(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024170628
(43)【公開日】2024-12-10
(54)【発明の名称】化学的アブレーション用製剤および種々疾患の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/045 20060101AFI20241203BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20241203BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20241203BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20241203BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20241203BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20241203BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20241203BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20241203BHJP
A61L 29/06 20060101ALI20241203BHJP
【FI】
A61K31/045
A61P11/00
A61P9/12
A61P3/10
A61P3/04
A61P13/12
A61P9/04
A61K31/19
A61L29/06
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024158261
(22)【出願日】2024-09-12
(62)【分割の表示】P 2022169101の分割
【原出願日】2013-10-30
(31)【優先権主張番号】61/796,118
(32)【優先日】2012-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/797,647
(32)【優先日】2012-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/848,483
(32)【優先日】2013-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/849,928
(32)【優先日】2013-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】515112997
【氏名又は名称】ニューロトロニック・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Neurotronic, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】リーシャオ・ワン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高血圧、糖尿病、肥満、心不全、末期の腎臓疾患、消化器系疾患、泌尿器系疾患、癌、腫瘍、疼痛、喘息、肺動脈性高血圧、および慢性閉塞性肺疾患の治療用製剤を提供する。
【解決手段】送達用カテーテルを神経に隣接する血管内腔に挿入し、ここで、血管内腔は肺動脈を含むこと;化学製剤を血管内腔へ送達用カテーテルから注入し、ここで、注入される化学製剤の量は、神経に障害または損傷を与え、疾患の症状を緩和する利益を提供するのに有効な量であること;および送達用カテーテルを血管内腔から引き抜くことを含む、疾患の治療方法における使用のための化学製剤であって、化学製剤が、10重量%~100重量%のエタノールおよび1重量%~100重量%の酢酸の少なくとも1つであり;疾患が、肺動脈性高血圧を含む、化学製剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)送達用カテーテルを疾患に罹患している組織に挿入すること;前記組織に傷害または損傷を与え、疾患の症状の緩和に利益をもたらすのに有効な量の製剤を一定の温度および一定の圧力で人体の組織に注入すること;及び
b)前記送達用カテーテルを前記人体から引き抜くことを含む疾患の治療方法であって、ここで前記製剤が前記組織と相互作用する、治療方法。
【請求項2】
前記疾患が高血圧、糖尿病、肥満、心不全、末期の腎臓疾患、消化器系疾患、泌尿器系疾患、癌、腫瘍、疼痛、喘息、肺動脈性高血圧、および慢性閉塞性肺疾患(COPD)からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記疾患が、頭部、腕、顔面、下肢、眼、顎、瘢痕、鼠径部、副腎、膀胱、子宮頸、結腸、食道、胆嚢、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、胃、および子宮の癌からなる群より選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記疾患に罹患している組織が腎動脈、血管内腔、非血管内腔、気道、副鼻腔、食道、呼吸器の内腔、消化器の内腔、および泌尿器の内腔からなる群より選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記製剤が、1種以上の成分のガス、蒸気、液体、溶液、乳剤または懸濁液を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記製剤が1種以上の成分の蒸気を含む場合に、前記蒸気を液体に凝縮することによって熱が発生する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記製剤が液体または溶液を含む場合に、前記製剤の温度が体温よりも高く、かつ、前記製剤から熱が伝達される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記製剤が乳剤または懸濁液を含む場合に、前記製剤の温度が体温よりも高く、かつ、前記製剤から熱が伝達される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記製剤の温度が-40~140℃の範囲である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記製剤の温度が-30~100℃の範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記製剤の温度が-20~80℃の範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記製剤の温度が0~140℃の範囲である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記製剤の温度が20~100℃の範囲である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記製剤の温度が30~80℃の範囲である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記製剤の温度が-40~0℃の範囲である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記製剤の温度が-30~-10℃の範囲である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記製剤の温度が-20~-30℃の範囲である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記製剤の温度が室温である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記製剤の温度が体温である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
組織の温度が前記製剤の温度とは異なる、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
組織の温度が前記製剤の温度よりも低い、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
組織の温度が前記製剤の温度よりも高い、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
組織の温度が-40~100℃の範囲である、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
組織の温度が-30~80℃の範囲である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
組織の温度が-20~80℃の範囲である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
組織の温度が-40~0℃の範囲である、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
組織の温度が-10~-35℃の範囲である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
組織の温度が-20~-30℃の範囲である、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
組織の温度が体温である、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記製剤の圧力が、約-40~150℃の温度で約1~12ATMである、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記製剤の圧力が1~12ATMの範囲である、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記製剤の圧力が1~8ATMの範囲である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記製剤の圧力が1~5ATMの範囲である、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記製剤の圧力が1~3ATMの範囲である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記製剤の圧力が身体の内腔または組織の圧力よりも高い、請求項1~29に記載の方法。
【請求項36】
前記製剤の量が0.2マイクロリットル~200ミリリットルの範囲である、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
治療時間が約2秒~約60分の間である、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記製剤から送達される熱またはエネルギーの量が約2カロリー/g~約150カロリー/gの間である、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記送達用カテーテルが、ニードルを用いた送達用カテーテル、バルーン付きカテーテル、バルーン付きカテーテル、注入カテーテル、またはそれらの組み合わせである、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記バルーン付きカテーテルがシングルバルーン送達用カテーテルまたはダブルバルーン送達用カテーテルを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記1種以上の成分の製剤が、水、生理食塩水、高張食塩水、フェノール、メタノール、エタノール、無水アルコール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、グリセロール、酢酸、乳酸、ヨウ化プロピル、ヨウ化イソプロピル、ヨウ化エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、硝酸エチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、リピオドール、尿素、ならびにそれらの誘導体およびそれらの組み合わせを含む、請求項1~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記製剤が、酸素、窒素、ヘリウム、アルゴン、空気、二酸化炭素、一酸化窒素、水、フェノール、メタノール、エタノール、無水アルコール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、グリセロール、酢酸、乳酸、ヨウ化プロピル、ヨウ化イソプロピル、ヨウ化エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、硝酸エチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチルおよびそれらの混合物のガスまたは蒸気を含む、請求項1~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記製剤が除神経用の治療薬を含む、請求項1~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記治療薬がナトリウムチャネル遮断薬、テトロドトキシン、サキシトキシン、デカルバモイルサキシトキシン、バニロイド、ネオサキシトキシン、リドカイン、コノトキシン、強心配糖体、ジゴキシン、グルタメート、スタウロスポリン、アムロジピン、ベラパミル、シマリン、ジギトキシン、プロスシラリジン、ウアバイン、ベラトリジン、ドーモイ酸、オレアンドリン、カルバマゼピン、アフラトキシン、グアネチジン、およびグアネチジン硫酸塩からなる群より選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記製剤が除神経術を画像化するための造影剤を含む、請求項1~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記造影剤がヨード、ヨウ化エチル、ヨウ化ナトリウム、リピオドール、ノノキシノールヨード、イオビトリドール、イオヘキソール、イオメプロール、イオパミドール、イオペントール、イオプロミド、イオベルソール、イオキシラン、イオトロラン、イオジキサノール、イオキサグレート、およびそれらの誘導体からなる群より選択される請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記製剤が、単純な蒸留によってはその成分を変化させることができない2種以上の成分の混合物である共沸混合物を含む、請求項1~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記共沸混合物がエタノール/水、プロパノール/水、イソプロパノール/水、ブタノール/水、酢酸/水、乳酸/水、乳酸エチル/水、乳酸エチル/エタノール、乳酸/エタノール/水、乳酸エチル/水/エタノール、酢酸エチル/エタノール、硝酸エチル/エタノール、および酢酸イソプロピル/エタノールからなる群より選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記製剤がエタノール/水、エタノール/水/酸素、エタノール/水/空気、エタノール/水/造影剤、エタノール/水/界面活性剤、エタノール/水/造影剤/界面活性剤、プロパノール/水、イソプロパノール/水、ブタノール/水、酢酸/水、酢酸/水/酸素、酢酸/水/空気、酢酸/水/エタノール、酢酸/水/造影剤、酢酸/水/造影剤/界面活性剤、酢酸/水/エタノール/造影剤、酢酸/水/エタノール/造影剤/界面活性剤、乳酸/水、乳酸/水/エタノール、乳酸/水/造影剤、乳酸/水/造影剤/界面活性剤、乳酸/水/エタノール/造影剤、乳酸/水/エタノール/造影剤/界面活性剤、乳酸エチル/水、乳酸エチル/エタノール、乳酸/エタノール/水、乳酸エチル/水/エタノール、酢酸エチル/エタノール、硝酸エチル/エタノール、または酢酸イソプロピル/エタノールを含む、請求項1~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
熱アブレーションおよび化学的アブレーションの併用による疾患の治療方法であって:
a)神経に隣接している身体の内腔に送達用カテーテルを挿入すること;
b)前記神経に障害または損傷を与え、前記疾患の症状の緩和に利益をもたらす量のエネルギーまたは/および製剤を望ましい温度で前記身体内腔の前記神経組織に送達すること;および
