(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170586
(43)【公開日】2024-12-10
(54)【発明の名称】移植免疫寛容を促進するための死亡したドナーに由来する細胞性組成物ならびにその製造および使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/28 20150101AFI20241203BHJP
A61K 35/14 20150101ALI20241203BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20241203BHJP
A61K 35/26 20150101ALI20241203BHJP
A61K 35/407 20150101ALI20241203BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20241203BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20241203BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20241203BHJP
C12N 5/0789 20100101ALI20241203BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20241203BHJP
【FI】
A61K35/28
A61K35/14
A61K35/12
A61K35/26
A61K35/407
A61P37/02
A61P13/12
A61K35/17
C12N5/0789
C12N5/0783
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024154750
(22)【出願日】2024-09-09
(62)【分割の表示】P 2021539495の分割
【原出願日】2019-09-18
(31)【優先権主張番号】62/732,823
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/732,830
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/732,832
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/732,827
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521113081
【氏名又は名称】ミディアー セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ズダノウスキ
(72)【発明者】
【氏名】コルビー スワイア
(72)【発明者】
【氏名】ディー. スコット バティ ジュニア
(57)【要約】 (修正有)
【課題】臓器移植レシピエントで混合キメラ現象を促進する組成物、その作製方法、および使用方法を提供する。
【解決手段】死亡したドナーの骨髄に由来するCD34+細胞および死亡したドナーの骨髄以外のものに由来するCD3+細胞を含有する細胞性組成物を提供する。組成物は、固形臓器移植のレシピエントにおいて混合キメラ現象を促進するのに有益である。そのような組成物を作製および使用する方法も提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、固形臓器移植レシピエントで混合キメラ現象を促進するための本発明の組成物で使用するための、死亡したドナーからの血液および血液成分を分析し、調製する方法をさらに提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2018年9月18日に出願の米国特許仮出願第62/732,823号;2018年9月18日に出願の米国特許仮出願第62/732,827号;2018年9月18日に出願の米国特許仮出願第62/732,830号;2018年9月18日に出願の米国特許仮出願第62/732,832号の権益および優先権を主張し、その各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、死亡したドナーに由来する細胞を含む治療組成物、ならびにそれを製造および使用する方法に一般的に関する。
【背景技術】
【0003】
米国では、ほぼ35、000件の臓器移植が毎年実行される。臓器移植の主要な合併症は、レシピエントの免疫系による臓器の拒絶である。臓器拒絶を回避するために、ほとんどの移植レシピエントは、彼らの残りの生涯の間免疫抑制薬をとらなければならない。しかし、免疫抑制療法は、感染症、がん、高血圧および肝傷害のリスクの増加を含む、それ自体のリスクのセットを有する。さらに、免疫抑制は、レシピエントが移植を許容することを保証しない。
【0004】
混合キメラ現象と呼ばれる状態である、ドナー由来およびレシピエント由来の細胞の混合物を含むようにレシピエントの免疫系を再構築することによって、免疫抑制なしの長期の移植免疫寛容を達成することができる。したがって、臓器移植レシピエントで混合キメラ現象を確立することが非常に望ましくなっている。
【0005】
混合キメラ現象は、造血幹および前駆細胞(HSPC)ならびにT細胞を含むドナー血液細胞をレシピエントに提供することによって達成することができる。残念ながら、成人のドナーからの血液細胞の供給は、生きているドナーからHSPCを得ることが困難なために制限される。HSPCは外科的摘出によって生きているドナーから収集することができるが、手術は全身麻酔を一般的に必要とし、痛みを伴うことがあり、感染症または神経および筋肉への損傷のリスクがある。あるいは、骨髄から血液にHSPCを動員する薬剤をドナーに投与し、アフェレーシスによって末梢血から細胞を収集することによって、HSPCを非外科的に回収することができる。しかし、アフェレーシスは、最高6時間もかかることがあり、十分な量のHSPCを得るために数日間も繰り返す必要があることがあり、感染症および血液凝固のリスクをもたらす。さらに、方法に関係なく、HSPCの供与はドナーに医学的な恩恵がないので、彼らがレシピエントと直接的な家族関係も個人的な関係もない限り、多くの個人はHSPCを供与することを望まない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、死亡したドナーがHSPCおよびT細胞の潜在的な代わりの供与源になることを認識し、本発明は、死亡したドナーからこれらの治療的に有益な細胞を得ることに関連した難題に対処する様々なアプローチおよび技術を提供する。特に、本発明は死亡したドナーの組織および体液の研究と関連した多数の異なる洞察および発見を利用し、それらは、本明細書において、死亡したドナーに由来する新しい操作された造血細胞生成物の生産のための新しい製造プロセスを開発するために活用される。例えば、死亡したドナーから血液を収集する新しい血液収集装置、死亡したドナーの骨髄からのCD34+細胞のex vivo抽出のための新しい方法、死亡したドナーの血液を処理するための新しい方法および死亡したドナーの血液を分析するための新しいアッセイの開発を限定されずに含む、新しい技術、製品およびアプローチが開発された。これらの洞察および開発の全ては、死亡したドナーに由来する新しい操作された造血細胞生成物の生産のための新しい製造プロセスをもたらした。
【0007】
ある特定の態様では、本発明は、死亡したドナーの骨髄に由来するHSPCおよび死亡したドナーの骨髄以外のものに由来するT細胞を含む新しい細胞性組成物を提供する。本明細書に記載される製造プロセスが開発までは、死亡したドナーの骨髄以外のもの(例えば、死亡したドナーの血液)に由来するCD3+T細胞を含む組成物はこれまで可能でなかった。ある特定の実施形態では、骨髄由来のHSPCはCD34の発現によって同定され、T細胞はCD3の発現によって同定される。細胞性組成物は、固形臓器移植のレシピエントで混合キメラ現象の確立を促進するのに十分な量でCD34+細胞およびCD3+細胞を含有する。
【0008】
本発明の組成物および方法は、臓器移植を支持するために幹細胞移入の有用性を大いに向上させる。最初に、それらは、医学的恩恵がない供与手順の副作用を許容することをしばしば嫌う、生きている個人からHSPCを得る必要性を回避する。同時に、本明細書で提供される組成物および方法は、死亡したドナーからHSPCおよびT細胞を得ることに関連する問題のいくつかを克服する。重要なことに、CD34+細胞およびCD3+細胞を得るために異なる供与源が使用されるので、各細胞型の収量が最適化される。例えば、豊富な骨髄供与源、例えば腸骨稜または椎体はCD34+細胞の供与源の役割をするが、CD3+細胞は血液から得られる。HSPCおよびT細胞の別々の処理は、特定の細胞集団の単離を容易にしその機能を保存する特異的プロトコールに、異なる供与源をかけることも可能にする。例えば、HSPCを動員するがT細胞のために有益でない可能性がある、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)などの薬剤で骨髄を処置することができる。本発明は、そのような細胞の集団が生きているレシピエントに投与する細胞製品の作製で使用するために適切であることを確実にするために、死亡したドナーから得られるHSPCおよびT細胞の分析の方法も提供する。
【0009】
別の態様では、本発明は、固形臓器移植レシピエントで混合キメラ現象を確立するための細胞製品を提供する。本製品は、死亡したドナーの骨髄に由来する、レシピエント体重1kgあたり1×105を超えるCD34+細胞および死亡したドナーの骨髄以外のもの(例えば、血液)に由来する、レシピエント体重1kgあたり1×105を超えるCD3+細胞を含む。
【0010】
別の態様では、本発明は、固形臓器移植レシピエントで混合キメラ現象を確立するための方法を提供する。本方法は、固形臓器移植を受けたかまたは受ける被験体に、死亡したドナーの骨髄に由来する、レシピエント体重1kgあたり1×105を超えるCD34+細胞、および死亡したドナーの骨髄以外のものに由来する、レシピエント体重1kgあたり1×105を超えるCD3+細胞を含有する製品を提供することを含む。
【0011】
細胞製品は、CD34+細胞およびCD3+細胞の各々の様々な量を含むことができる。量は、レシピエントの体重に対する細胞の数として規定することができる。例えば、細胞製品は、レシピエント体重1kgあたり少なくとも1×105、2×105、5×105、1×106、2×106、4×106、1×107、2×107、4×107、1×108、2×108または5×108のCD34+細胞を含有することができる。細胞製品は、レシピエント体重1kgあたり少なくとも1×104、2×104、5×104、1×105、2×105、5×105、1×106、2×106、5×106、1×107、2×107、5×107、1×108、2×108または5×108のCD3+細胞を含有することができる。
【0012】
細胞製品は、レシピエント体重1kgあたり少なくとも1×105のCD34+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも2×105のCD34+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも4×105のCD34+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも5×105のCD34+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも1×106のCD34+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも2×106のCD34+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも4×106のCD34+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも5×106のCD34+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも1×107のCD34+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも2×107のCD34+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも4×107のCD34+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも1×108のCD34+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも2×108のCD34+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも4×105のCD34+細胞、またはレシピエント体重1kgあたり少なくとも5×108のCD34+細胞を含有することができる。細胞製品は、レシピエント体重1kgあたり少なくとも1×105のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも2×105のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも4×105のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも5×105のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも1×106のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも2×106のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも4×106のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも5×106のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも1×107のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも2×107のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも4×107のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも1×108のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも2×108のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも4×105のCD3+細胞、またはレシピエント体重1kgあたり少なくとも5×108のCD3+細胞を含有することができる。細胞製品は、レシピエント体重1kgあたり約1×105のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり約2×105のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり約4×105のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり約5×105のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり約1×106のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり約2×106のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり約4×106のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり約5×106のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり約1×107のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり約2×107のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり約4×107のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり約1×108のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり約2×108のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり約4×105のCD3+細胞、またはレシピエント体重1kgあたり約5×108のCD3+細胞を含有することができる。
【0013】
骨髄は、任意の骨供与源に由来し得る。例えば、骨は、腸骨稜または椎体に由来し得る。
【0014】
骨髄以外のものは、骨髄でない任意の組織または体液であってよい。例えば、骨髄以外のものは、血液、肝臓、リンパ節、脾臓または胸腺であってよい。好ましくは、骨髄以外のものは、血液である。
【0015】
死亡したドナーは、成人、小児または胎児であってよい。
【0016】
CD34+細胞、CD3+細胞または両方は、固形臓器移植レシピエントにHLAがマッチし得る。CD34+細胞、CD3+細胞または両方は、固形臓器移植レシピエントにHLAミスマッチであってもよい。ドナーおよびレシピエントは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DQおよびHLA-DR遺伝子の間で6、8、10または12個の対立遺伝子でHLAがマッチし得る。ドナーおよびレシピエントは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DQおよびHLA-DR遺伝子の間で1、2、3、4、5、6またはそれより多くの対立遺伝子でHLAミスマッチであってよい。
【0017】
CD34+細胞およびCD3+細胞は、別々の容器で提供することができる。CD34+細胞およびCD3+細胞は、1つまたは複数の共通容器で混合物として提供することができる。
【0018】
細胞製品は、低温保存媒体を含有することができる。低温保存媒体は、凍結保護物質(cryoprotectant)、例えば約40,000Daの分子量を有するDMSO
またはデキストランを含有することができる。凍結保護物質は、約1%、2%、3%、4%、5%、7.5%または10%の濃度で存在することができる。
【0019】
固形臓器は、当技術分野で公知である方法によって移植することができる任意の固形臓器であってよい。例えば、かつ限定されずに、固形臓器は、腎臓、肺、すい臓、すい臓の島細胞、心臓、腸、結腸、肝臓、皮膚、筋肉、歯肉、目または歯であってよい。好ましくは、固形臓器は、腎臓である。
【0020】
他の態様では、本発明は、固形臓器移植レシピエントで混合キメラ現象を確立するための細胞製品を調製する方法を提供する。本方法は、死亡したドナーの骨髄に由来するCD34+細胞を得ること、死亡したドナーの骨髄以外のものに由来するCD3+細胞を得ること、ならびに固形臓器移植レシピエントへの投与のために、得られたCD34+細胞および得られたCD3+細胞を含む細胞製品を生産することを含む。細胞製品は、上記の1つまたは複数の特性を含むことができる。ある特定の実施形態では、骨髄以外のものは、血液、肝臓、リンパ節、脾臓または胸腺であってよい。好ましくは、骨髄以外のものは、血液である。
