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特開2024-170593RFIDチップ用チューニングアセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170593
(43)【公開日】2024-12-10
(54)【発明の名称】RFIDチップ用チューニングアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/07 20060101AFI20241203BHJP
【FI】
G06K19/07 260
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024154964
(22)【出願日】2024-09-09
(62)【分割の表示】P 2022540462の分割
【原出願日】2020-12-18
(31)【優先権主張番号】62/954,479
(32)【優先日】2019-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518000176
【氏名又は名称】エイヴェリー デニソン リテール インフォメーション サービシズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】AVERY DENNISON RETAIL INFORMATION SERVICES LLC
【住所又は居所原語表記】8080 Norton Parkway, Mentor, Ohio 44060 Uni-ted States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フォースター,イアン ジェイ.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】RFIDチップへの十分な電力伝達を防止する静電容量で初期化する可能性の少ないチューナブルRFIDチップを提供する。
【解決手段】RFIDチップ用チューニングアセンブリ10は、入力ポート12と、制御ユニット14と、入力ポートと制御ユニットとの間に並列に連結された複数のキャパシタ16a~16eと、セレクタ回路18と、を含む。セレクタ回路は、各キャパシタ及び制御ユニットに結合され、制御ユニットからの命令に応答して任意のキャパシタを介した電流の流れを選択的に許容及び防止することにより、RFIDチップの静電容量を調整する。前記命令は、例えば、RFIDチップの静電容量の自動調整に対してキャパシタを介した電流の流れを常に許容する命令と、キャパシタを介した電流の流れを常に防止する他の命令と、キャパシタを介した電流の流れを選択的に許容及び防止する第3の命令と、を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDチップ用チューニングアセンブリであって、
入力ポートと、
制御ユニットと、
入力ポートと制御ユニットとの間に並列に連結された複数のキャパシタと、
各キャパシタ及び制御ユニットに結合され、RFIDチップの静電容量を調整するための制御ユニットからの命令に応答して任意のキャパシタを介した電流の流れを選択的に許容及び防止するように構成されるセレクタ回路と、を含み、
前記制御ユニットは、前記セレクタ回路に複数の命令を発行するように構成され、
前記複数の命令は、
チューニング開始時の前記複数のキャパシタの結合静電容量が常に少なくとも最小値になるように選択された前記複数のキャパシタのうちの一部のキャパシタの各々を介した電流の流れを常に許容する命令と、
チューニング後の前記複数のキャパシタの前記結合静電容量が最大値よりも決して大きくならないように選択された前記複数のキャパシタのうちの他の一部のキャパシタの各々を介した電流の流れを常に防止する命令と、
前記複数のキャパシタのうちの残りのキャパシタの各々を介した電流の流れを選択的に許容及び防止する命令と、を含み、
前記複数のキャパシタの結合静電容量の前記最小値が、RFIDリーダを作動させて決定されたRFIDリーダの最小作動電力を検知したときの、前記RFIDチップの静電容量である、
チューニングアセンブリ。
【請求項2】
前記複数のキャパシタの各キャパシタは、異なる静電容量を有する、請求項1に記載のチューニングアセンブリ。
【請求項3】
キャパシタの任意の一対の静電容量の差は、キャパシタの任意の他の一対の静電容量の差と異なる、請求項2に記載のチューニングアセンブリ。
【請求項4】
前記複数のキャパシタのうちの1つのキャパシタは、他のキャパシタよりも低い静電容量を有し、
前記複数のキャパシタのうちの他の1つは、他のキャパシタよりも大きい静電容量を有し、
