩の含有量として表
すと、pHが5.4であるときの上記医薬組成物は、好適には、
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)0.81mgのL-ヒスチジン、及び4.14mgのL-ヒスチジン塩酸塩水和
物、
(iii)90mgのスクロース、並びに、
(iv)0.3mgのポリソルベート20を含む、医薬組成物として表すことができる。
【0127】
さらに、抗体-薬物コンジュゲートを100mg含有する単位製剤として表すと、pH
が5.4であるときの上記医薬組成物は、
(i)100mgの抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)4.06mgのL-ヒスチジン、及び20.7mgのL-ヒスチジン塩酸塩水和
物、
(iii)450mgのスクロース、並びに、
(iv)1.5mgのポリソルベート20を含む、医薬組成物として表すことができる。
【0128】
あるいは、抗体-薬物コンジュゲートの濃度が20mg/mLである水溶液として表す
と、上記医薬組成物は、
(i)20mg/mLの抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)25mMのヒスチジン緩衝剤、
(iii)9%のスクロース、及び、
(iv)0.03%のポリソルベート20、及び、
(v)水
を含み、pHが5.4である、医薬組成物として表すことができる。
【0129】
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗TROP2抗体(好適には、配列番号5
においてアミノ酸番号20乃至470に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号6
においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗
体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体)である場合
は、本発明の医薬組成物は、好適には、
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)10mmolのヒスチジン緩衝剤、
(iii)90mgのスクロース、及び、
(iv)0.2又は0.3mgのポリソルベート80、
を含む、医薬組成物である。
さらに、該抗体-薬物コンジュゲートが水に20mg/mLの濃度で溶解している状態で
の上記医薬組成物のpHは、好適には5.8~6.2であり、より好適には5.9~6.
1であり、更により好適には6.0である。
【0130】
また、ヒスチジン緩衝剤を、L-ヒスチジンとL-ヒスチジン塩酸塩の含有量として表
すと、pHが6.0であるときの上記医薬組成物は、好適には、
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)0.78mgのL-ヒスチジン、及び1.05mgのL-ヒスチジン塩酸塩水和
物、
(iii)90mgのスクロース、並びに、
(iv)0.2又は0.3mgのポリソルベート80を含む、医薬組成物として表すこと
ができる。
【0131】
抗体-薬物コンジュゲートを100mg含有する単位製剤として表すと、pHが6.0
であるときの上記医薬組成物は、
(i)100mgの抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)3.88mgのL-ヒスチジン、及び5.26mgのL-ヒスチジン塩酸塩水和
物、
(iii)450mgのスクロース、並びに、
(iv)1.0又は1.5mgのポリソルベート80を含む、医薬組成物として表すこと
ができる。
【0132】
あるいは、抗体-薬物コンジュゲートの濃度が20mg/mLである水溶液として表す
と、上記医薬組成物は、
(i)20mg/mLの抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)10mMのヒスチジン緩衝剤、
(iii)9%のスクロース、及び、
(iv)0.02又は0.03%のポリソルベート80、及び、
(v)水
を含み、pHが6.0である、医薬組成物として表すことができる。
【0133】
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗B7-H3抗体(好適には、配列番号7
においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号8
においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗
体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体)である場合
は、本発明の医薬組成物は、好適には、
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)10mmolのヒスチジン緩衝剤、
(iii)90mgのスクロース、及び、
(iv)0.2又は0.3mgのポリソルベート20、
を含む、医薬組成物である。
さらに、該抗体-薬物コンジュゲートが水に20mg/mLの濃度で溶解している状態で
の上記医薬組成物のpHは、好適には5.7~6.1であり、より好適には5.8~6.
0であり、更により好適には5.9である。
【0134】
また、ヒスチジン緩衝剤を、L-ヒスチジンとL-ヒスチジン塩酸塩の含有量として表
すと、pHが5.9であるときの上記医薬組成物は、好適には、
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)0.65mgのL-ヒスチジン、及び1.22mgのL-ヒスチジン塩酸塩水和
物、
(iii)90mgのスクロース、並びに、
(iv)0.2又は0.3mgのポリソルベート20を含む、医薬組成物として表すこと
ができる。
【0135】
さらに、抗体-薬物コンジュゲートを100mg含有する単位製剤として表すと、pH
が5.9であるときの上記医薬組成物は、
(i)100mgの抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)3.23mgのL-ヒスチジン、及び6.12mgのL-ヒスチジン塩酸塩水和
物、
(iii)450mgのスクロース、並びに、
(iv)1.0又は1.5mgのポリソルベート20を含む、医薬組成物として表すこと
ができる。
【0136】
あるいは、抗体-薬物コンジュゲートの濃度が20mg/mLである水溶液として表す
と、上記医薬組成物は、
(i)20mg/mLの抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)10mMのヒスチジン緩衝剤、
(iii)9%のスクロース、及び、
(iv)0.02又は0.03%のポリソルベート20、及び、
(v)水
を含み、pHが5.9である、医薬組成物として表すことができる。
【0137】
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体が、抗GPR20抗体(好適には、配列番号9
に記載のアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号1
0においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる
抗体、又は、該抗体の重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している抗体)である場
合は、本発明の医薬組成物は、好適には、
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)10mmolのヒスチジン緩衝剤、
(iii)90mgのスクロース、及び、
(iv)0.3mgのポリソルベート80、
を含む、医薬組成物である。
さらに、該抗体-薬物コンジュゲートが水に20mg/mLの濃度で溶解している状態で
の上記医薬組成物のpHは、好適には5.2~5.6であり、より好適には5.3~5.