【0021】
本方法は、CD34+細胞を骨髄から得る前に、死亡したドナーを放血させることを含むことができる。本方法は、死亡したドナーの骨の一部から骨髄を取り出すことを含むことができる。例えば、骨髄は、吸引または穿孔術によって取り出すことができる。穿孔術を含む方法は、骨の破片から骨髄を分離するための1つまたは複数の追加のステップを含むことができる。例えば、かつ限定されずに、骨髄は、撹拌、酵素的脱凝集、洗浄および濾過の1つまたは複数によって骨の破片から分離することができる。
【0022】
本方法は、骨髄を抗凝固剤で処理することを含むことができる。例えば、かつ限定されずに、抗凝固剤はアセノクマロール、抗トロンビンIII、アピキサバン、アルガトロバン、アトロメンチン、ベトリキサバン、ビバリルジン、ブロジファクム、ダビガトラン、ダルテパリン、ジフェナクム、エドキサバン、EDTA、エノキサパリン、フォンダパリヌクス、ヘパリン、イドラパリヌクス、フェニンジオン、フェンプロクモン、リバロキサバンまたはワルファリンであってよい。骨髄は骨の一部からのその取り出しの前に抗凝固剤で処理することができるか、またはそれは骨の一部からのその取り出しの後に抗凝固剤で処理することができる。
【0023】
本方法は、骨髄からCD34+細胞を動員する薬剤で骨髄を処理することを含むことができる。例えば、かつ限定されずに、骨髄からCD34+細胞を動員する薬剤は、アデノシン受容体アンタゴニスト、BIO5192、CCR1アンタゴニスト、CCR2アンタゴニスト、CXCR2アンタゴニスト、CXCR4アンタゴニスト、シクロホスファミド、デフィブロチド、EphA3-Fc、エリスロポイエチン(EPO)、グリコサミノグリカン(GAG)模倣体、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、増殖調節がん遺伝子ベータ(GRO-ベータ)、ヒト成長ホルモン、IL-8、マクロファージ炎症性タンパク質-1アルファ(MIP-1アルファ)、met-SDF-1ベータ、NSC23766、副甲状腺ホルモン、百日咳毒素、プレリキサホル、ポリ-[1-6]--D-グルコピラノシル-[1-3]--D-グルコピラノース(PGG)グルカン、Rac1阻害剤、レチノイン酸受容体アゴニスト、SB290157、SDF-1アルファペプチド類似体、幹細胞因子(SCF)、硫酸化コロミン酸、硫酸化多糖、T134、T140、トロンボポエチン(TPO)、TPO受容体アゴニスト、VCAM-1阻害剤、VLA-1阻害剤、VLA-4阻害剤または前述のいずれかの類似体もしくは誘導体であってよい。骨髄は骨の一部からのその取出しの前に骨髄からCD34+細胞を動員する薬剤で処理することができるか、または骨の一部からのその取出しの後に骨髄からCD34+細胞を動員する薬剤でそれを処理することができる。
【0024】
CD34+細胞を得ることは、赤血球、血小板または両方を骨髄から枯渇させることを含むことができる。例えば、かつ限定されずに、浮力活性化細胞分離、細胞溶解、ヘタスターチ沈降、免疫磁気枯渇、サイズベースの遠心分離または回転膜濾過によって骨髄から赤血球および/または血小板を枯渇させることができる。骨の一部からのその取出しの前に骨髄から赤血球および/または血小板を枯渇させることができるか、または骨の一部からのその取出しの後にそれから赤血球および/または血小板を枯渇させることができる。
【0025】
CD34+細胞を得ることは、取り出された骨髄からCD34+細胞を免疫選択することを含むことができる。好ましくは、CD34+細胞は、骨の一部からの骨髄の取出しの後に免疫選択される。
【0026】
CD3+細胞を得ることは、赤血球、血小板または両方を骨髄以外のもの、例えば血液から枯渇させることを含むことができる。例えば、かつ限定されずに、浮力活性化細胞分離、細胞溶解、ヘタスターチ沈降、免疫磁気枯渇、サイズベースの遠心分離または回転膜濾過によって骨髄から赤血球および/または血小板を枯渇させることができる。
【0027】
CD3+細胞を得ることは、CD3+細胞について骨髄以外のものを富化する他の方法を含むことができる。本方法は、CD3+細胞の正の選択、非CD3+細胞の枯渇またはその組合せを含むことができる。CD3+細胞の正の選択は、固体基材に固定される結合剤を使用したCD3+細胞の上の1つまたは複数のマーカーの結合を含むことができる。非CD3+細胞の枯渇は、固体基材に固定される結合剤を使用したCD3+細胞に存在しない1つまたは複数のマーカーの結合を含むことができる。CD3+細胞の正の選択のためのマーカーは、CD3、CD4およびCD8の1つまたは複数を含むことができる。CD3+細胞の負の選択のためのマーカーは、CD10、CD14、CD15、CD33、CD41、CD71、CD209およびCD235の1つまたは複数を含むことができる。結合剤は、抗体であってよい。固体基材は、ビーズまたは粒子であってよい。CD3+細胞を得ることは、骨髄以外のもの、例えば血液から凝塊、細胞凝集塊または両方を防止および/または除去することを含むことができる。凝塊および/または凝集塊の除去は、濾過、例えば血液の濾過、または抗凝固剤による血液の処理を含むことができる。
【0028】
CD3+細胞を得ることは、血液を細胞画分および血漿画分に分離することを含むことができる。
【0029】
本方法は、得られたCD34+細胞および得られたCD3+細胞を組み合わせることを含むことができる。あるいは、本方法は、得られたCD34+細胞および得られたCD3+細胞を別々の容器に保存することを含むことができる。
【0030】
本方法は、得られたCD34+細胞および得られたCD3+細胞を低温保存することを含むことができる。例えば、細胞は、凍結保護物質、例えば約40,000Daの分子量を有するDMSOまたはデキストランの添加によって低温保存することができる。
【0031】
別の態様では、本発明は、ex vivoで骨髄から得られた造血細胞から細胞製品を作製する方法を提供する。本方法は、被験体の体から骨髄を含む試料を得ること、試料を被験体の体から取り出した後に試料から造血細胞を得ること、および固形臓器移植レシピエントへの投与のために造血細胞を含有する細胞製品を生産することを含む。
【0032】
好ましくは、試料が被験体の体から得られるとき、被験体は死亡している。被験体は、ヒトまたは霊長類などの任意の哺乳動物であってよい。好ましくは、被験体はヒトである。
【0033】
試料は、被験体の体の任意の骨から得ることができる。好ましくは、試料は、腸骨稜または椎体、または両方から得られる。
【0034】
造血細胞は、1つまたは複数のマーカーを発現する造血細胞のサブセットであってよい。例えば、かつ限定されずに、造血細胞は、B細胞、好塩基球、好酸球、造血細胞、造血幹および前駆細胞(HSPC)、リンパ球、リンパ前駆細胞、マクロファージ、肥満細胞、巨核球、単球、ミエロブラスト、骨髄前駆細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、血小板/栓球、T細胞、T調節(Treg)細胞、メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、幹メモリーT細胞(TSCM)、ナイーブT細胞、細胞傷害性T細胞、ガンマデルタT細胞、ナチュラルキラーT細胞、CD34+細胞、CD4+細胞またはCD3+細胞であってよい。
【0035】
造血細胞は、任意の適切な手段によって試料から得ることができる。例えば、かつ限定されずに、造血細胞は、吸引または穿孔術によって試料から骨髄を取り出すことによって得ることができる。穿孔術を含む方法は、上記のものなど、骨の破片から骨髄を分離するための1つまたは複数の追加のステップを含むことができる。造血細胞は、上記の薬剤の1つまたは複数などの、骨髄からCD34+細胞を動員する薬剤と試料を接触させることによって得ることができる。
【0036】
試料から取り出された骨髄は、さらに処理することができる。例えば、骨髄は、上記のものなどの抗凝固剤で処理することができる。骨髄細胞は、例えば上記の方法によって骨の破片から分離することができる。骨髄は、例えば上記の方法によって、赤血球、血小板または両方を枯渇させることができる。CD34+細胞は、骨髄から免疫選択することができる。
【0037】
本方法は、細胞製品を低温保存することを含むことができる。細胞製品は、上記のものなどの凍結保護物質を使用して低温保存することができる。
【0038】
細胞製品は、固形臓器移植レシピエントに治療上の利益を提供することができる。例えば、細胞製品は、固形臓器移植レシピエントで混合キメラ現象の確立を促進することができる。
【0039】
固形臓器は、上記のものの1つなどの任意の固形臓器であってよい。
【0040】
造血細胞は、CD34+細胞およびCD3+細胞を含有する細胞製品に関して上記の通り、固形臓器移植レシピエントにとってHLAがマッチするかまたはHLAミスマッチであってもよい。
【0041】
別の態様では、本発明は、死亡したドナーに由来する血液が、生きているレシピエントに投与する製品の製造で使用するのに適切かどうか評価する方法を提供する。本方法は、死亡したドナーから血液を得ること、血液の成分を分析すること、および成分の分析に基づいて、生きているレシピエントに投与する製品の製造で使用するのに血液が適切かどうか決定することを含む。
【0042】
別の態様では、本発明は、死亡したドナーに由来する血液が、生きているレシピエントに投与する製品の製造で使用するのに適切かどうか評価する方法を提供する。本方法は、死亡したドナーから血液を得ること、死亡したドナーからの非血液組織の成分を分析すること、および成分の分析に基づいて、生きているレシピエントに投与する製品の製造で使用するのに血液が適切かどうか決定することを含む。
【0043】
非血液組織は、骨髄、脾臓、肝臓、リンパ節または胸腺であってよい。
【0044】
本方法は、複数の成分の分析を含むことができる。本方法は、複数の血液成分、非血液組織からの複数の成分、または少なくとも1つの血液成分および非血液組織からの少なくとも1つの成分の分析を含むことができる。
【0045】
血液または非血液組織の成分は、細胞型または細胞の集団であってよい。例えば、かつ限定されずに、細胞はB細胞、好塩基球、好酸球、造血細胞、造血幹および前駆細胞(HSPC)、リンパ球、リンパ前駆細胞、マクロファージ、肥満細胞、巨核球、単球、ミエロブラスト、骨髄前駆細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、血小板/栓球、T細胞、T調節(Treg)細胞、メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、幹メモリーT細胞、ナイーブT細胞、細胞傷害性T細胞、ガンマデルタT細胞、ナチュラルキラーT細胞、CD34+細胞、CD4+細胞またはCD3+細胞であってよい。
【0046】
血液または非血液組織の成分は、分子などの非細胞性成分であってよい。例えば、かつ限定されずに、分子はサイトカイン、炎症誘発性サイトカイン、抗炎症サイトカイン、ケモカイン、抗体または免疫グロブリンであってよい。
【0047】
生きているレシピエントに投与する製品の製造で使用するための血液の適性は、T細胞の分析を含むことができる。例えば、かつ限定されずに、T細胞活性化、消耗、アネルギー、増殖、生存率およびアポトーシスの1つまたは複数を分析することができる。T細胞活性化、消耗およびアネルギーの1つまたは複数の分析は、T細胞の表面の1つまたは複数のマーカーまたは受容体の検出を含むことができる。
【0048】
生きているレシピエントに投与する製品の製造で使用するための血液の適性は、HSPCの分析を含むことができる。例えば、かつ限定されずに、HSPC増殖、HSPC生存率およびHSPCアポトーシスの1つまたは複数を分析することができる。HSPCの増殖および/または生存率は、コロニー形成、長期培養またはマウスモデル再増殖アッセイでアッセイすることができる。
【0049】
生きているレシピエントに投与する製品の製造で使用するための血液の適性は、サイトカインまたはケモカインのレベルの分析を含むことができる。
【0050】
死亡したドナーからの血液または非血液組織の成分の分析は、生きているドナーからの同じ成分との比較を含むことができる。
【0051】
血液がそのような使用に適切であると決定される場合、本方法は製品の製造において血液からの材料を使用することを含むことができる。血液からの材料は、細胞型または細胞の集団であってよい。例えば、かつ限定されずに、細胞はB細胞、好塩基球、好酸球、造血細胞、造血幹および前駆細胞(HSPC)、リンパ球、リンパ前駆細胞、マクロファージ、肥満細胞、巨核球、単球、ミエロブラスト、骨髄前駆細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、血小板/栓球、T細胞、T調節(Treg)細胞、メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、幹メモリーT細胞、ナイーブT細胞、細胞傷害性T細胞、ガンマデルタT細胞、ナチュラルキラーT細胞、CD34+細胞、CD4+細胞またはCD3+細胞であってよい。血液からの材料は、分子などの非細胞性成分であってよい。例えば、かつ限定されずに、分子はサイトカイン、ケモカイン、抗体または免疫グロブリンであってよい。本方法は、製品の製造において血液からの複数の材料を使用することを含むことができる。
【0052】
本方法は、製品の製造において使用するための細胞性材料の拡大増殖(expansion)を含むことができる。
【0053】
本方法は、製品の製造で使用することができる血液中の材料への損傷を最小にするかまたは軽減するために、血液を処理することを含むことができる。
【0054】
一態様では、本発明は、複数の固形臓器移植レシピエントで混合キメラ現象を確立するための単一の死亡したドナーに由来する複数の細胞製品を提供する。各製品は、レシピエント体重1kgあたり1×105を超えるCD34+細胞、およびレシピエント体重1kgあたり1×105を超えるCD3+細胞を含み、複数の製品は単一の死亡したドナーに由来する。CD34+細胞は骨髄に由来し、CD3+細胞は骨髄以外のものに由来する。細胞製品は、上記の細胞製品の特性のいずれも含むことができる。
【0055】
別の態様では、本発明は、複数の固形臓器移植レシピエントで混合キメラ現象を確立するための方法を提供する。本方法は、固形臓器移植を受けたかまたは受ける複数の被験体の各々に、レシピエント体重1kgあたり1×105を超えるCD34+細胞、およびレシピエント体重1kgあたり1×105を超えるCD3+細胞を含有する製品を提供することを含む。各製品のCD34+細胞は一人の死亡したドナーの骨髄に由来し、各製品のCD3+細胞は死亡したドナーの骨髄以外のものに由来する。本方法は、固形臓器移植レシピエントで混合キメラ現象を確立するための方法に関して上に記載される特性のいずれも含むことができる。
【0056】
各製品は、レシピエント体重1kgあたり少なくとも1×105、2×105、5×105、1×106、2×106、4×106、1×107、2×107、4×107、1×108、2×108または5×108のCD34+細胞を含有することができる。各製品は、レシピエント体重1kgあたり少なくとも1×104、2×104、5×104、1×105、2×105、5×105、1×106、2×106、5×106、1×107、2×107、4×107、1×108、2×108または5×108のCD3+細胞を含有することができる。
【0057】
一態様では、本発明は、死亡したドナーからの血液を細胞性成分および非細胞性成分に分離し、細胞性成分の材料を使用して固形臓器移植レシピエントで混合キメラ現象を確立するための製品を生産する方法を提供する。製品は、上記の細胞製品の任意の特性を有することができる。
【0058】
本方法は、血液または血液の成分を上記のものなどの抗凝固剤で処理することを含むことができる。抗凝固剤による処理は、細胞性成分および非細胞性成分への血液の分離の前であっても、または分離の後であってもよい。
【0059】
本方法は、血液または血液の成分から赤血球、血小板または両方を枯渇させることを含むことができる。赤血球および/または血小板の枯渇は、上記の任意の方法によって実行することができる。赤血球および/または血小板の枯渇は、細胞性成分および非細胞性成分への血液の分離の前に実行することができるか、または分離の後であってもよい。
【0060】
本方法は、血液または血液の成分から凝塊および/または凝集塊を除去することを含むことができる。凝塊および/または凝集塊は、上記の任意の方法によって除去することができる。凝塊および/または凝集塊は、細胞性成分および非細胞性成分への血液の分離の前に除去することができるか、または分離の後にそれらを除去することができる。
【0061】
本方法は、特定のタイプの造血細胞、例えば、B細胞、好塩基球、好酸球、造血細胞、造血幹および前駆細胞(HSPC)、リンパ球、リンパ前駆細胞、マクロファージ、肥満細胞、巨核球、単球、ミエロブラスト、骨髄前駆細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、血小板/栓球、T細胞、T調節(Treg)細胞、メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、幹メモリーT細胞、ナイーブT細胞、細胞傷害性T細胞、ガンマデルタT細胞、ナチュラルキラーT細胞、CD34+細胞、CD4+細胞またはCD3+細胞について血液または血液の成分を富化することを含むことができる。免疫的選択(immunoselection)によって、1つまたは複数の細胞型を富化することができる。
【0062】
本方法は、上記の任意の方法による血液または血液の成分の分析を含むことができる。本方法は、血液または血液の成分が、生きているレシピエントに投与する製品、または固形臓器移植レシピエントで混合キメラ現象を確立するための製品の製造で使用するのに適切かどうか決定することを含むことができる。
【0063】
本方法は、血液の細胞性成分の拡大増殖を含むことができる。
【0064】
別の態様では、本発明は、死亡したドナーからの血液の収集のための装置を提供する。ある特定の実施形態では、装置は、冷却システムに連結した1つまたは複数の受け器を含む。
【0065】
装置は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれより多くの受け器を有することができる。好ましくは、受け器は約5から約10リットルの組み合わせた容量を有する。例えば、各受け器は、約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10リットルの容量を有することができる。
【0066】
冷却システムは、受け器内の血液を目標温度まで冷却するように構成される。目標温度は、約2℃から約8℃であってよい。冷却システムは、血液が凍結することまたは血液中での氷晶の形成を阻止することができる。冷却システムは、一定の時間内に血液を目標温度まで冷却することができる。例えば、冷却システムは、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、4時間以上、5時間以上、6時間以上、7時間以上、8時間以上、6時間以下、7時間以下、8時間以下、9時間以下、または10時間以下で、血液を目標温度まで冷却することができる。
