(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170521
(43)【公開日】2024-12-10
(54)【発明の名称】水を溶媒とする結晶化を用いて水溶液からメバロン酸又はその塩若しくはラクトンを回収するための方法及びその組成物
(51)【国際特許分類】
C12P 7/62 20220101AFI20241203BHJP
C07D 309/30 20060101ALI20241203BHJP
A61K 31/366 20060101ALI20241203BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20241203BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241203BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20241203BHJP
C12P 7/22 20060101ALI20241203BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20241203BHJP
【FI】
C12P7/62
C07D309/30 D
A61K31/366
A61K8/49
A61Q19/00
A61Q1/00
C12P7/22
A23L33/10
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024152013
(22)【出願日】2024-09-04
(62)【分割の表示】P 2022513846の分割
【原出願日】2020-08-25
(31)【優先権主張番号】62/892,760
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/012,492
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509240479
【氏名又は名称】ダニスコ・ユーエス・インク
(74)【代理人】
【識別番号】110003579
【氏名又は名称】弁理士法人山崎国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(72)【発明者】
【氏名】ヤルヴィネン、ユホ
(72)【発明者】
【氏名】コイヴィッコ、ハンヌ
(72)【発明者】
【氏名】クーシスト、イルキ
(72)【発明者】
【氏名】メントゥネン、テロ トゥオマス
(72)【発明者】
【氏名】ヌルミ、ユハ
(72)【発明者】
【氏名】サレラ、ペルッティ マティアス
(72)【発明者】
【氏名】シートネン、ヤニ
(72)【発明者】
【氏名】ホワイテッド、グレゴリー エム
(57)【要約】 (修正有)
【課題】メバロン酸の塩を含む水溶液から結晶形態のメバロノラクトンを生成するための方法及び生成したメバロノラクトンを含む組成物を提供する。
【解決手段】メバロン酸の塩(X-MVA)を含む水溶液からメバロノラクトンを生成するための方法であって、前記X-MVAを含む水溶液を陽イオン交換に付すことにより、X-MVAを含む前記水溶液をメバロノラクトン(MVL)を含む水溶液に変換することを含む、方法である。また、メバロノラクトン一水和物結晶を生成するための方法も提供する。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メバロン酸の塩の塩(X-MVA)を含む水溶液からメバロノラクトンを生成するための方法であって、前記メバロネートの塩を含む前記水溶液を陽イオン交換に付し、それによりメバロネートの塩を含む前記水溶液をメバロノラクトン(MVL)を含む水溶液に変換することを含む、方法。
【請求項2】
メバロン酸の塩の前記塩は、Na-メバロネート(Na-MVA)、K-メバロネート(K-MVA)、アンモニウムメバロネート(NH4-MVA)、リチウムメバロネート(Li-MVA)、他の任意の1価のメバロン酸の塩、又はこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
メバロノラクトンを含む前記水溶液を濃縮することにより、DSを少なくとも65%~90%含む液体にすることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
メバロノラクトン一水和物(MVL*H2O)結晶を得るために前記水溶液又は液体を0~25℃に冷却することを更に含む、請求項1又は請求項3に記載の方法。
【請求項5】
メバロノラクトンの純度が最小90%であるメバロノラクトンを含む希薄な液体を得るために、前記MVL*H2O結晶を水に溶解することを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記水溶液は、発酵ブロスである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記発酵ブロスは、プレコート濾過、精密濾過、又は限外濾過の少なくとも1種により、前記発酵ブロスからバイオマス及び任意の固体を除去することにより清澄化される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記発酵ブロスは、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)の発酵により得られるブロスである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項により生成したMVL又はその可溶化した形態を含む、医薬用又は在宅医療用又は栄養又はパーソナルケア又は化粧用組成物。
【請求項10】
請求項15に記載の方法により得られる結晶性メバロノラクトン*一水和物(MVL*H2O)。
【請求項11】
メバロノラクトン一水和物(MVL*H2O)結晶を含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年8月28日に出願された米国仮出願第62/892760号明細書、2020年4月20日に出願された米国仮出願第63/012492号の利益を主張するものであり、それぞれの全体を本明細書の一部を構成するものとしてここに援用する。
【0002】
本開示は、有機酸分離技法の分野に関し、より詳細には、水を溶媒とする結晶化(water solvent crystallization)を用いて有機酸及びその塩又はラクトンを水溶液から回収するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発酵ブロス等の溶液から有機酸を単離及び精製するための公知のプロセスは非常に複雑であり、一般には、溶媒抽出ステップ又は固相吸収が含まれる。
【0004】
炭水化物を含有する基質を様々な微生物を使用して発酵させることにより生成するカルボン酸等の有機酸を工業的に使用するために重要な面は、有機酸又は有機酸塩又はラクトンのみならず、他の有機酸、他の発酵副産物、微生物、及びその構成要素に加えて、基質の残滓、例えば、糖、タンパク質、脂質、及び他の微量の有機及び無機化合物も含む、こうした水性発酵液から、有機酸又はその塩若しくはラクトンを除去及び精製する費用対効果及び効率である。
【0005】
微生物により生成した有機酸を発酵ブロスから精製する古典的な方法は、ブロスのpHを低下させることにより目的の酸をプロトン化し、部分混和性を有する有機溶媒を用いて液/液抽出を行うものである(Organic Laboratory Techniques,3rd Edition pg.49-67.Ralph Fessenden,Joan Fessenden,Patty Feist 2001,Brooks/Cole)。
【0006】
米国特許出願公開第2014/0371486号明細書には、固相吸着を用いて発酵ブロスからカルボン酸を精製するための方法が記載されている。この方法は、発酵ブロス中に存在するバイオマス及び任意の固体を除去することと、バイオマスも固体も含まない発酵ブロスをナノ濾過により精密に清浄化することと、精密に清浄化されたバイオマスも固体も含まない発酵ブロスから、3級アミノ基を有する1又は複数の固相に吸着させることによりカルボン酸を除去することと、を含む。KR20180070117号明細書には、生合成されたメバロン酸からリン酸を用いてメバロノラクトンを製造する方法が記載されている。
【0007】
米国特許第5034105号明細書には、コハク酸塩の不飽和溶液からコハク酸を結晶化させる方法であって、前記塩溶液を電気透析に付すことにより過飽和溶液を生成させ、次いで、前記溶液にコハク酸の結晶化を促すのに有効な量の酢酸を添加することにより、コハク酸の過飽和溶液を結晶化させることによる、方法が記載されている。
【0008】
これらの方法の欠点は、プロセスに追加の物質が供給されることであり、目的の生成物中にはこの物質はもはや存在してはならず、もしこの物質が目的の生成物中に微量に存在すると、製品の品質及び適用可能性を制限しかねない。この方法の実際の実施にはまた、かなりの技術的な複雑さ及び相当なエネルギー消費が伴う場合もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、有機酸並びにその塩及びラクトンを精製及び回収するため、並びに有機酸及びその塩又はラクトンを結晶形態で製造するための、より効果が高く、信頼性が高く、環境に優しく、及び/又は経済的に実現可能なプロセスを開発することが依然として望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
水溶液から有機酸又はその塩若しくはラクトンの結晶形態を生成するための組成物及び方法が提供される。一態様において、結晶性メバロノラクトン*一水和物(MVL*H2O)及びメバロノラクトン*一水和物(MVL*H2O)を結晶化させる方法を開示する。
【0011】
より具体的には、一態様において、本明細書は、メバロン酸の塩(X-MVAとも称する)の結晶形態を水溶液から生成するための方法であって、前記X-MVAを含む水溶液をナノ濾過に付すことにより透過液を生成することと、前記透過液から前記X-MVAを、水を溶媒とする結晶化(water solvent crystallization)により結晶化させることと、を含む、方法を提供する(
図1A)。
【0012】
他の態様において、本明細書は、水に可溶化したメバロノラクトンを水溶液から生成するための方法であって:a)メバロン酸の塩(X-MVA)を含む水溶液をナノ濾過に付すことにより透過液を生成し、前記透過液から前記メバロン酸の塩を、水を溶媒とする結晶化により結晶化させることによって、前記メバロン酸の塩の結晶を生成することにより、水溶液から結晶形態の前記メバロン酸の塩を生成することと;b)(a)の結晶を水に溶解することによって水に可溶化したメバロン酸の塩を生成し、前記液体を陽イオン交換に付すことにより、前記水に可溶化したメバロン酸の塩を水に可溶化したメバロノラクトンに変換することと、を含む、方法を提供する(
図1B)。
【0013】
更なる他の態様において、本明細書は、メバロン酸の塩(X-MVA)を含む水溶液からメバロノラクトンを生成するための方法であって、前記メバロネートの塩を含む水溶液を、陽イオン交換に付すことにより、メバロネートの塩を含む前記水溶液をメバロノラクトン(MVL)を含む水溶液に変換することと、任意選択的に、前記溶液を濃縮することにより前記水溶液から高純度(純度>90%)のMVLを生成することと、前記濃縮された溶液からメバロノラクトン
*一水和物(MVL
*H
2O)を生成することと、メバロノラクトン
*一水和物(MVL
*H
2O)の結晶を水に溶解することにより高純度のMVL溶液を得ることと、を含む、方法を提供する(
図2)。
【0014】
メバロノラクトン*一水和物(MVL*H2O)の結晶形態を生成するための組成物及び方法も提供する。
【0015】
本開示の方法及び組成物の更なる実施形態を本明細書に示す。
【0016】
本開示は、以下の詳細な説明及び本出願の一部を構成する添付の図面からより充分に理解することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1A】水溶液から結晶形態のメバロン酸の塩(X-MVA)(これらに限定されるものではないが、Na-MVA等)を生成するための方法の模式図を示すものであり、前記メバロン酸の塩(Na-MVA)を含む水溶液をナノ濾過に付すことにより透過液を生成することと、前記透過液から前記メバロン酸の塩を、水を溶媒とする結晶化により結晶化させることと、を含む。水を溶媒とする結晶化は、透過液を蒸発させることにより、濃縮されたX-MVAを含むシロップ(syrup)を得ることと、次いで、前記シロップを冷却することによりメバロン酸の塩の結晶(Na-MVA結晶等)を生成することと、を含む。
【
図1B】水溶液から水に可溶化したメバロノラクトン(MVL)を生成するための方法の模式図を示すものであり、この方法は、
図1Aに記載した方法により得られたメバロン酸の塩の結晶(Na-MVA結晶等)を水に溶解することにより、水に可溶化したメバロン酸の塩(X-MVA)を生成することと、前記液体を陽イオン交換に付すことにより、前記水に可溶化したメバロン酸の塩(X-MVA)を水に可溶化したメバロノラクトン(MVL)に変換することと、任意選択的に、水に可溶化したメバロノラクトンを蒸発により濃縮することと、を含む。
【
図2】メバロン酸の塩(X-MVA)を含む水溶液からメバロノラクトンを生成するための方法の模式図を示すものであり、この方法は、前記メバロネートの塩を含む水溶液を陽イオン交換に付すことにより、メバロネートの塩を含む前記水溶液をメバロノラクトン(MVL)を含む水溶液に変換することと、任意選択的に、前記溶液を濃縮することにより、約23℃未満の低温で保存するとメバロノラクトン
*一水和物結晶を生成し得るシロップとすることと、を含む。このメバロノラクトン
*一水和物結晶を、任意選択的に、更に水に溶解して濃縮することにより、高度に濃縮された高純度のMVL液体(純度>90%)を生成することができる。