5であり、更により好適には5.4である。
【0138】
また、ヒスチジン緩衝剤を、L-ヒスチジンとL-ヒスチジン塩酸塩の含有量として表
すと、pHが5.4であるときの上記医薬組成物は、好適には、
(i)抗体-薬物コンジュゲート20mg当たりに、
(ii)0.32mgのL-ヒスチジン、及び1.66mgのL-ヒスチジン塩酸塩水和
物、
(iii)90mgのスクロース、並びに、
(iv)0.3mgのポリソルベート80を含む、医薬組成物として表すことができる。
【0139】
さらに、抗体-薬物コンジュゲートを100mg含有する単位製剤として表すと、pH
が5.4であるときの上記医薬組成物は、
(i)100mgの抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)1.62mgのL-ヒスチジン、及び8.29mgのL-ヒスチジン塩酸塩水和
物、
(iii)450mgのスクロース、並びに、
(iv)1.5mgのポリソルベート80を含む、医薬組成物として表すことができる。
【0140】
あるいは、抗体-薬物コンジュゲートの濃度が20mg/mLである水溶液として表す
と、上記医薬組成物は、
(i)20mg/mLの抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)10mMのヒスチジン緩衝剤、
(iii)9%のスクロース、及び、
(iv)0.03%のポリソルベート80、及び、
(v)水
を含み、pHが5.4である、医薬組成物として表すことができる。
【0141】
本発明の医薬組成物は、好適には、注射剤であり、より好適には、水性注射剤、又は凍
結乾燥注射剤であり、更により好適には、凍結乾燥注射剤である。
【0142】
本発明において「注射剤」とは、注射針を用いて、生体組織(例えば、静脈内、皮内、
皮下、筋肉内、及び腹腔内等)に投与するための医薬組成物を示す。本発明の注射剤には
、液状の注射剤だけでなく、用時溶解し液状にして用いるための固形状の注射剤も含まれ
る。液状の注射剤の場合、溶媒は水であっても良いし、水以外の溶媒であっても良いし、
水と水以外の溶媒の混合溶媒であっても良い。
【0143】
本発明において「水性注射剤」とは、液状の注射剤であって、溶媒が水(好適には注射
用水)である医薬組成物のことを示す。
本発明において「凍結乾燥注射剤」とは、水(好適には注射用水)で用時溶解して用いる
ことができる固形状の注射剤であって、所定量の医薬成分を含む水溶液を凍結乾燥するこ
とにより得られる医薬組成物のことを示す。
本発明の医薬組成物が、水性注射剤である場合、抗体-薬物コンジュゲートの濃度は、好
適には、5~60mg/mLであり、より好適には、15~40mg/mLであり、更に
より好適には、20mg/mLである。
本発明の医薬組成物が、水性注射剤である場合、本発明の医薬組成物は、好適には凍結さ
れた状態で保存することができる。
【0144】
本発明の医薬組成物が、凍結乾燥注射剤である場合、本発明の医薬組成物は、好適には
褐色バイアルに格納された状態で保存することができる。
【0145】
本発明の医薬組成物が、凍結乾燥注射剤である場合、本発明の医薬組成物と注射用水を
含むキットを、好適に使用することができる。ここで、該注射用水は、好適には、アンプ
ルに格納された状態で保存することができる。
【0146】
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートの含量が20mgである場合の凍結乾燥
注射剤は、注射用水1mLを用いて再溶解することにより、好適に使用することができる
。また、本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートの含量が100mgである場合の
凍結乾燥注射剤は、注射用水5mLを用いて再溶解することにより、好適に使用すること
ができる。
【0147】
本発明の医薬組成物が、凍結乾燥注射剤である場合、本発明の医薬組成物の製造方法は
、好適には、
(1)所定量の、
(i)抗体-薬物コンジュゲート、
(ii)ヒスチジン緩衝剤、
(iii)スクロース又はトレハロース、及び、
(iv)界面活性剤、
を含む水溶液を調製する工程、
(2)必要に応じて、水溶液のpHを所定の値に調整する工程、次いで、
(3)水溶液を凍結乾燥する工程、
を含む、製造方法である。
水溶液を凍結乾燥する工程は、好適には、水溶液の共融点付近の棚温度でアニーリングす
るプロセスを含む。ここで、共融点付近とは、共融点よりも1.5℃低い温度から、共融
点よりも1.5℃高い温度の範囲を示す。
本発明において「アニーリング」とは、凍結ガラス転移点(Tg’)以上の製品温度で凍
結体中の氷晶を成長させる工程を意味する。氷晶が大きくなることにより、乾燥時に昇華
する水(水蒸気)の通り道が大きくなる。これにより、昇華抵抗が減り、凍結乾燥ケーキ
の形状の改善及び乾燥時間の短縮が期待できる。
本発明において「棚温度」とは、凍結乾燥を行う装置内(系内)の温度を意味する。
本発明において「製品温度」とは、凍結乾燥を行う対象物(製品)の温度を意味する。
本発明において「凍結乾燥ケーキ」とは、一連の凍結乾燥プロセスによって得られた凍
結乾燥体(多孔性構造を有する固体)を意味する。
アニーリングは、前述の通り、水溶液の共融点よりも1.5℃低い温度から、共融点より
も1.5℃高い温度の範囲で好適に行うことができ、より好適には、水溶液の共融点と同
じ棚温度で行うことができる。
これらの製造方法は、好適には、共融点よりも5℃低い棚温度でアニーリングを行った場
合と比較し、1次乾燥するプロセスの時間が短縮されることを特徴とする。また、好適に
は、共融点よりも5℃低い棚温度でアニーリングを行った場合と比較し、よりシュリンク
が少ない凍結乾燥ケーキが得られることを特徴とする。
【0148】
本発明の医薬組成物の場合、共融点は約-3℃~約-1℃の範囲となるため、アニーリ
ングは、好適には、-4.5℃~0.5℃の棚温度で行うことができ、より好適には、-
4~-1℃の棚温度で行うことができ、更により好適には、-4~-2℃の棚温度で行う
ことができ、更により好適には、-3~-2℃の棚温度で行うことができ、更により好適
には、-2.5℃の棚温度で行うことができる。
【0149】
アニーリングを行った後は、本発明の医薬組成物は、1次乾燥プロセス及び2次乾燥プ
ロセスを経て、凍結乾燥注射剤として製造される。
【0150】
本発明において「1次乾燥プロセス」とは、凍結乾燥注射剤の製造工程の一つであり、
凍結体中の自由水を昇華するための工程を意味する。
本発明において「2次乾燥プロセス」とは、凍結乾燥注射剤の製造工程の一つであり、溶
質に結合した水(結合水)を昇華するための工程を意味する。
【0151】
1次乾燥プロセスは、好適には、-5~5℃の棚温度かつ5~15Paの真空下で行う
ことができ、より好適には、-4~4℃の棚温度かつ7~13のPaの真空下で行うこと
ができ、更により好適には、-3~3℃の棚温度かつ8~12のPaの真空下で行うこと
