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特開2024-170606液晶化合物配向層転写用配向フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170606
(43)【公開日】2024-12-10
(54)【発明の名称】液晶化合物配向層転写用配向フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20241203BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20241203BHJP
   C08J 7/043 20200101ALI20241203BHJP
   B29C 55/08 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
G02B5/30
C08J5/18 CFD
C08J7/043
B29C55/08
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024155516
(22)【出願日】2024-09-10
(62)【分割の表示】P 2020553395の分割
【原出願日】2019-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2018201940
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018209662
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018209663
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018219282
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018223878
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018231737
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019000802
(32)【優先日】2019-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 靖
(72)【発明者】
【氏名】村田 浩一
(57)【要約】      (修正有)
【課題】液晶化合物配向層を転写するための転写用フィルムとして安価で機械的強度に優れたポリエステルなどの延伸フィルムを用いながら、転写用フィルム上に設けられた液晶化合物配向層(位相差層や偏光層)の配向状態などを転写用フィルム上に積層した状態でも評価できる転写用フィルムを提供する。
【解決手段】液晶化合物配向層を対象物に転写するための配向フィルムであって、配向フィルムの配向方向と、配向フィルムの流れ方向または流れ方向と直交する方向との間の角度が、フィルムの幅方向において各端部から内側に5cmの地点にある両端部、中央部、及び中央部と両端部の中間にある中間部の5ヶ所で測定した値のうちの最大値で14度以下であることを特徴とする液晶化合物配向層転写用配向フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶化合物配向層を対象物に転写するための配向フィルムであって、配向フィルムの配向方向と、配向フィルムの流れ方向または流れ方向と直交する方向との間の角度が、フィルムの幅方向において各端部から内側に5cmの地点にある両端部、中央部、及び中央部と両端部の中間にある中間部の5ヶ所で測定した値のうちの最大値で14度以下であることを特徴とする液晶化合物配向層転写用配向フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶化合物配向層を転写するための転写用フィルムに関する。更に詳しくは、液晶化合物配向層からなる位相差層が積層された円偏光板などの偏光板や位相差板を製造する時や、液晶化合物配向層からなる偏光層を有する偏光板を製造する時などに用いられる、液晶化合物配向層を転写するための転写用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像表示装置においては、外来光の反射を低減するために、画像表示パネルの視聴者側のパネル面に円偏光板を配置している。この円偏光板は、直線偏光板とλ/4等の位相差フィルムとの積層体により構成され、画像表示パネルのパネル面に向かう外来光を直線偏光板により直線偏光に変換し、続くλ/4等の位相差フィルムにより円偏光に変換する。円偏光による外来光は、画像表示パネルの表面で反射する際に偏光面の回転方向が逆転し、この反射光は、逆に、λ/4等の位相差フィルムにより、直線偏光板で遮光される方向の直線偏光に変換され、その後直線偏光板により遮光されるため、外部への出射が抑えられる。このように、円偏光板は、偏光板にλ/4等の位相差フィルムを貼り合わせたものが用いられている。
【0003】
位相差フィルムとしては、環状オレフィン(特許文献1参照)、ポリカーボネート(特許文献2参照)、トリアセチルセルロースの延伸フィルム(特許文献3参照)などの単体の位相差フィルムが用いられている。また、位相差フィルムとしては、透明フィルム上に液晶化合物からなる位相差層を有する積層体の位相差フィルム(特許文献4,5参照)が用いられている。上記において液晶化合物からなる位相差層を設ける際には、液晶化合物を転写しても良いことが記載されている。
【0004】
また、液晶化合物からなる位相差層を透明フィルムに転写することにより位相差フィルムを作成する方法は特許文献6等で知られている。このような転写法により、λ/4等の液晶化合物からなる位相差層を透明フィルム上に設け、λ/4フィルムとする方法も知られている(特許文献7,8参照)。
【0005】
これらの転写法では転写用の基材として様々なものが紹介されており、中でもポリエステル、トリアセチルセルロース、環状ポリオレフィンなどの透明樹脂フィルムが多く例示されている。トリアセチルセルロース、環状ポリオレフィンなどの未延伸フィルムは、複屈折性がなく、位相差層をフィルム基材に設けた状態で位相差層の状態を検査(評価)することができる点で好ましいが、これらのフィルムは、高価であるだけでなく、フィルムを薄くした場合に機械的強度に劣り、必ずしも最適なものではなかった。
【0006】
一方、延伸フィルムは、未延伸フィルムに比べ機械的強度に優れ、転写用のフィルム基材として好ましいが、複屈折性を有するため、位相差層の評価が困難であった。特に二軸延伸ポリエステルフィルムは、比較的安価であり、かつ優れた機械的強度、耐熱性を有し、これらの面では転写用のフィルム基材として非常に好ましいが、ポリエステルフィルムは、大きな複屈折性を持つことから、フィルム基材上に液晶化合物配向層(位相差層)が積層された状態で、位相差層を評価することが困難であった。
【0007】
そのため、延伸フィルムにおいて位相差層を評価する場合には、対象物(他の透明樹脂フィルム、偏光板など)に転写した後に評価するか、位相差層を剥離して位相差層のみで評価するか、ガラス等に転写して評価する必要があった。対象物に転写した後に評価する方法は、位相差層に問題があった場合には正常品である偏光板なども含めて規格外品として処分する必要があり、生産性に劣った。位相差層を剥がして評価する方法は、位相差層が薄くなれば評価できない問題があった。また、剥がして評価する方法やガラスに転写する方法ではサンプル抽出評価となり、全量の評価はできなかった。
【0008】
また、延伸フィルムは、未延伸フィルムに比べ機械的強度に優れ、転写用のフィルム基材として好ましいが、転写した位相差層の配向方向が設計通りの配向方向にならず、そこからずれる問題がしばしば生じていた。そして、このような設計からずれた配向方向の位相差を有する偏光板をディスプレイに使用すると、光漏れなどの問題を生じることがあった。特に、二軸延伸ポリエステルフィルムなどの延伸ポリエステルフィルムは、比較的安価であり、かつ優れた機械的強度、耐熱性を有し、これらの点では転写用のフィルム基材として非常に好ましいが、ポリエステルフィルムでは、この配向方向のずれ、及びそれによる光漏れの問題が特に顕著であった。
【0009】
さらに、二軸延伸ポリエステルフィルムなどのポリエステルフィルムは、比較的安価であり、かつ優れた機械的強度、耐熱性を有し、これらの点では転写用のフィルム基材として非常に好ましいが、ポリエステルフィルムを転写用のフィルム基材として使用すると、その上に位相差層(液晶化合物配向層)を形成させて積層体を作製する工程で、フィルムのヘイズが上昇したり、フィルム中に異物が発生したりする問題があった。そして、このような上昇したヘイズや異物のため、液晶化合物の配向を制御するための紫外線照射時に偏光が乱れ、設計通りの配向方向にならない問題があった。
【0010】
また、転写用フィルム上に積層された液晶化合物と二色性色素を含む偏光層(液晶化合物配向層)を保護フィルムに転写することで偏光板を製造する方法も知られていたが、この場合も上記と同様の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2012-56322号公報
【特許文献2】特開2004-144943号公報
【特許文献3】特開2004-46166号公報
【特許文献4】特開2006-243653号公報
【特許文献5】特開2001-4837号公報
【特許文献6】特開平4-57017号公報
【特許文献7】特開2014-071381号公報
【特許文献8】特開2017-146616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の第一の目的は、液晶化合物配向層を転写するための転写用フィルムとして安価で機械的強度に優れたポリエステルなどの延伸フィルムを用いながら、転写用フィルム上に設けられた液晶化合物配向層(位相差層や偏光層)の配向状態などを転写用フィルム上に積層した状態でも評価できる転写用フィルムを提供しようとするものである。
【0013】
本発明の第二の目的は、液晶化合物配向層を転写するための転写用フィルムとして安価で機械的強度に優れたポリエステルなどの延伸フィルムを用いながら、転写した位相差層や偏光層の配向方向のずれの問題を低減させて、設計通りの配向で位相差層や偏光層を転写することができ、ディスプレイの光漏れの問題を防止することができる転写用フィルムを提供しようとするものである。
【0014】
本発明の第三の目的は、液晶化合物配向層を転写するための転写用フィルムとして安価で機械的強度に優れたポリエステルなどの延伸フィルムを用いながら、フィルム上への位相差層や偏光層(液晶化合物配向層)の形成工程におけるフィルムのヘイズの上昇やフィルム中の異物の発生を効果的に防止して、設計通りの配向の位相差層や偏光層(液晶化合物配向層)を形成することができる転写用フィルムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、第一の目的を達成するために鋭意検討した結果、配向フィルムとして、その配向方向と、配向フィルムの流れ方向または流れ方向と直交する方向との間の角度が最大となる箇所であっても特定の角度以下に制御されたものを使用することによって、上記の従来の問題が生じずに、液晶化合物配向層を配向フィルム上に積層した状態でも位相差相の評価が良好に行なえることを見出した。
【0016】
本発明者は、第二の目的を達成するために、従来の延伸フィルムを転写用のフィルム基材として使用した場合に、転写した位相差層や偏光層の配向方向が設計通りの配向方向にならない原因について検討した。その結果、基材としての延伸フィルムの上に液晶化合物を配向させて位相差層や偏光層を形成させるときの熱処理によって基材の延伸フィルムがある程度熱収縮するが、この熱収縮の程度が延伸フィルムの直交する二つの方向で大きく異なるため、熱収縮後の基材フィルムに歪みが生じること、そして、この歪みが基材フィルムの上に形成される位相差層や偏光層の配向方向に悪影響を与えるため、位相差層や偏光層の配向方向が設計通りの配向方向からずれてしまうことを見出した。そして、本発明者は、基材フィルムのこの歪みを効果的に防止する方法について鋭意検討した結果、基材フィルムである配向フィルムとして、その流れ方向(MD方向)と、流れ方向と直交する方向(TD方向)との間でフィルムの熱収縮率にバラツキがあっても、その差が特定の範囲内に制御されたものを使用することによって、上記の従来の問題が生じずに、設計通りの配向で位相差層や偏光層を転写することができ、光漏れの問題を生じないことを見出した。
【0017】
本発明者は、第三の目的を達成するために、従来の延伸ポリエステルフィルムを転写用のフィルム基材として使用した場合に、フィルム上への位相差層や偏光層(液晶化合物配向層)の形成工程においてフィルムのヘイズが上昇したり、フィルム中に異物が発生したりする原因について検討した。その結果、ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂は、その製造過程における重合の際の反応の副産物として、エステル環状三量体(オリゴマー)を必然的に含有すること、そのため、ポリエステルフィルムを転写用の基材フィルムとして使用した場合には、その上に液晶化合物を塗布して加熱して液晶化合物配向層(位相差層や偏光層)を形成させる工程における加熱処理によって、これらのオリゴマーが基材フィルムの表面に析出し、その結果、ヘイズの上昇や異物の発生をもたらすことを見出した。そして、本発明者は、転写用配向ポリエステルフィルムの加熱処理時のこのようなヘイズの上昇や異物の発生を効果的に防止する方法について鋭意検討した結果、ポリエステルフィルムのオリゴマー析出量が特定の範囲内に制御されたものを使用することによって、上記の従来の問題が生じずに、設計通りの配向の位相差層や偏光層(液晶化合物配向層)を形成することができることを見出した。
【0018】
即ち、第一の目的を達成するための発明は、以下の(1)~(6)の構成を有するものである。
(1)液晶化合物配向層を対象物に転写するための配向フィルムであって、配向フィルムの配向方向と、配向フィルムの流れ方向または流れ方向と直交する方向との間の角度が、フィルムの幅方向において各端部から内側に5cmの地点にある両端部、中央部、及び中央部と両端部の中間にある中間部の5ヶ所で測定した値のうちの最大値で14度以下であることを特徴とする液晶化合物配向層転写用配向フィルム。
(2)配向フィルムの幅方向での配向角の角度差が7度以下であることを特徴とする(1)に記載の液晶化合物配向層転写用配向フィルム。
(3)配向フィルムがポリエステルフィルムであることを特徴とする(1)または(2)に記載の液晶化合物配向層転写用配向フィルム。
(4)液晶化合物配向層と配向フィルムとが積層された積層体であって、配向フィルムが(1)~(3)のいずれかに記載の配向フィルムであることを特徴とする液晶化合物配向層転写用積層体。
(5)偏光板と(4)に記載の積層体の液晶化合物配向層面とを貼り合わせて中間積層体を形成する工程、及び中間積層体から配向フィルムを剥離する工程を含むことを特徴とする液晶化合物配向層積層偏光板の製造方法。
(6)(4)に記載の積層体中の液晶化合物配向層の配向状態を検査する方法であって、配向フィルムの配向方向に、または配向方向と直交する方向に、または配向フィルムの流れ方向に、または流れ方向と直交する方向に平行な電場振動方向を有する直線偏光を積層体の配向フィルム面から照射し、液晶化合物配向層面側で受光する工程を含むことを特徴とする液晶化合物配向層転写用積層体の検査方法。
【0019】
第二の目的を達成するための発明は、以下の(1)~(6)の構成を有するものである。
(1)液晶化合物配向層を対象物に転写するための配向フィルムであって、配向フィルムの流れ方向での150℃30分間の熱収縮率と、配向フィルムの流れ方向と直交する方向での150℃30分間の熱収縮率との差が4%以下であることを特徴とする液晶化合物配向層転写用配向フィルム。
(2)配向フィルムの流れ方向に対して45度の方向での150℃30分間の熱収縮率と、配向フィルムの流れ方向に対して135度の方向での150℃30分間の熱収縮率との差が4%以下であることを特徴とする(1)に記載の液晶化合物配向層転写用配向フィルム。
(3)配向フィルムがポリエステルフィルムであることを特徴とする(1)または(2)に記載の液晶化合物配向層転写用配向フィルム。