【0067】
装置は、1つまたは複数の受け器に連結した針を含むことができる。針は、管状材料によって1つまたは複数の受け器に連結することができる。
【0068】
装置は、死亡したドナーから血液を取り出すために真空を加えるように構成された真空システムを含むことができる。真空システムは、針、管状材料および受け器の1つまたは複数に連結することができる。
【0069】
一態様では、本発明は、生きているレシピエントへの移入のための製品の製造で使用するために、死亡したドナーから血液を収集する方法を提供する。本方法は、血液を冷却システムに連結した1つまたは複数の受け器を含む装置に移すことを含むことができる。本装置は、上に記載される特性のいずれも含むことができる。
【0070】
本方法は、死亡したドナーの血管、動脈または静脈に針を挿入することを含むことができる。本方法は、死亡したドナーの血管、動脈または静脈に真空を加えることを含むことができる。
【0071】
本方法は、血液を安定化剤と接触させることを含むことができる。安定化剤は、抗凝固剤、例えば上記のもの、または浸透圧安定化剤(osmoticstabilizing agent)、例えば
ヒト血清アルブミンであってよい。
【0072】
本方法は、血液を凍結保護物質、例えば上記のものと接触させることを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態による髄抽出装置の外部皮質切断トロカールの例示である。
【0074】
【
図2】
図2は、本発明の実施形態による髄抽出装置の内部トロカールの例示である。
【0075】
【
図3】
図3は、本発明の実施形態による血液収集装置を示す。
【0076】
【
図4】
図4は、本発明の実施形態による血液収集装置を示す。
【0077】
【
図5】
図5は、本発明の実施形態による細胞性組成物を調製する方法を例示する流れ図である。
【0078】
【
図6】
図6は、
図5の流れ図からの組織収集ステップの拡大図である。
【0079】
【
図7】
図7は、
図5の流れ図からの骨髄調製ステップの拡大図である。
【0080】
【
図8】
図8は、
図5の流れ図からの血液調製ステップのステップの拡大図である。
【0081】
【
図9】
図9は、
図5の流れ図からの緩衝液調製ステップの拡大図である。
【0082】
【
図10】
図10は、
図5の流れ図からのCD34
+細胞富化ステップの拡大図である。
【0083】
【0084】
【0085】
【
図13】
図13は、本発明の実施形態による細胞性組成物を調製する方法を例示する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0086】
臓器移植で克服すべき主要な難関は、レシピエントの免疫系がドナーの組織を許容するようにすることである。レシピエントの免疫系が供与された臓器を異物として検出するならば、それは組織を攻撃し、移植拒絶に導く。移植拒絶を回避するために、ほとんどの移植レシピエントは免疫系を抑制する薬物をとらなければならないが、そのような薬物はレシピエントの感染症およびがんのリスクを増加させる。移植拒絶を阻止する別の手段として、固形臓器の移植にドナー由来の血液細胞前駆体の移入が付随してもよい。ドナーの血液細胞を提供することは、レシピエントの免疫系が、臓器を非外来の組織と認識するように教育された細胞を含むように再構成されることを可能にする。その結果として、供与された臓器は攻撃されず、レシピエントは移植を許容する。
【0087】
レシピエントの免疫系を再構築するための1つの戦略は、完全なキメラ現象の状態を達成するために、レシピエントの造血系の、排他的にドナーに由来する細胞による完全な置き換えを必要とする。しかし、完全なキメラ現象に関連するリスクは、移植片対宿主病(GVHD)と呼ばれている状態である、完全にドナーに由来する免疫系がレシピエントの組織を外来であると特定してそれを攻撃するかもしれないということである。例えば、その内容は参照により本明細書に組み込まれる、Sachet al., Induction of Tolerance through Mixed Chimerism, ColdSpring HarbPerspect Med 2014;4:a015529、doi: 10.1101/cshperspect.a015529を参照。その結果、完全キメラ患者は、免疫抑制療法を無期限に受けなければならない。
【0088】
別の戦略は、混合キメラ現象と呼ばれる状態を達成するために、ドナー由来の細胞およびレシピエント由来の細胞の混合物によってレシピエントの免疫系を再増殖させるようにすることである。完全キメラ現象と比較して、混合キメラ現象は、GVHDのより低い率と関連付けられる。さらに、混合キメラレジメンは、最初のうちは、より低い用量の免疫抑制療法を必要とし、レシピエントの混合キメラ現象の安定性が確立された後には免疫抑制の完全な中止を可能にする。今日まで、混合キメラ現象の誘導は、免疫抑制療法を維持せずにヒトにおいて移植免疫寛容をもたらす唯一の方法である。
【0089】
混合キメラ現象を確立する現行の方法は、ドナーからの造血細胞の2つの異なる集団の移入を必要とする。成熟T細胞は移植臓器を「自己」組織として認識し、免疫系がそれを攻撃することを阻止する。成熟T細胞は細胞表面マーカーCD3を発現し、異なる亜集団は血液およびリンパ節に見出すことができる。CD3+T細胞は移入後の免疫寛容を促進するが、それらは有限な寿命を有し、それら自身を再生することができない。その結果として、造血幹および前駆細胞(HSPC)、T細胞に分化することができる多能性細胞の移入は、ドナー由来のT細胞集団の継続的な補充を可能にするためにも必要である。HSPCは細胞表面マーカーCD34を発現し、主に骨髄に存在する。
【0090】
生涯の免疫抑制療法なしで移植レシピエントにおいて長期の移植免疫寛容を支えるために、生きているドナーが払わなければならない犠牲は大きい。したがって、生きているドナーは、免疫抑制不要の移植免疫寛容を支えるのに必要な組織および細胞を提供するのに必要な手順を引き受ける利他主義によって、高度に動機付けられなければならない。その結果として、特に彼らが予定されるレシピエントと家族的または個人的な関係を持たない場合、わずかな個人しか固形臓器および造血細胞の生きているドナーになることを望まない。
【0091】
比較すると、かなりより高い百分率の個人が、死後に臓器および血液細胞を供与することに同意している。しかし、ドナーが死亡しているとき、生きているレシピエントへの移入に適切な造血細胞を得ることはより困難である。例えば、脳死の過程で放出されるサイトカインの有害な影響を回避するために、死亡したドナーから組織を迅速に取り出さなければならない。しかし、HSPCはほとんどの死亡したドナーの骨髄からとらなければならず、一方、血液はT細胞の最良の供与源である。したがって、主目的の固形臓器、血液および骨髄の3種類の組織または体液を、死亡したドナーから採集しなければならない。さらに、細胞性材料の3つの供与源は、全体の手順ができるだけ速やかに完了することを確実にしながら、各々の機能を最も良好に保存する順序で体から取り出さなければならない。
【0092】
死亡したドナーからの造血細胞を使用することの別の問題は、そのような細胞の生きている患者への移入の適性が不確定であることである。T細胞の場合、細胞の活性化、消耗およびアネルギーの状態は、細胞がレシピエントで移植免疫寛容を促進することができるかどうかに影響し、これらの特徴は、ドナーの死因、生前の健康状態、年齢、性別、ライフスタイルおよび他の因子によって異なり得る。細胞生存率、増殖能力およびアポトーシスの状態は、レシピエントで混合キメラ現象を促進する製品中のHSPCおよびT細胞の有用性を決定することにおける重大な変数である。
【0093】
本発明は、死亡したドナーから造血細胞を得ること、および生きているレシピエントへの移入に適切な組成物を作製するために細胞を使用することの困難を克服する調製および分析方法を提供する。本発明の組成物は、固形臓器移植レシピエントで混合キメラ現象の確立を促進し、したがって、そのようなレシピエントが免疫抑制療法なしで長期の移植免疫寛容を生じることを可能にする。その結果として、本発明は、死亡したドナーから供与された組織の、臓器移植を必要とする患者の寿命を延長および向上させる治療的能力を開放する。
【0094】
生きているレシピエントへの移入のための死亡したドナーに由来する細胞製品
本発明は、死亡したドナーから得られた造血細胞を含有する細胞製品を提供する。全ての造血細胞は、HSPC、様々な専門化した細胞に分化することができ、複製して新しいHSPCを生成することができる多分化能細胞に由来する。HSPCは、リンパ前駆体または骨髄前駆体から分化する。リンパ前駆体は、リンパ球およびナチュラルキラー細胞を生成する。骨髄前駆体は、骨髄および赤血球系統の細胞、例えば赤血球、血小板、好塩基球、好中球、好酸球、単球、マクロファージおよび抗原提示細胞、例えば樹状細胞を生成する。成人では、ほとんどの造血性の発生は骨髄で起こるが、一部のリンパ細胞の成熟および活性化は脾臓、胸腺およびリンパ節で起こる。
【0095】
本発明の細胞性組成物は、ドナーHSPCがレシピエントの体内で免疫系の成熟細胞に発生することを可能にする細胞の2つの集団を含む。1つの集団はCD34+細胞を含む。CD34は、骨髄系統にもリンパ系統にも拘束されていない幹細胞およびそれらの直後の後代、多分化能前駆細胞で発現される細胞表面マーカーである。その結果として、CD34発現は、HSPCを含有する細胞の集団を特定するための有益な手段である。成人では、CD34+細胞は骨髄に大部分存在する。
【0096】
本発明の細胞性組成物は、CD3+細胞も含む。CD3は、T細胞受容体の2つのポリペプチド鎖と相互作用してT細胞受容体複合体を形成する一群のポリペプチドを含む。CD3複合体は、ガンマ鎖、デルタ鎖および2つのイプシロン鎖を含む。CD3は成熟T細胞の表面で発現され、したがってT細胞のマーカーとして有益である。CD3+細胞は、循環血液中に豊富である。
【0097】
レシピエントで混合キメラ現象の確立を促進するために、細胞製品はCD34+細胞およびCD3+細胞を十分な量で含む。細胞製品は、CD34+細胞およびCD3+細胞を規定の量で含有することができる。製品中の細胞の量の有益な単位は、レシピエントの体重に対する細胞の数である。例えば、かつ限定されずに、細胞製品は、レシピエント体重1kgあたり、少なくとも1×104、2×104、5×104、1×105、2×105、5×105、1×106、2×106または4×106、1×107、2×107、4×107、1×108、2×108または5×108のCD34+細胞を含有することができる。例えば、かつ限定されずに、細胞製品は、レシピエント体重1kgあたり、少なくとも1×104、2×104、5×104、1×105、2×105、5×105、1×106、2×106、5×106、1×107、2×107、5×107、1×108、2×108または5×108のCD3+細胞を含有することができる。
【0098】
細胞製品は、レシピエント体重1kgあたり少なくとも1×105のCD34+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも2×105のCD34+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも4×105のCD34+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも5×105のCD34+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも1×106のCD34+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも2×106のCD34+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも4×106のCD34+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも5×106のCD34+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも1×107のCD34+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも2×107のCD34+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも4×107のCD34+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも1×108のCD34+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも2×108のCD34+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも4×105のCD34+細胞、またはレシピエント体重1kgあたり少なくとも5×108のCD34+細胞を含有することができる。細胞製品は、レシピエント体重1kgあたり少なくとも1×105のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも2×105のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも4×105のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも5×105のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも1×106のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも2×106のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも4×106のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも5×106のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも1×107のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも2×107のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも4×107のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも1×108のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも2×108のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり少なくとも4×105のCD3+細胞、またはレシピエント体重1kgあたり少なくとも5×108のCD3+細胞を含有することができる。細胞製品は、レシピエント体重1kgあたり約1×105のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり約2×105のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり約4×105のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり約5×105のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり約1×106のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり約2×106のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり約4×106のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり約5×106のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり約1×107のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり約2×107のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり約4×107のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり約1×108のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり約2×108のCD3+細胞、レシピエント体重1kgあたり約4×105のCD3+細胞、またはレシピエント体重1kgあたり約5×108のCD3+細胞を含有することができる。
【0099】
他の濃度は米国特許第9,504,717号および米国特許第9,561,253号に例示され、それぞれの内容は参照により完全に本明細書に組み込まれる。
【0100】
細胞製品は、CD34+細胞を指定された純度で含有することができる。例えば、細胞製品は、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%純粋であるCD34+細胞を含有することができる。他の純度は、米国特許第9,504,717号および米国特許第9,561,253号に例示され、各々の内容は参照により完全に本明細書に組み込まれる。
【0101】
CD34+細胞およびCD3+細胞は、1つまたは複数の容器の中の混合物として提供することができる。CD34+細胞およびCD3+細胞は、別々の容器で提供することができる。細胞製品を保持することが承認されている任意の市販容器を使用することができる。
【0102】
細胞製品は、冷凍で提供することができる。その結果として、細胞製品は、凍結保護物質を含有することができる。当技術分野で公知である任意の凍結保護物質を使用することができる。例えば、かつ限定されずに、凍結保護物質はDMSO、40kDaの平均分子量を有するデキストラン、血清、例えばウシの血清、アルブミン、例えばヒトの血清アルブミン、または細胞培地であってよい。凍結保護物質は、規定の濃度で存在することができる。例えば、細胞製品は、約1%のDMSO、約2%のDMSO、約5%のDMSO、約7.5%のDMSO、約10%のDMSO、約12.5%のDMSO、約15%のDMSOまたは約20%のDMSOを含有することができる。細胞製品は、約1%のデキストラン、約2%のデキストラン、約5%のデキストラン、約7.5%のデキストラン、約10%のデキストラン、約12.5%のデキストラン、約15%のデキストランまたは約20%のデキストランを含有することができる。凍結保護物質は市販されている凍結媒体、例えば、BioLife Solutions(Bothell、WA)による商品名CryoStor 10で販売される媒体であってよい。凍結保護は、米国特許第9,504,717号および米国特許第9,561,253号で議論され、各々の内容は参照により完全に本明細書に組み込まれる。
【0103】
細胞製品は、レシピエントにおける造血細胞の生着または機能的動員を増強する薬剤を含有することができる。細胞製品は、造血細胞へのレシピエントのマイナスの反応を阻止する薬剤を含有することができる。例えば、かつ限定されずに、医薬組成物は、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、酵素、賦形剤、担体、抗体またはその断片、小分子、薬物、アゴニスト、アンタゴニスト、マトリックスタンパク質または補完的細胞型を含有することができる。
