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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017052
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】液体水素移送システム
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/00 20060101AFI20240201BHJP
   F17C 13/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C01B3/00 Z
F17C13/00 302A
F17C13/00 302F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119429
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 純
(72)【発明者】
【氏名】高橋 強
(72)【発明者】
【氏名】蓮仏 達也
【テーマコード(参考)】
3E172
4G140
【Fターム(参考)】
3E172AA06
3E172AB01
3E172BA06
3E172BB03
3E172BD01
3E172DA04
3E172HA02
3E172HA04
3E172HA12
4G140AB02
(57)【要約】
【課題】液体水素の移送に伴うボイルオフガスの発生をより簡易に抑制することが可能な技術を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る液体水素移送システム1は、液体水素を貯留する液体水素貯槽10と、液体水素を貯留する液体水素貯槽20と、液体水素貯槽10と液体水素貯槽20との間で液体水素を移送するための液体水素流路31と、液体水素流路31に設けられ、液体水素に含まれるオルト水素のパラ水素への転換を促進する触媒を含むオルト・パラ転換触媒槽31Rと、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体水素を貯留する第1の貯留部と、
液体水素を貯留する第2の貯留部と、
前記第1の貯留部と前記第2の貯留部との間で液体水素を移送するための第1の経路と、
前記第1の経路に設けられ、液体水素に含まれるオルト水素のパラ水素への転換を促進する触媒を含む転換促進部と、を備える、
液体水素移送システム。
【請求項2】
前記第1の貯留部から前記第2の貯留部に液体水素を移送するための前記第1の経路、及び前記第2の貯留部から前記第1の貯留部に液体水素を移送するための前記第1の経路が設けられ、
前記転換促進部は、前記第1の貯留部から前記第2の貯留部に液体水素を移送するための前記第1の経路、及び前記第2の貯留部から前記第1の貯留部に液体水素を移送するための前記第1の経路の双方に設けられる、
請求項1に記載の液体水素移送システム。
【請求項3】
前記第1の貯留部と前記第2の貯留部との間を接続する管部と、
液体水素が気化したボイルオフガスを前記第1の貯留部及び前記第2の貯留部の少なくとも一方から外部に流出させるための第2の経路と、を備え、
前記第1の経路及び前記第2の経路の双方は、前記管部の内部に設けられる、
請求項1又は2に記載の液体水素移送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体水素移送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1の貯留部と第2の貯留部との間で、液体水素を移送する移送システムが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-108759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、液体水素の移送の過程や移送後の貯留の過程では、様々な要因で液体水素が気化したボイルオフガス(BOG:Boil Off Gas)が発生する可能性がある。そのため、例えば、ボイルオフガスを燃料として利用可能な設備や液化するための設備がない場合、貯留部の圧力上昇に伴いボイルオフガスを大気に放出する必要が生じる。よって、液体水素の移送に伴うボイルオフガスの発生は抑制されることが望ましい。
【0005】
一方、例えば、液体水素の移送経路や移送先の貯留部を液体窒素等で冷却可能な構造を採用し、ボイルオフガスの発生を抑制することも可能であるが、設備が複雑化しコストの上昇を招来する可能性がある。
【0006】
そこで、上記課題に鑑み、液体水素の移送に伴うボイルオフガスの発生をより簡易に抑制することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態では、
液体水素を貯留する第1の貯留部と、
液体水素を貯留する第2の貯留部と、
