(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017059
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】感冒症状抑制剤
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20240201BHJP
A61K 31/7028 20060101ALI20240201BHJP
A61K 36/899 20060101ALI20240201BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240201BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20240201BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20240201BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240201BHJP
A23C 9/13 20060101ALN20240201BHJP
A23L 2/00 20060101ALN20240201BHJP
A23L 2/52 20060101ALN20240201BHJP
A23L 29/281 20160101ALN20240201BHJP
A23G 4/06 20060101ALN20240201BHJP
A23G 3/34 20060101ALN20240201BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K31/7028
A61K36/899
A61P11/00
A61P1/12
A61P11/02
A61P25/04
A23C9/13
A23L2/00 A
A23L2/52
A23L29/281
A23G4/06
A23G3/34 101
A23G3/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119442
(22)【出願日】2022-07-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・2022年3月26日開催の2022年5月20日米由来セラミドおよびβ-シトステロールグルコシドの免疫,炎症性細胞に及ぼす作用について公開
(71)【出願人】
【識別番号】594045089
【氏名又は名称】オリザ油化株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田和佳奈
(72)【発明者】
【氏名】下田 博司
(72)【発明者】
【氏名】村井 弘道
【テーマコード(参考)】
4B001
4B014
4B018
4B041
4B117
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC03
4B001AC06
4B001AC20
4B001AC31
4B001AC43
4B001AC99
4B001EC05
4B014GB08
4B014GB09
4B014GB13
4B014GG01
4B014GG09
4B014GK05
4B014GK12
4B014GL04
4B014GL10
4B018LB01
4B018LB07
4B018LB08
4B018MD49
4B018ME14
4B018MF01
4B041LC10
4B041LD02
4B041LK09
4B041LK10
4B041LK11
4B041LK17
4B041LK30
4B041LK50
4B117LC04
4B117LG12
4B117LK12
4B117LL01
4B117LL06
4B117LP01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA06
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA08
4C086ZA34
4C086ZA59
4C086ZA73
4C088AB74
4C088BA13
4C088NA14
4C088ZA08
4C088ZA34
4C088ZA59
4C088ZA73
(57)【要約】
【課題】 新規でかつ、継続的に経口摂取することができる安全性が高い感冒症状抑制剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 上記課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
1.コメ由来のグルコシルセラミド組成物を有効成分とする感冒症状抑制剤。
