(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001706
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理装置、電力機器及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G01N 17/02 20060101AFI20231227BHJP
H02B 3/00 20060101ALI20231227BHJP
【FI】
G01N17/02
H02B3/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100542
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】514105011
【氏名又は名称】株式会社東光高岳
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】栗原 二三夫
(72)【発明者】
【氏名】折戸 由貴
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050AA07
2G050BA05
2G050EB03
(57)【要約】
【課題】容易な方法で、早期に配電盤の状態を把握することができるプログラム等を提供する。
【解決手段】プログラムは、電力機器内に設置される温湿度センサから得られる温湿度データと、前記電力機器内に設置されるACMセンサから得られる腐食電流データとを取得し、取得した複数時点の温湿度データに基づく前記電力機器内の水分量と、腐食電流データに基づく前記電力機器内の汚損度との分布に基づき、水分量軸及び汚損度軸により規定される複数のエリアに属する割合を特定する処理をコンピュータに実行させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力機器内に設置される温湿度センサから得られる温湿度データと、前記電力機器内に設置されるACMセンサから得られる腐食電流データとを取得し、
取得した複数時点の温湿度データに基づく前記電力機器内の水分量と、腐食電流データに基づく前記電力機器内の汚損度との分布に基づき、水分量軸及び汚損度軸により規定される複数のエリアに属する割合を特定する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項2】
前記水分量軸及び汚損度軸により規定されるグラフに、前記水分量及び汚損度の分布と、各エリアとを対応付けて示す画面情報を出力する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
複数時点の温湿度データに基づく前記電力機器内の水分量及び前記電力機器内の結露発生度の分布に基づき、水分量軸及び結露発生度軸により規定される複数のエリアに属する割合を特定する
請求項1又は請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記水分量軸及び結露発生度軸により規定されるグラフに、前記水分量及び結露発生度の分布と、各エリアとを対応付けて示す画面情報を出力する
請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
前記水分量軸及び汚損度軸により規定される複数のエリアに属する割合と、前記水分量軸及び結露発生度軸により規定される複数のエリアに属する割合とを統合することにより、前記電力機器の環境状態を特定する
請求項3に記載のプログラム。
【請求項6】
特定した前記割合に応じて前記電力機器に対する保全情報を生成する
請求項1又は請求項2に記載のプログラム。
【請求項7】
特定した前記割合に基づく前記電力機器の環境リスクが所定値以上である場合、所定の情報を出力する
請求項1又は請求項2に記載のプログラム。
【請求項8】
電力機器内に設置される温湿度センサから得られる温湿度データと、前記電力機器内に設置されるACMセンサから得られる腐食電流データとを取得し、
取得した複数時点の温湿度データに基づく前記電力機器内の水分量と、腐食電流データに基づく前記電力機器内の汚損度との分布に基づき、水分量軸及び汚損度軸により規定される複数のエリアに属する割合を特定する
処理を実行する制御部を備える
情報処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の情報処理装置を備える
電力機器。
【請求項10】
電力機器内に設置される温湿度センサから得られる温湿度データと、前記電力機器内に設置されるACMセンサから得られる腐食電流データとを取得し、
取得した複数時点の温湿度データに基づく前記電力機器内の水分量と、腐食電流データに基づく前記電力機器内の汚損度との分布に基づき、水分量軸及び汚損度軸により規定される複数のエリアに属する割合を特定する
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、情報処理装置、電力機器及び情報処理方法に関する。
【0002】
一般に、送受配電設備は、高圧配電線から分岐して給電し、工場、ビルなどの需要家内の設備に電力を供給するようになっている。これらの送配電設備では、ケーブルや配電盤内に設ける電気機器等において劣化等による部分放電が発生することがある。放電が発生すると、運転状態にある機器や、ケーブルにおける絶縁被覆の絶縁性能が低下あるいは消失し、重大な絶縁破壊事故につながるという問題がある。
【0003】
そこで、配電盤等の定期点検においては、配電盤内の電気機器の絶縁物における絶縁抵抗の測定、電気機器の動作確認、絶縁物の清掃等が実施され、配電盤の健全性の確認が行われている。通常、電気機器の絶縁物における絶縁抵抗は、電気機器への通電を停止して電気設備に含まれる絶縁物に試験電圧を印加し、絶縁物に流れる電流に基づいて測定対象体の抵抗値を測定するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