ができ、更により好適には、-2~2℃の棚温度かつ9~11のPaの真空下で行うこと
ができ、更により好適には、-1~1℃の棚温度かつ9~11のPaの真空下で行うこと
ができ、更により好適には、0℃の棚温度かつ約10Paの真空下で行うことができる。
【0152】
2次乾燥プロセスは、好適には、40~50℃の棚温度かつ5~15Paの真空下又は
真空なしで行うことができ、より好適には、42~48℃の棚温度かつ7~13Paの真
空下で行うことができ、更により好適には、44~46℃の棚温度かつ9~11Paの真
空下で行うことができ、更により好適には、45℃の棚温度かつ10Paの真空下で行う
ことができる。
【0153】
本発明の医薬組成物の品質は、例えば、50℃下、40℃/75%RH下、25℃/6
0%RH下、又は5℃下のような環境下において、1ヵ月間、3ヵ月間、6ヵ月間、12
ヵ月間、18ヵ月間、24ヵ月間、又は36ヵ月間での保存安定性を、タンパク質濃度、
水分、不溶性微粒子、DAR、単量体・凝集体・断片体の比率、NPI、IoP、電荷異
性体、及びpHを指標に評価することにより確認することができる。また、抗体-薬物コ
ンジュゲートにおける抗体の種類に応じて、抗原に対するBinding activi
tyやPotency(Bioassay)等を指標に品質評価を行うこともできる。さ
らに、Drug distributionやrCE-SDSを指標にした品質評価や、
性状(外観)観察による品質評価を行うこともできる。水性注射剤の場合は、浸透圧比を
指標とした品質評価を行うこともでき、凍結乾燥注射剤の場合は、再溶解時間を指標とし
た品質評価を行うこともできる。これらの品質評価により、既存の医薬組成物に対する優
位性を確認することもできる。
また、本発明の凍結乾燥方法は、本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートを含む
医薬組成物のみならず、スクロース又はトレハロースを含有する水溶液への一般的な適用
が期待される。
従って、スクロース又はトレハロースを含有する水溶液の共融点付近の棚温度でアニー
リングするプロセスを含む、凍結乾燥注射剤の製造方法(ここで、共融点付近とは、共融
点よりも1.5℃低い温度から、共融点よりも1.5℃高い温度の範囲を示す。)も、本
発明の範囲に含まれる。
また、アニーリングは、好適には、スクロース又はトレハロースを含有する水溶液の共
融点と同じ棚温度で行うことができる。
これらの製造方法は、好適には、共融点よりも5℃低い棚温度でアニーリングを行った
場合と比較し、1次乾燥するプロセスの時間が短縮されることを特徴とする。
【0154】
また、これらの製造方法は、好適には、共融点よりも5℃低い棚温度でアニーリングを
行った場合と比較し、よりシュリンクが少ない凍結乾燥ケーキが得られることを特徴とす
る。
【0155】
[医薬組成物の使用]
本発明の医薬組成物は、患者に対しては全身療法として適用する他、がん組織に局所的
に適用して治療効果を期待することができる。
【0156】
本発明の医薬組成物は、哺乳動物に対して好適に使用することができるが、より好適に
はヒトに対して使用することができる。
【0157】
本発明の医薬組成物を投与するために使用され得る導入経路としては、例えば、静脈内
、皮内、皮下、筋肉内、及び腹腔内の経路を挙げることができるが、好適には、静脈内で
ある。
【0158】
本発明の医薬組成物が水性注射剤である場合、好適には、適切な希釈液で希釈した後、
静脈内に点滴投与することができる。希釈液としては、例えば、ブドウ糖溶液(好適には
5%ブドウ糖溶液)や、生理食塩液を挙げることができる。
【0159】
本発明の医薬組成物が凍結乾燥注射剤である場合、水(好適には、注射用水)により溶
解した後、必要量を適切な希釈液で希釈した後、静脈内に点滴投与することができる。希
釈液としては、例えば、ブドウ糖溶液(好適には5%ブドウ糖溶液)や、生理食塩液を挙
げることができる。
【0160】
本発明の医薬組成物は、本発明の抗体-薬物コンジュゲートの抗原に対する親和性、す
なわち、抗原に対する解離定数(Kd値)の点において、親和性が高い(Kd値が低い)
ほど、少量の投与量であっても薬効を発揮させことができる。したがって、本発明の医薬
組成物の投与量は、抗原との親和性の状況に基づいて設定することもできる。本発明の医
薬組成物をヒトに対して投与する際には、例えば、抗体-薬物コンジュゲートとして、約
0.001~100mg/kg(ここで、「mg/kg」とは、ヒトの体重1kgあたり
の抗体-薬物コンジュゲートの投与量を意味する)を1回或は1~180日間に1回の間
隔で複数回投与すればよいが、例えば、本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートが
抗HER2抗体-薬物コンジュゲートである場合、好適には、0.8mg/kg~8mg
/kgを3週に1回投与する方法を挙げることができ、より好適には、0.8mg/kg
、1.6mg/kg、3.2mg/kg、5.4mg/kg、6.4mg/kg、7.4
mg/kg、又は8mg/kgを3週に1回投与する方法を挙げることができ、更により
好適には、5.4mg/kg、6.4mg/kg、7.4mg/kg、又は8mg/kg
を3週に1回投与する方法を挙げることができ、更により好適には、5.4mg/kg、
又は6.4mg/kgを3週に1回投与する方法を挙げることができる。
【0161】
本発明の医薬組成物は、がんの治療のために使用することができ、好適には、乳がん、
胃がん(胃腺がんと呼ぶこともある)、大腸がん(結腸直腸がんと呼ぶこともあり、結腸
がん及び直腸がんを含む)、肺がん(小細胞肺がん及び非小細胞肺がんを含む)、食道が
ん、唾液腺がん、胃食道接合部腺がん、胆管がん、ページェット病、膵臓がん、卵巣がん
、子宮がん肉腫、尿路上皮がん、前立腺がん、膀胱がん、胃腸間質腫瘍、消化管間質腫瘍
、子宮頸がん、扁平上皮がん、腹膜がん、肝臓がん、肝細胞がん、結腸がん、直腸がん、
子宮内膜がん、子宮がん、腎臓がん、外陰部がん、甲状腺がん、陰茎がん、白血病、悪性
リンパ腫、形質細胞腫、骨髄腫、神経上皮組織性腫瘍、神経鞘性腫瘍、頭頸部がん、皮膚
がん、咽頭がん、胆のうがん、胆管がん、中皮腫、及び肉腫からなる群より選択される少
なくとも一つのがんの治療のために使用することができる。例えば、本発明で使用される
抗体-薬物コンジュゲートが抗ER2抗体-薬物コンジュゲートである場合、より好適に
は、乳がん、胃がん、大腸がん、非小細胞肺がん、食道がん、唾液腺がん、胃食道接合部
腺がん、胆管がん、ページェット病、膵臓がん、卵巣がん、及び子宮がん肉腫からなる群
より選択される少なくとも一つのがんの治療のために使用することができ、より好適には
、乳がん、胃がん、大腸がん、非小細胞肺がん、食道がん、唾液腺がん、胃食道接合部腺
がん、胆管がん、及びページェット病からなる群より選択される少なくとも一つのがんの
治療のために使用することができ、さらにより好適には、乳がん、胃がん、大腸がん、又
