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特開2024-170578有機電界発光素子及び有機電界発光素子用多環化合物
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  • 特開-有機電界発光素子及び有機電界発光素子用多環化合物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170578
(43)【公開日】2024-12-10
(54)【発明の名称】有機電界発光素子及び有機電界発光素子用多環化合物
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20241203BHJP
   H10K 50/12 20230101ALI20241203BHJP
   H10K 85/30 20230101ALI20241203BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20241203BHJP
   H10K 50/81 20230101ALI20241203BHJP
   H10K 50/82 20230101ALI20241203BHJP
   H10K 50/17 20230101ALI20241203BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20241203BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20241203BHJP
   H10K 101/20 20230101ALN20241203BHJP
【FI】
C07F5/02 F CSP
H10K50/12
H10K85/30
H10K85/60
H10K50/81
H10K50/82
H10K50/17 171
H10K50/17
H10K50/15
H10K50/16
H10K101:20
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024154334
(22)【出願日】2024-09-06
(62)【分割の表示】P 2020001960の分割
【原出願日】2020-01-09
(31)【優先権主張番号】10-2019-0003819
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1, Samsung-ro, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002619
【氏名又は名称】弁理士法人PORT
(72)【発明者】
【氏名】山谷 昭徳
(57)【要約】      (修正有)
【課題】長寿命、高効率の有機電界発光素子及びそれに使用される多環化合物を提供する。
【解決手段】有機電界発光素子は、第1電極、その上に配置される正孔輸送層、その上に配置される発光層、その上に配置される電子輸送層、その上に配置される第2電極を含み、発光層は化学式1で表される多環化合物を含むことで高い発光効率を示す。化学式1において、環A及び環Bのうち少なくともいずれか一つは置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下ヘテロアリール環であり、ZはBAr、POAr、PSAr、SiArAr、またはGeArArである。

【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式4で表される多環化合物。
【化1】

(前記化学式4において、
ArおよびAr’は、それぞれ独立して置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数7以上30アラルキル基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、
環A及び環Bはそれぞれ独立して、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール環、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール環であり、環A及び環Bのうち少なくとも一つは化学式2で表され、
【化2】

環Mは、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、
Wは、B、PO、PS、SiAr、またはGeArであり、
ArおよびArはそれぞれ独立して、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換のオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換の環形成炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、
化学式2において、
X及びYはそれぞれ独立して、単結合、O、S、SO、SO、Se、NR、PR、POR、PSR、SiR、GeR10、またはBR11であり、X及びYは同時に単結合ではなく、
およびRはそれぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換若しくは無置換のオキシ基、置換若しくは無置換のチオール基、置換若しくは無置換のアミノ基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、シリル基、カルボニル基、ボリル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、環Aが化学式2で表される場合、RおよびRは結合して環を形成し、
~R11はそれぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換若しくは無置換のオキシ基、置換若しくは無置換のチオール基、置換若しくは無置換のアミノ基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、シリル基、カルボニル基、ボリル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、
前記R~R11は隣接する基と結合して環を形成するか、又は結合せず、
*は結合位置を示す。)
【請求項2】
前記Wは、Bである、請求項1に記載の多環化合物。
【請求項3】
下記化学式4で表される多環化合物。
【化3】

(化学式4において、
ArおよびAr’は、それぞれ独立して置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数7以上30アラルキル基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、
環A及び環Bはそれぞれ独立して、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール環、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール環であり、環A及び環Bのうち少なくとも一つは、置換若しくは無置換のピロール、置換若しくは無置換のチオフェン、置換若しくは無置換のオキサジン、あるいは置換若しくは無置換のフランであり、
環Mは、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、
Wは、BAr、POAr、PSAr、SiArAr、またはGeArArであり、
Ar~Arはそれぞれ独立して、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換のオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換された環形成炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。)
【請求項4】
第1電極と、
前記第1電極の上に配置される正孔輸送領域と、
前記正孔輸送領域の上に配置される発光層と、
前記発光層の上に配置される電子輸送領域と、
前記電子輸送領域の上に配置される第2電極と、を含み、
前記発光層は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の多環化合物を含む、有機電界発光素子。
【請求項5】
前記発光層は、遅延蛍光を放出する、請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記発光層は、熱活性遅延蛍光発光層である、請求項4に際の有機電界発光素子。
【請求項7】
前記発光層は、青色光を発する、請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
前記第1電極及び前記第2電極はそれぞれ独立して、Ag,Mg,Cu,Al,Pt,Pd,Au,Ni,Nd,Ir,Cr,Li,Ca,LiF/Ca,LiF/Al,Mo,Ti,In,Sn及びZnからなる群から選択される一つ、これらの中から選択される複数を含む化合物、これらの中から選択される複数を含む混合物、又はこれらの中から選択される1つ以上の酸化物を含む、請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
前記正孔輸送領域は、
前記第1電極の上に配置される正孔注入層と、
前記正孔注入層の上に配置される正孔輸送層と、
を含み、
前記正孔注入層の厚さは、約3nm~約100mnであり、
前記正孔輸送層の厚さは、約1nm~約100nmである、請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
前記電子輸送領域は、
前記発光層の上に配置される電子輸送層と、
前記電子輸送層の上に配置される電子注入層と、
を含み、
前記電子輸送層の厚さは、約10nm~約100nmであり、
前記電子注入層の厚さは、約0.1nm~約10nmである、請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項11】
前記発光層の厚さは、約10nm~約60nmである、請求項4に記載の有機電界発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子及びそれに使用される多環化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、映像表示装置として、有機電界発光表示装置(Organic Electroluminescence Display)の開発が盛んに行われている。有機電界発光表示装置は液晶表示装置などとは異なって、第1電極及び第2電極から注入された正孔及び電子を発光層において再結合させることで、発光層において有機化合物を含む発光材料を発光させて表示を実現するいわゆる自発光型表示装置である。
【0003】
有機電界発光素子を表示装置に応用するに当たっては、有機電界発光素子の低駆動電圧化、高発光効率化及び長寿命化が要求されており、これを安定的に実現し得る有機電界発光素子用材料の開発が持続的に要求されている。
【0004】
特に、最近は高効率の有機電界発光素子を実現するために三重項状態のエネルギーを利用するりん光発光や、三重項励起子の衝突によって一重項例励起子が生成される現象(Triplet-triplet annihilation、TTA)を利用した遅延蛍光発光に関する技術が開発されており、遅延蛍光現象を利用した熱活性遅延蛍光(Thermally Activated Delayed Fluorescence、TADF)材料に関する開発が進まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、長寿命、高効率の有機電界発光素子及びそれに使用される多環化合物を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、熱活性遅延蛍光発光材料を含む有機電界発光素子及び熱活性遅延蛍光発光材料として使用される多環化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、第1電極、第1電極の上に設けられる正孔輸送層、正孔輸送層の上に設けられる発光層、発光層の上に設けられる電子輸送層、及び電子輸送層の上に設けられる第2電極を含み、発光層は下記化学式1で表される多環化合物を含む有機電界発光素子が提供される。
【化1】

化学式1において、環A及び環Bはそれぞれ独立して置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール環、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール環であり、環A及び環Bのうち少なくともいずれか一つは置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下ヘテロアリール環であり、ZはBAr、POAr
、PSAr、SiArAr、またはGeArArであり、Arは置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数7以上30アラルキル基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、Ar~Arはそれぞれ独立して置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換のオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換された環形成炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換された環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、隣接する基と結合して環を形成してもよい。
【0008】
化学式1の環A及び環Bのうち少なくともいずれか一つは、下記化学式2で表される。
【化2】

化学式2において、X及びYはそれぞれ独立して単結合、O、S、SO、SO、Se、NR、PR、POR、PSR、SiR、GeR10、またはBR11であり、X及びYは同時に単結合ではなく、R~R11はそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換若しくは無置換のゲルミル基、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換のオキシ基、置換若しくは無置換のチオール基、置換若しくは無置換のアミノ基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、シリル基、カルボニル基、ボリル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、隣接する基と結合して環を形成してもよい。
【0009】
発光層は、遅延蛍光を放出する有機電界発光素子である。
【0010】
発光層はホスト及びドーパントを含む遅延蛍光発光層であり、前記ドーパントは前記多環化合物を含む有機電界発光素子である。
【0011】
発光層は、青色光を放出する熱活性遅延蛍光発光層である有機電界発光素子である。
【0012】
化学式1は下記化学式3で表される。
【化3】