測定対象体の抵抗値を測定することで、配電盤の劣化を診断することが可能である。しかし、例えば前回の点検から長期間が経過した場合、配電盤の劣化の進行を防止できないケースが起こり得る。また、絶縁抵抗を測定することにより配電盤の状態を診断する場合、電気機器への通電を停止して行う必要があるため、停電による設備稼働率の低下を招くことになり需要家側の負担が大きい。そのため、容易な方法で、早期に配電盤の状態を把握可能な技術が望まれる。
【0006】
本開示の目的は、容易な方法で、早期に配電盤の状態を把握することができるプログラム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るプログラムは、電力機器内に設置される温湿度センサから得られる温湿度データと、前記電力機器内に設置されるACMセンサから得られる腐食電流データとを取得し、取得した複数時点の温湿度データに基づく前記電力機器内の水分量と、腐食電流データに基づく前記電力機器内の汚損度との分布に基づき、水分量軸及び汚損度軸により規定される複数のエリアに属する割合を特定する処理をコンピュータに実行させる。
【0008】
本開示の一態様に係る情報処理装置は、電力機器内に設置される温湿度センサから得られる温湿度データと、前記電力機器内に設置されるACMセンサから得られる腐食電流データとを取得し、取得した複数時点の温湿度データに基づく前記電力機器内の水分量と、腐食電流データに基づく前記電力機器内の汚損度との分布に基づき、水分量軸及び汚損度軸により規定される複数のエリアに属する割合を特定する処理を実行する制御部を備える。
【0009】
本開示の一態様に係る電力機器は、上述の情報処理装置を備える。
【0010】
本開示の一態様に係る情報処理方法は、電力機器内に設置される温湿度センサから得られる温湿度データと、前記電力機器内に設置されるACMセンサから得られる腐食電流データとを取得し、取得した複数時点の温湿度データに基づく前記電力機器内の水分量と、腐食電流データに基づく前記電力機器内の汚損度との分布に基づき、水分量軸及び汚損度軸により規定される複数のエリアに属する割合を特定する処理をコンピュータが実行する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、通電を停止することなく、容易な方法で、早期に配電盤の状態を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態の情報処理システムの概要図である。
【
図2】情報処理システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】測定値DBに記憶される情報の内容例を示す図である。
【
図4】水分量-汚損度グラフの一例を示す図である。
【
図6】環境リスクの推定処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】端末装置の表示部に表示される診断画面の一例を示す模式図である。
【
図8】水分量-結露発生度グラフの一例を示す図である。
【
図10】第2実施形態における環境リスクの推定処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図11】第3実施形態の情報処理システムの概要図である。
【
図12】第3実施形態における処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の情報処理システム100の概要図である。情報処理システム100は、配電盤の環境状態を推定するシステムである。情報処理システム100は、情報処理装置1と、配電盤2とを備える。情報処理装置1と配電盤2とは、例えばインターネット等のネットワークNを介して通信可能に接続されている。情報処理装置1はさらに、ネットワークNを介して端末装置3と通信接続される。配電盤2及び端末装置3の数はそれぞれ2以上でもよい。
【0015】
情報処理装置1は、種々の情報処理、情報の送受信が可能な装置であり、例えばサーバコンピュータ、パーソナルコンピュータ、又は量子コンピュータ等である。情報処理装置1は、配電盤2に対する各種の測定データを取得し、取得した測定データに基づき、配電盤2の環境状態を推定する。情報処理装置1は、端末装置3を通じて環境状態の推定結果を提供する。
【0016】
配電盤2の環境状態とは、配電盤2の内部における環境状態であり、配電盤2の劣化につながる環境状態の可能性を示す情報を含む。より詳細には、配電盤2の内部における絶縁物の絶縁破壊リスクを示す情報を含む。本実施形態では、環境状態として、複数段階に分類される環境リスクを推定するものとする。環境リスクの推定結果は、リスクマップによりグラフ化して提示される。
【0017】
配電盤2は、電力送配電系統を筐体内に含む電力機器の一例である。配電盤2は、開閉可能な扉を備える金属製の筐体であり、略直方体形状を有する。複数の部屋に仕切られた筐体の内部には、電気機器である遮断器、変圧器、変流器等が収容されており、これら電気機器の絶縁材、母線支持材として絶縁物21が設けられている。通常時は扉が閉じられており、筐体内への風雨等の侵入を防止する。配電盤2は、内部に収納される電気機器等を保護するため接地されている。
【0018】
配電盤2の内部には、配電盤2の内部環境を検出する複数の検出センサ4が取り付けられている。検出センサ4は夫々、有線又は無線により制御装置5に接続されている。
【0019】
検出センサ4は、温湿度センサ41及びACM(Atmospheric Corrosion Monitor )型腐食センサ(以下、ACMセンサとも称する)42を含む。温湿度センサ41は、配電盤2の内部における温度及び相対湿度を測定するセンサである。温湿度センサ41は、配電盤2の内部における温度及び相対湿度を時系列的に検出する。温湿度センサ41は、温度センサ及び湿度センサにより構成されてもよい。