(4)液晶化合物配向層と配向フィルムとが積層された積層体であって、配向フィルムが(1)~(3)のいずれかに記載の配向フィルムであることを特徴とする液晶化合物配向層転写用積層体。
(5)偏光板と(4)に記載の積層体の液晶化合物配向層面とを貼り合わせて中間積層体を形成する工程、及び中間積層体から配向フィルムを剥離する工程を含むことを特徴とする液晶化合物配向層積層偏光板の製造方法。
(6)(4)に記載の積層体中の液晶化合物配向層の配向状態を検査する方法であって、配向フィルムの配向方向に、または配向方向と直交する方向に、または配向フィルムの流れ方向に、または流れ方向と直交する方向に平行な電場振動方向を有する直線偏光を積層体の配向フィルム面から照射し、液晶化合物配向層面側で受光する工程を含むことを特徴とする液晶化合物配向層転写用積層体の検査方法。
【0020】
第三の目的を達成するための発明は、以下の(1)~(6)の構成を有するものである。
(1)液晶化合物配向層を対象物に転写するための配向ポリエステルフィルムであって、150℃で90分加熱した後の配向ポリエステルフィルムの離型面の表面におけるエステル環状三量体の析出量が1.0mg/m以下であることを特徴とする液晶化合物配向層転写用配向ポリエステルフィルム。
(2)配向ポリエステルフィルムの離型面側層を構成するポリエステル樹脂中のエステル環状三量体の含有量が0.7質量%以下であることを特徴とする(1)に記載の液晶化合物配向層転写用配向ポリエステルフィルム。
(3)配向ポリエステルフィルムの離型面に、エステル環状三量体の析出を防止するコート層が設けられている(1)または(2)に記載の液晶化合物配向層転写用配向ポリエステルフィルム。
(4)液晶化合物配向層と配向ポリエステルフィルムとが積層された積層体であって、配向ポリエステルフィルムが(1)~(3)のいずれかに記載の配向ポリエステルフィルムであることを特徴とする液晶化合物配向層転写用積層体。
(5)偏光板と(4)に記載の積層体の液晶化合物配向層面とを貼り合わせて中間積層体を形成する工程、及び中間積層体から配向ポリエステルフィルムを剥離する工程を含むことを特徴とする液晶化合物配向層積層偏光板の製造方法。
(6)(4)に記載の積層体中の液晶化合物配向層の配向状態を検査する方法であって、配向ポリエステルフィルムの配向方向に、または配向方向と直交する方向に、または配向ポリエステルフィルムの流れ方向に、または流れ方向と直交する方向に平行な電場振動方向を有する直線偏光を積層体の配向ポリエステルフィルム面から照射し、液晶化合物配向層面側で受光する工程を含むことを特徴とする液晶化合物配向層転写用積層体の検査方法。
【発明の効果】
【0021】
第一の発明によれば、安価で機械的強度に優れたポリエステルなどの延伸フィルムを用いながら、配向フィルム上に設けられた液晶化合物配向層(位相差層や偏光層)の配向状態などを配向フィルムに積層した状態でも評価できる。
【0022】
第二の発明によれば、安価で機械的強度に優れたポリエステルなどの延伸フィルムを用いながら、設計通りの配向で位相差層や偏光層を転写することができ、ディスプレイの光漏れの問題を防止することができる。
【0023】
第三の発明によれば、安価で機械的強度に優れたポリエステル延伸フィルムを用いながら、フィルムの加熱処理時のヘイズの上昇や異物の発生を効果的に防止することができるので、設計通りの配向の位相差層や偏光層(液晶化合物配向層)を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
第一の発明の配向フィルムは、液晶化合物配向層を対象物(他の透明樹脂フィルム、偏光板など)に転写するためのものであり、配向フィルムの配向方向と、配向フィルムの流れ方向または流れ方向と直交する方向との間の角度が、最大となる箇所で14度以下であることを特徴とする。
【0025】
第二の発明の配向フィルムは、液晶化合物配向層を対象物(他の透明樹脂フィルム、偏光板など)に転写するためのものであり、配向フィルムの流れ方向(MD方向)での150℃30分間の熱収縮率と、配向フィルムの流れ方向と直交する方向(TD方向)での150℃30分間の熱収縮率との差が4%以下であることを特徴とする。
【0026】
第三の発明の配向ポリエステルフィルムは、液晶化合物配向層を対象物(他の透明樹脂フィルム、偏光板など)に転写するためのものであり、150℃で90分加熱した後の配向ポリエステルフィルムの離型面の表面におけるエステル環状三量体の析出量が1.0mg/m以下であることを特徴とする。なお、以下、配向ポリエステルフィルムを単に配向フィルムと称する場合がある。また、後述するオリゴマーブロックコート層、離型層、平坦化コート層、易滑コート層、帯電防止コート層などが設けられている場合は、これらの層を含めて配向ポリエステルフィルムまたは配向フィルムと称する場合がある。
【0027】
配向フィルムに用いられる樹脂としては、複屈折性を持つものが好ましく、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロースがより好ましく、ポリエステルがさらに好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0028】
配向フィルムは、構成としては、単層でも共押出による複数層であっても良い。複数層の場合は、表層(離型面の層A)/裏面層(B)や、A/中間層(C)/A(離型面の層と裏面層が同一)、A/C/B、などの構成が挙げられる。
【0029】
フィルムを延伸する場合は、一軸延伸、弱二軸延伸(二軸方向に延伸しているが一方の方向が弱いもの)、二軸延伸、いずれもかまわないが、幅方向に広い範囲で配向方向を一定にできるという面で一軸延伸か弱二軸延伸が好ましい。弱二軸延伸の場合は主配向方向を後段の延伸方向にすることが好ましい。一軸延伸の場合は、延伸方向は、フィルム製造の流れ方向(縦方向)であっても、これに直交する方向(横方向)であっても良い。
二軸延伸の場合は同時二軸延伸であっても逐次二軸延伸であっても良い。縦方向の延伸は速度差の異なるロール群による延伸が好ましく、横方向の延伸はテンター延伸が好ましい。
【0030】
転写用配向フィルムは工業的にはフィルムを巻回したロールで供給される。ロール幅の下限は好ましくは30cmであり、より好ましくは50cmであり、さらに好ましくは70cmであり、特に好ましくは90cmであり、最も好ましくは100cmである。ロール幅の上限は好ましくは5000cmであり、より好ましくは4000cmであり、さらに好ましくは3000cmである。
【0031】
ロール長さの下限は好ましくは100mであり、より好ましくは500mであり、さらに好ましくは1000mである。ロール長さの上限は好ましくは100000mであり、より好ましくは50000mであり、さらに好ましくは30000mである。
【0032】
一般的に偏光子はポリビニルアルコールをフィルムの流れ方向に延伸し、これにヨウ素や有機系化合物の二色性色素を吸収させたものが用いられ、偏光子の消光軸(吸収軸)がフィルムの流れ方向になっている。円偏光板の場合は位相差層としてλ/4層の遅相軸(配向方向)が消光軸に対して45度に積層されるか、λ/4層とλ/2層が斜め方向(10~80度)に積層される。また、液晶ディスプレイに用いられる光学補償層も偏光子の消光軸に対して斜め方向に積層される。
【0033】
従って、位相差層の配向状態は、例えば、フィルムの流れ方向に平行かまたは垂直の振動方向を有する直線偏光を転写用配向フィルム側から位相差層に照射し、位相差層で楕円偏光になった光を、楕円偏光を直線偏光に戻すための受光側位相差板と、位相差板により戻った直線偏光を通さない方向に設置した受光側偏光板とを通して受光素子で検知することにより検査(評価)することができる。転写用配向フィルム上に設けた位相差層に対して設計通りの位相差及び配向方向であった場合に直線偏光となる受光側位相差板を通過した光が消光状態であれば、設計通りの位相差層となっていることが分かる。逆に、光漏れがあれば、設計からずれていることが分かる。
【0034】
しかし、転写用配向フィルムの配向方向が配向フィルムの流れ方向に平行(MD)かまたは垂直(TD)からずれていた場合、転写用配向フィルムを通過した直線偏光が楕円偏光になり、光漏れが起こり、位相差層の正確な評価が困難になる。本発明は、このずれを最小限に抑えることによって、位相差層の正確な評価を可能とするものである。
【0035】
本発明の転写用配向フィルムのMDまたはTDと配向方向との間の角度(最大箇所)の下限は好ましくは0度である。また、本発明の転写用配向フィルムのMDまたはTDと配向方向との間の角度の上限は、最大値で好ましくは14度であり、より好ましくは7度であり、さらに好ましくは5度であり、特に好ましくは4度であり、最も好ましくは3度である。上記を越えると位相差層(液晶化合物配向層)の配向状態の評価が行いにくくなることがある。
【0036】
本発明の転写用配向フィルムの全幅(幅方向)での配向角の角度差の下限は好ましくは0度である。また、本発明の転写用配向フィルムの全幅での配向角の角度差の上限は好ましくは7度であり、より好ましくは5度であり、さらに好ましくは3度であり、特に好ましくは2度である。上記を越えると幅方向で位相差層(液晶化合物配向層)の配向状態の評価が行いにくくなることがある。
【0037】
テンター内でTD方向に延伸する場合、延伸ゾーンや熱固定ゾーンではフィルムはMD方向に縮む力が働く。フィルムの端部はクリップで固定されているが、中央部は固定されていないためにテンター出口では弓形に遅れて出てくるボーイング現象が起こる。これが配向方向の歪みとなる。
【0038】
配向方向の歪みを低減させ、上記特性を達成するためには、延伸温度、延伸倍率、延伸速度、熱固定温度、緩和工程の温度、緩和工程の倍率、各温度の幅方向の温度分布などを適宜調整すればよい。
【0039】
また、製膜したフィルムの全幅で配向方向が規定範囲内にならない場合は、延伸した幅広フィルムの中央部付近など、上記特性範囲内となる部分を採用することが好ましい。また、一軸方向への配向を強くすると配向方向の歪みは小さくなる傾向にあるため、弱二軸や一軸延伸フィルムを採用することも好ましい方法である。特に、MD方向が主配向方向である弱二軸や一軸延伸フィルムが好ましい。
【0040】
なお、本発明において、転写用配向フィルムの配向方向と、配向フィルムの流れ方向または流れ方向と直交する方向との角度、及びフィルムの幅方向での配向角の角度差は、以下のようにして決定される。
まず、フィルムをロールから引き出し、両端部(各端部から内側に5cmの地点)、中央部、及び中央部と両端部の中間にある中間部の5カ所で配向方向を決定した。中央部と両端部の中間にある中間部は、中央部と両端部との間隔を2等分した位置にある。なお、配向方向は、分子配向計を用いて求めたフィルムの遅相軸方向とした。次に、フィルムの全体の配向方向が流れ方向(MD)に近いか、それとも幅方向(TD)に近いかを調べた。そして、フィルムの全体の配向方向が流れ方向に近い場合には、上記5ヶ所のそれぞれにおいて、配向方向とフィルムの流れ方向との間の角度を求め、最も大きい角度となる箇所での値を「配向フィルムの配向方向と、配向フィルムの流れ方向との間の角度」の最大値として採用した。一方、フィルムの全体の配向方向が幅方向に近い場合には、上記5ヶ所のそれぞれにおいて、配向方向とフィルムの流れ方向と直交する方向との間の角度を求め、最も大きい角度となる箇所での値を「配向フィルムの配向方向と、配向フィルムの流れ方向と直交する方向との間の角度」の最大値として採用した。
また、上記5ヶ所で求めた角度のうち、最大値と最小値との間の差を、「フィルムの幅方向での配向角の角度差」とした。
なお、角度は、長手方向または幅方向に対して、前記最大値と同じ側に配向方向がある場合は正の値とし、長手方向又は幅方向に対して反対側に配向方向がある場合は負の値とし、正・負を区別して最小値を評価する。
【0041】
本発明の転写用配向フィルムのMD方向とTD方向の150℃30分間の熱収縮率差の下限は好ましくは0%である。また、本発明の転写用配向フィルムのMD方向とTD方向の150℃30分間の熱収縮率差の上限は好ましくは4%であり、より好ましくは3%であり、さらに好ましくは2%であり、特に好ましくは1.5%であり、最も好ましくは1%である。上記を越えると液晶化合物の配向処理で高温を要する場合や複数の液晶化合物を積層して温度の履歴が多くなった場合に液晶化合物の配向方向が設計からずれ、偏光板をディスプレイに利用した場合に光漏れなどが生じることがある。
【0042】
本発明の転写用配向フィルムのMD方向の150℃30分間の熱収縮率の下限は好ましくは-2%であり、より好ましくは-0.5%であり、さらに好ましくは-0.1%であり、特に好ましくは0%であり、最も好ましくは0.01%である。上記未満であると現実的に数値の達成が困難になりうる。また、本発明の転写用配向フィルムのMD方向の150℃30分間の熱収縮率の上限は好ましくは4%であり、より好ましくは3%であり、さらに好ましくは2.5%であり、特に好ましくは2%であり、最も好ましくは1.5%である。上記を越えると熱収縮率差の調整が行いにくくなることがある。また、平面性が悪くなり、作業性が悪化することがある。
【0043】
本発明の転写用配向フィルムのTD方向の150℃30分間の熱収縮率の下限は好ましくは-2%であり、より好ましくは-0.5%であり、さらに好ましくは-0.1%であり、特に好ましくは0%であり、最も好ましくは0.01%である。上記未満であると現実的に数値の達成が困難になりうる。また、本発明の転写用配向フィルムのTD方向の150℃30分間の熱収縮率の上限は好ましくは4%であり、より好ましくは2.5%であり、さらに好ましくは2%であり、特に好ましくは1.5%であり、最も好ましくは1%である。上記を越えると熱収縮率差の調整が行いにくいことがある。また、平面性が悪くなり、作業性が悪化することがある。
【0044】
本発明の転写用配向フィルムのMD方向に対して45度の方向とMD方向に対して135度の方向の150℃30分間の熱収縮率差の下限は好ましくは0%である。上記未満であると現実的に数値の達成が困難になりうる。また、本発明の転写用配向フィルムのMD方向に対して45度の方向とMD方向に対して135度の方向の150℃30分間の熱収縮率差の上限は好ましくは4%であり、より好ましくは3%であり、さらに好ましくは2%であり、特に好ましくは1.5%であり、最も好ましくは1%である。上記範囲をはずれると液晶化合物の配向方向が設計からずれ、偏光板をディスプレイに利用した場合に光漏れなどが生じることがある。
【0045】
フィルムの熱収縮特性は延伸温度、延伸倍率、熱固定温度、緩和工程の倍率、緩和工程の温度、などで調節することができる。また、冷却工程中にフィルムの表面温度が100℃以上でクリップから開放して巻き取ることも好ましい。クリップからの開放は、クリップを開ける方法でも、クリップで保持している端部を刃物等で切り離す方法であっても良い。また、オフラインで加熱処理(アニール処理)することも効果的な方法である。
【0046】
本発明の転写用配向フィルムの150℃30分間の熱収縮特性を上記とするためには、転写用配向フィルムの素材は、ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートであることが好ましい。
【0047】
本発明の転写用配向フィルムの95℃最大熱収縮率の下限は好ましくは0%であり、より好ましくは0.01%である。上記未満であると現実的に数値の達成が困難になりうる。また、本発明の転写用配向フィルムの95℃最大熱収縮率の上限は好ましくは2.5%であり、より好ましくは2%であり、さらに好ましくは1.2%であり、特に好ましくは1%であり、最も好ましくは0.8%である。上記を越えると偏光板をディスプレイに利用した場合に光漏れなどが生じることがある。
【0048】
本発明の転写用配向フィルムの最大熱収縮率方向とMDまたはTD方向との角度の下限は好ましくは0度である。また、本発明の転写用配向フィルムの最大熱収縮率方向とMDまたはTD方向との角度の上限は好ましくは20度であり、より好ましくは15度であり、さらに好ましくは10度であり、特に好ましくは7度であり、最も好ましくは5度である。上記を越えると液晶化合物の配向方向が設計からずれ、偏光板をディスプレイに利用した場合に光漏れなどが生じることがある。
【0049】