化学式3において、Z’はBAr、POAr、PSAr、SiArAr、またはGeArArであり、環Lは置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であ
り、環A、環B、及びZは化学式1で定義した通りである。
【0013】
化学式3において、前記Z及びZ’は互いに同じである。
【0014】
化学式1は下記化学式4で表される。
【化4】

化学式4において、WはB、PO、PS、SiAr、またはGeArであり、環Mは置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、Ar’は置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数7以上30以下のアラルキル基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、環A、環B、Ar、Ar、及びArは化学式1で定義した通りである。
【0015】
化学式1において、ZはBArである。
【0016】
化学式1において、Zは下記化学式5で表される。
【化5】

化学式5において、V~Vはそれぞれ独立してCR12またはNであり、R12は水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換若しくは無置換のオキシ基、置換若しくは無置換のチオール基、置換若しくは無置換のアミノ基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、シリル基、カルボニル基、ボリル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、隣接する基と結合して環を形成してもよい。
【0017】
化学式5のV~Vはそれぞれ独立してCR12であり、R12は水素原子、重水素原子、または置換若しくは無置換の炭素数2以上10以下のアルキル基である。
【0018】
化学式1の環A及び環Bのうち少なくともいずれか一つは、置換若しくは無置換のピロ
ール、置換若しくは無置換のチオフェン、置換若しくは無置換のオキサジン、または置換若しくは無置換のフランである。
【0019】
化学式1は下記化学式6で表される。
【化6】

化学式6において、Aは重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換若しくは無置換のオキシ基、置換若しくは無置換のチオール基、置換若しくは無置換のアミノ基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、シリル基、カルボニル基、ボリル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、隣接する基と互いに結合して環を形成してもよく、nは0以上5以下の整数であり、X及びYはそれぞれ独立して単結合、O、S、SO、SO、Se、NR、PR、POR、PSR、SiR、GeR10、またはBR11であり、R~R11はそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換若しくは無置換のオキシ基、置換若しくは無置換のチオール基、置換若しくは無置換のアミノ基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、シリル基、カルボニル基、ボリル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、隣接する基と結合して環を形成してもよく、Arは化学式1で定義した通りである。
【0020】
化学式1で表される多環化合物は、下記第1化合物群に示した化合物のうちいずれか一つである。
[化合物群1]

【化7】


【0021】
本発明の一実施形態によれば、化学式1で表される多環化合物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態による有機電界発光素子を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、多様な変更を加えることができ、多様な形態を有することができるため、特定の実施形態を図面に例示し、本文に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定な開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物又は代替物を含むと理解すべきである。
【0024】
各図面を説明しながら、類似の参照符号を類似の構成要素に対して使用している。添付した図面において、構造物の寸法は本発明をより明確にするために実際より拡大して示している。第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使用されるが、構成要素は用語に限らない。用語は一つの構造要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。例えば、本発明の権利範囲を逸脱しない限り第1構成要素は第2構成要素と称されてもよく、同様に第2構成要素も第1構成要素と称されてもよい。単数の表現は、文脈上明白に異なるように意味しない限り、複数の表現を含む。
【0025】
本出願において、「含む」または「有する」などの用語は明細書の上に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを示すものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないと理解すべきである。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上」にあるとする場合、これは他の部分の「直上」にある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。
【0026】
本明細書において、-*は結合される位置を意味する。
【0027】
本明細書において、「置換若しくは無置換の」とは重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、シリル基、ボリル基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、ゲルミル基、アルキル基、アリール基、及びヘテロ環基からなる群より選択される一つ以上の置換基に置換される若しくは無置換であることを意味する。また、前記例示された置換基それぞれは置換若しくは無置換であってもよい。例えば、ビフェニリル基はアリール基と解釈されてもよく、フェニル基に置換されたフェニル基と解釈されてもよい。
【0028】
本明細書において、「隣接する基と結合して環を形成」するとは、隣接する基と互いに結合して置換若しくは無置換の炭化水素環、または置換若しくは無置換のヘテロ環を形成することを意味する。炭化水素環は、脂肪族炭化水素環及び芳香族炭化水素環を含む。ヘテロ環は、脂肪族ヘテロ環及び芳香族ヘテロ環を含む。炭化水素環及びヘテロ環は、単環及び多環である。また、隣接する基と結合して形成された環は、他の環と連結されてスピロ構造を形成してもよい。
【0029】
本明細書において、「隣接する基」とは該当置換基が置換された原子と直接結合された原子に置換された置換基、該当置換基が置換された原子に置換された他の置換基または該当置換基と立体構造的に最も隣接した置換基を意味する。例えば、1,2-ジメチルベンゼンにおける2つのメチル基は互いに「隣接する基」と解釈され、1,1-ジエチルシクロペンテンにおける2つのエチル基は互いに「隣接する基」と解釈される。
【0030】
本明細書において、ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子が挙げられる。
【0031】
本明細書において、アルキル基は直鎖、分枝鎖、または環状である。アルキル基の炭素数は、1以上50以下、1以上30以下、1以上20以下、1以上10以下、または1以上6以下である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、i-ブチル基、2-エチルブチル基、3、3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、i-ペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、シクロペンチル基、1-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-エチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-ブチルヘキシル基、シクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、4-t-ブチルシクロヘキシル基、n-ヘプチル基、1-メチルペプチル基、2、2-ジメチルヘプチル基、2-エチルヘプチル基、2-ブチルヘプチル基、n-オクチル基、tーオクチル基、2-エチルオクチル基、2-ブチルオクチル基、2-ヘキシルオクチル基、3、7-ジメチルオクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、アダマンチル基、2-エチルデシル基、2-ブチルデシル基、2-ヘキシルデシル基、2-オクチルデシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、2-エチルドデシル基、2-ブチルドデシル基、2-ヘキシルドデシル基、2-オクチルデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、2-エチルヘキサデシル基、2-ブチルヘキサデシル基、2-ヘキシルヘキサデシル基、2-オクチルヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基、2-エチルイコシル基、2-ブチルイコシル基、2-ヘキシルイコシル基、2-オクチルイコシル基、n-ヘンイコシル基、n-ドコシル基、n-トリコシル基、n-テトラコシル基、n-ペンタコシル基、n-ヘキサコシル基、n-ヘプタコシル基、n-オクタコシル基、n-ノナコシル基、及びn-トリアコンチル基などが挙げられるが、これらに限らない。
【0032】
本明細書において、アリール基は芳香族炭化水素環から誘導された任意の作用基または置換基を意味する。アリール基は、単環式アリール基または多環式アリール基である。ア
リール基の環形成炭素数は、6以上30以下、6以上20以下、または6以上15以下である。アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、クォーターフェニリル基、キンクフェニリル基、セクシフェニリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、ベンゾフルオランテニル基、クリセニル基などが挙げられるが、これらに限らない。
【0033】
本明細書において、フルオレニル基は置換され、2つの置換基が互いに結合してスピロ構造を形成してもよい。フルオレニル基が置換される場合の例示は以下のようである。但し、これに限らない。
【化8】