【0020】
ACMセンサ42は、汚損センサの一種であり、配電盤2の内部における汚損度を測定するセンサである。具体的には、配電盤2の内部における腐食電流を測定する。ACMセンサ42は、鋼基板と、導電部材と、絶縁部材(いずれも不図示)とを備え、鋼基板と導電部材との間には導線で電流計測器が接続される。ACMセンサ42は、2種類の異種の金属の間に絶縁層を設けた状態で、両者の端部を環境に露出して、両者の金属の間に水膜が連結したときに流れる腐食電流を時系列的に計測し、金属の腐食速度を計測する。ACMセンサ42により検出される腐食電流値により、配電盤2内における大気環境の腐食性(汚損度)を直接、かつ定量的に評価することが可能である。なお、電流計測器は、ACMセンサ42の側に備えられてもよく、制御装置5に備えられていてもよい。ACMセンサ42の構造は上述の例に限らない。
【0021】
制御装置5は、温湿度センサ41及びACMセンサ42から出力される各測定値を随時受け付けることにより、配電盤2における温度及び相対湿度に関する温湿度データと、腐食電流に関する腐食電流データとを取得する。温湿度データと腐食電流データとの測定時点は同期されている。制御装置5は、取得した温湿度データ及び腐食電流データを情報処理装置1へ送信する。なお温湿度センサ41及びACMセンサ42が通信機能を備える場合、制御装置5は省略してもよい。
【0022】
温湿度センサ41及びACMセンサ42は夫々、配電盤2の内部において複数個取り付けられていてもよい。温湿度センサ41及びACMセンサ42は、配電盤2の内部に設けられる電気機器夫々に取り付けられていてもよい。
【0023】
端末装置3は、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等の情報端末装置であり、通信機能及び表示機能を有する。端末装置3は、例えば顧客又は保全業者等に使用される。端末装置3は、情報処理装置1から得られる環境状態の推定結果の出力インタフェースとして機能する。
【0024】
配電盤2の内部に収納された導体や機器充電部分と対地間の絶縁を保っている上述の絶縁物21には、樹脂材料が多く用いられており、高い絶縁特性が求められる。しかしながら、配電盤2は、通常屋外に設置され、塩分、粉塵、工場排気や自動車排気ガス由来の大気中のSOxやNOxなどの塵埃の多い環境で使用される。これらの塵埃は、汚損物として絶縁物21の表面に堆積する。また、配電盤2の設置環境は、内陸地域や沿岸部等多岐に渡り、様々な温度及び湿度下に設置される。
【0025】
絶縁物表面の汚損付着量(汚損度)と表面抵抗とは、特に高湿度条件において高い相関関係を有し、汚損付着量の増加に伴い表面抵抗が低下し易くなる。表面抵抗の低下は、配電盤2の劣化を意味する。本実施形態では、配電盤2から取得した温湿度データ及び腐食電流データに基づき配電盤2内の環境を特定し、特定した配電盤2内の環境に応じて、上述のような表面抵抗の低下につながる環境リスク(絶縁破壊リスク)を推定する。情報処理装置1は、配電盤2から随時取得した測定データを用いてリアルタイムに環境リスクを推定することのできる、オンラインでの常時監視を実現する。
【0026】
なお、本実施形態では検出センサ4を配電盤2に取り付ける例を説明するが、検出センサ4の取り付け対象は配電盤2に限定されるものではない。検出センサ4は、例えば、絶縁物21を収容する筐体として個々に設置される遮断器、変圧器等の他の電力機器に取り付けられ、これら電力機器の状態を検出してもよい。
【0027】
図2は、情報処理システム100の構成を示すブロック図である。
【0028】
情報処理装置1は、制御部11、記憶部12及び通信部13を備える。情報処理装置1は、複数台のコンピュータで構成し分散処理する構成でもよく、1台のサーバ内に設けられた複数の仮想マシンによって実現されていてもよく、クラウドサーバを用いて実現されていてもよい。
【0029】
制御部11は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等を用いたプロセッサを備える。制御部11は、内蔵するROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)等のメモリ、クロック、カウンタ等を用い、各構成部を制御して処理を実行する。
【0030】
記憶部12は、例えばハードディスク、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)等の不揮発性メモリを備える。記憶部12は、情報処理装置1に接続された外部記憶装置であってもよい。記憶部12は、制御部11が参照する各種コンピュータプログラム及びデータを記憶する。
【0031】
本実施形態において記憶部12は、配電盤2に係る汚損状態の推定に関する処理をコンピュータに実行させるためのプログラム1Pと、このプログラム1Pの実行に必要なデータとしての測定値DB(Data Base :データベース)121とを記憶している。測定値DB121は、配電盤2に対する温湿度データ及び腐食電流データを格納するデータベースである。
【0032】
プログラム1Pを含むコンピュータプログラム(プログラム製品)は、非一時的な記録媒体1Aにコンピュータ読み取り可能に記録されている態様でもよい。記憶部12は、読出装置によって記録媒体1Aから読み出されたコンピュータプログラムを記憶する。記録媒体1Aは、例えば磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等である。また、通信ネットワークに接続されている外部サーバからコンピュータプログラムをダウンロードし、記憶部12に記憶させてもよい。プログラム1Pは、単一のコンピュータプログラムでも複数のコンピュータプログラムにより構成されるものでもよく、また、単一のコンピュータ上で実行されても通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されてもよい。