【
図3】この写真は、メバロノラクトン
*一水和物(MVL
*H
2O)結晶の典型的な形状を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
有機酸並びにその塩及びラクトンを、水を溶媒とする結晶化を用いて水溶液から回収するための組成物及び方法を提供する。一態様において、結晶性メバロノラクトン*一水和物(MVL*H2O)及びメバロノラクトン*一水和物(MVL*H2O)を結晶化させる方法を開示する。
【0019】
より詳細には、一態様において、本発明の目的は、それを含む溶液からメバロネートの塩(X-MVA)を回収するための方法を提供することにある。他の態様において、本発明の目的は、メバロネートの塩(X-MVA)、メバロノラクトン(MVL)、メバロノラクトン*一水和物(MVL*H2O)、又はこれらの組合せを含む溶液からメバロノラクトン(MVL)を回収するための方法を提供することにある。メバロネートの塩を回収するため及び/又はメバロノラクトンを回収するための全プロセスは、好ましくは、有機溶媒を使用することなく水溶液中で実施することができる。
【0020】
本明細書に記載する方法により、着色物質が殆ど又は全く形成されない水のような外観を有する高純度(純度>90%)のMVL生成物を得ることができる。したがって、本明細書に記載する方法により生成するMVLは、大規模製造のために規模を拡大することができ、また、高度に精製されたMVL生成物に有色の汚染物質が殆ど又は全く存在せず無色透明であれば非常に価値の高いものになる、パーソナルケア産業から特に関心が寄せられている。
【0021】
この詳細な説明は、本出願人の発明が属する技術分野の他の当業者にその原理及び実際の用途を知らせることによって、他の当業者が、特定の使用の要件に最も適したものになり得るように本発明をその数々の形態に適応及び適用することができるようにすることを意図している。この詳細な説明及びその具体例は、特定の実施形態を示してはいるが、例示のみを目的とするものである。したがって本明細書は、記載された実施形態に限定されず、様々な修正を行うことが可能である。
【0022】
本文書は、読みやすいように複数の項から構成されているが、読者は、ある項における記載が他の項に適用できることを理解するであろう。このように、本開示の異なる項に使用されている見出しは限定するためのものと解釈すべきではない。
【0023】
本明細書において示す見出しは本組成物及び方法の様々な態様又は実施形態を制限するものではなく、本組成物及び方法は、本明細書全体を参照することにより理解することができる。したがって、この直後に定義する用語は、本明細書全体を参照することによってより十分に定義される。
【0024】
他に定義されていない限り、本明細書において用いられる全ての技術及び科学用語は、本組成物及び方法が属する技術分野の当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。
本明細書に記載する任意の方法及び材料と類似又は均等な方法及び材料も、本組成物及び方法の実施又は試験に用いることができるが、代表的な例示的方法及び材料をここに記載する。
【0025】
本明細書に引用する全ての刊行物及び特許を、個々の刊行物及び特許がそれぞれ具体的且つ個別に参照により組み込まれることが示されているかの如く、参照により本明細書に組み込み、また、引用されている刊行物に関連する方法及び/又は材料を開示及び説明するために、参照により本明細書に組み込む。
【0026】
定義
本明細書において、並びに実施例及び特許請求の範囲全体を通して、以下に示す定義を使用する。
【0027】
「メバロン酸(MVA)」又は「(R)-メバロン酸」という用語は本明細書において互換的に使用され、化学式C6H12O4を有し、モル質量が148.16g/molである(3R)-3,5-ジヒドロキシ-3-メチルペンタン酸を指す。メバロン酸のカルボキシレート陰イオンは、メバロネートとして知られている。本明細書に記載するメバロン酸は、生物学的に活性なRエナンチオマーである。
【0028】
「メバロネートの塩」又は「メバロネート塩」又は「X-MVA」という用語は、本明細書において互換的に使用され、Xが陽イオンであり、MVAがメバロン酸のカルボキシレート陰イオンであるメバロン酸の塩(したがって、X-MVA)を指す。メバロネートの塩は、Na-メバロネート(Na-MVA)、K-メバロネート(K-MVA)、アンモニウムメバロネート(NH4-MVA)、リチウムメバロネート(Li-MVA)、他の任意の1価のメバロン酸の塩、又はこれらの任意の組合せからなる群から選択することができる。
【0029】
「メバロノラクトン」又は「(R)-メバロノラクトン」又は「MVL」という用語は、本明細書において互換的に使用され、(R)-3-ヒドロキシ-3-メチル-δ-バレロラクトンを指す。
【0030】
本明細書に記載する水溶液は、平衡濃度に向かって互いに変換し合う有機酸及びそのラクトンの両方を含む溶液を含む。例えば、メバロン酸及びメバロノラクトンは互いに平衡化する傾向にある。本記載において、有機酸を含む溶液は、特に断りのない限り、確実にそのラクトン形態も含む。
【0031】
メバロノラクトン一水和物は、MVL*H2Oとも称される。
【0032】
SACは、強酸性陽イオン交換樹脂を指す。
【0033】
WACは、弱酸性陽イオン交換樹脂を指す。
【0034】
DSは、重量%で表される乾燥物含有量を指す。乾燥物はカールフィッシャー水分滴定法により測定することができる。
【0035】
RDSは、屈折率による乾燥物含有量(refractometric dry substance content)を指し、糖の水溶液の屈折率とDSとの間の相関関係に従い重量%で表される。
【0036】
IX又はIEXはイオン交換プロセスを指す。
【0037】
BV/hは、カラム又は運転装置(operating unit)に含まれるイオン交換材料を通過する体積流量を指す。BVは、カラム又は運転装置に含まれる指定されたイオン形態にあるイオン交換材料の体積である、ベッド体積を指す。
【0038】
純度は、構成成分(Na-MVA、MVL、MVL*H2O等)のDS又はRDSに基づく含有量を指す。面積%の算出手順では、クロマトグラム(HPLCクロマトグラム等)の各ピークの面積を、全てのピークの総面積の百分率として報告する。例えば、メバロノラクトンの純度が少なくとも90%であるとは、クロマトグラフィー分析を用いた、MVLに対応するピーク面積(この場合は90)のピークの総面積(100)に対する百分率を指す。純度は、HPLC(Rezex ROA-Organic Acid H+(8%)カラム)を用いて測定することができる。
【0039】
HPLCは、高速液体クロマトグラフィーを指す。
【0040】
ナトリウムメバロネート純度とは、メバロン酸、メバロネート、及びメバロノラクトンが全てナトリウムメバロネート形態にあると仮定した場合のナトリウムメバロネートの量を、乾燥物の総量で除した値を指す。
【0041】
メバロノラクトン純度とは、メバロン酸、メバロネート、及びメバロノラクトンが全てメバロノラクトン形態にあると仮定した場合のメバロノラクトンの総量を、乾燥物の総量で除した値を指す。
【0042】
メバロネート収率とは、メバロン酸、メバロネート、及びメバロノラクトンが全てメバロネート形態にあると仮定した場合の、目的の画分(ナノ濾過による透過液又は遠心ケーク等)中のメバロネートの量を、供給液画分(ナノ濾過供給液又は遠心分離供給液)中のメバロネートの量で除した値を指す。
【0043】
メバロノラクトン収率とは、メバロン酸、メバロネート、及びメバロノラクトンが全てメバロノラクトン形態にあると仮定した場合の、目的の画分(陽イオン交換生成物又は遠心ケーク)中のメバロノラクトンの量を、供給液画分(陽イオン交換供給液又は遠心分離供給液等)中のメバロノラクトンの量で除した値を指す。
【0044】
色とは、国際砂糖分析統一委員会(International Commission for Uniform Process of Sugar Analysis)(「ICUMSA」)糖色価等級格付け体系(sugar color grading system)に基づく色価を指す。
【0045】
DSCサーモグラムは、Mettler Toledo DSC822e示差走査熱量計を用いて測定した。この測定は、40μLアルミニウム製標準るつぼ内で流速80mL/minの窒素気流下にて実施した。温度範囲は0~50℃とし、昇温速度を2℃/minとした。
【0046】
旋光度は、メバロノラクトン濃度が2g/100mLである水溶液中で、Anton Paar MCP 300 Sucrometを20℃の温度で使用し、100mmのキュベット及び589nmのNa光源を用いて測定した。
【0047】
略語の意味を次に示す:「sec」は秒を意味し、「min」は分を意味し、「h」又は「hr」は時を意味し、「d」は日を意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「μM」はマイクロモル濃度を意味し、μmはマイクロメートルを意味し、「mM」はミリモル濃度を意味し、「M」はモル濃度を意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「μmole」はマイクロモルを意味し、「kg」はキログラムを意味し、「g」はグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「U」はユニットを意味し、「bp」は塩基対を意味し、「kb」はキロベースを意味する。
【0048】
出発物質
記載する方法に使用する溶液は、有機酸又はその塩若しくはラクトンを含む水溶液を含む。より具体的には、一態様において、出発物質は、少なくともMVA及び/又はメバロネートの1種の塩(X-MVA)を含む水溶液である。一態様において、出発物質は、メバロノラクトン(MVL)又はメバロノラクトン一水和物(MVL*H2O)を含む水溶液である。出発物質は、例えば、MVA、メバロネートの塩、メバロノラクトン、メバロノラクトン一水和物、又はこれらの任意の組合せを含む発酵由来の発酵液及び/又は水溶液から選択することができる。
【0049】
幾つかの実施形態において、水溶液は、発酵生成物を含む(又は全体若しくは一部がそれに由来する)。幾つかのこの種の実施形態において、水溶液は、精製すべきMVA、X-MVA、及び/又はMVLを製造するために使用される発酵生成物である(又は全体若しくは一部がそれに由来する)。幾つかの実施形態において、発酵は、炭水化物を含む水性培養液中で、MVA、X-MVA、及び/又はMVLを産生することができる1種の酵素(又は複数種の酵素)をコードする少なくとも1つの組換えポリヌクレオチド配列を含む組換え微生物を培養することを含む。発酵プロセスの生成物は、発酵「生成物」又は「ブロス」と称することができる。生成物は、通常、精製すべきX-MVA及び/又はMVLに加えて、例えば、1価及び2価の塩、糖類、オリゴ糖類、単糖類、アミノ酸、ポリペプチド、タンパク質、有機酸、核酸等の多くの成分を含む。水溶液は発酵に由来する、ある種のアルコール又は他の溶媒を含み得る。
【0050】
MVAの製造に多くの場合有用となる酵素の例として、MvaE(アセチル-CoAアセチルトランスフェラーゼ/HMG-CoAレダクターゼ)及びMvaS(ヒドロキシメチルグルタリル-CoAシンターゼ)が挙げられる。mvaE遺伝子は、チオラーゼ及びHMG-CoAレダクターゼの両方の活性を有するポリペプチド(MvaE)をコードする。mvaS遺伝子は、HMG-CoAシンターゼ活性を有するポリペプチド(MvaS)をコードする。MVA(及び対応するヌクレオチド配列)を産生することができる酵素は、これらに限定されるものではないが、リステリア・グレイ(Listeria grayi)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、(ストレプトコッカス・フェカーリス(Streptococcus faecalis))、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・ガリナラム(Enterococcus gallinarum)、及びエンテロコッカス・カセリフラブス(Enterococcus casseliflavus)に由来するものとすることができる。
【0051】
発酵ブロスは、MVA又はMVLを産生することができる任意の生物を発酵させることにより得られたブロスとすることができる。幾つかの実施形態において、発酵ブロスは、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)の発酵により得られるブロスである。幾つかの態様において、出発水溶液は、これらに限定されるものではないが、メバロン酸を塩として含む、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)の発酵により得られる発酵ブロス等の、pHが中性の発酵ブロスとすることができる。出発水溶液はまた、低pH(pH3~5)の発酵ブロスとすることもでき、前記発酵ブロスは、一部が酸形態にあり、一部がメバロネートの塩であるメバロン酸を含む。発酵ブロスは清澄化された発酵ブロスとすることができ、この清澄化は、発酵ブロスを供給液として限外濾過することにより得られる。
【0052】
幾つかの実施形態において、精製すべき有機酸はMVAであり、MVA出発溶液は、発酵プロセスの生成物を含み(又は全体若しくは一部がそれに由来する)、この発酵プロセスは、MvaE及びMvaSをコードする組換えポリヌクレオチド配列を含む組換え微生物を水性培養液中で培養することを含む。
【0053】
発酵ブロスは、プレコート濾過、精密濾過、遠心分離、又は限外濾過の少なくとも1種により、前記発酵ブロスからバイオマス及び任意の不溶性固体を除去することにより清澄化することができる。限外濾過は、例えば、内毒素、タンパク質、核酸、リポ多糖等の大きな生体分子を除去するのに有利となり得る。
【0054】