2.上記感冒症状抑制剤は、感冒に起因する下痢、鼻づまり、喉の痛み、喉のかすれ、せき、頭痛筋肉痛抑制するものである上記1.に記載の感冒症状抑制剤。
3.上記感冒症状抑制剤は、感冒に罹患しやすい者に対して摂取するものである上記1.又は上記2.に記載の感冒症状抑制剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コメ由来のグルコシルセラミド組成物を有効成分とする感冒症状抑制剤。
【請求項2】
上記感冒症状抑制剤は、感冒に起因する下痢、鼻づまり、喉の痛み、喉のかすれ、せき、頭痛、筋肉痛を抑制するものである請求項1に記載の感冒症状抑制剤。
【請求項3】
上記感冒症状抑制剤は、感冒に罹患しやすい者に対して摂取するものである請求項1又は請求項2に記載の感冒症状抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感冒症状抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
風邪症候群は、ウイルス性感染症の一種であるが、その主な症状としてはのどの痛み、筋肉痛、関節痛などの痛みを主とする症状;発熱、悪寒を主とする症状;鼻閉、鼻汁分泌亢進などの鼻を主とする症状;及び咳、痰などののどを主とする症状等がある。
【0003】
感冒薬には、これらの症状を早期に消失させるべく種々の成分が配合されている。例えば、痛みや発熱に対しては解熱鎮痛成分が、また、鼻の症状に対しては抗ヒスタミン成分が、また咳などには鎮咳成分や気管支拡張成分が配合されている。そして、解熱鎮痛成分としては、最近では、強力な解熱鎮痛作用を有するイブプロフェンが配合され、これらを併用した感冒薬が広く用いられるに至っている(特許文献1等)。これらの治療薬は、感冒に罹患した患者に対し、投与してその症状を緩和するものであり、感冒に罹患しにくい体質を改善するものではない。
【0004】
また、感冒の80~90%はウイルスによって引き起こされる急性呼吸器感染症である(非特許文献1)。ウイルスが上気道粘膜上に感染すると、生体反応として各種のサイトカインが産生されることで、鼻汁やのどの痛み、せき、全身倦怠感などの症状が生じる(非特許文献1)。感冒症状を緩和するアプローチとして、自然免疫系を調節することで、生体の免疫反応を高め、ウイルスの侵入や増殖を抑制することが挙げられる(非特許文献1)。
そこで、感冒に罹患しにくくするためには、自然免疫を賦活することが望ましい。
【特許文献1】特開2018-076306号公報
【非特許文献1】加藤士郎. 感冒の漢方治療. ファルマシア. 2020;56(3):208-12.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような背景の下、本発明者は、食品として用いられているコメ由来のグルコシルセラミド組成物を感冒に係りやすい体質の男女に経口摂取した結果、コメ由来のグルコシルセラミド組成物が感冒症状の発症を抑制することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、新規でかつ、継続的に経口摂取することができる安全性が高い感冒症状抑制剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の特徴は以下の通りである。
1.コメ由来のグルコシルセラミド組成物を有効成分とする感冒症状抑制剤。
2.上記感冒症状抑制剤は、感冒に起因する下痢、鼻づまり、喉の痛み、喉のかすれ、せき、頭痛、筋肉痛を抑制するものである上記1.に記載の感冒症状抑制剤。
3.上記感冒症状抑制剤は、感冒に罹患しやすい者に対して摂取するものである上記1.又は上記2.に記載の感冒症状抑制剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、食品としても使用されているコメ由来のグルコシルセラミド組成物を経口摂取することにより、感冒症状を抑制することができる。
感冒症状のうち、特に感冒に起因する下痢、鼻づまり、喉の痛み、喉のかすれ、せき、頭痛、筋肉痛を抑制することができる。
以上により、安全性が高く、継続的に摂取することにより、感冒の症状を抑制し、これにより、感冒に罹患しにくい体質に改善することができる感冒症状抑制剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例の試験参加者の追跡フローチャートである。
【
図2】コメ由来のグルコシルセラミド組成物を摂取することによる感冒症状抑制効果の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、コメ由来のグルコシルセラミド組成物を有効成分とすることを特徴とする。