【0033】
通信部13は、ネットワークNを介した通信を実現する通信インタフェースを備える。制御部11は、通信部13を通じて制御装置5及び端末装置3との間でデータを送受信する。
【0034】
情報処理装置1の構成は上述の例に限定されず、例えばユーザの操作を受け付けるための操作部、各種情報を表示するための表示部等を備えてもよい。
【0035】
端末装置3は、制御部31、記憶部32、通信部33、表示部34及び操作部35を備える。制御部31は、一又は複数のCPU、GPU等を用いたプロセッサを備える。制御部31は、内蔵するROM又はRAM等のメモリ、クロック、カウンタ等を用い、各構成部を制御して処理を実行する。
【0036】
記憶部32は、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを備える。記憶部32は、制御部31が参照する各種コンピュータプログラム及びデータを記憶する。通信部33は、ネットワークNを介した通信を実現する通信インタフェースを備える。制御部31は、通信部33を通じて情報処理装置1との間でデータを送受信する。
【0037】
表示部34は、例えば液晶ディスプレイ又は有機EL(electroluminescence)ディスプレイ等のディスプレイ装置を備える。表示部34は、制御部31からの指示に従って各種の情報を表示する。操作部35は、ユーザの操作を受け付けるインタフェースである。操作部35は、例えばキーボード、ディスプレイ内蔵のタッチパネルデバイス、スピーカ及びマイクロフォン等を備える。操作部35は、ユーザからの操作入力を受け付け、操作内容に応じた制御信号を制御部31へ送出する。
【0038】
配電盤2の制御装置5は、制御部51、記憶部52、通信部53及び入力部54を備える。制御部51は、CPU等を用いたプロセッサを備える。制御部51は、内蔵するROM又はRAM等のメモリを用い、各構成部を制御して処理を実行する。記憶部52は、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性メモリを備える。記憶部52は、制御部51が参照する各種プログラム及びデータを記憶する。通信部53は、ネットワークNを介した情報処理装置1との通信を実現する通信インタフェースである。
【0039】
入力部54は、温湿度センサ41及びACMセンサ42を接続するための入力I/F(Interface)を備える。入力部54と温湿度センサ41及びACMセンサ42夫々との間の接続は有線であってもよく、無線であってもよい。制御部51は、入力部54を通して温湿度センサ41及びACMセンサ42から出力される信号を取得する。
【0040】
図3は、測定値DB121に記憶される情報の内容例を示す図である。測定値DB121には、例えば測定データを識別するための測定IDをキーに、測定値の測定日時及び測定情報等の情報を紐付けたレコードが格納されている。測定情報には、例えばACMセンサ情報、腐食電流、温湿度センサ情報、温度、及び相対温度が含まれている。
【0041】
ACMセンサ情報は、測定データを測定したACMセンサ42を識別するための識別情報を含む。腐食電流は、ACMセンサ42による測定値である。腐食電流は、ACMセンサ42における検出電流を所定の増幅率で増幅して出力された増幅値であってもよい。温湿度センサ情報は、測定データを測定した温湿度センサ41を識別するための識別情報を含む。温度及び相対温度は、温湿度センサ41による測定値である。測定値DB121には、配電盤2を識別するための配電盤情報が記憶されてもよい。
【0042】
情報処理装置1は、制御装置5を通じて同一時点における腐食電流及び温湿度を取得する度、1セットの測定データとして対応付けて測定値DB121に記憶する。測定値DB121の内容は随時更新される。なお各測定データにおける腐食電流及び温湿度の測定時点は完全に同一のみでなく、略同一であってもよい。なお、測定値DB121の記憶内容は
図3に示す例に限定されない。
【0043】
以下、本実施形態における配電盤2の環境リスクの推定方法について詳述する。
図4は、水分量-汚損度グラフの一例を示す図である。
図4に示すグラフの横軸は配電盤2内の空気中に含まれる水分量、縦軸は配電盤2内の汚損度を示す。本実施形態では、水分量として容積絶対湿度(単位はg/m
3)を用い、汚損度として腐食電流値(単位はμA)を用いる場合を例に挙げて説明するが、水分量及び汚損度はこれに限らない。
【0044】
容積絶対湿度は、温湿度センサ41にて測定された現在の温度及び相対湿度に基づき算出することができる。腐食電流値は、ACMセンサ42による測定値又は増幅値を用いてよい。容積絶対湿度(水分量)は、横軸の左方向に向けて値が小さく、右方向に向けて値が大きくなる。腐食電流値(汚損度)は、縦軸の下方向に向けて値が小さく、上方向に向けて値が大きくなる。
【0045】
情報処理装置1は、例えば、横軸を容積絶対湿度とし、縦軸を腐食電流値とする2次元座標に、温度及び相対湿度の測定値に基づき算出した容積絶対湿度と、当該容積絶対湿度が得られた時刻での腐食電流の測定値とをプロットすることにより、
図4に示す水分量-汚損度グラフを生成する。水分量-汚損度グラフ上には、推定対象期間における複数時点の水分量及び汚損度の組み合わせがプロットされている。水分量及び汚損度に係る測定値は、例えば、推定対象期間中において10分毎から1時間毎等の所定間隔毎に測定されてもよい。水分量-汚損度グラフにより、水分量及び汚損度の分布が可視化して示される。
【0046】
図5は、汚損リスクマップの一例を示す図である。汚損リスクマップは、水分量-汚損度グラフ上に、予め設定される複数の汚損リスクを示す情報を重畳して表示するものである。
図4に示すマップの横軸及び縦軸は、
