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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170520
(43)【公開日】2024-12-10
(54)【発明の名称】音声処理装置
(51)【国際特許分類】
   H04S 7/00 20060101AFI20241203BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20241203BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20241203BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
H04S7/00 300
H04R3/00 310
H04R1/02 102B
B60R11/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024151986
(22)【出願日】2024-09-04
(62)【分割の表示】P 2022509296の分割
【原出願日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】P 2020052368
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】加来 文伸
(57)【要約】
【課題】携帯端末装置を使用している場合であっても適切な位置に音を定位させる等の補正をする。
【解決手段】レシーバ部(20)は、制御部(22)が、コンテンツに関する情報が表示される表示部(11)を有するタブレット端末(10)の位置を検出し、補正部(23)が、検出されたタブレット端末(10)の位置に基づいて、所定の空間に配置されたスピーカから出力されるコンテンツに関する音声を補正する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテンツに関する情報が表示される表示画面を有する携帯端末装置の前記表示画面の向きを検出する向き検出部と、
所定の空間に配置された複数のスピーカから出力される前記コンテンツに関する音声を補正する補正部と、を備え、
前記補正部は、検出された前記表示画面の向きに基づいて、前記コンテンツに関する音声のうち、左側の音声を出力するスピーカと右側の音声を出力するスピーカとを前記複数のスピーカから選択する、
ことを特徴とする音声処理装置。
【請求項2】
前記携帯端末装置の位置を検出する位置検出部を備え、
前記補正部は、検出された前記表示画面の向き及び前記携帯端末の位置に基づいて、前記コンテンツに関する音声のうち、左側の音声を出力するスピーカと右側の音声を出力するスピーカとを前記複数のスピーカから選択する、
ことを特徴とする請求項1に記載の音声処理装置。
【請求項3】
前記携帯端末装置の床面に対する傾きを取得する傾き取得部を備え、
前記補正部は、前記携帯端末装置の位置、前記表示画面の向き及び前記床面に対する傾きに基づいて前記補正をすることを特徴とする請求項2に記載の音声処理装置。
【請求項4】
前記向き検出部は、前記携帯端末装置に設けられた第1地磁気センサと、前記第1地磁気センサとは別に設けられた第2地磁気センサと、からそれぞれ検出結果を取得し、前記第1地磁気センサと前記第2地磁気センサの前記検出結果に基づいて前記表示画面の向きを検出することを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載の音声処理装置。
【請求項5】
前記複数のスピーカは車両の車室内に設けられていることを特徴とする請求項1から4のうちいずれか一項に記載の音声処理装置。
【請求項6】
所定の空間に配置された複数のスピーカから出力されるコンテンツに関する音声に所定の処理を施す音声処理装置で実行される音声処理方法であって、
前記コンテンツに関する情報が表示される表示画面を有する携帯端末装置の前記表示画面の向きを検出する向き検出工程と、
前記スピーカから出力される前記コンテンツに関する音声を補正する補正工程と、を含み、
前記補正工程は、検出された前記表示画面の向きに基づいて、前記コンテンツに関する音声のうち、左側の音声を出力するスピーカと右側の音声を出力するスピーカとを前記複数のスピーカから選択する、
ことを特徴とする音声処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載の音声処理方法をコンピュータにより実行させることを特徴とする音声処理プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載の音声処理プログラムを格納したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の空間に配置されたスピーカから出力されるコンテンツに関する音声に所定の処理を施す音声処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両において、運転席等の座席に座っている乗員等に楽曲等の音を定位させるため、車内に設置された各スピーカの遅延等を調整する機能はタイムアライメント等と称されて知られている(特許文献1を参照)。