グルコシルセラミド組成物は、米ヌカから多量に抽出することができる。原料米は、品種を限定しないが、甘味を呈する日本型(japonica)が好適である。特に、コシヒカリ、ササニシキなどで代表される主食用米品種が好ましい。通常、玄米の最外層にある果皮、種皮および糊粉層が精米機で取り除かれてヌカとなる。
【0010】
米ヌカからコメ由来のグルコシルセラミド組成物を抽出する方法としては、以下の工程A~Cによるのが望ましい。
すなわち、コメ由来のグルコシルセラミド組成物の製造方法は、次の工程A~Fからなることを特徴とする。
A.植物油原料を圧搾するか、または有機溶媒により抽出することにより、油脂原油を得る工程、
B.前記油脂原油を加熱した後、酸および水を添加することによりガム質の沈殿物を得る工程、
C.前記沈殿物を静置し、原油層(上層)、ガム層(中層)および水層(下層)に分離させ、これらの層のうち、前記ガム層(中層)を分取する工程、
D.前記ガム層(中層)を有機溶剤で抽出し、抽出液を除いて脱脂物を得る工程、
E.前記脱脂物を水またはアルコールで抽出し、抽出液を分取する工程、
F.前記抽出液を濃縮し、グルコシルセラミドを含有する植物抽出物(コメ由来のグルコシルセラミド組成物)を得る工程により製造することができる。
【0011】
前記有機溶媒は、ヘキサンの他、ヘプタン、石油エーテル、エーテル、クロロホルム、アセトン等を用いることができる。前記有機溶剤の抽出物を処理する酸は、有機酸としては酢酸、シュウ酸、クエン酸、蟻酸等を、無機酸としてはリン酸、硫酸、塩酸、硝酸等を用いることができる。望ましくは、リン酸を用いるとよい。
【0012】
前記アルコールは、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールおよびこれらの含水アルコール等を用いることができる。グルコシルセラミドを飲食品に使用する場合には、エタノールを使用するとよい。前記工程Fでガム質のアルコール抽出物からグルコシルセラミドを精製する手段としては、カラムクロマトグラフィーその他の適当な精製手段を用いることができる。
なお、コメ由来のグルコシルセラミド組成物は市販品を用いてもよく、例えば、オリザ油化株式会社製の「オリザセラミド」を用いてもよい。
【0013】
本発明の感冒症状抑制剤は、各種飲食品の素材として使用することができる。飲食品としては、例えば、菓子類(ガム、キャンディー、キャラメル、チョコレート、クッキー、スナック、ゼリー、グミ、錠菓等)、麺類(そば、うどん、ラーメン等)、乳製品(ミルク、アイスクリーム、ヨーグルト等)、調味料(味噌、醤油等)、スープ類、飲料(ジュース、コーヒー、紅茶、茶、炭酸飲料、スポーツ飲料等)をはじめとする一般食品や、健康食品(錠剤、カプセル等)、栄養補助食品(栄養ドリンク等)が挙げられる。これらの飲食品に本発明の剤を適宜配合するとよい。
【0014】
これら飲食品には、その種類に応じて種々の成分を配合することができ、例えば、ブドウ糖、果糖、ショ糖、マルトース、ソルビトール、ステビオサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L-アスコルビン酸、dl-α-トコフェロール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アラビアガム、カラギーナン、カゼイン、ゼラチン、ペクチン、寒天、ビタミンB類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、アミノ酸類、カルシウム塩類、色素、香料、保存剤の食品素材を使用することができる。
【0015】
具体的な製法としては、本発明の剤を粉末セルロースとともにスプレードライまたは凍結乾燥し、これを粉末、顆粒、打錠または溶液にすることで容易に飲食品(インスタント食品等)に含有させることができる。また、前記本発明の剤を、例えば、油脂、エタノール、グリセリンあるいはこれらの混合物に溶解して液状にし、飲料に添加するか、固形食品に添加することが可能である。必要に応じてアラビアガム、デキストリン等のバインダーと混合して粉末状あるいは顆粒状にし、飲料に添加するか固形食品に添加することも可能である。
【0016】
本発明の剤を飲食品に適用する場合の添加量としては、病気予防や健康維持が主な目的であるので、飲食品に対して有効成分の含量が合計1~20wt%以下であるのが好ましい。
【0017】