細胞バイオマスは、例えば、濾過、遠心分離、沈降、及び/又は細胞バイオマスの除去に適した他のプロセスを用いて発酵生成物から分離することができる。
【0055】
ナノ濾過
本明細書に記載するように、一態様において、本発明の目的は、メバロン酸の塩(X-MVA又はX-メバロネートとも称する)の結晶形態を水溶液から生成するための精製方法であって、前記メバロン酸の塩(X-MVA)を含む水溶液をナノ濾過に付すことにより透過液を生成することと、前記透過液から前記メバロン酸の塩を、水を溶媒とする結晶化により結晶化させることと、を含む方法にある(
図1A及び実施例1~4も参照されたい)。
【0056】
ナノ濾過(NF)は、圧力を駆動力とする膜濾過を基礎とするプロセスである。ナノ濾過により、2種の画分:保持液及び透過液が得られる。
【0057】
本発明の一態様において、NFプロセスは、メバロン酸の塩(これらに限定されるものではないが、Na-メバロネート、K-メバロネート、Li-メバロネート、アンモニウムメバロネート、又は他の1価のメバロン酸の塩等)を精製して透過液(濾過液とも称する)を得ることを目的とする。このプロセスからの保持液(濃縮液とも称する)は、消泡剤、内毒素、有色成分、2価の塩、及びより大きな分子を含む廃棄物である。本発明の一実施形態において、水溶液は、高含有量のメバロネート塩(透過液中に少なくとも60%のナトリウムメバロネート、実施例1~4)及びごく少量の廃棄物質を含む透過液を得るためのナノ濾過の供給液として使用される。
【0058】
出発水溶液は、これらに限定されるものではないが、メバロン酸を塩として含む、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)の発酵により得られる発酵ブロス等の、pHが中性の発酵ブロスとすることができる。出発水溶液はまた、低pH(pH3~5)の発酵ブロスとすることもでき、前記発酵ブロスは、一部が酸形態にあり、一部がメバロネートの塩であるメバロン酸を含む。
【0059】
本発明によるナノ濾過は、回分式プロセス又は連続式プロセスとして実施することができる。
【0060】
ナノ濾過は、通常、5~80℃の範囲、好ましくは、30~75℃の範囲、最も好ましくは50~70℃の範囲の温度で実施される。ナノ濾過の圧力は、通常、5~60barの範囲、好ましくは10~50barの範囲、最も好ましくは20~45barの範囲にある。pHは、1~10の範囲、好ましくは3~9の範囲、最も好ましくは6~9の範囲とすることができる。pHは、出発溶液の組成及びナノ濾過に使用される膜及び回収すべき構成成分の安定性に依存する。出発溶液のpHは、必要に応じて、ナノ濾過を行う前に所望の値に調整することができる。
【0061】
ナノ濾過は、通常、ナノ濾過供給液の濃度及び粘度に応じて、流束1~100l/m2h、好ましくは流束2~50l/m2h、最も好ましくは流束3~12l/m2hで実施される。
【0062】
本発明に使用されるナノ濾過膜は、MgSO4阻止率が50~99%(25℃、濃度2g/l、8bar、pH6)、好ましくは70~99%(25℃、濃度2g/l、8bar、pH6)、より好ましくは80~98%(25℃、濃度2g/l、8bar、pH6)、最も好ましくは90~98%(25℃、濃度2g/l、8bar、pH6)である高分子膜及び無機膜から選択することができる。一態様において、ナノ濾過膜は、MgSO4阻止率が約92~98%であるナノ濾過膜XN45である。
【0063】
ナノ濾過膜のMgSO4阻止率が99%又はそれを超えるMgSO4阻止率の場合は、1価塩の阻止率が過度に高く、MWCOが低く、したがってX-MVA塩の阻止率が高くなる。MgSO4阻止率が<90%MgSO4阻止率の膜は、小さい2価の塩も通過させてしまうため、さほど高度に精製されない。
【0064】
幾つかの実施形態において、膜の分画分子量(MWCO)は約100~約700ダルトンMWCO膜の範囲にあり、これらに限定されるものではないが、TriSep XN45膜等である。TriSep XN45膜は、MWCOが300~500ダルトンの膜であることを特徴とする。幾つかの実施形態において、膜の分画分子量(MWCO)は、約150~約400ダルトンの範囲にある。幾つかの実施形態において、膜の分画分子量(MWCO)は、約150~約300ダルトンの範囲にあり、これらに限定されるものではないが、Suez duratherm EXLDL及びDK膜等がある。Suez duratherm EXL DL及びDK膜は、MWCOが150~300ダルトンの膜であることを特徴とする。MWCO及びMgSo4阻止率は、どちらもナノ濾過膜の選択に重要なパラメータである。一態様において、ここに記載したプロセス用の膜は、MWCOが150Daを超えるが、2価の塩の排除率も高い(>90%MgSO4)ものであり、これらに限定されるものではないが、TriSep XN45タイプの膜等のナノ濾過膜である。
【0065】
幾つかの実施形態において、膜の分画分子量(MWCO)は約100~約900ダルトンの範囲にあり、MgSO4阻止率は25℃で約50~99%である。幾つかの実施形態において、膜の分画分子量(MWCO)は約150~約500ダルトンの範囲にあり、MgSO4阻止率は25℃で約80~99%である。幾つかの実施形態において、膜の分画分子量(MWCO)は約150~約300ダルトンの範囲にあり、MgSO4阻止率は25℃で約98~99%である。
【0066】
本発明に有用なナノ濾過膜は、負電荷又は正電荷を有することができる。膜はイオン性膜とすることができる、即ち、これらはカチオン性又はアニオン性基を含むことができるが、例え中性膜であってさえも有用である。ナノ濾過膜は、疎水性膜及び親水性膜から選択することができる。
【0067】
ナノ濾過膜の典型的な形態は、スパイラル型膜を含む。膜の構成は、例えば、平板、チューブ、及び中空繊維から選択することもできる。振動膜及び回転膜等の「高剪断」膜も使用することができる。膜は、チューブ型、スパイラル型、又は平板型とすることができる。
【0068】
本発明に有用なナノ濾過設備は、出発物質(供給液)を保持液部分及び透過液部分に分割する少なくとも1種のナノ濾過膜エレメントを含む。ナノ濾過設備は、通常、ポンプ及び弁並びに圧力計及び制御装置等の圧力及び流れを制御するための手段も含む。この設備はまた、1つの圧力容器内に異なる組合せで並列又は直列に配置された幾つかのナノ濾過膜エレメントを含むこともできる。
【0069】
ナノ濾過におけるX-MVA(メバロネートの塩、例えば、Na-メバロネート等)の収率は、通常、出発物質中に存在していたNa-メバロネートの70%を超え、好ましくは80%を超え、最も好ましくは90%を超える。
【0070】
透過液中のNa-メバロネート含有量は、DSで50%を超え、好ましくはDSで60%を超え、より好ましくはDSで70%を超え、最も好ましくはDSで80%を超える。
【0071】
ナノ濾過の透過液は、蒸発又は当該技術分野において知られている、メバロネートの塩を更に濃縮するための任意の手段、例えば、これらに限定されるものではないが、減圧下における蒸発(真空蒸発)によって更に濃縮することにより、濃縮された水性シロップ(aqueous syrup)を生成することができる。濃縮された水性シロップのNa-メバロネート含有量は、DSで60%超、好ましくはDSで65%~95%の間とすることができる。
【0072】
ナノ濾過の透過液は、イオン交換、蒸発、電気透析、及び濾過から選択される更なる精製ステップに付すことができる。これらの更なる精製ステップは、前記膜濾過の前又は後に実施することができる。
【0073】
更に、回収されたメバロネートの塩画分は、1又は複数の更なるステップ、例えば、蒸発、濃縮、濾過、イオン交換、活性炭処理、無菌濾過、結晶化、中間結晶化(intermediate crystallization)、ナノ濾過、及びクロマトグラフィーによる分画等に付すことができる。回収されたメバロネートの塩画分は、画分の純度に応じた異なる方法で処理することができる。
【0074】
幾つかの実施形態において、ナノ濾過から回収された透過液及び/又は濃縮された水性シロップは、続いて結晶化ステップに付される。
【0075】
一態様において、本明細書に記載するように、本方法は、水溶液から結晶形態のメバロン酸の塩(X-MVA)を生成するための方法であり、この方法は、前記メバロン酸の塩を含む水溶液を精製ステップに付すことであって、前記精製ステップにより、純度が少なくとも60%であるX-MVAを含む精製された溶液を生成する、ことと、水を溶媒とする結晶化により、前記精製された溶液から前記メバロン酸の塩を結晶化させることと、を含み、前記精製ステップは、前記メバロン酸の塩を含む水溶液をナノ濾過に付すことにより透過液を生成することを含み、前記透過液は、純度が少なくとも60%であるX-MVAを含む。
【0076】
別法として、一態様において、本方法は、水溶液からメバロン酸の塩(X-MVA)の結晶形態を生成するための方法であって、前記メバロン酸の塩を含む水溶液を精製ステップに付すことであって、前記精製ステップは、純度が少なくとも60%のX-MVAを含む精製された溶液を生成する、ことと、水を溶媒とする結晶化により、前記精製された溶液から前記メバロン酸の塩を結晶化させることと、を含み、前記精製ステップは、前記メバロン酸の塩を含む水溶液を、精密濾過、電気透析、イオン交換、濾過、活性炭処理、蒸発、濃縮、無菌濾過、クロマトグラフィーによる分画、又はこれらの任意の組合せに付すことを含む。
【0077】
陽イオン交換
一態様において、本明細書は、水に溶解したメバロノラクトンを水溶液から生成するための方法であって:この方法は:a)メバロン酸の塩(X-MVA)を含む水溶液をナノ濾過に付すことにより透過液を生成し、前記透過液から前記メバロン酸の塩を、水を溶媒とする結晶化により結晶化させることによって、前記メバロン酸の塩の結晶を生成することにより、水溶液から結晶形態の前記メバロン酸の塩を生成することと;b)(a)の結晶を水に溶解することによって水に可溶化したメバロン酸の塩を生成し、前記液体を陽イオン交換に付すことにより、前記水に溶解したメバロン酸の塩を水に溶解したメバロノラクトンに変換することと、を含む、方法を提供する(
図1B及び実施例9~12)。
【0078】
他の態様において、本明細書は、メバロン酸の塩(X-MVA)を含む水溶液からメバロノラクトンを生成するための方法であって、前記メバロネートの塩を含む水溶液を陽イオン交換に付し、それによりメバロネートの塩を含む前記水溶液をメバロノラクトン(MVL)を含む水溶液に変換することを含む、方法を提供する(
図2)。
【0079】
強酸性陽イオン交換樹脂(SAC樹脂)
SAC樹脂は、スチレン又はアクリル系骨格を有することができる。本発明の一実施形態において、樹脂は、スルホン化ポリスチレン-co-ジビニルベンゼン樹脂である。アルキル置換スチレン等のモノマー又はその混合物を基体とするものなどの他のアルケニル芳香族ポリマー樹脂も適用することができる。この樹脂は、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等の他の好適な芳香族架橋モノマーで、又はイソプレン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、若しくはこれらの混合物等の脂肪族架橋モノマーで架橋されていてもよい。樹脂の架橋度は、通常、ジビニルベンゼン(DVB)等の架橋剤の約1~約20%、好ましくは約3~約8%である。
【0080】
本発明のイオン交換に使用するためのSAC樹脂は、多価、2価、又は1価の陽イオン形とすることができる。1価の陽イオン形は、例えば、H+、Na+、及びK+から選択することができる。2価の陽イオン形の例は、Ca2+、Mg2+、Zn2+、Sr2+、及びBa2+である。3価の陽イオン形の例は、Al3+である。本発明の好ましい実施形態において、本発明のイオン交換に使用するためのSAC樹脂は1価のH+型である。樹脂の典型的な平均粒子径(mean average particle size)は、10~2000μm、好ましくは300~1200μmである。
【0081】
一実施形態において、メバロノラクトン(MVL)を生成するためのメバロン酸の塩(X-MVA)のイオン交換には1価のSAC樹脂が使用され、1価の陽イオンはH+型である。
【0082】
弱酸性陽イオン交換樹脂(SAC樹脂)
WAC樹脂は、カルボキシル官能基を有するアクリル系陽イオン交換樹脂である。アクリル系WAC樹脂は、通常、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、アクリル酸、及びこれらの混合物からなる群から誘導される。アクリル酸エステルは、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、及びアクリル酸ブチルからなる群から選択される。WAC樹脂のマトリックスは、アクリル系のもの以外であってもよい。WAC樹脂の活性官能基は、カルボキシル基以外であってもよい。これらは例えば、他の弱酸から選択することもできる。WAC樹脂は、H+、Na+、K+、Ca2+、又はMg2+形とすることができ、好ましくは、H+又はNa+形である。他のイオン形も使用することができる。
【0083】
WAC樹脂は、芳香族系架橋剤、好ましくはジビニルベンゼン(DVB)で架橋されている。これは、イソプレン、1,7-オクタジエン、トリビニルシクロヘキサン、ジエチレングリコールジビニルエーテル等の脂肪族架橋剤で架橋することもできる。架橋度は、1~20%、好ましくは、3~約8%DVBである。
【0084】
平均粒子径は、10~2000μm、好ましくは300~1200μmである。
【0085】
イオン交換は、好ましくは、陽イオン交換樹脂、特に強酸性陽イオン樹脂、特にH+イオン形を用いて実施される。
【0086】
一実施形態において、メバロノラクトン(MVL)を生成するためのメバロン酸の塩(X-MVA)のイオン交換には、1価のWAC樹脂が使用され、1価の陽イオンはH+型である。
【0087】
水を溶媒とする結晶化