【0003】
このようなタイムアライメントを行う場合、乗員の有無を検出し、乗員の座っている座席の近傍に音を定位させるのが望ましい。この際の乗員の検出方法としては、カメラにより検出することが知られている(特許文献2、3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-54326号公報
【特許文献2】特開2019-139582号公報
【特許文献3】特開2018-164144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カメラにより乗員を検出する方法の場合、画像認識等の複雑な処理が必要となる。また、処理の精度により乗員の検出が不正確となる場合もある。また、近年タブレット端末やスマートフォン等の携帯端末装置によりコンテンツを視聴等することが増えている。このような携帯端末装置の使用者(視聴者)に音を定位させる場合、携帯端末装置は車内で移動自在であるので、単に乗員を検出するだけでは、端末の使用者と他の乗員との区別がつかず所望の場所に音を定位させることができない。
【0006】
本発明が解決しようとする課題としては、携帯端末装置を使用している場合であっても適切な位置に音を定位させる等の補正をすることが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、コンテンツに関する情報が表示される表示画面を有する携帯端末装置の前記表示画面の向きを検出する向き検出部と、所定の空間に配置された複数のスピーカから出力される前記コンテンツに関する音声を補正する補正部と、を備え、前記補正部は、検出された前記表示画面の向きに基づいて、前記コンテンツに関する音声のうち、左側の音声を出力するスピーカと右側の音声を出力するスピーカとを前記複数のスピーカから選択する、ことを特徴としている。
【0008】
請求項6に記載の発明は、所定の空間に配置された複数のスピーカから出力されるコンテンツに関する音声に所定の処理を施す音声処理装置で実行される音声処理方法であって、前記コンテンツに関する情報が表示される表示画面を有する携帯端末装置の前記表示画面の向きを検出する向き検出工程と、前記スピーカから出力される前記コンテンツに関する音声を補正する補正工程と、を含み、前記補正工程は、検出された前記表示画面の向きに基づいて、前記コンテンツに関する音声のうち、左側の音声を出力するスピーカと右側の音声を出力するスピーカとを前記複数のスピーカから選択する、ことを特徴としている。
【0009】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の音声処理方法をコンピュータにより実行させることを特徴としている。
【0010】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の音声処理プログラムを格納したことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施例にかかる音声処理装置を備えた機器の外観斜視図である。
図2図1に示されたタブレット端末のブロック図である。
図3図1に示されたレシーバ部のブロック図である。
図4図2に示されたタブレット端末の動作のフローチャートである。
図5図3に示されたレシーバ部の動作のフローチャートである。
図6】タブレット端末の表示部の向きを特定する方法の説明図である。
図7】タブレット端末で表示等されているコンテンツの音声を定位させる位置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態にかかる音声処理装置を説明する。本発明の一実施形態にかかる音声処理装置は、位置検出部がコンテンツに関する情報が表示される表示画面を有する携帯端末装置の位置を検出し、補正部が検出された前記携帯端末装置の位置に基づいて、所定の空間に配置されたスピーカから出力される前記コンテンツに関する音声を補正する。このようにすることにより、携帯端末装置の位置に基づいてスピーカから出力される音声を補正することができるので、携帯端末装置を使用している場合であっても適切な位置に音を定位させる等の補正をすることができる。
【0013】
また、表示画面の向きを検出する向き検出部を備え、補正部は、携帯端末装置の位置及び表示画面の向きに基づいて補正をしてもよい。このようにすることにより、表示画面に向きも考慮することができる。したがって、携帯端末装置に対してどこに使用者がいるのかを推定することも可能となり、より適切な補正をすることができる。
【0014】