前記複数のキャパシタのうちの他の各キャパシタは、次に最も低い静電容量を有するキャパシタの2倍の静電容量と、次に最も大きい静電容量を有するキャパシタの半分の静電容量とを有する、請求項2に記載のチューニングアセンブリ。
【請求項5】
各キャパシタは、約50fF~約800fFの範囲の静電容量を有する、請求項1~4の何れか1項に記載のチューニングアセンブリ。
【請求項6】
前記複数のキャパシタは、
約50fFの静電容量を有する第1キャパシタと、
約100fFの静電容量を有する第2キャパシタと、
約200fFの静電容量を有する第3キャパシタと、
約400fFの静電容量を有する第4キャパシタと、
約800fFの静電容量を有する第5キャパシタと、を含む、
請求項5に記載のチューニングアセンブリ。
【請求項7】
前記複数のキャパシタは、0fF~約1,550fFの結合静電容量を提供するように構成される、請求項1~4の何れか1項に記載のチューニングアセンブリ。
【請求項8】
前記制御ユニットは、セレクタ回路への命令が複数のキャパシタの任意の1つ以上を介した電流の流れを選択的に許容及び防止して、入力ポートを介してRFIDチップに伝達される電力量が最大となる結合静電容量を提供するように構成される、請求項1~7の何れか1項に記載のチューニングアセンブリ。
【請求項9】
前記制御ユニットは、少なくとも1つの前記キャパシタを介した電流の流れを常に許容するか常に防止するようセレクタ回路に命令するように構成される、請求項8に記載のチューニングアセンブリ。
【請求項10】
前記複数のキャパシタのうちの組み合わせによる電流の流れを選択的に許容及び防止する命令は、
キャパシタの特定の組み合わせによる電流の流れを許容するときに入力ポートを介してRFIDチップに伝達される電力量と、キャパシタの異なる組み合わせによる電流の流れを許容するときに入力ポートを介してRFIDチップに伝達される電力量とを比較することと、
前記1つ以上の任意のキャパシタを介した電流の流れが許容及び防止されるとき、入力ポートを介してRFIDチップに伝達された電力量に少なくとも部分的に基づいて、前記1つ以上の任意のキャパシタを介した電流の流れを許容または防止するように前記セレクタ回路に命令することと、を含む、
請求項8または9に記載のチューニングアセンブリ。
【請求項11】
前記チューニングアセンブリは、RFIDチップが導電性リングに結合することを可能とし、RFIDチップと導電性リングの組み合わせは反応性ストラップを規定する、請求項1~10の何れか1項に記載のチューニングアセンブリ。
【請求項12】
チューニングされるように構成されたRFIDチップを含むRFIDインレイの製造方法であって、
RFIDチップ用チューニングアセンブリを提供するステップであって、チューニングアセンブリは、入力ポートと、制御ユニットと、入力ポートと制御ユニットとの間に並列に連結された複数のキャパシタと、各キャパシタと制御ユニットに結合され、RFIDチップの静電容量を調整するための制御ユニットからの命令に応答して任意のキャパシタを介した電流の流れを選択的に許容及び防止するように構成されたセレクタ回路とを含むステップと、
前記セレクタ回路に複数の命令を発行するように制御ユニットをプログラミングするステップであって、前記複数の命令は、
チューニング開始時の前記複数のキャパシタの結合静電容量が常に少なくとも最小値になるように選択された前記複数のキャパシタのうちの一部のキャパシタの各々を介した電流の流れを常に許容する命令と、
チューニング後の前記複数のキャパシタの前記結合静電容量が最大値よりも決して大きくならないように選択された前記複数のキャパシタのうちの他の一部のキャパシタの各々を介した電流の流れを常に防止する命令と、
前記複数のキャパシタのうちの残りのキャパシタの各々を介した電流の流れを選択的に許容及び防止する命令と、を含み、RFIDチップをアンテナに結合してRFIDインレイを規定するステップと、
を含み、
前記複数のキャパシタの結合静電容量の前記最小値が、RFIDリーダを作動させて決定されたRFIDリーダの最小作動電力を検知したときの、前記RFIDチップの静電容量である、
方法。
【請求項13】
前記制御ユニットは、前記RFIDチップが前記アンテナに結合される前にプログラミングされる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記制御ユニットは、前記RFIDチップが前記アンテナに結合された後にプログラミングされる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記RFIDインレイをテストするステップをさらに含み、前記制御ユニットは、前記テスト中にプログラミングされる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記RFIDインレイをRFIDラベルに組み込むステップをさらに含み、前記制御ユニットは、前記RFIDインレイが前記RFIDラベルに組み込まれた後にプログラミングされる、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記RFIDインレイをRFIDラベルに組み込むステップと、