c)前記送達用カテーテルを前記身体内腔から引き抜くこと
を含む、疾患の治療方法。
【請求項51】
前記エネルギーが高周波、凍結融解、マイクロ波、レーザー、超音波、および高密度焦点式超音波からなる群より選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記熱アブレーションが高周波、凍結融解、マイクロ波、レーザー、超音波、および高密度焦点式超音波アブレーションからなる群より選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記エネルギーを送達している間、またはその前後に前記製剤が前記神経組織に注入される、請求項50~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記熱アブレーションを行っている間、またはその前後に前記製剤が前記神経組織に注入される、請求項50~52のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2012年11月2日に出願の米国仮特許出願第61/796,118号、2012年12月12日に出願の出願番号第61/797,647号、2013年1月4日に出願の出願番号第61/848,483号、および2013年2月5日に出願の出願番号第61/849,928号の優先権を主張し、それらの全体はここで参照することにより本明細書に組み入れられる。
【0002】
本発明の態様は、高血圧、糖尿病、肥満、心不全、末期の腎臓疾患、消化器系疾患、泌尿科系疾患、癌、腫瘍、疼痛、喘息、肺動脈性高血圧および慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの疾患を治療するための、化学的アブレーション用製剤、熱アブレーションと化学的アブレーションの併用および方法に関する。この製剤には、1種以上の成分を含むガス、蒸気、液体、溶液、乳剤、および懸濁液が含まれる。方法は、疾患に罹患している標的とする人体の組織に、製剤または/および熱エネルギーを送達することによる化学的アブレーションを伴うものである。
【背景技術】
【0003】
高血圧、すなわち高血圧症は、世界的に懸念されている健康上の問題であり、成人人口のおよそ30~40%がこの状態にあると予測されている。さらに罹病率が、特に発展途上国において高まっていくと考えられている。高血圧の診断と治療は未だ最適ではなく、多くの患者は、指針が定めている適正な値に血圧を制御できていない。従って、高血圧を管理するための新しい方法の開発が、特に、いわゆる抵抗性高血圧患者に対する方法の開発が望まれている。抵抗性高血圧の患者は、複数の降圧薬を耐容量ぎりぎりで使用しても血圧を管理することができない。
【0004】
高血圧は、腎交感神経の機能が亢進することによって引き起こされる。遠心性および求心性の腎交感神経は通常、大動脈から腎臓の方向に、動脈の外側を縦軸方向に通っている。これらの神経は全身性高血圧の開始と維持に非常に重要である。これらの神経を切断すると血圧を低下させることが可能であることが分かっている。例示的な実験から、高インスリン血症誘導性高血圧を患っているラットの腎交感神経を切除すると、対照と比較して、血圧が正常血圧レベルまで低下することが示されている[Huang W-C,et al.Hypertension 1998;32:249-254]。
【0005】
これまで、腎神経の切断は外科的な方法によって行われてきたが、最近になって、腎臓動脈内で、神経を高周波アブレーションによって加熱・破壊する、カテーテルを用いた治療が試されてきている。ヒトでのRFアブレーションカテーテル法の試行も行われており、この治験のカテーテル治療群に登録された患者では血圧が低下したと報告された[Krum H,et al. Lancet 2009;373(9671):1228-1230]。
【0006】
良性前立腺肥大症は非癌性の前立腺肥大であり、60才を超える男性の50%以上がこの症状を患っている。若年期の前立腺はクルミ程度の大きさ・形で、重量は約20グラムである。前立腺の肥大は正常な過程だと考えられており、年齢を重ねると前立腺は徐々に大きくなり、正常の大きさの2倍以上になる。前立腺が大きくなると尿道が圧迫されて狭くなり、尿路閉塞が引き起こされ、排尿が困難になる。
【0007】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、2種類の主要な気道閉塞障害である慢性気管支炎と肺気腫を分類するために用いられている用語である。およそ1600万人の米国人がCOPDに罹患しており、そのうちの80~90%が人生の多くを喫煙者として過ごした。COPDは米国における主要な死因のうちの1つである。慢性気管支炎は気管支の炎症である。気管支は気管と肺をつないでいる。炎症を起こすと気管支は粘液を分泌し、慢性の咳が引き起こされる。肺気腫は肺胞、つまり肺の中にある空気嚢の過膨張である。この状態では息切れが起こる。
【0008】
喘息は、気道の炎症、粘液の過剰生成および気道過敏、ならびに気道が過剰に狭まる状態または刺激に容易に反応する状態を特徴とする慢性の呼吸器疾患である。喘息のエピソードまたは発作は気道の狭小化を引き起こし、それによって呼吸が困難になる。喘息発作は多くの活動に対する制限となって、患者の人生に大きな影響を及ぼす場合がある。重症例では、喘息発作は命を脅かす可能性もある。今日、ぜんそくの治療法は知られていない。
【0009】
肺動脈性高血圧(PAH)は、平均肺動脈圧の上昇および肺血管抵抗の増加を特徴とし、右心の機能低下と若年死をもたらす疾患群として定義されている。最近の標的化治療によって治療は進歩してきたが、PAHに対する治療法はなく、PAHは未だに生命を脅かす障害である。肺動脈の高周波除神経がPAH患者にとって安全で効果的であるという予備的な報告がある。
【0010】
慢性副鼻腔炎は、副鼻腔の膜の1種以上に起こる炎症である。慢性副鼻腔炎は治るまでに3週間以上かかり、数ヶ月と長引くことも多い。慢性副鼻腔炎の例では一般に、組織も損傷する。米国疾病予防管理センター(CDC)によれば、年間に3700万例の慢性副鼻腔炎が報告される。
【0011】
高周波(RF)アブレーションは高血圧、喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療に用いられてきた。カテーテルを用いた高周波(RF)除神経の利用は治療効果があると考えられているが、RF術によって生じた血管壁や神経の恒久的な損傷によって、長期的にどのような影響が現れるかは不明である。高周波エネルギーは、血管壁内に熱を生じることによって、血管の除神経を行う。RFプローブが動脈の内側に当たり、RFエネルギーが組織を介して伝達される。この方法は正確な制御を欠いている。内皮や平滑筋が損傷を受け、その結果、血管損傷や閉塞が生じる可能性がある。SYMPLICITY HTN-2臨床試験では、3群の患者が存在することが示されている。約10%は非反応者であり;39%は良い反応者で、血圧は140mmHgを切り;その間50%の患者は僅かに反応を示して少なくとも血圧が10mmHg低下する。しかしながら現時点では、この血圧の低下の臨床的な関連については分からない。高血圧患者の多くにとって、安全性と効力を改善する必要がある。
【0012】
従来から行われている外科手術や、腫瘍の治療に用いられている腫瘍手術を補完するために、様々な剥離技術が開発されてきた。これらの技術には、肝動脈化学閉塞術、アルコールもしくは酢酸などの化学薬品を使った経皮的アブレーション、または高周波アブレーションもしくは凍結療法を使った経皮的治療が含まれる。肝臓の腫瘍の治療に使われる局所的および限局的な剥離技術については広く解析されており、これらは近年、様々な他の腫瘍の治療にも用いられている。全身性の化学療法および外部照射は両方とも、腫瘍の反応性が低いこととその毒性から用途が制限されている。治療の安全性と効果を改善するための新しいアブレーション方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0013】
疾患、例えば高血圧、糖尿病、肥満、心不全、末期の腎臓疾患、消化器系疾患、泌尿器系疾患、癌、腫瘍、疼痛、喘息、肺動脈性高血圧、および慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療方法を開示する。いくつかの態様においてこの方法は、標的とする病気の組織に有効量の製剤を送達することを伴う。製剤は、1種以上の成分のガス、蒸気、液体、溶液、乳剤、または懸濁液を含む場合がある。方法は、人体の組織に、様々な温度で製剤を送達することを伴う。温度によって、治療用製剤の安全性および効力が高まる可能性がある。好適な温度は、-40~140℃の範囲であり、好ましくは-30~100℃の範囲であり、最も好ましくは-30~80℃の範囲であり得る。注入される製剤の圧力は、身体の内腔の圧力(1ATM)よりも高い場合がある。例えば、標的組織に注入される製剤の圧力範囲は1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。製剤は、二成分、三成分、四成分、または五成分以上を含む製剤のうちの1種類である。送達系は、経皮的またはより侵襲的でない送達方法であってよい。いくつかの態様において製剤は、身体の内腔の神経への吸収および浸透を高める成分を1種類以上含む。
【0014】
いくつかの態様において方法は、有効量のエネルギーおよび製剤を標的神経に送達することを伴う。エネルギーは例えば、高周波、凍結融解、マイクロ波、レーザー、超音波、および高密度焦点式超音波エネルギーからなる群より選択することができる。上述のように、製剤は、1種類以上の成分の、ガス、蒸気、液体、溶液、乳剤、および懸濁液を含む場合がある。方法は、様々な温度における人体の神経への熱および化学的アブレーションによって高血圧、糖尿病、肥満、心不全、末期の腎臓疾患、消化器系疾患、泌尿器系疾患、喘息、肺動脈性高血圧および慢性閉塞性肺疾患(COPD)を治療するための、熱アブレーションと化学的アブレーションの併用、それらの製剤および方法を含みうる。熱エネルギーによって、治療用化学的アブレーションの安全性および効力が高まる可能性がある。化学的アブレーションは、アブレーション温度およびアブレーション時間を低減することによって、治療用熱アブレーションの安全性および効力を改善する可能性がある。温度は、-40~140℃の範囲、好ましくは-30~100℃の範囲、最も好ましくは-30~80℃の範囲となる可能性がある。注入される製剤の圧力は、身体の内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる可能性がある。例えば、標的組織に注入される製剤の圧力範囲は、1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMになり得る。製剤は、二成分、三成分、四成分、または五成分以上を含む製剤のうちの1つであってよい。送達系は、経皮的なより侵襲性の低い送達カテーテルであってよい。製剤送達用のカテーテルは、ニードルを用いたカテーテルであってよい。製剤送達用のカテーテルはまた、バルーンを使ったカテーテルの場合もある。バルーン付きカテーテルは、シングルまたはダブルバルーンを有するものであってよい。製剤送達用のカテーテルは、注入用カテーテルであってよい。エネルギー送達用のカテーテルは、高周波、凍結融解、マイクロ波、レーザー、超音波、および高密度焦点式超音波送達用カテーテルからなる群より選択することができる。いくつかの態様では、開示の方法によって、熱エネルギーと、身体内腔の神経への吸収および浸透を高める成分を1種以上含む製剤との併用が提供される。
【0015】
いくつかの態様では、開示の方法によって、アブレーションサイズを大きくしながらも加熱によって生じる可能性のある合併症の危険性を最低限に抑えることで、高周波アブレーションの安全性および効力が改善される。そのような合併症の例としては、血栓形成、スチームポップ、発泡、病変の焦げ、再狭窄、内部および外膜の線維化、ならびにカテーテル操作(つまり穿孔処理)に関連するその他の合併症が挙げられる。局所的な熱アブレーション(RFアブレーション)は不均一で、外膜中に存在する神経まで到達しない。不十分な局所的RFアブレーションは効力が弱い(血圧があまり低下しない)。電極の大きさを小さくすること(その結果、血流による受動的な冷却が起こる)や能動液を介して電極を内部から(閉ループ)または外部から(開ループ)冷却することによって、合併症を最小限に抑えることができる。電極を冷却することで、神経組織までのエネルギー送達量が増える。外部からの冷却(開ループ)の一態様では、化学的製剤が能動冷却液に取って代わることができる。本開示の製剤は、電極を冷却するためだけでなく、化学的アブレーションにも使用することができる。そのため化学的アブレーション用製剤を、熱アブレーションを行っている間および熱アブレーションの前後に送達することが可能である。熱アブレーションには、高周波、凍結融解、マイクロ波、レーザー、超音波、および高密度焦点式超音波アブレーションが含まれる。
【0016】
いくつかの態様において製剤の成分は、水、生理食塩水、高張食塩水、フェノール、メタノール、エタノール、無水アルコール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、グリセロール、酢酸、乳酸、ヨウ化プロピル、ヨウ化イソプロピル、ヨウ化エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、硝酸エチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、尿素、リピオドール、界面活性剤、それらの誘導体およびそれらの組み合わせから選択される。
【0017】
いくつかの態様では、製剤の成分は1種以上のガスを含む。好適なガスとしては、酸素、窒素、ヘリウム、アルゴン、空気、二酸化炭素、一酸化窒素、ならびに有機・無機化合物、水、フェノール、メタノール、エタノール、無水アルコール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、グリセロール、酢酸、乳酸、ヨウ化プロピル、ヨウ化イソプロピル、ヨウ化エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、硝酸エチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、それらの誘導体、およびその組み合わせの蒸気が挙げられる。
【0018】
いくつかの態様では、製剤の成分は1種以上の界面活性剤を含む。界面活性剤の例としては、ラウリン酸PEG、ツイーン20、ツイーン40、ツイーン60、ツイーン80、オレイン酸PEG、ステアリン酸PEG、ラウリン酸PEGグリセリル、オレイン酸PEGグリセリル、ステアリン酸PEGグリセリル、ラウリン酸ポリグリセリル、オレイン酸ポリグリセリル、ミリスチン酸ポリグリセリル、パルミチン酸ポリグリセリル、ラウリン酸ポリグリセリル-6、オレイン酸ポリグリセリル-6、ミリスチン酸ポリグリセリル-6、パルミチン酸ポリグリセリル-6、ラウリン酸ポリグリセリル-10、オレイン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、パルミチン酸ポリグリセリル-10、モノラウリン酸ソルビタンPEG、モノラウリン酸ソルビタンPEG、モノオレイン酸ソルビタンPEG、ステアリン酸ソルビタンPEG、オレイルエーテルPEG、ラウロイルエーテルPEG、オクトキシノール、モノキシノール、チロキサポール、ショ糖モノパルミタート、ショ糖モノラウラート、デカノイル-N-メチルグルカミド、n-デシル-β-D-グルコピラノシド、n-デシル-β-D-マルトピラノシド、n-ドデシル-β-D-グルコピラノシド、n-ドデシル-β-D-マルトシド、ヘプタノイル-N-メチルグルカミド、n-ヘプチル-β-D-グルコピラノシド、n-ヘプチル-β-D-チオグルコシド、n-ヘキシル-β-D-グルコピラノシド、ノナノイル-N-メチルグルカミド、n-ノイル-β-D-グルコピラノシド、オクタノイル-N-メチルグルカミド、n-オクチル-β-D-グルコピラノシド、オクチル-β-D-チオグルコピラノシド;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、リシノール酸ナトリウム、ジオクチルナトリウムスルホこはく酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ジアルキルメチルベンジルアンモニウム塩、およびスルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル、有機酸、任意の有機酸および有機アミンの塩、ポリグリシドール、グリセロール、マルチグリセロール(multiglycerol)、ガラクチトール、ジ(エチレングリコール)、トリ(エチレングリコール)、テトラ(エチレングリコール)、ペンタ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)オリゴマー、ジ(プロピレングリコール)、トリ(プロピレングリコール)、テトラ(プロピレングリコール、およびペンタ(プロピレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)オリゴマー、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体、プルロニック、プルロニック85、ならびにそれらの誘導体およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0019】