前記第1の貯留部と前記第2の貯留部との間で液体水素を移送するための第1の経路と、
前記第1の経路に設けられ、液体水素に含まれるオルト水素のパラ水素への転換を促進する触媒を含む転換促進部と、を備える、
液体水素移送システムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
上述の実施形態によれば、液体水素の移送に伴うボイルオフガスの発生をより簡易に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】液体水素移送システムの第1例を示す図である。
図2】液体水素移送システムの第2例を示す図である。
図3】液体水素移送システムの第3例を示す図である。
図4】移送管の構造の一例を示す断面図である。
図5】移送管の構造の一例を示す断面図である。
図6】移送管の構造の一例を示す断面図である。
図7】再液化装置の構成の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0011】
本実施形態では、ボイルオフガスには、発生原因に依らず、あらゆる液体水素の気化ガスが含まれる前提で説明を行う。例えば、ボイルオフガスには、液体水素の貯留中や移送中の外部からの入熱に伴うフラッシュにより発生するガスが含まれる。また、例えば、ボイルオフガスには、液体水素の移送時に移送流路や移送先の貯槽の予冷に伴う蒸発により生じるガスが含まれる。また、例えば、ボイルオフガスには、液体水素の移送中に発生する圧力差に伴うフラッシュにより発生するガスが含まれる。圧力差に伴うフラッシュには、例えば、移送中の圧力損失に伴うフラッシュ、移送中に通過する弁によるフラッシュ、移送流路から貯槽への流入時の膨張に伴うフラッシュ等が含まれる。また、例えば、ボイルオフガスには、水素の核スピン異性体であるオルト水素からパラ水素への平衡状態に向かう転換(以下、「オルト・パラ転換」)に伴う転換熱に伴う蒸発により発生するガスが含まれる。以下、特に断らない限り、「平衡状態」は、オルト水素及びパラ水素の比率に関する平衡状態を意味する。
【0012】
[液体水素移送システムの第1例]
図1を参照して、本実施形態に係る液体水素移送システム1の第1例について説明する。
【0013】
図1は、液体水素移送システム1の第1例を示す図である。
【0014】
図1に示すように、液体水素移送システム1は、液体水素貯槽10,20と、移送管30,40と、断熱バルブボックス50と、再液化装置60とを含む。
【0015】
液体水素貯槽10,20は、それぞれ、液体水素を貯留する。例えば、液体水素貯槽10,20は、地上Lの液体水素の貯留用の施設内に設置される。
【0016】
移送管30,40は、液体水素貯槽10と液体水素貯槽20との間で液体水素を移送するための管である。移送管30,40は、後述の如く、断熱構造を有する。断熱には、熱の出入りがない状態だけでなく、熱の出入りが通常の構造の場合よりも抑制された状態が含まれ、以下、同様の意図で用いる。
【0017】
移送管30は、液体水素貯槽10から液体水素貯槽20への液体水素の移送、及び液体水素貯槽20から再液化装置60へのボイルオフガスの移送のために用いられる。
【0018】
移送管30は、一端が液体水素貯槽20に接続されると共に、他端側で移送管30-1,30-2に分岐する。
【0019】
移送管30-1は、その先端が液体水素貯槽10に接続される。
【0020】
移送管30-2は、その先端が断熱バルブボックス50に接続される。
【0021】
移送管30は、液体水素流路31と、BOG流路32とを内部に含む。
【0022】
液体水素流路31は、液体水素貯槽10から液体水素貯槽20に液体水素を移送するための流路である。液体水素流路31は、一端が液体水素貯槽20に接続されると共に、他端が移送管30-1に内包される形で液体水素貯槽10の底部と接続される。
【0023】
液体水素流路31には、オルト・パラ転換触媒槽31Rが設けられる。
【0024】
オルト・パラ転換触媒槽31Rには、オルト水素からパラ水素への転換を促進する触媒が設置される。触媒は、例えば、鉄系やクロム系の常磁性物質により形成される。これにより、例えば、液体水素貯槽10に貯留されている液体水素が平衡状態にない場合であっても、オルト・パラ転換触媒槽31Rを通じて、オルト・パラ転換を促進することができる。また、例えば、液体水素流路31での入熱や圧力差に伴うフラッシュによる温度条件の変化によって、パラ水素がオルト水素に転換し平衡状態が崩れても、オルト・パラ転換触媒槽31Rを通じて、オルト・パラ転換を促進することができる。そのため、液体水素貯槽20に流入する液体水素のオルト水素及びパラ水素の比率を平衡状態にしたり、平衡状態に近づけたりすることができる。その結果、液体水素貯槽20の中は、オルト水素が大半を占める液体水素として理想的な平衡状態により近づくことで、オルト・パラ転換の際の転換熱に伴って生じる、液体水素貯槽20の中での液体水素のガス化量を低減し、エネルギロスを抑制することができる。