は非小細胞肺がんの治療のために使用することができる。
【0162】
本発明の医薬組成物は、がん治療の主要な治療法である薬物療法のための薬剤として選
択して使用することができ、その結果として、がん細胞の成長を遅らせ、増殖を抑え、さ
らにはがん細胞を破壊することができる。これらの作用によって、がん患者において、が
んによる症状からの解放や、QOLの改善を達成でき、がん患者の生命を保って治療効果
が達成される。がん細胞の破壊には至らない場合であっても、がん細胞の増殖の抑制やコ
ントロールによってがん患者においてより高いQOLを達成しつつより長期の生存を達成
させることができる。
【0163】
このような薬物療法においての薬物単独での使用の他、本発明の医薬組成物は、アジュ
バント療法において他の療法と組み合わせて使用することもでき、外科手術や、放射線療
法、ホルモン療法等と組み合わせることができる。さらにはネオアジュバント療法におけ
る薬物療法として使用することもできる。
【0164】
以上のような治療的使用の他、本発明の医薬組成物は、微細な転移がん細胞の増殖を押
さえ、さらには破壊するといった予防効果も期待することができる。例えば、転移過程で
体液中にあるがん細胞を抑制し破壊する効果や、いずれかの組織に着床した直後の微細な
がん細胞に対する抑制、破壊等の効果が期待できる。したがって、特に外科的ながんの除
去後においてのがん転移の抑制、予防効果が期待できる。
【0165】
本発明の医薬組成物は、他のがん治療剤と併用して投与することもでき、これによって
抗腫瘍効果を増強させることができる。この様な目的で使用される他のがん治療剤として
、5-フルオロウラシル(5-FU)、ペルツズマブ(Pertuzumab)、トラス
ツズマブ(Trastuzumab)、パクリタキセル(Paclitaxel)、カル
ボプラチン(Carboplatin)、シスプラチン(Cisplatin)、ゲムシ
タビン(Gemcitabine)、カペシタビン(Capecitabine)、イリ
ノテカン(Irinotecan)(CPT-11)、ドセタキセル(Docetaxe
l)、ペメトレキセド(Pemetrexed)、ソラフェニブ(Sorafenib)
、ビンブラスチン(Vinblastin)、ビノレルビン(Vinorelbine)
、エベロリムス(Everolims)、タネスピマイシン(Tanespimycin
)、ベバシズマブ(Bevacizumab)、オキサリプラチン(Oxaliplat
in)、ラパチニブ(Lapatinib)、トラスツズマブエムタンシン(Trast
uzumab emtansine)(T-DM1)又は国際公開第2003/0380
43号に記載の薬剤、更にLH-RHアナログ(リュープロレリン(Leuprorel
in)、ゴセレリン(Goserelin)等)、エストラムスチン・フォスフェイト(
Estramustine Phosphate)、エストロジェン拮抗薬(タモキシフ
ェン(Tamoxifen)、ラロキシフェン(Raloxifene)等)、アロマタ
ーゼ阻害剤(アナストロゾール(Anastrozole)、レトロゾール(Letro
zole)、エキセメスタン(Exemestane)等)等を挙げることができるが、
抗腫瘍活性を有する薬剤であれば限定されることはない。
【実施例0166】
以下に示す例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるもの
ではない。また、これらはいかなる意味においても限定的に解釈されるものではない。
【0167】
[実施例1:抗体-薬物コンジュゲート(1)の製造]
国際公開第2015/115091号に記載の製造方法を参考に、ヒト化抗HER2抗
体(トラスツズマブ)を用いて、式
【0168】
【0169】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗HER2抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体
-薬物コンジュゲート(以下、「抗体-薬物コンジュゲート(1)」と称する)を製造し
た。抗体-薬物コンジュゲート(1)のDARは、7.8であった。
【0170】
[実施例2:抗体-薬物コンジュゲート(1)の製剤の調製]
製剤の調製法(1)
抗体-薬物コンジュゲート(1)(20mg/mL)、10mMヒスチジン緩衝剤、1
1.1%トレハロース水和物、及び0.02%ポリソルベート20を含む水溶液(pH5
.8)を透析カセット(透析膜、Slide-A-lyzer, MWCO 20,00
0)に注入し、透析カセットに注入した試料量の50倍以上の目的処方の賦形剤を含有す
る緩衝液で透析を行った。透析は5°Cで5時間以上を2回行った。透析後のタンパク質
濃度が約20mg/mLになるように濃縮または希釈を適宜実施した。この溶液を0.2
2μmフィルターを用いてろ過した。ろ過した液を1mLずつガラスバイアルに充填し、
ゴム栓を半打栓し、表1の条件で凍結乾燥を行った。凍結乾燥後、ゴム栓が打栓されたバ
イアルにキャップを巻締めた。ろ過と充填操作はクリーンベンチ内にて実施した。
【0171】
【0172】
製剤の調製法(2)
抗体-薬物コンジュゲート(1)(20mg/mL)、10mMヒスチジン緩衝剤、1
1.1%トレハロース水和物、及び0.02%ポリソルベート20を含む水溶液(pH5
.8)をUF膜キット(AMICON ULTRA-15、30kDa)に分注して30
00rpm、5℃設定で遠心を行い約2倍に濃縮した。この濃縮液に含有するポリソルベ
ート20を疎水性吸着剤(アンバーライト XAD7HP)に吸着させ除去した。このポ
リソルベート20を除去した薬液を透析カセット(透析膜、Slide-A-lyzer
, MWCO 20,000)に注入し、透析カセットに注入した試料量の50倍以上の
目的処方の賦形剤を含有する緩衝液で透析を行った。透析は5℃で5時間以上を2回行っ
た。透析後のタンパク質濃度が約20mg/mLになるように濃縮または希釈を適宜実施
した後、ポリソルベート20またはポリソルベート80を添加して混合した。この溶液を
0.22μmフィルターを用いてろ過した。ろ過した液を1mLずつガラスバイアルに充
填し、ゴム栓を半打栓し、表2の条件で凍結乾燥を行った。凍結乾燥後、ゴム栓が打栓さ
れたバイアルにキャップを巻締めた。ろ過と充填操作はクリーンベンチ内にて実施した。
【0173】
【0174】
[実施例3:安定性試験]
凍結乾燥注射剤を40℃/75%RHで3ヵ月間保存した。タンパク質濃度(UV法に
て測定)、水分(カールフィッシャー法にて測定)、不溶性微粒子(Micro Flo
w Imagingにて測定)、Drug Antibady Ratio(DAR)(
HPLC法にて測定)、単量体・凝集体・断片体の比率(SE-HPLC(SEC)にて
測定)、Non Proteinous Impurity (NPI)(HPLC法に
て測定)、Impurity of Payload (IoP)(HPLC法にて測定