また、補正部は、表示画面の向きに基づいて、コンテンツに関する音声のうち、少なくとも左チャンネル及び右チャンネルの音声を出力するスピーカを設定してもよい。このようにすることにより、例えば、表示画面の向きが表裏反転した場合に、左右の音声を入れ替えることができるようになる。したがって、違和感のない音声でコンテンツを視聴等することが可能となる。
【0015】
また、携帯端末装置の床面に対する傾きを取得する傾き取得部を備え、補正部は、携帯端末装置の位置、表示画面の向き及び床面に対する傾きに基づいて補正をしてもよい。このようにすることにより、携帯端末装置を取り付け部材等に固定しているか、手に持っているか等を判別して、音の定位位置等を決定する等の補正をすることができる。
【0016】
また、向き検出部は、携帯端末装置に設けられた第1地磁気センサと、第1地磁気センサとは別に設けられた第2地磁気センサと、からそれぞれ検出結果を取得し、第1地磁気センサと第2地磁気センサの検出結果に基づいて表示画面の向きを検出してもよい。このようにすることにより、第2地磁気センサを基準として、第1地磁気センサの方位から携帯端末装置の表示画面の向きを特定することができる。そのため、車両等の移動体であっても、地磁気センサを用いて表示画面の向きを特定することができる。
【0017】
また、スピーカは車両の車室内に設けられていてもよい。このようにすることにより、車室内の設けられたスピーカについての音像の定位等の補正をすることができる。
【0018】
また、本発明の一実施形態にかかる音声処理方法は、位置検出工程で、コンテンツに関する情報が表示される表示画面を有する携帯端末装置の位置を検出し、補正工程で、検出された前記携帯端末装置の位置に基づいて、所定の空間に配置されたスピーカから出力される前記コンテンツに関する音声を補正する。このようにすることにより、携帯端末装置の位置に基づいてスピーカから出力される音声を補正することができるので、携帯端末装置を使用している場合であっても適切な位置に音を定位させる等の補正をすることができる。
【0019】
また、上述した音声処理方法を、コンピュータにより実行させている。このようにすることにより、コンピュータを用いて携帯端末装置の位置に基づいてスピーカから出力される音声を補正することができるので、携帯端末装置を使用している場合であっても適切な位置に音を定位させる等の補正をすることができる。
【0020】
また、上述した音声処理プログラムをコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納してもよい。このようにすることにより、当該プログラムを機器に組み込む以外に単体でも流通させることができ、バージョンアップ等も容易に行える。
【実施例0021】
本発明の一実施例にかかる音声処理装置を図1図7を参照して説明する。図1に本実施例にかかる音声処理装置を備えた機器の外観斜視図を示す。図1に示した機器は、タブレット端末10と、レシーバ部20と、を備えている。
【0022】
タブレット端末10は、周知の平板状のコンピュータであり、携帯端末装置である。タブレット端末10は、レシーバ部20と着脱自在となっている。本実施例では、携帯端末装置としてタブレット端末10で説明するが、スマートフォン等他の携帯可能な端末装置であってもよい。
【0023】
タブレット端末10は、レシーバ部20と通信をすることで、自己で再生等されたコンテンツの音声等を車室内等の所定の空間に設置されたスピーカから出力させることができる。本実施例におけるコンテンツの音声とは、映像や音楽等に限らず、OS(Operating System)やアプリ等から発せられる警告音等、タブレット端末10が出力する全ての音を含む。
【0024】
レシーバ部20は、例えば車両等の移動体の室内に設置され、タブレット端末10が装着された場合には当該タブレット端末10を固定する。レシーバ部20は、例えば車両であれば車室内のインストルメントパネル等に設置される。レシーバ部20はさらに、有線、無線乃至端末との電気的接点によって、タブレット端末10へ充電が可能に構成されてもよい。
【0025】
図2にタブレット端末10の機能構成を示す。タブレット端末10は、表示部11と、地磁気センサ12と、ジャイロセンサ13と、制御部14と、無線通信部15と、記憶部16と、を備えている。
【0026】
表示部11は、例えば液晶ディスプレイ等で構成され、映像コンテンツや、アプリを示すアイコン、あるいはアプリの操作画面等のコンテンツに関する情報が表示される。即ち、表示部11は、コンテンツに関する情報が表示される表示画面として機能する。また、表示部11を構成する液晶ディスプレイにタッチパネルが重ねられ、タッチ操作にてタブレット端末10が操作される。
【0027】
地磁気センサ12は、地磁気を検出する周知のセンサである。地磁気センサ12は、ホールセンサやMR(Magneto Resistance)センサ、MI(Magneto Impedance)センサ等、いずれの方式を用いてもよく特に限定されない。