【0034】
本明細書において、ヘテロアリール基はヘテロ原子としてO、N、P、Si、及びSのうち一つ以上を含むヘテロアリール基である。ヘテロアリール基の環形成炭素数は、2以上30以下、または2以上20以下である。ヘテロアリール基は、単環式ヘテロアリール基または多環式ヘテロアリール基である。多環式ヘテロアリール基は、例えば2環または3還構造を有してもよい。ヘテロアリール基の例としては、チオフェニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、トリアゾリル基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、アクリジニル基、ピリダジニル基、キノリニル基、キナゾリル基、キノキサリニル基、フェノキサジニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリニル基、インドリル基、カルバゾリル基、N-アリルカルバゾリル基、N-ヘテロアリルカルバゾリル基、N-アルキルカルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基、チエノチオフェニル基、ベンゾフラニル基、フェナントロリニル基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェノチアジニル基、ジベンゾシロリル基、及びジベンゾフラニル基などが挙げられるが、これらに限らない。
【0035】
本明細書において、シリル基はアルキルシリル基及びアリールシリル基を含む。シリル基の例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、フェニルシリル基などが挙げられるが、これらに限らない。
【0036】
本明細書において、アミノ基の炭素数は特に限らないが、1以上30以下であってもよい。アミノ基は、アルキルアミノ基及びアリールアミノ基を含む。アミノ基の例としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、9-メチル-アントラセニルアミノ基、トリフェニルアミノ基などが挙げられるが、これらに限らない。
【0037】
本明細書において、ホスフィンオキシド基は、例えば、アルキル基及びアリール基の少
なくとも一方で置換されていてもよい。ホスフィンオキシド基の例としては、フェニルホスフィンオキシド基、ジフェニルホスフィンオキシド基が含まれるが、これらに限定されない。また、本明細書において、ホスフィンスルフィド基は、例えば、アルキル基及びアリール基の少なくとも一方で置換されていてもよい。ホスフィンスルフィド基の例としては、フェニルホスフィンスルフィド基、ジフェニルホスフィンスルフィド基が含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書において、ボリル基は、例えば、アルキル基及びアリール基の少なくとも一方で置換されていてもよい。ボリル基の例としては、フェニルボリル基、ジフェニルボリル基が含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書において、ゲルミル基は、例えば、アルキル基及びアリール基の少なくとも一方で置換されていてもよい。ゲルミル基の例としては、フェニルゲルミル基、ジフェニルゲルミル基が含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
以下、図1図3を参照して本発明の一実施形態による有機電界発光素子について説明する。
【0041】
図1図3を参照すると、本発明の一実施形態による有機電界発光素子10は、順次に積層された第1電極EL1、正孔輸送領域HTR、発光層EML、電子輸送領域ETR、及び第2電極EL2を含む。
【0042】
第1電極EL1及び第2電極EL2は互いに対向して配置され、第1電極EL1と第2電極EL2との間には複数の有機層が配置される。複数の有機層は正孔輸送領域HTR、発光層EML、及び電子輸送領域ETRを含む。一実施形態の有機電界発光素子10は、発光層EMLに一実施形態に係る多環化合物を含む。
【0043】
一方、図2図1に比べ、正孔輸送領域HTRが正孔注入層HIL及び正孔輸送層HTLを含み、電子輸送領域ETRが電子注入層EIL及び電子輸送層ETLを含む一実施形態の有機電界発光素子10の断面図を示す。また、図3図1に比べ、正孔輸送領域HTRが正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、及び電子阻止層EBLを含み、電子輸送領域ETRが電子注入層EIL、電子輸送層ETL、及び正孔阻止層HBLを含む一実施形態の有機電界発光素子10の断面図を示す。
【0044】
一実施形態に係る有機電界発光素子10において、第1電極EL1は導電性を有する。第1電極EL1は、金属合金または導電性化合物からなる。第1電極EL1はアノード(anode)である。
【0045】
第1電極EL1は、透過型電極、半透過型電極、または反射型電極である。第1電極EL1が透過型電極であれば、第1電極EL1透明金属酸化物、例えば、ITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、ZnO(zinc oxide)、ITZO(indium tin zinc oxide)などからなる。第1電極EL1が半透過型電極または反射型電極であれば、第1電極EL1はAg、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Mo、Ti、またはこれらの化合物や混合物(例えば、AgとMgの合金)を含む。また、例示された物質で形成された反射膜や半透過膜、及びITO、IZO、ZnO、ITZOなどで形成された透明導電膜を含む複数の層構造であってもよい。例えば、第1電極EL1はITO/Ag/ITOの複数の層を含むものであってもよい。
【0046】
正孔輸送領域HTRは第1電極EL1の上に設けられる。正孔輸送領域HTRは、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、正孔バッファ層及び電子阻止層EBLのうち少なくとも一つを含む。
【0047】
正孔輸送領域HTRは、単一物質で形成された単一層、複数の互いに異なる物質で形成された単一層、または複数の互いに異なる物質で形成された複数の層を有する多層構造を有する。
【0048】
例えば、正孔輸送領域HTRは正孔注入層HILまたは正孔輸送層HTLの単一層の構造を有してもよく、正孔注入物質と正孔輸送物質で形成された単一構造を有してもよい。また、正孔輸送領域HTRは、複数の互いに異なる物質を有する単一層の構造を有するか、第1電極EL1から順番に積層された正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL、正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL/正孔バッファ層、正孔注入層HIL/正孔バッファ層、正孔輸送層HTL/正孔バッファ層、または正孔注入層HIL/正孔輸送層HTL/電子阻止層EBLの構造を有してもよいが、これらに限らない。
【0049】
正孔輸送領域HTRは、真空蒸着法、スピンコート法、LB法(Langmuir-Blodgett)、インクジェットプリント法、レーザプリント法、レーザ熱転写法(Laser Induced Thermal Imaging、LITI)などのような多様な方法を利用して形成される。
【0050】
一実施形態に係る有機電界発光素子10の正孔注入層HILは、公知の正孔注入材料を含む。例えば、正孔注入層HILは、トリフェニルアミン含有ポリエーテルケトン(TPAPEK)、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(PPBI)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス-[4-(フェニル-m-トリル-アミノ)-フェニル]-フェニル-4,4’-ジアミン(DNTPD)、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物、4,4’,4”-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m-MTDATA)、N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(NPB)、N,N’-ビス(1-ナフチル)N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミン(α-NPD)、4,4’,4”-トリス{N,Nジフェニルアミノ}トリフェニルアミン(TDATA)、4,4’,4”-トリス(N,N-2-ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2-TNATA)、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(PANI/DBSA)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホナート)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/カンファースルホン酸(PANI/CSA)、ポリアニリン/ポリ(4-スチレンスルホナート)(PANI/PSS)、またはHAT-CN(ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2、3、6、7、10、11-ヘキサカルボニトリル)などを含んでもよい。しかし、これらに限らない。
【0051】
一実施形態に係る有機電界発光素子10の正孔輸送層HTLは、公知の正孔輸送材料を含む。例えば、正孔輸送層HTLは、1,1-ビス[(ジ-4-トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン(TAPC)、N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール誘導体、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(TPD)、4,4’,4”-トリス(Nーカルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)、またはN,N’-ジ(1-ナフチル)-N.N’-ジフェニルベンジジン(NPB)、N,N’-ビス(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミン(α-NPD)などを含んでもよい。しかし、これらに限らない。
【0052】
一方、正孔輸送領域HTRは電子阻止層EBLを更に含んでもよい。電子阻止層EBL
は正孔輸送層HTLと発光層EMLとの間に配置される。電子阻止層EBLは、電子輸送領域ETRから正孔輸送領域HTRへの電子の注入を防止する役割をする層である。
【0053】
電子阻止層EBLは、該当技術分野で知られている一般的な材料を含む。電子阻止層EBLは、例えば、N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール系誘導体、フルオレン系誘導体、TPD(N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジアミン)、TCTA(4,4’,4”-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン)などのようなトリフェニルアミン系誘導体、NPB(N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニル-ベンジジン)、TAPC(4,4’-シクロへキシリデンビス[N,N-ビス(4-メチルフェニル)ベンゼンアミン])、HMTPD(4,4’-ビス[N,N’-(3-トリル)アミノ]-3,3’-ジメチルビフェニル)、またはmCPなどを含んでもよい。また、上述したように、正孔阻止層EBLは、本発明の一実施形態に係る多環化合物を含んでもよい。
【0054】
正孔輸送領域HTRの厚さは、約10nm~約1000nm、例えば約10nm~約500nmであってもよい。正孔注入層HILの厚さは、例えば約3nm~約100mnであり、正孔輸送層HTLの厚さは、約3nm~約100nmであってもよい。例えば、電子阻止層EBLの厚さは、約1nm~約100nmであってもよい。正孔輸送領域HTR、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、及び電子阻止層EBLの厚さが上述したような範囲を満たせば、実質的な駆動電圧の上昇なしに十分な正孔輸送特性が得られる。
【0055】
正孔輸送領域HTRは、上述した物質以外に、導電性を向上するために電荷生成物質を更に含んでもよい。電荷発生物質は、正孔輸送領域HTR内に均一にまたは不均一に分散されている。電荷発生物質は、例えば、p-ドーパント(dopant)である。p-ドーパントはキノン誘導体、金属酸化物及びシアノ基含有化合物のうちいずれか一つであってもよいが、これらに限らない。例えば、p-ドーパントの非制限的な例としては、TCNQ(テトラシアノキノジメタン)及びF4-TCNQ(2,3,5,6-テトラフルオロ-テトラシアノキノジメタン)などのようなキノン誘導体、タングステン酸化物及びモリブデン酸化物のような金属酸化物などが挙げられるが、これらに限らない。
【0056】
上述したように、正孔輸送領域HTRは、正孔注入層HIL及び正孔輸送層HTL以外に、正孔バッファ層及び電子阻止層EBLのうち少なくとも一つを更に含んでもよい。正孔バッファ層は、発光層EMLから放出される光の波長による共振距離を補償して光放出効率を増加させる。正孔バッファ層に含まれる物質としては、正孔輸送領域HTRに含まれ得る物質を使用する。
【0057】
発光層EMLは正孔輸送領域HTRの上に設けられる。発光層EMLの厚さは、例えば、10nm以上60nm以下であってもよい。発光層EMLは、単一物質からなる単一層、複数の互いに異なる物質からなる単一層、または複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造を有する。
【0058】
発光層EMLは、赤色光、緑色光、青色光、白色光、黄色光、シアン光のうち一つを発光する。発光層EMLは、蛍光発光物質またはりん光発光物質を含む。
【0059】
一実施形態において、発光層EMLは蛍光発光層である。例えば、発光層EMLから放出された光のうち一部は熱活性遅延蛍光発光(Thermally Activated
Delayed Flouorescence、TADF)によるものであってもよい。詳しくは、発光層EMLは熱活性遅延蛍光発光する発光成分を含み、一実形態において、発光層EMLは青色光を放出する熱活性遅延蛍光発光する発光層である。
【0060】
一実施形態において、発光層EMLは化学式1で表される多環化合物を含む。
【化9】
【0061】
化学式1において、環A及び環Bはそれぞれ独立して置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール環、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール環である。
【0062】
一方、化学式1において、環A及び環Bのうち少なくともいずれか一つは置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール環である。環A及び環Bがいずれもヘテロアリール環でない場合、分子安定性が低くなって有機電界発光素子に適用する際に発光効率または寿命が低下する恐れがある。
【0063】
化学式1において、ZはBAr、POAr、PSAr、SiArAr、またはGeArArである。
【0064】
化学式1において、Arは置換若しくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数7以上30以下のアラルキル基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0065】
化学式1において、Ar~Arはそれぞれ独立して置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換のオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、隣接する基と結合して環を形成してもよい。
【0066】
一実施形態において、化学式1の環A及び環Bのうち少なくともいずれか一つは下記化学式2で表される。
【化10】
【0067】
化学式2において、X及びYはそれぞれ独立して単結合、O、S、SO、SO、Se、NR、PR、POR、PSR、SiR、GeR10、またはBR11である。
【0068】
化学式2において、R~R11はそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換若しくは無置換のゲルミル基、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換のオキシ基、置換若しくは無置換のチオール基、置換若しくは無置換のアミノ基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、シリル基、カルボニル基、
ボリル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。R~R11は隣接する基と結合して環を形成してもよい。
【0069】
化学式1の環A及び環Bのうちいずれか一つがヘテロアリール環であり、化学式2のX及びYが同時に単結合であることはない。
【0070】
一実施形態において、化学式1のArは置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、隣接する基と結合して環を形成してもよい。
【0071】
一実施形態において、化学式1のArが置換基を有し、該置換基が化学式1における環Bの環形成原子の一つと結合して縮合環を形成する場合、化学式1は下記化学式3で表されてもよい。
【化11】
【0072】
化学式3において、Z’は化学式1のArの置換基の一つに相当する。Z’は、BAr、POAr、PSAr、SiArAr、またはGeArArである。
【0073】
化学式3において、環Lは化学式1におけるArに相当する。環Lはそれぞれ独立して置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0074】
化学式3において、環A、環B、及びZは化学式1で定義した通りである。
【0075】
一実施形態において、化学式3のZ及びZ’は互いに同じであってもよい。
【0076】
化学式1のAr~Arはそれぞれ独立して置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、隣接する基と結合して環を形成してもよい。
【0077】
一実施形態において、化学式1のAr、Ar、Ar、Ar及びArのいずれか、またはAr及びArのいずれかがAr’を置換基として有するアミノ基のよって置換され、該アミノ基が化学式1における環Bの環形成原子の一つと結合して縮合環を形成場合、化学式1は下記化学式4で表されてもよい。
【化12】
【0078】
化学式4におけるWは、環Mが置換された化学式1におけるZに相当する。WはB、PO、PS、SiAr、またはGeArである。
【0079】
化学式4において、環MはAr、Ar、Ar、ArまたはArであり、それぞれ独立して置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0080】
化学式4において、Ar’は環Mに置換するアミノ基の置換基であり、Ar’は置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数7以上30以下のアラルキル基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0081】
化学式4において、環A、環B、Ar、Ar、及びArは化学式1で定義した通りである。
【0082】
一実施形態において、化学式1のZはBArである。
【0083】
化学式1のZがBArである場合、Zは下記化学式5で表されてもよい。
【化13】
【0084】
化学式5において、V~Vはそれぞれ独立してCR12またはNである。一方、V~Vのうち少なくともいずれか一つはCR12である。
【0085】
化学式5において、R12はそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換若しくは無置換のオキシ基、置換若しくは無置換のチオール基、置換若しくは無置換のアミノ基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、シリル基、カルボニル基、ボリル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、隣接する基と結合して環を形成してもよい。
【0086】
一実施形態において、化学式5のV~Vはそれぞれ独立してCR12であり、R12は水素原子、重水素原子、または置換若しくは無置換の炭素数2以上10以下のアルキル基である。
【0087】
一実施形態において、化学式1の環A及び環Bのうち少なくともいずれか一つは、置換若しくは無置換のピロール、置換若しくは無置換のチオフェン、置換若しくは無置換のオキサジン、または置換若しくは無置換のフランである。
【0088】
一実施形態において、化学式1は下記化学式6で表される。
【化14】
【0089】
化学式6において、Aは重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換若しくは無置換のオキシ基、置換若しくは無置換のチオール基、置換若しくは無置換のアミノ基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、シリル基、カルボニル基、ボリル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、隣接する基と結合して環を形成してもよい。
【0090】
化学式6において、nは0以上5以下の整数である。一方、nが2以上であれば、複数のAは互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0091】
化学式6において、X及びYはそれぞれ独立して単結合、O、S、SO、SO、Se、NR、PR、POR、PSR、SiR、GeR10、またはBR11である。
【0092】
化学式6において、R~R11はそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換若しくは無置換のオキシ基、置換若しくは無置換のチオール基、置換若しくは無置換のアミノ基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、シリル基、カルボニル基、ボリル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。R~R11は、隣接する基と結合して環を形成してもよい。
【0093】
化学式6において、Arは化学式1で定義した通りである。
【0094】
化学式1で表される一実施形態に係る多環化合物は、遅延蛍光発光材料である。この多環化合物は、熱活性遅延蛍光発光材料である。
【0095】
例えば、化学式1で表される多環化合物は一重項エネルギー準位S1と三重項エネルギー準位T1の差が小さく、熱活性遅延蛍光発光材料として使用されてもよい。詳しくは、化学式1で表される一実施形態に係る多環化合物は、下記第1化合物群に示した化合物のうちいずれか一つで表されてもよい。尚、以下の化合物群1において、iPrはイソプロピル基を示し、Phはフェニル基を示す。
【0096】
[第1化合物群]
【化15】