前記RFIDラベルを物品に結び付けるステップであって、前記制御ユニットは、前記RFIDラベルが前記物品に結び付けられた後にプログラミングされるステップと、をさらに含む、請求項12~16の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記制御ユニットをプログラミングするステップは、
(a)RFIDラベルを感知するために、比較的高い電力でRFIDリーダを作動させること、
(b)最小作動電力を決定するために、より低い電力でRFIDリーダを作動させること、
(c)最小作動電力よりも大きい電力でRFIDリーダを作動させること、
(d)RFIDリーダが最小作動電力よりも大きい前記電力で作動中に制御ユニットをプログラミングすること、
(e)より低い最小作動電力が達成されたか否かを決定するために、前記最小作動電力よりも低い電力でRFIDリーダを作動させること、
(f)最も低い最小作動電力に到達するまで(c)~(e)を繰り返すことと、を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
同様に構成され配置された複数のRFIDラベルに対して(a)~(f)を行うステップと、
同様に構成され配置された複数のRFIDラベルの制御ユニットの平均プログラミングを決定するステップと、
前記平均プログラミングに少なくとも部分的に基づいて、少なくとも1つのRFIDチップの制御ユニットをプログラミングするステップと、をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年12月28日付の米国仮特許出願第62/954,479号の利益を主張し、その内容全体を本明細書に参照として含む。
【0002】
本発明は、チューナブル無線周波数識別(「RFID」)装置に関する。より具体的に、本発明は、調整され得る静電容量を有するRFIDチップに関する。
【背景技術】
【0003】
(本明細書において「装置」と全体として指称する)RFIDタグ及びラベルは、客体を識別コードに関連付けるために広く用いられる。RFID装置は、一般にアンテナとアナログ電子機器及び/またはデジタル電子機器の組み合わせを有し、例えば、通信電子機器、データメモリ、及び制御ロジックを含み得る。例えば、RFIDタグは、自動車のセキュリティロックと併せて、建物へのアクセス制御、在庫及び小包の追跡に用いられる。
【0004】
最も基本的に、RFID装置は、アンテナに結合されたRFIDチップを含む。RFIDチップ及びアンテナは多様に構成され得、図1は、RFIDチップ「M」とアンテナ「A」の組み合わせの一実施形態を示し、本明細書では、RFIDインレイ「N」と指称する。図1のRFIDチップMは、導電性リング「L」に結合されて反応性ストラップ「S」を規定するのに対し、(ダイポールアンテナとして示す)アンテナ「A」は、反応性ストラップ「S」から分離される。アンテナ「A」が反応性ストラップ「S」から物理的に分離されているが、2つの構成要素は、RFIDリーダと信号を交換するために組み合わせて作動する。
【0005】
(例えば、ストラップの導電性パッドにアンテナを連結することにより)容量的または導電的にアンテナに結合されるように構成されるRFIDストラップの場合、アンテナの構成は得られたRFIDインレイの周波数を調整するように修正され得る。しかし、図1に示すタイプの反応性ストラップ「S」は、RFIDチップ「M」の静電容量と導電性リング「L」のインダクタンスによって決定される共振周波数を有するので、アンテナ「A」を再構成することは、非反応性ストラップの場合と同じ効果を有さない。言い換えれば、反応性ストラップは、容量的または導電的に結合されたストラップの場合、チューニングループの一部であるのに対し、図1に示すタイプの反応性ストラップ「S」はチューニングループである。
【0006】
より具体的に、図1に示すタイプのRFIDインレイ「N」のアンテナの応答は、2つの基本の極から構成され、一方は反応性ストラップ「S」の共振周波数と関連し、他方はアンテナ「A」と関連する。反応性ストラップ「S」とアンテナ「A」との結合、及び周波数領域における相対位置は、特定の周波数でRFIDインレイ「N」の性能を最適化するために用いられ得、例えば、誘電体のローディングと、金属または他のRFID装置への近接性を含むアプリケーションで用いられ得る。
【0007】