本発明の感冒症状抑制剤は、薬品(医薬品および医薬部外品を含む。)の素材として用いてもよい。薬品製剤用の原料に、本発明の剤を適宜配合して製造することができる。本発明の剤に配合しうる製剤原料としては、例えば、賦形剤(ブドウ糖、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等)、結合剤(蒸留水、生理食塩水、エタノール水、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドン等)、崩壊剤(アルギン酸ナトリウム、カンテン、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖、アラビアゴム末、ゼラチン、エタノール等)、崩壊抑制剤(白糖、ステアリン、カカオ脂、水素添加油等)、吸収促進剤(第四級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等)、吸着剤(グリセリン、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、硅酸等)、滑沢剤(精製タルク、ステアリン酸塩、ポリエチレングリコール等)などが挙げられる。
【0018】
本発明の感冒症状抑制剤の投与方法は、一般的には、錠剤、丸剤、軟・硬カプセル剤、細粒剤、散剤、顆粒剤、液剤等の形態で経口投与することができるが、非経口投与であってもよい。非経口剤として投与する場合は、溶液の状態、または分散剤、懸濁剤、安定剤などを添加した状態で、局所組織内投与、皮内、皮下、筋肉内および静脈内注射などによることができる。また、坐剤などの形態としてもよい。更に、点眼薬として投与することができる。
【0019】
投与量は、投与方法、病状、患者の年齢等によって変化し得るが、大人では、通常、1日当たり有効成分として0.5~500mg、子供では通常0.5~300mg程度投与することができる。
感冒症状抑制剤の配合比は、剤型によって適宜変更することが可能であるが、通常、経口または粘膜吸収により投与される場合は約0.01~15.0wt%、非経口投与による場合は、0.001~10wt%程度にするとよい。なお、投与量は種々の条件で異なるので、前記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また、範囲を超えて投与する必要のある場合もある。
【実施例0020】
以下、本発明の実施例を説明する。なお、以下に示す実施例は、本発明によって得られる本発明の剤の各種作用・効果等の確認のために説明するもので、本発明の範囲は、これらの製品および製法に限定されるものではない。
【0021】
試験例:コメ由来のセラミド組成物を摂取することによる感冒症状抑制効果の評価
(1) 試験デザイン
プラセボ対照二重盲検並行群間試験とし,被験者の登録基準は20歳以上の日本人男女で,風邪をひきやすい健常者とした。除外基準として,下記を設けた。
i. 悪性腫瘍、心不全、心筋梗塞の治療中もしくは既往歴がある者
ii. ペースメーカーや植え込み型除細動器を埋め込んでいる者
iii. 以下の慢性疾患で治療中の者
不整脈、肝障害、腎障害、脳血管障害、リウマチ、糖尿病、
脂質異常症、高血圧症、その他の慢性疾患
iv. 特定保健用食品、機能性表示食品、その他の機能性が考えられる食品/飲料を日頃から摂取している者
v. 医薬品 (漢方薬を含む) ・サプリメントを常用している者
vi. アレルギー (医薬品・試験食品関連食品) がある者
vii. 妊娠中、授乳中、あるいは試験期間中に妊娠する意思のある者
viii. 同意書取得日以前の28日間において他の臨床試験に参加していた者、あるいは試験期間中に参加予定のある者
ix. 喫煙している者
x. 呼吸器疾患の既往歴、現病歴がある者
xi. 自己免疫疾患がある者
xii. ステロイド剤などの免疫抑制剤を使用している者
xiii. 3か月以内にインフルエンザのワクチン接種をした者
xiv. その他、試験責任医師が本試験の対象として不適切と判断した者
除外基準をクリアした被験者の中から,試験責任医師が試験の参加に問題ないと判断した者でスクリーニング兼摂取前検査時の免疫力スコアが低い者(平均値:15)を選抜した。
【0022】
被験者には試験期間中,日誌と食事調査の記入を依頼し、試験参加中の遵守事項として、以下の点を徹底するよう求めた。
a. 試験食品を定められた用法・用量の通り摂取する。
b. 試験食品を摂取率80%以上となるよう摂取する。
c. 試験の同意書取得日から最終検査 (摂取8週間後検査) までは、暴飲暴食を避け、それまでの生活習慣を変えない。
d. 各検査前日から当日の検査終了までは飲酒と過度の運動を行わない。
e. 採血を行う6時間前から飲食を禁止する。試験食品の摂取も禁止とする。ただし、水のみ摂取可能とする。機能水、お茶は不可とする。
f. 試験期間中に体調の変化が生じた場合は、直ちに受託臨床試験機関に連絡し、以後の対応の指示を仰ぐ。