)、電荷異性体(CZEにて測定)、pH、及びHER2 binding activ
ity(ELISA法にて測定)を指標に、安定性を比較評価した。
【0175】
[実施例4:賦形剤スクリーニング]
凍結乾燥注射剤の賦形剤はバイオ医薬品で使用実績があり、浸透圧がほぼ等張となる濃
度である10%トレハロース水和物、9%スクロース、5%ソルビトールから選定した。
その他の成分は共通で抗体-薬物コンジュゲート(1)(20mg/mL)、40mMヒ
スチジン緩衝剤、0.02%ポリソルベート20、pH5.8とした。
【0176】
結果を表3に示す。5%ソルビトールよりも9%スクロース又は10%トレハロース水
和物を使用した場合に凝集体の生成が少ないことが判明した。特に9%スクロースを使用
した場合に凝集体の生成が最も少ないことが判明した(
図3)。
【0177】
【0178】
[実施例5:緩衝剤スクリーニング]
凍結乾燥注射剤の緩衝剤はバイオ医薬品で使用実績があり、pH4からpH7付近の緩
衝能を持つヒスチジン、クエン酸、リン酸、コハク酸、及びグルタミン酸から選定した。
これらの緩衝剤の濃度は一律25mMとした。その他の成分は共通で抗体-薬物コンジュ
ゲート(1)(20mg/mL)、10%トレハロース水和物、0.02%ポリソルベー
ト20、pH5.8とした。
【0179】
結果を表4に示す。緩衝剤として、ヒスチジンを使用した場合に、凝集体の生成が最も
少ないことが判明した(
図4)。
【0180】
【0181】
[実施例6:pHスクリーニング]
凍結乾燥注射剤の再溶解後のpHは緩衝剤スクリーニングで選定したヒスチジン緩衝剤
を用い、点滴静注した場合に生体適合性や刺激性等の安全性を考慮しpH4からpH7の
範囲から選定した。その他の成分は共通で抗体-薬物コンジュゲート(1)(20mg/
mL)、9%スクロース、25mMヒスチジン緩衝剤、0.02%ポリソルベート20と
した。試料作製は製剤の調製法(1)で実施した。
【0182】
結果を表5に示す。pHが高くなることにより凝集体が増加し(
図5)、pHが低くな
ることによりNPIが増加することが判明した(
図6)。従って、pH5.5にて凝集体
の増加とNPIの増加をバランスよく抑制できることが判明した。
【0183】
【0184】
[実施例7:緩衝剤濃度スクリーニング]
凍結乾燥注射剤の緩衝剤として選定したヒスチジン緩衝剤の濃度は、10mMから40
mMの範囲から選定した。その他の成分は共通で抗体-薬物コンジュゲート(1)(20
mg/mL)、9%スクロース、0.02%ポリソルベート20、pH5.5とした。試
料作製は製剤の調製法(1)で実施した。
【0185】
結果を表6に示す。ヒスチジン緩衝剤濃度が、10mMから40mMの場合において、
いずれも同等の安定性を示した。
【0186】
【0187】
[実施例8:界面活性剤スクリーニング]
凍結乾燥注射剤の場合、界面活性剤は凍結時のタンパク質濃縮層の界面保護剤や凍結乾
燥体の再溶解時に発生する微細な気泡に対する界面保護剤としての役割が期待されること
から、界面活性剤として、0.02%から0.04%のポリソルベート20(Tween
20)及び、ポリソルベート80(Tween80)について検討した。その他の成分は
共通で抗体-薬物コンジュゲート(1)(20mg/mL)、9%スクロース、25mM
ヒスチジン緩衝剤、pH5.5とした。試料作製は製剤の調製法(2)で実施した。
【0188】
結果を表7及び表8に示す(ここで、「PS」はポリソルベートを意味し、「PS20
」はポリソルベート20を意味し、「PS80」はポリソルベート80を意味する)。0
.02%から0.04%のポリソルベート20又は80を使用することで微粒子数の抑制
が認められ、特に0.02%から0.04%のポリソルベート80を使用した場合に、微
粒子数を抑制できることが判明した(
図7)。
【0189】
【0190】
【0191】
[実施例9:バイアル検討]
褐色ガラスバイアル、及び透明ガラスバイアルのそれぞれに、凍結乾燥注射剤を充填し
、1,000lxの白色蛍光灯下に光暴露した時の品質変化を比較検討した。凍結乾燥注
射剤の成分は、抗体-薬物コンジュゲート(1)(20mg/mL)、9%スクロース、
25mMヒスチジン緩衝剤、0.02%ポリソルベート20(pH5.5)とし、試料作
製は製剤の調製法(1)で実施した。
結果を表9に示す。透明ガラスバイアルよりも、褐色ガラスバイアルを使用した場合に
、凝集体(
図8)及びIoP(
図9)の生成を抑制できることが判明した。
【0192】
【0193】
[実施例10:凍結乾燥方法の設定]
注射剤の凍結乾燥方法を設定する上で指標となる重要な物性は、凍結乾燥する薬物含有
水溶液の凍結ガラス転移点(Tg’)、凍結乾燥中に生成する多孔性構造を有するケーキ
の崩壊温度(Tc)であり、このTg’またはTc以下となる製品温度で乾燥することに
よってケーキ状の多孔性構造を有する凍結乾燥体が得られる。乾燥プロセスは、一般的に
凍結体中の自由水を昇華するための1次乾燥プロセスと溶質に結合した水(結合水)を昇
華するための2次乾燥プロセスで構成され、1次乾燥プロセス中の自由水はTg’以下の
製品温度で昇華することが適当であり、Tc以下の製品温度で昇華することも可能である
。
抗体-薬物コンジュゲート(1)(20mg/mL)、9%スクロース、25mMヒス
チジン緩衝剤、0.03%ポリソルベート80、を含み、pHが5.5である水溶液(以
下、「水溶液(1)」という。)の、Tg’は-31℃、Tcは-27℃である。
水溶液(1)5.2~5.5mLを容量が約10mLのガラスバイアルに充填して凍結乾
燥方法の検討を実施した。
【0194】
(1)1次乾燥プロセスパラメータ検討
1次乾燥プロセスで最も重要なパラメータは棚温度及び、庫内真空度である。凍結乾燥
ケーキの形状(安定性)や再溶解性、乾燥時間は前述のパラメータの影響を大きく受ける
ことから、棚温度を-20℃から0℃の範囲及び、庫内真空度を5Paから15Paの範
囲で実験計画法を用いて検討した。凍結乾燥は表9のパラメータで実施した(アニーリン
グの棚温度は-7℃)。
【0195】
【0196】
図10は1次乾燥プロセスにおける棚温度と庫内真空度を変動させた時の水溶液(1)
の製品温度の等高線図である。棚温度が低く庫内真空度が高い条件で1次乾燥中の製品温
度は低くなり、その逆の棚温度が高く庫内真空度が低い条件で製品温度は高くなる、一般
的な製品温度挙動を示した。棚温度が-20℃から0℃の範囲及び、庫内真空度が5Pa
から15Paの範囲の製品温度はTc以下を示したものの、三角で囲んだ部分以外のパラ
メータでは凍結乾燥ケーキの多孔性構造に部分的な崩壊が生じ、凍結乾燥ケーキが縮んだ
状態の外観(シュリンク)となることが明らかとなった。
図11は1次乾燥プロセスにおける棚温度と庫内真空度を変動させた時の水溶液(1)
の乾燥時間の等高線図である。棚温度が低く庫内真空度が高い条件で1次乾燥時間は長く
なり、その逆の棚温度が高く庫内真空度が低い条件で乾燥時間は短くなる、一般的な乾燥
速度挙動を示し、製品温度との相関が認められた。製品温度等高線図の三角で囲んだ部分