RFIDチップ「M」の入力は、図2に示すように、抵抗性素子「R」及び容量性素子「C」と見なされ得る。図2において、RFIDチップ「M」の入力ポートは「P」で識別され、RFIDチップ「M」のキャパシタは「T」で識別され、RFIDチップ「M」のコアは「B」で識別される。図2に示すタイプの従来のRFIDチップ「M」において、キャパシタ「T」を介して入力ポート「P」とコア「B」との間のインターコネクションが固定され、RFIDチップ「M」の静電容量は、反応性ストラップ「S」の共振周波数を調整するよう調整することができない(即ち、RFIDチップ「M」はチューナブルではない)。
【0008】
反応性ストラップは、図3に示すように、多数の要因(例えば、反応性ストラップが最終的に結び付けられる物品の特性)に応じて異なる周波数でよりよく行われ得るので、チューナブルRFIDチップ「U」(即ち、調整可能な静電容量を有するもの)を提供することが知られている。図3の実施形態において、図2の単一キャパシタ「T」は、3つのキャパシタ「T1」、「T2」、及び「T3」に代替される。キャパシタ「T1」のうちの1つは、図2の単一キャパシタ「T」と同様であり、RFIDチップ「U」に固定された最小の静電容量を提供するのに対し、他の2つのキャパシタ「T2」及び「T3」(「チューナブル」キャパシタという)は、RFIDチップ「U」の総静電容量(即ち、共振周波数)を調整するために、電流の流れを選択的に受信するように(自動調整回路「D」の制御下で)構成される。特に、RFIDチップ「U」がRFIDリーダから信号を受信するときに電源を入れようとする際、自動調整回路「D」は、各チューナブルキャパシタ「T2」及び「T3」に対して、そのキャパシタが入力ポート「P」を介して(即ち、関連のアンテナから)、RFIDチップ「U」によって受信される電力を最大化するよう、電流の流れを受信するか否かを自動的に決定する。RFIDチップ「U」が、その感度を高めるために、その静電容量を自動的に調整可能なこのような機能を、通常「オートチューニング」という。
【0009】
図3のチューナブルRFIDチップ「U」が図2の固定周波数RFIDチップ「M」に対する改善であり得るが、短所がないわけではない。例えば、全てのチューナブルキャパシタ「T2」及び「T3」は、RFIDチップ「U」が電源を入れようとするたびにチューニングされる。基本的に、各チューナブルキャパシタ「T2」及び「T3」は、RFIDチップ「U」が電源を入れようとする際に電流の流れを受信する。(電流の流れを受信する各キャパシタ「T1」、「T2」、及び「T3」を有する)開始静電容量が、アンテナとRFIDチップ「U」との間に不十分な電力が自動調整回路「D」に伝達されるこのような不一致をもたらす場合であり得るので、オートチューニングプロセスを開始するために、且つ、RFIDチップ「U」が作動閾値に到達することを可能にするよう伝達される電力を最適化するために、(低い感度、及びRFIDインレイがRFIDリーダにより近くなる必要性に関する)より高い水準の電力が必要となる。
【0010】
RFIDチップへの十分な電力伝達を防止する静電容量で初期化する可能性の少ないチューナブルRFIDチップを提供することが有利であろう。
【0011】
よって、本明細書において、RFIDチップへの十分な電力伝達を防止する静電容量で初期化せず、RFIDチップのチューニングを可能とするチューニングアセンブリ、その製造方法及び使用方法を説明する。
【発明の概要】
【0012】
本発明には、以下で説明し請求する装置及びシステムにおいて、個別にまたは共に実施し得る複数の態様が存在する。これらの態様は、単独で採用してもよく、本明細書で説明する本発明の他の態様と組み合わせて採用してもよく、これらの態様を組み合わせた説明は、これらの態様を個別に使用することや、これらの態様を個別に、又は本明細書に添付する請求範囲に明示するような異なる組み合わせにより請求することを排除するものではない。
【0013】
本明細書において、RFIDチップ用チューニングアセンブリを説明する。チューニングアセンブリは、入力ポートと、制御ユニットと、入力ポートと制御ユニットとの間に並列に連結された複数のキャパシタと、を含む。セレクタ回路は、各キャパシタ及び制御ユニットに結合され、制御ユニットからの命令に応答して任意のキャパシタを介した電流の流れを選択的に許容及び防止することにより、RFIDチップの静電容量を調整するように構成される。制御ユニットからセレクタ回路への命令は、1つ以上の任意のキャパシタを介した電流の流れを常に許容する命令と、1つ以上の任意のキャパシタを介した電流の流れを常に防止する他の命令と、1つ以上の任意のキャパシタを介した電流の流れを選択的に許容及び防止する第3の命令と、を含む。一部の実施形態において、チューニングアセンブリは、RFIDチップが導電性リングに結合されることを可能とし、RFIDチップと導電性リングを組み合わせることで、反応性ストラップを規定する。