g. 試験期間中は、特定保健用食品、機能性表示食品、その他の機能性が考えられる食品/飲料をなるべく摂取しない。
h. 試験期間中にインフルエンザ感染症のワクチンを接種しない。
i. 試験期間中は、コロナウイルス等の感染予防対策 (手洗い・手指消毒の徹底、マスク着用など) を徹底し、感染の疑いがある場合は、速やかに受託臨床試験機関に連絡し、以後の対応の指示を仰ぐ。
また,試験期間中の治療開始者及び服薬者の取り扱いは以下の通りとした。
i. 医療用医薬品及びOTC医薬品 (要指導医薬品、一般医薬品) のいずれかを服薬した際は、服薬することになった旨を受託臨床試験機関に報告し、「医薬品使用確認票」に本人が記入をし、郵送する。なお、「医薬品使用確認票」は医薬品を服用するごとに記入する。
ii. 受託臨床試験機関は、試験責任医師及び分担医師に「医薬品使用確認票」及び被験者本人からヒアリングした内容を報告する。
iii. 試験責任医師または分担医師は被験者の服薬状況を確認し、有害事象の評価判定及び試験継続の可否を判断する。
【0023】
(2) 介入
試験食品として,被験食品群にはコメ由来のグルコシルセラミド組成物として、オリザ油化株式会社製のオリザセラミド(登録商標)-PCD 60 mg (グルコシルセラミド 1.8 mg) を含むカプセル,プラセボ群にはプラセボカプセルを摂取してもらった。介入期間は8週間とし,被験食品群,プラセボ群ともに, 1カプセルを1日1回朝食後に摂取してもらった。飲み忘れた場合は気が付いたときに摂取してもらった。
【0024】
(3)試験食品組成表
試験食品は、外観、形状、色、におい、味において識別不能である。試験食品の組成試験食品の組成 (1カプセルあたり) を下記に示す。
【0025】
【0026】
(4)測定項目
主アウトカムとして,感冒症状を採用した。試験期間中の以下の感冒症状の有無を日誌にて毎日記録した。
i. 調査項目: 1. 「鼻漏・鼻水: 黄色分泌物」、2. 「鼻漏・鼻水: 血の分泌物」、3. 「鼻づまり」、4. 「くしゃみ」、5. 「喉の痛み」、6. 「喉のかすれ」、7. 「せき」、8. 「頭痛」、9. 「倦怠感」、10. 「筋肉痛」、11. 「下痢」、12. 「吐き気」、13. 「嘔吐」
ii. 評価方法: 0-7の8段階で評価し、数値が低い程自覚症状が良いことを表す。
副次アウトカムとして,MOS Short-Form 36-Item Health. Survey (SF-36) を採用し,健康関連QOL(PCSスコア、MCSスコア、RCSスコア、身体機能、日常役割機能 (身体)、身体の痛み、全体的健康感、活力、社会生活機能、日常役割機能 (精神)、心の健康)を評価した。評価方法は各質問に対する選択肢の再コード化および欠損値の処理後、下位尺度の生得点を算出し、下位尺度得点に変換する。スクリーニング兼摂取前検査、摂取4週間後検査、摂取8週間後検査で測定した。
【0027】
(5)割付
割付責任者は、登録された症例数がプロトコルに設定した目標症例数に達成した後、全員同一日に割り付ける。割付責任者は、コンピューター上で乱数を生成し、定められた変数を因子とした完全無作為法により割付表を作成し、割付表に基づき、試験参加者を組み入れる。なお、割付比は1:1とする。
i. スクリーニング兼摂取前検査時における免疫力スコア
ii. 性別
iii. 年齢
【0028】
(6)統計解析
主要アウトカム,副次アウトカムともに,解析データセットはPPSとした。対応のないt検定などを用いて群間比較した。多角的見地から他の検定が必要となった場合は、それらを採用し、有効性の評価を行う。すべての統計解析は両側検定で行うものとし、有意水準は5%に設定した。用いるソフトウェアは、SPSS Statisticsのバージョン23以上とし、必要に応じて検証された他の統計ソフトウェアが使用される。また、本試験で発生するすべての多重性は考慮しない。
【0029】
(7)結果
図1に試験参加者の追跡フローチャートを示した。本試験は健常な日本人成人男女のうち、風邪をひきやすい者を対象とした。試験参加に同意した61名のうち、適格基準を満たす44名を本試験に組入れ、被験食品群とプラセボ群に22名ずつ割り付けた。摂取8週間後検査以降に来院しなかった試験参加者4名 (被験食品群に1名、プラセボ群に3名) であった。
PPSは、割り付け後に介入を一度も受けていない症例4名 (被験食品群に1名、プラセボ群に3名) が除外された。SAFはPPSと同様の解析対象者であった。よって、PPSおよびSAFの解析データセットの症例数は、40名 (被験食品群に21名、プラセボ群に19名) であった。
感冒症状の程度別の累積日数の平均値とSDを
図2に示した。
【0030】