いくつかの態様において製剤は、少なくとも1種の油、脂肪酸、または脂質を含む。その例としては、ダイズ油、植物油、花卉油、動物油、水産油、バター脂肪、ココナッツ油、ヤシ油、オリーブ油、落花生油、魚油、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、オクタデカトリエン酸、エイコサン酸、エイコセン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、トコトリエノール、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノレイン酸、アルファ-リノレイン酸、ガンマ-リノレイン酸、ベヘン酸、エルカ酸、リグノセリン酸、天然もしくは合成リン脂質、モノ-、ジ-、またはトリ-アシルグリセロール、カルジオリピン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルコリン、アルファトコフェロール、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、スフィンゴ脂質、プロスタグランジン、ガングリオシド、ネオビー(neobee)、ニオソーム、およびその誘導体が挙げられる。
【0020】
いくつかの態様において製剤は、1種以上の治療薬または除神経用の薬剤を含む。治療薬の例としては、ナトリウムチャネル遮断薬、テトロドトキシン、サキシトキシン、デカルバモイルサキシトキシン、バニロイド、ネオサキシトキシン、リドカイン、コノトキシン、強心配糖体、ジゴキシン、グルタメート、スタウロスポリン、アムロジピン、ベラパミル、シマリン、ジギトキシン、プロスシラリジン、ウアバイン、ベラトリジン、ドーモイ酸、オレアンドリン、カルバマゼピン、アフラトキシン、グアネチジン、およびグアネチジン硫酸塩が挙げられる。別の態様において製剤は、除神経術を画像化するための造影剤のうちの1種を含む。造影剤には、ヨード、ヨウ化エチル、ヨウ化ナトリウム、リピオドール、ノノキシノールヨード、イオビトリドール、イオヘキソール、イオメプロール、イオパミドール、イオペントール、イオプロミド、イオベルソール、イオキシラン、イオトロラン、イオジキサノール、イオキサグレート、およびそれらの誘導体が含まれる。
【0021】
いくつかの態様において製剤は、共沸混合物を含む。共沸混合物とは、単純な蒸留によってはその成分を変化させることができない、2種以上の成分の混合物である。この現象は、共沸混合物を沸騰させた時に生じる蒸気が、もとの混合液と同じ割合の組成であることによって起こる。製剤の共沸混合物の例としては、エタノール/水、エタノール/水/造影剤、エタノール/水/界面活性剤、エタノール/水/造影剤/界面活性剤、プロパノール/水、イソプロパノール/水、ブタノール/水、酢酸/水、酢酸/水/エタノール、酢酸/水/造影剤、酢酸/水/造影剤/界面活性剤、酢酸/水/エタノール/造影剤、酢酸/水/エタノール/造影剤/界面活性剤、乳酸/水、乳酸/水/エタノール、乳酸/水/造影剤、乳酸/水/造影剤/界面活性剤、乳酸/水/エタノール/造影剤、乳酸/水/エタノール/造影剤/界面活性剤、乳酸エチル/水、乳酸エチル/エタノール、乳酸/エタノール/水、乳酸エチル/水/エタノール、酢酸エチル/エタノール、硝酸エチル/エタノール、酢酸イソプロピル/エタノール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0022】
いくつかの態様において製剤は、1種以上の成分のガスまたは蒸気の状態である。蒸気またはガス製剤の例としては、酸素、窒素、ヘリウム、アルゴン、空気、二酸化炭素、一酸化窒素、水、フェノール、メタノール、エタノール、無水アルコール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、グリセロール、酢酸、乳酸、ヨウ化プロピル、ヨウ化イソプロピル、ヨウ化エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、硝酸エチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチルおよびそれらの混合物が挙げられる。蒸気製剤は界面活性剤を含んでいてもよい。蒸気製剤は、治療薬を含んでいてもよい。蒸気製剤は、造影剤、例えばリピオドール、ヨードを含んでいる場合がある。蒸気は、共沸混合物を含んでいる場合がある。蒸気は、二成分、三成分、四成分、または五成分以上を含む製剤のうちの1つであってよい。蒸気製剤の上昇温度は、0~140℃の範囲、好ましくは15~100℃、最も好ましくは20~85℃であってよい。注入される蒸気の圧力は身体の内腔の圧力(1ATM)よりも高い場合がある。例えば、標的組織に注入される蒸気の圧力範囲は1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。
【0023】
いくつかの態様において製剤は、1種以上の成分の液体の状態である。液体製剤の例としては、水、生理食塩水、高張食塩水、フェノール、メタノール、エタノール、無水アルコール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、グリセロール、酢酸、乳酸、ヨウ化プロピル、ヨウ化イソプロピル、ヨウ化エチル、リピオドール、酢酸メチル、酢酸エチル、硝酸エチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、尿素、界面活性剤、その他が挙げられる。液体製剤は治療薬を含んでいてもよい。液体製剤は造影剤を含んでいてもよい。液体製剤は共沸混合物を含んでいてもよい。液体製剤は、二成分、三成分、四成分、または五成分以上を含む製剤のうちの1つであってよい。液体製剤の望ましい温度は、-40~140℃の範囲、好ましくは-30~100℃、最も好ましくは-20~80℃であってよい。注入される液体の圧力は身体の内腔の圧力(1ATM)よりも高い場合がある。例えば、標的組織に注入される液体の圧力範囲は、1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMである場合がある。液体製剤には、溶液が含まれる場合がある。液体製剤には懸濁液が含まれる場合がある。液体製剤には乳剤が含まれる。
【0024】
いくつかの態様において疾患の治療方法は、人体の疾患に罹患している組織に送達用カテーテルを経皮的に挿入すること、そのカテーテルを介して身体組織へと製剤を注入すること(ここで送達される製剤および/または熱もしくは冷(heat or cool)の量は、組織に傷害または損傷を組織に与え、治療効果(例えば神経調節、血圧低下、息切れの治療)をもたらすのに有効であり)、および身体から送達用カテーテルを引き抜くことを含む。加熱または冷却は、製剤および組織の反応速度を加速することによって効果を高めるために用いられ得る。疾患の例としては、高血圧、糖尿病、肥満、心不全、末期の腎臓疾患、消化器系疾患、泌尿器系疾患、癌、腫瘍、疼痛、喘息、肺動脈性高血圧、および慢性閉塞性肺疾患(COPD)が挙げられる。体内組織の例としては、腎動脈、血管内腔、非血管内腔、気道、副鼻腔、食道、呼吸器の内腔、消化器の内腔、癌、腫瘍、疼痛、および泌尿器の内腔が挙げられる。製剤の例には、1種以上の成分の、ガス、蒸気、液体、溶液、乳剤、および懸濁液が含まれる。製剤が1種以上の成分の蒸気の場合には、組織内で蒸気を液体に凝縮することによって、熱を発生させることができる。製剤が液体または溶液の場合には、製剤の温度によって(つまり製剤の温度を体温よりも高くまたは低くすることで)、冷または熱を発生させることができる。液体製剤の温度は、-40~140℃の範囲、好ましくは-30~100℃、最も好ましくは-20~80℃であってよい。一態様では、製剤の温度は室温の場合がある。いくつかの態様では、製剤の温度は-40~-20℃の範囲である。いくつかの態様では、製剤の温度は15~80℃の範囲である。いくつかの態様では、製剤の温度は体温である。いくつかの態様では、製剤の温度は50~80℃の範囲である。いくつかの態様では、治療される組織の温度は製剤の望ましい温度より低く、かつ、体温よりも高い。治療される組織の温度は、-40~100℃の範囲、好ましくは-30~80℃、最も好ましくは-20~80℃であってよい。いくつかの態様では、治療される組織の温度は-40~-20℃の範囲である。いくつかの態様では、治療される組織の温度は15~80℃の範囲である。いくつかの態様では、治療される組織の温度は体温である。いくつかの態様では、治療される組織の温度は50~80℃の範囲である。送達用カテーテルはニードルまたはニードルを用いたカテーテルであって、画像による誘導を用いる。例えば、画像による誘導は、超音波、X線、CTスキャン、スコープ、またはそれらの組み合わせであってよい。注入される製剤の圧力は身体の内腔の圧力(1ATM)よりも高い場合がある。例えば、標的組織に注入される製剤の圧力範囲は1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。送達用カテーテルはバルーン付きカテーテルであってよい。例えば、バルーン付きカテーテルはシングルまたはダブルバルーンを有するものであってよい。送達用カテーテルは注入カテーテルであってよい。いくつかの態様では、カテーテルはバルーンカテーテルと注入カテーテルの組み合わせである。
【0025】
いくつかの態様において疾患の治療方法は、潅注熱アブレーションカテーテルを神経に隣接した身体の内腔に経皮的に挿入すること、神経に隣接した身体内腔の組織に製剤を注入すること;神経に隣接した身体内腔の組織を熱アブレーションによって焼灼すること;熱アブレーションを行っている間および/または熱アブレーションの前後に、製剤を注入すること(ここで送達される製剤および/またはエネルギーの量は、神経に傷害または損傷を与え、利益、例えば血圧の低下および息切れの低減をもたらすのに有効な量であり);および潅注熱アブレーションカテーテルを身体内腔から引き抜くことを含む。潅注熱アブレーションカテーテルは、高周波、凍結融解、マイクロ波、レーザー、超音波、および高密度焦点式超音波潅注アブレーションカテーテルからなる群より選択されるものである可能性がある。エネルギーは、製剤と神経との反応速度を加速することによって、効果を高めることができる。疾患は、高血圧、糖尿病、肥満、心不全、末期の腎臓疾患、消化器系疾患、泌尿器系疾患、喘息、肺動脈性高血圧、および慢性閉塞性肺疾患(COPD)からなる群より選択されるものであってよい。身体の内腔とは、腎動脈、血管内腔、非血管内腔、気道、副鼻腔、食道、呼吸器の内腔、消化器の内腔、および/または泌尿器の内腔を含む場合がある。製剤は、1種以上の成分のガス、蒸気、液体、溶液、乳剤、および懸濁液からなる群より選択されるものであってよい。製剤は、1種以上の成分の蒸気を含む場合には、組織内で蒸気を液体に凝縮することによって熱を発生させることができる。製剤が液体または溶液の場合には、製剤の温度を体温よりも高くまたは体温よりも低くすることによって、冷または熱を発生させることができる。液体製剤の温度は、-40~140℃の範囲であってよく、好ましくは-30~100℃の範囲、最も好ましくは-20~80℃の範囲である。いくつかの態様では、製剤の温度は室温である。いくつかの態様では、製剤の温度は-40~-20℃の範囲である。いくつかの態様では、製剤の温度は15~80℃の範囲である。いくつかの態様では、製剤の温度は体温である。いくつかの態様では、製剤の温度は50~80℃の範囲である。いくつかの態様では、神経に隣接している治療される組織の温度は製剤の望ましい温度よりも低く、かつ、体温よりも高い。神経に隣接している治療される組織の温度は-40~100℃の範囲であってよく、好ましくは-30~80℃の範囲、最も好ましくは-20~80℃の範囲である。いくつかの態様では、神経に隣接している治療される組織の温度は-40~-20℃の範囲である。いくつかの態様では、神経に隣接している治療される組織の温度は15~80℃の範囲である。いくつかの態様では、神経に隣接している治療される組織の温度は体温である。いくつかの態様では、神経に隣接している治療される組織の温度は50~80℃の範囲である。注入される製剤の圧力は身体内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる場合がある。例えば、標的組織へと注入される製剤の圧力範囲は、1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。
【0026】
いくつかの態様では、疾患の治療に、非潅注熱アブレーションカテーテルと製剤送達用カテーテルを併用しても、あるいはこの両者を同時に使用してもよい。疾患の治療方法は、非潅注熱アブレーションカテーテルまたは/および製剤送達用カテーテルを、神経に隣接している身体内腔に経皮的に挿入すること;神経に隣接している身体内腔の組織に製剤を注入すること;神経に隣接している身体内腔の組織を熱アブレーションによって焼灼すること;熱アブレーションを行っている間および/または熱アブレーションの前後に製剤を注入すること(ここで送達される製剤および/またはエネルギーの量は、その神経に傷害または損傷を与え、利益、例えば血圧の低下および息切れの低減をもたらすのに有効な量であり);ならびに非潅注熱アブレーションカテーテルまたは/および製剤送達用カテーテルを身体内腔から引き抜くことを含む可能性がある。非潅注熱アブレーションカテーテルは、高周波、凍結融解、マイクロ波、レーザー、超音波、および高密度焦点式超音波非潅注アブレーションカテーテルからなる群より選択されるものであってよい。製剤送達用カテーテルは、ニードルを用いたカテーテルである場合がある。製剤送達用カテーテルは、バルーン付きカテーテルであってもよい。バルーン付きカテーテルは、1つまたは2つのバルーンを有するものであってよい。製剤送達用カテーテルは注入カテーテルであってもよい。エネルギーは、製剤と神経との反応速度を加速することによって効果を高めることができる。疾患は、高血圧、糖尿病、肥満、心不全、末期の腎臓疾患、消化器系疾患、泌尿器系疾患、喘息、肺動脈性高血圧、および慢性閉塞性肺疾患(COPD)からなる群より選択されるものであってよい。身体の内腔は、腎動脈、血管内腔、非血管内腔、気道、副鼻腔、食道、呼吸器の内腔、消化器の内腔、および泌尿器の内腔からなる群より選択されるものであってよい。製剤は、1種以上の成分のガス、蒸気、液体、溶液、乳剤、および懸濁液からなる群より選択されるものである。製剤が1種以上の成分の蒸気である場合には、組織内で蒸気を液体に凝縮することによって熱を発生させることができる。製剤は液体または溶液の場合には、製剤の温度を体温よりも高くまたは体温よりも低くすることによって、冷または熱を発生させることができる。液体製剤の温度は-40~140℃の範囲であってよく、好ましくは-30~100℃の範囲、最も好ましくは-20~80℃の範囲である。いくつかの態様では、製剤の温度は室温である。いくつかの態様では、製剤の温度は-40~-20℃の範囲である。いくつかの態様では、製剤の温度は15~80℃の範囲である。いくつかの態様では、製剤の温度は体温である。いくつかの態様では、製剤の温度は50~80℃の範囲である。いくつかの態様では、神経に隣接している治療される組織の温度は製剤の望ましい温度よりも低く、かつ、体温よりも高い。神経に隣接している治療される組織の温度は-40~100℃の範囲であってよく、好ましくは-30~80℃の範囲、最も好ましくは-20~80℃の範囲である。いくつかの態様では、神経に隣接している治療される組織の温度は-40~-20℃の範囲である。いくつかの態様では、神経に隣接している治療される組織の温度は15~80℃の範囲である。いくつかの態様では、神経に隣接している治療される組織の温度は体温である。いくつかの態様では、神経に隣接している治療される組織の温度は50~80℃の範囲である。注入される製剤の圧力は身体内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる場合がある。例えば、標的組織へと注入される製剤の圧力範囲は、1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。