【0014】
また、本明細書において、チューナブルRFIDチップを含むRFIDインレイの製造方法を説明する。この方法は、RFIDチップ用チューニングアセンブリを提供するステップを含み、ここで、チューニングアセンブリは、入力ポートと、制御ユニットと、入力ポートと制御ユニットとの間に並列に連結された複数のキャパシタと、各キャパシタ及び制御ユニットに結合され、RFIDチップの静電容量を調整するための制御ユニットからの命令に応答して任意のキャパシタを介した電流の流れを選択的に許容及び防止するように構成されるセレクタ回路と、を含む。制御ユニットは、1つ以上の任意のキャパシタを介した電流の流れを常に許容する命令と、1つ以上の任意のキャパシタを介した電流の流れを常に防止する他の命令と、1つ以上の任意のキャパシタを介した電流の流れを選択的に許容及び防止する第3の命令とを含み、セレクタ回路に複数の命令を発行するようプログラミングされる。RFIDチップは、アンテナに結合されてRFIDインレイを規定する。一部の実施形態において、RFIDチップは、反応性ストラップの一部としてアンテナに結合されてRFIDインレイを規定する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来の設計による反応性ストラップ及び関連アンテナの概略図である。
図2】従来の設計によるRFIDチップの概略図である。
図3】従来の設計によるRFIDチップの概略図である。
図4】本開示の態様による例示的なRFIDチップ用チューニングアセンブリの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明において、必要に応じて本発明の詳細な実施形態を開示しているが、開示している実施形態は、多様な形態で実施し得る本発明の単なる例示に過ぎないことを理解すべきである。従って、本明細書で開示する特定の細部事項を単に制限的なものと解釈してはならず、請求範囲に対する基礎や、当業者が事実上任意の適切な方法で本発明を多様に採用するように教示するための代表的な基礎として解釈しなければならない。
【0017】
図4は、本開示の態様によるRFIDチップ11用チューニングアセンブリ10の例示的な実施形態を示す。チューニングアセンブリ10は、アンテナまたは入力ポート12及び制御ユニット14を含む。複数のキャパシタ16a~16eは、入力ポート12と制御ユニット14との間に並列に連結される。図4は、5つのキャパシタを示しているが、本開示によるチューニングアセンブリ10は、5つを超えるキャパシタまたは5つ未満のキャパシタを含み得ることを理解すべきである。セレクタ回路18は、各キャパシタ16及び制御ユニット14に結合される。本開示によるチューニングアセンブリ10は、図1に示すもの以外に、ストレージユニットまたはメモリユニット等の他の構成要素を含み得ることを理解しなければならない。
【0018】
個別のキャパシタ16の静電容量は、本開示の範囲を外れることなく変わり得る。一実施形態において、各キャパシタ16は、異なる静電容量を有し、これは、本明細書でより詳細に説明しているように、達成可能な範囲内でより多くの異なる結合静電容量を可能とするのに有利であり得る。例えば、例示的な一実施形態において、第1キャパシタ16aは、約50fFの静電容量を有し、第2キャパシタ16bは、約100fFの静電容量を有し、第3キャパシタ16cは、約200fFの静電容量を有し、第4キャパシタ16dは、約400fFの静電容量を有し、第5キャパシタ16eは、約800fFの静電容量を有する。この例示的な実施形態において、(第1キャパシタ16a以外の)各キャパシタ16は、次に最も低い静電容量を有するキャパシタ16の二倍の静電容量を有することが分かる(2進数配列と同様)。これは、本明細書でより詳細に説明しているように、可能な結合静電容量のより完全な範囲を可能とするのに有利であり得る。各キャパシタ16が異なる静電容量を有することが有利であり得るが、2つ以上のキャパシタ16が同じ静電容量を有すること及び/または各キャパシタ16が同じ静電容量を有することも本開示の範囲内にある。
【0019】
セレクタ回路18は、制御ユニット14からの命令に応答して任意のキャパシタ16を介した電流の流れを選択的に許容及び防止するように構成される。キャパシタ16の異なる組み合わせによる電流の流れを選択的に許容及び防止することにより、増加した感度のためにRFIDチップ11の総静電容量または結合静電容量が調整され得る。セレクタ回路18は、この機能を行うように多様に構成され得る。1つの例示的な実施形態において、各キャパシタ16は、セレクタ回路18によって開放されてキャパシタ16を介した電流の流れを防止するか、セレクタ回路18によって閉鎖されてキャパシタ16を介した電流の流れを許容する関連スイッチを含む。また、本開示の範囲を外れることなく、他の構成を採用し得る。