【0028】
ジャイロセンサ13は、角速度を検出する周知のセンサである。ジャイロセンサ13は、振動式、光学式等の周知の方式のセンサを用いればよく特に限定されない。
【0029】
制御部14は、例えばCPU(Central Processing Unit)等で構成され、タブレット端末10の全体制御を司る。制御部14は、例えば記憶部16に記憶されているコンテンツや無線通信部15から取得したコンテンツ等を表示部11に表示させたり、表示部11のタッチパネルからなされた操作に対応する処理を実行する。また、制御部14は、地磁気センサ12及びジャイロセンサ13の検出結果を無線通信部15にレシーバ部20へ送信させる。
【0030】
無線通信部15は、無線通信用のアンテナ及び通信回路等を備えている。無線通信部15は、本実施例ではBluetooh(登録商標)によりレシーバ部20と無線通信をする。無線通信部15は、地磁気センサ12及びジャイロセンサ13の検出結果をレシーバ部20へ送信する。また、無線通信部15は、レシーバ部20から自己までの距離や方向(角度)を検出するために所定のパケット等の基準信号を出力する。この基準信号による距離や方向の測定は、Bluetooh(登録商標)5.1の方向検出機能として公知である。なお、無線通信部15は、レシーバ部20以外の外部ネットワーク(公衆回線等)とも通信可能としてもよい。
【0031】
記憶部16は、例えばSSD(Solid State Drive)等の記憶装置で構成され、タブレット端末10で動作するOSやアプリ及びコンテンツ等の情報が記憶されている。
【0032】
図3にレシーバ部20の機能構成を示す。レシーバ部20は、無線通信部21と、制御部22と、補正部23と、アンプ24と、地磁気センサ25を備えている。
【0033】
無線通信部21は、無線通信用のアンテナ及び通信回路等を備えている。無線通信部21は、本実施例ではBluetooh(登録商標)によりタブレット端末10と無線通信をする。無線通信部21は、地磁気センサ12及びジャイロセンサ13の検出結果をレシーバ部20から受信する。また、無線通信部21は、タブレット端末10から送信された基準信号を受信して、タブレット端末10との距離や方向(角度)を検出する。
【0034】
制御部22は、例えばCPU等で構成され、レシーバ部20の全体制御を司る。また、制御部22は、タブレット端末10との距離や方向に基づいてタブレット端末10の位置を推定し、さらに推定された位置、地磁気センサ12及びジャイロセンサ13の検出結果及び地磁気センサ25の検出結果に基づいて、タブレット端末10で再生等されているコンテンツにかかる音声を車内の複数のスピーカから出力する際に定位させる位置を決定する。
【0035】
補正部23は、例えばDSP(Digital Signal Processor)等で構成され、制御部22で決定された位置に定位するように各スピーカへ供給する音声信号の遅延時間等を補正する。即ち、補正部23は、検出されたタブレット端末10(携帯端末装置)の位置に基づいて、所定の空間に配置されたスピーカから出力されるコンテンツに関する音声を補正する。補正方法は、従来技術に記載したタイムアライメント等の周知技術を用いればよい。
【0036】
アンプ24は、補正部23から出力された音声信号を増幅して車内に設置されたスピーカ26から出力する。
【0037】
磁気センサ25は、地磁気センサ12と同様に地磁気を検出する周知のセンサである。地磁気センサ25は、上述する表示部11の向きを検出する際の基準となる方位を検出する。
【0038】
なお、図3の構成では補正部23とアンプ24はレシーバ部20に含まれているが、それぞれ別体で構成してもよい。
【0039】
次に、上述した構成のタブレット端末10及びレシーバ部20の動作(音声処理方法)について図4及び図5を参照して説明する。図4は、タブレット端末10の動作のフローチャートである。なお、図4及び図5に示したフローチャートをコンピュータで実行されるプログラムとすることで、音声処理方法を実行する音声処理プログラムとすることができる。また、この音声処理プログラムは、レシーバ部20等が有するメモリ等に記憶するに限らず、メモリカードや光ディスク等の記憶媒体に格納してもよい。
【0040】
まず、地磁気センサ12により方位を検出する(ステップS11)。そして、ジャイロセンサ13により角速度を検出する(ステップS12)。
【0041】
次に、無線通信部15がレシーバ部20から自己までの距離や方向(角度)を検出するために所定のパケット等の基準信号を生成する(ステップS13)。
【0042】
そして、ステップS11~S13で取得・生成された方位、角速度や基準信号をレシーバ部20に送信する(ステップS14)。
【0043】