【0104】
ある特定の実施形態では、細胞製品は、酵素、基質または両方とも含有する。例えば、細胞製品は、1つまたは複数のアルファ1,3-フコシルトランスフェラーゼ、フコース供与体または両方を含有することができる。HSPCのフコシル化は、EセレクチンおよびPセレクチンへの結合を増強し、骨髄に向かうそれらの能力を向上させる。アルファ1,3-フコシルトランスフェラーゼの例には、アルファ1,3-フコシルトランスフェラーゼIV、アルファ1,3-フコシルトランスフェラーゼVIおよびアルファ1,3-フコシルトランスフェラーゼVIIが含まれる。フコース供与体は、GDP-フコースであってよい。HSPCのフコシル化は米国特許第7,776,591号に詳細に記載され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0105】
細胞製品は緩衝液を含有することができる。細胞製品は、生理的に適合するpHを維持するために緩衝化され得る。例えば、細胞製品は中性pH、例えば約6.0から約8.0に緩衝化され得る。
【0106】
細胞製品は、ヒトへの投与のために十分に無菌の条件下で調製される、等張性賦形剤を含む医薬組成物の形で供給することができる。組成物の細胞賦形剤および任意の付随エレメントの選択は、投与のために使用される経路および装置によって調整される。薬の製剤の一般原則については、CellTherapy: Stem Cell Transplantation, Gene Therapy, and
CellularImmunotherapy, by G. Morstyn & W. Sheridan. eds., CambridgeUniversityPress, 1996;およびHematopoietic Stem Cell Therapy, E. D. Ball, J. Lister& P.Law, Churchill Livingstone, 2000を参照する。
【0107】
CD34+細胞、CD3+細胞または両方は、レシピエントに対してHLAがマッチするかまたはHLAミスマッチであってもよい。主要組織適合複合体(MHC)抗原とも呼ばれるヒト白血球抗原(HLA)は、これらの細胞に固有の抗原性の正体を付与する細胞の表面に発現されるタンパク質分子である。MHC/HLA抗原は、T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞によって、免疫エフェクター細胞と同じ造血幹細胞の供与源に由来するものとして(「自己」)、または、造血再構成細胞の別の供与源に由来するものとして(「非自己」)認識される標的分子である。HLA抗原の2つの主要なクラス、HLAクラスIおよびHLAクラスIIが認識される。HLAクラスI抗原(ヒトではA、BおよびC)は各細胞を「自己」と認識されるようにし、HLAクラスII抗原(ヒトではDR、DPおよびDQ)はリンパ球と抗原提示細胞の間の反応に関与する。
【0108】
HLA遺伝子系の鍵となる態様は、その多型である。各遺伝子は、異なる対立遺伝子に存在する。対立遺伝子の生成物は、アルファおよび/またはベータドメイン(複数可)の1つまたは複数のアミノ酸が異なる。個体は各遺伝子の2つの対立遺伝子を有し、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DQおよびHLA-DR遺伝子の間で合計12個の対立遺伝子がある。HLAがマッチしたドナーは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DQおよびHLA-DR遺伝子の任意の組合せから選択される6、8、10または12個の対立遺伝子でレシピエントとマッチを有することができる。HLAタイピングにとって最も重要な遺伝子は、HLA-A、HLA-BおよびHLA-DRであり、したがってドナーおよびレシピエントは、HLA-A、HLA-BおよびHLA-DR遺伝子の6個全ての対立遺伝子でマッチし得る。HLAミスマッチドナーは、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DQおよびHLA-DR遺伝子の間で1、2、3、4、5、6またはそれより多くの対立遺伝子でミスマッチを有することができる。HLAタイピングは、当技術分野で公知の任意の方法によって実行することができる。HLAタイピング方法の例には、血清学的細胞傷害、フローサイトメトリーおよびDNAタイピングが含まれる。そのような方法は、例えば、米国特許第9,561,253号に記載され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0109】
HLA遺伝子は、染色体6p21位に存在するスーパー遺伝子座でクラスター化される。その結果として、単一の染色体の上に存在する対立遺伝子のセット、すなわちハプロタイプは、群として受け継がれる傾向がある。患者のハプロタイプを特定することは、マッチするドナーを見出す確率を予測するのを助け、探索戦略の開発における支援をもたらすことができる。ハプロタイプは、それらがどのくらい一般的に一般集団に含まれるかについて、ならびに異なる人種および民族の群の中のそれらの出現頻度について異なる。
【0110】
死亡したドナーからの細胞製品の製造は、生成物の追加の特徴付けを含むことができる。例えば、CD34+細胞および/またはCD3+細胞を含有する組成物のために、1つまたは複数の分泌された分子、例えばサイトカインまたはケモカインのプロファイルを確立することができる。あるいは、またはさらに、組成物のために細胞表面マーカー、例えばCD3、CD34またはCD45の発現のプロファイルを確立することができる。組成物を特徴付けるために、死亡したドナーからの血液の分析に関して下で記載される方法の1つまたは複数を含めて、任意の適切な方法を使用することができる。細胞製品は、病原体、例えばマイコプラズマまたは病原体の存在を明白に示すエンドトキシンの存在について試験することもできる。
【0111】
生きているレシピエントへの移入のための死亡したドナーからの細胞製品の調製
本発明は、死亡したドナーから得られるCD34+細胞およびCD3+細胞を含有する細胞製品を調製する方法を提供する。上に示すようなCD34+細胞およびCD3+細胞の支配的な解剖学的位置を考慮すると、異なる組織または体液が2つの細胞型のための好ましい供与源である。したがって、本発明は死亡したドナーの骨髄からCD34+細胞を得る方法、およびドナーからの血液、肝臓、リンパ節、脾臓または胸腺などの異なる供与源からCD3+細胞を得る方法を提供する。
【0112】
骨は、皮質骨または緻密骨と呼ばれる硬い外部の層、および骨髄を含有する海綿骨と呼ばれる内部の海綿状の部分を含む。骨髄は、大きな骨、例えば骨盤、椎骨、肋骨、大腿骨、脛骨および胸骨の海綿骨材から得ることができる。骨髄の好ましい供与源は、骨盤の腸骨稜および椎骨の椎体である。
【0113】
本方法は、死亡したドナーの体からの、骨髄および血液などのCD3+細胞の供与源のいずれの順序での取出しを含むことができる。好ましくは、血液が先ず取り出され、すなわち体から放血させ、次に骨髄が得られる。本方法は、目的の固形臓器、例えば、腎臓、肺、すい臓、すい臓の島細胞、心臓、腸、結腸、肝臓、皮膚、筋肉、歯肉、目または歯の取出しを含むことができる。目的の固形臓器、骨髄および血液などのCD3+細胞の供与源は、任意の順序で取り出すことができる。好ましくは、取出しは以下の順序で行われる:目的の固形臓器、血液および骨髄。
【0114】
骨髄は、任意の適切な方法によって死亡したドナーの体から取り出すことができる。一部の方法では、骨髄は吸引によって取り出される。吸引は、針を骨に挿入して、骨髄を引き抜くことを含む。一部の方法では、骨髄は穿孔術によって取り出される。穿孔器は、骨に切り込んで骨の円筒状の一部を抽出する環状の刃の付いたのこぎりである。
【0115】
図1は、本発明の実施形態による髄抽出装置の外部皮質切断トロカール101の例示である。外部トロカール101は中空のシャフト113を含み、それは手術用の鋼で作製することができる。外部トロカール101の遠位末端には、歯状ののこぎりなどの切断チップ115がある。切断チップ115は、手動で、圧縮空気で、または電気的に動かすことができる。切断チップ115は、取り替え可能であってよい。外部トロカール101の近位末端には、取り外し可能な空気圧ドライブアダプター117がある。空気圧ドライブアダプター117は外部トロカール101を空気圧ドライブと連結し、外部トロカール101から取り外し可能であってよい。外部トロカール101は、骨断片の取出しを容易にするために、外部トロカール101を真空ポンプまたは他の吸引源に連結する吸引アダプターを含むことができる。ドライブアダプター117が取り外されたとき、吸引アダプターは外部トロカール101の近位末端に取り付けることができるか、またはそれはドライブアダプター117に直接的に取り付けることができる。
【0116】
図2は、本発明の実施形態による髄抽出装置の内部トロカール201の例示である。内部トロカール201は、遠位末端に配置される1つまたは複数の展開可能な骨鉗子の刃219を有するシャフト223を含む。骨鉗子の刃は、異なる環状切断半径を達成するために、異なる角度で配置することができる。切断半径を調整することは、異なるサイズの骨に切り込むのに有益である。例えば、椎体の取出しのためにはより小さい切断半径が必要とされるが、大腿骨または脛骨から骨のセグメントを抽出するためにはより大きな切断半径が最適である。内部トロカール201は、1つまたは複数のハンドル217またはウイングもその近位末端に含む。ハンドル217は、骨のセグメントの手動抽出を可能にするために、手で回転することができる。あるいは、またはさらに、内部トロカール201は、低速動作のために空気圧ドライブに連結することができる。
【0117】
死亡したドナーから骨の一部を取り出すために、以下の順序のステップを使用することができる。以下の順序は例示だけが目的であり、骨取出しの他の方法が本発明の範囲内で可能であることを当業者は理解する。最初に、標準の外科的処置によって標的骨の皮質表面が露出させられる。次に、骨の皮質を通して骨髄腔に切り込むために、切断チップ115および空気圧ドライブのチャック内に置かれる空気圧ドライブアダプター117の付いた外部の切断トロカール101が使用される。次に、空気圧ドライブアダプター117がドライブから取り外される。次に、外部トロカール101のシャフト113を通して中実の内部トロカール201を挿入し、骨鉗子の刃219を配置する。骨鉗子の刃219をねじって髄質小柱を破壊するために、ハンドル217を使用する。あるいは、内部トロカール201は、低速の空気圧ドライブに係合させることができる。内部トロカール201をシャフト113から次に取り出し、中空のトロカールに吸引アダプターを据え付ける。最後に、吸引アダプターによって吸引装置を取り付け、収集バッグに骨髄腔を排出するために吸引する。
穿孔術によって得られる骨の一部は骨の破片を一般的に含有するので、骨の一部からCD34+細胞を得る方法は、骨の破片から骨髄細胞を分離する手順を含むことができる。骨の破片から骨髄細胞を単離するために、様々な方法、例えば物理的撹拌、酵素的脱凝集、洗浄および濾過を使用することができる。方法は、骨の一部からのHPSCの収量を向上させるために、上記の薬剤などの造血細胞を動員する1つまたは複数の薬剤で骨の破片を処理することを含むことができる。処理は、1つまたは複数の動員剤を含有する保存溶液または液体に骨の破片を浸漬することを含むことができる。HSPCの放出が抽出される材料の運搬または輸送の間に起こるように、処理は保存容器の中で行うことができる。したがって、骨の一部を第1のサイトでドナーから抽出し、第2のサイトのレシピエントに輸送することができ、造血細胞の動員は、少なくとも一部、組織が移動中に起こることができる。
【0118】
HSPCは、骨芽細胞、間質細胞および細胞外マトリックスとの分子相互作用の結果として骨髄中に大部分存在する。in vivoでは、そのような相互作用はHSPCを骨髄に繋留して、HSPCが循環血液に入ることを阻止する。HSPCの抽出の間、同じ分子相互作用は、他の細胞型および非細胞性材料からのCD34+細胞の単離を妨げることがある。その結果として、臓器移植を支えるための細胞製品で使用するためのCD34+細胞を調製する方法は、骨髄からCD34+細胞を動員する1つまたは複数の薬剤で骨髄または骨の一部を処理することを含むことができる。骨髄からHSPCを動員する薬剤のクラスには、化学療法薬、造血増殖因子、ケモカイン、ケモカイン受容体の阻害剤およびインテグリンの阻害剤が含まれる。例えば、かつ限定されずに、動員剤は、アデノシン受容体アンタゴニスト、BIO5192、CCR1アンタゴニスト、CCR2アンタゴニスト、CXCR2アンタゴニスト、CXCR4アンタゴニスト、シクロホスファミド、デフィブロチド、EphA3-Fc、エリスロポイエチン(EPO)、グリコサミノグリカン(GAG)模倣体、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、増殖調節がん遺伝子ベータ(GRO-ベータ)、ヒト成長ホルモン、IL-8、マクロファージ炎症性タンパク質-1アルファ(MIP-1アルファ)、met-SDF-1ベータ、NSC23766、副甲状腺ホルモン、百日咳毒素、プレリキサホル、ポリ[1-6]--D-グルコピラノシル-[1-3]--D-グルコピラノース(PGG)グルカン、Rac1阻害剤、レチノイン酸受容体アゴニスト、SB290157、SDF-1アルファペプチド類似体、幹細胞因子(SCF)、硫酸化コロミン酸、硫酸化多糖、T134、T140、トロンボポエチン(TPO)、TPO受容体アゴニスト、VCAM-1阻害剤、VLA-1阻害剤、VLA-4阻害剤またはその類似体もしくは誘導体であってよい。
【0119】
骨髄はHSPCのための生来の環境であるが、HSPCは骨髄細胞の小さい割合しか占めない。CD34+細胞は、骨髄中の全ての有核細胞のわずか約1%を占める。したがって、本発明の方法は、死亡したドナーからの骨髄抽出物をCD34+細胞について富化するステップを含むことができる。
【0120】
富化の1つの形は、除核細胞、例えば赤血球および血小板、ならびに多葉核を有する細胞、例えば好中球、好塩基球および好酸球を含む顆粒球から単核細胞を分離することである。単核細胞を単離するために富化するかまたはそれについて富化するためのいくつかの方法が、当技術分野で公知である。例えば、かつ限定されずに、単核細胞は、浮力活性化細胞分離、細胞溶解、ヘタスターチ沈降、免疫磁気枯渇、サイズベースの遠心分離および回転膜濾過によって単離または富化することができる。浮力活性化細胞分離のためのシステムは、Cesca Therapeutics,Inc.(Rancho Cordova、CA)から市販されており、例えば米国特許第9,695,394号に記載され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。サイズをベースとした遠心分離のためのシステムは、Sepax Technologies,Inc.(Newark、DE)から市販されている。回転膜濾過のためのシステムは、Fresenius Kabi USA、LLC(Lake Zurich、IL)によって商品名Lovo Automate Cell Processing Systemの下で販売されているシステムなど、市販されている。
【0121】
CD34+細胞は、1つまたは複数の細胞表面マーカーの定性的または定量的発現に基づいて精製することができる。適切な細胞表面マーカーの例には、AC133、CD3、CD34、CD38、CD45およびThy-1が含まれる。CD34+細胞は、マーカーの有無、またはマーカーの発現レベル、例えば高い対低い、に基づいて精製することができる。CD34+細胞の精製は、出発材料とCD34+細胞について富化された材料の間の、マーカー発現、全血球計算値および/または単核細胞数の比較を含むことができる。
【0122】
CD34+細胞は、適切な親和性試薬をCD34または別のマーカーに選択的に結合することによって精製することができる。親和性試薬は、抗体、完全長抗体、抗体の断片、天然に存在する抗体、合成抗体、操作された抗体、完全長アフィボディ、アフィボディの断片、完全長アフィリン、アフィリンの断片、完全長アンチカリン、アンチカリンの断片、完全長アビマー、アビマーの断片、完全長DARPin、DARPinの断片、完全長フィノマー、フィノマーの断片、完全長クニッツドメインペプチド、クニッツドメインペプチドの断片、完全長モノボディ、モノボディの断片、ペプチド、ポリアミノ酸などであってよい。親和性試薬は、検出試薬および/または精製試薬に直接的にコンジュゲートすることができる。検出試薬および精製試薬は同じであっても、またはそれらは異なってもよい。例えば、検出試薬および/または精製試薬は、蛍光性、磁性などであってよい。検出試薬および/または精製試薬は、カラム精製のための磁気粒子であってよい。例えば、磁気カラム精製は、当業者に公知である、Miltenyiのカラム、抗体、緩衝液、調製材料および試薬のシステム等を使用して実行することができる。CD34+およびCD3+細胞を含む造血細胞の親和性精製の方法、ならびに精製された集団の分析は、例えば、米国特許第9,561,253号;および第9,452,184号に記載され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0123】
CD34+細胞は、任意の方法によって単離、富化または精製することができる。例えば、CD34+細胞は、カラム精製、フローサイトメトリー、細胞選別または免疫吸着カラム分離によって単離、富化または精製することができる。好ましくは、CD34+細胞は、Miltenyi Biotec Inc.(Auburn、CA)によって商品名CliniMACSの下で販売されるものなどの免疫磁気カラムシステムを使用して精製される。CD34+細胞を含む造血細胞の親和性精製および精製された集団の分析の方法は、例えば、米国特許第9,561,253号;米国特許第9,452,184号;Nget al., Isolation of human and mouse hematopoietic stem cells,Methods Mol Biol.(2009) 506:13-21。doi: 10.1007/978-1-59745-409-4_2;およびSpohn etal., AutomatedCD34+ cell isolation of peripheral blood stem cellapheresis product,Cytotherapy
(2015) Oct;17(10):1465-71。doi:10.1016/j.jcyt.2015.04.005に記載され、その各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる。本方法は、正の選択、負の選択または両方を含むことができる。
【0124】