【0025】
BOG流路32は、液体水素貯槽20から断熱バルブボックス50を経由して再液化装置60にボイルオフガスを移送するための流路である。BOG流路32は、一端が液体水素貯槽20の飽和ガス層部分に接続されると共に、他端が移送管30-2に内包される形で断熱バルブボックス50に接続される。これにより、液体水素流路31に沿って配置されるBOG流路32を通流する、極低温のボイルオフガスの顕熱を利用した熱シールド作用で、液体水素流路31の液体水素への外部からの熱侵入量を抑制することができる。その結果、液体水素のガス化量を低減し、エネルギロスを抑制することができる。
【0026】
移送管40は、液体水素貯槽20から液体水素貯槽10への液体水素の移送、及び液体水素貯槽10,20から再液化装置60へのボイルオフガスの移送のために用いられる。
【0027】
移送管40は、一端が液体水素貯槽20の底部に接続されると共に、他端が断熱バルブボックス50に接続される。
【0028】
移送管40は、液体水素流路41と、BOG流路42,43とを内部に含む。
【0029】
液体水素流路41は、液体水素貯槽20から液体水素貯槽10に液体水素を移送するための流路である。液体水素流路41は、一端が液体水素貯槽20の底部に接続されると共に、他端が断熱バルブボックス50の内部を経由して液体水素貯槽10に接続される。
【0030】
BOG流路42は、液体水素貯槽20から断熱バルブボックス50を経由して再液化装置60にボイルオフガスを移送するための流路である。BOG流路42は、一端が液体水素貯槽20の飽和ガス層部分に接続されると共に、他端が断熱バルブボックス50に接続される。これにより、液体水素流路41に沿って配置されるBOG流路42を通流する、極低温のボイルオフガスの顕熱を利用した熱シールド作用で、液体水素流路41の液体水素への外部からの熱侵入量を抑制することができる。その結果、液体水素のガス化量を低減し、エネルギロスを抑制することができる。
【0031】
BOG流路42には、バルブ42Vが設けられる。
【0032】
バルブ42Vは、BOG流路42の開閉状態の切換や開度の調整を行うことができる。
【0033】
BOG流路43は、液体水素貯槽10からBOG流路42に液体水素貯槽10のボイルオフガスを移送し合流させる流路である。これにより、BOG流路43からBOG流路42を経由して液体水素貯槽10のボイルオフガスを再液化装置60に移送することができる。BOG流路43は、一端がBOG流路42の中間部に接続されると共に、他端が断熱バルブボックス50を経由して液体水素貯槽10の飽和ガス層部分と接続される。これにより、液体水素流路41に沿って配置されるBOG流路43を通流する、極低温のボイルオフガスの顕熱を利用した熱シールド作用で、液体水素流路41の液体水素への外部からの熱侵入量を抑制することができる。その結果、液体水素のガス化量を低減し、エネルギロスを抑制することができる。
【0034】
また、BOG流路43は、BOG流路42のバルブ42Vよりも断熱バルブボックス50(再液化装置60)側でBOG流路42に接続される。これにより、バルブ42Vが閉じられている場合に、液体水素貯槽10のボイルオフガスのみをBOG流路42,43に通流させることで、液体水素流路41の液体水素への外部からの熱侵入量を抑制することができる。その結果、液体水素のガス化量を低減し、エネルギロスを抑制することができる。
【0035】
尚、移送管30の内部には、移送管40の場合と同様、BOG流路32に加えて、液体水素貯槽10のボイルオフガスを移送するBOG流路が含まれてもよい。これにより、追加されるBOG流路を通流する、極低温のボイルオフガスの顕熱を利用した熱シールド作用で、液体水素流路31の液体水素への外部から熱の侵入量をより低減させることができる。この場合、追加されるBOG流路は、一端が液体水素貯槽10に接続されると共に、他端がBOG流路32の中間部に接続されてよい。これにより、追加されるBOG流路は、液体水素貯槽10のボイルオフガスを移送しBOG流路32に合流させることができ、その結果、BOG流路32を経由して液体水素貯槽10のボイルオフガスを再液化装置60に移送することができる。
【0036】
断熱バルブボックス50は、地上Lの液体水素の貯留用の施設内に設置され、BOG流路32,42を通じて移送されるボイルオフガスを再液化装置60に投入する。断熱バルブボックス50は、例えば、液体水素貯槽20の上部に設置される。断熱バルブボックス50は、断熱構造を有し、内部を通過する各流路の液体水素やボイルオフガスへの外部からの熱の侵入を抑制することができる。
【0037】
例えば、断熱バルブボックス50は、BOG流路32,42から移送されるボイルオフガスを再液化装置60の複数の投入経路のうちの何れか一つに選択的に投入する。具体的には、断熱バルブボックス50は、複数の投入経路に接続される複数の流路と、複数の流路の何れか一つに選択的にボイルオフガスを流入させるためのバルブ群とを含む。