本明細書に記載するように、一態様において、本発明の目的は、結晶形態のメバロン酸の塩(X-MVA又はX-メバロネートとも称する)を水溶液から生成するための方法であって、前記メバロン酸の塩(X-MVA)を含む水溶液を、これらに限定されるものではないが、ナノ濾過等の精製ステップに付すことにより、前記X-MVAを結晶化させることが可能な高純度の溶液(透過液)を生成することと、前記透過液から前記メバロン酸の塩を、水を溶媒とする結晶化により結晶化させることと、を含む方法にある(
図1A及び実施例5~8)。
【0088】
本発明の他の態様において、本明細書は、メバロン酸の塩(X-MVA)を含む水溶液からメバロノラクトンを生成するための方法であって、前記メバロネートの塩を含む水溶液を陽イオン交換に付し、それによりメバロネートの塩を含む前記水溶液をメバロノラクトン(MVL)を含む水溶液に変換することと、次いで、任意選択的に、前記MVL溶液を濃縮し、前記溶液を結晶化させることにより、MVL
*一水和物の結晶を得ることと、を含む、方法を提供する(
図2及び実施例13~20)。
【0089】
「水を溶媒とする結晶化」という用語は、水等の水性溶媒を使用し、有機溶媒を一切使用することなく実施される結晶化を指す。
【0090】
X-MVAの水を溶媒とする結晶化
X-MVAの結晶化は、10~80℃の範囲の温度下における冷却結晶化(cooling crystallization)又は析出結晶化(precipitation crystallization)等の従来の方法で実施することができる。X-MVAの結晶化はまた、有利には、煮沸結晶化(boiling crystallization)方法又は煮沸及び冷却による結晶化(boiling and cooling crystallization)方法により実施することができる。
【0091】
本開示の一実施形態において、X-MVAの結晶化は、DSに基づくX-MVA純度が60%を超え、好ましくは70%を超え、より好ましくは80%を超え、最も好ましくは90%を超え、特に95%を超える溶液(供給液)から実施される。この結晶化により、通常、DSに基づく純度が65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、89%、90%、91%、92%、93%、94%を超え、好ましくは95%を超え、最も好ましくは99%を超える、結晶性X-MVA生成物が得られる。
【0092】
X-MVAを含む溶液はまず、溶液のX-MVA含有量に応じて適切な乾燥物含有量(例えば、DSが約60~90%)になるように蒸発させることができる。シロップのDS濃度は、結晶化の可能性を有するのに十分に高い(過飽和)ことが必要である。最小DS含有量は、シロップの温度及び純度に依存する。シロップの純度が高くなるほど、シロップのDSを低くすることが必要である。DSが高過ぎると、結晶化が遅延するか又は結晶の懸濁液が高濃度になり過ぎて結晶を効率的に分離できなくなる。本発明の一実施形態において、Na-MVAを含むシロップの純度は65~99%である。
【0093】
過飽和溶液には、X-MVAの種結晶を添加することができる。種晶を使用する場合、種晶は、乾燥形態の結晶であるか又はこれらを溶媒、好ましくは水中に懸濁させ、結晶の大きさは、好ましくは、例えば、粉末化(pulverizing)又は粉砕(milling)により小さくする。X-MVAを含む溶液の蒸発温度は30℃~80℃の範囲とすることができる。種晶添加した後、結晶化原料(crystallization mass)を、結晶化収率及び粘度が結晶の分離に最適なものとなるまで、冷却しながら同時に混合した。冷却時間は、好ましくは10~60時間である。冷却時の温度降下は、好ましくは5~40℃である。種晶添加したNa-MVAを含むシロップは、約25℃、26℃、27℃、28℃、29℃、30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃から約75℃又はそれを超える温度まで冷却することができる。冷却は、約2hr、3hr、4hr、5hr、6hr、7hr、8hr、9hr、10hr、11hr、12hr、13hr、14hr、15hr、16hr、17hr、18hr、又はそれを超える時間で起こり得る。冷却は連続的に撹拌又は混合しながら行うことができる。混合は結晶化の制御に有利となり得る。混合することにより、結晶の沈降が防止され、結晶成長が維持され、自然発生による結晶形成が低減される。混合は、有利な熱及び物質移動も促進する。次いで、結晶化原料を、最終温度で、ある期間、好ましくは0.5~24時間、最大結晶収率に到達するように混合することができる。結晶は母液から、例えば、濾過又は遠心分離によって分離される。
【0094】
本発明の一実施形態において、X-MVA含有量がDSで65%を超える溶液から、溶解及び再結晶化ステップを経ることなく、1回の結晶化ステップ(=一段階結晶化)で、X-MVA結晶含有量がDSで97%を超え、好ましくはDSで98%を超え、より好ましくはDSで99%を超える高純度のX-MVA結晶が得られる。一段階結晶化は、煮沸及び冷却ステップを含むことができるが、再結晶ステップを含まない。
【0095】
本発明の他の実施形態において、X-MVAの結晶化は、更なるステップとして洗浄を含む。洗浄は、通常、母液からの結晶の分離と関連させて行われる。追加の洗浄は、水性洗浄溶媒を結晶ケークと混合し、その後、結晶を分離することにより行うことができる。
洗浄溶媒は水とすることができる。本発明のこの実施形態により、通常、純度が98%を超えるX-MVAが得られる。
【0096】
種結晶は様々なプロセスにより生成することができる。幾つかの実施形態においては、乾燥した種晶を粉砕することによって粒子径をより小さくする。種結晶の所望の量は、例えば、種結晶の大きさに依存し得る。幾つかの実施形態において、結晶化は、過飽和溶液に種結晶を添加することなく開始する。この種の幾つかの実施形態において、例えば、種晶添加は、種晶の自然発生を用いてなされる。
【0097】
幾つかの実施形態において、結晶化の開始(例えば、種結晶の添加)は、シロップの乾燥固体含有量が少なくとも約60%(重量による)になった時点で実施される。幾つかの実施形態において、結晶化の開始(例えば、種結晶の添加)は、シロップの乾燥固体含有量が少なくとも約70%(重量による)になった時点で実施される。幾つかの実施形態において、結晶化の開始(例えば、種結晶の添加)は、シロップの乾燥固体含有量が少なくとも約80%(重量による)になった時点で実施される。幾つかの実施形態において、結晶化の開始(例えば、種結晶の添加)はシロップの乾燥固体含有量が約60~約90%(重量による)になった時点で実施される。幾つかの実施形態において、結晶化の開始(例えば、種結晶の添加)はシロップの乾燥固体含有量が約70~約90%(重量による)になった時点で実施される。幾つかの実施形態において、結晶化の開始(例えば、種結晶の添加)は、シロップの乾燥固体含有量が約80~約90%(重量による)になった時点で実施される。幾つかの実施形態において、結晶化の開始(例えば、種結晶の添加)は、シロップの乾燥固体含有量が約80~約88%(重量による)になった時点で実施される。
【0098】
蒸発は、結晶成長能力及び粘度が許容すれば、種晶添加後に継続することができる。蒸発後、結晶化原料は、結晶含有量及び粘度が結晶の分離に最適なものとなるまで、冷却と同時に混合される。結晶化原料は、通常、10~75℃の温度に冷却される。次いで結晶化原料は、最終温度で、最大結晶化収率に達するまで、ある期間、好ましくは0.5時間~24時間混合することができ、その後、結晶は、例えば、濾過又は遠心分離により分離される。本発明のプロセスは、通常、更なるステップとして結晶の洗浄を含む。洗浄は、通常、母液からの結晶の分離と関連させて行われる。追加の洗浄は、洗浄溶媒を結晶ケークと混合し、その後結晶を分離することにより行うことができる。洗浄溶媒は水とすることができる。
【0099】
幾つかの実施形態において、再結晶は、X-MVA純度を高めるために1回又は複数回実施される。再結晶は、例えば、X-MVA結晶を水(通常、脱イオン水)に溶解し、得られた溶液をX-MVAに対し過飽和状態にし(例えば、蒸発による)、種晶添加し、上に記載した冷却による結晶化方法を用いて結晶化させることにより実施することができる。
【0100】
幾つかの実施形態において、収率は、初回の結晶化で生成した母液の結晶化を実施することにより高められる。この種の結晶化は、例えば、母液をX-MVAに対し過飽和状態にし(例えば、蒸発による)、種晶添加し、上に記載した冷却による結晶化方法を用いて結晶化させることにより実施することができる。
【0101】
本明細書に記載する結晶化は、溶液中に有機溶媒を存在させることを必要としない。有機溶媒を含まない結晶性X-MVAが得られる。結晶化ステップにおいて有機溶媒を添加することなく生成した結晶性X-MVAは、基本的に有機溶媒を含まない。
【0102】
結晶化及び結晶分離性能を改良するために水溶液に有機溶媒を添加することができるが、そのような有機溶媒の添加を行うと、これらに限定されるものではないが、得られる結晶又は精製物が少量のこうした有機溶媒を含むなどの不利益が生じ、これはパーソナルケア組成物等の市販の組成物には望ましくない。
【0103】
MVL*一水和物の水を溶媒とする結晶化
本明細書に記載するように、驚くべきことに、且つ予期せぬことに、MVLの高純度シロップを本明細書に記載する方法により調製し、23℃未満の温度で数週間冷却すると、メバロノラクトン一水和物(MVL*H2O)結晶が自然発生することが見出された。このメバロノラクトン一水和物(MVL*H2O)結晶は、本明細書に記載するように、MVL*H2Oの結晶化を更に促進するための種晶材料として使用することができる。MVL*H2Oの結晶化は、23℃、22℃未満、21℃未満、20℃未満、19℃未満、18℃未満、17℃未満、16℃未満、15℃未満、14℃未満、13℃未満、12℃未満、11℃未満、10℃未満、9℃未満、8℃未満、7℃未満、6℃未満、5℃未満、4℃未満、3℃未満、2℃未満、1℃未満、及び0℃までの温度等の、融点未満の温度で達成される。MVL*H2Oの結晶化は、0℃未満で、溶液の凝固点の低さまで実施可能である。本発明の一実施形態において、MVL*一水和物(MVL*H2O)の結晶化は、MVL純度がDSで55%超、好ましくは70%超、より好ましくは80%超、最も好ましくは90%超、特に95%超の水溶液から行われる。この結晶化により、通常、純度がDSで65%超、66%超、67%超、68%超、69%超、70%超、71%超、72%超、73%超、74%超、75%超、76%超、77%超、78%超、79%超、80%超、81%超、82%超、83%超、84%超、85%超、86%超、87%超、89%超、90%超、91%超、92%超、93%超、94%超、好ましくは、95%超、最も好ましくは99%超の結晶性MVL*H2O生成物が得られる。
【0104】
一態様において、実用上の理由から、MVL*H2Oの冷却結晶化が、一定温度での結晶化よりも好ましい。一定温度での結晶化は、種晶添加時に非常に高い過飽和度が必要であり、それにより、冷却を用いるよりもプロセスが制御しにくくなる。MVL*H2Oは結晶化中に多くの熱を放出するため、所望の結晶化収率に到達させるために系から熱を取り除かなければならない。種晶添加時の過飽和度が非常に高いなどの幾つかの例において、結晶化が実際に速くなり、結晶化懸濁液の温度が著しく上昇する可能性がある。このことは、効果的な冷却手段を使用するか又は種晶添加時の過飽和度をより低くし、及び制御された冷却を利用することによって克服することができる。
【0105】
MVLを含む溶液はまず、溶液のMVL含有量に応じて適切な乾燥物含有量(例えば、DS約65~90%)になるように蒸発させることができる。シロップのDS濃度は、結晶化の可能性を有するのに十分に高い(過飽和)ことが必要である。最小DS含有量は、シロップの温度及び純度に依存する。シロップの純度が高くなるほど、シロップのDSを低くすることが必要である。DSが高過ぎると、結晶化が遅延するか又は結晶の懸濁液が高濃度になり過ぎて結晶を効率的に分離できなくなる。過飽和溶液には、MVL*H2Oの種結晶を添加することができる。種晶を使用する場合、種晶は、乾燥形態の結晶であるか又はこれらを溶媒、好ましくは水中に懸濁させ、好ましくは、結晶の大きさを、例えば、粉末化又は粉砕により小さくする。種晶添加後、結晶化原料を、結晶化収率及び粘度が結晶の分離に最適なものとなるまで、冷却と同時に混合を行う。
【0106】
MVL*H2Oを結晶化するための条件を実施例13~20に更に記載する。
【0107】
一態様において、メバロノラクトン*一水和物(MVL*H2O)結晶は、結晶が液体に変化するように、水を追加することなく、ある温度(これらに限定されるものではないが、室温である約23℃~30℃等)まで加温することができる。この種の液体は、MVLを約87%及び水を13%含む。
【0108】
メバロノラクトン一水和物(MVL*H2O)結晶は、水に溶解させると、水のような外観及び粘度を呈し、殆ど又は全く着色していない高度に精製された(純度>90%)MVLを生成することができる。この高度に精製されたMVL溶液は、水のような外観を保ったまま、蒸発により更に濃縮することができる。
【0109】
MVA、X-MVA、MVL、及び/又はMVL*H2Oを含む組成物
結晶性X-MVA又は結晶性X-MVAを含む組成物は、例えば、栄養補助食品、乳幼児及び成人用栄養、医薬品、並びに化粧品の成分として使用することができる。
【0110】
本明細書のプロセスにより精製されたMVA、X-MVA、MVL、及び/若しくはMVL*H2O又は本明細書に記載するMVA、X-MVA、MVL、及び/若しくはMVL*H2Oを含む組成物は、例えば、栄養補助食品、パーソナルケア組成物(これらに限定されるものではないが、スキンケア、口腔ケア、ヘアケア組成物等)、医薬品、及び化粧品の成分として使用することができる。
【0111】