【0097】
上述した化学式1で表される多環化合物は、一実施形態に係る有機電界発光素子10に使用されて有機電界発光素子の効率及び寿命を改善させる。詳しくは、上述した化学式1で表される多環化合物は、一実施形態に係る有機電界発光素子10の発光層EMLに使用されて有機電界発光素子の発光効率及び寿命を改善させる。
【0098】
一実施形態において、発光層EMLはホスト及びドーパントを含み、ホストは遅延蛍光発光用ホストであり、ドーパントは遅延蛍光発光用ドーパントである。一方、化学式1で表される一実施形態に係る多環化合物は、発光層EMLのドーパント材料として含まれる。例えば、化学式1で表される一実施形態に係る多環化合物は、TADFドーパントとして使用されてもよい。
【0099】
一方、発光層EMLは公知のホスト材料を含む。例えば、一実施形態において、発光層EMLはホスト材料として、Alq(トリス(8-ヒドロキシキノリノ)アルミニウム)、CBP(4,4’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル)、PVK(ポリ(n-ビニルカルバゾール)、ADN(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、TCTA(4,4’,4”-トリス(カルバゾール-9-イル)-トリフェニルアミン)、TPBi(1,3,5-トリス(N-フェニルベンゾイミダゾール-2-イル)ベンゼン)、TBADN(3-tert-ブチル-9,10-ジ(ナフト-2-イル)アントラセン)、DSA(ジスチリルアリレン)、CDBP(4,4’-ビス(9-カルバゾリル)-2,2’-ジメチル-ビフェニル)、MADN(2-メチル-9,10-ビス(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、DPEPO(ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキシド)、CP1(ヘキサフェニルシクロトリホスファゼン)、UGH2(1、4-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン)、DPSiO(ヘキサフェニルシクロトリシロキサン)、DPSiO(オクタフェニルシクロテトラシロキサン)、またはPPF(2,8-ビス(ジフェニルホスフォリル)ジゼンゾフラン)などを含んでもよい。しかし、これらに限らず、提示されたホスト材料以外にも公知の遅延蛍発光光ホスト材料が含まれてもよい。
【0100】
一方、一実施形態に係る有機電界発光素子10において、発光層EMLは公知のドーパント材料を更に含んでもよい。発光層MELは、ドーパントとして、スチリル誘導体(例えば、1,4-ビス[2-(3-N-エチルカルバゾリル)ビニル]ベンゼン(BCzV
B)、4-(ジ-p-トリルアミノ)-4’-[(ジ-p-トリルアミノ)スチリル]スチルベン(DPAVB)、N-(4-((E)-2-(6-((E)-4-(ジフェニルアミノ)スチリル)ナフタレン-2-イル)ビニル)フェニル)-N-フェニルベンゼンアミン(N-BDAVBi)、ぺリレン及びその誘導体(例えば、2,5,8,11-テトラ-t-ブチルぺリレン(TBP))、ピレン及びその誘導体(例えば、1,1-ジピレン、1,4-ジピレニルベンゼン、1,4-ビス(N、N-ジフェニルアミノ)ピレン)などを含む。
【0101】
更に図1図3を参照すると、一実施形態に係る有機電界発光素子10において、電子輸送領域ETRは発光層EMLの上に設けられる。電子輸送領域ETRは電子阻止層、電子輸送層ETL及び電子注入層のEILうち少なくとも一つを含むが、これらに限らない。
【0102】
電子輸送領域ETRは、単一物質からなる単一層、複数の互いに異なる物質からなる単一層、または複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造を有する。
【0103】
例えば、電子輸送領域ETRは電子注入層のEILまたは電子輸送層ETLの単一層の構造を有してもよく、電子注入物質と電子輸送物質からなる単一層構造を有してもよい。また、電子輸送領域ETRは、複数の互いに異なる物質からなる単一層の構造を有するか、第1電極EL1から順番に積層された電子輸送層ETL/電子注入層EIL、正孔阻止層HBL/電子輸送層ETL/電子注入層EILの構造を有してもよいが、これらに限らない。電子輸送領域ETRの厚さは、例えば、約10nm~約150nmであってもよい。
【0104】
電子輸送領域ETRは、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法(Langmuir-Blodgett)、インクジェットプリント法、レーザプリント法、レーザ熱転写法(Laser Induced Thermal Imaging、LITI)などのような多様な方法を利用して形成される。
【0105】
電子輸送領域ETRが電子輸送層ETLを含む場合、例えば、電子輸送領域ETRは、Alq(トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム)、1,3,5-トリ[(3-ピリジル)-フェン-3-イル]ベンゼン、2,4,6-トリス(3’-ピリジン-3-イル)ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-(N-フェニルベンゾイミダゾリル-1-イルフェニル)-9,10-ジナフチルアントラセン、TPBi(1,3,5-トリ(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)ベンゼン)、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Bphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、TAZ(3-(4-ビフェニルイル)-4-フェニル-5-テルト-ブチルフェニル-1,2,4-トリアゾール)、NTAZ(4-(ナフタレン-1-イル)-3,5-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾール)、tBu-PBD(2-(4-ビフェニルイル)-5-(4-テルトーブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール)、BAlq(ビス(2-メチル-8-キノリノラト-N1,O8)-(1,1’-ビフェニル-4-オラト)アルミニウム)、Bebq(ベリリウムビス(ベンゾキノリン-10-オラト)、ADN(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、及びこれらの混合物を含んでもよいが、これらに限らない。
【0106】
電子輸送領域ETRが電子輸送層ETLを含む場合、電子輸送層ETLの厚さは、約10nm~約100nm、例えば約15nm~約50nmであってもよい。電子輸送層HTLの厚さが上述したような範囲を満たす場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに十分な電子輸送特性が得られる。
【0107】
電子輸送領域ETRが電子注入層EILを含む場合、電子輸送領域ETRは、例えば、LiF、LiQ(リチウムキノリナート)、LiO、BaO、NaCl、CsF、Ybのようなランタン族金属、またはRbCl、RbI、KIのようなハロゲン化金属などが使用されてもよいが、これらに限らない。電子注入層EILはまた、電子輸送物質と絶縁性の有機金属塩(organo metal salt)が混合された物質からなる。有
機金属塩は、エネルギーバンドギャップ(energy band gap)が約4eV
以上の物質である。詳しくは、例えば、有機金属塩は、酢酸金属塩(metal acetate)、安息香酸塩金属塩(metal benzoate)、アセト酢酸金属塩(metal acetoacetate)、金属アセチルアセトナート(metal acetylacetonate)、または金属ステアレート(stearate)を含む。
【0108】
電子輸送領域ETRが電子注入層ETLを含む場合、電子注入層ETLの厚さは、約0.1nm~約10nm、約0.3nm~約9nmである。電子注入層EILの厚さが上述したような範囲を満たす場合、実質的な駆動電圧の上昇なしに十分な電子注入特性が得られる。
【0109】
電子輸送領域ETRは、上述したように、正孔阻止層HBLを含む。正孔阻止層HBLは、例えば、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、及びBphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)のうち少なくとも一つを含んでもよいが、これらに限らない。
【0110】
第2電極EL2は、電子輸送領域ETRの上に設けられる。第2電極EL2は導電性を有する。第2電極EL2は金属合金または導電性化合物からなる。第2電極層EL2はカソード(cathode)である。第2電極EL2は、透過型電極、半透過型電極、また
は反射型電極である。第2電極EL2が透過型電極であれば、第2電極EL2は透明金属酸化物、例えば、ITO、IZO、ZnO、ITZOなどからなる。
【0111】
第2電極EL2半透過型電極または反射型電極であれば、第2電極EL2はAg、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Mo、Ti、またはこれらの化合物や混合物(例えば、AgとMgの混合物)を含む。また、前記例示された物質で形成された反射膜や半透過膜、及びITO、IZO、ZnO、ITZOなどで形成された透明導電膜を含む複数の層構造であってもよい。
【0112】
図示していないが、第2電極EL2は補助電極と接続される。第2電極EL2が補助電極と接続される場合、第2電極EL2の抵抗を減少させることができる。
【0113】
有機電解発光素子10において、第1電極EL1と第2電極EL2にそれぞれ電圧が印加されることで、第1電極EL1から注入された正孔(hole)は正孔輸送領域HTR
を介して発光層EMLに移動し、第2電極EL2から注入された電子は電子輸送領域ETRを介して発光層EMLに移動する。電子と正孔は発光層EMLで再結合して励起子(exciton)を生成し、励起子が励起状態から基底状態に落ちる際に発光する。
【0114】
有機電界発光素子10が前面発光型であれば、第1電極EL1は反射型電極であり、第2電極はEL2は透過型電極または半透過型電極である。有機電界発光素子10が背面発光型であれば、第1電極EL1は透過型電極または半透過型電極であり、第2電極はEL2は反射型電極である。
【0115】
本発明一実施形態による有機電界発光素子10は、上述した多環化合物を発光層材料と
して使用することで、改善された発光効率及び寿命特性を示す。
【0116】
本発明の一実施形態によれば、下記化学式1で表される多環化合物を提供される。
【化16】
【0117】
化学式1において、環A及び環Bはそれぞれ独立して置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール環、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール環である。