【0038】
再液化装置60は、地上Lの液体水素の貯留用の施設内に設置され、液体水素貯槽10や液体水素貯槽20のボイルオフガスを再液化する。再液化装置60から出力される液体水素は、液体水素貯槽10に戻される。
【0039】
尚、断熱バルブボックス50及び再液化装置60は、省略されてもよい。この場合、BOG流路32,42のボイルオフガスは、液体水素流路31,41の液体水素への外部からの熱侵入量の抑制のために利用された後、大気に放出される。また、再液化装置60に代えて、或いは、加えて、ボイルオフガスを気体のままで燃料等として直接消費可能な設備が設けられてもよい。
【0040】
[液体水素移送システムの第2例]
次に、図2を参照して、本実施形態に係る液体水素移送システム1の第2例について説明する。
【0041】
本例では、上述の第1例と同じ或いは対応する構成には同じ符号を付し、上述の第1例と異なる部分を中心に説明を行うと共に、上述の第1例と同じ或いは対応する内容の説明を簡略化或いは省略する場合がある。
【0042】
図2は、液体水素移送システム1の第2例を示す図である。
【0043】
図2に示すように、本例では、液体水素移送システム1は、オルト・パラ転換触媒槽41Rが設けられる点で上述の第1例と異なる。
【0044】
移送管40は、上述の第1例と同様、液体水素流路41と、BOG流路42,43とを内部に含む。
【0045】
液体水素流路41には、オルト・パラ転換触媒槽41Rが設けられる。
【0046】
オルト・パラ転換触媒槽41Rには、オルト水素からパラ水素への転換を促進する触媒が設置される。これにより、例えば、液体水素貯槽20に貯留されている液体水素が平衡状態にない場合であっても、オルト・パラ転換触媒槽41Rを通じて、液体水素のオルト・パラ転換を促進することができる。また、例えば、液体水素流路41での入熱や圧力差に伴うフラッシュによる温度条件の変化によって、パラ水素がオルト水素に転換し平衡状態が崩れても、オルト・パラ転換触媒槽41Rを通じて、オルト・パラ転換を促進することができる。そのため、液体水素貯槽10に流入する液体水素のオルト水素及びパラ水素の比率を平衡状態にしたり、平衡状態に近づけたりすることができる。その結果、液体水素貯槽10の中は、オルト水素が大半を占める液体水素として理想的な平衡状態により近づくことで、オルト・パラ転換の際の転換熱に伴って生じる、液体水素貯槽10の中での液体水素のガス化量を低減し、エネルギロスを抑制することができる。
【0047】
例えば、図2に示すように、オルト・パラ転換触媒槽41Rは、移送管40の内部において、液体水素流路41におけるBOG流路42,43の双方に隣り合う箇所に配置される。これにより、BOG流路42,43の双方の極低温の顕熱を利用した熱シールド作用で、オルト・パラ転換触媒槽41Rの液体水素への外部からの熱侵入をより適切に抑制し、オルト・パラ転換をより適切に促進させることができる。
【0048】
尚、上述の第1例において、オルト・パラ転換触媒槽31Rに代えて、液体水素流路41に、オルト・パラ転換触媒槽41Rが設けられてもよい。
【0049】
[液体水素移送システムの第3例]
次に、図3を参照して、本実施形態に係る液体水素移送システム1の第3例について説明する。
【0050】
本例では、上述の第1例や第2例と同じ或いは対応する構成には同じ符号を付し、上述の第1例や第2例と異なる部分を中心に説明を行うと共に、上述の第1例や第2例と同じ或いは対応する内容の説明を簡略化或いは省略する場合がある。
【0051】
図3は、液体水素移送システム1の第3例を示す図である。
【0052】
図3に示すように、本例では、液体水素移送システム1は、液体水素貯槽20が船舶SPに搭載される点で、上述の第1例や第2例と異なる。
【0053】
液体水素貯槽10は、岸壁Qに隣接する地上Lの液体水素の貯留用の施設内に設置される。
【0054】
液体水素貯槽20は、岸壁Qに接岸される船舶SPに搭載される。
【0055】
移送管30は、船舶SPが液体水素を液体水素貯槽20に貯留し外部に運搬する際に用いられる。
【0056】
移送管30は、上述の第1例や第2例と同様、液体水素流路31と、BOG流路32とを含む。
【0057】
液体水素流路31には、上述の第1例と同様、オルト・パラ転換触媒槽31Rが設けられる。これにより、上述の第1例や第2例と同様の作用・効果を奏する。
【0058】
移送管40は、液体水素を液体水素貯槽20に貯留した状態で船舶SPが岸壁Qに接岸する際に用いられる。
【0059】
移送管40は、上述の第1例や第2例と同様、液体水素流路41と、BOG流路42,43とを含む。
【0060】
液体水素流路41には、上述の第2例と同様、オルト・パラ転換触媒槽41Rが設けられる。これにより、上述の第2例と同様の作用・効果を奏する。
【0061】
尚、本例では、オルト・パラ転換触媒槽31R,41Rのうちの何れか一方が省略されてもよい。
【0062】
[移送管の構造]