本発明の転写用配向フィルムのMD方向の弾性率およびTD方向の弾性率の下限は好ましくは1GPaであり、より好ましくは2GPaである。上記未満であると各工程中で伸び、設計通りの配向方向にならないことがある。また、本発明の転写用配向フィルムのMD方向の弾性率およびTD方向の弾性率の上限は好ましくは8GPaであり、より好ましくは7GPaである。上記を越えると現実的に数値の達成が困難になりうる。
【0050】
本発明の転写用配向フィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムである場合、150℃で90分加熱した後の配向ポリエステルフィルムの離型面の表面におけるエステル環状三量体の析出量(以下、表面オリゴマー析出量(150℃90min)と称する)の下限は好ましくは0mg/mであり、より好ましくは0.01mg/mである。上記未満であると現実的に数値の達成が困難になりうる。表面オリゴマー析出量(150℃90min)の上限は好ましくは1mg/mであり、より好ましくは0.7mg/mであり、さらに好ましくは0.5mg/mであり、特に好ましくは0.3mg/mである。上記を越えると液晶化合物配向層を複数積層する場合や高温での配向処理が必要な場合にヘイズが上昇したり異物が発生したりし、紫外線照射での配向制御時に偏光が乱れ、設計通りの位相差層や偏光層が得られなくなることがある。なお、本発明において、配向フィルムの「離型面」とは、配向フィルムの表面のうち、配向フィルムの転写する液晶化合物配向層が設けられることを意図される表面を意味する。オリゴマーブロックコート層、平坦化コート層や離型層等が設けられている場合、この上に液晶化合物配向層を設けるのであれば、これらオリゴマーブロックコート層、平坦化層や離型層等の表面(液晶化合物配向層と接する面)が、配向フィルムの「離型面」である。
【0051】
表面オリゴマー析出量を下げるためには、転写用配向フィルムの表面にオリゴマー(エステル環状三量体)の析出をブロックするコート層(オリゴマーブロックコート層)を設けることが好ましい。
【0052】
オリゴマーブロックコート層は、Tgが90℃以上の樹脂を50重量%以上含むことが好ましい。かかる樹脂としては、メラミン等のアミノ樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂などが好ましい。樹脂のTgの上限は200℃であることが好ましい。
【0053】
オリゴマーブロックコート層の厚みの下限は好ましくは0.01μmであり、より好ましくは0.03μmであり、さらに好ましくは0.05μmである。上記未満であると十分なブロック効果が得られないことがある。オリゴマーブロックコート層の厚みの上限は好ましくは10μmであり、より好ましくは5μmであり、さらに好ましくは2μmである。上記を越えると効果が飽和となることがある。
【0054】
また、表面オリゴマー析出量を下げるためには、転写用配向フィルムの離型面側層を構成するポリエステル樹脂中のオリゴマー(エステル環状三量体)の含有量(以下、表層オリゴマー含有量と称する)を下げることも好ましい。表層オリゴマー含有量の下限は好ましくは0.3質量%であり、より好ましくは0.33質量%であり、さらに好ましくは0.35質量%である。上記未満であると現実的に数値の達成が困難になりうる。表層オリゴマー含有量の上限は好ましくは0.7質量%であり、より好ましくは0.6質量%であり、さらに好ましくは0.5質量%である。なお、本発明において、配向フィルムの「離型面側層」とは、配向フィルムを構成するポリエステルの各層のうち、離型面が存在する層を意味する。ここで、フィルムが単一の層である場合も離型面側層と呼ぶ場合がある。この場合、後述する裏面側層と離型面側層が同一層となる。
【0055】
表層オリゴマー含有量を下げるためには、原料ポリエステル中のオリゴマー含有量を下げることが好ましい。原料ポリエステル中のオリゴマー含有量の下限は好ましくは0.23質量%であり、より好ましくは0.25質量%であり、さらに好ましくは0.27質量%である。原料ポリエステル中のオリゴマー含有量の上限は好ましくは0.7質量%であり、より好ましくは0.6質量%であり、さらに好ましくは0.5質量%である。原料ポリエステル中のオリゴマー含有量は、固相重合など、固体状態のポリエステルに180℃以上融点以下の温度で加熱処理を行うことで低下させることができる。ポリエステルの触媒を失活させることも好ましい。
【0056】
また、表層オリゴマー析出量を下げるためには、製膜時の溶融時間を短くすることも有効である。
【0057】
本発明の転写用配向フィルムがポリエステルフィルムの場合、フィルムを構成するポリエステルの極限粘度(IVf)の下限は好ましくは0.45dl/gであり、より好ましくは0.5dl/gであり、さらに好ましくは0.53dl/gである。上記未満であるとフィルムの耐衝撃性が劣ることがある。また、製膜が行いにくくなったり、厚みの均一性が劣る場合がある。IVfの上限は好ましくは0.9dl/gであり、より好ましくは0.8dl/gであり、さらに好ましくは0.7dl/gである。上記を越えると熱収縮率が高くなることがある。また、製膜が行いにくくなることがある。
【0058】
本発明の転写用配向フィルムの波長380nmでの光線透過率の下限は好ましくは0%である。また、本発明の転写用配向フィルムの波長380nmでの光線透過率の上限は好ましくは20%であり、より好ましくは15%であり、さらに好ましくは10%であり、特に好ましくは5%である。上記を越えると、偏光紫外線を照射することで特定の配向方向にする場合に、裏面からの反射により配向層や液晶化合物配向層の方向均一性が悪くなることがある。波長380nmでの光線透過率はUV吸収剤添加により、範囲内とすることができる。
【0059】
本発明の転写用配向フィルムのヘイズの下限は好ましくは0.01%であり、より好ましくは0.1%である。上記未満であると現実的に数値の達成が困難になりうる。また、本発明の転写用配向フィルムのヘイズの上限は好ましくは3%であり、より好ましくは2.5%であり、さらに好ましくは2%であり、特に好ましくは1.7%である。上記を越えると偏光UV照射時に偏光が乱れ、設計通りの位相差層や偏光層が得られなくなることがある。また、位相差層や偏光層の検査時に乱反射で光漏れが起こり、検査が行いにくくなることがある。
【0060】
本発明の転写用配向フィルムの150℃90分加熱後のヘイズの下限、下限は上記と同様である。
【0061】
本発明の転写用配向フィルムの150℃90分加熱前後のヘイズの変化量の下限は好ましくは0%である。上限は好ましくは0.5%であり、より好ましくは0.4%であり、さらに好ましくは0.3%である。
【0062】
本発明の転写用配向フィルムは、遅相軸方向の屈折率nx-進相軸方向の屈折率nyの下限は好ましくは0.005であり、より好ましくは0.01であり、さらに好ましくは0.02であり、特に好ましくは0.03であり、最も好ましくは0.04であり、最も望ましくは0.05である。上記未満であると現実的に数値の達成が困難になりうる。また、nx-nyの上限は好ましくは0.15であり、より好ましくは0.13であり、さらに好ましくは0.12である。上記を越えると現実的に数値の達成が困難になりうる。特に、ポリエチレンテレフタレートフィルムの場合は、nx-nyの値が上記であることが好ましい。
【0063】
二軸延伸の場合、nx-nyの下限は好ましくは0.005であり、より好ましくは0.01である。上記未満であると現実的に数値の達成が困難になりうる。また、二軸延伸の場合、nx-nyの上限は好ましくは0.05であり、より好ましくは0.04であり、さらに好ましくは0.03である。上記を越えると現実的に数値の達成が困難になりうる。
【0064】
一軸延伸の場合、nx-nyの下限は好ましくは0.05であり、より好ましくは0.06である。上記未満であると一軸延伸のメリットが薄れることがある。また、一軸延伸の場合、nx-nyの上限は好ましくは0.15であり、より好ましくは0.13である。上記を越えると現実的に数値の達成が困難になりうる。
【0065】
本発明の転写用配向フィルムの進相軸方向の屈折率(ny)の下限は好ましくは1.55であり、より好ましくは1.58であり、さらに好ましくは1.57である。また、本発明の転写用配向フィルムの進相軸方向の屈折率(ny)の上限は好ましくは1.64であり、より好ましくは1.63であり、さらに好ましくは1.62である。
【0066】
本発明の転写用配向フィルムの遅相軸方向の屈折率(nx)の下限は好ましくは1.66であり、より好ましくは1.67であり、さらに好ましくは1.68である。また、本発明の転写用配向フィルムの遅相軸方向の屈折率(nx)の上限は好ましくは1.75であり、より好ましくは1.73であり、さらに好ましくは1.72であり、特に好ましくは1.71である。
【0067】
本発明の転写用配向フィルムの帯電防止性(表面抵抗)の下限は好ましくは1×10Ω/□であり、より好ましくは1×10Ω/□である。上記未満であっても効果が飽和し、それ以上の効果が得られないことがある。また、本発明の転写用配向フィルムの帯電防止性(表面抵抗)の上限は好ましくは1×1013Ω/□であり、より好ましくは1×1012Ω/□であり、さらに好ましくは1×1011Ω/□である。上記を越えると、静電気によるハジキが生じたり、液晶化合物の配向方向の乱れが生じたりすることがある。帯電防止性(表面抵抗)は、転写用配向フィルムに帯電防止剤を練り込むこと、離型層の下層や反対面に帯電防止コート層を設けること、又は離型層に帯電防止剤を添加すること等により、上記範囲内とすることができる。
【0068】
帯電防止コート層や離型層や転写用配向フィルムに添加する帯電防止剤としては、ポリアニリン、ポリチオフェンなどの導電性高分子、ポリスチレンスルホン酸塩などのイオン性高分子、スズドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズなどの導電性微粒子が挙げられる。
【0069】
転写用配向フィルムには離型層を設けても良い。ただし、フィルム自体が位相差層や配向層などの転写物との密着性が低く、離型層を設けなくとも十分な離型性がある場合には、離型層を設けなくても良い。また、密着性が低すぎる場合には、表面にコロナ処理を行うなどして密着性を調整しても良い。離型層は公知の離型剤を用いて形成することができ、アルキッド樹脂、アミノ樹脂、長鎖アクリルアクリレート系、シリコーン樹脂、フッ素樹脂が好ましい例として挙げられる。これらは、転写物との密着性に合わせて適宜選択できる。
【0070】
さらに、本発明の転写用配向フィルムでは、オリゴマーブロックコート層、帯電防止層、及び離型層の下層として易接着層を設けても良い。
【0071】
(離型面粗さ)
本発明の転写用配向フィルムの離型面(A層表面)は平滑であることが好ましい。
【0072】
本発明の転写用配向フィルムの離型面の三次元算術平均粗さ(SRa)の下限は好ましくは1nmであり、より好ましくは2nmである。上記未満であると現実的に数値の達成が困難になりうる。また、本発明の転写用配向フィルムの離型面のSRaの上限は好ましくは30nmであり、より好ましくは25nmであり、さらに好ましくは20nmであり、特に好ましくは15nmであり、最も好ましくは10nmである。
【0073】
本発明の転写用配向フィルムの離型面の三次元十点平均粗さ(SRz)の下限は好ましくは5nmであり、より好ましくは10nmであり、さらに好ましくは13nmである。また、本発明の転写用配向フィルムの離型面のSRzの上限は好ましくは200nmであり、より好ましくは150nmであり、さらに好ましくは120nmであり、特に好ましくは100nmであり、最も好ましくは80nmである。
【0074】
本発明の転写用配向フィルムの離型面の最大高さ(SRy:離型面最大山高さSRp+離型面最大谷深さSRv)の下限は好ましくは10nmであり、より好ましくは15nmであり、さらに好ましくは20nmである。また、本発明の転写用配向フィルムの離型面のSRyの上限は好ましくは300nmであり、より好ましくは250nmであり、さらに好ましくは150nmであり、特に好ましくは120nmであり、最も好ましくは100nmである。
【0075】
本発明の転写用配向フィルムの離型面の0.5μm以上の突起の数の上限は好ましくは5個/mであり、より好ましくは4個/mであり、さらに好ましくは3個/mであり、特に好ましくは2個/mであり、最も好ましくは1個/mである。
【0076】
離型面の粗さが上記を超えると、本発明の転写用配向フィルムの上に形成された液晶化合物配向層の微少部分で設計通りの配向状態や位相差とならず、ピンホール状やキズ状の欠点が生じる場合がある。これは、配向層であればラビング時に凸部分の配向層が剥がれることや、凸部分の麓部や凹部分のラビングが不十分となっていることが原因と考えられる。また、離型面層に粒子を含む場合、ラビング時に粒子が脱落し、表面を傷つけることが原因と考えられる。また、ラビング配向層であっても光配向層であっても、配向層を設けた状態で巻き取った場合、裏面層と擦れることにより、凸部分の配向層に穴が空く、圧力により配向が乱れる、等考えられる。これら配向層の欠陥により、配向層上に液晶化合物配向層を設ける時にその微少部分で液晶化合物の配向が起こらないことが原因と考えられる。
【0077】
液晶化合物配向層であれば、液晶化合物の塗工時に、凸部分で液晶化合物配向層の厚みが薄くなったり、凹部分では厚みが薄くなるなどの理由で、設計通りの位相差が得られないことも原因と考えられる。
【0078】
離型面(A)の粗さを上記範囲にするためには、本発明の転写用配向フィルムが延伸フィルムの場合には以下の方法が挙げられる。
・フィルム原反の離型面側層(表層)が粒子を含まないものとする。
・フィルム原反の離型面側層(表層)が粒子を含む場合は粒径の小さな粒子とする。
・フィルム原反の離型面側層(表層)が粒子を含む場合は平坦化コートを設ける。
【0079】
また、上記以外に原料や製造工程を以下のようにクリーンにすることも重要である。
・重合時の粒子スラリーにフィルターをかける。チップ化前にフィルターをかける。
・チップ化冷却水をクリーンなものにする。チップ搬送、製膜機投入までの環境をクリーンにする。
・製膜時、溶融樹脂にフィルターをかけ、凝集粒子や異物を除去する。
・コート剤にフィルターをかけ、異物を除去する。
・製膜、コート、乾燥時にクリーン環境下で行う。
【0080】
表層は平滑化のためには実質的に粒子を含まないことが好ましい。実質的に粒子を含まないとは、粒子含有量が50ppm未満であり、好ましくは30ppm未満であることを意味する。
【0081】
表面の滑り性を上げるため、表層は粒子を含んでいても良い。粒子を含む場合、表層粒子含有量の下限は好ましくは0ppmであり、より好ましくは50ppmであり、さらに好ましくは100ppmである。また、表層粒子含有量の上限は好ましくは20000ppmであり、より好ましくは10000ppmであり、さらに好ましくは8000ppmであり、特に好ましくは6000ppmである。上記を越えると、表層の粗さを好ましい範囲内にできないことがある。
【0082】
表層粒子径の下限は好ましくは0.005μmであり、より好ましくは0.01μmであり、さらに好ましくは0.02μmである。また、表層粒子径の上限は好ましくは3μmであり、より好ましくは1μmであり、さらに好ましくは0.5μmであり、特に好ましくは0.3μmである。上記を越えると、表層の粗さを好ましい範囲内にできないことがある。
【0083】
表層が粒子を含まない場合や粒径の小さな粒子とした場合であっても、その下層が粒子を含む場合は、下層の粒子の影響により離型面層の粗さが高くなる場合がある。このような場合は、離型面層の厚みを大きくしたり、粒子を含まない下層(中間層)を設ける等の方法をとることが好ましい。
【0084】
表層厚みの下限は好ましくは0.1μmであり、より好ましくは0.5μmであり、さらに好ましくは1μmであり、特に好ましくは3μmであり、最も好ましくは5μmである。また、表層厚みの上限は転写用配向フィルムの全厚みに対して、好ましくは97%、より好ましくは95%、さらに好ましくは90%である。
【0085】
粒子を含まない中間層は実質的に粒子を含まないという意味で、粒子の含有量は50ppm未満であり、30ppm未満であることが好ましい。転写用配向フィルムの全厚みに対して、中間層の厚みの下限は好ましくは10%、より好ましくは20%、さらに好ましくは30%である。上限は好ましくは95%、より好ましくは90%である。