【0118】
一方、化学式1において、環A及び環Bのうち少なくともいずれか一つは置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール環である。環A及び環Bがいずれもヘテロアリール環ではない場合、分子安定性が低くなって有機電界発光素子に適用する際に発光効率または寿命が低下する恐れがある。
【0119】
化学式1において、ZはBAr、POAr、PSAr、SiArAr、またはGeArArである。
【0120】
化学式1において、Arは置換若しくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数7以上30以下のアラルキル基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。
【0121】
化学式1において、Ar~Arはそれぞれ独立して置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換のオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、隣接する基と結合して環を形成してもよい。
【0122】
一実施形態において、化学式1の環A及び環Bのうち少なくともいずれか一つは下記化学式2で表される。
【化17】
【0123】
下記化学式2において、X及びYはそれぞれ独立して単結合、O、S、SO、SO、Se、NR、PR、POR、PSR、SiR、GeR10、またはBR11である。
【0124】
化学式2において、R~Rはそれぞれ独立して重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換若しくは無置換のオキシ基、置換若しくは無置換のチオール基、置換若しくは無置換のアミノ基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、シリル基、カルボニ
ル基、ボリル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。R~R11はそれぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換若しくは無置換のオキシ基、置換若しくは無置換のチオール基、置換若しくは無置換のアミノ基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、シリル基、カルボニル基、ボリル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。R~R11は、隣接する基と結合して環を形成してもよい。
【0125】
化学式1の環A及び環Bのうちいずれか一つがヘテロアリール環であり、化学式2のX及びYが同時に単結合であることはない。
【0126】
化学式1で表される一実施形態に係る多環化合物に対しては、上述した一実施形態に係る有機電界発光素子で説明した多環化合物に関する説明が同じく適用される。
【0127】
一実施形態に係る多環化合物は、上述した第1化合物群に示した化合物のうちから選択されるいずれか一つである。
【実施例0128】
以下、具体的な実施例及び比較例を介して本発明をより詳細に説明する。下記実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲はこれに限らない。
【0129】
(合成例)
本発明の一実施形態に係る多環化合物は、例えば、下記のように合成される。但し、本発明の一実施形態に係る多環化合物の合成方法は以下に限らない。
【0130】
1.化合物8の合成
本発明の一実施形態に係る多環化合物である化合物8は、例えば、下記反応によって合成される。
【化18】
【0131】
(中間体化合物Aの合成)
Ar雰囲気下、300mLの三口フラスコにN-(2,3-ジクロロフェニル)-N,N,N-トリフェニル-1,3-ベンゼンジアミンを9.63g(20mmol)と、アニリンを2.0mL(22mmol)、(Amphos)PdClを0.71g(1.0mmol)、NaOtBuを2.11g(22mmol)加え、100mLキシレン溶媒の中で120℃で1時間撹拌した。空冷後、水を加えて有機層を分取し、溶媒流去した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル)で精製した後、白色固体の化合物Aを7.40g(収率69%)得た。FAB-MS測定によって測定され
た化合物Aの分子量は、537であった。
【0132】
(中間体化合物Bの合成)
Ar雰囲気下、200mLの三口フラスコに化合物Aを7.37g(13.7mol)と2-ブロモ-1-フェニル-1H-インドールを4.08g(15.0mmol)、Pd(dba)を0.13g(0.14mmol)、Ruphos(2-ジシクロへキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシビフェニル)を0.26g(0.55mmol)、NaOtBuを1.44g(15.0mmol)加え、70mLトルエン溶媒の中で100℃で3時間撹拌した。空冷後、水を加えて有機層を分取し、溶媒流去した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル)で精製した後、白色固体の化合物Bを6.79g(収率68%)得た。FAB-MS測定によって測定された化合物Bの分子量は、728であった。
【0133】
(化合物8の合成)
Ar雰囲気下、300mLの三口フラスコに化合物Bを6.78g(9.3mmol)の脱水t-ブチルベンゼン溶液を50mL加え、-78℃で撹拌した。これに、1.9Mのt-BuLiのペンタン溶液を19.5mL(37mmol)滴下した。滴下終了後、60℃まで温度を上昇して2時間撹拌した後、t-ブチルベンゼンより低沸点の成分を減圧流去した。-30℃まで冷却し、BBrを1.8mL(19mmol)滴下した。滴下終了後、室温まで温度を上昇させて2時間撹拌した。その後、更に0℃まで冷却し、N,N-ジイソプロピルエチルアミンを1.7mL(9.8mmol)滴下した。滴下終了後、室温まで温度を上昇させて1時間撹拌した後、120℃まで温度を上昇させて8時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却し、氷浴(ice bath)で冷却したNaOAc水溶液、トルエンを加えて分液した。次に、ショートカラムクロマトグラフィ(シリカゲル)で精製した後、トルエン/ヘキサン溶媒で再結晶を行い、黄色個体の化合物8を5.09g(収率78%)を得た。
【0134】
FAB-MS及びNMRを測定して化合物8を確認した。FAB-MS測定によって測定された化合物8の分子量は702であった。また、H-NMR(CDCl)測定で
測定された化合物8のケミカルシフト値δは、8.43(1H)、7.94(1H)、7.69-7.48(6H)、7.37-7.22(11H)、7.10-6.98(12H)、6.86-6.81(4H)であった。
【0135】
2.化合物10の合成
本発明の一実施形態に係る多環化合物である化合物10は、例えば、下記反応によって合成される。
【化19】
【0136】
(中間体化合物Cの合成)
Ar雰囲気下、300mLの三口フラスコに2,3-ジクロロ-N,N-ジフェニル-1,3-ベンゼンジアミンを6.28g(20mmol)と、アニリンを2.0mL(2
2mmol)、(Amphos)PdClを0.71g(1.0mmol)、NaOtBuを2.11g(22mmol)加え、100mLキシレン溶媒の中で120℃で1時間撹拌した。空冷後、水を加えて有機層を分取し、溶媒流去した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル)で精製した後、白色固体の化合物Cを6.00g(収率81%)得た。FAB-MS測定によって測定された化合物Cの分子量は、370であった。
【0137】
(中間体化合物Dの合成)
Ar雰囲気下、200mLの三口フラスコに化合物Cを5.97g(16.1mol)、3-ブロモ-6-クロロ-ベンゾ[b]チオフェンを4.38g(17.7mmol)
、Pd(dba)を0.15g(0.16mmol)、Ruphosを0.30g(0.64mmol)、NaOtBuを1.70g(17.7mmol)加え、80mLトルエン溶媒の中で100℃で3時間撹拌した。空冷後、水を加えて有機層を分取し、溶媒流去した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル)で精製した後、白色固体の化合物Dを5.27g(収率61%)得た。FAB-MS測定によって測定された化合物Dの分子量は、536であった。
【0138】
(中間体化合物Eの合成)
Ar雰囲気下、200mLの三口フラスコに化合物Dを5.26g(9.8mol)、ジフェニルアミンを1.66g(9.8mmol)、Pd(dba)を0.18g(0.20mmol)、Ruphosを0.36g(0.78mmol)、NaOtBuを1.04g(10.8mmol)加え、50mLトルエン溶媒の中で110℃で8時間撹拌した。空冷後、水を加えて有機層を分取し、溶媒流去した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル)で精製した後、白色固体の化合物Eを5.05g(収率777%)得た。FAB-MS測定によって測定された化合物Eの分子量は、669であ
った。
【0139】
(化合物10の合成)
Ar雰囲気下、300mLの三口フラスコに化合物E5.03g(7.5mmol)の脱水t-ブチルベンゼン溶液を40mL加え、-78℃で撹拌した。これに、1.9Mのt-BuLiのペンタン溶液を15.8mL(30mmol)を滴下した。滴下終了後、60℃まで温度を上昇させて2時間撹拌した後、t-ブチルベンゼンより低沸点の成分を減圧流去した。-30℃まで冷却し、BBrを1.4mL(15mmol)滴下した。滴下終了後、室温まで温度を上昇させて2時間撹拌した。その後、更に0℃まで冷却し、N,N-ジイソプロピルエチルアミンを1.4mL(8.0mmol)滴下した。滴下終了後、室温まで温度を上昇させて1時間撹拌した後、120℃まで温度を上昇させて8時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷却し、氷浴で冷却したNaOAc水溶液、トルエンを加えて分液した。次に、ショートカラムクロマトグラフィ(シリカゲル)で精製した後、トルエン/ヘキサン溶媒で再結晶を行い、黄色個体の化合物10を4.00g(収率83%)を得た。
【0140】
FAB-MS及びNMRを測定して化合物10を確認した。FAB-MS測定によって測定された化合物10の分子量は643であった。また、H-NMR(CDCl)測
定で測定された化合物10のケミカルシフト値δは、8.01(1H)、7.77(1H)、7.71(1H)、7.43(1H)、7.31-7.16(11H)、7.10-6.98(13H)、6.86-6.82(2H)であった。
【0141】
3.化合物11の合成