図4に示した水分量-汚損度グラフと同様である。
【0047】
水分量-汚損度グラフのエリア(2次元平面)は、予め設定される各汚損リスクの定義情報に基づき、各汚損リスクに対応する複数エリア(領域)に分割される。本実施形態では、一例として、水分量-汚損度グラフの全エリアを、4段階の汚損リスクに対応する4つのエリアに分割するものとする。各エリアの分割方法、すなわち各汚損リスクの定義情報は、汚損リスクの設定数及び内容等に応じて適宜設定されてよい。
【0048】
図5に示す例では、容積絶対湿度に対する第1閾値及び腐食電流値に対する第2閾値に基づき、各汚損リスクに対応する4つの矩形エリアB1、B2、B3、B4が生成されている。
図5では、各汚損リスクのエリアに対し異なるハッチングを施している。矩形エリアB1が汚損リスク低、矩形エリアB2が汚損リスク中、矩形エリアB3が汚損リスクやや高、矩形エリアB4が汚損リスク高に対応する。
図5のマップ中、横軸に直交する破線は第1閾値を表し、縦軸に直交する破線は第2閾値を表す。
【0049】
図5に示すように、水分量-汚損度グラフを4つの矩形エリアに分割する場合には、例えば、第1閾値は7~15g/m
3の間の値としてもよく、また、第2閾値は3×10
-5~5×10
-4μAの間の値としてもよい。
【0050】
なお、各エリアは矩形に分割されるものに限らない。各エリアは境界線により区切られた任意の形状であってよく、境界線は直線又は曲線のいずれでもよい。境界線は、関数式等により定義されてもよく、人手による描画入力を受け付けることで設定されてもよい。水分量-汚損度グラフを分割するためのエリア数は、複数であれば特に限定的ではないが、3つ以上が望ましい。
【0051】
情報処理装置1は、水分量-汚損度グラフ(汚損リスクマップ)における各エリアと、水分量及び汚損度の分布とに基づき、配電盤2に対する汚損リスクを推定する。具体的には、各汚損リスクを示すエリアについて、汚損リスクマップ上における全プロット数に対する各エリアにおけるプロット数の割合を算出する。これにより、各汚損リスクの程度を定量化して示すことができる。汚損リスクは、例えば百分率の値で示されてもよい。汚損リスクは、環境リスクに対応する。
【0052】
情報処理装置1はさらに、環境状態として、配電盤2に対する環境リスクスコアを求めてもよい。環境リスクスコアは、水分量-汚損度グラフにおける一又は複数のエリアであって、所定の汚損リスクを示すエリアに係る割合に基づき決定してもよい。環境リスクスコアは、例えば、汚損リスクやや高及び汚損リスク高のエリアにおけるプロット数の割合の合計値としてもよい。環境リスクスコアは、例えば100点満点で点数化されてもよい。環境リスクスコアの点数が低い程、環境リスクが低く盤内環境が良好であることを意味する。
【0053】
図6は、環境リスクの推定処理手順の一例を示すフローチャートである。以下の各フローチャートにおける処理は、情報処理装置1の記憶部12に記憶するプログラム1Pに従って制御部11により実行されてもよく、制御部11に備えられた専用のハードウェア回路(例えばFPGA又はASIC)により実現されてもよく、それらの組合せによって実現されてもよい。情報処理装置1の制御部11は、例えば予め設定される推定タイミング(例えば1か月毎、3か月等)で以下の処理を開始する。
【0054】
情報処理装置1の制御部11は、制御装置5を通じて、複数の温湿度データ及び腐食電流データを取得する(ステップS11)。制御部11は、例えば所定間隔で測定された時系列の温湿度データ及び腐食電流データを取得する。測定データには、制御装置5又は制御装置5に対応する配電盤2を識別するための識別情報が関連付けられている。
【0055】
制御部11は、取得した温湿度データ及び腐食電流データ並びに制御装置5の識別情報等を対応付けて測定値DB121に記憶する(ステップS12)。なお制御部11は、複数の測定データをまとめて取得するものに限らず、温湿度センサ41及びACMセンサ42で測定データが測定される度に測定データを随時取得し、測定値DB121に蓄積してもよい。
【0056】
制御部11は、測定値DB121に記憶する複数の温湿度データ及び腐食電流データに基づき、配電盤2に対する水分量及び汚損度を算出する(ステップS13)。制御部11は、一例として、容積絶対湿度及び腐食電流値を算出(取得)してもよい。この場合において制御部11は、測定値DB121に記憶する測定データのうち、推定対象となる配電盤2に対する全ての測定データを用いてもよく、例えば直近3ヶ月、半年間等の適宜の診断期間における測定データを用いてもよい。なお、新設された配電盤2の場合には、ある程度の汚損物が付着すると予想される所定期間が経過した後の測定データを用いることが好ましい。
【0057】
制御部11は、水分量-汚損度グラフ上に、算出した複数の水分量及び汚損度の組み合わせをプロットすることにより、汚損リスクマップを生成する(ステップS14)。制御部11はまた、予め設定される各汚損リスクの定義情報に基づき、水分量-汚損度グラフ(汚損リスクマップ)上に、複数の汚損リスクに対応するエリアを重畳表示する。制御部11は、水分量-汚損度グラフ上における各汚損リスクに対応するエリアに対し、例えば色付け、枠線等の画像処理を施すことにより、汚損リスクのエリアを識別可能に表示する。制御部11は、汚損リスクに応じてエリアの表示色を変更するなど、各汚損リスクに対応するエリアの表示態様を汚損リスクに応じて異ならせることが好ましい。これにより、汚損リスクを明確に把握することができる。
【0058】
制御部11は、各汚損リスクを示すエリアについて、汚損リスクマップ上における全プロット数に対する各汚損リスクを示すエリアにおけるプロット数の割合を特定する(ステップS15)。これにより、汚損リスクが推定される。制御部11はさらに、算出した所定の汚損リスクに係る割合に基づき、配電盤2に対する環境リスクスコアを導出してもよい。
【0059】