【0020】
セレクタ回路18が各キャパシタ16を介した電流の流れを防止するように作用する場合、キャパシタ16は、RFIDチップ11の結合静電容量に寄与せず、よって、RFIDチップ11の結合静電容量は、RFIDチップ11の基本入力の静電容量(これは上述の実施形態において100fFである)と等しい。セレクタ回路18が各キャパシタ16を介した電流の流れを許容するように作用する場合、RFIDチップ11の結合静電容量は、個別のキャパシタ16の静電容量(上述の実施形態において1,550fF)と基本入力の静電容量(上述の実施形態において100fF)との和と等しく、これは、上述の実施形態における1,650fFの結合静電容量である。
【0021】
セレクタ回路18が全てのキャパシタ16ではなく少なくとも1つを介した電流の流れを許容する場合、結合静電容量は、RFIDチップ11の基本入力の静電容量と、可能な最大静電容量(即ち、全てのキャパシタ16を介した電流の流れが許容される場合の結合静電容量)との間のどこかにあるであろう。上述の実施形態において、100fF及び1,650fFの範囲の結合静電容量(基本入力の静電容量含む)が50ずつ増加することを達成し得る。例えば、150fFの結合静電容量は、(100fFの基本入力の静電容量以外に50fFの静電容量を有する)第1キャパシタ16aを介した電流の流れのみを許容するセレクタ回路18によって達成され得る。200fFの結合静電容量は、(100fFの基本入力の静電容量以外に100fFの静電容量を有する)第2キャパシタ16bを介した電流の流れのみを許容するセレクタ回路18によって達成され得る。250fFの結合静電容量は、最大に達成可能な結合静電容量まで、第1及び第2キャパシタ16a、16b等を介した電流の流れのみを許容するセレクタ回路18によって達成され得る。達成可能な結合静電容量値の範囲に対する密なカバレージは、多くの可能なアプローチの何れかによって達成され得るが、異なる静電容量値を有するキャパシタ16によって、また、キャパシタ16の任意の一対の静電容量の差が、上述の実施形態のように、キャパシタ16の任意の他の一対の静電容量の差と異なるので、効率的に達成され得る(即ち、最小限のキャパシタ16を使用)。
【0022】
制御ユニット14は、最大感度が達成されるまで、各キャパシタ16を介した電流の流れを自動的及び選択的に許容及び防止するようにセレクタ回路18に命令することにより、従来のオートチューンシステムのように作動するよう構成され得る。また、制御ユニット14は、セレクタ回路18に追加命令を発行するように構成されてもよく、従来のオートチューニング装置よりも利点を提供する。例えば、制御ユニット14は、1つ以上の任意のキャパシタ16を介した電流の流れを常に許容するようにセレクタ回路18に命令するよう構成され得る。これは、RFIDチップ11がRFIDチップ11によって達成できる静電容量値の完全な範囲よりも厳しい範囲で結合静電容量を必要とするアプリケーションで用いられることが知られている場合、有利であり得る。例えば、RFIDチップ11が少なくとも一部最小値の結合静電容量を有する必要があるということが知られている場合(例えば、同様のアプリケーションで同様に構成されるRFIDチップをテストすることにより)、制御ユニット14は、結合静電容量が常にその最小値であることを保障するために、最も適切なキャパシタ16を介した電流の流れを常に許容するようにセレクタ回路18に命令するよう構成され得る。
【0023】
同様に、制御ユニット14は、1つ以上の任意のキャパシタ16を介した電流の流れを常に防止するようにセレクタ回路18に命令するよう構成され得、これは、RFIDチップ11がRFIDチップ11によって達成できる静電容量値の完全な範囲よりも厳しい範囲で結合静電容量を必要とするアプリケーションで用いられることが知られている場合でも有利である。例えば、RFIDチップ11が一部最大値よりも低い結合静電容量を有する必要があるということが知られている場合(例えば、同様のアプリケーションで同様に構成されたRFIDチップをテストすることにより)、制御ユニット14は、結合静電容量がその最大値よりも決して大きくないことを保障するために、最も適切なキャパシタ16を介した電流の流れを常に防止するようにセレクタ回路18に命令するよう構成され得る。
【0024】