のパラメータ領域では、良好な形状の凍結乾燥ケーキが得られるが、長時間の1次乾燥プ
ロセスが必要になることが明らかとなった。
凍結乾燥ケーキの形状は外観品質の観点ではシュリンクのない状態が望まれるため、本
検討の結果から1次乾燥プロセスは少なくとも58時間必要であることが明らかとなった
。そのため、総凍結乾燥時間は、凍結プロセスに11時間、2次乾燥・出庫プロセスに1
2時間は必要であることから、81時間となる。つまり凍結乾燥のプロセス期間は3日間
以上となり、これに凍結乾燥開始日と終了日を加えると製造期間は5日間と見積もられた
。
一方、凍結乾燥は生産効率及び、生産コストの観点で短時間(短期間)のプロセスが望ま
しいため、長時間の凍結乾燥プロセスが必要になることが課題となった。
この課題を解決するため1次乾燥プロセス時間を短縮してもシュリンクが少ない凍結乾
燥ケーキを得るために、凍結乾燥ケーキの多孔性構造の改善が期待できるアニーリングス
テップに着目し、アニーリングパラメータの検討を実施した。
【0197】
(2)アニーリングパラメータ設定
アニーリングプロセスで重要なパラメータは棚温度であり、棚温度を変動することによ
って凍結体の製品温度を調節することができる。
本検討では凍結乾燥ケーキの多孔性構造は氷晶の氷が昇華することによって作られるため
、アニーリングの棚温度の最適化を実施した。アニーリングの棚温度は共融点から安全マ
ージンをとった温度に設定することが一般的であることから、共融点が-2.5℃である
水溶液(1)では-7℃で実施していたが、凍結体中の氷晶を成長させて氷の昇華抵抗を
減らし、乾燥がスムーズに進むことで凍結乾燥ケーキにシュリンクが生じ難い比表面積の
小さな多孔性構造とするため-7℃よりも高い棚温度を試みた。アニーリングの棚温度の
範囲は-7℃から0.5℃までとし、比表面積の小さな多孔性構造を作ることで凍結乾燥
ケーキの外観品質の改善を検討した。本検討の凍結乾燥は表11のパラメータで実施し、
1次乾燥時間は合計約42時間とした。
【0198】
【0199】
棚温度-7℃から0.5℃の範囲でアニーリングを実施し凍結乾燥した場合の製品温度
(アニーリング時)と凍結乾燥ケーキの形状を
図12に示す。アニーリング時の製品温度
が-7.0℃から-4.6℃の範囲ではバイアル底部から側面下部にかけて凍結乾燥ケー
キに顕著なシュリンクが認められ、-4.2℃から-3.4℃の製品温度範囲では僅かな
シュリンクが認められたものの、-2.6℃から-1.5℃の製品温度範囲ではシュリン
クのない凍結乾燥ケーキが得られた。これらの結果から共融点に近い棚温度でアニーリン
グするほどシュリンクは減少し、共融点付近ではシュリンクが起きなくなる事が判明した
。また、製品温度が共融点以上の-1.5℃まで上昇したとしても固体状態が維持され正
常な形状の凍結乾燥ケーキが得られることが明らかとなった。
アニーリングはこれまで共融点よりも5℃程度低い棚温度で実施されることが一般的で
あったが、本検討によって、共融点付近でアニーリングした方がより優れた外観の凍結乾
燥ケーキが得られることが見出された。アニーリングの棚温度は、本検討結果をもとに共
融点付近の-4℃から-2℃に設定した。
また、本検討から、共融点付近でアニーリングすることによって、1次乾燥プロセスの
時間を40時間程度短縮できることが判明した。
図10及び、
図11の結果をもとに、棚
温度-5℃、庫内真空度7Paに設定することにより製品温度が比較的低い状態で乾燥が
可能で且つ乾燥時間を18時間程度短縮が見込まれる条件であると考えられたことから1
次乾燥パラメータとして設定した。
【0200】
(3)2次乾燥プロセスパラメータ設定
2次乾燥プロセスは溶質に結合した水(結合水)を乾燥するためのプロセスであり、2
次乾燥後の乾燥度が凍結乾燥注射剤の保存安定性に大きく影響を及ぼすことが一般的に知
られている。結合水は高い温度で乾燥するほど低くすることができるが、抗体-薬物コン
ジュゲートの抗体部分は熱に不安定なことが一般的であるため、キャピラリー示差走査熱
量計でタンパク質の熱変性Onsetを測定した。
図13に示すのとおり抗体-薬物コン
ジュゲート(1)の熱変性Onsetは52℃から53℃であったことから2次乾燥の棚
温度は50℃以下で乾燥度(残存水分)を評価した。
2次乾燥の棚温度は30℃から50℃の範囲とし、乾燥度の評価を実施した。本検討の
凍結乾燥は表12のパラメータで実施した。
【0201】
【0202】
各2次乾燥の棚温度と凍結乾燥注射剤中の残存水分の結果を表13に示す。凍結乾燥注
射剤中の残存水分は5%まで安定性が維持されることを確認しているが、安定性のより高
いレベルを目標とするため、残存水分を1%以下に設定した。残存水分は1次乾燥条件の
影響を多少受けるものの、2次乾燥の棚温度が40℃から50℃の範囲で残存水分量が1
%以下となることが確認された。熱変性Onsetと本検討結果をもとに40℃から50
℃の中間の45℃を2次乾燥の棚温度に設定した。
【0203】
【0204】
(4)まとめ
バイオ医薬品(タンパク質医薬品)の凍結乾燥注射剤の賦形剤は、タンパク質の凍結保
護作用を持ち、保存中のメイラード反応リスクがないスクロースやトレハロースといった
非還元二糖類を製剤処方に選定することが一般的である。これらの糖は他の糖類よりもT
g’やTcが低いため棚温度を低くして製品温度がTg’やTcを超えないように乾燥す
る必要があり、凍結乾燥プロセスが長くなる課題や凍結乾燥ケーキにシュリンクが生じ易
いといった課題を持つ。水溶液(1)についても例外ではなかったことから、これらの課
題を解決するため1次乾燥、アニーリングプロセス及び1次乾燥プロセスの検討を実施し
、その結果をもとに表14のとおり水溶液(1)の凍結乾燥方法を設定した。この凍結乾
燥方法の特徴はアニーリングパラメータであり、共融点付近でアニーリングすることによ
ってシュリンクを顕著に低減した凍結乾燥ケーキを短時間で製造できることが見出された
。
【0205】
【0206】
本凍結乾燥方法で製造した凍結乾燥注射剤について、50℃下1ヵ月間、40℃/75
%RH下3ヵ月間、25℃/60%RH下3ヵ月間、5℃下3ヵ月間での保存安定性を、
タンパク質濃度、水分、不溶性微粒子、DAR、単量体・凝集体・断片体の比率、NPI
、IoP、電荷異性体、及びpHを指標に評価した結果、顕著な品質変化は認められない
ことが判明した。
【0207】
[実施例11:長期保存安定性の評価]
実施例10で製造した凍結乾燥注射剤について、さらに、40℃/75%RH下6ヵ月
間、25℃/60%RH下12ヵ月間、5℃下18ヵ月間での保存安定性を、タンパク質
濃度、水分、不溶性微粒子、DAR、単量体・凝集体・断片体の比率、NPI、IoP、
電荷異性体、及びpHを指標に評価した。その結果、顕著な品質変化は認められないこと
が判明した。
【0208】
[実施例12:凍結乾燥方法の更なる検討]
(1)アニーリングパラメータ設定
水溶液(1)の凍結乾燥方法として、凍結体中の氷晶を成長させるため、棚温度-2.