パーソナルケア産業においてMVA又はMVLを使用することを目的とする場合、それが無色透明であり、有色の混入物が殆ど又は全く存在しない精製された生成物は高価値である。本明細書に記載するように、本明細書に記載する方法により得られた高度に精製されたMVL生成物は、殆ど又は全く色が残っておらず、無色透明である。
【0112】
本明細書に開示する組成物及び方法の非限定的な例を次に示す:
1.水溶液から結晶形態の有機酸又はその塩を生成するための方法であって、前記有機酸又はその塩を含む水溶液をナノ濾過に付すことにより透過液を生成することと、前記透過液から有機酸又はその塩を、水を溶媒とする結晶化により結晶化させることと、を含む、方法。
【0113】
2.水を溶媒とする結晶化は、透過液を蒸発させることにより、DSを少なくとも60%含むシロップを得ることと、次いで、前記シロップを冷却することにより、前記有機酸又はその塩の結晶を生成することと、を含む、実施形態1の方法。
【0114】
3.水溶液は、発酵ブロスである、実施形態1の方法。
【0115】
4.発酵ブロスは、プレコート濾過、精密濾過、又は限外濾過の少なくとも1種により、前記発酵ブロスからバイオマス及び任意の固体を除去することにより清澄化される、実施形態3の方法。
【0116】
5.発酵ブロスは、エシェリヒア・コリ(Escherichiacoli)の発酵により得られるブロスである、実施形態3の方法。
【0117】
6.前記シロップから濾過及び遠心分離により前記有機酸又はその塩の前記結晶を除去することを更に含む、実施形態2の方法。
【0118】
7.有機酸はカルボン酸である、実施形態1の方法。
【0119】
8.カルボン酸は、ヒドロキシカルボン酸及びジカルボン酸からなる群から選択される、実施形態7の方法。
【0120】
9.ヒドロキシカルボン酸は、リンゴ酸、グリコール酸、イソクエン酸、マンデル酸、乳酸、タルトロン酸、酒石酸、クエン酸、β-ヒドロキシ酪酸、メバロン酸、及びサリチル酸からなる群から選択される、実施形態8の方法。
【0121】
10.水溶液から結晶形態のメバロン酸の塩(X-MVA)を生成するための方法であって、前記メバロン酸の塩を含む水溶液を精製ステップに付すことであって、前記精製ステップは、純度が少なくとも60%、好ましくは60~99%の間にあるX-MVAを含む精製された溶液を生成する、ことと、前記精製された溶液から前記メバロン酸の塩を、水を溶媒とする結晶化により結晶化させることと、を含む、方法。
【0122】
11.前記精製ステップは、前記メバロン酸の塩を含む水溶液をナノ濾過に付すことにより透過液を生成することを含み、前記透過液は、純度が少なくとも60%であるX-MVAを含む、実施形態10に記載の方法。
【0123】
11b.水溶液から結晶形態のメバロン酸の塩を生成するための方法であって、前記メバロン酸の塩(X-MVA)を含む水溶液をナノ濾過に付すことにより透過液を生成することと、前記透過液から前記メバロン酸の塩を、水を溶媒とする結晶化により結晶化させることと、を含む、方法。
【0124】
12.水を溶媒とする結晶化は、精製された溶液又は透過液を蒸発させることにより、DSを少なくとも60%含むシロップを得ることと、次いで、前記シロップを冷却することによりX-MVA結晶を生成することと、を含む、実施形態10、11、及び11bの方法。
【0125】
12b.透過液のX-MVA純度は、少なくとも60%であり、任意選択的に、65~95%の間にある、実施形態11bの方法。
【0126】
12c.シロップのX-MVA純度は、少なくとも60%であり、任意選択的に、65~95%の間にある、実施形態12の方法。
【0127】
13.水溶液は、発酵ブロスである、実施形態10の方法。
【0128】
14.発酵ブロスは、プレコート濾過、精密濾過、又は限外濾過の少なくとも1種により、前記発酵ブロスからバイオマス及び任意の固体を除去することにより清澄化される、実施形態13の方法。
【0129】
15.発酵ブロスは、エシェリヒア・コリ(Escherichiacoli)の発酵により得られるブロスである、実施形態13の方法。
【0130】
16.前記シロップから濾過及び遠心分離により前記結晶を除去することを更に含む、実施形態12の方法。
【0131】
16b.ナノ濾過は、約150Da~約700Daで分離分画(separation cut-off)するナノ濾過膜を利用する、実施形態11の方法。
【0132】
17.ナノ濾過は、2価の塩を少なくとも60~98重量%保持(retain)すると同時に、1価の塩を30重量%未満阻止(reject)することができるナノ濾過膜を利用する、実施形態10の方法。
【0133】
18.水溶液から水に可溶化したメバロノラクトンを生成するための方法であって:
a)メバロン酸の塩(X-MVA)を含む水溶液をナノ濾過に付すことにより透過液を生成し、前記透過液から前記メバロン酸の塩を、水を溶媒とする結晶化により結晶化させることによって、前記メバロン酸の塩の結晶を生成することにより、水溶液から結晶形態の前記メバロン酸の塩を生成することと;
b)(a)の結晶を水に溶解することによって水に可溶化したメバロン酸の塩を生成し、前記液体を陽イオン交換に付すことにより、前記水に可溶化したメバロン酸の塩を水に可溶化したメバロノラクトンに変換することと;を含む、方法。
【0134】
18b.透過液のX-MVA純度は、少なくとも60%であり、任意選択的に、65~95%の間にある、実施形態18の方法。
【0135】
18c.透過液は、前記メバロン酸の塩の結晶を生成するためにシロップから水を溶媒とする結晶化により前記メバロン酸の塩を結晶化する前に、前記シロップを生成するために濃縮される、実施形態18の方法。
【0136】
18d.シロップのX-MVA純度は、少なくとも60%であり、任意選択的に、65~95%の間にある、実施形態18cの方法。
【0137】
18e.水に可溶化したメバロノラクトンの純度は、少なくとも60%であり、任意選択的に、65~95%の間にある、実施形態18の方法。
【0138】
18f.b)の水に可溶化したメバロノラクトンは、少なくとも90%DSである高度に濃縮されたMVL液体を生成するために更に濃縮される、実施形態18の方法。
【0139】
19.前記メバロン酸の塩は、Na-メバロネート(Na-MVA)、K-メバロネート(K-MVA)、アンモニウムメバロネート(NH4-MVA)、リチウムメバロネート(Li-MVA)、他の任意の1価のメバロン酸の塩、又はこれらの任意の組合せからなる群から選択される、実施形態10又は実施形態18の方法。
【0140】
20.前記水に可溶化したメバロノラクトンの純度は、少なくとも90%(この百分率は、HPLC分析を用いたピークの総面積に対する、MVLに対応するピークの面積である)である、実施形態18、18b、18c、18d、18e、18f、又は19の方法。
【0141】
21.メバロン酸の塩(X-MVA)を含む水溶液からメバロノラクトンを生成するための方法であって、前記メバロネートの塩を含む水溶液を陽イオン交換に付し、それによりメバロネートの塩を含む前記水溶液をメバロノラクトン(MVL)を含む水溶液に変換することを含む、方法。
【0142】
22.前記メバロン酸の塩は、Na-メバロネート(Na-MVA)、K-メバロネート(K-MVA)、アンモニウムメバロネート(NH4-MVA)、リチウムメバロネート(Li-MVA)、他の任意の1価のメバロン酸の塩、又はこれらの任意の組合せからなる群から選択される、実施形態21の方法。
【0143】
23.メバロノラクトンを含む前記水溶液を濃縮することにより、DSを少なくとも65%~90%含む液体にすることを更に含む、実施形態21の方法。
【0144】
24.メバロノラクトン一水和物(MVL*H2O)結晶を得るために前記液体を0~25℃に冷却することを更に含む、実施形態23の方法。
【0145】
25.前記MVL*H2O結晶を水に溶解/可溶化することにより、高度に精製されたメバロノラクトンの希薄な液体を得ることを更に含み、希薄な液体のメバロノラクトン純度は少なくとも90%(この百分率は、HPLC分析を用いたピークの総面積に対する、MVLに対応するピークの面積である)である、実施形態24の方法。
【0146】
25b.前記高度に精製されたメバロノラクトンを含む希薄な液体は、少なくとも90%DSである高度に濃縮されたMVL液体を生成するために更に濃縮される、実施形態25の方法。
【0147】
26.水溶液は、発酵ブロスである、実施形態21の方法。
【0148】
27.発酵ブロスは、プレコート濾過、精密濾過、又は限外濾過の少なくとも1種により、前記発酵ブロスからバイオマス及び任意の固体を除去することにより清澄化される、実施形態26の方法。
【0149】
28.発酵ブロスは、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)の発酵により得られるブロスである、実施形態26の方法。
【0150】
29.実施形態20~26のいずれか一つにより生成する、MVL又はその可溶化した形態を含む医薬用又は在宅医療用又は栄養又はパーソナルケア又は化粧用組成物。
【0151】
30.実施形態1~17のいずれか一つの方法により得られる結晶性X-MVA。
【0152】
31.実施形態24の方法により得られる結晶性メバロノラクトン*一水和物(MVL*H2O)。
【0153】
32.分子式C6H10O3
*H2Oを有する結晶性メバロノラクトン*一水和物(MVL*H2O)。
【0154】
33.融点は25℃未満である、結晶性メバロノラクトン*一水和物(MVL*H2O)。
【0155】
34.メバロノラクトン一水和物(MVL*H2O)結晶を含む組成物。
【0156】
35.可溶化したメバロノラクトン一水和物(MVL*H2O)結晶を含む組成物。
【実施例0157】
以下に示す実施例においては、別段の指定がない限り、部及び百分率は重量により、度は摂氏である。これらの実施例は、本開示の実施形態を示すが、例示のみを目的として与えられていることを理解すべきである。上の検討及びこれらの実施例から、当業者は、本開示をその用法及び状況に適合させるために様々な変更及び修正を施すことができる。この種の修正もまた、添付の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
【0158】
実施例1
高緻密性(tight)ナノ濾過膜を用いたナトリウムメバロネート(Na-MVA)液のナノ濾過(NF)
本実施例においては、有機酸又はその塩を含む水溶液のナノ濾過、例えば、高緻密性ナノ濾過膜を使用するナトリウムメバロネート(Na-MVA)液のナノ濾過について記載する。
【0159】
この処理設備は、プレート・フレーム式濾過ユニット(Alfa Laval Labstak M20)、供給及び透析濾過ポンプ、熱交換器、冷却装置、70リットル容の供給液槽に加えて、入口及び出口圧力計並びに圧力制御弁を含むものとした。総膜面積は0.65m2とした。装着した膜は、Desal-5 DL(Suez、分画分子量約150~300ダルトン、25℃におけるMgSO4阻止率>98%)及びXN45(TriSep(商標登録)/Microdyn Nadir、分画分子量約300~500ダルトン、25℃におけるMgSO4阻止率90~96%)とした。MgSO4の阻止率は、濃度1~2g/l、7~8bar、25℃、pH6~8、10~25%回収率で規定したものである。
【0160】
エシェリヒア・コリ(Escherichia Coli)を原材料とするナトリウムメバロネートの発酵に由来する限外濾過の透過液を供給液として使用した。その目的は、不純物(他の塩、着色物質、消泡剤、タンパク質)を保持しながら、ナトリウムメバロネートを通過させることにあった。
【0161】
供給液63.4kgを70リットル容の供給液槽に供給した。供給液の乾燥物濃度はショ糖のRDSに基づき6.8g/100gであり、電気伝導率は17.7mS/cmであり、pHは7.8であった。透過液をDL膜から回収し、XN45膜からの透過液を供給液槽に再循環させた。供給液は表1に示す構成を有していた。HPLC及びIC分析値を%/ショ糖RDS基準で示す。
【0162】
【0163】
供給液は50~68℃に維持し、水を透析濾過に使用した。濾過圧力を20~33Barとし、濃縮液のDS(乾燥物)濃度を制御して、流束が7kg/m2/h(観測される最小流束値(minimum flux point))を超えるように維持した。
【0164】
回分式濾過を行った後、3つの透過液画分及び最終濃縮液画分を回収した。透過液画分及び最終濃縮液画分に関するHPLC及びIC分析値(%/ショ糖RDS基準)を含む結果を表2に示す。
【0165】
【0166】
メバロネートの全収率は49.9%と求められた。透過液のナトリウムメバロネート純度の平均値は75.6%であった。
【0167】
供給液及び濃縮液のサンプルから求めたサルフェート除去効率は78.1%であり、ホスフェート除去効率は71.0%であった。DL膜に関し5点で測定したナトリウムメバロネート阻止率の平均値は76.7%であった。DL及びXN45のメバロネート阻止率を、41kgの透過液を回収した後に、4番目の試料採取点で平行して測定したところ、阻止率はDL及びXN45でそれぞれ71.0%及び41.8%であった。
【0168】
実施例2
低緻密性(open)ナノ濾過(NF)膜を用いたナトリウムメバロネート液のナノ濾過 本実施例においては、有機酸又はその塩を含む水溶液のナノ濾過、例えば、低緻密性ナノ濾過膜を使用するナトリウムメバロネート液のナノ濾過について記載する。
【0169】
この処理設備は、プレート・フレーム式濾過ユニット(Alfa Laval Labstak M20)、供給及び透析濾過ポンプ、熱交換器、冷却装置、100リットル容の供給液槽に加えて、入口及び出口圧力計並びに圧力制御弁を含むものとした。総膜面積は0.72m2とした。装着した膜は、XN45(TriSep(商標登録)/Microdyn Nadir、分画分子量約300~500ダルトン、25℃におけるMgSO4阻止率90~96%)とした。MgSO4の阻止率は、濃度1~2g/l、7~8bar、25℃、pH6~8、10~25%回収率で規定したものである。
【0170】