次に、図4図6を参照して、移送管30,40の構造について説明する。
【0063】
図4図6は、移送管30の一例を示す断面図である。具体的には、図4図6は、移送管30の一例の互いに異なる箇所の断面図であり、図4図5は、オルト・パラ転換触媒槽31Rが設けられる箇所とは別の箇所の移送管30の断面図を示すと共に、図6は、オルト・パラ転換触媒槽31Rが設けられる箇所の移送管30の断面図を示す。
【0064】
以下、上述の第1例(図1)の移送管40の構造は、図4図5の移送管30の構造と同じであり、上述の第2例(図2)及び第3例(図3)の移送管の構造は、図4図6の移送管30の構造と同じであるため、移送管40の構造の図示及び説明を省略する。
【0065】
図4図6に示すように、移送管30は、外管30Aと、シールド内管30Bと、移送管30C,30Dとを含む。
【0066】
外管30Aは、移送管30の外形に相当し、例えば、円形の横断面を有する。
【0067】
シールド内管30Bは、外管30Aからの放射侵入熱が移送管30Cに直接伝わらないように外管30Aの内側に設けられる。例えば、シールド内管30Bは、外管30Aより外径が小さく且つ外管30Aと略同心の円形の横断面を有する。「略」は、例えば、製造上の誤差や製造上の限界を許容する意図であり、以下同様の意味で使用する。
【0068】
外管30Aとシールド内管30Bとの間には、移送管30の延びる方向で所定の間隔ごとにスペーサ30Fが設けられる。これにより、外管30Aの内部でシールド内管30Bの位置を真空断熱層中に保持することができる。
【0069】
外管30Aとシールド内管30Bとの間の空間SP1は、例えば、略真空状態とされている。これにより、外管30Aからシールド内管30Bへの入熱を抑制し、移送管30C,30Dで移送される液体水素やボイルオフガスへの熱侵入量を抑制することができる。そのため、液体水素のガス化によるエネルギロスを抑制することができる。
【0070】
移送管30Cは、外管30A及びシールド内管30Bからの放射侵入熱が直接伝わらないようにシールド内管30Bの内側に設けられる。例えば、移送管30Cは、シールド内管30Bより外径が小さく且つ外管30A及びシールド内管30Bと略同心の円形の横断面を有する。移送管30Cの内部は、液体水素流路31に相当し、液体水素が通流する。
【0071】
オルト・パラ転換触媒槽31Rが設けられる箇所の移送管30Cの外径は、オルト・パラ転換触媒槽31Rが設けられる箇所とは異なる箇所の移送管30Cの外径よりも大きく設定される。これにより、移送管30Cの圧力損失を抑制しつつ、移送管30Cの内部に液体水素のオルト・パラ転換を促進させるための触媒を設置することができる。
【0072】
シールド内管30Bと移送管30Cとの間には、移送管30の延びる方向で所定の間隔ごとにスペーサ30Gが設けられる。これにより、シールド内管30Bの内部で移送管30Cの位置を真空断熱層中に保持することができる。
【0073】
シールド内管30Bと移送管30Cとの間の空間SP2は、例えば、略真空状態とされている。これにより、外管30Aやシールド内管30Bから移送管30Cへの入熱を抑制し、移送管30Cで移送される液体水素への熱侵入量を抑制することができる。そのため、液体水素のガス化量を低減し、エネルギロスを抑制することができる。
【0074】
移送管30Dは、シールド内管30Bに熱接触する形で配置される。例えば、移送管30Dは、シールド内管30Bより外径が小さい円形の横断面を有する。移送管30Dの内部は、BOG流路32に相当し、ボイルオフガスが通流するのに十分な断面内径を有する。
【0075】
移送管30Dは、例えば、シールド内管30Bに取り付けられる。具体的には、シールド内管30Bの周方向の一部が切り欠かれ、移送管30Dは、その切り欠かれた部分に嵌め込まれる形で固定されてよい。これにより、極低温のボイルオフガスが通流する移送管30Dの作用により、シールド内管30Bが有効な放射シールド温度に保たれ、その結果、シールド内管30Bの内側の移送管30Cの液体水素への熱侵入量を更に抑制することができる。そのため、液体水素のガス化量を更に低減し、エネルギロスを更に抑制することができる。
【0076】
また、移送管30Dは、例えば、複数(本例では、2つ)設けられる。複数の移送管30Dの周方向での配置位置は、それぞれに通流するボイルオフガスの温度レベルに応じ最適に決められる。例えば、図4図6に示すように、2つの移送管30Dが周方向で180度間隔に配置される。これにより、移送管30Cの液体水素への熱侵入量を更に抑制することができる。その結果、液体水素のガス化量を更に低減し、エネルギロスを更に抑制することができる。
【0077】
また、外管30Aと移送管30Dとの間には、移送管30の延びる方向で所定間隔ごとにスペーサ30Hが設けられる。これにより、外管30Aの内部で移送管30を介してシールド内管30Bを真空断熱層中に保持することができる。
【0078】