【0086】
転写用配向フィルムの表層の粗さが高い場合、平坦化コートを設けても良い。平坦化コートに用いられる樹脂としては、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアミドなど一般にコート剤の樹脂として用いられるものが挙げられる。メラミン、イソシアネート、エポキシ樹脂、オキサゾリン化合物などの架橋剤を用いることも好ましい。これらは有機溶剤や水に溶解または分散させたコート剤として塗工されて乾燥される。またはアクリルの場合は無溶剤で塗工され、放射線で硬化させても良い。平坦化コートはオリゴマーブロックコートであっても良い。離型層をコートで設ける場合は離型層自体を厚くしても良い。
【0087】
表面平坦化コート層の厚みの下限は好ましくは0.01μmであり、より好ましくは0.1μmであり、さらに好ましくは0.2μmであり、特に好ましくは0.3μmである。上記未満であると平坦化の効果が不十分となることがある。また、表面平坦化コート層の厚みの上限は好ましくは10μmであり、より好ましくは7μmであり、さらに好ましくは5μmであり、特に好ましくは3μmである。上記を越えてもそれ以上の平坦化効果が得られないことがある。
【0088】
平坦化コートは製膜過程中にインラインコートで設けても良く、別途オフラインで設けても良い。
【0089】
(裏面側粗さ)
また、本発明の転写用配向フィルムの離型面を平滑にしても液晶化合物配向層に欠点が生じる場合があるが、これは、転写用配向フィルムはロール状に巻き取られており、表面と裏面が接しているため、裏面の粗さが表面に転写する(離型層に裏面の凸部が転写して凹部が形成される)ためであることがわかった。液晶化合物配向層を設けた転写用配向フィルムは、液晶化合物配向層を保護するため、マスキングフィルムを貼り合わせて巻き取られる場合もあるが、コスト低減のため、そのまま巻き取られることも多い。このように配向層を設けた状態で巻き取った場合は配向層が裏面の凸部により、凹む、穴が空く、配向層の配向が乱れるといった現象が起こっていると考えられる。また、液晶化合物配向層を設けた後では、裏面の凸部により、液晶化合物配向層に穴が空く、配向が乱れるといった現象が起こっていると考えられる。特に巻芯部では圧力が高くこれらの現象が起こりやすい。以上の知見から、上記の欠点は離型面の反対面表面(裏面)を特定の粗さにすることにより防止することができることがわかった。
【0090】
本発明の転写用配向フィルムの裏面の三次元算術平均粗さ(SRa)の下限は好ましくは1nmであり、より好ましくは2nmであり、さらに好ましくは3nm、特に好ましくは4nmであり、最も好ましくは5nmである。また、本発明の転写用配向フィルムの裏面のSRaの上限は好ましくは50nmであり、より好ましくは45nmであり、さらに好ましくは40nmである。上記を越えると欠点が多くなることがある。
【0091】
本発明の転写用配向フィルムの裏面の三次元十点平均粗さ(SRz)の下限は、好ましくは7nmであり、より好ましくは10nmであり、さらに好ましくは15nmであり、特に好ましくは20nmであり、最も好ましくは25nmである。また、本発明の転写用配向フィルムの裏面のSRzの上限は好ましくは1500nmであり、より好ましくは1200nmであり、さらに好ましくは1000nmであり、特に好ましくは700nmであり、最も好ましくは500nmである。上記を越えると欠点が多くなることがある。
【0092】
本発明の転写用配向フィルムの裏面の最大高さ(SRy:裏面最大山高さSRp+裏面最大他に深さSRv)の下限は好ましくは15nmであり、より好ましくは20nmであり、さらに好ましくは25nmであり、特に好ましくは30nmであり、最も好ましくは40nmである。また、本発明の転写用配向フィルムの裏面の最大高さSRyの上限は好ましくは2000nmであり、より好ましくは1500nmであり、さらに好ましくは1200nmであり、特に好ましくは1000nmであり、最も好ましくは700nmである。上記を越えると欠点が多くなることがある。
【0093】
本発明の転写用配向フィルムの裏面の2μm以上の突起の数の上限は好ましくは5個/mであり、より好ましくは4個/mであり、さらに好ましくは3個/mであり、特に好ましくは2個/mであり、最も好ましくは1個/mである。上記を越えると欠点が多くなることがある。
【0094】
本発明の転写用配向フィルムの裏面の粗さが上記範囲未満であると、フィルムの滑り性が悪くなり、フィルムのロールでの搬送時、巻き取り時などに滑りにくくなりキズが付きやすくなることがある。また、本発明の転写用配向フィルムの裏面の粗さが上記を超えると、上述の欠点が生じやすくなる。
【0095】
裏面の粗さを上記範囲とするためには、本発明の転写用配向フィルムが延伸フィルムの場合、以下の方法が挙げられる。
・フィルム原反の裏面側層(裏面層)を特定の粒子を含むものにする。
・フィルム原反の中間層に粒子を含むものを用い、裏面層側(裏面層)に粒子を含まないものとして厚みを薄くする。
・フィルム原反の裏面側層(裏面層)の粗さが大きい場合は平坦化コートを設ける。
・フィルム原反の裏面側層(裏面層)が粒子を含まない場合や粗さが小さい場合は易滑コート(粒子含有コート)を設ける。
【0096】
裏面層粒子径の下限は好ましくは0.01μmであり、より好ましくは0.05μmであり、さらに好ましくは0.1μmである。上記未満であると滑り性が悪くなり、巻き取り不良が起こる場合がある。また、裏面層粒子径の上限は好ましくは5μmであり、より好ましくは3μmであり、さらに好ましくは2μmである。上記を越えると裏面が粗くなりすぎることがある。
【0097】
裏面が粒子を含む場合、好ましくは50ppmであり、より好ましくは100ppmである。上記未満であると粒子を添加することによる滑り性の効果が得られないことがある。また、裏面層粒子含有量の上限は好ましくは10000ppmであり、より好ましくは7000ppmであり、さらに好ましくは5000ppmである。上記を越えると裏面が粗くなりすぎることがある。
【0098】
裏面層厚みの下限は好ましくは0.1μmであり、より好ましくは0.5μmであり、さらに好ましくは1μmであり、特に好ましくは3μmであり、最も好ましくは5μmである。また、裏面層厚みの上限は転写用配向フィルムの全厚みに対して、好ましくは95%、より好ましくは90%、さらに好ましくは85%である。
【0099】
中間層に粒子を含ませ、裏面層は粒子を含まずに薄くすることで裏面の粗さを制御することも好ましい。このような形態を取ることで、粒子の脱落を防ぎながら裏面の粗さを確保することができる。
【0100】
中間層の粒子の粒径や添加量としては、裏面層の粒子と同様である。この場合の裏面層の厚みの下限は好ましくは0.5μmであり、より好ましくは1μmであり、さらに好ましくは2μmである。厚みの上限は好ましくは30μmであり、より好ましくは25μmであり、さらに好ましくは20μmである。
【0101】
原反フィルムの裏面が粗い場合、平坦化コートを設けることも好ましい。平坦化コートは表面の平坦化コートで挙げたものを同様に用いることができる。
【0102】
裏面平坦化コート層の厚みの下限は好ましくは0.01μmであり、より好ましくは0.03μmであり、さらに好ましくは0.05μmである。上記未満であると平坦化の効果が小さくなることがある。また、裏面平坦化コート層の厚みの上限は好ましくは10μmであり、より好ましくは5μmであり、さらに好ましくは3μmである。上記を超えても平坦化の効果が飽和してしまう。
【0103】
原反フィルムの裏面側を粒子を含まないものとし、裏面に粒子を含有する易滑コートを設けてもよい。また、原反フィルムの裏面の粗さが小さい場合には、易滑コートを設けてもよい。
【0104】
裏面易滑コート層の粒子径の下限は好ましくは0.01μmであり、より好ましくは0.05μmである。上記未満であると易滑性が得られないことがある。また、裏面易滑コート層の粒子径の上限は好ましくは5μmであり、より好ましくは3μmであり、さらに好ましくは2μmであり、特に好ましくは1μmである。上記を越えると裏面の粗さが高すぎることがある。
【0105】
裏面易滑コート層の粒子含有量の下限は好ましくは0.1質量%であり、より好ましくは0.5質量%であり、さらに好ましくは1質量%であり、特に好ましくは1.5質量%であり、最も好ましくは2質量%である。上記未満であると易滑性が得られないことがある。また、裏面易滑コート層の粒子含有量の上限は好ましくは20質量%であり、より好ましくは15質量%であり、さらに好ましくは10質量%である。上記を越えると裏面の粗さが高すぎることがある。
【0106】
裏面易滑コート層の厚みの下限は好ましくは0.01μmであり、より好ましくは0.03μmであり、さらに好ましくは0.05μmである。また、裏面易滑コート層の厚みの上限は好ましくは10μmであり、より好ましくは5μmであり、さらに好ましくは3μmであり、特に好ましくは2μmであり、最も好ましくは1μmである。
【0107】
(転写用配向フィルムの製造方法)
以下、本発明の転写用配向フィルムが延伸フィルムである場合の転写用配向フィルムの製造方法について説明する。
MD延伸を行う場合、MD倍率の下限は1.5倍であることが好ましい。上限は好ましくは6倍であり、より好ましくは5.5倍、さらに好ましくは5倍である。また、TD延伸を行う場合、TD倍率の下限は1.5倍であることが好ましい。TD倍率の上限は好ましくは6倍であり、より好ましくは5.5倍であり、さらに好ましくは5倍である。
【0108】
HS温度の下限は好ましくは150℃であり、より好ましくは170℃である。上記未満であると熱収縮率が下がらないことがある。また、HS温度の上限は好ましくは240℃であり、より好ましくは230℃である。上記を越えると樹脂劣化となることがある。
【0109】
TD緩和率の下限は好ましくは0.1%であり、より好ましくは0.5%である。上記未満であると熱収縮率が下がらないことがある。また、TD緩和率の上限は好ましくは8%であり、より好ましくは6%であり、さらに好ましくは5%である。上記を越えるとたるみにより平面性が悪くなったり、厚みが不均一になることがある。
【0110】
アニール処理はフィルムを巻き出してオーブン中に通して巻き取る方法が好ましい。
【0111】
アニール温度の下限は好ましくは80℃であり、より好ましくは90℃であり、さらに好ましくは100℃である。上記未満であるとアニール効果が得られないことがある。また、アニール温度の上限は好ましくは200℃であり、より好ましくは180℃であり、さらに好ましくは160℃である。上記を越えると平面性が低下したり、熱収縮が高くなることがある。
【0112】
アニール時間の下限は好ましくは5秒であり、より好ましくは10秒であり、さらに好ましくは15秒である。上記未満であるとアニール効果が得られないことがある。また、アニール時間の上限は好ましくは10分であり、より好ましくは5分であり、さらに好ましくは3分であり、特に好ましくは1分である。上記を越えると効果が飽和するだけでなく大きなオーブンが必要であったり、生産性が劣ることがある。
【0113】
アニール処理では巻き出し速度と巻き取り速度の周速差で緩和率を調節する、巻き取り張力を調整して緩和率を調節するなどの方法が採られる。緩和率の下限は好ましくは0.5%である。上記未満であるとアニール効果が得られないことがある。また、緩和率の上限は好ましくは8%であり、より好ましくは6%であり、さらに好ましくは5%である。上記を越えると平面性が低下したり、巻き取り不良が起こることがある。
【0114】
(液晶化合物配向層転写用積層体)
次に、本発明の液晶化合物配向層転写用積層体について説明する。
本発明の液晶化合物配向層転写用積層体は、液晶化合物配向層と本発明の転写用配向フィルムが積層された構造を有する。液晶化合物配向層は転写用配向フィルム上に塗工し配向させる必要がある。配向させる方法としては、液晶化合物配向層の下層(離型面)にラビング処理等を行い配向制御機能を付与する方法や、液晶化合物を塗布後に偏光紫外線等を照射して直接液晶化合物を配向させる方法がある。
【0115】
(配向制御層)
また、転写用配向フィルムに配向制御層を設け、この配向制御層上に液晶化合物配向層を設ける方法も好ましい。なお、本発明において、液晶化合物配向層単独ではなく配向制御層と液晶化合物配向層を合わせた総称としても液晶化合物配向層と呼ぶことがある。配向制御層としては、液晶化合物配向層を所望の配向状態にすることができるものであれば、どのような配向制御層でもよいが、樹脂の塗工膜をラビング処理したラビング処理配向制御層や、偏光の光照射により分子を配向させて配向機能を生じさせる光配向制御層が好適な例として挙げられる。
【0116】
(ラビング処理配向制御層)
ラビング処理により形成される配向制御層に用いられるポリマー材料としては、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、ポリイミドおよびその誘導体、アクリル樹脂、ポリシロキサン誘導体などが好ましく用いられる。
【0117】
以下、ラビング処理配向制御層の形成方法を説明する。まず、上記のポリマー材料を含むラビング処理配向制御層塗布液を配向フィルムの離型面上に塗布したのち、加熱乾燥等を行ない、ラビング処理前の配向制御層を得る。配向制御層塗布液は架橋剤を有していても良い。
【0118】
ラビング処理配向制御層塗布液の溶剤としては、ポリマー材料を溶解するものであれば制限なく用いることができる。具体例としては、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、セロソルブ、などのアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル、ガンマーブチロラクトン、などのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、などのケトン系溶剤;トルエン又はキシレンなどの芳香族炭化水素溶剤、;テトラヒドロフラン又はジメトキシエタンなどのエーテル系溶剤などが挙げられる。これら溶剤は、単独で用いてもよいし、組み合わせてもよい。
【0119】
ラビング処理配向制御層塗布液の濃度は、ポリマーの種類や製造しようとする配向制御層の厚みによって適宜調節できるが、固形分濃度で表して、0.2~20質量%とすることが好ましく、0.3~10質量%の範囲が特に好ましい。塗布する方法としては、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法及びアプリケータ法などの塗布法や、フレキソ法などの印刷法などの公知の方法が採用される。
【0120】
加熱乾燥温度は、転写用配向フィルムにもよるが、PETの場合30℃~170℃の範囲が好ましく、より好ましくは、50~150℃、さらに好ましくは、70~130℃である。乾燥温度が低い場合は乾燥時間を長く取る必要が生じ、生産性に劣る場合がある。乾燥温度が高すぎる場合、転写用配向フィルムが熱で伸びたり、熱収縮が大きくなったりし、設計通りの光学機能が達成できなくなったり、平面性が悪くなる場合がある。加熱乾燥時間は例えば0.5~30分であればよく、1~20分がより好ましく、さらには2~10分がより好ましい。
【0121】
ラビング処理配向制御層の厚さは、0.01~10μmであることが好ましく、さらには0.05~5μm、特には0.1μm~1μmであることが好ましい。
【0122】
次に、ラビング処理を施す。ラビング処理は、一般にはポリマー層の表面を、紙や布で一定方向に擦ることにより実施することができる。一般的には、ナイロン、ポリエステル、アクリルなどの繊維の起毛布のラビングローラーを用い、配向制御層表面をラビング処理する。長尺状のフィルムの長手方向に対して斜めの所定方向に配向する液晶化合物配向制御層を設けるためには配向制御層のラビング方向もそれに合った角度にする必要がある。角度の調整は、ラビングローラーと配向フィルムとの角度調整、配向フィルムの搬送速度とローラーの回転数の調整で合わせることができる。
【0123】
なお、転写用配向フィルムの離型面に直接ラビング処理を行って転写用配向フィルム表面に配向制御機能を持たせることも可能であり、この場合も本発明の技術範囲に含まれる。
【0124】
(光配向制御層)