本方法は、生きているレシピエントに投与する製品の製造で使用されるCD34+細胞および/またはCD3+細胞の回収を容易にする、骨髄、血液または他の組織供与源の様々な他の処理を含むことができる。例えば、凝塊および/または細胞凝集塊、すなわち凝集を取り除くために、血液、骨髄または他の組織を処理することができる。凝塊および凝集塊は、任意の適切な方法によって除去することができる。凝塊および凝集塊の除去の非限定的な例には、濾過、例えば前記の回転膜濾過;血栓溶解薬、例えばアルテプラーゼ、アニストレプラーゼ、カビキナーゼ、組換え組織プラスミノーゲン活性化因子、レテプラーゼ、ストレプトキナーゼ、テネクテプラーゼおよびウロキナーゼによる処理;超音波;ならびに、例えば、Khalil,et al., Rubbing Against Blood Clots Using Helical Robots:Modeling and In VitroExperimental Validation, IEEE Robotics and AutomationLetters ( 2(2):927-934,April 2017, DOI: 10.1109/LRA.2017.2654546に記載されている
機械的摩擦が含まれ、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0125】
骨髄、血液または他の組織は、凝固を阻止するかまたは最小にするために、1つまたは複数の抗凝固剤で処理することができる。例えば、かつ限定されずに、抗凝固剤には、アセノクマロール、抗トロンビンIII、アピキサバン、アルガトロバン、アトロメンチン、ベトリキサバン、ビバリルジン、ブロジファクム、ダビガトラン、ダルテパリン、ジフェナクム、エドキサバン、EDTA、エノキサパリン、フォンダパリヌクス、ヘパリン、イドラパリヌクス、フェニンジオン、フェンプロクモン、リバロキサバンおよびワルファリンが含まれる。抗凝固剤は、死亡したドナーの体に投与することができる。あるいは、またはさらに、骨髄、血液または他の組織は、体から取り出した後に抗凝固剤で処理することができる。
【0126】
骨髄、血液または他の組織は、赤血球および/または血小板を枯渇させるために処理することができる。例えば、かつ限定されずに、赤血球および/または血小板は、上記の通り、浮力活性化細胞分離、細胞溶解、ヘタスターチ沈降、免疫磁気枯渇、サイズベースの遠心分離または回転膜濾過によって枯渇させることができる。
【0127】
血液からCD3+細胞を得る方法は、下で詳述される通り、血液を異なる構成成分、例えば細胞性画分および血漿画分に分離することを含むことができる。
【0128】
CD3+細胞を得ることは、CD3+細胞について血液または他の非骨髄供与源を富化する他の方法を含むことができる。富化は、CD3+細胞の正の選択、非CD3+細胞の枯渇またはその組合せを含むことができる。例えば、かつ限定されずに、CD3+細胞は、CD3+細胞の表面のマーカー、例えばCD3、CD4もしくはCD8に結合する抗体または他の薬剤の使用によって、正に選択することができる。例えば、かつ限定されずに、非CD3+細胞の枯渇は、CD3+細胞の表面に不在のマーカー、例えばCD10、CD14、CD15、CD33、CD41、CD71、CD209またはCD235に結合する抗体剤の使用によって枯渇させることができる。正の選択または枯渇は、粒子またはビーズにコンジュゲートした抗体を細胞の亜集団に結合させ、その各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,090,871号;米国特許出願公開第2010/0310588号;および国際特許出願公開WO2017/005647に記載されるものなどの、当技術分野で公知の方法によって細胞亜集団を選別することによって実行することができる。
【0129】
細胞製品で使用するためのCD34+細胞および/またはCD3+細胞の調製の間、任意の段階で細胞を凍結させること、すなわち低温保存することができる。低温保存は、本発明の細胞製品に関して上に記載されるものなどの、1つまたは複数の凍結保護物質の添加を含むことができる。低温保存は、細胞含有試料の温度を制御された速度で下げることを一般的に含む。低温保存は、細胞含有試料を解凍し、1つまたは複数の凍結保護物質を取り除くために試料を洗浄することを含むことができる。試料を凍結、解凍および洗浄することを含む低温保存のための方法および試薬は当技術分野で公知であり、例えば米国特許第9,561,253号に記載され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0130】
一部の状況では、死亡したドナーから最初に得られるCD34+細胞および/またはCD3+細胞の数は、生きているレシピエントで混合キメラ現象を促進するための製品を生成するのに不十分かもしれない。したがって、本方法はCD34+細胞および/またはCD3+細胞をex vivoで拡大増殖することを含むことができる。任意の所望の細胞型または細胞の集団を拡大増殖することができる。例えば、かつ限定されずに、拡大増殖される集団は、HSPC、T細胞、T調節(Treg)細胞、メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、幹メモリーT細胞、ナイーブT細胞、細胞傷害性T細胞、ガンマデルタT細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、巨核球、ミエロブラスト、単芽球、単球、マクロファージ、樹状細胞、CD34+細胞、CD3+細胞またはCD4+細胞を含むことができる。拡大増殖は、凍結の前または後であってよい。拡大増殖は1つまたは複数の増殖因子を提供することを含むことができ、別の細胞型、例えばフィーダー細胞の存在下で細胞を培養することを含むことができる。造血細胞を拡大増殖する方法は、例えば、米国特許第9,561,253号に記載され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0131】
CD34+細胞および/またはCD3+細胞は、ex vivoで遺伝子改変されてもよい。例えば、ドナー細胞の自家移入では、遺伝子欠陥は遺伝子療法を使用して修正することができる。遺伝子療法の方法は、例えば、Mali,Delivery systems for gene therapy, Indian J Hum Genet. 2013Jan-Mar; 19(1): 3-8,doi: 10.4103/0971-6866.112870;Gennady Ermak (2015) FRONTMATTER. EmergingMedical Technologies, ISBN: 978-981-4675-80-2,doi.org/10.1142/9789814675826_fmatter;およびBakhuraysahet al., Hematopoietic stemcell transplantation for multiple sclerosis: is it aclinical reality? StemCell Res Ther. 2016; 7:12, doi: 10.1186/s13287-015-0272-1に記載され、その
各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0132】
骨髄からの造血細胞のex vivo抽出
本発明は、生きているレシピエントに移入する細胞製品の製造で使用するために、死亡したドナーの骨髄からCD34+細胞などの造血細胞を抽出する方法も提供する。上述の通り、成人のCD34+細胞は骨髄に大部分存在し、そこで、それらは他の細胞に、および細胞外マトリックスに繋留される。CD34+細胞は、CD34+細胞と骨髄の成分の間の相互作用を破壊する薬剤による処理によって生きている患者の血液に入るように動員することができるが、最大の動員は数日を要する。体内でのCD34+細胞の動員はいかなる製造プロセスも遅らせ、死亡したドナーの場合は、サイトカインおよび脳死の後に放出される他の因子への細胞の曝露を延長する。本発明は、ex vivoで動員を実行することによって死亡したドナーの骨髄からのCD34+細胞の採集を向上させる方法を提供し、それは、骨髄が製造施設に輸送される間に容器の中でCD34+細胞を抽出することができるので、製造プロセスの速度を上げることができる。
【0133】
骨髄からの造血細胞のex vivo抽出は、本発明の細胞性組成物の生産を早める。抽出は、骨の試料が容器内にある間に、骨髄からの目的の細胞の放出を容易にする1つまたは複数の薬剤、例えば上記のCD34+細胞を動員する薬剤と骨の試料を接触させることを含む。したがって、このステップは、試料の保管中に、または処理施設への運搬の間に実行することができる。さらに、ex vivo抽出は骨髄細胞の急速な回収を可能にするので、それは、混合キメラ現象を促進する製品の製造で使用するための細胞の品質を向上させる。
【0134】
本方法は、死亡したドナーから骨の試料を得ることを含む。試料は、骨盤、椎骨、肋骨、大腿骨、脛骨および胸骨などの海綿状の材料を含有する任意の大きな骨からであってよい。好ましくは、試料は、骨盤の腸骨稜および椎骨の椎体からである。
【0135】
本方法は、それを体から取り出した後に骨の試料から骨髄細胞を得ることをさらに含む。骨髄細胞は、任意の方法によって骨の試料から得ることができる。例えば、骨髄細胞は前記の通り穿孔術または吸引によって得ることができる。穿孔術によって得られる試料は、前記の通り骨の破片を取り除くために処理することができる。
【0136】
本方法は、上記の動員剤の1つなどの、骨髄からCD34+細胞を動員する薬剤で骨の試料を処理することを含むことができる。
【0137】
本方法は、任意のタイプの造血細胞を得るために使用することができる。例えば、かつ限定されずに、細胞はB細胞、好塩基球、好酸球、造血細胞、造血幹および前駆細胞(HSPC)、リンパ球、リンパ前駆細胞、マクロファージ、肥満細胞、巨核球、単球、ミエロブラスト、骨髄前駆細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、血小板/栓球、T細胞、T調節(Treg)細胞、メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、幹メモリーT細胞、ナイーブT細胞、細胞傷害性T細胞、ガンマデルタT細胞、ナチュラルキラーT細胞、CD34+細胞、CD4+細胞またはCD3+細胞であってよい。好ましくは、細胞はHSPCまたはCD34+細胞である。
【0138】
本方法は、細胞製品の調製に関して上に記載されるものなどの、1つまたは複数の追加のステップを含むことができる。例えば、本方法は以下のいずれかを含むことができる:造血細胞を上記のものなどの抗凝固剤で処理すること;造血細胞または赤血球および/または血小板を枯渇させること;および、CD34+細胞などの細胞型または細胞の集団について造血細胞を富化すること。
【0139】
本方法は、生きているレシピエントへの移入のための製品の製造で使用するための、上記の細胞性組成物の1つなどの骨髄からex vivoで抽出される造血細胞を使用することを含むことができる。
【0140】
本発明は、CD34+細胞などの造血細胞の死亡したドナーの骨髄からのex vivo抽出のために有益な材料も含む。例えば、本発明は、上記の動員剤の1つなどの、骨髄からCD34+細胞を動員する1つまたは複数の薬剤を予め負荷した受け器を提供する。本発明は、1つまたは複数のそのような薬剤および死亡したドナーに由来する骨の1つまたは複数の部分を含有する容器を含むシステムも含む。
【0141】
造血細胞のex vivo抽出のための材料およびシステムは、特定の細胞型または細胞の集団を懸濁物に時間をわたり放出するそれらの能力によって特徴付けることができる。例えば、材料およびシステムは、参照保存システムと比較して、骨髄からのCD34+細胞の放出を2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1000倍またはそれより多く増加させることができる。
【0142】
造血細胞のex vivo抽出のための材料およびシステムは、特定の細胞型または細胞の集団の懸濁物への放出を規定の時間で、例えば1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間またはそれより長い時間で達成することができる。
【0143】
材料およびシステムは、混合キメラ現象を促進する製品の製造のための細胞の有用性を向上させる特徴を有する、特定の細胞型または細胞の集団の懸濁物への放出を達成することができる。例えば、かつ限定されずに、細胞は参照保存システムからの細胞と比較して優れた生存率、増殖能力、マーカー発現、および/またはアポトーシスの特徴を有することができる。
【0144】
死亡したドナーからの血液の分画
本発明は、死亡したドナーからの血液を2つまたはそれより多くの構成成分に分画する方法、および生きているレシピエントへの移入のための製品の製造で構成成分の1つまたは複数を使用する方法も提供する。生体ドナーからの血液のアフェレーシスは、異なる構成成分への血液の分離、1つまたは複数の構成成分の単離および残りを循環に戻すことを含む。例えば、白血球分離はドナーの血液からの白血球の単離、ならびに残りの細胞および血漿をドナーの体に戻すことを必要とする。アフェレーシスの方法および装置は当技術分野で公知であり、例えば、米国特許出願公開第2002/0107469号;米国特許第5,607,579号;米国特許第9,364,600号;および米国特許第6,743,192号に記載され、その各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0145】
本発明は、死亡したドナーから血液の成分を分離するために、アフェレーシスに類似した手順が使用される方法を提供する。死亡したドナーからの血液を使用する利点は、目的の成分の単離の後に血液の使用されなかった部分をドナーの体に戻す必要がないということである。例えば、死亡したドナーからの血液は、細胞性画分および血漿画分に、または2つまたはそれより多くの異なる細胞性画分に分離することができる。血液は、逐次的に分画することができる。例えば、細胞性および非細胞性の画分への最初の分離の後、CD3+細胞などの、特定の細胞型または細胞の集団について富化するために、細胞性画分をさらに処理することができる。CD3+細胞について富化するために、上記の方法のいずれかを含む、当技術分野で公知の任意の方法を使用することができる。
【0146】
死亡したドナーからの血液を異なる画分に分離することは、本発明の細胞製品に含まれるために特定の成分、例えば細胞型または細胞の集団について富化される画分を得るのに有益である。細胞は、任意のタイプの造血細胞、例えばB細胞、好塩基球、好酸球、造血細胞、造血幹および前駆細胞(HSPC)、リンパ球、リンパ前駆細胞、マクロファージ、肥満細胞、巨核球、単球、ミエロブラスト、骨髄前駆細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、血小板/栓球、T細胞、T調節(Treg)細胞、メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、幹メモリーT細胞、ナイーブT細胞、細胞傷害性T細胞、ガンマデルタT細胞、ナチュラルキラーT細胞、CD34+細胞、CD4+細胞またはCD3+細胞であってよい。特に、血液分画は、細胞製品の製造で使用するための、CD3+細胞について富化された画分を得るために有益である。血液の分画は、CD34+細胞について富化された画分を得るためにも有益であり、それは本発明の製品中の骨髄由来のCD34+細胞を補うために使用することができる。
【0147】
本発明のいくつかの洞察は、生きているレシピエントへの移入のための細胞製品の製造における、死亡したドナーからの分画された血液の使用を可能にする。1つは、下記のように死亡したドナーからの血液の収集のための本発明の装置および方法が、血液を体から速やかに取り出すこと、1つまたは複数の無菌の受け器に収集すること、および、血液細胞の活性を保存する保存温度に冷蔵することを可能にすることである。本発明は、前記のようにCD34+細胞およびCD3+細胞などの目的の細胞型について富化する方法を提供することによって、死亡したドナーからの分画された血液の使用も可能にする。死亡したドナーからの分画された血液を治療製品の製造のために有益にする別の進歩は、そのような製品の出発材料としてのそれらの有用性を決定するために、下に記載される分析法によって分画生成物を特徴付ける能力である。
【0148】
分画の方法は、死亡したドナーからの追加の成分を補った血液で実行することができる。例えば、混合物中の所望の細胞型または細胞の集団について富化するために、前記のように骨髄または他の組織から抽出された細胞を血液と組み合わせることができる。例えば、かつ限定されずに、富化される集団は、HSPC、T細胞、T調節(Treg)細胞、メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、幹メモリーT細胞、ナイーブT細胞、細胞傷害性T細胞、ガンマデルタT細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、巨核球、ミエロブラスト、単芽球、単球、マクロファージ、樹状細胞、CD34+細胞、CD3+細胞またはCD4+細胞を含むことができる。骨髄または他の組織から抽出される細胞は、CD34+細胞およびCD3+細胞について富化するための上記の手順のいずれかを供されてもよい。補われた血液は、次に前記の通りに画分に分離することができる。
【0149】
死亡したドナーからの血液の分析
本発明は、死亡したドナーからの血液が、生きているレシピエントに投与する製品の製造で使用するのに適切かどうか決定する分析方法も提供する。本方法は血液自体の分析を含むことができるか、または死亡したドナーからの他の組織の分析を含むことができる。分析法は、上記の調製方法のいずれかと組み合わせることができる。
【0150】
本方法は、生きているレシピエントへの移入のための製品の製造で使用するのに血液中の材料が好適であるかどうか決定するのに有益である。好ましくは、血液からの材料は、細胞型または細胞の集団である。例えば、かつ限定されずに、細胞はB細胞、好塩基球、好酸球、造血細胞、造血幹および前駆細胞(HSPC)、リンパ球、リンパ前駆細胞、マクロファージ、肥満細胞、巨核球、単球、ミエロブラスト、骨髄前駆細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、血小板/栓球、T細胞、T調節(Treg)細胞、メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、幹メモリーT細胞、ナイーブT細胞、細胞傷害性T細胞、ガンマデルタT細胞、ナチュラルキラーT細胞、CD34+細胞、CD4+細胞またはCD3+細胞であってよい。分析法は、上記の調製方法のいずれかと組み合わせることができる。あるいは、またはさらに、血液からの材料は、分子などの非細胞性成分であってよい。例えば、かつ限定されずに、分子はサイトカイン、ケモカイン、抗体または免疫グロブリンであってよい。
【0151】
T細胞が移植レシピエントで混合キメラ現象を促進するかどうか決定するために、死亡したドナーからのT細胞のいくつかの特徴の分析が有益である。例えば、かつ限定されずに、T細胞の活性化、アネルギー、アポトーシス、消耗、増殖、生存率およびサイトカイン分泌の分析は、T細胞が生きているレシピエントに治療上の利益を提供することができるかどうか評価するために使用することができる情報を提供する。
【0152】