エシェリヒア・コリ(Escherichia Coli)を原材料とするナトリウムメバロネートの発酵に由来する限外濾過の透過液を供給液として使用した。その目的は、不純物(他の塩、着色物質、消泡剤、タンパク質)を保持しながら、ナトリウムメバロネートを通過させることにあった。
【0171】
供給液80.0kgを100リットル容の供給液槽に供給した。供給液の濃度はショ糖のRDSに基づき6.6g/100gであった。pHをNaOHで8.8に調整した。消泡剤Foamblast 882の濃度を測定したところ、1337mg/Lであった。
供給液は表3に示す構成を有していた。HPLC及びIC分析値を%/ショ糖RDS基準で示す。
【0172】
【0173】
供給液を46~51℃に維持した。濾過圧力を10~25Barとし、流束が7kg/m2/h(観測される最小流束値)を超えるようにした。
【0174】
回分式濾過を行った後、2つの透過液画分及び最終濃縮液画分を回収した。透過液画分及び最終濃縮液画分に関するHPLC及びIC分析値(%/ショ糖RDS基準)を含む結果を表4に示す。
【0175】
【0176】
メバロネートの全収率は82.1%と求められた。濃度29.5%の透過液サンプルを蒸発させて測定した消泡剤濃度は84.4mg/lであり、これは、生成物の透過液画分から消泡剤が99%除去されたことを意味する。最終濃縮液の消泡剤濃度を測定したところ13230.0mg/lであった。3点で測定したナトリウムメバロネート阻止率の平均値は23.6%であった。
【0177】
実施例3
低緻密性ナノ濾過(NF)膜を用いたナトリウムメバロネート液のナノ濾過
本実施例においては、有機酸又はその塩を含む水溶液のナノ濾過、例えば、低緻密性ナノ濾過膜を使用するナトリウムメバロネート液のナノ濾過について記載する。
【0178】
この処理設備は、プレート・フレーム式濾過ユニット(Alfa Laval Labstak M20)、供給及び透析濾過ポンプ、熱交換器、冷却装置、100リットル容の供給液槽に加えて、入口及び出口圧力計並びに圧力制御弁を含むものとした。総膜面積は0.72m2とした。装着した膜は、XN45(TriSep(商標登録)/Microdyn Nadir、分画分子量約300~500ダルトン、25℃におけるMgSO4阻止率90~96%)とした。MgSO4の阻止率は、濃度1~2g/l、7~8bar、25℃、pH6~8、10~25%回収率で規定したものである。
【0179】
エシェリヒア・コリ(Escherichia Coli)を原材料とするナトリウムメバロネートの発酵に由来する限外濾過の透過液を供給液として使用した。その目的は、不純物(他の塩、着色物質、消泡剤、タンパク質)を保持しながら、ナトリウムメバロネートを通過させることにあった。
【0180】
供給液79.7kgを100リットル容の供給槽に供給した。供給液の濃度を7.0g/100gとした。pHを50グラムの30%NaOHで8.25に調整した。供給液は表5に示す構成を有していた。HPLC分析値を%/ショ糖RDS基準で示す(表6)。
【0181】
【0182】
供給液を46~51℃に維持した。濾過圧力を10~25Barとし、流束が7kg/m2/h(観測される流束最小値)を超えるようにした。
【0183】
回分式濾過を行った後、透過液画分及び最終保持液画分を回収した。全透過液の一部を蒸発させ、乾燥固体を28.7%とした。透過液画分及び最終濃縮液画分に関するHPLC分析値(%/ショ糖RDS基準)を含む結果を表6に示す。
【0184】
【0185】
全メバロネート収率は86.8%と求められた。
【0186】
実施例4
低緻密性スパイラル型ナノ濾過(NF)膜を用いたナトリウムメバロネート液のナノ濾過 本実施例においては、有機酸又はその塩を含む水溶液のナノ濾過、例えば、低緻密性スパイラル型ナノ濾過膜を使用するナトリウムメバロネート液のナノ濾過について記載する。
【0187】
この処理設備は、プレート・フレーム式濾過ユニット(Alfa Laval Labstak M20)、供給及び透析濾過ポンプ、熱交換器、冷却装置、1000リットル容の供給液槽に加えて、入口及び出口圧力計並びに圧力制御弁を含むものとした。総膜面積は14.8m2とした。装着した膜は、31milのスペーサを備える4040 XN45(TriSep(商標登録)/Microdyn Nadir、分画分子量約300~500ダルトン、25℃におけるMgSO4阻止率90~96%)とした。MgSO4の阻止率は、濃度1~2g/l、7~8bar、25℃、pH6~8、10~25%回収率で規定したものである。
【0188】
エシェリヒア・コリ(Escherichia Coli)を原材料とするナトリウムメバロネートの発酵に由来する限外濾過の透過液を供給液として使用した。その目的は、不純物(他の塩、着色物質、消泡剤、タンパク質)を保持しながら、ナトリウムメバロネートを通過させることにあった。
【0189】
供給液600kgを1000リットル容の供給槽に供給した。供給液の濃度を6.7g/100gとした。pHを30%NaOHで8.5に調整した。供給液は表7に示す構成を有していた。HPLC分析値を%/ショ糖RDS基準で示す。
【0190】
【0191】
供給液を45~52℃に維持した。濾過圧力を10~25Barとし、流束が5kg/m2/h(観測される最小流束値)を超えるようにした。
【0192】
回分式濾過を行った後、透過液画分及び最終濃縮液画分を回収した。全透過液を蒸発させることにより乾燥固体を39.1%とした。透過液画分及び最終濃縮液画分に関するHPLC分析値(%/ショ糖RDS基準)を含む結果を表8に示す。
【0193】
【0194】
メバロネートの全収率は87.5%と求められた。
【0195】
実施例5
ナトリウムメバロネート(Na-MVA)の水を溶媒とする結晶化
本実施例においては、有機酸又はその塩の、水を溶媒とする結晶化、例えば、ナトリウムメバロネート(Na-MVA)の水を溶媒とする結晶化及びナトリウムメバロネート種結晶の調製について記載する。
【0196】
結晶化原料は、ナトリウムメバロネートを含む水性シロップとした。シロップのナトリウムメバロネート純度はDSで96%であった。DSで≧95%のナトリウムメバロネートを含む水性シロップは、公知の市販のナトリウムメバロネート塩を脱イオン水中に溶解するか、又は公知の市販のナトリウムメバロネート塩を、実施例1~4に従い調製したナトリウムメバロネートを含むナノ濾過透過液と混合することにより生成することができる。
【0197】
原料シロップを70℃の温度で蒸発させた(Rotavapor R-151)。DS(乾燥物)が約54%となった時点で、自然発生核により結晶が生成した。核発生後も、結晶化原料のDSが81.8%となるまで70℃で2時間蒸発を継続した。
【0198】
蒸発させた結晶化原料を2リットル容の冷却晶析装置に移し替えた。結晶化原料を70℃で1時間維持した後、連続的に撹拌しながら20時間以内に40℃の温度まで冷却した。
【0199】
結果として得られた結晶化原料930gを洗浄水20mLと一緒に遠心分離した(回分式遠心分離、バスケット径22.5cm、3500rpm、5min)。遠心分離によるメバロネートの収率は45%であり、遠心分離ケークのナトリウムメバロネート純度はDSで≧98%であり、遠心分離母液のナトリウムメバロネート純度はDSで94%であった。
【0200】
結晶ケークを60℃の加熱室で19時間乾燥させた。乾燥ケークの水分含有量は≦0.2重量%であった。
【0201】
このプロセスに従い調製したナトリウムメバロネート結晶を実施例6、7、及び8の種結晶として使用した。使用前にこの結晶を磁器製粉砕器で粉砕した。
【0202】
実施例6
ナトリウムメバロネート(Na-MVA)の水を溶媒とする結晶化
本実施例においては、有機酸又はその塩の、水を溶媒とする結晶化、例えば、ナトリウムメバロネート(Na-MVA)の水を溶媒とする結晶化について記載する。
【0203】
結晶化原料には、実施例4に従い調製した、ナノ濾過透過液を蒸発させたものを用いた。結晶化を行う前に、シロップを活性炭で処理することにより着色物質を除去した。炭素処理は、蒸発させたシロップ76kgにNorit DX 1炭素粉600gを投入することにより行った(DS1kg当たり炭素粉約20g)。シロップを50℃の温度に加熱し、一定温度で45分間、撹拌を継続したままにした。次いで、濾過助剤を用いて炭素粉を濾過することによりシロップから分離した(Seitzデプスフィルタ、Kenite 300濾過助剤1.1kg)。得られたシロップのナトリウムメバロネート純度はDSで73%であり、色価は6300 ICUMSAであり、DSは24.1%であった。
【0204】
炭素処理した原料シロップ41kgを蒸発させることにより、DSを86.0%とした(Luwa薄膜蒸発器NL3-210/1600/10及びRotavapor R-153蒸発器)。起泡を防ぐため、蒸発時に10% Struktol J 650消泡剤4gを添加した。得られたシロップ11.6kgを10リットル容の冷却晶析装置に移し替え、70℃の温度で2回種晶添加した:1回目はナトリウムメバロネート乾燥種晶(実施例5に従い調製)を0.3g、次いで1回目の種晶添加から0.6時間後にナトリウムメバロネート乾燥種晶2.0gを添加した。1回目の種晶添加により非常に細かい結晶が生成した。
【0205】
種晶添加したシロップを連続的に撹拌しながら16時間以内に48℃の温度まで冷却した。48℃に冷却した後、結晶化原料を48℃で2時間維持した。
【0206】
結果として得られた結晶化原料10.7kgを洗浄水170mLと一緒に遠心分離した(回分式遠心分離、バスケット径40.5cm、2050rpm、10min)。遠心分離によるメバロネートの収率は33%であった。遠心分離ケークのナトリウムメバロネート純度はDSで94%であり、未乾燥ケークの水分含有量は5.3重量%であり、色価は5200 ICUMSAであった。遠心分離母液のナトリウムメバロネート純度はDSで68%であり、色価は82000 ICUMSAであった。
【0207】
実施例7
ナトリウムメバロネート(Na-MVA)の水を溶媒とする結晶化
本実施例においては、有機酸又はその塩の、水を溶媒とする結晶化、例えば、ナトリウムメバロネート(Na-MVA)の水を溶媒とする結晶化について記載する。
【0208】
結晶化原料には、実施例4に従い調製した、ナノ濾過透過液を蒸発させたものを用いた。これを、実施例6に記載した手順に従い活性炭で処理した(DS1kg当たりNorit DX 1炭素粉20g、接触時間45min、接触温度50℃、炭素粉は、Seitzデプスフィルタを使用し、Kenite 300濾過助剤と一緒に分離)。この原料のナトリウムメバロネート純度はDSで73%であり、色価は6300 ICUMSAであった。
【0209】
この原料シロップをDSが86.2%となるまで蒸発させた(Luwa薄膜蒸発器NL3-210/1600/10蒸発器及びRotavapor R-153蒸発器)。結果として得られたシロップ11.7kgを10リットル容の冷却晶析装置に移し替えて、2.0gのナトリウムメバロネート乾燥種晶(実施例5に従い調製)を69℃の温度で添加した。種晶添加したシロップを連続的に撹拌しながら16時間以内に44℃の温度まで冷却した。次いで、結晶化原料に脱イオン水を加えて希釈することにより、DS85.4%とした。希釈した結晶化原料を3時間以内に40℃の温度まで冷却し、40℃で2時間維持した。
【0210】
結果として得られた結晶化原料10.9kgを洗浄水170mLと一緒に遠心分離した(回分式遠心分離、バスケット径40.5cm、2050rpm、10min)。遠心分離によるメバロネートの収率は37%であった。遠心分離ケークのナトリウムメバロネート純度はDSで95%であり、未乾燥ケークの水分含有量は7.0重量%であり、色価は1100 ICUMSAであった。遠心分離母液のナトリウムメバロネート純度はDSで67%であり、色価は14000 ICUMSAであった。
【0211】
実施例8
ナトリウムメバロネート(Na-MVA)の水を溶媒とする結晶化
本実施例においては、有機酸又はその塩の、水を溶媒とする結晶化、例えば、脱イオン水中に結晶ケークを溶解することにより調製したシロップからの、ナトリウムメバロネート(Na-MVA)の水を溶媒とする結晶化について記載する。
【0212】
実施例6及び実施例7からのナトリウムメバロネート結晶を合わせて脱イオン水に溶解した。結果として得られた溶液を実施例6に記載した手順に従い活性炭で処理し(DS1kg当たりNorit DX 1炭素粉20g、接触時間45min、接触温度50℃、炭素粉をKenite 300濾過助剤と一緒にブフナー濾過により分離)、0.2μmの無菌フィルタで濾過し、DSが83.5%になるまで蒸発させた(Rotavapor R-151蒸発器)。シロップのナトリウムメバロネート純度はDSで96%であり、色価は1300 ICUMSAであった。
【0213】
結果として得られたシロップ5.6kgを6リットル容の冷却晶析装置に移し替えて、1.6gのナトリウムメバロネート乾燥種晶(実施例5に従い調製)を68℃の温度で添加した。種晶添加したシロップを連続的に撹拌しながら18時間以内に40℃の温度まで冷却した。40℃に冷却した後、結晶化原料を40℃で4時間維持した。
【0214】
結果として得られた結晶化原料5.1kgを洗浄水150mLと一緒に遠心分離した(回分式遠心分離、バスケット径40.5cm、2050rpm、10min)。遠心分離によるメバロネートの収率は42%であった。遠心分離ケークのナトリウムメバロネート純度はDSで≧98%であり、未乾燥ケークの水分含有量は1.5重量%であり、色価は100 ICUMSAであった。遠心分離母液のナトリウムメバロネート純度はDSで94%であり、色価は3400 ICUMSAであった。
【0215】
実施例9
結晶化したNa-MVAからメバロノラクトン(MVL)への陽イオン交換
本実施例においては、メバロノラクトン(MVL)を含む希薄な液体(これは、任意選択的に蒸発させることにより濃縮することができる)を生成するための、Na-MVA結晶が溶解している溶液の陽イオン交換について記載する(
図1Bも参照)。
【0216】