有意差が認められた項目のうち、オリザセラミド群でプラセボ群よりも低値を示した項目は、感冒症状 (症状の程度: 非常に軽度~重度、オリザセラミド群: 28.7 ± 21.2日、プラセボ群: 41.5 ± 17.2日、群間差: -12.9 日 [-25.2、-0.6]) であった。喉に関しては,喉の痛み (症状の程度:非常に軽度~重度、オリザセラミド群: 6.7 ± 8.8日、プラセボ群: 15.9 ± 18.1日、群間差: -9.2 日および症状の程度: 軽度~重度、オリザセラミド群: 0.5 ± 1.2日、プラセボ群: 3.3 ± 5.1日、群間差: -2.8日) であった。また喉のかすれに関しても,オリザセラミド群で有意な改善が見られた(症状の程度:軽度~重度、オリザセラミド群: 0.3 ± 1.3日、プラセボ群: 2.7± 4.9日、群間差: -2.4日)。
頭痛や筋肉痛にもオリザセラミド群で改善が見られた。頭痛では症状の程度が軽度~重度の被験者で、オリザセラミド群で1.2 ± 2.2日、プラセボ群: 3.0± 4.9日であり,-1.8の有意な差が見られた。筋肉痛でも症状の程度が軽度~重度の被験者で、オリザセラミド群で0.2 ± 0.5日、プラセボ群: 2.6± 5.2日であり,-2.4の有意な改善が見られた。
さらに下痢では,症状の程度が非常に軽度~重度の被験者で、オリザセラミド群で1.5 ± 2.8日、プラセボ群で8.6 ± 10.9日であり,群間差: -7.1日の改善であった。症状の程度が軽度~重度の被験者でも、オリザセラミド群で0.3 ±0.8日、プラセボ群で3.1 ± 5.8日であり,群間差: -2.8日の改善であった。
次に,副次アウトカムのSF-36では,「身体機能」においてオリザセラミド群でプラセボ群よりも有意な高値(改善)が認められた。
【0031】
(8)実施例の効果
図2に示されるように、試験期間中における感冒症状が「非常に軽度~重度」であった累積日数は、被験食品群がプラセボ群よりも有意に少なかった。また、感冒症状の具体的な症状の累積日数においてその程度が「非常に軽度~重度」では下痢、喉の痛みが有意に少なく、鼻づまり、喉のかすれ、せき、頭痛および筋肉痛は少ない傾向にあった。「軽度~重度」の症状で確認すると、被験食品群はプラセボ群よりも喉の痛み、喉のかすれ、筋肉痛、下痢、頭痛が有意に少なく、総感冒症状、鼻づまりが少ない傾向にあった。「中程度~重度」の症状においては、被験食品群はプラセボ群よりも総感冒症状、鼻づまり、喉の痛み、頭痛、下痢が少ない傾向にあった。その他のアウトカムにおいては、SF-36における身体機能が有意に改善することが確認された。また、活力にも改善傾向がみられた。
本試験では、コメ由来のグルコシルセラミド組成物の摂取による感冒症状の発現抑制効果が確認された。
【0032】
本発明による剤(コメ由来のグルコシルセラミド組成物)の配合例を示す。尚、以下の配合例は本発明を限定するものではない。
配合例1:チューインガム
砂糖 53.0wt%
ガムベース 20.0
グルコース 10.0
水飴 16.0
香料 0.5
コメ由来のグルコシルセラミド組成物 0.5
100.0wt%
【0033】
配合例2:グミ
還元水飴 40.0wt%
グラニュー糖 20.0
ブトウ糖 20.0
ゼラチン 4.7
水 9.68
ユズ果汁 4.0
ユズフレーバー 0.6
色素 0.02
コメ由来のグルコシルセラミド組成物 1.0
100.0wt%
【0034】
配合例3:キャンディー
砂糖 50.0wt%
水飴 33.0
水 14.4
有機酸 2.0
香料 0.2
コメ由来のグルコシルセラミド組成物 0.4
100.0wt%
【0035】
配合例4:ヨーグルト(ハード・ソフト)
牛乳 41.5wt%
脱脂粉乳 5.8
砂糖 8.0
寒天 0.15
ゼラチン 0.1
乳酸菌 0.005
コメ由来のグルコシルセラミド組成物 0.4
香料 微量
水 残余
100.0wt%
【0036】
配合例5:清涼飲料
果糖ブドウ糖液糖 30.0wt%
乳化剤 0.5
コメ由来のグルコシルセラミド組成物 0.3
香料 適量
精製水 残余
100.0wt%
【0037】
配合例6:錠菓
砂糖 76.4wt%
グルコース 19.0
ショ糖脂肪酸エステル 0.2
コメ由来のグルコシルセラミド組成物 0.5
精製水 3.9
100.0wt%
【0038】
配合例7:ソフトカプセル
玄米胚芽油 47.0wt%
ユズ種子油 40.0
乳化剤 12.0
コメ由来のグルコシルセラミド組成物 1.0
100.0wt%
【0039】
配合例8:錠剤
乳糖 54.0wt%
結晶セルロース 30.0
澱粉分解物 10.0
グリセリン脂肪酸エステル 5.0
コメ由来のグルコシルセラミド組成物 1.0
100.0wt%