光配向制御層とは、光反応性基を有するポリマー又はモノマーと溶剤とを含む塗工液を配向フィルムに塗布し、偏光、好ましくは偏光紫外線を照射することによって配向規制力を付与した配向膜のことをいう。光反応性基とは、光照射により液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光を照射することで生じる分子の配向誘起又は異性化反応、二量化反応、光架橋反応、あるいは光分解反応のような、液晶配向能の起源となる光反応を生じるものである。当該光反応性基の中でも、二量化反応又は光架橋反応を起こすものが、配向性に優れ、液晶化合物配向層のスメクチック液晶状態を保持する点で好ましい。以上のような反応を生じうる光反応性基としては、不飽和結合、特に二重結合であると好ましく、C=C結合、C=N結合、N=N結合、C=O結合からなる群より選ばれる少なくとも一つを有する基が特に好ましい。
【0125】
C=C結合を有する光反応性基としては例えば、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ-ル基、スチルバゾリウム基、カルコン基及びシンナモイル基などが挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基及び芳香族ヒドラゾンなどの構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基及びホルマザン基などや、アゾキシベンゼンを基本構造とするものが挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基及びマレイミド基などが挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリ-ル基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基及びハロゲン化アルキル基などの置換基を有していてもよい。
【0126】
中でも、光二量化反応を起こしうる光反応性基が好ましく、シンナモイル基及びカルコン基が、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向層が得られやすいため好ましい。さらにいえば、光反応性基を有するポリマーとしては、当該ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するものが特に好ましい。主鎖の構造としては、ポリイミド、ポリアミド、(メタ)アクリル、ポリエステル、等が挙げられる。
【0127】
具体的な配向制御層としては、例えば、特開2006-285197号公報、特開2007-76839号公報、特開2007-138138号公報、特開2007-94071号公報、特開2007-121721号公報、特開2007-140465号公報、特開2007-156439号公報、特開2007-133184号公報、特開2009-109831号公報、特開2002-229039号公報、特開2002-265541号公報、特開2002-317013号公報、特表2003-520878号公報、特表2004-529220号公報、特開2013-33248号公報、特開2015-7702号公報、特開2015-129210号公報に記載の配向制御層が挙げられる。
【0128】
光配向制御層形成用塗工液の溶剤としては、光反応性基を有するポリマー及びモノマーを溶解するものであれば制限なく用いることができる。具体例としてはラビング処理配向制御層の形成方法で挙げたものが例示できる。光配向制御層形成用塗工液には、光重合開始剤、重合禁止剤、各種安定剤を添加することも好ましい。また、光反応性基を有するポリマー及びモノマー以外のポリマーや光反応性基を有するモノマーと共重合可能な光反応性基を有しないモノマーを加えても良い。
【0129】
光配向制御層形成用塗工液の濃度、塗布方法、乾燥条件もラビング処理配向制御層の形成方法で挙げたものが例示できる。厚みもラビング処理配向制御層の好ましい厚みと同様である。
【0130】
偏光は、配向前の光配向制御層面の方向から照射することが好ましい。転写用配向フィルムの配向方向に対して光配向制御層の配向方向を平行又は垂直にする場合は、転写用配向フィルムを透過させて照射してもよい。
【0131】
偏光の波長は、光反応性基を有するポリマー又はモノマーの光反応性基が、光エネルギーを吸収できる波長領域のものが好ましい。具体的には、波長250~400nmの範囲の紫外線が好ましい。偏光の光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArFなどの紫外光レ-ザ-などが挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ及びメタルハライドランプが好ましい。
【0132】
偏光は、例えば前記光源からの光に偏光子を通過させることにより得られる。前記偏光子の偏光角を調整することにより、偏光の方向を調整することができる。前記偏光子は、偏光フィルターやグラントムソン、グランテ-ラ-等の偏光プリズムやワイヤーグリッドタイプの偏光子が挙げられる。偏光は、実質的に平行光であると好ましい。
【0133】
照射する偏光の角度を調整することにより、光配向制御層の配向規制力の方向を任意に調整することができる。
【0134】
照射強度は重合開始剤や樹脂(モノマー)の種類や量で異なるが、例えば365nm基準で10~10000mJ/cmが好ましく、さらには20~5000mJ/cmが好ましい。
【0135】
(液晶化合物配向層)
液晶化合物配向層は、液晶化合物が配向されたものであれば特に制限はない。具体的な例としては、液晶化合物と二色性色素を含む偏光膜(偏光子)、棒状やディスコティック液晶化合物を含む位相差層が挙げられる。
【0136】
(偏光膜)
偏光膜は一方向のみの偏光を通過させる機能を有し、二色性色素を含む。
【0137】
(二色性色素)
二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素をいう。
【0138】
二色性色素は、300~700nmの範囲に吸収極大波長(λMAX)を有するものが好ましい。このような二色性色素は、例えば、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素及びアントラキノン色素などが挙げられるが、中でもアゾ色素が好ましい。アゾ色素は、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素及びスチルベンアゾ色素などが挙げられ、好ましくはビスアゾ色素及びトリスアゾ色素である。二色性色素は単独でも、組み合わせても良いが、色調を調整(無彩色)にするため、2種以上を組み合わせることが好ましい。特には3種類以上を組み合わせるのが好ましい。特に、3種類以上のアゾ化合物を組み合わせるのが好ましい。
【0139】
好ましいアゾ化合物としては、特開2007-126628号公報、特開2010-168570号、特開2013-101328号、特開2013-210624号に記載の色素が挙げられる。
【0140】
二色性色素はアクリルなどのポリマーの側鎖に導入された二色性色素ポリマーであることも好ましい。これら二色性色素ポリマーとしては特開2016-4055号で挙げられるポリマー、特開2014-206682号の[化6]~[化12]の化合物が重合されたポリマーが例示できる。
【0141】
偏光膜中の二色性色素の含有量は、二色性色素の配向を良好にする観点から、偏光膜中、0.1~30質量%が好ましく、0.5~20質量%がより好ましく、1.0~15質量%がさらに好ましく、2.0~10質量%が特に好ましい。
【0142】
偏光膜には、膜強度や偏光度、膜均質性の向上のため、さらに重合性液晶化合物が含まれていることが好ましい。なお、ここで重合性液晶化合物は膜として重合後の物も含まれる。
【0143】
(重合性液晶化合物)
重合性液晶化合物とは、重合性基を有し、かつ、液晶性を示す化合物である。
重合性基とは、重合反応に関与する基を意味し、光重合性基であることが好ましい。ここで、光重合性基とは、後述する光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸などによって重合反応し得る基のことをいう。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。液晶性を示す化合物は、サーモトロピック性液晶でもリオトロピック液晶でもよく、また、サーモトロピック液晶における、ネマチック液晶でもスメクチック液晶でもよい。
【0144】
重合性液晶化合物は、より高い偏光特性が得られるという点でスメクチック液晶化合物が好ましく、高次スメクチック液晶化合物がより好ましい。重合性液晶化合物が形成する液晶相が高次スメクチック相であると、配向秩序度のより高い偏光膜を製造することができる。
【0145】
具体的な好ましい重合性液晶化合物としては、例えば、特開2002-308832号公報、特開2007-16207号公報、特開2015-163596号公報、特表2007-510946号公報、特開2013-114131号公報、WO2005/045485号公報、Lub et al.Recl.Trav.Chim.Pays-Bas,115,321-328(1996)などに記載のものが挙げられる。
【0146】
偏光膜中の重合性液晶化合物の含有割合は、重合性液晶化合物の配向性を高くするという観点から、偏光膜中70~99.5質量%が好ましく、より好ましくは75~99質量%、さらに好ましくは80~97質量%であり、特に好ましくは83~95質量%である。
【0147】
偏光膜は偏光膜組成物塗料を塗工して設けることができる。偏光膜組成物塗料は、溶剤、重合開始剤、増感剤、重合禁止剤、レベリング剤及び、重合性非液晶化合物、架橋剤等を含んでもよい。
【0148】
溶剤としては、配向層塗布液の溶剤として挙げたものが好ましく用いられる。
【0149】
重合開始剤は、重合性液晶化合物を重合させるものであれば限定はされないが、光により活性ラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。重合開始剤としては、例えばベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩などが挙げられる。
【0150】
増感剤は光増感剤が好ましい。例えば、キサントン化合物、アントラセン化合物、フェノチアジン、ルブレン等が挙げられる。
【0151】
重合禁止剤としては、ハイドロキノン類、カテコール類、チオフェノール類が挙げられる。
【0152】
重合性非液晶化合物としては、重合性液晶化合物と共重合するものが好ましく、例えば、重合性液晶化合物が(メタ)アクリロイルオキシ基を有する場合は(メタ)クレート類が挙げられる。(メタ)クリレート類は単官能であっても多官能であっても良い。多官能の(メタ)アクリレート類を用いることで、偏光膜の強度を向上させることができる。重合性非液晶化合物を用いる場合は偏光膜中に1~15質量%とすることが好ましく、さらには2~10質量%、特には3~7質量%にすることが好ましい。15質量%を越えると偏光度が低下することがある。
【0153】
架橋剤としては、重合性液晶化合物、重合性非液晶化合物の官能基と反応しうる化合物が挙げられ、イソシアネート化合物、メラミン、エポキシ樹脂、オキサゾリン化合物などが挙げられる。
【0154】
偏光膜組成物塗料を転写用配向フィルム上または配向制御層上に直接塗工後、必要により乾燥、加熱、硬化することにより、偏光膜が設けられる。
【0155】
塗工方法としては、塗布する方法としては、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法及びアプリケータ法などの塗布法や、フレキソ法などの印刷法などの公知の方法が採用される。
【0156】
塗工後の転写用配向フィルムは温風乾燥機、赤外線乾燥機などに導かれ、30~170℃、より好ましくは50~150℃、さらに好ましくは70~130℃で乾燥される。乾燥時間は0.5~30分が好ましく、1~20分がより好ましく、さらには2~10分がより好ましい。
【0157】
加熱は、偏光膜中の二色性色素および重合性液晶化合物をより強固に配向させるために行うことができる。加熱温度は、重合性液晶化合物が液晶相を形成する温度範囲にすることが好ましい。
【0158】
偏光膜組成物塗料に重合性液晶化合物が含まれる場合は、硬化するのが好ましい。硬化方法としては、加熱及び光照射が挙げられ、光照射が好ましい。硬化により二色性色素を配向した状態で固定することができる。硬化は、重合性液晶化合物に液晶相を形成させた状態で行うのが好ましく、液晶相を示す温度で光照射して硬化してもよい。光照射における光としては、可視光、紫外光及びレーザー光が挙げられる。取り扱いやすい点で、紫外光が好ましい。
【0159】
照射強度は重合開始剤や樹脂(モノマー)の種類や量で異なるが、例えば365nm基準で100~10000mJ/cmが好ましく、さらには200~5000mJ/cmが好ましい。
【0160】
偏光膜は、偏光膜組成物塗料を配向制御層上に塗布することで、色素が配向層の配向方向に添って配向し、その結果、所定方向の偏光透過軸を有することになるが、配向制御層を設けず直接転写用配向フィルムに塗工した場合は、偏光光を照射して偏光膜形成用組成物を硬化させることで、偏光膜を配向させることもできる。この際には、転写用配向フィルムの長尺方向に対して所望の方向の偏光光(例えば、斜め方向の偏光光)を照射する。さらにその後加熱処理することで二色性色素を強固に高分子液晶の配向方向に添って配向させることが好ましい。
【0161】
偏光膜の厚さは、0.1~5μmであり、好ましくは0.3~3μm、より好ましくは0.5~2μmである。
【0162】
(位相差層)
位相差層は液晶表示装置の偏光子と液晶セルの間に光学補償のために設けられるものや、円偏光板のλ/4層、λ/2層等が代表的なものとして挙げられる。液晶化合物としては、生や負のAプレート、正や負のCプレート、Oプレートなど、目的に合わせて棒状液晶化合物やディスコティック液晶化合物などを使用することができる。
【0163】
位相差の程度は、液晶表示装置の光学補償として用いられる場合は、液晶セルのタイプ、セルに用いられる液晶化合物の性質により適宜設定される。例えば、TN方式の場合はディスコティック液晶を用いたOプレートが好ましく用いられる。VA方式やIPS方式の場合、棒状液晶化合物やディスコティック液晶化合物を用いたCプレートやAプレートが好ましく用いられる。また、円偏光板のλ/4位相差層、λ/2位相差層の場合は、棒状化合物を用いて、Aプレートとすることが好ましく用いられる。これらの位相差層は単層だけでなく、組み合わせて複数の層にして用いられても良い。
【0164】
これらの位相差層に用いられる液晶化合物としては、配向状態を固定できるという面で、二重結合などの重合性基を持つ重合性液晶化合物であることが好ましい。
【0165】
棒状液晶化合物の例としては、特開2002-030042号公報、特開2004-204190号公報、特開2005-263789号公報、特開2007-119415号公報、特開2007-186430号公報、及び特開平11-513360号公報に記載された重合性基を有する棒状液晶化合物が挙げられる。
具体的な化合物としては、
CH=CHCOO-(CH)m-O-Ph1-COO-Ph2-OCO-Ph1-O-(CH)n-OCO-CH=CH
CH=CHCOO-(CH)m-O-Ph1-COO-NPh-OCO-Ph1-O-(CH)n-OCO-CH=CH
CH=CHCOO-(CH)m-O-Ph1-COO-Ph2-OCH
CH=CHCOO-(CH)m-O-Ph1-COO-Ph1-Ph1-CHCH(CH)C
式中、m、nは2~6の整数であり、
Ph1、Ph2は1,4-フェニル基(Ph2は2位がメチル基であっても良い)であり、
NPhは2,6-ナフチル基である
が挙げられる。
これらの棒状液晶化合物は、BASF社製からLC242等として市販されており、それらを利用することができる。
【0166】
これらの棒状液晶化合物は複数種を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0167】
また、ディスコティック液晶化合物としては、ベンゼン誘導体、トルキセン誘導体、シクロヘキサン誘導体、アザクラウン系、フェニルアセチレン系マクロサイクル等が挙げられ、特開2001-155866号公報に様々なものが記載されており、これらが好適に用いられる。
中でもディスコティック化合物としては、下記一般式(1)で表されるトリフェニレン環を有する化合物が好ましく用いられる。