処理設備は、内径45mm、全長1000mmのジャケット付きガラスカラムと、カラム上方に配置された供給液容器と、カラム出口の蠕動ポンプと、実験室用ロータリーエバポレータであるBuechi rotavapor R200とを含むものとした。Dowex 88強酸性陽イオン交換樹脂1リットルをカラムに充填し、ベッド長を約700mmとした。樹脂を逆洗し、4リットル(4ベッド体積)の5%H2SO4を用いて流速2BV/hとし、25℃の温度でH+型に再生した。
【0217】
水を用いた結晶化プロセスにより得られたDS純度約98%のナトリウムメバロネート結晶を水に溶解することにより24.2%の溶液を生成した。この目的は、ナトリウム陽イオンを交換して純粋なメバロン酸又はメバロノラクトンシロップを生成することにあった。
【0218】
供給液957グラムを、流速を1BV/hとして室温(約25℃)でカラムを通過させ、水を用いて溶出を継続した。供給液のpHは9.78であり、電気伝導率は39.4mS/cmであった。カラム溶出液のbrixが0.4%になったら生成物の回収を開始し、溶出液のbrixが1.2%になったら終了した。1322グラムの僅かに着色した生成物を回収した。カラムを再びH+型に再生し、原料を、速度を1BV/hとして室温(約25℃)で通過させた。カラム流出液のbrixが3.0%になったら生成物の回収を開始し、流出液のbrixが1.4%になったら終了した。1641グラムの着色していない生成物を回収した。この物質をロータリーエバポレータで蒸発させることによりKF-DS 99.1%とした。MVLのDS純度は95.5%であった。
【0219】
供給液及びイオン交換(IEX)生成物のHPLC分析値(乾燥物基準の%)を含む結果を表9に示す。
【0220】
【0221】
IEXプロセスによるメバロノラクトンの全収率を求めたところ95.6%であった。
【0222】
このプロセスに従い生成したメバロノラクトンを含むシロップの比旋光度は-34.7°(水、c=1、20℃)であった。
【0223】
実施例10
Na-MVA溶液からメバロノラクトン(MVL)への陽イオン交換
本実施例においては、メバロノラクトン(MVL)を含む水溶液(これは、任意選択的に蒸発させることにより濃縮することができる)を生成するための、Na-MVAを含む水溶液の陽イオン交換について記載する(
図2も参照)。
【0224】
処理設備は、100リットル容の槽と、Seitzデプスフィルタと、内径130mm、全長1500mmのジャケット付きガラスカラム3本と、カラム上方に配置された供給液容器と、カラム出口の蠕動ポンプと、LUWA薄膜蒸発器とを含むものとした。Dowex 88強酸性陽イオン交換樹脂(Dow)13リットルを各カラムに充填し、ベッド長を約1000mmとした。樹脂を逆洗し、130リットル(約3.3ベッド体積)の5%H2SO4を用いて流速を2BV/hとし、25℃の温度でH+型に再生した。
【0225】
この目的は、ナトリウム陽イオンを交換して、更に精製に付すためのメバロン酸又はメバロノラクトンシロップを生成することにあった。IEX供給液から析出する可能性のある着色物質を粉末活性炭を使用して除去した。
【0226】
Na-MVA純度が75.5%/DSであり、色価が10986 ICUMSA単位であるナノ濾過透過液を39.1%brixになるまで蒸発させた。この溶液76.2kgを50~60℃の温度に加熱し、2%/DSであるNorit DX 1粉末活性炭を添加して45分間混合した。懸濁液を、Seitzデプスフィルタである濾過面積0.56m2のT2600フィルタシート(Pall)及びプリコートとしてのKenite 300(IMERYS Filtration)珪藻土濾過助剤1kg/m2を用いて濾過した。brix24.1%の濾過液110リットルを蒸発させることにより、brix53%、色価6496 ICUMSA単位の溶液を得た。この材料14.8kgを希釈して、IEX供給液用にbrix39.8%とし、50℃に加熱した。
【0227】
供給液20.05kgを速度2BV/hとして50℃でカラムを通過させ、水を用いて溶出を継続した。最後のカラム溶出液のbrixが0.5%になったら生成物の回収を開始し、溶出液のbrixが4.0%となり、pHが2.5になったら終了した。生成物を2つの画分として回収した。画分を合わせて蒸発させた。合わせて蒸発させたIEX生成物の色価は2362 ICUMSA単位であり、MVL純度は約76%/DSであった。
【0228】
供給液及びIEX生成物に関する結果を表10に記載する。
【0229】
【0230】
実施例11
Na-MVA溶液からメバロノラクトン(MVL)への陽イオン交換
本実施例においては、メバロノラクトン(MVL)を含む水溶液(これは、任意選択的に蒸発させることにより濃縮することができる)を生成するための、Na-MVAを含む水溶液の陽イオン交換について記載する(
図2も参照)。
【0231】
処理設備は、100リットル容のタンクと、Seitzデプスフィルタと、内径130mm、全長1500mmのジャケット付きガラスカラム3本と、カラム上方に配置された供給液容器と、カラム出口の蠕動ポンプと、LUWA薄膜蒸発器とを含むものとした。Dowex 88強酸性陽イオン交換樹脂(Dow)13リットルを各カラムに充填し、ベッド長を約1000mmとした。樹脂を逆洗し、130リットル(約3.3ベッド体積)の5%H2SO4を用いて流速を2BV/hとし、25℃の温度でH+型に再生した。
【0232】
この目的は、ナトリウム陽イオンを交換して、更に精製に付すためのメバロン酸又はメバロノラクトンシロップを生成することにあった。IEX供給液から析出する可能性のある着色物質を、粉末活性炭を使用して除去した。
【0233】
Na-MVA純度が78.8%/DSであり、色価が8887 ICUMSA単位であるナノ濾過透過液を42.0%brixになるまで蒸発させた。この溶液41.4kgを55~58℃の温度に加熱し、2.2%/DSであるNorit DX 1粉末活性炭を添加して70分間混合した。懸濁液を、Seitzデプスフィルタである濾過面積0.28m2のT2600フィルタシート(Pall)及びプリコートとしてのKenite 300(IMERYS Filtration)珪藻土濾過助剤1kg/m2を用いて濾過した。brix23.8%及び色価2124 ICUMSA単位を有する濾過液56リットルが得られた。IEX供給液とするために、材料を蒸発させてbrix31.1%とした。
【0234】
供給液35.7kgを速度2BV/hとして25℃でカラムを通過させ、水を用いて溶出を継続した。最後のカラム溶出液のbrixが0.5%になったら生成物の回収を開始し、溶出液のbrixが2.0%となり、pHが2.5に達したら終了した。生成物及び残存画分を回収した。蒸発させたIEX生成物のMVL純度は約78~83%/DSであった。供給液及びIEX生成物に関する結果を表11に記載する。
【0235】
【0236】
実施例12
Na-MVA溶液からメバロノラクトン(MVL)への陽イオン交換
本実施例においては、メバロノラクトン(MVL)を含む水溶液(これは、任意選択的に蒸発させることにより濃縮することができる)を生成するための、Na-MVAを含む水溶液の陽イオン交換について記載する(
図2も参照されたい)。
【0237】
処理設備は、内径130mm、全長1500mmのジャケット付きガラスカラム3本と、カラム上方に配置された供給液容器と、カラム出口の蠕動ポンプとを含むものとした。
Dowex 88強酸性陽イオン交換樹脂(Dow)13リットルを各カラムに充填し、ベッド長を約1000mmとした。樹脂を逆洗し、130リットル(約3.3ベッド体積)の5%H2SO4を用いて流速を2BV/hとし、25℃の温度でH+型に再生した。
【0238】
この目的は、ナトリウム陽イオンを交換して、更に精製に付すためのメバロン酸又はメバロノラクトンシロップを生成することにあった。
【0239】
Na-MVA純度が68.2%/DSであり、色価が82952 ICUMSA単位であるNa-MVA結晶化後に得られた母液を39.4%brixに希釈した。
【0240】
供給液17.0kgを速度2BV/hとして25℃でカラムを通過させ、水を用いて溶出を継続した。最後のカラム溶出液のbrixが0.8%になったら生成物の回収を開始し、溶出液のbrixが2.0%になったら終了した。生成物を3つの画分で回収した。
画分を合わせて蒸発させた。合わせて蒸発させたIEX生成物のMVL純度は約70~73%/DSであった。
【0241】
供給液及びIEX生成物に関する結果を表12に記載する。
【0242】
【0243】
実施例13
メバロノラクトン一水和物の水を溶媒とする結晶化及びMVL*H2O種結晶の調製
本実施例においては、メバロノラクトン一水和物の水を溶媒とする結晶化及びメバロノラクトン一水和物種結晶の調製について記載する。
【0244】
高純度のMVLのシロップを本明細書に記載した方法により調製した(
図1A及び1B、実施例1~9)。予期せぬことに、且つ驚くべきことに、この高純度MVLシロップを低温(約6℃)で数週間保存すると、メバロノラクトン一水和物(MVL
*H
2O)結晶が自然発生することが認められた。
【0245】
このシロップのMVL純度はDSで98%(HPLC、H+型樹脂、面積%)であり、水分含有量は約6%w/wであり、これはMVL*H2Oを結晶化させるのに充分に高かった。
【0246】
結晶を濾過し、濾過チューブ内で遠心分離(570g、約15℃で2分間)することにより、結晶表面から母液を除去した。次いでこれらの結晶及び母液を分析した。結晶の水分含有量は10.8%(カールフィッシャー法による)であり、これは、結晶化条件に起因して、理論値である12.1%よりも少し低かった。母液の水分含有量は3.2%であり、これは、一水和物の結晶が生成する際に母液が濃縮されたことを意味している。結晶のMVL純度はDSで98.8%であり、母液は97.7%/DSであった。これらのMVL*H2O結晶を実施例14の種結晶として使用した。使用前にこの結晶を磁器製粉砕器で粉砕した。
【0247】
実施例14
メバロノラクトン一水和物の水を溶媒とする結晶化
本実施例は、ナトリウムメバロネート結晶化母液を陽イオン交換に付すことにより生成したメバロノラクトンシロップからの、メバロノラクトン一水和物の水を溶媒とする結晶化について記載するものである。
【0248】
実施例6で得られたナトリウムメバロネートを含む遠心分離母液を実施例12に従い陽イオン交換で処理することにより、メバロノラクトンを含む液体を得た。得られたシロップのメバロノラクトン純度はDSで71%であり、色価は34000 ICUMSAであった。
【0249】
原料シロップを蒸発させることにより、DSを93.7%とした(Rotavapor R-153蒸発器)。結果として得られたシロップ2.1kgを2リットル容の冷却晶析装置に移し替えて、0.4gのメバロノラクトン一水和物乾燥種晶(実施例13に従い調製)を11℃の温度で添加した。種晶添加したシロップを連続的に撹拌しながら16時間以内に7℃の温度まで冷却した。7℃に冷却した後、撹拌を7℃で50時間継続した。
温度が一定の間に、結晶化原料に脱イオン水を次に示すように3回に分けて加えて希釈した:(1)種晶添加から23時間後に40g添加、(2)種晶添加から43時間後に50g添加、及び(3)種晶添加から47時間後に10g添加。得られた結晶化原料のDSは89.1%であった。
【0250】
結晶化原料1.7kgを、回分式遠心分離により、洗浄水を使用せずに遠心分離した(バスケット径22.5cm、4000rpm、3min)。遠心分離によるメバロノラクトンの収率は52%であった。遠心分離ケークのメバロノラクトン純度はDSで94%であり、未乾燥ケークの水分含有量は10.8重量%であり、色価は5200 ICUMSAであった。遠心分離母液のメバロノラクトン純度はDSで56%であり、色価は52000 ICUMSAであった。
【0251】
このプロセスに従い調製したメバロノラクトン一水和物結晶を実施例15の種結晶として使用した。使用前にこの結晶を磁器製粉砕器で粉砕した。
【0252】
実施例15
メバロノラクトン一水和物の水を溶媒とする結晶化
本実施例においては、ナノ濾過に続いて陽イオン交換ステップを用いることにより生成したメバロノラクトンを含むシロップからの、メバロノラクトン一水和物の水を溶媒とする結晶化について記載する(
図2)。
【0253】
実施例4に従い調製されたナトリウムメバロネートを含むナノ濾過透過液を、実施例10に従い陽イオン交換処理することにより、メバロノラクトンを含む液体を得た。得られたシロップのメバロノラクトン純度はDSで76%であり、色価は2400 ICUMSAであった。
【0254】
この原料シロップを蒸発させることにより、DSを90.7%とした(Rotavapor R-153蒸発器)。結果として得られたシロップ6.3kgを6リットル容の冷却晶析装置に移し替えて、0.5gのメバロノラクトン一水和物乾燥種晶(実施例14に従い調製)を12℃の温度で添加した。種晶添加したシロップを連続的に撹拌しながら17時間以内に6℃の温度まで冷却した。6℃に冷却した後、撹拌を6℃で5時間継続した。温度が6℃で一定している間に、結晶化原料に脱イオン水を次に示すように3回に分けて加えて希釈した:(1)種晶添加から18時間後に50g添加、(2)種晶添加から19時間後に40g添加、及び(3)種晶添加から20時間後に70g添加。得られた結晶化原料のDSは88.1%であった。
【0255】
得られた結晶化原料5.2kgを、27~33mL/kgDS質量の量の洗浄水を使用して、4回の回分で遠心分離した(回分式遠心分離、バスケット径22.5cm、3500rpm、3min)。1回目の遠心分離から結晶ケークのサンプル及び母液のサンプルを回収した。1回目の遠心分離によるメバロノラクトンの収率は71%であった。1回目の遠心分離ケークのメバロノラクトン純度はDSで93%であり、未乾燥ケークの水分含有量は12.7重量%であり、色価は560 ICUMSAであった。1回目の遠心分離母液のメバロノラクトン純度はDSで55%であり、色価は5700 ICUMSAであった。
【0256】