【0027】
前述の一般的な記載および以降の詳細な説明はいずれも、特許請求した本発明を例示・説明するためだけのものであり、限定しようとするものではないと理解される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、ダブルバルーン送達用カテーテル態様の例示的な態様の透視図である。
【
図2A】
図2Aは、シングルバルーン送達用カテーテルを用いた気道への製剤注入の態様である。
【
図2B】
図2Bは、ダブルバルーン送達用カテーテルを用いた気道への製剤注入の態様である。
【
図2C】
図2Cは、ダブルバルーン送達用カテーテルを用いた腎動脈への製剤注入の態様である。
【
図3】
図3は、身体内腔にあるダブルバルーン送達用カテーテルの、部分的な断面図の態様である。
【
図4】
図4は、ダブルバルーン送達用カテーテルを用いた肺動脈への製剤注入の態様である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
有効量の製剤を標的組織、例えば疾患に罹患している組織に送達することによる疾患の治療を指向する態様を開示する。「疾患に罹患している組織」という用語は、疾患に寄与している全ての組織を含むものである。例えば疾患は、高血圧、糖尿病、肥満、心不全、末期の腎臓疾患、消化器系疾患、泌尿器系疾患、癌、腫瘍、疼痛、喘息、肺動脈性高血圧、および慢性閉塞性肺疾患(COPD)のうちの1つである場合がある。癌の例としては、副腎、膀胱、子宮頸、結腸、食道、胆嚢、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、胃、および子宮の癌が挙げられる。製剤は、1種以上の成分のガス、蒸気、液体、溶液、乳剤、および懸濁液の1つ以上を含む。方法は、望ましい温度の製剤を人体の組織に送達することを伴う場合がある。組織の例としては、腎動脈、血管内腔、非血管内腔、気道、副鼻腔、食道、呼吸器の内腔、消化器の内腔、癌、腫瘍、および泌尿器の内腔が挙げられる。温度によって、治療用製剤の安全性および効力が高まる場合がある。温度は-40~140℃の範囲であってよく、好ましくは-30~100℃、最も好ましくは-20~80℃である。注入される製剤の圧力は身体内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる場合がある。例えば、標的組織へと注入される製剤の圧力範囲は、1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。治療される組織の温度は製剤の温度と違っていても良い。治療される組織の温度は-40~100℃の範囲であってよく、好ましくは-30~80℃である。傷害または損傷に送達される製剤およびエネルギーの量は、疾患に罹患している組織を傷つけるかまたは傷害を与えるかまたは切除し、治療効果、例えば血圧低下、腫瘍退縮、疼痛緩和、喘息・肺動脈性高血圧の症状の緩和、およびCOPDの治療をもたらすのに効果的な量であることが好ましい。いくつかの態様では、エネルギーまたは熱が製剤と組織との反応速度を加速することによって、その効果を高めることができる。
【0030】
有効量のエネルギーまたは/および製剤を標的となる神経組織に送達することによる疾患の治療を指向する態様を開示する。例えば疾患は、高血圧、糖尿病、肥満、心不全、末期の腎臓疾患、消化器系疾患、泌尿器系疾患、喘息、肺動脈性高血圧、および慢性閉塞性肺疾患(COPD)からなる群より選択されるものであってよい。エネルギーは、高周波、凍結融解、マイクロ波、レーザー、超音波、および/または高密度焦点式超音波エネルギーであってよい。製剤は、1種以上の成分のガス、蒸気、液体、溶液、乳剤、および/または懸濁液であってよい。方法は、様々な温度における人体の神経への熱および化学的アブレーションによって高血圧、糖尿病、肥満、心不全、末期の腎臓疾患、消化器系疾患、泌尿器系疾患、喘息、肺動脈性高血圧および慢性閉塞性肺疾患(COPD)を治療するための、熱アブレーションと化学的アブレーションの併用、それらの製剤および方法を含み得る。熱エネルギーによって、治療用化学的アブレーションの安全性および効力が高まる可能性がある。化学的アブレーションでアブレーション温度を下げおよび/または時間を短縮することにより、熱アブレーションの安全性および効力が改善される可能性がある。温度は-40~140℃の範囲であってよく、好ましくは-30~100℃の範囲、最も好ましくは-30~80℃の範囲である。注入される製剤の圧力は身体内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる場合がある。例えば、標的組織へと注入される製剤の圧力範囲は、1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。製剤は、二成分、三成分、四成分、または5以上の成分を含む製剤のうちの1つである場合がある。送達系は、経皮的で侵襲性の低い送達用カテーテルの場合がある。開示の方法によって、熱エネルギーと身体内腔の神経への吸収および浸透を高める1種以上の成分を含む製剤との併用が提供される可能性がある。
【0031】
いくつかの態様では、アブレーションの大きさを大きくしながらも、加熱によって生じる可能性のある合併症の危険性を最低限に抑えることで、高周波アブレーションの安全性および効力が改善される。そのような合併症の例としては、血栓形成、スチームポップ、発泡、病変の焦げ、再狭窄、内部および外膜の線維化、ならびにカテーテル操作(つまり穿孔処理)に関連するその他の合併症が挙げられる。局所的な熱アブレーション(RFアブレーション)は不均一で、外膜中に存在する神経まで到達しない。不十分な局所的RFアブレーションは効力が弱い(血圧があまり低下しない)。方法には、電極の大きさ(血流による受動的な冷却)や能動液を介して電極を内部から(閉ループ)または外部から(開ループ)冷却することが含まれる。電極を冷却することで、神経組織までのエネルギー送達が増える。外部からの冷却(開ループ)の一態様では、化学的製剤を能動冷却液に置き換えることができる。本開示の製剤は、電極を冷却するためだけでなく、化学的アブレーションにも使用することができる。いくつかの態様では、製剤は神経組織に不均一に拡散および浸透し、それによって外膜中に存在する神経を身体内腔内で不均一に切除する場合がある。そのため化学的アブレーション用製剤を、熱アブレーションを行っている間および/または熱アブレーションの前後に送達することが可能である。熱アブレーションの例としては、高周波、凍結融解、マイクロ波、レーザー、超音波、および高密度焦点式超音波アブレーションが挙げられる。その結果、本方法は治療の安全性および効力を改善することができる。
【0032】
製剤は、二成分、三成分、四成分、または五成分以上を含む製剤のうちの1つである場合がある。送達系は、経皮的で、より侵襲性の低い送達方法であってよい。また、身体内腔の組織への吸収および浸透を高める1種以上の成分を含む製剤も提供する。
【0033】
いくつかの態様において製剤の成分は、水、生理食塩水、高張食塩水、フェノール、メタノール、エタノール、無水アルコール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、グリセロール、酢酸、乳酸、ヨウ化プロピル、ヨウ化イソプロピル、ヨウ化エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、硝酸エチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、尿素、リピオドール、界面活性剤、誘導体およびその組み合わせから選択される。
【0034】
いくつかの態様において製剤の成分はガスである。ガスの例としては、酸素、窒素、ヘリウム、アルゴン、空気、二酸化炭素、一酸化窒素、ならびに有機・無機化合物、水、フェノール、メタノール、エタノール、無水アルコール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、グリセロール、酢酸、乳酸、ヨウ化プロピル、ヨウ化イソプロピル、ヨウ化エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、硝酸エチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、およびそれらの混合物の蒸気が挙げられる。
【0035】
いくつかの態様では、製剤に含まれる成分は界面活性剤である。界面活性剤の例としては、ラウリン酸PEG、ツイーン20、ツイーン40、ツイーン60、ツイーン80、オレイン酸PEG、ステアリン酸PEG、ラウリン酸PEGグリセリル、オレイン酸PEGグリセリル、ステアリン酸PEGグリセリル、ラウリン酸ポリグリセリル、オレイン酸ポリグリセリル、ミリスチン酸ポリグリセリル、パルミチン酸ポリグリセリル、ラウリン酸ポリグリセリル-6、オレイン酸ポリグリセリル-6、ミリスチン酸ポリグリセリル-6、パルミチン酸ポリグリセリル-6、ラウリン酸ポリグリセリル-10、オレイン酸ポリグリセリル-10、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、パルミチン酸ポリグリセリル-10、モノラウリン酸ソルビタンPEG、モノラウリン酸ソルビタンPEG、モノオレイン酸ソルビタンPEG、ステアリン酸ソルビタンPEG、オレイルエーテルPEG、ラウロイルエーテルPEG、オクトキシノール、モノキシノール、チロキサポール、ショ糖モノパルミタート、ショ糖モノラウラート、デカノイル-N-メチルグルカミド、n-デシル-β-D-グルコピラノシド、n-デシル-β-D-マルトピラノシド、n-ドデシル-β-D-グルコピラノシド、n-ドデシル-β-D-マルトシド、ヘプタノイル-N-メチルグルカミド、n-ヘプチル-β-D-グルコピラノシド、n-ヘプチル-β-D-チオグルコシド、n-ヘキシル-β-D-グルコピラノシド、ノナノイル-N-メチルグルカミド、n-ノイル-β-D-グルコピラノシド、オクタノイル-N-メチルグルカミド、n-オクチル-β-D-グルコピラノシド、オクチル-β-D-チオグルコピラノシド;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、リシノール酸ナトリウム、ジオクチルナトリウムスルホこはく酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ジアルキルメチルベンジルアンモニウム塩、およびスルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル、有機酸、任意の有機酸および有機アミンの塩、ポリグリシドール、グリセロール、マルチグリセロール(multiglycerol)、ガラクチトール、ジ(エチレングリコール)、トリ(エチレングリコール)、テトラ(エチレングリコール)、ペンタ(エチレングリコール)、ポリ(エチレングリコール)オリゴマー、ジ(プロピレングリコール)、トリ(プロピレングリコール)、テトラ(プロピレングリコール、およびペンタ(プロピレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)オリゴマー、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体、プルロニック、プルロニック85、ならびにそれらの誘導体およびその組み合わせが挙げられる。製剤中の界面活性剤の含量は、0.1~80重量%の範囲であってよく、好ましくは0.5~50重量%、最も好ましくは1~15重量%である。
【0036】
いくつかの態様では、少なくとも1種の油、脂肪酸、および/または脂質が製剤に含まれる。例えば製剤は、ダイズ油、植物油、花卉油、動物油、水産油、バター脂肪、ココナッツ油、ヤシ油、オリーブ油、落花生油、魚油、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、オクタデカトリエン酸、エイコサン酸、エイコセン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、トコトリエノール、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノレイン酸、アルファ-リノレイン酸、ガンマ-リノレイン酸、ベヘン酸、エルカ酸、リグノセリン酸、天然もしくは合成リン脂質、モノ-、ジ-、またはトリ-アシルグリセロール、カルジオリピン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルコリン、アルファトコフェロール、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、スフィンゴ脂質、プロスタグランジン、ガングリオシド、ネオビー(neobee)、ニオソーム、およびその誘導体を含む場合がある。
【0037】
いくつかの態様において製剤は、1種以上の治療薬または除神経用の薬剤を含む。治療薬は、ナトリウムチャネル遮断薬、テトロドトキシン、サキシトキシン、デカルバモイルサキシトキシン、バニロイド、ネオサキシトキシン、リドカイン、コノトキシン、強心配糖体、ジゴキシン、グルタメート、スタウロスポリン、アムロジピン、ベラパミル、シマリン、ジギトキシン、プロスシラリジン、ウアバイン、ベラトリジン、ドーモイ酸、オレアンドリン、カルバマゼピン、アフラトキシン、グアネチジン、およびグアネチジン硫酸塩のうちの1つである場合がある。別の態様において製剤は、除神経術を画像化するための造影剤のうちの1種を含む。造影剤には、ヨード、ヨウ化エチル、ヨウ化ナトリウム、リピオドール、ノノキシノールヨード、イオビトリドール、イオヘキソール、イオメプロール、イオパミドール、イオペントール、イオプロミド、イオベルソール、イオキシラン、イオトロラン、イオジキサノール、イオキサグレート、およびそれらの誘導体が含まれ得る。製剤中の造影剤の含量は、2~25重量%の範囲になってよく、好ましくは5~15重量%である。
【0038】
いくつかの態様において製剤は、共沸混合物を含む。共沸混合物とは、単純な蒸留によってはその成分を変化させることができない、2種以上の成分の混合物である。この現象は、共沸混合物を沸騰させた時に生じる蒸気が、もとの混合液と同じ割合の組成であることによって起こる。共沸混合物または製剤は、エタノール/水、エタノール/水/造影剤、エタノール/水/界面活性剤、エタノール/水/造影剤/界面活性剤、プロパノール/水、イソプロパノール/水、ブタノール/水、酢酸/水、酢酸/水/エタノール、酢酸/水/造影剤、酢酸/水/造影剤/界面活性剤、酢酸/水/エタノール/造影剤、酢酸/水/エタノール/造影剤/界面活性剤、乳酸/水、乳酸/水/エタノール、乳酸/水/造影剤、乳酸/水/造影剤/界面活性剤、乳酸/水/エタノール/造影剤、乳酸/水/エタノール/造影剤/界面活性剤、乳酸エチル/水、乳酸エチル/エタノール、乳酸/エタノール/水、乳酸エチル/水/エタノール、酢酸エチル/エタノール、硝酸エチル/エタノール、酢酸イソプロピル/エタノールを含む場合がある。
【0039】
いくつかの態様において製剤は、1種以上の成分のガスまたは蒸気の状態である。ガスまたは蒸気製剤は、酸素、窒素、ヘリウム、アルゴン、空気、二酸化炭素、一酸化窒素、ならびに有機および無機化合物の蒸気を含む場合がある。有機および無機化合物の蒸気は、水、フェノール、メタノール、エタノール、無水アルコール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、グリセロール、酢酸、乳酸、ヨウ化プロピル、ヨウ化イソプロピル、ヨウ化エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、硝酸エチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチルおよびそれらの混合物を含んでいる場合がある。
【0040】
蒸気製剤は界面活性剤を含んでいてもよい。蒸気製剤は、治療薬を含んでいてもよい。蒸気製剤は、造影剤、例えばリピオドールおよびヨードを含んでいてもよい。蒸気は共沸混合物を含んでいてもよい。蒸気は、二成分、三成分、四成分、または五成分以上を含む製剤のうちの1つである場合がある。蒸気製剤の望ましい温度は、0~140℃の範囲であってよく、好ましくは15~100℃、最も好ましくは30~80℃である。注入される蒸気の圧力は身体内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる場合がある。例えば、標的組織に注入される蒸気の圧力範囲は1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。