本発明の一実施形態に係る多環化合物である化合物11は、例えば、下記反応によって合成される。
【化20】
【0142】
(中間体化合物Fの合成)
Ar雰囲気下、500mLの三口フラスコに、6-クロロ-1-フェニル-1H-インドール4.55g(20mmol)の脱水THF溶液を100mL加えて、-78℃で撹拌した。ここで、1.6Mのn-BuLiのヘキサン溶液を13mL(21mmol)滴下し、2時間撹拌した。これに、ヨウ素5.33g(21mmol)の脱水THF溶液を20mLを滴下し、-78℃で2時間撹拌した後、室温で3時間撹拌した。反応後、この混合液を水で洗浄した。得られた有機相を濃縮して、粘性の物質を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル)で精製した後、白色固体の化合物Fを6.00g(収率85%)得た。FAB-MS測定によって測定された化合物Fの分子量は、353であった。
【0143】
(中間体化合物Gの合成)
Ar雰囲気下、300mLの三口フラスコに化合物Fを5.98g(16.9mol)、2-ブロモ-5-クロロ-N-フェニル-ベンゼンアミンを4.78g(16.9mm
ol)、Pd(dba)を0.16g(0.17mmol)、dppfを0.25g(0.34mmol)、NaOtBuを1.79g(18.6mmol)加え、85mLトルエン溶媒の中で80℃で6時間撹拌した。空冷後、水を加えて有機層を分取し、溶媒流去した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル)で精製した後、白色固体の化合物Gを4.96g(収率58%)得た。FAB-MS測定によって測定された化合物Gの分子量は506であった。
【0144】
(中間体化合物Hの合成)
Ar雰囲気下、500mLの三口フラスコに化合物G4.93g(9.7mmol)の脱水THF溶液100mLを加え、-78℃で撹拌した。これに、1.6Mのn-BuLiのヘキサン溶液を12.5mL(20mmol)滴下し2時間撹拌した後、BBrを1.0mL(10mmol)滴下して、-78℃で1時間撹拌し、室温で3時間撹拌した。これを0℃まで冷却した後、1.0Mの2,4,6-トリイソプロピルフェニルマグネシウムブロマイドのTHF溶液を10mL(10mmol)滴下して0℃で2時間撹拌した後、室温で3時間撹拌した。反応後、この混合液を水で洗浄した。得られた有機相を濃縮して、粘性の物質を得た。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル)で精製した後、黄色固体の化合物Hを4.36g(収率70%)得た。FAB-MS測定によって測定された化合物Hの分子量は640であった。
【0145】
(化合物11の合成)
Ar雰囲気下、200mLの三口フラスコに化合物Hを4.35g(6.8mol)、ジフェニルアミンを2.30g(13.6mmol)、Pd(dba)を0.31g(0.34mmol)、Ruphosを0.63g(1.36mmol)、NaOtBuを1.44g(15.0mmol)加え、70mLトルエン溶媒の中で110℃で8時間撹拌した。空冷後、水を加えて有機層を分取し、溶媒流去した。得られた粗生成物をカラ
ムクロマトグラフィ(シリカゲル)で精製した後、黄色固体の化合物11を3.20g(収率52%)得た。
【0146】
FAB-MS及びNMRを測定して化合物11を確認した。FAB-MS測定によって測定された化合物11の分子量は906であった。また、H-NMR(CDCl)測
定で測定された化合物11のケミカルシフト値δは、8.39(1H)、7.69-7.56(5H)、7.31-7.22(12H)、7.10-6.98(15H)、6.86-6.81(2H)、6.40(1H),2.90-2.85(3H)、1.22-1.16(18H)であった。
【0147】
4.化合物12の合成
本発明の一実施形態に係る多環化合物である化合物12は、例えば、下記反応によって合成される。
【化21】
【0148】
(中間体化合物Iの合成)
Ar雰囲気下、500mLの三口フラスコにp、p’-ジトリルアミンを9.86g(50mol)、2-ブロモ-ベンゾ[b]チオフェンを10.65g(50mmol)、Pd(dba)を0.46g(0.50mmol)、Ruphosを0.93g(2.0mmol)、NaOtBuを5.29g(55mmol)加え、250mLトルエン溶媒の中で100℃で2時間撹拌した。空冷後、水を加えて有機層を分取し、溶媒流去した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィ(シリカゲル)で精製した後、白色固体の化合物Iを15.15g(収率92%)得た。FAB-MS測定によって測定された化合物Iの分子量は、329であった。
【0149】
(中間体化合物Kの合成)
1000mL丸底フラスコに化合物Iを15.13g(46mmol)、N-ブロモスクシンイミドを25.45g(143mmol)加え、酢酸を30mL添加して、30mLクロロホルム溶媒の中で2時間0℃で撹拌した。空冷後、チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて有機層を分取し、溶媒流去した。カラムクロマトグラフィ(シリカゲル)で精製した後、白色固体の化合物Kを23.16g(収率89%)得た。FAB-MS測定によって測定された化合物Kの分子量は、562であった。
【0150】
(化合物12の合成)
Ar雰囲気下、1000mLの三口フラスコに化合物A23.13g(40.9mmol)の脱水t-ブチルベンゼン溶液を160mL加え、-78℃で撹拌した。これに、1.9Mのt-BuLiのペンタン溶液を129mL(245mmol)滴下した。滴下終了後、室温まで温度を上昇させて2時間撹拌した。その後、-30℃まで冷却し、BBrを7.8mL(82mmol)を滴下した。滴下終了後、室温まで温度を上昇させて1時間撹拌した。その後、更に0℃まで冷却し、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジンを14.9mL(82mmol)滴下した。滴下終了後、室温まで温度を上昇させて
1時間撹拌した後、160℃まで温度を上昇させて10時間加熱撹拌した。反応液を0℃まで冷却し、1.0Mの2,4,6-トリイソプロピルフェニルマグネシウムブロマイドのTHF溶液を164mL(164mmol)滴下して0℃で2時間撹拌した後、室温で3時間撹拌した。反応後、リン酸緩衝液(pH6)、トルエンを加えて分液した。次に、カラムクロマトグラフィ(シリカゲル)で精製した後、トルエン/ヘキサン溶媒で再結晶を行い、黄色個体の化合物12を4.55g(収率19%)を得た。
【0151】
FAB-MS及びNMRを測定して化合物12を確認した。FAB-MS測定によって測定された化合物12の分子量は、585であった。また、H-NMR(CDCl
測定で測定された化合物12のケミカルシフト値δは、8.05(1H)、7.93(1H)、7.57-7.40(2H)、7.19-7.11(5H)、6.99-6.95(4H)、2.38-2.31(18H)、2.20-2.16(6H)であった。
【0152】
(素子作成例)
上述した化合物8、10、11、及び12の多環化合物を発光層の材料として使用し、実施例1~実施例4の有機電界発光素子を作製した。下記は、実施例1~実施例4、及び比較例1~比較例4において、発光層に使用された化合物を示している。
[実施例化合物]
【化22】
【0153】
下記比較例化合物R-1~R-4を発光層の材料として使用して、比較例1~4の有機電界発光素子を製作した。
[比較例化合物]
【化23】
【0154】
実施例1~4、及び比較例1~4の有機電界発光素子は、ガラス基板の上に150nmの厚さでITOをパターニングした後、超純水で洗浄し、UVオゾン処理を10分間実施した。次に、10nmの厚さでHAT-CNを蒸着し、α-NPDを80nmの厚さで蒸着し、mCPを5nmの厚さで蒸着して、正孔輸送領域を形成した。
【0155】
次に、発光層を形成する際、本発明の一実施形態の多環化合物または比較例化合物とDPEPOを20:80の割合で共蒸着し、厚さ20nmの層を形成した。次に、DPEPOを利用して厚さ10nmの層を形成した。つまり、共蒸着して形成された発光層は、実施例1~実施例4ではそれぞれ化合物8、10、11、及び12をDPEPOと混合して蒸着しており、比較例1~比較例4では比較例化合物R-1、R-2、R-3、及びR-4をDPEPOと混合して蒸着している。
【0156】
発光層の上にTPBiで厚さ30nmの層を形成し、LiFで厚さ0.5nmの層を形成して、電子輸送領域を形成した。次に、アルミニウム(Al)で厚さ100nmの第2電極を形成した。
【0157】
実施例において、正孔輸送領域、発光層、電子輸送領域、及び第2電極は、真空蒸着装置を利用して形成した。
【0158】
(有機電界発光素子の特性評価)
実施例及び比較例による有機電界発光素子の特性を評価するために、最大発光波長(nm)及び外部量子収率(%)を測定した。浜松ホトニクス社製C9920-11輝度配向特性測定装置を利用して測定した。寿命は初期輝度100cd/mからの輝度半減時間を示し、EQEは10mA/cmにおける値を意味する。
【表1】
【0159】
表1を参照すると、本発明の一実施形態に係る多環化合物を発光層のドーパント物質として使用した実施例1~実施例4の有機電界発光素子は、比較例1~比較例4に比べ、高い外部量子効率を示すことが分かる。また、本発明の一実施形態の多環化合物を発光層のドーパント物質として使用した実施例1~実施例4の有機電界発光素子は、比較例1~比較例4に比べ、長寿命を達成することが分かる。
【0160】
表1の結果を参照すると、実施例化合物は、高効率、長寿命の熱活性遅延蛍光材料として使用され得ることが分かる。
【0161】
本発明の一実施形態に係る有機電界発光素子の場合、上述したに一実施形態に係る多環化合物を発光層に含むことで高い発光効率を示す。
【0162】
実施例に比べ、比較例化合物R-1~R-4は安定したヘテロアリール環をコア分子内に含まないため、比較例1~4の有機電界発光素子は、実施例に比べ低い外部量子効率及び低い素子寿命を示す。
【0163】
これまで本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、該当技術分野における熟練した当業者または該当技術分野における通常の知識を有する者であれば、後述する特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び技術領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更し得ることを理解できるはずである。
【0164】
よって、本発明の技術的範囲は明細書の詳細な説明に記載されている内容に限らず、特許請求の範囲によって決められるべきである。
【符号の説明】
【0165】
10:有機電界発光素子 EL1:第1電極
EL2:第2電極 HTR:正孔輸送領域
EML:発光層 ETR:電子輸送領域
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式4で表される多環化合物。
【化1】