尚、移送管40の場合、移送管30Dと同様の管(以下、便宜的に「移送管40D」)の内部は、BOG流路42,43の何れかに相当する。そのため、移送管40の場合、複数の移送管40Dのうちの一部の移送管40DがBOG流路42に対応し、残りの一部の移送管40DがBOG流路43に対応する形で構成されてよい。
【0079】
このように、本例では、シールド内管30Bによって、移送管30Cを二重に真空断熱することができると共に、移送管30Dのボイルオフガスによってシールド内管30Bを有効な放射シールド温度に保つことができる。そのため、シールド内管30Bの内側の移送管30Cを通流する液体水素への熱侵入量を抑制することができ、その結果、液体水素のガス化量を低減し、エネルギロスを抑制することができる。
【0080】
[再液化装置の構成]
次に、図7を参照して、再液化装置60の概略的な構成について説明する。
【0081】
図7は、再液化装置の構成の一例を概略的に示す図である。具体的には、図7は、比較的液化効率が高いプロセスの事例として、クロードサイクルを例示している。
【0082】
尚、図7では省略されるが、実際には、再液化装置60において、水素ガスの液化の際のオルト・パラ転換の進行を早めるための低温触媒槽等の構成要素も必要となる。また、再液化装置60には、他の液化ガス(例えば、液体ヘリウム等)が補助冷媒として組み込まれる方式や、タービン回路と液化回路とが完全に分離される分離ブライトン方式等の様々な方式が任意に適用されてもよい。
【0083】
再液化装置60は、経路L1~L3と、圧縮機CPと、熱交換器HX1~HX6と、超臨界膨張タービンEPと、ジュールトムソン弁JTと、膨張タービンEP3と、低圧戻りIN1,IN2と、液化経路OUTとを含む。
【0084】
経路L1は、低圧戻りIN1,IN2を通じて投入される液化循環ガス及びボイルオフガス(水素ガス)を圧縮機CPの吸入側へ送る。
【0085】
経路L1は、極低温側(上流側)から順に、熱交換器HX6、熱交換器HX5、熱交換器HX4、熱交換器HX3、熱交換器HX2、及び熱交換器HX1を通過し、圧縮機CPに接続される。
【0086】
経路L2は、圧縮機CPにより外部エネルギで機械圧縮された水素ガスを熱交換器HX1~HX6により経路L1の水素ガス(低圧戻りガス)で冷却し、最終的に、ジュールトムソン弁JT等の断熱膨張により水素ガスの一部を液化するために循環させる。
【0087】
経路L2は、高温側(上流側)から順に、熱交換器HX1、熱交換器HX2、熱交換器HX3、熱交換器HX4、熱交換器HX5、超臨界膨張タービン、熱交換器HX6、及びジュールトムソン弁JTを通過する。
【0088】
経路L3は、経路L2の熱交換器HX2,HX3の間の箇所から水素ガスを分岐させ、膨張タービンEP3により断熱膨張し温度を低下させた水素ガスを寒冷利用するため、経路L1の熱交換器HX6及び熱交換器HX5の間の箇所に合流させる。
【0089】
圧縮機CPは、経路L1から供給される水素ガスを断熱圧縮し、経路L2に吐出する。
【0090】
熱交換器HX1は、経路L1の上流側の相対的に温度が低い水素ガス、及び外部から供給される液体窒素と、経路L2の圧縮機CPにより機械圧縮された直後の相対的に温度が高い水素ガスとの間で熱交換を行う。これにより、経路L2の水素ガスを順次冷却することができる。
【0091】
熱交換器HX2は、経路L1の相対的に温度が低い水素ガスと、経路L2相対的に温度が高い水素ガスとの間で熱交換を行う。これにより、熱交換器HX1を通過後の経路L2の水素ガスを更に冷却することができる。
【0092】
熱交換器HX3は、経路L1の相対的に温度が低い水素ガスと、経路L2の相対的に温度が高い水素ガスとの間で熱交換を行う。これにより、熱交換器HX2を通過後の経路L2の水素ガスを更に冷却することができる。
【0093】
熱交換器HX4は、経路L1の相対的に温度が低い水素ガス、及び経路L3の膨張タービンEP31で断熱膨張された相対的に温度が低い水素ガスと、経路L2の上流側の相対的に温度が高い水素ガスとの間で熱交換を行う。これにより、熱交換器HX3を通過後の経路L2の水素ガスを更に冷却することができる。
【0094】
熱交換器HX5は、経路L1の相対的に温度が低い水素ガスと、経路L2の上流側の相対的に温度が高い水素ガスとの間で熱交換を行う。これにより、熱交換器HX4を通過後の経路L2の水素ガスを更に冷却することができる。
【0095】
熱交換器HX6は、経路L1の相対的に温度が低い水素ガスと、経路L2の相対的に温度が高い水素ガスとの間で熱交換を行う。これにより、超臨界膨張タービンEPで断熱膨張された水素ガスを更に冷却することができる。
【0096】
超臨界膨張タービンEPは、経路L2における熱交換器HX5と熱交換器HX6との間に設けられ、熱交換器HX5を通過した水素ガスを断熱膨張させることで温度を低下させ、熱交換器HX6に供給する。
【0097】