【0041】
いくつかの態様において製剤は、1種以上の成分の液体の状態である。液体製剤は、水、生理食塩水、高張食塩水、フェノール、メタノール、エタノール、無水アルコール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、グリセロール、酢酸、乳酸、ヨウ化プロピル、ヨウ化イソプロピル、ヨウ化エチル、リピオドール、酢酸メチル、酢酸エチル、硝酸エチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、尿素、界面活性剤その他を含んでいる場合がある。液体製剤は治療薬を含んでいてもよい。液体製剤は造影剤を含んでいてもよい。液体製剤は共沸混合物を含んでいてもよい。液体製剤は、二成分、三成分、四成分、または5以上の成分を含む製剤のうちの1つである場合がある。液体製剤は溶液であってもよい。液体製剤は乳剤であってもよい。液体製剤は懸濁液であってもよい。液体製剤の温度は-40~140℃の範囲であってよく、好ましくは-30~100℃の範囲、最も好ましくは-30~80℃の範囲である。いくつかの態様では、製剤の温度は室温である。いくつかの態様では、製剤の温度は-40~-20℃の範囲である。いくつかの態様では、製剤の温度は15~80℃の範囲である。いくつかの態様では、製剤の温度は体温である。いくつかの態様では、製剤の温度は50~80℃の範囲である。製剤液体の圧力は身体内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる場合がある。例えば、標的組織に注入される液体の圧力範囲は1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。
【0042】
いくつかの態様では、疾患の治療方法は送達用カテーテルを経皮的に体内に挿入すること;そのカテーテルを介して身体の疾患に罹患している組織に製剤を注入すること(ここで送達される製剤および/または熱もしくは冷の量は、組織に障害または損傷を与え、治療効果、例えば、血圧の低下および息切れの低減をもたらすのに有効であり);および送達用カテーテルを身体から引き抜くことを含む。熱もしくは冷によって、製剤と組織の反応速度を加速することで効果を上げることができる。治療できる疾患の例としては、高血圧、糖尿病、肥満、心不全、末期の腎臓疾患、消化器系疾患、泌尿器系疾患、癌、腫瘍、疼痛(慢性および/または急性)、喘息、肺動脈性高血圧、および慢性閉塞性肺疾患(COPD)が挙げられる。癌には、副腎、膀胱、子宮頸、結腸、食道、胆嚢、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、胃、および子宮の癌が含まれる。体内組織には、腎動脈、血管内腔、非血管内腔、気道、副鼻腔、食道、呼吸器の内腔、消化器の内腔、癌、腫瘍、および泌尿器の内腔が挙げられる。製剤は、1種以上の成分を含むガス、蒸気、液体、溶液、乳剤、または懸濁液であってよい。製剤が1種以上の成分の蒸気である場合には、組織内で蒸気を液体に凝縮することによって熱を発生させることができる。製剤が液体または溶液の場合には、製剤の温度によって、つまり製剤の温度を体温よりも高くまたは体温よりも低くすることによって、冷または熱を発生させることができる。液体製剤の温度は-40~140℃の範囲であってよく、好ましくは-30~100℃の範囲、最も好ましくは-30~80℃の範囲である。いくつかの態様では、治療される組織の温度が製剤の温度と異なり、かつ、体温よりも低いまたは高い場合がある。治療される組織の温度は15~100℃の範囲であってよく、好ましくは20~90℃の範囲で、最も好ましくは36~80℃の範囲である。いくつかの態様では、治療される組織の温度は-40~20℃の範囲であってよい。注入される製剤の圧力は身体内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる場合がある。例えば、標的組織へと注入される製剤の圧力範囲は、1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。送達用カテーテルはニードルであってもまたはニードルを用いたカテーテルであってもよく、画像による誘導を用いる。画像による誘導は、超音波、X線、CT-スキャン、およびスコープのうちの1つである場合がある。また送達用カテーテルは、バルーン付きカテーテルであってもよい。バルーン付きカテーテルは少なくとも1つのまたは2つのバルーンを有するものであってよい。送達用カテーテルは注入カテーテルであってもよい。カテーテルはバルーン付きカテーテルおよび注入カテーテルの併用になる場合もある。
【0043】
いくつかの態様において疾患の治療方法は、送達用カテーテルを経皮的に神経に隣接している身体の内腔に挿入すること;神経に隣接している身体内腔の組織に、望ましい温度でエネルギーまたは/および上述の製剤を送達すること(ここで送達される製剤および/またはエネルギーの量は、神経に傷害または損傷を与え、利益、例えば血圧の低下をもたらすのに有効であり);および送達用カテーテルを身体の内腔から引き抜くこと、を含む。治療できる疾患の例としては、高血圧、糖尿病、肥満、心不全、末期の腎臓疾患、消化器系疾患、泌尿器系疾患、癌、腫瘍、疼痛(慢性および/または急性)、喘息、肺動脈性高血圧および慢性閉塞性肺疾患(COPD)が挙げられる。癌には、副腎、膀胱、子宮頸、結腸、食道、胆嚢、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、胃、および子宮の癌が含まれる。体内組織には、腎動脈、血管内腔、非血管内腔、肺動脈、気道、副鼻腔、食道、呼吸器の内腔、消化器の内腔、癌、腫瘍、および泌尿器の内腔が含まれる。いくつかの態様では、エネルギーによって製剤と神経との反応速度を加速することで効果を高めることができる。エネルギーは、高周波、凍結融解、マイクロ波、レーザー、超音波、および高密度焦点式超音波エネルギーのうちの1つである場合がある。そのため、エネルギー送達用のカテーテルは、高周波、凍結融解、マイクロ波、レーザー、超音波、および高密度焦点式超音波カテーテルのうちの1つである場合がある。例示的な製剤としては、1種以上の成分のガス、蒸気、液体、溶液、乳剤、および懸濁液が挙げられる。製剤が1種以上の成分の蒸気である場合には、組織内で蒸気を液体に凝縮することによって熱を発生させることができる。製剤が液体または溶液の場合には、体温よりも高い温度の製剤から、熱が伝達される場合もある。製剤の望ましい温度は-40~140℃の範囲であってよく、好ましくは-30~100℃の範囲、最も好ましくは-20~80℃の範囲である。神経に隣接している治療される組織の温度は、製剤の望ましい温度よりも低く、かつ、体温よりも高い場合がある。神経に隣接している治療される組織の温度は-40~100℃の範囲であってよく、好ましくは-30~90℃の範囲、最も好ましくは-20~80℃の範囲である。注入される製剤の圧力は身体内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる場合がある。例えば、標的組織へと注入される製剤の圧力範囲は、1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。
【0044】
いくつかの態様において製剤は、エタノールと水の混合物である。エタノール中のエタノール含量は、10~100重量%であってよい。製剤を、望ましい温度の蒸気または液体として、身体内腔の組織に送達することができる。蒸気または液体製剤の望ましい温度は-40~150℃の範囲であってよく、好ましくは-30~100℃の範囲、最も好ましくは-20~80℃の範囲である。組織の温度は-40~90℃の範囲であってよく、好ましくは-30~80℃の範囲である。エタノール/水製剤が共沸混合物となる可能性があってもよい。この共沸混合物は95.63%のエタノールと4.37%の水の可能性がある(重量で)。エタノールは78.4℃で沸騰し、水は100℃で沸騰するが、この共沸混合物は78.2℃で沸騰する。これは、両成分の沸点よりも低い。78.2℃は、全てのエタノール/水溶液が空気圧で沸騰可能な最低温度である。注入されるエタノールと水の混合液の圧力は身体内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる場合がある。例えば、標的組織に注入される混合液の圧力範囲は1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。
【0045】
いくつかの態様では、送達用カテーテルは高周波のカテーテルと注入カテーテルの組み合わせである。高周波カテーテルは、電極の大きさを小さくすること(血流を介した受動的な冷却が起こる)および/または能動液を介して内部から(閉ループ)または外部から電極を冷却することによって改変することができる。電極を冷却することで、神経組織までのエネルギー送達量が増える。外部からの冷却(開ループ)の態様では、化学的製剤を能動冷却液に置き換えることができる。いくつかの態様では本開示の製剤を、電極を冷却するためだけでなく、化学的アブレーションにも使用することができる。製剤は神経組織に不均一に拡散および浸透し、それによって外膜中に存在する神経を身体内腔内で不均一に切除する場合がある。そのため化学的アブレーション用製剤を、熱アブレーションを行っている間および熱アブレーションの前後に送達することが可能である。熱アブレーションには、高周波、凍結融解、マイクロ波、レーザー、超音波、および高密度焦点式超音波アブレーションが含まれる。その結果、本方法は治療の安全性および効力を改善することができる。
【0046】
いくつかの態様において送達用カテーテルは、注入内腔、エネルギー送達用内腔、誘導用ワイヤー内腔、膨張内腔、エネルギー送達用ポート、製剤注入ポート、および近位端にあるバルーン膨張ポート、エネルギー放出部位、製剤放出口、および遠位端にある1つまたは2つのバルーンを含む。エネルギー送達用要素は、高周波、凍結融解、マイクロ波、レーザー、超音波、および高密度焦点式超音波のうちの1つである場合がある。エネルギー生成装置をエネルギー送達用ポートに接続してもよい。エネルギー生成装置は、高周波、凍結融解、マイクロ波、レーザー、超音波、および高密度焦点式超音波エネルギー生成装置のうちの1つである場合がある。バルーン膨張ポートは膨張用の装置に接続することができる。製剤の供給部を送達用カテーテルの近位端にある製剤注入ポートに接続することもできる。
【0047】
いくつかの態様において製剤は、水、エタノールおよび酸素を含有している蒸気の混合物である。別の態様において製剤は、水、エタノールおよび空気を含有している蒸気の混合物である。いくつかの態様において製剤は、水、エタノール、酸素および窒素を含有している蒸気の混合物である。酸素または空気を含むこれらの製剤は、喘息およびCOPDの治療に特に有用である。
【0048】
いくつかの態様において製剤は、水、エタノールおよびヨードを含有している蒸気の混合物であり、ここでヨードを含む蒸気は、身体の内腔壁における蒸気混合物を画像化するのに有効な量である。いくつかの態様において製剤は、水、エタノールおよび界面活性剤を含有している液体の混合物である。いくつかの態様において製剤は、水、エタノールおよび造影剤を含有している液体の混合物であり、ここで造影剤は、身体の内腔壁におけるこの混合物を、X線を使って追跡するのに有効な量である。造影剤は、ヨード、ヨウ化エチル、ヨウ化ナトリウム、リピオドール、ノノキシノールヨード、イオビトリドール、イオヘキソール、イオメプロール、イオパミドール、イオペントール、イオプロミド、イオベルソール、イオキシラン、イオトロラン、イオジキサノール、イオキサグレート、およびそれらの誘導体のうちの1種以上であってよい。製剤中に含まれる造影剤の含量は、2~20重量%の範囲となってよく、好ましくは5~15重量%である。
【0049】
いくつかの態様において製剤は、酢酸と水の混合物である。製剤中に含まれる酢酸の含量は1~100重量%の範囲であってよく、好ましくは10~75重量%、最も好ましくは20~50重量%である。この製剤は、望ましい温度の蒸気または液体として、身体の内腔組織に送達することができる。蒸気または液体製剤の望ましい温度は-40~100℃の範囲であってよく、好ましくは-30~100℃の範囲、最も好ましくは-30~80℃の範囲である。組織の温度は-30~80℃の範囲であってよく、好ましくは60~80℃または-40~-20℃の範囲である。組織の温度は-40~0℃の範囲であってよく、好ましくは-30~-20℃の範囲である。注入される酢酸と水の混合物の圧力は、身体内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる場合がある。例えば、標的組織に注入される混合物の圧力範囲は1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。製剤中の酢酸含量は2重量%~75重量%となってよく、好ましくは10重量%~60重量%である。
【0050】
いくつかの態様において製剤は、水、酢酸および造影剤(例えばヨウ化ナトリウムおよびリピオドール)を含有している液体の混合物であり、ここで造影剤は、身体の内腔壁における蒸気混合物を画像化するのに有効な量である。製剤中の酢酸含量は1~100重量%の範囲であってよく、好ましくは10~75重量%、最も好ましくは30~60重量%である。別の態様において製剤は、水、酢酸および界面活性剤を含有している液体の混合物である。製剤中の酢酸含量は1~100重量%の範囲であってよく、好ましくは10~75重量%、最も好ましくは30~60重量%である。別の態様において製剤は、水、酢酸および造影剤を含有している液体の混合物であり、ここで造影剤は、身体の内腔壁内の混合物をX線によって追跡するのに有効な量である。造影剤は、ヨード、ヨウ化エチル、ヨウ化ナトリウム、リピオドール、ノノキシノールヨード、イオビトリドール、イオヘキソール、イオメプロール、イオパミドール、イオペントール、イオプロミド、イオベルソール、イオキシラン、イオトロラン、イオジキサノール、イオキサグレート、およびそれらの誘導体のうちの1つである場合がある。製剤中の造影剤含量は、2~20重量%の範囲であってよく、好ましくは5~15重量%である。
【0051】
いくつかの態様において製剤は、エタノールおよびリピオドール(LIPIODOL ULTRA-FLUIDE)を含有している液体の混合物であり、ここでリピオドールは、身体の内腔壁における蒸気混合物を画像化するのに、および標的の神経組織に傷害を与えるのに有効な量である。製剤中のリピオドール含量は10~80重量%の範囲であってよく、好ましくは15~75重量%、最も好ましくは20~50重量%である。別の態様において製剤は、水およびリピオドールを含有している液体の混合物である。製剤中のリピオドール含量は10~80重量%の範囲であってよく、好ましくは15~75重量%、最も好ましくは20~50重量%である。別の態様において製剤は、酢酸およびリピオドールを含有している液体の混合物である。製剤中のリピオドール含量は10~80重量%の範囲であってよく、好ましくは15~75重量%、最も好ましくは20~50重量%である。
【0052】
いくつかの態様において製剤は、フェノール、水、および一定量の造影剤(例えばヨード、ヨウ化ナトリウム、リピオドールおよびイオプロミド)の溶液である。フェノール含量は、2~20重量%の範囲であってよく、好ましくは5~16重量%である。製剤を、望ましい温度の溶液として、身体の内腔組織に送達することができる。液体製剤の望ましい温度は0~100℃の範囲であってよく、好ましくは20~95℃、最も好ましくは50~90℃である。組織の温度は36~80℃の範囲であってよく、好ましくは60~80℃である。フェノールがアブレーションに有効な薬剤である場合もある。注入される溶液の圧力が身体内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる場合がある。例えば、標的組織に注入される溶液の圧力範囲は、1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。
【0053】
いくつかの態様において製剤は、エチレングリコール、水、および少量の造影剤(例えばヨードおよびイオプロミド)の溶液である。エチレングリコール含量は2~90重量%の範囲であってよく、好ましくは15~75重量%である。液体製剤の望ましい温度は20~150℃の範囲であってよく、好ましくは40~120℃、最も好ましくは60~90℃である。注入される溶液の圧力が身体内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる場合がある。例えば、標的組織に注入される溶液の圧力範囲は、1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。