(前記化学式4において、
ArおよびAr’は、それぞれ独立して置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数7以上30アラルキル基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、
環A及び環Bはそれぞれ独立して、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール環、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール環であり、環A及び環Bのうち少なくとも一つは化学式2で表され、
【化2】

環Mは、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、
Wは、B、PO、PS、SiAr、またはGeArであり、
ArおよびArはそれぞれ独立して、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換のオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換の環形成炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、
化学式2において、
X及びYはそれぞれ独立して、単結合、O、S、SO、SO、Se、NR、PR、POR、PSR、SiR、GeR10、またはBR11であり、X及びYは同時に単結合ではなく、
およびRはそれぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換若しくは無置換のオキシ基、置換若しくは無置換のチオール基、置換若しくは無置換のアミノ基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、シリル基、カルボニル基、ボリル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、環Aが化学式2で表される場合、RおよびRは結合して環を形成し、
~R11はそれぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換若しくは無置換のオキシ基、置換若しくは無置換のチオール基、置換若しくは無置換のアミノ基、ホスフィンオキシド基、ホスフィンスルフィド基、シリル基、カルボニル基、ボリル基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、
前記R~R11は隣接する基と結合して環を形成するか、又は結合せず、
*は結合位置を示す。)
【請求項2】
前記Wは、Bである、請求項1に記載の多環化合物。
【請求項3】
下記化学式4で表される多環化合物。
【化3】