ジュールトムソン弁JTは、経路L2において、熱交換器HX6から出力される水素ガスを等エンタルピ膨張させる。この際、ジュールトムソン弁JTに供給される水素ガスの温度が逆転温度以下であるため、等エンタルピ膨張によって温度降下が生じる。これにより、ジュールトムソン弁JTは、水素ガスの一部を液化させて液化経路OUTに出力し、液体水素を液体水素貯槽10に戻すことができる。
【0098】
膨張タービンEP3は、上述の如く、経路L3に設けられる。膨張タービンEP3は、膨張タービンEP31,EP32を含む。膨張タービンEP3は、経路L3の水素ガスを断熱膨張させ、経路L1に還流させる。これにより、熱交換器HX1~HX5の低温側である経路L1に必要な寒冷量を生成することができる。
【0099】
膨張タービンEP31は、経路L3の最上流の水素ガスを断熱膨張させる。これにより、経路L2で熱交換器HX2を通過後の水素ガスの温度を更に低下させ、経路L3の下流側(熱交換器HX4)に供給することができる。
【0100】
膨張タービンEP32は、経路L3の熱交換器HX4から出力される水素ガスを断熱膨張させる。これにより、更に水素ガスの温度を低下させ、相対的に温度が低い水素ガスを経路L1に還流させることができる。そのため、熱交換器HX1~HX5の低温側(経路L1)に必要な寒冷量を確保することができる。
【0101】
低圧戻りIN1は、液体水素貯槽10のボイルオフガス(水素ガス)を再液化装置60(経路L1)に投入するために用いられる。
【0102】
低圧戻りIN2は、BOG流路32,42を通じて移送される、液体水素貯槽20のボイルオフガスを再液化装置60の低温側(経路L1)に投入するために用いられる。
【0103】
低圧戻りIN2は、低圧戻りIN21~IN23を含む。
【0104】
低圧戻りIN21は、BOG流路32,42を通じて移送される、液体水素貯槽20のボイルオフガスを経路L1における最も温度の低い(最上流の)熱交換器HX6の上流側に投入するために用いられる。
【0105】
低圧戻りIN22は、BOG流路32,42を通じて移送される、液体水素貯槽20のボイルオフガスを経路L1における熱交換器HX6と熱交換器HX5との間に投入するために用いられる。
【0106】
低圧戻りIN23は、BOG流路32,42を通じて移送される、液体水素貯槽20のボイルオフガスを経路L1における熱交換器HX2と熱交換器HX1との間に投入するために用いられる。
【0107】
低圧戻りIN21~IN23のうちの何れの投入経路を使用するかは、上述の如く、断熱バルブボックス50に内蔵されるバルブ群の開閉状態が適宜制御されることにより、切り換えることができる。断熱バルブボックス50のバルブ群を制御する制御装置は、任意の場所に設置されてよい。例えば、制御装置は、再液化装置60に搭載されてもよいし、断熱バルブボックス50に搭載されてもよいし、地上Lの液体水素の貯留施設に設置されてもよい。
【0108】
例えば、制御装置は、BOG流路32,42を通じて移送されるボイルオフガスの温度状態に応じて、バルブ群を制御し、低圧戻りIN21~IN23のうちの何れか一つを選択的に利用する。BOG流路32,42を通じて移送されるボイルオフガスの温度状態は、例えば、断熱バルブボックス50に設けられる温度センサにより計測され、その計測結果は、制御装置に取り込まれる。具体的には、ボイルオフガスの温度領域を低い方から第1の領域~第3の領域に区分してよい。そして、制御装置は、ボイルオフガスの温度が第1の領域にある場合、低圧戻りIN21を使用し、第2の領域にある場合、低圧戻りIN22を使用し、第3の領域にある場合、低圧戻りIN23を使用してよい。これにより、制御装置は、経路L1の下流側に向けて高くなる水素ガスの温度に合わせて、経路L1へのボイルオフガスの投入経路を適切に選択することができる。
【0109】
また、制御装置は、低圧戻りIN1を通じて経路L1に投入される液体水素貯槽10のボイルオフガスの温度状態を更に考慮して、低圧戻りIN21~IN23のうちの何れか一つを選択的に利用してもよい。液体水素貯槽10のボイルオフガスの温度状態は、例えば、液体水素貯槽10に設置される温度センサにより計測され、その計測結果は、制御装置に取り込まれる。例えば、ボイルオフガスの温度領域(第1の領域~第3の領域)が液体水素貯槽10のボイルオフガスの温度状態に応じて可変される。これにより、制御装置は、経路L1の温度状態に対して支配的な、液体水素貯槽のボイルオフガスの温度状態に合わせて、経路L1へのボイルオフガスの投入経路を適切に選択することができる。
【0110】
尚、低圧戻りIN2には、液体水素貯槽20のボイルオフガスを投入可能な1つのみ或いは2つのみの投入経路が含まれてもよいし、4つ以上の投入経路が含まれてもよい。
【0111】
液化経路OUTは、ジュールトムソン弁JTから出力される液体水素を液体水素貯槽10に向けて出力する。
【0112】
このように、本例では、再液化装置60は、液体水素貯槽10,20のボイルオフガスを再液化し、液体水素貯槽10に戻すことができる。
【0113】