【0054】
いくつかの態様において製剤は、グリセロール、水、および少量の造影剤(例えばヨードおよびイオプロミド)の溶液である。グリセロール含量は、2~90重量%の範囲であってよく、好ましくは15~75重量%である。液体製剤の望ましい温度は20~150℃の範囲であってよく、好ましくは40~120℃、最も好ましくは60~90℃である。注入される溶液の圧力が身体内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる場合がある。例えば、標的組織に注入される溶液の圧力範囲は、1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。
【0055】
いくつかの態様において製剤は、プロパノールと水の混合物である。プロパノール含量は10~99重量%の範囲であってよい。製剤を、望ましい温度の蒸気または液体として、身体内腔の神経に送達することができる。蒸気または液体製剤の望ましい温度は、20~100℃の範囲であってよく、好ましくは40~95℃、最も好ましくは60~90℃である。神経組織の温度は36~80℃の範囲であってよく、好ましくは60~80℃である。プロパノール/水製剤が共沸混合物の場合もある。共沸混合物は、71.7重量%のプロパノールと28.3重量%の水である可能性がある。プロパノールは97.2℃で沸騰し、水は100℃で沸騰するが、この共沸混合物は、いずれの成分の沸点よりも低い87.7℃で沸騰する。注入される混合物の圧力は身体内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる場合がある。例えば、標的組織に注入される混合物の圧力範囲は、1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。
【0056】
いくつかの態様において製剤は、イソプロパノールと水の混合物である。イソプロパノール含量は10~99重量%の範囲であってよい。製剤を、望ましい温度の蒸気または液体として、身体内腔の神経に送達することができる。蒸気または液体製剤の望ましい温度は20~100℃の範囲であってよく、好ましくは40~95℃、最も好ましくは60~90℃である。神経組織の温度は20~80℃の範囲であってよく、好ましくは60~80℃である。イソプロパノール/水製剤は共沸混合物の場合もある。この共沸混合物は87.9重量%のプロパノールと12.1重量%の水である可能性がある。イソプロパノールは82.5℃で沸騰し、水は100℃で沸騰するが、この共沸混合物はいずれの成分の沸点よりも低い80.4℃で沸騰する。注入される混合物の圧力が身体内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる場合がある。例えば、標的組織に注入される混合物の圧力範囲は、1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。
【0057】
いくつかの態様において製剤は、エタノールと酢酸エチルの混合物である。酢酸エチル含量は10~99重量%の範囲であってよい。製剤を、望ましい温度の蒸気または液体として、人体の組織に送達することができる。蒸気または液体製剤の望ましい温度は20~100℃の範囲であってよく、好ましくは40~95℃、最も好ましくは60~90℃である。組織の温度は36~80℃の範囲であってよく、好ましくは60~80℃である。酢酸エチル/エタノール製剤は共沸混合物の場合もある。この共沸混合物は、69.7重量%の酢酸エチルと30.3重量%のエタノールとなる場合がある。酢酸エチルは77.1℃で沸騰し、エタノールは78.4℃で沸騰するが、この共沸混合物はいずれの成分の沸点よりも低い71.8℃で沸騰する。注入される混合物の圧力は身体内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる場合がある。例えば、標的組織に注入される混合物の圧力範囲が1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。
【0058】
いくつかの態様において製剤は、エタノールとヨウ化エチルの混合物である。ヨウ化エチルの含量は10~99重量%の範囲であってよい。製剤を望ましい温度の蒸気または液体として、身体内腔の神経に送達することができる。蒸気または液体製剤の望ましい温度は20~100℃の範囲であってよく、好ましくは40~95℃、最も好ましくは60~90℃である。組織の温度は36~80℃の範囲であってよく、好ましくは60~80℃である。ヨウ化エチル/エタノール製剤は共沸混合物の場合もある。この共沸混合物は87重量%のヨウ化エチルと13重量%のエタノールとなる可能性がある。ヨウ化エチルは72.3℃で沸騰し、エタノールは78.4℃で沸騰するが、この共沸混合物はいずれの成分の沸点よりも低い63℃で沸騰する。注入される混合物の圧力は身体内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる場合がある。例えば、標的組織に注入される混合物の圧力範囲が1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。
【0059】
いくつかの態様において製剤は、水、エタノールと酢酸エチルの混合物である。エタノールの含量は2~99重量%の範囲であってよい。酢酸エチルの含量は2~85重量%の範囲であってよい。製剤を望ましい温度の蒸気または液体として、人体の組織に送達することができる。蒸気または液体製剤の望ましい温度は20~100℃の範囲であってよく、好ましくは40~95℃、最も好ましくは60~90℃である。組織の温度は36~80℃の範囲であってよく、好ましくは60~80℃である。酢酸エチル/エタノール製剤は共沸混合物の場合もある。この共沸混合物は、7.8重量%の水、83.2重量%の酢酸エチル、および9.0重量%のエタノールの混合物となる可能性がある。酢酸エチルは77.1℃で沸騰し、エタノールは78.4℃で沸騰し、水は100℃で沸騰するが、この共沸混合物はいずれの成分の沸点よりも低い70.3℃で沸騰する。注入される混合物の圧力は身体内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる場合がある。例えば、標的組織に注入される混合物の圧力範囲は1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。
【0060】
いくつかの態様では、製剤を人体の組織に注入するために送達用カテーテルを使用する。送達用カテーテルは、例えば超音波画像による誘導を使った、ニードルであってもまたはニードルを用いたカテーテルであってもよい。送達用カテーテルはバルーン付きカテーテルであってもよい。バルーン付きカテーテルは、少なくとも1つまたは2つのバルーンを有するもの、例えばシングルまたはダブルバルーンを含むものであってもよい。送達用カテーテルは注入カテーテルであってもよい。手順においては、バルーン付きカテーテルと注入カテーテルの組み合わせも同様に使用することができる。
【0061】
図について説明する。
図1は送達用カテーテル10を示しており、この送達用カテーテル10は、少なくとも1つの内部ルーメン、遠位端13、および近位端14を有する伸張シャフト11を含んでいる。遠位端13には、近位20と遠位21に、ルーメンに適合しているバルーンがある。いずれの構成においても、カテーテルシャフト11の管はプラスチック材料、例えば熱可塑性物質、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ペバックス(pebax)、ナイロン、フッ化ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホンなどから押し出すことができる。カテーテルシャフト11は、ルーメンの断面が様々な形になるように、例えば円形のまたは楕円形になるように押出または成型することができる。さらに、
図1に示しているように、カテーテル10には、近位バルーン20と遠位バルーン21を別個に膨らますことができるように、遠位バルーン21を膨らませるための遠位バルーン膨張ポート40と、近位バルーン20を膨らませるための近位バルーン膨張ポート41を備えても良い。ルーメンに適合しているバルーンは、ルーメンの壁が変形する圧力未満の圧力で膨張させることができるバルーンである。バルーンの材料は、バルーンを膨らませたときに規格に適合するように、高温において柔軟で使用可能なものが選択される。いくつかの態様においてバルーンの材料は、ポリアミド、ナイロン、ペバックス(pebax)、ポリエステル、テレフタル酸ポリエチレン、およびそれらの共重合体のうちの1種である。バルーンの直径は、治療する部位の直径によって、約2ミリメートル~約30ミリメートルの範囲であってよい。いくつかの態様では、それぞれのバルーンの直径は約2ミリメートル(「mm」)である。あるいは、それぞれのバルーンの直径は、約3ミリメートル、または約4ミリメートル、または約5ミリメートル、または約6ミリメートル、または約7ミリメートル、または約8ミリメートル、または約9ミリメートル、または約10ミリメートル、または約12ミリメートル、または約15ミリメートル、または約20ミリメートル、または約25ミリメートル、または約30ミリメートルであってよい。
【0062】
いくつかの態様においてカテーテルは電極を備えていない。具体的には、カテーテルは、アブレーション用のエネルギー、例えば高周波、超音波、マイクロ波エネルギーを有さないものであってよい。
【0063】
いくつかの態様では、少なくとも1つのマーカーバンド22bが近位バルーン20の近位に配置されており、かつ、少なくとも1つのマーカーバンド23aが遠位バルーン21の遠位に配置されている。バルーン付きカテーテルは迅速交換型カテーテルであってもまたはオバー・ザ・ワイヤー型カテーテルであってもよく、また、いずれの好適な生体適合材料からできていても良い。バルーン20および21の材料は、ポリエステル、ポリアミド、ナイロン12、ナイロン11、ポリアミド12、ポリエーテルとポリアミドのブロック共重合体、ペバックス(pebax)、ポリウレタン、およびポリエーテルとポリエステルのブロック共重合体のうちの1種からできている場合がある。バルーン21の直径はバルーン20の直径と同じであってもそれより小さくてもよい。
【0064】
図2Aおよび2Bは、喘息およびCOPDを治療するために、左主気管支に入れたバルーン送達用カテーテル198の模式図である。
図2Aおよび2Bの送達用カテーテル198によって、主気管支21、22の遠位にある気道を治療することができる。例えば、気管支樹27の遠位に作用するように、送達用カテーテル198を気道(例えば、2番以降の気道)に入れることができる。蛇行している気道に沿って送達系198を誘導して、種々の手技、例えば、葉の一部、葉全体、複数の葉、または片側もしくは両側の肺の除神経などを実施することができる。いくつかの態様では、葉気管支を処置して肺葉の除神経を行う。例えば、葉気管支に沿っている1箇所以上の部位を標的とし、その葉気管支に接続している葉全体の除神経を実施することができる。左葉気管支を処置して、左上葉および/または左下葉に作用することもできる。右葉気管支を処置して、右上葉、右中葉および/または右下葉に影響を及ぼすこともできる。葉を同時にまたは順次、処置することができる。いくつかの態様では、医師は1つの葉を治療することができる。治療の影響に応じて、医師はその他の葉を同時にまたは順次、治療することができる。この様式では、気管支樹の、それぞれ別個の領域を治療することができる。
【0065】
送達用カテーテル198は、区域気管支または亜区域気管支を治療にも用いることができる。それぞれの区域気管支にそった単一の治療部位に製剤を送達することで、それぞれの区域気管支を治療することができる。例えば、製剤を、右肺の各区域気管支に送達することができる。いくつかの手順においては、製剤を1回または2回処理することによって、右肺の大部分または右肺を実質的に全部治療することができる。いくつかの手順においては、2~6回未満の別個の処理により、両肺の大部分または実質的に全てが治療される。気管支の解剖学的な構造から、区域気管支は大抵の場合、1回または2回の処理によって切除される。
【0066】
送達用カテーテル198によって、他の組織または解剖学的な特徴、例えば粘液腺、繊毛、平滑筋、身体内腔(例えば血管)などの機能を維持しながら、神経組織に影響を及ぼすことができる。神経組織には、神経細胞、神経線維、樹状突起、および支持組織、例えば神経膠細胞が含まれる。神経細胞は電気的インパルスを伝達し、神経線維はインパルスが伝わる軸索に沿って伸張する。この電気的インパルスは化学的なシグナルに変換され、エフェクター細胞や、または他の神経細胞と連絡する。一例として、送達用カテーテル198は、気管支樹27の気道の一部を切除し、神経組織から伝達される1種以上の神経系シグナルを弱めるのに使用することができる。除神経は、気道に沿っている神経幹の一部に含まれる神経組織全体に損傷を与えて、神経幹の損傷を受けた部位を通って、気管支樹のより遠位に伝わるシグナルの実質的に全てを停止させることを含む場合がある。気道に沿って複数の神経幹が伸張している場合、それぞれの神経幹に損傷を与えることができる。つまり、気管支樹の一部分に沿っている神経支配を遮断することができる。シグナルが遮断されると、遠位気道の平滑筋が弛緩し、気道の拡張を引き起こす場合がある。気道が拡張すると気道抵抗が低下して肺におけるガス交換量が上昇し、それによって、1種以上の症状、例えば息切れ、喘鳴、胸部絞扼感などが低減、制限、または実質的に除去される。標的とした神経組織の周囲にあるまたは隣接している組織は影響をうける場合があるが、しかし、恒久的な損傷を受けるわけではない。いくつかの態様では、例えば、治療の前後で、治療した気道に沿っている気管支の血管は同程度の量の血液を気管支壁組織に送達することができ、また、治療した気道に沿っている肺血管は気管支樹27の遠位領域にある肺胞嚢に同程度の量の血液を送達することができる。これらの血管は継続して血液を輸送し、十分ガス交換を維持することができる。いくつかの態様では、気道の平滑筋はそれほどには損傷を受けない。例えば、呼吸器の機能に顕著には影響を及ぼさない気道壁にある平滑筋の相対的に小さい部分を、可逆的に変化させてもよい。望ましい温度の製剤を気道の外側にある神経組織を破壊するのに用いる場合には、治療上有効量の製剤は、標的としていない平滑筋組織の大部分には到達しない。
【0067】
図2Aおよび2Bに示すように、送達系198は、治療制御部202と制御部202に接続されている腔内伸張アセンブリ200を含む場合がある。伸張アセンブリ200を気管20に挿入し、送達アセンブリを使ってまたは使わないで、気管支樹27におよび気管支樹27を通って進めることができる。伸張アセンブリ200は、選択的に組織に作用することができる、遠位端203を含む場合がある。
【0068】
図2Aの制御部202は、1つ以上のプロセッサ、マイクロプロセッサ、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、および/または特定用途向け集積回路(ASIC)、記憶装置、バス、電源、ポンプ、製剤供給部、蒸気供給部、液体供給部、造影供給部、蒸気生成装置、望ましい温度の製材生成装置などを含んでいる場合がある。
【0069】
図2Aおよび2Bの遠位端203は、肺10の中の様々な部位、例えば、これらには限定されないが、神経組織、繊維状の組織、疾患に罹患しているまたは普通でない組織、筋組織、血液、血管、解剖学的な特徴(例えば、膜、腺、繊毛など)、または他の目的の部位を標的にすることができる。
【0070】
図2Cは、腎動脈に配置されたダブルバルーン送達用カテーテルの模式図である。
図2Cの送達用カテーテル106を使用して高血圧を治療することができる。製剤を、切断する腎神経に隣接している腎動脈の壁に注入することができる。腎臓の血管系のいくつかの要素は
図2Cでは省略されている。
【0071】
いくつかの態様では、本明細書で開示のカテーテル10では、
図3に示すように、治療ウィンドウ30全体の中で、製剤は実質的に均一に分布することができる。側孔31の位置、直径、数および頻度によって、治療ウィンドウ30を実質的に均一に充填することができる。
図3では、身体の内腔5に配置されているカテーテルを図示している。このカテーテルは治療ウィンドウ30に、治療薬3を送達するための2つの側孔31を有している。