式中、R~Rはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、アルキル基、又は-O-Xで示される基(ここで、Xは、Xはアルキル基、アシル基、アルコキシベンジル基、エポキシ変性アルコキシベンジル基、アクリロイルオキシ変性アルコキシベンジル基、アクリロイルオキシ変性アルキル基である)である。R~Rは、下記一般式(2)で表されるアクリロイルオキシ変性アルコキシベンジル基(ここで、mは4~10)であることが好ましい。
【0168】
位相差層は位相差層用組成物塗料を塗工して設けることができる。位相差層用組成物塗料は、溶剤、重合開始剤、増感剤、重合禁止剤、レベリング剤及び、重合性非液晶化合物、架橋剤等を含んでもよい。これらは、配向制御層や液晶偏光子の部分で説明した物を用いることができる。
【0169】
位相差層用組成物塗料を配向フィルムの離型面または配向制御層上に塗工後、乾燥、加熱、硬化することにより、位相差層が設けられる。
【0170】
これらの条件も配向制御層や液晶偏光子の部分で説明した条件が好ましい条件として用いられる。
【0171】
位相差層は複数設けられることがあるが、この場合、1つの転写用配向フィルム上に複数の位相差層を設けてこれを対象物に転写しても良く、1つの転写用配向フィルム上に単一の位相差層を設けたものを複数種用意してこれらを対象物に順に転写しても良い。
【0172】
また、偏光層と位相差層を1つの転写用配向フィルム上に設け、これを対象物に転写しても良い。さらに、偏光子と位相差層の間に保護層を設けたり、位相差層の上や位相差層の間に保護層を設ける場合がある。これらの保護層も位相差層や偏光層と共に転写用配向フィルム上に設けて対象物に転写しても良い。
【0173】
保護層としては透明樹脂の塗工層が挙げられる。透明樹脂としては、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリスチレン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂など特に限定するものではない。これら樹脂に架橋剤を加えて架橋構造としても良い。また、ハードコートのようなアクリルなどの光硬化性の組成物を硬化させたものであっても良い。また、保護層を配向フィルム上に設けた後、保護層をラビング処理し、その上に配向層を設けることなく液晶化合物配向層を設けても良い。
【0174】
(液晶化合物配向層積層偏光板の製造方法)
次に、本発明の液晶化合物配向層積層偏光板の製造方法について説明する。
本発明の液晶化合物配向層積層偏光板の製造方法は、偏光板と本発明の液晶化合物配向層転写用積層体の液晶化合物配向層面とを貼り合わせて中間積層体を形成する工程、及び中間積層体から配向フィルムを剥離する工程を含む。
以下、液晶化合物配向層が円偏光板に用いられる液晶化合物配向層である場合を例として説明する。円偏光板の場合、位相差層(転写用積層体中では、液晶化合物配向層と称される)としてはλ/4層が用いられる。λ/4層の正面レタデーションは100~180nmが好ましい。さらに好ましくは120~150nmである。円偏光板としてλ/4層のみを用いる場合、λ/4層の配向軸(遅相軸)と偏光子の透過軸は35~55度が好ましく、より好ましくは40度~50度、さらに好ましくは42~48度である。ポリビニルアルコールの延伸フィルムの偏光子と組み合わせて用いる場合には、偏光子の吸収軸が長尺偏光子フィルムの長さ方向となることが一般的であるため、長尺の転写用配向フィルムにλ/4層を設ける場合は長尺の転写用配向フィルムの長さ方向に対して上記範囲となるように液晶化合物を配向させることが好ましい。なお、偏光子の透過軸の角度が上記と異なる場合は偏光子の透過軸の角度を加味して上記関係になるよう液晶化合物を配向させる。
【0175】
λ/4層と配向フィルムが積層された転写用積層体中のλ/4層を偏光板に転写することで円偏光板を作成する。具体的には、偏光板と転写用積層体のλ/4層面を貼り合わせて中間積層体を形成し、この中間積層体から配向フィルムを剥離する。偏光板は偏光子の両面に保護フィルムが設けられているものでも良いが、片面のみに保護フィルムが設けられているものが好ましい。片面のみに保護フィルムが設けられている偏光板であれば、保護フィルムの反対面(偏光子面)に位相差層を貼り合わせることが好ましい。両面に保護フィルムが設けられているのであれば位相差層は画像セル側を想定している面に貼り合わせることが好ましい。画像セル側を想定している面とは、低反射層、反射防止層、防眩層など一般的に視認側に設けられる表面加工がされていない面である。位相差層が貼り合わされる側の保護フィルムはTAC、アクリル、COPなどで位相差のない保護フィルムであることが好ましい。
【0176】
偏光子としてはPVA系のフィルムを単独で延伸して作成した偏光子や、ポリエステルやポリプロピレンなどの未延伸基材にPVAを塗工し、基材ごと延伸して作成した偏光子を偏光子保護フィルムに転写したものや、液晶化合物と二色性色素からなる偏光子を偏光子保護フィルムに塗工するか転写したもの等が挙げられ、いずれも好ましく用いられる。
【0177】
貼り付ける方法としては、接着剤、粘着剤など従来知られているものを用いることができる。接着剤としてはポリビニルアルコール系接着剤、アクリルやエポキシなどの紫外線硬化型接着剤、エポキシやイソシアネート(ウレタン)などの熱硬化型接着剤が好ましく用いられる。粘着剤は、アクリルやウレタン系、ゴム系などの粘着剤が挙げられる。また、アクリル基材レスの光学用透明粘着剤シートを用いることも好ましい。
【0178】
偏光子として転写型のものを用いる場合、転写用積層体の位相差層(液晶化合物配向層)上に偏光子を転写し、その後、偏光子と位相差層を対象物(偏光子保護フィルム)に転写しても良い。
【0179】
位相差層を設ける側と反対側の偏光子保護フィルムとしてはTAC、アクリル、COP、ポリカーボネート、ポリエステルなど一般に知られているものが使用できる。中でもTAC、アクリル、COP、ポリエステルが好ましい。ポリエステルはポリエチレンテレフタレートが好ましい。ポリエステルの場合は、面内レタデーション100nm以下、特には50nm以下のゼロレタデーションフィルムであるか、3000nm~30000nmの高レタデーションフィルムであることが好ましい。
【0180】
高レタデーションフィルムを用いる場合、偏光サングラスをかけて画像を見た場合のブラックアウトや着色を防止する目的では、偏光子の透過軸と高レタデーションフィルムの遅相軸の角度は30~60度の範囲が好ましく、さらには35~55度の範囲が好ましい。裸眼で角度の浅い斜め方向から観察した場合の虹斑などの低減のためには、偏光子の透過軸と高レタデーションフィルムの遅相軸の角度は10度以下、さらには7度以下にするか、もしくは80~100度、さらには83~97度にすることが好ましい。
【0181】
反対側の偏光子保護フィルムには、防眩層、反射防止層、低反射層、ハードコート層などが設けられていても良い。
【0182】
(複合位相差層)
λ/4層単独では可視光領域の広い範囲に渡ってλ/4とならずに着色が生じることがある。そのため、λ/4層がλ/2層と組み合わせて用いられる場合がある。λ/2層の正面レタデーションは200~360nmが好ましい。さらに好ましくは240~300nmである。
【0183】
この場合、λ/4層とλ/2層を合わせてλ/4となるような角度に配置されることが好ましい。具体的には、λ/2層の配向軸(遅相軸)と偏光子の透過軸の角度(θ)は5~20度が好ましく、より好ましくは7度~17度である。λ/2層の配向軸(遅相軸)とλ/4の配向軸(遅相軸)との角度は、2θ+45度±10度の範囲が好ましく、より好ましくは2θ+45度±5度の範囲であり、さらに好ましくは2θ+45度±3度の範囲である。
【0184】
この場合も、ポリビニルアルコールの延伸フィルムの偏光子と組み合わせて用いる場合には、偏光子の吸収軸が長尺偏光子フィルムの長さ方向となることが一般的であるため、長尺の転写用配向フィルムにλ/2層やλ/4層を設ける場合は長尺の転写用配向フィルムの長さ方向または長さの垂直方向に対して上記範囲となるように液晶化合物を配向させることが好ましい。なお、偏光子の透過軸の角度が上記と異なる場合は偏光子の透過軸の角度を加味して上記関係になるよう液晶化合物を配向させる。
【0185】
これらの方法や、位相差層の例としては、特開2008-149577号公報、特開2002-303722号公報、WO2006/100830号公報、特開2015-64418号公報等を参考とすることができる。
【0186】
さらに、斜めから見た場合の着色の変化などを低減するためにλ/4層の上にCプレート層を設けることも好ましい形態である。Cプレート層はλ/4層やλ/2層の特性に合わせ、正または負のCプレート層が用いられる。
【0187】
これらの積層方法としては、例えば、λ/4層とλ/2層の組合せであれば、
・偏光子上に転写によりλ/2層を設け、さらにその上にλ/4層を転写により設ける。
・転写用配向フィルム上にλ/4層とλ/2層をこの順に設け、これを偏光子上に転写する。
・転写用配向フィルム上にλ/4層とλ/2層と偏光層をこの順に設け、これを対象物に転写する。
・転写用配向フィルム上にλ/2層と偏光層をこの順に設け、これを対象物に転写し、さらにこの上にλ/4層を転写する。
などの様々な方法を採用することができる。
【0188】
また、Cプレートを積層する場合も、偏光子上に設けられたλ/4層の上にCプレート層を転写する方法や、配向フィルムにCプレート層を設け、さらにこの上にλ/4層かλ/2層とλ/4層を設けてこれを転写する方法などの様々な方法が採用できる。
【0189】
このようにして得られた円偏光板の厚みは、120μm以下であることが好ましい。より好ましくは100μm以下、さらには90μm以下、特には80μm以下が好ましく、最も好ましくは70μm以下である。
【0190】
(液晶化合物配向層転写用積層体の検査方法)
次に、本発明の液晶化合物配向層転写用積層体の検査方法について説明する。
本発明の液晶化合物配向層転写用積層体の検査方法は、配向フィルムの配向方向に、または配向方向と直交する方向に、または配向フィルムの流れ方向に、または流れ方向と直交する方向に平行な電場振動方向を有する直線偏光を積層体の配向フィルム面から照射し、液晶化合物配向層面側で受光する工程、及び受光した光の消光状態の有無を検査する工程を含む。このように、本発明では、液晶化合物配向層転写用積層体は、液晶化合物配向層が位相差層であっても転写用配向フィルムに積層した状態でその光学特性を検査できる。
【0191】
位相差層の光学状態を検査するためには、転写用配向フィルムの配向方向に対して平行または垂直の直線偏光を照射し、積層体の反対面に設置した受光器でその偏光状態の変化を検出する。転写用配向フィルムの配向方向に対して平行とは-10~+10度が好ましく、より好ましくは-7~7度、さらに好ましくは-5~5度、特に好ましくは-3~3度、最も好ましくは-2~2度である。転写用配向フィルムの配向方向に対して垂直とは80~100度が好ましく、より好ましくは83~97度、さらに好ましくは85~95度、特に好ましくは87~93度、最も好ましくは88~92度である。上記範囲を超えると位相差層に当たる偏光、または通過してきた偏光が基材の位相差の影響を受けて乱され、正確な評価ができなくなる場合がある。
【0192】
なお、転写用配向フィルムの配向方向に合わせて、都度照射する直線偏光の角度を調整しても良いが、検査が煩雑となる。そのため、照射する直線偏光は転写用配向フィルムの流れ方向に対して平行または垂直として固定して検査することも好ましい。ここで平行または垂直の範囲は上記と同じである。
【0193】
受光器と液晶化合物配向層(位相差層)転写用積層体(検査対象フィルム)との間には、偏光フィルターを設けることが好ましい。また、液晶化合物配向層(位相差層)転写用積層体と偏光フィルターの間には、液晶化合物配向層(位相差層)転写用積層体の位相差層により楕円偏光となった光を、設計通りの楕円偏光である場合には直線偏光に変換させるための位相差板を設けることが好ましい。例えば、このような構成にすることにより、位相差層が設計通りのものである場合には受光器で検出した光は消光状態であるが、光の漏れがある場合には位相差層が設計からずれていることが分かる。設置する偏光フィルターの角度や位相差板の角度・位相差が少し異なる受光器を複数種設置し、位相差層の位相差や配向方向がどの方向にどれだけずれているかを検知することもできる。
【0194】
(偏光層の検査)
液晶化合物配向層が偏光層の場合は自然光(非偏光光)を照射し、透過する光を偏光フィルターを介して受光することで偏光層を検査することができる。また、偏光フィルターを介して直線偏光とした光を転写用積層体に照射してその透過光を受光することで検査することができる。これらの場合、偏光フィルターは転写用配向フィルムに設けられた偏光層が設計通りになっている場合に消光する角度に設定する。
【0195】
なお、偏光フィルターの角度が少し異なる受光器を複数種設置し、配向方向がどの方向にどれだけずれているかを検知することもできる。
【0196】
また、これらの場合、前記の自然光を照射する場合は転写用配向フィルム面側から、後者の直線偏光を照射する場合は偏光層面から照射することが好ましい。
【実施例0197】
以下、実施例を参照して本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されず、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、実施例における物性の評価方法は以下の通りである。
【0198】
(1)転写用配向フィルムの配向方向と、配向フィルムの流れ方向または流れ方向と直交する方向との角度、及びフィルムの幅方向での配向角の角度差
まず、フィルムをロールから引き出し、両端部(各端部から内側に5cmの地点)、中央部、及び中央部と両端部の中間にある中間部の5カ所で配向方向を決定した。中央部と両端部の中間にある中間部は、中央部と両端部との間隔を2等分した位置にある。なお、配向方向は、分子配向計(王子計測器株式会社製、MOA-6004型分子配向計)を用いて求めたフィルムの遅相軸方向とした。次に、フィルムの全体の配向方向が流れ方向(MD)に近いか、それとも幅方向(TD)に近いかを調べた。そして、フィルムの全体の配向方向が流れ方向に近い場合には、上記5ヶ所のそれぞれにおいて、配向方向とフィルムの流れ方向との間の角度を求め、最も大きい角度となる箇所での値を「配向フィルムの配向方向と、配向フィルムの流れ方向との間の角度」の最大値として採用した。一方、フィルムの全体の配向方向が幅方向に近い場合には、上記5ヶ所のそれぞれにおいて、配向方向とフィルムの流れ方向と直交する方向との間の角度を求め、最も大きい角度となる箇所での値を「配向フィルムの配向方向と、配向フィルムの流れ方向と直交する方向との間の角度」の最大値として採用した。
また、上記5ヶ所で求めた角度のうち、最大値と最小値との間の差を、「フィルムの幅方向での配向角の角度差」とした。
なお、角度は、長手方向または幅方向に対して、前記最大値と同じ側に配向方向がある場合は正の値とし、長手方向又は幅方向に対して反対側に配向方向がある場合は負の値とし、正・負を区別して最小値を評価する。
【0199】
(2)転写用配向フィルムの屈折率
上記(1)で求めた遅相軸方向が長辺と平行になるように、4cm×2cmの長方形を切り出し、測定用サンプルとした。このサンプルについて、直交する二軸の屈折率(遅相軸方向の屈折率:nx、進相軸方向(遅相軸方向と直交する方向)の屈折率:ny)、及び厚さ方向の屈折率(nz)をアッベ屈折率計(アタゴ社製、NAR-4T、測定波長589nm)によって求めた。
【0200】
(3)転写用配向フィルムのMD方向、TD方向、MD方向に対して45度の方向、又はMD方向に対して135度の方向での150℃30分間の熱収縮率
JIS C 2318-1997 5.3.4(寸法変化)に準拠して測定した。具体的には、測定すべき方向(MD方向、TD方向、MD方向に対して45度の方向、MD方向に対して135度の方向)に、フィルムを幅10mm、長さ250mmに切り取り、このサンプルに200mm間隔で二つの印を付け、5gfの一定張力下で、二つの印の間の間隔(A)を測定した。次いで、フィルムを150℃の雰囲気中のオーブンに入れ、無荷重下で150±3℃で30分間加熱処理した後、5gfの一定張力下で、二つの印の間の間隔(B)を測定した。以下の式より熱収縮率を求めた。