チューナブルキャパシタ16の状態を「凍結」させること(即ち、これによる電流の流れを常に許容するか防止することにより)は、従来のオートチューンシステムが有する問題を防止する。先行技術システムに関する記述で説明しているように、従来のオートチューン可能なRFIDチップ「U」(図3参照)の開始静電容量は、アンテナとRFIDチップ「U」との不一致により自動調整回路「D」に不十分な電力が伝達され、オートチューニングプロセスを開始するために、且つ、RFIDチップ「U」が作動閾値に到達することを可能にするよう伝達される電力を最適化するために、(低い感度、及びRFIDインレイがRFIDリーダにより近くなる必要性に関する)より高い水準の電力が必要となる。1つ以上のキャパシタ16の状態を「凍結」することにより、本開示によるRFIDチップ11は、そのような不一致を避けるために、目標値に十分に近い初期または開始の結合静電容量を有するであろう。(1つ以上のキャパシタ16の状態が「凍結」であり得る)初期構成から、入力ポート12を介してRFIDチップ11に伝達される電力量が最大となる結合静電容量に到達するまで、制御ユニット14とセレクタ回路18は、(キャパシタ16の特定の組み合わせによる電流の流れが許容されるときに入力ポート12を介してRFIDチップ11に伝達される電力量と、キャパシタ16の異なる組み合わせによる電流の流れが許容されるときに伝達される電力量とを比較して)「凍結」されていない個別のキャパシタ16の状態を調整するためにともに作動する。比較の後、1つ以上のキャパシタ16のうちの何れかを介した電流の流れを許容及び防止するとき、制御ユニット14は、入力ポート12を介してRFIDチップ11に伝達された電力量に少なくとも部分的に基づいて、1つ以上のキャパシタ16のうちの何れかを介した電流の流れを許容または防止するよう、セレクタ回路18に命令する。
【0025】
キャパシタ16の状態は、多様な時間や位置のうちの何れかで設定され得る(例えば、「凍結」状態に設定されるか、自動調整を許容するよう設定される)。一実施形態において、キャパシタ16の状態は、関連のRFIDチップ11が(反応性ストラップの一部として)アンテナに結合される前に設定される。他の実施形態において、キャパシタ16の状態は、RFIDインレイを規定するために、RFIDチップ11がアンテナに結合された後に設定される。これは、RFIDチップ11が、インレイテスト中にまたはRFIDインレイがRFIDタグ若しくはラベルに組み込まれた後に、プログラミングされることを含み得る。また、これは、RFIDチップ11が(RFIDタグまたはラベルの一部として)物品に結び付けられた後にプログラミングされることを含み得る。
【0026】
RFIDチップ11がサービスに配置される前に、RFIDチップ11の適切な結合静電容量を決定することが困難であり得るため、本開示は、比較的初期の製造段階でRFIDチップ11のプログラミングを許容するために、以前配置されたRFIDチップ11から収集したデータを用いるというアプローチを提供する。このアプローチにより、RFIDリーダは、(例えば、デニム衣類または綿シャツの物品に取り付けられる)サービスに配置されるRFIDラベルを感知するために、比較的高い電力で作動する。その後、RFIDリーダは、RFIDラベルが感知される最小作動電力を決定するために、より低い電力で作動する。次に、RFIDリーダは、以前に識別された最小作動電力よりも大きな電力で作動し、RFIDラベルのRFIDチップ11用チューニングアセンブリ10の制御ユニット14は、異なる結合静電容量を達成するよう、異なる結合によりキャパシタ16を介した電流の流れを伝達するために、セレクタ回路18に命令するようにプログラミングされる。その後、RFIDリーダは、以前に識別された最小作動電力よりも低い電力で作動し、より低い最小作動電力が達成されたか否か(即ち、RFIDラベルが新たな静電容量で感知できるか否か)を決定する。このプロセスは、最も低い最小作動電力が達成されるまで繰り返され得る。
【0027】
前述の手続きは、(平均の結合静電容量を含み得る)平均プログラミングを決定するために同様に構成され同様に位置する複数のRFIDラベルに対して繰り返され得る。その後、この情報は、RFIDチップ11がサービスに配置されるまで待つ必要なく、(RFIDチップ11がどのように用いられるか知られると)制御ユニット14をプログラミングして、今後のRFIDチップ11のキャパシタ16の状態を製造プロセスの比較的初期に設定するのに用いられ得る。
【0028】
上述の実施形態は、本発明の原理における適用例の一部を例示するものであることを理解するであろう。本明細書で個別に開示または請求する特徴の組み合わせを含む、請求する本発明の思想や範囲を外れることなく、当業者によって多数の変更が行われ得る。かかる理由で、本明細書の範囲は上記説明に制限されないが、以下の請求範囲に明示したとおりであり、請求範囲は、本明細書で個別に開示または請求する特徴の組み合わせを含む、本明細書の特徴に関するものであることが理解される。
図1
図2
図3
図4