制御部11は、生成した汚損リスクマップ及び汚損リスクの推定結果を提示する画面情報を生成する(ステップS16)。制御部11は、生成した画面情報を端末装置3へ送信し(ステップS17)、端末装置3を通じて画面を表示部34へ表示させる。なおステップS17において制御部11は、測定データに関連付けられる識別情報に基づき、画面情報の送信先、すなわち汚損リスクの推定対象となる配電盤2の顧客又は保全業者等の端末装置3を特定してもよい。制御部11は、一連の処理を終了する。
【0060】
図7は、端末装置3の表示部34に表示される診断画面の一例を示す模式図である。端末装置3の制御部31は、情報処理装置1から提供される画面情報に基づき、
図7に示す如く診断画面を表示部34に表示する。
【0061】
診断画面は、リスクマップ表示部341、環境リスク表示部342、及び保全情報表示部343を含む。
【0062】
リスクマップ表示部341には、汚損リスクマップが表示されている。情報処理装置1は、水分量-汚損度グラフ上に、診断対象期間における水分量及び汚損度をプロットするとともに、各汚損リスクのエリアに対し所定の画像処理を施した汚損リスクマップを生成し、リスクマップ表示部341に表示させる。
【0063】
情報処理装置1は、汚損リスクマップを生成する際、水分量及び汚損度を表すマーカの表示色、形状等をデータの取得時点に応じて変更してもよい。例えば1か月毎に異なる表示態様により水分量及び汚損度を表示してもよい。これにより、水分量及び汚損度の分布の変化を明確に把握することができる。
【0064】
環境リスク表示部342には、環境リスク(汚損リスク)の推定結果が表示されている。情報処理装置1は、各汚損リスクの割合を特定した場合、例えば各汚損リスクの値を示すテキストデータと、棒グラフとを生成し、環境リスク表示部342に表示する。情報処理装置1はさらに、環境リスクスコアを算出した場合、環境リスクスコアの点数を環境リスク表示部342に表示させる。
【0065】
保全情報表示部343には、汚損リスクの推定結果に応じたアドバイス等の保全情報が表示されている。情報処理装置1は、例えば、環境リスクスコアとアドバイスとを対応付けた不図示のアドバイステーブルを参照して、算出した環境リスクスコアに対応するアドバイスを生成し、保全情報表示部343に表示させる。情報処理装置1は、各汚損リスクの割合に対応するアドバイスを生成してもよい。情報処理装置1は、例えば、環境リスクスコア又は所定段階以上の汚損リスクの割合が所定値以上である場合、配電盤2の清掃や機器の更新等を促すアドバイスを提示する。
【0066】
診断画面は、汚損リスクの推定結果を時系列で表示するよう構成されてもよい。例えば、情報処理装置1は、推定処理を実行する度、得られた推定結果と配電盤2の識別情報とを対応付けて時系列順に測定値DB121等に記憶しておく。情報処理装置1は、汚損リスクの推定に際し、推定対象となる配電盤2について過去に取得した所定回数分の推定結果を読み出し、診断画面に表示させる。
図7に示す例では、環境リスクスコアの時系列変化が環境リスク表示部342に表示されている。時系列で表示される情報は環境リスクスコアに限らず、汚損リスクマップであってもよく、また、各汚損リスクの値であってもよい。
【0067】
診断画面はまた、汚損リスクの推定対象とする診断期間を変更可能に構成されてもよい。例えば診断画面は、
図7に示すように期間受付部344を備え、当該期間受付部344を通じて期間の選択を受け付ける。情報処理装置1は、期間受付部344を通じて期間の選択を受け付けた場合、受け付けた期間中における測定データに基づき、汚損リスクマップの生成及び汚損リスクの推定を実行する。情報処理装置1は、実行結果に応じた診断画面の更新情報を端末装置3へ出力する。
【0068】
本実施形態によれば、配電盤2に対する温湿度及び腐食電流の測定値に基づき、配電盤2の環境リスクを容易且つ精度よく推定することができる。環境リスクの推定に要する情報は、配電盤2に設けられる温湿度センサ41及びACMセンサ42を用いてオンラインにより容易に取得可能である。測定データを用いてリアルタイムに環境リスクを提示することで、環境リスクを早期に把握することができる。これにより、配電盤2の予測保全が可能となる。
【0069】
環境リスクは、リスクマップにより視覚的に容易に把握可能に提示される。ユーザは、リスクマップを通じて、各環境リスクに対するデータの分布状況とともに環境リスクの推定の根拠を明確に把握することができる。また、各環境リスクの可能性が定量的に示されるため、各環境リスクを比較しながら配電盤2の状況を総合的に認識することができる。
【0070】
(第2実施形態)
第2実施形態では、汚損リスクに加えて水膜リスクを推定する構成について説明する。以下では主に第1実施形態との相違点を説明し、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0071】
配電盤2における表面抵抗の低下には、汚損に加えて絶縁物表面における水分量も影響を及ぼす。汚損の付着した絶縁物表面における水膜の厚み及び/又は形成範囲の増大に伴い、絶縁物表面における水分量が増加し、表面抵抗が低下し易くなる。第2実施形態では、環境リスクとして汚損リスクに加えて水膜リスクを推定する。
【0072】
水膜リスクは、配電盤2内における水膜発生の可能性を表し、リスクの高さに応じて複数段階に分類される。水膜リスクは、配電盤2内の空気中に含まれる水分量と、配電盤2内の結露発生度に基づき推定可能である。水分量は、例えば汚損リスクの推定処理と同様に容積絶対湿度を用いてもよい。
【0073】
結露発生度とは、結露の発生し易さを意味する。本実施形態では、一例として、配電盤2における現在の温度と、露点温度との差分(以下、温度差とも称する)の逆数を結露発生度とする。配電盤2における現在の温度は、温湿度センサ41にて測定された温度であり、露点温度は、温湿度センサ41にて測定された温度及び相対湿度に基づき算出することができる。なお、結露発生度は温度差の逆数に限らず、例えば結露発生度を結露の発生しにくさとする場合には、温度差であってもよい。また結露発生度は、現在の温度と露点温度との差分により表されるものに限らない。