図5は、レシーバ部20の動作のフローチャートである。まず、無線通信部21が、タブレット端末10から送信された方位、角速度や基準信号を受信する(ステップS21)。本ステップでは、受信した方位に基づいて、後述する方法で制御部22が表示部11の向きを検出する。また、受信した角速度に基づいてタブレット端末10の床面(地面)に対する傾き値を検出する。なお、本実施例では、傾き値はタブレット端末10で検出しているが、レシーバ部20で検出して送信してもよい。
【0044】
次に、制御部22が、受信した基準信号に基づいてタブレット端末10の位置を検出する(ステップS22)。タブレット端末10の位置の検出については、上述したようにBluetooh(登録商標)の方向検出機能に基づいて行われる。次に、受信した方位と角速度を制御部22が取得する(ステップS23)。
【0045】
次に、補正部23が、ステップS22~S23で取得・検出した位置及び表示部11の向きやタブレット端末10の傾きに基づいてタブレット端末10の使用者の位置を推定し、その推定された位置に音が定位するようにコンテンツの音声信号について音場補正をする(ステップS24)。即ち、補正部23は、タブレット端末10(携帯端末装置)の位置、表示部11の向き及び床面に対する傾きに基づいて補正をしている。音場補正の内容としては、上述したタイムアライメントや、右チャンネル/左チャンネルの設定等が挙げられるが、当該位置での周波数特性を適正化するイコライジング等を行ってもよい。
【0046】
ここで、ステップS24における位置推定の際にタブレット端末10の表示部11の向きを特定する方法について図6を参照して説明する。図6(a)はレシーバ部20とタブレット端末10の表示部11の向きが同方向である場合、図6(a)はレシーバ部20とタブレット端末10の表示部11の向きが逆方向である場合である。図6において、レシーバ部20の地磁気センサ25が検出した方位が矢印A1の方向(基準0°とする)を示しているとする。このとき、タブレット端末10の地磁気センサ12が検出した方位が矢印A2の方向(基準0°)を示している場合(図6(a))は、2つの地磁気センサが検出した方位が同じなので、タブレット端末10の使用者Uは図6(a)に示した位置にいると推定する。
【0047】
一方、タブレット端末10の地磁気センサ12が検出した方位が矢印A3の方向(基準0°から200°)を示している場合(図6(b))は、2つの地磁気センサが検出した方位が略反対向きなので、タブレット端末10の使用者Uは図6(b)に示した位置にいると推定する。つまり、図6(b)は、図6(a)に対して表示部11が略反対向きになっていると推定することができる。
【0048】
本実施例では、レシーバ部20の地磁気センサ25の検出方位を基準0°として、タブレット端末10で検出された方位が基準0°に対して-90°~+90°は同じ向き(図6(a)の状態)、+90°~+270°は反対向き(図6(b)の状態)と判定すればよい。即ち、制御部22(向き検出部)は、タブレット端末10(携帯端末装置)に設けられた地磁気センサ12(第1地磁気センサ)と、地磁気センサ12(第1地磁気センサ)とは別に設けられた地磁気センサ25(第2地磁気センサ)と、からそれぞれ検出結果を取得し、地磁気センサ12(第1地磁気センサ)と地磁気センサ25(第2地磁気センサ)の検出結果に基づいて表示部11の向きを検出している。
【0049】
図5の説明に戻る。ステップS24で音場補正された音声信号は、補正部23でデジタル/アナログ変換(DA変換)され(ステップS25)、アンプ24で増幅されて(ステップS26)、スピーカ26から出力される(ステップS27)。
【0050】
上述した説明から明らかなように、ステップS22が位置検出工程、ステップS24が補正工程として機能する。
【0051】
ここで、図4及び図5で説明した動作によりタブレット端末10で表示等されているコンテンツの音声を定位させる位置の例について、図7を参照して説明する。図7は、車両の車室を模式的に示した図である。図7においては、車室内には運転席S1、助手席S2、後部座席S3、S4が設けられている。そして、レシーバ部20は、運転席S1、助手席S2の中間前方のインストルメントパネルに設置されている。また、車室内には、前側スピーカ26a、26b、後側スピーカ26c、26dが設置されている。この前側、後側は、便宜上車両の前方や後方に対応付けて記載している。
【0052】
図7(a)は、使用者Uが運転席S1に着席し、タブレット端末10がレシーバ部20に装着された状態である。この場合、右チャンネルの音声はスピーカ26a、26cから出力され、左チャンネルの音声はスピーカ26b、26dから出力される。なお、音声が4チャンネルである場合は、後方音声チャンネルに対応した音声がスピーカ26c、26dから出力される。そして、タブレット端末10はレシーバ部20と略同じ位置と検出され、タブレット端末10、レシーバ部20共に同じ方位と検出される。したがって、この場合は、運転席S1に音像が定位するように補正する。なお、運転席S1ではなく、運転席S1と助手席S2の中間に音像が定位するように補正してもよい。つまり、検出された位置に基づいて、所定の位置に定位させればよく、タブレット端末10の近くに定位させなくてもよい。