死亡したドナーからのT細胞またはCD3+細胞の特徴付けは、血液中の細胞の分析を含むことができる。任意の適切なアッセイを使用することができる。例えば、かつ限定されずに、本方法は増殖アッセイ、DNA合成アッセイ、アポトーシスアッセイ、コロニー形成アッセイ、マーカー発現アッセイなどを含むことができる。T細胞の分析方法は当技術分野で公知であり、例えば、Brousseau,et al., eds., Manual of Immunological Methods, CRC Press,Boca Raton, 1998, ISBN9780849385582;Detrick, et al., eds., Manual of Molecularand Clinical LaboratoryImmunology, Eighth Edition, American Society forMicrobiology Press, WashingtonD.C., USA, 2016, ISBN-13: 978-1555818715
;およびBalakrishnan,et al., Practical Immunology: A Laboratory Manual, Lap LambertAcademicPublishing, 2017, ISBN-13: 978-3330352032、に記載され、その各々の内
容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0153】
死亡したドナーからのT細胞またはCD3+細胞の特徴付けは、血液の非細胞性成分の分析を含むことができる。例えば、かつ限定されずに、非細胞性成分は、サイトカイン、例えば炎症誘発性もしくは抗炎症性サイトカイン、ケモカイン、抗体または免疫グロブリンであってよい。非細胞性成分は、死亡したドナーからの血清または血漿で分析することができる。非細胞性成分はイムノアッセイによって、例えば酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ、イムノPCR、およびThermoFisher Scientific(Waltham、MA)によるLuminex xMAP;Meso Scale Diagnostics(Rockville、MD)によるMeso Scale Discovery;Perkin Elmer(Waltham、MA)によるAlphaLISAおよびDELFIA;Gyros Protein Technologies(Uppsala、Sweden)によるGyrolab;およびMilliporeSigma(Burlington、MA)によるErennaの商品名の下で販売されるイムノアッセイシステムによって分析することができる。非細胞性成分の分析の他の方法は当技術分野で公知であり、例えば、Brousseau,et al., eds., Manual of Immunological Methods, CRC Press,Boca Raton, 1998, ISBN9780849385582;Detrick, et al., eds., Manual of Molecularand Clinical LaboratoryImmunology, Eighth Edition, American Society forMicrobiology Press, WashingtonD.C., USA, 2016, ISBN-13: 978-1555818715;およびBalakrishnan,et al., PracticalImmunology: A Laboratory Manual, Lap Lambert AcademicPublishing, 2017, ISBN-13:978-3330352032、に記載され、その各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0154】
本方法は、死亡したドナーからの血液中のHSPCまたはCD34+細胞が生きているレシピエントへの移入のための製品の製造で使用するのに適切かどうかの分析を含むことができる。HSPC増殖、HSPC生存率およびHSPCアポトーシスなどの特性は、血液中のHSPCが治療上の利益を提供することができるかどうか決定するために分析することができ、HSPCが生きているレシピエントに治療上の利益を提供することができるかどうか評価するために使用することができる。例えば、かつ限定されずに、分析は、外因性増殖因子に応答した細胞増殖を測定するコロニー形成アッセイまたは長期の培養アッセイを含むことができる。分析は、重症複合免疫不全(SCID)マウスなどのマウスモデルに再増殖するHSPCの能力についてのアッセイを含むことができる。これらおよび他の方法は当技術分野で公知であり、例えば、Loringand Peterson, eds., Human Stem Cell Manual: A LaboratoryGuide, Second Edition,Academic Press, 2012, ISBN: 978-0-12-385473-5;Stein, etal., eds., Human StemCell Technology and Biology: A Research Guide andLaboratory Manual,Wiley-Blackwell, 2011, ISBN 978-0-470-59545-9
;Frisch andCalvi, Hematopoietic Stem Cell Cultures and Assays, Methods MolBiol. 2014;1130: 315-324, doi: 10.1007/978-1-62703-989-5_24;Dick JE, et al.,Assay ofhuman stem cells by repopulation of NOD/SCID mice, Stem Cells, 1997;15Suppl1:199-203; discussion 204-7, DOI: 10.1002/stem.5530150826;およびT Tatekawa,et.a.,(2006) A novel direct competitive repopulation assay for humanhematopoietic stemcells using NOD/SCID mice, Cytotherapy, 8:4, 390-398,DOI:10.1080/14653240600847191、に記載され、その各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0155】
分析は、死亡したドナーからの血液または非血液組織の特徴の報告を提供することを含むことができる。例えば、かつ限定されずに、報告は、以下の特性のいずれかを有する細胞の百分率を含むことができる:マーカーの発現、生存率、増殖能力、アポトーシスの特徴、アネルギー、消耗、活性化およびサイトカイン分泌。報告は、細胞の亜集団の特徴を記載することができる。例えば、かつ限定されずに、報告は、CD34+細胞またはCD3+細胞などの特定のマーカーを発現する細胞の生存百分率、増殖能力、アポトーシスの特徴、アネルギー、消耗、活性化またはサイトカイン分泌を含むことができる。
【0156】
生きているレシピエントへの移入のための製品の製造で使用するのに血液中の材料が好適であるかどうかの決定は、死亡したドナーからの非血液組織の分析を含むことができる。例えば、かつ限定されずに、非血液組織は、骨髄、脾臓、肝臓、リンパ節または胸腺であってよい。非血液組織の細胞性成分、例えば、上記のものなどの造血細胞、または上記の分子などの非細胞性成分を分析することができる。上記のものを含む任意の分析法を使用することができる。
【0157】
体内の造血細胞の含有量および位置は、増殖および発生の間で変動する。例えば、脾臓は成人ではリンパ球の豊富な供与源であるが、肝臓は発生中の胎児で多くのリンパ球を含有する。したがって、造血細胞の組織供与源は、死亡時のドナーの年齢を説明することができる。
【0158】
本方法は、複数の成分の分析を含むことができる。複数の成分は同じ供与源からのものであっても、または、異なる供与源からのものであってもよい。例えば、本方法は血液の複数の細胞性成分、血液の複数の非細胞性成分、非血液組織の複数の成分、または細胞性血液成分、非細胞性血液成分および非血液組織の成分の任意の組合せの分析を含むことができる。
【0159】
死亡したドナーの血液からの成分が生きているレシピエントへの移入のための製品の製造で使用するのに好適であるかどうかよりよく決定するために、分析は、死亡したドナーの組織または体液からの1つまたは複数のパラメータの、生きているドナーからの対応する材料との比較を含むことができる。分析は、上記の任意の特徴の比較を含むことができる。例えば、かつ限定されずに、分析は、T細胞の活性化、T細胞のアネルギー、T細胞のアポトーシス、T細胞の消耗、T細胞の増殖、T細胞の生存率、T細胞のサイトカイン分泌、HSPC増殖、HSPC生存率、HSPCアポトーシス、サイトカインレベル、ケモカインレベル、抗体レベルおよび免疫グロブリンレベルの1つまたは複数の比較を含むことができる。
【0160】
死亡したドナーからの血液または血液成分が生きているレシピエントへの移入のための製品の製造で使用するのに好適であるかどうかの決定は、死亡したドナーと生きているドナーの間の1つまたは複数のパラメータの比較に依存することができる。例えば、死亡したドナーからの1つまたは複数のパラメータの値が生きているドナーまたは生きているドナーの集団からの対応する値と同等である場合、死亡したドナーからの血液または血液成分は、生きているレシピエントへの移入のための製品の製造で使用するのに好適であるとみなすことができる。比較分析は、生きているドナーおよび脳死の後の様々な時間段階のドナーのための特徴のプロファイルを確立することを含むことができる。値は、1つまたは複数の決定基準を満たしている、死亡したドナーと生きているドナーまたは生きているドナーの集団の間で比較することができる。例えば、生きているドナーまたは生きているドナーの集団は、以下の1つを有することができる:以前に固形臓器を供与した;造血細胞、例えばHSPCまたはT細胞を以前に供与した;または、レシピエントで混合キメラ現象の確立を支えた組織を以前に供与した。生きているドナーまたは生きているドナーの集団は健康であってよく、特定の年齢範囲内にあってよく、ある特定の性別、などであってよい。
【0161】
本方法は、生きているレシピエントへの移入のための製品の製造において、死亡したドナーの血液からの1つまたは複数の材料を使用することを含むことができる。材料は、細胞性または非細胞性の成分などの上記の任意の材料であってよい。
【0162】
本方法は、生きているレシピエントへの移入のための製品の製造で使用するための、細胞型または細胞の集団の拡大増殖を含むことができる。例えば、細胞はB細胞、好塩基球、好酸球、造血細胞、造血幹および前駆細胞(HSPC)、リンパ球、リンパ前駆細胞、マクロファージ、肥満細胞、巨核球、単球、ミエロブラスト、骨髄前駆細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、血小板/栓球、T細胞、T調節(Treg)細胞、メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、セントラルメモリーT細胞、幹メモリーT細胞、ナイーブT細胞、細胞傷害性T細胞、ガンマデルタT細胞、ナチュラルキラーT細胞、CD34+細胞、CD4+細胞またはCD3+細胞であってよい。
【0163】
本方法は、生きているレシピエントへの移入のための製品の製造で使用することができる血液中の材料への損傷を軽減するために、死亡したドナーからの血液を処理することを含むことができる。例えば、本方法は、抗凝固剤、緩衝液、凍結保護物質または安定剤を血液に加えることを含むことができる。安定剤は血液成分の分解を阻止することができるか、または浸透圧安定性を促進することができる。例えば、安定剤は、ヒト血清アルブミン(HSA)またはBaxter International Inc.(Deerfield、IL)により商品名Plasma-Lyteの下で販売される電解質溶液であってよい。
【0164】
本方法は、製品を低温保存することを含むことができる。製品は、長期保存のために好適な温度、例えば約-150℃で冷凍することができる。本方法は、製品の温度を長期保存温度まで徐々に下げることを含むことができる。
【0165】
死亡したドナーからの血液の収集のための装置および方法
本発明は、生きているレシピエントへの移入のための製品の製造で使用するための、死亡したドナーからの血液の収集のための装置および方法も提供する。血液は、生きているレシピエントへの移入のための材料の供与源として使用するために、迅速に処理しなければならない。特に、血液細胞の機能を変更することができるサイトカインの放出の前に、それは脳死の後に速やかに、好ましくは数時間のうちに体から取り出さなければならない。さらに、血液は、体から取り出した後に適切な短期保存温度、一般的に2~8℃に速やかに冷やさなければならないが、血液または血液製品が低温保存の準備ができるまで、凍結は回避すべきである。成人ヒトの全血液量が5リットルまたはそれより多いこと、およびCD34+およびCD3+細胞の十分な量を得るために最大回収が必要であることを考慮すると、死亡したドナーからの血液の収集は特異な課題を提供する。
【0166】
図3は、本発明の実施形態による血液収集装置301を示す。装置301は、冷却システムに連結した1つまたは複数の受け器303aおよび303bを含む。受け器は、約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10リットル、好ましくは、約5から約10リットルの合わせた容量を有することができる。装置は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれより多くの受け器を有することができる。受け器は剛性で、固定された形状を有することができるか、または柔軟で拡張可能であってもよい。例えば、かつ限定されずに、受け器はカップ、ボトル、シリンダー、バッグ、小袋などであってよい。受け器は、柔軟またはしなやかなプラスチックから作製することができる。一実施形態では、各受け器は25cm×20cm×2cmの長方形のプリズムであり、1リットルの容量を有する。
【0167】
装置301は、死亡したドナーの静脈または動脈に挿入することができる1つまたは複数のカニューレ305を含むことができる。カニューレは、管状材料などのコネクタ307aによって1つまたは複数の受け器303aおよび303bに連結することができる。複数の受け器303aおよび303bを有する装置301では、血液は、受け器303aおよび303bに並行して、逐次的にまたはそのなんらかの組合せで収集することができる。順番に配置される受け器を有する装置では、受け器303aおよび303bは、コネクタ307bで連結することができる。コネクタ307aおよび307bの1つまたは複数は、装置301を通した血液の逆流を阻止する一方通行のバルブを含むことができ、それによって、血液の汚染を最小にし、その無菌性を維持する。
【0168】
図4は、本発明の実施形態による血液収集装置401を示す。装置は、冷蔵コンパートメント409の中に配置される受け器403a、403b、403cおよび403dを含む。冷蔵コンパートメント409は、ドナーからのその取出しの後に血液を冷却する冷却剤411を含む。任意の好適な冷却剤411を使用することができる。例えば、かつ限定されずに、冷却剤411は、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩水、硝酸アンモニウムカルシウム、ジエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、氷、プロピレングリコールシリカゲル、ポリアクリル酸ナトリウム、尿素または水を含むことができる。
【0169】
冷却システムは、受け器内の血液を目標温度まで冷却するように構成される。目標温度は、約2℃から約8℃であってよい。冷却システムは、血液が凍結することまたは血液中での氷晶の形成を阻止することができる。冷却システムは、指定の時間内に血液を目標温度まで冷却することができる。例えば、冷却システムは、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、4時間以上、5時間以上、6時間以上、7時間以上、8時間以上、6時間以下、7時間以下、8時間以下、9時間以下または10時間以下で血液を目標温度まで冷却することができる。
【0170】
装置は、死亡したドナーから血液を取り出すために真空を加えるように構成された真空システムを含むことができる。真空システムは、ポンプであってよい。血液収集のための真空ポンプは当技術分野で公知であり、例えば、米国特許出願公開第2010/0042015号;および米国特許出願公開第2008/0199949号に記載され、その各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる。真空システムは、針、管状材料および受け器の1つまたは複数に連結することができる。
【0171】
本発明は、本発明の装置を使用した、死亡したドナーからの血液の取出しの方法を提供する。本方法は、血液を冷却システムに連結した1つまたは複数の受け器に移すことを含む。本方法は、死亡したドナーの血管、動脈または静脈に針を挿入することを含むことができる。本方法は、死亡したドナーの血管、動脈または静脈に真空を加えることを含むことができる。本方法は、血液を安定化剤または凍結保護物質、例えば上記のものと接触させることを含むことができる。
【0172】
死亡したドナーに由来する細胞製品を使用して臓器移植レシピエントを処置すること
本発明の細胞製品は、固形臓器移植のレシピエントに提供することができる。細胞製品は、任意の好適な手段によって提供することができる。例えば、かつ限定されずに、CD34+細胞および/またはCD3+細胞は、針、カテーテル、中心静脈カテーテルなどを使用した注射によってレシピエントに送達することができる。一部の場合には、細胞は血管内、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、骨に直接的に、または、レシピエントにおいて造血細胞が持続し、再生して分化するように造血細胞がレシピエントの適当な部位に向かうことを可能にする任意の供与源を通して送達することができる。CD34+細胞および/またはCD3+細胞は、注入によって提供することができる。CD34+細胞および/またはCD3+細胞は、入院患者の処置で、または外来患者の処置で提供することができる。入院患者の処置は病院への入院を必要とし、患者は病院の中で1夜または複数夜を過ごすことがある。外来患者の処置は病院への入院を必要とせず、病院以外の状況、例えばクリニック、医師の診療室、家庭または他の場所で実行することができる。
【0173】
本発明の組成物は、任意の固形臓器の移植と併用することができる。例えば、かつ限定されずに、固形臓器は、腎臓、肺、すい臓、すい臓の島細胞、心臓、腸、結腸、肝臓、皮膚、筋肉、歯肉、目または歯であってよい。移植は、完全な臓器、臓器の一部または臓器の組織からの細胞を含むことができる。細胞製品は、固形臓器移植の前、その間または後に提供することができる。例えば、かつ限定されずに、細胞製品は、固形臓器移植の1、2、3、4、5もしくは6日前または1、2、3もしくは4週前に提供することができるか、または、それは固形臓器移植の1、2、3、4、5もしくは6日後または1、2、3もしくは4週後に提供することができる。
【0174】