5℃を120分間保持してアニーリングを行う方法を採用していたが、120分では凍結
体の上層部の温度が-2.5℃まで上昇しておらず氷晶成長が不十分なため僅かながら凍
結乾燥ケーキにシュリンクが起きることが判明した。アニーリング時間を240分間まで
延長すると凍結体の上層部の温度が-2.5℃に到達することが判明したためアニーリン
グ時間を4時間に変更することとした。4時間に変更することによって氷晶が十分に成長
することで水の昇華速度が速くなり一次乾燥時間が短縮することが判明した。
【0209】
(2)一次乾燥プロセスパラメータ設定
-2.5℃で4時間アニーリングを行い、一次乾燥プロセスパラメータについて棚温度
を-10℃から15℃の範囲及び、庫内真空度を4Paから30Paの範囲で検討した。
凍結乾燥は表15のパラメータで実施した。
【0210】
【0211】
棚温度が-10℃から10℃の範囲及び、庫内真空度が4Paから30Paの範囲の製
品温度はTc以下を示し、凍乾ケーキが外観はシュリンクやコラプスのないケーキ形状で
あった。
【0212】
このうち、棚温度が-5℃から5℃であり、且つ、庫内真空度が5Paから15Paで
ある場合が特に安全な範囲と考えられ、さらに乾燥時間を勘案し、この範囲の中心条件で
ある棚温度が0℃であり、且つ、庫内真空度が10Paである場合を好適な条件として設
定した。
【0213】
(3)まとめ
上記の結果をもとに表16のとおり水溶液(1)の凍結乾燥方法を設定した。
【0214】
【0215】
本凍結乾燥方法で製造した凍結乾燥注射剤について、40℃/75%RH下3ヵ月間の
保存安定性を、タンパク質濃度、水分、不溶性微粒子、DAR、単量体・凝集体・断片体
の比率、NPI、IoP、電荷異性体、及びpHを指標に評価した。開始時点からの顕著
な品質変化は認められていない。
【0216】
[実施例13:他の処方と凍結乾燥条件の検討]
(1)製剤の調製
原薬(抗体-薬物コンジュゲート(1)(20mg/mL)、25mMヒスチジン、9
%スクロース、pH5.5)をUF膜キット(AMICON ULTRA-15、30k
Da)に分注して3000rpm、5℃設定で遠心を行い約3倍に濃縮した。この濃縮原
薬を透析カセット(透析膜、Slide-A-lyzer, MWCO 20,000)
に注入し、透析カセットに注入した試料量の50倍以上の目的処方の緩衝液で透析を行っ
た。透析は5°Cで5時間以上を2回行った。透析後のタンパク質濃度が約5mg/mL
または約50mg/mLになるように濃縮または希釈を適宜実施した後、ポリソルベート
80を添加して混合し、抗体-薬物コンジュゲート(1)(5mg/mL)、8%スクロ
ース、20mMヒスチジン緩衝剤、及び0.04%ポリソルベート80、を含み、pHが
4.0である水溶液(以下、「水溶液(2)」という。)、抗体-薬物コンジュゲート(
1)(50mg/mL)、6%スクロース、40mMヒスチジン緩衝剤、及び0.04%
ポリソルベート80、を含み、pHが7.0である水溶液(以下、「水溶液(3)」とい
う。)、抗体-薬物コンジュゲート(1)(5mg/mL)、8%トレハロース水和物、
20mMヒスチジン緩衝剤、及び0.04%ポリソルベート80、を含み、pHが4.0
である水溶液(以下、「水溶液(4)」という。)、並びに、抗体-薬物コンジュゲート
(1)(50mg/mL)、6%トレハロース水和物、40mMヒスチジン緩衝剤、及び
0.04%ポリソルベート80、を含み、pHが7.0である水溶液(以下、「水溶液(
5)」という。)を調製した。
なお、抗体-薬物コンジュゲート(1)20mg当たりの量で換算すると、水溶液(2
)は、320mgのスクロース、80mMのヒスチジン緩衝剤、及び1.6mgのポリソ
ルベート80を含み、水溶液(3)は、24mgのスクロース、16mMのヒスチジン緩
衝剤、及び0.16mgのポリソルベート80を含み、水溶液(4)は、320mgのト
レハロース水和物、80mMのヒスチジン緩衝剤、及び1.6mgのポリソルベート80
を含み、水溶液(5)は、24mgのトレハロース水和物、16mMのヒスチジン緩衝剤
、及び0.16mgのポリソルベート80を含んでいる。
これらの溶液を0.22μmフィルターを用いてろ過した。ろ過した液を5mLずつ褐
色ガラスバイアルに充填し、凍結乾燥製剤の場合はゴム栓を半打栓し、表17の条件で凍
結乾燥を行った。凍結乾燥後、ゴム栓が打栓されたバイアルにキャップを巻締めた。
【0217】
【0218】
(2)安定性試験
本凍結乾燥方法で製造した凍結乾燥注射剤について、40℃/75%RH下の保存安定
性を、タンパク質濃度、水分、不溶性微粒子、DAR、単量体・凝集体・断片体の比率、
NPI、IoP、電荷異性体、及びpHを指標に評価した。
【0219】
[実施例14:抗体-薬物コンジュゲート(2)の製造と処方の検討]
国際公開第2015/155998号に記載の製造方法を参考に、抗HER3抗体(配
列番号3に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号4に記載のアミノ酸配列からな
る軽鎖を含んでなる抗体)を用いて、式
【0220】
【0221】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗HER3抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗体
-薬物コンジュゲート(以下、「抗体-薬物コンジュゲート(2)」と称する)を製造し
た。抗体-薬物コンジュゲート(2)のDARは、7.7であった。
【0222】
抗体-薬物コンジュゲート(2)について、実施例2~8の方法と同様な方法で処方の
スクリーニング(抗体-薬物コンジュゲート(2)(20mg/mL)、9%スクロース
、25mMヒスチジン緩衝剤、ポリソルベート20(0.01~0.1%)、pH4.9
~5.9)を行った。その結果、抗体-薬物コンジュゲート(2)(20mg/mL)、
9%スクロース、25mMヒスチジン緩衝剤、及び0.03%ポリソルベート20、を含
み、pHが5.4である水溶液(以下、「水溶液(6)」という。)が好適な処方である
ことが判明した。
【0223】