熱収縮率(%)=(A-B)/A×100
【0201】
(4)95℃最大熱収縮率
スリットロールの各切り出し部から切り出された転写用配向フィルムを一辺21cmの正方形状に切り出し、23℃、65%RHの雰囲気で2時間以上放置した。このフィルムの中央を中心とする直径80mmの円を描き、二次元画像測定機(MITUTOYO製QUICK IMAGE)を使用して、フィルムの流れ方向を0度として1度間隔で直径を測定した。ここで、フイルム流れ方向を0度として、フィルム上面において時計回り(右回り)を正の角度、反時計回り(左回り)を負の角度と設定した。直径を測定したため、-90度~89度の範囲の測定で、全方向について測定された。次いで、このフィルムを95℃で30分間、温湯中で加熱処理した後、23℃、65%RHの雰囲気中で2時間以上放置した。その後、上記と同様に円の直径を1度間隔で測定した。熱処理前の直径をLo、熱処理後の同方向の直径をLとし、下記の式に従って、各方向の熱収縮率を求め、全方向での熱収縮率のうち最大となる値を最大熱収縮率とした。また、最大熱収縮率を有する方向と、MDまたはTDとの角度(値が小さくなる方)を求めた。
熱収縮率(%)=((L-L)/L)×100
【0202】
(5)弾性率:JIS C-2318に準じて測定した。サンプルは、中央部からスリットして得たスリットロールの幅方向の中央から切り出した。
【0203】
(6)波長380nmにおける光線透過率
分光光度計(日立製作所製、U-3500型)を用い、空気層を標準として転写用配向フィルムの波長300~500nm領域の光線透過率を測定し、波長380nmにおける光線透過率を求めた。
【0204】
(7)固有粘度
樹脂試料0.2gをフェノール/1,1,2,2-テトラクロルエタン(60/40(重量比))の混合溶媒50ml中に溶解し、30℃でオストワルド粘度計を用いて測定した。なお、表面層Aの試料は、A層単独で押出したフィルムサンプルを作製し、それを試料とした。
【0205】
(8)光漏れ
黄色蛍光体を用いた白色LEDを光源とする面発光光源の上に下側偏光板を置き、その上に、転写用配向フィルム上に位相差層(液晶化合物配向層)を設けたサンプル積層体を、偏光板の消光軸方向(吸収軸方向)がサンプル積層体の長辺方向と平行になるように置いた。さらにその上に、環状ポリオレフィンの延伸フィルムからなるλ/4フィルムを、配向主軸が下側偏光板の消光軸と45度の方向になるように置き、その上に上側偏光板を、上側偏光板の消光軸が下側偏光板の消光軸と平行になるように置いた。この状態で消光状態を観察した。具体的には、サンプル積層体のうち、最も明るい部分の消光状態を以下の基準で評価した。なお、サンプル積層体とλ/4フィルムを除き、下側偏光板と上側偏光板をクロスニコルの状態にした消光状態を消光状態とした。
◎:明るく感じるところはなく全体が消光状態であった。
○:消光状態よりもわずかな透過光が認められた。
△:透過光が認められたが位相差状態を評価することは可能であった。
×:透過光が多く、位相差状態を評価することは困難であった。
【0206】
(9)明るさ均一性
上記(8)と同じ状態で、サンプル積層体内の消光状態の均一性を以下の基準で評価した。なお、サンプル積層体とλ/4フィルムを除き、下側偏光板と上側偏光板をクロスニコルの状態にした消光状態を消光状態とした。
◎:サンプル積層体全域でほぼ同じ明るさであった。
○:わずかに明るさの違いがあった。
△:小さな明るさの違いがあった。
×:明るさの違いが大きかった。
【0207】
(10)位相差層の加熱配向方向ずれ
サンプル積層体をオーブン中で120℃20分間加熱処理し、室温に冷却したサンプル積層体の位相差層面側に市販の光学用粘着シートを貼り合わせ、さらに粘着シートをガラス板に貼り付けた後、配向フィルムを剥離し、ガラス板上に位相差層を転写した。ガラス板に位相差層を積層した状態で、クロスニコルに配置した偏光板の間にガラス板/位相差層積層体を配置し、消光する方向を求めた。消光する方向と配向フィルムの長辺方向との角度差を求め、この角度差と45度との差を加熱配向方向ずれとし、5回行った値の平均値を算出し、以下の基準で評価した。
◎:1度以内であった。
○:1度超、2度以下であった。
△:2度超、3度以下であった。
×:3度を超えた。
【0208】
(11)エステル環状三量体の含有量
ポリエステルフィルムの離型面側層を構成するポリエステル樹脂をカッターナイフで削り取り、細かく冷凍粉砕した。この粉砕した樹脂0.1gをヘキサフルオロイソプロパノールール(HFIP)/クロロホルム(2/3(容量比))の混合溶媒3mlに溶解した。得られた溶液にクロロホルム20mlを加えて均一に混合した。得られた混合液にメタノール10mlを加え、線状ポリエステルを再沈殿させた。次いで、この混合液を濾過し、沈殿物をクロロホルム/メタノール(2/1(容量比))の混合溶媒30mlで洗浄し、さらに濾過した。得られた濾液をロータリーエバポレーターで濃縮乾固した。濃縮乾固物にジメチルホルムアミド10mlを加え、エステル環状三量体測定溶液とし、液体クロマトグラフィーによりエステル環状三量体の含有量を求めた。
(測定条件)
装置:L-7000(日立製作所製)
カラム:μ-Bondasphere C18 5μ 100オングストローム 3.9mm×15cm(Waters製)
溶媒:溶離液A:2%酢酸/水(v/v)
溶離液B:アセトニトリル
グラジエントB%:10→100%(0→55分)
流速:0.8ml/分
温度:30℃
検出器:UV-258nm
【0209】
(12)フィルムの離型面の表面におけるエステル環状三量体の析出量
ポリエステルフィルムを15cm×15cmにカットし、オーブン中で150℃で90分間加熱した。その後、熱処理をしたフィルムを15cm×15cmのステンレス板上に離型面を上にして置き、その上に中央部に10cm×10cmの穴を空けた15cm×15cmのシリコーンシート(厚さ5mm)を載せ、さらにシリコーンシートと同形状(厚み2mm)のステンレス板を重ね、周辺部をクリップで留めた。次いで、中央の穴の中にDMF(ジメチルスルホアミド)4mlを入れて3分間放置した後、DMFを回収した。回収したDMF中のエステル環状三量体の量を液体クロマトグラフィーによって求めた。この値を、DMFを接触させたフィルム面積で割って、フィルムの離型面の表面におけるエステル環状三量体の析出量(mg/m)とした。
(測定条件)
装置:ACQUITY UPLC(Waters製)
カラム:BEH-C18 2.1×150mm(Waters製)
移動相:溶離液A:0.1%ギ酸(v/v)
溶離液B:アセトニトリル
グラジエントB%:10→98→98%(0→25→30分)
流速:0.2ml/分
カラム温度:40℃
検出器:UV-258nm
【0210】
(13)熱処理する前後のヘイズの増加量(△ヘイズ)評価
フィルムを50mm×75mm角に切り出し、JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」ヘーズ(曇価)に準拠して、熱処理する前の初期のヘイズ(加熱前ヘイズ)を測定した。測定器には、日本電色工業社製NDH-300A型濁度計を用いた。加熱後ヘイズを測定するために、試料フィルム片の加熱処理前にヘイズ評価しなかった方の面(裏面)に保護フィルム(藤森工業製PC-T073)を気泡が入らないようにローラーを用いて密着させる。保護フィルムを貼り付けた状態でフィルムを150℃に加熱したオーブン内にセットし、90分間経過後フィルムを取り出す。その後保護フィルムを剥離し、フィルムを上記と同様の方法でヘイズを測定し、加熱後ヘイズを得る。この加熱前後のヘイズ差を、△ヘイズとする。
Δヘイズ(%)=(加熱後ヘイズ)-(加熱前ヘイズ)
【0211】
(14)ポリエステルフィルムの表面固有抵抗値(Ω/sq)
JIS K 6911に基づいて、表面固有抵抗測定器(タケダ理研(株)社製)を用い、23℃、40%RHの雰囲気下、印加電圧500Vにて、表面固有抵抗値(Ω)を測定した。
【0212】
(15)高速塗工適正
転写用配向フィルムの非塗工面、またはオリゴマーブロックコート面にグラビアコーターで位相差層形成用溶液を塗布・乾燥させた。その後で、転写用配向フィルムの巻き芯付近(開始から450m付近)での膜質の状態を観察し、以下の基準で評価した。
○:均一な塗膜であった。
×:静電気によると思われるハジキが認められた。
【0213】
(16)三次元表面粗さSRa、SRz、SRy
触針式三次元粗さ計(SE-3AK、株式会社小阪研究所社製)を用いて、針の半径2μm、荷重30mgの条件下に、フィルムの長手方向にカットオフ値0.25mmで、測定長1mmにわたり、針の送り速度0.1mm/秒で測定し、2μmピッチで500点に分割し、各点の高さを三次元粗さ解析装置(SPA-11)に取り込ませた。これと同様の操作をフィルムの幅方向について2μm間隔で連続的に150回、すなわちフィルムの幅方向0.3mmにわたって行い、解析装置にデータを取り込ませた。次に解析装置を用いて中心面平均粗さ(SRa)、十点平均粗さ(SRz)、最大高さ(SRy)を求めた。
【0214】
(17)離型面高低差0.5μm以上(離型面)、2.0μm(裏面)以上の突起数
フィルム長手方向に幅100mm、長さ100mmの試験片を切り出し、これを2枚の偏光板の間に鋏込んでクロスニコル状態とし、消光位が保たれる状態にセットした。この状態でニコン万能投影機V-12(測定条件:投影レンズ50倍、透過照明光束切替えノブ50倍、透過光検査)を用いて、光が透過し、光り輝くように見える部分(キズ、異物)の長径が50μm以上あるものを検出した。このように検出された部分を、試験片から適当な大きさに切り取り、3次元形状測定装置(菱化システム社製、マイクロマップTYPE550;測定条件:波長550nm、WAVEモード、対物レンズ10倍)を用い、フィルム面に対して垂直方向から観察し、測定した。このとき、フィルム面に対して垂直方向から観察したときに50μm以内に近接する凹凸は、同一のキズ、異物としてこれらを覆う長方形を想定し、この長方形の長さ及び幅をキズ、異物の長さ及び幅とした。このキズ、異物に関して、断面映像(SURFACE PROFILE DISPLAY)を用いて、欠点数を定量した。なお、測定は20枚の試験片について行い、1m当たりの欠点数に換算した。離型面では高低差(最も高いところと低いところの差)が0.5μm以上のものの欠点数を、裏面は高低差2.0μm以上のものの欠点数を数えた。
【0215】
<転写用配向フィルム用ポリエステル樹脂の製造>
(ポリエステル樹脂(PET(X-m))の製造)
エステル化反応缶を昇温し200℃に到達した時点で、テレフタル酸を86.4質量部及びエチレングリコール64.6質量部を仕込み、撹拌しながら触媒として三酸化アンチモンを0.017質量部、酢酸マグネシウム4水和物を0.064質量部、トリエチルアミン0.16質量部を仕込んだ。ついで、加圧昇温を行い、ゲージ圧0.34MPa、240℃の条件で加圧エステル化反応を行った後、エステル化反応缶を常圧に戻し、リン酸0.014質量部を添加した。さらに、15分かけて260℃に昇温し、リン酸トリメチル0.012質量部を添加した。次いで15分後に、高圧分散機で分散処理を行い、15分後、得られたエステル化反応生成物を重縮合反応缶に移送し、280℃で減圧下重縮合反応を行った。
【0216】
重縮合反応終了後、95%カット径が5μmのナスロン製フィルターで濾過処理を行い、ノズルからストランド状に押出し、予め濾過処理(孔径:1μm以下)を行った冷却水を用いて冷却、固化させ、ペレット状にカットし、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET(X-m))を得た。PET(X-m)の固有粘度は0.62dl/gであり、不活性粒子及び内部析出粒子は実質上含有していなかった。
【0217】
(ポリエステル樹脂(PET(Y)の調製)
乾燥させた紫外線吸収剤(2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンズオキサジノン-4-オン)10質量部と、PET(X-m)(固有粘度が0.62dl/g)90質量部を混合し、混練押出機を用い、紫外線吸収剤を含有するポリエチレンテレフタレート樹脂(PET(Y))を得た。
【0218】
(低オリゴマー量ポリエステル(X-s)の製造)
ポリエステル樹脂(PET(X-m))を減圧下160℃にて乾燥し、次いで、含水量が15.3g/Nmに調湿された窒素ガスを粗製ポリエステル1kg当たり、毎時300リットルで流通し、230℃で12時間加熱処理を行った。得られたポリエステルの固有粘度は0.617dl/gであり、環状三量体の含有量は0.29質量%であった。
【0219】
<易接着層成分の製造>
(ポリウレタン樹脂D-1の製造)
脂肪族系ポリカーボネートポリオールを構成成分とするポリウレタン樹脂D-1を次の手順で製造した。撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、及び温度計を備えた4つ口フラスコに、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート43.75質量部、ジメチロールブタン酸12.85質量部、数平均分子量2000のポリヘキサメチレンカーボネートジオール153.41質量部、ジブチルスズジラウレート0.03質量部、及び溶剤としてアセトン84.00質量部を投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次に、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン8.77質量部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450gを添加して、25℃に調整して、2000min-1で攪拌混合しながら、ポリウレタンプレポリマー溶液を添加して水分散した。その後、減圧下で、アセトンおよび水の一部を除去することにより、固形分濃度35質量%の水溶性ポリウレタン樹脂(D-1)を調製した。得られたポリウレタン樹脂(D-1)のガラス転移点温度は-30℃であった。
【0220】
(オキサゾリン系架橋剤E-1の製造)
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、滴下ロート、および攪拌機を備えたフラスコに水性媒体としてのイオン交換水58質量部とイソプロパノール58質量部との混合物、および、重合開始剤(2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)・二塩酸塩)4質量部を投入した。一方、滴下ロートに、オキサゾリン基を有する重合性不飽和単量体としての2-イソプロペニル-2-オキサゾリン16質量部、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(エチレングリコールの平均付加モル数・9モル、新中村化学製)32質量部、およびメタクリル酸メチル32質量部の混合物を投入し、窒素雰囲気下、70℃において1時間にわたり滴下した。滴下終了後、反応溶液を9時間攪拌し、冷却することで固形分濃度40質量%のオキサゾリン基を有する水溶性樹脂(E-1)を得た。
【0221】
(易接着層用塗布液の調製)
下記の塗剤を混合して易接着層用塗布液を作成した。
水 55.62質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリウレタン樹脂(D-1) 11.29質量%
オキサゾリン系架橋剤(E-1) 2.26質量%
粒子 0.71質量%
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
粒子 0.07質量%
(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
界面活性剤 0.05質量%
(シリコン系、固形分濃度100質量%)
(固形分濃度10質量%)
【0222】
(転写用配向フィルムロール1の製造)