図3で示している側孔31は、内部内腔25との液体連絡口となっている。治療ウィンドウ30にある側孔31は、製剤が治療ウィンドウ30に均一に送達されるように、内腔の外部24または内部25と連絡することができる。
【0072】
図4は肺動脈内に配置されているダブルバルーン送達用カテーテルの模式図である。
図4の送達用カテーテルを使用して肺性高血圧を治療することができる。製剤を、切除する神経に隣接している肺動脈の壁に注入することができる。図示している送達用カテーテルの前方のバルーンは、分岐している部分に位置している。ベースライン時の肺動脈の血管造影を実施して、肺動脈の分岐レベルを同定し、動脈の直径を算出することができる。大腿静脈から挿入し、主肺動脈まで進めた8Fシースを示している。ダブルバルーンカテーテルをこの長いシースに沿って進める。前方のバルーンは分岐部分に位置している。分岐部分の近くにある神経が、送達用カテーテルによって注入される製剤からのアブレーションで損傷を受ける。
【0073】
本発明のいくつかの態様はまた、製剤、例えば蒸気または液体を、身体内腔のある区域に、一定の速度および予め決められた期間で送達する工程も含む。製剤を送達する前に、この製剤を、少なくとも80℃、または少なくとも100℃、または少なくとも150℃まで加熱してもよい。バルーンとシャフトを有する送達用カテーテルは、製剤の温度が少なくとも80℃、100℃、または150℃の時に機能する。カテーテルのバルーンおよびシャフト内に含まれる材料は、このような高温を維持する。いくつかの態様では、蒸気を送達することによって、蒸気の液体への変化が誘導され、この相転移の間に放出されるエネルギーが組織の区域または亜区域に伝達される。
【0074】
いくつかの態様では、組織を治療するのに安全かつ有効な用量は、約2カロリー/g~約150カロリー/gの間、好ましくは約5カロリー/g~約100カロリー/gの間であり、かつ、送達系のエネルギー伝達速度は約2カロリー/秒~約500カロリー/秒の間、好ましくは約5カロリー/g~約150カロリー/gである。いくつかの態様では、生成装置によって製剤、例えば、約1~12ATMの圧力、約20~150℃、好ましくは約50~120℃の温度の蒸気または液体を生産できる。
【0075】
組織に与えることが望まれる傷害の度合いに応じて、組織に与えられる製剤および/またはエネルギーの安全かつ有効な量、または製剤および/またはエネルギーの用量(例えば、カロリー/グラム)は、望ましい結果をもたらすように決定することができる。一般的には、用量が増加すると、組織が受ける傷害の度合いも上がる。組織に与えることが望まれる傷害の度合いは、そのため、製剤、例えば望ましい温度で組織に使用される蒸気または液体の用量を変化させることによって、制御することができる。
【0076】
有効であるためには、好ましい態様におけるエネルギー用量は、約1カロリー/g~約100カロリー/gと多様であり、および/またはいくつかの態様における製剤の用量は、0.2マイクロリットル~200ミリリットルと多様である。しかしながらこれらの限定は、以下に記載する他の送達指標(例えば、送達速度、送達時間など)が、組織に同じまたは同程度の傷害を与えるのに、異なる用量を用いてもよいのと同様に、使用される用量の決定的な限定を意味するものではない。
【0077】
組織に与える用量を決定した後に、送達系(例えば本発明に記載の送達系)によって組織に与えるのに必要な総エネルギーまたは製剤の量を決定することができる。これは通常、用量(カロリー/g)に、治療する組織の量(グラム)を掛けて、送達する製剤(ml)およびエネルギー(カロリー)の量を決定することで行われる。
【0078】
通常、送達(または流れの)速度、つまり送達系が製剤を送達する早さによって、決定した量のエネルギーを生成するために製剤が送達される期間が決まる。例えば、30カロリー/秒の送達速度で肺のある区域に300カロリーを送達するためには、治療期間は10秒となる。送達速度は一般的に、約2カロリー/秒~約200カロリー/秒である。重ねて、これらの限定は決定的な限定を意味するものではなく、送達速度は他の治療および/または送達指標に依存して、より高くまたは低くなる場合もある。
【0079】
治療時間は、治療する部位の体積、質量、および組織に対して及ぼすことが望まれる傷害の度合いによって変わり得る。治療時間は約2秒~約60分の間で変化する場合がある。傷害を与えて症状を緩和するためのいくつかの態様では、安全かつ有効な治療時間は約4秒から約30分の間である。
【0080】
送達速度は、送達システムの制御部によって設定することができる。使用者が一旦送達速度を設定すれば、製剤供給部は、蒸気または液体を所望の速度で送達するために必要とされる圧力量を、負荷される圧力を調整することで、確立することができる。送達速度の設定を変えることで、生成装置中の圧力量を、生成装置が調整するように誘導できる。蒸気生成装置中の圧力は、約5psi~約200psiを超える範囲であってよく、好ましくは約10psi~50psi超である。
【0081】
いくつかの態様では、高血圧の治療方法は、送達用カテーテルを神経に隣接している腎動脈に経皮的に挿入すること;本明細書に記載の製剤を、神経に隣接している身体内腔の組織に望ましい温度で送達すること(ここで送達される製剤および/または熱の量は、神経に傷害または損傷を与え、利益、例えば血圧低下をもたらすのに有効な量であり);および送達用カテーテルを身体内腔から引き抜くこと、を含む。熱は、製剤と神経との反応速度を加速することによって効果を高めるために用いることができる。製剤は、1種以上の成分のガス、蒸気、液体、溶液、乳剤、または懸濁液であってよい。製剤が1種以上の成分の蒸気を含む場合には、組織内で蒸気を液体に凝縮することによって熱を発生させることができる。製剤が液体または溶液の場合には、体温よりも製剤の温度を高くすることで、熱を伝達することができる。製剤の望ましい温度は-40~140℃の範囲であってよく、好ましくは-30~100℃、最も好ましくは-20~80℃である。神経に隣接している治療される組織の温度は、製剤の望ましい温度よりも低く、かつ、体温よりも高い場合がある。神経に隣接している治療される組織の温度は-40~100℃の範囲であってよく、好ましくは-30~90℃、最も好ましくは-20~80℃である。注入される製剤の圧力は身体内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる場合がある。例えば、標的組織へと注入される製剤の圧力範囲は、1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。
【0082】
いくつかの態様では、肺動脈性高血圧の治療方法は、肺動脈(PA)の分岐レベルを同定するためにPAの血管造影を実施すること;大腿静脈を通って、PA分岐の近くにある神経に隣接している肺動脈まで送達用カテーテルを経皮的に挿入すること;分岐部位にダブルバルーンカテーテルの前方のバルーンを配置すること;本明細書に記載の製剤を神経に隣接している身体内腔の組織に望ましい温度で注入すること(ここで送達される製剤および/または熱の量は神経に傷害または損傷を与えて利益、例えば血圧の低下をもたらすのに有効な量であり);および送達用カテーテルを身体内腔から引き抜くこと、を含む。熱を用いて製剤と神経との反応速度を加速することによって、効果を高めることができる。製剤は、1種以上の成分のガス、蒸気、液体、溶液、乳剤、または懸濁液を含む場合がある。製剤が1種以上の成分の蒸気を含んでいる場合には、組織内で蒸気を液体に凝縮することによって熱を発生させることができる。製剤が液体または溶液の場合には、製剤の温度を体温よりも高くすることで熱を伝達することができる。製剤の望ましい温度は-40~140℃の範囲であってよく、好ましくは-30~100℃、最も好ましくは-20~80℃である。神経に隣接している治療される組織の温度は、製剤の望ましい温度よりも低くかつ体温よりも高い場合がある。神経に隣接している治療される組織の温度は-40~100℃の範囲であってよく、好ましくは-30~90℃、最も好ましくは-20~80℃である。注入される製剤の圧力は身体内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる場合がある。例えば、標的組織へと注入される製剤の圧力範囲は、1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。
【0083】
いくつかの態様では、喘息の治療方法は、送達用カテーテルを神経に隣接している気道に挿入すること;本明細書に記載の製剤を神経に隣接した気道の組織に望ましい温度で注入すること(ここで送達される製剤および/または熱の量は、神経に傷害または損傷を与え、利益、例えば息切れの緩和をもたらすのに有効な量であり);および送達用カテーテルを身体内腔から引き抜くこと、を含む。熱が製剤と神経との反応速度を加速することによって、効果が高まる場合がある。製剤は、1種以上の成分のガス、蒸気、液体、溶液、乳剤、および懸濁液を含む場合がある。製剤が1種以上の成分の蒸気を含む場合には、組織内で蒸気を液体に凝縮することによって熱を発生させることができる。製剤が液体または溶液を含む場合には、製剤の温度を体温よりも高くすることで熱を伝達することができる。液体製剤の望ましい温度は-40~140℃の範囲であってよく、好ましくは-30~100℃、最も好ましくは-20~80℃である。神経に隣接している治療される組織の温度は、製剤の望ましい温度よりも低く、かつ、体温よりも高い場合がある。神経に隣接している治療される組織の温度は-40~100℃の範囲であってよく、好ましくは-30~90℃、最も好ましくは-20~80℃である。注入される製剤の圧力は身体内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる場合がある。例えば、標的組織へと注入される製剤の圧力範囲は、1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。
【0084】
いくつかの態様では、COPDの治療方法は、送達用カテーテルを神経に隣接している気道に挿入すること、本明細書に記載の製剤を、神経に隣接している身体内腔の組織に望ましい温度で注入すること(ここで送達される製剤および/または熱の量は、神経に傷害または損傷を与え、利益、例えばCOPD症状の緩和をもたらすのに有効な量である);および送達用カテーテルを気道から引き抜くこと、を含む。熱が製剤と神経との反応速度を加速することによって、効果が高まる場合がある。製剤は1種以上の製剤のガス、蒸気、液体、溶液、または懸濁液を含んでいてもよい。製剤が1種以上の成分の蒸気を含んでいる場合には、蒸気を液体に凝縮することによって熱を発生することができる。製剤が液体または溶液を含んでいる場合には、製剤の温度を体温よりも高くすることで熱を伝達することができる。製剤の望ましい温度は-40~140℃の範囲であってよく、好ましくは-30~100℃、最も好ましくは-20~80℃である。神経に隣接している治療される組織の温度は、製剤の望ましい温度よりも低く、かつ、体温よりも高い場合がある。神経に隣接している治療される組織の温度は-40~100℃の範囲であってよく、好ましくは-30~90℃、最も好ましくは-20~80℃である。注入される製剤の圧力は身体内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる場合がある。例えば、標的組織へと注入される製剤の圧力範囲は、1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。
【0085】
いくつかの態様において肥満の治療方法は、送達用カテーテルを神経に隣接している消化器の内腔に挿入すること、本明細書に記載の製剤を、神経に隣接した消化器内腔の組織に望ましい温度で注入すること(ここで送達される製剤および/または熱の量は、神経に傷害または損傷を与え、利益、例えば体重の減少をもたらすのに有効な量であり);および送達用カテーテルを消化器の内腔から引き抜くこと、を含む。熱が製剤と神経との反応速度を加速することによって、効果が高まる場合がある。製剤が、1種以上の成分のガス、蒸気、液体、溶液、乳剤および懸濁液を含む場合がある。製剤が、1種以上の成分の蒸気を含んでいる場合には、蒸気を液体に凝縮することによって熱を発生させることができる。製剤が液体または溶液を含んでいる場合には、製剤の温度を体温よりも高くすることで熱を伝達することができる。液体製剤の望ましい温度は-40~140℃の範囲であってよく、好ましくは-30~100℃、最も好ましくは-20~80℃である。神経に隣接している治療される組織の温度は、製剤の望ましい温度よりも低く、かつ、体温よりも高い場合がある。神経に隣接している治療される組織の温度は-40~100℃の範囲であってよく、好ましくは-30~90℃、最も好ましくは-20~80℃である。注入される製剤の圧力は身体内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる場合がある。例えば、標的組織へと注入される製剤の圧力範囲は、1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。
【0086】
いくつかの態様において泌尿器系疾患の治療方法は、送達用カテーテルを神経に隣接している泌尿器の内腔に挿入すること、本明細書に記載の製剤を、神経に隣接した泌尿器内腔の組織に望ましい温度で注入すること(ここで送達される製剤および/または熱の量は、神経に傷害または損傷を与え、利益、例えば排尿の制御をもたらすのに有効な量であり);および送達用カテーテルを泌尿器の内腔から引き抜くこと、を含む。熱が製剤と神経との反応速度を加速することによって、効果が高まる場合がある。製剤が、1種以上の成分のガス、蒸気、液体、溶液、乳剤、および懸濁液を含む場合がある。製剤が、1種以上の成分の蒸気を含んでいる場合には、蒸気を液体に凝縮することによって熱を発生させることができる。製剤が液体または溶液を含んでいる場合には、製剤の温度を体温よりも高くすることで熱を伝達することができる。液体製剤の望ましい温度は-40~140℃の範囲であってよく、好ましくは-30~100℃、最も好ましくは-20~80℃である。神経に隣接している治療される組織の温度は、製剤の望ましい温度よりも低く、かつ、体温よりも高い場合がある。神経に隣接している治療される組織の温度は-40~100℃の範囲であってよく、好ましくは-30~90℃、最も好ましくは-20~80℃である。注入される製剤の圧力は身体内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる場合がある。例えば、標的組織へと注入される製剤の圧力範囲は、1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。
【0087】
いくつかの態様において癌または腫瘍の治療方法は、画像による誘導下で、ニードルまたはニードルを使用した送達用カテーテル経皮的に癌または腫瘍に挿入すること;本明細書に記載の製剤を人体の癌組織に望ましい温度で注入すること(ここで送達される製剤および/または熱の量は、癌組織に傷害もしくは損傷を与えるかまたは癌組織を排除し、治療効果、例えば腫瘍の退縮もしくは排除をもたらすのに有効な量であり);および送達用カテーテルを身体から引き抜くこと、を含む。画像による誘導は、超音波、X線、CTスキャン、NMRを使った画像化、スコープ、またはそれらの組み合わせを含んでいる場合がある。癌の例としては、副腎、膀胱、子宮頸、結腸、食道、胆嚢、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、胃、および子宮の癌が挙げられる。熱を利用して製剤と癌組織の反応速度を加速することで、効果が高まる可能性がある。製剤が、1種以上の成分のガス、蒸気、液体、溶液、乳剤および懸濁液を含む場合がある。製剤が、1種以上の成分の蒸気を含んでいる場合には、蒸気を液体に凝縮することによって熱を発生させることができる。製剤が液体または溶液を含んでいる場合には、製剤の温度を体温よりも高くすることで熱を伝達することができる。製剤の望ましい温度は-40~140℃の範囲であってよく、好ましくは-30~100℃、最も好ましくは-20~80℃である。治療される組織の温度が製剤の望ましい温度よりも低く、かつ、体温よりも高い場合がある。治療される組織の温度は-40~100℃の範囲であってよく、好ましくは-30~90℃、最も好ましくは-20~80℃である。注入される製剤の圧力は身体内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる場合がある。例えば、標的組織へと注入される製剤の圧力範囲は、1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。