このプロセスに従い調製したメバロノラクトン一水和物結晶を実施例16及び17の種結晶として使用した。使用前にこの結晶を磁器製粉砕器で粉砕した。
【0257】
実施例16
メバロノラクトン一水和物の水を溶媒とする結晶化
本実施例においては、ナノ濾過に続いて陽イオン交換ステップを用いることにより生成したメバロノラクトンを含むシロップからの、メバロノラクトン一水和物の水を溶媒とする結晶化について記載する(
図2)。
【0258】
実施例3に従い調製されたNa-MVAを含むナノ濾過透過液を、実施例11に従い陽イオン交換処理することにより、MVLを含む液体を生成した。得られたシロップのメバロノラクトン純度はDSで81%であり、色価は1200 ICUMSAであった。
【0259】
この原料シロップを蒸発させることにより、DSを84.1%とした(Rotavapor R-153蒸発器)。得られたシロップ6.2kgを6リットル容の冷却晶析装置に移し替えて、1.0gのメバロノラクトン一水和物乾燥種晶(実施例15に従い調製)を16℃の温度で添加した。種晶添加したシロップを16℃で3時間維持した後、連続的に撹拌しながら11時間以内に6℃の温度まで冷却した。6℃に冷却した後、撹拌を6℃で7時間継続した。
【0260】
得られた結晶化原料5.5kgを、72~79mL/kgDS質量の量の洗浄水を使用して、5回の回分で遠心分離した(回分式遠心分離、バスケット径22.5cm、3500rpm、3min)。1回目の遠心分離から結晶ケークのサンプル及び母液のサンプルを回収した。1回目の遠心分離によるメバロノラクトンの収率は62%であった。1回目の遠心分離ケークのメバロノラクトン純度はDSで≧97%であり、未乾燥ケークの水分含有量は11.6重量%であり、色価は61 ICUMSAであった。1回目の遠心分離母液のメバロノラクトン純度はDSで64%であり、色価は2700 ICUMSAであった。
【0261】
実施例17
メバロノラクトン一水和物の水を溶媒とする結晶化
本実施例においては、遠心分離母液と希釈された結晶化原料との混合物からの、メバロノラクトン一水和物の水を溶媒とする結晶化について記載する。
【0262】
結晶化原料は、メバロノラクトンを含む水性シロップとした。これは、実施例16の遠心分離母液と、設備を脱イオン水で洗浄することにより回収した希釈された結晶化原料とを合一することにより得られたものである。得られたシロップのメバロノラクトン純度はDSで70%であり、色価は2400 ICUMSAであった。
【0263】
この原料を蒸発させることによりDSを85.3%とし(Rotavapor R-153)、得られたシロップ2.8kgを2リットル容の冷却晶析装置に移し替えた。このシロップに種晶を2回:1回目はメバロノラクトン一水和物乾燥種晶1.0g(実施例15に従い調製)を13℃の温度で添加し、次いでメバロノラクトン一水和物乾燥種晶1.0gを10℃の温度で添加した。1回目の種晶添加により非常に細かい結晶が生成した。
【0264】
種晶添加したシロップを10℃で35分間維持した後、連続的に撹拌しながら16時間以内に4℃の温度に冷却した。4℃に冷却した後、撹拌を4℃で2時間継続した。
【0265】
結果として得られた結晶化原料2.5kgを2回の回分で遠心分離した(回分式遠心分離、バスケット径22.5cm、3500rpm、3min)。1回目の遠心分離の洗浄水の量は90mL/kgDSとした。遠心分離により得られたメバロノラクトンの収率は42%であった。遠心分離ケークのメバロノラクトン純度はDSで≧97%であり、未乾燥ケークの水分含有量は14.7重量%であり、色価は33 ICUMSAであった。遠心分離母液のメバロノラクトン純度はDSで58%であり、色価は4200 ICUMSAであった。
【0266】
2回目の遠心分離は洗浄水を使用せずに実施した。遠心分離により得られたメバロノラクトンの収率は54%であった。遠心分離ケークのメバロノラクトン純度はDSで≧97%であり、未乾燥ケークの水分含有量は11.7重量%であり、色価は120 ICUMSAであった。遠心分離母液のメバロノラクトン純度はDSで53%であり、色価は4600 ICUMSAであった。
【0267】
このプロセスに従い調製したメバロノラクトン一水和物結晶を実施例18及び19の種結晶として使用した。使用前にこの結晶を磁器製粉砕器で粉砕した。
【0268】
実施例18
メバロノラクトン一水和物の水を溶媒とする結晶化
本実施例においては、脱イオン水中に溶解されたメバロノラクトン一水和物結晶の、水を溶媒とする再結晶について記載する。
【0269】
結晶化原料は、メバロノラクトンを含む水性シロップとした。これは、実施例15からの遠心分離ケーク2.2kgに脱イオン水を添加して溶解及び希釈することにより得られたものである。得られたシロップのメバロノラクトン純度はDSで92%であり、色価は560 ICUMSAであった。
【0270】
原料シロップを蒸発させることによりDSを80.8%とし(Rotavapor R-153)、得られたシロップ2.3kgを2リットル容の冷却晶析装置に移し替えた。
このシロップを、次に示す2段階で、種晶添加することなく、連続的に撹拌しながら冷却した:(1)2時間以内で20℃から15℃に冷却、及び(2)10時間以内で15℃から10℃に冷却。10℃に冷却した後、撹拌を10℃で6時間継続した。こうすることにより、自然発生による結晶形成が起こらなかった。
【0271】
このシロップにメバロノラクトン一水和物乾燥種晶(実施例17に従い調製)0.5gを10℃の温度で添加した。晶析装置のジャケットの冷却水温度を7℃で一定に維持した。種晶添加直後に結晶形成が開始した。結晶化原料の温度はまず結晶化熱に起因して種晶添加から50分以内に10℃から16℃まで上昇し、その後、3時間以内に16℃から12℃まで低下した。12℃まで降温した後、冷却水温度を7℃から12℃に昇温し、撹拌を12℃で1時間継続した。
【0272】
結果として得られた結晶化原料2.2kgを、65~66mL/kgDS質量の量の洗浄水を使用して、2回の回分で遠心分離した(回分式遠心分離、バスケット径22.5cm、3500rpm、3min)。1回目の遠心分離から結晶ケークのサンプル及び母液のサンプルを回収した。1回目の遠心分離によるメバロノラクトンの収率は52%であった。1回目の遠心分離ケークのメバロノラクトン純度はDSで≧98%であり、未乾燥ケークの水分含有量は13.6重量%であり、色価は35 ICUMSAであった。1回目の遠心分離母液のメバロノラクトン純度はDSで87%であり、色価は1100 ICUMSAであった。
【0273】
実施例19
メバロノラクトン一水和物の水を溶媒とする結晶化
本実施例においては、脱イオン水中に溶解されたメバロノラクトン一水和物結晶の、水を溶媒とする再結晶について記載するものである。
【0274】
結晶化原料は、メバロノラクトンを含む水性シロップとした。これは、実施例16からの遠心分離ケーク2.0kgと実施例17からの遠心分離ケーク320gとを合わせることにより得られたものである。混合する前に、実施例16からのメバロノラクトン生成物を脱イオン水で希釈することによりDSを80.9%とし、得られたシロップを実施例6に記載した手順に従い活性炭で処理した(DS1kg当たりNorit DX 1炭素粉20g、接触時間1時間、接触温度50℃、炭素粉は、Kenite 300濾過助剤と一緒にブフナー濾過により分離)。結晶化原料シロップのメバロノラクトン純度はDSで≧97%であり、色価は34 ICUMSAであった。
【0275】
この原料シロップを蒸発させることによりDSを78.3%とした(Rotavapor R-151蒸発器)。結果として得られたシロップ2.6kgを5リットル容の冷却晶析装置に移し替えて、0.4gのメバロノラクトン一水和物乾燥種晶(実施例17に従い調製)を17℃の温度で添加した。種晶添加したシロップを17℃で1.5時間維持した後、連続的に撹拌しながら15時間以内に13℃の温度まで冷却した。13℃に冷却した後、撹拌を13℃で5時間継続した。
【0276】
結果として得られた結晶化原料2.4kgを、65~71mL/kgDS質量の量の洗浄水を使用して、2回の回分で遠心分離した(回分式遠心分離、バスケット径22.5cm、3500rpm、3min)。1回目の遠心分離から結晶ケークのサンプル及び母液のサンプルを回収した。1回目の遠心分離によるメバロノラクトンの収率は50%であった。1回目の遠心分離ケークのメバロノラクトン純度はDSで≧98%であり、未乾燥のケークの水分含有量は12.1重量%であり、色価は3 ICUMSAであった。1回目の遠心分離母液のメバロノラクトン純度はDSで96%であり、色価は70 ICUMSAであった。
【0277】
このプロセスに従い調製したメバロノラクトン一水和物結晶を実施例20の種結晶として使用した。使用前にこの結晶を磁器製粉砕器で粉砕した。
【0278】
実施例20
メバロノラクトン一水和物の水を溶媒とする結晶化
本実施例においては、メバロノラクトン一水和物の水を溶媒とする結晶化及び高純度のメバロノラクトン水性シロップの調製について記載する。
【0279】
結晶化原料は、メバロノラクトンを含む水性シロップとした。これは、実施例17からの2回目の遠心分離ケークと、実施例18及び19からの遠心分離母液とを合一することにより得られたものである。このシロップを、脱イオン水を添加することによりDSが51.2%になるまで希釈し、得られた溶液を実施例6に記載した手順に従い活性炭で処理した(DS1kg当たりNorit DX 1炭素粉20g、接触時間1時間、接触温度50℃、炭素粉はKenite 300濾過助剤と一緒にブフナー濾過により分離)。得られたシロップのメバロノラクトン純度はDSで93%であり、色価は170 ICUMSAであった。
【0280】
炭素処理した原料シロップを蒸発させることによりDSを80.3%とした(Rotavapor R-153蒸発器)。結果として得られたシロップ2.6kgを2リットル容の冷却晶析装置に移し替えて、0.6gのメバロノラクトン一水和物乾燥種晶(実施例19に従い調製)を18℃の温度で添加した。種晶添加したシロップを18℃で1時間維持した後、連続的に撹拌しながら15時間以内に13℃の温度まで冷却した。13℃に冷却した後、撹拌を13℃で4時間継続した。
【0281】
得られた結晶化原料2.3kgを、67~68mL/kgDS質量の量の洗浄水を使用して、2回の回分で遠心分離した(回分式遠心分離、バスケット径22.5cm、3500rpm、3min)。1回目の遠心分離から結晶ケークのサンプル及び母液のサンプルを回収した。1回目の遠心分離によるメバロノラクトンの収率は51%であった。1回目の遠心分離ケークのメバロノラクトン純度はDSで≧98%であり、未乾燥ケークの水分含有量は12.3重量%であり、色価は3 ICUMSAであった。1回目の遠心分離母液のメバロノラクトン純度はDSで87%であり、色価は370 ICUMSAであった。
【0282】
このプロセスに従い調製したメバロノラクトン一水和物結晶のDSC分析を行ったところ、22.6℃にピーク極大がある吸熱ピークが見られた。
【0283】
遠心分離ケークを合わせ、脱イオン水を加えてDSを57.4%にすることにより、液体メバロノラクトン生成物を得た。得られたシロップを蒸発させることにより、DSを≧97%とした(Rotavapor R-153蒸発器)。蒸発後のシロップのメバロノラクトン純度はDSで≧98%であり、色価は2 ICUMSAであった。
【0284】
MVL*H2Oを結晶化させるための典型的な条件を表13A~13Eに示す。
【0285】
【0286】
【0287】
【0288】
【0289】
【0290】
更に、MVL*H2Oは、冷却設備に能力があり、結晶化原料の粘度が許容できるのであれば、0℃未満から母液の凝固点までの温度で結晶化させることができる。
【0291】
実施例21
メバロノラクトン一水和物(MVL*H2O)の特性評価
式C6H10O3
*H2Oを有する結晶性メバロノラクトン一水和物(MVL*H2O)について、以下に示すように更に特性評価した。
【0292】
A.X線による結晶構造
MVL*H2OのX線回折測定を行った。
【0293】
B.融点
MVL-一水和物(MVL*H2O)の融点(m.p.)は、結晶の純度に応じて20~25℃、好ましくは21~24℃である。結晶化はm.p.を下回った場合にのみ可能である。融点は、示差走査熱量計(DSC)のピーク温度を用いて決定した。DSCサーモグラムは、Mettler Toledo DSC822e示差走査熱量計を用いて測定した。この測定は、40μLアルミニウム製標準るつぼ内で流速80mL/minの窒素気流下にて実施した。温度範囲は0~50℃とし、昇温速度を2℃/minとした。
【0294】
C.結晶の水分含有量
分子量から算出されるMVL一水和物の水分含有量の理論値は12.15%(DS含有量87.85%)である(MVL*H2Oの分子量は148.16g/mol)。これは過剰な水を有する条件下で結晶化した結晶に相当する。結晶化用シロップに存在する水が結晶水含有量よりも少ない場合、母液は結晶化時に濃縮され、形成された結晶の結晶水含有量は理論値よりも低くなる。形成途中の(forming)MVL一水和物結晶の結晶水含有量が10.8%(カールフィッシャー法による)であることを、実施例13に記載したように観測した。高DS(96及び89)シロップにおいて形成されたMVL一水和物結晶でも、10~11%という結晶水含有量が観測された。
【0295】
D.水溶性
溶解度は結晶性化合物を特徴付ける特性の一つである。結晶化は、過飽和シロップの濃度が溶解度を上回った場合にのみ可能である。溶解度は、所与の温度で結晶化する最小のDS濃度を定めるものである。溶解度は、結晶懸濁液から平衡濃度を分析するなどの標準的な方法で求められる。
【0296】
MVL*H2Oの水溶性は、純度93%の結晶を使用し、純度100に換算することにより求めた。平衡時のDS含有量を測定し、0~20℃の範囲で算出した(表14)。
【0297】
【0298】
E.結晶形状
図3に、メバロノラクトン一水和物(MVL
*H
2O)結晶の典型的な形状を示す。結晶は容易に大きく且つ速やかに成長し、多量の結晶化熱を放出する。