転写用配向フィルムの中間層用の原料として、PET(X-m)樹脂ペレット90質量部と紫外線吸収剤を含有するPET(Y)樹脂ペレット10質量部を135℃で6時間減圧乾燥(1Torr)した後、押出機2(中間層II層用)に供給した。また、転写用配向フィルムの外層用の原料として、PET(X-m)を常法により乾燥して押出機1(外層(I層、III層)用)に供給し、285℃で溶解した。この2種のポリマーを、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度10μm粒子95%カット)で濾過し、2種3層合流ブロックにて積層し、口金よりシート状にして押し出した後、静電印加キャスト法を用いて表面温度30℃のキャスティングドラムに巻きつけて冷却固化し、未延伸フィルムを作った。この時、I層、II層、III層の厚さの比は10:80:10となるように各押出機の吐出量を調整した。
【0223】
次いで、リバースロール法により、この未延伸PETフィルムの片面に易接着用塗布液を、乾燥後の塗布量が0.08g/mになるように塗布した後、乾燥機に導き、80℃で20秒間乾燥した。
【0224】
この塗布層を形成した未延伸フィルムをテンター延伸機に導き、フィルムの端部をクリップで把持しながら、温度125℃の熱風ゾーンに導き、幅方向に4.0倍に延伸した。次に、幅方向に延伸された幅を保ったまま、温度210℃、10秒間で熱固定処理し、さらに3.0%の緩和処理を行った。その後、冷却したフィルムの両端部を切断し、0.4kg/mmの張力で巻き取り、フィルム厚み50μmの一軸配向PETフィルム(幅1800cm、転写用配向フィルム1)を得た。
得られたフィルムの中央部を50cm幅にスリットし、長さ約500mのフィルムロール(スリットフィルム1-c)とした。
得られたフィルムの中央部から右側50cm幅をスリットし、長さ約500mのフィルムロール(1-r1)とした。
得られたフィルムの右側端部50cm幅をスリットし、長さ約500mのフィルムロール(1-r2)とした。
【0225】
(転写用配向フィルムロール2の製造)
転写用配向フィルム1と同様の方法により作製された未延伸フィルム(易接着層塗工済み)を、加熱されたロール群及び赤外線ヒーターを用いて105℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で走行方向に3.3倍延伸した後、温度135℃の熱風ゾーンに導き、幅方向に3.5倍延伸し、熱固定温度を225℃とした以外は、転写用配向フィルム1と同様の方法で転写用配向フィルム2を得た。
得られたフィルムの中央部を50cm幅にスリットし、長さ約500mのフィルムロール(2-c)とした。
得られたフィルムの中央部から右側50cm幅をスリットし、長さ約500mのフィルムロール(2-r1)とした。
得られたフィルムの右側半分の中央部50cm幅をスリットし、長さ約500mのフィルムロール(2-r2)とした。
得られたフィルムの右側端部50cm幅をスリットし、長さ約500mのフィルムロール(2-r3)とした。
【0226】
(転写用配向フィルムロール3-cの製造)
フィルムロール1-cを巻き出し、130℃の加熱オーブンを通過させて巻き取り、アニール処理を行ない、転写用配向フィルムロール3-cを得た。オーブンの通過時間は20秒間とした。
【0227】
(転写用配向フィルムロール4-cの製造)
緩和処理条件を表1に示すように変えた以外は転写用配向フィルム1と同様に行い、転写用配向フィルムロール4-cを得た。中央部分をスリットした。
【0228】
(転写用配向フィルムロール5-cの製造)
熱固定温度を表1に示すように変えた以外は転写用配向フィルム1と同様に行い、転写用配向フィルムロール5-cを得た。中央部分をスリットした。
【0229】
(転写用配向フィルムロール6-cの製造)
幅方向の延伸倍率を表1に示すように変えた以外は転写用配向フィルム1と同様に行い、転写用配向フィルムロール6-cを得た。中央部分をスリットした。
【0230】
(転写用配向フィルムロール7-cの製造)
転写用配向フィルムロール6-cにアニール処理を行ない、転写用配向フィルムロール7-cを得た。
【0231】
(転写用配向フィルムロール8-cの製造)
転写用配向フィルム1と同様の方法により作製された未延伸フィルム(易接着層塗工済み)を、加熱されたロール群及び赤外線ヒーターを用いて105℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で走行方向に2.0倍延伸した後、温度135℃の熱風ゾーンに導き幅方向に4.0倍延伸し、転写用配向フィルム1と同様の方法で転写用配向フィルムロール8-cを得た。中央部分をスリットした。
【0232】
(転写用配向フィルムロール9-cの製造)
熱固定温度を170℃とし、緩和処理をおこなわず、0.6kg/mmの張力で巻き取った以外は転写用配向フィルム1と同様にし、転写用配向フィルムロール9-cを得た。中央部分をスリットした。
【0233】
(転写用配向フィルムロール10-cの製造)
転写用配向フィルム1と同様の方法により作製された未延伸フィルム(易接着層塗工済み)を、加熱されたロール群及び赤外線ヒーターを用いて105℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で走行方向に4.0倍延伸した後、乾燥機内で温度225℃、10秒間で処理し、周速差を利用して3.0%の緩和処理を行ない、転写用配向フィルムロール10-cを得た。中央部分をスリットした。
なお、上記転写用配向フィルムロール1~10-cでは、易接着層を塗工していない面(非易接着コート層面)を離型面として用いた。
【0234】
(転写用配向フィルムロール11-cの製造)
転写用配向フィルムロール1(1-c)の非易接着コート面にコロナ処理を行い、下記オリゴマーブロックコート剤を塗布し、加熱オーブン中で150℃3分間乾燥させ、転写用配向フィルムロール11-cを得た。塗布層の厚みは150nmであった。
・メラミン架橋アルキル変性アルキド樹脂(日立化成ポリマー社製:テスファイン322:固形分40%) 2.5部
・P-トルエンスルホン酸(日立化成ポリマー社製:ドライヤー900)
0.025部
・トルエン 50部
・メチルエチルケトン 47.2部
なお、オリゴマーブロックコート層面を離型面として用いた。
【0235】
(転写用配向フィルムロール12-cの製造)
片面の易接着層用塗布液の代わりに下記の塗剤(オリゴマーブロックコート剤)を用い、他方の面に下記の塗剤でシリカ粒子を含まないものを用いた以外は転写用配向フィルム1と同様に行ない、転写用配向フィルムロール12-cを得た。中央部分をスリットした。
・ヘキサメトキシメチロールメラミン 52質量%
・エポクロス(株式会社日本触媒製)。オキサゾリン基量7.7mmol/g
30質量%
・ポリグリセロールポリグリシジルエーテル 10質量%
・2-アミノ-2-メチルプロパノールハイドロクロライド 3質量%
・シリカ粒子(平均粒径0.07μm) 5質量%
(溶媒:トルエン/MEK=1/1)
なお、シリカ粒子を含まないオリゴマーブロックコート層面を離型面として用いた。
【0236】
(転写用配向フィルムロール13-cの製造)
PET(X-m)の代わりにPET(X-s)を用いた以外は転写用配向フィルムロール11-cと同様に行ない、転写用配向フィルムロール13-cを得た。中央部分をスリットした。
なお、オリゴマーブロックコート層面を離型面として用いた。
【0237】
(転写用配向フィルムロール14-cの製造)
易接着層用塗布液として下記の塗剤を用いた以外は転写用配向フィルム1と同様に行ない、帯電防止能を有する転写用配向フィルムロール14-cを得た。
水 16.70質量%
イソプロパノール 21.69質量%
ソルビトール 5.00質量%
チオフェン系樹脂 51.02質量%
(スタルク社製Bytron P AG、固形分濃度1.2質量%)
ポリウレタン樹脂(D-1) 3.81質量%
オキサゾリン系架橋剤水溶液(E-1) 1.22質量%
粒子 0.70質量%
(平均粒径40nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
粒子 0.07質量%
(平均粒径450nmのシリカゾル、固形分濃度40質量%)
界面活性剤 0.05質量%
(シリコン系、固形分濃度100質量%)
(固形分濃度10質量%)
なお、非易接着コート層面を離型面として用いた。
【0238】
(転写用配向フィルムロール15-cの製造)
転写用配向フィルムロール1(1-c)の易接着コート面に、ペルトロン C-4402(アンチモンドープ酸化スズ粒子)をMEKで固形分濃度5%にしたものを塗布し、加熱オーブン中で80℃3分間乾燥させ、厚み100nmの帯電防止コート層を設けた。一方、非易接着コート面には、転写用配向フィルム11-cと同様にしてオリゴマーブロックコート層を設け、帯電防止能を有する転写用配向フィルムロール15-cを得た。
なお、オリゴマーブロックコート層面を離型面として用いた。
【0239】
表1に、上記の転写用配向フィルムロールのそれぞれの製造条件と特性を示す。
【表1】
【0240】
実験例1A
(ラビング処理配向制御層の形成)
転写用配向フィルムロール1-cを巻き出して、長さ30cmに切り出し、非易接着コート面に下記組成のラビング処理配向制御層用塗料をバーコーターを用いて塗布し、80℃で5分間乾燥し、厚み200nmの膜を形成した。引き続き、得られた膜の表面をナイロン製の起毛布が巻かれたラビングロールで処理し、ラビング処理配向制御層を積層した転写用配向フィルムを得た。ラビングは切り出した長方形の短辺に対して45度になるように行った。
完全ケン化型ポリビニルアルコール(重量平均分子量800) 2質量部
イオン交換水 100質量部
界面活性剤 0.5質量部
【0241】
引き続き、ラビング処理を施した面に、下記組成の位相差層(液晶化合物配向層)形成用溶液をバーコート法により塗布した。110℃で3分間乾燥し、紫外線を照射して硬化させ、位相差層(液晶化合物配向層)としてのλ/4層を、転写用配向フィルム1-c上に形成させ、液晶化合物配向層転写用積層体を製造した。
棒状液晶化合物(BASF社製のLC242) 75質量部
下記化合物 20質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート 5質量部
イルガキュア379 3質量部
界面活性剤 0.1質量部
メチルエチルケトン 250質量部
【0242】
実験例2A、3A、6A~21A、実験例2B
転写用配向フィルムの種類を表2に示すように変えた以外は実験例1Aと同様にして、実験例2A、3A、6A~21A、実験例2Bの液晶化合物配向層転写用積層体を製造した。
【0243】
実験例4A、5A、実験例1B
転写用配向フィルムロール1-r2を長さ約30cmに切り出し、切り出したフィルムから、フィルムの配向軸と長辺の方向のなす角度が6度、9度、15度となるよう、できるだけ大きな面積の長方形に形を整えた。このフィルムを用いた以外は実験例3Aと同様にして、実験例4A、5A、実験例1Bの液晶化合物配向層転写用積層体を製造した。
【0244】
表2に、実験例1A~21A,1B,2Bの液晶化合物配向層転写用積層体の評価結果を示す。なお、表2の実験例4A、5A、実験例1Bの「MDまたはTDと配向方向との角度(最大箇所 度)」の項目の数値は、長方形サンプルの長辺と配向軸とのなす角度を示す。
【表2】
【0245】
表2から明らかなように、第一発明の要件を満たす実験例1A~21Aはいずれも、光漏れが◎、○又は△であり、位相差層(液晶化合物配向層)を配向フィルム上に積層した状態で位相差状態を評価することが可能であり、明るさ均一性にも優れていた。これに対して、配向フィルムの配向方向と、配向フィルムの流れ方向または流れ方向と直交する方向との間の角度が大きすぎる実験例1B及び実験例2Bはいずれも、光漏れが×であり、位相差層(液晶化合物配向層)を配向フィルム上に積層した状態で位相差状態を評価することが困難であった。
【0246】
また、表2から明らかなように、第二発明の要件を満たす実験例1A~3A,6A~14A,16A~21Aはいずれも、位相差層の配向角度ズレが◎、○又は△であった。これに対して、配向フィルムの流れ方向(MD方向)と、流れ方向と直交する方向(TD方向)との間の150℃熱収縮率の差が大きすぎる実験例15Aは、位相差層の配向角度ズレが×であった。実験例15Aの場合、次工程などでさらに熱が加わった場合や、位相差層を設ける時の温度等が高くなった場合に、位相差層の配向方向がずれて、対象物に設計通りの配向の位相差層を設けることができなくなる恐れがある。
【0247】
表3に、実験例1Aと比較した実験例17A~21Aの液晶化合物配向層転写用積層体のオリゴマーブロックコートの効果、及び帯電防止層の効果を示す。
【表3】
【0248】
表3から明らかなように、第三発明の要件を満たす実験例17A~19Aはいずれも、△ヘイズ(熱処理する前後のヘイズの増加量)が小さく、熱処理によるヘイズの増加が十分に抑制されていた。特に、配向フィルムを構成するポリエステル樹脂として低オリゴマー量のポリエステルを使用した実験例19Aは、表層オリゴマー含有量が少なく、そのため表面オリゴマー析出量も少なく、結果として△ヘイズが他の実施例より有意に小さく、熱処理によるヘイズの増加が極めて十分に抑制されていた。これに対して、表面オリゴマー析出量の大きい実験例1Aは、△ヘイズが大きく、熱処理によってヘイズが大きく増加してしまっていた。また、帯電防止コート層を設けた実験例21A、及び易接着層に帯電防止剤を添加した実験例20Aはいずれも、このようなことを行なっていない実験例1Aと比べてフィルムの表面抵抗が十分低く、帯電防止性に優れていた。
【0249】
表4に、代表として実験例1Aのフィルムの表面粗さを示す。なお、位相差層の評価において、ピンホール状やキズ状の欠点は、認められなかった。
【表4】
【0250】
実験例22A
(液晶化合物配向層積層偏光板の具体例としての円偏光板の製造)
熱可塑性樹脂基材として極限粘度0.63のポリエチレンテレフタレートを用いて厚さ100μmの未延伸フィルムを作成し、この未延伸フィルムの片面に、重合度2400、ケン化度99.9モル%のポリビニルアルコールの水溶液を塗布および乾燥して、PVA層を形成した。
得られた積層体を、120℃で周速の異なるロール間で長手方向に2倍に延伸して巻き取った。次に、得られた積層体を4%のホウ酸水溶液で30秒間の処理を行った後、ヨウ素(0.2%)とヨウ化カリウム(1%)の混合水溶液で60秒間浸漬し染色し、引き続き、ヨウ化カリウム(3%)とホウ酸(3%)の混合水溶液で30秒間処理した。
さらに、この積層体を72℃のホウ酸(4%)とヨウ化カリウム(5%)混合水溶液中で長手方向に一軸延伸を行い、引き続き、4%ヨウ化カリウム水溶液で洗浄、エアナイフで水溶液を除去した後に80℃のオーブンで乾燥し、両端部をスリットして巻き取り、幅30cm、長さ1000mの基材積層偏光子を得た。合計の延伸倍率は6.5倍で、偏光子の厚みは5μmであった。なお、厚みは基材積層偏光子をエポキシ樹脂に包埋して切片を切り出し、光学顕微鏡で観察して読み取った。
【0251】
超複屈折ポリエステルフィルム(コスモシャイン(R)SRF 厚さ80μm 東洋紡社製)に紫外線硬化型接着剤を用いて上記基材積層偏光子の偏光子面を貼り合わせた後、基材積層偏光子の基材を剥離した。さらにこれの偏光子面に市販の光学粘着剤シートを積層した。粘着剤シートの離型フィルムを剥離し、実験例1Aの液晶化合物配向層転写用積層体の液晶化合物配向層面と粘着剤層を貼り合わせ、その後、実験例1Aの積層体中の配向フィルムを剥離して、円偏光板を得た。得られた円偏光板は高い反射防止機能を有していた。なお、コスモシャイン(R)SRFの遅相軸と偏光子の消光軸とは垂直になるようにし、コスモシャイン(R)SRFのMD方向と実験例1Aの積層体中の配向フィルムのMD方向は平行になるようにした。
【産業上の利用可能性】
【0252】
本発明の液晶化合物配向層転写用配向フィルムは、上に設けられる液晶化合物配向層(位相差層や偏光層)の配向状態などを、液晶化合物配向層が配向フィルム上に積層された状態で適切に評価することができる。また、本発明の液晶化合物配向層転写用配向フィルムは、安価で機械的強度に優れたポリエステルなどの延伸フィルムを用いながら、設計通りの配向で位相差層や偏光層を転写することができ、ディスプレイの光漏れの問題を防止することができる。さらに、本発明の液晶化合物配向層転写用配向フィルムは、安価で機械的強度に優れたポリエステルなどの延伸フィルムを用いながら、フィルムの加熱処理時のヘイズの上昇や異物の発生を効果的に防止することができるので、設計通りの配向の位相差層や偏光層(液晶化合物配向層)を形成することができる。従って、本発明によれば、円偏光板などの位相差層積層偏光板を、高品質で安定して製造することができる。