(化学式4において、
ArおよびAr’は、それぞれ独立して置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数7以上30アラルキル基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、
環A及び環Bはそれぞれ独立して、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール環、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール環であり、環A及び環Bのうち少なくとも一つは、置換若しくは無置換のピロール、置換若しくは無置換のチオフェン、置換若しくは無置換のオキサジン、あるいは置換若しくは無置換のフランであり、
環Mは、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、または置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基であり、
Wは、B、PO、PS、SiAr 、またはGeAr であり、
Ar 及びAr はそれぞれ独立して、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換のオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1以上10以下のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換された環形成炭素数7以上30以下のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数2以上30以下のヘテロアリール基である。)
【請求項4】
第1電極と、
前記第1電極の上に配置される正孔輸送領域と、
前記正孔輸送領域の上に配置される発光層と、
前記発光層の上に配置される電子輸送領域と、
前記電子輸送領域の上に配置される第2電極と、を含み、
前記発光層は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の多環化合物を含む、
有機電界発光素子。
【請求項5】
前記発光層は、遅延蛍光を放出する、請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項6】
前記発光層は、熱活性遅延蛍光発光層である、請求項4に際の有機電界発光素子。
【請求項7】
前記発光層は、青色光を発する、請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
前記第1電極及び前記第2電極はそれぞれ独立して、Ag,Mg,Cu,Al,Pt,Pd,Au,Ni,Nd,Ir,Cr,Li,Ca,LiF/Ca,LiF/Al,Mo,Ti,In,Sn及びZnからなる群から選択される一つ、これらの中から選択される複数を含む化合物、これらの中から選択される複数を含む混合物、又はこれらの中から選択される1つ以上の酸化物を含む、請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
前記正孔輸送領域は、
前記第1電極の上に配置される正孔注入層と、
前記正孔注入層の上に配置される正孔輸送層と、
を含み、
前記正孔注入層の厚さは、約3nm~約100mnであり、
前記正孔輸送層の厚さは、約1nm~約100nmである、請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項10】
前記電子輸送領域は、
前記発光層の上に配置される電子輸送層と、
前記電子輸送層の上に配置される電子注入層と、
を含み、
前記電子輸送層の厚さは、約10nm~約100nmであり、
前記電子注入層の厚さは、約0.1nm~約10nmである、請求項4に記載の有機電界発光素子。
【請求項11】
前記発光層の厚さは、約10nm~約60nmである、請求項4に記載の有機電界発光素子。