【0053】
図7(b)は、使用者Uが後部座席S4に着席し、タブレット端末10が助手席S2のシートバック等に設けられた取り付け部材等に固定された状態である。この場合、タブレット端末10の位置は助手席S2のシートバックと検出され、タブレット端末10、レシーバ部20共に同じ方位と検出される。したがって、この場合は、後部座席S4に音像が定位するように補正する。
【0054】
図7(c)は、使用者U1が後部座席S4に着席し、使用者U2が後部座席S3に着席し、タブレット端末10が後部座席S3、S4の中間前方の天井等に設けられた取り付け部材等に固定された状態である。この場合、タブレット端末10の位置は後部座席S3、S4の中間前方と検出され、タブレット端末10、レシーバ部20共に同じ方位と検出される。したがって、この場合は、後部座席S3とS4の中間に音像が定位するように補正する。
【0055】
図7(d)は、図7(b)と使用者Uの位置は同じであって、タブレット端末10は使用者Uが手に持っている状態である。この場合、タブレット端末10の位置は助手席S2と検出され、タブレット端末10、レシーバ部20共に同じ方位と検出される。さらに、ジャイロセンサ13により検出されたタブレット端末10の車両床面に対する傾きから図7(a)~(c)とは異なり、タブレット端末10が傾斜した状態であることが分かり、使用者Uが手に持っていると推定することができる。したがって、この傾きに応じて図7(b)の定位位置よりも定位位置が使用者Uに近くなるように微調整する。例えば、上下方向(天地方向)を傾きに応じて高く(あるいは低く)する。
【0056】
図7(e)は、例えば車中泊やキャンピングカー、座席が後方向きに回転可能な自動運転車等を想定したものである。図7(e)は、使用者Uは、フラットにしたシートのS3とS4の中間位置に横になる等の状態で、タブレット端末10が車両後方に配置され、向きが矢印A5、つまり、図7(a)~(d)とは反対向きになっている。この場合、タブレット端末10の位置は後部座席S3、S4の後方位置と検出されるが、タブレット端末10の方位が、レシーバ部20の方位と反対向きと検出される。したがって、この場合は、図示した使用者Uの近傍位置に音像が定位するように補正する。さらに、図7(e)では、ステレオ音声の左右チャンネルを反転させる。つまり、右チャンネルがスピーカ26d、26bから出力され、左チャンネルがスピーカ26c、26aから出力されるようにする。4チャンネルの場合は、前方の音声と後方の音声も変転させる。このようにすることにより、表示部11の向きが反対方向となっても、それに合わせて適切な音声を出力することができる。
【0057】
なお、図7(e)は、表示部11の向きが反対向きになるケースであるが、例えば、スピーカ26a、26cが設けられている側(側面)に配置される場合でも本実施例により対応することができる。これは、図7(a)等とは、約90°表示部11の向きが変化するケースである。この場合であっても、少なくともタブレット端末10の位置と表示部11の向きが検出されるので、その位置と向きに基づいて使用者の位置を推定し、音像を定位させればよい。また、音声チャンネルは、スピーカ26aが左前方の音声チャンネル、スピーカ26cが右前方の音声チャンネル、スピーカ26bが左後方の音声チャンネル、スピーカ26dが右後方の音声チャンネルとする。
【0058】
なお、上述した実施例では、地磁気センサ12と地磁気センサ25により表示部11の向きを検出し、ジャイロセンサ13によりタブレット端末10の傾きを検出していたが、位置のみを検出するようにしてもよい。あるいは、位置と向きのみであってもよい。位置のみの場合は、図7(e)の状態には対応できないが、少なくとも通常の着席状態では音像の定位等の補正をすることができる。また、位置と向きのみであっても図7(d)の状態は判別できないが、この場合は、図7(b)と同様の補正をすれば最低限の補正をすることはできる。また、タブレット端末10はレシーバ部20と電気的に接続されるなど、物理的な接続を検出して図7(a)の状態を検出してもよい。さらに、シートバック等に設けられた取り付け部材との物理的な接続を検出して図7(b)などの状態を検出してもよい。
【0059】
本実施例によれば、レシーバ部20は、制御部22が、コンテンツに関する情報が表示される表示部11を有するタブレット端末10の位置を検出し、補正部23が、検出されたタブレット端末10の位置に基づいて、所定の空間に配置されたスピーカから出力されるコンテンツに関する音声を補正する。このようにすることにより、タブレット端末10の位置に基づいてスピーカ26から出力される音声を補正することができるので、タブレット端末10を使用している場合であっても適切な位置に音を定位させる等の補正をすることができる。
【0060】