【0074】
情報処理装置1は、温湿度データに基づき得られる複数の水分量及び結露発生度を用いて、水分量-結露発生度グラフを含む水膜リスクマップを生成し、水膜リスクを推定する。情報処理装置1は、汚損リスクと水膜リスクとを総合的に評価することにより、配電盤2に対する環境リスクスコアを算出する。
【0075】
図8は、水分量-結露発生度グラフの一例を示す図である。
図8に示すグラフの横軸は水分量としての容積絶対湿度(単位はg/m
3)、縦軸は結露発生度としての温度差の逆数(単位は1/K)を示す。容積絶対湿度は、横軸の左方向に向けて値が小さく、右方向に向けて値が大きくなる。温度差の逆数は、縦軸の下方向に向けて値が小さく、上方向に向けて値が大きくなる。
【0076】
情報処理装置1は、横軸を容積絶対湿度とし、縦軸を結露発生度とする2次元座標に、容積絶対湿度と、当該容積絶対湿度が得られた時刻での温度差の逆数とをプロットすることにより、
図8に示す水分量-結露発生度グラフを生成する。水分量-結露発生度グラフ上には、推定対象期間における複数時点の水分量及び温度差の逆数の組み合わせがプロットされている。
【0077】
図9は、水膜リスクマップの一例を示す図である。水膜リスクマップは、水分量-結露発生度グラフ上に、予め設定される複数の水膜リスクを示す情報を重畳して表示するものである。
図9に示すマップの横軸及び縦軸は、
図8に示した水分量-結露発生度グラフと同様である。
【0078】
汚損リスクマップの場合と同様に、水分量-結露発生度グラフのエリアは、予め設定される各水膜リスクの定義情報に基づき、各水膜リスクに対応する複数エリアに分割される。各エリアの分割方法、すなわち各水膜リスクの定義情報は、水膜リスクの設定数及び内容等に応じて適宜設定されてよい。
【0079】
図9では一例として、容積絶対湿度に対する第3閾値及び温度差の逆数に対する第4閾値に基づき、水分量-結露発生度グラフの全エリアを、4つの矩形エリアB5、B6、B7、B8に分割している。
図9では、各水膜リスクのエリアに対し異なるハッチングを施している。矩形エリアB5が水膜リスク低、矩形エリアB6及びB8が水膜リスク中、矩形エリアB7が水膜リスク高に対応する。
図9のマップ中、横軸に直交する破線は第3閾値を表し、縦軸に直交する破線は第4閾値を表す。
【0080】
図9に示す如く4つの矩形エリアに分割する場合には、例えば、第3閾値は7~15g/m
3の間の値としてもよく、また、第4閾値は0.05~0.2(1/K)の間の値としてもよい。
【0081】
なお、汚損リスクマップと同様に水膜リスクマップにおいても、各エリアは矩形であるものに限らず任意の形状であってよい。また水分量-結露発生度グラフを分割するためのエリア数は、複数であれば特に限定的ではないが、3つ以上が望ましい。
【0082】
情報処理装置1は、水分量-結露発生度グラフにおける各エリアと、水分量及び結露発生度の分布とに基づき、配電盤2に対する水膜リスクを推定する。具体的には、各水膜リスクを示すエリアについて、水膜リスクマップ上における全プロット数に対する各エリアにおけるプロット数の割合を算出する。水膜リスクは、例えば百分率の値で示されてもよい。
【0083】
情報処理装置1は、汚損リスクの推定結果と、水膜リスクの推定結果とを統合することにより、総合的な環境リスクスコアを求める。詳細には、汚損リスクマップに基づき算出した汚損リスクに関する環境リスクスコアと、水膜リスクマップに基づき算出した水膜リスクに関する環境リスクスコアとを考慮して総合スコアを決定する。
【0084】
汚損リスク及び水膜リスクそれぞれに関する環境リスクスコアは、各リスクマップにおける一又は複数のエリアに対する割合に基づき決定してもよい。総合スコアは、汚損リスクに関する環境リスクスコアと、水膜リスクに関する環境リスクスコアとを加算又は積算することにより決定してもよい。
【0085】
環境リスクスコアは、例えば、所定の汚損リスク(例えば汚損リスクやや高、汚損リスク高、又はそれらの組み合わせ)に係るプロット数の割合と、所定の水膜リスク(例えば水膜リスク中、水膜リスク高、又はそれらの組み合わせ)に係るプロット数の割合との積算値を200で割って100点換算した値としてもよい。
【0086】
図10は、第2実施形態における環境リスクの推定処理手順の一例を示すフローチャートである。第1実施の形態の
図6と共通する処理については同一のステップ番号を付しその詳細な説明を省略する。
【0087】
情報処理装置1の制御部11は、
図6のステップS11~S15と同様の処理を実行して、複数の温湿度データ及び腐食電流データを取得し、汚損リスクマップを生成し、各汚損リスクを示すエリアにおけるプロット数の割合を特定する。
【0088】
制御部11は、複数の温湿度データに基づき、配電盤2に対する結露発生度(例えば温度差の逆数)を算出する(ステップS21)。制御部11は、水分量-結露発生度グラフ上に、算出した複数の水分量及び結露発生度の組み合わせをプロットすることにより、水膜リスクマップを生成する(ステップS22)。制御部11はまた、予め設定される各水膜リスクの定義情報に基づき、水分量-結露発生度グラフ(水膜リスクマップ)上に、複数の水膜リスクに対応するエリアを重畳表示する。
【0089】
制御部11は、各水膜リスクを示すエリアについて、水膜リスクマップ上における全プロット数に対する各水膜リスクを示すエリアにおけるプロット数の割合を特定する(ステップS23)。これにより、水膜リスクが推定される。
【0090】
制御部11は、特定した汚損リスクと水膜リスクとを統合することにより、総合的な環境リスクスコアを求める(ステップS24)。制御部11は、例えば、所定の汚損リスクに係るプロット数の割合と、所定の水膜リスクに係るプロット数の割合とに基づき、環境リスクスコアを算出してもよい。