レシピエントで混合キメラ現象の確立を容易にするために、レシピエントの免疫系を細胞製品の提供とともに前処置することができる。例えば、非骨髄破壊前処置を使用することができる。非骨髄破壊前処置では、レシピエントは薬物、抗体、照射またはそのなんらかの組合せに、全ての骨髄細胞を根絶するのに低すぎる用量で曝露させられる。一般的に、前処置レジメンは、約10~12日間(例えば約11日間)の抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、全リンパ照射およびコルチコステロイド(例えばプレドニゾン)による処置を含む。照射は、レシピエントの体の特定の位置を標的にすることができる。例えば、照射は、組織、臓器、体の領域または全身を標的にすることができる。照射は、リンパ節、脾臓または胸腺、または当分野の技術者に公知である任意の他の領域を標的にすることができる。複数回の線量の照射が投与される場合、線量は同じ位置または異なる位置を標的にすることができる。非骨髄破壊前処置は、T細胞枯渇剤、例えば、モノクローナル抗体または薬物、例えばフルダラビンの使用を含むことができる。非骨髄破壊前処置のためのレジメンは当技術分野で公知であり、例えば米国特許第9,561,253号に記載され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0175】
本方法は、免疫抑制療法を含むことができる。免疫抑制療法または免疫抑制は、移植拒絶に導くことができるドナー細胞に対する宿主免疫系の応答を減らす薬剤による移植レシピエントの処置を含む。主な免疫抑制剤には、カルシニュリン阻害剤、例えばタクロリムス、シクロスポリンAが含まれる。通常、アジュバント剤がカルシニュリン阻害剤と組み合わせられる。アジュバント剤には、ステロイド、アザチオプリン、ミコフェノール酸(MPA)剤、例えばミコフェノール酸モフェチル、mTOR阻害剤、例えばシロリムス、およびベラタセプトが含まれる。アジュバント剤の使用は、臨床医が個々の薬剤の用量および毒性を減少させながら、十分な免疫抑制を達成することを可能にする。抗体をベースとした療法は、モノクローナル(例えば、ムロモナブ-CD3)もしくはポリクローナル抗体、または抗CD25抗体(例えば、バシリキシマブ、ダクリズマブ)を使用することができる。抗体をベースとした療法はカルシニュリン阻害剤の回避または用量低減を可能にし、おそらく腎毒性のリスクを低減する。免疫抑制療法のためのレジメンは当技術分野で公知であり、例えば、米国特許第9,561,253号に記載され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0176】
免疫抑制は、GVHDに導くことができる、レシピエント組織に対するドナー免疫細胞の応答を同様に減らすこともできる。GVHDは急性であってもまたは慢性であってもよい。急性のGVHDは一般的に移植後の最初の3カ月の間に起こり、皮膚、腸または肝臓を侵し得る。急性GVHDのための処置は、プレドニゾンなどの高用量コルチコステロイドを通常含む。慢性GVHDは、一般的に移植から最初の3カ月の後に起こり、後期の処置関係の合併症の主要な発生源である。慢性GVHDは機能的能力障害を引き起こすことができ、長期にわたる免疫抑制療法を必要とする可能性がある。
【0177】
免疫抑制療法は、複数の相で行うことができる。例えば、免疫抑制レジメンは、誘導相および維持相を有することができる。誘導および維持相戦略は、レシピエントで混合キメラ現象の確立を強化するために目標の治療的レベルを達成するように調整された用量で、異なる医薬品を使用することができる。
【0178】
安定した混合キメラ現象がレシピエントで確立された後、免疫抑制療法を中止することができる。レシピエントのキメラ状態は下記のように監視することができ、ある特定の期間、例えば、3カ月、6カ月、12カ月、18カ月、24カ月またはそれより長い期間の後に安定したとみなすことができる。したがって、ある特定の期間、例えば、3カ月、6カ月、12カ月、18カ月、24カ月またはそれより長い期間の後にレシピエントのための免疫抑制を中止することができる。免疫抑制療法の中止は漸減、すなわち、処置の投薬量または頻度を次第に低減することを含むことができる。
【0179】
当技術分野で公知であるように、個体が完全なキメラか、混合キメラかまたは非キメラであるかどうかの決定は、固形臓器移植レシピエントからの造血細胞試料、例えば末梢血、骨髄等の分析によって行うことができる。分析は、タイピングの任意の都合のよい方法によって実行することができる。分析は、造血細胞またはそのサブセット、例えば全ての単核細胞、T細胞、B細胞、CD56+NK細胞およびCD15+好中球で実行することができる。キメラ現象は、マイクロサテライトのPCR分析によって評価することができる。例えば、ドナーおよび宿主起源の短い末端反復配列の長さにおける多型を区別する市販のキットが利用できる。自動化されたリーダーは、人工ドナーおよび宿主細胞の混合物からの標準曲線に基づいて、ドナー型細胞の百分率を提供する。
【0180】
レシピエントは、ドナーに由来する細胞の割合に基づいて、完全キメラ、混合キメラまたは非キメラに分類することができる。例えば、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%のドナー由来の細胞を有する場合、レシピエントは完全キメラとみなすことができる。完全キメラと分類するにはドナー由来の細胞が少なすぎるが、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも7.5%、少なくとも10%のドナー由来の細胞などのある特定の閾値を超えるドナー由来の細胞の割合を有する場合、レシピエントは混合キメラとみなすことができる。ドナー由来の細胞の割合が混合キメラに分類するのに必要な閾値未満である場合、レシピエントは非キメラとみなすことができる。
【0181】
複数の生きているレシピエントへの移入のための単一の死亡したドナーに由来する細胞製品
本発明は、複数の生きているレシピエントへの移入のための単一の死亡したドナーに由来する複数の細胞製品も提供する。単一のドナーからのCD34+細胞およびCD3+細胞を含有する複数の細胞製品の生成は、異なるレシピエントに製品を移入することを可能にする。したがって、死亡したドナーからの2つまたはそれより多い固形臓器を異なるレシピエントに移植することができ、各レシピエントは、混合キメラ現象の確立を促進するドナーのCD34+細胞およびCD3+細胞を受けることもできる。例えば、本発明の製品および方法は、単一の死亡したドナーが、2人のレシピエントの各々へ腎臓、ならびにCD34+細胞およびCD3+細胞を含有する製品を提供することを可能にする。その結果として、発明の製品および方法は、追加の臓器ドナーを必要とせずに臓器移植処置から利益を受けることができる患者の人数を増加させる。
【0182】
単一の死亡したドナーは、固形臓器移植レシピエントで混合キメラ現象を促進する1、2、3、4、5またはそれより多くの細胞製品のための材料の供与源であることができる。単一の死亡したドナーからの複数の細胞製品は、上記の細胞製品の任意の要素、例えば、細胞型、細胞数、HLAマッチもしくはミスマッチの程度、細胞純度、凍結保護物質、安定化剤または移植強化剤を含むことができる。
【0183】
本発明は、複数の生きているレシピエントへの移入のために、単一の死亡したドナーから複数の細胞製品を調製する方法も提供する。本方法は、死亡したドナーの骨髄からCD34+細胞を、およびドナーの骨髄以外のものからCD3+細胞を得ることを含む。本方法は、細胞製品の調製、骨髄以外のものからのCD3+細胞のex vivo抽出、血液の分画または血液の分析に関して上で記載される任意の要素を含むことができる。例えば、かつ限定されずに、本方法は、骨髄の取出し、骨の破片からの細胞の分離、CD34+細胞を動員する薬剤による処置、除核もしくは多核細胞からの単核細胞の分離、RBCおよび血小板の枯渇、CD34+細胞および/またはCD3+細胞の富化、凝塊および/または細胞凝集塊の除去、抗凝固剤による処置、低温保存、細胞のex vivo拡大増殖、細胞の遺伝子改変、ならびにT細胞の活性化、T細胞のアネルギー、T細胞のアポトーシス、T細胞の消耗、T細胞の増殖、T細胞の生存率、T細胞のサイトカイン分泌、HSPC増殖、HSPC生存率、HSPCアポトーシス、サイトカインレベル、ケモカインレベル、抗体レベルおよび/または免疫グロブリンレベルの分析の1つまたは複数を含むことができる。
【実施例0184】
(実施例1)
本発明の実施形態による、死亡したドナーの骨髄に由来するCD34+細胞および死亡したドナーの血液に由来するCD3+細胞を含有する細胞性組成物を調製する方法が下に記載される。
【0185】
図1は、本発明の実施形態による、死亡したドナーの骨髄に由来するCD34
+細胞および死亡したドナーの血液に由来するCD3
+細胞を含有する細胞性組成物を調製する方法を例示する流れ図である。本方法は、下により詳細に記載される一連のステップを含む。本方法は、以下のステップを含む:組織の収集;骨髄の調製;血液の調製;緩衝液の調製;骨髄からのCD34
+細胞の富化;合わせた材料を個々の用量に分けること;および低温保存。本明細書に記載されるステップの順序は、例示だけが目的である。ある特定のステップは他の前に実行されなければならないことを当業者は理解するが、本方法はステップの特定の順序に限定されない。
【0186】
図6は、
図5の流れ図からの組織収集ステップの拡大図である。目的の血液、骨髄および1つまたは複数の固形臓器が、死亡したドナーの体から採集される。前記の通り、骨髄は穿孔術によって抽出される。前記の通り、血液は本発明の装置の1つまたは複数の受け器に収集される。体からの血液または他の材料は、感染性疾患マーカー(IDM)について試験される。
【0187】
図7は、
図5の流れ図からの骨髄調製ステップの拡大図である。抽出された骨髄は骨の破片を取り除くために篩に通され、上記の方法の1つによって赤血球が枯渇される。骨髄は、細胞数、無菌性、生存率、コロニー形成能力ならびにCD3、CD34およびCD45マーカーの発現についても分析される。生存率は7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD)の排除によってアッセイされ、マーカー発現はフローサイトメトリーによって分析される。
【0188】
図8は、
図5の流れ図からの血液調製ステップの拡大図である。血液は、上記の方法の1つによって赤血球および血小板が枯渇される。血液は、細胞数、無菌性、生存率、ならびにCD3、CD34およびCD45マーカーの発現についても分析される。生存率は7-AADの排除によってアッセイされ、マーカー発現はフローサイトメトリーによって分析される。
【0189】
図9は、
図5の流れ図からの緩衝液調製ステップの拡大図である。2つの緩衝液が調製され、1つはHSAを含有し、他の1つは平衡化電解質溶液を含有する。
【0190】
図10は、
図5の流れ図からのCD34
+細胞富化ステップの拡大図である。回転膜濾過によってCD34
+細胞について富化するために、緩衝液が骨髄調製ステップから得られた細胞と使用される。試料は、免疫磁気選択によってCD34
+細胞についてさらに富化される。回転膜濾過の前または後に、細胞数、生存率、コロニー形成能力およびマーカー発現が前記の通りに分析される。前記の通り、血液調製ステップからの細胞は、細胞数、生存率、マーカー発現、T細胞活性化、T細胞増殖およびT細胞アポトーシスについて分析される。CD34
+細胞が富化された骨髄由来の細胞およびCD3
+細胞を含有する血液由来の細胞の両方が、細胞製品で使用するのに好適であると決定される場合、2つの細胞画分は組み合わされる。
【0191】
図11は、
図5の流れ図からの分割ステップの拡大図である。プールされた細胞は、凝塊および細胞凝集塊、すなわち凝集を取り除くために濾過される。次に、プールされた細胞は2つの個々の用量に分けられ、その各々は、別々の臓器移植レシピエントで混合キメラ現象を促進するためにCD34
+細胞およびCD3
+細胞の十分な量を含有する。このステップの間、細胞数、生存率およびマーカー発現が前記の通りに分析される。細胞は、無菌性、エンドトキシン、マイコプラズマ、コロニー形成能力、サイトカイン、例えばIL-2の放出について分析することもできる。
【0192】
図12は、
図5の流れ図からの低温保存ステップの拡大図である。用量はアリコートにさらに分けることができるか、または単一の容器に維持することもできる。用量は、細胞製品の温度を制御された速度で目標温度に低減するフリーザーで冷凍される。細胞製品が目標温度に到達した後、それらは長期保存のために液体窒素に移される。
【0193】
(実施例2)
CD34+細胞およびCD3+細胞を含有する細胞製品、MDR-104を調製する例示的なプロセスは、下に記載される。プロセスは2つの用量を提供し、それぞれは、単一の死亡したドナーからのレシピエント体重1kgあたり100×106のT細胞およびレシピエント体重1kgあたり>4×106のCD34+細胞を含有する。各用量は、異なるレシピエントへの死亡したドナーからの1つの腎臓の移植を支援する。製品は、105細胞につき>500のコロニー形成単位(CFU)も含む。IL-2放出ならびに生存能力のあるCD34+細胞およびCD3+細胞の百分率を決定するために、製品をさらに特徴付けることができる。
【0194】
図13は、本発明の実施形態による細胞性組成物を調製する方法を例示する流れ図である。下でより詳細に記載されているように、CD3
+細胞はMDR-T処理で全血から調製され、CD34
+はMDR-E処理で骨髄から調製され、調製されたCD3
+細胞およびHSPCは、MDR-34T処理で組み合わされる。
【0195】
最終薬物製品の細胞性組成物に要求されるCD3+T細胞およびCD34+HSPCをそれぞれ供給する出発材料として、全血(WB)および骨髄(BM)が収集される。収集サイトから製造サイトへの運搬を容易にするために、放血された血液は、死亡したドナーの全身ヘパリン化の後に、単一の収集装置またはいくつかのより小さい収集装置の中に収集される。全血は、血小板および赤血球枯渇のためのアフェレーシス機器を使用してその後処理され、次に、CD34+が選択された製造中間体の添加の前または後の追加の血小板除去のために洗浄される。
【0196】
骨髄は、2つの方法の一方または両方を通して採集される。1つの方法は、死亡したドナーの露出した腸骨稜からの標準の骨髄吸引を用いる。第2の方法では、髄は、BMを含有する皮質および海綿骨のコアを収集することが可能である穿孔整形装置によって回収される。骨髄は、死亡したドナーの椎体から回収することもできる。2つの方法の各々によって採集される骨髄は、製造サイトへの回収されたBMの運搬を支える適当な輸送容器の中に置かれる。
【0197】
単離したCD34+HSPCは白血球分離血液製品と合わされ、死亡したドナーの腎臓の各レシピエントの用量必要量を満たすために、必要に応じて分離される。各用量は、別個の最終薬物製品ロットとして製剤化され、低温保存される。
【0198】
死亡したドナーから収集される全血は、死亡したドナーの腎臓の各レシピエントのためのCD3+T細胞の必要とされる用量を供給するために利用される。ドナー腎臓の各レシピエントのためのCD34+細胞の必要とされる用量を供給するために、CD34+HPSCが採集された骨髄から単離される。
【0199】
全血は、放血させた死亡したドナーから収集される。放血は、全身ヘパリン化の後に、および保存溶液の低温フラッシュと同時に起こる。放血される全血は、動脈および静脈供給からの2つのカニューレを通して死亡したドナーから排出され、製造サイトへの運搬のために無菌の接続を通して収集装置に接続される。
【0200】
死亡したドナーの骨髄は、2つの独立した方法の一方または両方によって収集される:標準の骨髄吸引および整形装置、穿孔器による髄回収。骨髄吸引は、ヘパリン化シリンジおよびJamshedie針を使用した反復吸引を通して実行される。穿孔装置は、海綿骨破片を含有する骨髄のコアをとることを可能にする。
【0201】
放血された血液は、最小限の血球凝集、赤血球溶解および細胞凝集で、ならびに赤血球および血小板枯渇の下流の処理を容易にする高い白血球生存率で製造サイトに到着することを必要とされる。全血は、血液が制御された温度に維持されることを可能にする装置に収集され、無菌の安定した運搬容器で輸送される。収集装置は、閉鎖系バイオ処理にも適合する。
【0202】
標準の吸引実施または穿孔術によって収集される骨髄は、最小限の血球凝集、赤血球溶解および細胞凝集で、ならびに赤血球、血小板枯渇およびCD34+HSPC単離の下流の処理を容易にする高い白血球生存率で製造サイトに到着することを必要とされる。全CD34+の収量および回収は、外挿された測定基準として追跡される。採集された骨髄の総体積を各方法について計算し、死亡した各ドナーについて外挿する。
【0203】
死亡したドナーからの採集された骨髄は、CD34+HPSC単離のための出発材料として使用される前に、下流の処理を受ける。骨髄の単核細胞(BMMNC)を得るために海綿骨の破片および赤血球枯渇から造血髄を分離するための最適な方法を確立するために、いくつかの方法および/または技術を用いることができる。
【0204】
死亡したドナーの血液は、骨髄を採集する前に取り出される。
【0205】
針吸引によって収集される入来骨髄は、緩衝液で希釈され、骨の破片を取り除くために適当な濾過装置で濾過される。単核細胞(MNC)の最大回収を得るために、以下の方法の1つまたは複数を使用することができる:サイズに基づく遠心分離、ヘタスターチ沈降、免疫磁気枯渇もしくは溶解と続く回転膜濾過洗浄ステップまたは浮力活性化細胞分離。
【0206】
穿孔器を使用して得られる入来骨髄コアは、物理的撹拌、酵素的脱凝集または洗浄および海綿状コアの中に埋め込まれた造血髄コンパートメントを回収するための濾過のうちの1つまたは複数によって処理される。
【0207】
入来骨髄は、CD45、CD34およびCD3を限定されずに含む標的細胞集団の細胞表面の特異的抗原を使用したフローサイトメトリー分析を通して、全血球計算値、無菌性および白血球生存率について分析される。フローサイトメトリー分析からのデータは、死亡したドナーからの参照値としてCD34+生存率、CD34+HSPC頻度およびCD34+細胞数の定量化を決定するために使用される。
【0208】
死亡したドナーから収集される放血血液は、製剤化および低温保存の前にアフェレーシスによって適当な出発材料に処理される。
【0209】
製造施設に受け入れられる入来全血は、MDR-104製造プロセスのための適当な出発材料を達成するために、末梢血単核細胞を富化するために処理される。体積を低減し、同等の白血球分離中間材料を得るために、入来全血出発材料はアフェレーシスを先ず受ける。入来材料ならびに生じた白血球分離から凝塊および細胞凝集塊を取り除くために、必要に応じて全血製品の濾過が実行される。生じた白血球分離中間材料は、死亡したドナーの腎臓の各レシピエントのためのCD3+T細胞の用量を製剤化するために使用される。
【0210】
入来全血は、CD45、CD34およびCD3を限定されずに含む標的細胞集団の細胞表面の特異的抗原を使用したフローサイトメトリー分析を通して、全血球計算値、無菌性および白血球生存率について分析される。T細胞用量期待値およびT細胞回収を満たす能力を、アフェレーシスの前および後に計算する。
【0211】
赤血球が枯渇された中間材料は、CD34+HSPCの免疫的選択のために利用される。最初に血小板を枯渇させ、次にRBCおよび血小板が低減した材料がCD34免疫的選択を受ける。
【0212】