また、制御部22が、表示部11の向きを検出し、補正部23は、タブレット端末10の位置及び表示部11の向きに基づいて補正をしている。このようにすることにより、表示部11に向きも考慮することができる。したがって、タブレット端末10に対してどこに使用者Uがいるのかを推定することも可能となり、より適切な補正をすることができる。
【0061】
また、補正部23は、表示部11の向きに基づいて、コンテンツに関する音声のうち、少なくとも右側チャンネル及び左側チャンネルの音声を出力するスピーカ26を設定している。このようにすることにより、例えば、表示部11の向きが表裏反転した場合に、左右の音声を入れ替えることができるようになる。したがって、違和感のない音声でコンテンツを視聴等することが可能となる。
【0062】
また、制御部22は、タブレット端末10の傾きを取得し、補正部23は、タブレット端末10の位置、表示部11の向き及びタブレット端末10の傾きに基づいて補正をしている。このようにすることにより、タブレット端末10を取り付け部材等に固定しているか、手に持っているか等を判別して、音の定位位置等を決定する等の補正をすることができる。
【0063】
また、タブレット端末10に設けられた地磁気センサ12と地磁気センサ25からそれぞれ検出結果を取得し、地磁気センサ12と地磁気センサ25の検出結果に基づいて表示部11の向きを検出している。このようにすることにより、地磁気センサ25を基準として、地磁気センサ12の方位からタブレット端末10の表示部11の向きを特定することができる。そのため、車両等の移動体であっても、地磁気センサを用いて表示部11の向きを特定することができる。
【0064】
なお、上述した実施例では、レシーバ部20が音声処理装置として機能したが、タブレット端末10が音声処理装置として機能してもよい。Bluetooth(登録商標)の方向検出機能は、端末側でも実施可能であるので、地磁気センサ25の検出情報をタブレット端末10が取得すれば、自己(タブレット端末10)の位置を推定して定位させる位置を算出することは可能である。ただし、算出結果は、スピーカ26からの出力に反映させるために、車載機器(レシーバ部20に限らない)に送信する必要がある。
【0065】
また、タブレット端末10の位置検出はBluetooh(登録商標)の方向検出機能に限らない。例えば既に車室内にカメラが設置されているのであればカメラ画像からタブレット端末10を画像認識により検知してもよい。あるいは、タブレット端末10とレシーバ部20の両方にGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機を設けて、双方で検出した位置(緯度経度)から相対的な距離や角度等を検出してもよい。
【0066】
また、上述した実施例では、車内の所定位置に音像を定位させることにタブレット端末10等の携帯端末装置の位置を利用していたが、当該位置を利用して、例えば後席でタブレット端末10のコンテンツに関する音が良好に聴取できるようにしてもよい。車内で前席と後席とで異なるソースを再生して、それぞれの座席で良好に聴くことができる技術は、特開2014-165569等により公知である。つまり、タブレット端末10の位置が前方にあると推定された場合は、タブレット端末10で再生等されているコンテンツを前席側のソースとし、タブレット端末10の位置が後方にあると推定された場合は、タブレット端末10で再生等されているコンテンツを後席側のソースとして、前記した文献の技術を適用すればよい。
【0067】
また、上述した実施例では、車両の車室内で説明したが、住宅等の室内であってもよい。また、屋外のタブレット端末10に対して車両のスピーカや室内のスピーカからの音が定位するように処理を行ってもよい。
【0068】
また、上述した実施例では、タブレット端末がコンテンツ情報を再生するとしているが、これに限定されない。例えば、レシーバがテレビ・ラジオ波受信部や、CDまたはDVD等の再生部を備え、通信によってコンテンツ情報を送信する構成も考えられる。レシーバで再生を行う場合、コンテンツ情報が映像であれば、映像をタブレット端末へ送信し、音声はアンプから出力する。
【0069】
また、本発明は上記実施例に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の音声処理装置を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0070】
10 タブレット端末(携帯端末装置)
11 表示部(表示画面)
12 地磁気センサ(第1地磁気センサ)
20 レシーバ部
21 無線通信部
22 制御部(位置検出部、向き検出部、傾き取得部)
23 補正部
24 アンプ
25 地磁気センサ(第2地磁気センサ)
26 スピーカ
図1
図2
図3
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図5
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図7