[実施例15:抗体-薬物コンジュゲート(3)の製造と処方の検討]
国際公開第2015/098099号に記載の製造方法を参考に、抗TROP2抗体(
配列番号5においてアミノ酸番号20乃至470に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び
配列番号6においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含
んでなる抗体)を用いて、式
【0224】
【0225】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗TROP2抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗
体-薬物コンジュゲート(以下、「抗体-薬物コンジュゲート(3)」と称する)を製造
した。抗体-薬物コンジュゲート(3)のDARは、4.3であった。
【0226】
抗体-薬物コンジュゲート(3)について、実施例2~8の方法と同様な方法で処方の
スクリーニング(抗体-薬物コンジュゲート(3)(20mg/mL)、スクロース(3
~9%)、ヒスチジン緩衝剤(3~15mM)、ポリソルベート20若しくはポリソルベ
ート80(0.01~0.1%)、pH5~7、あるいは抗体-薬物コンジュゲート(3
)(15~40mg/mL)、9%スクロース、10mMヒスチジン緩衝剤、0.02%
ポリソルベート80、pH6.0)を行った。その結果、抗体-薬物コンジュゲート(3
)(20mg/mL)、9%スクロース、10mMヒスチジン緩衝剤、及び0.02%ポ
リソルベート80、を含み、pHが6.0である水溶液(以下、「水溶液(7)」という
。)、並びに、抗体-薬物コンジュゲート(3)(20mg/mL)、9%スクロース、
10mMヒスチジン緩衝剤、及び0.03%ポリソルベート80、を含み、pHが6.0
である水溶液(以下、「水溶液(8)」という。)が好適な処方であることが判明した。
【0227】
[実施例16:抗体-薬物コンジュゲート(4)の製造と処方の検討]
国際公開第2014/057687号に記載の製造方法を参考に、抗B7-H3抗体(
配列番号7においてアミノ酸番号20乃至471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び
配列番号8においてアミノ酸番号21乃至233に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含
んでなる抗体)を用いて、式
【0228】
【0229】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗B7-H3抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗
体-薬物コンジュゲート(以下、「抗体-薬物コンジュゲート(4)」と称する)を製造
した。抗体-薬物コンジュゲート(4)のDARは、4.6であった。
【0230】
抗体-薬物コンジュゲート(4)について、実施例2~8の方法と同様な方法で処方の
スクリーニング(抗体-薬物コンジュゲート(4)(20mg/mL)、9%スクロース
若しくは10%トレハロース水和物、10mMヒスチジン緩衝剤若しくは10mMコハク
酸緩衝剤、ポリソルベート20若しくはポリソルベート80(0.005~0.04%)
、pH5.2~6.2、あるいは抗体-薬物コンジュゲート(4)(20~60mg/m
L)、9%スクロース、10mMヒスチジン緩衝剤、ポリソルベート20(0.005~
0.04%)、pH5.2~6.2)を行った。その結果、抗体-薬物コンジュゲート(
4)(20mg/mL)、9%スクロース、10mMヒスチジン緩衝剤、及び0.02%
ポリソルベート20、を含み、pHが5.9である水溶液(以下、「水溶液(9)」とい
う。)、並びに、抗体-薬物コンジュゲート(4)(20mg/mL)、9%スクロース
、10mMヒスチジン緩衝剤、及び0.03%ポリソルベート20、を含み、pHが5.
9である水溶液(以下、「水溶液(10)」という。)が好適な処方であることが判明し
た。
【0231】
[実施例17:抗体-薬物コンジュゲート(5)の製造と処方の検討]
国際公開第2018/135501号に記載の製造方法を参考に、抗GPR20抗体(
配列番号9に記載のアミノ酸番号20乃至472に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び
配列番号10においてアミノ酸番号21乃至234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を
含んでなる抗体)を用いて、式
【0232】
【0233】
(式中、Aは抗体との結合位置を示す)
で示される薬物リンカーと、抗GPR20抗体とがチオエーテル結合によって結合した抗
体-薬物コンジュゲート(以下、「抗体-薬物コンジュゲート(5)」と称する)を製造
した。抗体-薬物コンジュゲート(5)のDARは、7.8であった。
【0234】
抗体-薬物コンジュゲート(5)について、実施例2~8の方法と同様な方法で処方の
スクリーニング(抗体-薬物コンジュゲート(5)(20~60mg/mL)、9%スク
ロース、10mMヒスチジン緩衝剤、ポリソルベート80(0.01~0.1%)、pH
5.0~6.5)を行った。その結果、抗体-薬物コンジュゲート(5)(20mg/m
L)、9%スクロース、10mMヒスチジン緩衝剤、及び0.03%ポリソルベート80
、を含み、pHが5.4である水溶液(以下、「水溶液(11)」という。)が好適な処
方であることが判明した。
【0235】
[実施例18:凍結乾燥注射剤の製造と安定性試験]
実施例14~17にて調整した水溶液(6)~(11)を、実施例10及び12に記載
の方法と同様な方法で、それぞれ凍結乾燥し、凍結乾燥注射剤を製造した。
これらの凍結乾燥注射剤について、40℃/75%RHで1ヶ月間及び3ヵ月間の保存安
定性を、タンパク質濃度、水分、不溶性微粒子、DAR、単量体・凝集体・断片体の比率
、NPI、IoP、電荷異性体、及びpHを指標に評価した。開始時点からの顕著な品質
変化は認められていない。