【0091】
制御部11は、生成した汚損リスクマップ及び水膜リスクマップ、環境リスクの推定結果等を提示する画面情報を生成する(ステップS25)。制御部11は、生成した画面情報を端末装置3へ送信し(ステップS26)、端末装置3を通じて画面を表示部34へ表示させる。制御部11は、一連の処理を終了する。
【0092】
端末装置3の表示部34に表示される診断画面には、汚損リスク及び水膜リスクの両方に関する推定結果が表示される。情報処理装置1は、例えば、診断画面のリスクマップ表示部341に、汚損リスクマップ及び水膜リスクマップを並べて表示させる。情報処理装置1は、環境リスク表示部342に、汚損リスク及び水膜リスクの推定結果を表示させる。情報処理装置1は、汚損リスク及び水膜リスクに基づき推定された総合的な環境リスクスコアを表示させる。情報処理装置1は、総合的な環境リスクスコアに基づく保全情報を生成し、保全情報表示部343に表示させる。
【0093】
本実施形態によれば、汚損リスクに加えて水膜リスクを考慮することにより、環境状態をより精度よく推定することができる。また汚損リスクマップ及び水膜リスクマップの両方におけるデータ分布状況に基づき、効率的に環境リスクスコアを導出することができる。
【0094】
(第3実施形態)
第3実施形態では、配電盤2に備える報知機能により環境状態を報知する構成について説明する。以下では主に第1実施形態との相違点を説明し、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0095】
図11は、第3実施形態の情報処理システム100の概要図である。第3実施形態の情報処理システム100では、情報処理装置1を配電盤2に備える。情報処理装置1は有線又は無線により制御装置5に接続されている。なお、情報処理装置1を制御装置5に統合してもよい。
【0096】
配電盤2は、例えばLEDライト等の光源を含む報知部22を備え、光源の点灯により所定の情報を周囲に報知可能に構成されている。
図11では異なる色を発光する3つの報知部22を備える配電盤2の例を示す。報知部22はスピーカ等の音源を含み、音声により所定の情報を報知するよう構成されてもよい。報知部22は、情報処理装置1に接続されており、情報処理装置1から出力される各種信号を受け付ける。情報処理装置1は、環境リスクが高い場合、報知部22を通じてアラートを出力させる。
【0097】
図12は、第3実施形態における処理手順の一例を示すフローチャートである。第1実施の形態の
図6と共通する処理については同一のステップ番号を付しその詳細な説明を省略する。
【0098】
情報処理装置1の制御部11は、
図6のステップS11~S15と同様の処理を実行して、複数の温湿度データ及び腐食電流データを取得し、汚損リスクマップを生成し、各汚損リスクを示すエリアにおけるプロット数の割合を特定する。制御部11は、さらに
図10のステップS21~S22と同様の処理を実行して、水膜リスクマップを生成し、各水膜リスクに係る割合を特定してもよい。
【0099】
制御部11は、特定した所定の汚損リスクに係る割合に基づき、配電盤2に対する環境リスクスコアを算出する(ステップS31)。ステップS31では制御部11は、汚損リスク及び水膜リスクに基づく総合的な環境リスクスコアを算出してもよい。
【0100】
制御部11は、算出した環境リスクスコアと、予め設定されている閾値との大小関係を判断し、算出した環境リスクスコアが閾値以上であるか否かを判定する(ステップS32)。算出した環境リスクスコアが閾値未満であると判定した場合(S32:NO)、制御部11は一連の処理を終了する。
【0101】
算出した環境リスクスコアが閾値以上であると判定した場合(S32:YES)、制御部11は、配電盤2内の環境が適性でない旨の警告情報を報知部22を通じて出力し(ステップS33)、一連の処理を終了する。制御部11は、例えば環境リスクスコアに応じたLEDライトを発光させるための信号を報知部22へ出力する。報知部22は、制御部11の指示に応じてLEDライトを点灯させる。
【0102】
警告情報の出力要否は、環境リスクスコアに基づき判定されるものに限らず、例えば所定の汚損リスクに係る割合、所定の水膜リスクに係る割合、又はそれらの組み合わせに基づき判定されてもよい。警告情報の出力要否は、閾値に基づき判定するものに限らない。情報処理装置1は、例えば、今回の環境リスクスコアが前回よりも高い場合、警告情報を出力すると判定してもよい。
【0103】
本実施形態によれば、配電盤2自体により環境状態の悪化を報知することができるため、環境状態の悪化に対してより速やかな対応が可能となる。
【0104】
各実施形態に示すシーケンスは限定されるものではなく、矛盾の無い範囲で、各処理手順はその順序を変更して実行されてもよく、また並行して複数の処理が実行されてもよい。各処理の処理主体は限定されるものではなく、矛盾の無い範囲で、各装置の処理を他の装置が実行してもよい。上述の各フローチャートで説明した情報処理装置1が実行する処理の一部又は全部は、制御装置5で実行されてもよく、又は端末装置3で実行されてもよい。
【0105】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【0106】
各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0107】
100 情報処理システム
1 情報処理装置
11 制御部
12 記憶部
13 通信部
121 測定値DB
1P プログラム
1A 記録媒体
2 配電盤(電力機器)
41 温湿度センサ
42 ACMセンサ
5 制御装置
51 制御部
52 記憶部
53 通信部
54 入力部
3 端末装置
31 制御部
32 記憶部
33 通信部
34 表示部
35 操作部