また、本例では、再液化装置60は、液体水素貯槽20から移送されるボイルオフガスの温度状態に合わせて、断熱圧縮後の水素ガスの冷却に使用される、断熱圧縮前の水素ガスに液体水素貯槽20のボイルオフガスを合流させる位置を変化させる。これにより、水素ガスの再液化の運転効率の最適化を図ることができる。
【0114】
[作用]
次に、本実施形態に係る液体水素移送システムの作用について説明する。
【0115】
本実施形態では、液体水素移送システムは、第1の貯留部と、第2の貯留部と、第1の経路と、転換促進部と、を備える。液体水素移送システムは、例えば、上述の液体水素移送システム1である。第1の貯留部は、例えば、液体水素貯槽10である。第2の貯留部は、例えば、液体水素貯槽20である。第1の経路は、例えば、液体水素流路31や液体水素流路41である。転換促進部は、例えば、上述のオルト・パラ転換触媒槽31Rやオルト・パラ転換触媒槽41Rである。具体的には、第1の貯留部は、液体水素を貯留する。また、第2の貯留部は、液体水素を貯留する。また、第1の経路は、第1の貯留部と第2の貯留部との間で液体水素を移送するために用いられる。そして、転換促進部は、第1の経路に設けられ、液体水素に含まれるオルト水素のパラ水素への転換を促進する触媒を含む。
【0116】
これにより、液体水素移送システムは、第1の経路で移送される極低温の液体水素のオルト・パラ転換を促進させることができる。そのため、液体水素移送システムは、第1の貯留部及び第2の貯留部のうちの移送先の貯留部に流入する液体水素を平衡状態にしたり、平衡状態に近づけたりすることができる。よって、液体水素移送システムは、移送先の貯留部でのオルト・パラ転換の際の転換熱に伴う液体水素の蒸発を抑制し、ボイルオフガスの発生をより簡易に抑制することができる。
【0117】
また、本実施形態では、液体水素移送システムでは、第1の貯留部から第2の貯留部に液体水素を移送するための第1の経路、及び第2の貯留部から第1の貯留部に液体水素を移送するための第1の経路が設けられてもよい。前者及び後者の第1の経路は、それぞれ、例えば、上述の液体水素流路31及び液体水素流路41である。そして、転換促進部は、前者及び後者の第1の経路の双方に設けられてもよい。
【0118】
これにより、液体水素移送システムは、第1の貯留部から第2の貯留部に液体水素を移送する場合、及び第2の貯留部から第1の貯留部に液体水素を移送する場合の双方について、移送中の液体水素のオルト・パラ転換を促進することができる。そのため、液体水素移送システムは、第1の貯留部から第2の貯留部に液体水素を移送する場合、及び第2の貯留部から第1の貯留部に液体水素を移送する場合の双方について、移送先の貯留部でのオルト・パラ転換の際の転換熱に伴う液体水素の蒸発を抑制できる。
【0119】
また、本実施形態では、液体水素移送システムは、管部と、第2の経路と、を備えてもよい。管部は、例えば、移送管30や移送管40である。第2の経路は、例えば、BOG流路32やBOG流路42,43である。具体的には、管部は、第1の貯留部と第2の貯留部との間を接続する。また、第2の経路は、液体水素が気化したボイルオフガスを第1の貯留部及び第2の貯留部の少なくとも一方から外部に流出させるために用いられる。そして、第1の経路及び第2の経路の双方は、管部の内部に設けられる。
【0120】
これにより、液体水素移送システムは、管部の内部の第2の経路の極低温のボイルオフガスによって、管部の内部の第1の経路の液体水素の温度上昇を抑制することができる。そのため、液体水素移送システムは、第1の貯留部や第2の貯留部のボイルオフガスを利用して、第1の貯留部と第2の貯留部との間の液体水素の移送に伴うボイルオフガスの発生を抑制することができる。また、第1の貯留部や第2の貯留部には、液体水素の移送時における圧力差によって生じる、不可避のフラッシュガスに起因するボイルオフガスが含まれうる。そのため、ゼロにすることが不可能なボイルオフガスを利用して、第1の貯留部と第2の貯留部との間の液体水素の移送に伴うボイルオフガスの発生を安定的に抑制することができる。
【0121】
以上、実施形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0122】
1 液体水素移送システム
10,20 液体水素貯槽
30 移送管
30-1,30-2 移送管
30A 外管
30B シールド内管
30C,30D 移送管
30F,30G,30H スペーサ
31 液体水素流路
31R オルト・パラ転換触媒槽
32 BOG流路
40 移送管
40D 移送管
41 液体水素流路
41R オルト・パラ転換触媒槽
42 BOG流路
42V バルブ
43 BOG流路
50 断熱バルブボックス
60 再液化装置
CP 圧縮機
EP 超臨界膨張タービン
EP3 膨張タービン
EP31,EP32 膨張タービン
HX1~HX6 熱交換器
JT ジュールトムソン弁
L1~L3 経路
OUT 液化経路
SP1,SP2 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7