骨髄調製サブプロセスから得られる赤血球が枯渇された中間材料は、回転膜濾過を使用して血小板がさらに枯渇される。次に、RBCおよび血小板が低減した試料をCD34捕捉試薬とインキュベートし、回転膜濾過を使用して洗浄し、未結合のビーズを取り除き、CD34+HSPCの免疫的選択のために免疫磁気カラムシステムにロードする。
【0213】
入来骨髄は、CD45、CD34およびCD3を限定されずに含む標的細胞集団の細胞表面の特異的抗原を使用したフローサイトメトリー分析を通して、全血球計算値、無菌性および白血球生存率について分析される。CD34+細胞用量期待値およびCD34+回収を満たす能力を、免疫的選択の前および後に計算する。
【0214】
MDR-104は、CD34+HSPCがCD3+用量必要量を満たすために必要なT細胞数と組み合わされた複合製品用量製剤である。最初に、死亡したドナーの腎臓の各レシピエントのために、>4×106のCD34+細胞/kgの最小用量必要量を満たすために、MDR-Eサブプロセスを十分なCD34+細胞数で2つの別々のバッグに分ける。次に、全血調製サブプロセスで定量化したCD3+T細胞を、100×106のCD3
T細胞/kgの必要なCD3+T細胞用量を満たすように各MDR-E予備製剤バッグに加える。
【0215】
MDR-T34は、CD34+免疫的選択に由来するMDR-Eを全血調製操作単位の生じる白血球分離に由来する必要なT細胞用量と組み合わせるサブプロセスステップを表す。
【0216】
MDR-Eプロセス中間体は、生存能力のあるCD34+HSPCについて定量化され、次に、>4×106の生存能力のあるCD34+細胞/kgの必要な患者用量に基づいて予備製剤バッグに分離される。生存能力のあるCD3 T細胞は白血球分離プロセス中間体から定量化し、それぞれの患者ごとのT細胞用量必要量に基づいてMDR-E予備製剤バッグの各々に、生存能力のあるCD3 T細胞の100×106の細胞/kgを加える。次に、血小板濃度をさらに低減するために、各予備製剤化中間体は、追加の回転膜濾過ステップを受ける。
【0217】
血小板負荷および血小板低減効率は、回転膜濾過の前および後に監視される。CD34+HSPCおよびCD3+T細胞の損失も、回転膜濾過の前および後に監視される。標的細胞集団の頻度および生存率を監視するために、全細胞数および定量的フローサイトメトリーを使用する。予想される機能的特徴を有する十分なT細胞およびCD34+HSPCが用量必要量で維持されることを確実にするために、必要に応じて機能アッセイが用いられる。
【0218】
生じる予備製剤化プロセス中間体は、薬物を生成するためにCryoStor 10(CS10)と1:2の比で合わされ、低温保存の直前に3~4個の最終薬物製品容器に分配される。予備製剤化されたMDR-EおよびT細胞は凍結保護物質と合わされて最終製品を生成する。
【0219】
各レシピエントのための予備製剤化MDR-T34プロセス中間体は、収集容器の中で等体積のCS10と合わせる。次に、各製品は、最終製品容器に各々50mLの総体積で分ける。容器の密閉および低温保存の前に、必要に応じて濾過の必要性が評価される。両方のMDR-104製品の完成および容器の密閉の後、最終薬物製品は、制御速度フリーザーを使用した制御された低温保存を経て、≦-150℃での長期保存のために気相の液体N2に移される。
【0220】
参照による組込み
この開示全体で、特許、特許出願、特許公報、雑誌、本、論文、ウェブコンテンツなどの他の文書が参照および引用されている。全てのそのような文書は、全ての目的のためにここに参照により完全に本明細書に組み込まれる。
【0221】
均等物
本明細書で示され、記載されるものに加えて、本発明およびその多くのさらなる実施形態の様々な変更は、本明細書で引用される科学文献および特許文献の参考文献を含むこの文書の全内容から、当業者に明らかになる。本明細書の対象発明は、その様々な実施形態および均等物での本発明の実施へ適合させることができる、重要な情報、例証および指針を含む。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
固形臓器移植レシピエントで混合キメラ現象を確立するための細胞製品であって、
死亡したドナーの骨髄に由来する、レシピエント体重1kgあたり1×105を超えるCD34+細胞;および
前記死亡したドナーの骨髄以外のものに由来する、レシピエント体重1kgあたり1×105を超えるCD3+細胞
を含む細胞製品。
(項目2)
前記骨髄が腸骨稜または椎体に由来する、項目1に記載の細胞製品。
(項目3)
前記骨髄以外のものが、血液、肝臓、リンパ節、脾臓および胸腺からなる群より選択される、項目1に記載の細胞製品。
(項目4)
前記骨髄以外のものが血液である、項目3に記載の細胞製品。
(項目5)
前記CD34+細胞および前記CD3+細胞が前記固形臓器移植レシピエントにHLAがマッチする、項目1に記載の細胞製品。
(項目6)
前記CD34+細胞および前記CD3+細胞が前記固形臓器移植レシピエントにHLAがミスマッチである、項目1に記載の細胞製品。
(項目7)
前記CD34+細胞および前記CD3+細胞が別々の容器で提供される、項目1に記載の細胞製品。
(項目8)
前記CD34+細胞および前記CD3+細胞が共通容器の中の混合物として提供される、項目1に記載の細胞製品。
(項目9)
低温保存媒体をさらに含む、項目1に記載の細胞製品。
(項目10)
前記低温保存媒体が、約40,000Daの分子量を有するDMSOおよびデキストランからなる群より選択される少なくとも1つの凍結保護物質を含む、項目9に記載の細胞製品。
(項目11)
固形臓器移植レシピエントで混合キメラ現象を確立するための方法であって、固形臓器移植を受けたかまたは受ける被験体に、
死亡したドナーの骨髄に由来する、レシピエント体重1kgあたり1×105を超えるCD34+細胞;および
死亡したドナーの骨髄以外のものに由来する、レシピエント体重1kgあたり1×105を超えるCD3+細胞
を含む製品を提供するステップを含む、方法。
(項目12)
前記骨髄が腸骨稜または椎体に由来する、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記骨髄以外のものが、血液、肝臓、リンパ節、脾臓および胸腺からなる群より選択される、項目11に記載の方法。
(項目14)
前記骨髄以外のものが血液である、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記CD34+細胞および前記CD3+細胞が前記固形臓器移植レシピエントにHLAがマッチする、項目11に記載の方法。
(項目16)
前記CD34+細胞および前記CD3+細胞が前記固形臓器移植レシピエントにHLAがミスマッチである、項目11に記載の方法。
(項目17)
前記CD34+細胞および前記CD3+細胞が別々の容器で提供される、項目11に記載の方法。
(項目18)
前記CD34+細胞および前記CD3+細胞が共通容器の中の混合物として提供される、項目11に記載の方法。
(項目19)
前記製品が低温保存媒体をさらに含む、項目11に記載の方法。
(項目20)
前記低温保存媒体が、約40,000Daの分子量を有するDMSOおよびデキストランからなる群より選択される少なくとも1つの凍結保護物質を含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
固形臓器移植レシピエントで混合キメラ現象を確立するための細胞製品を調製する方法であって、
死亡したドナーの骨髄に由来するCD34+細胞を得るステップ;
前記死亡したドナーの骨髄以外のものに由来するCD3+細胞を得るステップ;および
固形臓器移植レシピエントへの投与のために得られた前記CD34+細胞および得られた前記CD3+細胞を含む細胞製品を生産するステップ
を含む、方法。
(項目22)
前記骨髄以外のものが、血液、肝臓、リンパ節、脾臓および胸腺からなる群より選択される、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記骨髄以外のものが血液である、項目22に記載の方法。
(項目24)
CD34+細胞を骨髄から得る前に、前記死亡したドナーを放血させる、項目23に記載の方法。
(項目25)
CD34+細胞を得るステップが、吸引または穿孔術を通して骨の一部から前記骨髄を取り出すステップを含む、項目21に記載の方法。
(項目26)
前記骨の一部が腸骨稜または椎体に由来する、項目25に記載の方法。
(項目27)
取り出された前記骨髄が抗凝固剤で処理される、項目25に記載の方法。
(項目28)
前記抗凝固剤が、アセノクマロール、抗トロンビンIIIアピキサバン、アルガトロバン、アトロメンチンおよびベトリキサバン、ビバリルジン、ブロジファクム、ダビガトラン、ダルテパリン、ジフェナクム、エドキサバン、エノキサパリン、フォンダパリヌクス、ヘパリン、イドラパリヌクス、フェニンジオン、フェンプロクモン、リバロキサバンおよびワルファリンからなる群より選択される、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記骨髄が穿孔術を通して取り出され、前記CD34+細胞を得るステップが骨の破片から骨髄細胞を分離するステップを含む、項目25に記載の方法。
(項目30)
前記分離ステップが、撹拌、酵素的脱凝集、洗浄および濾過からなる群より選択される1つを含む、項目29に記載の方法。
(項目31)
CD34+細胞を得るステップが、取り出された前記骨髄を、骨髄からのCD34+細胞を動員する薬剤と接触させるステップを含む、項目25に記載の方法。
(項目32)
前記薬剤が、アデノシン受容体アンタゴニスト、BIO5192、CCR1アンタゴニスト、CCR2アンタゴニスト、CXCR2アンタゴニスト、CXCR4アンタゴニスト、シクロホスファミド、デフィブロチド、EphA3-Fc、エリスロポイエチン(EPO)、グリコサミノグリカン(GAG)模倣体、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、増殖調節がん遺伝子ベータ(GRO-ベータ)、ヒト成長ホルモン、IL-8、マクロファージ炎症性タンパク質-1アルファ(MIP-1アルファ)、met-SDF-1ベータ、NSC23766、副甲状腺ホルモン、百日咳毒素、プレリキサホル、ポリ-[1-6]--D-グルコピラノシル-[1-3]--D-グルコピラノース(PGG)グルカン、Rac1阻害剤、レチノイン酸受容体アゴニスト、SB290157、SDF-1アルファペプチド類似体、幹細胞因子(SCF)、硫酸化コロミン酸、硫酸化多糖、T134、T140、トロンボポエチン(TPO)、TPO受容体アゴニスト、VCAM-1阻害剤、VLA-1阻害剤、VLA-4阻害剤ならびにその類似体および誘導体からなる群より選択される、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記CD34+細胞を得るステップが、赤血球、血小板または両方を取り出された前記骨髄から枯渇させるステップを含む、項目25に記載の方法。
(項目34)
前記枯渇ステップが、浮力活性化細胞分離、細胞溶解、ヘタスターチ沈降、免疫磁気枯渇、サイズベースの遠心分離および回転膜濾過からなる群より選択される少なくとも1つを含む、項目33に記載の方法。
(項目35)
CD34+細胞を得るステップが、取り出された前記骨髄からCD34+細胞を免疫選択するステップを含む、項目25に記載の方法。
(項目36)
CD3+細胞を得るステップが、赤血球、血小板または両方を前記血液から枯渇させるステップを含む、項目23に記載の方法。
(項目37)
前記枯渇ステップが、浮力活性化細胞分離、細胞溶解、ヘタスターチ沈降、免疫磁気枯渇、サイズベースの遠心分離および回転膜濾過からなる群より選択される少なくとも1つを含む、項目36に記載の方法。
(項目38)
CD3+細胞を得るステップが、前記血液から凝塊または細胞凝集塊を除去するステップを含む、項目23に記載の方法。
(項目39)
前記除去ステップが前記血液の濾過を含む、項目38に記載の方法。
(項目40)
CD3+細胞を得るステップが、前記血液を細胞性画分および血漿画分に分離するステップを含む、項目23に記載の方法。
(項目41)
前記細胞製品を生産するステップが、得られた前記CD34+細胞および得られた前記CD3+細胞を合わせるステップを含む、項目21に記載の方法。
(項目42)
前記細胞製品を生産するステップが、得られた前記CD34+細胞および得られた前記CD3+細胞を低温保存するステップを含む、項目21に記載の方法。
(項目43)
ex vivoで骨髄から得られた造血細胞から細胞製品を作製する方法であって、
被験体の体から骨髄を含む試料を得るステップ;
前記試料を前記被験体の体から取り出した後に前記試料から造血細胞を得るステップ;および
固形臓器移植レシピエントへの投与のために前記造血細胞を含む細胞製品を生産するステップ
を含む、方法。
(項目44)
前記試料が腸骨稜または椎体に由来する、項目43に記載の細胞製品。
(項目45)
前記試料が前記被験体の体から得られるとき前記被験体は死亡している、項目43に記載の方法。
(項目46)
前記被験体がヒトである、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記造血細胞がCD34+造血細胞を含む、項目43に記載の方法。
(項目48)
造血細胞を得るステップが、前記試料を、骨髄からCD34+細胞を動員する薬剤と接触させるステップを含む、項目43に記載の方法。
(項目49)
前記薬剤が、アデノシン受容体アンタゴニスト、BIO5192、CCR1アンタゴニスト、CCR2アンタゴニスト、CXCR2アンタゴニスト、CXCR4アンタゴニスト、シクロホスファミド、デフィブロチド、EphA3-Fc、エリスロポイエチン(EPO)、グリコサミノグリカン(GAG)模倣体、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、増殖調節がん遺伝子ベータ(GRO-ベータ)、ヒト成長ホルモン、IL-8、マクロファージ炎症性タンパク質-1アルファ(MIP-1アルファ)、met-SDF-1ベータ、NSC23766、副甲状腺ホルモン、百日咳毒素、プレリキサホル、ポリ-[1-6]--D-グルコピラノシル-[1-3]--D-グルコピラノース(PGG)グルカン、Rac1阻害剤、レチノイン酸受容体アゴニスト、SB290157、SDF-1アルファペプチド類似体、幹細胞因子(SCF)、硫酸化コロミン酸、硫酸化多糖、T134、T140、トロンボポエチン(TPO)、TPO受容体アゴニスト、VCAM-1阻害剤、VLA-1阻害剤、VLA-4阻害剤ならびにその類似体および誘導体からなる群より選択される、項目48に記載の方法。
(項目50)
造血細胞を得るステップが吸引または穿孔術を通して前記試料から骨髄を取り出すステップを含む、項目43に記載の方法。
(項目51)
取り出された前記骨髄が抗凝固剤で処理される、項目50に記載の方法。
(項目52)
前記抗凝固剤が、アセノクマロール、抗トロンビンIIIアピキサバン、アルガトロバン、アトロメンチンおよびベトリキサバン、ビバリルジン、ブロジファクム、ダビガトラン、ダルテパリン、ジフェナクム、エドキサバン、エノキサパリン、フォンダパリヌクス、ヘパリン、イドラパリヌクス、フェニンジオン、フェンプロクモン、リバロキサバンおよびワルファリンからなる群より選択される、項目51に記載の方法。
(項目53)
前記骨髄が穿孔術を通して取り出され、造血細胞を得るステップが骨の破片から骨髄細胞を分離するステップを含む、項目50に記載の方法。
(項目54)
前記分離ステップが、撹拌、酵素的脱凝集、洗浄および濾過からなる群より選択される1つを含む、項目53に記載の方法。
(項目55)
造血細胞を得るステップが、赤血球、血小板または両方を取り出された前記骨髄から枯渇させるステップを含む、項目50に記載の方法。
(項目56)
前記枯渇ステップが、浮力活性化細胞分離、細胞溶解、ヘタスターチ沈降、免疫磁気枯渇、サイズベースの遠心分離および回転膜濾過からなる群より選択される少なくとも1つを含む、項目55に記載の方法。
(項目57)
造血細胞を得るステップが、取り出された前記骨髄からCD34+細胞を免疫選択するステップを含む、項目50に記載の方法。
(項目58)
前記細胞製品を低温保存するステップをさらに含む、項目43に記載の方法。
(項目59)
前記細胞製品が、固形臓器移植レシピエントで混合キメラ現象の確立を促進する、項目43に記載の方法。
(項目60)
前記固形臓器が腎臓である、項目59に記載の方法。
(項目61)
得られる前記造血細胞が、前記固形臓器移植レシピエントにHLAがマッチする、項目59に記載の方法。
(項目62)
得られる前記造血細胞が、前記固形臓器移植レシピエントにHLAミスマッチである、項目59に記載の方法。
(項目63)
死亡したドナーに由来する血液が、生きているレシピエントに投与する製品の製造で使用するのに適切かどうか評価する方法であって、
死亡したドナーから血液を得るステップ;
前記血液の成分を分析するステップ;および
前記成分の分析に基づいて、生きているレシピエントに投与する製品の製造で使用するのに前記血液が適切かどうか決定するステップ
を含む、方法。
(項目64)
前記成分がT細胞を含む、項目63に記載の方法。
(項目65)
前記分析ステップが、T細胞活性化、T細胞消耗、T細胞アネルギー、T細胞増殖、T細胞生存率またはT細胞アポトーシスを分析するステップを含む、項目64に記載の方法。
(項目66)
前記成分が造血幹および前駆細胞(HSPC)を含む、項目63に記載の方法。
(項目67)
前記分析ステップがHSPC増殖、HSPC生存率またはHSPCアポトーシスを分析するステップを含む、項目66に記載の方法。
(項目68)
前記成分が非細胞性成分を含む、項目63に記載の方法。
(項目69)
前記非細胞性成分がサイトカインまたはケモカインを含む、項目68に記載の方法。
(項目70)
前記血液がそのような使用に適切であると決定される場合、前記製品の製造において前記血液からの材料を使用するステップをさらに含む、項目63に記載の方法。
(項目71)
前記材料がT細胞を含む、項目70に記載の方法。
(項目72)
前記材料がHSPCを含む、項目70に記載の方法。
(項目73)
死亡したドナーに由来する血液が、生きているレシピエントに投与する製品の製造で使用するのに適切かどうか評価する方法であって、
死亡したドナーから血液を得るステップ;
前記死亡したドナーからの非血液組織の成分を分析するステップ、および
前記成分の分析に基づいて、生きているレシピエントに投与する製品の製造で使用するのに前記血液が適切かどうか決定するステップ
を含む、方法。
(項目74)
前記成分がT細胞を含む、項目73に記載の方法。
(項目75)
前記分析ステップが、T細胞活性化、T細胞消耗およびT細胞アネルギーを分析するステップを含む、項目74に記載の方法。
(項目76)
前記成分が非細胞性成分を含む、項目73に記載の方法。
(項目77)
前記非細胞性成分がサイトカインまたはケモカインを含む、項目76に記載の方法。
(項目78)
前記非血液組織が骨髄を含む、項目73に記載の方法。
(項目79)
前記血液の成分である第2の成分を分析するステップをさらに含み、前記決定ステップが前記第2の成分の分析にも基づく
項目73に記載の方法。
(項目80)
前記血液がそのような使用に適切であると決定される場合、前記製品の製造において前記血液からの材料を使用するステップ
をさらに含む、項目73に記載の方法。
(項目81)
前記材料がT細胞を含む、項目80に記載の方法。
(項目82)
前記材料がHSPCを含む、項目80に記載の方法。