【0088】
いくつかの態様において疼痛の治療方法は、画像による誘導下で、ニードルまたはニードルを使用した送達用カテーテルを経皮的に疼痛のある組織に挿入すること;本明細書に記載の製剤を、人体の疼痛のある組織に、特に腰痛および癌性疼痛のある組織に望ましい温度で注入すること(ここで送達される製剤および/または熱の量は、神経組織に傷害もしくは損傷をあたえるか、または神経組織を除去して、治療効果、例えば疼痛の緩和または緩解をもたらすのに有効な量であり);および送達用カテーテルを身体から引き抜くこと、を含む。画像を使った誘導には、超音波、X線、CTスキャン、NMRを使った画像化、スコープ、またはそれらの組み合わせが含まれ得る。疼痛の例としては、頭部、腕、顔面、下肢、眼、顎、瘢痕、鼠径部、副腎、膀胱、子宮頸、結腸、食道、胆嚢、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、胃、および子宮の疼痛が挙げられる。熱を利用して製剤と疼痛組織の反応速度を加速することで、効果を高められる可能性がある。製剤は、1種以上の成分のガス、蒸気、液体、溶液、乳剤および懸濁液を含む場合がある。製剤が1種以上の成分の蒸気を含んでいる場合には、蒸気を液体に凝縮することによって熱を発生させることができる。製剤が液体または溶液を含んでいる場合には、製剤の温度を体温よりも高くすることで熱を伝達することができる。製剤の望ましい温度は-40~140℃の範囲であってよく、好ましくは-30~100℃、最も好ましくは-20~80℃である。治療される組織の温度が製剤の望ましい温度よりも低く、かつ、体温よりも高い場合がある。治療される組織の温度は-40~100℃の範囲であってよく、好ましくは-30~90℃、最も好ましくは-20~80℃である。注入される製剤の圧力は身体内腔の圧力(1ATM)よりも高くなる場合がある。例えば、標的組織へと注入される製剤の圧力範囲は、1~12ATM、例えば1~8ATM、1~5ATM、または1~3ATMとなる場合がある。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送達用カテーテルを神経に隣接する血管内腔に挿入し、ここで、血管内腔は肺動脈を含むこと;
化学製剤を血管内腔へ送達用カテーテルから注入し、ここで、注入される化学製剤の量は、神経に障害または損傷を与え、疾患の症状を緩和する利益を提供するのに有効な量であること;および
送達用カテーテルを血管内腔から引き抜くこと
を含む、疾患の治療方法における使用のための化学製剤であって、
化学製剤が、10重量%~100重量%のエタノールおよび1重量%~100重量%の酢酸の少なくとも1つであり;
疾患が、肺動脈性高血圧を含む、化学製剤。
【請求項2】
化学製剤が、疾患の治療方法における使用のための化学製剤であって、
血管内腔が、腎動脈をさらに含み、
疾患が、肺動脈性高血圧を含み、高血圧、末期の腎臓疾患、糖尿病、肥満またはこれらの組合せをさらに含む、請求項1に記載の化学製剤。
【請求項3】
疾患が、肺動脈性高血圧および高血圧を含む、請求項2に記載の化学製剤。
【請求項4】
疾患が、心不全をさらに含む、請求項2または3に記載の化学製剤。
【請求項5】
注入される化学製剤が、1つ以上の成分のガス、蒸気、液体、溶液、乳液または懸濁液の少なくとも1つを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の化学製剤。
【請求項6】
方法が、エネルギーを神経に送達することをさらに含み、送達されるエネルギーおよび化学製剤の量が、神経に障害または損傷を与え、疾患の症状を緩和する利益を提供するのに有効な量である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化学製剤。
【請求項7】
エネルギーが、高周波、凍結融解、マイクロ波、レーザー、超音波、高密度焦点式超音波、および少なくとも一部の化学製剤の液体への蒸気凝縮からなる群より選択される、請求項6に記載の化学製剤。
【請求項8】
エネルギーの送達中、送達前または送達後に、化学製剤が神経に注入される、請求項6または7に記載の化学製剤。
【請求項9】
化学製剤が、100重量%のエタノールである、請求項1~8のいずれか一項に記載の化学製剤。
【請求項10】
送達用カテーテルが、ニードル付き送達用カテーテル、バルーンカテーテル、ダブルバルーン送達用カテーテル、または注入送達用カテーテルである、請求項1~9のいずれか一項に記載の化学製剤。
【請求項11】
送達用カテーテルが、ニードル付き送達用カテーテルである、請求項1~10のいずれか一項に記載の化学製剤。
【請求項12】
送達用カテーテルが、伸張シャフトに沿って配置されるバルーンを含むバルーン送達用カテーテルであり、方法が、挿入後および注入前および引抜き前にバルーンを膨らませることをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の化学製剤。
【請求項13】
バルーンが、ポリアミド、ナイロン、ポリエーテルブロックアミド、ポリエステル、テレフタル酸ポリエチレン、ポリウレタン、それらの共重合体、およびそれらの混合物より選択される材料を含む、請求項12に記載の化学製剤。
【請求項14】
方法が、ベースライン時の肺動脈の血管造影を実施して、肺動脈の分岐レベルを同定し、動脈の直径を算出することをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の化学製剤。
【請求項15】
方法が、送達用カテーテルを肺動脈分岐部分近くの神経に配置し、肺動脈分岐部分近くの神経に障害または損傷を与えることを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の化学製剤。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
前述の一般的な記載および以降の詳細な説明はいずれも、特許請求した本発明を例示・説明するためだけのものであり、限定しようとするものではないと理解される。
本発明はまた、以下の態様および実施態様を含む。
[1]
a)送達用カテーテルを疾患に罹患している組織に挿入すること;前記組織に傷害または損傷を与え、疾患の症状の緩和に利益をもたらすのに有効な量の製剤を一定の温度および一定の圧力で人体の組織に注入すること;及び
b)前記送達用カテーテルを前記人体から引き抜くことを含む疾患の治療方法であって、ここで前記製剤が前記組織と相互作用する、治療方法。
[2]
前記疾患が高血圧、糖尿病、肥満、心不全、末期の腎臓疾患、消化器系疾患、泌尿器系疾患、癌、腫瘍、疼痛、喘息、肺動脈性高血圧、および慢性閉塞性肺疾患(COPD)からなる群より選択される、[1]に記載の方法。
[3]
前記疾患が、頭部、腕、顔面、下肢、眼、顎、瘢痕、鼠径部、副腎、膀胱、子宮頸、結腸、食道、胆嚢、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、胃、および子宮の癌からなる群より選択される、[1]または[2]に記載の方法。
[4]
前記疾患に罹患している組織が腎動脈、血管内腔、非血管内腔、気道、副鼻腔、食道、呼吸器の内腔、消化器の内腔、および泌尿器の内腔からなる群より選択される、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
前記製剤が、1種以上の成分のガス、蒸気、液体、溶液、乳剤または懸濁液を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]
前記製剤が1種以上の成分の蒸気を含む場合に、前記蒸気を液体に凝縮することによって熱が発生する、[5]に記載の方法。
[7]
前記製剤が液体または溶液を含む場合に、前記製剤の温度が体温よりも高く、かつ、前記製剤から熱が伝達される、[5]に記載の方法。
[8]
前記製剤が乳剤または懸濁液を含む場合に、前記製剤の温度が体温よりも高く、かつ、前記製剤から熱が伝達される、[1]に記載の方法。
[9]
前記製剤の温度が-40~140℃の範囲である、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10]
前記製剤の温度が-30~100℃の範囲である、[9]に記載の方法。
[11]
前記製剤の温度が-20~80℃の範囲である、[9]に記載の方法。
[12]
前記製剤の温度が0~140℃の範囲である、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[13]
前記製剤の温度が20~100℃の範囲である、[12]に記載の方法。
[14]
前記製剤の温度が30~80℃の範囲である、[12]に記載の方法。
[15]
前記製剤の温度が-40~0℃の範囲である、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[16]
前記製剤の温度が-30~-10℃の範囲である、[15]に記載の方法。
[17]
前記製剤の温度が-20~-30℃の範囲である、[15]に記載の方法。
[18]
前記製剤の温度が室温である、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[19]
前記製剤の温度が体温である、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[20]
組織の温度が前記製剤の温度とは異なる、[1]~[19]のいずれかに記載の方法。
[21]
組織の温度が前記製剤の温度よりも低い、[20]に記載の方法。
[22]
組織の温度が前記製剤の温度よりも高い、[20]に記載の方法。
[23]
組織の温度が-40~100℃の範囲である、[1]~[19]のいずれかに記載の方法。
[24]
組織の温度が-30~80℃の範囲である、[23]に記載の方法。
[25]
組織の温度が-20~80℃の範囲である、[23]に記載の方法。
[26]
組織の温度が-40~0℃の範囲である、[1]~[19]のいずれかに記載の方法。
[27]
組織の温度が-10~-35℃の範囲である、[26]に記載の方法。
[28]
組織の温度が-20~-30℃の範囲である、[23]に記載の方法。
[29]
組織の温度が体温である、[1]~[19]のいずれかに記載の方法。
[30]
前記製剤の圧力が、約-40~150℃の温度で約1~12ATMである、[1]~[29]のいずれかに記載の方法。
[31]
前記製剤の圧力が1~12ATMの範囲である、[1]~[29]のいずれかに記載の方法。
[32]
前記製剤の圧力が1~8ATMの範囲である、[31]に記載の方法。
[33]
前記製剤の圧力が1~5ATMの範囲である、[31]に記載の方法。
[34]
前記製剤の圧力が1~3ATMの範囲である、[31]に記載の方法。
[35]
前記製剤の圧力が身体の内腔または組織の圧力よりも高い、[1]~[29]のいずれかに記載の方法。
[36]
前記製剤の量が0.2マイクロリットル~200ミリリットルの範囲である、[1]~[35]のいずれかに記載の方法。
[37]
治療時間が約2秒~約60分の間である、[1]~[36]のいずれかに記載の方法。
[38]
前記製剤から送達される熱またはエネルギーの量が約2カロリー/g~約150カロリー/gの間である、[1]~[37]のいずれかに記載の方法。
[39]
前記送達用カテーテルが、ニードルを用いた送達用カテーテル、バルーン付きカテーテル、バルーン付きカテーテル、注入カテーテル、またはそれらの組み合わせである、[1]~[38]のいずれかに記載の方法。
[40]
前記バルーン付きカテーテルがシングルバルーン送達用カテーテルまたはダブルバルーン送達用カテーテルを含む、[39]に記載の方法。
[41]
前記1種以上の成分の製剤が、水、生理食塩水、高張食塩水、フェノール、メタノール、エタノール、無水アルコール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、グリセロール、酢酸、乳酸、ヨウ化プロピル、ヨウ化イソプロピル、ヨウ化エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、硝酸エチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチル、リピオドール、尿素、ならびにそれらの誘導体およびそれらの組み合わせを含む、[1]~[40]のいずれかに記載の方法。
[42]
前記製剤が、酸素、窒素、ヘリウム、アルゴン、空気、二酸化炭素、一酸化窒素、水、フェノール、メタノール、エタノール、無水アルコール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、グリセロール、酢酸、乳酸、ヨウ化プロピル、ヨウ化イソプロピル、ヨウ化エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、硝酸エチル、酢酸イソプロピル、乳酸エチルおよびそれらの混合物のガスまたは蒸気を含む、[1]~[41]のいずれかに記載の方法。
[43]
前記製剤が除神経用の治療薬を含む、[1]~[42]のいずれかに記載の方法。
[44]
前記治療薬がナトリウムチャネル遮断薬、テトロドトキシン、サキシトキシン、デカルバモイルサキシトキシン、バニロイド、ネオサキシトキシン、リドカイン、コノトキシン、強心配糖体、ジゴキシン、グルタメート、スタウロスポリン、アムロジピン、ベラパミル、シマリン、ジギトキシン、プロスシラリジン、ウアバイン、ベラトリジン、ドーモイ酸、オレアンドリン、カルバマゼピン、アフラトキシン、グアネチジン、およびグアネチジン硫酸塩からなる群より選択される、[43]に記載の方法。
[45]
前記製剤が除神経術を画像化するための造影剤を含む、[1]~[44]のいずれかに記載の方法。
[46]
前記造影剤がヨード、ヨウ化エチル、ヨウ化ナトリウム、リピオドール、ノノキシノールヨード、イオビトリドール、イオヘキソール、イオメプロール、イオパミドール、イオペントール、イオプロミド、イオベルソール、イオキシラン、イオトロラン、イオジキサノール、イオキサグレート、およびそれらの誘導体からなる群より選択される[45]に記載の方法。
[47]
前記製剤が、単純な蒸留によってはその成分を変化させることができない2種以上の成分の混合物である共沸混合物を含む、[1]~[46]のいずれかに記載の方法。
[48]
前記共沸混合物がエタノール/水、プロパノール/水、イソプロパノール/水、ブタノール/水、酢酸/水、乳酸/水、乳酸エチル/水、乳酸エチル/エタノール、乳酸/エタノール/水、乳酸エチル/水/エタノール、酢酸エチル/エタノール、硝酸エチル/エタノール、および酢酸イソプロピル/エタノールからなる群より選択される、[47]に記載の方法。
[49]
前記製剤がエタノール/水、エタノール/水/酸素、エタノール/水/空気、エタノール/水/造影剤、エタノール/水/界面活性剤、エタノール/水/造影剤/界面活性剤、プロパノール/水、イソプロパノール/水、ブタノール/水、酢酸/水、酢酸/水/酸素、酢酸/水/空気、酢酸/水/エタノール、酢酸/水/造影剤、酢酸/水/造影剤/界面活性剤、酢酸/水/エタノール/造影剤、酢酸/水/エタノール/造影剤/界面活性剤、乳酸/水、乳酸/水/エタノール、乳酸/水/造影剤、乳酸/水/造影剤/界面活性剤、乳酸/水/エタノール/造影剤、乳酸/水/エタノール/造影剤/界面活性剤、乳酸エチル/水、乳酸エチル/エタノール、乳酸/エタノール/水、乳酸エチル/水/エタノール、酢酸エチル/エタノール、硝酸エチル/エタノール、または酢酸イソプロピル/エタノールを含む、[1]~[46]のいずれかに記載の方法。
[50]
熱アブレーションおよび化学的アブレーションの併用による疾患の治療方法であって:
a)神経に隣接している身体の内腔に送達用カテーテルを挿入すること;
b)前記神経に障害または損傷を与え、前記疾患の症状の緩和に利益をもたらす量のエネルギーまたは/および製剤を望ましい温度で前記身体内腔の前記神経組織に送達すること;および
c)前記送達用カテーテルを前記身体内腔から引き抜くこと
を含む、疾患の治療方法。
[51]
前記エネルギーが高周波、凍結融解、マイクロ波、レーザー、超音波、および高密度焦点式超音波からなる群より選択される、[50]に記載の方法。
[52]
前記熱アブレーションが高周波、凍結融解、マイクロ波、レーザー、超音波、および高密度焦点式超音波アブレーションからなる群より選択される、[50]に記載の方法。
[53]
前記エネルギーを送達している間、またはその前後に前記製剤が前記神経組織に注入される、[50]~[52]のいずれかに記載の方法。
[54]
前記熱アブレーションを行っている間、またはその前後に前記製剤が前記神経組織に注入される、[50]~[52]のいずれかに記載の方法。